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特表2023-528192触媒系及びそれを使用してポリエチレンを生産するためのプロセス
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  • 特表-触媒系及びそれを使用してポリエチレンを生産するためのプロセス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-04
(54)【発明の名称】触媒系及びそれを使用してポリエチレンを生産するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/64 20060101AFI20230627BHJP
【FI】
C08F4/64
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022567737
(86)(22)【出願日】2021-05-28
(85)【翻訳文提出日】2022-12-22
(86)【国際出願番号】 US2021034868
(87)【国際公開番号】W WO2021243214
(87)【国際公開日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】63/031,638
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/143,324
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/143,333
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】ベイリー、レット エー.
(72)【発明者】
【氏名】ドー、ヒエン キュー.
(72)【発明者】
【氏名】ピアソン、デイヴィッド エム.
(72)【発明者】
【氏名】デローブ、ジョナサン イー.
(72)【発明者】
【氏名】カメリオ、アンドリュー エム.
(72)【発明者】
【氏名】フォンテーヌ、フィリップ ピー.
【テーマコード(参考)】
4J128
【Fターム(参考)】
4J128AA01
4J128AB00
4J128AC01
4J128AC26
4J128AE03
4J128AE06
4J128BC25A
4J128BC25B
4J128CA28A
4J128EA01
4J128EB02
4J128EB09
4J128EC02
4J128FA04
4J128GA01
4J128GA06
4J128GB01
(57)【要約】
本出願の実施形態は、プロ触媒、及び式(I)
【化1】
の構造を有する金属-配位子錯体を含むプロ触媒を含む触媒系に関する。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆コモノマー分布を有するエチレン系コポリマーを生産するプロセスであって、単一気相重合反応器内において、触媒系の存在下で、エチレン及び1つ以上の(C~C12)α-オレフィンコモノマーを、反応器温度60℃~150℃以下かつ前記1つ以上の(C~C12)α-オレフィンコモノマーの前記エチレンに対するモル供給比0.020以下で重合させることを含み、
前記触媒系が、1つ以上の担体材料及び式(Ia)による構造を有する活性化金属-配位子錯体を含み、
【化1】
式中、
A-は、アニオンであり、
Mは、チタン、ジルコニウム又はハフニウムであり、
nは、1、2、又は3であり、
各Xは、不飽和(C~C50)炭化水素、不飽和(C~C50)ヘテロ炭化水素、(C~C50)ヒドロカルビル、(C~C50)ヘテロヒドロカルビル、(C~C50)アリール、(C~C50)ヘテロアリール、ハロゲン、-N(R、及び-N(R)CORから独立して選択される単座配位子であり、
各Zは、独立して、-O-、-S-、(C~C50)アリール、(C~C50)ヘテロアリール、N(C~C40)ヒドロカルビル、及びP(C~C40)ヒドロカルビルから選択され、
及びR16は、独立して、(C~C50)アリール、(C~C50)ヘテロアリール、(C~C40)アルキル、(C~C40)ヘテロアルキル、式(II)を有するラジカル、式(III)を有するラジカル、及び式(IV)を有するラジカルから選択され、
【化2】
(式中、R31~35、R41~48、及びR51~59は、独立して、-H、(C~C50)ヒドロカルビル、(C~C50)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、RS(O)-、RS(O)-、(RC=N-、RC(O)O-、ROC(O)-、RC(O)N(R)-、(RNC(O)-、又はハロゲンから選択される)
、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、及びR15は、独立して、-H、(C~C50)ヒドロカルビル、(C~C50)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、RS(O)-、RS(O)-、(RC=N-、RC(O)O-、ROC(O)-、RC(O)N(R)-、(RNC(O)-、及びハロゲンから選択され、
17及びR18は、独立して、-(CR -(式中、下付き文字mは、1~10である)から選択され、
19及びR20は、独立して、直鎖又は分岐鎖(C~C20)アルキルから選択され、
各R、R、及びRは、独立して、-H、(C~C50)ヒドロカルビル、及び(C~C50)ヘテロヒドロカルビルから選択され、
前記エチレン系コポリマーが、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって求めたときに単峰性分子量分布を有し、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定中に溶解ポリマーに対する高速フーリエ変換赤外(FT-IR)分光法によって求めたときに0よりも大きい分子量コモノマー分布指数を有する、プロセス。
【請求項2】
及びR16が同じである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
及びR16のうちの少なくとも1つが、式(II)を有するラジカルであり、R32及びR34のうちの少なくとも1つが、tert-ブチルである、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
及びR16のうちの少なくとも1つが、式(III)を有するラジカルである、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項5】
42、R43、R46、及びR47のうちの少なくとも1つが、tert-ブチルである、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
41~48が、-Hである、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記1つ以上の担体材料が、ヒュームドシリカを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記触媒系が、噴霧乾燥された粒子を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
1時間当たり前記触媒系1グラム当たり2,500グラム以上の前記エチレン系コポリマーを生産する、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記エチレン系コポリマーの重量平均分子量の前記エチレン系コポリマーのコモノマー含有量重量パーセントに対する比が、10,000以上であるか、又は前記エチレン系コポリマーの重量平均分子量の前記エチレン系コポリマーのコモノマー含有量重量パーセントに対する比が、20,000以上であるか、又は前記エチレン系コポリマーの重量平均分子量の前記エチレン系コポリマーのコモノマー含有量重量パーセントに対する比が、30,000以上である、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
逆コモノマー分布を有するエチレン系コポリマーを生産するプロセスであって、単一気相重合反応器内において、触媒系の存在下で、エチレン及び1つ以上の(C~C12)α-オレフィンコモノマーを、反応器温度150℃以下かつ前記1つ以上の(C~C12)α-オレフィンコモノマーの前記エチレンに対するモル供給比0.020以下で重合させることを含み、
前記触媒系が、第IV族金属中心を有する活性化金属-配位子錯体と、少なくとも1つのジアニオン性ヘテロヒドロカルビル配位子と、1つ以上のモノアニオン性ヒドロカルビル配位子と、を含み、ただし、前記配位子は、シクロペンタジエニルではなく、前記触媒系が、担体材料を含有せず、
前記エチレン系コポリマーが、単峰性分子量分布及び0を超える分子量コモノマー分布指数を有する、プロセス。
【請求項12】
前記触媒系が、1つ以上の活性化剤を更に含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記1つ以上の活性化剤が、メチルアルモキサン(MAO)を含む、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記触媒系が、ニートの形態で、溶液として、スラリーとして、又はそれらの組み合わせで、前記気相重合反応器に供給される、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記反応器温度が、120℃以下であるか、又は前記反応器温度が、75℃~105℃であるか、又は前記反応器温度が、80℃~100℃であるか、又は前記反応器温度が、85℃~95℃である、請求項1~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記エチレン系コポリマーの分子量が、200,000g/mol超であるか、又は前記エチレン系コポリマーが、500,000g/mol超の分子量を有する、請求項1~15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記エチレン系コポリマーが、GPC測定の溶解ポリマーに対する高速FT-IR分光法によって求めたときに、30重量%未満のコモノマー組み込みを更に含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のプロセス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年5月29日に出願された米国仮特許出願第63/031,638号、2021年1月29日に出願された米国仮特許出願第63/143,324号、及び2021年1月29日に出願された米国仮特許出願第63/143,333号に対する優先権を主張するものであり、これらはそれぞれ全体が参照により組み込まれる。
【0002】
本開示の実施形態は、概して、ポリエチレンを生産するための、具体的には、気相重合反応器内においてエチレン及び任意選択で1つ以上の(C~C12)α-オレフィンコモノマーをシリル架橋ビス-フェニルフェノキシ触媒系と接触させるためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
チーグラー及びナッタによる不均一オレフィン重合の発見以来、世界中のポリオレフィン生産は2015年には年間約1億5000万トンに達し、市場の需要によって増加し続けている。ポリオレフィン重合プロセスにおける触媒系は、そのようなポリオレフィンの特徴及び特性に寄与し得る。例えば、ビス-フェニルフェノキシ(BPP)金属-配位子錯体を含む触媒系により、平坦又は逆の短鎖分岐分布(SCBD)、比較的高レベルのコモノマー組み込み、高いネイティブ分子量、及び/又は狭い乃至中程度の分子量分布(MWD)を有するポリオレフィンを生成し得る。
【0004】
しかしながら、気相重合などのいくつかの重合プロセスで利用される場合、BPP金属-配位子錯体を含む触媒系は、概して、不十分な生産性を示し得る。すなわち、BPP金属-配位子錯体を含む触媒系では、概して、使用される触媒系の量に対して生成されるポリマーが少なくなる場合がある。したがって、BPP金属-配位子錯体を含む触媒系の使用は、気相重合プロセスで商業的に実行可能ではない場合がある。
【発明の概要】
【0005】
したがって、気相重合プロセスで利用される場合、気相反応器内において使用するのに好適であり、生産性が改善された触媒系が継続的に必要とされている。本開示の実施形態は、気相重合プロセスで利用することができ、ケイ素含有架橋のないBPP金属-配位子錯体を含む類似の触媒系と比較したときに生産性の大幅な増加を示す触媒系を提供することによってこれらの必要性に対処する。
【0006】
更に、エチレン系コポリマー(ポリ(エチレン-コ-1-アルケン)とも呼ばれる)樹脂は、概して、短鎖分岐分布(SCBD)又はコモノマー分布を有する。多くのエチレン系コポリマーは、エチレン系コポリマーの分子量が増加するにつれてコモノマー重量パーセントが減少する逆SCBD又は逆コモノマー分布を有する。しかしながら、ポリマー鎖の分子量(MW)が増加するにつれて重量パーセント(重量%)コモノマーが増加するコポリマーを生成すると、多くの用途において性能が改善される。
