(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-04
(54)【発明の名称】乗組員保護と共に船舶を燻蒸するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A01M 13/00 20060101AFI20230627BHJP
B63B 27/00 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
A01M13/00
B63B27/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573656
(86)(22)【出願日】2021-05-26
(85)【翻訳文提出日】2023-01-26
(86)【国際出願番号】 AU2021050505
(87)【国際公開番号】W WO2021237290
(87)【国際公開日】2021-12-02
(32)【優先日】2020-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(32)【優先日】2020-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522464322
【氏名又は名称】フィントラン オーストラリア ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】スレイビン マシュー ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ヤナ アリク
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA11
2B121CA03
2B121CA14
2B121CA75
2B121CC02
2B121CC37
2B121DA62
2B121EA30
2B121FA04
2B121FA15
(57)【要約】
船舶を燻蒸する方法及びシステムは、船舶の貨物エリアへ燻蒸剤を送達することを含む。特に、船舶はロールオン/ロールオフ船舶であり得る。このようなシステムでは、選択領域の圧力が貨物エリアより大きくなるように、貨物エリアの上の船舶の選択領域と貨物エリアとの間に選択された最小圧力差を維持するための空気圧システムが設けられる。制御システムが圧力差を維持し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロールオン/ロールオフ船舶(RORO船舶)に付随的である制御システムであって、前記付随的制御システムはコントローラを含み、前記コントローラは:
燻蒸中に、前記船舶の選択エリア及び/又は貨物エリアから圧力測定値又は圧力差測定値を受信し、このような測定値に応答して、選択エリアの圧力が前記貨物エリアより大きくなるように前記選択エリアと前記貨物エリアとの間の選択最小圧力差を維持するために、前記船舶の前記選択エリアへの空気送達を制御し;及び
燻蒸及びその後の前記貨物エリアからの前記燻蒸剤の排出全体にわたって前記圧力差を維持するように構成される、制御システム。
【請求項2】
前記選択最小圧力差は少なくとも50Paであるか又は50Pa~100Paである、請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記選択最小圧力差は事前選択される、請求項1又は請求項2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記付随制御システムは1つ又は複数の圧力センサ及び/又は差圧センサに応答し、前記付随制御システムはさらに、前記選択最小圧力差を維持するために空気を前記選択エリアへ供給するように1つ又は複数の給気ファンを制御するように構成される、請求項1~3のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項5】
前記付随制御システムは、可変速ドライブを介し前記1つ又は複数のファンの少なくとも速度を制御するように構成される、請求項4に記載の制御システム。
【請求項6】
前記付随制御システムはさらに、前記選択エリア内の及び/又は前記送達される空気の空気取り入れ口における気体燻蒸剤;二酸化炭素;一酸化炭素;及び他の揮発性有機化合物(VOC)の1つ又は複数を検出するために低レンジ監視を行うように構成される、請求項1~5のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項7】
ロールオン/ロールオフ船舶(RORO船舶)に付随的である制御システムを事前構成する方法であって、前記方法は、
前記付随制御システムのコントローラが、
燻蒸中に前記船舶の選択エリア及び/又は貨物エリアから圧力測定値又は圧力差測定値を受信し、このような測定値に応答して、前記選択エリアの圧力が前記貨物エリアより大きくなるように、前記選択エリアと前記貨物エリアとの間の選択された最小圧力差を維持するために前記船舶の前記選択エリアへの空気送達を制御するように動作可能であり;及び
燻蒸及びその後の前記貨物エリアからの燻蒸剤の排出全体にわたって前記圧力差を維持するように動作可能であるように、前記付随制御システムの前記コントローラを事前構成することを含む、方法。
【請求項8】
少なくとも50Paの又は50Pa~100Paの前記選択最小圧力差を維持するように前記付随制御システムを事前構成することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの事前選択された最小圧力差を維持するために前記付随制御システムを事前構成することをさらに含む、請求項7又は請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記選択エリアへ空気を送達するために1つ又は複数の給気ファンを制御するように前記付随制御システムを事前構成することをさらに含む、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記選択エリア内の及び/又は前記送達される空気の空気取り入れ口における気体燻蒸剤;二酸化炭素;一酸化炭素;及び他の揮発性有機化合物(VOC)の1つ又は複数を検出するために低レンジ監視を行うように、前記付随制御システム又は追加付随制御システムを事前構成することをさらに含む、請求項7~10のいずれか一項に記載の方法であって、前記コントローラは前記低レンジ監視の出力に応答して空気送達を制御する、方法。
【請求項12】
船舶を燻蒸するためのシステムであって前記船舶にとって付随的であるシステムを構成する方法において、前記方法は、
前記船舶の選択エリア内の圧力が前記船舶の貨物エリア内の圧力より大きくなるように、前記船舶の選択エリアと前記貨物エリアとの間の最小選択圧力差を維持するように動作可能である空気圧システムのための空気取り入れ口を構成することを含み、前記空気取り入れ口は、埠頭から、又は前記船舶の船体を越えて外方にある場所において空気を引き込むように構成される、方法。
【請求項13】
前記空気圧システムが1つ又は複数のファンを含む請求項12に記載の方法であって、埠頭において前記ファンを構成することをさらに含む方法。
【請求項14】
前記空気圧システムが可変速ドライブを含み、前記可変速ドライブを介して、コントローラが前記1つ又は複数のファンの速度を制御する、請求項12又は13に記載の方法であって、埠頭において前記可変速ドライブを構成することをさらに含む方法。
【請求項15】
前記船舶を燻蒸するための燻蒸剤の源を提供することをさらに含む請求項12~14のいずれか一項に記載の方法であって、前記燻蒸剤の源は埠頭に配置される、方法。
【請求項16】
埠頭に移動可能乗員脱出ブームを構成することをさらに含む、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
船舶を燻蒸するためのシステムであって、前記システムは前記船舶に付随的であり、前記システムは、
前記船舶の貨物エリアへ燻蒸剤を送達するための燻蒸剤送達システム;及び
前記船舶の選択領域の前記圧力が前記貨物エリアより大きくなるように、前記貨物エリアの上の前記船舶の前記選択領域と前記貨物エリアとの間の選択された最小圧力差を維持するための空気圧システムを含む、システム。
【請求項18】
前記船舶がロールオン/ロールオフ船舶である、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記空気圧システムが、燻蒸及び排気全体にわたり前記圧力差を維持するためのコントローラを含む、請求項17又は18に記載のシステム。
【請求項20】
船舶を燻蒸するためのシステムであって、前記システムは前記船舶にとって付随的であり、前記システムは、
1つ又は複数の送達サイトにおいて前記船舶の貨物エリアへ燻蒸剤を送達するための燻蒸剤送達システム;及び
前記船舶の貨物エリア内の圧力より大きい前記船舶の選択エリア内の圧力を維持するための空気圧システム
を含み、
前記空気圧システムの空気取り入れ口は、前記1つ又は複数の燻蒸剤送達場所及び前記1つ又は複数の排気サイトから遠く離れている、システム。
【請求項21】
前記空気取り入れ口が、前記1つ又は複数の燻蒸剤送達場所及び排出される燻蒸剤のための1つ又は複数の排気サイトから30メートル超にある、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記空気取り入れ口が、前記船舶の船体の外側の埠頭に又は前記船舶の前方端に配置される、請求項20又は請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記船舶がロールオン/ロールオフ船舶である、請求項20~22のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項24】
前記空気圧システムが、燻蒸及び排気全体にわたり前記圧力を維持するためのコントローラを含む、請求項20~23のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項25】
船舶を燻蒸する方法であって、
前記船舶の貨物エリアに送達することを含み、
前記船舶はロールオン/ロールオフ船舶である、方法。
【請求項26】
前記船舶の選択エリアの圧力が前記貨物エリアより大きくなるように、前記選択エリアと前記貨物エリアとの間の選択された最小圧力差を維持するために、前記貨物エリアの上の前記船舶の前記選択エリアへ空気を送達することをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記燻蒸剤を1つ又は複数の送達サイトにおいて前記貨物エリアへ送達することをさらに含む、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
1つ又は複数の排気サイトからの燻蒸に続いて前記貨物エリアから燻蒸剤を排出することと、
前記船舶の選択エリアの圧力が前記貨物エリアより大きくなるように、前記選択エリアと前記貨物エリアとの間の選択された最小圧力差を維持するために、前記船舶の前記選択エリアへ空気を送達することと、をさらに含む、請求項25~27のいずれか一項に記載の方法であって、
前記空気送達のための空気取り入れ口は、前記1つ又は複数の燻蒸剤送達場所及び前記1つ又は複数の排気サイトから遠くにある、方法。
【請求項29】
前記空気取り入れ口が、前記1つ又は複数の燻蒸剤送達場所及び前記1つ又は複数の排気サイトから30メートル超にある、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記空気取り入れ口が、前記船舶の船体の外側の埠頭に又は前記船舶の前方端に配置される、請求項28又は29に記載の方法。
【請求項31】
前記貨物エリアを燻蒸するために前記燻蒸剤を送達すること;
燻蒸に続いて前記貨物エリアから燻蒸剤を排出すること;及び
前記貨物エリア内の圧力より大きい選択エリア内の圧力を維持するために、前記船舶の前記選択エリアへ空気を送達することをさらに含む、請求項25に記載の方法であって、
前記空気送達が燻蒸及び排気全体にわたって維持される、方法。
【請求項32】
船舶の入口路を流体的に密閉するように構成された一時的隔壁であって、
前記船舶の入口路内に配置されるように構成された本体;
前記本体の周囲に配置されたシールであって、前記入口路を流体的に密閉するために前記入口路に接触するように構成されたシール;及び
前記本体内の1つ又は複数の開口であって、流体導管と接続するようになされた1つ又は複数の開口
を含む、一時的隔壁。
【請求項33】
前記1つ又は複数の開口のうちの少なくともいくつかがそれぞれの弁を含む、請求項32に記載の一時的隔壁。
【請求項34】
前記1つ又は複数の開口が前記隔壁を横切って電力及び/又はデータを送達するように構成される、請求項32又は33に記載の一時的隔壁。
【請求項35】
前記隔壁が1つ又は複数の空気導管へ密閉的に接続されるように構成される、請求項32に記載の一時的隔壁。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、船舶を燻蒸するためのシステム及び方法に関する。本発明は、ロールオン/ロールオフ船舶の燻蒸に特定用途を有する。本発明はまた、ロールオン/ロールオフ船舶を燻蒸する方法に向けられる。さらに、本発明は一時的隔壁に関する。本発明はロールオン/ロールオフ船舶に向けられるが、本発明のいくつかの態様は、これらのタイプの船舶に決して限定されず、貨物船及び他のタイプの海洋船舶に広範な用途を有し得る。
【0002】
読者はまた、同時に申請された他の共出願(本明細書において説明されるが特許請求されない本発明の態様に関する“System and method for fumigating a vessel with exhaust”)に向けられる。当該共出願の全内容は参照により本明細書に援用される。
[背景技術]
【0003】
貨物運搬船に搭載された貨物が荷下ろしに先立って燻蒸されるということは、多くの管轄区における要件である。寄生された船舶の燻蒸もまた必要であり得る。燻蒸プロセスは、昆虫又は他の望ましくない害虫による貨物への寄生を無くすか、低減するか、又は回避するために、船舶の貨物エリア内へ薫蒸剤を放出することに関与する。燻蒸剤は、固体形式で提供されて貨物エリア内に配置され得るか、又は気体形式で提供されて、貨物エリア内へ管を介し運ばれ得る。燻蒸気体は通常、人にとって有毒である。
【0004】
燻蒸プロセスは、航海途中に、投錨したときに、又は埠頭に係留されたときに行われ得、通常は特殊機器を有する特別に訓練された人員により行われる。ほとんどの事例では、船舶の乗組員のメンバーは燻蒸プロセス中は船舶上に位置することになり、したがって燻蒸プロセスは、乗組員(及び特別に訓練された燻蒸人員)が有毒燻蒸剤に晒されないということを保証するやり方で行われることが絶対に必要である。機関室及び係船索などの船舶の一部へのアクセスも燻蒸中に必要とされ得る。
【0005】
