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特表2023-528342誘電泳動による決定論的横変位に基づく細胞選別チップ、装置、及び方法
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  • 特表-誘電泳動による決定論的横変位に基づく細胞選別チップ、装置、及び方法 図1
  • 特表-誘電泳動による決定論的横変位に基づく細胞選別チップ、装置、及び方法 図2
  • 特表-誘電泳動による決定論的横変位に基づく細胞選別チップ、装置、及び方法 図3
  • 特表-誘電泳動による決定論的横変位に基づく細胞選別チップ、装置、及び方法 図4
  • 特表-誘電泳動による決定論的横変位に基づく細胞選別チップ、装置、及び方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-04
(54)【発明の名称】誘電泳動による決定論的横変位に基づく細胞選別チップ、装置、及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/42 20060101AFI20230627BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20230627BHJP
   C12M 1/34 20060101ALN20230627BHJP
【FI】
C12M1/42
C12Q1/04
C12M1/34 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022572561
(86)(22)【出願日】2021-05-26
(85)【翻訳文提出日】2023-01-05
(86)【国際出願番号】 CN2021096171
(87)【国際公開番号】W WO2021239010
(87)【国際公開日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】202010457651.9
(32)【優先日】2020-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517353747
【氏名又は名称】中国科学院青島生物能源与過程研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲馬▼波
(72)【発明者】
【氏名】▲ディア▼志▲鈿▼
(72)【発明者】
【氏名】王喜先
(72)【発明者】
【氏名】徐健
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029AA09
4B029BB02
4B029BB07
4B029BB11
4B029CC01
4B029DG08
4B029FA04
4B063QA18
4B063QQ06
4B063QQ07
4B063QQ08
4B063QS36
4B063QX01
4B063QX04
(57)【要約】
誘電泳動による決定論的横変位に基づく細胞選別チップ、装置及び方法を提供する。当該チップは、1つの注入口(4.1)、直通路及び2つの注出口を含むマイクロ流路(4)を含み、直通路の底部には、集束電極群(1)、選別電極群(2)及び分離電極群(3)の3組の電極アレイ対が集積され、当該集束電極群は、細胞の集束及び信号の検出に用いられ、当該選別電極群は、単一細胞の選別に用いられ、当該分離電極群は、単一細胞の分離に用いられる。高速、正確かつ完璧にターゲット細胞の選別を実現することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの注入口、直通路及び2つの注出口を含むマイクロ流路を含み、
直通路の底部には、集束電極群、選別電極群及び分離電極群の3組の電極アレイ対が集積され、
前記集束電極群は、細胞の集束及び信号の検出に用いられ、
前記選別電極群は、単一細胞の選別に用いられ、
前記分離電極群は、単一細胞の分離に用いられる、
ことを特徴とする誘電泳動による決定論的横変位に基づく細胞選別マイクロ流体チップ。
【請求項2】
前記集束電極群及び分離電極群は、少なくとも一対の電極を含み、前記選別電極群は、少なくとも1つの電極であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項3】