【0007】
逆コモノマー分布は、通常、二重反応器構成及び単一又は二重の触媒プロセスを使用して得られる。二重反応器プロセスでは、単一の触媒を使用して、2つの反応器内において独立したプロセス制御を介して、別個の反応器内において高分子量低密度成分(より高いコモノマー重量%を有する)及び低分子量高密度(より低いコモノマー重量%)成分を作製することができる。二峰性分布全体にわたって正味の逆SCBDを有する二峰性樹脂が得られる。二重触媒単一反応器プロセスの場合、一方の触媒は高分子量低密度成分を作製するが、他方は低分子量高密度成分を形成し、その結果、逆SCBDを有する二峰性生成物が得られる。
【0008】
本開示の実施形態は、逆コモノマー分布を有するエチレン系コポリマーを生産するためのプロセスを含む。実施形態では、プロセスは、単一気相重合反応器内において、触媒系の存在下で、エチレン及び1つ以上の(C~C12)α-オレフィンコモノマーを、反応器温度150℃以下かつ1つ以上の(C~C12)α-オレフィンコモノマーのエチレンに対するモル供給比0.020以下で重合させることを含み、当該触媒系は、式(Ia)による構造を有する活性化金属-配位子錯体を含み、エチレン系コポリマーは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC、例えば、従来のGPC)によって求めたときに単峰性分子量分布を有し、そして、GPC測定の溶解ポリマーに対する高速FT-IR分光法によって求めたときに0よりも大きい分子量コモノマー分布指数を有する。
【0009】
1つ以上の実施形態では、触媒系は、1つ以上の担体材料上に配置された活性化金属-配位子錯体を含む。活性化金属-配位子錯体は、式(Ia)による構造を有する:
【0010】
【化1】
【0011】
式(I)中、Aは、アニオンであり、Mは、チタン、ジルコニウム又はハフニウムであり、(X)の下付き文字nは、1、2、又は3であり、各Xは、不飽和(C~C50)炭化水素、不飽和(C~C50)ヘテロ炭化水素、(C~C50)ヒドロカルビル、(C~C50)ヘテロヒドロカルビル、(C~C50)アリール、(C~C50)ヘテロアリール、ハロゲン、-N(R、及び-N(R)CORから独立して選択される単座配位子であり、式(I)の金属-配位子錯体は、全体的に電荷中性である。
【0012】
式(I)中、各Zは、独立して、-O-、-S-、(C~C50)アリール、(C~C50)ヘテロアリール、N(C~C40)ヒドロカルビル、及びP(C~C40)ヒドロカルビルから選択される。
【0013】
式(I)中、R及びR16は、独立して、(C~C50)アリール、(C~C50)ヘテロアリール、(C~C40)アルキル、(C~C40)ヘテロアルキル、式(II)を有するラジカル、式(III)を有するラジカル、及び式(IV)を有するラジカルから選択される:
【0014】
【化2】
【0015】
式(II)、(III)、及び(IV)中、R31~35、R41~48、及びR51~59は、独立して、-H、(C~C50)ヒドロカルビル、(C~C50)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、RS(O)-、RS(O)-、(RC=N-、RC(O)O-、ROC(O)-、RC(O)N(R)-、(RNC(O)-、又はハロゲンから選択される。
【0016】
式(I)中、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、及びR15は、独立して、-H、(C~C50)ヒドロカルビル、(C~C50)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、RS(O)-、RS(O)-、(RC=N-、RC(O)O-、ROC(O)-、RC(O)N(R)-、(RNC(O)-、及びハロゲンから選択される。
【0017】
式(I)中、R17及びR18は、独立して、-(CR -(式中、下付き文字mは、1~10であり、-(CR のRは、-H、(C~C10)アルキルである)から選択される。
【0018】
式(I)中、R19及びR20は、独立して、直鎖又は分岐鎖(C~C20)アルキルから選択される。
【0019】
式(I)、(II)、(III)、及び(IV)中、各R、R、及びRは、独立して、-H、(C~C50)ヒドロカルビル、及び(C~C50)ヘテロヒドロカルビルから選択される。
【0020】
本開示の実施形態は、触媒系を生産するための方法を含む。方法は、不活性炭化水素溶媒中で1つ以上の担体材料、1つ以上の活性化剤、及び金属-配位子錯体を接触させて、触媒系を生成することを含む。
【0021】
本開示の実施形態は、ポリエチレンを生産するためのプロセスを含む。このプロセスは、気相重合反応器内において、エチレン及び任意選択で1つ以上の(C~C12)α-オレフィンコモノマーを触媒系と接触させることを含む。触媒系は、1つ以上の担体材料上に配置された金属-配位子錯体を含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施例1及び4の逆コモノマー分布及び分子量分布のグラフ表示である。
図2】本発明の実施例12の逆コモノマー分布及び分子量分布のグラフ表示である。
図3】本発明の実施例13の逆コモノマー分布及び分子量分布のグラフ表示である。
図4】本発明の実施例15及び16の逆コモノマー分布及び分子量分布のグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、プロ触媒、触媒系、触媒系の生産方法、及びポリエチレンを生産するためのプロセスの具体的な実施形態について説明する。しかし、本開示の系、方法、及びプロセスは、異なる形態で具体化することもでき、本開示に記載される具体的な実施形態に限定されると解釈されるべきではないことを理解されたい。むしろ、実施形態は、本開示が、徹底的かつ完全になり、開示される発明主題の範囲を当業者に十分に伝えられるように提供される。
【0024】
本開示で使用される一般的な略語を以下に列挙する:
Me:メチル;Et:エチル;Ph:フェニル;Bn:ベンジル;i-Pr:イソ-プロピル;t-Bu:tert-ブチル;t-Oct:tert-オクチル(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル);Tf:トリフルオロメタンスルホネート;THF:テトラヒドロフラン;EtO:ジエチルエーテル;CHCl:ジクロロメタン;CV:カラム体積(カラムクロマトグラフィーで使用される);EtOAc:酢酸エチル;C:重水素化ベンゼン又はベンゼン-d6;CDCl:重水素化クロロホルム;NaSO:硫酸ナトリウム;MgSO:硫酸マグネシウム;HCl:塩化水素;n-BuLi:ブチルリチウム;t-BuLi:tert-ブチルリチウム;MAO:メチルアルミノキサン;MMAO:修飾メチルアルミノキサン;GC:ガスクロマトグラフィー;LC:液体クロマトグラフィー;NMR:核磁気共鳴;MS:質量分析;mmol:ミリモル;mL:ミリリットル;M:モル濃度;min又はmins:分;h又はhrs:時間;d:日。
【0025】
「ハロゲン原子」又は「ハロゲン」という用語は、フッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)、又はヨウ素原子(I)のラジカルを意味する。「ハロゲン化物」という用語は、ハロゲン原子のアニオン形態(フッ化物(F)、塩化物(Cl)、臭化物(Br)、又はヨウ化物(I))を意味する。
【0026】
「独立して選択される」という用語は、R基、例えば、R、R、及びRが、同一であっても異なっていてもよいことを意味する(例えば、R、R、及びRが全て置換アルキルであってもよく、又はR及びRが置換アルキルであり、Rがアリールであってもよい)。R基に関連する化学名は、化学名の化学構造に対応するものとして当該技術分野で認識されている化学構造を伝えることを意図している。結果として、化学名は、当業者に既知の構造的定義を補足及び例示することを意図しており、排除することを意図するものではない。
【0027】
「プロ触媒」という用語は、活性化剤と合わせたときに触媒活性を有する化合物を意味する。「活性化剤」という用語は、プロ触媒を触媒的に活性のある化合物に変換するようにプロ触媒と化学的に反応する化合物を意味する。本開示で使用するとき、「共触媒」及び「活性化剤」という用語は、互換的であり、明確に指定しない限り同一の意味を有する。
【0028】
「置換」という用語は、対応する非置換化合物又は官能基の炭素原子に結合している少なくとも1つの水素原子(-H)が、置換基(例えば、R)によって置き換えられることを意味する。「-H」という用語は、別の原子に共有結合している水素又は水素ラジカルを意味する。本開示で使用するとき、「水素」及び「-H」という用語は、互換的であり、明確に指定しない限り同一の意味を有する。
【0029】
特定の炭素原子含有化学基を説明するために使用するとき、「(C~C)」の形態を有する括弧付きの表現は、化学基の非置換形態がx個以上y個以下の炭素原子を有することを意味する。例えば、(C~C50)アルキルは、その非置換形態で1~50個の炭素原子を有するアルキル基である。いくつかの実施形態及び一般構造において、ある特定の化学基は、Rなどの1つ以上の置換基によって置換され得る。括弧付きの「(C~C)」を使用して定義されるRで置換された化学基は、任意の基Rの同一性に応じてy個を超える炭素原子を含有する場合もある。例えば、「正確に1個のR基で置換された(C~C50)アルキル(Rは、フェニル(-C)である)」は、7~56個の炭素原子を含有し得る。結果として、括弧付きの「(C~C)」を使用して定義される化学基が1個以上の炭素原子含有置換基Rによって置換されるとき、化学基の炭素原子の最小及び最大合計数は、x及びyの両方に、全ての炭素原子含有置換基Rに由来する炭素原子の合計数を加えることによって求められる。
【0030】
「(C~C50)ヒドロカルビル」という用語は、1~50個の炭素原子の炭化水素ラジカルを意味し、「(C~C50)ヒドロカルビレン」という用語は、1~50個の炭素原子の炭化水素ジラジカルを意味し、各炭化水素ラジカル及び各炭化水素ジラジカルは、芳香族又は非芳香族、飽和又は不飽和、直鎖又は分岐鎖、環式(3個以上の炭素を有し、単環式及び多環式、縮合及び非縮合の多環式、並びに二環式を含む)又は非環式であり、1個以上のRによって置換されているか又は置換されていない。本開示で使用するとき、(C~C50)ヒドロカルビルは、非置換又は置換の(C~C50)アルキル、(C~C50)シクロアルキル、(C~C25)シクロアルキル-(C~C25)アルキレン、(C~C50)アリール、又は(C~C25)アリール-(C~C25)アルキレン(ベンジル(-CH-C)など)であり得る。
【0031】
「(C~C50)アルキル」という用語は、1~50個の炭素原子を含有する飽和した直鎖又は分岐鎖の炭化水素ラジカルを意味する。各(C~C50)アルキルは、非置換であってもよく、1個以上のRによって置換されてもよい。実施形態では、炭化水素ラジカルにおける各水素原子は、例えばトリフルオロメチルなどのRで置換され得る。非置換(C~C50)アルキルの例は、非置換(C~C20)アルキル、非置換(C~C10)アルキル、非置換(C~C)アルキル、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2-ブチル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、1-ペンチル、1-ヘキシル、1-ヘプチル、1-ノニル、及び1-デシルである。置換(C~C50)アルキルの例は、置換(C~C20)アルキル、置換(C~C10)アルキル、トリフルオロメチル、及び[C45]アルキルである。「[C45]アルキル」という用語は、ラジカルに最大45個の炭素原子が存在する(置換基を含む)ことを意味し、例えば、メチル、トリフルオロメチル、エチル、1-プロピル、1-メチルエチル、又は1,1-ジメチルエチルなどの(C~C)アルキルである1個のRによって置換された、例えば(C27~C40)アルキルである。
【0032】
「(C~C50)シクロアルキル」という用語は、非置換であるか又は1個以上のRによって置換された3~50個の炭素原子の飽和環式炭化水素ラジカルを意味する。他のシクロアルキル基(例えば(C~C)シクロアルキル)も同様に、x~y個の炭素原子を有し、非置換であるか又は1個以上のRによって置換されていると定義される。非置換(C~C50)シクロアルキルの例は、非置換(C~C20)シクロアルキル、非置換(C~C10)シクロアルキル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、及びシクロデシルである。置換(C~C50)シクロアルキルの例は、置換(C~C20)シクロアルキル、置換(C~C10)シクロアルキル、及び1-フルオロシクロヘキシルである。
【0033】
