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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-04
(54)【発明の名称】エネルギ回収のための浮動船
(51)【国際特許分類】
   F03B 13/14 20060101AFI20230627BHJP
   F03D 3/02 20060101ALI20230627BHJP
   B63B 35/00 20200101ALI20230627BHJP
【FI】
F03B13/14
F03D3/02 Z
B63B35/00 T
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022562502
(86)(22)【出願日】2021-04-13
(85)【翻訳文提出日】2022-10-12
(86)【国際出願番号】 NO2021050098
(87)【国際公開番号】W WO2021210987
(87)【国際公開日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】20200454
(32)【優先日】2020-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522400685
【氏名又は名称】オフショア パワー プラント
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ロテ,アトレ
【テーマコード(参考)】
3H074
3H178
【Fターム(参考)】
3H074AA02
3H074AA12
3H074BB10
3H074BB11
3H074CC11
3H178AA12
3H178AA34
3H178AA43
3H178BB31
3H178CC01
3H178DD70X
(57)【要約】
本発明は、船体(2)と、波力発電所(10)とを含む、エネルギ回収のための浮動船(1)に関する。波力発電所(10)は、水の波を受け入れるように構成される入口(11)を含み、入口(11)は、入口(11)に入る水を運搬し且つ持ち上げるようにある角度で構成される輸送チャネル(12)に至る。輸送チャネル(12)は、水を受け入れるように構成される高架の窪み(13)に至り、窪み(13)は、窪み(13)より下方のタービン(14T)への出口を有し、タービン(14T)は、水の位置エネルギを電気エネルギに変換するための発電機(14G)を作動させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギ回収のための浮動船であって、
船体と、
波力発電所と、を含み、
前記波力発電所は、水の波を受け入れるように構成される入口を含み、
前記入口は、前記入口に入る水を運搬し且つ持ち上げるようにある角度で構成される輸送チャネルに至り、
前記輸送チャネルは、水を受け入れるように構成される高架の窪みに至り、
前記窪みは、前記窪みより下方のタービンへの出口を有し、
前記タービンは、前記水の位置エネルギを電気エネルギに変換するための発電機を作動させる、
浮動船。
【請求項2】
前記波力発電所を入ってくる波から遮蔽するために前記入口にある遮蔽手段を更に含み、該遮蔽手段は、開放位置と閉鎖位置との間で移動するように構成されるドアを含む、請求項1に記載の浮動船。
【請求項3】
前記船体に取り付けられる少なくとも1つのウェーブフォイルを更に含み、該ウェーブフォイルは、前記水に対して垂直な動きから前方推力を生成するように構成される、請求項1または2に記載の浮動船。
【請求項4】
少なくとも1つのラダーを更に含む、請求項1~3のうちのいずれか1項に記載の浮動船。
【請求項5】
当該浮動船から上方に突出する少なくとも1つのエアフォイル形状の本体を更に含み、前記エアフォイルは、当該浮動船を推進させるために風から推力を生成するように構成される、請求項1~4のうちのいずれか1項に記載の浮動船。
【請求項6】
前記エアフォイルは、ウイングまたはセールである、請求項6に記載の浮動船。
【請求項7】
波からエネルギを回収する方法であって、
- 請求項1に記載の浮動船を提供するステップと、
- 前記波が、前記輸送チャネルを介して、水を前記高架の窪みまで上方に輸送することを可能にするために、前記入口を、入ってくる海の波に向かって方向付けるステップと、
前記水を、前記出口を介して、前記タービンまで下方に導いて、前記発電機を作動させて、前記窪み内の前記水の前記位置エネルギを電気エネルギに変換するステップと、を含む、