前記集束電極群は、一対の電極アレイを少なくとも有し、各対の電極アレイにおける電極は互いに平行であり、単一の電極アレイ上の電極の一端は接続され、各対の電極アレイにおける電極は、間隔をおいて分布され、前記電極は、挟角を有することを特徴とする請求項2に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項4】
電極の挟角の角度は、a+bであり、電極角度a、bの範囲は、0~90度であることを特徴とする請求項3に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項5】
前記角度aとbは同じであることを特徴とする請求項4に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項6】
前記分離電極群と集束電極群は構造が同じであり、挟角方向が異なり、前記選別電極と中心線との挟角はaである請求項4に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項7】
前記集束電極群と分離電極群の電極対の中心線は、同一直線上にないことを特徴とする請求項1に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項8】
前記電極群の材質は、ITO、炭素、グラフェン、金属電極である請求項1に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項9】
前記マイクロ流体チップのいずれかと、
周波数及び電圧が異なる正弦交流電圧を発生させるための関数発生器と、
プログラムの実行及び関連光学機器による信号の採取及び收集を制御し、関数発生器の出力電圧、周波数、デューティ比等のパラメータを制御し、リレーのスイッチングを制御するためのコンピュータと、
制御回路のスイッチングを制御するためのリレーと、
流体がマイクロ流路に入るよう駆動する駆動力源としての流体駆動装置と、
を含むことを特徴とする誘電泳動による決定論的横変位に基づく細胞選別装置。
【請求項10】
前記流体駆動装置は、注射ポンプ又は重力駆動装置を含むことを特徴とする請求項9に記載の誘電泳動による決定論的横変位に基づく細胞選別装置。
【請求項11】
請求項1から8のいずれか1項に記載のマイクロ流体チップ、請求項9から10に記載の装置を利用して、
1)流体駆動装置を利用して細胞を含有する流体をマイクロ流体チップの注入口を介して直通路に入れる細胞を注入するステップと、
2)導線を介して集束電極群と関数発生器の出力端とを接続し、集束電極群に高周波電圧を周期的に印加して、流体中の細胞を電極挟角の信号モニタリング点の位置に集束させる細胞を集束するステップと、
3)光学信号採取点とモニタリング点との位置合わせをして光学信号を検出し、検出された信号をコンピュータプログラムで処理してターゲット細胞であるか否かを判断する信号を検出するステップと、
4)ターゲット細胞である場合、リレーをトリガして選別電極群に連通して高周波電圧を出力することにより、ターゲット細胞を選別電極に沿って中心線の位置からずらし、非ターゲット細胞であるとプログラムによって判定された場合、リレーをオンしないようにプログラムで制御することにより、非ターゲット細胞をもとの集束電極群の中心線の位置に沿ってずれずに移動を続けさせる細胞を選別するステップと、
5)分離電極群に高周波電圧を周期的に印加することにより、流体中の非ターゲット細胞とターゲット細胞とを異なる注出口に向かって流す細胞を分離するステップと、
を含むことを特徴とする誘電泳動による決定論的横変位に基づく細胞選別方法。
【請求項12】
前記細胞は、酵母細胞、大腸菌細胞又はHela細胞のうちの1つ又は複数であることを特徴とする請求項11に記載の誘電泳動による決定論的横変位に基づく細胞選別方法。
【請求項13】
前記流体の流速は、0.01~50マイクロリットル/分であることを特徴とする請求項11に記載の誘電泳動による決定論的横変位に基づく細胞選別方法。
【請求項14】