「(C~C50)アリール」という用語は、6~50個の炭素原子を有し、当該炭素原子のうちの少なくとも6~14個が芳香環炭素原子である、非置換であるか又は(1個以上のRによって)置換された単環式、二環式、又は三環式の芳香族炭化水素ラジカルを意味する。単環式芳香族炭化水素ラジカルは、1つの芳香環を含み、二環式芳香族炭化水素ラジカルは、2つの環を有し、三環式芳香族炭化水素ラジカルは、3つの環を有する。二環式又は三環式芳香族炭化水素ラジカルが存在するとき、そのラジカルの環のうちの少なくとも1つは芳香族である。芳香族ラジカルの他の1つの環又は複数の環は独立して、縮合又は非縮合、及び芳香族又は非芳香族であり得る。非置換(C~C50)アリールの例としては、非置換(C~C20)アリール、非置換(C~C18)アリール、2-(C~C)アルキルフェニル、フェニル、フルオレニル、テトラヒドロフルオレニル、インダセニル、ヘキサヒドロインダセニル、インデニル、ジヒドロインデニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、及びフェナントレンが挙げられる。置換(C~C50)アリールの例としては、置換(C~C20)アリール、置換(C~C18)アリール、2,4-ビス([C20]アルキル)-フェニル、ポリフルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、及びフルオレン-9-オン-1-イルが挙げられる。
【0034】
「ヘテロ原子」という用語は、水素又は炭素以外の原子を指す。1個又は1個超のヘテロ原子を含有する基の例としては、O、S、S(O)、S(O)2、Si(R、P(R)、N(R)、-N=C(R、-Ge(R-、又は-Si(R)-が挙げられ、各R及び各Rは、非置換(C~C18)ヒドロカルビル又はHであり、各Rは、非置換(C~C18)ヒドロカルビルである。「ヘテロ炭化水素」という用語は、炭化水素の1個以上の炭素原子がヘテロ原子で置き換えられている分子又は分子骨格を指す。「(C~C50)ヘテロヒドロカルビル」という用語は、1~50個の炭素原子を有するヘテロ炭化水素基を意味し、「(C~C50)ヘテロヒドロカルビレン」という用語は、1~50個の炭素原子を有するヘテロ炭化水素二価基を意味する。(C~C50)ヘテロヒドロカルビル又は(C~C50)ヘテロヒドロカルビレンのヘテロ炭化水素は、1個以上のヘテロ原子を有する。ヘテロヒドロカルビルの基は、炭素原子上又はヘテロ原子上に存在し得る。ヘテロヒドロカルビレンの2つの基は、単一の炭素原子上又は単一のヘテロ原子上に存在し得る。加えて、二価基の2つの基のうちの一方は、炭素原子上に存在し得、他方の基は、異なる炭素原子上に存在し得、2つの基のうちの一方は、炭素原子上に存在し得、他方はヘテロ原子上に存在し得るか、又は2つの基のうちの一方は、ヘテロ原子上に存在し得、他方の基は、異なるヘテロ原子上に存在し得る。各(C~C50)ヘテロヒドロカルビル及び(C~C50)ヘテロヒドロカルビレンは、非置換であってもよく、(1つ以上のRによって)置換されてもよく、芳香族又は非芳香族、飽和又は不飽和、直鎖又は分岐鎖、環式(単環式及び多環式、縮合及び非縮合多環式を含む)又は非環式であってよい。
【0035】
「(C~C50)ヘテロアリール」という用語は、合計4~50個の炭素原子及び1~10個のヘテロ原子の、非置換であるか又は(1つ以上のRによって)置換された単環式、二環式、又は三環式のヘテロ芳香族炭化水素ラジカルを意味する。単環式ヘテロ芳香族炭化水素基としては、1つのヘテロ芳香環が挙げられ、二環式ヘテロ芳香族炭化水素基は、2つの環を有し、三環式ヘテロ芳香族炭化水素基は、3つの環を有する。二環式又は三環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルが存在する場合、ラジカルにおける環のうちの少なくとも1つは、ヘテロ芳香族である。ヘテロ芳香族基の他の1つ又は複数の環は、独立して、縮合又は非縮合、及び芳香族又は非芳香族であり得る。他のヘテロアリール基(例えば、概して(C~C)ヘテロアリール、例えば(C~C12)ヘテロアリール)も同様に、x~y個の炭素原子(例えば、4~12個の炭素原子)を有し、かつ非置換であるか又は1個若しくは1個超のRによって置換されていると定義される。単環式ヘテロ芳香族炭化水素基は、5員環又は6員環である。5員環は、5マイナスh個の炭素原子を有し、hは、ヘテロ原子の数であり、1、2、3、又は4であり得、各ヘテロ原子は、O、S、N、又はPであり得る。5員環ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例としては、ピロール-1-イル、ピロール-2-イル、フラン-3-イル、チオフェン-2-イル、ピラゾール-1-イル、イソオキサゾール-2-イル、イソチアゾール-5-イル、イミダゾール-2-イル、オキサゾール-4-イル、チアゾール-2-イル、1,2,4-トリアゾール-1-イル、1,3,4-オキサジアゾール-2-イル、1,3,4-チアジアゾール-2-イル、テトラゾール-1-イル、テトラゾール-2-イル、及びテトラゾール-5-イルが挙げられる。6員環は、6マイナスh個の炭素原子を有し、hは、ヘテロ原子の数であり、1又は2であり得、ヘテロ原子は、N又はPであり得る。6員環ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例としては、ピリジン-2-イル、ピリミジン-2-イル、及びピラジン-2-イルが挙げられる。二環式ヘテロ芳香族炭化水素基は、縮合5,6-又は6,6-環系であり得る。縮合5,6-環系二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例は、インドール-1-イル、及びベンズイミダゾール-1-イルである。縮合6,6-環系二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例は、キノリン-2-イル、及びイソキノリン-1-イルである。三環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、縮合5,6,5-、5,6,6-、6,5,6-、又は6,6,6-環系であり得る。縮合5,6,5-環系の例は、1,7-ジヒドロピロロ[3,2-f]インドール-1-イルである。縮合5,6,6-環系の例は、1H-ベンゾ[f]インドール-1-イルである。縮合6,5,6-環系の例は、9H-カルバゾール-9-イルである。縮合6,6,6-環系の例は、アクリジン-9-イルである。
【0036】
「ポリマー」という用語は、同じ種類であろうと異なる種類であろうと、モノマーを重合させることによって調製されるポリマー化合物を指す。したがって、ポリマーという総称は、1種のモノマーのみを重合させることによって調製されるポリマーであるホモポリマー、及び2種以上の異なるモノマーを重合させることによって調製されるポリマーであるコポリマーを含む。
【0037】
「インターポリマー」という用語は、少なくとも2種の異なるモノマーを重合させることによって調製されるポリマーを指す。したがって、インターポリマーという総称は、コポリマー、及びターポリマーなどの2種を超える異なるモノマーを重合させることによって調製される他のポリマーを含む。
【0038】
「ポリオレフィン」、「ポリオレフィンポリマー」、及び「ポリオレフィン樹脂」という用語は、単純なオレフィン(アルケンとも呼ばれる、一般式C2nを有する)モノマーを重合させることによって調製されるポリマーを指す。したがって、ポリオレフィンという総称は、ポリエチレンなどの1つ以上のコモノマーの有り無しでエチレンモノマーを重合させることによって調製されるポリマー、及びポリプロピレンなどの1つ以上のコモノマーの有り無しでプロピレンモノマーを重合させることによって調製されるポリマーを含む。
【0039】
「エチレン系コポリマー」、「ポリエチレン」、及び「エチレン系ポリマー」という用語は、ポリエチレンのホモポリマー及びコポリマーを含む、エチレンモノマーに由来する単位を50モルパーセント(%)超含むポリオレフィンを指す。当該技術分野において既知のポリエチレンの一般的な形態としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、極低密度ポリエチレン(VLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、及び高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられる。
【0040】
「分子量分布」という用語は、ポリマーの2種類の異なる分子量の比を意味する。分子量分布という総称は、ポリマーの重量平均分子量(M)の当該ポリマーの数平均分子量(M)に対する比(「分子量分布(M/M)」と称される場合もある)、及びポリマーのz平均分子量(M)の当該ポリマーの重量平均分子量(M)に対する比(「分子量分布(M/M)」と称される場合もある)を含む。
【0041】
「組成物」という用語は、組成物を構成する材料並びに組成物の材料から形成される反応生成物及び分解生成物の混合物を意味する。
【0042】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語、及びそれらの派生語は、それが具体的に開示されているかどうかにかかわらず、いかなる追加の構成要素、ステップ、又は手順の存在を除外することを意図するものでもない。いかなる疑念も避けるために、「含む(comprising)」という用語の使用を通して特許請求されるすべての組成物は、別段矛盾する記述がない限り、ポリマー性か又は別のものであるかにかかわらず、任意の追加の添加剤、アジュバント、又は化合物を含み得る。対照的に、「から本質的になる」という用語は、操作性に必須ではないものを除いて、任意の続いて列挙される範囲から任意の他の構成要素、ステップ、又は手順を除外する。「~からなる」という用語は、具体的に記述又は列挙されていない任意の成分、ステップ、又は手順を除外する。
【0043】
実施形態では、触媒系は、プロ触媒を含む。プロ触媒は、金属-配位子錯体を含む。金属-配位子錯体は、式(I)による構造を有し得る。
【0044】
【化3】
【0045】
1つ以上の実施形態では、触媒系は、式(Ia)による構造を有する活性化金属-配位子錯体を含む。
【0046】
【化4】
【0047】
式(Ia)は、活性触媒の例示的な表現である。式(I)の金属-配位子錯体を活性化剤によって触媒的に活性にした場合、金属-配位子錯体の金属は、プラス1(+1)の形式電荷を有し得る。プロ触媒が金属-配位子錯体を含む実施形態では、金属-配位子錯体は、式(I)による構造を有し、全体的に電荷中性である。触媒系が金属-配位子錯体を含む実施形態では、金属-配位子錯体は、式(Ia)による構造を有し得、全体的にプラス1(+1)の形式電荷を有する。
【0048】
式(I)及び(Ia)中、Mは、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、又はハフニウム(Hf)である。実施形態では、Mは、各々独立して+2、+3、又は+4の形式的酸化状態にある、チタン、ジルコニウム、又はハフニウムである。
【0049】
式(I)及び(Ia)中、(X)の下付き文字nは、1、2、又は3であり、各Xは、不飽和(C~C50)炭化水素、不飽和(C~C50)ヘテロ炭化水素、(C~C50)ヒドロカルビル、(C~C50)ヘテロヒドロカルビル、(C~C50)アリール、(C~C50)ヘテロアリール、ハロゲン、-N(R、及び-N(R)CORから独立して選択される単座配位子である。実施形態では、各Xは、独立して、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2,2,-ジメチルプロピル、トリメチルシリルメチル、フェニル、ベンジル、又はクロロから選択される。いくつかの実施形態では、(X)の下付き文字nは2であり、各Xは同一である。他の実施形態では、少なくとも2つのXは異なる。例えば、(X)の下付き文字nは、2であってよく、各Xは、以下:メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2,2,-ジメチルプロピル、トリメチルシリルメチル、フェニル、ベンジル、及びクロロのうちの異なるものであってよい。実施形態では、(X)の下付き文字nは、1又は2であり、少なくとも2つのXは、独立して、モノアニオン性単座配位子であり、存在する場合、第3のXは中性単座配位子である。又は更なる実施形態では、(X)の下付き文字nは、2である。
【0050】
式(I)中、金属-配位子錯体は、全体的に電荷中性である。式(Ia)中、金属-配位子錯体は、プラス1(+1)の全体的な形式電荷を有する。
【0051】
式(I)及び(Ia)中、各Zは、独立して、-O-、-S-、(C~C50)アリール、(C~C50)ヘテロアリール、N(C~C50)ヒドロカルビル、及びP(C~C50)ヒドロカルビルから選択される。実施形態では、各Zは、同じである。例えば、各Zは、-O-であってよい。
【0052】
式(I)及び(Ia)中、R及びR16は、独立して、(C~C50)アリール、(C~C50)ヘテロアリール、(C~C50)アルキル、(C~C40)ヘテロアルキル、式(II)を有するラジカル、式(III)を有するラジカル、及び式(IV)を有するラジカルから選択される:
【0053】
【化5】
【0054】
式(II)中、R31、R32、R33、R34、R35は、独立して、-H、(C~C50)ヒドロカルビル、(C~C50)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、RS(O)-、RS(O)-、(RC=N-、RC(O)O-、ROC(O)-、RC(O)N(R)-、(RNC(O)-、又はハロゲンから選択される。
