(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-04
(54)【発明の名称】溶媒系積層接着剤
(51)【国際特許分類】
C09J 175/04 20060101AFI20230627BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20230627BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20230627BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
C09J175/04
C09J133/00
C09J11/06
B32B7/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570178
(86)(22)【出願日】2021-04-23
(85)【翻訳文提出日】2022-11-16
(86)【国際出願番号】 US2021028749
(87)【国際公開番号】W WO2021247159
(87)【国際公開日】2021-12-09
(32)【優先日】2020-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】ウー、チエ
(72)【発明者】
【氏名】ズパンシック、ジョセフ ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】セハノビシュ、カリヤーン
【テーマコード(参考)】
4F100
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AH03B
4F100AK25B
4F100AK45B
4F100AK51B
4F100AT00A
4F100AT00C
4F100BA03
4F100CC00B
4F100GB15
4J040EF121
4J040EF181
4J040EF281
4J040JA02
4J040JB02
4J040MA10
4J040MB03
4J040MB09
4J040NA06
4J040PA30
4J040PA33
(57)【要約】
(a)少なくとも1つのイソシアネート成分と、(b)(i)少なくとも1つの結晶性ポリカーボネートジオール化合物、(ii)少なくとも1つのアクリルポリマー化合物、及び(iii)少なくとも1つの溶媒の反応生成物を含む、少なくとも1つのイソシアネート反応性成分と、を含む、接着剤積層体構造を製造するための結晶性ポリカーボネートに基づく2成分溶媒系ポリウレタン接着剤組成物、並びに接着剤組成物を調製するためのプロセス。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤積層体構造を製造するための結晶性ポリカーボネートに基づくポリウレタン接着剤組成物であって、
(a)少なくとも1つのイソシアネート成分と、
(b)少なくとも1つのイソシアネート反応性成分であって、
(bi)少なくとも1つの結晶性ポリカーボネートジオール化合物、
(bii)少なくとも1つのアクリルポリマー化合物、及び
(biii)少なくとも1つの溶媒を含む、少なくとも1つのイソシアネート反応性成分と、
を含む、接着剤組成物。
【請求項2】
成分(a)対成分(b)の重量比が、4:100~30:100である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つのイソシアネート成分が、キシリレンジイソシアネート系ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート系ポリイソシアネート、トルエンジイソシアネート系ポリイソシアネート、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの結晶性ポリカーボネートジオール化合物が、カーボネート単位とヒドロキシル末端基との構造を有し、10℃~40℃の温度範囲にわたって固体である化合物を含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つの結晶性ポリカーボネートジオール化合物が、ポリ(ヘキサンジオール-カーボネート)、ポリ(ブタンジオール-カーボネート)、及びこれらの混合物を含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つのアクリルポリマー化合物が、ポリラウリルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリ(2-エチルヘキシル)アクリレート、ポリ(エチルアクリレート-2-エチルヘキシルアクリレート)、ポリラウリルメタクリレート、2つ以上のモノマー(メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、メチルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、酢酸ビニル、ブタジエンを含む)から作製されたアクリルコポリマー、及びこれらの混合物を含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つの溶媒が、酢酸エチル、メチルエチルケトン、及びこれらの混合物である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
