(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-04
(54)【発明の名称】環境のメチル水銀を減らす方法、ならびに、環境のメチル水銀の植物及び生体への取り込みを制限する方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/28 20230101AFI20230627BHJP
B01D 15/00 20060101ALI20230627BHJP
B09C 1/08 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
C02F1/28 C
B01D15/00 N
B09C1/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022567795
(86)(22)【出願日】2021-05-28
(85)【翻訳文提出日】2022-11-08
(86)【国際出願番号】 US2021034863
(87)【国際公開番号】W WO2021243210
(87)【国際公開日】2021-12-02
(32)【優先日】2020-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】594066006
【氏名又は名称】アルベマール コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,セ・ヘ
(72)【発明者】
【氏名】ジオウ,チンフイ
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,ジョン・イー
(72)【発明者】
【氏名】ベルツ,ザッシャ・ジェイ
【テーマコード(参考)】
4D004
4D017
4D624
【Fターム(参考)】
4D004AA41
4D004AA50
4D004AB03
4D004CA34
4D004CC11
4D004CC20
4D017AA01
4D017AA20
4D017BA04
4D017BA13
4D017CA01
4D017CA02
4D017CA03
4D017CA04
4D017CA05
4D017CB01
4D624AA10
4D624AB04
4D624AB18
4D624BA01
4D624BA02
4D624BA03
4D624BA06
4D624BA07
4D624BA11
4D624BA13
4D624BB01
4D624DB03
(57)【要約】
本開示は、生態系、沈降物、及び間隙水中での、メチル水銀の存在を減少させることにより、食料供給、魚及び水生生物を含む生体、ならびに植物を、水銀蓄積から保護する方法及びプロセスに関する。本開示は、沈降物及び/または間隙水を、吸着剤、及びハロゲン源、または、ハロゲン含有吸着剤を含有する改善剤で処理することを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水生生体、海洋生体、及び/または、湿地生体を水銀毒性から保護する方法であって、
水生生態系、海洋生態系、及び/または、湿地生態系における試料を同定することと、
前記試料を改善剤で処理することであって、前記改善剤が、吸着剤及びハロゲン源、ならびに/または、ハロゲン化吸着剤を含む、前記処理することと、
前記試料において、メチル水銀の量及び/または産生を低下させることと、を含み、
前記生態系内の間隙水でのメチル水銀の含有量が少なくとも60%減少する、前記方法。
【請求項2】
前記間隙水でのメチル水銀の含有量が少なくとも70%減少する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記間隙水でのメチル水銀の含有量が少なくとも80%減少する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記改善剤が、炭素質材料または無機材料である、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記改善剤が炭素質吸着剤である、請求項1~3、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記改善剤がハロゲン含有吸着剤である、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記改善剤が臭素含有活性炭である、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記ハロゲン源が臭素源である、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記ハロゲン源が、金属臭化物塩または臭化水素酸である、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
作物を水銀汚染から保護する方法であって、
作物が植えられる土壌試料を同定することと、
前記試料を改善剤で処理することであって、前記改善剤が、吸着剤及びハロゲン源、ならびに/または、ハロゲン化吸着剤を含む、前記処理することと、
前記試料において、メチル水銀の量及び/または産生を低下させることと、を含み、
前記土壌試料の間隙水でのメチル水銀の含有量が少なくとも60%減少する、前記方法。
【請求項11】
