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特表2023-528400タンパク質フコシル化の阻害剤及びその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-04
(54)【発明の名称】タンパク質フコシル化の阻害剤及びその用途
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/047 20060101AFI20230627BHJP
   C07C 35/14 20060101ALI20230627BHJP
   C07C 69/18 20060101ALI20230627BHJP
   C07C 69/21 20060101ALI20230627BHJP
   C07F 9/09 20060101ALI20230627BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20230627BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230627BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230627BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230627BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230627BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230627BHJP
   A61K 31/661 20060101ALI20230627BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
A61K31/047
C07C35/14
C07C69/18
C07C69/21
C07F9/09 K
A61K39/00 H
A61P43/00 121
A61P35/00
A61P37/02
A61P29/00
A61P31/04
A61P43/00 105
A61K31/661
C12N1/00 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573695
(86)(22)【出願日】2021-06-03
(85)【翻訳文提出日】2022-12-16
(86)【国際出願番号】 IB2021054844
(87)【国際公開番号】W WO2021245579
(87)【国際公開日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】63/034,256
(32)【優先日】2020-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505116426
【氏名又は名称】サイモン フレイザー ユニヴァーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】弁理士法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボカロ、デビッド ジェー
(72)【発明者】
【氏名】ブリットン、ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】トータ、ベンカタ ナラシンハラオ
(72)【発明者】
【氏名】フェルス リドゥ、アンソニー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4C086
4C206
4H006
4H050
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AC14
4B065BB04
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA03
4C085BB01
4C085EE01
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086DA34
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB07
4C086ZB11
4C086ZB26
4C086ZB35
4C086ZC01
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206CA13
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZB07
4C206ZB11
4C206ZB26
4C206ZB35
4C206ZC01
4C206ZC75
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB20
4H006BJ20
4H006BM10
4H006BM30
4H006BM71
4H006BM73
4H006FC22
4H006FE12
4H006KC12
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB20
(57)【要約】
本発明は、タンパク質フコシル化の阻害剤に関する。より具体的には、本発明は、タンパク質フコシル化の阻害剤として有用な炭素環式化合物に関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質、またはその断片または誘導体のフコシル化を阻害する方法であって、該方法は、真核細胞または哺乳動物を式(I)の化合物またはその塩と接触させることを含み、
式中、
R1は、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC1-C10アルケニル、または置換されていてもよいC1-C10アルキニルであり、
R2は、Hまたは-C(=O)(C1-C6)アルキルであり、
R3は、ハロ、OH、またはO-C(=O)(C1-C6)アルキルであり、また
R4は、H、-C(=O)(C1-C6)アルキル、または-P(=O)(OR5)(OR6)であり、式中、R5及びR6は、それぞれ独立に、H、(C1-C6)アルキル、(CH2)2SC(=O)CH3、CH2OC(=O)OR7、またはCH2OC(=O)R7であり、式中、R7は、C1-C8アルキルであり、または、式中、R5及びR6は、連結されて環を形成し、
ここで、前記タンパク質のフコシル化は、前記真核細胞または哺乳動物において、前記化合物が投与されていない場合における前記タンパク質のフコシル化量に対して、少なくとも5%低減される、前記方法。
【請求項2】
前記タンパク質が、N-グリカンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化合物が、前記N-グリカンに組み込まれていない、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記タンパク質が、抗体である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
R1が、CH3またはCHCH2であり、R2が、Hであり、R3が、OHであり、R4が、Hまたは-P(=O)(OR5)(OR6)であり、式中、R5及びR6が、Hである、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記化合物が、
である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記哺乳動物が、癌、自己免疫疾患、炎症性疾患、または感染症を有する、請求項3~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
癌を有する哺乳動物に癌関連抗原またはその抗原性断片を免疫原として投与することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記哺乳動物が、ヒトである、請求項3~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記塩が、薬剤的に許容される塩である、請求項3~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
有効量の式(I)の化合物またはその塩を含む、哺乳動物細胞の培地であって、
式中、
R1は、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC1-C10アルケニル、または置換されていてもよいC1-C10アルキニルであり、
R2は、Hまたは-C(=O)(C1-C6)アルキルであり、
R3は、ハロ、OH、またはO-C(=O)(C1-C6)アルキルであり、また
R4は、H、-C(=O)(C1-C6)アルキル、または-P(=O)(OR5)(OR6)であり、式中、R5及びR6は、それぞれ独立に、H、(C1-C6)アルキル、(CH2)2SC(=O)CH3、CH2OC(=O)OR7、またはCH2OC(=O)R7であり、式中、R7は、C1-C8アルキルであり、または、式中、R5及びR6は、連結されて環を形成する、哺乳動物細胞の培地。
【請求項12】
前記培地が、フコ-ス欠損タンパク質、またはその断片または誘導体の製造に有用である、請求項11に記載の哺乳動物の培地。
【請求項13】
前記有効量が、前記フコ-ス欠損タンパク質、またはその断片または誘導体の糖鎖へのフコ-ス取り込みを少なくとも50%減少させるのに十分な前記化合物の量である、請求項12に記載の哺乳動物の培地。
【請求項14】
前記哺乳動物細胞の培地が、チャイニ-ズハムスタ-卵巣細胞の培地である、請求項11~13のいずれか1項に記載の哺乳動物の培地。
【請求項15】
癌、自己免疫疾患、感染症、炎症性疾患、または鎌状赤血球症を治療する方法であって、該方法は、有効量の式(I)の化合物またはその薬剤的に許容される塩を、それを必要とする哺乳動物に投与することを含み、
式中、
R1は、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC1-C10アルケニル、または置換されていてもよいC1-C10アルキニルであり、
R2は、Hまたは-C(=O)(C1-C6)アルキルであり、
R3は、ハロ、OH、またはO-C(=O)(C1-C6)アルキルであり、また
R4は、H、-C(=O)(C1-C6)アルキル、または-P(=O)(OR5)(OR6)であり、式中、R5及びR6は、それぞれ独立に、H、(C1-C6)アルキル、(CH2)2SC(=O)CH3、CH2OC(=O)OR7、またはCH2OC(=O)R7であり、式中、R7は、C1-C8アルキルであり、または、式中、R5及びR6は、連結されて環を形成する、前記方法。
【請求項16】
式(I)の化合物またはその薬剤的に許容される塩の、タンパク質、またはその断片または誘導体のフコシル化を阻害するため、ここで、前記タンパク質のフコシル化は、真核細胞または哺乳動物において、前記化合物がない場合における前記タンパク質のフコシル化量に対して、少なくとも5%低減され、或いは癌、自己免疫疾患、感染症、炎症性疾患、または鎌状赤血球症を治療するための使用であって、
式中、
R1は、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC1-C10アルケニル、または置換されていてもよいC1-C10アルキニルであり、
R2は、Hまたは-C(=O)(C1-C6)アルキルであり、
R3は、ハロ、OH、またはO-C(=O)(C1-C6)アルキルであり、また
R4は、H、-C(=O)(C1-C6)アルキル、または-P(=O)(OR5)(OR6)であり、式中、R5及びR6は、それぞれ独立に、H、(C1-C6)アルキル、(CH2)2SC(=O)CH3、CH2OC(=O)OR7、またはCH2OC(=O)R7であり、式中、R7は、C1-C8アルキルであり、または、式中、R5及びR6は、連結されて環を形成する、前記使用。
【請求項17】
式(II)の化合物またはその薬剤的に許容される塩であって、
式中、
R1は、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC1-C10アルケニル、または置換されていてもよいC1-C10アルキニルであり、
R2は、Hまたは-C(=O)(C1-C6)アルキルであり、
R3は、ハロ、OH、またはO-C(=O)(C1-C6)アルキルであり、また
R4は、H、-C(=O)(C1-C6)アルキル、または-P(=O)(OR5)(OR6)であり、式中、R5及びR6は、それぞれ独立に、H、(C1-C6)アルキル、(CH2)2SC(=O)CH3、CH2OC(=O)OR7、またはCH2OC(=O)R7であり、式中、R7は、C1-C8アルキルであり、または、式中、R5及びR6は、連結されて環を形成し、
式中、R1がCH3の場合、R2はHではなく、R3はOHではなく、かつR4はHではない、式(II)の化合物またはその薬剤的に許容される塩。
【請求項18】
請求項17に記載の化合物を含む、組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、タンパク質フコシル化の阻害剤に関する。より具体的には、本発明は、タンパク質フコシル化の阻害剤として有用な炭素環式化合物(carbacyclic compounds)に関する。
【発明の背景】
【0002】
フコシル化は、フコシル基転移酵素(FUT)によって触媒される、GDP-フコ-スからN-グリカン、O-グリカンまたは糖脂質へのフコ-ス残基の転移を含む一般的な修飾である。FUT は、次のようにフコ-スの転移を触媒する:FUT1及び 2はα1,2-結合を触媒し;FUT3~7 及び FUT9~11 はα1,3-結合を触媒し;FUT3及び5はα1,4-結合を触媒し;FUT8はα1,6-結合(「コアフコシル化」)を触媒し;POFUT1はEGF様リピ-トのセリン/スレオニン残基への直接結合を触媒し;また、POFUT1はトロンボスポンジンリピ-トのセリン/スレオニン残基への直接結合を触媒する。フコシル化は、様々な細胞プロセスに関与している。
【0003】
抗体依存性細胞傷害(ADCC)は、免疫系のエフェクタ-細胞による細胞の選択的標的化及び溶解を含む。ADCCは、抗癌抗体の有効性のために中心的に重要であり、エフェクタ-ナチュラルキラ-(NK)細胞上のFc受容体(FcyR)に対する抗体のFc領域と癌細胞上の抗体と膜露出抗原との間の結合によって媒介される。食品医薬品局(FDA)に承認された最も多くのモノクロ-ナル抗体は、lgG1アイソタイプのものであり、2つのN結合型複合オリゴ糖をそれらのFc領域に組み込む。抗癌抗体のADCCは、エフェクタ-NK細胞上のFcyRに結合するために非特異的に競合するIgGを循環させることによって減衰される。この制限を克服するために、抗体のFc領域におけるN-グリカン構造の改変に焦点を合わせるいくつかの戦略が検討されている。最も顕著には、フコ-ス欠損(FD)抗体の産生は、FcyRへの結合を改善し、ADCCにおける有意な増加(約50倍)をもたらすことが見出された。従って、フコ-ス欠損(FD)抗体の開発に関心がある。FD-抗体の産生は、フコシル化に関与する重要な酵素、例えばGDP-マンノ-ス脱水酵素(GMD)、GDP-フコ-ス合成酵素(GFS)またはFUT8の小分子阻害または遺伝子ノックアウトによって達成することができる。1種以上のこれらの酵素の小分子阻害剤には明らかな利点がある。即ち、高価で時間のかかる細胞株の操作が不要となり、既存の製造プロセスへの破壊が最小限である。
【0004】
いくつかの抗体フコシル化の炭水化物阻害剤は、FD抗体の産生における添加剤としての有用性を実証しているが、これらの炭水化物阻害剤は、様々な程度で抗体N-グリカンに組み込まれている。そのような阻害剤は、有意な薬物一貫性リスクを示す可能性があり、免疫原性であり得る。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、タンパク質フコシル化の阻害剤に関する。より具体的には、本発明は、タンパク質フコシル化の阻害剤として有用な炭素環式化合物に関する。
【0006】
一態様では、本発明は、真核細胞または哺乳動物を式(I)の化合物またはその塩と接触させることによって、タンパク質、またはその断片または誘導体のフコシル化を阻害する方法を提供する。
式中、
R1は、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC1-C10アルケニル、または置換されていてもよいC1-C10アルキニルであり、
R2は、Hまたは-C(=O)(C1-C6)アルキルであり、
R3は、ハロ、OH、またはO-C(=O)(C1-C6)アルキルであり、また
R4は、H、-C(=O)(C1-C6)アルキル、または-P(=O)(OR5)(OR6)であり、式中、R5及びR6は、それぞれ独立に、H、(C1-C6)アルキル、(CH2)2SC(=O)CH3、CH2OC(=O)OR7、またはCH2OC(=O)R7であり、式中、R7は、C1-C8アルキルであり、または、式中、R5及びR6は、連結されて環を形成し、
ここで、前記タンパク質のフコシル化は、前記真核細胞または哺乳動物において、前記化合物が投与されていない場合における前記タンパク質のフコシル化量に対して、少なくとも5%低減される。
【0007】
いくつかの実施形態では、前記タンパク質は、N-グリカンであってもよい。
【0008】
いくつかの実施形態では、前記化合物は、N-グリカンに組み込まれていなくてもよい。
【0009】
いくつかの実施形態では、前記タンパク質は、抗体であってもよい。
【0010】
いくつかの実施形態では、R1は、CH3またはCHCH2であってもよく、R2は、Hであってもよく、R3は、OHであってもよく、R4は、Hまたは-P(=O)(OR5)(OR6)であってもよく、式中、R5及びR6は、Hであってもよい。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記化合物は、
であってもよい。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記哺乳動物は、癌、自己免疫疾患、炎症性疾患、または感染症を有し得る。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記方法は、癌を有する哺乳動物に癌関連抗原またはその抗原性断片を免疫原として投与することをさらに含み得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記哺乳動物は、ヒトであってもよい。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記塩は、薬剤的に許容される塩であってもよい。
【0016】
別の態様では、本発明は、有効量の式(I)の化合物またはその塩を含む哺乳動物細胞の培地を提供する。
式中、
R1は、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC1-C10アルケニル、または置換されていてもよいC1-C10アルキニルであり、
R2は、Hまたは-C(=O)(C1-C6)アルキルであり、
R3は、ハロ、OH、またはO-C(=O)(C1-C6)アルキルであり、また
R4は、H、-C(=O)(C1-C6)アルキル、または-P(=O)(OR5)(OR6)であり、式中、R5及びR6は、それぞれ独立に、H、(C1-C6)アルキル、(CH2)2SC(=O)CH3、CH2OC(=O)OR7、またはCH2OC(=O)R7であり、式中、R7は、C1-C8アルキルであり、または、式中、R5及びR6は、連結されて環を形成する。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記培地は、フコ-ス欠損タンパク質、またはその断片または誘導体の製造に有用であり得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記有効量は、前記フコ-ス欠損タンパク質、またはその断片または誘導体の糖鎖へのフコ-ス取り込みを少なくとも50%減少させるのに十分な前記化合物の量であり得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、前記培地は、チャイニ-ズハムスタ-卵巣細胞の培地であってもよい。
【0020】
別の態様では、本発明は、有効量の式(I)の化合物またはその薬剤的に許容される塩を、それを必要とする哺乳動物に投与することによって、癌、自己免疫疾患、感染症、炎症性疾患、または鎌状赤血球症を治療する方法を提供する。
式中、
R1は、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC1-C10アルケニル、または置換されていてもよいC1-C10アルキニルであり、
R2は、Hまたは-C(=O)(C1-C6)アルキルであり、
R3は、ハロ、OH、またはO-C(=O)(C1-C6)アルキルであり、また
R4は、H、-C(=O)(C1-C6)アルキル、または-P(=O)(OR5)(OR6)であり、式中、R5及びR6は、それぞれ独立に、H、(C1-C6)アルキル、(CH2)2SC(=O)CH3、CH2OC(=O)OR7、またはCH2OC(=O)R7であり、式中、R7は、C1-C8アルキルであり、または、式中、R5及びR6は、連結されて環を形成する。
【0021】
別の態様では、本発明は、式(I)の化合物またはその薬剤的に許容される塩の、タンパク質、またはその断片または誘導体のフコシル化を阻害するため(ここで、前記タンパク質のフコシル化は、真核細胞または哺乳動物において、前記化合物がない場合における前記タンパク質のフコシル化量に対して、少なくとも5%低減される)、或いは癌、自己免疫疾患、感染症、炎症性疾患、または鎌状赤血球症を治療するための用途を提供する。
式中、
R1は、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC1-C10アルケニル、または置換されていてもよいC1-C10アルキニルであり、
R2は、Hまたは-C(=O)(C1-C6)アルキルであり、
R3は、ハロ、OH、またはO-C(=O)(C1-C6)アルキルであり、また
R4は、H、-C(=O)(C1-C6)アルキル、または-P(=O)(OR5)(OR6)であり、式中、R5及びR6は、それぞれ独立に、H、(C1-C6)アルキル、(CH2)2SC(=O)CH3、CH2OC(=O)OR7、またはCH2OC(=O)R7であり、式中、R7は、C1-C8アルキルであり、または、式中、R5及びR6は、連結されて環を形成する。
【0022】
別の態様では、本発明は、式(II)の化合物またはその薬剤的に許容される塩を提供する。
式中、
R1は、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC1-C10アルケニル、または置換されていてもよいC1-C10アルキニルであり、
R2は、Hまたは-C(=O)(C1-C6)アルキルであり、
R3は、ハロ、OH、またはO-C(=O)(C1-C6)アルキルであり、また
R4は、H、-C(=O)(C1-C6)アルキル、または-P(=O)(OR5)(OR6)であり、式中、R5及びR6は、それぞれ独立に、H、(C1-C6)アルキル、(CH2)2SC(=O)CH3、CH2OC(=O)OR7、またはCH2OC(=O)R7であり、式中、R7は、C1-C8アルキルであり、または、式中、R5及びR6は、連結されて環を形成し、式中、R1がCH3の場合、R2はHではなく、R3はOHではなく、かつR4はHではない。
【0023】
別の態様では、本発明は、式(II)の化合物を含む組成物を提供する。
【0024】
本発明の概要は、必ずしも本発明の全ての特徴を記載していない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明のこれら及び他の特徴は、添付の図面を参照する以下の説明からより明らかになるであろう。
【0026】
図1A図1Dは、本発明の一実施形態による、カルバフコ-ス及びカルバフコ-ス類似体に対する細胞ベ-スのアッセイの結果を示す。(A)2-デオキシ-2-フルオロ-L-フコ-ス(2FFuc)、(B)カルバフコ-ス(1-21)、(C)カルバフコ-ス類似体2-3(リン酸塩)、及び(D)カルバフコ-ス類似体1-42(アルケン)。
【詳細な説明】
【0027】
本開示は、部分的に、糖の炭素環式類似体(carbacyclic analogues)の生成、及びそのようなタンパク質の生成中に、抗体等のタンパク質への炭水化物の取り込みを改変する際のそれらの使用を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、例えば、抗体及びタンパク質のコアフコシル化の量を阻害するのに有用であり得るカルバフコ-ス及びカルバフコ-ス類似体の生成及び使用を提供する。いくつかの実施形態では、本開示による化合物は、タンパク質(例えば、抗体)フコシル化を低減させる。いくつかの実施形態では、本開示による化合物は、タンパク質(例えば、抗体、N-グリカン)に組み込まれていない。
【0028】
いくつかの実施形態では、本開示は、カルバフコ-ス及びその類似体、ならびにそれらを製造する方法を提供する。「カルバフコ-ス」は、以下の構造を有する化合物を意味する。
【0029】
一態様では、本開示は、式Iの化合物またはその塩を提供する。
式中、
R1は、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC1-C10アルケニル、または置換されていてもよいC1-C10アルキニルであってもよく、
R2は、Hまたは-C(=O)(C1-C6)アルキルであってもよく、
R3は、ハロ、OH、またはO-C(=O)(C1-C6)アルキルであってもよく、また
R4は、H、-C(=O)(C1-C6)アルキル、または-P(=O)(OR5)(OR6)であってもよく、式中、R5及びR6は、それぞれ独立に、H、(C1-C6)アルキル、(CH2)2SC(=O)CH3、CH2OC(=O)OR7、またはCH2OC(=O)R7であってもよく、式中、R7は、C1-C8アルキルであり、または、式中、R5及びR6は、連結されて環を形成してもよい。
【0030】
代替的な態様では、本開示は、式IIの化合物またはその塩を提供する。
式中、
R1は、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC1-C10アルケニル、または置換されていてもよいC1-C10アルキニルであってもよく、
R2は、Hまたは-C(=O)(C1-C6)アルキルであってもよく、
R3は、ハロ、OH、またはO-C(=O)(C1-C6)アルキルであってもよく、また
R4は、H、-C(=O)(C1-C6)アルキル、または-P(=O)(OR5)(OR6)であってもよく、式中、R5及びR6は、それぞれ独立に、H、(C1-C6)アルキル、(CH2)2SC(=O)CH3、CH2OC(=O)OR7、またはCH2OC(=O)R7であってもよく、式中、R7は、C1-C8アルキルであり、または、式中、R5及びR6は、連結されて環を形成してもよく、
式中、R1がCH3の場合、R2はHではなく、R3はOHではなく、かつR4はHではない。
【0031】
いくつかの実施形態では、R1は、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、ペルハロ(C1- C10)アルキル、またはハロ(C1- C10)アルキルであってもよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、R1は、C1-C6アルキル、C2-C6アルケニル、C2-C6アルキニル、ペルハロ(C1-C6)アルキル、またはハロ(C1-C6)アルキルであってもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、R1は、アシルまたはエステルであってもよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、R1は、CH3、CH2F、CHF2、CF3、CCH、CCCH3、COCH3、COCH2CH3、CHCH2、C02CH3、及びCH2Brからなる群から選択されてもよい。
【0035】
いくつかの実施形態では、R1は、CH3であってもよい。
【0036】
いくつかの実施形態では、R1は、CHCH2であってもよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、R2は、Hまたは-C(=O)(C1-C6)アルキルであってもよい。
【0038】
いくつかの実施形態では、R2は、Hであってもよい。
【0039】
いくつかの実施形態では、R2は、-C(=O)(C1-C6)アルキルであってもよい。
【0040】
いくつかの実施形態では、R3は、ハロ、OH、またはO-C(=O)(C1-C6)アルキルであってもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、R3は、OHであってもよい。
【0042】
いくつかの実施形態では、R3は、Fであってもよい。
【0043】
いくつかの実施形態では、R3は、OHまたはO-C(=O)(C1-C6)アルキルであってもよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、R4は、H、O-C(=O)(C1-C6)アルキル、または-P(=O)(OR5)(OR6)であってもよく、式中、R5及びR6は、それぞれ独立にH、(C1-C6)アルキル、または(CH2)2SC(=O)CH3であってもよい。
【0045】
いくつかの実施形態では、R4は、Hであってもよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、R4は、-P(=O)(OR5)(OR6)であってもよく、式中、R5及びR6は、それぞれ独立にHであってもよい。
【0047】
いくつかの実施形態では、R4は、-P(=O)(OR5)(OR6)であってもよく、式中、R5及びR6は、両方ともHであってもよい。
【0048】
いくつかの実施形態では、R1は、CH3であってもよく、R2は、Hまたは-C(=O)CH3であってもよく、R3は、OHまたはO-C(=O)CH3であってもよく、かつR4は、Hまたは-C(=O)CH3であってもよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、R1は、CH3であってもよく、R2は、Hであってもよく、R3は、OHであってもよく、かつR4は、Hであってもよい。
【0050】
いくつかの実施形態では、R1は、CH3であってもよく、R2は、Hであってもよく、R3は、OHであってもよく、かつR4は、-P(=O)(OR5)(OR6)であってもよく、式中、R5及びR6は、Hであってもよい。
【0051】
いくつかの実施形態では、R1は、CH2Fであってもよく、R2は、Hまたは-C(=O)CH3であってもよく、R3は、OHまたはO-C(=O)CH3であってもよく、かつR4は、Hまたは-C(=O)CH3であってもよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、R1は、CHF2であってもよく、R2は、Hまたは-C(=O)CH3であってもよく、R3は、OHまたはO-C(=O)CH3であってもよく、かつR4は、Hまたは-C(=O)CH3であってもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、R1は、CF3であってもよく、R2は、Hまたは-C(=O)CH3であってもよく、R3は、OHまたはO-C(=O)CH3であってもよく、かつR4は、Hまたは-C(=O)CH3であってもよい。
