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特表2023-528375抗CD200R1抗体及びその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-04
(54)【発明の名称】抗CD200R1抗体及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230627BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230627BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230627BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230627BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20230627BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230627BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230627BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/28
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12P21/02 C
A61P35/00
A61K39/395 N
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573152
(86)(22)【出願日】2021-05-28
(85)【翻訳文提出日】2022-12-08
(86)【国際出願番号】 US2021034852
(87)【国際公開番号】W WO2021243204
(87)【国際公開日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】63/032,508
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521269861
【氏名又は名称】23アンドミー・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】23andME,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ユウ
(72)【発明者】
【氏名】フェノー,ジリアン,ベス
(72)【発明者】
【氏名】フー-ケリー,ジャーメイン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ヤオ-ミン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ウエイ-ジェン
(72)【発明者】
【氏名】カーラー,エリック,エドワード
(72)【発明者】
【氏名】レイ,セシリア
(72)【発明者】
【氏名】ピッツ,スティーブン,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】シャーフ,ルイーゼ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG26
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA91X
4B065AA93X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC412
4C084ZC75
4C085AA14
4C085BB11
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、ヒトCD200R1受容体タンパク質(hu-CD200R1)に特異的に結合し、hu-CD200R1によって媒介される免疫調節効果を減少、阻害、及び/又は完全にブロックすることができる、抗体及び抗原結合断片などの結合タンパク質を提供する。本開示はまた、抗体(及びその組成物)を使用して、CD200R1へのCD200の結合によって媒介される免疫調節機能又は活性の減少、阻害及び/又はブロックに応答する疾患及び状態を治療する方法も提供する。

【選択図】図8C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)第1の軽鎖超可変領域(HVR-L1)、第2の軽鎖超可変領域(HVR-L2)、及び第3の軽鎖超可変領域(HVR-L3)、並びに/又は(ii)第1の重鎖超可変領域(HVR-H1)、第2の重鎖超可変領域(HVR-H2)、及び第3の重鎖超可変領域(HVR-H3)を含む抗CD200R1抗体であって、
(a)HVR-L1が、RASESVDYSGNSFMH(配列番号11)、SASSSVSYMY(配列番号19)、RASKSISKYLA(配列番号27)、RASKSISKYLA(配列番号35)、QASHTINLN(配列番号43)、QASHTINLN(配列番号51)、RASKSVSTSGYSYMH(配列番号59)、及びRASESVDYSGNSFMH(配列番号77)から選択されるアミノ酸配列を含み、
(b)HVR-L2が、RASNLES(配列番号12)、LTSKLAS(配列番号20)、SGSTLQS(配列番号28)、SGSTLQS(配列番号36)、GTSNLED(配列番号44)、GTSNLED(配列番号52)、LASNLES(配列番号60)、及びRASNLES(配列番号78)から選択されるアミノ酸配列を含み、
(c)HVR-L3が、HQSNEDPPT(配列番号13)、QQWSSYPLT(配列番号21)、QQYNEYPWT(配列番号29)、QQYNEYPWT(配列番号37)、LQHTYLPWT(配列番号45)、LQHTYLPWT(配列番号53)、QHNRELLT(配列番号61)、及びHQSNWDPPT(配列番号79)から選択されるアミノ酸配列を含み、
(d)HVR-H1が、TNYAVS(配列番号15)、KDDYMH(配列番号23)、KDDYMH(配列番号31)、KDDYIH(配列番号39)、KDDYIH(配列番号47)、TSYWMH(配列番号55)、TSYVMF(配列番号63)、TNYRVS(配列番号81)、及びTNYWVS(配列番号85)から選択されるアミノ酸配列を含み、
e)HVR-H2が、VMWAGGGTNYNS(配列番号16)、RIDPANDNTKYAP(配列番号24)、RIDPENGNTKYGP(配列番号32)、RIDPANGNTKYAP(配列番号40)、RIDPANGNTKYAP(配列番号48)、AIYPGNSDTNYNQ(配列番号56)、YINPYNDDTKYNE(配列番号64)、VMYAGGGTNYNS(配列番号82)、及びTMWAGGGTNYNS(配列番号86)から選択されるアミノ酸配列を含み、
(f)HVR-H3が、ARERPLTGVMDY(配列番号17)、TRVEGRTGTYFDY(配列番号25)、TRQLGLRRVWYALDY(配列番号33)、ARQLGLRRTWYSLDY(配列番号41)、TRQLGLRRTWYAMDY(配列番号49)、TTAVGSY(配列番号57)、AREDYYGSRFVYW(配列番号65)、ARERPLTGVMDN(配列番号83)、及びARERPLTGPMDY(配列番号87)から選択されるアミノ酸配列を含む、抗体。
【請求項2】
(a)配列番号11のHVR-L1、配列番号12のHVR-L2、及び配列番号13のHVR-L3、並びに/又は配列番号15のHVR-H1、配列番号16のHVR-H2、及び配列番号17のHVR-H3、
(b)配列番号19のHVR-L1、配列番号20のHVR-L2、及び配列番号21のHVR-L3、並びに/又は配列番号23のHVR-H1、配列番号24のHVR-H2、及び配列番号25のHVR-H3、
(c)配列番号27のHVR-L1、配列番号28のHVR-L2、及び配列番号29のHVR-L3、並びに/又は配列番号31のHVR-H1、配列番号32のHVR-H2、及び配列番号33のHVR-H3、
(d)配列番号35のHVR-L1、配列番号36のHVR-L2、及び配列番号37のHVR-L3、並びに/又は配列番号39のHVR-H1、配列番号40のHVR-H2、及び配列番号41のHVR-H3、
(e)配列番号43のHVR-L1、配列番号44のHVR-L2、及び配列番号45のHVR-L3、並びに/又は配列番号47のHVR-H1、配列番号48のHVR-H2、及び配列番号49のHVR-H3、
(f)配列番号51のHVR-L1、配列番号52のHVR-L2、及び配列番号53のHVR-L3、並びに/又は配列番号55のHVR-H1、配列番号56のHVR-H2、及び配列番号57のHVR-H3、}
(g)配列番号59のHVR-L1、配列番号60のHVR-L2、及び配列番号61のHVR-L3、並びに/又は配列番号63のHVR-H1、配列番号64のHVR-H2、及び配列番号65のHVR-H3、
(h)配列番号77のHVR-L1、配列番号78のHVR-L2、及び配列番号79のHVR-L3、並びに/又は配列番号81のHVR-H1、配列番号82のHVR-H2、及び配列番号83のHVR-H3、}
(i)配列番号11のHVR-L1、配列番号12のHVR-L2、及び配列番号13のHVR-L3、並びに/又は配列番号85のHVR-H1、配列番号86のHVR-H2、及び配列番号87のHVR-H3、
(j)配列番号11のHVR-L1、配列番号12のHVR-L2、及び配列番号13のHVR-L3、並びに/又は配列番号81のHVR-H1、配列番号82のHVR-H2、及び配列番号83のHVR-H3、あるいは、
(k)配列番号77のHVR-L1、配列番号78のHVR-L2、及び配列番号79のHVR-L3、並びに/又は配列番号85のHVR-H1、配列番号86のHVR-H2、及び配列番号87のHVR-H3、を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記抗体が、配列番号10、18、26、34、42、50、58、66、若しくは76から選択される配列と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)アミノ酸配列、及び/又は配列番号14、22、30、38、46、54、62、67、80、若しくは84から選択される配列と少なくとも90%の同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)アミノ酸配列を含む、請求項1又は2に記載の抗体。
【請求項4】
(a)前記抗体が、配列番号10と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)アミノ酸配列、及び/又は配列番号14と少なくとも90%の同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)アミノ酸配列を含むか、
(b)前記抗体が、配列番号18と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)アミノ酸配列、及び/又は配列番号22と少なくとも90%の同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)アミノ酸配列を含むか、
(c)前記抗体が、配列番号26と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)アミノ酸配列、及び/又は配列番号30と少なくとも90%の同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)アミノ酸配列を含むか、
(d)前記抗体が、配列番号34と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)アミノ酸配列、及び/又は配列番号38と少なくとも90%の同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)アミノ酸配列を含むか、
(e)前記抗体が、配列番号42と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)アミノ酸配列、及び/又は配列番号46と少なくとも90%の同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)アミノ酸配列を含むか、
(f)前記抗体が、配列番号50と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)アミノ酸配列、及び/又は配列番号54と少なくとも90%の同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)アミノ酸配列を含むか、
(g)前記抗体が、配列番号58と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)アミノ酸配列、及び/又は配列番号62と少なくとも90%の同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)アミノ酸配列を含むか、
(h)前記抗体が、配列番号66と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)アミノ酸配列、及び/又は配列番号67と少なくとも90%の同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)アミノ酸配列を含むか、
(i)前記抗体が、配列番号76と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)アミノ酸配列、及び/又は配列番号80と少なくとも90%の同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)アミノ酸配列を含むか、
(j)前記抗体が、配列番号66と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)アミノ酸配列、及び/又は配列番号84と少なくとも90%の同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)アミノ酸配列を含むか、
(k)前記抗体が、配列番号66と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)アミノ酸配列、及び/又は配列番号80と少なくとも90%の同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)アミノ酸配列を含むか、あるいは
(l)前記抗体が、配列番号76と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)アミノ酸配列、及び/又は配列番号84と少なくとも90%の同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)アミノ酸配列を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項5】
前記抗体が、配列番号68、71、及び74から選択される配列と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖(LC)アミノ酸配列、並びに/又は配列番号69、70、72、73、75、88、及び89から選択される配列と少なくとも90%の同一性を有する重鎖(HC)アミノ酸配列を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項6】
(a)配列番号68と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖(LC)アミノ酸配列、及び/又は配列番号69と少なくとも90%の同一性を有する重鎖(HC)アミノ酸配列、
(b)配列番号68と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖(LC)アミノ酸配列、及び/又は配列番号70と少なくとも90%の同一性を有する重鎖(HC)アミノ酸配列、
(c)配列番号71と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖(LC)アミノ酸配列、及び/又は配列番号88と少なくとも90%の同一性を有する重鎖(HC)アミノ酸配列、
(d)配列番号71と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖(LC)アミノ酸配列、及び/又は配列番号72と少なくとも90%の同一性を有する重鎖(HC)アミノ酸配列、
(e)配列番号68と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖(LC)アミノ酸配列、及び/又は配列番号89と少なくとも90%の同一性を有する重鎖(HC)アミノ酸配列、
(f)配列番号68と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖(LC)アミノ酸配列、及び/又は配列番号73と少なくとも90%の同一性を有する重鎖(HC)アミノ酸配列、
(g)配列番号68と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖(LC)アミノ酸配列、及び/又は配列番号88と少なくとも90%の同一性を有する重鎖(HC)アミノ酸配列、
(h)配列番号71と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖(LC)アミノ酸配列、及び/又は配列番号89と少なくとも90%の同一性を有する重鎖(HC)アミノ酸配列、あるいは
(i)配列番号74と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖(LC)アミノ酸配列、及び/又は配列番号75と少なくとも90%の同一性を有する重鎖(HC)アミノ酸配列、である、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項7】
前記抗体が、以下の特性:
(a)1×10-8M以下、1×10-9M以下、1×10-10M以下、又は1×10-11M以下の結合親和性でhu-CD200R1に結合し、任意選択的に、前記結合親和性が、配列番号1、2、3、及び/又は4のhu-CD200R1ポリペプチドに対する平衡解離定数(K)によって測定される、
(b)1×10-8M以下、1×10-9M以下、1×10-10M以下、又は1×10-11M以下の結合親和性でhu-CD200R1-iso4及びhu-CD200R1-iso1に結合し、任意選択的に、前記結合親和性が、配列番号1及び/又は2のhu-CD200R1-iso4ポリペプチド、及び配列番号3及び/又は4のhu-CD200R1-iso1ポリペプチドに対する平衡解離定数(K)によって測定される、
(c)1×10-8M以下、1×10-9M以下、1×10-10M以下、又は1×10-11M以下の結合親和性でhu-CD200R1-iso4-Alt及びhu-CD200R1-iso4-Refに結合し、任意選択的に、前記結合親和性が、配列番号1のhu-CD200R1-iso4-Altポリペプチド、及び配列番号2のhu-CD200R1-iso4-Refポリペプチドに対する平衡解離定数(K)によって測定される、
(d)1×10-8M以下、1×10-9M以下、1×10-10M以下、又は1×10-11M以下の結合親和性でhu-CD200R1-iso4-Alt、hu-CD200R1-iso4-Ref、hu-CD200R1-iso1-Alt、及びhu-CD200R1-iso1-Refに結合し、任意選択的に、前記結合親和性が、配列番号1のhu-CD200R1-iso4-Altポリペプチド、配列番号2のhu-CD200R1-iso4-Refポリペプチド、配列番号3のhu-CD200R1-iso1-Altポリペプチド、及び配列番号4のhu-CD200R1-iso1-Refポリペプチドに対する平衡解離定数(K)によって測定される、
(e)1×10-8M以下、1×10-9M以下、1×10-10M以下、又は1×10-11M以下の結合親和性でcyno-CD200R1に結合し、任意選択的に、前記結合親和性が、配列番号5のcyno-CD200R1ポリペプチドに対する平衡解離定数(K)によって測定される、
(f)1×10-8M以下、1×10-9M以下、1×10-10M以下、又は1×10-11M以下の結合親和性でhu-CD200R1及びcyno-CD200R1に結合し、任意選択的に、前記結合親和性が、配列番号1、2、3及び/又は4のhu-CD200R1ポリペプチド、並びに配列番号5のcyno-CD200R1ポリペプチドに対する平衡解離定数(K)によって測定される、
(g)hu-CD200R1-iso4-Alt(配列番号1)、hu-CD200R1-iso4-Ref(配列番号2)、hu-CD200R1-iso1-Alt(配列番号3)、及びhu-CD200R1-iso1-Ref(配列番号4)へのhu-CD200-Fcの結合を、ELISAによって測定されたとき、10nM以下、7nM以下、5nM以下、2nM以下又は1nM以下のIC50でブロックする、
(h)2.5nM以下、1nM以下、又は0.5nM以下のIC50で、細胞上に発現されたhu-CD200R1へのhu-CD200-Fcの結合をブロックし、任意選択的に、前記細胞が、hu-CD200R1を安定して発現するU937細胞である、
(i)2.5nM以下、1nM以下、又は0.5nM以下のEC50でヒトT細胞に結合し、任意選択的に、前記ヒトT細胞が、CD4+T細胞又はCD8+T細胞である、
(j)100nM以下、50nM以下、又は10nM以下の抗体濃度で、ヒト腫瘍細胞からのIFNγ産生を少なくとも1.2倍、1.5倍、2倍、又はそれ以上増加させ、任意選択的に、前記腫瘍細胞の型が、結腸直腸、子宮内膜、肺、黒色腫、卵巣、膵臓、又は前立腺から選択される、
(k)hu-CD200-FcでコーティングされたヒトT細胞からのIFNγ及び/又はIL-2産生を、IgG対照と比較して少なくとも1.2倍、1.5倍、2倍、又はそれ以上増加させる、
(l)ヒトCD4+T細胞又はヒトCd8+T細胞の活性化を、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3倍又はそれ以上増加させる、
(m)CD200R1シグナル伝達を刺激しない、
(n)可溶性hu-CD200-Fcで処理されたU937単球細胞株におけるpDok2活性の誘導をブロックする、かつ/あるいは
(o)hu-CD200結合hu-CD200R1発現細胞株によって誘導されるNFkβ転写をブロックし、任意選択的に、前記細胞株が、CD200R1発現K562レポーター細胞及びCD200発現293T細胞である、のうちの1つ以上を特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体と同じエピトープに特異的に結合する抗CD200R1抗体であって、任意選択的に、10F6、h10F6、22.1、又はh22.1から選択される抗体と同じエピトープに結合する、抗体。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の抗体をコードする単離されたポリヌクレオチド又はベクター。
【請求項10】
請求項9に記載のオリゴヌクレオチド又はベクターを含む、単離された宿主細胞であって、任意選択的に、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、骨髄腫細胞(例えば、Y0、NS0、Sp2/0)、サル腎細胞(COS-7)、ヒト胚性腎臓系統(293)、ベビーハムスター腎細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(例えば、TM4)、アフリカミドリザル腎細胞(VERO-76)、ヒト子宮頸がん細胞(HELA)、イヌ腎細胞、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝細胞(Hep G2)、マウス乳腺腫瘍細胞、TR1細胞、Medical Research Council5(MRC5)細胞、及びFS4細胞から選択される、宿主細胞。
【請求項11】
抗体を産生する方法であって、請求項10に記載の宿主細胞を培養して、抗体を産生させることを含む、方法。
【請求項12】
請求項1~8のいずれか一項に記載の抗CD200抗体と、薬学的に許容される担体と、を含む医薬組成物であって、任意選択的に、前記組成物が、免疫チェックポイント分子に対する特異性を含む化学療法剤若しくは抗体を更に含むか、又は、任意選択的に、前記抗CD200R1抗体が前記組成物の唯一の有効成分である、医薬組成物。
【請求項13】
対象のCD200R1媒介性疾患を治療する方法であって、治療有効量の請求項1~8のいずれか一項に記載の抗体を前記対象に投与するか、又は治療有効量の請求項12に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項14】
前記治療有効量が、少なくとも約1mg/kg、少なくとも約2mg/kg、少なくとも約10mg/kg、少なくとも約20mg/kgである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記治療有効量が、少なくとも約0.3mg、少なくとも約1.0mg、少なくとも約3.0mg、少なくとも約10mg、少なくとも約30mg、少なくとも約100mg、少なくとも約300mg、又は少なくとも約900mgである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記治療有効量が、少なくとも約10mg/kg、少なくとも約20mg/kg、又は少なくとも約100mg/kgである、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
請求項1~8のいずれか一項に記載の抗体の前記治療有効量で、顕著なオフターゲット効果がない、請求項13~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1~8のいずれか一項に記載の抗体の10mg/kg以下の用量で、顕著なオフターゲット効果がない、請求項13~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1~8のいずれか一項に記載の抗体の20mg/kg以下の用量で、顕著なオフターゲット効果がない、請求項13~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記疾患ががんであり、任意選択的に、前記がんが、から選択される前記がんが、副腎がん、膀胱がん、肉腫、マイクロサテライト不安定性高(MSI-H)がん(固形MSIがんを含む)、TMB(腫瘍変異負荷)高腫瘍、ミスマッチ修復欠損(dMMR)がん、脳がん、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、EGJ腺がん、食道がん、胆嚢がん、胃がん(例えば、消化管カルチノイド(GIカルチノイド))、頭頸部がん、心臓がん、肝細胞がん、腎臓がん、肝臓がん、黒色腫、中皮腫(例えば、胸膜中皮腫)、非小細胞肺がん、卵巣がん、上皮性卵巣がん、子宮内膜がん、小児固形がん、膵臓がん、前立腺がん、脾臓がん、小細胞肺がん、精巣がん、甲状腺がん(例えば、甲状腺髄様がん又は甲状腺濾胞がん)、血液がん(例えば、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、白血病、リンパ腫、骨髄腫)、腎細胞がん腫、明細胞腎がん、神経内分泌腫瘍(例えば、悪性褐色細胞腫及び傍神経節腫)、及び子宮がんから選択される、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年5月29日に出願された米国仮特許出願第63/032,508号の優先権を主張するものであり、これはあらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、広義には、CD200R1受容体に結合する抗体及び抗原結合断片などの結合タンパク質、並びにかかる結合タンパク質を使用する方法に関する。
【0003】
配列表への言及
配列表の公式写しは、ASCII方式のテキストファイルとして、特許明細書と同時に、EFS-Web経由で提出され、ファイル名は「09402-007PV1_SeqList_ST25.txt」、作成日は2020年5月29日、サイズは85,869バイトである。EFS-Web経由で出願された配列表は、特許明細書の一部であり、配列表全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
細胞表面膜貫通糖タンパク質CD200受容体1(本明細書では「CD200R1」と称され、当技術分野ではCD200受容体1、CD200R、HCRTR2、OX2R、及びMOX2Rとしても知られている)は、骨髄細胞及びCD4+T細胞の表面に発現するヒトタンパク質である。CD200R1は、2つの免疫グロブリン様ドメインを含む細胞表面糖タンパク質である。CD200R及びその結合パートナーであるCD200は、どちらも高度に保存されたI型ペア膜糖タンパク質であり、Igタンパク質スーパーファミリーに属する2つの免疫グロブリン(Ig)様ドメイン(V及びC)で構成されている。CD200Rは、主にT細胞及び骨髄系細胞のサブセットで発現する。しかしながら、CD200は、ニューロン、上皮細胞、内皮細胞、線維芽細胞、リンパ系細胞など、様々なヒト細胞でも広範囲に発現している。CD200R1は、腫瘍壊死因子(TNF-α)及びインターフェロンなどの炎症誘発性分子の発現を調節するよう作用する。CD200RがそのリガンドであるCD200に結合すると、T細胞免疫応答及びナチュラルキラー(NK)細胞の細胞傷害活性の阻害、マクロファージによるインドールアミン-2,3ジオキシゲナーゼ(IDO)の分泌の促進、及び調節性T細胞(Treg)の拡大のトリガーを含む、免疫抑制活性をシグナル伝達することがわかっている(例えば、Gorczynski,“CD200:CD200R-mediated regulation of immunity.”ISRN Immunol.2012;2012を参照)。CD200は、樹状細胞及びリンパ系エフェクター細胞に対する免疫チェックポイント機能を有し、炎症性免疫応答の活性化を調節し、自己寛容の維持に寄与すると理解されている(例えば、Rygiel TP,Meyaard L.“CD200R signaling in tumor tolerance and inflammation:a tricky balance.”Curr Opin Immunol.2012;24(2):233-8を参照)。CD200は、慢性リンパ性白血病(CLL)、多発性骨髄腫(MM)、急性骨髄性白血病(AML)などを含む、様々な種類の固形及び血液腫瘍細胞で過剰発現する(例えば、McWhirter et al.“Antibodies selected from combinatorial libraries block a tumor antigen that plays a key role in immunomodulation.”Proc Natl Acad Sci USA.2006;103(4):1041-6を参照)。抗腫瘍細胞傷害性T細胞(CTL)応答の低下の発見は、積極的な腫瘍の進行と相関しており、患者の生存率の低下は、腫瘍細胞でのCD200の過剰発現と関連し、相関している。したがって、CD200は、CD200に特異的に結合してCD200R1へのライゲーションをブロックするヒト化抗体であるサマリズマブの開発を含む、がん免疫療法の標的となっており、進行性の慢性リンパ性白血病(CLL)患者の腫瘍量を軽減するための臨床試験が行われている(例えば、Mahadevan et al.,“Phase I study of samalizumab in chronic lymphocytic leukemia and multiple myeloma:blockade of the immune checkpoint CD200,”J.Immunotherapy Cancer 7,227(2019)を参照)。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、高い親和性でヒトCD200R1に特異的に結合する抗体を提供する。抗体は、CD200R1によって媒介される免疫調節効果を減少、阻害、及び/又は完全にブロックすることができる。本開示はまた、CD200R1によって媒介される免疫調節機能又は活性の減少、阻害及び/又はブロックに応答する疾患及び状態を治療するための組成物及び方法を提供する。
【0006】
少なくとも1つの実施形態において、本開示は、(i)第1の軽鎖超可変領域(HVR-L1)、第2の軽鎖超可変領域(HVR-L2)、及び第3の軽鎖超可変領域(HVR-L3)、並びに/又は(ii)第1の重鎖超可変領域(HVR-H1)、第2の重鎖超可変領域(HVR-H2)、及び第3の重鎖超可変領域(HVR-H3)を含む抗CD200R1抗体を提供し、
(a)HVR-L1は、RASESVDYSGNSFMH(配列番号11)、SASSSVSYMY(配列番号19)、RASKSISKYLA(配列番号27)、RASKSISKYLA(配列番号35)、QASHTINLN(配列番号43)、QASHTINLN(配列番号51)、RASKSVSTSGYSYMH(配列番号59)、及びRASESVDYSGNSFMH(配列番号77)から選択されるアミノ酸配列を含み、
(b)HVR-L2は、RASNLES(配列番号12)、LTSKLAS(配列番号20)、SGSTLQS(配列番号28)、SGSTLQS(配列番号36)、GTSNLED(配列番号44)、GTSNLED(配列番号52)、LASNLES(配列番号60)、及びRASNLES(配列番号78)から選択されるアミノ酸配列を含み、
(c)HVR-L3は、HQSNEDPPT(配列番号13)、QQWSSYPLT(配列番号21)、QQYNEYPWT(配列番号29)、QQYNEYPWT(配列番号37)、LQHTYLPWT(配列番号45)、LQHTYLPWT(配列番号53)、QHNRELLT(配列番号61)、及びHQSNWDPPT(配列番号79)から選択されるアミノ酸配列を含み、
(d)HVR-H1は、TNYAVS(配列番号15)、KDDYMH(配列番号23)、KDDYMH(配列番号31)、KDDYIH(配列番号39)、KDDYIH(配列番号47)、TSYWMH(配列番号55)、TSYVMF(配列番号63)、TNYRVS(配列番号81)、及びTNYWVS(配列番号85)から選択されるアミノ酸配列を含み、
(e)HVR-H2は、VMWAGGGTNYNS(配列番号16)、RIDPANDNTKYAP(配列番号24)、RIDPENGNTKYGP(配列番号32)、RIDPANGNTKYAP(配列番号40)、RIDPANGNTKYAP(配列番号48)、AIYPGNSDTNYNQ(配列番号56)、YINPYNDDTKYNE(配列番号64)、VMYAGGGTNYNS(配列番号82)、及びTMWAGGGTNYNS(配列番号86)から選択されるアミノ酸配列を含み、
