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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-04
(54)【発明の名称】空気冷却システム
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/06 20060101AFI20230627BHJP
   B01D 53/22 20060101ALI20230627BHJP
   B01D 63/08 20060101ALI20230627BHJP
   B01D 69/02 20060101ALI20230627BHJP
   F25B 19/04 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
F25B1/06
B01D53/22
B01D63/08
B01D69/02
F25B19/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570568
(86)(22)【出願日】2021-06-01
(85)【翻訳文提出日】2023-01-16
(86)【国際出願番号】 US2021070646
(87)【国際公開番号】W WO2021248156
(87)【国際公開日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】62/704,864
(32)【優先日】2020-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/129,206
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519418226
【氏名又は名称】クレイトン・ポリマーズ・エル・エル・シー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メータル,ビジェイ
(72)【発明者】
【氏名】トチェット,ロジャー
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006HA45
4D006JA07A
4D006JA08A
4D006JA08C
4D006JA14A
4D006JA18A
4D006JA52Z
4D006JA53Z
4D006JA66Z
4D006JA67Z
4D006KA12
4D006KE07R
4D006KE08Q
4D006MA01
4D006MA03
4D006MA04
4D006MA09
4D006MA12
4D006MA21
4D006MA31
4D006MB03
4D006MB06
4D006MB09
4D006MB14
4D006MB19
4D006MC22
4D006MC24
4D006MC28
4D006MC30
4D006MC37
4D006MC45
4D006MC47
4D006MC62
4D006MC74
4D006MC81
4D006MC88
4D006PA01
4D006PB17
4D006PB65
4D006PC72
(57)【要約】
空気冷却システムが、空気を冷却するように構成された蒸発器と、液体を貯蔵し、蒸発器へ液体を提供するためのリザーバとを含む。空気冷却システムはまた、蒸発器に流体的に結合され、蒸発器を通って流れる液体を蒸気に変換することを容易にするために、蒸発器内に相対的に低い圧力を生じさせるように構成された減圧システムを含む。減圧システムは、液体排出器を含み、液体排出器は、リザーバから液体を受け取るように構成された入口部分と、入口部分の下流に配置され、蒸発器に流体的に結合されたスロート部分と、スロート部分の下流に配置され、液体排出器内の圧力を増加させるように構成された出口部分とを有する。減圧システムはまた、リザーバからの液体を液体排出器へ供給するように液体排出器およびリザーバに流体的に接続されたポンプを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気冷却システムであって、
通過する空気を冷却するように構成された蒸発器と、
蒸発器へ液体を提供するように蒸発器に流体的に接続された液体を貯蔵するためのリザーバと、
減圧システムであって、減圧システムは、蒸発器に流体的に結合され、蒸発器を通って流れる液体の少なくとも一部分を蒸気に変換することを容易にするために、蒸発器内の周囲温度で液体の飽和蒸気圧以下の圧力を生じさせるように構成され、減圧システムは、
液体排出器であって、
リザーバから液体を受け取るように構成された入口部分、
入口部分の下流に配置され、蒸発器に流体的に結合されたスロート部部であって、入口部分から受け取った液体の速度を増加させるように構成されているスロート部分、および、
スロート部分の下流に配置され、蒸発器から受け取った蒸気の凝縮を容易にするために、液体排出器内の圧力を増加させるように構成された出口部分、
を有する、液体排出器を含む、
減圧システムと
液体排出器およびリザーバに流体的に接続され、リザーバからの液体を液体排出器へ供給するように構成されたポンプと、
を備える、空気冷却システム。
【請求項2】
減圧システムは、液体の飽和蒸気圧を下回る圧力まで蒸発器内の圧力を低下させるために、液体排出器の上流に配置され、かつ蒸発器に流体的に結合されたブースターポンプをさらに含む、請求項1に記載の空気冷却システム。
【請求項3】
液体は水であり、ブースターポンプが、摂氏25度で31.7mbarA以下の値まで圧力を低下させることを容易にする、請求項2に記載の空気冷却システム。
【請求項4】
ブースターポンプは、蒸発器内の流体の飽和蒸気圧未満の値、または20mbarA~40mbarAもしくは10mbarA~20mbarAの値まで、圧力を低下させることを容易にする、請求項2に記載の空気冷却システム。
【請求項5】
リザーバは、リザーバ内の液体のレベルが第1の閾値レベルを上回ったときにリザーバからの液体の排水を容易にするためのドレン弁を含む、請求項1に記載の空気冷却システム。
【請求項6】
液体排出器に流体的に接続され、液体排出器を出る液体の少なくとも一部分を受け取るように構成された熱交換器をさらに含み、熱交換器は、受け取った液体を冷却するように構成されている、請求項1に記載の空気冷却システム。
【請求項7】
熱交換器は、リザーバの上流に配置されており、冷却された液体をリザーバへ供給する、請求項6に記載の空気冷却システム。
【請求項8】
液体排出器は、ポンプから液体の水を受け取るように構成された水排出器であり、システムは、リザーバから蒸発器への液体の流れを制御するために、リザーバと蒸発器との間に配置された絞り弁をさらに含む、請求項1に記載の空気冷却システム。
【請求項9】
請求項1に記載の空気冷却システムであって、
蒸発器の上流または下流に配置され、液体排出器に流体的に結合するように構成された除湿コアであって、
空気チャネルと、
空気チャネルから分離された少なくとも1つの蒸気チャネルと、
を含む除湿コアと、
少なくとも1つの蒸気チャネルを空気チャネルから分離する膜であって、膜は、空気チャネルを通って流れる空気からの湿気の除去を容易にするように構成されており、膜は、水および水蒸気に対して選択的に透過性を有し、空気に対して不透過性を有し、1グラム当たり少なくとも1.0ミリ当量のイオン交換能を含む膜と、
をさらに含み、
スロート部分は、空気チャネルを通って流れる空気から少なくとも1つの蒸気チャネルへの湿気の流れを容易にするために、少なくとも1つの蒸気チャネル内に空気チャネル内より相対的に低い圧力を生じさせるように、少なくとも1つの蒸気チャネルに流体的に結合され、
出口部分は、少なくとも1つの蒸気チャネルから受け取った水蒸気の凝縮を容易にする、
空気冷却システム。
【請求項10】
減圧システムは、水の飽和蒸気圧を下回る圧力まで少なくとも1つの蒸気チャネル内の圧力を低下させるために、液体排出器の上流に配置され、除湿コアに接続されたブースターポンプをさらに含む、請求項9に記載の空気冷却システム。
【請求項11】
減圧システムに対する除湿コアの流体接続を制御するように減圧システムと除湿コアとの間に配置された弁をさらに含む、請求項9に記載の空気冷却システム。
【請求項12】
膜がスルホン化重合体を含有する、請求項9に記載の空気冷却システム。
【請求項13】
リザーバ内の圧力は、液体が水であるとき、空気冷却システムの開始時に5%~20%だけ周囲温度における液体の飽和蒸気圧より大きい値、または空気冷却システムの開始時に40mbarA~150mbarAに低下される、請求項1に記載の空気冷却システム。
【請求項14】
空気冷却システムは、開始前に、5%~20%だけ液体の飽和蒸気圧より大きい圧力値に事前調節される、請求項1に記載の空気冷却システム。
【請求項15】
空気冷却システムであって、
空気チャネルおよび空気チャネルから分離された少なくとも1つの蒸気チャネルを画定する少なくとも1つの除湿コアであって、
少なくとも1つの蒸気チャネルを空気チャネルから分離する膜であって、膜は、空気チャネルを通って流れる空気からの湿気の除去を容易にするように構成されており、
膜は、水および水蒸気に対して選択的に透過性を有し、空気に対して不透過性を有し、
膜は、1グラム当たり少なくとも1.0ミリ当量のイオン交換能を含む膜を含む、少なくとも1つの除湿コアと、
蒸発器を通過する空気を冷却するように構成されており、除湿コアの下流または上流に配置された蒸発器と、
蒸発器へ液体を提供するように蒸発器に流体的に接続された、液体を貯蔵するための耐圧リザーバと、
蒸発器または除湿コアのうちの少なくとも1つに流体的に結合された減圧システムであって、減圧システムは、
蒸発器に流体的に結合されたとき、蒸発器を通って流れる液体の少なくとも一部分を蒸気に変換することを容易にするために、蒸発器内の周囲温度で液体の飽和蒸気圧以下の圧力を生じさせ、かつ、
除湿コアに流体的に結合されたとき、空気チャネルを通って流れる空気からの湿気を少なくとも1つの蒸気チャネルへ抽出することを容易にするために、少なくとも1つの蒸気チャネル内に空気チャネルより相対的に低い圧力を生じさせるように構成されており、
減圧システムは、液体排出器を有し、液体排出器は、
リザーバから液体を受け取るように構成された入口部分、
入口部分の下流に配置され、蒸発器または少なくとも1つの蒸気チャネルのうちの少なくとも1つに流体的に結合され、入口部分から受け取った液体の速度を増加させるように構成されているスロート部分、および、
スロート部分の下流に配置され、蒸発器または除湿コアのうちの少なくとも1つから受け取った蒸気の凝縮を容易にするために、液体排出器内の圧力を増加させるように構成された出口部分、
を有する、減圧システムと、
液体排出器およびリザーバに流体的に接続され、リザーバからの液体を液体排出器へ供給するように構成されたポンプと、を備える、
空気冷却システム。
【請求項16】