【0054】
いくつかの実施形態では、R1は、CCHであってもよく、R2は、Hまたは-C(=O)CH3であってもよく、R3は、OHまたはO-C(=O)CH3であってもよく、かつR4は、Hまたは-C(=O)CH3であってもよい。
【0055】
いくつかの実施形態では、R1は、CCCH3であってもよく、R2は、Hまたは-C(=O)CH3であってもよく、R3は、OHまたはO-C(=O)CH3であってもよく、かつR4は、Hまたは-C(=O)CH3であってもよい。
【0056】
いくつかの実施形態では、R1は、COCH3であってもよく、R2は、Hまたは-C(=O)CH3であってもよく、R3は、OHまたはO-C(=O)CH3であってもよく、かつR4は、Hまたは-C(=O)CH3であってもよい。
【0057】
いくつかの実施形態では、R1は、COCH2CH3であってもよく、R2は、Hまたは-C(=O)CH3であってもよく、R3は、OHまたはO-C(=O)CH3であってもよく、かつR4は、Hまたは-C(=O)CH3であってもよい。
【0058】
いくつかの実施形態では、R1は、CHCH2であってもよく、R2は、Hまたは-C(=O)CH3であってもよく、R3は、Hまたは-C(=O)CH3であってもよく、かつR4は、Hまたは-C(=O)CH3であってもよい。
【0059】
いくつかの実施形態では、R1は、CHCH2であってもよく、R2は、Hであってもよく、R3は、OHであってもよく、かつR4は、Hであってもよい。
【0060】
いくつかの実施形態では、R1は、CO2CH3であってもよく、R2は、Hまたは-C(=O)CH3であってもよく、R3は、OHまたはO-C(=O)CH3であってもよく、かつR4は、Hまたは-C(=O)CH3であってもよい。
【0061】
いくつかの実施形態では、R1は、CH2Brであってもよく、R2は、Hまたは-C(=O)CH3であってもよく、R3は、OHまたはO-C(=O)CH3であってもよく、かつR4は、Hまたは-C(=O)CH3であってもよい。
【0062】
いくつかの実施形態では、R1は、CH3またはCHCH2であってもよく、R2は、Hであってもよく、R3は、OHであってもよく、かつR4は、Hまたは-P(=O)(OR5)(OR6)であってもよく、式中、R5及びR6は、Hであってもよい。
【0063】
いくつかの実施形態では、本開示は、式(III)の化合物またはその塩を提供する。
式中、
R2は、-C(=O)(C1-C10)アルキルであってもよく、
R3は、O-C(=O)(C1-C10)アルキルであってもよく、また
R4は、H、-C(=O)(C1-C6)アルキル、または-P(=O)(OR5)(OR6)であってもよく、式中、R5及びR6は、それぞれ独立に、H、(C1-C6)アルキル、(CH2)2SC(=O)CH3、CH2OC(=O)OR7、またはCH2OC(=O)R7であってもよく、式中、R7は、C1-C8アルキルであり、またはR5及びR6は、連結されて環を形成してもよい。
【0064】
いくつかの実施形態では、本開示は、式(IV)の化合物またはその塩を提供する。
式中、
R2は、Hまたは-C(=O)(C1-C10)アルキルであってもよく、
R3は、OHまたはO-C(=O)(C1-C10)アルキルであってもよく、また
R4は、-C(=O)(C1-C6)アルキル、または-P(=O)(OR5)(OR6)であってもよく、式中、R5及びR6は、それぞれ独立に、H、(C1-C6)アルキル、(CH2)2SC(=O)CH3、CH2OC(=O)OR7、またはCH2OC(=O)R7であってもよく、式中、R7は、C1-C8アルキルであり、またはR5及びR6は、連結されて環を形成してもよい。
【0065】
いくつかの実施形態では、本開示は、式(V)の化合物またはその塩を提供する。
式中、
R2は、Hまたは-C(=O)(C1-C10)アルキルであってもよく、
R3は、OHまたはO-C(=O)(C1-C10)アルキルであってもよく、また
R4は、H、-C(=O)(C1-C6)アルキル、または-P(=O)(OR5)(OR6)であってもよく、式中、R5及びR6は、それぞれ独立に、H、(C1-C6)アルキル、(CH2)2SC(=O)CH3、CH2OC(=O)OR7、またはCH2OC(=O)R7であってもよく、式中、R7は、C1-C8アルキルであり、またはR5及びR6は、連結されて環を形成してもよい。
【0066】
いくつかの実施形態では、本開示は、式(VI)の化合物またはその塩を提供する。
式中、
R2は、Hまたは-C(=O)(C1-C10)アルキルであってもよく、
R3は、OHまたはO-C(=O)(C1-C10)アルキルであってもよく、また
R4は、H、-C(=O)(C1-C6)アルキル、または-P(=O)(OR5)(OR6)であってもよく、式中、R5及びR6は、それぞれ独立に、H、(C1-C6)アルキル、(CH2)2SC(=O)CH3、CH2OC(=O)OR7、またはCH2OC(=O)R7であってもよく、式中、R7は、C1-C8アルキルであり、またはR5及びR6は、連結されて環を形成してもよい。
【0067】
いくつかの実施形態では、本開示は、式(VII)の化合物またはその塩を提供する。
式中、
R2は、Hまたは-C(=O)(C1-C10)アルキルであってもよく、
R3は、OHまたはO-C(=O)(C1-C10)アルキルであってもよく、また
R4は、H、-C(=O)(C1-C6)アルキル、または-P(=O)(OR5)(OR6)であってもよく、式中、R5及びR6は、それぞれ独立に、H、(C1-C6)アルキル、(CH2)2SC(=O)CH3、CH2OC(=O)OR7、またはCH2OC(=O)R7であってもよく、式中、R7は、C1-C8アルキルであり、またはR5及びR6は、連結されて環を形成してもよい。
【0068】
いくつかの実施形態では、本開示は、式(VIII)の化合物またはその塩を提供する。
式中、
R2は、Hまたは-C(=O)(C1-C10)アルキルであってもよく、
R3は、OHまたはO-C(=O)(C1-C10)アルキルであってもよく、また
R4は、H、-C(=O)(C1-C6)アルキル、または-P(=O)(OR5)(OR6)であってもよく、式中、R5及びR6は、それぞれ独立に、H、(C1-C6)アルキル、(CH2)2SC(=O)CH3、CH2OC(=O)OR7、またはCH2OC(=O)R7であってもよく、式中、R7は、C1-C8アルキルであり、またはR5及びR6は、連結されて環を形成してもよい。
【0069】
いくつかの実施形態では、本開示は、式(IX)の化合物またはその塩を提供する。
式中、
R2は、Hまたは-C(=O)(C1-C10)アルキルであってもよく、
R3は、OHまたはO-C(=O)(C1-C10)アルキルであってもよく、また
R4は、H、-C(=O)(C1-C6)アルキル、または-P(=O)(OR5)(OR6)であってもよく、式中、R5及びR6は、それぞれ独立に、H、(C1-C6)アルキル、(CH2)2SC(=O)CH3、CH2OC(=O)OR7、またはCH2OC(=O)R7であってもよく、式中、R7は、C1-C8アルキルであり、またはR5及びR6は、連結されて環を形成してもよい。
【0070】
いくつかの実施形態では、本開示は、式(X)の化合物またはその塩を提供する。
式中、
R2は、Hまたは-C(=O)(C1-C10)アルキルであってもよく、
R3は、OHまたはO-C(=O)(C1-C10)アルキルであってもよく、また
R4は、H、-C(=O)(C1-C6)アルキル、または-P(=O)(OR5)(OR6)であってもよく、式中、R5及びR6は、それぞれ独立に、H、(C1-C6)アルキル、(CH2)2SC(=O)CH3、CH2OC(=O)OR7、またはCH2OC(=O)R7であってもよく、式中、R7は、C1-C8アルキルであり、またはR5及びR6は、連結されて環を形成してもよい。
【0071】
いくつかの実施形態では、本開示は、式(XI)の化合物またはその塩を提供する。
式中、
R2は、Hまたは-C(=O)(C1-C10)アルキルであってもよく、
R3は、OHまたはO-C(=O)(C1-C10)アルキルであってもよく、また
R4は、H、-C(=O)(C1-C6)アルキル、または-P(=O)(OR5)(OR6)であってもよく、式中、R5及びR6は、それぞれ独立に、H、(C1-C6)アルキル、(CH2)2SC(=O)CH3、CH2OC(=O)OR7、またはCH2OC(=O)R7であってもよく、式中、R7は、C1-C8アルキルであり、またはR5及びR6は、連結されて環を形成してもよい。
【0072】
いくつかの実施形態では、本開示は、式(XII)の化合物またはその塩を提供する。
式中、
R2は、Hまたは-C(=O)(C1-C10)アルキルであってもよく、
R3は、OHまたはO-C(=O)(C1-C10)アルキルであってもよく、また
R4は、H、-C(=O)(C1-C6)アルキル、または-P(=O)(OR5)(OR6)であってもよく、式中、R5及びR6は、それぞれ独立に、H、(C1-C6)アルキル、(CH2)2SC(=O)CH3、CH2OC(=O)OR7、またはCH2OC(=O)R7であってもよく、式中、R7は、C1-C8アルキルであり、またはR5及びR6は、連結されて環を形成してもよい。
【0073】
いくつかの実施形態では、本開示は、式(XIII)の化合物またはその塩を提供する。
式中、
R2は、Hまたは-C(=O)(C1-C10)アルキルであってもよく、
R3は、OHまたはO-C(=O)(C1-C10)アルキルであってもよく、また
R4は、H、-C(=O)(C1-C6)アルキル、または-P(=O)(OR5)(OR6)であってもよく、式中、R5及びR6は、それぞれ独立に、H、(C1-C6)アルキル、(CH2)2SC(=O)CH3、CH2OC(=O)OR7、またはCH2OC(=O)R7であってもよく、式中、R7は、C1-C8アルキルであり、またはR5及びR6は、連結されて環を形成してもよい。
【0074】
いくつかの実施形態では、本開示は、式(XIV)の化合物またはその塩を提供する。
式中、
R2は、Hまたは-C(=O)(C1-C10)アルキルであってもよく、
R3は、OHまたはO-C(=O)(C1-C10)アルキルであってもよく、また
R4は、H、-C(=O)(C1-C6)アルキル、または-P(=O)(OR5)(OR6)であってもよく、式中、R5及びR6は、それぞれ独立に、H、(C1-C6)アルキル、(CH2)2SC(=O)CH3、CH2OC(=O)OR7、またはCH2OC(=O)R7であってもよく、式中、R7は、C1-C8アルキルであり、またはR5及びR6は、連結されて環を形成してもよい。
【0075】
「アルキル」は、例えば、1~10個の炭素原子、またはその間任意の値、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の炭素原子を含み、単結合により分子の残りの部分に結合している、炭素及び水素原子のみから構成され、不飽和を含有しない直鎖または分岐鎖炭化水素鎖基を指す。いくつかの実施形態では、アルキルは、例えば、1~6個の炭素原子、またはその間任意の値、例えば、1、2、3、4、5、または6個の炭素原子を含み、単結合により分子の残りの部分に結合している、炭素及び水素原子のみから構成され、不飽和を含有しない直鎖または分岐鎖炭化水素鎖基を指す。本明細書に特定的に記述されない限り、アルキル基は、本明細書に記載されている1つまたは複数の置換基により任意に置換されてもよい。本明細書に特定的に記述されない限り、前記置換は、アルキル基の任意の炭素に生じ得ることが理解される。
【0076】
「アルケニル」は、例えば、1~10個の炭素原子、またはその間任意の値、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の炭素原子を含み、単結合により分子の残りの部分に結合している、炭素及び水素原子のみから構成され、少なくとも1つの二重結合を含む直鎖または分岐鎖炭化水素鎖基を指す。いくつかの実施形態では、アルケニルは、例えば、1~6個の炭素原子、またはその間任意の値、例えば、1、2、3、4、5、または6個の炭素原子を含み、単結合により分子の残りの部分に結合している、炭素及び水素原子のみから構成され、少なくとも1つの二重結合を含む直鎖または分岐鎖炭化水素鎖基を指す。本明細書に特定的に記述されない限り、アルケニル基は、本明細書に記載されている1つまたは複数の置換基により任意に置換されてもよい。本明細書に特定的に記述されない限り、前記置換は、アルケニル基の任意の炭素に生じ得ることが理解される。
【0077】
「アルキニル」は、例えば、2~10個の炭素原子、またはその間任意の値、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の炭素原子を含み、単結合により分子の残りの部分に結合している、炭素及び水素原子のみから構成され、少なくとも1つの三重結合を含む直鎖または分岐鎖炭化水素鎖基を指す。いくつかの実施形態では、アルキニルは、例えば、2~6個の炭素原子、またはその間任意の値、例えば、2、3、4、5、または6個の炭素原子を含み、単結合により分子の残りの部分に結合している、炭素及び水素原子のみから構成され、少なくとも1つの三重結合を含む直鎖または分岐鎖炭化水素鎖基を指す。本明細書に特定的に記述されない限り、アルキニル基は、本明細書に記載されている1つまたは複数の置換基により任意に置換されてもよい。
【0078】
「アシル」は、式-C(O)Ra の基を指し、式中、Raは、本明細書に記載のように、C1-10アルキルまたはC1-6アルキル基である。該アルキル基は、本明細書に記載のように任意に置換されてもよい。
【0079】
「任意の」または「してもよい」は、後に続いて記載される事象または状況が起こっても起こらなくてもよいこと、及びその記載が、その事象または状況が1回もしく数回起こる場合と起こらない場合を含むことを意味する。例えば、「置換されていてもよいアルキル」は、アルキル基が置換されても、置換されなくてもよいこと、及びその記載が置換アルキル基と置換基を有さないアルキル基の両方を含むこと、及びアルキル基が1回または複数回置換されてもよいことを意味する。適切な任意の置換基の例は、限定されることなく、ハロ、オキソ、またはエステルを含む。いくつかの実施形態では、オキソ基は、本明細書に記載されるように、式IのR1のC1位置にあってもよい。いくつかの実施形態では、エステル基は、本明細書に記載されるように、式IのR1のC1位置にあってもよい。
【0080】
「ハロ」は、ブロモ、クロロ、フルオロ、ヨ-ド等を指す。いくつかの実施形態では、適切なハロゲンは、フッ素または臭素を含む。
【0081】
用語「阻害する」、「阻害すること」、または「の阻害」は、測定可能な量だけ減少させること、または完全に防止することを意味する。
【0082】
いくつかの実施形態では、本開示による化合物は、ペルハロ化合物であってもよい。
【0083】
いくつかの実施形態では、本開示による化合物において、R5及びR6は、連結されて環を形成してもよい。そのような実施形態では、「環」は、飽和または一不飽和であってもよい最大7員を有する単環式リン酸エステルを指す。いくつかの実施形態では、R5及びR6は、連結されてアリ-ルリン酸エステルを形成してもよい。
【0084】
いくつかの実施形態では、本開示による化合物の塩は、限定されることなく、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等の任意の適切な塩であってもよい。いくつかの実施形態では、本開示による化合物の塩は、薬剤的に許容される塩であってもよい。
【0085】
FD-タンパク質の製造
いくつかの実施形態では、本開示による化合物は、例えば、本明細書に記載の、または2017年11月14日に付与された米国特許第9,816,069号や2012年2月9日に公開されたPCT公開WO/2012/019165に記載の、または当技術分野で知られている標準的な技術を使用して、「フコ-ス欠損」または「FD」タンパク質または抗体の産生に使用することができる。従って、本開示は、部分的には、本明細書に記載の標準技術または当技術分野で知られている標準技術を使用して、真核細胞または哺乳動物を、本明細書に記載の化合物、例えば、式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、またはXIVの化合物、例えばカルバフコ-ス、またはその塩と接触させることによって、タンパク質またはその断片または誘導体のフコシル化を阻害する方法を提供する。これらの方法は、in vitroまたはin vivoで実施することができる。
【0086】
一般に、フコシル化とは、α(1,2)-、α(1,3)-、α(1,4)-、及び/またはα(1,6)-結合による、GDPからグリカンへのフコ-スの転移を指す。コアフコシル化とは、α1,6-結合やα-1,6-フコシル基転移酵素8(FUT 8)による、GDPから、抗体等のタンパク質のN-結合型グリカンの最も内側のN-アセチルグルコサミン (GlcNAc)残基(還元末端) へのフコ-スの転移を指す。
【0087】
「フコ-ス欠損」または「FD」タンパク質とは、炭素環式化合物、例えば、本明細書に記載の化合物、例えば、式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、またはXIVの化合物、例えばカルバフコ-スが存在しない場合に産生された抗体等のポリペプチドと比較して、フコシル化が低減された抗体等のポリペプチドを意味する。前記フコシル化の低減は、少なくとも約5%~100%であってもよく、またはその間の任意の値、例えば、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%であってもよい。いくつかの実施形態では、前記フコシル化の低減は、少なくとも約50%~100%であってもよく、またはその間の任意の値、例えば、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%であってもよい。いくつかの実施形態では、前記フコシル化の低減は、「コアフコシル化」の低減であってもよい。
【0088】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の炭素環式化合物、例えばカルバフコ-スを投与した後に、微量のフコ-スのみを糖鎖(例えば、N-グリカンのようなグリカン)に組み込むことができる。例えば、様々な実施形態では、本明細書に記載の炭素環式化合物を受けていない細胞または動物と比較して、動物(例えば、ヒト等の哺乳動物)の血清中の抗体の約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、または約1%未満は、フコシル化される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の炭素環式化合物(例えば、カルバフコ-ス)を受けていない動物と比較して、動物血清中の抗体は、実質的にフコシル化されていない(即ち、0.5%未満)。
【0089】
本明細書に記載の使用のためのタンパク質または抗体は、組換え技術を使用して作製することができる。標的抗原に結合するタンパク質または抗体、またはその断片または誘導体の組換え発現は、典型的には、抗体またはその誘導体をコ-ドする核酸を含む発現ベクタ-の構築を含む。このようなタンパク質をコ-ドする核酸が得られると、当該タンパク質分子の製造のためのベクタ-は、当該技術分野で周知の技術を用いた組換えDNA技術によって製造することができる。SambrookとRussell, 分子クロ-ニング:実験マニュアル(Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 第3版, 2001); Sambrook ら., 分子クロ-ニング:実験マニュアル(Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 第2版, 1989); Ausubel ら.,分子生物学のショ-トプロトコル(John Wiley & Sons, New York, 第4版, 1999);及びGlick & Pasternak, 分子バイオテクノロジ-:組換えDNAの原理と応用(ASM Press, Washington, D.C., 第2版, 1998)に記載されているような標準的な技術を組換え核酸法、核酸合成、細胞培養、導入遺伝子組込、及び組換えタンパク質発現に使用することができる。
【0090】
従って、いくつかの実施形態では、抗体またはその断片または誘導体は、ハイブリド-マ、骨髄、または他の適切な細胞(哺乳動物細胞を含む)からの組換え発現技術を使用して製造することができる。
【0091】
例えば、抗体またはその断片または誘導体の組換え発現のために、発現ベクタ-は、その重鎖または軽鎖、またはプロモ-タ-に作動可能に連結された重鎖または軽鎖可変ドメインをコ-ドすることができる。発現ベクタ-は、例えば、抗体分子の定常領域をコ-ドするヌクレオチド配列を含むことができ(例えば、PCT刊行物WO86/05807またはWO89/01036;または米国特許第5,122,464を参照)、抗体の可変ドメインを重鎖または軽鎖全体の発現のためのこのようなベクタ-にクロ-ニングすることができる。発現ベクタ-を当技術分野で公知の技術によって宿主細胞に伝達することができ、次いで、遺伝子導入された細胞を本明細書に記載の炭素環式化合物(例えば、カルバフコ-ス)の存在下で、当技術分野で公知の技術によって培養し、抗体を産生することができる。典型的には、二本鎖抗体の発現のために、重鎖及び軽鎖の両方をコ-ドするベクタ-を免疫グロブリン分子全体の発現のために宿主細胞において共発現することができる。
【0092】
任意の適切な哺乳動物細胞または細胞株を使用して、抗体またはその断片または誘導体を発現させることができる。例えば、チャイニ-ズハムスタ-卵巣細胞(CHO)等の哺乳動物細胞(例えば、DG44、Dxb11、CHO-K、CHO-K1、及びCHO-S)を使用することができる。いくつかの実施形態では、ヒト細胞株を使用することができる。適切な骨髄腫細胞株には、限定されることなく、SP2/0及びIR983F、及びNamalwa等のヒト骨髄腫細胞株が含まれる。他の適切な細胞には、限定されることなく、ヒト胚性腎臓細胞(例えば、HEK293)、サル腎細胞(例えば、COS)、ヒト上皮細胞(例えば、HeLa、PERC6、Wil-2、Jurkat、Vero、Molt-4、BHK、及びK6H6)が含まれる。他の適切な宿主細胞には、限定されることなく、YB2/0細胞が含まれる。
【0093】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は、ハイブリド-マから由来することができる。
【0094】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は、フコ-ストランスポ-タ-遺伝子ノックアウトを含まない。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、フコシル基転移酵素(例えば、FUT8)遺伝子ノックアウトを含まない。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、核酸をコ-ドするGnTIIIのノックインを含まない。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、核酸をコ-ドするゴルジαマンノシダ-ゼIIのノックインを含まない。
【0095】
様々な哺乳動物宿主発現ベクタ-系を利用して、抗体またはその断片または誘導体を発現させることができる。例えば、ヒトサイトメガロウイルス由来の主要な中間初期遺伝子プロモ-タ-要素またはチャイニ-ズハムスタ-卵巣EF-1αプロモ-タ-等のベクタ-と組み合わせた、チャイニ-ズハムスタ-卵巣細胞 (CHO)等の哺乳動物細胞 (DG44、Dxb11、CHO-K1、及びCHO-S等)は、抗体及びその誘導体の生産に効果的な発現システムである(例えば、Foeckingら, 1986, Gene 45:101;Collettら、1990, Bio/Technology 8:2;Allison、米国特許第5,888,809号を参照)。いくつかの実施形態では、適切な細胞株は、チャイニ-ズハムスタ-卵巣(CHO)細胞株またはCHO由来細胞株であってもよい。
【0096】
細胞株は、適切な培地で培養することができる。適切な培地には、例えば、成長に必要な塩、炭素源(糖等)、窒素源、アミノ酸、微量元素、抗生物質、選択剤等を含むものが含まれる。例えば、適切なHam's F10(Sigma)、基礎培地(MEM、Sigma)、RPMI-1640(Sigma)、ダルベッコ変法イ-グル培地((DMEM、Sigma)、PowerCHO(商標)細胞培地(Lonza Group Ltd.)、ハイブリド-マ無血清培地 (HSFM)(GIBCO)等の市販の培地は、宿主細胞の培養に適し得る。これらの培地のいずれかは、必要に応じて、ホルモン及び/または他の増殖因子(例えば、インスリン、トランスフェリン、または上皮増殖因子)、塩(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、及びリン酸塩)、緩衝剤(例えば、HEPES)、ヌクレオチド(アデノシン及びチミジン等)、抗生物質(例えば、ゲンタマイシン(商標)等)、微量元素(通常は、最終濃度がマイクロモル範囲で存在する無機化合物として定義される)、及びグルコ-スまたは対応するエネルギ-源を補充することができる。任意の他の必要なサプリメントも、当業者に知られている適切な濃度で含まれ得る。温度やpH等の培養条件は、当技術分野で知られているように、発現のために選択された宿主細胞で以前に使用されたものであってもよい。いくつかの実施形態では、前記培地は、フコ-スで補充されない。いくつかの実施形態では、前記培地は、無血清であってもよい。いくつかの実施形態では、前記培地は、動物由来のタンパク質であってもよい。
【0097】
いくつかの実施形態では、有効量の、本明細書に記載の化合物、例えば、式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、またはXIVの化合物、例えばカルバフコ-ス、またはその塩を培地に加えてもよい。代替的な実施形態では、前記培地は、有効量の、本明細書に記載の化合物、例えば、式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、またはXIVの化合物、例えばカルバフコ-ス、またはその塩を含んでもよい。従って、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物、例えば、式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、またはXIVの化合物、例えばカルバフコ-ス、またはその塩は、抗体、またはその断片または誘導体等のタンパク質のフコシル化を阻害するのに使用するためのキットに説明書と共に提供されてもよい。該キットは、限定されることなく、細胞培地や細胞株等をさらに含んでもよい。
【0098】
FD-タンパク質またはFD-抗体、またはその断片または誘導体を産生するために、有効量の炭素環式化合物、例えば、本明細書に記載の化合物、例えば、式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、またはXIVの化合物、例えばカルバフコ-スを、前記培地に添加することができ、或いは、前記細胞培地は、有効量の前記炭素環式化合物を含むことができる。この文脈において、「有効量」は、タンパク質または抗体、またはその断片または誘導体の糖鎖へのフコ-ス取り込みを少なくとも約5%~100%、またはその間の任意の値、例えば、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%減少させるのに十分な、本明細書に記載の炭素環式化合物の量を指す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の炭素環式化合物の有効量は、前記タンパク質または抗体、またはその断片または誘導体の糖鎖へのフコ-ス取り込みを少なくとも約50%減少させるのに十分であり得る。
【0099】
タンパク質または抗体、またはその断片または誘導体を発現する細胞は、本明細書に記載のような炭素環式化合物を補充した任意の適切な容量の培地で宿主細胞を増殖させることによって培養することができる。前記細胞は、T-フラスコ、スピナ-及びシェ-カ-フラスコ、WaveBag (商標)バッグ、ロ-ラ-ボトル、バイオリアクタ-、及び撹拌槽バイオリアクタ-を含む任意の適切な培養システムの中で、当該技術分野で公知の任意の方法に従って培養することができる。足場依存性細胞は、撹拌槽バイオリアクタ-内の懸濁液中に維持されるマイクロキャリア、例えばポリマ-球上でも培養することができる。あるいは、細胞を単一細胞懸濁液中で増殖させることができる。培地は、バッチプロセスで添加されてもよく、例えば、培地が単一のバッチで細胞に一度添加され、または、培地の小さいバッチが定期的に添加されるフェドバッチプロセスで添加されてもよい。培地は、培養終了時または培養中に数回収穫することができる。連続灌流の製造プロセスも当技術分野で知られており、そこでは、新鮮な培地が連続的に培養物に供給されながら、リアクタ-から同じ体積は連続的に取り出される。灌流培養は、通常、バッチ培養よりも高い細胞密度を達成し、収穫を繰り返すことで数週間または数か月間維持することができる。
【0100】
バッチ培養で増殖された細胞について、培地の体積は、少なくとも750 mL、1リットル、2リットル、3リットル、4リットル、5リットル、10リットル、15リットル、20リットル、またはそれ以上であってもよい。工業用途のために、培地の体積は、少なくとも100リットル、少なくとも200リットル、少なくとも250リットル、少なくとも500リットル、少なくとも750リットル、少なくとも1000リットル、少なくとも2000リットル、少なくとも5000リットル、または少なくとも10,000リットルであってもよい。本明細書に記載の炭素環式化合物、例えば、カルバフコ-スは、シ-ドトレイン、初期バッチ培地、急速な増殖期の後、または培地と連続的に(例えば、連続供給中)添加することができる。例えば、本明細書に記載の炭素環式化合物、例えば、カルバフコ-スは、10倍または100倍の濃度で初期シ-ドトレインまたはフィ-ドストックに添加することができ、これにより、その後の培地の添加により、前記炭素環式化合物の濃度が依然として有効なレベルに変化する。代替的に、本明細書に記載の炭素環式化合物、例えば、カルバフコ-スは、希釈を必要とせずに、培地に直接添加することができる。いくつかの実施形態では、所望のタンパク質または抗体、またはその断片または誘導体の産生を最適化するために、前記炭素環式化合物、例えば、本明細書に記載の化合物、例えば、式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、またはXIVの化合物、例えばカルバフコ-スは、細胞培養プロセスの比較的早い段階で添加することができ、培養プロセス全体にわたって有効な濃度を維持することができる。
