(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-04
(54)【発明の名称】ウイルスベクター用製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 35/76 20150101AFI20230627BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230627BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20230627BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20230627BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230627BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20230627BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230627BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230627BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20230627BHJP
A61K 35/761 20150101ALI20230627BHJP
A61K 35/763 20150101ALI20230627BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230627BHJP
C12N 15/86 20060101ALN20230627BHJP
C07K 14/765 20060101ALN20230627BHJP
C07K 14/77 20060101ALN20230627BHJP
【FI】
A61K35/76
A61K9/08
A61K47/42
A61K47/36
A61K47/02
A61K47/18
A61K47/12
A61K47/26
A61K9/19
A61K35/761
A61K35/763
A61P43/00
C12N15/86 Z
C07K14/765
C07K14/77
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022572521
(86)(22)【出願日】2021-05-28
(85)【翻訳文提出日】2022-11-25
(86)【国際出願番号】 US2021034943
(87)【国際公開番号】W WO2021243264
(87)【国際公開日】2021-12-02
(32)【優先日】2020-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】391003864
【氏名又は名称】ロンザ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LONZA LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】アーメド・ベシア
(72)【発明者】
【氏名】ヨーナス・コスト
(72)【発明者】
【氏名】エディ・ベルティエ
(72)【発明者】
【氏名】ハンス-クリスティアン・マーラー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA31
4C076CC26
4C076CC50
4C076DD01F
4C076DD09F
4C076DD23
4C076DD26Z
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4C076FF61
4C076FF63
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087ZC80
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA70
4H045EA20
(57)【要約】
アルブミンなどの球状タンパク質を含むウイルスベクター製剤が提供される。ヒアルロン酸などの多糖を含むウイルスベクター製剤も提供される。提供されるウイルスベクター製剤は、増加した安定性及び低減したウイルスベクター凝集を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルスベクター、
緩衝液、及び
球状タンパク質を含む、製剤。
【請求項2】
前記球状タンパク質が、アルブミン、α-フェトプロテイン、ビタミンD結合タンパク質、アファミン、グロビンタンパク質、αグロブリン、βグロブリン、γグロブリン、又はそれらの組み合わせである、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記製剤が、液体である、請求項1又は2に記載の製剤。
【請求項4】
前記製剤が、約0.1%~約5.0%の球状タンパク質を含む、請求項3に記載の製剤。
【請求項5】
前記製剤が、約0.5%~約2.0%の球状タンパク質を含む、請求項3に記載の製剤。
【請求項6】
前記製剤が、約0.75%~約1.5%の球状タンパク質を含む、請求項3に記載の製剤。
【請求項7】
前記製剤が、約0.8%~約1.2%の球状タンパク質を含む、請求項3に記載の製剤。
【請求項8】
前記製剤が、約1.0%の球状タンパク質を含む、請求項3に記載の製剤。
【請求項9】
ウイルスベクター、
緩衝液、及び
アルブミンを含む、製剤。
【請求項10】
前記アルブミンが、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、オボアルブミン、又はラクトアルブミンである、請求項1に記載の製剤。
【請求項11】
前記製剤が、液体である、請求項9又は10に記載の製剤。
【請求項12】
前記製剤が、約0.1%~約5.0%のアルブミンを含む、請求項11に記載の製剤。
【請求項13】
前記製剤が、約0.5%~約2.0%のアルブミンを含む、請求項11に記載の製剤。
【請求項14】
前記製剤が、約0.75%~約1.5%のアルブミンを含む、請求項11に記載の製剤。
【請求項15】
前記製剤が、約0.8%~約1.2%のアルブミンを含む、請求項11に記載の製剤。
【請求項16】
前記製剤が、約1.0%のアルブミンを含む、請求項11に記載の製剤。
【請求項17】
ウイルスベクター、
緩衝液、及び
多糖を含む、製剤。
【請求項18】
前記多糖が、ヒアルロン酸ナトリウム、ヘパラン、ヘパラン硫酸、ヘパリン、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン、デルマタン硫酸、ケラタン、ケラタン硫酸、アルギン、キトサン、キトサン硫酸、デキストラン、デキストラン硫酸、又はそれらの組み合わせである、請求項17に記載の製剤。
【請求項19】
前記多糖が、ヒアルロン酸ナトリウムである、請求項17に記載の製剤。
【請求項20】
前記製剤が、液体である、請求項17~19のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項21】
前記製剤が、約0.01ng/mL~約1mg/mLの多糖を含む、請求項20に記載の製剤。
【請求項22】
前記製剤が、約0.05ng/mL~約0.5mg/mLの多糖を含む、請求項20に記載の製剤。
【請求項23】
前記製剤が、約0.1ng/mL~約0.3mg/mLの多糖を含む、請求項20に記載の製剤。
【請求項24】
前記製剤が、約0.15ng/mL~約0.25mg/mLの多糖を含む、請求項20に記載の製剤。
【請求項25】
前記製剤が、約0.2ng/mLの多糖を含む、請求項20に記載の製剤。
【請求項26】
前記製剤が、約0.01ng/mL~約1mg/mLのヒアルロン酸ナトリウムを含む、請求項20に記載の製剤。
【請求項27】
前記製剤が、約0.05ng/mL~約0.5mg/mLのヒアルロン酸ナトリウムを含む、請求項20に記載の製剤。
【請求項28】
前記製剤が、約0.1ng/mL~約0.3mg/mLのヒアルロン酸ナトリウムを含む、請求項20に記載の製剤。
【請求項29】
前記製剤が、約0.15ng/mL~約0.25mg/mLのヒアルロン酸ナトリウムを含む、請求項20に記載の製剤。
【請求項30】
前記製剤が、約0.2ng/mLのヒアルロン酸ナトリウムを含む、請求項20に記載の製剤。
【請求項31】
前記製剤が、球状タンパク質及び多糖の両方を含む、請求項1~8及び17~30のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項32】
前記製剤が、アルブミン及び多糖の両方を含む、請求項9~30のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項33】
前記多糖が、ヒアルロン酸ナトリウムである、請求項31又は32に記載の製剤。
【請求項34】
前記製剤が、液体であり、前記製剤が、約2mM~約100mMの緩衝液を含む、請求項1~33のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項35】
前記製剤が、液体であり、前記製剤が、約5mM~約50mMの緩衝液を含む、請求項1~33のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項36】
前記製剤が、液体であり、前記製剤が、約15mM~約25mMの緩衝液を含む、請求項1~33のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項37】
前記製剤が、液体であり、前記製剤が、約20mMの緩衝液を含む、請求項1~33のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項38】
前記緩衝液が、リン酸ナトリウム、L-ヒスチジン、クエン酸ナトリウム、又はそれらの組み合わせである、請求項1~37のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項39】
糖を更に含む、請求項1~38のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項40】
前記製剤が、液体であり、前記製剤が、約50mM~約500mMの糖を含む、請求項18に記載の製剤。
【請求項41】
前記製剤が、液体であり、前記製剤が、約100mM~約400mMの糖を含む、請求項18に記載の製剤。
【請求項42】
前記製剤が、液体であり、前記製剤が、約250mM~約350mMの糖を含む、請求項18に記載の製剤。
【請求項43】
前記製剤が、液体であり、前記製剤が、約290mMの糖を含む、請求項18に記載の製剤。
【請求項44】
前記糖が、スクロース、ラクトース、グルコース、トレハロース、又はそれらの組み合わせである、請求項39~43のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項45】
前記糖が、スクロースである、請求項39~43のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項46】
界面活性剤を更に含む、請求項1~45のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項47】
前記製剤が、液体であり、前記製剤が、約0.01%~約0.1%の界面活性剤を含む、請求項46に記載の製剤。
【請求項48】
前記製剤が、液体であり、前記製剤が、約0.015%~約0.025%の界面活性剤を含む、請求項25に記載の製剤。
【請求項49】
前記製剤が、液体であり、前記製剤が、約0.02%の界面活性剤を含む、請求項25に記載の製剤。
【請求項50】
前記界面活性剤が、ポリソルベート80、ポリソルベート20、又はKolliphor P188である、請求項46~49のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項51】
塩化ナトリウムを更に含む、請求項1~49のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項52】
前記製剤が、液体であり、前記製剤が、約10mM~約500mMの塩化ナトリウムを含む、請求項51に記載の製剤。
【請求項53】
前記製剤が、液体であり、前記製剤が、約50mM~約300mMの塩化ナトリウムを含む、請求項51に記載の製剤。
【請求項54】
前記製剤が、液体であり、前記製剤が、約100mM~約200mMの塩化ナトリウムを含む、請求項51に記載の製剤。
【請求項55】
前記製剤が、液体であり、前記製剤が、約150mMの塩化ナトリウムを含む、請求項51に記載の製剤。
【請求項56】
前記製剤が、凍結乾燥固体である、請求項1、2、9、10、又は17~19のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項57】
前記緩衝液が、リン酸ナトリウム、L-ヒスチジン、トリス、コハク酸塩、クエン酸ナトリウム、又はそれらの組み合わせである、請求項56に記載の製剤。
【請求項58】
糖を更に含む、請求項56又は57に記載の製剤。
【請求項59】
前記糖が、スクロース、ラクトース、グルコース、トレハロース、又はそれらの組み合わせである、請求項58に記載の製剤。
【請求項60】
前記糖が、スクロースである、請求項58に記載の製剤。
【請求項61】
界面活性剤を更に含む、請求項56~60のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項62】
前記界面活性剤が、ポリソルベート80、ポリソルベート20、又はKolliphor P188である、請求項61に記載の製剤。
【請求項63】
塩化ナトリウムを更に含む、請求項56~62のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項64】
前記製剤が、約50nm以下のZ平均値を有する、請求項1~63のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項65】
前記製剤が、約40nm以下のZ平均値を有する、請求項1~63のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項66】
前記製剤が、約31nm以下のZ平均値を有する、請求項1~63のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項67】
前記製剤が、約25nm以下のZ平均値を有する、請求項1~63のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項68】
前記製剤が、約20nm以下のZ平均値を有する、請求項1~63のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項69】
前記製剤が、約0.5以下の多分散性指数を有する、請求項1~68のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項70】
前記製剤が、約0.35以下の多分散性指数を有する、請求項1~68のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項71】
前記製剤が、約0.3以下の多分散性指数を有する、請求項1~68のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項72】
前記ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、又はハイブリッドベクターである、請求項1~71のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項73】
前記ウイルスベクターが、アデノウイルスベクターである、請求項1~72のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項74】
前記製剤が、ヒトへの投与のために製剤化される、請求項1~73のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項75】
約10×10
8vg/mL~約10×10
13vg/mLのウイルスベクター、
約5mM~約40mMのリン酸ナトリウム、
約200mM~約400mMのスクロース、及び
約0.1%~約5.0%のアルブミンを含む、製剤。
【請求項76】
前記アルブミンが、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、又はそれらの組み合わせである、請求項75に記載の製剤。
【請求項77】
約10×10
9vg/mL~約10×10
11vg/mLの前記ウイルスベクターを含む、請求項75又は76に記載の製剤。
【請求項78】
前記ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、又はハイブリッドベクターである、請求項75~77のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項79】
約10×10
8vg/mL~約10×10
13vg/mLのウイルスベクター、
約5mM~約40mMのリン酸ナトリウム、
約200mM~約400mMのスクロース、及び
約0.05mg/mL~約0.4mg/mLのヒアルロン酸ナトリウムを含む、製剤。
【請求項80】
約10×10
9vg/mL~約10×10
11vg/mLの前記ウイルスベクターを含む、請求項79に記載の製剤。
【請求項81】
前記ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、又はハイブリッドベクターである、請求項79又は80に記載の製剤。
【請求項82】
前記ウイルスベクターが、ウイルス粒子中にある、請求項1~81のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項83】
前記ウイルス粒子が、感染性ウイルス粒子である、請求項82に記載の製剤。
【請求項84】
製剤中のウイルスベクターの凝集を低減する方法であって、請求項1~83のいずれか一項に記載の製剤のいずれか中に前記ウイルスベクターを製剤化することを含む、方法。
【請求項83】
ウイルスベクター製剤を調製する方法であって、前記方法が、
a.前記ウイルスベクターを含む組成物を得ることと、
b.前記製剤を形成するために前記(a)の組成物に球状タンパク質又は多糖を添加することと、を含み、前記球状タンパク質又は多糖が、約50nm以下のZ平均値を提供するのに十分な量で添加される、方法。
【請求項84】
前記球状タンパク質が、アルブミンである、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記アルブミンが、前記製剤の約0.1%~約5.0%である、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記多糖が、ヒアルロン酸ナトリウムである、請求項83に記載の方法。
【請求項87】
前記ヒアルロン酸ナトリウムが、前記製剤の約0.05mg/mL~約0.4mg/mLのヒアルロン酸ナトリウムである、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記製剤を1週間以上保存することを更に含む、請求項83~87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
前記製剤を1ヶ月を超えて保存することを含む、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記ウイルスベクターが、ウイルス粒子中にある、請求項83~89のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
ウイルスベクター製剤を調製する方法であって、前記方法が、
a.前記ウイルスベクターを含む組成物を得ることと、
b.前記製剤を形成するために前記(a)の組成物に球状タンパク質又は多糖を添加することと、を含み、前記球状タンパク質又は多糖が、約0.5以下の多分散性指数を提供するのに十分な量で添加される、方法。
【請求項92】
前記球状タンパク質が、アルブミンである、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記アルブミンが、前記製剤の約0.1%~約5.0%である、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記多糖が、ヒアルロン酸ナトリウムである、請求項91に記載の方法。
【請求項95】
前記ヒアルロン酸ナトリウムが、前記製剤の約0.05mg/mL~約0.4mg/mLのヒアルロン酸ナトリウムである、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記製剤を1週間以上保存することを更に含む、請求項91~95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項97】
前記製剤を1ヶ月を超えて保存することを含む、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記ウイルスベクターが、ウイルス粒子中にある、請求項91~97のいずれか一項に記載の方法。
【請求項99】
長期保存のためにウイルスベクター製剤を安定化する方法であって、前記方法が、
a.前記ウイルスベクターを含む組成物を得ることと、
b.前記製剤を形成するために前記(a)の組成物に球状タンパク質又は多糖を添加することであって、前記球状タンパク質又は多糖が、約0.5以下の多分散性指数を提供するのに十分な量で添加される、添加することと、
c.前記製剤を1週間を超えて保存することと、を含む、方法。
【請求項100】
前記製剤が、1ヶ月を超えて保存される、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
前記製剤が、前記(a)の組成物に前記球状タンパク質又は多糖を添加した後、凍結乾燥される、請求項99に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、ウイルスベクターを含む製剤に関する。製剤は、容易に投与される安定な製剤を提供するウイルスベクターの凝集を防止する薬剤を含む。
【背景技術】
【0002】
ウイルスベクターは、ワクチン及び遺伝子療法における治療用核酸の送達のためのビヒクルである。ウイルスベクターを作製するために、産生細胞を増殖させ、トランスフェクトし、典型的にはプラスミドである。次に、ウイルスベクターを細胞から回収し、使用のために製剤化する。凝集することなく高いベクター濃度を達成することは、ウイルスベクターの製造における重大な技術的障害である。
【0003】
ウイルス粒子は凝集体を形成することができ、これは、環境ストレス及び殺菌剤による分解に対する耐性を増加させる。凝集は、細胞種及び細胞関連不純物、ウイルス種、ウイルスの生化学的特性(例えば、ウイルスサイズ及び形状、等電点など)、生理化学的要因(例えば、pH、イオン強度)、及び動作要因(例えば、プロセス温度)によって影響を受ける。ウイルス凝集の研究は1950年代に始まったが、この現象は、ウイルスベクター製造における主要な課題の1つとして研究及び検討され続けている。
【0004】
ウイルス凝集は、治療薬の下流の処理及びその投与適合性に影響を及ぼす。ウイルス凝集は、静電的及び疎水的相互作用に起因して起こり、凝集したウイルス粒子は、下流の処理において合併症を引き起こし、濾過及びその後の精製ステップなどの膜ベースのプロセス中に、有意なベクター損失及び収率の低下をもたらし得る。更に、凝集は、最終製品の品質の指標を提供するウイルス感染性の読み取りに影響を与える。
【0005】
本発明の概要
本開示は、ウイルスベクター、緩衝液、及び球状タンパク質を含む製剤に関する。実施形態では、球状タンパク質は、アルブミン、α-フェトプロテイン、ビタミンD結合タンパク質、アファミン、グロビンタンパク質、αグロブリン、βグロブリン、γグロブリン、又はそれらの組み合わせである。実施形態では、製剤は、液体である。実施形態では、製剤は、約0.1%~約5.0%の球状タンパク質を含む。実施形態では、製剤は、約0.5%~約2.0%の球状タンパク質を含む。実施形態では、製剤は、約0.75%~約1.5%の球状タンパク質を含む。実施形態では、製剤は、約0.8%~約1.2%の球状タンパク質を含む。実施形態では、製剤は、約1.0%の球状タンパク質を含む。
【0006】
本開示はまた、ウイルスベクター、緩衝液、及びアルブミンを含む製剤に関する。実施形態では、アルブミンは、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、オボアルブミン、又はラクトアルブミンである。実施形態では、製剤は、液体である。実施形態では、製剤は、約0.1%~約5.0%のアルブミンを含む。実施形態では、製剤は、約0.5%~約2.0%のアルブミンを含む。実施形態では、製剤は、約0.75%~約1.5%のアルブミンを含む。実施形態では、製剤は、約0.8%~約1.2%のアルブミンを含む。実施形態では、製剤は、約1.0%のアルブミンを含む。
【0007】
本発明はまた、ウイルスベクター、緩衝液、及び多糖を含む製剤に関する。実施形態では、多糖は、グリコサミノグリカンである。実施形態では、多糖は、ヒアルロン酸ナトリウム、ヘパラン、ヘパラン硫酸、ヘパリン、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン、デルマタン硫酸、ケラタン、ケラタン硫酸、アルギン、キトサン、キトサン硫酸、デキストラン、デキストラン硫酸、又はそれらの組み合わせである。実施形態では、多糖は、ヒアルロン酸ナトリウムである。実施形態では、製剤は、液体である。実施形態では、製剤は、約0.01ng/mL~約1mg/mLの多糖を含む。実施形態では、製剤は、約0.05ng/mL~約0.5mg/mLの多糖を含む。実施形態では、製剤は、約0.1ng/mL~約0.3mg/mLの多糖を含む。実施形態では、製剤は、約0.15ng/mL~約0.25mg/mLの多糖を含む。実施形態では、製剤は、約0.2ng/mLの多糖を含む。実施形態では、製剤は、約0.01ng/mL~約1mg/mLのヒアルロン酸ナトリウムを含む。実施形態では、製剤は、約0.05ng/mL~約0.5mg/mLのヒアルロン酸ナトリウムを含む。実施形態では、製剤は、約0.1ng/mL~約0.3mg/mLのヒアルロン酸ナトリウムを含む。実施形態では、製剤は、約0.15ng/mL~約0.25mg/mLのヒアルロン酸ナトリウムを含む。実施形態では、製剤は、約0.2ng/mLのヒアルロン酸ナトリウムを含む。
【0008】
実施形態では、本開示はまた、球状タンパク質及び多糖の両方を含む製剤を提供する。実施形態では、本開示は、アルブミン及び多糖の両方を含む製剤を提供する。これらの製剤の実施形態では、多糖は、ヒアルロン酸ナトリウムである。
【0009】
本明細書の製剤の実施形態では、製剤は、液体である。液体製剤の実施形態では、製剤は、約2mM~約100mMの緩衝液を含む。液体製剤の実施形態では、製剤は、約5mM~約50mMの緩衝液を含む。液体製剤の実施形態では、製剤は、約15mM~約25mMの緩衝液を含む。液体製剤の実施形態では、製剤は、約20mMの緩衝液を含む。
【0010】
本明細書の製剤の実施形態では、緩衝液は、リン酸ナトリウム、L-ヒスチジン、トリス、コハク酸塩、クエン酸ナトリウム、又はそれらの組み合わせである。
【0011】
