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特表2023-528187触媒系及びそれを使用してポリエチレンを生産するためのプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-04
(54)【発明の名称】触媒系及びそれを使用してポリエチレンを生産するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/64 20060101AFI20230627BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
C08F4/64
C08F10/00 510
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022567500
(86)(22)【出願日】2021-05-28
(85)【翻訳文提出日】2022-12-12
(86)【国際出願番号】 US2021034878
(87)【国際公開番号】W WO2021243222
(87)【国際公開日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】63/031,638
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/143,333
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】ベイリー、レット エー.
(72)【発明者】
【氏名】デローブ、ジョナサン イー.
(72)【発明者】
【氏名】カメリオ、アンドリュー エム.
(72)【発明者】
【氏名】ドー、ヒエン キュー.
(72)【発明者】
【氏名】フォンテーヌ、フィリップ ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ピアソン、デイヴィッド エム.
(72)【発明者】
【氏名】ローゼン、マリ エス.
(72)【発明者】
【氏名】ベイリー、ブラッド シー.
【テーマコード(参考)】
4J128
【Fターム(参考)】
4J128AA01
4J128AB00
4J128AC26
4J128AC27
4J128AE03
4J128AE06
4J128BA01A
4J128BA01B
4J128BB01A
4J128BB01B
4J128BC25A
4J128BC25B
4J128CA28A
4J128EA01
4J128EB02
4J128EB09
4J128EC02
4J128FA04
4J128FA09
4J128GB01
(57)【要約】

本出願の実施形態は、プロ触媒、及び式(I)の構造を有する金属-配位子錯体を含む、プロ触媒を含む触媒系を対象とする。
【化1】
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンを生産するためのプロセスであって、1つ以上の担体材料上に配置された金属-配位子錯体を含む触媒系を用いて、エチレン分圧150psi以上かつ1つ以上の(C~C12)α-オレフィンコモノマーのエチレンに対するモル供給比0.030以下で、70℃~150℃以下の反応器温度の気相重合反応器内において、エチレン及び任意選択で1つ以上の(C~C12)α-オレフィンコモノマーを前記触媒系と接触させることを含み、前記金属-配位子錯体が、式(Ia)による構造を有し:
【化1】
(式中、
は、アニオンであり、
Mは、チタン、ジルコニウム又はハフニウムであり、
nは、1、2、又は3であり、
各Xは、(C~C50)ヒドロカルビル、(C~C50)ヘテロヒドロカルビル、(C~C50)アリール、(C~C50)ヘテロアリール、及びハロゲンからなる群から独立して選択される単座配位子であり、
及びRは、式(II)を有するラジカル及び式(III)を有するラジカルからなる群から独立して選択され、
【化2】
(式中、R9~13及びR14~21は、-H、(C~C50)ヒドロカルビル、(C~C50)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、又はハロゲンから独立して選択される)
、R、R、R、R、及びRは、-H、(C~C50)ヒドロカルビル、(C~C50)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、及びハロゲンから独立して選択される)、
前記触媒系の前記気相重合反応器への注入時に最初の5分間に消費されるエチレンの量が、前記触媒系の初期添加時に平均滞留時間tの時間全体に消費される全エチレンの25%未満であり、前記全エチレンの25%が取り込まれる時間(t25%)が、式(IV)による式によって計算される、プロセス:
【数1】
【請求項2】
前記プロセスが、前記平均滞留時間tの時間全体の間の指定の時間tにおける取り込み比(U)が式(V)に従って計算できることを更に含み、
【数2】
前記触媒系のUが、式(X)及び式(XI)によって示されるように、前記触媒系が前記反応器に供給された0.5分(30秒)後の時点で0.02(2パーセント)以下である、請求項1に記載のプロセス:
30秒(0.5分)における取り込み、
【数3】
30秒(0.5分)における取り込み、
【数4】
【請求項3】
前記触媒系のUが、前記触媒系が前記反応器に供給された1.5分(90秒)後の時点で0.05(5パーセント)以下であり、以下の式によって示される、請求項2に記載のプロセス:
【数5】
【請求項4】
前記触媒系のUが、前記触媒系が前記反応器に供給された3.0分(180秒)後の時点で0.15(15パーセント)以下であり、以下の式によって示される、請求項2又は3に記載のプロセス:
【数6】
【請求項5】
前記触媒系のUが、前記触媒系が前記反応器に供給された3.0分(180秒)後の時点で0.10(10パーセント)以下であり、以下の式によって示される、請求項1~4に記載のプロセス:
【数7】
【請求項6】
前記触媒系の前記気相重合反応器への注入時に最初の18分間に消費されるエチレンの量が、前記触媒系の初期添加時に平均滞留時間tの時間全体に消費される全エチレンの50%未満であり、全エチレンの50%が取り込まれる時間(t25%)が、式(IV)による式によって計算される、請求項1~5に記載のプロセス:
【数8】
【請求項7】
発熱率(%exo)が10%未満である、又は発熱率(%Exo)が5%未満である、請求項1~6に記載のプロセス。
【請求項8】
及びRが同じである、請求項1~7に記載のプロセス。
【請求項9】
及びRのうちの少なくとも1つが、式(II)を有するラジカルであり、R10及びR12のうちの少なくとも1つが、tert-ブチルである、請求項1~7に記載のプロセス。
【請求項10】
及びRのうちの少なくとも1つが、式(III)を有するラジカルである、請求項1~7のいずれかに記載のプロセス。
【請求項11】
15、R16、R19、及びR20のうちの少なくとも1つが、tert-ブチルである、請求項1~7に記載のプロセス。
【請求項12】
14~21が、-Hである、請求項1~7に記載のプロセス。
【請求項13】
1つ以上の担体材料が、ヒュームドシリカを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記アニオンが、アルミネートである、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
請求項1に記載の触媒系を調製する方法であって、
1つ以上の活性化剤を前記1つ以上の担体材料上に配置して、担持活性化剤を生成することと、
前記担持活性化剤を不活性炭化水素溶媒中の中性金属-配位子錯体の溶液又はスラリーと接触させることと、
を含む、方法。
【請求項16】
前記活性化剤が、メチルアルモキサン(MAO)を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記触媒系が、そのままの形態で、溶液として、又はスラリーとして前記気相重合反応器に供給される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記触媒系が、噴霧乾燥された粒子を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記反応器内の前記エチレン分圧が、150psi以上である、又は前記エチレン分圧が170psi以上である、又は前記エチレン分圧が200psi以上である、請求項1~18のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
前記反応器温度が120℃以下である、又は前記反応器温度が75℃~110℃である、又は前記反応器温度が80℃~105℃である、又は前記反応器温度が85℃~100℃である、請求項1~19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
ポリエチレンを生産するためのプロセスであって、1つ以上の担体材料上に配置された金属-配位子錯体を含む触媒系を用いて、エチレン分圧50psi~150psiかつ1つ以上の(C~C12)α-オレフィンコモノマーのエチレンに対するモル供給比0.030以下で、70℃~150℃以下の反応器温度の気相重合反応器内において、エチレン及び任意選択で1つ以上の(C~C12)α-オレフィンコモノマーを前記触媒系と接触させることを含み、前記金属-配位子錯体が、式(Ia)による構造を有し:
【化3】
(式中、
は、アニオンであり、
Mは、チタン、ジルコニウム又はハフニウムであり、
nは、1、2、又は3であり、
各Xは、(C~C50)ヒドロカルビル、(C~C50)ヘテロヒドロカルビル、(C~C50)アリール、(C~C50)ヘテロアリール、及びハロゲンからなる群から独立して選択される単座配位子であり、
及びRは、式(II)を有するラジカル及び式(III)を有するラジカルからなる群から独立して選択され、
【化4】
(式中、R9~13及びR14~21は、-H、(C~C50)ヒドロカルビル、(C~C50)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、又はハロゲンから独立して選択される)
、R、R、R、R、及びRは、-H、(C~C50)ヒドロカルビル、(C~C50)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、及びハロゲンから独立して選択される)、
前記触媒系の前記気相重合反応器への注入時に最初の25分間に消費されるエチレンの量が、前記触媒系の初期添加時に平均滞留時間tの時間全体に消費される全エチレンの50%未満であり、前記全エチレンの25%が取り込まれる時間(t25%)が、式(IV)による式によって計算される、プロセス:
【数9】
【請求項22】
前記エチレン分圧が、80psi~115psi、又は90psi~130psi、又は100~150psiである、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記気相重合反応器への前記触媒系の初期注入時に最初の30分間に消費されるエチレンの量が、前記平均滞留時間の時間全体に消費される全エチレンの50%未満である、請求項21に記載のプロセス。
【請求項24】
発熱率(%exo)が5%未満である、又は発熱率(%Exo)が2%未満である、請求項21~23に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年5月29日に出願された米国仮特許出願第63/031,638号及び2021年1月29日に出願された米国仮特許出願第63/143,333号に対する優先権を主張し、これらはその全体が参照により援用される。
【0002】
(発明の分野)
本開示の実施形態は、概して、ポリエチレンを生産するための、具体的には、気相重合反応器においてエチレン及び任意選択で1つ以上の(C~C12)α-オレフィンコモノマーをゲルマニウム架橋ビス-フェニルフェノキシ触媒系と接触させるためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
Ziegler及びNattaによる不均一オレフィン重合の発見以来、世界中のポリオレフィン生産は2015年には年間約1億5000万トンに達し、市場の需要により増加し続けている。ポリオレフィン重合プロセスにおける触媒系は、そのようなポリオレフィンの特徴及び特性に寄与し得る。例えば、ビス-フェニルフェノキシ(BPP)金属-配位子錯体を含む触媒系は、平坦又は逆の短鎖分岐分布(SCBD)、比較的高レベルのコモノマー組み込み、高いネイティブ分子量、及び/又は狭い~中程度の分子量分布(MWD)を有するポリオレフィンを生成し得る。
【0004】
しかしながら、気相重合などのいくつかの重合プロセスで利用される場合、BPP金属-配位子錯体を含む触媒系は、典型的には、1)急速なライトオフ(light-off)に関連する操作性の問題、及び/又は2)不十分な生産性を呈する。言い換えると、BPP金属-配位子錯体を含む触媒系は、一般に、反応器を汚損させる、かつ/又は使用される触媒系の量に対して生成されるポリマーが少ない場合がある。結果として、BPP金属-配位子錯体を含む触媒系の使用は、気相重合プロセスで商業的に実行可能ではない場合がある。
【発明の概要】
【0005】
したがって、気相重合プロセスで利用される場合、ライトオフ及び/又は生産性の特徴が改善された、気相反応器で使用するのに好適な触媒系が継続的に必要とされている。本開示の実施形態は、ゲルマニウム含有架橋を有するBPP金属-配位子錯体を含む触媒系を提供することによって、これらの必要性に対処する。触媒系は、気相重合プロセスで利用される場合、ゲルマニウム含有架橋を含まないビス-フェニルフェノキシ金属-配位子錯体を含む同様の触媒系と比較して、改善されたライトオフ及び生産性の特徴を呈する。
【0006】
本開示の実施形態は、ポリエチレンを生産するためのプロセスを含む。このプロセスは、エチレン分圧150psi以上かつ1つ以上の(C~C12)α-オレフィンコモノマーのエチレンに対するモル供給比0.030以下で、70℃~150℃以下の反応器温度の気相重合反応器内において、エチレン及び任意選択で1つ以上の(C~C12)α-オレフィンコモノマーを触媒系と接触させることを含み、当該触媒系は、1つ以上の担体材料上に配置された活性化金属-配位子錯体を含む。金属-配位子錯体は、式(Ia)による構造を有する:
【0007】
【化1】