方法。
【請求項8】
前記波力発電所を、入ってくる波から遮蔽するために、前記入口にあるドアを含む遮蔽手段を閉鎖することを更に含み、波が前記発電所についての設計範囲を超える場合に、前記ドアを閉鎖することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記船体上の少なくとも1つのウェーブフォイルを利用して、前記水に対する前記ウェーブフォイルの垂直移動から前方推力を生成することを更に含む、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つのラダーを操縦するステップと、前記浮動船から上方に突出する少なくとも1つのエアフォイル形状の本体を操縦して、前記浮動船を推進させるために風から推力を生成して、前記入口を介して波を受け入れるように前記浮動船を方向付けるステップと、を更に含む、請求項7~9のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
海底に対する前記浮動船の位置を維持するために前記推力を利用するステップを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記浮動船が、前記入口に入る水の量を増大させるために、波の方向に向かって移動するように、前記エアフォイルを方向付けることを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
推力を生成し且つ風力エネルギを回収するエアフォイルであって、
- 当該エアフォイルを通じる少なくとも1つの横方向の開口であって、当該エアフォイルの高圧面から低圧面に空気を排出するために構成される横方向の開口と、
- 各開口内に配置される発電機とタービンロータとを含む風力タービンと、を含む、
エアフォイル。
【請求項14】
前記1つ以上の開口を通じる空気流を完全にまたは部分的に遮断するために当該エアフォイルの少なくとも1つの面を覆うように延在するように構成されるカバーを更に含む、請求項13に記載のエアフォイル。
【請求項15】
前記カバーは、当該エアフォイルを覆い且つ当該エアフォイルの覆いを取るように載り且つ外れるように変位させられるように構成される織物のシートである、請求項14に記載のエアフォイル。
【請求項16】
前記カバーは、当該エアフォイルを覆い且つ当該エアフォイルの覆いを取るためにスライドされるように構成される固体材料の区画を含む、請求項14に記載のエアフォイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギ回収(harvesting)のための浮動船(floating vessel)およびエネルギを回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
十分なクリーンな再生可能エネルギを提供することは、今後数十年間における社会にとっての最大の課題の1つである。再生可能エネルギの生産が増加すると、新たな課題が生じる。とりわけ、大型風力タービンを陸上で設置することは、住宅地の近くと農村部に設置される場合の両方で争われている。何故ならば、それらは幾らかの人によって視覚的な汚染および鳥の個体群への害と考えられるからである。このことの故に並びにより安定した強風条件の故に、風力タービンを海上の浮動船へ移動させることが望ましい。
【0003】
深海で風力エネルギを回収するために、浮動風力タービン(floating wind turbines)が必要とされるが、課題がある。浮動風力タービンを経済的に実現可能にするために、それらは大型である必要がある。浮動風力タービンのサイズは、生産、設置および保守で課題を提示する。それらを製造して保管するには大きなエリアの必要性があり、設置および保守は高価である。何故ならば、大型の浮動クレーンがしばしば必要とされるからである。
【0004】
大型の浮動風力タービンは、150mのロータ直径を有し、ますます大きくなっている。そのような大型のロータの課題は、ロータブレードの先端速度が非常に高くなり、最終的に強風において風力タービンを制限することである。特定の風速より上で、風力タービンは、風中のエネルギの可能性を最大限に利用できない。
【0005】
経済およびカーボンフットプリントの両方に影響を与える別の側面は、浮動発電機に必要とされる材料の量である。サイズおよび力の故に、それらは、大量の鋼、繊維強化プラスチック、およびコンクリートが必要とされる。
