(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-04
(54)【発明の名称】ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体を含む洗濯ケア又は食器ケア組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 3/22 20060101AFI20230627BHJP
C11D 7/22 20060101ALI20230627BHJP
C11D 17/08 20060101ALI20230627BHJP
C11D 17/06 20060101ALI20230627BHJP
C11D 1/00 20060101ALI20230627BHJP
C11D 3/386 20060101ALI20230627BHJP
C11D 3/37 20060101ALI20230627BHJP
C11D 3/395 20060101ALI20230627BHJP
C11D 3/42 20060101ALI20230627BHJP
C11D 3/40 20060101ALI20230627BHJP
C11D 3/48 20060101ALI20230627BHJP
C11D 3/50 20060101ALI20230627BHJP
D06M 15/03 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
C11D3/22
C11D7/22
C11D17/08
C11D17/06
C11D1/00
C11D3/386
C11D3/37
C11D3/395
C11D3/42
C11D3/40
C11D3/48
C11D3/50
D06M15/03
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573168
(86)(22)【出願日】2021-06-09
(85)【翻訳文提出日】2022-11-28
(86)【国際出願番号】 US2021036508
(87)【国際公開番号】W WO2021252558
(87)【国際公開日】2021-12-16
(32)【優先日】2020-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE PROCTER & GAMBLE COMPANY
【住所又は居所原語表記】One Procter & Gamble Plaza, Cincinnati, OH 45202,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】シヴィク、マーク・ロバート
(72)【発明者】
【氏名】フライター、クリスティン・リン
(72)【発明者】
【氏名】フェアウェザー、ニール・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】シ、ガン
(72)【発明者】
【氏名】グッド、デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】フアン、ジェン-ジェン
(72)【発明者】
【氏名】ルー、ヘレン
(72)【発明者】
【氏名】アデルマン、ダグラス
【テーマコード(参考)】
4H003
4L033
【Fターム(参考)】
4H003AB03
4H003AB19
4H003AB28
4H003AB31
4H003AC08
4H003AC15
4H003BA09
4H003BA12
4H003BA15
4H003DA01
4H003DA05
4H003DA17
4H003DA19
4H003DB01
4H003DC02
4H003EA12
4H003EA15
4H003EA16
4H003EA19
4H003EA21
4H003EA28
4H003EB04
4H003EB05
4H003EB07
4H003EB08
4H003EB13
4H003EB14
4H003EB24
4H003EB33
4H003EB34
4H003EB37
4H003EB42
4H003EC01
4H003EC02
4H003EC03
4H003ED02
4H003EE05
4H003FA04
4H003FA07
4H003FA09
4H003FA12
4H003FA26
4H003FA28
4H003FA43
4L033AB04
4L033AC02
4L033CA02
(57)【要約】
本発明は、ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体を含む洗濯ケア又は食器ケア組成物であって、当該ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体が、
(i)グルコースモノマー単位のポリアルファ-1,6-グルカン骨格であって、グルコースモノマー単位の40%以上がアルファ-1,6グリコシド結合を介して結合し、グルコースモノマー単位の0%~30%未満がアルファ-1,3グリコシド結合を介して結合し、任意に、骨格グルコースモノマー単位の少なくとも5%がアルファ-1,2及び/又はアルファ-1,3グリコシド結合を介した分岐を有する、グルコースモノマー単位のポリアルファ-1,6-グルカン骨格と、
(ii)
【化1】
結合部分を通して当該ポリアルファ-1,6-グルカン骨格に結合している少なくとも1つの有機基と、
を含み、
当該ポリアルファ-1,6-グルカン骨格が、少なくとも5の重量平均重合度を有し、
当該ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体が、0.001~3.00の
【化2】
結合部分の置換度を有する、組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体を含む洗濯ケア又は食器ケア組成物であって、前記ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体が、
(i)グルコースモノマー単位のポリアルファ-1,6-グルカン骨格であって、前記グルコースモノマー単位の40%以上がアルファ-1,6グリコシド結合を介して結合し、前記グルコースモノマー単位の0%~30%未満がアルファ-1,3グリコシド結合を介して結合し、任意に、前記骨格グルコースモノマー単位の少なくとも5%がアルファ-1,2及び/又はアルファ-1,3グリコシド結合を介した分岐を有する、グルコースモノマー単位のポリアルファ-1,6-グルカン骨格と、
(ii)
【化1】
結合部分を通して前記ポリアルファ-1,6-グルカン骨格に結合している少なくとも1つの有機基と、
を含み、
前記ポリアルファ-1,6-グルカン骨格が、少なくとも5の重量平均重合度を有し、
前記ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体が、0.001~3.00の
【化2】
結合部分の置換度を有する、組成物。
【請求項2】
前記ポリアルファ-1,6-グルカン骨格に結合している前記有機基が、疎水性有機基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体が、エステル(-OCO-)、カーボネート(-OCOO-)、スルホン酸エステル(-OSO
2-)、及びエーテル(-O-)のうちの1つ以上から選択される結合部分を通して前記ポリアルファ-1,6-グルカン骨格に結合している1つ以上の追加の有機基を更に含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体が、親水性置換を実質的に含まない、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体が、カルボン酸、カルボン酸塩、スルホン酸誘導体、スルホン酸誘導体塩、硫酸誘導体、硫酸誘導体塩、チオサルフェート、チオサルフェート塩、リン酸誘導体、リン酸誘導体塩、アルキルアミン、アルキル置換アンモニウム塩、四級化ピリジン塩、四級化イミダゾール塩、又はそれらの任意の組み合わせから選択される親水性基を実質的に含まない、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体の前記アルファ-1,6-グルカン骨格が、5~95又は125~4000のいずれかの重量平均重合度を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体が、0.40~0.90の
【化3】
結合部分の置換度を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記骨格グルコースモノマー単位の5%~9%又は26%~40%が、アルファ-1,2又はアルファ-1,3グリコシド結合を介した分岐を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記有機基が、C
1~C
18アルキル基;ヒドロキシアルキル基;C
2~C
18アルケニル基;C
2~C
18アルキニル基;ベンジル基;C
6~C
20アリール基;(-CH
2CH
2O-)及び/若しくは(-CH
2CH(CH
3)O-)の繰り返し単位を含むポリエーテルであって、前記繰り返し単位の総数が、2~100の範囲である、ポリエーテル;又はそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記有機基が、C
1~C
10アルキル基;C
1~C
10ヒドロキシアルキル基;(-CH
2CH
2O-)、(-CH
2CH(CH
3)O-)、(-CH(CH
3)CH(CH
3)O-)、(-CH
2CH(CH
2CH
3)O-)、若しくはそれらの混合物の繰り返し単位を含むポリエーテルであって、前記繰り返し単位の総数が、2~100の範囲である、ポリエーテル;又はそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記有機基が、ベンジル基であり、前記ベンジル基が、ハロゲン、シアノ基、エステル基、アミド基、エーテル基、C
1~C
6アルキル基、アリール基、C
2~C
6アルケン基、C
2~C
6アルキン基、又はそれらの任意の組み合わせのうちの1つ以上で置換され得る、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体が、OECD 301B易生分解性CO
2発生試験法によって求めたときに90日目の試験期間において少なくとも10%の生分解性を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
液体、ゲル、粉末、ヒドロコロイド、水溶液、顆粒、錠剤、カプセル、単区画サッシェ、パッド、多区画サッシェ、単区画パウチ、又は多区画パウチの形態である、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
界面活性剤、酵素、洗剤ビルダー、錯化剤、ポリマー、汚れ放出ポリマー、界面活性増強ポリマー、漂白剤、漂白活性化剤、漂白触媒、布地コンディショナー、粘土、起泡促進剤、抑泡剤、防食剤、汚れ懸濁化剤、汚れ再付着防止剤、染料、殺菌剤、曇り防止剤、蛍光増白剤、香料、飽和又は不飽和脂肪酸、移染防止剤、キレート剤、色相染料、カルシウムカチオン、マグネシウムカチオン、視覚シグナル伝達成分、消泡剤、構造化剤、増粘剤、固化防止剤、デンプン、砂、ゲル化剤、又はそれらの任意の組み合わせから選択される成分を更に含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
セルラーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、又はそれらの任意の組み合わせから選択される酵素を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの有機基で置換されたポリアルファ-1,6-グルカンを含むポリアルファ-1,6-グルカン誘導体に関する。有機基は、
【0002】
【0003】
結合部分を通してポリアルファ-1,6-グルカンに結合している。ポリα-1,6-グルカンは、グルコースモノマー単位の骨格を含み、当該グルコースモノマー単位の40%以上がα-1,6-グリコシド結合を介して結合し、任意に、骨格グルコースモノマー単位の少なくとも5%がα-1,2及び/又はα-1,3グリコシド結合を介した分岐を有する。
【背景技術】
【0004】
エーテル基で修飾された多糖類は、洗浄、洗剤、化粧品、食品、セメント、フィルム、及び紙の製造においてレオロジー調整剤、エマルジョン安定剤、及び分散剤などの水性用途のために使用され得る。例えば、カルボキシメチルセルロース誘導体は、レオロジー調整剤として使用されている。酵素的に重合された多糖類及びその誘導体は、狭い多分散性及び組成の一貫性を有し得、いくつかの用途において利点をもたらす。ポリアルファ-1,3-1,6-グルカンのエーテル誘導体及び粘度調整剤としてそのような材料を使用する方法は、米国特許出願公開第2015/0232785号に開示されている。ポリアルファ-1,3-グルカンエーテル化合物を含むヒドロコロイド及び水溶液、並びにパーソナルケア製品、医薬品、食品、家庭用製品、又は工業製品の形態のそのような材料は、米国特許第10,005,850号に開示されている。エーテル化合物における選択された置換基及び置換度と組み合わせたグルカンポリマー骨格中のグリコシド結合のパターンは、水溶液中のグルカンエーテル化合物の溶解度又は分散性に影響を及ぼし得る。
【0005】
洗濯及び食器ケアなどの水性用途で、例えば、洗濯洗剤において、及び食器ケア用途において、染み除去、付着防止、灰色化防止、及び/又は白色度性能発揮剤(whiteness performing agents)として使用することができる新規材料が継続的に必要とされている。再生可能資源から作製することができ、生分解性であるそのような材料が依然として必要とされている。
【0006】
米国特許出願公開第2020/002646号及び同第2018/346846号は、多糖誘導体を含む組成物に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/0232785号
【特許文献2】米国特許第10,005,850号
【特許文献3】米国特許出願公開第2020/002646号
【特許文献4】米国特許出願公開第2018/346846号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体を含む洗濯ケア又は食器ケア組成物であって、当該ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体が、
(i)グルコースモノマー単位のポリアルファ-1,6-グルカン骨格であって、グルコースモノマー単位の40%以上がアルファ-1,6グリコシド結合を介して結合し、グルコースモノマー単位の0%~30%未満がアルファ-1,3グリコシド結合を介して結合し、任意に、骨格グルコースモノマー単位の少なくとも5%がアルファ-1,2及び/又はアルファ-1,3グリコシド結合を介した分岐を有する、グルコースモノマー単位のポリアルファ-1,6-グルカン骨格と、
(ii)
【0009】
【化2】
結合部分を通して当該ポリアルファ-1,6-グルカン骨格に結合している少なくとも1つの有機基と、
を含み、
当該ポリアルファ-1,6-グルカン骨格が、少なくとも5の重量平均重合度を有し、
当該ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体が、0.001~3.00の
【0010】
【化3】
結合部分の置換度を有する、組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
引用された全ての特許及び非特許文献の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0012】
本明細書で使用するとき、用語「実施形態」又は「開示」は、限定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に定義される又は本明細書に記載される実施形態のいずれにも広く適用される。これらの用語は、本明細書において互換的に使用される。
【0013】
本開示では、多数の用語及び略語が使用される。特に明記しない限り、以下の定義が適用される。
【0014】
要素又は構成要素の前に記載される冠詞「a」、「an」、及び「the」は、その要素又は構成要素の例(すなわち、存在)の数に関して非制限的であることを意図する。これらの冠詞は、1つ又は少なくとも1つを含むと読み取るべきであり、要素又は構成要素の単数形の語形はまた、その数が単数であることを自明に意味していない限り、複数形も含む。
【0015】
用語「含む(comprising)」は、請求項で言及されるような、記載された特徴、整数、ステップ/工程、又は構成要素の存在を意味するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ/工程、構成要素、又はこれらの群の存在又は追加を除外するものではないことを意味する。用語「含む(comprising)」は、用語「から本質的になる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting of)」という用語によって包含される実施形態を含むことを意図する。同様に、用語「から本質的になる」は、用語「からなる」によって包含される実施形態を含むことを意図する。
【0016】
存在する場合、全ての範囲は、包括的かつ組み合わせ可能である。例えば、「1~5」の範囲が列挙される場合、列挙される範囲は、範囲「1~4」、「1~3」、「1~2」、「1~2及び4~5」、「1~3及び5」などを含むと解釈されるべきである。
【0017】
数値に関連して本明細書で使用するとき、用語「約」は、その用語が文脈において具体的に定義されない限り、数値の+/-0.5の範囲を指す。例えば、「約6のpH値」という語句は、pH値が具体的に定義されない限り、5.5~6.5のpH値を指す。
【0018】
本明細書全体を通して与えられる全ての最大数値限定は、それよりも小さい全ての数値限定を、このようなより小さい数値限定が本明細書に明確に記載されているのと同様に含むことを意図する。本明細書の全体を通して与えられる全ての最小数値限定は、それよりも大きい全ての数値限定を、かかるより大きい数値限定があたかも本明細書に明確に記載されているのと同様に含む。本明細書の全体を通して与えられる全ての数値範囲は、かかるより広い数値範囲内に含まれる、より狭い全ての数値範囲を、かかるより狭い数値範囲があたかも全て本明細書に明確に記載されているのと同様に含む。
【0019】
本出願において指定される様々な範囲における数値の使用は、別途明示的に示されない限り、記載された範囲内の最小値及び最大値が両方とも「約」という語の後に続くのと同様に近似値として記載される。このようにして、規定の範囲を上回る及び下回るわずかなばらつきを使用して、範囲内の値と実質的に同じ結果を得ることができる。また、これらの範囲の開示は、最小値と最大値との間の各値及び全ての値を含む連続範囲として意図される。
【0020】
本開示の特徴及び利点は、以下の詳細な説明を読むことによって当業者により容易に理解されるであろう。明確にするために、別々の実施形態に関連して上及び下に記載されている本開示の特定の特徴は、単一の要素内で組み合わせて提供されてもよいことを理解されたい。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態に関連して記載される本開示の様々な特徴は、別々に又は任意の部分的組み合わせで提供されてもよい。加えて、単数への言及はまた、文脈上特に明記されない限り、複数を含んでもよい(例えば、「a」及び「an」は、1つ以上を指してもよい)。
【0021】
本明細書で使用するとき、
「多糖」という用語は、グリコシド結合によって互いに結合している単糖単位の長鎖で構成される高分子炭水化物分子を意味し、加水分解により、構成要素である単糖又はオリゴ糖が生じる。
【0022】
本明細書では、「ポリアルファ-1,6-グルカン」、「アルファ-1,6-グルカン」、「デキストラン」、「デキストランポリマー」などの用語は、少なくとも40%のアルファ-1,6グリコシド結合を含むアルファ-グルカンを指す。
【0023】
用語「重量パーセント」、「重量パーセント(重量%)」、及び「重量-重量パーセント(%w/w)」は、本明細書において互換的に使用される。重量パーセントは、組成物、混合物、又は溶液に含まれるときの質量基準での材料の百分率を指す。
【0024】
「水不溶性」という語句は、23℃で1000ミリリットルの水に1グラム未満の多糖又は多糖誘導体しか溶解しないことを意味する。
【0025】
用語「水溶性」は、多糖又は多糖誘導体が、25℃でpH7の水に1重量%以上溶解できることを意味する。重量パーセントは、例えば、水100グラム中多糖1グラムなど、水溶性の多糖の総重量に基づく。
【0026】
