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特表2023-528362網膜の疾患及び症状を処置するための方法及び組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-04
(54)【発明の名称】網膜の疾患及び症状を処置するための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/30 20150101AFI20230627BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230627BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20230627BHJP
【FI】
A61K35/30
A61P27/02
C12N5/071
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022572671
(86)(22)【出願日】2021-05-25
(85)【翻訳文提出日】2023-01-20
(86)【国際出願番号】 US2021034114
(87)【国際公開番号】W WO2021242788
(87)【国際公開日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】63/029,669
(32)【優先日】2020-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/036,327
(32)【優先日】2020-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/106,339
(32)【優先日】2020-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/182,684
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519336241
【氏名又は名称】リネージ セル セラピューティクス インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】500545311
【氏名又は名称】ハダシット メディカル リサーチ サービシーズ アンド ディベロップメント リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Hadasit Medical Research Services and Development Ltd.
(71)【出願人】
【識別番号】522459937
【氏名又は名称】モネス ジョーディ
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ビネッテ フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】ホッジ ゲイリー
(72)【発明者】
【氏名】スカリター ラミ
(72)【発明者】
【氏名】シャバト アヴィ ベン
(72)【発明者】
【氏名】モネス ジョーディ
(72)【発明者】
【氏名】バニン エヤル
(72)【発明者】
【氏名】チウ ティナ グアンティン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AC20
4B065BB12
4B065BB19
4B065BC06
4B065CA24
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB56
4C087BB64
4C087MA58
4C087NA14
4C087ZA33
(57)【要約】
黄斑変性などの網膜症状を含む眼の疾患及び病気を処置するための方法、組成物、及び装置が本明細書で提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
網膜の疾患又は障害を処置する又はその進行を遅らせる方法であって、それを必要とする対象に細胞治療剤を投与することを含み、前記細胞治療剤が網膜色素上皮(RPE)細胞を含み、前記RPE細胞が前記対象の網膜の解剖学的構造又は機能性を回復させる、方法。
【請求項2】
前記RPE細胞が多能性細胞に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記RPE細胞がヒトRPE細胞である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記RPE細胞が、ヒト胚(hESC)細胞株由来であった、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記RPE細胞が、高濃度のアクチビンA、形質転換増殖因子ベータ(TGF-b)ファミリーメンバー及びニコチンアミドを補充した低酸素(5%)培養下で、その後、通常の酸素(20%)培養に切り替えてRPE集団を濃縮して得られたものであった、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記RPE細胞が、約2000ng/ml/日~約4000ng/ml/日の濃度でPEDFを分泌する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞治療剤が、患者の萎縮性網膜の領域に投与されるか、又は萎縮性網膜の領域に隣接して投与される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞治療剤が、約50,000細胞~約1,000,000細胞の用量で投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記細胞治療剤が、約100,000細胞~約750,000細胞の用量で投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞治療剤が、約200,000細胞~約500,000細胞の用量で投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記細胞治療剤の前記投与が、前記対象の萎縮性網膜における萎縮領域を減少させる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記細胞治療剤の前記投与が、網膜の1つ又は複数の網膜層を回復させる、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記細胞治療剤の前記投与が、網膜における光受容体の機能性を回復させる、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記細胞治療剤の前記投与が、網膜の外顆粒層(ONL)を回復させる、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記細胞治療剤の前記投与が、網膜のエリプソイドゾーン(EZ)を回復させる、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞治療剤の前記投与が、網膜の中心窩を回復させる、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記細胞治療剤の前記投与が、網膜の血液網膜関門(BRB)を回復させる、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記細胞治療剤の前記投与が、網膜の細胞外マトリックス(ECM)をリモデリングする、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
網膜の前記解剖学的構造又は機能性の前記回復が、地図状萎縮の成長の低下、視力の改善、読み取り速度の改善、網膜構造の改善、ドルーゼンの減少、又は細胞の安定な生着のうちの1つ又は複数を評価することによって決定される、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記改善が、微小視野測定によって測定される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記対象の視力が処置によって改善され、改善された前記視力が、GA病変(複数可)の総面積の変化;単眼読み取り速度の変化;機能的読み取り独立指数(FRII)複合スコアの変化;正常輝度最高矯正視力スコア(NL-BCVA)の変化;低輝度最高矯正視力スコア(LL-BCVA)の変化;低輝度不足(LLD)の変化;単眼限界印刷サイズの変化;National Eye Institute Visual Functioning Questionnaire 25項目バージョン(NEI VFQ-25)遠方活動サブスケールスコアの変化;暗点の数の変化;黄斑感度の変化;及びAPL-2の全身血漿濃度の変化のうちの1つ又は複数によって評価される、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記方法が、移植された細胞の拒絶の遅延性の炎症を最小限にするか、又は全く生じさせない、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
投与することが、網膜の領域又は網膜に隣接する領域に前記RPE細胞を送達することを含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
送達することが、網膜の領域又は網膜に隣接する領域に前記RPE細胞を移植することを含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記処置することが、前記RPE細胞の多能性分泌効果を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記対象が、ドライ型AMD、網膜色素変性症、アッシャー症候群、卵黄様黄斑症、シュタルガルト病、網膜剥離、網膜異形成、網膜萎縮、網膜症、黄斑ジストロフィー、錐体ジストロフィー、錐体-桿体ジストロフィー、蜂巣状網膜ジストロフィー(Malattia Leventinese)、ドインハニカム型ジストロフィー、ソースビー型ジストロフィー、パターン/蝶型ジストロフィー、Best病、ノースカロライナ型ジストロフィー、中心性輪紋状脈絡膜ジストロフィー、網膜色素線条症、毒性黄斑症、病的近視、網膜色素変性、及び黄斑変性から選択される網膜疾患症状に罹患している、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記細胞治療剤が送達装置を用いて投与される、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記細胞治療剤が、前記送達装置を用いて網膜の地図状萎縮部に投与されるか、又はそれに隣接して投与される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記送達装置が、ニードル、キャピラリー及びチップを備える、請求項27又は28に記載の方法。
【請求項30】
前記送達装置が、約0.63mmの外径及び約0.53mmの内径を有するニードルと、約0.5mmの外径及び約0.25mmの内径を有するキャピラリーと、約0.12mmの外径及び約0.07mmの内径を有するチップとを備える、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記請求項のいずれか一項に記載の方法と共に使用するための、送達装置。
【請求項32】
ニードル、キャピラリー、及びチップを備える、請求項31に記載の装置。
【請求項33】
約0.63mmの外径及び約0.53mmの内径を有するニードルと、約0.5mmの外径及び約0.25mmの内径を有するキャピラリーと、約0.12mmの外径及び約0.07mmの内径を有するチップとを備える、請求項32に記載の装置。
【請求項34】
請求項1~33のいずれか一項に記載の、対象の網膜の解剖学的構造又は機能性を回復させるための細胞治療剤を含む、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年5月25日に出願された米国仮特許出願第63/029,669号;2020年6月8日出願の米国仮出願第63/036,327号;2020年10月27日に出願された米国仮出願第63/106,339号;2021年4月30日に出願された米国仮特許出願第63/182,684号の利益を主張し、それらは、その全体があらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
背景
本開示は、一般に、網膜疾患を処置する分野に関し、より詳細には、ヒト胚性幹細胞由来網膜色素上皮(RPE)細胞組成物を使用して網膜疾患を処置することに関する。
【0003】
RPE細胞の機能不全、変性及び喪失は、AMD、ベスト病及び網膜色素変性症(RP)のサブタイプなどの網膜疾患の顕著な特徴である。AMDは、西洋世界における視覚障害の主な原因である。75歳を超える人々の中で、25~30%が加齢黄斑変性(AMD)に罹患しており、進行性の中心視野の喪失により患者の6~8%が失明に至る。AMDは、加齢、煙及び補体多型などの複数の病因的危険因子が関与しており、その病態生理学的根本原因は、RPE加齢、酸化ストレス、パラ炎症、ブルッフ膜加齢及び脈絡膜虚血として要約することができ、これらは個々に、又は集合的に、網膜の健康の代謝悪化を引き起こす。網膜変性は、主に、細かい視覚的詳細、色知覚、顔認識、読書、及び運転を担う網膜の中心部分である黄斑が関与している。AMDには、ウェット型AMDとドライ型AMDの2つの形態がある。ドライ型AMDは、2つのタイプのうちの一般的な方であり、症例の約85~90%を占める。ウェット型AMDは、2つのタイプのうちの一般的でない方であり、症例の約10~15%を占める。AMDのドライ型は、RPEの過形成及びRPEの下又は代謝最終産物からなるブルッフ膜内のドルーゼン沈着物の形成によって開始される。この疾患は、黄斑の広い領域にわたるRPE細胞及び光受容体の変性を伴う地図状萎縮(GA)の進行期に徐々に進行し、中心視野の喪失を引き起こし得る。加えて、変性RPEは、血液網膜関門(BRB)に影響を及ぼし、これは、内側及び外側のバリアから構成されるものである。外側BRBは、脈絡膜から網膜下腔への溶質及び栄養素を調節する、ブルッフ膜とともに網膜色素上皮細胞層に形成されるバリアを指す。外側BRBは、特に体内で最も高い酸素代謝活性が行われる黄斑領域内で、光受容体の解剖学的及び機能的完全性を維持するのに不可欠な役割を果たす。hRPE細胞療法の主な目的は、喪失又は損傷した宿主RPEを置き換え、機能的で活性かつ生存可能なRPEを送達して光受容体を支持することである。
【0004】
この疾患の病因には、機能的に相互に関連する4つの組織、すなわち網膜色素上皮(RPE)、ブルッフ膜、脈絡毛細管板、及び光受容体の異常が関与している。しかしながら、RPE細胞機能の障害は、臨床的に関連するAMD変化をもたらす分子経路における初期の重要な事象である。
【0005】
ドライ型加齢黄斑変性(AMD)は、先進国における成人の失明の主な原因である。ウェット型AMDのほぼすべての症例は、ドライ型AMDとして始まる。ドライ型AMDは、典型的には両眼に発症する。現在、ドライ型AMDの患者に利用可能な米国食品医薬品局(FDA)又は欧州医薬品庁(EMA)が承認した処置選択肢はない。予防的手段としては、ビタミン/ミネラルのサプリメントが挙げられる。これらは、ウェット型AMDを発症するリスクを低下させるが、地図状萎縮の進行の発症には影響しない。
【発明の概要】
【0006】
概要
本明細書の実施形態は、一般に、黄斑変性などの網膜症状を含む眼の疾患及び病気を処置するための方法、組成物、及び装置に関する。
【0007】
一態様では、本開示は、網膜の疾患又は障害を処置又はその進行を遅らせる方法であって、それを必要とする対象に細胞治療剤を投与することを含み、細胞治療剤が網膜色素上皮(RPE)細胞を含み、RPE細胞が対象の網膜の解剖学的構造又は機能性を回復させる、方法を提供する。
【0008】
いくつかの実施形態では、RPE細胞は、多能性細胞に由来する。いくつかの実施形態では、RPE細胞は、ヒトRPE細胞である。いくつかの実施形態では、RPE細胞は、ヒト胚(hESC)細胞株に由来する。
【0009】
いくつかの実施形態では、RPE細胞は、高濃度のアクチビンA、形質転換増殖因子ベータ(TGF-b)ファミリーメンバー及びニコチンアミドを補充した低酸素(5%)培養下で、その後、通常の酸素(20%)培養に切り替えてRPE集団を濃縮して得られたものである。
【0010】
いくつかの実施形態では、RPE細胞は、約2000ng/ml/日~約4000ng/ml/日の濃度でPEDFを分泌する。
【0011】
いくつかの実施形態では、細胞治療剤は、患者の萎縮性網膜の領域に投与されるか、又は萎縮性網膜の領域に隣接して投与される。
【0012】
いくつかの実施形態では、細胞治療剤は、約50,000細胞~約1,000,000細胞の用量で投与される。いくつかの実施形態では、細胞治療剤は、約100,000細胞~約750,000細胞の用量で投与される。いくつかの実施形態では、細胞治療剤は、約200,000細胞~約500,000細胞の用量で投与される。
【0013】
いくつかの実施形態では、細胞治療剤の投与は、対象の萎縮性網膜における萎縮領域を減少させる。
【0014】
いくつかの実施形態では、細胞治療剤の投与は、網膜の1つ又は複数の網膜層を回復させる。
【0015】
いくつかの実施形態では、細胞治療剤の投与は、網膜における光受容体の機能性を回復させる。
【0016】
いくつかの実施形態では、細胞治療剤の投与は、網膜の外顆粒層(ONL)を回復させる。
【0017】
いくつかの実施形態では、細胞治療剤の投与は、網膜のエリプソイドゾーン(EZ)を回復させる。
【0018】
いくつかの実施形態では、細胞治療剤の投与は、網膜の中心窩を回復させる。
【0019】
いくつかの実施形態では、細胞治療剤の投与は、網膜の血液網膜関門(BRB)を回復させる。
【0020】
いくつかの実施形態では、細胞治療剤の投与は、網膜の細胞外マトリックス(ECM)をリモデリングする。
【0021】
いくつかの実施形態では、網膜の解剖学的構造又は機能性の回復は、地図状萎縮の成長の低下、視力の改善、読み取り速度の改善、網膜構造の改善、ドルーゼンの減少、又は細胞の安定な生着のうちの1つ又は複数を評価することによって決定される。
【0022】
いくつかの実施形態では、改善は、微小視野測定によって測定される。
【0023】
いくつかの実施形態では、対象の視力が処置によって改善され、改善された視力が、GA病変(複数可)の総面積の変化;単眼読み取り速度の変化;機能的読み取り独立指数(FRII)複合スコアの変化;正常輝度最高矯正視力スコア(NL-BCVA)の変化;低輝度最高矯正視力スコア(LL-BCVA)の変化;低輝度不足(LLD)の変化;単眼限界印刷サイズの変化;National Eye Institute Visual Functioning Questionnaire 25項目バージョン(NEI VFQ-25)遠方活動サブスケールスコアの変化;暗点の数の変化;黄斑感度の変化;及びAPL-2の全身血漿濃度の変化のうちの1つ又は複数によって評価される。
【0024】
いくつかの実施形態では、本方法は、移植された細胞の拒絶の遅延性の炎症を最小限にするか、又は全く生じさせない。
【0025】
いくつかの実施形態では、投与することは、網膜の領域又は網膜に隣接する領域にRPE細胞を送達することを含む。いくつかの実施形態では、送達することは、網膜の領域又は網膜に隣接する領域にRPE細胞を移植することを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、処置することは、RPE細胞の多能性分泌効果を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、対象は、ドライ型AMD、網膜色素変性症、アッシャー症候群、卵黄様黄斑症、シュタルガルト病、網膜剥離、網膜異形成、網膜萎縮、網膜症、黄斑ジストロフィー、錐体ジストロフィー、錐体-桿体ジストロフィー、蜂巣状網膜ジストロフィー(Malattia Leventinese)、ドインハニカム型ジストロフィー、ソースビー型ジストロフィー、パターン/蝶型ジストロフィー、Best病、ノースカロライナ型ジストロフィー、中心性輪紋状脈絡膜ジストロフィー、網膜色素線条症、毒性黄斑症、病的近視、網膜色素変性、及び黄斑変性から選択される網膜疾患症状に罹患している。
【0028】
いくつかの実施形態では、細胞治療剤は、送達装置を用いて投与される。
【0029】
いくつかの実施形態では、細胞治療剤は、送達装置を用いて網膜の地図状萎縮部に投与されるか、又はそれに隣接して投与される。
【0030】
いくつかの実施形態では、送達装置は、ニードル、キャピラリー及びチップを備える。いくつかの実施形態では、送達装置は、約0.63mmの外径及び約0.53mmの内径を有するニードルと、約0.5mmの外径及び約0.25mmの内径を有するキャピラリーと、約0.12mmの外径及び約0.07mmの内径を有するチップとを備える。
【0031】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載の方法のいずれかで使用するための、送達装置を提供する。
【0032】
いくつかの実施形態では、送達装置は、ニードル、キャピラリー及びチップを備える。
【0033】
いくつかの実施形態では、装置は、約0.63mmの外径及び約0.53mmの内径を有するニードルと、約0.5mmの外径及び約0.25mmの内径を有するキャピラリーと、約0.12mmの外径及び約0.07mmの内径を有するチップとを備える。
【0034】
さらに別の態様では、本開示は、本開示による対象の網膜の解剖学的構造又は機能性を回復させるための細胞治療剤を含む組成物を提供する。
【0035】
網膜色素上皮(RPE)は、視細胞外節(POS)と脈絡膜血管系との間のブルッフ膜上に位置する神経上皮由来の色素細胞の単層である。RPE単層は、光受容体の機能及び健全性にとって重要である。網膜色素上皮(RPE)細胞の機能不全、損傷、及び喪失は、加齢黄斑変性(AMD)、ベスト病を含む遺伝性黄斑変性(初期発症型の卵黄様黄斑ジストロフィー)、及び網膜色素変性(RP)のサブタイプなどの特定の眼疾患及び障害の顕著な特徴である。このような疾患に罹患した者の網膜へのRPEの移植は、RPEが変性した網膜疾患における細胞置換療法として使用することができる。
【0036】
ヒト多能性幹細胞は、移植のためのRPE細胞の供給源として有意な利点を提供する。それらの多能性発生能は、それらの真の機能的RPE細胞への分化を可能にし、無限の自己再生の可能性を考慮すると、それらはRPE細胞の無限の供給源として役立ち得る。実際、ヒト胚性幹細胞(hESC)及びヒト人工多能性幹細胞(iPSC)がインビトロでRPE細胞に分化し、網膜変性を減弱させ、網膜下移植後の視覚機能を維持し得ることが実証されている。したがって、hESCは、細胞療法のためのRPE細胞の産生のための無制限の供給源であり得る。
【0037】
しかしながら、ほとんどの細胞ベースの処置は、通常、体内への直接投与に適合しない低温溶液中で凍結保存され、臨床使用のための実用的な問題を引き起こす。細胞は、解凍後数時間以内に移植されるべきであり、さもなければ生存率及び品質を失い始める可能性がある。さらに、細胞は、臨床現場、病院又は他の処置施設に近接していなくてもよい認定施設での投与前に調製されなければならない。最後に、最終製剤の調製は細胞療法製造プロセスの一部であると考えられるため、各対象の処置用量は資格のある技術者によって放出されなければならない。
【0038】
本開示は、再生医療及びRPE細胞療法の分野におけるこれら及び他の欠点に対処する。本開示は、様々な方法、装置及び組成物に関するデータをさらに提供する。
【0039】
本発明の実施形態のための教示、方法、組成物、装置及びノウハウは、2019年7月4日に公開された「RETINAL PIGMENT EPITHELIUM CELL COMPOSITIONS」と題する国際公開第2019/130061号;2018年9月20日に公開された「METHODS FOR MEASURING THERAPEUTIC EFFECTS OF RETINAL DISEASE THERAPIES」と題する国際公開第2018/170494号;及び、2017年2月2日に公開された「LARGE SCALE PRODUCTION OF RETINAL PIGMENT EPITHELIAL CELLS」と題する国際公開第2017/017686号に見出される。その各々は、単独又は互いに組み合わせて、その方法、装置及び器具、組成物のすべてについてその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1図1は、RPE細胞による処置後3ヶ月の対象18の地理的萎縮(GA)内の色素沈着領域(矢印)を示す網膜スキャンを示し、GAの下方領域におけるRPE細胞の存在を証明している。白丸で表されるRPE細胞移植の領域は、ブレブ領域としても知られており、RPE細胞の注入に起因する水疱状の形成である。
【0041】
図2図2は、処置後9ヶ月の対象18のGA内の色素沈着領域(矢印)を示す網膜スキャンを示し、GAの下方領域におけるRPE細胞の存在を証明している。
【0042】
図3図3は、表示された処置後の12人の対象のそれぞれについて、ベースラインからの糖尿病性網膜症早期処置研究(ETDRS)文字の数の変化に基づく視力の変化を示すグラフである。ほとんどすべての対象がベースラインBCVAを維持し、半数以上がBCVAの着実な改善を有した。
【0043】
図4図4は、コホート4の処置眼及び未処置眼(他眼)について、経時的なベースラインからのGA(mm)のサイズの平均変化を示すグラフである。データは、GAの増殖が、他眼と比較して処置眼においてより遅かったことを実証している。
【0044】
図5図5は、コホート4の処置眼及び未処置眼(他眼)について、経時的なベースラインからのETDRS文字の数の平均変化に基づく視力の変化を示すグラフである。データは、BCVA減少が、他眼と比較して処置眼ではそれほど重症でなかったことを実証している。
【0045】
図6図6は、対象22の処置眼及び未処置眼(他眼)について、経時的なベースラインからのETDRS文字の数の平均変化を示すグラフである。対象は、多眼における低下に対して、処置眼における実質的な改善及び視覚機能活性の獲得を示した。
【0046】
図7A図7A図7Cは、対象14の経時変化を示す。図7Aは、処置眼及び未処置眼(他眼)について、経時的なベースラインからのETDRS文字の数の平均変化を示すグラフである。図7Bは、処置眼及び未処置眼(他眼)について、経時的なベースラインからのGA(mm)のサイズの平均変化を示すグラフである。図7Cは、処置眼及び未処置眼(他眼)におけるベースライン及び処置後3年の読み取られた文字の数を示す。対象は、解剖学的及び視覚機能的側面の両方において、治療眼と他眼との間で、処置眼に有利な実質的な差を示した。
図7B図7Aの説明を参照。
図7C図7Aの説明を参照。
【0047】
図8図8は、コホート4からの個々の対象の処置眼(左パネル)及び未処置眼(他眼、右パネル)における経時的なベースラインからの読み取り速度(1分間当たりの単語)の変化を示すグラフである。データは、他眼に対する処置眼の機能的な臨床的視覚改善を実証している。
【0048】
図9図9は、ベースライン(上)及び処置後9ヶ月(下)の対象14の処置網膜からの高分解能光干渉断層撮影(OCT)画像を示す。左画像は、右画像に示される網膜の領域を示す。GAの境界は、9ヶ月での外側網膜の回復/再生を実証する。
【0049】
図10図10は、試験開始前(過去、橙色、左パネル)、ベースライン(赤色)、処置後9ヶ月(青色)及び処置後23ヶ月(黄色)の対象14の処置網膜のOCT画像を示す。ベースラインからのGAの退縮が処置後9ヶ月及び23ヶ月の両方で観察され、解剖学的改善及び外側網膜の再生/回復を実証した。