式(Ia)中、Aは、アニオンであり、Mは、チタン、ジルコニウム、又はハフニウムであり、nは、1、2、又は3である。各Xは、(C~C50)ヒドロカルビル、(C~C50)ヘテロヒドロカルビル、(C~C50)アリール、(C~C50)ヘテロアリール、及びハロゲンからなる群から独立して選択される単座配位子である。
【0008】
式(Ia)中、R及びRは、式(II)を有するラジカル及び式(III)を有するラジカルからなる群から独立して選択される:
【0009】
【化2】
式(II)中、R9~13は、-H、(C~C50)ヒドロカルビル、(C~C50)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、又はハロゲンから独立して選択される。式(III)中、R14~21は、-H、(C~C50)ヒドロカルビル、(C~C50)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、又はハロゲンから独立して選択される。
【0010】
式(Ia)中、R、R、R、R、R、及びRは、-H、(C~C50)ヒドロカルビル、(C~C50)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、及びハロゲンから独立して選択される。
【0011】
本開示のプロセスは、触媒系の気相重合反応器への注入時に最初の5分間に消費されるエチレンの量が、触媒系の初期添加時に平均滞留時間tの時間全体に消費される全エチレンの25%未満であることを含み、全エチレンの25%が取り込まれる時間(t25%)は、式(IV)による式によって計算される:
【0012】
【数1】
本開示の実施形態によって提供されるこれらの及び更なる特徴は、以下の詳細な説明を考慮することでより深く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】表1からの実施例4及び7のエチレン取り込み曲線の図である。
図2】実施例1~3の反応器温度プロファイルのグラフ表示である。
図3】重合反応を条件2b下で行った実施例4~6の反応器温度プロファイルのグラフ表示である。
図4】重合反応を条件3下で行った実施例7~9の反応器温度プロファイルのグラフ表示である。
図5】重合反応を条件3下で行った実施例7及び9のエチレン取り込み曲線の図である。
図6】実施例14における触媒系2のエチレン及び全エチレン取り込み曲線のグラフ表示である。
図7】実施例16における触媒系2のエチレン取り込み曲線及び内部反応器プロファイルの図である。
図8】実施例19における触媒系2のエチレン及び全エチレン取り込み曲線のグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、プロ触媒、触媒系、触媒系の生成方法、及びポリエチレンを生産するためのプロセスの具体的な実施形態について説明する。しかし、本開示のシステム、方法、及びプロセスは、異なる形態で具体化することもでき、本開示に記載される具体的な実施形態に限定されると解釈されるべきではないことを理解されたい。むしろ、実施形態は、本開示が、徹底的かつ完全になり、開示される発明主題の範囲を当業者に十分に伝えられるように提供される。
【0015】
本開示で使用される一般的な略語を以下に列挙する:
【0016】
Me:メチル;Et:エチル; Ph:フェニル; Bn:ベンジル、i-Pr:イソ-プロピル; t-Bu:tert-ブチル; t-Oct:tert-オクチル(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル); Tf:トリフルオロメタンスルホネート; THF:テトラヒドロフラン; EtO:ジエチルエーテル; CHCl:ジクロロメタン; CV:カラム体積(カラムクロマトグラフィーで使用される);EtOAc:酢酸エチル、C:重水素化ベンゼン又はベンゼン-d6; CDCl:重水素化クロロホルム; NaSO:硫酸ナトリウム、MgSO:硫酸マグネシウム; HCl:塩化水素;n-BuLi:ブチルリチウム; t-BuLi:tert-ブチルリチウム;MAO:メチルアルミノキサン; MMAO:改変メチルアルミノキサン; GC:ガスクロマトグラフィー; LC:液体クロマトグラフィー; NMR:核磁気共鳴; MS:質量分析;mmol:ミリモル; mL:ミリリットル;M:モル濃度;min又はmins:分、h又はhrs:時間; d:日。
【0017】
「ハロゲン原子」又は「ハロゲン」という用語は、フッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)、又はヨウ素原子(I)のラジカルを意味する。「ハロゲン化物」という用語は、ハロゲン原子のアニオン形態:フッ化物(F)、塩化物(Cl)、臭化物(Br)、又はヨウ化物(I)を意味する。
【0018】
「独立して選択される」という用語は、R基、例えば、R、R、及びRが、同一であっても異なっていてもよいことを意味する(例えば、R、R、及びRが全て置換アルキルであってもよく、又はR及びRが置換アルキルであり、Rがアリールであってもよい)。R基に関連する化学名は、その化学名に対応するものとして当該技術分野で認識されている化学構造を伝えることを意図している。結果として、化学名は、当業者に既知の構造的定義を補足及び例示することを意図しており、排除することを意図するものではない。
【0019】
「プロ触媒」という用語は、活性化剤と合わせたときに触媒活性を有する化合物を意味する。「活性化剤」という用語は、プロ触媒を触媒的に活性のある化合物に変換する形でプロ触媒と化学的に反応する化合物を意味する。本開示で使用するとき、「共触媒」及び「活性化剤」という用語は、互換可能であり、明確に指定しない限り同一の意味を有する。
【0020】
「置換」という用語は、対応する非置換化合物又は官能基の炭素原子に結合している少なくとも1つの水素原子(-H)が、置換基(例えば、R)によって置き換えられることを意味する。「-H」という用語は、別の原子に共有結合している水素又は水素ラジカルを意味する。本開示で使用するとき、「水素」及び「-H」という用語は、互換的であり、明確に指定されない限り同一の意味を有する。
【0021】
特定の炭素原子含有化学基を説明するために使用するとき、「(C~C)」の形態を有する括弧付きの表現は、化学基の非置換形態がx個以上y個以下の炭素原子を有することを意味する。例えば、(C~C50)アルキルは、その非置換形態で1~50個の炭素原子を有するアルキル基である。いくつかの実施形態及び一般構造において、ある特定の化学基は、Rなどの1つ以上の置換基によって置換され得る。括弧付きの「(C~C)」を使用して定義されるRで置換された化学基は、任意の基Rの同一性に応じてy個を超える炭素原子を含有する場合もある。例えば、「正確に1個のR基で置換された(C~C50)アルキル(Rは、フェニル(~C)である)」は、7~56個の炭素原子を含有し得る。結果として、括弧付きの「(C~C)」を使用して定義される化学基が1個以上の炭素原子含有置換基Rによって置換されるとき、化学基の炭素原子の最小及び最大合計数は、x及びyの両方に、全ての炭素原子含有置換基Rに由来する炭素原子の数の合計を加えることによって求められる。
【0022】
「(C~C50)ヒドロカルビル」という用語は、1~50個の炭素原子の炭化水素ラジカルを意味し、「(C~C50)ヒドロカルビレン」という用語は、1~50個の炭素原子の炭化水素ジラジカルを意味し、各炭化水素ラジカル及び各炭化水素ジラジカルは、芳香族又は非芳香族、飽和又は不飽和、直鎖又は分岐鎖、環式(3個以上の炭素を有し、単環式及び多環式、縮合及び非縮合の多環式、並びに二環式を含む)又は非環式であり、1個以上のRによって置換されている、又は置換されていない。本開示で使用するとき、(C~C50)ヒドロカルビルは、非置換又は置換(C~C50)アルキル、(C~C50)シクロアルキル、(C~C25)シクロアルキル-(C~C25)アルキレン、(C~C50)アリール、又は(C~C25)アリール-(C~C25)アルキレン(ベンジル(~CH~C)など)であり得る。
【0023】
「(C~C50)アルキル」という用語は、1~50個の炭素原子を含有する飽和した直鎖又は分岐鎖の炭化水素ラジカルを意味する。各(C~C50)アルキルは、非置換であってもよく、1個以上のRによって置換されてもよい。実施形態では、炭化水素ラジカルにおける各水素原子は、例えばトリフルオロメチルなどのRで置換され得る。非置換(C~C50)アルキルの例は、非置換(C~C20)アルキル、非置換(C~C10)アルキル、非置換(C~C)アルキル、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2-ブチル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、1-ペンチル、1-ヘキシル、1-ヘプチル、1-ノニル、及び1-デシルである。置換(C~C50)アルキルの例は、置換(C~C20)アルキル、置換(C~C10)アルキル、トリフルオロメチル、及び[C45]アルキルである。「[C45]アルキル」という用語は、ラジカルに最大45個の炭素原子が存在する(置換基を含む)ことを意味し、例えば、メチル、トリフルオロメチル、エチル、1-プロピル、1-メチルエチル、又は1,1-ジメチルエチルなどの(C~C)アルキルである1個のRによって置換された(C27~C40)アルキルである。
【0024】
「(C~C50)シクロアルキル」という用語は、非置換であるか又は1個以上のRによって置換された3~50個の炭素原子の飽和環式炭化水素ラジカルを意味する。他のシクロアルキル基(例えば(C~C)シクロアルキル)も同様に、x~y個の炭素原子を有し、非置換であるか又は1個以上のRによって置換されていると定義される。非置換(C~C50)シクロアルキルの例は、非置換(C~C20)シクロアルキル、非置換(C~C10)シクロアルキル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、及びシクロデシルである。置換(C~C50)シクロアルキルの例は、置換(C~C20)シクロアルキル、置換(C~C10)シクロアルキル、及び1-フルオロシクロヘキシルである。
【0025】
「(C~C50)アリール」という用語は、6~50個の炭素原子を有し、当該炭素原子のうちの少なくとも6~14個が芳香環炭素原子である、非置換であるか又は(1個以上のRによって)置換された単環式、二環式、又は三環式の芳香族炭化水素ラジカルを意味する。単環式芳香族炭化水素ラジカルは、1つの芳香環を含み、二環式芳香族炭化水素ラジカルは、2つの環を有し、三環式芳香族炭化水素ラジカルは、3つの環を有する。二環式又は三環式芳香族炭化水素ラジカルが存在するとき、そのラジカルの環のうちの少なくとも1つは芳香族である。芳香族ラジカルの他の1つの環又は複数の環は独立して、縮合又は非縮合、及び芳香族又は非芳香族であり得る。非置換(C~C50)アリールの例としては、非置換(C~C20)アリール、非置換(C~C18)アリール、2-(C~C)アルキルフェニル、フェニル、フルオレニル、テトラヒドロフルオレニル、インダセニル、ヘキサヒドロインダセニル、インデニル、ジヒドロインデニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、及びフェナントレンが挙げられる。置換(C~C50)アリールの例としては、置換(C~C20)アリール、置換(C~C18)アリール、2,4-ビス([C20]アルキル)-フェニル、ポリフルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、及びフルオレン-9-オン-1-イルが挙げられる。
【0026】
「ヘテロ原子」という用語は、水素又は炭素以外の原子を指す。1個又は1個より多いヘテロ原子を含有する基の例としては、O、S、S(O)、S(O)、Si(R、P(R)、N(R)、-N=C(R、-Ge(R-、又は-Si(R)-が挙げられ、各R及び各Rは、非置換(C~C18)ヒドロカルビル又は-Hであり、各Rは、非置換(C~C18)ヒドロカルビルである。「ヘテロ炭化水素」という用語は、炭化水素の1個以上の炭素原子がヘテロ原子で置き換えられている分子又は分子骨格を指す。「(C~C50)ヘテロヒドロカルビル」という用語は、1~50個の炭素原子のヘテロ炭化水素ラジカルを意味し、「(C~C50)ヘテロヒドロカルビレン」という用語は、1~50個の炭素原子のヘテロ炭化水素ジラジカルを意味する。(C~C50)ヘテロヒドロカルビル又は(C~C50)ヘテロヒドロカルビレンのヘテロ炭化水素は、1個以上のヘテロ原子を有する。ヘテロヒドロカルビルの基は、炭素原子上又はヘテロ原子上に存在し得る。ヘテロヒドロカルビレンの2つの基は、単一の炭素原子上又は単一のヘテロ原子上に存在し得る。加えて、二価基の2つの基のうちの一方は、炭素原子上に存在し得、他方の基は、異なる炭素原子上に存在し得、2つの基のうちの一方は、炭素原子上に存在し得、他方はヘテロ原子上に存在し得るか、又は2つの基のうちの一方は、ヘテロ原子上に存在し得、他方の基は、異なるヘテロ原子上に存在し得る。各(C~C50)ヘテロヒドロカルビル及び(C~C50)ヘテロヒドロカルビレンは、非置換であってもよく、(1つ以上のRによって)置換されていてもよく、芳香族又は非芳香族、飽和又は不飽和、直鎖又は分岐鎖、環式(単環式及び多環式、縮合及び非縮合多環式を含む)又は非環式であってよい。
【0027】
