(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-04
(54)【発明の名称】冷蔵装置および吸湿シート
(51)【国際特許分類】
F25D 23/00 20060101AFI20230627BHJP
【FI】
F25D23/00 302J
F25D23/00 307
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022557075
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(85)【翻訳文提出日】2022-11-11
(86)【国際出願番号】 EP2020058367
(87)【国際公開番号】W WO2021190744
(87)【国際公開日】2021-09-30
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513121384
【氏名又は名称】ベステル エレクトロニク サナイー ベ ティカレト エー.エス.
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】トゥナイ エルカン
【テーマコード(参考)】
3L345
【Fターム(参考)】
3L345AA02
3L345AA13
3L345AA14
3L345KK04
(57)【要約】
冷蔵装置(10)は、冷却対象物を収容する冷却室(12)を備える。冷蔵装置(10)は、吸湿シート(100)が冷却室(12)内の水分を吸収できるように吸湿シート(100)の冷却室(12)の内部及び外部への移動を案内するガイド機構(50)を備える。一例において、吸湿シート(100)は、吸湿シート(100)を冷却室(12)の壁(14、16、18)に脱着可能に取り付ける一つ以上の永久磁石(102)を備える。別の実施形態において、吸湿シート(100)は、冷却室(12)から水分を吸収する吸水層(116)と、吸水層(116)の内側に配置されて水を貯える貯水層(114)とを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷蔵装置であって、
使用時に前記冷蔵装置による冷却対象物を収容する冷却室と、
吸湿シートの前記冷却室の内部及び外部への移動を案内するガイド機構とを備え、
前記ガイド機構は、前記吸湿シートが前記冷却室内の水分を吸収可能なように前記吸湿シートが冷蔵装置内に導入されるときに、前記吸湿シートを前記冷却室内部の所定位置に案内するよう構成且つ配置され、
前記ガイド機構は、前記吸湿シートが前記冷蔵装置から取り除かれるときに、前記吸湿シートを前記冷却室の外に案内するよう構成且つ配置されることを特徴とする冷蔵装置。
【請求項2】
請求項1に記載の冷蔵装置において、前記冷却室は少なくとも上壁と、後壁と、底壁とを備え、前記ガイド機構は、前記吸湿シートが前記上壁、後壁、および底壁の少なくとも一つに隣接するよう、前記吸湿シートを前記冷却室内の所定位置に案内するよう構成且つ配置されることを特徴とする冷蔵装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の冷蔵装置において、前記ガイド機構は、少なくとも一つのローラを備え、前記ローラは、前記吸湿シートの前記冷却室の内部及び外部への移動が、前記吸湿シートが前記ローラ上を移動することによって案内されるよう構成されることを特徴とする冷蔵装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の冷蔵装置において、前記吸湿シートを取り付け可能なウインチケーブルを有するウインチを備え、前記ウインチは少なくとも前記ウインチケーブルを巻き取り、前記吸湿シートを前記冷却室内に引き込むよう動作可能であることを特徴とする冷蔵装置。
【請求項5】
