(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-04
(54)【発明の名称】不織布、その作製方法、リチウム電池用セパレータおよびリチウム電池用セパレータベースフィルム
(51)【国際特許分類】
D04H 1/542 20120101AFI20230627BHJP
D04H 1/732 20120101ALI20230627BHJP
D04H 1/4382 20120101ALI20230627BHJP
D21H 27/30 20060101ALI20230627BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20230627BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20230627BHJP
H01M 50/417 20210101ALI20230627BHJP
H01M 50/423 20210101ALI20230627BHJP
H01M 50/426 20210101ALI20230627BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20230627BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20230627BHJP
【FI】
D04H1/542
D04H1/732
D04H1/4382
D21H27/30 B
H01M50/489
H01M50/414
H01M50/417
H01M50/423
H01M50/426
H01M50/42
H01M50/403 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573619
(86)(22)【出願日】2020-06-12
(85)【翻訳文提出日】2022-11-29
(86)【国際出願番号】 CN2020095860
(87)【国際公開番号】W WO2021248465
(87)【国際公開日】2021-12-16
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518279484
【氏名又は名称】シェンチェン シニア テクノロジー マテリアル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳莉
(72)【発明者】
【氏名】林陸菁
(72)【発明者】
【氏名】楊雪梅
(72)【発明者】
【氏名】陳秀峰
【テーマコード(参考)】
4L047
4L055
5H021
【Fターム(参考)】
4L047AA14
4L047AA17
4L047AA21
4L047AA23
4L047AA24
4L047AA26
4L047AA28
4L047AB02
4L047AB07
4L047BA09
4L047BA21
4L047CA01
4L047CC12
4L055AF14
4L055AF15
4L055AF25
4L055AF29
4L055AF33
4L055AF34
4L055AF35
4L055AG17
4L055AG69
4L055AH37
4L055BE08
4L055EA04
4L055EA16
4L055EA20
4L055GA31
4L055GA39
5H021BB01
5H021CC02
5H021EE03
5H021EE04
5H021EE06
5H021EE07
5H021EE08
5H021EE10
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH05
5H021HH06
(57)【要約】
不織布、その作製方法、リチウム電池用セパレータおよびリチウム電池用セパレータベースフィルムを提供し、材料の分野に属する。不織布の原材料は、幹繊維と接着繊維とを含み、接着繊維は、第1接着繊維と第2接着繊維とを含み、第1接着繊維の融点または軟化点は120~220℃であり、第2接着繊維の融点または軟化点は100~170℃であり、第2接着繊維の融点または軟化点は、第1接着繊維よりも15℃以上低く、幹繊維の融点または軟化点は、第1接着繊維よりも20℃以上高い。前記不織布の表面が微細な凹凸構造を有し、これによって、不織布の表面に対して塗布を行うとき、不織布の凹凸構造の存在により不織布の粘着性を高めることができる。さらに、塗布スラリーの不織布の表面に対する浸潤能力を向上させることができ、塗布スラリーと不織布との接触面積とを増加させて、両方の表面が嵌り合って嵌合力が発生し、強力な結合の効果を実現できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布であって、
