IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セーホーエル.ハンセン アクティーゼルスカブの特許一覧 ▶ コンパニ・ジェルベ・ダノンの特許一覧

特表2023-528345発酵食品製品を調製するための乳酸菌組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-04
(54)【発明の名称】発酵食品製品を調製するための乳酸菌組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20230627BHJP
   A23C 9/123 20060101ALI20230627BHJP
   C12N 15/54 20060101ALN20230627BHJP
【FI】
C12N1/20 A ZNA
A23C9/123
C12N15/54
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022572569
(86)(22)【出願日】2021-05-31
(85)【翻訳文提出日】2023-01-18
(86)【国際出願番号】 EP2021064542
(87)【国際公開番号】W WO2021240015
(87)【国際公開日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】20177299.3
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503260310
【氏名又は名称】セーホーエル.ハンセン アクティーゼルスカブ
(71)【出願人】
【識別番号】506375923
【氏名又は名称】コンパニ・ジェルベ・ダノン
【氏名又は名称原語表記】COMPAGNIE GERVAIS DANONE
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】ブノワ コルソン
(72)【発明者】
【氏名】ソニャ ブロク
(72)【発明者】
【氏名】ゲーレ レチ ブクホアン
(72)【発明者】
【氏名】ナナ クレステンスン
(72)【発明者】
【氏名】マリー-アニエス スーセ
(72)【発明者】
【氏名】ローラン マルシャル
(72)【発明者】
【氏名】アンヌ ドピエーリス
(72)【発明者】
【氏名】ファニー ラーレール
【テーマコード(参考)】
4B001
4B065
【Fターム(参考)】
4B001AC02
4B001BC07
4B001BC08
4B001BC14
4B001EC01
4B065AA30X
4B065AA49X
4B065AC14
4B065BA23
4B065BB24
4B065CA42
(57)【要約】
本発明は、発酵乳製品を製造するための組成物であって、以下の:(i) グルコース発酵性ストレプトコッカス・サーモフィルス(St)株及びグルコース発酵性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス(Lb)株を含むスターター培養物;並びに(ii) グルコース欠損ストレプトコッカス・サーモフィルス(St)株、ここで、前記St株は、ガラクトース発酵性であり、かつ、グルコキナーゼタンパク質をコードするglcK遺伝子のDNA配列内に突然変異を担持し、そしてその突然変異がグルコキナーゼタンパク質を不活化するか又はその遺伝子の発現に対して負の効果があるを含む組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の:
(i) グルコース発酵性ストレプトコッカス・サーモフィルス(St)株及びグルコース発酵性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス(Lb)株を含むスターター培養物;並びに
(ii) グルコース欠損ストレプトコッカス・サーモフィルス(St)株、ここで、前記St株は、ガラクトース発酵性であり、かつ、グルコキナーゼタンパク質をコードするglcK遺伝子のDNA配列内に突然変異を担持し、そしてその突然変異がグルコキナーゼタンパク質を不活化するか又はその遺伝子の発現に対して負の効果がある、
を含む、発酵乳製品を製造するための組成物。
【請求項2】
前記発酵乳製品の後酸性化が、(ii)のグルコース欠損ストレプトコッカス・サーモフィルス(St)株を含まない組成物を用いて調製された発酵乳製品と比較して、低減される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記グルコース欠損St株が2-デオキシグルコース耐性である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記グルコース欠損St株が、細胞内へのグルコースの輸送を低減する突然変異を担持する、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記グルコース欠損St株が、9.5%のB乳中に106~107CFU/mlの濃度で植菌され、そして、40℃にて20時間培養されたときに、その9.5%のB乳中のグルコース量を少なくとも5mg/mLまで増加させる、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記グルコース欠損St株が、0.05%のスクロースを含む9.5%のB乳中に106~107CFU/mlの濃度で植菌され、そして、40℃にて20時間培養されたときに、その0.05%のスクロースを含む9.5%のB乳中のグルコース量を少なくとも5mg/mLまで増加させる、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記グルコース発酵及び/又はグルコース欠損ストレプトコッカス・サーモフィルス株がラクトース陽性である、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記グルコース発酵性ストレプトコッカス・サーモフィルス株がラクトース欠損である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記グルコース欠損ストレプトコッカス・サーモフィルス株が:DSM32227;DSM28889;DSM25850;DSM25851;DSM26722及び母株としての寄託菌株のうちの1つを使用することによって得られたそこから誘導された突然変異株、ここで、前記突然変異体は、その母株のグルコース分泌特性を保有するか又は更に改善した、から成る群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株が:受託番号DSM28910;DSM22586、並びに(ラクトース及びX-Galを含有する培地上で白色コロニーを作り出す能力を有すると更に特徴づけられた)そこから誘導された突然変異株から成る群から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物を植菌し、そして、乳基質を発酵させることを含む、発酵乳製品を製造する方法。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物を含む発酵乳製品。
【請求項13】
発酵乳製品の調製のための、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、例えば、ヨーグルトなどの発酵乳製品を製造するための組成物及び方法に関する。特に、本発明は、後酸性化を低減するための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
発酵乳製品を製造するための現行の方法の大部分は、以下のステップ:
(a) 乳基質を、乳中に存在するラクトースから得られたグルコースを代謝できる乳酸菌(LAB)を含むスターター培養物の添加によって発酵させ;
(b) 発酵の間、LABがグルコースを代謝し、乳酸(酸性化)を産生し、そしてそれが、6.4~6.8(牛乳の場合)の最初の範囲からpH3.8~4.7の範囲へのpHの低下を引き起こし;
(c) 問題の発酵製品が所望のpHに達した時点で、発酵を発酵乳製品の急速冷却によって終了させること、
を特徴とする。
【0003】
この方法は、例えば、ヨーグルトやヨーグルト飲料を製造するのに使用される。
発酵を終了させるための乳製品の冷却なしに、プロセスは継続し、そして、目標pHが達成された後にも、製品の更なる酸性化、すなわち、後酸性化を引き起こすであろう。
【0004】
急速冷却の1つの欠点は、それが製品の食感の損失につながる点である。
そのため、急速冷却のステップを除くことは望ましく、更に、ユニット操作を割愛し、これにより生産コストを削減するであろう。
【0005】
発酵乳製品を製造する方法における急速冷却ステップの存在にもかかわらず、後酸性化、すなわち、所望するpHでの発酵終了後のLABによる乳酸の産生、がそれでも観察される。後酸性化は、乳製品の製造中の最も重要な問題の1つであると思われる。発酵乳製品の(加工、包装、輸送、及び保存を含めた)保存中のpH値の更なる低下が、酸性度の上昇及び保存期限の低下を伴う問題につながる。
【0006】
そのため、後酸性化はまた、ヨーグルトの保存期限に対して負の効果がある。ヨーグルトの保存期限は、国によって30~50日である。この期間、後酸性化は、ヨーグルトの品質を変化させ、酸味のある製品(フレーバ変化)及び高いホエイ分離(食感変化)を引き起こす。通常、ヨーグルトの品質は、保存の間、4℃~8℃の温度で製品を維持することにより、可能な限り維持される。この温度で、細菌は低い活性しか有していない。しかしながら、多くの国々においては、保存の間、そのクールチェーンを維持することは困難である。
【0007】
結果として、長期保存期限ヨーグルト(ESLヨーグルト)の製造は、特に、クールチェーンを維持することが困難である国々においては、興味深いことである。ESLヨーグルトの従来の製造方法は、発酵の後、熱処理ステップ(通常、65℃/30秒)を包含する。この処理は、発酵のために使用される細菌の数、及び酵母及びカビの数の有意な低下を引き起こす。加熱ステップはまた、ヨーグルトに存在する酵素の活性も阻害する。結果として、製品は9ヶ月までの長期保存期限を有することもでき、ここでは、わずかな後酸性化及び風味の変化しか観察されないか、又はまったく観察されない。