(f)HVR-H3は、ARERPLTGVMDY(配列番号17)、TRVEGRTGTYFDY(配列番号25)、TRQLGLRRVWYALDY(配列番号33)、ARQLGLRRTWYSLDY(配列番号41)、TRQLGLRRTWYAMDY(配列番号49)、TTAVGSY(配列番号57)、AREDYYGSRFVYW(配列番号65)、ARERPLTGVMDN(配列番号83)、及びARERPLTGPMDY(配列番号87)から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0007】
本開示の抗CD200R1抗体の少なくとも1つの実施形態において、抗体は、
(a)配列番号11のHVR-L1、配列番号12のHVR-L2、及び配列番号13のHVR-L3、並びに/又は配列番号15のHVR-H1、配列番号16のHVR-H2、及び配列番号17のHVR-H3、
(b)配列番号19のHVR-L1、配列番号20のHVR-L2、及び配列番号21のHVR-L3、並びに/又は配列番号23のHVR-H1、配列番号24のHVR-H2、及び配列番号25のHVR-H3、
(c)配列番号27のHVR-L1、配列番号28のHVR-L2、及び配列番号29のHVR-L3、並びに/又は配列番号31のHVR-H1、配列番号32のHVR-H2、及び配列番号33のHVR-H3、
(d)配列番号35のHVR-L1、配列番号36のHVR-L2、及び配列番号37のHVR-L3、並びに/又は配列番号39のHVR-H1、配列番号40のHVR-H2、及び配列番号41のHVR-H3、
(e)配列番号43のHVR-L1、配列番号44のHVR-L2、及び配列番号45のHVR-L3、並びに/又は配列番号47のHVR-H1、配列番号48のHVR-H2、及び配列番号49のHVR-H3、
(f)配列番号51のHVR-L1、配列番号52のHVR-L2、及び配列番号53のHVR-L3、並びに/又は配列番号55のHVR-H1、配列番号56のHVR-H2、及び配列番号57のHVR-H3、
(g)配列番号59のHVR-L1、配列番号60のHVR-L2、及び配列番号61のHVR-L3、並びに/又は配列番号63のHVR-H1、配列番号64のHVR-H2、及び配列番号65のHVR-H3、
(h)配列番号77のHVR-L1、配列番号78のHVR-L2、及び配列番号79のHVR-L3、並びに/又は配列番号81のHVR-H1、配列番号82のHVR-H2、及び配列番号83のHVR-H3、
(i)配列番号11のHVR-L1、配列番号12のHVR-L2、及び配列番号13のHVR-L3、並びに/又は配列番号85のHVR-H1、配列番号86のHVR-H2、及び配列番号87のHVR-H3、
(j)配列番号11のHVR-L1、配列番号12のHVR-L2、及び配列番号13のHVR-L3、並びに/又は配列番号81のHVR-H1、配列番号82のHVR-H2、及び配列番号83のHVR-H3、あるいは
(k)配列番号77のHVR-L1、配列番号78のHVR-L2、及び配列番号79のHVR-L3、並びに/又は配列番号85のHVR-H1、配列番号86のHVR-H2、及び配列番号87のHVR-H3、を含む。
【0008】
本開示の抗CD200R1抗体の少なくとも1つの実施形態において、抗体は、配列番号10、18、26、34、42、50、58、66、若しくは76から選択される配列に対して少なくとも90%の同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)アミノ酸配列、及び/又は配列番号14、22、30、38、46、54、62、67、80、若しくは84から選択される配列に対して少なくとも90%の同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)アミノ酸配列を含む。
【0009】
本開示の抗CD200R1抗体の少なくとも1つの実施形態において、抗体は、
(a)配列番号10に対して少なくとも90%の同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)アミノ酸配列、及び/又は配列番号14に対して少なくとも90%の同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)アミノ酸配列を含むか、
(b)配列番号18に対して少なくとも90%の同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)アミノ酸配列、及び/又は配列番号22に対して少なくとも90%の同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)アミノ酸配列を含むか、
(c)配列番号26に対して少なくとも90%の同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)アミノ酸配列、及び/又は配列番号30に対して少なくとも90%の同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)アミノ酸配列を含むか、
(d)配列番号34に対して少なくとも90%の同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)アミノ酸配列、及び/又は配列番号38に対して少なくとも90%の同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)アミノ酸配列を含むか、
(e)配列番号42に対して少なくとも90%の同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)アミノ酸配列、及び/又は配列番号46に対して少なくとも90%の同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)アミノ酸配列を含むか、
(f)配列番号50に対して少なくとも90%の同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)アミノ酸配列、及び/又は配列番号54に対して少なくとも90%の同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)アミノ酸配列を含むか、
(g)配列番号58に対して少なくとも90%の同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)アミノ酸配列、及び/又は配列番号62に対して少なくとも90%の同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)アミノ酸配列を含むか、
(h)配列番号66に対して少なくとも90%の同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)アミノ酸配列、及び/又は配列番号67に対して少なくとも90%の同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)アミノ酸配列を含むか、
(i)配列番号76に対して少なくとも90%の同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)アミノ酸配列、及び/又は配列番号80に対して少なくとも90%の同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)アミノ酸配列を含むか、
(j)配列番号66に対して少なくとも90%の同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)アミノ酸配列、及び/又は配列番号84に対して少なくとも90%の同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)アミノ酸配列を含むか、
(k)配列番号66に対して少なくとも90%の同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)アミノ酸配列、及び/又は配列番号80に対して少なくとも90%の同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)アミノ酸配列を含むか、あるいは、
(l)配列番号76に対して少なくとも90%の同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)アミノ酸配列、及び/又は配列番号84に対して少なくとも90%の同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)アミノ酸配列を含む。
【0010】
本開示の抗CD200R1抗体の少なくとも1つの実施形態において、抗体は、配列番号68、71、及び74から選択される配列と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖(LC)アミノ酸配列、並びに/又は配列番号69、70、72、73、75、88、及び89から選択される配列と少なくとも90%の同一性を有する重鎖(HC)アミノ酸配列を含む。
【0011】
本開示の抗CD200R1抗体の少なくとも1つの実施形態において、抗体は、
(a)配列番号68と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖(LC)アミノ酸配列、及び/又は配列番号69と少なくとも90%の同一性を有する重鎖(HC)アミノ酸配列、
(b)配列番号68と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖(LC)アミノ酸配列、及び/又は配列番号70と少なくとも90%の同一性を有する重鎖(HC)アミノ酸配列、
(c)配列番号71と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖(LC)アミノ酸配列、及び/又は配列番号88と少なくとも90%の同一性を有する重鎖(HC)アミノ酸配列、
(d)配列番号71と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖(LC)アミノ酸配列、及び/又は配列番号72と少なくとも90%の同一性を有する重鎖(HC)アミノ酸配列、
(e)配列番号68と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖(LC)アミノ酸配列、及び/又は配列番号89と少なくとも90%の同一性を有する重鎖(HC)アミノ酸配列、
(f)配列番号68と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖(LC)アミノ酸配列、及び/又は配列番号73と少なくとも90%の同一性を有する重鎖(HC)アミノ酸配列、
(g)配列番号68と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖(LC)アミノ酸配列、及び/又は配列番号88と少なくとも90%の同一性を有する重鎖(HC)アミノ酸配列、
(h)配列番号71と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖(LC)アミノ酸配列、及び/又は配列番号89と少なくとも90%の同一性を有する重鎖(HC)アミノ酸配列、あるいは
(i)配列番号74と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖(LC)アミノ酸配列、及び/又は配列番号75と少なくとも90%の同一性を有する重鎖(HC)アミノ酸配列、を含む。
【0012】
本開示によって提供される抗CD200R1抗体の少なくとも1つの実施形態において、抗体は、以下のうちの1つ以上の特性を有する:
(a)1×10-8M以下、1×10-9M以下、1×10-10M以下、又は1×10-11M以下の結合親和性でhu-CD200R1に結合し、任意選択的に、結合親和性が、配列番号1、2、3、及び/又は4のhu-CD200R1ポリペプチドに対する平衡解離定数(K)によって測定される、
(b)1×10-8M以下、1×10-9M以下、1×10-10M以下、又は1×10-11M以下の結合親和性でhu-CD200R1-iso4及びhu-CD200R1-iso1に結合し、任意選択的に、結合親和性が、配列番号1及び/又は2のhu-CD200R1-iso4ポリペプチド、及び配列番号3及び/又は4のhu-CD200R1-iso1ポリペプチドに対する平衡解離定数(K)によって測定される、
(c)1×10-8M以下、1×10-9M以下、1×10-10M以下、又は1×10-11M以下の結合親和性でhu-CD200R1-iso4-Alt及びhu-CD200R1-iso4-Refに結合し、任意選択的に、結合親和性が、配列番号1のhu-CD200R1-iso4-Altポリペプチド、及び配列番号2のhu-CD200R1-iso4-Refポリペプチドに対する平衡解離定数(K)によって測定される、
(d)1×10-8M以下、1×10-9M以下、1×10-10M以下、又は1×10-11M以下の結合親和性でhu-CD200R1-iso4-Alt、hu-CD200R1-iso4-Ref、hu-CD200R1-iso1-Alt、及びhu-CD200R1-iso1-Refに結合し、任意選択的に、結合親和性が、配列番号1のhu-CD200R1-iso4-Altポリペプチド、配列番号2のhu-CD200R1-iso4-Refポリペプチド、配列番号3のhu-CD200R1-iso1-Altポリペプチド、及び配列番号4のhu-CD200R1-iso1-Refポリペプチドに対する平衡解離定数(K)によって測定される、
(e)1×10-8M以下、1×10-9M以下、1×10-10M以下、又は1×10-11M以下の結合親和性でcyno-CD200R1に結合し、任意選択的に、結合親和性が、配列番号5のcyno-CD200R1ポリペプチドに対する平衡解離定数(K)によって測定される、
(f)1×10-8M以下、1×10-9M以下、1×10-10M以下、又は1×10-11M以下の結合親和性でhu-CD200R1及びcyno-CD200R1に結合し、任意選択的に、結合親和性が、配列番号1、2、3及び/又は4のhu-CD200R1ポリペプチド、及び配列番号5のcyno-CD200R1ポリペプチドに対する平衡解離定数(K)によって測定される、
(g)hu-CD200R1-iso4-Alt(配列番号1)、hu-CD200R1-iso4-Ref(配列番号2)、hu-CD200R1-iso1-Alt(配列番号3)、及びhu-CD200R1-iso1-Ref(配列番号4)へのhu-CD200-Fcの結合を、ELISAによって測定されたとき、10nM以下、7nM以下、5nM以下、2nM以下又は1nM以下のIC50でブロックする、
(h)2.5nM以下、1nM以下、又は0.5nM以下のIC50で、細胞上に発現されたhu-CD200R1へのhu-CD200-Fcの結合をブロックし、任意選択的に、細胞が、hu-CD200R1を安定して発現するU937細胞である、
(i)2.5nM以下、1nM以下、又は0.5nM以下のEC50でヒトT細胞に結合し、任意選択的に、ヒトT細胞が、CD4+T細胞又はCD8+T細胞である、
(j)100nM以下、50nM以下、又は10nM以下の抗体濃度で、ヒト腫瘍細胞からのIFNγ産生を少なくとも1.2倍、1.5倍、2倍、又はそれ以上増加させ、任意選択的に、腫瘍細胞の型が、結腸直腸、子宮内膜、肺、黒色腫、卵巣、膵臓、又は前立腺から選択される、
(k)hu-CD200-FcでコーティングされたヒトT細胞からのIFNγ及び/又はIL-2産生を、IgG対照と比較して少なくとも1.2倍、1.5倍、2倍、又はそれ以上増加させる、
(l)ヒトCD4+T細胞又はヒトCd8+T細胞の活性化を、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3倍以上増加させる、
(m)CD200R1シグナル伝達を刺激しない、
(n)可溶性hu-CD200-Fcで処理されたU937単球細胞株におけるpDok2活性の誘導をブロックする、かつ/あるいは
(o)hu-CD200結合hu-CD200R1発現細胞株によって誘導されるNFkβ転写をブロックし、任意選択的に、細胞株は、CD200R1発現K562レポーター細胞及びCD200発現293T細胞である。
【0013】
いくつかの実施形態において、治療有効量は、少なくとも約1mg/kg、少なくとも約2mg/kg、少なくとも約10mg/kg、少なくとも約20mg/kgである。いくつかの実施形態において、治療有効量は、少なくとも約0.3mg、少なくとも約1.0mg、少なくとも約3.0mg、少なくとも約10mg、少なくとも約30mg、少なくとも約100mg、少なくとも約300mg、又は少なくとも約900mgである。いくつかの実施形態において、治療有効量は、少なくとも約10mg/kg、少なくとも約20mg/kg、又は少なくとも約100mg/kgである。いくつかの実施形態において、治療有効量での本開示の抗CD200R1抗体の有意なオフターゲット効果はない。いくつかの実施形態において、10mg/kg以下の用量で、本開示の抗CD200R1抗体の有意なオフターゲット効果はない。いくつかの実施形態において、20mg/kg以下の用量で、本開示の抗CD200R1抗体の有意なオフターゲット効果はない。
【0014】
本開示はまた、以下の抗CD200R1抗体の実施形態を提供する:(i)抗体が、モノクローナル抗体である、(ii)抗体が、ヒト、ヒト化又はキメラ抗体である、(iii)抗体が、クラスIgGの完全長抗体であり、任意選択的に、クラスIgG抗体がIgG1、IgG2、IgG3、IgG4及びIgG4 S228P及びIgG4 S228P/L235Eから選択されるアイソタイプを有する、(iv)抗体が、Fc領域変異体、任意選択的に、エフェクター機能を改変されたFc領域変異体(例えば、結果としてエフェクターのない抗体になっている変異体)であるか、又は、抗体半減期を改変されたFc領域変異体であるか、又は、エフェクター機能及び抗体半減期を改変されたFc領域変異体であり、いずれのFc領域の例も、c末端のリジンを含んでも含まなくてもよい、(v)抗体が、任意選択的に、F(ab’)、Fab’、Fab、Fv、単一ドメイン抗体(VHH)、及びscFvからなる群から選択される抗体断片である、(vi)抗体が、免疫複合体であり、任意選択的に、免疫複合体が、CD200R1の媒介する疾患又は状態の治療のための治療薬を含む、(vii)抗体が、多重特異性抗体(任意選択的に、二重特異性抗体)である、かつ、(viii)抗体が、合成抗体であり、HVRが、イムノグロブリン足場又はフレームワーク以外の足場又はフレームワークにグラフト化され、任意選択的に、代替的なタンパク質足場及び人工ポリマー足場から選択される足場である。
【0015】
他の実施形態において、本開示は、本明細書に開示される抗CD200R1抗体をコードする単離された核酸を提供する。
【0016】
いくつかの実施形態において、本開示は、本明細書に開示されるような抗CD200R1抗体をコードする核酸を含む宿主細胞も提供する。
【0017】
本開示は、抗CD200R1抗体を産生する方法を提供し、本方法は、抗体が産生されるように、抗CD200R1抗体をコードする核酸(又はベクター)を含む宿主細胞を培養することを含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、本開示は、本明細書に開示されるような抗CD200R1抗体及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、CD200R1媒介性疾患又は状態を治療するための治療薬を更に含む。いくつかの実施形態において、抗CD200R1抗体は、医薬組成物の唯一の有効成分である。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、抗CD200R1抗体と、例えば免疫チェックポイント分子である抗原に対する特異性を含む二次抗体などのチェックポイント阻害剤などであるがこれに限定されない追加の有効成分とを含み、任意選択的に、免疫チェックポイント分子は、PD-1、PDL-1TIGIT、LAG3、PVRIG、KIR、TIM-3、CRTAM、CTLA-4、BTLA、CD96、CD244、CD160、LIGHT、GITR、4-1BB、OX40、CD27、TMIGD2、ICOS、CD40、CD47、SIRPa、NKG2D、NKG2A、TNFRSF25、CD33、CEA、Epcam、GPC3、CD73、CD83、CD39、TRAIL、CD226、VEGF、及びVISTAから選択される。
【0019】
いくつかの実施形態において、本開示は、対象のCD200R1媒介性疾患を治療する方法を提供し、本方法は、本明細書に開示されるような治療有効量の抗CD200R1抗体、又は本明細書に開示されるような抗CD200R1抗体の治療有効量の医薬製剤を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態において、抗CD200R1抗体は、CD200R1媒介性状態を治療するために対象に投与される唯一の有効成分である。いくつかの実施形態において、CD200R1媒介性状態について対象を治療するのに有効な、例えば、2つ以上、3つ以上、4つ以上、又は5つ以上の有効成分などの、2つ以上の有効成分を対象に投与する。いくつかの実施形態において、対象に投与される2つ以上の有効成分は、抗CD200R1抗体と、免疫チェックポイント分子である抗原に対する特異性を含む抗体などのチェックポイント阻害剤などの少なくとも1つの追加の有効成分と、を含む。
【0020】
本開示は、対象の細胞上に発現されるCD200R1へのCD200の結合によって媒介される疾患を治療する方法も提供し、本方法は、本明細書に開示されるような治療有効量の抗CD200R1抗体、又は本明細書に開示されるような抗CD200R1抗体の治療有効量の医薬組成物を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態において、抗CD200R1抗体は、対象の細胞上に発現するCD200R1へのCD200の結合によって媒介される疾患について対象を治療するために対象に投与される唯一の有効成分である。いくつかの実施形態において、対象は、対象を治療するのに有効な複数の活性薬剤を投与され、例えば、複数の活性薬剤は、抗CD200R1抗体と、追加の活性薬剤、例えば、限定されないが、免疫チェックポイント分子である抗原に対する特異性を含む二次抗体などの、チェックポイント阻害剤と、を含む。少なくとも1つの実施形態において、抗CD200R1抗体は、1×10-8M以下、1×10-9M以下、1×10-10M以下、又は1×10-11M以下の結合親和性でhu-CD200R1に結合し、任意選択的に、結合親和性が、配列番号1、2、3、及び/又は4のいずれか1つ以上のhu-CD200R1アイソフォームに対する平衡解離定数(K)によって測定される。
【0021】
本明細書に開示される使用及び治療方法のいくつかの実施形態において、本開示の抗CD200R1抗体又はその医薬組成物で治療することができる、CD200R1媒介性の疾患及び症状、又はCD200により媒介される疾患には、がんが含まれる。いくつかの実施形態において、がんは、副腎がん、膀胱がん、肉腫、マイクロサテライト不安定性高(MSI-H)がん(固形MSIがんを含む)、TMB(腫瘍変異負荷)高腫瘍、ミスマッチ修復欠損(dMMR)がん、脳がん、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、EGJ腺がん、食道がん、胆嚢がん、胃がん(例えば、消化管カルチノイド(GIカルチノイド))、頭頸部がん、心臓がん、肝細胞がん、腎臓がん、肝臓がん、黒色腫、中皮腫(例えば、胸膜中皮腫)、非小細胞肺がん、卵巣がん、上皮性卵巣がん、子宮内膜がん、小児固形がん、膵臓がん、前立腺がん、脾臓がん、小細胞肺がん、精巣がん、甲状腺がん(例えば、甲状腺髄様がん又は甲状腺濾胞がん)、血液がん(例えば、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、白血病、リンパ腫、骨髄腫)、腎細胞がん腫、明細胞腎がん、神経内分泌腫瘍(例えば、悪性褐色細胞腫及び傍神経節腫)、及び子宮がんから選択される。いくつかの実施形態において、がんは、肺がん(例えば、小細胞肺がん)、皮膚がん(例えば、黒色腫)、膵臓がん、子宮内膜がん、前立腺がん、結腸直腸がん、卵巣がん、中皮腫、及び膀胱がんから選択される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1A】本開示の選択された抗CD200R1抗体及び市販の抗体OX108からの、VLドメイン及びVHドメイン配列のアラインメントを示す。HVRを灰色で強調表示し、位置はKabat付番に基づいて番号付けしている。
図1B】同上。
図2】マウス抗CD200R1抗体、10F6のVLドメイン及びVHドメイン配列と、最も近いヒト生殖系列配列、及び10F6のヒト化バージョンの配列とのアラインメントを示す。位置はKabat付番に基づいて番号付けした。
図3】本開示の選択された抗CD200R1抗体によるhu-CD200R1(アイソフォーム1又は4及びハプロタイプRef又はAlt)へのhu-CD200-Fc結合のブロックに関するELISA結果のプロットを示す。1μg/mLのhu-CD200-Fcをプレートにコーティングした。hu-CD200R1溶液中の抗体の段階希釈(0.1μg/mL又は0.4μg/mL)をプレート結合hu-CD200-Fcとともにインキュベートした。ストレプトアビジンポリHRP抗体(Thermo-Fisher)を検出に使用した。
図4】CD200R1を発現する細胞へのhu-CD200-Fcの結合をブロックする本開示の抗CD200R1抗体の能力を示すアッセイ結果のプロットを示す。
図5A】抗CD200R1抗体h10F6及びh22.1のヒト又はcynoT細胞への結合を示すアッセイ結果のプロットを示す。
図5B】同上。
図6】抗CD200R1ブロック抗体による治療が、9人のがん患者から採取した一次PBMCサンプルの免疫活性化(IFNγ分泌の増加)をもたらしたことを示すデータのプロットを示す。PBMCを、100nMの抗CD200R1抗体、h22.1若しくはh10F6、又はエフェクターのないアイソタイプ対照で処理し、アッセイを実施例5に記載のように行った。
図7A】可溶性抗CD200R1抗体、h10F6及びh22.1が、アイソタイプ対照(Lyso IgG)と比較し、健康なドナーのpan T細胞においてCD200-Fcによって抑制されたIL-2及びIFNγ分泌をレスキューできることを示すプロットを示す。抗体は、100nMの固定濃度又は最高用量反応濃度を使用して試験した。示されるエラーバーは、3回作製したサンプルからの標準偏差又は標準誤差平均を代表する。プレートに結合したヒト化CD200-Fcリガンドは、pan T細胞機能を阻害する。IL-2及びIFNγレベルは、実施例5に記載のELISAによって測定した。
図7B】同上。
図7C】同上。
図7D】同上。
図8A】抗CD200R1抗体、h10F6及びh22.1によるT細胞の処理が、T細胞に対する寛容原性樹状細胞の抑制又は免疫原性樹状細胞による活性化をどのようにもたらすかを示すプロットを示す。10μg/mLで固定されたCD200R1抗体を用いたCD8+T細胞上の初期T細胞活性化マーカーCD69(図8A参照)及びCD4+T細胞上の増殖マーカーKi67(図8B参照)の発現を、アイソタイプ対照と比較した(標識としてIgG E)。図8Cは、アイソタイプ対照(ここではIso IgG E-と識別する)と比較した、10μg/mLで固定されたCD200R1抗体の処理によるMLR後4、5、及び6日のIFNg放出の計算値を示す。
図8B】同上。
図8C】同上。
図9】可溶性ヒト化22.1(図ではsol 22.1 IgGと表示)、ヒト化10F6(sol 10F6 IgG)、OX108(sol OX108 IgG)、CD200-Fc(sol CD200Fc)、及びアイソタイプ対照IgG(sol Iso IgG)で30分間処理した後に誘導されたpDok2レベルを示す。CD200R1を安定して発現するU937は、図では「CD200R+」として示し、200nMから始まる6倍希釈で処理した。親細胞を最高用量の200nMで処理し、図では「WT」として示す。上の行にはpDok2と表示し、下の行には合計Dok2と表示する。
図10A】CD200発現細胞と共培養したK562-CD200R1に対する可溶性抗CD200R1抗体h10F6及びh22.1の拮抗作用を示すデータのプロットを示す。図10A:抗体のIgG形態、図10B:抗体のFab形態。
図10B】同上。
図11】実施例7に記載のように実施された、抗CD200R1抗体、h10F6及びh22.1のラットにおける薬物動態試験からのデータのプロットを示す。
図12】h10F6の2mg/kg又は20mg/kg投与後の、2匹の雄及び2匹の雌のサルのh10F6の血清中濃度を経時的に示す。
図13A】実施例10に記載のように実施された、T細胞サブタイプへのh10F6の結合のフローサイトメトリー試験からのデータのプロットを示す。
図13B】同上。
図14】ビオチン化h10F6の段階希釈液でインキュベートし、ストレプトアビジン-PE及びLive/Dead染色で染色したMoDCの結合のEC50値を示す。
図15-1】カニクイザル、アカゲザル、マーモセット、ビーグル、ウサギのPBMCを示し、Sprague-Dawleyラットを50又は200nMのビオチン化h10F6又はアイソタイプ対照とインキュベートし、ストレプトアビジン-PE及びLive/Dead染色で染色した。
図15-2】同上。
図15-3】同上。
図16】ヒト、ウサギ、マーモセット、アカゲザル、又はカニクイザル由来の全長CD200-R1をトランスフェクトし、ビオチン化h10F6の連続希釈液、続いてストレプトアビジン-PE及びLive/Dead染色液とともにインキュベートした、CHO細胞への、h10F6の結合を示す。
図17-1】がん患者及び健常対照者の、TILとPBMCでのCD200の発現を示す。CD200発現は、腫瘍由来の免疫細胞サブセットと、がん患者のPBMC及び健康な被験者のPBMCで評価した。単一細胞免疫サブセットは、CD45+Tヘルパー細胞(CD3+CD4+)、細胞傷害性T細胞(CD3+CD8+)、及びB細胞(CD3-CD19+)に基づいてゲートし、骨髄細胞はCD11b+(系統陰性)と同定された。MFI(平均蛍光強度)によって測定されたCD200発現を、TILサブセットと、対応するPBMCとで比較した。
図17-2】同上。
図18-1】腫瘍由来の免疫細胞サブセット及びがん患者由来のPBMC及び健常者由来のPBMCにおいて評価されたCD200R1発現を示す。単一細胞免疫サブセットは、CD45+Tヘルパー細胞(CD3+CD4+)、細胞傷害性T細胞(CD3+CD8+)、及びB細胞(CD3-CD19+)に基づいてゲートし、骨髄細胞はCD11b+(系統陰性)と同定された。MFI(平均蛍光強度)によって測定されたCD200R1発現を、TILサブセットと、対応するPBMCとで比較した。
図18-2】同上。
図19A】高発現集団(総T細胞の約28%)を表すと予想されるレベルのhCD200R1を発現するよう操作されたU937細胞株を示す。パネルAは、U937-CDからの、様々な濃度のビオチン化hCD200-Fcの置換を示す。
図19B】同上。
図20】増加する濃度のh10F6に結合させたインビトロ単球分化DCの濃度の関数としての結合を示す。
図21】CD200を発現するHEK293細胞と共培養された、CD200R1及びDOK2を発現するよう操作されたヒトJurkat細胞における、CD200R1へのDOK2の誘導された動員のブロックを示す。
図22A】CD200R1及びNFκB-ルシフェラーゼレポーターを安定して発現するよう操作されたヒト骨髄細胞株K562のCD200-R1誘導NFκB活性化に対するh10F6の効果を示す。パネルAは、CD200R1を発現するK562細胞と、CD200を発現するHEK293T細胞との共培養が、細胞数依存的にNFκBレポーター遺伝子活性を誘導したことを示す。パネルBは、CD200R1を発現するK562細胞とCD200を発現するHEK293T細胞との共培養に、h10F6又はアイソタイプ対照の連続希釈を適用することにより、NFκBシグナル伝達をブロックする、h10F6の能力を示す。
図22B】同上。
図23A】20ng/mL GMCSF及び20ng/mL IL-4で7日間培養して樹状細胞に分化した単球を示す。樹状細胞は、寛容原性に分極するか(20ng/mL IL-10及びIFNα-2bを使用)、又は免疫原性DCに分極する(100ng/mL LPS及び50ng/mL TNF-αを使用)。分極の3日後、汎T細胞及び成熟DCを、20:1(T:DC)の比率で10ug/mL h10F6又はアイソタイプ対照と混合した。馴化培地を、サイトカイン測定のために4、5、及び6日後に回収した。T細胞活性化マーカーは、FACS分析によって測定した(抗CD69、抗CD25及び抗Ki67)。サイトカイン産生(パネルA:IFNγ、IL-12、及びIL-18)及びT細胞活性化マーカー(パネルB:CD4+Ki67+及びCD8+CD69+)の両方を測定し、4、5、及び6日目のIFNγ分泌の経時変化(パネルC)は、時間依存性を示す。
図23B】同上。
図23C】同上。
図24A】健康なPBMCドナーから分離され、完全培地で7日間、2μg/mL PHA及び4ng/mLヒトIL-2で慢性的に刺激されたヒト汎T細胞を示す。次いで、細胞を回収し、刺激剤を休止し、40ng/mLヒトIL-4で24時間プライミングした。細胞をプレーティングする前に、プレートを1μg/mLの抗CD3クローンOKT3及び15μg/mLのhCD200-Fc又はアイソタイプが一致するFc対照(PBSで希釈した対照コートと称する)で一晩4℃でコーティングした。細胞を回収し、洗浄し、50nM抗体で24時間プレーティングした。細胞上清を回収し、IL-2分泌をELISAで測定した。パネルAでは、生物学的3回反復とSEMからのIL-2分泌レベルの平均を、各ドナーについてグラフ化している。不対t検定を実施し、アイソタイプ対照と比較した有意なh10F6処理効果を決定した(*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001)。パネルBでは、IFNγ分泌のh10F6レスキューの用量反応曲線は、1人のドナーからの生物学的3回反復を示す。
図24B】同上。
図25A】アイソタイプ対照で処理されたPBMCと比較して、SEBでプライミングされたPBMCのh10F6(内因的にCD200を発現するGFP+COV644腫瘍細胞)による処理による腫瘍細胞殺傷の加速を示す。パネルAは、指定濃度のh10F6又はアイソタイプ対照で処理した3人中1人のドナー(RG1212)からの細胞の増殖曲線(ウェル当たりの緑色の面積で測定)を示す。パネルBは、パネルA(RG1212)に示される同じドナーからの殺傷期の時間枠の間に曲線の下の緑色の面積を使用して測定された腫瘍細胞GFPシグナルの用量依存的な減少を示す。データを、4~6の個々の測定値の平均±SEMとしてプロットする。
