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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-04
(54)【発明の名称】画像誘導放射線療法のための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 41/00 20200101AFI20230627BHJP
   A61K 49/18 20060101ALI20230627BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20230627BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20230627BHJP
   A61K 47/69 20170101ALI20230627BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230627BHJP
   A61N 5/00 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
A61K41/00
A61K49/18
A61K9/51
A61K47/34
A61K47/69
A61P35/00
A61N5/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022569575
(86)(22)【出願日】2021-05-11
(85)【翻訳文提出日】2022-11-14
(86)【国際出願番号】 EP2021062502
(87)【国際公開番号】W WO2021228867
(87)【国際公開日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】20305503.3
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512089645
【氏名又は名称】ウニヴェルシテ クロード ベルナール リヨン 1
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE CLAUDE BERNARD LYON 1
【住所又は居所原語表記】43 Boulevard du 11 novembre 1918,F-69622 Villeurbanne Cedex,France
(71)【出願人】
【識別番号】519433399
【氏名又は名称】エヌアッシュ テラギ
(71)【出願人】
【識別番号】522444911
【氏名又は名称】ソントゥル ジョルジュ フランソワ ルクレール
(71)【出願人】
【識別番号】503146324
【氏名又は名称】ザ ブリガム アンド ウィメンズ ホスピタル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】The Brigham and Women’s Hospital, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】リュクス,フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】ティユモン,オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ル デュク,ジェラルディーヌ
(72)【発明者】
【氏名】メイゾ,オレリアン
(72)【発明者】
【氏名】ルフィアック,マガリ
(72)【発明者】
【氏名】ミルジョレ,セリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】キャグニー,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ベルベコ,ロス
(72)【発明者】
【氏名】ビラニ,ニーダ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C082
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA65
4C076AA95
4C076BB13
4C076CC50
4C076EE27
4C076EE59
4C082AC00
4C082MA01
4C082PL05
4C084AA11
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C085HH07
4C085JJ02
4C085JJ03
4C085KA09
4C085KA28
4C085KB02
4C085KB12
4C085KB56
4C085KB72
4C085LL18
(57)【要約】
本開示は、腫瘍を治療する方法に関する。特に、本開示は、それを必要とする対象において、磁気共鳴画像誘導放射線療法によって腫瘍を治療する方法であって、前記方法は、以下の工程:
(i)磁気共鳴画像法のためのコントラスト増強および放射線療法のための放射線増感特性の両方を有する、高Z元素含有ナノ粒子の有効量を、それを必要とする対象に投与すること、ならびに
(ii)MR-Linacの手段によって、前記対象を、磁気共鳴画像誘導放射線療法に曝露することを含み、
前記高Z元素含有ナノ粒子は、40より大きい、好ましくは50より大きい原子Z番号を有する元素を含むナノ粒子であり、前記ナノ粒子は、20nm未満、例えば1~10nm、好ましくは2~8nmの平均流体力学的直径を有する、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高Z元素含有ナノ粒子であって、それを必要とする対象の腫瘍を治療する方法における使用のためのナノ粒子であって、前記方法が、
(i)磁気共鳴画像法のためのコントラスト増強および/または放射線療法のための放射線増感特性を有する、高Z元素含有ナノ粒子の有効量を、それを必要とする対象に投与すること、ならびに
(ii)磁気共鳴画像誘導線形加速器(MR-Linac)の手段によって、前記対象を、磁気共鳴画像誘導放射線療法に曝露することを含み、
前記高Z元素含有ナノ粒子は、40より大きい、好ましくは50より大きい原子Z番号を有する元素を含むナノ粒子であり、
前記ナノ粒子は、20nm以下、例えば1~10nm、好ましくは2~8nmの平均流体力学的直径を有し、
前記対象は、前記高Z含有ナノ粒子の有効量の単回投与後に、磁気共鳴画像誘導放射線療法の2以上のセッション、例えば2~7セッションに曝露される、ナノ粒子。
【請求項2】
前記MR-Linacが、好ましくは、0.5Tまたはそれ以下(例えば、0.35T)の磁場強度を有するMR-Linacの中から選択される、請求項1に記載の使用のためのナノ粒子。
【請求項3】
前記ナノ粒子が、高Z元素として、希土類金属、または希土類金属の混合物を含む、請求項1または2に記載の使用のためのナノ粒子。
【請求項4】
前記ナノ粒子が、高Z元素として、ガドリニウム、ビスマス、またはそれらの混合物を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のためのナノ粒子。
【請求項5】
前記ナノ粒子が、高Z元素のキレート、例えば希土類元素のキレートを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のためのナノ粒子。
【請求項6】
前記ナノ粒子が、以下を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のためのナノ粒子。
・ポリオルガノシロキサン、
・前記ポリオルガノシロキサンに共有結合したキレート、
・前記キレートによって錯化された高Z元素。
【請求項7】
前記ナノ粒子が、以下を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のためのナノ粒子。
・前記ナノ粒子の全重量の少なくとも8%、好ましくは8%~50%のシリコン重量比率を有するポリオルガノシロキサン、
・ナノ粒子当たり5~100、好ましくは5~20を含む割合で、前記ポリオルガノシロキサンに共有結合したキレート、および、
・前記キレートと錯体を形成する高Z元素。
【請求項8】
前記ナノ粒子が、前記ナノ粒子上に以下のキレート剤:DOTA、DTPA、EDTA、EGTA、BAPTA、NOTA、DOTAGA、およびDTPABA、またはそれらの混合物のうちの1つ以上をグラフトすることによって得られる、前記高Z元素を錯化するためのキレートを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のためのナノ粒子。
【請求項9】
前記ナノ粒子が、下記式のガドリニウムキレート化ポリシロキサンナノ粒子である、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のためのナノ粒子。
【化1】

式中、PSはポリシロキサンのマトリックスであり、かつ、
nは5~50、好ましくは5~20であり、流体力学的直径は1~10nm、例えば2~8nmである。
【請求項10】
前記方法が、放射線療法への最初の曝露前の2~10日間、好ましくは2~7日間の期間内に、放射線増感剤として、高Z元素含有ナノ粒子の有効量を、それを必要とする前記対象に投与することを含む、第1の腫瘍予備充填工程を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のためのナノ粒子。
【請求項11】
前記対象が、磁気共鳴画像のための造影剤をさらに投与することなく、磁気共鳴画像誘導放射線療法の少なくとも1つ以上の追加セッションに曝露される、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のためのナノ粒子。
【請求項12】
前記対象が、5~7日間以内の磁気共鳴画像誘導放射線療法の2以上のセッションに曝露され、典型的には、各セッションの間に2日間または3日間の最小所要時間を伴う、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用のためのナノ粒子。
【請求項13】
前記対象が、磁気共鳴画像誘導放射線療法の1セッションにつき、約3Gy~約20Gyの線量の電離放射線に曝露され、総線量が、好ましくは最高10分割で、例えば1~10分割で、典型的には4~10分割で投与される、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のためのナノ粒子。
【請求項14】
前記腫瘍が、固形腫瘍であり、好ましくは、以下から選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の使用のためのナノ粒子。
(i)子宮頸癌、直腸癌、肺癌、頭頸部癌、前立腺癌、結腸直腸癌、肝臓癌、および膵臓癌の原発腫瘍、ならびに
(ii)典型的には分画内移動を起こす、胸骨などの骨転移。
【請求項15】
前記ナノ粒子が、50~150mg/mL、好ましくは80~120mg/mL、例えば100mg/mLの濃度の注射液として投与され、好ましくは静脈注射によって投与される、請求項1~14のいずれか一項に記載の使用のためのナノ粒子。
【請求項16】
磁気共鳴画像誘導放射線療法のために投与される治療有効量が、50mg/kg~150mg/kg、典型的には80~120mg/kg、例えば100mg/kgである、請求項15に記載の使用のためのナノ粒子。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術領域〕
本開示は、腫瘍を治療する方法に関する。特に、本開示は、それを必要とする対象において、磁気共鳴画像誘導放射線療法によって腫瘍を治療する方法であって、前記方法は、以下の工程:
(i)磁気共鳴画像法のためのコントラスト増強および/または放射線療法のための放射線増感特性を有する、高Z元素含有ナノ粒子の有効量を、それを必要とする対象に投与すること、ならびに
(ii)磁気共鳴画像誘導線形加速器(MR-Linac)の手段によって、前記対象を、磁気共鳴画像誘導放射線療法に曝露することを含み、
前記高Z元素含有ナノ粒子は、40より大きい、好ましくは50より大きい原子Z番号を有する元素を含むナノ粒子であり、前記ナノ粒子は、20nm未満、例えば1~10nm、好ましくは2~8nmの平均流体力学的直径を有する、方法に関する。
【0002】
〔背景技術〕