【0008】
しかしながら、熱処理は、ヨーグルトの品質に負の効果を有し、そして風味及び食感の変化が得られる。熱処理の更なる負の効果は、生存細菌、例えばプロバイオティクスなど、の存在により得られる健康上の利益が低められるか、又は損なわれる。
【0009】
後酸性化を制御するためのアプローチの1つは、比較的酸性のpHを有する乳製品の製造にある。それらの方法においては、LABの更なる増殖及び乳酸の製造が、その酸性pHにより阻害される。しかしながら、乳酸の更なる生成は単に阻害され、そして完全には終了されず、そしてその方法はマイルドな味を有する発酵乳製品の製造には明らかに不適切である。
【0010】
後酸性化は、L.ブルガリクス(L. bulgaricus)の代謝活性により制御され、そしてペプチド摂取により引き起こされることが想定され、そしてアミノ酸代謝の欠損を有する菌株が後酸性化を制御するために生成された(US2010/0021586及びWO2006/042862A1)。後酸性化を制御するための他のアプローチは、従来技術に記載されており、そして弱後酸性化により特徴づけられる特定のLAB株の使用に基づくステップを包含する(WO2010/139765)。
【0011】
後酸性化を最小限に抑えるための代謝アプローチは、タンパク質:ラクトースの比率の制御、緩衝能力の制御、及び発酵の間、所定範囲内での緩衝能力及びpHの維持に基づかれている(WO2013/169205)。しかしながら、このアプローチは、発酵の間、多くのプロセスパラメーターの決定を必要とし、そして発酵の間、所定の範囲の維持を確保するために、発酵培地へのタンパク質又はラクトース、又は緩衝液の添加を必要とする。
【0012】
WO2013/160413は、食品製品の天然甘味料及び発酵乳のラクトース含有量の低下に関して増強された特性を有するストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)株及びラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)株、並びに斯かる菌株をスクリーニング及び単離する方法を開示している。
【0013】
WO2015/193459は、その後の保存中のスターター培養物の非常にわずかな増殖しかないか又は増殖がない結果となる、発酵中の乳ベースに含まれるラクトースの喪失によって得られる、低レベルの後酸性化を有する発酵乳製品を製造する方法を開示する。一実施形態は、グルコース代謝に欠陥がある4つの乳酸菌株の混合物を使用し、及び別の実施形態は、ラクトース欠損乳酸菌株の混合物を使用する。
【発明の概要】
【0014】
本発明の目的は、低減された後酸性化を有する発酵乳製品を製造するための組成物を提供することである。
この目的は、本発明により達成され、そしてそれは、以下の:
(i) グルコース発酵性ストレプトコッカス・サーモフィルス(St)株及びグルコース発酵性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス(Lb)株を含むスターター培養物;並びに
(ii) グルコース欠損ストレプトコッカス・サーモフィルス(St)株、ここで、前記St株は、ガラクトース発酵性であり、グルコキナーゼタンパク質をコードするglcK遺伝子のDNA配列に突然変異を担持し、そしてその突然変異がグルコキナーゼタンパク質を不活化するか又はその遺伝子の発現に対して負の効果がある、
を含む、発酵乳製品を製造するための組成物を対象としたものである。
【0015】
従来のストレプトコッカス・サーモフィルス株と従来のラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株を含む発酵乳製品を製造するための従来のスターター培養物に関して、保存中、すなわち、保冷温度においてでさえ、乳の乳酸菌発酵の終わりから消費時までの、後酸性化のリスクが存在することは周知である。斯かる後酸性化は、発酵乳製品の更なる酸性化、並びに遊離アミノ酸、例えば、グルタミン酸などの異臭の形成につながる保存中の乳酸菌の持続的な増殖によって引き起こされる。
【0016】
驚いたことに、発酵乳製品中の従来のスターター培養物による後酸性化が、従来のスターター培養物にグルコース欠損ストレプトコッカス・サーモフィルス株を加えることによって有意に低減され得ることがわかった。
グルコース欠損ストレプトコッカス・サーモフィルス株が完全に別の目的、つまり、発酵乳製品中の天然甘味料のレベルを増強するために、開発され、その一方で、後酸性化に対するいずれの影響もこれまで確認されておらず、更に予想されないので、これは、非常に驚くべき知見である。そのうえ、グルコース欠損ストレプトコッカス・サーモフィルス株は、それ自体が後酸性化を引き起こさないだけではなく、どうやら従来のスターター培養物の菌株の後酸性化も低減するらしく、そしてその効果はこれまで確認されておらず、かつ、予測できない。特に、従来のスターター培養物の菌株の後酸性化の低減の裏側にある機構は、明らかでなくて、また自明でもない。
【0017】
本発明の追加の利点は、グルコース陰性ストレプトコッカス・サーモフィルス株が乳ベースのラクトースの一部をグルコースに変換して、天然甘味料を含む発酵乳製品を提供し、それにより、その製品への砂糖の添加、及びラクトースに対して不寛容な消費者の利益のために乳ベースのラクトース含有量を下げる必要性を軽減するということである。
【0018】
第二の態様において、本発明は、本発明の組成物を植菌し、乳基質を発酵させることを含めた発酵乳製品を製造する方法に関する。
第三の態様において、本発明は、本発明の方法によって得られた発酵乳製品に関する。
第四の態様において、本発明は、発酵乳製品の調製のための本発明による組成物の使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の詳細な開示
定義
本明細書中で使用される場合、「LAB」と簡略化される「乳酸菌」という用語は、糖の発酵において主に産生される酸として乳酸、酢酸及びプロピオン酸を含む酸を産生する、グラム陽性微小好気性又は嫌気性細菌を指す。産業上最も有用な乳酸菌は、ラクトコッカス種(Lactococcus spp.)、ストレプトコッカス種(Streptococcus spp.)、ラクトバチルス種(Lactobacillus spp.)、ロイコノストック種(Leuconostoc spp.)、ペディオコッカス種(Pediococcus spp.)、ブレビバクテリウム種(Brevibacterium spp.)、エンテロコッカス種(Enterococcus spp.)及びプロピオニバクテリウム種(Propionibacterium spp.)を含む目である「ラクトバチルス目(Lactobacillales)」に属する。ラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)及びストレプトコッカス・サーモフィルスから成る属の細菌を含めた乳酸菌は、発酵乳製品などの酪農製品の生産のために発酵容器やバット内でそのままインキュベーションすることを意図した、バルクスターター増殖のための冷凍若しくは凍結乾燥培養物、又はいわゆるダイレクトバットセット(Direct Vat Set)(DVS)培養物のいずれかとして通常、酪農業界に供給される。そのような培養物は、一般に、「スターター培養物」又は「スターター」と称される。
【0020】
本願の記載における(特に、以下の特許請求の範囲との関連における)「a」及び「an」並びに「the」という用語、及びこれらの類似語は、他の言及が無い限り又は明確に否定していない限り、単数及び複数の両方を包含すると想定される。「含む(「comprising」「having」「including」及び「containing」)」という用語は、他に言及が無い限り、非限定的用語(すなわち、「これだけに限定されるものではないが、含む(including, but not limited to)」を意味する)として理解されるべきである。本明細書中の数値範囲の記載は、他に言及が無い限り、単に当該範囲内の各個別の数値を個別に参照する簡単な方法と見なされることが意図され、各個別の数値は、それらが個別に本明細書中に記載されているかのように本明細書中に包含される。本明細書中に記載される全ての方法は、本記載中に他の言及が無い限り、又は明確に否定されていない限り、任意の適切な順番で実施され得る。本明細書中の任意の及び全ての実施例、又は例示的用語(「例えば(「such as」)」)は、本発明をより良く明示することのみを意図しており、他の言及が無い限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中のいずれの用語も、本発明の実施に必須の明示されていない要素であることを示唆するものとして解釈されるべきではない。
【0021】
本発明との関連において、「甘味を増強する」という表現は、グルコキナーゼタンパク質をコードするglcK遺伝子のDNA配列に突然変異を担持しない母株によってもたらされた甘味と比較した場合の、甘味の増強を意味し、ここで、該突然変異は、グルコキナーゼタンパク質を不活化するか、又はその遺伝子の発現に対して負の効果がある。
「CFU」という表現は、はコロニー形成単位を意味する。
【0022】
本発明に関して、乳酸菌株と関連した「従来」という発現は、グルコース発酵性菌株を意味する。
【0023】
本発明の組成物のグルコース欠損ストレプトコッカス・サーモフィルス株
いくつかの国では、ヨーグルトの法的な定義は、ストレプトコッカス・サーモフィルスとラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクスの両方の存在を必要としている。両種とも、ヨーグルトの重要な香気成分であるアセトアルデヒドを望ましい量作り出す。
