(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-04
(54)【発明の名称】質量分析法による固相親和性選択
(51)【国際特許分類】
G01N 27/62 20210101AFI20230627BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20230627BHJP
G01N 27/623 20210101ALI20230627BHJP
【FI】
G01N27/62 F
G01N27/62 V
G01N33/15 Z
G01N27/623
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570538
(86)(22)【出願日】2021-05-20
(85)【翻訳文提出日】2022-12-16
(86)【国際出願番号】 IB2021054397
(87)【国際公開番号】W WO2021234640
(87)【国際公開日】2021-11-25
(32)【優先日】2020-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510075457
【氏名又は名称】ディーエイチ テクノロジーズ デベロップメント プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】コービー, トーマス アール.
(72)【発明者】
【氏名】リウ, チャン
【テーマコード(参考)】
2G041
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041EA04
2G041FA12
2G041GA08
2G041GA09
2G041HA01
(57)【要約】
質量分析法による親和性選択のためのシステムにおいて、溶液中の複数の薬物候補が、親和性に基づいて分離され、選択されたタンパク質のための結合親和性を有する、固相素子を、溶液中に導入することと、選択された薬物候補として、固相素子に複数の薬物候補のうちの少なくとも1つを結合させることと、結合解除された材料を分離するために、固相素子および選択された薬物候補を洗浄することと、開放ポートサンプリング界面のサンプリング領域を通して流動する、捕捉流体中で、選択された薬物候補をサンプリングすることと、サンプリングされた選択された薬物候補および捕捉流体をイオン化源に指向することとを含む、方法が、提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択された親和性に基づいて、化合物を同定および分離するための方法であって、
溶液中に複数の化合物をともに導入することと、
前記選択された親和性に基づいて、1つ以上の化合物と結合させるように動作する表面処理を備える、プローブを挿入することと、
前記プローブに前記複数の化合物からの1つ以上の化合物を結合させることと、
前記溶液から前記プローブおよび結合された1つ以上の化合物を除去することと、
前記プローブから前記1つ以上の化合物を分離することと、
開放ポートサンプリング界面の開放端において、流動する溶媒を用いて、前記分離された1つ以上の化合物を捕捉することと、
イオン化素子に前記溶媒および捕捉された1つ以上の化合物を輸送することと、
前記1つ以上の化合物をイオン化することと
を含む、方法。
【請求項2】
質量分析計内で前記イオン化された1つ以上の化合物を分析することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ以上の化合物をイオン化した後であるが、前記分析する前に、前記方法はさらに、微分移動度分光計におけるイオン移動度に基づいて、前記イオン化された1つ以上の化合物を分離することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記プローブは、
固相微量抽出(SPME)ファイバと、
REEDと、
磁性粒子と
から成る群から選択される、請求項1-3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記プローブから前記1つ以上の化合物を分離することは、
前記プローブから前記1つ以上の化合物を結合解除させるために、分離容器内の結合解除溶媒の中に、前記プローブおよび結合された1つ以上の化合物を挿入することと、
前記開放ポートサンプリング界面の開放端において、前記流動する溶媒の中に、前記結合解除溶媒および結合解除された1つ以上の化合物を注入することと
を含む、請求項1-3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記注入することは、