実施形態では、本明細書の製剤は、糖を更に含む。糖を含む製剤の実施形態では、製剤は、液体である。糖を含む液体製剤の実施形態では、製剤は、約50mM~約500mMの糖を含む。糖を含む液体製剤の実施形態では、製剤は、約100mM~約400mMの糖を含む。糖を含む液体製剤の実施形態では、製剤は、約250mM~約350mMの糖を含む。糖を含む液体製剤の実施形態では、製剤は、約290mMの糖を含む。糖を含む製剤の実施形態では、糖は、スクロース、ラクトース、グルコース、トレハロース、又はそれらの組み合わせである。実施形態では、糖は、スクロースである。
【0012】
実施形態では、本明細書の製剤は、界面活性剤を更に含む。界面活性剤を含む製剤の実施形態では、製剤は、液体である。界面活性剤を含む液体製剤の実施形態では、製剤は、約0.01%~約0.1%の界面活性剤を含む。界面活性剤を含む液体製剤の実施形態では、製剤は、約0.015%~約0.025%の界面活性剤を含む。界面活性剤を含む液体製剤の実施形態では、製剤は、約0.02%の界面活性剤を含む。界面活性剤を含む製剤の実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート80、ポリソルベート20、又はKolliphor P188である。
【0013】
実施形態では、本明細書の製剤は、塩化ナトリウムを更に含む。塩化ナトリウムを含む製剤の実施形態では、製剤は、液体である。塩化ナトリウムを含む液体製剤の実施形態では、製剤は、約10mM~約500mMの塩化ナトリウムを含む。塩化ナトリウムを含む液体製剤の実施形態では、製剤は、約50mM~約300mMの塩化ナトリウムを含む。塩化ナトリウムを含む、液体製剤の実施形態では、製剤は、約100mM~約200mMの塩化ナトリウムを含む。塩化ナトリウムを含む液体製剤の実施形態では、製剤は、約150mMの塩化ナトリウムを含む。
【0014】
本明細書に開示される製剤の実施形態では、製剤は、凍結乾燥固体である。凍結乾燥製剤の実施形態では、緩衝液は、リン酸ナトリウム、L-ヒスチジン、クエン酸ナトリウム、又はそれらの組み合わせである。凍結乾燥製剤の実施形態では、製剤は、糖を更に含む。実施形態では、糖は、スクロース、ラクトース、グルコース、トレハロース、又はそれらの組み合わせである。実施形態では、糖は、スクロースである。凍結乾燥製剤の実施形態では、製剤は、界面活性剤を更に含む。実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート80、ポリソルベート20、又はKolliphor P188である。凍結乾燥製剤の実施形態では、製剤は、塩化ナトリウムを更に含む。
【0015】
本明細書の製剤のいずれかの実施形態では、製剤は、約50nm以下のZ平均値を有する。実施形態では、製剤は、約40nm以下のZ平均値を有する。実施形態では、製剤は、約31nm以下のZ平均値を有する。実施形態では、製剤は、約25nm以下のZ平均値を有する。実施形態では、製剤は、約20nm以下のZ平均値を有する。
【0016】
本明細書の製剤のいずれかの実施形態では、製剤は、約0.5以下の多分散性指数を有する。実施形態では、製剤は、約0.35以下の多分散性指数を有する。実施形態では、製剤は、約0.3以下の多分散性指数を有する。
【0017】
本明細書の製剤のいずれかの実施形態では、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、又はハイブリッドベクターである。実施形態では、ウイルスベクターは、アデノウイルスベクターである。実施形態では、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルスベクターである。
【0018】
本明細書の製剤のいずれかの実施形態では、製剤は、ヒトへの投与のために製剤化される。
【0019】
本開示はまた、製剤中のウイルスベクターの凝集を低減する方法であって、本明細書に開示される製剤のいずれか中でウイルスベクターを製剤化することを含む、方法を提供する。
【0020】
実施形態では、本開示はまた、約10×108vg/mL~約10×1013vg/mLのウイルスベクター、約5mM~約40mMのリン酸ナトリウム、約200mM~約400mMのスクロース、並びに約0.1%~約5.0%のアルブミンを含む製剤を提供する。実施形態では、アルブミンは、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、又はそれらの組み合わせである。実施形態では、製剤は、約10×109vg/mL~約10×1011vg/mLのウイルスベクターを含む。実施形態では、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、又はハイブリッドベクターである。
【0021】
実施形態では、本開示はまた、約10×108vg/mL~約10×1013vg/mLのウイルスベクター、約5mM~約40mMのリン酸ナトリウム、約200mM~約400mMのスクロース、及び約0.05mg/mL~約0.4mg/mLのヒアルロン酸ナトリウムを含む製剤を提供する。実施形態では、製剤は、約10×109vg/mL~約10×1011vg/mLのウイルスベクターを含む。実施形態では、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、又はハイブリッドベクターである。
【0022】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本発明の特定の態様の例示的な実施形態を更に示すために含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施例5.1に記載される、qPCRによるAAV2滴定に対するDNase I消化及び熱カプシド開口ステップの影響に関するウイルスゲノム力価の棒グラフを示す。
【
図2】実施例5.1に記載される、エッペンドルフチューブ中での24時間の保存時での混合されていない試料と比較した混合された試料のAAV2力価定量化の棒グラフを示す。
【
図3A】実施例5.1に記載される、AAV2試料の透過型電子顕微鏡(TEM)画像を示す。(A)標準試料調製プロトコルで調製した1・10
10vg/mLの力価を有するAAV2試料、及び(B)修正した試料調製プロトコルで調製した1・10
11vg/mLの力価を有するAAV2試料。
【
図3B】実施例5.1に記載される、AAV2試料の透過型電子顕微鏡(TEM)画像を示す。(A)標準試料調製プロトコルで調製した1・10
10vg/mLの力価を有するAAV2試料、及び(B)修正した試料調製プロトコルで調製した1・10
11vg/mLの力価を有するAAV2試料。
【
図4A】実施例5.1に記載される、動的光散乱(DLS)及び多角度動的光散乱(MADLS)で得られた結果のプロットを示す。(A)1.0・10
11vg/mLの力価を有する4つの複製の後方散乱を用いた粒子サイズ分布、(B)後方散乱測定の相関曲線、(C)後方散乱、(D)側方散乱、(E)前方散乱、及び(F)MADLS。
【
図4B】実施例5.1に記載される、動的光散乱(DLS)及び多角度動的光散乱(MADLS)で得られた結果のプロットを示す。(A)1.0・10
11vg/mLの力価を有する4つの複製の後方散乱を用いた粒子サイズ分布、(B)後方散乱測定の相関曲線、(C)後方散乱、(D)側方散乱、(E)前方散乱、及び(F)MADLS。
【
図4C】実施例5.1に記載される、動的光散乱(DLS)及び多角度動的光散乱(MADLS)で得られた結果のプロットを示す。(A)1.0・10
11vg/mLの力価を有する4つの複製の後方散乱を用いた粒子サイズ分布、(B)後方散乱測定の相関曲線、(C)後方散乱、(D)側方散乱、(E)前方散乱、及び(F)MADLS。
【
図4D】実施例5.1に記載される、動的光散乱(DLS)及び多角度動的光散乱(MADLS)で得られた結果のプロットを示す。(A)1.0・10
11vg/mLの力価を有する4つの複製の後方散乱を用いた粒子サイズ分布、(B)後方散乱測定の相関曲線、(C)後方散乱、(D)側方散乱、(E)前方散乱、及び(F)MADLS。
【
図4E】実施例5.1に記載される、動的光散乱(DLS)及び多角度動的光散乱(MADLS)で得られた結果のプロットを示す。(A)1.0・10
11vg/mLの力価を有する4つの複製の後方散乱を用いた粒子サイズ分布、(B)後方散乱測定の相関曲線、(C)後方散乱、(D)側方散乱、(E)前方散乱、及び(F)MADLS。
【
図4F】実施例5.1に記載される、動的光散乱(DLS)及び多角度動的光散乱(MADLS)で得られた結果のプロットを示す。(A)1.0・10
11vg/mLの力価を有する4つの複製の後方散乱を用いた粒子サイズ分布、(B)後方散乱測定の相関曲線、(C)後方散乱、(D)側方散乱、(E)前方散乱、及び(F)MADLS。
【
図5A】実施例5.1に記載される、ゼータ電位測定のプロットである。(A)1・10
11vg/mLの力価を有するAAV2製剤の相プロット及び(B)ゼータ電位測定。
【
図5B】実施例5.1に記載される、ゼータ電位測定のプロットである。(A)1・10
11vg/mLの力価を有するAAV2製剤の相プロット及び(B)ゼータ電位測定。
【
図6】実施例5.1に記載される、alamarBlue試薬を用いたU2OS-HTB-96細胞生存率アッセイのプロットである。
【
図7】実施例5.1に記載される、AAV2-CMV-GFPの10
5及び10
6vg/細胞のMOIで感染した後のU2OS細胞の蛍光の棒グラフである(例えば、488nm em:520nm)。
【
図8】実施例5.1に記載される、10
3、10
4、10
5、10
6vg/細胞のAAV2 MOIで形質導入したときの24時間、48時間、72時間、96時間、及び7日後のU2OS-HTB-96細胞の蛍光強度の棒グラフである(例えば、460nm em:515nm)。
【
図9】実施例5.2に記載される、T0における製剤研究1のqPCRで測定されたAAV2-CMV-GFP滴定結果の棒グラフである。
【
図10】実施例5.2に記載される、T0における製剤研究1のGFP発現アッセイから検出された蛍光の棒グラフである。AAV2-CMV-GFP製剤での形質導入時のU2OS細胞の蛍光を24、48、及び72時間後に測定する。
【
図11】実施例5.3に記載される、製剤3、4、6、及び7(左から右へ)の凍結乾燥ケーキの画像を示す。製剤3及び4は、ケーキにおける小さな亀裂を示した。
【
図12】実施例5.3に記載される、製剤研究2中にqPCRで測定された全ての力価定量の要約を有する棒グラフである。
【
図13】実施例5.3に記載される、T0並びに-20℃及び-80℃で3ヶ月間保存された凍結試料と比較した、2~8℃で1ヶ月間又は3ヶ月間保存された異なるAAV2製剤で形質導入した後のU2OS細胞における蛍光の棒グラフである。
【
図14】実施例5.3に記載される、T0並びに-20℃及び-80℃で3ヶ月間保存された凍結試料と比較した、25℃で1ヶ月間保存された異なるAAV2製剤での形質導入後のU2OS細胞における蛍光の棒グラフである。
【
図15】実施例5.3に記載される、凍結融解サイクル、水平攪拌ストレス、及び40℃への曝露に曝露した後のU2OS細胞におけるGFP発現の棒グラフである。
【
図16A】実施例5.3に記載される、T0における全ての製剤の後方散乱を用いた粒子サイズ分布のプロットである:(A)製剤1、(B)製剤2、(C)製剤3、(D)製剤4、(E)製剤5、(F)製剤6、(G)製剤7、及び(H)製剤8。
【
図16B】実施例5.3に記載される、T0における全ての製剤の後方散乱を用いた粒子サイズ分布のプロットである:(A)製剤1、(B)製剤2、(C)製剤3、(D)製剤4、(E)製剤5、(F)製剤6、(G)製剤7、及び(H)製剤8。
【
図16C】実施例5.3に記載される、T0における全ての製剤の後方散乱を用いた粒子サイズ分布のプロットである:(A)製剤1、(B)製剤2、(C)製剤3、(D)製剤4、(E)製剤5、(F)製剤6、(G)製剤7、及び(H)製剤8。
【
図16D】実施例5.3に記載される、T0における全ての製剤の後方散乱を用いた粒子サイズ分布のプロットである:(A)製剤1、(B)製剤2、(C)製剤3、(D)製剤4、(E)製剤5、(F)製剤6、(G)製剤7、及び(H)製剤8。
【
図16E】実施例5.3に記載される、T0における全ての製剤の後方散乱を用いた粒子サイズ分布のプロットである:(A)製剤1、(B)製剤2、(C)製剤3、(D)製剤4、(E)製剤5、(F)製剤6、(G)製剤7、及び(H)製剤8。
【
図16F】実施例5.3に記載される、T0における全ての製剤の後方散乱を用いた粒子サイズ分布のプロットである:(A)製剤1、(B)製剤2、(C)製剤3、(D)製剤4、(E)製剤5、(F)製剤6、(G)製剤7、及び(H)製剤8。
【
図16G】実施例5.3に記載される、T0における全ての製剤の後方散乱を用いた粒子サイズ分布のプロットである:(A)製剤1、(B)製剤2、(C)製剤3、(D)製剤4、(E)製剤5、(F)製剤6、(G)製剤7、及び(H)製剤8。
【
図16H】実施例5.3に記載される、T0における全ての製剤の後方散乱を用いた粒子サイズ分布のプロットである:(A)製剤1、(B)製剤2、(C)製剤3、(D)製剤4、(E)製剤5、(F)製剤6、(G)製剤7、及び(H)製剤8。
【
図17A】
図17(A)は、実施例5.3に記載される、全ての測定されたプルポイント中の全ての製剤のZ平均値の棒グラフであり、
図17(B)は、実施例5.3に記載される、全ての測定されたプルポイント中の全ての製剤の多分散性指数の棒グラフである。
【
図17B】
図17(A)は、実施例5.3に記載される、全ての測定されたプルポイント中の全ての製剤のZ平均値の棒グラフであり、
図17(B)は、実施例5.3に記載される、全ての測定されたプルポイント中の全ての製剤の多分散性指数の棒グラフである。
【
図18A】実施例5.3に記載される、異なるサイズを有する目視で見えない(sub visible)粒子の棒グラフである:(A)全ての製剤中の目視で見えない粒子数≧2μm、(B)全てのプラセボ中の目視で見えない粒子数≧2μm、(C)全ての製剤中の目視で見えない粒子数≧5μm、(D)全てのプラセボ中の目視で見えない粒子数≧5μm、(E)全ての製剤中の目視で見えない粒子数≧10μm、(F)全てのプラセボ中の目視で見えない粒子数≧10μm、(G)全ての製剤中の目視で見えない粒子数≧25μm、(H)全てのプラセボ中の目視で見えない粒子数≧25μm。
【
図18B】実施例5.3に記載される、異なるサイズを有する目視で見えない(sub visible)粒子の棒グラフである:(A)全ての製剤中の目視で見えない粒子数≧2μm、(B)全てのプラセボ中の目視で見えない粒子数≧2μm、(C)全ての製剤中の目視で見えない粒子数≧5μm、(D)全てのプラセボ中の目視で見えない粒子数≧5μm、(E)全ての製剤中の目視で見えない粒子数≧10μm、(F)全てのプラセボ中の目視で見えない粒子数≧10μm、(G)全ての製剤中の目視で見えない粒子数≧25μm、(H)全てのプラセボ中の目視で見えない粒子数≧25μm。
【
図18C】実施例5.3に記載される、異なるサイズを有する目視で見えない(sub visible)粒子の棒グラフである:(A)全ての製剤中の目視で見えない粒子数≧2μm、(B)全てのプラセボ中の目視で見えない粒子数≧2μm、(C)全ての製剤中の目視で見えない粒子数≧5μm、(D)全てのプラセボ中の目視で見えない粒子数≧5μm、(E)全ての製剤中の目視で見えない粒子数≧10μm、(F)全てのプラセボ中の目視で見えない粒子数≧10μm、(G)全ての製剤中の目視で見えない粒子数≧25μm、(H)全てのプラセボ中の目視で見えない粒子数≧25μm。
【
図18D】実施例5.3に記載される、異なるサイズを有する目視で見えない(sub visible)粒子の棒グラフである:(A)全ての製剤中の目視で見えない粒子数≧2μm、(B)全てのプラセボ中の目視で見えない粒子数≧2μm、(C)全ての製剤中の目視で見えない粒子数≧5μm、(D)全てのプラセボ中の目視で見えない粒子数≧5μm、(E)全ての製剤中の目視で見えない粒子数≧10μm、(F)全てのプラセボ中の目視で見えない粒子数≧10μm、(G)全ての製剤中の目視で見えない粒子数≧25μm、(H)全てのプラセボ中の目視で見えない粒子数≧25μm。
【
図18E】実施例5.3に記載される、異なるサイズを有する目視で見えない(sub visible)粒子の棒グラフである:(A)全ての製剤中の目視で見えない粒子数≧2μm、(B)全てのプラセボ中の目視で見えない粒子数≧2μm、(C)全ての製剤中の目視で見えない粒子数≧5μm、(D)全てのプラセボ中の目視で見えない粒子数≧5μm、(E)全ての製剤中の目視で見えない粒子数≧10μm、(F)全てのプラセボ中の目視で見えない粒子数≧10μm、(G)全ての製剤中の目視で見えない粒子数≧25μm、(H)全てのプラセボ中の目視で見えない粒子数≧25μm。
【
図18F】実施例5.3に記載される、異なるサイズを有する目視で見えない(sub visible)粒子の棒グラフである:(A)全ての製剤中の目視で見えない粒子数≧2μm、(B)全てのプラセボ中の目視で見えない粒子数≧2μm、(C)全ての製剤中の目視で見えない粒子数≧5μm、(D)全てのプラセボ中の目視で見えない粒子数≧5μm、(E)全ての製剤中の目視で見えない粒子数≧10μm、(F)全てのプラセボ中の目視で見えない粒子数≧10μm、(G)全ての製剤中の目視で見えない粒子数≧25μm、(H)全てのプラセボ中の目視で見えない粒子数≧25μm。
【
図18G】実施例5.3に記載される、異なるサイズを有する目視で見えない(sub visible)粒子の棒グラフである:(A)全ての製剤中の目視で見えない粒子数≧2μm、(B)全てのプラセボ中の目視で見えない粒子数≧2μm、(C)全ての製剤中の目視で見えない粒子数≧5μm、(D)全てのプラセボ中の目視で見えない粒子数≧5μm、(E)全ての製剤中の目視で見えない粒子数≧10μm、(F)全てのプラセボ中の目視で見えない粒子数≧10μm、(G)全ての製剤中の目視で見えない粒子数≧25μm、(H)全てのプラセボ中の目視で見えない粒子数≧25μm。
【
図18H】実施例5.3に記載される、異なるサイズを有する目視で見えない(sub visible)粒子の棒グラフである:(A)全ての製剤中の目視で見えない粒子数≧2μm、(B)全てのプラセボ中の目視で見えない粒子数≧2μm、(C)全ての製剤中の目視で見えない粒子数≧5μm、(D)全てのプラセボ中の目視で見えない粒子数≧5μm、(E)全ての製剤中の目視で見えない粒子数≧10μm、(F)全てのプラセボ中の目視で見えない粒子数≧10μm、(G)全ての製剤中の目視で見えない粒子数≧25μm、(H)全てのプラセボ中の目視で見えない粒子数≧25μm。
【
図19】実施例5.3に記載される、製剤研究2で測定される全てのゼータ電位の要約の棒グラフである。
【
図20A】実施例5.3に記載される、(A)全ての製剤及び(B)プラセボについてのpH測定の要約の棒グラフである。
【
図20B】実施例5.3に記載される、(A)全ての製剤及び(B)プラセボについてのpH測定の要約の棒グラフである。
【
図21】実施例5.4に記載される、異なる0.2μmの滅菌PVDFフィルターを用いた滅菌濾過後のAAV2力価回復に対する150mMの塩化ナトリウムの影響を示すウイルス力価の棒グラフである。
【
図22A】実施例5.4に記載される、150mM NaClで提供される製剤と比較した、塩化ナトリウムを含まないAAV2製剤のDLSによって測定された粒子サイズ分布のプロットである。(A)NaClを含まない製剤、(B)150mM NaClを補充した製剤、(C)150mM NaClを含む製剤、及び0.2μmのMillex PVDF滅菌フィルターを通した滅菌濾過。
【
図22B】実施例5.4に記載される、150mM NaClで提供される製剤と比較した、塩化ナトリウムを含まないAAV2製剤のDLSによって測定された粒子サイズ分布のプロットである。(A)NaClを含まない製剤、(B)150mM NaClを補充した製剤、(C)150mM NaClを含む製剤、及び0.2μmのMillex PVDF滅菌フィルターを通した滅菌濾過。
【
図22C】実施例5.4に記載される、150mM NaClで提供される製剤と比較した、塩化ナトリウムを含まないAAV2製剤のDLSによって測定された粒子サイズ分布のプロットである。(A)NaClを含まない製剤、(B)150mM NaClを補充した製剤、(C)150mM NaClを含む製剤、及び0.2μmのMillex PVDF滅菌フィルターを通した滅菌濾過。
【
図23】実施例5.4に記載される、異なる染料を補充した異なる濃度の全ての試料の熱シフトを示すプロットである。
【
図24A】実施例5.4に記載される、(A)1倍、5倍、及び10倍のSYPRO-オレンジを補充したAAV2試料の蛍光強度、(B)1倍、5倍、及び10倍のSYBR-ゴールドを補充したAAV2試料の蛍光強度のプロットである。
【
図24B】実施例5.4に記載される、(A)1倍、5倍、及び10倍のSYPRO-オレンジを補充したAAV2試料の蛍光強度、(B)1倍、5倍、及び10倍のSYBR-ゴールドを補充したAAV2試料の蛍光強度のプロットである。
【
図25】実施例5.1.9に記載される、空のAAV2カプシド及び完全なAAV2カプシドの定量化に使用されたTEM画像を示す。画像は11kVで撮影され、1つは20kVで撮影し、1つは37kVで撮影した。
【
図26A】実施例5.1に記載される、T0における全てのプラセボの後方散乱を用いた粒子サイズ分布のプロットを示す:(A)プラセボ1、(B)プラセボ2、(C)プラセボ3、(D)プラセボ4、(E)プラセボ5、(F)プラセボ6、(G)プラセボ7、及び(H)プラセボ8。
【
図26B】実施例5.1に記載される、T0における全てのプラセボの後方散乱を用いた粒子サイズ分布のプロットを示す:(A)プラセボ1、(B)プラセボ2、(C)プラセボ3、(D)プラセボ4、(E)プラセボ5、(F)プラセボ6、(G)プラセボ7、及び(H)プラセボ8。
【
図26C】実施例5.1に記載される、T0における全てのプラセボの後方散乱を用いた粒子サイズ分布のプロットを示す:(A)プラセボ1、(B)プラセボ2、(C)プラセボ3、(D)プラセボ4、(E)プラセボ5、(F)プラセボ6、(G)プラセボ7、及び(H)プラセボ8。
【
図26D】実施例5.1に記載される、T0における全てのプラセボの後方散乱を用いた粒子サイズ分布のプロットを示す:(A)プラセボ1、(B)プラセボ2、(C)プラセボ3、(D)プラセボ4、(E)プラセボ5、(F)プラセボ6、(G)プラセボ7、及び(H)プラセボ8。
【
図26E】実施例5.1に記載される、T0における全てのプラセボの後方散乱を用いた粒子サイズ分布のプロットを示す:(A)プラセボ1、(B)プラセボ2、(C)プラセボ3、(D)プラセボ4、(E)プラセボ5、(F)プラセボ6、(G)プラセボ7、及び(H)プラセボ8。
【
図26F】実施例5.1に記載される、T0における全てのプラセボの後方散乱を用いた粒子サイズ分布のプロットを示す:(A)プラセボ1、(B)プラセボ2、(C)プラセボ3、(D)プラセボ4、(E)プラセボ5、(F)プラセボ6、(G)プラセボ7、及び(H)プラセボ8。
【
図26G】実施例5.1に記載される、T0における全てのプラセボの後方散乱を用いた粒子サイズ分布のプロットを示す:(A)プラセボ1、(B)プラセボ2、(C)プラセボ3、(D)プラセボ4、(E)プラセボ5、(F)プラセボ6、(G)プラセボ7、及び(H)プラセボ8。
【
図26H】実施例5.1に記載される、T0における全てのプラセボの後方散乱を用いた粒子サイズ分布のプロットを示す:(A)プラセボ1、(B)プラセボ2、(C)プラセボ3、(D)プラセボ4、(E)プラセボ5、(F)プラセボ6、(G)プラセボ7、及び(H)プラセボ8。
【
図27A】実施例5.1に記載される、25℃での1ヶ月後の後方散乱を用いた製剤のプロットを示す:(A)製剤1、(B)製剤2、(C)製剤3、(D)製剤4、(E)製剤5、(F)製剤6、(G)製剤7、及び(H)製剤8。
【
図27B】実施例5.1に記載される、25℃での1ヶ月後の後方散乱を用いた製剤のプロットを示す:(A)製剤1、(B)製剤2、(C)製剤3、(D)製剤4、(E)製剤5、(F)製剤6、(G)製剤7、及び(H)製剤8。
【
図27C】実施例5.1に記載される、25℃での1ヶ月後の後方散乱を用いた製剤のプロットを示す:(A)製剤1、(B)製剤2、(C)製剤3、(D)製剤4、(E)製剤5、(F)製剤6、(G)製剤7、及び(H)製剤8。
【
図27D】実施例5.1に記載される、25℃での1ヶ月後の後方散乱を用いた製剤のプロットを示す:(A)製剤1、(B)製剤2、(C)製剤3、(D)製剤4、(E)製剤5、(F)製剤6、(G)製剤7、及び(H)製剤8。
【
図27E】実施例5.1に記載される、25℃での1ヶ月後の後方散乱を用いた製剤のプロットを示す:(A)製剤1、(B)製剤2、(C)製剤3、(D)製剤4、(E)製剤5、(F)製剤6、(G)製剤7、及び(H)製剤8。
【
図27F】実施例5.1に記載される、25℃での1ヶ月後の後方散乱を用いた製剤のプロットを示す:(A)製剤1、(B)製剤2、(C)製剤3、(D)製剤4、(E)製剤5、(F)製剤6、(G)製剤7、及び(H)製剤8。
【
図27G】実施例5.1に記載される、25℃での1ヶ月後の後方散乱を用いた製剤のプロットを示す:(A)製剤1、(B)製剤2、(C)製剤3、(D)製剤4、(E)製剤5、(F)製剤6、(G)製剤7、及び(H)製剤8。
【
図27H】実施例5.1に記載される、25℃での1ヶ月後の後方散乱を用いた製剤のプロットを示す:(A)製剤1、(B)製剤2、(C)製剤3、(D)製剤4、(E)製剤5、(F)製剤6、(G)製剤7、及び(H)製剤8。
【発明を実施するための形態】
【0024】
改善された安定性を有し、かつ、ウイルスベクターの凝集が低減されたウイルスベクター製剤が本明細書に記載される。安定性の増加及び凝集の低減により、製剤は、保存、輸送、及び投与が容易になる。ウイルスベクター製剤の安定性を増加させ、かつ、ウイルスベクターの凝集を低減させる方法も本明細書に記載される。
【0025】
本明細書で使用される場合、「a」又は「an」は、1つ以上を意味し得る。本明細書で使用される場合、単語「a」又は「an」は、単語「含む」と併せて使用される場合、1つ又は1つ超を意味し得る。本明細書で使用される場合、「別の」又は「更なる」は、少なくとも第2の又はそれ以上を意味し得る。
【0026】
本出願全体を通して、「約」という用語は、値が、その値の決定に用いられる方法/デバイスでの誤差の固有の変動又は研究対象間に存在する変動を含むことを示すために使用される。典型的には、「約」という用語は、状況に応じて、およそ1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、若しくは20%未満、又はそれ以上の変動を包含することを意味する。実施形態では、当業者は、「約」という用語によって示される変動のレベルを本明細書で使用される文脈により理解するであろう。「約」という用語の使用はまた、具体的に記載される値を含むことも理解されるべきである。
【0027】
特許請求の範囲における「又は」という用語の使用は、選択肢のみを指すことが明示的に示されるか、又は選択肢が互いに排他的でない限り、「及び/又は」を意味するように使用されるが、本開示は、選択肢のみ及び「及び/又は」を指す定義を支持する。
【0028】