蒸発器または除湿コアのうちの少なくとも1つに対する減圧システムの流体結合を制御するための少なくとも1つの弁をさらに含む、請求項15に記載の空気冷却システム。
【請求項17】
少なくとも1つの弁は、
蒸発器および減圧システムの流体結合を制御するための第1の弁と、
除湿コアおよび減圧システムの流体結合を制御するための第2の弁とを含む、請求項15に記載の空気冷却システム。
【請求項18】
減圧システムは、ブースターポンプをさらに含み、ブースターポンプは、蒸発器の少なくとも1つの内部の圧力を液体の飽和蒸気圧を下回る圧力へ低下させること、または除湿コアの少なくとも1つの蒸気チャネル内の圧力を水の飽和蒸気圧を下回る圧力へ低下させることのために、液体排出器の上流に配置される、請求項15に記載の空気冷却システム。
【請求項19】
液体は水であり、ブースターポンプが、摂氏25度で31.7mbarA以下、または150mbarA未満、または20mbarA~40mbarA、または10mbarA~20mbarAの値まで、圧力を低下させることを容易にする、請求項15に記載の空気冷却システム。
【請求項20】
リザーバは、リザーバ内の液体のレベルが第1の閾値レベルを上回ったときにリザーバからの液体の排出を容易にするためのドレン弁を含む、請求項15に記載の空気冷却システム。
【請求項21】
液体排出器に流体的に接続され、液体排出器を出る液体の少なくとも一部分を受け取るように構成された熱交換器をさらに含み、熱交換器は、受け取った液体を冷却するように構成されている、請求項15に記載の空気冷却システム。
【請求項22】
熱交換器はリザーバの上流に配置され、冷却された液体をリザーバへ供給し、蒸発器は除湿コアの下流に配置されている、請求項15に記載の空気冷却システム。
【請求項23】
リザーバ内の圧力は、液体が水であるとき、空気冷却システムの開始時に5%~20%だけ周囲温度における液体の飽和蒸気圧より大きい値、または空気冷却システムの始動時に40mbarA~150mbarAの値まで低下される、請求項15に記載の空気冷却システム。
【請求項24】
空気冷却システムは、開始前に、5%~20%だけ液体の飽和蒸気圧より大きい圧力値に事前調節される、請求項15に記載の空気冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年5月31日出願の米国仮特許出願第62/704,864号、および2020年12月22日出願の米国仮特許出願第63/129,206号の優先権および利益を主張する。その内容は、あらゆる目的で引用により本明細書に組み込まれている
【0002】
本開示は、蒸発器と、蒸発器内の圧力を低下させて蒸発器を流れる空気を冷却するための液体排出器とを有する空気冷却システムに関する。
【背景技術】
【0003】
気候変動、地球温暖化、および都市化に伴い、占有空間の内部を冷却するための空気冷却システムの需要が増加している。空気冷却システムは通常、空気から熱および湿度を除去するための冷媒または乾燥除湿器を含む。しかし、空調機の動作は高いエネルギーを必要とする。従来の冷媒に基づく空調機は、冷媒蒸発段階中に熱交換器の周りで蒸気凝縮によって湿気が抽出されるとき、複合ステップで顕熱および潜熱負荷を管理する。このプロセスは、エネルギー集約的でありかつ非効率的である。
【0004】
デザートクーラーまたは冷却塔などの空気冷却器は、占有空間の内部へ相対的に冷たい空気を提供するためにも使用される。これらのシステムは概して、水の蒸発の原理で作用し、表面から水を蒸発させることによって空気を冷却する。しかし、これらのシステムは、必ずしも湿度の高い環境でうまく機能するとは限らない。
【0005】
米国特許第8,496,732号明細書は、除湿ユニット内の水選択透過膜間で湿度勾配を確立することによって空気を除湿するための空気冷却システムを開示している。この湿度勾配は、空気を圧縮することによって真空を生じさせる真空ポンプを使用して膜の一方の側に真空を生じさせることによって確立される。空気の圧縮性により、空気を圧縮することによって真空を生じさせることは比較的非効率的であり、より多くのエネルギーを消費する。加えて、空気を圧縮することによって真空を生じさせる真空ポンプは概して、乾燥空気などの非凝縮性の流体の大部分を動作のために使用し、水蒸気または湿気などの凝縮性の高い負荷を含む環境ではうまく応答しない。さらに空気冷却システムは、空気から抽出された水蒸気を凝縮するための凝縮器を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第8,496,732号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、空気からの熱の除去を容易にするために、エネルギー効率的な改善された空気冷却システムが依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様では、空気冷却システムが開示される。空気冷却システムは、加圧可能であり真空に耐える。システムは、蒸発器を通過する空気を冷却するように構成された蒸発器と、蒸発器へ液体を提供するように蒸発器に流体的に接続された、液体を貯蔵するためのリザーバとを含む。システムは、減圧システムをさらに含み、減圧システムは蒸発器に流体的に結合され、蒸発器を通って流れる液体の少なくとも一部分を蒸気に変換することを容易にするために、蒸発器内の周囲温度で液体の飽和蒸気圧以下の圧力を生じさせるように構成されている。減圧システムは、液体排出器およびポンプを含む。液体排出器は、リザーバから液体を受け取るように構成された入口部分と、入口部分の下流に配置され、蒸発器に流体的に結合されたスロート部分とを含む。スロート部分は、入口部分から受け取った液体の速度を増加させるようになされている。液体排出器はまた、スロート部分の下流に配置され、蒸発器から受け取った蒸気の凝縮を容易にするために、液体排出器内の圧力を増加させるように構成された出口部分を含む。ポンプは、液体排出器およびリザーバに流体的に接続され、リザーバからの液体を液体排出器へ供給するように構成されている。
【0009】
一実施形態によれば、減圧システムはブースターポンプをさらに含み、ブースターポンプは、液体の飽和蒸気圧を下回る圧力まで蒸発器内の圧力を低下させるために、液体排出器の上流に配置され、蒸発器に流体的に結合されている。
【0010】
一実施形態では、液体は水であり、ブースターポンプは、摂氏25度で31.7mbarA以下の値まで圧力を低下させることを容易にする。
【0011】
一実施形態では、ブースターポンプは、蒸発器内の流体の飽和蒸気圧未満の値まで圧力を低下させることを容易にする。
【0012】
一実施形態では、ブースターポンプは、20mbarA~40mbarAまたは10mbarA~20mbarAの値まで圧力を低下させることを容易にする。
【0013】
一実施形態によれば、リザーバは、液体のレベルが第1の閾値レベルを上回ったときにリザーバからの液体の排出を容易にするためのドレン弁を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、リザーバは、リザーバ内に貯蔵されている液体から周囲への熱伝達を容易にするために、熱伝導性の材料から作られる。
【0015】
いくつかの実施形態では、空気冷却システムは熱交換器をさらに含み、熱交換器は、液体排出器に流体的に接続され、液体排出器を出る液体の少なくとも一部分を受け取るように構成されている。熱交換器は、受け取った液体を冷却するように構成されている。
【0016】
一実施形態では、熱交換器はリザーバの上流に配置されており、冷却された液体をリザーバへ供給する。
【0017】
一実施形態では、液体排出器は、ポンプから液体の水を受け取るように構成された水排出器である。
【0018】
一実施形態によれば、空気冷却システムはまた、リザーバから蒸発器への液体の流れを制御するために、リザーバと蒸発器との間に配置された絞り弁を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、空気冷却システムは除湿コアをさらに含み、除湿コアは、蒸発器の上流または下流に配置され、液体排出器に流体的に結合するように構成されている。除湿コアは、空気チャネルと、空気チャネルから分離された少なくとも1つの蒸気チャネルと、少なくとも1つの蒸気チャネルを空気チャネルから分離する膜とを含み、膜は、空気チャネルを通って流れる空気からの湿気の除去を容易にするように構成されている。膜は、水および水蒸気に対して選択的に透過性を有し、空気に対して不透過性を有する。さらに、スロート部分は、空気チャネルを通って流れる空気から少なくとも1つの蒸気チャネルへの湿気の流れを容易にするために、少なくとも1つの蒸気チャネル内に空気チャネル内より相対的に低い圧力を生じさせるように、少なくとも1つの蒸気チャネルに流体的に結合されている。また出口部分は、少なくとも1つの蒸気チャネルから受け取った水蒸気の凝縮を容易にする。
【0020】
一実施形態では、膜は、スルホン化重合体を含み、本質的にスルホン化重合体からなり、またはスルホン化重合体からなる。
【0021】
一実施形態によれば、空気冷却システムはまた、減圧システムに対する除湿コアの流体接続を制御するように減圧システムと除湿コアとの間に配置された弁を含む。
【0022】
一実施形態では、リザーバ内の圧力は、空気冷却システムの開始時に、少なくとも5%、または7-20%、または最大25%だけ周囲温度における液体の飽和蒸気圧より大きい値まで低下される。
【0023】
一実施形態では、液体が水であるとき、リザーバ内の圧力は、空気冷却システムの開始時に40mbarA~150mbarAの値まで低下される。
【0024】
一実施形態では、空気冷却システムは、開始前に、5%超、または7~20%、または最大25%だけ液体の飽和蒸気圧より大きい圧力値に事前調節される。
【0025】
第2の態様では、空気冷却システムが開示される。空気冷却システムは、空気チャネルおよび空気チャネルから分離された少なくとも1つの蒸気チャネルを画定する少なくとも1つの除湿コアを含む。除湿コアは、少なくとも1つの蒸気チャネルを空気チャネルから分離する膜をさらに含む。膜は、空気チャネルを通って流れる空気からの湿気の除去を容易にするように構成されている。さらに、膜は、水および水蒸気に対して選択的に透過性を有し、空気に対して不透過性を有する。空気冷却システムは、蒸発器を通過する空気を冷却するように構成されており、除湿コアの上流または下流に配置された蒸発器をさらに含む。さらに、空気冷却システムは、蒸発器へ液体を提供するように蒸発器に流体的に接続された、液体を貯蔵するための耐圧リザーバを含む。さらに、空気冷却システムは、蒸発器または除湿コアのうちの少なくとも1つに流体的に結合された減圧システムを含む。減圧システムは、蒸発器に流体的に結合されたとき、蒸発器を通って流れる液体の少なくとも一部分を蒸気に変換することを容易にするために、蒸発器内の周囲温度で液体の飽和蒸気圧以下の圧力を生じさせるように構成されている。減圧システムはまた、除湿コアに流体的に結合されたとき、空気チャネルを通って流れる空気からの湿気を少なくとも1つの蒸気チャネルへ抽出することを容易にするために、少なくとも1つの蒸気チャネル内に空気チャネルより相対的に低い圧力を生じさせるように構成されている。減圧システムは、液体排出器およびポンプを含む。液体排出器は、リザーバから液体を受け取るように構成された入口部分と、入口部分の下流に配置され、蒸発器または少なくとも1つの蒸気チャネルのうちの少なくとも1つに流体的に結合されたスロート部分とを有する。スロート部分は、入口部分から受け取った液体の速度を増加させるように構成されている。液体排出器はまた、スロート部分の下流に配置され、蒸発器または除湿コアのうちの少なくとも1つから受け取った蒸気の凝縮を容易にするために、液体排出器内の圧力を増加させるように構成された出口部分を含む。ポンプは、液体排出器およびリザーバに流体的に接続され、リザーバからの液体を液体排出器へ供給するように構成されている。
