(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-04
(54)【発明の名称】CRISPRベースの塩基エディターシステムを使用した系列特異的抗原の阻害のための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/10 20060101AFI20230627BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20230627BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230627BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230627BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230627BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20230627BHJP
A61K 35/15 20150101ALI20230627BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20230627BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230627BHJP
A61K 38/50 20060101ALI20230627BHJP
A61K 47/62 20170101ALI20230627BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20230627BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230627BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20230627BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20230627BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20230627BHJP
A61K 38/47 20060101ALN20230627BHJP
【FI】
C12N5/10
A61P7/00
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
A61K35/28
A61K35/15
A61K35/76
A61K48/00
A61K38/50
A61K47/62
A61K47/68
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K35/17
C12N15/09 110
C12N15/12
A61K38/47
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022574196
(86)(22)【出願日】2021-06-03
(85)【翻訳文提出日】2023-01-16
(86)【国際出願番号】 US2021035691
(87)【国際公開番号】W WO2021247856
(87)【国際公開日】2021-12-09
(32)【優先日】2020-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】306018457
【氏名又は名称】ザ・トラスティーズ・オブ・コロンビア・ユニバーシティ・イン・ザ・シティ・オブ・ニューヨーク
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ムカジー,シッダールタ
(72)【発明者】
【氏名】ボロット,フローレンス
(72)【発明者】
【氏名】アリ,アブドゥッラー マフムード
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC14
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA13
4C084BA41
4C084BA44
4C084DC22
4C084NA13
4C084ZA511
4C084ZB261
4C084ZB271
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB12
4C085BB50
4C085CC03
4C085CC31
4C085DD62
4C085EE03
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB34
4C087BB37
4C087BB44
4C087BC83
4C087CA04
4C087CA12
4C087MA02
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA51
4C087ZB26
4C087ZB27
4C087ZC75
(57)【要約】
本書では、血液学的悪性腫瘍の免疫療法のために、CD33またはEMR2などの系列特異的細胞表面抗原をターゲティングする薬剤と、CD33またはEMR2などの系列特異的細胞表面抗原の発現が改変されている造血細胞集団とを投与する方法が開示される。また本書では、血液学的悪性腫瘍の免疫療法のために、複数の系列特異的細胞表面抗原をターゲティングする薬剤と、複数の系列特異的細胞表面抗原の発現が改変されている造血細胞集団とを投与する方法も開示される。CD33、もしくはEMR2、または複数の系列特異的細胞表面抗原に変異を含む細胞も提供され、CRISPRベースの塩基エディターシステムを使用してそのような細胞を産生する方法も提供される。
【選択図】
図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞であって、内因性CD33遺伝子のエキソン2内の改変されたスプライスアクセプターまたはエキソンスプライシングエンハンサー部位を含み、前記改変は、野生型の同等の細胞と比較した場合、CD33のエキソン2によってコードされるエピトープの発現レベル低下を引き起こす、前記遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
【請求項2】
前記改変は、CD33のエキソン2内の前記スプライスアクセプターまたはエキソンスプライシングエンハンサー部位におけるヌクレオチド置換である、請求項1に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
【請求項3】
前記改変は、CD33のイントロン1/エキソン2ジャンクションのヌクレオチド配列におけるヌクレオチド置換である、請求項1に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
【請求項4】
前記改変は、CからT、GからA、AからG、及びTからCからなる群から選択されるヌクレオチド置換である、請求項3に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
【請求項5】
遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞であって、内因性EMR2遺伝子のエキソン13内の改変されたスプライスドナー部位を含み、前記改変は、野生型の同等の細胞と比較した場合、EMR2のエキソン13によってコードされるエピトープの発現レベル低下を引き起こす、前記遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
【請求項6】
前記改変は、EMR2のエキソン13内の前記スプライスドナー部位におけるヌクレオチド置換である、請求項5に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
【請求項7】
前記改変は、EMR2のイントロン12/エキソン13ジャンクションのヌクレオチド配列におけるヌクレオチド置換である、請求項5に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
【請求項8】
前記改変は、CからT、GからA、AからG、及びTからCからなる群から選択されるヌクレオチド置換である、請求項7に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
【請求項9】
遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞であって、系列特異的抗原をコードする第1の内因性遺伝子のエキソン内の改変されたスプライスアクセプターまたはエキソンスプライシングエンハンサー部位と、系列特異的抗原をコードする第2の内因性遺伝子のエキソン内の改変されたスプライスアクセプターまたはエキソンスプライシングエンハンサー部位とを含み、前記改変は、野生型の同等の細胞と比較した場合、前記第1の内因性遺伝子の前記エキソンによってコードされるエピトープの発現レベル低下及び/または前記第2の内因性遺伝子の前記エキソンによってコードされるエピトープの発現低下を引き起こす、前記遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
【請求項10】
前記第1の内因性遺伝子はCD33であり、前記エキソンはエキソン2であり、前記第2の内因性遺伝子はEMR2であり、前記エキソンはエキソン13である、請求項9に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
【請求項11】
遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞であって、系列特異的抗原をコードする遺伝子に少なくとも1つのヌクレオチド置換を含み、前記ヌクレオチド置換は、スプライスエレメントをコードする配列内に含まれ、前記ヌクレオチド置換は、前記遺伝子によってコードされる転写物の選択的スプライシングをもたらし、前記選択的スプライシングは、野生型の同等の細胞と比較した場合、前記遺伝子によってコードされるエピトープの発現レベル低下を引き起こし、前記エピトープは、免疫療法剤によってターゲティングされる、前記遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
【請求項12】
前記スプライスエレメントは、スプライスアクセプター、スプライスドナー、スプライスエンハンサー、及びスプライスサイレンサーからなる群から選択される、請求項11に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
【請求項13】
選択的スプライシングは、エピトープをコードするエキソンがスキップされることを引き起こす、請求項11に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
【請求項14】
選択的スプライシングは、エピトープをコードするエキソンが延長されることを引き起こす、請求項11に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
【請求項15】
前記ヌクレオチド置換は、CからT、GからA、AからG、及びTからCからなる群から選択される、請求項11に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
【請求項16】
CD34+である、請求項1~15のいずれか1項に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
【請求項17】
対象の骨髄細胞または末梢血単核細胞に由来する、請求項1~16のいずれか1項に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
【請求項18】
前記対象は、造血器悪性腫瘍を有するヒト患者である、請求項17に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
【請求項19】
前記対象は、健康なヒトドナーである、請求項17に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
【請求項20】
予測されるオフターゲット部位のいずれにも変異を含まない、請求項1~19のいずれかに記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
【請求項21】
請求項1~21のいずれか1項に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞を複数含む細胞集団。
【請求項22】
系列特異的抗原をコードする遺伝子に少なくとも1つのヌクレオチド置換を含む、遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞を産生する方法であって、
(i)造血幹細胞または前駆細胞を用意することと、
(ii)前記細胞に、(a)スプライスエレメントを含む前記造血幹細胞または前駆細胞のゲノム内のヌクレオチド配列をターゲティングするターゲティングドメインを含むガイドRNA(gRNA)、及び(b)シトシンデアミナーゼまたはアデノシンデアミナーゼ(塩基エディター)に融合した、触媒的に損なわれたCas9エンドヌクレアーゼを導入することとを含み、それにより、遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞を産生する前記方法。
【請求項23】
前記スプライスエレメントは、スプライスアクセプター、スプライスドナー、スプライスエンハンサー、及びスプライスサイレンサーからなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
遺伝子中の前記少なくとも1つのヌクレオチド置換は、選択的スプライシングを引き起こす、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
選択的スプライシングは、エピトープをコードするエキソンがスキップされることを引き起こす、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
遺伝子中の前記少なくとも1つのヌクレオチド置換は、選択的スプライシングを引き起こし、エピトープをコードするエキソンが延長されることを引き起こす、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記ヌクレオチド置換は、CからT、GからA、AからG、及びTからCからなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記gRNAは、配列番号1~4及び46~47からなる群から選択される配列を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
前記系列特異的抗原はCD33である、請求項22に記載の方法。
【請求項30】
前記系列特異的抗原はEMR2である、請求項22に記載の方法。
【請求項31】
第1の系列特異的抗原及び第2の系列特異的抗原をコードする遺伝子に少なくとも1つのヌクレオチド置換を含む、遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞を産生する方法であって、
(i)造血幹細胞または前駆細胞を用意することと、
(ii)前記細胞に、(a)スプライスエレメントを含む前記造血幹細胞または前駆細胞のゲノム内の第1のヌクレオチド配列をターゲティングするターゲティングドメインを含む第1のガイドRNA(gRNA)、及び(b)シトシンデアミナーゼまたはアデノシンデアミナーゼ(塩基エディター)に融合した、第1の触媒的に損なわれたCas9エンドヌクレアーゼを導入することと、
(iii)前記細胞に、(a)スプライスエレメントを含む前記造血幹細胞または前駆細胞のゲノム内の第2のヌクレオチド配列をターゲティングするターゲティングドメインを含む第2のガイドRNA(gRNA)、及び(b)シトシンデアミナーゼまたはアデノシンデアミナーゼ(塩基エディター)に融合した、第2の触媒的に損なわれたCas9エンドヌクレアーゼをさらに導入することとを含み、これにより、遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞を産生する前記方法。
【請求項32】
前記スプライスエレメントは、スプライスアクセプター、スプライスドナー、スプライスエンハンサー、及びスプライスサイレンサーからなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
遺伝子中の前記少なくとも1つのヌクレオチド置換は、選択的スプライシングを引き起こす、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
選択的スプライシングは、エピトープをコードするエキソンがスキップされることを引き起こす、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
遺伝子中の前記少なくとも1つのヌクレオチド置換は、選択的スプライシングを引き起こし、エピトープをコードするエキソンが延長されることを引き起こす、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記ヌクレオチド置換は、CからT、GからA、AからG、及びTからCからなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記第1のgRNAは、配列番号1~3からなる群から選択される配列を含み、前記第2のgRNAは、配列番号4及び46~47からなる群から選択される配列を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項38】
前記第1の系列特異的抗原はCD33であり、前記第2の系列特異的抗原はEMR2である、請求項31に記載の方法。
【請求項39】
前記塩基エディターは、シトシン塩基エディターである、請求項22~38のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
前記塩基エディターは、アデノシン塩基エディターである、請求項22~38のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
(a)及び(b)は、前記細胞に導入される1つのベクターにおいてコードされる、請求項22~40のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
前記ベクターはウイルスベクターである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
(b)はタンパク質形態にあり、(a)及び(b)は、予備形成されたリボ核タンパク質複合体として前記細胞に導入される、請求項22~40のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
前記リボ核タンパク質複合体は、電気穿孔を介して前記細胞に導入される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記造血幹細胞または前駆細胞はCD34+である、請求項22~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記造血幹細胞または前駆細胞は、対象の骨髄細胞または末梢血単核細胞(PBMC)に由来する、請求項22~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記対象は造血障害を有する、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
請求項22~47のいずれか1項に記載の方法によって産生された、遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
【請求項49】
造血障害を処置する方法であって、それを必要とする対象に、請求項1~20及び48のいずれか1項に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または請求項21に記載の細胞集団の有効量を投与することを含む前記方法。
【請求項50】
前記造血障害は造血器悪性腫瘍である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