【0055】
式(III)中、R41、R42、R43、R44、R45、R46、R47、R48は、独立して、-H、(C~C50)ヒドロカルビル、(C~C50)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、RS(O)-、RS(O)-、(RC=N-、RC(O)O-、ROC(O)-、RC(O)N(R)-、(RNC(O)-、又はハロゲンから選択される。
【0056】
式(IV)中、R51、R52、R53、R54、R55、R56、R57、R58、及びR59は、独立して、-H、(C~C50)ヒドロカルビル、(C~C50)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、RS(O)-、RS(O)-、(RC=N-、RC(O)O-、ROC(O)-、RC(O)N(R)-、(RNC(O)-、又はハロゲンから選択される。
【0057】
式(I)及び(Ia)の金属-配位子錯体における基R及びR16は、互いに独立して選択される。例えば、Rは、式(II)、(III)、若しくは(IV)を有するラジカルから選択してよく、R16は、(C~C50)ヘテロアリールであってよいか、又はRは、式(II)、(III)、若しくは(IV)を有するラジカルから選択してよく、R16は、式(II)、(III)、若しくは(IV)を有するラジカルから選択してよく、Rと同じであっても異なっていてもよい。実施形態では、R及びR16はいずれも式(II)を有するラジカルであり、R及びR16における基R31~35は、同じであるか又は異なる。いくつかの実施形態では、R及びR16はいずれも式(III)を有するラジカルであり、R及びR16における基R41~48は、同じであるか又は異なる。他の実施形態では、R及びR16はいずれも式(IV)を有するラジカルであり、R及びR16における基R51~59は、同じであるか又は異なる。
【0058】
実施形態では、R及びR16のうちの少なくとも1つは式(II)を有するラジカルであり、R32及びR34のうちの少なくとも1つは、tert-ブチルである。いくつかの実施形態では、R又はR16のうちの少なくとも1つが式(III)を有するラジカルである場合、R43及びR46の一方又は両方は、tert-ブチルであり、R41~42、R44~45、及びR47~48は、-Hである。他の実施形態では、R42及びR47のうちの一方又は両方がtert-ブチルであり、R41、R43~46、及びR48は、-Hである。いくつかの実施形態では、R42及びR47はいずれも-Hである。いくつかの実施形態では、R41~48は、-Hである。
【0059】
式(I)中、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、及びR15は、独立して、-H、(C~C50)ヒドロカルビル、(C~C50)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、RS(O)-、RS(O)-、(RC=N-、RC(O)O-、ROC(O)-、RC(O)N(R)-、(RNC(O)-、及びハロゲンから選択される。
【0060】
いくつかの実施形態では、R、R、R、及びRのうちの少なくとも1つが、ハロゲン原子であり、R、R10、R11、及びR12のうちの少なくとも1つが、ハロゲン原子である。いくつかの実施形態では、R、R、R、及びRのうちの少なくとも2つが、ハロゲン原子であり、R、R10、R11、及びR12のうちの少なくとも2つが、ハロゲン原子である。様々な実施形態では、R、R、R、及びRのうちの少なくとも3つが、ハロゲン原子であり、R、R10、R11、及びR12のうちの少なくとも3つが、ハロゲン原子である。
【0061】
実施形態では、R及びR14は、(C~C24)アルキルである。様々な実施形態では、R及びR14は、(C~C20)アルキルである。いくつかの実施形態では、R及びR14は、(C~C24)アルキルである。1つ以上の実施形態では、R及びR14は、(C~C12)アルキルである。いくつかの実施形態では、R及びR14は、1-プロピル、2-プロピル(イソ-プロピルとも呼ばれる)、1,1-ジメチルエチル(tert-ブチルとも呼ばれる)、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-ブチル、ペンチル、3-メチル-1-ブチル、ヘキシル、4-メチル-1-ペンチル、ヘプチル、n-オクチル、tert-オクチル(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イルとも呼ばれる)、ノニル、及びデシルである。実施形態では、R及びR14は、-ORであり、Rは、(C~C20)炭化水素であり、いくつかの実施形態では、Rは、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル(イソ-プロピルとも呼ばれる)、又は1,1-ジメチルエチルである。
【0062】
実施形態では、R及びR14は、メチルである。他の実施形態では、R及びR14は、(C~C24)アルキルである。いくつかの実施形態では、R及びRは、1-プロピル、2-プロピル(イソ-プロピルとも呼ばれる)、1,1-ジメチルエチル(tert-ブチルとも呼ばれる)、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-ブチル、ペンチル、3-メチル-1-ブチル、ヘキシル、4-メチル-1-ペンチル、ヘプチル、n-オクチル、tert-オクチル(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イルとも呼ばれる)、ノニル、及びデシルである。
【0063】
いくつかの実施形態では、R及びR11は、ハロゲンである。他の実施形態では、R及びR11は、(C~C24)アルキルである。いくつかの実施形態では、R及びR11は、独立して、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル(イソ-プロピルとも呼ばれる)、1,1-ジメチルエチル(tert-ブチルとも呼ばれる)、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-ブチル、ペンチル、3-メチルブチル、ヘキシル、4-メチルペンチル、ヘプチル、n-オクチル、tert-オクチル(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イルとも呼ばれる)、ノニル、及びデシルから選択される。いくつかの実施形態では、R及びR11は、tert-ブチルである。実施形態では、R及びR11は、-ORであり、Rは、(C~C20)炭化水素であり、いくつかの実施形態では、Rは、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル(イソ-プロピルとも呼ばれる)、又は1,1-ジメチルエチルである。他の実施形態では、R及びR11は、-SiR であり、式中、各Rは、独立して、(C~C20)ヒドロカルビルであり、いくつかの実施形態において、Rは、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル(イソ-プロピルとも呼ばれる)、又は1,1-ジメチルエチルである。
【0064】
いくつかの実施形態では、R及びR14は、メチルであり、R及びR11は、ハロゲンである。他の実施形態では、R及びR11は、tert-ブチルである。他の実施形態では、R及びR14は、tert-オクチル又はn-オクチルである。
【0065】
式(I)中、R17及びR18は、独立して、-(CR -(式中、下付き文字mは、1~10である)から選択される。1つ以上の実施形態では、各下付き文字mは、1又は2である。
【0066】
式(I)中、R19及びR20は、独立して、直鎖又は分岐鎖(C~C20)アルキルから選択される。いくつかの実施形態では、R19及びR20は、独立して、直鎖又は分岐鎖(C~C20)アルキル又は(C~C)アルキルから選択される。
【0067】
式(I)、(II)、(III)、及び(IV)中、各R、R、及びRは、独立して、-H、(C~C50)ヒドロカルビル、及び(C~C50)ヘテロヒドロカルビルから選択される。
【0068】
実施形態では、式(I)の金属-配位子錯体の構造を有するプロ触媒を活性化剤と接触させるか又は合わせることによって、触媒的に活性にすることができる。活性化剤と接触させるか又は合わせることによって触媒的に活性にしたプロ触媒は、「触媒系」と称され得る。すなわち、本開示で使用するとき、触媒系は、プロ触媒及び1つ以上の活性化剤を含み得る。「活性化剤」という用語は、遷移金属化合物がオレフィンなどの不飽和モノマーをオリゴマー化又は重合させる速度を増加させる試薬の任意の組み合わせを含み得る。活性化剤はまた、オリゴマー又はポリマーの分子量、分岐度、コモノマー含有量、又は他の特性にも影響を及ぼし得る。遷移金属化合物は、配位又はカチオン性オリゴマー化及び/若しくは重合を可能にするのに十分な任意の方法で、オリゴマー化及び/又は重合触媒作用のために活性化され得る。
【0069】
アルモキサン活性化剤は、触媒組成物のうちの1つ以上の活性化剤として利用され得る。アルモキサン又はアルミノキサンは、概して、--Al(R)--O--サブユニット(式中、Rは、アルキル基である)を含有するオリゴマー化合物である。アルモキサンの例としては、メチルアルモキサン(MAO)、修飾メチルアルモキサン(MMAO)、エチルアルモキサン、及びイソブチルアルモキサンが挙げられる。特に除去可能な(abstractable)配位子がハライドである場合、アルキルアルモキサン及び修飾アルキルアルモキサンが触媒活性化剤として好適である。また、異なるアルモキサン及び修飾アルモキサンの混合物を使用してもよい。更なる説明については、米国特許第4,665,208号、同第4,952,540号、同第5,041,584号、同第5,091,352号、同第5,206,199号、同第5,204,419号、同第4,874,734号、同第4,924,018号、同第4,908,463号、同第4,968,827号、同第5,329,032号、同第5,248,801号、同第5,235,081号、同第5,157,137号、同第5,103,031号、及び欧州特許第0 561 476号、同第0 279 586号、同第0 516 476号、同第0 594 218号、及び国際公開第94/10180号を参照されたい。
【0070】
活性化剤がアルモキサン(修飾又は非修飾)である場合、活性化剤の最大量は、(金属触媒部位あたり)触媒前駆体に対してAl/Mが5000倍モル過剰になるように選択され得る。あるいは、又は更に、活性化剤対触媒前駆体の最小量は、1:1のモル比に設定してよい。
【0071】
活性化剤(又は捕捉剤)として利用され得るアルミニウムアルキル又は有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウムなどが挙げられる。
【0072】
実施形態では、金属-配位子錯体、活性化剤、又は両方は、1つ以上の担体材料上に配置され得る。例えば、金属-配位子錯体は、1つ以上の担体材料上に付着、当該担体材料と接触、当該担体材料で気化、当該担体材料に結合、又は当該担体材料内に組み込み、当該担体材料中若しくは上に吸着又は吸収され得る。金属-配位子錯体、活性化剤、又は両方は、当該技術分野で周知の担持方法のうちの1つを使用して、又は以下に記載の通り、1つ以上の担体材料と合わせることができる。本開示で使用するとき、金属-配位子錯体、活性化剤、又は両方は、例えば、1つ以上の担体材料上に付着、当該担体材料と接触、又は当該担体材料内に組み込み、当該担体材料中若しくは上に吸着又は吸収されたとき、担持形態となり得る。
【0073】
無機酸化物などの好適な担体材料としては、IUPAC周期表の2、3、4、5、13、又は14族の金属の酸化物が挙げられる。実施形態では、担体材料としては、脱水、ヒュームドシリカ、アルミナ(例えば、国際公開第1999/060033号に記載)、シリカ-アルミナ、及びこれらの混合物であってもよく、なくてもよいシリカが挙げられる。ヒュームドシリカは、親水性(未処理)、あるいは疎水性(処理済み)であり得る。実施形態では、担体材料は、疎水性ヒュームドシリカであり、これは、ジメチルジクロロシラン、ポリジメチルシロキサン流体、又はヘキサメチルジシラザンなどの処理剤で未処理のヒュームドシリカを処理することによって調製することができる。いくつかの実施形態では、担体材料としては、マグネシア、チタニア、ジルコニア、塩化マグネシウム(例えば、米国特許第5,965,477号に記載)、モンモリロナイト(例えば、欧州特許第0 511 665号に記載)、フィロケイ酸塩、ゼオライト、タルク、粘土(例えば、米国特許第6,034,187号に記載)、及びこれらの混合物が挙げられる。他の実施形態では、これらの担体材料の組み合わせ、例えば、シリカ-クロム、シリカ-アルミナ、シリカ-チタニア、及びこれらの組み合わせなどを使用してもよい。追加の担体材料としては、欧州特許第0 767 184号に記載の多孔質アクリルポリマーも含み得る。他の担体材料としては、国際特許出願第1999/047598号に記載のナノ複合材、国際特許出願第1999/048605号に記載のエアロゲル、米国特許第5,972,510号に記載の球晶、及び国際特許出願第1999/050311号に記載のポリマービーズも含み得る。
