(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-04
(54)【発明の名称】緩速微小循環人工細胞巣を構築する方法及びその装置
(51)【国際特許分類】
C12M 3/00 20060101AFI20230627BHJP
【FI】
C12M3/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022566378
(86)(22)【出願日】2021-03-18
(85)【翻訳文提出日】2022-12-06
(86)【国際出願番号】 CN2021081436
(87)【国際公開番号】W WO2021218472
(87)【国際公開日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】202010360162.1
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202020698481.9
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522423499
【氏名又は名称】彭興躍
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【氏名又は名称】庄司 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100224786
【氏名又は名称】大島 卓之
(74)【代理人】
【識別番号】100225015
【氏名又は名称】中島 彩夏
(72)【発明者】
【氏名】彭興躍
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB11
4B029DB19
(57)【要約】
フローフィールド中心にフローフィールドから隔離された細胞巣(62)を設置し、細胞巣(62)は開口(61)を通じてフローフィールドと連通し、開口(61)はフローフィールドが細胞巣(62)の周りを流れて形成された航跡(63)に向かっている緩速微小循環人工細胞巣を構築する方法である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フローフィールドの中心に前記フローフィールドから部分的に隔離された細胞巣を設置し、前記細胞巣を一つの開口だけで前記フローフィールドと連通させ、前記開口は、前記フローフィールドが前記細胞巣の周りを流れて形成させた航跡に向かっていることを特徴とする緩速微小循環人工細胞巣を構築する方法。
【請求項2】
前記フローフィールドは、前記フローフィールド内に設置された運動子が運動平面に沿って周期的に運動することにより、前記フローフィールドの流体を駆動して運動させて形成されたものであり、前記運動子は前記フローフィールドの外に設置された駆動子によって駆動して運動させることを特徴とする請求項1に記載の緩速微小循環人工細胞巣を構築する方法。
【請求項3】
前記運動子は回転子であり、前記回転子の回転摩擦によって流体が回転し、遠心運動が発生し、回転軸方向に負圧が発生し、回転軸に直交する平面のあらゆる方向に正圧が発生して、流体を駆動して運動させることを特徴とする請求項2に記載の緩速微小循環人工細胞巣を構築する方法。
【請求項4】
前記運動子は振動の軸方向に正圧を発生させ、その振動軸に直交な平面のあらゆる方向に負圧を発生させて、流体を駆動して運動させる振動子であることを特徴とする請求項2に記載の緩速微小循環人工細胞巣を構築する方法。
【請求項5】
前記振動子は明確なNS極を有する球形磁性子で、前記球形磁性子は前記フローフィールド内を往復転動していることを特徴とする請求項4に記載の微小循環人工細胞巣構築方法。
【請求項6】
前記駆動子は、明確なNS極を有する矩形磁石シートと駆動コイルであり、前記矩形磁石シートが前記駆動コイルに置かれて、前記駆動コイルは、音声ケーブルを介して外部の音声出力機器に接続されており、前記音声ケーブルから入力された音声は方形波入力であることを特徴とする請求項5に記載の微小循環人工細胞巣構築方法。
【請求項7】
前記音頻線入力方法は、
手順1:音声を左チャンネルと右チャンネルを含むwav形式またはMP3形式のファイルに作成し、音声の波形は方形波である。