前記不織布の原材料は、幹繊維と接着繊維とを含み、
前記接着繊維は、第1接着繊維と第2接着繊維とを含み、
前記第1接着繊維の融点または軟化点は120~220℃であり、前記第2接着繊維の融点または軟化点は100~170℃であり、前記第2接着繊維の融点または軟化点は、前記第1接着繊維の融点または軟化点よりも15℃以上低く、
前記幹繊維の融点または軟化点は、前記第1接着繊維の融点または軟化点よりも20℃以上高い
ことを特徴とする不織布。
【請求項2】
前記第2接着繊維の融点または軟化点は、前記第1接着繊維の融点または軟化点よりも20~100℃低い
ことを特徴とする請求項1に記載の不織布。
【請求項3】
前記第1接着繊維および前記第2接着繊維のそれぞれの繊維長さは1~6mmであり、前記第1接着繊維および前記第2接着繊維のそれぞれの繊維直径は10μm以下であり、
前記幹繊維の繊維長さは1~6mmであり、前記幹繊維の繊維直径は4μm以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の不織布。
【請求項4】
前記幹繊維は、前記幹繊維と前記接着繊維との総質量の60~80%を占め、
任意選択で、前記幹繊維は、前記幹繊維と前記接着繊維との総質量の65~75%を占める
ことを特徴とする請求項1に記載の不織布。
【請求項5】
前記第2接着繊維は、前記接着繊維の総質量の10~40%を占め、
任意選択で、前記第2接着繊維は、前記接着繊維の総質量の20~30%を占める
ことを特徴とする請求項1に記載の不織布。
【請求項6】
前記不織布は、密度が0.50~0.9g/cm
3であり、平均孔径が4.5μm以下であり、平均孔径に対する最大孔径の比が1~10である
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の不織布。
【請求項7】
前記幹繊維の材料は、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリアミド繊維、ポリイミド繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ポリフェニレンスルファイド繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリカーボネート繊維およびアラミド繊維のうちの少なくとも1種を含み、
任意選択で、前記第1接着繊維の材料は、未延伸ポリエステル繊維、ポリフッ化ビニリデン繊維、ポリアミド繊維、コポリアミド繊維およびポリオレフィン繊維のうちの少なくとも1種を含み、
前記第2接着繊維の材料は、ポリオレフィン繊維、共重合ポリエステル繊維およびコポリアミド繊維のうちの少なくとも1種を含む
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の不織布。
【請求項8】
熱圧処理の温度は、前記第2接着繊維の融点または軟化点温度よりも10℃以上高く、前記熱圧処理の温度は、前記幹繊維の融点または軟化点の温度以下であり、
任意選択で、熱圧処理の熱圧速度は1~100m/minである
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の不織布の作製方法。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の不織布を含む
ことを特徴とするリチウム電池用セパレータベースフィルム。
【請求項10】
塗布層と請求項9に記載のベースフィルムとを含み、前記塗布層が前記ベースフィルムの表面に付着している
ことを特徴とするリチウム電池用セパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、材料の分野に属し、具体的に、不織布、その作製方法、リチウム電池用セパレータおよびリチウム電池用セパレータベースフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
市場の主流となるリチウムイオン電池用セパレータは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)をはじめとする多孔質ポリオレフィンフィルムであり、場合によって単層、2層および3層の湿式セパレータまたは乾式セパレータなどの仕様の異なるセパレータを採用する。多孔質ポリオレフィンセパレータが経済的であるので量産に使用されるが、その熱安定性が劣るため、電池エネルギー密度のさらなる向上が制限される。140℃超の高温下でポリオレフィンリチウム電池用セパレータの大きな熱収縮が発生することがあり、セパレータの熱収縮の程度が大きい場合、電池の正極と負極とが接触して短絡が発生しやすくなり、電池の熱暴走が発生して、電池自体の発火や爆発を招くことがある。