接着剤組成物が、[平方メートル/日]当たり750立方センチメートル未満の酸素透過率(OTR)を有する積層体を形成するために使用される、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項9】
接着剤積層体構造を製造するための結晶性ポリカーボネートに基づくポリウレタン接着剤組成物を製造するためのプロセスであって、
(a)少なくとも1つのイソシアネート成分と、
(b)少なくとも1つのイソシアネート反応性成分であって、
(bi)少なくとも1つの結晶性ポリカーボネートジオール化合物、
(bii)少なくとも1つのアクリルポリマー化合物、及び
(biii)少なくとも1つの溶媒のブレンドを含む、少なくとも1つのイソシアネート反応性成分と、を混合することを含む、プロセス。
【請求項10】
多層積層体製品であって、
(A)少なくとも第1の層と、
(B)少なくとも第2の層と、
(C)前記第1の層と前記第2の層との間に配置された請求項1に記載の硬化した接着剤の少なくとも1つの層と、を含み、前記硬化した接着剤が、前記第1の層を前記第2の層に結合し、[平方メートル/日]当たり750立方センチメートル未満の酸素透過率(OTR)を有する積層体を提供する、多層積層体製品。
【請求項11】
多層積層体製品を製造するためのプロセスであって、
(I)第1の層及び/又は第2の層の表面の少なくとも一部分に請求項1に記載の接着剤を適用するステップと、
(II)前記接着剤が、前記第1の層と前記第2の層との間に配置されるように、前記第1の層と前記第2の層とを接触させるステップと、
(III)前記接着剤を硬化させて、前記硬化した接着剤を介して前記第2の層に結合された前記第1の層を含む多層積層体製品を形成するステップと、を含む、プロセス。
【請求項12】
請求項10に記載の積層体を含む、包装容器物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶媒系積層接着剤組成物、及びそのような積層接着剤組成物を調製するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
積層接着剤を使用して、異なる基材を一緒に結合する。そのような結合基材の一般的な使用は、可撓性食品包装用途にある。積層接着剤は、典型的には、2つのポリマー基材層の表面に適用されて、2つの基材層の間に結合層を形成する。接着剤は、基材層間に結合層を形成して、2つの基材層間に強い結合を提供する。接着剤で結合された基材構造は、包装構造を無傷に保ち、包装構造の内側の食品を安心かつ安全に保つことに役立つ。可撓性食品包装業における増大する需要は、可撓性食品包装の層状構造を通した酸素透過性を低減するような良好なガスバリア特性を有する積層接着剤に関する。低下した酸素透過性を呈する層状食品包装構造を製造するために使用される積層接着剤は、潜在的に包装構造を簡素化して、使用時のコストを削減し、食品包装を再生可能にし得る。したがって、標準的な接着剤と比較して低酸素透過性を示す接着剤などの向上した酸素バリア性能を有する積層接着剤を提供することが望ましい。特に、接着剤がガスバリア効果/特性を有するように、結晶性ポリカーボネート化合物に基づく積層接着剤を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は、可撓性包装用途に有用な積層接着剤であって、標準接着剤と比較して増強された酸素バリア性能を有する、積層接着剤と、そのような積層接着剤を製造するためのプロセスと、を提供することである。
【0004】
一実施形態では、本発明は、2成分溶媒系ポリウレタン積層接着剤組成物を対象としており、接着剤組成物は、結晶性ポリカーボネートに基づいていて、接着剤組成物は、多層積層体構造を製造するのに有用である。接着剤組成物は、例えば、(a)少なくとも1つのイソシアネート成分と、(b)(bi)少なくとも1つの結晶性ポリカーボネートジオール化合物、(bii)アクリルポリマー化合物などの少なくとも1つの流動調整剤、(biii)所望される場合、任意選択の添加剤の反応生成物を含む、少なくとも1つのイソシアネート反応性成分と、(c)少なくとも1つの溶媒と、を含む。
【0005】
別の実施形態では、本発明は、上記の接着剤組成物を調製するためのプロセスを対象としている。
【0006】
