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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-04
(54)【発明の名称】電球
(51)【国際特許分類】
   F21K 9/232 20160101AFI20230627BHJP
   F21Y 107/00 20160101ALN20230627BHJP
   F21Y 115/00 20160101ALN20230627BHJP
【FI】
F21K9/232
F21Y107:00
F21Y115:00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022572601
(86)(22)【出願日】2021-05-25
(85)【翻訳文提出日】2022-11-25
(86)【国際出願番号】 EP2021063773
(87)【国際公開番号】W WO2021239670
(87)【国際公開日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】20177042.7
(32)【優先日】2020-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516043960
【氏名又は名称】シグニファイ ホールディング ビー ヴィ
【氏名又は名称原語表記】SIGNIFY HOLDING B.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 48,5656 AE Eindhoven,The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100163821
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 沙希子
(72)【発明者】
【氏名】ホラチェック ミハル ヤン
(57)【要約】
電球10のガラスステム23を通して導体24を収容するためのフィードスルー本体26を備える電球10が開示される。電球10は、封止された光透過性表面構造体22内に配置された光エンジン21と、光エンジン21を支持するガラスステム23内に封止され、ガラスステムを通って延びるフィードスルー本体26と、相互に電気的に分離され、フィードスルー本体26を通って延び、フィードスルー本体の中に気密封止された導電性ワイヤ24であって、光エンジン21を少なくとも1つの電源及び信号源に接続する複数の導電性ワイヤ24と、を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性表面構造体及びガラスステムによって囲まれた空間内に配置された光エンジンであって、
前記ガラスステムは、相互に接続されたフレア及び管状部分を備え、前記ステムは、前記光エンジンを支持し、前記フレアによって前記光透過性表面構造体に融着されている、光エンジンと、
前記ガラスステムを通って延び、融着によって前記管状部分内に固定されているフィードスルー本体であって、
前記フィードスルー本体には、互いに電気的に分離された複数の導体が設けられ、前記導体は、前記ガラスステムを通って延び、前記光エンジンを少なくとも1つの電源及び信号源に接続している、フィードスルー本体と、
を備える、電球。
【請求項2】
前記空間は、前記光透過性表面構造体及び前記ガラスステムによって気密封止され、
前記フィードスルー本体は、前記管状部分内において気密な形態で封止長さにわたって封止状態で固定され、
前記導体は、気密な形態で前記ガラスステムを通って延びている、請求項1に記載の電球。
【請求項3】
前記ガラスステムは第1の熱膨張係数を有し、前記フィードスルー本体は第2の熱膨張係数を有し、前記第1の熱膨張係数及び前記第2の熱膨張係数は、|1×10-6/K|以下の差を有する、請求項1又は2に記載の電球。
【請求項4】
フィードスルー本体はフィードスルー管であり、前記導体は、気密な形態で前記フィードスルー管を通って延びる導電性ワイヤである、請求項1乃至3の何れか一項に記載の電球。
【請求項5】
前記フィードスルー管は、金属、セラミック、又はガラスで作られている、請求項4に記載の電球。
【請求項6】
複数の前記導電性ワイヤは、弾性かつ接着性の封止化合物を使用して前記フィードスルー管内に気密封止されている、請求項4又は5に記載の電球。
【請求項7】
前記封止化合物は、接着剤及びエポキシのうちの1つを含み、好ましくは、前記封止化合物は、エポキシ樹脂、非晶質シリカ、二酸化チタン、非繊維状酸化アルミニウム、オキシビス(エチレンオキシ)ビス(プロピルアミン)、ブチル2,3-エポキシプロピルエーテル、ビスフェノール-Aエピクロロヒドリン樹脂を含む群のうちの少なくとも1つを含む、請求項6に記載の電球。