【0003】
不織布セパレータは、耐熱性が優れるため、高エネルギーリチウム電池糸に適用する見込みがある。不織布セパレータは、空隙率が高く、熱安定性が高く、耐熱温度が150℃以上になる。また、不織布の三次元空孔構造によれば、比較的に高い電解液保有率を保証することができるとともに、セパレータに突き刺さることに起因した短絡を効果的に防止することができる。
【0004】
不織布は、孔径が大きく、空隙率が高いが、デンドライトが成長して孔を貫通することを防止するために、その厚さを増加しなければならないので、リチウムイオン電池用セパレータの孔径および厚さに対する要求をともに満足することができない。このため、従来技術において、不織布は、リチウムイオン電池用セパレータとしてそのまま使用することができず、通常、リチウムイオン電池複合セパレータのベースフィルムだけとして使用される。
【0005】
リチウムイオン電池用セパレータの性能を保証するため、不織布における塗布層の均一性を保つ必要がある。したがって、不織布の均一性および塗布面の平滑性を良好に保つ必要がある。さらに、不織布の塗布面の粘着性にも要求され、これによって、塗布層と不織布との密着性を保証できるとともに、塗布層と不織布との階層化や剥離が発生しないように保証できる。
【発明の概要】
【0006】
本出願の実施例は、不織布の、塗布層などの他の材料との結合性を向上させる不織布、その作製方法、リチウム電池用セパレータおよびリチウム電池用セパレータベースフィルムを提供することを目的とする。
【0007】
本出願の第1局面は、不織布を提供し、該不織布の原材料は、幹繊維と接着繊維とを含み、接着繊維は、第1接着繊維と第2接着繊維とを含む。
【0008】
第1接着繊維の融点または軟化点は120~220℃であり、第2接着繊維の融点または軟化点は100~170℃であり、第2接着繊維の融点または軟化点は、第1接着繊維の融点または軟化点よりも15℃以上低い。
【0009】
幹繊維の融点または軟化点は、第1接着繊維の融点または軟化点よりも20℃以上高い。
【0010】
第2接着繊維は、融点または軟化点が105~170℃であり比較的に低いため、熱間圧延処理が施されるときに先に融解し、不織布の表面に微細な凹凸構造が不連続的に形成される。幹繊維は、第1接着繊維および第2接着繊維よりも融点または軟化点が高く、熱圧処理の過程において寸法の安定性が高い。第1接着繊維が部分的に融解し、第2接着繊維が全部に融解し、そして各繊維を接着して冷却させて、不織布の三次元網状構造を形成する。第2接着繊維の融点または軟化点は第1接着繊維の融点または軟化点よりも15℃以上低いため、熱圧処理の過程において第2接着繊維が先に融解し、そして第1接着繊維が融解する。このため、不織布の形成過程における各温度での融解の程度をコントロールすることにより、不織布の表面に微細な凹凸構造を形成することができる。凹凸構造によれば、アンカー効果を果たし、塗布層と不織布ととの強力な結合を実現することができる。塗布スラリーが不織布の表面における微細な凹孔に入り込み、塗布層が硬化して動かなくなり、極めて強い結合強度を生成することができる。
【0011】
本出願の第1局面のいくつかの実施例において、第2接着繊維の融点または軟化点は、第1接着繊維の融点または軟化点よりも20~100℃低い。
【0012】
本出願の第1局面のいくつかの実施例において、第1接着繊維および第2接着繊維のそれぞれの繊維長さは1~6mmであり、第1接着繊維および第2接着繊維のそれぞれの繊維直径は10μm以下である。
【0013】
幹繊維の繊維長さは1~6mmであり、幹繊維の繊維直径は4μm以下である。
【0014】
任意選択で、第1接着繊維および第2接着繊維のそれぞれの繊維直径は2.5~9μmであり、幹繊維の繊維直径は1~3.5μmである。
【0015】
本出願の第1局面のいくつかの実施例において、幹繊維は、不織布の幹繊維と接着繊維との総質量の60~80%を占める。
【0016】
任意選択で、幹繊維は、不織布の幹繊維と接着繊維との総質量の65~75%を占める。
【0017】
本出願の第1局面のいくつかの実施例において、第2接着繊維は、接着繊維の総質量の10~40%を占める。
【0018】
任意選択で、第2接着繊維は、接着繊維の総質量の20~30%を占める。
【0019】
本出願の第1局面のいくつかの実施例において、不織布は、密度が0.50~0.9g/cm3であり、平均孔径が4.5μm以下であり、平均孔径に対する最大孔径の比が1~10である。