【0050】
図11図11は、対象14の両眼のGAの総サイズ(平方根変換、SQRTにおける総面積)の変化と、前年及びベースラインからの、mm SQRT/年の変化率(過去のプロットから予想される成長)とを示すグラフである。黄色のハッチングされたバーは、非処置眼である他眼(FE)についての予測/予期された成長を示す。青色のハッチングされたバーは、試験処置眼についての予測/予期された成長を示す。
【0051】
図12図12は、ベースライン(上)及び処置後3ヶ月(下)のELM境界に基づくGA境界を示す、対象14の処置眼からのOCT網膜画像である。ELM境界は、赤色矢印及び点線で示されている。ベースライン(BSL)から3ヶ月(3M)までのELM境界の変化を大きな矢印で示す。外網状層を青色矢印で示す。新しいRPE細胞は、下の画像に小さな緑色の矢印で示されている。左画像は、右画像に示される網膜の領域を示す。ELM境界及び/又はONL/OPL並びに新しい推定可能なRPEの中心成長は、処置後3Mで既に観察されている。
【0052】
図13図13は、ベースライン(上)及び処置後5ヶ月(下)のELM境界に基づくGA境界を示す、対象14の処置眼からのOCT網膜画像である。ELM境界は、赤色矢印及び点線で示されている。ベースライン(BSL)から5ヶ月(5M)までのELM境界の変化を大きな矢印で示す。外網状層を青色矢印で示す。新しいRPE細胞は、小さな緑色の矢印で示されている。左画像は、右画像に示される網膜の領域を示す。ELM境界及び/又はONL/OPL並びに新しい推定可能なRPEの中心的な成長は、処置後5Mで観察されている。
【0053】
図14図14は、ベースライン(上)、処置後9ヶ月(中央)及び処置後23ヶ月(下)のELM境界に基づくGA境界を示す、対象14の処置眼からのOCT網膜画像である。ELM境界は、赤色矢印及び点線で示されている。ベースライン(BSL)から9ヶ月(9M)までのELM境界の変化を大きな矢印で示す。9Mから23ヶ月(23M)への変化を中程度の矢印で示す。外網状層を青色矢印で示す。新しいRPE細胞は、小さな緑色の矢印で示されている。左画像は、右画像に示される網膜の領域を示す。ELM境界及び/又はONL/OPL並びに新しい推定可能なRPEの中心的な成長は、処置後9Mで観察され、23Mでわずかな退縮を伴う。
【0054】
図15図15は、処置後23ヶ月(23M)及び35ヶ月(35M)での対象14の処置眼の微小視野測定試験の変化を示す。図15は、視覚機能の改善及び暗点の減少(橙色の円に黒い染みとして表される「盲点/領域」)、並びに23Mと比較した35Mでの光感受性の改善を実証する。微小視野測定は、黄斑領域の特定の視覚領域をキャプチャーし、網膜感度領域の高解像度及び正確なマッピングを生成する眼底関連の視野検査である。微小視野測定は、「単純な」BCVA試験よりも高い信頼性で視覚機能の変化を評価するためのより良い試験である。さらに、微小視野測定は、解剖学的変化と視覚機能の欠陥との間の正確な相関を提供する。
【0055】
図16図16は、ベースライン(上)及び処置後1ヶ月(下)のELM境界に基づくGA境界を示す、対象21の処置眼からのOCT網膜画像である。ELM境界は、矢印及び点線で示されている。OPL境界は、矢印で示されている。ELM境界のベースライン(BSL)から1ヶ月(1M)への変化を点線間の矢印で示す。左画像は、右画像に示される網膜の領域を示す。ELM境界及び/又はOPLの中心的な成長は、処置後1Mで観察される。
【0056】
図17図17は、対象21の網膜の赤外(IR)画像である。ベースライン及び1ヶ月でのGA境界を示す。
【0057】
図18図18は、ベースライン(上)及び処置後3ヶ月(下)の孤立性萎縮病変を示す、対象21の処置眼からのOCT網膜画像である。左画像は、右画像に示される網膜の領域を示す。新しい特徴(丸で囲んだ)は、3ヶ月での外側網膜の再生を示唆する。欠損層の再生及び萎縮病変の「消失」を伴う、以前の萎縮領域のほぼ完全な回復が観察された。
【0058】
図19図19は、ベースライン(上)及び処置後3ヶ月(下)のGAを示す、対象21の処置眼からのOCT網膜画像である。左画像は、右画像に示される網膜の領域を示す。新しい高反射単層膜はおそらくRPE細胞を示し、3ヶ月後にはELM、OPL、ONLが回復している可能性がある。
【0059】
図20図20は、ベースライン(上)及び処置後3ヶ月(下)のGAを示す、対象21の処置眼からのOCT網膜画像である。左画像は、右画像に示される網膜の領域を示す。脈絡膜過剰透過の領域にわたって保存されたELM及びRPE単層を有する、非常に薄いが均質で連続的なONLの層(丸で囲んだ)は通常存在しないが、処置後3ヶ月で観察された。これは、萎縮領域内の回復した新しい層を示す。
【0060】
図21図21は、OpRegen-RPEの投与前(ベースライン、左上)、投与後1ヶ月(左中央)及び投与後2ヶ月(左下)の対象21の網膜における孤立性萎縮病変の画像を示す。右画像は、左画像に示される網膜の領域を示す。
【0061】
図22図22は、OpRegen-RPEの投与前(ベースライン、左上)、投与後1ヶ月(左中央)及び投与後2ヶ月(左下)の対象21の網膜における上側GA領域の画像を示す。右画像は、左画像に示される網膜の領域を示す。
【0062】
図23図23は、対象22の経時変化を示す。左パネルは、処置眼及び未処置眼(他眼)について、経時的なベースラインからのETDRS文字の数の平均変化を示すグラフである。右パネルは、処置眼及び未処置眼(他眼)について、経時的なベースラインからのGA(mm)のサイズの平均変化を示すグラフである。データは、解剖学的及び視覚機能的側面の両方において、治療眼と他眼との間で、処置眼に有利な実質的な差を示している。処置眼で実質的な視力改善が観察された。
【0063】
図24図24は、対象22の網膜における、ベースライン(左パネル)ではなく、処置後3ヶ月での微細な色素運動(右パネル)を示す眼底写真(FP)画像であり、3ヶ月でのRPE細胞の存在を示している。
【0064】
図25図25は、対象22のベースライン(左)及び処置後3ヶ月(右)での網膜のIR画像である。GA境界は減少し、3ヶ月ではあまり定義されない。
【0065】
図26図26は、ベースライン(上)及び処置後3ヶ月(下)の中心GAを示す、対象22の処置眼からのOCT網膜画像である。左画像は、右画像に示される網膜の領域を示す。萎縮のベースライン境界を線で示す。外網状体の沈下の減少、萎縮領域内の新しいELM、萎縮領域内の新しいRPE、及び過剰透過の減少を含む新しい特徴が小さな矢印で示されている。
【0066】
図27図27は、ベースライン(上)及び処置後3ヶ月(下)の下側GAを示す、対象22の処置眼からのOCT網膜画像である。左画像は、右画像に示される網膜の領域を示す。萎縮のベースライン境界を線で示す。外網状体の沈下の減少、萎縮領域内の新しいELM、及び萎縮領域内の新しいRPEを含む新しい特徴が小さな矢印で示されている。
【0067】
図28図28は、ベースライン(上)及び処置後3ヶ月(下)の孤立性萎縮病変を示す、対象22の処置眼からのOCT網膜画像である。左画像は、右画像に示される網膜の領域を示す。萎縮のベースライン境界を線で示す。外網状体の沈下の減少、萎縮領域内の新しいELM、及び萎縮領域内の新しいRPEを含む新しい特徴が小さな矢印で示されている。
【0068】
図29図29は、ELM境界に基づく、ベースライン(左)及び3ヶ月(右)のGAの境界を示すOCT網膜画像である。総面積、成長率、SQRT変換成長率を示す。
【0069】
図30図30は、ベースライン(左上)、処置後2ヶ月(中央左)及び3ヶ月(左下)での対象22の中心GA領域を示すOCT網膜画像である。新しい網膜下物質(RPE細胞)が2ヶ月で観察され、網膜下物質の増加及びELMの再形成が3ヶ月で観察された(矢印)。右画像は、左画像に示される網膜の領域を示す。青色の円は、同じ位置をマークし、その後の来院時に網膜の正確な領域をキャプチャーするために使用される脈絡膜の血管を示すプログレッシブ座標である。
【0070】
図31図31は、ベースライン(左上)、手術中(Intra OP、右上)、処置後2ヶ月(左下)及び3ヶ月(右下)の過去の治療時の対象14におけるRPE送達の面積を示す網膜画像である。ブレブは、細胞送達の面積を表す。ブレブは手術中にGAを覆い、RPE細胞によるGAの完全な被覆を示した。
【0071】
図32図32は、対象19(左)及び21(右)のRPE細胞送達の領域を表すブレブの術中画像を示す網膜画像である。GAを矢印で示す。
【0072】
図33A図33A図33Cは、スペクトル領域光干渉断層撮影(SD-OCT)画像である。図33Aは、例示的なBスキャンを示す。図33Bは、図33AからのBスキャンであり、層間の境界が重ねられている。図33Cは、図33AからのBスキャンであり、層厚が重ねられている。
図33B図33Aの説明を参照。
図33C図33Aの説明を参照。
【0073】
図34図34は、SD-OCTから生成された厚さ及び面積マップの例示的な図を示す。組織損失は白色領域で示され、保存組織領域は灰色又は黒色で示される。全網膜(左パネル)、外顆粒層(左から2番目)、視細胞外節(右から2番目)、及びRPE+ドルーゼン複合体(右パネル)の相対的な厚さを示す。
【0074】
図35図35は、ベースライン(左)、処置後3ヶ月(左から2番目)、6ヶ月(右から2番目)及び12ヶ月(右)での対象8からの処置眼(上)及び未処置眼(下)の総網膜の厚さマップを示す。平均総厚を示す。
【0075】
図36図36は、ベースライン(左)、処置後3ヶ月(左から2番目)、6ヶ月(右から2番目)及び12ヶ月(右)での対象8からの処置眼(上)及び未処置眼(下)の外顆粒層(ONL)の厚さマップを示す。ONLの総面積を示す。
【0076】
図37図37は、ベースライン(左)、処置後3ヶ月(左から2番目)、6ヶ月(右から2番目)及び12ヶ月(右)での対象8からの処置眼(上)及び未処置眼(下)の視細胞外節の厚さマップを示す。視細胞外節の総面積を示す。
【0077】
図38図38は、ベースライン(左)、処置後3ヶ月(左から2番目)、6ヶ月(右から2番目)及び12ヶ月(右)での対象8からの処置眼(上)及び未処置眼(下)のRPEとドルーゼンの複合体の厚さマップを示す。RPEとドルーゼンの複合体の総面積を示す。
【0078】
図39図39は、ベースライン(左)、処置後6ヶ月(中央)及び12ヶ月(右)での対象5からの処置眼(上)及び未処置眼(下)の総網膜の厚さマップを示す。平均総厚を示す。
【0079】
図40図40は、ベースライン(左)、処置後6ヶ月(中央)及び12ヶ月(右)での対象5からの処置眼(上)及び未処置眼(下)の外顆粒層(ONL)の厚さマップを示す。ONLの総面積を示す。
【0080】
図41図41は、ベースライン(左)、処置後6ヶ月(中央)及び12ヶ月(右)での対象5からの処置眼(上)及び未処置眼(下)の視細胞外節の厚さマップを示す。視細胞外節の総面積を示す。
【0081】
図42図42は、ベースライン(左)、処置後6ヶ月(中央)及び12ヶ月(右)での対象5からの処置眼(上)及び未処置眼(下)のRPEとドルーゼンの複合体の厚さマップを示す。RPEとドルーゼンの複合体の総面積を示す。
【0082】
図43図43は、ベースライン(左)、処置後6ヶ月(中央)及び12ヶ月(右)での対象13からの処置眼(上)及び未処置眼(下)の総網膜の厚さマップを示す。平均総厚を示す。
【0083】
図44図44は、ベースライン(左)、処置後6ヶ月(中央)及び12ヶ月(右)での対象13からの処置眼(上)及び未処置眼(下)の外顆粒層(ONL)の厚さマップを示す。ONLの総面積を示す。
【0084】
図45図45は、ベースライン(左)、処置後6ヶ月(中央)及び12ヶ月(右)での対象13からの処置眼(上)及び未処置眼(下)の視細胞内節の厚さマップを示す。視細胞外節の総面積を示す。
【0085】
図46図46は、ベースライン(左)、処置後6ヶ月(中央)及び12ヶ月(右)での対象13からの処置眼(上)及び未処置眼(下)の視細胞外節の厚さマップを示す。視細胞外節の総面積を示す。
【0086】
図47図47は、ベースライン(左)、処置後6ヶ月(中央)及び12ヶ月(右)での対象13からの処置眼(上)及び未処置眼(下)のRPEとドルーゼンの複合体の厚さマップを示す。RPEとドルーゼンの複合体の総面積を示す。
【0087】
図48図48は、ベースライン(左)及び処置後12ヶ月(右)での対象14からの処置眼(上)及び未処置眼(下)の総網膜の厚さマップを示す。平均総厚を示す。
【0088】
図49図49は、ベースライン(左)及び処置後12ヶ月(右)での対象14からの処置眼(上)及び未処置眼(下)の外顆粒層(ONL)の厚さマップを示す。ONLの総面積を示す。
【0089】
図50図50は、ベースライン(左)及び処置後12ヶ月(右)での対象14からの処置眼(上)及び未処置眼(下)の視細胞内節の厚さマップを示す。視細胞外節の総面積を示す。
【0090】
図51図51は、ベースライン(左)及び処置後12ヶ月(右)での対象14からの処置眼(上)及び未処置眼(下)の視細胞外節の厚さマップを示す。視細胞外節の総面積を示す。
【0091】
図52図45は、ベースライン(左)及び処置後12ヶ月(右)での対象14からの処置眼(上)及び未処置眼(下)のRPEとドルーゼンの複合体の厚さマップを示す。RPEとドルーゼンの複合体の総面積を示す。
【0092】
図53図53は、大量のフルオレセイン色素が硝子体腔に漏出し、それにより脈絡膜フラッシュ及び動脈相中の血管灌流の視認性が遮断され、血液網膜関門の破壊及びパラ炎症が眼内に予め存在することを示唆する、対象8におけるベースラインFA検査を示す。移植後22ヶ月で、FA検査は、明らかな脈絡膜及び網膜血管灌流を示し、硝子体腔に漏出する色素はなく、OpRegenがおそらく複数の作用機序によって破壊されたBRBの完全性を回復したことを示している。
【0093】
図54A図54A図54Dは、ベースラインと10.5ヶ月~22ヶ月の移植後との間のFAイメージングの同様の変化又は改善を有する4つの症例を示す。
図54B図54Aの説明を参照。
図54C図54Aの説明を参照。
図54D図54Aの説明を参照。
【0094】
図55図55は、ドルーゼンの消失が、上部の移植片領域から始まり(左上)、術後8ヶ月で残った小さな細長いバンドを除いて、下方へ移動してほぼ後部全体を清浄化したことを示す(上、左から2番目、大きな円)。OCTイメージングの特徴は、ベースライン(右上及び右下)と比較して5.5ヶ月(上、右から2番目)及び8ヶ月(下、右から2番目)でカラー眼底写真と一致しており、subRPEドルーゼンは有意に減少又は消失した。
【0095】
図56A図56A:FAは、染色の有意な減少を示したが(ドルーゼン)、網膜血管構造をぼやかすベールのような膜を有するようであった。周皮細胞反応が見られた。図56B:カラー眼底検査の22ヶ月で、網膜組織はベースラインのものと比較してより鮮明に見える。図56Cは、11ヶ月で、大きなドルーゼンが消失した後、移植片が宿主網膜をリモデリングし続けたことを示す。
図56B図56Aの説明を参照。
図56C図56Aの説明を参照。
【0096】
図57図57は、初期段階、中期段階及び後期段階からのFA検査の時間経過を提供しており、網膜の健康の有意な改善、全体にわたる血管灌流のより良好な視認性、及び炎症の減少を実証しており、網膜組織は非常に清浄に見える。
【0097】
図58図58は、GA瘢痕及びECMリモデリングにおけるOpRegen細胞療法を示す。
【0098】
図59図59は、異なる形態のECMリモデリングのOCT画像を示す。
【0099】
図60A図60A及び図60Bは、ベースラインから6M時間までのETDRS試験における文字の数の変化を測定することによるコホート4の対象における視覚機能を示す2つの表を示す。図60Aは、処置眼の視覚機能を表し、図60Bは、他眼の視覚機能を表す。ベースラインは0で表され、正の数(緑色でも記される)はベースラインから増加した文字の数を表す。負の数字(赤色でも記される)は、数字の前にマイナスによって表され、ベースラインから失われた文字の数を表す。例えば、対象13(602)は、安定したBCVA改善を維持し、最後の来院時にベースラインから19文字増加した。
図60B図60Aの説明を参照。
【0100】
図は、驚くべきかつ予想外の結果の様々な例示及び例を提供する。実施形態は、議論され、記載され、又はデータが図に提示される評価及びアッセイのいずれかを含むことができる様々な方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0101】
詳細な説明
本明細書の実施形態は、一般に、黄斑変性などの網膜症状を含む眼の疾患及び病気を処置するための方法、組成物、及び装置に関する。
【0102】
いくつかの実施形態では、組成物、方法及び装置は、同種異系(「既製」)の製品候補を利用することができる。例えば、これは、材料が個々の患者ではなく細胞株に由来し、大規模生産を促進し、患者特異的な処置よりも生産コストが低いことを意味し得る。
【0103】
方法、装置、組成物などは、添付の図面に記載されたものを含むことができる。
【0104】
この説明を読んだ後、様々な代替の実施形態及び代替の適用において本開示を実施する方法が当業者に明らかになるであろう。ただし、本発明の様々な実施形態のすべてについてここでは説明しない。ここに提示される実施形態は、一例としてのみ提示され限定でないことが理解されよう。したがって、様々な代替の実施形態のこの詳細な説明は、本明細書に記載の本開示の範囲又は幅を限定すると解釈されるべきではない。
【0105】
本技術を開示及び説明する前に、以下に記載される態様は、特定の組成物、そのような組成物を調製する方法、又はその使用に限定されず、したがって当然のことながら変化し得ることを理解されたい。本明細書で使用される専門用語が特定の態様を説明することのみを目的としており、限定するようには意図されていないことも理解されたい。
【0106】
読者の便宜のためだけに様々なセクションに分けられた詳細な説明及び任意のセクションに見られる開示は、別のセクションのものと組み合わされてもよい。タイトル又はサブタイトルが、読者の便宜のために本明細書で使用され得、本開示の範囲に影響を及ぼすことを意図しない。
【0107】
定義
「処置すること(treating)」、又は「処置(treatment)」という用語は、傷害、疾患、病理又は症状の治療又は改善におけるなんらかの成功の兆候を指し、あらゆる客観的又は主観的パラメータ、例えば症候の軽減、緩和、減弱、又は傷害、病理、若しくは症状を患者にとってより許容可能にすること、衰退又は衰弱の速度の低下、衰退の最終点での衰弱の重度の低下、患者の身体的又は精神的健康の改善などを含む。症候の処置又は改善は、客観的又は主観的パラメータに基づくことができる。身体検査、精神神経学的検査、及び/又は精神医学的評価の結果を含む。「処置」という用語及びその活用形は、傷害、病理、症状又は疾患の予防を含み得る。複数の実施形態において、処置することは予防することである。複数の実施形態において、処置することは予防することを含まない。本明細書で使用される「処置すること」又は「処置」はまた、(当技術分野でよく理解されているように)、臨床結果を含む、対象の症状において有益な又は所望の結果を得るための任意のアプローチを広く含む。有益な又は所望の臨床結果には、限定するものではないが、1つ又は複数の症候又は症状の緩和又は改善、疾患の程度の縮小、疾患の状態の安定化(すなわち、悪化しない)、疾患の伝播又は広がりの予防、疾患の進行の遅延又は鈍化、疾患状態の改善又は緩和、疾患の再発の減少、及び部分的であろうと全体的であろうと、検出可能であろうと検出不能であろうと、寛解が含まれ得る。換言すれば、本明細書で使用される「処置」は、疾患の任意の治癒、改善、又は予防を含む。処置は、疾患の発生を防止;疾患の広がりを抑制;疾患の症候を軽減;疾患の根本原因を完全に若しくは部分的に除去;疾患の持続期間を短縮;又はこれらの組み合わせを行い得る。
【0108】
本明細書で使用される「処置すること」及び「処置」は、予防的処置を含む。処置方法は、治療有効量の活性薬剤を対象に投与することを含む。投与工程は、単回投与からなってもよく、又は一連の投与を含んでもよい。処置期間の長さは、症状の重症度、患者の年齢、活性薬剤の濃度、処置に使用される組成物の活性、又はそれらの組み合わせなどの様々な要因に依存する。処置又は予防に使用される薬剤の有効投与量は、特定の処置又は予防計画の経過にわたって増加又は減少し得ることも理解されよう。投与量の変化は、当技術分野で公知の標準的な診断アッセイによって生じ、明らかになり得る。場合によっては、慢性投与が必要とされ得る。例えば、組成物は、患者を処置するのに十分な量及び期間で対象に投与される。複数の実施形態において、処置すること、又は処置は、予防的処置ではない。
【0109】
「予防する」という用語は、患者における疾患症候の発生の減少を指す。上記のように、予防は完全(検出可能な症候なし)であってもよく、又は、処置なしで生じる得るものよりも少ない症候が観察されるような部分的であってもよい。
【0110】
「患者」又は「それを必要とする対照」とは、本明細書で提供されるような医薬組成物の投与によって処置することができる疾患又は症状に苦しんでいるか、又は罹患しやすい生物を意味する。非限定的な例としては、ヒト、その他の哺乳動物、ウシ、ラット、マウス、イヌ、サル、ヤギ、ヒツジ、ウシ、シカ、及びその他の非哺乳動物が挙げられる。いくつかの実施形態では、患者はヒトである。
【0111】
「有効量」は、組成物の不存在と比較して、組成物が述べられた目的を達成するのに十分な量である(例えば、それが投与される効果を達成するか、疾患を処置するか、酵素活性を低下させるか、酵素活性を増加させるか、シグナル伝達経路を減少させるか、又は疾患若しくは症状の1つ又は複数の症候を減少させる)。「有効量」の例は、疾患の1つ又は複数の症候の処置、予防、又は軽減に寄与するのに十分な量であり、「治療有効量」とも呼ばれ得る。1つ又は複数の症候の「減少」(及びこの句の文法的等価物)は、症候(複数可)の重症度又は頻度の減少、又は症候(複数可)の排除を意味する。薬物(例えば、本明細書中に記載される細胞)の「予防有効量」は、対象に投与された場合に、意図された予防効果、例えば、損傷、疾患、病理若しくは症状の発症(又は再発)を予防若しくは遅延させるか、又は、損傷、疾患、病理若しくは症状、又はそれらの症候の発症(又は再発)の可能性を低下させる薬物の量である。完全な予防効果は、必ずしも1用量の投与によって生じるわけではなく、一連の用量の投与後にのみ生じることができる。したがって、予防有効量を1回又は複数回の投与で投与することができる。本明細書で使用される「活性低下量」は、アンタゴニストの非存在下と比較して酵素の活性を低下させるのに必要なアンタゴニストの量を指す。本明細書で使用される「機能破壊量」は、アンタゴニストの非存在下と比較して、酵素又はタンパク質の機能を破壊するのに必要なアンタゴニストの量を指す。正確な量は、処置の目的に依存し、公知の技術(例えば、Lieberman,Pharmaceutical Dosage Forms(vols.1-3,1992);Lloyd,The Art,Science and Technology of Pharmaceutical Compounding(1999);Pickar,Dosage Calculations(1999);及びRemington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Edition,2003,Gennaro,Ed.,Lippincott,Williams&Wilkinsを参照)を用いて当業者によって確認可能であろう。
【0112】
本明細書に記載の任意の組成物について、治療有効量は、細胞培養アッセイから最初に決定することができる。目標濃度は、本明細書に記載又は当技術分野で公知の方法を使用して測定された、本明細書に記載の方法を達成することができる活性組成物(複数可)(例えば、細胞濃度又は細胞数)の濃度である。
【0113】
当技術分野で周知のように、ヒトで使用するための治療有効量は、動物モデルから決定することもできる。例えば、ヒトに対する用量は、動物において有効であることが分かっている濃度を達成するように製剤化することができる。ヒトにおける投与量は、上記のように、組成物の有効性を監視し、投与量を上方又は下方に調整することによって調整することができる。上記の方法及び他の方法に基づいてヒトにおいて最大の有効性を達成するために用量を調整することは、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0114】
本明細書で使用される「治療有効量」という用語は、上記の障害を改善するのに十分な治療薬の量を指す。例えば、所与のパラメータについて、治療有効量は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、40%、50%、60%、75%、80%、90%、又は少なくとも100%の増加又は減少を示す。治療有効性は、「-倍」の増加又は減少として表すこともできる。例えば、治療有効量は、対照に対して少なくとも1.2倍、1.5倍、2倍、5倍又はそれ以上の効果を有することができる。
【0115】
投与量は、患者及び採用される組成物の要件に応じて変化してもよい。本開示の文脈において、患者に投与される用量は、時間の経過とともに患者において有益な治療反応をもたらすのに十分であるべきである。また、投与量の大きさは、副作用の有無、性質、程度によっても決定される。特定の状況に対する適切な投与量の決定は、医療従事者のスキルの範囲内である。一般に、処置は、組成物の最適用量未満の、より少ない用量で開始される。その後、状況下で最適な効果が得られるまで、投与量を少しずつ増やす。投与量及び間隔は、処置されている特定の臨床的適応症に有効な投与された組成物のレベルを提供するために個別に調整することができる。これにより、個人の疾患状態の重症度に見合った治療法を提供することができる。
【0116】
「共投与」は、本明細書中に記載される組成物が、1つ又は複数の追加の治療の投与と同時に、投与の直前に、又は投与の直後に投与されることを意味する。本明細書で提供される組成物は、患者に対して、単独で投与することができ、又は共投与することができる。共投与とは、組成物を個別に、又は組み合わせて(複数の組成物)同時投与又は連続投与することを含むことを意味する。したがって、調製物は、必要に応じて、(例えば、代謝分解を減少させるために)他の活性物質と組み合わせることもできる。
【0117】
「対照」又は「対照実験」は、その単純な通常の意味に従って使用され、実験の手順、試薬、又は変数の省略を除いて、実験の対象又は試薬が並行実験のように扱われる実験を指す。場合によっては、対照は、実験効果を評価する際の比較の基準として使用される。いくつかの実施形態では、対照は、本明細書(実施形態及び例を含む)に記載の組成物の非存在下でのタンパク質の活性の尺度である。
【0118】
「薬学的に許容され得る賦形剤」及び「薬学的に許容され得る担体」は、対象への活性薬剤の投与及び対象による吸収を補助し、患者に有意な有害毒性作用を引き起こさずに本開示の組成物に含めることができる物質を指す。薬学的に許容され得る賦形剤の非限定的な例としては、水、NaCl、通常の生理食塩水、乳酸加リンガー液、通常のスクロース、通常のグルコース、結合剤、充填剤、崩壊剤、潤滑剤、コーティング、甘味料、香味剤、塩溶液(リンガー液など)、アルコール、油類、ゼラチン、ラクトース、アミロース又はデンプンなどの炭水化物、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリジン及び着色剤などが挙げられる。そのような調製物は、滅菌し、必要に応じて、潤滑剤、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を及ぼすための塩、緩衝剤、着色剤、及び/又は本開示の組成物と有害に反応しない芳香族物質などの補助剤と混合することができる。当業者は、他の医薬賦形剤が本開示において有用であることを認識するであろう。
【0119】