【請求項8】
前記複数の導電性ワイヤは、前記導電性ワイヤの前記熱膨張係数に整合する熱膨張係数を有する絶縁層で個別に絶縁されている、請求項3乃至7の何れか一項に記載の電球。
【請求項9】
前記絶縁層は、マイラ及びシリコーンのうちの1つで作られている、請求項8に記載の電球。
【請求項10】
フィードスルーキャリアが、電気絶縁材料で作られており、導体は、前記フィードスルーキャリアの表面上に設けられた導電性トラックである、請求項1乃至3の何れか一項に記載の電球。
【請求項11】
前記フィードスルーキャリアは、セラミック又はガラスで作られており、前記導体は、前記フィードスルーキャリアの外面上に設けられた導電性トラックである、請求項10に記載の電球。
【請求項12】
前記トラックは、銅又はサーメット材料で作られており、前記サーメット材料は、耐火性酸化物としてアルミナ及び/又は窒化アルミニウムを含み、金属としてアルミニウム、モリブデン及び/又はタングステンを含む、請求項10又は11に記載の電球。
【請求項13】
前記フィードスルーキャリアはセラミック又はガラスで作られており、前記ガラスステムは第1の融点Tm1を有し、前記フィードスルーキャリアは第2の融点Tm2を有し、Tm2-Tm1≧75℃である、請求項1乃至12の何れか一項に記載の電球。
【請求項14】
請求項1乃至13の何れか一項に記載の電球を製造する方法であって、
I)フィードスルー本体をガラスステムの管状部分内に固定するステップと、
II)前記フィードスルー本体に、相互に電気的に分離された複数の導体を設けるステップと、
III)前記複数の導体を、前記ガラスステムによって支持された光エンジン接点に接続するステップと、
IV)前記光エンジンを、光透過性表面によって囲まれた空間内に配置するステップと、
V)前記光透過性表面を前記ガラスステムのフレア部分に融着することによって前記ガラスステムと前記光透過性表面構造体とを組み立てることにより、前記空間を閉鎖するステップと、を含む、方法。
【請求項15】
前記空間は、前記光透過性表面構造体及び前記ガラスステムによって気密封止され、前記フィードスルー本体は、前記管状部分内において気密な形態で封止長さにわたって封止状態で固定され、前記導体は、気密な形態で前記ガラスステムを通って延び、
前記方法は、前記管状部分を気密封止する前に、前記管状部分を介して前記空間にガスを充填するステップを更に含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、照明技術の分野に関し、より具体的には、ガラスステム内にマルチワイヤ気密フィードスルーを備える電球に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の白熱電球又はランプは、典型的には、透過性表面構造、フィラメント、中心にあるステム、及び接続ワイヤを備える。表面構造は、通常、球体の形状のガラスシェルであり、フィラメントによって生成された光を分散させるように構成されている。フィラメントは、通例では、タングステンで作られ、光を生成するために透過性表面構造体の内側に配置される。ステムは、一般に、ガラスで作られ、フィラメントを支持するために表面構造体の中心に配置される。接続ワイヤは、従来の白熱電球の構成要素を通る電気の供給を確実にするように構成されている。
【0003】
従来の白熱電球では、通常、リードインワイヤと呼ばれる2本のワイヤが存在し、これらワイヤは、それぞれ、ガラスステムを貫通し、白熱電球の口金に配置された、電源の正及び負(「+」及び「-」)の接点に接続されるように構成されている。
【0004】
対照的に、新しく開発された調整可能なLEDフィラメントランプは、一般に、ガラスステムを通って延びる2本より多いワイヤを必要とする。その理由の1つは、従来の電球のフィラメントに相当する、LEDフィラメントランプの光エンジンが、異なる色であってもよいLEDに加えて、LED光源を制御するための信号を受信するための通信要素などの構成要素を備えることである。したがって、ドライバと気密電球内に位置する光エンジンとの間に、電源及び信号のための、2つより多くの、一般には3つ~6つの相互接続ラインを必要とする場合がある。
【0005】
従来の白熱電球では、リードインワイヤは、製造プロセス中に、摂氏1000度を超える温度で溶融されたガラスステム内で溶融されるか又は溶融されたガラスステムの中に圧入される。そのような高温では、ワイヤを互いに分離することは、分離体がステム形成プロセス中に溶融することになるので、不可能である。