図25B】同上。
図26A】h10F6は、3人のユニークなドナーにおいてPBMCを介する腫瘍細胞殺傷を濃度依存的に増強したことを示す(パネルA~C)。n=4の反復からの、殺傷された腫瘍細胞の平均増加率をh10F6濃度でプロットし、ドナー別に分けた(パネルD)。RG1939(N=2)及びRG1307(N=3)で繰り返し実験したデータを集計し、3項非線形回帰モデルにフィットさせた。h10F6効果の範囲及びドナー間変動性を評価するために、アイソタイプ対照と比較した個々及びモデル適合の最大及び最小%腫瘍殺傷をドナーごとにプロットした。
図26B】同上。
図26C】同上。
図26D】同上。
図27】ビオチン化h10F6の段階希釈液とインキュベートし、ストレプトアビジン-PE、Live/Dead染色、並びに抗CD3クローンSK7、抗CD4クローンM-T466、抗CD8クローンBW135/80、抗CD20クローン2H7、抗CD11bクローンM1/70、抗CD14クローンTUK4及び抗HLA-DRクローンREA-805などの蛍光色素結合型の市販の抗体カクテルで染色したサルPBMCを示す。免疫細胞のサブタイプは、ヘルパーT細胞(CD3+CD4+)として定義した。サルCD4+T細胞への結合に関するEC50値は、3パラメータ、log10[h10F6]対応答、非線形曲線フィットを用いて決定した。
図28】ELISAを用いて評価した、固定化されたFcタグ付きMfCD200へのビオチン化MfCD200R1の結合をブロックするh10F6の能力を示す。1μMから2.38x10-7μMの範囲のh10F6の4倍連続希釈を、hCD200R1(0.04ug/ml)又はMfCD200R1(0.12ug/ml)とプレインキュベートした後、固定化MfCD200をプレートに添加した。HRP-ストレプトアビジン及び比色基質とインキュベートし、続いて各ウェルのOD450をモニターすることによって、結合を評価した。
図29】MfCD200R1を安定して発現するよう操作されたヒト単球細胞株K562を示す。非グリコシル化hIgG1 Fcタグと融合した組換えMfCD200の、MfCD200R1を発現するK562細胞への結合を、FACSによって確認した。h10F6.V1は、MfCD200R1を発現するK562細胞へのMfCD200-Fcの結合を用量依存的に阻害した。
図30】片対数プロットでプロットされた、h10F6.V1の、平均及び個々の血清濃度を示す。アッセイの定量下限(LLOQ)は0.06μg/mLであった。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示は、CD200R1に高い親和性で特異的に結合し、それによって免疫調節に関与する細胞表面受容体としてのCD200R1の機能、特にリンパ球(例えば、T細胞及びNK細胞)の活性化の阻害剤としてのCD200R1の機能を、阻害、低減、及び/又は完全にブロックする、ヒト化抗体を含む抗体を提供する。したがって、本開示の抗CD200R1抗体を含む組成物又は製剤のいずれも、CD200R1又はその標的リガンドであるCD200の機能によって媒介される疾患(がん及びウイルス感染症など)の治療のための治療薬として使用できることが企図される。更に、本開示の抗CD200R1抗体は、PD1、TIGIT、LAG3、PVRIG、KIR、TIM-3、及びCRTAMを含むがこれらに限定されない免疫チェックポイント分子を標的とする抗体などの他の治療薬と組み合わせて治療薬として使用できることが企図される。本開示によって企図される治療薬の中には、本開示の抗体の抗CD200R1結合特異性と、PD1、TIGIT、LAG3、PVRIG、KIR、TIM-3、及びCRTAMなどの免疫チェックポイント分子に対する抗体の別の結合特異性と、を含む二重特異性抗体がある。
【0024】
用語及び技法の概要
本明細書の記載及び添付の特許請求の範囲について、単数形「a」及び「an」は、明らかに別段の指示がない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「タンパク質(a protein)」への言及には複数のタンパク質が含まれ、「化合物(a compound)」への言及は複数の化合物を指す。特許請求の範囲は、任意の要素を除外するために起草される場合があることに更に留意されたい。したがって、この言及は、特許請求の範囲要素の列挙に関連して「単独で」、「のみ」などの排他的な用語を使用するか、又は「否定的な」制限を使用するための先行する基礎として機能することを意図としている。「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(include)」、「含む(includes)」、及び「含む(including)」の使用は、互いに交換可能であり、限定することを意図するものではない。様々な実施形態の記載が「含む」という用語を使用する場合、当業者は、いくつかの特定の例において、実施形態が「本質的にからなる」又は「からなる」という言語を使用して代替的に説明できることを理解するであろうことを更に理解されたい。
【0025】
値の範囲が提供される場合、文脈上明らかに別段の指示がない限り、その範囲の上限と下限との間にある値の各介在整数、及び値の各介在整数の各10分の1、明らかに別段の指示がない限り、及びその記載範囲における任意の他の記載値又は介在値は、本発明に包含されると理解される。これらのより小さな範囲の上限及び下限は、独立してより小さな範囲に含まれ、本発明内にも包含され、記載範囲における明確に除外される制限を受ける。記載された範囲が制限の一方又は両方を含む場合、含まれるそれらの制限の(i)いずれか又は(ii)両方を除く範囲も本発明に含まれる。例えば、「1~50」には、「2~25」、「5~20」、「25~50」、「1~10」などが含まれる。
【0026】
一般に、本明細書で使用される命名法並びに本明細書に記載される技法及び手順は、当業者によって十分に理解されかつ一般的に使用されるものを含み、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning-A Laboratory Manual(2nd Ed.),Vols.1-3,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989(hereinafter“Sambrook”)、Current Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubel et al.,eds.,Current Protocols,a joint venture between Greene Publishing Associates,Inc.and John Wiley&Sons,Inc.(supplemented through2011)(hereinafter“Ausubel”)、Antibody Engineering,Vols.1and2,R.Kontermann and S.Dubel,eds.,Springer-Verlag,Berlin and Heidelberg(2010)、Monoclonal Antibodies:Methods and Protocols,V.Ossipow and N.Fischer,eds.,2nd Ed.,Humana Press(2014)、Therapeutic Antibodies:From Bench to Clinic,Z.An,ed.,J.Wiley&Sons,Hoboken,N.J.(2009)、及びPhage Display,Tim Clackson and Henry B.Lowman,eds.,Oxford University Press,United Kingdom(2004)に記載される一般的な技法及び方法論などに記載されている。
【0027】
本開示で参照される全ての出版物、特許、特許出願、及び他の文書は、個々の出版物、特許、特許出願、又は他の文書の各々が、あらゆる目的で参照として本明細書に組み込まれることを個別に示すような場合と同程度に、あらゆる目的で全体を参照として本明細書に組み込まれる。
【0028】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明する目的のためのものであり、限定することを意図するものではないことを理解されたい。本開示を解釈する目的で、以下の用語の説明が適用され、適切な場合、単数形で使用される用語は複数形も含み、逆もまた同様である。
【0029】
本明細書で使用される「CD200R1」は、細胞表面膜貫通糖タンパク質CD200受容体1を指し、ヒト、カニクイザル(本明細書では場合によっては「cyno」と称される)、アカゲザル、及びそれらの様々なアイソフォームのCD200R1タンパク質を包含する。様々な例示的なCD200R1タンパク質及びアイソフォームのアミノ酸配列が当技術分野で知られており、以下の表2及び添付の配列表に示す。
【0030】
本明細書で使用される「CD200R1媒介性状態」又は「CD200R1媒介性疾患」は、リガンド(例えば、CD200)へのCD200R1の特異的な結合に関連する任意の医学的状態を包含する。例えば、細胞表面に発現されたCD200がCD200R1受容体を発現する他の細胞に特異的に結合すると、CD200発現細胞と他の免疫調節分子との結合に影響を与え、リンパ球(例えば、T細胞)の活性化を変化させる可能性がある。したがって、CD200R1媒介性疾患には、限定されないが、CD200R1若しくはCD200発現細胞の間の結合によって媒介される、及び/又はそれらのアンタゴニスト若しくは阻害剤に応答性の任意の疾患又は状態、及び/又は免疫チェックポイントの阻害に応答する任意の疾患又は状態、限定されないががんが挙げられる。具体的な例示的ながんは、本明細書の他の場所で示す。
【0031】
本明細書で使用される「免疫チェックポイント分子」は、免疫系経路を調節するように機能し、それによって不必要に細胞を攻撃するのを防止する分子を指す。多くの免疫チェックポイント分子は、抑制性及び共刺激性のいずれも、がん及びウイルス感染症の治療における(例えば、免疫抑制をブロックするためのブロッキング抗体又は免疫刺激を促進するためのアゴニストによる)免疫療法の標的である。がん免疫療法のために標的とされる免疫チェックポイント分子の例としては、PD1、TIGIT、LAG3、PVRIG、KIR、TIM-3、CRTAM、CTLA-4、BTLA、CD244、CD160、LIGHT、GITR、4-1BB、OX40、CD27、TMIGD2、ICOS、CD40、CD47、SIRPa、NKG2D、NKG2A、TNFRSF25、CD33、CEA、Epcam、GPC3、CD73、CD83、CD39、TRAIL、CD226、及びVISTAが挙げられる。
【0032】
本明細書で使用される「抗体」とは、特定の抗原に特異的に結合するか、又は免疫学的に反応する1つ以上のポリペプチド鎖を含む分子を指す。本開示の例示的な抗体には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、多重特異性(又はヘテロコンジュゲート)抗体(例えば、二重特異性抗体)、一価抗体(例えば、単一アーム抗体)、多価抗体、抗原結合断片(例えば、Fab’、F(ab’)、Fab、Fv、rIgG、及びscFv断片)、抗体融合物、及び合成抗体(又は抗体模倣物)が含まれる。
【0033】
「抗CD200R1抗体」又は「CD200R1に結合する抗体」とは、抗体がCD200R1を標的とする際の診断剤及び/又は治療剤として有用であるように十分な親和性でCD200R1に結合する抗体を指す。いくつかの実施形態において、抗CD200R1特異的抗体の無関係の非CD200R1抗原への結合の程度は、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)又は表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定したときの、CD200R1への抗体の結合に対して、約20%未満、約15%未満、約10%未満、又は約5%未満である。いくつかの実施形態において、CD200R1に結合する抗体は、<1μM、<100nM、<10nM、<1nM、<0.1nM、<0.01nM、又は<1pM(例えば、10-8M以下、例えば、10-8M~10-13M、例えば10-9M~10-13M)の解離定数(K)を有する。
【0034】
「完全長抗体」、「インタクト抗体」、又は「全抗体」とは、本明細書で互換的に使用され、天然の抗体構造に実質的に類似する構造を有する抗体、又は本明細書で定義されるFc領域を含む重鎖を有する抗体を指す。
【0035】
「抗体断片」とは、完全長抗体と同じ抗原に結合することができる完全長抗体の一部を指す。抗体断片の例には、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)、ダイアボディ、線形抗体、一価又は単一アーム抗体、一本鎖抗体分子(例えば、scFv)及び抗体断片から形成された多重特異性抗体が含まれるが、これらに限定されない。
【0036】
抗体の「クラス」とは、その重鎖が保有する定常ドメイン又は定常領域の種類を指す。抗体には、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMの5つの主要なクラスがあり、これらのいくつかは、更に、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2に分類される。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。
【0037】
「可変領域」又は「可変ドメイン」とは、抗体の抗原への結合に関与する抗体の重鎖又は軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれV及びV)は一般に類似の構造を有し、各ドメインは、4つの保存されたフレームワーク領域(FR)及び3つの超可変領域(HVR)を含む(例えば、Kindt et al.,Kuby Immunology,6th ed.,W.H.Freeman and Co.,page91を参照)。単一のV又はVドメインは、抗原結合特異性を付与するのに十分であり得る。更に、特定の抗原に結合する抗体は、V又はVドメインを使用して、、抗原に結合する抗体から単離し、それぞれ相補的なV又はVドメインのライブラリーをスクリーニングすることができる(例えば、Portolano et al.,J.Immunol.,150:880-887(1993)Clarkson et al.,Nature,352:624-628(1991)を参照)。
【0038】
本明細書で使用される「超可変領域」又は「HVR」とは、配列が超可変性であり、かつ/又は構造的に定義されたループ(「超可変ループ」)を形成する抗体可変ドメインの各領域を指す。一般に、天然抗体は、6つのHVRを有する4つの鎖を含み、重鎖可変ドメインV(HVR-H1、HVR-H2、HVR-H3)に3つ、軽鎖可変ドメインV(HVR-L1、HVR-L2、HVR-L3)に3つである。HVRは一般に、超可変ループ及び/又は「相補性決定領域」(CDR)からのアミノ酸残基を含む。多数の超可変領域の描写が使用されており、本明細書に包含される。Kabatの相補性決定領域(CDR)は、配列の可変性に基づいており、最も一般的に使用されている(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))。Chothiaは、代わりに構造ループの位置を参照する(Chothia and Lesk J.Mol.Biol.196:901-917(1987))。AbM超可変領域は、Kabat CDRとChothia構造ループとの間の妥協点を表し、Oxford Molecular’s AbM抗体モデリングソフトウェアで使用される。「接触」超可変領域は、利用可能な複雑な結晶構造の分析に基づく。これらの超可変領域の各々からの残基を以下の表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
別段に明記しない限り、可変ドメイン内のHVR残基及び他の残基(例えば、FR残基)は、Kabat et al.、前出に従って本明細書で付番される。
【0041】
本明細書で使用される超可変領域は、以下の拡張又は代替超可変領域を含み得る:Vドメインの24-36又は24-34(L1)、46-56又は50-56(L2)、及び89-97又は89-96(L3)、並びにVドメインの26-35又は30-35(H1)、50-61、50-65又は49-65(H2)、及び93-102、94-102又は95-102(H3)。可変ドメイン残基は、これらの定義の各々について、上記のKabatらに従って番号付けされている。
【0042】
本明細書で使用される「相補性決定領域」又は「CDR」とは、最も高い配列多様性を有する及び/又は抗原認識に関与する、可変ドメインのHVR内の領域を指す。一般に、天然抗体は、6つのCDRを有する4つの鎖を含み、重鎖可変ドメインV(H1、H2、H3)に3つ、軽鎖可変ドメインV(L1、L2、L3)に3つである。例示的なCDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、CDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3)は、L1のアミノ酸残基24~34、L2の50~56、L3の89~97、H1の31~35、H2の50~61、及びH3の95~102で出現する。(付番はKabatら、上記による)。
【0043】
「フレームワーク」又は「FR」とは、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般的に、FR1、FR2、FR3、及びFR4の4つのFRドメインで構成される。したがって、HVR及びFR配列は、一般に、V(又はV)において次の配列で出現する。FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。
【0044】
「天然抗体」とは、天然に存在する免疫グロブリン分子を指す。例えば、天然IgG抗体は、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質であり、ジスルフィド結合した2つの同一の軽鎖及び2つの同一の重鎖で構成されている。N末端からC末端まで、各重鎖は可変領域(V)を有し、可変重ドメイン又は重鎖可変ドメインとも呼ばれ、その後に3つの定常ドメイン(CH1、CH2、及びCH3)が続く。同様に、N末端からC末端まで、各軽鎖は可変領域(V)を有し、可変軽ドメイン又は軽鎖可変ドメインとも呼ばれ、その後に定常軽(CL)ドメインが続く。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つのタイプのうちの1つに割り当てられ得る。
【0045】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」とは、抗体の実質的に均一な集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を含む個々の抗体は、可能な変異体抗体(例えば、変異体抗体は、天然に存在する変異又はモノクローナル抗体の産生中に生じる変異、及び一般に少量存在する変異を含む)を除いて、同一であり、かつ/又は同じエピトープに結合する。典型的には、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。したがって、「モノクローナル」という用語は、実質的に均一な抗体集団から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体産生を必要とすると解釈されるべきではない。例えば、使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座の全て又は一部を含むトランスジェニック動物を利用する方法を含むがこれらに限定されない様々な技法によって作製され得、このような方法及び他の例示的なモノクローナル抗体作製法は、本明細書に記載されている。
【0046】
「キメラ抗体」とは、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定の供給源又は種に由来し、一方、重鎖及び/又は軽鎖の残りが異なる供給源又は種に由来する抗体を指す。
【0047】
「ヒト化抗体」とは、非ヒトHVRからのアミノ酸配列及びヒトFRからのアミノ酸配列を含むキメラ抗体を指す。特定の実施形態において、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの全てを実質的に含み、HVRの全て又は実質的に全てが非ヒト抗体のHVRに対応し、FRの全て又は実質的に全てがヒト抗体のFRに対応する。ヒト化抗体は、任意選択的に、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含み得る。抗体の「ヒト化形態」、例えば、非ヒト抗体とは、ヒト化を受けた抗体を指す。
【0048】
「ヒト抗体」とは、ヒト若しくはヒト細胞によって産生される抗体又はヒト抗体レパートリー若しくは他のヒト抗体をコードする配列を利用する非ヒト供給源に由来する抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を保有する抗体を指す。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を明確に除外する。
【0049】
「ヒト共通フレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンV又はVフレームワーク配列の選択において最も一般的に存在するアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンV又はV配列は、可変ドメイン配列のサブグループから選択される。一般に、配列のサブグループは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,NIH Publication 91-3242,Bethesda MD(1991),vols.1-3のようなサブグループである。いくつかの実施形態において、Vの場合、サブグループは、前出のKabatらのようなサブグループカッパIである。いくつかの実施形態において、Vの場合、サブグループは、前出のKabatらのようなサブグループIIIである。
【0050】
本明細書で使用される「アクセプターヒトフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒト共通フレームワークに由来する軽鎖可変ドメイン(V)フレームワーク又は重鎖可変ドメイン(V)フレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒト共通フレームワークに「由来する」アクセプターヒトフレームワークは、その同じアミノ酸配列を含み得るか、又はアミノ酸配列の変化を含み得る。いくつかの実施形態において、アミノ酸の変化数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、又は2以下である。いくつかの実施形態において、Vアクセプターヒトフレームワークは、Vヒト免疫グロブリンフレームワーク配列又はヒト共通フレームワーク配列と配列が同一である。
【0051】
「Fc領域」とは、免疫グロブリン重鎖のC末端ポリペプチド配列を含む二量体複合体を指し、C末端ポリペプチド配列は、インタクト抗体のパパイン消化によって得られるものである。Fc領域は、天然又は変異体のFc配列を含み得る。免疫グロブリン重鎖のFc配列の境界は変化する場合があるが、ヒトIgG重鎖のFc配列は通常、約Cys226番目でのアミノ酸残基から、又は約Pro230番目からFc配列のカルボキシル末端まで伸長すると定義される。ただし、Fc配列のC末端リジン(Lys447)は、存在する場合と存在しない場合がある。免疫グロブリンのFc配列は、一般に、2つの定常ドメイン、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含み、任意選択的に、CH4ドメインを含む。
【0052】
「Fc受容体」又は「FcR」とは、抗体のFc領域に結合する受容体を指す。いくつかの実施形態において、FcRは、天然のヒトFcRである。いくつかの実施形態において、FcRは、IgG抗体(ガンマ受容体)に結合するものであり、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIサブクラスの受容体を含み、これらの受容体の対立遺伝子変異体及び選択的スプライシング形態を含む。FcγRII受容体には、FcγRIIA(「活性化受容体」)及びFcγRIIB(「阻害受容体」)が含まれ、これらは主にその細胞質ドメインが異なる類似のアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)を含む。阻害性受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンベースの阻害モチーフ(ITIM)を含む(例えば、Daeron,Annu.Rev.Immunol.,15:203-234(1997)を参照)。本明細書で使用されるFcRは、新生児受容体であるFcRnも含み、FcRnは、胎児への母体IgGの移動(Guyer et al,J.Immunol.1 17:587(1976)及びKim et al,J.Immunol.24:249(1994))及び免疫グロブリンのホメオスタシスに関与する。FcRは、例えば、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol,9:457-92(1991)、Capel et al.,Immunomethods4:25-34(1994)、及びHaas et al.,J.Lab.Clin.Med.126:330-41(1995)で概説されている。
【0053】
本明細書で使用される「多価抗体」は、3つ以上の抗原結合部位を含む抗体である。多価抗体は、好ましくは、3つ以上の抗原結合部位を有するように操作され、一般に、天然配列のIgM又はIgA抗体ではない。
【0054】
「多重特異性抗体」は、少なくとも2つの異なる結合部位を有し、各部位が異なる結合特異性を有する抗体である。多重特異性抗体は、完全長抗体又は抗体断片であることができ、異なる結合部位は、各々異なる抗原に結合し得るか、又は異なる結合部位は、同じ抗原の2つの異なるエピトープに結合し得る。
【0055】
「Fv断片」とは、完全な抗原認識及び結合部位を含む抗体断片を指す。この領域は、緊密に結合した1つの重鎖及び1つの軽鎖の可変ドメインの二量体で構成されており、例えば、scFvでは天然で共有結合性であり得る。各可変ドメインの3つのHVRが相互作用してV-V二量体の表面上の抗原結合部位を規定するのは、この構成においてである。まとめると、6つのHVR又はそのサブセットは、抗体に抗原結合特異性を付与する。しかしながら、単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的な3つのHVRのみを含むFvの半分)でさえ、通常は結合部位全体よりも低い親和性であるが、抗原を認識して結合する能力を有する。
【0056】
「Fab断片」とは、軽鎖の可変及び定常ドメイン、並びに重鎖の可変ドメイン及び第1の定常ドメイン(CH1)を含む抗体断片を指す。「F(ab’)断片」は、一対のFab断片を含み、これらは一般に該Fab断片間のヒンジシステインによってそれらのカルボキシ末端近くで共有結合している。抗体断片の他の化学カップリングも当技術分野で知られている。
【0057】
本明細書で使用される「抗原結合アーム」とは、目的の標的分子に特異的に結合する能力を有する抗体の構成要素を指す。典型的には、抗原結合アームは、免疫グロブリンポリペプチド配列、例えば、免疫グロブリン軽鎖及び重鎖のHVR及び/又は可変ドメイン配列の複合体である。
【0058】
「一本鎖Fv」又は「scFv」とは、抗体のV及びVドメインを含む抗体断片を指し、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖に存在する。一般に、Fvポリペプチドには、VドメインとVドメインとの間に、scFvが所望の抗原結合構造を形成することを可能にするポリペプチドリンカーが更に含まれる。
【0059】
「ダイアボディ」とは、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体断片を指し、この断片は、同じポリペプチド鎖(V及びV)に軽鎖可変ドメイン(V)に接続された重鎖可変ドメイン(V)を含む。同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用することにより、ドメインは別の鎖の相補的ドメインと対合するしかなく、2つの抗原結合部位を作成する。
【0060】
「線形抗体」とは、Zapata et al.,Protein Eng.,8(10):1057-1062(1995)に記載されている抗体を指す。簡潔に述べると、これらの抗体は、相補的な軽鎖ポリペプチドとともに、一対の抗原結合領域を形成する、一対の(VH-CH1-VH-CH1)Fdセグメントを含む。線形抗体は二重特異性又は単一特異性であり得る。
【0061】
「裸の抗体」とは、異種部分(例えば、細胞傷害部分)又は放射性標識に結合していない抗体を指す。
【0062】
「親和性」とは、分子の単一結合部位(例えば、抗体)とその結合相手(例えば、抗原)との非共有相互作用の全体的な強さを指す。「結合親和性」とは、結合対のメンバー(例えば、抗体及び抗原)間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子Xのその相手Yに対する親和性は、一般に平衡解離定数(K)で表すことができる。親和性は、当技術分野で知られている一般的方法によって測定することができ、本明細書に記載されているものを含む。結合親和性を測定するための具体的な事例的及び例示的な実施形態を以下に記載する。
【0063】
「特異的に結合する」又は「特異的結合」とは、約1×10-7M以下の親和性値で抗体が抗原に結合することを指す。いくつかの実施形態において、抗体は、それが特異的に結合する抗原以外の抗原に対して二次親和性を有してもよく、ここで、「二次親和性」とは一般に、本明細書の他の場所に記載されているように、約10nMを超える親和性値を有する二次抗原への抗体の結合を指す。抗体が二次抗原に対して二次親和性を有する場合でも、かかる抗体は一次抗原に特異的に結合する。
【0064】
「親和性成熟」抗体とは、このような変化を保有しない親抗体と比較して、1つ以上のHVRに1つ以上の変化を有する抗体を指し、このような変化は、抗原に対する抗体の親和性の改善をもたらす。
【0065】
抗体の「機能的抗原結合部位」は、標的抗原に結合できる部位である。抗原結合部位の抗原結合親和性は、必ずしも抗原結合部位が由来する親抗体ほど強力ではないが、抗原に結合する能力は、抗原への抗体の結合を評価するために知られている様々な方法のいずれか1つを使用して測定可能でなければならない。
【0066】
「単離された抗体」とは、その自然環境の構成要素から分離された抗体を指す。いくつかの実施形態において、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)又はクロマトグラフィー法(例えば、イオン交換又は逆相HPLC)により決定されるように95%超又は99%の純度に精製される。抗体純度の評価方法の概説については、例えば、Flatman et al.,J.Chromatogr.B848:79-87を参照されたい。
【0067】
本明細書で使用される「実質的に類似する」又は「実質的に同じ」とは、2つの数値(例えば、一方は試験抗体に関連し、他方は参照抗体に関連する)間の十分に高度な類似性を指し、当業者は、2つの値の差が、該値(例えば、K値)によって測定される生物学的特徴に照らして、生物学的及び/又は統計的な有意性がほとんど又は全くないとみなすであろう。
【0068】
本明細書で使用される「実質的に異なる」とは、2つの数値(一般に、一方は分子に関連し、他方は参照分子に関連する)間の十分に高度な差異を指し、当業者は、2つの値の差が、該値(例えば、K値)によって測定される生物学的特徴に照らして、統計的に有意であるとみなすであろう。
【0069】
「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域に起因する生物活性を指し、抗体のアイソタイプによって異なる。抗体エフェクター機能の例には、Clq結合及び補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方調節及びB細胞の活性化が含まれる。
【0070】
「免疫複合体」とは、細胞毒性剤を含むがこれに限定されない、1つ以上の異種分子に結合した抗体を指す。
【0071】
「治療」、「治療する(treat)」又は「治療する(treating)」とは、治療されている個体の障害の自然経過を変えようとする試みにおける臨床的介入を指し、予防のために、又は臨床病理学の過程のいずれかで実施することができる。治療の望ましい結果には、障害の発生又は再発の予防、症状の緩和(alleviation)、障害の任意の直接的又は間接的な病理学的結果の減少、転移の予防、進行速度の低下、病態の改善又は緩和(palliation)、及び寛解又は予後の改善が含まれ得るが、これらに限定されない。例えば、治療は、対象に抗CD200R1抗体を含む医薬製剤の治療上有効量の投与を行い、CD200R1によって媒介される疾患若しくは状態、又はCD200R1が発病学及び/若しくは進行で役割を果たし得る疾患若しくは状態の成長を遅延させ、又は進行を遅延させることを含むことができる。
【0072】
「医薬製剤」とは、有効成分の生物活性が有効であり、製剤が投与される対象に毒性のある追加成分を含まない形態の調製物を指す。医薬製剤は、1つ以上の有効成分を含み得る。例えば、医薬製剤は、製剤の唯一の有効成分として抗CD200R1抗体を含んでもよく、又は、抗CD200R1抗体と、例えば免疫チェックポイント阻害剤などの1つ以上の追加の有効成分と、を含んでもよい。
【0073】
本明細書で使用される「唯一の有効成分」とは、言及される薬剤が、製剤中に存在するか、又は治療に使用される唯一の薬剤であって、本明細書で示される「治療」の説明と一致する、疾患を治療するための関連する薬理学的効果を提供する、又は提供することが期待される薬剤のことを意味する。唯一の有効成分を含む医薬製剤は、製剤中の例えば薬学的に許容される担体などの1つ以上の非有効成分の存在を排除しない。「非有効成分」とは、対象の状態を治療することを意図した関連する薬学的効果を提供するか、又はそうでなければ有意に寄与する、ことが期待されない薬剤である。
【0074】
「薬学的に許容される担体」とは、それが投与される対象に対して無毒である、有効成分以外の医薬製剤の成分を指す。薬学的に許容される担体には、緩衝剤、賦形剤、安定剤、又は防腐剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0075】