【0006】
再生可能エネルギを回収する別の方法は、波力(wave power)を別の形態のエネルギに変換することである。数多くの設計が試みられてきたが、依然として波力プラントのための商業的に実現可能な解決策を見つけることは困難であることが判明している。
【0007】
建造物に使用される建築材料、鋼または他の種類の材料の各トンから、可能な限り高い電力出力を得ることが望ましい。このことの故に、浮動風力タービンを波力と組み合わせることは、発電所で使用される建材の各トンからの電力出力を増加させる可能性として考えられる。問題は、殆どの既知の洋上波力発電所が、何らかの種類の浮動物体が波によって垂直方向に振動させられるという原理に基づいて建設されることである。他方、浮動風力発電機の基礎は、風力発電機の構成要に対する有害な応力を避けるために、波の中で可能な限り少なく移動するように設計され。よって、これまで、沖合の1つの浮動構造物の1つにおいて波の回収と風力エネルギとを組み合わせることは困難であることが判明している。
【0008】
沖合浮動風車/風力発電機および波力発電所の両方のコストを増加させ且つ柔軟性を低下させる別の側面は、固定(anchoring)である。過酷な気象条件のエリアにおいてそのような大型設備の位置を維持するためには、固定が必要とされる。幾つかの大型で重量のあるアンカおよび長いアンカラインが必要とされる。これはコストを劇的に増加させ且つ柔軟性を低下させる。他方、モータによる動的位置決めを使用してそのような浮動発電所の位置を維持することは、多くのエネルギを消費するので、エネルギの正味出力は低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、エネルギを回収する(harvesting)ための浮動船(floating vessel)を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、係留を用いることなく、僅かなエネルギ消費で、海底に対する船の位置を維持することができる、エネルギを回収するための浮動船を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、セール(帆)(sails)またはウイング(翼)(wings)の使用を通じて風中のエネルギを利用して海底に対するその位置を維持する、エネルギを回収するための浮動船を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、セールまたは翼の使用を通じて操縦および移動のために風中のエネルギを利用する、エネルギを回収するための浮動船を提供することである。
【0013】
本発明のさらに別の目的は、風力エネルギおよび波力エネルギの両方を回収できる船を提供することである。
【0014】
本発明の更に別の目的は、風及び波のエネルギを回収すると同時に、係船索を使用することなくその位置を保持することができる、船を提供することである。
【0015】
さらに別の目的は、エネルギを回収するための既存の浮動船と比較して、船中で使用される材料の1トン当たりより多くのエネルギを回収することができる、エネルギを回収するための浮動船を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
1つの態様において、本発明は、エネルギ回収のための浮動船を提供する。浮動船は、船体と、波力発電所とを含む。波力発電所は、水の波を受け入れるように構成される、船体内の入口を含む。入口は、入口に入る水を運搬し且つ持ち上げるようにある角度で構成される輸送チャネルに至る。
【0017】
輸送チャネルは、水を受け入れるように構成される高架の窪みに至り、窪みは、窪みより下方のタービンへの出口を有する。タービンは、水の位置エネルギ(ポテンシャルエネルギ)を電気エネルギに変換するための発電機を作動させる。
【0018】
浮動船は、波力発電所を入ってくる波から遮蔽するために入口にある遮蔽手段を更に含むことができ、遮蔽手段は、開放位置と閉鎖位置との間で移動するように構成されるドアを更に含むことができる。
【0019】
浮動船は、船体に取り付けられる少なくとも1つのウェーブフォイルを更に含むことができ、ウェーブフォイルは、水に対して垂直な動きから前方推力を生成するように構成される。
【0020】
浮動船は、少なくとも1つのラダーを更に含むことができる。
【0021】
浮動船は、浮動船から上方に突出する少なくとも1つのエアフォイル形状の本体を更に含むことができ、エアフォイルは、浮動船を推進させるために風から推力を生成するように構成される。