【0024】
食品産業の要件を満たすために、追加のカロリーを与えることなく、発酵製品中に直接より多くの天然の甘味(内的な甘味)を産生する新たな菌株、特にストレプトコッカス・サーモフィルス株及びラクトバシルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株を開発することが望ましくなった。
【0025】
ストレプトコッカス・サーモフィルスは、生物体が混合スターター培養物の一部として通常使用され、他の成分がラクトバチルス属、例えば、ヨーグルトではラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクスである商業的な乳発酵に最も幅広く使用される乳酸菌の1つである。
【0026】
ストレプトコッカス・サーモフィルスが使用されているときには、ラクトース分子のグルコース部分だけがストレプトコッカス・サーモフィルスによって発酵され、ガラクトースが発酵乳製品中に蓄積する。高い酸濃度が発酵を制限しているヨーグルトでは、遊離ガラクトースが残る。
【0027】
できるだけ最適な増殖性能を有するストレプトコッカス・サーモフィルス株を確保するために、ストレプトコッカス・サーモフィルスのガラクトース発酵株を選択剤である2-デオキシグルコースに晒した。典型的な2-デオキシグルコース耐性突然変異株は、グルコキナーゼ(glcK)をコードする遺伝子内、及びグルコーストランスポーターをコードする遺伝子内に突然変異を有する。2-デオキシグルコースに耐性がある単離された突然変異株、DSM28889及びDSM32227は、そのグルコキナーゼ遺伝子内に突然変異を有する。グルコキナーゼ遺伝子内の突然変異に加えて、DSM28889及びDSM32227が共に、分泌されたグルコースが細胞内に再び運び込まれないことを意味する突然変異を有する。
【0028】
本明細書中の「2-デオキシグルコースに耐性」という用語は、特定の突然変異菌株が、20mMの2-デオキシグルコースを含むM17培地のプレート上に画線接種されたときに、40℃で20時間インキュベーション後にコロニーに増殖する能力を有するということによって規定される。培地中の2-デオキシグルコースの存在は、非突然変異菌株の増殖を妨げるであろうが、その一方で、突然変異菌株の増殖が影響を受けないか又は顕著な影響を受けることはない。耐性の評価においで感受性基準菌株として使用できる非突然変異菌株としては、好ましくは菌株DSM25838及びDSM22934が挙げられる。
【0029】
驚いたことに、2-デオキシグルコース耐性突然変異株は単独では、酸性化時間は遅れるが、乳を更に完全に酸性化できる。従って、それらは、発酵乳適用に有用であり、そして、それらは、ヨーグルトの特徴である乳を酸性化する母株の能力を保持している。更に、0.05%のスクロースを含む9.5%のB乳(B-milk)に突然変異株を植菌し、そして40℃にて少なくとも20時間発酵させたとき、突然変異株が高レベルのグルコースを分泌することがわかった。同時に、非常に低レベルのラクトースが、発酵乳中に残っている。そのため、発酵乳製品を製造するための当該菌株の使用は、ラクトース不耐症の人々のために重要であり得る。
【0030】
その結果、最終的な発酵乳は、Godshall(1988. Food Technology 42(11) :71-78)によって説明されたとおり計算して、高い内的甘味指数を有する。
【0031】
本発明の一態様において、前記ストレプトコッカス・サーモフィルス株は、ストレプトコッカス・サーモフィルスのガラクトース発酵突然変異株であり、ここで、該突然変異株は、グルコキナーゼタンパク質をコードするglcK遺伝子のDNA配列内に突然変異を担持し、前記突然変異は、コードされたグルコキナーゼタンパク質を不活化するか、又はその遺伝子の発現に負の効果を有する。グルコキナーゼ活性のレベル又はグルコキナーゼ遺伝子の発現レベルを計測するための方法は、容易に知られ(Porter et al.(1982) Biochim. Biophys. Acta, 709; 178-186)、そして、市販キット及び容易に入手可能な材料を使用したトランスクリプトミクス又は定量的PCRを用いた酵素アッセイを含んでいる。
【0032】
本発明の好ましい実施形態において、本発明のグルコース欠損ストレプトコッカス・サーモフィルス株は、2-デオキシグルコース耐性である。本発明の好ましい実施形態において、本発明の2-デオキシグルコース耐性ストレプトコッカス・サーモフィルス株は、DSM28889又はDSM32227である。
【0033】
細菌の「菌株」は、本明細書中で使用される場合、増殖又は繁殖するときに遺伝的に不変のままである細菌を指す。同一の細菌の多様性が含まれる。
【0034】
「ガラクトース発酵性ストレプトコッカス・サーモフィルス株」という用語は、本明細書中で使用される場合、M17培地+2%のガラクトース上/その中で増殖できるストレプトコッカス・サーモフィルス株を指す。ガラクトース発酵性ストレプトコッカス・サーモフィルス株は、一晩培養物から1%で植菌し、37℃で24時間インキュベートした際に、唯一の炭水化物として2%のガラクトースを含有するM17培養液のpHを5.5以下に下げるストレプトコッカス・サーモフィルス株と本明細書中に規定される。
【0035】
「突然変異がグルコキナーゼタンパク質を不活化する」という用語は、本明細書中で使用される場合、「不活性グルコキナーゼタンパク質」をもたらす突然変異、細胞内に存在している場合、その正常機能を発揮することができないグルコキナーゼタンパク質、並びにグルコキナーゼタンパク質の形成を妨げる又はグルコキナーゼタンパク質の分解をもたらす突然変異を指す。
【0036】
特に、不活性グルコキナーゼタンパク質は、機能的グルコキナーゼタンパク質と比較して、グルコースのグルコース-6-リン酸へのリン酸化を促進することができないか、又は著しく遅い速度でしかグルコースのグルコース-6-リン酸へのリン酸化を促進できないタンパク質である。機能的グルコキナーゼタンパク質をコードする遺伝子と比較して、当該不活性グルコキナーゼタンパク質をコードする遺伝子は、その遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)内に突然変異を含んでおり、前記突然変異は、これだけに限定されるものではないが、タンパク質の機能的特性を変更させる欠失、フレームシフト突然変異、終止コドンの挿入又はアミノ酸置換をもたらす突然変異、あるいは、遺伝子の転写又は翻訳を低減するか、又は停止するプロモーター突然変異を含み得る。
【0037】
好ましい実施形態において、突然変異は、グルコキナーゼタンパク質の活性(グルコースのグルコース-6-リン酸へのリン酸化速度)を少なくとも50%、例えば少なくとも60%程度、例えば少なくとも70%程度、例えば少なくとも80%程度、例えば少なくとも90%程度低減する。
【0038】
グルコキナーゼ活性は、Poolら(2006, Metabolic Engineering 8;456-464)によって説明されたグルコキナーゼ酵素分析法によって測定できる。
【0039】
「機能的グルコキナーゼタンパク質(functional glucokinase protein)」という用語は、本明細書中で使用される場合、細胞内に存在している場合には、グルコースのグルコース-6-リン酸へのリン酸化を促進するグルコキナーゼタンパク質を指す。特に、機能的グルコキナーゼタンパク質は、配列番号1の1~966位に相当する配列、あるいは、配列番号1の1-966位に対応する配列に対して少なくとも85%の同一性、例えば少なくとも90%程度の同一性、例えば少なくとも95%程度の同一性、例えば少なくとも98%程度の同一性、例えば少なくとも99%程度の同一性を有する配列を有するORFを含む遺伝子によってコードされ得る。
【0040】
2つの配列のパーセント同一性は、例えばKarlin及びAltschul(1990. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87;2264)のアルゴリズム、Karlin及びAltschul(1993. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90; 5873-5877)に記載された修正アルゴリズム;Myers及びMiller(1988. CABIOS 4; 11-17)のアルゴリズム;Needleman及びWunsch(1970. J. Mol. Biol. 48;443-453)のアルゴリズム;並びにPearson及びLipman(1988. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85; 2444-2448)のアルゴリズムなどの数学的アルゴリズムを使用することによって決定できる。これらの数学的アルゴリズムに基づいて核酸又はアミノ酸の配列同一性を決定するコンピュータソフトウェアもまた入手可能である。例えば、ヌクレオチド配列の比較は、BLASTNプログラム、スコア=100、語長=12で行われる。アミノ酸配列の比較は、BLASTXプログラム、スコア=50、語長=3を用いて実施できる。BLASTに関するパラメーターを残すためには、初期設定のパラメーターが使用できる。
【0041】
多くの国々では、発酵乳製品への遺伝子組み換え生物(GMO)の使用が承認されていない。本発明では代わりに、発酵乳製品中での望ましいグルコース蓄積を提供できる天然に存在する突然変異株又は誘発された突然変異株を獲得する方法を提供する。これにより、本発明の好ましい実施形態において、突然変異株は、天然に存在する突然変異株又は誘発された突然変異株である。
【0042】
「突然変異細菌」又は「突然変異株」とは、本明細書中で使用される場合、天然の(自然発生的、自然に生じた)突然変異細菌、又は野性型DNA内に存在しないそのゲノム(DNA)内の1若しくは複数の突然変異を含む誘発された突然変異細菌を指す。「誘発された突然変異株」は。突然変異が、例えば化学的突然変異誘発物質、UV又はガンマ放射線などを用いた処理などのヒトの処理によって引き起こされた細菌である。対照的に、「自然発生的な突然変異株」又は「天然に存在する突然変異株」は、人によって突然変異誘発されていない。突然変異株細菌は、本明細書中では、非GMO(非遺伝子組み換え生物)である、すなわち、組み換えDNA技術によって改変されていない。
