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特表2023-528293単一ドメイン抗体及びがん治療におけるその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-04
(54)【発明の名称】単一ドメイン抗体及びがん治療におけるその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230627BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20230627BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230627BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230627BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230627BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230627BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230627BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230627BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20230627BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230627BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20230627BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230627BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230627BHJP
   A61K 49/16 20060101ALI20230627BHJP
   A61K 51/10 20060101ALI20230627BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230627BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230627BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20230627BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20230627BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230627BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230627BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230627BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20230627BHJP
   G01N 33/533 20060101ALI20230627BHJP
   G01N 33/534 20060101ALI20230627BHJP
   G01N 33/535 20060101ALI20230627BHJP
   G01N 33/531 20060101ALI20230627BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
C12N15/13
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K19/00
C07K16/46
C07K16/28
C07K14/725
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K47/68
A61K49/16
A61K51/10 200
A61K48/00
A61K35/76
A61K35/12
A61K35/15
A61K35/17
A61P35/00
A61K45/00
A61K9/127
G01N33/533
G01N33/534
G01N33/535
G01N33/531 A
G01N33/53 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022571243
(86)(22)【出願日】2021-05-20
(85)【翻訳文提出日】2023-01-16
(86)【国際出願番号】 EP2021063518
(87)【国際公開番号】W WO2021234110
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】20305535.5
(32)【優先日】2020-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509181699
【氏名又は名称】アンスティテュ・クリー
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】522453050
【氏名又は名称】ザ・ユニバーシティ・オブ・チューリッヒ
(71)【出願人】
【識別番号】522453120
【氏名又は名称】ホニング・バイオサイエンシーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】サンドリーヌ・ムテル
(72)【発明者】
【氏名】フランク・ペレス
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル・ベルナスコーニ
(72)【発明者】
【氏名】ナグジエ・ライラ・アリジャジ
(72)【発明者】
【氏名】ゼリア・ゴウヴェイア
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C076AA19
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF70
4C084AA13
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA24
4C084NA05
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZB26
4C085AA14
4C085AA19
4C085AA21
4C085AA27
4C085BB11
4C085BB31
4C085CC03
4C085DD62
4C085EE01
4C085HH03
4C085HH07
4C085KA04
4C085LL18
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB65
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA02
4C087MA24
4C087NA05
4C087NA13
4C087NA14
4C087ZB26
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA51
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本出願は、完全ヒト化抗FGFR4単一ドメイン抗体(sdAb)及びそのバリアントに関する。本発明は更に、前記sdAbを含む機能化された薬物ナノ担体、核酸、ベクター、宿主細胞、免疫細胞、及びそれを含む組成物、並びに治療のためのその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
FGFR4に対するヒト化合成単一ドメイン抗体(sdAb)であって、前記抗FGFR4 sdABが以下の式FRW1-CDR1-FRW2-CDR2-FRW3-CDR3-FRW4を有し、CDRが、
配列番号1のCDR1;配列番号2のCDR2及び配列番号3のCDR3、
配列番号4のCDR1;配列番号5のCDR2及び配列番号6のCDR3、
配列番号7のCDR1;配列番号8のCDR2及び配列番号9のCDR3、
配列番号10のCDR1;配列番号11のCDR2及び配列番号12のCDR3
から選択される、FGFR4に対するヒト化sdAb。
【請求項2】
フレームワーク領域が、
- 配列番号13若しくは配列番号17から選択されるFRW1、
- 配列番号14若しくは配列番号18から選択されるFRW2、
- 配列番号15若しくは配列番号19から選択されるFRW3、
- 配列番号16若しくは配列番号20から選択されるFRW4、
又は各FRW1、FRW2、FRW3及びFRW4に0個、1個、2個若しくは3個以下の保存的アミノ酸置換を有するそれらの機能的バリアントからなる、請求項1に記載のヒト化抗FGFR4 sdAb。
【請求項3】
配列番号41、配列番号42、配列番号43、及び配列番号44のいずれか1つに記載の配列を有する請求項2に記載のヒト化抗FGFR4 sdAb。
【請求項4】
核酸、ポリペプチド又はタンパク質、ウイルス、毒素及び化学物質から選択される目的の化合物に直接又は間接的に、共有又は非共有的に結合される、請求項1から3のいずれか一項に記載のヒト化抗FGFR4 sdAb。
【請求項5】
抗体が、酵素、フルオロフォア、NMR又はMRI造影剤、放射性同位体及びナノ粒子から選択される診断用化合物に直接又は間接的に、共有又は非共有的に結合される、請求項4に記載のヒト化抗FGFR4 sdAb。
【請求項6】
抗体が、細胞傷害性物質、化学療法剤、放射性同位体、標的化抗がん剤、免疫療法剤(免疫抑制剤又は免疫刺激剤など)、及び溶解性ペプチドから選択される治療用化合物に直接又は間接的に、共有又は非共有的に結合される、請求項4に記載のヒト化抗FGFR4 sdAb。
【請求項7】
薬物ナノ担体、任意選択で有機ナノ担体に直接又は間接的に、共有又は非共有的に結合される、請求項1から4のいずれか一項に記載のFGFR4 sdAB。
【請求項8】
有機ナノ担体が、高分子ナノ粒子、リポソーム、ミセル、及びアルブミンなどのタンパク質ベースのナノ担体から選択され、任意選択で有機ナノ担体がリポソームである、請求項1から4のいずれか一項に記載のFGFR4 sdAB。
【請求項9】
ナノ担体にカプセル化された薬物が、治療用化合物又は診断用化合物を含み、任意選択で治療用化合物が細胞傷害性化合物である、請求項7又は8に記載のFGFR4 sdAB。
【請求項10】
免疫グロブリンドメインに融合されており、任意選択で、Fcドメインに融合される、請求項1から4のいずれか一項に記載のFGFR4 sdAb。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に定義されるFGFR4 sdAbで構成される少なくとも第1のsdAbを含み、第2の抗原に結合する別のsdAbを更に含む多重特異的結合化合物であって、任意選択で、第1のsdAbが第2のsdAbのN末端に位置するか、又は第1のsdAbが第2のsdAbのC末端に位置する、多重特異的結合化合物。
【請求項12】
(a)請求項1から4のいずれか一項に定義される抗FGFR4 sdAbで構成される少なくとも第1のsdAb、及び任意選択で、第2の抗原に特異的に結合する第2のsdAbを含む抗原結合ドメイン、(b)膜貫通ドメイン、並びに(c)細胞内ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項13】
膜貫通ドメインが、CD3ゼータドメインの膜貫通ドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD8アルファ膜貫通ドメイン、DAP10膜貫通ドメイン、又はDAP12膜貫通ドメインから選択される、請求項12に記載のCAR。
【請求項14】
細胞内ドメインが、CD28、OX40、CD3ゼータ、4-1BB、DAP10 及び/又はDAP12 細胞内ドメインに由来する1つ又は複数のドメインを含み、任意選択で細胞内ドメインがCD3ゼータ及び4-1BB細胞内ドメインを含む、請求項12又は13に記載のCAR。
【請求項15】
膜貫通ドメインがCD8アルファの膜貫通ドメインであり、細胞内ドメインがCD3ゼータ及び4-1BB細胞内ドメインを含む、請求項12から14のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項16】
細胞外抗原結合ドメインのC末端ドメインと膜貫通ドメインのN末端の間に位置するスペーサー及び/又はヒンジドメインを更に含み、任意選択でヒンジがCD8アルファのヒンジである、請求項12から15のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項17】
ポリペプチドのN末端に位置するシグナルペプチドを更に含む、請求項12から16のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載のヒト化抗FGFR4 sdAb又はCARをコードする核酸配列を含む単離された核酸。
【請求項19】
ヒト化抗FGFR4 sdAb、又はCARが、異種調節制御配列に結合される、請求項18に記載の単離された核酸。
【請求項20】
請求項18又は19に記載の核酸を含むベクター。
【請求項21】
請求項18若しくは19に記載の核酸又は請求項20に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項22】
請求項1から17のいずれか一項に記載のヒト化抗FGFR4 sdAb、又はCARを発現する単離された細胞又は細胞の集団。
【請求項23】
前記細胞が、マクロファージ、NK細胞、CD4+/CD8+、TIL/腫瘍由来CD8 T細胞、セントラル記憶CD8+ T細胞、Treg、MAIT、及びYδ T細胞から選択される同種又は自己細胞である、請求項22に記載の単離された細胞又は細胞集団。
【請求項24】
治療で使用するための、請求項1から23のいずれか一項に定義されるヒト化抗FGFR4 sdAb、CAR、核酸、ベクター、宿主細胞、単離された細胞又は細胞集団。
【請求項25】
それを必要とする対象におけるがんの処置で使用するための、請求項1から23のいずれか一項に定義されるヒト化抗FGFR4 sdAb、CAR、核酸、ベクター、宿主細胞、単離された細胞又は細胞集団。
【請求項26】
がんの細胞治療で使用するための、請求項22又は23に記載の単離された細胞又は細胞集団。
【請求項27】
請求項24から27に記載の治療で使用するための、請求項1から23のいずれか一項に定義されるヒト化抗FGFR4 sdAb、CAR、核酸、ベクター、宿主細胞、単離された細胞又は細胞集団であって、前記ヒト化抗FGFR4 sdAb、CAR、核酸、ベクター、宿主細胞、単離された細胞又は細胞集団が、少なくとも1つの更なる治療剤と組み合わせて使用され、前記少なくとも1つの更なる治療剤が、抗がん剤、任意選択で化学療法剤、又は免疫療法剤、任意選択でチェックポイント阻害剤である、ヒト化抗FGFR4 sdAb、CAR、核酸、ベクター、宿主細胞、単離された細胞又は細胞集団。
【請求項28】
FGFR4媒介性がんの検出又はモニタリングのための、請求項4、5又は9に記載のヒト化抗FGFR4 sdAbの使用。
【請求項29】
対象におけるFGFR4媒介性がんを診断又はモニタリングするためのin vitro又はex vivo方法であって、
a)前記対象由来の適切な試料を、請求項5又は9に定義される診断用薬剤とin vitroで接触させる工程と、
b)前記試料中のFGFR4の発現を決定する工程と
を含む前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、抗FGFR4単一ドメイン抗体(sdAb)、及び診断薬又はがん治療におけるその使用に関する。前記抗FGFR4-sdAbは更に、キメラ抗原受容体に含め、がん細胞治療、特に細胞がん治療で使用することもできる。
【背景技術】
【0002】
線維芽細胞増殖因子受容体4(FGFR4)は、FGFR1、FGFR2及びFGFR3も含むFGF受容体ファミリーに属する。FGF受容体ファミリーの他のメンバーと同様に、膜貫通受容体FGFR4は、シグナルペプチド、細胞外リガンド結合ドメイン(ECD)、膜貫通ドメイン、細胞内タンパク質チロシンキナーゼドメイン(TKD)及びC末端リン酸化ドメインを含有する(Klint Pら、1998)。他の3つのFGFRメンバーと同じように、FGFR4の細胞外領域は、特異的リガンド結合に不可欠な3つの免疫グロブリン様ドメイン(IgI、IgII、及びIgIII)からなる。
【0003】
肝臓の恒常性の重要なメディエーターとしてFGFR4機能は、コレステロールにおけるその確立された役割に加えて通常の食事条件下で脂質及びグルコース代謝両方の維持に必要とされる(Huang Xら、Diabetes. 2007;56:2501~2510頁)。FGF6/FGFR4経路は、筋芽細胞分化及び筋管再生にも重要な役割を果たす(Floss Tら、Genes Dev. 1997;11:2040~2051頁;Zhao Pら、Dev. Dyn. 2004;229:380~392頁)。
【0004】
FGFR4は、効率を下げながらFGF1、FGF2、FGF4、FGF6、FGF8及びFGF9によって活性化され(Ornitzら、1996);これらの全ては他のファミリーメンバーも活性化するが、FGF19はFGFR4に特異的である(Xieら、1999)。古典的FGFは、ヘパリン/ヘパリン硫酸(HS)を用いてFGFR4に結合し、FGFR4を活性化する(Lin B.Cら、J. Biol. Chem. 2007;282:27277~27284頁)。FGFR4の特異的リガンドとして、FGF19は、β-クロトー(KLB)共受容体を用いてFGFR4に結合し、FGFR4を活性化することができる。FGF19は内分泌リガンドとして、FGFR4に対して他のFGFRメンバーより特異的な選択的親和性を有する(Ornitz D.Mら、J. Biol. Chem. 1996;271:15292~15297頁;Zhang Xら、J. Biol. Chem. 2006;281:15694~15700頁)。
【0005】
線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)は、細胞の増殖、転移、及び生存の増加を通じて腫瘍形成及びがんの進行において極めて重要な役割を果たすことが見出されている(Babina I.Sら、Nat. Rev. Cancer. 2017;17:318~332頁;Porta Rら、Crit. Rev. Oncol./Hematol. 2017;113:256~267頁)。FGFR4の上昇は、がんの発生及び進行と密接に相関しており、新規の及び有効な抗がん治療薬を開発するための魅力的な標的になっている。近年、1つの研究が様々ながんのタイプにおけるFGFR遺伝子の変化を評価し(Helsten Tら、Clin. Cancer Res. 2016;22:259~267頁)、FGFRの遺伝子変化が4853個の固形腫瘍の7.1%で生じることを示した。遺伝子変化は比較的低いものの、FGFR4過剰発現が多くのタイプのがんで更に報告されている。FGFR4 mRNA発現の増加は、肝細胞癌(HCC)の3分の1(Ho H.Kら、J. Hepatol. 2009;50:118~127頁)、及び乳がん試料の32%(Penault-Llorca Fら、Int. J. Cancer. 1995;61:170~176頁)で検出されている。FGFR4過剰発現はまた、中咽頭扁平上皮癌の64%及び口腔扁平上皮癌の41%でも観察されている(Koole Kら、Pathobiology. 2015;82:280~289頁)。過剰発現されたFGFR4は、肝核因子1アルファによって活性化されたイントロンエンハンサーによって媒介される膵臓癌及び由来する細胞株でも見出されている(Shah R.Nら、Oncogene. 2002;21:8251~8261頁)。更に、高度のFGFR4発現が横紋筋肉腫で検出された(Taylor J.Gら、J. Clin. Investig. 2009;119:3395~3407頁、また、Crose, L. E. S.ら Clin. Cancer Res. 18、3780~3790頁(2012)も参照)。
【0006】
FGF19遺伝子の増幅は、肝臓がん、乳がん、肺がん、膀胱がん、頭頚部扁平上皮癌(HNSCC)、及び食道がんで見出された(Huang X.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 2002;99:11369~11374頁;Sawey E.T.ら、Cancer Cell. 2011;19:347~358頁;Tiong K.H.ら、Oncotarget. 2016;7:57633頁;Zhang X.ら、Thorac. Cancer. 2017;8:655~665頁;Hoover H.ら、J. Proteome Res. 2015;14:3670~3679頁)。
【0007】
機構研究は、リン酸化FGFR4が2つの重要な細胞内標的、ホスホリパーゼγ(PLCγ)及びFGFR基質2(FRS2)を動員し、リン酸化することを示した[4]。MAPKは、次いでPLCγを通じて活性化タンパク質キナーゼC(PKC)によって刺激されうる。一方、MAPK及びPI3K-AKT経路は、増殖因子受容体結合2(GRB2)の動員を通じた活性化FRS2によってトリガーされうる。AKT及びERK1/2の上方制御された活性は、FGF19/FGFR4シグナル伝達が活性化するとHCCにおける細胞の増殖及び生存の増強をもたらす。FGF19-FGFR4軸は更に、転移及び生存率の低さと関連付けられている(Touat M.ら、Clin. Cancer Res. 2015;21:2684~2694頁)。
【0008】
研究は、抗がん単剤療法又は補助的処置として特に有望な、FGFR4を標的化する選択的阻害剤の開発に集中している。中和抗体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、及び低分子阻害剤を含む、FGFR4を標的化するための3つの戦略が特に開発されている。
【0009】
しかし、非特異的FGFR阻害剤の使用に起因する回避不能なオンターゲット毒性及びオフターゲット活性は、いくつかの副作用をもたらす(Dieci M.V.ら、Cancer Discov. 2013;3:264~279頁)。そのような短所は、結局はがん患者におけるその利用を制限する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】EP0368684
【特許文献2】WO06/030220
【特許文献3】WO06/003388
【特許文献4】WO89/12624
【特許文献5】WO2012059882
【特許文献6】US5663149
【特許文献7】米国特許第5,635,483号
【特許文献8】米国特許第5,780,588号
【特許文献9】米国特許第6,214,345号
【特許文献10】WO02088172
【特許文献11】WO2004010957
【特許文献12】WO2005081711
【特許文献13】WO2005084390
【特許文献14】WO2006132670
【特許文献15】WO03026577
【特許文献16】WO200700860
【特許文献17】WO207011968
【特許文献18】WO205082023
【特許文献19】WO2019077165
【特許文献20】EP2169073
【特許文献21】WO2004004771
【特許文献22】WO2004056875
【特許文献23】WO2006121168
【特許文献24】WO2008156712
【特許文献25】WO2009014708
【特許文献26】WO2009114335
【特許文献27】WO2013043569
【特許文献28】WO2014047350
【特許文献29】US6,984,720
【特許文献30】US8,017,114
【特許文献31】US7,109,003
【特許文献32】US8,143,379
【特許文献33】WO1997020574
【特許文献34】WO2007123737
【特許文献35】US8,491,895
【特許文献36】US20130177557
【特許文献37】US5,773,578
【特許文献38】US20140120622
【非特許文献】
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【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
診断用途及び/又は治療用途のためのさらなる製品を提供するために、細胞外ドメインに特異的に結合し、FGFR4媒介性シグナル伝達を遮断する高親和性FGFR4抗体を有することが故に極めて望ましい。
【0013】
故に、本発明の根底にある技術的問題の1つは、FGFR4発現に関連する疾患の診断、予防及び/又は処置に適した新規のFGFR4抗体及びこの使用方法を提供することであった。特に、単一ドメイン抗体足場は、組織へのより良好な浸透、腎臓でのより迅速なクリアランス、高特異性又は免疫原性の低下など、治療での使用に多くの利点を有することから、故に様々な治療戦略及び診断戦略において使用されうる、FGFR4に対する高親和性単一ドメイン抗体を提供することが本開示の目的である。
【0014】
キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)の養子移入療法は、典型的には、治験での一連の劇的な成功で血液悪性腫瘍の処置として大きな見込みを示している、可能性のある免疫療法の1つである。残念ながら、血液悪性腫瘍の処置におけるCAR-T細胞療法によるブレークスルーは、固形腫瘍では依然として十分に再現されていない(Y. Guo, Yら、Chimeric antigen receptor-modified T cells for solid tumors:challenges and prospects、J Immunol Res、2016;J. Liら、Chimeric antigen receptor T cell(CAR-T) immunotherapy for solid tumors:lessons learned and strategies for moving forward;J Hematol Oncol、11(2018)、22頁)。更に、キメラ抗原受容体の設計において最も使用されるscFvは、CAR-Tの治療有効性にマイナスの影響を与える可能性があるいくつかの特徴を示す。実際に、scFvは特に不十分な発現及び安定性を特徴とし、アンフォールディング及び凝集を起こす傾向がある。故に、患者プロファイルの多様性だけでなく腫瘍の著しい多様性もカバーするために、腫瘍学における現在の治療ツールを改善し、多様化する必要性が常に残っている。これは特に、横紋筋肉腫などの、FGFR4過剰発現に関連する高悪性度腫瘍に極めて重要である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本出願は、ナノ及びピコモル範囲の親和性でFGFR4に特異的に結合する合成ヒト化単一ドメイン抗体を提供する。これらのsdAbは、FGFR4媒介性がん細胞及び特にRMS細胞でFGFR4下流MAPK経路の活性化を遮断する能力を有することが更に示されている。本発明者らは、前記FGFR4 sdAbにより機能化されたリポソームが、FGFR4陽性がん細胞に特異的に結合し、内部に取り込まれることを更に示した。これらの結果は、本開示によるFGFR4標的化ナノ担体(及び特にリポソーム)製剤が、迅速及び特異的な受容体媒介細胞内取り込みを特徴とする、FGFR4過剰発現がん細胞のための特異的薬物送達プラットフォームとなるという強い証拠を提供するものである。最後に、本発明者らは、in vitroでFGFR4発現がん細胞に対する有意な抗腫瘍活性を媒介し、故に有望な標的化治療選択肢となることが示されたFGFR4-CAR T細胞を作製した。
【0016】
故に、本開示は、FGFR4に対する単一ドメイン抗体(sdAb)であって、前記ヒト化抗FGFR4 sdAbが以下の式FRW1-CDR1-FRW2-CDR2-FRW3-CDR3-FRW4を有し、CDRが、
配列番号1のCDR1;配列番号2のCDR2及び配列番号3のCDR3、
配列番号4のCDR1;配列番号5のCDR2及び配列番号6のCDR3、
配列番号7のCDR1;配列番号8のCDR2及び配列番号9のCDR3、
配列番号10のCDR1;配列番号11のCDR2及び配列番号12のCDR3
から選択される、FGFR4に対するsdAbに関する。
【0017】
一部の実施形態では、フレームワーク領域は、配列番号13若しくは配列番号17から選択されるFRW1、配列番号14若しくは配列番号18から選択されるFRW2、配列番号15若しくは配列番号19から選択されるFRW3、配列番号16若しくは配列番号20から選択されるFRW4、又は各FRW1、FRW2、FRW3及びFRW4に0個、1個、2個若しくは3個以下の保存的アミノ酸置換を有するそれらの機能的バリアントからなる。より具体的な実施形態では、フレームワーク領域は、配列番号13のFRW1、配列番号14のFRW2、配列番号15のFRW3、及び配列番号16のFRW4、又は配列番号17のFRW1、配列番号18のFRW2、配列番号19のFRW3、及び配列番号20のFRW4、又は各FRW1、FRW2、FRW3及びFRW4に0個、1個、2個若しくは3個以下の保存的アミノ酸置換を有するそれらの機能的バリアントからなる。
【0018】
更により特定の実施形態では、本開示は、配列番号41、配列番号42、配列番号43、及び配列番号44のいずれか1つに記載の配列を有するヒト化抗FGFR4 sdAbを企図する。
【0019】
本開示のヒト化抗FGFR4 sdAbは、核酸、ポリペプチド又はタンパク質、ウイルス、毒素及び化学物質から選択される目的の化合物に直接又は間接的に、共有又は非共有的に結合されうる。一部の実施形態では、ヒト化抗FGFR4 sdAbは、酵素、フルオロフォア、NMR又はMRI造影剤、放射性同位体及びナノ粒子から選択される診断用化合物に直接又は間接的に、共有又は非共有的に結合される。一部の実施形態では、ヒト化抗FGFR4 sdAbは、細胞傷害性物質、化学療法剤、放射性同位体、標的化抗がん剤、免疫療法剤(免疫抑制剤又は免疫刺激剤など)、及び溶解性ペプチドから選択される化合物に直接又は間接的に、共有又は非共有的に結合される。一部の実施形態では、ヒト化抗FGFR4 sdAbは、薬物ナノ担体、任意選択で有機ナノ担体に直接又は間接的に、共有又は非共有的に結合される。典型的には、有機ナノ担体は、高分子ナノ粒子、リポソーム、ミセル及びアルブミンなどのタンパク質ベースのナノ担体から選択されうる。
【0020】
FGFR4 sdAbは、免疫グロブリンドメイン、特にFcドメインに融合することもできる。
【0021】
本開示はまた、本明細書に記載のFGFR4 sdAbで構成される少なくとも第1のsdAbを含み、第2の抗原に結合する別のsdAbを更に含む多重特異的結合化合物であって、任意選択で、第1のsdAbが第2のsdAbのN末端に位置するか、又は第1のsdAbが第2のsdAbのC末端に位置する、多重特異的結合化合物も包含する。