「疎水性」という用語は、非極性であり、水に対してほとんど又は全く親和性を有しておらず、水をはじく傾向があるない分子又は置換基を指す。
【0027】
本明細書で使用するとき、「モル置換」(M.S.)という用語は、多糖又はその誘導体のモノマー単位当たりの有機基のモル数を指す。例えば、ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体のモル置換値は、例えば、数百又は更には数千単位の非常に高い上限を有し得ることに留意されたい。例えば、有機基が、ポリアルファ-1,6-グルカンのヒドロキシル基のうちの1つへのエチレンオキシドの付加を介したヒドロキシル含有アルキル基である場合、次いで、エチレンオキシドからそのように形成されたヒドロキシル基を更にエーテル化してポリエーテルを形成することができる。
【0028】
多糖又は多糖誘導体の分子量は、統計的に平均化された分子量分布、すなわち、数平均分子量(Mn)として又は重量平均分子量(Mw)として表すことができ、これらはいずれも、全般的に、ダルトン(Da)、すなわち、グラム/モルの単位で示される。あるいは、分子量は、DPw(重量平均重合度)、又はDPn(数平均重合度)として表すこともできる。高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、又はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、及びゲル濾過クロマトグラフィー(GFC)などの技術から、これらの分子量を計算するための様々な手段が当該技術分野において既知である。
【0029】
本明細書で使用するとき、「重量平均分子量」又は「Mw」は、
Mw=ΣNiMi
2/ΣNiMi;(式中、Miは、個々の鎖iの分子量であり、Niは、その分子量の鎖の数である)として計算される。SECを使用することに加えて、重量平均分子量は、静的光散乱、質量分析、特にMALDI-TOF(マトリックス支援レーザ脱離/イオン化飛行時間)、小角X線又は中性子散乱、超遠心分離などの他の技術によって決定することができる。
【0030】
本明細書で使用するとき、「数平均分子量」又は「Mn」は、サンプル中の全てのポリマー鎖の統計的平均分子量を指す。数平均分子量は、Mn=ΣNiMi/ΣNiとして計算され、式中、Miは、鎖の分子量であり、Niは、その分子量の鎖の数である。SECを使用することに加えて、ポリマーの数平均分子量は、蒸気圧浸透圧測定、又はプロトンNMR、FTIR、又はUV-visなどのスペクトル法/分光法による又は末端基決定などの様々な束一的方法によって決定することができる。
【0031】
本明細書で使用される場合、数平均重合度(DPn)及び重量平均重合度(DPw)は、1つのモノマー単位M1のモル質量で除算することによって、対応する平均分子量Mw又はMnから計算される。非置換グルカンポリマーの場合、M1=162である。置換グルカンポリマーの場合、M1=162+Mf×DoSであり、式中、Mfは、置換基のモル質量であり、DoSは、その置換基に対する置換度(1グルコース単位当たりの置換基の平均数)である。
【0032】
本明細書で言及されるようなグルコース炭素位置1、2、3、4、5、及び6は、当該技術分野で既知であり、構造Iに示される。
【0033】
【0034】
用語「グリコシド結合」及び「グリコシド連結」は、本明細書では互換的に使用され、炭水化物(糖)分子を別の炭水化物などの別の基に結合させる共有結合の種類を指す。本明細書で使用するとき、用語「α-1,6-グルコシド結合」は、隣接するα-D-グルコース環における炭素1及び6を介してα-D-グルコース分子を互いに結合させる共有結合を指す。本明細書で使用するとき、用語「α-1,3-グルコシド結合」は、隣接するα-D-グルコース環における炭素1及び3を介してα-D-グルコース分子を互いに結合させる共有結合を指す。本明細書で使用するとき、用語「α-1,2-グルコシド結合」は、隣接するα-D-グルコース環における炭素1及び2を介してα-D-グルコース分子を互いに結合させる共有結合を指す。
【0035】
本明細書で使用するとき、用語「α-1,4-グルコシド結合」は、隣接するα-D-グルコース環における炭素1及び4を介してα-D-グルコース分子を互いに結合させる共有結合を指す。本明細書では、「α-D-グルコース」は、「グルコース」と称される。
【0036】
グルカン、デキストラン、置換グルカン、又は置換デキストランのグリコシド結合プロファイルは、当該技術分野において既知の任意の方法を用いて求めることができる。例えば、結合プロファイルは、核磁気共鳴(NMR)スペクトル法(例えば、13C NMR又は1H NMR)を使用する方法を使用して求めることができる。使用できるこれら及び他の方法は、Food Carbohydrates:Chemistry,Physical Properties,and Applications(S.W.Cui,Ed.,Chapter 3,S.W.Cui,Structural Analysis of Polysaccharides,Taylor&Francis Group LLC,Boca Raton,FL,2005)に開示されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0037】
多糖又は多糖誘導体の構造及び分子量は、反応物質に基づいて求めることができ、多角度光散乱回折質量分析(MALDI)及びサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を含むがこれらに限定されない、当該技術分野において既知の様々な物理化学分析によって確認することができる。多糖又は多糖誘導体の置換度は、NMRスペクトル法及び化学消化法を含むがこれらに限定されない、当該技術分野において既知の様々な物理化学分析によって求めることができる。
【0038】
本発明は、ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体を含む洗濯ケア又は食器ケア組成物であって、当該ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体が、
(i)グルコースモノマー単位のポリアルファ-1,6-グルカン骨格であって、グルコースモノマー単位の40%以上がアルファ-1,6グリコシド結合を介して結合し、グルコースモノマー単位の0%~30%未満がアルファ-1,3グリコシド結合を介して結合し、任意に、骨格グルコースモノマー単位の少なくとも5%がアルファ-1,2及び/又はアルファ-1,3グリコシド結合を介した分岐を有する、グルコースモノマー単位のポリアルファ-1,6-グルカン骨格と、
(ii)
【0039】
【化5】
結合部分を通して当該ポリアルファ-1,6-グルカン骨格に結合している少なくとも1つの有機基と、
を含み、
当該ポリアルファ-1,6-グルカン骨格が、少なくとも5の重量平均重合度を有し、
当該ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体が、0.001~3.00の
【0040】
【化6】
結合部分の置換度を有する、組成物を提供する。
【0041】
ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体は、
(i)グルコースモノマー単位のポリアルファ-1,6-グルカン骨格であって、グルコースモノマー単位の40%以上がアルファ-1,6グリコシド結合を介して結合し、グルコースモノマー単位の0%~30%未満がアルファ-1,3グリコシド結合を介して結合し、任意に、骨格グルコースモノマー単位の少なくとも5%がアルファ-1,2及び/又はアルファ-1,3グリコシド結合を介した分岐を有する、グルコースモノマー単位のポリアルファ-1,6-グルカン骨格と、
(ii)
【0042】
【化7】
結合部分を通して当該ポリアルファ-1,6-グルカン骨格に結合している少なくとも1つの有機基と、
を含み、
当該ポリアルファ-1,6-グルカン骨格が、少なくとも5の重量平均重合度を有し、
当該ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体が、0.001~3.00の
【0043】
【0044】
本明細書で開示されるポリアルファ-1,6-グルカン誘導体は、グルコースモノマー単位の骨格を含む、水溶性ポリアルファ-1,6-グルカンを含み、グルコースモノマー単位の40%以上がアルファ-1,6グリコシド結合を介して結合し、グルコースモノマー単位の0%~30%未満がアルファ-1,3グリコシド結合を介して結合し、任意に、骨格グルコースモノマー単位の少なくとも5%がアルファ-1,2及び/又はアルファ-1,3グリコシド結合を介した分岐を有する。
【0045】
典型的には、ポリα-1,6-グルカンは、ポリα-1,6-グルカン誘導体が、いくつかの態様において、非置換及び置換α-D-グルコース環を含むように、多糖骨格及び/又は存在し得る任意の分岐において有機基でランダムに置換されている。本明細書で使用するとき、用語「ランダムに置換された」は、ランダムに置換された多糖におけるグルコース環上の置換基が非反復的に又はランダムに存在することを意味する。すなわち、置換グルコース環上の置換は、多糖における第2の置換グルコース環上の置換と同一であっても異なっていてもよく[すなわち、多糖におけるグルコース環の異なる原子上の置換基(同一であっても異なっていてもよい)]、その結果、ポリマー上の置換全体がパターンを有しなくなる。更に、置換グルコース環は、多糖内にランダムに存在する(すなわち、多糖内に置換及び非置換のグルコース環のパターンは存在しない)。
【0046】
いくつかの実施形態では、ポリα-1,6-グルカンを誘導体化するために使用される反応条件及び特定の置換基に応じて、ポリマー骨格のグルコースモノマーは、存在する場合、α-1,2及び/又はα-1,3結合を介した分岐を含む任意の分岐のグルコースモノマーに対して不均一に置換され得る。別の実施形態では、存在する場合、α-1,2及び/又はα-1,3結合を介した分岐を含む分岐のグルコースモノマーは、ポリマー骨格のグルコースモノマーに対して不均一に置換され得る。いくつかの実施形態では、反応条件及び使用される特定の置換基に応じて、ポリα-1,6-グルカンの置換は、ブロック状に生じ得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、ポリα-1,6-グルカンを誘導体化するために使用される反応条件及び特定の置換基に応じて、特定のグルコース炭素位置におけるヒドロキシル基は、不均一に置換され得ることが可能である。例えば、いくつかの実施形態では、炭素位置2、3、又は4におけるヒドロキシルは、他の炭素位置におけるヒドロキシルよりも多く置換され得る。
【0048】
本明細書に開示されるポリα-1,6-グルカン誘導体は、少なくとも1つの有機基で置換されたポリα-1,6-グルカンを含み、当該少なくとも1つの有機基は、独立して、ポリα-1,6-グルカン多糖骨格に、及び/又は
【0049】
【化9】
から選択される結合部分を通して任意の分岐に結合する。
【0050】
【0051】
結合部分を通してポリアルファ-1,6-グルカンに結合する有機基に加えて、本明細書に開示されるポリアルファ-1,6-グルカン誘導体は、存在する場合、-OCO-(エステル)、-OSO2-(スルホニル)、-O-(エーテル)、又は-OCOO-(カーボネート)から選択される結合部分を通してポリアルファ-1,6-グルカンに結合する追加の有機基を更に含み得る。
【0052】
本明細書に開示されるポリアルファ-1,6-グルカン誘導体は、親水性基修飾を実質的に含まないことが好ましい場合がある。実質的に含まないとは、典型的には、誘導体が、典型的には意図的には置換されていないことを意味する。しかしながら、例えば、不純物又は疎水性置換反応からの副生成物による非常に少量の置換は許容される。
【0053】
更に、本明細書に開示されるポリアルファ-1,6-グルカン誘導体は、修飾として他の官能基を更に含んでいてもよい。
【0054】
典型的な態様では、少なくとも1つの有機基は、グルカンの骨格上のグルコースモノマーの2、3、及び/若しくは4のグルコース炭素位置において、及び/又は存在する場合、分岐上のグルコースモノマーの2、3、4、若しくは6のグルコース炭素位置において、ポリα-1,6-グルカンを誘導体化することができる。非置換位置では、グルコースモノマー中にヒドロキシル基が存在する。
【0055】
一実施形態では、少なくとも1つの有機基は、C1~C18アルキル、C2~C18アルケニル、C2~C18アルキニル;(-CH2CH2O-)、(-CH2CH(CH3)O-)、(-CH(CH3)CH(CH3)O-)、(-CH2CH(CH2CH3)O-)、若しくはそれらの混合物の繰り返し単位を含むポリエーテルであって、繰り返し単位の総数が2~100の範囲である、ポリエーテル;C6~C20アリール、ベンジル、C1~C18アルキルスルホニル、C6~C20アリールスルホニル、p-トルエンスルホニル基、又はそれらの任意の組み合わせを含む。好適な有機基は、C3~C18アルコキシレートの繰り返し単位を含むポリエーテルである。
【0056】
別の実施形態では、少なくとも1つの有機基は、C1~C18アルキル、ベンジル、p-トルエンスルホニル基、又はそれらの任意の組み合わせを含む。更に別の実施形態では、少なくとも1つの有機基は、ベンジル基を含み、当該ベンジル基は、ハロゲン、シアノ、エステル、アミド、エーテル基、C1~C6アルキル基、アリール基、C2~C6アルケニル基、C2~C6アルキニル基、又はそれらの任意の組み合わせのうちの1つ以上で更に置換される。
【0057】
一実施形態では、少なくとも1つの有機基は、C1~C18アルキル基、ヒドロキシアルキル基、C2~C18アルケニル基、C2~C18アルキニル基、ベンジル基、C6~C20アリール基;(-CH2CH2O-)、(-CH2CH(CH3)O-)、(-CH(CH3)CH(CH3)O-)、(-CH2CH(CH2CH3)O-)、若しくはそれらの混合物の繰り返し単位を含むポリエーテルであって、当該繰り返し単位の総数が、2~100の範囲である、ポリエーテル;又はそれらの任意の組み合わせを含む。別の実施形態では、少なくとも1つの有機基は、C1~C10アルキル基、C1~C10ヒドロキシルアルキル基;(-CH2CH2O-)、(-CH2CH(CH3)O-)、(-CH(CH3)CH(CH3)O-)、(-CH2CH(CH2CH3)O-)、若しくはそれらの混合物の繰り返し単位を含むポリエーテルであって、当該繰り返し単位の総数が、2~100の範囲である、ポリエーテル;又はそれらの任意の組み合わせを含む。追加の実施形態では、少なくとも1つの有機基は、任意にアルキル基で置換されるC6~C20アリール基を含む。更なる実施形態では、アリール基は、トリル基である。
【0058】
本明細書に開示されるポリアルファ-1,6-グルカン誘導体は、親水性基修飾を実質的に含まないことが好ましい場合がある。本明細書では、親水性基は、典型的には、カルボン酸、カルボン酸塩、スルホン酸誘導体、スルホン酸誘導体塩、硫酸誘導体、硫酸誘導体塩、チオサルフェート、チオサルフェート塩、リン酸誘導体、リン酸誘導体塩、アルキルアミン、アルキル置換アンモニウム塩、四級化ピリジン塩、四級化イミダゾール塩、又はそれらの任意の組み合わせから選択される。親水性基は、カルボン酸、アルキル置換アンモニウム塩、スルホネート、アルキルスルホネート、サルフェート、チオサルフェート、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0059】
本明細書に開示されるポリα-1,6-グルカン誘導体は、有機基置換基を含み、水への溶解性の特徴によって対象となり、置換基の適切な選択及び置換度によって変化させることができる。ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体を含む組成物は、洗濯及び食器用途を含む広範囲にわたる用途において有用であり得る。0.1重量パーセント(重量%)超の水溶解度を有するポリα-1,6-グルカン誘導体は、生成物が主に水ベースの製剤中にあり、光学的透明性が望まれる組成物におけるレオロジー調整剤、エマルジョン安定剤、及び分散剤として有用であり得る。0.1重量%未満の水溶解度を有するポリα-1,6-グルカン誘導体は、生成物が、典型的には、ポリα-1,6-グルカン誘導体を可溶化又は分散させるために有機溶媒を含有する製剤中にある洗濯及び食器用途におけるレオロジー調整剤、エマルジョン安定剤、及び分散剤として有用であり得る。組成物の一実施形態では、ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体は、約0.001~3.00、又は0.01~2.50、又は0.1~2.00、又は0.1~約1.50のDoS、及び25℃の脱イオン水において0.1重量%以上の溶解度を有する。組成物の別の実施形態では、ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体は、約0.001~約2.00のDoS、及び25℃のpH7の水において0.1重量%未満の溶解度を有する。
【0060】
ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体を含む組成物は、上記の用途において持続可能な材料であり得る。更に、生分解性α-1,6-グルカン誘導体は、環境フットプリントの観点から非生分解性材料よりも好ましい。材料の生分解性は、例えば、以下の本明細書における実施例のセクションに開示されるように、当該技術分野において既知の方法によって評価することができる。一実施形態では、ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体は、OECD 301B易生分解性CO2発生試験法によって求めたとき、90日目の試験期間において少なくとも10%の生分解性を有する。別の実施形態では、ポリα-1,6-グルカン誘導体は、OECD 301B易生分解性発生試験法によって求めたとき、90日目の試験期間において少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、若しくは80%、又は5%~80%の任意の値の生分解性を有する。更に別の実施形態では、ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体は、OECD 301B易生分解性CO2発生試験法によって求めたとき、60日目の試験期間において少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、若しくは60%、又は5%~60%の任意の値の生分解性を有する。
【0061】
本明細書に開示されるポリアルファ-1,6-グルカン誘導体は、所望の程度の以下の物理的特性のうちの1つ以上を製品にもたらす量で、パーソナルケア製品、医薬品、家庭用製品、又は工業製品に含まれ得る:例えば、増粘、凍結/解凍安定性、潤滑性、水分の保持及び放出、質感、稠度、形状保持、乳化、結合、懸濁、分散、及びゲル化。製品中の本明細書に開示されるポリアルファ-1,6-グルカン誘導体の濃度又は量の例は、重量基準で、例えば、約0.1~3重量%、1~2重量%、1.5~2.5重量%、2.0重量%、0.1~4重量%、0.1~5重量%、又は0.1~10重量%であり得る。
【0062】
用語「ポリα-1,6-グルカン」及び「デキストラン」は、本明細書において互換的に使用される。デキストランは、周期的側鎖(分岐)がα-1,3-結合(Ioan et al.,Macromolecules 33:5730-5739)及び/又はα-1,2-結合によって直鎖に結合している、概してα-1,6-結合グルコースモノマーの鎖を含む複雑な分岐αグルカンのファミリーを表す。本明細書におけるポリアルファ-1,6-グルカン誘導体を生成するためのデキストランの生成は、例えば、スクロースを細菌(例えば、ロイコノストック属(Leuconostoc)又はストレプトコッカス属(Streptococcus)の種)で発酵させることを通して行うことができ、この場合、スクロースは、デキストラン重合のためのグルコース源として機能する(Naessens et al.,J.Chem.Technol.Biotechnol.80:845~860;Sarwat et al.,Int.J.Biol.Sci.4:379~386;Onilude et al.,Int.Food Res.J.20:1645~1651)。あるいは、ポリα-1,6-グルカンは、いずれも参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2015/183714号及び同第2017/091533号に記載されているように、GTF1729、GTF1428、GTF5604、GTF6831、GTF8845、GTF0088、及びGTF8117など(であるが、これらに限定されない)のグルコシルトランスフェラーゼ(デキストラン分解酵素)を使用して調製することもできる。
【0063】