手順2:方形波の周波数を変えることで振動子の周波数を変える;
手順3:得られた音声ファイルをMP3プレーヤーにコピーする;
手順4:手順1で得られた音声ファイルを左右のチャンネルの周波数によって異なるサブ音声ファイルを得ることができる;
手順5:MP3プレーヤの楽曲プレイリストでは、再生順序の編集やループの設定が可能である;
手順6:MP3より手順5で編集または設定されたファイルを再生し、音声信号を音声ケーブルを通して直接前記駆動コイルに出力することを特徴とする請求項6に記載の微小循環人工細胞巣構築方法。
【請求項8】
請求項1に記載の緩速微小循環人工細胞巣を構築する装置であって、流体を収容した本体を含み、前記本体内の底面には上方へ延びた環形の仕切り壁が設けられ、前記仕切り壁には2つの対称な上通路口と下通路口が開けられ、前記仕切り壁の外の上通路口と下通路口には一つの動子が設けられ、前記振動子は、前記主体外部に設けられた外部駆動子によって往復運動して前記フローフィールドを形成する;前記フローフィールド中央部に内輪が設けられており、前記内輪の内部は細胞巣であり、前記内輪は前記本体と一体成形されており、直径は前記仕切り壁の直径より小さく、前記内輪には一つの開口が設けられており、前記開口は、前記フローフィールドが前記内輪の周りを流れて形成された航跡に向かっていることを特徴とする緩速微小循環人工細胞巣を構築する装置。
【請求項9】
前記細胞巣は円形または楕円形であることを特徴とする請求項8に記載の緩速微小循環人工細胞巣を構築する装置。
【請求項10】
前記細胞巣は円形で、直径10mm、前記開口の幅2mmであるを特徴とする請求項9に記載の緩速微小循環人工細胞巣を構築する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は人工細胞巣を構築する方法及びその装置に関し、特に緩速微小循環人工細胞巣を構築する方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人体は一つの細胞から発展した三次元流体システムであり、数十兆個の細胞間の相互作用は非常に複雑で、流体輸送、分子拡散、ナノ粒子輸送などの過程を含む。生物医学研究と疾病治療薬の開発において、これらの過程を体外で全面的にシミュレーションすることは非常に重要である。例えば、チップ実験室で人体の様々な臓器や組織の細胞のシミュレーションに成功すれば、人間の代わりに薬物のスクリーニングと実験を行うことができ、人間の苦痛がなく、スクリーニングプロセスが大幅に加速する。シミュレーションに成功する最も重要な技術は細胞のマイクロフルイディクス環境を正確に制御することである。マイクロ流体自体が引き裂き力と分子とナノ粒子の輸送機能と物質交換機能を持っているからである。したがって、マイクロフルイディクス環境を正確に制御することは、実際には物理微小環境と化学微小環境を正確に制御することである。胚性幹細胞は微小環境に対する要求が最も高く、幹細胞巣の中で自己複製と分化をしなければならない。既存のマイクロフルイディクス技術で胚性幹細胞の培養に成功した例はない。しかし、マイクロフルイディクスのある人工幹細胞巣を実現しなければ、精密な条件制御下での実験を行い、薬物試験や研究を行うことができない。そのため、我々は人工細胞巣を構築する方法を見つけなければならないが、この方法を探す最も有効な経路は胚胎幹細胞を例に微小環境のコントロール要求を明らかにし、胚胎幹細胞で人工細胞巣の技術の有効性を検査することである。
【0003】
人工幹細胞巣は半閉鎖的な空間として設計され、細胞を外界の強い干渉から保護すると同時に、外界と一定の物質交換を持つことができる。胚性幹細胞は培養条件に厳しい要求があり、温度、酸性度、培地の要求は非常に厳しいだけでなく、腫瘍細胞のように単細胞でクローンを形成することはできない(多くの細胞の生きた細胞が団塊を成長させることである)。接種培養時には複数の細胞からなるクローンでなければならない。これは、複数の細胞のクローンには幹細胞の微小環境を形成する細胞分泌物が多いためである。これらの分泌物をマイクロ流体が持ち去ると、微小環境が破壊され、細胞が死亡し、クローンが消失し、培養に失敗する。従来のマイクロフルイディクス技術は以下の面で幹細胞の微小環境の制御要求を満たすことができなかった。