前記分離容器から前記結合解除溶媒および結合解除された1つ以上の化合物を吸引することと、
前記イオン化素子に圧送される溶媒流の中に、前記吸引された結合解除溶媒および結合解除された1つ以上の化合物を注入することと
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記注入することは、前記開放ポートサンプリング界面の開放端において、前記流動する溶媒の中に、前記分離容器から前記結合解除溶媒および結合解除された1つ以上の化合物の液滴を射出させることを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記注入することは、前記液滴を音響的または空気圧で射出させることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
質量分析法による親和性選択のためのシステムにおいて、溶液中の複数の薬物候補が、親和性に基づいて分離される、方法であって、
選択されたタンパク質のための結合親和性を有する、固相素子を前記溶液中に導入することと、
選択された薬物候補として、前記固相素子に前記複数の薬物候補のうちの少なくとも1つを結合させることと、
結合解除された材料を分離するために、前記固相素子および選択された薬物候補を洗浄することと、
開放ポートサンプリング界面のサンプリング領域を通して流動する、捕捉流体中で、前記選択された薬物候補をサンプリングすることと、
前記サンプリングされた選択された薬物候補および捕捉流体をイオン化源に指向することと
を含む、方法。
【請求項10】
前記固相素子は、固相微量抽出ファイバ、REED、および磁性粒子から成る群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記タンパク質は、アミノシラン試薬を用いて前記表面上のSi-OHを処理した後、グルタルアルデヒド(GA)との反応によって、前記固相素子の表面に不動化され、前記GAの遊離端は、前記タンパク質を捕捉するために、リジンのアミノ基と反応することが可能である、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記選択された薬物候補は、サンプルウェルから前記捕捉流体の中に前記選択された薬物候補を音響的に射出させることによってサンプリングされる、請求項9-11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記選択された薬物候補は、前記洗浄した後、前記サンプルウェルから射出される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記選択された薬物候補が、前記サンプルウェルから射出される前に、前記方法はさらに、
前記固相素子から前記選択された薬物候補を解放することと、
前記固相素子から前記選択された薬物候補を隔離することと、
前記捕捉流体の中に、前記固相素子を伴わずに、前記選択された薬物候補を射出させることと
を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記選択された薬物候補は、前記固相素子と結合された状態で射出される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記選択された薬物候補は、前記捕捉流体によって結合解除される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記選択された薬物候補および固相素子は、前記サンプルウェルから射出され、前記システムはさらに、前記イオン化源の前に、前記固相素子を捕獲するためのトラップを備える、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記候補薬物は、前記捕捉流体の中に溶媒を導入することによって、前記捕獲された固相素子から解放される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記トラップは、磁気トラップを備える、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記トラップは、フィルタまたはサイズトラップを備える、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連米国出願)
本願は、その全内容が、参照することによって本明細書に組み込まれる、2020年5月22日に出願された、米国仮出願第63/029,028号からの優先権の利益を主張する。
【0002】
(分野)