【0043】
「野生型株」は、天然に見られるように、非突然変異型の細菌を指す。
【0044】
「甘味を付与する特性を有する菌株」、「発酵乳製品中でグルコースの望ましい蓄積を提供する菌株」及び「食品の天然の甘味付与に関して優れた特性を有する菌株」などの用語は、乳製品の発酵において本発明の菌株を使用する有利な態様を特徴づけるために本明細書中で互換的に使用される。
【0045】
好ましい実施形態において、本発明によるストレプトコッカス・サーモフィルスの突然変異株は、9.5%のB乳中に106~107CFU/mlの濃度で植菌され、そして、40℃で少なくとも20時間培養されると、その9.5%のB乳中のグルコース量を少なくとも5mg/mLまで増加させる。
【0046】
別の好ましい実施形態、本発明によるストレプトコッカス・サーモフィルス突然変異株は、0.05%のスクロースを含む9.5%のB乳中に106~107CFU/mlの濃度で植菌され、そして、40℃で少なくとも20時間培養されると、その0.05%のスクロースを含む9.5%のB乳中のグルコース量を少なくとも5mg/mLまで増加させる。
【0047】
本明細書の文脈において、9.5%のB乳とは、9.5%の乾物量レベルに低脂肪脱脂乳を還元し、99℃で30分間低温殺菌し、その後、40℃に冷まして作られた、煮沸した乳である。
【0048】
本発明のより好ましい実施形態において、突然変異株は、少なくとも6mg/mL、例えば少なくとも7mg/mL程度、例えば少なくとも8mg/mL程度、例えば少なくとも9mg/ml程度、例えば少なくとも10mg/ml程度、例えば少なくとも11mg/ml程度、例えば少なくとも12mg/ml程度、例えば少なくとも13mg/ml程度、例えば少なくとも14mg/ml程度、例えば少なくとも15mg/ml程度、例えば少なくとも20mg/ml程度、例えば少なくとも25mg/mlなどのグルコース量の増強をもたらす。
【0049】
本発明の突然変異株ストレプトコッカス・サーモフィルス株は、9.5%のB乳に、106~107CFU/mlの本発明によるストレプトコッカス・サーモフィルス株を植菌し、本発明に従って40℃で少なくとも20時間、そのストレプトコッカス・サーモフィルス株で発酵させたとき、該乳中にグルコースを分泌する。好ましくは、9.5%のB乳に、106~107CFU/mlの本発明によるストレプトコッカス・サーモフィルス株を植菌し、本発明に従って40℃で少なくとも20時間、該ストレプトコッカス・サーモフィルス株で発酵させたとき、当該突然変異株は単独で、少なくとも5mg/mlのグルコースをB乳中に分泌する。前記菌株は、pH5への酸性化時間は2~5時間遅れるが、乳を更に完全に酸性化できる。最終的な発酵乳は、その発酵乳中に15mg/ml未満のラクトースしか含んでいない。その結果、最終的な発酵乳は、約2倍以上の高い内的甘味指数を有する。本発明の一実施形態において、グルコース欠損ストレプトコッカス・サーモフィルス株は、ラクトース陽性であっても、又はラクトース欠損であってもよいが、しかしながら、好ましくは前記菌株はラクトース陽性である。
【0050】
更に別の実施形態において、本発明による突然変異株は、その増殖パターンによって特徴づけできる。これは、突然変異株の増殖速度が、M17培地+2%のグルコース中に比べ、M17培地+2%のガラクトース中の方が速いという知見によって例示される。増殖速度は、経時的な600ナノメートル(OD600)で指数増殖期培養の吸光度における推移として計測される。
【0051】
好ましい実施形態において、増殖速度は、M17培地+2%のグルコース中に比べて、M17培地+2%のガラクトース中で少なくとも5%高い、例えば少なくとも10%程度高い、例えば少なくとも15%程度高い、例えば少なくとも20%程度高い。
【0052】
glcK遺伝子における突然変異
好ましい一実施形態において、突然変異は、配列番号2の249位において、アルギニンをコードするコドンの、グリシンをコードするコドンでの置換をもたらす。好ましくは、glcK遺伝子の突然変異は、配列番号1の745位において、GのAでの置換をもたらす。菌株CHCC16731には、斯かる突然変異がある。
【0053】
好ましい実施形態において、突然変異は、配列番号2(未掲載)の72位において、セリンをコードしているコドンの、プロリンをコードしているコドンでの置き換えをもたらす。好ましくは、glcK遺伝子内の突然変異は、配列番号1(未掲載)の214位におけるTのCでの置き換えをもたらす。
【0054】
別の好ましい実施形態において、突然変異は、配列番号2(未掲載)の141位における、トレオニンをコードしているコドンのイソロイシンをコードするコドンでの置き換えをもたらす。
【0055】
好ましくは、glcK遺伝子内の突然変異は、配列番号1(未掲載)の422位におけるCのTでの置き換えをもたらす。
【0056】
ストレプトコッカス・サーモフィルスのglcK遺伝子が、glcK遺伝子の他の部位の他のタイプの突然変異によって不活性化され得ることは、強調されるべきである。
【0057】
「グルコキナーゼをコードしているglcK遺伝子」という表現は、本明細書中で使用される場合、配列番号1のDNA配列によってコードされる特定のグルコキナーゼを含めたグルコキナーゼ活性を有するタンパク質をコードするあらゆるDNA配列を指す。グルコキナーゼは、グルコースをグルコース-6-フォスフェートに変換する反応を触媒する。
【0058】
細胞内へのグルコースの輸送を低減する突然変異
好ましい実施形態において、グルコース欠損ストレプトコッカス・サーモフィルス株は、細胞内へのグルコースの輸送を低減する突然変異を有する。
【0059】
「細胞内へのグルコースの輸送を低減する突然変異」という用語は、本明細書中で使用される場合、細胞の環境中のグルコースの蓄積をもたらすグルコースの輸送にかかわるタンパク質をコードする遺伝子内の突然変異を指す。ストレプトコッカス・サーモフィルス株の培地中のグルコースレベルは、当業者に知られている方法によって、そして、培地が乳基質であるときには、容易に計測できる。
【0060】
好ましい実施形態において、突然変異は、細胞内へのグルコースの輸送を、少なくとも50%、例えば少なくとも60%程度、例えば少なくとも70%程度、例えば少なくとも80%程度、例えば少なくとも90%程度低減する。
【0061】
細胞内へのグルコースの輸送は、Cochuら(2003. Appl Environ Microbiol 69(9); 5423-5432)によって説明されているグルコース取り込みアッセイによって測定できる。
【0062】
好ましくは、ストレプトコッカス・サーモフィルス株は、グルコーストランスポーターの成分をコードする遺伝子内に突然変異を担持しており、前記突然変異は、グルコース輸送タンパク質を不活化するか、又はその遺伝子の発現に対して負の効果を有する。
【0063】
前記成分とは、グルコースの輸送に重要であるグルコース輸送タンパク質のあらゆる成分であってよい。例えば、ストレプトコッカス・サーモフィルスのグルコース/マンノースPTSのあらゆる成分の不活性化が、グルコーストランスポーター機能の不活性化をもたらすことは、企図されている。
【0064】
「突然変異がグルコーストランスポーターを不活化する」という用語は、本明細書中で使用される場合、「不活性グルコーストランスポーター」をもたらす突然変異、細胞内に存在している場合、損なわれているためその正常機能を発揮することができないグルコース輸送タンパク質、並びにグルコース輸送タンパク質の形成を妨げる又はグルコース輸送タンパク質の分解をもたらす突然変異を指す。
【0065】
特に、不活性グルコース輸送タンパク質は、機能的グルコース輸送タンパク質と比較して、原形質膜を越えるグルコースの輸送を促進することができない又は著しく遅い速度でしか原形質膜を越えるグルコースの輸送を促進できないタンパク質である。機能的グルコース輸送タンパク質をコードする遺伝子と比較して、当該不活性グルコース輸送タンパク質をコードする遺伝子は、その遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)内に突然変異を含んでおり、前記突然変異は、これだけに限定されるものではないが、タンパク質の機能的特性を変更させる欠失、フレームシフト突然変異、終止コドンの挿入又はアミノ酸の置き換えをもたらす突然変異、あるいは、その遺伝子の転写又は翻訳を低減又は停止するプロモーター突然変異を含み得る。
【0066】
好ましい実施形態において、突然変異は、グルコース輸送タンパク質の活性(グルコースの輸送の速度)を少なくとも50%、例えば少なくとも60%程度、例えば少なくとも70%程度、例えば少なくとも80%程度、例えば少なくとも90%程度低減する。
グルコーストランスポーター活性は、Cochuら(2003. Appl Environ Microbiol 69(9); 5423-5432)によって説明されたグルコース取り込みアッセイによって測定できる。
【0067】
「機能的グルコース輸送タンパク質」という用語、本明細書中で使用される場合、細胞内に存在している場合、原形質膜を越えてグルコースの輸送を促進するグルコース輸送タンパク質を指す。
【0068】
本発明の好ましい実施形態において、グルコース欠損ストレプトコッカス・サーモフィルス株は、グルコース/マンノースホスホトランスフェラーゼ系のIIDManタンパク質をコードするmanM遺伝子のDNA配列内に突然変異を担持するが、該突然変異は、IIDManタンパク質を不活化するか、又はその遺伝子の発現に対して負の効果を有する。
【0069】
DSM28889は、グルコース/マンノースホスホトランスフェラーゼ系のIIDManタンパク質をコードするmanN遺伝子の79位において、トレオニンのプロリンへの変更を有する。好ましくは、ManN遺伝子における突然変異は、配列番号3の235位において、AのCでの置換をもたらす。