【0101】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるように産生されたタンパク質または抗体、またはその断片または誘導体は、本明細書に記載の炭素環式化合物、例えばカルバフコ-スの非存在下で培養された宿主細胞から産生された抗体または抗体誘導体と比較して、少なくとも10%のフコシル化の減少を示す。いくつかの実施形態では、本法によって産生されたタンパク質または抗体、またはその断片または誘導体は、本明細書に記載の炭素環式化合物、例えばカルバフコ-スの非存在下で培養された宿主細胞から産生された抗体または抗体誘導体と比較して、少なくとも50%のフコシル化の減少を示す。
【0102】
本明細書に記載の炭素環式化合物 (例えば、式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、またはXIVの化合物のいずれか、例えばカルバフコ-ス)の量は、標準的な細胞培養法によって測定することができる。例えば、細胞培養アッセイを実施して、最適な投与範囲を決定することができる。使用される精確な量は、投与時間、宿主細胞株、細胞密度等に依存し得る。有効用量は、in vitroモデルまたは試験システムからの用量反応曲線から外挿してもよい。
【0103】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の炭素環式化合物、例えばカルバフコ-スは、10 nM~50 mMの濃度で培地に存在することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の炭素環式化合物、例えばカルバフコ-スは、10 nM~10 mMの濃度で培地に存在することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の炭素環式化合物、例えばカルバフコ-スは、100 nM~5 mMの濃度で培地に存在することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の炭素環式化合物、例えばカルバフコ-スは、100 nM~3 mMの濃度で培地に存在することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の炭素環式化合物、例えばカルバフコ-スは、100 nM~2 mMの濃度で培地に存在することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の炭素環式化合物、例えばカルバフコ-スは、100 nM~1 mMの濃度で培地に存在することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の炭素環式化合物、例えばカルバフコ-スは、1 μM~1 mMの濃度で培地に存在することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の炭素環式化合物、例えばカルバフコ-スは、10 nM~1 mMの濃度で培地に存在することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の炭素環式化合物、例えばカルバフコ-スは、10 nM~500 μMの濃度で培地に存在することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の炭素環式化合物、例えばカルバフコ-スは、1 μM~500 μMの濃度で培地に存在することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の炭素環式化合物、例えばカルバフコ-スは、1 μM~250 μMの濃度で培地に存在することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の炭素環式化合物、例えばカルバフコ-スは、10 μM~100 μMの濃度で培地に存在することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の炭素環式化合物、例えばカルバフコ-スは、(宿主細胞の維持/増殖のために適切な温度で)少なくとも100 nMの濃度で培地に可溶であってもよい。
【0104】
糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンにフコ-スが結合していない糖鎖と、糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンにフコ-スが結合している糖鎖の含有量(例えば、比率)は、例えば、米国特許出願公開第2004-0110282号に記載されているように測定することができる。即ち、遊離糖鎖についてヒドラジン分解または酵素消化(例えば、生化学実験法23:糖タンパク質糖鎖の研究法(日本学会出版会)、高橋礼子編(1989年)を参照)、蛍光標識または放射性同位体標識を行い、そして、クロマトグラフィ-またはその他の適切な技術により標識糖鎖を分離する。前記遊離糖鎖の組成は、HPAEC-PAD法(例えば、J. Liq Chromatogr. 6:1557(1983)を参照)または任意の他の適切な技術を用いて、前記鎖を分析して測定することができる。
【0105】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるように製造された抗体、またはその断片または誘導体は、本明細書に記載の炭素環式化合物の非存在下で製造された抗体、またはその断片または誘導体よりも高いエフェクタ-機能(例えば、ADCC活性)を有することができる。前記エフェクタ-機能活性は、本明細書に記載の炭素環式化合物の培地中の濃度及び/または本明細書に記載の炭素環式化合物への曝露時間を変更することによって調節され得る。ADCC活性は、当技術分野で既知のアッセイを使用して測定してもよく、例示的な実施形態では、フコシル化された親抗体と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、または20倍で増加する。抗原陽性培養細胞株に対する細胞傷害活性は、エフェクタ-機能を(例えば、Cancer Immunol. Immunother. 36:373(1993)に記載されているように)測定することによって評価することができる。
【0106】
タンパク質または抗体、またはその断片または誘導体は、例えば、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィ-、ゲル電気泳動、透析、及びアフィニティ-クロマトグラフィ-を使用して精製することができる。いくつかの実施形態では、タンパク質または抗体、またはその断片または誘導体は、アフィニティ-クロマトグラフィ-を使用して精製することができる。
【0107】
いくつかの実施形態では、タンパク質Aは、ヒトIgG1、2、または4重鎖に基づいて、抗体、またはその断片または誘導体を精製するために使用することができる。親和性リガンドとしてのタンパク質Aの適性は、抗体、またはその断片または誘導体に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインの種及びアイソタイプに依存することができる。
【0108】
いくつかの実施形態では、タンパク質Gは、マウスアイソタイプ、またはいくつかのヒト抗体、またはそれらの断片または誘導体に使用することができる。親和性リガンドが付着しているマトリックスは、アガロ-スまたは任意の他の適切なマトリックスであり得る。制御された細孔ガラスまたはポリ(スチレンジビニル)ベンゼン等の機械的に安定なマトリックスは、アガロ-スで達成できるものよりも速い流速及び短い処理時間を可能にする。抗体またはその断片または誘導体が、CH3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX(商標)樹脂(J.T.Baker, Phillipsburg, N.J.)は、精製に有用であり得る。回収されるべき抗体またはその断片または誘導体によって、タンパク質精製のための他の技術、例えば、イオン交換カラム(陽イオン性または陰イオン交換)上の分画、エタノ-ル沈殿、逆相HPLC、シリカ上のクロマトグラフィ-、ヘパリンSEPHAROSE(商標)上のクロマトグラフィ-、陰イオンまたは陽イオン交換樹脂上のクロマトグラフィ-(ポリアスパラギン酸カラム等)、等電点電気泳動、SDS-PAGE、及び硫酸アンモニウム沈殿等も利用可能である。
【0109】
任意の精製段階に続いて、目的の抗体またはその断片または誘導体、及び汚染物質を含む混合物を、pHが低い疎水性相互作用クロマトグラフィ-に供することができる(例えば、pHが約2.5~4.5の溶出緩衝液を使用、好ましくは低い塩濃度(例えば、約0~0.25Mの塩)で実施)。
【0110】
一般に、理解されたいこととして、本明細書に記載または当技術分野で知られている任意の適切な方法は、本明細書に記載の炭素環式化合物と組み合わせて、FDタンパク質及び/またはFD-抗体、またはその断片または誘導体の製造に使用することができる。
【0111】
本明細書に記載されるように製造することができる抗体、またはその断片または誘導体は、モノクロ-ナル、キメラ、ヒト化(ベニヤを含む)、またはヒト抗体であり得る。適切な抗体は、複合N-グリコシド結合糖鎖(例えば、ヒトlgG 1Fc領域またはドメイン)を有するFc領域またはドメインを有する単鎖抗体等の抗体断片も含む。前記Fc領域またはドメインは、FCγ受容体結合部位を含むことができる。前記抗体は、ヒトまたはヒト化であり得る。いくつかの実施形態では、前記抗体は、げっ歯類(例えば、マウス及びラット)、ロバ、ヒツジ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ブタ、ラクダ、ウマ、またはニワトリであり得る。
【0112】
抗体、またはその断片または誘導体は、単一特異性、二重特異性、三重特異性、またはより大きいな多重特異性であり得る。多重特異的抗体は、異なる標的抗原の異なるエピト-プに特異的であり得るか、または同じ標的抗原上の異なるエピト-プに特異的であり得る(例えば、WO93/17715;WO92/08802;WO91/00360;WO92/05793;Tuttら, 1991, J. Immunol.147:60-69;米国特許第4,474,893号, 第4,714,681号, 第4,925,648号, 第5,573,920号, 及び第5,601,819号;Kostelnyら, 1992, J. Immunol.148:1547-1553を参照)。
【0113】
前記抗体、またはその断片または誘導体は、標的抗原に対する結合の特異性に関しても記載され得る。
【0114】
「抗体」とは、免疫グロブリンファミリ-に属するポリペプチドまたはその断片(抗原結合断片等)、並びに本明細書でさらに論じられるようなポリペプチド及び断片の保存的置換を意味する。抗体は、Harlow & Laneによる「抗体:実験室マニュアル」(Cold Spring Harbor Laboratory Press、1988)に概説されている。文脈から明らかでない限り、抗体を参照すると、本明細書に記載の抗体誘導体も含まれる。
【0115】
「天然の抗体」または「天然の免疫グロブリン」は、2つの同一の軽鎖(L)及び2つの同一の重鎖(H)からなる約150,000ダルトンのヘテロテトラマ-糖タンパク質である。各軽鎖は、典型的には、1つの共有ジスルフィド結合によって重鎖に連結され、一方、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で変化する。各重鎖及び軽鎖には、規則的な間隔で配置された鎖内ジスルフィド架橋もある。各重鎖は、一端に1つの可変ドメイン(「VH」)とそれに続くいくつかの定常ドメイン(「CH」)を有する。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(「VL」)及び他端に定常ドメイン(「CL」)を有する。軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1定常ドメインと整列し、軽鎖可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと整列する。前記「可変ドメイン」は、配列が広く異なっており、その抗原に対する抗体の結合及び特異性に関与している。可変性は、軽鎖及び重鎖可変ドメインの両方で「超可変領域」と呼ばれる 3 つのセグメントに集中し、可変性の少ない配列は、「フレ-ムワ-ク領域」または「FR」と呼ばれる。定常ドメインは、抗原結合に直接関与せず、その代わりに、様々なエフェクタ-機能を示す。
【0116】
「Fc領域」という用語は、抗体の定常領域(例えば、CH4ドメインを有していてもよいCHl-ヒンジ-CH2-CH3ドメイン)またはそのようなFc領域の保存的に置換された誘導体を指す。
【0117】
「Fcドメイン」という用語は、抗体の定常領域ドメイン(例えば、CH1、ヒンジ、CH2、CH3、またはCH4ドメイン)またはそのようなFcドメインの保存的に置換された誘導体を指す。
【0118】
用語「抗原結合部分」、「抗原結合断片」、または「抗原結合ドメイン」、「抗体断片」、または「抗体の機能的断片」は、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体断片を指す(一般に、Holligerら、Nature Biotech. 23(9)1126-1129(2005)を参照)。抗体断片の例には、限定されることなく、Fab断片、VL、VH、CL及びCHドメインからなる1価の断片、F(ab')2断片、ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む2価の断片、VH及びCHドメインからなるFd断片、抗体の単一ア-ムのVH及びCHドメインからなるFv断片、VH ドメインからなる(v)dAb断片、合成的に連結されたVL及びVHドメインからなる単鎖Fv(scFv)分子、異なる抗体鎖の相補的ドメインとのペアリングを必要とする短いリンカ-を合成的に結合して2つの抗原結合部位を産生する、VL及びVHドメインからなる二重特異性抗体、単離された相補性決定領域(CDR)等が含まれる。一般に、抗原結合断片は、複合N-グリコシド結合糖鎖を含む。
【0119】
いくつかの実施形態では、前記抗体は、モノクロ-ナル抗体であってもよい。「モノクロ-ナル抗体」という用語は、任意の真核または原核細胞クロ-ンを含む単一細胞クロ-ン、またはファ-ジクロ-ンに由来する抗体を指し、それが産生される方法ではない。従って、「モノクロ-ナル抗体」という用語は、ハイブリド-マ技術によって産生される抗体に限定されない。
【0120】
いくつかの実施形態では、前記抗体は、キメラ抗体であってもよい。キメラ抗体は、抗体の異なる部分が、マウスモノクロ-ナル抗体に由来する可変領域とヒト免疫グロブリン定常領域とを有する抗体等の異なる動物種に由来する分子である。キメラ抗体を産生する方法は、当該技術分野で知られている (例えば、Morrison, Science, 1985, 229:1202;Oiら, 1986, BioTechniques 4:214;Gilliesら, 1989, J.Immunol. Methods 125:191-202;米国特許第5,807,715号、第4,816,567号; 及び第4,816,397号を参照) 。
【0121】
いくつかの実施形態では、前記抗体は、ベニヤ抗体を含むヒト化抗体であり得る。ヒト化抗体は、所望の抗原に結合し、非ヒト種からの1つ以上の相補性決定領域(CDR)、及びヒト免疫グロブリン分子からのフレ-ムワ-ク及び定常領域を有する抗体分子である。しばしば、ヒトフレ-ムワ-ク領域内のフレ-ムワ-ク残基は、CDRドナ-抗体からの対応する残基に置換されて、抗原結合を改変するか、好ましくは改善する。これらのフレ-ムワ-ク置換は、当該技術分野で周知の方法によって特定される。例えば、CDRとフレ-ムワ-ク残基との相互作用をモデル化して、抗原結合及び配列比較に重要なフレ-ムワ-ク残基を特定し、特定の位置における異常なフレ-ムワ-ク残基を特定する(例えは、Queenら,米国特許第5,585,089号;Riecbmannら,1988,Nature 332:323を参照)。抗体は、当技術分野で知られている様々な技術、例えば、CDR移植(EP 0 239 400;WO 91/09967;米国特許第5,225,539号;第5,530,101号;及び第5,585,089号)、
ベニアリングまたはリサ-フェシング(EP 0 592 106; EP 0 519 596; Padlan, 1991, Molecular Immunology, 28(4/5):489-498; Studnickaら, 1994, Protein Engineering 7(6):805-814; Roguskaら, 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:969-973)、及び鎖シャフリング(米国特許第5,565,332号)を使用してヒト化することができる。
【0122】
いくつかの実施形態では、前記抗体は、ヒト抗体であり得る。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体ライブラリ-を使用するファ-ジディスプレイ法等、当技術分野で公知の種々の方法によって作製することができる。例えば、米国特許第4,444,887号及び第4,716,111号、WO98/46645、WO98/50433、WO98/24893、WO98/16654、WO96/34096、WO96/33735、及びWO91/10741を参照されたい。また、選択されたエピト-プを認識するヒト抗体は、「誘導選択」と呼ばれる技術を使用して産生することができる。そこでは、選択された非ヒトモノクロ-ナル抗体、例えばマウス抗体は、同じエピト-プを認識する完全ヒト抗体の選択をガイドするために使用される(例えば、Jespersら, 1994, Biotechnology 12:899-903を参照)。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する遺伝子導入マウスを用いて製造することもできる。抗原に対するモノクロ-ナル抗体は、従来のハイブリド-マ技術を用いて、免疫した遺伝子導入マウスから得ることができる。ヒト抗体を産生するための技術の概要については、LonbergとHuszar, 1995, Int. Rev. Immunol. 13:65-93を参照されたい。ヒト抗体及びヒトモノクロ-ナル抗体を作製するための技術及びそのような抗体を作製するためのプロトコルの詳細な説明については、例えば、WO98/24893; WO92/01047; WO96/34096; WO96/33735; 欧州特許第0 598,877号;米国特許第5,413,923号;第5,625,126号;第5,633,425号;第5,569,825号;第 5,661,016号;第5,545,806号;第5,814,318号;第5,885,793号;第5,916,771号;及び第5,939,598号のPCT刊行物を参照されたい。
【0123】
抗体の例には、ハ-セプチン(登録商標)(トラスツズマブ;Genentech)、リツキサン(登録商標)(リツキシマブ;Genentech)、リンツズマブ(Seattle Genetics, Inc.)、パリビズマブ(Medimmune)、アレムツズマブ(BTG)、及びエプラツズマブ(Immunomedics)が含まれる。
【0124】
「抗体誘導体」は、異種ポリペプチド(例えば、異種タンパク質のリガンド結合ドメイン)の結合等による異種分子の共有結合によって、または、グリコシル化(フコシル化以外)、脱グリコシル化(脱フコシル化以外)、アセチル化、リン酸化、または通常は抗体またはその断片に関連しないその他の改変によって改変された抗体またはその断片を指す。
【0125】
抗体誘導体の例には、限定されることなく、結合ドメイン-Ig融合物が含まれる。前記結合ドメインは、例えば、リガンド、受容体の細胞外ドメイン、ペプチド、非天然由来のペプチド等であってもよい。例示的な免疫グロブリンまたはFc領域を有する融合物には、限定されることなく、sTNFRIIとFc領域との融合タンパク質であるエタネルセプト(米国特許第5,605,690号)、抗原提示細胞上に発現するLFA-3とFc領域との融合タンパク質であるアレファセプト(米国特許第5,914,111号)、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原-4(CTLA-4)とFc領域との融合タンパク質(J. Exp. Med. 181:1869 (1995))、インタ-ロイキン15とFc領域との融合タンパク質(J. Immunol. 160:5742 (1998))、第VII因子とFc領域との融合タンパク質(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98:12180 (2001))、
インタ-ロイキン10とFc領域との融合タンパク質(J. Immunol. 154:5590 (1995))、インタ-ロイキン2とFc領域との融合タンパク質(J. Immunol. 146:915 (1991))、CD40とFc領域との融合タンパク質(Surgery 132:149 (2002))、
Flt-3(fms様チロシンキナ-ゼ)と抗体Fc領域との融合タンパク質(Acta. Haemato. 95:218 (1996))、OX40と抗体Fc領域との融合タンパク質(J. Leu. Biol. 72:522 (2002))、及び他のCD分子との融合タンパク質(例えば、CD2、CD30 (TNFRSF8)、CD95(Fas)、CD106(VCAM-I)、CD137)、接着分子(例えば、ALCAM(活性化白血球細胞接着分子)、カドヘリン、ICAM(細胞間接着分子)-1、ICAM-2、ICAM-3)サイトカイン受容体 (例えば、インタ-ロイキン-4R、インタ-ロイキン-5R、インタ-ロイキン-6R、インタ-ロイキン-9R、インタ-ロイキン-10R、インタ-ロイキン-12R、インタ-ロイキン-13Rα1、インタ-ロイキン-13Rα2、インタ-ロイキン-15R、インタ-ロイキン-21Rα)、ケモカイン、細胞死誘導シグナル分子(例えば、B7-H1、DR6 (細胞死受容体6)、PD-1(プログラム死-1)、TRAIL R1)、共刺激分子(例えば、B7-1、B7-2、B7-H2、ICOS(誘導共刺激因子))、増殖因子(例えば、ErbB2、ErbB3、ErbB4、HGFR)、分化誘導因子(例えば、B7-H3)、活性化因子(例えば、NKG2D)、シグナル伝達分子(例えば、gp130)、BCMA、及びTACIが含まれる。
【0126】
「抗原」は、抗体、またはその断片または誘導体が特異的に結合する分子である。
【0127】
用語「特異的に結合すること」または「特異的に結合する」は、抗体、またはその断片または誘導体が、それに対応する標的抗原と非常に選択的に結合し、多数の他の抗原と結合しないことを意味する。例えば、抗体、またはその断片または誘導体は、少なくとも約1x10-7 M、好ましくは10-8 M~10-9 M、10-10 M、10-11 M、または10-12 Mの親和性で結合することができ、密接に関連する抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン) への結合に対する親和性よりも少なくとも2倍大きい親和性で所定の抗原に結合する。
【0128】
抗体は、例えば、ウェスタンブロット、放射線免疫測定法、ELISA (酵素結合免疫測定法)、「サンドイッチ」免疫測定法、沈降免疫測定法、免疫放射定量測定法、蛍光免疫測定法、及びタンパク質A免疫測定法等の技術を用いる競合的及び非競合的な免疫測定システム等の従来の方法によって、標的抗原に対する特異的結合について測定することができる(例えば、Ausubelら編集、分子生物学におけるショ-トプロトコル(John Wiley & Sons, Inc., New York, 第4版, 1999);Harlow & Lane、抗体の使用:実験室マニュアル(Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1999を参照)。さらに、標的抗原に対する抗体の結合親和性及び抗体-抗原相互作用の解離速度は、表面プラズモン共鳴、標識抗体を用いた競合 FACS、または他の競合的な結合アッセイによって測定することができる。競合的な結合アッセイの一例は、放射線免疫測定法である。これは、増加量の標識されていない抗体の存在下で、標識された抗原(例えば、3Hまたは125I)を目的抗体とインキュベ-ションし、標識された抗原に結合した抗体を検出することを含む。次いで、該抗体の親和性及び結合解離速度は、Scatchardプロット解析によるデ-タから測定することができる。第2抗体との競合も、放射線免疫測定法を使用して測定することができる。この場合、増加量の標識されていない第2抗体の存在下で、抗原を標識された化合物(例えば、3Hまたは125I)に結合した目的抗体とインキュベ-トする。あるいは、抗体の結合親和性及び抗体-抗原相互作用の結合解離速度は、表面プラズモン共鳴によって測定することができる。
【0129】
いくつかの実施形態では、抗体、またはその断片または誘導体は、CD19、CD20、CD21、CD22、CD30、CD33、CD38、CD40、CD70、CD133、CD138、またはCD276に特異的に結合する。他の実施形態では、前記抗体、またはその断片または誘導体は、BMPR1B、LAT1(SLC7A5)、STEAP1、MUC16、巨核球増強因子(MPF)、Napi3b、Sema 5b、PSCA hlg、ETBR (エンドセリン型B受容体)、STEAP2、TrpM4、CRIPTO、CD21、CD 79a、CD79b、FcRH2、HER2、HER3、HER4、NCA、MDP、IL20R.α.、ブレビカン、Ephb2R、 ASLG659、PSCA、PSMA、GEDA、BAFF-R、CXCR5、HLA-DOB、P2X5、CD72、LY64、FCRH1、またはIRTA2に特異的に結合する。
【0130】
抗体は、標的抗原の抗原含有断片から、抗体の種類に応じた標準的な方法 (例えば、Kohlerら, Nature, 256:495, (1975);Harlow & Lane, Antibodies, 実験マニュアル(C.S.H.P., NY, 1988);Queenら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:10029-10033 (1989); 及びWO90/07861;Dowerら, WO91/17271; 及びMcCaffertyら, WO92/01047を参照、それぞれが全ての目的のために参照により組み込まれる。)で作製することができる。一例として、モノクロ-ナル抗体は、例えば、ハイブリド-マ、組換え体、及びファ-ジディスプレイ技術の使用、またはそれらの組み合わせを含む多種多様な技術を使用して調製することができる。ハイブリド-マ技術は、例えば、Harlowら, supra,及びHammerlingら, モノクロ-ナル抗体とT細胞ハイブリド-マ, pp.563-681(Elsevier, N.Y., 1981)に概説されている。抗体の作製に使用できるファ-ジディスプレイ法のに例は、例えば、Briinnanら, 1995, J. Immunol. Methods 182:41-50; Amesら, 1995, J. Immunol. Methods 184:177-186; Kettleboroughら, 1994, Eur. J. Immunol. 24:952-958; Persicら, 1997, Gene 187:9-18; Burtonら, 1994, 免疫学の進歩 57:191-280; PCT出願 第PCT/GB91/01 134号; PCT公開 WO90/02809; WO 91/10737; WO92/01047; WO92/18619; WO93/11236; WO95/15982; WO95/20401; 及び米国特許第5,698,426号;第5,223,409号;第5,403,484号;第5,580,717号;第5,427,908号;第5,750,753号;第5,821,047号;第5,571,698号;第5,427,908号;第5,516,637号;第5,780,225号;第5,658,727号;第5,733,743号;及び第5,969,108号に開示されたものが含まれる。単鎖Fv及び抗体の製造に使用できる技術の例には、米国特許第4,946,778号及び第5,258,498号;Hustonら, 1991, 酵素学の方法 203:46-88;Shuら, 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:7995-7999;及びSkerraら, 1988, Science 240:1038-1040に記載されているものが含まれる。
【0131】
直接投与
【0132】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の炭素環式化合物、例えば、カルバフコ-スは、被験者、例えばヒト等の哺乳動物に投与し、タンパク質のフコシル化を低減させることができる。従って、本開示は、部分的には、本明細書に記載の化合物、例えば、式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、またはXIVの化合物、例えばカルバフコ-ス、またはその薬剤的に許容される塩を、被験者、例えばヒト等の哺乳動物に投与することによって、タンパク質、またはその断片または誘導体のフコシル化を低減または阻害する方法を提供する。
【0133】
本明細書で使用される場合、被験者は、ヒト、非ヒト霊長類、ラット、マウス、牛、馬、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ等の哺乳動物であってもよい。前記被験者は、臨床患者、臨床試験のボランティア、実験動物等であってもよい。
【0134】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の炭素環式化合物(例えば、カルバフコ-ス)を投与した後、少量のフコ-スのみが糖鎖(例えば、N-グリカンまたは複合N-グリコシド結合糖鎖)に取り込まれる。例えば、様々な実施形態では、本明細書に記載の炭素環式化合物(例えば、カルバフコ-ス)を受けていない動物と比較して、動物(例えば、ヒト等の哺乳動物)中のタンパク質の約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、または約1%未満は、コアフコシル化される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の炭素環式化合物(例えば、カルバフコ-ス)を受けていない動物と比較して、動物血清中の抗体は、実質的にコアフコシル化されない(即ち、0.5%未満)。
【0135】
