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特表2023-528341低メチル化剤を含むがんを治療するための併用療法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-04
(54)【発明の名称】低メチル化剤を含むがんを治療するための併用療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/17 20060101AFI20230627BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230627BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230627BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230627BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230627BHJP
   A61K 31/706 20060101ALI20230627BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20230627BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20230627BHJP
   C07K 14/705 20060101ALN20230627BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20230627BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20230627BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20230627BHJP
【FI】
A61K38/17
A61P35/00 ZNA
A61P43/00 121
A61K45/00
A61P35/02
A61K31/706
A61K31/496
A61K45/06
C07K14/705
C07K19/00
C12N15/12
C12N15/62 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022572558
(86)(22)【出願日】2021-05-28
(85)【翻訳文提出日】2023-01-23
(86)【国際出願番号】 US2021034967
(87)【国際公開番号】W WO2021247430
(87)【国際公開日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】63/033,074
(32)【優先日】2020-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/106,285
(32)【優先日】2020-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/109,083
(32)【優先日】2020-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/114,959
(32)【優先日】2020-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/145,925
(32)【優先日】2021-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
(71)【出願人】
【識別番号】516237639
【氏名又は名称】エーエルエックス オンコロジー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ポンズ, ジャウメ
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ホン
(72)【発明者】
【氏名】ランドルフ, ソフィア
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA19
4C084AA23
4C084BA01
4C084BA41
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZC412
4C084ZC751
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA66
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC20
4C086ZC41
4C086ZC75
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA50
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
がん(例えば、骨髄異形成症候群などの血液癌)を治療する方法であって、SIRPα D1ドメイン変異体及びFcドメイン変異体を含むポリペプチド(例えば、融合ポリペプチド)を低メチル化剤(例えば、アザシチジン)と組み合わせて投与することを含む、方法が提供される。関連するキットも提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体のがんを治療する方法であって、前記個体に、有効量の(a)SIRPα D1ドメイン変異体とFcドメイン変異体とを含む融合ポリペプチド、及び(b)低メチル化剤を投与することを含み、
前記融合ポリペプチドの前記SIRPα D1ドメイン変異体のC末端は、前記Fcドメイン変異体のN末端に連結される、前記方法。
【請求項2】
個体のがんを治療する方法であって、前記個体に、有効量の(a)SIRPα D1ドメイン変異体とFcドメイン変異体とを含む融合ポリペプチド、(b)低メチル化剤、及び(c)Bcl-2阻害剤を投与することを含み、
前記融合ポリペプチドの前記SIRPα D1ドメイン変異体のC末端は、前記Fcドメイン変異体のN末端に連結される、前記方法。
【請求項3】
前記融合ポリペプチドの前記SIRPα D1ドメイン変異体が、配列番号81または配列番号85のアミノ酸配列を含み、
前記融合ポリペプチドの前記Fcドメイン変異体が、
(i)L234A、L235A、G237A、及びN297Aの変異を含むヒトIgG1 Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う);
(ii)A330S、P331S、及びN297Aの変異を含むヒトIgG2 Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う);
(iii)S228P、E233P、F234V、L235A、及びdelG236の変異を含むヒトIgG4 Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う);または
(iv)S228P、E233P、F234V、L235A、delG236、及びN297Aの変異を含むヒトIgG4 Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う)である、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記がんが、骨髄異形成症候群(MDS)である、請求項1または3に記載の方法。
【請求項5】
前記MDSが、高リスクMDSである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記個体が、MDSの前治療を受けたことがある、請求項1及び3~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記個体が、MDSの前治療を受けたことがない、請求項1及び3~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
治療が、導入期及び維持期を含み、前記導入期は、(a)SIRPα D1ドメイン変異体とFcドメイン変異体とを含む前記融合ポリペプチド、及び(b)前記低メチル化剤を投与することを含み、前記維持期は、SIRPα D1ドメイン変異体とFcドメイン変異体とを含む前記融合ポリペプチドを前記低メチル化剤なしで投与することを含む、請求項1及び3~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記がんが、急性骨髄性白血病(AML)である、請求項2または3に記載の方法。
【請求項10】
前記個体が、以下の特徴のうちの1つ以上を有する、請求項9に記載の方法:
(a)再発/難治性または新規診断AMLの細胞学的または組織学的確定診断;
(b)再発/難治性または前治療のない、集中導入療法に適していないと考えられるAML;
(c)HMA系レジメンによる前治療後の再発/難治性であるAML;
(d)前治療のないAMLであって、集中導入療法に適した候補とみなされないAML;ならびに
(e)適切な腎機能及び肝機能。
【請求項11】
前記低メチル化剤が、アザシチジン、デシタビン、5-フルオロ-2’-デオキシシチジン、ゼブラリン、CP-4200、RG108、ナナオマイシンA、グアデシタビン、RX-3117、EPI01、アントロキノノール、CC-486、またはASTX727である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記低メチル化剤が、アザシチジンである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記アザシチジンが、1回以上の28日サイクルで前記個体に投与され、前記アザシチジンは、各28日サイクルのうち7日間、毎日75mg/mの用量で前記個体に投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記アザシチジンが、1回以上の28日サイクルで投与され、前記アザシチジンは、各28日サイクルの間、毎日75mg/mの用量で5日間前記個体に投与され、アザシチジンの投与のない2日間が続き、次いで、更に2日間、75mg/mの用量で前記個体に投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記アザシチジンが、静脈内または皮下投与される、請求項12~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記Bcl-2阻害剤が、ベネトクラクス、ABT-737、ナビトクラックス、BCL201、またはAZD-0466である、請求項2~3及び9~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記Bcl-2阻害剤が、ベネトクラクスである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ベネトクラクスが、1日目に100mgの用量で、2日目に200mgの用量で、2日目を過ぎたら毎日400mgの用量で投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ベネトクラクスが、1日目に100mgの用量で、2日目に200mgの用量で、3日目に400mgの用量で、3日目を過ぎたら毎日600mgの用量で投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記ベネトクラクスが、経口投与される、請求項17~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記融合ポリペプチドが、最大約60mg/kgの用量で投与される、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記融合ポリペプチドが、約60mg/kgの用量で4週間に1回(q4w)投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
個体のがんを治療する方法であって、前記個体に、SIRPα D1ドメイン変異体及びFcドメイン変異体を含む、有効量の融合ポリペプチドを投与することを含み、前記SIRPα D1ドメイン変異体のC末端は、前記Fcドメイン変異体のN末端に連結され、
前記融合ポリペプチドは、最大約60mg/kgの用量で投与される、
前記方法。
【請求項24】
前記融合ポリペプチドが、約60mg/kgの用量で投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記融合ポリペプチドが、約60mg/kgの用量で4週間に1回(q4w)投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記融合ポリペプチドが、約45mg/kgの用量で投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記融合ポリペプチドが、約45mg/kgの用量で3週間に1回(q3w)投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記融合ポリペプチドの前記SIRPα D1ドメイン変異体が、配列番号81または配列番号85のアミノ酸配列を含み、
前記融合ポリペプチドの前記Fcドメイン変異体が、
(i)L234A、L235A、G237A、及びN297Aの変異を含むヒトIgG1 Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う);
(ii)A330S、P331S、及びN297Aの変異を含むヒトIgG2 Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う);
(iii)S228P、E233P、F234V、L235A、及びdelG236の変異を含むヒトIgG4 Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う);または
(iv)S228P、E233P、F234V、L235A、delG236、及びN297Aの変異を含むヒトIgG4 Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う)である、
請求項22~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記がんが、血液癌である、請求項22~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記がんが、固形腫瘍である、請求項22~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記SIRPα D1ドメイン変異体が、配列番号85のアミノ酸配列を含む、請求項1~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記SIRPα D1ドメイン変異体が、配列番号81のアミノ酸配列を含む、請求項1~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記Fcドメイン変異体が、L234A、L235A、G237A、及びN297Aの変異を含むヒトIgG1 Fc領域であり、番号付けは、KabatのEUインデックスに従うものである、請求項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記Fcドメイン変異体が、配列番号91のアミノ酸配列を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記融合ポリペプチドが、配列番号136のアミノ酸配列を含む、請求項1~31及び33~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記融合ポリペプチドが、配列番号135のアミノ酸配列を含む、請求項1~30及び32~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記融合ポリペプチドが、ホモ二量体を形成する、請求項1~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記融合ポリペプチドが、静脈内投与される、請求項1~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記個体が、ヒトである、請求項1~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
がんを治療するために、それを必要とする個体において、アザシチジンと組み合わせて使用するための、薬学的に許容される担体中の融合ポリペプチドを含むキットであって、
前記融合ポリペプチドは、SIRPα D1ドメイン変異体及びFcドメイン変異体を含み、前記SIRPα D1ドメイン変異体のC末端は、前記Fcドメイン変異体のN末端に融合され、
前記SIRPα D1ドメイン変異体は、配列番号81または配列番号85のアミノ酸配列を含み、
前記Fcドメイン変異体は、
(i)L234A、L235A、G237A、及びN297Aの変異を含むヒトIgG1 Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う);
(ii)A330S、P331S、及びN297Aの変異を含むヒトIgG2 Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う);
(iii)S228P、E233P、F234V、L235A、及びdelG236の変異を含むヒトIgG4 Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う);または
(iv)S228P、E233P、F234V、L235A、delG236、及びN297Aの変異を含むヒトIgG4 Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う)であり、
前記個体は、ヒトである、
前記キット。
【請求項41】
前記がんが、骨髄異形成症候群(MDS)である、請求項40に記載のキット。
【請求項42】
前記MDSが、高リスクMDSである、請求項41に記載のキット。
【請求項43】
がんを治療するために、それを必要とする個体において、アザシチジン及びベネトクラクスと組み合わせて使用するための、薬学的に許容される担体中の融合ポリペプチドを含むキットであって、
前記融合ポリペプチドは、SIRPα D1ドメイン変異体及びFcドメイン変異体を含み、前記SIRPα D1ドメイン変異体のC末端は、前記Fcドメイン変異体のN末端に融合され、
前記SIRPα D1ドメイン変異体は、配列番号81または配列番号85のアミノ酸配列を含み、
前記Fcドメイン変異体は、
(i)L234A、L235A、G237A、及びN297Aの変異を含むヒトIgG1 Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う);
(ii)A330S、P331S、及びN297Aの変異を含むヒトIgG2 Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う);
(iii)S228P、E233P、F234V、L235A、及びdelG236の変異を含むヒトIgG4 Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う);または
(iv)S228P、E233P、F234V、L235A、delG236、
及びN297Aの変異を含むヒトIgG4 Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う)であり、
前記個体は、ヒトである、
前記キット。
【請求項44】
前記がんが、急性骨髄性白血病(AML)である、請求項43に記載のキット。
【請求項45】
1回以上の28日サイクルで、アザシチジンをIV注入または皮下投与するための説明を更に含み、前記アザシチジンは、各28日サイクルのうち7日間、毎日75mg/mの用量で前記個体に投与される、請求項40~44のいずれか1項に記載のキット。
【請求項46】
1回以上の28日サイクルで、アザシチジンをIV注入または皮下投与するための説明を更に含み、前記アザシチジンは、各28日サイクルの間、毎日75mg/mの用量で5日間前記個体に投与され、アザシチジンの投与のない2日間が続き、次いで、更に2日間、75mg/mの用量で前記個体に投与される、請求項40~44のいずれか1項に記載のキット。
【請求項47】
ベネトクラクスを1日目に100mg、2日目に200mg、2日目を過ぎたら毎日400mgの用量で経口投与するための説明を更に含む、請求項43~46のいずれか1項に記載のキット。
【請求項48】
ベネトクラクスを1日目に100mg、2日目に200mg、3日目に400mg、3日目を過ぎたら毎日600mgの用量で経口投与するための説明を更に含む、請求項43~46のいずれか1項に記載のキット。
【請求項49】
前記SIRPα D1ドメイン変異体が、配列番号85のアミノ酸配列を含む、請求項40~48のいずれか1項に記載のキット。
【請求項50】
前記SIRPα D1ドメイン変異体が、配列番号81のアミノ酸配列を含む、請求項40~48のいずれか1項に記載のキット。
【請求項51】
前記Fcドメイン変異体が、L234A、L235A、G237A、及びN297Aの変異を含むヒトIgG1 Fc領域であり、番号付けは、KabatのEUインデックスに従うものである、請求項40~50のいずれか1項に記載のキット。
【請求項52】
前記Fcドメイン変異体が、配列番号91のアミノ酸配列を含む、請求項51に記載のキット。
【請求項53】
前記融合ポリペプチドが、配列番号136のアミノ酸配列を含む、請求項40~49及び51~52のいずれか1項に記載のキット。
【請求項54】
前記融合ポリペプチドが、配列番号135のアミノ酸配列を含む、請求項40~48及び50~52のいずれか1項に記載のキット。
【請求項55】
前記融合ポリペプチドが、ホモ二量体を形成する、請求項40~54のいずれか1項に記載のキット。
【請求項56】
前記融合ポリペプチドを最大60mg/kgの用量で前記個体に投与するための説明を更に含む、請求項40~55のいずれか1項に記載のキット。
【請求項57】
前記融合ポリペプチドを60mg/kgの用量で前記個体に4週間に1回(q4w)投与するための説明を更に含む、請求項40~56のいずれか1項に記載のキット。
【請求項58】
前記融合ポリペプチドをIV注入によって投与するための説明を更に含む、請求項40~57のいずれか1項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年6月1日に出願された米国仮出願第63/033,074号;2020年10月27日に出願された米国仮出願第63/106,285号;2020年11月3日に出願された米国仮出願第63/109,083号;2020年11月17日に出願された米国仮出願第63/114,959号;及び2021年2月4日に出願された米国仮出願第63/145,925号の優先権を主張するものであり、これらのそれぞれの内容は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
ASCIIテキストファイルでの配列表の提出
以下のASCIIテキストファイルでの提出内容は、その全体が参照により本明細書に援用される:コンピュータ可読形式(CRF)の配列表(ファイル名:757972001240SEQLIST.TXT、記録日:2021年5月28日、サイズ:297KB)。
【背景技術】
【0003】
本発明は、がんを治療する方法に関する方法であって、それを必要とする個体に、CD47(例えば、hCD47)とSIRPα(例えば、hSIRPα)との間の相互作用を阻害する剤を、低メチル化剤(例えば、アザシチジン)と組み合わせて投与することを含む、方法に関する。
【0004】
利用可能な治療法で治療した場合であっても、予後が不良ながんが多くある。例えば、米国には、骨髄異形成症候群(MDS)と診断された人がおよそ70,000名いる。MDSの患者は、予想される転機の幅が広く、改訂国際予後スコアリングシステム(Revised International Prognostic Scoring System)、すなわち、IPSS-Rのリスク分類から予測することができる。IPSS-Rが非常に低い患者では全生存期間の中央値が8.8年であるが、IPSS-Rが非常に高い患者では全生存期間の中央値が10ヶ月未満である。高リスクMDSの患者(IPSS-Rが中間、高い及び非常に高い)に対する標準治療には、幹細胞移植(SCT)、高強度及び低強度の化学療法レジメン、ならびに低メチル化剤(またはHMA)が含まれる。治癒の可能性のある治療法は、SCTのみであるが、この処置は、特に高齢患者にとっては負担が大きく、全MDS患者の200日時点の非再発死亡率はおよそ40%である。
【0005】
患者の75%近くが70歳以上で診断を受けていることから、治療選択肢を考慮する際には、予後における患者の年齢と、治療に関連して生じ得る生活の質への影響とのバランスが重要である。年齢を問わず、MDS患者の治療目標は、生存率の向上、症状の緩和及び生活の質のバランスである。骨髄異形成症候群(MDS)患者(高リスクMDS患者を含む)に対して、更なる治療選択肢を提供し、転帰を改善するための新しい治療法が当該技術分野において必要とされている。
【0006】
腫瘍細胞は、骨髄コンパートメントを操作して、抗腫瘍宿主免疫応答を回避し得る(Gabrilovich et al.,Nat Rev Immunol(2012)12(4):253-68)。例えば、正常細胞の表面上に発現されるCD47は、マクロファージ上のSIRPαに結合し、「don’t eat me(私を食べないで)」というシグナルをもたらすが、腫瘍細胞もまたCD47を過剰発現して、免疫を監視するマクロファージ成分を回避することがわかっている(Oldenborg,ISRN Hematol(2013)614619)。
【0007】
マクロファージによるがん細胞の破壊は、「don’t eat me」シグナル(例えば、CD47-SIRPα)の破壊と「eat me(私を食べて)」シグナルの活性化を同時に行うことによって最適化される。腫瘍細胞に対して最大限の食作用を誘発するには、どちらの要素も単独では十分でない。上記のように、CD47は、マクロファージ上のSIRPαとの相互作用を通じて、基本的な「don’t eat me」シグナルをもたらす。食作用を促進する「eat me」シグナルは、マクロファージの活性化Fcガンマ受容体に結合することによって、同じマクロファージに与えることができる。例えば、食作用を促進する「eat me」シグナルは、抗腫瘍抗体のFcドメインがマクロファージ上のFc受容体に結合することによって生じ得る。食作用促進性シグナル伝達は、腫瘍細胞の表面上のカルレティキュリンタンパク質がマクロファージ上のLRP受容体に結合することなどの他の刺激因子によっても生じ得る。
【0008】
骨髄異形成症候群(MDS)及び急性骨髄性白血病(AML)において、異形成細胞におけるCD47の過剰発現及び異常発現が報告されており、生存率との逆相関が示唆されている(Majeti et al.2009;Jiang et al.2013;Galli et al.2015)。
【0009】
本明細書において引用される全ての参考文献は、特許出願、特許公報、及びUniProtKB/Swiss-Protアクセッション番号を含め、それぞれの個々の参考文献が参照により援用されることが具体的かつ個別に示される場合と同様に、その全体が参照により本明細書に援用される。
【発明の概要】
【0010】
いくつかの実施形態において、個体のがん(例えば、骨髄異形成症候群(MDS)または急性骨髄性白血病(AML))を治療する方法であって、個体に、有効量の(a)SIRPα D1ドメイン変異体とFcドメイン変異体とを含む融合ポリペプチド、及び(b)低メチル化剤を投与することを含み、ここで、融合ポリペプチドのSIRPα D1ドメイン変異体のC末端は、Fcドメイン変異体のN末端に連結される、方法が提供される。いくつかの実施形態において、個体のがん(例えば、AML)を治療する方法であって、個体に、有効量の(a)SIRPα D1ドメイン変異体とFcドメイン変異体とを含む融合ポリペプチド、及び(b)低メチル化剤を投与することを含み、ここで、融合ポリペプチドのSIRPα D1ドメイン変異体のC末端は、Fcドメイン変異体のN末端に連結される、方法が提供される。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドのSIRPα D1ドメイン変異体は、配列番号81または配列番号85のアミノ酸配列を含み、融合ポリペプチドのFcドメイン変異体は、(i)L234A、L235A、G237A、及びN297Aの変異を含むヒトIgG1 Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う);(ii)A330S、P331S、及びN297Aの変異を含むヒトIgG2 Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う);(iii)S228P、E233P、F234V、L235A、及びdelG236の変異を含むヒトIgG4 Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う);または(iv)S228P、E233P、F234V、L235A、delG236、及びN297Aの変異を含むヒトIgG4 Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う)である。いくつかの実施形態において、がんは、骨髄異形成症候群(MDS)である。いくつかの実施形態において、MDSは、高リスクMDSである。いくつかの実施形態において、個体は、MDSの前治療を受けたことがある。いくつかの実施形態において、個体は、MDSの前治療を受けたことがない。いくつかの実施形態において、MDSの治療は、導入期及び維持期を含み、導入期は、(a)SIRPα D1ドメイン変異体とFcドメイン変異体とを含む融合ポリペプチド、及び(b)低メチル化剤を投与することを含み、維持期は、SIRPα D1ドメイン変異体とFcドメイン変異体とを含む融合ポリペプチドを低メチル化剤なしで投与することを含む。いくつかの実施形態において、がんは、急性骨髄性白血病(AML)である。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、最大約60mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、約60mg/kgの用量で4週間に1回(q4w)投与される。いくつかの実施形態において、がんは、急性骨髄性白血病(AML)である。いくつかの実施形態において、個体は、WHO2016分類による再発/難治性または新規診断AMLの細胞学的(subcytologically)または組織学的確定診断を有する。いくつかの実施形態において、個体は、集中導入療法に適していないと考えられる患者の再発/難治性または前治療のないAMLを有する。いくつかの実施形態において、個体は、HMA系レジメンによる前治療後の再発/難治性であるAMLを有する。いくつかの実施形態において、個体は、前治療のないAMLを有し、集中導入療法に適した候補とみなされない。いくつかの実施形態において、個体は、適切な腎機能及び肝機能を有する。いくつかの実施形態において、個体は、18歳以上である。いくつかの実施形態において、個体は、適切なパフォーマンスステータスを有する。いくつかの実施形態において、個体は、以前に同種造血幹細胞移植(HSCT)を受けていない。いくつかの実施形態において、個体は、HCST後少なくとも3ヶ月であり、制御されていない移植片対宿主病(GVHD)がない。いくつかの実施形態において、個体は、以前に同種HSCTを受けていない。いくつかの実施形態において、個体は、全米総合がん情報ネットワーク(NCCN)のAMLガイドライン2019年第3版によるt(8;21)、inv(16)、またはt(16;16)などの良好なリスク細胞遺伝学的所見のある新規診断AMLを有していない。いくつかの実施形態において、個体は、急性前骨髄球性白血病(APL)を有していない。いくつかの実施形態において、個体は、いかなる抗CD47または抗SIRPα(シグナル調節タンパク質アルファ)剤による前治療を受けていない。いくつかの実施形態において、個体は、B型及びC型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、後天性免疫不全症候群(AIDS)関連疾病、またはsars-cov-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)を含む既知の活性ウイルス感染を有していない。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、最大約60mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、約60mg/kgの用量で4週間に1回(q4w)投与される。
【0011】
いくつかの実施形態において、低メチル化剤は、アザシチジン、デシタビン、5-フルオロ-2’-デオキシシチジン、ゼブラリン、CP-4200、RG108、ナナオマイシンA、グアデシタビン、RX-3117、EPI01、アントロキノノール、CC-486、またはASTX727である。いくつかの実施形態において、低メチル化剤は、アザシチジンである。いくつかの実施形態において、アザシチジンは、1回以上の28日サイクルで個体に投与され、アザシチジンは、各28日サイクルのうち7日間、毎日75mg/mの用量で個体に投与される。いくつかの実施形態において、アザシチジンは、1回以上の28日サイクルで投与され、アザシチジンは、各28日サイクルの間、毎日75mg/mの用量で5日間個体に投与され、アザシチジンの投与のない2日間が続き、次いで、更に2日間、75mg/mの用量で個体に投与される。いくつかの実施形態において、アザシチジンは、静脈内または皮下投与される。
【0012】
いくつかの実施形態において、Bcl-2阻害剤は、ベネトクラクス、ABT-737、ナビトクラックス、BCL201、またはAZD-0466である。いくつかの実施形態において、Bcl-2阻害剤は、ベネトクラクスである。いくつかの実施形態において、ベネトクラクスは、1日目に100mgの用量で、2日目に200mgの用量で、2日目を過ぎたら毎日400mgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、ベネトクラクスは、1日目に100mgの用量で、2日目に200mgの用量で、3日目に400mgの用量で、3日目を過ぎたら毎日600mgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、ベネトクラクスは、経口投与される。
【0013】
いくつかの実施形態において、個体のがんを治療する方法であって、個体に、SIRPα D1ドメイン変異体及びFcドメイン変異体を含む、有効量の融合ポリペプチドを投与することを含み、ここで、SIRPα D1ドメイン変異体のC末端は、Fcドメイン変異体のN末端に連結され、融合ポリペプチドは、最大約60mg/kgの用量で投与される、方法が提供される。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、約60mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、約60mg/kgの用量で4週間に1回(q4w)投与される。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、約45mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、約45mg/kgの用量で3週間に1回(q3w)投与される。いくつかの実施形態において、がんは、血液癌である。いくつかの実施形態において、がんは、固形腫瘍である。
【0014】
いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドのSIRPα D1ドメイン変異体は、配列番号81または配列番号85のアミノ酸配列を含み、融合ポリペプチドのFcドメイン変異体は、(i)L234A、L235A、G237A、及びN297Aの変異を含むヒトIgG1 Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う);(ii)A330S、P331S、及びN297Aの変異を含むヒトIgG2 Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う);(iii)S228P、E233P、F234V、L235A、及びdelG236の変異を含むヒトIgG4 Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う);または(iv)S228P、E233P、F234V、L235A、delG236、及びN297Aの変異を含むヒトIgG4 Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う)である。
【0015】
本明細書で提供される方法のいずれかのいくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体は、配列番号85のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメインバリアントは、配列番号81のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、Fcドメイン変異体は、L234A、L235A、G237A、及びN297Aの変異を含むヒトIgG1 Fc領域であり、ここで、番号付けは、KabatのEUインデックスに従うものである。いくつかの実施形態において、Fcドメイン変異体は、配列番号91のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、配列番号136のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、配列番号135のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、ホモ二量体を形成する。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、静脈内投与される。いくつかの実施形態において、個体は、ヒトである。
【0016】
いくつかの実施形態において、がんを治療するために、それを必要とする個体において、アザシチジンと組み合わせて使用するための、薬学的に許容される担体中の融合ポリペプチドを含むキットであって、ここで、融合ポリペプチドは、SIRPα D1ドメイン変異体及びFcドメイン変異体を含み、SIRPα D1ドメイン変異体のC末端は、Fcドメイン変異体のN末端に融合され、SIRPα D1ドメイン変異体は、配列番号81または配列番号85のアミノ酸配列を含み、Fcドメイン変異体は、(i)L234A、L235A、G237A、及びN297Aの変異を含むヒトIgG1 Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う);(ii)A330S、P331S、及びN297Aの変異を含むヒトIgG2Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う);(iii)S228P、E233P、F234V、L235A、及びdelG236の変異を含むヒトIgG4Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う);または(iv)S228P、E233P、F234V、L235A、delG236、及びN297Aの変異を含むヒトIgG4Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う)であり、個体は、ヒトである、キットが提供される。いくつかの実施形態において、がんは、骨髄異形成症候群(MDS)または急性骨髄性白血病(AML)である。いくつかの実施形態において、がんは、MDSである。いくつかの実施形態において、MDSは、高リスクMDSである。
【0017】