【0070】
よって、好ましい実施形態において、本発明のストレプトコッカス・サーモフィルス株は、グルコース/マンノースホスホトランスフェラーゼ系のIIDManタンパク質をコードするmanN遺伝子のDNA配列における突然変異を担持するが、該突然変異は、配列番号4の79位において、トレオニンのプロリンへの置換をもたらす。
【0071】
本発明の別の好ましい実施形態において、本発明のストレプトコッカス・サーモフィルス株は、グルコース/マンノースホスホトランスフェラーゼ系のIICManタンパク質をコードするmanM遺伝子のDNA配列内に突然変異を担持するが、該突然変異は、IICManタンパク質を不活化するか、又はその遺伝子の発現に対して負の効果を有する。
【0072】
特定の好ましい実施形態において、突然変異は、グルコース/マンノースホスホトランスフェラーゼ系のIICManタンパク質の配列番号6の209位において、グルタミン酸をコードするコドンの終止コドンでの置き換えをもたらす(未掲載)。好ましくは、突然変異は、配列番号5の625位においてGのTでの置き換えをもたらす。
【0073】
本発明の好ましい実施形態において、グルコース欠損ストレプトコッカス・サーモフィルス株は:DSM32227;DSM28889;DSM25850;DSM25851;DSM26722及び母株としての寄託菌株のうちの1つを使用することによって得られたそこから誘導された突然変異株、ここで、前記突然変異体は、その母株のグルコース分泌特性を保有するか、又は更に改善した、から成る群から選択される。
【0074】
本明細書の文脈において、「そこから誘導された菌株」という用語は、例えば、遺伝子工学、放射線及び/又は化学的処理から成る手段によってスターター菌株又はそれらの母株から誘導された菌株、又は誘導されることができる菌株と理解されるべきである。「そこから誘導された菌株」はまた、自然発生的な突然変異株でもあり得る。「そこから誘導された菌株」が機能上同等な突然変異株、例えば、(例えば、食感又はガラクトースの発酵に関して)それらの母株と実質的に同じであるか、又は改善された特性を有する突然変異株であることが好ましい。特に、「そこから誘導された菌株」という用語は、本発明の菌株を、例えばエタンメタンスルホナート(EMS)又はN-メチル-N’-ニトロ-N-ニトログアニジン(NTG)などの化学的突然変異誘発物質、UV光を用いた処理を含めたいずれかの慣習的に使用されている突然変異誘発処理、又は自然に起こっている突然変異株に晒すことによって得られた菌株を指す。突然変異株は、いくつかの突然変異誘発処理に供され得るが(1回の処理とは、1回の突然変異誘発ステップとそれに続くスクリーニング/選択ステップと理解されるべきである)、ここでは20未満、10未満、又は5未満の処理(又はスクリーニング/選択ステップ)が行われるのが好ましい。好ましい突然変異株では、母株と比較して、突然変異体の細菌ゲノムのヌクレオチドの1%未満、0.1%未満、0.01%未満、0.001%未満又は0.0001%未満が別のヌクレオチドに置き換えられているか、欠失又は挿入されている。
【0075】
更なる実施形態において、本発明のグルコース欠損ストレプトコッカス・サーモフィルス株はラクトース発酵性である。よって、本発明の利点は、グルコース陰性のストレプトコッカス・サーモフィルス株が、乳基質のラクトースの一部をグルコースに変換して、天然甘味料を含む発酵乳製品を提供し、したがって、その製品への砂糖を添加する、及びラクトースに対して不寛容な消費者の利益のための乳ベースのラクトース含有量を下げる必要性を低減するということである。
【0076】
グルコース欠損ストレプトコッカス・サーモフィルス株を得る方法
グルコース欠損ストレプトコッカス・サーモフィルス株を得る方法は、ガラクトース発酵性菌株、すなわち、炭水化物源としてガラクトースを使用することができる菌株、を提供するステップを含む。
【0077】
ガラクトース発酵性菌株は、指定された濃度、例えば、2%など、のガラクトースを唯一の炭水化物源として含む、M17アガロースプレートなどのアガロースプレート上に試験すべき細菌を画線接種し、そして、これらのプレート上で増殖できるコロニーを同定するステップを含む方法によって得られてもよい。
【0078】
ガラクトース発酵性ストレプトコッカス・サーモフィルス株は、M17培地+2%のガラクトース上/中で増殖でき、そして、1%で一晩培養物から植菌し、37℃で24時間インキュベートしたとき、それらが、唯一の炭水化物として2%のガラクトースを含有するM17培養液中でpHを5.5以下に下げる能力を有することによって本明細書中で規定される。当該ガラクトース陽性株は、WO2011/026863(Chr. Hansen A/S)及びWO2011/092300(Chr. Hansen A/S)に記載されている。
【0079】
2-デオキシグルコースに耐性であるガラクトース発酵性菌株は、M17培地+2%のグルコース中の増殖パターンと、M17培地+2%のガラクトース中のその細菌の増殖パターンの相関を比較することによって同定される。
【0080】
ストレプトコッカス・サーモフィルス株をグルコース欠損株スクリーニングし、そして、単離する方法は、以下のステップ:
a) ガラクトース発酵性ストレプトコッカス・サーモフィルス母株を提供し、
b) 前記母株から誘導された突然変異株ストレプトコッカス・サーモフィルス株のプールから、2-デオキシグルコースに耐性がある突然変異株ストレプトコッカス・サーモフィルス株のプールを選択して、単離し、そして
c) 前記2-デオキシグルコースに耐性がある突然変異株ストレプトコッカス・サーモフィルス株のプールから、その突然変異株ストレプトコッカス・サーモフィルス株の増殖速度が、M17培地+2%のガラクトース中でM17培地+2%のグルコース中に比べて速いことを条件に、突然変異株ストレプトコッカス・サーモフィルス株を選択して、単離すること、
を含む。
【0081】
ある実施形態において、前記方法は、ステップa1) 前記母株を突然変異誘発に晒すこと、例えば化学的及び/又は物理的突然変異原などに母株を晒すこと、を更に含む。
【0082】
別の実施形態において、前記方法は、ステップd) ステップc) で得られた2-デオキシグルコース耐性ストレプトコッカス・サーモフィルス株のプールから、そのストレプトコッカス・サーモフィルス株の増殖速度が、M17培地+2%のスクロース中で速いが、しかし、M17培地+2%のグルコース中の母株の増殖速度と比較して、減速がゼロであるか、又は少なくとも0~50%であることを条件に、ストレプトコッカス・サーモフィルス株を選択して、単離すること、を更に含む。好ましくは、そのストレプトコッカス・サーモフィルス株の増殖速度は、ゼロであるか、又は母株の増殖速度と比較して5%未満、10%未満、15%未満、20%未満、25%未満、30%未満、35%未満、40%未満、45%未満、50%未満まで少なくとも低減される。
【0083】
ストレプトコッカス・サーモフィルス株のグルコース欠損は、グルコキナーゼタンパク質をコードするglcK遺伝子内のヌクレオチド配列における変化に起因し得る。その変化は、突然変異、挿入、及び/又は欠失であってもよい。
本発明の一実施形態において、グルコース欠損ストレプトコッカス・サーモフィルス株は、glcK遺伝子のヌクレオチド配列内に突然変異、挿入、及び/又は欠失を含む。
【0084】
本発明の組成物のグルコース発酵菌株
本発明の組成物のグルコース発酵性ストレプトコッカス・サーモフィルス株は、発酵乳製品を製造するための好適な、任意の従来のストレプトコッカス・サーモフィルス株であってもよい。
本発明の一実施形態において、グルコース発酵性ストレプトコッカス・サーモフィルス株は、ラクトース発酵性ストレプトコッカス・サーモフィルス株又はラクトース欠損ストレプトコッカス・サーモフィルス株である。
本発明の一実施形態において、グルコース発酵性ストレプトコッカス・サーモフィルス株は、受託番号DSM19242でDSMZに寄託された菌株又はそこから誘導されたグルコース発酵性突然変異株である。
【0085】
本発明の組成物のグルコース発酵性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株は、発酵乳製品を製造するのに好適な、任意の従来のラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株であってもよい。
本発明の一実施形態において、グルコース発酵性ラクトバチルスデルブリュッキー亜種ブルガリクス株は、ラクトース欠損ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株である。
本発明の一実施形態において、グルコース発酵性ラクトバチルスデルブリュッキー亜種ブルガリクス株は、受託番号DSM28910;DSM22586でDSMZに寄託された菌株及びそこから誘導されたグルコース発酵性突然変異菌株の群から選択される。
【0086】
「ラクトース代謝における欠損」及び「ラクトース欠損」という用語は、細胞増殖又は細胞生存を維持するための源としてラクトースを使用する能力を部分的に又は完全に失ったLABを特徴づけるために、本発明との関連において使用される。それぞれのLABは、スクロース、ガラクトース、グルコース、フルクトースから選択される1若しくは複数の非ラクトース炭水化物、及び/又は別の発酵可能炭水化物を代謝することができる。これらの炭水化物は、ラクトース欠損変異株による発酵を維持するのに十分な量で乳中には天然に存在しないので、これらの炭水化物を乳に添加する必要がある。ラクトース欠損及び部分的ラクトース欠損LABは、ラクトース及びX-Galを含む培地上で白色コロニーとして特徴づけることができる。
【0087】
本発明に関して、「X-Gal」という用語は、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクト-ピラノシドを意味し、そしてそれは、X-Galを無色のガラクトースと、自然に二量化して青色色素を形成する5-ブロモ-4-クロロインドキシルとに加水分解するβ-ガラクトシダーゼの発色基質である。