前記ステップ3)における光学信号の検出は、ラマン信号の検出又は蛍光信号の検出であることを特徴とする請求項11に記載の誘電泳動による決定論的横変位に基づく細胞選別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオ技術及び機器科学の分野に属し、具体的には、誘電泳動による決定論的横変位に基づく細胞選別チップ、装置、及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生物学では、主に集団細胞レベルで生物細胞が特徴づけられているが、異質な集団の平均測定は細胞培養に依存し、個々の細胞の違いを具現化することができない上、自然界の細胞の大多数は依然として培養することが難しい。単一細胞の機能識別と指向選別は、細胞の増殖に依存しないため、細胞培養のステップを直接スキップできるとともに、細胞の異質性を反映することもできる。蛍光活性化セルソーティング(FACS)は、高スループットな単一細胞分析技術であり、この技術を応用することにより単一細胞の同定効率が大幅に向上している。しかし、大多数の細胞はそれ自体蛍光効果が弱いか、又は蛍光がないため、この方法では、一般に蛍光標識を付す必要がある。また、細胞コロニーにおける機能的構成要素を識別する際、重要な細胞表現型は、おおまかに認識されるか又は完全に未知(つまり、「未知」の細胞表現型)でしかないことが多く、他のバイオ標識もなく、これらの研究の目的は、まさにこれら未知ながら重要な表現型(及びそのバイオ標識)を見つけることであることが多い。したがって、「未知の細胞表現型を検出する」という壁によって現在FACS等の細胞選別技術の単一細胞研究への応用が著しく制限されている。単一細胞ラマンスペクトル技術(SCRS)は、効率の高い、細胞内の化学物質情報を識別する技術であり、細胞内の化合物分子の構成及び構造に関する情報を提供することができ、ラマンスペクトルは、単一細胞全体の化学物質指紋スペクトルを取得する際にいかなる標識も必要としないため、生体細胞の細胞型、生理的特性及び表現型の変化を識別することができ、細胞ラマン信号の変化を利用して「未知の細胞表現型」を追跡し選別することができる。SCRSに基づくラマン活性化細胞選別(RACS)の実現は、上述の壁の解消に向けて新たなアイデアを提供するものである。
【0003】
従来技術には、光クランプ、レーザジェット結合等のラマン活性化細胞選別に関する一連の技術があり、これらはその静的バージョンに属する。これらのシステムは、簡単で実用的であるが、スループットが過度に低く、高スループット選別にラマンスペクトル技術を応用するのを妨げている。単一細胞選別のスループット向上を図るべく、高スループット選別を実現できるラマン活性化液滴選別システム及び選別方法も登場したが、この類の技術的解決案では油中水滴が用いられるため、流路が複雑で、取り扱いにくく、依然として実用におけるニーズを完全に満たすことができていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上の問題に鑑みて、本発明は、簡単なチップ構造を用いて、不均一な電界を印加することにより、単一細胞の選別を実現する誘電泳動による決定論的横変位に基づく細胞選別チップ、装置及び方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本発明の一方面が提供する誘電泳動による決定論的横変位に基づく細胞選別マイクロ流体チップは、1つの注入口、直通路及び2つの注出口を含むマイクロ流路を含み、直通路の底部には、集束電極群、選別電極群及び分離電極群の3組の電極アレイ対が集積され、当該集束電極群は、細胞の集束及び信号の検出に用いられ、当該選別電極群は、単一細胞の選別に用いられ、当該分離電極群は、単一細胞の分離に用いられる。
【0006】
当該集束電極群及び分離電極群は、少なくとも一対の電極を含み、選別電極群は、一対の電極であっても、1つの電極であってもよい。
【0007】
当該集束電極群は、一対の電極アレイを少なくとも有し、各対の電極アレイにおける電極は、互いに平行であり、単一の電極アレイ上の電極の一端は接続され、各対の電極アレイにおける電極は、間隔をおいて分布され、当該電極は、挟角を有する。
【0008】
当該電極は、形状が「>」に類似する2つの辺を有する。
【0009】
電極の挟角の角度は、a+bであり、電極角度a、bの範囲は、0~90度であり、好ましくは、15~45度である。
【0010】
aは、電極の一辺と中心線との挟角であり、bは、電極の他辺と中心線との挟角である。
【0011】
別の好ましい例において、当該角度aとbは同じではない。
【0012】
別の好ましい例において、当該角度aとbは同じである。