【0020】
本出願の第1局面のいくつかの実施例において、幹繊維の材料は、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリアミド繊維、ポリイミド繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ポリフェニレンスルファイド繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリカーボネート繊維およびアラミド繊維のうちの少なくとも1種を含む。
【0021】
本出願の第1局面のいくつかの実施例において、第1接着繊維の材料は、未延伸ポリエステル繊維、ポリフッ化ビニリデン繊維、ポリアミド繊維、コポリアミド繊維およびポリオレフィン繊維のうちの少なくとも1種を含む。
【0022】
第2接着繊維の材料は、ポリオレフィン繊維、共重合ポリエステル繊維およびコポリアミド繊維のうちの少なくとも1種を含む。
【0023】
本出願の第2局面は、不織布の作製方法を提供する。熱圧処理の温度は、前記第2接着繊維の融点または軟化点の温度よりも10℃以上高く、前記熱圧処理の温度は、前記幹繊維の融点または軟化点の温度以下であり、任意選択で、熱圧処理の熱圧速度は1~100m/minである。
【0024】
本出願の第3局面は、リチウム電池用セパレータベースフィルムを提供し、リチウムイオンセパレータベースフィルムが上記の第1局面による不織布を含む。
【0025】
本出願の第4局面は、リチウム電池用セパレータを提供し、リチウム電池用セパレータが、塗布層と上記の第2局面によるベースフィルムとを含み、塗布層がベースフィルムの表面に付着している。
【0026】
本出願に係る不織布は、その表面の凹凸構造の存在により、不織布の結合性を高めることができ、したがって、塗布スラリーと不織布との接触面積を増加させることができ、両方の表面が嵌り合って嵌合力が発生し、強力な結合の効果を実現できる。
不織布の均一性および結合性が優れるので、塗布層と不織布とが密着し、塗布層と不織布との階層化や剥離が発生しないようになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本出願の実施例の技術案をより明瞭に説明するため、以下、実施例の説明に必要な図面を簡単に説明する。説明する図面は、本出願のいくつかの実施例を示すものにすぎず、範囲を限定するものではない。当業者は、発明能力を用いなくても、これらの図面をもとに他の関連図面を得ることも可能である。
【0028】
【
図1】実施例1による不織布の表面の電子顕微鏡写真である。
【
図2】比較例1による不織布の表面の電子顕微鏡写真である。
【
図3】比較例2による不織布の表面の電子顕微鏡写真である。
【
図4】比較例3による不織布の表面の電子顕微鏡写真である。
【
図5】比較例4による不織布の表面の電子顕微鏡写真である。
【
図6】比較例5による不織布サンプルの表面の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本出願の実施例の目的、技術案および利点をより明瞭に説明するため、以下、本出願の実施例の技術案を明瞭かつ完全に説明する。実施例において、具体的な条件を明記しないことについて、従来の条件またはメーカーの勧めの条件下で行う。使用する試剤または器械の、製造メーカーが明記されていないものについて、市販の従来品を使用することが可能である。
【0030】
不織布の支持層に塗布層を複合する方法は、通常、まず塗布スラリーを調製し、そしてマイクログラビアコート、スプレーコート、ディップコートなどの方式でスラリーを不織布の表面に塗布し、乾燥を経て塗布層を硬化させるように行われる。塗布層と不織布との間の結合力は、異なる材料界面間の接触による相互作用であり、塗布層と不織布との間の界面張力、表面自由エネルギー、官能基の性質、界面反応などに影響されることがあり、その要因が複雑である。吸着理論および拡散理論に基づいて、塗布層と不織布との間の結合力が、主に分子間力、すなわち、ファンデルワールス力および水素結合の強さである。化学結合理論に基づいて、塗布層とベースフィルムとが化学結合で繋がっているが、化学結合を形成するには特定の条件を満たさなければならず、化学結合が必ず形成するとは言えないため、接着剤とベースとのすべての接触箇所で化学結合を形成することができない。また、機械的理論に基づいて、塗布層と不織布との間の結合力は、主に、塗布スラリーが不織布の表面の孔または凹凸構造に浸透して硬化して、嵌合により界面領域で生成されるものであり、この本質が摩擦力である。