【0088】
本発明の特定の実施形態において、ラクトース欠損株は、スクロース、ガラクトース、グルコース及びフルクトースから成る群から選択されるラクトース以外の炭水化物、好ましくはスクロース、を代謝できるストレプトコッカス・サーモフィルス株及び/又はラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株である。本発明の特定の実施形態において、ラクトース欠損株は、ガラクトースを代謝できるストレプトコッカス・サーモフィルス株及び/又はラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株である。
【0089】
本発明の組成物の特定の実施形態において、ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株は、受託番号DSM28910でDSMZに寄託された菌株、並びに(ラクトース及びX-Galを含有する培地上で白色コロニーを作り出す能力を有すると更に特徴づけられた)そこから誘導された突然変異株から成る群から選択される。
【0090】
ラクトース欠損株は、突然変異によって好適なラクトース発酵性母株から得られてもよい。ラクトース欠損株は、好適な培地、例えば、1%のラクトース及び200mg/mlのX-Galを含んだMRSアガロースプレート上の(ラクトース欠損表現型を示す)白色コロニーとして、UV突然変異形成後に選択された。ラクトース発酵性株はβ-ガラクトシダーゼ活性を有しているので、ラクトース陽性株のコロニーは、β-ガラクトシダーゼ活性のため青く見える。ラクトース欠損株を作製するためのラクトース発酵性母株として、寄託番号DSM19252でDSMZに寄託されたラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株が使用されてもよい。
【0091】
組成物
本発明は、以下の:
(i) グルコース発酵性ストレプトコッカス・サーモフィルス(St)株及びグルコース発酵性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス(Lb)株を含むスターター培養物;並びに
(ii) グルコース欠損ストレプトコッカス・サーモフィルス(St)株、ここで、前記St株は、ガラクトース発酵性であり、グルコキナーゼタンパク質をコードするglcK遺伝子のDNA配列に突然変異を担持し、そしてその突然変異がグルコキナーゼタンパク質を不活化するか又はその遺伝子の発現に対して負の効果がある、
を含む、発酵乳製品を製造するための組成物に関する。
【0092】
一実施形態において、本発明は、発酵乳製品を製造するための組成物を提供し、ここで、その発酵乳製品の後酸性化は、(ii)のグルコース欠損ストレプトコッカス・サーモフィルス(St)株を含まない組成物を用いて調製された発酵乳製品と比較して、低減される。
【0093】
一実施形態において、その発酵乳製品の後酸性化は、(ii)のグルコース欠損ストレプトコッカス・サーモフィルス(St)株を含まない組成物を用いて調製された発酵乳製品と比較して、5%超、10%超、15%超、20%超、25%超、30%超、35%超、40%超、45%超、又は50%超低減される。
【0094】
本発明の組成物は、104~1012CFU(コロニー形成単位)/gのグルコース欠損ストレプトコッカス・サーモフィルス株、例えば105~1011CFU/g程度、例えば106~1010CFU/g程度、又は例えば107~109CFU/g程度のグルコース欠損ストレプトコッカス・サーモフィルス株を含む組成物に関する。
【0095】
本発明の一実施形態において、グルコース欠損ストレプトコッカス・サーモフィルス株はラクトース発酵性である。
【0096】
一実施形態において、組成物のグルコース欠損ストレプトコッカス・サーモフィルス株は、9.5%のB乳を酸性化できず、9.5%のB乳に106~107CFU/mlのグルコース欠損ストレプトコッカス・サーモフィルス株を植菌し、そして、40℃で14時間インキュベートしたとき、1.0未満のpH低下をもたらすと規定される。9.5%のB乳に106~107CFU/mlのグルコース欠損ストレプトコッカス・サーモフィルス株を植菌し、そして、40℃で14時間インキュベートしたとき、1.0以上のpH低下をもたらすと規定される、グルコース欠損ストレプトコッカス・サーモフィルス株DSM32227;DSM28889;DSM25850;DSM25851;又はDSM26722によって9.5%のB乳の酸性化を引き起こすことができる量の化合物を、組成物は更に含む。ある実施形態において、前記化合物はスクロースである。好ましくは、スクロースの量は、0.000001%~2%、例えば0.00001%~0.2%程度、例えば0.0001%~0.1%程度、例えば0.001%~0.05%程度である。
【0097】
一実施形態において、前記組成物は、104~1012CFU/gの従来のラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株、例えば106~1010CFU/g程度、例えば105~1011CFU/g程度又はとしては、107~109CFU/g程度のラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株を更に含む。
【0098】
一実施形態において、組成物は、少なくとも2つのストレプトコッカス・サーモフィルス(St)株、少なくとも3つのSt株、又は少なくとも4つのSt株を含んでいる。更なる実施形態において、組成物は、2つのSt株、3つのSt株、又は4つのSt株を含んでいる。
【0099】
本発明の特定の実施形態において、組成物は、3つ以下のラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス(Lb)株、好ましくは2つ以下のLb株、又はより好ましくは1つのLb株を含んでいる。
【0100】
本発明の特定の実施形態において、組成物は:DSM32227;DSM28889;DSM25850;及びDSM26722から選択される少なくとも1つのストレプトコッカス・サーモフィルス株、並びにラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株DSM28910を含む。
【0101】
ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス、ストレプトコッカス・サーモフィルス、及び他の乳酸菌は、各種食品の製造において、技術的な目的に役立つスターター培養物として一般的に使用される。酪農工業では、斯かるスターター培養物は、例えば、ヨーグルトなどの、発酵乳製品の製造に使用される。これにより、本発明の一実施形態において、組成物はスターター培養物である。本発明の一実施形態において、組成物は、スターター培養物として使用される。本発明の一実施形態において、組成物は、ヨーグルトの製造のためのスターター培養物として使用される。本発明の一実施形態において、組成物は、低減された又は低い後酸性化を有するヨーグルトの製造のためのスターター培養物として使用される。後酸性化のレベルは、グルコース欠損ストレプトコッカス・サーモフィルス株を含んでいない類似の組成物又はスターター培養物を用いて調製されたヨーグルトとの比較で定義される。
【0102】
本発明の組成物はいくつかの形態で提供されてもよい。それは、冷凍形態、乾燥形態、凍結乾燥形態、又は液体形態であってもよい。よって、一実施形態において、組成物は、冷凍、乾燥、凍結乾燥又は液体形態である。
【0103】
本発明の組成物は、凍結保護剤、凍結乾燥保護剤、抗酸化剤、栄養物、増量剤、香味料又はその混合物を追加的に含んでもよい。その組成物は、好ましくは、凍結保護剤、凍結乾燥保護剤、抗酸化剤及び/又は栄養物のうちの1若しくは複数、より好ましくは、凍結保護剤、凍結乾燥保護剤及び/又は抗酸化剤、最も好ましくは、凍結保護剤若しくは凍結乾燥保護剤、又はその両方を含む。凍結保護剤や凍結乾燥保護剤などの保護剤の使用が、当該技術分野の当業者に知られている。好適な凍結保護剤又は凍結乾燥保護剤としては、単糖、二糖、三糖及び多糖類(グルコース、マンノース、キシロース、ラクトース、スクロース、トレハロース、ラフィノース、マルトデキストリン、デンプン及びアラビアゴム(アカシア)など)、ポリオール(エリスリトール、グリセロール、イノシトール、マンニトール、ソルビトール、トレイトール、キシリトールなど)、アミノ酸(プロリン、グルタミン酸など)、複合物質(スキムミルク、ペプトン、ゼラチン、酵母抽出物など)、並びに無機化合物(トリポリリン酸ナトリウムなど)が挙げられる。これにより、本発明によるスターター培養組成物は、イノシン-5’-一リン酸(IMP)、アデノシン-5’-一リン酸(AMP)、グアノシン-5’-一リン酸(GMP)、ウラノシン-5’-一リン酸(UMP)、シチジン-5’-一リン酸(CMP)、アデニン、グアニン、ウラシル、シトシン、アデノシン、グアノシン、ウリジン、シチジン、ヒポキサンチン、キサンチン、ヒポキサンチン、オロチジン、チミジン、イノシン及び当該化合物のうちのいずれかの誘導体から成る群から選択される1若しくは複数の凍結保護剤を含んでもよい。好適な抗酸化剤としては、アスコルビン酸、クエン酸とその塩、没食子酸塩、システイン、ソルビトール、マンニトール、マルトースが挙げられる。好適な栄養物としては、糖、アミノ酸、脂肪酸、ミネラル、微量元素、ビタミン(ビタミンBファミリー、ビタミンCなど)が挙げられる。その組成物は、任意選択で、増量剤(ラクトース、マルトデキストリンなど)及び/又は香味料を含めた更なる物質を含んでもよい。
【0104】
発酵乳製品を製造する方法
本発明は更に、本発明による組成物を植菌し、そして乳基質を発酵させることを含む、発酵乳製品を製造する方法を対象としたものである。組成物は、上記の項「組成物」において詳細に記載されている。
【0105】