【0074】
実施形態では、担体材料は、10平方メートル/グラム(m/g)~700m/gの表面積、0.1立方メートル/グラム(cm/g)~4.0cm/gの細孔容積、5マイクロメートル(μm)~500μmの平均粒径を有する。いくつかの実施形態では、担体材料は、50m/g~500m/gの表面積、0.5cm/g~3.5cm/gの細孔容積、及び10μm~200μmの平均粒径を有する。他の実施形態では、担体材料は、100m/g~400m/gの表面積、0.8cm/g~3.0cm/gの細孔容積、及び5μm~100μmの平均粒径を有し得る。担体材料の平均孔径は、典型的には、10オングストローム(Å)~1,000Å、例えば、50Å~500Å又は75Å~350Åである。
【0075】
本開示の触媒系を生成するための様々な好適な方法が存在する。1つ以上の実施形態では、触媒系を生産するための方法は、不活性炭化水素溶媒中で1つ以上の担体材料、1つ以上の活性化剤、及び金属-配位子錯体を接触させて、触媒系を生産することを含む。いくつかの実施形態では、触媒系を生産するための方法は、1つ以上の活性化剤を1つ以上の担体材料上に配置して、担持活性化剤を生産し、当該担持活性化剤を不活性炭化水素溶媒中の金属-配位子錯体の溶液(「トリム触媒」又は「トリムフィード」と称されることが多い)と接触させることを含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、触媒系を生成するための方法は、噴霧乾燥された担持活性化剤(すなわち、噴霧乾燥を介して生成された担持活性化剤)を不活性炭化水素溶媒中金属-配位子錯体の溶液と接触させることを含む。いくつかの実施形態では、担持活性化剤は、例えば鉱油スラリーなどのスラリーに含まれていてもよい。
【0076】
いくつかの実施形態では、触媒系を生産するための方法は、1つ以上の担体材料、1つ以上の活性化剤、及び金属-配位子錯体を混合して、触媒系前駆体を生産することを含み得る。方法は、触媒系前駆体を乾燥させて、触媒系を生産することを更に含み得る。より具体的には、方法は、金属-配位子錯体、1つ以上の担体材料、1つ以上の活性化剤、又はこれらの組み合わせと、不活性炭化水素溶媒との混合物を作製することを含み得る。次いで、金属-配位子錯体、1つ以上の活性化剤、又はこれらの組み合わせを、1つ以上の担体材料上に配置して生産するように不活性炭化水素溶媒を混合物から除去してよい。実施形態では、除去ステップは、混合物から不活性炭化水素溶媒を従来通り蒸発させることを介して達成することができ(すなわち、従来の濃縮方法)、その結果、蒸発/担持触媒系が得られる。他の実施形態では、除去ステップは、混合物を噴霧乾燥することによって達成することができ、その結果、噴霧乾燥粒子が生成される。乾燥及び/又は除去ステップは、得られる触媒系から液体を完全に除去し得ないことを理解すべきである。すなわち、触媒系は、残存量(すなわち、1重量%~3重量%)の不活性炭化水素溶媒を含んでいてもよい。
【0077】
上述のように、本開示の触媒系は、エチレンなどのオレフィンの重合を介してポリエチレンなどのポリマーを生産するためのプロセスにおいて利用され得る。実施形態では、気相流動床重合反応器などの気相重合反応器内において、1つ以上のオレフィンを本開示の触媒系と接触させてよい。例示的な気相系は、米国特許第5,665,818号、同第5,677,375号、及び同第6,472,484号、並びに欧州特許第0 517 868号及び同第0 794 200号に記載されている。例えば、いくつかの実施形態では、エチレン及び任意選択で1つ以上の(C~C12)α-オレフィンコモノマーを、気相重合反応器内において本開示の触媒系と接触させてよい。触媒系は、ニートの形態で(すなわち、乾燥固体として)、溶液として、又はスラリーとして、気相重合反応器内に供給してよい。例えば、いくつかの実施形態では、触媒系の噴霧乾燥粒子を、気相重合反応器に直接供給してよい。他の実施形態では、不活性炭化水素又は鉱油などの溶媒中の触媒系の溶液又はスラリーを反応器に供給してもよい。例えば、プロ触媒は、不活性炭化水素溶液中で反応器に供給され得、活性化剤は、鉱油スラリー中で反応器に供給され得る。
【0078】
実施形態では、気相重合反応器は、流動床反応器を含む。流動床反応器は、「反応域」及び「減速域」を含み得る。反応域は、反応域を通して重合熱を除去するために、気体状モノマー及び希釈剤の連続流によって流動化された成長ポリマー粒子、形成されたポリマー粒子、及び微量の触媒系の床を含み得る。任意選択で、再循環ガスの一部は、冷却され圧縮されて液体を形成することができ、それは反応域に再入された際に、循環ガス流の熱除去能力を増大させる。好適なガス流量は、簡単な実験によって容易に決定することができる。気体状モノマーの循環気流への補給は、粒子状ポリマー生成物及びそれに関連するモノマーを反応器から抜き出し得、反応器を通過する気体の組成を、反応域内で本質的に定常状態の気体状組成物を維持するように調整し得る速度に等しい速度であってよい。反応域から出た気体は、減速域に送られ得、そこで輸送粒子が除去される。より微細な輸送粒子及び粉塵は、サイクロン及び/又は微細フィルター内で除去することができる。気体は、熱交換器を通過し得、そこで重合熱が除去され、圧縮機内で圧縮され、次いで、反応域に戻され得る。追加の反応器の詳細及び反応器を操作するための手段は、例えば、米国特許第3,709,853号、同第4,003,712号、同第4,011,382号、同第4,302,566号、同第4,543,399号、同第4,882,400号、同第5,352,749号、及び同第5,541,270号、欧州特許第0 802 202号、並びにベルギー国特許第839,380号に記載されている。
【0079】
実施形態では、気相重合反応器の反応器温度は、150℃以下である。例えば、気相重合反応器の反応器温度は、30℃~120℃、30℃~110℃、30℃~100℃、30℃~90℃、30℃~50℃、30℃~40℃、40℃~150℃、40℃~120℃、40℃~110℃、40℃~100℃、40℃~90℃、40℃~50℃、50℃~150℃、50℃~120℃、50℃~110℃、50℃~100℃、50℃~90℃、90℃~150℃、90℃~120℃、90℃~110℃、90℃~100℃、100℃~150℃、100℃~120℃、100℃~110℃、110℃~150℃、110℃~120℃、又は120℃~150℃であってよい。概して、気相重合反応器は、反応器内のポリマー生成物の焼結温度を考慮して、実行可能な最高温度で操作することができる。ポリエチレンを作製するために使用されるプロセスに関係なく、反応器温度は、ポリマー生成物の溶融又は「焼結」温度未満である必要がある。その結果、温度上限は、ポリマー生成物の溶融温度となり得る。
【0080】
実施形態では、気相重合反応器の反応器圧力は、690kPa(100psig)~3,448kPa(500psig)である。例えば、気相重合反応器の反応器圧力は、690kPa(100psig)~2,759kPa(400psig)、690kPa(100psig)~2,414kPa(350psig)、690kPa(100psig)~1,724kPa(250psig)、690kPa(100psig)~1,379kPa(200psig)、1,379kPa(200psig)~3,448kPa(500psig)、1,379kPa(200psig)~2,759kPa(400psig)、1,379kPa(200psig)~2,414kPa(350psig)、1,379kPa(200psig)~1,724kPa(250psig)、1,724kPa(250psig)~3,448kPa(500psig)、1,724kPa(250psig)~2,759kPa(400psig)、1,724kPa(250psig)~2,414kPa(350psig)、2,414kPa(350psig)~3,448kPa(500psig)、2,414kPa(350psig)~2,759kPa(400psig)、又は2,759kPa(400psig)~3,448kPa(500psig)であってよい。
【0081】
実施形態では、ポリエチレンの最終特性を制御するために、重合中に水素ガスを使用してもよい。重合における水素の量は、例えば、エチレン又はエチレンと1-ヘキセンとのブレンドなどの全重合性モノマーに対するモル比として表すことができる。重合プロセスで使用される水素の量は、例えば、メルトフローレート(MFR)などのポリエチレンの所望の特性を得るのに必要な量であり得る。実施形態では、水素の全重合性モノマーに対するモル比(H:モノマー)は、0.0001超である。例えば、水素の全重合性モノマーに対するモル比(H:モノマー)は、0.0001~10、0.0001~5、0.0001~3、0.0001~0.10、0.0001~0.001、0.0001~0.0005、0.0005~10、0.0005~5、0.0005~3、0.0005~0.10、0.0005~0.001、0.001~10、0.001~5、0.001~3、0.001~0.10、0.10~10、0.10~5、0.10~3、3~10、3~5、又は5~10であり得る。
【0082】
1つ以上の実施形態では、プロセスは、1時間当たり触媒系1グラム当たり2,500グラム以上のポリエチレンを生産する(gポリ/g触媒・時)。いくつかの実施形態では、プロセスは、3,000gポリ/g触媒・時、4,000gポリ/g触媒・時、又は5,000gポリ/g触媒・時以上を生産する。
【0083】
実施形態では、本開示の触媒系は、単一の種類のオレフィンを重合させて、ホモポリマーを生産するために利用され得る。しかしながら、他の実施形態では追加のα-オレフィンを重合スキームに組み込んでもよい。追加のα-オレフィンコモノマーは、典型的には、20個以下の炭素原子を有する。例えば、本開示の触媒系は、エチレン及び1つ以上の(C~C12)α-オレフィンコモノマーを重合させるために利用され得る。例示的なα-オレフィンコモノマーとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、及び4-メチル-1-ペンテンが挙げられるが、それらに限定されない。例えば、1つ以上のα-オレフィンコモノマーは、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、及び1-オクテンからなる群から、又は代替として、1-ヘキセン及び1-オクテンからなる群から選択され得る。
【0084】
1つ以上の実施形態では、プロセスは、エチレン系コポリマーの重量平均分子量のエチレン系コポリマーのコモノマー含有量重量パーセントに対する比が10,000、20,000、又は30,000以上であるエチレン系コポリマーを生産する。
【0085】
いくつかの実施形態では、プロセスは、500,000g/mol超の分子量を更に含むエチレン系コポリマーを生産する。いくつかの実施形態では、生産されるエチレン系コポリマーの分子量は、600,000g/mol超、700,000超、又は750,000g/mol超である。
【0086】
様々な実施形態では、反応器温度が85℃~105℃である場合、分子量コモノマー分布は0よりも大きい。1つ以上の実施形態では、分子量が200,000g/molを超える場合、分子量コモノマー分布は0よりも大きい。
【0087】
実施形態では、エチレン系コポリマーはまた、GPC測定の一部として溶解ポリマーの高速FT-IR(フーリエ変換赤外)分光法によって求めたとき、30重量%未満のコモノマー組み込みを含む。いくつかの実施形態では、20重量%未満のコモノマー組み込みである。
【0088】
ほとんどのエチレン系コポリマーは、その構成成分である巨大分子の分子量によって変化するコモノマー含有量(すなわち、コポリマー中に存在する1-アルケンに由来する構成単位の重量分率の量)を有する。基本的に、巨大分子のより高分子量の分率がより低い重量%コモノマー含有量を有する場合、これは、分子量に対する正規コモノマー分布である。正規コモノマー分布はまた、正規短鎖分岐分布(正規SCBD)又は正規分子量コモノマー分布指数(正規MWCDI)と称される場合もある。MWCDIが0未満である場合、正規MWCDI又は正規SCBDが存在する。MWCDI=0の場合、平坦MWCDI又は平坦SCBDが存在する。MWCDI値は、Log(重量平均分子量)(Log(M))に対する炭素原子1000個当たりのSCBのプロットから求められる。米国特許出願公開第2017/008444(A1)号を参照。
【0089】
より高分子量の画分がより高い重量%コモノマー含有量を有する場合、それは、分子量に対する逆コモノマー分布を有するといわれる。この現象は、逆短鎖分岐分布(逆SCBD)、逆分子量コモノマー分布指数(逆MWCDI)、又はブロードな直交組成分布(BOCD)とも呼ばれる。MWCDIが0よりも大きい場合、逆コモノマー分布又は逆SCBDが存在する。
【0090】