【0031】
不織布の塗布面の結合性が劣る場合、塗布スラリーが不織布の表面に良好に浸潤することができなくなり、気泡が孔に残留され、塗布スラリーが不織布の孔に架け渡され、塗布スラリーと不織布との接触面積が減少してしまうので、塗布層と不織布との結合力が弱くなり、不織布塗布セパレータの性能が大幅に低下するなどの問題を招く。
以下、本出願の実施例による不織布、リチウム電池用セパレータおよびリチウム電池用セパレータベースフィルムを具体的に説明する。
【0032】
本出願の不織布は、その原材料が、幹繊維と接着繊維とを含む。接着繊維は、第1接着繊維と第2接着繊維とを含む。第1接着繊維の融点または軟化点は120~220℃であり、第2接着繊維の融点または軟化点は100~170℃であり、第2接着繊維の融点または軟化点は、第1接着繊維の融点または軟化点よりも15℃以上低く、幹繊維の融点または軟化点は、第1接着繊維の融点または軟化点よりも20℃以上高い。
【0033】
例示的に、本出願の実施例において、幹繊維の材料は、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリアミド繊維、ポリイミド繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ポリフェニレンスルファイド繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリカーボネート繊維およびアラミド繊維のうちの少なくとも1種を含む。
【0034】
例えば、ポリエステル繊維は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートおよびポリイソフタル酸エステルなどから選択されるものである。ポリオレフィン繊維は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、およびES(Ethylene-Propylene Side By Side)繊維などから選択されるものである。ポリアミド繊維は、例えばPA66などである。
【0035】
第1接着繊維の材料は、未延伸ポリエステル繊維、ポリフッ化ビニリデン繊維、ポリアミド繊維、コポリアミド繊維およびポリオレフィン繊維のうちの少なくとも1種を含む。
例えば、未延伸ポリエステル繊維は、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートなどから選択されるものである。ポリオレフィン繊維は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレンおよびES繊維などから選択されるものである。
【0036】
第2接着繊維の材料は、ポリオレフィン繊維、共重合ポリエステル繊維およびコポリアミド繊維のうちの少なくとも1種を含む。
【0037】
例えば、ポリオレフィン繊維は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレンおよびES繊維などから選択されるものである。共重合ポリエステル繊維は、CoPETおよびCoPBT(共重合ポリブチレンテレフタレート)などから選択されるものである。コポリアミド繊維は、PA6/6、PA6/66、PA6/66/12、PA6/66/69、PA6/66/610、PA6/66/612、PA6/66/1010、PA6/612/12、PA6/610/12、PA6/66/69/12およびPA6/66/11/12などから選択される。
【0038】
なお、本出願の他の実施例において、第1接着繊維、第2接着繊維および幹繊維として、他の材料を選択してもよい。
【0039】
例示的に、第1接着繊維の融点または軟化点は、120℃、125℃、130℃、140℃、145℃、155℃、167℃、183℃、190℃、200℃、210℃または220℃などであってもよい。
【0040】
第2接着繊維の融点または軟化点は、100℃、105℃、108℃、120℃、126℃、138℃、147℃、156℃、162℃または170℃などであってもよい。
【0041】
幹繊維の融点または軟化点は、第1接着繊維の融点または軟化点よりも20℃、21℃、23℃、25℃、26℃、28℃、30℃、40℃、50℃、60℃、100℃、150℃、200℃、280℃など高い。
【0042】
第2接着繊維は、融点または軟化点が105~170℃であり比較的に低いため、熱間圧延処理が施されるときに先に融解し、不織布の表面に微細な凹凸構造が不連続的に形成される。
【0043】