【0022】
本開示はまた、(a)本明細書に定義されるFGFR4 sdAbで構成される少なくとも第1のsdAb、及び任意選択で、第2の抗原に特異的に結合する第2のsdAbを含む抗原結合ドメイン、(b)膜貫通ドメイン、並びに(c)細胞内ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)も包含する。
【0023】
典型的には、第2の抗原は、PSMA、PSCA、BCMA、CS1、GPC3、CSPG4、EGFR、胎児アセチルコリン受容体サブユニットガンマ(fAChRγ)、HER3、IGF1R、SLC19A1、ACVR2A、EPHB4、CA125、IL-13R、CD278、CD123、NCAM、5T4、CD2、CD3、CD16(FcγRIII)、CD23、MART-1、L1 CAM、MUC16、ROR1、SLAMF7、cKit、CD38、CD53、CD56、CD71、CD74、CD92、CD100、CD123、CD138、CD148、CD150、CD200、CD261、CD262、CD276、CD362、gp100、ROR1、メソテリン、CD33/IL3Ra、c-Met、糖脂質F77、EGFRvlll、GD-2、NKp46受容体、NY-ESO-1 TCR又はMAGE A3 TCR、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、サバイビン、シトクロムP450 1 B1(CY1 B)、HER2、ウィルムス腫瘍遺伝子1(WT1)、livin、アルファフェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)、ムチン16、MUC1、p53、サイクリン、免疫チェックポイント標的、又はそれらの組合せからなる群から選択される。
【0024】
膜貫通ドメインは、CD3ゼータ膜貫通ドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD8アルファ膜貫通ドメイン、DAP10膜貫通ドメイン、又はDAP12膜貫通ドメインを含む細胞表面標的化タンパク質の膜貫通ドメインから選択することができる。
【0025】
細胞内ドメインは、CD28、OX40、CD3ゼータ、4-1BB、DAP10及び/又はDAP12細胞内ドメインに由来する1つ又は複数のドメインを含むことができる。
【0026】
本開示はまた、有利には異種調節制御配列に結合される本明細書に記載のヒト化抗FGFR4 sdAb又はCARをコードする核酸配列を含む単離された核酸も包含する。
【0027】
本開示はまた、本明細書に開示の核酸を含むベクター、それを含む宿主細胞、本明細書に開示のヒト化抗FGFR4 sdAb、又はCARを発現する単離された細胞又は細胞集団も包含する。典型的には、前記細胞は同種又は自己細胞であり、マクロファージ、NK細胞及びT細胞、特にCD4+/CD8+、TIL/腫瘍由来CD8 T細胞、セントラル記憶CD8+ T細胞、Treg、MAIT、及びYδ T細胞から選ぶことができる。
【0028】
定義されるヒト化抗FGFR4 sdAb、CAR、核酸、ベクター、宿主細胞、単離された細胞又は細胞集団を含む本開示の治療薬は、治療、特にがんの処置における使用であってもよい。これらは、特にがんの細胞治療において、及び/又は他の治療(特に、化学療法剤、及び/又は免疫療法剤、特に1つ若しくは複数のチェックポイント阻害剤などの他のがん治療)と組み合わせて使用されてもよい。
【0029】
最後に、本開示は、分子イメージング、特にFGFR4媒介性がんの検出又はモニタリングのための、以前に定義されているヒト化抗FGFR4 sdAbの使用を含む。本明細書に特に記載されるのは、対象におけるFGFR4媒介性がんを診断又はモニタリングするためのin vitro又はex vivo方法であって、
a)前記対象由来の適切な試料を、以前に定義されている診断用薬剤をin vitroで接触させる工程と、
b)前記試料中のFGFR4の発現を決定する工程と
を含む前記方法である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
定義:
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を記載することのみを目的とし、網羅するものではない。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が特に明白に指示しない限り複数の指示対象を含むことに注意しなければならない。
【0031】
用語「含む(comprising)」は本明細書で使用される場合、「含む(including)」又は「含有する(containing)」と同義であり、包括的又はオープンエンドであり、更なる引用されていないメンバー、要素又は方法工程を排除しない。
【0032】
具体的に記載されないか又は文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される場合、用語「約」は、当技術分野の通常の許容範囲内、例えば平均から2標準偏差内と理解されるべきである。約は、記載された値の20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、又は0.01%内と理解することができる。文脈から特に明らかでない限り、本明細書に提供された全ての数値は約という用語によって修飾される。
【0033】
本明細書で使用される場合、用語「単離された」は、(1)物質又は実体が初めに生成されたとき(天然にであろうと又は実験的設定であろうと)に会合した成分の少なくとも一部から分離され、(2)人の手によって生成、調製、及び/又は製造された物質又は実体を指す。単離された物質及び/又は実体は、それらが初めに結合した他の成分の少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、又はそれ以上から分離されうる。一部の実施形態では、単離された作用物質は、約80%超、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約99%超純粋である。本明細書で使用される場合、物質は、他の成分を実質的に含まないならば「純粋」である。
【0034】
単離された核酸、タンパク質、ポリペプチド、及び抗体を含む本開示の「単離された」生成物は、天然の生成物ではない(すなわち、「天然に存在しない」)。むしろ、本開示の「単離された」核酸、タンパク質、ポリペプチド、及び抗体は、「人為的」生成物である。本開示の「単離された」生成物は、天然の生成物とは「著しく異なる」又は「かなり異なる」可能性がある。非限定的な例として、単離された核酸は、精製、組換え、合成、標識されてもよく、及び/又は固体基質に結合されてもよい。そのような核酸は、天然に存在する核酸とは著しく異なる又はかなり異なる可能性がある。更なる非限定的な例として、本開示の「単離された」タンパク質、ポリペプチド、及び抗体は、精製、組換え、合成、標識されてもよく、及び/又は固体基質に結合されてもよい。そのようなタンパク質、ポリペプチド、及び抗体は、天然に存在するタンパク質、ポリペプチド、及び抗体とは著しく異なる又はかなり異なる可能性がある。
【0035】
用語「ポリヌクレオチド」、「核酸分子」、「核酸」、又は「核酸配列」は、少なくとも10塩基長のポリマー形態のヌクレオチドを指す。該用語には、DNA分子(例えば、cDNA又はゲノムDNA又は合成DNA)及びRNA分子(例えば、mRNA又は合成RNA)、並びに非天然ヌクレオチド類似体、非天然ヌクレオシド間結合、又はその両方を含有するDNA又はRNAの類似体が含まれる。核酸は、任意のトポロジー的コンフォメーションであってもよい。例えば、核酸は、一本鎖、二本鎖、三本鎖、四本鎖、部分的二本鎖、分岐状、ヘアピン状、環状、又はパドロック状のコンフォメーションであってもよい。核酸(ポリヌクレオチドとも呼ばれる)としては、RNA、cDNA、ゲノムDNAのセンス鎖及びアンチセンス鎖の両方、並びに上記の合成形態及び混合ポリマーが挙げられうる。当業者に容易に理解されるように、それらは化学的若しくは生化学的に修飾されてもよく、又は非天然の若しくは誘導体化されたヌクレオチド塩基を含有してもよい。そのような修飾としては、例えば、標識、メチル化、天然に存在するヌクレオチドの1つ又は複数と類似体との置換、ヌクレオチド間修飾、例えば、非荷電結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホロアミデート、カルバメート等)、荷電結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート等)、ペンダント部分(例えば、ポリペプチド)、インターカレーター(例えば、アクリジン、ソラレン等)、キレート剤、アルキル化剤、及び修飾された結合(例えば、アルファアノマー核酸等)が挙げられる。また、水素結合及び他の化学的相互作用を介して示された配列に結合する能力において、ポリヌクレオチドを模倣する合成分子も挙げられる。そのような分子は当技術分野で公知であり、例えば、分子の骨格中でペプチド結合がリン酸結合と置き換わるものが挙げられる。他の修飾としては、例えば、リボース環が架橋部分又は他の構造を含有する類似体、例えば「ロックド」核酸で見出される修飾が挙げられうる。
【0036】
「合成」RNA、DNA又は混合ポリマーは細胞外で作成されたもの、例えば化学的に合成されたものである。
【0037】
用語「核酸断片」は本明細書で使用される場合、完全長参照ヌクレオチド配列と比べて欠失、例えば、5'末端又は3'末端欠失を有する核酸配列を指す。一実施形態では、核酸断片は、断片のヌクレオチド配列が、天然に存在する配列における対応する位置と同一である連続配列である。一部の実施形態では、断片は、少なくとも10、15、20、若しくは25ヌクレオチド長、又は少なくとも20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、若しくは150ヌクレオチド長である。一部の実施形態では、核酸配列の断片は、オープンリーディングフレーム配列の断片である。一部の実施形態では、そのような断片は、オープンリーディングフレームヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質のポリペプチド断片(本明細書に定義される)をコードする。
【0038】
核酸は精製することができる。好ましくは、精製された核酸は、50%、75%、85%、90%、95%、97%、98%、又は99%超純粋である。本開示の文脈内では、少なくとも50%純粋な精製された核酸は、50%未満の他の核酸を含有する精製された核酸試料を意味する。例えば、プラスミドの試料が1%未満の混入細菌DNAを含有する場合、プラスミドの試料は少なくとも99%純粋でありうる。
【0039】
核酸の文脈における用語「作動可能に連結された」は、2つ以上のポリヌクレオチド(例えば、DNA)セグメント間の機能的関係を指す。典型的には、該用語は、転写された配列に対する転写調節配列の機能的関係を指す。例えば、プロモーター又はエンハンサー配列が適当な宿主細胞又は他の発現系においてコード配列の転写を刺激又は調節するならば、プロモーター又はエンハンサー配列はコード配列に作動可能に連結している。一般的に、転写された配列に作動可能に連結したプロモーター転写調節配列は、転写された配列に物理的に隣接しており、すなわち、シス作用である。しかし、エンハンサーなどのいくつかの転写調節配列は、それらが転写を増強するコード配列に物理的に隣接する又は近接して位置する必要がない。
【0040】
用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、本明細書において互換的に使用されてアミノ酸残基のポリマーを指す。該用語は、1つ又は複数のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工的な化学的模倣体であるアミノ酸ポリマー、並びに天然に存在するアミノ酸ポリマー及び天然に存在しないアミノ酸ポリマーに適用される。特に指示のない限り、特定のポリペプチド配列は、保存的に修飾されたそのバリアントも暗示的に包含する。更に、ポリペプチドは、それぞれが1つ又は複数の異なる活性を有するいくつかの異なるドメインを含んでもよい。誤解を避けるために、「ポリペプチド」は2個のアミノ酸より大きい任意の長さであってもよい。
【0041】
用語「ペプチド」は本明細書で使用される場合、短いポリペプチド、例えば、典型的には約50個未満のアミノ酸、及びより典型的には約30個未満のアミノ酸を含有するものを指す。該用語は本明細書で使用される場合、構造的機能を模倣し、故に生物学的機能を模倣する類似体及び模倣体を包含する。
【0042】
用語「単離されたタンパク質」又は「単離されたポリペプチド」は、その起源又は誘導源により、(1)その天然の状態でそれに付随する天然に結合する成分と結合していない、(2)純度が他の細胞物質の存在に関して判断されうる場合、天然には見出されない純度で存在する(例えば、同じ種由来の他のタンパク質を含まない)、(3)異なる種由来の細胞によって発現される、又は(4)天然に存在しない(例えば、それは天然に見出されるポリペプチドの断片であるか、又は天然には見出されないアミノ酸類似体若しくは誘導体、若しくは標準的なペプチド結合以外の結合を含む)タンパク質又はポリペプチドである。故に、化学的に合成されるか、又はポリペプチドが天然に由来する細胞とは異なる細胞系で合成されるポリペプチドは、その天然に結合する成分から「単離される」。ポリペプチド又はタンパク質は、当技術分野で周知のタンパク質精製法を使用して、天然に結合する成分を単離によって実質的に含まないようにすることもできる。このように定義される場合、「単離された」は、そのように記載されたタンパク質、ポリペプチド、ペプチド又はオリゴペプチドが、合成された細胞から物理的に除去されていることを必ずしも必要としない。
【0043】
タンパク質又はポリペプチドは、精製されてもよい。好ましくは、精製タンパク質又はポリペプチドは、50%、75%、85%、90%、95%、97%、98%、又は99%超純粋である。本開示の文脈内では、50%(等)超純粋な精製タンパク質は、50%(等)未満の他のタンパク質を含有する精製タンパク質試料を意味する。例えば、タンパク質の試料が1%未満の混入宿主細胞タンパク質を含有する場合、タンパク質の試料は99%純粋でありうる。
【0044】
用語「ポリペプチド断片」は本明細書で使用される場合、欠失、例えば、天然に存在するタンパク質などの完全長ポリペプチドと比べてアミノ末端及び/又はカルボキシ末端欠失を有するポリペプチドを指す。一実施形態では、ポリペプチド断片は、断片のアミノ酸配列が、天然に存在する配列における対応する位置と同一である連続配列である。断片は典型的には、少なくとも5、6、7、8、9若しくは10アミノ酸長、又は少なくとも12、14、16若しくは18アミノ酸長、又は少なくとも20アミノ酸長、又は少なくとも25、30、35、40若しくは45アミノ酸長、又は少なくとも50若しくは60アミノ酸長、又は少なくとも70アミノ酸長、又は少なくとも100アミノ酸長である。
【0045】
2つ以上の核酸又はポリペプチド配列の文脈における用語「パーセント同一の」又は「同一性パーセント」は、2つ以上の配列又は部分配列が同じである程度を指す。2つの配列が、比較される領域にわたってアミノ酸又はヌクレオチドの同じ配列を有するならば、2つの配列は「同一」である。比較ウィンドウにわたる、又は以下の配列比較アルゴリズムの1つを使用して若しくは手動アライメント及び目視検査によって測定されるときの指定された領域にわたる最大の一致について比較され、整列される場合、2つの配列が、同じであるアミノ酸残基又はヌクレオチドの明示されたパーセンテージ(すなわち、明示された領域にわたる、又は、明示されていない場合は配列全体にわたる、60%の同一性、任意選択で65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性)を有するならば、2つの配列は「実質的に同一」である。任意選択で、同一性は、少なくとも約30ヌクレオチド(又は10アミノ酸)長の領域にわたって、又はより好ましくは100~500ヌクレオチド若しくは1000以上のヌクレオチド(又は20、50、200又はそれ以上のアミノ酸)長の領域にわたって存在する。
【0046】
配列比較に関して、典型的には1つの配列は、被験配列が比較される参照配列として機能する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、被験配列及び参照配列がコンピュータに入力され、必要ならば部分配列座標が指定され、配列アルゴリズムプログラムパラメーターが指定される。デフォルトプログラムパラメーターが使用されてもよく、又は代替パラメーターが指定されてもよい。配列比較アルゴリズムは次いで、プログラムパラメーターに基づき参照配列と比較した被験配列の配列同一性パーセントを計算する。
【0047】
「比較ウィンドウ」は、本明細書で使用される場合、20~600、通常は約50~約200、より通常は約100~約150からなる群から選択される連続する位置の数のいずれか1つのセグメントに対する参照を含み、その中で配列は、2つの配列が最適に整列された後、同じ数の連続する位置の参照配列と比較されうる。比較のために配列をアライメントする方法は、当技術分野で周知である。比較のための配列の最適なアライメントは、例えば、Smith及びWaterman、Adv. Appl. Math. 2:482c頁(1970)の局所相同性アルゴリズム、Needleman及びWunsch、J. Mol. Biol. 48:443頁(1970)の相同性アライメントアルゴリズム、Pearson及びLipman、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85 :2444頁(1988)の類似性の検索方法、これらのアルゴリズムのコンピュータ実装(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Dr.、Madison、WIのGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)、又は手動のアライメント及び目視検査(例えば、Brentら、Current Protocols in Molecular Biology、2003参照)によって行うことができる。
【0048】
配列同一性及び配列類似性パーセントの決定に適したアルゴリズムの2つの例はBLAST及びBLAST 2.0アルゴリズムであり、これらはそれぞれAltschulら、Nuc. Acids Res. 25:3389~3402頁、1977;及びAltschulら、J. Mol. Biol. 215:403~410頁、1990に記載されている。BLAST分析を行うためのソフトウェアは、米国国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)を通じて公開されている。このアルゴリズムは、データベース配列中の同じ長さのワードと整列させた場合、ある正の値の閾値スコアTに一致するか又はこれを満たす、クエリー配列中の長さWの短いワードを同定することによって、高スコア配列ペア(HSP)を最初に同定することを含む。Tは隣接ワードスコア閾値と呼ばれる(Altschulら、同上)。これらの最初の隣接ワードヒットは、それらを含有するより長いHSPを見出すための検索を開始する種として機能する。ワードヒットは、累積アライメントスコアが増加されうる限り各配列に沿って両方向に延長される。累積スコアは、ヌクレオチド配列についてはパラメーターM(一対の一致残基に対する報酬スコア;常に> 0)、及びN(不一致残基に対するペナルティースコア;常に< 0)を使用して計算される。アミノ酸配列については、累積スコアを計算するのにスコア行列が使用される。各方向のワードヒットの延長は、累積アライメントスコアがその最大達成値から量Xだけ減少するとき;1つ若しくは複数の負のスコアの残基アライメントの蓄積により、累積スコアがゼロ以下になるとき;又はどちらかの配列の末端に到達したときに停止される。BLASTアルゴリズムパラメーターW、T、及びXは、アライメントの感度及び速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列に関する)は、デフォルトとしてワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=-4、及び両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列について、BLASTPプログラムは、デフォルトとしてワード長3、及び期待値(E)10、並びにBLOSUM62スコア行列(Henikoff及びHenikoff、(1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915頁参照)アライメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=-4、並びに両鎖の比較を使用する。BLASTアルゴリズムは、2つの配列間の類似性の統計解析も行う(例えば、Karlin及びAltschul、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873~5787頁、1993参照)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの尺度は最小合計確率(P(N))であり、2つのヌクレオチド配列間又はアミノ酸配列間の一致が偶然生じる確率の指標を提供する。例えば、参照核酸に対する被験核酸の比較の最小合計確率が、約0.2未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満であるならば、核酸は参照配列と類似していると考えられる。
【0049】
2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているE. Meyers及びW. Miller、Comput. Appl. Biosci. 4:11~17頁、1988)のアルゴリズムを使用して、PAM120重み残基表、ギャップ長ペナルティ12、及びギャップペナルティ4を使用して決定することもできる。更に、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、GCGソフトウェアパッケージ(www.gcg.comにて入手可能)のギャッププログラムに組み込まれているNeedleman及びWunsch、J. Mol. Biol. 48:444-453、1970)アルゴリズムを使用して、Blossom 62行列か又はPAM250行列のいずれか、並びにギャップ重み16、14、12、10、8、6、又は4及び長さ重み1、2、3、4、5、又は6を使用して決定されてもよい。
【0050】
上記の配列同一性のパーセンテージ以外に、2つの核酸配列又はポリペプチドが実質的に同一であるという別の指標は、以下に記載のように、第1の核酸によってコードされたポリペプチドが、第2の核酸によってコードされたポリペプチドに対して産生される抗体と免疫学的に交差反応性であることである。故に、ポリペプチドは典型的には、例えば、保存的置換によって2つのペプチドが異なるのみの第2のポリペプチドと実質的に同一である。2つの核酸配列が実質的に同一であるという別の指標は、2つの分子又はそれらの相補体が、以下に記載のようにストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズすることである。2つの核酸配列が実質的に同一であるという更なる別の指標は、配列を増幅するのに同じプライマーが使用されうることである。
【0051】
本明細書で使用される場合、「機能的バリアント」又は所与のタンパク質には、所与のタンパク質の機能性を保存する前記タンパク質の野生型バージョン、同じファミリーに属するバリアントタンパク質、ホモログタンパク質、又は切断バージョンが含まれる。典型的には、機能的バリアントは、所与のタンパク質と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、又は99%のアミノ酸同一性を示す。
【0052】
本明細書で使用される場合、用語「哺乳動物」は、有胎盤哺乳動物及び有袋哺乳動物を含む分類学的分類の哺乳動物の任意のメンバーを指す。故に、「哺乳動物」としては、ヒト、霊長類、家畜、及び実験哺乳動物が挙げられる。例示的な哺乳動物には、げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウマ、ヤギ、ラマ、ウシ、霊長類、ブタ、及び任意の他の哺乳動物が挙げられる。一部の実施形態では、哺乳動物は、トランスジェニック哺乳動物、遺伝子改変哺乳動物、及びクローン化哺乳動物のうちの少なくとも1つである。
【0053】
本開示によれば、用語「疾患」は、がん疾患、特に本明細書に記載されたがん疾患の形態を含む任意の病理学的状態を指す。
【0054】
用語「正常な」は、健康な状態又は健康な対象若しくは組織の状態、すなわち、非病理学的状態を指し、「健康な」は、好ましくは非がん性を意味する。
【0055】
用語「悪性腫瘍(malignancy)」は、非良性腫瘍又はがんを指す。本明細書で使用される場合、用語「がん」は、脱制御された又は制御されない細胞増殖を特徴とする悪性腫瘍を含む。
【0056】
用語「がん」は、原発性悪性腫瘍(例えば、その細胞が原発腫瘍の部位以外の対象の身体の部位に遊走していないもの)及び二次性悪性腫瘍(例えば、転移、すなわち、原発腫瘍の部位とは異なる二次的部位への腫瘍細胞の遊走から生じるもの)を含む。
【0057】
がんは、腫瘍に似ている細胞のタイプ及び、それ故に、腫瘍の起源と思われる組織によって分類される。これらはそれぞれ、組織像及び位置である。
【0058】
本開示による用語「がん」は、特に白血病、セミノーマ、メラノーマ、奇形腫、リンパ腫、神経芽細胞腫、神経膠腫及び肉腫を含む。用語がんは、特に、直腸がん、子宮内膜がん、腎臓がん、副腎がん、甲状腺がん、血液がん、皮膚がん、脳のがん、子宮頸がん、腸がん(intestinal cancer)、肝臓がん、結腸がん、胃がん、腸がん(intestine cancer)、頭頚部がん、胃腸がん、リンパ節がん、食道がん、結腸直腸がん、膵臓がん、耳鼻咽喉科(ENT)がん、乳がん、前立腺がん、子宮のがん、卵巣がん及び肺がん、軟部組織腫瘍並びにそれらの転移を含む。本開示による用語がんは、がん転移及びがんの再燃も含む。
【0059】
本開示による「腫瘍の増殖」又は「腫瘍増殖」は、腫瘍のサイズを増加させる腫瘍の傾向、及び/又は腫瘍細胞の増殖する傾向に関する。
【0060】
本開示の目的のために、用語「がん」及び「がん疾患」は、用語「腫瘍」及び「腫瘍疾患」と互換的に使用される。
【0061】
「処置する(treat)」とは、対象における腫瘍のサイズ若しくは腫瘍の数を低減することを含む、疾患を予防若しくは排除するため;対象における疾患を止める若しくは遅らせるため;対象における新たな疾患の発生を阻害する若しくは遅らせるため;現在疾患を有しているか、若しくは以前に疾患を有していた対象における症状及び/若しくは再発の頻度若しくは重症度を低下させるため;並びに/又は対象の寿命を延ばす、すなわち増加させるために、本明細書に記載の化合物又は組成物を対象に投与することを意味する。特に、用語「疾患の処置」は、疾患又はその症状の治癒、期間の短縮、改善、予防、進行若しくは悪化の減速若しくは阻害、又は発症の予防若しくは遅延を含む。
【0062】
本明細書に記載された治療的に活性な薬剤又は生成物、ワクチン及び組成物は、注射又は注入を含む任意の従来の経路により投与されてもよい。
【0063】
本明細書に記載された薬剤は、有効量で投与される。「有効量」は、単独で又は更なる用量と共に所望の反応又は所望の効果を達成する量を指す。特定の疾患又は特定の状態の処置の場合、所望の反応は、好ましくは疾患の経過の阻害に関する。これは、疾患の進行を減速させること、及び特に、疾患の進行を中断するか又は逆転させることを含む。疾患又は状態の処置における所望の反応は、前記疾患又は前記状態の発症の遅延又は発症の予防でもありうる。本明細書に記載された薬剤の有効量は、処置されるべき状態、疾患の重症度、年齢、生理的状態、サイズ及び体重を含む患者個人のパラメーター、処置の期間、付随する治療のタイプ(あるとすれば)、特定の投与経路並びに同様の要因に依存するであろう。したがって、本明細書に記載された薬剤の投与される用量は、そのようなパラメーターのいくつかに依存しうる。患者における反応が初回用量で不十分な場合には、高用量(又は異なる、より限局された投与経路によって達成される有効な高用量)が使用されうる。
【0064】
本明細書に記載の医薬組成物は、所望の反応又は所望の効果を生むように、好ましくは無菌であり、治療的に活性な物質の有効量を含有する。
【0065】
本明細書に記載の医薬組成物は、一般的に、薬学的に適合する量及び薬学的に適合する調製物で投与される。用語「薬学的に適合する」は、医薬組成物の有効成分の作用と相互作用しない非毒性物質を指す。この種類の調製物は通常、塩、緩衝物質、保存料、担体、補助免疫増強物質、例えばアジュバント、例えばCpGオリゴヌクレオチド、サイトカイン、ケモカイン、サポニン、GM-CSF及び/又はRNA、並びに必要に応じて他の治療的に活性な化合物を含有しうる。医薬で使用される場合、塩は薬学的に適合しているべきである。
【0066】
単一ドメイン抗体及びそのバリアント
本明細書で使用される場合、用語「FGFR4」は、当技術分野におけるその一般的な意味であり、ヒトFGFR4(「線維芽細胞増殖因子受容体4」とも称される)、特にヒトFGFR4の天然配列ポリペプチド、アイソフォーム、キメラポリペプチド、全てのホモログ、断片、及び前駆物質を含む。天然FGFR4のアミノ酸配列は、UniProt参照番号P22455(FGFR4_HUMAN)を含む。
より具体的には用語「FGFR4」は、以下の配列番号45のヒトFGFR4を含む。
【0067】
>sp|P22455|FGFR4_HUMAN線維芽細胞増殖因子受容体4 OS=ヒト(Homo sapiens)OX=9606 GN=FGFR4 PE=1 SV=2
【0068】
【化1】
【0069】
用語「抗体」は、4本のポリペプチド鎖、2本の重鎖(H)及び2本の軽鎖(L)から構成される任意の免疫グロブリン(Ig)分子、若しくはその抗原結合部分、又はIg分子の本質的なエピトープ結合特性を保持する、その任意の機能的断片、変異体、バリアント、若しくは派生物を広く指す。そのような変異体、バリアント、又は誘導体抗体フォーマットは当技術分野で公知である。完全長抗体では、各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVR又はVHと略される)及び重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2及びCH3から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVR又はVLと略される)及び軽鎖定常領域からなる。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLからなる。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が散在した、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性領域に更に細分することができる。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端へ以下の順:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で並んだ3つのCDR及び4つのFRから構成される。免疫グロブリン分子は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgAI及びIgA2)又はサブクラスのものでありうる。