【0006】
その上、従来の方法ではガラスステム内で溶融されることができるワイヤの数は、現在、最大4本のワイヤに限定される。このようにして溶融されるワイヤは、サイズ及び材料においても制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の全ての要因が、ガラスステム内の新しいランプによって必要とされる数のワイヤを、従来の方法を使用して配置することを困難にするか又は実行不可能にする。
【0008】
したがって、ガラスステム内により多くのワイヤを収容できる電球、及びそのような電球を製造する方法が真に必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1の態様では、光透過性表面構造体及びガラスステムによって囲まれた空間内に配置された光エンジンであって、
ガラスステムは、相互に接続されたフレア及び管状部分を備え、ステムは、光エンジンを支持し、フレアによって光透過性表面構造体に融着されている、光エンジンと、
ガラスステムを通って延び、融着によって管状部分内に固定されているフィードスルー本体であって、
フィードスルー本体には、互いに電気的に分離された複数の導体が設けられ、導体は、ガラスステムを通って延び、光エンジンを少なくとも1つの電源及び信号源に接続している、フィードスルー本体と、を備える電球が提供される。
【0010】
本開示は、ガラスステム内で固定又は溶融されたフィードスルー本体を使用して、例えば、互いが相互に電気的に分離された複数の導体、例えばワイヤ又は導電性トラックを、例えば4本より多い導体、例えば5本、6本、更には12本の導体を収容できるという洞察に基づく。したがって、従来のランプに関する問題を回避しながら、フィラメント又は光エンジンを電源及び信号源に接続するために、より多くの導体が利用可能である。導体が設けられたフィードスルー本体は、実際には単一のユニットを形成し、ユニットが全体として、ステムの管状部分内に固定されることができる。本発明による電球により、導体がステム内に固定された後に、相互に接触するリスク、又は互いに比較的近接してステム内に収容されるリスクが抑制される。したがって、電球の信頼性及び安全性が改善されるだけでなく、従来技術による電球と比較して、比較的多数の電流導体を、ガラスステムを通して、空間内に収容された光エンジンまで通すことも可能になる。
【0011】
本発明による電球は、空間が、光透過性表面構造体及びガラスステムによって気密封止され、フィードスルー本体が、例えば融着又は溶融により、管状部分内において気密な形態で封止長さにわたって封止状態で固定され、導体は、気密な形態でガラスステムを通って延びている、という特徴を有することができる。空間を気密封止することにより、電球は特殊ガスで充填された空間を有するようになり、当該空間内に、例えばネオンなどのガスが閉じ込められ、当該ガスが、光エンジンから光透過性表面構造体及び外部への熱伝導を改善し、したがって、ランプがより良好な性能及び保守を有するようになる。
【0012】
本開示の技術的解決策は、ガラスステム内で溶融されガラスステムを貫通するフィードスルー本体として、フィードスルー管又はスリーブを使用できるという特徴を有し得る。典型的には、導体は次いで、接続用の導電性ワイヤとして具現化される。接続ワイヤは次いで、フィードスルー管内に据え付けられるか又は埋め込まれ、そして封止される。これは、複数のワイヤが、例えば摂氏1400度を超える高温に曝されないであろうことを意味する。したがって、ワイヤは、タングステンの代わりに銅のような、より安価な材料で作ることができる。この解決策の別の利点は、ワイヤが、より細くされることができ、個別に絶縁されることができ、その結果、より多くのワイヤが、ガラスステム内に封止されてフィードスルー管内に収容されることができることである。
【0013】
電球は、ガラスステムが第1の熱膨張係数を有し、フィードスルー本体が第2の熱膨張係数を有し、第1の熱膨張係数及び第2の熱膨張係数は、|2.5×10-6/K|以下、例えば|1×10-6/K|以下の差を有する、という特徴を有してもよい。ステムとフィードスルー本体との間の熱膨張係数の差を限定することにより、ステムとフィードスルー本体との間の固定接続部の破損などの損傷のリスクが相殺されて、電球がより信頼性のあるものとなる。更に、空間のより信頼性の高い気密封止が得られる。
【0014】
本開示の一実施形態では、フィードスルー管は金属で作られている。金属は、管とガラスステムとの間の気密性を確保しながら、管をガラスステム内に封止するのに必要な高温に耐えることができるので、フィードスルー管用に非常に好適な材料である。本開示の特定の実施形態では、金属は、コバール、vacovit、タングステン、モリブデン、(Cr)NiFe、Alを含む。これらは全て容易に入手可能な材料であり、ガラスステム内に封止された管を形成するために使用することができる。