【0022】
エアフォイルは、ウイングまたはセールであることができる。
【0023】
別の態様において、本発明は、波からエネルギを回収する方法に関する。方法は、
- 前述のような浮動船を提供するステップと、
- 波が、輸送チャネルを介して、水を高架の窪みまで上方に輸送することを可能にするために、入口を、入ってくる海の波に向かって方向付けるステップと、水を、出口を介して、タービンまで下方に導いて、発電機を作動させて、窪み内の水の位置エネルギを電気エネルギに変換するステップと、を含む。
【0024】
方法は、波力発電所を、入ってくる波から遮蔽するために、入口にあるドアを含む遮蔽手段を閉鎖することを更に含むことができ、波が発電所についての設計範囲を超える場合に、ドアを閉鎖することを含む。
【0025】
方法は、船体上の少なくとも1つのウェーブフォイルを利用して、水に対するウェーブフォイルの垂直移動から前方推力を生成することを更に含むことができる。
【0026】
方法は、少なくとも1つのラダーを操縦するステップと、浮動船から上方に突出する少なくとも1つのエアフォイル形状の本体を操縦して、浮動船を推進させるために風から推力を生成して、入口を介して波を受け入れるように浮動船を方向付けるステップと、を更に含むことができる。
【0027】
方法は、海底に対する浮動船の位置を維持するために推力を利用するステップを更に含むことができる。
【0028】
方法は、浮動船が、入口に入る水の量を増大させるために、波の方向に向かって移動するように、エアフォイルを方向付けるステップを更に含むことができる。
【0029】
別の態様において、本発明は、推力を生成し且つ風力エネルギを回収するエアフォイルに関する。エアフォイルは、
- エアフォイルを通じる少なくとも1つの横方向の開口であって、エアフォイルの高圧面から低圧面に空気を排出するために構成される横方向の開口と、
- 各開口内に配置される発電機とタービンロータとを含む風力タービンと、を含む。
【0030】
エアフォイルは、1つ以上の開口を通じる空気流を完全にまたは部分的に遮断するためにエアフォイルの少なくとも1つの面を覆うように延在するように構成されるカバーを更に含むことができる。
【0031】
カバーは、エアフォイルを覆い(cover)且つエアフォイルの覆いを取る(uncover)ように載り且つ外れる(on and off)ように変位させられるように構成される織物のシート(a sheet of fabric)であることができる。
【0032】
カバーは、エアフォイルを覆い且つ当該エアフォイルの覆いを取るためにスライドされるように構成される固体材料(solid material)の区画(sections)を含むことができる。
【0033】
以下の図面を参照して、ほんの一例として、本発明の実施形態を以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】原則として本発明の実施形態を示しており、内部構成要素の一部を示すために、図は部分的に断面である。
図2】本発明の一実施形態を斜視図で示している。
図3】本発明の一実施形態を斜視図で示している。
図4】本発明の一実施形態を斜視図で示している。
図5】マルチロータ風力発電機を断面図で示している。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、海または湖のような他の水域で風および波からエネルギを回収する(harvesting)ための浮動船1に関する。浮動船1は、1つの可能な実施形態(図1を参照)において、波力発電所10と、マルチロータ風車/風力発電機20(multirotor windmill/wind generator)と、ウェーブフォイル30(波フォイル)と、1つ以上の発電プロペラ40とを含む。
【0036】
波力発電所10は、一実施形態において、入口11と、輸送チャネル12と、高架リザーバ/窪み13(elevated reservoir/basin)と、タービン14Tとを含む。波力発電所10は、発電するためにタービン14Tに接続される発電機14Gを更に含むことができる。
【0037】
マルチロータ風力発電機20は、ウイング(翼)21のようなエアフォイル形状の本体21に含まれる発電機22Gを備える、多数のタービンロータ22を含む。
【0038】