いくつかの実施形態では、タンパク質のフコシル化は、動物(例えば、ヒト等の哺乳動物)の細胞表面タンパク質では、本明細書に記載の炭素環式化合物(例えば、カルバフコ-ス)を受けていない動物と比較して、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%、約15%、約10%、約5%、または約1%低減される。いくつかの実施形態では、α(1,2)結合を介したタンパク質フコシル化は、動物(例えば、ヒト等の哺乳動物)の細胞表面タンパク質では、本明細書に記載の炭素環式化合物(例えば、カルバフコ-ス)を受けていない動物と比較して、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%、約15%、約10%、約5%、または約1%低減される。
【0136】
いくつかの実施形態では、α(1,3)結合を介したタンパク質フコシル化は、動物(例えば、ヒト等の哺乳動物)の細胞表面タンパク質では、本明細書に記載の炭素環式化合物(例えば、カルバフコ-ス)を受けていない動物と比較して、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%、約15%、約10%、約5%、または約1%低減される。いくつかの実施形態では、α(1,4)結合を介したタンパク質フコシル化は、動物(例えば、ヒト等の哺乳動物)の細胞表面タンパク質では、本明細書に記載の炭素環式化合物(例えば、カルバフコ-ス)を受けていない動物と比較して、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%、約15%、約10%、約5%、または約1%低減される。
【0137】
いくつかの実施形態では、α(1,6)結合を介したタンパク質フコシル化は、動物(例えば、ヒト等の哺乳動物)の細胞表面タンパク質では、本明細書に記載の炭素環式化合物(例えば、カルバフコ-ス)を受けていない動物と比較して、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%、約15%、約10%、約5%、または約1%低減される。
【0138】
いくつかの実施形態では、動物(例えば、ヒト等の哺乳動物)の血清中の白血球のフコシル化は、本明細書に記載の炭素環式化合物(例えば、カルバフコ-ス)を受けていない動物と比較して、少なくとも約60%、少なくとも約50%、少なくとも約40%、少なくとも約30%、少なくとも約20%、少なくとも約15%、少なくとも約10%、または少なくとも約5%低減される。いくつかの実施形態では、動物(例えば、ヒト等の哺乳動物)の血清中の白血球細胞のα(1,3)結合を介したフコシル化は、本明細書に記載の炭素環式化合物(例えば、カルバフコ-ス)を受けていない動物と比較して、少なくとも約60%、少なくとも約50%、少なくとも約40%、少なくとも約30%、少なくとも約20%、少なくとも約15%、少なくとも約10%、または少なくとも約5%低減される。いくつかの実施形態では、動物(例えば、ヒト等の哺乳動物)の血清中の白色血球細胞のα(1,4)結合を介したフコシル化は、本明細書に記載の炭素環式化合物(例えば、カルバフコ-ス)を受けていない動物と比較して、少なくとも約60%、少なくとも約50%、少なくとも約40%、少なくとも約30%、少なくとも約20%、少なくとも約15%、少なくとも約10%、または少なくとも約5%低減される。
【0139】
特定の実施形態では、少量のフコ-ス類似体(または本明細書に記載の炭素環式化合物の代謝物または生成物、例えば、カルバフコ-ス)のみが、抗体または抗体誘導体のグリカン(例えば、N-グリカンまたは複合N-グリコシド結合糖鎖)、またはタンパク質の他のグリカンに取り込まれる。例えば、様々な実施形態では、本明細書に記載の炭素環式化合物を受けていない動物と比較して、本明細書に記載の炭素環式化合物、例えば、カルバフコ-ス(または本明細書に記載の炭素環式化合物の代謝物または生成物)の約60%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、または約1%未満が、動物血清中の抗体のグリカンに取り込まれる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の炭素環式化合物を受けていない動物と比較して、本明細書に記載の炭素環式化合物、例えば、カルバフコ-ス(または本明細書に記載の炭素環式化合物の代謝物または生成物)の約60%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、または約1%未満が、動物の細胞表面タンパク質のグリカンに取り込まれる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の炭素環式化合物、例えば、カルバフコ-ス(または本明細書に記載の炭素環式化合物の代謝物または生成物)はいずれも、抗体または抗体誘導体のグリカン(例えば、N-グリカンまたは複合N-グリコシド結合糖鎖)、またはタンパク質の他のグリカンに取り込まれない。
【0140】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の炭素環式化合物を受けていない動物と比較して、本明細書に記載の炭素環式化合物、例えば、カルバフコ-ス(または本明細書に記載の炭素環式化合物の代謝物または生成物)の約60%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、または約1%未満が、動物血清中の白血球のグリカンに取り込まれる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の炭素環式化合物を受けていない動物と比較して、本明細書に記載の炭素環式化合物、例えばカルバフコ-ス(または本明細書に記載の炭素環式化合物の代謝物または生成物)はいずれも、動物血清中の白血球のグリカンに取り込まれない。
【0141】
炭素環式化合物及びその使用
【0142】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の炭素環式化合物、例えばカルバフコ-スは、様々な治療的及び非治療的な用途において有用であり得る。例えば、前記炭素環式化合物及び/または抗体は、治療薬として使用することができる。抗体誘導体(例えば、受容体-Fc融合物)は、治療用分子として使用することができる。いくつかの実施形態では、前記抗体または抗体誘導体は、他の分子と抱合されない。いくつかの実施形態では、前記抗体は、適切な薬物(例えば、抗体薬物抱合体)または他の活性剤に抱合される。前記抗体及び抗体誘導体は、診断アッセイ、予後アッセイ、放出アッセイ等の非治療的な目的に使用することもできる。従って、本開示は、部分的に、本明細書に記載の化合物、例えば、式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、またはXIVの化合物、例えばカルバフコ-スを含むキットを、診断アッセイ、予後アッセイ、放出アッセイ等で使用するため、または動物や細胞におけるフコシル化を阻害するための説明書とともに提供する。
【0143】
いくつかの実施形態では、前記炭素環式化合物は、癌、自己免疫疾患、感染症、炎症性疾患、または鎌状赤血球症に罹患している患者に治療的利益を提供することができる。従って、本開示は、部分的に、本明細書に記載の化合物、例えば、式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、またはXIVの化合物、例えばカルバフコ-ス、またはその薬剤的に許容される塩をヒト等の哺乳動物に投与することによって、癌、自己免疫疾患、感染症、炎症性疾患、または鎌状赤血球症を治療するための方法を提供する。従って、本開示は、部分的に、本明細書に記載の化合物、例えば、式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、またはXIVの化合物、例えばカルバフコ-ス、またはその薬剤的に許容されるその塩を薬剤的に許容される担体と組み合わせて含む医薬組成物をヒト等の哺乳動物に提供する。
【0144】
前記被験者は、癌、自己免疫疾患、感染症、炎症性疾患、または鎌状細胞疾患を有していてもよく、癌、自己免疫疾患、感染症、炎症性疾患または鎌状細胞疾患と診断されていてもよく、癌、自己免疫疾患、感染症、炎症性疾患、または鎌状細胞疾患を有しないことが確認された対照被験者であってもよい。癌、自己免疫疾患、感染症、炎症性疾患、鎌状細胞疾患の診断方法、及びそのような診断の臨床描写は、当業者に既知である。
【0145】
【0146】
本明細書に記載の炭素環式化合物は、患者における癌の治療に有用であり得る。本明細書に記載の炭素環式化合物を、それを必要とする動物(例えば、ヒト等の哺乳動物)に投与することにより、動物(例えば、ヒト患者)における腫瘍細胞または癌細胞の増殖の阻害または癌の治療をもたらすことができる。従って、本明細書に記載の炭素環式化合物は、動物性癌の治療のための様々な状況で使用することができる。
【0147】
本明細書に記載の炭素環式化合物は、フコシル化を欠く抗体のin vivo産生を増強するためにも有用であり得る。患者における癌標的に対するこのような抗体の割合を増加させることにより、動物(例えば、ヒト患者)における腫瘍細胞または癌細胞の増殖の阻害または癌の治療をもたらすことができる。従って、本明細書に記載の炭素環式化合物は、動物性癌の治療のための様々な状況で使用することができる。
【0148】
本明細書に記載の炭素環式化合物で治療され得る特定のタイプの癌は、固形腫瘍及び血液悪性腫瘍を含む。このような癌には、限定されることなく、(1)線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユ-イング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、結腸直腸癌、腎臓癌、膵臓癌、骨癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、食道癌、胃癌、口腔癌、鼻癌、喉癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛癌、セミノ-マ、胚性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、子宮癌、精巣癌、小細胞肺癌、膀胱癌、肺癌、上皮癌、神経膠腫、膠芽腫、多形性星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、皮膚癌、黒色腫、神経芽細胞腫、及び網膜芽細胞腫を含むがこれらに限定されない固形腫瘍、(2)急性リンパ芽球性白血病「ALL」、急性リンパ芽球性B細胞性白血病、急性リンパ性T細胞性白血病、急性骨髄芽球性白血病「AML」、急性前骨髄球性白血病「APL」、急性単芽球性白血病、急性赤白血病性白血病、急性巨核芽球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性非リンパ性白血病、急性未分化白血病、慢性骨髄性白血病「CML」、慢性リンパ性白血病「CLL」、有毛細胞白血病、多発性骨髄腫、急性及び慢性白血病、例えば、リンパ芽球性骨髄性及びリンパ球性骨髄球性白血病を含むがこれらに限定されない血液由来の癌、及び(3)ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、ワルデンストレ-ム高ガンマグロブリン血症、重鎖疾患、及び真性多血症等のリンパ腫が含まれる。
【0149】
制御されない細胞増殖を特徴とする腫瘍、転移、または任意の疾患もしくは障害を含むがこれらに限定されない癌は、本明細書に記載の炭素環式化合物を、それを必要とする動物(例えば、ヒト等の哺乳動物)に投与することによって治療または予防することができる。いくつかの実施形態では、本発明は、癌を治療または予防するための方法を提供し、該方法は、有効量の本明細書に記載の炭素環式化合物及び任意選択で化学療法剤を、それを必要とする動物に投与することを含む。一実施形態では、前記化学療法剤は、癌の治療が難治性であることが判明していないものである。別の実施形態では、前記化学療法剤は、癌の治療が難治性であることが判明したものである。本明細書に記載の炭素環式化合物は、癌の治療として手術も受けた動物に投与することができる。
【0150】
一実施形態では、他の治療方法は、放射線治療であってもよい。
【0151】
特定の実施形態では、本明細書に記載の炭素環式化合物は、化学療法剤または放射線療法と同時に投与される。別の特定の実施形態では、前記化学療法剤または放射線療法は、本明細書に記載の炭素環式化合物の投与の前または後に、好ましくは本明細書に記載の炭素環式化合物の投与の少なくとも1時間、5時間、12時間、1日、1週間、2週間、3週間、1ヶ月、または数ヶ月(例えば、3ヶ月まで)の前または後に投与される。
【0152】
化学療法剤は、一連のセッションにわたって投与することができ、本明細書に提供される化学療法剤の任意の1つまたは組み合わせとすることができる。放射線に関しては、治療される癌の種類に応じて、任意の放射線治療プロトコルを使用することができる。例えば、限定するものではないが、X線放射を投与することができ、特に、高エネルギ-メガ電圧(1 MeVのエネルギ-がより大きい放射線)を深部腫瘍に使用することができ、また、電子線及びオルソ電圧X線放射線を皮膚癌に使用することができる。ラジウム、コバルト及び他の元素の放射性同位体等のガンマ線放射性同位体も投与することができる。
【0153】
また、本発明は、化学療法または放射線療法があまりにも有毒であることが証明されている、または証明される可能性がある場合、例えば、治療を受ける被験者にとって容認できないまたは耐え難い副作用をもたらす場合の化学療法または放射線療法の代替として、本明細書に記載の炭素環式化合物による癌の治療方法を提供する。治療される動物は、任意選択で、どの治療が許容可能または耐えられるかによって、手術、放射線療法、または化学療法等の別の癌治療法で治療することができる。
【0154】
本開示はまた、癌を治療するための方法を提供し、該方法は、有効量の本明細書に記載の炭素環式化合物及び抗癌剤である治療薬を、それを必要とする動物に投与することを含む。適切な抗癌剤には、限定されることなく、メトトレキサ-ト、タキソ-ル、L-アスパラギナ-ゼ、メルカプトプリン、チオグアニン、ヒドロキシ尿素、シタラビン、シクロホスファミド、イホスファミド、ニトロソウレア、シスプラチン、カルボプラチン、マイトマイシン、ダカルバジン、プロカルバジン、トポテカン、窒素マスタ-ド、シトキサン、エトポシド、5-フルオロウラシル、BCNU、イリノテカン、カンプトテシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、プリカマイシン、ミトキサントロン、アスパラギナ-ゼ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、パクリタキセル、及びドセタキセルが含まれる。好ましい実施形態では、前記抗癌剤には、限定されることなく、アルキル化剤、窒素マスタ-ド(シクロホスファミド、イホスファミド、トロホスファミド、クロラムブシル)、ニトロソ尿素(カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU))、アルキルスルホン酸(ブスルファン、トレオスルファン)、トリアゼン(ダカルバジン)、白金含有化合物(シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン)、植物アルカロイド(ビンカアルカロイド-ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン)、タキソイド(パクリタキセル、ドセタキソ-ル)、DNAトポイソメラ-ゼ阻害剤、エピポドフィリン(エトポシド、テニポシド、トポテカン、9-アミノカンプトテシン、カンプトテシン)、クリスナト-ル、マイトマイシン(マイトマイシンC);抗葉酸剤等の代謝拮抗剤:DHFR阻害剤:メトトレキサ-ト、トリメトレキサ-ト;IMPデヒドロゲナ-ゼ阻害剤:ミコフェノ-ル酸、チアゾフリン、リバビリン、EICAR;リボヌクレオチドレダクタ-ゼ阻害剤:ヒドロキシ尿素デフェロキサミン;ピリミジン類似体:ウラシル類似体:5-フルオロウラシル、フロクスウリジン、ドキシフルリジン、ラチトレキセド;シトシン類似体:シタラビン(ara C)、シトシンアラビノシド、フルダラビン;プリン類似体:メルカプトプリン、チオグアニン;ホルモン療法:受容体拮抗薬:抗エストロゲン剤:タモキシフェン、ラロキシフェン、メゲストロ-ル;LHRHアゴニスト: ゴスククリン、酢酸ロイプロリド;抗アンドロゲン:フルタミド、ビカルタミド; レチノイド/デルトイド: ビタミンD3類似体:EB 1089、CB 1093、KH 1060; 光線力学療法: ベルトポルフィン(BPD-MA)、フタロシアニン、光増感剤Pc4、デメトキシヒポクレリンA(2BA-2-DMHA);サイトカイン:インタ-フェロン-アルファ、インタ-フェロン-ガンマ; 腫瘍壊死因子:その他:イソプレニル化阻害剤:ロバスタチン;ド-パミン作動性神経毒:1-メチル-4-フェニルピリジニウムイオン;細胞周期阻害剤:スタウロスポリン;アクチノマイシン: アクチノマイシンD、ダクチノマイシン;ブレオマイシン:ブレオマイシンA2、ブレオマイシンB2、ペプロマイシン;アントラサイクリン:ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、イダルビシン、エピルビシン、ピラルビシン、ゾルビシン、ミトキサントロン;MDR阻害剤:ベラパミル;及びCa2+ ATPase 阻害剤:タプシガルギンが含まれる。
【0155】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の炭素環式化合物は、癌ワクチンと組み合わせて免疫賦活剤として使用することができる。本明細書で使用される「癌ワクチン」という用語は、腫瘍細胞に対する特異的な免疫応答を誘導及び/または増強することによって腫瘍細胞を選択的に損傷する化合物を意味する。癌ワクチンは、例えば、TAAまたはTSAのペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を含む薬剤、及びTAAまたはTSAのペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を含む医薬組成物であり得る。本明細書で使用されるように、TSAとは、「腫瘍特異性抗原」を指し、また、TAAは、腫瘍関連抗原を指す。TSAは、癌細胞に固有の分子である。TAAは、癌細胞と正常細胞によって共有されるが、発現が異なる分子である。
【0156】
前記癌ワクチンの投与量は、該ワクチンに対する免疫応答の刺激の程度に応じて、適切な改変によって決定することができる。一般に、それは、有効成分として、成人1人あたり0.01~100 mg/日、好ましくは成人1人あたり0.1~10 mg/日である。前記癌ワクチンは、数日に1回~数ヶ月に1回投与することができる。投与は、経皮的、静脈内、または筋肉内等の医療用のペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を投与するための周知の方法に従って実施することができる。投与中の免疫応答を誘導及び/または増強するために、適切な免疫賦活剤の存在下または非存在下で、または担体に連結してまたは連結せずに、前記ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を使用することができる。前記担体は、人体に悪影響を及ぼさず、かつ抗原性を増強することができるものであれば、特に限定されない。担体の一例として、セルロ-ス、高分子アミノ酸、及びアルブミン等を挙げることができる。免疫賦活剤は、ペプチドワクチン接種のために一般的に使用されるものであり得る。例として、フロイント不完全免疫賦活剤(FIA)、アルミニウム免疫賦活剤(ALUM)、百日咳菌ワクチン、及び鉱油等を挙げることができる。また、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を製剤化するための適切な周知の方法を適用することによって、製剤を適切に選択することができる。
【0157】
または、患者の末梢血から単核細胞の画分を採取し、それを本発明のペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質とインキュベ-トした後、CTLの誘導及び/またはCTLの活性化が観察された単核細胞の画分を前記患者の血液中に戻すことにより、有効な癌ワクチン効果を得ることができる。本明細書に記載の炭素環式化合物は、単核細胞の再投与の際中またはその後に同時投与することができる。単核細胞の濃度、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の濃度、及び培養時間等の培養条件は、単に試験を繰り返すことによって決定することができる。培養中、インタ-ロイキン-2等のリンパ球の増殖を増強する能力を有する物質を添加してもよい。
【0158】
自己免疫疾患
【0159】
本明細書に記載の炭素環式化合物は、例えば、カルバフコ-スは、自己免疫疾患を調節し、または自己免疫疾患を治療し、それにより、症状及び/または自己免疫応答を低減させるために有用であり得、本明細書に記載の炭素環式化合物は、動物における自己免疫疾患の治療の様々な状況に使用することができる。
【0160】
一実施形態では、本明細書に記載の炭素環式化合物は、特定の自己免疫疾患に関連する自己免疫性抗体を下方制御し、または下方調節することができる。
【0161】
本明細書に記載の炭素環式化合物で治療され得る自己免疫疾患の特定な種類には、限定されることなく、Th2リンパ球関連障害(例えば、アトピ-性皮膚炎、アトピ-性喘息、鼻結膜炎、アレルギ-性鼻炎、オ-メン症候群、全身性硬化症、及び移植片対宿主病);Th1リンパ球関連疾患(関節リウマチ、多発性硬化症、乾癬、シェ-グレン症候群、橋本甲状腺炎、グレ-ブ病、原発性胆汁性肝硬変、ウェゲナ-肉芽腫症、結核等); 活性化Bリンパ球関連障害(全身性エリテマト-デス、グッドパスチャ-症候群、関節リウマチ、I型糖尿病等); 活動性慢性肝炎、アジソン病、アレルギ-性肺胞炎、アレルギ-反応、アレルギ-性鼻炎、アルポ-ト症候群、アナフィラキシ-、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、関節炎、回虫症、アスペルギルス症、アトピ-性アレルギ-、アトピ-性皮膚炎、アトピ-性鼻炎、ベ-チェット病、鳥飼病、気管支喘息、キャプラン症候群、心筋症、セリアック病、シャ-ガス病、慢性糸球体腎炎、コ-ガン症候群、寒冷凝集素症、先天性風疹感染症、CREST症候群、クロ-ン病、クリオグロブリン血症、クッシング症候群、皮膚筋炎、円盤状狼瘡、ドレスラ-症候群、イ-トン・ランバ-ト症候群、エコ-ウイルス感染症、脳脊髄炎、内分泌眼症、エプスタイン・バ-ウイルス感染症、馬のヒ-ブ、 紅斑症、エヴァンス症候群、フェルティ症候群、線維筋痛症、フックス環炎、胃萎縮、消化管アレルギ-、巨細胞性動脈炎、糸球体腎炎、グッドパスチャ-症候群、移植片対宿主病、バセドウ病、ギランバレ-病、橋本甲状腺炎、溶血性貧血、ヘノッホ・シェ-ンライン、特発性紫斑病副腎萎縮症、特発性肺線維炎、IgA腎症、炎症性腸疾患、インスリン依存性糖尿病、若年性関節炎、若年性糖尿病(I型)、ランバ-ト・イ-トン症候群、蹄葉炎、扁平苔癬、ルポイド肝炎、ル-プスリンパ球減少症、メニエ-ル病、混合性結合組織病、多発性硬化症、重症筋無力症、悪性貧血、多腺性症候群、初老期認知症、原発性無ガングロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、レイノ-現象、反復流産、ライタ-症候群、リウマチ熱、関節リウマチ、サンプタ-症候群、住血吸虫症、シュミット症候群、強皮症、シュルマン症候群、シェ-ルゲン症候群、スティフマン症候群、交感神経性眼炎、全身性エリテマト-デス、高安動脈炎、側頭動脈炎、甲状腺炎、血小板減少症、甲状腺中毒症、B型中毒性表皮壊死融解症、インスリン抵抗性I型糖尿病、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、白斑、ヴァルデンシュトレ-ムマクログロブリン血症、及びウェゲナ-肉芽腫症が含まれる。
【0162】
本開示は、自己免疫疾患を治療するための方法も提供し、該方法は、有効量の、本明細書に記載の炭素環式化合物、及び任意選択で、既知の自己免疫疾患の治療薬を、それを必要とする動物(例えば、哺乳動物)に投与することを含む。一実施形態では、前記抗自己免疫疾患の治療薬には、限定されることなく、シクロスポリン、シクロスポリンA、ミコフェニレ-ト、モフェチル、シロリムス、タクロリムス、エナネルセプト、プレドニゾン、アザチオプリン、メトトレキサ-ト、シクロホスファミド、プレドニゾン、アミノカプロン酸、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン、クロラムブシル、DHEA、ダナゾ-ル、ブロモクリプチン、メロキシカム、またはインフリキシマブが含まれる。
【0163】
感染症
【0164】
本明細書に記載の炭素環式化合物、例えば、カルバフコ-スは、感染症を引き起こす細胞の増殖の殺傷または阻害を増加させる免疫応答を強化するため、または感染症を治療するために有用であり得る。従って、本明細書に記載の炭素環式化合物は、動物における感染症の治療の様々な状況で使用することができる。
【0165】
一実施形態では、本明細書に記載の炭素環式化合物は、免疫応答を強化し、特定の感染症を産生する細胞の増殖の死滅または阻害、または増加した死滅または阻害をもたらすことができる。
【0166】
本明細書に記載の炭素環式化合物で治療され得る感染症の特定な種類には、限定されることなく、(1)細菌性疾患:ジプテリア、百日咳、潜在性菌血症、尿路感染症、胃腸炎、蜂巣炎、喉頭蓋炎、気管炎、アデノイド肥大、後咽頭膿瘍、膿痂疹、湿疹、肺炎、心内膜炎、敗血症性関節炎、肺炎球菌、腹膜炎、細菌性髄膜炎、急性化膿性髄膜炎、尿道炎、子宮頸管炎、直腸炎、咽頭炎、卵管炎、精巣上体炎、 淋病、梅毒、リステリア症、炭疽菌、ノカルジア症、サルモネラ菌、腸チフス、赤痢、結膜炎、副鼻腔炎、ブルセラ症、タラレミア、コレラ、腺ペスト、破傷風、壊死性腸炎、放線菌混合嫌気性感染症、梅毒、回帰熱、レプトスピラ症、ライム病、ラット咬傷熱、結核、リンパ節炎、ハンセン病、クラミジア、クラミジア性肺炎、トラコ-マ、封入体結膜炎、全身性; (2)真菌性疾患:ヒストプラズマ症、コクシジウム症、ブラストミセス症、スポロトリコ-シス、クリプトコッカス症、 全身性カンジダ症、アスペルギルス症、ムコ-ル症、マイセト-マ、クロモミセス症;(3)リケッチア病:発疹チフス、ロッキ-山紅斑熱、エ-ルリヒア症、東部ダニ媒介性リケッチア症、リケッチア痘、Q熱、及びバルトネラ症;(4)寄生虫症:マラリア、バベシア症、アフリカ睡眠病、シャ-ガス病、リ-シュマニア症、ダムダム熱、トキソプラズマ症、髄膜脳炎、角膜炎、腸内細菌症、ジアルジア症、クリプトスポリジウム症、イソスポリア症、サイクロスポリア症、ミクロスポリジウム症、回虫症、鞭虫感染症、鉤虫感染症、糸状虫感染症、眼幼虫遊走症、旋毛虫症、ギニアワ-ム病、リンパ系フィラリア症、ロイアシス、河川盲目症、犬糸状虫感染症、住血吸虫症、スイマ-そう痒、東洋肺吸虫、東洋肝吸虫、筋膜跛行症、筋膜錯視症、オピストルキス症、サナダムシ感染症、包虫症、肺胞包虫症;(5)ウイルス性疾患:麻疹、亜急性硬化性全脳炎、風邪、おたふくかぜ、風疹、発疹、第五病、水ぼうそう、呼吸器合胞体ウイルス感染症、クル-プ、細気管支炎、感染性単核症、ポリオ、ヘルパンギ-ナ、手足口病、ボ-ンホルム病、性器ヘルペス、性器疣贅、無菌性髄膜炎、心筋炎、心膜炎、胃腸炎、後天性免疫不全症候群(エイズ)、ライ症候群、川崎症候群、インフルエンザ、気管支炎、ウイルス性肺炎、急性熱性呼吸器疾患、急性咽頭結膜熱、流行性角結膜炎、 単純ヘルペス ウイルス1(HSV-1)、単純ヘルペス ウイルス2(HSV-2)、帯状疱疹、細胞腫大封入体病、狂犬病、進行性多発性白質脳症、ク-ル-病、致命的な家族性不眠症、クロイツフェルト・ヤコブ病、ゲルストマン・シュトラウスラ-・シャインカ-病、熱帯性痙性麻痺、西部馬脳炎、カリフォルニア脳炎、セントルイス脳炎、黄熱病、デングリンパ球性脈絡膜髄膜炎、ラッサ熱、出血熱、ハントウイルス、肺症候群、マ-ルブルグウイルス感染症、エボラウイルス感染症、天然痘、COVID-19が含まれる。
【0167】
本開示は、感染症を治療するための方法も提供し、該方法は、本明細書に記載の炭素環式化合物、及び任意選択で、抗感染症剤である治療薬を、それを必要とする動物(例えば、哺乳動物)に投与することを含む。一実施形態では、前記抗感染症剤は、限定されることなく、(1)抗菌剤:β-ラクタム 抗生物質:ペニシリン G、ペニシリン V、クロキサシリン、ジクロキサシリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、アンピシリン、アモキシシリン、バカンピシリン、アズロシリン、カルベニシリン、メズロシリン、ピペラシリン、チカルシリン;アミノグリコシド:アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン;マクロライド:アジスロマイシン、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、リンコマイシン、クリンダマイシン; テトラサイクリン:デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン;キノロン:シノキサシン、ナリジクス酸、フルオロキノロン:シプロフロキサシン、エノキサシン、グレパフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、スパルフロキサシン、トロバフロキシシン;ポリペプチド: バシトラシン、コリスチン、ポリミキシン B; スルホンアミド:スルフィソキサゾ-ル、スルファメトキサゾ-ル、スルファジアジン、スルファメチゾ-ル、スルファセタミド;その他の抗菌剤:トリメトプリム、スルファメタゾ-ル、クロラムフェニコ-ル、バンコマイシン、メトロニダゾ-ル、キヌプリスチン、ダルフォプリスチン、リファンピン、スペクチノマイシン、ニトロフラントイン;抗ウイルス剤:一般的な抗ウイルス剤:イドクスラジン、ビダラビン、トリフルリジン、アシクロビル、ファムシシクロビル、ペンシシクロビル、バラシクロビル、ガンシシクロビル、ホスカルネット、リバビリン、アマンタジン、リマンタジン、シドフォビル;アンチセンスオリゴヌクレオチド;免疫グロブリン;インタ-フェロン; HIV感染症の治療薬:ジドブジン、ジダノシン、ザルシタビン、スタブジン、ラミブジン、ネビラピン、デラビルジン、サキナビル、リトナビル、インジナビル、及びネルフィナビルである。
【0168】
炎症性疾患
【0169】