分子量全体にわたるこれらのコモノマー含有量分布は、x軸上の対数(M)に対してy軸上にコモノマー含有量の重量パーセント(重量%)の線形回帰をプロットすることによって示される。重量%コモノマー含有量は、赤外線検出器を使用したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定における溶解コポリマーに対する高速フーリエ変換赤外(FT-IR)分光法によって求められる。Mは、GPCによって測定したときの、分子量のフローリー分布の特定のx軸分子量点(10^[Log(M)])である。そのようなプロットでは、正規コモノマー分布は、負の勾配を有する(すなわち、より低いLog(M)値からより高いLog(M)値へ(x軸上の左から右へ)と進むデータ点に当てはめられた線が下向きに傾斜する)。
【0091】
実施形態では、1つ以上の(C~C12)α-オレフィンコモノマーは、プロピレンに由来していなくてもよい。すなわち、1つ以上の(C~C12)α-オレフィンコモノマーは、実質的にプロピレンを含んでいなくてもよい。化合物を「実質的に含まない」という用語は、材料又は混合物が、1.0重量%未満の化合物しか含まないことを意味する。例えば、プロピレンを実質的に含んでいなくてよい1つ以上の(C~C12)α-オレフィンコモノマーは、1.0重量%未満のプロピレン、例えば、0.8重量%未満のプロピレン、0.6重量%未満のプロピレン、0.4重量%未満のプロピレン、又は0.2重量%未満のプロピレンしか含んでいなくてもよい。
【0092】
実施形態では、生産されるポリエチレン、例えば、エチレンのホモポリマー及び/又はインターポリマー(コポリマーを含む)、並びに任意選択で1つ以上のコモノマーは、少なくとも50モルパーセント(モル%)のエチレン由来のモノマー単位を含み得る。例えば、ポリエチレンは、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、又は少なくとも90モル%のエチレン由来のモノマー単位を含み得る。実施形態では、ポリエチレンは、50モル%~100モル%のエチレン由来のモノマー単位を含む。例えば、ポリエチレンは、50モル%~90モル%、50モル%~80モル%、50モル%~70モル%、50モル%~60モル%、60モル%~100モル%、60モル%~90モル%、60モル%~80モル%、60モル%~70モル%、70モル%~100モル%、70モル%~90モル%、70モル%~80モル%、80モル%~100モル%、80モル%~90モル%、又は90モル%~100モル%のエチレン由来のモノマー単位を含み得る。
【0093】
実施形態では、生産されるポリエチレンは、少なくとも90モル%のエチレン由来のモノマー単位を含む。例えば、ポリエチレンは、少なくとも93モル%、少なくとも96モル%、少なくとも97モル%、又は少なくとも99モル%のエチレン由来のモノマー単位を含み得る。実施形態では、ポリエチレンは、90モル%~100モル%のエチレン由来のモノマー単位を含む。例えば、ポリエチレンは、90モル%~99.5モル%、90モル%~99モル%、90モル%~97モル%、90モル%~96モル%、90モル%~93モル%、93モル%~100モル%、93モル%~99.5モル%、93モル%~99モル%、93モル%~97モル%、93モル%~96モル%、96モル%~100モル%、96モル%~99.5モル%、96モル%~99モル%、96モル%~97モル%、97モル%~100モル%、97モル%~99.5モル%、97モル%~99モル%、99モル%~100モル%、99モル%~99.5モル%、又は99.5モル%~100モル%のエチレン由来のモノマー単位を含み得る。
【0094】
実施形態では、生産されるポリエチレンは、50モル%未満の追加のα-オレフィン由来のモノマー単位を含む。例えば、ポリエチレンは、40モル%未満、30モル%未満、20モル%未満、又は10モル%未満の追加のα-オレフィン由来のモノマー単位を含み得る。実施形態では、ポリエチレンは、0モル%~50モル%の追加のα-オレフィン由来のモノマー単位を含む。例えば、ポリエチレンは、0モル%~40モル%、0モル%~30モル%、0モル%~20モル%、0モル%~10モル%、0モル%~5モル%、0モル%~1モル%、1モル%~50モル%、1モル%~40モル%、1モル%~30モル%、1モル%~20モル%、1モル%~10モル%、1モル%~5モル%、5モル%~50モル%、5モル%~40モル%、5モル%~30モル%、5モル%~20モル%、5モル%~10モル%、10モル%~50モル%、10モル%~40モル%、10モル%~30モル%、10モル%~20モル%、20モル%~50モル%、20モル%~40モル%、20モル%~30モル%、30モル%~50モル%、30モル%~40モル%、又は40モル%~50モル%の追加のα-オレフィン由来のモノマー単位を含み得る。
【0095】
実施形態では、生産されるポリエチレンは、1つ以上の添加剤を更に含む。このような添加剤としては、帯電防止剤、色増強剤、染料、潤滑剤、顔料、一次酸化防止剤、二次酸化防止剤、加工助剤、紫外線(UV)安定剤、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。ポリエチレンは、任意の量の添加剤を含み得る。実施形態では、生産されるポリエチレンは、充填剤を更に含み、これとしては、例えば、炭酸カルシウム、タルク、又はMg(OH)などの有機又は無機充填剤を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0096】
生産されたポリエチレンは、多種多様な製品及び最終用途で使用され得る。生産されたポリエチレンはまた、任意の他のポリマーとブレンド及び/又は共押出してもよい。他のポリマーの非限定的な例としては、線状低密度ポリエチレン、エラストマー、プラストマー、高圧低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。生産されたポリエチレン及び生産されたポリエチレンを含むブレンドを使用して、様々な最終用途の中でも特に、吹込成形された部品又は製品を生産することができる。生産されたポリエチレン及び生産されたポリエチレンを含むブレンドは、フィルム、シート、並びに繊維の押出及び共押出などの成形操作、並びに吹込成形、射出成形、及び回転成形において有用であり得る。フィルムとしては、収縮フィルム、ラップ、ストレッチフィルム、シール性フィルム、延伸フィルム、軽食包装、重包装紙袋、買物袋、焼成及び冷凍食品包装、医療用包装、工業用ライナー、並びに食品接触及び非食品接触用途における膜として有用な、共押出又は積層によって成形される吹込又はキャストフィルムを挙げることができる。繊維は、フィルタ、おむつ布地、医療用衣類、及びジオテキスタイルを作製するために織布又は不織布の形態で使用するための溶融紡糸、溶液紡糸、及びメルトブローン繊維操作を含み得る。押出物品としては、医療用チューブ、ワイヤ、及びケーブルのコーティング、パイプ、ジオメンブレン、並びに池の中敷きを挙げることができる。成形物品としては、ボトル、タンク、大型中空物品、硬質食品容器、及び玩具の形態の単層及び多層構造物を挙げることができる。
【0097】
試験方法
重合活性
特に指定しない限り、本明細書に開示する全ての重合活性(生産性とも称される)は、生産されたポリマーの、反応器に添加された触媒の量に対する比として求めており、1時間当たりの触媒1グラム当たりのポリマーのグラム数(gPE/gcat/時)で報告する。
【0098】
コモノマー含有量
特に指定しない限り、本明細書に開示する全てのコモノマー含有量(すなわち、ポリマーに組み込まれたコモノマーの量)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定における溶解ポリマーに対する高速FT-IR分光法によって求めており、重量パーセント(重量%)で報告する。ポリマーのコモノマー含有量は、Lee et al.,Toward absolute chemical composition distribution measurement of polyolefins by high-temperature liquid chromatography hyphenated with infrared absorbance and light scattering detectors,86 Anal.Chem.8649(2014)に記載されているように、GPC測定においてIR5検出器などの赤外線検出器を使用することによって、ポリマー分子量に関して求めることができる。
【0099】
取り込み比
特に指示しない限り、本明細書に開示する全ての取り込み比は、コモノマー(例えば、(C~C12)α-オレフィンコモノマー)に由来するモノマー単位の量の、エチレン由来のモノマー単位の量に対する比として求めた。
【0100】
分子量
特に指示しない限り、重量平均分子量(M)、数平均分子量(M)、及びz平均分子量(M)を含む、本明細書に開示する全ての分子量は、従来のGPCを使用して測定しており、1モル当たりのグラム数(g/モル)で報告する。
【0101】
クロマトグラフィーシステムは、示差屈折率検出器(DRI)を備えた高温ゲル浸透クロマトグラフィー(Polymer Laboratories)からなっていた。3本のPolymer Laboratories PLgel 10μm Mixed-Bカラムを使用した。公称流量は1.0mL/分であり、公称注入体積は300μLであった。様々な移送ライン、カラム、及び示差屈折計(DRI検出器)が、160℃に維持されたオーブンに入っていた。Aldrich試薬グレードの1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)4リットル中に酸化防止剤としてのブチル化ヒドロキシトルエン6グラムを溶解させることによって、実験用溶媒を調製した。次いで、TCB混合物を、0.1μmテフロンフィルターを通して濾過した。次いで、GPC機器に入る前に、TCBを、オンラインデガッサーを用いて脱気した。
【0102】
乾燥ポリマーをガラスバイアルに入れ、所望の量のTCBを添加し、次いで、混合物を約2時間連続振盪しながら160℃で加熱することによって、ポリマー溶液を調製した。すべての量は、重量測定法で測定した。注入濃度は、0.5~2.0mg/mLであり、より低濃度をより高分子量のサンプルに使用した。各サンプルを実行する前に、DRI検出器をパージした。次いで、装置内の流量を1.0mL/分に増大させ、DRI検出器を8時間安定させた後、最初のサンプルを注入した。一連の単分散ポリスチレン(PS)標準を用いて実施するカラム較正とユニバーサル較正関係とを組み合わせることによって、分子量を求めた。以下の式を用いて各溶出体積におけるMWを計算した:
【0103】
【数1】
式中、下付き文字「X」を有する変数は、試験サンプルを表すが、下付き文字「PS」を有するものは、PSを表す。この方法では、
【0104】
【数2】
であり、一方、
【0105】
【数3】
は、既刊文献から入手した。具体的には、PEについては、a/K=0.695/0.000579であり、PPについては、0.705/0.0002288である。
【0106】
クロマトグラムの各点における濃度cは、以下の式を使用して、ベースラインを差し引いたDRIシグナル、IDRIから計算した:
【0107】
【数4】
式中、KDRIは、DRIを較正することによって求められる定数であり、dn/dcは、系の屈折率増分である。具体的には、ポリエチレンについてはdn/dc=0.109である。
【0108】
質量回収率は、溶出体積にわたる濃度クロマトグラフィーの積分面積と、所定の濃度に注入ループ容積を乗じた値に等しい注入質量との比から計算した。
【実施例
【0109】
実施例は、配位子の中間体、配位子、及び単離されたプロ触媒の合成手順、並びにプロ触媒(金属-配位子錯体とも呼ばれる)を含む重合プロセスを含む。本開示の1つ以上の特徴は、以下の実施例を考慮して例示される。
【0110】
【化6】
【0111】
金属-配位子錯体1(MLC-1)の合成
【0112】
【化7】
グローブボックス内で、ジエチルエーテル(3.00M、0.28mL、0.84mmol、4.2当量)中MeMgBr(臭化メチルマグネシウム)を、無水トルエン(6.0mL)中HfCl(64mg、0.2mmol、1.0当量)の-30℃の懸濁液に添加した。得られた混合物を10分間撹拌した後、固体配位子(国際公開第2018/022975(A1)号に記載;266mg、0.2mmol、1.0当量)を少しずつ添加した。得られた混合物を一晩撹拌した後、溶媒を真空下で除去して濃い色の残渣を得、これをヘキサン(12mL)で抽出した。得られた抽出物を約2mLまで濃縮し、一日間冷凍庫に入れておいた。任意の残りの溶媒をデカントし、残りの材料を真空下で乾燥させて、金属-配位子錯体(204mg、収率:66%)を白色の粉状物として得た。
【0113】
H NMR(400MHz,C)δ 8.64-8.60(m,2H),8.42-8.38(m,2H),7.67-7.47(m,8H),7.45-7.39(m,2H),7.26(d,J=2.5Hz,2H),7.07(dd,J=8.9,3.1Hz,3H),6.84-6.75(m,2H),5.27-5.19(m,2H),4.35(d,J=14.1Hz,2H),3.29(d,J=14.1Hz,2H),1.57(d,J=3.5Hz,4H),1.47(s,18H),1.34-1.19(m,30H),0.80(s,18H),0.58-0.48(m,12H),0.35-0.24(m,2H),-1.08(s,6H).
19F{1H} NMR(376MHz,CDCl)δ -116.40(m,2F).