幹繊維は、第1接着繊維および第2接着繊維よりも融点または軟化点が高く、熱圧処理の過程において寸法の安定性が高い。第1接着繊維および第2接着繊維が部分的にまたは全部に融解し、各繊維を接着して冷却させて、不織布の三次元網状構造を形成する。第1接着繊維、第2接着繊維は、融点または軟化点が低すぎると、熱圧処理の過程において融解しすぎ、ロールへの付着が過剰に発生することがあり、第1接着繊維、第2接着繊維は、融点または軟化点が高すぎると、熱圧処理が施されるときに適時に融解できないため、不織布の表面において所望の微細な凹凸構造を形成することが困難である。
【0044】
凹凸構造によれば、アンカー効果を果たし、塗布層と不織布との強力な結合を実現することができる。塗布スラリーが不織布の表面における微細な凹孔に入り込み、塗布層が硬化すると動かなくなり、極めて強い結合強度を生成することができる。
【0045】
第2接着繊維の融点または軟化点は、前記第1接着繊維の融点または軟化点よりも15℃以上低い。つまり、第2接着繊維の融点または軟化点は第1接着繊維の融点または軟化点に基づいて設定され、これをもとに材料を選択する。例えば、第2接着繊維の融点または軟化点は、第1接着繊維の融点または軟化点よりも15℃、18℃、20℃、25℃、45℃、40℃、28℃、30℃、50℃または70℃、90℃または115℃など低い。
【0046】
第2接着繊維の融点または軟化点は第1接着繊維の融点または軟化点よりも15℃以上低いため、熱圧処理の過程において第2接着繊維が先に融解し、そして第1接着繊維が融解する。不織布の形成過程における各温度での融解の程度をコントロールすることにより、不織布の表面に微細な凹凸構造を形成することができる。
【0047】
本出願のいくつかの実施例において、幹繊維は、幹繊維と前記接着繊維との総質量の60~80%を占め、つまり、幹繊維は、すべての繊維の総質量の60~80%を占める。例えば、幹繊維は、すべての繊維の総質量の60%、62%、67%、69%、72%、74%、76%または80%などを占める。
【0048】
幹繊維は、主に支持を提供するものである。構造の主体とされる幹繊維の含有量が比較的に低い場合、不織布の機械的強度に影響することがある。幹繊維の含有量が高い場合、幹繊維が接着繊維により十分粘着されることができなくなり、不織布の嵩密度に影響し、機械的強度の保証が困難である。
【0049】
さらに、第2接着繊維は、接着繊維の総質量の10~40%を占める。上記のように、第2接着繊維の融点が比較的に低い。第2接着繊維の含有量が少なすぎる場合、不織布の表面の微細な凹凸構造の形成に影響する。第2接着繊維の含有量が多すぎる場合、ポリマーが不織布の表面で融解し、孔の目詰まりを招いて、所望の空孔構造を得ることができなくなる。
【0050】
例示的に、本出願のいくつかの実施例において、第1接着繊維および第2接着繊維のそれぞれの繊維長さは1~6mmであり、第1接着繊維および第2接着繊維のそれぞれの繊維直径は10μm以下である。幹繊維の繊維長さは1~6mmであり、幹繊維の繊維直径は4μm以下である。
【0051】
例示的に、第1接着繊維および第2接着繊維のそれぞれの繊維長さは、1mm、2mm、3mm、4mm、5mmまたは6mmなどであってもよい。第1接着繊維および第2接着繊維のそれぞれの繊維直径は、0.5μm、1μm、2μm、3μm、4.5μm、6μm、6.2μm、7.2μm、7.6μm、8.0μm、9.2μmまたは10μmなどであってもよい。
【0052】
幹繊維の繊維長さは、1mm、2.5mm、3mm、3.6mm、4.2mm、5.1mmまたは6mmなどであってもよい。幹繊維の繊維直径は、0.2μm、0.6μm、1.2μm、1.8μm、2.5μm、3μm、3.2μm、3.6μmまたは4μmなどであってもよい。
【0053】
幹繊維および接着繊維のそれぞれの繊維長さは1~6mmである。幹繊維および接着繊維のそれぞれの繊維長さが1mm未満である場合、不織布の強度の不足問題がある。幹繊維および接着繊維のそれぞれの繊維長さが6mm超である場合、長い繊維が絡まって凝集しやすくなるので、不織布の外観上の欠陥を招く。
【0054】
幹繊維の直径が4μm以下かつ接着繊維の直径が10μm以下である場合、得られた不織布の厚さが適切である。幹繊維の直径が4μm超かつ接着繊維の直径が10μm超である場合、得られた不織布の厚さが比較的に大きくなり、該不織布をリチウム電池用セパレータとして使用する場合、電池内に収容できる活物質が少なくなり、電池の容量が低下してしまう。また、幹繊維の直径が4μm超かつ接着繊維の直径が10μm超である場合、不織布に大きな孔が形成され、塗布スラリーが貫通孔を介して上層から下層まで浸透しやすいので、塗布層にピンホールなどの欠陥が発生する可能性が高くなる。