炎症は、損傷に対する血管化された生きた組織の反応を伴う。例として、細胞接着を媒介するエピト-プを含むフコ-スは、身体の抗感染性免疫応答に重要であるが、他の状況では、細胞接着を媒介するエピト-プを含むフコ-スは、修復の代わりに組織損傷をもたらし、望ましくないか過剰であり得る。例えば、多くの病状(自己免疫疾患や炎症性疾患、ショックや再灌流障害等) には、フコ-ス含有エピト-プによって媒介される白血球の異常な接着が関与している。従って、炎症は、物理的、化学的、または生物学的な要因による損傷または異常刺激に応答して、血管及び隣接組織に影響を与える。炎症性疾患または障害の例には、限定されることなく、血管炎症性疾患、皮膚炎、慢性湿疹、乾癬、多発性硬化症、関節リウマチ、全身性エリテマト-デス、移植片対宿主病、敗血症、糖尿病、アテロ-ム性動脈硬化症、シェ-グレン症候群、進行性全身性硬化症、強皮症、急性冠症候群、虚血性再灌流、クロ-ン病、炎症性腸疾患、子宮内膜症、糸球体腎炎、重症筋無力症、特発性肺線維症、喘息、アレルギ-反応、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)またはその他の急性白血球媒介性肺損傷、血管炎、または炎症性自己免疫性筋炎が含まれる。本明細書に記載の炭素環式化合物が治療及び/または予防に有用であり得る他の疾患及び障害には、冠循環亢進、微生物感染、癌転移、血栓症、創傷、火傷、脊髄損傷、 消化管粘膜障害(例えば、胃炎、潰瘍)、骨粗鬆症、変形性関節症、敗血症性ショック、外傷性ショック、脳卒中、腎炎、アトピ-性皮膚炎、凍傷、成人呼吸困難症候群、潰瘍性大腸炎、虚血エピソ-ド後の糖尿病及び再灌流傷害、血管ステント留置術に伴う再狭窄の予防、及び望ましくない血管形成、例えば腫瘍増殖に伴う血管形成の予防が含まれる。
【0170】
他の治療薬
【0171】
本開示に従って提供される方法は、本明細書に記載の炭素環式化合物、例えば、カルバフコ-ス、ならびに治療薬またはその薬剤的に許容される塩または溶媒和物の投与をさらに含むことができる。該本明細書に記載の炭素環式化合物及び治療薬は、付加的にまたはより好ましくは相乗的に作用することができる。好ましい実施形態では、本明細書に記載の炭素環式化合物を含む組成物は、本明細書に記載の炭素環式化合物を含むものと同じ組成物の一部または異なる組成物であり得る、1つまたは複数の治療薬の投与と同時に投与される。別の実施形態では、本明細書に記載の炭素環式化合物は、前記治療薬の投与前または投与後に投与される。
【0172】
本発明の癌、自己免疫疾患または感染症の治療方法において、前記治療薬は、制吐薬であってもよい。適切な制吐薬には、限定されることなく、メトクロプロミド、ドンペリドン、プロクロルペラジン、プロメタジン、クロルプロマジン、トリメトベンズアミド、オンダンセトロン、グラニセトロン、ヒドロキシジン、アセチルロイシンモノエタノ-ルアミン、アリザプリド、アザセトロン、ベンズキナミド、ビエタナウチン、ブロモプリド、ブクリジン、クレボプリド、シクリジン、ジメンヒドリナ-ト、ジフェニド-ル、ドラセトロン、メクリジン、メタラタ-ル、メトピマジン、ナビロン、オキシペンジル、ピパマジン、スコポラミン、スルピリド、テトラヒドロカンナビノ-ル、チエチルペラジン、チオプロペラジン、及びトロピセトロンが含まれる。
【0173】
別の実施形態では、前記治療薬は、造血コロニ-刺激因子であり得る。適切な造血コロニ-刺激因子には、限定されることなく、フィルグラスチム、サルグラモスチム、モルグラモスチム、及びエリスロポエチンアルファが含まれる。
【0174】
さらに別の実施形態では、前記治療薬は、オピオイドまたは非オピオイド鎮痛剤であり得る。適切なオピオイド鎮痛剤には、限定されることなく、モルヒネ、ヘロイン、ヒドロモルフォン、ヒドロコドン、オキシモルフォン、オキシコドン、メトポン、アポモルヒネ、ノルモルヒネ、エトルフィン、ブプレノルフィン、メペリジン、ロペルミド、アニレリジン、エトヘプタジン、ピミニジン、ベ-タプロジン、ジフェノキシレ-ト、フェンタニル、スフェンタニル、アルフェンタニル、レミフェンタニル、レボルファノ-ル、デキストロメトルファン、フェナゾシン、ペンタゾシン、シクラゾシン、メタドン、イソメタドン、及びプロポキシフェンが含まれる。適切な非オピオイド鎮痛剤には、限定されることなく、セレコキシブ、ロフェコキシブ、ジクロフィナク、ジフルシナル、エトドラク、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、インドメタシン、ケトロラク、メクロフェナメ-ト、メフェナム酸、ナブメトン、ナプロキセン、ピロキシカム、及びスリンダクが含まれる。
【0175】
組成物、用量、及び投与
【0176】
本明細書に記載の炭素環式化合物(例えば、カルバフコ-ス)は、治療用途のために製剤化することができる。前記炭素環式化合物は、治療的または予防的に有効な量の抗体または誘導体と、1つまたは複数の薬剤的に適合可能な(許容される)成分とを含む医薬組成物として製剤化することができる。
【0177】
「有効量」の本明細書に記載の炭素環式化合物(例えば、カルバフコ-ス)は、治療的有効量、予防的有効量、または栄養学的有効量を含む。「治療的有効量」とは、所望の治療結果を達成するのに必要な投与量及び期間における有効量を指す。化合物の治療的有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別、及び重量、ならびに化合物の個体において所望の応答を誘発する能力等の要因に応じて変化し得る。投与計画は、最適な治療応答を提供するように調整することができる。治療的有効量はまた、化合物の毒性または有害な効果が治療的に有益な効果によって上回っている量でもある。「予防的有効量」とは、所望の予防結果を達成するのに必要な投与量及び期間における有効量を指す。典型的には、予防用量は、疾患の前または早期の段階で被験者に使用されるため、予防的有効量は、治療的有効量よりも少なくでもよい。化合物の治療的または予防的有効量の例示的な範囲は、被験者、例えばヒトの体重1 kgあたり約5~約50 mg/日であってもよい。
【0178】
留意されたいこととして、投与量の値は、緩和されるべき状態の重症度によって変化してもよい。任意の特定の被験者について、個々の必要性、及び組成物の投与者または投与を監督する者の専門的判断に従って、特定の投与計画を経時的に調整してもよい。本明細書に記載される投与量の範囲は、例示にすぎず、開業医によって選択され得る投与量の範囲を限定するものではない。前記組成物中の活性化合物の量は、個体の疾患状態、年齢、性別、及び重量等の要因に応じて変化し得る。投与計画は、最適な治療応答を提供するように調整することができる。例えば、単回で急速投与してもよく、時間をかけて数回に分けて投与してもよく、または、投与量は、治療状況の緊急性によって、比例的に減少または増加してもよい。投与の容易さ及び投与量の均一性のために、投与単位形態で非経口組成物を製剤化することが有利であり得る。
【0179】
一般に、前記炭素環式化合物は、実質的な毒性を生じることなく使用されるべきである。前記炭素環式化合物の毒性は、標準技術を使用して測定することができ、例えば、細胞培養物または実験動物または被験者における治療指数を試験することによって測定する。ここで、前記治療指数は、ヒト以外の動物の場合、LD50 (集団の50% に対する致死量)とED50(集団の50%に有効な最小用量)の比率であり、ヒトの場合、TD50(集団の50%に毒性がある用量)とED50(集団の50% に有効な最小用量)の比率である。最大耐量(MTD)は、被験者での試験において、一定期間にわたって、明白な毒性を引き起こさない(例えば、許容できない副作用を引き起こさない)化合物または組成物の定期的に投与される最高用量である。前記被験者は、ヒトであってもよく、または、例えば、マウスやラット等の動物であってもよい。
【0180】
定期的に投与される用量は、1日の用量であってもよく、単回の急速投与として投与してもよく、或いは、被験者が経時的に1日の総用量を受け取るように、1日の用量を2回以上の部分用量に分割してもよい。試験期間は、数日間から数ヶ月間、例えば約10、20、30、60、90、または120日間、またはそれらの間の任意の値に変動してもよい。明白な毒性の例は、限定されることなく、かなりの細胞死または器官の機能不全、被験者の寿命を大幅に縮めると予測される毒性症状、または10%以上の体重増加の遅延を含んでもよい。いくつかの実施形態では、炭素環式化合物は、他の化合物(例えば、核酸分子、小分子、ペプチド、またはペプチド類似体)とともに、リポソ-ム、免疫賦活剤、または任意の薬剤的または生理学的に許容される担体の存在下で、ヒトまたは動物への投与に適した形態で提供されてもよい。必要に応じて、本発明による炭素環式化合物を用いた治療は、治療される状態に対するより伝統的で既存の治療法と組み合わせてもよい。
【0181】
従来の医薬製剤または非医薬製剤の方法を用いて、治療すべき状態に苦しむ患者に炭素環式化合物を投与するのに適した製剤または組成物を提供してもよい。例えば、医薬または非医薬組成物は、典型的には、1種以上の担体(例えば、水及び油(石油、動物、植物のもの、またはピ-ナッツ油、大豆油、鉱物油、ごま油等の合成由来のものを含む)等の無菌液体)を含む。前記医薬組成物が静脈内投与されるとき、水は、より典型的な担体である。生理食塩水、水性デキストロ-ス、及びグリセロ-ル溶液は、特に注射可能な溶液のために、液体担体として使用することもできる。適切な賦形剤には、例えば、アミノ酸、デンプン、グルコ-ス、ラクト-ス、スクロ-ス、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、白亜、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセリン、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロ-ル、プロピレン、グリコ-ル、水、及びエタノ-ル等が含まれる。必要に応じて、前記組成物は、少量の湿潤剤または乳化剤、またはpH緩衝剤を含有することもできる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、丸薬、カプセル、粉末、徐放性製剤等の形態をとることができる。適切な薬剤的担体の例は、E. W. Martinによる「レミントンの薬学」に記載されている。このような組成物は、典型的には治療有効量のタンパク質を、典型的には精製された形態で、患者への適切な投与のための形態を提供するために適切な量の担体と共に含有する。前記製剤は、投与の態様に対応する。
【0182】
任意の適切な投与経路、例えば、非経口、静脈内、皮下、筋肉内、頭蓋内、眼窩内、点眼、脳室内、嚢内、脊髄内、大槽内、腹腔内、鼻腔内、エアロゾル、または経口投与を採用することができる。治療用製剤は、液体溶液または懸濁液の形態であってもよく、経口投与の場合、製剤は、錠剤またはカプセルの形態であってもよく、鼻腔内製剤の場合、粉末、点鼻液、またはエアロゾルの形態であってもよい。
【0183】
当技術分野で周知される製剤の製造方法は、例えば、レミントンの薬学に見出される。非経口投与の製剤は、例えば、賦形剤、無菌水、または生理食塩水、ポリエチレングリコ-ル等のポリアルキレングリコ-ル、植物由来の油、または水素化ナフタレンを含有してもよい。生体適合性や生分解性のラクチドポリマ-、ラクチド/グリコリド共重合体、またはポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマ-を用いて、前記化合物の放出を制御してもよい。調節性化合物のための他の潜在的に有用な非経口送達システムは、エチレン-酢酸ビニル共重合体粒子、浸透圧ポンプ、移植可能な注入システム、及びリポソ-ムを含む。吸入用製剤は、賦形剤、例えばラクト-スを含有してもよく、例えば、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエ-テル、グリココリン酸塩、及びデオキシコ-ル酸塩を含有する水溶液であってもよく、または、点鼻液の形で、またはゲルとして投与するための油性溶液であってもよい。典型的には、静脈内投与のための組成物は、無菌等張水性緩衝液における溶液である。必要に応じて、該医薬品は、可溶化剤及び注射部位の痛みを和らげるための局所麻酔薬(リグノカイン等)を含むこともできる。一般に、成分は別々に供給されるか、単位剤形で一緒に混合され、例えば、活性剤の量を示すアンプルまたは小袋等の密閉容器中の凍結乾燥粉末または水を含まない濃縮物として供給される。前記薬剤が点滴によって投与される場合、無菌の医薬品級の水または生理食塩水を含む輸液ボトルで調剤することができる。前記薬剤が注射によって投与される場合、投与前に成分を混合できるように、注射用滅菌水または生理食塩水のアンプルを提供することができる。
【0184】
以下の実施例において、本発明をさらに説明する。
【0185】
【実施例
【0186】
実験の一般詳細
【0187】
記載された全ての無水反応は、火炎乾燥されたガラス製品を用いて、窒素雰囲気下で実施した。順相カラムクロマトグラフィ-は、230~400メッシュのシリカゲル(Silicycle, SiliaFlash (登録商標)P60)で実施した。微量な溶媒の濃縮及び除去は、ドライアイス/アセトン凝縮器用いたBuchi回転式蒸発装置及びBuchi V-500ポンプから提供される真空で行った。
【0188】
全ての試薬及び出発物質は、Sigma Aldrich、Alfa Aesar、TCI America、Arcos、またはCarbosynth社から購入し、再精製をせずに使用した。全ての溶媒は、Sigma Aldrich、EMD、Anachemia、Caledon、Fisher、またはACP社から購入し、特に断りのない限り、再精製をせずに使用した。CH2Cl2は、CaH2上で新たに蒸留し、テトラヒドロフラン(THF)は、Na金属/ベンゾフェノン上で新たに蒸留した。低温
は、以下の条件を用いて維持した:0℃、氷水浴、-78℃、アセトン-ドライアイス浴。より長い反応時間に必要な-78℃~0℃の温度は、2-プロパノ-ル浴でNeslab Cryocool Immersion Cooler(CC-100 II)で維持した。
【0189】
核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、CDCl3またはCD3ODを用いて記録した。信号位置(δ)は、テトラメチルシラン(δ 0)からppmで示し、溶媒信号に対して測定した(1H NMR: CDCl3: δ 7.26, CD3OD: δ 3.31, D2O: δ 4.79; 13C NMR: CDCl3: δ 77.16, CD3OD: δ 49.00)。結合定数(J値)は、ヘルツ(Hz)で示し、最も近い0.1 Hzに報告した。1H NMRスペクトルデ-タは、多重度(s,シングレット;d,ダブレット;t,トリプレット;q,カルテット;m,マルチプレット;br.,ブロ-ド)、結合定数、及びプロトン数の順に作表した。
【0190】
赤外(IR)スペクトルは、適切な試料を有するPerkin Elmer Spectrum Two(登録商標)フ-リエ変換分光計で記録した。各化合物について、選択された特性的な吸収デ-タのみを提供した。
【0191】
高分解能質量スペクトルは、ESI-MS技術を用いたAgilent 6210 TOF LC/MSで実施した。
【0192】
旋光度は、589 nmにおいて、Perkin Elmer 341旋光計で測定した。


【0193】
ジエン4の合成: 5℃の1 (2.0 mmol、1当量)のDMF溶液(20 mL)溶液に、Selectfluo(登録商標)(2.0 mmol、1当量)及び(L)-プロリン(2.0 mmol、1当量)を加えた。該混合物を5℃で1時間撹拌し、H2Oで処理した後、Et2Oで抽出した。合わせた有機層を鹹水で洗浄し、次にNa2SO4で乾燥させた。溶媒を真空下で除去し、残留物をCH2Cl2(10 mL)に再溶解した。その後、(L)-プロリン(1.6 mmol、0.8
当量)及び1-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)プロパン-2-オン2(2.6 mmol、1.3当量)を0℃で加えた。該混合物を室温まで加熱し、48時間撹拌した。得られた混合物をH2Oで処理し、Et2Oで抽出した。合わせた有機層を鹹水で洗浄した後、Na2SO4で乾燥させた。溶媒を真空下で除去し、残留物をTHF(6 mL)に溶解した。別のフラスコでは、LiHMDS(1.0 M のTHF溶液、5.0 mmol、2.5当量)を冷却された(-78℃)5-(メタンスルホニル)-1-フェニル-1H-テトラゾ-ル(5.0 mmol、2.5当量)のTHF溶液(14 mL)を滴加し、-78℃で30分間撹拌した。その後、前記ケトン3のTHF溶液(6 mL)を-78℃で滴加し、該混合物をさらに1時間撹拌した後、H2Oでクエンチした。該混合物をEt2Oで抽出し、合わせた有機層を鹹水で洗浄した後、Na2SO4で乾燥させた。溶媒を真空下で除去し、残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィ-(ペンタン:エチルエ-テル、25:1)で精製し、化合物4を黄色の油として得た(276 mg、2ステップで30%)。[α]D = -14.5 (c = 1.1, CHCl3); 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.94 (ddd, J = 6.5, 10.5, 17.1 Hz, 1 H), 5.40 (dt, J = 1.4, 17.3 Hz, 1 H), 5.23 (m, 1 H), 5.01 (m, 1 H), 4.68-4.46 (m, 2 H), 4.13 (d, J = 8.8 Hz, 1 H), 3.56 (ddd, J = 5.4, 8.9, 27.8 Hz, 1 H), 1.79 (d, J = 5.4 Hz, 1 H), 1.71 (s, 3 H), 1.07 (s, 12 H), 1.06 (s, 6 H), 0.88 (s, 9 H), 0.08 (s, 3 H), 0.02 (s, 3 H); 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 145.2, 137.2 (d, J = 7.0 Hz), 117.4, 115.3, 93.3 (d, J = 183.0 Hz), 76.4 (d, J = 4.2 Hz), 74.5 (d, J = 22.6 Hz), 70.5 (d, J = 18.2 Hz), 25.9, 18.2, 18.1, 18.1, 18.1, 16.4, 12.6, -4.6, -5.3, -5.3; 19F NMR (377 MHz, CDCl3) δ -208.7 (ddd, J = 12.6, 27.8, 46.3 Hz); IR (neat) ν 3570, 2939, 1641, 1466, 1087, 829 cm-1; HRMS (ESI-TOF) m/z: [M + H]+ C24H50FO3Si2としての計算値461.3277; 実測値461.3274。
【0194】
トリオ-ル5の合成: 0℃の4 (0.5 mmol、1当量)のTHF溶液(5 mL)にTBAF(1.5 mmol、3当量)を加えた。該混合物を0℃で2時間撹拌した。溶媒を真空下で除去し、残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィ-(ペンタン:酢酸エチル、1:1)で精製し、化合物5を無色の油として得た(85 mg、90%)。
【0195】
フルオロトリオ-ル6の合成: 室温の5 (0.1 mmol、1当量)のCH2Cl2溶液(5 mL)にGrubbs'II触媒(0.01 mmol、0.1当量)を加えた。該混合物をアルゴン下で40℃に加熱し、40℃で2時間保持した。該反応を室温まで冷却し、真空下で濃縮した。次いで、残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィ-(ペンタン:酢酸エチル、6:1次いで1:1)で精製し、化合物6を無色の油として得た(12.1 mg、71%)。[α]D = -79.5 (c = 0.5, CH3OH); 1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 5.36 (m, 1 H), 4.44 (ddd, J = 7.2, 10.4, 54.3 Hz, 1 H), 4.16 (m, 1 H), 3.99 (t, J = 4.7 Hz, 1 H), 3.63 (ddd, J = 4.4, 8.5, 10.5 Hz, 1 H), 1.83 (t, J = 1.8 Hz, 3 H); 13C NMR (151 MHz, CD3OD) δ 136.9 (d, J = 2.4 Hz), 126.9 (d, J = 9.7 Hz), 96.0 (d, J = 177.7 Hz), 72.4 (d, J = 7.7 Hz), 71.7 (d, J = 20.6 Hz), 71.1 (d, J = 16.0 Hz), 20.6; 19F NMR (377 MHz, CD3OD) δ -205.2; IR (cast film) ν 3728, 3691, 2919, 1718, 1443, 967 cm-1; HRMS (ESI-TOF) m/z: [M - H]- C7H10FO3としての計算値161.0619; 実測値161.0617。
【0196】
酢酸塩7の合成: 6 (0.01 mmol)をAc20(25 μL)及びピリジン(25 μL)に溶解し、室温で12時間撹拌した。溶媒を真空下で除去し、残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィ-(ペンタン:酢酸エチル、2:1)で精製し、化合物7を無色の油として得た(2.3 mg、78%)。
【0197】
フルオロトリオ-ル8の合成: 6 (0.04 mmol、1当量)及び10%Pd/C(0.004 mmol、0.1当量)のEtOH混合溶液(0.4 mL)を室温及びH2(2 atm)下で撹拌した。12時間後、該反応混合物をセライトで濾過し、濾液を真空下で蒸発させた。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ペンタン:酢酸エチル、2:1)で精製し、化合物8を無色の油として得た(5.6 g、85%、約1.5:1のジアステレオマ-の混合物)。19F NMR (377 MHz, CD3OD): δ -203.7, -203.8。
【0198】
酢酸塩9の合成: 8 (0.01 mmol)をAc2O(25 μL)及びピリジン(25 μL)に溶解し、室温で12時間撹拌した。溶媒を真空下で除去し、残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィ-(ペンタン:酢酸エチル、2:1)で精製し、化合物9を無色の油として得た(2.2 mg、77%)。
【0199】
ケトン10の合成: 0℃のアルデヒド1 (2.0 mmol、1当量)のCH2Cl2溶液(5 mL)にNCS(2.2 mmol、1.1当量)及びL-プロリン(1.6 mmol、0.8当量)を加えた。該反応混合物を0℃で30分間放置し、ケトン2(4 mmol、2当量)のDMSO溶液(5.0 mL)を0℃で加えた。該反応混合物を室温まで加熱し、12時間撹拌した。該反応混合物をCH2Cl2で希釈し、水で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィ-(ペンタン:エチルエ-テル、8:1)で精製し、化合物10を黄色の油として得た(536 mg、56%)。[α]D = -25.3 (c = 1.19, CHCl3); 1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ 5.66-5.58 (m, 4 H), 5.36-5.27 (m, 2 H), 4.83 (dd, J = 10.5, 3.0 Hz, 1 H), 4.41 (m, 1 H), 2.14 (s, 3 H), 2.08 (s, 3 H), 2.06 (m, 1 H), 1.97 (s, 3 H), 1.92-1.78 (m, 2 H), 1.24 (s, 18 H), 0.95 (d, J = 6.6 Hz, 3 H); 13C NMR (151 MHz, CDCl3) δ 209.4, 137.7, 117.8, 78.5, 76.9, 71.4, 64.8, 25.7, 25.4, 18.2, 18.1, 17.8, 12.6, -4.8, -5.0; IR (neat) ν 3522, 2994, 1721, 1099, 838 cm-1; HRMS (ESI-TOF) m/z: [M + NH4]+ C23H51NClO4Si2としての計算値496.3040; 実測値496.3045。
【0200】
ジエン11の合成: LiHMDS (1.0 MのTHF溶液、2.7 mmol、2当量)を冷却された(-78℃)5-(メタンスルホニル)-1-フェニル-1H-テトラゾ-ル(2.7 mmol、2当量)のTHF溶液(9.5 mL)に滴加し、-78℃で30分間撹拌した。次いで、10 (1.35 mmol、1当量)のTHF溶液(4 mL)を-78℃で滴加し、該混合物をさらに1時間撹拌した後、H20でクエンチした。該混合物をEt20で抽出し、合わせた有機層を鹹水で洗浄した後、Na2SO4で乾燥させた。溶媒を真空下で除去し、残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィ-(ペンタン:エチルエ-テル、20:1)で精製し、化合物11を黄色の油として得た(464 mg、72%)。[α]D = -15.1 (c = 0.96, CHCl3); 1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 6.09 (ddd, J = 7.2, 10.3, 17.4 Hz, 1 H), 5.31 (dt, J = 1.3, 17.3 Hz, 1 H), 5.22 (dt, J = 1.0, 10.3 Hz, 1 H), 5.0 (m, 1 H), 4.54 (m, 1 H), 4.33 (d, J = 5.4 Hz, 1 H), 4.04 (d, J = 8.6 Hz, 1 H), 3.98 (dd, J = 5.6, 8.7 Hz, 1 H), 2.12 (d, J = 5.5 Hz, 1 H), 1.73 (s, 3 H), 1.07 (s, 12 H), 1.06 (s, 6H), 0.88 (s, 9 H), 0.10 (s, 3 H), 0.03 (s, 3 H); 13C NMR (126 MHz, CDCl3) δ 145.1, 138.3, 117.2, 115.4, 77.5, 77.2, 70.4, 65.3, 25.9, 18.2, 18.2, 16.6, 12.6, -4.6, -5.0; IR (neat) ν 3661, 2957, 1572, 1462. 1084, 836 cm-1; HRMS (ESI-TOF) m/z: [M + H]+ C24H50ClO3Si2としての計算値477.2982;実測値477.2977。
【0201】
トリオ-ル12の合成: 0℃の11 (1.0 mmol、1当量)のTHF溶液(10 mL)にTBAF(3.0 mmol、3.0当量)を加えた。該混合物を0℃で2時間撹拌した。溶媒を真空下で除去し、残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィ-(ペンタン:酢酸エチル、1:1)で精製し、化合物12を黄色の油として得た(169 mg、82%)。
【0202】
テトラオ-ル13の合成: 室温の12 (0.5 mmol、1当量)のCH2Cl2溶液(25 mL)にGrubbs'II触媒(0.05 mmol、0.1当量)を加えた。該混合物をアルゴン下で40℃に加熱し、40℃で1時間保持した。該反応を室温まで冷却し、該反応混合物をセライトで濾過した。濾液を真空下で蒸発させた。該混合物をTHF(2.5 mL)/NaOH(2.0 M、0.5 mL)に再溶解した。該反応を加熱して12時間還流した。該反応を室温まで冷却した。溶媒を真空下で除去し、残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィ-(CH2Cl2:MeOH、20:1次いで4:1)で精製し、化合物13を無色の油として得た(8.0 mg、10%)。[α]D = -61.5 (c = 0.9, CH3OH); 1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 5.40 (m, 1 H), 3.95 (d, J = 4.3 Hz, 1 H), 3.88 (m, 1 H), 3.57 (dd, J = 7.6, 10.5 Hz, 1 H), 3.38 (dd, J = 4.3, 10.5 Hz, 1 H), 1.82 (t, J = 1.7 Hz, 1 H); 13C NMR (151 MHz, CD3OD) δ 136.3, 128.3, 74.1, 73.6, 72.8, 72.0, 20.8; IR (cast film) ν 3724, 3698, 2349, 1664, 1436, 1084 cm-1; HRMS (ESI-TOF) m/z: [M + NH4]+ C7H16NO4としての計算値178.1074;実測値 178.1075。
【0203】
酢酸塩14の合成: 13 (0.01 mmol)をAc2O(25 μL)及びピリジン(25 μL)に溶解し、12時間室温で撹拌した。溶媒を真空下で除去し、残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィ-(ペンタン:酢酸エチル、3:1)で精製し、化合物14を無色の油として得た(2.6 mg、79%)。
【0204】
15の合成: 13 (0.025 mmol、1当量)と10%Pd/c(0.0025 mmol、0.1当量)のEtOH混合溶液(0.25 mL)を室温及びH2下(2 atm)で撹拌した。12時間後、該反応混合物をセライトで濾過し、濾液を真空下で蒸発させた。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィ-(CH2Cl2:MeOH、20:1)で精製し、15を無色の油として得た(3.0 mg、78%、1.5:1のジアステレオマ-の混合物、主として1-21)。該ジアステレオマ-をカラムクロマトグラフィ-(20%MeOHのEtOAc溶液)で分離し、1-21を得ることができた。[α]D 20 = +22.3 (c = 0.05, CH3OH); 1H NMR (600 MHz, CD3OD) δ 3.68 (brs, 1 H), 3.48-3.45 (m, 1 H), 3.39-3.35 (m, 1 H), 3.27 (dd, J = 9.6, 3.0 Hz, 1 H), 1.65-1.60 (m, 1 H), 1.57-1.48 (m, 2 H), 1.02 (d, J = 6.8 Hz, 3 H); 13C NMR (151 MHz, CD3OD): δ 76.5, 76.4, 74.9, 73.8, 35.8, 33.1, 17.8; IR (neat) ν 3368, 2958, 2928, 2857, 1731, 1668, 1462, 1261, 1067, 1022, 799 cm-1; HRMS (ESI-TOF) m/z: [M + Na]+ C7H14NaO4としての計算値185.0784;実測値185.0784。
【0205】
酢酸塩16の合成: 15 (0.01 mmol)をAc2O(25 μL)及びピリジン(25 μL)に溶解し、室温で12時間撹拌した。溶媒を真空下で除去し、残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィ-(ペンタン:酢酸エチル、3:1)で精製し、化合物16を無色の油として得た(2.6 mg、80%)。
【0206】
グリカンの分析
【0207】