【0114】
金属-配位子錯体2(MLC-2)の合成
【0115】
【化8】
グローブボックス内で、ジエチルエーテル(3M、0.28mL、0.84mmol、4.2当量)中MeMgBr(臭化メチルマグネシウム)を、無水トルエン(6.0mL)中HfCl(64mg、0.2mmol、1.0当量)の-30℃の懸濁液に添加した。得られた混合物を10分間撹拌した後、固体配位子(MLC-3に関して既に記載;287mg、0.2mmol、1.0当量)を少しずつ添加した。得られた混合物を一晩撹拌した後、溶媒を真空下で除去して濃い色の残渣を得、これをヘキサン(15mL)で抽出した。得られた抽出物を約2~3mLまで濃縮し、一日間冷凍庫に入れておいた。任意の残りの溶媒をデカントし、残りの材料を真空下で乾燥させて、金属-配位子錯体(270mg、収率:82%)を白色の粉状物として得た。
【0116】
H NMR(400MHz,C)δ 8.71(d,J=1.9Hz,2H),8.38(d,J=1.9Hz,2H),7.69-7.59(m,6H),7.49(dd,J=11.6,2.5Hz,4H),7.42-7.37(m,2H),7.32(dd,J=8.7,1.8Hz,2H),7.28-7.23(m,2H),5.20(d,J=8.7Hz,2H),4.14(d,J=13.6Hz,2H),3.14(d,J=13.6Hz,2H),1.85-1.77(m,2H),1.69-1.62(m,2H),1.57(s,18H),1.45-1.32(m,48H),0.95(s,18H),0.58(s,18H),-1.47(s,6H).
【0117】
金属-配位子錯体3(MLC-3)の合成
【0118】
【化9】
グローブボックス内で、ジエチルエーテル中MeMgBr(3M、0.11mL、0.32mmol)を、無水トルエン(5mL)中HfCl(0.026g、0.081mmol)の-35℃の懸濁液に添加した。得られた混合物を5分間撹拌した後、トルエン(5mL)中配位子(米国特許第9,029,487号;0.100g、0.081mmol)を少しずつ添加した。得られた混合物を一晩撹拌した後、溶媒を真空下で除去して濃い色の残渣を得、これをヘキサン及びトルエンの混合物(1:1、10mL)で抽出した。得られた抽出物を濾過し、真空下で乾燥させて、金属-配位子錯体(0.089g、収率:76%)を白色の粉状物として得た。
【0119】
H NMR(400MHz,C):δ 8.44-8.33(m,2H),8.10-8.03(m,2H),7.69(d,J=2.6Hz,2H),7.67-7.63(m,2H),7.56(d,J=2.6Hz,2H),7.52-7.46(m,8H),7.45-7.40(m,2H),7.14-6.98(m,2H),5.15(d,J=8.7Hz,2H),4.30(d,J=14.2Hz,2H),3.14(d,J=14.3Hz,2H),1.30(s,18H),1.14(s,18H),-0.72(s,6H),-1.04(s,6H).
【0120】
金属-配位子錯体4(MLC-4)の合成
【0121】
【化10】
グローブボックス内で、ジエチルエーテル中MeMgBr(3M、0.23mL、0.69mmol)を、無水トルエン(5mL)中HfCl(0.055g、0.172mmol)の-35℃の懸濁液に添加した。得られた混合物を5分間撹拌した後、トルエン(5mL)中配位子(国際公開第2008/033197(A2)号;0.150g、0.172mmol)を少しずつ添加した。得られた混合物を一晩撹拌した後、溶媒を真空下で除去して濃い色の残渣を得、これをヘキサン及びトルエンの混合物(1:1、10mL)で抽出した。得られた抽出物を濾過し、真空下で乾燥させて、金属-配位子錯体(0.185g、収率:100%)を白色の粉状物として得た。
【0122】
H NMR(400MHz,ベンゼン-d):δ 8.37-8.29(m,2H),8.09(dt,J=7.6,1.0Hz,2H),7.61-7.55(m,2H),7.53(dd,J=8.3,0.9Hz,2H),7.44(ddd,J=8.2,7.1,1.4Hz,2H),7.38(td,J=7.4,1.1Hz,2H),7.24(ddd,J=8.3,7.1,1.3Hz,2H),7.14-7.09(m,4H),7.04-6.98(m,4H),6.73(dd,J=8.4,2.3Hz,2H),5.02(d,J=8.3Hz,2H),4.36(d,J=14.2Hz,2H),3.19(d,J=14.2Hz,2H),2.16(s,6H),1.97(s,6H),0.37(t,J=8.0Hz,6H),-0.01--0.27(m,4H),-1.09(s,6H).
【0123】
金属-配位子錯体5(MLC-5)の合成
【0124】
【化11】
グローブボックス内で、250mLの一口丸底フラスコ内において、ジ-t-ブチルシリルジトリフレート(4.41g、10.0mmol、1.0当量)を無水THF(50mL)に溶解させた。フラスコにセプタムで蓋をし、密閉し、グローブボックスから取り出し、ドライアイス-アセトン浴中で-78℃まで冷却した後、ブロモクロロメタン(1.95mL、30mmol、3.0当量)を添加した。次に、シリンジポンプを使用して、3時間にわたって、ヘキサン中n-BuLiの溶液(9.2mL、23.0mmol、2.3当量)をフラスコの冷却壁に添加した。得られた混合物を一晩(およそ16時間)かけて室温まで加温した後、飽和NHCl(30mL)を添加した。得られた2層を分離し、水層をエーテル(2×50mL)で抽出した。合わせた有機層をMgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。粗生成物を更に精製することなく次の工程に使用した。
【0125】
グローブボックス内で、40mLのバイアルに、ビス(クロロメチル)ジ-t-ブチルシラン(1.21g、5.0mmol、1.0当量)、4-t-ブチル-2-ブロモフェノール(4.6g、20.0mmol、4.0当量)、KPO(6.39g、30.0mmol、6.0当量)、及びDMF(5mL)を充填し、反応混合物を110℃で一晩撹拌した。室温まで冷却した後、反応混合物を、溶出液としてエーテル/ヘキサン(0/100→30/70)を使用したカラムクロマトグラフィーによって精製し、ビス((2-ブロモ-4-t-ブチルフェノキシ)メチル)ジ-t-ブチルシラン(2.6g、収率:83%)を無色の油状物として得た。
【0126】
H NMR(400MHz,CDCl)δ 7.53(d,J=2.4Hz,2H),7.28(dd,J=8.6,2.4Hz,2H),7.00(d,J=8.7Hz,2H),3.96(s,4H),1.29(s,18H),1.22(s,18H).
【0127】
【化12】
【0128】
グローブボックス内で、撹拌子を備えた40mLのバイアルに、ビス((2-ブロモ-4-t-ブチルフェノキシ)メチル)ジ-t-ブチルシラン(0.46g、0.73mmol、1.0当量)、3,6-ジ-tert-ブチル-9-(2-((テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェニル)-9H-カルバゾール(1.53g、2.2mmol、3.0当量)、tBuP Pd G2(0.011g、0.022mmol、0.03当量)、THF(2mL)、及びNaOH(4M、1.1mL、4.4mmol、6.0当量)を充填した。バイアルを55℃で2時間、窒素下で加熱した。完了してから、上層の有機層をエーテルで抽出し、シリカゲルのショートプラグを通して濾過し、溶媒を減圧下で除去した。得られた残渣をTHF(10mL)及びMeOH(10mL)に溶解させた。次いで、濃HCl(0.5mL)を添加した。得られた混合物を75℃で2時間加熱した後、室温まで冷却した。次いで、溶媒を減圧下で除去し、得られた残渣を、溶出液としてTHF/MeCN(0/100>100/0)を使用した逆相カラムクロマトグラフィーによって精製し、6’,6’’’-(((ジ-t-ブチルシランジイル)ビス(メチレン))ビス(オキシ))ビス(3-(3,6-ジ-t-ブチル-9H-カルバゾール-9-イル)-3’-フルオロ-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)-[1,1’-ビフェニル]-2-オール)(0.71g、収率:67%)を白色の固形物として得た。
【0129】
H NMR(400MHz,CDCl)δ 8.44-8.07(m,6H),7.59-7.45(m,2H),7.23-7.11(m,4H),6.99-6.69(m,6H),6.53-6.38(m,2H),5.26-5.16(m,4H),3.81(br s,2H),3.19(br s,2H),1.60-1.05(m,70H),0.85(s,18H),0.74(s,18H).
【0130】
【化13】
【0131】
グローブボックス内で、ジエチルエーテル中MeMgBr(臭化メチルマグネシウム)(3M、0.28mL、0.84mmol、4.2当量)を、無水トルエン(6.0mL)中ZrCl(47mg、0.2mmol、1.0当量)の-30℃の懸濁液に添加した。得られた混合物を2分間撹拌した後、固体の6’,6’’’-(((ジ-t-ブチルシランジイル)ビス(メチレン))ビス(オキシ))ビス(3-(3,6-ジ-t-ブチル-9H-カルバゾール-9-イル)-3’-フルオロ-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)-[1,1’-ビフェニル]-2-オール)(287mg、0.2mmol、1.0当量)を少しずつ添加した。得られた混合物を一晩撹拌した後、溶媒を真空下で除去して濃い色の残渣を得、これをヘキサン(15mL)で抽出した。得られた抽出物を約2~3mLまで濃縮し、一日間冷凍庫に入れておいた。任意の残りの溶媒をデカントし、残りの材料を真空下で乾燥させて、金属-配位子錯体(250mg、収率:80%)を白色の粉状物として得た。
【0132】
H NMR(400MHz,C)δ 8.71(d,J=1.7Hz,2H),8.38(d,J=1.7Hz,2H),7.68-7.59(m,6H),7.52-7.42(m,6H),7.34(s,2H),7.33(dd,J=8.7,1.9Hz,2H),7.24(dd,J=8.7,2.6Hz,2H),5.17(d,J=8.7Hz,2H),4.05(d,J=13.5Hz,2H),3.08(d,J=13.5Hz,2H),1.85-1.77(m,2H),1.70-1.62(m,2H),1.57(s,18H),1.45-1.32(m,48H),0.95(s,18H),0.59(s,18H),-1.22(s,6H).
【0133】
金属-配位子錯体6(MLC-6)の合成
【0134】
【化14】
グローブボックス内で、250mLの一口丸底フラスコ内において、ジイソプロピルジクロロシラン(3.703g、20mmol、1.0当量)を無水THF(120mL)に溶解させた。フラスコにセプタムで蓋をし、密閉し、グローブボックスから取り出し、ドライアイス-アセトン浴中で-78℃まで冷却した後、ブロモクロロメタン(3.9mL、60mmol、3.0当量)を添加した。次に、シリンジポンプを使用して、3時間にわたって、ヘキサン中n-BuLiの溶液(18.4mL、46mmol、2.3当量)をフラスコの冷却壁に添加した。混合物を一晩(およそ16時間)かけて室温まで加温した後、飽和NHCl(30mL)を添加した。得られた2層を分離し、水層をエーテル(2×50mL)で抽出した。合わせた有機層をMgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。粗生成物を更に精製することなく次の工程に使用した。
【0135】
グローブボックス内で、40mLのバイアルに、ビス(クロロメチル)ジイソプロピルシラン(2.14g、10mmol、1.0当量)、4-t-ブチル-2-ブロモフェノール(6.21g、27mmol、2.7当量)、KPO(7.46g、35mmol、3.5当量)、及びDMF(10mL)を充填し、反応混合物を80℃で一晩撹拌した。室温まで冷却した後、反応混合物を、溶出液としてエーテル/ヘキサン(0/100>30/70)を使用したカラムクロマトグラフィーによって精製し、ビス((2-ブロモ-4-t-ブチルフェノキシ)メチル)ジイソプロピルシラン(4.4g、収率:73%)を無色の油状物として得た。
【0136】
H NMR(400MHz,CDCl)δ 7.51(d,J=2.4Hz,2H),7.26(dd,J=8.6,2.4Hz,2H),6.98(d,J=8.6Hz,2H),3.93(s,4H),1.45-1.33(m,2H),1.28(s,18H),1.20(d,J=7.3Hz,12H).