【0026】
一実施形態によれば、空気冷却システムはまた、蒸発器または除湿コアのうちの少なくとも1つに対する減圧システムの流体結合を制御するための少なくとも1つの弁を含む。
【0027】
一実施形態では、少なくとも1つの弁は、蒸発器および減圧システムの流体結合を制御するための第1の弁と、除湿コアおよび減圧システムの流体結合を制御するための第2の弁とを含む。
【0028】
一実施形態では、減圧システムはブースターポンプをさらに含み、ブースターポンプは、蒸発器の少なくとも1つの内部の圧力を液体の飽和蒸気圧を下回る圧力へ低下させること、または除湿コアの少なくとも1つの蒸気チャネル内の圧力を水の飽和蒸気圧を下回る圧力へ低下させることのために、液体排出器の上流に配置される。
【0029】
一実施形態では、液体は水であり、ブースターポンプは、摂氏25度で31.7mbarA以下の値まで圧力を低下させることを容易にする。
【0030】
一実施形態では、ブースターポンプは、蒸発器内の流体の飽和蒸気圧、または20mbarA~40mbarAもしくは10mbarA~20mbarAの値まで、圧力を低下させることを容易にする。
【0031】
一実施形態では、リザーバは、液体のレベルが第1の閾値レベルを上回ったときにリザーバからの液体の排水を容易にするためのドレン弁を含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、リザーバは、リザーバ内に貯蔵されている液体の水から周囲への熱伝達を容易にするために、熱伝導性の材料から作られる。
【0033】
一実施形態では、空気冷却システムは熱交換器をさらに含み、熱交換器は、液体排出器に流体的に接続され、液体排出器を出る液体の少なくとも一部分を受け取るように構成されている。熱交換器は、受け取った液体を冷却するように構成されている。いくつかの実施形態では、熱交換器は、リザーバの上流に配置されており、冷却された液体をリザーバへ供給する。
【0034】
一実施形態では、液体排出器は、ポンプから液体の水を受け取るように構成された水排出器である。
【0035】
実施形態では、空気冷却システムはまた、リザーバから蒸発器への液体の流れを制御するために、リザーバと蒸発器との間に配置された絞り弁を含む。
【0036】
一実施形態では、リザーバ内の圧力は、空気冷却システムの開始時に、5%超、または7~20%、または最大25%だけ周囲温度における液体の飽和蒸気圧より大きい値まで低下される。
【0037】
一実施形態では、リザーバ内の圧力は、液体が水であるとき、空気冷却システムの開始時に、少なくとも30mbarA、または40mbarA~150mbarA、または120mbarA未満の値まで低下される。
【0038】
一実施形態では、空気冷却システムは、開始前に、5%超、または7~20%、または最大25%だけ液体の飽和蒸気圧より大きい圧力値に事前調節される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】蒸発器と、蒸発器に接続された減圧システムとを有する空気冷却システムの一実施形態の概略図である。
図2】液体排出器の上流に配置された熱交換器を描く、蒸発器と、蒸発器に接続された減圧システムとを有する空気冷却システムの一実施形態の概略図である。
図3】減圧システムのリザーバに独立して接続された熱交換器を描く、蒸発器と、蒸発器に接続された減圧システムとを有する空気冷却システムの一実施形態の概略図である。
図4】蒸発器と、膜によって蒸気チャネルから分離された空気チャネルを有する除湿コアと、蒸発器および除湿コアに接続された減圧システムとを有する、空気冷却システムの一実施形態の概略図である。
図5】空気チャネルを通って流れる空気から蒸気チャネルへの水蒸気の流れを有する除湿コアの一実施形態の一部分の概略上面図である。
図6】第1の面から第2の面へ延びる空気チャネルを有する除湿コアの一実施形態の斜視図である。
図7】空気チャネルの延長方向に実質的に直交して延びる蒸気チャネルを描く図4の除湿コアの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本明細書で使用される以下の用語は、以下の意味を有する:
【0041】
「イオン交換能」またはIECは、重合体内でイオン交換を担う全体的な活性部位または官能基を指す。概して、IECを判定するために、従来の酸に基づく滴定方法が使用される。たとえば、「International Journal of Hydrogen Energy」、Volume 39、Issue 10、2014年3月26日、5054-5062頁、「Determination of the ion exchange capacity of anion-selective membrane」を参照されたい。IECは、1モルの交換可能プロトンを提供するために必要とされる重合体の重量である「当量」またはEWの逆である。
【0042】
「[A、B、またはCなどの群]のうちの少なくとも1つ」、または「[A、B、またはCなどの群]のいずれか1つ」の例に見られるような「AまたはBのうちの少なくとも1つ」は、その群からの単一の部材、その群からの2つ以上の部材、またはその群からの部材の組合せを意味する。たとえば、A、B、またはCのうちの少なくとも1つは、たとえばAのみ、Bのみ、またはCのみ、ならびにAおよびB、AおよびC、BおよびC、またはA、B、およびC、またはA、B、およびC任意の他のすべての組合せを含む。
【0043】
「A、B、またはC」として提示される実施形態の一覧は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、「AまたはB」、「AまたはC」、「BまたはC」、あるいは「A、B、またはC」の実施形態を含むものとして解釈されたい。たとえば、「蒸発器または除湿コアのうちの少なくとも1つ」は、蒸発器のみ、除湿コアのみ、ならびに蒸発器および除湿コアの両方を含む。
【0044】
本開示は、空気の冷却および/または空気からの湿気の除去を容易にするための空気冷却システムに関する。システムは、蒸発器、リザーバ、および減圧システムを備え、本質的に、またはこれらからなり、減圧システムは、液体排出器と、液体排出器およびリザーバに接続されたポンプとを有する。実施形態では、空気冷却システムは、蒸発器の上流または下流に配置され、液体排出器に流体的に結合するように構成された除湿コアをさらに含む。除湿コアは、水および水蒸気に対して選択的に透過性を有し、空気に対して不透過性を有する膜を有するものとして特徴付けられる。
【0045】
空気冷却システム内で使用するための液体:本明細書で言及する液体排出器は水排出器として企図される、液体または原動流体として水が使用されるが、任意の他の好適な非圧縮性の液体を空気冷却システム内で使用することもできることが理解されよう。したがって、水への言及は、それだけに限定されるものではないが、アセトン、アセトニトリル、アクロレイン、アクリロニトリル、アルコール(たとえば、とりわけエチル、アリル、ブチル、メチル、プロピル)、アリルアミン、アニリン、アニソール、ベンゼン、クロロホルム、シクロヘキサン、シクロペンタン、ジエチルエーテル、エタノール、化学冷媒(R-11、R-12、R-22を含む)、イソペンタン、および酢酸メチルなどの他の液体を含むことができる。
【0046】
液体排出器:液体排出器はベンチュリ効果に作用し、相対的に小さい直径を有する狭窄スロート部分を有し、スロート部分を通って液体、たとえば水が圧送される。液体がスロート部分を通って流れるにつれて、液体の速度または速さが増加し、スロート部分内の圧力が低くなる。低い圧力は、蒸気チャネルおよび/または蒸発器へ連通される。このようにして、液体排出器は、除湿コアに接続されたとき、除湿コアの空気チャネルと蒸気チャネルとの間に差圧を生じさせることを容易にし、空気チャネルを通って流れる空気から蒸気チャネルへの湿気の流れを有効にする。また液体排出器は、蒸発器内に真空または低圧を生じさせることを容易にし、蒸発器内を流れる液体の少なくとも一部分を蒸気に変換することを有効にする。スロート部分内の圧力の低下を制御するために、液体排出器の入口部分に入る液体の速度および体積が制御される。
【0047】
水とともに使用するための実施形態では、液体排出器は、40mbar~120mbarの真空圧を生成してもよい。液体排出器の真空生成能力は、液体の飽和蒸気圧によって制限されることが理解されよう。一実施形態では、液体排出器は、960mbarゲージ圧以下の圧力を生じさせてもよい。
【0048】
蒸気チャネル内の真空レベルをさらに増加させるために、または蒸気チャネル内の圧力を低下/低減させるために、ブースターポンプは、液体排出器の上流に配置され、蒸発器および除湿コアのうちの少なくとも1つに流体的に結合される。
【0049】
ブースターポンプ:ブースターポンプは、概して反対の方向に回転する少なくとも1対の噛合ローブを含むルーツポンプである。ローブを取り囲むポケット内に流体が閉じ込められ、入口側から出口側へ運ばれる。ブースターポンプは、周囲温度で水の蒸気分圧以下の圧力まで蒸気チャネル内の圧力を低下させることを容易にし、かつ/または液体の飽和蒸気圧以下の圧力まで蒸発器内の圧力を低下させることを容易にする。一実施形態では、液体は水であり、摂氏25度における水の飽和蒸気圧は約31.7mbarAである。一実施形態では、ブースターポンプと液体排出器を組み合わせることで、蒸気チャネルおよび/または蒸発器内に20mbarA以下の圧力を生じさせることが容易になる。いくつかの実施形態では、ブースターポンプは、10mbarA~20mbarAの値まで圧力を低下させることを容易にする。一実施形態では、ブースターポンプは、10mbarA以下まで圧力を低下させる。いくつかの実施形態では、ブースターポンプは、20mbarA~40mbarAの値まで圧力を低下させることを容易にする。いくつかの実施形態では、ブースターポンプは、150mbarA未満の値まで圧力を低下させることを容易にする。