HER2抗体を用いた遺伝子導入の1日後に、Expi-CHO細胞を最終濃度0.1 mMの化合物16、7、9、13、6、8、14、及び15で処理した。8日後、該遺伝子導入した細胞を採取し、PNGaseFを用いて、精製したHER2抗体を脱グリコシル化し、放出されたグリカンを精製し、キャピラリ-電気泳動-レ-ザ-誘起蛍光(CE-LIF)で分析した。その結果を表1に示す。
表1
【0208】
エポキシド1-2は、文献プロトコル (Hudlicky, T.;Price, J. D.;Rulin, F.;Tsunoda, T. J. Am. Chem. Soc. 1990, 112, 9439-9440) に従って調製した。酢酸塩1-3は、文献プロトコル (Banwell, M. G.;Ma, X.;Karunaratne, O. P.;Willis, A. C. Aust. J. Chem. 2010, 63, 1437-1447) に従って調製した。
【0209】
臭化ビニル1-4の合成: 撹拌された酢酸塩1-3 (402 mg、1.31 mmol)のメタノ-ル溶液(5 mL)に炭酸カリウム(200 mg、1.45 mmol)を加え、1時間撹拌した。該反応混合物を減圧下で濃縮した。得られた固体塊をNH4Clの飽和水溶液(10 mL)で処理し、酢酸エチル(20 mL)で抽出した。水層を分離し、EtOAc (2 x 20 mL)でさらに抽出した。合わせた有機相を鹹水(20 mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮して、粗ジオ-ルを淡黄色の粘性液体として得た。さらに精製することなく、この粗ジオ-ルをCH2Cl2(5 mL)に溶解し、0℃まで冷却した。トリエチルアミン(1.25 mL、8.97 mmol)、続いてtert-ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネ-ト(0.90 mL、3.92 mmol)を滴加した。氷浴を撤去し、該反応混合物を室温まで加熱した。10時間撹拌した後、反応混合物をNH4Clの飽和水溶液(10 mL)で処理し、Et20(20 mL)で抽出した。水層を分離し、さらにEt20(2×20 mL)で抽出した。合わせた有機相を鹹水(20 mL)で洗浄し、無水Na2S04で乾燥させ、濾過し、濃縮し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ-(10% Et20のヘキサン溶液)で精製し、1-4を白色の固体として得た(491 mg、76%)。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 6.06 (d, J = 3.4 Hz, 1 H), 4.61 (d, J = 6.4 Hz, 1 H), 4.16 (t, J = 6.2 Hz, 1 H), 4.03 (m, 1 H), 3.81 (t, J = 5.6 Hz, 1 H), 1.49 (s, 3 H), 1.39 (s, 3 H), 0.90 (s, 9 H), 0.89 (s, 9 H), 0.12 (s, 6 H), 0.10 (s, 3 H), 0.09 (s, 3 H)。
【0210】
ケトン1-5の合成: 磁気撹拌棒、アルゴン入口、及びセプタムを備えた火炎乾燥された50-mLフラスコに、アセトニド1-4 (565 mg、1.14 mmol)及びTHF(6 mL)を充填した。ドライアイス及びアセトン浴を用いて、該混合物を-55℃に冷却し、次いで、tert-ブチルリチウム(1.45 Mのペンタン溶液、1.25 mL、1.81 mmol)を滴加した。該反応混合物を-55℃で30分間撹拌した後、トリイソプロピルボレ-ト(ニ-ト、1.10 mL、4.77 mmol)を滴加した。前記ドライアイス及びアセトン浴を撤去し、該反応混合物を室温までゆっくりと加熱し、60時間撹拌した。次に、NaBO3・4H20(1.77 g、11.5 mmol)及びH2O(6 mL)を加えた。該混合物を室温で24時間撹拌した後、水(20 mL)に注ぎ入れ、Et20(30 mL)で抽出した。水層を分離し、Et20(2 x 30 mL)でさらに抽出した。合わせた有機相を鹹水(20 mL)で洗浄し、無水Na2S04で乾燥させ、濾過し、濃縮し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ-(20% Et20のヘキサン溶液)で精製し、1-5を白色の固体として得た(386 mg、3ステップで78%)。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 4.42 (m, 2 H), 4.19 (m, 1 H), 4.12 (m, 1 H), 2.94 (dd, J = 13.6, 2.9 Hz, 1 H), 2.38 (dd, J = 13.6, 3.8 Hz, 1 H), 1.41 (s, 3 H), 1.36 (s, 3 H), 0.92 (s, 9 H), 0.86 (s, 9 H), 0.16 (s, 3 H), 0.13 (s, 3 H), 0.11 (s, 3 H), 0.10 (s, 3 H); 13C NMR (126 MHz, CDCl3) δ 206.2, 110.6, 82.3, 78.1, 74.6, 70.3, 42.8, 27.3, 25.9, 25.7, 25.6, 18.0, 17.9, -4.88, -4.91, -5.1。
【0211】
アルキン1-6の合成: 撹拌されたアルキニルトリメチルシラン(0.25 mL、1.77 mmol)のTHF溶液(1 mL)にn-ブチルリチウム(2.41 Mのヘキサン溶液、600 μL、1.45 mmol)を-15℃及びAr雰囲気下で加えた。該反応混合物を-15℃で30分間撹拌した後、-50℃に冷却した。ケトン1-5 (201 mg、0.467 mmol)のTHF溶液(2 mL)を前記反応混合物に滴加し、-50℃~-30℃で3時間撹拌した。NH4Clの飽和水溶液(10 mL)を加えて、過剰のリチウム トリメチルシリルエタニドをクエンチし、EtOAc(20 mL)で抽出した。水層を分離し、EtOAc(2 x 20 mL)でさらに抽出した。合わせた有機相を鹹水(20 mL)で洗浄し、無水Na2S04で乾燥させ、濾過し、濃縮し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ-(20%Et2Oのヘキサン溶液)で精製し、1-6を得た(235 mg、95%)。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 4.23 (d, J = 5.4 Hz, 1 H), 3.99 (t, J = 5.6 Hz, 1 H), 3.77 (m, 1 H), 3.65 (dd, J = 8.0, 5.9 Hz, 1 H), 2.09 (dd, J = 13.0, 3.8 Hz, 1 H), 2.00 (dd, J = 13.0, 9.7 Hz, 1 H), 1.54 (s, 3 H), 1.37 (s, 3 H), 0.91 (s, 9 H), 0.90 (s, 9 H), 0.18 (s, 9 H), 0.13 (s, 3 H), 0.12 (s, 3 H), 0.09 (s, 3 H), 0.08 (s, 3 H); 13C NMR (126 MHz, CDCl3) δ 110.0, 90.8, 81.1, 79.6, 77.8, 77.4, 71.2, 67.7, 27.9, 26.5, 26.4, 26.3, 18.3, 18.2, -0.1, -3.7, -3.7, -4.1, -4.4。
【0212】
アルキン1-7の合成: 撹拌された0℃のアルコ-ル1-6 (203 mg、0.384 mmol)のCH2Cl2溶液(3 mL)にN,N-ジメチルアミノピリジン(280 mg、2.29 mmol)を加え、続いてメチル2-クロロ-2-オキソアセテ-ト(220 μL、2.39 mmol)を滴加した。氷浴を撤去し、該反応混合物を室温に加熱し、12時間撹拌した。該反応混合物を低温のNaHCO3飽和水溶液(5 mL)で処理し、EtOAc(20 mL)で抽出した。水層を分離し、EtOAc(2 x 20 mL)でさらに抽出した。合わせた有機相を無水Na2S04で乾燥させ、濾過し、濃縮し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ-(15%Et20のヘキサン溶液)で迅速に精製し、対応するエステルを得た。電子レンジ対応ガラス管の中で、該エステルをトルエン(1 mL)に溶解した。該反応混合物に2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)(75 mg、0.46 mmol)を加え、N2ガスを溶液中に30分間通気した。別の電子レンジ対応ガラス管の中で、ニ-トn-トリブチルスズ水素化物(1.20 mL、4.46 mmol)を加え、N2ガスを溶液中で30分間通気した後、反応混合物を120℃で10分間加熱した。前記粗反応混合物を2分間かけて滴加し、120℃で2時間撹拌した後、該溶液を20分間かけて室温まで冷却した。該反応混合物をNH4Clの飽和水溶液(10 mL)で処理し、EtOAc(20 mL)で抽出した。水層を分離し、EtOAc(2 x 20 mL)でさらに抽出した。合わせた有機相を鹹水(20 mL)で洗浄し、無水Na2S04で乾燥させ、濾過し、濃縮し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ-(5%Et20のヘキサン溶液)で精製し、1-7を無色の粘性液体として得た(117 mg、2ステップで59%)。これは、27℃のCDCl3における1H NMR分光法で測定した結果、約3:1のジアステレオマ-比を示した。
【0213】
アルキン1-8及び1-9の合成: 炭酸カリウム(18 mg、0.13 mmol)を撹拌されたアルキン1-7 (44.9 mg、87.5 μmol)のCH3OH溶液(1 mL)及びCH2Cl2(0.2 mL)に加え、23時間撹拌した。該反応混合物を減圧下で濃縮した。得られた固体塊をNH4Clの飽和水溶液(5 mL)で処理し、酢酸エチル(10 mL)で抽出した。水層を分離し、EtOAc(2 x 10 mL)でさらに抽出した。合わせた有機相を鹹水(10 mL)で洗浄し、無水Na2S04で乾燥させ、濾過し、濃縮し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ-(5%Et20のヘキサン溶液)で精製し、仮性D-アルトロ異性体1-8を無色の粘性液体として得て(25.3 mg、66%)、また、仮性L-フコ異性体1-9を無色の粘性液体として得た(9 mg、23%)。1-8のデ-タ:1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 4.10 (dd, J = 8.5, 5.2 Hz, 1 H), 4.00 (dd, J = 5.1, 2.7 Hz, 1 H), 3.88 (m, 1 H), 3.75 (m, 1 H), 3.00 (m, 1 H), 2.10 (d, J = 2.5 Hz, 1 H), 1.88 (m, 1 H), 1.72 (m, 1 H), 1.49 (s, 3 H), 1.34 (s, 3 H), 0.90 (s, 9 H), 0.89 (s, 9 H), 0.10 (s, 3 H), 0.08 (s, 6 H), 0.07 (s, 3 H); 13C NMR (126 MHz, CDCl3) δ 108.9, 86.6, 78.5, 77.5, 72.1, 69.7, 69.1, 32.2, 28.5, 27.1, 26.2, 25.9, 18.1, -4.5, -4.6, -4.7, -4.8。1-9のデ-タ:1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 4.30 (m, 1 H), 3.98 (m, 1 H), 3.61 (m, 1 H), 3.51 (m, 1 H), 2.82 (m, 1 H), 2.17 (d, J = 2.5 Hz, 1 H), 1.97-1.85 (m, 2 H), 1.54 (s, 3 H), 1.38 (s, 3 H), 0.89 (s, 9 H), 0.88 (s, 9 H), 0.11 (s, 3 H), 0.08 (s, 6 H), 0.07 (s, 3 H); 13C NMR (126 MHz, CDCl3) δ 109.5, 83.9, 80.4, 77.2, 74.9, 72.7, 69.8, 33.2, 27.6, 27.5, 26.2, 26.1, 25.8, 18.2, -3.8, -3.9, -4.2, -4.3。
【0214】
テトラオ-ル1-10の合成: 撹拌されたアルキン1-9 (15 mg、34 μmol)のCH3OH 溶液(1 mL)に、1M HCl(0.4 mL、0.4 mmol)を加え、14時間撹拌した。該反応混合物を減圧下で濃縮し、トルエン(3 x 2 mL)と共蒸発させ、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ-(5%CH3OHのEtOAc溶液)で精製し、1-10を無色の粘性液体として得た(4.7 mg、80%)。1H NMR (500 MHz, CD3OD) δ 3.93 (m, 1 H), 3.49 (m, 1 H), 3.35 (m, 1 H), 3.25 (dd, J = 9.6, 3.0 Hz, 1 H), 2.55 (m, 1 H), 2.37 (d, J = 2.5 Hz, 1 H), 1.93-1.83 (m, 2 H); 13C NMR (126 MHz, CD3OD) δ 85.2, 76.0, 75.5, 73.0, 72.9, 70.7, 34.1, 31.8; HRMS (ESI-TOF) m/z: [M + NH4]+ C8H12O4としての計算値190.1074;実測値190.1074。
【0215】
トリフルオロメチル化合物1-11の合成: 撹拌された0℃のケトン1-5 (141 mg、0.327 mmol)のTHF溶液(2 mL)にトリメチル(トリフルオロメチル)シラン(2.00 MのTHF溶液、180 μL、360 μmol)を加え、続いてテトラ-n-ブチルアンモニウムフルオリド(1.0 MのTHF溶液、10 μL、10 μmol)を加えた。氷浴を撤去し、該反応混合物を室温に加熱し、30分間撹拌した。該反応混合物をNH4Clの飽和水溶液(5 mL)で処理し、EtOAc(20 mL)で抽出した。有機層を無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮し、得られた粗生成物をCH3OH(2 mL)に溶解した。該溶液に炭酸カリウム(50 mg、0.36 mmol)を加え、1時間撹拌した。該反応混合物を減圧下で濃縮した。得られた固体塊をNH4Clの飽和水溶液(5 mL)で処理し、酢酸エチル(20 mL)で抽出した。水層を分離し、EtOAc(2 x 20 mL)でさらに抽出した。合わせた有機相を鹹水(10 mL)で洗浄し、無水Na2S04で乾燥させ、濾過し、濃縮し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ-(10%Et20のヘキサン溶液)で精製し、1-11を無色の粘性液体として得た(110 mg、67%)。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 4.3 (d, J = 6.4 Hz, 1 H), 4.17-4.11 (m, 2 H), 3.92 (m, 1 H), 2.00 (m, 2 H), 1.56 (s, 3 H), 1.38 (s, 1 H), 0.91 (s, 9 H), 0.88 (s, 9 H), 0.12 (s, 12 H)。
【0216】
トリフルオロメチル化合物1-12の合成: 撹拌された0℃のアルコ-ル1-11 (352 mg、0.703 mmol)のCH2Cl2溶液(3 mL)にN,N-ジメチルアミノピリジン(515 mg、4.22 mmol)を加え、続いて、メチル2-クロロ-2-オキソアセテ-ト(0.40 mL、4.4 mmol)を滴加した。氷浴を撤去し、該反応混合物を室温に加熱し、14時間撹拌した。該反応混合物を低温のNaHC03飽和水溶液(5 mL)で処理し、EtOAc(30 mL)で抽出した。水層を分離し、有機相を無水Na2S04で乾燥させ、濾過し、濃縮し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ-(10%Et20のヘキサン溶液)で迅速に精製し、加水分解エステル(出発物質)と共に、対応するエステルを得た。電子レンジ対応ガラス管の中で、該粗生成物をトルエン(1 mL)に溶解した。該反応混合物に2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)(60 mg、0.37 mmol)を加え、該溶液中にN2ガスを30分間通気した。別の電子レンジ対応ガラス管の中で、ニ-トn-トリブチルスズ水素化物(900 μL、3.35 mmol)を加え、該溶液中にN2ガスを30分間通気し、その後、該反応混合物を120℃で10分間加熱した。上記粗反応混合物を2分間かけて滴加し、120℃で2時間撹拌した後、該溶液を室温まで20分間冷却した。該反応混合物をNH4Clの飽和水溶液(10 mL)で処理し、EtOAc(30 mL)で抽出した。水層を分離し、EtOAc(2 x 20 mL)でさらに抽出した。合わせた有機相を鹹水(20 mL)で洗浄し、無水Na2S04で乾燥させ、濾過し、濃縮し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ-(2.5%Et20のヘキサン溶液)で精製し、1-11(65 mg、18%)と共に、1-12を無色の粘性液体として得た(119 mg、2ステップで35%)。これは、27℃のCDCl3におけるH NMR分光法で測定した結果、約1.2:1のジアステレオマ-比を示した。
【0217】
ジオ-ル1-13及び1-14の合成: 撹拌されたアセトニド1-12 (100 mg、0.206 mmol)のTHF溶液(2 mL)にテトラ-n-ブチルアンモニウムフルオリド(1.0 MのTHF溶液、1.0 mL、1.0 mmol)を加え、10時間撹拌した。該反応混合物をH20で処理し、酢酸エチル(20 mL)で抽出した。水層を分離し、EtOAc(2 x 20 mL)でさらに抽出した。合わせた有機相を鹹水(10 mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ-(65%EtOAcのヘキサン溶液)で精製し、1-13を無色の粘性液体として得て(24 mg、46%)、また、1-14を白色の固体として得た(80%EtOAc2のヘキサン溶液、20 mg、38%)。1-13のデ-タ:1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 4.35 (t, J = 5.3 Hz, 1 H), 4.03 (t, J = 6.8 Hz, 1 H), 3.78 (m, 1 H), 3.67 (t, J = 7.7 Hz, 1 H), 2.81 (m, 1 H), 2.04 (m, 1 H), 1.88 (m, 1 H), 1.53 (s, 3 H), 1.38 (s, 3 H); 13C NMR (126 MHz, CDCl3): δ 126.9, 109.8, 78.6, 75.6, 72.2, 68.0, 40.2, 28.1, 26.2, 25.9。1-14のデ-タ:1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 4.37 (m, 1 H), 3.95 (m, 1 H), 3.56 (m, 1 H), 3.48 (m, 1 H), 2.54 (m, 1 H), 2.06 (m, 1 H), 1.85 (m, 1 H), 1.55 (s, 3 H), 1.38 (s, 3 H); 13C NMR (126 MHz, CDCl3) δ 127.0, 110.9, 80.5, 77.8, 71.5, 70.4, 40.1, 28.4, 26.4, 25.9。
【0218】
テトラオ-ル1-15の合成: 撹拌されたジオ-ル1-13 (10.1 mg、39.4 μmol)のCH3OH溶液(0.9 mL)に1 M HCl(0.2 mL、0.2 mmol)を加え、12時間撹拌した。該反応混合物を減圧下で濃縮し、トルエン(3x 2 mL)と共蒸発させ、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ-(3%CH3OHのEtOAc溶液)で精製し、1-15を無色の粘性液体として得た(6.1 mg、72%)。1H NMR (500 MHz, CD3OD) δ 4.02 (dd, J = 7.1, 3.1 Hz, 1 H), 3.80-3.72 (m, 2 H), 3.70 (m, 1 H), 2.72 (m, 1 H), 1.99-1.88 (m, 2 H); 13C NMR (126 MHz, CD3OD) δ 129.0, 74.7, 73.4, 70.6, 68.2, 41.8, 27.7; 19F NMR (377 MHz, CD3OD) δ -68.7; HRMS (ESI-TOF) m/z: [M + NH4]+ C7H11F3O4としての計算値234.0948;実測値234.0951。
【0219】
テトラオ-ル1-16の合成: 撹拌されたジオ-ル1-14 (7.40 mg、26.9 μmol)のCH3OH溶液(0.9 mL)に1 M HCl(0.2 mL、0.2 mmol)を加え、12時間撹拌した。該反応混合物を減圧下で濃縮し、トルエン(3 x 2 mL)と共蒸発させ、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ-(3%CH3OHのEtOAc溶液)で精製し、1-16を無色の粘性液体として得た(5.1 mg、82%)。1H NMR (500 MHz, CD3OD) δ 4.13 (m, 1 H), 3.53 (m, 1 H), 3.43 (m, 1 H), 3.28 (dd, J = 9.6, 3.0 Hz, 1 H), 2.35 (m, 1 H), 1.93-1.82 (m, 2 H); 13C NMR (126 MHz, CD3OD) δ 128.2, 76.1, 75.4, 72.5, 68.8, 42.7, 27.2; HRMS (ESI-TOF) m/z: [M + NH4]+ C7H11F3O4としての計算値234.0948;実測値234.0952。
【0220】
アルケン1-17の合成: 磁気撹拌棒、アルゴン入口、及びセプタムを備えた火炎乾燥された50-mLフラスコに、アセトニド1-4 (199 mg、0.403 mmol)及びTHF (3 mL)を充填した。ドライアイス及びアセトン浴を用いて、該混合物を-55℃に冷却し、次いで、tert-ブチルリチウム(1.55 Mのペンタン溶液、410 μL、0.636 mmol)を滴加した。該反応混合物を-55℃で30分間撹拌した後、ヨウ化メチル(0.10 mL、1.6 mmol)を滴加した。前記ドライアイス及びアセトン浴を撤去し、該反応混合物を室温までゆっくりと加熱し、2時間撹拌した。該反応混合物をNH4Clの飽和水溶液(10 mL)で処理し、Et2O(30 mL)で抽出した。水層を分離し、Et2O(2 x 20 mL)でさらに抽出した。合わせた有機相を鹹水(20 mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ-(2%Et2O のヘキサン溶液)で精製し、1-17を無色の粘性液体として得た(104 mg、2ステップで60%)。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 5.36 (m, 1 H), 4.42 (d, J = 7.0 Hz, 1 H), 4.02 (m, 1 H), 3.99 (m, 1 H), 3.56 (m, 1 H), 1.80 (s, 3 H), 1.45 (s, 3 H), 1.35 (s, 3 H), 0.91 (s, 9 H), 0.90 (s, 9 H), 0.13 (s, 3 H), 0.09 (s, 6 H), 0.08 (s, 3 H); 13C NMR (126 MHz, CDCl3) δ 131.6, 129.0, 109.5, 78.8, 76.1, 75.8, 71.7, 28.0, 26.3, 26.2, 25.8, 19.9, 18.4, 18.3, -3.5, -3.7, -3.9, -4.4。
【0221】
ジオ-ル1-18の合成: 撹拌されたアセトニド1-17 (119.5 mg、0.2787 mmol)のTHF溶液(2 mL)にテトラ-n-ブチルアンモニウムフルオリド(1.0 MのTHF溶液、1.4 mL、1.4 mmol)を加え、10時間撹拌した。次に、該反応混合物をH20で処理し、酢酸エチル(20 mL)で抽出した。水層を分離し、EtOAc(2 x 20 mL)でさらに抽出した。あわせた有機相を鹹水(10 mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ-(95%EtOAcのヘキサン溶液)で精製し、1-18を無色の粘性液体として得た(50 mg、90%)。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 5.50 (s, 1 H), 4.42 (d, J = 6.5 Hz, 1 H), 4.07 (dd, J = 8.9, 6.6 Hz, 1 H), 4.03 (m, 1 H), 3.52 (t, J = 8.5 Hz, 1 H), 1.82 (s, 3 H), 1.48 (s, 3 H), 1.37 (s, 3 H); 13C NMR (126 MHz, CDCl3) δ 131.9, 128.0, 110.3, 77.7, 76.1, 75.4, 70.5, 28.3, 25.9, 20.1。
【0222】
ジオ-ル1-20の合成: ジオ-ル1-18 (216 mg、1.08 mmol)のCH3OH溶液(6 mL)をアルゴンバル-ン下で撹拌した。該溶液に炭酸カリウム(15 mg、0.11 mmol)を加え、続いてPt02(26重量%、56 mg、0.25 mmol)をアルゴン雰囲気下で加えた。前記アルゴンバル-ンをH2バル-ン(1 atm)に置換し、該溶液をH2で10秒間流した。該反応混合物をH2バル-ン下で24時間撹拌し、次いで、H2バル-ンをアルゴンバル-ンで置換し、アルゴンで1分間流した。該反応混合物をCH3OH(30 mL)で希釈し、セライト-545のパッドで濾過した。濾液を濃縮し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ-(95%EtOAcのヘキサン溶液)で精製し、D-アルトロ異性体1-19 (26 mg、12%)と共に、1-20を無色の粘性液体として得た(126 mg、58%)。1-20のデ-タ:1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 4.07 (m, 1 H), 3.86 (m, 1 H), 3.48 (m, 1 H), 3.44 (m, 1 H), 1.92 (m, 1 H), 1.80-1.69 (m, 2 H), 1.51 (s, 3 H), 1.35 (s, 3 H), 1.12 (d, J = 6.9 Hz, 3 H); 13C NMR (126 MHz, CDCl3) δ 109.2, 81.0, 78.6, 78.3, 71.4, 34.5, 30.0, 28.6, 26.5, 17.4; HRMS (ESI-TOF) m/z: [M + NH4]+ C10H18O4としての計算値203.1278;実測値203.1275。
【0223】
カルバフコ-ス1-21の合成: 撹拌されたジオ-ル1-20 (62.0 mg、0.307 mmol)のCH3OH溶液(8.3 mL)に1 M HCl(1.7 mL、1.7 mmol)を加え、12時間撹拌した。該反応混合物を減圧下で濃縮し、トルエン(3 x 3 mL)と共蒸発させ、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ-(5%CH3OHのEtOAc溶液)で精製し、1-21を白色の固体として得た(42 mg、85%)。[α]D 20 = +22.3 (c = 0.05, CH3OH); 1H NMR (600 MHz, CD3OD) δ 3.68 (brs, 1 H), 3.48-3.45 (m, 1 H), 3.39-3.35 (m, 1 H), 3.27 (dd, J = 9.6, 3.0 Hz, 1 H), 1.65-1.60 (m, 1 H), 1.57-1.48 (m, 2 H), 1.02 (d, J = 6.8 Hz, 3 H); 13C NMR (151 MHz, CD3OD): δ 76.5, 76.4, 74.9, 73.8, 35.8, 33.1, 17.8; IR (neat): ν 3368, 2958, 2928, 2857, 1731, 1668, 1462, 1261, 1067, 1022, 799 cm-1; HRMS (ESI-TOF) m/z: [M + Na]+ C7H14NaO4としての計算値185.0784;実測値185.0784。
【0224】
酢酸塩1-20aの合成:撹拌されたジオ-ル1-20 (6 mg、29 μmol)のCH3OH溶液(1 mL)に1 M HCl(0.2 mL、0.4 mmol)を加え、12時間撹拌した。該反応混合物を減圧下で濃縮し、トルエン(3 x 2 mL)と共蒸発させ、得られた粗生成物をピリジン(1 mL)に溶解した。Ac20(0.10 mL、1.1 μmol)を加え、50℃で12時間加熱した。該反応混合物を減圧下で濃縮し、トルエン(3 x 2 mL)と共蒸発させ、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ-(20%EtOAcのヘキサン溶液)で精製し、1-20aを白色の固体として得た(7.8 mg、2ステップで80%)。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 5.36 (t, J = 10.1 Hz, 1 H), 5.31 (m, 1 H), 4.92-4.86 (m, 2 H), 2.14 (s, 3 H), 2.03 (s, 3 H), 2.02 (s, 3 H), 1.97 (s, 3 H), 1.92 (m, 1 H), 1.89 (m, 1 H), 1.64 (m, 1 H); HRMS (ESI-TOF) m/z: [M + NH4]+ C15H26NO8としての計算値348.1653;実測値348.1650。
【0225】