【0137】
【化15】
【0138】
グローブボックス内で、撹拌子を備えた40mLバイアルに、ビス((2-ブロモ-4-t-ブチルフェノキシ)メチル)ジイソプロピルシラン(1.20g、2.0mmol、1.0当量)、2-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-5-メチル-2-((テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(2.54g、5.0mmol、2.5当量)、tBuP Pd G2(0.031g、0.06mmol、0.03当量)、THF(3mL)、及びNaOH(4M、3.0mL、12.0mmol、6.0当量)を充填した。バイアルを55℃で2時間、窒素下で加熱した。完了してから、上層の有機層をエーテルで抽出し、シリカゲルのショートプラグを通して濾過し、溶媒を減圧下で除去した。得られた残渣をTHF(10mL)及びMeOH(10mL)に溶解させた。次いで、濃HCl(0.5mL)を添加し、得られた混合物を75℃で2時間加熱した後、室温まで冷却した。次いで、溶媒を減圧下で除去し、得られた残渣を、溶出液としてTHF/MeCN(0/100>100/0)を使用した逆相カラムクロマトグラフィーによって精製し、6’’,6’’’’’-(((ジイソプロピルシランジイル)ビス(メチレン))ビス(オキシ))ビス(3,3’’,5-トリ-tert-ブチル-5’-メチル-[1,1’:3’,1’’-ターフェニル]-2’-オール)(1.62g、収率:78%)を白色の固形物として提供した:
【0139】
H NMR(400MHz,CDCl)δ 7.39(t,J=1.8Hz,2H),7.36(d,J=1.8Hz,4H),7.29(d,J=2.5Hz,2H),7.22(dd,J=8.6,2.6Hz,2H),7.10(d,J=2.2Hz,2H),6.94(d,J=2.3,2H),6.75(d,J=8.6Hz,2H),5.37(s,2H),3.61(s,4H),2.32(d,J=0.9Hz,6H),1.33(s,36H),1.29(s,18H),0.90-0.81(m,2H),0.73(d,J=7.1Hz,12H).
【0140】
【化16】
【0141】
グローブボックス内で、ジエチルエーテル中MeMgBr(3.00M、0.29mL、0.86mmol、4.3当量)を、無水トルエン(6.0mL)中ZrCl(47mg、0.2mmol、1.0当量)の-30℃の懸濁液に添加した。2分間撹拌した後、6’’,6’’’’’-(((ジイソプロピルシランジイル)ビス(メチレン))ビス(オキシ))ビス(3,3’’,5-トリ-tert-ブチル-5’-メチル-[1,1’:3’,1’’-ターフェニル]-2’-オール)(206mg、0.2mmol、1.0当量)を少しずつ添加した。得られた混合物を室温で一晩撹拌した後、溶媒を真空下で除去して、濃い色の残渣を得、これをヘキサン(10mL)で洗浄し、次いで、トルエン(12mL)で抽出した。濾過後、トルエン抽出物を真空下で乾燥させて、金属-配位子錯体(170mg、収率:74%)を白色の固形物として得た。
【0142】
H NMR(400MHz,C)δ 8.20-7.67(m,4H),7.79(t,J=1.8Hz,2H),7.56(d,J=2.5Hz,2H),7.26(d,J=2.4,2H),7.21(d,J=2.4,2H),7.18(d,J=2.4,2H),5.67(d,J=8.6Hz,2H),4.61(d,J=13.5Hz,2H),3.46(d,J=13.5Hz,2H),2.26(s,6H),1.47(s,36H),1.25(s,18H),0.52(dd,J=17.0,7.5Hz,12H),0.30-0.18(m,2H),-0.05(s,6H).
【0143】
金属-配位子錯体7(MLC-7)の合成
【0144】
【化17】
グローブボックス内で、撹拌子を備えた40mLバイアルに、ビス((2-ブロモ-4-t-ブチルフェノキシ)メチル)ジ-t-ブチルシラン(0.5g、0.80mmol、1.0当量)、2-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-5-メチル-2-((テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(1.21g、2.40mmol、3.0当量)、tBuP Pd G2(0.012g、0.024mmol、0.03当量)、THF(2mL)、及びKOH(4M、1.2mL、4.8mmol、6.0当量)を充填した。バイアルを55℃で2時間、窒素下で加熱した。完了してから、上層の有機層をエーテルで抽出し、シリカゲルのショートプラグを通して濾過し、溶媒を減圧下で除去した。得られた残渣をTHF(10mL)及びMeOH(10mL)に溶解させた。次いで、濃HCl(0.5mL)を添加した。得られた混合物を75℃で2時間加熱した後、室温まで冷却した。次いで、溶媒を減圧下で除去し、得られた残渣を、溶出液としてTHF/MeCN(0/100>100/0)を使用した逆相カラムクロマトグラフィーによって精製し、6’’,6’’’’’-(((ジ-t-ブチルシランジイル)ビス(メチレン))ビス(オキシ))ビス(3,3’’,5-トリ-tert-ブチル-5’-メチル-[1,1’:3’,1’’-ターフェニル]-2’-オール)(0.63g、収率:75%)を白色の固形物として得た。
【0145】
H NMR(400MHz,CDCl)δ 7.39-7.37(m,2H),7.36-7.34(m,2H),7.25-7.22(m,2H),7.10(d,J=2.4Hz,2H),6.93(d,J=2.3,2H),6.83(d,J=8.2,2H),5.13(s,2H),3.63(s,4H),2.32(s,6H),1.32(s,36H),1.28(s,18H),0.78(s,18H).
【0146】
グローブボックス内で、ジエチルエーテル中MeMgBr(3M、0.281mL、0.86mmol、4.3当量)を、無水トルエン(6mL)中ZrCl(0.046g、0.2mmol、1.0当量)の-30℃の懸濁液に添加した。得られた混合物を2分間撹拌した後、固体の6’’,6’’’’’-(((ジ-t-ブチルシランジイル)ビス(メチレン))ビス(オキシ))ビス(3,3’’,5-トリ-tert-ブチル-5’-メチル-[1,1’:3’,1’’-ターフェニル]-2’-オール)(0.212g、0.2mmol、1.0当量)を少しずつ添加した。得られた混合物をトルエン(2mL)ですすぎ、一晩撹拌した後、溶媒を真空下で除去して、濃い色の残渣を得、これをヘキサン(10mL)で洗浄し、濾過した後、トルエン(15mL)で抽出した。得られた抽出物を真空下で乾燥させて、金属-配位子錯体(0.2g、収率:85%)を白色の粉状物として得た。
【0147】
H NMR(400MHz,C)δ 7.93(br s,2H),7.79(t,J=1.9Hz,2H),7.65(br s,2H),7.63(d,J=2.5Hz,2H),7.23-7.17(m,4H),7.04-6.98(m,2H),5.92(d,J=8.6Hz,2H),4.56(d,J=13.3Hz,2H),3.45(d,J=13.2Hz,2H),2.25(s,6H),1.69-1.32(m,36H),1.28(s,18H),0.52(s,18H),-0.18(s,6H).
【0148】
本発明の噴霧乾燥有効触媒の調製:
触媒系の生産
様々な触媒系を、噴霧乾燥を介して生産した。具体的には、ヒュームドシリカ(Cabot CorporationからCAB-O-SIL(登録商標)として市販)及びメチルアルミノキサン(トルエン中10重量%)をトルエンに溶解させ、15分間混合した。得られたスラリーに金属-配位子錯体を添加し、更に30~60分間混合した。次いで、得られた触媒系前駆体を、入口温度185℃、出口温度100℃、吸引速度95回転/分(rpm)、及びポンプ速度150rpmの噴霧乾燥機(BUCHI CorporationからMini Spray Dryer B-290として市販)を使用して乾燥させた。
【0149】
【表1】
【0150】
気相バッチ反応器試験:
上記で調製した噴霧乾燥した触媒を、2Lの半バッチオートクレーブ重合反応器内において気相中で行ったエチレン/1-ヘキセンの共重合に使用した。個々のラン条件及びこれらのランで生成されたポリマーの特性を、試験した特性の結果として表にする。
【0151】
気相バッチ反応器触媒試験手順:
使用した気相反応器は、機械的撹拌器を備えた2リットルのステンレス鋼オートクレーブである。実験ランについては、反応器をまず1時間乾燥させ、200gのNaClを充填し、窒素下において100℃で30分間加熱することにより乾燥させた。反応器を焼き出しするこのプロセスの後、3gのSDMAO(担持メチルアルミノキサン)(sd-Cat1のみについて、5gのSDMAOを使用)を窒素圧下で捕捉剤として導入した。SDMAOを添加した後、反応器を密閉し、成分を撹拌した。次いで、反応器に水素及び1-ヘキセンを充填し、エチレンで加圧した。系が定常状態に達してから、触媒を80℃で反応器に充填して重合を開始させた。反応器温度を所望の反応温度にし、1時間のラン全体を通して、この温度、エチレン、1-ヘキセン、及び水素供給比で維持した。ランの終わりに、反応器を冷却し、排気し、開けた。得られた生成物混合物を水及びメタノールで洗浄し、次に、乾燥させた。重合生産性(ポリマー(グラム)/触媒(グラム)-時間)を、生産されたポリマーの、反応器に添加した触媒の量に対する比として求めた。
【0152】
ポリエチレンの生産
各ランに使用した反応条件を表2、4、及び6に報告する。各ランについての反応器データを、表4に報告する。各ランによって生産されたポリ(エチレン-コ-1-ヘキセン)コポリマー(エチレン系コポリマー)の特性を、表3、5、及び7に報告する。
【0153】
【表2】
【0154】
【表3】
【0155】
【表4】
【0156】
【表5】
【0157】
【表6】
[a]実施例12のラン時間は0.82時間であった。[b]実施例13のラン時間は0.80時間であった。
【0158】
【表7】
【0159】
ポリマー鎖の分子量(MW)の増加の関数としてコモノマー重量パーセント(重量%)が増加するポリマーは、多くの用途において改善された性能を有する。これは、ブロードな直交組成分布(BOCD)を有するポリマーとも称される。定量的には、「逆性(reverse-ness)」又は「BOCD性(BOCD-ness)」の尺度は、分子量コモノマー分布指数(MWCDI)である。MWCDIが0を超える場合、ポリマーは、BOCDである又は逆コモノマー分布を有すると考えられるが、0未満のMWCDIを有するポリマーは、正規(又はチーグラーナッタ)型コモノマー分布を有すると考えられ、MWCDIが0に等しい場合、コモノマー分布は平坦であると考えられる。特定のポリマー特性は、典型的には、コモノマー分布が正規→平坦→逆になるにつれて改善される。
【0160】
表3は、気相重合バッチ反応器内において噴霧乾燥触媒sd-IC-1を用いて作製した実施例1~5のエチレン系コポリマーが、独立して、逆コモノマー分布及び単峰性分子量分布を有することを示す。分子量分布(MWD)及びMWCDIは、既に記載した従来のGPC分析によって求めた。本発明の実施例1及び4の分子量コモノマー分布指数(MWCDI)及び分子量分布(MWD)を図1にグラフで示し、表4中の実施例12を図2に示し、表4中の実施例13を図3に示し、実施例15及び16を図4に示す。図1図4は、MWD曲線の単一極大に基づいてエチレン系コポリマーが単峰性であることを更に示す。更に、図1図4に示すように、MWCDI線は、0よりも大きい勾配を有し、したがって、逆コモノマー組み込みがあることを示す。

図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】