本発明は、流体を処理することを対象とし、より具体的には、選択された親和性に基づいて、化合物を同定および分離するための方法およびシステムを対象とする。
【背景技術】
【0003】
(背景)
質量分析法(ASMS)による親和性選択は、不動化または可溶性受容体への候補分子の結合を伴い、時間および費用効果的様式において大化合物ライブラリをスクリーニングするために使用されている。従来のASMSワークフローは、溶液相インキュベーションに基づき、溶液中の標的タンパク質が、薬物分子の混合物に添加される。結合解除された薬物分子は、次いで、限外濾過、スピンカラム、およびサイズ排除クロマトグラフィ等の機構によって、薬剤タンパク質複合体から分離される。分子量に基づく分離後、タンパク質薬物複合体および結合解除されたタンパク質は、分析のために逆相LC/MSに注入される。MSによって検出された薬物分子(LC内に解放される)は、標的タンパク質に対する結合親和性を用いて同定される。しかしながら、従来の方法論による分析速度は、LCを使用したタンパク質薬物複合体からの遊離薬物の時間のかかる分離(すなわち、溶出)に起因して、限定される。
【0004】
固相ASMSでは、固相素子の表面上の酵素が、固相素子の固相表面に対する親和性を用いて薬物分子を捕捉するために、溶液中の薬物混合物の中に挿入され得る。そのような固相素子の実施例は、磁性粒子および固相微量抽出(SPME)ファイバを含むが、しかしながら、SPMEファイバのような他の固相素子と比較して、磁性粒子は、はるかに広い表面積を有し、これは、捕捉感度を改良する。1つのそのようなアプローチである、MagMASS(J.Nat.Prod.2016,79,2898-2902)では、磁性粒子が、溶液中に結合解除された薬物を残しながら、タンパク質結合親和性を用いて薬物分子を「取り出す」ために使用される。必要であれば、磁性粒子は、液体相への薬物分子の溶出およびLC-MS/MSの中への射出前に、洗浄されることできる。
【0005】
また、SPMEファイバ等の結合された薬物分子を用いた固相基材の直接サンプリングのために、開放ポートサンプリング界面(OPI)を使用することは公知であり(その内容が、参照することによって本明細書に組み込まれる、第US10103015B2号参照)、固相素子は、サンプルウェルの間および/またはサンプルウェルからOPIに、磁性粒子を移送するために、磁石(例えば、電磁石)を使用するための磁性粒子である(その内容が、参照することによって本明細書に組み込まれる、第PCT/IB2018/089146号)。磁性粒子がMSの中に取り込まれることを回避するために、OPIを使用して、MSポートに磁性粒子を移送するとき、注意されなければならない。
【0006】
以下の参考文献、すなわち、2014年2月13日に公開された、Moen et al.,(J.Anal.Methods Chem、2014)による、「Solid Phase Microextraction and Related Techniques for Drugs in Biological Samples」、Niels Jonker et al.(Chromatographia、2010年7月)による、「Direct Dynamic Protein-Affinity Selection Mass-Spectrometry」、72(1-2)、7-13、O’Connell et al.(Anal.Chem.,2014,96,pp.7413-7420)による、「Solution-Based Indirect Affinity Selection Mass Spectrometry -A General Tool for High-Throughput Screening of Pharmaceutical Compound Libraries」、「Pulsed Ultrafiltration Mass Spectrometry」、Richard B.van Breemen et al.(Anal.Chem.,1997,69,pp.2159-2164)による、「A New Method for Screening Combinatorial Libraries」、Michael D Rush,et al.(J.Nat.Prod.2016,79,pp.2898-2902)による、「Magnetic Microbead Affinity Selection Screening(MagMASS) of Botanical Extracts for Inhibitors of 15-Lipoxygenase」、Benjamin M.Johnson(Mass Spectrometry Reviews,2002,21,pp.76-86)による、「APPLICATIONS OF PULSED ULTRAFILTRATION-MASSSPECTROMETRY」、第WO2017/093896 Al号(Don W.Arnold,et al.)、および第WO2019/102355 Al 号(Don W.Arnold,et al.)は、背景技術として関連する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第10,103,015号公報
