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特表2023-528337単一抗体によるナイーブT細胞およびB細胞のネガティブセレクションのための組成物および方法
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  • 特表-単一抗体によるナイーブT細胞およびB細胞のネガティブセレクションのための組成物および方法 図1
  • 特表-単一抗体によるナイーブT細胞およびB細胞のネガティブセレクションのための組成物および方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-04
(54)【発明の名称】単一抗体によるナイーブT細胞およびB細胞のネガティブセレクションのための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20230627BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20230627BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20230627BHJP
   C12N 1/02 20060101ALI20230627BHJP
   C12M 1/26 20060101ALN20230627BHJP
   C12M 1/00 20060101ALN20230627BHJP
【FI】
G01N33/53 Y
G01N33/543 541A
G01N33/53 D
C12N5/0783
C12N1/02
C12M1/26
C12M1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022572543
(86)(22)【出願日】2021-05-28
(85)【翻訳文提出日】2022-12-26
(86)【国際出願番号】 US2021034817
(87)【国際公開番号】W WO2021243190
(87)【国際公開日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】63/031,184
(32)【優先日】2020-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522458505
【氏名又は名称】バイオマグネティック ソリューションズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】チェン、チューイェン
(72)【発明者】
【氏名】リベルティ、ポール、エー.
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA09
4B029BB11
4B029BB17
4B029CC01
4B029CC03
4B029CC13
4B065AA92
4B065AA94X
4B065AC12
4B065BD14
4B065CA44
(57)【要約】
【要約】
【解決手段】 目的のナイーブで未接触の標的細胞を単離するための組成物および方法が開示される。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともT細胞およびB細胞を含む末梢血単核細胞(PBMC)調製物から標的細胞画分を単離する方法であって、前記調製物は内因性または添加IgGを実質的に欠き、前記標的細胞表面はFc受容体を実質的に含まず、前記方法は、
(a)前記PBMC調製物に、Fc受容体保有細胞および前記調製物に存在するB細胞上のエピトープの両方に同時に結合する単一の免疫学的に活性な捕捉剤を導入する工程であって、前記捕捉剤は磁気応答性粒子を含むフェロフルイドに作動可能に連結され、それによってB細胞、単球、顆粒球、および血小板から選択されるFc受容体保有細胞の磁気クラスターを形成する、前記導入する工程と、
(b)前記調製物からFc受容体保有細胞およびB細胞の前記磁気クラスターを磁気分離器で分離する工程と、および
(c)本質的にナイーブな状態で前記標的細胞画分を回収する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
少なくともT細胞およびB細胞を含む末梢血単核細胞(PBMC)調製物から標的細胞画分を単離する方法であって、前記調製物は内因性または添加IgGを実質的に欠き、前記標的細胞表面はFc受容体を実質的に含まず、前記方法は、
(a)前記PBMC調製物に、Fc受容体保有細胞および前記調製物に存在するB細胞上のエピトープの両方に同時に結合する単一の免疫学的に活性な捕捉剤を導入する工程であって、前記捕捉剤は特異的結合対の第1のメンバーに作動可能に連結される、前記導入する工程と、
(b)工程(a)の前記調製物を、第2の結合部材に作動可能に連結された磁気応答性粒子を含むフェロフルイドと、前記第1および第2の結合対部材間に特定の結合対が形成する条件下で接触させる工程であって、それによってB細胞、単球、顆粒球、および血小板から選択されるFc受容体保有細胞の磁気クラスターを形成する、前記接触させる工程と、
(c)前記調製物からFc受容体保有細胞およびB細胞の前記磁気クラスターを磁気分離器で分離する工程と、および
(d)本質的にナイーブな状態で前記標的細胞画分を回収する工程と、
を含む、方法。
【請求項3】
内因性IgGを実質的に含まない少なくともT細胞およびB細胞を含む末梢血単核細胞(PBMC)調製物から標的細胞画分を分離する方法であって、前記標的細胞表面はFc受容体を実質的に含まず、前記方法は、
(a)前記PBMC調製物に、抗ヒトIgGと、特異的結合対の第1メンバーおよびB細胞上のエピトープに結合するFabまたはF(ab)'を含む捕捉剤とを導入する工程と、
(b)工程(a)の前記調製物を、第2の結合対部材に作動可能に連結された磁気応答性粒子を含むフェロフルイドと、前記第1および第2の結合対部材間に特定の結合対が形成する条件下で接触させる工程であって、それによってB細胞、単球、顆粒球、および血小板から選択されるFc受容体保有細胞の磁気クラスターを形成する、前記接触させる工程と、
(c)前記調製物から前記捕捉剤結合Fc受容体保有細胞およびB細胞を磁気分離器で分離する工程と、および
(d)本質的にナイーブな状態で前記標的細胞画分を回収する工程と、
を含む、方法。
【請求項4】
請求項1、2、または3のいずれかに記載の方法において、前記標的細胞が、CD3T細胞である、方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法において、前記捕捉剤が、B細胞上のエピトープと免疫特異的に結合するFab領域と、および非標的細胞上のFcγRと結合するFc領域とを有する抗体またはその免疫学的活性断片である、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、前記FcγRを有する非標的細胞が、単球、顆粒球、マクロファージ、樹状細胞、およびNK細胞から選択される、方法。
【請求項7】
請求項5に記載の方法において、前記Fab領域が、CD19、CD20、IgG、およびCD32から選択されるB細胞エピトープに結合する、方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法において、前記免疫学的に活性な捕捉剤が、マウスまたはヒト由来のモノクローナルIgG抗体であり、ヒトFcγRによって結合されるFc領域を含む、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、前記モノクローナル抗体がIgGである、方法。
【請求項10】
前記請求項1~9の何れかに記載された方法において、前記結合対部材が、ビオチン-ストレプトアビジン、受容体-リガンド、アゴニスト-アンタゴニスト、レクチン-炭水化物、アビジン-ビオチン、ビオチンアナログ-アビジン、デチオビオチン-ストレプトアビジン、デチオビオチン-アビジン、イミノビオチン-ストレプトアビジン、およびイミノビオチン-ビジンから選択される、方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、前記捕捉剤が、磁気応答性粒子がラット-抗マウスIgG抗体またはマウス-抗ヒトIgG抗体と作動可能に連結されるフェロフルイドを含む、方法。
【請求項12】
請求項2に記載の方法において、前記特異的結合対の前記第1または第2のメンバーがビオチンである、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、前記各抗体が3~7個のビオチン分子を含む、方法。
【請求項14】
請求項2に記載の方法において、前記特異的結合対の前記第1または第2のメンバーがストレプトアビジンである、方法。
【請求項15】
少なくともT細胞およびB細胞を含む末梢血単核細胞(PBMC)調製物からナイーブCD4T細胞を単離する方法であって、前記調製物は内因性または添加IgGを実質的に欠き、前記CD4T細胞表面はFc受容体を実質的に含まず、前記方法は、
(a)前記PBMC調製物に、Fc受容体保有細胞およびB細胞上のエピトープの両方に同時に結合する第1の免疫学的に活性な捕捉剤と、およびCD8T細胞に結合する第2の免疫学的に活性な捕捉剤とを導入する工程であって、前記第1および第2の免疫学的に活性な捕捉剤の各々が、フェロフルイド中に存在する磁気応答性粒子に作動可能に連結する、前記導入する工程と、
(b)前記調製物から前記捕捉剤結合Fc受容体保有細胞と、およびB細胞およびCD8細胞を磁気分離器で分離する工程と、および
(c)本質的にナイーブな状態で前記CD4T細胞を回復させる工程と、
を含む、方法。
【請求項16】
末梢血単核細胞(PBMC)調製物からナイーブCD8T細胞を単離する方法であって、前記調製物は内因性または添加IgGを実質的に欠き、前記CD8T細胞表面はFc受容体を実質的に含まず、前記方法は、
(a)前記PBMC調製物に、Fc受容体保有細胞およびB細胞上のエピトープの両方に同時に結合する第1の免疫学的に活性な捕捉剤と、およびCD4T細胞に結合する第2の免疫学的に活性な捕捉剤とを導入する工程であって、前記第1および第2の免疫学的に活性な捕捉剤の各々が、フェロフルイド中に存在する磁気応答性粒子と作動可能に連結し、前記CD4T細胞、前記B細胞および前記Fc受容体保有細胞が磁気クラスターを形成する、前記導入する工程と、
(b)前記調製物から前記磁気クラスターを磁気分離器で分離する工程と、および
(c)本質的にナイーブな状態で前記CD8T細胞を回復させる工程と、
を含む、方法。
【請求項17】
末梢血単核細胞(PBMC)調製物からナイーブNK細胞を単離する方法であって、高親和性Fcレセプター結合に適した条件下で、前記調製物は内因性または添加IgGを実質的に欠き、前記方法は、
(a)前記PBMC調製物に、Fc受容体保有細胞とB細胞上のエピトープの両方に同時に結合する第1の免疫学的に活性な捕捉剤と、高親和性FcR結合に適した条件下でCD3T細胞に結合する第2の免疫学的に活性な捕捉剤とを導入する工程であって、前記第1および第2の免疫学的に活性な捕捉剤の各々が、フェロフルイド中に存在する磁気応答性粒子と作動可能に連結し、Fc受容体保有細胞、B細胞、およびCD3細胞の磁気クラスターを形成する、前記導入する工程と、
(b)前記調製物から前記磁気クラスターを磁気分離器で分離する工程と、および
(c)本質的にナイーブな状態で前記NK細胞を回復させる工程と、
を含む、方法。
【請求項18】
少なくともT細胞およびB細胞を含む末梢血単核細胞(PBMC)調製物からナイーブCD34幹細胞を単離する方法であって、前記調製物は内因性または添加IgGを実質的に欠き、前記CD34細胞表面はFc受容体を実質的に含まず、前記方法は、
(a)前記PBMC調製物に、Fc受容体保有細胞およびT細胞上のエピトープの両方に同時に結合する免疫学的に活性な捕捉剤を導入する工程であって、前記免疫学的に活性な捕捉剤は、フェロフルイド中に存在する磁気応答性粒子に作動可能に連結する、前記導入する工程と、
(b)前記調製物から前記捕捉剤結合Fc受容体保有細胞、およびT細胞を磁気分離器で分離する工程と、および
(c)本質的にナイーブで、未接触の状態で前記CD34幹細胞細胞を回復させる工程と、
を含む、方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法において、前記PBMCが、造血幹細胞を骨髄から末梢血に移行させるためにG-CSFで処理されたドナーから単離される、方法。
【請求項20】
請求項18に記載の方法において、前記モノクローナル抗体およびストレプトアビジンが、FcγRIとの相互作用を促進する濃度で存在する、方法。
【請求項21】
請求項1または請求項2に記載の方法において、前記フェロフルイドが、粒子あたり4000~7000個のモノクローナル抗体を含む、方法。
【請求項22】
請求項17に記載の方法において、前記モノクローナル抗体の濃度を約0.2μg/mlに下げることにより、前記高親和性FcR結合条件を促進する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年5月28日に出願された米国仮出願63/031,184の優先権を主張し、その内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、免疫学および生体液からの未接触の免疫細胞(例えば、T、BおよびNK細胞)の磁気分離・単離の分野に関するものである。具体的には、生体試料から望ましくない細胞タイプを効率的に分離し、目的の細胞タイプを未接触のナイーブな状態で残し、それを分離して様々な治療用途に使用できる組成物および方法が提供される。
【背景技術】
【0003】
本明細書では、本発明が属する技術の状況を説明するために、いくつかの刊行物および特許文献を引用している。これらの引用文献の各々は、参照することにより、あたかも全文が記載されているかのように本明細書に組み込まれる。
【0004】
Tリンパ球(T細胞)の選択、プライミング、増殖、トランスフェクションを経てキメラ抗原受容体(CAR)T細胞を作り出す免疫療法は、現代における最も重要な医学的進歩の一つである。FDA承認製品(大型B細胞リンパ腫(Kymriah-Novartis)および非ホジキンリンパ腫(Yescarta-Gilead))により特定の白血病およびリンパ腫の治癒を実証したことから、CAR T細胞の他の多くの応用が検討されており、世界中で多くの臨床試験が行われている(Kansagra AJ.et al.,Clinical Utilization of Chimeric Antigen Receptor T-Cells in B Cell Acute Lymphoblastic Leukemia,1994)。An Expert Opinion from the European Society for Blood and Marrow Transplantation and the American Society for Blood and Marrow Transplantation.Biol Blood Marrow Transplant.25:e76-85, 2019;Seif M.,et al.CAR T Cells Beyond Cancer:Hope for Immunomodulatory Therapy of Infectious Diseases.Front Immunol.10:2711,2019)。最近のレビューに示されているように、このような治療法を固形腫瘍に適用するための非常に大きな取り組みが行われている(Mohanty R.,et al.CAR T cell therapy:A new era for cancer treatment.Oncol Rep.Oncol Rep.42:2183-2195、2019)。
【0005】
CAR T細胞(生薬)の製造工程は、同種CAR Tの場合、患者またはドナーからのアフェレーシス法による末梢血単核細胞(PBMC)の採取から始まり、それらの細胞は、(i)直接刺激して活性化・増殖させ、その後の工程で十分な数の細胞を処理し、十分に製品を製造できるようにするか、(ii)T細胞またはCD4やCD8T細胞などのサブセットの選択を受けることがある。製造の最初の段階として細胞を選択することで、より良い製品が得られるという証拠が続々と出てきている。さらに、CD4とCD8T細胞の開始比率が、より耐久性のある治療法を提供する上で重要であるという説得力のある証拠がある(Turtle CJ.,et al.CD19 CAR-T cells of defined CD4:CD8composition in adult B cell ALL patients.J Clin Invest.126:2123-38,2016).