放射線療法(radiation therapy)(radiotherapyとしても知られる)は、最も用いられている抗腫瘍戦略の1つである。全ての癌患者のうち半数を超える患者が、電離放射線(IR)単独または手術もしくは化学療法との併用で治療している。医学物理学において実現された近年の進歩(低/高エネルギー放射線の開発、単分割スケジュール、少分割スケジュール、多分割スケジュールの実施、および使用線量率の多様化)並びに革新的な医療技術(3D-コンホメーション放射線療法(3D-CRT)、強度変調放射線療法(IMRT)、定位放射線手術(SRS)、および機能的イメージングなど)の開発が、放射線療法の最も一般的な副作用である周囲の健康な組織への影響を低減しながら、腫瘍に対する効率的な放射線量のより良い送達に寄与している。
【0003】
磁気共鳴(MR)スキャナと線形加速器とを単一の機械に組み合わせることは、癌放射線療法の結果を大幅に改善することができる最近の開発である。特に、MRイメージングは、とりわけ軟組織癌のための腫瘍描写を改善する機会を提供する。MRイメージングと電離放射線による治療とを同時に行う可能性は、経時的な腫瘍の空間的発展を考慮に入れることを可能にする。さらに、リアルタイムMRイメージングは、呼吸によるリスクにさらされている腫瘍および臓器の動きを補正することができる。
【0004】
しかしながら、これらの新たな治療プロトコルの1つの制限は、市販の造影剤をその状況で使用することが困難であることである。それらは腫瘍において短い残留磁気(remanence)を有し、これは、リアルタイムイメージングのコントラストを改善するために、放射線療法のそれぞれのフラクションの前に1回の注射を実施しなければならないことを意味する。患者および介護者に過度の負担を生じさせることに加えて、これは、市販の造影剤が、患者への限られた曝露について開発および検証されているので、安全性の問題であり得る。
【0005】
したがって、MR画像誘導放射線療法を使用するプロトコルを改善する必要がある。
【0006】
本発明者らは、特定の高Z元素含有ナノ粒子が、数日間、MRイメージングおよび/または放射線増感特性のための、腫瘍内で適切なコントラストを提供するという予期せぬ発見を行った。本ヒト腫瘍におけるこのようなナノ粒子の予想外に長い残留磁気は、本発明者が磁気共鳴画像誘導放射線療法に造影剤および/または放射線増感剤としてのこのような高Z元素含有ナノ粒子の使用を組み合わせた新しい治療法をデザインすることを可能にし、ここで、ナノ粒子の単回投与は、それを必要とする対象における腫瘍の治療のための磁気共鳴画像誘導放射線療法の多数の分割を可能にする。
【0007】
〔簡単な説明〕
したがって、本開示は、高Z元素含有ナノ粒子であって、それを必要とする対象の腫瘍を治療する方法における使用のためのナノ粒子であって、前記方法が、
(i)磁気共鳴画像法のためのコントラスト増強および/または放射線療法のための放射線増感特性を有する、高Z元素含有ナノ粒子の有効量を、それを必要とする対象に投与すること、ならびに
(ii)磁気共鳴画像誘導線形加速器(MR-Linac)の手段によって、前記対象を、磁気共鳴画像誘導放射線療法に曝露することを含み、
前記高Z元素含有ナノ粒子は、40より大きい、好ましくは50より大きい原子Z番号を有する元素を含むナノ粒子であり、前記ナノ粒子は、20nm以下、例えば1~10nm、好ましくは2~8nmの平均流体力学的直径を有する、ナノ粒子である、方法に関する。
【0008】
特定の実施形態では、前記MR-Linacが、好ましくは、0.5Tまたはそれ以下(例えば、0.35T)の磁場強度を有するMR-Linacの中から選択される。
【0009】
特定の実施形態では、前記ナノ粒子が、高Z元素として、希土類金属、または希土類金属の混合物を含む。例えば、前記ナノ粒子は、高Z元素として、ガドリニウム、ビスマス、またはそれらの混合物を含み得る。
【0010】
特定の実施形態では、前記ナノ粒子が、高Z元素のキレート、例えば希土類元素のキレートを含む。典型的には、前記ナノ粒子が、以下を含む
(i)ポリオルガノシロキサン、
(ii)前記ポリオルガノシロキサンに共有結合したキレート、
(iii)前記キレートによって錯化された高Z元素。
【0011】
特定の実施形態では、前記ナノ粒子が、以下を含む
(i)前記ナノ粒子の全重量の少なくとも8%、好ましくは8%~50%のシリコン重量比率を有するポリオルガノシロキサン、
(ii)ナノ粒子当たり5~100、好ましくは5~20を含む割合で、前記ポリオルガノシロキサンに共有結合したキレート、および
(iii)前記キレートと錯体を形成する高Z元素。
【0012】
特定の実施形態では、前記ナノ粒子が、前記ナノ粒子上に以下のキレート剤:DOTA、DTPA、EDTA、EGTA、BAPTA、NOTA、DOTAGA、およびDTPABA、またはそれらの混合物のうちの1つ以上をグラフトすることによって得られる、前記高Z元素を錯化するためのキレートを含む。
【0013】
特に好適な実施形態では、前記ナノ粒子が、ガドリニウムキレート化ポリシロキサンナノ粒子であり、より好ましくは、下記式:
【0014】
【化1】
【0015】
式中、PSはポリシロキサンのマトリックスであり、かつ、n
は5~50、好ましくは5~20であり、流体力学的直径は1~10nm、例えば2~8nmである。
【0016】
特定の実施形態では、前記治療する方法が、放射線療法への最初の曝露前の2~10日間、好ましくは2~7日間の期間内に、放射線増感剤として、前記高Z元素含有ナノ粒子の有効量を、それを必要とする前記対象に投与することを含む、第1の腫瘍予備充填工程を含む。
【0017】
有利なことに、前記対象が、磁気共鳴画像のための造影剤をさらに投与することなく、磁気共鳴画像誘導放射線療法の少なくとも1つ以上の追加セッションに曝露され得る。
【0018】
典型的には、前記対象が、前記高Z含有ナノ粒子の有効量の単回投与後、磁気共鳴画像誘導放射線療法の2以上のセッション、例えば、2~7セッションに曝露される。より具体的な実施形態では、前記対象が、5~7日間以内の磁気共鳴画像誘導放射線療法の2以上のセッションに曝露され、典型的には、各セッションの間に2日間または3日間の最小所要時間を伴う。
【0019】
特定の実施形態では、対象が、磁気共鳴画像誘導放射線療法の1セッションにつき、約3Gy~約20Gyの線量の電離放射線に曝露され、総線量が、好ましくは最高10分割で、例えば1~10分割で投与される。
【0020】
本開示の方法により標的とされる腫瘍が、固形腫瘍であり得、好ましくは、以下から選択され得る
・子宮頸癌、直腸癌、肺癌、頭頸部癌、前立腺癌、結腸直腸癌、肝臓癌、および膵臓癌の原発腫瘍、ならびに
・典型的には分画内移動を起こす、胸骨などの骨転移。
【0021】
特定の実施形態では、前記ナノ粒子が、50~150mg/mL、好ましくは80~120mg/mL、例えば100mg/mLの濃度の注射液として投与され、好ましくは静脈注射によって投与される。例えば、磁気共鳴画像誘導放射線療法のために投与される治療有効量は、50mg/kg~150mg/kg、典型的には80~120mg/kg、例えば100mg/kgである。
【0022】
〔図の説明〕
図1.投与量に対するMRI増強。グラフ上の各点は、1cmを超える最長径を有する転移において測定されたMRI増強値に相当する。MRI増強は、各用量、プールされた15~30mg/kg用量、プールされた50~75mg/kgおよび100mg/kgの間で統計学的に異なっていることがわかった。
【0023】
図2.AGuIX濃度に対するMRI増強。グラフ上の各点は、患者#13の1cmを超える最長径を有する転移において測定されたMRI増強およびAGuIX濃度値に相当する。黒い曲線は、一連の点に適用される線形回帰に相当する。破線の曲線は95%信頼帯に相当する。
【0024】
図3.ナノ粒子投与1週間後のMRI増強。患者#13のシグナル増強マップ(色分け)の一部を、患者への静脈注射の2時間後(左側画像)および1週間後(右側画像)に得られた元の3D T強調画像に重ね合わせる。矢印はAGuIX増強転移を指している。
【0025】
図4.ViewRayのMRIdianを用いたMultihance(A)およびAGuIX(B)のMRI陽性シグナル。
【0026】
図5.ViewRayのMRIdianを用いたMultihanceおよびAGuIXのシグナルの強度。
【0027】
図6.AGuIX(A)およびBi-AGuIX(50/50)(B)のMRIシグナルの比較。
【0028】
図7.ViewRayのMRIdianを用いた平均シグナル強度(C)の定量化。
【0029】
図8.ViewRayのMRIdianおよびTrueFISP(A)またはT1強調(B)を用いた、AGuIXナノ粒子の静脈内投与後の皮下NSCLC腫瘍の画像(腫瘍は白色の丸で囲まれている)。ViewRayのMRIdianおよびTrueFISPシークエンス(C)を用いたAGuIXナノ粒子の腫瘍内投与後の皮下NSCLC腫瘍の画像。
【0030】
〔詳細な説明〕
本開示は、一部には、特定のナノ粒子のヒト腫瘍における長い残留磁気、ならびにMR画像誘導放射線療法の複数回のセッションを伴う癌治療におけるMR造影剤および/または放射線増感剤としての使用のためのそれらの優位性という、発明者らによって示された驚くべき知見に基づいている。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「造影剤」は、隣接構造または非病理学的構造に対して、特定の解剖学的構造(例えば、特定の組織または器官)または病理学的解剖学的構造(例えば、腫瘍)の視覚化を可能にするコントラストを人工的に増加させる目的で、医療用イメージングにおいて使用される任意の製品または組成物を意味することを意図する。用語「イメージング剤」は隣接構造または非病理学的構造に対して、特定の解剖学的構造(例えば、特定の組織または器官)または病理学的解剖学的構造(例えば、腫瘍)を視覚化することを可能にするシグナルを生じさせる目的で、医療用イメージングで使用される任意の製品または組成物(以下、コントラスト増強とも称される)を意味することを意図する。造影剤またはイメージング剤の作用原理は、使用されるイメージング技術に依る。
【0032】
イメージングは、磁気共鳴画像法(MRI)、コンピュータ断層撮影画像法、陽電子放出断層撮影画像法、またはそれらの任意の組み合わせを使用して実行され得る。本明細書で使用される場合、用語「MR造影剤」は、磁気共鳴画像法においてコントラストを増強することを可能にする造影剤をいう。
【0033】
本明細書で使用される場合、用語「放射線増感」は当業者によって容易に理解される。一般に、放射線増感は放射線療法(例えば、光子放射線、電子放射線、陽子放射線、重イオン放射線など)に対する癌細胞の感受性を増加させる工程をいう。
【0034】
〔本開示の治療方法における使用のための高Z含有ナノ粒子〕
いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、本開示の治療方法の有利な効果は、特にナノ粒子の2つの特徴に結び付けられると考えられる:
(i)それらは、MRイメージングのための、放射線増感特性および/またはコントラスト増強特性を有する高Z元素、典型的には高Zカチオンの錯体を含有する;
(ii)それらは、小さい平均流体力学的直径を有する。
【0035】
本明細書で使用される前記高Z元素は、40より大きく、例えば50より大きい原子Z数を有する元素である。
【0036】
特定の実施形態では、前記高Z元素が重金属から選択される。前記高Z元素は、より好ましくは、Au、Ag、Pt、Pd、Sn、Ta、Zr、Tb、Tm、Ce、Dy、Er、Eu、La、Nd、Pr、Lu、Yb、Bi、Hf、Ho、Pm、Sm、In、およびGd、ならびにそれらの混合物である。
【0037】
高Z元素は、酸化物および/またはカルコゲニドまたはハロゲン化物として、または有機キレート剤などのキレート剤との錯体として、ナノ粒子中に含まれるカチオン性元素であることが好ましい。
【0038】
ナノ粒子のサイズ分布は、例えば、PCS(光子相関分光法)に基づくMalvern
Zetasizer Nano-S粒子径測定器などの市販の粒子径測定器を用いて測定する。
【0039】
本開示の目的のために、用語「平均流体力学的直径」または「平均直径」は、粒子の直径の調和平均を意味することが意図される。このパラメータを測定する方法は、規格ISO13321:1996にも記載されている。
【0040】
例えば、20nm未満、特に1~10nm、さらにより好ましくは、1~8nm、または例えば、2~8nm、または典型的には約5nmの平均流体力学的直径を有するナノ粒子が本明細書中に開示される方法に好適である。特に、静脈注射後の腫瘍において、優れた受動的標的化、および迅速な腎排泄(したがって、低い毒性)を提供することが示されている。
【0041】
好ましくは、前記ナノ粒子が、少なくとも50重量%のガドリニウム(Gd)、ジスプロシウム(Dy)、ルテチウム(Lu)、ビスマス(Bi)またはホルミウム(Ho)、またはそれらの混合物(ナノ粒子中の高Z元素の総重量に対して)、例えば少なくとも50重量%のガドリニウムを、ナノ粒子中の高Z元素として含む。