【0055】
また、幹繊維および接着繊維のそれぞれの長さおよび直径を上記の範囲内に収めることによれば、得られた不織布の孔径を適切な範囲内にすることができる。孔の内壁において凹凸構造が形成されたので、不織布の塗布層との結合性を高めることができる。また、幹繊維および接着繊維のそれぞれの長さおよび直径を限定して孔の径を制御することで、孔構造が大きすぎることに起因した、塗布層にピンホールが形成されて、塗布層が不織布の裏面まで浸透して発生する電気化学的な安全性の問題を防止することができる。さらに、孔径が小さすぎることに起因した、塗布層が孔内に浸透しにくくて凹凸構造と嵌合することができず、剥離強度が低いことを防止することができる。
【0056】
本出願のいくつかの実施例において、得られた不織布の平均孔径が4.5μm以下であり、平均孔径に対する最大孔径の比が1~10である。このようにして、塗布スラリーが塗布面から裏面まで浸透してガイドロールの表面に付着して、異物汚染を引き起こすことを防止できる。
【0057】
さらに、不織布の密度は0.50~0.9g/cm3である。このようにして、塗布スラリーが塗布面から裏面まで浸透することを防止して、不織布の孔の目詰まりの発生を低減することができる。したがって、十分な空孔率を保証することができ、イオンの伝導率に影響を与えなく、不織布セパレータの電気的性能を保証することができる。
【0058】
例示的に、本出願に係る不織布は、各原材料を用いて繊維原紙を調製し、そして成形された繊維原紙に対して熱間圧延処理を行うことにより調製され得る。
【0059】
本出願の実施例による不織布の表面が微細な凹凸構造を有するので、不織布の表面において塗布を行うとき、不織布の凹凸構造の存在により不織布の粘着性を高めることができる。さらに、塗布スラリーの不織布の表面に対する浸潤能力を向上させることができ、塗布スラリーと不織布との接触面積を増加させて、両方の表面が嵌り合って嵌合力が発生し、強力な結合の効果を実現できる。
【0060】
本出願の実施例による不織布は、リチウム電池用セパレータのベースフィルムの調製に使用することができる。なお、本出願の他の実施例において、不織布を他の用途として使用することもでき、特に塗布層またはスラリーなどとの強力な結合が必要である場合に適しており、本出願の実施例では不織布の使用に対して限定しない。
【0061】
本出願は、上記の不織布の作製方法をさらに提供する。熱圧処理の温度は、第2接着繊維の融点または軟化点の温度よりも10℃以上高く、例えば10~200℃以上高く、また、熱圧処理の温度が前記幹繊維の融点または軟化点の温度よりも低い。
【0062】
上記の熱圧処理の温度下で、第2接着繊維がほぼ完全に溶融し、第1接着繊維が部分的に溶融するようになる。熱圧過程において、第2接着繊維が押し出され凹凸構造が形成され、第1接着繊維により幹繊維を接着する。
【0063】
さらに、熱圧処理の熱圧速度は1~100m/minである。該熱圧速度を採用する場合、第2接着繊維による、形成された孔の目詰まりを防止できる。
【0064】
本出願は、リチウム電池用セパレータベースフィルムをさらに提供し、リチウムイオンセパレータベースフィルムが上記の不織布を含む。
【0065】
本出願は、リチウム電池用セパレータをさらに提供し、該リチウム電池用セパレータが、塗布層と上記のベースフィルムとを含み、前記塗布層が前記ベースフィルムの表面に付着している。
【0066】
上記のように、本出願の実施例による不織布は、その表面の凹凸構造の存在により、不織布の粘着性を高めることができ、塗布スラリーと不織布との接触面積を増加させて、両方の表面が嵌り合って嵌合力が発生し、強力な結合の効果を実現できる。
【0067】
不織布の均一性および粘着性が優れるので、塗布層と不織布とが密着し、塗布層と不織布との階層化や剥離が発生しないようになる。
【0068】
以下、実施例を参照しながら、本出願の特徴および性能をさらに詳細に説明する。
【0069】
実施例1~実施例6
実施例1~実施例6は、それぞれ不織布を提供し、具体的な繊維配合が表1に示されている。
【0070】
傾斜網製紙機で各実施例の原材料を抄紙して面密度が12g/m2の繊維原紙を製造し、そして繊維原紙に対して熱間圧延処理を行った。熱圧装置として鋼ロール/軟質ロールのコンビネーションのものを利用し、熱圧により不織布を得た。各実施例のそれぞれの熱圧温度は表1に示されている。
【0071】
そして、得られた不織布をA4サイズに裁断してサンプルとし、アニロックスロールによりその1つの外面に対して酸化アルミニウムセラミック顆粒の塗布を行った。塗布スラリーの固形分として重量で35%の酸化アルミニウム/10%のPVDFであった。塗布後に乾燥させ、本実施例による不織布塗布サンプルを得た。