系列特異的抗原をターゲティングする薬剤の有効量を前記対象に投与することをさらに含み、前記薬剤は、前記系列特異的抗原と結合する抗原結合性フラグメントを含む、請求項49または請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記系列特異的抗原をターゲティングする前記薬剤は、前記系列特異的抗原と結合する前記抗原結合性フラグメントを含む、キメラ抗原受容体(CAR)を発現する免疫細胞である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記系列特異的抗原はCD33またはEMR2である、請求項51及び52に記載の方法。
【請求項54】
前記少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原をターゲティングする薬剤の有効量を前記対象に投与することをさらに含み、前記薬剤は、前記少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原と結合する抗原結合性フラグメントを含む、請求項51~53に記載の方法。
【請求項55】
前記免疫細胞はT細胞である、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
前記免疫細胞、前記遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞、またはその両方は、同種異系である、請求項49~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記免疫細胞、前記遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞、またはその両方は、自己由来である、請求項49~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記対象は、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、白血病、または多発性骨髄腫を有するヒト患者である、請求項49~57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記対象は、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、または慢性リンパ芽球性白血病である白血病を有するヒト患者である、請求項58に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2020年6月3日に出願された米国第63/033,966号、2020年6月3日に出願された米国第63/033,970号、及び2021年5月4日に出願された米国第63/183,791号の優先権を主張し、これら各々の内容全体は、参照により本書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本願には、ASCII形式で電子提出された配列表が含まれ、その全体は参照によりここに組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
標的免疫療法の出現は新たな可能性を開き、リンパ芽球性白血病患者に関して大きな成功を示している。しかし、キメラ抗原T細胞療法(CAR-T)の臨床試験では、ターゲティング可能な独特の細胞表面抗原がないことから、CD19標的免疫療法を超える成功は限られることが示されている。実際、CD19免疫療法の成功は、免疫グロブリンの補充により管理できるB細胞形成不全にかかっている。
【0004】
しかし、あらゆる標的免疫療法のアプローチは、がん性細胞において独特にまたは優先的に発現される抗原を必要とする。実際、抗原が免疫療法の理想的な候補となるためには、その抗原はがん細胞に特有であり、その生存に不可欠であり、正常細胞では発現しない必要がある。今日まで、がん性細胞に対する真に腫瘍特異的な抗原は見出されていない。そのような理想的な抗原が存在しないがんのために、系列特異的であり悪性細胞によって過剰発現される抗原のターゲティングを、系列特異的抗原(LSA)を欠く遺伝子工学操作された幹細胞の移植と組み合わせた新たなアプローチが検討された。
【0005】
以前に公開された研究及び特許(米国特許第10,137,155号)において、CD33をターゲティングするCAR-T細胞及び/またはADゲムツズマブオゾガマイシン(GO)を使用したアプローチは、系列特異的抗原を欠失させるようにCRISPR/Cas9技術を使用して工学操作されたCD33ノックアウト(KO)造血幹細胞の生着及びリポピュレーションに影響を与えることなく、CD33+急性骨髄性白血病保有マウスをレスキューできたことが示された。
【0006】
しかし、CRISPR/WT Cas9によるゲノム編集はDNA二重鎖切断(DSB)を誘導し、これはp53を介したDNA損傷応答及び染色体転座に関連付けられている。
【0007】
よって、オフターゲット効果及び消耗性の免疫抑制副作用を引き起こさないターゲティング抵抗性造血幹細胞を生成するために、異なるアプローチが必要である。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、系列特異的細胞表面抗原と結合する抗原結合性フラグメントを含む薬剤(例えば、系列特異的細胞表面抗原をターゲティングするキメラ受容体を発現する免疫細胞)が、系列特異的細胞表面抗原を発現する細胞の細胞死を選択的に引き起こすが、抗原が欠損している細胞(例えば、遺伝子工学操作された造血細胞)は、それによって引き起こされる細胞死を回避するという発見に少なくとも部分的に基づく。このような所見に基づけば、系列特異的細胞表面抗原をターゲティングする薬剤、例えばCD33をターゲティングするCAR-T細胞と、系列特異的細胞表面抗原(例えば、CD33)が欠損しているかまたは改変されている造血細胞との組み合わせを用いる免疫療法が、造血器悪性腫瘍の効果的な処置方法をもたらすことは予想されたであろう。
【0009】
本書では、抗体及びキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)を含む治療剤によってターゲティングされるエピトープを欠いているか、または修飾されたエピトープを含むHSCである、ターゲティング抵抗性造血幹細胞を生成するための、CRISPRベースの塩基エディターの使用が記述される。このアプローチはさらに、標的免疫療法と、塩基エディターを用いて生成されたターゲティング抵抗性造血幹細胞の移植とを組み合わせた、血液学的悪性腫瘍患者の処置を可能にし、CRISPR/WT Cas9ゲノム編集の潜在的な遺伝毒性を回避するであろう。この新たなアプローチは、CRISPRベースのシトシン塩基エディター及びアデニン塩基エディター(CBE及びABE)を使用したHSC/HSPCの高い編集効率を可能にする。CBE及びABEは、それぞれシチジンデアミナーゼまたはアデノシンデアミナーゼに融合したCas9ニッカーゼであり、DSBを生成することなく、ターゲットの領域における正確な塩基置換を可能にする。塩基エディターは、DSBを避けるため、DSBに起因する望まれないインデル、転座、または再構成をなくす安全性の高い編集ツールと考えられている。
【0010】
一態様において、本開示は、遺伝子工学操作の前には造血細胞上に存在する系列特異的細胞表面抗原が欠損している、遺伝子工学操作された造血細胞(例えば、HSC)を提供する。いくつかの実施形態では、系列特異的細胞表面抗原をコードする内因性遺伝子の全体または一部が、例えば塩基エディターを使用する(例えば、CRISPRベースの塩基エディターシステムを用いる)ゲノム編集によって欠失する。いくつかの実施形態では、CRISPRベースの塩基エディターシステムは、系列特異的細胞表面抗原をコードする内因性遺伝子からエキソンを欠失させる。いくつかの実施形態では、CRISPRベースの塩基エディターシステムは、系列特異的細胞表面抗原をコードする内因性遺伝子におけるヌクレオチド置換をもたらす。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド置換は、スプライスエレメントをコードする配列内にあり、ヌクレオチド置換は、遺伝子によってコードされる転写物の選択的スプライシングをもたらす。いくつかの実施形態では、CRISPRベースの塩基エディターシステムは、内因性遺伝子におけるスプライスエレメントをターゲティングし、CRISPRベースの塩基エディターシステムは、遺伝子によってコードされる転写物の選択的スプライシングをもたらす。いくつかの実施形態では、選択的スプライシングは、エピトープをコードするエキソンがスキップされることを引き起こす。いくつかの実施形態では、選択的スプライシングは、エピトープをコードするエキソンが延長されることを引き起こす。いくつかの実施形態では、選択的スプライシングは、早期コドン終結を誘導する。いくつかの実施形態では、スプライスエレメントは、スプライスドナー、スプライスアクセプター、スプライスエンハンサー、またはスプライスサイレンサーである。いくつかの実施形態では、塩基エディターは、シトシン塩基エディターである。いくつかの実施形態では、塩基エディターは、アデニン塩基エディターである。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド置換は、「C」から「T」である。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド置換は、「G」から「A」である。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド置換は、「A」から「G」である。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド置換は、「T」から「C」である。
【0011】
いくつかの実施形態では、系列特異的細胞表面抗原はCD33である。いくつかの実施形態では、CD33のエキソン2内のスプライスアクセプターまたはエキソンスプライシングエンハンサー部位が改変される。いくつかの実施形態では、CD33のイントロン1/エキソン2ジャンクションのヌクレオチド配列が改変される。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド置換は、「C」から「T」である。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド置換は、「G」から「A」である。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド置換は、「A」から「G」である。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド置換は、「T」から「C」である。いくつかの実施形態では、gRNA配列は、CD33をコードするヌクレオチド配列の一部にハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、gRNA配列は、CD33をコードするヌクレオチド配列のエキソン2内のスプライスアクセプターまたはエキソンスプライシングエンハンサー部位をターゲティングする。いくつかの実施形態では、gRNA配列は、CD33のSNPであるrs12459419をターゲティングする。いくつかの実施形態では、gRNA配列は、CD33のイントロン1/エキソン2ジャンクションをターゲティングする。いくつかの実施形態では、gRNA配列は、配列番号37を含むヌクレオチド配列をターゲティングする。いくつかの実施形態では、gRNAは、配列番号1~3のいずれか1つを含む配列を有する。
【0012】
いくつかの実施形態では、系列特異的細胞表面抗原はEMR2である。いくつかの実施形態では、EMR2のエキソン13内のスプライスドナー部位が改変される。いくつかの実施形態では、EMR2のイントロン12/エキソン13ジャンクションのヌクレオチド配列が改変される。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド置換は、「C」から「T」である。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド置換は、「G」から「A」である。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド置換は、「A」から「G」である。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド置換は、「T」から「C」である。いくつかの実施形態では、gRNA配列は、EMR2をコードするヌクレオチド配列の一部にハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、gRNA配列は、EMR2をコードするヌクレオチド配列のエキソン13内のスプライスドナー部位をターゲティングする。いくつかの実施形態では、gRNA配列は、EMR2のイントロン12/エキソン13ジャンクションをターゲティングする。いくつかの実施形態では、gRNA配列は、配列番号40を含むヌクレオチド配列をターゲティングする。いくつかの実施形態では、gRNAは、配列番号4または46~47のいずれか1つを含む配列を有する。
【0013】
いくつかの実施形態では、造血細胞は、造血幹細胞(例えば、CD34+/CD33Δ2細胞またはCD34+/EMRΔ13)である。
【0014】
いくつかの実施形態では、造血幹細胞は、骨髄細胞または末梢血単核細胞(PBMC)から取得することができる。
【0015】
いくつかの態様では、本開示は、第1の系列特異的細胞表面抗原及び少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原、すなわち、第2の系列特異的細胞表面抗原、第3の系列特異的細胞表面抗原、第4の系列特異的細胞表面抗原などを組み合わせて阻害するための組成物及び方法を提供する。
【0016】
いくつかの実施形態では、更なる系列特異的細胞表面抗原も、CRISPRベースの塩基エディターシステムを使用して造血細胞中で欠失または阻害される。いくつかの実施形態では、系列特異的細胞表面抗原(複数可)をコードする内因性遺伝子の全体または一部が、例えば塩基エディターを使用する(例えば、CRISPRベースの塩基エディターシステムを用いる)ゲノム編集によって欠失する。いくつかの実施形態では、CRISPRベースの塩基エディターシステムは、系列特異的細胞表面抗原(複数可)をコードする内因性遺伝子からエキソンを欠失させる。いくつかの実施形態では、CRISPRベースの塩基エディターシステムは、系列特異的細胞表面抗原(複数可)をコードする内因性遺伝子におけるヌクレオチド置換をもたらす。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド置換は、スプライスエレメントをコードする配列内にあり、ヌクレオチド置換は、遺伝子(複数可)によってコードされる転写物の選択的スプライシングをもたらす。いくつかの実施形態では、CRISPRベースの塩基エディターシステムは、内因性遺伝子(複数可)におけるスプライスエレメントをターゲティングし、CRISPRベースの塩基エディターシステムは、遺伝子(複数可)によってコードされる転写物の選択的スプライシングをもたらす。いくつかの実施形態では、選択的スプライシングは、エピトープをコードするエキソンがスキップされることを引き起こす。いくつかの実施形態では、選択的スプライシングは、エピトープをコードするエキソンが延長されることを引き起こす。いくつかの実施形態では、選択的スプライシングは、早期コドン終結を誘導する。いくつかの実施形態では、スプライスエレメントは、スプライスドナー、スプライスアクセプター、スプライスエンハンサー、またはスプライスサイレンサーである。いくつかの実施形態では、塩基エディターは、シトシン塩基エディターである。いくつかの実施形態では、塩基エディターは、アデニン塩基エディターである。いくつかの実施形態では、塩基エディターは、アデニン塩基エディターである。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド置換は、「C」から「T」である。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド置換は、「G」から「A」である。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド置換は、「A」から「G」である。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド置換は、「T」から「C」である。
【0017】
いくつかの実施形態では、第1の系列特異的細胞表面抗原はCD33である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原または第2の系列特異的細胞表面抗原はEMR2である。
【0018】
いくつかの実施形態では、複数の更なる系列特異的細胞表面抗原が、CRISPRベースの塩基エディターシステムを使用して欠失または阻害される。いくつかの実施形態では、複数の更なる系列特異的細胞表面抗原は、CD33及びEMR2とは異なる。
【0019】
いくつかの実施形態では、造血細胞は、造血幹細胞(例えば、CD34+/CD33Δ2/EMR2Δ13細胞)である。
【0020】
いくつかの実施形態では、造血幹細胞は、骨髄細胞または末梢血単核細胞(PBMC)から取得することができる。
【0021】
いくつかの態様では、本開示は、内因性CD33遺伝子のエキソン2内の改変されたスプライスアクセプターまたはエキソンスプライシングエンハンサー部位を含む、遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞を提供する。本開示の一態様は、遺伝子工学操作された造血幹細胞及び/または前駆細胞であって、野生型の同等物と比較した場合、CD33のエキソン2によってコードされるエピトープの発現レベルが低下している遺伝子工学操作された造血幹細胞及び/または前駆細胞を提供する。いくつかの実施形態では、遺伝子工学操作された造血幹細胞及び/または前駆細胞は、野生型の同等物によって発現されるCD33のエピトープの10%未満を発現する。いくつかの実施形態では、遺伝子工学操作された造血幹細胞及び/または前駆細胞は、CD33のエピトープを発現しない。いくつかの実施形態では、CD33のエキソン2内のスプライスアクセプターまたはエキソンスプライシングエンハンサー部位が改変される。いくつかの実施形態では、CD33のイントロン1/エキソン2ジャンクションのヌクレオチド配列が改変される。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド置換は、「C」から「T」である。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド置換は、「G」から「A」である。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド置換は、「A」から「G」である。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド置換は、「T」から「C」である。いくつかの実施形態では、遺伝子工学操作された造血幹細胞及び/または前駆細胞はCD34+である。いくつかの実施形態では、遺伝子工学操作された造血幹細胞及び/または前駆細胞は、対象(例えば、造血器悪性腫瘍を有するヒト患者、または健康なドナー)の骨髄細胞または末梢血単核細胞に由来する。
【0022】
いくつかの態様では、本開示は、内因性EMR2遺伝子のエキソン13内の改変されたスプライスドナー部位を含む、遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞を提供する。本開示の一態様は、遺伝子工学操作された造血幹細胞及び/または前駆細胞を提供し、遺伝子工学操作された造血幹細胞及び/または前駆細胞は、野生型の同等物と比較した場合、EMR2のエキソン13によってコードされるエピトープの発現レベルが低下している。本開示の一態様は、遺伝子工学操作された造血幹細胞及び/または前駆細胞を提供し、改変されたスプライスドナー部位は、野生型の同等物と比較した場合、早期コドン終結及び変異型またはトランケート型のEMR2の産生を誘導する。いくつかの実施形態では、遺伝子工学操作された造血幹細胞及び/または前駆細胞は、EMR2のエピトープを発現しない。いくつかの実施形態では、EMR2のエキソン13内のスプライスドナー部位が改変される。いくつかの実施形態では、EMR2のイントロン12/エキソン13ジャンクションのヌクレオチド配列が改変される。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド置換は、「C」から「T」である。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド置換は、「G」から「A」である。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド置換は、「A」から「G」である。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド置換は、「T」から「C」である。いくつかの実施形態では、遺伝子工学操作された造血幹細胞及び/または前駆細胞はCD34+である。いくつかの実施形態では、遺伝子工学操作された造血幹細胞及び/または前駆細胞は、対象(例えば、造血器悪性腫瘍を有するヒト患者、または健康なドナー)の骨髄細胞または末梢血単核細胞に由来する。