ばら積み貨物船は、穀物、石炭、鉱石他の同様なルーズ貨物などの未梱包ばら積み貨物を搬送するように特別に設計された船舶である。ばら積み貨物船は通常、船舶における船首から船尾までに配置された1つ又は複数の別個の貨物倉を含む。穀物又は他の未梱包ばら積み品は、例えば船舶のデッキ上に位置する1つ又は複数のクレーンにより貨物倉内へ荷積みされ、及びそこから荷下ろしされ得る。代替的に、コンベアローダ、岸辺クレーン又は空気圧式ローダが貨物を荷積み及び荷下ろしするために使用され得る。貨物倉のそれぞれはまた、通常、貨物倉への開口を閉じるためのハッチも含む。
【0006】
ばら積み貨物船では、船舶の居住エリア及び船舶の機関室は通常、貨物倉の船尾に位置し、居住エリアは機関室の上に設けられる。貨物倉は、垂直方向に延伸する隔壁により機関室から分離される。居住エリアは、介在機関室により貨物倉から物理的に除去されることにより、さらには垂直方向に延伸する隔壁と機関室と居住エリアとの間のデッキとを含む2つの物理的障壁により、貨物倉から物理的に分離される。この物理的分離に起因して、船舶の検査に付されるばら積み貨物船の貨物倉のそれぞれを燻蒸することは一般的に比較的安全であった。
【0007】
新しい挑戦は、ロールオン/ロールオフ(roll-on/roll-off)船舶(RORO船舶としても知られる)を安全に燻蒸しようとする際に現れる。この種の船舶では、貨物エリアは通常、船舶のほぼ全長にわたって延伸し、船舶内のデッキ内に配置される。デッキは階段及び梯子などの直立通路により相互接続され、デッキはランプにより連結される。さらに、デッキは水密区域又はガス密区域にグループ化され、各区域内には通常、2台のデッキを有するが、いくつかの船舶は、区域当たり2台を超えるデッキを含み得る。標準的に、RORO船舶は約4つの区域に配置され、各区域は独立に換気される。貨物エリアは、車輪付き貨物などの小口分け貨物を貨物エリア上へ転がし得るか、又は貨物エリア内に運転し得るようなやり方で構成される。
【0008】
RORO船舶では、居住エリアは通常、船舶の露天甲板上に配置され、平板鋼及び床敷きだけが、居住エリアを貨物エリアの最上段デッキから分離する。したがって、この平板鋼構造内のいかなる開口又は小さな亀裂によっても、燻蒸剤が貨物エリアの最上段デッキから居住エリアに入る可能性がある。開口又は小さな亀裂は、航海中に船舶にかかる応力に起因して、航洋船において一般的である。
【0009】
RORO船舶内の居住エリアの配置は、燻蒸剤を貨物エリアから排気するための別の挑戦を提示する。甲板積貨物に貢献する換気システムは、燃料蒸気を貨物エリアから換気するように特別に設計されてきた。船舶の各区域(甲板積貨物の水密又はガス密グループ)は、それ自身の一群の機械的換気扇により貢献(以下に論述されるような給気及び排気)され、換気扇はグループとして制御され得る、又はグループ内の各換気扇は当該グループ内のいかなる他の換気扇とも独立して個々に制御され得る。一般的に、このシステムは通常、荷積み/荷下ろし作業中に各区域において20~30回換気及び航行中に毎時10回換気を実現するように設計されてきた。
【0010】
RORO船舶は通常、貨物エリアの以下の2つのタイプの換気システムのうちの1つを有する:
1.給気及び排気機械的換気扇:
給気及び排気換気扇は露天甲板の周縁の回りに配置される。いくつかの船舶は70以上もの機械的換気扇を有し得る。機械的換気扇は、給気機械的換気扇、排気機械的換気扇、又は可逆給気機械的換気扇として働く。船舶の各区域は、区域内の空気を交換するために協働する一群の給気及び排気機械的換気扇により換気される。各区域は、空気が交換される一群の機械的換気扇へ接続される複数のダクト(給気ダクト及び排気ダクト)を有する。
- 給気機械的換気扇は空気を露天甲板から区域内へ供給する。
- 排気機械的換気扇は空気を区域から露天甲板上の大気中へ排出する。
【0011】
換気扇は、場合によっては専用給気換気扇及び専用排気換気扇であり得る。いくつかのファンは、給気モードと排気モードとにおいて交互に実行され得、モードはオペレータにより制御される。このような換気扇は可逆給気換気扇と呼ばれる。どれだけ多くの換気が航行又は荷積み/荷下ろし中に実現される必要があるかに依存して、いくつかの機械的換気扇は使用されてもされなくてもよい。
【0012】
機械的換気扇は通常、居住エリア及び機関室給気換気取り入れ口の極近傍(時にかろうじて数メートル)に位置する。タイプ1は新しいRORO船舶に普及している。
【0013】
2.給気機械的換気扇及び通気筐体:
給気機械的換気扇は船の前方及び船体中央部周縁の周囲に配置される。
- これらの給気機械的換気扇へ接続される配管が新鮮空気を貨物エリア内へ供給する。
- 通気筐体は船舶の船尾端に(左舷及び右舷周縁にも)配置される。各区域はそれ自身の専用通気筐体を有する。
- 配管は各区域を通気筐体へ接続する。
【0014】
給気機械的換気扇により新鮮な空気が各区域内へ入れられ、大気は通気筐体を通して排出される。
【0015】
いずれの場合も、機械的換気扇/通気筐体は機関室空気取り入れ口及び乗組員居住のための空調取り入れ口の近くにある。したがって、この相対的近接性は、燻蒸中に機械的換気扇/通気筐体が燻蒸剤を換気すればリスクを乗組員に提示する。
【0016】
加えて、機械的換気扇は、開閉するがいずれにせよ雨の侵入を回避するために下方へ向けられる機械的に操作される通気口により設計される。したがって、機械的換気扇は露天甲板上へ吹き降ろす。燻蒸剤を貨物エリアから機械的換気扇を介し換気することは、燻蒸剤が階層になり、露天甲板上に留まる尤度を生成する。これは、乗組員が機関室、繋船具へアクセスする必要性のリスク又は避難の場合のリスクを呈示する。
【0017】
ばら積み貨物船と区別されるRORO船舶の別の特殊特徴は、RORO船舶がRORO船舶内の貨物の低密度に起因してばら積み貨物船と比較して水面から盛り上がるということである。したがって、係船索は、下げられ(通常はデッキ4又は5上に)、したがって乗組員が潮汐運動を考慮するために係船索を調節し得るように階段吹き抜け(stairwell)アクセスを必要とすることになる。対照的に、ばら積み貨物船の係船索は露天甲板上に配置される。
【0018】
船舶の他のエリアは燻蒸中にアクセスを必要とし得る。例えば、貨物区域間にはさまれる機関室は燻蒸中にアクセスを必要とし得る。例えば、補助発電機は通常、燻蒸中に働く。警報条件が発生すれば、乗組員は機関室へのアクセスを必要とすることになる。機関室又はアクセス路に入る燻蒸剤は乗組員の健康にとって有害になる。
【0019】
本発明の目的はRORO船舶を燻蒸するためのシステム/方法を提供することである。本発明の別の目的はまた、船舶の入口路を流体的に密閉するように構成された一時的隔壁を提供することである。本発明の別の目的は、知られたシステム、方法及び機器を上回る有益な選択を公衆に少なくとも提供することである。
【0020】
本明細書で使用されるように、用語「ロールオン/ロールオフ船舶」すなわち「RORO船舶」は、車付き又は牽引式貨物が通常は船尾ランプ又はサイドランプを介し船舶の貨物デッキ上まで転がされる又は運転される任意の船舶を指す。このような船舶の例は自動車トラック専用運搬船(PCTC:pure car and truck carrier)、大型運搬船(LCTC:large car and truck carrier)、及び自動車専用運搬船(PCC:pure car carrier)を含む。
【0021】
本明細書におけるいかなる従来技術への参照も、「この従来技術がいかなる法的意味においても一般的知識の一部を形成する」ということ、又は「この従来技術が、理解され、関連するものと見做され、及び/又は当業者により他の従来技術と組み合わせられることが合理的に期待される可能性がある」ということの承認又は暗示ではない。
[発明の概要]
[課題を解決するための手段]
【0022】
1.船舶を燻蒸するためのシステム
第1の態様では、船舶を燻蒸するためのシステムが提供され、システムは船舶に付随的である。システムは、
燻蒸剤を船舶の貨物エリアへ送達するための燻蒸剤送達システム、及び
選択領域の圧力が貨物エリアより大きくなるように、貨物エリアの上の船舶の選択領域と貨物エリアとの間の選択された最小圧力差を維持するための空気圧システムを含む。
【0023】
一実施形態では、船舶はロールオン/ロールオフ(RORO)船舶である。好適には、空気圧システムは、燻蒸及び排気全体にわたって圧力差を維持するためのコントローラを含む。
【0024】
本システムは好適には、船舶の本体内に存在せず、船舶の機械類、索具、歯車及び他の付属品の一部でもないという点で付随的である。制御システムはまた、船舶を燻蒸するために持ち込まれた付随機器であるということが好適である。説明したように、これらの態様の多くは埠頭で使用される。空気圧システムの部品は持ち運び可能であることが好ましい。例えば、空気圧システムは1つ又は複数のコントローラ、1つ又は複数のファン、1つ又は複数の可変速ドライブ及び関連センサを含み得、そのいくつか又はすべては持ち運び可能であり得る。
【0025】
好適には、選択エリアは船舶の居住エリアを含む。しかし、選択エリアは代替的に又は加えて、人間の占有が意図される他のエリア(機関室、アクセス廊下、及び機関室又は係船索への階段吹き抜けなど)を含み得る。
【0026】
燻蒸剤は殺虫剤であり得る。代替的に、燻蒸剤は殺虫剤、消毒剤、清浄剤、殺菌剤、汚染除去薬、防腐剤、清浄薬、ワクチン、抗ウイルス薬又は蒸気を含み得る。
【0027】
好適には、燻蒸剤送達システムは、燻蒸剤を気体形式で送達するための1つ又は複数の第1導管を含み、1つ又は複数の第1導管の第1の端は燻蒸剤の源へ接続され、1つ又は複数の第1導管の第2の端は、気体燻蒸剤を船舶の貨物エリアへ送達するために船舶の貨物エリアへ接続される。
【0028】
好適には、空気圧システムは空気を送達するための1つ又は複数の第2導管を含み、1つ又は複数の第2導管の第1の端は空気の源へ接続され、1つ又は複数の第2導管の第2の端は船舶の選択エリアへ接続される。上述のように、選択エリアは好適には船舶の居住エリアである。
【0029】
好適には、1つ又は複数の第2導管は、居住エリアと貨物エリアとの圧力差がほぼ維持されるように空気を居住エリアへ送達するように構成される。圧力差は好適には少なくとも50Pa、より好適には50Pa~100Paである。圧力差は、予め定められた又は予め選択された圧力差であり得るか、又は代替的に測度パラメータ若しくは運用指針に従って判断され得る。圧力差は一定であり得る。代替的に、圧力差は、最小圧力差が維持されれば、燻蒸の経過全体にわたって変動し得る。圧力差は他の測定パラメータに従って変動し得る。選択された最小圧力差は燻蒸全体にわたって維持され得、好適には燻蒸を越えて(少なくとも貨物エリアからの燻蒸剤の除去まで)延長され得る。
【0030】
一実施形態では、空気圧システムは、居住エリア内の比較的高い圧力を維持することにより圧力差を維持し得、これにより、圧力差が居住エリアと貨物エリア(通常は大気圧にある)との間に存在するということを保証する。
【0031】
空気圧システム及び/又は燻蒸剤送達システムは、好適にはコントローラ又はそれぞれのコントローラにより制御される。コントローラは好適には制御システムの一部を形成する。当該コントローラ又は各コントローラは、製造時に又はルーチンサービス若しくは較正時に事前構成される。較正は再較正を含む。
【0032】
燻蒸剤送達システムの1つ又は複数の第1導管は、好適には貨物エリアへの入口に位置する第1の隔壁へ複数の第1導管の第2の端において密閉的に接続される。第1の隔壁は好適には、気体燻蒸剤を流体的に受け取って貨物エリアへ送達するように構成される。一実施形態では、第1の隔壁は、1つ又は複数の第1導管へそれぞれ接続されるように構成された1つ又は複数の開口をその中に含み、これにより気体燻蒸剤を貨物エリアへ送達する。1つ又は複数の開口はそれぞれの1つ又は複数の弁を含み得る。1つ又は複数の弁は一方向弁であり得る。1つ又は複数の開口はまた、貨物エリア外のガス試料を解析するために第1の隔壁を横切って貨物エリアからガス試料を転送するために使用され得る。好適には、第1の隔壁は、貨物エリアへの入口を流体的に密閉するように構成されたシールを含む。シールは好適にはゴム押し出しの形式である。シールは好適には、密閉される入口路の形式及びタイプに従って隔壁上に配置される。第1の隔壁は、電力及び/又はデータを第1の隔壁を横切って送達するように構成された1つ又は複数の他の開口を含み得る。第1の隔壁は防水鋼戸口へ嵌められ得る。このタイプのドアは戸口の周縁の回りに走る突出鋼フランジをほぼ常に有する。通常、突出鋼フランジはシールを生成するためにドア上のゴムパッキンの枠に嵌る。一時的隔壁を使用することによりシールを生成するための、次の2つの好ましい選択肢がある。
1)戸口の周縁のまわりを走る突出鋼フランジへゴム押し出し部品を嵌め込む。ゴム押し出し部品は隔壁上の平坦面と共にシールを生成する、又は、
2)接着剤を使用することにより平坦ゴム又は発泡(ブチルテープ)平坦押し出し部品を隔壁へ貼り付ける。次に、戸口の周囲を走る突出鋼フランジが隔壁の裏側のゴム表面の枠に嵌る。
【0033】
本システムは好適にはさらに、1つ又は複数の他の一時的隔壁を含み、ここでは、アクセス路は、密閉される必要があるが、付帯設備(導管又は電力ケーブルなど)を貫通する必要がある。1つ又は複数の他の隔壁は第1の隔壁と同様であり得る。例えば、各貨物区域内への多くの入口点が存在する。各脱出トランク(船舶の周縁の回りに配置された垂直アクセス路)は、貨物区域間に防水扉又はハッチを有することになる。隔壁は好適には、付帯設備を取り付ける必要があるアクセス路(ドア/ハッチ)上に嵌め込まれる。好適には、隔壁は、船舶の各貨物区域内への少なくとも1つの入口に配置され、したがって、各貨物区域は必要に応じ、いかなる他の貨物区域とも独立に燻蒸され得る。例えば、第1の隔壁は、第1の貨物区域への入口に配置され得、第2の貨物区域への入口に配置された別の隔壁へ導管を介し流体接続され得、したがって、燻蒸剤は第2の貨物区域へ送達され得る。
【0034】
本システムは好適にはさらに、各貨物区域内に配置される複数の再循環ファンを含み得る。複数の再循環ファンは気体燻蒸剤をそれぞれの貨物区域にわたって散布するように構成される。1つ又は複数の第1導管は好適には、第1の隔壁を介し(又はそれぞれの貨物区域への入口に配置されたそれぞれの隔壁を介し)複数の再循環ファンへ流体接続され、こうして燻蒸剤を貨物区域にわたって散布する。好ましい実施態様では、貨物区域内の各デッキは2つの再循環ファンを含み、第1のファンは船舶の右舷側の船体中央部に配置され、第2のファンは船舶の左舷側の船体中央部に配置される。第1のファン及び第2のファンは好適には船舶内で反対方向に向く。例えば、第1のファンは船舶の船尾端の方向に向き、第2のファンは船舶の船首端の方向に向く。複数の再循環ファンは、第1の隔壁内の複数の他の開口(又は1つ又は複数の他の隔壁内の1つ又は複数の開口)を通って送達される電力により給電され得る。複数の再循環ファンは船舶の船上に配置された電源により又は船舶の遠くに配置された電源により給電され得る。
【0035】
1つ又は複数の第2導管は好適には、それらの第2の端において、居住エリアへの入口に配置された第2の隔壁と密閉的に接続される。第2の隔壁は、好適には空気を流体的に受け取り、居住エリアへ送達するように構成される。一実施形態では、第2の隔壁は、1つ又は複数の第2導管へそれぞれ接続されるように構成された1つ又は複数の開口をその中に含み、これにより空気を居住エリアへ送達する。1つ又は複数の開口はそれぞれの1つ又は複数の弁を含み得る。1つ又は複数の弁は一方向弁であり得る。好適には、第2の隔壁は、居住エリアへの入口を流体的に密閉するように構成されたシールを含む。第2の隔壁は電力及び/又はデータを第2の隔壁を横切って送達するように構成された1つ又は複数の他の開口を含み得る。