いくつかの実施形態において、がんを治療するために、それを必要とする個体において、アザシチジン及びベネトクラクスと組み合わせて使用するための、薬学的に許容される担体中の融合ポリペプチドを含むキットであって、ここで、融合ポリペプチドは、SIRPα D1ドメイン変異体及びFcドメイン変異体を含み、SIRPα D1ドメイン変異体のC末端は、Fcドメイン変異体のN末端に融合され、SIRPα D1ドメイン変異体は、配列番号81または配列番号85のアミノ酸配列を含み、Fcドメイン変異体は、(i)L234A、L235A、G237A、及びN297Aの変異を含むヒトIgG1 Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う);(ii)A330S、P331S、及びN297Aの変異を含むヒトIgG2Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う);(iii)S228P、E233P、F234V、L235A、及びdelG236の変異を含むヒトIgG4Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う);または(iv)S228P、E233P、F234V、L235A、delG236、及びN297Aの変異を含むヒトIgG4Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う)であり、個体は、ヒトである、キットが提供される。いくつかの実施形態において、がんは、AMLである。
【0018】
いくつかの実施形態において、キットは、1回以上の28日サイクルで、アザシチジンをIV注入または皮下投与するための説明を更に含み、アザシチジンは、各28日サイクルのうち7日間、毎日75mg/mの用量で個体に投与される。いくつかの実施形態において、キットは、1回以上の28日サイクルで、アザシチジンをIV注入または皮下投与するための説明を更に含み、アザシチジンは、各28日サイクルの間、毎日75mg/mの用量で5日間個体に投与され、アザシチジンの投与のない2日間が続き、次いで、更に2日間、75mg/mの用量で個体に投与される。
【0019】
いくつかの実施形態において、キットは、ベネトクラクスを1日目に100mg、2日目に200mg、2日目を過ぎたら毎日400mgの用量で経口投与するための説明を更に含む。いくつかの実施形態において、キットは、ベネトクラクスを1日目に100mg、2日目に200mg、3日目に400mg、3日目を過ぎたら毎日600mgの用量で経口投与するための説明を更に含む。
【0020】
キットのいくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体は、配列番号85のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体は、配列番号81のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、Fcドメイン変異体は、L234A、L235A、G237A、及びN297Aの変異を含むヒトIgG1 Fc領域であり、ここで、番号付けは、KabatのEUインデックスに従うものである。いくつかの実施形態において、Fcドメイン変異体は、配列番号91のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、配列番号136のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、配列番号135のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、融合ポリペプチドはホモ二量体を形成する。いくつかの実施形態において、キットは、融合ポリペプチドを最大60mg/kgの用量で個体に投与するための説明を更に含む。いくつかの実施形態において、キットは、融合ポリペプチドを60mg/kgの用量で個体に4週間に1回(q4w)投与するための説明を更に含む。いくつかの実施形態において、キットは、融合ポリペプチドをIV注入によって投与するための説明を更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A】マクロファージによるヒトHL60細胞の食作用に対する薬物A、アザシチジン、及び薬物A+アザシチジンの効果を評価するために実施した実験の結果を示す。
図1B】マクロファージによるヒトOCI-AML3細胞の食作用に対する薬物A、アザシチジン、及び薬物A+アザシチジンの効果を評価するために実施した実験の結果を示す。
図2】ヒト末梢血単核細胞(PBMC)培養物におけるCD11c樹状細胞の生存率に対する薬物A、アザシチジン、及び薬物A+アザシチジンの効果を評価するために実施した実験の結果を示す。
図3A】HL60、OCI-AML3、及びMV4-11のヒト急性骨髄性白血病細胞株の表面上におけるカルレティキュリンの発現に対するアザシチジンの影響を評価するために実施したin vitro実験の結果を示す。
図3B】MV4-11ヒト急性骨髄性白血病細胞株及び2名のヒトドナーに由来する初代AML芽球の表面上におけるカルレティキュリンの発現に対するアザシチジンまたはベネトクラクスの影響を評価するために実施したin vitro実験の結果を示す。
図3C】MV4-11ヒト急性骨髄性白血病細胞株及び2名のヒトドナーに由来する初代AML芽球の表面上におけるCD47の発現に対するアザシチジンまたはベネトクラクスの影響を評価するために実施したin vitro実験の結果を示す。
図4A】HL60腫瘍異種移植片を担持するマウスにおける腫瘍成長に対する薬物A、アザシチジン、及び薬物A+アザシチジンの効果を評価するために実施した実験の結果を示す。
図4B】OCI-AML3腫瘍異種移植片を担持するマウスにおける腫瘍成長に対する薬物A、アザシチジン、及び薬物A+アザシチジンの効果を評価するために実施した実験の結果を示す。
図4C】MV4-11腫瘍異種移植片を担持するマウスにおける腫瘍成長に対する薬物A、アザシチジン、及び薬物A+アザシチジンの効果を評価するために実施した実験の結果を示す。
図4D】各治療群のMV4-11異種移植マウスのうち、腫瘍退縮を示した数を示す。
図5A】HL60-LUC2を7.5E6細胞/マウスの濃度で尾静脈注射介して移植したマウスにおける腫瘍成長に対する薬物A、アザシチジン、及び薬物A+アザシチジンの効果を評価するために実施した実験の結果を示す。
図5B】接種後3、8、11、14、18、及び22日目に撮像したマウスにおける総発光強度(発光量)対時間(すなわち、腫瘍サイズ対時間)に関するデータを示す。治療は、IV接種後4日目に開始した。
図5C】HL60-LUC2を移植したマウスにおける腫瘍成長に対する147日目の試験終了までの薬物A、アザシチジン、または薬物A+アザシチジンの効果を評価するために実施した実験の結果を示す。
図5D】14用量の薬物A+アザシチジン(例えば、導入療法)を既に受けたHL60-LUC2を移植したマウスにおける腫瘍成長に対する薬物A単剤療法(例えば、維持療法)の効果を評価するために実施した実験の結果を示す。
図6A】HL60-LUC2を10×10細胞/マウスの濃度で尾静脈注射を介して移植したマウスにおける腫瘍成長に対する薬物A、アザシチジン、ベネトクラクス、アザシチジン+ベネトクラクス、または薬物A+アザシチジン+ベネトクラクスの効果を評価するために実施した実験の結果を示す。
図6B】PBS(対照)、アザシチジン、ベネトクラクス、薬物A、アザシチジン+ベネトクラクス、またはアザシチジン+ベネトクラクス+薬物Aによる治療を受けた異種移植ヒトHL-60LUC2腫瘍を担持するマウスの生存率(日数)を示す。
図7A】ヒト単球由来マクロファージによるAML細胞の食作用に対する薬物A、アザシチジン、及び薬物A+アザシチジンの効果を評価するために実施した実験の結果を示す。
図7B】ヒト単球由来マクロファージによるAML細胞の食作用に対する薬物A、ベネトクラクス、及び薬物A+ベネトクラクスの効果を評価するために実施した実験の結果を示す。
図8】80日の評価期間において、HL60-LUC2を移植したマウスにおける腫瘍成長に対する薬物A、ベネトクラクス、または薬物A+ベネトクラクスの効果を評価するために実施した実験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の説明は、例示的な方法、パラメーターなどについて記載する。しかしながら、そのような説明は、本開示の範囲を制限することを意図するものではなく、むしろ、例示的な実施形態の説明として提供されることを認識されたい。
【0023】
定義
「約」または「およそ」という用語は、当業者によって決定されるような特定の値についての許容可能な誤差範囲内であることを意味し、値を測定するまたは決定する方法、すなわち、測定システムの限界に部分的に依存する。例えば、「約」は、当該技術分野における慣例に従って、1以内または1より大きい標準偏差を意味することができる。あるいは、「約」は、所与の値の最大20%、最大10%、最大5%、または最大1%の範囲を意味し得る。あるいは、特に生物学的システムまたはプロセスに関して、この用語は、値の10倍以内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内を意味し得る。別段に記載されない限り、本出願及び特許請求の範囲に特定の値が記載される場合、「約」という用語は、特定の値について許容可能な誤差範囲内にあることを意味するとみなされる。
【0024】
本明細書に使用される用語は、特定の事例を説明することのみを目的にしており、限定することを意図するものではない。本明細書で使用される場合、単数形の「a」、「an」及び「the」は、文脈により別途明示される場合を除き、複数形も含むことが意図される。更に、「含む(including)」、「含む(includes)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「含む(with)」という用語またはそれらの変形が詳細な説明または特許請求の範囲のいずれかで使用される限りにおいて、かかる用語は、「含む(comprising)」と同様に包括的であることが意図される。
【0025】
本明細書で使用される場合、「治療」、「治療すること」などの用語は、ある作用を得る目的で、剤を投与すること、または手順を実施することを指す。いくつかの実施形態において、作用は、疾患またはその症状を完全にまたは部分的に防ぐという点で予防的である。いくつかの実施形態において、作用は、疾患または疾患の症状の部分的または完全な治癒をもたらすという点で治療的である。
【0026】
本明細書で使用される場合、「リンカー」という用語は、2つの要素、例えば、タンパク質ドメインの間の連結を指す。いくつかの実施形態において、リンカーは、共有結合またはスペーサーであり得る。「スペーサー」という用語は、2つのポリペプチドまたはポリペプチドドメインの間にスペースまたは柔軟性(またはスペースと柔軟性の両方)を与えるために、2つのポリペプチドまたはポリペプチドドメインの間に存在する部分(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)ポリマー)またはアミノ酸配列(例えば、1~200個のアミノ酸配列)を指す。いくつかの実施形態において、アミノ酸スペーサーは、ポリペプチドの一次配列の一部である(例えば、ポリペプチド主鎖を介して間隔をあけたポリペプチドまたはポリペプチドドメインに接続されている)。
【0027】
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、本明細書に記載されるポリペプチド、例えば、SIRPα D1ドメインまたはその変異体を有するポリペプチド、またはポリペプチドを含有する医薬組成物の量であって、がん、例えば、固形腫瘍または血液がんなどの疾患を有する患者を治療する際に、所望の治療効果を達成するのに十分かつ有効である量を指す。いくつかの実施形態において、ポリペプチドの有効量は、有害な副作用を回避するものである。
【0028】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」という用語は、有効成分及び賦形剤または希釈剤(または賦形剤と希釈剤の両方)を含み、有効成分を好適な投与方法によって投与することを可能にする、医療または医薬製剤を指す。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される医薬組成物は、ポリペプチドに適合する薬学的に許容される構成成分を含む。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、経口投与用の錠剤またはカプセル剤の形態、あるいは、例えば、注射による静脈内または皮下投与用の水性形態である。
【0029】
本明細書で使用される場合、「対象」、「個体」、及び「患者」という用語は、脊椎動物、例えば、哺乳動物を指すために区別なく使用される。哺乳動物には、ネズミ、サル、ヒト、家畜、競技用動物及び愛玩動物が含まれるが、これらに限定されない。in vivoで得られるまたはin vitroで培養された生物学的実体の組織、細胞、それらの子孫も包含される。いずれの用語も医療専門家の監督を伴うものではない。
【0030】
本明細書で使用される場合、「親和性」または「結合親和性」という用語は、2つの分子間の結合相互作用の強さを指す。一般に、結合親和性は、分子とその結合パートナー、例えば、SIRPα D1ドメイン変異体とCD47との間の非共有結合性相互作用の合計の強さを指す。別段に指示されない限り、結合親和性は、結合ペアのメンバー間の1:1の相互作用を反映する、固有の結合親和性を指す。2分子間の結合親和性は、一般に、解離定数(KD)または会合定数(KA)によって記述される。互いに低い結合親和性を有する2つの分子は、一般にゆっくりと結合し、容易に解離する傾向があり、大きなKDを示す。互いに高い結合親和性を有する2つの分子は、一般に容易に結合し、結合を長く維持する傾向があり、小さなKDを示す。いくつかの実施形態において、2つの相互作用分子のKDは、既知の方法及び技術、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)を使用して決定される。KDは、koff/konの比として算出することができる。
【0031】
本明細書で使用される場合、「~未満のK」という用語は、列挙されるKD値に対して、数値的に小さいK値及び結合親和性の増加を指す。本明細書で使用される場合、「~より大きいKD」という用語は、列挙されるKD値に対して、数値的に大きいKD値及び結合親和性の減少を指す。
【0032】
本明細書で使用される場合、「~と併せて」とは、1つの治療法に加えた別の治療法の施行を指す。したがって、「~と併せて」とは、個体への1つの治療法の施行前、施行中、または施行後の別の治療法の施行を指す。
【0033】
概説
個体(例えば、ヒト個体)のがん(例えば、骨髄異形成症候群(「MDS」)などの骨髄癌を治療する方法であって、個体に、有効量の(a)CD47(例えば、hCD47)とSIRPα(例えば、hSIRPα)との間の相互作用を遮断する剤、及び(b)低メチル化剤を投与することを含む、方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、急性骨髄性白血病(「AML」)を治療する方法が提供される。
【0034】
いくつかの実施形態において、CD47(例えば、hCD47)とSIRPα(例えば、hSIRPα)との間の相互作用を遮断する剤は、CD47-SIRPa経路の低分子阻害剤(例えば、RRX-001など)である。例えば、Miller et al.(2019)“Quantitative high-throughput screening assays for the discovery and development of SIRPα-CD47 interaction inhibitors.” PLoS ONE 14(7):e0218897及びSasikumar et al.ACR-NCI-EORTC International Conference:Molecular Targets and Cancer Therapeutics;October 26-30,2017;Philadelphia,PA;Abstract B007を参照されたい。
【0035】
いくつかの実施形態において、CD47(例えば、hCD47)とSIRPα(例えば、hSIRPα)との間の相互作用を遮断する剤は、CD47(例えば、hCD47)に結合する。いくつかの実施形態において、この剤は、約10nMまたはそれより優れたK(少なくとも約9nM、8nM、7nM、6nM、5nM、3nM、2nM、1nM、750pM、500pM、250pM、200pM、100pM、50pM、25pM、20pM 10pMまたは10pM未満などのいずれか1つ)でCD47(例えば、hCD47)に結合する。いくつかの実施形態において、CD47(例えば、hCD47)に結合する剤は、ヒト対象において、少なくとも約50%のCD47受容体占有率(例えば、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、または約100%のいずれか1つ)を呈する。いくつかの実施形態において、CD47(例えば、hCD47)に結合する剤は、約80ng/ml以下、例えば、約75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、または5ng/mlのいずれか1つのEC50を有する。いくつかの実施形態において、CD47(例えば、hCD47)に結合する剤は、抗CD47抗体(例えば、治療用抗CD47抗体)またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態において、抗原結合断片は、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、Fv、scFv、ワンアーム抗体、またはダイアボディである。いくつかの実施形態において、抗CD47抗体は、単一特異性抗体である。いくつかの実施形態において、抗CD47抗体は、多重特異性(例えば、二重特異性)抗体である。いくつかの実施形態において、「抗CD47抗体」という用語は、限定するものではないが、トリオマブ、DART(すなわち、二重親和性再標的化抗体)、TandAb(すなわち、タンデムダイアボディ)、タンデムscFv、CrossMab、DNL(すなわち、ドック・アンド・ロック(抗体)、DVD-Ig(すなわち、二重可変ドメイン免疫グロブリン)、4価の二重特異性IgG、ナノボディ、二重標的化ドメイン、及びART-Ig(すなわち、非対称型工学技術免疫グロブリン)を含む、抗体ベースのコンストラクト(多重特異性コンストラクトなど)を包含する。例示的な抗体コンストラクト(単一特異性と多重特異性の両方)に関する追加の詳細は、Husain et al.(2018)Biodrugs 32(5):441-464及びSpiess et al.(2015)Molecular Immunology 67(2):95-106に提供されている。いくつかの実施形態において、抗CD47抗体は、Hu5F9-G4、B6H12.2、BRIC126、CC-90002、SRF231、またはIBI188(Innovent Biologics)である(これらの抗CD47抗体の更なる情報については、例えば、Zhao et al.(2011),PNAS USA 108:18342-18347;Chao et al.(2010)Cell 142:699-713,Kim et al.(2012)Leukemia 26:2538-2545;Chao et al.(2011)Blood 118:4890-4891;Goto et al.(2014)Eur J.Cancer 50:1836-1846;及びEdris et al.(2012)PNAS USA 109:6656-61を参照されたい)。
【0036】
いくつかの実施形態において、CD47(例えば、hCD47)とSIRPα(例えば、hSIRPα)との間の相互作用を遮断する剤は、SIRPα(例えば、hSIRPα)に結合する。いくつかの実施形態において、この剤は、約10nMまたはそれより優れたK(少なくとも約9nM、8nM、7nM、6nM、5nM、3nM、2nM、1nM、750pM、500pM、250pM、200pM、100pM、50pM、25pM、20pM 10pMまたは10pM未満などのいずれか1つ)でSIRPα(例えば、hSIRPα)に結合する。いくつかの実施形態において、SIRPα(例えば、hSIRPα)に結合する剤は、ヒト対象において、少なくとも約50%のSIRPα受容体占有率(例えば、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、または約100%のいずれか1つ)を呈する。いくつかの実施形態において、SIRPα(例えば、hSIRPα)に結合する剤は、約80ng/ml以下、例えば、約75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、または5ng/mlのいずれか1つのEC50を有する。いくつかの実施形態において、SIRPα(例えば、hSIRPα)に結合する剤は、抗SIRPα抗体(例えば、治療用抗SIRPα抗体)またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態において、抗原結合断片は、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、Fv、scFv、ワンアーム抗体、またはダイアボディである。いくつかの実施形態において、抗SIRPα抗体は、単一特異性抗体または単一特異性抗体コンストラクト(上記のものを含むが、これらに限定されない)である。いくつかの実施形態において、抗SIRPα抗体は、多重特異性(例えば、二重特異性)抗体または多重特異性抗体コンストラクト(上記のものを含むが、これらに限定されない)である。いくつかの実施形態において、抗SIRPα抗体は、KWAR23、SE12C3、040、またはMY-1である(これらの抗SIRPα抗体の更なる情報については、例えば、Ring et al.(2017)PNAS USA 114(49):E10578-E10585);Murata et al.(2018)Cancer Sci 109(5):1300-1308;及びYanigata et al.(2017)JCI Insight 2:e89140を参照されたい)。いくつかの実施形態において、抗SIRPα抗体は、WO2018/057669;US-2018-0105600-A1;US20180312587;WO2018107058;WO2019023347;US20180037652;WO2018210795;WO2017178653;WO2018149938;WO2017068164;及びWO2016063233に記載されている抗体であり、これらの内容は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0037】
いくつかの実施形態において、CD47(例えば、hCD47)とSIRPα(例えば、hSIRPα)との間の相互作用を遮断する剤は、抗SIRPβ抗体もしくは抗SIRPγ抗体(例えば、SIRPαに結合することが可能な抗SIRPβ抗体または抗SIRPγ抗体)、またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態において、この剤は、SIRPα、SIRPβ、及びSIRPγのうちの2つ以上に結合することが可能な抗体(またはその抗原結合断片)である。いくつかの実施形態において、そのような抗体は、約10nMまたはそれより優れたK(少なくとも約9nM、8nM、7nM、6nM、5nM、3nM、2nM、1nM、750pM、500pM、250pM、200pM、100pM、50pM、25pM、20pM 10pMまたは10pM未満などのいずれか1つ)でSIRPα(例えば、hSIRPα)に結合する。いくつかの実施形態において、この抗体は、ヒト対象において、少なくとも約50%のSIRPα受容体占有率(例えば、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、または約100%のいずれか1つ)を呈する。いくつかの実施形態において、抗体は、約80ng/ml以下、例えば、約75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、または5ng/mlのいずれか1つのEC50を有する。いくつかの実施形態において、抗原結合断片は、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、Fv、scFv、ワンアーム抗体、またはダイアボディである。いくつかの実施形態において、抗体は、単一特異性抗体または単一特異性抗体コンストラクト(上記のものを含むが、これらに限定されない)である。いくつかの実施形態において、抗体は、多重特異性(例えば、二重特異性)抗体または多重特異性抗体コンストラクト(上記のものを含むが、これらに限定されない)である。
【0038】
いくつかの実施形態において、CD47(例えば、hCD47)とSIRPα(例えば、hSIRPα)との間の相互作用を遮断する剤は、CD47に結合する部分を含む融合ポリペプチドである。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、抗体Fc領域及びCD47に結合する部分を含む。いくつかの実施形態において、CD47(例えば、hCD47)に結合する融合ポリペプチドの部分は、約10nMまたはそれより優れたK(少なくとも約9nM、8nM、7nM、6nM、5nM、3nM、2nM、1nM、750pM、500pM、250pM、200pM、100pM、50pM、25pM、20pM 10pMまたは10pM未満などのいずれか1つ)でCD47(例えば、hCD47)に結合する。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、ヒト対象において、少なくとも約50%のCD47受容体占有率(例えば、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、または約100%のいずれか1つ)を呈する。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、約80ng/ml以下、例えば、約75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、または5ng/mlのいずれか1つのEC50を有する。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、WTヒト抗体Fc領域を含む。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、WT Fc領域と比較して、エフェクター機能の低下(例えば、消失など)を呈するFc変異体(例えば、WTヒト抗体Fc領域の変異体)を含む。例示的なFc変異体は、WO2017/027422及びUS2017/0107270に記載され、これらの内容は、その全体が参照により本明細書に援用される。いくつかの実施形態において、CD47(例えば、hCD47)に結合する部分は、WT SIRPα(例えば、hSIRPα)、またはWT SIRPγ(例えば、hSIRPγ)である。いくつかの実施形態において、CD47(例えば、hCD47)に結合する部分は、WT SIRPα(例えば、hSIRPα)、またはWT SIRPγ(例えば、hSIRPγ)のCD47結合断片(例えば、d1ドメイン)である。いくつかの実施形態において、CD47(例えば、hCD47)に結合する部分は、SIRPα変異体、SIRPγ変異体、SIRPβ変異体、またはそのCD47結合断片(例えば、d1ドメイン)である。例示的なSIRPγ変異体、SIRPβ1変異体、及びSIRPβ2変異体は、例えば、WO2013/109752;US2015/0071905;USP9,944,911;WO2016/023040;WO2017/027422;US2017/0107270;USP10,259,859;US9845345;WO2016187226;US20180155405;WO2017177333;WO2014094122;US2015329616;US20180312563;WO2018176132;WO2018081898;WO2018081897;PCT/US2019/048921;US20180141986A1;及びEP3287470A1に記載されており、これらの内容は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0039】
いくつかの実施形態において、CD47(例えば、hCD47)とSIRPα(例えば、hSIRPα)との間の相互作用を遮断する剤は、抗体Fc領域及びSIRPα変異体を含む融合ポリペプチドである。いくつかの実施形態において、SIRPα変異体は、約10nMまたはそれより優れたK(少なくとも約9nM、8nM、7nM、6nM、5nM、3nM、2nM、1nM、750pM、500pM、250pM、200pM、100pM、50pM、25pM、20pM 10pMまたは10pM未満などのいずれか1つ)でCD47(例えば、hCD47)に結合する。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、ヒト対象において、少なくとも約50%のCD47受容体占有率(例えば、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、または約100%のいずれか1つ)を呈する。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、約80ng/ml以下、例えば、約75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、または5ng/mlのいずれか1つのEC50を有する。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、WTヒト抗体Fc領域を含む。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、WT Fc領域と比較して、エフェクター機能の低下(例えば、消失など)を呈するFc変異体(例えば、WTヒト抗体Fc領域の変異体)、例えば、本明細書に引用される参考文献に記載されているものなどを含む。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、WO2013/109752;US2015/0071905;WO2016/023040;WO2017/027422;US2017/0107270;USP10,259,859;US9845345;WO2016187226;US20180155405;WO2017177333;WO2014094122;US2015329616;US20180312563;WO2018176132;WO2018081898;WO2018081897;US20180141986A1;及びEP3287470A1に記載されているSIRPα変異体を含み、これらの内容は、その全体が参照により本明細書に援用される。いくつかの実施形態において、抗体Fc領域及びSIRPα変異体を含む融合ポリペプチドは、TTI-621、TTI-622、またはIMM01である(例えば、Petrova et al.(2017)Clin Cancer Res 23:1086-1079;Russ et al.(2018)Blood Rev S0268-960X(17)30093-0;Zhang,X,Chen,W,Fan,J et al.Disrupting CD47-SIRPα axis alone or combined with autophagy depletion for the therapy of glioblastoma.Carcinogenesis 2018;39:689-99参照)。
【0040】
いくつかの実施形態において、CD47(例えば、hCD47)とSIRPα(例えば、hSIRPα)との間の相互作用を遮断する剤は、SIRPα D1ドメイン変異体(例えば、本明細書に記載されるSIRPα D1ドメイン変異体)及びFcドメイン変異体(例えば、本明細書に記載されるFcドメイン変異体)を含む融合ポリペプチドである。
【0041】
SIRPα D1ドメイン変異体及びFcドメイン変異体を含むポリペプチドによる治療方法に関する更なる詳細は、以下に記載される。また、WO2017/027422及び米国特許第10,259,859号も参照されたく、これらのそれぞれの内容は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0042】
また、個体のがんを治療する方法であって、個体に、SIRPα D1ドメイン変異体及びFcドメイン変異体を含む、有効量のポリペプチド(例えば、融合ポリペプチド)を投与することを含み、ここで、ポリペプチドは、約60mg/kgの用量で4週間に1回(q4w)投与される、方法が本明細書で提供される。また、個体のがんを治療する方法であって、個体に、SIRPα D1ドメイン変異体及びFcドメイン変異体を含む、有効量のポリペプチド(例えば、融合ポリペプチド)を投与することを含み、ここで、ポリペプチドは、約45mg/kgの用量で3週間に1回(q3w)投与される、方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、少なくとも1つの追加の抗がん剤と組み合わせて投与される。
【0043】
シグナル調節タンパク質α(SIRPα)D1ドメイン及びその変異体
いくつかの実施形態において、野生型シグナル調節タンパク質α(SIRP-α)D1ドメイン(例えば、配列番号1または2に記載される野生型SIRPα D1ドメイン)に対して残基80におけるアミノ酸変異;ならびに野生型SIRPα D1ドメイン(例えば、配列番号1または2に記載される野生型SIRPα D1ドメイン)に対して残基6、残基27、残基31、残基47、残基53、残基54、残基56、残基66、及び残基92からなる群から選択される残基における少なくとも1つの追加のアミノ酸変異を含む、SIRPα D1ドメインまたはその断片を含むSIRPα D1変異体を含む、ポリペプチドが本明細書で開示される。
【0044】
また、いくつかの実施形態において、Fcドメイン変異体を含むポリペプチドが本明細書で開示され、ここで、Fcドメイン変異体二量体は、2つのFcドメイン変異体を含み、各Fcドメイン変異体は、独立して、(i)変異L234A、L235A、G237A、及びN297AからなるヒトIgG1 Fc領域;(ii)変異A330S、P331S及びN297AからなるヒトIgG2 Fc領域;または(iii)変異S228P、E233P、F234V、L235A、delG236、及びN297AからなるヒトIgG4 Fc領域から選択される。
【0045】
シグナル調節タンパク質α(「SIRP-α」または「SIRP-アルファ」)は、Igスーパーファミリーに属する膜貫通糖タンパク質であり、骨髄系細胞の膜上に広く発現している。SIRPαは、体内の多くの細胞種に広く発現しているタンパク質CD47と相互作用する。SIRPαとCD47の相互作用により、免疫系によって認識され得る「自己」細胞の飲み込みが阻害される。腫瘍細胞におけるCD47の高発現は、急性骨髄性白血病及びいくつかの固形腫瘍癌において、生存の予後不良因子として働くことが観察されている。
【0046】
天然型SIRPαは、3つの相同性の高い免疫グロブリン(Ig)様細胞外ドメインD1、D2、及びD3を含んでいる。SIRPα D1ドメイン(「D1ドメイン」)は、SIRPαの膜遠位の細胞外ドメインを指し、SIRPαのCD47への結合を媒介する。本明細書で使用される場合、「SIRPαポリペプチド」という用語は、CD47に結合することが可能な任意のSIRPαポリペプチドまたはその断片を指す。野生型ヒトSIRPαには、少なくとも10個の変異体がある。表1は、天然に生じる野生型ヒトSIRPα D1ドメイン変異体(配列番号1及び2)のD1ドメインのアミノ酸配列を示す。いくつかの実施形態において、SIRPαポリペプチドは、SIRPα D1ドメインを含む。いくつかの実施形態において、SIRPαポリペプチドは、配列番号1及び2に記載されるものなどの野生型D1ドメインを含む。いくつかの実施形態において、SIRPαポリペプチドは、野生型ヒトSIRPαのD2またはD3ドメイン(またはD2とD3ドメインの両方)(表3参照)を含む。
【表1】
【0047】
本明細書で使用される場合、「SIRPα D1ドメイン変異体」という用語は、野生型SIRPαよりもCD47に対して高い親和性を有するSIRPα D1ドメインまたはSIRPαポリペプチドのCD47結合部分を含むポリペプチドを指す。SIRPα D1ドメイン変異体は、野生型SIRPαに対して、少なくとも1つのアミノ酸の置換、欠失、または挿入(またはこれらの組み合わせ)を含む。
【0048】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示されるSIRPα D1ドメイン変異体は、SIRPα D1ドメインまたはその変異体を含む。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体は、配列番号1及び2に示される野生型D1ドメインに対して、1つ以上のアミノ酸の置換、挿入、付加、または欠失を含む。表2は、各SIRPα D1ドメイン変異体(配列番号13~14)における例示的なアミノ酸置換を列挙する。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメインポリペプチドまたはSIRPα D1ドメイン変異体は、D1ドメインの断片を含む。いくつかの実施形態において、SIRPαポリペプチド断片またはSIRPα D1ドメイン変異体断片は、10アミノ酸長未満、約10アミノ酸長、約20アミノ酸長、約30アミノ酸長、約40アミノ酸長、約50アミノ酸長、約60アミノ酸長、約70アミノ酸長、約80アミノ酸長、約90アミノ酸長、約100アミノ酸長、または約100アミノ酸長超のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン断片は、CD47に結合する能力を保持している。
【0049】
いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体を含む本開示のポリペプチドは、野生型ヒトSIRPα D1ドメインよりも高い結合親和性でCD47に結合する。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体は、天然に生じるD1ドメインの親和性よりも少なくとも1倍(例えば、少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、5倍または5倍より大きい)の親和性でヒトCD47に結合する。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体は、天然に生じるD1ドメインの親和性よりも少なくとも1倍(例えば、少なくとも10倍、100倍、1000倍または1000倍より大きい)の親和性でヒトCD47に結合する。
【0050】
本明細書で使用される場合、「最適化された親和性」または「最適化された結合親和性」という用語は、SIRPα D1ドメイン変異体を含む本明細書で開示されるポリペプチドとCD47との間の結合相互作用の最適化された強さを指す。例えば、いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、がん細胞上のCD47に主に結合するか、またはより高い親和性で結合し、非がん細胞上のCD47に実質的に結合しないか、より低い親和性で結合する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドとCD47との間の結合親和性は、その相互作用が臨床的に関係のある毒性を引き起こさないように、または最大の親和性で結合する変異体と比較して毒性が低くなるように最適化される。いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるポリペプチドとCD47との間の最適化された結合親和性を達成するために、SIRPα D1ドメイン変異体を含むポリペプチドは、CD47に対する結合親和性が最大に達成可能なものよりも低くなるように開発される。いくつかの実施形態において、本明細書で開示されるSIRPα D1ドメイン変異体は、齧歯類、非ヒト霊長類(NHP)、及びヒトCD47と交差反応する。