いくつかの実施形態では、ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体は、グルコースモノマー単位の40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%以上、又は100%が、アルファ-1,6-グリコシド結合を介して結合しているグルコースモノマー単位の骨格を含む。ポリα-1,6-グルカン誘導体の骨格は、例えば、α-1,2、α-1,3、及び/又はα-1,4グリコシド結合を介して結合している、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、又は60%のグルコースモノマー単位を含み得る。いくつかの態様では、ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体は、直鎖状(非分岐)の骨格を含む。
【0064】
本明細書におけるデキストラン「長鎖」は、「実質的に(又は大部分が)α-1,6-グルコシド結合」を含み得、これは、いくつかの態様では、少なくとも約98.0%のα-1,6-グルコシド結合を有し得ることを意味する。本明細書におけるデキストランは、いくつかの態様では、「分岐構造」(樹状などの分岐した構造)を含み得る。この構造では、高い可能性で反復的に、長鎖が他の長鎖から分岐している(例えば、長鎖は、別の長鎖からの分岐であってよく、これ自体も別の長鎖からの分岐であってよいなど)と考えられる。この構造中の長鎖は、「類似の長さ」であり得ると考えられ、これは、分岐構造中の全ての長鎖の少なくとも70%の長さ(DP[重合度])が、分岐構造の全ての長鎖の平均長さプラスマイナス30%以内であることを意味する。
【0065】
いくつかの実施形態では、デキストランはまた、典型的には、1~3グルコースモノマー長であり、典型的には、デキストランポリマーの全てのグルコースモノマーの約10%未満を構成する、長鎖から分岐している「短鎖」も含み得る。このような短鎖は、典型的には、α-1,2-、α-1,3-、及び/又はα-1,4-グルコシド結合を含む(いくつかの態様では、長鎖中に低い割合のこのような非α-1,6結合が存在し得ることが理解される)。特定の実施形態では、分岐を有するポリ-1,6-グルカンは、国際公開第2015/183714号及び同第2017/091533号(いずれも参照により本明細書に組み込まれる)の手順に従って酵素的に生成され、この場合、例えば、GTFJ18T1又はGTF9905などのα-1,2-分枝酵素を、デキストランポリマー(多糖)の生成中又は生成後に添加してよい。いくつかの実施形態では、α-1,2-分岐を生成することが知られている任意の他の酵素を添加してもよい。α-1,3-分岐を有するポリ-1,6-グルカンは、参照により本明細書に組み込まれるVuillemin et al..(2016、J.Biol Chem.291:7687-7702)又は米国特許出願第62/871,796号に開示されるように調製することができる。そのような実施形態における分岐度のポリα-1,6-グルカン又はポリα-1,6-グルカン誘導体は、50%、40%、30%、20%、10%、又は5%以下(又は5%~50%の任意の整数値)の短分岐、例えば、α-1,2-分岐又は1,3-分岐を有する。一実施形態では、ポリα-1,6-グルカン又はポリα-1,6-グルカン誘導体は、50%未満のα-1,2-分岐度を有する。別の実施形態では、ポリアルファ-1,6-グルカン又はポリアルファ-1,6-グルカン誘導体は、少なくとも5%のアルファ-1,2-分岐度を有する。一実施形態では、ポリα-1,6-グルカン誘導体の骨格グルコースモノマー単位の少なくとも約5%は、α-1,2-又はα-1,3-グリコシド結合を介した分岐を有する。一実施形態では、ポリα-1,6-グルカン又はポリα-1,6-グルカン誘導体は、グルコースモノマー単位の40%以上がα-1,6-グリコシド結合を介して結合している、グルコースモノマー単位の骨格を含む。一実施形態では、ポリα-1,6-グルカン誘導体は、グルコースモノマー単位の40%以上がα-1,6-グリコシド結合を介して結合し、グルコースモノマー単位の少なくとも5%がα-1,2又はα-1,3グリコシド結合を介した分岐を有する、グルコースモノマー単位の骨格を含む。一実施形態では、ポリα-1,6-グルカン誘導体は、グルコースモノマー単位の40%以上がα-1,6-グリコシド結合を介して結合し、グルコースモノマー単位の少なくとも5%がα-1,2結合を介した分岐を有する、グルコースモノマー単位の骨格を含む。一実施形態では、ポリα-1,6-グルカン誘導体は、グルコースモノマー単位の40%以上がα-1,6-グリコシド結合を介して結合し、グルコースモノマー単位の少なくとも5%がα-1,3結合を介した分岐を有する、グルコースモノマー単位の骨格を含む。一実施形態では、ポリアルファ-1,6-グルカン又はポリアルファ-1,6-グルカン誘導体は、直鎖状、又は主に直鎖状である。いくつかの態様では、本明細書に開示されるポリアルファ-1,6-グルカン又はその誘導体の骨格グルコースモノマー単位の少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、若しくは90%、少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、若しくは90%、又は約1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、若しくは90%未満は、アルファ-1,2及び/又はアルファ-1,3グリコシド結合を介した分岐を有し得る。いくつかの態様では、本明細書に開示されるアルファ-1,2-及び/若しくはアルファ-1,3-分岐ポリアルファ-1,6-グルカン又はその誘導体の全てのグリコシド結合の少なくとも約1%、2%、2.5%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、若しくは45%、少なくとも約1%、2%、2.5%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、若しくは45%、又は約1%、2%、2.5%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、若しくは45%未満は、アルファ-1,2及び/又はアルファ-1,3グリコシド結合である。α-1,2-分岐又はα-1,3-分岐の量は、実施例に開示されるとおりNMR法によって求めることができる。
【0066】
本明細書に開示されるポリα-1,6-グルカン及びポリα-1,6-グルカン誘導体は、5~4000の範囲の数平均重合度(DPn)又は重量平均重合度(DPw)を有し得る。いくつかの実施形態では、DPn又はDPwは、5~100、5~500、5~1000、5~1500、5~2000、5~2500、5~3000、又は5~4000の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、DPn又はDPwは、50~500、50~1000、50~1500、50~2000、50~3000、又は50~4000の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、DPn又はDPwは、400~4000、400~3000、400~2000、又は400~1000の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、DPn又はDPwは、少なくとも約5、10、25、50、100、250、500、1000、1500、2000、2500、3000、4000、5000、6000、5~100、5~250、5~500、5~1000、5~1500、5~2000、5~2500、5~3000、5~4000、5~5000、5~6000、10~100、10~250、10~500、10~1000、10~1500、10~2000、10~2500、10~3000、10~4000、10~5000、10~6000、25~100、25~250、25~500、25~1000、25~1500、25~2000、25~2500、25~3000、25~4000、25~5000、25~6000、50~100、50~250、50~500、50~1000、50~1500、50~2000、50~2500、50~3000、50~4000、50~5000、50~6000、100~100、100~250、100~500、100~1000、100~1500、100~2000、100~2500、100~3000、100~4000、100~5000、若しくは100~6000、又は約5、10、25、50、100、250、500、1000、1500、2000、2500、3000、4000、5000、6000、5~100、5~250、5~500、5~1000、5~1500、5~2000、5~2500、5~3000、5~4000、5~5000、5~6000、10~100、10~250、10~500、10~1000、10~1500、10~2000、10~2500、10~3000、10~4000、10~5000、10~6000、25~100、25~250、25~500、25~1000、25~1500、25~2000、25~2500、25~3000、25~4000、25~5000、25~6000、50~100、50~250、50~500、50~1000、50~1500、50~2000、50~2500、50~3000、50~4000、50~5000、50~6000、100~100、100~250、100~500、100~1000、100~1500、100~2000、100~2500、100~3000、100~4000、100~5000、若しくは100~6000未満であってよい。
【0067】
ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体は、
(i)グルコースモノマー単位のポリアルファ-1,6-グルカン骨格であって、グルコースモノマー単位の40%以上がアルファ-1,6グリコシド結合を介して結合し、グルコースモノマー単位の0%~30%未満がアルファ-1,3グリコシド結合を介して結合し、任意に、骨格グルコースモノマー単位の少なくとも5%がアルファ-1,2及び/又はアルファ-1,3グリコシド結合を介した分岐を有する、グルコースモノマー単位のポリアルファ-1,6-グルカン骨格と、
(ii)
【0068】
【化11】
結合部分を通して当該ポリアルファ-1,6-グルカン骨格に結合している少なくとも1つの有機基と、
を含み、
当該ポリアルファ-1,6-グルカン骨格が、少なくとも5の重量平均重合度を有し、
当該ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体が、0.001~3.00の
【0069】
【0070】
ポリα-1,6-グルカン誘導体は、多糖骨格及び/又は任意による分岐のうちの1つ以上に、少なくとも1つの有機基で置換されたポリα-1,6-グルカンを含む。骨格に含まれるグルコースモノマーで置換が行われる場合、多糖は、2、3、及び/又は4のグルコース炭素位置において、結合部分を通して多糖に結合する本明細書で定義される有機基で誘導体化される。分岐に含まれるグルコースモノマーで置換が行われる場合、多糖は、2、3、4、又は6のグルコース炭素位置において、結合部分を通して多糖に結合する本明細書で定義される有機基で誘導体化される。有機基は、独立して、誘導体化されていない(置換されていない)ポリアルファ-1,6-グルカン中に元々存在するヒドロキシル基の代わりに、
【0071】
【化13】
結合部分を通してポリアルファ-1,6-グルカンに結合する。
【0072】
結合部分が
【0073】
【0074】
【化15】
-C
R-(式中、「-C
G-」は、ポリα-1,6-グルカンエーテル化合物のグルコースモノマー単位の炭素を表し、「-C
R-」は、有機基に含まれる)を含むことから、ポリα-1,6-グルカン誘導体は、本明細書ではグルカン「カルバメート」化合物と呼ばれる。ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体は、2つの-C
R-を含み得る。一実施形態では、結合部分は、
【0075】
【化16】
であり、ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体は、ポリアルファ-1,6-グルカンカルバメート化合物を含む。ポリアルファ-1,6-グルカン混合カルバメート化合物は、結合部分
【0076】
【0077】
一実施形態では、少なくとも1つの結合部分は
【0078】
【化18】
であり、少なくとも1つの結合部分は-OSO
2-であり、ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体は、カルバメート及びスルホニル置換基の両方を含む。別の実施形態では、少なくとも1つの結合部分は
【0079】
【化19】
であり、少なくとも1つの結合部分は-O-であり、ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体は、カルバメート及びエーテル置換基の両方を含む。別の実施形態では、少なくとも1つの結合部分は
【0080】
【化20】
であり、少なくとも1つの結合部分は-O-であり、ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体は、カルバメート及びエーテル置換基の両方を含む。
【0081】
本明細書に開示される組成物は、本明細書に開示される1つ以上のポリα-1,6-グルカンエーテル誘導体を含んでいてもよく、又はそれから本質的になっていてもよい。一実施形態では、組成物は、1つのポリアルファ-1,6-グルカン誘導体を含み得る。別の実施形態では、組成物は、結合部分が同じであり、有機基が異なる2つ以上のポリアルファ-1,6-グルカン誘導体、又は結合部分(カルバメートと第2の結合基との組み合わせの場合)が異なり、有機基が同じである2つ以上の誘導体を含み得る。組成物はまた、結合部分及び有機基の両方が異なる2つ以上の誘導体を含んでいてもよい。
【0082】
本明細書で使用するとき、「置換度」(DoS)という用語は、骨格内、及び存在し得る任意のα-1,2又はα-1,3分岐内にモノマー単位を含む、ポリα-1,6-グルカン誘導体の各モノマー単位(グルコース)における置換されたヒドロキシル基の平均数を指す。ポリα-1,6-グルカンポリマーにおけるグルコースモノマー単位には最大3個のヒドロキシル基が存在するので、本明細書におけるポリα-1,6-グルカン誘導体は、3.00以下の全体置換度を有し得る。本明細書に開示されるポリα-1,6-グルカン誘導体は約0.01~約3.00の置換度を有し得るので、多糖における置換基はヒドロキシルのみではあり得ないことが当業者には理解されるであろう。ポリα-1,6-グルカン誘導体の置換度は、特定の置換基に関して、又は全体置換度、すなわち、本明細書で定義されるグルカン誘導体の各異なる置換基のDoSの合計に関して記述することができる。本明細書で使用するとき、置換度が特定の置換基又は置換基の種類に関して記述されていない場合、ポリα-1,6-グルカン誘導体の全体置換度を意味する。目標DoSは、対象となる特定の用途においてポリα-1,6-グルカン誘導体を含む組成物の所望の溶解度及び性能を提供するように選択することができる。
【0083】
本明細書に開示されるポリアルファ-1,6-グルカン誘導体は、約0.001~約3.00、例えば約0.001~約2.50、又は例えば約0.01~約2.00、又は例えば約0.10~約1.50、又は例えば約0.20~1.40、又は例えば0.20~1.30、又は例えば0.20~1.20、又は例えば0.20~1.00、約0.20~約0.80、又は例えば約0.20~約0.60、又は例えば約0.20~約0.40の範囲のDoSを有する。ポリα-1,6-グルカン誘導体の置換度は、特定の置換基に関して、又は全体置換度、すなわち、本明細書で定義されるグルカン誘導体の各異なる置換基のDoSの合計に関して記述することができる。本明細書で使用するとき、置換度が特定の置換基の種類に関して記述されていない場合、ポリα-1,6-グルカン誘導体の全体置換度を意味する。
【0084】
本明細書に開示されるポリアルファ-1,6-グルカン誘導体のカルバメート結合部分のDoSは、0.001~3.00、若しくは0.01~2.50、若しくは0.1~2.00、若しくは0.20~1.00、又は約0.20~約1.00、例えば約0.20~約0.80、若しくは例えば約0.20~約0.60、若しくは例えば約0.20~約0.40、若しくは例えば約0.50~0.60の範囲である。
【0085】
本明細書に開示されるポリアルファ-1,6-グルカン誘導体の一実施形態では、少なくとも1つの有機基は、C1~C18アルキル基、ヒドロキシアルキル基、C2~C18アルケニル基、C2~C18アルキニル基、ベンジル基、C6~C20アリール基;(-CH2CH2O-)、(-CH2CH(CH3)O-)、(-CH(CH3)CH(CH3)O-)、(-CH2CH(CH2CH3)O-)、若しくはそれらの混合物の繰り返し単位を含むポリエーテルであって、当該繰り返し単位の総数が、2~100の範囲である、ポリエーテル;又はそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0086】
本明細書で使用するとき、用語「アルキル基」は、不飽和を含有しない直鎖、分岐鎖、又は環状(「シクロアルキル」又は「脂環式」)炭化水素基を指す。アルキル基は、例えば、別のアルキル基で、又は少なくとも1つのヒドロキシアルキル基若しくはジヒドロキシアルキル基で置換され得る。一実施形態では、有機基は、C1~C18アルキル基、例えばC4~C18アルキル基、又は例えばC1~C10アルキル基である。アルキル基は、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデカニル、テトラデカニル、ペンタデカニル、ヘキサデカニル、ヘプタデカニル、又はオクタデカニル基であってよい。アルキル基の1つ以上の炭素を別のアルキル基で置換して、アルキル基を分岐させることもできる。直鎖アルキル基の分岐鎖異性体の例としては、イソプロピル、イソ-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、イソヘキシル、ネオヘキシル、2-エチルヘキシル、2-プロピルヘプチル、及びイソオクチルが挙げられる。一実施形態では、有機基は、メチル基である。一実施形態では、有機基は、エチル基である。一実施形態では、有機基は、プロピル基である。
【0087】
アルキル基の1つ以上の炭素が、少なくとも1つのヒドロキシアルキル基で置換されてもよい。好適なヒドロキシアルキル基は、ヒドロキシメチル(-CH2OH)、ヒドロキシエチル(例えば、-CH2CH2OH、-CH(OH)CH3)、ヒドロキシプロピル(例えば、-CH2CH2CH2OH、-CH2CH(OH)CH3、-CH(OH)CH2CH3)、ヒドロキシブチル、及びヒドロキシペンチル基である。他の例としては、ジヒドロキシメチル、ジヒドロキシエチル、ジヒドロキシプロピル、ジヒドロキシブチル、及びジヒドロキシペンチルなどのジヒドロキシアルキル基(ジオール)が挙げられる。別の実施形態では、アルキル基は、シクロアルキル基であり、シクロアルキル基は、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、又はシクロデシル基であり得る。一実施形態では、シクロアルキル基は、C5~C10シクロアルキル基である。一実施形態では、有機基は、ヒドロキシアルキル基である。
【0088】
特定の実施形態でのアルキル基における置換は、アルキル基の末端炭素原子に結合してもよく、当該末端炭素基は、エーテル、スルホニル、カーボネート、又はカルバメート部分に結合している炭素原子とは反対側にあり、これは、次いで、グルカンポリマーの酸素に結合する。この末端置換の例は、ヒドロキシプロピル基-CH2CH2CH2OHにある。あるいは、アルキル基の内部炭素原子において置換されてもよい。内部置換の例は、ヒドロキシプロピル基-CH2CH(OH)CH3にある。
【0089】
別の実施形態では、アルキル基は、炭化水素鎖内に酸素、硫黄、及び/又は窒素などの1つ以上のヘテロ原子を含有し得る。別の実施形態では、アルキル基は、炭化水素鎖内に酸素及び/又は硫黄などの1つ以上のヘテロ原子を含有し得る。例としては、アルキルグリセロールアルコキシレート部分(-アルキレン-OCH2CH(OH)CH2OH)を含有するアルキル基、2-エチルヘキシルグリシジルエーテルの開環から誘導される部分、及び例えばジヒドロピランから誘導されるようなテトラヒドロピラニル基が挙げられる。ジヒドロピランあるいはジヒドロフランで調製された誘導体は、ポリグルカン骨格とのアセタール結合をもたらす。アセタール結合は、R2C(OR’)2)(式中、R’は、ジヒドロピラン又はジヒドロフランの環状環において互いに結合される)によって表される。