【特許文献2】国際公開第2017/093896号公報
【特許文献3】国際公開第2019/102355号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(要約)
本発明のある側面は、開放ポートサンプリング界面OPIの中に候補分子を移送するための改良された方法および装置を提供することである。
【0009】
一側面では、候補分子が、調製段階(サンプルウェル)において、固相素子から隔離され、次いで、吸引力を使用してサンプルが吸引されて取り除かれることを要求しない、プロセスを使用して、OPIの中に(固相素子を伴わずに)導入される。
【0010】
別の側面では、結合または結合解除された候補分子が、MSへのイオンの導入前に、固相素子を濾過して取り除くプロセスに従って、OPIの中に導入される。一実施形態では、調製ステップが、サンプルウェルにおいて行われ、次いで、隔離された固相素子は、サンプルが、溶媒ベースの捕捉流体を使用して、固相素子から分離される、OPIの中に射出される。固相素子は、次いで、MSに進入する前に捕獲される。ある実施形態では、外部磁場が、MSイオン源にサンプルを送達する前に、固相素子を捕獲する。別の実施形態では、トラップが、OPIをエレクトロスプレーイオン化前に提供される、または移送導管と直列であってもよい。
【0011】
まださらなる側面では、いくつかの調製ステップが、OPIおよび移送導管において実施され、より少ないステップが、サンプルウェルにおいて実施されていてもよい。例えば、第1の捕捉流体が、固相素子が、サンプルとともに捕獲されるにつれて、洗浄作用を提供する、サンプルおよび固相素子を捕捉するために使用され得、第2の分離流体(すなわち、溶媒)が、次いで、捕獲された固相素子からサンプルを分離するために使用され得る。ある実施形態では、第2の分離流体は、事前に定義された傾斜またはシーケンスの濃度が増加することに従って、濃度が0~100%に増加する、可変濃度勾配に伴って流動し得る。また、ある実施形態では、MS信号が、第1の捕捉流体から第2の分離流体に切替をトリガするために使用されてもよい。本実施形態では、第1の捕捉流体は、MSに指向され、これは、洗浄成分が、MS互換性である場合、有用である。別の実施形態では、捕捉流体は、廃導管に指向され得、タイマが、第1の捕捉流体から第2の分離流体に切替をトリガし、イオン源に分離流体を指向するために使用され、これは、洗浄成分が、MS互換性でない場合、有用であり得る。
【0012】
また、本明細書に記載される側面によると、OPIが、固相ASMSにおける磁気ビーズの使用を簡略化するために使用されてもよい。他の側面によると、固相素子は、磁気である必要はなく、薬物分子候補は、サイズに基づいて隔離されてもよい。
【0013】
他の側面では、固相素子は、溶液中に、均一に懸濁され得、選択された候補を捕捉するために動作し得、候補を伴う溶液から音響的に射出させ、OPIを通して流動する捕捉流体に捕捉され得、候補がMSイオン化源に流動することを可能にするように、磁気トラップによって捕捉流体から捕獲され得る。いくつかの側面では、トラップは、磁気トラップまたはサイズベースのトラップを備えてもよい。
【0014】
上記の側面は、溶液中に複数の化合物をともに導入することと、選択された親和性に基づいて、1つ以上の化合物と結合させるように動作する表面処理を備える、プローブを挿入することと、プローブに複数の化合物からの1つ以上の化合物を結合させることと、溶液からプローブおよび結合された1つ以上の化合物を除去することと、プローブから1つ以上の化合物を分離することと、開放ポートサンプリング界面の開放端において、流動する溶媒を用いて、分離された1つ以上の化合物を捕捉することと、イオン化素子に溶媒および捕捉された1つ以上の化合物を輸送することと、1つ以上の化合物をイオン化することとを含む、選択された親和性に基づいて、化合物を同定および分離するための方法によって達成されることができる。
【0015】
ある実施形態では、本方法はさらに、質量分析計内でイオン化された1つ以上の化合物を分析することを含んでもよい。
【0016】