前記間隙水でのメチル水銀の含有量が少なくとも70%減少する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記間隙水でのメチル水銀の含有量が少なくとも80%減少する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記改善剤が、炭素質材料または無機材料である、請求項10~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記改善剤が炭素質吸着剤である、請求項10~12のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記改善剤がハロゲン含有吸着剤である、請求項10~12のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記改善剤が臭素含有活性炭である、請求項10~12のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記ハロゲン源が臭素源である、請求項10~12のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記ハロゲン源が、金属臭化物塩または臭化水素酸である、請求項10~12のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
メチル水銀を土壌間隙水から取り除く方法であって、
前記間隙水を含有する沈降物試料を改善剤で処理することであって、前記改善剤が、吸着剤及びハロゲン含有化合物、ならびに/または、ハロゲン化吸着剤を含む、前記処理することと、
前記試料において、メチル水銀の量及び/または産生を低下させることと、を含み、
前記間隙水でのメチル水銀の含有量が少なくとも60%減少する、前記方法。
【請求項20】
前記間隙水でのメチル水銀の含有量が少なくとも70%減少する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記間隙水でのメチル水銀の含有量が少なくとも80%減少する、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記改善剤が、炭素質材料または無機材料である、請求項19~21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記改善剤が炭素質吸着剤である、請求項19~21のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記改善剤がハロゲン含有吸着剤である、請求項19~21のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記改善剤が臭素含有活性炭である、請求項19~21のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
ハロゲン源が臭素源である、請求項19~21のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
ハロゲン源が、金属臭化物塩または臭化水素酸である、請求項19~21のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記改善剤が、Br-PAC、NaBr-PAC、もしくはHBr-PAC、またはこれらの組み合わせである、請求項1~3、10~12、または19~21のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
2021年5月28日に、米国特許法第119条(e)に基づき出願された本出願は、2020年5月28日に出願された、「METHOD OF REDUCING ENVIRONMENTAL METHYL MERCURY AND LIMITING ITS UPTAKE INTO PLANTS AND ORGANISMS」という表題の米国仮特許出願シリアル番号63/031,174号の利益を主張し、その内容全体及び物質が、以下で完全に説明されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示の様々な実施形態は概して、環境系におけるメチル水銀の減少方法に関する。本開示は特に、水生及び海洋生体、ならびに植物による、メチル水銀の取り込みを制限または防止するのに有用である。
【背景技術】
【0003】
多くの汚染物質が、ヒト及び環境に対して毒性であることが知られている。これらの既知の環境汚染物質の1つである水銀は、有害物質疾病登録局(「ATSDR」)によって優先有害性物質のうちの1つとして分類されている。米国全国浄化優先順位リスト(NPL)には、水銀で汚染された多数の場所が列挙されている。このような場所には、固体(例えば、土壌、くず、廃棄物、及び他の固体)、液体(例えば、地下水、湖、池、及び他の液体)、ならびに、固体と液体の組み合わせ(例えば、底質、スラリー、沈降物、及び、固体と液体の他の組み合わせ)を含む、様々な物質が含まれている。これらの場所の大部分は、水銀を除去するための除染がなされていない。
【0004】
さらに、特に土壌及び沈降物中における、水銀化合物による環境汚染は、メチル水銀の生成をもたらし得る。メチル水銀は環境において、主に、水銀汚染物質の、細菌によるメチル化により産生される。メチル水銀は水生食物ウェブに生物蓄積及び生物濃縮され得、捕食性の魚においてその頂点に達し、ここでは、濃度は、水柱よりも最大、100万倍高い場合がある。結果的に、水柱での、低濃度のHg(ng/L)でさえも、魚及び水鳥内で、著しい濃度のメチル水銀がもたらされ得る。水田及び他の食物連鎖も同様に、メチル水銀の取り込みに影響を受け得る。これらの品目は最終的に、ヒトが消費する食物源に到達し得る。
【0005】