A)微小環流がなく、細胞分泌物が失われる;B)流速が速すぎたり、時間が長すぎたり、流れが頻繁すぎたりして、細胞クローンが破壊されるC)細胞巣の概念がなく、物質交換速度が速すぎる。そのため、内循環と外交換を通じて、人体のようなゆっくりとした微小循環制御の細胞巣を構築することは、大きな技術的課題である。現在、マイクロフルイディクスで胚性幹細胞を自動的に培養する例は報告されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の主な目的は、緩速微小循環人工細胞巣を構築する方法を設計し、マイクロ流体循環制御を実現できる人工細胞巣を得ることである。この人工細胞巣は便利な細胞または組織微小環境シミュレーション技術及び研究方法であり、幹細胞ニッチをより正確に作成し、その詳細なパラメータを設定することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、フローフィールドの中心に前記フローフィールドから部分的に隔離された細胞巣を設置し、前記細胞巣を一つの開口だけで前記フローフィールドと連通させ、前記開口は、前記フローフィールドが前記細胞巣の周りを流れて形成させた航跡に向かっている緩速微小循環人工細胞巣を構築する方法である。
【0006】
前記フローフィールドは、前記フローフィールド内に設置された運動子が運動平面に沿って周期的に運動することにより、前記フローフィールドの流体を駆動し運動させて形成されたものであり、前記運動子は前記フローフィールドの外に設置された駆動子によって駆動して運動させることを特徴とする緩速微小循環人工細胞巣におけるフローフィールドを構築する方法である。
【0007】
さらに、前記運動子は回転子であり、前記回転子の回転摩擦によって流体が回転し、遠心運動が発生し、回転軸方向に負圧が発生し、回転軸に直交する平面のあらゆる方向に正圧が発生して、流体を駆動して運動させる。
【0008】
さらには、前記運動子は振動の軸方向に正圧を発生させ、その振動軸に直交な平面のあらゆる方向に負圧を発生させて、流体を駆動して運動させる振動子である。
【0009】
さらには、前記振動子は明確なNS極を有する球形磁性子で、前記球形磁性子は前記フローフィールド内を往復転動している。
【0010】
さらに、前記駆動子は、明確なNS極を有する矩形磁石シートと駆動コイルであり、前記矩形磁石シートが前記駆動コイルに置かれて、前記駆動コイルは、音声ケーブルを介して外部の音声出力機器に接続されており、前記音声ケーブルから入力された音声は方形波入力である。
【0011】
さらには、前記音声ケーブルの入力方法は以下の通りである。
手順1:音声を左チャンネルと右チャンネルを含むwav形式またはMP3形式のファイルに作成し、音声の波形は方形波である;
手順2:方形波の周波数を変えることで振動子の周波数を変える;
手順3:得られた音声ファイルをMP3プレーヤーにコピーする;
手順4:手順1で得られた音声ファイルを左右のチャンネルの周波数によって異なるサブ音声ファイルを得ることができる;
手順5:MP3プレーヤの楽曲プレイリストでは、再生順序の編集やループの設定が可能である;
手順6:MP3より手順5で編集または設定されたファイルを再生し、音声信号を音声ケーブルを通して直接前記駆動コイルに出力する。
【0012】
流体を収容した本体を含み、前記本体内の底面には上方に延びた環形の仕切り壁が設けられ、前記仕切り壁に2つの対称な上通路口と下通路口が開けられ、前記仕切り壁の外の上通路口と下通路口には一つの振動子が設けられ、前記振動子は、前記主体外部に設けられた外部駆動子によって往復運動して前記フローフィールドを形成する;前記フローフィールド中央部に内輪が設けられており、前記内輪の内部は細胞巣であり、前記内輪は前記本体と一体成形されており、直径は前記仕切り壁の直径より小さく、前記内輪には一つの開口が設けられており、前記開口は、前記フローフィールドが前記内輪の周りを流れて形成された航跡に向かっている緩速微小循環人工細胞巣を構築する装置である。
【0013】
さらには、前記細胞巣は円形または楕円形である。
【0014】
さらには、前記細胞巣は円形で、直径10mm、前記開口の幅2mmである。
【0015】