本明細書で使用する場合、「含む(comprising)」(並びに「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」などの含む(comprising)の任意の変形若しくは形態)、「有する(having)」(並びに「有する(have)」及び「有する(has)」などの有する(having)の任意の変形若しくは形態)、「含む(including)」(並びに「含む(includes)」及び「含む(include)」などの含む(including)の任意の変形若しくは形態)、又は「含む(containing)」(並びに「含む(contains)」及び「含む(contain)」などの含む(containing)の任意の変形若しくは形態)という用語は、包含的又はオープンエンドであり、追加の、記載されていない要素又は方法ステップを除外しない。
【0029】
「例えば(for example)」という用語及びその対応する略語「例えば(e.g.)」(斜体であるかどうかにかかわらない)の使用は、別段で明示的に記載されない限り、記載された特定の用語が、参照又は引用される特定の例に限定されることを意図しない、本開示の代表的な例及び実施形態であることを意味する。
【0030】
本明細書で使用される場合、「間(between)」は、範囲の末端を含む範囲である。例えば、xとyとの間の数には、x及びyの数、並びにxとyとの範囲に入る任意の数が明示的に含まれる。
【0031】
球状タンパク質製剤
本開示は、改善された安定性及び低減されたベクター凝集を有する球状タンパク質を含むウイルスベクター製剤を提供する。実施形態では、本開示は、ウイルスベクター、緩衝液、及び球状タンパク質を含む製剤を提供する。
【0032】
実施形態では、球状タンパク質は、ウイルスベクター製剤中のウイルス凝集を低減するのに好適な任意の球状タンパク質であり得る。実施形態では、製剤は、2種以上の球状タンパク質を含む。球状タンパク質という用語は、形状が比較的球形である水溶性タンパク質を指す。いくつかの実施形態では、球状タンパク質という用語は、相当な数のαヘリックス及び/又はβシート、例えば、2、3、4、5、6、7、若しくは8つのαヘリックス及び/又は2、3、4、5、6、7、若しくは8つのβシートを有するタンパク質を指す。いくつかの実施形態では、αヘリックス及び/又はβシートは、コンパクトな構造に折り畳まれる。いくつかの実施形態では、球状タンパク質は、疎水性アミノ酸側鎖及び親水性アミノ酸側鎖を含み、疎水性アミノ酸側鎖の殆どは、球状タンパク質の内部に埋入され(すなわち、水と相互作用することができない)、親水性アミノ酸側鎖の大部分は、球状タンパク質の表面上にある(すなわち、水と相互作用することができる)。いくつかの実施形態では、球状タンパク質は、疎水性アミノ酸側鎖を含み、疎水性アミノ酸側鎖の60%、70%、80%、又は90%が、球状タンパク質の内部に埋入される。いくつかの実施形態では、球状タンパク質は、親水性アミノ酸側鎖を含み、60%、70%、80%又は90%親水性アミノ酸側鎖が、球状タンパク質の内部に埋入される。いくつかの実施形態では、球状タンパク質は、1、2、3つ、又はそれ以上のジスルフィド結合を有する。いくつかの実施形態では、球状タンパク質は、1つより大きいポリペプチドを含み、例えば、球状タンパク質は、三次元構造を堅固にする2、3、又は4つのポリペプチドを含む。実施形態では、球状タンパク質は、実質的に変性しておらず、すなわち、球状タンパク質は、その三次元構造を実質的に保持する。したがって、いくつかの実施形態では、本開示は、ウイルスベクター、緩衝液、及び球状タンパク質を含む製剤であって、製剤が、天然状態の球状タンパク質を維持するのに好適であり、すなわち、球状タンパク質が、実質的に変性されない、製剤を提供する。
【0033】
いくつかの実施形態では、球状タンパク質は、10kDa~1200kDa、約20kDa~約1200kDa、約30kDa~約1000kDa、約30kDa~約700kDa、約40kDa~約500kDa、約50kDa~約250kDa、約50kDa~約200kDa、約50kDa~約150kDa、又は約50kDa~約100kDaの分子量を有する。いくつかの実施形態では、球状タンパク質は、700kDa~1200kDa、800kDa~1200kD、900kDa~1200kDa、又は1000kDa~1200kDaの分子量を有する。
【0034】
いくつかの実施形態では、球状タンパク質は、約10mg/mL~約150mg/mL、約20mg/mL~約120mg/mL、約30mg/mL~約100mg/mL、約40mg/mL~約90mg/mL、約40mg/mL~約80mg/mL、又は約40mg/mL~約70mg/mL溶解度を有する。
【0035】
実施形態では、球状タンパク質は、アルブミン、α-フェトプロテイン、ビタミンD結合タンパク質、アファミン、グロビンタンパク質、αグロブリン、βグロブリン、γグロブリン、又はそれらの組み合わせである。実施形態では、球状タンパク質は、水溶性球状タンパク質である。実施形態では、球状タンパク質は、アルブミンである。実施形態では、球状タンパク質は、血清アルブミンである。実施形態では、アルブミンは、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、オボアルブミン、又はラクトアルブミンである。実施形態では、アルブミンは、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、又はそれらの組み合わせである。実施形態では、アルブミンは、ヒト血清アルブミンである。実施形態では、アルブミンは、ウシ血清アルブミンである。
【0036】
実施形態では、製剤は、約0.1%~約5.0%の球状タンパク質を含む。実施形態では、製剤は、約0.5%~約2.0%の球状タンパク質を含む。実施形態では、製剤は、約0.75%~約1.5%の球状タンパク質を含む。実施形態では、製剤は、約0.8%~約1.2%の球状タンパク質を含む。実施形態では、製剤は、約1.0%の球状タンパク質を含む。実施形態では、製剤は、約0.5%、1.0%、1.5%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%、又は5.0%の球状タンパク質を含む。
【0037】
実施形態では、製剤は、液体又はゲルである。実施形態では、製剤は、液体である。実施形態では、製剤は、液体又はゲルから凍結乾燥される。実施形態では、製剤は、凍結乾燥形態から再構成される。
【0038】
実施形態では、本開示は、ウイルスベクター、緩衝液、及びアルブミンを含む製剤を提供する。
【0039】
実施形態では、製剤は、1種を超えるアルブミンを含む。実施形態では、アルブミンは、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、オボアルブミン、又はラクトアルブミンである。実施形態では、アルブミンは、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、又はそれらの組み合わせである。実施形態では、アルブミンは、ヒト血清アルブミンである。実施形態では、アルブミンは、ウシ血清アルブミンである。
【0040】
実施形態では、製剤は、約0.1%~約5.0%のアルブミンを含む。実施形態では、製剤は、約0.5%~約2.0%のアルブミンを含む。実施形態では、製剤は、約0.75%~約1.5%のアルブミンを含む。実施形態では、製剤は、約0.8%~約1.2%のアルブミンを含む。実施形態では、製剤は、約1.0%のアルブミンを含む。実施形態では、製剤は、約0.5%、1.0%、1.5%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%、又は5.0%のアルブミンを含む。
【0041】
実施形態では、アルブミンを含む製剤は、液体又はゲルである。実施形態では、製剤は、液体である。実施形態では、製剤は、液体又はゲルから凍結乾燥される。実施形態では、製剤は、凍結乾燥形態から再構成される。
【0042】
多糖製剤
他の実施形態では、本開示は、ウイルスベクター、緩衝液、及び多糖を含む製剤を提供する。
【0043】
実施形態では、多糖は、ウイルスベクター製剤中のウイルス凝集を低減するのに好適な任意の多糖であり得る。実施形態では、製剤は、1種を超える多糖を含む。実施形態では、多糖は、ヒアルロン酸ナトリウム、ヘパラン、ヘパラン硫酸、ヘパリン、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン、デルマタン硫酸、ケラタン、ケラタン硫酸、アルギン、キトサン、キトサン硫酸、デキストラン、デキストラン硫酸、又はそれらの組み合わせである。実施形態では、多糖は、グリコサミノグリカンである。実施形態では、多糖は、ケラタン硫酸である。実施形態では、多糖は、ヒアルロン酸ナトリウムである。
【0044】
本明細書で使用される場合、「ヒアルロン酸ナトリウム」という用語は、共役塩基形態のヒアルロン酸塩及び酸形態のヒアルロン酸の両方を含む。
【0045】
実施形態では、製剤は、約0.01ng/mL~約1mg/mLの多糖を含む。実施形態では、製剤は、約0.05ng/mL~約0.5mg/mLの多糖を含む。実施形態では、製剤は、約0.1ng/mL~約0.3mg/mLの多糖を含む。実施形態では、製剤は、約0.15ng/mL~約0.25mg/mLの多糖を含む。実施形態では、製剤は、約0.2ng/mLの多糖を含む。実施形態では、製剤は、約0.05ng/mL、0.1ng/mL、0.15ng/mL、0.2ng/mL、0.25ng/mL、0.3ng/mL、0.35ng/mL、0.4ng/mL、0.45ng/mL、又は0.5ng/mLの多糖を含む。
【0046】
実施形態では、製剤は、約0.01ng/mL~約1mg/mLグリコサミノグリカンを含む。実施形態では、製剤は、約0.05ng/mL~約0.5mg/mLグリコサミノグリカンを含む。実施形態では、製剤は、約0.1ng/mL~約0.3mg/mLグリコサミノグリカンを含む。実施形態では、製剤は、約0.15ng/mL~約0.25mg/mLグリコサミノグリカンを含む。実施形態では、製剤は、約0.2ng/mLのグリコサミノグリカンを含む。実施形態では、製剤は、約0.05ng/mL、0.1ng/mL、0.15ng/mL、0.2ng/mL、0.25ng/mL、0.3ng/mL、0.35ng/mL、0.4ng/mL、0.45ng/mL、又は0.5ng/mLのグリコサミノグリカンを含む。
【0047】
実施形態では、製剤は、約0.01ng/mL~約1mg/mLのヒアルロン酸ナトリウムを含む。実施形態では、製剤は、約0.05ng/mL~約0.5mg/mLのヒアルロン酸ナトリウムを含む。実施形態では、製剤は、約0.1ng/mL~約0.3mg/mLのヒアルロン酸ナトリウムを含む。実施形態では、製剤は、約0.15ng/mL~約0.25mg/mLのヒアルロン酸ナトリウムを含む。実施形態では、製剤は、約0.2ng/mLのヒアルロン酸ナトリウムを含む。実施形態では、製剤は、約0.05ng/mL、0.1ng/mL、0.15ng/mL、0.2ng/mL、0.25ng/mL、0.3ng/mL、0.35ng/mL、0.4ng/mL、0.45ng/mL、又は0.5ng/mLのヒアルロン酸ナトリウムを含む。
【0048】
実施形態では、製剤は、液体又はゲルである。実施形態では、製剤は、液体である。実施形態では、製剤は、液体又はゲルから凍結乾燥される(lyophilized)(すなわち、凍結乾燥される(freeze-dried))。実施形態では、製剤は、凍結乾燥形態から再構成される。
【0049】
組み合わせ製剤
実施形態では、本開示は、ウイルスベクター、緩衝液、球状タンパク質、及び多糖を含む製剤を提供する。実施形態では、製剤は、上記に開示される濃度の球状タンパク質及び上記に開示される濃度の多糖の両方を含む。実施形態では、製剤は、アルブミン及び多糖の両方を含む。実施形態では、製剤は、上記に開示される濃度のアルブミン及び上記に開示される濃度の多糖の両方を含む。
【0050】
実施形態では、製剤は、アルブミン及びグリコサミノグリカンの両方を含む。実施形態では、製剤は、上記に開示される濃度のアルブミン及び上記に開示される濃度のグリコサミノグリカンの両方を含む。
【0051】
組み合わせ製剤の実施形態では、多糖は、ヒアルロン酸ナトリウムである。実施形態では、製剤は、アルブミン及びヒアルロン酸ナトリウムの両方を含む。実施形態では、製剤は、上記に開示される濃度のアルブミン及び上記に開示される濃度のヒアルロン酸ナトリウムの両方を含む。
【0052】
液体及びゲル製剤
実施形態では、製剤は、緩衝液を含む。実施形態では、製剤は、液体であり、緩衝液を含む。実施形態では、製剤は、ゲルであり、緩衝液を含む。実施形態では、製剤は、約2mM~約100mMの緩衝液を含む。実施形態では、製剤は、約5mM~約50mMの緩衝液を含む。実施形態では、製剤は、約15mM~約25mMの緩衝液を含む。実施形態では、製剤は、約20mMの緩衝液を含む。実施形態では、製剤は、約5mM~約75mMの緩衝液を含む。実施形態では、製剤は、約10mM~約30mMの緩衝液を含む。実施形態では、製剤は、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50mMの緩衝液を含む。
【0053】
実施形態では、製剤は、液体であり、製剤は、約2mM~約100mMの緩衝液を含む。実施形態では、製剤は、液体であり、製剤は、約5mM~約50mMの緩衝液を含む。実施形態では、製剤は、液体であり、製剤は、約15mM~約25mMの緩衝液を含む。実施形態では、製剤は液体であり、製剤は、約20mMの緩衝液を含む。実施形態では、製剤は、液体であり、製剤は、約5mM~約75mMの緩衝液を含む。実施形態では、製剤は、液体であり、製剤は、約10mM~約30mMの緩衝液を含む。実施形態では、製剤は、液体であり、製剤は、約5、10、15、20、25、30、35又は40mMの緩衝液を含む。
【0054】
実施形態では、緩衝液は、リン酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液、HEPES緩衝液、トリシン緩衝液、テトラホウ酸塩緩衝液、MPOS緩衝液、グリシン緩衝液、又はイミダゾール緩衝液である。実施形態では、緩衝液は、リン酸ナトリウム、L-ヒスチジン、クエン酸ナトリウム、又はそれらの組み合わせである。
【0055】
実施形態では、製剤は、糖を更に含む。実施形態では、製剤は、液体であり、糖を更に含む。実施形態では、製剤は、ゲルであり、糖を更に含む。実施形態では、製剤は、約50mM~約500mMの糖を含む。実施形態では、製剤は、約100mM~約400mMの糖を含む。実施形態では、製剤は、約250mM~約350mMの糖を含む。実施形態では、製剤は、約290mMの糖を含む。実施形態では、製剤は、約50mM~約400mMの糖を含む。実施形態では、製剤は、約100mM~約340mMの糖を含む。実施形態では、製剤は、約200mM~約340mMの糖を含む。実施形態では、製剤は、約240mM~約340mMの糖を含む。実施形態では、製剤は、約210mM、220mM、230mM、240mM、250mM、260mM、270mM、280mM、290mM、300mM、310、mM、320mM、330mM、340mM、350mM、360mM、370mM、380mM、390mM、又は400mMの糖を含む。
【0056】
実施形態では、製剤は、液体であり、製剤は、約50mM~約500mMの糖を含む。実施形態では、製剤は、液体であり、製剤は、約100mM~約400mMの糖を含む。実施形態では、製剤は、液体であり、製剤は、約250mM~約350mMの糖を含む。実施形態では、製剤は液体であり、製剤は約290mMの糖を含む。実施形態では、製剤は、液体であり、製剤は、約50mM~約400mMの糖を含む。実施形態では、製剤は、液体であり、製剤は、約100mM~約340mMの糖を含む。実施形態では、製剤は、液体であり、製剤は、約200mM~約340mMの糖を含む。実施形態では、製剤は、液体であり、製剤は、約240mM~約340mMの糖を含む。実施形態では、製剤は液体であり、製剤は、約210mM、220mM、230mM、240mM、250mM、260mM、270mM、280mM、290mM、300mM、310、mM、320mM、330mM、340mM、350mM、360mM、370mM、380mM、390mM、又は400mM糖を含む。
【0057】
実施形態では、糖は、単糖類、二糖類、又は三糖類である。実施形態では、糖は、デキストロース、フルクトース、ガラクトース、グルコース、ラクトース、マルトース、リブロース、マンノース、スクロース、トレハロース、セロビオース、キトビオース、又はそれらの組み合わせである。実施形態では、糖は、スクロース、ラクトース、グルコース、トレハロース、又はそれらの組み合わせである。実施形態では、糖は、スクロースである。
【0058】
実施形態では、製剤は、界面活性剤を更に含む。実施形態では、製剤は液体であり、界面活性剤を更に含む。実施形態では、製剤は、ゲルであり、界面活性剤を更に含む。実施形態では、製剤は、約0.01%~約0.1%の界面活性剤を含む。実施形態では、製剤は、約0.015%~約0.025%の界面活性剤を含む。実施形態では、製剤は、約0.02%の界面活性剤を含む。実施形態では、製剤は、約0.05%~約0.50%の界面活性剤を含む。実施形態では、製剤は、約0.05%~約0.3%の界面活性剤を含む。実施形態では、製剤は、約0.1%~約0.3%の界面活性剤を含む。実施形態では、製剤は、約0.01%、0.05%、0.1%、0.15%、0.2%、0.25%、又は0.3%の界面活性剤を含む。
【0059】
実施形態では、製剤は、液体であり、製剤は、約0.01%~約0.1%の界面活性剤を含む。実施形態では、製剤は、液体であり、製剤は、約0.015%~約0.025%の界面活性剤を含む。実施形態では、製剤は、液体であり、製剤は、約0.02%の界面活性剤を含む。実施形態では、製剤は、液体であり、製剤は、約0.05%~約0.50%の界面活性剤を含む。実施形態では、製剤は、液体であり、製剤は、約0.05%~約0.3%の界面活性剤を含む。実施形態では、製剤は、液体であり、製剤は、約0.1%~約0.3%の界面活性剤を含む。実施形態では、製剤は、液体であり、製剤は、約0.01%、0.05%、0.1%、0.15%、0.2%、0.25%、又は0.3%の界面活性剤を含む。
【0060】
当該技術分野で既知の様々な界面活性剤であり、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、又は両性イオン性界面活性剤を含むことができる。
【0061】
いくつかの一般的に遭遇する各種界面活性剤には、
【0062】
イオン性界面活性剤:i)陰イオン性界面活性剤(典型的には、硫酸塩、スルホン酸塩、又はカルボキシン酸塩アニオンに基づく)、例えば、α-オレフィン硫酸塩、アンモニウムオクチル/デシルエーテル硫酸塩、スルホコハク酸ナトリウム、トリデシルエーテル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、グリオコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム、N-ラウロイルサルコシン、アルキル硫酸塩、特に、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸リチウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属アルキル硫酸塩、又はラウリル硫酸アンモニウム;ラウレス硫酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸塩、デオキシコール酸アルカリ若しくはアルカリ土類塩又はデオキシコール酸、リン酸エステル及び塩、ii.)カチオン性界面活性剤、例えば、セチルトリメチルアンモニウムブロミド又は他のアルキルトリメチルアンモニウム塩などの四級アンモニウムカチオン、ステアリルアミン酢酸塩又はココナッツアルキルアミン酢酸塩などのアルキルアミン塩、塩化及び臭化ベンザルコニウム、例えば、塩化ベンゼトニウム又は塩化メチルベンゼトニウム、ステアリルアミンポリグリコールエーテル又はオレイルアミンポリグリコールエーテルに基づくカチオン性界面活性剤が挙げられる。。
【0063】
両性イオン(両性)界面活性剤、例えば、ドデシルベタイン、ドデシルジメチルアミノキシド、CHAPS、CHAPSO、BigCHAP、EMPIGEN BB(N-ドデシル-N,N-ジメチルグリシン)、ラウリルジメチルアミンオキシド、zwittergent3-08、zwittergent3-10、zwittergent3-12、zwittergent3-14、zwittergent3-16など、又は非イオン性界面活性剤、例えば、アルキルポリエチレンオキシド、オクチルグリコシド及びデシルマルトシドを含むアルキルポリグリコシド、例えば、ノニデット(nonidet)P10又はノニデット(nonidet)P40界面活性剤、MEGA-8、MEGA-9又はMEGA-10、Triton X100及び関連する界面活性剤、又はTweenファミリーの界面活性剤、例えば、Tween20、Tween40、Tween60、Tween80、APO-10、APO-12、C8E6、Ci0E6、Ci2E6、Ci2E8、Ci2E9、Ci2E10、Ci6Ei2、Ci6E2I、ヘプタン-1,2,3-トリオール、ルブロール(lubrol)PX、ゲナポール(genapol)ファミリー、n,-ドデシル-b-D-グルコピラノシド、テシット(thesit)、プルロニック(pluronic)ファミリー。
【0064】
いくつかの実施形態では、界面活性剤は、少なくとも2つの界面活性剤の組み合わせである。好ましくは、1つの界面活性剤は、カチオン性界面活性剤であり、少なくとも1つの更なる界面活性剤は、非イオン性界面活性剤である。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、カチオン性界面活性剤としてのセチルトリメチルアンモニウムブロミドと、非イオン性界面活性剤としてのポリソルベート、例えば、Tween20又はTween80との組み合わせである。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、セチルトリメチルアンモニウムブロミドではない。
【0065】
いくつかの実施形態では、界面活性剤は、アニオン性界面活性剤である。実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート80、ポリソルベート20、又はKolliphor P188である。
【0066】
実施形態では、製剤は、塩化ナトリウムを更に含む。実施形態では、製剤は、液体であり、塩化ナトリウムを更に含む。実施形態では、製剤は、ゲルであり、塩化ナトリウムを更に含む。実施形態では、製剤は、約10mM~約500mMの塩化ナトリウムを含む。実施形態では、製剤は、約50mM~約300mMの塩化ナトリウムを含む。実施形態では、製剤は、約100mM~約200mMの塩化ナトリウムを含む。実施形態では、製剤は、約150mMの塩化ナトリウムを含む。実施形態では、製剤は、約50mM~約250mMの塩化ナトリウムを含む。実施形態では、製剤は、約125mM~約175mMの塩化ナトリウムを含む。実施形態では、製剤は、約50mM、60mM、70mM、80mM、90mM、100mM、110mM、120mM、130mM、140mM、150mM、160mM、170mM、180mM、190mM、200mM、210mM、220mM、230mM、240mM、又は250mMの塩化ナトリウムを含む。
【0067】
実施形態では、製剤は、液体であり、製剤は、約10mM~約500mMの塩化ナトリウムを含む。実施形態では、製剤は、液体であり、製剤は、約50mM~約300mMの塩化ナトリウムを含む。実施形態では、製剤は、液体であり、製剤は、約100mM~約200mMの塩化ナトリウムを含む。実施形態では、製剤は液体であり、製剤は約150mMの塩化ナトリウムを含む。実施形態では、製剤は、液体であり、製剤は、約50mM~約250mMの塩化ナトリウムを含む。実施形態では、製剤は、液体であり、製剤は、約125mM~約175mMの塩化ナトリウムを含む。実施形態では、製剤は、液体であり、製剤は、約50mM、60mM、70mM、80mM、90mM、100mM、110mM、120mM、130mM、140mM、150mM、160mM、170mM、180mM、190mM、200mM、210mM、220mM、230mM、240mM、又は250mMの塩化ナトリウムを含む。
凍結乾燥(Freeze-Dried)(凍結乾燥(Lyophilized))製剤
【0068】
実施形態では、製剤は、凍結乾燥(freeze-dried)(凍結乾燥(lyophilized))固体である。凍結乾燥固体は、本明細書に記載のプロセスを含む、当該技術分野で既知のプロセスを使用して作製することができる。
【0069】
実施形態では、凍結乾燥固体は、緩衝液を含む。実施形態では、緩衝液は、リン酸ナトリウム、L-ヒスチジン、トリス、コハク酸塩、クエン酸ナトリウム、又はそれらの組み合わせである。実施形態では、凍結乾燥製剤は、糖を更に含む。実施形態では、糖は、スクロース、ラクトース、グルコース、トレハロース、又はそれらの組み合わせである。実施形態では、糖は、スクロースである。
【0070】
実施形態では、凍結乾燥製剤は、界面活性剤を更に含む。実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート80、ポリソルベート20、又はKolliphor P188である。
【0071】
実施形態では、凍結乾燥製剤は、塩化ナトリウムを更に含む。
【0072】
実施形態では、凍結乾燥製剤は、本明細書に記載される液体又はゲル製剤を凍結乾燥することによって製造される。実施形態では、凍結乾燥製剤は、本明細書に記載される液体又はゲル製剤を形成するように再構成される。実施形態では、凍結乾燥製剤は、本明細書に記載される液体又はゲル製剤を形成するように水中で再構成される。
製剤の特性
【0073】
実施形態では、ウイルスベクターは、ウイルス粒子中にある。したがって、いくつかの実施形態では、ウイルスベクターという用語は、ウイルスベクターに関連する、例えば、ウイルスベクターを包含する、タンパク質カプシド粒子を含むことができる。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、感染性ウイルス粒子中にあり、すなわち、宿主生物に感染することができる。完全な明確性のために、本明細書で使用される場合、いくつかの実施形態では、ウイルスベクターという用語は、ウイルス粒子、例えば、感染性ウイルス粒子を含むことができる。したがって、本明細書に記載の製剤又は方法におけるウイルスベクターへの言及は、ウイルス粒子、例えば、感染性ウイルス粒子を含むことができる。
【0074】
実施形態では、製剤は、ウイルスベクター製剤を評価するための当該技術分野における標準技術を使用して測定される特性を有する。実施形態では、製剤について、Z平均値が測定される。本明細書で使用される「Z平均値」という用語は、溶液中の粒子の強度加重平均流体力学的サイズである。実施形態では、ウイルスベクター製剤中のより大きな粒子の存在は、ベクター凝集を示すことができる。Z平均値を測定するための方法は、本明細書に記載されている。実施形態では、Z平均値は、動的光散乱(DLS)を使用して測定される。実施形態では、Z平均値は、多角度動的光散乱(MADLS)を使用して測定される。実施形態では、Z平均値は、ナノトラッキング分析を使用して測定される。
【0075】
実施形態では、製剤は、約50nm以下のZ平均値を有する。実施形態では、製剤は、約40nm以下のZ平均値を有する。実施形態では、製剤は、約31nm以下のZ平均値を有する。実施形態では、製剤は、約25nm以下のZ平均値を有する。実施形態では、製剤は、約20nm以下のZ平均値を有する。
【0076】