浮動船1は、一実施形態において、図2図4に示すような船舶に似た形状とされることができる。浮動船1がエネルギを回収しているときに、船首は、入ってくる波の方向に向けられる。浮動船1は、開放するときに入口11を露出するドア、好ましくは、船首ポートまたは船首ドア3のような隔離手段(isolation means)を有することができる。隔離のための手段は、(船が図2図4中の船舶のような形状とされる場合には)必ずしも船首にある必要はない。何故ならば、入口11は、例えば、船1の側面から、波を受けるように配置されることができるからである。
【0039】
船首ドア3は、波高が浮動船1および/または発電所10の設計範囲を超えるときに、波力発電所10を閉じ且つ入ってくる波から隔離するように配置されることができる。
【0040】
船首ドア3が開いた状態で、波は集められ、ある角度で配置される輸送チャネル12内に入口11によって導かれるので、波は水を界面から高架リザーバまたは窪み13内に持ち上げる。高架窪み13は、1つ以上のチューブまたはパイプ15を通じて下って、発電機(図示せず)に接続されたタービン14Tに排出される。タービン14Tは、タービン14Tの上方に可能な限り多くの水頭(head of water)を与えるように可能な限り水線(waterline)に近く配置される。水は、タービン14Tを通過した後に、周囲の海または湖に流されることができる。
【0041】
1つよりも多くのタービン14Tおよび1つよりも多くの発電機14Gを使用して、波力発電所10の容量を調整することを可能にすることができる。任意の所与の時に使用中のタービン14Tの数は、高架窪み13に持ち上げられて入る水の量に関して調整されることができる。
【0042】
異なる波高(wave heights)および条件について波力発電所10を最適化するために、高架窪み13の高さを調節することができ、同様に、輸送チャネル12の角度を調節することができる。加えて、輸送チャネル12は、輸送チャネル12を流れ下る水を方向転換させる(diverting)ためのデバイスを備えることができる。これは、入口の方向に輸送チャネル12を流れ下る水によって、入ってくる波からの水が減速されるのを避けるためである。1つの可能な実施形態において、デバイスは、輸送チャネル12の底にあるフラップであることができる。フラップは、波からの水が高架窪み13内に流入するときに、輸送チャネル12の底と平らに位置し、水が輸送チャネル12を流れ下るときに、輸送チャネル12の底に対してある角度で反転される。方向転換させられる水は、発電するためにタービンに向けられることができる。
【0043】
浮動船1は、発電のために周囲の水体に対する浮動船の動きを利用するためにプロペラ40を備えることができる。プロペラ40は、図1に見られるように、船体2から海中に突出することができる。プロペラ40は、不使用時には船体2内に収納されることができる。
【0044】
浮動船1によって集められるエネルギは、船上で貯蔵されることができるか、或いは浮動船がその場所で接続するインフラストラクチャ(基幹施設)を介して転送されることができる。
【0045】
エネルギが貯蔵される場合、エネルギは、既述のように、発電機によって電気エネルギに変換され、バッテリに貯蔵されることができる。別の可能性は、電解槽(electrolyzer)内で電流を利用して、タンクに貯蔵される水素を生成することによって、エネルギを貯蔵することである。
【0046】
係船索を持たない浮動船1について、エネルギを回収することが経済的に実現可能であるという目的で、それは位置決めまたは推進のために供給されるエネルギに依存してはならない。従って、着想は、浮動船に作用する力を位置決めおよび推進のために利用することである。
【0047】
浮動船は、推進のために或いは海底に対する位置を維持するために浮動船1に作用する自然の力を利用するためのいくつかの手段を含むことができる。そのような手段は、セール(帆)又はウイング21のような1つ以上のエアフォイル21、1つ以上のウェーブフォイル30および1つ以上のラダー(舵)4であることができる。
【0048】
帆走において、「ヒーブツー(ヒービング)(heaving to)」又は「ホーブツー(ホービング)(hove to)」という用語は、帆船の前進を遅らせるために使用される技術を意味する。この技法を適用するときに、船に対して作用する力は、互いに対して設定されるので、力の合計は、ゼロまたはゼロに近い値に等しく、船を静止状態またはほぼ静止状態のままにする。換言すれば、1つ以上のセールからの駆動動作(driving action)が、他のセール(others)からの駆動によってほぼ均衡されるときに、船は「ホーブツー」にある。