請求項4に記載の冷蔵装置において、前記ウインチケーブルの自由端は、前記吸湿シートを接続して前記吸湿シートを前記ウインチケーブルに取り付け可能な接続装置を備えることを特徴とする冷蔵装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の冷蔵装置において、前記ウインチの動作を作動させるよう動作可能なモータを備えることを特徴とする冷蔵装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の冷蔵装置と、前記ガイド機構によって前記冷却室内の所定位置及び前記冷却室の外部に案内可能な吸湿シートとの組み合わせ。
【請求項8】
請求項7に記載の組み合わせにおいて、前記吸湿シートは、前記吸湿シートを前記冷蔵装置の前記冷却室の壁に脱着可能に取り付ける一つ以上の永久磁石を備えることを特徴とする組み合わせ。
【請求項9】
請求項7または8に記載の組み合わせにおいて、前記吸湿シートは、比較的低い摩擦係数を有し、前記吸湿シートが前記冷却室の内部及び外部に移動するときの、前記冷却室の一つ以上の壁の上における前記吸湿シートの摺動を容易とする低摩擦面を有することを特徴とする組み合わせ。
【請求項10】
請求項7から9のいずれか一項に記載の組み合わせにおいて、前記吸湿シートは前記低摩擦面に対向する吸水面と、前記吸水面と前記低摩擦面との間に配置される貯水層とを備えることを特徴とする組み合わせ。
【請求項11】
冷蔵装置の冷却室に配置する吸湿シートであって、
使用時に前記吸湿シートが配置される冷蔵装置の冷却室から水分を吸収する吸水層と、
前記吸水層の内側に配置され、吸水面によって吸収された水を貯える貯水層とを備え、
前記吸水層は、前記冷却室内の水分を捕捉する複数の水捕捉塊と、前記水捕捉塊から前記貯水層に水を移送する複数の水移送塊とからなることを特徴とする吸湿シート。
【請求項12】
請求項11に記載の吸湿シートにおいて、前記水捕捉塊は略円錐状であり、前記水捕捉塊の円錐の基部は、前記円錐の基部が使用時に前記冷蔵装置の前記冷却室に向けられるよう前記吸水層から離れる方向に向いて配置されていることを特徴とする吸湿シート。
【請求項13】
請求項11または12に記載の吸湿シートにおいて、前記水移送塊は略円錐状であり、前記水移送塊の円錐の基部が前記吸水層に向けて対向するよう配置されることを特徴とする吸湿シート。
【請求項14】
請求項11から13のいずれか一項に記載の吸湿シートにおいて、前記吸湿シートを前記冷蔵装置の前記冷却室の壁に脱着可能に取り付ける一つ以上の永久磁石を備えることを特徴とする吸湿シート。
【請求項15】
請求項11から14のいずれか一項に記載の吸湿シートにおいて、前記吸湿シートが前記冷蔵装置内に巻き上げられるように、前記吸湿シートを前記冷蔵装置のウインチケーブルの接続装置に接続する接続装置を備えることを特徴とする吸湿シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願開示は、冷蔵装置および冷蔵装置用の吸湿シートに関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫、冷凍庫、一体型の冷蔵冷凍庫などの冷蔵装置に共通する問題は、水滴の増加による当該装置内の湿度の増加である。同様に、このような装置における共通の課題は、当該装置内の、例えば塵、花粉、および他の空気中を浮遊する物質などの、細菌を含む粒子の増加である。
【0003】
冷蔵装置の中には、例えばファンによる空気循環システムを備えるものもあるが、これらは一般に冷蔵装置外への空気の排出口を有しないため、一般に湿度を低下させたり、粒子を冷蔵装置から除去したりすることはない。粒子を吸引するための荷電イオンを生成する空気イオン化装置を有する冷蔵装置もある。しかし、繰り返しになるが、イオン化された空気と捕捉された粒子のための冷蔵装置外への排出口が一般に設けられないため、これらは有効ではない可能性がある。冷蔵装置が湿った、または汚れた空気の排出口を備える場合であっても、この湿った、または汚れた空気は、単に冷蔵装置が配置された部屋に押し出されるだけであり、これは好ましくないだろう。
【0004】
さらに、冷蔵装置内の湿気などを吸収するために、ユーザは、吸収性ライナーまたはパッドを冷蔵装置の棚または引き出しに配置することも可能である。しかし、このようなライナーは、しばしば使用するのに不便であり、非常に有効ではない可能性がある。
【発明の概要】