【0013】
当該分離電極群と集束電極群は構造が同じであり、挟角方向が異なり、当該選別電極と中心線との挟角はaである。
【0014】
当該分離電極群の電極形状は、「<」に類似する。
【0015】
電極対の幅Lは、マイクロ流路の幅に応じて柔軟に調整できる。
【0016】
電極幅D及び電極ピッチdは、細胞/粒子の寸法に応じて調整可能であるが、電極幅D及び電極ピッチdは、いずれも細胞/粒子の最大寸法より大きい。
【0017】
別の好ましい例において、当該集束電極群と分離電極群の電極対の中心線は、同一直線上にない。
【0018】
別の好ましい例において、2組の電極対の中心線の距離cは、電極幅D及び電極ピッチdによって決まる。
【0019】
別の好ましい例において、電極対の幅Lは1ミリメートル、電極幅Dは25ミクロン、電極間距離dは25ミクロン、電極角度a、bのいずれも30度、2組の電極対の中心線の距離cは35ミクロンである。
【0020】
別の好ましい例において、当該電極群の材質は、ITO、炭素、グラフェン、金属電極である。
【0021】
別の好ましい例において、当該電極の高さは10ナノメートル~10ミクロンであり、好ましくは、50~150ナノメートルである。
【0022】
別の好ましい例において、当該チップ底部に電極対を集積するキャリアの材質は、珪酸塩ガラス、石英ガラス、フッ化カルシウムガラス、ポリジメチルシロキサン(PDMS)又はポリメチルメタクリレート(PMMA)であり、好ましくは、石英ガラスである。
【0023】
別の好ましい例において、当該電極アレイ群には、電極に高周波交流電圧を印加するための関数発生器が外部に接続されている。
【0024】
別の好ましい例において、当該選別電極群の応答時間は50ミリ秒である。
【0025】
高周波交流電圧を電極に周期的に印加することにより、流体中の微粒子が電極に沿って流れるようにする。これは、不均一な電界を印加することにより、分極しにくい溶液中の細胞/微粒子が分極しやすくなり、電極に垂直で電極を指向する誘電泳動力を受けるとともに、細胞がさらに、流れ方向に平行で流れ方向を指向する流体推進力を受け、両者の合力によって細胞が電極に沿って移動するものである。
【0026】
当該直流道の幅は、理論上上限を設けなくともよく、チャンネル幅は、電極アレイを増やすことによっても好ましい集束効果に達することができる。
【0027】
別の好ましい例において、当該直流道の幅は1~2ミリメートルである。
【0028】
本発明の別の方面が提供する誘電泳動による決定論的横変位に基づく細胞選別装置は、
マイクロ流体チップと、
周波数及び電圧が異なる正弦交流電圧を発生させるための関数発生器と
プログラムの実行及び関連光学機器による信号の採取及び收集を制御し、関数発生器の出力電圧、周波数、デューティ比等のパラメータを制御し、リレーのスイッチングを制御するためのコンピュータと、
制御回路のスイッチングを制御するためのリレーと、
流体がマイクロ流路に入るよう駆動する駆動力源としての流体駆動装置とを含む。
【0029】
別の好ましい例において、当該流体駆動装置は、注射ポンプ又は重力駆動装置を含む。
【0030】
本発明のさらに別の方面が提供する誘電泳動による決定論的横変位に基づく細胞選別方法は、具体的に、
1)流体駆動装置を利用して細胞を含有する流体をマイクロ流体チップの注入口を介して直通路に入れる細胞を注入するステップと、
2)導線を介して集束電極群と関数発生器の出力端とを接続し、集束電極群に高周波電圧を周期的に印加して、流体中の細胞を電極挟角の信号モニタリング点の位置に集束させる細胞を集束するステップと、
3)光学信号採取点とモニタリング点5との位置合わせをして光学信号を検出し、検出された信号をコンピュータプログラムで処理してターゲット細胞であるか否かを判断する信号を検出するステップと、
4)ターゲット細胞である場合、リレーをトリガして選別電極群に連通して高周波電圧を出力することにより、ターゲット細胞を選別電極に沿って中心線の位置からずらし、非ターゲット細胞であるとプログラムによって判定された場合、リレーをオンしないようにプログラムで制御することにより、非ターゲット細胞をもとの集束電極群の中心線の位置に沿ってずれずに移動を続けさせる細胞を選別するステップと、
5)分離電極群に高周波電圧を周期的に印加することにより、流体中の非ターゲット細胞とターゲット細胞とを異なる注出口に向かって流す細胞を分離するステップとを含む。