【0015】
これに対して、本開示の別の実施形態では、フィードスルー本体は、セラミック又はガラスから作られている。セラミック材料もまた、高温に耐えることができる。セラミックの例としては、Al(2072℃の融点を有する)、又はSiAlON(2745℃の融点を有する)を挙げることができる。電球ステム用に使用されるガラスよりも高い転移温度又は溶融温度を有するガラスのタイプは、溶融石英又は溶融シリカガラス(融点1650℃)を挙げることができる。
【0016】
本開示の一実施形態では、複数の導電性ワイヤは、弾性かつ接着性の封止化合物を使用してフィードスルー管内に気密封止されている。封止化合物は、フィードスルー管と各導電性ワイヤとの間の気密性を確保するのに役立つ。したがって、封止化合物は、フィードスルー管の材料とワイヤの材料との間での熱膨張係数の不整合を補償するために、フィードスルー管及びワイヤ絶縁体に対して十分な弾性及び接着性を示す必要がある。そのような目的には、弾性と接着性とを有する封止化合物が好適である。
【0017】
本開示の例示的な実施形態では、封止化合物は、接着剤及びエポキシのうちの1つを含む。具体的には、封止化合物は、エポキシ樹脂、非晶質シリカ、オキシビス(エチレンオキシ)ビス(プロピルアミン)、二酸化チタン、ブチル2,3-エポキシプロピルエーテル、非繊維状酸化アルミニウム、及びビスフェノール-Aエピクロロヒドリンを含んでもよい。これらの化合物は、導電性ワイヤをフィードスルー管内の気密封止するための適切な特性を有する。
【0018】
本開示の例示的な実施形態では、複数の導電性ワイヤは、導電性ワイヤの熱膨張係数に整合する熱膨張係数を有する絶縁層で個別に絶縁される。導電性ワイヤは、ガラスステム内に既に封止されているフィードスルー管内に据え付けられるので、ワイヤは、ガラスステム内でワイヤを溶融するのに必要な高温に耐える必要がなく、したがって、各ワイヤに非常に薄い絶縁材料を適用することができる。この薄い絶縁層は、導電性ワイヤが互いからしっかりと絶縁されることを確実にして、多数の導電性ワイヤをフィードスルー管内に据え付けることを可能にし、それにより、より多くの接続ワイヤを必要とする新しいランプの必要性に対処する。
【0019】
本開示の一実施形態では、絶縁層は、マイラ及びシリコーンのうちの1つで作られている。各ワイヤは非常に薄い絶縁層で個別に絶縁されており、これはリッツ線で使用される設計と同様であるので、封止の前及び後に、フィードスルー管内でワイヤ間の分離を維持する必要はない。これは、ワイヤの据え付け又は埋め込みを遥かに容易にするのに役立つ。
【0020】
本開示の一実施形態では、複数の導電性ワイヤの直径は、0.2mm~0.5mmの範囲にある。導電性ワイヤは、ガラス溶融に相当する摂氏1400度の温度に曝されないので、必要なワイヤの電気的及び機械的特性を提供するには0.2~0.5mmの範囲の直径で十分である。
【0021】
本開示の一実施形態では、導電性ワイヤの数は3本以上、例えば6本、又は9本である。これは、特に、フィラメント又は光エンジンを電源及び信号源に接続するために少なくとも4本の接続ワイヤを必要とする新しいタイプの電球又はランプにとって有利であり、それにより、電球又はランプを様々な方法で制御して、顧客によって望まれるような、より多くの照明動作モードを提供することが可能になる。
【0022】
本開示の一実施形態では、フィードスルー管は、1.0mm~3.5mmの範囲の内径を有する。フィードスルー管は、必要な数のワイヤを収容するのに十分に大きな内径を有する。内径は、導電性ワイヤの直径と、フィードスルー管内に据え付けられたワイヤの数とに基づいて選択されてもよい。フィードスルー管は、典型的には、0.5~1.5mmの範囲の壁厚を有して、フィードスルー管を通過する導電性ワイヤを、固定/封止プロセス中に生成される熱から適切に保護するために、フィードスルー管が適切な断熱特性を有するようにする。
【0023】