【0005】
本明細書に開示される第一の態様によれば、冷蔵装置であって、使用時に前記冷蔵装置による冷却対象物を収容する冷却室と、吸湿シートの前記冷却室の内部及び外部への移動を案内するガイド機構とを備え、前記ガイド機構は、前記吸湿シートが前記冷却室内の水分を吸収可能なように前記吸湿シートが冷蔵装置内に導入されるときに、前記吸湿シートを前記冷却室内部の所定位置に案内するよう構成且つ配置され、前記ガイド機構は、前記吸湿シートが前記冷蔵装置から取り除かれるときに、前記吸湿シートを前記冷却室の外に案内するよう構成且つ配置される冷蔵装置が提供される。
【0006】
これにより、ユーザが吸湿シートを冷却室内の所定位置に配置すること、およびシートから水を抜き、洗浄または交換することが必要なときに、シートを冷却室から抜き取ることが容易かつ便宜となる。
【0007】
一例において、前記冷却室は少なくとも上壁と、後壁と、底壁とを備え、前記ガイド機構は、前記吸湿シートが前記上壁、後壁、および底壁の少なくとも一つに隣接するよう、前記吸湿シートを前記冷却室内の所定位置に案内するよう構成且つ配置される。
【0008】
一例において、前記ガイド機構は、少なくとも一つのローラを備え、前記ローラは、前記吸湿シートの前記冷却室の内部及び外部への移動が、前記吸湿シートが前記ローラ上を移動することによって案内されるよう構成される。
【0009】
一例において、前記冷蔵装置は、前記吸湿シートを取り付け可能なウインチケーブルを有するウインチを備え、前記ウインチは少なくとも前記ウインチケーブルを巻き取り、前記吸湿シートを前記冷却室内に引き込むよう動作可能である。
【0010】
一例において、前記ウインチケーブルの自由端は、前記吸湿シートを接続して前記吸湿シートを前記ウインチケーブルに取り付け可能な接続装置を備える。
【0011】
一例において、前記冷蔵装置は、前記ウインチの動作を作動させるよう動作可能なモータを備える。
【0012】
上述の冷蔵装置と、前記ガイド機構によって前記冷却室内の所定位置及び前記冷却室の外部に案内可能な吸湿シートとの組み合わせも提供される。
【0013】
一例において、前記吸湿シートは、前記吸湿シートを前記冷蔵装置の前記冷却室の壁に脱着可能に取り付ける一つ以上の永久磁石を備える。
【0014】
一例において、前記吸湿シートは、比較的低い摩擦係数を有し、前記吸湿シートが前記冷却室の内部及び外部に移動するときの、前記冷却室の一つ以上の壁の上における前記吸湿シートの摺動を容易とする低摩擦面を有する。
【0015】
一例において、前記吸湿シートは前記低摩擦面に対向する吸水面と、前記吸水面と前記低摩擦面との間に配置される貯水層とを備える。
【0016】
本明細書に開示される第二の態様によれば、冷蔵装置の冷却室に配置する吸湿シートであって、使用時に前記吸湿シートが配置される冷蔵装置の冷却室から水分を吸収する吸水層と、前記吸水層の内側に配置され、吸水面によって吸収された水を貯える貯水層とを備え、前記吸水層は、前記冷却室内の水分を捕捉する複数の水捕捉塊と、前記水捕捉塊から前記貯水層に水を移送する複数の水移送塊とからなる吸湿シートが提供される。
【0017】
一例において、水捕捉塊は略円錐状であり、前記水捕捉塊の円錐の基部は、前記円錐の基部が使用時に前記冷蔵装置の前記冷却室に向けられるよう前記吸水層から離れる方向に向いて配置されている。
【0018】
一例において、前記水移送塊は略円錐状であり、前記水移送塊の円錐の基部が前記吸水層に向けて対向するよう配置される。
【0019】
一例において、前記吸湿シートは、前記吸湿シートを前記冷蔵装置の前記冷却室の壁に脱着可能に取り付ける一つ以上の永久磁石を備える。
【0020】
一例において、前記吸湿シートは、前記吸湿シートが前記冷蔵装置内に巻き上げられるように、前記吸湿シートを前記冷蔵装置のウインチケーブルの接続装置に接続する接続装置を備える。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本願開示の理解を促し、かつ、実施形態がどのように実施されうるかを示すために、例として以下の添付図面が参照される。
【0022】
【