なお別の実施形態では、本発明は、(A)少なくとも第1の層と、(B)少なくとも第2の層と、(C)第1の層と第2の層との間に配置された上記の接着剤組成物の少なくとも1つの層と、を含む、多層積層体製品であって、接着剤組成物が、硬化されて第1の層を第2の層に結合する、多層積層体製品を対象としている。
【0007】
更に別の実施形態では、本発明は、上記の多層積層体製品を製造するためのプロセスを対象としている。
【0008】
更になお別の実施形態では、本発明は、上記の多層積層体製品を使用して製造された包装製品を対象としている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書全体にわたって使用される場合、以下の略称は、文脈上別途明確に指示されない限り、以下の意味を有する:「<」は、「未満」を意味し、「>」は、「よりも大きい」を意味し、「≦」は、「以下」を意味し、「≧」は、「以上」を意味し、「@」は、「において」を意味し、μm=マイクロメートル、g=グラム、mg=ミリグラム、L=リットル、g/cc=1立方センチメートル当たりのグラム、mL=ミリリットル、g/mL=1ミリリットル当たりのグラム、g/mol=1モル当たりのグラム、g/m2=1平方メートル当たりのグラム、ppm=百万分率、ppmw=重量百万分率、rpm=1分間当たりの回転数、m=メートル、mm=ミリメートル、cm=センチメートル、cm/分=1分当たりのセンチメートルmin=分、s=秒、hr=時、℃=摂氏温度、N=ニュートン、mmHg=水銀柱ミリメートル、psig=1平方インチ当たりのポンド、ccO2/m2/日=[平方メートル/日]当たりの酸素の立方センチメートルN/15mm=15ミリメートル当たりのニュートン、kPa=キロパスカル、%=パーセント、体積%=体積パーセント、及び重量%=重量パーセント。
【0010】
別途明記されない限り、全てのパーセンテージ、部、比などの量は、重量によって定義される。例えば、本明細書に記載した全てのパーセンテージは、別途指示されない限り、重量パーセンテージ(重量%)である。
【0011】
温度は、摂氏温度(℃)であり、「周囲温度」及び/又は「室温」は、別途明記されない限り、20℃~25℃の温度を意味する。
【0012】
本発明は、新規の2成分溶媒系ポリウレタン接着剤組成物を対象としており、接着剤組成物は、結晶性ポリカーボネートに基づいており、接着剤組成物は、接着剤積層体構造を製造するのに有用である。接着剤組成物は、例えば、(a)少なくとも1つのイソシアネート成分と;(b)(bi)少なくとも1つの結晶性ポリカーボネートジオール化合物、(bii)少なくとも1つのアクリルポリマー化合物、及び(biii)少なくとも1つの溶媒の反応生成物を含む、少なくとも1つのイソシアネート反応性成分と、を含む。
【0013】
一般に、2液型積層接着剤組成物を調製することは、成分(a)である、イソシアネート成分を含む第1の部分を提供することと、例えば、ポリオール成分などの成分(b)である、イソシアネート反応性成分、を含む第2の部分を提供することと、次いで、成分(a)及び成分(b)を一緒に組み合わせるか、又は混合して、2液型接着剤系又は組成物を形成することと、を含む。
【0014】
本発明の成分(a)であるイソシアネート成分は、1つ以上のイソシアネート化合物を含むことができる。例えば、イソシアネート化合物は、脂肪族系イソシアネート、芳香族系イソシアネート、及びこれらの混合物を含むことができる。「脂肪族系ポリイソシアネート」は、芳香族環を含有しないイソシアネートである。本発明において有用な好適な脂肪族イソシアネートの例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(hexamethylene diisocyanate、HDI)、ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(H12MDI)、キシリレンジイソシアネート(xylylene diisocyanate、XDI)、1,4-又は1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、これらの2つ以上の二量体、三量体、誘導体、及び混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
本発明において有用な芳香族系イソシアネートとしては、例えば、1,3-及び1,4-フェニレンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート(2,6-TDI)、2,4-トルエンジイソシアネート(2,4-TDI)、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’-MDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI)、ポリマーイソシアネート、及びこれらの2つ以上の混合物を含むがこれらに限定されない、1つ以上のポリイソシアネート化合物を挙げることができる。