これらの系において、メチル水銀を減少させる、または除去するアジュバント及び改善剤を同定することが、回復における現行の努力である。多くの技術が、イオン性水銀の防止に焦点を当てている一方で、特に、沈降物及び間隙水中での、メチル水銀による以前の汚染を評価して、これを回復する、または防止する方法及び戦略が、現行の課題である。
【発明の概要】
【0006】
本開示の様々な実施形態は概して、間隙水、及び、生態系の他の領域からメチル水銀を取り除くことによる、生物相及び生態系の保護方法、ならびに、環境汚染物質を、移動媒体、移動相、または移動流から取り除くためのプロセス、装置、デバイス、及びシステムに関する。
【0007】
本開示の一実施形態は、水生生体、海洋生体、及び/または、湿地生体を水銀毒性から保護する方法であって、水生生態系、海洋生態系、及び/または、湿地生態系における試
料を同定することと、試料を改善剤で処理することであって、上記改善剤が、吸着剤及びハロゲン源、ならびに/または、ハロゲン化吸着剤を含む、上記処理することと、上記試料において、メチル水銀の量及び/または産生を低下させることと、を含み、生態系内の間隙水でのメチル水銀の含有量が少なくとも60%減少する、上記方法であることができる。
【0008】
本開示の別の実施形態は、作物を水銀汚染から保護する方法であって、作物が植えられる土壌試料を同定することと、試料を改善剤で処理することであって、上記改善剤が、吸着剤及びハロゲン源、ならびに/または、ハロゲン化吸着剤を含む、上記処理することと、上記試料において、メチル水銀の量及び/または産生を低下させることと、を含み、土壌試料の間隙水でのメチル水銀の含有量が少なくとも60%減少する、上記方法であることができる。
【0009】
本開示の別の実施形態は、メチル水銀を土壌間隙水から取り除く方法であって、間隙水を含有する沈降物試料を改善剤で処理することであって、上記改善剤が、吸着剤及びハロゲン含有化合物、ならびに/または、ハロゲン化吸着剤を含む、上記処理することと、上記試料において、メチル水銀の量及び/または産生を低下させることと、を含み、間隙水でのメチル水銀の含有量が少なくとも60%減少する、上記方法であることができる。
【0010】
本開示の一実施形態では、間隙水でのメチル水銀の含有量は、少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%減少することができる。
【0011】
本開示の一実施形態では、改善剤は、炭素質材料または無機材料である。改善剤は無機材料であることができる。改善剤は炭素質材料であることができる。
【0012】
本開示の一実施形態では、改善剤は、ハロゲン含有吸着剤、臭素含有吸着剤、または、臭素含有活性炭であることができる。
【0013】
本開示の一実施形態では、ハロゲン源は、臭素源であることができる。ハロゲン源は、金属臭化物塩または臭化水素酸である。
【0014】
本開示の一実施形態では、改善剤は、Br-PAC、NaBr-PAC、もしくはHBr-PAC、またはこれらの組み合わせであることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】A及びBは、本開示の例示的実施形態に従った、スクリーニングレベル毒性試験のための実験セットアップを示す。
【
図2】本開示の例示的実施形態に従った、間隙水でのメチル水銀の減少を示す。
【
図3】A及びBは、本開示の例示的実施形態に従った、虫の組織でのメチル水銀蓄積の減少を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示の好ましい実施形態を詳述するものの、他の実施形態が想到されることが理解されよう。したがって、本開示は、その範囲が、以下の説明、または、図面に示す構成要素の構造及び配置の詳細に限定されることを意図するものではない。本開示は、他の実施形態であることができ、様々な方法で実施または実行することができる。また、好ましい実施形態を説明するために、特定の用語を、明確性のために使用する。
【0017】
本明細書及び付属の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上、別途明確に指示されない限り、複数形の指示対象を含むこ
とにもまた留意されなければならない。
【0018】
また、好ましい実施形態を説明するために、用語を明確性のために使用する。各用語は、当業者によって理解される最も広い意味を想到し、同様の目的を実現するために同様の様式で動作する、あらゆる技術的等価物を含むことが意図される。
【0019】
範囲は本明細書において、「約」、もしくは「およそ」ある特定の値から、及び/または、「約」、もしくは「およそ」別の特定の値まで、として表現されることができる。そのような範囲が表現されるとき、別の実施形態は、1つの特定の値から及び/または他の特定の値までを含む。
【0020】
「含む(comprising)」、または「含む(comprising)」、または「含む(including)」は、少なくとも、名前の付いた化合物、要素、粒子、または方法ステップが、組成物、または物品、または方法に存在するものの、他のそのような化合物、材料、粒子、方法ステップが、名前の付いたのと同じ機能を有する場合であっても、他の化合物、材料、粒子、方法ステップの存在を除外することを意味する。
【0021】
また、1つ以上の方法ステップへの言及は、明示的に識別されたそれらのステップ間にある追加の方法ステップ、または、これらの間に介在する方法ステップの存在を排除するものではないことも理解されなければならない。同様に、デバイスまたはシステム中での、1つ以上の構成要素への言及は、明示的に識別されたこれらの構成要素間にある追加の構成要素、または、これらの間に介在する構成要素の存在を排除するものではないことも理解されなければならない。