【0042】
特に好ましい実施形態では、本開示の方法で使用する前記ナノ粒子がガドリニウムをベースにしたナノ粒子である。
【0043】
特定の実施形態では、前記高Z元素が、例えば、カルボン酸、アミン、チオール、またはホスホネート基を有するキレート剤から選択される、有機キレート剤と錯体を形成するカチオン性元素である。
【0044】
好ましい実施形態では、ナノ粒子が高Z元素、および、任意に、キレート剤に加えて、生体適合性コーティングをさらに含む。このような生体適合性に好適な薬剤は、生体適合性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、生体ポリマー、多糖類、またはポリシロキサン)を含むが、これらに限定されない。
【0045】
特定の実施形態では、ナノ粒子は、50~5000mM-1・s-1(37℃および1.4Tで)の粒子当たりの緩和率r1、および/または少なくとも5%、例えば5%~30%のGd重量比率を有するように選択される。
【0046】
1つの特定の実施形態では、前記ナノ粒子は非常に小さい流体力学的直径、例えば1~10nm、好ましくは2~8nmを有し、高Z元素のキレート、例えば希土類元素のキレートを含むナノ粒子である。特定の実施形態では、前記ナノ粒子がガドリニウムまたはビスマスのキレートを含む。
【0047】
上述の実施形態のいずれかと組み合わせることができる特定の実施形態では、前記高Z元素含有ナノ粒子は以下を含む
・ポリオルガノシロキサン、
・前記ポリオルガノシロキサンに共有結合したキレート剤、
・前記キレート剤によって錯化された高Z元素。
【0048】
本明細書で使用される場合、用語「キレート剤」は、1つ以上の金属イオンを錯化することが可能な1つ以上の化学部分をいう。
【0049】
例えば、キレート剤には1,4,7,-トリアザシクロノナン三酢酸(NOTA)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA)、1,4,7-トリアザシクロノナン-1-グルタル酸-4,7-二酢酸(NODAGA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、シクロヘキシル-1,2-ジアミン四酢酸(CDTA)、エチレングリコール-0,0’ビス(2-アミノエチル)-N,N,N’,N’-四酢酸(EGTA)、N,N-ビス(ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン-N,N’-二酢酸(HBED)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、ヒドロキシエチルジアミン三酢酸(HEDTA)、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-N,N’,N’’,N’’’-四酢酸(TETA)、および1,4,7,10-テトラアザ-1,4,7,10-テトラ-(2-カルバモイルメチル)-シクロドデカン(TCMC)および1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン、1-(グルタル酸)-4,7,10-三酢酸(DOTAGA)が含まれるが、これらに限定されない。
【0050】
好ましい実施形態では、前記キレート剤が以下の中から選択される:
【0051】
【化2】
【0052】
式中、波状結合はナノ粒子を形成する生体適合性コーティングの連結基にキレート剤を連結する結合を示す。
【0053】
上述の実施形態と好適に組み合わせることができる特定の実施形態では、希土類元素の前記キレートが、ガドリニウムおよび/またはビスマスのキレート、好ましくはDOTAまたはDOTAGAキレート化Gd3+および/またはBi3+である。より具体的な実施形態では、希土類元素の前記キレートが、(ガドリニウムのモル)/(ビスマスのモル)の比率が1であるガドリニウムおよびビスマスのキレートである。
【0054】
特定の好ましい実施形態では、ナノ粒子当たりの高Z元素の比率、例えばナノ粒子当たりの希土類元素、例えばガドリニウム(任意でDOTAGAでキレート化されている)の比率は、3~100、好ましくは5~50、例えば5~20、典型的には約10である。このような比率で、ナノ粒子は、0.35Tまたは0.5TのMR-Linacなどの低い磁場強度を有するMR-Linacと共に使用される場合でさえ、MRイメージングのための優れた緩和性およびコントラスト増強特性を有する。
【0055】
特定の実施形態では、ハイブリッドナノ粒子はコアシェル型である。希土類酸化物および任意に官能化されたポリオルガノシロキサンマトリックスからなるコアをベースにしたコアシェル型のナノ粒子が知られている(特に、WO2005/088314、WO2009/053644参照)。
【0056】
ナノ粒子はさらに、特定の組織へのナノ粒子の標的化を可能にする分子で官能化されてもよい。前記薬剤は共有結合によってナノ粒子に結合されてもよいし、例えば、カプセル化または親水性/疎水性相互作用による、またはキレート剤を使用する、非共有結合によってトラップされてもよい。
【0057】
1つの特定の実施形態では、以下を含むハイブリッドナノ粒子が使用される:
-希土類カチオンMn+を含むポリオルガノシロキサン(POS)マトリックスであって、nは2~4の整数であり、任意に部分的に金属酸化物および/またはオキシ水酸化物の形態であり、任意にドープカチオンDm+と結合し、mは2~6の整数であり、Dは好ましくはM以外の希土類金属、アクチニドおよび/または遷移元素である;
-共有結合-Si-C-を介して前記POSに共有結合したキレート
-前記Mn+カチオンおよび好適なDm+カチオンが前記キレートによって錯化される。
【0058】
コアシェル型構造の場合、POSマトリックスは、金属カチオンベースのコアを取り囲む表面層を形成する。その厚さは、0.5~10nmの範囲となり得、総体積の25%~75%に相当し得る。
【0059】
POSマトリックスは外部媒介物に対するコアの保護(特に、加水分解に対する保護)として作用し、造影剤の特性(例えば、ルミネセンス)を最適化する。それはまた、キレート剤および標的分子のグラフト化を介して、ナノ粒子の官能化を可能にする。
【0060】
本開示の治療方法において使用するための超微細ナノ粒子
特に好ましい実施形態では、前記ナノ粒子が以下の式のガドリニウムキレート化ポリシロキサンナノ粒子である
【0061】
【化3】
【0062】
式中、PSはポリシロキサンのマトリックスであり、かつnは5~50であり、典型的には5~20であり、かつ流体力学的直径は1~10nm、例えば2~8nm、典型的には約5nmである。
【0063】
より具体的には、上記式に記載される前記ガドリニウムキレート化ポリシロキサンナノ粒子が、次のセクションに記載されるAGuIX超微細ナノ粒子である。
【0064】
本開示の方法にしたがって使用し得る上述の超微細ナノ粒子は、以下の工程からなるトップダウン合成経路によって得られてもよく、または得ることができる:
a.金属(M)酸化物コアを得る工程であって、Mが上述の高Z元素であり、好ましくはガドリニウムである工程、
b.例えばゾルゲル法によりM酸化物コアの周りにポリシロキサンシェルを添加する工程、
c.キレート剤をPOSシェルにグラフト化し、前記キレート剤が-Si-C-共有結合によって前記POSシェルに結合され、それによってコアシェル前駆体ナノ粒子を得る工程、および、
d.金属酸化物コアの溶解のためにコアシェル前駆体ナノ粒子を水溶液中で精製および移動させる工程。
グラフト化剤は、(M)のカチオン性形態を錯化するのに十分な量であり、コアの溶解後の得られた超微細ナノ粒子の平均流体力学的直径は、10nm未満、例えば1~10nm、典型的には8nm未満、例えば2~8nmである。
【0065】
金属酸化物コアの完全な溶解を伴う好ましい実施形態では、上述の方法にしたがって得られたこれらのナノ粒子は、少なくとも1つのコーティングによってカプセル化された金属酸化物のコアを含まない。これらのナノ粒子の合成に関するさらなる詳細を以下に示す。
【0066】
このトップダウン合成法は、典型的には1~8nm、より具体的には2~8nmの観測サイズを生ずる。したがって、本明細書で使用される用語は、超微細ナノ粒子である。
【0067】
あるいは、10nm未満、例えば1~8nm、典型的には2~6nmの平均直径を有する前記超微細ナノ粒子を調製するための別の「ワンポット」合成方法を以下に記載する。
【0068】
これらの超微細ナノ粒子またはコアフリーナノ粒子に関するさらなる詳細、それらを合成するための工程および使用は、特許出願WO2011/135101、WO2018/224684、またはWO2019/008040に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0069】
本開示の治療する方法における使用のためのナノ粒子の好ましい実施形態を得るための方法
一般に、当業者は、本開示にしたがって使用されるナノ粒子を容易に製造することができるであろう。より具体的には、以下の要素に留意されたい:
ランタニド酸化物またはオキシ水酸化物のコアベースのコアシェル型ナノ粒子について、例えば、P. Perriat et al., J. Coll. Int. Sci, 2004, 273, 191; O. Tillement et al., J. Am. Chem. Soc., 2007, 129, 5076およびP. Perriat et al., J. Phys. Chem. C, 2009, 113, 4038に記載されているように、溶媒としてアルコールを使用する製造工程で使用することができる。
【0070】
POSマトリックスについて、Stoeber(Stoeber, W; J. Colloid Interf Sci 1968, 26, 62)によって開始されたこれらに由来するいくつかの技術を使用してもよい。また、Louisら(Louis et al., 2005, Chemistry of Materials, 17, 1673-1682)または国際出願WO2005/088314に記載されているようなコーティングに用いられる工程を使用してもよい。
【0071】
実際には、超微細ナノ粒子の合成が、例えばMignot et al. Chem. Eur. J. 2013, 19, 6122-6136に記載されている:典型的には、コア/シェル型の前駆体ナノ粒子が(修飾ポリオール経路を介して)ランタニド酸化物コアおよび(ゾル/ゲルを介して)ポリシロキサンシェルで形成される;この物体は、例えば、約5~10nmの流体力学的直径を有する。したがって、非常に小さなサイズ(10nm未満に調整可能)のランタニド酸化物コアは、以下の刊行物に記載されている手法の1つによって、アルコール中で製造することができる:P. Perriat et al., J. Coll. Int. Sci, 2004, 273, 191; O. Tillement et al., J. Am. Chem. Soc., 2007, 129, 5076およびP. Perriat et al., J. Phys. Chem. C, 2009, 113, 4038。
【0072】
これらコアは、例えば、以下の刊行物に記載されているプロトコルにしたがって、ポリシロキサンの層でコーティングされることができる:C. Louis et al., Chem. Mat., 2005, 17, 1673およびO. Tillement et al., J. Am. Chem. Soc., 2007, 129, 5076。
【0073】
意図した金属カチオンに特異的なキレート剤(例えば、Gd3+用のDOTAGA)をポリシロキサンの表面にグラフトする;その一部を層の内側に挿入することもできるが、ポリシロキサンの形成の制御は複雑であり、簡単な外部グラフトはこれら非常に小さなサイズで、グラフトに充分な割合を与える。
【0074】
ナノ粒子は透析法または接線濾過法といった手段によって、例えば、好適な大きさの細孔を含む膜上で、合成残渣から分離することができる。
【0075】
コアは溶解によって(例えば、pHを変更することによって、または溶液中に錯化分子を導入することによって)破壊される。したがって、コアのこの破壊は、ポリシロキサン層を散乱させ(緩慢な腐食または崩壊のメカニズムによる)、最終的に複雑な形態を有するポリシロキサン物を得ることを可能にする。その特徴的な大きさは、ポリシロキサン層の厚さの規模である。すなわち、これまでに製造された物よりもはるかに小さい。
【0076】