【0049】
「ヒービングツー」技法の背後にある原理は、エネルギを回収するために浮動船1の位置を維持するために利用されることができる。浮動船は、エネルギを回収するときの位置を維持することのために並びに浮動船が移動する必要があるときに浮動船1を帆走させることために使用されることができるエアフォイル21を備えることができる。
【0050】
セールまたはウイング21を使用することができ、或いはセールとウイング21との組み合わせさえも使用することができる。ウイング21は、より堅くより剛性の構造であることができ、図1図4に見られるように、浮動船の上面デッキ(top deck)から上に垂直に突出して配置される航空機のウイングに類似することができる。エアフォイル/ウイング21の断面が図5に示されている。図5のウイング21は、内部風力タービン22、22Gを備え、マルチロータ風力タービン20と考えられることができる。そのようなエアフォイル21は、必ずしも風力タービン及び開口23を備える必要はない。浮動船1上のいくつかのエアフォイル21は、全く普通のエアフォイル21であることができ、次に、幾つかのエアフォイル21は、風力タービン22、22Gを備えることができる。これは、とりわけ、十分な推力を生成するのに必要とされる面積に依存する。エアフォイル21およびマルチロータ風力発電機20は、以下に詳細に議論される。
【0051】
エアフォイル21に加えて、位置決めおよび推力のために、ウェーブフォイル30を利用することができる。ウェーブフォイル30は、浮動船1の船体2に接続されることができ、浮動船1と共に水中で上下に動く。
【0052】
ウェーブフォイルの背後にある原理は、当業者に知られている。浮動船1は、波の故に水中で上下に動き、1つ以上のウェーブフォイル30は、上下の動きの一部を前方推力に変換する。ウェーブフォイルは、それらが水中で上下に動かされるときに、それらが揚力(lift)を生成し、揚力がドラグ(drag)よりも大きな前方推力成分を有し、それによって、浮動船1の前方推進を生成するように形作られる。
【0053】
ウェーブフォイル30は、前方推力の生成に加えて望ましい効果も有し、それは浮動船1を安定化させる。可能な限り多くの水を高架窪み13内に引き入れるために、浮動船1は、波の上に乗る代わりに、可能な限り波を切らなければならない(plow)。ウェーブフォイル30は、ヒーブ(heave9a及びピッチ(pitch)を制限し、それによって、より多くの水が入口11に入る。同時に、ウェーブフォイル30は、垂直方向の移動を減少させるので、それらは、波の方向に前方推力を生成する。これは浮動船1の位置を維持することに寄与し、時間単位当たりで入口11に入る水の量を増加させる。ウェーブフォイル30は、調整可能および/または回転可能であることもできるので、推力の方向は、浮動船1の位置を保持し、浮動船1を方向付け、或いは浮動船1を移動させる目的のために、調整されることができる。
【0054】
1つの可能な実施形態において、浮動船1は、制御信号をエアフォイル21、ラダー4およびウェーブフォイル30に送信する動的位置決めシステムを使用して、その位置を維持する。加えて、浮動船1は、バックアップとしてモータに接続されたバックアップ推進プロペラ5を備えることができる。バックアップ推進プロペラ5およびモータは、例えば、緊急の場合に使用されることができる。モータは、電気モータであることができ、船内に貯蔵されているエネルギを利用することができる。
【0055】
ウイング/エアフォイル21の一般的な原理は、片側の空気についての移動距離がより長い故に、圧力差がエアフォイル21に亘って生じることである。同じ一般的な原理が、航空機のウイング、帆走のためのセール、および多数の他の用途についても当て嵌まる。
【0056】
図5は、所望の方向において推力を生成するために使用されることもできるマルチロータ風力発電機20の可能な実施形態を断面で示している。マルチロータ風力発電機20は、エアフォイル21を含む。エアフォイル21は、エアフォイルの前縁24から後縁25まで延びるエアフォイルの軸に実質的に垂直に配置された1つ以上の開口23を含む。それによって、エアフォイル21の高圧面27から低圧面26への空気の流れを可能にする。開口23またはチャネルは、エアフォイル21の長手軸または前縁24から後縁25まで広がる軸に対して垂直である必要はないが、開口は、これらの軸の一方または両方に対して垂直であることができる。
【0057】