「治療有効量」とは、例えば、対象の疾患、障害、又は状態を治療又は予防するために所望する治療結果又は予防結果を達成するための有効成分又は薬剤(例えば、医薬製剤)の量を指す。CD200R1媒介性の疾患又は状態の場合、治療剤の治療有効量は、疾患、障害、又は状態に関連する1つ以上の症状をある程度低減、予防、阻害、及び/又は軽減する量である。がん療法の場合、インビボでの有効性は、例えば、原発性腫瘍の成長、二次腫瘍の発生又は成長、転移の発生又は数、症状の持続時間、重症度、及び/若しくは再発、応答率(RR)、応答の持続時間、並びに/又は生活の質を評価することによって測定することができる。
【0076】
本明細書で使用される「同時に」とは、2つ以上の治療剤の投与を指し、投与の少なくとも一部が時間的に重複する。したがって、同時投与は、1つ以上の他の薬剤の投与を中止した後、1つ以上の薬剤の投与が継続する場合の投薬計画を含む。
【0077】
「個体」又は「対象」とは、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト及びサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)を含むがこれらに限定されない哺乳動物を指す。
【0078】
様々な実施形態の詳細な説明
I.CD200R1
ヒトCD200R1(「hu-CD200R1」)は、細胞、特に骨髄細胞及びT細胞の表面に発現する膜貫通糖タンパク質である。hu-CD200R1のUniprot配列Q8TD46-1は、アイソフォーム1と称される325アミノ酸のアイソフォームをコードする。hu-CD200R1のUniprot配列Q8TD46-4は、アイソフォーム1と称される348アミノ酸のアイソフォームをコードする。しかしながら、ヒト集団で主に観察されるhu-CD200R1アイソフォームは、UniProt配列Q8TD46-4アイソフォーム4の348アミノ酸配列変異体であり、E335Qが置換されている。このアイソフォーム4の変異体(Q8TD46-4+E335Q)は、1000ゲノムプロジェクト(https://www.internationalgenome.org/)で観察された全個体の99%超を占める2つの主要なハプロタイプのうちの1つである。このハプロタイプ(本明細書では「Alt」と称する)は、0.54の頻度でヨーロッパ系の個体で最も頻繁に観察される。他の主要なハプロタイプ(本明細書では「Ref」と称する)は、0.46の頻度でヨーロッパ系の個体に観察され、ヒトゲノム参照配列に対応する。Altハプロタイプは、Q8TD46-4配列の細胞外ドメイン(ECD、アミノ酸1~266)、及びE335Q置換を有する、Q8TD46-4配列の細胞内ドメイン(ICD、アミノ酸291~348)を有する。Refハプロタイプは、3つの置換、R112K、P144T、及びQ200Hを有する、Q8TD46-4配列の細胞外ドメイン(ECD、アミノ酸1~266)、及びQ8TD46-4配列の細胞内ドメイン(ICD、アミノ酸291~348)を有する。
【0079】
hu-CD200R1-iso4Alt及びRefハプロタイプECD配列(位置27~266)の240アミノ酸セグメントは、以下の表2において、それぞれ配列番号1及び2として本明細書に示す。hu-CD200R1-iso1Alt及びRefハプロタイプECD配列(位置29~243)の215アミノ酸セグメントは、以下の表2において、それぞれ配列番号3及び4として本明細書に示す。
【0080】
hu-CD200R1アイソフォーム4に類似する、cyno-CD200R1及びアカゲザルCD200R1の組換えにより調製されたセグメントを、以下の表2にそれぞれ配列番号5及び6として示す。
【0081】
hu-CD200R1受容体標的リガンドであるhu-CD200タンパク質は、Uniprot P41217として存在し得、本明細書では配列番号7として示す。対応するcyno-CD200R1CD200タンパク質もまた、本明細書において配列番号8として示す。全てのCD200ポリペプチドは、配列番号9として示されるエフェクターのないヒトIgG FcとのC末端融合体である。
【0082】
以下の表2は、本開示の様々なCD200R1の配列及びCD200ポリペプチド構築物の要約的説明、並びにそれらの配列識別子を提供する。配列は、添付の配列表にも含まれる。
【0083】
【表2-1】
【0084】
【表2-2】
【0085】
II.抗CD200R1抗体
いくつかの実施形態において、本開示は、様々な周知の免疫グロブリン特徴(例えば、HVR、FR、V、Vドメイン、並びに全長の重鎖及び軽鎖)のアミノ酸配列及びコードヌクレオチド配列に関して抗CD200R1抗体の構造を提供する。以下の表3は、本開示の抗CD200R1抗体配列、及びこれらの配列識別子の要約説明を提供する。配列は、添付の配列表に含まれる。
【0086】
【表3-1】
【0087】
【表3-2】
【0088】
【表3-3】
【0089】
【表3-4】
【0090】
【表3-5】
【0091】
【表3-6】
【0092】
【表3-7】
【0093】
【表3-8】
【0094】
1.抗CD200R1抗体の結合親和性、ブロッキング及び細胞シグナル伝達阻害
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される抗CD200R1抗体は、CD200R1に結合するための平衡解離定数(K)が、<100nM、<10nM、<1nM、<0.1nM、<0.01nM、又は<0.001nMである(例えば、10-8M以下、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)。
【0095】
いくつかの実施形態において、結合親和性は、配列番号1、2、3、及び/又は4のhu-CD200R1アイソフォーム/ハプロタイプポリペプチドに対する平衡解離定数(K)によって測定される。いくつかの実施形態において、抗CD200R1は、配列番号1、2、3、及び4の4つ全てのhu-CD200R1アイソフォーム/ハプロタイプポリペプチドに対して、<100nM、<10nM、<1nM、<0.1nM、<0.01nM、又は<0.001nM(例えば、10-8M以下、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)のCD200R1に対する結合についての平衡解離定数(K)の親和性で結合することができる。少なくとも1つの実施形態において、抗CD200R1は、配列番号1及び2のhu-CD200R1ポリペプチドに対して、10-8M以下の範囲の匹敵する(例えば、20%以内)又は同等の親和性で結合することができる。
【0096】
少なくとも1つの実施形態において、抗CD200R1抗体は、1×10-8M以下、1×10-9M以下、1×10-10M以下又は1×10-11M以下の結合親和性で、hu-CD200R1-iso4及びhu-CD200R1-iso1に結合することを特徴とする。いくつかの実施形態において、結合親和性は、配列番号1及び/又は2のhu-CD200R1-iso4ポリペプチド、並びに配列番号3及び/又は4のhu-CD200R1-iso1ポリペプチドに対する平衡解離定数(K)によって測定される。
【0097】
少なくとも1つの実施形態において、抗CD200R1抗体は、1×10-8M以下、1×10-9M以下、1×10-10M以下又は1×10-11M以下の結合親和性で、hu-CD200R1-iso4及びhu-CD200R1-iso4-Refに結合することを特徴とする。いくつかの実施形態において、結合親和性は、配列番号1のhu-CD200R1-iso4-Altポリペプチド及び配列番号2のhu-CD200R1-iso4-Refポリペプチドに対する平衡解離定数(K)によって測定される。
【0098】
本明細書に開示されるように生成される様々な抗CD200R1抗体は、cyno-CD200R1、並びに/又はhu-CD200R1及びcyno-CD200R1の両方に高親和性結合することができる抗体を含むことが企図される。より具体的には、いくつかの実施形態において、本開示の抗CD200R1抗体は、1×10-8M以下、1×10-9M以下、1×10-10M以下又は1×10-11M以下の結合親和性でcyno-CD200R1に結合する。いくつかの実施形態において、結合親和性は、配列番号5のhu-CD200R1ポリペプチドに結合するための平衡解離定数(K)として測定される。いくつかの実施形態において、本開示の抗CD200R1抗体は、1×10-8M以下、1×10-9M以下、1×10-10M以下又は1×10-11M以下の結合親和性でcyno-CD200R1に結合する。いくつかの実施形態において、結合親和性は、配列番号5のcyno-CD200R1ポリペプチドに結合するための平衡解離定数(K)として測定される。いくつかの実施形態において、本開示の抗CD200R1抗体は、1×10-8M以下、1×10-9M以下、1×10-10M以下又は1×10-11M以下の結合親和性で、hu-CD200R1及びcy-CD200R1の両方に結合する。いくつかの実施形態において、結合親和性は、配列番号1、2、3又は4のhu-CD200R1ポリペプチド、及び配列番号5のcyno-CD200R1に結合するための平衡解離定数(K)として測定される。
【0099】
一般に、リガンドのその受容体への結合親和性は、様々なアッセイのいずれかを使用して決定することができ、様々な定量値で表すことができる。抗体の親和性を決定するのに有用である具体的なCD200R1結合アッセイは、本明細書の実施例に開示されている。更に、抗原結合アッセイが、当技術分野で知られており、本明細書で使用することができ、ウエスタンブロット、放射性免疫アッセイ、酵素結合免疫吸収アッセイ(ELISA)、「サンドイッチ」免疫アッセイ、表面プラズモン共鳴に基づくアッセイ(WO2005/012359に記載されているBIAcoreアッセイなど)、免疫沈降アッセイ、蛍光免疫アッセイ、プロテインA免疫アッセイ、蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)などの技法を使用する任意の直接又は競合結合アッセイを含むが、これらに限定されない。
【0100】
したがって、いくつかの実施形態において、結合親和性は、K値として表され、固有の結合親和性を反映する(例えば、最小化された結合活性効果を有する)。本開示の抗CD200R1抗体は、ヒトにおいて優勢である4つの別個のCD200R1アイソフォーム/ハプロタイプ、すなわちhu-CD200R1-iso4-Alt(配列番号1)、hu-CD200R1-iso4-Ref(配列番号2)、hu-CD200R1-iso1-Alt(配列番号3)、hu-CD200R1-iso1-Ref(配列番号4)、の組み合わせの細胞外ドメインに対して強い結合親和性を示す。これらの4つのアイソフォーム、配列番号1~4の4つのhu-CD200R1ポリペプチドの細胞外ドメインは、10nM~1pMのK値を示す。したがって、本開示の抗CD200R1抗体は、CD200R1の同じ又は重複するエピトープに対してより低い親和性を有する抗体と競合し得る。
【0101】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される抗CD200R1抗体は、CD200のCD200R1への結合を減少、阻害、及び/又は完全にブロックし、それによって、T細胞の活性化を含む、CD200R1によって媒介される免疫調節及び/又は免疫シグナル伝達をブロックする。CD200発現細胞に結合するCD200R1発現細胞によって媒介されるこれらの免疫調節及び/又は免疫シグナル伝達経路を阻害する抗体の能力は、本開示の実施例に記載の様々な細胞ベースのアッセイを含む既知の細胞ベースのアッセイを使用してインビトロでアッセイすることができる。したがって、いくつかの実施形態において、本開示のCD200R1抗体は、CD200へのCD200R1の結合によって媒介される細胞のシグナル伝達経路を減少させ、阻害し、及び/又は完全にブロックする能力に基づく、以下の機能特性のうちの1つ以上を特徴とする。
【0102】
少なくとも1つの実施形態において、本開示のCD200R1抗体は、hu-CD200R1-iso4-Alt(配列番号1)、hu-CD200R1-iso4-Ref(配列番号2)、hu-CD200R1-iso1-Alt(配列番号3)、及びhu-CD200R1-iso1-Ref(配列番号4)へのhu-CD200-Fcの結合を、ELISAによって測定したときに、10nM以下、7nM以下、5nM以下、2nM以下、又は1nM以下のIC50でブロックする。
【0103】
少なくとも1つの実施形態において、本開示のCD200R1抗体は、2.5nM以下、1nM以下、又は0.5nM以下のIC50で、細胞上に発現されたhu-CD200R1へのhu-CD200-Fcの結合をブロックし、任意選択的に、細胞は、hu-CD200R1を安定して発現するU937細胞である。
【0104】
少なくとも1つの実施形態において、本開示のCD200R1抗体は、10nM以下、5nM以下、1nM以下、又は0.1nMの抗体IC50濃度で、ヒトT細胞上で発現されるCD200R1へのCD200の結合をブロックし、任意選択的に、細胞はCD8+T細胞又はCD4+T細胞である。
【0105】
少なくとも1つの実施形態において、本開示のCD200R1抗体は、2.5nM以下、1nM以下、又は0.5nM以下のEC50でヒトT細胞に結合し、任意選択的に、ヒトT細胞はCD4+T細胞又はCD8+T細胞である。
【0106】
少なくとも1つの実施形態において、本開示のCD200R1抗体は、100nM以下、50nM、又は10nM以下の抗体濃度で、ヒト腫瘍細胞からのIFNγ産生を少なくとも1.2倍、1.5倍、2倍、又はそれ以上増加させ、任意選択的に、腫瘍細胞型は、結腸直腸、子宮内膜、肺、黒色腫、卵巣、膵臓、又は前立腺の型から選択される。
【0107】
少なくとも1つの実施形態において、CD200R1抗体は、IgG対照と比較して、CD200-FcコートされたヒトT細胞からのIFNγ及び/又はIL-2産生を、少なくとも1.2倍、1.5倍、2倍、又はそれ以上増加させる。
【0108】
少なくとも1つの実施形態において、CD200R1抗体は、CD4+T細胞及び/又はCd8+T細胞の活性化を、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3倍以上増加させる。
【0109】
少なくとも1つの実施形態において、CD200R1抗体は、CD200とCD200R1発現細胞株との間の結合によって誘導されるNFkβ転写をブロックし、任意選択的に、細胞株は、CD200R1発現K562レポーター細胞及びCD200発現293T細胞である。
【0110】
少なくとも1つの実施形態において、本開示のCD200R1抗体は、CD200R1媒介性細胞シグナル伝達をブロックすることができ、CD200R1活性のアゴニストとして作用しないか、そうでなければ不注意にCD200R1シグナル伝達を刺激する。CD200R1アゴニスト活性の誘導の1つの実験的指標は、CD200で処理した細胞におけるpDok2活性の誘導である。したがって、少なくとも1つの実施形態において、本開示の抗CD200R1抗体は、可溶性CD200-Fcで処理されたU937単球細胞株におけるpDok2活性の誘導をブロックする。
【0111】
2.抗体断片
いくつかの実施形態において、本開示の抗CD200R1抗体は、抗体断片であり得る。本開示の結合決定基とともに有用な抗体断片には、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)、Fv、scFv断片、単価、単一ドメイン抗体、一アーム若しくは単一アーム抗体、及び本明細書に記載され、当技術分野で知られている他の断片が含まれるが、これらに限定されない。したがって、本発明の抗CD200R1抗体のいくつかの実施形態において、抗体は、F(ab’)、Fab’、Fab、Fv、単一ドメイン抗体(VHH)、単一アーム抗体、及びscFvからなる群から選択される抗体である。
【0112】
様々な抗体断片の概説については、例えば、Hudson et al.,Nat.Med.,9:129-134(2003)を参照。scFv断片の概説については、例えば、Pluckthun,in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer-Verlag,New York),pp.269-315(1994)を参照。WO93/16185、並びに米国特許第5,571,894号及び同第5,587,458号も参照。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、インビボ半減期が増加したFab及びF(ab’)断片の説明については、米国特許第5,869,046号を参照。他の一価抗体形態は、例えば、WO2007/048037、WO2008/145137、WO2008/145138、及びWO2007/059782に記載されている。一価の単一アーム抗体は、例えば、WO2005/063816に記載されている。ダイアボディは、二価又は二重特異性でありうる2つの抗原結合部位を有する抗体断片である(例えば、EP0404097、WO93/01161、Hudson et al.,Nat.Med.,9:129-134(2003)及びHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:6444-6448(1993)を参照)。
【0113】
いくつかの実施形態において、抗体断片は、抗体の重鎖可変ドメインの全部又は一部、又は軽鎖可変ドメインの全部又は一部を含む単一ドメイン抗体である。いくつかの実施形態において、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体(Domantis,Inc.、Waltham,MA、例えば、米国特許第6,248,516号を参照)である。
【0114】
抗体断片は、本明細書に記載されるように、インタクト抗体のタンパク質分解消化、並びに組換え宿主細胞(例えば、E.coli又はファージ)による産生を含むが、これらに限定されない様々な技法によって作製され得る。
【0115】
3.キメラ及びヒト化抗体
いくつかの実施形態において、本開示の抗CD200R1抗体は、キメラ抗体であり得る。(例えば、米国特許第4,816,567号及びMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855(1984)に記載のキメラ抗体を参照)。一実施形態において、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、又はサルなどの非ヒト霊長類に由来する可変領域)及びヒト定常領域を含む。いくつかの実施形態において、キメラ抗体は、クラス又はサブクラスが親抗体のものから変換された「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体は、その抗原結合断片を含むことができると企図される。
【0116】
いくつかの実施形態において、本開示の抗CD200R1抗体は、ヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、親の非ヒト抗体の特異性及び親和性を保持しながら、ヒトに対する免疫原性を低減させるためにヒト化される。一般に、ヒト化抗体は、HVR、CDR(又はその一部)が非ヒト抗体に由来し、FR(又はその一部)がヒト抗体配列に由来する1つ以上の可変ドメインを含む。ヒト化抗体は、任意選択的に、ヒト定常領域の少なくとも一部も含むであろう。いくつかの実施形態において、ヒト化抗体中のいくつかのFR残基は、抗体の特異性又は親和性を回復又は改善するために、非ヒト抗体(例えば、CDR残基が由来する抗体)からの対応残基で置換される。
【0117】
ヒト化抗体及びそれらを作製する方法は、例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci,.13:1619-1633(2008)で概説されており、例えば、Riechmann et al.,Nature,332:323-329(1988)、Queen et al.,Proc.Nat´I Acad.Sci.USA86:10029-10033(1989)、米国特許第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号及び同第7,087,409号、Kashmiri et al.,Methods,36:25-34(2005)(SDR(a-HVR)グラフティングの記載)、Padlan,Mol.Immunol.,28:489-498(1991)(「リサーフェイシング」の記載)、Dall’Acqua et al.,Methods,36:43-60(2005)(「FRシャッフリング」の記載)、並びにOsbourn et al.,Methods,36:61-68(2005)及びKlimka et al.,Br.J.Cancer,83:252-260(2000)(FRシャッフリングへの「ガイド下選択」アプローチの記載)で更に記載されている。
【0118】
ヒト化のために使用され得るヒトフレームワーク領域としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:「ベストフィット」法を使用して選択されるフレームワーク領域(Sims et al.J.Immunol.151:2296(1993)を参照)、軽鎖又は重鎖の可変領域の特定サブグループのヒト抗体共通配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992)及びPresta et al.,J.Immunol,151:2623(1993)を参照)、ヒト成熟(体細胞変異した)フレームワーク領域又はヒト生殖系列フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)を参照)、及びFRライブラリーのスクリーニングに由来するフレームワーク領域(例えば、Baca et al.,J.Biol.Chem.272:10678-10684(1997)及びRosok et al.,J.Biol.Chem.271:2261 1-22618(1996)を参照)。
【0119】
4.ヒト抗体
いくつかの実施形態において、本開示の抗CD200R1抗体は、ヒト抗体であり得る。ヒト抗体は、当技術分野で知られている様々な技法を使用して産生することができる。ヒト抗体は、一般に、van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.5:368-74(2001)及びLonberg,Curr.Opin.Immunol.20:450-459(2008)で概説されている。ヒト抗体は、インタクトヒト抗体又は抗原接種に応答してヒト可変領域を有するインタクト抗体を産生するように改変されたトランスジェニック動物に免疫原を投与することによって調製することができる。このような動物は典型的には、内因性免疫グロブリン遺伝子座に置き換わる、又は染色体外に存在するか、若しくは動物の染色体にランダムに組み込まれる、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全て又は一部を含む。このようなトランスジェニックマウスでは、内因性免疫グロブリン遺伝子座は一般に不活化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得る方法の概説については、Lonberg,Nat.Biotech.23:1117-1125(2005)を参照。例えば、米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号のXENOMOUSE(商標)、米国特許第5,770,429号のHUMAB(登録商標)技術、米国特許第7,041,870号のK-M MOUSE(登録商標)技術及び米国特許出願公開第2007/0061900号のVELOCIMOUSE(登録商標)技術も参照)。このような動物によって生成されたインタクト抗体由来のヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることによって、更に改変され得る。
【0120】
ヒト抗体は、ハイブリドーマに基づく方法で作製することもできる。ヒトモノクローナル抗体を産生するためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株が記載されている。例えば、Kozbor,J.Immunol,133:3001(1984)、Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51-63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987)、及びBoerner et al.,J.Immunol.,147:86(1991)を参照。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術により生成されたヒト抗体は、Li et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557-3562(2006)にも記載されている。更なる方法としては、例えば、米国特許第7,189,826号に記載されている方法が挙げられる(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の産生を説明する)。ヒトハイブリドーマ技術(すなわち、トリオーマ技法)はまた、例えば、Vollmers and Brandlein,Histology and Histopathology,20(3):927-937(2005)、及びVollmers and Brandlein,Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology,27(3):185-91(2005)に記載されている。
【0121】
ヒト抗体は、ヒト由来のファージディスプレイライブラリーから選択されたFvクローン可変ドメイン配列を単離することによっても生成され得る。このような可変ドメイン配列を、次いで、所望のヒト定常ドメインと組み合わせることができる。抗体ライブラリーからヒト抗体を選択するための技法を以下に記載する。
【0122】
5.ライブラリー由来の抗体
いくつかの実施形態において、本開示の抗CD200R1抗体は、所望する活性又は複数の活性を有する抗体についてコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって単離され得る。例えば、ファージディスプレイライブラリーを生成し、そのようなライブラリーを所望の結合特徴を保有する抗体についてスクリーニングするための様々な方法が当技術分野で知られている。本開示の抗CD200R1抗体ヒト化型の親和性成熟変異体を調製するためのファージディスプレイの使用は、本明細書に開示される実施例に記載されている。このようなライブラリー由来の抗体を産生するための他の方法は、例えば、Hoogenboom et al.,Methods in Molecular Biology178:1-37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2001)、McCafferty et al.,Nature348:552-554、Clackson et al.,Nature352:624-628(1991)、Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1992)、Marks and Bradbury,m Methods in Molecular Biology248:161-175(Lo,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2003)、Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299-310(2004)、Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073-1093(2004)、Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA101(34):12467-12472(2004)、及びLee et al.,J.Immunol.Methods284(1-2):1 19-132(2004)に見出すことができる。
【0123】
6.多重特異性抗体
いくつかの実施形態において、本開示の抗CD200R1抗体は、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体である。いくつかの実施形態において、多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる結合部位を有し、各々が異なる抗原に対する結合特異性を有し、そのうちの少なくとも1つがCD200R1に特異的に結合するモノクローナル抗体である。
【0124】
いくつかの実施形態において、多重特異性抗体は、CD200R1に対する特異性と、免疫調節、免疫シグナル伝達を媒介する、及び/又はがん若しくは腫瘍細胞上で発現される、別の抗原に対する特異性と、を含む二重特異性抗体である。二重特異性抗体のいくつかの実施形態において、他の特異性は、PD1、TIGIT、LAG3、PVRIG、KIR、TIM-3、CRTAM、CTLA-4、BTLA、CD244、CD160、LIGHT、GITR、4-1BB、OX40、CD27、TMIGD2、ICOS、CD40、CD47、SIRPa、NKG2D、NKG2A、TNFRSF25、CD33、CEA、Epcam、GPC3、CD73、CD83、CD39、TRAIL、CD226、及びVISTAから選択される免疫チェックポイント分子である抗原に対するものである。いくつかの実施形態において、抗CD200R1二重特異性抗体、抗体が特異性を有する他の抗原は、PD1、TIGIT、LAG3、PVRIG、KIR、TIM-3、及びCRTAMから選択される。
【0125】
いくつかの実施形態において、結合部位のうちの少なくとも1つは、細胞毒性剤に特異的に結合する。例示的な実施形態において、本開示の抗CD200R1抗体は、二重特異性抗体であり、CD200R1を発現する細胞に細胞毒性剤を局在化するために使用することができる。
【0126】
多重特異性抗体を作製するための技法には、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の組換え共発現が含まれるが、これに限定されない(例えば、Milstein and Cuello,Nature,305:537(1983)、WO93/08829、及びTraunecker et al.,EMBOJ.10:3655(1991)を参照)。「ノブインホール」技術も、本開示の抗CD200R1抗体に有用な二重特異性抗体を生成するために使用することができる。ノブインホール技術の技法は当技術分野で知られており、例えば米国特許第5,731,168号に記載されている。
【0127】
多重特異性抗体は、ホモ二量体ではなくFcヘテロ二量体抗体分子の形成に有利な「静電ステアリング」効果の操作(WO2009/089004A1)、2つ以上の抗体又は断片の架橋(例えば、米国特許第4,676,980号、及びBrennan et al.,Science,229:81(1985)を参照)、二重特異性抗体を産生するためのロイシンジッパーの使用(例えば、Kostelny et al.,J.Immunol,148(5):1547-1553(1992)を参照)、二重特異性抗体断片を作製するための「ダイアボディ」技術の使用(例えば、Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444-6448(1993)を参照)、一本鎖Fv(scFv)二量体の使用(例えば、Gruber et al.,J.Immunol,152:5368(1994)を参照)又は三重特異性抗体(例えば、Tutt et al.,J.Immunol.,147:60(1991)を参照)によっても作製することができる。
【0128】
7.抗体変異体
いくつかの実施形態において、本開示の抗CD200R1抗体の変異体も企図される。例えば、抗体の結合親和性及び/又は他の生物学的特性が改善された抗体は、抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な修飾を導入することによって、又はペプチド合成によって調製することができる。そのような修飾には、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/又は挿入、及び/又は置換が含まれる。最終構築物がCD200R1抗原結合の所望の特徴を保有するという条件で、欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせを行って、最終構築物に到達することができる。
【0129】
A.置換、挿入、及び欠失の変異体
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるものに加えて、1つ以上のアミノ酸置換を有する抗CD200R1抗体変異体が提供される。変異誘発の部位には、HVR及びFRを含めることができる。典型的な「保存的」アミノ酸置換及び/又は共通側鎖のクラス又は特性に基づく置換は、当技術分野で周知であり、本開示の実施形態で使用することができる。本開示は、アミノ酸側鎖クラスの1つのメンバーが別のクラスからのアミノ酸と交換される非保存的アミノ酸置換に基づく変異体も企図する。
【0130】
アミノ酸側鎖は典型的には、次のクラス又は共通の特性に従ってグループ化される。(1)疎水性:Met、Ala、Val、Leu、Ile、ノルロイシン、(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln、(3)酸性:Asp、Glu、(4)塩基性:His、Lys、Arg、(5)鎖配向の影響:Gly、Pro、及び(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0131】
抗体へのアミノ酸置換、及び所望する機能、例えば、保持/改善された抗原結合、減少した免疫原性、又は改善されたADCC若しくはCDCについての後続のスクリーニングのための技法は当技術分野で周知である。
【0132】
アミノ酸置換変異体は、親抗体(例えば、ヒト化抗体又はヒト抗体)の1つ以上の超可変領域残基を置換することを含み得る。一般に、更なる研究用に選択された結果として生じる変異体は、親抗体と比べて特定の生物学的特性が改変され(例えば、親和性の増加、免疫原性の低減)、かつ/又は親抗体の特定の生物学的特性を実質的に保持するであろう。例示的な置換変異体は、親和性成熟抗体であり、これは、便宜上、例えば、本明細書の実施例に記載されるものなどのファージディスプレイに基づく親和性成熟技法を使用して生成され得る。簡潔に述べると、1つ以上のHVR残基が変異し、変異体抗体がファージに提示され、特定の生物活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。