電球は、フィードスルー本体が電気絶縁材料で作られており、導体がフィードスルー本体の表面上に設けられた導電性トラックである、という特徴を有してもよい。そのような導電性トラックの提供は、スクリーン印刷、0.1~1mmの厚さなどの厚膜を提供するペースト塗布を介して、又は物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)、化学溶液堆積(CSD)を介して、又は典型的には0.001~0.1mmの厚さなどの薄膜を提供するリソグラフィを介して、容易にかつ従来通りに得ることができる。導電性トラックとして使用される好適な材料は、例えば、銅、モリブデン、タングステン、又はサーメットである。好適なサーメットは、例えば、アルミナと、典型的には0.1~0.2体積分率の量のタングステン又はモリブデンを含む金属とを含む、又は窒化アルミニウムと、約40重量%~約50重量%のアルミニウム金属とを含む、耐火性酸化物である。それに加えて、電球は、トラックが銅又はサーメット材料で作られており、サーメット材料が、耐火性酸化物としてアルミナ及び/又は窒化アルミニウムを含み、金属としてアルミニウム、モリブデン及び/又はタングステンを含む、という特徴を有してもよい。これらの材料は、この目的に好適である。ガラスステムの管状部分を、上に導電性トラックが堆積されたバー/ロッド形状のフィードスルー本体と溶融及び/又は封止すると、ガラスステムを通る導体の確実で気密な通過が実現される。
【0024】
電球は、フィードスルー本体がセラミック又はガラスで作られており、導体がフィードスルー本体の外面上に設けられた導電性トラック、例えば中実ロッド又は中実バーである、という特徴を有してもよい。このバー形状又はロッド形状のフィードスルー本体は、ステムの管状部分内に固定又は封止されて、導体が所望の形態でガラスステムを通過することが達成される。任意選択で、導体がステムを通過する代替的又は追加的な方法として、導電性トラックが設けられた中実バー又はロッドが第1のフィードスルー本体であり、導電性トラックは、複数のルース電気ワイヤの代わりとして機能し、第2のフィードスルー本体、すなわちフィードスルー管内に固定又は封止される。第1のフィードスルー本体と第2のフィードスルー本体とを組み合わせたフィードスルー構造は、その後、単一ユニットとしてガラスステムの管状部分内に封止されて、所望通りに導体をガラスステムに通すことができる。
【0025】
電球は、フィードスルー本体がセラミック又はガラスで作られており、ガラスステムが第1の融点Tm1を有し、フィードスルー本体が第2の融点Tm2を有し、Tm2-Tm1≧75℃である、という特徴を有してもよい。そのような最小の又はそれよりも大きい温度差が、ガラスステムの管状部分におけるフィードスルーキャリアの封止を容易にする。なぜなら、当該温度差が、フィードスルー本体が過度に変形するリスクを低下させ、したがって、導体間の相互接触のリスク、及び/又は導体の破損などの損傷のリスクを低減させるからである。
【0026】
本開示の第2の態様では、本開示の第1の態様による電球を製造する方法が提示される。方法は、
I)例えば溶融又は接着によって、フィードスルー本体をガラスステムの管状部分内に固定するステップと、
II)フィードスルー本体に、相互に電気的に分離された複数の導体を設けるステップと、
III)複数の導体を、ガラスステムによって支持された光エンジン接点に接続するステップと、
IV)光エンジンを、光透過性表面によって囲まれた空間内に配置するステップと、
V)光透過性表面をガラスステムのフレア部分に融着することによってガラスステムと光透過性表面構造体とを組み立てることにより、空間を閉鎖するステップと、を含む。
【0027】
導電性ワイヤをフィードスルー本体内に封止するための封止化合物が、フィードスルー本体をガラスステム内に固定する際の、例えば溶融によって封止する際の、比較的高い温度に耐性を有しないかも知れないことを考慮して、本開示の方法は、最初にフィードスルー本体をガラスステム内に封止する。次いで、導電性ワイヤは、好適な温度でフィードスルー管内に据え付けられ封止される。ステップI及びIIで与えられるシーケンスは、導電性ワイヤが高温に曝された場合に損傷を受ける懸念を排除する。代替として、例えば、フィードスルーキャリアが、上に堆積された導電性トラックを有して使用される場合、ステップI及びIIは、逆の順序で実施されてもよい。
【0028】
本開示の方法の一実施形態では、空間は、光透過性表面構造体及びガラスステムによって気密封止され、フィードスルー本体は、管状部分内において気密な形態で封止長さにわたって封止状態で固定され、導体は、気密な形態でガラスステムを通って延び、方法は、ガス供給管を介して光透過性表面構造体にガスを充填するステップと、管状部分を気密封止することによって空間を封止するステップとを更に含む。
【0029】
本開示の一実施形態では、本方法は、ガス供給管を塞いでフィードスルー本体を目立たないようにして、光の散乱を抑制するステップを更に含む。
【0030】
本開示の上述の及び他の、特徴及び利点は、添付の図面を参照する以下の説明から最もよく理解されるであろう。図面において、同様の参照番号は、同一の部分、又は同等の機能若しくは動作を実行する部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】従来技術による白熱電球を概略的に示す。