【0036】
気体燻蒸剤は、以下のうちの任意の1つ又は複数を含み得る:弗化スルフリル、ホルムアルデヒド、臭化メチル、クロロピクリン、ヨードホルム、シアン化水素、窒素、ギ酸エチル及びエタンジニトリル。燻蒸剤はまた、窒素又は二酸化炭素などの搬送ガスと共に送達され得る。
【0037】
燻蒸剤の源は変動し得る。一実施形態では、燻蒸剤は気体燻蒸剤を含む移動可能車両により提供され得る。気体燻蒸剤は通常、移動可能車両内のガスボンベ内に蓄積される。ガスボンベは別個のグループ内へ配置され得る。グループ内のガスボンベのそれぞれはマニホールドを介し流体接続され得る。2つの第1導管が各マニホールドから延伸し、気体燻蒸剤をそれぞれの貨物区域内へ送達し得る。第1導管のそれぞれは約1/4インチ(6.35mm)~1インチ(25.4mm)の直径を有し得るが、好適には約3/8インチ(9.53mm)である。
【0038】
代替配置では、燻蒸剤は液体形式で提供され、埠頭又は船上で気化され得る。気化方法は次のものを含む:
a)各デッキ上の再循環ファンのジェット気流内への液体燻蒸剤の導入。これは弗化スルフリルに適切である;
b)熱交換器気化器:このような配置が各貨物デッキ上に提供される可能性がある。
c)空気支援霧化:これにより、液体燻蒸剤は再循環ファンのジェット気流内へ導入される前に加圧される。このような配置は再循環ファンに隣接した各貨物デッキ上に設けられる可能性がある。
d)燻蒸剤液体ギ酸エチルが、液体CO2中に溶解され、混合物として埠頭から船舶へ送達され、この放出は大気及び気化による熱を生じる。
【0039】
好ましい実施態様では、1つ又は複数の第2導管のそれぞれは、それらの第1の端において、それぞれの1つ又は複数のファンへ接続される。1つ又は複数のファンは、空気が1つ又は複数の第2導管により居住エリアなどの船舶の選択エリアへ送達され得るように空気をそれぞれの1つ又は複数の第2導管内に引き込むように構成される。1つ又は複数のファンは好適には、可変速ドライブ(VSD:variable speed drive)を介しコントローラにより制御される。好適には、コントローラは、可変速ドライブを介し1つ又は複数のファンの少なくとも1つの速度を制御する。一実施形態では、VSDはコントローラと一体化され得る。代替的に、VSDはコントローラとは別であり得、及びコントローラにより作動可能に制御され得る。
【0040】
好適な実施形態では、空気圧システムは、居住エリアなどの船舶の選択エリアへ空気を送達するように構成された3つの第2導管を含む。この実施形態では、空気圧システムはさらに3つのファンを含み、ファンのそれぞれは、3つの第2導管のそれぞれの第2導管のそれぞれの第1の端へ接続される。第2導管は好適には、それぞれが450mmの直径を有するそれぞれのダクトである。
【0041】
好適には、空気の源は船舶の埠頭に位置する環境大気である。代替的に、空気の源は、船舶の露天甲板の下から又は船舶の前方端における露天甲板上から引き出され得る。この実施形態では、1つ又は複数のファンが船舶の露天甲板上に配置され得、それぞれの1つ又は複数の導管は、その第1の端において1つ又は複数のファンへ接続され得る。1つ又は複数の導管の第2の端は、露天甲板の下から新鮮な空気を引き出すように船舶の側面全体にわたって通され得る。
【0042】
好適には、空気の源は燻蒸剤の源から遠く離れて配置される。好適には、空気の源は船舶の遠くに配置される。
【0043】
本システムは好適にはさらに、空気の源に配置された又はそれに隣接した空気品質モニタを含む低レンジ範囲監視システムを含む。好適には、空気品質モニタは、1つ又は複数の第2導管の第1の端の少なくとも1つにほぼ隣接して配置される。空気品質モニタは、気体燻蒸剤、二酸化炭素、一酸化炭素及び他の揮発性有機化合物(VOC:volatile organic compound)のうちの1つ又は複数の有無を検出するように構成され得る。低レンジ監視システムはさらに、船舶の乗組員により通常は占められる他のエリア(例えば機関室など)内に配置される1つ又は複数の他のモニタ又はセンサを含み得る。低レンジ監視システムのモニタ又はセンサのそれぞれは、上述の化合物のそれぞれの有無を検出するように構成され得る。弗化スルフリルを含む気体燻蒸剤に関して、低レンジ監視システムのモニタ又はセンサのそれぞれは、0.1ppmの分解能で約0.5ppm~230ppmの範囲の濃度の弗化スルフリルを検出するように構成される。しかし、様々なレベルが様々な異なる燻蒸剤に適用されることになる。低レンジ監視システムのモニタ又はセンサのそれぞれは好適にはそれぞれの測定結果をコントローラへ送信する。
【0044】
燻蒸剤送達システムはさらに、高レンジ範囲監視システムを含み得る。高レンジ監視システムは、船舶の貨物区域のそれぞれの貨物区域内に配置される複数のモニタ又はセンサを含み得る。高レンジ監視システムのモニタ又はセンサのそれぞれは、燻蒸運転の効能を判断するために貨物区域内の気体燻蒸剤の有無を検出するように構成され得る。弗化スルフリルを含む気体燻蒸剤に関して、高レンジ監視システムのモニタ又はセンサのそれぞれは、燻蒸運転の効能を判断するために約5,000ppm~15,000ppmの範囲の濃度の弗化スルフリルを検出するように構成される。しかし、様々なレベルが様々な異なる燻蒸剤に適用されることになる。高レンジ監視システムのモニタ又はセンサのそれぞれは好適には、それぞれの測定結果を関連コントローラへ送信する。
【0045】
空気圧システム及び低レンジ監視システムのコントローラは、圧力差を維持するために空気圧システムの継続動作を保証するように一体化され得操作可能であり得、低レンジ監視システムは、有人エリア(例えば居住エリア)内の及び/又は空気圧システムへの取り入れ口における気体燻蒸剤のレベルを検出する。低レンジ監視システムが空気圧システムの取り入れ口における燻蒸剤を検出すれば安全機構が空気圧システムの中断を妨げ得る。別の安全機能は、低レンジ監視システムが有人エリア内の燻蒸剤を検出すれば居住システムなどの有人エリア内の圧力を増加することにその本質があり得る。例えば、最大250Paの圧力(最上段貨物倉又は外部環境に対する)が有人エリア内では耐えられ得る。代替実施態様では、高レンジ監視システムは単一モニタ又はセンサを含み得る。この実施形態では、1つ又は複数のガス採取ラインが、貨物エリア全体にわたり配置され、一端においてマニホールドへ接続され得る。マニホールドはモニタ又はセンサへ接続され得、ポンプが、ガス試料を1つ又は複数のガス採取ラインを介しモニタ又はセンサへポンピングするために使用され得る。この実施形態では、モニタ又はセンサは貨物エリア内に又は貨物エリア外に配置され得る。いずれの場合も、モニタ又はセンサは好適にはその測定結果を関連コントローラへ送信する。モニタ又はセンサが貨物エリアの外に配置されれば、必要に応じ1つ又は複数のガス採取ラインが一時的隔壁のうちの任意のものを通し配策され得る。
【0046】
空気圧システムは好適にはさらに、貨物エリア内に配置された第1の圧力センサ及び居住エリアなどの選択エリア内に配置された第2の圧力センサを含む。船舶がRORO船舶である実施形態では、貨物エリアは船舶内に略垂直方向に配置された複数の貨物区域を含み得る。この実施形態では、居住エリアは、複数の貨物区域の最上段貨物区域の上に少なくとも部分的に配置され得る。好適な実施形態では、第1の圧力センサは複数の貨物区域の最上段貨物区域内に配置される。より好適には、第1の圧力センサは、居住エリアにほぼ隣接する最上段貨物区域内の或る位置に配置される。
【0047】
第1及び第2の圧力センサは、貨物区域内及び居住エリア内のそれぞれの圧力を感知し、第1及び第2の圧力を関連コントローラへそれぞれ送信するように構成される。コントローラは第1の圧力と第2の圧力との差を判断するように構成される。コントローラはさらに好適には、第1の圧力と第2の圧力との差が或る圧力差超に維持されるということを保証するために1つ又は複数のファンの運転を制御するように構成される。上述のように、圧力差は好適には少なくとも50Paより好適には50~100Paである。したがって、第2の圧力は好適には、第1の圧力を少なくとも50Pa超える。
【0048】
代替実施態様では、空気圧システムは差圧センサを含み得る。差圧センサの第1の圧力感知端は船舶の居住エリア内に配置され得るか又はそれへ流体接続され得、差圧センサの第2の圧力感知端は最上段貨物区域内に配置され得るか又はそれへ流体接続され得る。第1及び第2の圧力感知端は、第1及び第2の圧力感知端から延びるそれぞれの導管により、居住エリア及び最上段貨物区域へそれぞれ流体接続され得る。差圧センサの第1及び第2の端は、居住エリア及び最上段貨物区域内のそれぞれの圧力を感知してそれぞれの圧力を関連コントローラへ送信するように構成される。上記と同様に、次に、コントローラは、それぞれの圧力間の差を判断するように及び圧力差が維持されるということを保証するために1つ又は複数のファンの動作を制御するように構成される。
【0049】
代替実施形態では、差圧センサの第1の圧力感知端は、コントローラへ又は導管を介し可変速ドライブ(VSD)と一体化されたコントローラへ流体接続され得、第2の圧力感知端は最上段貨物区域へ延伸する導管を介し最上段貨物区域へ流体接続され得る。
【0050】
さらに別の代替実施態様では、空気圧システムは、1つ又は複数のファン内に配置された、その上に配置された、又はそれに隣接して配置された圧力センサを含み得、圧力センサは運転中に1つ又は複数のファンにかけられる抵抗を測定するように構成される。1つ又は複数のファンにかけられる抵抗は、居住エリア内の圧力と居住エリア外の外気圧との圧力差を判断するために、当業者に知られたやり方で補間され得る。関連コントローラは、居住エリアが貨物区域より大きな相対圧力にあるということを保証するために圧力差を制御するように構成され得る。
【0051】
本システムは好適には、船の電力とは独立した、少なくとも1つの第1の電源を含む。代替的に、本システムはその電力を船の電力から引き出し得る。電源は、電力を少なくともコントローラ、第1及び第2の圧力センサ、空気圧システムの1つ又は複数のファン、1つ又は複数の再循環ファン、低レンジ監視システム、及び高レンジ監視システムへ提供するように構成される。低レンジ監視システムの空気品質モニタ(空気の源に隣接して配置された)は電池などの別の電源により代替的に給電され得る。
【0052】
本システムは第1の電源及び第2の電源を含み得る。第2の電源は好適にはバックアップ電源であり、第1の電源が動作不能になった場合に第1の電源により給電される部品へ電力を提供し得る。第1及び第2の電源は、それぞれの第1及び第2の移動可能発電機であり得る。代替的に、第1及び第2の電源は、それぞれの第1及び第2の電池であり得る、又は移動可能発電機と電池との任意の組み合わせであり得る。
【0053】
気体燻蒸剤は好適には、船舶のデッキ上に配置された1つ又は複数の開口を介し貨物区域から出るように構成される。好ましい実施態様では、組み合わせ煙突(flexible stack or chimney)が、1つ又は複数の開口のそれぞれの周囲に配置され、出ていく気体燻蒸剤を船舶のデッキから略上方へ離れる方向に向けるように構成される。1つ又は複数の開口は、機械的換気扇、通気筐体又は脱出トランクの組み合わせを含み得る。
【0054】
発明の概要に記載された他の態様に関連して説明された特徴のうちの任意の特徴もまた、この態様に対する用途を有し得る。
【0055】
第2の態様によると、船舶を燻蒸するためのシステムが提供され、本システムは船舶に付随的であり、本システムは、1つ又は複数の送達サイトにおいて燻蒸剤を船舶の貨物エリアへ送達するための燻蒸剤送達システム;及び船舶の選択エリア内の圧力(船舶の貨物エリア内の圧力より大きい)を維持するための空気圧システムを含み、空気圧システムの空気取り入れ口は1つ又は複数の燻蒸剤送達場所及び1つ又は複数の排気サイトから遠く離れている。
【0056】
好適には、空気取り入れ口は1つ又は複数の燻蒸剤送達場所から30メートル超にある。
【0057】
1つ又は複数の排気サイトからの燻蒸に続いて貨物エリアから燻蒸剤を排出するための排気システムが設けられ得、好適には、空気取り入れ口は1つ又は複数の排気サイトから30m超にある。
【0058】
空気取り入れ口は船舶の船体の外側の埠頭に又は船舶の前方端に配置され得る。
【0059】
好適には、空気圧システムは、燻蒸及び排気全体にわたって圧力を維持するためのコントローラを含む。
【0060】
発明の概要に記載された他の態様に関連して説明された特徴のうちの任意の特徴もまたこの態様に対する用途を有し得る。
【0061】
2.RORO船舶を燻蒸する方法
別の態様では、船舶を燻蒸する方法が提供される。本方法は燻蒸剤をロールオン/ロールオフ船舶の貨物エリアへ送達することを含む。
【0062】
好適には、本方法はさらに、選択エリアの圧力が貨物エリアより大きくなるように、選択エリアと貨物エリアとの間の選択された最小圧力差を維持するために空気を貨物エリアの上の船舶の選択エリアへ送達することを含む。好適には、本方法はさらに、1つ又は複数の送達サイトにおいて燻蒸剤を貨物エリアへ送達することを含み、本方法はさらに、1つ又は複数の排気サイトからの燻蒸に続いて貨物エリアから燻蒸剤を排出することと、選択エリアの圧力が貨物エリアより大きくなるように、選択エリアと貨物エリアとの間の選択された最小圧力差を維持するために空気を船舶の選択エリアへ送達することとを含み、空気送達のための空気取り入れ口は1つ又は複数の燻蒸剤送達場所と1つ又は複数の排気サイトから遠くにある。
【0063】
好適には、空気取り入れ口は1つ又は複数の燻蒸剤送達場所及び1つ又は複数の排気サイトから30メートル超にある。本発明のより好適な形式では、空気取り入れ口は船舶の船体の外側の埠頭に又は船舶の前方端に配置される。
【0064】
本方法はさらに、貨物エリアを燻蒸するために燻蒸剤を送達すること;燻蒸に続いて貨物エリアから燻蒸剤を排出すること;及び貨物エリア内の圧力より大きい選択エリア内の圧力を維持するために空気を船舶の選択エリアへ送達することを含み得、空気送達は燻蒸及び排気全体にわたって維持される。
【0065】
発明の概要に記載された他の態様に関連して説明された特徴のうちの任意の特徴もまたこの態様に対する用途を有し得る。
【0066】
3.燻蒸システムを構成する方法
別の態様では、船舶を燻蒸するためのシステムを構成する方法が提供され、本システムは船舶にとって付随的であり、本方法は、船舶の選択エリア内の圧力が船舶の貨物エリア内の圧力より大きくなるように船舶の選択エリアと貨物エリアとの間の最小選択圧力差を維持するように動作可能である空気圧システムの空気取り入れ口を構成することを含み、空気取り入れ口は空気を埠頭から又は船舶の船体を越えて外方の場所において引き込むように構成される。
【0067】
好適には、空気圧システムは1つ又は複数のファンを含み、本方法はさらに埠頭においてファンを構成することを含む。空気圧システムは可変速ドライブを含み得、コントローラは可変速ドライブを介し1つ又は複数のファンの速度を制御する、本方法はさらに埠頭において可変速ドライブを構成することを含む。