【0006】
CAR T細胞の製造には、いくつかのT細胞選択法が用いられてきた。「未接触の」T細胞から始めるべき多くの正当な生物学的理由があるにもかかわらず、ほとんどのプロセスでは、T細胞上のCD3受容体に特異性を持つ標的mAb、またはCD4もしくはCD8T細胞のポジティブセレクションの場合には、適切なmAbを使用したポジティブセレクションが行われている。これらのmAbは、一般的な捕捉装置と組み合わせて使用するか、磁性ナノ粒子、浮遊能力を有するマイクロバブル、その他の固体支持体などの分離ビークルに結合させるか、あるいはmAbを蛍光標識して、標識細胞をフローサイトメトリー法により選択できるようにすることができる。それらの方法のいずれも、未接触のT細胞を生成しない。さらに、粒子が分離方法に採用されている場合、その後の製造工程を開始する前に除去することが必要である。粒子を除去しない場合、出発細胞にそのような粒子が存在しても悪影響がないことを明確に証明しなければならないが、これは面倒で費用のかかる作業である。
【0007】
T細胞およびT細胞サブセットに対してポジティブセレクション法を採用することには、ある種の利点がある。例えば、ほとんどのネガティブセレクションプロトコルでは、PBMCからすべての非T細胞種を除去する必要があるため、利用可能なネガティブ分離システムは通常、9種類ものmAb(最低でも7種類)を含むモノクローナル抗体(mAb)カクテルを採用している。これらの抗体は、非標的細胞、例えば、CD14-単球、CD15-顆粒球、CD16-NK細胞および顆粒球、CD19-B細胞、CD34-幹細胞、CD36-単球/マクロファージ/血小板、CD56-NK細胞、CD123-ミエル系細胞および一部のB細胞、(T細胞がネガティブ選択される場合)およびCD235a-赤血球を除去するための特定の表面受容体と結合する。
【0008】
FDAのガイドラインでは、治療用として前駆細胞に接触する物質は、この場合mAbにおいて、人体で使用する治療用mAbと同じ品質でなければならないことを念頭に置いている。したがって、生体内で使用する多数のmAbを用いたネガティブセレクションシステムを構築するためのスタートアップ費用は、医療システムおよびそのような治療製品を必要とする患者にとってコスト負担となる。不要な細胞を除去するために、市販の陽性選択キットを寄せ集めてそのような選択を行うことに関連するコストは、ロイコパック治療1回につき合計約2万ドルである。このコストを現在のCAR Tの生産コストに上乗せすることは、到底容認できるものでは無い。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に従って、末梢血単核細胞(PBMC)調製物からFc受容体陰性標的細胞画分を単離する方法が開示される。一実施形態において、内因性または添加されたIgGを実質的に含まないようにされたPBMC調製物が提供される。Fc受容体保有細胞とB細胞上のエピトープの両方に同時に結合する単一の免疫学的に活性な捕捉剤を導入し、捕捉剤が磁気応答性粒子を含むフェロフルイドに作動可能に連結し、B細胞、単球、顆粒球、および血小板を含むFc受容体保有細胞の磁気クラスターを形成し、次に、磁気分離器においてFc受容体保有細胞およびB細胞の前記磁気クラスターを準備物から分離して、標的細胞画分を本質的にナイーブで触れていない状態において回収する。
【0010】
Fc受容体陰性標的細胞を未接触の状態で分離するための別の実施形態では、Fc受容体を有する細胞およびB細胞上のエピトープの両方に同時に結合する単一の免疫学的に活性な捕捉剤をPBMC調製物に導入し、捕捉剤は、特定の結合ペアの第1の部材に作動可能に連結される。次に、この調製物を、第2の結合部材に作動可能に結合した磁気応答性粒子を含むフェロフルイドと接触させ、前記第1および第2の結合対部材間に特異的結合対を形成させ、それによってB細胞、単球、顆粒球および血小板から選ばれるFc受容体保有細胞の磁気クラスターを形成させる条件下で、この磁気クラスターを分離する。この磁気クラスターを磁気分離器で分離し、ナイーブな状態で標的細胞画分を回収する。本明細書に開示された方法において使用するためのB細胞エピトープは、限定されないが、CD19、CD20、IgG、およびCD32を含む。
【0011】
Fc受容体陰性標的細胞を未接触の状態で単離する方法のさらに別の実施形態では、抗ヒトIgGと、FabまたはF(ab)'μ細胞である特異的結合対の第1のメンバーからなる捕捉剤とが、前記IgGおよびFabまたはF(ab)'、B細胞エピトープに対する親和性を有する、内因性IgGのレベルが減少したPBMC調製物中に導入される。このPBMC調製物を、第2の結合対部材に作動可能に連結された磁気応答性粒子を含むフェロフルイドと、前記第1および第2の結合対部材間に特定の結合対が形成される条件下で接触させ、それによってIgG結合B細胞、単球、顆粒球、および血小板を含むFc受容体保有細胞の磁気クラスターを形成させる。次に、この磁気クラスターを前記調製物から磁気分離器で分離し、本質的にナイーブな状態で標的細胞画分を回収する。
【0012】
特定の好ましい実施形態において、標的細胞は、CD3T細胞である。抗体の特異性が変更される他の実施形態では、上述のクラスタリング機能を使用して、B細胞を単離することができる。適切な結合ペアメンバーを提供することにより、CD34幹細胞、CD4、CD8、およびNK細胞を単離することができる。
【0013】
上記の方法で使用するための捕捉剤は、例えば、ヒトFcγRが結合するFc領域を含むマウスまたはヒト由来のモノクローナルIgG抗体を含み、該抗体は、B細胞上のエピトープ、未接触のT細胞を回収する場合の非標的細胞上への結合親和性を有する。ある好ましい実施形態において、抗体はIgGである。他のアプローチにおいて、IgGは、免疫学的に活性な抗体断片、(例えば、Fab)と共に添加され、ここで断片は、特異的結合ペアの第一メンバーに作動可能に連結される。FcγRを有する非標的細胞が除去される実施形態では、そのような細胞には単球、顆粒球、マクロファージ、樹状細胞、およびNK細胞などが含まれる。
【0014】
本明細書では、ビオチンおよびストレプトアビジンの使用を例示するが、他の有用な結合対メンバーとしては、これらに限定されない、受容体-リガンド、アゴニスト-アンタゴニスト、レクチン-炭水化物、アビジン-ビオチン、ビオチンアナログ-アビジン、デチオビオチン-ストレプトアビジン、デチオビオチン-アビジン、イミノビオチン-ストレプトアビジンおよびイミノビオチン-アビジンが存在する。
【0015】
また、末梢血単核細胞(PBMC)調製物からナイーブCD4またはCD8T細胞を分離するための方法も提供される。ナイーブCD4細胞を単離する実施形態では、Fc受容体保有細胞およびB細胞上のエピトープの両方に同時に結合する第1の免疫学的に活性な捕捉剤と、CD8T細胞に結合する第2の免疫学的に活性な捕捉剤とを、PBMC調製物中に導入する。この場合、前記第1および第2の免疫学的に活性な捕捉剤の各々は、フェロフルイド中に存在する磁気応答性粒子に作動可能に連結し、CD8T細胞、B細胞および前記Fc受容体保有細胞の磁気クラスターを形成させる。細胞の磁気クラスターは、磁気分離器で前記調製物から分離され、CD4T細胞は、本質的にナイーブな状態で回収される。CD8T細胞を分離することが望ましい状況においては、抗CD8抗体を抗CD4抗体に置き換える。
【0016】
本発明はまた、高親和性Fc受容体結合に適した条件下で、末梢血単核細胞(PBMC)調製物からナイーブNK細胞を単離する方法を提供するものである。この実施形態において、Fc受容体保有細胞とB細胞上のエピトープの両方に同時に結合する第1の免疫学的に活性な捕捉剤と、CD3T細胞に高親和性FcR結合を促進する条件下で結合する第2の免疫学的に活性な捕捉剤と、前記第1および第2の免疫学的に活性な捕捉剤の各々がフェロフルイド中に存在する磁気応答性粒子と作動可能に連結し、Fc受容体保有細胞、B細胞およびCD3細胞の磁気クラスターを形成していることを示す。その後、磁気クラスターを磁気分離器で調製品から分離し、ナイーブNK細胞を本質的にナイーブな状態で回収する。
【0017】
さらに別の態様において、末梢血単核細胞(PBMC)調製物からナイーブCD34幹細胞を単離するための方法が提供される。例示的な方法は、PBMC調製物に、Fc受容体保有細胞およびT細胞上のエピトープの両方に同時に結合する免疫学的に活性な捕捉剤を導入することを含み、前記免疫学的に活性な捕捉剤は、フェロフルイド中に存在する磁気応答性粒子に作動可能に連結され、前記Fc受容体保有細胞、およびT細胞が磁気分離器中で前記調製物から分離される磁気クラスターを形成し、これによって本質的にナイーブで未装着状態にあるCD34幹細胞を回収することが可能になる。この方法の好ましい実施形態において、造血幹細胞が骨髄から末梢血に移動するようにG-CSFで処理したドナーからPBMCを分離する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、以下の実施例で説明するナイーブな未接触のCD3細胞のネガティブセレクションのための結合パートナーの模式図である。抗CD32 mAbは、Fabパラトープ-CD32エピトープ相互作用によりCD32発現細胞に結合し、Fc-FcgR相互作用により他のFcgRに結合する。CD19とCD20はB細胞特異的な受容体で、抗CD19とCD20はそれぞれ特異的なCD19とCD20エピトープを介してB細胞に結合し、さらにFc-FcgR相互作用を介して他の細胞にも結合する。SIgはB細胞表面特異的受容体でもあり、抗IgG mAbはsIgエピトープを介してB細胞に結合し、Fc-FcγR相互作用を介して他の細胞に結合する。さらに、抗IgGはFcgRを発現する細胞を標識する血漿遊離Igとの結合にも使用することができる。抗IgG抗体を使用する場合、抗体は完全長IgG形式であっても、FcγRCを標識する血漿遊離Igに対して親和性を有するFab/F(ab')形式であっても良い。
図2図2は、MAH-Ig-FFで細胞を標識・分離し、フローサイトメトリー解析に供した後に得られたヒストグラムである。細胞はCD45-FITCでゲーティングし、細胞選択後のCD3、CD11b、CD19陽性細胞を測定した。
【発明を実施するための形態】
【0019】
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞を用いた免疫療法など、遺伝子操作されたT細胞の養子移入が、がんや自己免疫疾患の治療に効果的であることを示す臨床データが増えつつある。現在までのところ、免疫細胞の製造には、主にT細胞上に発現する特定の受容体のmAb標識に基づくポジティブセレクションが用いられている。このポジティブセレクションは、細胞を試薬と接触させる必要があるため、異なる遺伝子の発現を変化させる可能性がある。さらに、ポジティブセレクションは、レシピエントへの移植後すぐに抗体依存性の細胞毒性を引き起こすという逸話もある。これらの欠点が、採用された免疫細胞の効力と長期持続性に悪影響を及ぼす可能性は十分にある。したがって、所望の細胞タイプ、例えばナイーブT、B、NK、またはCD34幹細胞を単純化したネガティブセレクションを用いる代替戦略は、大きな価値があり、標的細胞の望ましくない活性化を抑えることができるだろう。
【0020】