実施形態では、製剤について、多分散性指数(PDI)が測定される。本明細書で使用される「多分散性指数」という用語は、サイズに基づく試料の不均一性の尺度である。実施形態では、ウイルスベクター製剤中の異種粒子の存在は、ウイルスベクター凝集を示すことができる。多分散性指数を測定するための方法は、本明細書に記載されている。実施形態では、多分散性指数は、動的光散乱を使用して測定される。実施形態では、多分散性指数は、サイズ排除クロマトグラフィー、例えば、ゲル透過クロマトグラフィーを使用して測定される。実施形態では、多分散性指数は、質量分析法を使用して測定される。
【0077】
実施形態では、製剤は、約0.5以下の多分散性指数を有する。実施形態では、製剤は、約0.35以下の多分散性指数を有する。実施形態では、製剤は、約0.3以下の多分散性指数を有する。
【0078】
ウイルスベクター
製剤中のウイルスベクターは、当該技術分野で既知の任意のウイルスベクターであり得る。実施形態では、製剤は、1種を超えるウイルスベクターを含む。実施形態では、製剤は、同じタイプの1種を超えるウイルスベクターを含み、ウイルスベクターの各々は、異なる核酸配列を含む。
【0079】
実施形態では、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、又はハイブリッドベクターである。実施形態では、ウイルスベクターは、アデノウイルスベクターである。実施形態では、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルスベクターである。実施形態では、ウイルスベクターは、血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、又はAAV8のアデノ随伴ウイルスベクターである。
【0080】
実施形態では、本開示は、約10×108vg/mL(1mL当たりのウイルスゲノム)~約10×1013vg/mLのウイルスベクターを含む製剤を提供する。実施形態では、製剤は、約10×109vg/mL~約10×1011vg/mLのウイルスベクターを含む。実施形態では、製剤は、約10×105vg/mL~約10×1015vg/mLのウイルスベクターを含む。実施形態では、製剤は、約10×106vg/mL~約10×1014vg/mLのウイルスベクターを含む。実施形態では、製剤は、約10×107vg/mL~約10×1013vg/mLのウイルスベクターを含む。実施形態では、製剤は、約10×108vg/mL~約10×1012vg/mLのウイルスベクターを含む。実施形態では、製剤は、約10×105vg/mL、10×106vg/mL、10×107vg/mL、10×108vg/mL、10×109vg/mL、10×1010vg/mL、10×1011vg/mL、10×1012vg/mL、10×1013vg/mL、10×1014vg/mL、又は10×1015vg/mLのウイルスベクターを含む。
【0081】
対象への投与
実施形態では、製剤は、哺乳動物に投与するために製剤化される。実施形態では、製剤は、ヒトへの投与のために製剤化される。実施形態では、製剤は、コンパニオン動物、例えば、イヌ又はネコに投与するために製剤化される。実施形態では、製剤は、農場動物、例えば、ウシ、ブタ、家禽、ヒツジ、ヤギ、又はウマに投与されるように製剤化される。
【0082】
ウイルスベクターの凝集を低減する方法
実施形態では、本開示は、製剤中のウイルスベクターの凝集を低減するための方法を提供する。実施形態では、本明細書に記載の製剤のいずれかにウイルスベクターを製剤化することを含む、製剤中のウイルスベクターの凝集を低減する方法。実施形態では、ウイルスベクターの凝集を低減する方法は、治療用タンパク質を製造するプロセスで使用される。実施形態では、ウイルスベクターの凝集を低減する方法は、治療用抗体を製造するためのプロセスで使用される。実施形態では、ウイルスベクターの凝集を低減する方法は、ワクチンを製造するプロセスで使用される。実施形態では、ウイルスベクターの凝集を低減する方法は、治療用タンパク質を開発するプロセスで使用される。実施形態では、ウイルスベクターの凝集を低減する方法は、治療用抗体を開発するためのプロセスで使用される。実施形態では、ウイルスベクターの凝集を低減する方法は、ワクチンを開発するためのプロセスで使用される。
【0083】
製剤
実施形態では、本開示は、
約10×108vg/mL~約10×1013vg/mLのウイルスベクター、
約5mM~約40mMのリン酸ナトリウム、
約200mM~約400mMのスクロース、及び
約0.1%~約5.0%のアルブミンを含む製剤を提供する。
【0084】
製剤の実施形態では、アルブミンは、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、又はそれらの組み合わせである。実施形態では、製剤は、約10×109vg/mL~約10×1011vg/mLのウイルスベクターを含む。実施形態では、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、又はハイブリッドベクターである。実施形態では、ウイルスベクターは、アデノウイルスベクターである。実施形態では、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルスベクターである。実施形態では、ウイルスベクターは、血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、又はAAV8のアデノ随伴ウイルスベクターである。
【0085】
実施形態では、本開示は、
約10×108vg/mL~約10×1013vg/mLのウイルスベクター、
約5mM~約40mMのリン酸ナトリウム、
約200mM~約400mMのスクロース、及び
約0.05mg/mL~約0.4mg/mLのヒアルロン酸ナトリウムを含む製剤を提供する。
【0086】
製剤の実施形態では、製剤は、約10×109vg/mL~約10×1011vg/mLのウイルスベクターを含む。実施形態では、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、又はハイブリッドベクターである。実施形態では、ウイルスベクターは、アデノウイルスベクターである。実施形態では、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルスベクターである。実施形態では、ウイルスベクターは、血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、又はAAV8のアデノ随伴ウイルスベクターである。
【実施例】
【0087】
本明細書に記載の方法及び用途に対する他の好適な修正及び適合を、実施形態のいずれかの範囲から逸脱することなく行うことができることは、関連する技術分野の当業者には容易に明らかとなるであろう。以下の例は、例示のみを目的として本明細書に含まれ、限定することを意図するものではない。
【0088】
【0089】
要約
背景:アデノ随伴ウイルス血清型2(AAV2)は、遺伝子治療におけるポピュラーなベクターとして用いられている。遺伝毒性を示さずに効率的かつ安定した導入遺伝子発現を引き起こす能力に基づいて、これらのベクターは治療アプローチに有望である[1]。AAV2ベースの遺伝子療法は既に市場に参入しているにもかかわらず、それらの製剤開発に関する報告された文献は殆どない。
【0090】
目的:本明細書では、AAV2の特性評価に使用される分析方法の評価及び開発、並びにAAV2製剤の知識を向上及び拡大するための3ヶ月間の製剤安定性試験におけるこれらの戦略の適用を報告する。
【0091】
方法:AAV2試料の特性評価を行うために、以下の方法を使用した:逆位末端配列(Inverted Terminal Repeat)qPCR、AAV2-CMV-GFPによるU2OS-HTB-96細胞の感染、透過型電子顕微鏡法(TEM)、動的光散乱法(DLS)、及びゼータ電位
【0092】
結果:方法評価及び開発の際、汎用ITR qPCRを使用したベクター定量前に、酵素DNase I及び熱カプシド開放ステップを添加したことにより、精度が向上したことが示された。TEMを使用して、完全なカプシドの58%がベクターゲノムを含むことが決定された。導入遺伝子発現に関して、製剤安定性試験は、液体又は凍結状態で保存された試料が凍結乾燥のものよりも良好な性能を示すことを示した。異なる緩衝系を比較すると、クエン酸ナトリウム緩衝液と比較して、ベクターがL-ヒスチジン又はリン酸ナトリウム中に保存されるときに、導入遺伝子発現が有意に高かった。更に、発現は、保存時に、温度に依存する様式で急速に減少することが観察された。発現の変化とは対照的に、力価は研究の過程を通じて一定のままであり、攪拌ストレスによってのみ影響を受けた。更に、ベクター凝集が製剤化中に生じることが示された。1%ヒトアルブミンの添加は、凝集を防止し、発現に関するベクター安定性プロファイルを改善した。
【0093】
結論:本プロジェクトの目的は、AAV2製剤に関する知識の向上及び拡大であった。これは、AAV2の特性評価のためのいくつかの分析方法の評価及び開発並びにその後の製剤研究によって達成された。AAV2の導入遺伝子発現が、製剤緩衝液、pH、及び保存条件によって影響を受けることが示された。力価の変化のようなパラメータの影響は少なかった。それにもかかわらず、製剤の安定性を更に向上させ、アルブミンの添加による凝集を防止するための戦略が提供される。
【0094】
2 導入部
最近、遺伝子治療は臨床試験での成功により多くの注目を集めている[2]。遺伝子治療は、遺伝性疾患などのまだ満たされていない医療ニーズに対する解決策を提供する[3]。治療原理は、疾患の原因となる欠陥遺伝子の置き換え又は治療としての治療遺伝子の送達に基づいている[4]。遺伝子導入を促進するために、いくつかの異なるベクターが使用される。ウイルスベクター及び非ウイルスベクターがあり、後者は物理的方法、機械的方法、化学的方法に分けることができる[5]。レーザー照射、エレクトロポレーション、遺伝子銃の使用などの物理的方法は劇的に改善されたが、それらの使用は局所投与に限定されている[6]。リポソーム及びカチオン性ポリマーなどの化学的及び合成方法は、最も成功し、かつ、広く使用されている非ウイルス担体に共通する[7]。
【0095】
レトロウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルスは、遺伝子治療に使用されるウイルスベクターの代表である[8]。
図1を参照されたい。これらのベクターは、2つの群に分類することができる。第1の群は、それらのゲノムを宿主細胞染色分体に安定的に組み込むことができる。レトロウイルス、レンチウイルス、及びヘルペスウイルスは、その群のメンバーである。第2の群は、そのウイルスゲノムを染色体外スペースに沈着させる。その群の代表は、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルスである[8]。レトロウイルスは、一本鎖RNAを、宿主細胞ゲノムに安定的に組み込まれる二本鎖DNAに変換することができる[9]。この永続的な組み込みにより、連続的して長期間持続する発現が可能になる。全てのレトロウイルスは、安定した組み込みを達成するために有糸分裂を必要とする[10]。変異原性及び有糸分裂活性細胞の必要性などの欠点にもかかわらず、レトロウイルス遺伝子療法はいくつかの成功を記録している。これらは、がん細胞に対するキメラT細胞受容体(CAR-T)を発現するために、T細胞のエキソビボ形質導入において頻繁に適用される[11]。別の用途は、重症複合免疫不全に対する市場に出回っているエキソビボレトロウイルス療法であるStrimvelisに代表される[12]。
【0096】
最近では、臨床試験におけるレトロウイルスの使用の減少及びレンチウイルスへの移行が記録されている[13]。レンチウイルスは、レトロウイルス科に属するが、非分裂細胞に感染する特殊な能力を有する[14]。レンチウイルスの主要なリスクは、安全性及び効率性プロファイルを損なう免疫応答の刺激である[15]。
【0097】
単純ヘルペスウイルス1型は、中枢神経系内の疾患を治療すること及びがん細胞の溶解について調査されている[16]。
【0098】
アデノウイルスは、そのゲノムを染色体外に送達するウイルスベクターの第2の群のメンバーを表す。レンチウイルスと同様に、アデノウイルスは非分裂細胞に感染することができる。アデノウイルスは、二本鎖DNAを含む[17]。アデノウイルスベクターの利点は、その高い形質導入及び発現効率である。その高い免疫原性は、主な欠点である[18]。
【0099】
しかしながら、このような有望なウイルス療法の開発の経路は困難である。1999年に、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠損症を有する最初の患者が組換えアデノウイルスで治療され、多臓器不全を引き起こす重度の免疫応答を経験した後に死亡した[19]。2000年の別の研究では、重症複合免疫不全を有する4人の子供が、CD34+細胞をレトロウイルスでエキソビボ治療した後に白血病のようなT細胞増殖を発症した[20]。
【0100】
アデノ随伴ウイルス(AAV)の発見及び開発により、遺伝子療法の分野は飛躍的進歩を経験した。分裂細胞及び非分裂細胞に感染し、遺伝毒性又は重度の免疫応答を引き起こすことなく安定したインビボタンパク質発現を引き起こすそれらの能力は、現時点で最も有望なウイルスベクターとなる。多くのAAV療法は、臨床試験及び市場に移行している[21]。
【0101】
2012年に、Glyberaという名前の最初のAAVベースの遺伝子療法が認可されて上市した。これは、遺伝性家族性リポタンパク質リパーゼ欠損症を治療するために開発された。臨床研究により、このAAV1ベースの療法が、最大14週間にわたって血液中のトリグリセリド濃度を有意に低下させることを示された。これは、膵炎及び腹痛の発生率の低下を伴う[22]。2018年に、Glyberaは、長期的な有効性が不十分であり、かつ、商用利用の可能性がないため、市場から撤退した[23]。2017年に、Luxturnaの認可によって、遺伝子療法における画期的な進歩がもたらされた。これは、欠損した遺伝子を送達して網膜染料上皮タンパク質を産生する、AAV2ベースの遺伝子療法である[24]。この療法は、網膜ジストロフィーを治療するためにSpark Therapeuticsによって開発された[13]。最も最近では、AveXisが、脊髄性筋萎縮症に対する1回用量治療である遺伝子療法ZolgensmaについてFDAの認可を受けた。この疾患は、運動神経細胞生存ニューロン1遺伝子(survival moto neuron 1 gene)の変異又は欠失によって生ずる。Zolgensmaは、欠失又は欠損した遺伝子を骨格筋に送達するためにAAV9ベクターを利用している[25]。その高い価格は多くの否定的な見出しを飾ったが、この療法の成功は、他のウイルス遺伝子療法の概念を証明する重要な出来事である[26]。
【0102】
【0103】
2.1 アデノ随伴ウイルス
その成功及び有望な特性により、AAVベクターは現在、ウイルス遺伝子療法の研究対象となっている。AAVに関する知識は長年にわたって著しく増加したが、AAVの製剤開発に関する文献は殆ど報告されていない。AAV製剤開発の分野での少ない寄稿、並びにそれらの分子組成物及び感染経路は、次のセクションで更に詳述される。
【0104】
Croyle及びその同僚は、この分野に最初の貢献をした。彼らは、AAV及びアデノウイルス安定性研究を実施し、ウイルスベクターの安定性に影響を及ぼすいくつかのプロセス要因及び賦形剤を同定した。凍結乾燥した場合にAAVがかなり安定することが観察された。最大3ヶ月間にわたって25℃で保存した場合、感染力価の喪失は観察されなかった。AAV製剤を-80℃に凍結させると、-20℃に凍結するよりも大きな感染力価の損失がもたらされた。彼らによると、この損失は凍結時のpH低下と関連している。しかしながら、賦形剤及び緩衝液を適切な選択することにより、-80℃、-20℃、2~8℃、25℃で5ヶ月以上保存した場合、安定したAAV感染力価となる[27]。
【0105】
別のグループは、組換えAAV(rAAV)の適切な出荷及び保存温度に関する第2の研究を発表した。彼らは、-80℃、-20℃、2~8℃、25℃、及び37℃などの異なる保存温度がインビトロ及びインビボでの形質導入効率に及ぼす影響を調べた。-80℃で保存されたウイルスストックは、AAVを凍結保護剤なしで保存したにもかかわらず、最大1ヶ月間にわたって安定したままであり、形質導入効率の損失を記録しなかった。温度の上昇に伴い、形質導入効率は低下する。特に保存初期では、37℃などの高い温度は、25℃の保存温度と比較して大きな形質導入効率の低下をもたらす。更に、研究では、形質導入効率が急速に低下したにもかかわらず、37℃で保存してもウイルスの一部が感染性を保つことが示された[28]。
【0106】
より最近の研究では、異なるAAV保存温度、緩衝溶液、及び異なる臨床材料の適合性が試験された。彼らは、ベクターコピー数及び導入遺伝子発現がベクター安定性のマーカーとして使用した。導入遺伝子発現のインビボでの低下は、AAVを72℃に20分間加熱した後、又はUV光でAAVを10分間曝露した後にのみ見られた。20分間にわたる55℃などの温度又は4回の凍結融解サイクルは、導入遺伝子発現に影響を及ぼさなかった。彼らはまた、補体タンパク質を含むヒト血清をAAV1ベクターに曝露した。そのような状態によっても導入遺伝子発現のいかなる損失も生じなかったが、集団の70%超がAAV1免疫を有する。並行して、頻繁に使用される臨床材料及び希釈剤を用いて適合性試験を行った。導入遺伝子発現に対するステンレス鋼針並びにポリエチレン及びガラス表面の影響を試験した。更に、リン酸緩衝液、乳酸リンゲル溶液、及びガドリニウムなどの臨床用途のために頻繁に使用される異なる希釈剤が調べられた。材料も希釈剤も、導入遺伝子発現の低下をもたらさなかった。5.5~8.5の範囲の異なるpHでさえ、発現に影響を及ぼさなかった[29]。
【0107】
上記の研究は全て、感染力価又は形質導入効率のみをモニタリングした。追加の物理化学的特性評価は行われなかった。
【0108】
Wright及びその同僚は、ベクター凝集を更にモニタリングした研究を発表した。対称的なカプシド構造及び逆荷電カプシドポケット間の追加のイオン相互作用は、低いAAV溶解性をもたらす。したがって、凝集は、力価>1014vg/mLの高力価製剤において頻繁に生じる。しかしながら、凝集は、凍結融解サイクルに曝露されたときに非常低い力価でも観察された。彼らは、主に塩であるいくつかの賦形剤が、ベクター凝集を防止することができることを示した。この効果は、イオン強度によって引き起こされ、特定のイオン種に依存しない。荷電アミノ酸は、例えば、特定の塩と同じイオン強度でのみ凝集を防止することができた。更に、この刊行物では、AAVの精製プロセスがベクター凝集に重要な影響を有することが示された。精製後のヌクレアーゼ処理は、ベクター凝集を著しく低減した。この所見は、残存宿主細胞タンパク質及びDNA断片がカプシド間のイオン結合を促進することを示唆する。高イオン強度製剤は、形質導入効率及び導入遺伝子発現に負の影響を及ぼさなかった[30]。
【0109】
AAVの安定性に影響を与える特性をよりよく理解するために、カプシド構造及び特徴をより深く掘り下げる必要がある。アデノ関連ウイルスは、パルボウイルス科のメンバーである[31]。それらは、約25nmの直径を有する60個のタンパク質からなる20面体カプシドを有する[32]。AAVカプシドは、約6.3の等電点を有する。殆どの血清型の三次元構造は、低温電子顕微鏡法によって解明されている[33]。AAV2の場合、VP1、VP2、VP3という名称の構造タンパク質が、それぞれ1:1:10の比率でカプシドを構成する。VP3は、最も豊富にあるカプシドタンパク質であるだけでなく、他の構造タンパク質よりもN末端上で65アミノ酸短い[34]。VP1及びVP2は、細胞の感染を成功させるために重要であるようである。N末端には、それらは、ホスホリパーゼA2(PLA2)及びカプシド内に埋入された核局在化シグナル(NLS)ドメインを含む。VP1/2カプシドタンパク質の欠失及びそのPLA2ドメインの変異によって、カプシド構造がインタクトなままであっても、ウイルスは形質導入性を失う[35]。形質導入の成功のためには、埋込されたPLA2及びNLSを外在化させる必要がある。外在化は、5倍対称軸のチャネルを通して行われる。この孔はかなり小さいため、嵩高いVP2N末端が外在化している可能性は低い[36]。正確には12個の孔がAAV2カプシド上に位置している。孔形成アミノ酸の変異又は欠失によって、PLA2活性の低下及びVP1 N末端外在化が生じていないか、又はそれらの低下のみが生じることが示された。このような変異は、受容体媒介性カプシドの取り込みには影響を及ぼさなかったが、ウイルス感染性に強い影響を及ぼした[37]。より最近の研究では、pHの変化によってVP1N末端の立体構造変化が誘発され得ることが示されている。7.5から5へのpH低下によって、VP1N末端の可逆的なコンフォメーション変化及び外在化が引き起こされ、これにより、エンドソーム脱出が可能になる。細胞がエンドソームpHを低く保つことを防止するH+ATPアーゼ阻害剤であるバフィロマイシンA1で細胞を処理した場合、エンドソーム脱出は生じなかった。これは、エンドソーム脱出を促進するためには低pH環境であることの必要性を示している[33]。pH誘発性立体構造変化と同様に、温度上昇は、VP1外在化を引き起こすことができる。AAVカプシドの熱安定性を詳細に調べると、カプシド融解温度が、最も安定性の高いAAV血清型と最も安定性の低いAAV血清型との間で20℃を超えて異なることが示された。AAV5は、70℃の融解温度を有する最も安定していないAAV2と比較して、90℃の融解温度を有する最も安定した血清型である。実験では、VP1は、熱安定性に寄与せず、埋包された表面積も、一次アミノ酸配列も寄与しないことが示された。カプシドのX線結晶構造分析により、AAV2血清型が、AAV5と比較して非常にフレキシブルなタンパク質複合体であることが明らかとなり、これは、カプシド融解温度の低下を説明することができる。しかしながら、熱安定性の大きな違いについての明確な説明がまだ懸案中である。それにもかかわらず、これらの知見は、カプシドの特性評価に重要な価値を付加する[32]。
【0110】
カプシドは、ゲノムの保護に関与するだけでなく、細胞のウイルス取り込みにも重要である。受容体媒介性クラスリンエンドサイトーシスは、取り込みに関与する[38]。2時間後、ウイルスゲノムは既に核内に位置している[39]。血清型は、異なる特定の受容体に結合し、これは組織トロピズムを明確にしている[21]。アデノ随伴ウイルス2は、細胞に侵入するために、主にヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)を用いる。線維芽細胞増殖因子(FGFR)、肝細胞増殖因子(HGFR)、ラミニン受容体、及びインテグリンαVβ1/αVβ5などの4つの共受容体は、取り込みを支援することが知られている[40]。HSPGをノックアウトすることにより、AAV2に対する感染抵抗性が生じた[41]。一方、FGFR1受容体のノックアウトは、宿主細胞感染に有意な影響を及ぼさなかった[42]。AAV4はAAV5と53%の配列相同性しか共有しないが、両方とも、細胞に入るためにシアル酸を必要とする[21]。より最近の研究は、新たに発見された受容体 KIAA0319Lの重要性を示す。KIAA0319Lノックアウト細胞は、全てのAAV感染に抵抗性であった[42]。しかしながら、血清型特異的受容体相互作用は、AAV組織トロピズムの原因となる[4]。
【0111】
AAV安定性は、カプシドタンパク質だけでなく、ゲノム長、浸透圧、及び環境のpHによっても影響を受ける。小さいゲノムサイズを有するAAVは、より高いDNA放出温度を有する。ベクターDNAとカプシドのヒスチジン残基との生相互作用の発生は、より低いpHにおける安定化効果の原因となり得る。低pHでのこれらの追加の相互作用は、エンドソームにおいてウイルスを保護し、安定化し得る[43]。これは、カプシド構造がウイルスの安定性に寄与するだけでなく、カプシド遺伝子相互作用も重要であることを示している。AAVのゲノム構造を調べることは特に価値がある。
【0112】
wtAAVには、4.7kbの一本鎖DNAがパッケージングされる[44]。ゲノムは、3つのオープンリーディングフレーム(ORF)を含む[45]。Rep ORFは、転写調節及びウイルス複製に関与する4つのタンパク質をコードする。異なるRepタンパク質の発現は、スプライシングによって制御される。スプライシングされたRNAは、Rep68及びRep40をコードし、スプライシングされていないRNAは、Rep52及びRep72をコードする[46]。Cap ORFは、3つの構造カプシドタンパク質VP1、VP2、VP3をコードする[47]。アセンブリ活性化タンパク質(AAP)は、Cap遺伝子上に位置し、異なるリーディングフレームで転写されるため、第3のORFを表す[45]。逆位末端配列(ITR)を形成する145塩基対の長いT字型ヘアピンは、両方の遺伝子に隣接している[48]。ITRは、DNAポリメラーゼ結合を可能にするため、ベクター複製に不可欠である[49]。これらの配列の他に、DNA上に位置する3つの異なるプロモーターがある。P40は、Cap遺伝子の転写の誘導に関与している。P5及びP19は、Repタンパク質転写産物を生成する[50]。wtAAVと比較して、組換えAAV(rAAV)中のRep及びCap遺伝子が治療用導入遺伝子及びそれぞれのプロモーターで置き換えられる。ITR配列は保持されている[51]。
【0113】
送達されたAAVゲノムの殆どは、染色体外では環状形態で保存されている[52]。ベクターDNAの最大99.5%は、エピソーム形態で見出すことができ、宿主染色体に組み込まれていない[53]。小さな割合が、ヒト染色体19の特定の遺伝子座に組み込まれる[54]。
【0114】
以下のセクションでは、多様なAAV特性評価に使用される分析方法を詳述する。
2.2 分析方法
2.2.1 定量ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)による強度及び用量決定
【0115】
送達されるウイルスゲノムの数は、通常、治療効果と相関する[56]。したがって、力価測定は、用量評価のための重要なアッセイである[57]。定量リアルタイムPCR、サザンブロッティング、及び紫外分光光度法を含む、力価決定のためのいくつかの方法が存在する[55]。紫外分光光度法は速くて経済的なアプローチであるが、その精度が欠点である。宿主細胞の不純物、緩衝液、及び賦形剤は、この技術の精度を損なう[58]。
【0116】
qPCRを用いたDNAアンプリコンの定量化には、二本鎖DNAに結合し、蛍光に開始するSYBR-緑色染料、又はssDNAに結合し、DNA-ポリメラーゼによる除去時に蛍光に開始する標識TaqManプローブのいずれかが必要である[59]。高い価格にもかかわらず、TaqManアプローチは、最も頻繁に使用される定量化アプローチである。その高い感度及び特異性によって、これは非常に信頼性の高い戦略となる。そして、高い再現性及びTaqMan戦略との高い同等性により、これは魅力的なアプローチとなる[62]。SYBR-グリーン感度は、プライマー二量体及び二次構造の形成によって損なわれ得る[60]。それにもかかわらず、SYBR-グリーンは、低価格で簡単であるために頻繁に使用されている[61]。SYBR-グリーンは更に、特異性を確認するために溶融曲線ステップを必要とする[63]。
【0117】