【0023】
いくつかの態様では、本開示は、内因性CD33遺伝子のエキソン2内の改変されたスプライスアクセプターまたはエキソンスプライシングエンハンサー部位、及び少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原のエキソン内の改変されたスプライスエレメントを含む、遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞を提供する。本開示の一態様は、遺伝子工学操作された造血幹細胞及び/または前駆細胞を提供し、遺伝子工学操作された造血幹細胞及び/または前駆細胞は、野生型の同等物と比較した場合、CD33及び/または少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原のエキソンによってコードされるエピトープの発現レベルが低下している。いくつかの実施形態では、遺伝子工学操作された造血幹細胞及び/または前駆細胞は、野生型の同等物によって発現される、CD33及び/または少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原のエキソンによってコードされるエピトープの10%未満を発現する。いくつかの実施形態では、遺伝子工学操作された造血幹細胞及び/または前駆細胞はCD34+である。いくつかの実施形態では、遺伝子工学操作された造血幹細胞及び/または前駆細胞は、対象(例えば、造血器悪性腫瘍を有するヒト患者、または健康なドナー)の骨髄細胞または末梢血単核細胞に由来する。
【0024】
いくつかの態様では、本開示は、内因性CD33遺伝子のエキソン2内の改変されたスプライスアクセプターまたはエキソンスプライシングエンハンサー部位、及び内因性EMR2のエキソン13内の改変されたスプライスドナー部位を含む、遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞を提供する。本開示の一態様は、遺伝子工学操作された造血幹細胞及び/または前駆細胞を提供し、遺伝子工学操作された造血幹細胞及び/または前駆細胞は、野生型の同等物と比較した場合、CD33のエキソン2によってコードされるエピトープ及び/またはEMR2のエキソン13によってコードされるエピトープの発現レベルが低下している。いくつかの実施形態では、遺伝子工学操作された造血幹細胞及び/または前駆細胞は、野生型の同等物によって発現される、CD33のエキソン2によってコードされるエピトープ及び/またはEMR2のエキソン13によってコードされるエピトープの10%未満を発現する。いくつかの実施形態では、選択的スプライシングは、野生型の同等物と比較した場合、EMR2の早期コドン終結及び変異型またはトランケート型のEMR2の産生を誘導する。いくつかの実施形態では、遺伝子工学操作された造血幹細胞及び/または前駆細胞はCD34+である。いくつかの実施形態では、遺伝子工学操作された造血幹細胞及び/または前駆細胞は、対象(例えば、造血器悪性腫瘍を有するヒト患者、または健康なドナー)の骨髄細胞または末梢血単核細胞に由来する。
【0025】
本開示は、いくつかの実施形態では、本書に記述される遺伝子工学操作された造血幹細胞及び/または前駆細胞を複数含む細胞集団も提供する。
【0026】
別の態様では、本開示は、遺伝子工学操作された造血幹細胞及び/または前駆細胞を産生する方法であって、(i)造血幹細胞及び/または前駆細胞を用意することと、(ii)細胞に、(a)系列特異的細胞表面抗原をコードするヌクレオチド配列をターゲティングするガイドRNA(gRNA)、及び(b)シトシンデアミナーゼまたはアデノシンデアミナーゼ(塩基エディター)に融合したDNA修飾酵素すなわちCas9ニッカーゼに融合した、触媒的に損なわれたCasタンパク質を導入することとを含み、それにより、遺伝子工学操作された造血幹細胞及び/または前駆細胞を産生する方法を提供する。
【0027】
別の態様では、本開示は、遺伝子工学操作された造血幹細胞及び/または前駆細胞を産生する方法であって、(i)造血幹細胞及び/または前駆細胞を用意することと、(ii)細胞に、(a)スプライスエレメントを含む造血幹細胞または前駆細胞のゲノム内のヌクレオチド配列をターゲティングするターゲティングドメインを含むガイドRNA(gRNA)、及び(b)シトシンデアミナーゼまたはアデノシンデアミナーゼ(塩基エディター)に融合したDNA修飾酵素すなわちCas9ニッカーゼに融合した、触媒的に損なわれたCasタンパク質を導入することとを含み、それにより、遺伝子工学操作された造血幹細胞及び/または前駆細胞を産生する方法を提供する。
【0028】
いくつかの実施形態では、この方法は、系列特異的細胞表面抗原をコードする内因性遺伝子からエキソンを欠失させる。いくつかの実施形態では、この方法は、系列特異的細胞表面抗原をコードする内因性遺伝子におけるヌクレオチド置換をもたらす。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド置換は、スプライスエレメントをコードする配列内にあり、ヌクレオチド置換は、遺伝子によってコードされる転写物の選択的スプライシングをもたらす。いくつかの実施形態では、この方法は、内因性遺伝子におけるスプライスエレメントをターゲティングし、この方法は、遺伝子によってコードされる転写物の選択的スプライシングをもたらす。いくつかの実施形態では、選択的スプライシングは、エピトープをコードするエキソンがスキップされることを引き起こす。いくつかの実施形態では、選択的スプライシングは、エピトープをコードするエキソンが延長されることを引き起こす。いくつかの実施形態では、スプライスエレメントは、スプライスドナー、スプライスアクセプター、スプライスエンハンサー、またはスプライスサイレンサーである。いくつかの実施形態では、塩基エディターは、シトシン塩基エディターである。いくつかの実施形態では、塩基エディターは、アデニン塩基エディターである。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド置換は、「C」から「T」である。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド置換は、「G」から「A」である。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド置換は、「A」から「G」である。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド置換は、「T」から「C」である。
【0029】
いくつかの実施形態では、系列特異的細胞表面抗原はCD33である。いくつかの実施形態では、gRNAは、CD33のエキソン2にフランキングするヌクレオチド配列をターゲティングする。いくつかの実施形態では、gRNAは、配列番号1、配列番号2、及び/または配列番号3と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、gRNA配列は、CD33のイントロン1/エキソン2ジャンクションをターゲティングする。いくつかの実施形態では、gRNA配列は、配列番号37を含むヌクレオチド配列をターゲティングする。いくつかの実施形態では、gRNAと、DNA修飾酵素に融合した、触媒的に損なわれたCasタンパク質とは、細胞に導入される1つのベクターにおいてコードされる。いくつかの実施形態では、ベクターはウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、gRNAと、DNA修飾酵素に融合した、触媒的に損なわれたCasタンパク質とは、予備形成されたリボ核タンパク質複合体として細胞に導入される。いくつかの実施形態では、リボ核タンパク質複合体は、電気穿孔を介して細胞に導入される。
【0030】
いくつかの実施形態では、系列特異的細胞表面抗原はEMR2である。いくつかの実施形態では、gRNAは、EMR2のエキソン13にフランキングするヌクレオチド配列をターゲティングする。いくつかの実施形態では、gRNAは、配列番号4、配列番号46及び/または配列番号47と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、gRNA配列は、EMR2のイントロン12/エキソン13ジャンクションをターゲティングする。いくつかの実施形態では、gRNA配列は、配列番号40を含むヌクレオチド配列をターゲティングする。いくつかの実施形態では、gRNAと、DNA修飾酵素に融合した、触媒的に損なわれたCasタンパク質とは、細胞に導入される1つのベクターにおいてコードされる。いくつかの実施形態では、ベクターはウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、gRNAと、DNA修飾酵素に融合した、触媒的に損なわれたCasタンパク質とは、予備形成されたリボ核タンパク質複合体として細胞に導入される。いくつかの実施形態では、リボ核タンパク質複合体は、電気穿孔を介して細胞に導入される。
【0031】
別の態様では、本開示は、遺伝子工学操作された造血幹細胞及び/または前駆細胞を産生する方法であって、(i)造血幹細胞及び/または前駆細胞を用意することと、(ii)細胞に、(a)第1の系列特異的細胞表面抗原をコードするヌクレオチド配列をターゲティングするガイドRNA(gRNA)、及び(b)シトシンデアミナーゼまたはアデノシンデアミナーゼ(塩基エディター)に融合したDNA修飾酵素すなわちCas9ニッカーゼに融合した、触媒的に損なわれたCasタンパク質を導入することとを含み、かつ、細胞に、少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原をターゲティングする第2のガイドRNA(gRNA)、及び(b)シトシンデアミナーゼまたはアデノシンデアミナーゼ(塩基エディター)に融合したDNA修飾酵素すなわちCas9ニッカーゼに融合した、触媒的に損なわれたCasタンパク質を導入することをさらに含み、それにより、遺伝子工学操作された造血幹細胞及び/または前駆細胞を産生する方法を提供する。
【0032】
別の態様では、本開示は、遺伝子工学操作された造血幹細胞及び/または前駆細胞を産生する方法であって、(i)造血幹細胞及び/または前駆細胞を用意することと、(ii)細胞に、(a)第1の系列特異的細胞表面抗原のスプライスエレメントを含む造血幹細胞または前駆細胞のゲノム内のヌクレオチド配列をターゲティングするターゲティングドメインを含むガイドRNA(gRNA)、及び(b)シトシンデアミナーゼまたはアデノシンデアミナーゼ(塩基エディター)に融合したDNA修飾酵素すなわちCas9ニッカーゼに融合した、触媒的に損なわれたCasタンパク質を導入することとを含み、かつ、細胞に、少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原の造血幹細胞または前駆細胞のゲノム内のヌクレオチド配列をターゲティングするターゲティングドメインを含む第2のガイドRNA(gRNA)、及び(b)シトシンデアミナーゼまたはアデノシンデアミナーゼ(塩基エディター)に融合したDNA修飾酵素すなわちCas9ニッカーゼに融合した、触媒的に損なわれたCasタンパク質を導入することをさらに含み、それにより、遺伝子工学操作された造血幹細胞及び/または前駆細胞を産生する方法を提供する。
【0033】
いくつかの実施形態では、系列特異的細胞表面抗原はCD33である。いくつかの実施形態では、gRNAは、CD33のエキソン2にフランキングするヌクレオチド配列をターゲティングする。いくつかの実施形態では、gRNAは、配列番号1、配列番号2、及び/または配列番号3と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、gRNA配列は、CD33のイントロン1/エキソン2ジャンクションをターゲティングする。いくつかの実施形態では、gRNA配列は、配列番号37を含むヌクレオチド配列をターゲティングする。
【0034】
いくつかの実施形態では、gRNAと、DNA修飾酵素に融合した、触媒的に損なわれたCasタンパク質とは、細胞に導入される1つのベクターにおいてコードされる。いくつかの実施形態では、ベクターはウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、gRNAと、DNA修飾酵素に融合した、触媒的に損なわれたCasタンパク質とは、予備形成されたリボ核タンパク質複合体として細胞に導入される。いくつかの実施形態では、リボ核タンパク質複合体は、電気穿孔を介して細胞に導入される。
【0035】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原はEMR2である。いくつかの実施形態では、gRNAは、EMR2のエキソン13にフランキングするヌクレオチド配列をターゲティングする。いくつかの実施形態では、gRNAは、配列番号4、配列番号46及び/または配列番号47と少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、gRNA配列は、EMR2のイントロン12/エキソン13ジャンクションをターゲティングする。いくつかの実施形態では、gRNA配列は、配列番号40を含むヌクレオチド配列をターゲティングする。いくつかの実施形態では、gRNAと、DNA修飾酵素に融合した、触媒的に損なわれたCasタンパク質とは、細胞に導入される1つのベクターにおいてコードされる。いくつかの実施形態では、ベクターはウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、gRNAと、DNA修飾酵素に融合した、触媒的に損なわれたCasタンパク質とは、予備形成されたリボ核タンパク質複合体として細胞に導入される。いくつかの実施形態では、リボ核タンパク質複合体は、電気穿孔を介して細胞に導入される。
【0036】
本開示はまた、いくつかの態様において、CRISPRベースの塩基エディターシステムを使用して、造血幹細胞または前駆細胞のサンプル中の系列特異的細胞表面抗原のエピトープの発現を低下させるための、本書に記述されるgRNAの使用を提供する。
【0037】
本開示はまた、いくつかの態様において、造血幹細胞または前駆細胞のサンプル中の系列特異的細胞表面抗原のエピトープの発現を低下させるための、CRISPRベースの塩基エディターシステムの使用を提供する。
【0038】
本開示はまた、いくつかの態様において、CRISPRベースの塩基エディターシステムを使用して、造血幹細胞または前駆細胞のサンプル中のCD33のエピトープの発現を低下させるための、本書に記述されるgRNAの使用を提供する。
【0039】
本開示はまた、いくつかの態様において、造血幹細胞または前駆細胞のサンプル中のCD33のエピトープの発現を低下させるための、CRISPRベースの塩基エディターシステムの使用を提供する。
【0040】
本開示はまた、いくつかの態様において、CRISPRベースの塩基エディターシステムを使用して、造血幹細胞または前駆細胞のサンプル中のEMR2のエピトープの発現を低下させるための、本書に記述されるgRNAの使用を提供する。
【0041】
本開示はまた、いくつかの態様において、造血幹細胞または前駆細胞のサンプル中のEMR2のエピトープの発現を低下させるための、CRISPRベースの塩基エディターシステムの使用を提供する。
【0042】
本開示はまた、いくつかの態様において、CRISPRベースの塩基エディターシステムを使用して、造血幹細胞または前駆細胞のサンプル中のCD33及び少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原の発現を低下させるための、本書に記述されるgRNAの使用を提供する。
【0043】
本開示はまた、いくつかの態様において、造血幹細胞または前駆細胞のサンプル中のCD33及び少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原の発現を低下させるための、CRISPRベースの塩基エディターシステムの使用を提供する。
【0044】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの更なる系列特異的抗原はEMR2である。
【0045】
いくつかの実施形態では、gRNAは、単一分子ガイドRNA(sgRNA)である。
【0046】
いくつかの実施形態では、造血幹細胞及び/または前駆細胞はCD34+である。いくつかの実施形態では、造血幹細胞及び/または前駆細胞は、対象の骨髄細胞または末梢血単核細胞(PBMC)に由来する。いくつかの実施形態では、対象は造血障害を有する。いくつかの実施形態では、対象は健康なHLA適合ドナーである。
【0047】
本開示は、いくつかの実施形態では、本書に記述される方法によって産生された、遺伝子工学操作された造血幹細胞及び/または前駆細胞を提供する。
【0048】
別の態様では、本開示は、造血障害を処置する方法であって、それを必要とする対象に、本書に記述される遺伝子工学操作された造血幹細胞及び/または前駆細胞あるいは細胞集団の有効量を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、造血障害は造血器悪性腫瘍である。
【0049】
いくつかの実施形態では、この方法は、CD33をターゲティングする薬剤の有効量を対象に投与することをさらに含み、薬剤は、CD33と結合する抗原結合性フラグメントを含む。いくつかの実施形態では、CD33をターゲティングする薬剤は、CD33と結合する抗原結合性フラグメントを含む、キメラ抗原受容体(CAR)を発現する免疫細胞である。
【0050】
いくつかの態様では、本開示は、造血障害の処置において使用するための、本書に記述される遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または本書に記述される細胞集団を提供し、処置は、それを必要とする対象に、遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または細胞集団の有効量を投与することを含み、かつ、CD33をターゲティングする薬剤であって、CD33と結合する抗原結合性フラグメントを含む薬剤の有効量を対象に投与することをさらに含む。
【0051】
いくつかの態様では、本開示は、造血障害の処置において使用するための、CD33をターゲティングする薬剤であって、CD33と結合する抗原結合性フラグメントを含む薬剤を提供し、処置は、それを必要とする対象に、CD33をターゲティングする薬剤の有効量を投与することを含み、かつ、本書に記述される遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または本書に記述される細胞集団の有効量を対象に投与することをさらに含む。
【0052】
造血障害の処置において使用するための、本書に記述される遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または本書に記述される細胞集団と、CD33をターゲティングする薬剤であって、CD33と結合する抗原結合性フラグメントを含む薬剤との組み合わせであって、処置は、それを必要とする患者に、遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または細胞集団、及びCD33と結合する薬剤の有効量を投与することを含む、組み合わせ。
【0053】