【0031】
別の好ましい例において、当該細胞は、酵母細胞、大腸菌細胞又はHela細胞等の生物細胞の1つ又は複数である。
【0032】
別の好ましい例において、当該流体の流速は0.01~50マイクロリットル/分であり、流速の大きさは直通路の幅及び高さに関係し、好ましくは、注入流速は10~40マイクロリットル/分である。
【0033】
酵母を例に挙げると、酵母を純水で3回洗浄し純水を注入緩衝液とし、通電電圧16ボルト、周波数10メガヘルツの正弦交流電圧を最適パラメータとする。
【0034】
別の好ましい例において、印加する高周波電圧の持続時間は、流動場における流体流速等のパラメータに基づいて調整し、負荷時間は、ターゲット細胞から2組の電極の中心線の距離c以上の距離ずれることを満たすものである必要がある。
【0035】
当該ステップ3)における光学信号の検出は、ラマン信号の検出又は蛍光信号の検出である。
【0036】
当該ステップ3)における光学信号の検出とステップ4)における選別との間に遅延時間が存在し、当該遅延時間は、間隔時間=液流長さ/液流流速によって計算し決定される。なお、液流長さとは、信号検出点から選別操作点までに検出された液体が流れた実際の距離をいう。
【0037】
選別電極群及び分離電極群をトリガしない場合、当該システム方法は、フローサイトメトリー検出として用いることができるが、検出点を流れる細胞ごとに信号検出が行われる。
【発明の効果】
【0038】
本発明には、以下に示す有益な効果がある。
1)チップマイクロ流路は、構造が簡単で、流路が1本の直通路であり、実際の取り扱いが容易である。
2)選別電極の応答時間はミリ秒オーダーであり、高スループットの選別効率が得られる。
3)集束電極群を集積し、細胞の捕獲効率及び検出効率を保証できるとともに、細胞の注入流速を大幅に向上させてマイクロチューブに細胞を注入する際に沈降するのを効果的に防止し、注入効率を向上させることができ、システムが安定的に稼働する時間を効果的に延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】誘電泳動による決定論的横変位に基づく細胞選別チップの模式図である。符号の説明:1 集束電極群、2 選別電極群、3 分離電極群、4 マイクロ流路、4.1 注入口、4.2 収集口、4.3 廃液口、5 信号検出点。
図2】電極の各パラメータの模式図である。a、bは、いずれも電極角度を表し、dは、電極と電極との間の距離を表し、Dは、電極幅を表し、cは、2組の電極対の中心線の距離を表し、Lは、電極対の幅を表す。
図3】別の電極群の構造模式図である。
図4】誘電泳動による決定論的横変位に基づく細胞選別装置の模式図である。符号の説明:1 マイクロ流体チップ、2 関数発生器、3 コンピュータ、4 リレー、5 注射ポンプ。
図5】誘電泳動による決定論的横変位に基づく細胞選別の流れを示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
発明の詳細な説明
以下、図面及び実施例を参照して本発明についてさらに詳細に説明する。これらの実施例は、本発明を説明するためのものにすぎず、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。
【0041】
マイクロ流体チップの構造を図1に示す。当該マイクロ流体チップは、マイクロ流路4を含み、当該マイクロ流路は、1つの注入口4.1、直通路、収集口4.2、及び廃液口4.3を含む。マイクロ流路4の底部には、集束電極群1、選別電極群2及び分離電極群3の3組の電極アレイ対が集積されている。当該集束電極群は、細胞の集束及び信号の検出に用いられ、当該選別電極群は、単一細胞の選別に用いられ、当該分離電極群は、単一細胞の分離に用いられる。
【0042】
図2は電極の各パラメータの模式図である。a、bは、いずれも電極角度を表し、dは、電極と電極との間の距離を表し、Dは、電極幅を表し、cは、2組の電極対の中心線の距離を表し、Lは、電極対の幅を表す。
【0043】
図3は、別の電極群の構造模式図である。なお、選別電極群には、電極が1つしかない。
【実施例
【0044】
実施例1
油脂生産量の多い酵母細胞のラマンフローサイトメトリーによる選別
【0045】
実験の準備:
培養した酵母細胞1ミリリットルを遠沈管に取り、5000回転/分で5分間遠心分離し、上澄みを捨て、純水1ミリリットルを加えて再懸濁させた後、再度遠心分離させ、5000回転/分で5分間遠心分離した。3回洗浄した後、純水1ミリリットルを加えて再懸濁させた。菌の濃度に応じてこれを1000~10000倍に希釈し、一定濃度の界面活性剤(例えば、終濃度0.5%のPF127)を加え、細胞が電極に吸着するのを防止し、均一に混ぜた後、注射器に注入した。
【0046】
ラマン測定器をオンにし、レーザ光が信号のモニタリング点5と一致するようにしてレーザ光をオンにした。
【0047】
用いたマイクロ流体チップの構造は、図3に示すとおりである。マイクロ流体チップ内の電極のパラメータは、電極対の幅Lが1ミリメートル、電極幅Dが25ミクロン、電極間距離dが25ミクロン、電極角度a、bのいずれも30度、2組の電極対の中心線の距離cが35ミクロンであった。
【0048】
マイクロ流体チップ1、関数発生器2、コンピュータ3、リレー4、注射ポンプ5を図4に示すように接続し、コンピュータ内の編成されたプログラムを実行して、関数発生器の出力チャンネル2に出力チャンネル1を制御させ、チャンネル2に、電圧20ボルト、周波数5ヘルツの方形波を出力させ、出力チャンネル1に、電圧16ボルト、周波数10メガヘルツの正弦波を出力させた。同時に、ラマン信号の採取と分析をプログラムで制御し、ターゲット細胞が検出されると、リレー4のオンをプログラムで制御した。
【0049】
実験中:
注射ポンプ5を用いて上述の処理をした菌液をマイクロ流路に注入し、液体中の酵母細胞を集束電極群の集束作用下で電極対の先端まで徐々に移動させた。マイクロ流路の流速は、約40マイクロリットル/分、電極の通電パラメータは、電圧16ボルト、周波数10メガヘルツ、集束トラップ効率は95%超に達した。
【0050】
酵母細胞が信号モニタリング点まで移動すると、ラマンスペクトルを採取され、採取されたスペクトルをプログラムによって簡単に分析した。ターゲット細胞である場合、ラマンスペクトルは油脂の特徴的なピークを反映することから、プログラムによってターゲット細胞であると判断され、プログラムによってリレーがアクティブに制御されて、選別電極群がオンになり、遅延及び負荷の持続時間を予め設定することにより、ターゲット細胞を下に移動させた。非ターゲット細胞である場合、ラマンスペクトルに油脂の特徴的なピークは示されないことから、リレーはアクティブにならないため、選別電極群に電圧負荷はなく、細胞は中心線に沿って移動を続けた。
【0051】
分離電極群の役割は、分離電極群の中心線両端の細胞を中心線からさらにずらして、ターゲット細胞をチャンネル下方に、非ターゲット細胞をチャンネル上方に位置させることである。
【0052】
最後に、油脂生産量の多い酵母細胞が収集口で收集され、油脂の生産量が低いか又は生産しない酵母細胞が廃液口にあった。
【0053】
実験終了:
マイクロ流体チップチャンネルを無水エタノールで2回洗い流した後、オーブンに入れて乾燥させ、繰り返し利用した。
【0054】
実施例2
油脂生産量の多い酵母細胞のラマンフローサイトメトリーによる検出
【0055】
実験の準備:
培養した酵母細胞1ミリリットルを遠沈管に取り、5000回転/分で5分間遠心分離し、上澄みを捨て、純水1ミリリットルを加えて再懸濁させた後、再度遠心分離させ、5000回転/分で5分間遠心分離した。3回洗浄した後、純水1ミリリットルを加えて再懸濁させた。菌の濃度に応じてこれを1000~10000倍に希釈し、一定濃度の界面活性剤(例えば、終濃度0.5%のPF127)を加え、細胞が電極に吸着するのを防止し、均一に混ぜた後、注射器に注入した。
【0056】
ラマン測定器をオンにし、レーザ光が信号のモニタリング点5と一致するようにしてレーザ光をオンにした。
【0057】
用いたマイクロ流体チップの構造は、図3に示すとおりである。マイクロ流体チップ内の電極のパラメータは、電極対の幅Lが1ミリメートル、電極幅Dが25ミクロン、電極間距離dが25ミクロン、電極角度a、bのいずれも30度、2組の電極対の中心線の距離cが35ミクロンであった。
【0058】
マイクロ流体チップ1、関数発生器2、コンピュータ3、リレー4、注射ポンプ5を図4に示すように接続し、コンピュータ内の編成されたプログラムを実行して、関数発生器の出力チャンネル2に出力チャンネル1を制御させ、チャンネル2に、電圧20ボルト、周波数5ヘルツの方形波を出力させ、出力チャンネル1に、電圧16ボルト、周波数10メガヘルツの正弦波を出力させた。同時に、ラマン信号の採取と分析をプログラムで制御した。