「(C~C50)ヘテロアリール」という用語は、合計2~50個の炭素原子及び1~10個のヘテロ原子の、非置換であるか又は(1つ以上のRによって)置換された単環式、二環式、又は三環式のヘテロ芳香族炭化水素ラジカルを意味する。単環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルとしては、1つのヘテロ芳香環が挙げられ、二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、2つの環を有し、三環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、3つの環を有する。二環式又は三環式のヘテロ芳香族炭化水素ラジカルが存在する場合、ラジカルにおける環のうちの少なくとも1つは、ヘテロ芳香族である。ヘテロ芳香族ラジカルの他の1つ又は複数の環は、独立して、縮合又は非縮合、及び芳香族又は非芳香族であり得る。他のヘテロアリール基(一般的には(C~C)ヘテロアリール、例えば、(C~C12)ヘテロアリール)も同様に、x~y個の炭素原子(例えば、4~12個の炭素原子)を有し、かつ非置換であるか又は1個若しくは1個より多いRによって置換されていると定義される。単環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、5員環又は6員環である。5員環は、5マイナスh個の炭素原子を有し、hは、ヘテロ原子の数であり、1、2、又は3であり得、各ヘテロ原子は、O、S、N、又はPであり得る。5員環ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例としては、ピロール-1-イル、ピロール-2-イル、フラン-3-イル、チオフェン-2-イル、ピラゾール-1-イル、イソオキサゾール-2-イル、イソチアゾール-5-イル、イミダゾール-2-イル、オキサゾール-4-イル、チアゾール-2-イル、1,2,4-トリアゾール-1-イル、1,3,4-オキサジアゾール-2-イル、1,3,4-チアジアゾール-2-イル、テトラゾール-1-イル、テトラゾール-2-イル、及びテトラゾール-5-イルが挙げられる。6員環は、6マイナスh個の炭素原子を有し、hは、ヘテロ原子の数であり、1又は2であり得、ヘテロ原子は、N又はPであり得る。6員環ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例としては、ピリジン-2-イル、ピリミジン-2-イル、及びピラジン-2-イルが挙げられる。二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、縮合5,6-又は6,6-環系であり得る。縮合5,6-環系二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例は、インドール-1-イル、及びベンズイミダゾール-1-イルである。縮合6,6-環系二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例は、キノリン-2-イル、及びイソキノリン-1-イルである。三環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、縮合5,6,5-、5,6,6-、6,5,6-、又は6,6,6-環系であり得る。縮合5,6,5-環系の例は、1,7-ジヒドロピロロ[3,2-f]インドール-1-イルである。縮合5,6,6-環系の例は、1H-ベンゾ[f]インドール-1-イルである。縮合6,5,6-環系の例は、9H-カルバゾール-9-イルである。縮合6,6,6-環系の例は、アクリジン-9-イルである。
【0028】
「ポリマー」という用語は、同じ種類であろうと異なる種類であろうと、モノマーを重合させることによって調製されるポリマー化合物を指す。したがって、ポリマーという総称は、1種のモノマーのみを重合させることによって調製されるポリマーであるホモポリマー、及び2種以上の異なるモノマーを重合させることによって調製されるポリマーであるコポリマーを含む。
【0029】
「インターポリマー」という用語は、少なくとも2種の異なるモノマーを重合させることによって調製されるポリマーを指す。したがって、インターポリマーという総称は、コポリマー、及びターポリマーなどの2種より多い異なるモノマーを重合させることによって調製される他のポリマーを含む。
【0030】
「ポリオレフィン」、「ポリオレフィンポリマー」、及び「ポリオレフィン樹脂」という用語は、単純なオレフィン(アルケンとも呼ばれる、一般式C2nを有する)モノマーを重合させることによって調製されるポリマーを指す。したがって、ポリオレフィンという総称は、ポリエチレンなどの1つ以上のコモノマー有り又は無しでエチレンモノマーを重合させることによって調製されるポリマー、及びポリプロピレンなどの1つ以上のコモノマー有り又は無しでプロピレンモノマーを重合させることによって調製されるポリマーを含む。
【0031】
「ポリエチレン」及び「エチレン系ポリマー」という用語は、ポリエチレンのホモポリマー及びコポリマーを含む、50モルパーセント(%)超のエチレンモノマーに由来する単位を含むポリオレフィンを指す。当該技術分野において既知のポリエチレンの一般的な形態としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、極低密度ポリエチレン(VLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、及び高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられる。
【0032】
「分子量分布」という用語は、ポリマーの2つの異なる分子量の比を意味する。分子量分布という総称は、ポリマーの重量平均分子量(M)の当該ポリマーの数平均分子量(M)に対する比(「分子量分布(M/M)」と称される場合もある)、及びポリマーのz平均分子量(M)の当該ポリマーの重量平均分子量(M)に対する比(「分子量分布(M/M)」と称される場合もある)を含む。
【0033】
「組成物」という用語は、組成物を構成する材料の混合物、並びに組成物の材料から形成される反応生成物及び分解生成物を意味する。
【0034】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語、及びそれらの派生語は、それが具体的に開示されているかどうかにかかわらず、何らかの追加の構成要素、ステップ、又は手順の存在を除外することを意図するものではない。いかなる疑念も避けるために、「含む(comprising)」という用語の使用を通して特許請求される全ての組成物は、別段矛盾する記述がない限り、ポリマー性か又は別のものであるかにかかわらず、任意の追加の添加剤、アジュバント、又は化合物を含み得る。対照的に、「から本質的になる」という用語は、操作性に必須ではないものを除いて、任意の後続の列挙される範囲から任意の他の構成要素、ステップ、又は手順を除外する。「~からなる」という用語は、具体的に記述又は列挙されていない任意の成分、ステップ、又は手順を除外する。
【0035】
実施形態では、触媒系は、プロ触媒を含む。プロ触媒は、金属-配位子錯体を含む。金属-配位子錯体は、式(I)による構造を有し得る:
【0036】
【化3】
【0037】
式(I)中、Mは、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、又はハフニウム(Hf)である。実施形態では、Mは、各々独立して+2、+3、又は+4のホルマール酸化状態にある、チタン、ジルコニウム、又はハフニウムである。
【0038】
式(I)中、(X)の下付き文字nは、1、2、又は3であり、各Xは、不飽和(C~C50)炭化水素、不飽和(C~C50)ヘテロ炭化水素、(C~C50)ヒドロカルビル、(C~C50)ヘテロヒドロカルビル、(C~C50)アリール、(C~C50)ヘテロアリール、ハロゲン、-N(R、及び-N(R)CORから独立して選択される単座配位子である。実施形態では、各Xは、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2,2,-ジメチルプロピル、トリメチルシリルメチル、フェニル、ベンジル、又はクロロから独立して選択される。いくつかの実施形態では、(X)の下付き文字nは2であり、各Xは同一である。他の実施形態では、少なくとも2つのXは異なる。例えば、(X)の下付き文字nは、2であってよく、各Xは、以下のうちの異なるものであってよい:メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2,2,-ジメチルプロピル、トリメチルシリルメチル、フェニル、ベンジル、及びクロロである。実施形態では、(X)の下付き文字nは、1又は2であり、少なくとも2つのXは、独立して、モノアニオン性単座配位子であり、存在する場合、第3のXは中性単座配位子である。又は更なる実施形態では、(X)の下付き文字nは、2である。式(I)中、金属-配位子錯体は、全体的に電荷中性である。
【0039】
式(I)中、R及びRは、式(II)を有するラジカル及び式(III)を有するラジカルから独立して選択される:
【0040】
【化4】
【0041】
式(II)中、R、R10、R11、R12、R13は、-H、(C~C50)ヒドロカルビル、(C~C50)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、~CN、~CF、RS(O)-、RS(O)-、(RC=N-、RC(O)O-、ROC(O)-、RC(O)N(R)-、(RNC(O)-、又はハロゲンから独立して選択される。
【0042】
式(III)中、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、及びR21は、-H、(C~C50)ヒドロカルビル、(C~C50)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、~CN、~CF、RS(O)-、RS(O)-、(RC=N-、RC(O)O-、ROC(O)-、RC(O)N(R)-、(RNC(O)-、又はハロゲンから独立して選択される。
【0043】
式(I)の金属-配位子錯体における基R及びRは、互いに独立して選択される。例えば、Rは、式(II)若しくは(III)を有するラジカルから選択してよく、Rは、(C~C50)ヘテロアリールであってよい、又はRは、式(II)、(III)、若しくは(IV)を有するラジカルから選択してよく、R16は、式(II)若しくは(III)を有するラジカルから選択してよく、Rと同じであっても異なっていてもよい。実施形態では、R及びRはいずれも式(II)を有するラジカルであり、R及びRにおける基R9~13は、同じであるか又は異なる。幾つかの実施形態では、R及びRはいずれも式(III)を有するラジカルであり、R及びRにおける基R14~21は、同じであるか又は異なる。
【0044】
実施形態では、R及びRのうちの少なくとも1つは式(II)を有するラジカルであり、R10及びR12のうちの少なくとも1つは、tert-ブチルである。いくつかの実施形態では、R又はRのうちの少なくとも1つが式(III)を有するラジカルである場合、R16及びR19の一方又は両方は、tert-ブチルであり、R14~15、R17~18、及びR20~21は、-Hである。他の実施形態では、R15及びR20のうちの一方又は両方がtert-ブチルである場合、R14、R16~19、及びR21は、-Hである。いくつかの実施形態では、R15及びR20の両方が-Hである。いくつかの実施形態では、R14~21は、-Hである。
【0045】
式(I)中、R、R、R、R、R、R、及びRは、-H、(C~C50)ヒドロカルビル、(C~C50)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、~CN、~CF、RS(O)-、RS(O)-、(RC=N-、RC(O)O-、ROC(O)-、RC(O)N(RN)-、(RNC(O)-、及びハロゲンから独立して選択される。
【0046】
いくつかの実施形態では、R又はRのうちの少なくとも1つが、ハロゲン原子であり、R又はRのうちの少なくとも1つが、ハロゲン原子である。いくつかの実施形態では、R及びRはいずれもハロゲン原子であり、両方又はR又はRは、ハロゲン原子である。
【0047】
実施形態では、R及びRは、(C~C24)アルキルである。様々な実施形態では、R及びRは、(C~C20)アルキルである。いくつかの実施形態では、R及びRは、(C~C24)アルキルである。1つ以上の実施形態では、R及びRは、(C~C12)アルキルである。いくつかの実施形態では、R及びRは、1-プロピル、2-プロピル(イソ-プロピルとも呼ばれる)、1,1-ジメチルエチル(tert-ブチルとも呼ばれる)、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-ブチル、ペンチル、3-メチル-1-ブチル、ヘキシル、4-メチル-1-ペンチル、ヘプチル、n-オクチル、tert-オクチル(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イルとも呼ばれる)、ノニル、及びデシルである。実施形態では、R及びRは、-OR(式中、Rは、(C~C20)炭化水素であり、いくつかの実施形態では、Rは、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル(イソ-プロピルとも呼ばれる)、又は1,1-ジメチルエチルである)である。
【0048】
いくつかの実施形態では、R及びRは、(C~C20)アルキルである。いくつかの実施形態では、R及びRは、1-プロピル、2-プロピル(イソ-プロピルとも呼ばれる)、1,1-ジメチルエチル(tert-ブチルとも呼ばれる)、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-ブチル、ペンチル、3-メチル-1-ブチル、ヘキシル、4-メチル-1-ペンチル、ヘプチル、n-オクチル、tert-オクチル(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イルとも呼ばれる)、ノニル、及びデシルである。実施形態では、R及びRは、メチルである。
【0049】
いくつかの実施形態では、R及びRは、ハロゲンである。他の実施形態では、R及びRは、(C~C24)アルキルである。いくつかの実施形態では、R及びRは、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル(イソ-プロピルとも呼ばれる)、1,1-ジメチルエチル(tert-ブチルとも呼ばれる)、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-ブチル、ペンチル、3-メチルブチル、ヘキシル、4-メチルペンチル、ヘプチル、n-オクチル、tert-オクチル(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イルとも呼ばれる)、ノニル、及びデシルから独立して選択される。いくつかの実施形態では、R及びR11は、tert-ブチルである。実施形態では、R及びRは、-OR(式中、Rは、(C~C20)ヒドロカルビルであり、いくつかの実施形態では、Rは、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル(イソ-プロピルとも呼ばれる)、又は1,1-ジメチルエチルである)である。他の実施形態では、R及びRは、-SiR (式中、各Rは、独立して、(C~C20)ヒドロカルビルであり、いくつかの実施形態では、Rは、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル(イソ-プロピルとも呼ばれる)、又は1,1-ジメチルエチルである)である。