本明細書で使用される「細胞」は、そのゲノムDNAを保存又は複製するのに十分な代謝又は他の機能を実行する細胞を指す。細胞は、例えば、無傷の膜の存在、特定の色素による染色、子孫を産生する能力、又は配偶子の場合、第2の配偶子と組み合わせて生存可能な子孫を産生する能力を含む、当技術分野で周知の方法によって同定することができる。細胞は、原核細胞及び真核細胞を含み得る。原核細胞には、細菌が含まれるが、これに限定されない。真核細胞には、酵母細胞並びに植物及び動物由来の細胞、例えば哺乳動物、昆虫(例えばスポドプテラ(spodoptera))及びヒト細胞が含まれるが、これらに限定されない。細胞は、天然に非接着性であるか、又は例えばトリプシン処理によって表面に接着しないように処理されている場合に有用であり得る。
【0120】
本明細書中で使用される場合、「幹細胞」とは、特定の特殊化された機能を有する他の細胞型(例えば、完全に分化した細胞)に分化するように誘導されるまで、培地中で長期間にわたって未分化状態(例えば、多能性又は多能性幹細胞)に留まることができる細胞のことを指す。複数の実施形態において、「幹細胞」には、胚性幹細胞(ESC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、成体幹細胞、間葉系幹細胞及び造血幹細胞が含まれる。複数の実施形態において、RPE細胞は、多能性幹細胞(例えば、ESC又はiPSC)から作製される。
【0121】
本明細書で使用される場合、「人工多能性幹細胞」又は「iPSC」は、体細胞の遺伝子操作によって、例えば、Oct-3/4、Sox2、c-Myc及びKLF4などの転写因子を用いた線維芽細胞、肝細胞、胃上皮細胞などの体細胞のレトロウイルス形質導入によって、体細胞から生成することができる細胞である[Yamanaka S,Cell Stem Cell.2007,1(1):39-49;Aoi T,et al.,Generation of Pluripotent Stem Cells from Adult Mouse Liver and Stomach Cells.Science.2008 Feb 14.(Epub ahead of print);IH Park,Zhao R,West JA,et al.Reprogramming of human somatic cells to pluripotency with defined factors.Nature 2008;451:141-146;K Takahashi,Tanabe K,Ohnuki M,et al.Induction of pluripotent stem cells from adult human fibroblasts by defined factors.Cell 2007;131:861-872]。他の胚様幹細胞は、レシピエント細胞が有糸分裂で停止している場合、卵母細胞への核移植、胚性幹細胞との融合、又は接合体への核移植によって作製され得る。さらに、iPSCは、非組み込み法を使用して、例えば、小分子又はRNAを使用することによって生成され得る。
【0122】
「胚性幹細胞」という用語は、3つすべての胚性胚葉(すなわち、内胚葉、外胚葉及び中胚葉)の細胞に分化することができる、又は未分化状態のままであることができる胚性細胞を指す。「胚性幹細胞」という語句は、妊娠後に形成された胚組織(例えば、胚盤胞)から胚の着床前に得られる細胞(すなわち、着床前胚盤胞)、着床後/原腸形成前段階の胚盤胞から得られる拡張胚盤胞細胞(EBC)(国際公開第2006/040763号参照)、及び妊娠中の任意の時点、好ましくは妊娠10週前に胎児の生殖組織から得られる胚性生殖(EG)細胞を含む。複数の実施形態において、胚性幹細胞は、周知の細胞培養方法を用いて得られる。例えば、ヒト胚性幹細胞は、ヒト胚盤胞から単離することができる。
【0123】
市販の幹細胞もまた、本開示の態様及び実施形態において使用され得ることが理解される。ヒトES細胞は、NIHヒト胚性幹細胞登録(www.grants.nih.govstem_cells/)又は他のhESC登録から購入することができる。市販の胚性幹細胞株の非限定的な例は、HAD-C 102、ESI、BGO 1、BG02、BG03、BG04、CY12、CY30、CY92、CY1O、TE03、TE32、CHB-4、CHB-5、CHB-6、CHB-8、CHB-9、CHB-10、CHB-11、CHB-12、HUES 1、HUES 2、HUES 3、HUES 4、HUES 5、HUES 6、HUES 7、HUES 8、HUES 9、HUES 10、HUES 11、HUES 12、HUES 13、HUES 14、HUES 15、HUES 16、HUES 17、HUES 18、HUES 19、HUES 20、HUES 21、HUES 22、HUES 23、HUES 24、HUES 25、HUES 26、HUES 27、HUES 28、CyT49、RUES3、WAO 1、UCSF4、NYUES 1、NYUES2、NYUES3、NYUES4、NYUESS、NYUES6、NYUES7、UCLA 1、UCLA 2、UCLA 3、WA077(H7)、WA09(H9)、WA 13(H13)、WA14(H14)、HUES 62、HUES 63、HUES 64、CT I、CT2、CT3、CT4、MA135、Eneavour-2、WIBR 1、WIBR2、WIBR3、WIBR4、WIBRS、WIBR6、HUES 45、Shef 3、Shef 6、BINhem19、BJNhem20、SAGO 1、SAOO1である。
【0124】
「網膜の色素層」としても知られる「網膜色素上皮」又は「RPE」という用語は、網膜の外側の細胞の色素層を指す。RPE層は、ブルッフ膜(脈絡膜内縁)と光受容体との間に位置する。RPEは、網膜に栄養素を供給するための中間体であり、網膜の発達、光の吸収、成長因子の分泌、及び眼の免疫応答の媒介を含む多くの機能を補助する。RPEの機能不全は、網膜色素変性、糖尿病性網膜症、西ナイルウイルス、及び黄斑変性を含む症状において視力喪失又は失明をもたらし得る。
【0125】
「疾患」又は「症状」という用語は、本明細書で提供される組成物又は方法で処置することができる患者又は対象の状態又は健康状態を指す。加齢黄斑変性すなわちAMDは、網膜中心部の進行性慢性疾患であり、世界中で視力喪失の主な原因である。ほとんどの視力喪失は、2つのプロセス:新生血管(「ウェット型」AMD及び地図状萎縮(GA、「ドライ型」)のうちの1つに起因して疾患の後期段階で起こる。GAでは、網膜色素上皮、脈絡毛細管板及び光受容体の進行性萎縮が起こる。AMDのドライ型はより一般的であるが(全症例の85~90%)、「ウェット」型に進行することがあり、未処置のまま放置すると、急速かつ重度の視力喪失をもたらす。AMDの推定有病率は、米国及び他の先進国では2,000人に1人である。この有病率は、一般人口における高齢者の割合とともに増加すると予想される。疾患の危険因子には、環境因子と遺伝因子の両方が含まれる。この疾患の病因には、機能的に相互に関連する4つの組織、すなわち網膜色素上皮(RPE)、ブルッフ膜、脈絡毛細管板及び光受容体の異常が関与している。しかしながら、RPE細胞機能の障害は、臨床的に関連するAMD変化をもたらす分子経路における初期の重要な事象である。現在、ドライ型AMDに対する承認された処置はない。予防的手段としては、ビタミン/ミネラルのサプリメントが挙げられる。これらは、ウェット型AMDを発症するリスクを低下させるが、地図状萎縮(GA)の進行の発症には影響しない。
【0126】
本明細書で提供される方法に従って処置の効果を測定し得る疾患の非限定的なリストには、網膜色素変性症、レーバー先天性黒内障、遺伝性又は後天性黄斑変性、加齢黄斑変性(AMD)、地図状萎縮(GA)、ベスト病、網膜剥離、脳回転状萎縮、コロイデレミア、パターンジストロフィー並びにRPEの他のジストロフィー、シュタルガルト病、光線性、レーザー性、炎症性、感染性、放射線性、新生血管性又は外傷性のいずれか1つによって生じる損傷によるRPE及び網膜損傷、網膜異形成、網膜萎縮、網膜症、黄斑ジストロフィー、錐体ジストロフィー、錐体-桿体ジストロフィー、蜂巣状網膜ジストロフィー(Malattia Leventinese)、ドインハニカム型ジストロフィー、ソースビー型ジストロフィー、パターン/蝶型ジストロフィー、Best病、ノースカロライナ型ジストロフィー、中心性輪紋状脈絡膜ジストロフィー、網膜色素線条症、毒性黄斑症、病的近視、網膜色素変性、及び黄斑変性が含まれる。複数の実施形態において、疾患は、ドライ型AMDである。複数の実施形態において、疾患は、GAである。
【0127】
萎縮型加齢黄斑変性(AMD)又は進行性ドライ型AMDとしても知られる「地図状萎縮」又は「GA」又は「萎縮性網膜」は、経時的に視覚機能の損失をもたらし得る網膜(光受容体、網膜色素上皮、脈絡毛細管板)の進行性及び不可逆性の損失をもたらし得る加齢黄斑変性の進行した形態である。
【0128】
いくつかの実施形態では、RPE欠損は、高齢、喫煙、不健康な体重、抗酸化物質の低摂取、又は心血管障害のうちの1つ又は複数に起因し得る。他の実施形態では、RPE欠損は先天性異常に起因し得る。文脈が許す限り互換的に使用され得る「網膜色素上皮細胞」、「RPE細胞」、「RPE」は、例えば、機能的に、エピジェネティックに、又は発現プロファイルによって、網膜の色素上皮細胞層を形成する天然RPE細胞と似ている(例えば、眼内への移植、投与又は送達の際に、それらは天然RPE細胞の機能活性と同様の機能活性を示す)細胞型の細胞を指す。
【0129】
本明細書で使用される場合、「OpRegen」という用語は、系統制限ヒトRPE細胞株を指す。RPE細胞は、アクチビンA、形質転換増殖因子ベータ(TGF-b)ファミリー及びニコチンアミドを補充してRPE集団を濃縮した分化培地下で誘導される。OpRegenは、眼用平衡塩類溶液(BSS Plus)中に、又はCryoStor(登録商標)5内のすぐに投与できる(ready to administer:RTA)解凍注入(thaw and inject:TAI)製剤として製剤化された単一細胞懸濁液である。
【0130】
処置方法
本明細書の実施形態は、一般に、黄斑変性などの網膜症状を含む眼の疾患及び病気を処置するための方法、組成物、及び装置に関する。
【0131】
したがって、一態様では、本明細書に記載、説明又は例示される網膜疾患又は障害を処置又はその進行を遅らせる方法が提供される。
【0132】
いくつかの実施形態によれば、網膜疾患を処置すること、又はその進行を遅らせることは、視力の再生を評価するための微小視野測定によって実証することができる。微小視野測定は、視覚感度領域の高解像度マッピングで視覚機能を測定又は評価するために使用できるツールの1つである。微小視野測定は、網膜上のこの特定の視覚領域又は視力障害の位置を特定することを可能にし、解剖学的変化と臨床的変化との間で、これらの2つの重要なパラメータ(解剖学的欠陥と視覚障害)の間の良好な相関を伴って、「ギャップを乗り越える」ことができる。
【0133】
他の実施形態によれば、微小視野測定で評価される視力の再生は、RPE細胞の投与が、ベースライン微小視野測定評価と比較して改善された微小視野測定評価を含むことを実証することを含む。他の実施形態によれば、微小視野測定で評価される視力の再生は、RPE細胞の投与が、ベースライン及び他眼/未処置眼と比較して保存された微小視野測定評価を含むことを実証することを含む。
【0134】
特定の実施形態によれば、網膜疾患を処置又はその進行を遅らせることは、RPE細胞の投与の1年後での、ベースライン又は他眼と比較して約5%~約20%のGA病変成長率の低下を含む。複数の実施形態において、網膜疾患を処置又はその進行を遅らせることは、投与の1年後での、ベースライン又は他眼と比較して約5%~約50%のGA病変成長率の低下を含む。複数の実施形態において、網膜疾患を処置又はその進行を遅らせることは、投与の1年後での、ベースライン又は他眼と比較して約5%~約25%のGA病変成長率の低下を含む。複数の実施形態において、網膜疾患を処置又はその進行を遅らせることは、投与の1年後での、ベースライン又は他眼と比較して約5%~約100%のGA病変成長率の低下を含む。複数の実施形態において、網膜疾患を処置又はその進行を遅らせることは、投与の1年後での、ベースライン又は他眼と比較して約5%~約10%のGA病変成長率の低下を含む。量は、エンドポイントを含む、列挙された範囲内の任意の値又は部分範囲であってよい。
【0135】
いくつかの実施形態によれば、網膜疾患を処置又はその進行を遅らせることは、安定な最高矯正視力(BCVA);低輝度試験性能の低下がないこと;又は微小視野測定感度の低下がないこと;又は、読み出し速度の低下がないことの、1つ又は複数を含む。複数の実施形態において、比較は、年齢が一致し、性別が一致する対照との比較である。複数の実施形態において、比較はベースラインとの比較である。複数の実施形態において、比較は他眼との比較である。複数の実施形態において、比較は、約1週間~約5年の期間で行われる。複数の実施形態において、比較は、約1ヶ月で行われる。複数の実施形態において、比較は、約3ヶ月で行われる。複数の実施形態において、比較は、約6ヶ月で行われる。複数の実施形態において、比較は、約1年で行われる。期間は、エンドポイントを含む、列挙された範囲内の任意の値又は部分範囲であってよい。
【0136】
いくつかの実施形態によれば、約25,000~約1,000,000個のRPE細胞を活性物質として含む、網膜の疾患又は障害を処置又はその進行を遅らせるための医薬組成物が提示される。複数の実施形態では、組成物は、約50,000~約500,000個のRPE細胞を含む。複数の実施形態では、組成物は、約100,000~約500,000個のRPE細胞を含む。複数の実施形態では、組成物は、約250,000~約500,000個のRPE細胞を含む。複数の実施形態では、組成物は、約50,000~約400,000個のRPE細胞を含む。複数の実施形態では、組成物は、約50,000~約300,000個のRPE細胞を含む。複数の実施形態では、組成物は、約50,000~約250,000個のRPE細胞を含む。複数の実施形態では、組成物は、約50,000~約200,000個のRPE細胞を含む。量は、エンドポイントを含む、列挙された範囲内の任意の値又は部分範囲であってよい。
【0137】
いくつかの実施形態では、本方法は、それを必要とする対象に細胞治療剤を投与することを含み、細胞治療剤は網膜疾患の網膜構造を回復させることができる。
【0138】
細胞治療剤
いくつかの態様では、本開示は、多能性細胞に由来する網膜色素上皮(RPE)細胞を含む細胞治療剤である。そのような細胞治療剤には、OpRegenが含まれるが、これに限定されることは意図されていない。
【0139】
いくつかの実施形態によれば、RPE細胞は、成熟RPE細胞の少なくとも1、2、3、4又は5つのマーカーを発現する。いくつかの実施形態によれば、RPE細胞は、成熟RPE細胞の少なくとも2個~少なくとも10個又は少なくとも2個~少なくとも30個のマーカーを発現する。そのようなマーカーとしては、CRALBP、RPE65、PEDF、PMEL17、ベストロフィン1及びチロシナーゼが挙げられるが、これらに限定されない。任意に、RPE細胞はまた、RPE前駆細胞のマーカー(例えば、MITF)を発現し得る。他の実施形態では、RPE細胞はPAX-6を発現する。他の実施形態では、RPE細胞は、Rx、OTX2又はSIX3を含むがこれらに限定されない網膜前駆細胞の少なくとも1つのマーカーを発現する。任意に、RPE細胞は、SIX6及び/又はLHX2を発現し得る。
【0140】
いくつかの実施形態によれば、RPE細胞はOpRegen(登録商標)細胞である。
【0141】
本明細書で使用される場合、「成熟RPE細胞のマーカー」という語句は、非RPE細胞又は未成熟RPE細胞と比較して成熟RPE細胞で上昇している(例えば、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍)抗原(例えば、タンパク質)を指す。
【0142】
本明細書で使用される場合、「RPE前駆細胞のマーカー」という語句は、非RPE細胞と比較したとき、RPE前駆細胞において上昇している(例えば、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍)抗原(例えば、タンパク質)のことを指す。
【0143】
他の実施形態によれば、RPE細胞は、網膜の色素上皮細胞層を形成する天然RPE細胞の形態と同様の形態を有する。例えば、細胞は着色していてもよく、特徴的な多角形の形状を有していてもよい。
【0144】
いくつかの実施形態によれば、RPE細胞は、多能性幹細胞(例えば、ESC又はiPSC)から作製される。
【0145】
人工多能性幹細胞(iPSC)は、体細胞の遺伝子操作によって、例えば、Oct-3/4、Sox2、c-Myc及びKLF4などの転写因子を用いた線維芽細胞、肝細胞、胃上皮細胞などの体細胞のレトロウイルス形質導入によって、体細胞から作製することができる[Yamanaka S,Cell Stem Cell.2007,1(1):39-49;Aoi T,et al.,Generation of Pluripotent Stem Cells from Adult Mouse Liver and Stomach Cells.Science.2008 Feb 14.(Epub ahead of print);IH Park,Zhao R,West JA,et al.Reprogramming of human somatic cells to pluripotency with defined factors.Nature 2008;451:141-146;K Takahashi,Tanabe K,Ohnuki M,et al.Induction of pluripotent stem cells from adult human fibroblasts by defined factors.Cell 2007;131:861-872]。他の胚様幹細胞は、レシピエント細胞が有糸分裂で停止している場合、卵母細胞への核移植、胚性幹細胞との融合、又は接合体への核移植によって作製され得る。さらに、iPSCは、非組み込み法を使用して、例えば、小分子又はRNAを使用することによって生成され得る。
【0146】
ヒト胚性幹細胞は、ヒト胚盤胞から単離することができる。ヒト胚盤胞は、典型的には、ヒトのインビボ着床前胚又はインビトロ受精(IVF)胚から得られる。あるいは、単一細胞のヒト胚を胚盤胞期まで拡大することができる。ヒトES細胞を単離するために、透明帯を胚盤胞から除去し、内部細胞塊(ICM)を、栄養外胚葉細胞を溶解し、穏やかなピペッティングによって無傷のICMから除去する手順によって単離する。その後、ICMを、その増殖を可能にする適切な培地を含有する組織培養フラスコに置床する。9~15日後、ICM由来の増殖物を機械的解離又は酵素的分解のいずれかによって塊に解離させ、次いで、細胞を新鮮な組織培養培地に再播種する。未分化形態を示すコロニーをマイクロピペットによって個々に選択し、機械的に塊に解離させ、再播種する。次いで、得られたES細胞を4~7日毎に日常的に分割する。ヒトES細胞の調製方法のさらなる詳細については、Reubinoff et al.Nat Biotechnol 2000,May:18(5):559;Thomson et al.,[U.S.Patent No.5,843,780;Science 282:1145,1998;Curr.Top.Dev.Biol.38:133,1998;Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:7844,1995];Bongso et al.,[Hum Reprod 4:706,1989];及びGardner et al.,[Fertil.Steril.69:84,1998]を参照のこと。
【0147】
さらに、ES細胞は、マウス(Mills and Bradley,2001)、ゴールデンハムスター[Doetschman et al.,1988,Dev Biol.127:224-7]、ラット[Iannaccone et al.,1994,Dev Biol.163:288-92]、ウサギ[Giles et al.1993,Mol Reprod Dev.36:130-8;Graves&Moreadith,1993,Mol Reprod Dev.1993,30 36:424-33]、いくつかの家畜種[Notarianni et al.,1991,J Reprod Fertil Suppl.43:255-60;Wheeler 1994,Reprod Fertil Dev.6:563-8;Mitalipova et al.,2001,Cloning.3:59-67]及び非ヒト霊長類種(アカゲザル及びマーモセット)[TThomson et al.,1995,Proc Natl Acad Sci U S A.92:7844-8;Thomson et al.,1996,Biol Reprod.55:254-9]を含む他の種から得ることができる。
【0148】
拡張胚盤胞細胞(EBC)は、原腸形成前の段階で、受精後少なくとも9日の胚盤胞から得ることができる。胚盤胞を培養する前に、透明帯を消化して[例えば、Tyrodeの酸性溶液による方法(Sigma Aldrich,St Louis,MO,USA)]、内部の細胞塊を露出させる。次いで、胚盤胞を、標準的な胚性幹細胞培養法を使用して、インビトロで受精後少なくとも9日、最大14日間(すなわち、原腸形成事象の前に)、全胚として培養する。
【0149】
ES細胞を調製するための別の方法は、Chung et al.,Cell Stem Cell,Volume 2,Issue 2,113-117(2008年2月7日)に記載されている。この方法は、体外受精プロセス中に胚から単一細胞を除去することを含む。このプロセスで胚は破壊されない。
【0150】
EG(胚性生殖)細胞は、当業者に公知の実験技術を使用して、妊娠約8~11週の胎児(ヒト胎児の場合)から得られた始原生殖細胞から調製される。生殖隆起は解離され、小さな部分に切断され、その後、機械的解離によって細胞に解離される。次いで、EG細胞を、適切な培地を含む組織培養フラスコ中で増殖させる。細胞は、EG細胞と一致する細胞形態が観察されるまで(典型的には7~30日又は1~4継代後)、培地を毎日交換して培養される。ヒトEG細胞を調製する方法に関するさらなる詳細については、Shamblott et al.,[Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:13726,1998]及び米国特許第6,090,622号を参照のこと。
【0151】
ES細胞を調製するさらに別の方法は、単為生殖によるものである。このプロセスでも胚は破壊されない。
【0152】
ES培養法は、幹細胞増殖に必要な因子を分泌すると同時にそれらの分化を阻害するフィーダー細胞層の使用を含み得る。培養は、典型的には、固体表面、例えばゼラチン又はビメンチンでコーティングされた表面で行われる。例示的なフィーダー層としては、ヒト胚性線維芽細胞、成体ファロピウス上皮細胞、初代マウス胚性線維芽細胞(PMEF)、マウス胚性線維芽細胞(MEF)、マウス胎児線維芽細胞(MFF)、ヒト胚性線維芽細胞(HEF)、ヒト胚性幹細胞の分化から得られるヒト線維芽細胞、ヒト胎児筋細胞(HFM)、ヒト胎児皮膚細胞(HFS)、ヒト成体皮膚細胞、ヒト包皮線維芽細胞(HFF)、ヒト臍帯線維芽細胞、臍帯又は胎盤から得られるヒト細胞、及びヒト骨髄間質細胞(hMSC)が挙げられる。成長因子を培地に添加して、ESCを未分化状態に維持することができる。そのような成長因子としては、bFGF及び/又はTGFが挙げられる。別の実施形態では、薬剤を培地に添加して、hESCをナイーブ未分化状態に維持することができる-例えば、Kalkan et al.,2014,Phil.Trans.R.Soc.B,369:20130540を参照のこと。
【0153】
ヒト臍帯線維芽細胞は、ヒト血清(例えば20%)及びグルタミンを補充したダルベッコ改変イーグル培地(例えば、DMEM、SH30081.01、Hyclone)中で増殖させ得る。好ましくは、ヒト臍帯細胞は照射される。これは、当技術分野で公知の方法(例えば、Gamma cell,220 Exel,MDS Nordion 3,500-7500rads)を使用して行うことができる。十分な細胞が得られると、それらは凍結され得る(例えば、凍結保存)。ESCの増殖のために、ヒト臍帯線維芽細胞を、典型的には、約20%のヒト血清(及びグルタミン)を補充したDMEM(例えば、SH30081.01、Hyclone)中に約25,000~100,000細胞/cm2の濃度で、ゼラチン(例えば組換えヒトゼラチン(RhG 100-001、繊維素)又はヒトビトロネクチン又はラミニン521(Bio lamina)などの接着性基質で任意にコーティングした固体表面(例えば、T75又はT175フラスコ)に播種する。hESCは、典型的には、支持培地(例えば、ヒト血清アルブミンを含むNUTRISTEM(登録商標)又はNUT(+))中で1~4日後にフィーダー細胞の上にプレーティングされる。bFGF及びTGFI3などのESCの分化を防ぐために、培地に追加の因子を添加してもよい。十分な量のhESCが得られると、細胞を機械的に破壊することができる(例えば、滅菌チップ又は使い捨て滅菌幹細胞ツールを使用することによって;14602 Swemed)。あるいは、細胞を酵素処理(例えば、コラゲナーゼA、又はTrypLE Select)によって除去することができる。このプロセスは、必要な量のhESCに達するために数回繰り返され得る。いくつかの実施形態によれば、1回目の増殖後、TrypLE Selectを使用してhESCを除去し、2回目の増殖後、コラゲナーゼAを使用してhESCを除去する。
【0154】
ESCは、分化工程の前にフィーダー上で増殖させることができる。フィーダー層ベースの培地の非限定的な例は、本明細書で上記に記載されている。増殖は、典型的には、少なくとも2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間又は10日間行われる。増殖は、少なくとも1継代、少なくとも2継代、少なくとも3継代、少なくとも4継代、少なくとも5継代、少なくとも6継代、少なくとも7継代、少なくとも8継代、少なくとも9継代又は少なくとも10継代にわたって行われる。いくつかの実施形態では、増殖は、少なくとも2継代~少なくとも20継代行われる。他の実施形態では、増殖は、少なくとも2継代~少なくとも40継代行われる。増殖後、分化剤を用いて多能性幹細胞(例えばESC)を指向性分化に供する。
【0155】
フィーダー細胞を含まない系もES細胞培養において使用されており、そのような系は、フィーダー細胞層の代替物として、血清代替物、サイトカイン及び成長因子(IL6及び可溶性IL6受容体キメラを含む)が補充されたマトリックスを利用する。幹細胞は、培養培地、例えばLonza L7系、mTeSR、StemPro、XFKSR、E8、NUTRISTEM(登録商標))の存在下で、細胞外マトリックス(例えば、MATRIGELR(商標)、ラミニン又はビトロネクチン)などの固体表面上で増殖させることができる。フィーダー細胞と幹細胞の同時増殖を必要とし、混合細胞集団をもたらし得るフィーダーベースの培養とは異なり、フィーダーフリー系で増殖させた幹細胞は表面から容易に分離される。幹細胞の増殖に用いられる培養培地には、MEF馴化培地、bFGF等の、分化を効果的に阻害し、その増殖を促進する因子が含まれる。
【0156】
いくつかの実施形態では、増殖後、多能性ESCは、接着性表面上で(スフェロイド又はエンビロイド体の中間生成なしに)指向性分化に供される。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際特許出願公開第WO2017/072763号を参照されたい。
【0157】