ある実施形態では、本方法はさらに、1つ以上の化合物をイオン化した後であるが、分析する前に、微分移動度分光計におけるイオン移動度に基づいて、イオン化された1つ以上の化合物を分離することを含んでもよい。
【0017】
ある実施形態では、プローブは、固相微量抽出(SPME)ファイバと、(その内容が、本明細書に組み込まれる、米国仮特許出願第62/692,274号に記載されるような)REEDと、磁気ビーズとから成る群から選択される。
【0018】
ある実施形態では、プローブから1つ以上の化合物を分離することは、プローブから1つ以上の化合物を結合解除させるために、分離容器内の結合解除溶媒の中に、プローブおよび結合された1つ以上の化合物を挿入することと、開放ポートサンプリング界面の開放端において、流動する溶媒の中に、結合解除溶媒および結合解除された1つ以上の化合物を注入することとを含んでもよい。
【0019】
ある実施形態では、注入することは、分離容器から結合解除溶媒および結合解除された1つ以上の化合物を吸引することと、イオン化素子に圧送される溶媒流の中に、吸引された結合解除溶媒および結合解除された1つ以上の化合物を注入することとを含んでもよい。
【0020】
ある実施形態では、注入することは、開放ポートサンプリング界面の開放端において、流動する溶媒の中に、分離容器から結合解除溶媒および結合解除された1つ以上の化合物の液滴を射出させることを含んでもよい。
【0021】
ある実施形態では、注入することは、液滴を音響的または空気圧で射出させることを含んでもよい。
【0022】
他の側面が、質量分析法による親和性選択のためのシステムにおいて達成され得、溶液中の複数の薬物候補が、選択されたタンパク質のための結合親和性を有する、固相素子を溶液中に導入することと、選択された薬物候補として、固相素子に複数の薬物候補のうちの少なくとも1つを結合させることと、結合解除された材料を分離するために、固相素子および選択された薬物候補を洗浄することと、開放ポート界面(OPI)のサンプリング領域を通して流動する、捕捉流体中で、選択された薬物候補をサンプリングすることと、サンプリングされた選択された薬物候補および捕捉流体をイオン化源に指向することとを含む、方法によって、親和性に基づいて分離される。
【0023】
ある実施形態では、本方法はさらに、アミノシラン試薬を用いて表面上のSi-OHを処理した後、グルタルアルデヒド(GA)との反応によって、タンパク質を固相素子の表面に不動化させることを含み得、GAの遊離端は、タンパク質を捕捉するために、リジンのアミノ基、またはストレプトアビジンビオチン相互作用、もしくはヒスチジン標識を介して、反応することが可能である。
【0024】
ある実施形態では、本方法はさらに、サンプルウェルから捕捉流体の中に選択された薬物候補を音響的に射出させることによって、選択された薬物候補をサンプリングさせることを含んでもよい。
【0025】
ある実施形態では、本方法はさらに、洗浄した後、サンプルウェルから選択された薬物候補を射出させることを含んでもよい。
【0026】
ある実施形態では、本方法はさらに、選択された薬物候補が、サンプルウェルから射出される前に、固相素子から選択された薬物候補を解放することと、固相素子から選択された薬物候補を隔離することと、捕捉流体の中に、固相素子を伴わずに、選択された薬物候補を射出させることとを含んでもよい。
【0027】
ある実施形態では、選択された薬物候補は、固相素子と結合された状態で射出される。
【0028】
ある実施形態では、選択された薬物候補は、捕捉流体によって結合解除される。
【0029】
ある実施形態では、選択された薬物候補および固相素子は、サンプルウェルから射出され、本システムはさらに、イオン化源の前に、固相素子を捕獲するためのトラップを備える。
【0030】
ある実施形態では、候補薬物は、捕捉流体の中に溶媒を導入することによって、捕獲された固相素子から解放される。
【0031】
ある実施形態では、トラップは、磁気トラップを備える。
【0032】
ある実施形態では、トラップは、フィルタまたはサイズトラップを備える。
【0033】
いくつかの実施形態では、固相素子は、候補から分離された素子とともに射出される一方、他の実施形態では、固相素子は、候補に結合された素子とともに射出される。
【0034】
いくつかの実施形態では、薬物分子候補は、捕捉流体によって固相素子から隔離される一方、他の実施形態では、薬物分子候補が、固相素子が捕捉流体から捕獲された後、剥離剤(例えば、溶媒)によって隔離される。
【0035】