【0068】
本方法は船舶を燻蒸するための燻蒸剤の源を提供することをさらに含み得、燻蒸剤の源は埠頭に配置される。
【0069】
本方法はさらに、埠頭に移動可能乗組員脱出ブーム(escape boom)を構成することを含み得る。
【0070】
発明の概要に記載された他の態様に関連して説明された特徴のうちの任意の特徴もまたこの態様に対する用途を有し得る。
【0071】
4.制御システム
さらに別の態様によると、ロールオン/ロールオフ船舶(RORO船舶)に付随的である制御システムが提供される。付随制御システムは、燻蒸中に船舶の選択エリア及び/又は貨物エリアから圧力又は圧力差測定値を受信し、このような測定値に応答して、選択エリアと貨物エリアとの間の選択最小圧力差を維持するために船舶の選択エリアへの空気送達を制御するように構成されたコントローラを含み、選択エリアの圧力は貨物エリアより大きい。コントローラはさらに、燻蒸及び貨物エリアからの燻蒸剤のその後の排出全体にわたって圧力差を維持するように構成される。
【0072】
好適には、選択最小圧力差は少なくとも50Paである又は50Pa~100Paである。選択最小圧力差は事前選択され得る。付随制御システムは、1つ又は複数の圧力センサ及び/又は差圧センサに応答し得、好適にはさらに、選択最小圧力差を維持するために空気を選択エリアへ供給するように1つ又は複数の給気ファンを制御するように構成される。付随制御システムは好適には、可変速ドライブを介し1つ又は複数のファンの少なくとも速度を制御するように構成される。
【0073】
付随制御システムはさらに、選択エリア内の及び/又は送達される空気の空気取り入れ口における気体燻蒸剤;二酸化炭素;一酸化炭素;及び他の揮発性有機化合物(VOC)の1つ又は複数を検出するために低レンジ監視を行うように構成され得る。
【0074】
発明の概要に記載された他の態様に関連して説明された特徴のうちの任意の特徴もまたこの態様に対する用途を有し得る。
【0075】
さらに別の態様によると、ロールオン/ロールオフ船舶(RORO船舶)に付随的である制御システムを事前構成する方法が提供される。本方法は付随制御システムのコントローラを事前構成することを含む。コントローラは、燻蒸中に船舶の選択エリア及び/又は貨物エリアから圧力又は圧力差測定値を受信し、このような測定値に応答して、選択エリアと貨物エリアとの間の選択最小圧力差を維持するために船舶の選択エリアへの空気送達を制御するように動作可能であり、選択エリアの圧力は貨物エリアより大きい。コントローラはさらに、燻蒸及び貨物エリアからの燻蒸剤のその後の排出全体にわたって圧力差を維持するように動作可能である。
【0076】
好適には、本方法はさらに、少なくとも50Paの又は50Pa~100Paの選択最小圧力差を維持するように付随制御システムを事前構成することを含む。本方法はさらに、少なくとも1つの事前選択された最小圧力差を維持するために付随制御システムを事前構成することを含み得る。好適には、本方法はさらに、選択エリアへ空気を送達するために1つ又は複数の給気ファンを制御するように付随制御システムを事前構成することを含む。
【0077】
本方法はさらに、選択エリア内の及び/又は送達される空気の空気取り入れ口における気体燻蒸剤;二酸化炭素;一酸化炭素;及び他の揮発性有機化合物(VOC)の1つ又は複数を検出するために低レンジ監視を行うように付随制御システム又は追加付随制御システムを事前構成することを含み、コントローラは低レンジ監視の出力に応答して空気送達を制御する。
【0078】
発明の概要に記載された他の態様に関連して説明された特徴のうちの任意の特徴もまたこの態様に対する用途を有し得る。
【0079】
5.一時的隔壁
別の態様では、船舶の入口路を流体的に密閉するように構成された一時的隔壁が提供される。隔壁は、船舶の入口路内に配置されるように構成された本体;本体の周囲に配置されたシールであって、入口路を流体的に密閉するために入口路に接触するように構成されたシール;及び、本体内の1つ又は複数の開口であって、流体導管と接続するようになされた1つ又は複数の開口を含む。
【0080】
シールを有する本体は好適には、入口路の開口より大きくなるように寸法決めされる。
【0081】
本体内の開口は好適には、流体導管への接続を容易にするための嵌合特徴を含む。
【0082】
1つ又は複数の開口は、隔壁を介して流体が通過できるように構成され得る。流体はガス状流体であり得る。隔壁は、隔壁を介した電力、データ、及び/又は他の付帯設備の通過を許容するように構成された1つ又は複数の他の開口を含み得る。
【0083】
1つ又は複数の開口のうちの少なくともいくつかはそれぞれの弁を含む。
【0084】
好適には、隔壁は、前述の態様に関連して上に記載された1つ又は複数の空気導管へ密閉的に接続されるように構成される。
【0085】
隔壁は好適には、船舶を燻蒸するための上述のシステムの一部を形成する。発明の概要に記載された他の態様に関連して説明された特徴のうちの任意の特徴もまた、この態様に対する用途を有し得る。
【0086】
本明細書で使用されるように、文脈が別途必要としない限り、用語「含む」及びその変形形態(進行形、三人称単数形など)は、さらなる追加物、部品、整数又は工程を除外するように意図されていない。
【0087】
前段において説明された態様の別の態様及び別の実施形態は、例により添付図面を参照して与えられる以下の説明から明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【
図1】一実施形態に従って燻蒸され得るRORO船舶の側面断面図であり、一実施形態による燻蒸剤送達システム、空気圧システム及び一時的フレキシブル排気口を示し、燻蒸運転を示す。
【
図2】
図1と同様であるが換気運転(燻蒸運転後に発生する)を示す。
【
図3】一実施形態に従って燻蒸され得る代替RORO船舶の側面断面図であり、一実施形態による燻蒸剤送達システム、空気圧システム及び一時的フレキシブル排気口を示し、燻蒸運転を示す。
【
図4】
図3と同様であるが、換気運転(燻蒸運転後に発生する)を示す。
【
図5】一実施形態に従って燻蒸され得る代替RORO船舶の側面断面図であり、一実施形態による燻蒸剤送達システム、空気圧システム及び一時的フレキシブル排気口を示し、燻蒸運転を示す。
【
図6】
図5と同様であるが換気運転(燻蒸運転後に発生する)を示す。
【
図7】
図2の船舶の居住エリアの一部の前側透視図であり、さらに、
図2の空気圧システムの一時的隔壁及び他の部品を示す。
【
図8】
図7と同様であるが、一時的隔壁のいくつかの部品だけを示す。
【
図11】線11-11に沿った
図10の隔壁の側面断面図である。
【
図13】
図1の燻蒸剤送達システムに関連する別の隔壁の後部前面図である。
【
図15】
図1の燻蒸剤送達システムに関連するとともに貨物エリア全体にわたって内部的に使用される別の隔壁の側面透視図である。
【
図16】
図1の燻蒸剤送達システムに関連するとともに貨物エリアの全体にわたって内部的に使用されるハッチ隔壁の側面透視図である。
【
図17】一実施形態によるフレキシブル一時的排気口の透視図である。
【
図19】
図17のフレキシブル一時的排気口の前面切り欠き図である。
【
図20】線20-20に沿った
図19のフレキシブル一時的排気口の側面断面図である。
【
図21】代替実施態様に従って燻蒸され得るRORO船舶の側面断面図であり、一実施形態による燻蒸剤送達システム、空気圧システム、一時的フレキシブル排気口を示し、燻蒸運転及び換気運転の両方を示す。
【
図22】RORO船舶の露天甲板上に取り付けられ得る筐体を有する機械的排気換気扇である。
【
図23】
図22の機械的換気扇上に設置される一実施形態によるフレキシブル排気口(タイプII)である。
【
図25】換気運転中の
図23のフレキシブル排気口の側面図である。
【
図26】RORO船舶の露天甲板上に取り付けられ得る排気口筐体である。
【
図27】一実施形態によるフレキシブル排気口の設置場所を示す
図26の通気筐体である。
【
図28】換気運転中の
図27の排気口筐体及びフレキシブル排気口である。
【発明を実施するための形態】
【0089】
典型的RORO船舶
図1を参照すると、船体12と複数の別個の貨物区域14を含む貨物エリア13とを含むロールオン/ロールオフ船舶10(以降「RORO船舶」)が示される。貨物区域14のそれぞれは、水密又はガス密であり、それぞれの貨物デッキ16を含む。
図1に示すように、各貨物区域14は単一貨物デッキ16を含む。しかし、
図1に示すRORO船舶は単に例示的であるということと、RORO船舶はそれぞれの別個の貨物区域14内に2つ又は3つの貨物デッキなどの2つ以上の貨物デッキ16を含み得るということとが理解されることになる。典型的RORO船舶は、4つの別個の貨物区域の間で分散された合計13の貨物デッキを含み得る。単一貨物区域内の貨物デッキのそれぞれは通常はランプにより相互接続される。
【0090】
RORO船舶10はさらに、複数の貨物区域14の最上段貨物区域の上に配置された露天甲板18と船舶10の船首端22にほぼ隣接する露天甲板18上に配置された居住エリア20とを含む。居住エリア20は、船舶10の乗組員又は要員へ居住設備を提供するように配置され、船舶10の様々な居住区を含む。ブリッジ23が居住エリア20の上に配置され、居住エリア20へほぼ流体接続される。ブリッジ23は様々な制御器、航行器、及び船舶10の指揮に必要な他の機器を収容する。
【0091】
RORO船舶10の貨物区域14は、互いの上に配置され、船舶10のほぼ全長に沿って延伸する。図示の実施形態では、船舶10は4つのこのような貨物区域14を含む。上述のように、貨物区域14のそれぞれは、水密又はガス密であるように構成され、1つ又は複数の移動可能又は密閉可能ランプを介し隣接貨物区域14へさらに接続可能である。移動可能ランプは開位置と閉位置との間で移動可能である。開位置では、隣接貨物区域14同士を接続するランプが隣接接続貨物区域14間の乗組員、他の要員及び貨物の通過を可能にする。理解されるように、開位置では、隣接接続貨物区域14は、例えば1つの貨物区域14内の気体燻蒸剤が隣接接続貨物区域14内へ流れることができるように互いに流体接続される。しかし閉位置では、ランプは隣接貨物区域が水密又はガス密であるように隣接貨物区域14間のシールとして働く。
【0092】
最上段貨物区域14は、露天甲板18内に配置された1つ又は複数の脱出トランクを介し乗組員又は他の要員(特別に訓練された燻蒸要員など)によりアクセスされ得る。
図1に示すRORO船舶10は、露天甲板18の周縁の回りに概して配置された8~10個のこのような脱出トランク(4つの脱出トランクだけが
図1に示される)を含む。脱出トランクは、露天甲板18を介した最上段貨物区域14内へのそれぞれの開口又は入口路を画定し、各貨物デッキ16を通して一番下の貨物区域14内の一番下の貨物デッキ16まで下方へ延伸する梯子又は梯子と階段との組み合わせを含む。
【0093】
露天甲板18を介した最上段貨物区域14内への開口又は入口路はハッチ29(例えば
図1を参照)又は階段31(
図5の例を参照)の形式であり得る。加えて、脱出トランクは貨物エリア13全体にわたり配置されたハッチ19及び/又は階段を画定する。ハッチ19及び/又は階段は、貨物区域14内の隣接貨物デッキ16同士を接続し、隣接貨物区域14同士を接続する。ハッチ19は、貨物区域14を隣接貨物区域14から流体的に密閉するために所望により選択的に閉じられ得るそれぞれのハッチ開口を画定する。階段は、その上端及び下端に、隣接貨物区域14から貨物区域14を流体的に密閉するためにこれも所望により選択的に閉じられ得るそれぞれのドアを含む。以下に説明されるように、燻蒸運転及びその後の換気運転中、隣接貨物区域14同士を接続するハッチ19及び/又は階段のそれぞれ(様々な付帯設備(気体燻蒸剤を含む導管など)が貨物エリア13全体にわたって配策されることを可能にする「上昇器」として選択される単一脱出トランクのハッチ19及び/又は階段を除く)は閉じられる。以下に説明される理由のために、船舶10の船体中央部にほぼ最近接して配置された脱出トランクが上昇器として選択されることが好ましい。便宜上、この特定脱出トランクは以降「上昇器脱出トランク」と呼ばれることになる。気体燻蒸剤を含む導管などの付帯設備の貨物エリア13全体にわたる配策を可能にするために、上昇器脱出トランクのハッチ19のそれぞれはハッチ隔壁115(
図16を参照)に取り付けられ、上昇器脱出トランクの各階段のドアのそれぞれはドア隔壁111(
図15を参照)に取り付けられる。上述のように、各階段は上部ドア及び下部ドアを含む。
図1は、上昇器脱出トランクとして使用されればハッチ隔壁115に取り付けられるだろう貨物エリア13内の様々な内部ハッチ19を示す。
図5は、上昇器脱出トランクとして使用されればドア隔壁111に取り付けられるだろう貨物エリア13内の内部ドア111aを示す。ハッチ隔壁115及びドア隔壁111は以下に詳細に説明される。
【0094】
図1に示すRORO船舶10は、梯子だけを含むハッチ29の形式の複数の脱出トランクを含む。
図5は、ハッチ29及び階段31の形式の複数の脱出トランクを含む代替RORO船舶10’’’を示し、少なくとも1つの脱出トランクは梯子及び階段の組み合わせを含む。具体的には、最も右側から2番目の脱出トランクが階段と梯子との組み合わせを含むということが
図5において分かる。
【0095】
機械的給気換気扇及び排気換気扇
船舶10はさらに、複数の給気機械的換気扇24及び複数の排気機械的換気扇26を含む。具体的には、各貨物区域14はそれぞれの専用給気機械的換気扇24及び専用排気機械的換気扇26を含む。給気機械的換気扇24のそれぞれは、新鮮な空気を露天甲板18周囲からそれぞれの貨物区域14へ延びるそれぞれのダクト25を介しそれぞれの貨物区域14内へ供給するように構成される(
図2において矢印の方向より示されるように)。排気機械的換気扇26のそれぞれは、それぞれの貨物区域14からそれぞれのダクト27を介し露天甲板18の上の大気中へ空気を排出するように構成される(
図2において矢印の方向より示されるように)。
図1は、各貨物区域14が単一給気機械的換気扇24及び単一排気機械的換気扇26だけを含むということを示すが、当業者は、貨物区域14のそれぞれは通常は複数の給気機械的換気器及び排気機械的換気器を含むことになるということを認識することになる。給気機械的換気器24及び排気機械的換気扇26のそれぞれは、貨物区域14に対する空気の供給及び排出をそれぞれ制御するために所望により選択的に開閉可能である。さらに、給気機械的換気扇24のそれぞれは、所望により空気を貨物区域14内へ移動することを支援するように構成されたそれぞれのファン24aを含む。代替的に、空気は給気機械的換気扇24を介し貨物区域14内に受動的に引き込まれ得る。排気機械的換気扇26のそれぞれは、所望により空気を貨物区域14から除去することを支援するように構成されたそれぞれのファン26aを含む。
【0096】