したがって、本開示の一態様によれば、接着性表面上で指向性分化に供される細胞の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%が未分化ESCであり、多能性のマーカーを発現する。例えば、細胞の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%がOct4±TRA-1-60+である。未分化ESCは、NANOG、Rex-1、アルカリホスファターゼ、Sox2、TDGF-ベータ、SSEA-3、SSEA-4及び/又はTRA-1-81などの他の多能性マーカーを発現し得る。
【0158】
1つの例示的な分化プロトコルでは、非分化胚性幹細胞を、第1の分化剤を使用して接着性表面上でRPE細胞系統に分化させ、次いで、形質転換増殖因子B(TGFB)スーパーファミリーのメンバー(例えば、TGF1、TGF2及びTGF3サブタイプ、並びに、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、及びアクチビンAB)、nodal、抗ミュラー管ホルモン(AMH)、いくつかの骨形成タンパク質(BMP)、例えば、BMP2、BMP3、BMP4、BMP5、BMP6及びBMP7、並びに成長因子及び分化因子(GDF)を含む相同リガンド)を使用してRPE細胞にさらに分化させる。具体的な実施形態によれば、形質転換増殖因子B(TGFB)スーパーファミリーのメンバーは、アクチビンA(例えば20~200ng/ml、例えば100~180ng/ml)である。
【0159】
いくつかの実施形態によれば、第1の分化剤は、約1~100mM、5~50mM、5~20mM、例えば10mMの濃度で使用されるニコチンアミド(NA)である。他の実施形態によれば、第1の分化剤は3-アミノベンズミンである。
【0160】
「ナイアシンアミド」としても知られているNAは、ベータ細胞機能を保存及び改善すると考えられているビタミンB3(ナイアシン)のアミド誘導体形態である。NAは、化学式C6H6N20を有する。NAは、成長及び食物のエネルギーへの変換に不可欠であり、関節炎の処置及び糖尿病の処置と予防に使用されている。
【0161】
いくつかの実施形態によれば、ニコチンアミドは、ニコチンアミド誘導体又はニコチンアミド模倣物である。本明細書で使用される「ニコチンアミド(NA)の誘導体」という用語は、天然NAの化学修飾誘導体である化合物を意味する。一実施形態では、化学修飾は、アミド部分の窒素又は酸素原子を介した、基本的なNA構造のピリジン環の(環の炭素又は窒素メンバーを介した)置換であり得る。置換されている場合、1つ又は複数の水素原子が置換基で置換されていてもよく、及び/又は置換基がN原子に結合して4価の正に帯電した窒素を形成していてもよい。したがって、本発明のニコチンアミドは、置換又は非置換のニコチンアミドを含む。別の実施形態では、化学修飾は、例えばNAのチオベンズアミド類似体を形成するための、単一の基の欠失又は置換であり得、これらはすべて有機化学に精通した者によって理解される通りである。本発明の文脈における誘導体には、NAのヌクレオシド誘導体(例えばニコチンアミドアデニン)も含まれる。NAの様々な誘導体が記載されており、いくつかはまた、PDE4酵素の阻害活性に関連して(国際公開第03/068233号;国際公開第02/060875号;GB2327675A)、又はVEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤として(WOO 1/55114)記載されている。例えば、4-アリール-ニコチンアミド誘導体を調製する方法(国際公開第05/014549号)。他の例示的なニコチンアミド誘導体は、WOO 1/55114及びEP2128244に開示されている。
【0162】
ニコチンアミド模倣物には、ニコチンアミドの修飾形態、及び多能性細胞からのRPE細胞の分化及び成熟におけるニコチンアミドの効果を再現するニコチンアミドの化学的類似体が含まれる。例示的なニコチンアミド模倣物には、安息香酸、3-アミノ安息香酸、及び6-アミノニコチンアミドが含まれる。ニコチンアミド模倣物として作用し得る別のクラスの化合物は、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)の阻害剤である。例示的なPARP阻害剤には、3-アミノベンズアミド、イニパリブ(BSI 201)、オラパリブ(AZD-2281)、ルカパリブ(AG014699、PF-01367338)、ベリパリブ(ABT-888)、CEP 9722、MK 4827及びBMN-673が含まれる。
【0163】
さらなる企図される分化剤としては、例えばノギン、Wntのアンタゴニスト(Dkkl又はIWR1e)、nodalアンタゴニスト(Lefty-A)、レチノイン酸、タウリン、GSK3b阻害剤(CHIR99021)及びノッチ阻害剤(DAPT)が挙げられる。
【0164】
特定の実施形態によれば、分化は以下のように行われる。(a)第1の分化剤(例えばニコチンアミド)を含む培地中でのESCの培養;(b)TGFBスーパーファミリーのメンバー(例えばアクチビンA)及び第1の分化剤(例えばニコチンアミド)を含む培地中での工程a)から得られた細胞の培養。
【0165】
工程(a)は、TGFI3スーパーファミリーのメンバー(例えばアクチビンA)の非存在下で行われ得る。
【0166】
いくつかの実施形態では、工程(a)における培地は、TGFI3スーパーファミリーのメンバーを完全に欠いている。他の実施形態では、培地中のTGFI3スーパーファミリーメンバーのレベルは、20ng/ml未満、10ng/ml、1ng/ml又はさらには0.1ng/ml未満である。
【0167】
上記のプロトコルは、工程(b)で得られた細胞を、第1の分化剤(例えばニコチンアミド)を含むが、TGFI3スーパーファミリーのメンバー(例えばアクチビンA)を含まない培地で培養することによって継続され得る。この工程は、本明細書では工程(b*)と呼ばれる。
【0168】
上記のプロトコルを、追加の実施形態を用いてさらに詳細に説明する。工程(a):十分な量のESCが得られたら、分化プロセスを開始する。細胞を細胞培養物から取り出し(例えば、コラゲナーゼA、ディスパーゼ、TrypLE select、EDTAを使用することによって)、ニコチンアミドの存在下(及びアクチビンAの非存在下)で非接着性基質(例えば、Hydrocellなどの細胞培養プレート又はアガロース被覆培養皿、又はペトリ細菌学的皿)上に播種し得る。ニコチンアミドの例示的な濃度は、0.01~100mM、0.1~100mM、0.1~50mM、5~50mM、5~20mM、及び10mMである。細胞が非接着性基質(例えば、細胞培養プレート)上に播種されると、細胞培養物は、細胞懸濁物、好ましくは懸濁培養物中の浮遊性クラスター、すなわちヒト胚性幹細胞(hESC)に由来する細胞の凝集物と称され得る。細胞クラスターは、いずれの基質(例えば、培養プレート、担体)にも接着しない。浮遊性幹細胞の供給源は、国際公開第06/070370号に以前に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。この段階は、最低1日間、より好ましくは2日間、3日間、1週間、又はさらには14日間行われ得る。好ましくは、細胞は、例えば0.01~100mM、0.1~100mM、0.1~50mM、5~50mM、5~20mM、例えば10mMのニコチンアミドと一緒に(及びアクチビンAの非存在下で)懸濁液中で3週間を超えて培養されない。一実施形態では、細胞は、例えば0.01~100mM、0.1~100mM、0.1~50mM、5~50mM、5~20mM、例えば10mMのニコチンアミドと一緒に(及びアクチビンAの非存在下で)懸濁液中で6~8日間培養される。
【0169】
いくつかの実施形態によれば、細胞が非接着性基質、例えば細胞培養プレート上で培養される場合、大気酸素条件は20%である。しかしながら、大気酸素パーセントが約20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%未満、又はさらには約5%未満(例えば、1%~20%、1%~10%又は0~5%)であるような、大気酸素条件の操作も考えられる。他の実施形態によれば、細胞は、最初に通常の大気酸素条件下で非接着性基質上で培養され、次いで通常の大気酸素条件よりも低く下げられる。
【0170】
非接着性細胞培養プレートとしては、Nunc社製(例えば、Hydrocellカタログ番号174912)等が挙げられる。
【0171】
典型的には、クラスターは、少なくとも約50~500,000、50~100,000、50~50,000、50~10,000、50~5000、又は50~1000個の細胞を含む。一実施形態によれば、クラスター内の細胞は、層に編成されず、不規則な形状を形成する。1つの実施形態において、クラスターは、多能性胚性幹細胞を実質的に欠いている。別の実施形態では、クラスターは、少量の多能性胚性幹細胞(例えば、タンパク質レベルでOCT4及びTRA-1-60を共発現する5%以下又は3%以下(例えば0.01~2.7%)の細胞)を含む。典型的には、クラスターは、ニコチンアミドの影響下で部分的に分化した細胞を含む。そのような細胞は、PAX6、Rax、Six3及び/又はCHX10などの神経及び網膜の前駆体マーカーを主に発現する。
【0172】
クラスターは、当技術分野で公知の酵素的又は非酵素的(例えば、機械的)方法を使用して解離させることができる。いくつかの実施形態によれば、細胞は、もはやクラスター(例えば、2~100,000個の細胞、2~50,000個の細胞、2~10,000個の細胞、2~5000個の細胞、2~1000個の細胞、2~500個の細胞、2~100個の細胞、2~50個の細胞の凝集物又は塊)にならないように解離される。特定の実施形態によれば、細胞は単一細胞懸濁液中にある。
【0173】
次いで、細胞(例えば解離細胞)を、接着性基質上に播種し、例えば0.01~100mM、0.1~100mM、0.1~50mM、5~50mM、5~20mM、及び例えば10mMのニコチンアミドの存在下(及びアクチビンAの非存在下)で培養することができる。濃度は、エンドポイントを含む、列挙された範囲内の任意の値又は部分範囲であってよい。この段階は、最低1日間、より好ましくは2日間、3日間、1週間、又はさらには14日間行われ得る。好ましくは、細胞は、ニコチンアミドの存在下(及びアクチビンの非存在下)で3週間を超えて培養されない。例示的な実施形態では、この段階は6~7日間行われる。
【0174】
他の実施形態によれば、細胞が接着性基質、例えばラミニン上で培養される場合、大気酸素条件は20%である。それらは、大気酸素百分率が約20%、15%、10%未満、より好ましくは約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、より好ましくは約5%(例えば、1%~20%、1%~10%又は0~5%)であるように操作され得る。量は、エンドポイントを含む、列挙された範囲内の任意の値又は部分範囲であってよい。
【0175】
いくつかの実施形態によれば、細胞は、最初に通常の大気酸素条件下で接着性基質上で培養され、その後、酸素は通常の大気酸素条件よりも低く下げられる。
【0176】
接着性基質又は物質混合物の例には、フィブロネクチン、ラミニン、ポリD-リジン、コラーゲン及びゼラチンが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0177】
工程(b):指向性分化の第1段階の後(工程a;すなわち、ニコチンアミド(例えば0.01~100mM、0.1~100mM、0.1~50mM、5~50mM、5~20mM、例えば10mM)の存在下での培養では、次いで、部分的に分化した細胞は、アクチビンA(例えば0.01~1000ng/ml、0.1~200ng/ml、1~200ng/ml-例えば140ng/ml、150ng/ml、160ng/ml又は180ng/ml)の存在下での培養によって接着性基質上でのさらなる分化段階に供され得る。したがって、アクチビンAは、0.1pM~10nM、10pM~10nM、0.1nM~10nM、1nM~10nM、例えば5.4nMの最終モル濃度で添加され得る。濃度は、エンドポイントを含む、列挙された範囲内の任意の値又は部分範囲であってよい。
【0178】
ニコチンアミドもこの段階で添加することができる(例えば0.01~100mM、0.1~100mM、0.1~50mM、5~50mM、5~20mM、例えば10mM)。濃度は、エンドポイントを含む、列挙された範囲内の任意の値又は部分範囲であってよい。この段階は、1日~10週間、3日~10週間、1週間~10週間、1週間~8週間、1週間~4週間、例えば少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも5日、少なくとも1週間、少なくとも9日、少なくとも10日、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、少なくとも9週間、少なくとも10週間行われ得る。期間は、エンドポイントを含む、列挙された範囲内の任意の値又は部分範囲であってよい。
【0179】
いくつかの実施形態によれば、この段階は、約8日~約2週間行われる。この分化段階は、本明細書で上記に詳述したように、低又は通常の大気酸素条件で行われ得る。
【0180】
工程(b*):指向性分化の第2段階の後(すなわち、接着性基質上でのニコチンアミド及びアクチビンAの存在下での培養;工程(b)、さらなる分化細胞は、任意に、アクチビンAの非存在下で、ニコチンアミド(例えば、0.01~100mM、0.1~100mM、0.1mM~50mM、5mM~50mM、5mM~20mM、例えば10mM)の存在下での接着性基質培養での後続の分化段階に供される。濃度は、エンドポイントを含む、列挙された範囲内の任意の値又は部分範囲であってよい。この段階は、少なくとも1日、2日、5日、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間又はさらには4週間行われてもよい。この分化段階はまた、本明細書で上記に詳述したように、低又は通常の大気酸素条件で行われ得る。
【0181】
ESCが分化される基本培地は、インビトロでの細胞増殖を支持するための当技術分野で公知の任意の公知の細胞培養培地であり、典型的には、塩類、糖類、アミノ酸及び培養物中の細胞を生存可能な状態に維持するために必要な任意の他の栄養素を含む規定の基本溶液を含む培地である。特定の実施形態によれば、基本培地は馴化培地ではない。本発明に従って利用され得る市販の基本培地の非限定的な例には、NUTRISTEM(登録商標)(ESC分化のためのbFGF及びTGFなし、ESC増殖のためのbFGF及びTGFあり)、NEUROBASAL(商標)、KO-DMEM、DMEM、DMEM/F12、CELLGRO(商標)幹細胞増殖培地又はX-VIVO(商標)が含まれる。基本培地には、細胞培養を扱う当技術分野で公知の様々な薬剤を補充することができる。以下は、本開示に従って使用される培養物に含まれ得る様々なサプリメントへの非限定的な言及である:血清又は血清代替物含有培地、例えば、限定されないが、ノックアウト血清代替物(KOSR)、NUTRIDOMA-CS、TCH(商標)、N2、N2誘導体若しくはB27又は組み合わせ;細胞外マトリックス(ECM)成分、例えば、限定されないが、フィブロネクチン、ラミニン、コラーゲン及びゼラチン。ECMはその後、成長因子のTGFI3スーパーファミリーの1つ又は複数のメンバー;限定されないが、ペニシリン及びストレプトマイシンなどの抗菌剤;及び非必須アミノ酸(NEAA)、培養中のSCの生存を促進するのに役割を果たすことが知られているニューロトロフィン、例えば、限定されないが、BDNF、NT3、NT4を担持するために使用され得る。
【0182】
いくつかの実施形態によれば、ESCを分化させるために使用される培地は、NUTRISTEM(登録商標)培地(Biological Industries,06-5102-01-1A)である。
【0183】
いくつかの実施形態によれば、ESCの分化及び増殖は、異種が存在しない条件下で行われる。他の実施形態によれば、増殖/成長培地は、異種混入物を実質的に含まない、すなわち、血清、動物由来成長因子及びアルブミンなどの動物由来成分を含まない。したがって、これらの実施形態によれば、培養は異種混入物の非存在下で行われる。異種を含まない条件下でESCを培養するための他の方法は、米国特許出願第20130196369号に提供されており、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0184】
RPE細胞を含む調製物は、適正製造基準(GMP)(例えば、調製物はGMPに準拠している)及び/又は現在の適正組織基準(GTP)(例えば、調製物はGTPに準拠していてもよい)に従って調製され得る。
【0185】
分化工程の間、胚性幹細胞は、それらの分化状態についてモニターされ得る。細胞分化は、分化を示すことが知られている細胞又は組織特異的マーカーの検査時に決定することができる。
【0186】
組織/細胞特異的マーカーは、当技術分野で周知の免疫学的技術[Thomson JA et al.,(1998).Science 282:1145-7]を使用して検出することができる。例としては、膜結合又は細胞内マーカーについてのフローサイトメトリー、細胞外及び細胞内マーカーについての免疫組織化学、並びに分泌された分子マーカーについての酵素免疫アッセイが挙げられるが、これらに限定されない。
【0187】
本明細書において上記で記載される分化段階の後、色素細胞及び非色素細胞の両方を含む混合細胞集団が得られ得る。この態様によれば、混合細胞集団の細胞がプレートから除去される。いくつかの実施形態では、これは酵素的に行われる(例えば、トリプシン(TrypLE Select)を使用する;例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際特許出願公開第WO2017/021973号を参照されたい)。本発明のこの態様によれば、培養物から除去される(及びその後増殖される)細胞の少なくとも10%、20%、30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%が非色素細胞である。他の実施形態では、これは、例えばセルスクレーパーを使用して機械的に行われる。さらに他の実施形態では、これは化学的に(例えば、EDTAによって)行われる。酵素処理と化学処理の組み合わせも考えられる。例えば、EDTA及び酵素処理を使用することができる。さらに、培養物から取り出される(及びその後に増殖される)細胞の少なくとも10%、20%又はさらには30%が色素細胞であり得る。
【0188】
本開示の一態様によれば、培養物中の全細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%が除去され、その後、増殖される。
【0189】
細胞の混合集団の増殖は、細胞外マトリックス、例えばゼラチン、コラーゲンI、コラーゲンIV、ラミニン(例えばラミニン521)、フィブロネクチン及びポリ-D-リジン上で行われ得る。増殖のために、細胞を無血清KOM、血清含有培地(例えば、20%ヒト血清を含むDMEM)又はNUTRISTEM(登録商標)培地(06-5102-01-1A、Biological Industries)中で培養することができる。これらの培養条件下で、適切な条件下で継代した後、色素細胞対非色素細胞の比は、精製RPE細胞の集団が得られるように増加する。そのような細胞は、RPE細胞の特徴的な多角形形態及び色素沈着を示す。
【0190】
一実施形態では、増殖は、ニコチンアミドの存在下(例えば0.01~100mM、0.1~100mM、0.1~50mM、5~50mM、5~20mM、例えば10mM)及びアクチビンAの非存在下で行われる。濃度は、エンドポイントを含む、列挙された範囲内の任意の値又は部分範囲であってよい。
【0191】
細胞の混合集団は、懸濁液中(マイクロキャリアの有無にかかわらず)又は単層中で増殖させることができる。単層培養又は懸濁培養における細胞の混合集団の増殖は、当業者に周知の方法によって、バイオリアクタ又はマルチ/ハイパースタックにおける大規模増殖に変更することができる。
【0192】
いくつかの実施形態によれば、増殖期は、少なくとも1~20週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、少なくとも9週間、又はさらに10週間行われる。好ましくは、増殖期は、1週間~10週間、より好ましくは2週間~10週間、より好ましくは3週間~10週間、より好ましくは4週間~10週間、又は4週間~8週間行われる。期間は、エンドポイントを含む、列挙された範囲内の任意の値又は部分範囲であってよい。
【0193】
さらに他の実施形態によれば、細胞の混合集団は、増殖期に少なくとも1回、増殖期に少なくとも2回、増殖期に少なくとも3回、増殖期に少なくとも4回、増殖期に少なくとも5回、又は増殖期に少なくとも6回継代される。
【0194】
細胞を酵素的に収集する場合、8継代超、9継代超、さらには10継代超(例えば11~15継代)増殖を継続することが可能である。総細胞倍加数は、30超、例えば31、32、33、34又はそれ以上に増加させることができる。(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2017/021973号を参照されたい)。
【0195】
本明細書に記載の方法に従って生成されたRPE細胞の集団は、いくつかの異なるパラメータに従って特徴付けられ得る。したがって、例えば、得られたRPE細胞は、形状が多角形であり、着色していてもよい。
【0196】
本明細書中に開示される細胞集団及び細胞組成物は、一般に、未分化ヒト胚性幹細胞を欠いていることが理解されるであろう。いくつかの実施形態によれば、例えばFACSによって測定して、1:250,000未満の細胞がOct4+TRA-1-60+細胞である。細胞はまた、PCRによって測定して、GDF3又はTDGFの発現が(5,000倍を超えて)下方制御され得る。この態様のRPE細胞は、胚性幹細胞マーカーを実質的に発現しない。前記1つ又は複数の胚性幹細胞マーカーは、OCT-4、NANOG、Rex-1、アルカリホスファターゼ、Sox2、TDGF-ベータ、SSEA-3、SSEA-4、TRA-1-60及び/又はTRA-1-81を含み得る。
【0197】
治療用RPE細胞調製物は、実質的に精製されてよく、非RPE細胞に関して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%のRPE細胞を含む。RPE細胞調製物は、非RPE細胞を本質的に含まなくてもよく、又はRPE細胞からなってもよい。例えば、RPE細胞の実質的に精製された調製物は、約25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%又は1%未満の非RPE細胞型を含み得る。例えば、RPE細胞調製物は、約25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%、0.09%、0.08%、0.07%、0.06%、0.05%、0.04%、0.03%、0.02%、0.01%、0.009%、0.008%、0.007%、0.006%、0.005%、0.004%、0.003%、0.002%、0.001%、0.0009%、0.0008%、0.0007%、0.0006%、0.0005%、0.0004%、0.0003%、0.0002%、又は0.0001%未満の非RPE細胞を含み得る。
【0198】
RPE細胞調製物は、非RPE細胞及び他の成熟レベルのRPE細胞の両方に関して実質的に純粋であり得る。調製物は、非RPE細胞に関して実質的に精製され、成熟RPE細胞について濃縮され得る。例えば、成熟RPE細胞が濃縮されたRPE細胞調製物では、RPE細胞の少なくとも約30%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99%、又は100%が成熟RPE細胞である。調製物は、非RPE細胞に関して実質的に精製され、成熟RPE細胞ではなく分化RPE細胞について濃縮され得る。例えば、RPE細胞の少なくとも約30%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%が、成熟RPE細胞ではなく分化RPE細胞であり得る。
【0199】
本明細書中に記載される調製物は、細菌、ウイルス又は真菌の汚染又は感染(HIV1、HIV2、HBV、HCV、HAV、CMV、HTLV1、HTLV2、パルボウイルスB19、エプスタイン・バーウイルス又はヘルペスウイルス1及び2、SV40、HHVS、6、7、8、CMV、ポリオーマウイルス、HPV、エンテロウイルスの存在が含まれるが、これらに限定されない)を実質的に含まなくてもよい。本明細書に記載の調製物は、マイコプラズマの汚染又は感染を実質的に含まなくてもよい。
【0200】
本明細書に開示される細胞集団を特徴付ける別の方法は、マーカー発現によるものである。したがって、例えば、免疫染色によって測定して、細胞の少なくとも80%、85%、90%、95%又は100%がベストロフィン1を発現し得る。1つの実施形態によれば、細胞の80~100%がベストロフィン1を発現する。
【0201】
他の実施形態によれば、免疫染色によって測定して、細胞の少なくとも80%、85%、87%、89%、90%、95%、97%又は100%が小眼球症関連転写因子(MITF)を発現する。例えば、細胞の80~100%がMITFを発現する。
【0202】
他の実施形態によれば、免疫染色によって測定して、細胞の少なくとも80%、85%、87%、89%、90%、95%、97%又は100%が小眼球症関連転写因子(MITF)及びベストロフィン1の両方を発現する。例えば、細胞の80~100%がMITF及びベストロフィン1を共発現する。
【0203】
他の実施形態によれば、免疫染色によって測定して、細胞の少なくとも80%、85%、87%、89%、90%、95%、97%又は100%が小眼球症関連転写因子(MITF)及びZ0-1の両方を発現する。例えば、細胞の80~100%がMITF及びZ0-1を共発現する。
【0204】
他の実施形態によれば、免疫染色によって測定して、細胞の少なくとも80%、85%、87%、89%、90%、95%、97%又は100%がZ0-1及びベストロフィン1の両方を発現する。
【0205】
例えば、細胞の80~100%がZ0-1及びベストロフィン1を共発現する。
【0206】
別の実施形態によれば、免疫染色又はFACSによって測定して、細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、87%、89%、90%、95%、97%又は100%がペアードボックス遺伝子6(PAX-6)を発現する。例えば、細胞の少なくとも50%~100%がペアードボックス遺伝子6(PAX-6)を発現する。
【0207】
別の実施形態によれば、免疫染色によって測定して、細胞の少なくとも80%、85%、87%、89%、90%、95%、97%又は100%が細胞性レチナールアルデヒド結合タンパク質(CRALBP)を発現する。例えば、細胞の80~100%がCRALBPを発現する。
【0208】
別の実施形態によれば、免疫染色によって測定したて、細胞の少なくとも80%、85%、87%、89%、90%、95%、97%又は100%が細胞メラノサイト系統特異的抗原GP100(PMEL17)を発現する。例えば、細胞の約80~100%がPMEL17を発現する。
【0209】
RPE細胞は、最終分化を示すマーカー、例えばベストロフィン1、CRALBP及び/又はRPE65を共発現し得る。一実施形態によれば、得られたRPE細胞集団の細胞の少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも100%、又はさらには約50%~100%が、プレメラノソームタンパク質(PMEL17)と細胞性レチナールアルデヒド結合タンパク質(CRALBP)の両方を共発現する。
【0210】