【0070】
抗体断片は、例えばF(ab')2、Fab、Fv、sFv等としての抗体の部分である。完全長抗体の機能的断片は、完全長抗体の標的特異性を保持する。Fab(断片、抗体)、scFv(単鎖可変鎖断片)及び単一ドメイン抗体(dAb)などの組換え機能的抗体断片は、それ故に、mAbに基づく治療薬の代替としての治療薬を開発するために使用されている。scFv断片(約25kDa)は、2つの可変ドメイン、VH及びVLからなる。天然には、VH及びVLドメインは、疎水性相互作用により非共有結合され、解離する傾向がある。しかし、親水性の柔軟なリンカーでドメインを連結して単鎖Fv(scFv)を作出することによって、安定な断片が改変されうる。最小の抗原結合断片は、単一可変断片、すなわちVH又はVLドメインである。軽鎖/重鎖パートナーへの結合はそれぞれ、標的結合に必要とされない。そのような断片は、単一ドメイン抗体で使用される。単一ドメイン抗体(約12~15kDa)は、それ故にVHドメインか又はVLドメインのいずれかを有する。
【0071】
本明細書で使用される場合、用語「単一ドメイン抗体」(sdAb)又はナノボディ(登録商標)(Ablynx社の商標)は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、重鎖に由来する単一の単量体可変抗体ドメインからなる分子量わずか12~15kDaの抗体断片を指す。そのような単一ドメイン抗体(VHHと称される)は、ラクダ類哺乳動物に見出すことができ、天然には軽鎖を欠く。(単一)ドメイン抗体の概要に関して、上に挙げた先行技術、並びにEP0368684、Wardら(Nature 1989 Oct 12;341(6242):544~6頁)、Holtら、Trends Biotechnol、2003、21(11):484~490頁;及びWO06/030220、WO06/003388も参照のこと。単一ドメイン抗体のアミノ酸配列及び構造は、当技術分野の及び本明細書においてそれぞれ、「フレームワーク領域1」又は「FRW1」;「フレームワーク領域2」又は「FRW2」;「フレームワーク領域3」又は「FRW3」;及び「フレームワーク領域4」又は「FRW4」と呼ばれる4つのフレームワーク領域又は「FRW」から構成されるとみなすことができ、フレームワーク領域は、当技術分野でそれぞれ、「相補性決定領域1」又は「CDR1」;「相補性決定領域2」又は「CDR2」及び「相補性決定領域3」又は「CDR3」と呼ばれる3つの相補性決定領域又は「CDR」によって遮られる。したがって、単一ドメイン抗体は、一般構造:FRW1-CDR1-FRW2-CDR2-FRW3-CDR3-FRW4(ここで、FRW1~FRW4はそれぞれフレームワーク領域1~4を指し、CDR1~CDR3は相補性決定領域1~3を指す)を有するアミノ酸配列として定義することができる。本開示の文脈では、単一ドメイン抗体のアミノ酸残基は、国際免疫遺伝学(International ImMunoGeneTics)情報システムアミノ酸ナンバリング(http://imgt.cmes .fr/)によって与えられるVHドメインに関する一般的ナンバリングに従ってナンバリングされる。
【0072】
「単離されたsdAb」は、本明細書で使用される場合、他の抗体、特に、異なる抗原特異性を有する他のsdAbを実質的に含まない単一ドメイン抗体(sdAb)を指す(例えば、FGFR4に特異的に結合する単離された抗体は、FGFR4以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。更に、単離された抗体は、他の細胞物質及び/又は化学物質を実質的に含まない場合がある。
【0073】
本明細書で使用される場合、用語「合成の」は、そのような抗体が天然に存在する抗体の断片からは得られていないが、人工的なコード配列を含む組換え核酸から作製されたことを意味する。
【0074】
用語「CDR」は、抗体可変配列内の相補性決定領域を指す。重鎖及び軽鎖の各可変領域には3つのCDRがあり、可変領域ごとにCDR1、CDR2及びCDR3と名付けられている。用語「CDRセット」は、抗原に結合することができる単一可変領域に生じる3つのCDRのグループを指す。これらのCDRの正確な境界は、異なるシステムに従って別々に定義されている。Kabatによって記載されたシステムが本明細書で使用される。用語「Kabatナンバリング」、「Kabat定義」及び「Kabatラベリング」は、本明細書において互換的に使用される。当技術分野で認識されているこれらの用語は、抗体、又はその抗原結合部分の重鎖及び軽鎖可変領域中の他のアミノ酸残基より可変性である(すなわち、超可変性の)アミノ酸残基をナンバリングするシステムを指す(Kabatら、(1971) Ann. NY Acad. Sci. 190:382~391頁、及びKabatら、(1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S. Department of Health and Human Services、NIH Publication No. 91-3242)。
【0075】
sdAb親和性は、本開示におけるFGFR4などの抗原上に提示されたエピトープに、sdAbがその抗原結合部位(パラトープ)を通じて結合する強度を指す。親和性は、KD値の評価に基づき評価することができる。
【0076】
用語「KD」は、本明細書で使用される場合、koffのkonに対する比(すなわちkoff/kon)から得られ、モル濃度(M)として表される平衡解離定数を指すものとされる。KD値は、抗体の濃度(特定の実験に必要とされる抗体の量)に関連しており、そのためKD値が低いほど(濃度が低いほど)故に抗体の親和性は高くなる。抗体のKD値は、当技術分野で十分に確立された方法を使用して決定することができる。mAbのKD値を決定する方法は、Harlowら、Antibodies: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1988 ;Coliganら編、Current Protocols in Immunology、Greene Publishing Assoc. and Wiley Interscience、N.Y.、1992、1993、及びMuller、Meth. Enzymol. 92:589~601頁、1983に見出すことができ、その参考文献は全体が参照により本明細書に組み込まれる。抗体のKDを決定する方法は、表面プラズモン共鳴を使用するか、又はBiacore(登録商標)などのバイオセンサーシステムを使用することによる(親和性評価に関する詳細な情報についてはRich RLら、Anal Biochem、2001も参照するだけでなく、sdAbの親和性測定の具体的な実施に関する更なる詳細は、Moutel Sら、eLife 2016;5:e16228頁も参照のこと)。親和性測定は一般的に25℃で行われる。用語「kassoc」又は「ka」、又は「kon」は本明細書で使用される場合、特定の抗体-抗原相互作用の結合速度を指すものとされるのに対し、用語「kdis」又は「kd」、又はkoffは本明細書で使用される場合、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度を指すものとされる。簡単には、sdAbはそのそれぞれの抗原より小さいタンパク質であることから、sdAbはBiocoreバイオセンサー機器からのセンサーチップで捕捉することができ、一方、組換え抗原(すなわち、典型的にはrFGFR4)は分析物として使用することができる。分析物は、注入間にセンサーチップを再生することなく、例えば単一サイクルで3.125nM~50nMにわたり濃度を上昇させながら連続注入されてもよい。結合パラメーターは、BIAevalutationソフトウェアの1:1のラングミュア結合モデルを用いてオーバーレイセンサーグラムをフィットさせることによって得ることができる。
【0077】
典型的には、本開示による単一ドメイン抗体は、FGFR4、特に本明細書に定義されるヒトFGFR4に約10-6M以下、10-7M以下、10-8M以下、10-9M以下、10-10M以下、又は10-11M以下のKD結合親和性で結合する。一部の実施形態では、KD結合親和性は、特に10-7~10-12M、特に10-8~10-12、特に10-8~10-10から構成されるナノ/ピコモル範囲にある。
【0078】
本発明者らは、必要とされる特性、特に必要とされる親和性を有し、以下の配列を特徴とする4つの参照単一ドメイン抗体(sdAb)を単離した。
【0079】
【表1】
【0080】
したがって、本開示は、table1(表1)に定義される4つの参照単一ドメイン抗体のうちの1つの少なくとも3つのCDRを有する単一ドメイン抗体を包含する。
【0081】
一部の実施形態では、本開示によるsdAbは、配列番号41~44のいずれか1つに記載のアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90、95、96、97、98、99又は100パーセントの同一性を有するsdAbを含む。
【0082】
本開示によるsdAbは特に、配列番号13~20の配列のうちの1つ又は複数と少なくとも60、70、80、90、95、96、97、98、99又は100パーセントの同一性を有するフレームワーク領域配列を有するヒト化抗FGFR4 SdAbを含む。
【0083】
本明細書に開示のヒト化抗FGFR4 sdAbの3つのCDR領域は、table1(表1)に定義される参照ヒト化sdAb(hsdAb)のうちの1つの3つのCDR領域と100%同一であってもよい。或いは、一部の実施形態では、本開示によるhsdAbは、アミノ酸欠失、挿入又は置換によって変異されており、それにもかかわらず、table1(表1)のsdAbのCDR領域と比べてCDR領域に少なくとも60、70、80、90、95、96、97、98、99又は100パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を有してもよい。典型的には、本開示によれば、抗体は、table1(表1)のsdAbのそれぞれのCDR配列と比べて、1つ又は複数のCDRにおける1、2、3又は4個の間のアミノ酸変動(欠失、挿入又は置換を含む)を有してもよい。
【0084】
一部の実施形態では、本開示の単一ドメイン抗体は、table1(表1)の参照単一ドメイン抗体のうちの1つの変異体バリアントであって、前記参照sdAbの対応する3つのCDR領域と100%同一の3つのCDR領域を有し、対応する参照sdAbの対応するフレームワーク領域と比較した場合、1、2、3、4又は5個以下のアミノ酸が、FRW1、FRW2、FRW3及び/又はFRW4領域のうちの1つ又は複数においてアミノ酸欠失、挿入又は置換によって変異されている、前記変異体バリアントである。
【0085】
一部の実施形態では、本開示のsdAbは、配列番号41~44と比べて1つ又は複数のアミノ酸置換、欠失、挿入又は他の修飾を有し、単一ドメイン抗体の生物学的機能を保持する配列番号41~44から選択される。修飾は、参照単一ドメイン抗体又はポリペプチドの配列と比較してアミノ酸配列に変化をもたらす単一ドメイン抗体又はポリペプチドをコードする1つ又は複数のコドンの1つ又は複数の置換、欠失又は挿入を含んでもよい。アミノ酸置換は、1つのアミノ酸を類似した構造特性及び/又は化学的特性を有する別のアミノ酸で置換する(例えばロイシンをセリンで置換)、すなわち、保存的アミノ酸置換の結果であってもよい。挿入又は欠失は、任意選択で約1~5個のアミノ酸の範囲であってもよい。与えられた変動は、配列におけるアミノ酸の挿入、欠失又は置換を系統的に作成し、完全長配列又は成熟天然配列によって示される活性に関して、得られたバリアントをテストすることによって決定することができる。
【0086】
一部の実施形態では、修飾は保存的配列修飾である。本明細書で使用される場合、用語「保存的配列修飾」は、アミノ酸配列を含有する抗体の結合特徴に著しい影響を与えないか又は著しく変更しないアミノ酸修飾を指すものとされる。そのような保存的修飾としては、アミノ酸置換、付加及び欠失が挙げられる。修飾は、部位特異的変異誘発及びPCR媒介変異誘発などの当技術分野で公知の標準的な手法によって、本明細書に記載の単一ドメイン抗体に導入することができる。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が、類似した側鎖を有するアミノ酸残基で置換されるものである。類似した側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当技術分野で定義されている。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が挙げられる。故に、本開示の単一ドメイン抗体のCDR領域内の1つ又は複数のアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーからの他のアミノ酸残基で置換することができ、変更された抗体が、保持された機能(すなわち、上記の(c)~(I)に記載された機能)について本明細書に記載された機能アッセイを使用してテストされうる。
【0087】
一部の実施形態では、単一ドメイン抗体は、配列番号41~44の1つから選択されるが、1つ又は複数のアミノ酸置換、例えば1~20個、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個のアミノ酸置換を含む。1つ又は複数のアミノ酸置換は、1つ又は複数のフレームワーク領域にあってもよい。或いは、又は更に、1つ又は複数のアミノ酸置換は、1つ又は複数のCDRにあってもよい。一部の実施形態では、アミノ酸置換はフレームワーク及びCDR配列中にある。
【0088】
一部の実施形態では、ヒト化単一ドメイン抗体は、配列番号41~44を有するものから選択される単一ドメイン抗体のバリアントであり、該バリアントは1つ又は複数の配列修飾を含み、非修飾単一ドメイン抗体と比較して、結合親和性、特異性、熱安定性、発現レベル、エフェクター機能、グリコシル化、免疫原性の低下、又は可溶性などの特性の1つ又は複数を改善する。
【0089】
好ましい実施形態では、本開示によるsdAbは、FGFR4に対して厳密な特異性を有する。FGFR4に対して厳密な特異性を有することにより、本開示によるsdAbは、他のFGFR分子、例えばFGFR1、FGFR2、又はFGFR3への検出可能な結合を示さないことが本明細書では意図される。結合アッセイは、多様ではないFGFR分子をその表面に発現する細胞に結合しているsdAbを検出することによって、結果に例示されているように行うことができる。典型的には、アッセイは、標識抗体(例えばFITC標識抗iXHis-tag抗体)を使用して表面結合単一ドメイン抗体を検出するフローサイトメトリーによって行うことができる。
【0090】
一部の実施形態では、sdAb、典型的には、本開示による単一ドメイン抗体は、少なくとも10-7M、特に少なくとも10-8M、少なくとも10-9MのFGFR4に対する親和性(KD)を有するが、他のFGFR分子(FGFR1、FGFR2及び/又はFGFR3など)に対しては親和性がないか、又は10-3M未満の極めて低い親和性を有する。一部の実施形態では、FGFR4に特異的なsdAbはFGFR1及びFGFR3に対する親和性はないが、FGFR2に対しては高い親和性(1.106~1.108、特に1.106~1.107)を保存する。
【0091】
好ましい実施形態では、本開示によるsdAbはFGFR4シグナル伝達を阻害する。この特性の分析は、本明細書に含まれる結果に例示されているように行うことができる。典型的には、FGFR4活性化アッセイはRh30細胞で行われ、ERK1:2リン酸化がリードアウトとして使用されうる。Rh30細胞は故に、テストされるべき抗体を含む又は含まないFGFR4に対する特異的リガンド、FG19とインキュベートされうる。リン光体ERK1/2レベルの増加は、テスト抗体が本開示によるFGFR4下流経路を活性化することを意味する。
【0092】
当業者は、in vitro及びin vivo発現ライブラリーを含む、本明細書に記載の抗原結合分子を同定し、得、及び最適化するための異なる方法があることがわかるであろう。ディスプレイ(例えば、リボソーム及び/又はファージディスプレイ)及び/又は変異誘発(例えば、エラープローン変異誘発)などの当技術分野で公知の最適化法が使用されてもよい。本開示はそれ故に、本明細書に記載された単一ドメイン抗体の配列最適化バリアントも含む。
【0093】
本開示の一部の実施形態では、本明細書に記載の単離されたヒト化単一ドメイン抗体は、目的の化合物に直接又は間接的に、共有又は非共有的に結合されてもよい。上に定義される目的の物質又は化合物は、本明細書に定義される単一ドメイン抗体に、末端(N又はC末端)の一方か、又は前記単一ドメイン抗体のアミノ酸のうちの1つの側鎖のいずれかに、直接及び共有又は非共有的に結合することができる。目的の物質は、スペーサー(又はリンカー)を用いて前記単一ドメイン抗体に、前記単一ドメイン抗体の末端の一方か、又は前記単一ドメイン抗体のアミノ酸のうちの1つの側鎖のいずれかに、間接的に及び共有又は非共有的に結合することもできる。目的の物質の、ペプチド、特に抗体への従来の結合方法は当技術分野で公知である(例えば、Ternynck及びAvrameas 1987「Techniques immunoenzymatiques」Ed. INSERM、Paris;Hermanson、2010、Bioconjugate Techniques、Academic Press参照)。
【0094】
一部の実施形態では、本明細書に記載の単一ドメイン抗体は、特に、式sdAb-(L-(D)m)nの「抗体薬物コンジュゲート」又はその薬学的に許容される塩の形態であってもよく;式中、sdAbは、以前に開示されている単一ドメイン抗体であり;Lはリンカーであり;Dは目的の化合物であり;mは1~8の整数であり;及びnは1~10の整数、典型的には3又は4である。
【0095】
用語「抗体薬物コンジュゲート」は本明細書で使用される場合、単一ドメイン抗体と別の薬剤、例えば、化学療法剤、毒素、免疫療法剤、イメージングプローブ等との結合を指す。結合は、共有結合か又は静電力などによる非共有相互作用であってもよい。当技術分野で公知の様々なリンカーが、イムノコンジュゲートを形成するために使用されうる。リンカー(L)は、例えば、切断性リンカー、非切断性リンカー、親水性リンカー、プロ荷電リンカー及びジカルボン酸ベースのリンカーからなる群から選択されうる。
【0096】
一部の実施形態では、本開示の単一ドメイン抗体は、目的の化合物にコンジュゲートされるか、又は共有結合される。本明細書で使用される場合、用語「コンジュゲーション」は当技術分野におけるその一般的な意味であり、化学的コンジュゲーション、又は化学架橋を意味する。多くの化学架橋法も当技術分野で公知である。架橋試薬は、ホモ二官能性(すなわち、同じ反応を受ける2つの官能基を有する)であるか、又はヘテロ二官能性(すなわち、2つの異なる官能基を有する)であってもよい。数多くの架橋試薬が市販されている。その使用のための詳細な説明は、商業的供給業者から容易に入手可能である。ポリペプチド架橋及びコンジュゲート調製に関する一般的な参考文献は以下である: WONG、Chemistry of protein conjugation and crosslinking、CRC Press(1991)、また、Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy(Reisfeldら編、Alan R. Liss, Inc.、1985)の中のMonoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy」の中のArnonら、「Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy」;Controlled Drug Delivery(Robinsonら編、Marcel Deiker, Inc.、第2版1987)の中のHellstromら、「Antibodies For Drug Delivery」;Monoclonal Antibodies '84: Biological And Clinical Applications(Pincheraら編、1985)の中のThorpe、「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review」;Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy(Baldwinら編、Academic Press、1985)の中の「Analysis, Results, and Future Prospective of the Therapeutic Use of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy」;及びThorpeら、1982、Immunol. Rev. 62: 119~58頁も参照のこと。また、例えば、PCT公開WO89/12624も参照のこと)。典型的には、核酸分子は、抗体上のリジン又はシステインに、それぞれN-ヒドロキシスクシンイミドエステル又はマレイミド官能性により共有結合される。改変システインを使用するコンジュゲーション又は非天然アミノ酸の組み込みの方法は、コンジュゲートの均一性を改善すると報告されている(Axup, J.Y.、Bajjuri, K.M.、Ritland. M.、Hutchins. B.M.、Kim. C.H.、Kazane. S.A.、Haider. R.、Forsyth. J.S.、Santidrian. A.F.、Stafin. K.ら(2012). Synthesis of site-specific antibody-drug conjugates using unnatural amino acids. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 109、16101~16106頁;Junutula, J.R.、Flagella, K.M.、Graham, R.A.、Parsons, K.L.、Ha, E.、Raab, H.、Bhakta, S.、Nguyen, T.、Dugger, D.L.、Li、G.ら(2010) Engineered thio-trastuzumab-DMl conjugate with an improved therapeutic index to target human epidermal growth factor receptor 2-positive breast cancer. Clin. Cancer Res.16、4769~4778頁). Junutulaら(2008)は、「THIOMAB」(TDC)と呼ばれるシステインベースの部位特異的コンジュゲーションを開発した。これは、従来のコンジュゲーション方法と比較して治療指数の改善を示すとクレームされている。特に当業者は、アシルドナーグルタミン含有タグ(例えば、Gin含有ペプチドタグ又はQタグ)か、又はポリペプチド改変(例えば、ポリペプチドにおけるアミノ酸欠失、挿入、置換、又は変異による)によって反応性にされる内因性グルタミンで改変されたポリペプチドを構想することもできる。次いで、トランスグルタミナーゼは、アミンドナー剤(例えば、反応性アミンを含む低分子又は反応性アミンに結合された低分子)と共有結合で架橋して、アシルドナーグルタミン含有タグ又はアクセス可能な/曝露された/反応性の内因性グルタミンを通じてFc含有ポリペプチドに部位特異的にコンジュゲートされるアミンドナー剤と、安定で均一な集団の改変Fc含有ポリペプチドコンジュゲートを形成することができる(WO2012059882)。「TGase」又は「TG」と互換的に使用される用語「トランスグルタミナーゼ」は、ペプチド結合グルタミンのγ-カルボキサミド基と、リジン又は構造的に関連する一級アミン(例えばアミノペンチル基)、例えばペプチド結合リジンのε-アミノ基の間のアシル転移反応を通じてタンパク質を架橋し、ε-(γ-グルタミル)リジンイソペプチド結合をもたらすことができる酵素を指す。TGaseとしては、とりわけ、細菌トランスグルタミナーゼ(BTG)、例えば、EC参照EC 2.3.2.13(タンパク質-グルタミン-y-グルタミルトランスフェラーゼ)を有する酵素が挙げられる。一部の実施形態では、本開示の単一ドメイン抗体は、リンカー分子によって異種部分にコンジュゲートされる。本明細書で使用される場合、用語「リンカー分子」は、本開示の単一ドメイン抗体に結合される任意の分子を指す。結合は、典型的には共有結合である。一部の実施形態では、リンカー分子は柔軟であり、本開示の単一ドメイン抗体の結合を妨げない。
【0097】
本明細書において意図される目的の化合物又は物質は、核酸、ポリペプチド又はタンパク質、ウイルス、毒素及び化学物質から無制限に選択することができる。
【0098】
一部の実施形態では、目的の化合物としては、抗原結合ドメイン薬剤、例えば、抗体、そのバリアント及び断片、特に同じ又は別の単一ドメイン抗体、アプタマー、又は酵素が挙げられる。
【0099】
上に記載の目的の化合物又は物質は、治療用又は診断用化合物であってもよい。治療用化合物としては特に、抗がん活性及び/又は細胞傷害性活性(すなわち、細胞傷害性化合物)を有する治療用化合物が挙げられ、診断用化合物としては、典型的にはイメージングプローブが挙げられる。
【0100】
化学療法薬は特異性を欠く場合が多く、健康な組織に影響を与える可能性もある。この問題を克服するために、ナノビヒクルが薬物を腫瘍部位に能動的に送達するのに使用されうる。化学療法の分野でのナノテクノロジーの使用は、腫瘍部位の薬物濃度を高めることによって体内分布を改善し、正常な細胞に対する毒性を低減する可能性がある(Ferrari, M. Cancer nanotechnology: Opportunities and challenges. Nat. Rev. Cancer 5、161~171頁(2005);及び詳細な総説については、Kumari, P.、Ghosh, B. & Biswas, S. Nanocarriers for cancertargeted drug delivery. J. Drug Target. 24、179~191頁(2016)参照)。故に、一部の実施形態では、目的の前記物質は薬物ナノ担体であり、薬物ナノ担体は、リポソーム若しくはポリマー実体などの有機物か、又は診断用若しくは治療用化合物を含む、若しくはカプセル化する無機物であってもよい(Villarazaら 2010 Chem Rev.、110、2921~2959頁)。それ故に、ナノボディは、毒性カーゴをがん細胞に送達するための極めて便利なツールであり、異なるナノ粒子又はナノ担体フォーマットへの化学的コンジュゲーションによく適している。有機担体(又はカーゴ)としては、リポソーム又はミセルなどのリポ粒子、アルブミンベースのナノ粒子、及びポリマーベースのポリマーソームを含む高分子ナノ粒子が挙げられうる。無機担体としては、量子ドット、カーボンナノチューブ、層状複水酸化物、メソポーラスシリカ、及び磁性ナノ粒子が挙げられうる(特に、Senapati, S.、Mahanta, A.K.、Kumar, S.ら Controlled drug delivery vehicles for cancer treatment and their performance. Sig Transduct Target Ther 3、7頁(2018)参照)。
【0101】
高分子ナノ粒子は、ナノスケールの大きさを有する固体、生体適合性でコロイド状の、生分解性である場合が多い系である。高分子ナノ粒子は、合成ポリマー、例えば、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、N-(2-ヒドロキシプロピル)-メタクリルアミドコポリマー(HPMA)及びポリ(スチレン-無水マレイン酸)コポリマー、又は天然ポリマー、例えばゼラチン、デキストラン、グアーガム、キトサン、及びコラーゲンから作ることができる。薬物は、表面若しくはバルク侵食、ポリマーマトリックスを通じた拡散、膨張とその後の拡散による、又は局所刺激に対する応答としてのその制御送達のために、ポリマーマトリックスに分散させるか、又は高分子にコンジュゲーション/付着させるかのいずれかにより容易にカプセル化することができる。
【0102】
アルブミンは、卵白(オボアルブミン)、ウシ血清(ウシ血清アルブミン、BSA)、及びヒト血清(ヒト血清アルブミン、HSA)を含む様々な供給源から得ることができ、大豆、乳汁、及び穀物で利用可能なタンパク質である。アルブミンベースのナノ担体は、調製の容易さ、様々な薬物に対する高い結合能、非毒性、非免疫原性、生体適合性、及び生分解性の特性、並びに循環血漿中の長い半減期などのいくつかの利点を有する。アルブミンナノ粒子表面の官能基(アミノ基及びカルボキシル基)の存在は、標的化リガンド及び他の表面修飾に結合しやすくする。
【0103】
ミセルは、疎水性コア及び親水性シェルをもたらす、水溶液中での両親媒性ブロックコポリマーの自己組織化によって形成される球形又は球状をしたコロイド状のナノスケール系である。ミセルは、ある特定の濃度(臨界ミセル濃度;CMC)及び温度下で自然に形成されうる両親媒性コロイドの群に属する。疎水性コアは疎水性薬物のリザーバーとして機能するのに対し、親水性シェルは疎水性コアを安定させ、ポリマー及び疎水性薬物の両方を水溶性にし、粒子をi.v.投与に適した候補にする。薬物は、物理的、化学的、又は静電相互作用によりポリマーミセルに組み込まれる。
【0104】