PBMC/ロイコパックに含まれる白血球の構成は。T細胞(45-60%)、B細胞(5-15%)、単球(10-30%)、顆粒球(0.6-10%)、およびNK細胞(5-10%)である。現在までのところ、臨床応用においてCART細胞を調製するためのネガティブセレクションプロトコルは存在しない。しかしながら、磁気分離を用いたPBMC/ロイコパックに対する従来の研究レベルのネガティブセレクションはいくつか存在する。例えば、Miltenyi Biotech (Bergisch Gladbach,Germany)pan-T cell selection kit (#130-096-535)では、抗体カクテルは、PBMCから非T細胞を除去するために、9つの抗体(CD14、CD15、CD16、CD19、CD34、CD36、CD56、CD123、およびCD235a)を含む。同様に、DynalのビーズベースのCD3ネガティブセレクション製品では、7つの抗体(CD14、CD16、CD19、CD36、CD56、CD123、およびCD235a)が関与し、同等の純度(~95%以上)が得られる(Dynabeads(商標)Untouched(商標)Human T Cells Kit、#11344D)。CD14、CD19、およびCD56の3つの抗体を用いて、CD3T細胞をネガティブエンリッチした報告もあるが、顆粒球を取り除くために分離前にFicoll精製が必要である(Janssen W.,et al.A simple large scale method for T cell enrichment by negative selection in preparation for viral transduction)。Cytotherapy 19:S38,2017)。
【0021】
CD3陽性T細胞選択に関する先行研究(Liberti PA,Riter DW,Khristov TR.A novel low cost high yield clinical scale cell separator.Cell Gene Therapy Insight.4:581-600,2018)、T細胞を磁気標識する間接的な方法を採用し、ポジティブな免疫磁気分離を効果的に行った。それらの研究では、PBMCをまず抗CD3 mAbとインキュベートし、その後、当社の135~165nmの独自の高度磁性ナノ粒子(代替的にフェロフルイドまたはFFと呼ばれる)の共通の捕捉バージョンで磁気標識した(Liberti et al.,米国特許第5,698,271号、6,120,856号)。予備的な研究は、FFに結合したラット抗マウスFc(RAM)mAbという共通の捕捉剤を用いて開始された。そのシステムは一貫して、CD3細胞の優れた収率(>75%)のT細胞産物をもたらしたが、異なるレベルの単球(PBMC調製物中の単球の10~95%)で繰り返し汚染されたものであった。RAM-FFがFcRと相互作用していると仮定し、単球の結合を阻害するために、熱凝集性ヒトIgG(HAIG)およびFcR遮断抗体とPBMCをプレインキュベートするなどの大きな試みが行われた。HAIGの添加量にかかわらず、単球の結合は阻害されなかったが、Fcブロッキング抗体は有効であった。しかし、このようなブロッカーはコストがかかるため、市販の安価な分離キットを作ることは不可能であった。
【0022】
初期の陽性選択T細胞研究で使用された多くの異なるRAM-FF調製物の分析から、FFとの結合に使用されたRAMのレベルと単球の汚染(捕捉)の間に強い相関関係があることが示唆された。分析によると、FFへのRAM結合のあるレベルにおいて、これらのナノ粒子はFcγRベアリング細胞(FcγRC)に高い親和性で結合し、FFおよび他の固体表面または支持体への結合においてRAMのFc部分の近接が重要な役割を果たすことが示された。我々の研究室では、FFの表面にRAM(4000-7000IgG/粒子)を効果的に飽和させ、単球に対する親和性を低レベルの結合(500-1000IgG/粒子)および他の非免疫タンパク質の結合と比較することにより、FFなどの固体支持体上のRAM Fc近接の役割を実験的に実証する。高濃度のRAMで調製したFFは、アフェレーシス製品のアリコートから単球を完全に除去することが可能であった。さらに、このような除去は、mAb標的細胞分離に使用されるのと同じ濃度のFFで実施することができる。RAMはIgGサブタイプであることに注意。さらに、ウシまたはヒト血清アルブミン(BSA、HSA)を結合したFFとPBMCをインキュベートした場合、結合の程度にかかわらず、単球を磁気的に除去することができなかった。
【0023】
単球がRAMFc:FcγR結合相互作用ではなく、RAM-FFを摂取して磁気応答性細胞を作り出しているかどうかを判断するために、0℃で実験を行ったが、室温で行った実験と同じ結果が得られた。FFに結合したRAMのレベルが低い実験を行った場合、回収された単球のレベルが低かった。これらの結果は、RAM-FF:単球の相互作用は、主に結合性のものであり、RAMのFc領域の近接を必要とするか、またはそれによって増強されることを示すものである。
【0024】
なぜなら、そのようなレベルでは、そのような抗体のFc部分は、FcγRsの高い親和性を持つ結合者として働くために十分に近接し、同時にその抗体の特異性は、少なくとも1つの他の細胞の特異性、すなわち、IgGサブクラスの単一の抗体を結合するために使用できるはずであるから、つまりB細胞である。このように、固体支持体上のFcの近接は、近接するFcγRへの多価の付着を介して、親和性を高める。さらに、単一のmAbによるT細胞ネガティブセレクションを調べるために、IgGアイソタイプのマウス抗ヒトIgG抗体を高レベル(4000~7000mAb/粒子)でFFにコンジュゲートさせた。この実験の作業仮説は、B細胞は表面IgGを発現しているのでFab可変ドメインはB細胞に結合し、表面に近接したこの抗体のFc領域は単球、マクロファージ、樹状細胞(DC)、顆粒球、ナチュラルキラー(NK)細胞に発現するFcγR、またB細胞発現FCγRIIBとしてB細胞にも結合するだろうというものであった。
【0025】
多くの順列とコントロールで行われた実験により、仮説が証明され、この戦略により、95%以上の純度でナイーブCD3T細胞を繰り返しネガティブに分離できることが実証された。ある実験では、PBMC調製物は、抗ヒトIgG抗体と明らかに反応する内在性IgGを避けるために、3サイクルの遠心分離によって洗浄されたため、内在性IgGを実質的に含まないものとなった。このようなPBMC調製物にヒトIgGを約4~10μg/mLより大きいレベルで添加すると、T細胞の回収率は低下し、B細胞の汚染は増加した。これらの実験では、B細胞を標識するために抗ヒトIgGが使用されたことから、内因性IgGが抗ヒトIgG抗体の細胞標識能力を効果的に中和するものと推論された。実施形態では、ジスルフィドで結合したFabまたはFab様フラグメント、例えばF(ab')、低レベルの内因性IgGが選択を容易にする、すなわち、ビオチン化FabまたはF(ab')はB細胞表面IgGに結合してB細胞を標識し、Fab/F(ab')は遊離血漿IgGに結合してF(ab')-IgG複合体を形成してFcγRCを標識して除去できる(図1)。試料を「実質的にIgGフリー」にするためには、少なくとも3回の洗浄と再懸濁が必要。Fab/F(ab')を使用する場合、細胞は1回または2回しか洗浄されないため、サンプルに血漿中IgGが残存することになる。
【0026】
抗ヒトIgG抗体は、FcγRCに結合したIgと同様に細胞産物中の内在性IgGに結合することができるので、モデルを単純化するために、抗CD19mAbを高レベルでFFに結合させ(4000~7000mAb/粒子)、内在性IgGを欠くPBMCのネガティブセレクションに使用した。この実験により、ナイーブT細胞も高純度(>92%)で生産された。上記の抗ヒトIg実験と比較したこの概念的に単純な実験から、B細胞と特異的に反応する1つの成分と、凝集したFcと思われるものを介してFcγRCと反応する1つの成分があれば、十分にナイーブT細胞を生産できることが推測された。
【0027】
単一の抗体を用いて標的細胞を濃縮することにより、細胞標識の手順が大幅に簡略化され、従来のプロトコルのように多くの抗体を必要とするコストが劇的に削減され、その結果、プロセスが驚くほど高速になる。このコンセプトの魅力は、以下に開示する実験データによって裏付けられており、臨床に関連する製品への転換を大幅に加速させる。また、同じ戦略を用いて、CD4またはCD8T細胞、B細胞、NK細胞のネガティブセレクションを簡略化することも可能であり、これは以下に述べるように、システムに他のmAbを1つ追加することで達成される。
【0028】
上記のように、PBMCからの最初の陽性T細胞選択は、(i)抗CD3mAbのインキュベーション、(ii)未結合mAbの除去、(iii)RAM-FFとのインキュベーションという工程を用いた間接磁気標識法で行われた。これらの選択プロトコールにおける単球の混入は、全く許容できないものであった。もし、T細胞をビオチン化抗CD3抗体で標識し、結合しなかった抗体を除去し、SA-FFをインキュベートして磁気分離し、同様のポジティブセレクション実験を行った場合、単球の汚染は劇的に改善されたが、依然として受け入れがたいレベルであった。この問題は、内因性IgGを実質的に含まないPBMCを、わずか1.0mg/mLのヒトIgGとインキュベートし、その後ビオチン-抗CD3抗体とインキュベートし、結合しなかったmAbを取り除き、その後SA-FFで磁気標識することで解決された。これらの実験により、単球の混入がないT細胞調製物が得られた。これらの結果は、ビオチン化抗CD3抗体とFcR、特に高親和性レセプターとの相互作用が、IgGを添加しない場合の単球汚染に関与している可能性を示唆するものである。なお、上記の実験では、単球の混入を防ぐために1mg/mLのヒトIgGが必要であり、すなわち標識mAbの約1000分の1であることを念頭に置いておくことが重要である。
【0029】
そこで、他のIgが存在しない状態でPBMCとインキュベートしたビオチン-抗CD3mAbが、FcγRに結合した内在性IgGと交換するか、あるいは「空の」FcRが十分に存在し、標識mAb添加により、その部位がFcγRC標識用の標的化アンカーとして使用されるという可能性を検討した。単量体IgGに対する異なるFcγRの結合反応のKは10-6から10-9Mであるので、IgGは標識剤として機能するのに十分なエネルギーで結合しているはずである。さらに、我々のSA-FFは多価であるため、FcγRC上のビオチン化mAbに多価の付着を介してFcγRCとSA-FFの結合エネルギーを高める機会があり、mAbのFc-FcγR相互作用が一因である可能性も考えられる。
【0030】
これらの知見は、特にネガティブな分離実験に関連するものである。好ましいプロトコルは、一般的な捕捉剤を添加する前に、未結合の標識mAbを反応混合物中に保持することである。これにより、そのような薬剤(この場合はSA-FF)は、mAb標識B細胞だけでなく、ビオチンを有する他のあらゆる成分と反応する機会を得ることができる。例えば、ビオチン-抗CD19mAbを使用する場合、mAbとPBMCをインキュベートすると、mAb標識B細胞が生じ、FcγRC上のFcγRのmAb標識が生じる可能性がある。SA-FFのような一般的な捕捉剤を添加すると、後者がmAb標識B細胞に結合し、ビオチンを有する任意のFcγRCに結合し、さらに未結合のビオチン-抗CD19に結合するなど、いくつかの反応が起こる可能性がある。したがって、磁気標識のインキュベーション期間中、B細胞との標識反応に加えて、新しい種、すなわち、結合した抗体とSA-FFの複合体が形成されることになる。この複合体は、前述のRAM-FFのデータから、FcγRCに強く結合することが予想される。このように、B細胞に特異的なmAb(CD19、CD20、IgGなど)を間接選択プロトコルに使用する場合、多くの複雑な反応を伴い、一般的な捕捉剤がいくつかの有利な役割を果たすと思われる。例えば、ナノ粒子または表面上のSA多価は、そのFcRCに結合したビオチン-抗体を介してFcRCの標識を促進することができ、その場合、SA-FFの多価はそのようなFcRCを捕捉できる点まで結合強度を向上させる。SA-FFの同じ多価性と結合していないビオチン-mAbとの反応により、充填されていないFcRと反応することができる種が生じ、したがって、その後の除去のためにFcR細胞(FcRC)を標識する別のメカニズムが作り出される。