いくつかの実施形態では、遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または細胞集団は、CD33をターゲティングする薬剤と併用投与される。いくつかの実施形態では、遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または細胞集団は、CD33をターゲティングする薬剤の前に投与される。いくつかの実施形態では、CD33をターゲティングする薬剤は、遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または細胞集団の前に投与される。
【0054】
いくつかの実施形態では、免疫細胞はT細胞である。いくつかの実施形態では、免疫細胞、遺伝子工学操作された造血幹細胞及び/または前駆細胞、あるいはその両方は、同種異系である。いくつかの実施形態では、免疫細胞、遺伝子工学操作された造血幹細胞及び/または前駆細胞、あるいはその両方は、自己由来である。いくつかの実施形態では、キメラ受容体中の抗原結合性フラグメントは、ヒトCD33と特異的に結合する単鎖抗体フラグメント(scFv)である。
【0055】
いくつかの実施形態では、この方法は、EMR2をターゲティングする薬剤の有効量を対象に投与することをさらに含み、薬剤は、EMR2と結合する抗原結合性フラグメントを含む。いくつかの実施形態では、EMR2をターゲティングする薬剤は、EMR2と結合する抗原結合性フラグメントを含む、キメラ抗原受容体(CAR)を発現する免疫細胞である。
【0056】
いくつかの態様では、本開示は、造血障害の処置において使用するための、本書に記述される遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または本書に記述される細胞集団を提供し、処置は、それを必要とする対象に、遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または細胞集団の有効量を投与することを含み、かつ、EMR2をターゲティングする薬剤であって、EMR2と結合する抗原結合性フラグメントを含む薬剤の有効量を対象に投与することをさらに含む。
【0057】
いくつかの態様では、本開示は、造血障害の処置において使用するための、EMR2をターゲティングする薬剤であって、EMR2と結合する抗原結合性フラグメントを含む薬剤を提供し、処置は、それを必要とする対象に、EMR2をターゲティングする薬剤の有効量を投与することを含み、かつ、本書に記述される遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または本書に記述される細胞集団の有効量を対象に投与することをさらに含む。
【0058】
造血障害の処置において使用するための、本書に記述される遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または本書に記述される細胞集団と、EMR2をターゲティングする薬剤であって、EMR2と結合する抗原結合性フラグメントを含む薬剤との組み合わせであって、処置は、それを必要とする患者に、遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または細胞集団、及びEMR2と結合する薬剤の有効量を投与することを含む、組み合わせ。
【0059】
いくつかの実施形態では、遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または細胞集団は、EMR2をターゲティングする薬剤と併用投与される。いくつかの実施形態では、遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または細胞集団は、EMR2をターゲティングする薬剤の前に投与される。いくつかの実施形態では、EMR2をターゲティングする薬剤は、遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または細胞集団の前に投与される。
【0060】
いくつかの実施形態では、免疫細胞はT細胞である。いくつかの実施形態では、免疫細胞、遺伝子工学操作された造血幹細胞及び/または前駆細胞、あるいはその両方は、同種異系である。いくつかの実施形態では、免疫細胞、遺伝子工学操作された造血幹細胞及び/または前駆細胞、あるいはその両方は、自己由来である。いくつかの実施形態では、キメラ受容体中の抗原結合性フラグメントは、ヒトEMR2と特異的に結合する単鎖抗体フラグメント(scFv)である。
【0061】
いくつかの実施形態では、この方法は、CD33をターゲティングする薬剤であって、CD33と結合する抗原結合性フラグメントを含む薬剤の有効量と、少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原をターゲティングする薬剤であって、少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原と結合する抗原結合性フラグメントを含む薬剤の有効量とを対象に投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、CD33をターゲティングする薬剤は、CD33と結合する抗原結合性フラグメントを含む、キメラ抗原受容体(CAR)を発現する免疫細胞である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原をターゲティングする薬剤は、少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原と結合する抗原結合性フラグメントを含む、キメラ抗原受容体(CAR)を発現する免疫細胞である。いくつかの実施形態では、CD33をターゲティングする薬剤、及び少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原をターゲティングする薬剤は、免疫細胞である。いくつかの実施形態では、CD33及び少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原をターゲティングする薬剤は、CD33及び少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原と結合する抗原結合性フラグメントを含む、キメラ抗原受容体(CAR)を発現する免疫細胞である。
【0062】
いくつかの態様では、本開示は、造血障害の処置において使用するための、本書に記述される遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または本書に記述される細胞集団を提供し、処置は、それを必要とする対象に、遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または細胞集団の有効量を投与することを含み、かつ、CD33をターゲティングする薬剤であって、CD33と結合する抗原結合性フラグメントを含む薬剤の有効量と、少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原をターゲティングする薬剤であって、少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原と結合する抗原結合性フラグメントを含む薬剤の有効量とを対象に投与することをさらに含む。
【0063】
いくつかの態様では、本開示は、造血障害の処置において使用するための、CD33をターゲティングする薬剤であって、CD33と結合する抗原結合性フラグメントを含む薬剤と、少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原をターゲティングする薬剤であって、少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原と結合する抗原結合性フラグメントを含む薬剤とを提供し、処置は、それを必要とする対象に、CD33をターゲティングする薬剤の有効量と、少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原をターゲティングする薬剤であって、少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原と結合する抗原結合性フラグメントを含む薬剤の有効量とを投与することを含み、かつ、本書に記述される遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または本書に記述される細胞集団の有効量を対象に投与することをさらに含む。
【0064】
造血障害の処置において使用するための、本書に記述される遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または本書に記述される細胞集団と、CD33をターゲティングする薬剤であって、CD33と結合する抗原結合性フラグメントを含む薬剤と、有効量の、少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原をターゲティングする薬剤であって、少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原と結合する抗原結合性フラグメントを含む薬剤との組み合わせであって、処置は、それを必要とする患者に、遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または細胞集団、ならびにCD33と結合する薬剤及び少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原と結合する薬剤の有効量を投与することを含む、組み合わせ。
【0065】
いくつかの実施形態では、CD33をターゲティングし、CD33と結合する抗原結合性フラグメントを含む薬剤と、少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原をターゲティングし、少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原と結合する抗原結合性フラグメントを含む薬剤とは、同じ薬剤である。いくつかの実施形態では、薬剤は、CD33及び少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原をターゲティングする免疫細胞である。
【0066】
いくつかの実施形態では、遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または細胞集団は、CD33をターゲティングする薬剤及び少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原をターゲティングする薬剤と併用投与される。いくつかの実施形態では、遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または細胞集団は、CD33をターゲティングする薬剤及び少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原をターゲティングする薬剤の前に投与される。いくつかの実施形態では、CD33をターゲティングする薬剤及び少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原をターゲティングする薬剤は、遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または細胞集団の前に投与される。いくつかの実施形態では、CD33をターゲティングする薬剤は、遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または細胞集団の前に投与され、少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原をターゲティングする薬剤は、遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または細胞集団の後に投与される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原をターゲティングする薬剤は、遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または細胞集団の前に投与され、CD33をターゲティングする薬剤は、遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または細胞集団の後に投与される。
【0067】
いくつかの実施形態では、免疫細胞はT細胞である。いくつかの実施形態では、免疫細胞、遺伝子工学操作された造血幹細胞及び/または前駆細胞、あるいはその両方は、同種異系である。いくつかの実施形態では、免疫細胞、遺伝子工学操作された造血幹細胞及び/または前駆細胞、あるいはその両方は、自己由来である。いくつかの実施形態では、キメラ受容体中の抗原結合性フラグメントは、ヒトCD33及び/または少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原と特異的に結合する単鎖抗体フラグメント(scFv)である。いくつかの実施形態では、キメラ受容体中の抗原結合性フラグメントは、ヒトの少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原と特異的に結合する単鎖抗体フラグメント(scFv)である。
【0068】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原はEMR2である。
【0069】
いくつかの実施形態では、CD33、及び/またはEMR2、及び/または更なる系列特異的細胞表面抗原をターゲティングする薬剤は、本書に記述される、該薬剤と併せて投与される遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または細胞集団において改変されている、発現が低下している、または欠失しているエピトープをターゲティングする。
【0070】
いくつかの実施形態では、対象は、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、白血病、または多発性骨髄腫を有するヒト患者である。いくつかの実施形態では、対象は、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、または慢性リンパ芽球性白血病である白血病を有するヒト患者である。本書における組成物及び方法の特徴を、以下に列挙する実施形態にも記述する。
【0071】
本書における組成物及び方法の特徴を、以下に列挙する実施形態にも記述する。
1. 遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞であって、系列特異的抗原をコードする遺伝子に少なくとも1つのヌクレオチド置換を含み、前記ヌクレオチド置換は、スプライスエレメントをコードする配列内に含まれ、前記遺伝子によってコードされる転写物の選択的スプライシングをもたらし、前記選択的スプライシングは、野生型の同等の細胞と比較した場合、前記遺伝子によってコードされるエピトープの発現レベル低下を引き起こし、前記エピトープは、免疫療法剤によってターゲティングされる、前記遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
2. 前記スプライスエレメントは、スプライスアクセプター、スプライスドナー、スプライスエンハンサー、及びスプライスサイレンサーからなる群から選択される、先行する実施形態のいずれかに記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
3. 選択的スプライシングは、エピトープをコードするエキソンがスキップされることを引き起こす、実施形態1または2に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
4. 選択的スプライシングは、エピトープをコードするエキソンが延長されることを引き起こす、先行する実施形態のいずれかに記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
5. 前記ヌクレオチド置換は、「C」から「T」または「G」から「A」である、先行する実施形態のいずれかに記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
6. 前記ヌクレオチド置換は、「A」から「G」または「T」から「C」である、先行する実施形態のいずれかに記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
7. 前記ヌクレオチド置換は、CRISPRベースの塩基エディターシステムを使用してなされる、先行する実施形態のいずれかに記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
8. 前記エピトープの前記発現レベル低下は、前記造血幹細胞または前駆細胞から分化した(例えば、最終分化した)細胞におけるものであり、前記野生型の同等の細胞は、野生型造血幹細胞または前駆細胞から分化した(例えば、最終分化した)細胞である、先行する実施形態のいずれかに記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
9. 前記造血幹細胞または前駆細胞から分化した前記細胞は、骨髄芽球、単芽球、単球、マクロファージ、またはナチュラルキラー細胞である、実施形態8に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
10. 遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞であって、内因性CD33遺伝子のエキソン2内の改変されたスプライスアクセプターまたはエキソンスプライシングエンハンサー部位を含み、前記改変は、野生型の同等の細胞と比較した場合、CD33のエキソン2によってコードされるエピトープの発現レベル低下をもたらす、前記遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
11. 遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞であって、内因性CD33遺伝子のエキソン2内の改変されたスプライスアクセプターまたはエキソンスプライシングエンハンサー部位を含み、前記改変は、野生型の同等の細胞と比較したレベルの20%未満である、CD33のエキソン2によってコードされるエピトープの発現レベル低下をもたらす、前記遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
12. 遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞であって、内因性CD33遺伝子のエキソン2内の改変されたスプライスアクセプターまたはエキソンスプライシングエンハンサー部位を含み、前記改変は、CD33のエキソン2内の前記スプライスアクセプターまたはエキソンスプライシングエンハンサー部位におけるヌクレオチド置換である、前記遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
13. 遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞であって、内因性CD33遺伝子のエキソン2内の改変されたスプライスアクセプターまたはエキソンスプライシングエンハンサー部位を含み、前記改変は、CD33のイントロン1/エキソン2ジャンクションのヌクレオチド配列におけるヌクレオチド置換である、前記遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
14. 遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞であって、内因性CD33遺伝子のエキソン2内の改変されたスプライスアクセプターまたはエキソンスプライシングエンハンサー部位を含み、前記改変は、配列番号1のヌクレオチド配列を含むgRNAの使用によりなされる、前記遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
15. 遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞であって、内因性CD33遺伝子のエキソン2内の改変されたスプライスアクセプターまたはエキソンスプライシングエンハンサー部位を含み、前記改変は、配列番号2のヌクレオチド配列を含むgRNAの使用によりなされる、前記遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