本発明は微小フローフィールド内に細胞巣を設置し、フローフィールドの流れの周りに形成された航跡れに開口を設置することにより、細胞巣内に複数の渦を持つ独特なフローフィールドを形成し、これらの渦を通って外部物質が細胞巣の奥まで急速に到達することができ、細胞巣の超緩微小循環及び内外物質の交換速度を細かく制御することができる。この細胞巣により、実験細胞の微小環境をより正確に作成し、それらの詳細なパラメータを設定することができる。この人工細胞巣技術の操作は伝統的なシャーレと同じで、迅速かつ便利な細胞または組織微小環境シミュレーション技術と研究方法である。
【0016】
本発明は、また、対称性の原理による振動子と回転子によって流体を駆動して運動させる最も簡単な方式で、これによって最も簡単な関連構造と駆動方式を派生して、最大限の応用シーンと最低の製造コストと最長の寿命を実現することができる。その駆動方式、材料、空間スケール、構造、出力能力などはすべて拡張性があり、その構築した微小フローフィールドは特に微小循環システムの構築に適しており、流体は閉鎖空間内で微小循環制御を完成でき、外界のいかなる干渉を受けない;あらゆる方形波、弦楽曲または交響楽団の録音はすべてチップの中の液体を駆動することができて、集成性があり、化学、生命科学、環境科学、医療衛生などの分野で広く応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に関わる細胞巣つきのマイクロシャーレの構成模式図である。
【
図3】運動子によって駆動されるマイクロシャーレ内の流体の流れの模式図である。
【
図4】細胞巣内に形成された4つの微小循環の流れの模式図である。
【
図5】振動子とその一次元、二次元、三次元の空間における流体への影響の模式図であり、
図5a~dは振動子が一次元の空間でz軸に沿って上下に運動による負圧の模式図であり、
図5e~hは2次元の振動子の上下振動による負圧の模式図であり、
図5i~lは3次元空間における振動子のz軸に沿った上下振動による負圧の模式図。
【
図6】回転子の動作の模式図であり、
図6aは回転子の回転方向を示す模式図であり、
図6bは回転子の回転による負圧の模式図である。
【
図7】本発明の実施例1のその中の一つ実験のの実体模式図である。
【
図8】本発明の実施例1の動作模式図であり、
図8aは初期状態の模式図、
図8bは磁石が時計回りに回転したときの磁石の運動模式図であり、
図8cは磁石が反時計回りに回転するときの磁石の運動模式図であり、
図8dは方形波電流での磁石と磁性子の運動模式図である。 図中において、1…本体、2…仕切り壁、21…上通路口,22…下通路口、3…内輪路、4…外輪路、5…運動子(球形磁性子)、6…内輪、61…開口、62…細胞巣、63…航跡、7…矩形磁石シート、8…駆動コイル、9…チャンバ壁。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の実施例を参照して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の実施形態はこれに限定するものではない。
【0019】
人体は流体システムであり、微小環境の物理的及び化学的要因を制御している。幹細胞巣、腫瘍細胞巣及び腫瘍細胞の異質性と幹細胞分化に関わる半閉鎖空間構造は、体外でそのマイクロフルイディクス特性をシミュレーションする必要がある。既存のマイクロチップで胚性幹細胞を培養することはできない。幹細胞巣のマイクロフルイディクス環境が分からないからである。一方、マイクロチップは簡単で使いやすい技術ではなく、従来のシャーレにはマイクロチップ機能が欠けている。
【0020】
本発明は、微小フローフィールドに半閉鎖的な細胞巣を設置し、細胞巣の開口は、フローフィールドが細胞巣に対応して還流して形成された航跡に向かって、フローフィールドと連通して、微小環境のシミュレーションを実現する緩速微小循環人工細胞巣を構築する方法である。航跡とは、航跡とは、物体と流体が相対的に運動するとき物体の後ろの圧力が流体の他の部分の圧力と明らかに異なる領域であり、後流とも呼ばれる。通常、流体が非流線型の物体の周りを運動するとき、流れは物体の後部表面から分離し、物体の後ろに乱れた、大小の渦に満ちた後流を形成する。
【0021】