正しい条件の下で、開口部23を通じる空気の速度は、風速よりも大きい。(開口23内で)エアフォイルを横切る風速が周囲の一般的な風速よりも高いことを具体化する例が、帆船4の例である。帆船は、背後から直接セールに向かう風(風で走る(running with the wind))では最高速度の帆走を達成しない。帆船は、それがセールと共にウイング/エアフォイル原理を利用するときに(例えば、風で走る代わりに、クローズ(close)、ブロード(broad)またはビームリーチ(beam reach)で帆走するときに)、より高い速度に達する。
【0058】
1つの可能な実施形態では、セールが帆船で使用されるときに、1つ以上のマルチロータ発電機20を使用することができる。各開口23は、開口を通じる空気流を防止するためにカバーを備えることができる。開口を開閉することによって、エアフォイル21からの推力を調整することができる。カバーは、一方の側から他方の側へエアフォイル21上に徐々に広げることができるセールであることができ、或いは、カバーは、開口23またはチャネルを横切ってスライドするスライドカバーであることができる。そのようなマルチロータ発電機20は、風が推力/推進に必要とされるものよりも高いときには、より少ない推力/推進を生成し、タービンロータ22を横切る高圧面27と低圧面26との間の流れの面積を調整することによってより多くの風力エネルギを回収する、ように調整されることができる。
【0059】
小さなタービンロータ22が風力タービン22、22G上の大きなロータに対して持つ1つの有意な利点がある。その利点は、小さなロータが大きなロータと同じように先端速度(tip speed)によって制約されないことである。150メートルの直径であることができる大きな従来の風力タービンは、低いRMPでさえ非常に大きな先端速度を得る。従来の大型風力タービンは、このことの故に、強風条件を利用することができない。何故ならば、先端速度は、ロータの先端を損傷するからである。1つのエリアをカバーする多くの小さなロータを同じエリアをカバーする1つの大きなロータの代わりに使用することによって、発電/回収のために強風条件をより良く利用することができ、同時に、小さなロータおよび発電機は、動きに対してあまり敏感ではない。
【0060】
再生可能エネルギの回収が経済的に実現可能であることを目的とする浮動船1のために、全ての条件の下で可能な限り多くのエネルギを回収することが必要である。暴風雨の間に、波力発電所10を使用することは可能でないことがある。波力発電所10は、次に、船首ドア3を閉じることによって隔離されることができる。たとえ浮動船1を保護するために船首ドア3が閉じられるとしても、マルチロータ風力発電機20およびプロペラ40は、エネルギを回収することができる。マルチロータ発電機20は、ロータの先端速度によって制約されず、プロペラ40は、船首ドア3が閉じられるので、より垂直方向の移動の故に、より多くのエネルギを生成する。
【0061】
ウェーブフォイルは、船首ドアが開いているときに可能な限り多くの水を高架窪み13内に持ち上げるために並びに波力発電所10が波から隔離されているときにプロペラ40からの発電を最適化するために、浮動船の挙動を最適化するのに役立つことができる。
【0062】
制御信号を、とりわけ、波力発電所、マルチロータ発電機20、プロペラ40およびウェーブフォイル30に送信する制御システムは、任意の所与のときに、安全、位置決めおよび電力回収に関して、浮動船を最適化することを必要とする。
【0063】
エネルギ回収およびエネルギを回収するという用語によって、エネルギが1つの形態から別の形態に変換されることを意味する。風または波からのそのようなエネルギは、例えば、電気のように、より簡単に蓄えられるか或いは利用されることができるエネルギ形態に変換される。
【0064】
代替的な実施形態では、フレットナーロータ(Flettner rotor)が、風力エネルギを回収する風力タービンとして使用され、同時に、フレットナーロータのマグヌス効果(Magnus effect)が、位置決め目的および/または推進のために使用される。垂直フレットナーロータは、風の方向に対して垂直な力の成分を生成する。この力成分は、浮動船1の位置を維持するために、或いは推進への寄与として利用されることができる。
【0065】
フレットナーロータは、前述の浮動船1上のウイングまたはセールの代わりに或いはそれらと一緒に使用されることができる。
【符号の説明】
【0066】
1 浮動船(floating vessel)
2 船体(hull)
3 船首ドア(bow door)
4 ラダー(rudder)