16. 遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞であって、内因性CD33遺伝子のエキソン2内の改変されたスプライスアクセプターまたはエキソンスプライシングエンハンサー部位を含み、前記改変は、配列番号3のヌクレオチド配列を含むgRNAの使用によりなされる、前記遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
17. 前記改変は、CRISPRベースの塩基エディターシステムを使用してなされる、実施形態10~16に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
18. 前記改変は、野生型の同等の細胞と比較した場合、CD33の前記エキソン2によってコードされるエピトープの発現レベル低下(例えば、前記野生型の同等の細胞におけるレベルの50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、15%未満、10%未満、または5%未満)をもたらす、実施形態10~17に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
19. CD33のエピトープの前記発現レベル低下は、前記造血幹細胞または前駆細胞から分化した(例えば、最終分化した)細胞におけるものであり、前記野生型の同等の細胞は、野生型造血幹細胞または前駆細胞から分化した(例えば、最終分化した)細胞である、実施形態10~18に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
20. 前記造血幹細胞または前駆細胞から分化した前記細胞は、骨髄芽球、単芽球、単球、マクロファージ、またはナチュラルキラー細胞である、実施形態19に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
21. 遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞であって、内因性EMR2遺伝子のエキソン13内の改変されたスプライスドナー部位を含み、前記改変は、野生型の同等の細胞と比較した場合、EMR2のエキソン13によってコードされるエピトープの発現レベル低下をもたらす、前記遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
22. 遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞であって、内因性EMR2遺伝子のエキソン13内の改変されたスプライスドナー部位を含み、前記改変されたスプライスドナー部位は、野生型の同等物と比較した場合、早期コドン終結及び変異型またはトランケート型のEMR2の産生を誘導する、前記遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
23. 遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞であって、内因性EMR2遺伝子のエキソン13内の改変されたスプライスドナー部位を含み、前記改変は、EMR2のエキソン13内のスプライスアクセプターまたはエキソンスプライシングエンハンサー部位におけるヌクレオチド置換である、前記遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
24. 遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞であって、内因性EMR2遺伝子のエキソン13内の改変されたスプライスドナー部位を含み、前記改変は、EMR2のイントロン12/エキソン13ジャンクションのヌクレオチド配列におけるヌクレオチド置換である、前記遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
25. 遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞であって、内因性EMR2遺伝子のエキソン13内の改変されたスプライスドナー部位を含み、前記改変は、配列番号4または46~47のいずれか1つのヌクレオチド配列を含むgRNAの使用によりなされる、前記遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
26. 前記改変は、CRISPRベースの塩基エディターシステムを使用してなされる、実施形態21~25に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
27. 前記改変は、野生型の同等の細胞と比較した場合、EMR2の前記エキソン13によってコードされるエピトープの発現レベル低下(例えば、前記野生型の同等の細胞におけるレベルの50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、15%未満、10%未満、または5%未満)をもたらす、実施形態21~25に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
28. EMR2のエピトープの前記発現レベル低下は、前記造血幹細胞または前駆細胞から分化した(例えば、最終分化した)細胞におけるものであり、前記野生型の同等の細胞は、野生型造血幹細胞または前駆細胞から分化した(例えば、最終分化した)細胞である、実施形態21~26に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
29. 前記造血幹細胞または前駆細胞から分化した前記細胞は、骨髄芽球、単芽球、単球、マクロファージ、またはナチュラルキラー細胞である、実施形態29に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
30. CD34+である、先行する実施形態のいずれかに記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
31. 対象の骨髄細胞または末梢血単核細胞に由来する、先行する実施形態のいずれかに記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
32. 前記対象は、造血器悪性腫瘍を有するヒト患者である、実施形態31に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
33. 前記対象は、健康なヒトドナー(例えば、HLA適合ドナー)である、実施形態31に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
34. 遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞であって、系列特異的抗原をコードする遺伝子における少なくとも1つのヌクレオチド置換であって、前記ヌクレオチド置換は、スプライスエレメントをコードする配列内に含まれ、前記遺伝子によってコードされる転写物の選択的スプライシングをもたらし、前記選択的スプライシングは、野生型の同等の細胞と比較した場合、前記遺伝子によってコードされるエピトープの発現レベル低下を引き起こし、前記エピトープは、免疫療法剤によってターゲティングされる、前記ヌクレオチド置換と、少なくとも1つの更なる系列特異的抗原をコードする遺伝子における少なくとも1つのヌクレオチド置換であって、前記ヌクレオチド置換は、スプライスエレメントをコードする配列内に含まれ、前記遺伝子によってコードされる転写物の選択的スプライシングをもたらし、前記選択的スプライシングは、野生型の同等物と比較した場合、少なくとも1つの更なる系列特異的抗原をコードする前記遺伝子によってコードされるエピトープの発現レベル低下を引き起こす、前記ヌクレオチド置換とを含み、両方のエピトープが免疫療法剤(複数可)によってターゲティングされる、前記遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
35. 前記スプライスエレメントは、スプライスアクセプター、スプライスドナー、スプライスエンハンサー、及びスプライスサイレンサーからなる群から選択される、実施形態34に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
36. 選択的スプライシングは、エピトープをコードするエキソンがスキップされることを引き起こす、実施形態34~35に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
37. 選択的スプライシングは、エピトープをコードするエキソンが延長されることを引き起こす、実施形態34~35に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
38. 前記ヌクレオチド置換は、「C」から「T」または「G」から「A」である、実施形態34~37に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
39. 前記ヌクレオチド置換は、「A」から「G」または「T」から「C」である、実施形態34~37に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
40. 前記ヌクレオチド置換は、CRISPRベースの塩基エディターシステムを使用してなされる、実施形態34~39に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
41. 前記エピトープの前記発現レベル低下は、前記造血幹細胞または前駆細胞から分化した(例えば、最終分化した)細胞におけるものであり、前記野生型の同等の細胞は、野生型造血幹細胞または前駆細胞から分化した(例えば、最終分化した)細胞である、実施形態34~40に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
42. 前記造血幹細胞または前駆細胞から分化した前記細胞は、骨髄芽球、単芽球、単球、マクロファージ、またはナチュラルキラー細胞である、実施形態41に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
43. 遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞であって、内因性CD33遺伝子のエキソン2内の改変されたスプライスアクセプターまたはエキソンスプライシングエンハンサー部位であって、前記改変は、CD33のエキソン2内の前記スプライスアクセプターまたはエキソンスプライシングエンハンサー部位におけるヌクレオチド置換である、前記改変されたスプライスアクセプターまたはエキソンスプライシングエンハンサー部位と、少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原をコードする内因性遺伝子のエキソン内の改変されたエレメントの改変とを含む、前記遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
44. 遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞であって、内因性CD33遺伝子のエキソン2内の改変されたスプライスアクセプターまたはエキソンスプライシングエンハンサー部位であって、前記改変は、CD33のエキソン2内の前記スプライスアクセプターまたはエキソンスプライシングエンハンサー部位におけるヌクレオチド置換である、前記改変されたスプライスアクセプターまたはエキソンスプライシングエンハンサー部位と、内因性EMR2遺伝子のエキソン13内の改変されたスプライスドナー部位であって、前記改変は、EMR2のエキソン13内の前記スプライスドナー部位におけるヌクレオチド置換である、前記改変されたスプライスドナー部位とを含む、前記遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
45. 遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞であって、内因性CD33遺伝子のエキソン2内の改変されたスプライスアクセプターまたはエキソンスプライシングエンハンサー部位であって、前記改変は、CD33のエキソン2内の前記スプライスアクセプターまたはエキソンスプライシングエンハンサー部位におけるヌクレオチド置換であり、野生型の同等の細胞と比較した場合、CD33のエキソン2によってコードされるエピトープの発現レベル低下をもたらす、前記改変されたスプライスアクセプターまたはエキソンスプライシングエンハンサー部位を含み、かつ、内因性EMR2遺伝子のエキソン13内の改変されたスプライスドナー部位であって、前記改変は、EMR2のエキソン13内の前記スプライスドナー部位におけるヌクレオチド置換であり、野生型の同等の細胞と比較した場合、EMR2のエキソン13によってコードされるエピトープの発現レベル低下をもたらし、及び/または、野生型の同等の細胞と比較した場合、早期コドン終結及び変異型もしくはトランケート型のEMR2の産生を誘導する、前記改変されたスプライスドナー部位をさらに含む、前記遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
46. 遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞であって、内因性CD33遺伝子のエキソン2内の改変されたスプライスアクセプターまたはエキソンスプライシングエンハンサー部位であって、前記改変は、CD33のエキソン2内の前記スプライスアクセプターまたはエキソンスプライシングエンハンサー部位におけるヌクレオチド置換であり、配列番号1のヌクレオチド配列を含むgRNAの使用によりなされる、前記改変されたスプライスアクセプターまたはエキソンスプライシングエンハンサー部位を含み、かつ、内因性EMR2遺伝子のエキソン13内の改変されたスプライスドナー部位であって、前記改変は、EMR2のエキソン13内の前記スプライスドナー部位におけるヌクレオチド置換であり、配列番号4または46~47のいずれか1つのヌクレオチド配列を含むgRNAの使用によりなされる、前記改変されたスプライスドナー部位をさらに含む、前記遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
47. 遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞であって、内因性CD33遺伝子のエキソン2内の改変されたスプライスアクセプターまたはエキソンスプライシングエンハンサー部位であって、前記改変は、CD33のエキソン2内の前記スプライスアクセプターまたはエキソンスプライシングエンハンサー部位におけるヌクレオチド置換であり、配列番号2のヌクレオチド配列を含むgRNAの使用によりなされる、前記改変されたスプライスアクセプターまたはエキソンスプライシングエンハンサー部位を含み、かつ、内因性EMR2遺伝子のエキソン13の改変されたスプライスドナー部位であって、前記改変は、EMR2のエキソン13内の前記スプライスドナー部位におけるヌクレオチド置換であり、配列番号4または46~47のいずれか1つのヌクレオチド配列を含むgRNAの使用によりなされる、前記改変されたスプライスドナー部位をさらに含む、前記遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
48. 遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞であって、内因性CD33遺伝子のエキソン2内の改変されたスプライスアクセプターまたはエキソンスプライシングエンハンサー部位であって、前記改変は、CD33のエキソン2内の前記スプライスアクセプターまたはエキソンスプライシングエンハンサー部位におけるヌクレオチド置換であり、配列番号3のヌクレオチド配列を含むgRNAの使用によりなされる、前記改変されたスプライスアクセプターまたはエキソンスプライシングエンハンサー部位を含み、かつ、内因性EMR2遺伝子のエキソン13の改変されたスプライスドナー部位であって、前記改変は、EMR2のエキソン13内の前記スプライスドナー部位におけるヌクレオチド置換であり、配列番号4または46~47のいずれか1つのヌクレオチド配列を含むgRNAの使用によりなされる、前記改変されたスプライスドナー部位をさらに含む、前記遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
49. 前記改変(複数可)は、CRISPRベースの塩基エディターシステムを使用してなされる、実施形態43~48に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
50. 前記改変は、野生型の同等の細胞と比較した場合、CD33の前記エキソン2によってコードされるエピトープの発現レベル低下(例えば、前記野生型の同等の細胞におけるレベルの50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、15%未満、10%未満、または5%未満)、及び/または、野生型の同等の細胞と比較した場合、EMR2の前記エキソン13によってコードされるエピトープの発現レベル低下(例えば、前記野生型の同等の細胞におけるレベルの50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、15%未満、10%未満、または5%未満)をもたらす、実施形態43~49に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
51. 前記野生型の同等物によって発現される前記CD33の前記エキソン2によってコードされるエピトープの20%未満、及び/または、前記野生型の同等物によって発現されるEMR2の前記エキソン13によってコードされるエピトープの20%未満を発現する、実施形態43~50に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
52. CD33及び/またはEMR2のエピトープの前記発現レベル低下は、前記造血幹細胞または前駆細胞から分化した(例えば、最終分化した)細胞におけるものであり、前記野生型の同等の細胞は、野生型造血幹細胞または前駆細胞から分化した(例えば、最終分化した)細胞である、実施形態43~51に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
53. 前記造血幹細胞または前駆細胞から分化した前記細胞は、骨髄芽球、単芽球、単球、マクロファージ、またはナチュラルキラー細胞である、実施形態52に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
54. CD34+である、実施形態34~53に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
55. 対象の骨髄細胞または末梢血単核細胞に由来する、実施形態34~53に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
56. 前記対象は、造血器悪性腫瘍を有するヒト患者である、実施形態55に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
57. 前記対象は、健康なヒトドナー(例えば、HLA適合ドナー)である、実施形態55に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
58. シトシンデアミナーゼまたはアデノシンデアミナーゼ(塩基エディター)に融合した、触媒的に損なわれたCRISPRエンドヌクレアーゼと、前記内因性CD33遺伝子を接触させること、及び、シトシンデアミナーゼまたはアデノシンデアミナーゼ(塩基エディター)に融合した、触媒的に損なわれたCRISPRエンドヌクレアーゼと、前記内因性EMR2遺伝子を接触させることを含むプロセスによって作製された、実施形態43~57に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
59. 予測されるオフターゲット部位のいずれにも変異を含まない、先行する実施形態のいずれかに記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