リポソームは小さな球形の自己閉鎖型構造であり、少なくとも1つの同心円状の脂質二重層を有し、そのコアに水性相を封入している。リポソームは、その生体適合性及び生分解性の性質と、その内側水性コアに親水性薬剤(親水性薬物、DNA、RNA等)を、ラメラ内に疎水性薬物を封入するその特有の能力のために、1965年に発見されて以来、薬物送達ビヒクルとして広く使用されており、万能な治療担体となっている。更に、両親媒性薬物もリモートローディング法、例えばドキソルビシンには硫酸アンモニウム法を、又はビンクリスチンにはpH勾配法を使用して、リポソームの内側水性コアに充填することができる(Bolotin, E. M.ら Ammonium sulfate gradients for efficient and stable remote loading of amphipathic weak bases into liposomes and ligandoliposomes. J. Liposome. Res. 4, 455~479頁(1994)、及びBoman, N. L.ら、Liposomal vincristine which exhibits increased drug retention and increased circulation longevity cures mice bearing P388 tumors. Cancer Res. 54、2830~2833頁(1994)参照)。リガンド標的化リポソームは、特定の標的細胞へのリポソーム-薬物コンジュゲートの内部移行をin vitro及びin vivoの両方で促進することが見出されている。化学療法薬の一部のリポソーム製剤は臨床に移され、該薬物の安全性及び薬物動態特性の改善が立証されている。顕著な例はリポソームドキソルビシン(Doxil(登録商標))、ダウノルビシン(DaunoXome(登録商標))、及びVCR(Marqibo(登録商標))であり、これらは遊離薬物と比べて副作用の低減に寄与している(O’Brien, M. E. R.ら、Ann. Oncol. 15、440~449頁(2004);Gill, P. S.ら、J. Clin. Oncol. 14、2353~2364頁(1996);及びShah, N. N.ら、Pediatr. Blood Cancer 63、997~1005頁(2016)参照)。
【0105】
治療用化合物を送達するためのリポソーム技術に関する最近の総説については、Bulbake, Upendraら「Liposomal Formulations in Clinical Use: An Updated Review.」Pharmaceutics vol. 9,2 12. 27 Mar. 2017を参照のこと。標的化リポソーム(すなわち、上に記載のFGFR4 sdAbに結合される)の典型的な例は、特に結果のセクションに記載されている(が、Roveri, M.ら、Nanomedicine nnm-2017-0430(2017)も参照のこと。例示された リポソームは、特に、卵スフィンゴミエリン、コレステロール、PEG-セラミド(典型的にはN-パルミトイル-スフィンゴシン-1-[サクシニル[メトキシPEG-2000]])、DSPE-PEG-マレイミド(典型的には1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[マレイミド(ポリエチレングリコール)-2000])(両方ともAvanti Polar Lipids社)、及びDiR(1,1'-ジオクタデシル-3,3,3',3'-テトラメチルインドトリカルボシアニンヨージド)(Thermo Fisher Scientific社)の組合せを含む。前記脂質の好都合な比は、典型的にはそれぞれ、49.8:45:4:1:0.2モル%である。総脂質の70mM前後の濃度が脂質膜で達成される。
【0106】
アクティブターゲティングリポソームを作製するために、DSPE-PEG脂質に反応性マレイミド基が遠位端に導入された。遊離システインをC末端に有する単一ドメイン抗体が次いでリポソーム表面に結合された。リポソームに封入されうる典型的な治療剤としては、ドキソルビシン(Doxil(登録商標)、Myocet(登録商標))、ダウノルビシン(DaunoXome(登録商標))、VCR(Marqibo(登録商標))、ビノレルビン(TCL178)が挙げられる。
【0107】
以下に列挙されている化合物は、本明細書に開示の単一ドメイン抗体に直接コンジュゲートされるか、又は上記の担体に封入されてもよい。
【0108】
用語「毒素」、「細胞毒」又は「細胞傷害性化合物」は本明細書で使用される場合、細胞の成長及び増殖に有害であり、細胞又は悪性腫瘍を低減、阻害又は破壊するように作用しうる任意の薬剤を指す。
【0109】
用語「抗がん化合物」は本明細書で使用される場合、細胞傷害性薬剤、化学療法剤、放射性同位体、標的化抗がん剤、免疫療法剤(免疫抑制剤又は免疫刺激剤など)、及び溶解性ペプチドを含むがこれらに限定されない、がんなどの細胞増殖性障害を処置するのに使用することができる任意の薬剤を指す。
【0110】
抗がん又は細胞傷害性活性を有する治療用化合物は、例えば、V-ATPase阻害剤、アポトーシス促進剤、Bcl2阻害剤、MCL1阻害剤、HSP90阻害剤、IAP阻害剤、mTor阻害剤、微小管安定化剤、微小管不安定化剤、アウリスタチン、ドラスタチン、マイタンシノイド、MetAP(メチオニンアミノペプチダーゼ)、タンパク質CRM1の核外輸送の阻害剤、DPPIV阻害剤、プロテアソーム阻害剤、ミトコンドリアにおけるリン酸転移反応の阻害剤、タンパク質合成阻害剤、キナーゼ阻害剤、CDK2阻害剤、CDK9阻害剤、キネシン阻害剤、HDAC阻害剤、DNA傷害剤、DNAアルキル化剤、DNAインターカレーター、DNA副溝結合剤、及びDHFR阻害剤からなる群から選択することができる。
【0111】
細胞傷害性化合物は、例えば、タキソール;サイトカラシンB;グラミシジンD;臭化エチジウム;エメチン;マイトマイシン;エトポシド;テニポシド;ビンクリスチン;ビンブラスチン;コルヒチン;ドキソルビシン;ダウノルビシン;ジヒドロキシアントラシンジオン(dihydroxyanthracindione);チューブリン阻害剤、例えばマイタンシン又はその類似体若しくは誘導体;有糸分裂阻害剤、例えばモノメチルアウリスタチンE若しくはF又はその類似体若しくは誘導体;ドラスタチン10若しくは15又はその類似体;イリノテカン又はその類似体;ミトキサントロン;ミトラマイシン;アクチノマイシンD;1-デヒドロテストステロン;グルココルチコイド;プロカイン;テトラカイン;リドカイン;プロプラノロール;ピューロマイシン;カリケアマイシン又はその類似体若しくは誘導体;代謝拮抗薬、例えばメトトレキサート、6メルカプトプリン、6チオグアニン、シタラビン、フルダラビン、5フルオロウラシル、ダカルバジン、ヒドロキシウレア、アスパラギナーゼ、ゲムシタビン、又はクラドリビン;アルキル化剤、例えばメクロレタミン、チオテパ、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)、ロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、ダカルバジン(DTIC)、プロカルバジン、マイトマイシンC;白金誘導体、例えばシスプラチン又はカルボプラチン;デュオカルマイシンA、デュオカルマイシンSA、ラケルマイシン(CC-1065)、又はその類似体若しくは誘導体;抗生物質、例えばダクチノマイシン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、プリカマイシン、アントラマイシン(AMC));ピロロ[2,1-c][1,4]-ベンゾジアゼピン(PDB);ジフテリア毒素及び関連分子、例えばジフテリアA鎖並びにその活性断片及びハイブリッド分子、リシン毒素、例えばリシンA又は脱グリコシル化リシンA鎖毒素、コレラ毒素、志賀様毒素、例えばSLT I、SLT II、SLT IIV、LT毒素、C3毒素、志賀毒素、百日咳毒素、破傷風毒素、ダイズBowman-Birkプロテアーゼ阻害剤、シュードモナス外毒素、アロリン(alorin)、サポリン、モデシン、ゲラニン(gelanin)、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、シナアブラギリ(Aleuritesfordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaccaamericana)タンパク質、例えばPAPI、PAPII、及びPAP-S、ニガウリ(momordicacharantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サンボウソウ(sapaonariaofficinalis)阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン、及びエノマイシン毒素;リボヌクレアーゼ(RNase);DNase I、ブドウ球菌エンテロトキシンA;ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質;ジフテリア毒素;並びにシュードモナス内毒素からなる群から選択されうる。
【0112】
一部の実施形態では、本明細書に開示のsdAbにコンジュゲートされるか、又は本明細書に開示のsdAbにより機能化されたナノ担体にカプセル化される治療用化合物としては、アウリスタチン又はそのペプチド類似体、誘導体又はプロドラッグが挙げられる。アウリスタチンは、微小管動態、GTP加水分解、並びに核分裂及び細胞分裂を妨げ(Woykeら (2001) Antimicrob. Agents and Chemother. 45(12): 3580~3584頁)、抗がん活性(US5663149)、抗真菌活性(Pettitら、(1998) Antimicrob. Agents and Chemother. 42: 2961~2965頁)を有することが示されている。例えば、アウリスタチンEは、パラアセチル安息香酸又はベンゾイル吉草酸と反応して、それぞれAEB及びAEVBを生成することができる。他の典型的なアウリスタチン誘導体としては、AFP、MMAF(モノメチルアウリスタチンF)、及びMMAE(モノメチルアウリスタチンE)が挙げられる。適切なアウリスタチン並びにアウリスタチン類似体、誘導体及びプロドラッグ、並びにアウリスタチンのAbへのコンジュゲーションに適切なリンカーは、例えば、米国特許第5,635,483号、第5,780,588号、及び第6,214,345号、並びに国際特許出願公開WO02088172、WO2004010957、WO2005081711、WO2005084390、WO2006132670、WO03026577、WO200700860、WO207011968及びWO205082023に記載されている。
【0113】
一部の実施形態では、本明細書に開示のsdAbにコンジュゲートされるか、又は本明細書に開示のsdAbにより機能化されたナノ担体にカプセル化される治療用化合物としては、メルタンシン(エムタンシン又はDM1とも呼ばれる)、又はそのペプチド類似体、誘導体又はプロドラッグが挙げられる。メルタンシンはチューブリン阻害剤であり、チューブリンに結合して微小管の組み立てを阻害することを意味する。
【0114】
一部の実施形態では、本明細書に開示のsdAbにコンジュゲートされるか、又は本明細書に開示のsdAbにより機能化されたナノ担体にカプセル化される治療用化合物としては、ピロロ[2,1-c][1,4]-ベンゾジアゼピン(PDB)又はその類似体、誘導体若しくはプロドラッグが挙げられる。適切なPDB及びPDB誘導体、並びに関連技術は、例えば、Hartley J. A.ら、Cancer Res 2010;70(17) :6849~6858頁;Antonow D.ら、Cancer J 2008;14(3) :154~169頁;Howard P.W.ら、Bioorg Med ChemLett 2009;19:6463~6466頁、及びSagnouら、Bioorg Med ChemLett 2000;10(18) :2083~2086頁に記載されている。
【0115】
一部の実施形態では、本明細書に開示のsdAbにコンジュゲートされるか、又は本明細書に開示のsdAbにより機能化されたナノ担体にカプセル化される治療用化合物としては、アントラサイクリン、マイタンシン、カリケアマイシン、デュオカルマイシン、ラケルマイシン(CC-1065)、ドラスタチン10、ドラスタチン15、イリノテカン、モノメチルアウリスタチンE、モノメチルアウリスタチンF、PDB、又は任意のそれらの類似体、誘導体、若しくはプロドラッグからなる群が挙げられる。
【0116】
一部の実施形態では、本明細書に開示のsdAbにコンジュゲートされるか、又は本明細書に開示のsdAbにより機能化されたナノ担体にカプセル化される治療用化合物としては、アントラサイクリン又はその類似体、誘導体若しくはプロドラッグが挙げられる。一部の実施形態では、単一ドメイン抗体は、マイタンシン又はその類似体、誘導体若しくはプロドラッグにコンジュゲートされる。一部の実施形態では、単一ドメイン抗体は、カリケアマイシン又はその類似体、誘導体若しくはプロドラッグにコンジュゲートされる。一部の実施形態では、単一ドメイン抗体は、デュオカルマイシン又はその類似体、誘導体若しくはプロドラッグにコンジュゲートされる。一部の実施形態では、単一ドメイン抗体は、ラケルマイシン(CC-1065)又はその類似体、誘導体若しくはプロドラッグにコンジュゲートされる。一部の実施形態では、抗体は、ドラスタチン10又はその類似体、誘導体若しくはプロドラッグにコンジュゲートされる。一部の実施形態では、抗体は、ドラスタチン15又はその類似体、誘導体若しくはプロドラッグにコンジュゲートされる。一部の実施形態では、抗体は、モノメチルアウリスタチンE又はその類似体、誘導体若しくはプロドラッグにコンジュゲートされる。一部の実施形態では、単一ドメイン抗体は、モノメチルアウリスタチンF又はその類似体、誘導体若しくはプロドラッグにコンジュゲートされる。一部の実施形態では、抗体は、ピロロ[2,1-c][1,4]-ベンゾジアゼピン又はその類似体、誘導体若しくはプロドラッグにコンジュゲートされる。一部の実施形態では、単一ドメイン抗体は、イリノテカン又はその類似体、誘導体若しくはプロドラッグにコンジュゲートされる。
【0117】
一部の実施形態では、本明細書に開示のsdAbにコンジュゲートされるか、又は本明細書に開示のsdAbにより機能化されたナノ担体にカプセル化される治療用化合物としては、核酸又は核酸結合分子が挙げられる。1つのそのような実施形態では、コンジュゲート核酸は、細胞傷害性リボヌクレアーゼ(RNase)若しくはデオキシリボヌクレアーゼ(例えば、DNase I)、アンチセンス核酸、抑制性RNA分子(例えば、siRNA分子)、又は免疫刺激性核酸(例えば、免疫刺激性CpGモチーフ含有DNA分子)である。一部の実施形態では、抗体は、アプタマー又はリボザイムにコンジュゲートされる。
【0118】
一部の実施形態では、本明細書に開示のsdAb(例えば、融合タンパク質としての)にコンジュゲートされるか、又は本明細書に開示のsdAbにより機能化されたナノ担体にカプセル化される治療用化合物としては、CLIP、マガイニン2、メリチン、セクロピン及びPI 8などの溶解性ペプチドが挙げられる。
【0119】
一部の実施形態では、本明細書に開示のsdAb(例えば、融合タンパク質としての)にコンジュゲートされるか、又は本明細書に開示のsdAbにより機能化されたナノ担体にカプセル化される治療用化合物としては、例えば、IL-2、IL-4、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-18、IL-23、IL-24、IL-27、IL-28a、IL-28b、IL-29、KGF、IFNa、IFN3、IFNy、GM-CSF、CD40L、Flt3リガンド、幹細胞因子、アンセスチム、及びTNFaなどのサイトカインが挙げられる。
【0120】
一部の実施形態では、本明細書に開示のsdAbにコンジュゲートされるか、又は本明細書に開示のsdAbにより機能化されたナノ担体にカプセル化される治療用化合物としては、放射性同位体又は放射性同位体含有キレートが挙げられる。例えば、抗体は、抗体が放射性同位体と複合体を形成できるようにするキレート剤リンカー、例えばDOTA、DTPA又はチウキセタンにコンジュゲートされてもよい。単一ドメイン抗体はまた、又は或いは、1つ又は複数の放射性標識アミノ酸又は他の放射性標識分子を含みうるか、又はコンジュゲートされうる。放射性同位体の非限定的な例としては、3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、125I、131I、186Re、213Bi、225Ac、及び227Thが挙げられる。治療目的には、ベータ又はアルファ粒子放射線を放出する放射性同位体、例えば、1311、90Y、211At、212Bi、67Cu、186Re、188Re、及び212Pbが使用されうる。
【0121】
診断用化合物は、酵素、フルオロフォア、NMR若しくはMRI造影剤、放射性同位体又はナノ粒子から選択することができる。例えば、診断用化合物は、以下からなる群から選択されてもよい:
- 酵素、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコース-6-ホスファターゼ又はベータガラクトシダーゼ;
- フルオロフォア、例えば、電子検出器(CCDカメラ、光電子増倍管)を用いて可視化される緑色蛍光タンパク質(GFP)、スペクトルの紫外線(UV)部分の波長で励起される青色蛍光色素(例えばAMCA(7-アミノ-4-メチルクマリン-3-酢酸);Alexa Fluor(登録商標)350)、青色光によって励起される緑色蛍光色素(例えばFITC、Cy2、Alexa Fluor(登録商標)488)、緑色光によって励起される赤色蛍光色素(例えばローダミン、Texas Red、Cy3、Alexa Fluor色素546、564及び594)、又は近赤外光で励起される色素(例えばCy5);
- 放射性同位体、例えば、PETイメージングに使用することができる18F、nC、13N、150、68Ga、82Rb、44Sc、64Cu、86Y、89Zr、124I、152Tb、又はSPECT/シンチグラフィー試験に使用することができる67Ga、81mKr、99mTc、mIn、123I、125I、3 Xe、201T1、155Tb、195mPt、又はオートラジオグラフィー若しくはin situハイブリダイゼーションに使用される211 212 75 76 131 111であってもよい14C、3H、35S、3P、125I、又は化合物を標識するのに使用することができるAt-、Bi-、Br-、Br-、I-、In、177Lu-、212Pb-、186Re-、188Re-、153Sm-、0Y;
- NMR又はMRI造影剤、例えば、常磁性剤ガドリニウム(Gd)、ジスプロシウム(Dy)、及びマンガン(Mn)、並びに酸化鉄(MION、SPIO又はUSPIOなど)又は鉄白金(SIPP)に基づく超常磁性薬剤、並びに18F、13C、23Na、170、15NなどのX核;
- ナノ粒子、例えば、金ナノ粒子(B. Van de Broekら、ACSNano、5巻、6号、4319~4328頁、2011)又は量子ドット(A. Sukhanovaら、2012 Nanomedicine、8 516~525頁)。
【0122】
好ましい実施形態では、前記診断用化合物は、フルオロフォア、より好ましくはAlexa Fluor(登録商標)488、又はMRI造影剤、より好ましくはガドリニウムである。
【0123】
診断用薬剤が検出に使用される場合、診断用薬剤は、シンチグラフィー試験用の放射性原子、例えば99Tc若しくは123I、又は核磁気共鳴(NMR)イメージング(MRIとしても知られる)用のスピン標識、例えば13C、9F、Fe、Gd、123I、111In、Mn、15N又は7Oを含んでもよい。
【0124】
本開示による目的の物質は、哺乳動物又はヒト血液脳関門を通過してもよく、又はしなくてもよい。
【0125】
一部の実施形態では、目的の化合物が異種ポリペプチドである場合、本開示の単一ドメイン抗体は、1つ又は複数の異種ポリペプチドに(或いは、又は更に)融合されて、融合タンパク質(本明細書では「融合ポリペプチド」又は「ポリペプチド」とも称される)を形成しうる。「融合」又は「キメラ」タンパク質又はポリペプチドは、天然には連結されない第2のアミノ酸配列に連結された第1のアミノ酸配列を含む。通常は別々のタンパク質に存在するアミノ酸配列は、融合ポリペプチド中で結合させることができる。融合タンパク質又はポリペプチドは、例えば、化学合成によって、又はポリペプチド領域が所望の関係でコードされたポリヌクレオチドを作出し、翻訳することによって作出される。
【0126】
本開示によれば、融合タンパク質は故に、そのC末端及び/又はそのN末端で直接か又はスペーサーを介してのいずれかで融合された、特に、そのC末端で異種ポリペプチドのN末端に、及び/又はそのN末端で異種ポリペプチドのC末端に融合された本開示による少なくとも1つの単離されたヒト化単一ドメイン抗体(hsbAb)を含むことができる。本明細書で使用される場合、用語「直接」は、ヒト化単一ドメイン抗体の末端(N又はC末端)の(最初の又は最後の)アミノ酸が、異種ポリペプチドの末端(N又はC末端)の(最初の又は最後の)アミノ酸に融合されることを意味する。言い換えれば、この実施形態では、前記sdAbのC末端の最後のアミノ酸は、共有結合によって前記異種ポリペプチドのN末端の最初のアミノ酸に直接連結され、又は前記sdAbのN末端の最初のアミノ酸は、共有結合によって前記異種ポリペプチドのC末端の最後のアミノ酸に直接連結される。本明細書で使用される場合、「リンカー」とも呼ばれる用語「スペーサー」は、本開示のsdAbを異種ポリペプチドに連結する少なくとも1つのアミノ酸の配列を指す。そのようなスペーサーは、立体障害を予防するのに有用でありうる。本開示に開示されたリンカーの例は、以下の配列(Gly3-Ser)4、(Gly3-Ser)、Ser-Gly又は(Ala-Ala-Ala)を有する。
【0127】
一部の実施形態では、目的の化合物は、別の又は同じ抗原結合ドメインを含む1つ又は複数のポリペプチドであってもよい。特に、目的の化合物は、本明細書に開示の1つ又は複数の単一ドメイン抗体であってもよく、又はなくてもよい。2つ以上の抗原結合ドメインを含む、特に、2つ以上の単一ドメイン抗体を含む又は2つ以上の単一ドメイン抗体から本質的になる、得られた融合タンパク質、又はポリペプチドは、本明細書では「多価」ポリペプチド又は抗原結合化合物と呼ばれる。一部の実施形態では、前記融合タンパク質又はポリペプチドは、本明細書に記載の第1の結合ドメイン、及び典型的には同様に単一ドメイン抗体である、少なくとも1つの他の結合ドメイン(例えば、同じ又は別のエピトープ、抗原、標的、タンパク質又はポリペプチドに対する)を有する少なくとも1つの単一ドメイン抗体を含んでもよい。「多重特異性」(融合)ポリペプチドは、類似した抗原結合ドメインを含む、特に同じ単一ドメイン抗体を含むポリペプチド(「単一特異性」(融合)ポリペプチド)とは反対に、少なくとも2つの異なる抗原結合ドメイン(すなわち、異なるエピトープ、抗原又は標的を標的化する)を含むポリペプチドを指す。
【0128】
故に、一部の実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質は、任意の所望のタンパク質、ポリペプチド、抗原、抗原決定基又はエピトープに対する少なくとも第2の抗原結合ドメインも提供しうる。前記結合ドメインは、FGFR4に対する、特に同じ若しくは異なるFGFR4エピトープに対する結合ドメインであってもよく、又は任意の他の抗原、ポリペプチド若しくはタンパク質に対する結合ドメインであってもよい。
【0129】
本開示の「二重特異性」融合タンパク質は、第1の抗原(すなわちFGFR4)に対する本明細書に開示の少なくとも1つの単一ドメイン抗体と、第2のFGFR4エピトープ又は抗原(すなわちFGFR4と異なる)に対する少なくとも1つの更なる結合ドメインとを含む融合ポリペプチドであるのに対し、本開示の「三重特異性」ポリペプチドは、本明細書に開示の及び第1の抗原(すなわちFGFR4)に対する少なくとも1つの単一ドメイン抗体と、第2のFGFR4エピトープ又は抗原(すなわちFGFR4と異なる)に対する少なくとも1つの更なる結合ドメインと、第3のFGFR4エピトープ又は抗原(すなわち両方と異なる、すなわち第1及び第2の抗原と異なる)に対する少なくとも1つの更なる結合ドメイン等とを含むポリペプチドである。
【0130】
FGFR4以外の抗原の例は、PSMA、PSCA、BCMA、CS1、GPC3、CSPG4、EGFR、胎児アセチルコリン受容体サブユニットガンマ(fAChRγ)、HER3、IGF1R、SLC19A1、ACVR2A、EPHB4、CA125、IL-13R、CD278、CD123、NCAM、5T4、CD2、CD3、CD16(FcγRIII)、CD23、MART-1、L1 CAM、MUC16、ROR1、SLAMF7、cKit、CD38、CD53、CD56、CD71、CD74、CD92、CD100、CD123、CD138、CD148、CD150、CD200、CD261、CD262、CD276、CD362、gp100、ROR1、メソテリン、CD33/IL3Ra、c-Met、糖脂質F77、EGFRvlll、GD-2、NKp46受容体、NY-ESO-1 TCR又はMAGE A3 TCR、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、サバイビン、シトクロムP450 1 B1(CY1 B)、HER2、ウィルムス腫瘍遺伝子1(WT1)、リビン(livin)、アルファフェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)、ムチン16、MUC1、p53、サイクリン、免疫チェックポイント標的又はそれらの組合せから選択することができる。
【0131】
一部の実施形態では、多重特異性融合ポリペプチドの少なくとも1つの更なる抗原は、典型的には二重特異性T細胞又はNK細胞エンゲージャー分子に関して例示されているように(特に、BiTE(登録商標)に関するWolf E、Hofmeister R、Kufer P、Schlereth B、Baeuerle PA.「BiTEs:bispecific antibody constructs with unique anti-tumor activity.」Drug Discov Today. 2005年9月15日;10(18):1237~44頁. Review参照)、1つ若しくは複数のT細胞抗原、1つ若しくは複数のマクロファージ抗原、1つ若しくは複数のNK細胞抗原、1つ若しくは複数の好中球抗原、及び/又は1つ若しくは複数の好酸球抗原などの少なくとも免疫細胞抗原を含む。その中でもT細胞抗原に関しては、T細胞受容体α及びβ鎖のCD2及びフレームワーク配列、特にCD2又はCD3、とりわけCD3複合体のε鎖が使用されうる。例えば、NK細胞抗原に関しては、FcγRIII由来及び/又はNKp46受容体由来の断片が使用されうる。
【0132】
前記多重特異性ポリペプチドは、CAR療法と同じ原理で免疫細胞リダイレクト免疫療法において使用することができる(例示的な総説については、Ellwanger K、Reusch U、Fucek Iら Redirected optimized cell killing(ROCK(登録商標):A highly versatile multispecific fit-for-purpose antibody platform for engaging innate immunity. MAbs. 2019;11(5):899~918頁を参照のこと)。
【0133】
一部の実施形態では、更なる結合ドメインは、単一ドメイン抗体の半減期が増加するように血清タンパク質に対する結合ドメインであってもよい。典型的には、前記血清タンパク質はアルブミンである。
【0134】
一部の実施形態では、更なる結合ドメインは、本開示の単一ドメイン抗体が血液脳関門を通過するように、血液脳関門の血管内皮の受容体に対する結合ドメインであってもよい。標的化受容体としては、特にトランスフェリン受容体、インスリン受容体、IGF-I及びIGF-II受容体が挙げられる。
【0135】
一部の実施形態では、1つ又は複数の更なる結合ドメインは、従来の鎖抗体(及び特にヒト抗体)及び/又は重鎖抗体の1つ又は複数の部分、断片又はドメインを含んでもよい。例えば、本明細書に定義される単一ドメイン抗体は、従来の(典型的にはヒト)VH又はVLに、任意選択でリンカー配列を介して連結されてもよい。
【0136】
一部の実施形態では、本開示のポリペプチド、又は融合タンパク質は、免疫グロブリンドメインに連結された本開示の単一ドメイン抗体を含むことができる。例えば、ポリペプチド、又は融合タンパク質は、Fc部分(ヒトFcなど)に連結された本開示の単一ドメイン抗体を含む。前記Fc部分は、本開示の単一ドメイン抗体の半減期を増加させ、その産生さえも増加させるのに有用でありうる。例えば、Fc部分は、血清タンパク質に結合することができ、故に単一ドメイン抗体における半減期を増加させる。一部の実施形態では、少なくとも1つの単一ドメイン抗体は、1つ又は複数の(典型的にはヒト)ヒンジ及び/若しくはCHI、並びに/又はCH2及び/若しくはCH3ドメインに、任意選択でリンカー配列を介して連結することもできる。例えば、適切なCHIドメインに連結された単一ドメイン抗体は、例えば、従来のFab断片又はF(ab')2断片に似た抗体断片/構造(ただし、従来のVHドメインの一方又は(F(ab')2断片の場合には)両方が、本明細書に定義される単一ドメイン抗体によって置換されている)を生成するのに-適切な軽鎖と一緒に-使用されうる。一部の実施形態では、本開示の1つ又は複数の単一ドメイン抗体は、1つ若しくは複数の定常ドメイン(例えば、Fc部分の一部として/Fc部分を形成するのに使用されうる2つ又は3つの定常ドメイン)に、Fc部分に、並びに/又は1つ若しくは複数のエフェクター機能を本開示のポリペプチドに付与する、及び/若しくは1つ若しくは複数のFc受容体に結合する能力を付与しうる、1つ若しくは複数の抗体部分、断片若しくはドメインに連結されてもよい(任意選択で適切なリンカー又はヒンジ領域を介して)。例えば、この目的のために、及びこれに限定されることなく、1つ又は複数の更なるアミノ酸配列は、抗体の、例えば、重鎖抗体由来の、及びより典型的には従来のヒト鎖抗体由来の1つ若しくは複数のCH2及び/若しくはCH3ドメインを含んでもよく;並びに/又は、例えばIgG由来(例えばIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4由来)、IgE由来の若しくは別のヒトIg、例えばIgA、IgD若しくはIgM由来のFc領域を形成してもよい。
【0137】
キメラ抗原受容体
用語「キメラ抗原受容体」又は「CAR」又は「CARs」は本明細書で使用される場合、細胞(例えば、ナイーブT細胞、セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞又はそれらの組合せなどのT細胞)に抗原特異性を移植し、故に抗原結合ドメインの抗原結合特性をT細胞の溶解能及び自己複製と結びつける改変受容体を指す。CARsは、人工T細胞受容体、キメラT細胞受容体又はキメラ免疫受容体としても公知である。用語「抗原結合ドメイン」又は「抗原特異的標的化ドメイン」は本明細書で使用される場合、特定の抗原を標的化し、結合するCARの領域を指す。CARが宿主細胞で発現される場合、このドメインは細胞外ドメイン(エクトドメイン)を形成する。
【0138】
本開示のCARは、一般式:
sdAb(n)-膜貫通ドメイン-細胞内シグナル伝達ドメイン
(式中、nは、1又はそれ以上である)の分子を含む。
【0139】
一部の実施形態では、nは少なくとも2、例えば2、3、4又は5である。細胞で発現される場合、sdAb(n)は抗原結合ドメインを形成し、細胞外側に位置する。
【0140】