図2】本開示による電球を概略的に示す。
図3A】本開示による、ガラスステム内に配置されたフィードスルー本体の拡大図と、内部に導体が封止されたフィードスルー本体のいくつかの例の断面図とを概略的に示す。
図3B】本開示による、ガラスステム内に配置されたフィードスルー本体の拡大図と、内部に導体が封止されたフィードスルー本体のいくつかの例の断面図とを概略的に示す。
図3C】本開示による、ガラスステム内に配置されたフィードスルー本体の拡大図と、内部に導体が封止されたフィードスルー本体のいくつかの例の断面図とを概略的に示す。
図4A】本開示による、外面上に導電性トラックを有するフィードスルー本体の拡大された詳細図を、本開示に従って概略的に示す。
図4B】本開示による、外面上に導電性トラックを有するフィードスルー本体の拡大された詳細図を、本開示に従って概略的に示す。
図5】本開示による、電球を製造するための方法の一実施形態をフローチャート形式の図で概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
ここで、本開示により意図される実施形態が、添付図面を参照してより詳細に説明される。開示される主題は、本明細書に記載される実施形態のみに限定されるものとして解釈されるべきではない。むしろ、示される実施形態は、主題の範囲を当業者に伝えるための例として提示されている。
【0033】
図1は、従来技術による白熱電球10を概略的に示す。電球10は、光透過性表面構造体12及びガラスステム13によって気密封止された空間9内に配置されたフィラメント11を備える。フィラメント11は、通例では、タングステン又は外部の好適な金属材料から作られ、電気を伝導し光を放つように機能する。ガス封止された光透過性表面構造体12は、典型的には球体の形状を有し、電球10の内部構成要素を保護するように機能する。グローブ12は、一般に、より高い温度に耐えるように、ソーダ石灰ガラスなどの硬質ガラスで作られる。
【0034】
電球10は、ステム13を更に備え、ステム13は、ガラスで作られ、ステム13内に配置されたワイヤ14を保護するように、かつ、光を空間光分布を伴って分散させるような、グローブ12内の空間的方向に、フィラメント11を支持し持ち上げるように機能する。
【0035】
リードインワイヤと呼ばれることが多いワイヤ14は、フィラメント11を電球10の口金15内に配置された電源(図示せず)に接続して、口金15からフィラメント11に電流を流す。ワイヤ14は、通例では、ニッケルメッキ銅から作られる。
【0036】
従来の白熱電球10には2本のワイヤ14があることが多いが、新しく開発された調整可能な電球は、より多くのワイヤ、例えば、電源及び信号線に接続するための3本~6本、又は10本の相互接続ラインを必要とする場合がある。
【0037】
本開示による電球について、図2図3A図3C、及び図4A図4Bを参照して以下に説明する。
【0038】
図2は、本開示による電球20を概略的に示す。図3Aは、フィードスルー本体の拡大図30を概略的に示し、図3A図3Bでは、フィードスルー管がガラスステム内に配置され、フィードスルー管内に導電性ワイヤが封止されている。図3Bは、導電性接続ワイヤが内部に封止されたフィードスルー管の別の実施形態の断面図40を概略的に示す。図3Cは、更に別のフィードスルー構造の断面図40を概略的に示す。
【0039】
図2及び図3Aを参照すると、電球20は、光透過性表面構造体22及びステム23によって気密封止された空間19内に配置された1つ以上のフィラメント、例えば発光ダイオード、つまりLEDの、フィラメント21を、光エンジン21aとして備えてもよい。フィラメント21は、ガラスステム23によって支持され、ガラスステムはフレア231及び管状部分232を備える。フィラメント21を、電球20の口金25に又は口金25内に配置された少なくとも1つの信号及び電源制御部(図示せず)に接続するように、複数の導電性ワイヤ24、24bが構成されている。
【0040】
ガラス、金属、又はセラミックで作られていてもよいフィードスルー本体26、管、又はスリーブ26bが、ガラスステム23内に配置及び固定され、複数の導体24、図ではワイヤ24bを収容するように構成されている。図2は、5本の導電性ワイヤ24bを収容するように構成されたフィードスルー本体、管、又はスリーブ26bの一例を示し、対応するLEDフィラメント21に電気的に接続された各導電性リードワイヤ24bについて、1本の共通中立ワイヤ及び4本のリードワイヤがある。しかしながら、より多い又はより少ないワイヤ24bがフィードスルー管26b内に配置されること、例えば、図3Bに示されるように7本のワイヤ24bを有することができることが当業者によって企図されることができる。