【0050】
膜:システム内で使用するための膜は、優れた水蒸気輸送率(MVTR)特性および優れたイオン交換能(IEC)を有する湿気透過膜である。膜は、空気湿気に対して選択的透過性、すなわち透過性を有するが、他の空気成分に対しては選択的透過性、すなわち透過性を有しないものとして特徴付けられる。実施形態では、膜は、空気に対してほぼ不透過性を有する。実施形態では、膜は、1日当たり100g/m超、または500g/m超、または1,000g/m超のMVTRのMVTRを有するものとして特徴付けられる。ASTM E-96BおよびASTM F1249は、MVTRを測定するための標準的な方法を規定している。実施形態では、膜は、1日当たり5g/m未満の空気透過率を有するものとして特徴付けられる。
【0051】
実施形態では、膜は、好ましいイオン交換能およびプロトン伝導度、ならびにガラス転移温度を有し、水和されたときでも可撓性および材料強度ならびに良好な安定性および膨潤性の両方を提供するものとして特徴付けられる。膜は、ほとんどまたは実質的に全体的に、共重合体内の単量体単位の数に基づいて、10~100mol%のスルホン酸またはスルホン酸塩官能基を含有するように十分にスルホン化されたスルホン化重合体(SP)から形成される。実施形態では、SPは、基板面上に被覆を形成するために使用され、基板は、同じまたは異なる材料から作られる。他の実施形態では、膜は、単一または複数のSP層またはフィルムとして使用され、各SP層または膜は、特定の厚さまたは事前選択された厚さを有する。
【0052】
実施形態では、SPは、3つ以上のブロックを含むブロック共重合体分子構造を有するスルホン化ブロック共重合体であり、電圧の印加によって加速させることができるプロセスである水の透過を有効にするイオン伝導領域を分相および形成するように設計される。実施形態では、SPは、スルホン化テトラフルオロエチレン共重合体、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化ブロック共重合体などのパーフルオロスルホン酸重合体、ポリエーテルスルホンなどのポリスルホン、ポリエーテルケトンなどのポリケトン、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0053】
実施形態では、スルホン化重合体は、スルホン化共重合体内のスルホン化可能な単量体単位の数(「スルホン化度」)に基づいて、10~100mol%のスルホン酸またはスルホン酸塩官能基を含有するように十分にまたは選択的にスルホン化されたものとして特徴付けられる。実施形態では、スルホン化重合体は、25mol%超、または50mol%超、または95mol%未満、または25~70mol%のスルホン化度を有する。
【0054】
実施形態では、スルホン化重合体は、被覆材料に接触してから5分以内に微生物の少なくとも99%を殺す自己滅菌作用を有するものとして特徴付けられる。
【0055】
実施形態では、スルホン化重合体はスルホン化ブロック共重合体であり、A-B-A、A-B-A-B-A、(A-B-A)X、(A-B)X、A-D-B-D-A、A-B-D-B-A、(A-D-B)X、(A-B-D)X、またはこれらの混合物のいずれかに対応する1つまたは複数の共重合体ブロック構成を有し、ここでnは2から約30の整数であり、Xはカップリング剤残留物であり、各Dブロックは、好ましくはスルホン化に対して耐性を有する重合体ブロックである。実施形態では、SPは、A-B-A、(A-B)X、A-B-D-B-A、(A-B-D)X、A-D-B-D-A、および(A-D-B)Xに対応する線形構造、または(A-B)Xおよび(A-D-B)Xに対応する径方向構造を有し、ここでnは3~6の範囲である。A、B、C、およびDブロックのうちの2つ以上が同じであっても異なってもよい。
【0056】
実施形態では、Aブロックは、アクリルエステルまたはメタクリルエステルの重合体セグメントである。実施形態では、Aブロックは、重合されたパラ置換スチレン単量体、エチレン、3から18炭素原子のαオレフィン、1,3-シクロジエン単量体、水素化前に35molパーセント未満のビニル含量を有する共役ジエンの単量体、アクリルエステル、メタクリルエステル、およびこれらの混合物から選択される。Aブロックが1,3-シクロジエンまたは共役ジエンの重合体である場合、これらのブロックは、ブロック共重合体の重合後、ブロック共重合体のスルホン化前に水素化されることが好ましい。Aブロックが1,3-シクロジエン単量体の水素化重合体である場合、そのような単量体は、1,3-シクロヘキサジエン、1,3-シクロヘプタジエン、および1,3-シクロオクタジエンからなる群から選択することができる。Aブロックは、Bブロックに存在するものなど、最大15molパーセントのビニル芳香族単量体を含有することができる。
【0057】
Bブロックは、単量体単位の数に基づいて、約10~約100molパーセントのスルホン酸またはスルホン酸エステル官能基を含有してもよく、非置換スチレン単量体、オルト置換スチレン単量体、メタ置換スチレン単量体、αメチルスチレン単量体、1,1-ジフェニルエチレン単量体、1,2-ジフェニルエチレン単量体、およびこれらの混合物から選択された1つまたは複数の重合ビニル芳香族単量体のセグメントを含有する。
【0058】
Dブロックは、イソプレン、1,3-ブタジエン、およびこれらの混合物から選択された共役ジエンの水素化重合体または共重合体を含有してもよい。
【0059】
Xはカップリング剤残留物であり、カップリング剤は、ポリアルケニルカップリング剤、ジハロアルカン、ハロゲン化ケイ素、シロキサン、多官能エポキシド、シリカ化合物、カルボン酸を有する一価アルコールのエステル(たとえば、安息香酸メチルおよびアジピン酸ジメチル)、およびエポキシ化油を含む、当技術分野で知られているものから選択される。
【0060】
実施形態では、SPは、A-B、A-B-A、(A-B)、(A-B-A)、(A-B-A)X、(A-B)X、またはこれらの混合物の一般構成を有する水素化されたスルホン化ブロック共重合体であり、ここでnは2から約30の整数であり、Xはカップリング剤残留物である。水素化前、各Aブロックは、モノアルケニルアレン重合体ブロックであり、各Bブロックは、少なくとも1つの共役ジエンおよび少なくとも1つのモノアルケニルアレンの制御分布共重合体ブロックである。水素化後、アレン2重結合の約0-10%が還元され、共役ジエン2重結合の少なくとも約90%が還元される。各Aブロックは、約3,000~約60,000の平均分子量数を有する。各Bブロックは、約30,000~約300,000の平均分子量数を有する。各Bブロックは、Aブロックに隣接しており、共役ジエン単位に富む末端領域と、Aブロックに隣接しておらず、モノアルケニルアレン単位に富む1つまたは複数の領域とを具備する。水素化ブロック共重合体中のモノアルケニルアレンの総量は、約20重量パーセント~約80重量パーセントである。各Bブロックにおけるモノアルケニルアレンの重量パーセントは約10パーセント~約75パーセントであり、アルケニルアレンの芳香環の少なくとも25%はスルホン化される。水素化されたスルホン化ブロック共重合体は、0.08ジーメンス/cmより大きいイオン伝導度を有する。
【0061】
実施形態では、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の骨格を有するスルホン化共重合体はスルホン化テトラフルオロエチレン共重合体であり、ビニルエーテルの側鎖(たとえば、-O-CF-CF-O-CF-CF-)が、クラスタ領域内のスルホン酸基で終端する。
【0062】
実施形態では、スルホン化重合体はポリスチレンスルホン酸であり、例には、100,000ダルトン超、400,000ダルトン超、および最大1,500,000ダルトンの分子量を有する、カリウムポリスチレンスルホン酸、ナトリウムポリスチレンスルホン酸、ナトリウムポリスチレンスルホン酸およびカリウムポリスチレンスルホン酸の共重合体(たとえば、ポリスチレンスルホン酸共重合体)が含まれる。ポリスチレンスルホン酸重合体は、架橋されていても架橋されていなくてもよい。実施形態では、ポリスチレンスルホン酸重合体は未架橋であり、水溶性を有する。
【0063】
実施形態では、スルホン化重合体はポリスルホンであり、芳香族ポリスルホン、ポリフェニレンスルホン、芳香族ポリエーテルスルホン、ジクロロジフェノキシスルホン、スルホン化置換ポリスルホン重合体、およびこれらの混合物からなる群から選択される。実施形態では、スルホン化重合体はスルホン化ポリエーテルスルホン共重合体であり、他の単量体、たとえばビスフェノールAおよび4-フルオロフェニルスルホンとともに、ヒドロキノンスルホン酸2-カリウム(HPS)などのスルホン酸塩を含む反応物質によって作られることができる。重合体のスルホン化度は、重合体骨格内のHPS単位の量によって制御されることができる。
【0064】
実施形態では、スルホン化重合体はポリスルホンまたはポリアリールエーテルケトン、たとえばポリエーテルケトンケトン(PEKK)をスルホン化することによって得られるスルホン化ポリエーテルケトン(SPEEK)である。ポリエーテルケトンケトンは、ジフェニルエーテルおよびベンゼンジカルボン酸誘導体を使用して製造される。スルホン化PEEKは、膜の被覆、膜およびフィルムへのキャスティングのために後に使用するために、アルコールおよび/または水溶性生成物として利用可能である。
【0065】
スルホン化共重合体を使用することで、SP膜は親水性および吸湿性を有し、湿気に対しても透過性を有するが、空気ならびに窒素および酸素などの気体に対しては透過性を有しない。スルホン化共重合体を含有する膜は、イオン交換特性によって選択的に透過性を有するものとして特徴付けられる。SP膜はまた、優れた水蒸気輸送率(MVTR)特性および優れたイオン交換能を有するものとして特徴付けられる。
【0066】
SP膜はまた、水を吸収するときに相当な膨潤、たとえば周囲温度で少なくとも100%の膨潤を受けるものとして特徴付けられる。スルホン化度(たとえば、少なくとも25mol%)を有するスルホン化ブロック共重合体を使用する実施形態では、SP膜はまた抗菌特性を示し、室内空間で冷却に加えて空気を滅菌するのに特に有用である。
【0067】
実施形態では、SPは、0.5meq/g超、または1.5~3.5meq/g、または1.25meq/g超、または2.2meq/g超、または2.5meq/g超、または4.0meq/g超、または4.0meq/g未満のIECを有する。
【0068】
実施形態では、SP膜(フィルム)またはSPを含有する被覆は、1μm超、または5μm超、または5~50μm、または100μm未満、または75μm未満、またはμm未満の厚さを有する。実施形態では、膜/被覆は、ナノコンポジット材料を含有してもよく、1μm未満、または0.5μm未満、または0.1μm未満の平均孔径を具備してもよい。
【0069】