60. 先行する実施形態のいずれかに記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞を複数含む(例えば、造血幹細胞、造血前駆細胞、またはそれらの組み合わせを含む)細胞集団。
61. 内因性CD33遺伝子のエキソン2の欠失または改変と、内因性EMR2遺伝子のエキソン13の欠失または改変とを含む、複数の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞を含む細胞集団。
62. 1つまたは複数の工学操作されていないCD33遺伝子及び/または工学操作されていないEMR2遺伝子を含む1つまたは複数の細胞をさらに含む、実施形態61に記載の細胞集団。
63. CD33についてホモ接合性野生型である、及び/またはEMR2についてホモ接合性野生型である、1つまたは複数の細胞をさらに含む、実施形態61~62に記載の細胞集団。
64. CD33についてヘテロ接合性野生型である、及び/またはEMR2のヘテロ接合性野生型である、1つまたは複数の細胞をさらに含む、実施形態61~63のいずれかに記載の細胞集団。
65. CD33及び/またはEMR2の前記発現レベル低下は、前記造血幹細胞または前駆細胞から分化した(例えば、最終分化した)細胞におけるものであり、前記野生型の同等の細胞は、野生型造血幹細胞または前駆細胞から分化した(例えば、最終分化した)細胞である、実施形態61~64のいずれかに記載の細胞集団。
66. 前記造血幹細胞または前駆細胞から分化した前記細胞は、骨髄芽球、単芽球、単球、マクロファージ、またはナチュラルキラー細胞である、実施形態65に記載の細胞集団。
67. 造血幹細胞及び造血前駆細胞を含む、実施形態61~66のいずれかに記載の細胞集団。
68. 実施形態1~59のいずれかに記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞を含む医薬組成物。
69. 実施形態60~67のいずれかに記載の細胞集団を含む医薬組成物。
70. 実施形態1~33のいずれかに記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または実施形態60~67のいずれかに記載の細胞集団を作製する方法であって、
(i)造血幹細胞または前駆細胞(例えば、野生型造血幹細胞または前駆細胞)を用意することと、
(ii)前記細胞に、(a)スプライスエレメントを含む前記造血幹細胞または前駆細胞のゲノム内のヌクレオチド配列をターゲティングするターゲティングドメインを含むガイドRNA(gRNA)、及び(b)シトシンデアミナーゼまたはアデノシンデアミナーゼ(塩基エディター)に融合したDNA修飾酵素に融合した、触媒的に損なわれたCasタンパク質を導入することとを含み、それにより、遺伝子工学操作された造血幹細胞及び/または前駆細胞を産生する前記方法。
71. 実施形態34~59のいずれかに記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または実施形態60~67のいずれかに記載の細胞集団を作製する方法であって、
(i)造血幹細胞または前駆細胞を用意することと、
(ii)前記細胞に、(a)スプライスエレメントを含む前記造血幹細胞または前駆細胞のゲノム内の第1のヌクレオチド配列をターゲティングするターゲティングドメインを含む第1のガイドRNA(gRNA)、及び(b)シトシンデアミナーゼまたはアデノシンデアミナーゼ(塩基エディター)に融合した、第1の触媒的に損なわれたCas9エンドヌクレアーゼを導入することと、
(iii)前記細胞に、(a)スプライスエレメントを含む前記造血幹細胞または前駆細胞のゲノム内の第2のヌクレオチド配列をターゲティングするターゲティングドメインを含む第2のガイドRNA(gRNA)、及び(b)シトシンデアミナーゼまたはアデノシンデアミナーゼ(塩基エディター)に融合した、第2の触媒的に損なわれたCas9エンドヌクレアーゼをさらに導入することとを含み、これにより、遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞を産生する前記方法。
72. 前記方法は、前記系列特異的細胞表面抗原(複数可)をコードする内因性遺伝子(複数可)におけるヌクレオチド置換をもたらす、実施形態70~71に記載の方法。
73. 前記方法は、内因性遺伝子(複数可)におけるスプライスエレメントをターゲティングし、前記方法は、前記遺伝子(複数可)によってコードされる転写物の選択的スプライシングをもたらす、実施形態70~72のいずれかに記載の方法。
74. 前記選択的スプライシングは、エピトープをコードするエキソンがスキップされることを引き起こす、実施形態70~73のいずれかに記載の方法。
75. 前記選択的スプライシングは、エピトープをコードするエキソンが延長されることを引き起こす、実施形態70~73のいずれかに記載の方法。
76. 前記スプライスエレメント(複数可)は、スプライスドナー、スプライスアクセプター、スプライスエンハンサー、またはスプライスサイレンサーである、実施形態70~75のいずれかに記載の方法。
77. 前記塩基エディター(複数可)は、シトシン塩基エディターである、実施形態70~76のいずれかに記載の方法。
78. 前記塩基エディター(複数可)は、アデニン塩基エディターである、実施形態70~76のいずれかに記載の方法。
79. 前記エンドヌクレアーゼ(複数可)は、Cas9ニッカーゼである、実施形態70~78のいずれかに記載の方法。
80. 前記シトシン塩基エディター(複数可)は、BE4Maxである、実施形態77に記載の方法。
81. 前記アデノシン塩基エディター(複数可)は、ABE8eである、実施形態78に記載の方法。
82. 前記選択的スプライシングは、CD33のエキソン2によってコードされるエピトープの発現低下をもたらす、実施形態70~81のいずれかに記載の方法。
83. 前記選択的スプライシングは、野生型の同等の細胞と比較した場合、EMR2のエキソン13によってコードされるエピトープの発現低下、及び/または、早期コドン終結及び変異型もしくはトランケート型のEMR2の産生をもたらす、実施形態70~81のいずれかに記載の方法。
84. 配列番号1~4及び46~47のいずれかに記載の配列、もしくはその逆相補体、または前述のいずれかと少なくとも90%もしくは95%の同一性を有する配列、または前述のいずれかに対して1個以下、2個以下、もしくは3個以下の変異を有する配列を含む、ガイドリボ核酸(gRNA)。
85. 1つまたは複数の化学修飾(例えば、核酸塩基、糖、または骨格部分に対する化学修飾)を含む、実施形態84に記載のgRNA。
86. Cas9と結合する、実施形態84及び85のいずれかに記載のgRNA。
87. 配列番号1~3を含むgRNA及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるgRNA、または前記gRNAをコードする核酸を含む、キットまたは組成物。
88. 第2のgRNA、または前記第2のgRNAをコードする核酸をさらに含み、前記第2のgRNAは、CD33以外の系列特異的細胞表面抗原をターゲティングする、実施形態87に記載のキット。
89. 前記第2のgRNAは、EMR2をターゲティングする、実施形態88に記載のキットまたは組成物。
90. 前記第2のgRNAは、配列番号4または46~47のいずれか1つを含む、実施形態89及び90のいずれかに記載のキットまたは組成物。
91. 第3のgRNA、または前記第3のgRNAをコードする核酸をさらに含む、実施形態88~90のいずれかに記載のキットまたは組成物。
92. 前記第3のgRNAは、CD33及びEMR2以外の系列特異的細胞表面抗原をターゲティングする、実施形態91に記載のキットまたは組成物。
93. シトシンデアミナーゼまたはアデノシンデアミナーゼ(塩基エディター)に融合した、1つまたは複数の触媒的に損なわれたCRISPRエンドヌクレアーゼをさらに含む、実施形態87~92のいずれかに記載のキットまたは組成物。
94. gRNAが配列番号1~3を含む、造血幹細胞または前駆細胞のサンプル中のCD33の発現を低下させるためのCRISPRベースの塩基エディターシステムの使用。
95. gRNAが配列番号4及び46~47を含む、造血幹細胞または前駆細胞のサンプル中のEMR2の発現を低下させるためのCRISPRベースの塩基エディターシステムの使用。
96. gRNAが配列番号1~4及び46~47を含む、造血幹細胞または前駆細胞のサンプル中のCD33及び/またはEMRR2の発現を低下させるためのCRISPRベースの塩基エディターシステムの使用。
97. 遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞を産生する方法であって、
(i)造血幹細胞または前駆細胞を用意することと、
(ii)前記細胞に、(a)配列番号1~3を含むガイドRNA(gRNA)、及び(b)シトシンデアミナーゼまたはアデノシンデアミナーゼ(塩基エディター)に融合した前記gRNAと結合するヌクレアーゼ(例えば、エンドヌクレアーゼ)を導入することとを含み、それにより、遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞を産生する前記方法。
98. 遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞を産生する方法であって、
(i)造血幹細胞または前駆細胞を用意することと、
(ii)前記細胞に、(a)配列番号1~3と少なくとも90%同一のヌクレオチド配列を含むガイドRNA(gRNA)、及び(b)シトシンデアミナーゼまたはアデノシンデアミナーゼ(塩基エディター)に融合したCas9エンドヌクレアーゼを導入することとを含み、それにより、前記遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞を産生する前記方法。
99. 前記gRNA配列は、CD33のイントロン1/エキソン2ジャンクションをターゲティングする、実施形態97及び98に記載の方法。
100. 前記gRNAは、配列番号37を含むヌクレオチド配列をターゲティングする、実施形態97~99に記載の方法。
101. 前記方法は、CD33のエキソン2のスプライスエレメントをコードする配列内のヌクレオチド置換をもたらし、前記ヌクレオチド置換は、遺伝子によってコードされる転写物の選択的スプライシングをもたらす、実施形態97~100のいずれかに記載の方法。
102. 前記転写物の前記選択的スプライシングは、CD33のエキソン2のエピトープの発現低下をもたらす、実施形態101に記載の方法。
103. 前記塩基エディターは、シトシン塩基エディターであり、BE4maxである、実施形態97~102のいずれかに記載の方法。
104. 前記塩基エディターは、アデノシン塩基エディターであり、ABE8eである、実施形態97~102のいずれかに記載の方法。
105. 野生型の同等の細胞と比較した場合、CD33のエキソン2のエピトープの発現レベルが低下している、前記遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞をもたらす、実施形態97~104のいずれかに記載の方法。
106. 複数の造血幹細胞または前駆細胞に対して行われる、実施形態97~105のいずれかに記載の方法。
107. 実施形態60~67のいずれかによる細胞集団を産生する、実施形態97~106のいずれかに記載の方法。
108. 遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞を産生する方法であって、
(i)造血幹細胞または前駆細胞を用意することと、
(ii)前記細胞に、(a)配列番号4または46~47を含むガイドRNA(gRNA)、及び(b)シトシンデアミナーゼまたはアデノシンデアミナーゼ(塩基エディター)に融合した前記gRNAと結合するヌクレアーゼ(例えば、エンドヌクレアーゼ)を導入することとを含み、それにより、遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞を産生する前記方法。
109. 遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞を産生する方法であって、
(i)造血幹細胞または前駆細胞を用意することと、
(ii)前記細胞に、(a)配列番号4または46~47と少なくとも90%同一のヌクレオチド配列を含むガイドRNA(gRNA)、及び(b)シトシンデアミナーゼまたはアデノシンデアミナーゼ(塩基エディター)に融合したCas9エンドヌクレアーゼを導入することとを含み、それにより、前記遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞を産生する前記方法。
110. 前記gRNA配列は、EMR2のイントロン12/エキソン13ジャンクションをターゲティングする、実施形態108及び109に記載の方法。
111. 前記gRNAは、配列番号40を含むヌクレオチド配列をターゲティングする、実施形態108~110に記載の方法。
112. 前記方法は、EMR2のエキソン13のスプライスエレメントをコードする配列内のヌクレオチド置換をもたらし、前記ヌクレオチド置換は、遺伝子によってコードされる転写物の選択的スプライシングをもたらす、実施形態108~111のいずれかに記載の方法。
113. 前記転写物の前記選択的スプライシングは、野生型の同等物と比較した場合、EMR2のエキソン13のエピトープの発現低下をもたらし、及び/または、早期コドン終結及び変異型もしくはトランケート型のEMR2の産生を誘導する、実施形態112に記載の方法。
114. 前記塩基エディターは、シトシン塩基エディターであり、BE4maxである、実施形態108~112のいずれかに記載の方法。
115. 前記塩基エディターは、アデノシン塩基エディターであり、ABE8eである、実施形態108~112のいずれかに記載の方法。
116. 野生型の同等の細胞と比較した場合、EMR2のエキソン13のエピトープの発現レベルが低下している、前記遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞をもたらす、実施形態108~115のいずれかに記載の方法。
117. 複数の造血幹細胞または前駆細胞に対して行われる、実施形態108~116のいずれかに記載の方法。
118. 実施形態60~67のいずれかによる細胞集団を産生する、実施形態108~117のいずれかに記載の方法。
119. 遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞を産生する方法であって、
(i)造血幹細胞または前駆細胞(例えば、野生型造血幹細胞または前駆細胞)を用意することと、
(ii)前記細胞に、(a)配列番号1~3を含むガイドRNA(gRNA)、及び(b)シトシンデアミナーゼまたはアデノシンデアミナーゼ(塩基エディター)に融合した前記gRNAと結合するヌクレアーゼ(例えば、エンドヌクレアーゼ)(例えば、Cas9エンドヌクレアーゼ)を導入することと、
(iii)前記細胞に、(a)少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原をターゲティングするガイドRNA(gRNA)、及び(b)シトシンデアミナーゼまたはアデノシンデアミナーゼ(塩基エディター)に融合した前記gRNAと結合するヌクレアーゼ(例えば、エンドヌクレアーゼ)(例えば、Cas9エンドヌクレアーゼ)をさらに導入することとを含み、それにより、遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞を産生する前記方法。
120. 遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞を産生する方法であって、
(i)遺伝子工学操作された造血幹細胞及び/または前駆細胞を用意することと、
(ii)前記細胞に、(a)配列番号1~3と少なくとも90%同一のヌクレオチド配列を含むガイドRNA(gRNA)、及び(b)シトシンデアミナーゼまたはアデノシンデアミナーゼ(塩基エディター)に融合したCas9エンドヌクレアーゼを導入することと、
(iii)前記細胞に、(a)少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原をターゲティングするガイドRNA(gRNA)、及び(b)シトシンデアミナーゼまたはアデノシンデアミナーゼ(塩基エディター)に融合したCas9エンドヌクレアーゼをさらに導入することとを含み、それにより、遺伝子工学操作された造血幹細胞及び/または前駆体を産生する前記方法。
121. 野生型の同等の細胞と比較した場合、CD33のエキソン2のエピトープの発現レベルが低下している、及び/または前記少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原のエキソンのエピトープの発現レベルが低下している、前記遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞をもたらす、実施形態119~120のいずれかに記載の方法。
122. 複数の造血幹細胞または前駆細胞に対して行われる、実施形態119~121のいずれかに記載の方法。
123. 複数の造血幹細胞及び複数の造血前駆細胞を含む細胞集団に対して行われる、実施形態119~122のいずれかに記載の方法または使用。
124. 実施形態60~67のいずれかによる細胞集団を産生する、実施形態119~123のいずれかに記載の方法。
125. 前記少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原はEMR2であり、前記方法は、野生型の同等物と比較した場合、EMR2のエキソン13によってコードされるエピトープの発現レベル低下をもたらし、及び/または、早期コドン終結及び変異型もしくはトランケート型のEMR2の産生を誘導する、実施形態119~123のいずれかに記載の方法。
126. 前記gRNAは配列番号4または46~47である、実施形態125に記載の方法。
127. (a)及び(b)の核酸は、前記細胞に導入される1つのベクターにおいてコードされる、実施形態97~126のいずれかに記載の方法。
128. 前記ベクターはウイルスベクターである、実施形態127に記載の方法。
129. 前記塩基エディターはタンパク質の形態にあり、(a)及び(b)は、予備形成されたリボ核タンパク質複合体として前記細胞に導入される、実施形態97~126のいずれかに記載の方法。
130. 前記リボ核タンパク質複合体は、電気穿孔を介して前記細胞に導入される、実施形態129に記載の方法。
131. 前記gRNAは、単一分子ガイドRNA(sgRNA)である、実施形態97~130のいずれかに記載の方法。
132. 前記gRNAは、修飾されたsgRNAである、実施形態97~131のいずれかに記載の方法。
133. 前記gRNAは、化学修飾されたsgRNAである、実施形態97~132のいずれかに記載の方法。
134. 前記造血幹細胞または前駆細胞はCD34+である、実施形態97~133のいずれかに記載の方法。
135. 前記造血幹細胞または前駆細胞は、対象の骨髄細胞または末梢血単核細胞(PBMC)に由来する、実施形態97~133のいずれかに記載の方法。
136. 前記対象は造血障害を有する、実施形態135に記載の方法。
137. 前記対象は健康なドナーである、実施形態135に記載の方法。
138. 実施形態97~137のいずれかに記載の方法または使用によって産生された、遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
139. 実施形態138に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞を複数含む(例えば、造血幹細胞、造血前駆細胞、またはそれらの組み合わせを含む)細胞集団。
140. 造血障害を処置する方法であって、それを必要とする対象に、実施形態1~43及び138のいずれかに記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または実施形態60~67及び169のいずれかに記載の細胞集団の有効量を投与することを含む前記方法。