【0050】
いくつかの実施形態では、R及びRは、メチルであり、R及びRは、ハロゲンである。他の実施形態では、R及びRは、tert-ブチルである。他の実施形態では、R及びRは、tert-オクチル又はn-オクチルである。
【0051】
式(I)、(Ia)、(II)、及び(III)中、各R、R、及びRは、-H、(C~C50)ヒドロカルビル、及び(C~C50)ヘテロヒドロカルビルから独立して選択される。
【0052】
実施形態では、プロ触媒を活性化剤と接触させるか又は合わせることによって、触媒的に活性にすることができる。活性化剤と接触させるか又は合わせることによって触媒的に活性にしたプロ触媒は、「触媒系」と称され得る。すなわち、本開示で使用するとき、触媒系は、プロ触媒及び1つ以上の活性化剤を含み得る。「活性化剤」という用語は、遷移金属化合物がオレフィンなどの不飽和モノマーをオリゴマー化又はポリマー化させる速度を増加させる試薬の任意の組み合わせを含み得る。活性化剤はまた、オリゴマー又はポリマーの分子量、分岐度、コモノマー含有量、又は他の特性にも影響を及ぼし得る。遷移金属化合物は、配位又はカチオン性オリゴマー化及び/若しくはポリマー化を可能にするのに十分な任意の方法で、オリゴマー化及び/又はポリマー化触媒作用のために活性化され得る。
【0053】
アルモキサン活性化剤は、触媒組成物のうちの1つ以上の活性化剤として利用され得る。アルモキサン又はアルミノキサンは、一般に、--Al(R)--O--サブユニット(式中、Rは、アルキル基である)を含有するオリゴマー化合物である。アルモキサンの例としては、メチルアルモキサン(MAO)、修飾メチルアルモキサン(MMAO)、エチルアルモキサン、及びイソブチルアルモキサンが挙げられる。特に除去可能な(abstractable)配位子がハロゲン化物である場合、アルキルアルモキサン及び修飾アルキルアルモキサンが触媒活性化剤として好適である。また、異なるアルモキサン及び/又は修飾アルモキサンの混合物を使用してもよい。更なる説明については、米国特許第4,665,208号、同第4,952,540号、同第5,041,584号、同第5,091,352号、同第5,206,199号、同第5,204,419号、同第4,874,734号、同第4,924,018号、同第4,908,463号、同第4,968,827号、同第5,329,032号、同第5,248,801号、同第5,235,081号、同第5,157,137号、同第5,103,031号、及び欧州特許第0 561 476号、同第0 279 586号、同第0 516 476号、同第0 594 218号、及び国際公開第94/10180号を参照されたい。
【0054】
活性化剤がアルモキサン(修飾又は非修飾)である場合、活性化剤の最大量は、(金属触媒部位あたり)触媒前駆体に対してAl/Mが10,000倍モル過剰になるように選択され得る。あるいは、又は更に、活性化剤対触媒前駆体の最小量は、1:1のモル比に設定してよい。実施形態では、活性化剤対触媒前駆体の量は、10,000:1 Al/M、5,000:1 Al/M、1,000:1 Al/M、500:1 Al/M、250:1 Al/M、150:1 Al/M、120:1 Al/M、100:1 Al/M、50:1 Al/M、20:Al/M、10:1 Al/M、5:1 Al/M、1:1 Al/Mから選択してよい。
【0055】
活性化剤(又は捕捉剤)として利用され得るアルミニウムアルキル又は有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウムなどが挙げられる。
【0056】
中性金属-配位子錯体を活性化剤によって触媒的に活性にする場合、金属-配位子錯体の金属は、プラス1(+1)の形式電荷を有し得る。プロ触媒が金属-配位子錯体を含む実施形態では、金属-配位子錯体は、式(I)による構造を有し、全体的に電荷中性である。触媒系が金属-配位子錯体を含む実施形態では、金属-配位子錯体は、式(Ia)による構造を有し得、全体的にプラス1(+1)の形式電荷を有する:
【0057】
【化5】
【0058】
式(Ia)中、Aは、アニオンであり、M、(X)の下付き文字n、各X、各Z、及びR~Rは、式(I)の金属-配位子錯体に関して既に記載した通りである。
【0059】
式(Ia)は、活性触媒の例示的な描写である。
【0060】
実施形態では、金属-配位子錯体、活性化剤、又はその両方は、1つ以上の担体材料上に配置され得る。例えば、金属-配位子錯体は、1つ以上の担体材料上に付着、担体材料と接触、担体材料で気化、担体材料に結合、又は担体材料内に組み込み、担体材料中若しくは担体材料上に吸着又は吸収され得る。金属-配位子錯体は、当該技術分野で周知の担持方法のうちの1つを使用して、又は以下に記載の通り、1つ以上の担体材料と合わせることができる。本開示で使用するとき、金属-配位子錯体は、例えば、1つ以上の担体材料上に付着、担体材料と接触、又は担体材料内に組み込み、担体材料中若しくは担体材料上に吸着又は吸収されたとき、担持形態である。
【0061】
無機酸化物などの好適な担体材料としては、IUPAC周期表の2、3、4、5、13、又は14族の金属の酸化物が挙げられる。実施形態では、担体材料としては、脱水、ヒュームドシリカ、アルミナ(例えば、国際出願第1999/060033号に記載)、シリカ-アルミナ、及びこれらの混合物であってもよく、なくてもよいシリカが挙げられる。ヒュームドシリカは、親水性(未処理)、あるいは疎水性(処理済み)であってよい。実施形態では、担体材料は、疎水性ヒュームドシリカであり、これは、ジメチルジクロロシラン、ポリジメチルシロキサン流体、又はヘキサメチルジシラザンなどの処理剤で未処理のヒュームドシリカを処理することによって調製することができる。いくつかの実施形態では、担体材料としては、マグネシア、チタニア、ジルコニア、塩化マグネシウム(例えば、米国特許第5,965,477号に記載)、モンモリロナイト(例えば、欧州特許第0 511 665号に記載)、フィロケイ酸塩、ゼオライト、タルク、粘土(例えば、米国特許第6,034,187号に記載)、及びこれらの混合物が挙げられる。他の実施形態では、これらの担体材料の組み合わせ、例えば、シリカ-クロム、シリカ-アルミナ、シリカ-チタニア、及びこれらの組み合わせなどを使用してもよい。追加の担体材料としては、欧州特許第0 767 184号に記載の多孔質アクリルポリマーも含み得る。他の担体材料としては、国際出願第1999/047598号に記載のナノ複合材、国際出願第1999/048605号に記載のエアロゲル、米国特許第5,972,510号に記載の球晶、及び国際出願第1999/050311号に記載の高分子ビーズも含み得る。
【0062】
実施形態では、担体材料は、10平方メートル/グラム(m/g)~700m/gの表面積、0.1立方メートル/グラム(cm/g)~4.0cm/gの細孔容積、5マイクロメートル(μm)~500μmの平均粒径を有する。いくつかの実施形態では、担体材料は、50m/g~500m/gの表面積、0.5cm/g~3.5cm/gの細孔容積、及び10μm~200μmの平均粒径を有する。他の実施形態では、担体材料は、100m/g~400m/gの表面積、0.8cm/g~3.0cm/gの細孔容積、及び5μm~100μmの平均粒径を有し得る。担体材料の平均孔径は、典型的には、10オングストローム(Å)~1,000Å、例えば、50Å~500Å又は75Å~350Åである。
【0063】
本開示の触媒系を生成するための様々な好適な方法が存在する。1つ以上の実施形態では、触媒系を生成するための方法は、不活性炭化水素溶媒中で1つ以上の担体材料、1つ以上の活性化剤、及び金属-配位子錯体を接触させて、触媒系を生成することを含む。いくつかの実施形態では、触媒系を生成するための方法は、1つ以上の活性化剤を1つ以上の担体材料上に配置して、担持活性化剤を生成し、当該担持活性化剤を不活性炭化水素溶媒中金属-配位子錯体の溶液(「トリム触媒」又は「トリムフィード」と称されることが多い)と接触させることを含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、触媒系を生成するための方法は、噴霧乾燥された担持活性化剤(すなわち、噴霧乾燥を介して生成された担持活性化剤)を不活性炭化水素溶媒中で金属-配位子錯体の溶液と接触させることを含む。いくつかの実施形態では、担持活性化剤は、例えば鉱油スラリーなどのスラリーに含まれていてもよい。
【0064】
いくつかの実施形態では、触媒系を生成するための方法は、1つ以上の担体材料、1つ以上の活性化剤、及び金属-配位子錯体を混合して、触媒系前駆体を生成することを含み得る。方法は、触媒系前駆体を乾燥させて触媒系を生成することを更に含み得る。より具体的には、方法は、金属-配位子錯体、1つ以上の担体材料、1つ以上の活性化剤、又はこれらの組み合わせと、不活性炭化水素溶媒との混合物を作製することを含み得る。次いで、金属-配位子錯体、1つ以上の活性化剤、又はこれらの組み合わせを生成するように不活性炭化水素溶媒を混合物から除去し、1つ以上の担体材料上に配置してよい。実施形態では、除去ステップは、混合物から不活性炭化水素溶媒を従来通り蒸発させることを介して達成することができ(すなわち、従来の濃縮方法)、その結果、蒸発/担持触媒系が得られる。他の実施形態では、除去ステップは、混合物を噴霧乾燥することによって達成することができ、その結果、噴霧乾燥粒子が生成される。乾燥及び/又は除去ステップは、得られる触媒系から液体を完全に除去しなくてもよいことを理解すべきである。すなわち、触媒系は、残存量(すなわち、1重量%~3重量%)の不活性炭化水素溶媒を含んでいてもよい。
【0065】
前述のように、本開示の触媒系は、エチレンなどのオレフィンの重合を介してポリエチレンなどのポリマーを生成するためのプロセスにおいて利用され得る。気相重合などのいくつかの重合プロセスで利用される場合、BPP金属-配位子錯体を含む触媒系は、典型的には、1)急速なライトオフに関連する操作性の問題、及び/又は2)不十分な生産性を呈する。例えば、BPP金属-配位子錯体を含む触媒系は、気相重合反応器内でのライトオフが早すぎる、すなわち、注入時にエチレンを早く消費しすぎる場合があり、それにより、粒子が過熱、溶融、及び凝集し、触媒ボールの形成、チャンキング、及び気相重合反応器を汚損させ得る他の「破片(rubble)」が引き起こされる。
【0066】
実施形態では、気相流動床重合反応器などの気相重合反応器において、1つ以上のオレフィンを本開示の触媒系と接触させてよい。例示的な気相系は、米国特許第5,665,818号、同第5,677,375号、及び同第6,472,484号、並びに欧州特許第0 517 868号及び同第0 794 200号に記載されている。例えば、いくつかの実施形態では、エチレン及び任意選択で1つ以上の(C~C12)α-オレフィンコモノマーを、気相重合反応器内で本開示の触媒系と接触させてよい。触媒系は、そのままの形態で(すなわち、乾燥固体として)、溶液として、又はスラリーとして、気相重合反応器に供給してよい。例えば、いくつかの実施形態では、触媒系の噴霧乾燥粒子を、気相重合反応器に直接供給してよい。他の実施形態では、不活性炭化水素又は鉱油などの溶媒中で触媒系の溶液又はスラリーを反応器に供給してもよい。例えば、プロ触媒は、不活性炭化水素溶液中で反応器に供給され得、活性化剤は、鉱油スラリー中で反応器に供給され得る。
【0067】
実施形態では、気相重合反応器は、流動床反応器を含む。流動床反応器は、「反応域」及び「減速域」を含み得る。反応域は、反応域を通して重合熱を除去するために、気体状モノマー及び希釈剤の連続流によって流動化された成長ポリマー粒子、形成されたポリマー粒子、及び微量の触媒系の床を含み得る。任意選択で、再循環気体の一部を冷却し、圧縮して液体を形成してもよく、それは、反応域に再入した際に、循環気流の熱除去能を増大させる。好適な気流量は、簡単な実験によって容易に決定することができる。気体状モノマーの循環気流への補給は、粒子状ポリマー生成物及びそれに関連するモノマーを反応器から抜き出し得、反応器を通過する気体の組成を、反応域内で本質的に定常状態の気体状組成物を維持するように調整し得る速度に等しい速度であってよい。反応域から出た気体は、減速域に送られ得、そこで輸送粒子が除去される。より微細な輸送粒子及び粉塵は、サイクロン及び/又は微細フィルタ内で除去することができる。気体は、熱交換器を通過し得、そこで重合熱が除去され、圧縮機内で圧縮され、次いで、反応域に戻され得る。追加の反応器の詳細及び反応器を操作するための手段は、例えば、米国特許第3,709,853号、同第4,003,712号、同第4,011,382号、同第4,302,566号、同第4,543,399号、同第4,882,400号、同第5,352,749号、及び同第5,541,270号、欧州特許第0 802 202号、並びにベルギー国特許第839,380号に記載されている。
【0068】
急速なライトオフを有する触媒系は、「触媒ボール」又はチャンクの形成によって気相重合反応器を汚損させる場合があり、これによって、触媒の注入やポリマー粒子の除去が妨害されたり、操作性にとって有害な他の問題が生じたりすることがある。チャンキング及び「触媒ボール」の形成は、触媒の急速なライトオフによるポリマー粒子の過熱及び融合によって悪化すると考えられる現象である。触媒系のライトオフは、エチレンの取り込み、又はエチレンの消費、及び式(IV)によって示されるエチレン取り込み比Utの観点で便利に表すことができる
【0069】
【数2】
【0070】
式中、重合プロセスの平均滞留時間tRにわたる触媒系の全エチレン取り込みは、式(V)によって示され、触媒系の重合反応器への注入後の所与の時間におけるエチレン取り込みは、式(VI)によって示される:
【0071】
【数3】
【0072】
ライトオフは、触媒供給量を増加若しくは減少させることによって、又は反応器内のエチレン分圧を上昇若しくは低下させることによって、プロセスにおいて制御することができるが、触媒供給量を減少させるか又はエチレン分圧を低下させることによって触媒のライトオフ及び関連する反応器の操作性の問題の重大度を軽減すると、反応器の収率及び単位時間当たりに生成されるポリマーの量を減少させ、最終的には、生産スケールの重合反応器において経済的ではなくなるため、多くの場合実用的ではない。更に、触媒系のライトオフの大きな構成要素は、触媒系の活性化金属-配位子錯体に固有である。本明細書では、触媒系の活性有機金属成分の構造的特徴は、触媒系の固有のライトオフを変化させることによって触媒の操作性を改善したものとして記載されている。