【0133】
変異誘発の標的となり得る抗体の残基又は領域を同定するための有用な方法は、「アラニンスキャニング変異誘発」である(例えば、Cunningham and Wells(1989)Science,244:1081-1085を参照)。この方法では、標的残基の残基又はグループ(例えば、Arg、Asp、His、Lys、及びGluなどの荷電残基)が同定され、中性又は負電荷のアミノ酸(例えば、Ala又はポリアラニン)で置き換えられ、抗体と抗原との相互作用が影響するか否かを決定する。アミノ酸位置に更なる置換を導入し、最初の置換に対する機能感受性を実証することができる。あるいは、又は更に、抗体と抗原との接触点を同定するための抗原-抗体複合体の結晶構造を決定することができる。このような接触残基及び隣接残基は、置換の候補として標的化又は排除され得る。変異体をスクリーニングして、所望の特性が含まれているか否かを決定できる。
【0134】
アミノ酸配列の挿入には、1つの残基から100以上の残基を含むポリペプチドまでの長さにわたるアミノ酸及び/又はカルボキシル末端融合、並びに単一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例には、N末端メチオニル残基を有する抗体が含まれる。抗体分子の他の挿入変異体には、抗体の血清半減期を増加させる酵素又はポリペプチドに対する抗体のN末端又はC末端への融合が含まれる。
【0135】
抗体親和性を改善するために、HVRで置換され得る。かかる変更は、「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセス中に高頻度で変異を受けるコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury,Methods Mol.Biol.207:179-196(2008)を参照)で行うことができ、得られた変異体V又はVは、結合親和性について試験される。いくつかの実施形態において、親和性成熟は、二次ライブラリーから構築及び再選択することによって実行することができる(例えば、Hoogenboom et al.,Methods in Molecular Biology,178:1-37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,(2001)を参照)。多様性を導入する別の方法には、いくつかのHVR残基(例えば、一回に4~6残基)がランダム化されるHVR指向アプローチが含まれる。抗原結合に関与するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング変異誘発又はモデリングを使用して、特異的に同定することができる。特に、HVR-H3及びHVR-L3が標的化されることが多い。
【0136】
いくつかの実施形態において、置換、挿入、又は欠失は、そのような変更が抗原に結合する抗体の能力を実質的に低減させない限り、1つ以上のHVR内で起こり得る。例えば、結合親和性を実質的に低減させない保存的変更(例えば、本明細書で提供されるような保存的置換)がHVRにおいてなされ得る。このような変更は、HVRの「ホットスポット」の外部にあり得る。上記で提供された変異体V及びV配列のいくつかの実施形態において、各HVRは、変更されていないか、又はわずか1つ、2つ、又は3つのアミノ酸置換を含む。
【0137】
B.グリコシル化変異体
いくつかの実施形態において、本開示の抗CD200R1抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増減するように変更される。抗体へのグリコシル化部位の付加又は欠失は、アミノ酸配列を変更することによって実行することができ、それにより1つ以上のグリコシル化部位を作成又は除去することができる。
【0138】
抗体がFc領域を含む実施形態において、Fc領域に付着した炭水化物を変更することができる。典型的には、哺乳動物細胞によって産生される天然抗体は、Fc領域のCH2ドメインの約297番目のアスパラギン(「N297」)周辺へのN-結合によって結合された分岐、二分岐オリゴ糖を含む(例えば、Wright et al.,TIBTECH15:26-32(1997)を参照)。オリゴ糖には、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸、並びに二分岐オリゴ糖構造の「ステム」内のGlcNAcに結合したフコースなどの様々な炭水化物が含まれ得る。いくつかの実施形態において、抗体のFc領域のオリゴ糖の修飾は、特定の改善された特性を有する変異体を作成することができる。
【0139】
いくつかの実施形態において、本開示の抗CD200R1抗体は、親抗体の変異体であり得、変異体は、Fc領域に(直接的又は間接的に)結合したフコースを欠く炭水化物構造を含む。例えば、そのような抗体中のフコース量は、約1%~約80%、約1%~約65%、約5%~約65%、又は約20%~約40%であり得る。フコース量は、MALDI-TOF質量分析(例えば、WO2008/077546を参照)によって測定されるように、N297に結合した全ての糖構造(例えば、複合体、ハイブリッド、及び高マンノース構造)の総量と比べて、Asn297で糖鎖内のフコース平均量を算出することにより決定できる。N297とは、Fc領域の約297番目に位置するアスパラギン残基を指すが(Fc領域残基のEu付番)、N297は、抗体のわずかな配列変異のため、297番目の上流又は下流±約3アミノ酸、すなわち、294~300番目の間にも位置し得る。
【0140】
いくつかの実施形態において、フコシル化変異体は、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許公開第2003/0157108号又は同第2004/0093621号を参照。「脱フコシル化」又は「フコース欠失」抗体の例及びそれらを調製するための関連方法は、例えば、US2003/0157108、US2003/0115614、US2002/0164328、US2004/0093621、US2004/0132140、US2004/0110704、US2004/0110282、US2004/0109865、WO2000/61739、WO2001/29246、WO2003/085119、WO2003/084570、WO2005/035586、WO2005/035778、WO2005/053742、WO2002/031140、Okazaki et al.J.Mol.Biol.336:1239-1249(2004)、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)に開示されている。
【0141】
脱フコシル化抗体を産生するのに有用な細胞株には、タンパク質フコシル化が欠損しているLed3 CHO細胞(例えば、Ripka et al.,Arch.Biochem.Biophys,.249:533-545(1986)、US2003/0157108、及びWO2004/056312を参照)、及びアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8などのノックアウト細胞株、ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)、Kanda,Y.et al.,Biotechnol.Bioeng.,94(4):680-688(2006)、及びWO2003/085107)が含まれる。
【0142】
C.Fc領域変異体
いくつかの実施形態において、本開示の抗CD200R1抗体は、Fc領域(すなわち、Fc領域変異体)に1つ以上のアミノ酸修飾を含み得る。Fc領域変異体は、1つ以上のアミノ酸残基の位置にアミノ酸置換を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4のFc領域)を含み得る。本開示の抗CD200R1抗体とともに有用であり、当技術分野で知られている広範囲のFc領域変異体を以下に記載する。
【0143】
いくつかの実施形態において、抗CD200R1抗体は、エフェクター機能が変更されたFc領域変異体とすることができる。いくつかの実施形態において、エフェクター機能が変更された抗体は、親抗体のエフェクター機能の一部(全てではない)を保有できるか、低いエフェクター機能を保有するか、又はエフェクター機能のいずれも保有しない(例えば、エフェクターレス)。エフェクターレスFc領域変異体は、エフェクター機能(ADCCなど)が不要又は有害である、及び/又は抗体のインビボ半減期が重要である、特定の適用においてより望ましいものとすることができる。
【0144】
エフェクター機能が低減した、又はエフェクターレスであるFc領域変異体抗体は、次のFc領域、すなわち238、265、269、270、297、327及び329番目の1つ以上にアミノ酸置換を含み得る。(例えば、米国特許第6,737,056号を参照)。このようなFc領域変異体は、265、269、270、297及び327番目のうちの2つ以上でのアミノ酸置換を含み得る。このようなFc領域変異体は、265及び297の両残基のアラニンへの置換も含み得る(例えば、米国特許第7,332,581号を参照)。いくつかの実施形態において、本開示の抗CD200R1抗体は、エフェクターレスFc領域変異体である。いくつかの実施形態において、抗CD200R1抗体のエフェクターレスFc領域変異体は、N297G(例えば、Shields,R.et al.,“High Resolution Mapping of the Binding Site on Human IgG1 for
【0145】
【数1】
and FcRn and Design of IgG1 Variants with Improved Binding to the
【0146】
【数2】
*”,Journal of Biological Chemistry,276(9):6591-6604(2001)を参照)、N297A(例えば、Friend,P.J.et al.,“Phase I Study of an Engineered Aglycosylated Humanized CD3 Antibody in Renal Transplant Rejection”,Transplantation,68(11):1632-7(1999)を参照)、P331S/K322A(例えば、Tawara,T.et al.,“Complement Activation Plays a Key Role in Antibody-Induced Infusion Toxicity in Monkeys and Rats”,J Immunol,180(4):2294-8(2008)を参照)、S228P/L235E(例えば、Newman,R.et al.,“Modification of the Fc Region of a Primatized IgG Antibody to Human CD4 Retains Its Ability to Modulate CD4 Receptors but Does Not Deplete CD4(+)T Cells iN Chimpanzees”,Clin Immunol,98(2):164-74(2001)を参照)、又はL234A/L235A/P329G(また「LALAPG」と称する)(例えば、Schlothauer,T.et al.,“Novel human IgG1 and IgG4 Fc-engineered antibodies with completely abolished immune effector functions”,Protein Eng.Des.Sel.,29(10):457-466(2016)、Lo,M.et al.,”Effector-attenuating Substitutions That Maintain Antibody Stability and Reduce Toxicity in Mice”,Journal of Biological Chemistry,292(9):3900-3908(2017)を参照)から選択される1つ以上のアミノ酸置換を含む。他の実施形態において、抗CD200R1抗体のエフェクターレスFc領域変異体は、アミノ酸置換L234A/L235A(「LALA」)を含む(Woodle,E.Steve et al.,Transplantation,68(5):608-616(1999))。
【0147】
したがって、いくつかの実施形態において、抗CD200R1抗体のエフェクターレスFc領域変異体は、N297A又はN297Gから選択される1つ以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、抗CD200R1抗体のエフェクターレスFc領域変異体は、アミノ酸置換P331S/K322Aのペアを含む。いくつかの実施形態において、抗CD200R1抗体のエフェクターレスFc領域変異体は、アミノ酸置換L234A/L235A(LALA)又はL234A/L235A/P329G(LALAPG)を含む。抗CD200R1がアイソタイプIgG2又はIgG4のものであるいくつかの実施形態において、抗CD200R1抗体は、アミノ酸置換S228P及び/又はL235Eを含む。
【0148】
FcRへの結合が改善又は減少したFc領域変異体は、例えば、米国特許第6,737,056号、WO2004/056312及びShields et al.,J.Biol.Chem.9(2):6591-6604(2001)に開示されている。ADCCが改善されたFc領域変異体は、例えば、Fc領域の298、333、及び/又は334番目(EU付番に基づく)に1つ以上のアミノ酸置換を含むことができる。例えば、米国特許第6,194,551号、WO99/51642、及びIdusogie et al.,J.Immunol.164:4178-4184(2000)に記載されているように、Clq結合及び/又は補体依存性細胞傷害(CDC)が変更された(すなわち、改善あるいは減少した)Fc領域変異体。半減期が増加し、新生児Fc受容体(FcRn)への結合が改善されたFc領域変異体は、例えば、US2005/0014934A1(Hinton et al.)に開示されている。かかるFc領域変異体は、238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、及び434番目のうちの1つ以上でアミノ酸置換を含む。半減期が増加した他のFc領域変異体には、例えば、US7658921B2(Dall’Acqua et al.)に記載されている252、254、及び256番目のYTE変異のセット(すなわち、M252Y/S254T/T256E)が含まれる。Fc領域変異体の他の例は、例えば、米国特許第5,648,260号及び同第5,624,821号及びWO94/29351に見出すことができる。
【0149】
一般に、インビトロ及び/又はインビボの細胞傷害アッセイを実行して、Fc領域変異体におけるCDC及び/又はADCC活性の低減/喪失を確認する(confirm)ことができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを実施して、抗体がFcγR結合を欠いている(したがって、ADCC活性を欠いている可能性が高い)が、FcRn結合能力を保持することを確実にすることができる。ADCCを媒介する初代細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現するが、単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom,et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA83:7059-7063(1986)を参照)及びHellstrom,et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA82:1499-1502(1985)、第5,821,337号(Bruggemann,M.et al.,J.Exp.Med.,166:1351-1361(1987)を参照)に記載されている。あるいは、非放射性アッセイ法を使用することができる(例えば、フローサイトメトリー用のACTI(商標)非放射性細胞傷害アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View,CA及びCytoTox96(登録商標)非放射性細胞傷害アッセイ(Promega、Madison,WI)を参照)。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。あるいは、又は更に、目的の分子のADCC活性は、インビボで、例えば、Clynes et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA95:652-656(1998)に開示されているような動物モデルにおいて評価され得る。抗体がClqに結合できないため、CDC活性を欠くことを確認するために、Clq結合アッセイを実行することもできる。例えば、WO2006/029879及びWO2005/100402のClq及びC3c結合ELISAを参照。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを行うことができる(例えば、Gazzano-Santoro et al.,J.Immunol.Methods202:163(1996)、Cragg,M.S.et al.,Blood101:1045-1052(2003)、及びCragg,M.S.and M.J.Glennie,SW103:2738-2743(2004)を参照)。FcRn結合及びインビボクリアランス/半減期の決定は、当技術分野で知られている方法を使用して実施することができる(例えば、Petkova,et al.,Intl.Immunol.,18(12):1759-1769(2006)を参照)。
【0150】
D.システイン操作変異体
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗CD200R1抗体は、反応性チオール基を作成するために、特定の非HVR位置でシステイン残基で置換され得ることが企図される。このような操作された「チオMAb」は、本明細書の他の箇所に記載されるように、例えば、薬物部分又はリンカー-薬物部分に抗体を結合することによって免疫複合体を作成するために使用され得る。システイン操作抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号に記載されているように生成することができる。いくつかの実施形態において、以下の抗体残基のうちのいずれか1つ以上は、システインで置換され得る。軽鎖のV205(Kabat付番)、重鎖のA118(EU付番)、重鎖Fc領域のS400(EU付番)。
【0151】
E.抗体誘導体
いくつかの実施形態において、本開示の抗CD200R1抗体は、非タンパク質性部分で更に修飾(すなわち、誘導体化)され得る。抗体の誘導体化に好適な非タンパク質性部分には、水溶性ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール及びプロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸のホモポリマー又はランダムコポリマー、及びデキストラン又はポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、並びにこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、抗体の修飾は、メトキシ-ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドを使用して実行することができる。ポリマーは、任意の分子量のものであり、分岐又は非分岐であり得る。抗体に結合するポリマーの数は様々であり、複数のポリマーが結合する場合、それらは同じ分子又は異なる分子であり得る。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/又は種類は、抗体の特定の特性又は機能を含むがこれらに限定されない考慮事項、例えば、抗体誘導体が定義する条件下で療法に使用されるか否か、に基づいて決定することができる。
【0152】
8.免疫複合体
いくつかの実施形態において、本開示の抗CD200R1抗体は、免疫複合体でもあり得、免疫複合体は、1つ以上の細胞毒性剤に結合した抗CD200R1抗体を含む。本開示によって企図される好適な細胞毒性剤には、化学療法剤、薬物、成長阻害剤、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物、若しくは動物起源の酵素活性毒素、又はそれらの断片)、又は放射性同位体が含まれる。
【0153】
いくつかの実施形態において、免疫複合体は、本明細書に記載されるような抗CD200R1抗体が1つ以上の薬物と結合する抗体-薬物複合体(ADC)である。
【0154】
いくつかの実施形態において、本開示の免疫複合体は、CD200R1媒介性の疾患又は状態を治療するための薬物又は治療薬と結合した本明細書に記載の抗CD200R1抗体を含む。
【0155】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗CD200R1抗体は、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(Pseudomonas aeruginosa由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、Aleurites fordiiタンパク質、ジアンチンタンパク質、Phytolaca americanaタンパク質、Momordica charantia阻害剤、クルシン、クロチン、Sapaonaria officinalis阻害剤、ゲロニン、マイトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、及びトリコテセンを含むがこれらに限定されない、酵素活性毒素又はその断片に結合することができる。
【0156】
いくつかの実施形態において、本開示の免疫複合体は、放射性同位体と結合した本明細書に記載の抗CD200R1抗体(すなわち、放射性複合体(radioconjugate))を含む。このような放射性複合体の産生には、様々な放射性同位体が利用できる。例としては、限定されないが、64Cu、89Zr、211At、131I、125I、90Y、186Re、188Re、153Sm、212Bi、32P、212Pb、及びLuの放射性同位体が含まれる。いくつかの実施形態において、放射性同位元素は、18F、FDGであるか、又はそれを含むことができる。いくつかの実施形態において、免疫複合体は、シンチグラフィー検出用の放射性同位体、又はNMR検出又はMRI用のスピン標識を含み得る。好適な放射性同位体又はスピン標識には、123I、131I、111In、13C、19F、15N、17O、Gd、Mn、及びFeの様々な同位体が含まれ得る。
【0157】
抗CD200R1抗体と細胞毒性剤との免疫複合体は、タンパク質との結合に好適な幅広い周知の二機能性試薬及び化学物質を使用して作製することができる。このような試薬には、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、アジプイミド酸ジメチルHQ)、活性エステル(例えば、ジスクシンイミジルスベレート)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス-(p-アジドベンゾイル)-ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン-2,6-ジイソシアネート)、及びビス活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)が含まれるが、これらに限定されない。
【0158】
本開示の免疫複合体を調製するための試薬は、市販の「架橋」試薬、例えば、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、及びスルホ-SMPB、及びSVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)ベンゾエート)(例えば、Pierce Biotechnology,Inc.、Rockford,IL.,U.S.Aを参照)も含み得る。
【0159】
9.合成抗体
いくつかの実施形態において、本開示の抗CD200R1抗体は、免疫グロブリン足場若しくはフレームワーク以外の足場若しくはフレームワーク、例えば、代替タンパク質足場、又は人工ポリマー足場にグラフティングされた抗CD200R1免疫グロブリン(例えば、HVR-L1など)からのCDR又はHVRのセットを含む合成抗体であり得る。
【0160】
本開示の合成抗体を調製するために企図される例示的な代替タンパク質足場には、フィブロネクチン、ネオカルチノスタチンCBM4-2、リポカリン、T細胞受容体、プロテインAドメイン(プロテインZ)、Im9、TPRタンパク質、亜鉛フィンガードメイン、pVIII、鳥類膵臓ポリペプチド、GCN4、WWドメインSrc相同性ドメイン3、PDZドメイン、TEM-1ベータラクタマーゼ、チオレドキシン、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、PHD-fmgerドメイン、CL-2、BPTI、APPI、HPSTI、エコチン、LACI-D1、LDTI、MTI-II、サソリ毒素、昆虫デフェンシン-Aペプチド、EETI-II、Min-23、CBD、PBP、チトクロームb-562、Ldl受容体ドメイン、ガンマ-クリスタリン、ユビキチン、トランスフェリン、及び/又はC型レクチン様ドメインが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0161】
合成抗体に有用な例示的人工ポリマー(非タンパク質)の足場は、例えば、Fiedler et al.,(2014)“Non-Antibody Scaffolds as Alternative Therapeutic Agents,”in Handbook of Therapeutic Antibodies(eds.S.Dubel and J.M.Reichert),Wiley-VCH Verlag GmbH&Co.、Gebauer et al.,Curr.Opin.Chem.Biol,13:245-255(2009)、Binz et al,Nat.Biotech.,23(10):1257-1268(2005)に記載されている。
【0162】
IV.組換え方法及び組成物
本開示の抗CD200R1抗体は、抗体産生の分野で周知の組換え方法及び材料を使用して産生することができる。いくつかの実施形態において、本開示は、抗CD200R1抗体をコードする単離された核酸を提供する。核酸は、Vを含むアミノ酸配列及び/又は抗体のVを含むアミノ酸配列(例えば、抗体の軽鎖及び/又は重鎖)をコードすることができる。いくつかの実施形態において、本開示の抗CD200R1抗体をコードする核酸配列を含む1つ以上のベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。いくつかの実施形態において、本開示の抗CD200R1抗体をコードする核酸配列を含む宿主細胞が提供される。一実施形態において、宿主細胞は、抗体のVを含むアミノ酸配列及び抗体のVを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクターで形質転換されている。別の実施形態において、宿主細胞は、抗体のVを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第1のベクター、及び抗体のVを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2のベクターで形質転換されている。
【0163】
組換え法のいくつかの実施形態において、使用される宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの真核細胞、又はリンパ系細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20)である。少なくとも1つの実施形態において、抗CD200R1抗体の作製方法が提供され、この方法は、上で提供されるように、抗体の発現に好適な条件下で、抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を培養することと、任意選択的に、宿主細胞(又は宿主細胞培養培地)から抗体を回収することとを含む。
【0164】
簡潔に述べると、抗CD200R1抗体の組換え産生は、抗体をコードする核酸を単離し(例えば、本明細書に記載されるように)、宿主細胞における更なるクローニング及び/又は発現のためにこの核酸を1つ以上のベクターに挿入することによって実行される。このような核酸は、当技術分野で周知の従来手順を使用して(例えば、所望の抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)、容易に単離及び配列決定される。抗体をコードするベクターをクローニング又は発現するための好適な宿主細胞及び培養方法は、当技術分野で周知であり、原核細胞又は真核細胞が含まれる。典型的には、発現後、抗体は、可溶性画分で細胞ペーストから単離され、更に精製され得る。原核生物に加えて、糸状菌又は酵母などの真核微生物は、グリコシル化経路が「ヒト化」された真菌又は酵母株を含む、抗体をコードするベクターの好適なクローニング又は発現宿主であり、部分的又は完全なヒトグリコシル化パターンを有する抗体の産生をもたらす(例えば、Gerngross,Nat.Biotech.,22:1409-1414(2004)、及びLi et al.,Nat.Biotech.,24:210-215(2006)を参照)。
【0165】
本開示のグリコシル化抗CD200R1抗体の発現に好適な宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)にも由来し得る。無脊椎動物細胞の例には、植物及び昆虫の細胞が含まれる。特に、Spodoptera frugiperda細胞のトランスフェクション用に、昆虫細胞と組み合わせて使用することができる多数のバキュロウイルス株が同定されている。植物細胞培養物を宿主として利用することもできる(例えば、米国特許第5,959,177号、同第6,040,498号、同第6,420,548号、及び同第7,125,978号を参照)。
【0166】
本開示の抗CD200R1抗体の産生に有用な哺乳動物宿主細胞株の例としては、DHFR-CHO細胞を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(例えば、Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA77:4216(1980)を参照)、Y0、NS0、Sp2/0などの骨髄腫細胞株、SV40(COS-7)によって形質転換されたサル腎臓CVl株、ヒト胚性腎臓系統(例えば、Graham et al.,J.Gen Virol.,36:59(1977)に記載されている293又は293細胞)、ベビーハムスター腎細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(例えば、Mather,Biol.Reprod.,23:243-251(1980)に記載されているTM4細胞)、サル腎細胞(CVl)、アフリカミドリザル腎細胞(VERO-76)、ヒト子宮頸がん細胞(HELA)、イヌ腎細胞(MDCK、バッファローラット肝細胞(BRL3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝細胞(Hep G2)、マウス乳腺腫瘍(MMT060562)、TR1細胞(例えば、Mather et al.,Annals N Y.Acad.Sci.383:44-68(1982)及びUS6,235,498)、Medical Research Council5(MRC5)細胞(例えば、ATCCより入手可能であり、CCL-171とも称される)、及びForeskin4(FS-4)細胞(例えば、Vilcek et al.Ann.N.Y.Acad.Sci.284:703-710(1977)、Gardner&Vilcek.J.Gen.Virol.44:161-168(1979)、及びPang et al.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.77:5341-5345(1980))が挙げられる。抗体産生に好適である有用な哺乳動物宿主細胞株の一般的概説については、例えば、Yazaki and Wu,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ),pp.255-268(2003)を参照。
【0167】
V.抗CD200R1抗体の医薬組成物及び製剤
本開示は、抗CD200R1抗体を含む医薬組成物及び医薬製剤も提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、本明細書に記載される抗CD200R1抗体及び薬学的に許容される担体を含む医薬製剤を提供する。いくつかの実施形態において、抗CD200R1抗体は、医薬組成物の唯一の有効成分である。このような医薬製剤は、所望の純度を有する抗CD200R1抗体を、1つ以上の薬学的に許容される担体と混合することによって調製することができる。典型的には、このような抗体製剤は、水溶液(例えば、米国特許第6,171,586号、及びWO2006/044908を参照)として、又は凍結乾燥製剤(例えば、米国特許第6,267,958号を参照)として調製することができる。
【0168】
薬学的に許容される担体は、一般に、使用される投与量及び濃度でレシピエントに対して無毒である。このような薬学的に許容される広範囲の担体が当技術分野で周知である(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)を参照)。本開示の製剤に有用で薬学的に許容される例示的な担体には、ホスフェート、シトレート、及び他の有機酸などの緩衝剤、アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤、保存剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ヘキサメトニウムクロリド、ベンザルコニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリド、フェノール、ブチル又はベンジルアルコール、メチル又はプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、及びm-クレゾール)、低分子量(約10残基未満)ポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチン、若しくは免疫グロブリンなどのタンパク質、ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリジンなどのアミノ酸、単糖、二糖、及びグルコース、マンノース、若しくはデキストリンを含む他の炭水化物、EDTAなどのキレート剤、スクロース、マンニトール、トレハロース若しくはソルビトールなどの糖、ナトリウムなどの塩形成対イオン、金属錯体(例えば、Zn-タンパク質複合体)、及び/又はポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0169】