図1】本願開示の実施形態に係る吸湿シートの一例を備える冷蔵装置の一例の正面図を模式的に示す。
【
図2】
図1の冷蔵装置のガイド機構と吸湿シートとを模式的に示す。
【
図3A】吸湿シートが冷蔵装置内に導入される際の異なる段階を示しており、
図1の冷蔵装置の側方断面図を模式的に示す。
【
図3B】吸湿シートが冷蔵装置内に導入される際の異なる段階を示しており、
図1の冷蔵装置の側方断面図を模式的に示す。
【
図3C】吸湿シートが冷蔵装置内に導入される際の異なる段階を示しており、
図1の冷蔵装置の側方断面図を模式的に示す。
【
図4】本願開示の実施形態にかかる吸湿シートの例の斜視断面図を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
具体的に
図1~3を参照すると、本願開示の実施形態にかかる吸湿シート100の一例を備える冷蔵装置10の一例が示される。この冷蔵装置10は、例えば冷蔵庫、冷凍庫、一体型冷凍冷蔵庫等であってよい。
図1において、シート100は、冷蔵装置10内に全体が配置された形で示される。
図2に模式的に示されるのは、吸湿シート100と冷蔵装置10のガイド機構50のみであり、冷蔵装置10の残部は分かりやすくするために図示されていない。
図3A~3Cは、シート100が冷蔵装置10内に導入される際の、またはこれに対応して、シート100が冷蔵装置10から引き出されるかまたは押し出される際の異なる段階を示す。
【0024】
冷蔵装置10は、使用時に冷却対象物が内部に配置される冷却室12を備える。この冷却室12は、上壁14と、後壁16と、底壁18とを有する。本例での冷却室12は、対向する側壁20(
図1参照)を有する。この例の冷却室12は、かなりありふれた矩形直方体形状を有するが、他の形状であってもよいことは理解されるべきである。にもかかわらず、以降の記載で明らかとなるように、シート100が使用時にその上を通って移動する冷却室12の壁のいずれもが少なくとも略平面である場合に、本明細書に記載される例の動作が容易となる。
【0025】
冷蔵装置10は、例えば蒸発器、圧縮器、膨張弁、冷媒移送用パイプ等の、冷却室12を冷却するための蒸気圧縮冷凍サイクルを実現するのに必要な通常の部品(図示略)も有する。
【0026】
冷蔵装置10のガイド機構50は、吸湿シート100を冷蔵装置10の内部及び外部に案内するのに用いられる。具体的には、ガイド機構50は、シート100が冷蔵装置10内に導入される際にシート100を冷却室12内部の所定位置に案内する。同様に、ガイド機構50は、シート100が冷蔵装置10から除去される際にシート100を冷却室12の外に案内する。
【0027】
図示される例において、冷却室12内の所定位置に配置された際に、シート100が冷却室12の上壁14、後壁16、および底壁18の少なくともいずれかに隣接するようガイド機構50が構成される。以降の記載で明らかとなるように、シート100が上壁14、後壁16および底壁18の一つのみに隣接するか、上壁14と後壁16とに隣接するか、後壁16と底壁18とに隣接するか、または三つの壁14、16、18の全てに隣接するかは、シート100がどれだけ長いか、壁14、16、18がどれだけ長いか、およびシート100がどれだけ冷却室12内に挿入されるかに応じて決まる。シート100が水分等を吸収する面積を最大化するには、
図1に模式的に示されるように、シート100は三つの壁14、16、18全てを覆うべきである。しかし、別の例では、シート100が底壁18の上にない状態で底壁18上に冷却対象物を配置することをユーザが望む場合に、シート100は例えば上壁14と後壁16とのみを覆うのが便宜である可能性もある。
【0028】
いずれにしても、冷却室12の壁14、16、18の一つ以上に隣接してシート100を配置することの利点は、吸湿シート100が冷却室12の主要な内部構造から離隔されることである。このことが意味するのは、冷却室12内の冷却対象物用に予定されたスペースをシート100が占有しないということである。また、例えばシートが底壁18に隣接しない場合、これが意味するのは、例えば冷蔵装置の棚の上、または引き出しの中に通常配置される公知の吸収ライナーまたはパッドと比較して、冷却室12内の冷却対象物がシート100上に静置される必要がないということである。これにより、吸収した水分量のために時間経過とともに湿る可能性のあるライナー上に冷却対象物が静置され、公知の構成において冷却対象物が損なわれる事態を防ぐこととなる。