【0041】
図では金属管26bであるフィードスルーキャリア26は、例えばガラスステム23の製造中に一緒に、ガラスステム23の管状232部分の封止領域233における封止長さSLにわたって溶融されてもよい。任意選択で、予め製造されたガラスステム23にフィードスルー経路を設けることができ、その場合、フィードスルー管26bは、気密性、及び/又はイングレスプロテクションコード規格に準拠するイングレスプロテクションを提供するように、ぴったり嵌められて封止されることになる。
【0042】
フィードスルー管26bとガラスステム23との間の気密性は、ガラス及び管に対する適切な材料の組み合わせを選択することによって維持されることができる。一例として、白熱電球用に定められたそれら材料の一般に知られている組み合わせが使用されてもよい。
【0043】
一例として、フィードスルー管26bは、コバール、vacovit、タングステン、モリブデン、(Cr)NiFe、Alを含む金属の群のうちの1つで作られてもよい。一方、ステム23は、ソーダライムガラスなどのガラスで作られてもよい。ステム用に好適なガラスの例が表1に示される。
【0044】
【表1】
【0045】
リードイン電源ワイヤ及び信号ラインを含んでもよい複数の導電性ワイヤ24は、フィードスルー管26b内に据え付けられるか又は埋め込まれる。フィードスルー管26bとワイヤ24bとの間の気密性を保証する目的で、例えば図3Bに示されるような封止化合物41が、フィードスルー管26b内及びワイヤ24bの周りに充填されてもよい。
【0046】
好適な封止化合物41は、フィードスルー管26bの材料とワイヤ24bの絶縁層42の材料との間の熱膨張係数の不整合を補償するよう、図3Bを参照して以下に記載されるように、十分な、弾性と、フィードスルー管26b及びワイヤ24bの周りの絶縁層42に対する接着性とを示す。一例として、エポキシ樹脂、非晶質シリカ、オキシビス(エチレンオキシ)ビス(プロピルアミン)、二酸化チタン、ブチル2,3-エポキシプロピルエーテル、非繊維状酸化アルミニウム、ビスフェノール-Aエピクロロヒドリン樹脂を含む群のうちの1つが、封止化合物41として使用されてもよい。
【0047】
導電性ワイヤ24b間の電気的分離を確実にするために、各ワイヤ24bは、リッツ線と同様に、非常に薄い絶縁層42で個別に絶縁される。絶縁層42は、例えば、マイラ又はシリコーンで作られていてもよい。その結果、ワイヤ24bの封止の前又は後に、フィードスルー管26b内のワイヤ24b間の分離を維持する必要がない。
【0048】
絶縁層42は、ワイヤ24bの熱膨張係数に整合する熱膨張係数を有する。例えば、マイラは、銅の熱膨張係数1.7×10-5[in/in/℃](ASTM-D696)に整合する熱膨張係数を有する。
【0049】
銅ワイヤを使用する利点は、銅ワイヤが電球の口金25内の電源とフィラメントとに直接、はんだ付けされることができることであり、これは、ガラスステム13内のワイヤ14が溶接されることだけができる従来の電球と比較して有利である。
【0050】
マイラの溶融温度は約250℃であり、これは、後述するようなアセンブリプロセスのために十分な耐性をもたらすことになる。
【0051】
個別に絶縁されたワイヤは、気密性を保証するのに役立つ。その結果、絶縁層とワイヤ材料との熱膨張係数の不整合が限定される。ワイヤ絶縁層及びワイヤ界面の長さはまた、封止に関しても有利である。
【0052】
発想は、ワイヤ24bがフィードスルー管26b内に埋め込まれる前に、最初にフィードスルー管26bがガラスステム23内に封止されるということである。その後、導電性ワイヤ24bが、封止されたフィードスルー管26b内に埋め込まれるか又は据え付けられる。このように、ワイヤ24bは、約1400℃のガラス溶融に相当する温度に曝されることがない。結果として、ワイヤ24bの直径が、従来のガラスを通るフィードスルーに対して減少する場合がある。
【0053】
ワイヤ24bは、0.2mm~0.5mmの範囲内の直径を有してもよい。チューブ26b内に収容されるワイヤ24bの数は、管の内径に依存してもよい。5チャネルカラーフィラメント電球の場合、少なくとも5本のワイヤ24bのフィードスルーが必要であり、これは、1.0mm~3.5mmの管の内径で実現できる。
【0054】
ガラスステムとフィードスルー管、フィードスルー管と封止化合物、封止化合物と導電性ワイヤの周りのワイヤ絶縁層、及びワイヤ絶縁層とワイヤ自体、の各ペアにおける上述した気密性は、ワイヤ24b間の相互の電気的分離を確保しながら、フィードスルー管26b内の複数の導電性ワイヤ24bの気密な埋め込み又は埋め込みを確保するのに役立つ。