【0016】
1つの好ましい実施形態では、本発明において有用なイソシアネート成分は、XDI系ポリイソシアネート、HDI系ポリイソシアネート、MDI系ポリイソシアネート、TDI系ポリイソシアネート、及びこれらの混合物であり得る。
【0017】
本発明において有用ないくつかの市販のイソシアネート成分の例としては、TAKENATE(登録商標)D-110N及びTAKENATE(登録商標)D-120N(両方とも三井化学から入手可能)、DESMODUR(登録商標)N 3300、DESMODUR(登録商標)Quix 175、及びDESMODUR(登録商標)E 2200/76(全てThe Covestro Companyから入手可能、並びにISONATE(商標)125M、ADCOTE(商標)L76-204、COREACTANT CT、及びCATALYST F(全てThe Dow Chemical Companyから入手可能)、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0018】
イソシアネートは、2つを超えるイソシアネート基/分子の平均官能価を有する。一実施形態では、例えば、イソシアネートは、2.1~4.0の平均官能価を有し得る。
【0019】
本発明のイソシアネート成分(a)などのイソシアネート基を有する化合物はまた、化合物の総重量に基づいて、イソシアネート基(NCO)の重量パーセントによっても特徴付けることができる。イソシアネート基の重量パーセントは、「NCO%」と称され、ASTM D2572-97に従って測定される。一実施形態では、成分(a)のNCO含有量は、7%以上であり、別の実施形態では10%以上である。なお別の実施形態では、成分(a)のNCO含有量は、30%以下であり、更に別の実施形態では25%以下である。
【0020】
本発明のプロセスに使用されるイソシアネート成分の量は、例えば、一実施形態では2重量%~40重量%、別の実施形態では3重量%~30重量%、なお別の実施形態では4重量%~20重量%である。
【0021】
本発明の成分(b)(又はB側成分)であるイソシアネート反応性成分は、(bi)所定量の少なくとも1つの結晶性ポリカーボネートジオール化合物、及び(bii)所定量の少なくとも1つのアクリルポリマー化合物、並びに(biii)所定量の少なくとも1つの溶媒の反応生成物であるイソシアネート反応性組成物を含む。上記の3つの成分(bi)~(biii)のブレンド又は混合物は、イソシアネート成分(a)と混合されるイソシアネート反応性成分(b)を形成する。接着剤積層体構造を製造するための結晶性ポリカーボネートに基づくポリウレタン接着剤組成物は、成分(a)を成分(b)と混合することによって形成される。
【0022】
成分(a)は、一実施形態では4:100~30:100、別の実施形態では5:100~25:100、なお別の実施形態では6:100~20:100の重量比で、成分(b)と混合することができる。
【0023】
結晶性ポリカーボネートジオールは、カーボネート単位とヒドロキシル末端基との構造を有する化合物であり、10℃~40℃の範囲を含む温度範囲にわたって固体である。本発明で有用な好適な結晶性ポリカーボネートジオールの例としては、ポリ(ヘキサンジオール-カーボネート)、ポリ(ブタンジオール-カーボネート)、及びこれらの2つ以上の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
1つの好ましい実施形態では、結晶性ポリカーボネートジオールは、35℃~60℃の融解温度及び500g/mol~3,500g/molの分子量を有する。
【0025】
本発明で有用な市販の結晶性ポリカーボネートジオール化合物のいくつかの例としては、例えば、UBE Industries,Inc.から入手可能なETERNACOLL(登録商標)UH-100、ETERNACOLL(登録商標)UH-200、及びETERNACOLL(登録商標)UH-300を挙げることができる。
【0026】
本発明のプロセスの成分(b)であるイソシアネート反応性共反応物、を作製するために使用される結晶性ポリカーボネートジオール化合物の量は、例えば、一実施形態では10重量%~50重量%であり、別の実施形態では15重量%~15重量%であり、なお別の実施形態では20重量%~40重量%である。
【0027】
本発明で有用な成分(ii)である少なくとも1つのアクリルポリマー化合物は、凹み(cratering)を制御し、オレンジピール特性を低減するために粉末コーティングにおいて典型的に使用される、流動調整剤又は流動制御剤である。流量調整剤は、接着剤の界面張力及び表面張力を制御するのに役立つ。
【0028】