酢酸塩1-22a及び1-22bを合成: 撹拌されたジオ-ル1-20 (63.5 mg、0.314 mmol)のTHF溶液(1.5 mL)にCeCl3・7H20(11 mg、30 μmol)を加え、続いて無水酢酸(150 μL、1.59 mmol)を加え、24時間撹拌した。該反応混合物をNaHC03の飽和水溶液(10 mL)で処理し、EtOAc(20 mL)で抽出した。水層を分離し、EtOAc (2 x 20 mL)でさらに抽出した。合わせた有機相を鹹水(20 mL)で洗浄し、無水Na2S04で乾燥させ、濾過し、濃縮し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ-(40%EtOAcのヘキサン溶液)で精製し、非分離性の1-22a及び1-22bを無色の粘性液体として得た(60 mg、78%)。これは、27℃のCDCl3における1H NMR分光法で測定した結果、約5.6:1の位置異性体比を示した。1H NMR (400 MHz, CDCl3, Major isomer) δ 4.88 (dd, J = 10.1, 7.7 Hz, 1 H), 4.08 (m, 1 H), 3.98 (dd, J = 7.7, 4.8 Hz, 1 H), 3.48 (m, 1 H), 2.14 (s, 3 H), 1.91 (m, 1 H), 1.81 (m, 1 H), 1.61 (m, 1 H), 1.53 (s, 3 H), 1.34 (s, 3 H), 1.13 (d, J = 7.0 Hz, 3 H); 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 172.2, 109.5, 79.8, 78.4, 78.1, 70.9, 35.8, 29.8, 28.1, 26.4, 21.3, 17.3; HRMS (ESI-TOF) m/z: [M + NH4]+ C12H20O5 としての計算値245.1384;実測値245.1387。
【0226】
リン酸塩1-24の合成: 撹拌されたテトラ-n-ブチルアンモニウムメチルH-リン酸塩1-23(125 mg、0.389 mmol)のCH2Cl2溶液(2.7 mL)及びピリジン(0.3 mL)にAc20(40 μL、0.42 mmol)を加えた。該反応混合物を55℃で1時間撹拌し、氷浴を用いて5分間かけて室温まで冷却した。酢酸塩1-22 (12.0 mg、37.3 μmmol)のCH2Cl2溶液(1.5 mL)を上記の冷却された反応混合物に5分間かけて滴加し、該反応混合物を55℃で15時間撹拌した後、15分間かけて室温まで冷却した。該反応混合物を濃縮し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ-(75%EtOAcのヘキサン溶液)で迅速に精製し、所望の2-O-アセチルH-リン酸塩を得た。該H-リン酸塩(8.0 mg、24.8 μmmol)をCH2Cl2(1 mL)に溶解し、0℃に冷却した。Et3N(20 μL、0.18 mmol)を加えて、続いて、l2(16 mg、63 μmmol)のピリジン溶液(1 mL)を加えた。氷浴を撤去し、該反応混合物を4時間かけて室温まで加熱した。Na2S04の飽和水溶液(5 mL)を加えて、過剰のl2をクエンチし、該反応混合物をEtOAc(20 mL)で抽出した。水層を分離し、EtOAc(2 x 20 mL)でさらに抽出した。あわせた有機相を鹹水(10 mL)で洗浄し、無水Na2S04で乾燥させ、濾過し、濃縮し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ-(20%CH3OHのEtOAc溶液)で迅速に精製し、所望のメチルH-リン酸塩を得た。これをCH3CN (1.5 mL)に溶解した。Et3N(35 μL、0.25 mmol)、NaI(18 mg、0.12 mmol)、続いてPOM-Cl(35 μL、0.24 mmol)を順次に加え、70℃で14時間加熱した。該反応混合物をNa2S204の飽和水溶液(10 mL)で処理し、EtOAc(20 mL)で抽出した。水層を分離し、EtOAc(2 x 20 mL)でさらに抽出した。合わせた有機相を鹹水(20 mL)で洗浄し、無水Na2S04で乾燥させ、濾過し、濃縮し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ-(30%EtOAcのヘキサン溶液)で精製し、1-24を無色の粘性液体として得た(2.7 mg、3ステップで10%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.66-5.56 (m, 4 H), 5.12 (dd, J = 10.3, 7.9 Hz, 1 H), 4.28 (m, 1 H), 4.08 (m, 1 H), 3.98 (dd, J = 7.7, 4.8 Hz, 1 H), 2.12 (s, 3 H), 2.07-1.91 (m, 3 H), 1.55 (s, 3 H), 1.35 (s, 3 H), 1.24 (s, 18 H), 1.15 (d, J = 6.7 Hz, 3H); 31P NMR (162 MHz, CDCl3) δ -5.08; HRMS (ESI-TOF) m/z: [M + NH4]+ C24H41O12Pとしての計算値570.2674;実測値 570.2675。
【0227】
1-25の合成: 冷却されたTFA:H2O(9:1, 0.5 mL)溶液をアセトニド1-24 (2.0 mg、3.6 μmol)に加え、3時間撹拌した。該反応混合物を減圧下で濃縮し、トルエン(3 x 2 mL)と共蒸発させ、得られた粗生成物をピリジン(1 mL)に溶解した。Ac20(0.10 mL、1.1 μmol)を加え、50℃で24時間加熱した。該反応混合物を減圧下で濃縮し、トルエン(3 x 2 mL)と共蒸発させ、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ-(30%EtOAcのヘキサン溶液)で精製し、1-25を無色の粘性液体として得た(1.5 mg、2ステップで69%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.66-5.58 (m, 4 H), 5.36-5.27 (m, 2 H), 4.83 (dd, J = 10.5, 3.0 Hz, 1 H), 4.41 (m, 1 H), 2.14 (s, 3 H), 2.08 (s, 3 H), 2.06 (m, 1 H), 1.97 (s, 3 H), 1.92-1.78 (m, 2 H), 1.24 (s, 18 H), 0.95 (d, J = 6.6 Hz, 3 H); 31P NMR (162 MHz, CDCl3) δ -5.11. HRMS (ESI-TOF) m/z: [M + NH4]+ C25H41O14Pとしての計算値614.2572;実測値614.2575。
【0228】
ジベンジルリン酸塩2-1の合成: 撹拌された酢酸塩1-22a及び1-22b (233 mg、0.954 mmol)のCH2Cl2溶液(4 mL)に、1Hテトラゾ-ル(0.40 Mのアセトニトリル溶液、6.0 mL、2.4 mmol)を加え、続いて、室温でジベンジルジイソプロピルホスホロアミダイト(0.80 mL、2.4 mmol)を加えた。1時間後、該混合物にm-CPBA(77%、854 mg、3.81 mmol)を0℃で加えた。0℃で1時間撹拌した後、該混合物をCH2Cl2(30 mL)で希釈し、Na2S03の飽和水溶液(10 mL)及びNaHCO3の飽和水溶液(10 mL)で洗浄した。水層を分離し、CH2Cl2(2 x 20 mL)でさらに抽出した。合わせた有機層を鹹水(20 mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ-(25%EtOAcのヘキサン溶液)で精製し、望ましくない異性体(12%)と共に、2-1を白色の固体として得た(337 mg、70%)。2-1のデ-タ:1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.38-7.28 (m, 10 H), 5.13 (dd, J = 10.2, 7.7 Hz, 1 H), 5.03-4.92 (m, 4 H), 4.24 (dddd, J = 11.4, 10.2, 7.5, 4.0 Hz, 1 H), 4.09-4.03 (m, 1 H), 3.96 (dd, J = 7.8, 4.7 Hz, 1 H), 1.92 (s, 3 H), 1.91-1.82 (m, 2 H), 1.77-1.66 (m, 1 H), 1.56 (s, 3 H), 1.34 (s, 3 H), 1.10 (d, J = 6.7 Hz, 3 H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 170.5, 135.8 (2C), 128.7, 128.7, 128.1, 128.0, 109.8, 78.4, 77.7, 76.3, 76.3, 75.8, 75.7, 69.5, 69.4, 69.4, 33.7, 29.4, 28.0, 26.5, 21.1, 17.1; 31P NMR (162 MHz, CDCl3) δ -1.79。
【0229】
アセトニド2-2の合成: 冷却された(0℃)酢酸塩2-1 (85 mg、0.17 mmol)のTHF溶液(3 mL)にEtMgBr(3.0 MのEt20溶液、0.95 mL、2.9 mmol)を加え、0℃で1.5時間撹拌した。NH4Clの飽和水溶液(10 mL)を加え、過剰のグリニャ-ル試薬をクエンチし、EtOAc(20 mL)で抽出した。水層を分離し、EtOAc(2 x 20 mL)でさらに抽出した。あわせた有機相を鹹水(15 mL)で洗浄し、無水Na2S04で乾燥させ、濾過し、濃縮し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ-(45%EtOAcのヘキサン溶液)で精製し、2-2を無色の粘性液体として得た(65 mg、85%)。:1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ 7.41-7.28 (m, 11 H), 5.13-4.90 (m, 4 H), 4.11-3.98 (m, 2 H), 3.87 (dd, J = 7.3, 4.9 Hz, 1 H), 3.61 (dd, J = 9.7, 7.3 Hz, 1 H), 1.82 (ddq, J = 16.2, 6.9, 3.5 Hz, 1 H), 1.72 (dt, J = 12.7, 4.0 Hz, 1 H), 1.66-1.54 (m, 1 H), 1.50 (s, 3 H), 1.34 (s, 3 H), 1.08 (d, J = 6.9 Hz, 3 H); 13C NMR (151 MHz, CDCl3) δ 135.81, 135.80, 135.76, 135.75, 128.8, 128.74, 128.72, 128.2, 128.18, 128.15, 128.13, 109.4, 80.7, 79.7, 79.66, 77.5, 76.5, 76.4, 69.81, 69.77, 69.72, 69.68, 33.22, 33.20, 29.6, 28.5, 26.4, 17.2; 31P NMR (162 MHz, CDCl3) δ -0.82。
【0230】
2-3の合成: 撹拌されたアセトニド2-2 (30.3 mg、65.5 μmol)のCH3OH溶液(1.2 mL)に1 M HCl(0.3 mL、0.3 mmol)を加え、2時間撹拌した。該反応混合物を減圧下で濃縮し、トルエン(3 x 2 mL)と共蒸発させ、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ-(5%CH3OHのEtOAc溶液)で迅速に精製し、対応するトリオ-ルを無色の粘性液体として得た(22.7 mg、82%)。該トリオ-ル(22.7 mg、53.7 μmol)のCH3OH溶液(3 mL)をアルゴン下で撹拌した。該反応混合物にPd(OH)2-C(20重量%、17 mg、0.024 mmol)を加え、次に、アルゴンバル-ンをH2バル-ン(1 atm)に置換し、5時間撹拌した。この時点で、前記H2バル-ンをアルゴンバル-ンで置換し、アルゴンで1分間流した。該反応混合物をCH3OH(20 mL)で希釈し、該溶液をセライト-545のパッドで濾過した。濾液を濃縮し、得られた粗生成物を球状シリカゲル(粒子サイズ40~75 μm)のカラムクロマトグラフィ-(50%CH3OHのCH2Cl2溶液)で精製し、2-3を白色の固体として得た(9.5 mg、2ステップで60%)。1H NMR (500 MHz, D2O) δ 3.98-3.91 (m, 1 H), 3.79 (t, J = 2.8 Hz, 1 H), 3.60 (dd, J = 9.5, 9.5 Hz, 1 H), 3.49 (dd, J = 10.0, 3.1 Hz, 1 H), 1.89 (dt, J = 13.0, 4.2 Hz, 1 H), 1.78-1.69 (m, 1 H), 1.48 (td, J = 13.0, 11.5 Hz, 1 H), 0.99 (d, J = 6.9 Hz, 3 H)。
【0231】
ジベンジルリン酸塩2-4の合成: 冷却された(0℃)アルコ-ル2-2 (37 mg、80 μmol)のCH2Cl2溶液(2 mL)にイミダゾ-ル(55 mg、0.81 mmol)を加え、続いて、TESCl(0.10 mL、0.74 mmol)を加えた。氷浴を撤去し、反応混合物を室温で2時間撹拌した。反応混合物をCH2Cl2で希釈し、NaHCO3の飽和水溶液(10 mL)で洗浄し、CH2Cl2(20 mL)で抽出した。水層を分離し、CH2Cl2(2 x 20 mL)でさらに抽出した。合わせた有機相を鹹水(15 mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ-(20%EtOAcのヘキサン溶液)で精製し、2-4を無色の粘性液体として得た(44.6 mg、97%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.38-7.28 (m, 10 H), 5.14-4.94 (m, 4 H), 4.13-3.96 (m, 2 H), 3.82 (dd, J = 6.6, 5.1 Hz, 1 H), 3.63 (dd, J = 9.1, 6.6 Hz, 1 H), 1.95 (dt, J = 12.6, 4.0 Hz, 1 H), 1.89-1.77 (m, 1 H), 1.68-1.53 (m, 1 H), 1.49 (s, 3 H), 1.33 (s, 3 H), 1.05 (d, J = 6.9 Hz, 3 H), 0.93 (t, J = 7.9 Hz, 9 H), 0.69-0.58 (m, 6 H); 31P NMR (162 MHz, CDCl3) δ -1.49。
【0232】
POM-リン酸塩2-5の合成: 撹拌されたジベンジルリン酸塩2-4 (46 mg、80 μmol)のCH3CN溶液(3 mL)にNaHCO3(76 mg、0.90 mmol)を加え、続いてPd(OH)2-C (20重量%、23 mg、33 μmol)をアルゴン下で反応混合物に加えた。アルゴンバル-ンをH2バル-ン(1 atm)に置換し、4時間撹拌した。この時点で、H2バル-ンをアルゴンバル-ンで置換し、アルゴンで1分間流した。該反応混合物をCH3OH(20 mL)で希釈し、該溶液をセライト-545のパッドで濾過した。濾液を濃縮し、得られた粗生成物をCH3CN(2 mL)及びCH2Cl2(0.5 mL)に溶解した。DIPEA (0.14 mL、0.80 mmol)に続いてPOM-I(0.15 mL、0.99 mmol)を順次に加え、36時間撹拌した。該反応混合物をNa2S203の飽和水溶液(10 mL)で処理し、EtOAc(20 mL)で抽出した。水層を分離し、EtOAc(2 x 20 mL)でさらに抽出した。合わせた有機相を鹹水(15 mL)で洗浄し、無水Na2S04で乾燥させ、濾過し、濃縮し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ-(13%EtOAcのヘキサン溶液)で精製し、2-5を淡黄色の粘性液体として得た(7 mg、2ステップで14%)。1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ 5.71-5.57 (m, 4 H), 4.15-4.05 (m, 1 H), 4.04-4.00 (m, 1 H), 3.87-3.75 (m, 1 H), 3.61 (dd, J = 9.1, 6.7 Hz, 1 H), 1.99 (dt, J = 12.9, 4.2 Hz, 1 H), 1.94-1.82 (m, 1 H), 1.70-1.57 (m, 1 H), 1.47 (s, 3 H), 1.33 (s, 3 H), 1.23 (s, 18 H), 1.10 (d, J = 7.0 Hz, 3 H), 0.94 (t, J = 8.0 Hz, 9 H), 0.70-0.57 (m, 6 H); 13C NMR (150 MHz, CDCl3) δ 176.8 (2C), 109.0, 83.0, 82.9, 82.81, 82.77, 81.9, 81.8, 80.3, 80.2, 77.8, 77.2, 77.1, 38.9, 33.0, 29.5, 28.4, 26.99, 26.97, 26.5, 17.3, 6.9 (3C), 5.0 (3C); 31P NMR (162 MHz, CDCl3) δ -4.67。
【0233】
POM-リン酸塩トリオ-ル2-6の合成: TFA:H20(9:1、0.7 mL)の溶液をアセトニド2-6 (7.6 mg、12 μmol)に加え、4時間撹拌した。該反応混合物を減圧下で濃縮し、トルエン(3 x 2 mL)と共蒸発させ、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ-(90%EtOAcのヘキサン溶液)で精製し、トリオ-ル2-6を淡黄色の粘性液体として得た(4.0 mg、70%)。1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ 5.75-5.57 (m, 4 H), 4.33-4.19 (m, 1 H), 3.86-3.83 (m, 1 H), 3.80 (app t, J = 9.4 Hz, 1 H), 3.46 (dd, J = 9.4, 2.9 Hz, 1 H), 1.90-1.73 (m, 2 H), 1.72-1.62 (m, 1 H), 1.24 (s, 18 H), 1.08 (d, J = 6.8 Hz, 3 H); 13C NMR (150 MHz, CDCl3) δ 177.4, 177.0, 83.0, 82.99, 82.97, 82.95, 81.4, 81.3, 74.8, 73.63, 73.60, 71.9, 38.94, 38.91, 32.93, 32.91, 31.2, 29.9, 26.97, 26.96, 17.1; 31P NMR (162 MHz, CDCl3) δ -4.17; HRMS (ESI-TOF) m/z: [M + NH4]+ C19H39NO11Pとしての計算値488.2255;実測値 488.2174。
【0234】
アルコ-ル3-1の合成:撹拌されたケトン1-5 (464 mg、1.077 mmol)のTHF/Et20(1:1)溶液(17 mL)にヨ-ドフルオロメタン(0.086 Mのペンタン溶液、8.37 mL、0.72 mmol)を-78℃で加え、続いてMeLi.LiBr(1:1)(1.6 MのEt20溶液、1.34 mL、2.15 mmol)を加えた。該反応混合物を-78℃で5分間撹拌した。次いで、該反応混合物をNH4Clの飽和水溶液で処理し、Et20で抽出した。有機層を無水MgS04で乾燥させ、濾過し、濃縮し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ-(5%Et20のヘキサン溶液)で精製し、3-1を無色の粘性液体として得た(207 mg、62%)。[α]D = +7.5 (c = 0.96, CHCl3); 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 4.23 (dd, J = 8.9, 59.9 Hz, 1 H), 4.13-4.11 (m, 2 H), 4.10 (dd, J = 8.9, 60.2 Hz, 1 H), 4.08 (d, J = 2.6 Hz, 1 H), 3.90-3.85 (m, 1 H), 2.04 (ddd, J = 2.1, 4.1, 14.6 Hz, 1 H), 1.78 (dd, J = 4.9, 14.6 Hz, 1 H), 1.55 (s, 3 H), 1.37 (s, 1 H), 0.91 (s, 9 H), 0.89 (s, 9 H), 0.12 (s, 9 H), 0.10 (s, 3H); 13C NMR (101 MHz, CDCl3): δ 109.4, 84.7 (d, J = 174.9 Hz), 78.5, 73.5 (d, J = 3.0 Hz), 72.4, 71.5, 70.8 (d, J = 18.1 Hz), 33.3 (d, J = 2.5 Hz), 26.3, 26.0, 25.9, 25.5, 18.1 (d, J = 13.3 Hz), -4.3, -4.4, -4.5, -4.8; 19F NMR (377 MHz, CDCl3): δ -228.3 (t, J = 12.7, 47.4 Hz); IR (neat) ν 3468, 2930, 2370, 1255, 1082, 837 cm-1; HRMS (ESI-TOF) m/z: [M + H]+ C22H45FO5Si2としての計算値465.2862;実測値465.2858。
【0235】
フルオロメチル化合物3-2の合成:-17℃の、撹拌されたアルコ-ル3-1 (40 mg、0.086 mmol)のCH2Cl2溶液(1.2 mL)にN,N-ジメチルアミノピリジン(63.2 mg、0.516 mmol)を加え、続いてメチル2-クロロ-2-オキソアセテ-ト(47.5 μL、0.516 mmol)を滴加した。2時間後に氷浴を撤去し、該反応混合物を室温まで加熱し、1時間撹拌した。該反応混合物を冷却されたNaHC03の飽和水溶液で処理し、EtOAcで抽出した。水層を分離し、有機相を無水MgS04で乾燥させ、濾過し、濃縮し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ-(33% Et20のヘキサン溶液)で迅速に精製し、対応するエステルを得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.04 (dd, J = 10.3, 48.1 Hz, 1 H), 4.58 (dd, J = 10.3, 45.7 Hz, 1 H), 4.50 (d, J = 6.7 Hz, 1 H), 3.99 (t, J = 6.5 Hz, 1 H), 3.89 (s, 3 H), 3.81 (dd, J = 6.7, 7.9 Hz, 1 H), 3.65 (m, 1 H), 2.25 (m, 2 H), 1.51 (s, 3 H), 1.32 (s, 3 H), 0.90 (s, 9 H), 0.89 (s, 9 H), 0.13 (s, 3 H), 0.10 (s, 3 H), 0.09 (s, 3 H), 0.08 (s, 3 H)。電子レンジ対応ガラス管の中で、該粗生成物をトルエン(1 mL)に溶解した。該反応混合物に2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)(28.2 mg、0.172 mmol)を加え、該溶液にN2ガスを30分間通気した。別
の電子レンジ対応ガラス管で、ニ-トn-トリブチルスズ水素化物(463 μL、1.72 mmol)を加え、該溶液にN2ガスを30分間通気した後、該反応混合物を120℃で加熱した。前者の粗反応混合物を急速に後者に加え、120℃で2時間撹拌した後、該溶液を室温まで冷却した。該反応混合物をNH4Clの飽和水溶液で処理し、EtOAcで抽出した。水層を分離し、EtOAでさらに抽出した。合わせた有機相を鹹水(20 mL)で洗浄し、無水MgS04で乾燥させ、濾過し、濃縮し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ-(5% Et20のヘキサン溶液)で精製し、3-2を無色の粘性液体として得た(34 mg、2ステップで88%)。これは、25℃のCDCl3における1H NMR分光法で測定した結果、約2:1のジアステレオマ-比を示した。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 4.67-4.26 (m, 2 H), 4.24 (m, 0.6 H), 4.07-3.94 (m, 1.7 H), 3.81 (m, 0.4 H), 3.61-3.48 (m, 1.3 H), 2.38-2.13 (m, 1 H), 1.81-1.68 (m, 1H), 1.64-1.43 (m, 1 H), 1.50 (s, 2 H), 1.47 (s, 1 H), 1.36 (s, 1 H), 1.35 (s, 2 H), 0.93-0.90 (s, 18 H), 0.15-0.07 (s, 12 H); 13C NMR (101 MHz, CDCl3): δ 109.2, 108.5, 85.4 (d, J = 167.5 Hz), 84.6 (d, J = 167.9 Hz), 81.7, 79.0, 78.4, 77.4, 73.3, 73.2, 71.8, 70.2, 35.9 (d, J = 18.9 Hz), 35.2 (d, J = 18.6 Hz), 29.6 (d, 4.9 Hz), 29.6 (d, J = 3.1 Hz), 28.6, 28.0, 26.3, 26.2, 25.9, 25.8, 18.4, 18.3, 18.1, -3.5, -3.7, -4.0, -4.3, -4.6, -4.7, -4.8, -4.8; 19F NMR (377 MHz, CDCl3): δ -222.7 (dt, J = 12.7, 46.9 Hz), -231.1 (dt, J = 29.9, 48.0 Hz); IR (neat) ν 3698, 3621, 2929, 2369, 1470, 1245, 829 cm-1; HRMS (ESI-TOF) m/z: [M + H]+ C22H45FO4Si2としての計算値449.2913; 実測値449.2912。
【0236】
ジオ-ル3-3及び3-4を合成: 撹拌されたアセトニド3-2(129 mg、0.288 mmol)のTHF溶液(3 mL)にテトラ-n-ブチルアンモニウムフルオリド(1.0 MのTHF溶液、1.15 mL、1.15 mmol)を加え、12時間撹拌した。その後、該反応混合物をNH4Clの飽和水溶液で処理し、酢酸エチルで抽出した。水層を分離し、EtOAcでさらに抽出した。合わせた有機相を鹹水で洗浄し、無水MgS04で乾燥させ、濾過し、濃縮し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ-(20%アセトンのDCM溶液)で精製し、異性体3-4を白色の固体として得て(21.8 mg、30%)、また、異性体3-3を白色の固体として得た(37.0 mg、51%)。3-3のデ-タ:[α]D = + 30.7 (c = 1.4, acetone); 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 4.59 (ddd, J = 7.6, 8.9, 46.7 Hz, 1 H), 4.42 (ddd, J = 6.9, 8.9, 47.1 Hz, 1 H), 4.26 (t, J = 4.3 Hz, 1 H), 3.93 (m, 1 H), 3.57-3.44 (m, 2 H), 2.50 (d, J = 2.7 Hz, 1 H), 2.34 (d, J = 2.4 Hz, 1 H), 2.29 (m, 1 H), 1.88 (m, 1 H), 1.51 (s, 3 H), 1.48 (m, 1 H), 1.36 (s, 3 H); 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 109.9, 85.0, 83.4, 80.7, 78.7, 73.7 (d, J = 6.1 Hz), 71.0 (d, J = 1.5 Hz), 36.3 (d, J = 19.1 Hz), 28.6 (d, J = 5.7 Hz), 28.5, 26.5; 19F NMR (377 MHz, CDCl3): δ -222.6 (dt, J = 12.8, 46.7 Hz); IR (neat) ν 3721, 3694, 3624, 3597, 3214, 2369, 1366, 1218 1024 cm-1; HRMS (ESI-TOF) m/z: [M + H]+ C10H17FO4としての計算値221.1184;実測値221.1183。3-4のデ-タ:[α]D = + 17.4 (c = 1.1, acetone); 1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 4.56 (ddd, J = 4.5, 9.3, 36.7 Hz, 1 H), 4.46 (ddd, J = 4.0, 9.3, 36.0 Hz, 1 H), 4.20 (t, J = 5.7 Hz, 1 H), 4.00 (t, J = 6.6 Hz, 1 H), 3.77-3.55 (m, 2 H), 2.52 (s, 1 H), 2.47 (s, 1 H), 2.34 (m, 1 H), 1.87 (m, 2 H), 1.52 (s, 3 H), 1.37 (s, 3 H); 13C NMR (101 MHz, CDCl3): δ 109.3, 85.6 (d, J = 170.0 Hz), 79.0 (d, J = 1.1 Hz), 76.5, 74.8 (d, J = 4.8 Hz), 68.8 (d, J = 1.9 Hz), 36.3 (d, J = 18.8 Hz), 29.8 (d, J = 3.1 Hz), 28.2, 25.9; 19F NMR (377 MHz, CDCl3): δ -225.0 (dt, J = 31.3, 47.5 Hz); IR (neat) ν 3712, 3695, 3677, 3665, 2919, 2852, 1446, 1369, 1004 cm-1; HRMS (ESI-TOF) m/z: [M + H]+ C10H17FO4としての計算値221.1184;実測値 221.1182。
【0237】
テトラオ-ル3-5の合成: 撹拌されたジオ-ル3-3 (24 mg、93.7 μmol)のCH3OH溶液(4.8 mL)に1 M HCl(1.2 mL)を加え、2時間撹拌した。該反応混合物を減圧下で濃縮し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ-(20%CH3OHのEtOAc溶液)で精製し、3-5を無色の粘性液体として得た(15.4 mg、91%)。[α]D = +2.8 (c = 1.4, CH3OH); 1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 4.50 (dt, J = 8.5, 47.5 Hz, 1 H), 4.32 (ddd, J = 6.5, 8.7, 47.3 Hz, 1 H), 3.94 (m, 1 H), 3.53 (t, J = 9.3 Hz, 1 H), 3.50-3.39 (m, 1H), 3.29 (dd, J = 3.0, 9.5 Hz, 1 H), 1.92 (m, 1 H), 1.64 (dt, J = 4.2, 12.5 Hz, 1 H), 1.47 (q, J = 12.4 Hz, 1 H), 1.02 (d, J = 6.7 Hz, 1 H); 13C NMR (151 MHz, CD3OD) δ 83.7 (d, J = 166.7 Hz), 75.2, 74.7, 72.0, 68.5 (d, J = 5.3 Hz), 37.9 (d, J = 18.6 Hz), 28.0 (d, J = 6.5 Hz); 19F NMR (377 MHz, CD3OD) δ -225.0 (dt, J = 12.4, 47.4 Hz); IR (neat) ν 3728, 3694, 2345, 1598, 1044 cm-1; HRMS (ESI-TOF) m/z: [M + NH4]+ C7H17NFO4としての計算値198.1136; 実測値198.1139。