【0073】
本開示では、好ましいライトオフを有する触媒系は、式(VII)によって定量化され、触媒寿命の最初の5分間に消費されるエチレンの量は、触媒系の初期添加時に平均滞留時間tの時間全体に消費される全エチレンの25%未満であり、全エチレンの25%が取り込まれる時間(t25%)は、式(IV)による式によって計算される:
【0074】
【数4】
【0075】
あるいは、ライトオフは、触媒系が重合反応器に送達された後の指定の時間tにおける消費されたエチレンの取り込み比(U)又は百分率を、触媒寿命又は平均滞留時間tのいずれか短い方の全体の間に消費される全エチレンと比較したときに定量化することができ、式(IV)に従って計算することができる。例えば、触媒系のUは、式(X)及び(XI)によって示されるように、触媒系が反応器に供給された0.5分(30秒)後の時点で0.02(2パーセント)以下である:
30秒(0.5分)における取り込み、
【0076】
【数5】
30秒(0.5分)における取り込み、
【0077】
【数6】
【0078】
触媒系のエチレン取り込み及びエチレン取り込み比は、ライトオフバッチ反応器試験法によって測定することができる。
【0079】
実施形態では、気相重合反応器の反応器温度は、70℃~150℃である。例えば、気相重合反応器の反応器温度は、70℃~120℃、70℃~110℃、70℃~100℃、90℃~150℃、90℃~120℃、90℃~110℃、90℃~100℃、100℃~150℃、100℃~120℃、100℃~110℃、110℃~150℃、110℃~120℃、又は120℃~150℃であり得る。一般に、気相重合反応器は、反応器内のポリマー生成物の焼結温度を考慮して、実行可能な最高温度で操作することができる。ポリエチレンを作製するために使用されるプロセスに関係なく、反応器温度は、ポリマー生成物の溶融又は「焼結」温度未満でなければならない。その結果、温度上限は、ポリマー生成物の溶融温度となり得る。
【0080】
いくつかの実施形態では、本開示のプロセスは、内部反応器温度を更に含み、当該内部反応器温度は、おおよそ反応器温度±5℃である。様々な実施形態では、内部反応器温度は、反応器温度±3℃又は反応器温度±2℃であり、1つ以上の実施形態では、内部反応器温度は、反応器温度±1℃である。
【0081】
急速なライトオフは、粒子の過熱につながるエチレン及び/又はコモノマーの急速な消費に起因する操作性の問題を引き起こし、恐らく、重合熱の尺度及び触媒粒子温度の間接的な尺度である内部反応器温度(Tint)の観点でより良好に定量化される。Tintは、半バッチ気相重合プロセスにおける異なる触媒のライトオフの重大度を定量化及び比較する便利な方法である。
【0082】
いくつかの実施形態では、気相重合反応器の反応器圧力は、50psi~150psi(345kPa~1035kPa)である。例えば、気相重合反応器の反応器圧力は、80psi~115psi(552kPa~793kPa)、90psi~130psi(620.5kPa~896kPa)、又は100psi~150psi(690kPa~1035kPa)であってよい。
【0083】
1つ以上の実施形態では、気相重合反応器の反応器圧力は、150psi(1035kPa)以上である。様々な実施形態では、気相重合反応器の反応器圧力は、180psi(1241kPa)以上、190psi(1310kPa)以上、200psi(1379kPa)以上、又は230psi(1586kPa)以上である。
【0084】
いくつかの実施形態では、触媒系の気相重合反応器への注入時に最初の5分間に消費されるエチレンの量は、触媒系の初期添加時に平均滞留時間tの時間全体に消費される全エチレンの25%未満であり、全エチレンの25%が取り込まれる時間(t25%)は、式(IV)による式によって計算される:
【0085】
【数7】
【0086】
1つ以上の実施形態では、触媒系の気相重合反応器への注入時に最初の25分間に消費されるエチレンの量は、触媒系の初期添加時に平均滞留時間tの時間全体に消費される全エチレンの50%未満であり、全エチレンの25%が取り込まれる時間(t25%)は、式(IV)による式によって計算される:
【0087】
【数8】
【0088】
実施形態では、ポリエチレンの最終特性を制御するために、重合中に水素ガスを使用してもよい。重合における水素の量は、例えば、エチレン又はエチレンと1-ヘキセンとのブレンドなどの全重合性モノマーに対するモル比として表すことができる。重合プロセスで使用される水素の量は、例えば、メルトフローレート(MFR)などのポリエチレンの所望の特性を得るのに必要な量であり得る。実施形態では、水素の全重合性モノマーに対するモル比(H:モノマー)は、0.0001超である。例えば、水素の全重合性モノマーに対するモル比(H:モノマー)は、0.0001~10、0.0001~5、0.0001~3、0.0001~0.10、0.0001~0.001、0.0001~0.0005、0.0005~10、0.0005~5、0.0005~3、0.0005~0.10、0.0005~0.001、0.001~10、0.001~5、0.001~3、0.001~0.10、0.10~10、0.10~5、0.10~3、3~10、3~5、又は5~10であり得る。
【0089】
実施形態では、本開示の触媒系は、単一の種類のオレフィンを重合させて、ホモポリマーを生成するために利用され得る。しかしながら、他の実施形態では追加のα-オレフィンを重合スキームに組み込んでもよい。追加のα-オレフィンコモノマーは、典型的には、20個以下の炭素原子を有する。例えば、本開示の触媒系は、エチレン及び1つ以上の(C~C12)α-オレフィンコモノマーを重合させるために利用され得る。例示的なα-オレフィンコモノマーとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、及び4-メチル-1-ペンテンが挙げられるが、それらに限定されない。例えば、1つ以上のα-オレフィンコモノマーは、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、及び1-オクテンからなる群から、又は代替として、1-ヘキセン及び1-オクテンからなる群から選択され得る。
【0090】
実施形態では、1つ以上の(C~C12)α-オレフィンコモノマーは、プロピレンに由来していなくてもよい。すなわち、1つ以上の(C~C12)α-オレフィンコモノマーは、実質的にプロピレンを含んでいなくてもよい。化合物を「実質的に含まない」という用語は、材料又は混合物が、化合物が1.0重量%未満で含むことを意味する。例えば、プロピレンを実質的に含んでいなくてよい1つ以上の(C~C12)α-オレフィンコモノマーは、1.0重量%未満のプロピレン、例えば、0.8重量%未満のプロピレン、0.6重量%未満のプロピレン、0.4重量%未満のプロピレン、又は0.2重量%未満のプロピレンを含んでいてもよい。
【0091】
実施形態では、生産されるポリエチレン、例えば、エチレンのホモポリマー及び/又はインターポリマー(コポリマーを含む)、並びに任意選択で1つ以上のコモノマーは、少なくとも50モルパーセント(モル%)のエチレン由来のモノマー単位を含み得る。例えば、ポリエチレンは、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、又は少なくとも90モル%のエチレン由来のモノマー単位を含み得る。実施形態では、ポリエチレンは、50モル%~100モル%のエチレン由来のモノマー単位を含む。例えば、ポリエチレンは、50モル%~90モル%、50モル%~80モル%、50モル%~70モル%、50モル%~60モル%、60モル%~100モル%、60モル%~90モル%、60モル%~80モル%、60モル%~70モル%、70モル%~100モル%、70モル%~90モル%、70モル%~80モル%、80モル%~100モル%、80モル%~90モル%、又は90モル%~100モル%のエチレン由来のモノマー単位を含み得る。
【0092】
実施形態では、生産されるポリエチレンは、少なくとも90モル%のエチレン由来のモノマー単位を含む。例えば、ポリエチレンは、少なくとも93モル%、少なくとも96モル%、少なくとも97モル%、又は少なくとも99モル%のエチレン由来のモノマー単位を含み得る。実施形態では、ポリエチレンは、90モル%~100モル%のエチレン由来のモノマー単位を含む。例えば、ポリエチレンは、90モル%~99.5モル%、90モル%~99モル%、90モル%~97モル%、90モル%~96モル%、90モル%~93モル%、93モル%~100モル%、93モル%~99.5モル%、93モル%~99モル%、93モル%~97モル%、93モル%~96モル%、96モル%~100モル%、96モル%~99.5モル%、96モル%~99モル%、96モル%~97モル%、97モル%~100モル%、97モル%~99.5モル%、97モル%~99モル%、99モル%~100モル%、99モル%~99.5モル%、又は99.5モル%~100モル%のエチレン由来のモノマー単位を含み得る。
【0093】
実施形態では、生産されるポリエチレンは、50モル%未満の追加のα-オレフィン由来のモノマー単位を含む。例えば、ポリエチレンは、40モル%未満、30モル%未満、20モル%未満、又は10モル%未満の追加のα-オレフィン由来のモノマー単位を含み得る。実施形態では、ポリエチレンは、0モル%~50モル%の追加のα-オレフィン由来のモノマー単位を含む。例えば、ポリエチレンは、0モル%~40モル%、0モル%~30モル%、0モル%~20モル%、0モル%~10モル%、0モル%~5モル%、0モル%~1モル%、1モル%~50モル%、1モル%~40モル%、1モル%~30モル%、1モル%~20モル%、1モル%~10モル%、1モル%~5モル%、5モル%~50モル%、5モル%~40モル%、5モル%~30モル%、5モル%~20モル%、5モル%~10モル%、10モル%~50モル%、10モル%~40モル%、10モル%~30モル%、10モル%~20モル%、20モル%~50モル%、20モル%~40モル%、20モル%~30モル%、30モル%~50モル%、30モル%~40モル%、又は40モル%~50モル%の追加のα-オレフィン由来のモノマー単位を含み得る。
【0094】
実施形態では、生産されたポリエチレンは、1つ以上の添加剤を更に含む。このような添加剤としては、帯電防止剤、色増強剤、染料、潤滑剤、顔料、一次酸化防止剤、二次酸化防止剤、加工助剤、紫外線(UV)安定剤、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。ポリエチレンは、任意の量の添加剤を含み得る。実施形態では、生産されたポリエチレンは、充填剤を更に含み、これは、例えば、炭酸カルシウム、タルク、又はMg(OH)などの有機又は無機充填剤を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0095】
生産されたポリエチレンは、多種多様な製品及び最終用途で使用され得る。生産されたポリエチレンはまた、任意の他のポリマーとブレンド及び/又は共押出してもよい。他のポリマーの非限定的な例としては、線状低密度ポリエチレン、エラストマー、プラストマー、高圧低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。生産されたポリエチレン及び生産されたポリエチレンを含むブレンドを使用して、様々な最終用途の中でも特に、吹込成形された部品又は製品を生産することができる。生産されたポリエチレン及び生産されたポリエチレンを含むブレンドは、フィルム、シート、並びに繊維の押出及び共押出などの成形操作、並びに吹込成形、射出成形、及び回転成形において有用であり得る。フィルムは、収縮フィルム、ラップ、ストレッチフィルム、シール性フィルム、延伸フィルム、軽食包装、重包装紙袋、買物袋、焼いた食品及び冷凍食品の包装、医療用包装、工業用ライナー、並びに食品に接触する、及び食品に接触しない用途における膜として有用な、共押出又は積層によって成形される吹込又は流延フィルムを含み得る。繊維は、フィルタ、おむつ布地、医療用衣類、及びジオテキスタイルを作製するために織布又は不織布の形態で使用するための溶融紡糸、溶液紡糸、及びメルトブローン繊維操作を含み得る。押出物品は、医療用チューブ、ワイヤ、及びケーブルのコーティング、パイプ、ジオメンブレン、並びに池の中敷きを含み得る。成形物品は、ボトル、タンク、大型中空物品、硬質食品容器、及び玩具の形態の単層及び多層構造物を含み得る。
【0096】
試験方法
重合活性
特に指定しない限り、本開示の全ての重合活性(生産性とも称される)は、生産されたポリマーの反応器に添加された触媒の量に対する比として求められたものであり、1時間当たりの触媒1グラム当たりのポリマーのグラム数(gPE/gcat/hr)で報告されている。
【0097】
コモノマー含有量
特に指定しない限り、本開示の全てのコモノマー含有量(すなわち、ポリマーに組み込まれたコモノマーの量)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定において溶解ポリマーに対して急速FT-IR分光法によって求められたものであり、重量パーセント(重量%)で報告されている。ポリマーのコモノマー含有量は、Lee et al., Toward absolute chemical composition distribution measurement of polyolefins by high-temperature liquid chromatography hyphenated with infrared absorbance and light scattering detectors, 86 Anal. Chem. 8649 (2014)に記載されているように、GPC測定においてIR5検出器などの赤外線検出器を使用することによって、ポリマー分子量に関して求めることができる。
【0098】
高荷重メルトインデックス(I21
特に指示しない限り、本明細書に開示される全ての高荷重メルトインデックス(I21)は、190℃及び21.6kg荷重でASTMD1238-10、方法Bに従って測定したものであり、1分間当たりのデシグラム(dg/分)で報告されている。
【0099】
溶融温度(T
特に指示しない限り、本明細書に開示される全ての溶融温度(T)は、ASTMD3418-08に従って測定したものであり、摂氏(℃)で報告されている。特に指示しない限り、10ミリグラム(mg)のサンプルに対して1分間当たり摂氏10度(℃/分)の走査速度を使用し、第2の加熱サイクルを使用して溶融温度(T)を決定した。