本開示の製剤に有用な薬学的に許容される担体は、可溶性中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)など、ヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(例えば、rHuPH20又はHYLENEX(登録商標)、Baxter International,Inc.)などの間質性薬分散剤も含み得る(例えば、米国特許公開第2005/0260186号及び同第2006/0104968号を参照)。
【0170】
本明細書に開示されるような製剤は、抗CD200R1に加えて、必要に応じて、製剤が投与される対象において治療される特定の兆候に有用な有効成分を含み得ることも企図される。好ましくは、任意の有効成分は、抗CD200R1抗体活性の活性と相補的な活性を有し、その活性は互いに悪影響を及ぼさない。
【0171】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、抗CD200R1抗体と、チェックポイント阻害剤などであるがこれに限定されない追加の有効成分とを含む。そのような実施形態で有用なチェックポイント阻害剤には、免疫チェックポイント分子である抗原に対する特異性を含む二次抗体が含まれるが、これに限定されない。いくつかの実施形態において、二次抗体は、PD1、TIGIT、LAG3、PVRIG、KIR、TIM-3、CRTAM、CTLA-4、BTLA、CD244、CD160、LIGHT、GITR、4-1BB、OX40、CD27、TMIGD2、ICOS、CD40、CD47、SIRPa、NKG2D、NKG2A、TNFRSF25、CD33、CEA、Epcam、GPC3、CD200、CD200R1、CD73、CD83、CD39、TRAIL、CD226、及びVISTAから選択される免疫チェックポイント分子に対する特異性を含む。
【0172】
少なくとも1つの実施形態において、医薬組成物は、抗CD200R1抗体及び追加の有効成分を含み、追加の有効成分は、PD1、TIGIT、LAG3、PVRIG、KIR、TIM-3、及びCRTAMから選択される免疫チェックポイント分子に対する特異性を含む抗体である。
【0173】
少なくとも1つの実施形態において、抗CD200R1抗体及び追加の有効成分を含む医薬組成物であって、追加の有効成分が免疫チェックポイント分子PD1に対する特異性を含む抗体である。本明細書に開示される医薬組成物の実施形態において有用なPD1に対する特異性を含む例示的な抗体には、ドスタリマブ、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、及びピジリズマブが含まれるが、これらに限定されない。
【0174】
有効成分は、例えば、コアセルベーション技法によって、又は界面重合によって、例えば、コロイド薬送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマクロエマルジョンで、それぞれヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ-(メチルメタシレート)マイクロカプセルによって、調製されたマイクロカプセルに封入され得る。このような技法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。
【0175】
いくつかの実施形態において、製剤は、抗体及び/又は他の有効成分の徐放性調製物であり得る。徐放性調製物の好適な例には、抗体を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、このマトリックスは、成形品、例えば、フィルム、又はマイクロカプセルの形態である。
【0176】
典型的には、対象に投与される本開示の製剤は滅菌性である。滅菌製剤は、よく知られた技法を使用して、例えば、滅菌濾過膜による濾過によって容易に調製することができる。
【0177】
IV.使用及び治療方法
本開示の抗CD200R1抗体を含む組成物又は製剤のいずれも、いかなる方法又は使用にも、例えば、CD200R1に特異的に結合し、それによって、免疫調節又はシグナル伝達に関係する細胞表面受容体としての、CD200R1の機能、特にT細胞又はNK細胞の活性化を負に制御する(又は、抑制する)際のCD200R1の機能、を阻害、低減及び/又は完全にブロックするそれらの能力を利用する治療法において、使用できることが企図される。
【0178】
細胞表面糖タンパク質CD200は、CD200R1の天然の結合標的である。しかしながら、CD200は、ニューロン、上皮細胞、内皮細胞、線維芽細胞、リンパ系細胞など、様々なヒト細胞でより広く発現しており、CD200R1とそのリガンドであるCD200との結合は、免疫抑制活性を示すことがわかっている。したがって、抗CD200R1抗体は、CD200R1のCD200への特異的結合を阻害、低減、及び/又は完全にブロックすることを含む治療方法で使用できることが企図される。
【0179】
CD200R1の免疫調節及び/又は免疫シグナル伝達活性、特にリンパ球活性化に対するCD200R1の免疫抑制効果を阻害、低減、及び/又は完全にブロックすることによって治療できる可能性のある疾患、障害、及び状態が、数多く存在する。疾患、障害、及び状態の範囲には、がんが含まれるが、これに限定されない。
【0180】
例えば、特定のタンパク質(例えば、PD1)の免疫阻害作用をブロックする薬剤が、副腎がん、膀胱がん、肉腫、マイクロサテライト不安定性高(MSI-H)がん(固形MSIがんを含む)、TMB(腫瘍変異負荷)高腫瘍、ミスマッチ修復欠損(dMMR)がん、脳がん、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、EGJ腺がん、食道がん、胆嚢がん、胃がん(例えば、消化管カルチノイド(GIカルチノイド))、頭頸部がん、心臓がん、肝細胞がん、腎臓がん、肝臓がん、黒色腫、中皮腫(例えば、胸膜中皮腫)、非小細胞肺がん、卵巣がん、上皮性卵巣がん、子宮内膜がん、小児固形がん、膵臓がん、前立腺がん、脾臓がん、小細胞肺がん、精巣がん、甲状腺がん(例えば、甲状腺髄様がん又は甲状腺濾胞がん)、血液がん(例えば、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、白血病、リンパ腫、骨髄腫)、腎細胞がん腫、明細胞腎がん、神経内分泌腫瘍(例えば、悪性褐色細胞腫及び傍神経節腫)、及び子宮などの、広範囲にわたるがんを治療するために現在開発中である。いくつかの実施形態において、がんは、肺がん(例えば、小細胞肺がん)、皮膚がん(例えば、黒色腫)、膵臓がん、子宮内膜がん、前立腺がん、結腸直腸がん、卵巣がん、中皮腫、及び膀胱がんから選択される。したがって、本開示の抗CD200R1抗体を含む組成物又は製剤のいずれも、上に挙げたがんのいずれかの治療のための方法又は使用に使用できることが企図される。いくつかの実施形態において、がんは、肺がん(例えば、小細胞肺がん)、皮膚がん(例えば、黒色腫)、膵臓がん、子宮内膜がん、前立腺がん、結腸直腸がん、卵巣がん、中皮腫及び膀胱がんから選択される。いくつかの実施形態において、本開示は、対象のがんを治療する方法を提供し、本方法は、治療有効量の本開示の抗CD200R1抗体をそれを必要とする対象に投与すること、又は、本開示の抗CD200R1抗体及び薬学的に許容される担体を含む治療有効量の医薬組成物を対象に投与することを含む。
【0181】
以下の実施例を含む本明細書に開示されるように、本開示の抗CD200R1抗体は、CD200にCD200R1結合を低減させ、阻害し、及び/又は、ブロックし、それにより、免疫抑制性シグナル伝達経路を変化させる能力を有する。したがって、いくつかの実施形態において、本開示は、対象におけるCD200R1媒介性の疾患又は状態を治療する方法を提供し、本方法は、治療有効量の本開示の抗CD200R1抗体を対象に投与すること、又は、本開示の抗CD200R1抗体及び薬学的に許容される担体を含む治療有効量の医薬組成物をそれを必要とする対象に投与することを含む。同様に、いくつかの実施形態において、本開示は、対象の細胞に発現されるCD200への結合によって媒介される疾患を治療する方法を提供し、本方法は、治療有効量の本開示の抗CD200R1抗体を対象に投与すること、又は、本開示の抗CD200R1抗体及び薬学的に許容される担体を含む治療有効量の医薬組成物をそれを必要とする対象に投与することを含む。
【0182】
治療有効量の医薬組成物は、少なくとも約1mg/kgの抗CD200R1抗体又は少なくとも約10mg/kgの抗CD200R1抗体を含むことができる。治療有効量の医薬組成物は、少なくとも約2mg/kgの抗CD200R1抗体又は少なくとも約20mg/kgの抗CD200R1抗体を含むことができる。治療有効量の医薬組成物は、少なくとも約0.3mgの抗CD200R1抗体、少なくとも約1.0mgの抗CD200R1抗体、少なくとも約3.0mgの抗CD200R1抗体、少なくとも約10mgの抗CD200R1抗体、少なくとも約30mgの抗CD200R1抗体、少なくとも約100mgの抗CD200R1抗体、少なくとも約300mgの抗CD200R1抗体、少なくとも約900mgの抗CD200R1抗体、又は少なくとも約1400mgの抗CD200R1抗体を含むことができる。治療有効量の医薬組成物は、少なくとも約10mg/kgの抗CD200R1抗体、少なくとも約20mg/kgの抗CD200R1抗体、又は少なくとも約100mg/kgの抗CD200R1抗体を含むことができる。いくつかの実施形態において、治療有効量の医薬組成物は、前述の任意の2つの値の間の範囲に存在する抗CD200R1抗体の量を含むことができる。
【0183】
いくつかの実施形態において、医薬組成物の治療有効量は、顕著なオフターゲット効果を誘発することができない。例えば、場合によっては、10mg/kg以下の用量で抗CD200R1抗体の有意なオフターゲット効果をなくすことができる。別の例として、場合によっては、20mg/kg以下の用量、又は100mg/kg以下の用量で抗CD200R1抗体の有意なオフターゲット効果をなくすことができる。いくつかの実施形態において、オフターゲット効果は、ヒト組織における非特異的結合(例えば、BV ELISAによって測定される)又は交差反応性を含むことができる。いくつかの医薬組成物では、本明細書に提供される別の治療有効量で、又は本明細書に提供される任意の2つの治療有効量の範囲内で、抗CD200R1抗体の有意なオフターゲット効果をなくすことができる。
【0184】
本治療方法に従う抗CD200R1抗体、組成物、又は医薬製剤の投与は、対象の抗CD200R1媒介性疾患の進行から対象を保護及び/又は治療する、抗体誘導性治療効果を提供する。いくつかの実施形態において、本治療方法は、抗CD200R1媒介性の疾患又は状態を予防及び/又は治療するために、当業者に知られている1つ以上の追加の治療剤の投与又は治療を更に含むことができる。1つ以上の追加薬剤の投与を含むこのような方法は、併用投与(2つ以上の治療剤が同じ又は個別の製剤に含まれる場合)、及び個別投与を包含し、その場合、抗体組成物又は製剤は、追加治療剤投与の前、同時、及び/又は後に投与され得る。
【0185】
本開示の治療方法のいくつかの実施形態において、抗CD200R1抗体又は抗CD200R1抗体を含む医薬製剤は、薬剤を全身的に又は所望の標的組織に送達する任意の投与様式(mode of administration)によって対象に投与される。全身投与は、一般に、所望の標的部位、組織、又は器官への直接ではない部位で対象に抗体を投与する任意の様式を指し、抗体又はその製剤は、対象の循環系に入るため、代謝及び他の同様なプロセスを受ける。
【0186】
したがって、本開示の治療方法において有用な投与様式には、注射、注入、点滴、及び吸入が含まれ得るが、これらに限定されない。注射による投与には、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、脳室内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、脳内脊髄、及び胸骨内の注射及び注入が含まれ得る。
【0187】
いくつかの実施形態において、抗CD200R1抗体の医薬製剤は、抗体が腸内の不活性化から保護されるように製剤化される。したがって、本治療方法は、製剤の経口投与を含み得る。
【0188】
いくつかの実施形態において、薬剤としての本開示の抗CD200R1抗体を含む組成物又は製剤の使用も提供される。更に、いくつかの実施形態において、本開示は、薬剤、特にCD200R1媒介性疾患を治療、予防又は阻害するための薬剤の製造又は調製における、抗CD200R1抗体を含む組成物又は製剤の使用を提供する。更なる実施形態において、本薬剤は、CD200R1媒介性疾患の個体に有効量の薬剤を投与することを含む、CD200R1媒介性疾患を治療、予防又は阻害するための方法で使用するためのものである。特定の実施形態において、薬剤は、有効量の少なくとも1つの追加治療剤、又は治療を更に含む。かかる医薬品に使用できる例示的な追加の治療薬又は治療法としては、PD1、TIGIT、LAG3、PVRIG、KIR、TIM-3、CRTAM、CTLA-4、BTLA、CD244、CD160、LIGHT、GITR、4-1BB、OX40、CD27、TMIGD2、ICOS、CD40、CD47、SIRPa、NKG2D、NKG2A、TNFRSF25、CD33、CEA、Epcam、GPC3、CD73、CD83、CD39、TRAIL、CD226、及びVISTAなどの免疫チェックポイント分子に対する特異性を含む抗体が含まれるが、これらに限定されない。少なくとも1つの実施形態において、本開示の薬剤に存在する追加の治療薬又は治療法は、免疫チェックポイント分子PD1に対する特異性を含む抗体であり、ドスタリマブ、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、及びピジリズマブから選択される抗体を含むが、これらに限定されない。
【0189】
更なる実施形態において、薬剤は、CD200R1媒介性疾患を治療、阻害又は予防するために薬剤の有効な量を対象に投与することを含む、対象のCD200R1媒介性疾患を治療、阻害又は予防するために使用するものである。
【0190】
CD200R1媒介性の疾患又は状態の予防又は治療のため、本開示の組成物及び製剤に含まれる抗CD200R1抗体の適切な投与量(単独で又は1つ以上の他の追加治療剤と併用して使用される場合)は、治療される特定の疾患又は状態、疾患の重症度及び経過、抗体が予防目的又は治療目的で投与されるか否か、患者に投与された薬歴、患者の病歴及び抗体に対する応答、及び主治医の裁量に依存するだろう。本明細書に記載の組成物及び製剤に含まれる抗CD200R1抗体は、一度に、又は一連の治療にわたって患者に適切に投与することができる。本明細書では、様々な時点にわたる単回投与又は複数回投与、ボーラス投与、及びパルス注入を含むが、これらに限定されない様々な投薬スケジュールが企図される。
【0191】
疾患の種類及び重症度に応じて、本開示の製剤中約1μg/kg~20mg/kgの抗CD200R1抗体は、例えば、1回以上の個別投与によるか又は持続注入によるかを問わず、ヒト対象に投与するための初回の候補投与量である。一般に、抗体の投与量は、約0.05mg/kg~約20mg/kgの範囲とすることができる。いくつかの実施形態において、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg、10mg/kg、20mg/kg、又はこれらのいずれか2つの間のいずれかの値(又はこれらの任意の組み合わせ)の1つ以上の用量をヒト対象に投与し得る。いくつかの実施形態において、ヒト対象に投与される用量は、約20mg/kgを超えることができる。
【0192】
いくつかの実施形態において、治療有効量をヒト対象などの対象に投与することができる。治療有効量は、少なくとも約1mg/kg、少なくとも約10mg/kg、少なくとも約1mg/kgと約10mg/kgの間の用量とすることができる。治療有効量は、少なくとも約2mg/kg、少なくとも約20mg/kg、又は少なくとも約2mg/kgと約20mg/kgの間の用量とすることができる。治療有効量は、少なくとも約0.3mg、少なくとも約1.0mg、少なくとも約3.0mg、少なくとも約10mg、少なくとも約30mg、少なくとも約100mg、少なくとも約300mg、少なくとも約900mg、少なくとも約1400mg/kg、又は少なくとも約、前述の2つの値の間の範囲にある用量とすることができる。治療有効量は、少なくとも約10mg/kg、少なくとも約20mg/kg、少なくとも約100mg/kg、又は少なくとも、上記の2つの値の間の範囲にある任意の用量とすることができる。
【0193】
投与量の投与は、対象の状態に応じて、数日以上にわたって維持することができ、例えば、当技術分野で知られている方法によって決定されるように、CD200R1媒介性疾患が十分に治療されるまで投与を続けることができる。いくつかの実施形態において、高い初回負荷量が投与され、その後、1回以上の低用量(例えば、1回以上の維持用量)が投与され得る。しかしながら、他の投与計画が有用な場合がある。投与量投与の治療効果の進行は、従来の技法及びアッセイによって監視することができる。
【0194】
したがって、本開示方法のいくつかの実施形態において、抗CD200R1抗体の投与は、約1mg/kg~約100mg/kgの1日投与量を含む。いくつかの実施形態において、抗CD200R1抗体の投与量は、少なくとも約1mg/kg、少なくとも約5mg/kg、少なくとも約10mg/kg、少なくとも約20mg/kg、又は少なくとも約30mg/kgでの1日投与量を含む。
【実施例
【0195】
本開示の様々な特徴及び実施形態は、下記の代表的な実施例で示され、これらは、例示を意図するものであり、限定するものではない。当業者は、特定の実施例が、その後に続く特許請求の範囲でより完全に説明されるように、本発明の例示にすぎないことを容易に理解するであろう。本出願に記載されている全ての実施形態及び特徴は、その中に含まれる全ての実施形態と互換性があり、組み合わせ可能であると理解されるべきである。
【0196】
実施例1:CD200R1ポリペプチドの生成
本実施例は、本開示の抗CD200R1抗体を誘発及びスクリーニングする際に抗原として使用される様々なCD200R1ポリペプチド構築物の調製を例示する。
【0197】
A.CD200R1の作製
4つのhu-CD200R1アイソフォームの細胞外ドメイン、hu-CD200R1-iso4-Alt(配列番号1)、hu-CD200R1-iso4-Ref(配列番号2)、hu-CD200R1-iso1-Alt(配列番号hu-CD200R1-iso1-Ref(配列番号4)、並びにカニクイザルCD200R1(配列番号5)及びアカゲザルCD200R1(配列番号6)の類似の細胞外ドメインセグメントを、発現のために、CMVプロモーターを有する哺乳動物発現ベクターにクローニングした。構築物は、C末端に精製用タグ、GGGSGLNDIFEAQKIEWHEGSGGHHHHHHHH(配列番号90)、及びN末端にマウスIgG1重鎖分泌シグナル、MGWSCIILFLVATATGVHS(配列番号91)を含む。組換えCD200R1ポリペプチドは、Expi293システム(Thermo Fisher Scientific、Waltham,MA,USA)を、標準的な説明書に従い使用し、発現させた。培地上清を300gでの遠心分離によって清澄化し、続いて0.22ミクロンフィルターで濾過した。濾過された培地からAkta精製システム(GE Healthcare)に連結されたHistrapFFカラム(GE Healthcare、Chicago,IL,USA)を使用した固定化金属アフィニティクロマトグラフィーにより、組換えCD200R1を精製した。Histrapカラムの溶出液を、Akta精製システム(GE Healthcare)に連結されたSuperdex200を使用した1×PBS緩衝液でのサイズ排除クロマトグラフィーによって更に精製した。精製タンパク質の大部分を濃縮し、0.22ミクロンフィルターで濾過した。
【0198】
B.CD200の産生
ヒトCD200(配列番号7)及びカニクイザルCD200(配列番号8)の細胞外ドメインを、発現のために、CMVプロモーターを有する哺乳動物発現ベクターにクローニングした。構築物は、N末端にマウスIgG1重鎖分泌シグナル(配列番号91)、及びC末端にN297G変異を有するヒトIgG断片結晶化可能(Fc)領域(配列番号9)を含む。CD200-Fcポリペプチドは、Expi293システム(ThermoFisher)を、標準的な説明書に従い使用し、発現させた。培地上清を300gでの遠心分離によって清澄化し、続いて0.22ミクロンフィルターで濾過した。濾過された培地から、Akta精製システム(GE Healthcare)に接続されたMabSelect SuReカラム(GE Healthcare)を用いたアフィニティクロマトグラフィーによって、組換えCD200-Fcを精製した。精製されたCD200-Fcは、MabSelect SuReから100mMクエン酸ナトリウム、pH3.0で溶出し、100mM Tris、pH8.8によって直ちに中和した。MabSelect SuReの溶出液を、Akta精製システム(GE Healthcare)に連結されたSuperdex200を用いて、1×PBS緩衝液中のサイズ排除クロマトグラフィーによって更に精製した。精製タンパク質の大部分を濃縮し、0.22ミクロンフィルターで濾過した。
【0199】
実施例2:ハイブリドーマ法を使用した抗ヒトCD200R1抗体の生成、スクリーニング及び特徴解析
この実施例は、マウスハイブリドーマ技術を使用して抗CD200R1抗体を生成する方法、並びに更なる特徴解析のための抗体のスクリーニング及び選抜方法を例示する。
【0200】
A.免疫キャンペーン
BalbC(22.1のための)又はSwiss Websterマウス(10F6のための)の免疫は、社内で産生させた、組換えhu-CD200R1-iso4-Altポリペプチド(配列番号1)及びhu-CD200R1-iso4-Refハプロタイプポリペプチド(配列番号2)細胞外ドメインによって実施した。Sigmaアジュバントシステム(Millipore Sigma St.Louis,MO)を全ての免疫に使用した。力価は、以下に記載されるようにELISAによって決定された。力価に基づいて選択されたマウスには、融合前にアジュバントなしで最終の追加免疫を与えた。1日後、脾臓を採取し、標準プロトコルに従って処理した。標準プロトコルに従って、PEGを使用して、脾細胞を骨髄腫P3X63Ag8.653細胞(アメリカンタイプカルチャーコレクションCRL1580)と融合させ、標準的な技法を使用して96ウェルプレートに約50,000骨髄腫細胞/ウェルで播種し、得られたコロニーのクローン性を最大化した。親ハイブリドーマは、AH(アザセリン+ヒポキサンチン)を補充した選択培地を使用して選抜した。
【0201】
B.ハイブリドーマ上清のELISAスクリーニング
培養の12~14日後、上清を回収し、ヒトCD200R1でコーティングされた96ウェルプレートを用いたELISAによる一次スクリーニングに供した。96ウェルMAXISORP(登録商標)平底プレート(ThermoScientific,catalogue number439454)を、50μL/ウェルのタンパク質を用いて、コーティング緩衝液(0.05Mカーボネート緩衝液、pH9.6又はホスフェート緩衝生理食塩水、PBS)中1μg/mLの濃度で、4℃で一晩コーティングした。コーティング溶液を除去した後、ホスフェート緩衝生理食塩水(PBS)pH7.4(ELISA希釈液)に1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含む200μLのアッセイ/ブロッキング溶液を添加し、室温で1時間インキュベーションすることにより、非特異的結合をブロッキングした。
【0202】
C.ハイブリドーマのシークエンシング
モノクローナル抗CD200R1ハイブリドーマのヒットを、標準ハイブリドーマ培地(DMEM/F12、10%FBS、1%Glutamax、1%pen/strep)において、80%超の生存率で、7~10日間、T75フラスコで1~3×10の密度まで増殖させた。培養物から1~300万個の細胞を15mL falconチューブにて、300gで5分間ペレット化した。細胞ペレットを5mLの氷冷PBSに再懸濁して洗浄した。PBSを除去し、細胞を1mlのTRIZOL試薬(Life technologies)に再懸濁した。細胞を確実に溶解させるために、溶解物を20G1ゲージ針(BD305175)を備えた1mLシリンジに20回通した。TRIZOL/細胞懸濁液を直ちにドライアイスで凍結し、処理するまで-80℃で保存した。
【0203】
Direct-zol RNA Miniprep Plusキット(Zymo Research)を使用して溶解物から全RNAを単離し、5ugの全RNAを使用して、SMARTer RACE5’キット(Takara)を使用して、5’-RACE対応ハイブリドーマcDNAを生成させた。cDNAから重鎖及び軽鎖特異的遺伝子断片を増幅するために、以下のプライマーを5’-RACE PCR反応でキットに含まれるユニバーサルプライマーと組み合わせて使用した。
(a)マウスVHファミリー特異的可変領域プライマーTCTTGTCCACCTTGGTGCTGCTGGCCGG(配列番号92)、TTTGTCCACCGTGGTGCTGCTGGCTGGT(配列番号93)、
(b)マウスVκファミリー特異的可変領域プライマー:GATCAGTCCAACTGTTCAGGACGCC(配列番号94)、又は
(c)マウスVλファミリー特異的可変領域プライマー:ACACTCAGCACGGGACAAACTCTTCTCCACAGT(配列番号95)、ACACTCTGCAGGAGACAGACTCTTTTCCACAGT(配列番号96)、ACACTCAGCACGGGACAAACTCTTCTCCACATG(配列番号97)。
【0204】
PCR産物を精製し、In-Fusionクローニングキット(Takara)を使用してpRACEにクローニングし、M13フォワード及びM13リバースプライマーを使用してSanger Sequencerを使用して両方の鎖を配列決定した。7つの抗CD200R1ハイブリドーマ(10F6、9B8、5D1、10A2、1F3、11E4、22.1)のVLドメイン、VHドメイン、及び超可変領域(HVR)配列を表2にまとめる。10F6、9B8、5D1、10A2、1F3、11E4、22.1及び市販の抗体OX108の配列のアラインメントを、図1AのVLドメイン及び図1BのVHドメインについて示す。
【0205】
D.10F6及び22.1のヒト化
マウス10F6抗体の軽鎖可変領域(VL)及び重鎖可変領域(VH)配列を、ヒト生殖細胞系抗体配列対してアラインメントし、ヒト生殖細胞系カッパ軽鎖(遺伝子ID:IGKJ4.02)及びヒト生殖細胞系列重鎖(遺伝子ID:IGHJ4.03)を、最も近いヒトフレームワークとして同定した(アラインメントを図2に示す)。マウス10F6軽鎖及び重鎖の相補性決定領域(CDR)を、同定された最も近いヒトフレームワークにそれぞれ移植し、ヒト化抗体クローンを生成させた。このプロセスでは、マウス10F6 VLのCDR-L1の24~34位、CDR-L2の50~56位、及びCDR-L3の89~97位を、ヒトκ軽鎖フレームワークアクセプターに移植し、マウス10F6 VHのCDR-H1の31~35位、CDR-H2の50~61位、及びCDR-H3の93~102を、ヒト重鎖フレームワークアクセプターに移植した。得られた10F6のヒト化バージョン「h10F6」のVHドメイン、VLドメイン、及びHVR配列を表3に要約する。h10F6の全長重鎖及び軽鎖配列も表3に示す。22.1抗体を同様にヒト化して、h22.1抗体を得た。h22.1の関連する配列も表3に要約する。
【0206】
E.h10F6及びh22.1の発現及び精製
ヒト化10F6(h10F6)及びヒト化22.1の重鎖及び軽鎖可変ドメインを合成し、pRKプラスミドにクローニングした。組換えヒト化10F6 IgG及び22.1 IgGの発現は、Expi293F発現システム(Life Technologies)を使用して、提供された説明書に従って行った。トランスフェクション反応では、重鎖と軽鎖のプラスミドの比率を1対1に保ち、トランスフェクション細胞を6日間培養してから採取した。組換えIgG分子は下記のプロトコルで精製した。細胞を除去するために300gで10分間遠心分離し、0.22ミクロンのフィルターで濾過することにより、培地上清を清澄化した。清澄化した培地上清を、PBS緩衝液で平衡化したPOROS MabCapture A樹脂(Thermo Scientific)と混合し、穏やかに回転させながら室温で1.5時間インキュベーションした。インキュベーション後、スラリーをカラムに充填し、0.5MのNaClを含むPBS緩衝液20カラム体積によって樹脂を洗浄し、次に、0.1Mの酢酸+0.15MのNaClの3カラム床体積によって溶出させた。溶出液を1M MOPS、pH7.0でpH5.2にすばやく中和し、PD-10カラム(GE)でPBS緩衝液にバッファー交換した。
【0207】
実施例3:抗CD200R1抗体の結合親和性、エピトープマッピング、及びブロッキング能力
この実施例は、実施例1及び2で調製された抗CD200R1抗体の結合及びエピトープ特性の試験を説明する。
【0208】
A.CD200R1の結合親和性の測定
ヒト化抗CD200R1、h10F6の、様々なヒトCD200R1アイソフォーム(Iso1及びIso4、代替又は参照ハプロタイプ)及びcynoCD200R1への結合親和性を測定するために、BIACORE(商標)8K機器を使用してSPR測定を実施した。簡潔に述べると、HBS-EP緩衝液(0.01M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.005%界面有効成分P20)へのBiotin CAPture試薬(GE)の1:4希釈液を、2μL/分の流速でチップに適用した。動態測定では、3nMのビオチン化ヒトCD200R1であった。次に、抗体h10F6を含むHBS-P緩衝液(0.01M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、0.005%界面有効成分P20)中の、低濃度(0.27nM)~高濃度(200nM)までの3倍段階希釈液を、37℃で注入した(流速:30μL/分)。センサーグラムを記録し、BIACORE(登録商標)8K Evaluation Software(バージョン1.1.1.7442)により評価する前に、参照及び緩衝液の減算を行った。結合率(kon)及び解離率(koff)は、単純な1対1のラングミュア結合モデルを使用して算出された。平衡解離定数(K)を、koff/konの比率として算出した。h10F6のcyno-CD200R1への結合親和性は、6nMのビオチン化cyno-CD200R1を使用して、同じプロトコルで測定した。様々なhu-CD200R1アイソフォームに対するh10F6の結合親和性データを、以下の表4に要約する。
【0209】
【表4】
【0210】
結果:表4に示すように、h10F6は、市販の抗体OX108よりも100倍~1000倍高いhu-CD200R1への結合親和性を有する。親和性は、結合アッセイで使用される特定のhu-CD200R1アイソフォームとハプロタイプに依存する。長いCD200R1アイソフォーム4(iso4)が優勢な形態であるため(ALS、T1D、敗血症、多発性硬化症患者の、インターフェロンβ治療前後の、健常サンプル及び疾患時サンプルのRNA-seqデータからのスプライスイベントの解析(例えば、Linsley P.S.,et al.,PLoS One,9(10):e109760(2014)を参照)からの、ゲノムベースの予測及び定量化の方法を使用して実行された予測分析から、アイソフォーム4は86%であると予測され、アイソフォーム1は14%であると予測される)、また、参照ハプロタイプと代替ハプロタイプの頻度が集団間で本質的に分かれているため(Ref46%及びAlt54%)、抗CD200R1治療薬は、主要なアイソフォーム4の参照ハプロタイプと代替ハプロタイプの両方に高い親和性で結合するはずである。h10F6は、OX108よりも1000倍高い親和性でアイソフォーム4alt及びアイソフォーム4refに結合する。対照的に、OX108はあまり一般的ではないアイソフォーム1に結合し、すなわち、優勢なアイソフォーム4に対する結合親和性と比較して10倍の親和性があり、治療薬としてはあまり適していない。cyno-CD200R1に対するh10F6の親和性は>1000nMである。
【0211】
B.ELISAで測定されたhu-CD200R1のブロッキング
h10F6、及び6つの他のヒト化抗CD200R1抗体(h22.1、h9B8、h5D1、h10A2、h1F3、及びh11E4)を、以下のようにELISAによってhu-CD200R1のブロックについてアッセイした。96ウェルMAXISORP(登録商標)平底プレート(Thermofisher、カタログ番号439454)を、PBS中の1μg/mLヒトCD200-Fcで4℃で一晩コーティングした。コーティング溶液を除去した後、1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むPBSで非特異的結合をブロックし、室温で1時間インキュベートした。次いで、プレートを0.05%TWEEN(登録商標)-20を含むPBS(洗浄緩衝液)で5回洗浄した。ブロッキング期間中、NUNC Fプレート(Thermofisher、カタログ番号269620)中で、0.5%のBSA及び0.05%のTween20を含むPBS(ELISA緩衝液)を使用して、60μl/ウェルの0.1nM又は0.4nMビオチン化ヒトCD200R1、及び60ul/ウェルの抗体(0.3uMから始まる、1:4の連続希釈)を、室温で1時間調製した。次いで、抗原-抗体混合溶液を100ul/ウェルでhuCD200-Fc被覆ウェルに室温で15分間移した。次いで、プレートを洗浄緩衝液で洗浄し、ELISA緩衝液で1:5000に希釈した50μl/ウェルのストレプトアビジンポリHRP(Thermofisher、カタログ番号21140)を室温で1時間添加した。プレートを洗浄緩衝液で洗浄し、50μL/ウェルでテトラメチルベンジジン(TMB)マイクロウェルペルオキシダーゼ基質(VWR、カタログ番号95059-156)を添加することによって15分間発色させた。酵素による発色を、50μL/ウェルのTMB停止溶液(VWR、カタログ番号95059-200)で停止させた。プレートを450nmでSpectraMax i3Xプレートリーダー(Molecular Devices)で分析した。