qPCR用いた力価定量化は、迅速で、処理が容易であり、かつ、広いダイナミックレンジを有するため、ウイルス力価定量化のための最も頻繁に使用される方法に進化した[56]。多くの場合、ITR断片がヘアピン構造を形成するため、qPCRはウイルス力価を過小評価する[49]。このような構造は、プライマーのアニーリングを妨げ、力価を人工的に低下させる。定量化前に試料をエンドヌクレアーゼで処理することにより、過小評価の問題が解決され、更に、アッセイ間の変動が改善される。導入遺伝子の中心内の増幅領域を標的とするアッセイは、不正確さを引き起こすITRヘアピン構造の影響を受けることが少ない[64]。
【0118】
開発されたqPCR戦略の殆どは、特定の導入遺伝子配列を標的化する[65]。しかしながら、CMVプロモーターなどの一般的に使用されるプロモーターも、これらがより広い適用範囲を提供するので、有望な増幅標的である[66]。このようなプロモーター特異的又は導入遺伝子特異的qPCR測定の実施は、異なる導入遺伝子又はプロモーターを有するベクターについて新たに開発される必要があるため、限定的である。
【0119】
Aurnhammer及びその同僚は、全てのAAV2に適用することができるニユバーサルITR特異的qPCRアプローチを開発した。プライマー及びプローブの位置は、ITR配列内にある[65]。これらの利点にもかかわらず、実験は、ITR qPCR測定値が常にウイルス力価を過大評価し、更に、高い実験室間変動を有することを示している。系統立った過大評価は、1回切断直線化プラスミド標準物質によって生ずる。プラスミドに埋め込まれたITRの増幅効率の低下は、過大評価の原因となり得る。ITR配列の両端で切断されたプラスミド標準物質は、この過大評価を解決する[67]。qPCRの欠点は、市販されている標準材料がAAV2及びAAV8のみに存在し、定量化精度がアンプリコンの二次構造に影響されることである。
【0120】
最近、AAV力価測定に適した代替物として、ドロップレットデジタルPCR(ddPCR)と名付けられた新しいPCR法が登場した[68]。その名が示すように、試料は、約20,000個の液滴に分けられる。これらの液滴は、従来のPCRサイクルを受けて、それに応じて、染色され、フローサイトメトリーで分析される。1つ以上のDNAアンプリコンを含む液滴は、陽性として分類され、空の液滴は、陰性として分類される。ポアソン統計の助けを借りて、DNA標準を必要とせずに、DNA分子の平均数を計算することができる[69]。結果は、ddPCRが、堅牢性及びアッセイの変動に関して従来のqPCRよりも優れたAAV滴定を行ったことを示している[70]。
【0121】
しかしながら、分析方法、増幅配列、及び蛍光染料は、AAV滴定の精度、感度、及び堅牢性に影響を与えるだけでなく、試料調製も影響を及ぼす。Dobnik及びその同僚は、定量化前にAAV試料をDNase Iとインキュベートすることによって宿主細胞DNA残基を除去することにより、力価が著しく低下することを示している[70]。
【0122】
2.2.2 TEM、AEX-HPLC、及びAUCを用いた空のカプシドと完全なカプシドとの比率の決定
空のカプシドは、AAV生合成中に生成される全てのカプシドのかなりの量を構成する[71]。全てのカプシドの最大90%が空であり得る[55]。空のカプシドが存在する理由は不明である。pH、イオンの種類、濃度などの細胞培養条件が比率に影響を及ぼす[72]。しかしながら、空のカプシドは、治療効果を媒介しないので望ましくない。細胞受容体に結合することによって、それらは完全なウイルスベクターの取り込みを減少させ、免疫応答を引き起こす可能性さえある[73]。次のセクションでは、空のカプシドと完全なカプシドとの比率を定量化するための異なる方法を詳述する。
【0123】
透過型電子顕微鏡法(TEM)は、空のカプシドと完全なカプシドとの比率を定義するために広く使用される技術である。AAVは、酢酸ウラニルを用いたいわゆる「ネガティブ染色」によって可視化される。完全な粒子は染料を除外し、したがって白い点として現れる。一方、空のカプシドは染料を取り込み、カプシド中に暗い斑点を伴って現れる[74]。TEMには、最小限の試料消費及び直接的な可視化などのいくつかの利点がある。それにもかかわらず、それは時間がかかり、高価であり、恣意的であり、試料調製に依存する[73]。
【0124】
DNAを含むカプシドは、わずかに異なる表面電荷を有し、これは、アニオン交換クロマトグラフィー(AEX)による連続溶出を可能にする。カプシドの溶出は、蛍光又は紫外線吸光度のいずれかによって検出することができる。このような測定は、完全なカプシド比と空のカプシドとの比率の迅速で、単純で、かつ非常に再現性の高い決定を可能にする[75]。高スループット、品質管理(QC)フレンドリー性、測定の自動化、及び少容量の試料は、アニオン交換クロマトグラフィー法の大きな利点である[76]。通常、ウイルス製剤は、低い量のタンパク質濃度を含み、これは、低いシグナル対雑音比を引き起こす。蛍光検出器を使用することにより、シグナル対雑音比を向上させることができる。このような進歩にもかかわらず、AEX戦略は、完全なカプシドと空のカプシドとの比率の大雑把な推定しかできない[73]。
【0125】
完全なカプシドと空のカプシドとの比率を定量化するための第3の方法は、分析用超遠心分離(AUC)である。AUCは、空のカプシドと完全なカプシドの比率を定義するためのゴールドスタンダードとみなされている[76]。ベクターゲノムの存在は、密度を増加させ、したがって、空のカプシドから沈降速度を上回って分離することを可能にする[73]。この方法は、空のカプシド及び完全なカプシドを定量化するための非常に正確で再現可能なツールである[77]。従来、空のカプシドと完全なカプシドとを分離するためにセシウム-塩化物密度勾配AUCを適用していたが、このアプローチはスケーラブルではない[71]。超遠心分離及び計算方法の最近の進歩により、沈降のリアルタイムモニタリングと、その後の紫外線検出システムを使用したAAVカプシドの定量化が可能になった[78]。その高い感度は、異なるゲノムサイズを有するカプシドの分離及び定量化を可能にすることさえある[78]。特に研究目的のための大きな制限は、少なくとも400μlの高容量及び約5・1012vg/mLの高力価の要件である[73]。
2.2.3 カプシド-ELISA及びNTAを用いたカプシド総数
【0126】
前述の戦略は、主にDNA含有ベクターの定量化に焦点を当てている。AAVカプシドの総数を定量化するためのアプローチが不足している。カプシド-ELISAは、AAVカプシドの総数を直接的に定量化するわずかなアプローチのうちの1つである[79]。血清型1、4、5、及び6特異的抗体を使用して、サンドイッチELISAを行い、それぞれのカプシド総数を定量化することができる[80]。ELISAアッセイの主な欠点は、価格、高い変動性、及び遊離タンパク質への非特異的結合の可能性である[55]。
【0127】
Kondratov及びその同僚による最近の刊行物では、ナノ粒子追跡分析(NTA)を使用して、AAVカプシドの総数を計数した。検出可能なシグナルを得るために、カプシドを金ナノ粒子で標識した[81]。
2.2.4 細胞ベースの発現アッセイを用いたベクター製剤の活性及び効力
【0128】
AAVは、分裂細胞及び非分裂細胞を形質導入することができる[52]。AAVベクターの形質導入効率は、導入遺伝子発現を測定することによって同定される[82]。ベクターの不安定性及び分解が形質導入の低下を引き起こすため、これはベクター製剤の重要な品質特性である[27]。主に、緑色蛍光タンパク質(GFP)などの蛍光タンパク質をコードする導入遺伝子を有するベクターが、形質導入アッセイに使用される[55]。細胞ベースのアッセイにおけるベクター濃度は、感染多重度(MOI)として表される。MOIは、1つの細胞に追加されるゲノム含有ベクターの数である[83]。
【0129】
形質導入実験は、インビボ、エクスビボ、又はインビトロのいずれかで実施される[84]。AAV血清型は別個の組織トロピズムを有するため、インビトロ実験では、高い形質導入効率を有する細胞株を選択することが重要である[4]。多くのインビトロ研究では、形質導入実験のためにHEK293細胞を使用する。これは、確立された既知の細胞株であり、AAVの生合成にも使用される[85]。
【0130】
Ellis及びその同僚は、様々な異なる細胞及び血清型をスクリーニングする形質導入研究を行った。実験は、多くの前駆細胞が十分に形質導入されておらず、インビトロAAV形質導入アッセイに好適ではないことを示した。しかしながら、多くの不死化ヒト細胞株は、特にAAV1及びAAV6によって高度に形質導入された[84]。
【0131】
頻繁に使用される血清型2(AAV2)をより詳しく見ると、いくつかの刊行物は、U2OS細胞の形質導入実験の成功を記載している。これらの骨肉腫細胞は、AAV2感染症に非常に感受性である。しかしながら、これがそれらの変異又は骨細胞様の性質によって引き起こされるかどうかはまだ不明である[86]。AAV2による高い形質導入のため、この細胞株は、前述のKIAA0319L受容体を同定する実験に利用された[42]。Ellis及びその同僚により、U2OS細胞において98%のAAV2形質導入効率が測定され、これは、上記の他の刊行物で観察された形質導入効率に対応する[84]。
【0132】
引用文献の殆どでは、形質導入効率を定量化するためにフローサイトメトリーが使用されている。フローサイトメトリーは、ベクター媒介遺伝子移入の迅速かつ堅牢な品質評価に関して十分に好適である[87]。
2.2.5 DLS及びNTAを用いた粒子サイズ評価
【0133】
動的光散乱(DLS)は、ブラウン運動下の粒子の光散乱を測定する。大きな粒子は、小さな粒子よりもゆっくりとした運動であるために、より高い相関を有し、逆もまた同様である[88]。これに基づいて、DLSは、それぞれの粒子の拡散係数を計算し、これにより流体力学的半径の計算が可能となる[89]。
【0134】
ナノトラッキング分析は、より新規なアプローチであり、DLSと同じ原理に基づいている。レーザーはブラウン運動下での光の散乱を可視化する。デジタルカメラは、粒子サイズを追跡し、計数し、測定する。NTAは、DLSよりも高い分解能を有し、試料不純物にもに乏しい[90]。DLSに対するその利点にもかかわらず、これはAAVのサイズ決定に使用されることは殆どない。
【0135】
DLSは、非常に感度が高く、低容量の試料を必要とする[30]。したがって、DLSは、ウイルスベクターのサイズ測定及び凝集測定用に普及した[89]。ベクター凝集が精製中に生じ、したがって、ウイルス療法の安全性及び効力プロファイルを損なう可能性がある[91]。それゆえに、DLSは、ベクター精製後の品質管理のためのツールとして使用され得る[92]。調べる際には殆ど、ベクターサイズ及び凝集分析のためにDLSを使用している[90]。例えば、Wang及びその同僚は、DLSを用いて、AAVカプシド修飾がそのサイズに及ぼす影響を調べた[34]。他の研究は、DLSを使用して、抗体が組織相互作用に影響を与えるベクター凝集をどのようにして媒介するかを調べた[93]。凝集はまた、ウイルスベクターの保存中に生じ得る。したがって、精製戦略を改善するだけでなく、ベクターを安定させるための新しい革新的な製剤アプローチに焦点を当てることが重要である[91]。本出願では、DLSを使用して、AAV2凝集に対する異なる賦形剤の影響を評価した。凝集測定により、十分なイオン強度を製剤に添加したときに、AAV2凝集体のサイズが減少することが明らかになった[30]。
2.2.6 ゼータ電位を用いたコロイド安定性の評価
【0136】
ゼータ電位は、粒子の表面電位を測定し、ナノ粒子のコロイド安定性の特性評価を行うための重要なツールである[94]。ゼータ電位は、主にpHの影響を受ける。ウイルスなどのナノ粒子は、pHがそれらの等電点に近い場合にコロイド安定性の低下を示す。それにもかかわらず、イオン強度及び粒子濃度はまた、ゼータ電位に影響する[95]。表面電位の測定は、アデノ関連ウイルスの製剤開発の際に適用することができる。文献によれば、AAV2は、-9.4mVの表面電位を有する[96]。コロイド安定性は、ゼータ電位の大きさによって影響を受ける。-30mV未満の値又は+30mVより大きい値は、高度な安定性を示す。-25mVより大きいゼータ電位又は+25mVより小さいゼータ電位は、ファンデルワールス、疎水性相互作用、及び水素結合の形成に起因して凝集し、塊になり、又は凝塊する傾向がある[97]。
2.2.7 製剤化開発における有用なツールとしての示差走査蛍光測定法
【0137】
示差走査蛍光測定法(DSF)は、タンパク質の熱安定性を決定することができる蛍光ベースのアッセイである。分析方法は、内因性又は外因性の蛍光変化のいずれかを検出する。内因性蛍光は、トリプトファン、フェニルアラニン、及びチロシンなどの芳香族アミノ酸によって引き起こされる。温度誘導性タンパク質のアンフォールディング時に、アミノ酸はそれらの位置を変化させ、これにより蛍光スペクトルの変化がもたらされる。一方、外因性蛍光は、外因性染料の添加によって引き起こされる[98]。SYPRO-オレンジは、良好なシグナル対雑音比により、DSFに最も一般的に使用される染料である[99]。したがって、AAVの熱安定性に関する殆どの実験は、SYPRO-オレンジを使用する。これは、カプシドアンフォールディング時にアクセス可能になる疎水性領域に結合する。製剤開発においてその使用を制限するSYPRO-オレンジの欠点は、頻繁に使用される界面活性剤に対する親和性である。これらの界面活性剤の疎水性領域への結合は、高いバックグラウンド蛍光をもたらす[100]。したがって、より新しいアプローチは、SYPRO オレンジDSFの簡単かつ正確な代替として、AAVカプシドの内因性蛍光を利用する[101]。これらの改善に加えて、試料消費量が低く、迅速であり、堅牢であり、かつ費用対効果の高い測定がDSFの主な利点である[4]。
【0138】
DSFは、製剤開発における非常に価値ある方法として現れた。前述したように、カプシド融解温度を測定することにより、血清型を同定することができる[32]。最近の研究では、DSFの適用は、AAV血清型の同定以上のことをすることができることが示されている。タンパク質不純物は、例えば、DSFフィンガープリントに著しく影響を与え、AAVバッチ純度を評価することが可能になる。同様に、蛍光シグナル強度は、カプシド濃度に直接比例する。両方の言及した適用を利用して、AAV調製物のバッチ間の一致を評価することができる[102]。
【0139】
Bennett及び同僚は、緩衝液スクリーニングを行い、したがって、別の製剤に関連するDSFの実施を示した。彼らは、緩衝液がAAVの熱安定性にどのように影響するかを測定した。結果は、緩衝液の選択が、血清型特異的な様式でカプシドの融解温度に影響することを示した。AAV2の場合、トリス緩衝液は、リン酸緩衝液と比較して、融解温度を最大15℃上昇させた[103]。緩衝液だけでなく、そのpHは、血清型特異的な様式で熱安定性に影響を及ぼす。AAV5の熱安定性は、pHの低下と比例して低下する。一方、AAV2は、pH5において最高の熱安定性を有する[102]。上記の刊行物は、新たな製剤関連のDSFの適用を浮き彫りにしている。
2.3 プロジェクトの構成及び製剤研究
【0140】
プロジェクトは2つの部分に分けられる。最初の数ヶ月間は、AAV2の特性評価のための分析方法の評価及び開発に焦点を当てた。最初に、用量の推定を行うためにqPCR法を改変した。並行して、製剤によって誘導される発現を試験するために、細胞ベースの導入遺伝子アッセイを開発した。粒子分析を行い、ゼータ電位測定、光遮蔽法を用いた目視で見えない粒子の形成、及び動的光散乱に焦点を当てた。更に、DSF技術を確立し、AAV2製剤に適用した。
【0141】
プロジェクトの第2部では、3ヶ月間の安定性試験において8つの異なる製剤を評価した。文献中の製剤は、AAV供給元によって提供される製剤、及びLuxturnaなどの市販の製剤とともに、0.001%P188を補充したリン酸緩衝液を使用する。この緩衝液を、製剤開発の出発点として使用した。製剤ごとに1つの変数のみを変更することによって、更なる製剤を開発した。これにより、変更されたパラメータの影響に関する結論が得られた。AAV2の安定性に対するそれらの影響を評価するために、異なる緩衝液、pH、及び賦形剤を使用した。Bennett及びその同僚は、pHが熱安定性に直接影響することを既に示している。したがって、異なるpH範囲を試験し、5.5、6.8、及び7.5のpHを選択した。最も低いpH5.5は、最高のAAV2熱安定性をもたらしただけでなく、エンドソーム環境を模倣した[103]。その後に、選択されたpH範囲において緩衝し、かつ、凍結乾燥に好適である、3つのポピュラーで確立された製剤緩衝液を選択した。直接の比較が可能になるように、同じ緩衝液濃度を選択した。20mM L-ヒスチジン、クエン酸ナトリウム、及びリン酸ナトリウムをAAV2安定性試験のための製剤緩衝液として選択した。後者は、ポピュラーなAAV保存用及び出荷用緩衝液である一方、L-ヒスチジン緩衝液は、生物学的製剤において一般的に使用される。最後に、クエン酸ナトリウム緩衝液は、特に、AAV安定性へのその影響が文献に記載されていないため、選択された。全ての製剤に290mMのスクロースを補充した。スクロースは、凍結乾燥のための増量剤として必要であった。研究では、2つの異なる界面活性剤を試験した。一方で、Kolliphor P188をAAV製剤において頻繁に使用される界面活性剤として試験し、一方で、ポリソルベート80を試験した。それぞれ0.001%及び0.02%のKolliphor P188及びPS80濃度を使用した。これらは、文献に記載されている標準的な界面活性剤濃度であり、AAV供給元によって使用され、市販のAAV製剤において使用されている。このような低い界面活性剤濃度は、ガラス又はプラスチック表面への非特異的結合を防止するのに十分であることが示された[104]。
【0142】
本プロジェクトの中心的な目的は、凍結乾燥がAAV2ベクターの安定性に及ぼす影響を評価することであった。凍結乾燥は、-80℃の現在のAAV保存及び出荷温度に魅力的な代替物を提示するであろう。高価なAAVベクターのために、4つの製剤に凍結乾燥を適用することが決定された。AAVは安定であることが知られているが、それらは凝集する傾向がある。
【0143】
Wright及びその同僚は、凝集の原因となる異なるメカニズムを提案した。1014vg/mLより大きい力価を有する高力価製剤では、対称的なキャプシド構造及び逆荷電キャプシドポケット間の相互作用により、AAVの溶解度が低下する。ヌクレアーゼで処理したAAV2試料では、より少ないベクター凝集が見られるため、彼らは、残存する宿主細胞DNA断片が、静電相互作用を上回ってAAV2カプシドに結合し、凝集を媒介することを提案した。このようなベクター凝集体を防止するために、イオン強度が記載されている[30]。本研究は凍結乾燥に焦点を当てたため、凝集の問題に対処し、かつ、同時に凍結乾燥させることができる新規な非塩ベースの賦形剤を評価した。
【0144】
0.2mg/mLのヒアルロン酸ナトリウムを使用した1つの製剤を提供した。AAV製剤の開発におけるヒアルロン酸の使用は、文献にはまだ記載されていない。別の製剤は、1%ヒト血清アルブミンを使用した。アルブミンは、AAVカプシドと相互作用し、その形質導入効率を高めると考えられている[105]。これらの賦形剤は凍結乾燥を妨げないので、該賦形剤を選択した。表2は、全ての製剤組成物を要約している。AAV2ベクターは非常に高価格であるため、本開示の最初の部分で評価された全ての選択された分析方法の実施を依然として可能にする最小の力価を使用することを決定した。したがって、製剤研究を1・1011vg/mLのAAV2力価により行った。
【0145】
【0146】
AAV2の安定性に対する異なる温度曝露の影響を比較するための実験を行った。したがって、広範囲の温度範囲を研究に追加した。まず、-20℃及び-80℃などの2つの異なる凍結温度及びAAV2安定性に対するこれらの影響を比較することが望ましい。第二に、2~8℃、25℃、40℃の上昇した保存温度を調べた。同時に、製剤を、-20℃及び-80℃までの凍結融解サイクル並びに水平攪拌ストレスへの曝露などのいくつかのストレスに曝露した。後者は、それがまだ文献に記載されていないという条件を提供している。しかしながら、いくつかの刊行物では、凍結融解ストレスは記載されていた。Croyle及びその同僚は、凍結融解サイクルに曝露したときのベクター遺伝子発現の減少を示した[27]。低い力価では、そのようなサイクルによってベクター凝集が誘導されることが記載されていた[30]。両方の特徴を調べたため、このストレス条件は興味深い条件となった。AAV2は高価格であったため、限られた量のベクターしか入手できず、凍結乾燥を4つの製剤に限ることを決定した。いくつかの文献的証拠に基づき、材料を節約するために、40℃への曝露によって感染性がすぐに失われることを予想した。したがって、製剤を2週間のみ曝露した[28]。他の温度に曝露した製剤の安定性を3ヶ月間調べた。全ての製剤を製造後直ぐに及び3ヶ月間の保存後にT0で分析したが、材料を節約するために凍結乾燥のT0分析は行わなかった。その後の分析では、材料を節約するために、条件特異的なプルポイントを設定した。詳細なプルポイントの設定は、表3及び4に示されている。
【0147】
【0148】
【0149】
2.4 プロジェクトの目的
本プロジェクトの目的は、AAV2ベクターの特性評価に使用される分析方法を評価及び開発し、続いて、AAV2を用いた3ヶ月間の安定性試験を実施することである。
【0150】
評価される分析方法は、用量及び効力の特性評価を行うことを目的とした。一方、AAV2ベクターの凝集挙動、目視で見えない粒子の形成、表面電位、及び熱安定性に関する情報を得るために、物理化学的特性評価を行う。
【0151】
次いで、最適化又は開発された分析方法を3ヶ月間の製剤安定性試験に適用する。この研究の際に、AAV2ベクターの安定性に対する異なる賦形剤、pH範囲、緩衝液、及び界面活性剤の影響の特性評価を行うことが目標であった。中心となる目標は、ベクター安定性に対する凍結乾燥の影響を評価することであった。安定性試験では、製剤を、異なる温度並びに水平攪拌ストレス及び凍結融解ストレスなどの異なるストレスに曝露する。
【0152】
3 材料
緩衝液の製造及び配合:
L-ヒスチジン一塩酸塩(J.T Baker)、L-ヒスチジン(J.T Baker)、クエン酸1H2O(J.T Baker)、クエン酸トリナトリウム2H2O(J.T Baker)、リン酸ナトリウム一塩基性1H2O(J.T Baker)、リン酸ナトリウム二塩基2H2O(J.T Baker)、スクロース(Pfanstiehl)、ポリソルベート80(J.T.Baker)、Kolliphor P188 BIO(BASF)、ヒアルロン酸ナトリウム(Lifecore Biomedical)、アルブミン,ヒト(Sigma-Aldrich)、pH計780(Metrohm)、2R/13mm SchottバイアルSL/NBB Tubular Fiolax Clear Type I(Schott)、13mm血清グレーFluorotecストッパーWES(Lonza DPS)、13mm lyo グレーFlurotec-ストッパーWES(Lonza DPS)、Whatman Pursdisc PVDFシリンジフィルター,0.2μm,13mm(GE Healthcare)
【0153】
凍結乾燥及びKarl-Fisher滴定:
Lyostar3(SP Scientific)、安全キャビネット(A1 Safetech)、Karl-Fisher滴定装置(Metrohm 3.0)
【0154】
qPCR:
1000×AAV標準(Virovek Inc)、AAV2-CMV-GFP(Virovek Inc)、フォワードプライマー100μM(Sigma-Aldrich)、リバースプライマー100μM(Sigma-Aldrich)、powerUp、SYBRグリーンマスターミックス(SYBR グリーン Master Mix)(appliedBiosystems)、ヌクレアーゼフリー水(ThermoFisher)、DNase I、RNaseフリー(ThermoFisher)、DNase I用の10×DNase I 緩衝液+ MgCl2(ThermoFisher)、50mM EDTA(ThermoFisher)、Thermoblock(Eppendorf)、Quantstudio5(appliedBiosystems)、MicroAmp、EnduraPlate光学96ウェル(appliedBiosystems)、光学接着カバー(appliedBiosystems)、RNase AWAY(Molecular Bio Products)
【0155】
TEM:
透過型電子顕微鏡Philips CM100(Philips)、2%酢酸ウラニル(Science Services)、銅グリッド(Copper Grid)(Graticules Optics)、AAV2-CMV-GFP(Virovek Inc)
【0156】
DLS/MADLS及びゼータ電位:
Zetasizer Ultra(Malvern Instruments)、高精度石英セル10×10mm光路(Hellma Analytics)、ナノスフィアサイズ標準(Nanosphere size standard)50nm(ThermoScientific)、ナノスフィアサイズ標準60nm(ThermoScientific)、ナノスフィアサイズ標準100nm(ThermoScientific)、DTS1070キュベット(Malvern Instruments)、ゼータ電位移動標準DTS1235(zeta potential transfer standard DTS1235)(Malvern Panalytical)
【0157】
DSF:
Optim Unit(Unchained labs)、SYBR-ゴールド核酸染色(appliedBiosystems)、SYPRO-オレンジ(Sigma-Aldrich)
【0158】
U2OS細胞の増殖及び再培養:
U2OS-HTB-96(ATCC)、マッコイ5A培地(McCoy’s 5A Medium)(Gibco)、胎児ウシ血清(Gibco)、ペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco)、PBS(Gibco)、Nunc Easyフラスコ75、175、及び225cm2 Nuclon deta surface(ThermoScientific)、0.25%トリプシン--EDTA(1X)(Gibco)、CO2インキュベーター(Binder)、Via1-cassette(Chemometec)、Nucleocounter NC-200(Chemometec)、等温V1500-ABシリーズ(Labtec)、振盪水浴GFL1086(FAUST)、Centrifuge 5920R(Eppendorf)
【0159】
細胞生存率アッセイ:
AlamarBlue細胞生存試薬(Invitrogen)、Nunc F96マイクロウェルブラック(ThermoScientific)、Via1-cassette(Chemometec)、Nucleocounter NC-200(Chemometec)Spectramax id3(Molecular devices)、マッコイ5A培地(Gibco)、CO2インキュベーター(Binder)
【0160】
導入遺伝子発現アッセイ:
rGFP1mg/mL(Roche)、Nunc F96マイクロウェルブラック(ThermoScientific)、Via1カセット(Chemometec)、Nucleocounter NC-200(Chemometec)、Spectramax id3(Molecular devices)、マッコイ5A培地(Gibco)、CO2インキュベーター(Binder)、U2OS-HTB-96(ATCC)、AAV2-CMV-GFP(Virovek Inc.)、PBS(Gibco)
【0161】
フィルター実験:
13mm Puradiscシリンジフィルター,0.2μm,PVDF(GE Healthcare)、10mm Anotopシリンジフィルター、0.2μm PVDF(GE Healthcare)、13mm Millexシリンジフィルター,0.2μm,PVDF(Merck Millipore)、Quantstudio5(appliedBiosystems)、及び上記の全てのqPCR装置。
【0162】
4 方法
4.1 AAV2特性評価のための分析方法の評価及び開発
殆どの方法を、製剤研究に適用する前に試験した。分析方法の評価及び開発の際に、方法がAAV2に適用可能であるかどうか、及び修正が必要であるかどうかを評価する必要がある。この研究の際に、qPCRなどのいくつかの方法を大きく改変し、GFP発現アッセイなどの他の方法を新たに開発した。分析方法の評価及び開発の一部として行った実験を次のセクションで更に詳述する。
【0163】
4.1.1 定量ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)によるAAV2逆位末端配列(ITR)の定量化
この汎用ITR定量化アプローチは、これが文献において及びAAV2供給元によってよく説明され、頻繁に使用されているために使用した。この汎用AAV2方法の最適化及び確立により、代わりに導入遺伝子に依存しないAAV2滴定が可能になり、これは様々な異なるAAV2プロジェクトに適用することができる。力価の定量化のために、Aurnhammer及び同僚によって最初に開発された汎用AAV2 ITR qPCRを更に修正した[65]。TaqManアプローチをより便利で対費用効果の高いSYBR-グリーンアプローチに置き換えることによって、qPCR法を改変した。この改変は、一般にアクセス可能なAddgeneのプロトコルに基づいた。SYBR-グリーンベースのAAV2-ITR qPCRに、DNase I消化ステップ及びカプシド開口ステップを更に補充した。これらの処理の影響を推定するために、これらの消化及び開始ステップを使用して及び使用せずに、実験を行った。
【0164】
以下の配列をプライマーとして使用した[65]。
フォワードプライマー(FW):5’-GGAACCCCTAGTGATGGAGTT-3’
リバースプライマー(RW):5’-CGGCCTCAGTGAGCGA-3’
【0165】
4.1.2 AAV2滴定手順
まず、購入した直鎖化プラスミド標準物質を用いた希釈系を調製した。得られた標準曲線は、滴定中の定量化ツールとして機能した。ヌクレアーゼフリー水で5つの希釈液を作製した。1μL当たり1.0・108 DNAアンプリコンの濃度を有する得られた1000倍標準物質を必要な濃度に希釈した(1・107、1・106、1・105、1・104、1・103のDNAアンプリコン/μL)。全てのqPCR実験を通じて、標準曲線をこの様式で調製した。
【0166】
続いて、DNase I消化ステップ及びカプシド開口ステップのいずれかを使用して又は使用せずに、AAV試料を調製した。製剤研究1及び2の際の全てのプルポイント分析は、そのような消化ステップ及び開口ステップが含んだ。これらの実験の前に、そのような処理の影響を検出するために、未処理試料を処理試料とともに調製した。1・1011vg/mLの力価を有する5μLの試料を38μLのヌクレアーゼフリー水、MgCl2を含む5μLの10×DNase反応緩衝液、及び2μLのDNase I(1U/μL)と混合することにより、そのような処理を含んだ試料を調製した。混合物を37℃で40分間インキュベートした。インキュベーション後、10μLの50mM EDTA溶液を混合物に入れ、試料を最高65℃で10分間加熱して、DNase Iを不活性化した。次いで、カプシドを95℃で30分間開口し、それに応じて希釈した。その後、これらの試料をヌクレアーゼフリー水中で希釈した(1:10、1:200、1:1000、1:5000)。開口もされておらず、DNase Iで消化もされていない試料を、消化及び開口した試料と同じく直接希釈した。qPCRプレートに、5μLの各試料及び標準希釈液を2つ組で充填した。更に、2つのウェルに5μLのヌクレアーゼフリー水を充填し、鋳型なし対照(NTC)として機能させた。プレートを密封し、マスターミックスを調製した。1つのウェルに使用されるマスターミックスレシピは、4.7μLのヌクレアーゼフリー水、10μLのPower UP SYBR-グリーンマスターミックス、及び0.15μLの100μMフォワード及びリバースプライマーで構成される。マルチチャネルピペットを使用して、15μLのマスターミックスを各ウェルに添加した。プレートを光学接着カバーで密封し、3000rpmで2分間遠心分離し、Quantstudio5に移した。使用したマスターミックス(50℃で2分、98℃で3分、40×98℃で15秒、続いて58℃で30秒)の要件を満たすように、PCR実施プロファイルを調整した。3つのステップの溶融曲線(95℃で15秒、60℃で1分、及び95℃で15秒)を用いて分析を終了した。データ分析には、QuantStudio設計及び分析ソフトウェアを使用した。
【0167】
4.1.3 qPCRのAAV2試料処理の評価
第1の実験は、カプシド開口及びDNase I消化ステップの影響の特性評価を行う。まず、0.001% P188を含む20mMリン酸緩衝液を調製した。この緩衝液を使用して、1.2・1011vg/mLのAAV2懸濁液を作製した。各5μLのその懸濁液に、3本のエッペンドルフチューブを設けた。45μLのヌクレアーゼフリー水を第1のアリコートに添加した。他のアリコートに、各々、38μLのヌクレアーゼフリー水、5μLのMgCl2を含む10×DNase反応緩衝液及び2μLのDNase I(1U/μL)を提供した。その後、上記のように2つのアリコートのカプシドを開口した。開口手順を、ヌクレアーゼフリー水のみで希釈したアリコート及びDNase Iを含む2つのアリコートのうちの1つに適用した。DNase Iを含む他のアリコートのカプシドは開口しなかった。開口後、試料を希釈し、上記のqPCR手順に従って増幅した。
【0168】
4.1.4 エッペンドルフチューブへのAAV2の接着
全ての連続希釈をエッペンドルフチューブ中で行い、多くの実験は中間ステップでエッペンドルフチューブを使用したため、接着実験を行った。1・1010vg/mLの力価を有するAAV2製剤を0.001%P188を含むリン酸緩衝液(pH7.4)中で調製した。500μLのこの製剤を作製し、2つのアリコートに分けた。各アリコートを1.5mLのエッペンドルフチューブ中で24時間保存した。24時間後、1つのアリコートを100μLの容量で10回上下にピペッティングすることによってしっかり混合したが、他方のアリコートは全く混合しなかった。消化及びカプシド開放ステップを含む、両方のアリコートのqPCRを行った。
【0169】
4.1.5 TEMを用いた完全なカプシド及び空のカプシドの定量化
完全なカプシド比と空のカプシドとの比率の決定のためにTEMを使用することを決定した。AUC及びAEX-HPLCと比較して、TEMは、非常に小さな容量及び力価を必要とする。AUCは、完全なカプシド及び空のカプシドを定量化するためのゴールドスタンダードとして既知であるが、いくつかの刊行物は、TEMでの定量化がAUCで得られた結果と直接的に相関することを示している。AAV2ストック懸濁液の完全なカプシド及び空のカプシドのみを定量化したため、AEX-HPLCなどの高スループット方法の非常に時間がかかる実施を必要としなかった。透過型電子顕微鏡法(TEM)及び関連する試料調製を、Basel大学のNano Imaging LabにおいてフィリップスCM100で行った。2%酢酸ウラニルでの陰性染色により、空のAAVカプシド及び完全なAAVカプシドの区別が可能になった。銅グリッドにウイルスを添加する前に、グリッドをグロー放電する必要があった。銅グリッドを放電チャンバー内に配置した。ドームを銅グリッド上に設置し、ニードルバルブを注意深く閉じ、真空ポンプをオンにした。続いて、電源を50ボルトにし、銅グリッドを30秒間グロー放電した。続いて、銅グリッド上で、試料をインキュベート、洗浄、及び染色した。このプロジェクトの際に、2つの異なる試料調製物を試験した。第1の実験では、AAV陰性染色のためのNano Imaging Labの標準プロトコルを適用した。したがって、銅グリッドを10μLの1・1010vg/mLの試料とともに1分間インキュベートした。インキュベーション後、グリッドを50μL ddH2Oで3回洗浄した。各洗浄ステップの後、濾紙を使用して水を除去した。銅グリッドを2回、10秒間、2%酢酸ウラニル溶液5μLとともにインキュベートすることにより、陰性染色を達成した。この試料調製物を使用して、わずかなカプシドしか検出されなかった。それが、試料調製手順の改変及び繰り返しの理由である。2回目の染色の試みでは、グロー放電を1回目と同じように行った。次いで、放電された銅グリッドを15μLの1・1011vg/mLの試料とともにインキュベートした。この後、50μLのddH2Oを用いた1回の洗浄ステップのみを行った。2%酢酸ウラニルを用いた染色ステップの数を上記と同じに維持した。空のカプシド比と完全なカプシドとの比率の定量化のために、11枚のランダムな写真を撮影した。1枚の写真は20kVの電圧で撮影し、1枚は37kVで撮影した。他の9枚の写真は11kVの電圧で撮影した。
【0170】
4.1.6 DLS及びMADLSを用いた粒子及び凝集分析
DLSを使用して、ナノメートル範囲の粒子サイズ分布をモニタリングした。これは、ウイルスベクター凝集を測定及び定量化するための最先端技術である。これは試料消費量が少ないため、魅力的な方法である。前述したように、使用した力価は1・1011vg/mLであった。この力価は、約0.62μg/mLの非常に低いタンパク質濃度に対応する。評価法の際に、これらの濃度を検出できるかどうかを調べる必要があった。全てのDLS測定は、Malvern Instrumentsのzetasizer Ultraで、低容量で高精度のZEN 2112石英キュベットで行った。まず、ラテックスビーズを用いたシステム適合性試験(SST)を行った。10mM NaCl溶液を調製し、滅菌濾過し、4つの滅菌15mLチューブに等分した。各チューブに、50、61、又は100nmのラテックスビーズ標準のいずれかの2滴を提供した。フラスコをゆっくりと反転させることによって、懸濁液を慎重に均質化した。高精度ZEN 2112石英キュベットに、50μLの各標準物質を提供した。1.59の屈折率及び0.01の吸収率のポリスチレンラテックスビーズ設定を選択し、SSTを行った。水を1.33の屈折率及び0.8872mPasの粘度の分散剤として選択した。50nmラテックスビーズ標準物質のZ平均値の受入基準は、48nm±3nmであった。61nm標準では、受入基準は61nm±4nmであり、100nm規格では、受入基準は±8nmであった。試料を少容量の石英キュベットタイプZEN 2112に充填する前に、これを水及びエタノールですすいだ。粒子を含まない加圧された空気を使用して、キュベットを乾燥させた。次いで、AAV2ベクターを0.001%P188を含むPBS(pH7.4)に希釈し、1・1011vg/mLの力価とした。キュベットに50μLの試料を充填した。AAV2設定を使用して測定を行った。この測定方法は、1.45の屈折率及び0.001の吸収率からなる。水を1.33の屈折率及び0.8872mPasの粘度の分散剤として選定した。温度を25℃に設定し、平衡時間を120秒に設定した。分散剤の散乱を75kcpsに設定した。各試料を3つの後方散乱によって特性評価を行った。3つ組のMADLS測定値を全ての製剤に適用した。MADLS測定値は、凍結融解サイクル、攪拌ストレス、40℃での2週間の保存、及び2~8℃での1ヶ月間の凍結乾燥試料の保存後、T0でプラセボにも適用した。分析後、試料をエッペンドルフチューブに移し、更なる分析のために2~8℃で保存した。
【0171】
4.1.7 ゼータ電位測定
ゼータ電位は、拡散バリア法を用いて、Malvern Instrumentsのzetasizer UltraでDTS 1070キュベット中で測定した。システム適合性試験(SST)は、DTS 1070ポリスチレンキューブに-42mV±4.2mVのゼータ電位移動標準物質を充填することによって行った。2つの熱接触プレートをキュベットに取り付けた。標準物質を、1.59の屈折率及び0.01の吸収率で測定されたポリスチレンラテックスビーズの機器設定を用いて測定した。分散剤として水を選択した。システム適合性試験に合格した後、キュベットを水で洗い流し、0.001% P188を補充したPBS(pH7.4)を充填した。拡散バリア法(DBM)を用いて、試料をキュベットに添加した。この方法は、低い試料容量のために特別に開発された。ゲル電気泳動充填チップの助けにより、130μLの試料をキュベットの底部に充填した。使用したAAV2製剤は、0.001% P188を補充したPBS(pH7.4)中で調製され、1・1011vg/mLの力価を有した。熱伝導プレートをキュベットに取り付けた。1.45の屈折率及び0.001の吸収率であったタンパク質について機器設定をして、試料を測定した。分散剤として水を選択した。全ての測定を3つ組で行った。その後、キュベットを水及びエタノールで洗い流し、少なくとも2回再利用した。
【0172】
4.1.8 細胞株の増殖
細胞株を受け取ったら、細胞培養培地を調製した。マッコイの5A培地に、胎児ウシ血清(FBS)及びペニシリン-ストレプトマイシン(Pen/Strep)を提供し、10% FBS及び1% Pen/Strepを含むマッコイの5A培地の最終濃度を得た。
【0173】
約1・106 U2OS-HTB-96細胞を含む1つのクライオバイアルをATCCから入手した。細胞を解凍し、9mLの予熱した媒体に懸濁した。チューブを136rcfで5分間遠心分離し、培地を吸引した。その後、細胞ペレットを16mLの予熱した培地に再懸濁し、75cm2培養フラスコに播種した。約90%のコンフルエンシー後、接着細胞を懸濁し、8mLの予熱した培地を提供した。136rcfで5分間遠心分離した後、上清を吸引し、ペレットを4mLの培地に再懸濁した。48mLの予熱した培地を含む2つの225cm2培養フラスコに各々、2mLの懸濁液を提供し、37℃、5%CO2で保存した。90%のコンフルエンシーに達した後、1つの培養フラスコの細胞を懸濁し、計数した。細胞を洗浄した後、1.2・106細胞/mLの細胞懸濁液(2継代)を5%(v/v)のDMSOを補充した培地中で調製した。7つのクライオチューブに1mLの懸濁液(2継代)を提供し、液体窒素中で凍結した。他のフラスコの細胞を、それらの細胞を4mLの培地に懸濁し、1mLの懸濁液を4つの175cm2培養フラスコに移すことにより、更に増殖させた。90%のコンフルエンシーで、細胞を採取し、計数し、5%(v/v)のDMSOを補充した培地中に再懸濁した。1.6・106細胞/mL(3継代)のU2OS濃度での別の30個のクライオチューブを液体窒素中で凍結した。
【0174】
4.1.9 再培養手順:
再培養を常に75cm2フラスコで行った。古い培地を吸引し、接着細胞を12mLの予熱したPBSで洗浄した。リン酸緩衝液を吸引した後、2mLの0.25%トリプシン、0.03%EDTA溶液をフラスコに添加し、細胞が脱着するまで、フラスコを37℃で3分間インキュベートした。脱着した細胞を8mLの培地に懸濁し、136rcfで5分間遠心分離した。上清を吸引し、細胞ペレットを5mLの培地中に再懸濁した。次いで、16mLの予熱した培地を充填した新しい75cm2細胞培養フラスコに、1mLのこの懸濁液を提供し、37℃及び5%CO2でインキュベーター中で保存した。細胞が90%のコンフルエンシーに達した場合、再培養を開始した。30継代に達するまで各細胞株を再培養した。
【0175】
4.1.10 細胞株の確立及び細胞生存率アッセイ:
細胞ベースの導入遺伝子発現アッセイの前に、alamarBlue細胞生存率アッセイを行うことによって細胞株を確立した。このアッセイは、理想的な播種密度、得られる増殖速度、及び細胞生存率に関する情報を得るために行った。U2OS細胞を回収し、懸濁した。ストック懸濁液を8.2・106細胞/mLの濃度で調製した。異なる細胞濃度(4.1・105、2.0・105、1.0・105、5.0・104、2.5・104、及び1.25・104細胞/mL)で希釈系列を調製した。正確に100μLの各懸濁液を96ウェルプレートに添加し、4.0・104、2.0・104、1.0・104、5000、2500、及び1250細胞/ウェル(3906、7813、1.56・104、3.13・104、6.25・104、1.3・105、2.63・105細胞/cm2)をとした。各密度を8つ組でプレーティングした。プレートを37℃、5%CO2で一晩保存した。24時間のインキュベーション後、古い培地を吸引し、それを180μLの新鮮な培地に置き換えることによって、第1の細胞生存率アッセイを行った。20μLのalamarBlue試薬を添加し、10%(v/v)のalamarBlue-Medium溶液を得た。プレートを37℃及び5%CO2で2時間45分間インキュベートした。インキュベーション後、各ウェルの100uLの上清を黒色96ウェルプレートに移した。550nmの励起及び590nmの発光で蛍光を測定した。比較できる結果を得るために、Spectramax id3内の光電子増倍管(PMT)を低に設定した。この測定後、残存した上清を吸引し、これを150μLの培地に置き換えた。細胞生存率アッセイを7日間連続して繰り返した。8日目に、培地を70%イソプロパノールに置き換えることによって細胞を死滅させた。5分間のインキュベーション後、イソプロパノールを再び培地に置き換え、上記のようにしてアッセイを行った。この測定は、蛍光が生存細胞でのみ得られることを示すために陰性対照として作用した。
【0176】
4.1.11 導入遺伝子発現アッセイの開発
殆どの公開された文献は、形質導入された及び導入遺伝子発現細胞を定量化するために、蛍光活性化細胞選別(FACS)デバイス又は共焦点顕微鏡のいずれかを使用している。FACS細胞選別器も共焦点顕微鏡も利用できなかったため、プレートリーダーを使用した細胞ベースの発現アッセイを開発した。このアッセイの欠点は、GFPを発現する細胞の正確な数を定量化できないことであった。主な関心は、製剤がT0での発現の開始と比較して導入遺伝子発現をどのように誘導するかであったため、これらの制限事項は許容された。このプレートリーダーアッセイは、高スループット、費用有効性、及び社内利用性を提供した。
【0177】
詳細な文献検索の後、接着U2OS-HTB-96細胞(BSL-1)をGFP発現アッセイの開発に使用される細胞株として候補とした。文献には、そのような実験のためにHEK293細胞が主に記載されているが、それらはAAV2によって十分に形質導入されず、強く接着しないため、それらを意図的に使用しなかった。両方の特徴は、プレートリーダーアッセイの成功に必須であり、U2OS細胞によって満たされる。シグナル強度が低すぎることが危惧されたため、細胞生存率に悪影響を及ぼすことなく、1ウェル当たりにできるだけ多くの細胞を配置した。細胞生存率が低下する前に、GFPの発現を4日間モニタリングすることができるため、10,000細胞/ウェルの初期細胞密度がアッセイに適しているようであった。この細胞数により、複数組で作業を行うことも可能になった。
【0178】
まず、4つのウェルに、それぞれ100μLの1.0・105細胞/mLの細胞懸濁液((1.0・104細胞/ウェル)を提供した。播種直後、1・1010vg/mLのウイルス懸濁液100μLを1ウェルに添加し、105の多重感染度(MOI)が得られ、1・1011vg/mLのウイルス懸濁液100μLを他のウェルに添加し、105のMOIが得られた。他の2つのウェルをブランクとして使用し、したがって、100μLのPBSを提供した。このプレートを37℃、5%CO2でインキュベートした。24、48、72、96時間後、それぞれ488nm及び520nmの励起及び発光波長で蛍光を測定した。培地は4日間新しくせず、交換もしなかった。96時間の測定後、培地を吸引し、100μLのPBSで置き換え、蛍光測定を繰り返した。前の実験の結果を解釈した後、波長走査を行い、GFPの励起波長及び発光波長を決定した。1mg/mLの組換えGFP溶液を、PBS中の連続希釈(10μg/mL、1μg/mL、100ng/mL、10ng/mL、1ng/mL)で調製した。波長走査は、黒色96ウェルプレートで行った。各ウェルに、100μLの各希釈液を提供した。理想的な励起波長及び発光波長を決定し、手順を最適化した後、MOIスクリーニングンを行った。このスクリーニングは、製剤研究内でGFP発現アッセイを設計する方法に関する情報を得るために行った。最低の検出可能な蛍光をもたらすMOIを定義することと、異なるMOIによって引き起こされる蛍光差を検出するプレートリーダーの能力の特性評価を行うこととが目的であった。実験により、GFP発現に対するインキュベーション時間の影響を更に浮き彫りにする必要がある。4つの異なるウイルス試料を異なる力価で調製した。試料は、1・1011vg/mL、1・1010vg/mL、1・109vg/mL、1・108vg/mLの力価を有した。全ての希釈物を、0.001% P188を含む20mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)を用いて作製した。U2OS-HTB-96細胞を回収し、懸濁した。懸濁液を希釈して、1・105vg/mLの濃度にした。100μLの細胞懸濁液をウェルに播種し、1・104細胞/ウェルの細胞密度とした。新たに播種した細胞に、直ちに、それぞれ100μLのウイルス希釈液を添加し、それぞれ、106、105、104及び103vg/mLのMOIをもたらした。各ウイルス濃度を5つ組で測定した。各複製ウェルについて、対照ウェルも調製した。対照ウェルに、100μLの細胞懸濁液を充填した。ウイルスを添加する代わりに、0.001% P188を含む100μLの20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)を添加した。感染後、プレートをインキュベーター中で37℃、5%CO2で保存した。24、48、72、96時間での各蛍光測定前に、培地を吸引し、100μLのリン酸緩衝液に置き換えた。Spectramax id3で、460nmの励起及び515nmの発光で測定を行った。測定後、リン酸緩衝液を再び150μLの培地に置き換えた。製剤研究1及び製剤研究2の際のプルポイント分析を105vg/細胞のMOIで行い、72時間後の読み取りを比較した。
【0179】
【0180】
R.J.Beynon and T.Patapoffによって開発されたプログラムである緩衝液及びレシピフォーミュラリー(Buffer and recipe formulary)(B.A.R.F.)を使用することによって、緩衝液レシピを決定した。全ての緩衝液を作製し、プルポイント分析に使用する場合に0.2μmのPVDF膜を通して滅菌濾過した(表5)。プルポイント中に、ゼータ電位、目視で見えない粒子の測定、及び導入遺伝子発現アッセイのための希釈剤として、緩衝液を使用した。プルポイント分析に使用した緩衝液には、アルブミンもヒアルロン酸ナトリウムも提供されていなかった。全ての緩衝液を、最大2週間にわたって遮光し、2~8℃で保存した。
【0181】
配合に使用した緩衝液を異なる方法で調製した。緩衝液とともに、2mg/mLのヒアルロン酸ナトリウム、5% PS80、及び1% P188ストック溶液を作製した。各ストックをそれぞれの緩衝液で調製した。その後、界面活性剤を規定の容量の緩衝液に入れ、0.02% PS80又は0.001% P188の最終界面活性剤濃度とした。次いで、配合を開始した。このステップは、滅菌条件下、Claire-Berner安全キャビネット内で行った。配合を開始する前に、Claire-Berner安全キャビネットをイソプロパノールで激しく洗浄した。安全キャビネット内で操作するときには、滅菌した手袋及びスリーブを使用した。第1のステップでは、AAV2ストック懸濁液を解凍し、8つのアリコートに分け、それぞれの緩衝液で2.19・1012vg/mLの力価に希釈した。次いで、粒子を含まない滅菌細口ボトル内で配合を行った。まず、細口ボトルに緩衝液を提供した。第二に、アルブミン又はヒアルロン酸ナトリウムなどの予め作製した賦形剤ストック溶液を緩衝液に添加した。最後に、2.19・1012vg/mLの力価を有する予め作製したAAV2希釈液を添加して、1.095・1011vg/mLの最終力価を達成した。AAV2を含まないプラセボ製剤に同じ手順を適用した。シリコンなしの5mLのシリンジで吸引する前に、各製剤を慎重に混合した。針をwhatman puradisc0.2μm、13mmシリンジフィルターと交換した。製剤を、粒子を含まない新しい滅菌狭口ボトルに滅菌濾過した。滅菌濾過後、Nalgeneボトルを閉じ、安全キャビネットを再び清浄化した。次のステップでは、粒子を含まない滅菌2mLガラスバイアルに、245μLの製剤を提供した。製剤を更に凍結乾燥させる場合は16個のガラスバイアルに充填し、凍結乾燥を行わない場合は12個のガラスバイアルを充填した。全てのバイアルを、粒子を含まない滅菌した血清又は凍結乾燥ストッパーのいずれかで手で栓をした。凍結乾燥が意図されていない全てのバイアルを手で圧着し、異なる温度又はストレス条件のいずれかに曝露し、表3に記載されるように最大3ヶ月間保存した。凍結融解及び攪拌ストレスへの曝露を製造直後に開始した。凍結乾燥を意図するバイアルを凍結乾燥機に移した。凍結乾燥を行ったプラセボを過剰に作製した。凍結乾燥棚上に、それらを製剤バイアルの周りに配置して、凍結融解プロセス中に均質な熱流束を確保した。2つのプラセボバイアルに温度センサーを提供した。温度センサーを含む1つのバイアルを隅に配置した一方、もう一方を棚の中央に配置した。バイアルを棚に乗せた後、棚を凍結乾燥機前の安全キャビネットに移した。このキャビネット内で、凍結乾燥ストッパーを滅菌ピンセットで持ち上げた。次いで、棚を凍結乾燥機に移し、電極を差し込んだ。4つの製剤及びそれらのプラセボ、すなわち、製剤3、4、6、7に凍結乾燥を適用した。凍結乾燥後、バイアルを手動で圧着し、異なる条件(2~8℃で1ヶ月間及び3ヶ月間、又は25℃で2週間、1ヶ月間、及び3ヶ月間)で保存した。プルポイント分析の際に、分析方法の評価及び開発に記載された方法を用いて製剤を分析した。これらの2つの測定の結果に基づいて、進行中の研究を中止し、改変された配合スキームを用いて第2の研究を開始することを決定した。
【0182】
4.3 製剤研究2
製剤研究2を研究1と同様に調製した。同じ緩衝液レシピ及びAAV濃度を使用した。しかしながら、製剤化手順のわずかな調整を行った。製剤を滅菌濾過しなかった。それ以外の点は、配合手順を同じままにした。
【0183】
全ての方法を方法評価及び開発実験の際に記載されたように行った。異なる時点での導入遺伝子アッセイで使用される細胞の播種密度、細胞生存率、及び継代を別表の表8に示す。更に、pH及び目視で見えない粒子の測定を行った。任意の目視で見えない粒子の測定前に、5μmのラテックスビーズ懸濁液を用いてシステム適合性試験を行った。製剤の85μLアリコートを製剤緩衝液で1.0・1010vg/mLの力価に希釈した。その後、全ての試料をHIAC9703+で分析した。
【0184】
4.4 追加実験
AAV2ベクターが製剤研究1での配合後に低い回復を示した理由を評価するための追加実験を行った。ベクター凝集又は滅菌フィルター膜への親和性がベクター損失の原因であるかどうかを観察するように実験を設計した。
【0185】
SYPRO-オレンジ又はSYBR-ゴールドを使用することによって1.0・1011vg/mLの力価を有する低濃度製剤にDSFを適用することができるかどうかも試験した。
【0186】
4.4.1 AAV2の滅菌濾過に対する150mM NaClの影響