典型的には、本明細書に記載のCARは、1つ又は複数の抗原を標的化する、1つ又は複数の、特に少なくとも2つの抗原結合ドメイン(それぞれが単一ドメイン抗体を含む)を好ましくは含む。本開示のCARの抗原結合ドメインは、両方ともFGFR4に特異的であり故に二価結合分子をもたらす、2つ又は少なくとも2つのsdAbを含むことができる。一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、両方ともFGFR4に特異的であるが異なるエピトープに結合する、2つ又は少なくとも2つのVH単一ドメイン抗体を含む。言い換えれば、抗原結合ドメインは、FGFR4の第1のエピトープに結合する第1の単一ドメイン抗体、及びFGFR4の第2のエピトープに結合する第2の単一ドメイン抗体を含む。エピトープは重複していてもよい。故に、抗原結合ドメインは二重パラトープ性である。他の実施形態では、抗原結合ドメインは、両方ともFGFR4に特異的であり同じエピトープに結合する、2つの単一ドメイン抗体を含む。
【0141】
好ましい実施形態では、抗原結合ドメインは、本開示による、及び故にFGFR4に特異的である1つの単一ドメイン抗体と、別の抗原に特異的である別の抗原結合ドメインとを含み、故に二重特異性抗原結合ドメインをもたらす。言い換えれば、抗原結合ドメインは、FGFR4で構成される第1の標的に結合する第1の単一ドメイン抗体と、第2の標的に結合する第2の単一ドメイン抗体とを含む。故に、ある特定の実施形態では、本開示は二重特異性CARに関する。
【0142】
本明細書で使用される場合、用語「二重特異性CAR」又は「二重特異性抗原結合ドメイン」は故に、FGFR4を含む2つの標的に対する特異性を有するポリペプチドを指す。したがって、本明細書に記載の二重特異性結合分子は、FGFR4及び第2の標的を発現する(又はその細胞表面に提示する)細胞を選択的及び特異的に結合することができる。
【0143】
他の実施形態では、結合分子は、多重特異性結合分子を提供する2つを超える抗原結合ドメインを含む。本明細書に記載の多重特異性抗原結合ドメインは故に、FGFR4を結合することに加えて、1つ又は複数の追加の標的を結合することができる。すなわち、多重特異性ポリペプチドは、少なくとも2つの、少なくとも3つの、少なくとも4つの、少なくとも5つの、少なくとも6つの、又はそれより多い標的を結合することができ、多重特異性ポリペプチド剤は、それぞれ少なくとも2つの、少なくとも3つの、少なくとも4つの、少なくとも5つの、少なくとも6つの、又はそれ以上の標的結合部位を有する。
【0144】
一部の実施形態では、本開示による多重特異性CARによって結合されうる追加の抗原としては、腫瘍抗原が挙げられる。一部の実施形態では、腫瘍抗原は、血液悪性腫瘍又は固形腫瘍と関連している。例えば、腫瘍抗原は、PSMA、PSCA、BCMA、CS1、GPC3、CSPG4、EGFR、胎児アセチルコリン受容体サブユニットガンマ(fAChRγ)、HER3、IGF1R、SLC19A1、ACVR2A、EPHB4、CA125、IL-13R、CD278、CD123、NCAM、5T4、CD2、CD3、CD16(FcγRIII)、CD23、MART-1、L1 CAM、MUC16、ROR1、SLAMF7、cKit、CD38、CD53、CD56、CD71、CD74、CD92、CD100、CD123、CD138、CD148、CD150、CD200、CD261、CD262、CD276、CD362、gp100、ROR1、メソテリン、CD33/IL3Ra、c-Met、糖脂質F77、EGFRvIII、GD-2、NKp46受容体、NY-ESO-1 TCR若しくはMAGE A3 TCR、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、サバイビン、シトクロムP450 1 B1(CY1 B)、HER2、ウィルムス腫瘍遺伝子1(WT1)、livin、アルファフェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)、ムチン16、MUC1、p53、サイクリン、免疫チェックポイント標的、又はそれらの組合せからなる群から選択されてもよい。しかし、当業者は、他の腫瘍抗原も本開示の範囲内で標的となることを理解するであろう。
【0145】
上に詳細に記載されている結合ドメインに加えて、本開示のCARは膜貫通ドメインを更に含む。「膜貫通ドメイン」(TMD)は本明細書で使用される場合、細胞膜を通過し、小胞体シグナル伝達ドメイン及び抗原結合ドメインに連結される(後者の場合、任意選択でヒンジを介して)CARの領域を指す。一実施形態では、本開示のCARの膜貫通ドメインは、膜貫通タンパク質(例えばタイプI膜貫通タンパク質)、人工疎水性配列、又はそれらの組合せの膜貫通領域である。一部の実施形態では、膜貫通ドメインは、CD3ゼータドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD8アルファ膜貫通ドメイン、DAP10膜貫通ドメイン又はDAP12膜貫通ドメインを含む。他の膜貫通ドメインは当業者に明らかであり、本開示の代替の実施形態と関連して使用されうる。
【0146】
DAP10及びDAP12は、NK細胞で発現されるほとんどの活性化NKR及びT細胞で発現される全てのNKRとパートナーになるアダプターである(Chen X、Bai F、Sokol Lら A critical role for DAPl0 and DAP12 in CD8+ T cell-mediated tissue damage in large granular lymphocyte leukemia. Blood. 2009;113(14):3226~3234頁参照)。
【0147】
一部の実施形態では、細胞外ドメインは、結合ドメインに融合されたヒンジに融合される。ヒンジは、CD8ヒンジなどの2~50個のアミノ酸を含む任意のリンカーアミノ酸配列であってもよい。
【0148】
本開示のCARは、細胞内シグナル伝達ドメインを更に含む。「細胞内シグナル伝達ドメイン」、「細胞質ドメイン」又は「エンドドメイン」は、活性化シグナルをT細胞に伝達し、T細胞にその特殊化した機能を果たすように指示するドメインである。エフェクター機能シグナルを伝達し、本開示により使用されうるドメインの例としては、T細胞受容体複合体のζ鎖又は任意のそのホモログ(例えば、η鎖、FcsRIy及びβ鎖、MB 1(Iga)鎖、B29(Ig)鎖等)、ヒトCD3ゼータ鎖、CD3ポリペプチド(Δ、δ及びε)、sykファミリーチロシンキナーゼ(Syk、ZAP 70等)、srcファミリーチロシンキナーゼ(Lck、Fyn、Lyn等)、及びT細胞伝達に関与する他の分子由来の細胞内ドメイン、例えばCD2、CD5、OX40、CD28、DAP10及びDAP12が挙げられるが、これらに限定されない。他の細胞内シグナル伝達ドメインは当業者に明らかであり、本開示の代替の実施形態と関連して使用されうる。一部の実施形態では、細胞内ドメインは、DAP10、DAP12、CD28、4-1BB又はヒトCD3ゼータ鎖の細胞内ドメインから特に選択される。
【0149】
典型的には、本開示によるCARは、CD3ゼータ鎖及び4-1BBの細胞内ドメインを含むことができる。
【0150】
一部の実施形態では、CARは、CD3-ζ鎖(簡単にζとも称される)及び共刺激受容体CD28、4-1 BB(CD137)、OX40(CD134)、LAG3、TRIM、HVEM、ICOS、CD27、又はCD40Lの細胞質ドメインから選択される少なくとも1つの追加の活性化ドメインの少なくとも50、60、70、80、90、100、110、120、150、又は200アミノ酸の断片を含む追加の活性化ドメイン(又は細胞内ドメイン)を含むことができる。様々な実施形態では、CARは、上述の追加の活性化ドメインのアミノ酸配列と少なくとも90%を超える、好ましくは95%を超える、より好ましくは99%を超える同一性を共有する少なくとも20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、150、又は200アミノ酸の断片を含む追加の活性化ドメインを含む。
【0151】
一部の実施形態では、本開示のCARは、抗原特異的結合後のCAR-T細胞活性を増強する1つ又は複数の共刺激ドメインを更に含む。このドメインを本開示のCARに含めることにより、メモリー細胞の増殖、生存及び/又は成長は増強する。共刺激ドメインは細胞内に位置する。共刺激ドメインは、以下の群:CD3ゼータ、CD28、CD137(4-IBB)、CD134(OX40)、DapIO、CD27、CD2、CD5、ICAM-1、LFA-1(CD1 la/CD18)、Lck、TNFR-I、TNFR-II、Fas、CD30、CD40、LAG3、TRIM、HVEM、ICOS、CD40L又はそれらの組合せから選択されるタンパク質から得られる機能的シグナル伝達ドメインである。他の共刺激ドメイン(例えば、他のタンパク質由来)は、当業者に明らかであろう。複数のシグナル伝達経路を動員するために、複数の共刺激ドメインが単一のCARに含まれてもよい。一実施形態では、共刺激ドメインは4-1BBから得られる。用語「4-1BB」は、GenBank受託番号AAA62478.2として提供されるアミノ酸配列、又はヒト以外の種、例えば、げっ歯類(例えばマウス又はラット)、サル若しくは類人猿由来の同等の残基を有するTNFRスーパーファミリーのメンバーを指す。用語「4-1BB共刺激ドメイン」は、GenBank受託番号AAA62478.2のアミノ酸残基214~255、又はヒト以外の種、例えば、マウス、げっ歯類、サル、類人猿等由来の同等の残基を指す。
【0152】
一部の実施形態では、本開示のCARは、細胞外抗原結合ドメインと膜貫通ドメインを連結するヒンジ又はスペーサー領域を更に含む。このヒンジ又はスペーサー領域は、得られたCARの異なる長さ及び柔軟性を得るのに使用することができる。本開示により使用されうるヒンジ又はスペーサー領域の例としては、抗体若しくはその断片若しくは誘導体のFc断片、抗体、若しくはその断片若しくは誘導体のヒンジ領域、抗体のCH2領域、抗体のCH3領域、人工スペーサー配列、例えばペプチド配列、又はそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。他のヒンジ又はスペーサー領域は当業者に明らかであり、本開示の代替の実施形態と関連して使用されうる。一実施形態では、ヒンジはIgG4ヒンジ又はCD8Aヒンジである。
【0153】
一部の実施形態では、本開示のCARは、CARの異なるドメインを連結する「リンカードメイン」又は「リンカー領域」を更に含む。このドメインは、約1~100アミノ酸長のオリゴペプチド又はポリペプチド領域を含む。適切なリンカーは当業者に明らかであり、本開示の代替の実施形態と関連して使用されうる。
【0154】
一部の実施形態では、本開示のCARは、「リーダー配列」を更に含む。一実施形態では、リーダー配列はCD8Aドメインである。
【0155】
本開示のCARは、標識又はタグを更に含んでもよい。例えば、イメージングを促進する標識、例えば蛍光標識又は他のタグ(mycなど)。これは、例えば、腫瘍結合をイメージングする方法において使用することができる。標識は抗原結合ドメインにコンジュゲートされてもよい。
【0156】
本明細書に記載されたCARは、単一のポリペプチド鎖として合成されてもよい。この実施形態では、抗原特異的標的化領域はN末端にあり、直列に配置され、リンカーペプチドによって分離される。
【0157】
CAR設計の例は、特にJaspers JE、Brentjens RJ.「Development of CAR T cells designed to improve antitumor efficacy and safety」(Pharmacol Ther. 2017;178:83~91頁)に提供されている。本開示によるよく適したCAR設計としては、特にYing, Z.ら(A safe and potent anti-CD19 CAR T cell therapy. Nat. Med. 25、947~953頁(2019))、及びJune, C. H.、O'Connor, R. S.、Kawalekar, O. U.、Ghassemi, S. & Milone, M. C.(CAR T cell immunotherapy for human cancer. Science(80-. ). 359、1361~1365頁(2018))によって記載されたものが挙げられる。本開示による更なる適切なCAR構築物は、特にWO2019077165に開示されている。有利には、本開示によれば、そこに記載のscFv結合ドメインは1つ又は複数の単一ドメイン抗体で置換され、本明細書に記載の少なくとも1つの抗FGFR4単一ドメイン抗体を含む。
【0158】
そこに含まれる結果は、mycタグA8とそれに続くCD8アルファのヒンジ及び膜貫通ドメイン、及び4-1BB及びCD3ゼータの細胞内シグナル伝達ドメインから構成されるFGFR4-CAR T細胞は、in vitroでFGFR4発現RMS細胞に対する有意な抗腫瘍活性を媒介し、それ故に有望な更なる標的化治療選択肢となることを示した。
【0159】
核酸、ベクター、宿主細胞
本開示はまた、単一ドメイン抗体若しくはバリアントそれ故に又は前述のCARをコードする単離された核酸、及びそれを含む核酸構築物も提供する。本開示による核酸は、組換えDNA技術及び/又は化学的DNA合成の周知の方法によって得ることができる。また、それに対して少なくとも60%、70%、80%又は90%の配列同一性を有する配列も本開示の範囲内である。
【0160】
「核酸」、「ポリヌクレオチド」、又は「核酸分子」は、デオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)、又はDNA若しくはRNAの組合せを指す。RNAとしては、in vitro転写RNA又は合成RNA;本明細書に記載のCARポリペプチドをコードするmRNA配列が挙げられる。)核酸は自殺遺伝子を更に含んでもよい。構築物は、プラスミド、ベクター、転写又は発現カセットの形態であってもよい。
【0161】
本開示は故に、宿主細胞における核酸の転写の調節を可能にする転写プロモーターの制御下で本開示による前記核酸を含む組換え発現カセットも提供する。前記核酸は、宿主細胞におけるその翻訳の調節を可能にする適当な制御配列に連結することもできる。
【0162】
本開示はまた、本開示による核酸を含む組換えベクター(例えば、組換え発現ベクター)も提供する。有利には、前記組換えベクターは、本開示による発現カセットを含む組換え発現ベクターである。
【0163】
用語「ベクター」は、本明細書で使用される場合、それが連結された別の核酸を増殖することができる核酸分子を指す。該用語には、自己複製核酸構造としてのベクター、並びにベクターが導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれるベクターが含まれる。ある特定のベクターは、それが作動可能に連結された核酸の発現を指示することができる。そのようなベクターは、本明細書では「発現ベクター」と呼ばれる。
【0164】
本開示によるベクターは、好ましくは、目的の配列の複製、この配列の発現、染色体外形態でのこの配列の維持、さもなければ宿主の染色体への組み込みなどによる、哺乳動物細胞への安定な遺伝子導入及び長期遺伝子発現に適したベクターである。組換えベクターは、標準的な組換えDNA技術手法を使用して構築され、当技術分野で公知の従来の方法を使用して作製される。
【0165】
一部の実施形態では、本開示のベクターは、組み込みベクター、例えば組み込みウイルスベクター、例えば特にレトロウイルス又はAAVベクターである。好ましくは、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクター、最も好ましくは組み込みウイルスベクターである。
【0166】
本開示の文脈内では、「レンチウイルスベクター」は、遺伝物質を細胞に送達するために改変され、トランスで提供されるレンチウイルスタンパク質(例えば、Gag、Pol、及び/又はEnv)を必要とする非複製非病原性ウイルスを意味する。実際に、レンチウイルスベクターは、機能性Gag、Pol、及びEnvタンパク質の発現を欠く。レンチウイルスベクターは、有利には自己不活性化ベクター(SINベクター)である。レンチウイルスベクターは、有利には、セントラルポリプリントラクト/DNA FLAP配列(cPPT-FLAP)、及び/又は目的の遺伝子の発現を改善するニワトリベータグロビンインシュレーター配列などのインシュレーター配列を含む。レンチウイルスベクターは、有利には、別のエンベロープタンパク質、好ましくは別のウイルスエンベロープタンパク質、好ましくは水疱性口内炎ウイルス(VSV)糖タンパク質でシュードタイプ化される。一部の好ましい実施形態では、前記レンチウイルスベクターは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)ベクターである。
【0167】
レンチウイルスベクターは、レンチウイルス、特にヒト免疫不全ウイルス(HIV-1又はHIV-2)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ウマ感染性脳炎ウイルス(EIAV)、ヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)及びネコ免疫不全ウイルス(FIV)に由来し、これらは、病原性に関与する遺伝的決定因子を除去し、治療効果を得るのに有用な新たな決定因子を導入するために修飾される。
【0168】
レンチウイルスベクターは、前記レトロウイルスベクターの作製又は発生の段階に応じてRNA又はDNA分子の形態で存在してもよい。レンチウイルスベクターは、プラスミドなどの組換えDNA分子の形態か、又はレンチウイルス及び他のタンパク質の複合体内のRNA分子などのレンチウイルスベクター粒子(本開示の文脈ではレンチウイルス粒子と互換的に称される)の形態であってもよい。
【0169】
そのようなベクターは、シス及びトランス作用配列の分離に基づく。複製欠損ベクターを生成するために、トランス作用配列(例えば、gag、pol、tat、rev、及びenv遺伝子)が欠失され、導入遺伝子をコードする発現カセットによって置換されてもよい。
【0170】
非分裂細胞への効率的な組み込み及び複製は、一般的に、レンチウイルスゲノムの中央部に2つのシス作用配列、すなわちセントラルポリプリントラクト(cPPT)及びセントラルターミネーション配列(CTS)の存在を必要とする。これらは、セントラルDNA「フラップ」と呼ばれる三本鎖DNA構造の形成をもたらし、核膜孔における組込み前複合体の脱殻、及び樹状細胞などの非分裂細胞の核への発現カセットの効率的な移入のためのシグナルとして作用する。一実施形態では、本開示は、特に欧州特許出願EP2169073に記載の、cPPT/CTS配列と呼ばれるセントラルポリプリントラクト及びセントラルターミネーション配列を含むレンチウイルスベクターを包含する。
【0171】
ベクタープロウイルスDNA配列の宿主細胞ゲノムへの組み込みに関与する長末端反復(LTR)などの更なる配列は、通常はシスで存在する。ベクターは、例えば、前記LTR(AU3)のドメインU3のLTR配列を変異させて得ることができる(Miyoshi Hら、1998、J Virol. 72(10):8150~7頁;Zuffereyら、1998、J V/ro/ 72(12):9873~80頁)。好ましくは、ベクターはエンハンサーを含有しない。一実施形態では、本開示は、3' LTR中のプロモーター及びエンハンサー配列を除去している変異U3領域(AU3)を好ましくは有するLTR配列を含むレンチウイルスベクターを包含する。
【0172】
パッケージング配列Ψ(プサイ)も、ポリヌクレオチド配列のカプシド形成を助けるためにベクター粒子に組み込まれてもよい(Kesslerら、2007、Leukemia、21(9):1859~74頁;Paschenら、2004、Cnacer Immunol Immunother 12(6):196~203頁)。一実施形態では、本開示は、レンチウイルスパッケージング配列Ψ(プサイ)を含むレンチウイルスベクターを包含する。
【0173】
トランスポートRNA結合部位若しくはプライマー結合部位(PBS)又はウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE)などの更なる追加の機能配列も、in vivoでの導入遺伝子のより安定な発現を得るために、本開示のレンチウイルスベクターポリヌクレオチド配列に有利には含まれてもよい。一部の実施形態では、本開示は、PBSを含むレンチウイルスベクターを包含する。一部の実施形態では、本開示は、WPRE及び/又はIRESを含むレンチウイルスベクターを包含する。
【0174】
故に、好ましい実施形態では、レンチウイルスベクターは、少なくとも1つのcPPT/CTS配列、1つのΨ配列、1つの(好ましくは2つの)LTR配列、及びβ2ηη又はクラスI MHCプロモーターの転写制御下で導入遺伝子を含む発現カセットを含む。
【0175】
本開示の一部の実施形態では、本開示のベクター(すなわち組換え遺伝子導入ベクター)は、宿主細胞における標的融合タンパク質の発現のための適当な手段を含む発現ベクターである。
【0176】
様々なプロモーターが、標的融合タンパク質をコードする核酸配列の高発現を駆動するのに使用されうる。プロモーターは、組織特異的プロモーター、ユビキタスプロモーター、恒常性又は誘導性プロモーターであってもよい。好ましいプロモーターは、T細胞及び/又はNK細胞、好ましくはヒトT細胞及びヒトNK細胞において特に機能性である。特に、好ましいプロモーターは、T細胞又はNK細胞、好ましくはヒトT細胞又はNK T細胞においてレンチベクターから標的融合タンパク質(特に、以前に定義されているCAR)の高発現を駆動することができる。例えば、本開示によるプロモーターは、ホスホグリセリン酸キナーゼプロモーター(PGK)、脾臓フォーカス形成ウイルス(SFFV)プロモーター、前記プロモーター(EFS)の短縮型を含む伸長因子-1アルファ(EF-1アルファ)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)前初期エンハンサー及びプロモーターなどのウイルスプロモーター、ハイブリッドLTRプロモーターを含むレトロウイルス5'及び3' LTRプロモーター、ヒトユビキチンプロモーター、MHCクラスIプロモーター、MHCクラスIIプロモーター、並びにβ2ミクログロブリン(β2ηη)プロモーターから選択されてもよい。プロモーターは、有利にはヒトプロモーター、すなわち、ヒト細胞又は脾臓フォーカス形成ウイルス(SFFV)などのヒトウイルス由来のプロモーターである。ヒトユビキチンプロモーター、MHCクラスIプロモーター、MHCクラスIIプロモーター、及びβ2ミクログロブリン(β2ηη)プロモーターはより特に好ましい。好ましくは、MHCクラスIプロモーターは、HLA-A2プロモーター、HLA-B7プロモーター、HLA-Cw5プロモーター、HLA-F、又はHLA-Eプロモーターである。一部の実施形態では、プロモーターは、CMVプロモーター/エンハンサーではないか、又はデクチン-2若しくはMHCIIプロモーターではない。そのようなプロモーターは当技術分野で周知であり、それらの配列は配列データベースで入手可能である。
【0177】
典型的には、レンチウイルス粒子は、カプシドと呼ばれるタンパク質コート、及び一部の場合では、カプシドを取り囲む脂質のエンベロープによって取り囲まれたDNAか又はRNAのいずれか(最も好ましくは一本鎖RNA)から作られる遺伝物質から構成されるウイルスの細胞外感染形態を指す。故に、レンチウイルスベクター粒子(又はレンチウイルス粒子)は、ウイルスタンパク質と関連して以前に定義されているレンチウイルスベクターを含む。ベクターは好ましくは組み込みベクターである。
【0178】
レンチウイルス粒子のRNA配列は、宿主細胞ゲノム(プロウイルスベクターDNA)に挿入された二本鎖DNA配列からの転写によって得ることができ、又は形質転換宿主細胞におけるプラスミドDNA(プラスミドベクターDNA)の一過性発現から得ることができる。特に治療用途のためにレンチウイルス粒子を設計し、調製するための適当な方法は当技術分野で周知であり、例えばMerten OW、Hebben M、Bovolenta C. Production of lentiviral vectors. Mol Ther Methods Clin Dev. 2016 Apr 13;3:16017頁に記載されている。
【0179】
好ましくは、レンチウイルス粒子は、組み込みのための能力を有する。そのため、レンチウイルス粒子は機能性インテグラーゼタンパク質を含有する。非組み込みベクター粒子は、レンチウイルスベクター粒子の組み込み能力の大部分又は全てを排除する1つ又は複数の変異を有する。例えば、非組み込みベクター粒子は、レンチウイルスpol遺伝子によってコードされるインテグラーゼの、組み込み能力の低下を引き起こす変異を含有しうる。対照的に、組み込みベクター粒子は、レンチウイルスベクター粒子の組み込み能力の大部分又は全てを排除する任意の変異を含有しない機能性インテグラーゼタンパク質を含む。
【0180】
一部の実施形態では、本開示は、
(a)以前に定義されているキメラ抗原受容体をコードする核酸配列を含む核酸
を含み、核酸(a)及び(b)が同じ又は分離されたベクターに位置する、1つ又は複数のベクターを含むベクター系を包含する。
【0181】
好ましい核酸は、前のセクションに記載されている。
【0182】
ベクター系が1つを超えるベクター、典型的には2つ以上のベクターを含む場合、前記ベクターは典型的には同じタイプ(例えば:レンチウイルスベクター)である。以下のセクションでは、ベクターは、「1つ又は複数のベクター」又は「ベクター系」としても意図されうる。好ましくは、本開示は、レンチウイルスベクター系及び特にレンチウイルス粒子系を包含する。
【0183】
本開示によれば、ベクターは発現ベクターであってもよい。ベクターはプラスミドベクターであってもよい。
【0184】
故に、一実施形態では、本開示は、以前に定義されているCARタンパク質をコードする核酸を含むベクター、及び特に発現ベクター、最も好ましくはレンチウイルスベクターを包含する。
【0185】
本開示はまた、1つ又は複数のウイルス粒子が、以前に定義されているようにウイルスベクター、典型的には組み込みウイルスベクターを含むウイルス粒子系も包含する。好ましくは、ウイルスベクターはレンチウイルスベクターであり、ウイルス粒子はレンチウイルス粒子である。
【0186】
本開示はまた、本明細書に開示の核酸構築物、特に本開示による組換え発現カセット又は組換えベクターを含有する宿主細胞も提供する。宿主細胞は、原核生物宿主細胞か又は真核生物宿主細胞のいずれかである。用語「宿主細胞」は、そのような細胞の子孫を含む、外来核酸が導入された細胞を指す。宿主細胞には「形質転換体」及び「形質転換細胞」が含まれ、初代形質転換細胞及びそれに由来する子孫を継代数にかかわらず含む。子孫は核酸含量が親細胞と完全に同一でなくてもよいが、変異を含有しうる。最初に形質転換された細胞でスクリーニングされ、又は選択されたのと同じ機能又は生物学的活性を有する変異体子孫が、本明細書に含まれる。
【0187】
本開示はまた、以前に定義されている単一ドメイン抗体又はCARからなる又はこれを含むポリペプチドを、上に定義される宿主細胞で産生する方法であって、
- 本開示による核酸構築物、組換え発現カセット又は組換えベクターを含有する宿主細胞を提供する工程と、
- 前記宿主細胞を培養する工程と、
- 任意選択で本開示の単一ドメイン抗体又はCARを精製する工程と
を含む前記方法も提供する。
【0188】
クロマトグラフィー(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル透過クロマトグラフィー及び逆相クロマトグラフィー)などのポリペプチドを精製する方法は、当技術分野で周知である。
【0189】
本開示はまた、本明細書に開示の核酸構築物を含む組成物も包含する。
【0190】
免疫細胞及びそれを得る方法
本開示はまた、前述の核酸構築物、特にベクター、及びより具体的には前述の少なくとも1つ又は複数のCARをコードするウイルスベクター粒子を含む、単離された細胞、細胞の集団、細胞株、又は細胞培養物も提供する。
【0191】
一実施形態では、細胞は、細胞ゲノムに組み込まれたベクター及び/又はウイルスベクター粒子を含有する。一実施形態では、細胞は、CARを安定に発現するベクターを含有する。一実施形態では、細胞は、CARをコードするレンチウイルスベクター粒子を産生する。
【0192】
細胞は、好ましくは哺乳動物細胞、特にヒト細胞である。ヒト非分裂細胞は特に好ましい。好ましくは、細胞は免疫細胞である。本明細書で使用される場合、用語「免疫細胞」には、造血起源であり、免疫応答において役割を果たす細胞が含まれる。免疫細胞としては、B細胞及びT細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)などのリンパ球、単球、マクロファージ、好酸球、マスト細胞、好塩基球、及び顆粒球などの骨髄細胞が挙げられる。
【0193】
本明細書で使用される場合、用語「T細胞」にはT細胞受容体(TCR)を有する細胞が含まれ、本開示によるT細胞は、炎症性Tリンパ球、細胞傷害性Tリンパ球、調節性Tリンパ球、粘膜関連インバリアントT細胞(MAIT)、Υδ T細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、又は1型及び2型ヘルパーT細胞並びにTh17ヘルパー細胞の両方を含むヘルパーTリンパ球からなる群から選択されうる。別の実施形態では、前記細胞は、CD4+ Tリンパ球及びCD8+ Tリンパ球からなる群に由来しうる。
【0194】
前記免疫細胞は、健康なドナー又はがんに罹患している対象に由来してもよい。
【0195】
免疫細胞は、血液から抽出されてもよく、又は幹細胞に由来してもよい。幹細胞は、成体幹細胞、胚性幹細胞、より具体的には非ヒト幹細胞、臍帯血幹細胞、前駆細胞、骨髄幹細胞、人工多能性幹細胞、全能性幹細胞又は造血幹細胞であってもよい。代表的なヒト細胞はCD34+細胞である。
【0196】
T細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位由来の組織、腹水、胸水、脾臓組織、及び腫瘍を含む多くの非限定的な供給源から得ることができる。ある特定の実施形態では、T細胞は、FICOLL(商標)分離などの当業者に公知の任意の数の手法を使用して対象から採取された血液の単位から得ることができる。一実施形態では、対象の循環血液由来の細胞はアフェレーシスによって得られる。ある特定の実施形態では、T細胞はPBMCから単離される。PBMCは、白血球の密度勾配遠心分離、例えばLYMPHOPREP(商標)勾配、PERCOLL(商標)勾配又はFICOLL(商標)勾配による遠心分離によって得られるバフィーコートから単離されてもよい。T細胞は、例えばCD14 DYNABEADS(登録商標)を使用して単球枯渇によってPBMCから単離されてもよい。一部の実施形態では、赤血球細胞は密度勾配遠心分離の前に溶解されてもよい。
【0197】
別の実施形態では、前記細胞は、健康なドナーから、がん、特にユーイング肉腫と診断された対象に由来してもよい。細胞は、自家細胞又は同種細胞であってもよい。
【0198】