一実施形態において、本発明は、発酵乳製品を製造する方法であって、以下の:
(i) グルコース発酵性ストレプトコッカス・サーモフィルス(St)株及びグルコース発酵性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス(Lb)株を含むスターター培養物;並びに
(ii) グルコース欠損ストレプトコッカス・サーモフィルス(St)株、ここで、前記St株は、ガラクトース発酵性であり、グルコキナーゼタンパク質をコードするglcK遺伝子のDNA配列に突然変異を担持し、そしてその突然変異がグルコキナーゼタンパク質を不活化するか又はその遺伝子の発現に対して負の効果がある、
を植菌し、そして乳ベースを発酵させることを含む方法に関する。
【0106】
一実施形態において、本発明は、発酵乳製品を製造する方法に関し、ここで、その発酵乳製品の後酸性化は、(ii)のグルコース欠損ストレプトコッカス・サーモフィルス(St)株を含まない組成物を用いて調製された発酵乳製品と比較して、低減される。
【0107】
一実施形態において、本発明は、発酵乳製品を製造する方法であって、以下の:
(i) グルコース発酵性ストレプトコッカス・サーモフィルス(St)株及びグルコース発酵性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス(Lb)株を含むスターター培養物;並びに
(ii) グルコース欠損ストレプトコッカス・サーモフィルス(St)株、ここで、前記St株は、ガラクトース発酵性であり、グルコキナーゼタンパク質をコードするglcK遺伝子のDNA配列に突然変異を担持し、そしてその突然変異がグルコキナーゼタンパク質を不活化するか又はその遺伝子の発現に対して負の効果がある、
を植菌し、そして乳ベースを発酵させることを含み、
ここで、その発酵乳製品の後酸性化は、(ii)のグルコース欠損ストレプトコッカス・サーモフィルス(St)株を用いないで調製された発酵乳製品と比較して、低減される、
方法に関する。
【0108】
「乳」という用語は、任意の哺乳類、例えばウシ、ヒツジ、ヤギ、バッファロー又はラクダなどを搾乳して得た乳分泌物として理解されるべきである。好ましい態様において、乳は、牛乳である。
【0109】
「乳基質」という用語は、本発明の方法に係る発酵に供され得る任意の生乳/加工乳材料を指す。従って、有用な乳基質は、これだけに限定されるものではないが、タンパク質を含有する任意の乳又は乳様製品の溶液/懸濁物、例えば全乳又は低脂肪乳、脱脂乳、バターミルク、還元乳粉、練乳、粉乳、ホエイ、ホエイ透過物、ラクトース、ラクトースの結晶化からの母液、ホエイタンパク質濃縮物、又はクリームを含む。明らかに、乳基質は、完全に又は部分的に、任意の哺乳類由来であってもよく、例えば実質的に純粋な哺乳類の乳、又は還元乳粉である。
【0110】
好ましくは、乳基質中のタンパク質の少なくとも一部は、例えばカゼイン又はホエイタンパク質などの乳中に天然に存在するタンパク質である。しかしながら、前記タンパク質の一部は、乳中に天然に存在しないタンパク質であってもよい。
発酵の前に、当該技術分野で公知の方法に従い乳基質は均質化又は殺菌されてもよい。
【0111】
本明細書中、「均質化」という用語は、可溶性懸濁物又は乳液を取得するための激しい混合を意味する。均質化が発酵の前に実施される場合、それは、乳脂肪が乳から分離しない程度に小さなサイズに分散するように実施されるべきである。これは、乳を高圧で小さなオリフィスを通して押し出すことにより達成され得る。
【0112】
本明細書中、「殺菌」とは、生きた生物、例えば微生物を減少又は死滅させるために乳基質を処理することを意味する。好ましくは、殺菌は、一定時間、特定の温度で乳基質を維持することにより達成される。当該特定の温度は、通常加熱により達成される。殺菌温度及び時間は、特定の細菌、例えば有害な細菌を死滅又は不活性化するように選択され得る。急速冷却工程が続いてもよい。
【0113】
本発明における「発酵」は、微生物の作用により炭水化物がアルコール又は酸に変換されることを意味する。好ましくは、本発明の方法は、ラクトースを乳酸に変換することを含む。発酵乳製品の製造に使用される発酵プロセスは周知であり、当業者は、温度、酸素量、(単数若しくは複数の)微生物の量及び特性、並びに処理時間などの適切な処理条件をどのように選択するかを心得ている。自明であるが、発酵条件は、本発明の達成を支持するように、すなわち、固形又は液状の乳製品(発酵乳製品)を得るように選択される。
【0114】
「発酵乳製品」という用語は、本明細書中で使用される場合、食料又は飼料製品を指し、前記食料又は飼料製品の調製は、乳酸菌による乳基質の発酵にかかわっている。本明細書中で使用される場合、「発酵乳製品」としては、これだけに限定されるものではないが、好熱発酵乳製品、例えば、ヨーグルト、中温発酵乳製品、例えば、サワークリーム及びバターミルク、並びに発酵ホエイなどの製品が挙げられる。
【0115】
「好熱性菌」という用語は、本明細書中では、35℃より高い温度にて最も良好に繁殖する微生物を指す。工業的に最も有用な好熱性菌としては、ストレプトコッカス属の種及びラクトバチルス属の種が挙げられる。「好熱発酵」という用語は、本明細書中では、約35℃より高い温度、例えば約35℃~約45℃などでの発酵を指す。「好熱発酵乳製品」という用語は、好熱性スターター培養物の好熱発酵により調製された発酵乳製品を指し、斯かる発酵乳製品としては、セットヨーグルト、スタードヨーグルト、飲用ヨーグルト、例えばYakultが挙げられる。
【0116】
「中温性菌」という用語は、本明細書中では、中程度の温度(15℃~35℃)にて最も良好に繁殖する微生物を指す。工業的に最も有用な中温性菌としては、ラクトコッカス属の種及びロイコノストック属の種が挙げられる。「中温発酵」という用語は、本明細書中では、約22℃~約35℃の間の温度での発酵を指す。「中温発酵乳製品」という用語は、中温性スターター培養物の中温発酵により調製された発酵乳製品を指し、斯かる発酵乳製品としては、バターミルク、サワーミルク、カルチャードミルク、スメタナ、サワークリーム、ケフィール及びフレッシュチーズ、例えばクアーク、トバログ及びクリームチーズなどが挙げられる。
【0117】
好ましい実施形態において、播種されるストレプトコッカス・サーモフィルス細胞の濃度は、乳基質1mlあたり104~109CFUのストレプトコッカス・サーモフィルス細胞、例えば乳基質1mlあたり104CFU~108CFU程度のストレプトコッカス・サーモフィルス細胞である。
【0118】
本発明の方法の別の好ましい実施形態において、ストレプトコッカス・サーモフィルス株は、9.5%のB乳を酸性化できず、9.5%のB乳に106~107CFU/mlのストレプトコッカス・サーモフィルス株を植菌し、そして、40℃で14時間インキュベートしたとき、1.0未満のpH低下をもたらすと規定される。9.5%のB乳に106~107CFU/mlのストレプトコッカス・サーモフィルス株を植菌し、そして、40℃で14時間インキュベートしたとき、1.0以上のpH低下をもたらすと規定される、ストレプトコッカス・サーモフィルス株による9.5%のB乳の酸性化を引き起こすことができるような量の化合物が、その乳基質に加えられる。好ましくは、前記化合物はスクロースである。好ましくは、スクロースの量は、0.000001%~2%、例えば0.00001%~0.2%程度、例えば0.0001%~0.1%程度、例えば0.001%~0.05%程度である。
【0119】
本明細書の文脈において、ヨーグルトスターター培養物は、少なくとも1つのラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株と少なくとも1つのストレプトコッカス・サーモフィルス株を含む細菌培養物である。これによれば、「ヨーグルト」という用語は、ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株とストレプトコッカス・サーモフィルス株を含む組成物を乳に植菌し、そして、発酵させることによって入手可能な発酵乳製品を指す。
【0120】
更なる実施形態において、本発明は、グルコース欠損ストレプトコッカス・サーモフィルス(St)株を乳ベースに加えることによって、グルコース発酵性ストレプトコッカス・サーモフィルス(St)株とグルコース発酵性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス(Lb)株を含むスターター培養物によって調製された発酵乳製品中の後酸性化を軽減するための方法であって、ここで、前記St株が、ガラクトース発酵性であり、かつ、グルコキナーゼタンパク質をコードするglcK遺伝子のDNA配列内に突然変異を担持し、そしてその突然変異がグルコキナーゼタンパク質を不活化するか又はその遺伝子の発現に対して負の効果がある、方法に関する。一実施形態において、グルコース欠損St株はラクトース発酵性であってもよい。
【0121】
本発明の任意の実施形態において、スターター培養物及びグルコース欠損ストレプトコッカス・サーモフィルス(St)株は、混合物として又はパーツキット(kit-of-part)として加えられてもよい。
【0122】
発酵乳製品
本発明は更に、本発明による組成物を含む発酵乳製品に関する。好ましい実施形態において、発酵乳製品は、ヨーグルト、チーズ、サワークリーム及びバターミルク、並びに発酵ホエイであってもよい。好ましくは、発酵乳製品はヨーグルトである。
【0123】
一実施形態において、本発明は、発酵乳製品に関し、ここで、その発酵乳製品の後酸性化は、(ii)のグルコース欠損ストレプトコッカス・サーモフィルス(St)株を含んでいない組成物を用いて調製された発酵乳製品と比較して、低減される。
【0124】
一実施形態において、発酵乳製品は、本発明による組成物を植菌し、そして乳基質を発酵させることを含む発酵乳製品を製造する方法によって製造される。一実施形態において、本発明の組成物は、1若しくは複数のグルコース欠損ストレプトコッカス・サーモフィルス株、1若しくは複数のグルコース発酵性ストレプトコッカス・サーモフィルス株、及び1若しくは複数のグルコース発酵性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株を含む。