図1にさらに示されるように、貨物区域14のデッキ16のそれぞれの上に配置されるのは貨物30である。貨物30は、任意の形式の貨物であり得、船舶10の船尾端34に配置された選択的開閉可能船尾ランプ32を介し船舶10の貨物区域14の上へ転がらされる又はその中へ運転される通常は車付き又は軌道付き貨物である。貨物30の荷積み後に及び船舶10の運行中、貨物区域14へのアクセスは、船体12の右舷側の舷門11に隣接する居住設備梯子踊り場(accommodation ladder landing)防水ドア36を介し実現され得る。上述のように、最上段貨物区域14はまた、露天甲板18内の1つ又は複数の脱出トランク(ハッチ29の形式又は階段31の形式のいずれかの)を介しアクセスされ得る。添付図面全体にわたって示されるように、居住設備梯子踊り場防水ドア36は下から2番目の貨物区域14への直接アクセスを提供する。しかし、他のRORO船舶上では居住設備梯子踊り場防水ドアは下から2番目の貨物区域以外の別の貨物区域への直接アクセスを提供し得るということが認識されることになる。
【0097】
船舶10はさらに、船舶の船尾端34にほぼ隣接する複数の貨物区域14のうちの一番下の貨物区域に隣接して配置された機関室38を含む。機関室38は、垂直方向に延伸する平板鋼隔壁40を介し一番下の貨物区域14から物理的に分離され、下から2番目の貨物区域14の平板鋼甲板敷物により下から2番目の貨物区域14からさらに分離される。理解されるように、機関室38は、船舶10に動力供給して船舶10を推進するために使用されるエンジン及び他の関連機器を収容し、ブリッジ23内に配置された様々な制御器により制御される。乗組員は、船舶10の運転中に及び潜在的に燻蒸及びその後の換気中に時々機関室38内に位置し得る。エンジンの使用中に生成される排出ガスは、船舶10の船尾端34にほぼ隣接する露天甲板18上に配置された煙突42を介し排出される。
【0098】
トラベルタワー(travel tower)300が、居住設備梯子踊り場防水ドア36を介したRORO船舶10へのアクセスが可能でない緊急又は燻蒸運転中のRORO船舶10の乗船又は下船の代替手段を提供するために埠頭に配置される。トラベルタワー300は、乗客を埠頭からRORO船舶10の露天甲板18へ上昇させることができる移動クレーン(cherry picker)スタイル車両である。
【0099】
図1に示され及び上に説明されたRORO船舶10は単に例示的であるということと、RORO船舶の特定形式及び配置は本発明の範囲に影響を与えることなく変更され得るということとが理解されよう。
【0100】
付随的燻蒸システム
上述のように、船舶の乗組員及び任意の特別に訓練された燻蒸要員の安全性を保証する一方で船舶10内の貨物30が荷下ろしに先立って適切に燻蒸されるということを保証する現在の必要性がある。この目的を達成するために、本開示は、その実施形態が
図1~
図28に示され以下に詳細に説明される船舶を燻蒸するためのシステム及び方法を提供する。
【0101】
図1を最初に参照すると、燻蒸剤を船舶10の貨物区域14へ送達するための燻蒸剤送達システム50と貨物エリア13内の圧力より大きい居住エリア20内の圧力を維持するための空気圧システム60とが示される。したがって、貨物エリア13と比較して居住エリア20内のより大きな相対圧力を維持することにより、貨物エリア14内に在るいかなる気体燻蒸剤も、居住エリア20の下の平板鋼甲板敷物内の例えば意図せぬ開口又は亀裂を介し居住エリア20に入ることを防止される。
【0102】
燻蒸剤送達システム50は船舶10の埠頭に配置された移動車両56内に蓄積された燻蒸剤含有ガスボンベ54へそれぞれの第1の端において接続された複数の第1導管52(
図1に概略的に示される)を含む。通常、ガスボンベは別個のグループ内へ配置される。グループ内のガスボンベのそれぞれはマニホールドを介し流体接続され得る。2つの第1導管が各マニホールドから延伸し、気体燻蒸剤をそれぞれの貨物区域14内へ送達し得る。燻蒸剤送達システムは通常は20~36個の第1導管52を含み得る。第1導管52のそれぞれは約1/4インチ(6.35mm)~1インチ(25.4mm)の直径を有し得る。しかし、導管52のそれぞれの導管の好ましい直径は3/8インチ(9.53mm)である。
【0103】
燻蒸剤は、農薬、殺虫剤、消毒剤、清浄剤、殺菌剤、汚染除去薬、防腐剤、清浄薬、ワクチン、抗ウイルス薬又は蒸気のうちの任意の1つ又は複数であり得、弗化スルフリル、ギ酸エチル、エタンジニトリル、ホルムアルデヒド、臭化メチル、クロロピクリン、ヨードホルム、シアン化水素(bluefume)、窒素及び二酸化炭素のうちの任意の1つ又は複数を含み得る。本開示は弗化スルフリルを参照することを含むが、他の燻蒸剤がいくつかの実施形態へ取り込まれ得るということが理解されることになる。加えて、高レンジ範囲検出システム及び低レンジ検出システムにより検出される燻蒸剤の送達のモード及びレベルは選択される燻蒸剤に従って変動し得る。
【0104】
複数の第1導管52それぞれの第2の端は、居住設備梯子踊り場防水ドア36内に配置された燻蒸隔壁110を介し貨物区域14へ流体接続される。以下に詳細に説明される燻蒸隔壁110(
図13、14を参照)は、「複数の第1導管52を介し貨物区域14へ送達されるいかなる気体燻蒸剤も居住設備梯子踊り場防水ドア36を通して貨物区域14から環境内へ脱出することを防止される」ということを保証するために居住設備梯子踊り場防水ドア36を流体的に密閉するように構成される。
【0105】
居住設備梯子踊り場防水ドア36内に配置された燻蒸隔壁110に加えて、複数の他の隔壁が貨物エリア13全体にわたり配置される。上述のように、上昇器脱出トランク内の隣接貨物区域14同士を接続する各ハッチ19に配置されたハッチ隔壁115(
図16)がある。加えて、上昇器脱出トランク内の隣接貨物区域14同士を接続する各階段の各ドア(
図5と
図6に示すドア111aにおけるものなど)にドア隔壁111(
図15)がある。ドア隔壁111は、全体形式では略矩形であり、それぞれのドア開口を密閉するように構成されたシール84を含む。ドア隔壁111はまた、略矩形開口113をその下半分内に含み、開口113は複数の第1導管52を収容しこれにより気体燻蒸剤を隔壁111を横切って送達するように構成される。ハッチ隔壁115(
図16)は、断面が略四角であり、略四角ハッチ開口19aより大きくなるように寸法決めされる。したがって、ハッチ隔壁115は、ハッチ開口19aの上に着座してそれを覆うことによりハッチ19を流体的に密閉するように構成される。
図16はハッチ隔壁115がハッチ19内の開口19aの上に部分的に配置された分解図を示すということに注意すべきである。ドア隔壁111と同様に、ハッチ隔壁115は、複数の第1導管52を収容しこれにより気体燻蒸剤をハッチ隔壁115を横切って送達するように構成された略矩形開口117を含む。
【0106】
貨物エリア13全体にわたって使用される燻蒸隔壁110、ドア隔壁111、及びハッチ隔壁115の組み合わせは、貨物エリア13全体がほぼ同時に燻蒸されることを可能にする、又は代替的に、特定貨物区域14が任意の他の貨物区域14とは別に燻蒸されることを可能にする、又はさらに代替的に、複数の貨物区域14が任意の他の貨物区域14とは別個に燻蒸されることを可能にする。
【0107】
燻蒸のモード
貨物エリア13全体をほぼ同時に燻蒸することは以下のやり方で実現される。最初に、複数の第1導管52が、それらの第1の端において、移動可能燻蒸剤含有車両56へ流体接続され、それらの第2の端において、居住設備梯子踊り場防水ドア36内に配置された燻蒸隔壁110の外側へ流体接続される。次に、別の複数の第1導管52が、それらの第1の端において、燻蒸隔壁110の内側へ接続され、それらの第2の端において、下から2番目の貨物区域14内に配置されたそれぞれの再循環ファン33へ接続される(上に説明したように、居住設備梯子踊り場防水ドア36は下から2番目の貨物区域14への直接アクセスを提供する)。再循環ファン33は下から2番目の貨物区域14全体にわたって気体燻蒸剤を分散するように構成される。気体燻蒸剤を各貨物区域14全体にわたって分散するために各貨物区域14内の各貨物デッキ16内に配置された2つの再循環ファン33があることが好ましい。好ましい配置では、船舶10の右舷側のほぼ船体中央部に配置された第1のファン33と船舶10の左舷側のほぼ船体中央部に配置された第2のファンとがある。第1及び第2のファン33は好適には船舶10内で反対方向に向く。例えば、第1のファン33は船舶10の船尾端の方向へ向き得、第2のファン33は気体燻蒸剤を各貨物区域14全体にわたって十分に散布するために船舶10の船首端の方向に向き得る。
【0108】
再循環ファン33のそれぞれは好適には直接駆動軸流ファンである。好適には、再循環ファン33のそれぞれは7.5kW直接駆動軸流ファンである。さらに、再循環ファン33のそれぞれは各貨物デッキ16全体にわたる気体燻蒸剤の十分な散布を保証するために好適には760mmの直径及び貨物デッキ16の上1.5mに位置する中心線を有する。再循環ファン33は約4~16m3/sの空気容積流速を有し得る。再循環ファン33の好ましい空気容積流速は約10m3/sである。
【0109】
下から2番目の貨物区域14以外の貨物区域を燻蒸するために、別の複数の第1導管52が、それらの第1の端において燻蒸隔壁110の内側へ接続され、それらの第2の端において、他の貨物区域14のそれぞれの貨物区域内に配置された再循環ファン33へ接続される。複数の第1導管52は1つ又は複数のドア隔壁111(
図15)を介し及び/又は脱出トランク上昇器内の1つ又は複数のハッチ隔壁115(
図16)を介し特定貨物区域14へ配策され得る。上述のように、ドア隔壁111及びハッチ隔壁115は、第1導管52が配策され得るそれぞれの開口113及び117を含む。このようにして、複数の第1導管52は、貨物区域14のそれぞれ内の居住設備梯子踊り場防水ドア36内に配置された燻蒸隔壁110の内側から再循環ファン33へ延伸し、これにより貨物区域14間の分離を生成する一方で貨物エリア13全体をほぼ同時に燻蒸し得る。
【0110】
単一貨物区域14だけ又は特定複数の貨物区域14だけを燻蒸するために、複数の第1導管52は、それらの第1の端において燻蒸隔壁110の内側へ接続され、第2の端において、燻蒸されることが望まれる特定貨物区域14又は貨物区域群14内の再循環ファン33へ接続される。燻蒸されることが望まれない任意特定貨物区域14は、脱出トランク上昇器を介し当該貨物区域14内へ到るそれぞれのドア隔壁111及びハッチ隔壁115内の開口113及び117を閉じることにより流体的に密閉される。
図15に示すように、ドア隔壁111は、開口113の周囲に配置された一対のフラップ114を含み、一対のフラップ114は開口113を閉じて流体的に密閉するように構成される。フラップ114は、好適にはゴムシーリング材を含み、フラップ114が開口113を閉じる閉位置へ付勢される。同様に、
図16に示すように、ハッチ隔壁115は、開口117の周囲に配置されたフラップ118を含み、フラップ118は開口117を閉じて流体的に密閉するように構成される。フラップ117は、一対のフラップ114と同様であり、閉位置へ付勢されるゴムシーリング材を含む。このようにして、脱出トランク上昇器からそれらの貨物区域14に到るそれぞれのドア隔壁111及びハッチ隔壁115内の開口113及び117を閉じることにより、特定貨物区域14を流体的に密閉することにより、1つ又は複数の貨物区域14は所望により別個に燻蒸され得る。
【0111】
図15、16に示すように、2つの第1導管52は各貨物区域14を燻蒸するためにドア隔壁111及び/又はハッチ隔壁115を貫通する。しかし、当業者は、異なる数の導管52がそれぞれの特定貨物区域14を燻蒸するために使用され得るということを認識するだろう。例えば、2~4本の導管52が貨物区域14内の各貨物デッキ16を燻蒸するために使用され得、1つ又は2本の導管52が各貨物デッキ16上の各再循環ファン33へ接続され得る。図示の配置では、2つの第1導管52が各貨物区域14を燻蒸するために使用される。導管52の第1の導管は特定貨物区域14内に配置された第1のファン33へ接続され、導管52の第2の導管は特定貨物区域14内に配置された第2のファン33へ接続される。上述のように、船舶10の船体中央部にほぼ最近接して配置された脱出トランクが、導管52などの付帯設備が貨物エリア13全体にわたって配策される上昇管脱出トランクとして選択される。有利には、この位置決めは、各貨物区域14内の再循環ファン33がそうであるように、燻蒸隔壁110もまた船舶10のほぼ船体中央部に配置されるので、可能な限り最短の導管52が貨物エリア13全体にわたって使用されることを可能にする。
【0112】
高レンジ監視システム
燻蒸システム50の他の特徴が次に説明される。
図1に戻って参照すると、燻蒸運転の効能を判断するために、高レンジ監視システムが使用される。高レンジ監視システムは貨物区域14のそれぞれ内に配置された複数のセンサ35を含む。センサ35は、約5,000ppm~15,000ppmの濃度の範囲内の弗化スルフリルの形式の気体燻蒸剤を検出する。高レンジ監視システム内のセンサ35はコントローラ41へフィードバックする。高レンジ監視システムは燻蒸及び換気中に作動され得る。
【0113】
燻蒸運転中、給気機械的換気扇24及び排気機械的換気扇26は、露天甲板18の上の環境内への気体燻蒸剤の脱出を防止するために閉位置に維持される。排気機械的換気扇26のそれぞれの周囲に取り付けられるのは、以下に詳細に説明されるそれぞれのフレキシブル一時的排気口58である。フレキシブル一時的排気口58は、燻蒸運転が完了した後に貨物区域14からの気体燻蒸剤の安全な除去を支援する。
図1に示す実施態様では、一時的フレキシブル排気口58は、閉鎖又は非稼働位置にある排気機械的換気扇26に起因して非稼働収縮位置に示される。
【0114】
乗員エリア内の過圧
上述のように、燻蒸運転中、空気圧システム60は居住エリア20内の空気圧を貨物区域14内の空気圧より高く維持するように構成される。示された実施形態では、ブリッジ23もまた、居住エリア20へ流体接続されることに起因して貨物区域14より大きな相対圧力に維持される。
【0115】
空気圧システムは、空気を船舶10の居住エリア20へ送達するように構成された3つの第2導管62(
図2に概略的に示される)を含む。導管62のそれぞれは、船舶10の埠頭に(すなわち船舶10の遠くに)配置された空気の源へそれらの第1の端において接続され、居住エリア20内への入口路64(以下に説明される)内に配置された居住隔壁80(
図7)へそれらの第2の端において接続される。居住隔壁80は、3本の導管62のそれぞれへ流体接続されこれにより空気を居住エリア20内へ送達するように構成され、さらに、空気が入口路64を介し脱出するのを防止するために入口路64を流体的に密閉するように構成される。燻蒸運転中、居住エリア20は好適には、貨物区域14と比較してより大きな相対圧力に居住エリア20を維持することをそうでなければ困難にするだろう居住エリア20からの比較的著しい量の空気の脱出を防止するために、著しく気密にされるか、又は十分な程度に少なくとも気密にされる。この目的を達成するために、燻蒸運転中、居住エリア内へのいかなる通気口又は開口も好適には閉じられ、空気を居住エリア20へ供給及び/又はから除去するいかなる空調装置も好適にはシャットダウンされる。
【0116】