【0031】
SA-FFを用いた我々のポジティブセレクションT細胞研究、および単球汚染を減少させる添加ヒトIgGの効果に基づいて、添加IgGは、FcγRに結合したビオチン化mAbへの多価SA-FF結合を否定できると思われ,十分高濃度の添加IgGでは、これらのmAbはFcから競合することが予想され、特にそれらの実験では未結合のビオチン-抗CD3mAbを除去後、FcγRと競合すると予想される。
【0032】
FcγRCの除去に関与する可能性のあるメカニズムについて、以下のネガティブT細胞選択実験が行われた:ビオチン化抗CD19mAbをIgG非存在下でPBMCとインキュベートし、その後SA-FFとインキュベートして磁気分離を行った。T細胞純度は>92%で、T細胞画分に単球がほとんど混入していない。IgG(0.125~1mg/mL)を添加しても、予想通り単球減少効果に大きな変化は見られなかった。さらに、ビオチン化抗CD19mAbの添加量を増やすと、単球の除去はより完全になり(例えば、2~4μg/mLは<2μgmLよりも良好)、CD3純度はより高くなった。これらの結果から、ビオチン-mAbは、閉じた状態で結合できる表面と複合化することで、FcRCと高い親和性で結合できるようになったと考えられる。
【0033】
これらの開示は、FcγRを細胞分離に非常に積極的に関与させる様々な方法があることを示し、簡単で試薬を節約した方法で、ナイーブで未接触の細胞を分離するいくつかのルートを作り出した。
【0034】
定義
本開示をより容易に理解できるようにするために、最初に特定の用語を定義する。本願で使用される場合、本明細書に明示的に規定される場合を除き、以下の各用語は、以下に規定される意味を有するものとする。追加の定義は、本願を通じて規定される。
【0035】
「生体試料」という用語は、限定されないが、細胞を含む体液、末梢血、組織ホモジネート、アスピレート、およびヒト被験者から取得可能な希少細胞の他の供給源を含む。
【0036】
「決定基」という用語は、本明細書に記載された標的細胞のいずれかに関連して用いられる場合、生物特異的リガンドまたは生物特異的試薬によって特異的に結合され、特定の結合物質への選択的結合に関与し、それを担う標的細胞の部分を指し、その存在は選択的結合が生じるために必要である。基本的な用語では、決定基は、特異的結合対反応において受容体によって認識される標的細胞上の分子接触領域である。
【0037】
本明細書で使用する「特異的結合対」という用語には、抗原-抗体、受容体-ホルモン、受容体-リガンド、アゴニスト-アンタゴニスト、レクチン-糖質、ビオチン-ストレプトアビジン、核酸(RNAまたはDNA)ハイブリダイゼーション配列、Fc受容体またはマウスIgG-プロテインA、アビジン-ビオチン、ストレプトアビジン-ビオチンおよびウイルス-受容体の相互作用が含まれている。様々な他の決定基特異的結合物質の組み合わせが、この発明の方法の実施に使用するために企図され、それは当業者には明らかであるものである。抗CD3mAbのような特異的結合対の第1のメンバーがその第2のメンバーであるT細胞上のCD3エピトープに結合するとき、このような反応は「標識反応」と呼ばれ、それらのT細胞はmAbにより標識されたとみなされる。
【0038】
「ポジティブセレクション」とは、目的の細胞タイプ上に存在する第2の結合対の第2のメンバーに選択的に結合する特異的結合対の第1のメンバーの異なる付着の混合物から精製し、それによって混合物から細胞を単離することを指す。特異的結合対の第2のメンバーを採用して、正の選択を行う、すなわち、目的の実体を精製するための様々な手段および方法は、当技術分野において周知である。
【0039】
「ネガティブセレクション」とは、異なる細胞種の混合物から、目的の細胞種を除く混合物中の各細胞種に1つまたはそれ以上の特異的結合対の第1メンバーを付着させることにより、目的の細胞種を精製することを指す。結合対の第2メンバーを用いる特異的結合対反応により、結合対の第1メンバーを有する実体が、目的の実体を残して混合物から分離されることができる。このような分離を行う手段および方法は、当技術分野でよく知られている。混合物から取り残された部分は、陰性画分と呼ばれる。
【0040】
「本質的にナイーブまたは未接触の状態」とは、特定の結合ペアのメンバーによって接触されていない細胞のサブセットを指す。
【0041】
「T細胞」は、CD3細胞を意味するものとする。定義によれば、CD3細胞のネガティブセレクションは、特定の結合ペアのいずれのメンバーとも接触していないナイーブT細胞を産生する。
【0042】
「Fc受容体陰性標的細胞」とは、Fc受容体をほとんど、あるいは全く発現していない標的細胞のことである。
【0043】
ポジティブセレクションおよびネガティブセレクションでは、それぞれ回収または除去されるべき細胞タイプが、通常、対応する抗体またはそのエピトープに高い親和性で特異的に結合する何らかの薬剤と反応するそれらの細胞上のエピトープなど、特定の結合ペアの一方のメンバー、特定の結合ペアの第2のメンバーと接触される。このような高親和性の結合対反応は、しばしば「標識化反応」と呼ばれる。
【0044】
用語「抗体」は、抗原に特異的に結合する糖タンパク質免疫グロブリンを含むが、これに限定されない。一般に、抗体は、ジスルフィド結合によって相互に連結された少なくとも2本の重(H)鎖および2本の軽(L)鎖、またはその抗原結合分子を含み得る。各H鎖は、重鎖可変領域と重鎖定数領域を含む。重鎖定数領域は、3つの定数ドメイン、CH1、CH2、およびCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域と軽鎖定数領域を含む。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。軽鎖と重鎖の可変領域(VLとVH)および定常領域(CLとCH1)の相互作用によって形成される抗体分子の部分は、FabまたはFabフラグメント(抗原結合画分)と呼ばれる。抗体をパパイン分解すると、1分子あたり2個のFab断片と、Fcと呼ばれる結晶化する断片(Fraction crystalized)が生成される。Fc断片はヒンジ領域以下の重鎖ドメインからなり、CH2ドメイン同士、同様にCH3ドメインが相互作用して形成される。抗体をペプシン分解すると、ヒンジ領域以下の抗体分子が切断され、重鎖をつなぐジスルフィド結合はそのまま残る。こうして、ジスルフィドで結合した2つのFab様フラグメントが生成され、(Fab')と呼ばれる。これらのジスルフィドが減少すると、単一の抗原結合断片(Fab')が生成される。重鎖のヒンジ領域とCH2ドメイン(ヒンジ領域の直下、近傍の領域)には、細胞上のFc受容体(FcR)に結合する抗体分子の領域が存在する。抗体のペプシン分解は必ずしも均一に切断されないため、(Fab')製剤にはFcR結合配列が含まれる場合がある。
【0045】
抗体または免疫グロブリン(Ig)は、IgG、IgM、IgE、IgAおよび分泌型IgAを含むがこれらに限定されない、一般に知られているアイソタイプのいずれかに由来しても良い。IgGサブクラスも当業者にはよく知られており、ヒトIgG、IgG、IgG、およびIgG、またはマウスIgG、IgG、およびIgGが含まれるが、これらに限定されるわけではない。「抗体」という用語は、一実施例として、天然に存在する抗体および天然に存在しない抗体、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体、キメラ抗体およびヒト化抗体、ヒトまたは非ヒト抗体、完全合成抗体、組換え生産抗体、免疫グロブリン、抗体軽鎖モノマー、抗体重鎖モノマー、抗体軽鎖ダイマー、抗体重鎖ダイマー、抗体軽鎖-重鎖ペア、イントラボディ、抗体融合、ヘテロコンジュゲート抗体、単一ドメイン抗体、一価抗体。一本鎖抗体または一本鎖Fv(scFv)、アフィボディ、Fabフラグメント、F(ab')フラグメント、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、ミニボディ、ドメイン抗体、合成抗体(本書では「抗体擬態」と呼ぶこともある)および上記のいずれかの抗原結合フラグメントを含む。上記で定義されたような抗体は、任意の種から得ることができる。
【0046】
Fc受容体(FcRC)を発現する細胞は、抗体-抗原複合体に接着する能力によって、他の造血系細胞と区別される。FcRは、主に特定のサブクラスの抗体のCH2ドメインに存在するアミノ酸配列に結合する。FcRは、抗体重鎖上の、ある種のサブクラスのCH2のヒンジ領域の下、またはその近傍にある配列に結合する。FcγRは、特定のサブクラスのIgG抗体のみに特異的に結合するクラスである。これらの膜貫通型分子は、いくつかの免疫グロブリン(Ig)クラスおよびサブクラスのFc領域を認識する。異なるアイソタイプのFcRとそれに対応するCDの呼称は、IgG(FcγRI/CD64、FcγRII/CD32、およびFcγRIII/CD16)、IgE(FcεRI)、IgA(FcαRI/CD89)、IgM(FcμR)、およびIgA/IgM(Fcα/μR)などがある。「FcRを実質的に含まない」とは、FcRに結合することが知られるIgアイソタイプおよびそのサブクラスから形成される免疫複合体を有する表面に接着しない細胞を意味する。
【0047】
「アイソタイプ」とは、重鎖定常領域遺伝子がコードする抗体クラスまたはサブクラス(例えば、IgMまたはIgG)を意味する。
【0048】
「検出可能な標識」とは、物理的または化学的手段により直接または間接的に検出または測定することで、試験サンプル中の標的細胞の存在を示すことができる物質を指す。吸光、蛍光、反射、光散乱、燐光、ルミネセンスの特性に基づいて直接または間接的に検出可能な分子またはイオン、放射性特性によって検出可能な分子またはイオン、核磁気共鳴または常磁性特性によって検出可能な分子またはイオンなどである。吸光または蛍光に基づいて間接的に検出可能な分子のグループには、例えば、適切な基質を、例えば、非光吸収分子から光吸収分子へ、または非蛍光分子から蛍光分子へと変換させる様々な酵素が含まれる。
【0049】
この「実質的に除外する」という表現は、生物試料特異的リガンド(例えば、mAb)または生物試料特異的試薬(ビオチン、ストレプトアビジンなど)と対応する標的決定基(例えば、対象細胞上の細胞受容体)との間の結合反応の特異性を意味する。生物特異的リガンドおよび試薬は、標的決定基に対して特異的な結合活性を有するが、他の試料成分に対して低レベルの非特異的な結合を示すこともある。
【0050】
本明細書で使用する「濃縮」という用語は、生体試料から標的T細胞およびB細胞を濃縮することを意味する。
【0051】