【0022】
本文書全体で使用されているように、「処理された」、「接触した」、及び、「修復された」などの用語は、改善剤が、メチル水銀または他の水銀源-改善剤の使用前または後のいずれかで存在する、メチル水銀または他の水銀源を含有する物質と、メチル水銀または他の水銀源の、環境上の利用可能性の低下をもたらすように相互作用することを示す。
【0023】
メチル水銀は沈降物中で生成されることができ、多くの場合、無機水銀種のように移動性ではなく、沈降物の間隙水の中に留まる。したがって、従来の流れバリア、反応性キャップ、及び、同様の透過性システムは、沈降物または間隙水の中にトラップされたメチル水銀を取り除く点においては非効率であり得る。具体的には、沈降物及び間隙水の中のメチル水銀の分画は、イオン形態の水銀と比較して困難である可能性がある。しかし、微生物はその沈降物及び間隙水に留まり、植物の寿命は、その沈降物及び間隙水において、ならびに、その沈降物及び間隙水と接触する生態系において伸び得、メチル水銀を取り込むことができることで、メチル水銀を食物連鎖を通して移動させる。本開示は、メチル水銀を沈降物、土壌、及び間隙水から減少させ、環境上の生態を保護し、メチル水銀の食物連鎖への取り込みを防止するプロセスについて記載する。
【0024】
メチル水銀などの汚染物質を修復させる、任意の改善剤の目的は、少なくとも2つのゴールを達成するものでなければならない。まず、改善剤は、生体または生物がメチル水銀を吸収できないようにする、または少なくとも、メチル水銀の取り込みの実質的な減少をもたらすように、メチル水銀を試料からトラップし、除去し、または別の場合においては減少させなければならない。次に、改善剤そのものが無毒性でなければならない。具体的には、改善剤が試料の中に残る場合、生体または生物は、改善剤による処理の影響を受けてはならない。
【0025】
PCT/US2019/030729に開示されているプロセスは、我々が開発を続けたハロゲン化吸着剤を含んだ。当該開示及び他の組成物を、環境上の課題に適用すること
の試験において、当該開示は、競合的に汚染物質を吸着するだけでなく、メチル水銀を間隙水から取り除く点において2倍の目標を達することができ、生体に対して無毒性であることを、我々は発見した。実施例で記載するとおり、試料により生物学的に生成されたメチル水銀の量は、沈降物、及び特に、沈降物の間隙水において、実質的に減少することができる。さらに、処理前にメチル水銀によって汚染された試料にて成長する海洋生体は、その試料の中で引き続き生存、成長、及び増殖する。
【0026】
本開示は次いで、メチル水銀を土壌試料、沈降物、及び/または、間隙水から取り除く方法を含むことができる。土壌試料または沈降物は、中に水銀を有する間隙水を含有することができ、改善剤によって処理することができ、改善剤は、吸着剤、及びハロゲン含有化合物、ならびに/または、ハロゲン化吸着剤を含むことができる。
【0027】
本開示は、水生生体、海洋生体、及び/または、湿地生体を水銀毒性から保護する方法もまた含むことができる。試料は、生体、及びその中の間隙水を含有する、水生生態系、海洋生態系、及び/または、湿地生態系において同定されることができる。試料は改善剤によって処理することができ、改善剤は、吸着剤、及びハロゲン含有化合物、ならびに/または、ハロゲン化吸着剤を含むことができ、故に、試料中のメチル水銀の量及び/または産生を減少させることができる。用語「生態系」とは、水生、海洋、または湿地に流れ去ることができる水を有する隣接領域を含む、相互作用する生体及びその物理的環境の、生物学的共同体であることができる。メチル水銀を生態系から減少させる、取り除く、及び/または、修復することにより、虫などの低レベルの生体が汚染物質から保護されることができ、故に、メチル水銀が食物連鎖から減少する、または除去されることができる。
【0028】
本開示は、作物を水銀汚染から保護する方法もまた含むことができる。土壌試料を、作物が植えられるもの、及び、間隙水を有するものに同定することができ、試料を改善剤によって処理することができ、改善剤は、吸着剤、及びハロゲン含有化合物、ならびに/または、ハロゲン化吸着剤を含むことができる。海洋または水生環境の生体の、メチル水銀への曝露の減少と同様に、メチル水銀は、水銀汚染された領域における植物の成長によって、食物連鎖に入り込むことができる。(例えば、Li,R.,Wu,H.,Ding,J.et al.Mercury pollution in vegetables,grains and soils from areas surrounding coal-fired power plants.Sci Rep 7,46545(2017)を参照されたい。)
【0029】
間隙水でのメチル水銀の含有量は、本開示に従って減少させることができる。減少量は、初期の試験量の少なくとも約50%であることができる。減少量は、少なくとも約60%、少なくとも70%、少なくとも約80%、または、少なくとも約90%であることができる。間隙水中のメチル水銀を、少なくとも約50、60、70、80、または90%減少させるために、沈降物を、有効量の改善剤で処理することができる。
【0030】
本開示は、水生生体、海洋生体、及び/または、湿地生体が処理によって保護される方法を含むことができる。本開示は、少なくとも1つの測定された生体の生残率を含むことができ、生残率は、少なくとも約75%、好ましくは少なくとも約100%である。ここで、生残率とは、改善剤を用いない試料と比較しての、試料内での生体の総数を意味する。生体は生殖可能であるため、生残率もまた高くなる可能性がある。したがって、生残率は、少なくとも約110%、少なくとも約125%、または、少なくとも約150%であることができる。