したがって、コアを除去することにより、直径が約5~10nmから8nm未満の粒子の大きさ、例えば2~8nmの粒子の大きさに縮小することが可能になる。さらに、この作業により、同じ大きさではあるがM(例えば、ガドリニウム)を表層のみに含む理論的なポリシロキサンナノ粒子に比べて、1nm当たりのM(例えば、ガドリニウム)の数を増加させることができる。ナノ粒子の大きさに対するMの数は、EDXで測定したM/Si原子比によって評価できる。典型的には、超微細ナノ粒子当たりのこのMの数が5~50であり得る。
【0077】
1つの特定の実施形態では、本開示によるナノ粒子が酸官能基を有するキレート剤、例えばDOTAまたはDOTAGAを含む。ナノ粒子の前記酸官能基は、例えば、EDC/NHS(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド/N-ヒドロスクシンイミド)を用いて、適正量の標的化分子の存在下で活性化される。次いで、このようにグラフトされたナノ粒子は、例えば接線濾過によって精製される。
【0078】
あるいは、本開示によるナノ粒子が、生理学的pHで負に帯電している少なくとも1つのヒドロキシシランまたはアルコキシシラン、および、ポリアミノポリカルボン酸から選択される少なくとも1つのキレート剤を以下と混合することを含む合成方法(「ワンポット合成方法」)によって得られてもよく、または得ることができる。
【0079】
-生理学的pHで中性である少なくとも1つのヒドロキシシランまたはアルコキシシラン、および/または、
-生理学的pHで正に帯電し、アミノ官能基を含む少なくとも1つのヒドロキシシランまたはアルコキシシラン、
ここで:
-中性のシラン対負に帯電したシランのモル比Aは、以下のように定義される:0≦A≦6、好ましくは0.5≦A≦2;
-正に帯電したシラン対負に帯電したシランのモル比Bは、以下のように定義される:0≦B≦5、好ましくは0.25≦B≦3;
-中性および正に帯電したシラン対負に帯電したシランのモル比Cは、以下のように定義される:0<C≦8、好ましくは1≦C≦4。
【0080】
このようなワンポット合成方法のうちより特定の実施形態では、この方法は、生理学的pHで負に帯電している少なくとも1つのアルコキシシラン(APTES-DOTAGA、TANED、CEST、およびこれらの混合物の中から選択される前記アルコキシシラン)を、以下と混合することを含む
-少なくとも生理学的pHで中性であるアルコキシシランであって、前記アルコキシシランは、TMOS、TEOSおよびそれらの混合物の中から選択される、アルコキシラン、および/または
-生理学的pHで正に帯電したAPTES、
ここで:
-中性シラン対負に帯電したシランのモル比Aは、以下のように定義される:0≦A≦6、好ましくは0.5≦A≦2;
-正に帯電したシラン対負に帯電したシランのモル比Bは、以下のように定義される:0≦B≦5、好ましくは0.25≦B≦3;
-中性および正に帯電したシラン対負に帯電したシランのモル比Cは、以下のように定義される:0<C≦8、好ましくは1≦C≦4。
【0081】
特定の実施形態によれば、ワンポット合成方法は、生理学的pHで負に帯電したAPTES-DOTAGAを以下と混合することを含む
-生理学的pHで中性である少なくとも1つのアルコキシシランであって、前記アルコキシシランは、TMOS、TEOS、およびそれらの混合物の中から選択される、アルコキシシラン、および/または
-生理学的pHで正に帯電したAPTES、
ここで:
-中性シラン対負に帯電したシランのモル比Aは、以下のように定義される:0≦A≦6、好ましくは0.5≦A≦2;
-正に帯電したシラン対負に帯電したシランのモル比Bは、以下のように定義される:0≦B≦5、好ましくは0.25≦B≦3;
-中性および正に帯電したシラン対負に帯電したシランのモル比Cは、以下のように定義される:0<C≦8、好ましくは1≦C≦4。
【0082】
AGuIXナノ粒子
より特に好ましい実施形態では、前記ガドリニウムキレート化ポリシロキサンベースのナノ粒子が下記式の超微細AGuIXナノ粒子である
【0083】
【化4】
【0084】
式中、PSはポリシロキサンであり、かつnは平均して約10であり、かつ5±2nmの流体力学的直径であり、かつ約10±1kDaの質量を有する。
【0085】
前記AGuIXナノ粒子は平均化学式によって記載することもできる:
(GdSi3-824-345-815-3040-60、1-10HO)
本開示の方法による使用のためのナノ粒子の医薬製剤
医薬として使用される場合、本明細書中で提供される使用のための前記高Zナノ粒子を含有する組成物は、ナノ粒子の懸濁液の医薬製剤の形態で投与することができる。これらの製剤は、本明細書中または他に記載されるように調製することができる。これらの製剤は、局所的または全身的治療が所望されるかどうか、および治療部位によって、種々の経路から投与されることができる。
【0086】
特に、本明細書に記載されるような使用のための前記医薬製剤は、活性成分として、本明細書で提供される高Z含有ナノ粒子の懸濁液を、1つ以上の薬学的に許容可能な担体(賦形剤)と組み合わせて含有する。本明細書で提供される医薬製剤を製造する際に、ナノ粒子組成物は、例えば賦形剤と混合され得るか、または賦形剤によって希釈され得る。賦形剤が希釈剤として機能する場合、賦形剤は、ナノ粒子組成物のためのビヒクル、担体、または媒体として作用する固体、半固体、または液体材料であってもよい。
【0087】
したがって、医薬製剤は、粉末、錠剤、エリキシル、懸濁液、エマルジョン、溶液、シロップ、エアゾール(固体として、または液体媒体中で)、滅菌注入溶液、滅菌包装粉末などの形態であってもよい。
【0088】
特定の実施形態では、本明細書に記載されるような使用のための前記医薬製剤は、例えば静脈注射用の水溶液中に溶解される予備充填バイアル中に含有される滅菌凍結乾燥粉末である。特定の実施形態では、前記凍結乾燥粉末が活性成分として、有効量の前記高Z含有ナノ粒子、典型的にはガドリニウムキレート化ポリシロキサンベースのナノ粒子、およびより具体的には本明細書に記載されるようなAGuIXナノ粒子を含む。ある特定の実施形態では、前記凍結乾燥粉末がバイアル当たり約200mg~15g、例えば、バイアル当たり280~320mgのAGuIX、典型的にはバイアル当たり300mgのAGuIX、または約800mg~1200mg、例えば、バイアル当たり1gのAGuIXのいずれかを含有する。
【0089】
前記粉末はさらに、1つ以上の追加賦形剤、特にCaCl、例えば、0.5~0.80mgのCaCl、典型的には0.66mgのCaClを含み得る。
【0090】
前記凍結乾燥粉末は、水溶液中、典型的には注射用の水の中で溶解することができる。したがって、特定の実施形態では、本開示による使用のための前記医薬溶液が活性成分として、本明細書に記載されるような有効量の前記高Z含有ナノ粒子、典型的にはガドリニウムキレート化ポリシロキサンベースのナノ粒子、およびより具体的にはAGuIXナノ粒子を含む注入用溶液である。
【0091】
例えば、本明細書に開示される方法で使用するための前記注入用溶液は、ガドリニウムキレート化ポリシロキサンベースのナノ粒子の溶液であり、典型的にはAGuIXナノ粒子溶液である。前記注入用溶液は、50~150mg/mL、例えば80~120mg/mL、典型的には100mg/mLの溶液であり、1つまたは複数の追加の薬学的に許容される賦形剤、例えば0.1~0.3mg/mLのCaCl、典型的には0.22mg/mLのCaClを任意で含む。
【0092】
〔本開示の治療方法〕
本開示は、腫瘍の治療を必要とする対象の腫瘍を治療する方法であって、前記方法が、
(i)磁気共鳴画像法(MRI)のためのコントラスト増強および/または放射線増感特性を有する、高Z元素含有ナノ粒子の有効量を、それを必要とする対象に投与すること、ならびに
(ii)MR-Linacの手段によって、前記対象を、磁気共鳴画像誘導放射線療法に曝露することを含み、
前記高Z元素含有ナノ粒子は、40より大きい、好ましくは50より大きい原子Z番号を有する元素を含むナノ粒子であり、前記ナノ粒子は、20nm未満、例えば1~10nm、好ましくは8nm未満、より好ましくは2~8nmの平均流体力学的直径を有する、方法に関する。
【0093】
本開示はまた、高Z元素含有ナノ粒子であって、それを必要とする対象の腫瘍を治療する方法における使用のためのナノ粒子であって、前記方法が、
(i)磁気共鳴画像法(MRI)のためのコントラスト増強および/または放射線増感特性を有する、高Z元素含有ナノ粒子の有効量を、それを必要とする対象に投与すること、ならびに
(ii)MR-Linacの手段によって、前記対象を、磁気共鳴画像誘導放射線療法に曝露することを含み、
前記高Z元素含有ナノ粒子は、40より大きい、好ましくは50より大きい原子Z番号を有する元素を含むナノ粒子であり、前記ナノ粒子は、20nm未満、例えば1~10nm、好ましくは8nm未満、より好ましくは2~8nmの平均流体力学的直径を有する、ナノ粒子に関する。
【0094】
本開示はさらに、高Z元素含有ナノ粒子であって、それを必要とする対象の腫瘍を治療するための薬物の製造における使用のためのナノ粒子であって、前記治療が、
(i)磁気共鳴画像法(MRI)のためのコントラスト増強および/または放射線増感特性を有する、高Z元素含有ナノ粒子の有効量を、それを必要とする対象に投与すること、ならびに
(ii)MR-Linacの手段によって、前記対象を、磁気共鳴画像誘導放射線療法に曝露することを含み、
前記高Z元素含有ナノ粒子は、40より大きい、好ましくは50より大きい原子Z番号を有する元素を含むナノ粒子であり、前記ナノ粒子は、20nm未満、例えば1~10nm、好ましくは8nm未満、より好ましくは2~8nmの平均流体力学的直径を有する、ナノ粒子に関する。
【0095】
本明細書で使用される場合、用語「高Z元素含有ナノ粒子」は、前のセクションに記載されたナノ粒子をいう。
【0096】
好ましい実施形態では、前記高Z元素含有ナノ粒子は、磁気共鳴画像法(MRI)のためのコントラスト増強および放射線増感特性の両方を有する。この点に関して、本開示の治療方法における使用のための好ましい実施形態は、超微細ナノ粒子であり、より好ましい実施形態は、前のセクションに記載したように、AGuIXナノ粒子であり、これは、腫瘍を受動的に標的とし、MRイメージング、顕著な放射線増感特性のために特に良好なコントラスト増強を示す。
【0097】
本明細書で使用される場合、用語「治療すること」または「治療」は(1)疾患を阻害すること;例えば、疾患、状態または障害の病理または症状に見舞われているまたは呈している個体における疾患、状態または障害を阻害すること(すなわち、病理および/または症状のさらなる進行を阻止すること);および(2)疾患を改善すること;例えば、疾患、状態または障害の病理または症状に見舞われているまたは呈している個体における疾患、状態または障害を改善すること(すなわち、病理および/または症状を一変させること)、例えば、疾患の重症度を低減させること、または1つ以上の疾患の症状を軽減すること、または緩和することのうち、1つ以上を指す。特に、腫瘍の治療に関して、用語「治療」は、腫瘍の増殖の阻害、または腫瘍のサイズの縮小を指すことができる。
【0098】
本明細書で互換的に使用される用語「患者」および「被験者」は、哺乳動物および無脊椎動物を含む動物界の任意のメンバーをいう。例えば、マウス、ラット、他の齧歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、霊長類、魚類、およびヒトが挙げられる。好ましくは、前記被験者は哺乳動物、または例えば腫瘍を有する被験者を含むヒトである。
【0099】
特定の実施形態では、前記腫瘍が固形腫瘍である。
【0100】
明らかに、前のセクションに記載されたナノ粒子と共にMR画像誘導放射線療法を用いた本方法は、病変のより良好な可視化および追跡を可能にし、健康な組織に対する有害な影響を最小限に抑えながら、放射線療法によって治療される腫瘍の体積を最大限にすることを可能にする。
【0101】
当該方法は、胸部、腹部、および骨盤などの、分画間および分画内運動によって影響を受ける部位における腫瘍を治療するのに特によく適している。
【0102】
したがって、好ましい実施形態では、前記腫瘍は、以下の部位のうちの1つ以上に局在している:
・腹部、特にオリゴメタスタシス、膵臓/十二指腸、肝胆道、胃、肉腫、または腹部の他の部位
・骨盤および下肢、特に下部胃腸管、前立腺、膀胱、オリゴメタスタシス、四肢、
・頭部および頸部および脳、ならびに中枢神経系、
・胸部、特に肺および縦隔、食道、オリゴメタスタシス、骨、乳房。
【0103】
具体的な実施形態では、前記固形腫瘍は、
(i)子宮頸癌、直腸癌、肺癌、乳癌、頭頸部癌、前立腺癌、膀胱癌、結腸直腸癌、肝臓癌、および膵臓癌の原発腫瘍、または
(ii)骨転移または肝転移、典型的には分画内移動を起こす、胸骨などの骨転移
からなる群から選択される。
【0104】