【0090】
別の実施形態では、有機基はC2~C18アルケニル基であり、アルケニル基は、直鎖、分岐鎖、又は環状であり得る。本明細書で使用するとき、用語「アルケニル基」は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含有する炭化水素基を指す。アルケニル基の例としては、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキシル、及びアリル基が挙げられる。他の実施形態では、アルケニル基の1つ以上の炭素は、アルキル基、又はヒドロキシアルキル若しくはジヒドロキシアルキル基による置換を有し得る。そのような置換基アルキル基の例としては、メチル、エチル、及びプロピル基が挙げられる。一実施形態では、アルケニル基は、C4~C18アルケン基である。
【0091】
任意に、アルケニル基は、炭化水素鎖内に酸素、硫黄、及び/又は窒素などの1つ以上のヘテロ原子を含有することができ、例えば、アルケニル基は、アリルグリシジルエーテルの開環から誘導された部分を含有し得る。
【0092】
別の実施形態では、有機基はC2~C18アルキニル基である。本明細書で使用するとき、用語「アルキニル」は、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含有する直鎖及び分岐鎖炭化水素基を指す。アルキニル基は、例えば、プロピン、ブチン、ペンチン、又はヘキシンであり得る。アルキニル基は、例えば、アルキル、ヒドロキシアルキル、又はジヒドロキシアルキル基で置換され得る。任意に、アルキニル基は、炭化水素鎖内に酸素、硫黄、及び/又は窒素などの1つ以上のヘテロ原子を含有し得る。
【0093】
別の実施形態では、有機基は、(-CH2CH2O-)、(-CH2CH(CH3)O-)、(-CH(CH3)CH(CH3)O-)、(-CH2CH(CH2CH3)O-)、若しくはそれらの混合物の繰り返し単位を含むポリエーテルであって、当該繰り返し単位の総数が、2~100の範囲である、ポリエーテルである。一実施形態では、有機基は、(-CH2CH2O-)4-100を含むポリエーテル基である。別の実施形態では、有機基は、(-CH2CH(CH3)O-)4-100を含むポリエーテル基である。別の実施形態では、有機基は、(-CH2CH(CH2CH3)O-)2-100を含むポリエーテル基である。別の実施形態では、有機基は、(-CH(CH3CH(CH3)O-)2-100を含むポリエーテル基である。本明細書で使用するとき、値の範囲を指定する添字は、繰り返し単位の可能な数を指定するために使用され、例えば、(CH2CH2O)2-100は、2~100個の範囲の繰り返し単位を含有するポリエーテル基を意味する。いくつかの態様では、本明細書におけるポリエーテル基は、メトキシ、エトキシ、又はプロポキシ基などで保護されてもよい。
【0094】
別の実施形態では、有機基は、アリール基である。本明細書で使用するとき、用語「アリール」は、単一の環(例えば、フェニル)、複数の環(例えば、ビフェニル)、又は少なくとも1つが芳香族である複数の縮合環(例えば、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル、ナフチル、アントリル、又はフェナントリル)を有する芳香族/炭素環式基を意味し、これは、任意に、メチル、エチル、又はプロピル基などのアルキル基で一置換、二置換、又は三置換される。一実施形態では、アリール基は、C6~C20アリール基である。別の実施形態では、アリール基は、メチル置換アリール基、例えば、トリル(-C6H4CH3)又はキシリル[-C6H3(CH3)2]基である。更なる実施形態では、トリル基は、p-トリル基である。更に別の実施形態では、アリール基は、ベンジル基(-CH2-C6H5)である。ベンジル基は、任意に、ハロゲン、シアノ、エステル、アミド、エーテル基、C1~C6アルキル基、アリール基、C2~C6アルケン基、C2~C6アルキン基、又はそれらの任意の組み合わせのうちの1つ以上で更に置換されてもよい。追加の実施形態では、アリール基は、フェニル基である。
【0095】
一実施形態では、ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体は、約0.001~約2.00のカルバメート結合部分のDoSを有し、少なくとも1つの結合部分は、
【0096】
【化21】
であり、少なくとも1つの有機基は、メチル、エチル、フェニル、ベンジル、又はp-トリル基である。別の実施形態では、ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体は、約0.01~約1.50のカルバメート結合部分のDoSを有し、少なくとも1つの結合部分は、
【0097】
【化22】
であり、少なくとも1つの有機基は、メチル、エチル、フェニル、ベンジル、又はp-トリル基である。更なる実施形態では、ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体は、約0.01~約1.00のカルバメート結合部分のDoSを有し、少なくとも1つの結合部分は、
【0098】
【化23】
であり、少なくとも1つの有機基は、メチル、エチル、フェニル、ベンジル、又はp-トリル基である。更に別の実施形態では、ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体は、約0.1~約0.80のカルバメート結合部分のDoSを有し、少なくとも1つの結合部分は、
【0099】
【化24】
であり、少なくとも1つの有機基は、メチル、エチル、フェニル、ベンジル、又はp-トリル基である。
【0100】
一実施形態では、ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体は、約0.001~約3.00のDoSを有し、少なくとも1つの結合部分は、
【0101】
【化25】
であり、少なくとも1つの結合部分は、-OSO
2-であり、少なくとも1つの有機基は、メチル、エチル、フェニル、ベンジル、又はp-トリル基である。別の実施形態では、ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体は、約0.001~約3.00のDoSを有し、少なくとも1つの結合部分は、
【0102】
【化26】
であり、少なくとも1つの結合部分は、-OSO
2-であり、少なくとも1つの有機基は、メチル、エチル、フェニル、ベンジル、又はp-トリル基である。更なる実施形態では、ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体は、約0.001~約3.00のDoSを有し、少なくとも1つの結合部分は、
【0103】
【化27】
であり、少なくとも1つの結合部分は、-OSO
2-であり、少なくとも1つの有機基は、メチル、エチル、フェニル、ベンジル、又はp-トリル基である。更に別の実施形態では、ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体は、約0.001~約3.00のDoSを有し、少なくとも1つの結合部分は、
【0104】
【化28】
であり、少なくとも1つの結合部分は、-OSO
2-であり、少なくとも1つの有機基は、メチル、エチル、フェニル、ベンジル、又はp-トリル基である。
【0105】
ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体の一実施形態では、結合部分は、
【0106】
【化29】
であり、カルバメート結合部分のDoSは、0.001~3.00であり、少なくとも1つの有機基は、C
1~C
18アルキル基、ヒドロキシアルキル基、C
2~C
18アルケニル基、C
2~C
18アルキニル基、ベンジル基、C
6~C
20アリール基;(-CH
2CH
2O-)、(-CH
2CH(CH
3)O-)、(-CH(CH
3)CH(CH
3)O-)、(-CH
2CH(CH
2CH
3)O-)、若しくはそれらの混合物の繰り返し単位を含むポリエーテルであって、当該繰り返し単位の総数が、2~100の範囲である、ポリエーテル;又はそれらの任意の組み合わせを含む。別の実施形態では、結合部分は、-O-であり、Dosは、0.20~1.00であり、少なくとも1つの有機基は、C
1~C
10アルキル基、C
1~C
10ヒドロキシルアルキル基;(-CH
2CH
2O-)、(-CH
2CH(CH
3)O-)、(-CH(CH
3)CH(CH
3)O-)、(-CH
2CH(CH
2CH
3)O-)、若しくはそれらの混合物の繰り返し単位を含むポリエーテルであって、当該繰り返し単位の総数が、2~100の範囲である、ポリエーテル;又はそれらの任意の組み合わせを含む。追加の実施形態では、結合部分は、
【0107】
【化30】
であり、カルバメート結合部分のDosは、0.20~1.00であり、少なくとも1つの有機基は、ベンジル基、又はハロゲン、シアノ、エステル、アミド、エーテル基、C
1~C
6アルキル基、アリール基、C
2~C
6アルケン基、C
2~C
6アルキン基、若しくはそれらの任意の組み合わせのうちの1つ以上で置換されたベンジル基を含む。更なる実施形態では、結合部分は、
【0108】
【化31】
であり、カルバメート結合部分のDosは、0.001~3.00であり、少なくとも1つの有機基は、C
1~C
10アルキル基、C
1~C
10ヒドロキシルアルキル基;(-CH
2CH
2O-)、(-CH
2CH(CH
3)O-)、(-CH(CH
3)CH(CH
3)O-)、(-CH
2CH(CH
2CH
3)O-)、若しくはそれらの混合物の繰り返し単位を含むポリエーテルであって、当該繰り返し単位の総数が、2~100の範囲である、ポリエーテル;ベンジル基、又はそれらの任意の組み合わせを含む。更に別の実施形態では、結合部分は、
【0109】
【化32】
であり、カルバメート結合部分のDoSは、0.001~3.00であり、少なくとも1つの有機基は、任意にアルキル基で置換されるC
6~C
20アリール基を含む。
【0110】
ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体の一実施形態では、結合部分は、-OCONH-であり、DoSは、約0.001~約1.5であり、少なくとも1つの有機基は、C1~C18アルキル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、C2~C18アルケニル基、C2~C18アルキニル基、ベンジル基、C6~C20アリール基;(-CH2CH2O-)及び/又は(-CH2CH(CH3)O-)の繰り返し単位を含むポリエーテルであって、当該繰り返し単位の総数が、3~100の範囲である、ポリエーテル;又はそれらの組み合わせを含む。別の実施形態では、結合部分は、-OCONH-であり、Dosは、約0.001~約1.5であり、少なくとも1つの有機基は、C1~C10アルキル基、C1~C10ヒドロキシルアルキル基;(-CH2CH2O-)及び/又は(-CH2CH(CH3)O-)の繰り返し単位を含むポリエーテルであって、当該繰り返し単位の総数が、3~100の範囲である、ポリエーテル;又はそれらの組み合わせを含む。追加の実施形態では、結合部分は、-OCONH-であり、Dosは、約0.001~約1.5であり、少なくとも1つの有機基は、ベンジル基、又はハロゲン、シアノ、エステル、アミド、エーテル基、C1~C6アルキル基、アリール基、C2~C6アルケン基、C2~C6アルキン基、若しくはそれらの組み合わせのうちの1つ以上で置換されたベンジル基を含む。更なる実施形態では、結合部分は、-OCONH-であり、Dosは、約0.001~約1.5であり、少なくとも1つの有機基は、C1~C10アルキル基、C1-C10ヒドロキシルアルキル基;(-CH2CH2O-)及び/又は(-CH2CH(CH3)O-)の繰り返し単位を含むポリエーテルであって、当該繰り返し単位の総数が、3~100の範囲である、ポリエーテル;ベンジル基、又はそれらの組み合わせを含む。更に別の実施形態では、結合部分は、-OCONH-であり、DoSは、約0.001~約1.5であり、少なくとも1つの有機基は、任意にアルキル基で置換されるC6~C20アリール基を含む。
【0111】
ポリアルファ-1,6-グルカンは、多糖を、所望の有機基を含むモノイソシアネートと接触させることによって、グルカンカルバメート化合物に誘導体化することができる。例えば、多糖は、まず多糖を溶媒で溶解又は懸濁させ、次いで、モノイソシアネートを添加し、混合物を一定期間にわたって30~100℃に加熱することによって修飾することができる。DMSO、DMF、又はDMAcなどの非プロトン性溶媒を使用することができる。多糖対溶媒の重量比は、5:1~30:1、例えば10:1~20:1の範囲であり得る。モノイソシアネートは、25℃から系の沸騰温度までの範囲の温度、例えば、40~80℃の範囲の温度で添加してよい。モノイソシアネート対多糖のモル比は、所望の最終置換度に応じて、0.1:1~4.0:1の範囲であり得る。モノイソシアネートの添加後、0.1~24時間、例えば0.5~4時間、混合物の適正温度を保持することができる。誘導体化された多糖は、反応器の内容物を撹拌された水、メタノール、イソプロパノール、エタノール、アセトン、又はそれらの混合物に、2~8リットル対1キログラムの体積対重量比、例えば、体積対重量比4で注ぐことによって沈殿させることができる。沈殿した多糖誘導体を濾過し、乾燥させてよい。
【0112】
一実施形態では、多糖誘導体は、脂肪族、脂環式、又は芳香族モノイソシアネートに由来する少なくとも1つのカルバメート置換基を含有する。多糖誘導体の少なくとも1つのカルバメート置換基は、芳香族モノイソシアネート、例えば、フェニル、ベンジル、ジフェニルメチル、又はジフェニルエチルイソシアネートに由来し得、有機基は、それぞれ、フェニル、ベンジル、ジフェニルメチル、又はジフェニルエチルに対応する。一実施形態では、少なくとも1つのカルバメート置換基は、フェニルカルバメート基であり、有機基は、フェニルである。別の実施形態では、多糖誘導体の少なくとも1つのカルバメート置換基は、脂肪族モノイソシアネート、例えば、エチル、プロピル、ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、又はオクタデシルイソシアネートに由来し得、有機基は、それぞれ、エチル、プロピル、ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、又はオクタデシル基に対応する。更なる実施形態では、多糖誘導体の少なくとも1つのカルバメート置換基は、脂環式モノイソシアネート、例えば、シクロヘキシル、シクロヘプチル、又はシクロドデシルイソシアネートに由来し得、有機基は、それぞれ、シクロヘキシル、シクロヘプチル、又はシクロドデシル基に対応する。有用なモノイソシアネートは、市販されている。
【0113】
本明細書に開示される反応で生成されるポリα-1,6-グルカン誘導体は、任意に、化合物が容易には溶解しない液体で1回以上洗浄してもよい。例えば、ポリα-1,6-グルカンは、エーテル化合物の溶解度に応じて(洗浄のためには不溶性であることが望ましい)、水、アルコール、アセトン、芳香族、又はこれらの任意の組み合わせで洗浄することができる。概して、アルコールなどの有機溶媒を含む溶媒が洗浄に好ましい。ポリグルカン生成物は、例えば、メタノール又はエタノールを含有する水溶液で1回以上洗浄してよい。例えば、70~95重量%のエタノールを使用して、生成物を洗浄することができる。ポリグルカン生成物は、別の実施形態では、メタノール:アセトン(例えば、60:40)溶液で洗浄してよい。アルキルポリアルファ-1,6-グルカンエーテル(例えば、エチルポリアルファ-1,6-グルカン)及びアルキルヒドロキシアルキルポリアルファ-1,6-グルカンエーテル(例えば、エチルヒドロキシエチルポリアルファ-1,6-グルカン)を洗浄するためなどの特定の実施形態では、熱水(約95~100℃)を使用してもよい。
【0114】
ポリアルファ-1,6-グルカンは、1つ以上のベンジル基で修飾されてもよい。ポリグルカンは、塩基、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、水素化ナトリウムを使用してヒドロキシル基のうちの1つ以上を脱プロトン化し、続いて、ベンジル化剤、例えば、ハロゲン化ベンジルで処理することによってベンジル化することができる。ベンジル化剤のベンジル基は、任意に、ハロゲン、シアノ、エステル、アミド、エーテル基、C1~C6アルキル基、アリール基、C2~C6アルケン基、C2~C6アルキン基、又はそれらの任意の組み合わせのうちの1つ以上によって置換されてもよい。いくつかの実施形態では、ベンジル化剤は、以下の構造によって表すことができる:
【0115】
【化33】
(式中、LGは、脱離基、例えば、クロライド、ブロマイド、ヨーダイドであり、R
3は、ハロゲン、シアノ、エステル、アミド、エーテル、C
1~C
6アルキル、アリール、C
2~C
6アルケン、C
2~C
6アルキンであり、nは、1、2、3、4、又は5である)。ハロゲンは、フルオライド、クロライド、ブロマイド、又はヨーダイドであってよい。エステルは、ベンジル-C(O)O-R
1であってもよく、又はエステルは、ベンジル-OC(O)-R
1(式中、R
1基は、C
1~C
6アルキル基又はアリール基である)であってもよい。エーテルは、C
1~C
6アルキルエーテル又はアリールエーテルであってよい。アミドは、ベンジル-C(O)N(R
2)
2又はベンジル-N(R
2)(O)C-(式中、各R
2は、独立して、水素又はC
1~C
6アルキルである)であってよい。上記例の各々において、「ベンジル」という用語は、ベンジル化剤を指す。
【0116】
脱プロトン化は、塩基及び水性溶媒、塩基及び有機溶媒、又は塩基及び水性溶媒と有機溶媒との混合物の存在下で行うことができる。好適な有機溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ピリジン、1-メチル-2-ピロリジノン、又はそれらの任意の組み合わせを挙げることができる。いくつかの実施形態では、ポリグルカンは、塩基と溶媒との混合物に添加してよい。任意に、混合物を加熱してもよい。次いで、ベンジル化剤、例えば、塩化ベンジルを添加してよい。水性系では、ベンジル化度が増加するにつれて、ベンジルポリグルカンが溶液から沈殿し、これを濾過によって除去することができる。有機溶媒を利用するか、又は温度若しくは濃度を変化させることによって、置換度を0.40超に増加させることができる。ベンジルポリグルカンは、既知の技術を使用して単離することができる。
【0117】
更なる修飾のために出発物質としてポリα-1,6-グルカンを使用して、上記置換反応のいずれかを繰り返してもよい。このアプローチは、有機基のDoSを増加させるのに、及び/又は1つ以上の異なる有機基若しくはスルホニル基をエーテル化合物に付加するのに好適であり得る。例えば、ベンジルポリアルファ-1,6-グルカンエーテル生成物は、カルボキシメチル基で更に修飾するための基質として使用することができる。ポリアルファ-1,6-グルカンメチルエーテルは、ベンジルエーテル基で更に修飾するための基質として使用することができる。
【0118】
所望の用途に応じて、本明細書に開示されるポリアルファ-1,6-グルカン誘導体を含む組成物に、様々な組成物、例えば、洗濯ケア又は食器ケア製品で使用するための組成物で使用するのに好適な1つ以上の他の材料及び/又は活性成分を製剤する、例えば、ブレンドする、混合する、又は組み込むことができる。この文脈における「ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体を含む組成物」という用語は、例えば、本明細書に開示されるポリアルファ-1,6-グルカン誘導体を各々含む水性製剤、レオロジー調整組成物、布地処理/ケア組成物、洗濯ケア製剤/組成物、布地柔軟剤、及び食器ケア組成物を含み得る。
【0119】
本明細書で使用するとき、用語「有効量」は、所望の効果を達成するのに好適な、使用又は投与される物質の量を指す。物質の有効量は、用途に応じて変化し得る。当業者は、典型的には、取り消し(undo)実験を行うことなく、特定の用途又は対象ごとに有効量を求めることができるであろう。
【0120】