5 推進プロペラ(propulsion propeller)
10 波力発電所(wave power plant)
11 入口(inlet)
12 輸送チャネル(transport channel)
13 高架窪み(elevated basin)
14T タービン(turbine)
14G 発電機(electrical generator)
15 パイプ(pipe)
20 マルチロータ風力タービン(multirotor wind turbine)
21 エアフォイル/ウイング(airfoil/wing)
22 タービンロータ(turbine rotor)
22G 発電機(generator)
23 開口(aperture)
24 前縁(leading edge)
25 後縁(trailing edge)
26 低圧面(lower-pressure face)
27 高圧面(higher-pressure face)
28 空気流(airflow)
30 ウェーブフォイル(wave foil)
40 発電プロペラ(power generating propeller)
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2022-02-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギ回収のための浮動船であって、
船体と、
前記船体に取り付けられる少なくとも1つのウェーブフォイルであって、水に対して垂直な動きから前方推力を生成するように構成される、ウェーブフォイルと、
波力発電所と、を含み、
前記波力発電所は、水の波を受け入れるように構成される入口を含み、
前記入口は、前記入口に入る水を運搬し且つ持ち上げるようにある角度で構成される輸送チャネルに至り、
前記輸送チャネルは、水を受け入れるように構成される高架の窪みに至り、
前記窪みは、前記窪みより下方のタービンへの出口を有し、
前記タービンは、前記水の位置エネルギを電気エネルギに変換するための発電機を作動させる、
浮動船。
【請求項2】
前記波力発電所を入ってくる波から遮蔽するために前記入口にある遮蔽手段を更に含み、該遮蔽手段は、開放位置と閉鎖位置との間で移動するように構成されるドアを含む、請求項1に記載の浮動船。
【請求項3】
少なくとも1つのラダーを更に含む、請求項1または2に記載の浮動船。
【請求項4】
当該浮動船から上方に突出する少なくとも1つのエアフォイル形状の本体を更に含み、前記エアフォイルは、当該浮動船を推進させるために風から推力を生成するように構成される、請求項1~のうちのいずれか1項に記載の浮動船。
【請求項5】
前記エアフォイルは、ウイングまたはセールである、請求項に記載の浮動船。
【請求項6】
波からエネルギを回収する方法であって、
- 請求項1に記載の浮動船を提供するステップと、
- 前記船体上の少なくとも1つのウェーブフォイルを利用して、水に対する前記ウェーブフォイルの垂直移動から前方推力を生成するステップと、
- 前記波が、前記輸送チャネルを介して、水を前記高架の窪みまで上方に輸送することを可能にするために、前記入口を、入ってくる海の波に向かって方向付けるステップと、
前記水を、前記出口を介して、前記タービンまで下方に導いて、前記発電機を作動させて、前記窪み内の前記水の前記位置エネルギを電気エネルギに変換するステップと、を含む、
方法。
【請求項7】
前記波力発電所を、入ってくる波から遮蔽するために、前記入口にあるドアを含む遮蔽手段を閉鎖することを更に含み、波が前記発電所についての設計範囲を超える場合に、前記ドアを閉鎖することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つのラダーを操縦するステップと、前記浮動船から上方に突出する少なくとも1つのエアフォイル形状の本体を操縦して、前記浮動船を推進させるために風から推力を生成して、前記入口を介して波を受け入れるように前記浮動船を方向付けるステップと、を更に含む、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
海底に対する前記浮動船の位置を維持するために前記推力を利用するステップを更に含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記浮動船が、前記入口に入る水の量を増大させるために、波の方向に向かって移動するように、前記エアフォイルを方向付けることを更に含む、請求項に記載の方法。
【国際調査報告】