【0072】
【0073】
比較例1~比較例5
比較例1~比較例5は、それぞれ不織布を提供し、具体的な繊維配合が表2に示されている。
【0074】
傾斜網製紙機で各比較例の原材料を抄紙して面密度が12g/m2の繊維原紙を製造し、そして繊維原紙に対して熱間圧延処理を行った。熱圧装置として鋼ロール/軟質ロールのコンビネーションのものを利用し、不織布を得た。各比較例のそれぞれの熱圧温度は表2に示されている。
【0075】
そして、得られた不織布をA4サイズに裁断してサンプルとし、アニロックスロールによりその1つの外面に対して酸化アルミニウムセラミック顆粒の塗布を行った。塗布スラリーの固形分として重量で35%の酸化アルミニウム/10%のPVDFであった。塗布後に乾燥させ、本実施例による不織布塗布サンプルを得た。
【0076】
【0077】
試験例
各実施例および各比較例で得られた不織布のそれぞれに対して性能テストを行った。テスト結果は表3に示されており、テストは下記の基準に基づいて行われた。
【0078】
GB/T 451.2-2002に基づいて不織布の「面密度」を測定した。
GB/T 451 .3-2002に基づいて不織布の「厚さ」を測定し、不織布の「密度」は、不織布の「面密度」を不織布の「厚さ」で割ることにより得られた。
GB/T 32361-2015に基づいて不織布の「孔径」を測定した。
GB/T 12914-2008に基づいて不織布の「引張り強度」を測定した。
GB/T 2792-2014に基づいて塗布層の「剥離強度」を測定した。
【0079】
【0080】
図1は、実施例1による不織布の表面の電子顕微鏡写真である。
図2は、比較例1による不織布の表面の電子顕微鏡写真である。
図3は、比較例2による不織布の表面の電子顕微鏡写真である。
図4は、比較例3による不織布の表面の電子顕微鏡写真である。
図5は、比較例4による不織布の表面の電子顕微鏡写真である。
【0081】
【0082】
比較例1の試験結果から分かるように、使用される幹繊維の融点または軟化点が第1接着繊維とほぼ同じであり、すなわち、幹繊維の融点または軟化点と第1接着繊維の融点または軟化点との差が20℃よりも低い場合、
図2に示すように、過剰なポリマーが不織布の表面で融解し、孔の目詰まりを招いて、所望の空孔構造を得ることが困難であり、不織布表面の微細な凹凸構造を形成することができなかった。
【0083】
比較例2の試験結果から分かるように、使用される第1接着繊維の融点または軟化点と第2接着繊維の融点または軟化点との差が15℃よりも低い場合、熱圧過程において第1接着繊維と第2接着繊維とがほぼ同時に融解し、
図3に示すように、不織布表面の微細な凹凸構造を形成することができなかった。
【0084】
比較例3の試験結果から分かるように、使用される第1接着繊維は、融点または軟化点が220℃超であり、第2接着繊維の融点または軟化点との差が15℃よりも高い場合、熱圧過程において第1接着繊維が適時に融解できないため、各繊維間の十分な粘着を実現できなく、不織布の構造が疎である。
図4に示すように、不織布表面の微細な凹凸構造を形成することができなかった。
【0085】
比較例4の試験結果から分かるように、使用される第2接着繊維の融点または軟化点が100℃未満であり、第1接着繊維の融点または軟化点と第2接着繊維の融点または軟化点との差が15℃よりも高い場合、
図5に示すように、熱圧過程において、第2接着繊維は融解しすぎ、ロールへの付着が過剰に発生し、不織布の表面の平滑度に影響し、不織布表面の微細な凹凸構造を形成することができなかった。
【0086】
図6は、比較例5による不織布サンプルの表面の電子顕微鏡写真である。
図6に示すように、比較例5による不織布は、孔内に凹凸構造が形成れていなかったため、剥離強度が比較的に低かった。
【0087】
本出願の実施例1~6による不織布は、性能が優れ、特に塗布層の剥離強度が比較例1~5のサンプルの剥離強度よりも顕著に高いため、塗布層と支持層との結合強度が著しく改善されたことがわかった。
【0088】
上記記載は、本出願の好ましい実施例にすぎず、本出願を限定するものではない。当業者にとって、本出願に各種の変更や変化を有してもよい。本出願の精神および主旨から逸脱しない限り、行われるすべての変更、均等置換、改良なども、本出願の保護範囲に属する。
【0089】
産業上の利用可能性
上記のように、本開示の実施例による不織布は、粘着性が優れ、塗布スラリーと不織布との接触面積を増加させることができ、両方の表面が嵌り合って嵌合力が発生し、強力な結合の効果を実現できる。
【国際調査報告】