【0029】
ガイド機構50は数多くの異なる形で構成されてよい。例えば、ガイド機構50は、シート100が冷却室12に導入されたり取り除かれる際に、シート100がその上を摺動する一つ以上のスライダーから構成されるかまたは一つ以上のスライダーを備えてもよい。これらのスライダーは、例えば冷却室12の内部にわたり横方向に延び、静止または固定される複数のロッドまたはレールなどの形態であってもよい。
【0030】
図示される例では、ガイド機構50は冷却室12の内部にわたって横方向に延び、それぞれの長手方向軸を中心に回転可能に取り付けられる複数のローラ52、54、56、58によって提供される。これらローラ52、54、56、58により、シート100の冷却室12の内部及び外部への移動が容易となる。また、これらのローラ52、54、56、58により、シート100を冷却室12内に正確に配置しやすくなり、シート100を平坦に保ちやすくなる。
【0031】
具体的に、この例では、冷却室12の上部前方にわたって延びるよう取り付けられる第一ローラ52と、冷却室12の上部後方にわたって延びるよう取り付けられる第二ローラ54と、冷却室12の下部後方にわたって延びるよう取り付けられる第三ローラ56と、冷却室12の下部前方にわたって延びるよう取り付けられる第四ローラ58とが設けられる。各ケースにおいて、各ローラ52、54、56、58は、冷却室12の上壁、後壁、および底壁、すなわち壁14、16、18それぞれに近接するものの離隔して取り付けられる。
図3A~3Cにおいて最も明確に示されるように、これにより各壁14、16、18に隣接または近接させつつ、冷却室12内にシート100を導入するスペースが得られる。他の例においては、より少ないまたは多くのローラが冷却室12の内部に横方向にわたって、場合によって図面に示される例とは異なる位置に配置されてもよいことが理解されるであろう。
【0032】
使用にあたり、ユーザは、例えば、シート100の自由端を上壁14と上部前方ローラ52との間のスペースまたは、より不便かもしれないが底壁18と下部前方ローラ58との間のスペースに挿入することにより、シート100を冷蔵装置10の冷却室12内に供給することができる。その後、ユーザはシート100が冷却室12内の所望の位置に配置されるまでシート100を操作して、場合によっては他のローラ54、56、58/52の周りにシート100を供給することができる。ユーザは、同様にして冷却室12からシート100を引き出すことができる。
【0033】
しかしながら、シート100を冷却室12内に挿入しやすくするため、図示される例では、下部前方ローラ58はウインチとして動作する。少なくとも一つのガイドケーブルまたはロープ60の一端が下部前方ローラ58に固定される。図示される例では、二本のガイドケーブルまたはロープ60の一端が下部前方ローラ58に固定される。図示される例では、これら二本のガイドケーブル60は下部前方ローラ58の対向する端部に固定される。
【0034】
具体的には、
図3A~3Cを参照すると、シート100を冷却室12内に挿入したい場合、このシート100をガイドケーブル60に接続する。ここで、ガイドケーブル60の自由端は、上部前方ローラ52のすぐ前方に(冷却室12の開口前方に向けて)突き出ていることが理解される。次いで、下部前方ローラ58が回転させられ、シート100を冷却室12内に引き込む。
図3Bを参照すると、シート100は、上部前方ローラ52と冷却室12の上壁14の内面との間のスペースで上部前方ローラ52の上を移動する。
図3Cを参照すると、下部前方ローラ58を引き続き回転することで、上部後方ローラ54の上で下部後方ローラ56に向かってシート100が下方に引き込まれる。下部前方ローラ58を引き続き回転すると、シート100は、下部後方ローラ56の下で下部前方ローラ58に向かって引き込まれる。