【0059】
注射ポンプ5を用いて上述の処理をした菌液をマイクロ流路に注入し、液体中の酵母細胞を集束電極群の集束作用下で電極対の先端まで徐々に移動させた。マイクロ流路の流速は、約40マイクロリットル/分、電極の通電パラメータは、電圧16ボルト、周波数10メガヘルツ、集束トラップ効率は95%超に達した。
【0060】
酵母細胞が信号モニタリング点まで移動すると、ラマンスペクトルを採取され、採取されたスペクトルをプログラムによって簡単に分析した。
【0061】
最後に、検出を終えた酵母細胞を収集口で收集した。
【0062】
実験終了:
マイクロ流体チップチャンネルを無水エタノールで2回洗い流した後、オーブンに入れて乾燥させ、繰り返し利用した。
採取されたラマンスペクトルを後で分析することによって、油脂生産量の多い酵母細胞が占める割合等の関連情報を得ることができた。
【0063】
実施例3
蛍光細胞のフローサイトメトリーによる選別
【0064】
実験の準備:
培養した、一部発現可能な蛍光タンパクを含有する大腸菌1ミリリットルを遠沈管に取り、5000回転/分で5分間遠心分離し、上澄みを捨て、純水1ミリリットルを加えて再懸濁させた後、再度遠心分離させ、5000回転/分で5分間遠心分離した。3回洗浄した後、純水1ミリリットルを加えて再懸濁させた。菌の濃度に応じてこれを1000~10000倍に希釈し、一定濃度の界面活性剤(例えば、終濃度0.5%のPF127)を加え、細胞が電極に吸着するのを防止し、均一に混ぜた後、注射器に注入した。
【0065】
蛍光画像生成器をオンにし、レーザ光が信号のモニタリング点5と一致するようにしてレーザ光をオンにした。
【0066】
用いたマイクロ流体チップの構造は、図3に示すとおりである。電極対の幅Lが1ミリメートル、電極幅Dが25ミクロン、電極間距離dが25ミクロン、電極角度a、bのいずれも15度、2組の電極対の中心線の距離cが50ミクロンであった。
【0067】
マイクロ流体チップ1、関数発生器2、コンピュータ3、リレー4、注射ポンプ5を図4に示すように接続し、コンピュータ内の編成されたプログラムを実行して、関数発生器の出力チャンネル2に出力チャンネル1を制御させ、チャンネル2に、電圧20ボルト、周波数0.2ヘルツの方形波を出力させ、出力チャンネル1に、電圧16ボルト、周波数1メガヘルツの正弦波を出力させた。同時に、蛍光信号の採取と分析をプログラムで制御し、ターゲット細胞が検出されると、リレー4のオンをプログラムで制御した。
【0068】
実験中:
注射ポンプ5を用いて上述の処理をした菌液をマイクロ流路に注入し、液体中の大腸菌細胞を集束電極群の集束作用下で電極対の先端まで徐々に移動させた。マイクロ流路の流速は、約10マイクロリットル/分、電極の通電パラメータは、電圧16ボルト、周波数1メガヘルツ、集束トラップ効率は90%超に達した。
【0069】
大腸菌細胞が信号モニタリング点まで移動すると、蛍光タンパクを含有する大腸菌がレーザ光に励起されて蛍光信号を出し、この蛍光信号がコンピュータに採取され、プログラムによってリレーがアクティブに制御されて、選別電極群がオンになり、遅延及び負荷の持続時間を予め設定することにより、ターゲット細胞を下に移動させた。蛍光タンパクを含有しない大腸菌はモニタリング点を通過するときに蛍光信号を励起しないことから、プログラムは、リレーをアクティブにしないように制御され、選別電極群に電圧負荷はなく、細胞は中心線に沿って移動を続けた。
【0070】
分離電極群の役割は、分離電極群の中心線両端の細胞を中心線からさらにずらして、ターゲット細胞をチャンネル下方に、非ターゲット細胞をチャンネル上方に位置させることである。
【0071】
最後に、蛍光を帯びた大腸菌が収集口で收集され、非蛍光の大腸菌細胞が廃液口にあった。
【0072】
実験終了:
マイクロ流体チップチャンネルを無水エタノールで2回洗い流した後、オーブンに入れて乾燥させ、繰り返し利用した。
【0073】
本発明の上述の内容を踏まえ、当業者は、本発明に様々な変更又は修正を行うことができ、これらの均等物も本願に添付の特許請求の範囲により限定される範囲にあることが理解される。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】