本発明を実施するのに使用するための好ましい磁性粒子は、コロイドとして挙動する粒子である。そのような粒子は、一般に約200ナノメートル(nm)(0.20ミクロン)未満であるサブミクロン粒子サイズと、長期間にわたる溶液からの重力分離に対する安定性とによって特徴付けられる。その他多くの利点に加え、このサイズ範囲では、細胞分析に一般的に適用される分析技術では本質的に見えない。90-150nmの範囲内にあり、70-90%の磁性質量を有する粒子が、本発明での使用に企図されている。適切な磁性粒子は、超常磁性材料の結晶性コアを、磁性コアに結合し、例えば物理的に吸収されるかまたは共有結合し、安定化コロイド特性を付与する分子によって取り囲んだものである。コーティング材料は、試料中に見出される生体高分子と磁性コアとの間の非特異的相互作用を防止するのに有効な量で適用されることが好ましい。このような生体高分子としては、非標的細胞表面のシアル酸残基、レクチン、グリプロテイン、その他の膜構成成分などが考えられる。さらに、できるだけ多くの磁性質量/ナノ粒子を含むことが望ましい。コアを構成する磁性結晶の大きさは十分に小さく、完全な磁区を含んでいない。ナノ粒子のサイズは、ブラウンエネルギーが磁気モーメントを上回る程度に十分に小さい。その結果、中程度の強さの磁場でも、コロイド磁性粒子の北極・南極の配列とそれに続く相互引力・斥力が発生しないようで、溶液の安定性に寄与する。最後に、磁性粒子は高磁場勾配の外場分離装置で分離可能であることが望ましい。その特性は、強磁性ビーズやスチールウールを装填したより複雑な内部勾配カラムに比べて、試料の取り扱いを容易にし、経済的な利点をもたらすものである。上記のような特性を有する磁性粒子は、米国特許第4,795,000号明細書に記載されている基材を改良することにより調製することができる。米国特許第4,795,698号、同第5,597,531号および同第5,698,271号に記載された基材を改良することにより、上記の特性を有する磁性粒子を調製することができる。それらの基材からの調製を以下に説明する。
【0052】
ナイーブで未接触の標的細胞を効率的に分離することが可能
本明細書では、養子細胞療法などの遺伝子工学および治療法において使用するためのナイーブ細胞、例えば、T細胞を調製する方法が記載される。具体的には、いくつかの実施形態では、方法は、単離されたCD4および/またはCD8T細胞集団などの複数の異なる細胞集団または種類の細胞を含む組成物を使用または生成する。いくつかの実施形態では、方法は、1つまたはそれ以上の細胞集団を単離するための工程を含む。本明細書に記載の方法に供される細胞は、一般に、哺乳類被験者、好ましくはヒト被験者に由来する試料から単離される。
【0053】
我々は、FcRC上のFcRを利用して、いくつかの重要な細胞集団のネガティブセレクションを最小数の特異抗体で行う方法が複数存在することを発見した。T細胞の場合、好ましくはIgGクラスの単一抗体で、そのアミノ酸残基がヒンジ領域、CH2ドメイン、あるいは無傷のFcの下および近傍にあるものが、FcγRCと結合反応を起こすことを見いだした。このような抗体のFab部分は、B細胞上のユニークなエピトープと反応し、標識抗体以外の内因性または添加されたIgGが実質的に存在しない場合、およびIgGが存在する他の場合には、PBMC標本中のナイーブおよびメモリーT細胞以外のすべての細胞の標識に有効に使用することが可能である。固体担体を用いた特異的結合対反応やフローサイトメトリーによる細胞選別法などの様々な周知の細胞分離技術と組み合わせることにより、我々の発見が単一のmAbまたは特異性の高いポリクローナル抗体によるナイーブT細胞の精製を可能にする。すなわち、単球、マクロファージ、樹状細胞(DC)、顆粒球、NK細胞などに発現するFcγRや、FcγRと相互作用する抗体のFc部分を、ナイーブT細胞の細胞分離・精製に独創的かつ有利に利用することができる。この発見を、B細胞上の表面Ig、CD19、CD20、又はCD32などのB細胞エピトープを指向する単一のmAbの使用と組み合わせると、ナイーブT細胞を調製するための単純で効率的かつ驚くほど経済的な方法論が達成される。CD4またはCD8細胞に向けられた第2のmAbとの組み合わせで、ナイーブCD4またはCD8細胞が容易に調製される。この発明には、多面的な実施形態が存在する。
【0054】
ナイーブT細胞を製造するための1つの実施形態において、その後の除去のために、PBMC中のナイーブT細胞以外のすべての実質的な標識は、FcγRに結合する抗体クラスからのFc断片の、固体支持体への付着に加えて、両方の場合において、FcγRCおよびB細胞をそれぞれ懸濁液から除去するために十分な結合エネルギーでB細胞と結合できる他の1つの実体によって、達成される。それは、ユニークなB細胞特異性を持ち、FcγRに結合するサブクラスの1つの抗体で達成できる。注目すべきは、そのような表面上のFcの密度がFcγRまたはFcγRに結合したIgとの結合相互作用に影響し、その表面上のFcの近接性を考慮する必要があることを明らかにしたことである。我々は、生物学的プロセスでよく知られる多価の結合相互作用を介して、それらの相互作用の増強があることを理論的に説明する。
【0055】
CD19、CD20、表面Igsなど、上記の目的のために標的とすることができるB細胞に特異的な決定因子またはエピトープがいくつか存在する。これらのB細胞特異的エピトープの発現は、B細胞が発生する間、かなり安定している。別の好適なエピトープはCD32であり、これはその幅広い発現のために、他のB細胞特異的エピトープの中で好ましいものである。CD32は、T細胞を除くB細胞および他のWBCに発現している。この広い発現は、強いFab/CD32エピトープ結合とFc/FcγR結合を介して、すべてのFcγ RCに対する標識のための効果的なアプローチを提供するものである。このアプリケーションでは、このタスクに適したいくつかのmAbsを説明する。それらのFcγR反応性mAbのいずれかを適切な密度で表面に結合させるだけで、B細胞とFcγRCを結合させる固体支持体ができる。それらのmAbの1つをペトリ皿または同様の容器に結合させた場合、研究者または診断者は、不要な細胞をパンニングするだけでナイーブT細胞を容易に調製することができる。このようなmAbを、ここで採用したFFのようなナノ粒子、他の磁性粒子、または浮遊能力を有するナノ/マイクロ実体に結合させる場合、より大規模な分離のための簡単な手段が可能になる。mAbsを表面に直接付着させる方法と、適切なリンカーを介して結合させる方法は様々である。リンカーを介した結合は有利であるが、我々が示したように直接結合はうまく機能する。
【0056】
抗体の断片が上記実施形態に採用され得ることは理解されよう。FabおよびFc断片の作製方法は50年近く前から知られており、FcγRに結合するIgG分子の主要部分であるCH2ドメインの作製方法と同様に容易に作製することができる。したがって、FcまたはCH2断片のいずれか、あるいはヒンジ領域とその直下および近位のアミノ酸配列(Kiyoshi M.,et al.Structural basis for binding of human IgG1 to its high-affinity human receptor FcγRI.Nature Communications,(2015),6:6866)は、FcγRCおよびB細胞を捕捉し、その後除去するための強力かつ特異的な固体支持体を製造するために、抗B細胞特異的実体とともに固定化することができる。それらの断片は直接連結することができるが、後者のアプローチはより多くの立体化学的結合の機会をもたらすので、リンカーを採用することがより効果的である可能性がある。
【0057】
間接標識法の利点と共通の捕捉剤の利点を併せ持つナイーブT細胞を製造するための別の実施形態では、PBMCを抗CD19、-CD20、抗ヒトIg、または抗CD32などのB細胞エピトープに向けられたmAbとインキュベートする。その後、標識mAbの起源となる種に対する抗Fcを有する適切な支持体上で共通の捕捉剤とインキュベートすることになる。このような抗Fcの要件は、当該技術分野でよく知られているFcγRと強い相互作用ができるサブタイプでなければならないことである。臨床使用のために、この実施形態が2つのmAb(標識mAbおよび共通捕捉mAb)を必要とするにもかかわらず、標識mAbの効率的な使用、すなわち、抗B細胞mAbをその分子形態で使用することがあり、共通捕捉剤上の第2のmAbは、他の多くの特定の分離工程においてその方法で使用することが可能である。我々はこの目的のためにFFに高密度に結合したモノクローナルラット抗マウスFc(RAM)を採用し、すでに述べたように、固体支持体に結合したSAをビオチン化ターゲティングmAbと組み合わせて同様に使用してきた。
【0058】
間接プロトコルでFcγRCの標識に固体支持体に結合したRAMが使用される場合、その標識反応に関与する2つの種、すなわち、RAM-固体支持体および標的化抗体に結合したその成分(それらが適切なサブクラスであることを条件)がありそうだということは注目すべきことである。あるいは、SA結合固体支持体、または他の特異的結合ペア反応が使用される場合、異なるメカニズムが存在すると思われる。これらの場合、共通の捕捉剤は、FcγRCが標的化mAbと結合する時、そしておそらくは、その多価性を介して、FcγRに関連するビオチン標識mAbと結合することによっても、最も可能性の高い標識剤になるだろう。ビオチン/ストレプトアビジンの代わりに使用できるDNP/抗DNP、フルオレセイン/抗フルオレセイン、ビオチン/抗ビオチン、およびアルサニル酸/抗アルサニル酸のような当技術分野で既知の他の特異的結合対反応があるが、ビオチン/SA結合対の強さは容易に利用できる共有結合のそれに近いものである。このようなネガティブセレクションでは、ラベルを反転させる必要はないが、将来、除去した細胞との反応を反転させる必要がある場合には、結合親和性の低い結合対、例えばデスチオビオチンとストレプトアビジンや、アビジンやストレプトアビジンで解離できるビオチン-抗ビオチン結合対反応も使用可能である。その他、mAbとビオチン、またはストレプトアビジンとHSAの間の結合を切断する方法も考えられる。
【0059】
PBMCは、ナイーブT、B細胞、FcγRCの3つのサブグループまたはフラクションに分類されるので、後者の2つのグループを除去できる方法は、ナイーブT細胞の単離につながるはずである。上記の実施形態は、多くの種類の細胞上のFcγRの共通性を利用し、固体支持体に結合した抗B細胞mAbとの組み合わせで、そのような細胞を標的とすることで、適切な処理によりナイーブT細胞を生成することができる。さらに、ビオチン化mAbまたはその結合断片をSA共通捕捉剤と組み合わせて使用する間接的な手順で、標識および分離処理段階を実施することができる。SAは、言及されたナノ/マイクロ粒子のいずれかに結合され得るか、またはセファロースもしくは繊維および当技術分野で公知の他のもののようなカラム充填材料に結合され得る(例えば、Etchells and Peterson、米国特許第5,215,926号参照)。
【0060】
PBMCは、ナイーブT、B細胞、FcγR細胞の3つのサブグループまたはフラクションに分類されると述べたが、B細胞エピトープを特異的に標的とする1つの抗体を用いることで、CD3T細胞を高純度に分離することが可能である。実際、B細胞も低親和性のFcγR、FcγRIIBを発現しているので、PBMCもT細胞とFcγR細胞の2クラスに分類される。FcγRを標的とする抗体を用いれば、そのFabとFcの両部分がFcγRと結合することで、非T細胞を除去することも可能となる。CD32はFcγRIIとも呼ばれ、B細胞、単球、顆粒球、樹状細胞、NK細胞、血小板に広く発現していることが知られており、IgGクラスの抗ヒトCD32抗体はFab領域を用いたFcγRII発現細胞とFc領域とFFの適正結合度を用いた他のFcγRを持つ細胞を全て除去し、T細胞のみを画分に残せば良いことになる。