【0051】
本明細書で使用される場合、「免疫原性」という用語は、外来抗原であるかのように、宿主において免疫応答を引き起こすタンパク質(例えば、治療用タンパク質)の特性を指す。タンパク質の免疫原性は、in vitro T細胞増殖アッセイなどの多種多様な方法でin vitroでアッセイすることができる。
【0052】
本明細書で使用される場合、「最小の免疫原性」という用語は、例えば、アミノ酸置換により修飾されたタンパク質(例えば、治療用タンパク質)の免疫原性が、アミノ酸置換が導入される前の免疫原性(例えば、非修飾タンパク質)よりも低くなる(例えば、少なくとも10%、25%、50%、または100%低い)ことを指す。いくつかの実施形態において、タンパク質(例えば、治療用タンパク質)は、最小の免疫原性を有するように修飾され、外来抗原であっても、宿主の免疫応答を全くまたはほとんど引き起こさない。
【0053】
いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体は、最小の免疫原性を示す。いくつかの実施形態において、対象に投与される本開示のSIRPαポリペプチドは、SIRPα D1ドメイン変異体の親和性を増加させるアミノ酸変化を除き、対象の生体試料中のSIRPαポリペプチドのアミノ酸配列と同じアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、本明細書で開示されるポリペプチド変異体は、抗CD47抗体または野生型SIRPαと比較して、副作用のリスクを低下させる。いくつかの実施形態において、本明細書で開示されるポリペプチド変異体は、抗CD47抗体または野生型SIRPαと比較して、貧血のリスクを低下させる。いくつかの実施形態において、本明細書で開示されるポリペプチド変異体は、齧歯類または非ヒト霊長類(NHP)の研究において、急性貧血を引き起こさない。
【0054】
表2は、SIRPα D1ドメイン変異体中の各D1ドメイン配列に対する具体的なアミノ酸置換を列挙する。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体は、表2に列挙される置換の1つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14またはそれ以上)を含む。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体は、野生型D1ドメインに対して、最大14個のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体は、野生型D1ドメインに対して、最大10個のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体は、野生型D1ドメインに対して、最大7個のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、本開示のSIRPα D1ドメイン変異体は、野生型D1ドメインの配列に対して、少なくとも90%(例えば、少なくとも92%、95%、97%または97%より大きい)のアミノ酸配列同一性を有する。
【0055】
いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体は、2つ以上の野生型D1ドメインまたはその変異体の部分(例えば、ある野生型D1ドメインまたはその変異体の部分及び別の野生型D1ドメインまたはその変異体の部分)を含むキメラSIRPα D1ドメイン変異体である。いくつかの実施形態において、キメラSIRPα D1ドメイン変異体は、野生型D1ドメインまたはその変異体の少なくとも2つの部分(例えば、3、4、5またはそれ以上の部分)を含み、ここで、部分のそれぞれは、異なる野生型D1ドメインに由来する。いくつかの実施形態において、キメラSIRPα D1ドメイン変異体は、表2に列挙される1つ以上のアミノ酸置換を更に含む。
【表2】
【0056】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、EEEXQXIQPDKSVLVAAGETXTLRCTXTSLXPVGPIQWFRGAGPGRXLIYNQXGXFPRVTTVSDX10TX11RNNMDFSIRIGNITPADAGTYYCX12KX13RKGSPDDVEX14KSGAGTELSVRAKPS(配列番号13)の配列を含むSIRPα D1ドメイン変異体を含み、ここで、XはL、I、またはVであり、XはV、L、またはIであり、XはAまたはVであり、XはA、I、またはLであり、XはI、T、S、またはFであり、XはE、V、またはLであり、XはKまたはRであり、XはEまたはQであり、XはH、P、またはRであり、X10はL、T、またはGであり、X11はKまたはRであり、X12はVまたはIであり、X13はF、L、またはVであり、X14はFまたはVであり、変異体は、配列番号1の配列を含む野生型SIRPα D1ドメインに対して、少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
【0057】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号13の配列を含むSIRPα D1ドメイン変異体を含み、ここで、Xは、L、I、またはVである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、V、L、またはIである。いくつかの実施形態において、Xは、AまたはVである。いくつかの実施形態において、Xは、A、I、またはLである。いくつかの実施形態において、Xは、I、T、S、またはFである。いくつかの実施形態において、Xは、E、V、またはLである。いくつかの実施形態において、Xは、KまたはRである。いくつかの実施形態において、Xは、EまたはQである。いくつかの実施形態において、Xは、H、P、またはRである。いくつかの実施形態において、X10は、L、T、またはGである。いくつかの実施形態において、X11は、KまたはRである。いくつかの実施形態において、X12は、VまたはIである。いくつかの実施形態において、X13は、F、L、Vである。いくつかの実施形態において、X14は、FまたはVである。いくつかの実施形態において、本開示の本態様のポリペプチド は、配列番号1の配列を含む野生型SIRPα D1ドメインに対して、6個以下のアミノ酸置換を含む。
【0058】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号1の配列を含む野生型SIRPα D1ドメインよりも少なくとも10倍大きい結合親和性でCD47に結合する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号1の配列を含む野生型SIRPα D1ドメインよりも少なくとも100倍大きい結合親和性でCD47に結合する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号1の配列を含む野生型SIRPα D1ドメインよりも少なくとも1000倍大きい結合親和性でCD47に結合する。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体ポリペプチドまたはその断片は、1×10-8M未満、5×10-9M未満、1×10-9M未満、5×10-10M未満、1×10-10M未満または1×10-11M未満のKDでCD47に結合する。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体ポリペプチドまたはその断片は、約500nM~100nM、約100nM~50nM、約50nM~10nM、約10nM~5nM、約5nM~1nM、約1nM~500pM、約500pM~100pM、約100pM~50pM、または約50pM~10pMのKDでCD47に結合する。
【0059】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、EEEXQXIQPDKSVSVAAGESXILHCTXTSLXPVGPIQWFRGAGPARXLIYNQXGXFPRVTTVSEX10TX11RENMDFSISISNITPADAGTYYCX12KX13RKGSPDTEX14KSGAGTELSVRAKPS(配列番号14)の配列を含むSIRPα D1ドメイン変異体を含み、ここで、XはL、I、またはVであり、XはV、L、またはIであり、XはAまたはVであり、XはV、I、またはLであり、XはI、T、S、またはFであり、XはE、V、またはLであり、XはKまたはRであり、XはEまたはQであり、XはH、P、またはRであり、X10はS、T、またはGであり、X11はKまたはRであり、X12はVまたはIであり、X13はF、L、またはVであり、X14はFまたはVであり、変異体は、配列番号2の配列を含む野生型SIRPα D1ドメインに対して、少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
【0060】
いくつかの実施形態において、本開示の本態様において、ポリペプチドは、配列番号14の配列を含み、ここで、Xは、L、I、またはVである。いくつかの実施形態において、Xは、V、L、またはIである。いくつかの実施形態において、Xは、AまたはVである。いくつかの実施形態において、Xは、V、I、またはLである。いくつかの実施形態において、Xは、I、T、S、またはFである。いくつかの実施形態において、Xは、E、V、またはLである。いくつかの実施形態において、Xは、KまたはRである。いくつかの実施形態において、Xは、EまたはQである。いくつかの実施形態において、Xは、H、P、またはRである。いくつかの実施形態において、X10は、S、T、またはGである。いくつかの実施形態において、X11は、KまたはRである。いくつかの実施形態において、X12は、VまたはIである。いくつかの実施形態において、X13は、F、L、またはVである。いくつかの実施形態において、X14は、FまたはVである。いくつかの実施形態において、本開示の本態様のポリペプチドは、配列番号2の配列を含む野生型SIRPα D1ドメインに対して、6個以下のアミノ酸置換を含む。
【0061】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号2の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインよりも少なくとも10倍大きい結合親和性でCD47に結合する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号2の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインよりも少なくとも100倍大きい結合親和性でCD47に結合する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号2の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインよりも少なくとも1000倍大きい結合親和性でCD47に結合する。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体ポリペプチドまたはその断片は、1×10-8M未満、5×10-9M未満、1×10-9M未満、5×10-10M未満、1×10-10M未満または1×10-11M未満のKでCD47に結合する。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体ポリペプチドまたはその断片は、約500nM~100nM、約100nM~50nM、約50nM~10nM、約10nM~5nM、約5nM~1nM、約1nM~500pM、約500pM~100pM、約100pM~50pM、または約50pM~10pMのKでCD47に結合する。
【0062】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、EEXQXIQPDKXVXVAAGEXLXCTX10TSLX11PVGPIQWFRGAGPX12RX13LIYNQX1415GX16FPRVTTVSX1718TX19RX20NMDFX21IX22IX23NITPADAGTYYCX24KX25RKGSPDX2627EX28KSGAGTELSVRX29KPS(配列番号23)の配列を有するSIRPα D1ドメイン変異体を含み、ここで、XはEまたはGであり、XはL、I、またはVであり、XはV、L、またはIであり、XはSまたはFであり、XはLまたはSであり、XはSまたはTであり、XはAまたはVであり、XはIまたはTであり、XはHまたはRであり、X10はA、V、I、またはLであり、X11はI、T、S、またはFであり、X12はAまたはGであり、X13はE、V、またはLであり、X14はKまたはRであり、X15はEまたはQであり、X16はH、P、またはRであり、X17はDまたはEであり、X18はS、L、T、またはGであり、X19はKまたはRであり、X20はEまたはDであり、X21はSまたはPであり、X22はSまたはRであり、X23はSまたはGであり、X24はVまたはIであり、X25はF、L、Vであり、X26はDまたは不在であり、X27はTまたはVであり、X28はFまたはVであり、X29はAまたはGであり、変異体は、配列番号1または2の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインに対して、少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
【0063】
前述の実施形態のいずれかにおいて、本開示の本態様において、Xは、L、I、またはVである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、V、L、またはIである。実施形態において、Xは、SまたはFである。いくつかの実施形態において、Xは、LまたはSである。いくつかの実施形態において、Xは、SまたはTである。いくつかの実施形態において、Xは、AまたはVである。いくつかの実施形態において、Xは、IまたはTである。いくつかの実施形態において、Xは、HまたはRである。いくつかの実施形態において、X10は、A、V、I、またはLである。いくつかの実施形態において、X11は、I、T、S、またはFである。いくつかの実施形態において、X12は、AまたはGである。いくつかの実施形態において、X13は、E、V、またはLである。いくつかの実施形態において、X14は、KまたはRである。いくつかの実施形態において、X15は、EまたはQである。いくつかの実施形態において、X16は、H、P、またはRである。いくつかの実施形態において、X17は、DまたはEである。いくつかの実施形態において、X18は、S、L、T、またはGである。いくつかの実施形態において、X19は、KまたはRである。いくつかの実施形態において、X20は、EまたはDである。いくつかの実施形態において、X21は、SまたはPである。いくつかの実施形態において、X22は、SまたはRである。いくつかの実施形態において、X23は、SまたはGである。いくつかの実施形態において、X24は、VまたはIである。いくつかの実施形態において、X25は、F、L、Vである。いくつかの実施形態において、X26は、Dまたは不在である。いくつかの実施形態において、X27は、TまたはVである。いくつかの実施形態において、X28は、FまたはVである。いくつかの実施形態において、X29は、AまたはGである。いくつかの実施形態において、本開示の本態様のポリペプチドは、配列番号1または2の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインに対して、6個以下のアミノ酸置換を含む。
【0064】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号1または2の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインよりも少なくとも10倍大きい結合親和性でCD47に結合する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号1または2の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインよりも少なくとも100倍大きい結合親和性でCD47に結合する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号1または2の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインよりも少なくとも1000倍大きい結合親和性でCD47に結合する。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体ポリペプチドまたはその断片は、1×10-8M未満、5×10-9M未満、1×10-9M未満、5×10-10M未満、1×10-10M未満または1×10-11M未満のKでCD47に結合する。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体ポリペプチドまたはその断片は、約500nM~100nM、約100nM~50nM、約50nM~10nM、約10nM~5nM、約5nM~1nM、約1nM~500pM、約500pM~100pM、約100pM~50pM、または約50pM~10pMのKでCD47に結合する。
【0065】
いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体を含む本開示のポリペプチドは、表3に示される野生型ヒトSIRPαの配列番号24の配列を有するD2ドメイン、配列番号25の配列を有するD3ドメイン、または配列番号24の配列を有するD2ドメインと配列番号25の配列を有するD3ドメインを更に含む。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体は、D2ドメインの断片もしくは変異体またはD3ドメインの断片もしくは変異体を更に含む。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体は、D2ドメインの断片または変異体及びD3ドメインの断片または変異体を更に含む。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体は、リンカーによってD2またはD3ドメインに接続される。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体は、リンカーによってD2及びD3ドメインに接続される。
【表3】
【0066】
いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体を含む本開示のポリペプチドは、ポリペプチドの薬物動態特性を改善するために、例えば、血清半減期を増加させるために、Fcドメイン変異体に結合される。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体は、二量体化が不可能なFcドメイン変異体に結合される。いくつかの実施形態において、Fcドメイン変異体は、本明細書に記載されるポリペプチドの血清半減期を増加させる働きがある。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体を含む本開示のポリペプチドは、表4に示される配列番号26~36のいずれか1つの配列を含まない。
【表4】
【0067】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチド及びポリペプチドコンストラクトは、免疫アッセイなどの結合アッセイのために、in vitroで利用される。例えば、いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチド及びポリペプチドコンストラクトは、液相で利用されるか、または固相担体に結合される。いくつかの実施形態において、イムノアッセイに利用されるポリペプチドは、様々な方法で検出可能に標識される。
【0068】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるポリペプチド及びポリペプチドコンストラクトは、様々な担体に結合され、特定の抗原発現細胞の存在を検出するために使用される。担体の例としては、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然及び変性セルロース、ポリアクリルアミド、アガロース、ならびにマグネタイトが挙げられる。担体の性質は、可溶性でも不溶性もよい。
【0069】
様々な異なる標識及び標識方法が知られている。標識の例としては、酵素、放射性同位体、蛍光化合物、コロイド金属、化学発光化合物及び生物発光化合物が挙げられる。本明細書で開示されるポリペプチドに標識を結合するには、様々な技術が利用可能である。
【0070】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、低分子量のハプテンに結合される。これらのハプテンは、次いで、第2の反応によって特異的に検出される。例えば、いくつかの実施形態において、ハプテンであるビオチンがアビジンとともに使用されるか、あるいは、ハプテンであるジニトロフェニル、ピリドキサールまたはフルオレセインが特定の抗ハプテン抗体(例えば、それぞれ抗ジニトロフェニル抗体、抗ピリドキサール抗体、及び抗フルオレセイン抗体)により検出される。
【0071】
グリコシル化パターンを変更したSIRPα D1ドメイン変異体
いくつかの実施形態において、野生型シグナル調節タンパク質α(SIRP-α)D1ドメイン(例えば、配列番号1または2に記載される野生型SIRPα D1ドメイン)に対して残基80におけるアミノ酸変異;ならびに野生型SIRPα D1ドメイン(例えば、配列番号1または2に記載される野生型SIRPα D1ドメイン)に対して残基6、残基27、残基31、残基47、残基53、残基54、残基56、残基66、及び残基92からなる群から選択される残基における少なくとも1つの追加のアミノ酸変異を有する、SIRPα D1ドメインまたはその断片を含むSIRPα D1変異体を含む、ポリペプチドが本明細書で開示される。
【0072】
また、いくつかの実施形態において、Fcドメイン変異体を含むポリペプチドが本明細書で開示され、ここで、Fcドメイン変異体二量体は、2つのFcドメイン変異体を含み、各Fcドメイン変異体は、独立して、(i)変異L234A、L235A、G237A、及びN297AからなるヒトIgG1 Fc領域;(ii)変異A330S、P331S及びN297AからなるヒトIgG2 Fc領域;または(iii)変異S228P、E233P、F234V、L235A、delG236、及びN297AからなるヒトIgG4 Fc領域から選択される。
【0073】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示される組成物中のポリペプチドは、グリコシル化が減少したまたは最小であるSIRPα D1ドメイン変異体を含む。表1中の配列番号1及び2のD1ドメインは、配列N80ITPのアミノ酸N80に単一の潜在的なN結合型グリコシル化部位をそれぞれ含有している。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞におけるSIRPα D1ドメインの発現は、16kDaのメジャーバンド(非グリコシル化)と、Endo Hfによって取り除かれた高分子量のマイナーバンドをもたらす。Endo Hfは、エンドグリコシダーゼHとマルトース結合タンパク質の組み換えタンパク質融合体である。Endo Hfは、高マンノースのキトビオースコア内部及びN結合型糖タンパク質のいくつかのハイブリッドオリゴ糖内部を切断する。これは、アミノ酸位置83のプロリンがグリコシル化の効率を低下させ、グリコシル化の程度が異なるタンパク質をもたらすことから、不均一性が生じることを示唆している。薬物の開発において、不均一性は、プロセス開発において課題となり得る。したがって、SIRPα D1ドメイン変異体の均一な非グリコシル化形態を生成する可能性を調べるために、いくつかの実施形態において、SIRPα D1変異体のアミノ酸N80がAlaに変異される。いくつかの実施形態において、非グリコシル化SIRPα D1ドメイン変異体を作製するために、SIRPα D1ドメイン変異体のアミノ酸N80が、任意の天然及び非天然に生じるアミノ酸、例えば、N80A及びN80Qを含む、任意のアミノ酸で置き換えられる。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体は、N80A変異及び少なくとも1つの追加の変異(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10個の更なる変異またはそれ以上)を含む。いくつかの実施形態において、追加の変異は、CD47結合部位にある。いくつかの実施形態において、追加の変異は、D1ドメインの疎水性コアにある。
【0074】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示される組成物中のポリペプチドは、野生型SIRPα D1ドメインと比べてグリコシル化が増加しているSIRPα D1ドメイン変異体を含む。最終生成物の均一性を高めるための別の選択肢は、アミノ酸N80におけるグリコシル化の効率を高め、野生型と比べてグリコシル化が増加したSIRPα D1ドメイン変異体を生成することである。いくつかの実施形態において、配列NITP83中のアミノ酸P83は、アミノ酸N80におけるグリコシル化の程度に影響を与える。いくつかの実施形態において、P83を任意のアミノ酸に変更すると、N80におけるグリコシル化の効率が増加する。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体のアミノ酸P83は、天然及び非天然に生じるアミノ酸、例えば、P83V、P83A、P83I、及びP83Lを含む、任意のアミノ酸で置き換えられる。いくつかの実施形態において、本開示のポリペプチドは、例えば、細胞株の遺伝子操作(例えば、遺伝子操作された酵母または哺乳動物の宿主)もしくはキフネンシンの添加などの細胞培養条件の変更によって、または原核生物(E.coliなど)などの天然で非グリコシル化である宿主を使用することによって、そのような細胞によって発現されるタンパク質をグリコシル化しないように最適化された細胞で発現される。
【0075】
表5は、SIRPα D1ドメイン変異体中の各D1ドメイン変異体配列に対する具体的なアミノ酸置換を列挙する。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体は、表5に列挙される置換の1つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14またはそれ以上)を含む。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体は、グリコシル化されていないか、または最小のグリコシル化である。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体は、完全にグリコシル化されているか、またはほぼ完全にグリコシル化されている。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体は、野生型D1ドメインに対して、最大14個のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体は、野生型D1ドメインに対して、最大10個のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体は、野生型D1ドメインに対して、最大7個のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、本開示のSIRPα D1ドメイン変異体は、野生型D1ドメインの配列に対して、少なくとも90%(例えば、少なくとも92%、95%、97%または97%より大きい)のアミノ酸配列同一性を有する。
【0076】
いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体は、2つ以上の野生型D1ドメインまたはその変異体の部分(例えば、ある野生型D1ドメインまたはその変異体の部分及び別の野生型D1ドメインまたはその変異体の部分)を含むキメラSIRPα D1ドメイン変異体である。いくつかの実施形態において、キメラSIRPα D1ドメイン変異体は、野生型D1ドメインまたはその変異体の少なくとも2つの部分(例えば、3、4、5またはそれ以上の部分)を含み、ここで、部分のそれぞれは、異なる野生型D1ドメインに由来する。いくつかの実施形態において、キメラSIRPα D1ドメイン変異体は、表5に列挙される1つ以上のアミノ酸置換を更に含む。
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【0077】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、EEEXQXIQPDKSVLVAAGETXTLRCTXTSLXPVGPIQWFRGAGPGRXLIYNQXGXFPRVTTVSDX10TX11RNNMDFSIRIGX12ITX13ADAGTYYCX14KX15RKGSPDDVEX16KSGAGTELSVRAKPS(配列番号37)の配列を有するSIRPα D1ドメイン変異体を含み、ここで、XはL、I、またはVであり、XはV、L、またはIであり、XはAまたはVであり、XはA、I、またはLであり、XはI、T、S、またはFであり、XはE、V、またはLであり、XはKまたはRであり、XはEまたはQであり、XはH、P、またはRであり、X10はL、T、またはGであり、X11はKまたはRであり、X12はN、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W、またはYであり、X13はP、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W、またはYであり、X14はVまたはIであり、X15はF、L、またはVであり、X16はFまたはVであり、変異体は、配列番号1の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインに対して、少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
【0078】
いくつかの実施形態において、本開示の本態様において、ポリペプチドは、配列番号37の配列を有するSIRPα D1ドメイン変異体を含み、ここで、Xは、L、I、またはVである。いくつかの実施形態において、Xは、V、L、またはIである。いくつかの実施形態において、Xは、AまたはVである。いくつかの実施形態において、Xは、A、I、またはLである。いくつかの実施形態において、Xは、I、T、S、またはFである。いくつかの実施形態において、Xは、E、V、またはLである。いくつかの実施形態において、Xは、KまたはRである。いくつかの実施形態において、Xは、EまたはQである。いくつかの実施形態において、Xは、H、P、またはRである。いくつかの実施形態において、X10は、L、T、またはGである。いくつかの実施形態において、X11は、KまたはRである。いくつかの実施形態において、X12は、N、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W、またはYである。いくつかの実施形態において、X13は、P、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W、またはYである。いくつかの実施形態において、X14は、VまたはIである。いくつかの実施形態において、X15は、F、L、Vである。いくつかの実施形態において、X16は、FまたはVである。
【0079】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるポリペプチドは、配列番号1の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインに対して、10個以下のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるポリペプチドは、配列番号1の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインに対して、7個以下のアミノ酸置換を含む。
【0080】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号1の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインよりも少なくとも10倍大きい結合親和性でCD47に結合する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号1の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインよりも少なくとも100倍大きい結合親和性でCD47に結合する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号1の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインよりも少なくとも1000倍大きい結合親和性でCD47に結合する。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体ポリペプチドまたはその断片は、1×10-8M未満、5×10-9M未満、1×10-9M未満、5×10-10M未満、1×10-10M未満または1×10-11M未満のKでCD47に結合する。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体ポリペプチドまたはその断片は、約500nM~100nM、約100nM~50nM、約50nM~10nM、約10nM~5nM、約5nM~1nM、約1nM~500pM、約500pM~100pM、約100pM~50pM、または約50pM~10pMのKでCD47に結合する。
【0081】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、EEEXQXIQPDKSVSVAAGESXILHCTXTSLXPVGPIQWFRGAGPARXLIYNQXGXFPRVTTVSEX10TX11RENMDFSISISX12ITX13ADAGTYYCX14KX15RKGSPDTEX16KSGAGTELSVRAKPS(配列番号38)の配列を有するSIRPα D1ドメイン変異体を含み、ここで、XはL、I、またはVであり、XはV、L、またはIであり、XはAまたはVであり、XはV、I、またはLであり、XはI、T、S、またはFであり、XはE、V、またはLであり、XはKまたはRであり、XはEまたはQであり、XはH、P、またはRであり、X10はS、T、またはGであり、X11はKまたはRであり、X12はN、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W、またはYであり、X13はP、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W、またはYであり、X14はVまたはIであり、X15はF、L、またはVであり、X16はFまたはVであり、変異体は、配列番号2の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインに対して、少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
【0082】
いくつかの実施形態において、本開示の本態様において、ポリペプチドは、配列番号38の配列を有するSIRPα D1ドメイン変異体を含み、ここで、Xは、L、I、またはVである。いくつかの実施形態において、Xは、V、L、またはIである。いくつかの実施形態において、Xは、AまたはVである。いくつかの実施形態において、Xは、V、I、またはLである。いくつかの実施形態において、Xは、I、T、S、またはFである。いくつかの実施形態において、Xは、E、V、またはLである。いくつかの実施形態において、Xは、KまたはRである。いくつかの実施形態において、Xは、EまたはQである。いくつかの実施形態において、Xは、H、P、またはRである。いくつかの実施形態において、X10は、S、T、またはGである。いくつかの実施形態において、X11は、KまたはRである。いくつかの実施形態において、X12は、N、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W、またはYである。いくつかの実施形態において、X13は、P、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W、またはYである。いくつかの実施形態において、X14は、VまたはIである。いくつかの実施形態において、X15は、F、L、またはVである。いくつかの実施形態において、X16は、FまたはVである。
【0083】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号2の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインに対して、10個以下のアミノ酸置換を有するSIRPα D1ドメイン変異体を含む。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号2の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインに対して、7個以下のアミノ酸置換を有するSIRPα D1ドメイン変異体を含む。
【0084】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号2の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインよりも少なくとも10倍大きい結合親和性でCD47に結合する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号2の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインよりも少なくとも100倍大きい結合親和性でCD47に結合する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号2の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインよりも少なくとも1000倍大きい結合親和性でCD47に結合する。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体ポリペプチドまたはその断片は、1×10-8M未満、5×10-9M未満、1×10-9M未満、5×10-10M未満、1×10-10M未満または1×10-11M未満のKでCD47に結合する。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体ポリペプチドまたはその断片は、約500nM~100nM、約100nM~50nM、約50nM~10nM、約10nM~5nM、約5nM~1nM、約1nM~500pM、約500pM~100pM、約100pM~50pM、または約50pM~10pMのKでCD47に結合する。
【0085】