同種免疫細胞治療では、免疫細胞は患者よりむしろ健康なドナーから採取される。典型的には、これらは、移植片対宿主病の可能性を低減するためにHLAマッチングされる。或いは、HLAマッチングを必要としなくてもよい一般的な「既製」品は、TCRαβ受容体の破壊又は除去などの、移植片対宿主病を低減するように設計された修飾を含む。総説についてはGrahamら、Cells. 2018年10月;7(10):155頁を参照のこと。単一の遺伝子は、ベータ鎖をコードする2つの遺伝子よりむしろアルファ鎖(TRAC)をコードするため、TRAC座は、TCRαβ受容体発現を除去又は破壊するための典型的な標的となる。或いは、TCRαβシグナル伝達の抑制因子が発現されてもよく、例えば切断型のCD3ζはTCR抑制分子として作用することができる。HLAクラスI分子の破壊又は除去も使用されている。例えば、Torikaiら、Blood. 2013;122:1341~1349頁はZFNを使用してHLA-A座をノックアウトしたが、Renら、Clin. Cancer Res. 2017;23:2255~2266頁は、HLAクラスI発現に必要とされるベータ2ミクログロブリン(B2M)をノックアウトした。Renらは、TCRαβ、B2M及び免疫チェックポイントPD1を同時にノックアウトした。一般的に、免疫細胞は活性化され、拡大されて養子細胞治療で利用される。本明細書に開示の免疫細胞は、in vivo又はex vivoで拡大することができる。免疫細胞、特にT細胞は、一般的に当技術分野で公知の方法を使用して活性化し、拡大することができる。一般的にT細胞は、CD3/TCR複合体関連シグナルを刺激する薬剤、及びT細胞の表面の共刺激分子を刺激するリガンドを結合させた表面との接触によって拡大される。
【0199】
典型的には、免疫細胞は、本明細書に開示のキメラ抗原受容体を発現するように修飾される。複数の腫瘍特異的標的の発現は、標的抗原の発現を変異させるか又は低減することによって抗原逃避の機会を低減しうる。前述のように本開示のCARは、多重特異性CAR(すなわち、FGFR4に対する1つを超える抗原及び少なくとも別の抗原に対する)であってもよい。更に、又は或いは、本明細書に記載の免疫細胞は、本明細書に定義される1つ又は複数のCAR、及び1つ又は複数の別の抗原を標的化する少なくとも別のCARを発現しうる。
【0200】
組換え抗原受容体を発現するように免疫細胞が遺伝子修飾されうる方法は、当技術分野で周知である。抗原受容体をコードする核酸分子は、例えばベクター、又は任意の他の適切な核酸構築物の形態で細胞に導入されうる。ベクター、及びその必要とされる成分は、当技術分野で周知である。抗原受容体をコードする核酸分子は、当技術分野で公知の任意の方法、例えばPCRを使用する分子クローニングを使用して生成することができる。抗原受容体配列は、部位特異的変異誘発などの一般的に使用される方法を使用して修飾することができる。
【0201】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載のCARで細胞を形質転換する工程を含む、養子免疫療法において使用するための細胞の集団を生成するex vivo方法に関する。
【0202】
本開示の組成物及びキット
本開示はまた、1つ若しくは複数の抗FGFR4単一ドメイン抗体、CAR、それをコードする核酸構築物、及び/又は本明細書に開示のCARを、単独で若しくは安定化化合物などの少なくとも1つの他の薬剤と組み合わせて含む1つ若しくは複数の単離された細胞若しくは細胞集団を含む医薬組成物も包含し、該医薬組成物は任意の滅菌した生体適合性医薬担体で投与されてもよく、任意選択で、滅菌した薬学的に許容される緩衝液、希釈剤、及び/又は賦形剤と共に製剤化されてもよい。薬学的に許容される担体は、典型的には組成物を増強若しくは安定化し、及び/又は組成物の調製を容易にするのに使用することができる。薬学的に許容される担体としては、生理学的に適合性の、及び一部の実施形態では薬学的に不活性な溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌及び抗真菌剤、等張剤、並びに吸収遅延剤等が挙げられる。一部の実施形態では、本開示による医薬組成物は、以前に開示されている薬物ナノ担体に連結された本明細書に開示の抗FGFR4単一ドメイン抗体を含む。典型的には、本明細書に開示の抗FGFR4 sdAbにより機能化された前記薬物ナノ担体は、治療用(細胞傷害性化合物など)又は診断用化合物にカプセル化される。特定の実施形態では、前記薬物ナノ担体はリポソームである。
【0203】
本明細書に開示のsdAbを含む医薬組成物の投与は、経口又は非経口的に達成することができる。非経口送達の方法としては、局所、動脈内(腫瘍に直接)、筋肉内、脊髄、皮下、髄内、髄腔内、脳室内、静脈内、腹腔内、又は鼻腔内投与が挙げられる。
【0204】
本開示の遺伝子修飾細胞又は医薬組成物は、非経口投与を含む任意の好都合な経路によって投与することができる。非経口投与としては、例えば、静脈内、筋肉内、動脈内、腹腔内、鼻腔内、直腸、膀胱内、皮内、局所又は皮下投与が挙げられる。組成物は、1つ又は複数の投与単位の形態をとることができる。
【0205】
故に、有効成分に加えてこれらの医薬組成物は、薬学的に使用することができる調製物への活性化合物の加工を容易にする賦形剤及び助剤を含む適切な薬学的に許容される担体を含有してもよい。製剤及び投与の手法に関する更なる詳細は、Remington's Pharmaceutical Sciences(Ed. Maack Publishing Co、Easton、Pa.)の最新版に見いだすことができる。
【0206】
投与経路に応じて、単一ドメイン抗体又はそのバリアントは、化合物を不活性化しうる酸の作用及び他の天然の条件から化合物を保護する材料中でコーティングされてもよい。
【0207】
組成物は典型的には滅菌であり、好ましくは流体である。適正な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用により、分散体の場合には必要とされる粒径の維持により、及び界面活性剤の使用により維持することができる。多くの場合、等張剤、例えば糖、マンニトール又はソルビトールなどの多価アルコール、及び塩化ナトリウムを組成物に含めることが好ましい。注射可能な組成物の長時間吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム又はゼラチンを組成物に含めることによってもたらすことができる。
【0208】
経口投与用の医薬組成物は、当技術分野で周知の薬学的に許容される担体を経口投与に適した投与量で使用して製剤化することができる。そのような担体は、患者による摂取のための錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液等として医薬組成物を製剤化できるようにする。
【0209】
経口用の医薬調製物は、活性化合物を固体賦形剤と組合せ、任意選択で、得られた混合物を粉砕し、所望であれば適切な助剤を添加後、錠剤又は糖衣錠コアを得るために顆粒の混合物を処理することにより得ることができる。適切な賦形剤は、炭水化物又はタンパク質充填剤、例えば、ラクトース、スクロース、マンニトール、又はソルビトールを含む糖;トウモロコシ、コムギ、コメ、ジャガイモ、又は他の植物由来のデンプン;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、又はカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース;並びにアラビアガム及びトラガントを含むガム;並びにゼラチン及びコラーゲンなどのタンパク質である。所望であれば、崩壊剤又は可溶化剤、例えば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、又はアルギン酸ナトリウムなどのその塩が添加されてもよい。
【0210】
糖衣錠コアは、適切なコーティング剤、例えばアラビアガム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコール及び/又は二酸化チタンも含有する濃縮糖溶液、ラッカー溶液、及び適切な有機溶媒又は溶媒混合物と共に提供される。染料又は顔料が、製品識別のための又は活性化合物の量、すなわち投与量を特徴付けるための錠剤又は糖衣錠コーティング剤に添加されてもよい。
【0211】
経口的に使用されうる医薬調製物としては、ゼラチンでできたプッシュフィットカプセル、並びにゼラチン及びグリセロール又はソルビトールなどのコーティング剤でできた軟密封カプセル剤が挙げられる。プッシュフィットカプセルは、充填剤又は結合剤、例えばラクトース又はデンプン、潤滑剤、例えばタルク又はステアリン酸マグネシウム、及び任意選択で安定化剤と混合された有効成分を含有することができる。軟カプセルでは、活性化合物は、脂肪油、液体パラフィン、又は安定化剤を含む若しくは含まない液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体に溶解又は懸濁されてもよい。
【0212】
非経口投与用の医薬製剤は、活性化合物の水溶液を含む。注射のために、本開示の医薬組成物は、水溶液、好ましくは生理学的に適合性の緩衝液、例えばハンクス液、リンゲル液、又は生理学的緩衝食塩水に製剤化されてもよい。水性注射懸濁液は、懸濁液の粘度を高める物質、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、又はデキストランを含有してもよい。更に、活性化合物の懸濁液は、適当な油性注射懸濁液として調製されてもよい。適切な親油性溶媒又はビヒクルとしては、ゴマ油などの脂肪油、又はオレイン酸エチル若しくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、又はリポソームが挙げられる。 任意選択で、懸濁液は、適切な安定化剤、又は化合物の可溶性を増加させて高濃度溶液の調製を可能にする薬剤を含有することもできる。
【0213】
局所又は鼻腔投与に関して、透過させようとする特定のバリアに適した浸透剤が製剤に使用される。そのような浸透剤は、一般的に当技術分野で公知である。
【0214】
本開示の医薬組成物は、当技術分野で周知の及び日常的に行われる方法に従って調製することができる。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、Mack Publishing Co.、第20版、2000;及びSustained and Controlled Release Drug Delivery Systems、J R. Robinson編、Marcel Dekker, Inc.、New York、1978参照のこと。医薬組成物は、好ましくはGMP条件下で製造される。
【0215】
特定の障害又は状態の処置において有効/活性な本開示の医薬組成物の量は、障害又は状態の性質に依存し、標準的な臨床的手法によって決定することができる。更に、最適な投与量範囲の特定を助けるために、in vitro又はin vivoアッセイが任意選択で使用されてもよい。組成物で使用されるべき正確な用量は、投与経路及び疾患又は障害の深刻度にも依存し、開業医の判断及び各患者の状況に従って決定されるべきである。
【0216】
本明細書に開示の組成物は、適切な投与量が得られるように本開示の結合分子(例えば、単一ドメイン抗体若しくはそのバリアント又はキメラ抗原受容体)の有効量を含む。化合物の正しい投与量は、特定の製剤、適用方法、並びに処置されるその特定の部位、宿主及び疾患に従って異なるであろう。年齢、体重、性別、食事、投与のタイミング、排出速度、宿主の状態、薬物組合せ、反応感度、及び疾患の重症度のような他の要因が考慮されるものとする。投与は、最大耐用量内で連続的又は定期的に実施することができる。
【0217】
典型的には、この量は、組成物の質量で本開示の結合分子の少なくとも約0.01%である。本開示の好ましい組成物は、非経口投与単位が本開示の結合分子の約0.01質量%~約2質量%を含有するように調製される。
【0218】
静脈内投与に関して、組成物は、典型的には動物の体重の約0.1mg/kg~約250mg/kg、好ましくは、動物の体重の約0.1mg/kg~約20mg/kg、及びより好ましくは動物の体重の約1mg/kg~約10mg/kgを含みうる。
【0219】
本組成物は、エアロゾル、スプレー、懸濁液のような適切な担体の形態、又は使用に適した任意の他の形態をとることができる。適切な医薬担体の他の例は、E. W. Martinによる「Remington's Pharmaceutical Sciences」に記載されている。
【0220】
本明細書に開示の医薬組成物は、他の治療薬、例えば抗がん剤と同時投与することができる。
【0221】
医学的使用
本開示はまた、治療で使用するための、特にがんの処置において使用するための、本明細書に記載の抗FGFR4単一ドメイン抗体若しくはそのバリアント、本明細書に記載のFGFR4に対するCAR若しくはそのバリアント、前記抗FGFR4単一ドメイン抗体若しくはCARをコードする核酸、又は本明細書に記載のCARを含む細胞、株若しくは細胞集団にも関する。本開示はまた、医薬の製造(特にがんの処置のための)における、本明細書に記載の抗FGFR4単一ドメイン抗体若しくはそのバリアント、本明細書に記載のFGFR4に対するCAR 若しくはそのバリアント、前記抗FGFR4単一ドメイン抗体若しくはCARをコードする核酸、又は本明細書に記載の前記CARを含む細胞、株若しくは細胞集団にも関する。
【0222】
本開示はまた、本明細書に記載の抗FGFR4単一ドメイン抗体若しくはそのバリアント、本明細書に記載のFGFR4に対するCAR若しくはそのバリアント、前記抗FGFR4単一ドメイン抗体若しくはCARをコードする核酸、又は本明細書に記載のCARを含む細胞、株又は細胞集団を対象に投与する工程を含むがんの予防及び/又は処置の方法であって、それを必要とする対象に、抗FGFR4単一ドメイン抗体若しくはそのバリアント、CAR、本明細書に記載のCARを含む細胞、株若しくは細胞集団、及び/又は本開示の医薬組成物の薬学的に活性な量を投与する工程を含む前記方法も包含する。方法は、がんを有する対象を同定する工程を更に含みうる。
【0223】
本開示はまた、標的免疫療法における、抗FGFR4単一ドメイン抗体又はそのバリアント、FGFR4に対するCAR又はそのバリアント、前記抗FGFR4単一ドメイン抗体又はCARをコードする核酸、本明細書に記載のCARを含む細胞株又は細胞集団のうちの1つ又は複数の使用も含む。例えば、多重特異性ポリペプチドの形態での本開示のsdAb及び特にそのバリアントは、免疫細胞抗原を更に標的化し、免疫細胞(特にCAR T細胞)を発現するCARは、免疫細胞リダイレクト免疫療法において使用されうる。
【0224】
別の態様では、本開示は、対象における標的細胞集団又は組織に対するT細胞媒介免疫応答を刺激する方法であって、本明細書に記載のFGFR4に対するCARを発現する細胞又は細胞集団の有効量を対象に投与する工程を含む前記方法に関する。
【0225】
別の態様では、本開示は、対象に抗腫瘍免疫をもたらす方法であって、本明細書に記載のFGFR4に対するCARを発現するように遺伝子修飾された細胞又は細胞集団の有効量を哺乳動物に投与し、それにより対象に抗腫瘍免疫をもたらす工程を含む前記方法に関する。
【0226】
本開示はまた、対象における養子細胞又はCAR-T細胞治療で使用するための、抗FGFR4単一ドメイン抗体(そのバリアントを含む)、本明細書に記載のFGFR4に対するCAR、又は前記ヒト化抗FGFR4 SdAb又はCARをコードする核酸構築物、又は以前に定義されている前記CARを発現する免疫細胞にも関する。典型的には、本開示の方法において使用するための免疫細胞は、リダイレクトT細胞、例えばリダイレクCD8+ 及び/又はCD4+ T細胞である。
【0227】
一部の実施形態では、抗FGFR4単一ドメイン抗体(そのバリアントを含む)、及び本明細書に記載のFGFR4に対するCAR、並びにそれらをコードする核酸構築物及びそのようなCARを含む細胞は、腫瘍増殖の阻害、分化の誘導、腫瘍体積の低減、及び/又は腫瘍の腫瘍原性の低減に有用でである。使用の方法は、in vitro、ex vivo、又はin vivo方法であってもよい。
【0228】
本明細書に記載の医学的使用の特定の実施形態では、抗FGFR4 sdAbは、リポソームなどの薬物ナノ担体に前述のように連結される。本明細書に記載の1つ又は複数の抗FGFR4 sdAbにより機能化された前記薬物ナノ担体、特にそのようなリポソームは、治療用化合物(細胞傷害性化合物など)又は診断用化合物を典型的にはカプセル化する。
【0229】
ある特定の態様では、対象はヒト患者、特に小児患者である。ある特定の態様では、対象は腫瘍を有するか又は腫瘍が除去されている。対象は、がんを発症するリスクもありうる。
【0230】
がんは、固形がん又は液体腫瘍でありうる。本明細書に記載された方法、使用及び組成物によって処置されうるがんとしては、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、乳房、結腸、食堂、胃腸、歯肉、頭部、腎臓、肝臓、肺、上咽頭、頸部、卵巣、前立腺、皮膚、胃、精巣、舌、又は子宮由来のがん細胞が挙げられるが、これらに限定されない。更に、がんは、具体的には以下の組織型でありうるが、これらに限定されない:新生物、悪性;癌腫;癌腫、未分化;巨大紡錘細胞癌(giant and spindle cell carcinoma);小細胞癌;乳頭癌;扁平上皮癌;リンパ上皮癌;基底細胞癌;石灰化上皮癌;移行上皮細胞癌;乳頭移行上皮細胞癌;腺癌;ガストリノーマ、悪性;胆管癌;肝細胞癌;混合型肝細胞癌及び胆管癌;索状腺癌;腺様嚢胞癌;腺腫性ポリープの腺癌;腺癌、家族性大腸ポリポーシス;固形癌;カルチノイド腫瘍、悪性;細気管支-肺胞腺癌;乳頭腺癌;色素嫌性癌;好酸性癌;好酸性腺腫;好塩基性癌;透明細胞腺癌;顆粒細胞癌;濾胞性腺癌;乳頭及び濾胞性腺癌;非被包性硬化性癌;副腎皮質癌;類内膜癌;皮膚付属器癌;アポクリン腺癌;皮脂腺癌;耳垢腺癌;粘膜表皮癌;嚢胞腺癌;乳頭嚢胞腺癌;乳頭状漿液性嚢胞腺癌;ムチン性嚢胞腺癌;ムチン性腺癌;印環細胞癌;浸潤性導管癌;髄様癌;小葉癌;炎症性癌;パジェット病、乳房;腺房細胞癌;腺扁平上皮癌;扁平上皮化生を伴う腺癌;胸腺腫、悪性;卵巣間質腫瘍、悪性;莢膜細胞腫、悪性;顆粒膜細胞腫、悪性;及び嗅神経芽細胞腫、悪性;セルトリ細胞癌;ライディッヒ細胞腫瘍、悪性;脂質細胞腫瘍、悪性;傍神経節腫、悪性;乳房外傍神経節腫、悪性;褐色細胞腫;血管球血管肉腫;悪性黒色腫;無色素性悪性黒色腫;表在拡大型黒色腫;巨大色素性母斑の悪性黒色腫;類上皮細胞悪性黒色腫;青色母斑、悪性;肉腫;線維肉腫;線維性組織球腫、悪性;粘液肉腫;脂肪肉腫;平滑筋肉腫;横紋筋肉腫(RMS);胚性横紋筋肉腫;胞巣状横紋筋肉腫;間質肉腫;混合腫瘍、悪性;ミュラー管混合腫瘍;腎芽細胞腫;肝芽腫;癌肉腫;間葉腫、悪性;ブレナー腫瘍、悪性;葉状腫瘍、悪性;滑液肉腫;中皮腫、悪性;未分化胚細胞腫;胚性癌;奇形腫、悪性;卵巣甲状腺腫、悪性;絨毛上皮癌;中腎腫、悪性;血管肉腫;血管内皮腫、悪性;カポジ肉腫;血管外皮腫、悪性;リンパ管肉腫;骨肉腫;傍骨性骨肉腫;軟骨肉腫;軟骨芽細胞腫、悪性;間葉性軟骨肉腫;骨の巨細胞腫;ユーイング肉腫;歯原性腫瘍、悪性;エナメル上皮歯牙肉腫;エナメル上皮腫、悪性;エナメル上皮線維肉腫;松果体腫、悪性;脊索腫;神経膠腫、悪性;上衣腫;星状細胞腫;原形質性星状細胞腫;線維性星状細胞腫;星状芽細胞腫;神経膠芽腫;乏突起膠腫;乏突起芽腫;原始神経外胚葉性;小脳肉腫;神経節芽細胞腫;神経芽細胞腫;網膜芽腫;嗅神経腫瘍;髄膜腫、悪性;神経線維肉腫;神経鞘腫、悪性;顆粒細胞腫瘍、悪性;悪性リンパ腫;ホジキン病;ホジキンリンパ腫;側肉芽腫;悪性リンパ腫、小リンパ球性;悪性リンパ腫、大細胞型、びまん性;悪性リンパ腫、濾胞性;菌状息肉症;他の指定非ホジキンリンパ腫;悪性組織球症;多発性骨髄腫;マスト細胞肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病;リンパ性白血病;形質細胞性白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞白血病;骨髄性白血病;好塩基性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病;マスト細胞性白血病;巨核芽球性白血病;骨髄肉腫;及び有毛細胞性白血病。
【0231】
本開示により処置及び/又は予防されうるより具体的ながんとしては、FGFR4媒介性がんが挙げられる。典型的には、FGFR4媒介性がんは、FGFR4が発現又は過剰発現されるがんである。FGFR4が発現及び/又は過剰発現される典型的ながんとしては、肝細胞癌(HCC)、乳がん、中咽頭扁平上皮癌、経口扁平上皮癌、膵臓癌及び由来する細胞株、並びに横紋筋肉腫(RMS)が挙げられる。
【0232】
一部の実施形態では、上に記載のがん処置、及び/又は養子細胞がん治療は、追加のがん治療と組み合わせて投与される。一部の実施形態では、上に記載のがん処置及び/又は養子細胞がん治療は、標的化治療、免疫療法、例えば免疫チェックポイント治療及び免疫チェックポイント阻害剤、共刺激抗体、化学療法並びに/又は放射線療法と組み合わせて投与される。
【0233】
チェックポイント阻害剤などの免疫チェックポイント治療としては、プログラム死1(PD-1)阻害剤、プログラム死リガンド1(PD-L1)阻害剤、プログラム死リガンド2(PD-L2)阻害剤、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)阻害剤、T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有タンパク質3(TIM-3)阻害剤、Ig及びITIMドメインを含むT細胞免疫受容体(TIGIT)阻害剤、B及びTリンパ球アテニュエーター(BTLA)阻害剤、T細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA)阻害剤、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)阻害剤、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤、キラー免疫グロブリン様受容体(KIR)阻害剤、KIR2L3阻害剤、KIR3DL2阻害剤、並びに癌胎児性抗原関連細胞接着分子1(CEACAM-1)阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。特に、チェックポイント阻害剤としては、抗体抗PD1、抗PD-L1、抗CTLA-4、抗TIM-3、抗LAG3が挙げられる。共刺激抗体は、ICOS、CD137、CD27、OX-40及びGITRを含むがこれらに限定されない免疫調節受容体を通じて陽性シグナルを送達する。
【0234】
抗PD1抗体の例としては、ニボルマブ、セミプリマブ(REGN2810又はREGN-2810)、チスレリズマブ(BGB-A317)、チスレリズマブ、スパルタリズマブ(PDR001又はPDR-001)、ABBV-181、JNJ-63723283、BI 754091、MAG012、TSR-042、AGEN2034、ピディリズマブ、ニボルマブ(ONO-4538、BMS-936558、MDX1106、GTPL7335又はオプジーボ)、ペムブロリズマブ(MK-3475、MK03475、ランブロリズマブ、SCH-900475又はキイトルーダ)、並びに国際特許出願WO2004004771、WO2004056875、WO2006121168、WO2008156712、WO2009014708、WO2009114335、WO2013043569及びWO2014047350に記載された抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0235】
抗PD-L1抗体の例としては、LY3300054、アテゾリズマブ、デュルバルマブ及びアベルマブが挙げられるが、これらに限定されない。
【0236】
抗CTLA-4抗体の例としては、イピリムマブ(例えば、米国特許US6,984,720及びUS8,017,114参照)、トレメリムマブ(例えば、米国特許US7,109,003及びUS8,143,379参照)、一本鎖抗CTLA4抗体(例えば、国際特許出願WO1997020574及びWO2007123737参照)、及び米国特許US8,491,895に記載された抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0237】
抗VISTA抗体の例は、米国特許出願US20130177557に記載されている。
【0238】
LAG3受容体の阻害剤の例は、米国特許US5,773,578に記載されている。
【0239】
KIR阻害剤の例は、IPH4102標的化KIR3DL2である。
【0240】
本明細書で使用される場合、用語「化学療法」は当技術分野におけるその一般的な意味であり、化学療法剤を患者に投与することで構成される処置を指す。化学療法実体は本明細書で使用される場合、細胞に破壊的である実体を指し、すなわち、該実体は細胞の生存能を低減する。化学療法実体は細胞傷害性薬物であってもよい。化学療法剤としては、アルキル化剤、例えばチオテパ及びシクロホスファミド;スルホン酸アルキル、例えばブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファン;アジリジン、例えばベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa);アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンチオホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド及びトリメチロールメラミンを含むエチレンイミン及びメチルアメラミン(methylamelamine);アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン);カンプトテシン(合成類似体トポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼルシン及びビセレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体、KW-2189及びCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンジスタチン;ナイトロジェンマスタード、例えばクロラムブシル、クロルナファジン、チョロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩(mechlorethamine oxide hydrochloride)、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソウレア、例えばカルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチン;抗生物質、例えばエンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特にカリケアマイシンガンマII及びカリケアマイシンオメガII;ダイネミシンAを含むダイネミシン;ビスホスホネート、例えばクロドロネート;エスペラミシン;並びにネオカルジノスタチンクロモフォア及び関連する色素タンパク質エンジイン抗生物質クロモフォア、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン(carabicin)、カミノマイシン(caminomycin)、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、例えばマイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗薬、例えばメトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸類似体、例えばデノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート;プリン類似体、例えばフルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えばアンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン;アンドロゲン、例えばカルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎薬、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補充剤、例えばフロリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキサート;デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジコン;エルホルミチン(elformithine);酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン;マイタンシノイド、例えばマイタンシン及びアンサマイトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモル(mopidanmol);ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;N-メチルヒドラジン(MIH)及びプロカルバジンを含むメチルヒドラジン誘導体;PSK多糖複合体);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフラン(sizofuran);スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2',2"-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT-2毒素、ベラクリンA、ロリジンA及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、パクリタキセル及びドセタキセル;クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金配位錯体、例えばシスプラチン、オキサリプラチン及びカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;イリノテカン(例えば、CPT-11);トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイド、例えばレチノイン酸;カペシタビン;アントラサイクリン、ニトロソウレア、代謝拮抗薬、エピポドフィロトキシン(epipodophylotoxin)、酵素、例えばL-アスパラギナーゼ;アントラセンジオン;副腎皮質ステロイドアンタゴニスト、例えばプレドニゾン及び同等物、デキサメタゾン及びアミノグルテチミドを含むホルモン及びアンタゴニスト ;プロゲスチン、例えばカプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン及び酢酸メゲストロール;エストロゲン、例えばジエチルスチルベストロール及びエチニルエストラジオール同等物;抗エストロゲン、例えばタモキシフェン;プロピオン酸テストステロン及びフルオキシメステロン/同等物を含むアンドロゲン;抗アンドロゲン、例えばフルタミド、ゴナドトロピン放出ホルモン類似体及びリュープロリド;並びに非ステロイド系抗アンドロゲン、例えばフルタミド;生物学的応答修飾物質、例えばIFNa、IL-2、G-CSF及びGM-CSF;並びに上記のうちのいずれかの薬学的に許容される塩、酸又は誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0241】