【0125】
一実施形態において、組成物の1若しくは複数のグルコース欠損ストレプトコッカス・サーモフィルス株は:DSM32227;DSM28889;DSM25850;DSM25851;DSM26722;及びそれらから誘導されたグルコース欠損突然変異株から成る群から選択される。
【0126】
一実施形態において、組成物の1若しくは複数のグルコース発酵性ストレプトコッカス・サーモフィルス株は:DSM19242;DSM22935;及びそれらから誘導されたグルコース発酵性突然変異株から成る群から選択される。
【0127】
一実施形態において、組成物の1若しくは複数のグルコース発酵性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株は:DSM28910;DSM22586;及びそれらから誘導されたグルコース発酵性突然変異株から成る群から選択される。
【0128】
一実施形態において、発酵乳製品は、DSM28889から選択される1若しくは複数の菌株、及びDSM19242とDSM22586から選択される1若しくは複数の菌株を含む。
一実施形態において、発酵乳製品は、菌株DSM28889、DSM19242、及びDSM22586を含む。
一実施形態において、発酵乳製品は、菌株DSM28889及びDSM22935を含む。
【0129】
本発明の組成物の使用
本発明は、発酵乳製品の調製のための本発明による組成物の使用に関する。
【0130】
一実施形態において、本発明は、本発明の組成物の使用に関し、ここで、その発酵乳製品の後酸性化は、グルコース欠損ストレプトコッカス・サーモフィルス(St)株を含んでいない組成物を用いて調製された発酵乳製品と比較して、低減される。
【0131】
一実施形態において、本発明は、発酵乳製品の後酸性化を、(ii)のグルコース欠損ストレプトコッカス・サーモフィルス(St)株を用いないで調製された発酵乳製品と比較して、低減するための、以下の:
(i) グルコース発酵性ストレプトコッカス・サーモフィルス(St)株及びグルコース発酵性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス(Lb)株を含むスターター培養物;並びに
(ii) グルコース欠損ストレプトコッカス・サーモフィルス(St)株、ここで、前記St株は、ガラクトース発酵性であり、グルコキナーゼタンパク質をコードするglcK遺伝子のDNA配列に突然変異を担持し、そしてその突然変異がグルコキナーゼタンパク質を不活化するか又はその遺伝子の発現に対して負の効果がある、
の使用に関する。
【0132】
一実施形態において、本発明は、発酵乳製品の後酸性化を、グルコース欠損ストレプトコッカス・サーモフィルス(St)株を用いないで調製された発酵乳製品と比較して、低減するための、グルコース欠損ストレプトコッカス・サーモフィルス(St)株、ここで、前記St株は、ガラクトース発酵性であり、グルコキナーゼタンパク質をコードするglcK遺伝子のDNA配列に突然変異を担持し、そしてその突然変異がグルコキナーゼタンパク質を不活化するか又はその遺伝子の発現に対して負の効果があるの使用に関する。そのグルコース欠損St株はラクトース発酵性であってもよい。
【0133】
本発明の実施形態は、非限定的な例によって以下に説明される。
【0134】
配列表
配列番号1は、菌株DSM28889の突然変異グルコキナーゼ遺伝子のDNA配列を示す。
配列番号2は、配列番号1によってコードされたアミノ酸配列を示す。
配列番号3は、菌株DSM28889の突然変異ManN遺伝子のDNA配列を示す。
配列番号4は、配列番号3によってコードされたアミノ酸配列を示す。
配列番号5は、菌株DSM28889のManM遺伝子(突然変異なし)のDNA配列を示す。
配列番号6は、配列番号5によってコードされたアミノ酸配列を示す。
【実施例
【0135】
材料と方法
培地:
ストレプトコッカス・サーモフィルスに関して、使用する培地は、当業者に知られているM17培地である。
【0136】
表1:M17アガロース培地は、最終的なpH7.1±0.2(25℃)を有する1リットルのH2Oあたり以下の組成を有する:
【表1】
【0137】
表2:M17培養液は、最終的なpH7.0±0.2(25℃)を有する1リットルのH2Oあたり以下の組成を有する:
【表2】
【0138】
添加された炭素源は、無菌のラクトース20g/l、グルコース20g/l又はガラクトース20g/lである。
【0139】
当業者が知っているとおり、M17培地は、ストレプトコッカス・サーモフィルスの増殖に好適であるように考慮された培地である。更に、当業者が理解しているように、本文脈において、M17濃縮物は、様々な供給業者から供給される可能性があるので、特定の供給業者とは無関係に、当業者は、本明細書中の着目の関連細胞について、2-デオキシグルコース耐性に関して(標準的な測定不確実性の範囲内で)本明細書中に関連する同じ結果を得る。
【0140】
ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクスを培養するのに使用する培地は、MRS-IM培地であった。MRS-IMは、アガロースプレート又は培養液の形態で使用した。
【0141】
表3:MRS-IMアガロース培地は、1リットルのH2Oあたり以下の組成を有する。オートクレーブ後に、pHを25℃にて6.9±0.1に調整する。
【表3】
【0142】
表4:液体培養のために以下の実施例で使用するMRS-IM培養液は、1リットルのH2Oあたり以下の組成を有する。オートクレーブ後に、pHを25℃にて6.9±0.1に調整する。炭素源であるラクトース20g/l又はグルコース20g/lを、最初に濾過滅菌した後に、オートクレーブ処理した培養液に添加した。
【表4】
【0143】
上記MRS-IM培地は、ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクスの増殖を支える培地の能力に影響を及ぼすことなく、ある程度変更できる。更に、当業者には明らかなように、MRS-IM濃縮物又は先に記載した種々の成分は、様々な供給業者から入手でき、そして、MRS-IM培地の調製に使用され得る。これらの培地は、以下の実施例、特に2-デオキシグルコース耐性の選択アッセイに同様に使用する。
【0144】
実施例1:グルコース欠損ストレプトコッカス・サーモフィルス株DSM28889の添加を伴っていない及び伴った市販のヨーグルト培養物の後酸性化
培養物
培養物1:Premium4
培養物2:Premium4+DSM28889
DSM28889は、グルコース欠損、ガラクトース発酵性、かつ、ラクトース発酵性ストレプトコッカス・サーモフィルス株である。
【0145】
Premium4は、2種類のグルコース発酵性ストレプトコッカス・サーモフィルス株と1種類のグルコース発酵性ラクトバチルス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス株を含んでいるChr. Hansen A/Sによって販売された市販のヨーグルトスターター培養物である。3種類の菌株のすべてがラクトース発酵性である。
【0146】
表5:ヨーグルト製造プロセスのパラメーター
【表5】
【0147】
ヨーグルトスターター培養物を、実験室スケールでのヨーグルト製造について、グルコース欠損株DSM28889(5回2つのサンプル)の添加の有無により試験した。乳ベースを、38℃まで加熱し、次に、あらかじめ解凍し、添加前に3Lバットに乳で希釈した培養物を植菌した。植菌した乳ベースを、100gヨーグルトカップ(二重反復試験)に注ぎ入れ、そしてインキュベータ内で38℃にて維持し、その後、pH4.6に達したときに冷却室に移した(固形ヨーグルトプロセス)。1日目には、試験したサンプルを用いた1セットのヨーグルトカップを、13℃のインキュベータ内に置き、そして29日間まで保存したが、それと同時に、同一セットのカップを29日間まで5℃にて冷蔵室に保たれた。
【0148】
結果
酸性化
培養物1は、4.6のpHに達するまで468分であった。培養物2は、4.6のpHに達するまで752分であった。
【0149】
後酸性化
表6:後酸性化(pH)
【表6】
後酸性化は、DSM28889の存在下では両方の試験温度にて低減された。
【0150】
炭水化物
表7:5℃にて21日間にわたる保存後のヨーグルトの炭水化物プロファイル(mg/g)
【表7】
【0151】
寄託株と専門家のみへの分譲
本出願人は、下記の寄託された微生物のサンプルを、特許が付与される日まで、専門家にのみ入手可能にすることを要求する。
【0152】
表8:寄託は、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(DSMZ)GmbH, Inhoffenstr.7B, D-38124 Braunschweig, Germanyにて、特許手続上の微生物寄託の国際的承認に関するブダペスト条約に従っておこなわれた。
【表8】
【0153】
参考文献
WO2006/042862
US2010/0021586
WO2010/139765
WO2011/026863
WO2011/092300
WO2013/160413
WO2013/169205
WO2015/193459
WO2017/167660
Porter et al. (1982) Biochim. Biophys. Acta, 709:178-186
Godshall (1988) Food Technology 42(11):71-78
Cochu et al. (2003) Appl and Environ Microbiol, 69(9):5423-5432
Pool et al. (2006) Metabolic Engineering 8(5):456-464
【配列表】
2023528345000001.app
【国際調査報告】