【0100】
取り込み比
特に指示しない限り、本開示の全ての取り込み比は、コモノマー(例えば、(C~C12)α-オレフィンコモノマー)に由来するモノマー単位の量の、エチレン由来のモノマー単位の量に対する比として求めた。
【0101】
分子量
特に指示しない限り、重量平均分子量(M)、数平均分子量(M)、及びz平均分子量(M)を含む、本明細書に開示される全ての分子量は、従来のGPCを使用して測定したものであり、1モル当たりのグラム数(g/モル)で報告されている。
【0102】
クロマトグラフィーシステムは、示差屈折率検出器(DRI)を備えた高温ゲル浸透クロマトグラフィー(Polymer Laboratories)からなっていた。3本のPolymer Laboratories PLgel 10μm Mixed-Bカラムを使用した。公称流量は1.0mL/分であり、公称注入体積は300μLであった。様々な移送ライン、カラム、及び示差屈折計(DRI検出器)が、160℃に維持されたオーブンに入っていた。Aldrich試薬グレードの1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)4リットル中に酸化防止剤としてのブチル化ヒドロキシトルエン6グラムを溶解させることによって、実験用溶媒を調製した。次いで、TCB混合物を、0.1μmテフロンフィルタを通して濾過した。次いで、GPC機器に入る前に、TCBをオンラインデガッサーを用いて脱気した。
【0103】
乾燥ポリマーをガラスバイアルに入れ、所望の量のTCBを添加し、次いで、混合物を約2時間連続振盪しながら160℃で加熱することによって、ポリマー溶液を調製した。全ての量は、重量測定法で測定した。注入濃度は、0.5~2.0mg/mLであり、より低濃度をより高分子量のサンプルに使用する。各サンプルを実行する前に、DRI検出器をパージした。装置内の流量を1.0mL/分に増大させ、最初のサンプルを注入する前に、DRI検出器を8時間安定させる。一連の単分散ポリスチレン(PS)標準を用いて実施するカラム較正とユニバーサル較正関係とを組み合わせることによって、分子量を求めた。以下の式を用いて各溶出体積におけるMWを計算した:
【0104】
【数9】
式中、下付き文字「X」を有する変数は、試験サンプルを表すが、下付き文字「PS」を有するものは、PSを表す。この方法では、aPS=0.67及びKPS=0.000175であり、一方、a及びKは、既刊文献から入手した。具体的には、PEについては、a/K=0.695/0.000579であり、PPについては、0.705/0.0002288である。
【0105】
クロマトグラムの各点における濃度cは、以下の式を使用して、ベースラインを差し引いたDRIシグナル、IDRIから計算した:
【0106】
【数10】
式中、KDRIは、DRIを較正することによって求められる定数であり、(dn/dc)は、系の屈折率増分である。具体的には、ポリエチレンについてはdn/dc=0.109である。
【0107】
質量回収率は、溶出体積にわたる濃度クロマトグラフィーの積分面積の、所定の濃度に注入ループ容積を乗じた値に等しい注入質量との比に対するから計算した。
【0108】
ライトオフバッチ反応器試験法。
概要。機械的撹拌機を備えた2リットル(L)の半バッチオートクレーブ重合反応器で行われる各々の重合ランにおけるエチレン取り込み又はエチレン消費、触媒系を観察する。バッチ反応器において、気相中にて水素(H)の存在下でエチレン及び1-ヘキセンを共重合させる。質量分析及びガスクロマトグラフィーによって、気相中においてエチレン(「C」)、1-ヘキセン(「C」)、及びHの濃度を分析する。それらの濃度を定常状態で維持するために、3時間の重合ラン全体を通して連続的にC及びH成分を添加するが、Cはそれ以上添加しない。時間に対するエチレン取り込みを測定して、触媒動態プロファイルの相対的な表現を得る。
【0109】
バッチ反応器の乾燥及び充填。各ランの前に、バッチ反応器を1時間乾燥させる。次いで、乾燥したバッチ反応器に200gのNaClを充填する。バッチ反応器を、反応器及び反応器の内容物を100℃でN雰囲気下において30分間加熱することによって更に乾燥させる。次いで、3gの噴霧乾燥されたシリカ担持メチルアルミノキサン(SDMAO)を添加して残渣を捕捉し、バッチ反応器を密閉し、内容物を撹拌する。次いで、得られた乾燥したバッチ反応器に、1-ヘキセン対エチレン(C/C)のモル比が0.004になるように、3.04リットル(L)のH及び1-ヘキセンを充填する。バッチ反応器をエチレンで1.52メガパスカル(MPa)に加圧する。得られた系を定常状態に到達させる。
【0110】
次いで、バッチ反応器に触媒系を充填して重合を開始させる。触媒の添加時間を時間ゼロ(時間)として記録する。反応器の温度を目標温度(典型的には、80~100℃)にし、その温度で1~5時間維持する。反応器を冷却し、通気し、開放し、得られたポリオレフィン生成物を水、メタノールで洗浄し、乾燥させて、乾燥ポリオレフィン生成物を得る。
【0111】
各バッチ反応器のランについて、反応器-時間に添加した触媒1グラム当たりの作製された乾燥ポリオレフィン生成物のグラム数(gPE/gcat-hr)として、触媒活性/重合生産性を計算する。gPE/gcat-hrの数が大きいほど、触媒活性/重合生産性が高い。エチレン取り込みは、ランの過程全体を通して測定され、反応中の任意の時間での全エチレン取り込みは、式(VI)によって求めることができ:
【0112】
【数11】
ランの過程にわたる全エチレン取り込みは、式(V)によって得られる:
【0113】
【数12】
2つの触媒系を比較すると、全ての条件が同じであるとして、所与の時間における取り込み比Utは、より急速なライトオフを有する触媒についてより大きく、より緩徐なライトオフを有する触媒系についてはUよりも大きな値を有する。
【実施例
【0114】
金属-配位子錯体1(MLC-1)の合成
【0115】
【化6】
【0116】
[0112]ガラス瓶(1リットル(L))に、アセトニトリル(400mL)、4-フルオロ-6-メチル-フェノール(50g、396.4mmol)、及びp-トルエンスルホン酸(一水和物、75.6g、396mmol)を充填した。得られた溶液を25分間で0℃に冷却し、約5分間にわたってN-ブロモスクシンイミド(70.55g、396.4mmol)でゆっくりと処理し、一晩撹拌しながら室温に到達させた。揮発性物質を真空下で除去し、得られた沈殿物をジクロロメタン(600mL)で処理し、0℃に冷却し、シリカゲルの大きなプラグを通して濾過し、続いて、冷ジクロロメタン(CHCl)で数回洗浄した。揮発性物質を真空下で除去して、2-ブロモ-4-フルオロ-6-メチル-フェノール(46g、収率:56%)を得た。
【0117】
H NMR (400MHz,クロロホルム-d)δ 7.05 (ddd, J = 7.7, 3.0, 0.7Hz, 1H), 6.83 (ddt, J = 8.7, 3.0, 0.8Hz, 1H), 5.35 (s, 1H), 2.29 (d, J = 0.7Hz, 3H).
【0118】
19F NMR (376MHz,クロロホルム-d)δ -122.84.
【0119】
【化7】
【0120】
グローブボックス内で、磁気撹拌子を備えるフラスコ(250mL)において、NaH(95%、1.76g)を、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF;35mL)中2-ブロモ-4-フルオロ-6-メチル-フェノール(15g、73.2mmol)の溶液に、水素の発生が停止するまでゆっくりと添加した。反応混合物を、室温で30分間撹拌した。この時間後、ジイソプロピルゲルミルジクロリド(6.29g、24.4mmol)を添加した。混合物を55℃に加温し、この温度で18時間保持した後、グローブボックスから除去し、飽和塩化アンモニウム水溶液(NHCl; 20mL)及び水(HO;8mL)でクエンチした。ジエチルエーテル(EtO;30mL)を混合物に添加し、これを分液漏斗に移して、得られた相を分離した。水相をEtO(20mL)で更に抽出し、合わせた有機抽出物をブライン(10mL)で洗浄した。次いで有機層を乾燥させ(MgSO)、濾過し、濃縮乾固させた。粗残渣をシリカゲル上にドライロードし、次いで、フラッシュクロマトグラフィー(100mL/分、20分かけて10%まで上昇する酢酸エチルを含む純粋なヘキサン)を使用して精製して、淡黄色の油状物を生成物として得た。全てのクリーンな画分(一部の画分は、<10%の出発フェノールを含有していた)を合わせ、最終生成物を真空下で一晩乾燥させて、ビス((2-ブロモ-4-フルオロ-6-メチルフェノキシ)メチル)ジイソプロピルゲルマン(9g、収率:62%)を得た。
【0121】
H NMR (400MHz,クロロホルム-d)δ 7.10 (dd, J = 7.7, 3.0Hz, 2H), 6.84 (ddd, J = 8.8, 3.1, 0.8Hz, 2H), 4.14 (s, 4H), 2.33 (s, 6H), 1.74 (hept, J = 7.4Hz, 2H), 1.35 (d, J = 7.4Hz, 12H).
【0122】
19F NMR (376MHz,クロロホルム-d)δ -118.03.
【0123】
【化8】
【0124】
撹拌子を備えるガラス瓶(500mL)に、2,7-ジ-tert-ブチル-9-(2-((テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェニル)-9H-カルバゾール(国際公開第2014/105411(A1)号に記載の通り; 29.0g、41.9mmol)、ビス((2-ブロモ-4-フルオロ-6-メチルフェノキシ)メチル)ジイソプロピルゲルマン(6.00g、8.65mmol、10%の2-ブロモ-4-フルオロ-2-メチル-フェノールを含有)、及びTHF(80mL)を充填した。溶液を55℃に加熱し、撹拌しながら、クロロ[(トリ-tert-ブチルホスフィン)-2-(2-アミノビフェニル)]パラジウム(II)(tBuP-PdG2;199mg、0.346mmol、4mol%)で処理した。NaOH水溶液(17.3mL、51.9mmol、3M)を窒素で20分間パージし、次いで、THF溶液に添加した。反応物を55℃で一晩撹拌した。水相を分離し、廃棄し、残存する有機相をジエチルエーテルで希釈し、ブラインで2回洗浄した。溶液をシリカゲルの短いプラグに通した。濾液をロータリーエバポレーターで乾燥させ、THF/メタノール(40mL/40mL)に溶解させ、HCl(2mL)で処理し、70℃で一晩撹拌した。溶液を真空下で乾燥させ、C18逆相カラムクロマトグラフィーによって精製して、オフホワイトの固形物として配位子(6.5g、収率:54%)を得た。
【0125】
H NMR (400MHz,クロロホルム-d)δ 8.01 (d, J = 8.2Hz, 4H), 7.42 (dd, J = 25.5, 2.4Hz, 4H), 7.32 (dd, J = 8.2, 1.6Hz, 4H), 7.17 (s, 4H), 6.87 (ddd, J = 16.4, 8.8, 3.0Hz, 4H), 6.18 (s, 2H), 3.79 (s, 4H), 2.12 (s, 6H), 1.71 (s, 6H), 1.56 (s, 4H), 1.38 (s, 12H), 1.31 (s, 36H), 0.83 - 0.73 (m, 30H).
【0126】
19F NMR (376MHz,クロロホルム-d)δ -119.02.
【0127】
【化9】
【0128】
グローブボックス内で、ジエチルエーテル中MeMgBr(3M、2.4mL、7.1mmol)を、無水トルエン(83mL)中ZrCl(402mg、1.72mmol)の-30℃の懸濁液に添加した。得られた混合物を3分間撹拌した後、配位子(2.3g、1.64mmol)を少しずつ添加した。反応物を室温で一晩撹拌し、次いで、フリットプラスチック漏斗を通して濾過した。濾液を真空下で乾燥させ、トルエン(40mL)に再溶解させ、セライトのプラグを通して再び濾過し、真空下で再び乾燥させた。得られた固形分をペンタン(約5mL)で洗浄し、真空下で乾燥させて、オフホワイトの粉状物として金属-配位子錯体(2.1g、収率:84%)を提供した。
【0129】
H NMR (400MHz,ベンゼン-d)δ 8.20 (dd, J = 8.2, 0.5Hz, 2H), 8.11 (dd, J = 8.2, 0.6Hz, 2H), 7.88 - 7.82 (m, 4H), 7.77 (d, J = 2.6Hz, 2H), 7.50 (dd, J = 8.3, 1.7Hz, 2H), 7.42 - 7.37 (m, 4H), 6.99 (dd, J = 8.7, 3.1Hz, 2H), 6.20 - 6.10 (m, 2H), 4.29 (d, J = 12.2Hz, 2H), 3.90 (d, J = 12.2Hz, 2H), 1.56 (s, 4H), 1.53 (s, 18H), 1.29 (s, 24H), 1.27 (s, 6H), 1.18 (s, 6H), 1.04 - 0.94 (m, 2H), 0.81 (d, J = 7.4Hz, 6H), 0.80 (s, 18H), 0.74 (d, J = 7.4Hz, 6H), -0.47 (s, 6H).
【0130】
19F NMR (376MHz,ベンゼン-d)δ -116.24.
【0131】
金属-配位子錯体2(MLC-2)の合成
【0132】
【化10】
【0133】
国際公開第2018/183056(A1)号に記載の通り、金属-配位子錯体を合成した。
【0134】
H NMR (400MHz, C)δ 8.04 (br s, 2H), 7.76 (t, J = 1.9Hz, 2H), 7.61 (br s, 2H), 7.43 (t, J = 2.8Hz, 2H), 7.34 (d, J = 2.4Hz, 2H), 7.08 (t, J = 8.8Hz, 2H), 5.50 (dd, J = 8.8, 1.1Hz, 2H), 4.75 (d, J = 11.5Hz, 2H), 3.69 (d, J = 11.4Hz, 2H), 2.69- 2.49 (m, 4H), 1.71- 1.60 (m, 4H), 1.58- 1.19 (m, 74H), 0.96- 0.87 (m, 6H), 0.73- 0.57 (m, 14H), -0.04 (s, 6H). 19F{1H}NMR (376MHz, C)δ -108.63 (m, 2F).