これらは、続いて明白となるであろう、他の側面および利点とともに、より完全に以降で説明および請求される構造および動作の詳細に存在し、その一部を形成する、付随の図面が参照されるが、同様の数字は、全体を通して同様の部品を指す。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1は、タンパク質結合親和性を用いて薬物分子を捕捉するために使用される磁性粒子を使用する、MagMASS方法におけるステップを示す。
【0037】
【
図2】
図2は、実施形態において使用される、開放ポートサンプリング界面(OPI)の略図である。
【0038】
【
図3】
図3は、選択された親和性に基づいて、化合物を同定および分離するための方法を描写する。
【0039】
【
図4】
図4は、ある実施形態による、選択された親和性に基づいて、化合物を同定および分離するための方法を描写する。
【0040】
【
図5】
図5は、
図4の方法を実装するための可能性として考えられるシステムを描写する。
【0041】
【
図6】
図6は、さらなる実施形態による、選択された親和性に基づいて、化合物を同定および分離するための方法を描写する。
【0042】
【
図7】
図7は、
図6の方法を実装するための可能性として考えられるシステムを描写する。
【0043】
【
図8】
図8は、付加的実施形態による、選択された親和性に基づいて、化合物を同定および分離するための方法を描写する。
【0044】
【
図9】
図9は、
図8の方法を実装するための可能性として考えられるシステムを描写する。
【0045】
【発明を実施するための形態】
【0046】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
本発明者らは、
図1に示されるように、先行技術MagMASS方法が、タンパク質結合親和性を用いて薬物分子を捕捉するために、磁性粒子を使用することを見出している。最初に、磁気ビーズ(B)が、溶液中に薬物分子候補(UおよびD)を含有する、サンプル容器100に導入される。親和性を伴う薬物分子候補(D)は、次いで、磁気ビーズに結合される。結合解除された薬物分子(U)が、次いで、洗浄容器110内で除去される一方、ビーズ(B)および結合された薬物分子候補(D)は、磁石115からの磁場を介して、容器内に留保される。洗浄されたビーズは、洗浄容器から除去され、薬物分子候補(D)が、溶媒を使用して、ビーズから隔離される、分離容器120の中に導入される。隔離された薬物分子候補(d)は、次いで、分離容器120から吸引される一方、磁気ビーズは、磁石125からの磁場を介して、定位置に保持される。吸引された薬物分子候補は、次いで、分析のためにLC-MS/MS130の中に経時的に溶出される。磁気ビーズは、次いで、分離容器120から磁気で除去されることができる。
【0047】
上記に議論されるように、本発明の側面が、固相素子として磁気ビーズを伴うOPIを使用する、候補分子を移送するための改良された方法および装置と、精密かつ制御された様式における、OPIへのサンプルの非接触導入のための音響液滴射出技術とを含む。
【0048】
図2を参照すると、共軸方向配列で配列される第2の円筒形部材210内に配置される第1の円筒形部材205と、開口先端215とを備える、OPI200が、示される。OPI200の付加的詳細が、種々の実施形態を参照して、下記に提供される。
【0049】
一般に、
図3に示されるように、選択された親和性に基づいて、化合物を同定および分離するための方法が、提供される。300では、複数の化合物が、溶液中にともに導入される。310では、プローブが、溶液中に挿入され、プローブは、選択された親和性に基づいて、1つ以上の化合物と結合するように動作する、表面処理を含む。化合物のうちの1つ以上は、次いで、320において、プローブに結合される。ある実施形態では、基材表面は、結合親和性を伴う埋め込まれたタンパク質を含有し得る、固相微量抽出(SPME)ファイバを備えてもよい。基材表面は、タンパク質を保持するように構成される、任意の材料であり得、メッシュ材料または表面もしくはREEDのようなブレード等の種々の実施例を含むことができる。他の実施形態では、下記に議論されるように、表面処理は、ビーズ等の磁気材料を含むことができる。
【0050】
結合された1つ以上の化合物を伴うプローブは、次いで、330において、溶液から除去される。340では、1つ以上の化合物は、プローブから分離される。350では、分離された1つ以上の化合物は、OPI200の開口先端215において、流動する有機溶媒を用いて捕捉される。360では、OPI200の開口先端215において、溶媒および捕捉された1つ以上の化合物は、LC-MS/MS130等のイオン化素子に輸送される。次いで、370では、1つ以上の化合物は、当技術分野において公知のように、LC-MS/MS130内でイオン化される。