製剤研究1の際の力価損失がフィルター特異的であるかどうかを見出すために、13mmのPuradisc0.2μm PVDFを13mmのMillex 0.2μm PVDF及び10mmのAnotop 0.2μm PVDFフィルターと比較した。GE Healthcareに連絡後、Anotopフィルターがウイルス物質の濾過に推奨された。2つの異なるフィルターサイズにより、濾過後の力価回復に対するフィルター表面積の影響の比較が可能となった。最初に、20mM L-ヒスチジン、290mM スクロース、0.02% PS80の100mLの溶液(pH6.8)を作製した。2つの10mLのアリコートを採取し、88mgの塩化ナトリウム(NaCl)を1つのアリコートに添加し、最終的なNaCl濃度を150mMとした。2985μLを各アリコートから2つのエッペンドルフチューブに移した。一方、2.19・1013vg/mLの力価を有するウイルスストックを解凍した。各緩衝液アリコートに、15μLのAAV2ストックを提供した。上下にピペッティングすることによって、試料を激しく混合した。その後、塩化ナトリウムを含まない製剤を濾過した。Puradisc、Anotop、及びMillex滅菌フィルターを通して濾過を行った。塩化ナトリウムを含まない1mLの製剤を各フィルターを通して濾過した。150mMの塩化ナトリウムを含む製剤に同じ手順を適用した。その後、上記の標準的なqPCRプロトコルを使用して、ウイルス力価を決定した。更に、異なる試料のDLS測定を行った。
【0187】
4.4.2 SYPRO-オレンジ及びSYBR-ゴールドを用いた熱シフトアッセイ
示差走査蛍光測定法(DSF)による測定をUnchained labのOptimシステムで行った。実験では、シグナル強度を増強するためにSYPRO-オレンジ及びSYBR-ゴールドを利用した。この実験では、SYPRO-オレンジ及びSYBR-ゴールドの染料及び異なる濃度を比較した。SYPRO-オレンジ及びSYBR-ゴールドをそれぞれ5000倍及び10000倍の濃度で購入した。実験のために、染料を20mM L-ヒスチジン、290mM スクロース、0.02% ポリソルベート80、pH6.8で希釈した。SYPRO-オレンジ及びSYBR-ゴールドについて、3つの染料ストックを作製した。3μLの10倍、50倍、及び100倍ストックを作製し、27μLの1.0・1011vg/mL AAV2試料に入れた。これにより、1倍、5倍、又は10倍の最終染料濃度が得られた。各染料濃度について、同じ濃度の緩衝液対照を調製した。9μLの染色したAAV2試料をDSFキャピラリーに添加した。SYPRO-オレンジのOptim設定を用いて、各試料を3つ組で測定した。開始温度及び終了温度をそれぞれ15℃及び95℃に設定した。加熱速度を0.33℃/分に設定した。
【0188】
5 結果
5.1 AAV2の特性評価のための分析方法の評価及び開発の結果
5.1.1 DNase I消化及び熱カプシド開口ステップがウイルス力価に及ぼす影響
qPCR法の評価及び改変の目的は、力価の定量化に対するDNase I消化及び熱カプシド開口の影響に関する情報を得ることであった。
図1は、3つの異なる処理によって得られる力価を示す。最も高い力価は、定量化前に試料を開口したときに得られた。このような熱カプシド開口ステップを加えることにより、1.66・10
11vg/mLの力価が得られた。この手順の実施は、供給元によって与えられた力価の過大評価をもたらした。DNase I消化ステップを加えることにより、力価が1.07・10
11vg/mLに低下した。DNase I消化ステップのみを行い、それに続く熱カプシド開口を行わなかった場合、力価は7.74・10
10vg/mLに更に低下した。未消化の試料から消化後に生じる力価を減算することにより、1mL当たり約5.9・10
9の宿主細胞DNA断片がAAV試料に存在することが示された。この実験により、定量化前のDNase I処理が力価を有意に低下させる一方で、カプシド開口ステップが力価を増加させることが示された。両方の試料処理の組み合わせにより、供給元からの所与の力価と比較してわずかな偏差での正確な力価決定が可能になる。この結果に基づいて、製剤研究中の力価定量化は、DNase I消化及び熱カプシド開口ステップを適用した。
図1を参照されたい。
【0189】
5.1.2 AAV2のエッペンドルフチューブへの接着
プルポイント分析中、AAV2製剤をエッペンドルフチューブに頻繁に保存した。したがって、24時間の保存時のAAV2のエッペンドルフチューブへの接着を決定するための実験を行った。
図2は、エッペンドルフチューブに24時間保存した後の混合された試料及び混合されていない試料のAAV2力価を示す。定量化前の試料混合は、2.9・10
9vg/mLの力価をもたらし、1.5・10
9vg/mLの力価であることが測定された混合されなかった試料と比較して2倍高かった。データは、激しい混合が力価を増加させることができることを示している。両方の測定値は、AAV2供給元によって付与された力価を過小評価した。これらの結果に基づいて、低結合チューブを以下の実験で使用し、試料を使用前に激しく混合した。
図2を参照されたい。
【0190】
5.1.3 透過型電子顕微鏡法を用いた完全なカプシドと空のカプシドとの比率
透過型電子顕微鏡法を使用して、完全なAAV2カプシド及び空のAAV2カプシドの比率を決定した。最初のカプシド可視化は、バーゼル大学のNano Imaging Labからの標準プロトコル及び1.0・10
10vg/mLの力価を有する試料を利用した。図(3A)に示すように、不十分な数のカプシドを可視化した。このような少量のカプシドでは、完全なカプシド及び空のカプシドの定量化が可能にならなかった。この結果に基づいて、試料調製物を改変し、1.0・10
11vg/mLのより高い力価を使用した。このアプローチにより、図(3B)に示されるように、非常に高い数の染色カプシドがもたらされた。酢酸ウラニルがカプシドに入ることができないため、完全なカプシドは白い点として現れた。しかしながら、空のカプシドは、染料がカプシドに入ることによって引き起こされる暗い斑点をカプシドの中央に含む。11枚の写真(
図25を参照)の全てのカプシドを手動で計数することにより、完全なカプシド及び空のカプシドの数の推定が可能であった。試料は、58.3%の完全なカプシド及び41.6%の空のカプシドを含んでいた。両方の実験の比較により、定量化のために十分なカプシドを可視化するためには、少なくとも1.0・10
11vg/mLの力価及び1つの洗浄ステップのみを有する改変された染色プロトコルが必要であることが明らかになった。
【0191】
5.1.4 AAV2試料のDLS及びMADLS
AAV2は、20~25nmのサイズを有する。DLSは流体力学半径を測定するため、20~30nmのピークが予想された。
図4に示されるように、後方散乱測定(4A)は2つの粒子種の存在を示した。予想されるサイズ範囲内の1つの粒子サイズ分布が、約640nmの1つの非常に大きな種とともに得られた(別表7を参照)。643nmのZ平均値により、より大きな粒子種の存在が確認された。多分散性指数測定はまた、試料が多分散であることを示した。方法評価の一部として、追加のMADLSを行い、この測定でも結果を得ることができるかどうかを試験した。(4C)に示されるように、後方散乱は両方の粒子種を検出することができる。側方散乱(4D)により、後方散乱によって得られた粒子分布が確認された。しかしながら、前方散乱(4E)は、500nmに1つのピークのみを検出した。MADLS(4F)内の前方散乱及び側方散乱は一致した一方、前方散乱は、約20~30nmの粒子種を検出することができなかった。20~30nmの粒子種を検出する能力に基づき、後方散乱を製剤研究中に使用して、AAV2製剤の特性評価を行った。
【0192】
5.1.5 AAV2のゼータ電位測定
方法評価中に、拡散バリア法を行い、1.0・1011vg/mLの力価を有する130μLのAAV2試料を使用した場合にゼータ電位を得ることができるかどうかを試験した。データ品質の指標として図(5A)に示された位相プロット測定は、時間の関数としての参照周波数と測定された拍動周波数との間の位相の明確な差を明らかにした。これにより、0.001% P188を補充したPBS(pH7.4)中に保存したときに、AAV2ベクターのゼータ電位を測定することが可能であることが示された。方法評価中に行われた測定を3つ組で行い、-9.46mVの平均ゼータ電位が得られた。
【0193】
5.1.6 alamarBlueによるU2OS-HTB-96細胞生存率アッセイ
この生存率アッセイにより、異なる播種密度が増殖速度及び細胞生存率にどのように影響するかを試験した。
図6に示されるように、アッセイは、増殖速度が細胞密度に依存することを示した。10,000細胞/ウェルの細胞播種密度が赤色で強調表示されているが、それは、この密度を導入遺伝子アッセイの開発において後で使用したためである。蛍光強度は、増殖速度がプレーティングされた細胞密度に依存することを示した。より小さな播種密度は、より小さな初期蛍光強度をもたらした。1.3・10
5細胞/cm
2の最も高い初期密度は、4~5日後に最大の細胞密度に達した。6.25・10
4細胞/cm
2及び3.13・10
4細胞/cm
2のより小さい密度は、同じ時間後に同じ密度に達した。この結果により、最も高い播種細胞密度を用いた増殖速度が、より低い密度と比較して小さいことが示された。7813及び1.56・10
4細胞/cm
2の播種密度は、5日後にプラトーに到達し、最小の播種密度は、6日後に最大の細胞密度に達した。それにもかかわらず、最大の細胞密度に達した後、全てのウェルは、7日後に細胞生存率の低下を記録した。蛍光が培地の成分ではなく細胞によって引き起こされることを確認するために、細胞を8日後に死滅させ、陰性対照として機能させた。alamarBlueの添加によっては蛍光が生じなかったが、これは、蛍光シグナルを達成するために生存細胞が必要であることを示している。
【0194】
5.1.7 U2OS細胞ベースのGFP発現アッセイの開発
最初に開発した導入遺伝子発現アッセイの結果を
図7に示す。示される蛍光強度は、細胞、培地、及びPBSのみを含むブランクを既に減算している。
図7に示されるように、結果により、両方のMOIは、36時間後に既に検出可能な蛍光シグナルを引き起こしていることが示された。蛍光シグナルは経時的に増加し、72時間後に最大値に達した。シグナル強度は時間依存的であるだけでなく、MOI依存的であった。本開示の過程に際して、MOIという用語は、1つの細胞に添加されるウイルスゲノムの数として常に使用される。10
6vg/細胞のMOIは、10
5vg/細胞のMOIよりも高い蛍光をもたらした。72時間後、10
6vg/細胞のMOIによって引き起こされた蛍光は、10
5vg/細胞のMOIによって引き起こされた蛍光の2倍であった。96時間後、蛍光は低下した。96時間において培地をPBSに置き換えると、蛍光シグナルが増幅された。培地を用いた96時間の蛍光強度と比較して、10
6vg/細胞のMOIでインキュベートしたウェルのPBSでの蛍光は、ほぼ12倍増加した10
5vg/細胞のMOIでインキュベートしたウェルと対照的に、ほぼ4倍増加した。その結果に基づき、次いで、GFP発現を決定するための蛍光測定値をPBS形態で測定した。
【0195】
5.1.7.1 組換えGFP及びMOI滴定の波長走査
rGFP波長走査によって、460nmの励起波長及び515nmの発光波長を使用した場合にrGFPの蛍光強度が最大になることが明らかになった。その後、プレートリーダーが異なるMOIによって引き起こされる発現を区別できるかどうか、及び検出限界がどこに位置するかを見出すために、異なるMOIの滴定を行った。
図8は、MOI画面の結果を示す。これは、形質導入されたU2OS細胞のMOI依存的な蛍光強度を明確に示している。MOIが高いほど、発現が高くなる。更に、GFP発現は経時的に増加した。最大の蛍光増加は、48時間~72時間に現れた。一方、72~96時間にはわずかな蛍光増加しか見られなかった。7日後の蛍光の読み取りでは、発現が有意に低下したことが明らかになった。10
3vg/細胞のMOIは、48時間後に測定可能な蛍光強度をもたらしたが、有意な発現変化をもたらさなかった。これらの結果に基づいて、製剤研究中の導入遺伝子発現アッセイを10
5vg/細胞のMOIで行い、72時間後の読み取りを比較のために使用した。
【0196】
5.2 製剤研究1
5.2.1 T0における製剤のAAV2力価決定
第1の製剤研究において、qPCRを用いたAAV2滴定及びGFP導入遺伝子発現アッセイからなるT0分析を行った。配合の際に、1・10
11vg/mLの力価を目標とした。qPCR AAV2滴定結果を
図9に示し、8つの製剤全てが目標とした力価よりも非常に小さい力価を有していたことが明らかとなった。製剤間の力価変動にもかかわらず、全ての力価は、9.86・10
7vg/mL~8.13・10
8vg/mLの範囲であった。
【0197】
5.2.2 T0における製剤のGFP発現
GFP導入遺伝子アッセイのデータを
図10に要約する。示されたデータは、負の蛍光シグナルの一部を説明するブランクを既に減算している。これらの結果により、製剤6及び7は高GFP発現を誘発したことが示された。一方、他の全ての製剤は、72時間後であっても測定可能なGFP発現をもたらさなかった。製剤3、4、5、8の蛍光強度は、5.7・10
5以下の蛍光にしか達しなかった。製剤1及び2は、その後、検出可能な蛍光を示さなかった。AAV2滴定から取得したデータを加えた場合、結果は、GFP発現が、全ての製剤において、約10
3vg/細胞のMOIで起こったことを示した。製剤6は、非常に高い蛍光強度を引き起こしたが、MOIは、他の製剤と比較して更に小さかった。低い導入遺伝子発現及び低いAAV2力価に基づき、この研究を終了することを決定した。
【0198】
5.3 製剤研究2の結果
5.3.1 凍結乾燥及び残存水分量
凍結乾燥ケーキの目視検査では、32個のケーキのうち5個が凍結乾燥ケーキに小さな亀裂を示すことが示された。凍結乾燥ケーキの写真を
図11に示す。残存水分量を、Karl Fisher滴定を用いて、3つのプラセボバイアル中で測定した。分析により、残存水分量は1.11、1.13、及び1.23%であることが明らかとなった。
【0199】
5.3.2 製剤研究2における全てのAAV2力価決定の要約
各プルポイント中に、qPCRを使用して、全ての製剤の力価を決定した。全てのqPCR結果の要約を
図12に示す。配合の際に、全ての製剤は1・10
11vg/mLの力価を目標とした。定量化により、製剤1、2、4、及び5が異なるプルポイント測定値間で低い力価変動を有し、それらが1・10
11vg/mLの目標とした力価にほぼ到達することが示された。攪拌ストレスへの曝露は、製剤1、3、5、及び8の力価低下をもたらした。プルポイント測定値間の大きな力価変動及び殆どの測定値の大きな標準偏差が、製剤6で見られた。製剤6の-80℃の凍結融解サイクルへの曝露は、約2logの力価低下をもたらした。同様に、製剤6の全ての力価は、他の製剤と比較して非常に小さく、1・10
10vg/mLを超えなかった。製剤7は、全ての測定値間で大きな変動を示さなかったにもかかわらず、殆どの力価測定値は、力価を約1log過少評価した。製剤2、4、6、及び7では攪拌モデル後に力価低下がないことは注目すべきことである。上記の力価低下に加えて、製剤は、製剤研究の過程にわたって一定のウイルス力価を示した。
【0200】
5.3.3 製剤研究2における全てのGFP発現アッセイの要約
以下のセクションは、細胞ベースのGFP導入遺伝子発現アッセイの結果を提供する。細胞を8つの異なるAAV2-CMV-GFP製剤で形質導入した。形質導入が成功したら、細胞はGFPを発現する。プレートリーダーで蛍光を測定することにより、GFP発現を直接定量化することが可能であった。
【0201】
5.3.3.1 2~8℃で保存した製剤による形質導入後のU2OS細胞におけるGFP導入遺伝子発現
図13は、2~8℃に異なる時間にわたって曝露された全ての製剤のGFP導入遺伝子アッセイから得られた結果を示す。各製剤は、T0で異なる蛍光強度を誘発した。T0での製剤特異的GFP発現にもかかわらず、殆どの製剤は、3ヶ月間凍結したとき、凍結温度とは関係なしに有意な蛍光低下を記録した。製剤6及び8は、凍結時に発現低下を示さず、製剤7は、小さな発現低下しか記録しなかった。製剤8の2~8℃での1ヶ月間及び3ヶ月間の曝露は、-20又は-80℃での3ヶ月間の保存とは対照的に、非常に少ない発現をもたらした。2~8℃で保存された他の製剤は、凍結した製剤と比較して、同様の発現を示した。2~8℃で保存した場合、1ヶ月及び3ヶ月の間の保存間に差は見られなかった。製剤3及び4の凍結乾燥、続いて、2~8℃で1ヶ月間の保存により、液体製剤と対照的に同様の発現を示した。一方、製剤6及び7は、凍結乾燥した際時に有意に低い蛍光強度をもたらした。全てのプルポイントの際に、製剤3を用いた形質導入は、他の製剤と比較して、非常に小さい絶対蛍光強度をもたらした。製剤1では、製剤2と比較して、研究全体の際に既にT0でより少ない発現であることが明らかになった。
【0202】
全てのプルポイントの際の絶対GFP発現は、製剤6で最も高かった。GFP発現アッセイにおいてMOIを適用した(別表9を参照されたい)。
【0203】
5.3.3.2 25℃で保存した製剤による形質導入後のU2OS細胞におけるGFP導入遺伝子発現
図14の結果は、GFP発現が25℃での2週間の保存後に有意に低下したことを示す。25℃で2週間保存した後に蛍光が大きく低下したにもかかわらず、1ヶ月保存したときに更なる低下は観察されなかった。しかしながら、25℃で3ヶ月間保存した後、全ての製剤で発現が更に低下した。製剤1及び2は、25℃で2週間及び4週間の保存後に、最大の発現低下を示した。再び、製剤6は、最高の絶対GFP発現をもたらした。製剤3を除く全ての凍結乾燥製剤は、形質導入時に凍結乾燥していない製剤よりも更に小さいGFP発現をもたらした。凍結乾燥、続いて、25℃での3ヶ月間の保存は、1ヶ月間の保存と比較して更に低い発現をもたらした。
【0204】
5.3.3.3 40℃への曝露後、凍結融解サイクル後、及び攪拌ストレス後のGFP導入遺伝子発現
図15は、製剤を40℃又は凍結融解及び攪拌ストレスなどのストレス条件に曝露した後のGFP発現を示す。製剤6及び8は、-20℃までの凍結融解サイクル後でも、-80℃までの凍結融解サイクル後でも、GFP発現低下を記録しなかった。他の全ての製剤は、凍結融解時に発現の低下を示した。-20℃までのサイクルは、-80℃までのサイクルとは対照的に、製剤3、4、及び5の発現についてより明確な低下を引き起こした。他の全ての製剤は、-80℃までのサイクルと比較して、同様の発現を明らかにした。提示されたデータは、2~8℃で5日間の水平振盪が、凍結融解サイクルよりも更に低いGFP発現を引き起こしたことを示した。いずれの製剤も振盪ストレスに耐性はなかったが、製剤6は、他の製剤と比較して最小の発現低下を示した。製剤1、2、5、及び7では、攪拌ストレスは、-20℃の凍結融解サイクルへの曝露と同様のGFP発現の低下を引き起こした。他の製剤は、より低い発現をもたらした。製剤8におけるGFP発現は、5日間振盪した後に有意に低下した。40℃に2週間曝露することにより、全ての製剤においてGFP発現が防止された。
【0205】
5.3.4 製剤研究2においてDLSで測定した全てのZ平均値及び粒子サイズ分布の要約
図17(A)は、全ての測定されたプルポイントの際の全ての製剤のZ平均値を示す。凝集を示さない製剤については、20~30nmのZ平均値が予想された。データは、製剤6が全てのプルポイントの際に31nmを超えない最小のZ平均値を有することを示し、対照的に、他の全ての製剤は、T0で既に有意に高いZ平均値を有していた。製剤1は、T0で既に約1500nmの最高のZ平均値を示した。一方、製剤2、3は、T0で約400nmのより小さいZ平均値を有した。更に、製剤2、3、及び7は、他の製剤と比較して低いZ平均値を示した。25℃への2週間又は1ヶ月間の曝露時に、いくつかの製剤において、Z平均値が有意に増加した。製剤1、4、5、7、及び8は、そのような増加を記録した。製剤2及び3は、25℃への2週間又は1ヶ月間の曝露時に、いかなるZ平均値の増加も示さなかった。攪拌ストレスに曝露した後の最高のZ平均値が、製剤8で見られた。この製剤は、振盪後に最高のZ平均値を示しただけではなく、-20℃までの凍結融解サイクル後にも最高値を有した。
【0206】
図16に示すT0における各製剤の粒子分布を見ると、製剤7のみが30nmにおいて小さな粒子サイズ分布を示す。
【0207】
他の全ての製剤は、その範囲内でいかなるサイズ分布も示さなかった。1%のアルブミンを含む製剤6は、10nm前後の非常に顕著な粒子サイズ分布を有した。0.02% PS80を含んだ製剤1、2、3、4、及び5も、10nmでのピークを明らかにした。全ての製剤は、方法評価実験中に既に検出されているように、より高いナノメートル範囲において特異的な粒子サイズ分布を示した。製剤1では、このピークは約1000nmであった一方、製剤2では、これは566nmであった。同様に、製剤4は、1074nmにおいてサイズ分布を示し、製剤3は、522nmにおいてサイズ分布を示した。製剤5及び6では、それぞれ、1292nm及び1561nmのピークが明らかになった。製剤7及び8では、粒子サイズ分布が、それぞれ957nm及び1320nmで見出された。本研究の過程中に、T0で記載された粒子サイズ分布プロファイルは一定のままであった。特に、約1、10、30nmに記載されたピークは、全ての条件及びプルポイントにおいて、それぞれの製剤で同じままであった。より高いナノメートル範囲で記載されたピークのみが、研究の過程中でいくつかのシフトを記録した。製剤2の場合、T0で約100nmで殆ど見られなかった分布は、25℃に4週間曝露した後に強度が増した。DLSをプラセボでもT0で行った。保存中にピークシフトは観察されなかった。プラセボのZ平均値は、全ての製剤において3.2~8.5nmであった。1%のアルブミンを含むプラセボ6を除く全てのプラセボは、1nmでピークを示した。プラセボは、製剤とは対照的に、高いナノメートル範囲では、いかなるピークも示されていない。25℃に1ヶ月間曝露した製剤及びT0におけるプラセボのサイズ分布を
図29及び30に示す。
【0208】
図17(B)に示される多分散性測定。文献によれば、単分散AAV製剤は、0.2以下のPDI値を有する。したがって、製剤6は単分散であり、凍結乾燥し、2~8℃及び25℃で保存されたときに多分散となった。T0では、製剤5も単分散であることが明らかであったが、保存時には多分散性となった。他の全ての製剤は、T0から多分散であり、多分散のままであった。製剤8は、振盪時には最高のZ平均値を有しただけでなく、多分散性が他の製剤と比較して高かった。
【0209】
5.3.5 製剤研究2における目視で見えない粒子測定の要約
目視で見えない粒子を決定するために全ての試料を希釈したため、得られた粒子数に希釈係数を乗じた。計数した後、ソフトウェアにより、粒子をそのサイズに応じて4つの群に分割した。測定によって、全ての製剤における粒子数が非常に少ないことが明らかになった。全ての計数をそれぞれのプラセボと比較した。
図18B、18D、18F、及び18Hに示されるように、多くのプラセボ測定値は、製剤中の粒子数とは対照的に、より高い粒子数を示した。プラセボ1は、他のプラセボと比較して、全ての時点で最も高い粒子数を示した。一方、製剤1は、T0で、40℃での保存後に、凍結融解サイクル後に、及び攪拌ストレス後に、他の製剤と比較して高い粒子数のみを有していた。-80℃までの凍結融解サイクルへの曝露時に、製剤2は、プラセボと対照的に、2、5、及び10μmの粒子数が有意に多かった。同様に、製剤3は、25℃に2週間曝露したときに、より高い2、5、10、及び25μmの粒子数を有した。他の全ての製剤は、それらのプラセボと比較して、有意に大きな粒子数を有しなかった。目視で見えない粒子の殆どは、製剤及びプラセボ1で検出された。
図18~21を参照されたい。
【0210】
5.3.6 製剤研究2におけるゼータ電位測定の要約
図19は、全ての製剤のゼータ電位を示す。全ての製剤は、負のゼータ電位を有する。特に製剤7では、プルポイント間の大きな変動が観察された。製剤1及び8のゼータ電位は、プルポイント分析間のより小さな変動を示した。製剤1は、全てのプルポイント中で最小のゼータ電位を有した。製剤7では、2週間にわたって40℃に曝露し、2~8℃で凍結乾燥及び保存したことより、約-31mVの高いゼータ電位が得られた一方、-20℃までの10回の凍結融解サイクルでは、-2mVのゼータ電位が得られた。攪拌ストレスへの曝露により、製剤6でのみゼータ電位が増加した。方法評価中に既に示されているように、T0での製剤8のゼータ電位は-9.46mVに達し、これを文献に記載されているAAV2表面電位とアラインした。攪拌後のゼータ電位は、製剤8で最小であった。
【0211】
5.3.7 製剤研究2におけるpH測定の要約
殆どの製剤は、製剤安定性研究の経過にわたって一定のpH値を示した。-20℃の凍結融解サイクル後、製剤1及び2並びにプラセボ1及び2では、pHの小さな増加が観察された。同様に、製剤1は、2~8℃及び25℃で1ヶ月間保存した後、5.5から5.8へのpH増加を示した。
図20(A)及び20(B)を参照されたい。
【0212】
5.4 追加の結果
5.4.1 塩化ナトリウムを含まない製剤と比較した150mMの塩化ナトリウムを含む製剤の濾過
第1の製剤研究から得られた結果に基づいて、滅菌濾過後の力価低下の理由を調べるために追加の実験を行った。これらの実験は、製剤研究2のプルポイント分析の間で行った。
図21は、AAV2製剤の濾過能力に対する塩化ナトリウムの影響を示す。150mMの塩化ナトリウムを補充した製剤は、滅菌濾過後に完全な力価の回復を示した。滅菌濾過プロセスでは、有意でない量のウイルスゲノムが失われた。しかしながら、塩化ナトリウムを含まない製剤は、3つ全てのフィルターで1.5Log単位を超えて力価が失われたことを記録した。Puradisc PVDFフィルターを通して濾過することより、それぞれ3.87・10
9vg/mL及び3.53・10
9vg/mLの力価が得られたMillex及びAnotopフィルターと比較して、2.27・10
9vg/mLのわずかに小さい力価が得られた。
【0213】
5.4.2 DLSで測定した粒子サイズ分布に対する150mMの塩化ナトリウムの影響
【表7】
【0214】
図22及び表6に示されるように、150mMの塩化ナトリウムを含む製剤と、いかなる塩も含まない製剤とでは、粒子サイズ分布が異なる。両方の製剤は、同じ緩衝液、同じ賦形剤及びスクロース濃度で構成された。結果は、NaClを含まない製剤のZ平均値が587nmであることを示した。製剤に塩化ナトリウムを補充することによって、Z平均値が83nmに低下した。製剤を0.2μmのMillex PVDFフィルターを通して滅菌濾過したとき、Z平均値は更に低下する。多分散性は、NaClを含まない製剤と比較して、NaClを含む製剤ではほぼ2倍の大きさであった。150mM NaClを補充した製剤では、約20~30nmのサイズ分布が明らかなった一方で、NaClを含まない製剤は、その範囲においていかなる粒子サイズ分布も示さなかった。代わりに、約780nmの粒子種を検出した。NaClの添加は、このサイズ分布プロファイルを大きく変化させた。滅菌濾過した製剤は、滅菌濾過しなかった試料と比較して、非常に小さい標準偏差を示した。
【0215】
5.4.3 SYPRO-オレンジ及びSYBR-ゴールドを用いた熱シフトアッセイ
導入部に記載されているように、DSFは、賦形剤、緩衝液系、及びpH範囲がカプシドの熱安定性に及ぼす影響を研究するための魅力的なツールである。製剤研究2のプルポイント分析間で方法評価を行った。1.0・10
11vg/mLの力価を有する試料を用いて、示差走査蛍光測定法を実施した。これらの力価は非常に低い濃度に対応するため、SYPRO-オレンジ及びSYBR-ゴールドを添加してシグナル強度を増強した。カプシド変性により引き起こされる熱シフトを観察し、融解温度を決定することが目的であった。