使用の際、膜アセンブリの入口側と下流端または下流部との間に差圧を生じさせ、それにより膜の入口側から他方の側への水分子の拡散を促すことによって、空気からの湿気を水透過膜によって抽出することができる。
【0070】
実施形態では、SP膜は、シート以外の形態、たとえば網材、篩目もしくは格子、織布、不織布、穿孔板もしくは孔あき板、発泡材、中空繊維膜、または全体を通って隙間および通路が相互接続されたパッドとしてもよく、その上にSPが被覆または結合される。実施形態では、SP膜は、空気流の方向に平行または垂直に、螺旋形とすることができ、またはスタック状に配置することができる。
【0071】
実施形態では、SP膜は中空繊維の形態である。湿り空気は、真空下で中空繊維を通って流れる。中空繊維は、大きい除湿表面積を提供しており、空気流に平行または垂直に向けられてもよい。中空繊維膜の内側が真空下に配置されたとき、繊維の中空コア(実質的に真空下にある)と繊維の外面との間に浸透勾配が生成される。中空膜の実施形態では、中空繊維の内面、外面、または内面および外面の両方に、SP被覆またはフィルムを施してもよい。中空繊維膜は当技術分野で知られており、たとえば米国特許第5,762,798号明細書に開示されており、これは引用により本明細書に組み込まれている。
【0072】
膜は、当技術分野で知られているプロセス、たとえばキャスティングによって、枠、別の1つもしくは複数の膜、高分子マトリックス、または複数の繊維束に結合されまたは組み込まれたSPを具備してもよい。SP膜はまた、繊維マトリックスまたは蒸発冷却器内のファン羽根に被覆として施すことができる。
【0073】
膜は、空気および湿度が自由に流れることができる支持構造として働く枠または別の穿孔層に結合することができる。枠は、金属またはプラスチックを具備してもよく、それだけに限定されるものではないが、ハニカムおよび波形構造を含む、考えられる任意の幾何形状に形成することができる。実施形態では、枠は、大きい表面積のために、ハニカム、螺旋、不織、または複数の多孔性の設計を有することができ、複数の側でプロトン伝導膜が用いられ、一方の側は空気が流れ込むための開口である。他の実施形態では、枠は、露出面積を増加させるために、チャネルを有する波形シートの形状である。たとえば除去すべき湿気の量または部屋のサイズに応じて、1つまたは複数の枠を追加または除去することによって膜枠の数を変更することもできる。
【0074】
形状保持枠は、熱的または機械的に形成することができ、好ましくは剛性、半剛性、または実質的な剛性を有する。本明細書では、剛性、半剛性、または実質的な剛性を有する枠は、自重を受けてその形状を維持することが可能な材料または構造を含む枠である。好適な枠材料には、繊維ガラス、アルミニウム、炭素、またはポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニルに基づく硬質ポリマー、スチレン/アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン、アラミド系高分子繊維、金属、金属合金、セルロース、硝酸セルロース、酢酸セルロース、およびこれらの組合せが含まれる。
【0075】
運転:実施形態では、空気冷却システムは、部屋へ供給される空気中の湿度レベルを最小のエネルギー消費で低下させるために、空気の冷却および/または空気からの湿気の除去を容易にする。空気を冷却するために、空気冷却システムは、液体、たとえば水が流れる蒸発器と、蒸発器内の圧力を低下させるための液体排出器およびブースターポンプを有する減圧システムとを含む。蒸発器内の圧力は、周囲温度で液体の飽和蒸気圧以上の値まで低下される。それによって、液体が蒸発器を通って流れるとき、液体は蒸気に変換され、蒸発器を通過する空気から蒸発の潜熱を吸収し、それによって空気を冷却する。
【0076】
空気の湿度レベルを低下させるために、空気冷却システムは、膜を有する除湿コアを含み、膜は、膜の空気チャネルを通って流れる空気からの湿気の除去を容易にするように構成されている。膜は、水および水蒸気に対して選択的に透過性を有し、空気に対して不透過性を有する。除湿コアは、膜の空気チャネルを通って流れる空気から湿気を抽出するために、膜の蒸気チャネル内に真空を生じさせるように、減圧システムに流体的に結合される。それによって、減圧システムは、除湿コアの蒸気チャネルと空気チャネルとの間に差圧を生じさせることを容易にし、空気チャネルからの蒸気チャネル内の湿気の流れを有効にする。一実施形態では、差圧または真空は、周囲の水の飽和蒸気圧に対応することができる。また減圧システムは、蒸発器および/または除湿コアに選択的に接続される。
【0077】
部屋または領域へ提供される空気の温度を低下させるために、リザーバからの液体は、入口導管を通して蒸発器へ提供され、また蒸発器は、蒸発器内の周囲温度で液体の飽和蒸気圧を下回る圧力を生じさせるように、減圧システムに接続される。そうするために、液体排出器および任意選択でブースターポンプが動作させられる。液体排出器を動作させるために、リザーバからの液体が液体排出器の入口部分へ圧送される。続いて、液体は液体排出器のスロート部分に入る。スロート部分の断面積またはスロート部分の直径は入口部分の断面積より小さいため、ベンチュリ効果によってスロート部分内の液体の速度は増加する。それによって、スロート部分内の圧力は低下減少する。スロート部分がブースターポンプおよび蒸発器に連通しているため、蒸発器内に対応する低い圧力が生成される。液体排出器および/またはブースターポンプは、蒸発器内の圧力が周囲温度で液体の飽和蒸気圧以下の値まで減少するように制御されることが理解されよう。蒸発器内の圧力の減少によって、蒸発器内を流れる液体の少なくとも一部分が蒸気に変換される。蒸発器内の液体の蒸発プロセスにより、蒸発器の外側で通過する周囲空気の顕熱エネルギーが吸収され、冷却された空気が部屋へ送達される。
【0078】
一実施形態では、ブースターポンプを省略してもよい。そのような場合、システムの電源が投入される前に、システム全体が冷却/原動流体の飽和蒸気圧をちょうど上回る圧力に事前調節され、これは閉ループシステムであるため、事前調節された圧力は、システムの寿命にわたって維持される。一実施形態では、空気冷却システムは、始動前に、5%~20%だけ液体の飽和蒸気圧より大きい圧力値に事前調節される。たとえば、原動流体が水である場合、リザーバ内の圧力は、40mbarA~60mbarAまで低下される(液体が水であるとき)。リザーバ内の圧力を所望の値まで低下させた後、原動流体ポンプは、液体を液体排出器に提供し、したがって液体排出器を介して蒸発器からの集まりを液体リザーバへ動かすように動作させられる。この例では、2つの事柄が同時に発生する。蒸発器の圧力は、液体の飽和蒸気圧を越えてさらに低下され、このプロセスで液体は蒸発し、熱を吸収する。次にこの蒸発した流体は、液体排出器で凝縮し、液体リザーバ内の液体の量を増加させ、したがってリザーバおよび排出システム内の圧力を蒸発器に比べて増加させる。一実施形態では、液体排出器からリザーバへ流れる液体の少なくとも一部分は、熱交換器によって冷却される。このプロセスの結果、排出器内の真空圧の効率がより高くなり、したがってブースターポンプが任意選択の構成要素になる。
【0079】
空気から湿気を除去して部屋または領域へ送達するための実施形態では、減圧システムは、除湿コアの蒸気チャネルに接続されており、圧力が低下されることで、真空と周囲空気側との間の湿気勾配が増加し、したがって周囲から真空媒体への湿流が加速し、周囲空気を効率的に除湿する。圧力が飽和水蒸気圧の閾値に近づき、これを超えるにつれて、湿流が大幅に増加することが知られている。次いで水蒸気は液体排出器のスロート部分へ流れ、出口部分内のより高い圧力の存在により、液体排出器の出口部分内で液体の水に変換され、次いでリザーバへ戻る。実施形態では、液体排出器からリザーバへ流れる液体の少なくとも一部分は、熱交換器によって冷却される。
【0080】
ブースターポンプおよび液体排出器は、冷却量、水除去率、および/またはリザーバの圧力に応じて、真空(すなわち、圧力)を生成するように制御することができる。たとえば、相対的により大量の冷却容量が必要とされる市販の空気冷却システムなどの大型のシステムの場合、必要とされる水の蒸発も比例して増加し、その場合、ブースターポンプは、圧力を10mbar未満まで低下させることを容易にすることができる。そのような場合、多段階式または可変速のブースターポンプを利用することができる。別法として、相対的により小さい水蒸気抽出率が必要とされ、かつ/またはより少量の空気を冷却することが必要とされる小型の設備の場合、10mbar~20mbarに対応する圧力で十分である。そのような場合、単一段階のブースターポンプを利用することができる。さらに、蒸気チャネルおよび/または蒸発器内の圧力を変動させるために、ブースターポンプの速さを制御することができる。
【0081】
器具および器具を使用する方法の様々な実施形態を示す図を参照されたい。
【0082】
図1を参照すると、蒸発器102と、蒸発器102内の圧力を低下させるための減圧システム104とを有する空気冷却システム100が示されている。空気冷却システム100は、入ってくる空気流(以下、第1の空気流と呼ぶ)200Aを部屋内へ受け取り、相対的に低下された温度を有する空気(以下、第2の空気流200Bと呼ぶ)を送達または生成する。示されているように、蒸発器102は、リザーバ108から液体、たとえば液体の水を受け取るように、減圧システム104およびリザーバ108、たとえば水リザーバ110に流体的に接続された蒸発器コイル106である。リザーバ108は耐圧リザーバであり、大気圧より高い圧力で液体を保持するように構成されており、相対的に低い圧力で液体を貯蔵するように構成されている。たとえば、リザーバ108は、液体の蒸気圧(すなわち、飽和蒸気圧)以下の圧力で液体を貯蔵することができる。一実施形態では、液体は水であり、摂氏25度における蒸気圧は約31.7mbarAである。示されているように、蒸発器102の入口は、入口導管112を介してリザーバ108に接続されており、蒸発器102の出口は、出口導管114を介して減圧システム104に接続されている。それによって、液体はリザーバ108から蒸発器102へ流れ、減圧システム104によって蒸発器102内で発生/生成される低圧または真空によって、蒸気、たとえば水蒸気に変換され、減圧システム104を介してリザーバ108へ戻る。液体が蒸発器102内で蒸気に変換されるとき、液体は蒸発器102を通過する空気流200Aから蒸気への変換の潜熱エネルギーを受け取り、それ故冷却される。第1の空気流200Aの吸引および蒸発器102における第1の空気流200Aの通過を容易にするために、空気冷却システム100は、蒸発器102の下流に配置されたファン116を含んでもよい。
【0083】