141. 造血障害の処置において使用するための、実施形態1~20及び138のいずれかに記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または実施形態60~67及び169のいずれかに記載の細胞集団であって、前記処置は、それを必要とする対象に、前記遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または前記細胞集団の有効量を投与することを含み、かつ、CD33をターゲティングする薬剤であって、CD33と結合する抗原結合性フラグメントを含む前記薬剤の有効量を前記対象に投与することをさらに含む、前記遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または前記細胞集団。
142. 造血障害の処置において使用するための、実施形態1~20及び138のいずれかに記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または実施形態60~67及び169のいずれかに記載の細胞集団と、CD33をターゲティングする薬剤であって、CD33と結合する抗原結合性フラグメントを含む前記薬剤との組み合わせであって、前記処置は、それを必要とする患者に、前記遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または前記細胞集団、及びCD33と結合する前記薬剤の有効量を投与することを含む、前記組み合わせ。
143. 造血障害の処置において使用するための、実施形態1~9、21~29及び138のいずれかに記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または実施形態60~67及び169のいずれかに記載の細胞集団であって、前記処置は、それを必要とする対象に、前記遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または前記細胞集団の有効量を投与することを含み、かつ、EMR2をターゲティングする薬剤であって、EMR2と結合する抗原結合性フラグメントを含む前記薬剤の有効量を前記対象に投与することをさらに含む、前記遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または前記細胞集団。
144. 造血障害の処置において使用するための、実施形態1~9、21~29及び138のいずれかに記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または実施形態60~67及び169のいずれかに記載の細胞集団と、EMR2をターゲティングする薬剤であって、EMR2と結合する抗原結合性フラグメントを含む前記薬剤との組み合わせであって、前記処置は、それを必要とする患者に、前記遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または前記細胞集団、及びEMR2と結合する前記薬剤の有効量を投与することを含む、前記組み合わせ。
145. 造血障害の処置において使用するための、実施形態1~9、43~59及び138のいずれかに記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または実施形態60~67及び169のいずれかに記載の細胞集団であって、前記処置は、それを必要とする対象に、前記遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または前記細胞集団の有効量を投与することを含み、かつ、CD33をターゲティングする薬剤であって、CD33と結合する抗原結合性フラグメントを含む前記薬剤の有効量と、少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原をターゲティングする薬剤であって、前記少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原と結合する抗原結合性フラグメントを含む前記薬剤の有効量とを前記対象に投与することをさらに含む、前記遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または前記細胞集団。
146. 造血障害の処置において使用するための、実施形態1~9、43~59及び138のいずれかに記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または実施形態60~67及び169のいずれかに記載の細胞集団と、CD33をターゲティングする薬剤であって、CD33と結合する抗原結合性フラグメントを含む前記薬剤と、少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原をターゲティングする薬剤であって、少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原と結合する抗原結合性フラグメントを含む前記薬剤との組み合わせであって、前記処置は、それを必要とする患者に、前記遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または前記細胞集団、ならびにCD33及び前記少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原と結合する前記薬剤の有効量を投与することを含む、前記組み合わせ。
147. 前記少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原はEMR2である、実施形態145に記載の組み合わせ及び実施形態146に記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞。
148. がん免疫療法において使用するための、実施形態1~59及び138のいずれかに記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞、または実施形態60~67及び169のいずれかに記載の細胞集団。
149. 前記患者は造血障害を有する、がん免疫療法において使用するための、実施形態1~59及び138のいずれかに記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞、または実施形態60~67及び169のいずれかに記載の細胞集団。
150. 造血障害を有する患者の造血系リポピュレーションにおいて使用するための、実施形態1~59及び138のいずれかに記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞、または実施形態60~67及び169のいずれかに記載の細胞集団。
151. 造血障害を処置する方法において使用するための、実施形態1~59及び138のいずれかに記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞、または実施形態60~67及び169のいずれかに記載の細胞集団であって、本書に記述される前記遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または本書に記述される細胞集団が前記患者をリポピュレートする、前記遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または前記細胞集団。
152. 免疫療法においてCD33及び/または少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原をターゲティングする薬剤の細胞傷害効果を低下させるのに使用するための、実施形態1~59及び138のいずれかに記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞、または実施形態60~67及び169のいずれかに記載の細胞集団。
153. CD33及び/または少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原をターゲティングする薬剤を使用する免疫療法の方法において使用するための、実施形態1~59及び138のいずれかに記載の遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞、または実施形態60~67及び169のいずれかに記載の細胞集団であって、本書に記述される前記遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または本書に記述される細胞集団は、CD33及び/または少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原をターゲティングする前記薬剤の細胞傷害効果を低下させる、前記遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または前記細胞集団。
154. 前記遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または前記細胞集団は、CD33及び/または少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原をターゲティングする前記薬剤と併用投与される、実施形態140~153のいずれかに記載の方法、細胞、薬剤、または組み合わせ。
155. 前記遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または前記細胞集団は、CD33及び/または少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原をターゲティングする前記薬剤の前に投与される、実施形態140~153のいずれかに記載の方法、細胞、薬剤、または組み合わせ。
156. CD33及び/または少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原をターゲティングする前記薬剤は、前記遺伝子工学操作された造血幹細胞もしくは前駆細胞または前記細胞集団の前に投与される、実施形態140~153のいずれかに記載の方法、細胞、薬剤、または組み合わせ。
157. 前記造血障害は造血器悪性腫瘍である、実施形態140~156のいずれかに記載の方法、細胞、薬剤、使用、または組み合わせ。
158. 前記対象に、CD33をターゲティングする薬剤であって、CD33と結合する抗原結合性フラグメントを含む前記薬剤の有効量、及び/または、少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原をターゲティングする薬剤であって、前記少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原と結合する抗原結合性フラグメントを含む前記薬剤の有効量を投与することをさらに含む、実施形態140~157のいずれかに記載の方法、細胞、薬剤、使用、または組み合わせ。
159. CD33をターゲティングする前記薬剤は、CD33と結合する前記抗原結合性フラグメントを含む、キメラ抗原受容体(CAR)を発現する免疫細胞であり、前記少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原をターゲティングする前記薬剤は、前記少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原と結合する前記抗原結合性フラグメントを含む、キメラ抗原受容体(CAR)を発現する免疫細胞である、実施形態158に記載の方法、細胞、薬剤、使用、または組み合わせ。
160. 前記少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原はEMR2である、実施形態152~159に記載の方法、細胞、薬剤、使用、または組み合わせ。
161. 前記免疫細胞はT細胞である、実施形態159に記載の方法、細胞、薬剤、使用、または組み合わせ。
162. 前記対象は、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、白血病、または多発性骨髄腫を有するヒト患者である、実施形態140~161のいずれかに記載の方法、細胞、薬剤、使用、または組み合わせ。
163. 前記対象は、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、または慢性リンパ芽球性白血病である白血病を有するヒト患者である、実施形態163に記載の方法、細胞、薬剤、使用、または組み合わせ。
【0072】
以下の図面は、本明細書の一部をなし、本開示のある特定の態様をさらに示すために含まれるものであり、これらの態様は、これらの図面のうちの1つまたは複数を本書で提示される特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせて参照することにより、よりよく理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【
図1】0型、1型、2型、及び3型の系列特異的抗原の例示的な図解を提示する。
【
図2】0型の系列特異的細胞表面抗原であるCD307をターゲティングするキメラ受容体を発現する免疫細胞を示す概略図である。CD307を発現する多発性骨髄腫(MM)細胞、及び形質細胞などの他のCD307発現細胞は、抗CD307キメラ受容体を発現する免疫細胞によってターゲティングされる。
【
図3】2型の系列特異的細胞表面抗原であるCD33をターゲティングするキメラ受容体を発現する免疫細胞を示す概略図である。CD33を発現する急性骨髄性白血病(AML)細胞。ヒト造血幹細胞(HSC)は、CD33が欠損するように遺伝子工学操作され、したがって、抗CD33キメラ受容体を発現する免疫細胞によって認識されない。HSCは、骨髄性細胞を生じさせることができる。
【
図4A】CD33の塩基編集方式を示す。
図4Aは、エキソン1~3領域の詳細及び可能性のあるスプライシングの結果を示す。ag:スプライシングアクセプター部位(SA)。gt:スプライシングドナー部位。点線は、可能性のあるスプライシング事象を表す。GOゲンツズマブオゾガマイシン(抗体(Ab)アイコン)は、エキソン2に位置するエピトープを認識する。
【
図4B】CD33の塩基編集方式を示す。
図4Bは、エキソン2 SA(赤)及びエキソンスプライシングエンハンサー部位(黄色のESE)を強調したイントロン1(小文字)/エキソン2(大文字)ジャンクションDNA配列を示す。
【
図4C】CD33の塩基編集方式を示す。
図4Cは、CD33 mRNA完全長(CD33
FL)が7つのエキソンを含むことを示す。エキソン2は、Ig様V型ドメインをコードする。CD33
Δ2は、CをTに変化させて改変されたエキソンスプライシングエンハンサー(ESE)部位をもたらす一般的な多型(rs12459419)のためにエキソン2を欠いている。
【
図5A】ABEが、ターゲットの部位において最大95%の効率でA>G変換を導入し、インデルはごくわずかであり、エキソン2スキッピングを誘導することを示す。
図5Aは、野生型ゲノム配列(上)と比較した、編集済細胞のサンガーシーケンシングプロファイルである。ESEまたはSAを変異させるシトシンまたはアデニンの編集が矢印で示されている。
【
図5B】ABEが、ターゲットの部位において最大95%の効率でA>G変換を導入し、インデルはごくわずかであり、エキソン2スキッピングを誘導することを示す。
図5Bは、ターゲット部位における編集結果を表すCRISPResso2によるHTS分析の結果を示す。ターゲットのヌクレオチドを囲むおよそ250bpは、抽出されたゲノムDNAからPCR増幅され、Illumina MiSeqでシーケンシングされた。結果は、ターゲットの塩基各々が意図される変異を獲得したことを示す。
【
図5C】ABEが、ターゲットの部位において最大95%の効率でA>G変換を導入し、インデルはごくわずかであり、エキソン2スキッピングを誘導することを示す。
図5Cは、エキソン2内に位置するエピトープを認識する2つの異なる抗体クローンWM53及びP67.6を使用したFACS分析による、電気穿孔7日後の編集済細胞におけるCD33発現の評価を示す。BE4による編集後、CD34
+細胞の約30%がCD33発現を示すが、ABEによる編集後は5%未満である。
【
図5D】ABEが、ターゲットの部位において最大95%の効率でA>G変換を導入し、インデルはごくわずかであり、エキソン2スキッピングを誘導することを示す。
図5Dは、ESEまたはSAの編集がエキソン2スキッピングを誘導することを示す。CD34
+編集済細胞におけるエキソンスキッピングを、CD33
Δ2に特異的なプライマー(エキソンジャンクション1-3にまたがる)、またはすべてのアイソフォームに共通するプライマー(エキソン1、5、及び7内)のセットを用いたcDNAに対するPCRを行うことによって特性評価した。PCR産物をポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離し、SYBR-safeの蛍光により可視化した。ゲルの下で、PCR産物のサンガーシーケンシングにより、編集済細胞にはエキソン2が存在しないが、他のエキソンはすべてインタクトであることが確認される。
【
図6A】in vitroで分化したWTまたはCD33
Δ2の単球が正常な貪食能力を示すこと、及びCD34
+CD33
Δ2細胞がin vitroでGO細胞傷害性に対する抵抗性をもつことを示す。
図6Aは、in vitroで分化したWTまたはCD33
Δ2の単球が、E.Coli生体粒子の内部移行によって測定した場合に同等の貪食能力を示すことを示す。左側は、in vitroで分化したWTまたはCD33
Δ2の単球によるE.Coli生体粒子の内部移行の代表的なFACsプロットである。アクチン重合阻害剤であるサイトカラシンDによる処置は、貪食を抑止する。右側は、貪食の定量化を示すグラフである。
【
図6B】in vitroで分化したWTまたはCD33
Δ2の単球が正常な貪食能力を示すこと、及びCD34
+CD33
Δ2細胞がin vitroでGO細胞傷害性に対する抵抗性をもつことを示す。
図6Bは、CD34
+CD33
Δ2細胞がin vitroでGO細胞傷害性に抵抗することを示す。細胞をGOと共に48時間インキュベートし、細胞傷害性をFACSによって分析した。CD34
+CD33
Δ2は、GO細胞傷害性に対し、ホモ接合性rs12459419 A14V SNPを有するドナーと比べて同じ抵抗性を示す。
【
図7A】CD34
+CD33
Δ2が、in vivoで生着し、完全な造血系を再現し、ゲムツズマブオゾガマイシン(GO)に対する抵抗性をもつことを示す。
図7Aは、移植後16週で分析した骨髄(BM)及び脾臓における、ヒトCD45+細胞の頻度、ならびに、ヒトCD45集団内の骨髄系前駆細胞(CD123)及びリンパ系前駆細胞(CD10)、ならびに成熟した骨髄系細胞(CD14)及びリンパ系細胞(CD19)、及びT細胞(CD3)の頻度を示すグラフである。
【
図7B】CD34
+CD33
Δ2が、in vivoで生着し、完全な造血系を再現し、ゲムツズマブオゾガマイシン(GO)に対する抵抗性をもつことを示す。
図7Bは、CD34
+WTまたはCD34
+CD33
Δ2を生着させたマウスのBMに対するH&E染色及び抗CD33による免疫組織化学の代表的画像である。
【
図7C】CD34
+CD33
Δ2が、in vivoで生着し、完全な造血系を再現し、ゲムツズマブオゾガマイシン(GO)に対する抵抗性をもつことを示す。
図7Cは、CD34
+CD33
Δ2細胞がin vivoでGO抵抗性をもつことを示す。移植12週間後のマウスの末梢血(PB)を、CD33
+CD14
+細胞またはCD33
Δ2CD14
+細胞の存在について分析した。次にマウスに2.5ugrのGOを注射し、GO処置の1週間後に採血して袋詰めし、ヒト化マウスのPB及びBM中の骨髄性細胞の存在を評価した。GO処置前、CD34
+WT移植マウスまたはCD34
+CD33
Δ2移植マウスは、PB中のCD14
+細胞の頻度が同じであることを示していた(上のFACSプロット)。GO注射の1週間後、CD34
+CD33
Δ2細胞を生着させたマウスのPB及びBM中ではCD33
-CD14
+細胞が検出されるが、CD34
+WT生着マウスのPB及びBM中ではCD33
+細胞及びCD14
+細胞が根絶されている。
【
図7D】CD34
+CD33
Δ2が、in vivoで生着し、完全な造血系を再現し、ゲムツズマブオゾガマイシン(GO)に対する抵抗性をもつことを示す。
図7Dは、移植16週間後の骨髄サンプルから生着したWT(未編集)細胞または編集済細胞中のターゲット部位(A7)におけるCD33オンターゲットA-G編集のグラフである。移植の16週間後、CD33遺伝子座をマウスの骨髄由来のゲノムDNAから増幅させた。アンプリコンをHTSによってシーケンシングし、A7位におけるAからGへの編集を定量化した。