本発明で有用な流動調整剤としては、1つ以上の一般的な流動調整剤、例えば、低ガラス転移温度アクリル樹脂、例えば、ポリラウリルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリ(2-エチルヘキシル)アクリレート、ポリ(エチルアクリレート-2-エチルヘキシルアクリレート)、ポリラウリルメタクリレート、2つ以上のモノマー(メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、メチルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、酢酸ビニル、ブタジエンなどを含む)から作製されたアクリルコポリマー、及びこれらの混合物を挙げることができる。他の有用な流動調整剤としては、ケイ素含有ポリマー、及びフッ素化ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールのエステル、及びフッ素化脂肪酸を挙げることができる。
【0029】
本発明のプロセスの成分(b)であるイソシアネート反応性共反応物を作製するために使用されるアクリルポリマーの量は、例えば、一実施形態では0.05重量%~4重量%であり、別の実施形態では0.1重量%~3重量%であり、なお別の実施形態では0.2重量%~2重量%である。
【0030】
本発明の成分(c)である少なくとも1つの溶媒化合物は、例えば、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ジオキソラン、酢酸プロピル、トルエン、及びこれらの混合物などの任意の従来の担体溶媒を含む、1つ以上の化合物を含み得る。1つの好ましい実施形態では、本発明で有用な溶媒化合物は、酢酸エチル、メチルエチルケトン、及びこれらの混合物であり得る。
【0031】
本発明のプロセスの成分(b)であるイソシアネート反応性共反応物を作製するために使用される溶媒化合物の量は、例えば、一実施形態では10重量%~90重量%であり、別の実施形態では30重量%~85重量%であり、なお別の実施形態では50重量%~80重量%である。
【0032】
いくつかの実施形態では、本発明の接着剤組成物は、例えば、粘着付与剤、触媒可塑剤、レオロジー調整剤、接着促進剤、酸化防止剤、充填剤、着色剤、界面活性剤、溶媒、及びこれらの2つ以上の組み合わせを含むがこれらに限定されない、1つ以上の任意選択の添加剤を含むことができる。
【0033】
接着剤組成物で有用な任意選択の成分の量は、例えば、一実施形態では0重量%~3重量%、別の実施形態では0重量%~2重量%、なお別の実施形態では0.01重量%~1重量%であり得る。
【0034】
一般に、積層接着剤組成物を作製するプロセスは、(I)結晶性ポリカーボネートジオールを50℃~70℃の温度で溶融するステップと、(II)溶融ジオールを反応器に注ぎ入れるステップであって、反応器が、50℃~60℃の温度に予熱されている、ステップと、(II)溶媒及び任意の他の任意選択の添加剤を反応器に装填するステップと、(IV)均一に混合された完全に透明な溶液が形成されるまで、撹拌によって反応器内の全ての成分を混合するステップと、(V)得られた完全に透明な溶液を反応器から取り出すステップと、を含む。
【0035】
本発明の結晶性ポリカーボネートに基づく溶媒系ポリウレタン接着剤組成物の層を含む、多層積層体製品が形成され得る。任意の数の層を使用して、積層体製品を形成することができる。1つの好ましい実施形態では、積層体は、接着剤組成物を、2つの基材層(例えば、基材は、同じ材料又は異なる材料から作製され得る)のうちの少なくとも1つに適用するステップと、接着剤組成物が2つの基材の表面間の層として配置されるように、基材を一緒に組み合わせるステップと、次いで、接着剤組成物を硬化させて、2つの基材間に結合層を形成するステップとによって、形成される。一般に、2つの基材の各々は、例えば、2つの別個のポリマーフィルムを含むことができる。本明細書で使用される場合、「フィルム」は、層構造の1つの寸法が0.5mm以下であり、層構造の他の2つの寸法が両方とも1cm以上である、任意の層構造である。「ポリマーフィルム」は、ポリマーまたはポリマーの混合物から作製されるフィルムである。ポリマーフィルムの組成物は、典型的には、80重量パーセント以上の1つ以上のポリマーである。
【0036】
積層体構造を形成するために使用される好適な基材としては、紙、織布および不織布、ポリマーフィルム、金属コーティングされた(金属化された)ポリマーフィルム、並びにこれらの組み合わせなどのフィルムが挙げられる。基材は、基材のうちの1つ以上を一緒に接着する、本発明による接着剤組成物を用いて、層化されて積層体構造を形成する。
【0037】