示されているように、減圧システム104は、蒸発器102の出口に流体的に結合された液体排出器120、たとえば水排出器122と、液体、たとえば液体の水を液体排出器120へ供給するためのポンプ124と、液体を貯蔵し、液体排出器120から放出された液体を受け取るためのリザーバ108とを含む。
【0084】
示されているように、液体排出器120は、出口導管114を介して蒸発器102に流体連通している。それによって、液体排出器120内に低い圧力が生じたことに応答して、蒸発器内で生成される蒸気が出口導管114を介して液体排出器120の方へ流れる。示されているように、液体排出器120は、液体排出器120の入口ポート130を画定する入口部分128と、入口部分128から長手方向に延びるスロート部分132と、スロート部分132から延びて液体排出器120の出口ポート136を画定する出口部分134とを含む。また液体排出器120は、蒸発器102内で相対的に低い圧力(すなわち、真空)を生成/維持すること、および蒸気が蒸発器102から液体排出器120(すなわち、スロート部分132)に入ることを容易にするために、出口導管114を介して蒸発器102に流体的に結合されてスロート部分132に流体連通して配置された蒸気入口ポート138を画定する。
【0085】
さらに入口部分128は、液体を相対的に高速でスロート部分132に注入/供給するためのオリフィス142を画定するノズル部分140を含んでもよく、出口部分134の断面積は、スロート部分132から出口ポート136へ徐々に増加して、スロート部分132から受け取った液体まで速さを減少させる。いくつかの実施形態では、液体の速度/速さが徐々に増加することを容易にするために、入口部分128の断面積は入口ポート130からスロート部分132へ徐々に減少してもよい。それによって、入口部分128は、液体が入口ポート130からスロート部分132へ流れるにつれて液体の速度/速さを増加させることを容易にし、出口部分134は、液体がスロート部分132から出口ポート136へ流れるにつれて液体の速度/速さを減少させるように構成されている。その結果、スロート部分132における圧力は、入口ポート130および出口ポート136における圧力に比べて低くなる。スロート部分132における圧力(すなわち、真空)のレベルは、入口部分128に入る液体の速度および/または量を制御することによって調整/制御されてもよい。したがって、スロート部分132は、蒸発器102に流体連通しており、したがって蒸発器102内に真空(すなわち、減圧)が生じる。スロート部分132における圧力のレベルは、蒸発器102内で生じる減圧が閾値より低くなるように制御される。一実施形態では、液体が液体の水であるとき、入口導管112を介して水リザーバ110から受け取った液体の水の少なくとも一部分を水蒸気に変換することを有効にするために、閾値は室温で水の飽和蒸気圧以下である。
【0086】
蒸発器102内に閾値を下回る圧力を生成および維持するために、減圧システム104は、液体排出器120と蒸発器102との間に配置されたブースターポンプ148を含んでもよい。ブースターポンプ148は、蒸発器102内の圧力のさらなる低下、したがって真空の増加を有効にする。一実施形態では、ブースターポンプ148および液体排出器120はともに、蒸発器102内の圧力を20mbarA~40mbarAまで低下させる。一実施形態では、減圧システム104は、ブースターポンプ148の入口において20mbarA未満の圧力を生じさせることができる。一実施形態では、減圧システム104は、ブースターポンプ148の入口において10mbarA未満の圧力を生じさせることができる。一実施形態では、減圧システム104は、ブースターポンプ148の入口において10mbarA~20mbarAの圧力を生じさせることができる。ブースターポンプ148および液体排出器120は、空気冷却システム100のサイズおよび所望の水抽出率に基づいて、蒸発器102内の圧力を低下させるように制御することができる。一実施形態では、ブースターポンプ148はルーツポンプである。しかし、当技術分野で知られている任意のタイプの真空ブースターポンプを利用することができることが理解されよう。
【0087】
液体排出器120への液体の流れを制御および提供するために、ポンプ124は、液体排出器120の上流に配置され、第1のパイプ150を介して入口ポート130に流体的に接続される。一実施形態では、ポンプ124は、液体排出器120へ圧送される液体の量の制御を可能にするために、可変速ポンプとしてもよい。さらに、ポンプ124は、リザーバ108から液体を受け取って液体を所望の速度/速さで液体排出器120へ提供するように、第2のパイプ152を介してリザーバ108に接続される。一実施形態では、リザーバ108は、リザーバ108内に貯蔵されている液体と周囲との間の熱の伝達を容易にするために、リザーバ108の外面に沿って複数のフィン(図示せず)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、リザーバ108は、リザーバ108内に貯蔵されている液体と周囲との間の熱伝達を容易にするために、高い熱伝導度を有する材料から作られる。
【0088】
いくつかの実施形態では、液体排出器120を出る液体の少なくとも一部分は、リザーバ108へ供給される前に冷却される。そうするために、排出器120は、液体排出器120によって放出された液体を冷却する(すなわち、温度を低下させる)ための熱交換器154に流体的に接続される。熱交換器154は、空気から液体への熱交換器としてもよく、液体排出器120の下流およびリザーバ108の上流に配置してもよく、液体排出器120から液体を受け取って冷却された液体をリザーバ108へ供給するように構成されてもよい。示されているように、熱交換器154は、第3のパイプ158を介して出口ポート136に流体的に接続されており、第3のパイプ158を介して液体排出器120からの液体を受け取る。同様に、熱交換器154は、第4のパイプ160を介してリザーバ108に流体的に接続されており、第4のパイプ160を介して冷却された液体をリザーバ108へ供給する。いくつかの実装形態では、液体のうち液体排出器120から放出された部分のみが、バイパス導管によって熱交換器154へ提供される。一実施形態では、液体のうち熱交換器154によって冷却される部分が液体の残り部分と混合された後、液体はリザーバ108に入る。いくつかの実装形態では、液体のうち熱交換器154によって冷却された部分は、リザーバ108へ直接流れる/流入することとしてもよい。一実施形態では、減圧システム104は、熱交換器154を通って流れる液体の冷却を容易にするために、熱交換器154への空気の流れを増加させるための送風機162を含んでもよい。送風機162は、熱交換器154への空気流の方向に上流または下流に配置されてもよい。
【0089】
運転の際、排出器の真空生成能力は、原動流体の蒸気圧と同様でしかない。図1に示すように、導管150内の原動流体によって、排出器がどれだけの真空を生成することができるかが決まる。ポンプ124において、ポンプ124の圧送の速さが加速された場合、圧力が増加する。1気圧での水の蒸気圧は約40ミリバールであるが、高圧流体が使用された場合(言い換えれば、ポンプが非常に高速で圧送する場合)、真空に引く能力が最適化されてもよい。したがって、システムが加圧された場合、40ミリバール未満の真空圧を生成することができる。実施形態では、タンク内の圧力は原動流体の蒸気圧を上回る。流体が水であり、圧力が1気圧である場合、水リザーバは約30ミリバールを超える必要がある。原動流体の圧力が真空の生成をもたらすため、ポンプ124によって原動流体の圧力が大幅に増加される。
【0090】
実施形態(図示せず)では、システムは、圧力の読取りに基づいて速さが調整されるように、圧力監視デバイス、コントローラなどをさらに含む。(相対)圧力は、1気圧未満とすることができることに留意されたい。実施形態では、水リザーバ110における圧力は、原動流体の蒸気圧を上回るレベルで維持され、コイルからの凝縮物が実際に液体になる(凝縮する)ことを可能にする。次に、導管150内の圧力は水リザーバを上回るように維持され、それによりコイル内に顕著な真空を生じさせる。実施形態では、原動流体の蒸気圧の上下で状態を維持するように供給を監視/調節するために、ソフトウェアプログラムを実装することができる。ブースターポンプの使用は、システムの動作を容易にするのに役立つ。
【0091】
代替実施形態によれば、図2に示すように、熱交換器154は、リザーバ108の上流(図1に示す)ではなく、ポンプ124の下流に配置される。そのような場合、第3のパイプ158は、液体排出器120をリザーバ108に接続する。熱交換器154は、ポンプ124によって液体排出器120へ圧送される液体の少なくとも一部分を冷却するように構成されている。そのような場合、原動流体のうち導管150を進む部分が、ポンプ124の下流の場所で導管161へそらされる。このそらされた流体が熱交換器154を通過し、導管160を介してリザーバ108へ戻る。また送風機162は、空気が熱交換器154を通って流れることを有効にするために、熱交換器154の上流に配置されることが示されている。しかし送風機162は、熱交換器の下流に配置されてもよい。
【0092】
別の実施形態では、図3に示すように、液体リザーバ108は、液体ポンプ124B、空気/液体熱交換器154、およびファン162からを備えた、独立した冷却システムを有する。システムは、液体温度がプログラムされた設定点に比べてどの程度であるかに基づいて起動することができる。図3に示すように、熱交換器154は、入口導管157および出口導管159を介してリザーバ108に接続され、第2のポンプ124Bが、入口導管157を介してリザーバ108からの液体を、液体を冷却するために熱交換器154へ提供する。冷却された液体は、出口導管159を介してリザーバ108に戻る。一実施形態では、第2のポンプ124Bは、リザーバ108内の液体の温度が閾値温度値を上回ったときに熱交換器154へ液体を圧送する。また送風機162は、液体を冷却するために、空気が熱交換器154を通って流れることを可能にするように、熱交換器154の上流に配置または位置決めされる。しかし、送風機162は、熱交換器154の下流に位置決めされてもよい。
【0093】
空気冷却システム100は、リザーバ108から蒸発器102へ流れる液体の量を制御するために、絞り弁166をさらに含む。絞り弁166は、電気制御弁ととしてもよく、周囲の温度および/または蒸発器102内で生成される圧力に基づいて制御される。一実施形態では、コントローラが、所望の空気冷却レベルを提供するように、ブースターポンプ148、ポンプ124、および絞り弁166を制御してもよい。
【0094】