本発明をより良好に検証するために、本発明は、上記の方法に従って細胞巣つきのマイクロシャーレを設計した(
図1~3に示す)。超スローサイクル(40μm/s)と材料交換レートの可調整を実現し、腫瘍細胞と幹細胞が人工細胞巣で共培養する最適条件を探す。具体的には、このマイクロシャーレは、底面を有し、流体が充填された中空円筒体である本体1と、その底面内から上へ伸びた環形仕切り壁2とを含み、仕切り壁2と本体1とは、一体に成形し、本体1を内輪路3と外輪路4の二つのフローフィールドに分ける。仕切り壁2は円心に対する2つの対称位置には、いずれも上通路口21と下通路口22が開けられており、本体1の底面の中部に直径10mmの内輪6がさらに設けられている。内輪6も同様に本体1と一体に成形され、その直径は仕切り壁2の直径よりも小さい。内輪6には幅2mmの開口61が1つしか開けられない。内輪6の中部は細胞巣62であり、開口61は流体が内輪6を流れる時に環流して形成された航跡63に向かい、好ましくは航跡63の中心に向かう。シャーレ内に流動体を入れ、外輪路4に一つの運動子5が置かれ、運動子5が下通路口22に置かれており、外部駆動子により運動子5を駆動して下通路口22の外で底面と平行に往復運動または回転させ、シャーレ内の流体を流動させ、内輪構造内の細胞巣領域に相対的に閉鎖された細胞または組織培養微小環境を形成し、内輪6の開口61の設置方向が異なり、その内部と外部との交換速度および微小循環の制御性が異なり、開口61をフローフィールド旋回流の航跡63に設置した場合、このときの細胞巣62には、他の方向に開口するよりも安定した渦対が形成されている。渦対には糸引き効果があり、水の進入を阻止するほか、流入する流体流も細くして細胞巣62に微小循環を形成し、
図4に示すように、細胞巣の4つの円形循環フローフィールドについては、非常に細い十字型循環は細胞巣全体を貫通しており、これら4つの円形循環フローフィールドは時計回りと反時計回り異なる方向で現れ、対角線上のフローフィールドの循環方向は同じであることが分かる。シャーレに外部物質流体を注入し、細胞巣62内の細胞流動の最高速度が非常に低いことを実験的に発見し、細胞巣62外の流速に比べて、その2%しかない。4つの渦のそれぞれの渦中心と細胞巣62は全体としての辺縁付近の速度がより低く、そのため、細胞巣62内に流速の遅い微小循環エリアを構築し、この循環フローフィールドは安定しており、制御しやすく、特に流速に敏感な幹細胞などの培養と観測に適している。
【0022】
上記のミクロフローフィールド循環の制御をよりよく実現するために、本発明者らは、CN111486072号において、局在非対称運動を利用してマイクロ流体を駆動する方法を引用し、流体内に設置された運動子と流体外に設置された駆動子によって、運動子が駆動子によって運動平面に沿って周期的に運動し、流体を駆動して運動させる。
【0023】
局在非対称運動でマイクロ流体を駆動する方法は、振動子の駆動と回転子の駆動の2種類方式がある。振動子の駆動は、局在振動する振動子によって、振動の軸線方向に正圧が発生し、その振動軸線に直交する平面上のすべての方向に負圧が発生し、流体運動を駆動して運動させる(
図5に示す)。回転子の駆動とは、局在回転する球体によって、回転摩擦して流体が回転し遠心運動を発生し、回転軸方向に負圧を発生させ、回転軸に直交する平面のあらゆる方向に正圧を発生させて流体を駆動して運動させる(
図6に示す)。
【0024】
上記のマイクロシャーレでは、同様に、上記2種類の異なるマイクロ流体を駆動する方法によって運動子5駆動して運動させることができる。
【0025】
本発明の実施形態
実施例1:
振動子の駆動方式については、運動子5は、明確なNS極を有する球形磁性子5であってもよく、駆動子は明確なNS極を有する矩形磁石シート7と駆動コイル8であってもよく(
図7に示す)、球形磁性子5を流体チャンバ内に配置し、矩形磁石シート7と駆動コイル8は駆動子であり、流体チャンバの外に配置され、すなわち、矩形磁石シート7及び駆動コイル8と球形磁性子5との間にチャンバ壁9(境界とも呼ばれる)。浮力が一定の場合、球形磁性子5は流体中に浮遊することができる。矩形磁石シート7は、駆動コイル8の内輪面内に寝かされており、駆動コイル8は矩形磁石シート7の回転又は揺動を駆動する能力を有している。