好ましい実施形態では、本発明の接着剤組成物を使用して調製された多層積層体製品は、(A)少なくとも第1の層と、(B)少なくとも第2の層と、(C)第1の層と第2の層との間に配置された接着剤組成物の少なくとも1つの層と、を含み、接着剤が硬化されて、第1の層を第2の層に結合する。
【0038】
1つの一般的な実施形態では、多層積層体製品は、接着剤組成物を用いて一緒に組み合わされた2つ以上のフィルム基材又はフィルム層であり得る。いくつかの実施形態では、第1のフィルム層と、第2のフィルム層と、第1のフィルム層と第2のフィルム層との中間に配置されたバリア接着剤層とを含む、積層体フィルム構造が開示される。例えば、好ましい実施形態では、多層積層体製品は、第1のフィルム層(又は外層)と、第2のフィルム層(又は内層)と、第1の層と第2の層との間に配置された接着剤組成物を含む結合層とを含む、3つの層から作製され得る。
【0039】
本発明の3層積層体製品は、A/B/Aの層状構造を有することができ、Aは、同じ材料である第1及び第2の層を表し、Bは、接着剤組成物の結合層を表す。3層積層体フィルム製品を本明細書で参照するが、本発明は、多層フィルム部材の少なくとも1つの層が接着剤組成物の結合層であるという条件で、任意の数のフィルム層を備えた多層ラミネート部材を含み、その結合層は、適切なガスバリア特性を有する。前述のように、多層フィルム部材の構造は、A/B/Aであり得、Aで表される両方の層は、同じポリマー材料から作製されているか、又は多層フィルム部材の構造は、A/B/Cであり得、Cは、Aの層とは異なる材料から作製されているフィルム層を表す。又は多層フィルム部材の構造は、積層体を作製する当業者には明らかである、A、B、及びC層の任意の組み合わせであり得る。
【0040】
本発明の積層体製品の第1の層は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリスチレン、シクロオレフィンコポリマー、ポリ塩化ビニル、スチレンブタジエンなどを含む、1つ以上の材料から作製され得る。1つの好ましい実施形態では、本発明において有用な第1の層の材料は、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びこれらの組み合わせであり得る。本発明の第1の層において有用な市販の材料のいくつかの例としては、例えば、二軸延伸ポリプロピレン(FILMTECH,INC.から入手可能)、及びポリエチレン(Berry Plasticsから入手可能)、並びにそれらの混合物が挙げられる。別の好ましい実施形態では、第1のフィルム層は、例えば、0.89g/cc~0.92g/ccの密度を有するポリプロピレンから作製することができる。
【0041】
本発明の積層体製品において使用される第1の層の厚さは、例えば、一実施形態では10μm~200μm、別の実施形態では15μm~150μm、なお別の実施形態では20μm~125μmである。
【0042】
前述のように、本発明の積層体製品の第2の層は、より容易にリサイクル可能であるという利点を有する第1の層と同じ材料から作製することができる。別の実施形態では、第2の層は、第1の層とは異なる1つ以上の材料から作製することができる。
【0043】
積層体製品の第2の層が第1の層とは異なるポリマーから作製されている場合、第2の層は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリスチレン、シクロオレフィンコポリマー、ポリ塩化ビニル、スチレンブタジエン、及びこれらの混合物を含むことができる。1つの好ましい実施形態では、本発明において有用な第2の層の材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びこれらの混合物であり得る。本発明の第2の層において有用な市販の材料のいくつかの例としては、例えば、ポリエチレン(Berry Plasticsから入手可能)、及び二軸延伸ポリプロピレン(FILMTECH,INC.から入手可能)、並びにこれらの混合物を挙げることができる。別の好ましい実施形態では、第2のフィルム層は、第1の層とは異なる場合、例えば、0.915g/cc~0.967g/ccの密度を有するポリエチレンから作製することができる。
【0044】
本発明のフィルムにおいて使用される第2の層の厚さは、例えば、一実施形態では10μm~200μm、別の実施形態では15μm~150μm、なお別の実施形態では20μm~125μmである。
【0045】
一般的な実施形態では、多層積層体製品を製造するための1つのプロセスは、例えば、
(I)第1の層及び/又は第2の層の表面の少なくとも一部分に本発明の接着剤組成物を適用するステップと、
(II)接着剤が第1の層と第2の層との間に配置されるように、第1の層と第2の層とを接触させるステップと、
(III)接着剤を硬化させて、硬化された接着剤を介して第2の層に結合された第1の層を含む多層積層体製品を形成するステップと、を含む。
【0046】