【0135】
触媒系1の調製
窒素パージしたグローブボックス内で、0.80グラムの疎水性ヒュームドシリカ(Cabot CorporationからCAB-O-SIL(登録商標)TS-610として市販)を20.0グラムのトルエンに添加し、十分に分散するまで混合して、スラリーを生成した。次に、6.60グラムのメチルアルミノキサン(トルエン中10重量%)をスラリーに添加し、15分間撹拌し、得られた混合物に0.043グラムのMLC-1を添加し、次いで、更に30~60分間撹拌した。次いで、混合物を、入口温度185℃、出口温度100℃、吸引速度95回転/分(rpm)、及びポンプ速度150rpmのスプレードライヤー(BUCHI CorporationからMini Spray Dryer B-290として市販)を使用して乾燥させて、触媒系1を生成した(触媒系1)。
【0136】
触媒系2の調製
窒素パージしたグローブボックス内で、0.68グラムの疎水性ヒュームドシリカ(Cabot CorporationからCAB-O-SIL(登録商標)TS-610として市販)を20.0グラムのトルエンに添加し、十分に分散するまで混合して、スラリーを生成した。次に、9.05グラムのメチルアルミノキサン(トルエン中10重量%)をスラリーに添加し、15分間撹拌し、得られた混合物に0.046グラムのMLC-1を添加し、次いで、更に30~60分間撹拌した。次いで、混合物を、入口温度185℃、出口温度100℃、吸引速度95回転/分(rpm)、及びポンプ速度150rpmのスプレードライヤー(BUCHI CorporationからMini Spray Dryer B-290として市販)を使用して乾燥させて、触媒系2を生成した(触媒系2)。
【0137】
触媒系3の調製
窒素パージしたグローブボックス内で、0.80グラムの疎水性ヒュームドシリカ(Cabot CorporationからCAB-O-SIL(登録商標)TS-610として市販)を20.0グラムのトルエンに添加し、十分に分散するまで混合して、スラリーを生成した。次に、6.98グラムのメチルアルミノキサン(トルエン中10重量%)をスラリーに添加し、15分間撹拌し、得られた混合物に0.091グラムのMLC-1を添加し、次いで、更に30~60分間撹拌した。次いで、混合物を、入口温度185℃、出口温度100℃、吸引速度95回転/分(rpm)、及びポンプ速度150rpmのスプレードライヤー(BUCHI CorporationからMini Spray Dryer B-290として市販)を使用して乾燥させて、触媒系1を生成した(触媒系3)。
【0138】
触媒系4の調製
窒素パージしたグローブボックス内で、0.66グラムの疎水性ヒュームドシリカ(Cabot CorporationからCAB-O-SIL(登録商標)TS-610として市販)を37.5グラムのトルエンに添加し、十分に分散するまで混合して、スラリーを生成した。次に、5.90グラムのメチルアルミノキサン(トルエン中10重量%)をスラリーに添加し、15分間撹拌し、得られた混合物に0.074グラムのMLC-2を添加し、次いで、更に30~60分間撹拌した。次いで、混合物を、入口温度185℃、出口温度100℃、吸引速度95回転/分(rpm)、及びポンプ速度150rpmのスプレードライヤー(BUCHI CorporationからMini Spray Dryer B-290として市販)を使用して乾燥させて、触媒系4を生成した。
【0139】
比較触媒系C1の調製
窒素パージしたグローブボックス内で、1.33グラムの疎水性ヒュームドシリカ(Cabot CorporationからCAB-O-SIL(登録商標)TS-610として市販)を37.5グラムのトルエンに添加し、十分に分散するまで混合して、スラリーを生成した。次に、11.00グラムのメチルアルミノキサン(トルエン中10重量%)をスラリーに添加し、これを15分間撹拌した後、0.189グラムの以下の構造を有する金属-配位子錯体を添加した:
【0140】
【化11】
【0141】
次いで、混合物を更に30~60分間撹拌した。次いで、混合物を、入口温度185℃、出口温度100℃、吸引速度95回転/分(rpm)、及びポンプ速度150rpmのスプレードライヤー(BUCHI CorporationからMini Spray Dryer B-290として市販)を使用して乾燥させて、比較触媒系C1を生成した(比較触媒C1)。
【0142】
比較触媒系C2の調製
窒素パージしたグローブボックス内で、2.65グラムの疎水性ヒュームドシリカ(Cabot CorporationからCAB-O-SIL(登録商標)TS-610として市販)を75.0グラムのトルエンに添加し、十分に分散するまで混合して、スラリーを生成した。次に、22.00グラムのメチルアルミノキサン(トルエン中10重量%)をスラリーに添加し、これを15分間撹拌した後、0.155グラムの以下の構造を有する金属-配位子錯体を添加した:
【0143】
【化12】
【0144】
次いで、混合物を更に30~60分間撹拌した。次いで、混合物を、入口温度185℃、出口温度100℃、吸引速度95回転/分(rpm)、及びポンプ速度150rpmのスプレードライヤー(BUCHI CorporationからMini Spray Dryer B-290として市販)を使用して乾燥させて、比較触媒系2を生成した(比較触媒C2)。
【0145】
気相バッチ反応器試験:
上記で調製した噴霧乾燥した触媒を、2Lの半バッチオートクレーブ重合反応器内において気相中で行ったエチレン/1-ヘキセンの共重合に使用した。個々のラン条件及びこれらのランで生成されたポリマーの特性を表1~5に示す。
【0146】
気相バッチ反応器触媒試験手順:用いた気相反応器は、機械的撹拌機を備える2リットルのステンレス鋼製オートクレーブである。実験ランについては、反応器をまず1時間乾燥させ、200gのNaClを充填し、窒素下において100℃で30分間加熱することにより乾燥させた。反応器を焼き出しした後、3gのSDMAO(噴霧乾燥した担持メチルアルミノキサン)を窒素圧下で捕捉剤として導入した。SDMAOを添加した後、反応器を密閉し、成分を撹拌した。次いで、反応器に水素及び1-ヘキセンを充填し、エチレンで加圧した。系が定常状態に達したら、触媒を80℃で反応器に充填して重合を開始させた。反応器温度を所望の反応温度にし、1時間のラン全体を通して、この温度、エチレン、1-ヘキセン、及び水素供給比で維持した。ランの終わりに、反応器を冷却し、排気し、開放した。得られた生成物混合物を水及びメタノールで洗浄し、次に、乾燥させた。重合活性(ポリマー(グラム)/触媒-時間(グラム))を、生成されたポリマーの、反応器に添加された触媒の量に対する比として求めた。
【0147】
【表1】
【0148】
条件1a:注入T=80℃、ランT=90℃、0.003 C6/C2、0.004 H2/C2、100psi C2、ランタイム1時間。条件2a:注入T=80℃、ランT=100℃、0.004 C6/C2、0.0068 H2/C2、230psi C2、ランタイム1時間。条件3:注入T=80℃、ランT=93℃、0.0043 C6/C2、0.004 H2/C2、220psi C2、ランタイム1時間。条件1b:注入T=80℃、ランT=90℃、0.004 C6/C2、0.0011 H2/C2、115psi C2、ランタイム1時間。条件2b:注入T=80℃、ランT=90℃、0.004 C6/C2、0.0011 H2/C2、230psi C2、ランタイム1時間。
【0149】
ランタイムは3時間まで延長した。
【0150】
[0137]急速なライトオフは、粒子の過熱につながるエチレン及び/又はコモノマーの急速な消費に起因する操作性の問題を引き起こし、恐らく、重合熱の尺度及び触媒粒子温度の間接的な尺度である内部反応器温度(Tint)の観点でより良好に定量化される。Tintは、半バッチ気相重合プロセスにおける異なる触媒のライトオフの重大度を定量化及び比較する便利な方法である。
【0151】
[0138]図2中、条件1a下の実施例1~3(触媒系1~3)及び条件1b下の比較例10(比較触媒系C1)の内部温度プロファイル。各例では、触媒を80℃で注入し、次いで、温度を90℃の目標温度まで急速に上昇させる。図2中の触媒系1~3の3回のランでは、最高温度は目標温度を超えない(表1)。比較触媒系C1を含む比較例では、Tintは、90℃の目標温度を約10℃超過して99.9℃になる。また、比較触媒系C1も、条件2b下で90℃の目標温度を約43℃超過して132.5℃になる。比較触媒系C2も、条件3下で93℃の目標温度を約26℃超過して118.5℃になる。また、ゲルマニウム架橋触媒系1~3の生産性は著しく高い(表1)。
【0152】
[0139]触媒系1のエチレン取り込み曲線を図1に示す。これらは表1からの実施例4及び7である。実施例4の生産性値は、283,771gPE/gcat/hであり、実施例7では、259,108gPE/gcat/hである(又はそれぞれ効率の観点では155.7MM gPE/gZr及び142.2MM gPE/gZr)。これらのランは、上記の通り粒子が過熱され互いに融合することによって引き起こされ、急速なライトオフを有する触媒によって悪化する、チャンキングなどの操作性の問題を経験しなかった。この触媒の生産性は、任意の以前のCARLバッチ反応器のランよりもはるかに高く、これにもかかわらず、エチレン取り込み曲線は、触媒のライトオフが比較的穏やかであり、かつ減衰が遅いことを示し、これは、噴霧乾燥ビス-フェニルフェノキシ(すなわち、MCL-1、MCL-2、及びMCL~C1)触媒よりもメタロセン触媒により典型的である。
【0153】
【表2】
【0154】
条件:注入T=80℃、0 C6/C2、ランタイム1時間。
【0155】
条件2a下の実施例4~6(触媒系1~3)及び条件2b下の比較例11(比較触媒C1)の内部温度プロファイルを図3に示す。触媒系1は、(表1に記録されているように)両方とも極めて高い生産性を有するにもかかわらず、100℃の目標温度を超過しない。触媒系は、目標温度を約8℃超過する。しかしながら、温度は、ランにつき最高108.1℃に達するのに約6分間かかる。比較触媒C1は、経済的な利点のある操作エチレン分圧(約200psi C2PP)での過熱によって引き起こされる深刻なチャンキングの問題に悩まされることが多いため、比較触媒C1の比較例11の条件は、90℃の温度を標的としていた。表1の実施例11では、比較触媒C1は、42.5℃目標温度を超過する(最大T=132.5℃)。
【0156】
表1中の例の各々のでは、触媒系を80℃で注入し、温度を90℃の目標温度まで急速に上昇させた。図3中の触媒系1の3回のランでは、最高温度は目標温度を超えない(表1)。比較触媒C1を含む比較例では、Tintは、90℃の目標温度を約10℃超過して99.9℃になる。また、表2ではゲルマニウム架橋触媒系1~3の生産性は著しく高かった。生産性(及びゲルマニウム架橋触媒系1~3の実施例の効率は、三炭素架橋を有する比較触媒系よりもはるかに高い。
【0157】
触媒系1~3もまた、条件3で試験し、いくつかの異なる市販の触媒系で使用される比較触媒2と比較した。触媒系1Aを用いたラン7~9及び比較触媒C2を用いた比較ラン12の内部温度プロファイルを、図4に示す。230psiのエチレンを有する高C2PP条件にもかかわらず、MLC-1を有する実施例のいずれも反応器の過熱を示さず、(表1に記録されているように)最高温度は、93℃の目標温度よりも3℃高いことを記録しただけである。対照的に、比較触媒C2は、急速なライトオフを示し、最高温度は118.5℃である。ランにおける触媒系1~3の生産性は、ライトオフがより制御されているにもかかわらず、比較触媒C2よりも最大2桁高い。更に、エチレン取り込み曲線(図5)は、触媒系1~3が、気相重合プロセスの標準である3時間の滞留時間にわたってはるかに高い生産性を有することを示す。
【0158】
この触媒を使用した表2の実施例13~20は全て、高C2PP(230psi C2)で約45,000~60,000gPE/gcat/hの非常に高い生産性を示す。より低いC2PPでさえも、生産性は比較的高いままである。触媒系1~3を使用する実施例ほど高くはないが、これらは、任意の種類の良好な組み込み触媒(メタロセン、ポストメタロセン)についてこれまでになく生産性が高い。図6図8のエチレン取り込み曲線は、低C2PPにおいて良好に挙動するメタロセン触媒とより一般的に関連している、徐々のライトオフ及び長い触媒寿命を示す。例えば、実施例16についての図7における内部温度プロファイルは、表2の全てのランを代表する。エチレン取り込みプロファイルの減衰は非常に緩徐であるが、図8の実施例19では、触媒の減衰速度は115℃で有意に増加する。徐々のライトオフ及び温度加速減衰を伴う生産性の高い触媒は、気相ポリエチレンプロセスにおいて良好に挙動する操作のための非常に有望な候補である。
【0159】
【表3】
【0160】
条件:注入T=80℃、0 C6/C2、ランタイム1時間。
【0161】
ライトオフ、又は1時間のランのうち最初の5%若しくは最初の3分間以内の初期発熱及び全エチレン取り込みもまた、触媒の操作性を評価するために定量化することができる。触媒系1~4、並びに比較触媒C1及び比較触媒C2について、測定された発熱、並びにいくつかのバッチ実験の最初の3分間以内の様々な時点での全エチレン取り込み率を表5に示す。発熱は、以下の式1を使用して計算され、式中、Tintは、反応器内の熱電対で測定された内部温度であり、設定Trxは、実験のための設定反応器温度である。全エチレン取り込み率は、以下の式2を使用して計算され、式中、C2取り込み時間は、実験のその指定の時間で消費された全エチレンであり、及びC2取り込み全体は、ラン全体(1時間又は3時間)で消費された全エチレンである。
発熱=最高Tint-設定Trx 式1
%C2取り込み時間=(C2取り込み時間/全C2取り込み全体)×100% 式2
【0162】
触媒系のライトオフ又はエチレン取り込みプロファイルは、発熱率(%Exo)によって特徴付けられ、従来バッチ反応器試験法によって便利に測定され、式(XII)によって示される、Trxに対する最高反応器温度(Tmax)と目標反応器温度(Trx)温度との差として百分率で定量化され得る:
【0163】
【数13】
発熱率は、同様のエチレン分圧範囲で最も良く比較される。150psi未満のエチレン分圧では、操作性の問題の兆候を有さない穏やかなライトオフを有する触媒系は、5%未満の発熱率(%exo)を有することを特徴とし得る。例えば、実施例1~3及び18は全て<2.0%の%exoを有するが、比較例は11.0%の%exoを有する。150psiを超えるエチレン分圧を有する反応器の操作については、操作性の問題の兆候を有さない穏やかなライトオフの触媒系は、10%未満の発熱率(%exo)を有することを特徴とし得る。例えば、実施例4~9、13~17、及び19~20は、4%未満の%exoを有するが、比較例11及び12は、それぞれ47.2%及び27.4%の%exoを有する。
【0164】
高いエチレン分圧を有する条件下で初期触媒注入時に著しく高い発熱(≧17℃)を有する比較例と比較して、触媒系1~4では、一貫してより低い発熱が観察される(≦8℃)(表4)。触媒系1~4はまた、比較触媒C1及び比較触媒C2と比較して、低及び高C2PPの両方を含む様々な条件下で、最初の3分間以内の様々な時点で著しく低い全エチレン取り込みを示す(表4、1~17番対18~24番)。触媒系1~4の著しく低い発熱及び初期エチレン取り込み、又はライトオフは、比較例である比較触媒C1及び比較触媒C2と比較して、これらの触媒が改善されたライトオフを有し、したがって、操作性が改善されたことの証拠を示す。