図2に示すように、導管62の第1の端のそれぞれは、空気がそれぞれの導管62を介し居住エリア20へ送達され得るように、空気をそれぞれの導管62内に引き込むように構成されたそれぞれのファン66へ接続される。ファン66は、可変速ドライブ(VSD)43を介しファン66の速度を少なくとも制御するコントローラ41により制御され、これにより導管62のそれぞれを介し居住エリア20へ送達される空気の容積流量を調節可能に制御する。VSD43及びファン66は第1及び第2の移動可能発電機45により給電される。好適には、第2の発電機45は、第1の発電機45が非稼働になる場合に第1の発電機45のバックアップ電源として働く。
【0117】
圧力差感知
空気圧システム60はさらに、船舶の居住エリア20内に配置された第1の圧力感知端72と最上段貨物区域14内に配置され及び居住エリア20に隣接した第2の圧力感知端74とを含む差圧センサ70を含む。差圧センサ70の第1端及び第2端72及び74は、居住エリア20内及び最上段貨物区域14内のそれぞれの圧力を感知してそれぞれの圧力をコントローラ41へ送信するように構成される。コントローラ41は、それぞれの圧力の差を判断するように、及び予め定められた所望圧力差が維持されることを保証するために導管62へ接続されるファン66の動作を制御するように構成される。好適には、居住エリア20内の圧力は貨物区域14内の圧力の上少なくとも50Paに維持される。より好適には、居住エリア20内の圧力は貨物区域14内の圧力の上50~100Paに維持される。当業者により理解されるように、圧力差が予め定められた所望圧力差未満に低下すれば、コントローラはファン66の速度を増加するようにVSD43を介しファン66を制御し、これにより、導管62を介し居住エリア20内に引き込まれる空気の容積流量を増加する。逆に、圧力差が最大所望圧力差を超えれば、コントローラはファン66の速度を低減するようにSD43を介しファン66を制御し、これにより導管62を介し居住エリア20内に引き込まれる空気の容積流量を低減する。
【0118】
空気品質監視
空気圧システム60はさらに、ファン66(したがって導管62の取り入れ口端)にほぼ隣接する、埠頭に配置された空気品質モニタ76を含む。空気品質モニタは、気体燻蒸剤、二酸化炭素、一酸化炭素及び他の揮発性有機化合物(VOC)のうちの1つ又は複数の有無を検出するように構成され、空気圧システム60が必要に応じてシャットダウンされ得るようにこれらの気体の有無をコントローラ及び/又はオペレータへ報告し得る。空気品質モニタ76は、0.1ppmの分解能を有する0.5ppm~230ppmの範囲内の弗化スルフリルを含む燻蒸剤気体を検出するために使用される低レンジ監視システムの一部を形成する。低レンジ監視システムの一部を形成する他のセンサ37がガス漏れを検出するために特定位置において使用され得る。例えば、センサ37は、機関室38、通路、並びに乗員アクセス及び居住エリア20内に配置され得る。センサ37は制御システムへフィードバックされるケーブルフィードによりデイジーチェイン接続され得る。低レンジ監視システムは燻蒸及び換気中に作動される。
【0119】
燻蒸運転は、処理要件に依存して約12~48時間以上など数時間続き得る。燻蒸運転全体にわたり、空気圧システム60は、居住エリア20と貨物区域14との間の予め定められた所望圧力差を維持するように作動され、燻蒸作業の終了以降まで(少なくとも、貨物区域14及び貨物30からの気体燻蒸剤の除去まで)任意選択的に作動される。
【0120】
換気運転
燻蒸運転が完了した後、換気運転が貨物区域14及び貨物30から気体燻蒸剤を安全に除去するために開始される。換気運転は約10~36時間など数時間続き得る。換気運転中、給気機械的換気扇24が開かれ、それらの関連ファン24aが、空気の新鮮な供給が貨物区域14内に引き込まれることを可能にするために作動される。加えて、排気機械的換気扇26が開かれ、それらの関連ファン26aが、気体燻蒸剤を含む空気を貨物区域14から積極的に除去するために作動される。この換気運転は
図2に示される。
図2で分かるように、換気運転中、フレキシブル一時的排気口58は、ガス状燻蒸剤を含む空気を露天甲板18から離れてほぼ上方に追い出すためにほぼ直立動作位置にある。以下に説明されるように、フレキシブル一時的排気口58は、脱出するガス状燻蒸剤が居住エリア20から離れる方向に向けられるということをできるだけ保証する動作位置にある場合は居住エリア20の上方に延伸する。
【0121】
隔壁
図7~14は、居住設備梯子踊り場防水ドア36に配置された燻蒸隔壁110に関係する詳細、居住エリア20内への入口路68内に配置された居住隔壁80に関係する詳細、並びにフレキシブル一時的排気口58及び他の潜在的換気方法に関係する詳細を提供する。
【0122】
図7を最初に参照すると、居住エリア20内への右舷入口路68に配置された一時的隔壁80が示される。空気圧システム60の3本の導管62のそれぞれは、空気を居住隔壁80を介し居住エリア20内へ送達するために居住隔壁80へ流体的に及び密閉的に接続される。
【0123】
図8、9を参照すると、一時的居住隔壁80は、入口路68内の隔壁80を居住エリア20(
図9に示す内側)の内側に最初に位置決めすることにより設置される。隔壁80は、入口路68の略矩形開口より若干大きくなるように寸法決めされた矩形本体82(
図9)を含む。隔壁80はさらに、本体82の第1の面すなわち外側面86上にシール84(
図9)を含む。シール84は、その長さ全体にわたる断面で略矩形であり、外側面86上の矩形本体82の周縁に沿って延伸し、本体82の外端から若干挿入される(
図9、11を参照)。本体82の外側面86は、シール84が入口路68内の開口に接触して密閉するように居住エリアの内側から離れる方向に向くように位置決めされる。居住隔壁80は、入口路68を囲む居住エリア20の外壁90に対して固定された一連の略矩形ブラケット88(
図7)によりこの位置に維持される。
【0124】
図8を参照すると、居住隔壁80は、入口路68を横切って略水平方向に配置されるように構成された4つの略矩形ブラケット88を含む。ブラケット88のそれぞれは、横方向に突出する外側フランジ化長手方向端92であって居住エリア20の外壁90と接触するように構成された端92を含む。ブラケット88のそれぞれはさらに、ブラケット88の全長に概して沿って延伸する細長い開口又はスリット94を含む。細長い開口94は一対の概してT字状の管状棒96を収容するように構成される。棒96の遠端は、棒96の遠端が本体82(
図9)の内面から突出するように隔壁80の本体82を貫通するそれぞれの略円状アパーチャ98(
図15)内に収容されるように構成される。それぞれのナット100は、隔壁80の本体82に対する棒96の位置を固定するために棒96の遠位端のそれぞれの周囲に配置される。棒96の近位端は、細長い開口94より広くなるように寸法決めされしたがって本体82に対するブラケット88の位置を調節するためにブラケット88と接触するように構成されたそれぞれの略環状プレート(
図8)を含む。当業者により理解されるように、棒96の略T字状近位端は、隔壁80の本体82に対する棒96の位置を調節するためにしたがって入口路68内の開口に対するシール84の位置を調節するために手動で回転され得る。例えば、締め付け中、棒96の略円状プレート102は、ブラケット88を隔壁80の相対的に本体82の方向へ移動させるためにブラケット88の外面と接触する。
【0125】
図9~
図12に示すように、隔壁80の本体82は、本体82の横断中心線に沿って互いに垂直方向に配置され本体82を貫通する3つの略円状開口104を含む。開口104のそれぞれは空気圧システム60の第2導管62のそれぞれの第2導管へ流体的に且つ密閉的に接続されるように構成される。開口104は、空気が開口10を介し居住エリア20に入ることを可能にするが空気の逆流を防止する一方向弁として動作し得るそれぞれの弁(示されない)を含み得る。
【0126】
図13、14は、居住設備梯子踊り場防水ドア36に配置されるように構成された一時的燻蒸隔壁110を示す。しかし、燻蒸隔壁110はその代りに貨物エリア13内への任意の他の好適な開口に嵌め込まれ得る(露天甲板18上の階段(脱出トランク)31(
図5)に到るドアにおいて又は後部船尾アクセスドアを介しなど)ということが認識されよう。しかし、燻蒸隔壁110は好適には、貨物エリア13内のそのほぼ中央の場所のおかげで、居住設備梯子踊り場防水ドアへ嵌め込まれる。
【0127】
燻蒸隔壁110は、形式及び動作の点で居住隔壁80に似ている。例えば、居住隔壁80と同様に、燻蒸隔壁110は、本体82、本体82の外側面86上の本体82の周縁の周囲に略延伸する略矩形のシール84、複数のブラケット88、関連T字状管状棒96、管状棒96の遠位端を収容するように構成された隔壁110の本体82を貫通する複数の略円状アパーチャ98、及び棒96を本体82へ固定するために本体82の内面上の棒96の遠位端のそれぞれの遠位端の周囲に配置されたそれぞれのナット100を含む。加えて、燻蒸隔壁110は、居住隔壁80が居住エリア20内への開口64に対向して密閉されるのとほぼ同じやり方で居住設備梯子踊り場防水ドア36に対向して密閉される。しかし、燻蒸隔壁110は居住設備梯子踊り場防水ドア36へ外嵌される、居住隔壁80は居住エリア20内への開口64へ内嵌される。
【0128】
燻蒸隔壁110はまた、隔壁110を横切ってガス状燻蒸剤を送達するために本体82の上半分内に概して配置された複数の略円状の開口又は栓112であって燻蒸システム50のそれぞれの第1導管52へ流体的に且つ密閉的に接続されるように構成された複数の略円状の開口又は栓112を含む。具体的には、燻蒸隔壁110は、3つの隣接垂直方向に延伸するグループで配置された36個の開口又は栓112を含み、各グループは並置された2つの開口112の6つの列を含む。したがって、燻蒸隔壁110は、移動可能燻蒸剤含有車両56から36個の第1導管52を収容し得、36個の第1導管52を貨物エリア13全体にわたって分散し得る。例えば
図14に示すように、開口又は栓112は、隔壁110のいずれかの側のそれぞれの第1導管52へ接続される隔壁110を貫通する。燻蒸隔壁110は燻蒸される特定船舶に従って必要に応じ任意数の開口又は栓122を含む可能性があるということが理解されることになる。一般的に、燻蒸隔壁110は、2~4本の導管52が各貨物デッキ16へ配策されることを可能にするために十分な数の開口又は栓112を含むことになる。
【0129】
燻蒸隔壁110はまた、本体82の下半分内に配置される一連のポート119を含み、一連のポート119は隔壁110を横切って電力及び/又はデータを受信及び送信するように構成される。示された実施形態では、燻蒸隔壁110は、2列で配置された8つのポート119を互いの上に含む。上述のように、燻蒸隔壁110は燻蒸される特定船舶に従って必要に応じ任意数のポート119を含む可能性があるということが理解されよう。一般的に、燻蒸隔壁110は、少なくとも1つの3相電力ケーブルが各貨物デッキ16へ配策されることを可能にするために十分な数のポート119を含むことになる。各ポート119は好適には15~50Ampの電流を供給するように構成される。
【0130】
ポート119は電力を貨物区域14の各貨物区域内の再循環ファン33へ供給し得る。ポート119はまた、高レンジ監視システムのセンサ35とコントローラ41との間のデータ接続を提供し得る。具体的には、1つ又は複数の電力ケーブルが、第1及び/又は第2の移動可能発電機45と燻蒸隔壁110の外側のポート119との間で接続され得、燻蒸隔壁110の内側のポート119と貨物区域14のそれぞれ内に配置された再循環ファン33との間に接続され得る。高レンジ範囲監視システムのセンサ35は同様なやり方でコントローラ41へ接続され得る。
【0131】
上述のように、
図15及び16はそれぞれ、上昇器脱出トランク内の各階段の各ドア内に配置されたドア隔壁111及び上昇器脱出トランク内の各ハッチ19内に配置されたハッチ隔壁115を示す。ドア隔壁111は居住隔壁20及び燻蒸隔壁110と形式の点でほぼ似ている。ドア隔壁111は、上昇器脱出トランク内の各階段の各ドアの周囲に、居住隔壁80及び燻蒸隔壁110がそれぞれの開口64及び36へ密閉されるのとほぼ同じやり方で密閉される。具体的には、ドア隔壁111のそれぞれは、管状棒9などを収容するように構成された複数の円状アパーチャ98を含む。ハッチ隔壁115は、略矩形のハッチ開口19aと比較して各次元においてより大きい略矩形板状本体115aを含む。このようにして、ハッチ開口19aに対向して配置される場合、板状本体は開口19aを密閉するように働く。各ハッチ開口19aは略900mm×900mm又は1000mm×1000mmである。
【0132】
燻蒸剤
上述のように、説明された燻蒸剤送達方法に関する変形を必要とし得る、異なる燻蒸剤化学物質が使用され得る。当業者により理解されるように、ギ酸エチル、エタンジニトリル及びシアン化水素などの燻蒸化学物質は、上述の方法が使用されれば遭遇され得るいくつかの条件及び濃度下で可燃性であり得る。
【0133】
上記方法では、これは、一定濃度の燻蒸剤が可燃性領域を通過すると液体から気体への化学薬品の気化中に発生する可能性が最も高い。濃度のこの変化は、燻蒸剤をRoRo船舶10の貨物区域14内の再循環ファン33へ導入する際に発生する。貨物区域14内の火事開始のリスクを回避するために、燻蒸剤送達の別の方法が、このリスクを提示する燻蒸剤気体に関し使用され得る。
【0134】
潜在的に可燃性である燻蒸剤による燻蒸は、上述の弗化スルフリルの方法を使用することにより、安全に行うことが可能な場合がある。例えば、液体ギ酸エチルは、移動可能燻蒸剤含有車両56の燻蒸剤含有シリンダ54及び1つ又は複数の一時的隔壁110へ接続される複数の第1導管52を介し貨物区域14へ送達され得る。ギ酸エチルは貨物区域14内の再循環ファン33近くのポンプへ供給される。ポンプはギ酸エチルの圧力を7バール~300バールの範囲に(好適には200バールの周囲に)増加する。液体ギ酸エチルはノズル又は制約要素を介しポンプから外に追い出され、再循環ファン33の空気流経路内へ入れられ得る。液体ギ酸エチルの高圧のおかげで、液体ギ酸エチルは、ノズルを高速度状態のままにし、微細噴霧、靄又は霧へ霧化される。霧化された液体ギ酸エチルは圧力の低下に晒され、これにより液体ギ酸エチルをガス状状態へ変化させ、空気中へ分散させる。再循環ファン33により供給される空気量は、ギ酸エチルの濃度が可燃性範囲未満に急速に低下するようにされる。この方法を使用することにより、燻蒸剤の燃焼に起因する火事のリスクは、導管52から出る霧化された流れの極一部だけが短期間の間可燃性範囲内にあり得るので低くなり得る。
【0135】
代替燻蒸送達方法では、潜在的可燃性燻蒸剤は、上に説明したものと同様なやり方で複数の導管52を介し液体形式の燻蒸下で貨物区域14へ向けられる。しかし、液体燻蒸剤は、再循環ファン33へは向けられず、その代りに、気化器又は熱交換器と再循環ファンの近くに配置された高容量混合装置とから構成される混合機へ向けられる。気化器又は熱交換器は通常、熱水浴槽又は熱油浴槽内の銅管のコイルから構成されるが、多くの他の好適なタイプの熱交換器が存在する。銅コイルを通過すると、液体燻蒸剤は暖められ、液体から気体へ遷移する。気化器は通常、電力が1kW~15kW、好適には10kWである。次に、ガス状燻蒸剤は高容量混合装置内へ向けられる。高容量混合装置は所望燻蒸剤濃度を生成するために必要とされる比で空気と燻蒸剤とを吸い込む。混合が発生する速度は、燻蒸剤の可燃性濃度が急速に回避されるようにされる。空気/燻蒸剤混合物は、燻蒸下で貨物区域14の周囲に一様に分散されるように再循環ファン33近くの混合装置から出る。代替的に、気化された燻蒸剤は、高容量混合装置に入るより、むしろ混合されるために再循環ファン33へ直接送達される。