特定の実施形態によれば、細胞は、PMEL17(SwissProt No.P40967)と、細胞性レチナールアルデヒド結合タンパク質(CRALBP;SwissProt No.P12271)、レシチンレチノールアシルトランスフェラーゼ(LRAT;SwissProt No.095327)及び性決定領域Yボックス9(SOX 9;P48436)からなる群から選択される少なくとも1つのポリペプチドとを共発現する。
【0211】
特定の実施形態によれば、集団の細胞の少なくとも80%が、検出可能なレベルのPMEL17及び上述のポリペプチドの1つ(例えば、CRALBP)を発現し、より好ましくは集団の細胞の少なくとも85%が、検出可能なレベルのPMEL17及び上述のポリペプチドの1つ(例えば、CRALBP)を発現し、より好ましくは集団の細胞の少なくとも90%が、検出可能なレベルのPMEL17及び上述のポリペプチドの1つ(例えば、CRALBP)を発現し、より好ましくは集団の細胞の少なくとも95%が、検出可能なレベルのPMEL17及び上述のポリペプチドの1つ(例えば、CRALBP)を発現し、より好ましくは集団の細胞の100%が、検出可能なレベルのPMEL17及び上述のポリペプチドの1つ(例えば、FACS)を発現する。
【0212】
別の実施形態によれば、CRALBP及び上記ポリペプチドの1つ(例えばPMEL17)の共発現(例えば、平均蛍光強度によって測定される)のレベルは、未分化ESCと比較して、少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも3倍、より好ましくは少なくとも4倍、さらにより好ましくは少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍増加する。
【0213】
一実施形態では、RPEは最終分化しており、一般にPax6を発現しない。別の実施形態では、RPE細胞は最終分化しており、一般にPax6を発現する。
【0214】
本明細書に記載のRPE細胞はまた、移植後に機能的RPE細胞として作用し得、ここで、RPE細胞は、移植細胞を受けている患者の神経感覚網膜と脈絡膜との間に単層を形成し得る。RPE細胞はまた、隣接する光受容体に栄養素を供給し、食作用によって脱落した視細胞外節を処分し得る。
【0215】
一実施形態によれば、単層中の細胞の経上皮電気抵抗は、100オームより大きい。
【0216】
好ましくは、細胞の経上皮電気抵抗は、150、200、250、300、300、400、500、600、700、800オームより大きく、又はさらには900オームより大きい。抵抗は、エンドポイントを含む、列挙された範囲内の任意の値又は部分範囲であってよい。
【0217】
経上皮電気抵抗(TEER)を測定するための装置は当技術分野で公知であり、例えば、EVOM2上皮容積計(World Precision Instruments)が挙げられる。
【0218】
増殖期の後、RPE細胞を含む細胞集団が得られ、その少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はさらに100%がCRALBP+PMEL1 7+である。
【0219】
RPE細胞の誘導が大きな利益をもたらすことは、当業者には十分に理解されよう。それらは、それらの生存、再生及び機能を促進するための新しい薬物の開発のためのインビトロモデルとして使用され得る。RPE細胞は、RPE細胞に対して毒性又は再生効果を有する化合物のハイスループットスクリーニングに役立ち得る。それらは、光受容体細胞の発達、分化、維持、生存及び機能にとって重要な機構、新しい遺伝子、可溶性又は膜結合因子を明らかにするために使用され得る。
【0220】
本明細書に記載のRPE細胞はまた、網膜変性及び他の変性障害における機能不全又は変性RPE細胞の移植、補充及び支持のためのRPE細胞の無制限の供給源として役立ち得る。さらに、遺伝子改変RPE細胞は、移植後に眼及び網膜に遺伝子を運搬及び発現するためのベクターとして機能し得る。
【0221】
特定の実施形態では、RPE細胞組成物は、以下の方法に従って生成され得る。(1)ヒト血清アルブミン(HSA)を含むNUT+で2週間、CWプレート中のhUCF上でhESCを培養すること、(2)HSAを含むNUT+で4~5週間(又は所望の量の細胞まで)、CWプレート中のhUCF上でhESCを増殖させるために機械的に継代すること、(3)HSAを含むNUT+でさらに1週間、6cmプレート中のhUCF上でhESCコロニーを(例えば、コラゲナーゼを使用して)増殖させ続けること、(4)ニコチンアミド(NIC)を含むNUT-において、約5枚の6cmプレートから1 HydroCellに約1週間、コロニーを移すことによってスフェロイド体(SB)を調製すること、(5)NICを含むNUT-において、約1週間、6ウェルプレートの2~3ウェルにSBを移すことによって、Lam511上のSBの平坦化を実施してもよい、(6)NIC及びアクチビンを含むNUT-において、Lam511上で接着性細胞を約1~2週間培養し、NICを含むNUT-で培地を置換し、1~3週間培養し、(7)酵素、例えばTrypLE Selectなどを使用して色素細胞を濃縮し、(8)20%ヒト血清及びNUT-において、約2~9週間(培地を置換する)、フラスコ中でゼラチン上でRPE細胞を増殖させ、(9)RPE細胞を回収する。
【0222】
RPE細胞の増殖集団の回収は、当技術分野で公知の方法を使用して(例えば、トリプシンなどの酵素を使用するか、EDTAなどを使用して化学的に)行われ得る。いくつかの実施形態では、PBS又はBSS plusなどの適切な溶液を使用してRPE細胞を洗浄することができる。他の実施形態では、凍結保存のためのRPE細胞組成物の製剤化及び融解直後の対象への投与の前に、RPE細胞をフィルターにかけることができる。いくつかの実施形態では、濾過後細胞の生存率パーセントは、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%である。いくつかの実施形態では、中和溶液中に約0~約8時間保存した濾過後の細胞の生存率パーセントは、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%である。
【0223】
さらなる実施形態では、中和培地に約0~約8時間保存し、続いて凍結保存培地に約0~約8時間保存した濾過後の細胞の生存率パーセントは、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である。他の実施形態では、中和培地に約0~約8時間保存し、続いて凍結保存培地に約0~約8時間保存した濾過後の細胞の回収パーセントは、少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である。
【0224】
さらに他の実施形態では、中和培地に約0~約8時間保存し、続いて凍結保存培地に約0~約8時間保存し、凍結保存組成物を解凍した後の、濾過後の細胞の生存率パーセントは、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である。さらに他の実施形態では、中和培地に約0~約8時間保存し、続いて凍結保存培地に約0~約8時間保存し、凍結保存組成物を解凍した後の、濾過後の細胞の回収パーセントは、少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である。
【0225】
いくつかの実施形態では、中和培地に約0~約8時間保存し、続いて凍結保存培地に約0~約8時間保存し、凍結保存組成物を解凍した後の、濾過後のRPE細胞は、約1,500ng/ml/日~約4,500ng/ml/日、約2,000ng/ml/日~約3,000ng/ml/日のPEDFを分泌することができる。濃度は、エンドポイントを含む、列挙された範囲内の任意の値又は部分範囲であってよい。他の実施形態では、中和培地に約0~約8時間保存し、続いて凍結保存培地に約0~約8時間保存し、凍結保存組成物を解凍した後の、濾過後のRPE細胞は、14日間で少なくとも約1.2x10~5 x10、又は約2.5x x10~約4 x10個の細胞に増殖させることができる。
【0226】
いくつかの実施形態では、中和培地中に室温で約0~約8時間保存した濾過後のRPE細胞の生存率パーセントは、少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%である。いくつかの実施形態では、凍結保存培地中に室温で約0~約8時間保存した濾過後のRPE細胞の生存率パーセントは、少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%である。さらなる実施形態では、中和溶液に室温で約0~約8時間保存し、続いて凍結保存培地に室温で約0~約8時間保存した濾過後の細胞の生存率パーセントは、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である。なおさらなる実施形態では、中和溶液に室温で約0~約8時間保存し、続いて凍結保存培地に室温で約0~約8時間保存した濾過後の細胞の回収パーセントは、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%、105%、110%、115%、120%、125%、130%、140%、150%である。
【0227】
回収後、RPE細胞の増殖集団を特定の治療用量(例えば、細胞数)で製剤化し、診療所への輸送のために凍結保存することができる。次いで、すぐに投与できる(RTA)RPE細胞療法組成物は、さらなる処理をせずに解凍後に直接投与することができる。凍結保存に適した培地の例としては、90%ヒト血清/10% DMSO、培地3 10%(CS10)、培地2 5%(CS5)及び培地1 2%(CS2)、幹細胞バンカー、PRIME XV°FREEZIS、HYPOTHERMASOL(登録商標)、トレハロースなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0228】
解凍後すぐに投与できる(RTA)用途に適した凍結保存培地に製剤化されたRPE細胞は、アデノシン、デキストラン40、ラクトビオン酸、HEPES(N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジンN’-(2-エタンスルホン酸))、水酸化ナトリウム、L-グルタチオン、塩化カリウム、重炭酸カリウム、リン酸カリウム、デキストロース、スクロース、マンニトール、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ジメチルスルホキシド(DMSO)、及び水に懸濁したRPE細胞を含み得る。この凍結保存培地の一例は、商品名CRYOSTOR(登録商標)で市販されており、BioLife Solutions,Inc.によって製造されている。
【0229】
さらなる実施形態では、凍結保存培地は、プリンヌクレオシド(例えば、アデノシン)、分岐グルカン(例えば、デキストラン40)、両性イオン性有機化学緩衝剤(例えば、HEPES(N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジンEN’-(2Eエタンスルホン酸)))、及び細胞が耐え得る極性非プロトン性溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む。なおさらなる実施形態では、プリンヌクレオシド、分岐グルカン、緩衝剤、及び極性非プロトン性溶媒の1つ又は複数は、一般に、米国FDAによって安全であると認識されている。
【0230】
いくつかの実施形態では、凍結保存培地は、糖酸(例えば、ラクトビオン酸)、1又は複数の塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、酸化防止剤(例えば、L-グルタチオン)、1又は複数のハロゲン化物塩(例えば、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム)、塩基性塩(例えば、重炭酸カリウム)、リン酸塩(例えば、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム)、1又は複数の糖(例えば、デキストロース、スクロース)、糖アルコール(例えば、マンニトール)及び水のうちの1つ又は複数をさらに含む。
【0231】
他の実施形態では、糖酸、塩基、ハロゲン化物塩、塩基性塩、酸化防止剤、リン酸塩、糖、糖アルコールの1つ又は複数は、一般に、米国FDAによって安全であると認識されている。
【0232】
DMSOは、凍結保存プロセス中に細胞を死滅させ得る氷結晶の形成を防止するための凍結保護剤として使用することができる。いくつかの実施形態では、凍結保存可能なRPE細胞療法組成物は、約0.1%~約2%のDMSO(v/v)を含む。いくつかの実施形態では、RTA RPE細胞療法組成物は、約1%~約20%のDMSOを含む。いくつかの実施形態では、RTA RPE細胞療法組成物は、約2%のDMSOを含む。いくつかの実施形態では、RTA RPE細胞療法組成物は、約5%のDMSOを含む。
【0233】
いくつかの実施形態では、解凍後すぐに投与できる用途に適した凍結保存培地に製剤化されたRPE細胞療法は、DMSOを含まない凍結保存培地に懸濁したRPE細胞を含み得る。例えば、RTA RPE細胞療法組成物は、Trolox、Na+、K+、Ca2+、Mg2+、cl-、H2P04-HEPES、ラクトビオン酸、スクロース、マンニトール、グルコース、デキストラン-40、アデノシン、DMSOを含まないグルタチオン(ジメチルスルホキシド、(CH3)2SO)又は任意の他の双極性非プロトン性溶媒に懸濁したRPE細胞を含み得る。この凍結保存培地の一例は、HYPOTHERMOSOL(登録商標)又はHYPOTHERMOSOL(登録商標)-FRSの商品名で市販されており、これもBioLife Solutions,Inc.によって製造されている。他の実施形態では、解凍後すぐに投与できる用途に適した凍結保存培地に製剤化されたRPE細胞組成物は、トレハロースに懸濁したRPE細胞を含み得る。
【0234】
本開示に従って製剤化されたRTA RPE細胞療法は、対象の眼への注射の前に最終用量製剤を調製するためのGMP設備の使用を必要としない。本明細書に記載のRTA RPE細胞療法製剤は、臨床現場に直接出荷することができる最終用量製剤を含む非毒性凍結溶液中で凍結保存することができる。必要に応じて、製剤を解凍し、中間調製工程を実施する必要なく対象の眼に投与することができる。
【0235】
いくつかの実施形態では、RPE細胞組成物は凍結保存され、約-4°C~約-200°Cの温度で保存され得る。いくつかの実施形態では、RPE細胞組成物は凍結保存され、約-20°C~約-200°Cの温度で保存され得る。いくつかの実施形態では、RPE細胞組成物は凍結保存され、約-70°C~約-196°Cの温度で保存され得る。いくつかの実施形態では、凍結保存に適した温度又は凍結保存温度は、約-4°C~約-200°Cの温度、又は約-20°C~約-200°C、-70°C~約-196°Cの温度を含む。
【0236】
いくつかの実施形態では、RTA RPE細胞療法組成物は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、又は31日間凍結保存され得る。他の実施形態では、RPE細胞は、約1.5~48ヶ月間凍結保存され得る。他の実施形態では、RTA RPE細胞療法組成物は、生存率又は細胞回収率を低下させることなく、約1~約48ヶ月間凍結保存され得る。いくつかの実施形態では、RTA RPE細胞療法組成物は、安定性を維持しながら、2~8°Cで少なくとも約38時間保存され得る。
【0237】
いくつかの実施形態では、RTA RPE細胞療法組成物は、生存率、細胞回収率又は効力を低下させることなく、8,000マイルにわたって凍結されて出荷され得る。
【0238】
RPE細胞は、例えば、Idelson M,Alper R,Obolensky A et al.(Directed differentiation of human embryonic stem cells into functional retinal pigment epithelium cells.Cell Stem Cell 2009;5:396-408)の方法に従って、又はParul Choudhary et al,(「Directing Differentiation of Pluripotent Stem Cells Toward Retinal Pigment Epithelium Lineage」、Stem Cells Translational Medicine,2016)、又は国際公開第2008129554号に従って産生することができ、これらはすべて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0239】
RTA RPE細胞療法組成物は、RPEの生着、組み込み、生存、効力などを支持する追加の因子を任意に含み得る。いくつかの実施形態では、RTA RPE細胞療法組成物は、本明細書に記載のRPE細胞調製物の機能の活性化剤を含む。いくつかの実施形態では、RTA RPE細胞療法組成物は、ニコチンアミドを含む。いくつかの実施形態では、RTA RPE細胞療法組成物は、約0.01~100mM、0.1~100mM、0.1~50mM、5~50mM、5~20mM、例えば10mMの濃度でニコチンアミドを含む。他の実施形態では、RTA RPE細胞療法組成物は、レチノイン酸を含む。いくつかの実施形態では、RTA RPE細胞療法組成物は、約0.01~100mM、0.1~100mM、0.1~50mM、5~50mM、5~20mM、例えば10mMの濃度でレチノイン酸を含む。濃度は、エンドポイントを含む、列挙された範囲内の任意の値又は部分範囲であってよい。
【0240】
いくつかの実施形態では、RTA RPE細胞療法組成物は、本明細書に記載されるものなどのRPE細胞調製物のブランチの膜への接着を増加させることが示されている様々なインテグリンの活性化剤を含むように製剤化され得る。例えば、いくつかの実施形態では、RTA RPE細胞療法組成物は、約5μM~1,000μMの濃度で細胞外マンガン(Mn2+)を含む。他の実施形態では、RTA RPE細胞療法組成物は、配座特異的モノクローナル抗体TS2/16を含む。
【0241】
他の実施形態では、RTA RPE細胞療法組成物はまた、RPE細胞免疫調節活性の活性化剤を含むように製剤化され得る。
【0242】
いくつかの実施形態では、RTA RPE細胞療法組成物は、ROCK阻害剤を含み得る。
【0243】
いくつかの実施形態では、RTA RPE細胞療法組成物は、フリーラジカルの捕捉、pH緩衝、癌/浸透圧支持、及びイオン濃度バランスの維持によって凍結及び融解プロセス中の分子細胞ストレスを減少させる成分を含む培地に製剤化され得る。
【0244】
いくつかの実施形態では、解凍後すぐに投与できる用途に適した凍結保存培地に製剤化されたRPE細胞療法は、1つ又は複数の免疫抑制化合物を含み得る。特定の実施形態では、解凍後すぐに投与できる用途に適した凍結保存培地に製剤化されたRPE細胞療法は、1つ又は複数の免疫抑制化合物の徐放のために製剤化された1つ又は複数の免疫抑制化合物を含み得る。本明細書中に記載される製剤とともに使用するための免疫抑制化合物は、以下のクラスの免疫抑制薬に属し得る:グルココルチコイド、細胞増殖抑制薬(例えば、アルキル化剤又は代謝拮抗剤)、抗体(ポリクローナル又はモノクローナル)、イムノフィリンに作用する薬物(例えば、シクロスポリン、タクロリムス又はシロリムス)。さらなる薬物には、インターフェロン、オピオイド、TNF結合タンパク質、ミコフェノール酸及び低分子生物学的薬剤が含まれる。免疫抑制薬の例としては、間葉系幹細胞、抗リンパ球グロブリン(ALG)ポリクローナル抗体、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)ポリクローナル抗体、アザチオプリン、BAS 1L1 X 1MAB(登録商標)(抗IL-2Ra受容体抗体)、シクロスポリン(シクロスポリンA)、DACLIZUMAB(登録商標)(抗IL-2Ra受容体抗体)、エベロリムス、ミコフェノール酸、RITUXUMAB(登録商標)(抗CD20抗体)、シロリムス、タクロリムス、タクロリムス及び/又はミコフェノール酸モフェチルが挙げられる。
【0245】
本開示内で想定されるRPE細胞を作製するためのさらなる方法は、PCT/US2018/023030(WO2018/170494)に記載されており、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0246】
本開示内で想定される「解凍注入」製剤を作製するためのさらなる方法は、PCT/IB2018/001579(WO2019/130061)に記載されており、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0247】
特定の実施形態では、RPE細胞療法は、約100,000細胞/ml~約1,000,000細胞/mlの細胞濃度で製剤化され得る。特定の実施形態では、RPE細胞療法は、約1,000,000細胞/ml、約2,000,000細胞/ml、約3,000,000細胞/ml、約4,000,000細胞/ml、約5,000,000細胞/ml、6,000,000細胞/ml、7,000,000細胞/ml、8,000,000細胞/ml、約9,000,000細胞/ml、約10,000,000細胞/ml、約11,000,000細胞/ml、約12,000,000細胞/ml、13,000,000細胞/ml、14,000,000細胞/ml、15,000,000細胞/ml、16,000,000細胞/ml、約17,000,000細胞/ml、約18,000,000細胞/ml、約19,000,000細胞/ml、又は約20,000,000細胞/mlの細胞濃度で製剤化され得る。細胞は、エンドポイントを含む、列挙された範囲内の任意の値又は部分範囲であってよい。
【0248】
いくつかの実施形態では、RPE細胞は、治療的又は薬学的に許容され得る担体又は生体適合性培地で投与される。いくつかの実施形態では、対象に投与されるRPE製剤の体積は、約10μl~約50μl、約20μl~約70μl、約20μl~約100μl、約25μl~約100μl、約100μl~約150μl、又は約10μl~約200μlである。特定の実施形態では、10μl~200μlのRPE製剤の2つ以上の用量を投与することができる。特定の実施形態では、一定量のRPE製剤を対象の眼の網膜下腔に投与する。特定の実施形態では、網膜下送達方法は、経硝子体又は上脈絡膜であり得る。いくつかの実施形態では、一部の対象について、経硝子体又は上脈絡膜網膜下送達方法を使用してERMのインシデントを減少させることができる。いくつかの実施形態では、一定量のRPE製剤を対象の眼に注射することができる。
【0249】
いくつかの実施形態では、細胞治療剤のRPE細胞はヒトRPE細胞である。
【0250】
いくつかの実施形態では、RPE細胞は、OpRegen(登録商標)細胞である。OpRegenはヒト胚(hESC)細胞株に由来するRPE細胞株であり、高濃度のアクチビンA、形質転換増殖因子ベータ(TGF-b)ファミリー及びニコチンアミドを補充した低酸素(5%)培養下で、その後、通常の酸素(20%)培養に切り替えてRPE集団を濃縮したものである。アクチビンAは、硬い基材又は硬質の基材上のRPE細胞の生存を改善するが、軟質の基材上では改善しない。このように、OpRegenは、ネイティブRPE細胞と比較してさらなる生物学的能力を獲得し、ブルッフ膜が変性して硬くなるか又は肥厚するGA設定などの過酷な微小環境での生存を増強した。OpRegen細胞によって分泌される120+を超える同定されたタンパク質の中で、色素上皮由来因子(PEDF)、血小板由来成長因子(PDGF)、血管内皮成長因子(VEGF)、ベストロフィン、アンギオゲニン、CRLABP、TIMP-2、TIMP-1、IL-6、PMEL-1(メロノソーム)、インテグリン、TNF-α及び補体保護タンパク質が高レベルの分泌タンパク質としてトップである。その効力を、基礎PEDF/VEGF比及び21日目の頂端VEGF/PEDF比(これらの両方が>1であった)によって試験した。注目すべきことに、高い酸素レベルはPEDF分泌を増加させる。懸濁処方のOpRegenは、依然として2~8°Cで24時間PEDFを生成することができ、これはその堅牢性を示している。
【0251】
OpRegenは、2000~4000ng/ml/日で非常に高いレベルのPEDFを分泌し、これは、PEDFが、AMD適応症にとって関心のあるBRBに対するRPEにおける抗酸化的役割を有するので、その高い治療効力を説明することができる。PEDFは、インビボでRPE及びミュラーグリアによって分泌される50kDaのタンパク質である;これはまた、おそらく加齢及び酸化ストレスによって乱されるミトコンドリア動態を回復させることによって、光受容体に対する神経保護機能を実証する。PEDFは、H202によって誘発されるRPE透過性変化を防止し、酸化ストレスに対するRPEのバリア機能を維持することができた。PEDFはまた、マスター因子NF-KappaBとの相互作用を介した内因性抗炎症因子である。PEDFは細胞外マトリックス(コラーゲン及びプロテオグリカン)に結合し、TGF-ベータの阻害を介して糖尿病性網膜症及びウェット型AMDの抗線維症において役割を果たす。一部には、PEDF分泌は、ドルーゼンを有する/有さない患者におけるフルオレセイン血管造影(FA)の改善、及び移植後2~4週間という早期に見られるGA病変内のECMリモデリング又は瘢痕減弱の可能性のある徴候を伴うOCT画像化によって証明されるように、OpRegen処置された対象における所見を裏付ける。
【0252】
本開示の範囲内での使用に適したRPE細胞は、本明細書に記載のRPE細胞に限定されない。任意の市販の、又は他の方法で入手可能なRPE細胞を使用することができる。
【0253】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細胞治療剤は、網膜疾患の網膜構造を回復させることができる。
【0254】
患者の網膜の解剖学的構造の回復は、「回復(restoration)」及び「回復させること(restoring)」と交換可能に使用することができ、年齢が一致し、性別が一致する対照、ベースライン、又は他眼と比較した患者の正常な構造の回復又は再生;罹患領域におけるエリプソイドゾーン(EZ)の変化によって決定される正常な解剖学的構造の領域の回復、OCTによって証明されるRPE生着、及び網膜の厚さの改善;網膜色素上皮(RPE)の再生の回復又は誘導;罹患領域におけるエリプソイドゾーン(EZ)の変化によって決定される正常な解剖学的構造の領域の回復、OCTによって証明されるRPE生着、及び網膜の厚さの改善;視力回復;萎縮性網膜の萎縮領域を減少させる;網膜の1つ又は複数の網膜層を回復させること;網膜の光受容体を回復させること;網膜の外顆粒層(ONL)を回復させること;網膜のエリプソイドゾーン(EZ)を回復させること;網膜の中心窩を回復させること;網膜の血液網膜関門(BRB)を回復させること;及び網膜の細胞外マトリックス(ECM)を回復させることを意味する。
【0255】
患者の網膜の機能を回復すること又は再生することは、網膜層がそれらの正常な構造に回復させること、並びに光吸収、上皮輸送、視細胞外節(POS)膜の食作用、及びPEDF及び光受容体などの因子の分泌などの活性を行うRPE細胞が機能的に活性であり、光伝達を行うことができ、それによって機能的視力を可能にすることを意味する。
【0256】