【0061】
前述したように、単一の抗体、すなわちB細胞に固有の特異性を有するmAbを採用してナイーブT細胞を産生する実施形態において、CD4またはCD8T細胞に向けられる第2のmAbを加えた場合、ナイーブCD4またはCD8細胞のいずれかが適切な分離系を介して生産されることが明らかだろう。別の実施形態では、同様に、1つの分離スキームにおいて、mAbで標識されたそれらの細胞の一方または他方とともに、ナイーブCD4またはCD8細胞のいずれかを回収することが可能だろう。言い換えると、1回の磁気分離または浮力分離で実施できる、それらのナイーブサブセットの一方を未接触で、他方をmAbで標識して得るための方法が提供される。例えば、ある場合には、ビオチン化抗B細胞およびデスチオビオチン抗CD4のmAbカクテルをPBMCと混合すると、すべてのFcRC、B細胞およびCD4細胞は、添加およびSA固体支持体とのインキュベーションにより磁気標識されるだろう。磁気分離後、CD8細胞は上清または液相に残り、FcRC、B細胞およびCD4細胞は含まれない。このように、懸濁液中のCD8は容易に回収される。磁気分離された細胞は、この場合、CD4細胞を「ポジティブセレクション」して含むことになる。これらの細胞は、デスチオビオチン:SA結合を切断するビオチンの添加により、容易に放出される可能性がある。分離が、我々が開発したシステム(WO 2016/183032A1)の場合のように、広い面積にわたって細胞を磁気的に収集することができる装置およびかなり均一に層になっている細胞で行われた場合、それらのCD4細胞の良好な回収が期待されるだろう。この方法によるナイーブCD4細胞の回収は、所望により、抗CD4 mAbの代わりにデスチオビオチン抗CD8mAbを使用することによって達成することが可能である。ビオチン置換によるデスチオビオチン解離手段に加えて、ビオチン/抗ビオチン反応を解離させる方法は当技術分野でよく知られる(Lund,G.and Wegmann,T.,米国特許番号5,518,882;Brieden,J.and Dose,C.米国特許番号20140113315A1)。したがって、上記のスキームにおいて、mAb標識されたCD4またはCD8細胞を回収する方法はいくつか存在する。
【0062】
本明細書に開示された上記のすべての実施形態に加えて、これらの概念および方法をさらに拡張し、ナイーブNK細胞およびナイーブB細胞さえも分離することを可能にする、採用し得る別の変数が存在する。上述のように、ナイーブT細胞を除く白血球はFcγRsを発現し、高親和性受容体と低親和性受容体の解離定数には非常に大きな差があるため(Mkaddem S.,et al."Understanding Fc receptor involvement in inflammatory diseases":From mechanisms to new therapeutic tools.Front Immunol.10:811,2019;Chauhan A.K.,Human CD4T-cells:A role for low-affinity Fc receptors.Front Immunol.7:215,2016)、標識PBMC調製に使用するmAbの濃度を変えることで、最適化された陰性分離条件を実現することができる。我々は、高親和性FcγRは、低親和性FcγRとの十分に強い結合に必要とされ得るものよりも少ない程度にクラスター化した固体支持体上のFcとの相互作用によって選択的に標識することができると仮定している。したがって、低親和性FcγRのみを有するFcγRCの単離が可能になった。
【0063】
適切なmAbがSA-FFのような多価結合表面と相互作用し、その後FcRと相互作用するときに形成される複合体の別の結果は、血小板もFcγRを負担することである。したがって、PBMCを、例えば、適切なアイソタイプのビオチン化mAbと十分に高い濃度(>2μg/mL、例えば、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5μ/ml)でインキュベートした後、SA-FFすると、血小板もビオチン標識されるようになる。したがって、上記のような共通捕捉磁性ナノ粒子による分離や、固体支持体、あるいは他の分離基材を用いる何らかの手段により、陰性画分から血小板も除去されることになる。ほとんどの内因性IgGを欠くPBMCの調製においても、血小板の混入は問題となり得るので、そのFcγRを介して除去することができる。したがって、本発明は、ナイーブT細胞および他の細胞の調製方法を作成するための手段を提供するだけでなく、選択を開始する前に血液製剤の重要な処理を行う必要性が排除されるため、時間と費用を節約することができる。
【0064】
前述のすべてに加えて、本明細書に開示されるようにFcγRCを容易に枯渇させることができるという原理は、他の重要な臨床戦略を可能にする。例えば、現在、CD34幹細胞は、抗CD34 mAbsを用いたポジティブセレクションにより単離される。このような細胞を、移植や遺伝子工学的治療のために、未接触の細胞やナイーブな細胞から処理できることが望ましいだろう。現在のやり方でもネガティブセレクションは可能だが、CD34()以外の細胞を取り除くには7-9個のmAbが必要である。経済的な観点からは、この方法は実行不可能である。一方、正常および白血病患者の胎児および成人骨髄の研究から、FcγRは非転移前駆CD34細胞では発現しないことが確認される(Olweus J.et al.CD64/Fc Gamma RI is a granulo-monocytic lineage marker on CD34hematopoietic progenitor cells,.Blood.85:2402-13,1995;Aoki Y.,et al.Identification of CD34 and CD34 leukemia-initiating cells in MLL-rearranged human acute lymphoblastic leukemia.Blood.125:967-80,2015).したがって、本明細書に記載される方法および試薬を用いて、未接触であるCD34幹細胞の負の選択が達成可能である。以下に例示されるように、その結果は、たった1つのmAb、すなわち、ビオチン化抗CD3 mAbで達成され得る。
【0065】
FcγRCと血小板の結合のために表面上のクラスター化したFcを使用するという原理は、別の有利な目的のために有利に使用することができる。開示されているように、我々は、PBMCをRAM-FFで処理すると、すべての単球を枯渇させることができることを発見した。さらに、血小板は、その表面にクラスター化したFc領域を有する構築物で枯渇させることができることを観察している。したがって、PBMCおよび他の類似の混合物をそのような薬剤で処理することにより、FcRを有する成分を欠いたPBMC調製物および混合物を作成することができる。そのFc断片を近接させる方法で表面に結合したヒトIgGは、FcγRを有する成分との結合に理想的であろう。FcγRのそのような担体の除去は、磁性または浮力のある粒子で、密に結合したヒトIgG吸着剤上をPBMCが通過し、単に、細胞体の密度の差に基づく分離の遠心分離法を可能にする方法で密度が変化するようにその実体を標識することによって容易に達成できるだろう。
【0066】
要約すると、B細胞に対する特異的反応性とFcγRに結合するFc領域を有する単一の抗体のみを用いたナイーブT細胞のネガティブセレクションに、FcγRC上のFcγRを有利に使用できることを発見した。直接標識法、すなわち固体支持体に結合した単一の鍵試薬で、または単一の鍵試薬を、その鍵試薬を密着して結合させることができる共通の捕捉剤などの表面または固体支持体とともに用いる間接標識法でそれぞれ実施することができる2つの主要方法が開示される。分離方法としては、様々な方法を採用することができる。
【0067】
B細胞との直接的な結合に加え、FcγRCの標識化において作動していると考えられるメカニズムは、(i)抗CD19やCD20のようなB細胞に対する抗体を用いた場合、固体支持体上にクラスター化したFcγRCの標識化、(ii)抗B細胞表面Ig、例えば,γマウス抗ヒトIgGもFcγRCに結合した免疫グロブリンに結合でき、近傍の免疫グロブリンの架橋を介してそれらの結合反応を安定化し、したがってFcγR-抗体反応の結合定数を高めることができるという事実、および(iii)抗CD32を用いる場合、抗体はFabパラトープを介し、すべてのFcγRにFc領域を介して結合できる(図1)。上記のように、メカニズム「2」はシステム内の遊離IgGに敏感であり、それゆえ、洗浄していないPBMCサンプルに見られる低レベルの内在性IgGにおいて最もよく実施される。低親和性FcγRは、その親和性定数の増大を介して互いに近接するFc領域と相互作用するとき、FcγRCを「標識」する役割を果たすこともできるようである。したがって、PBMCに結合させるmAbの量を変えることにより、高親和性FcγRだけを選択的に標識することが可能だろう。この能力により、ナイーブNK細胞やB細胞の分離が可能になる。
【0068】
FcRと表面上のクラスター化したFcとの間で観察された「特異的結合対反応」を事実上利用する上記の方法に加えて、未接触またはナイーブT細胞のいずれかを精製する手段として、FcγRを免疫特異的に標的化する方法も開示する。
【0069】
現在請求されている方法および組成物は、CAR T療法用の細胞の調製において有利に使用することができる。本発明はまた、CD34のネガティブセレクションのための手段も提供し、これもまた重要な治療的可能性を有する。
【0070】
最後に、本明細書で提供される情報を考慮すると、FcγRに結合するそれらの抗体のFcγR結合領域を模倣する1つまたはそれ以上のポリペプチド配列と、本開示に従ってB細胞または何らかの他の特異性に特異的に結合できる分子実体(結合または独立)の生成を介して、mAbが果たす機能を果たすように組換え分子が設計可能である。
【0071】
本発明の実施を容易にするために、以下の材料および方法が提供される。
【0072】
磁性粒子-フェロフルイド(FF):FFはすべてBioMagnetic Solution社(ステートカレッジ、ペンシルバニア州)製を使用した。BSA/HSA-FFは、ウシ血清アルブミン(BSA、Sigma)またはヒト血清アルブミン(HSA、Akron Biotech、Boca Raton、フロリダ州)をFFにコーティングして合成され、コーティング後のサイズは約125~130nmであり、84%の磁気質量を含んでおり、RAM-FFは、BSAまたはHSA-FFにラット抗マウスIgG1 mAbを標準的なトラウト試薬とスルホSMCC手順(サーモフィッシャー、ウォルサム、マサチューセッツ州)を用いて結合させることで作製、SA-FFは、BSAまたはHSA-FFにストレプトアビジン(Agilent、サンタクララ、カリフォルニア)を結合させて同様に合成され、サイズはRAM-およびSA-FFともに約155~165nmであった。
【0073】