いくつかの実施形態では、リザーバ108から液体排出器120へ液体を提供するポンプ124を開始する前に、リザーバ108に真空ポンプ(図示せず)を係合することによって、リザーバ108内の圧力が低下される。実施形態では、リザーバ108内の圧力が、周囲温度における液体の飽和蒸気圧より5%~20%大きい値まで低下される。水の使用を伴う実施形態では、リザーバ108内の圧力は、周囲温度における液体の飽和蒸気圧に応じた値、たとえば40mbarA~150mbarAまで低下される。リザーバ108内の圧力を所望の値まで低下させた後、ポンプ124を動作させて、液体排出器120へ液体を提供する。液体排出器120を離れる液体が、液体排出器120に入る液体より高い圧力を有するため、リザーバ108内の圧力が増加し、ポンプ124によって液体排出器120へ送達される液体の圧力が増加する。この結果、スロート部分132での圧力降下がより大きくなり、蒸発器102内で所望のより低い圧力が生成される。このようにして、液体排出器は、蒸発器102において、周囲温度で液体の飽和蒸気圧以下の圧力を生じさせることを容易にする。いくつかの実施形態では、これにより、ブースターポンプ148の使用を制限することが容易になる。いくつかの実施形態では、ブースターポンプ148を省略されてもよい。
【0095】
図4を参照すると、本開示の代替実施形態による空気冷却システム100’が示されている。空気冷却システム100’は、空気冷却システム100’が、空気からの湿気の抽出を容易にし、それによって部屋または領域へ送達される空気(第2の空気流200B)中の湿気または湿度レベルの制御を容易にするために、減圧システム104に流体的に結合された除湿コア210をさらに含むことを除いて、空気冷却システム100に類似している。それによって、除湿コア210は、相対的に高い湿気含量を有する空気(入口空気400Aとも呼ぶ)を受け取り、相対的に低い湿気含量を有する空気(出口空気400Bとも呼ぶ)を放出する。チャネル間の差圧により、湿気勾配が生じ、より低圧の環境で湿気含量が低下され、したがって湿流が加速する。
【0096】
そうするために、図4図5図6、および図7を参照すると、除湿コア210は、400Aが流れる少なくとも1つの空気チャネル214と、少なくとも1つの空気チャネル214を通って流れる湿気(たとえば、入口空気400Aから抽出された水蒸気220)を受け取る少なくとも1つの蒸気チャネル216とを画定する。示されているように、各蒸気チャネル216は、空気チャネル214のうちの1つまたは複数に隣接して配置され、膜222によって分離される。逆に、各空気チャネル214は、蒸気チャネル216のうちの1つまたは複数に隣接して配置され、膜222によって隣接する蒸気チャネル216から分離される。
【0097】
一実施形態では、図6に示すように、除湿コア210は箱形構造を有し、第1の面226が入口空気400Aの流れに略直交して配置されて、空気チャネル214の各々のための入口228を画定しており、第2の面230が第1の面226に略平行に配置されて、空気チャネル214の各々の出口232を画定している。それによって、入口空気400Aは第1の面226を通って空気チャネル214に入り、第2の面230を通って出口空気400Bとして除湿コア210を出る。そのように入口空気400Aから除去された湿気(すなわち、水蒸気220)は、蒸気チャネル216(図5に示す)内へ収集される。
【0098】
示されているように、各蒸気チャネル216は、空気チャネル214の延長方向に実質的に直交する方向に延びてもよく、除湿コア210の第3の面234(すなわち、頂面234)および除湿コア210の第4の面236(すなわち、底面236)に実質的に直交する方向に延びてもよい。さらに、第4の面236は、蒸気チャネル214の各々の閉端を画定してもよく、それによって水蒸気220が底面236を通って除湿コア210から出ることを防止してもよく、水蒸気220が蒸気チャネル216から出ることを容易にするために、各蒸気チャネル214のための出口238(図7に示す)を頂面234に近接して配置されてもよい。一実施形態では、除湿コア210は、蒸気チャネル216の出口238に流体連通するように頂面234に近接して配置された1つまたは複数の収集チャネル(図示せず)を含んでもよい。そのような場合、出口238は、頂面234に近接して配置され得る除湿コア210の断続的な表面によって画定されてもよく、そのような断続的な表面は底面236に平行に延びる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の収集チャネル(図示せず)は、空気チャネル214に実質的に平行に延びてもよく、第1の面226および第2の面230に閉端を含んでもよい。
【0099】
また、図6および図7に示すように、除湿コア210は、スタック241が、スタック241間に空気チャネル214を画定するために、互いに平行に、互いから隔置されて配置されるように複数のスタック241を配置することによって形成される。スタック241は、1つのスタック241の膜222が隣接するスタック241の膜222に面するように配置される。さらに、各スタック241は、外枠242と、外枠242内に配置されて外枠242によって支持された波形構造243とを含む。示されているように、外枠242は、波形構造243の外縁に取り付けられる。さらに、各波形構造243は、実質的に矩形の形状を有する複数の蒸気チャネル216を画定する。さらに、各波形構造243は2つの膜222を含み、一方の膜222は、波形構造243の第1の側に配置され、他方の膜222は、第1の側とは反対に位置する波形構造143の第2の側に配置される。それによって、波形構造243は2つの膜222間に配置される。それによって、膜222は、波形構造243の蒸気チャネル216を、2つの隣接するスタック241間に画定された空気チャネル214から分離する。
【0100】
空気チャネル214に略直交して延びる蒸気チャネル216を有する箱形、たとえば立方構造が企図されるが、除湿コア210は、当技術分野で知られている任意の他の好適な形状または構造を含んでもよいことが理解されよう。さらに、空気チャネル214および蒸気チャネル216は、実質的に同じ方向に延びてもよく、互いに平行に走ることとしてもよいと考えてもよい。また、同心円状の空気チャネル214および蒸気チャネル216を有する除湿コア210を考えてもよい。さらに、除湿コア210は、水蒸気220を受け取るように各蒸気チャネル216に流体連通している導管240(図4、および図6に示す)を含むことができ、水蒸気220が除湿コア210から出ることを容易にする。
【0101】
図5に示すように、空気チャネル214を通って流れる空気から蒸気チャネル216への水蒸気220の動きは、膜222によって容易になり、空気チャネル214から蒸気チャネル216への空気の他の成分244、たとえば窒素、酸素、二酸化炭素などの流れは、膜222によって実質的に阻止される。いくつかの実施形態では、膜222は、空気チャネル214から蒸気チャネル216への他の成分244の流れの約99パーセントを阻止することとしてもよい。特定の実装形態では、膜222は、空気チャネル214から蒸気チャネル216への他の成分244の流れの約95パーセントから99パーセントを阻止することとしてもよい。
【0102】
膜222は、空気チャネル214を通って流れる空気から水蒸気220を抽出することを容易にし、蒸気チャネル216内に空気チャネル214より相対的に低い圧力が存在することに応答して、水蒸気220が膜220を通って隣接する蒸気チャネル216へ流れることを容易にする。したがって、空気チャネル214と隣接する蒸気チャネル216との間に湿度勾配が確立される。湿度勾配は、空気チャネル214と隣接する蒸気チャネル216との間に圧力勾配/差圧を生じさせることによって生成される。特に、蒸気チャネル216内の水蒸気の分圧は、空気チャネル214内の水蒸気の分圧より低いレベルで維持されており、空気チャネル214を通って流れる空気中の水蒸気220が、吸引側(すなわち、蒸気チャネル216)の方へ引き込まれる。
【0103】
導管240は、減圧システム104から蒸気チャネル216への接続を容易にし、蒸気チャネル216と空気チャネル214との間に所望の差圧を生じさせるために、蒸気チャネル216内で所望の減圧を維持することを容易にする。蒸発器102と同様に、減圧システム104(すなわち、液体排出器120およびブースターポンプ148)は、蒸気チャネル216内に、周囲温度における液体、たとえば水の飽和蒸気圧に対応する圧力を生じさせる。一実施形態では、ブースターポンプ148および水排出器122はともに、蒸気チャネル216内の圧力を20mbarA~40mbarAへ低下させる。一実施形態では、減圧システム104は、ブースターポンプ148の入口において20mbarA未満の圧力を生じさせてもよい。一実施形態では、減圧システム104は、ブースターポンプ148の入口において10mbarA未満の圧力を生じさせてもよい。一実施形態では、減圧システム104は、ブースターポンプ148の入口において10mbarA~20mbarAの圧力を生じさせてもよい。ブースターポンプ148および水排出器122は、空気冷却システム100’のサイズおよび所望の水抽出率に基づいて、蒸気チャネル内の圧力を低下させるように制御されてもよい。
【0104】
さらに、空気冷却システム100’は、減圧システム104に対する蒸発器102および/または除湿コア210の選択的接続を容易にするために、少なくとも1つの弁、たとえば第1の弁170および第2の弁180を含む。示されているように、第1の弁170は、減圧システム104に対する蒸発器102の接続または切断を制御するように配置され、第1の位置と第2の位置との間を動くように構成されている。第1の位置で、第1の弁170は、蒸発器102から減圧システム104への流体接続を可能にし、蒸発器から液体排出器120への蒸気の流れを可能にし、第2の位置で、第1の弁170は、蒸発器102を減圧システム104から流体的に切断し、したがって蒸発器102から液体排出器120への蒸気の流れを防止する。示されているように、第1の弁170は、減圧システム104の上流および蒸発器102の下流に配置される。
【0105】
同様に、第2の弁180は、減圧システム104に対する除湿コア210の接続または切断を制御するように配置され、開位置と閉位置との間を動くように構成されている。開位置では、第2の弁180は、蒸気チャネル216から減圧システム104への流体接続を可能にし、蒸気チャネル216から液体排出器120への水蒸気220の流れを可能にし、閉位置で、第2の弁180は、蒸気チャネル216を減圧システム104から流体的に切断し、したがって蒸気チャネル216から液体排出器120への水蒸気220の流れを防止する。示されているように、第2の弁180は、減圧システム104の上流および除湿コア210の下流に配置される。一実施形態では、第1の弁170および第2の弁180は電気制御弁であり、部屋から受け取った空気の所望の冷却および湿度レベルに基づいて、コントローラによって動作させられる。いくつかのシナリオでは、第1の弁170を第1の位置へ動かし、第2の弁180を閉位置へ動かすことによって、蒸発器102のみが減圧システム104に流体的に接続される。同様に、第2の弁180を開位置へ動かし、第1の弁170を第2の位置へ動かすことによって、除湿コア210のみを減圧システム104に流体的に接続することができる。さらに、蒸発器102および除湿コア210を減圧システム104に同時に接続するために、第1の弁170は第1の位置へ動かされ、第2の弁180は開位置へ動かされる。