「再生(recovery)」及び「再生する(recover)」及び「再生する(recovers)」及び「再生すること(recovering)」は、エリプソイドゾーンの再生;正常なアーキテクチャの回復による再生;年齢が一致し、性別が一致する対照、ベースライン又は他眼と比較して;以下を含む1つ又は複数がより組織化されつつあるという主観的評価:外境界膜、筋様体領域(光受容体の内側セグメント)、エリプソイドゾーン(IS/OS接合部)、光受容体の外側セグメント、ドルーゼンの喪失、及び網状偽ドルーゼンの消失;限定されないが、外境界膜、筋様体領域(光受容体の内側セグメント)、エリプソイドゾーン(IS/OS接合部)、及び光受容体の外側セグメントの1つ又は複数を含む、網膜の基本的な基礎層の1つ又は複数がより組織化されつつあるという主観的評価;RPE細胞の投与部位の近く又は投与部位における網膜の部位が、ベースライン微小視野測定評価と比較して改善された微小視野測定評価を含むことを実証すること;EZ-RPEの厚さ、面積、又は体積測定値の1つ又は複数の改善を含むエリプソイドゾーンの再生;EZ-RPE中心窩平均厚さの改善;EZ-RPE中心窩厚みの改善;EZ-RPE中心亜領域体積の改善;色素上皮及び網膜の厚さの再生;網膜の基本的な基礎層の組織化;網膜の12~14層のうちの2~6層の組織化を意味するために交換可能に使用され得る。
【0257】
処置及び投薬量
対象に投与され得る生細胞の数は、典型的には、用量あたり少なくとも約50,000~約5x10個である。いくつかの実施形態では、細胞治療剤は、少なくとも約50,000個の生細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞治療剤は、少なくとも約100,000個の生細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞治療剤は、少なくとも約150,000個の生細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞治療剤は、少なくとも約200,000個の生細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞治療剤は、少なくとも約250,000個の生細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞治療剤は、少なくとも約300,000個の生細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞治療剤は、少なくとも約350,000個の生細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞治療剤は、少なくとも約400,000個の生細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞治療剤は、少なくとも約450,000個の生細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞治療剤は、少なくとも約500,000個の生細胞を含む。いくつかの実施形態において、細胞治療剤は、少なくとも約600,000個、少なくとも約700,000個、少なくとも約800,000個、少なくとも約900,000個、少なくとも約1,000,000個、少なくとも約2,000,000個、少なくとも約3,000,000個、少なくとも約4,000,000個、少なくとも約5,000,000個、少なくとも約6,000,000個、少なくとも約7,000,000個、少なくとも約8,000,000個、少なくとも約9,000,000個、少なくとも約10,000,000個、少なくとも約11,000,000、又は少なくとも約12,000,000個の生存細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞治療剤は、50,000~100,000個の生細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞治療剤は、100,000~200,000個の生細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞治療剤は、200,000~300,000個の生細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞治療剤は、300,000~400,000個の生細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞治療剤は、400,000~500,000個の生細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞治療剤は、500,000~1,000,000個の生細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞治療剤は、1,000,000~2,000,000個の生細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞治療剤は、2,000,000~3,000,000個の生細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞治療剤は、3,000,000~4,000,000個の生細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞治療剤は、4,000,000~5,000,000個の生細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞治療剤は、5,000,000~6,000,000個の生細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞治療剤は、6,000,000~7,000,000個の生細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞治療剤は、7,000,000~8,000,000個の生細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞治療剤は、8,000,000~9,000,000個の生細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞治療剤は、9,000,000~10,000,000個の生細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞治療剤は、10,000,000~11,000,000個の生細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞治療剤は、11,000,000~12,000,000個の生細胞を含む。特定の実施形態では、細胞治療剤は、50,000~1,000,000個の細胞の用量で投与される。特定の実施形態では、細胞治療剤は、100,000~750,000個の細胞の用量で投与される。特定の実施形態では、細胞治療剤は、200,000~500,000個の細胞の用量で投与される。本明細書に列挙される値又は範囲の各々は、エンドポイントを含む、それらの間の任意の値又は部分範囲を含んでもよい。
【0258】
いくつかの実施形態では、対象に投与されるRTA RPE製剤の体積は、約50μl~約100μl、約25μl~約100μl、約100μl~約150ul、又は約10μl~約200μlである。特定の実施形態では、10μl~200μlのRTA RPE製剤の2回用量を投与することができる。本明細書に列挙される値又は範囲の各々は、エンドポイントを含む、それらの間の任意の値又は部分範囲を含んでもよい。
【0259】
特定の実施形態では、一定量のRTA RPE製剤を対象の眼の網膜下腔に投与する。特定の実施形態では、網膜下送達方法は、経硝子体又は上脈絡膜であり得る。いくつかの実施形態では、一定量のRTA RPE製剤を対象の眼に注射することができる。
【0260】
特定の実施形態では、RTA RPE治療用細胞組成物は、約100,000細胞/ml~約1,000,000細胞/mlの細胞濃度で製剤化され得る。特定の実施形態では、RTA RPE細胞療法は、約1,000,000細胞/ml、約2,000,000細胞/ml、約3,000,000細胞/ml、約4,000,000細胞/ml、約5,000,000細胞/ml、6,000,000細胞/ml、7,000,000細胞/ml、8,000,000細胞/ml、約9,000,000細胞/ml、約10,000,000細胞/ml、約11,000,000細胞/ml、約12,000,000細胞/ml、13,000,000細胞/ml、14,000,000細胞/ml、15,000,000細胞/ml、16,000,000細胞/ml、約17,000,000細胞/ml、約18,000,000細胞/ml、約19,000,000細胞/ml、又は約20,000,000細胞/mlの細胞濃度で製剤化され得る。本明細書に列挙される値又は範囲の各々は、エンドポイントを含む、それらの間の任意の値又は部分範囲を含んでもよい。
【0261】
複数の実施形態において、本方法は、RPE細胞を対象の眼に投与することを含む。複数の実施形態において、本方法は、対象の眼の網膜下腔にRPE細胞を投与することを含む。複数の実施形態において、本方法は、RPE細胞を対象の眼の硝子体空間、網膜内外、網膜周辺又は脈絡膜内に投与することを含む。複数の実施形態において、本方法は、GA病変上にRPE細胞を投与することを含む。複数の実施形態において、本方法は、対象の眼におけるGAを標的化することを含む。複数の実施形態において、本方法が、GAを持ち上げることによってRPE細胞を投与することを含む。複数の実施形態において、本方法は、GA病変付近の周囲の健康な組織にRPC細胞を投与することを含む。複数の実施形態において、RPE細胞は、単層として投与される。いくつかの実施形態では、細胞組成物が注入される。
【0262】
本明細書に記載されるように生成されたRPE細胞は、対象の眼又は他の場所(例えば、脳内)の様々な標的部位に移植され得る。1つの実施形態によれば、RPE細胞の移植は、RPEの正常な解剖学的位置(視細胞外節と脈絡膜との間)である眼の網膜下腔に対するものである。さらに、細胞の遊走能及び/又は正のパラクリン作用に依存して、硝子体空間、網膜内外、網膜周辺及び脈絡膜内を含むがこれらに限定されない追加の眼区画への移植が考慮され得る。
【0263】
移植は、当技術分野で公知の様々な技術によって行われ得る。RPE移植を行うための方法は、例えば、米国特許第5,962,027号、第6,045,791号及び第5,941,250号、並びにEye Graefes Arch Clin Exp Opthalmol March 1997;235(3):149-58;Biochem Biophys Res Commun Feb.24,2000;268(3):842-6;Opthalmic Surg February 1991;22(2):102-8に記載されている。角膜移植を行うための方法は、例えば、米国特許第5,755,785号及びEye 1995;9(Pt 6 Su):6-12;Curr Opin Opthalmol August 1992;3(4):473-81;Ophthalmic Surg Lasers April 1998;29(4):305-8;Ophthalmology April 2000;107(4):719-24;及びJpn J Ophthalmol November-December 1999;43(6):502-8に記載されている。主にパラクリン効果を利用する場合、半透過性容器又は生分解性細胞外マトリックス内に封入された眼に細胞を送達及び維持することもでき、これはまた、宿主免疫系への細胞の曝露を減少させる(Neurotech USA CNTF delivery system;PNAS March 7,2006 vol.103(10)3896-3901)。
【0264】
いくつかの実施形態では、細胞治療剤は、萎縮性網膜に隣接して埋め込まれる。
【0265】
複数の実施形態において、細胞治療剤は、GAに隣接して投与される。複数の実施形態において、細胞治療剤は、GAに投与される。複数の実施形態において、細胞治療剤は、投与後にGAの少なくとも約20%を覆う。複数の実施形態において、細胞治療剤は、投与後にGAの少なくとも約30%を覆う。複数の実施形態において、細胞治療剤は、投与後にGAの少なくとも約40%を覆う。複数の実施形態において、細胞治療剤は、投与後にGAの少なくとも約50%を覆う。複数の実施形態において、細胞治療剤は、投与後にGAの少なくとも約60%を覆う。複数の実施形態において、細胞治療剤は、投与後にGAの少なくとも約70%を覆う。複数の実施形態において、細胞治療剤は、投与後にGAの少なくとも約75%を覆う。複数の実施形態において、細胞治療剤は、投与後にGAの少なくとも約80%を覆う。複数の実施形態において、細胞治療剤は、投与後にGAの少なくとも約85%を覆う。複数の実施形態において、細胞治療剤は、投与後にGAの少なくとも約90%を覆う。複数の実施形態において、細胞治療剤は、投与後にGAの少なくとも約95%を覆う。複数の実施形態において、細胞治療剤は、投与後にGAの少なくとも約96%を覆う。複数の実施形態において、細胞治療剤は、投与後にGAの少なくとも約97%を覆う。複数の実施形態において、細胞治療剤は、投与後にGAの少なくとも約98%を覆う。複数の実施形態において、細胞治療剤は、投与後にGAの少なくとも約99%を覆う。複数の実施形態において、細胞治療剤は、投与後にGAの約100%を覆う。
【0266】
1つの実施形態によれば、移植は、部分平面硝子体切除手術を介して行われ、その後、小さい網膜開口を介して網膜下腔に細胞が送達されるか、又は直接注射によって行われる。
【0267】
特定の実施形態では、投与は、硝子体切除術と、それに続く小さな網膜切開術によるカニューレを介した黄斑領域の網膜下腔へのRTA治療用細胞組成物の送達を含み得る。細胞用量に応じて、50~100μLの総体積の細胞懸濁液を、GA拡大の潜在的リスクがある領域に埋め込むことができる。
【0268】
いくつかの実施形態では、RTA治療用細胞組成物が、存在する場合にはGAの領域とより良好に保存された中心窩網膜外及びRPE層との間の境界に沿って、黄斑領域に形成された網膜下腔に、硝子体切除後に小さな網膜切開術を通して送達される単一の外科的処置が行われる。蓋検鏡の配置後、標準的な3ポート硝子体切除術を実施することができる。これは、23G又は25G注入カニューレ及び2つの23G又は25/23Gポート(トロカール)の配置を含み得る。その後、コア硝子体切除術を、23G又は25Gの器具を用いて行い、その後、後部硝子体顔面を剥離することができる。RTA治療用細胞組成物は、後極内の所定の部位の網膜下腔に、好ましくは、存在する場合、GAの境界の近くに依然として比較的保存されている領域の網膜を貫通して注射され得る。
【0269】
いくつかの実施形態では、細胞組成物は上脈絡膜注射によって投与される。
【0270】
RPE細胞は、様々な形態で移植され得る。例えば、RPE細胞は、マトリックスとともに単一細胞懸濁液の形態で標的部位に導入され得るか、又はマトリックス若しくは膜、細胞外マトリックス若しくは基質、例えば生分解性ポリマー若しくは組み合わせに接着され得る。RPE細胞はまた、マトリックス又は足場上に印刷され得る。RPE細胞はまた、光受容体などの他の網膜細胞と一緒に移植(同時移植)され得る。処置の有効性は、視覚及び眼の機能及び構造の様々な尺度によって評価され得、これには、とりわけ、最高矯正視力(BCVA)、暗及び明順応状態、全視野、多焦点、焦点又はパターン網膜電図検査5 ERG)での視野測定又は微小視野測定によって測定される光に対する網膜感度、コントラスト感度、読み取り速度、色覚、臨床生体顕微鏡検査、眼底撮影法、光干渉断層法(OCT)、眼底自発蛍光(FAF)、赤外線及び多色イメージング、フルオレセイン又はICG血管造影、養子光学、並びに視覚機能及び眼構造を評価するために使用される追加の手段が含まれる。
【0271】
対象は、RPE細胞の投与前又は投与と同時にコルチコステロイド、例えばプレドニゾロン又はメチルプレドニゾロン、プレドフォルテを投与され得る。別の実施形態によれば、対象は、RPE細胞の投与前又は投与と同時にコルチコステロイド、例えばプレドニゾロン又はメチルプレドニゾロン、プレドフォルテを投与されない。
【0272】
免疫抑制薬は、処置前、処置と同時に及び/又は処置後に対象に投与され得る。免疫抑制薬は、以下のクラスに属し得る:グルココルチコイド、細胞増殖抑制薬(例えば、アルキル化剤又は代謝拮抗剤)、抗体(ポリクローナル又はモノクローナル)、イムノフィリンに作用する薬物(例えば、シクロスポリン、タクロリムス又はシロリムス)。さらなる薬物には、インターフェロン、オピオイド、TNF結合タンパク質、ミコフェノール酸及び低分子生物学的薬剤が含まれる。免疫抑制薬の例としては、間葉系幹細胞、抗リンパ球グロブリン(ALG)ポリクローナル抗体、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)ポリクローナル抗体、アザチオプリン、BAS 1L1 X 1MABO(抗IL-2Ra受容体抗体)、シクロスポリン(シクロスポリンA)、DACLIZUMAB(登録商標)(抗IL-2Ra受容体抗体)、エベロリムス、ミコフェノール酸、RITUX 1MABO(抗CD20抗体)、シロリムス、タクロリムス、タクロリムス及び/又はミコフェノール酸モフェチルが挙げられる。
【0273】
免疫抑制薬は、例えば、局所、眼内、網膜内、又は全身に対象に投与され得る。免疫抑制薬は、これらの方法の1つ又は複数で同時に投与されてもよく、又は送達方法は、互い違いの方法で使用されてもよい。
【0274】
あるいは、RTA RPE細胞療法組成物は、免疫抑制薬を使用せずに投与され得る。
【0275】
抗生物質が、処置前、処置と同時に及び/又は処置後に対象に投与され得る。抗生物質の例としては、オフロックス、ゲンタマイシン、クロラムフェニコール、トブレックス、ビガモックス、又は眼での使用が認可された任意の他の局所抗生物質製剤が挙げられる。
【0276】
いくつかの実施形態では、細胞組成物は、投与後に炎症を引き起こさない。いくつかの実施形態では、炎症は、炎症に関連する細胞の存在を特徴とし得る。
【0277】
いくつかの実施形態において、回復は萎縮面積の減少をもたらす。処置後の指定された時間に、眼底自発蛍光(FAF)を使用して、特に病変の縁の周りの任意の過蛍光を検出することができ、萎縮領域のサイズを測定することができる。病変の全体的な大きさの減少に加えて、病変の周囲の過蛍光辺縁部の大きさの減少又は消失を使用して、処置が疾患の進行を減速又は停止させていることを示すことができる。病変の処置された半分と病変の処置されていない半分との間の過蛍光の差を測定し、処置の有効性を決定するために使用することができる。したがって、同じ眼を処置対象及び対照対象として使用することができる。
【0278】
いくつかの実施形態において、回復は萎縮面積の減少をもたらす。本明細書で使用される場合、「減少する(decrease)」、「低下する(reduce)」、「減少(reduction)」、「最小(minimal)」、「低い(low)」又は「より低い(lower)」という用語は、例えば対照と比較して、基底レベル未満の減少を指す。「増加する(increase)」、「高い(high)」、「より高い(higher)」、「最大(maximal)」、「上昇する(elevate)」又は「上昇(elevation)」という用語は、例えば対照と比較して、基底レベルを超える増加を指す。増加、上昇、減少、又は低下は、対照又は標準レベルと比較して、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%であり得る。本明細書に列挙される値又は範囲の各々は、エンドポイントを含む、それらの間の任意の値又は部分範囲を含んでもよい。
【0279】
特定の実施形態では、処置は網膜層の回復をもたらす。別の実施形態では、眼底自発蛍光の二次元画像を使用する処置効果評価は、光干渉断層法(OCT)を使用して増強される。OCTは、三次元高解像度画像を生成するために使用することができ、特に網膜疾患の処置を受けている対象において、網膜層の構造評価のための重要な断面情報を提供することができる。OCTを使用して、網膜障害の処置が施される前後に網膜の層のプロファイル画像を得ることができる。健康な眼では、網膜組織の個々の層は明確なバンドとして見ることができる。逆に、例えばAMD又はGAによって引き起こされる特徴的な欠陥は、RPE及び光受容体層における劣化の明確に画定された領域として見ることができる。GAを有する多くの眼において、OCT画像は、ブランチ膜と外網状層との間に発達し得るくさび形低反射構造を示し得る。そのような構造の同定及び監視は、AMD及びGAを有する患者における網膜層の生存率を維持することを目的とする治療の臨床試験において重要である光受容体層のOCT境界を定義するのに有用であり得る。
【0280】
OCTにおける網膜層のセグメント化を眼底自発蛍光の代謝マッピングと組み合わせることによって、機能的変化に関連する形態学的変化をより明確に見ることができる。特殊なソフトウェアを使用して、FAF画像に見られる病変領域を定量化し、経時的に追跡することができる。病変を覆うRPE再生の領域を含む処置効果も同定することができ、RPEの回復は網膜の厚さを測定することによって定量化することができる。
【0281】
いくつかの実施形態では、処置は、光受容体の回復をもたらす。RPE細胞は、栄養素、水及びイオン輸送、光吸収、脱落した視細胞外節(POS)の食作用、全トランス型レチナールの11シス型レチナールへの再異性化(これは視覚サイクル、免疫調節、必須因子の分泌及び血液網膜関門の形成にとって重要である)を含む、光受容体生存にとって重要な多くの過程に関与している。RPE単層は、PRと脈絡毛細管(CC)との間の極性化した代謝ゲートキーパとして作用する。RPEは、先端から基底側への構造的及び機能的極性を有する。頂端側では、RPE細胞は、POSとの直接接触を可能にする複数の絨毛を形成し、脈絡毛細管からPRにグルコース及びビタミンAなどの分子を輸送する。基底側では、RPE細胞は、CO2、乳酸塩及び水などの代謝産物を脈絡膜毛細血管に輸送し、血液網膜関門を生成する脈絡膜からRPEを分離する下地の基底ブルッフ膜(BM)を生成する。側壁では、隣接するRPE細胞が密着結合を形成する。バリア機能を使用して、細胞間に形成されたタイトジャンクションを測定することによって、RPE細胞培養物の効力を決定することができる。RPEタイトジャンクションは、RPE単層を横切るイオン及び水の傍細胞移動を制限し、RPE輸送体の正しい頂端-基底分布を維持する。本明細書に開示されるRPE細胞組成物は、100Ωを超える経上皮電気抵抗(TEER)を生成する能力によって決定されるバリア機能を示す。
【0282】
さらに、RPE細胞は、毛様体毛細血管内皮及び光受容体の構造的完全性を維持するのを助ける様々な神経栄養因子、例えば線維芽細胞増殖因子(bFGF及びaFGF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、色素上皮由来因子(PEDF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、血管内皮増殖因子(VEGF)などを分泌する。RPE細胞はまた、眼の免疫特権特性を確立するのに重要な形質転換増殖因子(TGF)-βなどの抗炎症性サイトカインを分泌する。本明細書中に記載されるRTA治療用細胞組成物において使用されるRPE細胞は、神経栄養因子を分泌することができる。本明細書に開示されるRPE細胞組成物はまた、それぞれRPE増殖及び血管形成を増強させる分極PEDF及びVEGF分泌を示す。
【0283】
特定の実施形態では、RPE細胞移植片は、移植された後にこれらの因子を分泌することによって網膜組織を変性させるための長期持続性栄養支持を提供する。この栄養支持は、網膜の分解及び視力喪失を減弱させるように作用し得る一部の対象である。栄養因子は、細胞生存及び分化促進剤として知られている。栄養因子及び栄養因子ファミリーの例としては、ニューロトロフィン、毛様体神経栄養因子/白血病阻害因子(CNTF/LIF)ファミリー、肝細胞成長因子/散乱因子ファミリー、インスリン様成長因子(IGF)ファミリー及びグリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)ファミリーが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載のRPE細胞は、投与又は網膜移植の直後に栄養因子の分泌を開始し得る。さらに、細胞がレシピエント細胞間に組み込まれ、対象の細胞とのシナプス接触を確立すると、神経保護支持の安定した流れが始まり得る。
【0284】
いくつかの実施形態では、RPE細胞の処置/投与は、J.Cell.Mol.Med.Vol 17,No 7,2013 pp.833-843(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)によって記載されているように、RPE細胞の多能性分泌効果をもたらす。
【0285】
いくつかの実施形態では、処置は、外顆粒層(ONL)の回復をもたらし得る。ONL(又は外顆粒の層又は外顆粒層)は、眼の光検出部分である脊椎動物網膜の層の1つである。内顆粒層と同様に、外顆粒層は楕円形核体のいくつかの層を含んでおり、それらは、次の層の杆状体及び錐状体とそれぞれ接続されているため杆状体顆粒及び錐状体顆粒と名付けられている2種類である。
【0286】
球状の杆状体顆粒は、はるかに多数であり、層全体にわたって異なるレベルに配置される。それらの核は特有の横縞模様の外観を呈し、各細胞のいずれかの末端から延長されるのは微細突起である。外側プロセスは、杆状体及び錐状体の層の単一の杆状体と連続している;内端は、拡大された末端の外網状層内にあり、杆状体の双極細胞の外突起が分裂するタフト内に埋め込まれている。その過程で、それは多数の静脈瘤を呈する。
【0287】
茎様錐状体顆粒は、杆状体顆粒よりも数が少ないが、外境界膜の近くに配置され、それを通って杆状体及び錐状体の層の錐状体と連続している。それらは交差剥離を示さないが、細胞をほぼ完全に満たす梨状核を含有する。顆粒の内端から厚い突起が外網状層に入り、そこから錐体拡大又は足板に拡大し、そこから多数の微細なフィブリルが放出され、円錐双極の外突起と接触する。
【0288】
いくつかの実施形態では、処置は、本明細書の他の箇所に記載されるように、エリプソイドゾーンの回復をもたらし得る。
【0289】
いくつかの実施形態では、処置は、網膜の中心窩の回復をもたらし得る。
【0290】
いくつかの実施形態では、処置は、本明細書の他の箇所に記載されるように、血液網膜関門(BRB)の回復又は修復をもたらし得る。
【0291】
いくつかの実施形態では、回復は、細胞外マトリックス(ECM)のリモデリングをもたらし得る。ECMは、周囲の細胞に構造的及び生化学的支持を提供するコラーゲン、酵素、糖タンパク質及びヒドロキシアパタイトなどの細胞外高分子及びミネラルからなる三次元ネットワークである。多細胞性は異なる多細胞系統において独立して進化したので、ECMの組成は多細胞構造間で異なるが、細胞接着、細胞間コミュニケーション及び分化は、ECMの共通の機能である。
【0292】
動物細胞外マトリックスは、間質マトリックス及び基底膜を含む。間質性マトリックスが様々な動物細胞の間に(すなわち、細胞間空間に)存在する。多糖類及び繊維状タンパク質のゲルは間質腔を満たし、ECMにかかるストレスに対する圧縮緩衝液として作用する。基底膜は、様々な上皮細胞が上に存在するECMのシート状の沈着物である。動物における結合組織の各タイプは、ECMのタイプを有する:コラーゲン線維及び骨ミネラルは骨組織のECMを含み、網状線維及び基質は疎性結合組織のECMを含み、血漿は血液のECMである。
【0293】
いくつかの実施形態では、回復は、地図状萎縮の成長の低下、視力の改善、読み取り速度の改善、網膜構造の改善、ドルーゼン(RPE細胞によって除去される廃棄物)の減少、又は細胞の安定な生着のうちの1つ又は複数を含む。
【0294】