別の態様において、本開示は、EEXQXIQPDKXVXVAAGEXLXCTX10TSLX11PVGPIQWFRGAGPX12RX13LIYNQX1415GX16FPRVTTVSX1718TX19RX20NMDFX21IX22IX2324ITX25ADAGTYYCX26KX27RKGSPDX2829EX30KSGAGTELSVRX31KPS(配列番号47)の配列を有するSIRPα D1ドメイン変異体を含むポリペプチドを特徴とし、ここで、XはEまたはGであり、XはL、I、またはVであり、XはV、L、またはIであり、XはSまたはFであり、XはLまたはSであり、XはSまたはTであり、XはAまたはVであり、XはIまたはTであり、XはH、R、またはLであり、X10はA、V、I、またはLであり、X11はI、T、S、またはFであり、X12はAまたはGであり、X13はE、V、またはLであり、X14はKまたはRであり、X15はEまたはQであり、X16はH、P、またはRであり、X17はDまたはEであり、X18はS、L、T、またはGであり、X19はKまたはRであり、X20はEまたはNであり、X21はSまたはPであり、X22はSまたはRであり、X23はSまたはGであり、X24は任意のアミノ酸であり、X25は任意のアミノ酸であり、X26はVまたはIであり、X27はF、L、Vであり、X28はDまたは不在であり、X29はTまたはVであり、X30はFまたはVであり、X31はAまたはGであり、変異体は、配列番号1または2の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインに対して、少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
【0086】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号47の配列を含み、ここで、Xは、EまたはGである。前述の実施形態のいずれかにおいて、本開示の本態様において、Xは、L、I、またはVである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、V、L、またはIである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、SまたはFである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、LまたはSである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、SまたはTである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、AまたはVである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、IまたはTである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、HまたはRである。前述の実施形態のいずれかにおいて、X10は、A、V、I、またはLである。前述の実施形態のいずれかにおいて、X11は、I、T、S、またはFである。前述の実施形態のいずれかにおいて、X12は、AまたはGである。前述の実施形態のいずれかにおいて、X13は、E、V、またはLである。前述の実施形態のいずれかにおいて、X14は、KまたはRである。前述の実施形態のいずれかにおいて、X15は、EまたはQである。前述の実施形態のいずれかにおいて、X16は、H、P、またはRである。前述の実施形態のいずれかにおいて、X17は、DまたはEである。前述の実施形態のいずれかにおいて、X18は、S、L、T、またはGである。前述の実施形態のいずれかにおいて、X19は、KまたはRである。前述の実施形態のいずれかにおいて、X20は、EまたはNである。前述の実施形態のいずれかにおいて、X21は、SまたはPである。前述の実施形態のいずれかにおいて、X22は、SまたはRである。前述の実施形態のいずれかにおいて、X23は、SまたはGである。前述の実施形態のいずれかにおいて、X24は、N、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W、またはYである。前述の実施形態のいずれかにおいて、X25は、P、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W、またはYである。前述の実施形態のいずれかにおいて、X26は、VまたはIである。前述の実施形態のいずれかにおいて、X27は、F、L、Vである。前述の実施形態のいずれかにおいて、X28は、Dまたは不在である。前述の実施形態のいずれかにおいて、X29は、TまたはVである。前述の実施形態のいずれかにおいて、X30は、FまたはVである。前述の実施形態のいずれかにおいて、X31は、AまたはGである。
【0087】
いくつかの実施形態において、本開示の本態様のポリペプチドは、配列番号1または2の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインに対して、10個以下のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、本開示の本態様のポリペプチドは、配列番号1または2の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインに対して、7個以下のアミノ酸置換を含む。
【0088】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号1または2の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインよりも少なくとも10倍大きい結合親和性でCD47に結合する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号1または2の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインよりも少なくとも100倍大きい結合親和性でCD47に結合する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号1または2の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインよりも少なくとも1000倍大きい結合親和性でCD47に結合する。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体ポリペプチドまたはその断片は、1×10-8M未満、5×10-9M未満、1×10-9M未満、5×10-10M未満、1×10-10M未満または1×10-11M未満のKでCD47に結合する。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体ポリペプチドまたはその断片は、約500nM~100nM、約100nM~50nM、約50nM~10nM、約10nM~5nM、約5nM~1nM、約1nM~500pM、約500pM~100pM、約100pM~50pM、または約50pM~10pMのKでCD47に結合する。
【0089】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、EEELQXIQPDKSVXVAAGEXAXLXCTXTSLXPVGPIQWFRGAGPXRXLIYNQX1011GX12FPRVTTVSX1314TKRX15NMDFSIX16IX1718ITPADAGTYYCX19KFRKGX202122DX23EFKSGAGTELSVRAKPS(配列番号48)の配列を有するSIRPα D1ドメイン変異体を含み、ここで、XはVまたはIであり、XはLまたはSであり、XはTまたはSであり、XはTまたはIであり、XはRまたはHであり、XはA、V、またはIであり、XはI、R、Y、KまたはFであり、XはGまたはAであり、XはEまたはVであり、X10はKまたはRであり、X11はE、DまたはQであり、X12はHまたはPであり、X13はDまたはEであり、X14はS、LまたはTであり、X15はNまたはEであり、X16はRまたはSであり、X17はGまたはSであり、X18はNまたはAであり、X19はVまたはIであり、X20はS、IまたはMであり、X21はPまたは不在であり、X22はDまたはPであり、X23はVまたはTであり、あるいはその断片である。
【0090】
別の態様において、本開示は、EEELQXIQPDKSVLVAAGETATLRCTXTSLXPVGPIQWFRGAGPGRXLIYNQXGXFPRVTTVSDXTKRNNMDFSIRIGXITPADAGTYYCX10KFRKGSPDDVEFKSGAGTELSVRAKPS(配列番号49)の配列を有するSIRPα D1ドメイン変異体を含むポリペプチドを特徴とし、ここで、XはV、L、またはIであり、XはA、I、V、またはLであり、XはI、F、S、またはTであり、XはE、V、またはLであり、XはKまたはRであり、XはEまたはQであり、XはH、P、またはRであり、XはL、T、S、またはGであり、XはAであり、X10はVまたはIであり、変異体は、配列番号1の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインに対して、少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
【0091】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号49の配列を含み、ここで、Xは、V、LまたはIである。前述の実施形態のいずれかにおいて、本開示の本態様において、Xは、A、I、V、またはLである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、I、F、S、またはTである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、E、V、またはLである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、KまたはRである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、EまたはQである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、H、P、またはRである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、L、T、SまたはGである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、Aである。前述の実施形態のいずれかにおいて、X10は、VまたはIである。
【0092】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号49に対して、少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性)を含むSIRPα D1ドメインを含み、ここで、X、X、X、X、X、X、X、X、X、及びX10のそれぞれは、野生型アミノ酸ではない。
【0093】
いくつかの実施形態において、本開示の本態様のポリペプチドは、配列番号1のいずれか1つの配列を有する野生型SIRPα D1ドメインに対して、10個以下のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、本開示の本態様のポリペプチドは、配列番号1のいずれか1つの配列を有する野生型SIRPα D1ドメインに対して、7個以下のアミノ酸置換を含む。
【0094】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号1の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインよりも少なくとも10倍大きい結合親和性でCD47に結合する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号1の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインよりも少なくとも100倍大きい結合親和性でCD47に結合する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号1の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインよりも少なくとも1000倍大きい結合親和性でCD47に結合する。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体ポリペプチドまたはその断片は、1×10-8M未満、5×10-9M未満、1×10-9M未満、5×10-10M未満、1×10-10M未満または1×10-11M未満のKでCD47に結合する。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体ポリペプチドまたはその断片は、約500nM~100nM、約100nM~50nM、約50nM~10nM、約10nM~5nM、約5nM~1nM、約1nM~500pM、約500pM~100pM、約100pM~50pM、または約50pM~10pMのKでCD47に結合する。
【0095】
別の態様において、本開示は、EEELQXIQPDKSVSVAAGESAILHCTXTSLXPVGPIQWFRGAGPARXLIYNQXGXFPRVTTVSEXTKRENMDFSISISXITPADAGTYYCX10KFRKGSPDTEFKSGAGTELSVRAKPS(配列番号50)の配列を有するSIRPα D1ドメイン変異体を含むポリペプチドを特徴とし、ここで、XはVまたはIであり、XはVまたはIであり、XはIまたはFであり、XはEまたはVであり、XはKまたはRであり、XはEまたはQであり、XはHまたはPであり、XはSまたはTであり、XはNまたはAであり、X10 VまたはIであり、変異体は、配列番号2の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインに対して、少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
【0096】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号50の配列を含み、ここで、Xは、VまたはIである。前述の実施形態のいずれかにおいて、本開示の本態様において、Xは、VまたはIである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、IまたはFである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、EまたはVである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、KまたはRである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、EまたはQである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、HまたはPである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、SまたはRである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、NまたはAである。前述の実施形態のいずれかにおいて、X10は、VまたはIである。
【0097】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号50に対して、少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性)を含むSIRPα D1ドメインを含み、ここで、X、X、X、X、X、X、X、X、X、及びX10のそれぞれは、野生型アミノ酸ではない。
【0098】
いくつかの実施形態において、本開示の本態様のポリペプチドは、配列番号2の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインに対して、10個以下のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、本開示の本態様のポリペプチドは、配列番号2の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインに対して、7個以下のアミノ酸置換を含む。
【0099】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号2の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインよりも少なくとも10倍大きい結合親和性でCD47に結合する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号2の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインよりも少なくとも100倍大きい結合親和性でCD47に結合する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号2の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインよりも少なくとも1000倍大きい結合親和性でCD47に結合する。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体ポリペプチドまたはその断片は、1×10-8M未満、5×10-9M未満、1×10-9M未満、5×10-10M未満、1×10-10M未満または1×10-11M未満のKでCD47に結合する。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体ポリペプチドまたはその断片は、約500nM~100nM、約100nM~50nM、約50nM~10nM、約10nM~5nM、約5nM~1nM、約1nM~500pM、約500pM~100pM、約100pM~50pM、または約50pM~10pMのKでCD47に結合する。
【0100】
別の態様において、本開示は、EEELQXIQPDKSVLVAAGETATLRCTXTSLXPVGPIQWFRGAGPGRXLIYNQXEGXFPRVTTVSDXTKRNNMDFSIRIGXITPADAGTYYCXKFRKGSPDDVEFKSGAGTELSVRAKPS(配列番号51)の配列を有するSIRPα D1ドメイン変異体を含むポリペプチドを特徴とし、ここで、XはVまたはIであり、XはAまたはIであり、XはIまたはFであり、XはEまたはVであり、XはKまたはRであり、XはHまたはPであり、XはLまたはTであり、XはNまたはAであり、XはVまたはIであり、変異体は、配列番号1の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインに対して、少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
【0101】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号51の配列を含み、ここで、Xは、VまたはIである。前述の実施形態のいずれかにおいて、本開示の本態様において、Xは、AまたはIである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、IまたはFである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、EまたはVである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、KまたはRである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、HまたはPである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、LまたはTである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、NまたはAである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、VまたはIである。いくつかの実施形態において、Xは、Vではない。
【0102】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号51の配列を含み、ここで、Xは、Aである。前述の実施形態のいずれかにおいて、本開示の本態様において、Xは、Aであり、Xは、VまたはIである。前述の実施形態のいずれかにおいて、本開示の本態様において、Xは、Aであり、Xは、AまたはIである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、Aであり、Xは、IまたはFである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、Aであり、Xは、EまたはVである。いくつかの実施形態において、Xは、Vではない。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、Aであり、Xは、KまたはRである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、Aであり、Xは、HまたはPである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、Aであり、Xは、AまたはVである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、Aであり、Xは、VまたはIである。
【0103】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号51の配列を含み、ここで、Xは、Aである。前述の実施形態のいずれかにおいて、本開示の本態様において、Xは、Aであり、Xは、Iである。前述の実施形態のいずれかにおいて、本開示の本態様において、Xは、Aであり、Xは、Iである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、Aであり、Xは、Fである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、Aであり、Xは、Vである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、Aであり、Xは、Rである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、Aであり、Xは、Pである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、Aであり、Xは、Tである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、Aであり、Xは、Iである。
【0104】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号51に対して、少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性)を含むSIRPα D1ドメイン変異体を含み、ここで、X、X、X、X、X、X、X、X、及びXのそれぞれは、野生型アミノ酸ではない。
【0105】
いくつかの実施形態において、本開示の本態様のポリペプチドは、配列番号1の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインに対して、10個以下のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、本開示の本態様のポリペプチドは、配列番号1の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインに対して、7個以下のアミノ酸置換を含む。
【0106】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号1の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインよりも少なくとも10倍大きい結合親和性でCD47に結合する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号1の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインよりも少なくとも100倍大きい結合親和性でCD47に結合する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号1の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインよりも少なくとも1000倍大きい結合親和性でCD47に結合する。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体ポリペプチドまたはその断片は、1×10-8M未満、5×10-9M未満、1×10-9M未満、5×10-10M未満、1×10-10M未満または1×10-11M未満のKでCD47に結合する。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体ポリペプチドまたはその断片は、約500nM~100nM、約100nM~50nM、約50nM~10nM、約10nM~5nM、約5nM~1nM、約1nM~500pM、約500pM~100pM、約100pM~50pM、または約50pM~10pMのKでCD47に結合する。
【0107】
別の態様において、本開示は、EEELQXIQPDKSVLVAAGETATLRCTXTSLXPVGPIQWFRGAGPGRELIYNQXEGXFPRVTTVSDXTKRNNMDFSIRIGXITPADAGTYYCVKFRKGSPDDVEFKSGAGTELSVRAKPS(配列番号222)の配列を有するSIRPα D1ドメイン変異体を含むポリペプチドを特徴とし、ここで、XはV、L、またはIであり、XはA、I、またはLであり、XはI、T、S、またはFであり、XはKまたはRであり、XはHまたはPであり、XはL、T、またはGであり、XはNまたはAであり、変異体は、配列番号1に従う配列を有する野生型SIRPα D1ドメインに対して、少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
【0108】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号222の配列を含み、ここで、Xは、V、L、またはIである。前述の実施形態のいずれかにおいて、本開示の本態様において、Xは、A、I、またはLである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、I、T、S、またはFである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、KまたはRである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、HまたはPである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、L、T、またはGである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、NまたはAである。
【0109】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号222の配列を含み、ここで、Xは、VまたはIである。前述の実施形態のいずれかにおいて、本開示の本態様において、Xは、AまたはIである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、IまたはFである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、KまたはRである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、HまたはPである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、LまたはTである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、NまたはAである。
【0110】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号222の配列を含み、ここで、Xは、Aである。前述の実施形態のいずれかにおいて、本開示の本態様において、Xは、Aであり、Xは、VまたはIである。前述の実施形態のいずれかにおいて、本開示の本態様において、Xは、Aであり、Xは、AまたはIである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、Aであり、Xは、IまたはFである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、Aであり、Xは、KまたはRである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、Aであり、Xは、HまたはPである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、Aであり、Xは、LまたはTである。
【0111】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号222の配列を含み、ここで、Xは、Aである。前述の実施形態のいずれかにおいて、本開示の本態様において、Xは、Aであり、Xは、Iである。前述の実施形態のいずれかにおいて、本開示の本態様において、Xは、Aであり、Xは、Iである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、Aであり、Xは、Fである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、Aであり、Xは、Rである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、Aであり、Xは、Pである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、Aであり、Xは、Tである。
【0112】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号222に対して、少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性)を含むSIRPα D1ドメインを含み、ここで、X、X、X、X、X、X、及びXのそれぞれは、野生型アミノ酸ではない。
【0113】
いくつかの実施形態において、本開示の本態様のポリペプチドは、配列番号1の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインに対して、10個以下のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、本開示の本態様のポリペプチドは、配列番号1の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインに対して、7個以下のアミノ酸置換を含む。
【0114】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号1の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインよりも少なくとも10倍大きい結合親和性でCD47に結合する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号1の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインよりも少なくとも100倍大きい結合親和性でCD47に結合する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号1の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインよりも少なくとも1000倍大きい結合親和性でCD47に結合する。いくつかの実施形態において、断片は、10未満のアミノ酸長、約10アミノ酸長、約20アミノ酸長、約30アミノ酸長、約40アミノ酸長、約50アミノ酸長、約60アミノ酸長、約70アミノ酸長、約80アミノ酸長、約90アミノ酸長、約100アミノ酸長、または約100アミノ酸長超のポリペプチドを含む。断片は、CD47に結合する能力を保持している。好ましくは、SIRPα D1ドメイン変異体ポリペプチド及びその断片は、SIRPαポリペプチドがCD47に結合するよりも高い親和性でCD47に結合する。例えば、いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体ポリペプチドまたはその断片は、1×10-8M未満、5×10-9M未満、1×10-9M未満、5×10-10M未満、1×10-10M未満または1×10-11M未満のKでCD47に結合する。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体ポリペプチドまたはその断片は、約500nM~100nM、約100nM~50nM、約50nM~10nM、約10nM~5nM、約5nM~1nM、約1nM~500pM、約500pM~100pM、約100pM~50pM、または約50pM~10pMのKでCD47に結合する。
【0115】
別の態様において、本開示は、EEELQXIQPDKSVSVAAGESAILHCTXTSLXPVGPIQWFRGAGPARELIYNQXEGXFPRVTTVSEXTKRENMDFSISISXITPADAGTYYCVKFRKGSPDTEFKSGAGTELSVRAKPS(配列番号212)の配列を有するSIRPα D1ドメイン変異体を含むポリペプチドを特徴とし、ここで、XはV、L、またはIであり、XはV、I、またはLであり、XはI、T、S、またはFであり、XはKまたはRであり、XはH、P、またはRであり、XはS、T、またはGであり、XはNまたはAであり、変異体は、配列番号2の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインに対して、少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
【0116】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号212の配列を含み、ここで、Xは、V、L、またはIである。前述の実施形態のいずれかにおいて、本開示の本態様において、Xは、V、I、またはLである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、I、T、S、またはFである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、KまたはRである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、HまたはPである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、S、T、またはGである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、NまたはAである。
【0117】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号212の配列を含み、ここで、Xは、VまたはIである。前述の実施形態のいずれかにおいて、本開示の本態様において、Xは、VまたはIである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、IまたはFである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、KまたはRである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、HまたはPである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、SまたはTである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、NまたはAである。
【0118】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号212の配列を含み、ここで、Xは、Aである。前述の実施形態のいずれかにおいて、本開示の本態様において、Xは、Aであり、Xは、VまたはIである。前述の実施形態のいずれかにおいて、本開示の本態様において、Xは、Aであり、Xは、VまたはIである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、Aであり、Xは、IまたはFである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、Aであり、Xは、KまたはRである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、Aであり、Xは、HまたはPである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、Aであり、Xは、SまたはTである。
【0119】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号212の配列を含み、ここで、Xは、Aである。前述の実施形態のいずれかにおいて、本開示の本態様において、Xは、Aであり、Xは、Iである。前述の実施形態のいずれかにおいて、本開示の本態様において、Xは、Aであり、Xは、Iである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、Aであり、Xは、Fである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、Aであり、Xは、Rである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、Aであり、Xは、Pである。前述の実施形態のいずれかにおいて、Xは、Aであり、Xは、Tである。
【0120】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号212に対して、少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性)を有するSIRPα D1ドメインを含み、ここで、X、X、X、X、X、X、及びXのそれぞれは、野生型アミノ酸ではない。
【0121】
いくつかの実施形態において、本開示の本態様のポリペプチドは、配列番号2の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインに対して、10個以下のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、本開示の本態様のポリペプチドは、配列番号2の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインに対して、7個以下のアミノ酸置換を含む。
【0122】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号2の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインよりも少なくとも10倍大きい結合親和性でCD47に結合する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号2の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインよりも少なくとも100倍大きい結合親和性でCD47に結合する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号2の配列を有する野生型SIRPα D1ドメインよりも少なくとも1000倍大きい結合親和性でCD47に結合する。いくつかの実施形態において、断片は、10未満のアミノ酸長、約10アミノ酸長、約20アミノ酸長、約30アミノ酸長、約40アミノ酸長、約50アミノ酸長、約60アミノ酸長、約70アミノ酸長、約80アミノ酸長、約90アミノ酸長、約100アミノ酸長、または約100アミノ酸長超のポリペプチドを含む。断片は、CD47に結合する能力を保持している。好ましくは、SIRPα D1ドメイン変異体ポリペプチド及びその断片は、SIRPαポリペプチドがCD47に結合するよりも高い親和性でCD47に結合する。例えば、いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体ポリペプチドまたはその断片は、1×10-8M未満、5×10-9M未満、1×10-9M未満、5×10-10M未満、1×10-10M未満または1×10-11M未満のKでCD47に結合する。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体ポリペプチドまたはその断片は、約500nM~100nM、約100nM~50nM、約50nM~10nM、約10nM~5nM、約5nM~1nM、約1nM~500pM、約500pM~100pM、約100pM~50pM、または約50pM~10pMのKでCD47に結合する。