【0031】
本開示は、改善剤を使用して、試料中のメチル水銀を減少させる、または取り除く。改善剤は吸着剤であることができる。好ましくは、改善剤はハロゲン源と組み合わせた吸着
剤であることができ、ハロゲンとの組み合わせとしては、吸着剤と共に試料に加えられた、外部ハロゲン源と組み合わせて使用される、ハロゲン含有吸着剤及び/または吸着剤を挙げることができる。より好ましくは、改善剤はハロゲン含有吸着剤である。
【0032】
本明細書で適用する吸着剤材料としては、炭素質材料及び無機材料が挙げられる。適切な炭素質材料には、例えば、活性炭、カーボンブラック、木炭、及び石炭が含まれるが、これらに限定されない。好ましい炭素質材料は活性炭であり、それは、これらに限定されないが、例えば、粉末、粒状、または押し出しを含む、多くの形態で使用することができ、高比表面積である。粉末活性炭は、活性炭の特に好ましい形態である。
【0033】
適切な無機材料には、無機酸化物(例えば、アルミナ(非結晶質及び結晶質)、シリカ、マグネシア、ジルコニア、及びチタニア);天然ゼオライト(例えば、チャバザイト、クリノプチロライト、フォージャサイト) ;合成ゼオライト(例えば、合成チャバザイトなどの、高いSi:Al比を備えるゼオライト(ZSM-5、ベータゼオライト、ソーダライト)、中~低程度のSi:Al比を備えるゼオライト(Yゼオライト、Aゼオライト)、シリカアルミナホスフェート(SAPO)ゼオライトまたはゼオタイプ、イオン交換ゼオライト、未焼成ゼオライト);粘土鉱物(例えば、カオリン/カオリナイト、ベントナイト、モンモリロナイト);無機水酸化物及びオキシ水酸化物(例えば、水酸化鉄及び水酸化酸化鉄);混合金属酸化物及び層状複水酸化物(例えば、ハイドロタルサイト、金属化二層粘土);珪藻土;セメントダスト;基材上の触媒を含む水素添加処理触媒(例えば、アルミナ、シリカ、またはチタニア);CaCO3;ならびに前述の任意の2つ以上の組み合わせ;が含まれる。好ましい無機材料には、無機酸化物(特に、シリカ)、天然ゼオライト(特に、チャバザイト)、及び粘土鉱物(特に、カオリナイト及びベントナイト)が含まれる。CaCO3も好ましい基材材料である。
【0034】
ハロゲン含有吸着剤またはハロゲン源中のハロゲン元素は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、または、任意の2種以上のハロゲンの混合物であることができる。臭素は好ましいハロゲンである。適切なハロゲン含有化合物には、当業者には周知であるように、例えば、元素ヨウ素及び/またはヨウ素化合物、元素臭素及び/または臭素化合物、元素塩素及び/または塩素化合物、元素フッ素及び/またはフッ素化合物、及び他の適切なハロゲン化合物が含まれるが、これらに限定されない。使用できるハロゲン含有化合物の種類には、ハロゲン化水素酸、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、及びハロゲン化アンモニウムが含まれる。
【0035】
ハロゲン化水素酸には、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素が含まれる。アルカリ金属ハロゲン化物には、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、及びヨウ化カリウムが含まれる。アルカリ土類ハロゲン化物には、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、塩化カルシウム、及び臭化カルシウムが含まれる。ハロゲン化アンモニウムには、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウムが含まれる。
【0036】
好ましいハロゲン含有化合物は、元素臭素、臭化水素、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化カリウム、及び臭化カルシウムを含む。臭素含有化合物は、好ましいハロゲン含有化合物である。より好ましいのは、臭化水素及び元素臭素、特に元素臭素である。
【0037】
ハロゲン含有吸着剤は、米国特許第6,953,494号及び同第9,101,907号、ならびに、国際特許公開第WO2012/071206に記載されている材料及びハロゲン含有化合物から作製することができる。いくつかの実施形態では、好ましいハロゲン含有吸着剤は臭素含有吸着剤である。いくつかの実施形態では、好ましいハロゲン含有吸着剤はハロゲン含有活性炭である。他の実施形態では、好ましいハロゲン含有活性炭は
、塩素含有活性炭、臭素含有活性炭、及び、ヨウ素含有活性炭である。好ましい実施形態では、ハロゲン含有吸着剤は、塩素含有活性炭及び臭素含有活性炭である。より好ましい実施形態では、ハロゲン含有吸着剤は臭素含有活性炭である。
【0038】
いくつかの実施形態では、吸着剤、及びハロゲン含有化合物、ならびに/または、ハロゲン化吸着剤は、Br-PAC(臭化PAC)、NaBr-PAC(臭化ナトリウム含浸PAC)、または、HBr-PAC(臭化水素含浸PAC)であることができる。HBr-PAC及びNaBr-PACは、含浸粉末化活性炭材料であり、NaBr及び/またはHBr、及びPACの水溶液が完全に混合された後、加熱して過剰の水が除去される。
【0039】