癌を治療するための本開示の方法は、上述した高Z含有ナノ粒子の有効量を対象の腫瘍に投与する工程を含む。投与される量は、MR画像誘導放射線療法中にMR造影剤および/または放射線増感剤としてナノ粒子を使用するのに十分であるべきである。好ましくは、ナノ粒子は、MR画像誘導放射線療法中にMR造影剤および放射線増感剤として組み合わせて使用するのに十分な量で投与される。
【0105】
前記ナノ粒子は、局所経路(腫瘍内経路(IT)、動脈内経路(IA))、皮下経路、静脈内経路(IV)、皮内経路、気道経路(吸入)、腹腔内経路、筋肉内経路、鞘内経路、眼内経路、または経口経路などの種々の投与可能な経路を用いて被験者に投与することができる。
【0106】
特定の実施形態では、高Z含有ナノ粒子は静脈内に投与される。実際に、本明細書に開示されるナノ粒子は受動的標的化によって、例えば、透過性および保持効果を高めることによって、ヒト腫瘍を有利に標的とする。
【0107】
ナノ粒子は、治療される腫瘍を有する対象に、放射線治療の第1のセッションの投与より、例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、または24時間前に投与され得る。
【0108】
特定の実施形態では、本方法は、任意の放射線増感剤を使用しない放射線療法の1回以上のセッションが事前に行われてもよい。これは、例えば、前立腺癌において使用され得、ここで、前立腺を標的とする1つ以上の放射線療法は、放射線増感剤としてナノ粒子を投与し放射線を送達する前、より具体的には、磁気共鳴画像誘導放射線療法によって腫瘍に放射線を送達する前に実施される。
【0109】
別の特定の実施形態では、本方法が、腫瘍の第1の腫瘍予備充填工程を含む。
【0110】
そのような予備充填工程は、放射線療法への最初の曝露前の2~10日間、好ましくは2~7日間の期間内に、放射線増感剤として、高Z元素含有ナノ粒子の有効量を、それを必要とする前記対象に投与することを含む。
【0111】
実際に、本腫瘍のナノ粒子の残留磁気を考慮すると、2~10日間の期間内に高Z元素含有ナノ粒子を腫瘍に「予備充填」し、次いで、治療される腫瘍を有する対象に、放射線療法の第1の放射の投与より、例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間)前に、ナノ粒子を再度投与することが有益であり得る。
【0112】
したがって、特定の実施形態では、本方法は、
(i)放射線増感剤として、高Z元素含有ナノ粒子の第1の有効量を、それを必要とする前記対象に、腫瘍の第1の照射前の2~10日間、好ましくは2~7日間の期間内に注入すること、
(ii)腫瘍の第1の照射前の1時間~12時間の期間内に、同じかまたは異なる高Z元素含有ナノ粒子の第2の有効量を注入すること、および
(iii)磁気共鳴画像誘導放射線療法の1回以上のセッションに対象を曝露すること、
を含む。
【0113】
前記の実施形態と組み合わせ得る他の実施形態では、ナノ粒子のさらなる注入または投与は、適切な場合、放射線療法の1回以上のセッションの後に行うことができる。
【0114】
典型的には、分割放射線療法を使用する場合、ナノ粒子は、放射線療法の複数のセッションの間、毎週1回さらに注入され得る。例えば、具体的な実施形態では、本明細書に開示される方法は、分割MR画像誘導放射線療法の1回以上のセッション後5~10日以内に、例えば、分割MR画像誘導放射線療法の第1のセッションのための前記注入工程の7日後に、同じかまたは異なる高Z元素含有ナノ粒子の治療有効量を注入する、少なくとも1つの追加のステップをさらに含む。
【0115】
好ましい実施形態では、前記ナノ粒子が、ガドリニウムキレート化ポリシロキサン系ナノ粒子(例えば、AGuIXナノ粒子)であり、それぞれの注入工程で静脈内投与される治療有効量は、50mg/kg~150mg/kg、典型的には80~120mg/kg、例えば、100mg/kgである。
【0116】
〔画像誘導放射線療法のステップ〕
本開示の方法によれば、対象は、磁気共鳴画像誘導線形加速器(MR-Linac)による磁気共鳴画像誘導放射線療法に曝露される。
【0117】
本明細書で使用される場合、用語「放射線療法」は、電離放射線に相当する照射を用いた腫瘍学的性質の疾患治療のために使用される。電離放射線は、治療部位(標的組織)内の細胞の遺伝物質を損傷することによって、前記細胞を損傷または破壊するエネルギーを蓄積し、前記細胞が増殖し続けることを不可能にする。典型的には、前記電離放射線は光子、例えばX線である。電離放射線が有するエネルギーの量に依存して、光線は、身体の表面上の、またはより深い癌細胞を破壊するために使用することができる。X線ビームのエネルギーが高いほど、X線はより深く標的組織に入ることができる。
【0118】
線形加速器は、ますます大きなX線エネルギーを発生させる。放射線(X線など)を癌部位に集束させるための機械の使用は、外部ビーム放射線療法と呼ばれる。
【0119】
電離放射線は、典型的にはMR-Linacで2MeV~25MeVであり、特に4MeV~18MeV、典型的には4MeVまたは6MeVである。
【0120】
本明細書で使用される場合、用語「磁気共鳴画像誘導放射線療法」は、磁気共鳴画像ユニットを放射線療法ユニットと組み合わせて使用することをいい、治療送達の前または最中に標的の体積およびリスクにさらされている臓器をリアルタイムで画像化することを可能にし、必要に応じて再計画することを可能にする。磁気共鳴画像誘導放射線療法は、胸部、腹部、および骨盤などの分画間および分画内運動によって影響を受ける部位において特に有用である。典型的には、リスクにさらされている臓器および標的の可視化は、磁気共鳴画像誘導放射線療法を用いて、コーンビームコンピュータ断層撮影法と比較して改善することができ、これは計画の適応および有害性の低減を可能にすることができる。この技術は、正確(precise)かつ正確(accurate)な投与のために自動ビームゲートを使用し得る。腫瘍が動くと、ビームが自動的に止まる。したがって、臨床医は放射線量を増加させながら、自信を持ってマージンを縮小することができる。
【0121】
画像誘導放射線療法のための任意のMR-Linacは、本開示の治療方法において使用され得る。
【0122】
現在使用されているMR-Linacは、現在市販されている製品である垂直ビームフィールドシステム(例えば、ElektaおよびViewray)を含む。他のシステムは、インライン配向性(Aurora-RT)ならびに垂直配向性およびインライン配向性の両方(Australian)を含む。現行のMR-Linacシステムの磁場強度は、0.35T;例えば、MRIdian(Viewray)、0.5T(Aurora-RT、MagneTx)、および1.5T(Unity、Elekta)と異なる。MR-Linacシステムおよびその使用方法のさらなる詳細は、Liney et al Clinical Oncology 30 (2018) 686-691に記載されている。
【0123】
好ましい実施形態では、本開示の方法で使用されるMR-Linacは、0.5T以下、例えば0.35Tの磁場強度を有する。このような実施形態は、先のセクションに記載されているような超微細ナノ粒子またはAGuIXナノ粒子を用いると特に好ましい。
【0124】
典型的には、MR-Linacを用いた磁気共鳴画像誘導放射線療法のセッションは、以下の工程を含む:
1.シミュレーション工程
典型的には、MR画像誘導放射線療法の前に、治療前のコンピュータ断層撮影(CT)およびMRIが取得される。標的およびリスクにさらされている臓器は、治療前のデータに基づいて、放射線腫瘍医によって輪郭を描かれ得る。
【0125】
2.再配置工程、必要に応じて適応計画工程
各治療セッションの開始時に、患者が治療台上に配置される。新たなMRIスキャンが行われ、放射線治療計画を作成するために使用された元のスキャンと比較される。走査上の何かが変化した場合、放射線治療計画は、腫瘍および器官の動きを考慮するように適応され得る。
【0126】
3.治療送達ステップ
高度な専門化チームが放射線治療計画および標的化に満足すると、患者は治療を受ける。
【0127】
MR-LINAC上の放射線送達は、MRIと完全に統合される。この技術は、システムが、治療用放射線ビームを送達し、同時に標的領域をモニターすることができることを意味する。放射線ビームは、周囲の健康な組織への投与を最小にしながら、標的への投与を最大にするように正確に成形される。
【0128】
放射線ビームが照射されている間、MR-LINACは、そのMRIを用いて、腫瘍および/または近くの臓器の一定の映像を取り込み、サブ秒スピードでそれらに作用している。腫瘍または重要臓器が医師によって定義された境界を越えて移動する場合、放射線ビームは自動的に停止し、標的が移動して所定の境界内に戻ると、治療は自動的に再開する。したがって、正しい量の放射線が正しい位置に送達される。
【0129】
腫瘍を治療するための磁気共鳴画像誘導放射線療法におけるMR-Linacの使用のためのプロトコルの例は、Fischer-Valuck et al, 2017 (Advances in Radiation Oncology, 2, 485-493), Henke LE, et al., Magnetic Resonance Image-Guided Radiotherapy (MRIgRT): A 4.5-Year Clinical Experience, Clinical Oncology (2018), https://doi.org/10.1016/j.clon.2018.08.010に開示されている。
【0130】
現在の実践によれば、標準MRI造影剤は、コントラスト増強を改善するために、各セッションで磁気共鳴画像誘導放射線療法の前に投与される。MR-Linacと共に使用されているそのような標準造影剤の例として、循環剤、例えば、ガドベン酸(Multihance)、ガドテリ酸(Dotarem)、およびガドブトロール(Gadovist)が挙げられる。
【0131】
本開示の方法において、画像誘導放射線療法の前に対象に投与される高Z含有ナノ粒子は、MRイメージングのための造影剤もしくは放射線療法のための放射線増感剤のいずれかとして、または、好ましくは、MRイメージングのための造影剤および放射線増感剤の両方として使用される。
【0132】
先行技術で使用される標準造影剤とは対照的に、本発明者らは、本明細書に開示される高Z含有ナノ粒子(より具体的には、AGuIXナノ粒子または他のGd系超微細ナノ粒子)が以下の利点を有することに実際に気付いた:
・それらは、MRイメージングのための造影剤として、および放射線増感剤として使用することができ、放射線療法の前の単一の注入工程を可能にする。
【0133】
・それらは、腫瘍中に、数日間という特に長い残留磁気を有し、そのようなナノ粒子の各セッションの投与を回避することを可能にする。
【0134】
・それらは、粒子あたりのGdの数が多いこと(通常、Dotaremなどの他の従来の造影剤を1として比較したときに5~50の間)により、高い緩和性を有し、これにより、高品質のMRイメージングが可能になり、好ましくは、例えば、0.5T以下、典型的には、0.35Tの低磁場強度のMR-Linacとの使用に特に適している。
【0135】
好ましい実施形態では、単回静脈注射後の腫瘍中の高Z含有ナノ粒子の観察された残留磁気を考慮すると、対象はMRIのための造影剤をさらに投与することなく、磁気共鳴画像誘導放射線療法の複数セッションに曝露され得る。典型的には、前記対象は、MRIのための造影剤をさらに投与することなく、磁気共鳴画像誘導放射線療法の少なくとも2セッションに曝露される。
【0136】
特定の実施形態では、前記対象は、前記高Z含有ナノ粒子の有効量の単回投与後に、磁気共鳴画像誘導放射線療法の2、3、4、5、6、または7セッションに曝露される。例えば、前記対象は、5~7日以内の磁気共鳴画像誘導放射線療法の2以上のセッションに曝露され得る。特定の実施形態では、各セッションの間に2日間または3日間の最小所要時間が観察され得る。
【0137】
MR画像誘導放射線療法の分野の当業者であれば、疾患の性質および患者の体質による適切な投与および適用のスケジュールを決定する方法を知っているであろう。特に、用量制限毒性(DLT)の評価方法や、それに応じた最大耐量(MTD)の決定方法を知っているであろう。
【0138】
光子放射線療法で使用される放射線の量はグレイ(Gy)で測定され、治療対象となる癌の種類や病期によって異なる。治癒例では、固形腫瘍に対する典型的な総線量は20~120Gyであり、典型的には25~100Gyである。
【0139】
放射線腫瘍医が線量を選択する際には、患者が化学療法を受けているかどうか、患者の併存疾患、放射線療法が手術の前後に実施されているかどうか、および手術の成功度合いなど、他の多くの因子が考慮される。