【0212】
結果:hu-CD200R1の様々なアイソフォームに対するh10F6、h22.1、h9B8、h5D1、h10A2、h1F3、h11E4のELISAブロッキングデータを示すプロットを図3に示す。プロットによって示されるように、ヒト化抗CD200R1、h10F6は、試験された他の抗CD200R1抗体よりもhu-CD200:hu-CD200R1相互作用の良好なブロッカーである。
【0213】
ブロッキングIC50は、ビオチン化hu-CD200R1のコーティングhu-CD200-Fcへの結合を50%阻害するh10F6の濃度を表す。表5に要約されたIC50値によって示されるように、h10F6は、ブロッキングアッセイで使用される特定のhu-CD200R1アイソフォーム及びハプロタイプに依存して、1.7nM~6.6nMの間のIC50でhu-CD200:hu-CD200R1相互作用をブロックする。
【0214】
【表5】
【0215】
C.エピトープビニング分析
エピトープビニング実験を、実施例2に記載のように調製された6つのヒト化抗CD200R1抗体h10F6、h9B8、h5D1、h10A2、h1F3、h11E4、及びh22.1に対して実施した。エピトープビニング測定は、SAV Octetセンサー(ForteBio)でビオチン化ヒトCD200R1を捕捉し、抗体1に結合し、続いて抗体2でプローブすることにより、OctetRed96で実施した。抗体2が抗体1結合CD200R1に結合できる場合、2つの抗体を異なるビンに割り当てた。抗体2が抗体1結合CD200R1に結合できなかった場合、2つの抗体を同じエピトープビンに割り当てた。
【0216】
結果:エピトープビニング実験の結果を表6に要約する。測定された6つの抗CD200R1抗体は、CD200R1上の3つの異なるエピトープを認識するとして、エピトープビニングによって決定された。h10F6及びh22.1は、CD200R1上の重複するCD200ブロックエピトープに結合することが決定された。抗体h9B8、h10A2、h5D1、及びh1F3はエピトープビンを共有しているが、h11E4はCD200R上の異なるエピトープに結合する。
【0217】
【表6】
【0218】
D.細胞ベースの、抗体によるhu-CD200R1ブロッキングのアッセイ
ヒト化抗CD200R1抗体のブロッキング活性を、以下の細胞ベースのアッセイで試験した。hu-CD200R1(UNQ#Q8TD46)を安定して発現するU937細胞を、ヒトTruStain FcX(Biolegend、カタログ番号422302)とともに4℃で10分間インキュベートした後、抗CD200R1抗体を4℃で20分間添加した。細胞を洗浄した後、55nM huCD200-Fc-Flagとともに4℃で20分間インキュベートした。細胞を洗浄した後、抗Flag-PEクローンL5(Biolegendカタログ番号637310)とともに4℃で20分間インキュベートすることにより、huCD200-Fc-Flag結合を検出した。細胞への結合は、CytoFLEX(Beckman Coulter)を用いたフローサイトメトリーによって分析した。結合曲線は、平均蛍光強度(MFI)に基づいて算出した。
【0219】
結果:図4に示すように、BinA抗体h10F6は、他の2つのBinA抗体OX108及びh22.1よりも10倍及び6倍強力なhu-CD200R1のブロック(すなわち、より低いIC50値)を示す。4つのヒト化BinB抗体h9B8、h5D1、h10A2、及びh1F3は、h10F6よりも弱い様々なレベルのCD200R1ブロッキング活性を有するが、唯一、BinCヒト化クローンh11E4は、CD200Fc結合をブロックしない。
【0220】
E.h10F6及びh22.1のヒト及びカニクイザルT細胞への結合
ヒト化抗CD200R1抗体が内因性抗原に結合する能力を、健康なドナーから分離されたヒトPanT細胞(StemCell Technologies、カタログ番号70500.2)及びカニクイザル末梢血単核細胞(WorldWide Primates)を使用して測定した。ヒトの場合、T細胞は、PanT細胞分離キット(Miltenyi Biotecカタログ番号130-095-535)を使用して単離した。細胞をヒトTruStain FcX(Biolegend、カタログ番号422302)と4℃で10分間インキュベートした後、ビオチン標識抗CD200R1抗体(h10F6又はh22.1)又はアイソタイプ対照と4℃で20分間インキュベートした。細胞を洗浄し、抗CD200R1結合をストレプトアビジン-PE(BD Biosciences)を用いて検出した。ヒト免疫細胞タイプを、抗CD4クローンOKT4及び抗CD8クローンRPA-T8(Biolegend)で標識した。Cyno免疫細胞を、抗CD3クローン10D12、抗CD4クローンM-T466、及び抗CD8クローンBW135/80(Miltenyi Biotec)で標識した。細胞への結合は、CytoFLEX(Beckman Coulter)を用いたフローサイトメトリーによって分析した。幾何平均蛍光強度に基づいて結合曲線を算出した。
【0221】
結果:図5Aに示すように、h10F6は、h22.1及びOX108よりもヒトT細胞に対して高い親和性を有する。しかしながら、図5Bに示されるように、h10F6もOX108もカニクイザルT細胞との交差反応性を示さない。
【0222】
実施例4:抗CD200R1抗体のインビトロ及びインビボ機能アッセイ
この実施例は、本開示の抗CD200R1抗体の機能的活性を特徴付けるために使用されるインビトロ細胞ベースのアッセイ及びインビボ試験を説明する。
【0223】
A.抗CD200R1抗体による腫瘍患者のPBMCの免疫活性化
抗CD200R1抗体の機能活性を、初代末梢血単核細胞(PBMC)で試験した。9人の腫瘍患者からのPBMCを、Discovery Life Sciences(Los Osos,California)から購入した。選択した抗CD200R1抗体100nMを含む384ウェルプレートに、1ウェル当たり2~4×10個の細胞を3連で播種した。次いで、細胞を0.1ng/mLのブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)(Toxin Technologyカタログ番号BT202)で刺激し、37℃で3日間培養した。ThermoScientificから市販されているキットを使用して、ELISAによって上清のIFNγレベルを測定した。生物学的トリプリケートの平均をアイソタイプ対照に対して正規化し、複数のT検定を実行して有意差を決定した。
【0224】
結果:図6に示されるように、ヒト化抗CD200R1抗体、h10F6及びh22.1は、様々ながんタイプを有する患者由来のサンプルにおいてIFNγの産生を増加させた。具体的には、図6は、100nMのh10F6又はh22.1で処理されたサンプルにおける、アイソタイプ対照に対して正規化されたIFNγ産生の倍率変化を示す。h10F6で処理した場合、9人の腫瘍患者の細胞のうち6人が、IFNγ産生の統計的に有意な増加を示した。h22.1で治療した場合、9人の患者のうち4人が有意な治療効果を示した。
【0225】
B:初代ヒト汎T細胞アッセイ
IFNγ分泌のレスキューにおける抗CD200R1抗体の機能的活性を、プレート結合CD200-Fcの存在下で測定した。健康なPBMCドナーから分離された初代ヒト汎T細胞(Stem Cell、カタログ番号70500.2)を、完全培地中で7日間、2μg/mL PHA(Sigma、カタログ番号11082132001)及び4ng/mLヒトIL-2(Roche、カタログ番号24951700)で慢性的に刺激した。次に、細胞を回収し、40ng/mLのヒトIL-4(Peprotech、カタログ番号200-04)で24時間プライミングした。細胞をプレーティングする前に、プレートを1μg/mLの抗CD3クローンOKT3(Biolegend、カタログ番号317326)及びPBSで希釈した15μg/mLのヒトCD200Fc又はアイソタイプ対照(Corning、カタログ番号21-040-CM)で4℃で一晩コーティングした。細胞を回収し、洗浄し、抗CD200R1抗体で24時間プレーティングした。細胞上清を回収し、サイトカイン、ヒトIFNγ(Invitrogen、カタログ番号88-7025-88)及びヒトIL-2(Invitrogen、コーティング88-7316-88)の分泌をELISAで測定した。
【0226】
結果:図7A及び図7Bに示されるように、h10F6 IgGによる処置は、2人の異なる健康なドナー(ドナー203及びドナー538)におけるIL-2分泌の機能的レスキューを示すが、h22.1による処置によるレスキューは、1人のドナーのみで見られた。図7C及び図7Dに示されるように、h10F6による処置はまた、IL-2分泌においてアイソタイプ対照よりも用量依存的応答においてより優れた有効性を示し(図7C)、IFNγ分泌において市販の抗体、OX108よりもより優れた有効性を示した(図7D)。
【0227】
D.初代ヒト混合リンパ球反応アッセイ
ヒト化抗CD200R1抗体の機能活性を、同種混合リンパ球反応アッセイで、汎T細胞及び分極樹状細胞を使用して測定した。PBMCは、Stemcell Technologies、カタログ番号70500.1からの健康なドナーロイコパックから、遠心分離及びACK溶解緩衝液(Gibco、カタログ番号A10492-01)を使用する赤血球溶解によって調製した。pan単球分離キット(Miltenyi、カタログ番号130-096-537)を使用して、単球をPBMCから単離した。汎T細胞は、Miltenyiの汎T Cell分離キット(Miltenyi、カタログ番号130-096-535)を使用して単離した。次に、単球を、20ng/mL GM-CSF(Fisher Scientific、カタログ番号215GM010)及びIL-4(Fisher Scientific、カタログ番号204IL010)を含む完全培地に100万個/mLで7日間播種した。次に樹状細胞を、100ng/mL LPS(Sigma、カタログ番号L-4391)及び50ng/mL TNFα(Fisher Scientific、カタログ番号210TA020CF)を使用して免疫原性DCに更に分極し、又は20ng/mL IL-10(Fisher Scientific、カタログ番号217IL010)及び20ng/mL IFNa-2b(Fisher Scientific、カタログ番号111051)を使用しDCを3日間馴化させた。分極後、汎T細胞及び成熟DCを、1:20のpanT:DC細胞比で、10μg/mLの抗CD200R1抗体又はアイソタイプ対照と完全培地で混合した。T細胞の活性化を評価するために、MLR上清と細胞を4、5、及び6日目に採取した。サイトカイン分泌は、IFNγ Human Luminex Procartaplexキット(ThermoFisher、カタログ番号EPX01A-10228-901)を使用して測定した。T細胞の活性化を評価するために、細胞をヒトTruStain FcX(Biolegend、カタログ番号422302)とともに4℃で10分間インキュベートした後、細胞外染色抗CD3クローンUCHT1、抗CD4クローンOKT4、抗CD8クローンRPA-T8、抗-CD86クローンBU63、抗CD11cクローンBU15とインキュベートした。更に、T細胞の活性化を測定するために、活性化マーカーとして抗CD69クローンFN50、抗CD25クローンBC96、及び抗HLA-DRクローンL243を追加した。細胞を4℃で20分間染色し、洗浄し、細胞内染色の準備をした。Foxp3/Transcription Factor Staining Buffer Set(Thermofisher Scientific、カタログ番号00-5523-00)を使用して、4Cで45分間、抗Ki67クローンB56による細胞内染色のために細胞を固定及び透過処理した。細胞内染色後、細胞を再度洗浄し、PBS+2%FBSに再懸濁した。CytoFLEX(Beckman Coulter)を用いたフローサイトメトリーによって発現を分析した。
【0228】
結果:図8A図8B、及び図8Cに示されるように、ヒト化抗CD200R抗体、h10F6による処理は、CD8T細胞の活性化を増加させ(図8A)、CD4T細胞の増殖を増加させ(図8B)、h22.1 IgGより大きく、アイソタイプ制御を有意に超えて、IFNγ分泌を増加させた(図8C)。
【0229】
E.抗CD200R1抗体のPhospho-Dok2誘導アッセイ
CD200との嵌合により、CD200R1のホスホチロシン結合認識モチーフへのDok2キナーゼの動員を介して、CD200R1阻害シグナル伝達が開始される(Mihrshahi2009及びMihrshahi2010などを参照)。ヒト化抗CD200R1抗体、h10F6及びh22.1のアゴニズム活性を、U937単球細胞株(ATCC#CRL-1593.2)及びhu-CD200R1を安定的に発現するU937細胞株の両方におけるホスホ-Dok2の誘導によって評価した。18時間血清飢餓状態にした後、親細胞又はCD200R1過剰発現細胞を、様々な濃度の可溶性ヒト化抗CD200R1又はアイソタイプ対照又はCD200-Fcで60分間処理した。細胞を、1×SDS+プロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤で溶解させた。ライセートを、NuPAGE 4~12% Bis-Tris MES SDS(BioRad)で非還元条件で分離した。ウエスタンブロットは、抗pDok2 Y351(Cell Signaling Technology カタログ番号3911S)及び抗Dok2(Santa Cruz Biotechnology カタログ番号sc-17830)を用いて行った。
【0230】
結果:図9に示されるように、野生型(WT)U937細胞株と比較して、pDok2は、200nMの最高用量の可溶性CD200-Fc、33nMのOX108、及び5.6nMという低用量のh22.1で処理した場合に誘導される。対照的に、h10F6による処理は、WTと比較してpDok2を誘導できず、h10F6にはCD200R1アゴニスト特性がないことが示唆された。h10F6が、CD200のCD200R1結合をブロックする一方で、CD200R1シグナル伝達を不注意に刺激しない能力(pDok2発現によって測定される)は、ともに不注意なCD200R1アゴニスト活性を示すh22.1及びOX108と比べてh10F6の治療能力を大幅に増強する。
【0231】
F.NFKb-Lucレポーター細胞株における、K562-CD200R1に対するアンタゴニスト活性のアッセイ
CD200をCD200R1発現細胞株と共培養すると、CD200はNFkB転写を誘導することが過去に報告されている(例えば、Wang,et al.,Nat.Med.,25:656-666(2019)を参照)。K562単球細胞株(ATCC CCL-243)を、ヒト化抗CD200R1抗体、h10F6及びh22.1のアンタゴニスト活性を測定するために、CD200R1及びNFkBルシフェラーゼレポーターを安定して発現するよう操作した。抗CD200R1クローン、h22.1及びh10F6の二価及び一価Fabフォーマットの両方を、様々な濃度で、K562レポーター細胞及びCD200を安定的に発現する293T(UNQ#P41217)の共培養液に、37℃で6時間添加した。培養物に20ng/mLのTNFα(RnD Systems カタログ番号210-TA)を添加した。
【0232】
結果:図10A及び図10Bに示されるように、NFkB転写は、CD200発現細胞と比較して、CD200発現細胞によって誘導される。ブロッキング抗体を共培養物に加えた後、h10F6とh22.1の間のアンタゴニスト機能の違いが明らかになる。二価(図10A)及び一価h10F6(図10B)のいずれも、CD200駆動NFkB転写をベースラインレベルまでブロックすることができる。しかしながら、CD200のh22.1 IgGとの共培養は、NFkBの誘導を部分的にブロックするだけであり、一価のh22.1 Fabは効果がない。
【0233】
実施例5:ヒト化抗CD200R1抗体h10F6の親和性成熟
この実施例は、hu-CD200R1及びcyno-CD200R1の両方への結合を改善するための、ヒト化抗CD200R1抗体h10F6の親和性成熟に使用されるファージライブラリー構築及びパニング法を例示する。
【0234】
A.h10F6親和性成熟NNKライブラリーの構築及びパニング
抗CD200R1抗体クローンh10F6の親和性成熟変異体配列を特定するために、ファージライブラリーを、重鎖及び軽鎖残基を含む一価Fabファージディスプレイ用にFab-amber形式で構築し、20個のアミノ酸全てを32コドンでコードするNNK縮重コドンを使用してランダム化した(Brenner et al.,1992)。ライブラリーは、3つの軽鎖又は重鎖の各々のHVRに1つのNNK変異を適用するように設計した。次に、合成変異誘発オリゴヌクレオチドを使用して、クンケル変異誘発を用いて重鎖及び軽鎖ライブラリーを構築した(Kunkel et al.,1987)。得られたライブラリーDNAを、E.coli XL1細胞にエレクトロポレーションし、約6.5×10~4.3×10個の形質転換体を得た。
【0235】
ファージライブラリーをSUPERBLOCK(商標)PBS緩衝液(Pierce)及び0.05%TWEEN(登録商標)20で30分間インキュベートし、hu-CD200R1(iso4、Alt及びRefハプロタイプ)及びcyno-CD200R1をコーティングしたプレートに適用して、最初のラウンドのパニングを行った。その後の2~3ラウンドでは、ファージライブラリーをビオチン化hu-CD200R1又はcyno-CD200R1抗原の濃度を下げながらインキュベートした。溶出したファージを対数期XL-1に感染させ、更なるアフィニティースクリーニングのためにLBカルベニシリンプレートに37℃で一晩プレーティングした。
【0236】
NGSを使用して親和性成熟ライブラリーから配列を抽出するために、ファージミド二本鎖DNAを、最初のファージライブラリー(非選別ライブラリー)並びに第1及び第2ラウンドの溶液選択(選別ライブラリー)からファージミドを保有するE.coli XL-1細胞から単離した。精製されたDNAをテンプレートとして使用し、Illumina16sライブラリー調製プロトコルを使用してVH及びVL領域のアンプリコンを生成させた。配列決定アダプター及びデュアルインデックスバーコードを、Illumina Nextera XT Index Kitを使用して追加した。Illumina MiSeqでの配列決定用の調製において、アダプターを連結したアンプリコンを、MiSeq Reagent Kit v3(600サイクル)を使用して、標準Illuminaライブラリー変性及びサンプルローディングプロトコルに供した。ペアエンド配列決定は、200塩基対~300塩基対の挿入サイズでアンプリコンの全長をカバーするように実施した。
【0237】
ペアエンド配列決定データは、最初に、ペアエンドアセンブラPANDAseq(Masella et al.,2012)を使用してアセンブルし、完全なアンプリコンを得た。次に、同定されたアンプリコンについて品質管理(QC)を実施し、各アンプリコンが配列の挿入又は欠失及び終止コドンがないことを確認し(check)、各CDR配列は、最大1つのNNK変異のみを保有し、非NNK変異はなかった。位置特異的重み行列は、ランダム化された全ての位置の全変異頻度を算出することによって生成された。各変異の濃縮比は、前述のように、選別サンプルの所与の位置での所与の変異頻度を、非選別サンプルのまったく同じ変異の頻度で割ることによって算出した(Koenig et al.,2015)。
【0238】
結果:hu-CD200R1及びcyno-CD200R1の両方に対する、得られたh10F6変異体の結合の増加をサポートする、富化されたHVR変異を表7にまとめる。
【0239】
【表7-1】
【0240】
【表7-2】
【0241】
実施例6:精製された親和性改良型のh10F6の変異体の特徴解析
この実施例は、hu-CD200R1及びcyno-CD200R1の結合親和性、並びに実施例6に記載の親和性成熟によって調製された、選抜されたh10F6変異体、h10F6.V1、h10F6.V2、h10F6.V3、及びh10F6.V4によるブロッキングを示す。
【0242】
A.Biacore結合
哺乳動物発現構築物へクローニングしてIgG1タンパク質を生成させるために、h10F6変異体を合成した。変異体IgG1タンパク質のLC及びHC配列を表3にまとめる。h10F6.V1は、配列番号71のLC及び配列番号88のHCを有する。h10F6.V2は、配列番号68のLC(h10F6及びh10F6.V3と同じ)及び配列番号89のHC(h10F6.V4と同じ)を有する。h10F6.V3は、配列番号68のLC(h10F6及びh10F6.V2と同じ)及び配列番号88のHC(h10F6.V1と同じ)を有する。h10F6.V4は、配列番号71のLC(h10F6.V1と同じ)及び配列番号89のHC(h10F6.V2と同じ)を有する。
【0243】
重鎖又は軽鎖をコードするプラスミドを、実施例2に記載のように発現及び精製した。hu-CD200R1-iso4(Alt及びRefハプロタイプ)及びcyno-CD200R1に結合する、選抜されたh10F6親和性改善変異体の結合動態を決定するために、BIACORE(商標)8K機器を用いたSPR測定を実施例3のAと同様に実施した。簡潔に述べると、h10F6変異体をHBS-P緩衝液(0.01M HEPES、pH7.4、0.15M NaCl、0.005% 界面活性剤P20)で0.5μg/mLに希釈し、フローセル2(FC2)中、プロテインAチップに30μL/分の流速で60秒間適用した。次に、HBS-P緩衝液(0.01M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、0.005%界面有効成分P20)中のヒト又はcyno-CD200R1の、300nMからの3倍連続希釈液を37℃で、フローセル1(FC1)及びフローセル2(FC2)の両方に注入した(流速:30μL/分)。センサーグラムを記録し、BIACORE(登録商標)8K Evaluation Software(バージョン1.1.1.7442)により評価する前に、参照及び緩衝液の減算を行った。結合率(kon)及び解離率(koff)は、単純な1対1のラングミュア結合モデルを使用して算出された。平衡解離定数(KD)を、表8に要約するように、koff/konの比率として算出した。
【0244】
【表8】
【0245】
結果:表8に要約される結合親和性値によって示されるように、4つの変異体、h10F6.V1、h10F6.V2、h10F6.V3、及びh10F6.V4は、hu-CD200R1及びcyno-CD200R1に対する結合交差反応性を示すことがわかった。
【0246】
B.ブロッキングアッセイ
4つのh10F6変異体、h10F6.V1、h10F6.V2、h10F6.V3、及びh10F6.V4を、実施例3.Bに記載のように実施したヒトCD200:CD200R1ブロッキングELISAアッセイにおける性能についてアッセイした。コーティングされたhu-CD200-Fc又はcyno-CD200-Fcへのビオチン化hu-CD200R1又はビオチン化cyno-CD200R1の結合を50%阻害する、抗CD200R1変異体IgG1の濃度を表す、ブロッキングIC50値を測定した。
【0247】
結果:表9に要約するように、4つのh10F6変異体は、hu-CD200R1及びcyno-CD200R1の両方を最も強力にブロックするh10F6.V1との交差反応性ブロッキング活性を示した。
【0248】
【表9】
【0249】
実施例7:抗CD200R1抗体のラット薬物動態試験
この実施例は、ヒト化抗CD200R1抗体h10F6及びh22.1のラットにおけるインビボ薬物動態(PK)試験を説明する。
【0250】
材料及び方法:ヒト化抗CD200R1抗体h10F6及びh22.1を、Sprague-Dawleyラットに静脈内投与した。10mg/kg又は1mg/kgの単回用量を、投与群ごとに雄2匹及び雌2匹のラットに投与した。採血は、注射後5分、2時間、6時間、24時間、3日、7日、10日、14日、17日、及び21日後に行った。ヒツジ抗ヒトIgG1でヒトIgG抗体を捕捉し、ビオチン標識ヤギ抗ヒトIgG(H+L)及びストレプトアビジン-HRPで検出する一般的なELISA法を使用して、血清中の抗CD200R1レベルを定量化した。非コンパートメント分析を使用して、3~21日の時間範囲でPKパラメータを計算した。
【0251】
図11に示されるように、薬物動態は、非標的媒介枯渇プロファイルのものを例示する。h10F6の半減期は、1mg/kg及び10mg/kg投与群でそれぞれ11.4~14.8日の範囲である。h22.1の半減期は、両用量群で約12日である。10mg/kg h22.1グループの1匹の動物は、同じグループの他の3匹のラットと比較してより速いクリアランスプロファイルを示し、分析から除外した。
【0252】
ラットにおけるh10F6の平均PKパラメータを以下の表10に要約する。Sprague-Dawleyラットへの1又は10mg/kgの単回IVボーラス注射の後、h10F6血清濃度が二相的に低下した。h10F6のPKは用量に比例し、雄及び雌で同様であった。Sprague-Dawleyラットにおけるh22.1の平均最終半減期は、1mg/kg及び10mg/kgの用量で、それぞれ11.4日及び14.8日であった。
【0253】
【表10】
【0254】
実施例8:サルにおけるh10F6の単回投与薬物動態
h10F6の単回投与PK試験は、非結合種であるカニクイザルで行い、そのPK特性及び耐性を特徴解析した。
【0255】
ナイーブカニクイザル(N=8、4M/4F)に、h10F6を単回IVボーラス注射により、それぞれ2及び20mg/kgで投与した(1群当たり2M/2F)。血清中のh10F6の濃度、臨床化学的パラメータ、血液学的パラメータ、並びにサルの一般的な健康状態及び外観を、投与後35日間モニターした。PK分析のための血液サンプルを、投与前、及び投与後15分、2時間、8時間、及び1、2、4、7、10、14、21、28、及び35日目に採取した。臨床病理学用のサンプルを、投与前と投与後1日目及び35日目に採取した。サル血清サンプル中のh10F6の濃度は、0.06μg/mLの定量下限(LLOQ)でh10F6の濃度を測定するために開発及び認定されたELISAを使用して測定した。サルにおけるh10F6の濃度-時間PKプロファイルを図12に示す。
【0256】
サルにおけるh10F6の平均PKパラメータを以下の表11に要約する。カニクイザルに2又は20mg/kgのh10F6を単回IVボーラス注射した後、h10F6血清濃度は二相的に低下した。h10F6の平均最終半減期(T1/2)は、2mg/kg及び20mg/kgグループでそれぞれ11.5日及び13.3日であった。h10F6のPKは用量に比例し、2~20mg/kgの試験用量範囲にわたって性差は観察されなかった。サル8匹中2匹(20mg/kg群の雄1匹、雌1匹)で、14日目から21日目にかけて血清中のh10F6濃度が急激に低下した。この発見は、抗薬物抗体(ADA)の形成の可能性に起因していた。そのため、ADAの影響を受けたと疑われるPKパラメータをh10F6要約データから除外し、部分的なAUC(AUC0~14D)をPK分析に含めた。ADAが疑われる2匹の動物のデータを要約平均データから除外しても、h10F6用量の比例性又は性差に関する結論に影響はなかった。
【0257】
10F6はサルで直線的なPKを示し、雄及び雌で同様のPKを示し、定常状態でのクリアランスの平均値と分布の推定量は、サルで直線的なPKを示すヒト化IgGの典型的な値と一致していた(Betts,et al.,2018)。非結合種において予想されたように、h10F6のPKプロファイルは、サルにおけるh10F6の主要な除去経路が直線的で不飽和、非特異的なクリアランス機構であることを示唆している。h10F6は、臨床観察並びに血清化学及び血液学パラメータの評価に基づいて、35日目まで良好に許容された。
【0258】
【表11】
【0259】
実施例9:ヒトにおけるh10F6の薬物動態
h10F6のPKを、カニクイザルで2~20mg/kg、Sprague-Dawleyラットで1~10mg/kgの、単回投与試験で評価した。h10F6への曝露はほぼ用量に比例し、雄と雌との間に違いは観察されなかった。PKプロファイルは、ADA形成を示唆するPKプロファイルを有した、20mg/kgで投与された2匹のサルを除いて、標的媒介性の素因又はADA効果の証拠を示唆していない。これらの結果は、アロメトリック法がh10F6のヒトPKを予測するのに適切である可能性があることを裏付けている。
【0260】
以下の表12に示すように、クリアランス及び分布体積などのヒトPKパラメータを、サルにおける非臨床データから計算した。簡潔に述べると、サルのh10F6血清濃度は、二相的に投与後に低下した。したがって、2又は20mg/kgのh10F6を投与されたN=8匹のサルからの濃度-時間データは、ADAが疑われるデータを除外して、2コンパートメントモデルに同時にフィットした。このモデルからのサルのPKパラメータを、アロメトリック指数=1でスケーリングされる分布項(V1及びV2)の量と、指数=0.85でスケーリングされるクリアランス項(CL及びQ)のスケールという仮定に基づいて、ヒトPKパラメータを導出するためにアロメトリック的にスケーリングした(Deng,et al.,2011)。体重2.4kg(単回投与PK試験、h10F6-VIV-01におけるサルの平均体重)及び70kgを、サル及びヒトの体重としてそれぞれ採用した。体重70kgのヒトのPKパラメータは、ヒト化IgGモノクローナル抗体の典型的な範囲内にある。
【0261】
h10F6はヒトのCD200R1に特異的であるため、標的を介する薬物動態を前臨床的に評価することはできなかった。ただし、GLP h10F6.V1ハザード同定試験からの毒物動態(TK)データは、TMDDについて評価することができ、TMDDがサルにおけるh10F6.V1の支配的なクリアランス経路であることが判明した場合、この試験からの知見を使用して、h10F6ヒトPK予測を通知又は潜在的に改良することができる。これらのPKパラメータに基づいて、h10F6除去半減期は19.4日と計算できる。
【0262】
【表12】
【0263】
ヒトにおけるh10F6の予測PKパラメータを使用して、健康なボランティアと患者のh10F6PKを推定し、それぞれ開始用量と予想される治療用量範囲の選択を通知した。
【0264】
ヒトにおけるh10F6のPKは、用量範囲にわたって線形であると想定できる。しかしながら、標的を介する薬物動態がヒトの総クリアランスに寄与する可能性がある場合、排出半減期は低用量で予測されるよりも短い可能性がある。したがって、h10F6のAUCは、健康なボランティア及び患者では、特に低用量で過剰に予測される可能性がある。そのため、用量範囲全体にわたって直線性があると仮定すると、特に低用量では、用量選択において保守的なアプローチとなる。
【0265】
以下の表13に示す用量は、健康なボランティアで評価された最大用量であり得、開始用量を0.3mgとし、最大用量は半対数(約3倍)増加する。これらの用量は、h10F6.V1のハザード特定試験及びh10F6のエクスビボ組織交差反応性試験などのハザード特定試験によって通知され、データのレビューに基づいて保証される場合は変更できる。過去のコホートからの安全性、PK及びPDデータの全体を、SRCの用量漸増決定において慎重に考慮する必要があろう。
【0266】
【表13】
【0267】
予測されたヒトPKパラメータは、患者のh10F6PKを推定して、予測される治療用量範囲を得るためにも使用した。以下の仮定を使用して、患者のh10F6PKを推定したが、これには、線形PK、Q3W投与、又は10%の血清対腫瘍分配係数、又はそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0268】
患者に使用される実際の投与頻度は、進行がん患者におけるh10F6.V1の複数回投与試験からの安全性、PK及びPDデータによって知ることができる。患者は、健康なボランティアよりも高いレベルのCD200R1発現(例えば、TIL)を有する可能性があり、CD200R1の存在により、例えば標的媒介クリアランスが完全に飽和していない場合に低用量で、クリアランスが速くなり、h10F6への曝露が低くなる可能性がある。CD200R1は低密度の表面受容体であるが、例えば好中球などの骨髄系細胞で最高レベルで発現され得、その急速なターンオーバーが低用量でのh10F6除去の中心となる可能性がある。例えば、腫瘍内のTILにおけるCD200R1の発現により、健康なボランティアにおいて直線的なPKを達成するh10F6の用量と比較して同等以上の用量のh10F6を投与して、患者において直線的なPKを達成することができる。固形腫瘍における抗体の濃度は、平均して血清濃度の10%から30%であり得る。各コホートで考慮される最大用量を得るために、10%という保守的なアプローチを使用できる。
【0269】
実施例10:初代ヒト細胞への抗CD200R1抗体の結合
h10F6がヒト細胞に発現する内因性CD200R1に結合することを確認するために、健康なドナーからのヒトPBMCを使用したフローサイトメトリーによって、末梢免疫細胞サブセットへのh10F6の結合を測定した。
【0270】
3人のドナーから分離されたPBMCでは、免疫サブセットへのh10F6結合は、文献で報告されている予想されるCD200R1発現と一致し(Wright,et al.,2003、Rijkers,et al.,2008、Czarnowicki,et al.,2017)、CD4+T細胞は最高レベルのCD200R1を発現し、CD8+T細胞ではわずかに低い発現が観察された。比較すると、B細胞ではかなり低いレベルのCD200R1発現が観察され、B細胞の染色の分布は二峰性であり、全B細胞のサブセット(約16%)がCD200R1を発現したことを示唆している。h10F6は、3人の健康なドナーからの末梢単球への結合が限られていることを示す。これらの結果は、市販の抗CD200R1抗体と3人の他の健康なドナーから新たに分離された単球を使用した試験と一致している(データ示さず)。T細胞サブタイプへの結合は、h10F6の段階希釈を試験することによって評価し(図13)、以下の表14に示すように、これらの末梢免疫サブセットへの結合のEC50値は、試験した3人のドナー全体で一貫しており、0.30~0.40nMの範囲であった。
【0271】
【表14】
【0272】