【0051】
ある実施形態では、
図5に示されるシステムを参照して
図4に記載されるように、選択された親和性に基づいて、化合物を同定および分離するための方法が、提供される。400では、溶液中の複数の薬物分子候補(UおよびD)および磁気ビーズ(B)が、親和性を伴う薬物分子候補(D)が、磁気ビーズに結合されるように、例えば、それに対してビーズが磁気で付着される、電磁気サンプリング素子またはプローブを使用して、サンプル容器100に導入される。410では、ビーズ(B)および結合された薬物分子候補(D)は、例えば、電磁気サンプリング素子またはプローブを使用して、サンプル容器100から洗浄容器110に移送され、それに応じて、結合解除された薬物分子(U)は、洗浄を介して除去される一方、ビーズ(B)および結合された薬物分子候補(D)は、磁石115からの磁場を介して、容器内に留保される。420では、結合された薬物分子候補を伴う洗浄ビーズは、例えば、電磁気サンプリング素子またはプローブを使用して、洗浄容器から除去され、離容器120の中に導入され、薬物分子候補(D)は、有機溶媒を使用して、ビーズから解放される。430では、薬物分子候補(D)は、磁石125を介して、磁気ビーズ(B)から隔離される。440では、薬物分子候補(D)は、OPI200の中に分離容器120から音響的に射出される。OPI200内で、捕捉流体は、2つの円筒形部材の間の環状空間220を通して、先端部215に向かって進行し、次いで、流体経路を画定する、図における矢印で描写されるような内側円柱を通して、先端部から離れるように進行する。捕捉流体は、サンプルを清浄する必要性を事実上排除する。450では、溶媒および射出された薬物候補(D)は、先端部215からMSイオン化源530に流動する。随意に、または必要であれば、薬物分子候補(D)は、微分移動度分光法(DMS)またはMS技法(例えば、MS-MS等における分裂パターン)を使用して、結合解除された薬物分子(U)から分離されることができる。
【0052】
さらなる実施形態では、
図7に示されるシステムを参照して
図6に記載されるように、選択された親和性に基づいて、化合物を同定および分離するための方法が、提供される。600では、溶液中の複数の薬物分子候補(UおよびD)および磁気ビーズ(B)が、親和性を伴う薬物分子候補(D)が、磁気ビーズに結合されるように、例えば、それに対してビーズが磁気で付着される、電磁気サンプリング素子またはプローブを使用して、サンプル容器100に導入される。610では、ビーズ(B)および結合された薬物分子候補(D)は、例えば、電磁気サンプリング素子またはプローブを使用して、サンプル容器100から洗浄容器110に移送され、それに応じて、結合解除された薬物分子(U)は、洗浄を介して除去される一方、ビーズ(B)および結合された薬物分子候補(D)は、磁石115からの磁場を介して、容器内に留保される。620では、結合された薬物分子候補を伴う洗浄ビーズは、洗浄容器から除去され、例えば、電磁気サンプリング素子またはプローブを使用して、離容器120の中に導入され、薬物分子候補(D)は、有機溶媒を使用して、ビーズから解放される。630では、薬物分子候補(D)およびビーズ(B)は、OPI200の中に分離容器120から音響的に射出される。OPI200内で、捕捉流体は、2つの円筒形部材の間の環状空間220を通して、先端部215に向かって進行し、次いで、流体経路を画定する、図における矢印で描写されるような内側円柱を通して、先端部から離れるように進行する。捕捉流体は、サンプルを清浄する必要性を事実上排除する。640では、溶媒、ビーズ(B)、および薬物候補(D)は、ビーズ(B)が捕獲される、直列トラップ730に、先端部215から流動する(640)。650では、溶媒および射出された薬物候補(D)は、トラップ730からMSイオン化源530に流動する。代替として、薬物分子候補(D)を分離容器120内のビーズから分離するのではなく、薬物分子候補(D)は、OPI200内のビーズから分離され得、捕捉流体は、溶媒である。
【0053】
随意に、または必要であれば、薬物分子候補(D)は、微分移動度分光法(DMS)またはMS技法(例えば、MS-MS等における分裂パターン)を使用して、結合解除された薬物分子(U)から分離されることができる。
【0054】
630における音響射出に関して、薬物分子候補(D)が、例えば、分注前に分離容器120を機械的に攪拌することによって、または音響分注システム内で電磁気ミキサを統合することによって、分離容器120内のサンプル溶液中で均一に懸濁されることが好ましい。
【0055】
付加的実施形態では、
図9に示されるシステムを参照して