図1参照。繰り返すと、シート100を冷却室12の底壁18上まで延びるように引くことは必ずしも必要ないし好ましくないかもしれない。例えば、シート100が上壁14および後壁16上にのみに延びるように、または場合によっては、上壁14または後壁16上のみに延びるだけで十分であるかまたは好ましいかもしれない。
【0035】
したがって、この例においては、ガイド機構50を用いて、シート100を冷却室12に引き込み、シート100を冷却室12の各壁14、16、18に隣接または近接して配置することもできる。
【0036】
下部前方ローラ58は、上述のようにウインチとして動作する場合、必要に応じてユーザにより手動で回動されてもよい。あるいは、図示される例に示されるように、下部前方ローラ58は電気モータ62によって回転駆動されてもよい。この電気モータ62は、例えば、ユーザがシート100をガイドケーブル60に接続した後にスタートボタン等を押すことによって動作してもよい。これに代えて、何らかのセンサ機構を設け、このセンサにより、シート100がガイドケーブル60に接続されていることを検出した場合に、自動的にモータ62を操作させてもよい。別のオプションとして、必要に応じて他のローラ52、54、56の少なくとも一つを、各々の電気モータによって回転駆動させてもよい。具体例として、電気モータ64を設けて上部前方ローラ52を回転させ、この上部電気モータ64の回転を下部前方ローラ58に設けられた下部電気モータ62の回転と合わせてもよい。
【0037】
シート100を冷却室12の壁14、16、18の一つ以上に近接して保ちやすくするため、壁14、16、18が磁性材料から形成されるかまたは磁性材料を含有する場合、この例のシート100は、複数の永久磁石102を備える。磁石102は、好ましくはシート100の表面から突出しないようにシート100の本体に配置される。さもなければ、磁石102はローラ52、54、56、58にわたるシート100の移動を阻害する可能性があるからである。磁石102により、シート100が冷却室12の関係する壁14、16、18の一つ以上に脱着可能に取り付けられる。磁石102は全体として、シート100が冷却室12の内外に移動する際に、シート100が冷却室12の壁14、16、18を越えて移動するのを妨げるほど強い磁気を有するべきではないことが理解されよう。磁石102は、小さなボタン型、帯状(strip)などの形状であってよい。
【0038】
シート100をガイドケーブル60に接続するには、複数のオプションが可能である。シート100は、例えば、一端に複数の弾性ソケットを有し、ガイドケーブル60はこれらのソケットに押し込み可能とされて、ソケットに接続されたシート100を保持するものとされてよい。別の例として、一つ以上の係合部がシート100およびガイドケーブル60に、またはガイドケーブル60に関連付けて設けられ、シート100をガイドケーブル60に係脱可能に係止してもよい。具体的に
図2を参照すると、例えば、ガイドケーブル60間を延びるようにガイドケーブル60に接続された材料のストリップ66があってもよい。このストリップ66は、例えば、シート100の一端に設けられた対応する部分と係合してシート100をガイドケーブル60に接続する複数の部品を有してもよい。一例として、ストリップ66およびシート100は、それぞれ、プレス型スタッドまたはプレス型ファスナー等の対応する部品を備えてもよい。
図2に模式的に示される(ユーザにとって最も便宜となりそうな)別の例では、ストリップ66およびシート100には、ユーザが必要な時にシート100をストリップ66に留め、シート100をストリップ66から外すことができるように、ファスナー68、104の各々の部品が設けられてもよい。
【0039】