本発明の積層体フィルム構造は、標準的な接着剤組成物の代わりにバリア接着剤組成物を使用して一緒に結合されたポリマーから作製されたフィルムを含むが、本発明の積層体フィルム構造は、依然として、同様の又は強化されたバリア特性を達成する。本発明の上記のプロセスによって作製された積層体製品によって示される有利な特性のうちの1つは、例えば、改善された(すなわち、低減された)酸素透過率(OTR)を有する積層体を含むことができる。いくつかの実施形態では、積層体フィルム構造は、「ccO2/m2/日」と略され、ASTM法D3985に従って測定される、[平方メートル/日]当たり750立方センチメートル以下の酸素のOTRを有する。
【0047】
積層体フィルム構造は、様々な層材料、層の数、フィルムの厚さ、及び他の特性を伴って設計することができるため、特定の積層体構造のOTRは、例えば、第1及び第2の層の様々な特性に依存するであろう。例示として、それによって限定されないが、本発明の積層体構造のOTRは、一般に、一実施形態では、標準的な接着剤組成物を使用した積層体より15%低く、別の実施形態では、標準的な接着剤組成物を使用した積層体より25%低く、なお別の実施形態では、標準的な接着剤組成物を使用した積層体より50%低い。更に別の実施形態では、本発明の積層体構造のOTRは、標準的な接着剤組成物を使用した積層体よりも10%~90%低い。
【0048】
上記のように調製された積層体は、例えば、可撓性包装用途、並びに家庭内及びパーソナルケア用途で使用することができる。1つの好ましい実施形態では、積層体は、食品を包装するためのパッケージ、パウチ、又は容器などの多層積層体構造製品又は物品を作製するために使用される。好ましい実施形態では、積層体は、2つのポリマーフィルムを一緒に結合する2つのフィルム層の間に配置された接着剤層を備えたポリマーフィルムの2つの層から作製される。食品包装物品などの物品を作製するプロセスは、食品包装製造の当業者によって実行され得る。
【0049】
上記のように、標準的な接着剤の代わりに本発明のバリア接着剤層を使用することによって、積層体構造を通した酸素の透過性の低減があり、したがって、上記の積層体を使用して作製される物品は、上記の積層体によって示される改善された(すなわち、低減された)OTRなどの同じ有利なガスバリア特性を有することになる。
【0050】
更に、ABA構造を有する多層積層体は、有利には、単純で容易に製造可能な構造であり得、また、その積層体から作製された食品包装が環境に優しくなるように、有益に再生可能であり得る。
【実施例】
【0051】
以下の実施例は、本発明を更に詳細に説明するために提示されるが、特許請求の範囲の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。別途指示されない限り、全ての部及びパーセンテージは、重量による。
【0052】
発明の実施例(Inv.Ex.)及び比較例(Comp.Ex.)において使用される様々な原料又は配合成分を、以下のように説明する。
MOR-FREE(商標)C33は、脂肪族系イソシアネートであり、The Dow Chemical Company(Dow)から入手可能である。
ADCOTE(商標)577は、イソシアネート末端化合物であり、Dowから入手可能である。
ADCOTE(商標)577Bは、ヒドロキシル末端化合物であり、Dowから入手可能である。
ETERNACOLL(登録商標)UH-100は、1,000の分子量(Mw)及び約45℃の融点を有する1,6-ヘキサンジオール系結晶性ポリカーボネートジオールであり、UBE Industries Company(UBE)から入手可能である。
ETERNACOLL(登録商標)UH-200は、2,000のMw及び約50℃の融点を有する1,6-ヘキサンジオール系結晶性ポリカーボネートジオールであり、UBEから入手可能である。
ETERNACOLL(登録商標)PH-100は、1,4-シクロヘキサンジメタノール及び1,6ヘキサンジオールが、コポリカーボネートジオール成分として適用される、1,000のMwを有する非結晶性コポリカーボネートジオールであり、UBEから入手可能である。
MODAFLOW(登録商標)樹脂は、アクリルコポリマーであり、Allnex Inc.から入手可能である。
「BOPP」は、二軸延伸ポリプロピレンを表している。BOPPは、20μmの厚さを有するフィルムであり、Filmtech Inc.から入手可能である。
【0053】
試験
90°T剥離試験