他の実施形態では、好ましいハロゲン含有吸着剤は、塩素含有活性炭及びヨウ素含有活性炭である。さらに他の実施形態では、好ましいハロゲン含有吸着剤は、ハロゲン含有チャバザイト、ハロゲン含有ベントナイト、ハロゲン含有カオリナイト、及び、ハロゲン含有シリカである。
【0040】
ハロゲン含有吸着剤、特に臭素含有吸着剤、さらにとりわけ臭素含有吸着剤は、例えば、限定されるものではないが、酸化及び/または吸着を含む手段により、材料中の汚染物質の環境上の利用可能性を低下させることができる。吸着は、そのような汚染物質の移動性を低下させることにより、環境汚染物質の環境上の利用可能性を低下させることができる。ハロゲン含有吸着剤が、汚染物質の環境上の利用可能性を低下させることができる他の方法には、表面反応によるそのような汚染物質の分解を向上させることによるもの;及び/または、メチル水銀などの汚染物質の形成を阻害することによるもの;及び/または、他のメカニズムによるものがある。本開示のプロセスにおいては、固形分、または液体、またはこれらの組み合わせに適用されるか否かに関係なく、ハロゲン含有吸着剤により吸着された環境汚染物質は、環境への脱着が実質的に最小限に抑えられるように安定化される。
【0041】
水銀及び他の環境汚染物質は、ハロゲン含有吸着剤、特に、臭素含有活性炭に吸着される、または、これらにより取り除かれる。別のハロゲン(特に臭素)種が、ハロゲン含有吸着剤、特に臭素含有吸着剤、具体的には臭素含有活性炭から形成されることができる。
【0042】
いくつかのハロゲン含有吸着剤、具体的には臭素含有活性炭は、元素状水銀、酸化水銀、及び有機水銀を含む異なる酸化状態の水銀を、物理的及び化学的に吸着することができる。臭素含有活性炭に吸着された水銀は、広範囲のpH値において安定し、ここで、「安定」とは、水銀が、吸着後に測定可能な量で、吸着剤から分離しないことを意味する。
【実施例】
【0043】
実施例1-スクリーニングレベルのスパイキング及び毒性評価
水銀の生物学的利用能を低下させる点における、改善剤の有効性を評価するために、淡水の貧毛類であるLumbriculus variegatus(一般的にはブラックワームと呼ばれる)を使用して、スクリーニングレベルのスパイキング及び毒性評価を初期研究で行った。適切な沈降物のスパイキング濃度が、生物蓄積試験の実施前に同定されたことを、スクリーニングレベルの評価は示した。スパイキングプロセスは、天然沈降物中で、試験する生体の著しい死亡を引き起こすこともなく、を水銀の生物学的利用能の低下に関する、改善剤の有効性を評価するのに十分な解像度をもたらす、十分高いメチル水銀濃度を生み出すことが、本研究により確認されたため、我々は、28日間の実験終了時に、試験した生体の生物学的蓄積を分析することができた。
【0044】
きれいな自然のリザーバから、自然の沈降物試料を収集し、HgCl
2で200、100、20、及び0mg/kg(未スパイク)でスパイクして、室温で1週間、毒性条件で
保管をし、平衡、及び、メチル化を含む天然プロセスを生じさせた。次に、Br-PACを、完全に混合することで、スパイクした沈降物に添加して、使用前に24時間気候順化させた。EPA 600/R-99/064(淡水無脊椎動物による、沈降物関連汚染物質の毒性及び生物蓄積を試験する方法、第二版、2000)、及び、EPA 712-C-16-002(生態学効果の試験ガイドラインOCSPP 850.1735:スパイクした全沈降物の10日間毒性試験、淡水無脊椎動物、2016)で提供される、標準的なガイダンスに従い、淡水の貧毛類(Lumbriculus variegatus)の虫による10日間の曝露を行った。10匹の虫(Lumbriculus)を、きれいな沈降物を含む第1及び第2対照に加えて、各処理の組み合わせのために、3つの複製に添加した。(
図1)
【0045】
Lumbriculusに対する、処理した沈降物の生残結果を表1に示す。生残は全ての処理において100%を超え、対照は、試験濃度における水銀または改善剤が原因で、毒性を示さない。試験中に発生した虫の生殖により、生残は100%を超えた。
【0046】
沈降物及び水の化学分析結果は、全試料において、メチル水銀が上手く産生されたことを示す。まとめると、研究のために選択した自然沈降物は、全ての処理における高い生残に基づき、好適なLumbriculusであることが証明され、特に間隙水において、水銀を全てメチル水銀に転換することにも効果的であることが証明された。水銀のスパイキング手順は、全沈降物中での、標的の15%以内である全濃度をもたらす点においてもまた、効果的であった。
【表1】
【0047】
実施例2-水銀汚染沈降物におけるメチル水銀の減少
きれいな自然のリザーバから、自然の沈降物試料を収集し、HgCl
2で200、100、20、及び0mg/kg(未スパイク)でスパイクして、室温で1週間、毒性条件で保管をし、平衡、及び、メチル化を含む天然プロセスを生じさせた。次に、Br-PACを、完全に混合することで、スパイクした沈降物に添加して、分析前に24時間気候順化させた。反応器との重複水をまず、全ての沈降物から取り除き、濾過により、全ての沈降物から間隙水をさらに分離した。Br-PACで処理した、各画分(沈降物、間隙水、及び、重複水)における、全水銀、及びメチル水銀濃度を、未処理の沈降物と比較して分析した。分析化学のため、12L容器内の400mLビーカー及びサロゲートチャンバー内
での、スクリーニングレベル毒性試験のための実験セットアップを示す、
図1A及び1Bを参照されたい。
【0048】