【0140】
総線量は、一般的には分割する(時間を分散する)。量およびスケジュール(電離放射線の計画および送達、分割線量、分割送達計画、総投与単独、または他の抗癌剤との組み合わせなど)は、任意の疾患/解剖学的部位/疾患段階の患者設定/年齢について定義され、任意の特定の状況についてのケアの基準を構成する。
【0141】
本開示の方法に関して成人の典型的な従来の分割スケジュールは、1週間に5日、1日当たり1.8~3.0Gyであってもよく、例えば2~8週間連続であってもよい。特定の実施形態では、前記放射線療法は総線量25~80Gyの電離放射線、例えば総線量30Gyの電離放射線に被験者を曝露することからなる。
【0142】
高線量の電離放射線を用いて得られる、本開示の方法によるナノ粒子と電離放射線との複合作用を考慮すると、具体的な一実施形態では、患者の腫瘍に曝露される電離放射線の線量が有利に低分画化される。例えば、画分当たり少なくとも3Gy、例えば、約3Gy~約20Gy、または5~7Gyの線量が患者の腫瘍に曝露され、総放射線量は、少数の画分(典型的には10画分以下、例えば、1~10画分であるが、必ずしもそうではない)で送達される。
【0143】
対象が膵臓癌を患っている特定の実施形態では、本明細書に開示される方法で適用される放射線療法は、1セッションにつき8Gyの画分で、MR-Linacシステムを用いてMR画像誘導放射線療法の6セッションに対象を曝露することを含む。
【0144】
対象が前立腺癌を患っている他の特定の実施形態では、本明細書に開示される方法で適用される放射線療法は、放射線増感剤を用いずに前立腺に適用される1セッションにつき9Gyの画分で、MR-Linacシステムを用いてMR画像誘導放射線療法の5セッションに対象を曝露し、次いで、典型的には1セッションにつき10Gyの画分で、MR-Linacシステムを用いたMR画像誘導放射線療法のみを用いて前立腺腫瘍を治療するための4回の追加セッションのブーストに対象を曝露することを含む。高Z含有ナノ粒子(例えば、超微細ナノ粒子またはAGuIXナノ粒子)は、最後の4セッションのみ投与される。
【0145】
対象が肝転移を患っている他の特定の実施形態では、本明細書に開示される方法で適用される放射線療法は、1セッションにつき9Gyの画分で、MR-Linacシステムを用いてMR画像誘導放射線療法の6セッションに対象を曝露することを含む。
【0146】
対象がリンパ節転移を患っている他の特定の実施形態では、本明細書に開示される方法で適用される放射線療法は、1セッションにつき6Gyの画分で、MR-Linacシステムを用いてMR画像誘導放射線療法の5セッションに対象を曝露することを含む。
【0147】
対象が骨転移を患っている他の特定の実施形態では、本明細書に開示される方法で適用される放射線療法は、1セッションにつき9Gyの画分で、MR-Linacシステムを用いてMR画像誘導放射線療法の6セッションに対象を曝露することを含む。
【0148】
上記の実施形態では、典型的には、超微細ガドリニウムベースナノ粒子、より好ましくは前のセクションに記載されているAguixナノ粒子は、1つ以上のMR誘導放射線療法セッションのためのMR造影剤および放射線増感剤として使用される。
【0149】
さらなる非限定的な詳細は、実施例において提供される。
【0150】
本開示の方法との併用療法
本明細書に開示される使用のためのナノ粒子は、例えば、上述の癌障害の治療または予防のために、唯一の活性成分として、または、例えば、他の薬物(例えば、細胞毒性剤、抗増殖剤、または他の抗腫瘍剤)に対する補助薬として、またはそれらと組み合わせて投与してもよい。
【0151】
好適な細胞毒性剤、抗増殖剤または抗腫瘍剤は、シスプラチン、ドキソルビシン、タキソール、エトポシド、イリノテカン、トポテカン、パクリタキセル、ドセタキセル、エポチロン、タモキシフェン、5-フルオロウラシル、メトトレキサート、テモゾロミド、シクロホスファミド、チピファルニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、イマチニブ、ゲムシタビン、ウラシルマスタード、クロルメチン、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ピポブロマン、トリエチレンメラミン、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン、フロクスウリジン、シタラビン、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、リン酸フルダラビン、オキサリプラチン、ホリニン酸、ペントスタチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトラマイシン、デオキシコホルマイシン、マイトマイシンC、L-アスパラギナーゼ、テニポシドを含むが、これらに限定されない。
【0152】
いくつかの実施形態では、追加の治療剤は本明細書で提供される組成物と同時に投与される。いくつかの実施形態では、追加の治療剤は本明細書で提供される組成物の投与後に投与される。いくつかの実施形態では、追加の治療剤は本明細書で提供される組成物の投与前に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は外科手術中に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は外科手術中に追加の治療剤と組み合わせて投与される。
【0153】
本明細書で提供される追加の治療剤は、広い用量範囲にわたって有効であり得、一般に有効量で投与される。しかし、実際に投与される治療剤の量は、通常、治療状況、選択された投与経路、投与される実際の化合物、個々の被験者の年齢、体重、および反応、被験者の症状の重篤度などを含む関連する状況にしたがって、医師によって決定されることが理解される。
【0154】
本開示の方法の他の態様および利点は、実例のみを目的として示した以下の実施例において明らかになる。
【0155】
〔実施例〕
実施例1:Gdベースのセラノスティックナノ粒子のヒト初回試験:4種類の脳転移を有する患者への取り込みおよび生体内分布
1.1材料および方法
研究設計
本研究は、脳転移治療のための全脳放射線療法と併用した放射線増感AGuIXナノ粒子の静脈内投与の耐性を評価するための前向き用量漸増フェイズI-b臨床試験の一部である。Nano-Rad試験(AGuIXガドリニウムベースナノ粒子を使用した多発性脳転移の放射線増感)は、NCT02820454として登録された。本明細書では、募集患者15人に適用したMRIプロトコルの所見を報告する。このMRI補助研究に与えられた目標は、i)脳転移および周囲の健康な組織におけるAGuIXナノ粒子の分布を評価すること、およびii)AGuIXナノ粒子の静脈内投与後の脳転移および周囲の健康な組織におけるT1強調コントラスト増強およびナノ粒子濃度を測定することであった(Verry C, et al. BMJ Open. 9:e023591 (2019))。
【0156】
患者の選択
手術または定位放射線照射による局所治療に不適格な多発性脳転移患者を募集した。選択基準は以下を含む:i)最低年齢18歳、ii)組織学的に確認された固形腫瘍由来の続発性脳転移、iii)脳照射歴なし、iv)腎不全なし(糸球体濾過量>60mL/min/1.73m)、v)肝機能正常(ビリルビン<30μmol/L;アルカリホスファターゼ<400UI/L;アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)<75UI/L;アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)<175UI/L)。
【0157】
試験設計
試験プロトコルの主な工程は以下の通りであった。患者は0日目に、0.2mL/kg体重(0.1mmol/kg体重)の用量のDotarem(ガドテル酸メグルミン)を静脈内ボーラス注入する工程を含む、第1のイメージングセッション(次の項のMRIプロトコル参照)を受けた。第1のイメージングセッションの1~21日後(患者の都合および放射線療法の計画に応じて)、患者は15、30、50、75または100mg/kg体重の用量のAGuIXナノ粒子の溶液を静脈内投与された。AGuIXナノ粒子の投与日を1日目とする。
【0158】
AGuIXナノ粒子の合成
AGuIXナノ粒子は、6工程の合成によって得られた。最初の工程は、ジエチレングリコール中の三塩化ガドリニウム上にソーダを添加することによる酸化ガドリニウムコアの形成である。2番目の工程は、TEOSおよびAPTESを添加することによるポリシロキサンシェルの発達である。熟成後、無機マトリックスの表面に存在する遊離アミノ官能基との反応のためにDOTAGA無水物を添加する。水に移した後、酸化ガドリニウムコアの溶解が観察され、ガドリニウムはマトリックスの表面でDOTAGAによってキレート化される。次に、超小型AGuIXナノ粒子中のポリシロキサンマトリックスの断片化を観察した。最後の工程は、ナノ粒子の凍結乾燥である。
【0159】
セラノスティック剤は、ポリシロキサンマトリックスに共有グラフトされた、ガドリニウム環状配位子、DOTAの誘導体(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン酸-1,4,7,10-四酢酸)に囲まれたポリシロキサンネットワークから構成される。セラノスティック剤の流体力学的直径は4±2nmであり、質量は約10kDaであり、平均化学式(GdSi3-824-345-815-3040-60,1-10HO)によって記述される。平均して、各ナノ粒子はその表面上に、コアガドリニウムイオンをキレート化する10個のDOTAリガンドを提示する。3テスラでの縦方向の緩和率r1は、Gd3+イオン当たり8.9mM-1.s-1と等しく、AGuIXナノ粒子当たり約89mM-1.s-1の総r1をもたらす。同じMRIセッションを、ガドテル酸メグルミンの注入なしで、ナノ粒子の投与の2時間後に行った。次いで、患者は全脳放射線療法(30Gyを3Gyの10セッションで照射)を受けた。AGuIXナノ粒子を投与した7日後(8日目)および4週間後(28日目)に、同様のMRIセッションを各患者について行った。
【0160】
MRIプロトコル
MRI取得は、3テスラPhilipsスキャナーで行った。32チャンネルのPhilipsヘッドコイルを使用した。患者は、以下のMRIシーケンスを含む同一のイメージングプロトコルを受けた:i)3D T強調グラディエントエコーシーケンス、ii)複数のフリップ角を有する3D FLASHシーケンス、iii)磁化率強調画像(SWI)シーケンス、iv)流体減衰反転回復(FLAIR)シーケンス、v)拡散強調画像(DWI)シーケンス。これらの画像シーケンスのいくつかは、放射線療法後の脳転移奏効を評価するRECIST(固形腫瘍における奏効評価基準)およびRANO(神経腫瘍学における奏効評価)基準(24、25)に従う場合に推奨される。3DT強調イメージングシーケンスは、MRI造影剤投与後の健康な組織および脳転移の高解像度コントラスト増強画像を提供する。3D FLASHシーケンスは、T1緩和時間および造影剤濃度を計算するために、異なったフリップ角で数回繰り返される。SWIシーケンスは、出血の存在を検出するために使用される。FLAIRシーケンスは、炎症または浮腫の存在をモニタリングするために適用される。最後に、DWIシーケンスは、組織または脳転移における異常な水の拡散を検出するために適用され得る。総取得時間は、患者調整画像パラメータに応じて30分~40分の範囲であった。前記イメージングシーケンスの鍵となる特徴および主要な取得パラメータは、補足材料のセクションに詳述する。
【0161】
画像処理および定量化パイプライン
MRI分析は、GIN研究所(グルノーブル、フランス)が開発したMP(https:// github.com/nifm-GIN/MP3)と呼ばれる社内コンピュータプログラムを用いて行い、Matlab(登録商標)ソフトウェアで実行した。画像分析は、転移の計数および測定、コントラスト増強の定量化、緩和時間およびナノ粒子の濃度を含む。RECISTおよびRANO基準に従い、最長径が1cmを超える転移のみが測定可能とみなされ、その後の分析で保持された。パーセンテージで表されるMRI増強は、造影剤投与前のMRIシグナル振幅に対する造影剤投与後のMRIシグナル振幅の比率として定義され、MRIシグナル振幅は3D T強調イメージデータセットで測定された。T緩和時間は、4つの異なったフリップ角度で得られた3D FLASH画像から導出された。脳転移におけるナノ粒子の濃度は、造影剤投与前後のT緩和時間の変動およびナノ粒子の既知の緩和性に由来した。
【0162】