【0165】
【表4】
【0166】
条件1a:注入T=80℃、ランT=90℃、0.003 C6/C2、0.004 H2/C2、100psi C2、ランタイム1時間。条件1b:注入T=80℃、ランT=90℃、0.004 C6/C2、0.0011 H2/C2、115psi C2、1時間。条件1c:注入T=80℃、ランT=90℃、0.004 C6/C2、0.0011 H2/C2、230psi C2、1時間。条件2a:注入T=80℃、ランT=100℃、0.004 C6/C2、0.0068 H2/C2、230psi C2、1時間。条件2b:注入T=80℃、ランT=100℃、0.004 C6/C2、0.0016 H2/C2、230psi C2、1時間。条件3:注入T=80℃、ランT=93℃、0.0043 C6/C2、0.004 H2/C2、220psi C2、1時間。3時間。条件4:注入T=80℃、ランT=90℃、0 C6/C2、0.018 H2/C2、230psi C2、1時間。条件5:注入T=80℃、ランT=90℃、0 C6/C2、0.01 H2/C2、230psi C2、1時間。条件6:注入T=80℃、ランT=90℃、0 C6/C2、0.007 H2/C2、230psi C2、1時間。条件7:注入T=80℃、ランT=90℃、0 C6/C2、0.004 H2/C2、230psi C2、1時間。条件8:注入T=80℃、ランT=90℃、0 C6/C2、0.01 H2/C2、165psi C2、1時間。条件9:注入T=80℃、ランT=90℃、0 C6/C2、0.01 H2/C2、100psi C2、1時間。条件10:注入T=80℃、ランT=105℃、0 C6/C2、0.01 H2/C2、230psi C2、1時間。条件11:注入T=80℃、ランT=80℃、0 C6/C2、0.01 H2/C2、230psi C2、1時間。
【0167】
触媒のライトオフ及び制御されたエチレン消費を評価するための別の方法は、実験中に指定の量の全エチレンを触媒が消費した時間を測定することである。操作不能な挙動につながる急速で制御不能なライトオフ及びエチレン消費を有する触媒は、その全エチレン取り込みの大部分がランの初期段階内(すなわち、60分間のランの最初の6分間、又は10%)で生じる形で、エチレンを急速に消費する傾向がある。この挙動も、同様に反応器内のチャンキング及び/又は凝集につながる傾向がある。表5は、様々な条件の各々について、ラン中に消費された全エチレンの25%、50%、75%、及び90%を触媒が消費した指定の時点を示す。より高いエチレン分圧(C2PP≧165psi)下の反応器条件では、1時間のラン中に、消費される全エチレンの25%、50%、75%、及び90%を触媒系1~4が消費する時間は、比較例である比較触媒系C1及びC2よりも著しく遅い(表5、4~13番及び15~16番対18、19及び21番)。表4のデータと合わせて、表5のデータは、本発明の触媒系1~4の各々について、より遅い初期エチレン消費並びにランの過程全体を通して制御されたエチレン消費を示し、これは、高いエチレン分圧を有する条件下での比較例である比較触媒系1のランの過程全体にわたる急速で制御不能なエチレン消費とは全く対照的である。
【0168】
【表5】
【0169】
条件1a:注入T=80℃、ランT=90℃、0.003 C6/C2、0.004 H2/C2、100psi C2、ランタイム1時間。条件1b:注入T=80℃、ランT=90℃、0.004 C6/C2、0.0011 H2/C2、115psi C2、1時間。条件2a:注入T=80℃、ランT=100℃、0.004 C6/C2、0.0068 H2/C2、230psi C2、1時間。条件2b:注入T=80℃、ランT=90℃、0.004 C6/C2、0.0011 H2/C2、230psi C2、1時間。条件2c:注入T=80℃、ランT=100℃、0.004 C6/C2、0.0016 H2/C2、230psi C2、1時間。条件3:注入T=80℃、ランT=93℃、0.0043 C6/C2、0.004 H2/C2、220psi C2、1時間。3時間。条件4:注入T=80℃、ランT=90℃、0 C6/C2、0.018 H2/C2、230psi C2、1時間。条件5:注入T=80℃、ランT=90℃、0 C6/C2、0.01 H2/C2、230psi C2、1時間。条件6:注入T=80℃、ランT=90℃、0 C6/C2、0.007 H2/C2、230psi C2、1時間。条件7:注入T=80℃、ランT=90℃、0 C6/C2、0.004 H2/C2、230psi C2、1時間。条件8:注入T=80℃、ランT=90℃、0 C6/C2、0.01 H2/C2、165psi C2、1時間。条件9:注入T=80℃、ランT=90℃、0 C6/C2、0.01 H2/C2、100psi C2、1時間。条件10:注入T=80℃、ランT=105℃、0 C6/C2、0.01 H2/C2、230psi C2、1時間。条件11:注入T=80℃、ランT=80℃、0 C6/C2、0.01 H2/C2、230psi C2、1時間。
【0170】
本明細書に開示される寸法及び値は、列挙されたまさにその数値に厳密に限定されると理解されるべきではない。代わりに、別段明記されない限り、そのような各寸法は、列挙された値とその値を取り巻く機能的に同等な範囲との両方を意味することが意図される。例えば、「40g/cm」として開示される寸法は、「約40g/cm」を意味することが意図される。
【0171】
本明細書に含まれる式で使用される記号は、数学の分野で理解される標準的な意味を指す。例えば、「=」は等しいことを意味し、「×」は乗算演算を意味し、「+」は加算演算を意味し、「-」は減算演算を意味し、「>」は、「より大きい」符号であり、「<」は「未満」の符号であり、「/」は除算演算を意味する。
【0172】
存在する場合、任意の相互参照された又は関連する特許若しくは特許出願、及び本出願がその優先権又は利益を主張する任意の特許若しくは特許出願も含めて、本明細書で引用される文書は全て、明示的に除外又は別途制限されない限り、参照によりその全体が組み込まれる。いかなる文書の引用も、開示又は特許請求されるいかなる実施形態に関しても、それが先行技術であること、又はそれ単独若しくはいかなる他の単一若しくは複数の参照文献との組み合わせにおいても、いかなるそのような実施形態も教示、示唆、又は開示することを認めるものではない。更に、本文書における任意の用語の意味又は定義が、参照により組み込まれた文書における同じ用語の任意の意味又は定義と矛盾する場合は、本文書においてその用語に割り当てられた意味又は定義が適用されるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-01-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンを生産するためのプロセスであって、1つ以上の担体材料上に配置された金属-配位子錯体を含む触媒系を用いて、エチレン分圧150psi以上かつ1つ以上の(C~C12)α-オレフィンコモノマーのエチレンに対するモル供給比0.030以下で、70℃~150℃以下の反応器温度の気相重合反応器内において、エチレン及び任意選択で1つ以上の(C~C12)α-オレフィンコモノマーを前記触媒系と接触させることを含み、前記金属-配位子錯体が、式(Ia)による構造を有し:
【化1】
(式中、
は、アニオンであり、
Mは、チタン、ジルコニウム又はハフニウムであり、
nは、1、2、又は3であり、
各Xは、(C~C50)ヒドロカルビル、(C~C50)ヘテロヒドロカルビル、(C~C50)アリール、(C~C50)ヘテロアリール、及びハロゲンからなる群から独立して選択される単座配位子であり、
及びRは、式(II)を有するラジカル及び式(III)を有するラジカルからなる群から独立して選択され、
【化2】
(式中、R9~13及びR14~21は、-H、(C~C50)ヒドロカルビル、(C~C50)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、又はハロゲンから独立して選択される)
、R、R、R、R、及びRは、-H、(C~C50)ヒドロカルビル、(C~C50)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、及びハロゲンから独立して選択される)、
前記触媒系の前記気相重合反応器への注入時に最初の5分間に消費されるエチレンの量が、前記触媒系の初期添加時に平均滞留時間tの時間全体に消費される全エチレンの25%未満であり、前記全エチレンの25%が取り込まれる時間(t25%)が、式(IV)による式によって計算される、プロセス:
【数1】
【請求項2】
前記プロセスが、前記平均滞留時間t全体の間の指定の時間tにおける取り込み比(U)が式(V)に従って計算できることを更に含み、
【数2】
前記触媒系のUが、式(X)及び式(XI)によって示されるように、前記触媒系が前記反応器に供給された0.5分(30秒)後の時点で0.02(2パーセント)以下である、請求項1に記載のプロセス:
30秒(0.5分)における取り込み、
【数3】
30秒(0.5分)における取り込み、
【数4】
【請求項3】
前記触媒系のUが、前記触媒系が前記反応器に供給された1.5分(90秒)後の時点で0.05(5パーセント)以下であり、以下の式によって示される、請求項2に記載のプロセス:
【数5】
【請求項4】
前記触媒系のUが、前記触媒系が前記反応器に供給された3.0分(180秒)後の時点で0.15(15パーセント)以下であり、以下の式によって示される、請求項2又は3に記載のプロセス:
【数6】
【請求項5】
前記触媒系のUが、前記触媒系が前記反応器に供給された3.0分(180秒)後の時点で0.10(10パーセント)以下であり、以下の式によって示される、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス:
【数7】
【請求項6】
前記触媒系の前記気相重合反応器への注入時に最初の18分間に消費されるエチレンの量が、前記触媒系の初期添加時に平均滞留時間tの時間全体に消費される全エチレンの50%未満であり、前記全エチレンの50%が取り込まれる時間(t25%)が、式(IV)による式によって計算される、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス:
【数8】
【請求項7】
発熱率(%exo)が10%未満である、又は発熱率(%Exo)が5%未満である、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
及びRが、同じである、又は
及びRのうちの少なくとも1つが、式(II)を有するラジカルであり、R10及びR12のうちの少なくとも1つが、tert-ブチルである、又は
及びRのうちの少なくとも1つが、式(III)を有するラジカルである、又は
15、R16、R19、及びR20のうちの少なくとも1つが、tert-ブチルである、又は
14~21が、-Hである、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
1つ以上の担体材料が、ヒュームドシリカを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記アニオンが、アルミネートである、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
請求項1に記載の触媒系を調製する方法であって、
1つ以上の活性化剤を前記1つ以上の担体材料上に配置して、担持活性化剤を生成することと、
前記担持活性化剤を不活性炭化水素溶媒中の中性金属-配位子錯体の溶液又はスラリーと接触させることと、
を含む、方法。
【請求項12】
前記活性化剤が、メチルアルモキサン(MAO)を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記触媒系が、そのままの形態で、溶液として、又はスラリーとして前記気相重合反応器に供給される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記触媒系が、噴霧乾燥された粒子を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記反応器内の前記エチレン分圧が150psi以上である、又は前記エチレン分圧が170psi以上である、又は前記エチレン分圧が200psi以上である、請求項1~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記反応器温度が、120℃以下である、又は前記反応器温度が、75℃~110℃である、又は前記反応器温度が、80℃~105℃である、又は前記反応器温度が、85℃~100℃である、請求項1~15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
ポリエチレンを生産するためのプロセスであって、1つ以上の担体材料上に配置された金属-配位子錯体を含む触媒系を用いて、エチレン分圧50psi~150psiかつ1つ以上の(C~C12)α-オレフィンコモノマーのエチレンに対するモル供給比0.030以下で、70℃~150℃以下の反応器温度の気相重合反応器内において、エチレン及び任意選択で1つ以上の(C~C12)α-オレフィンコモノマーを前記触媒系と接触させることを含み、前記金属-配位子錯体が、式(Ia)による構造を有し:
【化3】
(式中、
は、アニオンであり、
Mは、チタン、ジルコニウム又はハフニウムであり、
nは、1、2、又は3であり、
各Xは、(C~C50)ヒドロカルビル、(C~C50)ヘテロヒドロカルビル、(C~C50)アリール、(C~C50)ヘテロアリール、及びハロゲンからなる群から独立して選択される単座配位子であり、
及びRは、式(II)を有するラジカル及び式(III)を有するラジカルからなる群から独立して選択され、
【化4】
(式中、R9~13及びR14~21は、-H、(C~C50)ヒドロカルビル、(C~C50)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、又はハロゲンから独立して選択される)
、R、R、R、R、及びRは、-H、(C~C50)ヒドロカルビル、(C~C50)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、及びハロゲンから独立して選択される)、
前記触媒系の前記気相重合反応器への注入時に最初の25分間に消費されるエチレンの量が、前記触媒系の初期添加時に平均滞留時間tの時間全体に消費される全エチレンの50%未満であり、前記全エチレンの25%が取り込まれる時間(t25%)が、式(IV)による式によって計算される、プロセス:
【数9】
【請求項18】
前記エチレン分圧が、80psi~115psi、又は90psi~130psi、又は100~150psiである、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記触媒系の前記気相重合反応器への初期注入時に最初の30分間に消費されるエチレンの量が、前記平均滞留時間の時間全体に消費される全エチレンの50%未満である、請求項17に記載のプロセス。
【請求項20】
発熱率(%exo)が5%未満である、又は発熱率(%Exo)が2%未満である、請求項17~19のいずれか一項に記載のプロセス。

【国際調査報告】