放射線治療の適切な例としては、外照射放射線治療(例えば、表面X線治療、慣用電圧X線治療、超高圧X線治療、放射線手術、定位放射線治療、分割定位放射線治療、コバルト線治療、電子線治療、速中性子治療、中性子捕獲治療、陽子線治療、強度変調放射線治療(IMRT)、3次元原体放射線治療(3D-CRT)等);小線源治療;非密封線源放射線治療;トモセラピー等が挙げられるが、これらに限定されない。ガンマ線は、放射線治療で使用される光子の別の形態である。ガンマ線は、ある特定の元素(ラジウム、ウラニウム、及びコバルト60など)が分解又は崩壊する際、放射線を放出するときに自然に生成される。一部の実施形態では、放射線治療は、陽子放射線治療又は陽子ミニビーム放射線治療であってもよい。陽子放射線治療は陽子線を使用する超精密形態の放射線治療である(Prezado Y、Jouvion G、Guardiola C、Gonzalez W、Juchaux M、Bergs J、Nauraye C、Labiod D、De Marzi L、Pouzoulet F、Patriarca A、Dendale R. Tumor Control in RG2 Glioma-Bearing Rats:A Comparison Between Proton Minibeam Therapy and Standard Proton Therapy Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2019年6月1日;104(2):266~271頁. doi:10.1016/j.ijrobp.2019.01.080;Prezado Y、Jouvion G、Patriarca A、Nauraye C、Guardiola C、Juchaux M、Lamirault C、Labiod D、Jourdain L、Sebrie C、Dendale R、Gonzalez W、Pouzoulet F. Proton minibeam radiation therapy widens the therapeutic index for high-grade gliomas. Sci Rep. 2018年11月7日;8(1):16479頁. doi:10.1038/s41598-018-34796-8)。放射線治療は、FLASH(登録商標)放射線治療(FLASH-RT)又はFLASH(登録商標)陽子照射でもあってもよい。FLASH(登録商標)放射線治療は、日常の臨床診療で現在使用されているものより数桁大きい線量率(超高線量率)で放射線処置の超高速送達を必要とする(Favaudon V、Fouillade C、Vozenin MC. The radiotherapy FLASH to save healthy tissues. Med Sci(Paris) 2015 ;31 :121~123頁. DOI:10.1051/medsci/20153102002);Patriarca A.、Fouillade C. M.、Martin F.、Pouzoulet F.、Nauraye C.ら Experimental set-up for FLASH proton irradiation of small animals using a clinical system. Int J Radiat Oncol Biol Phys、102(2018)、619~626頁. doi:10.1016/j.ijrobp.2018.06.403. Epub 2018年7月11日)。
【0242】
「組合せて」は、本開示によるT細胞組成物の投与前、投与と同時、投与後の追加の治療の投与を指しうる。
【0243】
チェックポイント遮断との組合せに加えて、又はチェックポイント遮断との組合せの代替として、本開示のT細胞組成物は、TALEN及びCrispr/Casを含むがこれらに限定されない遺伝子編集技術を使用して、該組成物を免疫チェックポイントに耐性にするように遺伝子修飾することもできる。そのような方法は、当技術分野で公知であり、例えば US20140120622を参照のこと。遺伝子編集技術は、T細胞によって発現される免疫チェックポイントの発現を防ぐのに使用することができ(上記のリストされたチェックポイント阻害剤参照)、より具体的にはPD-1、Lag-3、Tim-3、TIGIT、BTLA CTLA-4及びこれらの組合せを含むが、これらに限定されない。本明細書で論じられるT細胞は、これらの方法のいずれかによって修飾されうる。
【0244】
本開示によれるT細胞は、サイトカイン、可溶性免疫調節受容体及び/又はリガンドを含むがこれらに限定されない、腫瘍へのホーミングを増加する分子を発現し、及び又は腫瘍微小環境に炎症性メディエーターを送達するように遺伝子修飾することもできる。
【0245】
このように本開示の種々の実施形態を記載してきたが、本明細書における本開示は例示にすぎず、様々な他の代替、適合、及び変更が本開示の範囲内で行われうることが当業者によって留意されるべきである。したがって、本開示は、本明細書に例示される特定の実施形態に限定されない。
【0246】
分子イメージング及び診断のツール
本明細書に開示のナノボディは、目的の細胞に対する放射性核種などのイメージング剤をin vivoで典型的には標的にする分子イメージング及び分子診断法(in vitro及びin vivoの両方)において極めて興味深い。故に、ナノボディ標的化イメージングは、疾患の診断法、疾患進行のモニタリング、及び特定の治療剤に対する、特に本明細書に開示の抗FGFR4 sdAbなどの抗FGFR4剤に対する応答の予測を含む、様々な目的のために本発明により使用されうる。
【0247】
ナノボディは、バイオマーカーを検出又は明確にすることによって早期診断及びがん予防に役立ちうる。ナノボディは、その高い特異性により現在のmAbベースの診断手法を改善することができる。更に、極端な温度、pH、又はイオン強度下でのその高い安定は、厳しい条件下で適用が依然として生じうることを確保する。
【0248】
ナノボディの小さいサイズは、迅速な腫瘍蓄積及び均一な分布、並びに効率的な血液クリアランスを可能にし、高い腫瘍対バックグラウン比に寄与することから、特に分子イメージングの分野で非常に有利である。
【0249】
分子イメージングで及び/又は診断ツールとして使用するための本明細書に記載のナノボディは、数種類のイメージング剤に容易にコンジュゲートすることができ、その高い特異性はその使用を比較的安全なものにする。
【0250】
一部の実施形態では、本明細書に開示のナノボディは、放射線イメージングで使用するための放射性核種にコンジュゲートすることができる。単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)はγ線に基づいており、本開示のsdAbは、故に99mTc、177Lu、123I、125I及び111Inなどのより長寿命の放射性核種に連結することができる。一方、68Ga、124I又は89Zr、64Cu、18F、又は15Oなどのより短寿命の放射性核種は、ポジトロン放射型断層撮影(PET)目的で使用することができる。シンチグラフィーは、SPECTとして同じ放射性核種を使用しうる。
【0251】
本開示によるナノボディ標的化ベースのイメージングで使用可能な他のイメージング剤としては、吸収性低分子色素、金属ナノ粒子(光音響イメージング、PAI)、小型合成蛍光プローブが挙げられ、一般的なイメージング剤としては、近赤外フルオロフォア、例えばIRDye 800CW、Ag2S量子ドット及びFDA承認インドシアニングリーン、又は蛍光タンパク質発現遺伝子(蛍光分子断層撮影)、ルシフェラーゼ発現遺伝子(生物発光イメージング)、超常磁性酸化鉄(SPIO)、ガドリニウム-DTPA(磁気共鳴イメージング)、ナノ粒子ベースの造影剤(コンピュータ断層撮影)が挙げられる。
【0252】
sdAbはその小さいサイズ及び急速なクリアランスのために、典型的には分子イメージング戦略に高い関連性がある。sdAbは、その小さいサイズ及びあまり複雑でない3D構造のために、高い化学耐性及び温度耐性も有する。これは、分子イメージング法及びコンジュゲーション化学(生産)にとって好ましい。
【0253】
本開示による抗FGFR4 sdAbは、細胞ベースのELISAアッセイで使用することもできる。サンドイッチELISAを行うために、好ましくは抗原上の異なるエピトープを標的化するナノボディの捕捉及び検出の両方が使用される。
【0254】
本開示の一部の実施形態では、本明細書に記載の抗FGFR4単一ドメイン抗体は、生体試料中のFGFR4の存在を検出するのに故に有用である。用語「検出する」は本明細書で使用される場合、定量的又は定性的検出を包含する。ある特定の態様では、生体試料は1つ又は複数の細胞又は組織を含む。ある特定の態様では、そのような組織は、FGFR4を発現する、特に、対照対象由来又は対象の対照集団由来の他の組織又は類似した組織と比べて高レベルでFGFR4を発現する正常組織及び/又はがん組織を含む。
【0255】
また、FGFR4の発現増加と関連する障害、典型的にはFGFR4関連がん又は腫瘍を診断する方法も含まれる。ある特定の態様では、方法は、
- テスト細胞を本開示の抗FGFR4単一ドメイン抗体と接触させる工程と、
- 前記ヒト化抗FGFR4 sdAbのHERへの結合を検出して、テスト細胞におけるFGFR4の発現のレベルを決定する(定量的に又は定性的にのいずれか)工程と、
- テスト細胞におけるFGFR4の発現のレベルを、対照細胞(例えば、テスト細胞と同じ組織起源の正常な細胞、又はそのような正常な細胞に匹敵するレベルでFGFR4を発現する細胞)におけるFGFR4の発現のレベルと比較する工程と
を含み、対照細胞と比較してテスト細胞におけるFGFR4の高レベルの発現は、FGFR4の発現増加と関連する障害の存在を示す。ある特定の態様では、テスト細胞は、FGFR4の発現増加と関連する障害を有することが疑われる個体から得られる。ある特定の態様では、障害は、がん又は腫瘍などの細胞増殖性障害である。
【0256】
ある特定の態様では、上記の方法などの診断又は検出の方法は、細胞の表面において、又はその表面でFGFR4を発現する細胞から得られた膜調製物において発現された抗FGFR4単一ドメイン抗体の結合を検出する工程を含む。細胞の表面で発現されたFGFR4へのヒト化抗FGFR4 sdAbの結合を検出する例示的なアッセイは、「FACS」アッセイである。
【0257】
ある特定の他の方法は、本明細書に開示のヒト化抗FGFR4 SDABのFGFR4への結合を検出するのに使用することができる。そのような方法としては、ウェスタンブロット、放射性イムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、蛍光イムノアッセイ、プロテインAイムノアッセイ、及び免疫組織化学(IHC)などの、当技術分野で周知の抗原結合アッセイが挙げられるが、これらに限定されない。有利には、これらの実施形態では本明細書に開示のヒト化抗FGFR4 SDABは、前述の診断用化合物、特に検出可能な標識に連結される。
【0258】
本明細書に記載の方法の一部の実施形態では、本明細書に開示の抗FGFR4 SDABは、リポソームなどの薬物ナノ担体に連結される。典型的には、本明細書に開示の抗FGFR4 SDABにより機能化された前記薬物ナノ担体は、診断用化合物をカプセル化する。
【0259】
以下では、本発明が以下の例及び図を用いて例示される。
【図面の簡単な説明】
【0260】
図1】ファージディスプレイバイオパニング及びFGFR4結合ナノボディ配列の事前選択の概略図。ファージディスプレイ選択は、2つの異なる合成ナノボディファージディスプレイライブラリーにより、ビオチン化及びダイナビーズ結合FGFR4で実施した。富化ファージクローンは、Rh4-FR4wt細胞上の細胞表面FGFR4へのそれらの結合について試験し、40個のユニークな結合剤を生じた。8個のナノボディを選択し、大腸菌(E.coli)で発現させ、最終的に4つの候補A8、B1、B5及びF8がRh4-FR4wtに結合したが、Rh4-FR4ko細胞には結合しなかった。
図2】in vitroでのナノボディの結合検証。A)ナノボディは、フローサイトメトリーにより、細胞表面FGFR4に対するそれらの結合選択性について試験した。ヒストグラムは、Rh4-FR4ko細胞に対してRh4-FR4wt細胞に結合している各ナノボディの単一細胞の生集団を示す。二次FITC標識抗HIS-タグ抗体(二次抗体)をバックグラウンド対照として使用して、mCherry(mCh)は陰性対照として使用した。平均蛍光強度(MFI)は、FlowJoTM10ソフトウェアによって決定した。B)Rh30細胞におけるFGFR4の活性化アッセイは、組換えFGF19により、及びナノボディと組み合わせて実施した。細胞は、10μMのナノボディ(A8、B1、B5、F8、mCh)と1時間インキュベートした後、50nMのFGF19によって10分間、FGFR4を刺激した。対照細胞(C)は、ナノボディの不在下で、FGF19によって刺激されないか又は刺激される。細胞溶解物は、抗ホスホERK1/2抗体によるウェスタンブロットによって解析した。全Erk1/2レベルは、ローディング対照として示される。
図3】表面プラズモン共鳴分光法による、組換えタンパク質に対するナノボディの親和性決定。シングルサイクルカイネティクス解析を、デキストランベースのセンサーチップに共有結合性のアミン結合により固定化したFGFR4で実施した。解析物A8、B1、B5、F8及びmChを5つの異なる濃度で注入した後、解離相へと続いた。最終解離工程を、最後の注入工程の後に加え、KD算出のためのKoff率を決定した。黒い曲線は測定したデータを表し、赤い曲線は、BIA評価ソフトウェアによって実施したフィット解析(異種リガンドモデル)を示す。
図4】ビンクリスチン負荷標的化リポソームの特徴付け。A)動的光散乱法によって測定したナノボディコートしたリポソームのサイズ分布。B)カップリングされたナノボディのウェスタンブロット解析。100ngのナノボディに等価なリポソーム懸濁液(L)を、ゲル電気泳動のための還元及び変性条件下でロードし、100及び50ngのカップリングされていないタンパク質を対照としてロードした。ナノボディは、抗His6-タグ抗体によって検出した。
図5】FGFR4標的化リポソームのin vitro結合検証。FGFR4標的化ナノボディA8、B1、B5及びF8によって装飾したリポソーム又はmCh陰性対照を、フローサイトメトリーによって細胞表面FGFR4へのそれらの結合選択性について試験した。付着した細胞を、37℃及び5% CO2で、0.5mMの全脂質濃度で2時間インキュベートした。ヒストグラムは、Rh4-FR4ko細胞に対してRh4-FR4wtに結合するリポソームの単一細胞の生集団を示す。非処置細胞は、対照集団を表す。平均蛍光強度(MFI)は、FlowJoTM10ソフトウェアによって決定した。
図6】FGFR4標的化リポソームの内部移行。ナノボディコートした蛍光リポソームと、37℃及び5% CO2で2時間インキュベートしたRh4-FR4wt細胞の共焦点顕微鏡解析。全脂質濃度は3mMであった。細胞は、DAPI含有培地により洗浄、固定及びマウントした。
図7】RMS細胞に対するFGFR4-CAR T細胞の細胞傷害性。A)CAR-VHHaFR4構築物の概略図。CARは、CD8アルファ単一ペプチド配列及びC末端mycタグに続いてCD8アルファのヒンジ及び膜貫通(TM)ドメインを有するナノボディA8から構成される。細胞内シグナル伝達ドメインは、4-1BB及びCD3ゼータであり、ストレプトアビジン結合ペプチド(SBP)へと続く。B)ドナーA及びドナーBのCD8+T細胞形質導入効率は、BFPシグナルのフローサイトメトリー解析によって決定した。C)ドナーA及びドナーBのエフェクターT細胞と72時間共培養したRh4細胞のルシフェラーゼ活性によって決定した細胞傷害性。相対細胞死は、両ドナーにおいて指定したエフェクター:標的(E:T)細胞比でFGFR4-CAR T細胞とインキュベートしたRh4-FR4wt細胞で最高であった。Rh4-FR4ko細胞では、非特異的細胞死滅が、全てのCAR T細胞と非形質導入CD8+T細胞の共培養で観察された。D)xCELLigence RTCA DPを使用して、ドナーBからのエフェクターT細胞と共培養したRh4細胞のリアルタイム細胞死解析。FGFR4-CAR T細胞は、非特異的CD19-CAR T細胞又は非形質導入CD8+ T細胞と比較して、Rh4-FR4wtにおいて、指定したE:T細胞比でより高い死滅活性を示した。Rh4-FR4ko細胞では、特異的細胞傷害性は観察されなかった。アスタリスクは、エフェクターT細胞の添加の時間を示す。
【実施例
【0261】
材料及び方法
プラスミド及びクローニング
組換えタンパク質発現のため、pHEN2ファージミドベクター上の配列をコードするナノボディは、pSB_init(Zurich大学のM.Seeger labにより親切に提供された)へのFXクローニング54のためのSapI導入プライマーによってPCR増幅した。発現ベクターは、ccdB自殺カセット、C末端システイン及び6×Hisタグを持つ。ナノボディ配列のクローニングの成功は、ccdBを置き換え、構築物は大腸菌MC1061で増幅させた。CAR T細胞構築物は、A8ナノボディ配列によって作成し、A8によるscFvCD19の置換により、pTRIP-BFP-2a-scFvCD19-myc-41BB-CD3zeta-SBPへのライゲーションによってクローニングした(pTRIP-BFP-2a-vHH-FGFR4-myc-41BB-CD3zeta-SBP)。pTRIP-BFP-2a-scFvCD19-myc-41BB-CD3zeta-SBPは、単一ペプチドCD8アルファ-CD19に対する一本鎖可変断片-mycタグ-CD8アルファのヒンジ及び膜貫通ドメイン-刺激ドメイン4-1BB及びCD3ゼータドメイン-ストレプトアビジン結合ペプチド(SBP)から構成される配列の遺伝子合成によって先に作成した。この遺伝子は、Nicolas Manel(Institut Curie、Paris)55によって親切に提供されたpTRIP-SFFV-tagBFP-2A.apeへとクローニングした。
【0262】
細胞株
細胞株Rh4(Peter Houghton, Research Institute at Nationwide Children's Hospital、Columbus、OHによって親切に提供された)、Rh30、HEK293ft HEK293T(ATCC、LGC Promochem社から購入した)は、5% CO2中37℃で、10% FBS(Sigma-Aldrich社)、2mM L-グルタミン及び100 U/ml ペニシリン/ストレプトマイシン(両方ともThermo Fisher Scientific社)を補足したDMEM(Sigma-Aldrich社)中で維持した。RMS細胞株は、2014/2015の細胞株タイピング解析(STRプロファイリング)によって試験及び認証され、正にマッチした48。試験した全ての細胞株は、マイコプラズマが陰性であった。
【0263】
CRISPR/Cas9 FGFR4ノックアウト細胞の生成
Rh4 FGFR4ノックアウトクローンは、CRISPR/Cas9技術によって生成した。FGFR4ノックアウトのsgRNA配列(TTGCACATAGGGGAAACCGT)をコードする相補性の一本鎖オリゴヌクレオチドを、アニールし、Esp3I(ER0451、Thermo Fisher Scientific社)制限及びT4ライゲーション(15224017, Thermo Fisher Scientific社)により、thelentiCRISPRv2 puroベクター(#98290、Addgene社)へとクローニングした。レンチウイルスベクターは、HEK293T細胞中で産生した。細胞に、JetPrime(Polyplus Transfection社)を使用して、pMDL、pREV、pVSV-G及びlentiCRISPRv2-sgFR4Ex14を一過的にトランスフェクトした。24時間後、培地を置き換え、さらに48時間後、ウイルス上清を回収した。上清をろ過し、20倍濃縮し(Amicon Ultra 15、Merck Millipore社、4000g、15分)、-80℃で保存した。RMS細胞の形質導入は、10μg/ml ポリブレン(Merck Millipore社)の存在下で濃縮したウイルス上清によって実施した。24時間後、培地を交換し、72時間後に1μg/mlのピューロマイシン選択を開始し、7日間行った。単一細胞クローニングを、96ウェルプレートで選択した細胞によって実施し、FGFR4ノックアウトをウェスタンブロッティングによりタンパク質レベルで確認した。全ての実験は、ノックアウトクローン#8で実施した。
【0264】
CAR T細胞構築のためのレンチウイルスベクターの産生
レンチウイルス粒子は、ポリエチレンイミン(PEI)沈殿プロトコールを使用して、HEK293ftへの目的の遺伝子(BFP-2a-scFvCD19/sdAB-FGFR4-myc-41BB-CD3zeta-SBP)を含有するプラスミド、パッケージングプラスミドpsPAX2及びエンベローププラスミドpVSVGのコトランスフェクションによって産生された。細胞は、5% CO2中、37℃でインキュベートし、48時間後に上清を回収及び保存した後、さらに24時間のレンチウイルス産生のため、新しい培地を添加した。72時間後、上清を一緒にプールし、0.2μm孔径フィルターを使用して濾過した。レンチウイルス粒子を濃縮するため、PBS中20%スクロースを濾過した上清にアプライした後、4℃で1.5時間、100,000gで遠心分離した。ペレットを1mLの凍結培地(DMEM完全培地+0.1mM βメルカプトエタノール(Gibco)及び1mM HEPES(GIBCO))中に回収し、使用まで-80℃で保存した。レンチウイルス力価は、形質導入の72時間後のHEK293ft細胞における蛍光タンパク質(mtagBFP)の検出により、フローサイトメトリーによって決定した。
【0265】
T細胞単離及び形質導入
末梢血単核細胞(PBMC)は、密度勾配Lymphoprep(StemCells社)を使用して回収した。CD8+T細胞は、CD8+T細胞ヒト単離キット(Miltenyi社)の説明書に従って、CD4、CD15、CD16、CD19、CD34、CD36、CD56、CD123、TCRγ/δ、及びCD235a(グリコフォリンA)に対する抗体を含有するカクテルを使用するネガティブ選択によって単離した。単離したCD8+T細胞は、次いで、50μMのβ-メルカプトエタノール(Merck Millipore社)及び5%ヒト血清(Merck Millipore社)を補足したX-VIVO培地(Lonza社)中で培養し、製造業者の説明書に従って、ヒトTアクチベーターCD3/CD28 Dynabeads(Gibco社)を使用して活性化させた。T細胞活性化のおよそ24時間後、T細胞は、およそ5又は5より高いMOIで、4μg/mLのポリブレン(Merck Millipore社)と混合したレンチウイルス粒子によって形質導入した。2日後、培地を交換し、5ng/mLの組換えヒトインターロイキン-2(IL2;R&D Biosystem社)を補足した新しい培地によって置き換えた。形質導入効率は、フローサイトメトリーを使用して、mtagBFP発現細胞の検出による形質導入後6又は7日目に評価した。健康な成人血液ドナー(Saint-Louis Etablissement Francais du sang(EPS)又はSaint-Antoine Crozatier EFS at Paris、France)は、研究目的のために彼らの血液を提供することに同意した。
【0266】
ファージディスプレイ選択
FGFR4のスクリーニングは、3×109個の合成ヒト化sdAbから構成されるNali-H1ライブラリー24及び1.6×109個の合成完全ヒト化sdAbから構成されるGimliライブラリーを使用して、記載されたように56、自然条件のビオチン化細胞外FGFR4(G&P Biosciences社)によって実施した。
【0267】
タンパク質発現及び精製
ナノボディのペリプラズムでの発現は、C末端システイン及び6×Hisタグを有するタンパク質産生を可能にするpSB_initベクターを持つ大腸菌MC1061で実施した。Terrific Broth培地(25μg/mlクロラムフェニコール)中で終夜増殖させた20mlのプレ培養を2000mlの新しい培地中で希釈し、37℃で2時間増殖させた。次いで、温度を25℃まで下げ、1時間後、0.02% L-アラビノースによってタンパク質発現を誘導した。細菌培養は、25℃で終夜増殖させ、遠心分離(12000g、15分)によって細胞を回収した。ペリプラズムのタンパク質抽出は、浸透圧ショック法によって実施した。細胞は、50mlの溶解緩衝液1(50mM Tris/HCl、pH8.0、20%スクロース、0.5mM EDTA、5μg/mlリゾチーム、2mM DTT)によって再懸濁し、氷上で30分間インキュベートした。氷冷した溶解緩衝液2(PBS、pH7.5、1mM MgCl2、2mM DTT)の添加後、遠心分離(3800g、15分)によって細胞片を回収し、タンパク質を含有する上清に最終濃度10mMのイミダゾールを補足した。10mlのCo2+-ビーズスラリー(HisPur Cobalt Resin、Thermo Fisher Scientific社)を、洗浄緩衝液(PBS、pH7.5、30mMイミダゾール、2mM DTT)によって洗浄し、上清をビーズに添加した。4℃で1時間のインキュベーション後、ビーズを20mlの洗浄緩衝液によって洗浄し、結合したタンパク質を20mlの溶出緩衝液(PBS、pH 7.5、300mMイミダゾール、2mM DTT)によって溶出した。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の前に、タンパク質溶出液をPBS、pH7.5、2mM DTTへと終夜透析し、スピンフィルター遠心分離(Amicon Ultra 15、3kDa、Merck Millipore社)によって濃縮した。
【0268】
フローサイトメトリー
選択したファージ、組換えナノボディ及び装飾したリポソームの結合検証を、Rh4-FR4wt細胞及びRh4-FR4ko細胞で実施した。FGFR4に結合する選択したファージクローンの特異性は、96ウェルプレート(Becton Dickinson社)でのフローサイトメトリーによって決定した。Rh4-FR4wt細胞又はRh4-FR4ko細胞の細胞表面染色は、1% FBSを補足したPBS中で、氷上で実施した。80μLファージ+20μL PBS/1%ミルクを、氷上で1時間、1×105個の細胞上でインキュベートした。PBS中での2回の洗浄後、ファージ結合は、氷上で1時間、1:250希釈の抗M13抗体(27-9420-01;GE healthcare社)、次いで45分間、1:400希釈のA488コンジュゲート抗マウス抗体(715-545-151;Jackson ImmunoResearch, Europe Ltd)によって検出した。試料は、2回洗浄後、MACSQuantサイトメーター(Miltenyi社)でのフローサイトメトリーによって解析し、結果はFlowJoソフトウェア(BD Biosciencess社、France)によって解析した。ファージディスプレイ抗mCherryナノボディを陰性対照として使用し24、陽性対象として、本発明者らは抗FGFR4抗体(BT53、J. Khan lab, NCI、Bethesda、MDによって親切に提供された)を使用した。組換えナノボディの結合試験のため、細胞をAccutase(Stemcell Technologies社)によってはがし、PBSで洗浄した。以下の全ての工程は、氷上で実施した:4×105個の細胞を、1時間、30μg/mlの濃度のナノボディとインキュベートし、PBSによって1回洗浄し、さらに30分間、抗HisタグFITC標識抗体(LS-C57341、LSBioscience社、1:10希釈)とインキュベートした。細胞をPBSでもう1回洗浄し、解析した。96ウェルプレート中の細胞に、標的化リポソームを最終脂質濃度0.5mMで添加し、37℃及び5% CO2で2時間インキュベートした。細胞をPBSで2回洗浄し、Accutaseによってはがした。全てのフローサイトメトリー測定は、Fortessaフローサイトメーター(BD Biosciences社)によって実施し、データはFlowJo(商標)10.4.1ソフトウェアを使用して解析した。
【0269】
受容体活性化アッセイ
FGFR4活性化へのナノボディの効果を試験するため、6×104個のRh30-FR4wt細胞及びRh30-FR4ko細胞を24ウェルプレートにプレートした。次の日、FBS不含培地中の細胞に、ナノボディを10μMの濃度で添加し、10分間の50nM組換えヒトFGF19(Peprotech社)による刺激の前に、37℃で1時間インキュベートした。細胞を氷冷のPBSによってすぐに洗浄し、Tris/RIPA緩衝液(50mM Tris HCl、pH7.5、150mM NaCl、1% NP40、0.5% Na-デオキシコール酸塩、0.1% SDS、1mM EGTA、標準的なプロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤を含む)中で溶解した。全細胞抽出物は、次いでウェスタンブロッティングによって解析した。
【0270】
ウェスタンブロッティング
SDS-PAGE試料を、4~12%のNuPAGE Bis-Trisゲル(Thermo Fisher Scientific社)上で分離し、Trans-Blot Turbo Transfer Blotメンブレン(Biorad社)上にブロットした。室温で1時間、ブロッキング緩衝液(5%ミルク/TBST)によってメンブレンをブロッキングした後、一次抗体を1:1000希釈で添加し、4℃で終夜インキュベートした。HRPコンジュゲート二次抗体をブロッキング緩衝液で1:10,000に希釈し、室温で1時間、洗浄したメンブレンに添加した。化学発光は、ChemiDoc(商標)Touch Imaging system(BioRad社)でAmersham(商標)ECL(商標)検出試薬(GE Healthcare社)又はSuperSignal(商標)West Femto Maximum Sensitivity Substrate(ThermoFisher Scientific社)とのインキュベーション後に検出した。使用した一次抗体は、ホスホ-p44/42 MAPK Thr202/Tyr204(#9101)、β-チューブリンD3U1W(#86298)、FGF受容体1 D8E4(#9740)(全てCell Signaling Technology社製)、FGF受容体2 C-17(sc-122)、FGF受容体3 B9(sc13121)及びFGF受容体4 A-10(sc-136988)(全てSanta Cruz Biotechnology社製)であった。二次抗体は、抗ウサギIgG(#7074、Cell Signaling Technology社)及び抗マウスIgG(#7076、Cell Signaling Technology社)であった。
【0271】
表面プラズモン共鳴分光法