【0136】
別の代替燻蒸送達方法では、混合機は、燻蒸されるRORO船舶10の貨物区域14内ではなく埠頭上に配置される。燻蒸剤は、気化器又は熱交換器内で気化され、高容量混合装置内で空気と混合される。ガス状空気/燻蒸剤混合物は次に、フレキシブルダクトと、上に詳細に説明された空気圧システム60と同様なやり方でフレキシブルダクトを収容するように構成された一時的隔壁とを介し燻蒸下で貨物区域14へ送達される。
【0137】
液体燻蒸剤は貨物区域14内に又は埠頭上に配置された気化器を使用する気化を必要としないということが可能である。この事例では、液体燻蒸剤は、貨物区域14内に又は埠頭側に、のいずれかに配置される高容量混合装置の内部で気化され得る。代替的に、液体燻蒸剤は、埠頭側で空気と混合され得る噴霧、靄又は霧を生成するためにポンプにより加圧されて次にノズルから取り出され得る。燻蒸剤は、上述のように液体として又は上述のようにフレキシブルダクトを介しガス状空気/燻蒸剤混合物としてのいずれかとして貨物区域14へ送達され得る。
【0138】
別の実施形態では、ガス状空気/燻蒸剤混合物は、貨物区域14とRoRo船舶10の露天甲板18上の給気機械的換気扇24又は排気機械的換気扇26とを接続するダクト25、27を介し燻蒸される貨物区域14へ送達され得る。ガス状空気/燻蒸剤混合物は、前述の任意のやり方で用意されていてもよいし、液体としてダクト25、27又は機械的換気扇24、26へ送達され、機械的換気扇24、26又はダクト25、27の内部で気化されてもよい。
【0139】
別の代替方法では、燻蒸剤は、二酸化炭素又は窒素などの空気以外の不燃性ガスと所望濃度まで埠頭において混合され得、次に上述のように空気圧システム60又は機械的換気扇24、26と同様なやり方でフレキシブルダクトを介し燻蒸されるために貨物区域14へ送達され得る。
【0140】
燻蒸剤と液体炭酸とを所望濃度まで混合し、燻蒸剤混合物を低温液体(次に、上述のように気化器、熱交換器又は霧化を使用することにより安全に気化される可能性がある)として貨物区域14へ送達することも望ましい場合がある。
【0141】
上述の燻蒸方法の組み合わせが船舶と行われる燻蒸との構成に基づき利用される可能性があるということが当業者により理解されることになる。
【0142】
一時的フレキシブル排気口
残りの図は、換気運転中に貨物区域14からガス状燻蒸剤を除去することを支援するように構成されるフレキシブル一時的排気口に関する詳細を提供する。
【0143】
タイプI一時的フレキシブル排気口
図17~
図20を初めに参照すると、排気機械的換気扇26の周囲に配置されたフレキシブル一時的排気口58(タイプI)が示される。上に述べたように、フレキシブル一時的排気口58は、換気運転中(燻蒸運転が完了した後)にガス状燻蒸剤を貨物区域14から除去することを支援するように構成される。
【0144】
図17を最初に参照すると、一時的フレキシブル排気口58は、直立排気口を提供するため使用中に略垂直方向に膨張する膨張可能導管120を含む。一時的フレキシブル排気口58は貨物区域14からの排出空気(ガス状燻蒸剤を含む)により膨張するように構成される。膨張可能導管120はその下端に第1の開口122及びその上端に第2の開口124を含む。
図17に示すように、例えば、第2の開口又は上側開口124は使用中に第1開口又は下側開口122より小さな断面積を有し得る。
【0145】
第1の開口122は、排気機械的換気扇26の上に嵌められ(又は、同様な導管が以下に説明されるように通気筐体の上に嵌められる可能性がある)、長さ調整可能フレキシブルストラップ126を介し排気機械的換気扇26へ機械的に固定される。第1又は下側開口122がストラップ126を介し機械的換気扇26へ固定されると、フレキシブル排気口58は、機械的換気扇26と流体連通状態になり、したがって、下側開口122の下流に配置される機械的換気扇26から排出される空気を上側開口124を介し排出するように構成される(
図20において矢印の方向により示されるように)
【0146】
これらの図に示されるように、フレキシブル排気口58は、使用時は略円錐状であり、膨張される。フレキシブル排気口58は、下側略円筒状部128(機械的換気扇26の矩形断面形状に適合するフレキシブル導管120のおかげで
図17、18ではいくぶん矩形に見える)を含む。フレキシブル排気口58は上側略円錐台形部130をさらに含む。
【0147】
図17を参照すると、膨張可能導管120の第1の開口122は機械的換気扇26の通気口の下の機械的換気扇26の基部の周囲に嵌め込まれる。使用中、フレキシブル排気口58のこの位置決めは、通気口の下のプレナムチャンバを生成し、これによりフレキシブル排気口58の膨張を支援する。
【0148】
図17~
図18に示すように、膨張可能導管120は、機械的換気扇26を収容するように寸法決めされ、好適には、間隙が使用中に換気扇26の筐体と膨張可能導管120との間に生成される(
図19、20に具体的に示される)ようなやり方で寸法決めされる。膨張可能導管120の内側壁と換気扇筐体26との間の間隙は好適には約300mmである(換気扇筐体26のそれぞれの側で)。膨張可能導管120は居住エリア20の高さを超える高さを有するように寸法決めされる。したがって、使用中、膨張可能導管120は約8~10メートルの高さを有する。上述のように、フレキシブル排気口58の上側下流開口124の比較的高い位置決めは、排出空気(ガス状燻蒸剤を含む)が居住エリア20から離れる方向に向けられるということをできるだけ保証する。
【0149】
特定換気配置(採用される機械的換気扇26の数など)は、RORO船舶の設計;貨物、燻蒸剤及び関連規則により判断される特定種類の貨物及び燻蒸剤の換気要件並びに希釈の安全レベル;各機械的換気扇26の流量、及び貨物デッキ16の区画配置などの様々な要因に依存し得る。卓越風の別の条件もまた、換気要件と関係し得る。これらの要因は、当該特定船舶に好適な換気計画を設計する際に考慮され得る。
【0150】
図2及び
図17~
図20に示す換気配置の一実施形態では、それぞれのフレキシブル一時的排気口58は、各排気機械的換気扇26の周囲に配置され、貨物区域14からのガス状燻蒸剤を含む空気を排出することを支援する。上述のように、換気運転中、給気機械的換気扇24及びそれらの関連ファン24aは新鮮な空気を貨物区域14内へ吸い込むように作動され、排気機械的換気扇26及びそれらの関連ファン26aはガス状燻蒸剤を含む空気をフレキシブル一時的排気口58を介し貨物区域14から除去するように作動される。
図1に示すように、燻蒸運転中、フレキシブル一時的排気口58は、それぞれの排気機械的換気扇26へ取り付けられるが、燻蒸中に露天甲板18の上の大気中へのガス状燻蒸剤の脱出を防止するためにそれらの下流開口において互いに結び付けられる。
【0151】
タイプII一時的フレキシブル排出口
上述のフレキシブル一時的排気口58は、気密シールが配管又は他の障害物のおかげで機械的排気口換気扇26の船首又は上昇ダクトにおいて形成され得ないという制限に遭遇し得る。
図21は、前述のフレキシブル排気口58が機械的換気扇26へ取り付けられることができないRORO船舶10を示す。
【0152】
代替フレキシブル排気口240(タイプII)が排気機械的換気扇26内に取り付けられる
図21の燻蒸運転は、上に説明したものと同様である。燻蒸剤の貨物区域14を換気する際、新鮮な空気が、給気機械的換気扇24を使用することにより貨物区域14内に引き込まれる、及び/又は排気機械的換気扇26を使用することにより貨物区域14から引き出される。
【0153】
図22から分かるように、露天甲板18上の機械的換気扇26は、天候及び他の干渉から機械的換気扇26/排風機26aを保護するために換気扇筐体242内に通常は収容される。筐体242は、排気ダクト27及び/又は軸流ファン26a(示されない)の上部へのアクセスを許容するために開くメンテナンスアクセスドア244を一方の側に有する。これらのドアは代替フレキシブル排気口240を設置するために開かれる。
【0154】
図23~
図25は、排気ダクト27の上部へ取り付けるように換気運転中に露天甲板18を避けて排出燻蒸剤を向けるように構成された代替フレキシブル排気口240(タイプII)を示す。代替フレキシブル排気口240は、耐ガス性リップストップ(ripstop)ナイロンから作られ、フレキシブル排気口140が排気ダクト27の上部と結合することと筐体242を洗浄することとを可能にするために略「L」字形のものである。
図24に示すように、代替フレキシブル排気口240は略水平部246及び略垂直部248を含む。
【0155】
略水平部246は、概して細長い立方体であるが円筒状でもよい膨張可能プレナム247である。略水平部246は、排気ダクト27の上部を収容し囲むために軸流ファン26aより若干大きい、直径約1mである円状接続250を有する。円状接続250は、ガス密シールを生成する張力/ラチェットストラップ252を使用することにより固定される。排気ダクト27は、障害無しにプレナム247が取り付けられ得る清浄表面を提供する。膨張されると、プレナムは、略垂直部248が換気扇筐体242に邪魔されないようにメンテナンスドア244から延伸し筐体242を越える。
【0156】
略垂直部248は円状接続250より遠位にあるプレナム247へ接続する。略垂直部248は、排出される燻蒸剤の速度を修正するために上側下流開口124の直径を変更するために、上側下流開口124及び引き紐134を有する円錐台形ベロシティコーン(frustoconical velocity cone)252に対し先細りなる。ベロシティコーン252は調整可能であり得る。
【0157】
ベロシティコーン252/略垂直部248は、膨張可能プレナム247及び/又は略垂直部248の内面に働く排出燻蒸剤の力を許容するために、換気扇筐体242の方向へ水平方向に対し約12°の角度で傾斜される。
図25から分かるように、ベロシティコーン252は、この傾斜のおかげで燻蒸剤を排出する際により垂直となる。ベロシティコーン252/略垂直部248は、排出燻蒸剤を露天甲板18及び乗員居住から離れる方向に安全に向けるために、換気扇筐体242を垂直方向に貫通する。
【0158】
代替フレキシブル排気口240をさらに支持するために、
図23に示すように交差部材を含む少なくとも1つのブラケット254を含む支持アセンブリは、換気運転中にドアを開位置に保持するために代替フレキシブル排気口240の底部へ支持を提供するためにメンテナンスアクセスドア244に従属する。支持アセンブリは、プレナムを下から支持するために交差部材が一定範囲の高さに設定されることを可能にするように調整可能であり得る。追加交差部材は、煙突を換気扇筐体の方向へ保持するために煙突上のループを通され得る。代替的に、膨張可能構造へ支持を提供する別の方法は、下から膨張可能構造を支持するために膨張可能プレナムの下部を船舶のデッキまで延ばすことだろう。
【0159】
空気圧システムの補償
上述のように、空気圧システム60は、ガス状燻蒸剤のすべて又はほぼすべてが貨物区域14及び貨物30から除去されるまで燻蒸運転全体にわたって好適には換気運転全体にわたって作動される。ガス状燻蒸剤は、高レンジ監視システムのセンサ35が5ppm以下の濃度の弗化スルフリルの形式のガス状燻蒸剤の濃度を検出すると貨物区域14及び貨物30から除去された又はほぼ除去されたと考えられる。
【0160】
理解されるように、換気運転中、貨物エリア13内の圧力は、新鮮な空気の供給が給気機械的換気扇24により提供されるおかげで増加し得る。したがって、空気圧システム60は、貨物エリア13内の圧力の任意の増加に照らして貨物エリア13と居住エリア20との間の所望圧力差を維持するように動作する。「空気圧システム60は、居住エリア20の居住性又は有用性に著しく影響を与えることなく居住エリア20が平均海面大気圧を超えて最大300Pa~1kPaの圧力にある(貨物エリア13内の圧力を超えて少なくとも50Paの所望圧力差を維持する一方で)ように居住エリア20へ空気を送達することができる」ということが発見された。しかし、居住エリア20内の好ましい最大圧力は平均海面大気圧を超えて約300Paである。
【0161】
居住エリア20内の圧力が平均海面大気圧を超えて300Paに近いか又は300Paを超えれば、警報が、貨物エリア13内の圧力を低減することをオペレータに通知するためにトリガされ得る。これは、給気機械的換気扇24の動作を調整することにより及び/又は露天甲板18内の1つ又は複数のハッチ29を開くことにより実現され得る。
【0162】
代替換気配置
給気、排気、及び可逆機械的換気扇を有する上述のRORO船舶は最も一般的な配置である(特に新しいRORO船舶の場合に)。しかし、換気の追加挑戦を呈示する他の配置もまたRORO船舶内に発見され得る。
【0163】
通気筐体を介した受動的換気
第1のケースでは、RORO船舶は、いかなる排気機械的換気扇も有しない可能性があり、その代りに、露天甲板上に配置された通気筐体による貨物区域の受動的換気に依存し得る。通気筐体は、自動車専用船(PCTC:Pure Car and Truck Carrier)タイプ船舶上で通常発見される。このようなRORO船舶が
図3、4に示される。
【0164】
図3で分かるように、船舶10’は、空気を貨物区域14のそれぞれへ引き込む関連ファン24aを含む給気機械的換気扇24と露天甲板18上に配置された一連の通気筐体39とを含む。各貨物区域14は専用通気筐体39とそれぞれの貨物区域14の受動的換気を可能にする配管とを含む。
図4の矢印の方向は、給気機械的換気扇24を介した貨物区域14内への空気の移動方向と通気筐体39を介した貨物区域14からの空気の移動方向とを示す。
【0165】
図3は燻蒸下のRORO船舶10’を示す。
図3に示す燻蒸システム50及び空気圧システム60は
図1、2に関連して本明細書において説明されたものと同じであり、燻蒸運転は
図1~
図2に示すRORO船舶10に関連して本明細書において説明されたものとほぼ同じやり方で行われる。
図3に示すように、通気筐体39のそれぞれは、以下にさらに詳細に説明される一時的フレキシブル排気口262(タイプIII)を備える。
【0166】
代替的に、一時的フレキシブル排気口58と同様なタイプの一時的フレキシブル排気口(示されない)が、排気機械的換気扇26に関連して上に説明されたものとほぼ同じやり方で通気筐体39の周囲に取り付けられる可能性がある(例えば
図17~
図20参照)。
【0167】
燻蒸運転中(
図3に示す)、一時的フレキシブル排気口58/262は、露天甲板18の上の大気中へのガス状燻蒸剤の脱出を防止するためにそれらの下流側開口において互いに結び付けられ得る。
【0168】
図4は換気運転を示す。この図で分かるように、一時的フレキシブル排気口58/262の下流側開口は、ガス状燻蒸剤を含む空気が通気筐体39を介し貨物区域14から排出されることを可能にするために互いに結び付けられない。換気運転中、給気機械的換気扇24及びそれらの関連ファン24aは貨物区域14内に新鮮な空気を引き込むように作動される。貨物区域14内への新鮮な空気の引き込みは通気筐体39を介した受動的排気式換気を支援する。