【0123】
いくつかの実施形態において、EEELQXIQPDKSVLVAAGETATLRCTXTSLXPVGPIQWFRGAGPGRXLIYNQXGXFPRVTTVSDXTKRNNMDFSIRIGX101112ADAGTYYCX13KFRKGSPDDVEFKSGAGTELSVRAKPS(配列番号218)に従う配列を有するSIRPα D1ドメイン変異体を含むポリペプチドが本明細書に記載され、ここで、XはV、L、またはIであり、XはA、V、L、またはIであり、XはI、S、T、またはFであり、XはE、L、またはVであり、XはKまたはRであり、XはEまたはQであり、XはH、R、またはPであり、XはS、G、L、またはTであり、Xは任意のアミノ酸であり、X10は任意のアミノ酸であり、X11は任意のアミノ酸であり、X12は任意のアミノ酸であり、X13はVまたはIであり、SIRPα D1ドメイン変異体は、配列番号1に従う配列を有する野生型SIRPα D1ドメインに対して、少なくとも2つのアミノ酸置換を含む。
【0124】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号212の配列を含み、ここで、X、Xは、Aである。前述の実施形態のいずれかにおいて、本開示の本態様において、Xは、Nである。前述の実施形態のいずれかにおいて、本開示の本態様において、X10は、Iである。前述の実施形態のいずれかにおいて、本開示の本態様において、Xは、Nであり、X10は、Pである。前述の実施形態のいずれかにおいて、本開示の本態様において、Xは、Nであり、X11は、S、T、またはC以外の任意のアミノ酸である。前述の実施形態のいずれかにおいて、本開示の本態様におい、X11は、Tである。前述の実施形態のいずれかにおいて、本開示の本態様において、X11は、T以外のアミノ酸である。前述の実施形態のいずれかにおいて、本開示の本態様において、X12は、Pである。前述の実施形態のいずれかにおいて、本開示の本態様において、Xは、Nであり、X12は、P以外の任意のアミノ酸である。
【0125】
いくつかの実施形態において、EEELQXIQPDKSVLVAAGETATLRCTXTSLXPVGPIQWFRGAGPGRXLIYNQXGXFPRVTTVSDXTKRNNMDFSIRIGXITX10ADAGTYYCX11KFRKGSPDDVEFKSGAGTELSVRAKPS(配列番号219)に従う配列を有するSIRPα D1ドメイン変異体を含むポリペプチドが本明細書に記載され、ここで、XはV、L、またはIであり、XはA、V、L、またはIであり、XはI、S、T、またはFであり、XはE、L、またはVであり、XはKまたはRであり、XはEまたはQであり、XはH、R、またはPであり、XはS、G、L、またはTであり、XはNであり、X10はP以外の任意のアミノ酸であり、X11はVまたはIであり、SIRPα D1ドメイン変異体は、配列番号1に従う配列を有する野生型SIRPα D1ドメインに対して、少なくとも2つのアミノ酸置換を含む。
【0126】
本開示の別の態様において、配列番号48のアミノ酸配列を有するSIRPα D1ドメイン変異体ポリペプチドまたはその断片を含む組成物が本明細書で開示される。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体ポリペプチドまたはその断片は、SIRPαポリペプチドがCD47に結合する親和性と比較して、より高い親和性でCD47に結合する。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体ポリペプチドは、1×10-8M未満、または1×10-9M未満、1×10-10M未満または1×10-11M未満のKでCD47に結合する。いくつかの実施形態において、上述のSIRPα D1ドメイン変異体ポリペプチドは、第2のポリペプチドに結合または融合される。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドは、限定するものではないが、Fcポリペプチド、Fc変異体または前述の断片を含む。
【0127】
前述に限定されることなく、いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体ポリペプチドは、表6に示される配列番号53~87及び213のいずれか1つから選択される。
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
【表6-4】
【表6-5】
【0128】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、表6に提供される任意の変異体に対して、少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性)を有するSIRPα D1変異体ドメインを含む。
【0129】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、表6中の配列番号80、81、または85に対して、少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性)を有するSIRPα D1ドメインを含む。
【0130】
Fcドメイン変異体及びそれを含む融合ポリペプチド
いくつかの実施形態において、野生型シグナル調節タンパク質α(SIRP-α)D1ドメイン(例えば、配列番号1または2に記載される野生型SIRPα D1ドメイン)に対して残基80におけるアミノ酸変異;ならびに野生型SIRPα D1ドメイン(例えば、配列番号1または2に記載される野生型SIRPα D1ドメイン)に対して残基6、残基27、残基31、残基47、残基53、残基54、残基56、残基66、及び残基92からなる群から選択される残基における少なくとも1つの追加のアミノ酸変異を有する、SIRPα D1ドメインまたはその断片を含むSIRPα D1変異体を含む、ポリペプチドが本明細書で開示される。
【0131】
また、いくつかの実施形態において、Fcドメイン変異体二量体が本明細書で開示され、ここで、Fcドメイン変異体二量体は、2つのFcドメイン変異体を含み、各Fcドメイン変異体は、独立して、(i)変異L234A、L235A、G237A、及びN297AからなるヒトIgG1 Fc領域;(ii)変異A330S、P331S及びN297AからなるヒトIgG2 Fc領域;または(iii)変異S228P、E233P、F234V、L235A、delG236、及びN297AからなるヒトIgG4 Fc領域から選択される。
【0132】
細胞表面抗原を標的とする抗体は、免疫細胞上のFc受容体(FcR)結合に付随する免疫活性化及びエフェクター機能を誘発し得る。IgG(ガンマ受容体)、IgE(イータ受容体)、IgA(アルファ受容体)及びIgM(ミュー受容体)を含む、特定の抗体クラスに特異的であるFc受容体が多数存在する。細胞表面上のFc受容体へのFc領域の結合は、多数の生物学的反応を誘発し得、当該反応には、抗体被覆粒子の食作用(抗体依存性細胞媒介性食作用またはADCP)、免疫複合体のクリアランス、キラー細胞による抗体被覆細胞の溶解(抗体依存性細胞媒介性細胞傷害またはADCC)及び炎症性メディエーターの放出、胎盤通過、及び免疫グロブリン産生の制御が含まれる。更に、補体のC1成分の抗体への結合は、補体系を活性化し得る。補体の活性化は、細胞病原体の溶解にとって重要であり得る。しかしながら、補体の活性化はまた、炎症反応を刺激することもあり、自己免疫過敏症または他の免疫疾患に関与することもある。ある特定のFc受容体に結合する能力を減少または消失させた変異Fc領域は、局所細胞または局所組織を損傷も破壊もさせずに、リガンド機能を標的化、活性化または中和することによって作用する治療用抗体及びFc融合ポリペプチドコンストラクトの開発に有用である。
【0133】
いくつかの実施形態において、SIRPα D1ポリペプチドコンストラクトは、エフェクター機能を消失または減少させたFcドメインを形成するFcドメイン変異体に連結された非天然に生じるSIRPα D1ドメイン変異体を含む。
【0134】
いくつかの実施形態において、Fcドメイン変異体は、第2及び第3の抗体定常ドメイン(例えば、CH2及びCH3)を含むポリペプチド鎖を指す。いくつかの実施形態において、Fcドメイン変異体はまた、ヒンジドメインを含む。いくつかの実施形態において、Fcドメイン変異体は、IgG、IgE、IgM、IgA、及びIgDを含む、任意の免疫グロブリン抗体アイソタイプのものである。更に、いくつかの実施形態において、Fcドメイン変異体は、任意のIgGサブタイプ(例えば、IgG1、IgG2、IgG2a、IgG2b、IgG2c、IgG3、及びIgG4)のものである。いくつかの実施形態において、Fcドメイン変異体は、野生型Fcドメイン単量体配列に対して、FcドメインとFc受容体との間の相互作用を変化させる10個ものアミノ酸修飾(例えば、挿入、欠失及び/または置換)(例えば、1~10、1~8、1~6、1~4個のアミノ酸の置換、付加もしくは挿入、欠失、またはこれらの組み合わせ)を含む。
【0135】
本明細書で使用される場合、「Fcドメイン二量体」という用語は、2つのFcドメインの二量体を指す。野生型Fcドメイン二量体において、2つの野生型Fcドメインは、2つのCH3抗体定常ドメイン間の相互作用、及び2つの二量体化Fcドメインのヒンジドメイン間に形成される1つ以上のジスルフィド結合によって、二量体化される。
【0136】
本明細書で使用される場合、「Fcドメイン二量体変異体」という用語は、少なくとも1つのFcドメイン変異体を含む。いくつかの実施形態において、Fcドメイン二量体変異体は、エフェクター機能を欠くように変異されたFcドメイン変異体、例えば、「デッドFcドメイン二量体変異体」を含む。いくつかの実施形態において、Fcドメイン二量体変異体中のFcドメインのそれぞれは、CH2抗体定常ドメイン中に、Fcドメイン二量体変異体とFcγ受容体(FcγR)、Fcα受容体(FcαR)、またはFcε(FcεR)などのFc受容体との間の相互作用または結合を減少させるアミノ酸置換を含む。
【0137】
いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体(例えば、表2、5、及び6に記載される変異体のいずれか)は、免疫グロブリンのFcドメイン変異体またはFcドメイン変異体の断片に融合される。いくつかの実施形態において、免疫グロブリンのFcドメイン変異体またはFcドメイン変異体の断片は、別のFcドメイン変異体とともにFcドメイン二量体を形成することができる。いくつかの実施形態において、免疫グロブリンのFcドメイン変異体またはFcドメイン変異体の断片は、別のFcドメイン変異体とともにFcドメイン二量体を形成することができない。いくつかの実施形態において、Fcドメイン変異体またはFcドメイン変異体の断片は、ポリペプチドの血清半減期を増加させるために、本開示のポリペプチドに融合される。いくつかの実施形態において、本開示のポリペプチドに融合されたFcドメイン変異体またはFcドメイン変異体の断片は、第2のFcドメイン変異体と二量体化して、Fc受容体に結合するFcドメイン二量体変異体を形成するか、あるいは、Fcドメイン変異体は、Fc受容体に結合する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドの血清半減期を増加させるためにポリペプチドに融合されたFcドメイン変異体またはFcドメイン変異体の断片は、いかなる免疫系関連反応も誘導しない。
【0138】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるSIRPαポリペプチドまたはコンストラクトは、第1のFcドメイン変異体に接続されたSIRPα D1ドメインまたはその変異体、及び第2のFcドメイン変異体に接続された抗体可変ドメインを含み、ここで、第1及び第2のFcドメイン変異体が結合してFcドメイン二量体変異体(例えば、ヘテロ二量体Fcドメイン二量体変異体)を形成する。Fcドメイン二量体は、免疫グロブリンのC末端に認められるタンパク質構造である。Fcドメイン二量体は、CH3抗体定常ドメイン間の相互作用によって二量体化される2つのFcドメインを含む。野生型Fcドメイン二量体は、Fc受容体、例えば、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIa、FcγRIIIb、及びFcγRIVに結合する最小構造を形成する。
【0139】
Fcドメイン二量体は、抗体のその標的への結合に直接関与しないが、抗体依存性の細胞毒性における抗体の関与などの様々なエフェクター機能に関与することができる。いくつかの実施形態において、本開示のSIRPαポリペプチドまたはコンストラクト中のFcドメインは、エフェクター機能の低下、例えば、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)の低下、補体依存性細胞溶解(CDC)の低下、抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)の低下、またはこれらの任意の組み合わせをもたらす、アミノ酸の置換、付加もしくは挿入、欠失、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、本開示のSIRPαポリペプチドまたはコンストラクトは、ヒトFc受容体に対する結合の低下(例えば、最小の結合または結合がないこと)及び補体タンパク質C1qに対する結合の低下(例えば、最小の結合または結合がないこと)を特徴とする。いくつかの実施形態において、本開示のSIRPαコンストラクトは、ヒトFcγRI、FcγRIIA、FcγRIIB、FcγRIIIB、またはこれらの任意の組み合わせ、及びC1qに対する結合の低下(例えば、最小の結合または結合がないこと)を特徴とする。ADCC、CDC、ADCP、またはこれらの任意の組み合わせなどの抗体依存性エフェクター機能を変更または減少させるために、いくつかの実施形態において、本開示のSIRPαコンストラクト中のFcドメインは、IgGクラスのものであり、E233、L234、L235、G236、G237、D265、D270、N297、E318、K320、K322、A327、A330、P331、またはP329における1つ以上のアミノ酸置換を含む(KabatのEUインデックスに従う番号付け(Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991)))。
【0140】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される非天然型Fc領域を含むポリペプチドコンストラクトは、天然型Fc領域を含むポリペプチドコンストラクトと比較して、Fcγ受容体CD16a、CD32a、CD32b、CD32c、及びCD64のうちの少なくとも1つへの結合の低下または消失を呈する。いくつかの場合において、本明細書に記載されるポリペプチドコンストラクトは、CD16a、CD32a、CD32b、CD32c、及びCD64のFcγ受容体に対する結合の低下または消失を呈する。
【0141】
CDCは、抗体Fcドメインに補体成分C1qが結合することによって補体カスケードが活性化される、細胞傷害の一形態を指す。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される非天然型Fc領域を含むポリペプチドコンストラクトは、野生型Fc領域を含むポリペプチドコンストラクトと比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上のC1q結合の減少を呈する。いくつかの場合において、本明細書に記載される非天然型Fc領域を含むポリペプチドコンストラクトは、野生型Fc領域を含むポリペプチドコンストラクトと比較して、CDCの減少を呈する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される非天然型Fc領域を含むポリペプチドコンストラクトは、野生型Fc領域を含むポリペプチドコンストラクトと比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上のCDCの減少を呈する。いくつかの場合において、本明細書に記載される非天然型Fcドメイン変異体またはFcドメイン二量体変異体を含むポリペプチドコンストラクトは、野生型Fc領域を含むポリペプチドコンストラクトと比較して、無視できる程度のCDCを呈する。
【0142】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるFcドメイン変異体またはFcドメイン二量体変異体は、野生型配列に対して、最小のグリコシル化であるか、減少したグリコシル化を有する。いくつかの実施形態において、脱グリコシル化は、N297Aの変異、またはN297をNではない任意のアミノ酸に変異させることによって達成される。いくつかの実施形態において、脱グリコシル化は、モチーフN-Xaa1-Xaa2-Xaa3(N=アスパラギン;Xaa1=P(プロリン)を除く任意のアミノ酸;Xaa2=T(トレオニン)、S(セリン)またはC(システイン);及びXaa3=P(プロリン)を除く任意のアミノ酸)を壊すことによって達成される。一実施形態において、N-Xaa1-Xaa2-Xaa3モチーフは、Kabat et al.,1991に従って指定される残基297~300を指す。いくつかの実施形態において、N、Xaa1、Xaa2、またはXaa3のうちいずれかの1つ以上に対する変異は、Fcドメイン変異体またはFcドメイン二量体変異体の脱グリコシル化をもたらす。
【0143】
いくつかの実施形態において、抗体IgG定常領域の変異体(例えば、Fcドメイン変異体またはFcドメイン二量体変異体)は、Fcγ受容体に特異的に結合する能力が減少しているか、または食作用を誘導する能力が減少している。いくつかの実施形態において、抗体IgG定常領域の変異体(例えば、Fcドメイン変異体またはFcドメイン二量体変異体)は、Fcγ受容体に特異的に結合する能力が減少しており、食作用を誘導する能力が減少している。例えば、いくつかの実施形態において、Fcドメイン変異体は、エフェクター機能を欠くように変異され、これは、「デッド」Fcドメイン変異体の典型である。例えば、いくつかの実施形態において、Fcドメイン変異体は、Fcドメイン二量体とFcγ受容体との間の相互作用を最小にすることが知られている特定のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、Fcドメイン変異体は、IgG1抗体に由来し、アミノ酸置換L234A、L235A、G237A、及びN297A(Kabat et al.,1991によるEU番号付けシステムに従って指定)のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の追加の変異が、そのようなIgG1 Fcドメイン変異体に含まれる。ヒトIgG1 Fcドメイン変異体に対するそのような追加の変異の非限定的な例としては、E318A及びK322Aが挙げられる。いくつかの場合において、ヒトIgG1 Fcドメイン変異体は、野生型ヒトIgG1配列と比較して、合計で最大12、11、10、9、8、7、6、5または4個以下の変異を有する。いくつかの実施形態において、1つ以上の追加の欠失が、そのようなIgG1 Fcドメイン変異体に含まれる。例えば、いくつかの実施形態において、例えば、ポリペプチドが細菌または哺乳動物細胞中で産生される場合、ポリペプチドの均一性を高めるために、表7中の配列番号88に提供されるFcドメインIgG1重鎖定常領域のC末端リシンが欠失される。いくつかの場合において、ヒトIgG1 Fcドメイン変異体は、野生型ヒトIgG1配列(例えば、以下の配列番号161参照)と比較して、合計で最大12、11、10、9、8、7、6、5または4個以下の欠失を有する。いくつかの実施形態において、IgG1 Fcドメイン変異体は、配列番号135、配列番号136または配列番号137のいずれか1つに従う配列を有する。
配列番号161:
DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
【0144】
いくつかの実施形態において、Fcドメイン変異体は、IgG2またはIgG4抗体に由来し、アミノ酸置換A330S、P331S、またはA330SとP331Sの両方を含む。前述のアミノ酸位置は、Kabat,et al.(1991)に従って定義される。所与の抗体に対するアミノ酸残基のKabat番号付けは、抗体の配列と「標準的な」Kabat番号付け配列との相同領域でのアラインメントによって決定され得る。いくつかの実施形態において、Fcドメイン変異体は、A330S、P331S及びN297Aのアミノ酸置換(Kabat et al.(1991)によるEU番号付けシステムに従って指定)のうちの1つ以上を含む、ヒトIgG2 Fcドメイン配列を含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の追加の変異が、そのようなIgG2 Fcドメイン変異体に含まれる。ヒトIgG2 Fcドメイン変異体に対するそのような追加の変異の非限定的な例としては、V234A、G237A、P238S、V309L及びH268A(Kabat et al.(1991)によるEU番号付けシステムに従って指定)が挙げられる。いくつかの場合において、ヒトIgG2 Fcドメイン変異体は、野生型ヒトIgG2配列と比較して、合計で最大12、11、10、9、8、7、6、5、4、3個またはそれ以下の変異を有する。いくつかの実施形態において、1つ以上の追加の欠失が、そのようなIgG2 Fcドメイン変異体に含まれる。例えば、いくつかの実施形態において、例えば、ポリペプチドが細菌または哺乳動物細胞中で産生される場合、ポリペプチドの均一性を高めるために、表7中の配列番号89に提供されるFcドメインIgG2重鎖定常領域のC末端リシンが欠失される。いくつかの場合において、ヒトIgG2 Fcドメイン変異体は、野生型ヒトIgG2配列(例えば、以下の配列番号162参照)と比較して、合計で最大12、11、10、9、8、7、6、5または4個以下の欠失を有する。
配列番号162:
ERKCCVECPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
【0145】
Fcドメイン変異体がIgG4 Fcドメイン変異体である場合、いくつかの実施形態において、そのようなFcドメイン変異体は、S228Pの変異(Kabat,et al.(1991)に従って指定)を含む。いくつかの場合において、ヒトIgG4 Fcドメイン変異体は、野生型ヒトIgG4配列と比較して、合計で最大12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個の変異(複数可)を有する。いくつかの実施形態において、Fcドメイン変異体は、S228P、E233P、F234V、L235A、及びdelG236のアミノ酸置換(Kabat et al.(1991)によるEU番号付けシステムに従って指定)のうちの1つ以上を含む、ヒトIgG4 Fc配列を含む。いくつかの実施形態において、Fcドメイン変異体は、S228P、E233P、F234V、L235A、delG236、及びN297Aのアミノ酸置換(Kabat et al.(1991)によるEU番号付けシステムに従って指定)のうちの1つ以上を含む、ヒトIgG4 Fc配列を含む。
【0146】
いくつかの実施形態において、Fcドメイン変異体は、IgG1 Fc領域の変異L234A、L235A、G237AもしくはN297Aのうちの少なくとも1つ、またはIgG2 Fc領域の変異A330S、P331SもしくはN297Aのうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態において、Fcドメイン変異体は、IgG1 Fc領域の変異L234A、L235A、G237AもしくはN297Aのうちの少なくとも2つ、またはIgG2 Fc領域の変異A330S、P331SもしくはN297Aのうちの少なくとも2つを含む。いくつかの実施形態において、Fcドメイン変異体は、IgG1 Fc領域の変異L234A、L235A、G237AもしくはN297Aのうちの少なくとも3つを含むか、またはIgG2 Fc領域の変異A330S、P331S及びN297Aからなる。いくつかの実施形態において、Fcドメイン変異体は、変異L234A、L235A、G237A及びN297Aからなる。
【0147】
いくつかの実施形態において、Fcドメイン変異体は、野生型ヒトIgG Fc領域と比較して、対象のFc受容体に対する結合の低下を呈する。いくつかの実施形態において、Fcドメイン変異体は、野生型ヒトIgG Fc領域と比較して、対象のFc受容体に対する結合の消失を呈する。いくつかの実施形態において、Fcドメイン変異体は、野生型ヒトIgG Fc領域と比較して、食作用の低下を呈する。いくつかの実施形態において、Fcドメイン変異体は、野生型ヒトIgG Fc領域と比較して、食作用の消失を呈する。
【0148】
配列番号88及び配列番号89は、FcドメインIgG1及びIgG2重鎖定常領域のアミノ酸配列を提供する。いくつかの実施形態において、Fcドメイン変異体は、表7に示される配列番号90~95の任意の変異体である。
【表7-1】
【表7-2】
【0149】
抗体依存性細胞媒介性細胞傷害は、本明細書においてADCCとも呼ばれ、ある特定の細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞及び好中球)上に存在するFc受容体(FcR)に分泌型Igが結合し、これにより、これらの細胞傷害性エフェクター細胞が抗原担持標的細胞に特異的に結合し、続いて、その標的細胞を死滅させることを可能にする、細胞傷害の一形態を指す。抗体依存性細胞媒介性食作用は、本明細書においてADCPとも呼ばれ、ある特定の食細胞(例えば、マクロファージ)上に存在するFc受容体(FcR)に分泌型Igが結合し、これにより、食作用エフェクター細胞が抗原担持標的細胞に特異的に結合し、続いて、その標的細胞を取り込み、消化することを可能にする、細胞傷害の一形態を指す。標的細胞の表面に対するリガンド特異的高親和性IgG抗体は、細胞傷害性細胞または食細胞を刺激することができ、かかる死滅に使用することができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるFcドメイン変異体またはFcドメイン二量体変異体を含むポリペプチドコンストラクトは、野生型Fc領域を含むポリペプチドコンストラクトと比較して、ADCCまたはADCPの減少を呈する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるFcドメイン変異体またはFcドメイン二量体変異体を含むポリペプチドコンストラクトは、野生型Fc領域を含むポリペプチドコンストラクトと比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上のADCCまたはADCPの減少を呈する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるFcドメイン変異体またはFcドメイン二量体変異体を含むポリペプチドコンストラクトは、野生型Fc領域を含むポリペプチドコンストラクトと比較して、ADCCまたはADCPの消失を呈する。
【0150】
補体依存性細胞傷害は、本明細書においてCDCとも呼ばれ、抗体Fcドメインに補体成分C1qが結合することによって補体カスケードが活性化される、細胞傷害の一形態を指す。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるFcドメイン変異体またはFcドメイン二量体変異体を含むポリペプチドコンストラクトは、野生型Fc領域を含むポリペプチドコンストラクトと比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上のC1q結合の減少を呈する。いくつかの場合において、本明細書に記載されるFcドメイン変異体またはFcドメイン二量体変異体を含むポリペプチドコンストラクトは、野生型Fc領域を含むポリペプチドコンストラクトと比較して、CDCの減少を呈する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるFcドメイン変異体またはFcドメイン二量体変異体を含むポリペプチドコンストラクトは、野生型Fc領域を含むポリペプチドコンストラクトと比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上のCDCの減少を呈する。いくつかの場合において、本明細書に記載されるFcドメイン変異体またはFcドメイン二量体変異体を含むポリペプチドコンストラクトは、野生型Fc領域を含むポリペプチドコンストラクトと比較して、無視できる程度のCDCを呈する。
【0151】
本明細書におけるFcドメイン変異体またはFcドメイン二量体変異体は、野生型ヒトIgG Fc領域と比較して、Fcγ受容体に対する結合の減少を呈するものを含む。例えば、いくつかの実施形態において、Fcドメイン変異体またはFcドメイン二量体変異体は、実施例に記載されるように、Fcγ受容体への結合が、野生型ヒトIgG Fc領域のFcγ受容体によって示される結合よりも小さい。いくつかの場合において、Fcドメイン変異体またはFcドメイン二量体変異体は、Fcγ受容体に対する結合を、10%、20% 30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%(エフェクター機能が完全に消失)低下させる。いくつかの実施形態において、結合の低下は、いずれか1つ以上のFcγ受容体、例えば、CD16a、CD32a、CD32b、CD32c、またはCD64に対するものである。
【0152】
いくつかの場合において、本明細書で開示されるFcドメイン変異体またはFcドメイン二量体変異体は、その野生型ヒトIgG Fc領域と比較して、食作用の低下を呈する。そのようなFcドメイン変異体またはFcドメイン二量体変異体は、その野生型ヒトIgG Fc領域と比較して、食作用の低下を呈し、ここで、食作用活性の低下は、例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%である。いくつかの場合において、Fcドメイン変異体またはFcドメイン二量体変異体は、その野生型ヒトIgG Fc領域と比較して、食作用の消失を呈する。
【0153】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示されるFcドメイン変異体またはFcドメイン二量体変異体は、1つ以上の融合パートナーに結合される。場合によって、融合パートナーは、治療用部分である。いくつかの場合において、融合パートナーは、発現されるタンパク質の標的化、精製、スクリーニング、ディスプレイなどを可能にするように選択される。いくつかの実施形態において、融合パートナーはまた、Fc受容体への結合の程度または食作用の低下の程度に影響する。本明細書に記載されるように、いくつかの実施形態において、Fcドメイン変異体またはFcドメイン二量体変異体が融合パートナーに結合される場合、以下に記載されるようなポリペプチドコンストラクトを形成する。
【0154】
いくつかの実施形態において、融合パートナーは、Fcドメイン変異体またはFcドメイン二量体変異体配列にリンカー配列を介して連結される。いくつかの実施形態において、リンカー配列は、一般に、10アミノ酸未満などの少数のアミノ酸を含むが、それより長いリンカーも利用される。いくつかの場合において、リンカーは、10、9、8、7、6、もしくは5アミノ酸長またはそれより短いアミノ酸長を有する。いくつかの場合において、リンカーは、少なくとも10、11、12、13、14、15、20、25、30もしくは35アミノ酸長またはそれより長いアミノ酸長を有する。任意選択により、いくつかの実施形態において、切断可能なリンカーが利用される。
【0155】
いくつかの実施形態において、融合パートナーは、Fcドメイン変異体またはFcドメイン二量体変異体タンパク質及び任意の関連する融合パートナーを、所望の細胞位置または細胞外培地に誘導する、ターゲット配列またはシグナル配列である。いくつかの実施形態において、ある特定のシグナル伝達配列は、タンパク質を成長培地中、または細胞膜の内膜と外膜との間に位置するペリプラズム中に分泌されるようにする。いくつかの実施形態において、融合パートナーは、精製またはスクリーニングを可能にするペプチドまたはタンパク質をコードする配列である。そのような融合パートナーには、ポリヒスチジンタグ(Hisタグ)(例えば、His6(配列番号223)及びHis10(配列番号224))または固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)システム(例えば、Ni+2アフィニティーカラム)で使用される他のタグ、GST融合物、MBP融合物、Strepタグ、細菌酵素BirAのBSPビオチン化標的配列、及び抗体の標的になるエピトープタグ(例えば、c-mycタグ、flagタグなど)が含まれるが、これらに限定されない。
【0156】
いくつかの実施形態において、そのようなタグは、精製、スクリーニング、またはその両方に有用である。例えば、いくつかの実施形態において、Fcドメイン変異体またはFcドメイン二量体変異体は、Hisタグを使用してNi+2アフィニティーカラムに固定化することによって精製し、次に、精製した後、同じHisタグを使用して、Ni+2をコーティングしたプレートに抗体を固定化し、ELISAまたは本明細書に別途記載される他の結合アッセイを実施する。いくつかの実施形態において、融合パートナーにより、本明細書に記載されるFcドメイン変異体またはFcドメイン二量体変異体をスクリーニングするための選択方法の使用が可能になる。
【0157】
様々な選択方法を可能にする様々な融合パートナーが利用可能である。例えば、Fcドメイン変異体またはFcドメイン二量体変異体ライブラリーのメンバーをgene IIIタンパク質に融合させることによる、ファージディスプレイを利用することができる。いくつかの実施形態において、融合パートナーFcドメイン変異体またはFcドメイン二量体変異体は標識される。あるいは、いくつかの実施形態において、融合パートナーは、発現ベクター上の特定の配列に結合し、これにより、融合パートナー及び関連するFcドメイン変異体またはFcドメイン二量体変異体が、それらをコードする核酸と共有結合または非共有結合的に連結可能となる。
【0158】
いくつかの実施形態において、融合パートナーが治療用部分である場合、治療用部分は、例えば、ペプチド、タンパク質、抗体、siRNA、または低分子である。本開示のFcドメイン変異体またはFcドメイン二量体変異体に結合される治療用抗体の非限定的な例としては、CD47を認識する抗体が挙げられるが、これらに限定されない。本開示のFcドメイン変異体またはFcドメイン二量体変異体に結合される治療用ポリペプチドの非限定的な例としては、SIRPαポリペプチドを含むCD47結合ポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。そのような場合、CD47結合ポリペプチドは、本開示のFcドメイン変異体またはFcドメイン二量体変異体に結合または融合される。CD47結合ポリペプチドの例としては、抗CD47抗体またはその断片、及びSIRPαまたはその断片などのCD47のリガンドが挙げられるが、これらに限定されない。CD47結合ポリペプチドの更なる例としては、SIRPαの天然に生じる形態及びその変異体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0159】
いくつかの実施形態において、Fcドメイン二量体変異体を含むポリペプチドが本明細書で開示され、ここで、Fcドメイン二量体変異体は、2つのFcドメイン変異体を含み、各Fcドメイン変異体は、独立して、(i)変異L234A、L235A、G237A、及びN297AからなるヒトIgG1 Fc領域;(ii)変異A330S、P331S及びN297AからなるヒトIgG2 Fc領域;または(iii)変異S228P、E233P、F234V、L235A、delG236、及びN297AからなるヒトIgG4 Fc領域から選択される。いくつかの実施形態において、Fcドメイン変異体は、同一である(すなわち、ホモ二量体)。いくつかの実施形態において、Fcドメイン変異体は、異なる(すなわち、ヘテロ二量体)。いくつかの実施形態において、Fcドメイン二量体のFcドメイン変異体のうちの少なくとも1つは、変異L234A、L235A、G237A、及びN297AからなるヒトIgG1 Fc領域である。いくつかの実施形態において、Fcドメイン二量体のFcドメイン変異体のうちの少なくとも1つは、変異A330S、P331S及びN297AからなるヒトIgG2 Fc領域である。いくつかの実施形態において、Fcドメイン二量体変異体は、ヒトIgG Fc領域の野生型バージョンと比較して、Fcγ受容体に対する結合の消失または減少を呈する。いくつかの実施形態において、Fcドメイン二量体変異体は、ヒトIgG Fc領域の野生型バージョンと比較して、CD16a、CD32a、CD32b、CD32c、及びCD64のFcγ受容体に対する結合の消失または減少を呈する。いくつかの実施形態において、Fcドメイン二量体変異体は、ヒトIgG Fc融合体の野生型バージョンと比較して、C1qに対する結合の消失または減少を呈する。いくつかの実施形態において、Fcドメイン二量体変異体のFcドメイン変異体のうちの少なくとも1つは、変異S228P、E233P、F234V、L235A、delG236、及びN297Aを含むヒトIgG4 Fc領域である。いくつかの実施形態において、Fcドメイン二量体変異体は、野生型ヒトIgG4 Fc領域と比較して、Fcγ受容体に対する結合の消失または減少を呈する。いくつかの実施形態において、Fcドメイン二量体変異体は、そのヒトIgG4 Fc領域の野生型バージョンと比較して、CD16a及びCD32bのFcγ受容体に対する結合の消失または減少を呈する。いくつかの実施形態において、Fcドメイン二量体変異体は、約5×10-6Mよりも大きいKDでFcγ受容体に結合する。
【0160】
いくつかの実施形態において、Fcドメイン二量体変異体は、CD47結合ポリペプチドを更に含む。いくつかの実施形態において、Fcドメイン二量体変異体は、ヒトIgG Fc領域の野生型バージョンと比較して、Fcγ受容体に対する結合の消失または減少を呈する。いくつかの実施形態において、CD47結合ポリペプチドは、齧歯類及び非ヒト霊長類において、急性貧血を引き起こさない。いくつかの実施形態において、CD47結合ポリペプチドは、ヒトにおいて、急性貧血を引き起こさない。
【0161】
いくつかの実施形態において、CD47結合ポリペプチドは、シグナル調節タンパク質α(SIRP-α)ポリペプチドまたはその断片である。いくつかの実施形態において、SIRPαポリペプチドは、アミノ酸配列EEELQX1IQPDKSVLVAAGETATLRCTX2TSLX3PVGPIQWFRGAGPGRX4LIYNQX5EGX6FPRVTTVSDX7TKRNNMDFSIRIGX8ITPADAGTYYCX9KFRKGSPDDVEFKSGAGTELSVRAKPS(配列番号221)を含むSIRPα D1ドメイン変異体を含み、ここで、X1はVまたはIであり、X2はAまたはIであり、X3はIまたはFであり、X4はEまたはVであり、X5はKまたはRであり、X6はHまたはPであり、X7はLまたはTであり、X8はN以外の任意のアミノ酸であり、X9はVまたはIである。いくつかの実施形態において、SIRPαポリペプチドは、X1がVまたはIであり、X2がAまたはIであり、X3がIまたはFであり、X4がEであり、X5がKまたはRであり、X6がHまたはPであり、X7がLまたはTであり、X8がNではなく、X9がVである、SIRPα D1ドメイン変異体を含む。
【0162】
いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体であって、SIRPα D1ドメイン変異体は、非天然に生じる高親和性SIRPα D1ドメインであり、SIRPα D1ドメイン変異体は、天然に生じるD1ドメインの親和性よりも少なくとも10倍大きい親和性でヒトCD47に結合するSIRPα D1ドメイン変異体と、Fcドメイン変異体であって、Fcドメイン変異体は、第2のFcドメイン変異体を含む第2のポリペプチドと連結されてFcドメイン二量体変異体を形成し、Fcドメイン二量体変異体は、エフェクター機能の消失または減少を有する、Fcドメイン変異体とを含む、ポリペプチドが本明細書で開示される。いくつかの実施形態において、非天然に生じる高親和性SIRPα D1ドメインは、残基80にアミノ酸変異を含む。
【0163】
いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体が本明細書で開示され、ここで、SIRPα D1ドメイン変異体は、250nM未満のKDで第1の種に由来するCD47に結合し、SIRPα D1ドメイン変異体は、250nM未満のKDで第2の種に由来するCD47に結合し、第1の種に由来するCD47のKD及び第2の種に由来するCD47のKDは、互いに100倍以内であり、第1の種及び第2の種は、ヒト、齧歯類、及び非ヒト霊長類からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体は、少なくとも3つの異なる種に由来するCD47に結合する。いくつかの実施形態において、非ヒト霊長類は、カニクイザルである。
【0164】
いくつかの実施形態において、(a)250nM未満のKDでヒトCD47に結合するSIRPα D1ドメインと、(b)SIRPα D1ドメインのN末端またはC末端に連結されたFcドメインまたはその変異体とを含む、ポリペプチドであって、齧歯類及び非ヒト霊長類で急性貧血を引き起こさないポリペプチドが本明細書で開示される。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、非天然に生じるヒトSIRP-αの変異体である。いくつかの実施形態において、ポリペプチドのin vivoでの投与は、投与後の最初の1週間の間、50%未満のヘモグロビン減少をもたらす。いくつかの実施形態において、ポリペプチドのヒトでの投与は、投与後の最初の1週間の間、50%未満のヘモグロビン減少をもたらす。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、少なくとも1つのFcドメイン二量体変異体を更に含み、ここで、Fcドメイン二量体変異体は、(i)変異L234A、L235A、G237A、及びN297AからなるヒトIgG1 Fc領域;(ii)変異A330S、P331S及びN297AからなるヒトIgG2 Fc領域;または(iii)変異S228P、E233P、F234V、L235A、delG236、及びN297AからなるヒトIgG4 Fc領域から選択されるFcドメイン変異体を含む。いくつかの実施形態において、Fcドメイン変異体は、変異L234A、L235A、G237A、及びN297AからなるヒトIgG1 Fc領域である。いくつかの実施形態において、Fcドメイン変異体は、変異A330S、P331S及びN297AからなるヒトIgG2Fc領域である。
【0165】
本開示のSIRPαコンストラクトは、従来の遺伝子的または化学的手段、例えば、化学コンジュゲーションを使用して、リンカーにより、Fcドメインまたはその変異体のN末端にC末端が接続されたSIRPαドメインまたはその変異体を含む。いくつかの実施形態において、リンカー(例えば、スペーサー)は、ポリペプチドとFcドメインまたはその変異体との間に挿入される。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体を含む本開示のポリペプチドは、二量体の形成が不可能なFcドメイン変異体に融合される。いくつかの実施形態において、本開示のポリペプチドは、別のFcドメインまたはその変異体との二量体、例えば、ヘテロ二量体を形成することが可能なFcドメインまたはその変異体に融合される。いくつかの実施形態において、本発明のポリペプチドは、Fcドメインまたはその変異体に融合され、この融合タンパク質は、ホモ二量体を形成する。いくつかの実施形態において、本開示のポリペプチドは、第1のFcドメインまたはその変異体に融合され、異なるタンパク質またはペプチド(例えば、抗体可変領域)は、第2のFcドメインまたはその変異体に融合される。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメインまたはその変異体は、第1のFcドメインまたはその変異体に接続され、治療用タンパク質(例えば、サイトカイン、インターロイキン、抗原、ステロイド、抗炎症剤、または免疫調節剤)は、第2のFcドメインまたはその変異体に接続される。いくつかの実施形態において、第1及び第2のFcドメインまたはその変異体は、ヘテロ二量体を形成する。
【0166】
前述に限定されることなく、いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体ポリペプチド(例えば、表2、5、及び6に記載される変異体のいずれか)は、Fcドメインまたはその変異体などのFcポリペプチドまたはFc変異体ポリペプチドに融合される。SIRPα D1ドメイン変異体ポリペプチド及び融合されたFcドメイン変異体ポリペプチドを含むポリペプチドの例としては、表8に示される配列番号96~137、214、及び216が挙げられるが、これらに限定されない。
【表8-1】
【表8-2】
【表8-3】
【表8-4】
【表8-5】
【表8-6】
【表8-7】
【表8-8】
【表8-9】
【表8-10】
【0167】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、表8に提供される任意の変異体に対して、少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性)を有するSIRPα D1変異体ドメインを含む。
【0168】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、表8中の配列番号98~104、107~113、116~122、または135~137に対して、少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性)を有するSIRPα D1ドメイン変異体を含む。
【0169】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、(a)シグナル調節タンパク質α(SIRP-α)D1変異体であって、SIRPα D1ドメイン変異体は、アミノ酸配列EEXQXIQPDKXVXVAAGEXLXCTX10TSLX11PVGPIQWFRGAGPX12RX13LIYNQX1415GX16FPRVTTVSX1718TX19RX20NMDFX21IX22IX2324ITX25ADAGTYYCX26KX27RKGSPDX2829EX30KSGAGTELSVRX31KPS(配列番号47)を含み、ここで、XはE、またはGであり、XはL、I、またはVであり、XはV、L、またはIであり、XはS、またはFであり、XはL、またはSであり、XはS、またはTであり、XはA、またはVであり、XはI、またはTであり、XはH、R、またはLであり、X10はA、V、I、またはLであり、X11はI、T、S、またはFであり、X12はA、またはGであり、X13はE、V、またはLであり、X14はK、またはRであり、X15はE、またはQであり、X16はH、P、またはRであり、X17はD、またはEであり、X18はS、L、T、またはGであり、X19はK、またはRであり、X20はE、またはNであり、X21はS、またはPであり、X22はS、またはRであり、X23はS、またはGであり、X24は任意のアミノ酸であり、X25は任意のアミノ酸であり、X26はV、またはIであり、X27はF、L、またはVであり、X28はDまたは不在であり、X29はT、またはVであり、X30はF、またはVであり、X31はA、またはGであり、SIRPα D1ドメイン変異体は、配列番号1~10のいずれか1つによる配列を有する野生型SIRPα D1ドメインに対して少なくとも2つのアミノ酸置換を含む、SIRPα D1変異体と、(b)2つのFcドメイン変異体を有するFcドメイン二量体変異体であって、各Fcドメイン変異体は、独立して、(i)N297A変異を含むヒトIgG1 Fc領域;(ii)L234A、L235A、及びG237A変異を含むヒトIgG1 Fc領域;(iii)L234A、L235A、G237A、及びN297A変異を含むヒトIgG1 Fc領域;(iv)N297A変異を含むヒトIgG2 Fc領域;(v)A330S及びP331S変異を含むヒトIgG2 Fc領域;(vi)A330S、P331S、及びN297A変異を含むヒトIgG2 Fc領域;(vii)S228P、E233P、F234V、L235A、及びdelG236変異を含むヒトIgG4 Fc領域;または(viii)S228P、E233P、F234V、L235A、delG236、及びN297A変異を含むヒトIgG4 Fc領域である、Fcドメイン二量体変異体とを含む。
【0170】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、SIRPα D1ドメイン変異体を含み、ここで、SIRPα D1ドメイン変異体は、配列番号47に従うアミノ酸配列を含み、2つのFcドメインを有するFcドメイン二量体であって、Fcドメインの1つは、L234A、L235A、G237A、及びN297A変異を含むヒトIgG1 Fc領域を含むFcドメイン変異体である。
【0171】
Fcドメインの二量体化
いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体ポリペプチド(例えば、表2、5、及び6に記載される変異体のいずれか)は、N末端またはC末端のいずれかで、第1のFcドメイン(例えば、Fcドメイン変異体)に融合される。いくつかの実施形態において、第1のFcドメインは、二量体を形成することができない変異体である。いくつかの実施形態において、第1のFcドメインは、第2のFcドメインと二量体を形成する。いくつかの実施形態において、第1及び第2のFcドメインは、第1と第2のドメインFcドメイン間のヘテロ二量体化を促進するアミノ酸置換を含む。
【0172】
いくつかの実施形態において、Fcドメイン二量体の2つのFcドメインのそれぞれは、2つの単量体のヘテロ二量体化を促進するアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、SIRPαコンストラクトは、例えば、第1のFcドメインに融合されたSIRPα D1ドメイン変異体ポリペプチドを含む第1のサブユニット、及び第2のFcドメインを含む第2のサブユニット(例えば、SIRPα D1ドメイン変異体ポリペプチドまたは任意の他のポリペプチドを含まない)から形成される。いくつかの実施形態において、コンストラクトは、Fcドメイン二量体に連結された単一のSIRPα D1ドメイン変異体ポリペプチドを有する(例えば、シングルアーム)。いくつかの実施形態において、コンストラクトは、Fcドメイン二量体に連結された2つのSIRPα D1ドメイン変異体ポリペプチドを有する(例えば、ダブルアーム)。いくつかの実施形態において、約500nMのKDを有するSIRPα D1ドメイン変異体は、ダブルアームコンストラクトに特に有用である。いくつかの実施形態において、約50nMのKDを有するSIRPα D1ドメイン変異体は、ダブルアームコンストラクトに特に有用である。いくつかの実施形態において、約5nMのKDを有するSIRPα D1ドメイン変異体は、ダブルアームコンストラクト及びシングルアームコンストラクトに有用である。いくつかの実施形態において、約500pMのKDを有するSIRPα D1ドメイン変異体は、ダブルアームコンストラクト及びシングルアームコンストラクトに有用である。いくつかの実施形態において、約100pMのKDを有するSIRPα D1ドメイン変異体は、ダブルアームコンストラクト及びシングルアームコンストラクトに有用である。いくつかの実施形態において、約50pMのKDを有するSIRPα D1ドメイン変異体は、ダブルアームコンストラクト及びシングルアームコンストラクトに有用である。いくつかの実施形態において、約10pMのKDを有するSIRPα D1ドメイン変異体は、ダブルアームコンストラクト及びシングルアームコンストラクトに有用である。
【0173】
いくつかの実施形態において、Fcドメインのヘテロ二量体化は、「ノブ・イントゥ・ホール」残基ペア及び電荷残基ペアなど、2つのFcドメインに、異なるが適合する置換を導入することによって促進される。ノブとホールの相互作用は、ヘテロ二量体形成に有利であるが、ノブとノブ及びホールとホールの相互作用は、立体的衝突及び好ましい相互作用の欠如により、ホモ二量体形成を妨害する。ホールは、タンパク質中の元のアミノ酸を、より小さい側鎖体積を有する異なるアミノ酸で置き換えたときに生じる空隙を指す。ノブは、タンパク質中の元のアミノ酸を、より大きい側鎖体積を有する異なるアミノ酸で置き換えたときに生じる突起を指す。例えば、いくつかの実施形態において、置き換えられるアミノ酸は、FcドメインのCH3抗体定常ドメイン中にあり、2つのFcドメインの二量体化に関与する。いくつかの実施形態において、一方のCH3抗体定常ドメイン中に、他方のCH3抗体定常ドメイン中のノブを収容するようにホールを形成する。これにより、ノブとホールのアミノ酸が2つのFcドメインのヘテロ二量体化を促進または支持するように作用する。いくつかの実施形態において、一方のCH3抗体定常ドメイン中のホールは、他方のCH3抗体定常ドメイン中の元のアミノ酸をより良好に収容するように作成される。いくつかの実施形態において、一方のCH3抗体定常ドメイン中のノブは、他方のCH3抗体定常ドメイン中の元のアミノ酸と更なる相互作用を形成するように作成される。
【0174】
いくつかの実施形態において、ホールは、CH3抗体定常ドメイン中のチロシンまたはトリプトファンなどのより大きな側鎖を有するアミノ酸を、アラニン、バリンまたはトレオニンなどのより小さな側鎖を有するアミノ酸で置き換えることによって構築される(例えば、Y407V変異)。同様に、いくつかの実施形態において、ノブは、CH3抗体定常ドメイン中のより小さな側鎖を有するアミノ酸を、より大きな側鎖を有するアミノ酸で置き換えることによって構築される(例えば、T366W変異)。いくつかの実施形態において、一方のFcドメインは、ノブ変異T366Wを含み、他方のFcドメインは、ホール変異T366S、L358A及びY407Vを含む。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体を含む本開示のポリペプチドは、ノブ変異T366Wを含むFcドメインに融合させて、望ましくないノブ-ノブホモ二量体形成を制限する。ノブ・イントゥ・ホールアミノ酸ペアの例としては、限定するものではないが、表9のものが挙げられ、ノブ・イントゥ・ホールFcドメイン変異体及びSIRPα-Fc融合体の例は、表10に記載される。
【表9】
【表10-1】
【表10-2】
【表10-3】
【0175】
ノブ・イントゥ・ホール戦略に加えて、いくつかの実施形態において、静電的ステアリングもFcドメインの二量体化を制御するために使用される。静電的ステアリングは、ペプチド、タンパク質ドメイン、及びタンパク質中の相反する荷電アミノ酸間の好ましい静電相互作用を利用して、より高次のタンパク質分子の形成を制御することを指す。特に、静電的ステアリングを使用して、Fcドメインの二量体化を制御するためには、CH3-CH3界面を構成する1つ以上のアミノ酸残基を正または負に荷電したアミノ酸残基に置き換え、それにより、導入される特定の荷電アミノ酸に応じて、相互作用が静電的に有利または不利になるようにする。いくつかの実施形態において、界面上のリシン、アルギニン、またはヒスチジンなどの正に荷電したアミノ酸は、アスパラギン酸またはグルタミン酸などの負に荷電したアミノ酸で置き換えられる。いくつかの実施形態において、界面上の負に荷電したアミノ酸が正に荷電したアミノ酸で置き換えられる。いくつかの実施形態において、荷電アミノ酸は、相互作用するCH3抗体定常ドメインの一方、または両方に導入される。いくつかの実施形態において、相互作用する2つのFcドメインのCH3抗体定常ドメインに荷電アミノ酸を導入すると、荷電アミノ酸間の相互作用から生じる静電的ステアリング作用によって制御され、Fcドメインのヘテロ二量体の選択的形成が促進される。静電的ステアリングアミノ酸ペアの例としては、限定するものではないが、表11のものが挙げられる。
【表11】
【0176】
特に、二重特異性抗体を構築する文脈においては、Fcドメインのヘテロ二量体化を制御するために使用される他の方法も利用可能である。
【0177】
いくつかの実施形態において、第1のFcドメイン及び第2のFcドメインは、それぞれ、ヒトIgG1の配列に対して、次のアミノ酸置換:T366W、T366S、L368A、Y407V、T366Y、T394W、F405W、Y349T、Y349E、Y349V、L351T、L351H、L351N、L351K、P353S、S354D、D356K、D356R、D356S、E357K、E357R、E357Q、S364A、T366E、L368T、L368Y、L368E、K370E、K370D、K370Q、K392E、K392D、T394N、P395N、P396T、V397T、V397Q、L398T、D399K、D399R、D399N、F405T、F405H、F405R、Y407T、Y407H、Y407I、K409E、K409D、K409T、及びK409Iのうちの1つ以上を含む。
【0178】
いくつかの実施形態において、Fcドメインは、(a)野生型ヒトIgG1に対して、次のアミノ酸置換:T366W、T366S、L368A、Y407V、T366Y、T394W、F405W、Y349T、Y349E、Y349V、L351T、L351H、L351N、L351K、P353S、S354D、D356K、D356R、D356S、E357K、E357R、E357Q、S364A、T366E、L368T、L368Y、L368E、K370E、K370D、K370Q、K392E、K392D、T394N、P395N、P396T、V397T、V397Q、L398T、D399K、D399R、D399N、F405T、F405H、F405R、Y407T、Y407H、Y407I、K409E、K409D、K409T、もしくはK409Iのうちの1つ、または(b)(i)ヒトIgG1 Fc領域に対して、N297Aの変異;(ii)ヒトIgG1 Fc領域に対して、L234A、L235A、及びG237Aの変異;(iii)ヒトIgG1 Fc領域に対して、L234A、L235A、G237A、及びN297Aの変異;(iv)ヒトIgG2 Fc領域に対して、N297Aの変異;(v)ヒトIgG2 Fc領域に対して、A330S及びP331Sの変異;(vi)ヒトIgG2 Fc領域に対して、A330S、P331S、及びN297Aの変異;(vii)ヒトIgG4 Fc領域に対して、S228P、E233P、F234V、L235A、及びdelG236の変異;もしくは(viii)ヒトIgG4 Fc領域に対して、S228P、E233P、F234V、L235A、delG236、及びN297Aの変異を含む。いくつかの実施形態において、Fcドメイン変異体は、(a)野生型ヒトIgG1に対して、次のアミノ酸置換:T366W、T366S、L368A、Y407V、T366Y、T394W、F405W、Y349T、Y349E、Y349V、L351T、L351H、L351N、L351K、P353S、S354D、D356K、D356R、D356S、E357K、E357R、E357Q、S364A、T366E、L368T、L368Y、L368E、K370E、K370D、K370Q、K392E、K392D、T394N、P395N、P396T、V397T、V397Q、L398T、D399K、D399R、D399N、F405T、F405H、F405R、Y407T、Y407H、Y407I、K409E、K409D、K409T、もしくはK409Iのうちの1つを含み、(b)(i)ヒトIgG1 Fc領域に対して、N297Aの変異;(ii)ヒトIgG1 Fc領域に対して、L234A、L235A、及びG237Aの変異;(iii)ヒトIgG1 Fc領域に対して、L234A、L235A、G237A、及びN297Aの変異;(iv)ヒトIgG2 Fc領域に対して、N297Aの変異;(v)ヒトIgG2 Fc領域に対して、A330S及びP331Sの変異;(vi)ヒトIgG2 Fc領域に対して、A330S、P331S、及びN297Aの変異;(vii)ヒトIgG4 Fc領域に対して、S228P、E233P、F234V、L235A、及びdelG236の変異;もしくは(viii)ヒトIgG4 Fc領域に対して、S228P、E233P、F234V、L235A、delG236、及びN297Aの変異を更に含む。
【0179】
いくつかの実施形態において、第1及び第2のFcドメインは、異なるアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、第1のFcドメインは、T366Wを含む。いくつかの実施形態において、第2のFcドメインは、T366S、L368A、及びY407Vを含む。いくつかの実施形態において、第1のFcドメインは、D399Kを含む。いくつかの実施形態において、第2のFcドメインは、K409Dを含む。
【0180】
リンカー
いくつかの実施形態において、野生型シグナル調節タンパク質α(SIRP-α)D1ドメインに対して残基80におけるアミノ酸変異;ならびに野生型SIRPα D1ドメインに対して残基6、残基27、残基31、残基47、残基53、残基54、残基56、残基66、及び残基92からなる群から選択される残基における少なくとも1つの追加のアミノ酸変異を有する、SIRPα D1ドメインまたはその断片を含むSIRPα D1変異体を含む、ポリペプチドが本明細書で開示される。
【0181】
また、いくつかの実施形態において、Fc変異体を含むポリペプチドが本明細書で開示され、ここで、Fc変異体は、2つのFcドメイン変異体を含むFcドメイン二量体を含み、各Fcドメイン変異体は、独立して、(i)変異L234A、L235A、G237A、及びN297AからなるヒトIgG1 Fc領域;(ii)変異A330S、P331S及びN297AからなるヒトIgG2 Fc領域;または(iii)変異S228P、E233P、F234V、L235A、delG236、及びN297Aを含むヒトIgG4 Fc領域から選択される。
【0182】
本開示において、リンカーは、ポリペプチドまたはタンパク質ドメインまたは関連する非タンパク質部分の間の連結または接続を記載するために使用される。いくつかの実施形態において、リンカーは、Fcドメイン(またはその変異体)とSIRPα D1ドメイン変異体との間の連結または接続である。いくつかの実施形態において、リンカーは、2つのポリペプチドが互いにタンデム状に接続されるように、SIRPα D1ドメイン変異体のC末端とFcドメイン変異体のN末端とを接続する。
【0183】
いくつかの実施形態において、リンカーは、単純な共有結合、例えば、ペプチド結合、合成ポリマー、または化学反応、例えば、化学コンジュゲーションから生成される任意の種類の結合である。リンカーがペプチド結合である場合、いくつかの実施形態において、あるタンパク質ドメインのC末端のカルボン酸基が別のタンパク質ドメインのN末端のアミノ基と縮合反応して、ペプチド結合を結合する。いくつかの実施形態において、ペプチド結合は、従来の有機化学反応を介した合成手段、または宿主細胞からの自然産生によって形成され、ここで、タンデム状の両方のタンパク質(例えば、Fcドメイン変異体及びSIRPα D1ドメイン変異体)のDNA配列をコードする核酸分子は、宿主細胞において、必要な分子機序(例えば、DNAポリメラーゼ及びリボソーム)によって、直接転写され、両方のタンパク質をコードする連続したポリペプチドに翻訳され得る。
【0184】
リンカーが合成ポリマーである場合、いくつかの実施形態において、ポリマーは、2つのタンパク質の接続末端が末端アミノ酸と反応するように、両端が反応性化学官能基で官能化される。
【0185】
リンカー(上述のペプチド結合を除く)が化学反応から形成される場合、いくつかの実施形態において、化学官能基(例えば、アミン、カルボン酸、エステル、アジド、または他の官能基)が、あるタンパク質のC末端及び別のタンパク質のN末端のそれぞれに合成的に結合される。いくつかの実施形態において、2つの官能基は、次いで、合成化学手段を介した反応により化学結合が形成され、それにより、2つのタンパク質が一緒に接続される。
【0186】
スペーサー
本開示において、いくつかの実施形態において、本開示のFcドメイン単量体とSIRPα D1変異体ポリペプチドとの間のリンカーは、約1~200個のアミノ酸を含むアミノ酸スペーサーである。好適なペプチドスペーサーには、グリシン及びセリンなどの柔軟性のあるアミノ酸残基を含有するペプチドリンカーが含まれる。リンカー配列の例は、表12に提供される。いくつかの実施形態において、スペーサーは、GS、GG、GGS、GGG、GGGGS(配列番号:163)、GGSG(配列番号:164)、またはSGGG(配列番号165)のモチーフ、例えば、複数または繰り返しのモチーフを含有する。いくつかの実施形態において、スペーサーは、GSのモチーフ、例えば、GS、GSGS(配列番号166)、GSGSGS(配列番号167)、GSGSGSGS(配列番号168)、GSGSGSGSGS(配列番号169)、またはGSGSGSGSGSGS(配列番号170)を含む、2~12個のアミノ酸を含有する。いくつかの実施形態において、スペーサーは、GGSのモチーフ、例えば、GGS、GGSGGS(配列番号171)、GGSGGSGGS(配列番号172)、及びGGSGGSGGSGGS(配列番号173)を含む、3~12個のアミノ酸を含有する。いくつかの実施形態において、スペーサーは、GGSG(配列番号164)のモチーフ、例えば、GGSG(配列番号164)、GGSGGGSG(配列番号174)、またはGGSGGGSGGGSG(配列番号175)を含む、4~12個のアミノ酸を含有する。いくつかの実施形態において、スペーサーは、GGGGS(配列番号163)のモチーフ、例えば、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号176)を含有する。いくつかの実施形態において、スペーサーは、グリシン及びセリン以外のアミノ酸、例えば、AAS(配列番号177)、AAAL(配列番号178)、AAAK(配列番号179)、AAAR(配列番号180)、EGKSSGSGSESKST(配列番号181)、GSAGSAAGSGEF(配列番号182)、AEAAAKEAAAKA(配列番号183)、KESGSVSSEQLAQFRSLD(配列番号184)、GGGGAGGGG(配列番号185)、GENLYFQSGG(配列番号186)、SACYCELS(配列番号187)、RSIAT(配列番号188)、RPACKIPNDLKQKVMNH(配列番号189)、GGSAGGSGSGSSGGSSGASGTGTAGGTGSGSGTGSG(配列番号190)、AAANSSIDLISVPVDSR(配列番号191)、またはGGSGGGSEGGGSEGGGSEGGGSEGGGSEGGGSGGGS(配列番号192)を含有する。
【0187】
いくつかの実施形態において、スペーサーは、EAAAK(配列番号193)のモチーフ、例えば、複数または繰り返しのモチーフを含有する。いくつかの実施形態において、スペーサーは、(XP)n(ここで、Xは任意のアミノ酸(例えば、A、K、またはE)であり、nは1~5である)及びPAPAP(配列番号:194)などのプロリンリッチ配列のモチーフ、例えば、複数または繰り返しのモチーフを含有する。
【表12】
【0188】
いくつかの実施形態において、使用されるペプチドスペーサー及びアミノ酸の長さは、関与する2つのタンパク質及び最終タンパク質融合ポリペプチドに望まれる柔軟性の程度に応じて調整される。いくつかの実施形態において、スペーサーの長さは、適切なタンパク質の折り畳みを確実にし、凝集の形成を回避するように調整される。いくつかの実施形態において、スペーサーは、AまたはAAAL(配列番号:178)である。
【0189】
ベクター、宿主細胞、及びタンパク質産生
いくつかの実施形態において、野生型シグナル調節タンパク質α(SIRP-α)D1ドメインに対して残基80におけるアミノ酸変異;ならびに野生型SIRPα D1ドメインに対して残基6、残基27、残基31、残基47、残基53、残基54、残基56、残基66、及び残基92からなる群から選択される残基における少なくとも1つの追加のアミノ酸変異を有する、SIRPα D1ドメインまたはその断片を含むSIRPα D1変異体を含む、ポリペプチドが本明細書で開示される。
【0190】
また、いくつかの実施形態において、Fc変異体を含むポリペプチドが本明細書で開示され、ここで、Fc変異体は、2つのFcドメイン単量体を含むFcドメイン二量体を含み、各Fcドメイン単量体は、独立して、(i)変異L234A、L235A、G237A、及びN297AからなるヒトIgG1Fc領域;(ii)変異A330S、P331S及びN297AからなるヒトIgG2Fc領域;または(iii)変異S228P、E233P、F234V、L235A、delG236、及びN297Aを含むヒトIgG4Fc領域から選択される。
【0191】
いくつかの実施形態において、本開示のポリペプチドは、宿主細胞から産生される。宿主細胞は、本明細書に記載されるポリペプチド及び融合ポリペプチドを対応する核酸から発現させるために求められる必要な細胞成分、例えば、オルガネラを含む媒体を指す。いくつかの実施形態において、核酸は、形質転換、トランスフェクション、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、直接マイクロインジェクション、感染などによって宿主細胞に導入される核酸ベクターに含まれる。いくつかの実施形態において、核酸ベクターの選択は、使用される宿主細胞に依存する。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、原核生物(例えば、細菌)または真核生物(例えば、哺乳動物)のいずれかを起源とする。
【0192】
いくつかの実施形態において、ポリペプチド、例えば、SIRPα D1ドメイン変異体(例えば、表2、5、及び6に提供される任意の変異体)及びFc変異体などの融合パートナーを含むポリペプチドコンストラクトは、核酸、好ましくは、ポリペプチドコンストラクト(例えば、Fc変異体、リンカー、及び融合パートナー)をコードする核酸を含有する発現ベクターで形質転換された宿主細胞を、ポリペプチドコンストラクトの発現を誘導または引き起こすために適切な条件下で培養することによって産生される。いくつかの実施形態において、発現に適した条件は、選択された発現ベクター及び宿主細胞によって異なる。いくつかの実施形態において、多種多様な適切な宿主細胞が使用され、哺乳動物細胞、細菌、昆虫細胞、及び酵母が含まれるが、これらに限定されない。例えば、本開示での使用が見出される様々な細胞株は、American Type Culture Collectionから入手可能なATCC(登録商標)細胞株カタログに記載されている。いくつかの実施形態において、本開示のFcドメイン変異体は、細胞株の遺伝子操作もしくはキフネンシンの添加などの細胞培養条件の変更によって、または原核生物(E.coliなど)などの天然で非グリコシル化である宿主を使用することのいずれかによって、そのような細胞によって発現されるタンパク質をグリコシル化しないように最適化された細胞で発現される。いくつかの場合において、Fcにおけるグリコシル化配列の修飾は、必要ではない。
【0193】
核酸ベクターの構築及び宿主細胞
本開示のポリペプチドのアミノ酸配列をコードする核酸配列は、様々な方法によって調製することができる。これらの方法には、オリゴヌクレオチドを介した変異導入(または部位特異的変異導入)及びPCR変異導入が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、本開示のポリペプチドをコードする核酸分子は、標準的な技術、例えば、遺伝子合成を使用することで得られる。あるいは、野生型SIRPα D1ドメインをコードする核酸分子を、標準的な技術、例えば、QuikChange(商標)変異導入を使用して、特定のアミノ酸置換を含むように変異させる。いくつかの場合において、核酸分子は、ヌクレオチドシンセサイザーまたはPCR技術を使用して合成される。
【0194】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドコンストラクト、例えば、SIRPα D1ドメイン変異体(例えば、表2、5、及び6に提供される任意の変異体)及びFc変異体などの融合パートナーを含むポリペプチドコンストラクトをコードする核酸は、タンパク質を発現させるために、発現ベクターに組み込まれる。タンパク質の発現には、様々な発現ベクターを利用することができる。発現ベクターは、自己複製する染色体外ベクターまたは宿主ゲノムに統合されるベクターを含み得る。ベクターはまた、様々な要素またはエレメントを含み得る。例えば、いくつかの実施形態において、ベクター要素には、プロモーター配列、リボソーム結合部位、シグナル配列、転写開始及び停止配列、翻訳開始及び停止配列、3’及び5’非翻訳領域(UTR)、及びエンハンサーまたは活性化配列などの転写及び翻訳調節配列;複製起点;選択マーカー遺伝子;ならびに目的のポリペプチドをコードする核酸配列、及び転写終結配列が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、発現ベクターは、制御配列もしくは調節配列、選択マーカー、任意の融合パートナー、追加のエレメント、または任意のこれらの組み合わせと作動可能に連結されたタンパク質を含む。「作動可能に連結」という用語は、核酸が別の核酸配列と機能的な関係性に置かれていることを意味する。一般に、これらの発現ベクターは、Fc変異体をコードする核酸に作動可能に連結された転写及び翻訳調節核酸を含み、典型的には、タンパク質を発現するために使用される宿主細胞に適したものである。限定するものではないが、抗生物質耐性遺伝子または蛍光タンパク質遺伝子などの選択遺伝子またはマーカーを使用して、例えば、抗生物質または蛍光の発現によって、発現ベクターを含有する宿主細胞を選択することができる。様々な選択遺伝子が利用可能である。
【0195】
いくつかの実施形態において、ベクターの要素またはエレメントは、発現ベクターが宿主細胞のタイプに適合するように最適化される。本開示での使用が見出される発現ベクターには、哺乳動物細胞、細菌、昆虫細胞、酵母、及びin vitro系でのタンパク質発現を可能にするものが含まれるが、これらに限定されない。
【0196】
いくつかの実施形態において、哺乳動物細胞は、本開示のポリペプチドを産生するための宿主細胞として使用される。哺乳動物細胞のタイプの例としては、ヒト胎児腎臓(HEK)(例えば、HEK293、HEK293F)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、HeLa、COS、PC3、Vero、MC3T3、NS0、Sp2/0、VERY、BHK、MDCK、W138、BT483、Hs578T、HTB2、BT20、T47D、NS0(いかなるの免疫グロブリン鎖も内因性に産生しないマウス骨髄腫細胞株)、CRL7O3O、及びHsS78Bstの細胞が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、E.coli細胞は、本開示のポリペプチドを産生するための宿主細胞として使用される。E.coli株の例としては、E.coli 294(ATCC(登録商標)31,446)、E.coli λ 1776(ATCC(登録商標)31,537、E.coli BL21(DE3)(ATCC(登録商標)BAA-1025)、及びE.coli RV308(ATCC(登録商標)31,608)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0197】
異なる宿主細胞は、タンパク質産物の翻訳後プロセシング及び修飾(例えば、グリコシル化)について、特徴的かつ特定の機構を有している。いくつかの実施形態において、発現されるポリペプチドの正しい修飾及びプロセシングを確実にするように、適切な細胞株または宿主系が選択される。ベクターをタンパク質産生のための宿主細胞に導入した後、宿主細胞は、プロモーターの誘導、形質転換体の選択、または所望の配列をコードする遺伝子の増幅のために適宜変更した従来の栄養素培地中で培養される。
【0198】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドコンストラクト、例えば、SIRPα D1ドメイン変異体(例えば、表2、5、及び6に提供される任意の変異体)及びFc変異体などの融合パートナーを含むポリペプチドコンストラクトは、レトロウイルスまたはアデノウイルスなどのウイルスを使用して発現コンストラクトが哺乳動物細胞に導入される系を含む、哺乳動物発現系で発現される。いくつかの実施形態において、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、または霊長類の細胞が利用される。好適な細胞には、限定するものではないが、Jurkat T細胞、NIH3T3、CHO、COS、及び293細胞を含む、既知の研究用細胞も含まれる。あるいは、いくつかの実施形態において、タンパク質は、細菌細胞で発現される。細菌発現系は、当該技術分野においてよく知られており、Escherichia coli (E.coli)、Bacillus subtilis、Streptococcus cremoris、及びStreptococcus lividansが含まれる。いくつかの場合において、Fcドメイン変異体を含むポリペプチドコンストラクトは、限定するものではないが、Sf9及びSf21細胞などの昆虫細胞で産生されるか、限定するものではないが、Saccharomyces、Pichia、Kluyveromyces、Hansenula及びYarrowia属の生物などの酵母細胞で産生される。いくつかの場合において、Fcドメイン変異体を含むポリペプチドコンストラクトは、無細胞翻訳系を使用してin vitroで発現される。原核生物(例えば、E.coli)と真核生物(例えば、小麦胚、ウサギ網状赤血球)の両方の細胞に由来するin vitro翻訳系が利用可能であり、いくつかの実施形態において、目的のタンパク質の発現レベル及び機能特性に基づいて選択される。例えば、当業者によって認識されるように、in vitro翻訳は、いくつかのディスプレイ技術、例えば、リボソームディスプレイが必要である。加えて、いくつかの実施形態において、Fcドメイン変異体は、限定するものではないが、液相ペプチド合成及び固相ペプチド合成などの化学合成方法によって生成される。細菌抽出物などの非グリコシル化系を使用するin vitro転写の場合、Fcは、天然のグリコシル化部位が存在していてもグリコシル化されることはないことから、Fcの不活性化が同様に得られる。
【0199】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドコンストラクトは、天然に生じるアミノ酸と同様に機能する、非天然アミノ酸、アミノ酸類似体、アミノ酸模倣体、または任意のこれらの組み合わせを含む。天然にコードされているアミノ酸は、一般に、20個の通常のアミノ酸(アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリン)及びピロリシン及びセレノシステインを指す。アミノ酸類似体は、天然に生じるアミノ酸と同じ基本化学構造、例えば、水素、カルボキシル基、アミノ基、及びR基に結合する炭素を有する化合物、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを指す。いくつかの実施形態において、そのような類似体は、修飾されたR基(ノルロイシンなど)または修飾されたペプチド骨格を有するが、一般に、天然に生じるアミノ酸と同じ基本化学構造を保持している。
【0200】
タンパク質の産生、回収、及び精製