【0055】
図3Cは、導体24がステムを通って延びることができる代替的なフィードスルー構造の断面図40を概略的に示す。当該代替的なフィードスルー構造は、導体24として導電性トラック24aが設けられた第1のフィードスルー本体26a、すなわち中実バー又はロッド26aを備え、導電性トラック24aは、複数のルース電気ワイヤの代わりとして機能し、第2のフィードスルー本体、すなわちフィードスルー管26b内に固定又は封止される。第1のフィードスルー本体26aは、ポッティング材料41によって第2のフィードスルー本体26b内に固定されている。第1のフィードスルー本体26aと第2のフィードスルー本体26bとを組み合わせたこのフィードスルー構造は、その後、単一ユニットとしてガラスステムの管状部分内に封止されて、所望通りに導体24をガラスステムに通すことができる。
【0056】
図4A図4Bは、ガラスステム23の拡大図30を、搭載/支持されたLED光エンジン21a、すなわち複数の、すなわち5つのLEDフィラメント21と、ガラスステム23内に配置されたフィードスルーキャリア26、図4A図4Bではガラスバー26a、と共に概略的に示し、フィードスルーキャリアは、フィードスルーキャリア上に導体24として配置された、複数の、すなわち7つの、導電性トラック24aを有し、導電性トラックは、この場合はスクリーン印刷によるが、代替的に、例えば貼り付け、PVD、CVD、CSDにより、又はリソグラフィ法により得ることができる。図4Bは、図4Aの実施形態に示すようなステム内に封止されたフィードスルーキャリアの一部のより詳細な図を概略的に示す。ガラスステム23のガラスは、第1のガラス、すなわち、表1に示される特性を有する参照番号220のガラスから構成される。ガラスバーフィードスルー本体26aは、第2のガラス、すなわち表1に示す特性を有する参照番号342のガラスから構成される。第1のガラスと第2のガラスの特性が整合していることにより、ガラスバーフィードスルー本体26a並びに導電性トラック24aが、図4Aに示す封止長さSLにわたって、ガラスステムの管状部分232内に適切に気密封止されることが可能である。ガラスステム上には、複数の独立して制御可能なLEDフィラメント21を備える螺旋形状のLED光エンジン21aが取り付けられており、フィラメント21の各々は、フィードスルー本体26a上の対応する導電性トラック24aに接続されている(接続は図示されていないが、オス-メス式のプラグ状構造によって簡便に接続を得ることができる)。導電性トラック24aは、銅金属で作られている。図4Aに示すような支持された光エンジン21aを有するステム23は、図2のランプに示すようなステム及び支持された光エンジンの代替として適切に適用できる。
【0057】
図5は、本開示による、電球を製造するための方法50の一実施形態をフローチャート形式の図で概略的に示す。
【0058】
ガラスステム内のフィードスルー管を溶融するのに必要な高温を考慮して、本開示の方法50の第1のステップ51として、フィードスルーキャリアは、ガラスステム内に固定される、例えば溶融される。
【0059】
それに続いて、ステップ52において、複数の導電性ワイヤがフィードスルー管内に供給され、次いで、複数のフィラメントの各々の接点などの光エンジン接点に接続される。代替として、ステップ51及び52は逆の順序で実行されてもよい。
【0060】
ステップ51及び52に続き、ステップ53において、光エンジンは、光透過性表面及びガラスステムによって囲まれた空間内に配置される。
【0061】
その後、ステップ54において、この時点で内部に固定/封止された管を有するガラスステムと、管内の所定位置にある導電性ワイヤとが、光透過性表面構造体と組み立てられる。これは、従来方法におけるのと同様に、例えば、ステムのフレアを光透過性表面構造体に溶融することによる融着により行われる。
【0062】
その後、ステップ55において、電球は任意選択でガスで充填され封止されてもよく、次いで、ステップ56においてガス供給管は塞がれてもよい。
【0063】
本開示は、上記で開示された実施例に限定されず、当業者によって、発明スキルを適用する必要なく、及びデータ通信、データ交換、及びデータ処理の、環境、システム、又はネットワークの何れかにおける使用のために、添付の特許請求の範囲において開示されている本開示の範囲を超えて修正及び拡張されることができる。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5
【国際調査報告】