抗体とフローサイトメトリー解析抗ヒトIgGのマウスポリクローナル抗体は、Jackson Laboratory(カタログ番号209-005-082)から入手した。ポリクローナルヤギ抗ヒトIgG(Fab')-ビオチンおよびFab-ビオチンはRockland Immunochemicals(ポッツタウン、ペンシルバニア州)から、ヒトCD3、CD19、IgG、CD20およびCD32へのmAbはAbsolute antibody(ボストン、マサチューセッツ州)から購入された。抗ヒトCD34およびCD56抗体はBiolegend(サンディエゴ、カリフォルニア州)から、蛍光抗体抗CD45-FITC、CD3-PE、CD11b-PEcy5、CD19-PEcy5、CD34-PEおよびCD56-PEはBiolegendからのものであった。分離前後の細胞を蛍光結合抗体で染色し、CD3、CD11b、CD19陽性細胞はCD45陽性細胞でゲーティングして解析、アイソタイプコントロールは解析ゲートの設定に使用、サンプルはGuava(登録商標) easyCyte(商標)Flow Cytometer(Luminex)を用いて解析した。
【0074】
細胞および細胞の分離:多くの実験のための細胞は、血漿を除去するために直ちに遠心分離したアフェレーシス製品から得られた。0.5%BSAを含むPBSで3サイクルの遠心分離により洗浄し、最後にペレット化した細胞をCryoStor-CS10(Biolife Solutions、Bothell、ワシントン州)で懸濁し、分注、凍結した。CryoStor-CS10は、無血清、無タンパク質の細胞凍結培地である。これらのアリコートは、内因性ヒトIgGを実質的に含まないので、PBMC-Igと称される。また、PBS中の1%BSAまたはHSAで2回洗浄した新鮮なアフェレシス製品を用いて実験も行った。
【0075】
ダイレクトネガティブセルセレクションの手順:主にIgGアイソタイプの抗ヒトIgG(MAH-Ig)のマウスポリクローナル抗体を、製造元の推奨に従って、トラウト試薬とスルホSMCCを用いてBSA-FFにコンジュゲートした。このコンジュゲーションは、FFの表面に抗体を密に充填することを目的とした(4000~7000mAb/粒子)。同様のコンジュゲーションは、抗ヒトCD19mAbでも行われた。凍結PBMCをそのまま等量の緩衝液(PBS中4%BSA)で希釈し、15ug/mL(Fe基準)MAH-Ig-FFと細胞濃度2-10x10cell/mLで室温にて20分インキュベートした。FFは拡散によって容易に細胞を標識するので、20分のインキュベーションの間、それ以上の混合は必要ない。インキュベーション終了後、必要に応じて細胞をさらに2x10/mLに希釈し、四重極磁選機で15分間分離した。分離されなかった細胞-陰性画分-は吸引により回収された。陰性画分(未接触の細胞)の分析は、CD45、CD3、およびCD11b抗体を用いて、Guava EasyCyte Plus Flow Cytometerでフローサイトメトリーにより行われた。CD3T細胞の純度および収量を分析した。
【0076】
間接的なネガティブセレクションの手順:ビオチン化抗体と20分間インキュベートした後、SA-FFを細胞混合物に直接添加し、さらに15分間インキュベートした。その後、細胞を2x10/mLに希釈し、磁気分離に供した。
【0077】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を説明するために提供されるものである。これらは、本発明を何ら限定することを意図するものではない。
【実施例1】
【0078】
抗ヒトIgG抗体による直接標識法を用いたアフェレシス製品/PBMCからのアンタッチドCD3T細胞の単離
IgGアイソタイプを主とする抗ヒトIgGのマウスポリクローナル抗体(MAH-Ig)をJackson Laboratoryから入手し(カタログ番号209-005-082)、Troutの試薬とスルホSMCCを用いてFFにコンジュゲートさせた。MAH-Ig-FF上の抗体結合のレベルは、約300μg~500/μgの鉄であった。この145nmのナノ粒子では、粒子表面に抗体が「密集」しており、粒子あたり約4000~7000mAbが存在することになる。
【0079】
解凍したPBMC-Ig(内因性Igを実質的に除去)をさらに処理せずに、15μg/mL(鉄濃度に基づく)MAH-Ig-FFおよび細胞濃度2-10x10cell/mLとともに室温で20分間インキュベートした。FFは拡散によって容易に細胞を標識するので、20分間のインキュベーションの間、さらなる混合は必要ない。インキュベーション終了後、オプションで細胞を2x10/mLに希釈し、四重極型磁選機で15分間分離した。分離されなかった細胞-陰性画分-は吸引により回収した。陰性画分(未接触の細胞)の分析は、Guava EasyCyte Plusフローサイトメーターを用いたフローサイトメトリーによって行われ、T細胞は抗CD45-FITCおよび抗CD3-PEで細胞を染色することによって同定された。図2を参照。複数の実験におけるCD3T細胞の純度は>95%であった。
【0080】
これらの結果から、ヒトB細胞表面Igに対する結合特異性を有する抗体1つで、B細胞だけでなくFcγRCの大部分も除去できることが明らかとなった。T細胞の純度95%は、一般的に主要な臨床製造機関でCAR Tの製造に使用されているものよりも優れている。
【実施例2】
【0081】
実施例2a
ビオチン化抗ヒトIgG抗体とSA-FFを用いたアフェレシス製品/PBMCからの未接触CD3T細胞の単離
ポリクローナルマウス抗ヒトIgG(MAH-Ig)は、HABAテストで測定したところ、7ビオチン/mAbのレベルにビオチン化(MAH-Ig-ビオチン)された。SA-FF(145nm)は、BioMagnetic Solutions、ステートカレッジ、ペンシルバニア州(カタログ#SAFF-109)から得た。2-10x10の濃度のPBMC-Igを、2~4μg/mLのIgGアイソタイプのMAH-Ig-Biotinを主体に、室温で20分間インキュベートした。SA-FF(15μg/mL)を細胞混合物に添加し、さらに15分間インキュベートした。インキュベーション終了後、細胞を2×10/mLに希釈し、上記と同様に磁気分離を行った。実施例1と同様に、陰性画分の細胞を蛍光染色およびフローサイトメトリー分析により解析し、複数の実験において、>95%が未接触またはナイーブCD3T細胞であることが判明した。
【0082】
共通の捕捉剤であるSA-FFは、PBMC-Ig中の細胞、特にそれらの細胞のFcγ Rと反応しないことを考えると、これらの実験では、t FcγRCは、以下のメカニズムのうちの1つまたはそれ以上を介して除去されていると考えられる。まず、MAH-Ig-ビオチンは、PBMCと混合すると、B細胞を明確に標識する;それはまた、高親和性FcγRに結合でき、十分な濃度があれば、低親和性FcγRにも結合できる;MAH-Ig-ビオチンはFcγRを占有する内在性Igsを架橋し、かかる架橋は親和定数を多価に増強するのでそれらのFcγRへの内在性Igsの結合を増大させる結果になった。したがって、MAH-Ig-Biotinは、FcγRCを高い親和性でビオチンで標識している可能性がある。最初の抗体インキュベーションの後、SA-FFをシステムに加えたときに起こるはずの別の反応は、未結合のMAH-Ig-ビオチンも同時にSA-FFに結合して、FcγRに結合できる複合体を形成することである。したがって、FcγRCが磁気標識化される方法は複数存在するようだ。それらをまとめると(i)SA-FFがFcγRC上のビオチンに多価の相互作用を介して結合し、非常に強い結合を生じる、すなわち、親和性である、(ii)MAH-Ig-Biotinと複合化したSA-FFは、「空」のFcγRと強く相互作用するか、多価の付着の可能性のために、「充填」FcγRのIgを置換する、または(iii)、MAH-Ig-BiotinはFcγRを占めるIgに結合し、多価付着を介してIgを架橋し、細胞がSA-FFによって容易にラベルされるように十分な結合エネルギーを生成する。
【0083】
実施例2b
ビオチン化抗ヒトIgG(Fab')2断片を用いたアフェレシス製品/PBMCからの未接触CD3+T細胞の分離
ヤギ抗ヒトIgGのポリクローナルビオチン化(Fab')フラグメント(FαHIg)をRockland Immunochemicals(ポッツタウン、ペンシルバニア州)から購入し、異なる量のヒトIgGを抗体標識前に細胞に添加した以外は例2aに記載のものと同様の実験において使用した。抗ヒトIgGのビオチン化F(ab')フラグメント(FαHIg)の添加前にヒトIgGとプレインキュベーションしたPBMC-Igの効果を表1に表わす。B細胞の混入(この調製ではもともと15%)は、ヒトIgGの添加量の増加とともに著しく増加するが、これは標識抗体が添加されたヒトIgGによって中和されていることから予想されることである。一方、CD11b細胞(元々29.3%)は、著しく影響を受けていない。このことから、これらの実験では複雑な結合反応が起こっていることが示唆される。例えば、ヒトIgGが添加されていない場合、(Fab')はFcγRに結合したIgsに結合し、それらのIgsの架橋を引き起こし、FcγRとの相互作用を安定化させる可能性が最も高い。さらに、ヒトIgGが添加される量が増加するとき、第2の現象が起こっていると考えられる、すなわち、(Fab')はIgGに結合し、FcγRCと強く相互作用する複合体を形成し、したがって、それらはビオチン標識され、続いてSA-FFによって、またはIg-(Fab')-SA-FF複合体の一部として、SA-FFによって除去されていることになる。しかし、IgGの添加量が増加すると、(Fab')とB細胞表面のIgGとの相互作用が競合し、B細胞の枯渇に影響を与える。
【表1】
【0084】
ビオチン化抗CD19mAbを用いて上記とほぼ同様の実験を行ったところ、高純度のナイーブT細胞が得られた。この実験では、ヒトIgGによる前処理はほとんど影響を与えず、相互作用のメカニズムに関する我々の仮説が確認された。
【実施例3】
【0085】
ビオチン化抗ヒトCD32およびSA-FFを用いたアフェレシス製品からの未接触CD3T細胞の単離
FcγRは、上記実施例で示したようにFcγRCを除去するために用いることができるので、FcγRに対する抗体を用いて、抗体-エピトープ反応とクラスターFcを介したFcRC磁気標識の組み合わせにより、以下の方法でそのような細胞をすべて除去することが可能であると思われる。抗CD32抗体は、B細胞/単球/顆粒球/血小板などの白血球に広く発現しているが、T細胞には発現していないFcγRIIに結合する。本抗体は、抗体-エピトープ反応により、調製品中のB細胞を含む全てのFcγRIIを持つ細胞を標識するために使用できる。また、未結合のビオチン化抗CD32抗体とSA-FFとの間で結合が起こり、FF上のFcがクラスター化し、FcγRCにも強く結合する。この方法は、抗CD32抗体と、システムに導入された捕捉表面に結合した抗CD32抗体とで、FcRのすべてのガンマクラスを標識することを可能にするものである。適切な分離装置でインキュベートした後、ナイーブT細胞の高純度な懸濁液を得ることができる。この方法の有効性を実証するために、ヒトCD32に親和性のあるIgGクラスのビオチン化マウスmAbを使用した。2-10x10の濃度のPBMCを、IgGアイソタイプのビオチン化マウス抗ヒトCD32 mAbと室温で15分間インキュベートし、その後の反応に十分な未結合mAbを提供した。SA-FFを細胞混合物に添加し、さらに15分間インキュベートした。抗体-エピトープ反応またはSA-FF上のクラスター化FcによるFcRγCの効率的な標識が達成された。標識された細胞を分離した結果、陰性画分中の未接触あるいはナイーブCD3T細胞の純度は>92%であった。
【実施例4】
【0086】
アフェレシス製品もしくは、PBMCを2種類の抗体を用いたCD4またはCD8T細胞のネガティブセレクション