【0238】
テトラオ-ル3-6の合成: 撹拌されたジオ-ル3-4 (18 mg、70.3 μmol)のCH3OH溶液(4.8 mL)に1 M HCl(1.2 mL)を加え、2時間撹拌した。該反応混合物を減圧下で濃縮し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ-(20%CH3OHのEtOAc溶液)で精製し、3-6を無色の粘性液体として得た(12.2 mg、96%)。[α]D = +5.8 (c = 0.3, CH3OH); 1H NMR (500 MHz, CD3OD) δ 4.59 (ddd, J = 5.2, 9.2, 47.8 Hz, 1 H), 4.47 (ddd, J = 4.4, 9.2, 47.7 Hz, 1 H), 3.85-3.78 (m, 2 H), 3.75-3.68 (m, 2 H), 2.21 (m, 1 H), 1.87-1.83 (m, 2 H); 13C NMR (151 MHz, CD3OD) δ 85.9 (d, J = 167 Hz), 74.8, 73.9, 71.4, 69.7 (d, J = 3.8 Hz), 37.8 (d, J = 17.9 Hz), 30.5 (d, J = 3.5 Hz); 19F NMR (377 MHz, CD3OD) δ -229.0 (broad signal); IR (neat) ν 3731, 3691, 2346, 1645, 1064 cm-1; HRMS (ESI-TOF) m/z: [M + NH4]+ C7H17NFO4 としての計算値198.1136;実測値198.1141。
【0239】
酢酸塩3-7の合成: 撹拌されたテトラオ-ル3-6 (3 mg、16.7μmol)のピリジン溶液(0.6 mL)にAc20(0.02 mL、0.2 mmol)を加え、50℃で12時間撹拌した。該反応混合物を減圧下で濃縮し、トルエンと共蒸発させ、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ-(30%EtOAcのヘキサン溶液)で精製し、3-7を無色の粘性液体として得た(5.2 mg、89%)。[α]D = +12.6 (c = 0.6, CHCl3); 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.32-5.25 (m, 2 H), 5.18 (d, J = 3.3, 7.5 Hz, 1 H), 5.08-5.02 (m, 1 H), 4.56 (ddd, J = 4.4, 9.7, 47.5 Hz, 1 H), 4.49 (ddd, J = 4.4, 9.7, 47.1 Hz, 1 H), 2.37 (m, 1 H), 2.09 (s, 3 H), 2.06 (s, 3 H), 2.05 (s, 3 H), 2.04 (s, 3 H), 2.05-2.01 (m, 2 H); 13C NMR (151 MHz, CDCl3) δ 170.0, 170.0, 169.9, 169.7, 84.0 (d, J = 171.2 Hz), 70.2, 69.6 (d, J = 3.1 Hz), 69.5 (d, J = 2.5 Hz), 69.4 (d, J = 1.8 Hz), 35.9 (d, J = 19.5 Hz), 27.6 (d, J = 3.1 Hz, 21.1, 21.0, 20.9, 20.8; 19F NMR (377 MHz, CDCl3) δ -223.9 (broad signal); IR (cast film) ν 2919, 2849, 1748, 1369, 1218, 1040 cm-1; HRMS (ESI-TOF) m/z: [M + NH4]+ C15H25NO8としての計算値366.1559;実測値366.1557。
【0240】
アルデヒド1-29は、L-ケブラキト-ルから文献に報告された方法に従って調製した。
【0241】
メチルエステル1-33の合成:0℃のアルデヒド1-29 (Monda, S.;Sureshan, K. M. J. Org. Chem. 2016, 81, 11635、0.161 mmol、34.5 mg、1.0当量)のCH2Cl2:Et3N(4:1、c=0.1 M)溶液にtert-ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネ-ト(4.0当量)を加えた。室温で1時間撹拌した後、該反応混合物をNaHCO3の飽和水溶液でクエンチした。水層をEt2Oで抽出した。合わせた有機層を鹹水で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、真空下で蒸発させた。残留物(1.0当量)をtBuOH:H20(4:1、c=0.01 M)に溶解した。2-メチル-2-ブテン(100当量)、NaH2P04(11当量)、及びNaCl02(10当量)を0℃で加えた。0℃で10分間撹拌した後、該反応混合物を室温で1時間撹拌した。該反応混合物をH20でクエンチした。水層を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を鹹水で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、真空下で蒸発させた。残留物(1.0当量)をCH2Cl2:MeOH (4:1、c=0.01 M) に再溶解し、(トリメチルシリル)ジアゾメタン(5.0当量)を加えた。該反応混合物を室温で1時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残留物(1.0当量)をEtOH(c=0.1 M)及びRh/Al203(0.5当量)に溶解した。該反応混合物を室温及びH2(50 atm)下で撹拌した。12時間後、該反応混合物をセライトで濾過し、濾液を真空下で蒸発させた。残留物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィ-(nヘキサン:Et20、10:1)で精製し、1-33を白色の固体として得た(52 mg、単離収率68%)。m.p.:105-106℃、1H NMR (600 MHz, CDCl3): δ 4.53 (dd, J = 4.5, 4.1 Hz, 1H), 4.01 (t, J = 6.8 Hz, 1H), 3.73 (s, 3H), 3.59 (dd, J = 6.9, 6.5 Hz, 1H), 3.52-3.48 (m, 1H), 2.74 (dt, J = 13.4, 3.5 Hz, 1H), 1.98 (dt, J = 13.4, 3.8 Hz, 1H), 1.91-1.85 (m, 1H), 1.48 (s, 3H), 1.32 (s, 3H), 0.89 (d, J = 3.0 Hz, 18H), 0.11-0.07 (m, 12H); 13C NMR (151 MHz, CDCl3): δ 172.1, 109.4, 80.9, 77.7, 74.1, 72.9, 52.2, 40.4, 28.8, 27.6, 26.20, 26.18, 25.9, 18.3, 18.2, -3.7, -3.8, -4.2, -4.3; IR (neat): ν 3182, 2950, 2931, 2857, 1747, 1306, 1255, 1108, 1046, 827, 780 cm-1; HRMS (ESI): m/z [M + H]+ C23H47O6Si2としての計算値475.2911;実測値 475.2910; [α]D 20 = 29.3 (c = 0.1, MeOH)。
【0242】
テトロ-ル1-34の合成
【0243】
1-33(0.025 mmol、12.0 mg)をメタノ:1N HCl(4:1、c=0.05M)に溶解した。室温で5時間撹拌した後、溶媒を真空下で除去した。残留物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィ-(CH2Cl2:MeOH、4:1)で精製し、1-34を白色固体として得た(5.2 mg、単離収率76%)。1H NMR (400 MHz, MeOD): δ 4.26 (t, J = 2.7 Hz, 1H), 3.70 (s, 3H), 3.52-3.47 (m, 1H), 3.41-3.37 (m, 1H), 3.33-3.32 (m, 1H), 2.61-2.56 (m, 1H), 1.94-1.89 (m, 2H); 13C NMR (151 MHz, MeOD): δ 174.5, 76.1, 75.7, 72.9, 71.8, 52.3, 44.3, 29.6; IR (neat): ν 3178, 2921, 2853, 1718, 1578, 1421, 1298, 847 cm-1; HRMS (ESI): m/z [M + H]+ C8H15O6としての計算値207.0863;実測値207.0861; [α]D 20 = -14.0 (c = 0.1, MeOH)。
【0244】
アルキルブロマイド1-38の合成: LiAlH4(3.0当量)を1-33 (0.058 mmol、27.4 mg、1.0当量)のEt20(c=0.03 M)溶液に数回に分けて加えた。還流下で16時間加熱した後、該反応混合物を湿潤Et20でクエンチした。水層を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を鹹水で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、蒸発させた。残留物(1.0当量)をCH2Cl2(c=0.05 M) に溶解した。PPh3(1.0当量)、CBr4(1.0当量)、及びEt3N(1.0当量)を加えた。室温で48時間撹拌した後、溶媒を真空下で除去した。残留物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィ-(nヘキサン:Et20、40:1)で精製し、1-38を泡沫状の固体として得た(21.2 mg、単離収率72%)。1-38のデ-タ:1H NMR (600 MHz, CDCl3): δ 4.29 (dd, J = 4.3, 4.1 Hz, 1H), 3.92 (t, J = 5.8 Hz, 1H), 3.54-3.50 (m, 2H), 3.47-3.43 (m, 1H), 3.34 (dd, J = 9.8, 6.9 Hz, 1H), 2.12-2.06 (m, 1H), 1.83 (dt, J = 12.8, 3.6 Hz, 1H), 1.51-1.47 (m, 1H), 1.47 (s, 3H), 1.33 (s, 3H), 0.90 (s, 18H), 0.12-0.08 (m, 12H); 13C NMR (151 MHz, CDCl3): δ 109.0, 81.6, 78.9, 74.5, 73.2, 38.0, 34.5, 32.8, 29.9, 28.0, 26.3, 26.2, 18.34, 18.32, -3.6, -3.7, -4.1, -4.3; IR (neat): ν 2954, 2932, 2861, 1474, 1384, 1257, 1097, 1052, 1034, 803 cm-1; HRMS (ESI): m/z [M + H]+ C22H46BrO4Si2としての計算値509.2113;実測値 509.2113; [α]D 20 = -6.3 (c = 0.3, MeOH)。
【0245】
テトラオ-ル1-39の合成: 1-38 (0.029 mmol、14.9 mg)をメタノ-ル:1N HCl (4:1、c=0.05 M)に溶解した。室温で3時間撹拌した後、溶媒を真空下で除去した。残留物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィ-(CH2Cl2:MeOH、15:1次いで2:1)で精製し、1-39を無色の油として得た(5.0 mg、単離収率71%)。1H NMR (600 MHz, MeOD): δ 4.02 (brs, 1H), 3.55-3.49 (m, 2H), 3.42-3.35 (m, 2H), 3.27 (dd, J = 9.6, 2.9 Hz, 1H), 1.87-1.79 (m, 2H), 1.53-1.47 (m, 1H); 13C NMR (151 MHz, MeOD): δ 76.4, 76.1, 73.2, 71.3, 41.6, 35.2, 32.9; IR (neat): ν 3372, 2924, 2857, 1451, 1257, 1116, 1072, 1049, 989 cm-1; HRMS (ESI): m/z [M + Na]+ C7H13BrNaO4としての計算値262.9889;実測値262.9886; [α]D 20 = 9.2 (c = 0.12, MeOH)。
【0246】
アルケン1-42の合成: LiAlH4(3.0当量)を1-33 (0.066 mmol、31.1 mg、1.0当量)のEt20溶液(c=0.03 M)に数回に分けて加えた。還流下で16時間加熱した後、該反応混合物を湿潤Et20でクエンチした。水層を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を鹹水で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、真空下で蒸発させた。残留物(1.0当量)をCH2Cl2(c=0.1 M)に溶解し、デス・マ-チン・ペリオジナン(1.2当量)を加えた。室温で30分間撹拌した後、溶媒を真空下で除去し、粗アルデヒド1-40を得た。N2雰囲気下でPPh3MeBr(3.0当量)のTHF溶液にnBuLi(2.5 Mのヘキサン溶液、3.0当量)を-78℃で加えた。該混合物を室温まで30分間加熱した後、-78℃に冷却し、前記粗アルデヒド1-40 (1.0当量)を加えた。該反応混合物を室温まで30分間加熱した。該反応混合物を水でクエンチし、Et20で抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、濃縮し、粗アルケン1-41を得た。残留物(0.055 mmol)をメタノ-ル:1N HCl(4:1、c=0.05 M)に溶解した。室温で3時間撹拌した後、溶媒を真空下で除去した。残留物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィ-(CH2Cl2:MeOH、15:1次いで2:1)で精製し、1-42を無色の油として得た(4.0 mg、単離収率35%)。1H NMR (600 MHz, MeOD): δ 5.98-5.90 (m, 1H), 5.08 (dt, J = 17.3, 1.6 Hz, 1H), 5.04 (dt, J = 10.4, 1.5 Hz, 1H), 3.81 (brs, 1H), 3.53-3.49 (m, 1H), 3.45-3.39 (m, 1H), 3.33-3.31 (m, 1H), 2.24-2.19 (m, 1H), 1.78-1.63 (m, 2H); 13C NMR (151 MHz, MeOD): δ 140.8, 115.1, 76.5, 76.2, 74.1, 73.7, 42.8, 33.2; IR (neat): ν 3318, 2932, 2876, 1645, 1421, 1257, 1123, 1071, 1049, 989, 903 cm-1; HRMS (ESI): m/z [M + Na]+ C8H14NaO4としての計算値197.0784;実測値197.0787; [α]D 20 = -5.4 (c = 0.3, MeOH)。
【0247】
ニトリル1-43の合成: 0℃のアルデヒド1-29 (0.115 mmol、24.6 mg、1.0当量)のCH2Cl2:Et3N (4:1、c=0.1 M)溶液にtert-ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネ-ト(1.0当量)を加えた。室温で1時間撹拌した後、該反応混合物をNaHCO3の飽和水溶液でクエンチした。水層をEt20で抽出した。合わせた有機層を鹹水で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、真空中で蒸発させ、粗1-30を得た。ジメチルヒドラジン塩酸塩(1.5当量)及びEt3N(1.5当量)のMeOH(c=0.175 M)溶液を室温で10分間撹拌した。該反応混合物に粗1-30(1.0当量)を加えた。該反応混合物を室温で2時間撹拌した。次いで、前記反応溶液をマグネシウムモノペルオキシフタル酸六水和物(2.5当量)のMeOH(c=0.7 M)溶液に0℃で滴加した。0℃で10分間撹拌した後、該反応混合物をH20でクエンチした。水層をEt20で抽出した。合わせた有機層を鹹水で洗浄し、Na2S04で乾燥させ、真空下で蒸発させた。残留物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィ-(nヘキサン:Et20、12:1)で精製し、1-43を泡沫状の固体として得た(22.8 mg、単離収率45%)。1H NMR (600 MHz, CDCl3): δ 6.46 (dd, J = 3.2, 0.8 Hz, 1H), 4.62 (d, J = 6.4 Hz, 1H), 4.18 (dd, J = 6.0, 6.0 Hz, 1H), 4.09-4.07 (m, 1H), 3.80 (dd, J = 5.8, 5.7 Hz, 1H), 1.47 (s, 3H), 1.37 (s, 3H), 0.90 (s, 9H), 0.88 (s, 9H), 0.12 (s, 3H), 0.11 (s, 3H), 0.095 (s, 3H), 0.088 (s, 3H); 13C NMR (151 MHz, CDCl3): δ 146.5, 117.0, 113.1, 111.6, 77.2, 72.5, 71.4, 69.7, 29.8, 27.7, 26.00, 25.99, 25.9, 25.8, 18.2, 18.1, -4.1, -4.3, -4.4; IR (neat): ν 2929, 2859, 1679, 1463, 1378, 1258, 1096, 837, 779 cm-1; HRMS (ESI): m/z [M + H]+ C22H42NO4Si2としての計算値440.2652;実測値440.2650; [α]D 20 = 50.1 (c = 0.6, CH2Cl2)。
【0248】
テトラオ-ル1-45の合成: 1-43 (0.048 mmol、21.2 mg、1.0当量)のEtOH(c=0.05 M)溶液にRh/Al203(0.5当量)を加えた。該反応混合物を室温及びH2(50 atm)下で撹拌した。12時間後、該反応混合物をセライトで濾過し、濾液を真空下で蒸発させた。残留物をメタノ-ル:1N HCl(4:1、c=0.05 M)に溶解した。室温で3時間撹拌した後、溶媒を真空下で除去した。残留物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィ-(CH2Cl2:MeOH、15:1)で精製し、1-45を無色の油として得た(2.5 mg、単離収率30%)。1H NMR (600 MHz, MeOD): δ 4.05 (dd, J = 2.4, 2.4 Hz, 1H), 3.51-3.48 (m, 1H), 3.38-3.35 (m, 1H), 3.26 (dd, J = 9.6, 2.8 Hz, 1H), 2.94-2.91 (m, 1H), 2.00-1.97 (m, 2H); 13C NMR (151 MHz, MeOD): δ 121.4, 75.6, 74.9, 72.2, 70.7, 31.4, 31.3; IR (neat): ν 2928, 2859, 1679, 1463, 1378, 1258, 1196, 1100, 837, 776, 683 cm-1; HRMS (ESI): m/z [M + Na]+ C7H11NNaO4としての計算値196.0586;実測値 196.0590; [α]D 20 = 2.9 (c = 0.1, MeOH)。
【0249】
エチルケトン1-47の合成: 0℃のアルデヒド1-29 (0.1 mmol、21.4 mg、1.0当量)のCH2Cl2:Et3N(4:1、c=0.1 M)溶液にtert-ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネ-ト(1.0当量)を加えた。室温で1時間撹拌した後、該反応混合物をNaHCO3の飽和水溶液でクエンチした。水層をEt2Oで抽出した。合わせた有機層を鹹水で洗浄し、Na2S04で乾燥させ、真空下で蒸発させた。残留物(1.0当量)をTHF(c=0.1 M)に溶解し、EtMgBr(3.0当量)を0℃で加えた。0℃で2時間撹拌した後、該反応混合物をNH4Clの飽和水溶液でクエンチした。水層をEt2Oで抽出した。合わせた有機層を鹹水で洗浄し、Na2S04で乾燥させ、真空下で蒸発させた。残留物(1.0当量)をCH2Cl2(c=0.1 M)に溶解した。デス・マ-チン・ペリオジナン(1.2当量)及びNaHCO3(3.0当量)を加えた。室温で30分間撹拌した後、溶媒を真空下で除去した。残留物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィ-(nヘキサン: Et2O、15:1)で精製し、1-47を泡沫状の固体として得た(31.8 mg、単離収率66%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 6.64 (d, J = 2.3 Hz, 1H), 5.01 (d, J = 6.6 Hz, 1H), 4.16 (ddd, J = 7.2, 2.2, 1.2 Hz, 1H), 4.07 (dd, J = 7.6, 6.6 Hz, 1H), 3.69 (t, J = 7.5 Hz, 1H), 2.79 (dq, J = 17.7, 7.2 Hz, 1H), 2.63 (dq, J = 17.7, 7.2 Hz, 1H), 1.45 (s, 3H), 1.40 (s, 3H), 1.12 (t, J = 7.2 Hz, 3H), 0.94 (s, 9H), 0.90 (s, 9H), 0.14-0.09 (m, 12H); 13C NMR (101 MHz, CDCl3): δ 200.3, 141.5, 134.9, 110.3, 78.5, 74.7, 71.7, 70.8, 31.9, 29.8, 28.2, 26.3, 26.2, 26.1, 18.4, 18.3, 8.0, -3.7, -3.8, -3.9, -4.3; IR (neat): ν 2930, 2855, 1715, 1682, 1462, 1381, 1250, 1202, 1145, 1115, 1073, 838, 779 cm-1; HRMS (ESI): m/z [M + H]+ C24H47O5Si2としての計算値 471.2962;実測値471.2961; [α]D 20 = 15.2 (c = 1.0, CH2Cl2)。
【0250】
ケトン1-49の合成
【0251】
ケトン1-49の合成: 1-47 (0.05 mmol、23.6 mg、1.0当量)のEtOH(c=0.05 M)溶液にRh/Al2O3(0.5当量)を加えた。該反応混合物を室温及びH2(50 atm)下で撹拌した。12時間後、該反応混合物をセライトで濾過し、濾液を真空下で蒸発させた。残留物をメタノ-ル:1N HCl (4:1、c=0.05 M)に溶解した。室温で3時間撹拌した後、溶媒を真空下で除去した。残留物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィ-(CH2Cl2:MeOH、15:1次いで2:1)で精製し、1-49を無色の油として得た(4.1 mg、単離収率40%)。1H NMR (600 MHz, MeOD): δ 4.32 (dd, J = 2.7, 2.4 Hz, 1H), 3.50-3.47 (m, 1H), 3.41-3.38 (m, 1H), 3.36 (dd, J = 9.5, 2.9 Hz, 1H), 2.68-2.51 (m, 3H), 1.87-1.84 (m, 2H), 1.02 (t, J = 7.2 Hz, 3H); 13C NMR (151 MHz, MeOD): δ 212.8, 76.2, 76.0, 73.2, 71.7, 50.9, 34.2, 29.1, 7.9; IR (neat): ν 2939, 2852, 1713, 1672, 1256, 1202, 1070, 841, 789 cm-1; HRMS (ESI): m/z [M + H]+ C9H17O5としての計算値205.1076; 実測値205.1072; [α]D 20 = -24.1 (c = 0.1, MeOH)。
【0252】
細胞ベ-スのアッセイ
【0253】
CHO K1細胞は、T175フラスコ中で、10%PBSを補充したF12培地において、37℃と5%CO2の条件下で増殖させた。350個の細胞を384ウェルプレ-トの各ウェルに播種し(Corning 4680、最終的に45 μL)、37℃で終夜インキュベ-トした。阻害剤は、20 mMのDMSO原液として保存した。CHO細胞の培養液中で、阻害剤を所望の濃度に希釈し、前記プレ-トのウェルに分注した(最終ウェル体積は50 mL)。等量のDMSO(媒体)を対照ウェルに分注した。細胞を阻害剤の存在下で5日間インキュベ-トした。処理後、前記培養液を除去し、洗浄/分注複合機(EL406、Biotek)を用いて、60 μLのPBS-Tで細胞を4回洗浄した。次いで、50 μLの 4%PFAのPBS-T溶液を前記プレ-トに分注し、室温で細胞を15分間インキュベ-トした後、60 μLのPBS-Tで4回洗浄した。続いて、非特異的レクチン結合を防止するために、5%ウシ血清アルブミン(BSA)のPBS-T溶液を用いて細胞を室温で45分間インキュベ-トした。次いで、前記BSA溶液を、50 μLの5 μg/mLフルオレセイン抱合型アリュ-リア・オ-レンティア・レクチン(AAL)(Vector Laboratories)溶液に置換し、細胞を暗所で室温に1時間維持した。陰性対照は、AAL及びレクチン拮抗剤としての100 mMフコ-スと共培養した。続いて、60 μLのPBS-Tで細胞を4回洗浄した。その後、50 μLの1 μg/mLヘキストのPBS溶液を各ウェルに分注し、ImageXpress MicroXLSハイコンテント顕微鏡(Molecular Device)を用いて細胞を直接に画像化した。DAPI及びFITCチャネル(それぞれ50 ms及び300 ms露光)を用いて、ウェルごとに4つのサイトを画像化した。MetaXpressソフトウェアを用いて、画像を処理した。簡潔に言えば、各サイトについて、統合された平均蛍光を定量し、核染色で測定された対応する数の細胞について正規化した。各サイトからの結果を組み合わせて、各ウェルについての単一の値を提供した。4回の生物学的な繰り返しを提供する条件ごとに、少なくとも4つの独立したウェルを画像化した。IC50曲線は、GraphPad Prismを用いてプロットした。結果は、媒体ウェル(DMSO処理)の平均値で正規化した。
【0254】
本発明者らは、細胞ベ-スのアッセイにおいて、3.2 nM~100 μMの濃度範囲にわたる用量反応実験を通じて、カルバフコ-ス及び選択された類似体の効力を評価した。細胞ベ-スのフコシル化拮抗剤2-デオキシ-2-フルオロ-L-フコ-ス(2FFuc)は、対照として使用した(図1A-D)。
【0255】
前記アッセイの条件下では、2FFucでのIC50は、137±79 μMと測定され、以下のように、最も強力な化合物は、IC50が16.1±7.7 μMのカルバフコ-スであった。
【0256】
以下の化合物は、前記アッセイの条件下で良好な結果を示さなかった。
【0257】
全ての引用は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0258】
他の実施形態
【0259】
本発明は、1つまたは複数の実施形態に関して記載されてきた。しかし、請求項に定義された本発明の範囲を逸脱することなく、多数の変更及び改変を行えることは当業者にとって明白であろう。従って、本発明の様々な実施形態が本明細書に開示されているが、当業者の共通の一般知識に従って、本発明の範囲内で多くの適合及び改変を行うことができる。このような改変には、実質的に同じ方法で同じ結果を達成するための、本発明の任意の態様を既知の等価物で置き換えることが含まれる。理解すべきこととして、特定の実施形態は、追加の実施形態を作成するために任意の方法及び任意の数で組み合わせることができ、実施形態の任意の順列及び組み合わせは、文脈が別段に示さない限り、本出願の明細書によって開示されるとみなされるべきである。数値範囲には、範囲を定義する数値が含まれる。本明細書における値の数値範囲の列挙は、範囲内に入る個々の値を個別に参照する簡単な方法として機能することを意図しているに過ぎない。本明細書で別段に示さない限り、各個別の値は、本明細書に個別に記載されているかのように、本明細書に組み込まれる。「約」とは、5%以下の値または範囲からの差異(プラスまたはマイナス)、例えば、0.5%、1%、1.5%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%、5.0%等を意味する。本発明を説明する文脈で使用される「a」、「an」及び「the」という用語及び同様の参照物は、本明細書で別段に示さない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方をカバ-すると解釈されるべきである。本明細書において、「含む」という言葉は、「含むが、これに限定されない」という語句と実質的に同等であるオ-プンエンドの用語として使用され、「含む」という言葉は、対応する意味を有する。しかし、理解すべきこととして、「含むこと」または「含む」という言葉、または同じ語源を有する変形が本明細書で使用される場合、指定されていない要素、ステップ、または成分を除外する「・・・からなること」または「・・・からなる」への変形または修正、または、クレ-ムされた発明の基本的及び新規な特徴に実質的に影響を与えないものと共に、特定の材料または列挙されたステップに限定する「本質的に・・・からなること」または「本質的に・・・からなる」への変形または修正も企図される。本明細書における参考文献の引用は、そのような参考文献が本発明に対する先行技術であることを認めるものと解釈されるべきではない。全ての刊行物は、あたかも個々の刊行物が参照により本明細書に組み込まれることが具体的かつ個別に示され、本明細書に完全に記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。本発明は、実施例を参照して実質的に前述した全ての実施形態及び変形を含む。



図1A
図1B
図1C
図1D
【国際調査報告】