複数の実施形態において、回復には、地理的萎縮の成長の減少が含まれる。複数の実施形態において、地図状萎縮の成長を減少させることは、地図状萎縮の大きさを減少させること、例えば、萎縮の総面積を減少させることを含む。複数の実施形態において、地理的萎縮の成長を低下させることは、萎縮性病変の成長を低下させることを含む。複数の実施形態において、萎縮性病変は、孤立している(原発性GAとは無関係である)。複数の実施形態において、地理的萎縮の成長を低下させることは、地理的萎縮の成長率を低下させることを含む。複数の実施形態において、低下は、対照(例えば、予想される成長若しくは成長率、過去の成長若しくは成長率、未処置の眼における成長若しくは成長率、同様の疾患若しくは障害を有する対象についての平均成長若しくは成長率、又は同等な対象における成長若しくは成長率など)と比較される。
【0295】
複数の実施形態において、地理的萎縮の成長は、対照の約98%未満である。複数の実施形態において、地理的萎縮の成長は、対照の約95%未満である。複数の実施形態において、地理的萎縮の成長は、対照の約90%未満である。複数の実施形態において、地理的萎縮の成長は、対照の約85%未満である。複数の実施形態において、地理的萎縮の成長は、対照の約80%未満である。複数の実施形態において、地理的萎縮の成長は、対照の約75%未満である。複数の実施形態において、地理的萎縮の成長は、対照の約70%未満である。複数の実施形態において、地理的萎縮の成長は、対照の約65%未満である。複数の実施形態において、地理的萎縮の成長は、対照の約60%未満である。複数の実施形態において、地理的萎縮の成長は、対照の約50%未満である。複数の実施形態において、地理的萎縮の成長は、対照の約40%未満である。複数の実施形態において、地理的萎縮の成長は、対照の約30%未満である。複数の実施形態において、地理的萎縮の成長は、対照の約25%未満である。複数の実施形態において、地理的萎縮の成長は、対照の約20%未満である。複数の実施形態において、地理的萎縮の成長は、対照の約10%未満である。複数の実施形態において、地理的萎縮の成長は、対照の約1%~約99%である。複数の実施形態において、地理的萎縮の成長は、対照の約10%~約90%である。値は、エンドポイントを含む、列挙された範囲内の任意の値又は部分範囲であり得る。
【0296】
複数の実施形態において、回復には、視力の改善が含まれる。複数の実施形態において、視力の改善は、処置前(ベースライン)の視力などの対照に対する改善を含む。複数の実施形態において、「改善」には、予想されたよりも低い視力の喪失、例えば、対照よりも低い視力の喪失、未処置の眼よりも低い視力の喪失、過去の喪失率よりも低い視力の喪失、同様の疾患又は障害を有する対照についての平均喪失率よりも低い視力の喪失などが含まれる。複数の実施形態において、視力の改善には、総合視力の改善が含まれる。複数の実施形態において、視力の改善には、色覚の改善が含まれる。複数の実施形態において、視力の改善には、周辺視野の改善が含まれる。複数の実施形態において、視力の改善には、遠見視力の改善が含まれる。複数の実施形態において、視力の改善には、視覚特有の社会的機能の改善が含まれる。複数の実施形態において、視力の改善には、視覚特有の精神衛生の改善が含まれる。複数の実施形態において、視力の改善には、視覚特有の依存性の改善が含まれる。
【0297】
複数の実施形態において、視力の改善は、対照と比較して少なくとも5%改善される。複数の実施形態において、視力の改善は、対照と比較して少なくとも10%改善される。複数の実施形態において、視力の改善は、対照と比較して少なくとも20%改善される。複数の実施形態において、視力の改善は、対照と比較して少なくとも25%改善される。複数の実施形態において、視力の改善は、対照と比較して少なくとも30%改善される。複数の実施形態において、視力の改善は、対照と比較して少なくとも40%改善される。複数の実施形態において、視力の改善は、対照と比較して少なくとも50%改善される。複数の実施形態において、視力の改善は、対照と比較して少なくとも60%改善される。複数の実施形態において、視力の改善は、対照と比較して少なくとも70%改善される。複数の実施形態において、視力の改善は、対照と比較して少なくとも80%、90%、100%又はそれ以上改善される。複数の実施形態において、視力は、対照と比較して約5%~約500%改善される。複数の実施形態において、視力は、対照と比較して約5%~約250%改善される。複数の実施形態において、視力は、対照と比較して約5%~約100%改善される。改善は、エンドポイントを含む、列挙された範囲内の任意の値又は部分範囲であり得る。
【0298】
複数の実施形態において、回復は、読み取り速度の改善を含む。複数の実施形態において、読み取り速度の改善は、処置前(ベースライン)の読み取り速度などの対照に対する改善を含む。複数の実施形態において、「改善」には、予想されたよりも低い読み取り速度の喪失、例えば、対照よりも低い読み取り速度の喪失、例えば、未処置の眼よりも低い読み取り速度の喪失、過去の喪失率よりも低い読み取り速度の喪失、同様の疾患又は障害を有する対照についての平均喪失率よりも低い読み取り速度の喪失、同等の対象についての喪失率よりも低い読み取り速度の喪失などが含まれる。
【0299】
複数の実施形態において、読み取り速度の改善は、対照と比較して少なくとも5%改善される。複数の実施形態において、読み取り速度の改善は、対照と比較して少なくとも10%改善される。複数の実施形態において、読み取り速度の改善は、対照と比較して少なくとも20%改善される。複数の実施形態において、読み取り速度の改善は、対照と比較して少なくとも25%改善される。複数の実施形態において、読み取り速度の改善は、対照と比較して少なくとも30%改善される。複数の実施形態において、読み取り速度の改善は、対照と比較して少なくとも40%改善される。複数の実施形態において、読み取り速度の改善は、対照と比較して少なくとも50%改善される。複数の実施形態において、読み取り速度の改善は、対照と比較して少なくとも60%改善される。複数の実施形態において、読み取り速度の改善は、対照と比較して少なくとも70%改善される。複数の実施形態において、読み取り速度の改善は、対照と比較して少なくとも80%、90%、100%又はそれ以上改善される。複数の実施形態において、読み取り速度は、対照と比較して約5%~約500%改善される。複数の実施形態において、読み取り速度は、対照と比較して約5%~約250%改善される。複数の実施形態において、読み取り速度は、対照と比較して約5%~約100%改善される。改善は、エンドポイントを含む、列挙された範囲内の任意の値又は部分範囲であり得る。
【0300】
複数の実施形態において、回復させることは、網膜の1つ又は複数の領域の厚さを増加させること、厚さの損失を防ぐこと、又は厚さの損失率を低下させることを含む。複数の実施形態において、回復させることは、網膜の1つ又は複数の領域の面積を増加させること、面積の損失を防ぐこと、又は面積の損失率を低下させることを含む。複数の実施形態において、回復させることは、網膜の1つ又は複数の領域の体積を増加させること、体積の損失を防ぐこと、又は体積の損失率を低下させることを含む。複数の実施形態において、網膜の領域は、萎縮領域の近傍を含む。複数の実施形態において、網膜の領域は、全網膜、中心窩中心、中心窩、中心萎縮又は病変、末梢萎縮又は病変、多発性病変、RPE、外境界膜(ELM)、外顆粒層(ONL)、外網状層(OPL)、内顆粒層(INL)、内網状層(IPL)、神経節細胞層(GCL)、網膜神経線維層(RNFL)、内境界膜(ILM)、エリプソイドゾーン(EZ)、PRの内側/外側セグメント(IS/OS)のうちの1つ又は複数であり得る。
【0301】
複数の実施形態において、網膜の領域の厚さ、面積又は体積は、対照と比較して少なくとも5%改善される。複数の実施形態において、網膜の領域の厚さ、面積又は体積は、対照と比較して少なくとも10%改善される。複数の実施形態において、網膜の領域の厚さ、面積又は体積は、対照と比較して少なくとも20%改善される。複数の実施形態において、網膜の領域の厚さ、面積又は体積は、対照と比較して少なくとも25%改善される。複数の実施形態において、網膜の領域の厚さ、面積又は体積は、対照と比較して少なくとも30%改善される。複数の実施形態において、網膜の領域の厚さ、面積又は体積は、対照と比較して少なくとも40%改善される。複数の実施形態において、網膜の領域の厚さ、面積又は体積は、対照と比較して少なくとも50%改善される。複数の実施形態において、網膜の領域の厚さ、面積又は体積は、対照と比較して少なくとも60%改善される。複数の実施形態において、網膜の領域の厚さ、面積又は体積は、対照と比較して少なくとも70%改善される。複数の実施形態において、網膜の領域の厚さ、面積又は体積は、対照と比較して少なくとも80%、90%、100%又はそれ以上改善される。複数の実施形態において、網膜の領域の厚さ、面積又は体積は、対照と比較して約5%~約500%改善される。複数の実施形態において、網膜の領域の厚さ、面積又は体積は、対照と比較して約5%~約250%改善される。複数の実施形態において、網膜の領域の厚さ、面積又は体積は、対照と比較して約5%~約100%改善される。改善は、エンドポイントを含む、列挙された範囲内の任意の値又は部分範囲であり得る。
【0302】
特定の実施形態では、網膜疾患を処置又はその進行を遅らせる、その停滞を維持する、又は逆転させることは、微小視野測定で評価した視力の再生によって実証される。微小視野測定は、眼底関連視野測定と呼ばれることもあるが、いくつかの技術のうちの1つを使用して、物体や光源を注視する能力を失った人々の網膜の特定の部分で知覚される光の量の「網膜感度マップ」を作成する視野検査の一種である。微小視野測定で評価された視力の再生は、ベースライン、年齢が一致し、性別が一致する対照、又は対象の他眼と比較した、微小視野測定での網膜感度と網膜の解剖学的変化/欠陥との間の相関を含む。特定の実施形態では、網膜疾患を処置又はその進行の遅らせる、その停滞を維持する、又は逆転させることは、微小視野測定で評価される視力の再生によって実証され、スペクトル領域光干渉断層法(SD-OCT)で見られる解剖学的網膜変化又は萎縮領域と、黄斑完全性評価(MAIA)微小視野測定での網膜感度損失との相関がある。Invest Ophthalmol Vis Sci.2017 May 1;58(6):BIO291-BIO299.doi:10.1167/iovs.17-21834,「Correlation Between Macular Integrity Assessment and Optical Coherence Tomography Imaging of Ellipsoid Zone in Macular Telangiectasia Type 2」;Mukherjee D.et al.を参照のこと(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0303】
他の実施形態では、マップを、年齢が一致し、性別が一致する対照、対象のベースライン又は対象の他眼と比較することによって、網膜疾患の処置又はその進行を遅らせる、その停滞を維持する、又は逆転させることを実証するために、エリプソイドゾーンのトポグラフィーマップ、例えば直交トポグラフィー(正面)マップを、OCTボリュームスキャン、例えばHeidelberg Spectralis OCTボリュームスキャン(15×10°の領域、30μmのBスキャン間隔)又はZeiss Cirrus HD-OCT 4000 512×128キューブスキャンから生成した。EZの組織化と網膜感度との間には相関関係がある。RPE細胞の投与後、EZゾーンが組織化し、網膜感度が改善する。例えば、Retina,2018 Jan;38 Suppl 1:S27-S32.「Correlation Of Structural And Functional Outcome Measures In A Phase One Trial Of Ciliary Neurotrophic Factor In Type 2 Idiopathic Macular Telangiectasia,」Sallo FB,et al.を参照のこと(その全体が参照により組み込まれる)。
【0304】
特定の実施形態では、網膜疾患を処置又はその進行を遅らせる、その停滞を維持する、又は逆転させることは、年齢が一致し、性別が一致する対照、投与前後の対象のベースライン又は他眼と比較して、OCT-Aによって実証される。
【0305】
例えば、スペクトルドメイン(SD)-OCT及びOCT-Aイメージングを使用し、例えばOCT EZマッピングを使用してSD-OCTデータを分析して、黄斑キューブ全体のEZ-網膜色素上皮(RPE)複合体の線形、面積及び体積測定値を得る。OCT-A網膜毛細血管密度は、例えば、Optovue Avantiスプリットスペクトル振幅無相関血管造影アルゴリズムを使用して測定することができる。EZ-RPEパラメータを、年齢が一致し、性別が一致する対照、対象のベースライン又は他眼と比較する。
【0306】
一実施形態では、投与後、EZ-RPE中心窩平均厚さが改善し、EZ-RPE中心窩厚さが改善し、EZ-RPE中心亜領域体積が改善する。EZ-RPEの厚さ、面積、及び体積は、処置応答を測定するための視力の改善と相関している。これらの測定値のそれぞれは、視力と逆相関する。例えばInvest Ophthalmol Vis Sci.2017 Jul 1;58(9):3683-3689,「OCT Angiography and Ellipsoid Zone Mapping of Macular Telangiectasia Type 2 From the AVATAR Study,」Runkle AP.,et alに概説されている方法を参照されたい(その全体が参照により組み込まれる)。
【0307】
一実施形態では、再生は、例えば、外境界膜、筋様体領域(光受容体の内側セグメント)、エリプソイドゾーン(IS/OS接合部)、光受容体の外側セグメント、ドルーゼンの喪失、及び網状偽ドルーゼンの消失を含む1つ又は複数がより組織化されつつあるという主観的評価である。再生はまた、網膜の基本的な基礎層の1つ又は複数がより組織化されつつあるという主観的評価を含むことができる。本明細書で使用される場合、より組織化される網膜の基本的な基礎層は、外境界膜、筋様体領域(光受容体の内側セグメント)、エリプソイドゾーン(IS/OS接合部)、及び光受容体の外側セグメントの1つ又は複数を含む。
【0308】
一実施形態では、エリプソイドゾーンの分析は、年齢が一致し、性別が一致する対照、ベースライン又は他眼と比較したEZ体積の減少によるEZの組織化を実証する。別の実施形態では、EZ体積の減少は、少なくとも2%又は少なくとも5%又は少なくとも7%又は少なくとも10%、又は1~5%、又は1~10%、又は1~50%、又は10~50%を含む。別の実施形態では、EZの組織化は、例えば、EZの構造の体積の減少によって実証され、例えば、ベースラインと2ヶ月目及び3ヶ月目との比較を参照されたい。例えば、EZの体積は、少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%減少する。本明細書に列挙される値又は範囲の各々は、エンドポイントを含む、それらの間の任意の値又は部分範囲を含んでもよい。
【0309】
一実施形態では、再生は、EZ-RPE中心窩平均厚さの改善、EZ-RPE中心窩厚さの改善、及びEZ-RPE中心亜領域体積の改善の1つ又は複数を含む。EZ-RPEの厚さ、面積、及び体積は、処置応答を測定するための視力の改善と相関している。これらの測定値のそれぞれは、視力と逆相関する。
【0310】
いくつかの実施形態では、改善又は回復は、微小視野測定によって測定される。
【0311】
微小視野測定では、網膜の特定の領域が光点で刺激され、対象はボタンを押して刺激の知覚を確認する。機能的及び非機能的領域の識別に加えて、刺激強度を変化させて、網膜の特定の領域の相対感度も識別することができる。眼底は、赤外線カメラを介して監視することができ、視野の感度は、眼底写真にマッピングされ、他の技術で得られた画像と比較することができる。
【0312】
特定の実施形態では、網膜疾患を処置又はその進行を遅らせる、その停滞を維持する、又は逆転させることは、微小視野測定で評価される視力の再生によって実証され、微小視野測定で評価される視力の再生は、ベースライン、年齢が一致し、性別が一致する対照、又は対象の他眼と比較して、微小視野測定での網膜感度と網膜の解剖学的変化/欠陥との間の相関を含む。特定の実施形態では、網膜疾患を処置又はその進行の遅らせること、その停滞を維持すること、又は逆転させることは、微小視野測定で評価される視力の再生によって実証され、スペクトル領域光干渉断層法(SD-OCT)で見られる解剖学的網膜変化又は萎縮領域と、黄斑完全性評価(MAIA)微小視野測定での網膜感度損失との相関がある。Invest Ophthalmol Vis Sci.2017 May 1;58(6):BIO291-BIO299.doi:10.1167/iovs.17-21834,「Correlation Between Macular Integrity Assessment and Optical Coherence Tomography Imaging of Ellipsoid Zone in Macular Telangiectasia Type 2」;Mukherjee D.et al.を参照のこと(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0313】
RPE細胞は、様々な形態で移植され得る。例えば、RPE細胞は、マトリックスとともに単一細胞懸濁液の形態で標的部位に導入され得るか、又はマトリックス若しくは膜、細胞外マトリックス若しくは基質、例えば生分解性ポリマー若しくは組み合わせに接着され得る。RPE細胞はまた、マトリックス又は足場上に印刷され得る。RPE細胞はまた、光受容体などの他の網膜細胞と一緒に移植(同時移植)され得る。処置の有効性は、視覚及び眼の機能及び構造の様々な尺度によって評価され得、これには、とりわけ、最高矯正視力(BCVA)、暗及び明順応状態、全視野、多焦点、焦点又はパターン網膜電図検査5 ERG)での視野測定又は微小視野測定によって測定される光に対する網膜感度、コントラスト感度、読み取り速度、色覚、臨床生体顕微鏡検査、眼底撮影法、光干渉断層法(OCT)、眼底自発蛍光(FAF)、赤外線及び多色イメージング、フルオレセイン又はICG血管造影、養子光学、並びに視覚機能及び眼構造を評価するために使用される追加の手段が含まれる。
【0314】
いくつかの実施形態では、細胞治療剤は、送達装置を使用して網膜下腔に埋め込まれる。いくつかの実施形態では、送達装置は、ニードル、キャピラリー及びチップを備える。複数の実施形態において、送達装置は、約0.63mmの外径及び約0.53mmの内径を有するニードルと、約0.5mmの外径及び約0.25mmの内径を有するキャピラリーと、約0.12mmの外径及び約0.07mmの内径を有するチップとを備える。
【0315】
別の態様では、本明細書に記載、説明又は例示される網膜疾患又は障害の進行を評価する方法が提供される。
【0316】
一態様では、本明細書に記載、説明又は例示される細胞治療薬を製造する方法が提供される。
【0317】
一態様では、本明細書に記載、説明又は図示された評価尺度に従って視覚を評価及び改善する方法が提供される。複数の実施形態において、評価は、以下のうちの1つ又は複数である:地図状萎縮の成長の低下、視力、読み取り速度、網膜構造、ドルーゼンの減少、又は細胞の安定した生着。複数の実施形態において、評価は、地図状萎縮の成長の低下である。複数の実施形態において、評価は、視力である。複数の実施形態において、評価は、読み取り速度である。複数の実施形態において、評価は、網膜構造である。複数の実施形態において、評価は、ドルーゼンの減少である。複数の実施形態において、評価は、細胞の安定な生着である。
【0318】
本明細書で提供される方法について、複数の実施形態において、本方法は、移植された細胞の拒絶の遅延性の炎症を最小限にするか、又は全く生じさせない。複数の実施形態において、本方法は、移植された細胞の拒絶を最小限に抑える。複数の実施形態において、本方法は、移植された細胞の拒絶の遅延性の炎症をもたらす。
【0319】
本明細書で提供される方法について、複数の実施形態において、本方法は、本明細書に記載、説明又は例示される患者集団、患者特性又は患者人口統計を含む。複数の実施形態において、本方法は、本明細書に記載、説明又は例示される患者集団を含む。複数の実施形態において、本方法は、本明細書に記載、説明又は例示される患者特性を含む。複数の実施形態において、本方法は、本明細書に記載、説明又は例示される患者人口統計を含む。
【0320】
いくつかの実施形態では、本方法は、本明細書に記載、説明又は例示される患者(対象)、患者集団、患者特性、又は患者人口統計を選択することをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、患者集団は、網膜疾患起源又はRPE損傷、機能不全若しくは様々な病態からの喪失に関連する網膜疾患に罹患している。いくつかの実施形態では、患者集団は、ドライ型AMD、網膜色素変性症、アッシャー症候群、卵黄様黄斑症、シュタルガルト病、網膜剥離、網膜異形成、網膜萎縮、網膜症、黄斑ジストロフィー、錐体ジストロフィー、錐体-桿体ジストロフィー、蜂巣状網膜ジストロフィー(Malattia Leventinese)、ドインハニカム型ジストロフィー、ソースビー型ジストロフィー、パターン/蝶型ジストロフィー、Best病、ノースカロライナ型ジストロフィー、中心性輪紋状脈絡膜ジストロフィー、網膜色素線条症、毒性黄斑症、病的近視、網膜色素変性、及び黄斑変性からなる群から選択される網膜疾患症状に罹患している。複数の実施形態において、AMDに罹患している患者が選択される。複数の実施形態において、患者は、ドライ型AMDに罹患している。複数の実施形態において、患者は、ウェット型AMDに罹患している。
【0321】
上述の疾患に加えて、記載される方法に従って処置の効果を測定し得る疾患の非限定的なリストには、レーバー先天性黒内障、遺伝性又は後天性黄斑変性、加齢黄斑変性(AMD)、地図状萎縮(GA)、ベスト病、網膜剥離、脳回転状萎縮、コロイデレミア、パターンジストロフィー、並びに光、レーザー、炎症、感染、放射線、血管新生又は外傷性損傷のいずれか1つによって引き起こされる損傷によるRPE、RPE及び網膜損傷の他のジストロフィーも含まれる。特定の実施形態によれば、疾患はドライ型AMDである。別の実施形態によれば、疾患はGAである。
【0322】
複数の実施形態において、本方法は、ドライ型AMDを有する患者を選択することを含む。複数の実施形態において、本方法は、進行したドライ型AMDを有する患者を選択することを含む。複数の実施形態において、本方法は、GAを有するドライ型AMDを有する患者を選択することを含む。複数の実施形態において、本方法は、GAを有する進行したドライ型AMDを有する患者を選択することを含む。複数の実施形態において、本方法は、最高矯正視力(BCVA)が20/200以下の患者を選択することを含む。複数の実施形態において、本方法は、最高矯正視力(BCVA)が20/63~20/250の患者を選択することを含む。複数の実施形態において、本方法は、最高矯正視力(BCVA)が20/250よりも良い患者を選択することを含む。複数の実施形態において、本方法は、最高矯正視力(BCVA)が20/100よりも良い患者を選択することを含む。複数の実施形態において、本方法は、最高矯正視力(BCVA)が20/63よりも良い患者を選択することを含む。複数の実施形態において、本方法は、黄斑領域を含む中心GAを有する患者を選択することを含む。複数の実施形態において、本方法は、黄斑領域を含まずに中心GAを有する患者を選択することを含む。複数の実施形態において、本方法は、末梢GAを有する患者を選択することを含む。複数の実施形態において、本方法は、中心及び末梢GAを有する患者を選択することを含む。複数の実施形態において、本方法は、GAサイズが約0.2mm以上の患者を選択することを含む。
【0323】
本明細書に記載の所見は、本発明の教示によるRPE細胞移植が網膜病変又は変性に罹患している患者の網膜細胞を置換又は救済することができる独特の視点を支持する。重要なことに、原発性萎縮病変から離れた、不完全RPE及び外側網膜萎縮(iRORA)の周辺領域において、OpRegen移植後の広範な消失の例が開示されている(例えば、図21を参照のこと)。
【0324】
装置
本明細書で提供される方法について、実施形態では、方法は、本明細書に記載、提示、又は記載されるデバイス又は装置を含む。
【0325】
一態様では、本明細書に記載、説明又は例示される方法、装置及び組成物に使用するための装置及び/又は組成物が提供される。
【0326】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載の方法のいずれかで使用するための、送達装置を提供する。
【0327】
いくつかの実施形態では、装置は、ニードル、キャピラリー及びチップを備える。いくつかの実施形態では、装置は、約0.63mmの外径及び約0.53mmの内径を有するニードルと、約0.5mmの外径及び約0.25mmの内径を有するキャピラリーと、約0.12mmの外径及び約0.07mmの内径を有するチップとを備える。
【0328】
複数の実施形態において、組成物、方法及び装置は、同種異系(「既製」)の製品候補を利用することができる。例えば、これは、材料が個々の患者ではなく細胞株に由来し、大規模生産を促進し、患者特異的な処置よりも生産コストが低いことを意味し得る
【0329】
方法、装置、組成物などは、参照により本明細書に組み込まれる添付の図面に記載されたものを含むことができる。
【実施例
【0330】
実施例1:24名の患者のOpRegenの第1/2a相臨床試験からの中間結果
OpRegenは、確立された多能性細胞株に由来し、GAを有する進行したドライ型AMD患者の網膜下に移植されたヒト網膜色素上皮細胞の単回注射の第1/2相非盲検用量漸増安全性及び有効性試験で評価された。この試験は、24人の患者を4つのコホートに登録した。最初の3つのコホートは、疾患の進行期を有する対象を登録した。最初の3つのコホートの12人の対象はすべて、法定盲目であり、最高矯正視力(BCVA)は20/200以下であり、GAが進行していた(サイズは約17mm)。第4のコホートには、コホート1~3と比較して疾患の初期段階に提示された12人の対象が登録され、より良好な視力(20/63~20/250の視力)及びより小さいGA面積(最大11mm)を有していた。コホート4にはまた、OpRegenの新しい「解凍及び注射」(TAI)製剤で処置された対象が含まれ、これは現場に直接出荷され、解凍したらすぐに使用することができ、用量調製施設を使用しなければならない複雑性及び物流を排除する。コホート4の最初の3人の対象は以前の製剤で処置され、コホート4の最後の9人の対象は「TAI」製剤で処置された。この試験の主な目的は、処置によって発現した有害事象の発生率及び頻度によって評価されるOpRegenの安全性及び忍容性を評価することであった。副次的目的は、主要な臨床的関連性の様々な方法によって測定された眼科的パラメータの変化を評価することによって、OpRegen処置の予備的有効性を評価することであった。さらなる目的は、ジャイロスコープSDSを使用したOpRegenの送達の安全性の評価を含む。
【0331】