つまり、図示の例においては、ユーザは、下部前方ローラ58をウインチとして用いて、シート100を冷蔵装置10と冷却室12とに引き込むことで、新鮮な乾いた吸湿シート100を、冷蔵装置10の冷却室12にガイド機構50を用いて挿入することができる。ガイド機構50は、シート100が冷却室12の壁14、16、18に近接するようにシート100の移動を案内する。シート100が完全に挿入されると、シート100の移動が停止される。これにより、永久磁石102がシートを引き付けて冷却室12の壁14、16、18に当接させ、シート100によりユーザが冷却室12内にアイテムを配置したり冷却室12からアイテムを取り除くことが阻害されたり妨げられないよう、シート100を冷却室100の主要部の外部に保持することが可能となる。時間経過に伴い、シート100は水分を吸収し、場合によっては粒子も吸収する。この場合、ユーザは上述の操作を反転して、シート100を冷却室12から引き出してもよい。その後、ユーザはシート100を廃棄して新しいシートと交換することができ、または、より好ましくは、このシート100を洗って乾燥させ、再度冷却室12に挿入してもよい。
【0040】
図4が模式的に示すのは、本願開示の実施形態に係る吸湿シート100の例の斜視部分断面図である。このシート100は、上述の冷蔵装置10とともに使用されてよい。シート100は、以下に説明するように、シート100の吸水性を様々な形で実現し、冷蔵装置10へのシート100の挿入または冷蔵装置10からのシート100の除去を可能または容易とする複数の層を有する。一般に、シート100は、シート100が冷蔵装置10に挿入され、冷蔵装置10から取り除かれる際にローラ52、54、56、58の周りで屈曲するようある程度の柔軟性を備えるべきである。
【0041】
図4において、矢印Aは冷蔵装置10の壁14、16、18の方向を指しており、シート100が冷蔵装置10に挿入されているとき、
図4に示されるシート100の上面106が冷蔵装置10の壁14、16、18に面している。これに対応して、矢印Bは冷却室12の内部を指しており、シート100が冷蔵装置10に挿入されているとき、
図4に示されるシート100の下面108が冷却室12の内部に面している。
【0042】
冷蔵装置10の壁14、16、18に面する面106から冷却室12内部に面する面108に向かってシート100の層を移動すると、シート100の第一層110は、数多くの特性の一つ以上を有する材料から形成される。第一の望ましい特性は、第一層110が(少なくとも、例えばシート100の他の面108と比べて)比較的低い摩擦係数を有することである。これは、シート100が冷蔵装置10に挿入され、また冷蔵装置10から取り除かれる際に、シート100が冷蔵装置10の壁14、16、18の上をより容易に摺動できるようにするためである。第二の好ましい特性は、第一層110が防水性で、シート100によって冷却室12から吸収された水分がシート100を通過しないことである。第一層110は、例えばポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロンなどを含むポリマーから形成されてよい。
【0043】
図4は、第一層110の内側の第二層112を示す。この第二層112は、シート100を冷蔵装置10の壁14、16、18に固定しやすくする上述の永久磁石102を備える。第二層112は、例えばポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロンなどを含むポリマーから形成されてよい。別々の層として示されるものの、別の例においては、第一層110が永久磁石102を備えてもよく、永久磁石102を設けるためだけの第二層112のような別個の層はなくてもよい。
【0044】
シート100は第三層114を有する。第三層114の主な機能は、冷却室12の内部から吸収した水分を溜めることである。したがって、第三層114は水を溜めることができる材料から形成される。適切な例としては、天然または合成スポンジが挙げられ、合成スポンジは、典型的には、例えばポリエステル、ポリウレタン、植物性セルロース等から形成される。第三層114のスポンジは、圧縮形態であってもよい。
【0045】
シート100は第四(最終)層116を有する。第四層116の主要な機能は、冷却室12の内部にある水分を吸収または捕捉し、この捕捉された水分を第三の貯水層114に押し出すかまたは移送することである。第四層116は様々な異なる形で構成されてよい。
図4に示される例では、第四層116は三つの部分を備える。具体的に、第四層116は主基板118と、複数の水捕捉突起または塊(buds or wads)120と、複数の水移送突起または塊122とを有する。