図23の結果は、いずれの試料においても熱シフトが観察されなかったことを示した。熱シフトは見られないが、
図24(A)及び(B)は、染料含有試料の励起が、検出可能であり、かつ濃度に依存する蛍光シグナルを引き起こすことを示している。より高いAAV2濃度での更なる測定は行わなかった。
【0216】
6 議論
6.1 AAV2の特性評価のための分析方法の評価及び開発
予想されるように、残存宿主細胞不純物が試料中に存在するため、DNase I試料処理によって力価が低下した。この消化ステップがなければ、宿主細胞DNAがウイルス力価の定量化を妨げるため、力価は過大評価されるであろう。2つのニユットのDNase Iを用いたDNase I処置時の同様の力価低下は、Dobnik及びその同僚によって観察及び記載された[70]。このような不純物の存在は、DNase I消化ステップの必要性を浮き彫りにするだけでなく、潜在的な凝集についての危険シグナルでもあった。Wright及びその同僚が提案したように、残存宿主細胞DNAは、濃度はかなり低いが、凝集を媒介することができる[30]。
【0217】
熱カプシド開口は、AAV2力価を増加させ、qPCRサイクルの開始時の短いカプシド開口時間は、分析前に全てのウイルスゲノムを放出するのに十分ではないことを示した。両方の処理を組み合わせることで、供給元によって与えられた力価の正確な決定が可能になった。
【0218】
エッペンドルフ接着実験では、試料をエッペンドルフチューブ中で24時間保存した後に混合したときに、AAV2力価が増加することが示された。しかしながら、増加が、AAVをチューブ壁から脱着させることによって引き起こされるのか、又は試料を均質化することによって引き起こされるのかどうかを結論付けることはできない。それにもかかわらず、この知識を適用し、エッペンドルフチューブに保存されている試料は、その容量の半分を用いて少なくとも10回上下にピペッティングすることによって常に混合された。
【0219】
TEM測定については、銅グリッド上の十分なカプシドを可視化するために、標準的なネガティブ染色プロトコルの修正及び力価の増加が必要であることが示された。力価が高いほど、グリッド上のAAVカプシドの数が多くなることは妥当であると思われるが、文献では、109~1010vg/mLの力価によってグリッド上で高量のカプシドをもたらされたことが既に示されている。したがって、試料の調製における主な改変がカプシド数の増加をもたらしたと想定することができる。特に、銅グリッド上でのベクター懸濁液の長期間にわたるインキュベーション時間によって、より多くのカプシドが接着することが可能となり、したがって、以後の洗浄ステップ中に洗い流すことができなかった。結果は、試料が、空のカプシドよりもわずかに多くの完全なカプシドを含んでいることを示した。これは、精製されていないAAV試料が、通常、非常に多くの空のカプシドを有するため、AAV2供給元がAAVを十分に精製したことを示す指標である。
【0220】
ゼータ電位測定は拡散バリア法を用いて行うことができ、1・1011vg/mLの力価は、読み取りを得るのに十分であることが示された。ゼータ電位方法評価の結果は、pH7.5で-9.46mVのAAV2表面電位を示したが、これはpH7.5で測定したAAV2の文献値に対応する。
【0221】
GFP発現アッセイの開発中に、濃度に依存するGFP蛍光は、プレートリーダーで測定することができることが示された。蛍光強度は、蛍光測定の前に、ウェル中の培地をPBSに置き換えたときに増加した。この結果の説明は、フェノールレッドを含む培地がGFPのクエンチャーとして機能することである。フェノールレッドによる追加の妨害は、細胞培養pHがシフトしているときに引き起こされ得、したがってフェノールレッド吸光度スペクトルが変化する。このような混乱因子を防ぐために、測定中に培養培地をPBSに置き換えることに決め、一方の側及び他方の側のシグナル強度を得てし、経時的に一貫した結果を保証した。
【0222】
第1の発現実験は、文献に記載された488nmの励起波長及び520nmの発光波長で行った。シグナル強度が非常に低かったため、rGFP対照を用いて波長走査を行うことに決めた。この対照を使用して、理想的な励起波長及び発光波長(すなわち、それぞれ460nm及び515nm)を同定した。これらの波長の使用は、シグナル強度を更に増加させた。
【0223】
次のステップにおいて、プレートリーダーが、異なるMOIによって引き起こされるGFP発現を区別することができることが示された。予想どおり、この結果は、濃度依存性の発現を浮き彫りした。同様に、GFP発現は、24時間後に既に検出されたが、経時的に更に増加した。このような迅速な蛍光の発生は、一方では、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターが、U2OS細胞におけるGFP発現をモニタリングするのに好適な効率的かつ強力なプロモーターであることを示し、他方では、AAV形質導入が、細胞とともに行ったインキュベーションから数時間以内に生じたことを示した。見出された結果は、Bartlett及びその同僚によって裏付けられ、彼らは、AAV感染及び核へのゲノム形質導入が3~4時間以内に起こることを示した[39]。
【0224】
全てのMOIにおいて3~4日後に最大の発現に達した。細胞生存率アッセイを見ると、これは細胞密度及び細胞生存率と相関することが明らかとなる。4日後にウェルプレートで最高の細胞密度が観察され、細胞が更に密度を増加させることができないことが示された。細胞密度は更に2日間一定のままであり、細胞が平衡状態にあることが示された。7日後に細胞生存率は有意に低下し、これはGFP発現アッセイでも見ることができる。GFP発現細胞が死滅していたため、7日後にGFP発現、したがって蛍光の低下が見られた。細胞生存能が失われる理由は、ウェル内の細胞密度が高すぎること、及び細胞の恒常性を維持するのに十分な栄養素が不足していることである。
【0225】
103vg/細胞のMOIが測定可能なGFP発現をもたらしたにもかかわらず、発現の変化は長い時間にわたって検出されなかった。したがって、このMOIを検出の最下限として定義した。104vg/細胞のより高いMOIは、既に、時間依存性のGFP発現をもたらした。これらの結果に基づいて、105vg/細胞のMOIで製剤研究を行うこととした。このようなMOIは、強いGFP発現及び蛍光をもたらした。同様に、検出下限に直接到達することなく、発現の低下をモニタリングすることが可能であった。106のより高いMOIと比較した別の利点は、1つのみではなく5つの複製においてGFP発現を定量化することが可能であったことである。細胞生存率アッセイは、この密度によって、細胞及び発現を失うことなく、4日間にわたってGFP発現をモニタリングすることが可能になったことが示した。より高い密度では、そのような長い観察が保証されず、これは不十分な発現時間のリスクを露呈し得る。一方、低い密度では、測定可能なシグナルを発生させるには小さすぎる可能性がある。
【0226】
AAV2粒子サイズ分布をモニタリングする方法としてのDLSの評価の際に、AAV2カプシドを1011vg/mLの力価で検出することができることが示された。単純な後方散乱分析は、AAV2に帰属する約20~30nmのサイズ分布を明らかにすることができた。DLSはAAV2を検出することができるが、約600nmに別のピークが現れた。その後の実験により、凝集体がこれらのサイズ分布を生じさせたことが示された。シグナル強度が非常に低かったため、AAVの検出下限について機器製造元に連絡した。デバイス供給元によると、使用されたカプシド量は検出下限に等しかった。MADLS測定を行い、後方散乱測定から得られた結果を確認した。前方散乱は後方散乱及び側方散乱よりも感度が低いため、20~30nmの予想される範囲でのサイズ分布を検出することができなかった。したがって、製剤研究では、後方散乱測定のみを適用することを決定した。
【0227】
導入部に記載のように、DSFを用いた熱シフトアッセイは、製剤研究内での価値あるデータを追加することができる。染料を添加したにもかかわらず、熱シフトは検出されなかった。染料の励起は濃度に依存するシグナル強度を示し、これにより、十分な染料が試料中に存在することが証明された。したがって、失われた熱シフトは、小さすぎるAAV2濃度によって生じ、不十分な染料濃度によって生じない。より高い力価が必要とされたため、更なる実験を行わなかった。文献から、約6・1011~1・1012vg/mLの力価を使用したときの測定可能な熱シフトを予想した[102]。
【0228】
6.2 製剤研究1
製剤研究1においてqPCR発現アッセイをT0で行った後、全ての製剤が、目標とするよりも低い力価を含むことが明らかになった。この所見は、GFP発現アッセイによって確認された。力価が低いにもかかわらず、アルブミン及びヒアルロン酸を含む製剤において、有意なGFP発現が観察された。有意な発現が見られたが、qPCR測定は、他の製剤とは対照的に、同様の力価を示した。その結果に基づき、アルブミン及びヒアルロン酸は、qPCR法を妨害し、ベクター力価を人工的に低下させる可能性があると仮定した。
【0229】
全ての製剤において観察される力価の損失は、AAV凝集又はフィルターへの吸着によって説明することができる。方法評価中のDLSの結果は、643nmのZ平均値を明らかにしたため、第1の仮説を潜在的に裏付けている。したがって、その問題の理由及び解決策を明らかにするように、製剤研究2のプルポイント間の追加の実験を設計した。
【0230】
追加の実験に示されるように、AAV2製剤は、PVDFフィルター商品とは関係なく、150mM NaClが提供されるときに滅菌濾過され得る。文献によれば、そのような塩濃度はAAV2の凝集を防止するが、吸着を完全に排除することはできない[30]。
【0231】
追加のDLS測定では、塩化ナトリウムが凝集を防止し、Z平均値を非常に低くすることが示された。粒子サイズ分布をより詳しく見ると、150mM NaClの補充時には、20~30nmの粒子分布が現れ、未凝集のAAV2が存在することが示された。この分布は、NaClが提供されない製剤では認められなかった。代わりに、そのような製剤では、ベクター凝集を示す782nmのピークのみが明らかになった。
【0232】
150mM NaClを含む製剤の滅菌濾過では、滅菌濾過されていない試料の測定と比較して、より低い標準偏差が得られた。興味深いことに、約273nmのサイズ分布がまだ現れた。多分散性指数により、滅菌濾過にもかかわらず、試料が多分散であることが確認された。これは、凝集体を形成するようになる濾過後のAAVベクターの再平衡化に起因し得る。
【0233】
両方の場合(NaClが有り及びなし)において、凝集体の存在がDLSによって観察されたことは言及に値する。滅菌濾過、続いて、qPCRを用いたAAV2力価定量化を行うことだけが、150mM NaClを製剤に提供したときに、凝集が低減され、滅菌濾過が力価の損失を引き起こさなかったことを信頼して示すことができた。
【0234】
製剤研究は凍結乾燥後の製剤の安定性を評価することを目的としていたため、選択された製剤はNaClを含まなかった。これは、そのような高レベルのNaClを使用することにより、凍結点の低下がもたされ、したがって、極めて長い凍結乾燥サイクルの開発が必要になるからである。一方、AAV凝集を防止する可能性を有し、かつ、同時に凍結乾燥させることができる潜在的な代替物として、アルブミン及びヒアルロン酸を調べた。
【0235】
GFPの発現は、製剤研究1中に、製剤6及び7において観察された。この所見は、より少ない凝集が起こり、より多くのベクターが滅菌フィルターを通過したことを示した。アルブミンを含む製剤は、ヒアルロン酸を含む製剤よりも多くの発現を示したが、これは、より効率的な凝集防止によって生じた可能性が高い。それにもかかわらず、GFPの発現は、方法開発中に測定された発現と比較して低かったが、これは、凝集が完全に防止されていないことを示している。
【0236】
6.3 製剤研究2
全ての製剤を成功裏に凍結乾燥させた。いくつかの凍結乾燥ケーキでは、軽微な亀裂が明らかになったが、これは、スクロースを含む製剤で一般的に観察されるケーキ収縮及び使用される製剤が小容量であることによって説明できる。
【0237】
第2の製剤安定性研究は、研究1とは対照的に一般に高い力価を示した一方、アルブミン及びヒアルロン酸を含む製剤は、それらのGFP発現は高いが、比較的低い力価を示した。これは、文献にそのような現象が記載されていないため、更なる調査が必要な仮説であるqPCRでの両方の賦形剤の潜在的な妨害を指摘している可能性がある。-80℃までのF/Tサイクル後の1つの外れ値を除いて、力価は試験過程中に一貫性を維持した。
【0238】
試験全体を通じて、力価は、緩衝液及びpHとは関係なく、一定であることが示された。注目すべきは、唯一のストレス条件としての攪拌ストレスが、いくつかの製剤において有意な力価低下を引き起こすことである。その仮説は、攪拌ストレスがいくつかのカプシドを破壊し、それらのゲノムの放出を引き起こしたというものである。次いで、DNase I消化ステップ中に、このDNAを消化し、除去する。アルブミン、ヒアルロン酸を含む試料は、振盪後に力価低下を記録しなかった。
【0239】
しかしながら、pH6.8を有するL-ヒスチジン及びリン酸ナトリウムは、攪拌ストレスに対して耐性であった。いくつかの要因が原因となり得る。まず、L-ヒスチジンpH5.5製剤は、力価低下に耐性であったL-ヒスチジンpH6.8製剤と比較して力価低下を記録したため、pHがカプシドの安定性に影響を及ぼすと結論付けられた。より高い7.5のpHでは、振盪ストレスに対する安定性が低下するようであった。したがって、約6.8のpHは、カプシド安定性に関して好ましいことが示された。
【0240】
凍結乾燥を成功裏に行い、該凍結乾燥は全く力価低下をもたらさなかった。更に、AAVは、力価の損失を観察することなく凍結乾燥された。
【0241】
力価測定とは対照的に、導入遺伝子発現は、療法の効力について情報を提供する。異なる温度及びストレス時に、力価は殆ど一定のままであるにもかかわらず、発現は急速に減少する。異なるストレスへの曝露は、-80℃までの凍結融解サイクルが、-20℃までの凍結融解サイクルと比較して、同様の発現をもたらし、いくつかの場合では、より高い発現をもたらすことを示した。この所見は、-80℃の凍結融解サイクルが、-20℃の凍結融解サイクルとは対照的に、導入遺伝子発現により悪影響を及ぼすことを提案したCroyle及びその同僚と矛盾する[27]。リン酸緩衝液(pH6.8)にアルブミン又はP188を添加することにより、T0でのGFP発現と比較して、両方の温度の凍結融解サイクルに耐性が生じた。アルブミンは、形質導入効率の障害をもたらす大きなカプシド変化を防ぐことからカプシドを保護するようであった。攪拌ストレス及び得られた力価低下は、GFP発現においても観察された。特に、P188を含む製剤8は、T0とは対照的に、攪拌ストレスにさらされたときに、そのGFP発現の半分しか記録されなかった。P188では、PS80と比較して、攪拌ストレスからのカプシドの保護がより悪くなると結論付けられた。この所見は力価測定によって確認された。驚くべきことに、力価の差異は測定されたが、製剤4と製剤5との間に発現差は観察されなかった。L-ヒスチジンpH6.8と比較したL-ヒスチジンpH5.5との間の振盪後の発現の差異は、qPCR試験で観察された力価低下によって説明することができる。pH5.5でのカプシドは、安定性が低く、したがって、攪拌及び温度ストレスの影響を受けやすい。それにもかかわらず、全ての製剤は、力価低下を記録していない製剤と同様に、振盪時に発現の損失があった。このような結果は、振盪ストレスがカプシド破壊を引き起こすか、又はカプシド変化をもたらし、これによりベクターの形質導入効率が低下することを示した。
【0242】
L-ヒスチジン、又はリン酸緩衝液へのアルブミンの添加は良好に機能し、言及した全てのストレスにおいてわずかなGFP発現低下のみを示した。AAV2の融解温度は約70℃であるが、40℃への曝露は任意の発現を消失させるのに十分である。このような温度への曝露は、不可逆的なカプシド変化をもたらし、ベクター感染性を無効にしたと仮定された。
【0243】
研究全体を通して、クエン酸ナトリウムを含む製剤は、T0で既に他の全ての製剤とは対照的に、非常に少ないGFP発現を観察したことが観察された。クエン酸塩はキレート剤として機能することが知られている。このキレート能力が、観察される発現/効力の低下をもたらしたかどうかは、評価中のままである。
【0244】
5.5の酸性pHは、より高いpHを有する製剤と比較して、T0で既に非常に低い発現をもたらした。導入部に記載されているように、より低いpHは、VP1タンパク質のN末端の細孔の開口及び外在化をもたらす。このような立体構造変化により、エンドソーム脱出が可能になるが、これは、受容体媒介性取り込みを妨害し、カプシド安定性を損ない、又は成功したエンドソーム脱出をその後に妨げる可能性がある。
【0245】
全ての製剤を-20℃又は-80℃まで凍結させ、続いて3ヶ月間保存したことにより、殆どの製剤においてGFP発現が大きく低下した。再び、P188又はアルブミンを含むリン酸ナトリウム緩衝液は、発現低下に耐性であり、T0で同様の発現を示した。両方の製剤は、凍結融解サイクルに対する耐性を既に示していた。このような特性が示されたことで、P188又はアルブミンのいずれかを補充したリン酸ナトリウム緩衝液は、優れた保存用及び出荷用緩衝液となる。このような好ましい特徴は、このP188がAAV製造元によって頻繁に使用される理由を説明している。-20℃及び-80℃で3ヶ月間保存することは、アルブミンを含む製剤においても非常に成功し、更に、2~8℃での保存中に発現を安定化させた。一方、P188を含む製剤は、2~8℃で保存したときに有意な発現低下を記録した。したがって、その主な使用は、-20℃又は-80℃での長期保存に限定されるべきである。そのような理由により、アルブミンの添加は、P188よりも優れた新しい魅力的な代替保存用賦形剤を提供する。
【0246】
他の全ての製剤は、2~8℃で1ヶ月間又は3ヶ月間の保存とは対照的に、凍結されたときに同様の発現を示した。製剤は、2~8℃で1ヶ月間保存したとき、3ヶ月間と比較して発現の変化を示さなかった。この結果は、将来の安定性試験の設計のために価値がある。特に、GFP発現の低下をもたらす不安定性は、2~8℃での1ヶ月間の保存前に生じたことを示している。最大の減少は、2~8℃での1ヶ月間の保存後に達成され、3ヶ月間保存した場合には更なる減少はなかった。いくつかの刊行物及びAAV供給元の推奨事項は、-20℃でベクターを保存しないことを勧告していたが、-80℃で3ヶ月間保存したときと比較して、-20℃で保存したときの発現に有害な影響は評価されなかった。長期保存の影響については、まだ評価中である。
【0247】
本明細書での結果は、25℃で2週間だけ保存することで、2~8℃での保存とは対照的にGFPの発現が非常に小さくなり、製剤は発現の低下を防ぐことができなかったことを示した。興味深いことに、発現は2週間後と比較して4週間後に同様であったが、3ヶ月間保存した場合には更に減少した。AAV2は、そのような温度では明らかに不安定であった。
【0248】
本研究の主な目標は、AAV2製剤の凍結乾燥を評価することであった。2~8℃で保存された凍結乾燥製剤は、2~8℃で保存された液体製剤と同様の発現をもたらすことが示されたが、唯一の違いは、液体製剤とは対照的に3ヶ月間保存されたときに、発現の更なる低下が見られたことであった。賦形剤としてのヒアルロン酸ナトリウムは、ガラス転移温度を上昇させる特徴を有し、したがって、凍結乾燥に好適である。好ましい特性にもかかわらず、ヒアルロン酸ナトリウムを含む製剤は、他の製剤と比較して、より低いGFP発現を示した。本明細書での結果は、液体製剤が、凍結乾燥製剤と比較して、2~8℃又は25℃で1ヶ月間又は2ヶ月間保存したときに、同様の又はより高いGFP発現を示したことを示した。この結果は、凍結乾燥試料内で90日間感染力価が一定に保たれたことを示したCroyle及びその同僚の結果と矛盾する[27]。
【0249】
AAV2ベクター製剤へのアルブミンの添加は、他の製剤とは対照的に、研究全体を通して最も高いGFP発現をもたらした。1つ理由は、アルブミンがカプシドに結合し、追加の層を形成することであり得る。カプシドに結合したアルブミンでは、ウイルスの取り込みは、アルブミン特異的受容体によって更に媒介され、HSPG受容体依存性であるだけではない[105]。アルブミンが、温度及びストレスに依存する構造変化からウイルスカプシドを更に保護するかどうかを調べるために、更なる調査を行う必要があった。
【0250】
一般に、GFP発現測定は、力価と比較して、異なる製剤、賦形剤、曝露されるストレス及び温度によって発現がより影響を受けることを浮き彫りにした。力価測定は、信頼できる安定性予測因子ではないことが示された。逆に、攪拌時の力価低下は、GFP発現低下と関連付けられる。力価測定は、AAV2の安定性に関するわずかな予測を可能にし、用量の推定に不可欠であるが、それらを安定性の予測にのみ使用すべきではない。力価測定は、治療効果に重要な導入遺伝子発現を表すものではなく、これは、力価よりもストレスに非常に感受性があることが示された。
【0251】
凝集していないAAV2製剤については、約25nmのZ平均値が予想された。DLS測定は、アルブミンの添加が低いZ平均値をもたらし、凝集が防止されなかったことを示した。一方、他の全てのAAV2製剤では、T0で既に凝集していることが明らかになった。多分散性測定は、これらの結論を支持し、製剤6が単分散であることを示した。アルブミンはカプシドに結合し、カプシド-カプシド相互作用の発生を防止するとことが想定された。凍結乾燥はZ平均値を著しく増加させなかったが、アルブミンを含む製剤は多分散となった。Z平均値の大きな差異が製剤間で見られた。製剤2、3、及び7は、製剤1、4、5、及び8と比較して、非常に小さいZ平均値を有した。現在の知見では、これらの製剤がベクター凝集に好まし特徴を有していたかについて結論を導き出すことはできない。製剤6を除く全ての製剤が凝集したとしか結論付けができない。
【0252】
光遮蔽法を用いた目視で見えない粒子の測定では、濃度の問題が存在した。この方法は、800~1000μLの容量を使用した。導入部に記載されているように、製剤の容量は、わずか245μLであった。したがって、試料を1・1010vg/mLの力価まで希釈した。試料希釈は確実にデータ品質を損なうものであり得、良好な実施ではない場合があるが、そのような測定を行う唯一の方法であった。製剤バイアル中の粒子数は、プラセボバイアル中よりも大きくないことが示された。粒子数は1000粒子/mLを超えなかった。製剤及びプラセボ1中のより高い粒子数は、ポリソルベート80の自己酸化及び加水分解によって生じ得る。ゼータ電位測定値の方法評価により、そのような測定値がAAV2特性評価に適用することができることが示された。評価方法中に測定された表面電位は、文献に記載される値と相関している。特に、ヒアルロン酸ナトリウムを含む製剤は、ゼータ電位内で変動があったことを明らかにした。変動にもかかわらず、ヒアルロン酸ナトリウムは、T0で最低のゼータ電位を引き起こした。負に帯電したヒアルロン酸がカプシドに結合することで、この所見が説明され得る。ゼータ電位は、コロイド安定性の指標である。負又は正のゼータ電位が大きいほど、粒子間の反発は大きくなり、小さいほど、粒子の凝集挙動は小さくなる。文献によると、試験した全ての製剤では、初期不安定性を明らかにし、かつ、凝集する傾向があるゼータ電位を有する[97]。製剤6は凝集を示さなかったにもかかわらず、ゼータ電位の有意な変化は観察されなかった。結果は、ゼロに近い小さなカプシド電位のみがAAV2で得られることを示したが、これはカプシドが電位の大きな差異を明らかにしないことを示している。この値と凝集していないAAV2ベクターの文献値とを比較すると、表面電位が影響を受けず、したがって、そのようなベクターのコロイド安定性を正確に明らかにしないことは注目に値する。この結果により、AAV2の製剤開発におけるゼータ電位測定の使用及び利点が疑問視された。ゼータ電位はpHによって影響を受け、これは、最大のゼータ電位があることが明らかになった製剤1に見ることができる。低pH製剤の酸性環境は、約6.4のpIでカプシドをプロトン化し、これにより表面電位が増加した。
【0253】
世界的な新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大中に検査施設が閉鎖されたため、3ヶ月の時点が完全に分析されなかったことは言及に値する。先に得られた結果に基づいて、3ヶ月の安定性後にGFP発現アッセイの実施を優先し、データを示して上記で論じた。残念ながら、力価分析並びに粒子及びゼータ電位の測定を行う時間は残されていなかった。
【0254】
7 結論
このプロジェクトの最初の部分では、AAV2の特性評価に使用される分析方法を評価及び開発した。まず、汎用ITR qPCRは、TaqManアプローチをSYBR-グリーンアプローチと交換することによって成功裏に最適化された。2単位のDNase Iの添加及び熱カプシド開口ステップの実施によって、方法の精度が向上した。導入遺伝子発現をモニタリングするために、プレートリーダーアッセイを開発し、U2OS細胞がAAV2誘導発現を定量化するのに好適な細胞株であることが示された。TEMを用いて、約60%のカプシドがウイルスDNAを含んでいたことが示された。完全なカプシドと空のカプシドとの比率が成功裏に決定されたにもかかわらず、測定は、より時間のかからないスケーラブルなアプローチの必要性を浮き彫りにした。DLSによる粒子分析を用いて、1・1011vg/mLの力価を検出することができたが、検出の下限にあることが示された。ゼータ電位測定により、-9.46mVの文献値が確認された。
【0255】
第2のステップでは、3ヶ月のAAV2製剤安定性研究において、分析方法を適用及び開発した。配合後に大きな力価損失が観察された後、第1の製剤研究を終了した。これらの調査により、AAV2が製剤化中に速やかに凝集し、したがって濾過されたことが示された。150mM NaClを添加することにより、凝集が防止さえれ、滅菌濾過が可能となった。qPCR滴定と組み合わせた滅菌濾過のみが、150mM NaClが凝集を著しく低減することを正確に示した。
【0256】
第2の製剤研究では、1%のアルブミンの添加によってこの研究の経過中の凝集が防止されることが示された。一方、他の全ての製剤は、T0で既に凝集していた。製剤6及び8は、凍結及び凍結融解サイクル時に発現低下を示さず、したがって保存緩衝液として好適である。導入遺伝子の発現は、温度に依存した様式(40℃>25℃>2~8℃≧-20/-80℃)での保存時に急速に低下した。凍結乾燥、続いて25℃での保存は、25℃で保存されたそれぞれの液体製剤と比較して低い発現をもたらした。この研究では、2~8℃での保存は、1ヶ月の保存後には既に最小の発現に達していたことが示された。これは、研究の早い段階でより多くのプルポイントを追加する必要性を示している。
【0257】
力価はこの研究の過程中に一定のままであり、攪拌ストレスによってのみ影響を受けた。ポリソルベート80の添加は、振盪時の有意な力価低下から製剤を保護した一方、P188は、保護効果を明らかにすることができなかった。アルブミン及びヒアルロン酸の補充はqPCR力価定量化を妨げる可能性があることが本明細書で示されている。
【0258】
分析方法のこの評価及び開発並びに製剤研究内のそれらの応用により、AAV2ベクター製剤開発の分野における貴重な知見が得られた。
【0259】
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【国際調査報告】