重複水及び全沈降物の両方におけるメチル水銀は、改善剤を伴わないものと比較して、改善された試料においておよそ40%減少した。未改善試料に対する、間隙水中でのメチル水銀の濃度(3.83μg/L)は、重複水中でのメチル水銀の濃度(0.017μg/L)よりも高かったが、改善した沈降物における間隙水の濃度は、99%を超えて、ちょうど0.06μg/Lの値まで減少し、このことは、メチル水銀産生の減少における、処理の実質的な有効性を示している。(
図2)
【0049】
水銀が全てメチル水銀に転換することを示す別の方法は、測定したメチル水銀の画分を比較することである。メチル水銀の画分は、Br-PACで処理した沈降物中でのわずか0.5%と比較して、未処理沈降物の間隙水では25.4%に達した。(表2)メチル水銀の減少に関するこれらの考察を説明するためのメカニズムは、まだ明らかになっていない。しかし、沈降物/重複水/間隙水中での、Br-PACを含む、及び含まない全水銀の画分としてのメチル水銀は変化するため、メカニズムは、吸着プロセスとして単純に説明することができない可能性がある。
【表2】
【0050】
実施例3-淡水虫のLumbriculus variegatusにおける生物蓄積の減少
EPA 600/R-99/064(淡水無脊椎動物による、沈降物関連汚染物質の毒性及び生物蓄積を試験する方法、第二版、2000)、及び、EPA 712-C-16-002(生態学効果の試験ガイドラインOCSPP 850.1735:スパイクした全沈降物の10日間毒性試験、淡水無脊椎動物、2016)で提供される、標準的なガイダンスに従い、Lumbriculus虫を用いる、28日間の生物蓄積曝露実験を実施して、水銀の生物学的利用能の低下という点における、Br-PACの有効性を示した。沈降物虫で、高いメチル水銀濃度を達成するための、自然沈降物を用いるメチル水銀スパイキング手順を、実施例1で説明した。スパイキング、及び、4週間の平衡期間の後、完全に混合することで、改善剤を、スパイクした沈降物に添加し、使用前に24時間気候順化させた。各処理において、5つの試験複製物全てに由来する組織の、全水銀及び脂質含有量を測定し、これにより、分析のために、改善剤を含む、及び含まない、28日間の曝露終了時に、生物蓄積の情報をもたらすことができた。各処理において、5つの試験複製物全てに由来する組織の、全水銀及び脂質含有量を測定し、これにより、分析のために、
改善剤を含む、及び含まない、28日間の曝露終了時に、生物蓄積の情報をもたらすことができた。
【0051】
28における、Lumbriculus虫の組織内での、水銀及び脂質濃度の一覧を、
図3A及び3Bにまとめる。生きた生体は主に、水銀のメチル化形態を蓄積し、組織内での、全水銀の測定値は、メチル水銀濃度を表すものであると推定される。Br-PACにより改善された沈降物は、スパイクした3つの処理全てにおいて、虫組織虫での水銀の生物学的利用能を低下させることに成功した。スパイクした3つの水銀濃度の中で、水銀の湿重量濃度は、未改善沈降物において0.24~4.79μg/g、及び、Br-PACで改善された沈降物においては0.19~1.62μg/gの範囲であった。虫対照組織での水銀の濃度は、予想どおり低く、全処理及び期間において、0.01~0.10μg/g湿重量の範囲であった。4つの水銀濃度(0、1、10、及び100ppm)における、未処理沈降物と比較した、Br-PACで処理した沈降物試料における、虫組織でのメチル水銀の蓄積(μg/g湿重量)を示す、
図3A及びBを参照されたい。
【0052】
未改善と改善沈降物における、水銀の比率に基づくBr-PACの処理の有効性の一覧を、表3に示す。試験の14日目には、Br-PACで改善された沈降物における、試験組織は、それぞれ、未改善沈降物におけるものよりも、10及び100mg/kgのHg濃度において、およそ2.8及び3.6倍少ない水銀を有した。結果は、28日目においても非常に類似しており、それぞれ、未改善沈降物におけるものよりも、10及び100mg/kgのHg濃度において、4.7及び3.7倍、水銀が少なかった。
【表3】
【0053】
実施例4-BSAFにより測定した生物蓄積の減少
生物蓄積を分析する別の方法は、沈降物蓄積因子に対する生物相(BSAF)であり、これは、沈降物から組織への直接の生物学的利用能の測定をもたらす。14日目及び28日目の両方において、スパイクした水銀処理のそれぞれに対する、沈降物虫での全水銀及びメチル水銀に関して、結果を表4に示す。Br-PAC改善の、100mg/kg Hg処理における、14日目及び28日目の両方における0.01から、28日目における、Br-PAC改善の、1.0mg/kg Hg処理における0.23までの範囲の、全沈降物水銀濃度を使用して、BSAF値を計算した。全水銀濃度は、虫組織虫においてよりも、沈降物虫において、一貫してはるかに高かったことを、これらの結果は示す。沈降物虫での全水銀と比較した、組織虫での水銀の限定的な蓄積にもかかわらず、BSAF値
は、10及び100mg/kgのHgでスパイクした、Br-PAC処理沈降物よりも、一貫して低かった。全水銀に関して、未改善と、Br-PAC改善沈降物との間でのBSAF比率は、差がないことを示す、1.0mg/kgでの処理における0.9xから、10.0mg/kgのHgによる処理における5.1xの平均までの範囲であった。
【0054】
Br-PAC改善沈降物におけるメチル水銀濃度を用いて計算したBSAF値は、10.0mg/kgのHg処理における、28日目での0.75の平均(0.57~0.81、n=5)から、28日目における、未改善の100mg/kgのHgによる処理における22.9の範囲であった。1.0を超えるBSAF値は、メチル水銀が、沈降物から優先的に虫組織に分画されたことを示す。虫組織におけるメチル水銀の生物蓄積は、未改善と改善沈降物との間でのBSAF比率を有する、未改善の沈降物において実質的に多く、14日目における、1.0mg/kgのHg処理における1.6xから、28日目における、10.0mg/kgの処理における24xの平均までの範囲であった。BSAF比率と虫組織濃度の両方に基づく、Br-PAC処理の有効性は、水銀スパイク沈降物濃度の増加に伴い増加した。Br-PAC処理の有効性の顕著な増加は、14日目に観察されたものと比較して、28日目における、未改善と改善沈降物との間での、より大きなBSAF比率と共に、経時的に観察された。