用語「酵素加水分解に対する耐性」は、ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体の酵素加水分解に対する相対的安定性を指す。加水分解に対する耐性を有することは、洗剤、布地ケア、及び/又は洗濯ケア用途などの酵素が存在する用途におけるこれらの物質の使用にとって重要である。いくつかの実施形態では、多糖誘導体は、セルラーゼに対して耐性である。他の実施形態では、多糖誘導体は、プロテアーゼに対して耐性である。また更なる実施形態では、多糖誘導体は、アミラーゼに対して耐性である。更に他の実施形態では、多糖誘導体は、リパーゼに対して耐性である。更に他の実施形態では、多糖誘導体は、マンナナーゼに対して耐性である。他の実施形態では、多糖誘導体は、複数のクラスの酵素、例えば、2つ以上のセルラーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、マンナナーゼ、又はこれらの組み合わせに対して耐性である。任意の特定の酵素に対する耐性は、対応する酵素による処理後に、物質の少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、95又は100%が残存するものとして定義される。残存率は、SEC-HPLCを使用して酵素処理後の上清を測定することによって求めることができる。酵素耐性を測定するためのアッセイは、以下の手順を使用して決定することができる:ポリアルファ-1,6-グルカンのサンプルをバイアル内の水に添加し、PTFE磁気撹拌子を使用して混合して、1重量パーセント水溶液を作製する。pH7.0及び20℃で水性混合物を生成する。そのポリアルファ-1,6-グルカン誘導体が完全に溶解した後、1.0ミリリットル(mL)(酵素製剤の1重量パーセント)のセルラーゼ(Puradex(登録商標)EGL)、アミラーゼ(Purastar(登録商標)ST L)プロテアーゼ(Savinase(登録商標)16.0L)、又はリパーゼ(Lipex(登録商標)100L)を添加し、20℃で72時間(h)混合する。72時間撹拌した後、反応混合物を10分間で70℃に加熱して、添加した酵素を不活化し、得られた混合物を室温まで冷却し、遠心分離して任意の沈殿物を除去する。回収したポリアルファ-1,6-グルカン誘導体についてSEC-HPLCにより上清を分析し、反応混合物に酵素を添加しなかった対照と比較する。その対応するポリアルファ-1,6-グルカン誘導体の面積カウントの変化パーセントを使用して、対応する酵素処理に対する物質の相対的耐性を試験することができる。合計に対する面積の変化パーセントを使用して、特定の酵素で処理した後に残存する材料の相対量を評価する。少なくとも10%、好ましくは少なくとも50、60、70、80、90、95、又は100%の回収パーセントを有する材料は、対応する酵素処理に対して「耐性」であるとみなされる。
【0121】
本明細書における「水性組成物」という語句は、溶媒が少なくとも約1重量%の水であり、ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体を含む、溶液又は混合物を指す。
【0122】
用語「ヒドロコロイド」及び「ヒドロゲル」は、本明細書において互換的に使用される。ヒドロコロイドとは、水が分散媒体であるコロイド系を指す。本明細書において、「コロイド」は、別の物質全体に微視的に分散している物質を指す。したがって、本明細書におけるヒドロコロイドはまた、水又は水溶液中のポリアルファ-1,6-グルカン誘導体の分散体、エマルジョン、混合物、又は溶液を指すこともある。
【0123】
本明細書における用語「水溶液」は、溶媒が水である溶液を指す。ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体は、水溶液中に分散、混合、及び/又は溶解することができる。水溶液は、本明細書のヒドロコロイドの分散媒体として機能することができる。
【0124】
用語「分散化剤」及び「分散剤」は、本明細書において互換的に使用され、ある物質の別の物質中の分散体の形成及び安定化を促進する物質を指す。本明細書における「分散体」とは、水性組成物全体にわたって散在又は均一に分布している1つ以上の粒子、例えば、家庭用製品の任意の成分を含む水性組成物を指す。ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体は、本明細書に開示される水性組成物中で分散剤として作用し得ると考えられる。
【0125】
本明細書で使用するとき、用語「粘度」は、流体又はヒドロコロイドなどの水性組成物が、それを流動させる傾向のある力に抵抗する程度の尺度を指す。本明細書で使用することができる粘度の様々な単位としては、センチポアズ(cps)及びパスカル秒(Pa・s)が挙げられる。センチポアズは、ポアズの100分の1であり、1ポアズは、0.100kg・m-1・s-1に等しい。したがって、本明細書で使用するとき、用語「粘度調節剤」及び「粘度調整剤」は、流体又は水性組成物の粘度を変化させる/調整することができる全てを指す。
【0126】
用語「布地」、「織物」、及び「布」は、本明細書において互換的に使用され、天然及び/又は人工繊維のネットワークを有する織布又は不織布材料を指す。このような繊維は、例えば、糸又は毛糸であってもよい。
【0127】
本明細書における「布地ケア組成物」は、何らかの方法で布地を処理するのに好適な任意の組成物である。このような組成物の好適な例としては、洗濯ではない繊維処理(糊抜き、すり磨き、シルケット加工、漂白、着色、染色、印刷、バイオ研磨、抗菌処理、防しわ処理、染み耐性処理など)、洗濯ケア組成物(例えば、洗濯ケア洗剤)、及び布地柔軟剤が挙げられる。
【0128】
用語「洗剤組成物」、「ヘビーデューティー洗剤」、及び「多目的洗剤」は、本明細書において互換的に使用されて、任意の温度における基質、例えば、食器、カトラリー、車両、布地、カーペット、衣料、白色及び着色織物の通常の洗浄に有用な組成物を指す。布地、硬質表面、並びに布地及びホームケアの分野における任意の他の表面を処理するための洗剤組成物としては、洗濯洗剤、布地コンディショナー(柔軟剤を含む)、洗濯及びすすぎ用の添加剤及びケア組成物、布地フレッシュニング組成物、洗濯予洗、洗濯前処理、硬質表面処理組成物、カーケア組成物、食器洗浄組成物(食器手洗い用及び自動食器洗浄用の製品を含む)、空気ケア製品、多孔質基質又は不織布シートの上又は中に含有される洗剤、並びに消費者による使用又は事業者による使用のための他のクリーナー製品が挙げられる。
【0129】
用語「セルラーゼ」及び「セルラーゼ酵素」は、本明細書において互換的に使用され、セルロース中のβ-1,4-D-グルコシド結合を加水分解し、それによってセルロースを部分的又は完全に分解する酵素を指す。あるいは、セルラーゼは、例えば「β-1,4-グルカナーゼ」と称される場合もあり、エンドセルラーゼ活性(EC3.2.1.4)、エキソセルラーゼ活性(EC3.2.1.91)、又はセロビアーゼ活性(EC3.2.1.21)を有し得る。本明細書における特定の実施形態では、セルラーゼは、カルボキシメチルセルロースなどのセルロースエーテル誘導体中のβ-1,4-D-グルコシド結合を加水分解することもできる。「セルロース」は、β-1,4-結合D-グルコースモノマー単位の直鎖を有する不溶性多糖を指す。
【0130】
本明細書で使用するとき、用語「布地の手触り(fabric hand)」又は「柄(handle)」は、物理的、生理学的、心理的、社会的、又はこれらの任意の組み合わせであり得る、布地に対する人々の触覚応答を意味する。いくつかの実施形態では、布地の手触りは、American Association of Textile Chemists and Colorists(AATCC test method「202-2012,Relative Hand Value of Textiles:Instrumental Method」)によって与えられているとおり、相対的な風合値を測定するためのPhabrOmeter(登録商標)System(Nu Cybertek,Inc.(Davis,California)から入手可能)を使用して測定することができる。
【0131】
組成物は、液体、ゲル、粉末、ヒドロコロイド、水溶液、顆粒、錠剤、カプセル、単区画サッシェ、多区画サッシェ、単区画パウチ、又は多区画パウチの形態であり得る。いくつかの実施形態では、組成物は、液体、ゲル、粉末、単区画サッシェ、又は多区画サッシェの形態である。
【0132】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるポリアルファ-1,6-グルカン誘導体を含む組成物は、布地ケア組成物の形態であり得る。布地ケア組成物は、手洗い、機械洗浄、及び/又は他の目的、例えば、布地の浸漬及び/又は前処理などに使用することができる。布地ケア組成物は、例えば、洗濯洗剤、布地コンディショナー、任意の洗浄、すすぎ、又は乾燥機に添加される製品、単位用量又はスプレーの形態をとることができる。液体形態の布地ケア組成物は、水性組成物の形態であってよい。他の実施形態では、布地ケア組成物は、顆粒状洗剤又は乾燥機に添加される布地柔軟剤シートなどの乾燥形態であってもよい。布地ケア組成物の他の非限定的な例としては、顆粒又は粉末形態の多目的又はヘビーデューティー洗浄剤;液体、ゲル、又はペースト形態の多目的又はヘビーデューティー洗浄剤;液体又は乾燥細密布地(例えば、デリケート)洗剤;漂白添加剤、「染み用スティック(stain-stick)」、又は前処理などの洗浄助剤;乾燥及び湿潤拭き取り布、パッド、又はスポンジなどの基質付き製品;スプレー及びミスト;水溶性単位用量物品を挙げることができる。
【0133】
組成物は、例えば、粉末、顆粒、ペースト、バー、単位用量、又は液体のような任意の有用な形態であってよい。
【0134】
単位用量形態は、水溶性であってもよく、例えば、水溶性フィルムと、パウチとも呼ばれる液体又は固体洗濯洗剤組成物と、を含む水溶性単位用量物品であってもよい。水溶性単位用量パウチは、少なくとも1つの区画に液体又は固体洗剤組成物を完全に封入する水溶性フィルムを含む。水溶性単位用量物品は、単一の区画又は複数の区画を含んでいてよい。水溶性単位用量物品は、少なくとも2つの区画又は少なくとも3つの区画を含み得る。区画は、重ねて配置されてもよく、又は並べて配置されてもよい。
【0135】
単位用量物品は、典型的には、液体又は固体洗濯洗剤組成物を含む内部体積を封入する水溶性フィルムで作製された閉鎖構造である。パウチは、例えば、パウチが水に接触する前にパウチから組成物を放出することなく、組成物を保持し、保護するために好適な、任意の形態及び形状であってよい。
【0136】
固体単位用量物品は、典型的には、洗剤粒子を封入する水溶性繊維と、繊維間に分散した他の洗剤活性物質とで作製され、固体洗濯洗剤組成物パッドを生じさせる閉鎖構造である。別の例では、固体単位用量物品であるサッシェ又はパウチは、例えば、サッシェ又はパウチが水に接触する前にパウチから組成物を放出させることのない、組成物を保持及び保護するのに好適な任意の形態及び形状であってよい。
【0137】
組成物は、固体の形態、好ましくは、トローチ又はビーズなどの粒子の形態であり得る。好適な粒子は、水溶性担体中に分散したポリアルファ-1,6-グルカンエーテル化合物を含み得る。個々の粒子は、約1mg~約1gの質量を有し得る。水溶性担体は、水溶性ポリマーであり得る。水溶性担体は、ポリエチレングリコール、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、ポリプロピレングリコールポリオキソアルキレン、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールエーテル、硫酸ナトリウム、デンプン、及びこれらの混合物からなる群から選択され得る。組成物は、約25重量%~約99.99重量%の水溶性担体と、約0.01重量%~約30重量%のポリアルファ-1,6-グルカンエーテル化合物とを含み得る。粒子は、ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体、界面活性剤、香料、コンディショニング剤(例えば、第四級アンモニウム化合物及び/又はシリコーン)、又はそれらの混合物などの追加の有益剤を更に含み得る。粒子は、第1の粒子であってよく、第2の粒子を更に含む複数の粒子の一部であってよい。複数の粒子は、第1の粒子及び第2の粒子を含み得、ポリアルファ-1,6-グルカンエーテル化合物を含む粒子が第1の粒子であり、第2の粒子は、非カプセル化香料、カプセル化香料、又はそれらの混合物であってよい香料などの異なる有益剤を含む。粒子は、洗剤組成物と組み合わせて、例えば、洗浄サイクル中に同時に、又はその後すすぎサイクル中に使用され得る。
【0138】
液体洗剤組成物は、水性であってよく、典型的には、最大約70重量%の水と、0重量%~約30重量%の有機溶媒とを含有する。また、30重量%以下の水を含有するコンパクトゲルタイプの形態であってもよい。
【0139】
本明細書に開示されるポリアルファ-1,6-グルカン誘導体は、所望の製品において成分として使用することもでき、又は1つ以上の追加の好適な成分とブレンドして、例えば、布地ケア用途、洗濯ケア用途、及び/若しくは食器ケア用途として使用することもできる。開示される組成物のいずれか、例えば、布地ケア、洗濯ケア、又は食器ケア組成物は、組成物の総重量に基づいて、0.01~99重量パーセントの範囲でポリアルファ-1,6-グルカン誘導体を含み得る。組成物は、0.1~10重量%、又は0.1~9重量%、又は0.5~8重量%、又は1~7重量%、又は1~6重量%、又は1~5重量%、又は1~4重量%、又は1~3重量%、又は5~10重量%、又は10~15重量%、又は15~20重量%、又は20~25重量%、又は25~30重量%、又は30~35重量%、又は35~40重量%、又は40~45重量%、又は45~50重量%、又は50~55重量%、又は55~60重量%、又は60~65重量%、又は65~70重量%、70~75重量%、又は75~80重量%、又は80~85重量%、又は85~90重量%、又は90~95重量%、又は95~99重量%のポリアルファ-1,6-グルカン誘導体を含み得、重量パーセントは、当該組成物の総重量に基づく。
【0140】
組成物は、界面活性剤、酵素、洗剤ビルダー、錯化剤、ポリマー、汚れ放出ポリマー、界面活性増強ポリマー、漂白剤、漂白活性化剤、漂白触媒、布地コンディショナー、粘土、起泡促進剤、抑泡剤、防食剤、汚れ懸濁化剤、汚れ再付着防止剤、染料、殺菌剤、曇り防止剤、蛍光増白剤、香料、飽和又は不飽和脂肪酸、移染防止剤、キレート剤、色相染料、カルシウムカチオン、マグネシウムカチオン、視覚シグナル伝達成分、消泡剤、構造化剤、増粘剤、固化防止剤、デンプン、砂、ゲル化剤、又はこれらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つを更に含み得る。酵素は、セルラーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、又はこれらの任意の組み合わせであってよい。
【0141】
組成物は、例えば、布地ケア、洗濯ケア、及び/又は食器ケアに有用な洗剤組成物であってよく、1つ以上の活性酵素を更に含有していてもよい。好適な酵素の非限定的な例としては、プロテアーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペルオキシダーゼ、脂肪分解酵素(例えば、メタロ脂肪分解酵素)、キシラナーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、エステラーゼ(例えば、アリールエステラーゼ、ポリエステラーゼ)、ペルヒドロラーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、ペクチン酸リアーゼ、マンナナーゼ、ケラチナーゼ、レダクターゼ、オキシダーゼ(例えば、コリンオキシダーゼ)、フェノールオキシダーゼ、リポキシゲナーゼ、リグニナーゼ、プルラナーゼ、タンナーゼ、ペントサナーゼ、マラナーゼ、β-グルカナーゼ、アラビノシダーゼ、ヒアルロニダーゼ、コンドロイチナーゼ、ラッカーゼ、メタロプロテイナーゼ、アマドリアーゼ、グルコアミラーゼ、アラビノフラノシダーゼ、フィターゼ、イソメラーゼ、トランスフェラーゼ、アミラーゼ、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。酵素が含まれる場合、酵素は、組成物の総重量に基づいて約0.0001~0.1重量%の活性酵素で当該組成物中に存在し得る。他の実施形態では、酵素は、組成物の総重量に基づいて、約0.01~0.03重量%(例えば、純粋な酵素タンパク質として計算)の活性酵素で存在し得る。いくつかの実施形態では、2つ以上の酵素の組み合わせを組成物中で使用してもよい。いくつかの実施形態では、2つ以上の酵素は、セルラーゼと、プロテアーゼ、ヘミセルラーゼ、ペルオキシダーゼ、脂肪分解酵素、キシラナーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、エステラーゼ、ペルヒドロラーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、ペクチン酸リアーゼ、マンナナーゼ、ケラチナーゼ、レダクターゼ、オキシダーゼ、フェノールオキシダーゼ、リポキシゲナーゼ、リグニナーゼ、プルラナーゼ、タンナーゼ、ペントサナーゼ、マラナーゼ、β-グルカナーゼ、アラビノシダーゼ、ヒアルロニダーゼ、コンドロイチナーゼ、ラッカーゼ、メタロプロテイナーゼ、アマドリアーゼ、グルコアミラーゼ、アラビノフラノシダーゼ、フィターゼ、イソメラーゼ、トランスフェラーゼ、アミラーゼ、又はそれらの任意の組み合わせのうちの1つ以上とである。
【0142】
いくつかの実施形態では、組成物は、1つ以上の酵素を含んでいてよく、各酵素は、組成物の総重量に基づいて約0.00001重量%~約10重量%存在する。いくつかの実施形態では、組成物はまた、組成物の総重量に基づいて、約0.0001重量%~約10重量%、約0.001重量%~約5重量%、約0.001重量%~約2重量%、又は約0.005重量%~約0.5重量%の濃度で各酵素を含んでいてもよい。
【0143】
セルラーゼは、エンドセルラーゼ活性(EC3.2.1.4)、エキソセルラーゼ活性(EC3.2.1.91)、又はセロビアーゼ活性(EC3.2.1.21)を有し得る。セルラーゼは、セルラーゼ活性を維持するのに好適な条件下で活性を有する「活性セルラーゼ」であり、このような好適な条件を決定することは、当該技術分野の技能の範囲内である。セルロースを分解できることに加えて、セルラーゼは、特定の実施形態では、カルボキシメチルセルロースなどのセルロースエーテル誘導体を分解することもできる。
【0144】
セルラーゼは、細菌又は真菌などの任意の微生物源に由来し得る。化学的に修飾されたセルラーゼ又はタンパク質が遺伝子操作された変異体セルラーゼが含まれる。好適なセルラーゼとしては、例えば、バチルス属、シュードモナス属、ストレプトマイセス属、トリコデルマ属、フミコーラ属、フザリウム属、チエラビア属、及びアクレモニウム属由来のセルラーゼが挙げられる。他の例として、セルラーゼは、フミコーラ・インソレンス(Humicola insolens)、ミセリオフィソーラ・サーモフィラ(Myceliophthora thermophile)、フサリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)、又はそれらの任意の組み合わせに由来し得る。上記のいずれかなどのセルラーゼは、N末端シグナルペプチドを欠く成熟形態であり得る。本明細書で有用な市販のセルラーゼとしては、CELLUSOFT(登録商標)、CELLUCLEAN(登録商標)、CELLUZYME(登録商標)、及びCAREZYME(登録商標)(Novozymes A/S);CLAZINASE(登録商標)及びPURADAX(登録商標)HA及びREVITALENZ(商標)(DuPont Industrial Biosciences)、BIOTOUCH(登録商標)(AB ENZYMES);並びにKAC-500(B)(登録商標)(花王)が挙げられる。
【0145】
あるいは、本明細書におけるセルラーゼは、当該技術分野において既知の任意の手段によって生成されてもよく、例えば、セルラーゼは、微生物又は真菌の異種発現系などの異種発現系において組み換えにより生成され得る。異種発現系の例としては、細菌(例えば、大腸菌、バチルス属種)及び真核生物系が挙げられる。真核生物系は、酵母(例えば、ピキア属種、サッカロマイセス属種)又は真菌(例えば、T.リーゼイ(T.reesei)などのトリコデルマ属種、アスペルギルス・ニガー(A.niger)などのアスペルギルス属種)の発現系を使用してよい。
【0146】
特定の実施形態では、セルラーゼは熱安定性であり得る。セルラーゼの熱安定性とは、一定時間(例えば、約30~60分)にわたって高温(例えば、約60~70℃)に曝露した後に活性を保持する酵素の能力を指す。セルラーゼの熱安定性は、その間に規定の条件下でセルラーゼ活性の半分が失われる分数、時間数、又は日数で与えられる半減期(t1/2)によって測定することができる。
【0147】
特定の実施形態では、セルラーゼは、広範囲のpH値(例えば、pH~7.0~約11.0などの中性又はアルカリ性pH)に対して安定であり得る。このような酵素は、このようなpH条件下で、所定の時間(例えば、少なくとも約15分、30分、又は1時間)安定したままであり得る。
【0148】