これまでの実施例に基づいて、ナイーブCD4またはCD8細胞の調製方法が考案され、ネガティブ選択されるT細胞タイプに応じて、CD4またはCD8のいずれかに指向するmAbを追加で1つ含むようにした。CD4ナイーブ細胞のネガティブセレクションを例にとって説明すると、2つのmAbがFFに固定化され、一方または両方がFcγR、すなわち正しいサブクラス/アイソタイプと反応することになる。したがって、もし実施例1が、FFに結合した抗ヒトIgGおよび抗CD8 mAbsの両方を有することによって修正されたなら、そのような結合体は、かなりのレベルの競合IgGがない場合、FcγRC、B細胞およびCD8細胞のすべてを消耗し、負の画分に未接触のCD4細胞が残されるはずである。ナイーブCD8細胞を得るために、固定化される2番目のmAbは、抗CD8ではなく抗CD4だろう。したがって、陰性画分にはCD8細胞が含まれることになる。
【0087】
別のアプローチにおいて、SA-FFのような共通の捕捉剤を使用する場合、2つのビオチン化mAbを使用して、上記と同じ結果を達成することができる。したがって、ナイーブCD4細胞の製造は、CD8細胞、B細胞およびFcRCを標識するために、ビオチン化抗CD8および抗B細胞特異的mAbとPBMCをインキュベートすることにより達成されるであろう。SA-FFを用いた磁気分離により、ネガティブに選択されたCD4細胞を得ることができる。ここで報告された純度から、CD4細胞の純度は90%台半ばから後半と予想される。このことは、抗CD19ビオチン、抗CD8ビオチンとSA-FFを併用して実験的に確認され、>92%の純度のCD4細胞が得られる。
【実施例5】
【0088】
1回の磁気分離で2種類のmAbを用いたCD4およびCD8細胞の回収
CD4とCD8細胞の定義された比率によって調製されたCAR Tコンストラクトの臨床的重要性に基づき、そのような分離を効率的に達成することが望ましいと思われる。ここで説明した手順を用いると、2つのmAb特異性のみを利用する以下のスキームが、そのタスクを遂行することができると合理的に期待されるだろう。このような分離を達成するための1つの戦略は、PBMC-IgからCD4細胞以外のすべてを枯渇させ、CD4細胞を陰性画分に残し、次に単純な抽出プロセスによって陽性選択画分からCD8細胞を回収することである。
【0089】
例えば、IgGを実質的に含まないPBMCを、B細胞に特異的なFcγR相互作用ビオチン化mAb、例えばアイソタイプIgGor,およびCD8細胞に特異的な非FcR結合抗体を持つIgGサブクラスのデスチオビオンチニル化mAbとインキュベートすることができる。したがって、すべてのFcγRを持つ細胞は抗B細胞mAbでビオチン標識され、CD8細胞はデスチオビオチン標識mAbで標識されるだろう。結合と分離の後、共通の捕捉剤、例えばSA-FFを加えると、CD8細胞とすべてのFcγRCは正に分離され、残りの負に選択されたナイーブCD4T細胞は容易に回収されるだろう。ビオチンおよびデスチオビオチンのSAとの結合定数の非常に大きな差に基づき(Hirsch JD,et al.Analytical Biochemistry、308:343-357,2022)、ビオチンとのインキュベーションによってSA-FFからCD8細胞を放出でき、SA結合部位からデスチオビオチンmAbを置換する。ビオチン置換によるデスチオビオチン解離手段に加えて、ビオチン-抗ビオチン反応を解離させる方法は当技術分野でよく知られる(Lund,G.and Wegmann,T.,米国特許第5,518,882号明細書;Brieden,J.and Dose,C.米国特許第20140113315A1)。したがって、上記のスキームにおいて、mAb標識されたCD4またはCD8細胞を回収する方法は、いくつかある。
【0090】
SA-FFまたは他の適切な解離性結合対からのCD8細胞の回収のために、磁気標識された細胞が山に蓄積しないような十分な面積および磁気勾配特性の収集表面上にそれらを広げることによって、磁気分離装置を採用することが有利であるだろう。それが達成された場合、特許公開WO2016/183032A1に開示された磁気分離システムを採用する場合のように、CD8細胞は、収集面上に磁気的に保持される間、穏やかに抽出され得る。あるいは、磁気的に捕捉された細胞は、ビオチン(SA-ビオチンシステムの場合)と共に懸濁され得、放出が起こるであろう。その後、混合物を再度分離し、CD8細胞を浮遊させたまま、容易に回収することができる。
【実施例6】
【0091】
2種類のmAbを用いた間接標識によるアフェレシス製品からの未分化B細胞の単離
これまでの実施例での結果をもとに、これらの方法を適応し、ナイーブB細胞の作製に成功した。この方法では、白血球に発現するFcγRが異なる結合親和性を持つことを利用する。例えば、単球、マクロファージ、DC、顆粒球は高親和性のFcγR(FcγRI)を発現し、B細胞やNK細胞は低親和性のFcγR(B細胞はFcγRIIB、NK細胞はFcγRIICとFcγRIIIA)を発現している。高親和性FcγRは価数の影響を受けないが、低親和性FcγRは多量体の抗体を好んで結合する。B細胞は低親和性のFcγR(FcγRIIB)を発現しているので、標識工程で使用するmAbの濃度を下げ、FF上のSAのコーティングを調整することにより、高親和性の反応のみを促進し、標的化に用いるmAb上のFc結合を介して反応混合物中の単球、顆粒球、DCなどの高親和性のFcγRを持つ細胞を優先的に標識することができるはずである。CD3細胞およびNK細胞も除去のために標的化する必要があるので、抗CD3および抗CD16を含むがこれに限定されない、この目的に適した2つのmAbsを採用することができる。PBMC-Igは、ビオチン化抗CD3(約0.15μg/mL)および抗CD16(約0.05μg/mL)と共に15~20分間インキュベートして適切な標識レベルを達成することが可能である。その後、すべての望ましくない細胞タイプは、一般的な捕捉磁気ナノ粒子または当技術分野でよく知られた他の適切な薬剤で除去することができる。これらの方法によって、高純度の未接触のB細胞の回収が達成される。
【実施例7】
【0092】
アフェレシス製品から未接触のNK細胞を分離すること、もしくは2種類の抗体を用いたPBMC
PBMCの5~10%はNK細胞であり、現在知られている最も効果的な抗がん剤の1つである革新的なCAR-T免疫療法の主要な構成要素となっている(Shimasaki N.,et al.Nature Reviews Drug Discovery, 2020,19:200-218)。癌抗原を用いた遺伝子工学のためのナイーブNK細胞の単離は、CAR-Tの重要な初期段階を構成する。実施例6に詳述した同じ概念に基づいて、標識反応中のmAb濃度およびFF粒子上のSA密度を制限することにより、競合するIgGの実質的非存在下で、単離された未接触のNK細胞が達成され得る。1つのアプローチでは、ビオチン化マウス抗ヒトB細胞抗体(抗CD19 mAbなど)とビオチン化マウス抗ヒトCD3抗体の組み合わせ、少なくとも1つの試薬がIgGアイソタイプのものが採用される。抗体は、合計で約0.2μg/mLの濃度(抗CD3mAbは0.15μg/mL、抗B(CD19)mAbは0.05μg/mL)で添加されることになる。これらの抗体制限条件下では、高親和性FcγRの結合のみが起こる。上記の濃度でmAbをインキュベートした後、SA-FFを添加し、実施例2に記載したように分離を行う。このようにmAb濃度を下げると、T細胞、B細胞、および高親和性FcγRCは磁気分離され、NK細胞は陰性画分に残される。
【実施例8】
【0093】
ネガティブセレクションによる未接触のCD34造血幹細胞の分離
現在広く用いられているプロトコルでは、CD34、抗CD34mAbsを用いたポジティブセレクションにより幹細胞が分離される。このような細胞を、移植や遺伝子工学的治療のために、手を加えていない、あるいはナイーブな細胞から処理できることが望ましいと思われる。現在行われている方法では、ネガティブセレクションは可能であるが、CD34の細胞以外を除去するために7~9個のmAbsが必要である。経済的な観点からは、これは実行可能なアプローチではない。一方、正常および白血病患者の胎児および成人骨髄に関する研究から、FcγRは非転移性前駆細胞CD34細胞では発現しないことが確認された(Olweus J.et al.CD64/Fc Gamma RI is a granulo-monocytic lineage marker on CD34 hematopoietic progenitor cells.Blood.85:2402-13,1995;Aoki Y.,et al.Identification of CD34 and CD34 leukemia-initiating cells in MLL-rearranged human acute lymphoblastic leukemia.Blood.125:967-80,2015).
【0094】
したがって、PBMC中のCD34ナイーブ細胞以外のすべての細胞を除去するためにmAbを適切に選択することから始めて、次の戦略を適用することができる。ビオチン化mAb(IgGアイソタイプの抗CD3)をPBMCと約20分間インキュベートし、それによってすべてのT細胞とFcγR発現細胞を標識することができる。非標識細胞のネガティブセレクションは、FFのような固体支持体上のSAで行うことができる。このような磁気分離の上澄みは、T細胞、B細胞、および他のFcγRC(血小板を含む)が溶液から磁気的に分離されるため、濃縮CD34細胞集団となるであろう。特定の実施形態では、PBMCのドナーは、造血幹細胞が骨髄から末梢血に移動するように誘導するためにG-CSFで処理される。
【0095】
この実施形態では、有核細胞の約98~99%が除去される必要があるので、システムに十分な量のビオチン化mAbを提供し、十分なインキュベーション時間によって、除去すべきすべての細胞を徹底的に標識することが重要だろう。細胞濃度が約1x10/mLの場合、高親和性mAbを細胞懸濁液1mL当たり2μgの濃度で約20分のインキュベーション時間で使用すれば十分であるはずである。この場合、約8万個のmAb/細胞が存在することになり、このような細胞の標識とその後の除去には十分すぎるほどである。
【0096】
このような大きな割合の細胞が除去されると、望ましいCD34細胞が巻き込まれる危険性がある。したがって、このタイプの分離は、総細胞濃度が約3x10総細胞/mL未満、場合によっては5x10総細胞と同様に低く行うことが望ましいと思われる。我々の経験では、1%のスクロースを添加すると、劇的に減少することがわかった。さらに、磁気分離を採用する場合、望ましくない細胞を広い面積で分離して除去し、巻き込みを最小限に抑えることが望ましいと思われる。それを達成するために、Libertiら、WO2016/183032A1によって開示されるような分離システムを使用することが望ましいだろう。そのシステムは、細胞が山積みに集められるのを最小限に抑えるだけでなく、そこに「メニスカス・スクラビング」と呼ばれるプロセス、つまり巻き込まれた細胞を除去するための穏やかな手段も提供しているのである。
【0097】
以上、本発明の好ましい実施形態の一部を説明し、具体的に例示したが、本発明がかかる実施形態に限定されることは意図していない。本明細書で引用したすべての特許、特許出願、および出版物は、すべての目的のために、参照によりその全体が明示的に組み込まれる。以下の特許請求の範囲に規定されるように、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、様々な変更がそれらになされ得る。
図1
図2
【国際調査報告】