組織常在性DCの表現型を再現するために、健康なドナーPBMCから単球を単球分離キットを使用して分離し、20ng/mLの顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)及び20ng/mLのIL-4を使用してインビトロで1週間分化させた。h10F6は、評価された3人の個々のドナーにわたって単球由来樹状細胞(MoDC)への結合を示し、同様の用量反応曲線が得られた(図14)。ドナー全体の結合EC50値(0.45~0.60nM)を以下の表15に要約する。
【0273】
【表15】
【0274】
実施例11:抗CD200-R1抗体は初代ラット、ウサギ、イヌ、マーモセット、アカゲザル、及びカニクイザルPBMCに結合しない
h10F6の他の種由来の免疫細胞への結合能力も評価した。評価のために、ヒトCD200R1と≧50%の配列相同性を共有する種として、ラットCD200R1(54%細胞外ドメイン、ECD、類似性)、イヌCD200R1(50%ECD類似性)、ウサギCD200R1(61%ECD類似性)、マーモセット(82%ECD類似性)、アカゲザル(91%ECD類似性)、及びカニクイザル(89%ECD類似性)を選択した。それぞれの種の各々に由来するPBMCのフローサイトメトリー分析の結果は、h10F6がラット、ウサギ、又はイヌの初代免疫細胞に結合しないことを示した。h10F6はまた、図15に示されるように、高い配列相同性にもかかわらず、アカゲザル、マーモセット、又はカニクイザル細胞への結合を示さなかった。
【0275】
ウサギ、マーモセット、アカゲザル、及びカニクイザルCD200R1に対する交差反応性を示さないことは、ヒトCD200R1を陽性対照として使用し、これらの種の完全長CD200R1コンセンサス配列をトランスフェクトしたCHO細胞へのh10F6の結合を測定することによって確認した(図16)。初代細胞で観察された結果と一致して、h10F6はヒトCD200R1のみを認識した。
【0276】
実施例12:末梢及び腫瘍浸潤免疫細胞におけるCD200R1の発現
CD200及びCD200R1の発現を、凍結保存された切除した腫瘍組織からの腫瘍浸潤リンパ球(TIL)で評価し、明細胞腎、乳房、黒色腫、子宮内膜腺がん、及び卵巣がんの患者からのPBMCと一致し、腫瘍微小環境と比較し、末梢の免疫細胞におけるそれらの分布が理解された(CD200 IND bookの図5、CD200R1 IND bookの図6)。末梢免疫細胞のCD200レベルは、がん患者と健康なドナーの間で類似していたが、腫瘍浸潤性免疫細胞では、試験した5人のがん患者全員のCD4+T細胞、CD8+T細胞を含むCD200発現レベルがアップレギュレートされていた。5人中4人のがん患者における腫瘍浸潤CD11b+骨髄細胞もまた、末梢からの対応するサンプルと比較して高いCD200発現を示した(図17)。患者PBMCサブセットでのCD200R1発現は、健康な対照発現レベルに匹敵した(図18)。ただし、CD200R1は、がん患者5人中4人において、対応する末梢サンプルと比較して、CD4+及びCD8+TIL T細胞でより高い発現を示した。試験した5人の患者サンプル全てにおいて、TIL B細胞及びCD11b+骨髄細胞は、対応する末梢サンプルと比較してCD200R1発現の上昇を示した。このデータは、腫瘍微小環境におけるCD200及びCD200R1アップレギュレーションの文献による報告を裏付けるものであり(Zheng,et al.,2017、Thommen,et al.,2018、Cassetta,et al.,2019)、CD200R1抑制性受容体の発現上昇とそのリガンドが、免疫抑制性の腫瘍微小環境に寄与している可能性がある。
【0277】
実施例13:抗CD200-R1抗体によるCD200/CD200R1相互作用のブロック
A.抗CD200-R1抗体による、CD200R1を発現する細胞からの既結合CD200の置換
【0278】
腫瘍及び腫瘍浸潤免疫細胞の文脈では、腫瘍細胞及び/又は血管上の内皮細胞に発現するCD200の一定の割合が、免疫細胞で発現するCD200R1に事前に結合していると予想される。CD200R1から既結合CD200を置換するh10F6の能力を評価するために、hCD200R1(U937-CD200R1)を発現するようU937細胞株を操作し、h10F6とのインキュベーション前に様々な濃度のhCD200-Fcとプレインキュベーションした。アッセイは、h10F6によるU937-CD200R1からのビオチン化hCD200-Fcの置換をモニタリングすることにより(図19、パネルA)、又は、異なる濃度のhCD200-Fcの存在下でビオチン化h10F6のU937-CD200R1細胞への結合をモニタリングすることにより(図19、パネルB)行った。h10F6は、両方のアッセイ形式で細胞表面に発現したhCD200R1からhCD200-Fcを強力に置換し、存在するhCD200-Fcの濃度に応じて、0.16から1.28nMの範囲のh10F6ブロッキングIC50値をもたらした。予想どおり、既結合CD200の置換に対するh10F6のIC50値は、CD200R1を発現する細胞をh10F6とプレインキュベートした場合よりもかなり高かった(効力が低かった)(IC50=0.08nM)。
【0279】
B.アント-CD200-R1抗体による、CD200R1を内因的に発現する初代樹状細胞へのCD200の結合のブロック
h10F6の生物学的作用メカニズムの重要な属性は、CD200R1発現細胞へのCD200結合を効果的に防止することであるため、インビトロで分化させ、高レベルの内因性CD200R1を発現させた樹状細胞への可溶性組換えCD200結合をブロックするh10F6の能力を評価した。h10F6は、0.08nMのIC50値で濃度依存的にCD200R1発現DCへのCD200結合を100%ブロックした(図20)。ここでは、インビトロで単球分化したDCを、漸増濃度のh10F6に結合させた。未結合の抗体を2回洗浄して除去した後、500nMのCD200-Fc-FLAG融合タンパク質を添加した。4℃で20分間インキュベーションした後、CD200結合を検出するために抗Flag PE抗体を添加した。結合のEC50値は、3パラメータ、log10[h10F6]対応答、非線形曲線フィット(フィット曲線を、このモデルに基づいて外挿推定)を使用して決定した。CD200R1に結合するが、CD200R1-CD200結合をブロックしない対照抗体(ノンブロッカー)は、CD200結合を阻害せず、実際、結合を強化するようにも見えた。まとめると、これらの結果は、h10F6が初代免疫細胞上のCD200R1へのCD200の結合を防止できることを示す。
【0280】
実施例14:抗CD200R1抗体によるCD200R1シグナル伝達の阻害
下流のCD200R1を介するシグナル伝達に対するh10F6の効果を、2つの異なる細胞ベースのアッセイシステムを使用してインビトロで特徴付けた。CD200R1受容体細胞内ドメインへのDOK2の動員を防止するh10F6の能力を評価した。そのほか、NFκBレポーター遺伝子を使用して、CD200R1を介する核因子κB(NFκB)の下流活性化を評価した。
【0281】
CD200R1シグナル伝達経路は、CD200によって誘導されるCD200R1のY302のリン酸化から始まり、その後にDOK2が動員される(Zhang,et al.,2004、Mihrshahi,et al.,2009、Mihrshahi and Brown,2010)。そのため、市販のCD200R1特異的DOK2動員アッセイ(EuroFins DiscoverX)を使用して、h10F6がDOK2の下流動員をブロックする能力を評価した。このインビトロ細胞ベースのアッセイシステムでは、ヒトJurkat細胞株はCD200R1とDOK2を発現するよう操作されており、各々のC末端が別の相補的なβ-ガラクトシダーゼ酵素断片で修飾されている。DOK2がCD200R1の細胞内ドメインに近接すると、2つの操作された酵素断片が互いに補完し合い、特殊な基質を加水分解して化学発光シグナルを生成できる機能的な酵素を形成する。したがって、ヒトJurkat細胞をCD200発現HEK293細胞と共培養すると、CD200R1シグナル伝達を反映する用量依存的化学発光シグナルが誘導される(図21)。可溶性h10F6の段階希釈物を共培養物に添加すると、濃度依存的にCD200リガンドによるCD200R1へのDOK2の動員がブロックされた(IC50=0.03nM)。CD200内因性発現のないHEK293T細胞を使用して、シグナルのベースラインレベルを決定した。シグナルがベースラインレベル(HEK293T対照細胞刺激によって示される)に戻ったとき、抗体濃度の増加に伴う阻害の完了とした。
【0282】
前臨床試験では、正規のNFκB経路が、卵巣、大腸炎関連のがん、肝細胞及び神経膠芽腫のマウスモデルで腫瘍促進の役割を果たし得ることが示唆されている。文献の報告では、免疫抑制性腫瘍関連マクロファージ(TAM)M2表現型及び骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)が、NFκBに依存する可能性があることが示唆されている(Hagemann,et al.,2008、Li,et al.,2020)。更に、骨髄細胞の標準的なNFκB経路を破壊すると、腫瘍の増殖が遅くなり、抗炎症性M2が炎症誘発性M1免疫浸潤に再分極し、CD8+T細胞と腫瘍細胞アポトーシスの増加をサポートする(Achyut,et al.,2017)。ヒト単球細胞株K562を、CD200R1及びNFκB-ルシフェラーゼレポーターを発現するよう操作し、NFκB経路に対するCD200-CD200R1シグナル伝達の効果と、この効果をブロックするh10F6の能力を解析した。
【0283】
CD200R1発現K562細胞をプレート結合CD200で処理するか(データは示さず)、又はCD200発現HEK293T細胞と共培養すると、細胞数依存的にNFκBレポーター遺伝子活性が誘導された(図22、パネルA)。このK562 HEK293-CD200+共培養物への可溶性h10F6の連続希釈物の添加は、2.31nMのIC50値で、膜結合CD200依存性NFκB応答を効果的かつ完全にブロックし(図22、パネルB)、またプレート結合CD200の場合、3.38nMのIC50であった(データ示さず)。これらのデータは、h10F6が2つの独立した細胞ベースのシステムでCD200/CD200R1シグナル伝達を効果的にブロックすることを示す。
【0284】
実施例15:抗CD200R1抗体による免疫細胞活性化の増強
A.混合リンパ球アッセイにおける抗CD200R1抗体の効果
同種T細胞共培養の状況で寛容原性DCの抑制効果を逆転させるh10F6の能力を、混合リンパ球アッセイで評価した。サイトカイン産生とT細胞活性化マーカーの両方を測定した。簡潔に述べると、単球をGMCSF及びIL-4とともに7日間培養することによって樹状細胞に分化させた。樹状細胞を、寛容原性に分極化させるか、又は免疫原性DCに分極化させ、免疫刺激性の陽性対照として機能させた。分極の3日後、汎T細胞及び成熟DCを、h10F6又はアイソタイプ対照抗体の存在下で混合した。続いて、サイトカイン産生及びT細胞活性化マーカーを4~6日間の共培養後に分析した。寛容原性DC混合リンパ球アッセイにおけるh10F6処理は、IFNγ、IL-12p70、及びIL-18を含む炎症誘発性サイトカインの時間依存的な2~3倍の誘導によって証明されるように、T細胞活性化をもたらした(図23、パネルA及びC)。T細胞活性化マーカーCD69及び増殖マーカーKi67の顕著な増加も観察され、免疫原性DC共培養によって示される最大活性化の40~70%に達した(図23、パネルB)。まとめると、これらのデータは、寛容原性DCの存在下でT細胞機能をレスキューするh10F6の能力を示す。
【0285】
B.IL-2の分泌及びINFγの産生を評価する汎T細胞アッセイにおける抗CD200R1抗体の効果
T細胞機能をレスキューするh10F6の能力について、プレート結合CD200-Fcの存在下での汎T細胞アッセイで評価した(図24、パネルA)。健康なPBMCドナーから分離されたヒト汎T細胞を、フィトヘマグルチニン及びIL-2で7日間、完全培地で慢性的に刺激した。次いで、細胞を回収し、刺激剤を休止し、IL-4で24時間プライミングした。この前処理により、汎T細胞でのCD200R1発現が増加し、リガンド(CD200)に対する感受性が高まった。50nM h10F6による汎T細胞の処理は、プレート結合CD200-Fcの存在下でIL-2分泌の機能的レスキューを示した。h10F6はまた、用量依存的にIFNγ産生をレスキューした(図24、パネルBに示す、0.07nMのEC50)。したがって、h10F6は、骨髄細胞とは無関係にT細胞機能も直接調節する。
【0286】
実施例16:抗CD200R1抗体は、PBMC媒介による腫瘍細胞殺傷を用量依存的にリアルタイムで増強する
標的腫瘍細胞(内因性CD200を発現するCOV644細胞)を、緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するよう操作した。GFP標識COV644腫瘍細胞を健康なドナーPBMCとインキュベートした。刺激剤(SEB)も、免疫細胞を活性化するために培地に添加した。PBMCを介する腫瘍細胞の殺傷を、各ウェルの蛍光強度の経時的な損失を測定することによって定量化した。
【0287】
免疫媒介性の腫瘍細胞の殺傷は、蛍光シグナルの喪失が腫瘍細胞の殺傷と一致することを確認するために、目視検査によって確認した。プライミング及び活性化の成功は、標識されていない免疫細胞のクラスター化によって明らかであった。免疫細胞の殺傷は、GFP標識細胞膜の破壊と標的腫瘍細胞の収縮によって確認された。h10F6を、リアルタイムのIncuCyte腫瘍増殖アッセイで3人の異なるドナーで試験した。実施された合計24の試験のうち15において、h10F6は、アイソタイプ対照と比較した、ウェル当たりのGFPシグナルの減少によって定量化されるように、抗腫瘍殺傷活性を促進した。h10F6は、用量依存的に、SEBプライミングPBMC媒介腫瘍細胞死を促進した(図25)。
【0288】
図25において、h10F6効果を示した15回のIncuCyte PBMC媒介腫瘍殺傷実験の殺傷期からのGFPシグナルの曲線下面積(AUC)を、非線形の阻害剤応答回帰モデルにフィットさせ、データの適合度を評価した。3人のドナーによる6回の実験では、R2≧0.40の許容しきい値を超えた。これらの6つの実験からのデータを、アイソタイプ対照と比較した%PBMC媒介腫瘍殺傷に変換した。腫瘍殺傷率の個々の値を計算し(濃度ごとにn=4で反復)、腫瘍殺傷率の平均値に変換した。アイソタイプ対照と比較した殺傷された腫瘍細胞の増加率として報告された平均殺傷率を、h10F6濃度によってプロットし、反復実験からのドナー固有のデータを集計し、図26に示すように、ドナーによるアッセイでのh10F6のEC50を報告する。
【0289】
3人のドナーにわたるPBMC媒介性腫瘍細胞殺傷の値を表16に報告する。h10F6はPBMC媒介性腫瘍細胞殺傷を濃度依存的に増加させ、平均EC50が1.37nM(又は0.20μg/mL、範囲:0.17~2.38nM)であった。アイソタイプ対照と比較して、h10F6はPBMCを介する腫瘍細胞の殺傷を最大52.9%(個人)増加させ、3人のドナー全体で35.2%の平均最大効果があった(0%はアイソタイプ対照によって得られた殺傷であり、100%は、腫瘍細胞が殺傷期全体でGFPシグナルを放出しなかった場合である)。
【0290】
【表16】
【0291】
h10F6の能力は、SEBで刺激されたドナーPBMCの存在下で、PBMCを介するCD200+がん細胞の死を強力に増強した。
【0292】
実施例17:h10F6.V1を使用した毒物学的試験
h10F6の非臨床安全性評価には、インビトロ薬学データ、潜在的オフターゲット結合を評価するインビボPK試験からの許容度データ、インビトロでのサイトカイン放出、h10F6の組織交差反応性、及びサロゲート抗体h10F6.V1の許容度及びGLP毒物学的試験、の評価を含めた。
【0293】
h10F6.V1の忍容性と、オフターゲット結合及び毒性の可能性を、ラット及びカニクイザルにおけるh10F6の単回投与IVボーラス投与後に評価した。h10F6.V1による、末梢ヒト免疫細胞によるサイトカイン放出を誘導する能力も評価した。
【0294】
A.Sprague-Dawleyラットにおける忍容性
h10F6.V1は、10mg/kgの用量までの単回IVボーラス注射(1~2mL/kg)(2/性別/群;1mg/kg及び10mg/kg)で忍容された。動物を、各投与又はサンプル収集時点で、有意な臨床徴候、瀕死、及び死亡率について観察した。投与時と7、14、及び21日目に体重を記録した。早期死亡率又は瀕死状態はなく、被験物質に関連する臨床徴候又は体重の変化はなかった。結論として、例えば10mg/kgまでの単回IV投与後のラットにおけるh10F6.V1のオフターゲット結合を示す明白な毒性は観察されなかった。
【0295】
B.カニクイザルにおける忍容性
h10F6.V1は、カニクイザル(2mg/kg及び20mg/kgで雌雄各2匹)に20mg/kgの用量まで単回IVボーラス注射(2mL/kg)を行った後、忍容性が良好であった。動物に対し、研究現場に到着した時点で、認定された獣医スタッフによって一般的な健康状態についてスクリーニングした。コロニー固有の参照データと一致する臨床病理学的パラメータを有する健康状態の良好な動物のみを試験に供した。投与日に、動物を、投与後最初の6時間の各サンプル採取時点の前後に観察し、サンプル採取のその後の各時点で再び観察した。投与後、重要な臨床徴候、死亡率、疼痛及び苦痛の徴候について少なくとも1日2回、一般的な健康状態及び外観について少なくとも1日1回、動物を観察した。投与前、投与時、及び少なくとも毎週投与後に体重を記録した。血液学的及び血清化学的な変化を評価するために、投与前、投与後24時間、及び投与後35日に血液を採取した。早期死亡率又は瀕死状態はなく、臨床徴候、体重、血液学的又は臨床化学的側面において、被験物質に関連する変化もなかった。結論として、20mg/kgまでの単回IV投与後のカニクイザルにおけるh10F6のオフターゲット結合を示す明らかな毒性は観察されなかった。
【0296】
C.サイトカイン放出アッセイ
h10F6への曝露後のPBMCによるサイトカイン放出の可能性を評価し、影響がないことがわかった。h10F6.V1による処理に対する10人の健康なヒトドナー由来の全血及びPBMCサンプルの反応を、抗CD3抗体又はSEB処理(それぞれPBMC及び全血アッセイのポジティブ対照)、ヒト化抗ニワトリリゾチームIgG1カッパ(N297G Fcドメイン変異アイソタイプ対照処理(アイソタイプネガティブ対照)、及び無処理対照、と比較した。全血サンプルを可溶性フォーマットで処理し、PBMCをプレート結合ウェットコーティングフォーマットで処理した。h10F6.V1の濃度依存的応答を、両方の処理形式で、0.002、0.02、0.2、2、及び20μg/mlで解析した。サイトカイン放出を、IL-2、IL-6 TNFα、及びIFNγの誘導について、処理後24時間の単一の時点で評価した。
【0297】
h10F6.V1処理は、試験したどの濃度又は条件下でも、顕著なIL-2、TNFα、及びIFNγサイトカインの放出を誘発しなかった。h10F6.V1処理は、全血可溶性フォーマットで顕著なIL-6放出を誘発しなかった。h10F6処理後、全てのドナーは、PBMCプレート結合ウェットコーティング形式で低から中程度のレベルのIL-6を有していた。h10F6.V1で処理したサンプルで観察されたIL-6のレベルは、アイソタイプIgG1陰性対照抗体処理と同等であり、同じ濃度で使用した場合、抗CD3陽性対照よりも低かった。h10F6.V1の濃度と測定されたIL-6のレベルとの間に相関は観察されなかった。h10F6は、10人の健康なヒトドナーからの全血(例えば、可溶性処理フォーマット)又はPBMC(例えば、プレート結合、湿式コーティング処理フォーマット)で試験した場合、陰性対照を超えるIL-2、IL-6、TNFα、又はIFNγのインビトロでのサイトカイン放出の証拠を示さなかった。
【0298】
実施例18:例示的サロゲート抗体の薬理学
A.Expi-HEK293細胞におけるサロゲート抗体非臨床試験材料の産生
h10F6は、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、非ヒト霊長類(アカゲザル、マーモセット、カニクイザル)を含む試験した非臨床種で発現したCD200R1と交差反応しない。したがって、カニクイザルCD200R1、h10F6.V1に結合する完全にヒト化されたサロゲート抗体を、CD200R1阻害に関連する潜在的な危険性を評価するために開発した。h10F6.V1はh10F6の変異体であり、重鎖相補性決定領域(CDR)領域の3つのアミノ酸と軽鎖CDR領域の1つのアミノ酸を除いて、同じ一次配列を共有している。
【0299】
h10F6.V1は、h10F6について説明したのと同じプロセスを使用して、Expi-HEK293発現システムで産生させた。h10F6.V1の特徴を以下の表17に示す。
【0300】
【表17】
【0301】
B.カニクイザルから単離されたPBMCへのサロゲート抗体の結合
h10F6.V1がカニクイザル細胞に発現する内因性CD200R1に結合することを確認するために、カニクイザル由来のPBMCを使用したフローサイトメトリーによって、h10F6.V1の末梢免疫細胞サブセットへの結合を測定した。
【0302】
3匹のサルから単離されたPBMCにおいて、h10F6.V1は、CD4+T細胞への予想される結合を示した(図27)。T細胞への結合を、h10F6.V1の段階希釈を試験することによって評価した。用量依存的な結合が観察され、EC50値は0.34~1.54nMの範囲であった。
【0303】
C.サロゲート抗体によるMfCD200/MfCD200R1相互作用のブロック
MfCD200R1の固定化MfCD200への結合をブロックするh10F6.V1の能力を、ELISAを使用して実施した。図28に示されるように、サロゲート抗体は、MfCD200R1:MfCD200相互作用を2.45nMのブロッキングIC50値でブロックした。
【0304】
ヒト単球細胞株、K562を、MfCD200R1を安定して発現するよう操作した。MfCD200R1の配列を、バイオインフォマティクス解析及び2匹のドナーサルの食道から抽出したRNAを使用したシークエンシング実験の確認によって明確に決定した。MfCD200R1を発現するK562細胞への非グリコシル化hIgG1 Fcタグと融合したMfCD200の結合を、FACSによって確認した。この結合は、h10F6.V1によって強力にブロックされた(IC50=0.50nM)が、非MfCD200R1バインダーh10F6はこの相互作用をブロックしなかった(図29)。
【0305】
D.カニクイザルにおけるサロゲート抗体の単回投与薬物動態
h10F6.V1は、カニクイザル由来のCD200R1に対して高い結合親和性を有するh10F6のサロゲートである。h10F6は主要な毒物学種であるカニクイザル由来のCD200R1に結合しないため、h10F6.V1の単回投与PK試験を実施して、カニクイザルにおけるそのPK特性及び忍容性を評価し、GLPハザード同定試験での使用への適合性を判断した。サルにおけるh10F6.V1の濃度-時間PKプロファイルを図30に示す。
【0306】
サルにおけるh10F6.V1の平均PKパラメータを以下の表18に要約する。カニクイザルへの20mg/kgの単回IVボーラス注射の後、h10F6.V1血清濃度は二相的に低下した。h10F6.V1の除去は、時間に対して直線的であり、35日間までADA又は他の非線形除去挙動(例えば、標的媒介薬物動態;TMDD)の証拠がないことを示唆した。平均最終半減期は10.2日で、クリアランスの平均値及び定常状態での分布の推定量は、サルにおいて線形PKを示すヒト化IgGの典型的であり得る値と一致していた。
【0307】
【表18】
【0308】
h10F6.V1はサルで直線的なPKを示し、試験された20mg/kgの用量で、直線的で非飽和性の非特異的なクリアランスメカニズムが、サルにおけるh10F6.V1の除去の主要な要因であることを示唆している。h10F6.V1は、臨床観察及び血清化学的及び血液学的パラメータの評価に基づいて、35日目まで十分に許容された(セクション14.2.3.1を参照)。したがって、サルにおけるh10F6.V1のPK及び忍容性は、h10F6の代用としての適合性と、GLP毒物学的試験での使用を裏付けるものである。
【0309】
実施例19:サロゲート抗体を使用した毒物学的試験
他の種で発現されたCD200R1へのh10F6の結合の評価は、非臨床安全性を評価するために使用される種で発現されたCD200R1と交差反応しないことを明らかにした。その結果、薬学的に関連する動物種におけるh10F6の潜在的な毒性の評価は不可能であり、カニクイザル由来のCD200R1に結合する代替抗体h10F6.V1を開発し、ハザードを特定する目的で非臨床的な安全性を評価した。
【0310】
A.カニクイザルの単回投与試験における忍容性
h10F6.V1を、1回のIVボーラス注射(2mL/kg、20mg/kg)の後、カニクイザル(雄3匹)で十分に許容された。動物に対し、研究現場に到着した時点で、認定された獣医スタッフによって一般的な健康状態についてスクリーニングした。コロニー固有の参照データと一致する臨床病理学的パラメータを有する健康状態の良好な動物のみを試験に供した。投与日に、動物を、投与後最初の6時間の各サンプル採取時点の前後に観察し、サンプル採取のその後の各時点で再び観察した。投与後、重要な臨床徴候、死亡率、疼痛及び苦痛の徴候について少なくとも1日2回、一般的な健康状態及び外観について少なくとも1日1回、動物を観察した。投与前、投与時、及び少なくとも毎週投与後に体重を記録した。血液学的及び血清化学的な変化を評価するために、投与前、投与後24時間、及び投与後35日に血液を採取した。早期死亡率又は瀕死状態はなく、臨床徴候、体重、血液学的又は臨床化学的側面において、被験物質に関連する変化もなかった。20mg/kgの単回IV投与後のカニクイザルにおけるCD200/CD200R1相互作用の阻害が危険であることを示し得る明白な毒性は観察されなかった。
【0311】
B.カニクイザルにおける反復投与試験における毒性学及び安全性薬理学
反復投与GLP試験では、CD200/CD200R1相互作用の中断と潜在的に関連する毒性のハザードを特定する目的で、雄及び雌のカニクイザルに低速ボーラスIV注射によって週1回、例えば4週間投与した場合の、h10F6.V1の潜在的な毒性を測定することができる。この試験では、6週間の回復期間後の結果の潜在的な可逆性も評価できる。更に、TK特性及び探索的バイオマーカーを評価できる。用量は、上記のような非GLP単回用量PD試験に基づいて選択することができる。RO予測に基づいて、100mg/kg/用量は、長期間にわたり標的を飽和させることができる。10mg/kg/用量レベルでは観察可能な徴候は見られず、週1回の投与間隔で約99%のROが得られる。試験デザインを以下の表19に示す。
【0312】
【表19】
【0313】
臨床観察、体重、体重変化、摂餌量、眼科、血液学、臨床化学、凝固、尿検査、臓器重量、肉眼的及び顕微鏡的組織病理学などの、標準的な毒性学的エンドポイントに対する被験物質関連の影響を評価できる。更に、安全性薬理パラメータ(神経行動、心電図、心拍数、血圧、又は呼吸数)への影響をモニターできる。標準パラメータに加えて、末梢血免疫表現型パラメータ(CD3、FoxP3、CD25、CD159a、CD20、CD4、Ki67、及びCD8)及びサイトカイン(IL-2、IL-6、IL-8、MCP-1、IFNγ、及びTNFα)レベルを、例えば検証済みのアッセイを使用してモニターできる。TK及び探索的バイオマーカー分析用のサンプルを、評価のために採取できる。局所的な忍容性も評価できる。
【0314】
この試験では、次のパラメータ及びエンドポイントを評価した:死亡率、臨床観察、体重、定性的な食物消費、眼科、定性的な心電図、体温、神経学的検査、呼吸数、臨床病理学パラメータ(血液学、凝固、臨床化学、及び尿検査)、生物分析及び毒物動態パラメータ、抗薬物抗体パラメータ、免疫表現型検査、受容体占有率分析、サイトカイン分析、探索的血漿処理、RNAの探索的全血、臓器重量、及び肉眼及び顕微鏡検査。
【0315】
カニクイザルへの10又は100mg/kgのh10F6.V1の週1回4週間の静脈内ボーラス注射による投与は、臨床観察、摂餌量、体重、眼科検査、心電図、体温、神経学的検査、呼吸数、血液学、凝固、臨床化学、尿検査パラメータ、又は骨髄細胞学に係る変化と関連していなかった。
【0316】
免疫表現型検査では、h10F6.V1関連の変化は、10及び100mg/kg群で、投与前15日目及び29日目に観察されたTリンパ球、CD25+Tリンパ球、及びNK細胞でのKi67発現の増加に限定されていた。h10F6.V1の投与により、1日目10mg/kg群では、投与後48時間及び投与前8日に、また1日目100mg/kg群では、投与後48時間から63日目の回復期間の終わりまで、好中球の遊離受容体%が減少し、受容体占有率(%RO)が増加した。また、22日目:投与後48時間で両用量群のTヘルパーリンパ球の総受容体%が増加し、1日目:投与後48時間から29日目まで、両方の用量群でTリンパ球の%ROが増加した。これらの増加は、50日目までにほぼベースラインに戻った。両方の用量群で、他の試験細胞集団又は活性化マーカーにh10F6.V1関連の変化はなかった。
【0317】
サイトカイン評価では、試験前及び対照範囲と比較して、投与された全ての動物において、いずれの時点においても、血漿中のIL-2、IL-6、IL-8、MCP-1、IFN-γ、及びTNF-αの濃度に、何らのh10F6.V1投与に起因する可能性のある変化は見られなかった。
【0318】
顕微鏡観察による評価では、安楽死の末期に、100mg/kgを投与された1匹の雌の脳(軽度)及び眼(軽度)、≧10mg/kgを投与された動物の下垂体(最小)、及び100mg/kgを投与された雄の副腎(最小)で、単核細胞浸潤の高い発生率及び/又は重症度が観察された。回復安楽死時に、100mg/kgを投与された1匹の雄の脳(軽度)、100mg/kgを投与された1匹雌の下垂体(最小)、及び100mg/kgを投与された雄の副腎(最小)で、単核細胞浸潤の高い発生率及び/又は重症度が観察された。単核細胞浸潤は、背景所見として、又は生物製剤の投与に関連して観察できる。投与された動物で観察されたより高い発生率及び/又は重症度、雌雄間の発生率の不一致、及び重症度の差の大きさは、これらの浸潤が直接的なh10F6.V1関連効果よりもむしろ生物製剤の投与に関連する非特異的なクラス効果を表している可能性が最も高いことを示唆しているが、寄与及び/又は直接的なh10F6.V1関連の影響を完全に排除することはできない。最終安楽死及び回復安楽死では、h10F6.V1に関連する臓器重量の違い又は肉眼的所見は観察されなかった。
【0319】
結論として、1、8、15、及び22日目に週1回、静脈内(低速ボーラス)注射によるh10F6.V1の投与は、カニクイザルにおいて、≦100mg/kgで良好に忍容された。組織病理学的変化は、脳、眼(安楽死終末のみ)、及び100mg/kgでの下垂体、及び≧10mg/kgでの副腎、における単核細胞浸潤からなった。これらの変化は、抗薬物抗体による免疫複合体に関連している可能性があり、有害ではないと考えられた。以上の結果から、無影響量は100mg/kgと判断された。
【0320】
実施例20:h10F6及びサロゲート抗体についての比較薬理の要約
Expi-293HEK細胞で生成された材料を使用して生成された予備的データは、以下の表20に示すように、h10F6.V1が2.63nMのKDで組換えMfCD200R1に結合することを示しており、MfCD200R1に対するその結合親和性が、h10F6のhCD200R1に対する結合親和性と同等(~20倍以内)であり得ることを示している。組換えタンパク質結合試験の結果と一致して、試験したサロゲート抗体は、ヒトT細胞に結合するh10F6に匹敵する親和性(約4倍以内;表20)で、CD200R1を発現する初代カニクイザルCD4+T細胞に結合できる。更に、インビトロブロッキング試験の結果は、h10F6.V1が、ELISA及びMfCD200R1過剰発現細胞ベースのシステムの両方で、ヒトhCD200R1及びhCD200に対してh10F6に匹敵する効力で、MfCD200R1とMfCD200の間の相互作用を~6~7倍でブロックできることを示した(表20)。
【0321】
【表20】
【0322】
まとめると、これらの結果は、サロゲート抗体h10F6.V1が、hCD200R1:hCD200の結合のh10F6による阻害と同等の方法で、MfCD200R1:MfCD200の結合を阻害できることを示す。
【0323】
h10F6及びh10F6.V1の比較薬物動態
h10F6.V1及びh10F6のPK特性は、IVボーラス注射による20mg/kgの単回投与でカニクイザルで評価した場合に類似していた。h10F6.V1及びh10F6の平均最終半減期は、それぞれ10.2日及び11.5~13.3日であり、それらの曝露は同等であった(Cmax及びAUClastで測定して1.5倍以内)。CHO-K1細胞で得られたh10F6.V1のPKは、GLPハザード同定試験で評価する予定である。h10F6は、hCD200R1特異的でグリコシル化されていない中性荷電IgG抗体であるため、h10F6がCHO-K1細胞又はExpi-HEK293細胞で産生される場合、同様のPK特性を有すると予想される。
【0324】
本発明の前述の開示は、明確化及び理解の目的で例及び例示としていくらか詳細に説明されてきたが、本明細書に記載の実施例、説明、及び実施形態を含む本開示は、例示を目的とし、本開示を制限するものとして解釈されるべきではない。本明細書に記載の実施例、説明、及び実施形態に対して様々な改変又は変更を行うことができ、本開示及び添付の特許請求の範囲の趣旨及び視野内に含まれるべきであることは当業者には明らかであろう。更に、当業者は、本明細書に記載されているものと同等な多くの方法及び手順を認識するであろう。そのような全ての同等物は、本開示の範囲内にあると理解されるべきであり、添付の特許請求の範囲によって網羅される。
【0325】
本発明の追加の実施形態は、以下の特許請求の範囲に記載されている。
【0326】
そのような個々の出版物、特許、特許出願、又は他の文書が各々参照により、その全体をあらゆる目的で本明細書に組み込むために個別具体的に示され、本明細書にその全体が記載されたかのような場合と同程度に、本明細書で言及される全ての出版物、特許出願、特許、又は他の文書の開示は、あらゆる目的でその全体が参照により明示的に組み込まれる。矛盾する場合は、規定用語を含む本明細書が優先されるであろう。
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図1A
図1B
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15-1】
図15-2】
図15-3】
図16
図17-1】
図17-2】
図18-1】
図18-2】
図19A
図19B
図20
図21
図22A
図22B
図23A
図23B
図23C
図24A
図24B
図25A
図25B
図26A
図26B
図26C
図26D
図27
図28
図29
図30
【配列表】
2023528375000001.app
【国際調査報告】