少なくとも1つ、2つ、又はそれ以上のセルラーゼが組成物中に含まれていてよい。本明細書における組成物中のセルラーゼの総量は、典型的には、組成物中のセルラーゼを使用する目的に好適な量である(「有効量」)。例えば、セルロース含有布地の感触及び/又は外観を改善することを目的とする組成物中のセルラーゼの有効量は、布地の感触の測定可能な改善(例えば、布地の滑らかさ及び/又は外観の改善、布地の外観の鮮明さを低減する傾向がある毛玉及び微小繊維の除去)を生じさせる量である。別の例として、本明細書における布地ストーンウォッシュ加工組成物中のセルラーゼの有効量は、所望の効果をもたらす(例えば、縫い目及び布地パネルを、着用され、色落ちしたように見せる)量である。本明細書における組成物中のセルラーゼの量はまた、例えば、組成物が使用されるプロセスパラメータ(例えば、機器、温度、時間など)及びセルラーゼ活性に依存し得る。布地が処理される水性組成物中のセルラーゼの有効濃度は、当業者であれば容易に決定することができる。布地ケアプロセスにおいて、セルラーゼは、例えば、最低で約0.01~0.1ppmの全セルラーゼタンパク質、又は約0.1~10ppbの全セルラーゼタンパク質(例えば、1ppm未満)から、最高で約100、200、500、1000、2000、3000、4000、又は5000ppmの全セルラーゼタンパク質の濃度で、布地が処理される水性組成物(例えば、洗浄液)中に存在し得る。
【0149】
好適な酵素は、当該技術分野において既知であり、例えば、MAXATASE(登録商標)、MAXACAL(商標)、MAXAPEM(商標)、OPTICLEAN(登録商標)、OPTIMASE(登録商標)、PROPERASE(登録商標)、PURAFECT(登録商標)、PURAFECT(登録商標)OXP、PURAMAX(商標)、EXCELLASE(商標)、PREFERENZ(商標)プロテアーゼ(例えば、P100、P110、P280)、EFFECTENZ(商標)プロテアーゼ(例えば、P1000、P1050、P2000)、EXCELLENZ(商標)プロテアーゼ(例えば、P1000)、ULTIMASE(登録商標)、及びPURAFAST(商標)(Genencor);ALCALASE(登録商標)、SAVINASE(登録商標)、PRIMASE(登録商標)、DURAZYM(商標)、POLARZYME(登録商標)、OVOZYME(登録商標)、KANNASE(登録商標)、LIQUANASE(登録商標)、NEUTRASE(登録商標)、RELASE(登録商標)、及びESPERASE(登録商標)(Novozymes);BLAP(商標)及びBLAP(商標)変異体(Henkel Kommanditgesellschaft auf Aktien(Duesseldorf,Germany))、並びにKAP(B.アルカロフィルス・スブチリシン(B.alkalophilus subtilisin);花王(東京)プロテアーゼ;MANNASTAR(登録商標)、PURABRITE(商標)、及びMANNAWAY(登録商標)マンナナーゼ;M1 LIPASE(商標)、LUMA FAST(商標)、及びLIPOMAX(商標)(Genencor);LIPEX(登録商標)、LIPOLASE(登録商標)、及びLIPOLASE(登録商標)ULTRA(Novozymes);並びにLIPASE P(商標)「Amano」(天野製薬)リパーゼ;STAINZYME(登録商標)、STAINZYME PLUS(登録商標)、NATALASE(登録商標)、DURAMYL(登録商標)、TERMAMYL(登録商標)、TERMAMYL ULTRA(登録商標)、FUNGAMYL(登録商標)、及びBAN(商標)(Novo Nordisk A/S及びNovozymes A/S);RAPIDASE(登録商標)、POWERASE(登録商標)、PURASTAR(登録商標)、及びPREFERENZ(商標)(DuPont Industrial Biosciences)アミラーゼ;GUARDZYME(商標)(Novo Nordisk A/S及びNovozymes A/S)ペルオキシダーゼ、又はそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0150】
組成物中の酵素は、従来の安定化剤、例えば、プロピレングリコール又はグリセロールなどのポリオール;糖又は糖アルコール;乳酸;ホウ酸又はホウ酸誘導体(例えば、芳香族ホウ酸エステル)を使用して安定化することができる。
【0151】
本明細書における洗剤組成物は、典型的には、1つ以上の界面活性剤を含み、当該界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、双極性界面活性剤、半極性非イオン性界面活性剤、及びこれらの混合物から選択される。界面活性剤は、石油由来(合成とも呼ばれる)であってもよく、又は非石油由来(天然とも呼ばれる)であってもよい。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、洗浄組成物の約0.1重量%~約60重量%の濃度で存在し、一方、別の実施形態では、濃度は、約1重量%~約50重量%であり、一方、また更なる実施形態では、濃度は、約5重量%~約40重量%である。洗剤は、通常、0重量%~約50重量%の、直鎖アルキルベンゼンスルホネート(LAS)、α-オレフィンスルホネート(AOS)、アルキルサルフェート(脂肪アルコールサルフェート)(AS)、アルコールエトキシサルフェート(AEOS又はAES)、二級アルカンスルホネート(SAS)、α-スルホ脂肪酸メチルエステル、アルキル-若しくはアルケニルコハク酸、又は石鹸などのアニオン性界面活性剤を含有する。
【0152】
洗剤組成物は、式R1-(OCH2CH2)x-O-SO3M(式中、R1は、約C8~約C20の偶数の炭素鎖長からなる非石油由来の直鎖状又は分枝鎖状の脂肪アルコールであり、xは、約0.5~約8であり、Mは、アルカリ金属又はアンモニウムカチオンである)のアルキルエトキシサルフェートを含み得る。アルキルエトキシサルフェートの脂肪アルコール部分(R1)は、地質由来(例えば、石油由来)ではなく、再生可能な資源由来(例えば、動物又は植物由来)である。再生可能な資源由来の脂肪アルコールは、天然脂肪アルコールと称される場合がある。天然脂肪アルコールは、炭素数が偶数であり、末端炭素に単一のアルコール(-OH)が結合している。界面活性剤の脂肪アルコール部分(R1)は、偶数の炭素鎖、例えば、C12、C14、C16、C18などの分布を含み得る。
【0153】
加えて、洗剤組成物は、任意に、アルコールエトキシレート(AEO又はAE)、カルボキシル化アルコールエトキシレート、ノニルフェノールエトキシレート、アルキルポリグリコシド、アルキルジメチルアミンオキシド、エトキシル化脂肪酸モノエタノールアミド、脂肪酸モノエタノールアミド、又はポリヒドロキシアルキル脂肪酸アミドなどの非イオン性界面活性剤を0重量%~約40重量%含有していてもよい。洗剤組成物は、式R2-(OCH2CH2)y-OH(式中、R2は、約C10~約C18の偶数の炭素鎖長からなる非石油由来の直鎖状又は分枝鎖状の脂肪アルコールであり、yは、約0.5~約15である)のアルキルエトキシレートを含み得る。アルキルエトキシレートの脂肪アルコール部分(R2)は、地質由来(例えば、石油由来)ではなく、再生可能な資源由来(例えば、動物又は植物由来)である。界面活性剤の脂肪アルコール部分(R2)は、偶数の炭素鎖、例えば、C12、C14、C16、C18などの分布を含み得る。
【0154】
組成物は、1つ以上の洗剤ビルダー又はビルダー系を更に含んでいてもよい。少なくとも1つのビルダーを組み込むいくつかの実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、少なくとも約1重量%、約3重量%~約60重量%、又は約5重量%~約40重量%のビルダーを含む。ビルダーとしては、例えば、ポリリン酸のアルカリ金属塩、アンモニウム塩及び/又はアルカノールアンモニウム塩、アルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ土類及びアルカリ金属の炭酸塩、アルミノケイ酸塩、ポリカルボキシレート化合物、エーテルヒドロキシポリカルボキシレート、無水マレイン酸とエチレン又はビニルメチルエーテルとのコポリマー、1,3,5-トリヒドロキシベンゼン-2,4,6-トリスルホン酸、及びカルボキシメチルオキシコハク酸、ポリ酢酸(例えば、エチレンジアミン四酢酸及びニトリロ三酢酸など)の様々なアルカリ金属塩、アンモニウム塩、及び置換アンモニウム塩、並びにポリカルボキシレート(例えばメリト酸、コハク酸、クエン酸、オキシジコハク酸、ポリマレイン酸、ベンゼン1,3,5-トリカルボン酸、カルボキシメチルオキシコハク酸など)、並びにこれらの可溶性塩が挙げられる。洗剤ビルダー又は錯化剤の例としては、ゼオライト、二リン酸塩、三リン酸塩、ホスホン酸塩、クエン酸塩、ニトリロ三酢酸(NTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTMPA)、アルキル-若しくはアルケニルコハク酸、可溶性ケイ酸塩、又は層状ケイ酸塩(例えば、Hoechst製SKS-6)が挙げられる。洗剤はまた、ビルダーを含んでいなくてもよく(unbuilt)、すなわち、洗剤ビルダーを本質的に含んでいなくてもよい。
【0155】
組成物は、少なくとも1つのキレート剤を更に含んでいてもよい。好適なキレート剤としては、例えば、銅、鉄、及び/又はマンガンキレート剤、並びにこれらの混合物が挙げられる。少なくとも1つのキレート剤が使用されるいくつかの実施形態では、組成物は、当該組成物の総重量に基づいて、約0.1重量%~約15重量%、又は更には約3重量%~約10重量%のキレート剤を含む。
【0156】
組成物は、少なくとも1つの付着助剤を更に含んでいてもよい。好適な付着助剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリカルボキシレート;ポリテレフタル酸などの汚れ放出ポリマー;カオリナイト、モンモリロナイト、アタパルジャイト、イライト、ベントナイト、ハロイサイトなどの粘土、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0157】
当該組成物は、1つ以上の移染防止剤を更に含んでいてもよい。好適な移染防止剤としては、例えば、ポリビニルピロリドンポリマー、ポリアミンN-オキシドポリマー、N-ビニルピロリドンとN-ビニルイミダゾールとのコポリマー、ポリビニルオキサゾリドン、ポリビニルイミダゾール、マンガンフタロシアニン、ペルオキシダーゼ、ポリビニルピロリドンポリマー、エチレンジアミン四酢酸(EDTA);ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸(DTPMP);ヒドロキシエタンジホスホン酸(HEDP);エチレンジアミンN,N’-二コハク酸(EDDS);メチルグリシン二酢酸(MGDA);ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA);プロピレンジアミン四酢酸(PDT A);2-ヒドロキシピリジン-N-オキシド(HPNO);又はメチルグリシン二酢酸(MGDA);グルタミン酸N,N-二酢酸(N,N-ジカルボキシメチルグルタミン酸四ナトリウム塩(GLDA);ニトリロ三酢酸(NTA);4,5-ジヒドロキシ-m-ベンゼンジスルホン酸;クエン酸及びその任意の塩;N-ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、トリエチレンテトラアミン六酢酸(TTHA)、N-ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HEIDA)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、エチレンジアミン四プロピオン酸(EDTP)、及びそれらの誘導体、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。少なくとも1つの移染防止剤が使用される実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、約0.0001重量%~約10重量%、約0.01重量%~約5重量%、又は更には約0.1重量%~約3重量%の移染防止剤を含み得る。
【0158】
組成物は、ケイ酸塩を更に含んでいてもよい。好適なケイ酸塩としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、二ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、結晶質フィロケイ酸塩、又はそれらの任意の組み合わせを挙げることができる。いくつかの実施形態では、ケイ酸塩は、組成物の総重量に基づいて、約1重量%~約20重量%の濃度で存在し得る。他の実施形態では、ケイ酸塩は、組成物の総重量に基づいて、約5重量%~約15重量%の濃度で存在し得る。
【0159】
組成物は、分散剤を更に含んでいてもよい。好適な水溶性有機材料としては、例えば、ホモポリマー又はコポリマーの酸又はその塩を挙げることができ、この場合、ポリカルボン酸は、互いに炭素原子2個以下分だけ離れている少なくとも2個のカルボキシルラジカルを含む。
【0160】
組成物は、本ポリα-1,6-グルカン誘導体に加えて、1つ以上の他の種類のポリマーを更に含んでいてもよい。本明細書において有用な他の種類のポリマーの例としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリカルボキシレート、例えば、ポリアクリレート、マレイン酸/アクリル酸コポリマー、及びラウリルメタクリレート/アクリル酸コポリマーが挙げられる。
【0161】
組成物は、漂白系を更に含んでいてもよい。例えば、漂白系は、例えば、ドデカノイルオキシベンゼンスルホネート、デカノイルオキシベンゼンスルホネート、デカノイルオキシ安息香酸若しくはその塩、テトラアセチルエチレンジアミン(TAED)、又はノナノイルオキシベンゼンスルホネート(NOBS)などの過酸形成漂白活性化剤と組み合わせてもよい、H2O2源、例えば、過ホウ酸塩、過炭酸塩、過水和物塩、過ホウ酸塩のナトリウム塩一水和物又は四水和物、過硫酸塩、過リン酸塩、過ケイ酸塩、過カルボン酸及び塩、過炭酸及び塩、過イミド酸及び塩、ペルオキシ一硫酸及び塩、スルホン化亜鉛フタロシアニン、スルホン化アルミニウムフタロシアニン、キサンテン染料を含んでいてもよい。あるいは、漂白系は、ペルオキシ酸(例えば、アミド、イミド、又はスルホン型のペルオキシ酸)を含んでいてもよい。他の実施形態では、漂白系は、ペルヒドロラーゼを含む酵素漂白系であり得る。上記のいずれかの組み合わせを使用してもよい。
【0162】
組成物は、布地コンディショナー、粘土、泡増進剤、泡抑制剤、防食剤、汚れ懸濁剤、汚れ再付着防止剤、染料、殺菌剤、曇り防止剤、蛍光増白剤、又は香料などの従来の洗剤成分を更に含んでいてもよい。本明細書における洗剤組成物のpH(使用濃度の水溶液中で測定)は、中性又はアルカリ性(例えば、pH約7.0~約11.0)であり得る。
【0163】
組成物は、洗剤組成物であってよく、任意に、ヘビーデューティー(多目的)洗濯洗剤組成物であってもよい。いくつかの実施形態では、洗剤組成物は、アニオン性洗浄界面活性剤(直鎖状又は分枝鎖状又はランダム鎖状の置換又は非置換アルキルサルフェート、アルキルスルホネート、アルキルアルコキシル化サルフェート、アルキルホスフェート、アルキルホスホネート、アルキルカルボキシレート、及び/又はこれらの混合物の群から選択される)と、任意に、非イオン性界面活性剤(直鎖状又は分枝鎖状又はランダム鎖状の置換又は非置換アルキルアルコキシル化アルコール、例えば、C8~C18アルキルエトキシル化アルコール及び/又はC6~C12アルキルフェノールアルコキシレートの群から選択される)とを含む洗浄界面活性剤(10%~40%重量/重量)を含んでいてよく、この場合、アニオン性洗浄界面活性剤(親水性指数(HIc)が6.0~9である)の非イオン性洗浄界面活性剤に対する重量比は、1:1超である。また、好適な洗浄界面活性剤としては、カチオン性洗浄界面活性剤(アルキルピリジニウム化合物、アルキル四級アンモニウム化合物、アルキル四級ホスホニウム化合物、アルキル三級スルホニウム化合物、及び/又はこれらの混合物の群から選択される);双極性及び/又は両性洗浄界面活性剤(アルカノールアミンスルホベタインの群から選択される);両性界面活性剤;半極性非イオン性界面活性剤、並びにこれらの混合物も挙げられる。
【0164】
組成物は、任意に、例えば、両親媒性アルコキシル化グリース洗浄ポリマーからなる界面活性増強ポリマーを含む洗剤組成物であってもよい。好適な両親媒性アルコキシル化グリース洗浄ポリマーとしては、例えばアルコキシル化ポリアルキレンイミンなどの分枝鎖状の親水性及び疎水性を有するアルコキシル化ポリマー;例えば不飽和C1~C6カルボン酸、エーテル、アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、糖単位、アルコキシ単位、無水マレイン酸、グリセロールなどの飽和ポリアルコール、及びそれらの混合物といったモノマーを含む親水性骨格と、例えば1つ以上のC4~C25アルキル基、ポリプロピレン、ポリブチレン、飽和C1~C6モノカルボン酸のビニルエステル、アクリル酸又はメタクリル酸のC1~C6アルキルエステル、及びそれらの混合物といった疎水性側鎖と、含むランダムグラフトポリマーを挙げることができる。
【0165】
好適なヘビーデューティー洗濯洗剤組成物は、任意に、追加のポリマー、例えば、汚れ放出ポリマー(アニオン性末端保護ポリエステル、例えばSRP1;ランダム又はブロック構成の糖、ジカルボン酸、ポリオール、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つのモノマー単位を含むポリマー;ランダム又はブロック構成のエチレンテレフタレート系ポリマー及びそのコポリマー、例えば、REPEL-O-TEX SF、SF-2、及びSRP6、TEXCARE SRA100、SRA300、SRN100、SRN170、SRN240、SRN260、SRN300、及びSRN325、MARLOQUEST SLを含む)、アクリル酸、マレイン酸(又は無水マレイン酸)、フマル酸、イタコン酸、アコニット酸、メサコン酸、シトラコン酸、メチレンマロン酸、及びそれらの任意の混合物から選択される少なくとも1つのモノマーを含むポリマーなどのカルボキシレートポリマーを含む再付着防止ポリマー;ビニルピロリドンホモポリマー、及び/又は500~100,000ダルトン(Da)の範囲の分子量のポリエチレングリコール;並びにポリマーカルボキシレート(マレエート/アクリレートランダムコポリマー又はポリアクリレートホモポリマーなど)を含んでいてもよい。存在する場合、汚れ放出ポリマーは、組成物の総重量に基づいて、0.1~10重量%で含まれ得る。
【0166】
ヘビーデューティー洗濯洗剤組成物は、任意に、飽和又は不飽和脂肪酸、好ましくは飽和又は不飽和C12~C24脂肪酸;付着助剤、例えば、多糖、セルロースポリマー、ポリジアリルジメチルアンモニウムハロゲン化物(DADMAC)、並びにランダム又はブロック構成のDADMACとビニルピロリドン、アクリルアミド、イミダゾール、イミダゾリニウムハロゲン化物、及びそれらの混合物とのコポリマー、カチオン性グアーガム、カチオン性デンプン、カチオン性ポリアシルアミド、又はそれらの任意の組み合わせを更に含んでいてもよい。存在する場合、脂肪酸及び/又は付着助剤は、それぞれ、組成物の総重量に基づいて0.1%~10%重量で存在し得る。
【0167】
洗剤組成物は、任意に、シリコーン又は脂肪酸系泡抑制剤;色相染料、カルシウム及びマグネシウムカチオン、視覚的シグナル伝達成分、消泡剤(組成物の総重量に基づいて0.001重量%~約4.0重量%)、並びに/又はジグリセリド及びトリグリセリド、エチレングリコールジステアレート、微結晶セルロース、マイクロファイバーセルロース、バイオポリマー、キサンタンガム、ジェランガム、及びこれらの混合物からなる群から選択される構造化剤/増粘剤(組成物の総重量に基づいて0.01重量%~5重量%)を含んでいてもよい。
【0168】
本明細書に開示される組成物は、食器洗浄洗剤組成物の形態であってもよい。食器洗浄洗剤の例としては、自動食器洗浄洗剤(典型的には、食器洗浄機で使用される)及び手洗い用食器洗剤が挙げられる。食器洗浄洗剤組成物は、例えば、本明細書に開示される任意の乾燥又は液体/水性形態であってよい。食器洗浄洗剤組成物の特定の実施形態に含まれ得る成分としては、例えば、リン酸塩;酸素若しくは塩素系漂白剤;非イオン性界面活性剤;アルカリ塩(例えば、メタケイ酸塩、アルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム);本明細書に開示される任意の活性酵素;腐食防止剤(例えば、ケイ酸ナトリウム);消泡剤;セラミックからの光沢(glaze)及びパターンの除去を減速させるための添加剤;香料;(粒状洗剤における)固化防止剤;(錠剤ベースの洗剤における)デンプン;(液体/ゲル系洗剤における)ゲル化剤;並びに/又は砂(粉末洗剤)のうちの1つ以上が挙げられる。