図7は、本実施例のその中の一つ実験の実体模式図であり、球形磁性子5、矩形磁石シート7、駆動コイル8はいずれも市場で入手し、本実験では、直径2mmの球形磁性子5、長さ4.5mmの矩形磁石シート7、及び内輪幅5mmよりやや大きく、長さ3mmの駆動コイル8を用い、矩形磁石シート7を駆動コイル8内に入れて、実験装置全体のサイズは1cm以下であり、他のミニフロー型ポンプに比べて、体積が大幅に減少している。駆動原理は同じであり、球形磁性子5、矩形磁石シート7、駆動コイル8は必要に応じてサイズを調整することができる。
【0026】
駆動コイル8に通電すると、電流の大きさを調節することにより、矩形磁石シート7のN極とS極の位置が変化し、球形磁性子5の位置も変化する。
図8に示すように、矩形磁石シート7の中心を揺動支点として、駆動コイル8が正方向に通電すると、矩形磁石シート7のS極が球形磁性子5に向かって時計回りに揺動し(
図8bに示す)、駆動コイル8が逆方向に通電すると、N極は球形磁性子5に向かって反時計回りに揺動し(
図8cに示す)、駆動コイル8の入力電流が方形波電流の場合、矩形磁石シート7が中心を支点として規則的に揺動し、磁力の変化によるチャンバ壁9の他方側の球形磁性子5が矩形磁石シート7と平行する方向に往復転動している(
図8dに示す)。球形磁性子5は、フローフィールドを摺動または転動することができる。滑り摩擦力が大きいため、詰まりや不円滑を引き起こしやすい、フローフィールドの制御が精確になりにくく、転がりによる振動が標準である。矩形磁石シート7の揺動によってスイングスキャン磁界を発生し、磁気ビーズの転がりや振動を制御し、さらにフローフィールドを駆動し振動を標準化し、走査の距離、角度は、球形磁性子5の転がりとマッチングして、理想的な振動駆動、即ち転動式振動駆動を引き起こすことができ、マッチングしない場合、例えば球形磁性子5の体積が小さい場合、矩形磁石シート7の揺動によるスイングスキャン磁界は、磁気ビーズを制御し、磁気ビーズの寿命と効率の低下を招く。最適なマッチング状態は、矩形磁石シート7が1回つき揺動し、球形磁性子5が半周転動することである。
【0027】
球形磁性子5の体積が小さいため、最低でも0.248mWのエネルギー量が必要であって、4つの球形磁性子5を駆動して振動させるのに必要な消費電力は1mW未満であり、本実施例では、音波を駆動源とし、球形磁性子5は、下通路口22の外側の外輪路4に入れられ、駆動コイル8(矩形磁石シート7を内包する)が球形磁性子5に近いシャーレ本体1の外に配置される。駆動コイル8は一つの音声ケーブル(図示せず)を介して外部の音声出力機器に接続されており、即ち、駆動コイル8の両極はそれぞれ外部の音声出力機器の左右チャンネルに接続されており、ステレオ音楽を再生する場合、音声出力ファイルを方形波ファイルに変更し、効果的な駆動が可能になる。
【0028】
音声ケーブルの入力方法は以下の通りである。
手順1:音声を左チャンネルと右チャンネルを含むwav形式またはMP3形式のファイルに作成し、音声の波形は方形波である;
手順2:方形波の周波数を変えることで振動子の周波数を変える;
手順3:得られた音声ファイルをMP3プレーヤーにコピーする;
手順4:手順1で得られた音声ファイルを左右のチャンネルの周波数によって異なるサブ音声ファイルを得ることができる;
手順5:MP3プレーヤの楽曲プレイリストでは、再生順序の編集やループの設定が可能である;
手順6:MP3より手順5で編集または設定されたファイルを再生し、音声信号を音声ケーブルを通して直接前記駆動コイルに出力する。
【0029】
実施例2:
回転子の駆動方式について、運動子5は、同様に明確なNS極を有する球形磁性子であり、駆動子は明確なNS極を有する矩形磁石シートとマイクロモータ(図示せず)であり、同様に、同様に球形磁性子5を流体チャンバ内に配置し、矩形磁石シートとマイクロモータは駆動主体であり、流体チャンバの外に配置される。すなわち、矩形磁石シート及びマイクロモータと球形磁性子5との間にチャンバ壁がある。矩形磁石シートの中心はマイクロモータのモータに接続され、マイクロモータによって回転され、磁力の変化による流体チャンバ内の球形磁性子も回転する。矩形磁石シートの長さは球形磁性子の直径に相当し、球形磁性子は円周運動ではなく回転したままになる。フローフィールドの流速は回転子の体積の影響を受け、回転子の体積が小さくなるにつれて次第に弱くなる。