【0106】
さらに、いくつかの実施形態では、空気冷却システム100’は、空気冷却システム100’の動作を制御するためのコントローラおよび複数のセンサを含んでもよい。一実施形態では、空気冷却システム100’は、第1の空気流200A、入口空気400A、出口空気400B、および第2の空気流200Bのうちの少なくとも1つの温度および湿度を監視するために、1つまたは複数の温度センサおよび1つまたは複数の湿度センサを含んでもよい。それによって、コントローラは、液体を最適の速さで送達するように、ポンプ124を制御することができ、蒸気チャネル216および/または蒸発器102内で所望のレベルの真空または圧力を維持または生成するように、ブースターポンプ148を制御してもよい。
【0107】
単一の蒸発器102および単一の除湿コア210を有する空気冷却システム100’が図示および企図されるが、空気冷却システム100’は、直列構成もしくは並列構成またはこれらの組合せで配置された任意の数の除湿コア210および蒸発器102を含んでもよいことが理解されよう。
【0108】
減圧システム104に流体的に接続された除湿コア210および蒸発器102を有する空気冷却システム100’の作用について、次に説明する。そうするために、第1の弁170は第1の位置へ動かされ、第2の弁180は開位置へ動かされる。空気冷却システム100は、相対的に高い湿度レベルおよび高い温度を有する第1の空気流200Aを部屋から受け取り、相対的に低い湿度レベルおよび低い温度を有する第2の空気流200Bを部屋へ供給する。そうするために、空気冷却システム100’は、部屋から第1の空気流200Aを受け取る。一実施形態では、ファン116は、部屋からの第1の空気流200Aの吸引/取込みを容易にすることができる。第1のユニット700に入ると、第1の空気流200Aは、入口空気400Aとして除湿コア210に入り、空気チャネル214を通って流れ、出口空気400Bとして除湿コア210を出る。入口空気400Aが空気チャネル214を通って流れているとき、入口空気400Aに存在する水蒸気220の少なくとも一部分が、膜222を通って隣接する蒸気チャネル216へ流れる。入口空気400Aからの水蒸気220の抽出および蒸気チャネル216内の水蒸気220の動きを容易にするために、差圧が生成される。差圧は、空気チャネル214内の圧力と比較して蒸気チャネル216内に相対的に低い圧力を生成または維持することによって生成される。実際には、水蒸気220が膜222を越えて流れることを確実にするために、蒸気チャネル216内の水蒸気の分圧は、空気チャネル214内の周囲温度における水の飽和蒸気圧に比べてより低い値で維持される。そうするために、コントローラは、リザーバ108からの液体、この場合は液体の水を、適当な速さで液体排出器120、この場合は水排出器122の入口ポート130へ圧送するようにポンプ124を制御および動作することができ(すなわち、1秒当たり所定の量の液体の水が入口部分128に入る)、ブースターポンプ148を動作および制御する。水排出器122に入る液体の水の適当な速さおよびブースターポンプ148の速さは、部屋の湿度レベルおよび/もしくは入口空気400Aの湿度レベル、入口空気400Aの温度、部屋へ送達される空気の所望の温度および湿度レベル、ならびに/または空気冷却システム100’に入る第1の空気流200Aの速さおよび量に基づいて判定されてもよい。
【0109】
液体の水が入口部分128を通って流れてスロート部分132に入ると、液体の水の速さは増加し、スロート部分132で最大値に到達する。その結果、蒸気チャネル216が蒸気入口ポート138および導管240を介してスロート部分132に流体連通しているため、スロート部分132で相対的に低い圧力(すなわち、真空)が生じ、したがって蒸気チャネル216内で相対的に低い圧力が生じる。導管240の長さおよび導管240内の他の屈曲によって引き起こされる真空の損失により、蒸気チャネル216内の圧力の値は、ブースターポンプ148の出口における圧力の値と比較して相対的に高くなりうることが理解されよう。さらに、減圧システム104は、ブースターポンプ148の出口における圧力が空気チャネル214内の圧力より低くなり、所望の差圧になるように制御される。蒸気チャネル216と空気チャネル214との間の差圧により、空気チャネル214を通って流れる空気から水蒸気220が抽出され、膜222を越えて蒸気チャネル216へ動く。同様に、蒸気チャネル216とスロート部分132との間の差圧により、入口空気400Aから抽出された水蒸気220は導管240およびブースターポンプ148を通って移動する/流れることとしてもよく、蒸気入口ポート138を介してスロート部分132に入る。水排出器122(すなわち、スロート部分132)に入ると、水蒸気220は液体の水に沿って動くことができ、水排出器122の出口部分134に入る。出口部分134内の断面積が増加するため、液体の水の速度は減少し、それによって出口部分134内にスロート部分132内の圧力と比較して相対的に高い圧力を生じさせる。それによって、蒸気チャネル216から受け取った水蒸気220は、水排出器122を離れる前に出口部分134内で凝縮する。それによって、水蒸気220を液体の水に凝縮させるための別個の凝縮器の必要がなくなり、それによって空気冷却システム100’の効率が向上する。
【0110】
水排出器122の出口部分134内での水蒸気220の凝縮によって熱が生成されてもよく、その結果、水排出器122の出口ポート136を出る液体の水の温度が増加する。液体の水を水リザーバ110へ送達する前に液体の水の温度を低下させるために、液体の水の少なくとも一部分が熱交換器154へ誘導され、熱交換器154は、受け取った液体の水の冷却を容易にする。その後、冷却された液体の水は貯蔵のために水リザーバ110へ供給され、後にポンプ124によって水排出器122へ供給するために利用可能になる。除湿コア210から受け取った水蒸気220の凝縮により、水排出器122を出て水リザーバ110によって受け取られる液体の水の体積は、ポンプ124によって水排出器122へ供給される液体の水の体積より大きくなりうることに留意されたい。それによって、水リザーバ110内の液体の水のレベルが増加し得る。リザーバ110があふれて液体の水が水リザーバ110からこぼれるのを防止するために、水リザーバ110内の液体の水のレベルが第1の閾値レベルを上回ったときはドレン弁182を開いてもよい。ドレン弁182を開くことで、水リザーバ110からの液体の水の排出を可能にし得る。さらに、液体の水のレベルが第2の閾値未満に低下したことに応答して、ドレン弁182を閉じてもよい。特定の実装形態では、ドレン弁182は、液体の水のレベルが第1の閾値を上回ったことおよび第2の閾値を下回ったことに応答して、それぞれ自動的に開閉するように構成されている。
【0111】
図1図3には示されていないが、実施形態では、空気冷却システム100は、リザーバ108からの液体の排出/除去を容易にするためのドレン弁をさらに有する。
【0112】
さらに、除湿コア210から放出された出口空気400Bは、蒸発器102によって受け取られて冷却され、第2の空気流200Bとして蒸発器102を出る。出口空気400Bが蒸発器102を通過するとき、出口空気400Bは、水排出器122によって蒸発器コイル106内に生成される低圧および出口空気400Bによって提供される潜熱エネルギーにより、蒸発器コイル106内を流れる液体の水を蒸発させ、蒸発器コイル106内を流れる液体の水の少なくとも一部分を水蒸気に変換し得る。それによって、蒸発器102を通過するとき、出口空気400Bの温度は低下する。したがって、蒸発器から放出された第2の空気流200Bは、除湿コア210から受け取った出口空気400Bより相対的に冷たい。蒸発器102を通過した後の第2の空気流200Bは、空気冷却システム100’を出て部屋に入る。スロート部分132内、したがって蒸気チャネル216内に低い圧力を生じさせるための原動流体として液体の水を利用することで、液体の水の非圧縮性により、エネルギー消費を低減させることが容易になる。さらに、水排出器122を圧力低下手段として使用することで、蒸気チャネル216内に低い圧力または真空を生じさせるために従来のポンプが使用されるシナリオに比べて、キャビテーションに関連する損傷が防止される。また、水排出器122を使用することで、空気冷却システムの全体的なサイズを減少させることが容易になる。第2の弁が閉位置へ動かされたとき、除湿コア210は分離され、空気冷却システム100’は、第1の空気流200Aのみを冷却し、冷却された空気を部屋へ提供する。それによって、この場合、空気冷却システム100’は、空気冷却システム100と同様に作用することができる。あるシナリオでは、第2の弁180を開位置へ動かすことができ、第1の弁170は第2の位置へ動かされる。そのような場合、蒸発器102は空気冷却システム100’から分離され、空気冷却システム100’は、第1の空気流200Aからの湿気の除去を容易にする。それによって、部屋へ送達される第2の空気流200Bは、第1の空気流200Aに比べてより低い湿度レベルを有する。
【0113】
水排出器122を使用することで、凝縮性の高い留分を水蒸気の形態で取り扱う能力が提供され、ならびに除湿コア210で抽出された湿気を凝縮するため、新鮮な水の供給源が得られる。さらに水排出器122は、絶対圧5mbar(mbarAとして表す)まで低い真空圧を生成することが可能である。また水排出器122は、ブースターポンプ148とともに、100mbarA、150mbarA、またはさらには500mbarA、またはそれ以上などの真空圧の範囲で動作するように調整することができる。真空圧は、圧力および流量などの流体の変数を調整するによって調節される。
【0114】
本明細書では、「含む(include)」という用語およびその文法的変形は非限定的であることが意図され、したがってリスト内の項目の記載は、他の同様の項目を除外するものではなく、そのような項目は、列挙された項目の代わりに使うことができ、または列挙された項目に追加することができる。「備える(comprises)」および/または「備えている(comprising)」という用語は、本明細書で使用されるとき、記載の特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を指定するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはこれらの群の存在または追加を除外するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】