NeuroSpin(CEA、サクレー、フランス)で開発されたBrainVISA/Anatomistソフトウェア(http://brainvisa.info)を用いて、3D画像レンダリングを行った。異なる転移の位置をよりよく可視化するために、BrainVISAのMorphologistパイプラインを使用して、各患者の脳と頭部の両方のメッシュを作製した。
【0163】
統計解析
全ての分析は、GraphPad Prism(GraphPad Software Inc.)を用いて行った。特記しない限り、有意性は5%確率水準で固定した。特記しない限り、全てのデータは、平均値±SDとして示される。
【0164】
1.2結果
投与されたAGuIX Gdベースのナノ粒子は全4種類の脳転移においてMRIコントラスト増強を誘導する
患者募集の結果、4種類の脳転移、すなわちNSCLC(非小細胞肺癌)N=6、乳房N=2、黒色腫N=6および結腸癌N=1が含まれた。全ての患者に、投与量(15、30、50、75および100mg/kg体重についてN=3)の各漸増工程でセラノスティックナノ粒子AGuIX(材料および方法に記載されるように)を首尾よく注入した。
【0165】
1日目、AGuIX注入の2時間後に、MRIシグナル増強が全ての種類の脳転移、全ての患者および全ての投与量に対して観察された。各転移の周囲に描かれた関心領域内で、MRIシグナル増強は、AGuIXナノ粒子の投与量と共に増加することが見出された(図1)。測定可能な転移全体(1cmを超える最長径)を平均したシグナル増強は、15、30、50、75および100mg/kg体重の各々のAGuIX用量について、26.3±15.2%、24.8±16.3%、56.7±23.8%、64.4±26.7%および120.5±68%に等しかった。前記MRI増強は、注入量と線形的に相関することが見出された(傾き1.08、R=0.90)(図示せず)。
【0166】
Gdベースのナノ粒子は、臨床使用されている造影剤と同等の脳転移のMRI増強を示す
0日目、臨床的に承認されたGdベースの造影剤(Dotarem(登録商標),Guerbet、ヴィルパント、フランス)を各患者に注入した15分後においても、MRI増強を測定した。最長径が1cmを超える測定可能な転移全体を平均したMRI増強は182.9±116.2%に等しかった。注入の15分後に観察されたこのMRI増強は、最高用量のAGuIXナノ粒子の投与の2時間後に観察されたものと同程度の大きさである。
【0167】
測定可能な脳転移におけるMRIシグナル増強能力として定義されるAGuIXナノ粒子の検出感度を全ての投与量について評価し、臨床的に使用される造影剤Dotarem(登録商標)の感度と比較した。Dotaremの感度をパーセンテージとして表すと、AGuIXナノ粒子の感度は、15、30、50、75および100mg/kg体重の注入量についてそれぞれ12.1、19.5、34.2、31.8および61.6%に等しかった。
【0168】
AGuIXナノ粒子の濃度は、脳転移において定量化することができる
マルチフリップ角3D FLASH取得は、T値(図示せず)の画素ごとのマップを計算し、関心領域にわたる縦緩和時間の定量化を可能にするために首尾よく使用された。AGuIXナノ粒子の取り込みによって誘導された、脳転移におけるT緩和時間の低下は、これらTマップに明確に示されている。予想されるように、T値の低下は、コントラスト増強脳転移と共局在する。
【0169】
コントラスト増強転移におけるAGuIXナノ粒子の濃度を、それらの投与後のT値の変化に基づいて計算した。AGuIX濃度の測定は、100mg/kg体重の用量で投与された患者において、1cmを超える最長径を有する転移について行われた。脳転移における平均AGuIX濃度は、患者#13、#14および#15について、それぞれ57.5±14.3、20.3±6.8、29.5±12.5mg/Lと測定された。
【0170】
MRI増強およびナノ粒子濃度の相関を、最大用量(100mg/kg)の患者について評価した。NSCLC転移を有する患者#13からのMRIデータとの相関を図2に例示する。2つのMRIパラメータ間の強い正の相関が、測定値の範囲における線形性に近い関係で観察された。
【0171】
それぞれの患者について、MRI増強およびT値を、目に見える転移のない関心脳領域(患者当たり3つの代表的な関心領域、全ての患者について同様の大きさ)において評価した。前記健康な脳領域のいずれにおいても、有意なMRI増強は観察されず、T変動も観察されなかった。
【0172】
ナノ粒子投与の1週間後にMRI増強が観察される
最大用量(100mg/kg体重)を投与された患者では、8日目の測定可能な転移(1cmを超える最長径)においてMRI増強の持続が認められた。すなわち、図3に示すようにAGuIXナノ粒子の投与後1週間までMRI増強の持続が認められた。転移におけるMRI増強の平均値は、患者#13、#14および#15で、それぞれ32.4±10.8%、14±5.8%および26.3±9.7%と測定された。比較点として、1日目の平均MRI増強は、患者#13、#14および#15について、それぞれ175.8±45.2%、58.3±18.4%および154.1±61.9%に等しかった。低いT変動のために、AGuIXナノ粒子濃度は計算できなかった。MRI増強およびナノ粒子濃度の間に観察された相関に基づいて、脳転移における8日目のAGuIX濃度について10μMの上限値を推定することができる。AGuIXナノ粒子の投与から4週間後の28日目において、いずれの患者においても顕著なMRI増強は観察されなかった。
【0173】
考察
脳転移の発生は癌の既往歴でよくみられる事象であり、患者の余命に負の影響を及ぼす。多発性脳転移患者に対しては、全脳放射線療法(WBRT)が依然として標準治療である。しかし、全生存期間の中央値は6カ月未満であり、これらの患者の治療効果を改善するために新たな手法を開発する必要がある。したがって、放射線増感剤の使用は非常に興味深い。AGuIXナノ粒子のインビボセラノスティック特性(放射線増感およびマルチモーダルイメージングによる診断)はげっ歯類(F. Lux, et al. Br J Radiol. 18:20180365 (2018))および特に脳腫瘍(G. Le Duc, et al. ACS Nano. 5, 9566-9574 (2011), C. Verry C, et al. Nanomedicine 11, 2405-2417 (2016))における8つの腫瘍モデルで実施された前臨床研究において先に実証された。脳転移に対するAGuIXナノ粒子の診断値の臨床評価は、臨床試験Nano-Radの副次目的のうちの1つであった。患者におけるAGuIXナノ粒子の放射線療法の適用に関する標的用量は100mg/kgである。この理由のために、本研究の結論および見地は本質的にこの用量に焦点を当てている。
【0174】
患者に投与されるAGuIXナノ粒子の最大用量(100mg/kg体重または100μmol/kg体重のGd3+)は、Dotarem(登録商標)(100mol/kg体重のGd3+)などの臨床的に使用されるMRI造影剤の1用量でGd3+注入されるキレート化ガドリニウムイオンの量に相当する。したがって、転移で観察されたMRI増強を、臨床業務で使用されるGdベースの造影剤用量に対するAGuIXの最大用量と比較することは適切である。
【0175】
この研究では、注入への患者の反応を観測する間、ナノ粒子投与とMRI取得との間に2時間の遅延があった。約1時間の平均ナノ粒子血漿半減期では、この遅延が血漿中のナノ粒子濃度の86%の低下をもたらす。対照的に、Dotarem(登録商標)注入とMRI取得との間には15分の遅延しかなかった。ナノ粒子のこの有意なクリアランスおよび患者の血中濃度の低下にもかかわらず、最大ナノ粒子用量でのMRI増強は、臨床造影剤で観察されるものに近い。
【0176】
脳転移におけるMRIシグナルを増強するAGuIXナノ粒子のこの顕著な診断性能は、2つの独立した因子に起因し得る。第1の因子はナノ粒子の固有の磁気特性に関係している。臨床的なGdベースの造影剤と比較して、それらのより大きな直径および分子量はより高い縦緩和係数rをもたらす。したがって、MRIシグナルの強度を改変する能力を増加させる。具体的には、AGuIXナノ粒子とDotarem(登録商標)のr値が、3テスラの磁界で、Gd3+イオン当たり8.9および3.5mM-1.S-1にそれぞれ等しい(B.R. Smith, S.S. Gambhir. Chem Rev. 117, 901-986 (2017))。
【0177】
第2の因子は、AGuIXナノ粒子が脳転移において受動的に蓄積する能力に関連し得る。この受動的標的化現象は腫瘍におけるナノ物体の蓄積が欠陥のある腫瘍血管および漏出性の腫瘍血管の両方に起因し、かつ有効なリンパ排液がないことに起因すると仮定する、いわゆる血管透過性・滞留性亢進(EPR)効果を利用する(A. Bianchi, et al. MAGMA. 27, 303-316 (2014))。AGuIXナノ粒子による腫瘍の受動的標的化は、癌の動物モデルの先の研究において一貫して観察されている。多発性脳黒色腫転移のマウスモデルにおいて、腫瘍細胞におけるAGuIXナノ粒子の内在化が報告され、脳転移におけるナノ粒子の存在は動物への静脈注射の24時間後になお観察された(Kotb, A. et al. Theranostics 6(3):418-427 (2016))。最大用量100mg/kgでは、1cmを超える直径を有する全ての転移が、ナノ粒子が投与された7日後までコントラスト増強された。
【0178】
投与1週間後の転移におけるMRIシグナル増強の持続は、この蓄積および転移からのナノ粒子のクリアランスの遅延を強調する。発明者の知る限りでは、臨床的に使用されるGdベースの造影剤の投与後に、転移においてこのような後期MRI増強に関する文献報告はない。
【0179】
このヒト初回臨床試験の設計には用量漸増が含まれていた。したがって、患者はAGuIXナノ粒子の用量を5段階増量して投与された。転移におけるシグナル増強および投与されたナノ粒子濃度の間で観察された線形相関から、調査された線量範囲内のナノ粒子の用量は、転移の受動的標的化のための制限因子ではないと結論付けることができる。重要なことに、この最初の臨床研究に参加した患者の数が限られているにもかかわらず、これらの最初の結果は、ナノ粒子の取り込みおよびシグナル増強がナノ粒子の注入用量にかかわらず、調査した4つの種類の転移(NSCLC、黒色腫、乳房および結腸)に存在することを示している。
【0180】
AGuIXナノ粒子の放射線増感特性を考慮すると、転移に蓄積したナノ粒子の局所濃度を評価し、おそらく定量化することが重要である。そのために、MRIプロトコルは、ナノ粒子濃度が導出されたTマッピングイメージングシーケンスを含んでいた。本臨床研究で得られた濃度値は、腫瘍の動物モデルを用いた前臨床研究で得られた濃度値とともに広い視野で考えることができる。最大用量を注入された3人の患者のNSCLCおよび乳癌転移におけるAGuIXナノ粒子の計算濃度は8~63mg/Lの間で変化した。これは、脳転移における8~63μMのGd3+イオンの濃度範囲に相当する。上述の3人の患者において、%ID/gは8~63%の範囲である。上記MRI前臨床研究2件では、%ID/gについて同程度であり、それぞれ28%ID/gおよび45%ID/gであった。興味深いことに、これらの濃度は放射線療法セッションの設定と適合する注入後の遅延(数時間)で得られる。
【0181】
本研究では、ナノ粒子濃度と、強固なT強調3D MRIシークエンスを用いて得られたMRIシグナル増強SEとの関連性も評価した。転移での測定可能なナノ粒子濃度の範囲において、MRI増強とナノ粒子濃度との線形関係が、本研究で使用される取得プロトコルで観察される。したがって、本研究で使用される特定のプロトコルを用いて、MRI増強は、AGuIXナノ粒子の濃度を評価するための強固で簡単な指標として使用することができる。
【0182】
転移標的化は診断および放射線増感の両方の目的に有益であるが、健康な周囲組織ではナノ粒子を低濃度に維持することが望ましい。この点に関して、AGuIXナノ粒子の最大用量を投与した2時間後に、転移のない脳組織におけるMRI増強は観察されなかった。この増強の欠如は患者の血漿中で測定されたナノ粒子の迅速なクリアランスと一致し、健康な脳に対するナノ粒子の無害性を肯定的に示している。
【0183】
要約すると、本明細書で報告される臨床試験の予備結果は、Gdベースのナノ粒子の静脈注射が患者における異なる種類の脳転移を増強するために有効であることを実証する。
【0184】
これに加えて、フェイズ1臨床試験の予備結果は、本研究のために選択された100mg/kg用量までのAGuIXナノ粒子の静脈注射の良好な耐性を実証する。
【0185】