いくつかの実施形態において、本開示のポリペプチドを産生するために使用される宿主細胞は、選択された宿主細胞の培養に好適な培地で成長される。哺乳動物の宿主細胞に好適な培地の例としては、最小必須培地(MEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、Expi293(商標)発現培地、ウシ胎児血清(FBS)を含むDMEM、及びRPMI-1640が挙げられる。細菌の宿主細胞に好適な培地の例としては、選択剤、例えば、アンピシリンなどの必要な添加物を加えたルリア培地(LB)が挙げられる。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、約20℃~約39℃、例えば、約25℃~約37℃、好ましくは、37℃などの好適な温度、約5%~10%などのCOレベルで培養される。いくつかの実施形態において、培地のpHは、pH約6.8~pH7.4、例えば、pH7.0であり、主に、宿主生物に依存する。誘導性プロモーターが発現ベクターに使用される場合、タンパク質の発現は、プロモーターの活性化に好適な条件下で誘導することができる。
【0201】
いくつかの実施形態において、タンパク質の回収は、例えば、浸透圧ショック、超音波処理、または溶解によって、宿主細胞を破壊することを含む。細胞を破壊したら、細胞デブリを遠心分離または濾過によって除去する。次いで、タンパク質を更に精製することができる。いくつかの実施形態において、本開示のポリペプチドは、様々なタンパク質精製方法、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、及びサイズ排除カラムクロマトグラフィー)、遠心分離、較差溶解度によって、またはタンパク質の精製に関する任意の他の標準的な技術によって精製される。例えば、いくつかの実施形態において、タンパク質は、プロテインAカラム(例えば、POROSプロテインAクロマトグラフィー)などのアフィニティーカラムとクロマトグラフィーカラム(例えば、POROS HS-50カチオン交換クロマトグラフィー)、濾過、限外濾過、脱塩及び透析手順を適切に選択及び組み合わせることによって、単離及び精製される。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、精製を容易にするためのペプチドなどのマーカー配列にコンジュゲートされる。マーカーアミノ酸配列の一例は、ヘキサヒスチジンペプチド(His6タグ)であり、マイクロモルの親和性でニッケル官能化アガロースアフィニティーカラムに結合することができる。代替としては、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質由来のエピトープに対応するヘマグルチニン「HA」タグを使用することができる。
【0202】
いくつかの実施形態において、本開示のポリペプチド、例えば、SIRPα D1ドメイン変異体(例えば、表2、5、及び6に提供される任意の変異体)及びFc変異体などの融合パートナーを含むポリペプチドコンストラクトは、例えば、遺伝子療法の文脈において、本開示のポリペプチドをコードする核酸分子を含有するウイルスベクター(例えば、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター(例えば、改変ワクシニアアンカラ(MVA)などのワクシニアウイルスベクター)、アデノ随伴ウイルスベクター、及びアルファウイルスベクター)などのベクターを投与することによって、対象(例えば、ヒト)の細胞によって産生される。ベクターは、対象の細胞の内部に入ることで(例えば、形質転換、トランスフェクション、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、直接マイクロインジェクション、感染などによって)、本明細書で開示されるポリペプチドの発現に使用することができる。いくつかの場合において、ポリペプチドは、細胞から分泌される。いくつかの実施形態において、疾患または障害の治療が所望の結果であれば、更なる処置は必要ではない。いくつかの実施形態において、タンパク質の回収が望ましい場合、対象から血液を採取し、様々な方法によって血液からタンパク質を精製する。
【0203】
がんの治療方法
骨髄癌の治療方法
いくつかの実施形態において、個体(例えば、ヒト個体)のがん(例えば、骨髄異形成症候群(MDS)または急性骨髄性白血病(AML)などの骨髄癌)を治療する方法であって、個体に、有効量の(a)CD47(例えば、hCD47)とSIRPα(例えば、hSIRPα)との間の相互作用を遮断する剤、及び(b)低メチル化剤を投与することを含む、方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、がんは、AMLである。いくつかの実施形態において、がんは、TP53変異AML及び/またはFLT3変異AMLである。いくつかの実施形態において、がんは、MDSである。いくつかの実施形態において、方法は、導入期及び維持期を含み、ここで、導入期は、(a)CD47(例えば、hCD47)とSIRPα(例えば、hSIRPα)との間の相互作用を遮断する剤、及び(b)低メチル化剤の投与を含み、維持期は、低メチル化剤を伴わない、CD47(例えば、hCD47)とSIRPα(例えば、hSIRPα)との間の相互作用を遮断する剤の投与を含む(例えば、CD47(例えば、hCD47)とSIRPα(例えば、hSIRPα)との間の相互作用を遮断する剤による単剤療法)。
【0204】
いくつかの実施形態において、個体(例えば、ヒト個体)のがん(例えば、骨髄異形成症候群(MDS)または急性骨髄性白血病(AML)などの骨髄癌)を治療する方法であって、個体に、有効量の(a)CD47(例えば、hCD47)とSIRPα(例えば、hSIRPα)との間の相互作用を遮断する剤、(b)低メチル化剤、及び(c)Bcl-2阻害剤(例えば、選択的Bcl-2阻害剤)を投与することを含む、方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、がんは、AMLである。いくつかの実施形態において、がんは、TP53変異AML及び/またはFLT3変異AMLである。いくつかの実施形態において、がんは、MDSである。
【0205】
MDSは、細胞の成熟異常(脊髄形成異常症)及び/または特徴的な細胞遺伝学的異常を伴う慢性的な血液減少症(例えば、貧血、好中球減少症、血小板減少症)を特徴とする一連の血液状態を包含する。その結果、MDSの個体は、症候性貧血、感染症、及び出血のリスクのみならず、標準治療に対して抵抗性となることが多い急性骨髄性白血病(AML)へ進行するリスクがある。MDSの個体の最も一般的な死因は、AMLへの移行ではなく、骨髄不全である。いくつかの実施形態において、MDSは、高リスクMDSである。いくつかの実施形態において、MDSは、個体が改訂国際予後スコアリングシステム(IPSS-R)で3を超えるスコアを有する場合、高リスクであるとみなされる。いくつかの実施形態において、MDSは、個体が改訂国際予後スコアリングシステム(IPSS-R)で3.5を超えるスコアを有する場合、高リスクであるとみなされる。IPSS-Rは、(1)個体の骨髄中の芽球(血液細胞の非常に初期の形態)の割合;(2)細胞遺伝学的異常の種類及び数(存在する場合);(3)個体の血液中の赤血球レベル(ヘモグロビンで測定);(4)個体の血液中の血小板レベル;ならびに(5)個体の血液中の好中球レベルの5つの因子に基づいて検証される予後予測ツールである。各因子にスコアが付けられ、スコアが3以下の個体は、予後が良好である見通しを得られる可能性が高い。IPSS-Rに関する更なる詳細及び個体のMDSのリスク状態を決定するためのスコアの計算方法については、例えば、Greenbergetal.(2012)“Revised international prognostic scoring system for myelodysplastic syndromes.” Blood,120(12),2454-2465;及びSchanz et al.(2012).“New comprehensive cytogenetic scoring system for primary myelodysplastic syndromes(MDS)and oligoblastic acute myeloid leukemia after MDS derived from an international database merge.” J Clin Oncol,30(8),820-829を参照されたい。いくつかの実施形態において、個体は、約3以上または約3.5以上のIPSS-Rスコアを有する。いくつかの実施形態において、個体は、約3未満または約3.5未満のIPSS-Rスコアを有する。いくつかの実施形態において、個体は、MDSの前治療を受けたことがある。MDSの現在の標準治療には、例えば、造血幹細胞移植及びアザシチジンが含まれる。いくつかの実施形態において、個体は、MDSの前治療を受けたことがない。
【0206】
AMLは、造血系のクローナルに増殖する異常分化した、時には分化が不完全な細胞による骨髄、血液、及び他の組織の浸潤を特徴とするがんの形態である。AMLは、成人の急性白血病のなかで最も一般的な形態の1つである。米国では、毎年、推定19,520人が医師によりAMLと診断されている。この疾患のために、毎年、推定10,670人が死亡している。いくつかの実施形態において、個体は、WHO2016分類による再発/難治性または新規診断AMLの細胞学的または組織学的確定診断を有する。いくつかの実施形態において、個体は、集中導入療法に適していないと考えられる患者の再発/難治性または前治療のないAMLを有する。いくつかの実施形態において、個体は、HMA系レジメンによる前治療後の再発/難治性であるAMLを有する。いくつかの実施形態において、個体は、前治療のないAMLを有し、集中導入療法に適した候補とみなされない。いくつかの実施形態において、個体は、適切な腎機能及び肝機能を有する。いくつかの実施形態において、個体は、18歳以上である。いくつかの実施形態において、個体は、適切なパフォーマンスステータスを有する。いくつかの実施形態において、個体は、以前に同種HSCTを受けていない。いくつかの実施形態において、個体は、HCST後少なくとも3ヶ月であり、制御されていない移植片対宿主病(GVHD)がない。いくつかの実施形態において、個体は、以前に同種HSCTを受けていない。いくつかの実施形態において、個体は、NCCNのAMLガイドライン2019年第3版によるt(8;21)、inv(16)、またはt(16;16)などの良好なリスク細胞遺伝学的所見のある新規診断AMLを有していない。いくつかの実施形態において、個体は、急性前骨髄球性白血病(APL)を有していない。いくつかの実施形態において、個体は、いかなる抗CD47または抗SIRPα(シグナル調節タンパク質アルファ)剤による前治療を受けていない。いくつかの実施形態において、個体は、B型及びC型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、後天性免疫不全症候群(AIDS)関連疾病、またはsars-cov-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)を含む既知の活性ウイルス感染を有していない。
【0207】
いくつかの実施形態において、CD47とSIRPαとの間の相互作用を遮断する剤は、SIRPαD1ドメイン変異体(例えば、本明細書に記載されるSIRPαD1ドメイン変異体)及びFcドメイン変異体(例えば、本明細書に記載されるFcドメイン変異体)を含むポリペプチド(例えば、融合ポリペプチド)である。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドのSIRPα D1ドメイン変異体(例えば、本明細書に記載されるSIRPα D1ドメイン変異体)のC末端は、Fcドメイン変異体のN末端に融合される。いくつかの実施形態において、ポリペプチド(例えば、融合ポリペプチド)は、配列番号81または配列番号85のアミノ酸配列を含む、SIRPα 1ドメイン変異体を含む。いくつかの実施形態において、Fcドメイン変異体は、(i)L234A、L235A、G237A、及びN297Aの変異を含むヒトIgG1 Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う);(ii)A330S、P331S、及びN297Aの変異を含むヒトIgG2 Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う);(iii)S228P、E233P、F234V、L235A、及びdelG236の変異を含むヒトIgG4 Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う);または(iv)S228P、E233P、F234V、L235A、delG236、及びN297Aの変異を含むヒトIgG4 Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う)である(例えば、SIRPα D1ドメイン変異体のC末端は、Fcドメイン変異体のN末端に融合される)。いくつかの実施形態において、個体に投与されるポリペプチド(例えば、融合ポリペプチド)は、配列番号136または配列番号135のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、ポリペプチド(例えば、融合ポリペプチド)は、ホモ二量体を形成する。
【0208】
低メチル化剤
低メチル化剤は、(i)DNA損傷応答の誘導をもたらすRNA及び/またはDNAへの組み込みによる細胞毒性、ならびに(ii)正常な細胞成長及び分化の回復を可能にするDNAメチルトランスフェラーゼの阻害を介したDNAの低メチル化という、主に2つの抗がん活性機構を持つことがこれまでに示されている抗がん薬物の一種である。低メチル化剤に関する追加の詳細については、例えば、Diesch et al.(2016)“A clinical-molecular update on azanucleoside-based therapy for the treatment of hematologic cancers.” Clin Epigenet,8:71;Sato et al.(2017)“DNA Hypomethylating Drugs in Cancer Therapy.” Cold Spring Harbor Perspectives in Medicine,7(5),a026948;及びDatta et al.(2012)“Novel Insights into the Molecular Mechanism of Action of DNA Hypomethylating Agents:Role of Protein Kinase C δ in Decitabine-Induced Degradation of DNA Methyltransferase 1.” Genes & cancer,3(1),71-81を参照されたい。
【0209】
いくつかの実施形態において、低メチル化剤は、アザシチジン(5-アザ-2’-デオキシシチジン、5-アザシチジン、アザシチジン、ラダカマイシン、4-アミノ-1-β-D-リボフラノシル-s-トリアジン-2(1H)-オン、及びU-18496としても知られている)である。シチジンのピリミジンヌクレオシド類似体であるアザシチジンは、実験式C12の白色結晶性粉末であり、244.2g/molの分子量である。アザシチジンは、化学的には4-アミノ-1-[(2R,3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)オキソラン-2-イル]-1,3,5-トリアジン-2-オンと記載され、以下の化学構造を有する:
【化1】
【0210】
アザシチジンのCAS登録番号は、320-67-2である。アザシチジンは、皮下または静脈内投与され、PREMIERPRO RX AZACITIDINE(登録商標)、VIDAZA(登録商標)、AZACITIDINE NOVAPLUS(登録商標)などの商品名で販売されている。アザシチジンの調製、調剤、用量、及び投与スケジュールについての完全な情報は、各地の添付文書に見出すことができる(米国については、例えば、www(dot)accessdata.fda(dot)gov/drugsatfda_docs/label/2008/050794s011lbl(dot)pdfを参照されたい;欧州については、例えば、www(dot)ema(dot)Europa(dot)eu/en/documents/product-information/vidaza-epar-product-information_en(dot)pdfを参照されたい。いくつかの実施形態において、アザシチジンは、各地の添付文書において推奨されている投与量及び回数に従って投与される。
【0211】
いくつかの実施形態において、低メチル化剤は、デシタビン(5-アザ-2’-デオキシシチジン、4-アミノ-1-(2-デオキシ-β-D-erythro-ペントフラノシル)-s-トリアジン-2(1H)-オン、及び5-アザデオキシシチジンとしても知られている)。デシタビンはまた、シチジンのピリミジンヌクレオシド類似体である。デシタビンは、実験式C12及び218.21g/molの分子量を有する。デシタビンは、化学的には4-アミノ-1-[(2R,4S,5R)-4-ヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)オキソラン-2-イル]-1,3,5-トリアジン-2-オンと記載され、以下の化学構造を有する:
【化2】
【0212】
デシタビンのCAS登録番号は、2353-33-5である。デシタビンは、静脈内投与され、DACOGEN(登録商標)(及びその他)の商品名で販売されている。デシタビンの調製、調剤、用量、及び投与スケジュールについての完全な情報は、各地の添付文書に見出すことができる(米国については、例えば、www(dot)accessdata(dot)fda.gov/drugsatfda_docs/label/2010/021790s006lbl(dot)pdfを参照されたい;欧州については、例えば、www(dot)ema(dot)europa(dot)eu/en/documents/product-information/dacogen-epar-product-information_en(dot)pdfを参照されたい。いくつかの実施形態において、デシタビンは、各地の添付文書において推奨されている投与量及び回数に従って投与される。
【0213】
いくつかの実施形態において、低メチル化剤は、FdCyd(5-フルオロ-2’-デオキシシチジン)、ゼブラリン、CP-4200(すなわち、アザシチジンのエライジン酸誘導体)、RG108、ナナオマイシンA、グアデシタビン、RX-3117、EPI01、アントロキノノール、CC-486、またはASTX727である(例えば、astx(dot)com/research-development/clinical-pipeline/astx727-oral-dnmt-inhibitor-hematological-malignancies/参照)。本方法での使用が見出される他の例示的な低メチル化剤は、例えば、Sato et al.(2017).“DNA Hypomethylating Drugs in Cancer Therapy.” Cold Spring Harbor perspectives in medicine,7(5),a026948及びDuchmann,et al.(2019).“Clinical update on hypomethylating agents.” Int J Hematol 110,161-169に記載されている。
【0214】
Bcl-2阻害剤
Bcl-2阻害剤は、アポトーシス促進性のBcl2と競合して抗アポトーシスファミリーメンバーの表面上にあるBH3結合溝を占有することによって細胞毒性作用を発揮すると考えられている抗がん薬物の一種である。これらの阻害剤は、1つ以上のBcl2ファミリーメンバーに結合することによって、BCL-2及び他の関連タンパク質の天然アンタゴニストの活性を模倣し、アポトーシスを回復することにより、腫瘍細胞においてアポトーシスを誘導する。
【0215】
いくつかの実施形態において、Bcl-2阻害剤は、ベネトクラクス(GDC-0199、ABT-199、及びRG7601としても知られている)であり、本明細書に記載される方法において使用される例示的な選択的Bcl2阻害剤である。ベネトクラクスは、実験式C4550ClNSの淡黄色から濃黄色の固体であり、868.44g/molの分子量である。ベネトクラクスは、水溶性が極めて低い。ベネトクラクスは、化学的には4-(4-{[2-(4-クロロフェニル)-4,4ジメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル]メチル}ピペラジン-1-イル)-N-({3-ニトロ-4-[(テトラヒドロ-2H-ピラン-4イルメチル)アミノ]フェニル}スルホニル)-2-(1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-イルオキシ)ベンズアミド)と記載され、以下の化学構造を有する:
【化3】
【0216】
ベネトクラクスのCAS登録番号は、1257044-40-8である。ベネトクラクスは、経口投与され、Venclexta及びVenclyxtoの商品名で販売されている。ベネトクラクスの調製、調剤、用量、及び投与スケジュールについての完全な情報は、各地の添付文書に見出すことができる(米国については、例えば、www(dot)accessdata(dot)fda(dot)gov/drugsatfda_docs/label/2016/208573s000lbl(dot)を参照されたい;欧州については、例えば、www(dot)ema(dot)europa(dot)eu/en/medicines/human/EPAR/venclyxto#product-information-sectionを参照されたい)。いくつかの実施形態において、ベネトクラクスは、各地の添付文書において推奨されている投与量及び回数に従って投与される。
【0217】
いくつかの実施形態において、Bcl-2阻害剤は、ABT-737である。ABT-737は、本明細書に記載される方法において使用される別の例示的な選択的Bcl2阻害剤である。Bcl2とBcl-xLの両方を阻害するABT-737は、実験式C4245ClNを有し、813.43g/molの分子量を有する。ABT-737のCAS登録番号は、852-808-04-9である。ABT-737は、化学的には4-{4-[(4’-クロロ-2-ビフェニルイル)メチル]-1-ピペラジニル}-N-[(4-{[(2R)-4-(ジメチルアミノ)-1-(フェニルスルファニル)-2-ブタニル]アミノ}-3-ニトロフェニル)スルホニル]ベンズアミドと記載され、以下の化学構造を有する:
【化4】
【0218】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される方法において使用されるBcl-2阻害剤は、ナビトクラックスである。Bcl2、Bcl-xL、及びBcl-wのいずれも阻害するナビトクラックス(ABT-263としても知られている)は、実験式C4755ClFを有し、974.6g/molの分子量を有する。ナビトクラックスのCAS登録番号は、923564-51-6である。ABT-737は、化学的には4-[4-[[2-(4-クロロフェニル)-5,5-ジメチルシクロヘキセン-1-イル]メチル]ピペラジン-1-イル]-N-[4-[[(2R)-4-モルホリン-4-イル-1-フェニルスルファニルブタン-2-イル]アミノ]-3-(トリフルオロメチルスルホニル)フェニル]スルホニルベンズアミドと記載され、以下に提供される化学構造を有する。ナビトクラックスに関する更なる詳細は、例えば、Tse et al.(2008)Cancer Res.68(9):3421-3429に提供されている。
【化5】
【0219】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される方法において使用されるBcl2阻害剤は、S55746(BCL201及びServier-1としても知られている)である。S55746は、BCL-2の疎水性の溝を占有する。S55746は、MCL-1、BFL-1には有意な結合を示さず、BCL-2の疎水性の溝を占有するという選択性プロファイルを示す。その選択性プロファイルでは、MCL-1、BFL-1(BCL2A1/A1)に有意な結合を示さず、BCL-XLには低い親和性であることが示されている。S55746は、血小板などのBCL-XL依存性細胞に対する細胞毒性活性を持たない(例えば、Casara et al.(2008) Oncotarget.9(28): 29975-20088参照)。S55746は、実験式C4342を有し、710.82g/molの分子量を有する。S55746のCAS登録番号は、1448584-12-0である。S55746は、化学的には(S)-N-(4-ヒドロキシフェニル)-3-(6-(3-(モルホリノメチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-2-カルボニル)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-N-フェニル-5,6,7,8-テトラヒドロインドリジン-1-カルボキサミドと記載され、以下の化学構造を有する:
【化6】
【0220】
いくつかの実施形態において、ポリペプチド(例えば、融合ポリペプチド)及び低メチル化剤(例えば、アザシチジン)は、同時投与、併用投与、または逐次投与される。いくつかの実施形態において、ポリペプチド(例えば、融合ポリペプチド)、低メチル化剤(例えば、アザシチジン)、及びBcl-2阻害剤(例えば、ベネトクラクス)は、同時投与、併用投与、または逐次投与される。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、静脈内注入を介して投与される。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、最大60mg/kgの用量で(例えば、静脈内注入を介して)投与される。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、60mg/kgの用量で、4週間に1回(すなわち、q4w)または28日に1回(例えば、静脈内注入を介して)投与される。いくつかの実施形態において、低メチル化剤(例えば、アザシチジン)は、静脈内注入または皮下を介して投与される。いくつかの実施形態において、アザシチジンは、1回以上の28日サイクルで投与される。いくつかの実施形態において、アザシチジンは、各28日サイクルのうち7日間、毎日75mg/mの用量で投与される。いくつかの実施形態において、アザシチジンは、各28日サイクルの間、毎日75mg/mの用量で5日間個体に投与され、アザシチジンの投与のない2日間が続き、次いで、更に2日間、75mg/mの用量で個体に投与される。いくつかの実施形態において、Bcl-2阻害剤(例えば、ベネトクラクス)は、経口投与される。いくつかの実施形態において、ベネトクラクスは、ある用量で投与される。いくつかの実施形態において、ベネトクラクスは、治療の1日目に100mg、治療の2日目に200mg、治療の3日目以降は毎日400mgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、ベネトクラクスは、治療の1日目に100mg、治療の2日目に200mg、治療の3日目に400mg、3日目を過ぎたら毎日600mgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、ベネトクラクスは、低メチル化剤(例えば、アザシチジンまたはデシタビン)と組み合わせて、各28日サイクルで1日1回400mgが投与される。
【0221】
いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、20mmのTeflon被覆ゴムセプタム栓及びアルミニウムシールで密封された100mg/5mlのタイプI透明ガラスバイアルでの使用に供給される(例えば、静脈内投与)。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、20mmのTeflon被覆ゴムセプタム栓及びアルミニウムシールで密封された400mg/20mlのタイプI透明ガラスバイアルでの使用に供給される(例えば、静脈内投与)。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、使用するまで、その元の容器中、2~8℃(36~46°F)で保管される(例えば、静脈内投与)。
【0222】
がんを治療するための併用療法
いくつかの実施形態において、個体(例えば、ヒト個体)のがんを治療する方法であって、個体に、SIRPα D1ドメイン変異体(例えば、本明細書に記載されるSIRPα D1ドメイン変異体)及びFcドメイン変異体(例えば、本明細書に記載されるFcドメイン変異体)を含む、有効量のポリペプチド(例えば、融合ポリペプチド)を投与することを含み、ここで、ポリペプチド(例えば、融合ポリペプチド)は、最大約60mg/kg(例えば、約20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59または60mg/kgのいずれか1つなど;これらの値の間の任意の範囲を含む)の用量で個体に(例えば、静脈内注入を介して)投与される、方法が提供される。いくつかの実施形態において、個体(例えば、ヒト個体)のがんを治療する方法であって、個体に、SIRPα D1ドメイン変異体(例えば、本明細書に記載されるSIRPα D1ドメイン変異体)及びFcドメイン変異体(例えば、本明細書に記載されるFcドメイン変異体)を含む、有効量のポリペプチド(例えば、融合ポリペプチド)を投与することを含み、ポリペプチド(例えば、融合ポリペプチド)は、約60mg/kgの用量で個体に投与される、方法が提供される。いくつかの実施形態において、ポリペプチド(例えば、融合ポリペプチド)は、約60mg/kgの用量で、4週間に1回(例えば、q4w)または28日に1回(例えば、静脈内注入を介して)投与される。いくつかの実施形態において、個体(例えば、ヒト個体)のがんを治療する方法であって、個体に、SIRPαD1ドメイン変異体(例えば、本明細書に記載されるSIRPαD1ドメイン変異体)及びFcドメイン変異体(例えば、本明細書に記載されるFcドメイン変異体)を含む、有効量のポリペプチド(例えば、融合ポリペプチド)を投与することを含み、ポリペプチド(例えば、融合ポリペプチド)は、約45mg/kgの用量で個体に(例えば、静脈内注入を介して)投与される、方法が提供される。いくつかの実施形態において、ポリペプチド(例えば、融合ポリペプチド)は、約45mg/kgの用量で、3週間に1回(例えば、q3w)または21日に1回、個体に(例えば、静脈内注入を介して)投与される。いくつかの実施形態において、ポリペプチド(例えば、融合ポリペプチド)のSIRPα D1ドメイン変異体のC末端は、Fcドメイン変異体のN末端に融合される。いくつかの実施形態において、ポリペプチド(例えば、融合ポリペプチド)は、配列番号81または配列番号85のアミノ酸配列を含む、SIRPα 1ドメイン変異体を含む。いくつかの実施形態において、Fcドメイン変異体は、(i)L234A、L235A、G237A、及びN297Aの変異を含むヒトIgG1 Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う);(ii)A330S、P331S、及びN297Aの変異を含むヒトIgG2 Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う);(iii)S228P、E233P、F234V、L235A、及びdelG236の変異を含むヒトIgG4 Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う);または(iv)S228P、E233P、F234V、L235A、delG236、及びN297Aの変異を含むヒトIgG4 Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う)である(例えば、SIRPα D1ドメイン変異体のC末端は、Fcドメイン変異体のN末端に融合される)。いくつかの実施形態において、個体に投与されるポリペプチド(例えば、融合ポリペプチド)は、配列番号136または配列番号135のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、ポリペプチド(例えば、融合ポリペプチド)は、ホモ二量体を形成する。いくつかの実施形態において、個体は、ヒトである。
【0223】
いくつかの実施形態において、方法は、SIRPα D1ドメイン変異体(例えば、本明細書に記載されるSIRPα D1ドメイン変異体)及びFcドメイン変異体(例えば、本明細書に記載されるFcドメイン変異体)を含むポリペプチド(例えば、融合ポリペプチド)を、少なくとも1つの追加の剤(例えば、抗がん剤)、例えば、少なくとも2、3、4、または5つの追加の剤(例えば、抗がん剤)と組み合わせて投与することを含む。いくつかの実施形態において、本明細書の方法との使用が見出される例示的な抗がん剤(複数可)としては、限定するものではないが、治療用抗体、抗体薬物コンジュゲート(ADC)、低分子阻害剤、ペプチド阻害剤、コルチコステロイド、メトトレキサート、免疫調節剤、抗腫瘍抗生物質、免疫療法剤、抗がんワクチン、腫瘍溶解性ウイルス、サイトカイン、または化学療法剤(例えば、トポイソメラーゼ阻害剤、代謝拮抗物質、有糸分裂阻害薬、低メチル化剤、白金系化合物、アントラサイクリン、アルキル化剤、植物アルカロイドなど)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0224】
追加的または代替的に、いくつかの実施形態において、方法は、SIRPα D1ドメイン変異体(例えば、本明細書に記載されるSIRPα D1ドメイン変異体)及びFcドメイン変異体(例えば、本明細書に記載されるFcドメイン変異体)を含むポリペプチドを、少なくとも1つの追加の治療様式と併せて投与することを含む。いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドの投与と併せて実施される例示的な治療様式(複数可)には、限定するものではないが、養子細胞療法(例えば、キメラ抗原受容体T細胞療法(CAR-T)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、TCR改変T細胞、TCR改変NK細胞、及びマクロファージ細胞産物)、自家幹細胞移植、同種幹細胞移植、放射線照射、手術、遺伝子治療、冷凍アブレーション、及び骨髄移植が挙げられる。
【0225】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される方法によって治療されるがんは、固形腫瘍である。本明細書で提供される方法によって治療される例示的ながんとしては、限定するものではないが、例えば、乳癌、肺癌、肺腺癌、扁平上皮細胞肺癌、小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、頭頸部癌、中皮腫、脳癌、脳腫瘍、腹部癌、結腸癌、結腸直腸癌、食道癌、副咽頭間隙癌、胃腸癌、神経膠腫、肝臓癌、胃癌、口腔癌、舌癌、神経芽細胞腫、骨肉腫、卵巣癌、腎癌、膀胱癌、尿路癌、膵癌、網膜芽細胞腫、子宮頸癌、子宮癌、ウィルムス腫瘍、多発性骨髄腫、皮膚癌、リンパ腫、白血病、血液癌、甲状腺癌、骨癌、腺様嚢胞癌、軟骨肉腫、膵島細胞腫瘍、神経内分泌腫瘍、前立腺癌、膠芽腫、子宮内膜癌腫、子宮内膜癌、平滑筋肉腫、胆嚢癌、肝細胞癌、黒色腫、または他の固形腫瘍が挙げられる。
【0226】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される方法によって治療されるがんは、血液癌である。本明細書で提供される方法によって治療される例示的ながんとしては、限定するものではないが、例えば、多発性骨髄腫、または白血病、限定するものではないが、例えば、急性もしくは慢性骨髄性白血病、急性もしくは慢性リンパ芽球性白血病、急性リンパ性白血病(ALL)慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄異形成症候群(MDS)、慢性骨髄性白血病(CML)、毛様細胞性白血病、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、若年性骨髄単球性白血病(JMML)、大顆粒リンパ球性(LGL)白血病、形質細胞腫、芽球形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)、B細胞前リンパ球性白血病(B-PLL)、T細胞前リンパ球性白血病(T-PLL)、多発性骨髄腫(MM)、及び非ホジキンリンパ腫(例えば、びまん性大細胞B細胞リンパ腫(DLBCL)、バーキットリンパ腫、マントル細胞リンパ腫(MCL)、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)、リンパ形質細胞性リンパ腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、辺縁帯リンパ腫(MZL)及び濾胞性リンパ腫(FL)が挙げられる。
【0227】
キット及び製造品
本発明の別の実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体及びFcドメイン変異体を含むポリペプチド(例えば、本明細書に記載される融合ポリペプチド)を含む、製造品またはキットが提供される。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体は、個体(例えば、ヒト個体)の骨髄異形成疾患(MDS)または急性骨髄性白血病(AML)の治療のために、低メチル化剤(例えば、アザシチジン)と組み合わせて使用するためのものである。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体は、個体(例えば、ヒト個体)のAMLの治療のために、低メチル化剤(例えば、アザシチジン)及びBcl-2阻害剤(例えば、veneotclax)と組み合わせて使用するためのものである。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体は、配列番号81及び配列番号85からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、Fcドメイン変異体は、(i)L234A、L235A、G237A、及びN297Aの変異を含むヒトIgG1 Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う);(ii)A330S、P331S、及びN297Aの変異を含むヒトIgG2 Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う);(iii)S228P、E233P、F234V、L235A、及びdelG236の変異を含むヒトIgG4 Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う);または(iv)S228P、E233P、F234V、L235A、delG236、及びN297Aの変異を含むヒトIgG4 Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う)である。いくつかの実施形態において、Fcドメイン変異体は、配列番号91のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号135または配列番号136のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体及びFcドメイン変異体を含むポリペプチドは、ホモ二量体を形成する。いくつかの実施形態において、キットまたは製造品は、本明細書で提供される治療方法に従って使用するためのものである。
【0228】