【表4】
*5つの複製物の平均値
表4。Br-PAC改善を含む、及び含まない、メチル水銀用の沈降物蓄積因子(BSAF)に対する生物相
【0055】
実施例5-臭化改善剤を用いるメチル水銀の減少
実施例1及び2は、Br-PACによる沈降物の処理時の、メチル水銀の著しい減少、及び、間隙水中でのメチル水銀の著しい減少を示した。 このメチル水銀研究は、Br-PACの、メチル水銀を減少させる相対的な利点を確認するために設計された。試験セットアップ及び条件は、実施例1に類似する。4つの異なる臭化活性炭を含む、5つの異なる改善剤を、それぞれ3通りにスクリーニングした。表5は、未処理沈降物と比較した、改善剤で処理したメチル水銀汚染沈降物における、間隙水でのメチル水銀濃度についてまとめている。Br-PACは気相臭化プロセスにより調製された一方で、NaBr-PAC及びHBr-PACは、含浸法により調製された。以下の表は、3つの臭化活性炭試料は全て、非臭化活性炭の比較における、間隙水中でのメチル水銀の著しい減少を示すことについて明確に示した。
【表5】
表5。未処理沈降物と比較した、改善剤で処理したメチル水銀汚染沈降物における、間隙水でのメチル水銀濃度。
【0056】
実施形態
加えて、または代替的に、本開示は、以下の実施形態の1つ以上を含むことができる。
【0057】
実施形態1。メチル水銀を土壌間隙水から取り除く方法であって、上記間隙水を含有する沈降物試料を、改善剤により処理するステップと、上記試料において、メチル水銀の量及び/または産生を低下させるステップと、を含む、上記方法。上記改善剤は、吸着剤、及びハロゲン含有化合物、ならびに/または、ハロゲン化吸着剤を含有することができる。方法は、上記間隙水中のメチル水銀の含有量を少なくとも60%減少させることができる。
【0058】
実施形態2。水生生体、海洋生体、及び/または、湿地生体を水銀毒性から保護する方法。方法は、水生生態系、海洋生態系、及び/または、湿地生態系における試料を同定することと、上記試料を改善剤で処理することと、上記試料において、メチル水銀の量及び/または産生を低下させることと、を含むことができる。改善剤は、吸着剤、及びハロゲン源、ならびに/または、ハロゲン化吸着剤を含有することができる。生態系における間隙水でのメチル水銀の含有量は、少なくとも60%減少することができる。
【0059】
実施形態3。作物を水銀汚染から保護する方法。方法は、作物が植えられる土壌試料を同定することと、上記試料を改善剤で処理することと、上記試料において、メチル水銀の量及び/または産生を低下させることと、を含むことができる。改善剤は、吸着剤、及びハロゲン源、ならびに/または、ハロゲン化吸着剤を含有することができる。土壌試料の間隙水でのメチル水銀の含有量は、少なくとも60%減少することができる。
【0060】
実施形態4。間隙水でのメチル水銀の含有量が少なくとも70%減少する、前述の実施形態のいずれか1つに記載の方法。間隙水でのメチル水銀の含有量は、少なくとも80%、または少なくとも90%減少する。
【0061】
実施形態5。上記改善剤が、炭素質材料もしくは無機材料である、または、炭素質材料である、前述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0062】
実施形態6。上記改善剤がハロゲン含有吸着剤である、前述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0063】
実施形態7。上記改善剤が臭素含有活性炭である、前述の実施形態のいずれかに記載の
方法。
【0064】
実施形態8。ハロゲン源が臭素源である、前述の実施形態のいずれかに記載の方法。ハロゲン源は、金属ハロゲン化物塩、またはハロゲン化水素塩であることができる。ハロゲン源は、金属臭化物塩または臭化水素酸であることができる。
【0065】
実施形態9。上記改善剤が、Br-PAC、NaBr-PAC、もしくはHBr-PAC、またはこれらの組み合わせであることができる、前述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0066】
本明細書で開示する実施形態及び特許請求の範囲は、それらの適用が、明細書で説明される、及び、図面で図示される構成要素の構造及び配置の詳細に限定されないものと理解されるべきである。むしろ、明細書及び図面は、想到される実施形態の例をもたらす。本明細書で開示する実施形態及び特許請求の範囲はさらに、他の実施形態を実施可能であり、かつ、様々な方法で実践及び実施することが可能である。また、本明細書で用いる専門用語及び用語は、説明のためのものであり、特許請求の範囲を限定するものとみなされてはならないものと理解されるべきである。
【0067】
したがって、当業者は、明細書及び特許請求の範囲が基づく着想を、本出願で提示される実施形態及び特許請求の範囲のいくつかの目的を実施するための他の構造、方法、及びシステムの設計のための基礎として速やかに利用することができることを理解するであろう。したがって、特許請求の範囲は、そのような等価な構造を含むものとみなされることが重要である。
【国際調査報告】