2つのフィルム、すなわち、接着剤で一緒に接着された一次フィルム及び二次フィルムからなる積層体試料上で、90°T剥離試験を行った。積層体試料を15mm幅のストリップに切断し、試料の各々を50Nのローディングセルを備えたThwing Albert(商標)QC-3A剥離試験機で引っ張った。積層体試料を、15mmのストリップ上で4インチ/分(10cm/分)の速度において剥離試験機で引っ張った。積層体中の2つのフィルムが分離(剥離)したときに、引張中の力の平均を記録した。フィルムのうちの1つが伸張又は破損した場合、最大の力又は破損時の力を記録した。積層体試料に関する最終値は、試験された3つの別個の試料ストリップの平均値である。破壊モード(failure mode、FM)又は破壊のモード(mode of failure、MOF)を次のように記録した:接着剤が一次フィルム及び二次フィルムの両方の上で見出されることを示す、AS(接着剤の分割(Adhesive Split))又は凝集破壊。
【0054】
酸素透過率(OTR)測定
形成された積層体の酸素透過率(OTR)は、ASTM法D3985(「電量センサーを使用したプラスチックフィルム及びシートを通した酸素ガス透過率に関する標準試験方法」)の下で、MOCON OXTRAN 2/21を使用して測定された。OTRデータは、標準単位「cc/m2/日)」で報告される。OTR測定値を得るための試験に使用された条件は、23℃及び相対85%の湿度(RH)であった。
【0055】
イソシアネート共反応物
イソシアネート共反応物(Co-Reactant、CR)を調製するための一般的手順
表Iに記載の共反応物(CR)を、結晶性ポリカーボネートジオール化合物又は非結晶性ポリカーボネートジオール化合物を使用して調製する。ポリカーボネートジオールを、最初に、60℃のオーブン内で溶融し、次いで、溶融した結晶性又は非結晶性ポリカーボネートジオール化合物を、酢酸エチル及びアクリルポリマーと60℃で1時間混合して、イソシアネート反応性成分組成物を形成する。
【0056】
【0057】
接着剤配合物
接着剤配合物を調製するための一般的手順
表IIに記載の接着剤配合物は、表Vに列挙した成分を以下の条件下で混合することによって調製される。
【0058】
接着剤配合物を調製するための適切な配合成分、イソシアネート反応性成分、及びイソシアネート成分を、表IIに記載する。接着剤配合物試料の調製の例示として発明の実施例1の接着剤を使用して、約2,541gのイソシアネート成分(成分B)、約459gのイソシアネート成分(成分A)を、プラスチック容器に装填する。材料を、機械的ミキサを使用して、室温(約25℃)で30分間混合して、発明の実施例1の配合接着剤を得る。
【0059】
表IIは、全ての接着剤が同じ量の過剰なイソシアネートを有する、選択した実施例の接着剤配合物を記載している。
【0060】
【0061】
コーティングされた積層体
コーティングされた積層体を調製するための一般的手順
ポリウレタン接着剤を、接着剤配合物を調製するための一般的手順を使用して、上記のように調製する。接着剤を、最初に、グラビアシリンダを介して一次基材上にコーティングする。次いで、コーティングされたフィルムを、3つにゾーン化したオーブンに通過させる。次いで、コーティングされたフィルムを、90℃の温度、及び1平方インチ当たり40ポンド(275.8kPa)に設定したニップ圧力を用いて、加熱されたスチールロール下で別の基材にニップする。積層構造を、17℃の冷却ロール温度で最終冷却ロールに通過させる。次いで、得られた積層体を温度制御室に入れて、23℃及び50%RHで7日間硬化させる。
【0062】
実施例4~6
コーティングされた積層体を、表IIに上記した発明の実施例1~3のポリウレタン接着剤組成物を使用し、かつ上記のコーティングされた積層体を調製するための一般的手順を使用して、製造した。得られた発明の実施例4~6の積層体の各々は、3.5g/m2の接着剤コーティング重量を有していた。
【0063】
比較例C
コーティングされた積層体を、表IIに上記した比較例Aのポリウレタン接着剤組成物を使用して、かつ上記のコーティングされた積層体を調製するための一般的手順を使用して、製造した。得られた比較例Aの積層体は、3.5g/m2の接着剤コーティング重量を有していた。
【0064】
比較例D
約55重量%のADCOTE(商標)577、4.9重量%のADCOTE(商標)577B、及び40.1重量%の酢酸エチルを含むポリウレタン接着剤を使用したことを除いて、この比較例Bでは、上記のようにコーティングされた積層体を調製するための同じ一般的手順を使用した。この比較例Bでは、積層構造を、17℃の冷却ロール温度の最終冷却ロールに通過させた後、積層体を、温度制御室に入れて、23℃及び50%RHで7日間硬化させた。積層体は、3.5g/m2の接着剤コーティング重量を有していた。
【0065】
積層体/接着剤性能
以下の表IIIに記載のデータから、結晶性ポリカーボネートを含有する、それぞれ、発明の実施例1、2、及び3の接着剤配合物でコーティングされた発明の実施例4、5、及び6の積層体は、非結晶性ポリカーボネート主鎖を含有する接着剤配合物でコーティングされた比較例C及び比較例Dと対比して、改善されたOTRバリア性能を示したことが見られ得る。
【0066】
【国際調査報告】