【0169】
タイプIII一時的フレキシブル排気口
次に、代替一時的フレキシブル排気口262が
図26~28に関連して提示される。このような船舶が
図26に示され、ここでは、貨物区域14からの受動的排気ダクト27は(通常は露天甲板18の船尾端34の)通気筐体39の内部に収容される。燻蒸運転は先に説明したものと同じである。しかし、燻蒸剤の換気は、受動的排気ダクト27を介し燻蒸剤を追い出すように燻蒸される貨物区域14内へ空気を引き込み、その圧力を上昇させる、機械的給気換気扇24に依存する。
【0170】
図27はRORO船舶10の露天甲板18上に設置される典型的通気筐体39を示す。通気筐体39は通気筐体39の内側を露天甲板18へ接続するアクセス戸口258を有し、アクセス戸口258はメンテナンス又はアクセスが必要とされなければ通常は閉じられる。通気筐体39の壁内の鎧戸付き通気口260が排出ガス又は燻蒸剤を通気筐体39の内側から露天甲板18の大気へ追い出すために通常は設けられる。貨物区域14からの排気ダクト27は通気筐体39の内側の床上で終端する。
【0171】
図27に示すのは、通気筐体26のアクセスドア258上に設置される第2の代替フレキシブル排気口262(タイプIII)である。通気筐体39の壁内の鎧戸付き通気口260は、接着テープにより固定されたプラスチックシート264などの任意の従来の手段により空気流を防止するために覆われる。この配置では、排出ガス又は燻蒸剤は、鎧戸付き通気口260を介し通気筐体39から出ることを阻止されており、その代りに、アクセスドア258を介し排気するように強制される。第2の代替フレキシブル排気口262は、
図29に示すように戸口を覆い空気流を第2の代替フレキシブル排気口262内へ向けるようにアクセス戸口258へ固定される。
【0172】
図28を参照すると、第2の代替フレキシブル排気口262は換気運転中に膨張する。排気口は耐ガス性リップストップナイロンから作られる。第2の代替排気口262の接続点266は、クランプを使用することにより接続点266がアクセス戸口258へ固定され得るようにアクセス戸口258(通常は楕円状であり、一般的には通気筐体当たり1つのアクセス戸口258)と同様な形状のアルミニウムプロフィルである。代替的に、第2の代替排気口262は、アルミニウムプロフィルを有しないその代りに接着テープを使用するアクセス戸口258へ取り付けられ得る。
【0173】
第2の代替排気口262は、膨張されるとアクセス戸口258から離れる方向に延伸するプレナム268、第2の代替排気口262へ支持を提供するために下方へ露天甲板18の方向へ延伸するプレナム268の下側部分、及び露天甲板18から離れる方向に排出燻蒸剤を向けるためにプレナム268から上方へ延伸する調整可能ベロシティコーン270を含む。プレナムは細長い立方体又は略円筒形状であり得る。ベロシティコーン268は形状が円錐台形であり、最上点に上側下流開口部224と、排出される燻蒸剤の速度を修正するために開口の直径を変更するために引き紐234とを有する。
【0174】
第2の代替排気口262を通気筐体39へ設置するために、
1.すべての給気換気扇がスイッチオフされる。
2.通気筐体に至るダクトはその蓋を介し閉じられる。
3.通気筐体へのメンテナンスドアが開けられる。
4.プラスチックシート/プラスチック段ボール/他のシートが通気筐体の内側から換気鎧戸の上へ嵌め込まれる又はテーピングされる。
5.排気口262はアクセス戸口258へ嵌め込まれる。
6.給気換気扇がターンオンされる。
7.通気筐体ダクトは第2の代替排気口262の膨張を許容するために開放される。
【0175】
加えて、排気口262は通気筐体256へ固定するために紐を備え得る。
【0176】
脱出トランクを介する換気
第2の例では、好ましい方法は、上述のフレキシブル排気口の非適合性のおかげで、機械的換気扇又は通気筐体の配置のおかげで、又は他の状況のおかげで可能ではない。
【0177】
この場合、換気は脱出トランクの使用により実現される可能性がある。上述のように、脱出トランクは、下方へ延伸し最上段貨物区域14内へ入る梯子を含むハッチ29(
図1)の形式であり得る。代替的に、脱出トランクは最上段貨物区域14内へ至る階段31(
図5)の形式であり得る。脱出トランク内の軸流ファン又は混成流ファンなどの吸気ファンを用い、一時的排気口58が使用され得る。しかし、このような一時的排気口は機械的換気扇などの構造の上に嵌る必要はない。したがって、一時的排気口はフレキシブルである必要はない。加えて、一時的排気口は、ベロシティコーン及び円筒状導管又は他の直管が採用される可能性があるので整形される必要がない。
【0178】
当業者により理解されるように、換気のこの別の方法は
図1に示すRORO船舶10及び
図3に示すRORO船舶10’により使用される可能性がある。
【0179】
図5を最初に参照すると、RORO船舶10”は一例として給気機械的換気扇24及び排気機械的換気扇26を含むということが分かる。
図5のRORO船舶は採用される第2のケースの方法のための給気機械的換気扇24又は排気機械的換気扇26を有する必要がないということが理解されることになる。RORO船舶10”はまた、階段又はハッチ29の形式の脱出トランク及び階段31の形式の脱出トランクを含む。
【0180】
図5は燻蒸下のRORO船舶を10”示す。燻蒸運転は上に説明したのとほぼ同じやり方で行われる。
図5で分かるように、燻蒸運転を始めることに先立って、一時的フレキシブル排気口58はそれぞれのハッチ29及び階段31へ取り付けられ、それらの下流側開口において互いに結び付けられる。単一ハッチ29及び単一階段31だけが、取り付けられた一時的フレキシブル排気口58と共に
図5に示されるが、複数のハッチ29及び階段31が一時的フレキシブル排気口58に取り付けられることになるということが理解されることになる。
図5はまた、軸流ファン又は混成流ファン164内の一時的隔壁154と最上段貨物区域14に到るそれぞれのフレキシブルダクト159とを含む2つのハッチ29を示す。以下に説明されるように、換気運転中、軸流ファン又は混成流ファン164を含むハッチ29は、貨物エリア13内に新鮮な空気を引き込むために給気換気扇として操作される。しかし燻蒸運転中、一時的隔壁154及び軸流ファン又は混成流ファン164を含むハッチ29は、露天甲板18の上の大気中へのガス状燻蒸剤を含む空気の脱出を防止するために着脱可能カバー188により覆われる。
図5は換気運転中に給気換気扇として使用される軸流ファン又は混成流ファン164を含むハッチ29だけを示すが、軸流ファン又は混成流ファン164を含む階段31も給気換気扇として使用される可能性があるということが理解されることになる。
【0181】
1つの配置では、換気運転中の給気換気扇として使用のために、脱出トランク(ハッチ29又は階段31のいずれか)の総数の約1/2がフレキシブル一時的排気口58に取り付けられ脱出トランク(ハッチ29又は階段31のいずれか)の総数の残りの1/2がそれぞれの一時的隔壁及び軸流ファン又は混成流ファン164に取り付けられる。
【0182】
図6は換気運転を示す。具体的には、最初に、フレキシブル一時的排気口58の下流側開口同士は結び付けられなく、ハッチ29を覆うカバー188は除去される。最上段貨物区域14が他の貨物区域14の換気に先立って換気される。上述のように、軸流ファン又は混成流ファン164を含むハッチ29は、新鮮な空気を最上段貨物区域14内に供給するために給気換気扇として操作される。
図6に示すように、軸流ファン又は混成流ファン164を含む最も左のハッチ29はまた、フレキシブルダクト159を含む。フレキシブルダクト159は最上段貨物区域14内に配置された下流側開口を含み、これにより新鮮な空気を最上段貨物区域14内へ供給する。最上段貨物区域14内への新鮮な空気の供給は、最上段貨物区域14内の空気を、フレキシブル一時的排気口58に取り付けられるハッチ29及び階段31を介し排出させる。
【0183】
最上段貨物区域14内のガス状燻蒸剤(弗化スルフリルを含むガス状燻蒸剤)の濃度が5ppm以下になると、特別に訓練された燻蒸要員がハッチ29又は階段31を介し最上段貨物区域に入る。特別に訓練された燻蒸要員は次に、最上段貨物区域14から2番目の貨物区域14に到るハッチ19を開く。次に、特別に訓練された燻蒸要員は、フレキシブルダクト159の下流側開口が最上段から2番目の貨物区域14内に位置するように給気ハッチ29のフレキシブルダクト159を最上段から2番目の貨物区域14内へ配策する。このようにして、新鮮な空気は最上段から2番目の貨物区域14内へ供給され得る。「
図6は、軸流ファン又は混成流ファン164を含む最も右側のハッチ29が、最上段から2番目の貨物区域14上に位置するその下流側開口を有するフレキシブルダクト159を含むということだけを示す」ということが理解されることになる。
【0184】
フレキシブルダクト159が最上段から2番目の貨物区域14へ配策された後、次に、特別に訓練された燻蒸要員は貨物エリア13から出る。貨物エリア13が終わると、換気運転は再び開始され、最上段から2番目の貨物区域14が換気される。具体的には、新鮮な空気は、開かれたハッチ19と軸流ファン又は混成流ファン164を含むハッチ29とを介し最上段から2番目の貨物区域14内に引き込まれる。最上段から2番目の貨物区域14への新鮮な空気の供給は、ガス状燻蒸剤を含む空気を、開かれたハッチ19とフレキシブル一時的排気口を含むハッチ29及び階段31とを介し最上段から2番目の貨物区域14から排出させる。最上段から2番目の貨物区域14内のガス状燻蒸剤(弗化スルフリルを含むガス状燻蒸剤)の濃度が5ppm以下になると、特別に訓練された燻蒸要員がハッチ29又は階段31及び内部ハッチ19を介し最上段から2番目の貨物区域に入る。
【0185】
次に、特別に訓練された燻蒸要員は、下から2番目の貨物区域14へのハッチ19を開き、それらの下流側開口が下から2番目の貨物区域14内に位置するようにフレキシブルダクト159を配策する。次に、特別に訓練された燻蒸要員は貨物エリア13から出る。貨物エリア13が終わると、換気運転は再び開始され、下から2番目の貨物区域14が換気される。このプロセスは貨物区域14のすべてが換気されるまで繰り返される。
【0186】
したがって、上に説明したように、換気のこの代替方法では、貨物エリア13は、軸流ファン又は混成流ファン164によりハッチ29及び/又は階段31を介し積極的に引き出される新鮮な空気により換気される。要するに、軸流ファン又は混成流ファン164を含むハッチ29及び/又は階段31は、給気換気扇として働き、機械的給気換気扇24と同様な機能を行う。
【0187】
貨物区域からの空気の受動的排出を生じる上記の配置のいずれも、居住エリア及び他の乗員エリアへ適用される正圧を多分超える可能性がある貨物区域内の潜在的圧力増強という観点で、それほど望ましくない。
【0188】
当業者により理解されるように、上記方法の組み合わせがRORO船舶10の燻蒸を実現するために使用される可能性がある。例えば、換気中に機械的給気ダクト25を介し貨物エリア13内に新鮮な空気を引き込み燻蒸剤を脱出トランク内のハッチ29又は階段31を介し排出するための別の方法を組み合わせることも可能である。
【0189】
適切な配置に関する評価は船の検査を含み得る。例えば、様々なコンパートメント間の金属シート内の毛髪状亀裂を生じる疲労のおかげで悪条件にある船はこのような配置には不適当だろう。しかし、船が良好な条件にあれば、このような配置は十分であり得る。
【0190】
昆虫採集網
図18に示すように、フレキシブル排気口58は、膨張可能導管120内に配置される昆虫採集網132であって、換気運転中にいかなる生きた昆虫も捕捉し、大気中へ排出されることを防止するように構成された昆虫採集網132を含む。昆虫採集網132は、下流上側開口124より上流上側開口122に概して近い排気機械的換気扇26のほぼ上に配置される。昆虫採集網132は機械的換気扇の上約30cmに配置され得る。これは、質量中心を低く維持し、フレキシブル排気口58のより良い空気力学特性を提供する。昆虫採集網132は0.5mm~10mmの範囲の略格子辺を有する。昆虫採集網132は着脱可能であり得る、すなわち適所にベルクロ化(velcroed)され得るが、理想的には適所に縫い付け/固定される。
【0191】
別の防護方法は次のものを含む:a)最初に昆虫採集網により排気機械的換気扇を覆い、排気機械的換気扇の基部に締め付け、次に昆虫採集網で覆われた排気機械的換気扇をフレキシブル排気口58により覆うこと;又はb)昆虫が排気ダクト内へ吸い込まれ大気中に排出されることを防止するために、昆虫採集網を貨物区域内の取り入れ口(排気ダクト)の上に固定すること(この例では、昆虫採集網はフレキシブル排気口58内に存在しない)。
【0192】
タイプII及びタイプIIIフレキシブル排気口240、262もまた上記に基づき昆虫採集網を取り付け得る。
【0193】
調整可能上側開口
ベロシティコーンの使用は導管58の形状を第1の開口から狭めるように意図されている。第1の開口は、大きくなるように意図され、及び上側第2の開口への排気機械的換気扇26の構造の上に嵌るように意図されており、第2の開口はフレキシブル導管58を膨張構成で維持するサイズのものであるように意図されている。加えて、排気機械的換気扇26からの流出は下方向であり、フレキシブル導管58は、排気機械的換気扇26の下にプレナムチャンバを生成するように整形される必要がある。加えて、排気機械的換気扇26周囲の適切なクリアランスが排出空気の上方通過のための必要とされる。これらの要因は、フレキシブル導管58の大きな基部を決定し、これにより、より小さな第2の上側開口124に対する円錐台形テーパ付けを必要とする。
【0194】
図17~
図20に示すように、フレキシブル排気口58はさらに、上側開口124の周囲に配置された引き紐134を含み、これにより上側開口124の断面積を調節する。下流上側開口124の調節は、引き紐134を介し開口124を最初に引いて排出空気の圧力が開口124を自動的に調節することを可能にすることにより実現され得る。
図18は、引き紐134の使用による上側開口124の断面積の調整可能性を示す。この図に示すように、開口124は、フレキシブル排気口58の上側部分130が形式全体で概して円筒状である第1の比較的制約されない開放構成と上側部分130が形式全体で概して円錐台形である第2の比較的制約された構成との間で調整可能である。通常、開口124は、開口124が適切な開放構成に順応することを可能にする換気された空気の力により、第2の比較的制約された構成で最初に配置される。通常、開放構成の断面積は出力ファンの断面積に対応し得る。調整可能開口は、排気口58の自動調整が、換気された空気の出力に比例して適切に寸法決めされたベロシティコーンを生成することを可能にする。
【0195】
本明細書において開示され定義された発明は、本文又は添付図面から明らかな個々の特徴の2つ以上の特徴のすべての代替組み合わせに拡張するということが理解されることになる。これらの様々な組み合わせのすべてが本発明の様々な代替態様を構成する。
【国際調査報告】