【0169】
ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体に加えて、食器洗浄洗剤組成物は、(i)0~10重量%の量で存在する、任意のエトキシル化非イオン性界面活性剤、アルコールアルコキシル化界面活性剤、エポキシ保護ポリ(オキシアルキル化)アルコール、又はアミンオキシド界面活性剤を含む非イオン性界面活性剤;(ii)約5~60重量%の範囲の、任意のリン酸塩ビルダー(例えば、一リン酸塩、二リン酸塩、三リン酸塩、他のオリゴマーポリリン酸塩、トリポリリン酸ナトリウム-STPP)、任意のリン酸塩を含まないビルダー(例えば、メチル-グリシン-二酢酸[MGDA]及びその塩又は誘導体、グルタミン-N,N-二酢酸[GLDA]及びその塩又は誘導体、イミノジコハク酸(IDS)及びその塩又は誘導体、カルボキシメチルイヌリン及びその塩又は誘導体、ニトリロ三酢酸[NTA]、ジエチレントリアミン五酢酸[DTPA]、B-アラニン二酢酸[B-ADA]及びその塩を含むアミノ酸系化合物)、ポリカルボン酸のホモポリマー及びコポリマー、並びにこれらの部分的又は完全に中和された塩、0.5~50重量%の範囲のモノマーポリカルボン酸及びヒドロキシカルボン酸並びにこれらの塩、又は約0.1重量%~約50重量%の範囲のスルホン化/カルボキシル化ポリマーを含むビルダー;(iii)約0.1重量%~約10重量%の範囲の乾燥助剤(例えば、任意に3~6個の官能基、例えば、重縮合を促す酸、アルコール又はエステル官能基を有する更なるモノマーと共に、ポリエステル、特にアニオン性ポリエステル;ポリカーボネート-、ポリウレタン-及び/又はポリ尿素-ポリオルガノシロキサン化合物、又はこれらの前駆体化合物、特に反応性環状カーボネート及び尿素型の前駆体化合物);(iv)約1重量%~約20重量%の範囲のケイ酸塩(例えば、二ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、及び結晶性フィロケイ酸塩などのケイ酸ナトリウム又はカリウム);(v)無機漂白剤(例えば、過ホウ酸塩、過炭酸塩、過リン酸塩、過硫酸塩及び過ケイ酸塩などの過水和物塩)及び/又は有機漂白剤、例えば、ジアシル-及びテトラアシルペルオキシド、特にジペルオキシドデカン二酸、ジペルオキシテトラデカン二酸、及びジペルオキシヘキサデカン二酸などの有機ペルオキシ酸;(vi)漂白活性化剤、例えば、約0.1重量%~約10重量%の範囲の有機過酸前駆体、及び/又は漂白触媒(例えば、マンガントリアザシクロノナン及び関連する錯体;Co、Cu、Mn及びFeビスピリジルアミン並びに関連する錯体;並びにペンタミン酢酸コバルト(III)及び関連する錯体);(vii)約0.1重量%~5重量%の範囲の金属ケア剤、例えば、ベンザトリアゾール、金属塩及び錯体、並びに/又はケイ酸塩、並びに/又は(viii)自動食器洗浄洗剤組成物1グラム当たり活性酵素約0.01~5.0mgの範囲の本明細書に開示される任意の活性酵素、及び酵素安定剤成分を含み得る。重量パーセントは、組成物の総重量に基づく。
【0170】
他の実施形態では、本開示は、基質を処理する方法であって、(A)ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体を含む組成物を提供するステップであって、当該誘導体が、(i)
【0171】
【化34】
結合部分を通してポリアルファ-1,6-グルカンに結合している少なくとも1つの有機基で置換されたポリアルファ-1,6-グルカンを含み、(ii)少なくとも5の重量平均重合度を有し、(iii)約0.001~約3.00の置換度を有し、当該ポリアルファ-1,6-グルカンが、グルコースモノマー単位の骨格であって、グルコースモノマー単位の40%以上がアルファ-1,6グリコシド結合を介して結合し、グルコースモノマー単位の0%~30%未満がアルファ-1,3グリコシド結合を介して結合し、任意に、骨格グルコースモノマー単位の少なくとも5%がアルファ-1,2及び/又はアルファ-1,3グリコシド結合を介した分岐を有する、グルコースモノマー単位の骨格を含む、ステップと、(B)当該基質を当該組成物と接触させるステップと、(C)任意に、当該基質をすすぐステップと、
を含み、当該基質が、例えば、織物、布地、カーペット、室内装飾材料、衣料、又は表面である、方法に関する。任意に、基質に接触させるステップは、水の存在下で実施することができる。ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体を含む組成物は、本明細書に開示するとおりである。
【0172】
一実施形態では、基質を処理する方法は、基質に灰色化防止特性を付与することができ、これは、布地の洗浄中に布地から分離した汚れが洗浄液中に懸濁するので、布地への再付着が防止されることを意味する。別の実施形態では、基質を処理する方法は、基質に再付着防止特性を付与することができる。例えば当該技術分野において既知の方法を使用して、再付着モニターとして作用する初期の清潔な布地の存在下で、ターゴトメータ及び予め汚しておいた布地の複数回洗浄を使用して、灰色化防止剤及び再付着防止剤の有効性を判定することができる。
【0173】
一実施形態では、基質は、織物、布地、カーペット、又は衣料であり得る。別の実施形態では、基質は、カーペット、室内装飾材料、又は表面であり得る。更に別の実施形態では、基質は、織物、布地、カーペット、室内装飾材料、衣料、又は表面であり得る。「室内装飾材料」とは、肘掛け椅子及びソファなどの家具に固定された、柔らかく、パッドの詰まった織物カバーを意味する。処理は、例えば、布地の手触りの改善、汚れ付着に対する耐性の改善、色堅牢性の改善、耐摩耗性の改善、しわ耐性の改善、抗真菌活性の改善、染み耐性の改善、洗濯時の洗浄性能の改善、乾燥速度の改善、染料、顔料若しくはレーキの更新の改善、白色度保持の改善、又はそれらの任意の組み合わせのうちの1つ以上の効果を基質に提供する。処理は、例えば、汚れ付着に対する耐性の改善、染み耐性の改善、洗浄性能の改善、又はそれらの任意の組み合わせの効果を基質に提供する。
【0174】
本明細書における布地は、天然繊維、合成繊維、半合成繊維、又はこれらの任意の組み合わせを含み得る。半合成繊維は、化学的に誘導体化された天然材料を使用して作製され、その例はレーヨンである。本明細書における布地の種類の非限定的な例としては、(i)綿(例えば、ブロードクロス、キャンバス、シャンブレー、シェニール、インド更紗、コーデュロイ、クレトン、ダマスク、デニム、フランネル、ギンガム、ジャカード、ニット、マテラーセ、オックスフォード、パーケール、ポプリン、プリセ、綿繻子、シアサッカー、シアー、テリー織、綾織、ベルベット)、レーヨン(例えば、ビスコース、モーダル、リオセル)、リネン、及びTencel(登録商標)などのセルロース繊維;(ii)絹、羊毛及び関連する哺乳動物繊維などのタンパク質性繊維;(iii)ポリエステル、アクリル、ナイロンなどの合成繊維;(iv)黄麻、亜麻、ラミー、コイヤー、カポック、サイザル、ヘネッケン、アバカ、麻、及びインド麻由来の長植物繊維;並びに(v)(i)~(iv)の布地の任意の組み合わせで作製される布地が挙げられる。繊維の種類(例えば、天然及び合成)の組み合わせを含む布地としては、例えば、綿繊維及びポリエステルの両方を有するものが挙げられる。1つ以上の布地を含有する材料/物品としては、例えば、衣類、カーテン、ドレープ、室内装飾材料、カーペット、ベッドリネン、バスリネン、テーブルクロス、寝袋、テント、自動車内装品などが挙げられる。天然及び/又は合成繊維を含む他の材料としては、例えば、不織布、パッド、紙、及び発泡体が挙げられる。布地は、典型的には、織り又は編み構造体である。
【0175】
接触させるステップは、様々な条件、例えば、時間、温度、洗浄/すすぎ量で行うことができる。布地又は織物基質を接触させる方法、例えば、布地ケア方法又は洗濯方法は、概ね周知である。例えば、布地を含む材料を、(i)少なくとも約5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、又は120分間、(ii)少なくとも約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90℃又は95℃の温度(例えば、洗濯洗浄又はすすぎの場合、約15~30℃の「低」温、約30~50℃の「中」温、約50~95℃の「高」温)で、(iii)約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12のpH(例えば、約2~12、又は約3~11のpH範囲)で、(iv)少なくとも約0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、又は4.0重量%の塩(例えば、NaCl)濃度で、又はv)i)~iv)の任意の組み合わせで、開示された組成物と接触させてよい。布地ケア方法又は洗濯方法における接触させるステップは、例えば、洗浄ステップ、浸漬ステップ、及び/又はすすぎステップのいずれかを含み得る。いくつかの実施形態では、すすぎステップは、水ですすぐステップである。
【0176】
接触させることができる他の基質としては、例えば、食器用洗剤(例えば、自動食器洗浄洗剤又は食器手洗い用洗剤)で処理することができる表面が挙げられる。このような材料の例としては、セラミック材料、陶磁器、金属、ガラス、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリスチレン)、及び木材から作製された食器、グラス、ポット、フライパン、耐熱皿、台所用具、及び平皿(本明細書では「食卓用食器」と総称される)の表面が挙げられる。食器洗浄又は食卓用食器洗浄方法を実施するための条件(例えば、時間、温度、洗浄体積)の例は、当該技術分野において既知である。他の例では、布地を含む材料との接触に関して上に開示した条件のいずれかなどの好適な条件セットの下で、食卓用食器物品を本明細書の組成物と接触させることができる。
【0177】
基質を処理する方法の特定の実施形態は、組成物と接触させた後に材料を乾燥させる乾燥ステップを更に含む。乾燥ステップは、接触させるステップの直後に、又は接触させるステップの後に行ってよい1つ以上の追加のステップの後に実施してよく、例えば、例えば水性組成物中での洗浄に続いて水ですすいだ後に布地を乾燥させる。乾燥は、例えば、少なくとも約30、40、50、60、70、80、90、100、120、140、160、170、175、180、又は200℃の温度での空気乾燥など、当該技術分野において既知のいくつかの手段のいずれによって行ってもよい。本明細書において乾燥された材料には、典型的には、3、2、1、0.5、又は0.1重量%未満の水がその中に含まれる。
【0178】
処理は、例えば、汚れ付着に対する耐性の改善、染み耐性の改善、洗浄性能の改善、又はそれらの任意の組み合わせの効果を基質に提供する。接触させるステップは、基質を組成物で拭き取る又は基質に組成物を噴霧することを含み得る。
【0179】
以下は、本発明の好ましい実施形態である:
1.ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体を含む洗濯ケア又は食器ケア組成物であって、当該ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体が、
(i)グルコースモノマー単位のポリアルファ-1,6-グルカン骨格であって、グルコースモノマー単位の40%以上がアルファ-1,6グリコシド結合を介して結合し、グルコースモノマー単位の0%~30%未満がアルファ-1,3グリコシド結合を介して結合し、任意に、骨格グルコースモノマー単位の少なくとも5%がアルファ-1,2及び/又はアルファ-1,3グリコシド結合を介した分岐を有する、グルコースモノマー単位のポリアルファ-1,6-グルカン骨格と、
(ii)
【0180】
【化35】
結合部分を通して当該ポリアルファ-1,6-グルカン骨格に結合している少なくとも1つの有機基と、
を含み、
当該ポリアルファ-1,6-グルカン骨格が、少なくとも5の重量平均重合度を有し、
当該ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体が、0.001~3.00の
【0181】
【化36】
結合部分の置換度を有する、組成物。
2.当該ポリアルファ-1,6-グルカン骨格に結合している有機基が、疎水性有機基である、実施形態1に記載の組成物。
3.当該ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体が、エステル(-OCO-)、カーボネート(-OCOO-)、スルホン酸エステル(-OSO
2-)、及びエーテル(-O-)のうちの1つ以上から選択される結合部分を通して当該ポリアルファ-1,6-グルカン骨格に結合している1つ以上の追加の疎水性有機基を更に含む、実施形態1又は2に記載の組成物。
4.当該ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体が、親水性置換を実質的に含まない、実施形態1~3のいずれか1つに記載の組成物。
5.当該ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体が、カルボン酸、カルボン酸塩、スルホン酸誘導体、スルホン酸誘導体塩、硫酸誘導体、硫酸誘導体塩、チオサルフェート、チオサルフェート塩、リン酸誘導体、リン酸誘導体塩、アルキルアミン、アルキル置換アンモニウム塩、四級化ピリジン塩、四級化イミダゾール塩、又はそれらの任意の組み合わせから選択される親水性基を実質的に含まない、請求項1~3のいずれか1つに記載の組成物。
6.当該ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体の当該アルファ-1,6-グルカン骨格が、5~95又は125~4000のいずれかの重量平均重合度を有する、実施形態1~5のいずれか1つに記載の組成物。
7.当該ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体が、0.40~0.90の
【0182】
【化37】
結合部分の置換度を有する、実施形態1~6のいずれか1つに記載の組成物。
8.当該骨格グルコースモノマー単位の5%~9%又は26%~40%が、アルファ-1,2又はアルファ-1,3グリコシド結合を介した分岐を有する、実施形態1~7のいずれか1つに記載の組成物。
9.当該有機基が、C
1~C
18アルキル基;ヒドロキシアルキル基;C
2~C
18アルケニル基;C
2~C
18アルキニル基;ベンジル基;C
6~C
20アリール基;(-CH
2CH
2O-)及び/若しくは(-CH
2CH(CH
3)O-)の繰り返し単位を含むポリエーテルであって、当該繰り返し単位の総数が、2~100の範囲である、ポリエーテル;又はそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項1、3、及び6~8のいずれか1つに記載の組成物。
10.当該有機基が、C
1~C
10アルキル基;C
1~C
10ヒドロキシアルキル基;(-CH
2CH
2O-)、(-CH
2CH(CH
3)O-)、(-CH(CH
3)CH(CH
3)O-)、(-CH
2CH(CH
2CH
3)O-)、若しくはそれらの混合物の繰り返し単位を含むポリエーテルであって、当該繰り返し単位の総数が、2~100の範囲である、ポリエーテル;又はそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項1、3、及び6~8のいずれか1つに記載の組成物。
11.当該有機基が、ベンジル基であり、当該ベンジル基が、ハロゲン、シアノ基、エステル基、アミド基、エーテル基、C
1~C
6アルキル基、アリール基、C
2~C
6アルケン基、C
2~C
6アルキン基、又はそれらの任意の組み合わせのうちの1つ以上で置換され得る、請求項1、3、及び6~8のいずれか1つに記載の組成物。
12.当該ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体が、OECD 301B易生分解性CO
2発生試験法によって求めたときに90日目の試験期間において少なくとも10%の生分解性を有する、実施形態1~11のいずれか1つに記載の組成物。
13.液体、ゲル、粉末、ヒドロコロイド、水溶液、顆粒、錠剤、カプセル、単区画サッシェ、パッド、多区画サッシェ、単区画パウチ、又は多区画パウチの形態である、実施形態1~12のいずれか1つに記載の組成物。
14.界面活性剤、酵素、洗剤ビルダー、錯化剤、ポリマー、汚れ放出ポリマー、界面活性増強ポリマー、漂白剤、漂白活性化剤、漂白触媒、布地コンディショナー、粘土、起泡促進剤、抑泡剤、防食剤、汚れ懸濁化剤、汚れ再付着防止剤、染料、殺菌剤、曇り防止剤、蛍光増白剤、香料、飽和又は不飽和脂肪酸、移染防止剤、キレート剤、色相染料、カルシウムカチオン、マグネシウムカチオン、視覚シグナル伝達成分、消泡剤、構造化剤、増粘剤、固化防止剤、デンプン、砂、ゲル化剤、又はそれらの任意の組み合わせから選択される成分を更に含む、実施形態1~13のいずれか1つに記載の組成物。
15.セルラーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、又はそれらの任意の組み合わせから選択される酵素を含む、実施形態1~14のいずれか1つに記載の組成物。
【0183】
典型的には、親水性有機基としては、カルボン酸、カルボン酸塩、スルホン酸誘導体、スルホン酸誘導体塩、硫酸誘導体、硫酸誘導体塩、チオサルフェート、チオサルフェート塩、リン酸誘導体、リン酸誘導体塩、アルキルアミン、アルキル置換アンモニウム塩、四級化ピリジン塩、四級化イミダゾール塩、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0184】
疎水性有機基とは、典型的には、親水性有機基ではないことを意味する。
【0185】
典型的には、親水性有機基は、C1~C18アルキル、C2~C18アルケン、C2~C18アルキン;(-CH2CH2O-)、(-CH2CH(CH3)O-)、(-CH(CH3)CH(CH3)O-)、(-CH2CH(CH2CH3)O-)、若しくはそれらの混合物の繰り返し単位を含むポリエーテルであって、繰り返し単位の総数が2~100の範囲である、ポリエーテル;C6~C20アリール、ベンジル、C1~C18アルキルスルホニル、C6~C20アリールスルホニル、p-トルエンスルホニル基、又はそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0186】
典型的には、疎水性有機基は、C1~C18アルキル、ベンジル、p-トルエンスルホニル基、又はそれらの任意の組み合わせから選択され得る。有機基は、ベンジル基から選択され得、ベンジル基は、ハロゲン、シアノ、エステル、アミド、エーテル基、C1~C6アルキル基、アリール基、C2~C6アルケン基、C2~C6アルキン基、又はそれらの任意の組み合わせのうちの1つ以上で更に置換され得る。
【0187】
典型的には、疎水性有機基は、C1~C18アルキル基、ヒドロキシアルキル基、C2~C18アルケニル基、C2~C18アルキニル基、ベンジル基、C6~C20アリール基;(-CH2CH2O-)、(-CH2CH(CH3)O-)、(-CH(CH3)CH(CH3)O-)、(-CH2CH(CH2CH3)O-)、若しくはそれらの混合物の繰り返し単位を含むポリエーテルであって、当該繰り返し単位の総数が、2~100の範囲である、ポリエーテル;又はそれらの任意の組み合わせから選択され得る。
【0188】
典型的には、疎水性有機基は、C1~C10アルキル基、C1~C10ヒドロキシルアルキル基;(-CH2CH2O-)、(-CH2CH(CH3)O-)、(-CH(CH3)CH(CH3)O-)、(-CH2CH(CH2CH3)O-)、若しくはそれらの混合物の繰り返し単位を含むポリエーテルであって、当該繰り返し単位の総数が、2~100の範囲である、ポリエーテル;又はそれらの任意の組み合わせから選択され得る。
【0189】
典型的には、疎水性有機基は、任意にアルキル基で置換されるC6~C20アリール基から選択され得、当該アリール基は、好ましくは、トリル基であり得る。
【0190】
洗濯ケア及び食器ケア組成物は、典型的には、(a)仕上げた織物のケア、仕上げた織物の洗浄、仕上げた織物の衛生処理、仕上げた織物の消毒、洗剤、染み除去剤、柔軟剤、布地強化剤、染み除去又は仕上げた織物の処理、予洗及び後洗処理、洗濯機の洗浄及びメンテナンス(仕上げた織物とは、衣類及び布製品を含むことを意図する)、(b)食器洗浄機、利用水の両方、及びその内容物のための洗剤、予備的後処理及び機器洗浄及びメンテナンス製品などの、自動食洗機における、皿、グラス、陶器、鍋、フライパン、台所用品、カトラリーなどのケア、又は、(c)食器手洗い用洗剤に好適である。
【0191】
以下の実施例の製剤は、本発明に好適である:
以下は、本開示に係る洗浄組成物の例示の実施例であり、限定を意図するものではない。
【0192】
実施例1~7:重質液体洗濯洗剤組成物。
【0193】
【0194】
洗浄及び/又は処理組成物の総重量に基づく。酵素濃度は、原材料として報告される。
【0195】
【0196】
以下は、好適な水溶性単位用量製剤である。組成物は、単一チャンバ水溶性単位用量物品の一部であってもよく、又は複数の区画にわたって分割されて、以下の「区画全体が平均化された」全物品組成物をもたらす。
【0197】
【0198】
固体自由流動性粒子状洗濯洗剤組成物の実施例:
【0199】
【実施例】
【0200】
特に明記しない限り、全ての成分は、Sigma-Aldrich(St.Louis,Missouri)から入手可能であり、入手したまま使用した。
【0201】
本明細書で使用するとき、「Comp.Ex.」は、比較例を意味し、「Ex.」は、実施例を意味し、「std dev」は、標準偏差を意味し、「g」は、グラムを意味し、「mL」は、ミリリットルを意味し、「uL」は、マイクロリットルを意味し、「wt」は、重量を意味し、「L」は、リットルを意味し、「min」は、分を意味し、「kDa」は、キロダルトンを意味し、「PES」は、ポリエーテルスルホンを意味する。
【0202】
NMRスペクトル法によるアノマー結合の決定方法
グルコシルトランスフェラーゼGTF8117及びα-1,2分枝酵素によって合成された水溶性オリゴ糖類及び多糖生成物中のグリコシド結合を、1H NMR(核磁気共鳴スペクトル法)によって決定した。乾燥オリゴ糖/多糖ポリマー(6mg~8mg)を、D2O中1mM DSS(4,4-ジメチル-4-シラペンタン-1-スルホン酸;NMR参照標準)溶液0.7mLに溶解させた。サンプルを周囲温度で一晩撹拌した。透明な均質溶液525uLを5mm NMR管に移した。2D 1H、13Cホモ/ヘテロ核型NMR実験を使用してAGU(無水グルコース単位)結合を同定した。データを20℃で収集し、500MHz又は600MHzのいずれかで動作するBruker Avance III NMRスペクトル計で処理した。このシステムは、プロトン最適化され、ヘリウム冷却された冷凍プローブを備える。1D 1HNMRスペクトルを使用して、グリコシド結合分布を定量化し、多糖骨格が主にアルファ-1,6であることを見出した。この結果は、個々の結合タイプを表すNMR共鳴の積分強度を、グルコース結合を表す全てのピークの合計の積分強度で除し、100を乗じた比を反映している。
【0203】
水溶解度試験法
以下の方法を使用して、ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体が水溶性であるかどうかを判定した。誘導体を、脱イオン水中に指定の重量で懸濁させ、室温で一晩振盪又は撹拌した。固形分が検出されない場合、ポリマーは可溶性である。
【0204】
生分解性試験方法
多糖誘導体の生分解性を、OECD 301B易生分解性CO2発生試験指針に従って判定した。この試験では、試験物質が唯一の炭素及びエネルギー源であり、好気性条件下では、微生物が試験物質を代謝してCO2を生成し、又は炭素をバイオマスに組み込む。試験物質によって生成されるCO2の量(ブランク接種材料によって発生したCO2について補正)は、試験物質中の有機炭素が完全にCO2に変換された場合に生成され得たCO2の理論量(ThCO2)の百分率として表される。
【0205】
ポリマーの白色度性能を評価する方法
白色度保持とも呼ばれる白色度維持は、汚れの存在下で洗浄されたときに白色物品の白色度が失われるのを防ぐ洗剤の能力である。白い衣類は、汚れた衣類から汚れが除去され、洗浄水中に懸濁し、その後、これらの汚れが衣類に再付着し得るときに、経時的に汚れて/くすんで見える場合があるので、衣類は洗浄されるたびに白色が失われる。ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体の白色度効果を、5つのポットを有する自動ミニウォッシャーを使用して評価する。WFK Testgewebe GmbHによって供給されるSBL2004試験汚れストリップを使用して、消費者の汚れレベル(身体汚れ、食物、垢、草などの混合物)をシミュレートする。平均して、1つのSBL2004ストリップごとに8gの汚れをロードする。WFK Testgewebe GmbHから購入した以下の表2の白色布地見本を白色度トレーサーとして使用する。洗浄試験の前に、Konica Minolta CM-3610D分光光度計を使用して全ての白色度トレーサーのL、a、b値を測定する。
【0206】
【表5】
*WI(A)-光源A(屋内照明)
**WI(D65)-光源D65(屋外照明)
【0207】
試験を完了するためには、3つの洗浄サイクルが必要である:
サイクル1:各ミニウォッシャーのチューブ内で(規定の硬度の)7.57Lの水と混合することによって、所望の量の洗剤を完全に溶解させる。各布地タイプの3.5 SBL2004ストリップ(約28gの汚れ)及び3つの白色度トレーサー(内部複製物)を規定の条件下においてミニウォッシャーで洗浄し、すすぎ、次いで、乾燥させる。
サイクル2:上記白色度トレーサーを、新しいセットのSBL2004シートを用いて再度洗浄し、乾燥させる。全ての他の条件は、サイクル1と同じままである。
サイクル3:上記白色度トレーサーを、新しいセットのSBL2004シートを用いて再度洗浄し、乾燥させる。全ての他の条件は、サイクル1と同じままである。
【0208】
サイクル3の後、全ての白色度トレーサーを乾燥させ、次いで、Konica Minolta CM-3610 D分光光度計を使用して再び測定する。洗浄前及び洗浄後のL、a、b測定値に基づき、白色度指数の変化(ΔWI(CIE))を計算する。
ΔWI(CIE)=WI(CIE)(洗浄後)-WI(CIE)(洗浄前)。
【0209】
ミニウォッシャーは5つのポットを有し、5つの製品を1回の試験で試験することができる。典型的なポリマー白色度性能試験では、比較ポリマーを含有するか又はポリマーを含まない1つの参照製品を、本明細書に開示される本発明のポリグルカン誘導体を含有する4つの製品と共に試験し、「対参照ΔWI」を報告する。
対参照ΔWI(CIE)=ΔWI(CIE)(製品)-ΔWI(CIE)(参照)
【0210】
ポリα-1,3-グルカンの代表的な調製
ポリα-1,3-グルカンは、米国特許第7,000,000号、米国特許出願公開第2013/0244288号(現在米国特許第9,080,195号)、及び米国特許出願公開第2013/0244287号(現在米国特許第8,642,757号(これらは全て、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているようなgtfJ酵素調製物を使用して調製することができる。
【0211】
いずれも、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2014/0179913号(現在米国特許第9,139,718号)(例えば、その中の実施例12を参照されたい)に開示されている手順に従って、ポリα-1,3-グルカンポリマーを合成することができる。
【0212】
ポリアルファ-1,6-グルカンサンプルの調製
様々な量のアルファ-1,2分岐を含有するポリアルファ-1,6-グルカンを調製する方法は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2017/091533号に開示されている。スクロース濃度、温度、及びpHなどの反応パラメータを調整して、様々なレベルのアルファ-1,2-分岐及び分子量を有するポリアルファ-1,6-グルカンを提供することができる。アルファ-1,2-分岐ポリアルファ-1,6-グルカンを調製するための代表的な手順を以下に提供する(19%のアルファ-1,2-分岐及び81%のアルファ-1,6結合を含有する)。1D 1HNMRスペクトルを使用して、グリコシド結合分布を定量化した。アルファ-1,2-分岐を有するポリアルファ-1,6-グルカンの追加のサンプルを同様に調製した。例えば、あるサンプルは、32%のアルファ-1,2-分岐及び68%のアルファ-1,6結合を含有しており、別のサンプルは、10%のアルファ-1,2-分岐及び90%のアルファ-1,6結合を含有していた。
【0213】
19%のα-1,2分岐を有するポリα-1,6-グルカンの調製
以下の手順に従って、グルコシルトランスフェラーゼGTF8117及びα-1,2-分枝酵素GTFJ18T1の段階的組み合わせを使用して、可溶性α-1,2-分岐ポリα-1,6-グルカンを調製した。
【0214】
スクロース(450g/L)、GTF8117(9.4U/mL)、及び50mM酢酸ナトリウムで構成される反応混合物(2L)をpH5.5に調整し、47℃で撹拌した。アリコート(0.2~1mL)を所定の時点で回収し、90℃で15分間加熱することによりクエンチした。得られた熱処理されたアリコートを0.45μmフィルターに通した。フロースルーをHPLCにより分析して、スクロース、グルコース、フルクトース、ロイクロース、オリゴ糖、及び多糖の濃度を求めた。23.5時間後、反応混合物を30分間かけて90℃に加熱した。熱処理された反応混合物のアリコートを0.45μmフィルターに通し、可溶性単糖/二糖類、オリゴ糖類、及び多糖類についてフロースルーを分析した。主な生成物は、DPwが93である直鎖状デキストランであった。
【0215】
238.2gのスクロース及び210mLのα-1,2-分枝酵素GTFJ18T1(5.0U/mL)を、直上に記載したGTF8117反応から得られた残りの熱処理された反応混合物に添加することによって、第2の反応混合物を調製した。混合物を、約2.2Lの体積で30℃において撹拌した。アリコート(0.2~1mL)を所定の時点で回収し、90℃で15分間加熱することによりクエンチした。得られた熱処理されたアリコートを0.45μmフィルターに通した。フロースルーをHPLCにより分析して、スクロース、グルコース、フルクトース、ロイクロース、オリゴ糖、及び多糖の濃度を求めた。95時間後、反応混合物を30分間かけて90℃に加熱した。熱処理された反応混合物のアリコートを0.45μmフィルターに通し、可溶性単糖/二糖類、オリゴ糖類、及び多糖類についてフロースルーを分析した。残りの熱処理された混合物を、1Lの遠心分離ボトルを使用して遠心分離した。上清を回収し、1又は5KDa MWCOカセット及び脱イオン水を用いた限外濾過システムを使用して、200倍超清浄化した。清浄化されたオリゴ/多糖生成物溶液を乾燥させた。次いで、乾燥サンプルを1H NMRスペクトル法により分析して、オリゴ糖類及び多糖類のアノマー結合を決定した。
【0216】
比較ポリマー例1:
低DoSでの(DoS=0.17)塩化ベンジルによるポリアルファ-1,3-グルカン(DPw800)の修飾
4つ口2リットルフラスコに、撹拌しながら980mLの水を添加し、ポリアルファ-1,3-グルカン(270g、40重量%固形分)を少しずつ添加した。反応混合物を20~25℃、次いで室温で2時間撹拌しながら、水酸化ナトリウム(55g、50重量%水溶液)を10分間かけて滴下した。反応混合物を75℃に加熱し、塩化ベンジル(77g)を添加した。反応混合物を85℃に加熱し、85℃で3.5時間維持した。反応混合物を冷却し、濾過した。湿潤ケーキを水(3×700mL)、エタノール(50重量%、800mL)、メタノール(80重量%、800mL)、アセトン(800mL)、及びヘキサン(2×500mL)で洗浄した。得られた湿潤ケーキを、真空によりフリットで(on frit)乾燥させ、3時間N2パージして、白色の固形分を得た。固形分を80℃の真空オーブンで一晩窒素掃引しながら乾燥させて、白色の固形分96gを得た。1H NMR分析によってベンジル置換度は0.17であると求められた。この材料は、0.1重量%で水溶性ではない。
【0217】
本発明のポリマー実施例1
フェニルイソシアネートによるポリアルファ-1,6-グルカンの修飾(DoS=0.24)
ポリアルファ-1,6-グルカン(21kDa、31%アルファ-1,2-分岐及び69%アルファ-1,6結合、20.0g)を、200mLのジメチルホルムアミドと共に90℃で1時間窒素下、加熱した。混合物を55℃に冷却した。これに、フェニルイソシアネート(14g)を添加した。混合物を、3時間かけて70℃に加熱した。室温に冷却した後、混合物を300mLのイソプロパノールに注いで、生成物を沈殿させた。生成物を濾過により収集し、イソプロパノール(3×100mL)及びアセトン(100mL)で洗浄した。1H NMR分析によって置換度は0.24であると求められた。この材料は、0.1重量%超で水溶性である。
【0218】
本発明のポリマー実施例2
クロロギ酸フェニルによるポリアルファ-1,6-グルカンの修飾
ポリアルファ-1,6-グルカン(21kDa、31%アルファ-1,2-分岐及び69%アルファ-1,6結合、10.0g)を、200mLのジメチルアセトアミドと共に90℃で1.5時間窒素下、加熱した。混合物を室温に冷却した。これに、ピリジン(4.2g)を添加した。混合物を塩/氷浴で冷却した。冷却した混合物に、クロロギ酸フェニル(9g)を滴下した。混合物を室温で2時間撹拌し、次いで、室温に加温し、72時間撹拌した。氷(10g)を混合物に添加し、得られた混合物を室温で30分間撹拌した。内容物を300mLのイソプロパノールに注いで、微細な白色の沈殿物を得た。固形分を濾過により収集し、イソプロパノール(3×100mL)及びアセトン(100mL)で洗浄した。1H NMR分析によってカーボネート基による置換度は0.07であると求められた。
【0219】
本発明のポリマー実施例3(DoS=0.43)
フェニルイソシアネートによるポリアルファ-1,6-グルカンの修飾
ポリアルファ-1,6-グルカン粉末(56kDa、15~25%のアルファ-1,2-分岐及び75~85%のアルファ-1,6結合、20.14g)をDMAc(100mL)に懸濁させ、室温で一晩撹拌した。DMAc(37g)を85℃及び20トルで留去し、続いて、ポット内に残っている材料にフェニルイソシアネート(19.21g)を滴下した。反応混合物を85℃で3時間撹拌した。生成物が沈殿し、イソプロパノールを使用して精製し、真空乾燥後に34.99gの白色の粉状物を得た。
【0220】
本発明のポリマー実施例4(DoS=0.59)
フェニルイソシアネートによるポリアルファ-1,6-グルカンの修飾
ポリアルファ-1,6-グルカン粉末(56kDa、15~25%のアルファ-1,2-分岐及び75~85%のアルファ-1,6結合、20.07g)をDMAc(100mL)に懸濁させ、室温で一晩撹拌した。DMAc(34.09g)を87℃及び22トルで留去し、続いて、ポット内に残っている材料にフェニルイソシアネート(26.14g)を滴下した。反応混合物を85℃で4時間撹拌した。生成物が沈殿し、イソプロパノールを使用して精製し、真空乾燥後に29.41gの粉状物を得た。
【0221】
本発明のポリマー実施例5(DoS=0.24)
フェニルイソシアネートによるポリアルファ-1,6-グルカンの修飾
ポリアルファ-1,6-グルカン粉末(40kDa、15~25%のアルファ-1,2-分岐及び75~85%のアルファ-1,6結合、20.20g)をDMAc(100mL)に懸濁させ、室温で一晩撹拌した。DMAc(24.52g)を88℃及び30トルで留去し、続いて、ポット内に残っている材料にフェニルイソシアネート(10.77g)を滴下した。反応混合物を85℃で2時間撹拌した。生成物が沈殿し、イソプロパノールを使用して精製し、真空乾燥後に31.92gの粉状物を得た。
【0222】
本発明のポリマー実施例6(DoS=0.20)
ジエチルカルバモイルクロリドによるポリアルファ-1,6-グルカンの修飾
ポリアルファ-1,6-グルカン粉末(56kDa、15~25%のアルファ-1,2-分岐及び75~85%のアルファ-1,6結合、20.22g)をDMAc(100mL)に懸濁させ、室温で一晩撹拌した。DMAc(33.62g)を84℃及び20トルで留去し、続いて、ポット内に残っている材料にジエチルカルバモイルクロリド(10.06g)を滴下した。反応混合物を85℃で4.5時間撹拌した。生成物が沈殿し、イソプロパノールを使用して精製し、真空乾燥後に21.20gの薄い黄褐色の粉状物を得た。
【0223】
本発明のポリマー実施例7(DoS=0.40)
ジエチルカルバモイルクロリドによるポリアルファ-1,6-グルカンの修飾
ポリアルファ-1,6-グルカン粉末(56kDa、15~25%のアルファ-1,2-分岐及び75~85%のアルファ-1,6結合、20.20g)をDMAc(100mL)に懸濁させ、室温で一晩撹拌した。DMAc(40.01g)を88℃及び20トルで留去し、続いて、ポット内に残っている材料にジエチルカルバモイルクロリド(20.16g)を滴下した。反応混合物を85℃で7時間撹拌し、続いて、15時間室温に冷却しながら撹拌した。生成物が沈殿し、イソプロパノールを使用して精製し、真空乾燥後に21.19gの薄い黄褐色の粉状物を得た。
【0224】
本発明のポリマー実施例8(DoS=0.21)
p-トルエンスルホニルイソシアネートによるポリアルファ-1,6-グルカンの修飾
ポリアルファ-1,6-グルカン粉末(56kDa、15~25%のアルファ-1,2-分岐及び75~85%のアルファ-1,6結合、20.05g)をDMAc(100mL)に懸濁させ、室温で一晩撹拌した。DMAc(45.56g)を88℃及び22トルで留去し、続いて、ポット内に残っている材料にp-トルエンスルホニルイソシアネート(15.47g)を滴下した。反応混合物を88℃で23時間撹拌した。生成物が沈殿し、イソプロパノールを使用して精製し、真空乾燥後に26.51gの粉状物を得た。
【0225】
本発明のポリマー実施例9(DoS=0.39)
水中におけるフェニルイソシアネートによるポリアルファ-1,6-グルカンの修飾
ポリアルファ-1,6-グルカン粉末(56kDa、15~25%のアルファ-1,2-分岐及び75~85%のアルファ-1,6結合、20.15g)を水(80.10g)に溶解させ、続いて、NaOH(0.25N、約2mL)を添加して、pHを11に上昇させた。フェニルイソシアネート(17.52g)を滴下し、続いて、室温で3.5時間撹拌した。生成物が沈殿し、イソプロパノールを使用して精製し、真空乾燥後に31.35gの白色の粉状物を得た。
【0226】
本発明のポリマー実施例10(DoS=0.39)
ベンジルイソシアネートによるポリアルファ-1,6-グルカンの修飾
ポリアルファ-1,6-グルカン粉末(560kDa、15~25%のアルファ-1,2-分岐及び75~85%のアルファ-1,6結合、10.08g)を水(40.40g)に溶解させ、続いて、NaOH(0.25N、約1mL)を添加して、pHを11に上昇させた。ベンジルイソシアネート(9.79g)を滴下し、続いて、室温で4時間撹拌した。生成物が沈殿し、イソプロパノールを使用して精製し、真空乾燥後に13.40gの粉状物を得た。
【0227】
生分解性試験の結果
実施例1及び8のポリアルファ-1,6-グルカン類誘導体の生分解性を、OECD 301B易生分解性CO2発生試験指針に従って判定した。この試験では、試験物質が唯一の炭素及びエネルギー源であり、好気性条件下では、微生物が試験物質を代謝してCO2を生成し、又は炭素をバイオマスに組み込む。試験物質によって生成されるCO2の量(ブランク接種材料によって発生したCO2について補正)は、試験物質中の有機炭素が完全にCO2に変換された場合に生成され得たCO2の理論量(ThCO2)の百分率として表される。
【0228】
【0229】
生分解試験結果(表2)は、材料が56日目に40%超分解していたことを示す。
【0230】
液体ベース洗剤におけるポリマー性能
列挙する成分を混合することによって、当業者に既知の既存の手段により以下の液体洗剤を調製する。
A:比較組成物、ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体を含まない、
B:本発明の組成物、本発明のポリアルファ-1,6-グルカン誘導体(本発明のポリマー実施例1)を含む、
C:本発明の組成物、本発明のポリアルファ-1,6-グルカン誘導体(本発明のポリマー実施例3)を含む、
【0231】
【0232】
比較組成物A、本発明の組成物B、及び本発明の組成物Cの製剤の白色度維持性能を、白色度法に従って評価する。本発明のポリアルファ-1,6-グルカン誘導体は、比較組成物Aと比較して、白色度性能を明確に改善させることができる。
【0233】
本明細書に開示される寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳密に限定されるものとして理解されるべきではない。その代わりに、特に指示がない限り、そのような寸法は各々、列挙された値とその値を囲む機能的に同等な範囲との両方を意味することが意図される。例えば、「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味することが意図される。
【国際調査報告】