【0030】
実施例1と実施例2のマイクロシャーレ内に設けられた細胞巣で、実験細胞の微小環境をより正確に作成し、それらの詳細なパラメータを設定することができる。例えば、速度が26μm/s、60s/日の場合、前記人工細胞巣で幹細胞と腫瘍細胞を14日間培養した後、幹細胞と腫瘍細胞とも良好な健康状態を示した。このような人工細胞巣技術は操作的には従来のシャーレと同じで、迅速で便利な細胞または組織微小環境シミュレーション技術と研究方法である。
【0031】
以上は本発明の好ましい実施形態にすぎず、本発明の技術的範囲を制限するものではない。したがって、本発明の技術的本質に基づいて、上記の実施例に加えられた細かい修正、同等の変更、修正は依然として本発明の保護範囲に属する。
【手続補正書】
【提出日】2022-12-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
【
図1】本発明に関わる細胞巣つきのマイクロシャーレの構成模式図である。
【
図2】マイクロシャーレの
音声プレーヤーと接続される平面模式図である。
図2A マイクロシャーレの部分拡大模式図である。
図2B 実施例2の駆動子の模式図である。
図2C マイクロシャーレにおける駆動子の別の置き方の模式図である。
【
図3】運動子によって駆動されるマイクロシャーレ内の流体の流れの模式図である。
【
図4】細胞巣内に形成された4つの微小循環の流れの模式図である。
【
図5】振動子とその一次元、二次元、三次元の空間における流体への影響の模式図であり、
図5a~dは振動子が一次元の空間でz軸に沿って上下に運動による負圧の模式図であり、
図5e~hは2次元の振動子の上下振動による負圧の模式図であり、
図5i~lは3次元空間における振動子のz軸に沿った上下振動による負圧の模式図。
【
図6】回転子の動作の模式図であり、
図6aは回転子の回転方向を示す模式図であり、
図6bは回転子の回転による負圧の模式図である。
【
図7】本発明の実施例1のその中の一つ実験のの実体模式図である。
【
図8】本発明の実施例1の動作模式図であり、
図8aは初期状態の模式図、
図8bは磁石が時計回りに回転したときの磁石の運動模式図であり、
図8cは磁石が反時計回りに回転するときの磁石の運動模式図であり、
図8dは方形波電流での磁石と磁性子の運動模式図である。
【
図9】
本発明の音声ケーブルの入力方法の概略図。 図中において、1…本体、2…仕切り壁、21…上通路口,22…下通路口、3…内輪路、4…外輪路、5…運動子(球形磁性子)、6…内輪、61…開口、62…細胞巣、63…航跡、7…矩形磁石シート、8…駆動コイル、
8'…マイクロモータ、9…チャンバ壁
、10…音声出力機器、11…音声ケーブル。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0027】
球形磁性子5の体積が小さいため、最低でも0.248mWのエネルギー量が必要であって、4つの球形磁性子5を駆動して振動させるのに必要な消費電力は1mW未満であり、本実施例では、音波を駆動源とし、球形磁性子5は、下通路口22の外側の外輪路4に入れられ、駆動コイル8(矩形磁石シート7を内包する)が球形磁性子5に近いシャーレ本体1の外に配置される。駆動コイル8は一つの音声ケーブル11を介して外部の音声出力機器10に接続されており、即ち、駆動コイル8の両極はそれぞれ外部の音声出力機器10の左右チャンネルに接続されており、ステレオ音楽を再生する場合、音声出力ファイルを方形波ファイルに変更し、効果的な駆動が可能になる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0029】
実施例2:
回転子の駆動方式について、運動子5は、同様に明確なNS極を有する球形磁性子であり、駆動子は明確なNS極を有する矩形磁石シート7とマイクロモータ8'であり、同様に、同様に球形磁性子5を流体チャンバ内に配置し、矩形磁石シートとマイクロモータは駆動主体であり、流体チャンバの外に配置される。すなわち、矩形磁石シート及びマイクロモータ8'と球形磁性子5との間にチャンバ壁9がある。矩形磁石シートの中心はマイクロモータのモータ81'に接続され、マイクロモータによって回転され、磁力の変化による流体チャンバ内の球形磁性子も回転する。矩形磁石シートの長さは球形磁性子の直径に相当し、球形磁性子は円周運動ではなく回転したままになる。フローフィールドの流速は回転子の体積の影響を受け、回転子の体積が小さくなるにつれて次第に弱くなる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フローフィールドの中心に前記フローフィールドから部分的に隔離された細胞巣を設置し、前記細胞巣を一つの開口だけで前記フローフィールドと連通させ、前記開口は、前記フローフィールドが前記細胞巣の周りを流れて形成させた航跡に向かっていることを特徴とする緩速微小循環人工細胞巣を構築する方法。
【請求項2】
前記フローフィールドは、前記フローフィールド内に設置された運動子が運動平面に沿って周期的に運動することにより、前記フローフィールドの流体を駆動して運動させて形成されたものであり、前記運動子は前記フローフィールドの外に設置された駆動子によって駆動して運動させることを特徴とする請求項1に記載の緩速微小循環人工細胞巣を構築する方法。
【請求項3】
前記運動子は回転子であり、前記回転子の回転摩擦によって流体が回転し、遠心運動が発生し、回転軸方向に負圧が発生し、回転軸に直交する平面のあらゆる方向に正圧が発生して、流体を駆動して運動させることを特徴とする請求項2に記載の緩速微小循環人工細胞巣を構築する方法。
【請求項4】
前記運動子は振動の軸方向に正圧を発生させ、その振動軸に直交な平面のあらゆる方向に負圧を発生させて、流体を駆動して運動させる振動子であることを特徴とする請求項2に記載の緩速微小循環人工細胞巣を構築する方法。
【請求項5】
前記振動子は明確なNS極を有する球形磁性子で、前記球形磁性子は前記フローフィールド内を往復転動していることを特徴とする請求項4に記載の微小循環人工細胞巣構築方法。
【請求項6】
前記駆動子は、明確なNS極を有する矩形磁石シートと駆動コイルであり、前記矩形磁石シートが前記駆動コイルに置かれて、前記駆動コイルは、音声ケーブルを介して外部の音声出力機器に接続されており、前記音声ケーブルから入力された音声は方形波入力であることを特徴とする請求項5に記載の微小循環人工細胞巣構築方法。
【請求項7】
前記音頻線入力方法は、
手順1:音声を左チャンネルと右チャンネルを含むwav形式またはMP3形式のファイルに作成し、音声の波形は方形波である。
手順2:方形波の周波数を変えることで振動子の周波数を変える;
手順3:得られた音声ファイルをMP3プレーヤーにコピーする;
手順4:手順1で得られた音声ファイルを左右のチャンネルの周波数によって異なるサブ音声ファイルを得ることができる;
手順5:MP3プレーヤの楽曲プレイリストでは、再生順序の編集やループの設定が可能である;
手順6:MP3より手順5で編集または設定されたファイルを再生し、音声信号を音声ケーブルを通して直接前記駆動コイルに出力することを特徴とする請求項6に記載の微小循環人工細胞巣構築方法。
【請求項8】
請求項1に記載の緩速微小循環人工細胞巣を構築する装置であって、流体を収容した本体を含み、前記本体内の底面には上方へ延びた環形の仕切り壁が設けられ、前記仕切り壁には2つの対称な上通路口と下通路口が開けられ、前記仕切り壁の外の上通路口と下通路口には一つの動子が設けられ、前記振動子は、前記主体外部に設けられた外部駆動子によって往復運動して前記フローフィールドを形成する;前記フローフィールド中央部に内輪が設けられており、前記内輪の内部は細胞巣であり、前記内輪は前記本体と一体成形されており、直径は前記仕切り壁の直径より小さく、前記内輪には一つの開口が設けられており、前記開口は、前記フローフィールドが前記内輪の周りを流れて形成された航跡に向かっていることを特徴とする緩速微小循環人工細胞巣を構築する装置。
【請求項9】
前記細胞巣は円形または楕円形であることを特徴とする請求項8に記載の緩速微小循環人工細胞巣を構築する装置。
【請求項10】
前記細胞巣は円形で、直径10mm、前記開口の幅2mmであるを特徴とする請求項9に記載の緩速微小循環人工細胞巣を構築する
装置。
【手続補正5】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】