最後に、8日目の腫瘍中のナノ粒子の持続性は、実施例2に記載されるような画像誘導放射線療法を使用する実施例のために、最初の照射の前に造影剤および放射線増感剤などのナノ粒子の単回注射を可能にするプロトコル、ならびにナノ粒子の単回注射の5~7日間後以内のその後の放射線療法のセッションを支持する。
【0186】
実施例2:放射線増感剤および造影剤としてのAGuIXナノ粒子の使用と組み合わせたMR-Linacシステムによって送達される少分割放射線療法の実現可能性および耐性を評価するための概要
2.1 理論的根拠および標的患者プロファイル
磁気共鳴画像誘導線形加速器(MR-Linac)は、軟組織内部に位置する腫瘍に特異的な優位性を有する、身体全体の癌を治療するための放射線療法と共に、磁気共鳴画像法またはMRIを使用する。このシステムは、治療放射ビームを送達し、同時に対象領域をモニターすることができる。テクノロジーの組み合わせは、放射線腫瘍医が、体内の解剖学的構造および腫瘍を見ることができるので、放射線腫瘍医に、放射線の送達よりも大きな制御を与える。それらは、放射線治療計画を微調整し、各治療を個別化し、適応させることができる。しかしながら、腫瘍の種類または局在によれば、治療中に腫瘍を強調および追跡するために造影剤の使用が必要である。
【0187】
現在使用されている造影剤は、各RT分割の前に注射しなければならない。
【0188】
AGuIX NPは、腫瘍放射線感受性を増加させ、MRIスキャンのための腫瘍コントラストを増加させる能力を有する潜在的なセラノスティック剤である。さらに、AGuIXは、数日間の間、この腫瘍コントラストを増加させ、週に1回の注射を可能にし得る。
【0189】
2.2研究の目的
主な目的は、1週間あたり1回のAGuIX注入を用いて、1週間あたり2回または3回のMR-Linac装置のMRIスキャンによる腫瘍を追跡するための造影剤としてのAGuIXの使用を評価することである。
【0190】
関連エンドポイント:注入後の異なる時点(1時間~5日間)でMR-Linacを用いて行われたMRIスキャンからの造影剤有効性評価。
【0191】
副次目的:
MR-linacとAGuIXとの組み合わせを用いて送達される少分割RTの安全性を評価すること。(エンドポイント:放射線療法終了後3ヶ月までのCTCAE-V5.0による急性有害事象)
MR-LinacとAGuIXとの組み合わせを用いて送達した少分割RT後の無増悪生存期間(PFS)を評価すること。(エンドポイント:PFS:RECIST V1.1にしたがって治験責任医師によって決定された無作為化から疾患進行の最初の発生までの時間、または何らかの原因による死亡のいずれか早く生じた方。
【0192】
2.3適格性基準/被験者特性
選択基準
-18歳
-ECOGステータス:0または1
-前立腺または膵臓の原発腫瘍、リンパ節の再発、肝転移または原発部位、骨転移、典型的には胸骨などの分画内運動を受ける骨転移を有する患者。
【0193】
-少分割放射線療法の適応
非選択基準
-同じ対象での以前の放射線療法
-MRIスキャンの禁忌
-造影剤に対するアレルギー性
2.4研究に用いた治療
薬剤名/治療名および商品名:AGuIX
化学名(DCI):ガドリニウムキレート化ポリシロキサンベースのナノ粒子
医薬形態:300mgのAGuIXを活性成分として含有する滅菌凍結乾燥されたオフホワイトの粉末(300mgのAGuIX/バイアル)。それぞれのバイアルには、不活性成分として0.66mgのCaClが含まれている。製剤は、ブロモブチルゴムストッパー付きの1回使用10mL透明ガラスバイアルに入れて供給する。
【0194】
調製手順:注入用水3mLを含む溶液で溶解し、100mg/mLのAGuIX溶液を得る。この時、溶液のpHは7.2±0.2である。
【0195】
注入用水で溶解した1時間後に溶解液をシリンジにとり、シリンジポンプを用いて注入する。
【0196】
溶解後、最低1時間、最長24時間以内に投与する。
【0197】
AGuIX溶液は溶解後半日以内に投与されるが、ナノ粒子は[+2℃;+8℃]で保存され、溶解後最長24時間以内に投与されなければならない。
【0198】
シリンジポンプを用いた緩徐注入(2mL/分)による静脈内投与
1投与あたりの用量:100mg/kg、1mL/kg
2.5治療および関連手順
放射線療法:
治療部位に応じた放射線療法スキーム:
-膵臓癌:8Gyの6分割
-前立腺癌:前立腺における9Gyの5分割、その後の腫瘍における10Gyの4分割の追加免疫(AGuIXは最後の4分割についてのみ使用する)
-肝転移:9Gyの6分割
-リンパ節転移:6Gyの5分割
-骨転移:4Gyの5分割
どのような場所であっても、放射線療法は、1週間に2または3分割の比率で実施される。2セッションの間の時間は2~3日間である。
【0199】
フェイズIB:5人の患者を位置ごとに含める。各位置は独立して分析される。
【0200】
o工程1:RT開始の1週間前に実施されるバイオアベイラビリティ試験:
1日目に50mg/kgの濃度のAGuIXを最初に注入する。MRIスキャンは摂取腫瘍のコントラストを評価するために、2時間後、4時間後、3日後、および5日後にMR-Linacを用いて実施される。
【0201】
-1人超の患者で3日目にコントラストが失われた場合:該当する位置で試験を中止する。
【0202】
-2人超の患者で5日目にコントラストが失われた場合:50mg/kgの濃度のAGuIXを5回注入した5人の新規患者を含める
コントラストが失われた場合、Dotarem注入またはMultiHance注入を用いて、腫瘍を可視化してもよい。
【0203】
o工程2:安全性研究:
-8日目にAGuIXの2回目の注入を実施し、続いて1回目の分割放射線療法(これについては、以前のバイオアベイラビリティ研究の結果にしたがってスケジュールが確立される)を実施する。
【0204】
-分割放射線療法の前に、15日目にAGuIXの3回目の注入を実施する。
【0205】
-各セッションで実施されるMRIスキャンで処理された腫瘍位置(8日目、10日目、12日目、15日目+/-17日目+/-19日目)に応じて、4~6回の分割放射線療法を実施する。
【0206】
2人超の患者でグレード>2の毒性を強調する場合:50mg/kgの濃度のAGuIXを5回注入した5人の新規患者を含める。
【0207】
実施例3:ViewRay Linac MRIのMRIによるAGuIXおよびmultihance検出の比較。
【0208】
0.35Tの磁場を表示するViewRay Linac MRI(MRIdian MR-linac、ViewRay Inc.、Oakwood、USA)(S. Kluter, Clinical and Translational Radiation Oncology, 2019)のための陽性MRI造影剤として使用されるAGuIXナノ粒子の容量を決定するために、ガドリニウム中の様々な濃度を有する試料を試験し、トルソコイル(2面可撓性6チャネルコイルアレイ)を用いてMultihance(Bracco)と比較した。試料の濃度を以下の表1に示す。
【0209】
【表1】
【0210】
ViewRay MRIdianシステムは、外部放射線治療の目的で臨床的に使用されるため、AGuIXの使用専用の非常に適切な装置である。2Dコロナルスピンエコーシーケンスを使用した:TR=400ms、TE=20ms、フリップ角=90°、帯域幅=57.Hz/Px、Matrix=512×512、Slice Thickness=3mm、Field Of View=350×350×263mm、Number of Averages=5。総取得時間は12:30分であった。
【0211】
画像化の1時間前に、multihanceおよびAGuIXの溶液を、それぞれ0.5mol.L-1および100g.L-1のストック溶液からPPI水中で希釈することによって調製し、エッペンドルフ中に置いた。
【0212】
いずれの造影剤も低濃度で検出でき、0.35Tでも造影剤として作用することができるものの、図4(ViewRayのMRIdianを用いたMultihance(A)およびAGuIX(B)のMRIポジティブシグナル)ならびに図5(ViewRayのMRIdianを用いたMultihanceおよびAGuIXのシグナル強度)から分かるように、AGuIX(5μM[Gd3+])の方がMultihance(25μM[Gd3+])に比べて感度が良い。
【0213】
実施例4:ViewRay Linac MRIのMRIによる様々な濃度でのAGuIXおよびBi-AGuIX(50/50)の検出の比較。
【0214】
別の超小型ナノ粒子が試験され、AGuIXナノ粒子と比較されている。AGuIXナノ粒子は、その表面にポリシロキサンマトリックスおよび共有結合グラフト化ガドリニウムキレート(DOTAGA(Gd3+))を示す5nm未満のナノ粒子である。酸性条件下でAGuIXナノ粒子を処理することにより、特許出願WO2018/107057に記載されている方法にしたがって、ガドリニウムの50%が除去され、次いで、等量のビスマスで置き換えられて、Gd/Bi:50/50の比率を有する粒子が得られる。
【0215】
次いで、ナノ粒子を、溶液中で、寒天寒天を用いて、濃度を増加させながら混合する。次いで、T1重み付けされたシグナルは、MRIdian MR-Linacによって定量化される(図6:AGuIX(A)およびBi-AGuIX(50/50)(B)についてのMRIシグナルの比較、ならびに図7:ViewRayのMRIdianを用いた平均シグナル強度(C)の定量化)。Bi-AGuIX(50/50)と比較して、AGuIXについて約2倍高いシグナルが得られる。シグナルがより弱い場合であっても、Bi-AGuIX(50/50)は、MR-Linacに対する関心を強調するMRIにおいて非常に低い濃度で依然として検出可能である。より高い原子番号(83対64)を示すビスマスによるガドリニウムの置換は、より高い放射線増感効果をもたらし得る。
【0216】
実施例5:ViewRay Linac MRIのMRIによる腫瘍のインビボ検出。
【0217】
皮下非小細胞肺癌(NSCLC、A549)を有するマウスをMRIdian MR-Linacを用いてMRIにより画像化した。AGuIXの2つの投与方法を試験した:マウスあたり約6mgのAGuIXに対応する300mg/kgの用量を用いた、静脈内投与および腫瘍内投与。両方の投与について、腫瘍は、T1-重み付けシーケンスを用いて可視化することができる(図8:ViewRayのMRIdianおよびTrueFISPを用いたAGuIXナノ粒子の静脈内投与後の皮下NSCLC腫瘍の画像化(A)またはT1-重み付け(B)(腫瘍は白色で、丸で囲む)。ViewRayのMRIdianおよびTrueFISPシーケンス(C)を用いたAGuIXナノ粒子の腫瘍内投与後の皮下NSCLC腫瘍の画像化)。AGuIXナノ粒子は5nmに近い大きさを示す超小型ナノ粒子であり、腎臓によるそれらの取り込みは、両方の投与について追跡することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0218】
図1】投与量に対するMRI増強。グラフ上の各点は、1cmを超える最長径を有する転移において測定されたMRI増強値に相当する。MRI増強は、各用量、プールされた15~30mg/kg用量、プールされた50~75mg/kgおよび100mg/kgの間で統計学的に異なっていることがわかった。
図2】AGuIX濃度に対するMRI増強。グラフ上の各点は、患者#13の1cmを超える最長径を有する転移において測定されたMRI増強およびAGuIX濃度値に相当する。黒い曲線は、一連の点に適用される線形回帰に相当する。破線の曲線は95%信頼帯に相当する。
図3】ナノ粒子投与1週間後のMRI増強。患者#13のシグナル増強マップ(色分け)の一部を、患者への静脈注射の2時間後(左側画像)および1週間後(右側画像)に得られた元の3D T強調画像に重ね合わせる。矢印はAGuIX増強転移を指している。
図4】ViewRayのMRIdianを用いたMultihance(A)およびAGuIX(B)のMRI陽性シグナル。
図5】ViewRayのMRIdianを用いたMultihanceおよびAGuIXのシグナルの強度。
図6】AGuIX(A)およびBi-AGuIX(50/50)(B)のMRIシグナルの比較。
図7】ViewRayのMRIdianを用いた平均シグナル強度(C)の定量化。
図8】ViewRayのMRIdianおよびTrueFISP(A)またはT1強調(B)を用いた、AGuIXナノ粒子の静脈内投与後の皮下NSCLC腫瘍の画像(腫瘍は白色の丸で囲まれている)。ViewRayのMRIdianおよびTrueFISPシークエンス(C)を用いたAGuIXナノ粒子の腫瘍内投与後の皮下NSCLC腫瘍の画像。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】