シングルサイクルカイネティクス解析は、300mM NHS(N-ヒドロキシスクシンイミド)と50mM EDC(N-エチル-N'-(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)の混合物によって活性化したCMD200Mセンサーチップ(XanTec bioanalytics GmbH)上でBIAcore T200装置(GE Healthcare社)によって実施した。組換えFGFR1、FGFR2、FGFR3及びFGFR4(G&P Biosciences社)を活性化したバイオセンサー(800~12,000RU;1RU=1pg/mm2)上に固定化し、1Mエタノールアミンによるブロッキング工程へと続いた。チップあたり1つの流路を参照として使用し、バックグラウンド補正を提供した。ナノボディを、5つの異なる濃度で注入し、解離相へと続いた。Koff率は、最後の注入後の最終解離工程から決定した。FGFR4による測定は、強い結合及び表面からの不完全な解離により、新しく固定化したタンパク質上の各ナノボディについて実施した。固定化流速は5μl/分であり、結合試験は30μl/分で実施した。結合パラメーターは、BIA評価ソフトウェアの異種リガンドモデルフィットによって決定した。黒い曲線は、測定したデータを表し、赤い曲線は実行したフィット解析を示す。
【0272】
蛍光標識したVCR負荷リポソームの調製
リポソームの産生及びビンクリスチン負荷は、わずかに改変して、記載したように実施した23。リポソームは、それぞれ49.8:45:4:1:0.2mol%の比で、卵由来スフィンゴミエリン(Lipoid GmbH)、コレステロール(Sigma Aldrich社)、PEG-セラミド(N-パルミトイル-スフィンゴシン-1-[スクシニル[メトキシPEG-2000]])、DSPE-PEG-マレイミド(1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[マレイミド(ポリエチレングリコール)-2000])(両方ともAvanti Polar Lipids社)及びDiR(1,1'-ジオクタデシル-3,3,3',3'-テトラメチルインドトリカルボシアニンヨウ化物)(Thermo Fisher Scientific社)によるフィルム水和/押出成形法によって産生した。脂質フィルムは、クエン酸緩衝液(250mM、pH3)によって水和し、濃度70mMの全脂質を生じる。次に、6回の凍結融解サイクル並びにLIPEX(登録商標)Thermobarrel押し出し機(Evonik Nutrition and Care GmbH)及び100nm孔径のポリカルボネートメンブレン(Whatman社)による10回の押出成形工程を実施した。膜貫通pH勾配は、PD MidiTrap(商標)Sephadex G-25カラム(GE Healthcare Lifesciences社)によるゲル排除クロマトグラフィーを介して生成した。カラムは、カップリング緩衝液(PBS、pH7.0)によって調整し、溶出したリポソーム懸濁液(14mM)をビンクリスチンカプセル化のために使用した。薬物対脂質モル比0.05のため、1mlのリポソームを、カップリング緩衝液中で希釈した1mlの0.7mM VCR(VincristineTeva、Teva Pharma AG)と混合し、65℃で1時間インキュベートした。非カプセル化VCRは、スピンフィルター遠心分離(Amicon Ultra 0.5、100kDa、Merck Millipore社)によって除去し、カプセル化反応は、11.2mM懸濁液に濃縮した。
【0273】
ナノボディによるリポソームの装飾
リポソーム表面へのナノボディのカップリングのため、タンパク質は、PD MiniTrap(商標)Sephadex G-25カラム(GE Healthcare Lifesciences社)により、カップリング緩衝液(PBS、pH7.0)へと緩衝液交換した。0.4nmol/μmolのナノボディの脂質に対する比を反応45のために選択し、リポソームあたりおよそ30ナノボディを生じた。反応は、4℃で終夜インキュベートし、洗浄及びスピンフィルター遠心分離(Amicon Ultra 0.5、100kDa、Merck Millipore社)による濾過の2工程によって、カップリングしていないナノボディを除去した。リポソームの平均直径及び多分散指数(PDI)を、動的光散乱法(Litesizer 500、Anton Paar社)によって測定した。リポソームにカップリングされたナノボディの量を推定するため、変性及び還元条件下で、標識したリポソーム及び規定した量の相当するナノボディによってゲル電気泳動を実施した。試料分離、ウェスタンブロッティング及び画像化は、Hisタグ抗体(ab 18184、Abcam社)によって上記のように実施した。
【0274】
VCR定量
ビンクリスチン濃度の定量は、RP-18(5μm、4.6×250mm)LiChrospher(登録商標)100カラム(Merck社)を有するHPLC(Ultimate 3000 HPLC system、Thermo Fisher Scientific社)によって実施した。890μg/ml~13.9μg/mlの範囲のビンクリスチンの検量線を用意し、リポソーム試料は解析のためにメタノールによって破壊した。ドキソルビシンは全ての試料に混合され、内部標準として寄与した。リン酸二カリウム緩衝液(50mM、pH3.2)を、流速1.5ml/分で30分間、アセトニトリル/UPW 90/10(v/v;32%)の混合物による移動相(68%)として使用した。20μlの各試料を注入し、検出は、UV-VIS検出器によって230nmで行った。薬物負荷効率は、スピンフィルター精製リポソーム懸濁液及び水性フロースルー中のビンクリスチン濃度を解析することによって決定した。カプセル化効率は、濾過したリポソーム及びフロースルーからのビンクリスチンの合わせた量と比較したリポソーム懸濁液中のビンクリスチンのパーセンテージを表した。
【0275】
共焦点顕微鏡
蛍光リポソームの細胞結合及び内部移行の検出は、共焦点レーザー走査顕微鏡(CLSM-Leica SP8 inverse)により、Rh4野生型及びRh4-FGFR4-ノックアウト細胞で実施した。40,000個の細胞を、4ウェル顕微鏡スライド(Falcon(商標)Chambered Cell Culture Slides、Fisher Scientific社)に播種した。次の日、標的化又は対照リポソームを、最終脂質濃度3mMで細胞に添加し、37℃及び5% CO2で2時間インキュベートした。次いで、ウェルをPBSで2回洗浄し、細胞を4%ホルムアルデヒド溶液で15分間固定した。PBSによるさらに2回の洗浄工程後、スライドはチャンバーケースから外し、DAPI含有培地(VECTASHIELD(商標)Hardset Antifade Mounting Medium with Phalloidin、Vector Laboratories社)によってマウントした。顕微鏡画像化は、63×対物レンズ(HC PL APO CS2 63x/1.30)並びにDAPI及びDiR励起について、それぞれレーザーDiode405及びDiode638によって実施した。全ての画像は、ImageJによって処理した。
【0276】
CAR T細胞細胞傷害性アッセイ
2つの方法を使用して、RMS細胞に対するT細胞の細胞傷害性を評価した。生物発光アッセイのため、Rh4-FR4wt細胞及びRh4-FR4ko細胞はレンチウイルス粒子によって形質導入され、オペロン(P2A)として、3つのタンパク質、mtag BFP、赤色ホタルルシフェラーゼ及びピューロマイシン耐性遺伝子(BFP-P2A-Luciferase-P2A-Puromycin)を一緒に発現させた。完結に言うと、96ウェルViewPlate Black(Perkin-Elmer社)のDMEM完全培地中に標的細胞をプレートし(4000個の細胞/ウェル)、次の日、X-ViVO培地(DMEMと比較して2倍容積)中に指定した標的に対するエフェクターの比(E:T)で、エフェクター細胞(CD8+T細胞)を添加した。37℃及び5% CO2で、およそ72時間のインキュベーション後、ウェルをPBSで2回洗浄し、PBS中1~2mg/mLのルシフェリン基質(Perkin Elmer社)を、FLUOstar OPTIMA(BMG LabTech社)による発光測定の前に10分間(37℃)添加した。細胞生存のパーセンテージは、各ポイントでの発光値を取り、それを得られた最高の発光値によって割ることにより算出した。リアルタイム細胞死測定は、xCELLigence real-Time Analyzer System(ACEA Biosciences社)によって実施した。完結に言うと、標的細胞を16ウェルE-プレート(ACEA Biosciences社)のDMEM完全培地中にプレートし(10,000個の細胞/ウェル)、次の日、X-Vivo培地(DMEMと比較して2倍容積)中に指定したE:T比で、エフェクター細胞を添加した。細胞指数(相対インピーダンス)を、37℃及び5% CO2で約4日間、15分ごとにリアルタイムでモニターした。曲線内の水平線は、アッセイ中に使用した二重のウェルのSDを示す。
【0277】
結果
FGFR4特異的ナノボディのファージディスプレイ選択
FGFR4結合ナノボディのスクリーニングは、2つの合成ファージディスプレイライブラリー、ヒト化sdAbライブラリーNaLi-H124及び完全ヒト化sdAbライブラリーGimliで実施した。本発明者らは、組換えFGFR4に対する3回のバイオパニングによって、2つの独立したファージディスプレイ選択を実施した(図1)。FGFR4に対する結合特異性を検証するため、本発明者らは、CRISPR/Cas9によってFGFR4ノックアウト細胞RMS細胞を作成し、Rh4 FGFR4野生型細胞(Rh4-FR4wt)及びRh4 FGFR4ノックアウト細胞(Rh4-FR4ko)へのそれらの結合についてのそれぞれのスクリーニングからの80個のファージクローンを試験した。フローサイトメトリー解析は、Rh4-FR4wt細胞のみに結合するNaLi-H1ライブラリーから24個の及びGimliライブラリーから55個のファージクローンを明らかにした。79個のファージクローンのサンガーシークエンシングは、NaLi-H1からの12個及びGimliライブラリーからの28個のユニークなナノボディを確認した。次に、フローサイトメトリーによってRh4-FR4wtに最も結合することが示された(データは示さない)各ライブラリーからの4個のファージクローン(すなわち、NaLi-H1:A8、B1、B5、C3;Gimli:A4、F8、F11、H2)を組換えによって発現させた。陰性対照として、本発明者らは、抗mCherryナノボディ(mCh)24を発現させた。およそ17kDaの組換えナノボディは、C末端Myc/6×Hisタグ及びリポソーム表面へのマレイミドカップリングのための更なるシステインを持って発現するように操作された。6×Hisタグ精製及びサイズ排除クロマトグラフィーは、1リットルの細菌培養あたり3~16mgの範囲の収率で高純度のタンパク質を生じた(補遺、図2)。
【0278】
選択したナノボディはRMS細胞に結合し、受容体シグナル伝達を阻害する
細胞表面に発現したFGFR4への組換えナノボディの結合の検証は、フローサイトメトリーによってRh4-FR4wt及びRh4-FR4ko細胞で実施した。FITC標識抗6×Hisタグ抗体を使用して、表面結合ナノボディを検出した。試験した4つの組換えナノボディは、Rh4-FR4wt細胞への顕著な結合を示さなかったが(C3、A4、F11、H2、データは示さない)、組換えナノボディA8、B1、B5及びF8は、Rh4-FR4wt細胞に特異的な結合を示し、Rh4-FR4ko細胞には結合しなかった(図2A)。予想通り、抗mCherry陰性対照ナノボディは、Rh4-FR4wt細胞にもRh4-FR4ko細胞にも結合しなかった。Rh4-FR4wt細胞とインキュベートした4つのFGFR4結合剤の平均蛍光強度(MFI)は、400の範囲であるが、抗mCherry陰性対照、又は抗6×Hisタグ抗体のみが200のMFIを示し(図2B)、B5候補のわずかに高い値により、Rh4-FR4ko細胞への結合と類似していた。
【0279】
FGFR4の細胞外ドメインは、FGFR1、2、及び3と高いアミノ酸相同性を有する。RMS腫瘍の最適な標的化のため、本発明者らは、FGFR4のみに特異的な結合剤を同定することを目的とした。Rh4-FR4wt細胞及びRh4-FR4ko細胞は両方とも、FGFR1及びFGFR2を発現し、Rh4-FR4koレベルがRh4-FR4wtよりもわずかに低い場合でさえも(補遺、図1)、本発明者らは、ナノボディがFGFR4に特異的であり、FGFR1又はFGFR2に結合しないと結論づけた。合わせると、RMS細胞上のナノボディの結合検証は、4つのFGFR4標的化ナノボディ候補を明らかにした。
【0280】
異常なFGFRシグナル伝達は、様々な型のがんと関係がある。RMSでは、過剰発現の他にも、FGFR4は、全ての腫瘍のうち6%を超えて活性化変異を持ち、細胞内でのシグナル伝達を促進する構成的腫瘍を生じることが示された3,32。FGFR4は、4つの主要なシグナル伝達経路:RAS-MAPK、PI3K-AKT、PLCγ及びSTAT33を開始する。したがって、本発明者らは、FGFR4活性化及び下流シグナル伝達への選択したナノボディの効果を試験した。FGFR4活性化アッセイは、Rh30細胞で実施し、ERK 1/2リン酸化は読出しとして使用した。本発明者らは、ナノボディの事前添加あり又はなしで、Rh30細胞を、FGFR4の特異的リガンドであるFGF19とインキュベートした(図2C)。予想通り、FGF19は、ホスホ-ERK1/2レベルの急激な増加をもたらした。注目すべきことに、Rh30細胞を選択したナノボディと前インキュベートした場合、キナーゼ活性化は不在であるが、陰性対照抗mCherryは、ERK 1/2リン酸化をブロックしなかった。これらのデータは、選択したナノボディが、RMS細胞においてFGFR4下流のMAPK経路の活性化をブロックする能力を有することを示す。
【0281】
FGFR4へのナノボディの高親和性結合
FGFR4へのナノボディの結合親和性を決定するため、本発明者らは、組換えFGFR4により、表面プラズモン共鳴(SPR)分光法を実施した。上ですでに述べたように、FGFR1及びFGFR2はRh4-FR4ko細胞上で発現され、フローサイトメトリー解析は、細胞へのナノボディの結合を示さなかった。FGFR4特異性の更なる確認のため、本発明者らは、組換えFGFR1、FGFR2及びFGFR3による親和性測定も含めた。ナノボディA8、B1、B5、F8、及びmChは、FGFRコートしたチップ上に5つの異なる濃度で注入した。陰性対照mChを除いて、FGFR4結合について算出したKD値は、ナノ及びピコモル範囲であった(図3;Table2(表2))。親和性パラメーターは、1:1結合モデルにはフィットできず、最高フィットは、BIAevaluationソフトウェアの異種性リガンドモデルによって得られ、各候補について2つのKD値を生じた。受容体ファミリーアイソフォームFGFR1及びFGFR3への親和性の測定は、予想通り、解析物の結合を示さなかった。SPRデータは、FGFR4への全ての候補の強い結合を確認し、B1及びF8が厳しいFGFR4特異性を有することが示唆された。
【0282】
【表2】
【0283】
VCR負荷標的化リポソームの調製及び特徴付け
先の研究では、本発明者らは、リポソームVCRの製剤を最適化した23。本明細書では、活発な標的化リポソームを産生するため、本発明者らは、先端部に反応性マレイミド基を有するDSPE-PEG脂質を導入した。C末端に遊離のシステインを持つナノボディを、次いで、リポソーム表面にカップリングさせた。卵由来スフィンゴミエリン、コレステロール、PEG-セラミド、DSPE-PEG-マレイミド及びDiR(49.8:45:4:1:0.2mol%)から構成される蛍光リポソームは、フィルム水和/押出成形法によって調製し、VCRカプセル化及びナノボディカップリングへと続いた。装飾したリポソームL-A8、L-B1、L-B5、L-F8及びL-mChの動的光散乱測定は、およそ120~135nmの流体力学的径及び0.03~0.13の低PDI値を明らかにした(図4A、Table2(表2))。
【0284】
リポソームにカップリングされたナノボディは、抗6×Hisタグ抗体によるウェスタンブロッティングによって解析した。リポソーム懸濁液の試料は、100ngの理論量のナノボディによって調製した。カップリング効率を推定するため、本発明者らは100ng及び50ngの相当する組換えナノボディをウェスタンブロットゲルにロードした(図4B)。全てのリポソーム懸濁液は、DSPE-PEG-マレイミド(2.9kDa)に結合した1つのナノボディ分子(17kDa)に相当する、見かけサイズ25kDaの優勢な画分の泳動を示した。2つの更なるバンドが、より大きなサイズに現れ、ナノボディあたり2つ又は3つの脂質分子の複合体の形成を示している。C末端システインの他、ナノボディは2つの更なるシステインを有し、分子間ジスルフィド結合を形成し、マレイミド基の可能な反応部位を示す。特に、全てのリポソーム試料中に、遊離のナノボディに相当するわずかなバンドのみがあった。
【0285】
VCRのカプセル化効率を決定するため、本発明者らは、VCRカプセル化反応及び最終精製後の全ての標的化リポソームによってHPLC解析を実施した。VCRカプセル化効率は高く、97.8%の薬物がナノベシクルに封入され、標的化リポソームのVCR濃度は250~320μg/mlの範囲であった(Table3(表3))。
【0286】
合わせると、本発明者らは、試料間で類似の薬物濃度及びサイズ分布の蛍光標識したVCR負荷及びナノボディコートリポソームを産生することができた。
【0287】
【表3】
【0288】
FGFR4標的化リポソームは、FGFR4陽性RMS細胞に特異的に結合し、内部移行する
次に、本発明者らは、リポソーム表面上のナノボディが、FGFR4を発現するRMS細胞に依然として結合できるか試験した。Rh4-FR4wt細胞及びRh4-FR4ko細胞は、通常の細胞培養条件下で、FGFR4標的化リポソーム又はmCherry標的化対照リポソームと2時間インキュベートした。DiR蛍光を、続いてフローサイトメトリーによって解析した(図5)。FGFR4標的化リポソームとインキュベートしたRh4-FR4wtは、蛍光シグナルの増加を示し、FGFR4ヘの結合を示しているが、FGFR4標的化リポソームとインキュベートしたRh4-FR4ko細胞では蛍光の増加は観察されなかった。対照mCherry標的化リポソームとインキュベートしたRh4-FR4wtは、50以下の、未処置細胞と類似のMFIを示した。FGFR4標的化リポソームの間では、MFI値は、L-A8、L-B1、L-B5及びL-F8について、それぞれ300、600、1700及び1400の間の範囲であり、したがって、L-mChのMFI値より6、12、34及び28倍増加した。これらの結果は、ナノボディが、VCR負荷リポソームの表面にカップリングされた場合、Rh4-FR4wtに依然として特異的に結合することができるが、結合強度は4つのナノボディ間で異なったことを示す。
【0289】
薬物負荷リポソームの受容体媒介性内部移行が、細胞内薬物量を増加させ、したがって、それらの治療効果を増強させる34ことは、周知の現象である。したがって、本発明者らは、共焦点顕微鏡により、FGFR4標的化リポソームの内部移行を調べた。リポソームは、Rh4-FR4wt細胞及びRh4-FR4ko細胞上で2時間インキュベートした。続いて、固定した細胞の画像は、FGFR4標的化ナノボディによってコートされた全てのリポソームの明確な細胞内取り込みを明らかにした。注目すべきことには、Rh4-FR4wt細胞をL-mChとインキュベートした場合、蛍光シグナルは検出されなかった(図6)。フローサイトメトリーデータと一貫して、L-A8及びL-B1は、弱い細胞内蛍光を示した。際だったことに、Rh4-FR4ko細胞では蛍光が観察されず、FGFR4へのそれらの特異性を支持する(補遺、図4)。したがって、FGFR4標的化リポソーム製剤は、FGFR4を過剰発現するRMS腫瘍細胞のための特異的薬物送達プラットフォームを示し、それらの速く、特異的な受容体媒介性細胞内取り込みによって特徴付けられる。
【0290】
RMS細胞のFGFR4-CAR T細胞標的化
選択したナノボディの治療能を調べるため、本発明者らは、キメラ抗原受容体(CAR)を生成し、FGFR4に対するT細胞を産生した。A8ナノボディを使用して、現在血液のがん治療で使用されるCD19-CAR T構築物25,35(Celgene, Juno Therapeutics and Kymriad, Novartis社)中の、CD19標的化一本鎖抗体断片(scFv)を置換した。生じるCAR(CAR-sdAbaFGFR4)は、mycタグA8の後にCD8アルファのヒンジ及び膜貫通ドメイン並びに4-1BB及びCD3ゼータの細胞内シグナル伝達ドメインで構成される(図7A)。CD8+T細胞は、4人の健康なドナーから単離され(ドナーA、B、C及びD)、FGFR4又はCD19標的化CARによって形質導入された。形質導入効率は、mtagBFP発現によって測定され、約80% FGFR4-CAR陽性細胞及び約60% CD19-CAR陽性細胞を示した(図7B、補遺、図5A)。Rh4-FR4wt細胞及びRh4-FR4ko細胞に対するCAR T細胞の細胞傷害性能を評価するため、本発明者らは、生物発光及びリアルタイム細胞死アッセイを適用した(図7C、D)。RMS細胞は、異なる比率(E:T-エフェクターT細胞対標的RMS細胞)でCAR T細胞と共培養し、更なる対照として、本発明者らは非形質導入CD8+T細胞を使用した。生物発光アッセイは、ドナーA及びドナーBからのT細胞によって実施し、FGFR4-CAR T細胞によるRh4-FR4wtの特異的死滅を明らかにした(図7C)。ドナーBからのT細胞は、最少のE:T比である4:1で、ほぼ100%死細胞の高い細胞傷害効率を示した。T細胞間で、32:1のE:T比で細胞死を比較することにより、本発明者らは、ほぼ100%死細胞によりFGFR4-CAR T細胞の選択的細胞傷害効果を確かめることができた。CD19-CAR T細胞及びCD8+対照T細胞は、およそ20~35%死細胞の値にだけ達した。Rh4-FR4ko細胞に対するT細胞媒介毒性は、CARとCD8+対照T細胞の両方について類似していた。ドナーB、C及びDからのCARによる細胞死のリアルタイム解析は、FGFR4-CAR TによるRh4-FR4wtの選択的細胞死により、類似の結果を示したが、Rh4-FR4ko細胞の細胞傷害性は無いか又は減少した(図7D、補遺、図5B)。合わせると、これらのデータは、選択したナノボディA8が、in vitroでFGFR4発現RMS細胞に対する顕著な抗腫瘍活性を媒介するFGFR4-CAR T細胞を生成することができ、したがって、有望な更なる標的化処置オプションを提示することを示した。
【0291】
考察
本明細書において、本発明者らは、ナノボディによりFGFR4を標的化することによりRMSの2つの治療戦略の開発を報告し、それらをRMS細胞で検証した。本発明者らは、4つのFGFR4結合ナノボディを選択し、それらを、活性薬物送達及び細胞媒介性免疫療法について、in vitroで試験した。VCR負荷蛍光標識FGFR4標的化リポソームは、RMS細胞とインキュベートした場合、選択的結合及び内部移行を示した。さらに、本発明者らは、FGFR4発現RMS細胞に対して特異的細胞傷害性を生じる1つのナノボディ候補を有するFGFR4-CAR T細胞を生成することができた。
【0292】
4つの選択したナノボディA8、B1、B5及びF8は、FGFR4発現RMS細胞に結合するだけでなく、FGFR4-FGF19 MARKシグナル伝達軸をブロックすることもできる。本発明者らの目的は、その機能よりも活性薬物送達のためのFGFR4を標的化するナノボディを選択することであったが、受容体シグナル伝達がRMSにおける治療標的も提示し得ることに注目すべきである32,36。ARMSでは、FGFR4は融合タンパク質PAX3-FOXO137の直接標的遺伝子であり、ERMSでは、FGFR4は受容体の活性化変異を持つ12%の腫瘍によって頻繁に増幅される38~40。さらに、FGFR4は、RMS腫瘍形成に関係があるだけではない。FGFR4は、FGF19発現肝細胞癌及び頭頸部扁平上皮癌において腫瘍進行を駆動し41~43、全腫瘍のうちの0.5%がFGFR4に異常を示すと推定される44。選択したナノボディは、したがって、他のがんにおいて可能な治療アプローチとしても寄与し得る。
【0293】
FGFR4に結合するナノボディの表面プラズモン共鳴分光法は、およそナノからピコモルの強い親和性を明らかにした。測定したデータは、1:1結合モデルとフィットできなかった。最良フィットは、FGFR4へのナノボディの2つの別々の結合親和性パラメーターを示す異種リガンドモデルによって得られた。本発明者らは、他のアプローチは本発明者らの測定と対応していなかったため、組換えFGFR4を、アミン基結合によりセンサーチップ上の活性化カルボキシル基へと直接固定化しなければならなかった。したがって、センサーチップへのFGFR4の無方向性結合が、ナノボディ結合部位の完全又は部分的な立体障害をもたらし、異種結合パラメーターを生じることができる。これは、最大ナノボディ結合シグナルを表すRmax値を比較すると明らかであり、A8の親和性測定のため、本発明者らは、800 RU FGFR4をセンサーチップに固定化することができた。リガンドの推定分子量40kDa及びナノボディの17kDaにより、本発明者らは、340RUのRmaxを予測したが((MWFGFR4/MWNB)*800 RU)、実際には、44RUだけの値が達成された。本発明者らは、ナノボディ結合後に流れ出た細胞を完全には再生できなかったため、本発明者らは全ての測定を、各ナノボディについて新しく固定化したFGFR4によって実施した。これは、異なる量の固定化FGFR4を生じた。A8、B1及びB5解析は、およそ800RUのFGFR4で実施したが、F8及びmChについては、本発明者らはそれぞれ9000及び12,000RUを固定化した。そのような高リガンド密度での陰性対照mChの測定により、高ナノボディ濃度で非特異的な相互作用させた。これは、ナノボディ候補と比較して低く算出された親和性をもたらした。
【0294】
遊離及びリポソームコンジュゲートのナノボディの両方ともが、Rh4-FR4wt細胞に特異的に結合し、Rh4-FR4koには結合を示さなかった。
【0295】
リポソームVCRの製剤は、1mol%でのDSPE-PEG-マレイミドの導入によって改変した。本発明者らは、先に記載されたように23、同等の質、サイズ及び薬物負荷効率のリポソームを産生することができた。表面へのナノボディカップリングは、全脂質のμmolあたり0.4nmolのナノボディにより、Oliveiraと同僚45によって記載されたように実施し、高カップリング効率をもたらした。本発明者らは、カップリング反応内で、脂質に対するナノボディの高い比率も試験したが、これは、リポソームの沈殿をもたらした。リポソーム懸濁液中のほんのわずかなカップリングされていないナノボディは無視でき、細胞での本発明者らの結合検証と干渉しなかった。
【0296】
蛍光FGFR4標的化リポソームは、共焦点顕微鏡により、Rh4-FR4koには無い、細胞内のドット状構造によって表されるRh4-FR4wt細胞における非常に特異的な内部移行を示した。画像は、インキュベーションの2時間後に撮られ、高度に血管新生された腫瘍への薬物送達プラットドームに有利であり得る速い内部移行プロセスを示している。
【0297】
in vitro細胞アッセイは、薬物負荷ナノベシクルの治療効果を予測及び比較するのに好適ではなく、それは浸透及び保持効果の増強による13。本発明者らは、RMS Rh4-FR4wt細胞及びRh4-FR4ko細胞を、濃度を増加させた標的化リポソーム及びL-mChとインキュベートしたが、リポソーム及び細胞株間で細胞傷害効果に顕著な違いは見られなかった(データは示さない)。これらの結果は、リポソームが付着した細胞上で1時間又は2時間インキュベートされ、続いて培養、又は薬物放出の3日以内にリポソームの非特異的な取り込みを防ぐために洗い流された後でさえも得られた。細胞培養プレートへのリポソームの非特異的結合は、この解釈であり得る。したがって、RMSへのFGFR4標的化薬物送達の治療能はさらにin vivoで研究される必要がある。
【0298】
本発明者らは、Rh4-FR4wtに対する、ナノボディベースのFGFR4-CAR T細胞の選択的細胞媒介性細胞傷害性を検証することができた。本発明者らは、3人のCD8+ T細胞ドナーA、B及びC間の死滅効率にいくらかの違いを見たが、全てのFGFR4-CAR Tは、同じ特異性の傾向を示した。リアルタイム細胞解析は、CAR Tの細胞傷害性能をモニターする優れたツールを提示し、CD19-CAR T細胞に匹敵する、Rh4-FR4koへのFGFR4-CAR T細胞の効果が無いか減少したことを明らかにした。本発明者らは、RMS腫瘍が健康な組織と比較して異常に高いFGFR4発現を示すため39、FGFR4-CAR T細胞によるRMSの免疫ベースの処置が有望な可能性を持つと考える。ある特定の閾値レベルを超える高抗原密度が、有効なCAR T細胞活性化のために必要とされ、RMS処置のための治療濃度域を可能にすることが示された46,47
【0299】
RMSにおける異常なFGFR4発現及びシグナル伝達の同定以来、それは可能な治療標的として調べられてきた。小分子阻害剤PD173074による受容体の標的化は、ARMS担持マウスにおける腫瘍退縮を誘導するが、毒性副作用が伴うことが報告された48。Li及び同僚は、多標的キナーゼ阻害剤ポナチニブの治療効果を調べた36。ERMS及びARMSによるin vitro実験は、低ナノモル範囲のIC50値を有する阻害剤に対する細胞の高い感受性を示した。さらに、彼らは、FGFR4突然変異を有するRMSを担持するマウスにおいてのみ、阻害剤が腫瘍増殖を遅延させることを示すことができた。更なる研究では、FGFR4下流シグナル伝達経路PI3K-AKT-mTOR及びRAS-MEK-ERKは、RMSにおいて同時に標的化され、in vitro及びin vivoで相乗効果を示した49。FGFR4抗体に基づくRMSの治療は、抗体薬コンジュゲート(ADC)50~52として、又はキメラ抗原受容体(CAR)上に移植してCAR T細胞を生成する抗原結合ドメイン53による有望な結果により調べられた。本発明者らの研究により、本発明者らは、本明細書において、活発な薬物送達及びT細胞動員による、ナノボディに基づくFGFR4標的化の新規の有望な戦略を示す。
【0300】
要約すると、本発明者らは、受容体シグナル伝達への阻害効果を有するFGFR4特異的ナノボディを選択した。さらに、本発明者らは、標的化リポソームVCRによるRMS処置のための有効な薬物送達プラットフォームを開発し、in vitroでのFGFR4-CAR T細胞による有効な細胞媒介性細胞傷害性を示すことができた。腫瘍標的化アプローチは、RMS in vivoモデルにおいて試験し、他のFGFR4発現腫瘍にさらに適用され得る必要がある。
[参考文献]
【0301】
配列表
【表4】
【0302】
【表5】
【0303】
【表6】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
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【国際調査報告】