図8に記載されるように、選択された親和性に基づいて、化合物を同定および分離するための方法が、提供される。800では、溶液中の複数の薬物分子候補(UおよびD)および磁気ビーズ(B)が、親和性(D)を伴う薬物分子候補が、磁気ビーズに結合されるように、例えば、それに対してビーズが磁気で付着される、電磁気サンプリング素子またはプローブを使用して、サンプル容器100に導入される。810では、非洗浄薬物分子候補(D)およびビーズ(B)は、OPI200の中にサンプル容器100から音響的に射出される。OPI200内で、捕捉流体は、2つの円筒形部材の間の環状空間220を通して、先端部215に向かって進行し、次いで、流体経路を画定する、図における矢印で描写されるような内側円柱を通して、先端部から離れるように進行する。捕捉流体(例えば、水)は、サンプルを清掃する必要性を効果的に排除する。820では、溶媒、ビーズ(B)、および非洗浄薬物候補(D)は、ビーズ(B)が捕獲される、直列トラップ730に、先端部215から流動し(640)、薬物候補(D)は、結合解除された薬物分子(U)を除去するために洗浄される。830では、捕捉流体(水)の流動は、ビーズ(B)から薬物分子候補(D)を分離するために、弁900を介した有機溶媒流動に切り替える。840では、溶媒および選択された薬物候補(D)は、トラップ730からMSイオン化源530に、輸送ライン910を介して、流動する。
【0056】
随意に、または必要であれば、薬物分子候補(D)は、微分移動度分光法(DMS)またはMS技法(例えば、MS-MS等における分裂パターン)を使用して、結合解除された薬物分子(U)から分離され得る。
【0057】
フィルタまたはサイズトラップ、もしくは随時置換され得る永久磁石、または磁気ビーズ(B)を捕獲するために通電され、次いで、例えば、任意の捕捉された磁気ビーズを解放するために、清浄サイクルの間、消磁され得る、電磁石を含む、トラップ730の異なる実施形態が、想定される。
図10に示されるように、移送ライン900は、廃容器に捕捉流体の流動を再指向するための、弁920を含み、それによって、電磁石が、捕捉したビーズを解放するために消磁されるとき、清掃サイクルの間、イオン化源530の中に磁気ビーズを解放することを回避し得る。
【0058】
図7のシステムでは、トラップ730は、OPI200の先端部215における磁気トラップ(すなわち、第1の円筒形部材205および/または第2の円筒形部材210の一方または両方を囲繞する電磁石)であり得、清浄サイクルが、洗浄された薬物候補が、MSイオン化源530に運搬された後、トラップからビーズを解放するように、溶媒ベースの捕捉流体を用いて実施されてもよい。
【0059】
別の実施形態では、トラップ730は、イオン化源530に配置され得、ビーズ軌道は、
図5および9に示されるシステムと併用するために、イオンよりはるかに重いビーズに起因して、MSイオン化源530への入口において、イオンから分離され得る。
【0060】
さらなる実施形態では、トラップ730は、
図9に示されるシステムの輸送ライン900上の直列の磁気トラップであってもよい。直列の磁気トラップは、輸送ライン内の磁気ビーズ(B)を捕捉するために十分な磁場を有する、輸送ライン900の置換可能区分であり得ることが、想定される。
【0061】
ビーズ(B)から隔離された薬物分子候補(D)の音響射出を採用する、
図5のシステムでは、永久磁石保護トラップが、イオン化源530および磁気ビーズのMS形態の非意図的射出物を容器120から保護するために含まれ得ることもまた、想定される。
【0062】
図5および7に描写されるシステムは、別個のサンプル、洗浄および分離容器100、110、および120の使用について議論するが、サンプル調製は、単一容器または複数の容器において実施され得ることが、想定される。
【0063】
図4-10に記載される実施形態のそれぞれでは、化合物を磁性粒子(B)の固相表面との親和性を用いて薬物分子に導入することの代替として、タンパク質が磁性粒子(B)上に事前に不動化されるのではなく、粒子(B)が、遊離溶液内へのタンパク質薬物統合後(例えば、400、600、800後)に添加され、タンパク質薬物複合体を取り出すために使用され得ることが、想定される。
【0064】
本発明の多くの特徴および利点は、詳細な説明から明白であり、したがって、添付の請求項によって、本発明の範囲内に該当する本発明の全てのそのような特徴および利点を網羅することが、意図される。さらに、多数の修正および変更が、容易に当業者に想起され得るため、本発明を図示および説明される正確な構造ならびに動作に限定することは所望されず、故に、全ての好適な修正および均等物が、本発明の範囲内に該当すると見なされ得る。
【国際調査報告】