【0046】
この水捕捉塊120は、使用時に冷却室12の内部に面する表面108に、または表面108に向けて配置される。図示される例では、水捕捉塊または突起120は、円錐状または略円錐状であり、塊120の円錐の基部が使用時に冷却室12の内部に面する表面108の外部に面し、円錐の先端がシート100の内側に向いている。これが意味するのは、表面108の多くのおよびいくつかの例では、表面108の全てが水捕捉塊120により有効に構成され、これによりシート100の冷却室12から水分を吸収する能力が最大化されるということである。
【0047】
水移送塊122は第四層116の反対側に、または反対側に向けて(すなわち、シート100の内側に向けて)配置される。図示される例では、水移送塊122は円錐状または略円錐状であり、塊122の円錐の基部がシート100の内側に向き、円錐の先端が使用時に冷却室12の内部に面する表面108に向けてシート100の外部に向いている。
【0048】
使用時にシート100が冷蔵装置10内に配置されると、水捕捉塊120が冷却室12内部から水を吸収する。水捕捉塊120の水吸収能力は、水捕捉塊120が円錐状で、その基部が冷却室12の内部に向いている場合に向上する。水捕捉塊120の基部で捕捉された水は、水捕捉塊120を通ってその先端に到達する。この水は、水移送塊122により集められる。上述のように、水捕捉塊120と水移送塊122とは主基板118内に設けられてもよく、したがって水捕捉塊120によって捕捉された水が基板118を通って水移送塊122に到達してもよい。他の例においては、基板はそれ自体として存在していなくてもよく、代わりに第四層116が水捕捉塊120と水移送塊122のみからなり、水が塊120、122との間を直接通過する。いずれにしても、水移送塊122の先端に到達した水は、水移送塊122の基部に移送され、そこから、水が第三層114に到達して溜められる。
【0049】
水捕捉塊120の材料は、塊120が冷却室12の内部から水を吸収する能力を向上するように選択されてよい。例えば、水捕捉塊120は、包まれたり、圧縮されたり、または織られて高密度化された綿、または何らかの綿ベースの吸収材、一般的な亜麻、亜麻仁、または一般的な亜麻、亜麻仁から形成される麻、例えばセルロース繊維強化ポリプロピレンを含むポリプロピレンまたは何らかのポリプロピレンベースの吸収材、またはこれらの混合物から形成されてもよい。水移送塊122の材料は、塊122が水を第三層114に移送して貯蔵する能力を向上するように選択されてよい。適切な材料の例としては低摩擦を実現する材料が挙げられる。例えば、水移送塊122はシルクまたは何らかのシルクベースの材料、ポリエチレンまたは何らかのポリエチレンベースの材料、ウールまたは何らかのウールベースの材料、ビスコースまたは何らかのビスコースベースの材料、ナイロンまたは何らかのナイロンベースの材料、またはこれらの混合物から形成されてよい。
【0050】
上記のとおり、このようなシート100は、上述のようにシート100が冷蔵装置10に挿入され、冷蔵装置10から取り除かれる際に、ローラ52、54、56、58の周りで屈曲可能なようある程度の柔軟性を備える。シート100が水分、場合によっては粒子も吸収して一杯になったら、ユーザはシート100を取り除き、好ましくはシート100を洗って乾燥させ、再び冷却室12に挿入することでシート100を再利用できる。
【0051】
本明細書に記載される例は、本発明の実施形態の説明的事例として理解されるべきである。さらなる実施形態および事例も想定される。任意の一例または実施形態に関して記載されたいずれの特徴は、単独または他の特徴と組み合わせて使用してもよい。さらには、任意の一例または実施形態に関して記載されたいずれの特徴は、その他の例または実施形態の一つ以上の特徴と組み合わせて、または、その他の例または実施形態と組み合わせることによって、使用してもよい。さらには、本明細書に記載されていない均等物および変形例についても、特許請求の範囲で定義される本発明の範囲内で採用することができる。
【国際調査報告】