コホート4で処置された12人の対象は、より良好なベースライン視力及びより小さな領域の地図状萎縮(GA)を有していた。コホート1~3では、ベースライン時に法定盲目であった対象では、進行性GAのために予想通り視力(VA)低下が生じた。コホート4では、GAの面積が小さく、ベースラインの最高矯正視力(BCVA)が高い、改善又は持続したBCVAが、最後の来院時に11/12(92%)の対象で観察された(-7~+19のETDRS文字の範囲)。OpRegenは、免疫抑制(COVID又は他の健康状態)がより少ない2人の対象を含めて、すべての処置対象(N=24)で忍容性が高かった。急性又は遅延性の炎症及び持続的な眼内圧上昇(IOP)は観察されなかった。すべての対象が少なくとも1つの有害事象(AE)を報告したが、AEの大部分は軽度であった(87%)。眼関連障害系のAE(n=165事象)には以下が含まれる:経毛様体扁平部硝子体切除術(PPV)処置対象(n=17対象;54.7歳F/U)ではn=136、Orbit SDS処置対象(n=7対象;6.9歳F/U)ではn=29。持続的な網膜下色素沈着は、OpRegenの複数年の耐久性を示唆した。ドルーゼンの減少、光受容体及びRPE層の回復、処置領域におけるGA進行の局所的な遅延、ETDRSスコア及び読み取り速度によるより良好な視力、及び改善されたNEI視覚機能アンケート(VFQ-25)スコア(National Eye Institute Visual Functioning Questionnaire-25(NEI VFQ-25)バージョン2000-面接者管理形式)を含む、解剖学的構造及び機能の改善がいくつかの対象で観察され続けている。処置後の外科的介入は、以下を含む4例(4名の対象における5つの事象)で発生した:3つの網膜上膜(ERM)を外科的に剥離し(ERMは17人の対象のうち15人で観察され、ほとんどは臨床的に有意ではなかった)、PPV網膜切開術によって細胞を受けた17人の対象のうち2人で網膜剥離(RD)が観察され、処置応答性の脈絡膜血管新生(CNV)が3人のOrbit SDS処置対象で観察され、全員が承認された抗VEGFの単回投与を受けた。OpRegen TAI製剤を7名のOrbit SDS処置対象及び2名のPPV処置対象に投与した。網膜下液のゆっくりとした再吸収が、続発症を伴わずに、4名のOrbit SDS/TAI処置対象において認められた。臨床的利益の評価は進行中であり、標準的なFAF測定に加えて詳細なOCT分析を利用している。対象の長期追跡調査は進行中である。
【0332】
最小有効用量及び持続期間の免疫抑制療法を投与するための継続的な試みの一部として、免疫抑制は、コホート4の対象において約3ヶ月の周術期の間にのみ利用された。注目すべきことに、タクロリムスを含まず、ミコフェノール酸モフェチルのみを含むベースラインで修正免疫抑制レジメンを受けた一人のOpRegen患者は、移植後4.5ヶ月でOpRegen細胞の急性又は遅延性の炎症又は拒絶の徴候を示さなかった。1人の患者は処置直後にCOVIDと診断され、すべての免疫抑制を停止し、患者が無症候性になった時点で再開した。この2人目の患者も同様に、術後4.5ヶ月でOpRegen細胞の急性又は遅延性の炎症又は拒絶の徴候を示さなかった。上記の軽減されたレジメン以外に、免疫抑制剤は予定通り、典型的には術後90日以内に中止され、OpRegenによる急性又は遅延性の拒絶又は炎症の症例は報告されなかった。
【0333】
9人の対象をOpRegenの新しい「解凍及び注射」(TAI)製剤で処置し、7人をGyroscope Orbit(商標)Subretinal Delivery System(Orbit SDS)を使用して処置した。処置後3ヶ月(図1)及び9ヶ月(図2)の、処置眼のGA内の色素沈着領域の代表的なFP画像を示す。色素沈着領域は、GA内のRPE細胞の存在の証拠である。
【0334】
全体として、コホート4の対象の処置眼の11/12(92%)は、移植後4.5ヶ月~3年超でベースライン視力以上であった。最高矯正視力(BCVA)の改善は、糖尿病性網膜症早期処置研究(ETDRS)チャートで最大+19文字に達した。対照的に、対象の未処置眼の11/12(92%)は、同じ時点でベースラインエントリー値未満であった。新たに報告されたデータの中で、最近処置されたコホート4対象の3人(50%)が、少なくとも4.5ヶ月の最後の予定された評価で+7~+16文字の範囲のBCVAの顕著な改善を示した。2名のさらなるコホート4の対象は、ベースライン値から2文字の増加を経験した。1人の患者は、ベースラインより7文字下であった。以前に報告された一部の対象における網膜の構造的改善及びドルーゼン密度の減少は継続している。OpRegen RPE細胞の永続的な生着の証拠は、最も早期に処置された対象において5年超に及んだ。他眼と比較して処置された方がGAの進行が遅い傾向が続いた。全体として、OpRegenは良好に忍容され、予想外の有害事象又は重篤な有害事象はなかった。
【0335】
以下の表1、表2及び表3のデータは、コホート4の5人の対象(14、15、13、16及び17)の記録値の変化をまとめたものである。視覚カテゴリについては、5人の対象全員が改善を認めた。視覚カテゴリについて組み合わせた5人の対象すべての記録値の平均変化は18%であった。
【0336】
網膜回復の証拠及び確認されたGA増殖の病歴(9ヶ月で最初に報告された)を有するコホート4の対象は、23ヶ月目に、ベースライン時よりも小さいGAの面積を維持していた。この対象はまた、処置後9ヶ月~23ヶ月でBCVAのさらなる改善を経験したが、未処置眼は視力のさらなる低下を経験している。
【0337】
コホート4の経時的な(1ヶ月~24ヶ月)視力の個々の変化を図3(ベースラインからのETDRS文字の数の変化によって測定)及び図8(読み取り速度によって測定)に示す。視力の平均変化(ベースラインからのETDRS文字の数の変化によって測定)を図5に示す。処置した眼におけるGAのサイズの平均変化を図4に示す。
【0338】
個々の対象のデータを図6及び図7A図7Cに示す。
【0339】
【表1】
【0340】
【表2】
【0341】
【表3】
【0342】
すべての質問を含む空白のアンケート(National Eye Institute Visual Functioningアンケート25(VFQ-25)バージョン2000-面接者管理形式)は、参照により本明細書に組み込まれる。アンケートは、スクリーニング訪問11、訪問17、訪問18、訪問19、訪問20、訪問21及び訪問22で投与された。表4に示す項目を平均すると、VFQ-25サブスケールが生成された。
【0343】
【表4】
【0344】
臨床試験データからの観察には、生活の質の改善、読み取り速度の改善、及び微小視野測定の改善が含まれる。
【0345】
実施例2:GAを伴うドライ型AMDを有する対象における網膜回復
網膜回復は、本明細書中で使用される細胞が、GA境界を測定するために使用される一般的な画像化技術であるFAFのもとで自家蛍光しないので、観察することが困難である。IRによる測定は、萎縮境界を評価する方法として受け入れられていない。高分解能OCTは、GA病変境界及び網膜の微細層を測定するためのFAFの代替法である。このようにOCTを使用することは、それ自体の制限を伴うより遅い手動プロセスであるが、ケーキの層のように、網膜内の個々の細胞型を区別する能力を提供する(例:ONL、OPL、RPE)。図9図12図14図16図18図22図26図28及び図30は、ベースライン及び処置後の萎縮領域のいくつかの断面及び「空中」の視点を示す。
【0346】
対象14は、処置後9ヶ月及び23ヶ月でOPL、ONL、ELM、RPE及び外側網膜の再生/回復の解剖学的改善を有していた(図9~15)。同様に、対象21は、1ヶ月目にGA境界の減少並びに解剖学的改善及びELMの回復(図16及び図17)、並びに以前の(原発性GAから分離された)萎縮領域のほぼ完全な回復を有し、欠損層の再生及び萎縮性病変の「消失」を有していた(図18)。処置後2及び3ヶ月で改善が見られた(図18図22)。GAへのRPE送達は、処置手順中並びに処置後2ヶ月及び3ヶ月に対象14で観察された(図31)。
【0347】
微小視野測定。図15は、回復領域も機能的であり得るという予備的証拠を示す(単に組織を見ることは組織が活性であることを意味しない)。微小視野測定は、視覚に使用される領域を「マッピング」するために、網膜上にピンポイント光をフラッシュすることを含む。微小視野測定データは収集が困難であるため、少数の時点で少数の対象にしか存在しない。しかしながら、それらは、患者14が回復領域で視覚能力を有するという少なくともいくつかの証拠を提供する。
【0348】
対象22は、未処置眼と比較して処置眼の視力及びGAサイズの改善を示した(図23)。対象22における処置後3ヶ月での色素沈着は、RPE細胞の存在を示した(図24)。IR画像化によって測定されるGAサイズは、3ヶ月でのGAの境界の減少を実証し(図25)、OCT測定(図26~30)も同様である。
【0349】
対象14を35ヶ月間追跡した。別個の組織層は23ヶ月で検出可能であったが、9ヶ月では存在しなかった。観察期間を通して、及び萎縮の全(周辺)領域にわたってこの現象の例が多数あった。出願人らは、処置前の年の患者のGA成長率を測定し、未処置の成長率に基づく患者のGAサイズの外挿を可能にした。GAは3年間ベースラインと比較して変化しないままであり、これは疾患の自然経過(すなわち、状況は次第に悪化する)を考慮すると、これは予想されないことであった。患者の処置された眼は最近になってようやくベースラインを下回ったが、患者がもはや視力のために使用していない反対側の眼よりもはるかに良好なままである。対象14はオリジナルの症例であり、効果の持続性を示す。
【0350】
対象21の新たな所見。同様の観察が、2.5ヶ月という早期に異なる患者において検出された。分析は外側網膜領域のみで行った。ベースラインは、予想される場所でELM、EZの喪失を伴う予想されるGA/cRORAを示した。3週間後、ELM/EZの明らかな部分的再形成を含む有意な外側網膜変化が観察された。EZのびまん性肥厚及び非晶質の高反射網膜下物質が存在した。6週間で、いくつかのEZ変化が持続したが、EZの消失も生じた。RPE/ブルッフの肥厚も観察された。
【0351】
対象22の新たな所見。対象22は、自身の処置経験を「生活変化」と呼んだ女性である。GAの周りの様々な位置におけるELMの新しい材料及び拡張、並びに主要領域に接続されていないGAのいくつかの小さな領域又は「島」が特定された。3ヶ月までに、これらの島は処置後に消失しており、早期の介入がドライ型AMDにおいてより良好な臨床転帰をもたらすという主張を裏付けている。患者22をOrbit SDSを用いて処置した。
【0352】
ベースラインは、多焦点サテライトを伴う中心GA/cRORAを示した。EZ/ELM/過剰透過の予想される損失は、RPEを通して観察された。4週目に、大きな網膜下液貯留を伴う黄斑円孔形成があった。RPE表面上の多数の沈着物がIR及びOCTで同定された。6週目に、残留網膜下液及び新しい物質がRPEの表面上に明らかになった。PEDが、非常に高反射性の内部物質(可能性のある1型CNV)により明らかであった。3ヶ月までに、すべての網膜下液が消散し、網膜下物質が残存し、大きな中心網膜下沈着物が現れた。新しい上網膜内液があった。4ヶ月までに、ELMの伸長が多くの場所で認められた。網膜下物質が増加した。眼底写真上の網膜出血は、流体の領域及びブルッフを通る1型CNVの可能性のある芽の領域に対応し得る。FAFではRPE喪失の全体的な拡大があったが、色素沈着の増加及び定義された萎縮の境界へのELMの拡大があった。
【0353】
概要
対象14、21及び22では、移植細胞が回復した症例がGAの大部分を占めていた。細胞配置は、Orbit評価に重要な意味を有するこれらの結果を達成するために重要であると思われる。対象14(GAの完全なカバレッジを有する患者)における回復を見た後、外科医は、最終的な7人の対象においてGAにわたって細胞を送達するためにより大きな努力をした。最後の4人のOrbit対象では、高度に訓練された外科医の手に委ねられたにもかかわらず、1人だけがGAにわたって細胞を首尾よく堆積させた。対照的に、PPVにアクセスした処置の両方がこれを首尾よく達成することができた(PPVはこの点に関してより柔軟である)。第3の症例(Pt.#22)では、Orbitを使用して、完全なカバレッジを完了した同じ外科医によって部分的なカバレッジが達成された。
【0354】
回復はこの時点で臨床転帰と完全に相関していなかったが、いくつかの興味深いつながりが引き出され得る。しかし、AMDを処置するための任意の他のアプローチで以前に回復が観察されていないことを考えると、機能回復が起こる場合に機能再生の動態を予測するのを助ける先行例はない。
【0355】
実施例3:加齢黄斑変性(AMD)のドライ型及びウェット型についての重要な調節エンドポイント
予想される有効性エンドポイントは以下の通りである。主要有効性エンドポイントFAFに基づく試験対象の眼におけるGA病変(複数可)の総面積(mm)のベースラインから12ヶ月目までの変化。
【0356】
主要な副次的有効性エンドポイント。1)24ヶ月目(選択された国)のMinnesota Reading(MNRead)又はRadner Reading Chartsによって評価された、単眼読み取り速度(試験対象の眼)のベースラインからの変化。2)24ヶ月目の、機能的読み取り独立指数(FRII)複合スコアのベースラインからの変化。3)ETDRSチャートによって評価した24ヶ月目の正常輝度最高矯正視力スコア(NL-BCVA)のベースラインからの変化。4)ETDRSチャートによって評価した12ヶ月目及び24ヶ月目の低輝度最高矯正視力スコア(LL-BCVA)のベースラインからの変化。5)12ヶ月目及び24ヶ月目の低輝度不足(LLD)のベースラインからの変化。6)FAF(選択部位)によって評価した場合の試験対象の眼におけるGA病変(複数可)の総面積(mm)の各計画された評価でのベースラインからの変化。7)MNRead又はRadner Reading Chartsによって評価された、12ヶ月目及び24ヶ月目(選択された国)の単眼限界印刷サイズ(試験対象の眼)のベースラインからの変化。8)12ヶ月目及び24ヶ月目のNational Eye Institute Visual Functioning Questionnaire 25アイテムバージョン(NEI VFQ-25)遠方活動サブスケールスコアのベースラインからの変化。9)黄斑機能的応答の評価のために薄明視微小視野測定によって評価される暗点の数(Oaks試験のみ)。10)黄斑機能的応答の評価のための薄明視微小視野測定によって評価される黄斑感度の変化。11)経時的なAPL-2の全身血漿濃度。
【0357】
安全性エンドポイント。1)眼及び全身の処置によって発現した有害事象の発生率及び重症度。2)APL-2に対する抗治療抗体の発生率。3)試験対象の眼における新しい活性CNVの発生率。
【0358】
ドライ型AMD試験における重要な副次的エンドポイントのいくつかに関する詳細は以下の通りであった。48週目での、薄明視顕微測定によって評価される絶対暗点の数のベースラインからの変化[時間枠:ベースライン、48週目]。暗点は、黄斑を中心とし、試験した範囲内の網膜感度の欠如を報告した微小視野測定検査の試験点であり、最大68点がこの範囲内で試験された。より高い結果は、絶対暗点の拡大及びより高い数の絶対暗点を示す。薄明視微小視野測定評価を、試験対象の眼のみの拡張後に実施し、データを中央読み取りセンターに転送した。データは、試験の早期終了のため、96週目ではなく48週目まで収集した。ベースラインからの正の変化は、絶対的な暗点の数の増加(より多くの網膜感度の欠如);疾患の悪化を示す。
【0359】
48週目での、薄明視微小視野測定によって評価される平均黄斑感度のベースラインからの変化[時間枠:ベースライン、48週目]。薄明視微小視野測定を使用して黄斑感度を評価し、評価を試験対象の眼のみの拡張後に実施し、データを中央読み取りセンターに転送した。ベースラインからの負の変化は、平均黄斑感度の減少;疾患の悪化を示す。データは、試験の早期終了のため、96週目ではなく48週目まで収集した。
【0360】
48週目の糖尿病性網膜症早期処置研究(ETDRS)チャートによって評価した最高矯正視力(BCVA)スコアのベースラインからの変化[時間枠:ベースライン、48週目]。BCVAスコアは、4メートル(m)の開始距離で評価したETDRS視力チャート上で正しく読み取られた文字の数に基づいた。BCVAスコア試験を、眼を拡張する前に行った。BCVAスコアは、試験対象の眼において0~100文字の範囲である。アイチャート上で正しく読み取られた文字の数が少ないほど、視覚(又は視力)は悪くなる。ベースラインからの負の変化は、視力の低下;疾患の悪化を示す。データは、試験の早期終了のため、96週目ではなく48週目まで収集した。
【0361】
48週目での、BCVAスコアにおいてベースラインから15文字未満の喪失を有する参加者のパーセンテージ[時間枠:48週目]。ベースラインからの15文字未満の喪失を、4メートル(m)の開始距離でETDRSチャートによって評価した。BCVAは、アイチャートを使用して測定し、正しく読み取られた文字の数(0~100文字の範囲)として報告した。アイチャート上で正しく読み取られた文字の数が少ないほど、視覚(又は視力)は悪くなる。データは、試験の早期終了のため、96週目ではなく48週目まで収集した。
【0362】
48週目での、低輝度条件下でのETDRSチャートによって評価した低輝度視力(LLVA)のベースラインからの変化[時間枠:ベースライン、48週目]。LLVAは、その眼の最高矯正に2.0-log単位の中立密度フィルターをかけ、参加者に通常照射されたETDRSチャートを読み取らせることによって測定した。評価は、眼を拡張する前に行った。LLVAスコアは、試験対象の眼において0~100文字の範囲である。アイチャート上で正しく読み取られた文字の数が少ないほど、視覚(又は視力)は悪くなる。データは、試験の早期終了のため、96週目ではなく48週目まで収集した。
【0363】
48週目での、LLVAスコアにおいてベースラインから15文字未満の喪失を有する参加者のパーセンテージ[時間枠:48週目]。ベースラインからの15文字未満の喪失を、4mの開始距離でETDRSチャートによって評価した。データは、試験の早期終了のため、96週目ではなく48週目まで収集した。
【0364】
48週目での、Minnesota低視力読み取り試験(MNRead)チャート又はRadner読み取りチャートによって評価した両眼読み取り速度のベースラインからの変化[時間枠:ベースライン、48週目]。MNRead視力カードは、正常及び低視力参加者の読み取り視力及び読み取り速度を測定するのに適した連続テキスト読み取り視力カードであった。MNRead視力カードは、等しい数の文字を有する単一の単純な文からなっていた。ストップウォッチを使用して、10分の1秒までの時間を記録した。視覚のために読み取ることができなかった、又は試行されなかった文は、時間が0、エラーが10として記録されるべきである。Radner Reading Cardは、読み取り速度、読み取り視力、及び限界印刷サイズの測定に適していた。読み取り時間が20秒を超えたとき、又は参加者が重大なエラーを起こしたときに読み取り試験を停止した。ベースラインからの負の変化は、両眼読み取り速度の減少;疾患の悪化を示す。データは、試験の早期終了のため、96週目ではなく48週目まで収集した。
【0365】
48週目での、MNReadチャート又はRadner読み取りチャートによって評価した単眼最大読み取り速度のベースラインからの変化[時間枠:ベースライン、48週目]。MNRead視力カードは、正常及び低視力参加者の読み取り視力及び読み取り速度を測定するのに適した連続テキスト読み取り視力カードであった。MNRead視力カードは、等しい数の文字を有する単一の単純な文からなっていた。ストップウォッチを使用して、10分の1秒までの時間を記録した。視覚のために読み取ることができなかった、又は試行されなかった文は、時間が0、エラーが10として記録されるべきである。Radner Reading Cardは、読み取り速度、読み取り視力、及び限界印刷サイズの測定に適していた。読み取り時間が20秒を超えたとき、又は参加者が重大なエラーを起こしたときに読み取り試験を停止した。ベースラインからの負の変化は、単眼読み取り速度の減少;疾患の悪化を示す。データは、試験の早期終了のため、96週目ではなく48週目まで収集した。
【0366】
48週目のnational eye institute visual functioning questionnaire 25項目(NEI VFQ-25)バージョン複合スコアのベースラインからの変化[時間枠:ベースライン、48週目]。NEI-VFQ-25アンケートは、25の項目を含み、それに基づいて全体的な複合VFQスコア及び12のサブスケールが導出された:近方活動、遠方活動、全般的な健康、総合視力、眼痛、視覚特有の社会的機能、視覚特有の精神衛生、視覚特有の役割の困難、視覚特有の依存、運転、色覚及び周辺視野。各質問に対する応答は0~100スコアに変換された。各サブスケール、合計スコア=スコアに寄与する項目の平均。各サブスケール及び総スコア、スコア範囲:0~100、より高いスコアはより良好な機能を表す。ベースラインからの負の変化は、視覚機能の低下;疾患の悪化を示す。データは、試験の早期終了のため、96週目ではなく48週目まで収集した。
【0367】
48週目での、NEI VFQ-25近方活動サブスケールスコアのベースラインからの変化[時間枠:ベースライン、週]。NEI-VFQ-25アンケートには25の項目が含まれ、それに基づいて近方活動が測定された。近方活動は、新聞の普通の印刷物を読むこと、近見視力を必要とする仕事又は趣味を行うこと、又は混雑した棚で何かを見つけることと定義される。各質問に対する応答は0~100スコアに変換された。サブスケール=スコアに寄与する項目の平均。このサブスケールでは、スコア範囲は0~100であり、より高いスコアはより良好な機能を表す。ベースラインからの負の変化は、近方視覚活動の低下;疾患の悪化を示す。データは、試験の早期終了のため、96週目ではなく48週目まで収集した。
【0368】
48週目での、NEI VFQ-25遠方活動サブスケールスコアのベースラインからの変化[時間枠:ベースライン、48週目]。NEI-VFQ-25アンケートには25の項目が含まれ、それに基づいて遠方活動が測定された。遠方活動は、道路標識又は店舗名を読むこと、及び階段、段差、又は縁石を降りることとして定義される。各質問に対する応答は0~100スコアに変換された。サブスケール=スコアに寄与する項目の平均。このサブスケールでは、スコア範囲は0~100であり、より高いスコアはより良好な機能を表す。ベースラインからの負の変化は、遠方視覚活動の低下;疾患の悪化を示す。データは、試験の早期終了のため、96週目ではなく48週目まで収集した。
【0369】
48週目の平均機能的読み取り独立(FRI)指数のベースラインからの変化[時間枠:ベースライン、48週目]。FRIは、GA AMD参加者に最も関連する機能的読み取り活動に関する7項目を有する面接者管理アンケートであった。それは、1つの総合指数スコアを有する。過去7日間に行われた各FRI指数読み取り活動について、参加者は、視覚補助、活動の調整、又は別の参加者からの支援を必要とする程度について尋ねられた。平均FRI指数スコアは1~4の範囲であり、スコアが高いほど独立性が高いことを示す。ベースラインからの負の変化は、FRIの低下;疾患の悪化を示す。データは、試験の早期終了のため、96週目ではなく48週目まで収集した。
【0370】
実施例4:厚さ及び面積を測定するためのSD-OCTイメージング
網膜の異なる層の厚さ、面積及び体積を処置した眼において決定した。SD-OCT画像を、Spectralis(Spectralis;Heidelberg Engineering,Inc.,Heidelberg,Germany)、中心窩を中心とする20×20度の視野内の512×49の等間隔のBスキャンからなる黄斑体積を用いてキャプチャーした。すべてのBスキャンの網膜層を、3D-OCTOR(Doheny Eye Instituteで開発)を使用して厚さ及び面積の測定のために手動でセグメント化した。具体的には、外顆粒層、視細胞内節(ミオイドゾーン)、視細胞外節(エリプソイドゾーン)、及びRPE+ドルーゼン複合体を、黄斑容積内のすべてのBスキャンを使用して手動でセグメント化した。
【0371】
例示のBスキャンを図33A図33Cに示す。Bスキャン(図33A)を境界に基づいて層に分割し(図33B)、層の厚さ及び面積を決定した(図33C)。厚さマップは、全網膜、ONL、視細胞外節、RPE+ドルーゼン複合体(図34、それぞれ左から右)、及び視細胞内節の厚さを示す。個々の対象の例示的な厚さマップを図35図52に示す。結果を表5~表10に示す。
【0372】
【表5】
【0373】
【表6】
【0374】
【表7】
【0375】
【表8】
【0376】
【表9】
【0377】
【表10】
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【表11】
【0379】
【表12】
【0380】
実施例5:
RPE処置は血液網膜関門の回復をもたらす
RPEは非常に高いレベルのPEDFを分泌し(2000~4000ng/ml/日のOpRegenレベルについて測定した)、これは治療効力に寄与する。PEDFは、インビボでRPE及びミュラーグリアによって分泌される50kDaのタンパク質であり、抗血管新生作用、老化及び酸化ストレスによって乱されたミトコンドリア動態を回復させることによる光受容体の神経保護機能、(マスター因子NF-KappaBとの相互作用による)抗炎症活性、細胞外マトリックス(コラーゲン及びプロテオグリカン)への結合による抗線維化活性などの有益な機能を有している。OpRegen処置された対象では、これは、ドルーゼンを有する/有さない患者におけるフルオレセイン血管造影(FA)の改善、及び移植後2~4週間という早期に見られるGA病変内のECMリモデリング又は瘢痕減弱の可能性のある徴候を伴うOCT画像化によって証明される。
【0381】
対象8におけるベースラインFA検査は、大量のフルオレセイン色素が硝子体腔に漏出することを示し、それにより脈絡膜フラッシュ及び動脈相中の血管灌流の視認性が遮断され、血液網膜関門の破壊及びパラ炎症が眼内に予め存在することが示唆された(図53)。移植後22ヶ月で、FA検査は、明らかな脈絡膜及び網膜血管灌流を示し、硝子体腔に漏出する色素はなく、OpRegenがおそらく複数の作用機序によって(例えばPEDFの様々な対象を介する)破壊されたBRBの完全性を回復したことを示している。図54A図54Dは、OpRegen細胞療法によるBRBの回復又は修復の3つのさらなる例を提供する。
【0382】
対象8は、後部網膜全体に広がる広範なドルーゼンを有する患者の典型例である。図55は、ドルーゼンの消失が、上部の移植片領域から始まり(左上)、術後8ヶ月で残った小さな細長いバンドを除いて、下方へ移動してほぼ後部全体を清浄化したことを示す(上、左から2番目、大きな円)。OCTイメージングの特徴は、ベースライン(右上及び右下)と比較して5.5ヶ月(上、右から2番目)及び8ヶ月(下、右から2番目)でカラー眼底写真と一致しており;subRPEドルーゼンは有意に減少又は消失した。宿主網膜組織は減弱しているようであり、これは、高レベルのPEDFの存在によってもたらされる生物学的効果に部分的に、場合によってはそれに起因して、ECMリモデリングの可能性を示唆している。
【0383】
11ヶ月で、対象8では、大きなドルーゼンが消失した後、移植片が宿主網膜をリモデリングし続けた(図56A図56C)。FAは、有意に減少した染色を示したが(ドルーゼン)、網膜血管構造をぼやかすベールのような膜を有するようであった。眼底検査の22ヶ月で、網膜組織は、おそらくその抗炎症効果、又はPEDFがマトリックス外代謝回転を調節する役割を有するECM洗浄のために、ベースラインのものと比較してより鮮明に見える。
【0384】
図57は、初期段階、中期段階及び後期段階からのFA検査の時間経過を提供しており、網膜の健康の有意な改善、全体にわたる血管灌流のより良好な視認性、及び炎症の減少を実証する。網膜組織は非常にきれいに見える;このFAパターンは、他の治療様式では以前に報告されていない。これは、OpRegenの治療効果に非常に独特である。
【0385】
本明細書で提供されるすべての参考文献(すべての非特許文献、特許、及び特許公報を含む)は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
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図60A
図60B
【国際調査報告】