いくつかの実施形態において、キットまたは製造品は、低メチル化剤を更に含む。いくつかの実施形態において、低メチル化剤は、アザシチジンである。いくつかの実施形態において、キットは、個体(ヒト個体など)のがん(例えば、骨髄異形成症候群(MDS)または急性骨髄性白血病(AML)などの骨髄癌)の治療またはその進行遅延のために、ポリペプチド(例えば、融合ポリペプチド)を、低メチル化剤(例えば、アザシチジン)と組み合わせて使用するための説明を含む添付文書またはラベルを含む。いくつかの実施形態において、キットまたは製造品は、AML、例えば、TP53変異型AML及び/またはFLT3変異型AMLの治療に使用するためのものである。いくつかの実施形態において、キットまたは製造品は、MDS、例えば、高リスクMDSの治療に使用するためのものである。いくつかの実施形態において、ポリペプチド(例えば、融合ポリペプチド)及び低メチル化剤(例えば、アザシチジン)は、キットにおいて、一緒に提供される。いくつかの実施形態において、ポリペプチド(例えば、融合ポリペプチド)及び低メチル化剤(例えば、アザシチジン)は、同じ容器または別個の容器で提供される。
【0229】
いくつかの実施形態において、キットまたは製造品は、Bcl-2阻害剤を更に含む。いくつかの実施形態において、Bcl-2阻害剤は、ベネトクラクスである。いくつかの実施形態において、キットは、個体(ヒト個体など)のがん(例えば、急性骨髄性白血病(AML)などの骨髄癌)の治療またはその進行遅延のために、ポリペプチド(例えば、融合ポリペプチド)を、低メチル化剤(例えば、アザシチジン)及びBcl-2阻害剤(例えば、ベネトクラクス)と組み合わせて使用するための説明を含む添付文書またはラベルを含む。いくつかの実施形態において、キットまたは製造品は、AML、例えば、TP53変異型AML及び/またはFLT3変異型AMLの治療に使用するためのものである。いくつかの実施形態において、ポリペプチド(例えば、融合ポリペプチド)、低メチル化剤(例えば、アザシチジン)、及びBcl-2阻害剤(例えば、ベネトクラクス)は、キットにおいて、一緒に提供される。いくつかの実施形態において、ポリペプチド(例えば、融合ポリペプチド)、低メチル化剤(例えば、アザシチジン)、及びBcl-2阻害剤(例えば、ベネトクラクス)は、同じ容器または別個の容器で提供される。
【0230】
本発明の別の実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体及びFcドメイン変異体を含むポリペプチド(例えば、本明細書に記載される融合ポリペプチド)を含む、製造品またはキットが提供される。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体は、配列番号81及び配列番号85からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、Fcドメイン変異体は、(i)L234A、L235A、G237A、及びN297Aの変異を含むヒトIgG1 Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う);(ii)A330S、P331S、及びN297Aの変異を含むヒトIgG2 Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う);(iii)S228P、E233P、F234V、L235A、及びdelG236の変異を含むヒトIgG4 Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う);または(iv)S228P、E233P、F234V、L235A、delG236、及びN297Aの変異を含むヒトIgG4 Fc領域(番号付けはKabatのEUインデックスに従う)である。いくつかの実施形態において、Fcドメイン変異体は、配列番号91のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号135または配列番号136のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、SIRPα D1ドメイン変異体及びFcドメイン変異体を含むポリペプチドは、ホモ二量体を形成する。いくつかの実施形態において、キットは、個体(ヒト個体など)のがん(例えば、本明細書に別途記載されるがん)の治療のためにポリペプチド(例えば、融合ポリペプチド)を使用するための説明を含む添付文書またはラベルを含む。いくつかの実施形態において、添付文書またはラベルは、ポリペプチド(例えば、融合ポリペプチド)を、それを必要とする個体に最大60mg/kgの用量で投与するための説明を提供する。いくつかの実施形態において、添付文書またはラベルは、ポリペプチド(例えば、融合ポリペプチド)を個体に60mg/kgの用量で4週間に1回(q4w)または28日に1回投与するための説明を提供する。いくつかの実施形態において、添付文書またはラベルは、ポリペプチド(例えば、融合ポリペプチド)を、それを必要とする個体に45mg/kgの用量で3週間に1回(q3w)または21日に1回投与するための説明を提供する。いくつかの実施形態において、キットは、少なくとも1つの追加の抗がん剤(例えば、本明細書に別途記載される抗がん剤)を更に含む。いくつかの実施形態において、キットは、個体(ヒト個体など)のがん(例えば、本明細書に記載されるがん)の治療またはその進行遅延のために、ポリペプチド(例えば、融合ポリペプチド)を、少なくとも1つの追加の抗がん剤と組み合わせて使用するための説明を含む添付文書またはラベルを含む。いくつかの実施形態において、ポリペプチド(例えば、融合ポリペプチド)及び少なくとも1つの追加の抗がん剤は、同じ容器または別個の容器で提供される。追加的または代替的に、いくつかの実施形態において、キットは、ポリペプチド(例えば、融合ポリペプチド)を、少なくとも1つの追加の治療様式(例えば、本明細書に記載される治療様式)と併せて使用するための説明を含む添付文書またはラベルを含む。
【0231】
好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、バッグ及びシリンジが挙げられる。容器は、様々な材料、例えば、ガラス、プラスチック(ポリ塩化ビニルもしくはポリオレフィンなど)、または合金(ステンレス鋼もしくはハステロイなど)から形成され得る。いくつかの実施形態において、容器は、製剤を保持し、容器上のラベルまたは容器に付随するラベルは、使用上の指示を示し得る。製造品またはキットは、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、及び使用上の指示を含む添付文書を含め、商業的視点及び使用者の視点から望ましい他の材料を更に含み得る。いくつかの実施形態において、製造品は、別の剤(例えば、化学療法剤、抗新生物薬、治療用抗体など)のうちの1つ以上を更に含む。1つ以上の剤に好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、バッグ及びシリンジが挙げられる。
【0232】
本明細書は、当業者が本発明を実施することを可能にするのに十分なものであるとみなされる。本明細書中に示され、かつ記載される変更に加えて、本発明の様々な変更が前述の記述から当業者に明らかになり、添付の特許請求の範囲内に含まれる。本明細書に引用される全ての公開物、特許、及び特許出願は、その全体があらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【実施例
【0233】
本開示は、以下の実施例を参照することによって、より十分に理解されるであろう。しかしながら、実施例は、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書に記載される実施例及び実施形態は、例示のみを目的とするものであり、それらを考慮した様々な変形または変更が当業者に想起され、本出願の趣旨及び範囲ならびに添付の特許請求の範囲内に含まれることを理解されたい。
【0234】
実施例1:実施例2A~2Eの材料及び方法
末梢血単核細胞(PBMC)の単離
Blood Centers of the Pacificまたは血小板分離白血球除去フィルター(LRSチャンバー)(Vitalant)からのトリマ残留物をPBS(Life Technologies)で希釈した。希釈した血液を2つのチューブに分け、15mLのFicoll-Paque Plus(GE Healthcare)の上に重ねた。チューブを400×gで30分間遠心分離した。末梢血単核細胞(PBMC)を界面から回収し、40mLのPBSを加えて2回洗浄し、400×gで10分間遠心分離し、MACS緩衝液(PBS+0.5%BSA(Thermo Fisher Scientific)、2mM EDTA(Teknova))中に再懸濁した。
【0235】
食作用のためのヒト単球由来マクロファージの誘導及び培養
CD14単球を、Classical Monocytes Isolation Kit、ヒト(Miltenyi Biotec)及びLSカラム(Miltenyi Biotec)を製造元のプロトコルに従って使用して、ネガティブ選択により精製した。50ng/mLのM-CSF(Miltenyi Biotec)、10%FBS(Thermo Fisher Scientific)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、及び1%GlutaMAXを加えたRPMI完全培地で構成される25mLの培地が入った150mmの組織培養皿(Corning)に、CD14単球を600万細胞/皿で播種した。細胞を7~11日間培養した。
【0236】
in vitro食作用アッセイ
標的細胞であるHL60細胞及びOCI-AML3細胞は、PBSで1回洗浄し、Celltrace CFSE Cell Proliferationキット(Thermo Fisher Scientific)を製造元の説明書に従って300nM CFSE(カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル)との懸濁液中で標識し、RPMI完全培地中に再懸濁した。標的細胞を、RPMI完全培地中で、39nM~2.5μMのアザシチジンの2倍連続希釈とともに一晩インキュベートした。マクロファージとのインキュベーションの前に、RPMI中に細胞を再懸濁した。マクロファージをPBSで1回洗浄し、TrypLE Select中で37℃で20分間インキュベーションすることによって、培養プレートから剥離した。細胞をセルスクレーパー(Corning)で取り出し、PBSで洗浄し、RPMI中に再懸濁した。
【0237】
CFSEで標識した標的細胞をアザシチジンで48時間処理し、遠心し、超低U底96ウェルプレート(Corning)に100,000細胞/ウェルで加えた。次いで、薬物Aを加えた。5%二酸化炭素の加湿インキュベーター内で、プレートを37℃で30分間インキュベートし、次いで、50,000個のマクロファージを加えた。5%二酸化炭素の加湿インキュベーター内で、プレートを37℃で2時間インキュベートした。細胞を400×gで5分間遠心分離することによってペレット化し、PBSで1:4000に希釈したFixable Viability Dye eFluor 780(ebioscience)で4℃で30分間染色した。細胞をFACS緩衝液(0.5%BSA含有PBS)で洗浄し、ヒトFcR Blocking Reagent(Miltenyi Biotec)、BV421抗CD33(Biolegend)、APC抗CD14(Biolegend)及びPE-Cyanine7抗CD11b(Invitrogen)を含有するFACS緩衝液中、4℃で45分間染色した。細胞をFACS緩衝液で2回洗浄し、PBSで希釈した0.5%パラホルムアルデヒド中4℃で一晩固定した。細胞をFACS Canto II(BD Biosciences)で解析し、続いて、Flowjo 10.6.1(Becton Dickinson & Company)によりデータを解析した。死細胞は、e780陰性集団でゲーティングすることにより除外した。マクロファージは、系統マーカーCD33、CD11b及びCD14に対して陽性である細胞として同定した。この集団のうち、腫瘍細胞を貪食したマクロファージを、CFSEが陽性である細胞として同定した。
【0238】
ヒトPBMC生存率アッセイ
PBMCをカウントし、完全RPMI中にプレーティングした。薬物Aを、単独でまたはアザシチジンとの組み合わせで、PBMCに加えた。37℃で72時間または5日間インキュベーションした後、細胞を固定可能な生存率色素で染色し、続いて、細胞表面マーカー:CD3、CD19、CD14、CD56、CD16、CD11c、及びHLADR(Biolegend)で染色した。細胞を処理してAttune NxT によるフローサイトメトリーを行い、FlowJo10.3によって解析した。生存率のゲーティング戦略には、FSC高さ及びFSC幅によるダブルシングレット除去、それに続く、細胞型表面マーカー、次いで、生存率ゲーティングが含まれた。CD11c DCは、陰性系統(CD3、CD19、CD14、CD16及びCD56)のHLADR CD11cとして同定した。GraphPad Prism 8を使用して、生細胞を集計した。
【0239】
カルレティキュリン発現の分析
ヒト急性骨髄性白血病細胞株HL60におけるカルレティキュリン発現レベルの変化を検出するために、OCI-AML3細胞及びMV4-11細胞を、完全成長培地(RPMI1640、10%FBS)中、2.5μMまたは75nMのいずれかのアザシチジン(Selleckchem)とともに37℃の5%COインキュベーター内で72時間インキュベートした。完全成長培地で成長した細胞をカルレティキュリンベースライン発現の対照として使用した。インキュベーション後、細胞を採取し、染色緩衝液(PBS、2%FBS)で1回洗浄し、PBS中で固定可能な生/死染色(Invitrogen)と4℃で1時間染色し、染色緩衝液で1回洗浄し、500ng/mLのカルレティキュリン-AF647(クローン1G6A7、Novus)とともにインキュベートした。4℃で1時間インキュベーションした後、細胞を染色緩衝液で2回洗浄し、0.5%パラホルムアルデヒドで固定した。細胞をAttune(ThermoScientific)で解析し、続いて、Flowjo 10.6を使用してデータを解析した。
【0240】
in vivo抗腫瘍活性
NOD-SCID雌マウスの右脇腹に、1:1のマトリゲル(Corning)とRPMI1640の比を使用して、HL60(ATCC)、MV4-11(ATCC)、OCI-AML3(DSMZ)の急性骨髄性白血病細胞を5×10細胞/マウスの濃度で注射することによって、皮下腫瘍異種移植片を誘発させた。全腫瘍の平均サイズがHL60で105mm、MV4-11で75mm、OCI-AML3で112mmに到達するまで、腫瘍をモニタリングした。PBS、アザシチジン(Selleckchem)、薬物A、及びアザシチジン+薬物A併用のコホートにマウスを無作為に割り付け、HL60及びOCI-AML3については、コホートあたりマウス4~5匹、MV4-11については、コホートあたりマウス10匹とした。HL60及びOCI-AML3の腫瘍モデルのマウスには、アザシチジンを5mg/kgで3日の間隔をあけて5回、薬物Aを10mg/kgで3日の間隔をあけて6回、腹腔内(IP)投与した。MV4-11腫瘍担持マウスには、アザシチジンを5mg/kg及び薬物Aを10mg/kg、週3回IP投与した。腫瘍をノギスで二次元測定し、腫瘍体積を長さ×幅×幅×0.5で算出した。ここで、長さは、2回の測定でより大きいほうとした。腫瘍が約2000mmの体積に達したら、動物を屠殺した。
【0241】
全身性白血病モデルにおけるBLI連続イメージング
HL60LUC2(ATCC)細胞株を、RPMI1640中、7.5×10細胞の濃度でNOD-SCID雌マウスの尾静脈を介して注射した。IVIS Spectrum(Perkin Elmer)を使用して、生物発光イメージング(BLI)の取得及び分析を行い、腫瘍成長をモニタリングした。ホタルD-ルシフェリン(Regis Technologies)を15mg/mlのストックのリン酸緩衝生理食塩水中に希釈し、使用する前に濾過した。マウス群を試料室に入れ、200μlのD-ルシフェリンを腹腔内(IP)注射した。注射後およそ10分でBLI全身シグナルを取得した。BLI発光強度の値は、マウス接種3日後に最初のスキャンを取得し、連続的に週2回モニタリングした。Living Image Software(Perkin Elmer)を使用して、マウス全身にわたる関心領域を手動で設定し、BLIの平均総発光強度(光子/秒、p/s)を定量した。平均2.6E6の総発光強度(光子/秒)で、PBS、アザシチジン(Selleckchem)、薬物A、及びアザシチジンと薬物Aの併用のコホートにマウスを無作為に割り付け、コホートあたりマウス10匹とした。アザシチジン製剤は、PBS中2%DMSOであった。アザシチジン治療マウスには、5mg/kgのアザシチジンをIP注射によって、3日の間隔をあけて5回投与した。薬物A治療マウスには、30mg/kgのIP注射によって、3日の間隔をあけて5回投与した。総発光強度が1E11到達するか、体重が20%を超えて減少したとき、動物を屠殺した。
【0242】
実施例2A:in vitroモデルにおけるマクロファージによる食作用に対する薬物Aとアザシチジンの併用による効果
本実施例において、マクロファージによるHL60及びOCI-AML3ヒト急性骨髄性白血病細胞の食作用に対する薬物A単独、アザシチジン単独、及び薬物Aとアザシチジンの併用による効果をin vitroアッセイ(詳細については実施例1参照)で評価した。HL60は、TP53null FLT3wt細胞株であり、OCI-AML3は、TP53wt及びFLT3wtである。
【0243】
簡潔に述べると、HL60細胞及びOCI-AML3細胞(すなわち、「標的細胞」)をCFSE(カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル)で標識し、アザシチジン(aza)で48時間処理した。次いで、標的細胞を遠心し、96ウェルプレートのウェルに100,000細胞/ウェルで加えた。次いで、薬物Aを加えた。未処理の対照標的細胞、及びアザシチジンのみ、または薬物Aのみで処理した対照標的細胞を並行して調製した。マクロファージをウェルに加え、プレートを37℃で2時間インキュベートした。マクロファージ細胞をペレット化し、染色し、フローサイトメトリーを介して分析した。死細胞は、e780陰性集団でゲーティングすることにより除外した。マクロファージは、系統マーカーCD33、CD11b及びCD14に対して陽性である細胞として同定した。この集団のうち、腫瘍細胞を貪食したマクロファージを、CFSEが陽性である細胞として同定した。
【0244】
図1Aに示されるように、アザシチジン(aza)は、単剤として、HL60細胞のマクロファージ媒介生食作用をわずかに刺激したが、薬物Aは、単剤として、食作用にほとんど影響しなかった。(薬物A処理細胞と未処理細胞の比較。)1.6nMの薬物Aと156nMのazaの組み合わせは、薬物A単独またはaza単独のいずれかよりも大きく、マクロファージによるHL60細胞の食作用を刺激した。同様の結果が、OCI-AML3細胞において、40nMの薬物A及び2.5μMのazaで観察された。図1Bを参照されたい。
【0245】
実施例2B:ヒトPBMC培養物におけるCD11c樹状細胞の生存率に対する薬物Aとアザシチジンの併用による効果
本実施例において、ヒト末梢血単核細胞培養物におけるCD11c樹状細胞の生存率に対する薬物A単独、アザシチジン単独、及び薬物Aとアザシチジンの併用による効果をin vitroアッセイ(詳細については実施例1参照)で評価した。樹状細胞(DC)は、哺乳動物の免疫系の抗原提示細胞(アクセサリー細胞としても知られている)である。樹状細胞は、自然免疫系と適応免疫系との間のメッセンジャーとして働くと考えられている。
【0246】
PMBC細胞を1.25μMのアザシチジン(aza)単独とインキュベーションすると、CD11c樹状細胞の生存率が約40%減少したが、PBMCを200nMの薬物A単独とインキュベーションすると、CD11c樹状細胞の生存率が約40%増加した。図2を参照されたい。1.25μMのazaと200nMの薬物Aの両方とともにインキュベートしたPBMC培養物中におけるCD11c樹状細胞の生存率は、薬物A単独とインキュベートしたPBMC培養物中におけるCD11c樹状細胞の生存率とほぼ同等であった。図2を参照されたい。かかる結果は、CD11c樹状細胞に対するアザシチジンの効果を薬物Aが救済することを示している。
【0247】
実施例2C:ヒト急性骨髄性白血病細胞株におけるカルレティキュリン発現に対するアザシチジンまたはベネトクラクスの効果
本実施例において、HL60、OCI-AML3、及びMV4-11ヒト急性骨髄性白血病(AML)細胞の細胞表面上におけるカルレティキュリンの発現レベルに対するアザシチジンの効果をin vitroアッセイ(詳細については実施例1参照)で評価した。HL60は、TP53nullFLT3wt細胞株であり、OCI-AML3は、TP53wt及びFLT3wtであり、MV4-11は、TP53wt及びFLT3-ITDである。
【0248】
カルレティキュリンは、Ca2+結合及び小胞体に存在する貯蔵に関与する多機能性タンパク質である。カルレティキュリンはまた、急性骨髄性白血病(AML)においてこれまでに記載されている細胞表面食作用促進マーカーである。図3Aに示されるように、HL60、OCI-AML3、及びMV4-11細胞の表面上のカルレティキュリンの発現は、アザシチジンの濃度が増えるにつれて増加した。細胞表面のカルレティキュリン発現のベースラインは、培地のみでインキュベートした細胞で示されたものである。
【0249】
MV4-11及び2名の異なるヒト患者に由来する初代AML細胞の細胞表面上のカルレティキュリンの発現レベルに対するアザシチジンまたはベネトクラクスの効果についても試験した。図3Bに示されるように、アザシチジンとベネトクラクスはいずれもMV411 AML細胞株と初代AML芽球の両方において、食作用促進シグナルであるカルレティキュリンの発現を増加させた。
【0250】
別のアッセイにおいて、MV4-11及び2名の異なるヒト患者に由来する初代AML細胞の細胞表面上のCD47の発現レベルに対するアザシチジンまたはベネトクラクスの効果について試験した。図3Cに示されるように、アザシチジンとベネトクラクスはいずれもMV411AML細胞株と初代AML芽球の両方において、抗食作用シグナルであるCD47の発現を増加させた。
【0251】
実施例2D:in vitroにおけるAML細胞株及び初代AML芽球の食作用に対する薬物Aとアザシチジンまたはベネトクラクスの併用による効果
AML細胞(HL60、OCIAML3、またはヒトドナー由来初代AML芽球)をアザシチジンまたはベネトクラクスと24~48時間インキュベートし、次いで、薬物Aの存在下または非存在下で、ヒト単球由来マクロファージと2時間共培養した。AML細胞の食作用を、AML細胞を飲み込んだマクロファージ(CFSE+)の数対マクロファージ総数として、フローサイトメトリーによって決定した。図7A及び7Bに示されるように、薬物Aとアザシチジン(7A)またはベネトクラクス(7B)の併用は、薬物A、アザシチジン、またはベネトクラクスによる単剤処理と比較して、ヒトマクロファージによるAML細胞の食作用による除去を促進した。
【0252】
実施例2E:白血病異種移植モデルにおける薬物Aとアザシチジンの併用による抗腫瘍活性
本実施例において、薬物Aとアザシチジン(aza)の併用による抗腫瘍活性を、HL60、OCI-AML3及びMV4-11ヒト白血病腫瘍異種移植片のいずれかを担持するマウスで評価した(実験の詳細は実施例1参照)。HL60は、TP53null FLT3wt細胞株であり、OCI-AML3は、TP53wt及びFLT3wtであり、MV4-11は、TP53wt及びFLT3-ITDである。
【0253】
HL60異種移植腫瘍を担持するマウスを、マウス4~5匹ずつの4群に無作為に割り付けた。マウス1群に、(a)薬物Aを10mg/kgでIP投与(Q3D、合計6用量)、(b)azaを5mg/kgでIP投与(Q3D、合計5用量)、(c)薬物Aとazaの両方の投与(単剤それぞれの場合の用量及び投与スケジュール)、または(d)ビヒクルの投与を行った。OCI-AML3異種移植片を担持するマウスも同様に無作為に割り付け、治療した。
【0254】
MV4-11異種移植片を担持するマウスは、9~10匹ずつの4群に無作為に割り付けた。マウス1群に、薬物Aを10mg/kgでIP投与し(週3回)、第2の群のマウスに、azaを5mg/kgでIP投与し(週3回)、第3の群に、薬物Aとazaの両方を投与し(単剤それぞれの場合の用量及び投与スケジュール、第4の群に、ビヒクルを投与した。
【0255】
腫瘍成長阻害率(%)(TGI)を(1-(治療腫瘍の平均体積)/(対照腫瘍の平均体積))×100%として算出した。20日目において、aza単剤で治療したマウスのHL60腫瘍成長は、最小限の阻害であり(すなわち、ビヒクル対照を投与したマウスと比較して)、一方、薬物Aによる治療は、マウスの腫瘍成長に著しい影響を与えなかった(すなわち、ビヒクルによる治療と比較して)。図4Aを参照されたい。azaと薬物Aの併用による治療は、いずれかの薬物単独よりも大きく、マウスのHL60腫瘍成長を遅らせた。20日目において、aza単独で治療したマウスでは、42%のTGIが観察され、薬物A単独で治療したマウスでは、10%のTGIが観察され、薬物Aとazaの併用で治療したマウスでは、67%のTGIが観察された。OCI-AML3モデルでも同様の結果が観察され、azaと薬物Aの併用による治療は、いずれかの薬物単独よりも大きく、マウスのOCI-AML3腫瘍成長を遅らせた。図4Bを参照されたい(*p<0.05、テューキーの通常の一元配置ANOVA)。20日目において、aza単独で治療したマウスでは、33%のTGIが観察され、薬物A単独で治療したマウスでは、-3.7%のTGIが観察され、薬物Aとazaの併用で治療したマウスでは、69%のTGIが観察された。
【0256】
薬物A10mg/kgをアザシチジン5mg/kgと併用して投与すると、各単剤またはビヒクル対照による治療と比較して、MV4-11異種移植片の腫瘍成長が消失した。26日目において、aza単独で治療したマウスでは、49%のTGIが観察され、薬物A単独で治療したマウスでは、35%のTGIが観察され、薬物Aとazaの併用で治療したマウスでは、86%のTGIが観察された。図4Cを参照されたい(***p<0.001、26日目におけるテューキーの通常の一元配置ANOVA)。薬物A+azaで治療したマウスの5/10が完全な腫瘍消失を示した。図4Dを参照されたい。
【0257】
実施例2F:全身性白血病モデルにおける薬物Aとアザシチジンの併用による抗腫瘍活性
薬物A単独及びアザシチジンとの併用による抗腫瘍活性を、播種性HL60-LUC2急性骨髄性白血病モデルで試験した。免疫不全NSGマウスにHL60-LUC2細胞(7.5E6細胞/動物)を尾静脈内注射により移植した後、生物発光イメージングによって生着を確認し、マウスを4群(10マウス/群)に無作為に割り付けた。治療を以下の表Aに示すように実施した。
【表13】
【0258】
生物発光シグナルについて、3日目からマウスを週2回イメージングした。図5A及び5Bに示されるように、薬物A30mg/kgをアザシチジン5mg/kgと併用して投与すると、各単剤またはビヒクル対照による治療と比較して、腫瘍成長がなくなった。
【0259】
マウスが薬物Aの単剤投与、アザシチジンの単剤投与、または薬物Aとアザシチジンの併用投与を14用量受けるまで、治療を継続した。薬物Aの単剤療法及びアザシチジンの単剤療法は、中程度の腫瘍成長阻害をもたらしたが、薬物Aの単剤療法またはアザシチジンの単剤療法を投与したマウスの全てが治療85日目までに疾患で死亡した。図5Cを参照されたい。対照的に、薬物Aとアザシチジンの併用は、147日目の試験終了まで、100%の動物生存で、腫瘍成長を完全に排除した。図5Cを参照されたい。
【0260】
播種性HL60-LUC2急性骨髄性白血病モデルで実施した第2の実験においては、アザシチジン及び薬物Aの治療法を生着後4日目に開始し、3日ごとに合計14用量を腹腔内投与した。以下の表A2を参照されたい。
【表14】
【0261】
薬物A+アザシチジンを投与されたマウスの半数で、薬物Aの単剤療法を更に16用量継続した。図5Dに示されるように、アザシチジン単剤で治療したマウスの全てがほぼ85日目までに治療で死亡した。14用量の薬物A+アザシチジンで治療したマウスにおいて、腫瘍阻害は、105日目まで観察された。対照的に、14用量の薬物A+アザシチジン、続いて、追加の16用量の薬物Aの単剤療法で治療したマウスの4匹中3匹では、試験終了(147日目)まで腫瘍阻害が観察された。図5Dを参照されたい。
【0262】
実施例3:全身性白血病モデルにおける薬物Aとベネトクラクスの併用による抗腫瘍活性
薬物A単独及びベネトクラクスとの併用による抗腫瘍活性を、実施例2に記載される播種性HL60-LUC2急性骨髄性白血病モデルにおいて試験した。ベネトクラクス及び薬物Aの治療法を生着後4日目に開始し、3日ごとに合計5用量を投与した。以下の表Bを参照されたい。
【表15】
【0263】
ベネトクラクス単剤療法及び薬物A単剤療法はそれぞれ中程度の腫瘍成長阻害をもたらしたが、持続的な応答を維持しなかった。ベネトクラクス単剤療法または薬物A単剤療法を行ったマウスの全てが40日目までに疾患で死亡した。図8を参照されたい。対照的に、ベネトクラクスと薬物Aの併用で治療したマウスの8匹のうち6匹では、80日の評価期間中、腫瘍成長が完全になくなった。
【0264】
実施例4:全身性白血病モデルにおける薬物Aとアザシチジン及びベネトクラクスの併用による抗腫瘍活性
異種移植したヒトHL-60Luc2白血病腫瘍を担持するマウスにおける腫瘍成長の阻害に対する薬物Aとアザシチジン及びベネトクラクスの併用による効果。週齢6の雌のNODSCID(Charles River)マウスを異種移植実験に使用した。各マウスの尾静脈にHL-60Luc2細胞(10×10細胞/マウス)を静脈内注射した。接種後4日目から、IVIS Caliper(PerkinElmer)を使用して、腫瘍の進行をモニタリングした。白血病負荷が約1×10光子/秒に達したら、マウスを無作為に群に割り付け、(a)PBS(対照)、(b)アザシチジン、(c)ベネトクラクス、(d)薬物A、(e)アザシチジン+ベネトクラクス、または(f)アザシチジン+ベネトクラクス+薬物Aを腹腔内投与した。アザシチジンは、5mg/kgの用量で3日ごとに合計5用量で腹腔内投与し、薬物Aは、30mg/kgの用量で3日ごとに合計5用量で腹腔内投与し、ベネトクラクスは、100mg/kgの用量で毎日14日間強制経口投与した。治療開始後3~4日ごとに、D-ルシフェリン(Regis)をマウスに注射し、小動物用in vivoイメージングシステム(IVIS)を使用して腫瘍生物発光を測定し、記録した。IVISソフトウェア(Caliper Life Sciences)により、関心領域をマウス全身でゲーティングし、放射輝度(光子/s/cm/ステラジアン)によって定義される発光量強度面積(光子/秒)として報告した。
【0265】
図6Aに示されるように、薬物Aとベネトクラクス及びアザシチジンの併用は、薬物A単独、アザシチジン単独、ベネトクラクス単独、またはアザシチジンとベネトクラクスの併用よりも大きく腫瘍成長を阻害した。図6Bに示されるように、薬物Aとベネトクラクス及びアザシチジンの併用で治療したマウスは、アザシチジン単独、ベネトクラクス単独、またはアザシチジンとベネトクラクスの組み合わせで治療したマウスよりも、生存率の増加を示した。薬物Aとベネトクラクス及びアザシチジンの併用により、80日の評価期間中、9匹のマウスのうち7匹で、腫瘍成長が完全になくなった。図6Bを参照されたい。
【0266】
実施例5:薬物Aは複数の急性骨髄性白血病治療薬に対する応答の深さ及び持続性を増強させる
急性骨髄性白血病(AML)は、標準療法の後であっても、ほとんどの患者で再発する進行性の血液悪性腫瘍である。最近の治療の進歩にもかかわらず、有効な新規治療の開発は依然としてアンメットニーズである。
【0267】
CD47は、腫瘍細胞によって上方制御される、宿主の免疫応答を回避するための骨髄チェックポイントであり、その遮断は、抗腫瘍免疫性を増強させる(Weiskopf(2017)Eur J Cancer,76:100-109)。薬物Aは、不活性なヒト免疫グロブリンFc領域に連結された高親和性CD47遮断剤を含む、人工融合タンパク質である。前臨床試験において、薬物Aは、マクロファージの食作用、樹状細胞の活性化及び腫瘍関連マクロファージの炎症表現型へのシフトを促進することによって、自然免疫と適応免疫を橋渡しし、様々な抗がん療法と組み合わせることで、抗腫瘍活性を増加させる(Kauder et al.(2018)PLoS ONE 13(8):e0201832)。薬物Aは、固形腫瘍の患者及び血液悪性腫瘍の患者で良好な忍容性をこれまでに示している。薬物Aと抗がん療法の併用で、抗腫瘍応答が助長されることが報告されている(Kim et al.Abstract #EP1247、25th Congress of the European Hematology Association(EHA)2020におけるポスター発表及びChow et al.Abstract #3056、2020 American Society of Clinical Oncology Virtual Scientific Programにおけるポスター発表)。最近、AML患者において、アザシチジンとBCL2阻害剤ベネトクラクスの併用は、アザシチジン単独と比較して有効性の増加を示した(DiNardo et al.(2019)Blood,133(1):7-17。アザシチジンまたはベネトクラクスによるin vitro治療は、白血病悪性腫瘍において、CD47と食作用促進マーカーのカルレティキュリンの両方の細胞表面発現を増加させた。
【0268】
薬物Aとアザシチジンまたはベネトクラクスのいずれかの併用によりAMLに対する治療有効性が増強するという仮説を検証するために、実験を実施した。薬物Aによるin vitro治療は、アザシチジンまたはベネトクラクスで治療した、TP53及びFLT3変異を有する細胞を含む複数のAML細胞株において、いずれかの治療単独と比較して、ヒト単球由来マクロファージによる食作用の飲み込みを増強させた。実施例2B~2Cを参照されたい。in vitroの所見は、いくつかのマウスAML異種移植モデルにおけるin vivo抗白血病活性の増強と相関した。実施例2C~2Dを参照されたい。AML細胞をマウスに尾静脈を介して接種するか、または皮下に移植し、腫瘍が指数関数的な成長に達したら、マウスを無作為に割り付け、ビヒクル対照、アザシチジン、ベネトクラクス、薬物A単独または薬物Aと化学療法の併用を投与した。薬物Aの併用療法を受けたコホートは、腫瘍消失の証拠とともに、有意に大きな腫瘍進行の阻害を示し、任意の単剤療法よりも極めて生存が増強された。
【0269】
実施例6:高リスク骨髄異形成症候群(MDS)のヒト患者における薬物Aとアザシチジンの併用の安全性、忍容性及び有効性を評価するための例示的な臨床試験
高リスク骨髄異形成症候群(MDS)の患者における薬物Aとアザシチジン(aza)の併用の安全性、認容性、及び有効性を評価するために、第1/2相臨床試験を実施する。第1相は、高リスクMDS患者において、漸増量の薬物Aと標準用量のazaの併用で安全性を評価して第2相の推奨用量を特定することを含み、第2相は、薬物A+azaの併用の有効性を評価する。
【0270】
約63名の患者を登録する。例示的な組み入れ基準は、(a)第1相:前治療なしまたは再発/難治性のいずれかである高リスクMDSの診断;第2相:前治療のない高リスクMDSの診断;(b)適切な腎機能及び肝機能;(c)18歳以上;ならびに(d)適切なパフォーマンスステータス(例えば、米国東海岸がん臨床試験グループ(Eastern Cooperative Oncology Group)(ECOG)スケールによるもの、ecog-acrin(dot)org/resources/ecog-performance-status参照)である。例示的な除外基準は、(a)MDSまたは急性骨髄性白血病(AML)に対する同種造血幹細胞移植(同種HSCT)の実施歴;(b)任意の抗CD47または抗SIRPα剤による前治療;(c)B型及びC型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、後天性免疫不全症候群(AIDS)関連疾病、またはSARS-CoV-2を含む既知の活性ウイルス感染である。
【0271】
第1相において、薬物Aは、最大60mg/kg、例えば、60mg/kgを4週間に1回(Q4W)、azaと組み合わせて投与する。azaは、各28日サイクルのうち7日間、毎日75mg/mの用量で(典型的に「7-0レジメン」と呼ばれる)、または各28日サイクルで、75mg/mの用量を毎日5日間、続いて、治療なし2日間(すなわち、アザシチジン投与なし)、次いで、75mg/mを毎日2日間静脈内または皮下投与する(典型的に「5-2-2レジメン」と呼ばれる)。第2相において、薬物Aは、第2相の推奨用量でazaと併用投与される(75mg/mの用量で各28日サイクルの最初の7日間毎日静脈内または皮下投与)。
【0272】
第1相の主要評価項目は、用量制限毒性(DLT)を示す試験参加者数である。第2相の主要評価項目は、全奏効率(ORR)であり、これは、奏効に達した試験参加者数である(例えば、国際作業部会(IWG)基準による完全奏効(CR)または部分奏効(PR)(例えば、,Cheson et al.Blood.2000;96:3671 3674及びCheson et al.Blood.2006;108:419-425参照)。
【0273】
実施例7:急性骨髄性白血病(AML)のヒト患者における薬物Aとベネトクラクス及びアザシチジンの併用の安全性、認容性、及び有効性を評価するための例示的な臨床試験
急性骨髄性白血病(AML)患者における薬物A、ベネトクラクス及びアザシチジン(Aza)の併用の安全性、認容性、及び有効性を評価するために、第1/2相臨床試験を実施する。第1a相において、参加者は、漸増用量の薬物Aをベネトクラクス及びアザシチジンと併用で投与される。第1相の主要評価項目は、用量制限毒性を経験した参加者数である。第1b/2相において、参加者は、薬物Aを第2相の推奨用量でベネトクラクス及びアザシチジンと併用で投与される。第1b/2相の主要評価項目は、European Leukemia Net(ELN)2017基準による完全寛解(CR)及び造血機能の回復が不十分な完全寛解(CRi)に達した参加者数である。これらの試験は、併用の安全性及び有効性ならびに推奨用量を特定するものである。
【0274】
例示的な組み入れ基準には、(a)WHO2016分類による再発/難治性または新規診断AMLの細胞学または組織学的確定診断;(b)第1a相:集中導入療法に適していないと考えられる患者の再発/難治性または前治療のないAML;(c)第1b相:HMA系レジメンによる前治療後の再発/難治性であるAML;(d)第2相:集中導入療法に適した候補とみなされない患者の前治療のないAML;(e)適切な腎機能及び肝機能;(f)18歳以上;ならびに(g)適切なパフォーマンスステータスが含まれるが、これらに限定されない。
【0275】
例示的な除外基準には、(a)第1a相及び第1b相については、以前に同種HSCTを受けた患者は、HCST後少なくとも3ヶ月でなければならず、制御されていない移植片対宿主病(GVHD)がない;(b)第2相については、以前に同種HSCTを受けた患者は除外される;(c)NCCNのAMLガイドライン2019年第3版によるt(8;21)、inv(16)、またはt(16;16)などの良好なリスク細胞遺伝学的所見のある新規診断AML患者;(d)急性前骨髄球性白血病(APL)患者;(e)任意の抗CD47または抗SIRPα(シグナル調節タンパク質アルファ)剤による前治療;(f)B型及びC型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、後天性免疫不全症候群(AIDS)関連疾病、またはsars-cov-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)を含む既知の活性ウイルス感染が含まれるが、これらに限定されない。
【0276】
前述の実施例は、例示のみを目的に提供されており、決して、本発明の範囲を限定することを意図していない。本明細書中に示され、かつ記載される変更に加えて、本発明の様々な変更が前述の記述から当業者に明らかになり、添付の特許請求の範囲内に含まれる。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
【配列表】
2023528341000001.app
【国際調査報告】