【
図8A】オフターゲット分析の結果を示す。
図8Aは、識別された上位19のオフターゲット遺伝子座をまとめた表である。
【
図8B】オフターゲット分析の結果を示す。
図8Bは、移植16週間後の骨髄から生着したヒトWT(未編集)細胞または編集済細胞中で識別された上位19のオフターゲット遺伝子座のA7位におけるAからGへの編集の評価のグラフである。
【
図8C】オフターゲット分析の結果を示す。
図8Cは、移植16週間後の骨髄から生着したヒトWT(未編集)細胞または編集済細胞中で識別された上位19のオフターゲット遺伝子座におけるインデルの評価のグラフである。
【
図9A】CD33及びEMR2の塩基編集方式を示し、ABEが、CD34
+細胞の二重編集につながるターゲット部位におけるA>G変換を導入することを示す。
図9A(上)は、EMR2、エキソン13、gtgagt:スプライシングドナー部位(SD)の詳細を示す。
図9A(下)は、イントロン12(小文字)/エキソン13(大文字)ジャンクションDNA配列を示し、エキソン13 SD(赤)及び太字のプロトスペーサーが強調されている。
【
図9B】CD33及びEMR2の塩基編集方式を示し、ABEが、CD34
+細胞の二重編集につながるターゲット部位におけるA>G変換を導入することを示す。
図9Bは、野生型ゲノム配列(上)と比較した編集済細胞のサンガーシーケンシングプロファイルである。CD33エキソン2のSAまたはEMR2エキソン13のSDを変異させるアデニンの編集が矢印で示されている。
【
図9C】CD33及びEMR2の塩基編集方式を示し、ABEが、CD34
+細胞の二重編集につながるターゲット部位におけるA>G変換を導入することを示す。
図9Cは、ヌクレオフェクション1週間後のWT及び編集済細胞のFACS分析を示す。
【
図10A】CD33をターゲティングする抗原結合性フラグメントを含む例示的なキメラ受容体の概略図を示す。
図10A:抗CD33 scFv、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、及びシグナル伝達ドメインを含む、CD33をターゲティングする一般的なキメラ受容体。
【
図10B】CD33をターゲティングする抗原結合性フラグメントを含む例示的なキメラ受容体の概略図を示す。
図10B:抗CD33 scFv、CD8由来のヒンジドメイン、CD8由来の膜貫通ドメイン、ならびにCD28及びCD3ζ由来の細胞内ドメインを含む、CD33をターゲティングするキメラ受容体。
【
図10C】CD33をターゲティングする抗原結合性フラグメントを含む例示的なキメラ受容体の概略図を示す。
図10C:抗CD33 scFv、CD8由来のヒンジドメイン、CD8由来の膜貫通ドメイン、ならびにICOS(またはCD27、4-1BB、もしくはOX-40)及びCD3ζ由来の細胞内ドメインを含む、CD33をターゲティングするキメラ受容体。
【
図10D】CD33をターゲティングする抗原結合性フラグメントを含む例示的なキメラ受容体の概略図を示す。
図10D:抗CD33 scFv、CD8由来のヒンジドメイン、CD8由来の膜貫通ドメイン、ならびにOX40、CD28、及びCD3ζ由来の細胞内ドメインを含む、CD33をターゲティングするキメラ受容体。
【
図12A】空のベクターまたは抗CD33キメラ受容体をコードするベクターが形質導入されたK562細胞において発現される抗CD33キメラ受容体の発現を示す。
図12A:CD3ζを認識する一次抗体を使用したウェスタンブロット。表は、試験したキメラ受容体の各々の推定分子量を提示している。
【
図12B】空のベクターまたは抗CD33キメラ受容体をコードするベクターが形質導入されたK562細胞において発現される抗CD33キメラ受容体の発現を示す。
図12B:抗CD33キメラ受容体について陽性に染色される細胞集団の増加を示すフローサイトメトリー分析。
【
図13A】抗CD33キメラ受容体がCD33に結合することを示す。
図13A:ポンソー染色されたタンパク質ゲル。レーン1、3、5:CD33分子。レーン2、4、6:CD33分子+APCコンジュゲート。
【
図13B】抗CD33キメラ受容体がCD33に結合することを示す。
図13B:CD3ζを認識する一次抗体を使用したウェスタンブロット。レーン1、3、及び5は、CD33分子とコインキュベートされたキメラ受容体を含み、レーン2、4、及び6は、CD33-APCコンジュゲートとコインキュベートされたキメラ受容体を含む。
【
図13C】抗CD33キメラ受容体がCD33に結合することを示す。
図13C:抗CD33キメラ受容体を発現しCD33と結合する細胞集団の増加を示すフローサイトメトリー分析。
【
図14】示されているキメラ受容体を発現するNK92細胞によるK562細胞の細胞傷害性を示す。A:空のHIVzsGベクターと比較したCART1及びCART2。B:空のHIVzsGベクターと比較したCART3。
【
図15】示されているキメラ受容体を発現するNK92細胞による、CD33が欠損したK562細胞の細胞傷害性(y軸に細胞傷害率として表されている)を示す。A:CD33ターゲティングCRISPR/Cas試薬で前処理したK562細胞の未選別集団。B:CD33が欠損したK562細胞の単一クローン。縦列は、左から右へ、空のHIVzsGベクター、CART1、CART2、及びCART3に対応する。
【
図16】初代T細胞集団のフローサイトメトリー分析を示す。A:T細胞マーカーC4
+、CD8
+、またはCD4
+CD8
+の両方の発現に基づく細胞の選別。B:示されている初代T細胞集団におけるCD33の相対的発現。
【
図17】示されているキメラ受容体を発現する初代T細胞によるK562細胞の細胞傷害性を示す。A:CD4
+T細胞。B:CD4
+/CD8
+(CD4/8)及びCD8
+(CD8)。
【発明を実施するための形態】
【0074】
がん細胞の細胞表面に存在する抗原をターゲティングするがん免疫療法は、対象の発達及び/または生存に必要であるか、あるいはそれらに決定的に関与する、正常な非がん細胞の細胞表面にもターゲット抗原が存在する場合、特に困難である。これらの抗原をターゲティングすると、免疫療法の細胞傷害効果が、がん細胞に加えてかかる細胞に向かうため、対象に有害効果が及ぶ可能性がある。
【0075】
本書に記述される方法、核酸、及び細胞は、がん細胞だけでなく、対象の発達及び/または生存に重要な細胞にも存在する抗原(例えば、1型または2型の抗原)のターゲティングを可能にする。この方法は、(1)ターゲットの系列特異的細胞表面抗原を保有する細胞の数を、そのような抗原をターゲティングする薬剤を使用して低下させること、及び(2)抗原を提示する故に薬剤の投与により死滅し得る正常細胞(例えば、非がん細胞)を、系列特異的細胞表面抗原が欠損している造血細胞で置換することを伴う。本書に記述される方法は、目的の系列特異的細胞表面抗原を発現するがん細胞を含むターゲット細胞の監視を維持することができ、対象の発達及び/または生存に重要であり得る系列特異的抗原を発現する非がん細胞集団を維持することもできる。
【0076】
したがって、本書には、造血器悪性腫瘍を処置するための、系列特異的細胞表面抗原(例えば、CD33)をターゲティングする抗原結合性フラグメントを含むキメラ受容体を発現する免疫細胞と、系列特異的細胞表面抗原が欠損している造血幹細胞(HSC)または造血前駆細胞(HPC)などの造血細胞との併用が記述される。また本書では、キメラ受容体、それをコードする核酸、それを含むベクター、及びそのようなキメラ受容体を発現する免疫細胞(例えば、T細胞)が提供される。
【0077】
本開示は、本書に記述されるものなどの系列特異的抗原が欠損している遺伝子工学操作された造血細胞、及びそれを作製するための方法(例えば、ゲノム編集方法)も提供する。
【0078】
また本書には、造血器悪性腫瘍を処置するための、系列特異的細胞表面抗原(例えば、CD33)及び少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原(例えば、EMR2)をターゲティングする抗原結合性フラグメントを含むキメラ受容体を発現する免疫細胞と、系列特異的細胞表面抗原(複数可)が欠損している造血幹細胞(HSC)または造血前駆細胞(HPC)などの造血細胞との併用が記述される。また本書では、キメラ受容体、それをコードする核酸、それを含むベクター、及びそのようなキメラ受容体を発現する免疫細胞(例えば、T細胞)が提供される。本開示は、本書に記述されるものなどの系列特異的抗原が欠損している遺伝子工学操作された造血細胞、及びそれを作製するための方法(例えば、ゲノム編集方法)も提供する。
【0079】
また本書には、CRISPRベースの塩基エディターシステムを使用した造血細胞のゲノム編集の方法が記述される。CIRSPRベースの塩基エディターシステムの使用は、CRISPRベースのシトシン塩基エディター及びアデニン塩基エディター(CBE及びABE)を使用したHSC/HSPCの高い編集効率を可能にする。CBE及びABEは、それぞれシチジンデアミナーゼまたはアデノシンデアミナーゼに融合したCas9ニッカーゼであり、DSBを生成することなく、ターゲットの領域における正確な塩基置換を可能にする。塩基エディターは、DSBを避けるため、DSBに起因する望まれないインデル、転座、または再構成をなくす安全性の高い編集ツールと考えられている。
【0080】
本書では、スプライスエレメントのヌクレオチド配列を特異的に改変することによって造血細胞を修飾するための、塩基エディター、特にアデノシン塩基エディターであるABE8eの高度に効果的な使用が示される。スプライスエレメントの改変は、遺伝子によってコードされる転写物の選択的スプライシングをもたらし、さらに、遺伝子によってコードされるエピトープ、例えば遺伝子のエキソンによってコードされるエピトープの発現レベル低下を引き起こす。本書では、CD33のエキソン2内のスプライスアクセプターまたはエキソンエンハンサー部位を改変するための塩基エディター及びgRNAの使用が示される。特に、ABE8e塩基エディターと、ジャンクションDNA配列をターゲティングするように特別に設計されたガイドRNAとを使用したゲノム編集は、インデルなしで最大95%の効率を示した。
【0081】
また本書では、EMR2のエキソン13のスプライスドナー部位を改変するための塩基エディターの使用が示される。
【0082】
更に、本書に記述されるシチジンデアミナーゼまたはアデノシンデアミナーゼに融合したCas9ニッカーゼは、mRNAまたはタンパク質の形態で使用することができる。後者の形態は、前者よりも少ないオフターゲット効果をもたらし、HSCを編集するために首尾よく使用され、このHSCはin vivoで生着し、CD34細胞にGOへの抵抗性を与えることができた。
【0083】
例えば、実施例1~5を参照のこと。
【0084】
定義
「対象」、「個体」、及び「患者」という用語は、同義に使用され、脊椎動物、好ましくはヒトなどの哺乳動物を指す。哺乳動物は、ヒト霊長類、非ヒト霊長類、またはマウス、ウシ、ウマ、イヌ、もしくはネコの種を含むが、これらに限定されない。本開示の文脈において、「対象」という用語には、in vitroもしくはex vivoで培養可能またはin vivoで操作可能な組織及び細胞も包含される。「対象」という用語は、「生物」という用語と同義に使用され得る。
【0085】
「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド」、「ヌクレオチド配列」、「核酸」及び「オリゴヌクレオチド」という用語は同義に使用される。これらは、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド、またはそれらの類似体のいずれかの、任意の長さのポリマー形態のヌクレオチドを指す。ポリヌクレオチドの例は、遺伝子または遺伝子フラグメントのコード領域または非コード領域、エキソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、任意の配列の単離RNA、核酸プローブ、及びプライマーを含むが、これらに限定されない。ポリヌクレオチド内の1つまたは複数のヌクレオチドは、さらに修飾されていてもよい。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分により中断されていてもよい。ポリヌクレオチドは、例えば標識剤とのコンジュゲーションにより、重合後に修飾することもできる。
【0086】
「ハイブリダイゼーション」という用語は、1つまたは複数のポリヌクレオチドが反応して、ヌクレオチド残基の塩基間の水素結合を介して安定化された複合体を形成する反応を指す。水素結合は、ワトソンクリック塩基対合、Hoogstein結合、または任意の他の配列特異的な様式で発生し得る。複合体は、二重鎖構造を形成する2つの鎖、多重鎖複合体を形成する3つ以上の鎖、単一の自己ハイブリダイズ鎖、またはこれらの任意の組み合わせを含み得る。ハイブリダイゼーション反応は、PCRの開始、または酵素によるポリヌクレオチドの切断など、より広範なプロセスにおけるステップを構成し得る。所与の配列とハイブリダイズ可能な配列は、所与の配列の「相補体」と呼ばれる。
【0087】
「組換え発現ベクター」という用語は、遺伝子修飾されたオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド構築物であって、構築物がmRNA、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、細胞内でmRNA、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドを発現させるのに十分な条件下でベクターを細胞と接触させた場合に、宿主細胞によるmRNA、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドの発現を可能にする構築物を意味する。本開示のベクターは、全体として天然に存在するものではない。ベクターの一部は天然に存在し得る。本開示の天然に存在しない組換え発現ベクターは、DNA及びRNAを含むがこれらに限定されない任意の種類のヌクレオチドを含むことができ、これらは、一本鎖でも二本鎖でもよく、合成されても天然源から部分的に取得されてもよく、天然の、非天然の、または改変されたヌクレオチドを含んでもよい。
【0088】
「トランスフェクション」、「形質転換」、または「形質導入」は、本書で使用される場合、物理的または化学的な方法を使用することにより、1つまたは複数の外因性ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入することを指す。
【0089】
「抗体」、「抗体のフラグメント」、「抗体フラグメント」、「抗体の機能的フラグメント」、または「抗原結合性部分」は、特定の抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つまたは複数のフラグメントまたは部分を意味するように同義に使用される(Holliger et al.,Nat.Biotech.(2005)23(9):1126)。本件の抗体は、抗体及び/またはそのフラグメントであり得る。抗体フラグメントは、Fab、F(ab’)2、scFv、ジスルフィド結合Fv、Fc、あるいはバリアント及び/または混合物を含む。抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、単鎖抗体、または二重特異性抗体であり得る。IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMを含む、すべての抗体アイソタイプが本開示に包含される。好適なIgGサブタイプには、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4が含まれる。抗体の軽鎖または重鎖の可変領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる3つの超可変領域によって中断されたフレームワーク領域からなる。本件の抗体または抗原結合性部分のCDRは、非ヒト由来でもヒト由来でもよい。本件の抗体または抗原結合性部分のフレームワークは、ヒト、ヒト化、非ヒト(例えば、ヒトにおける抗原性を減少させるように修飾されたマウスフレームワーク)、または合成のフレームワーク(例えば、コンセンサス配列)であり得る。
【0090】
本件の抗体または抗原結合性部分は、約10-7M未満、約10-8M未満、約10-9M未満、約10-10M未満、約10-11M未満、または約10-12M未満の解離定数(KD)で特異的に結合することができる。本開示による抗体の親和性は、従来の技法を使用して容易に決定することができる(例えば、Scatchard et al.,Ann.N.Y.Acad.Sci.(1949)51:660、及び米国特許第5,283,173号、同第5,468,614号、または均等物を参照のこと)。
【0091】
「キメラ受容体」、「キメラ抗原受容体」、または代替的に「CAR」という用語は、全体を通して同義に使用され、少なくとも細胞外抗原結合性ドメインと、膜貫通ドメインと、以下に定義する刺激分子に由来する機能的シグナル伝達ドメインを含む細胞質シグナル伝達ドメイン(本書では「細胞内シグナル伝達ドメイン」とも呼ばれる)とを含む組換えポリペプチド構築物を指す。Lee et al.,Clin.Cancer Res.(2012)18(10):2780、Jensen et al.,Immunol Rev.(2014)257(1):127。一実施形態では、刺激分子は、T細胞受容体複合体に関連するゼータ鎖である。一態様では、細胞質シグナル伝達ドメインは、以下に定義する少なくとも1つの共刺激分子に由来する、1つまたは複数の機能的シグナル伝達ドメインをさらに含む。共刺激分子は、4-1BB(すなわち、CD137)、CD27及び/またはCD28、あるいはこれらの分子のフラグメントでもよい。別の態様では、CARは、細胞外抗原認識ドメインと、膜貫通ドメインと、刺激分子に由来する機能的シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインとを含む、キメラ融合タンパク質を含む。CARは、細胞外抗原認識ドメインと、膜貫通ドメインと、共刺激分子に由来する機能的シグナル伝達ドメイン及び刺激分子に由来する機能的シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインとを含む、キメラ融合タンパク質を含む。代替的に、CARは、細胞外抗原認識ドメインと、膜貫通ドメインと、1つまたは複数の共刺激分子(複数可)に由来する2つの機能的シグナル伝達ドメイン及び刺激分子に由来する機能的シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインとを含む、キメラ融合タンパク質を含む。CARは、細胞外抗原認識ドメインと、膜貫通ドメインと、1つまたは複数の共刺激分子(複数可)に由来する少なくとも2つの機能的シグナル伝達ドメイン及び刺激分子に由来する機能的シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインとを含む、キメラ融合タンパク質を含んでもよい。核酸配列によってコードされるCARの抗原認識部分は、任意の系列特異的な抗原結合性抗体フラグメントを含むことができる。抗体フラグメントは、1つまたは複数のCDR、可変領域(またはその一部)、定常領域(またはその一部)、または前述のもののいずれかの組み合わせを含み得る。
【0092】
「シグナル伝達ドメイン」という用語は、セカンドメッセンジャーを生成すること、またはかかるメッセンジャーに応答することでエフェクターとして機能することにより、規定のシグナル伝達経路を介して細胞活動を制御するように、細胞内で情報を伝達することによって作用するタンパク質の機能的部分を指す。
【0093】
「ゼータ」または代替的に「ゼータ鎖」、「CD3ゼータ」もしくは「TCRゼータ」という用語は、GenBankアクセッション番号NP_932170、NP_000725、もしくはXP_011508447として提供されるタンパク質、または非ヒト種、例えば、マウス、齧歯類、サル、類人猿などに由来する均等な残基と定義され、「ゼータ刺激ドメイン」または代替的に「CD3ゼータ刺激ドメイン」もしくは「TCRゼータ刺激ドメイン」は、T細胞活性化に必要な初期シグナルを機能的に伝達するのに十分である、ゼータ鎖の細胞質ドメイン由来のアミノ酸残基と定義される。
【0094】
「遺伝子工学操作された」または「遺伝子修飾された」という用語は、遺伝子工学操作によって、例えばゲノム編集によって細胞が操作されることを指す。すなわち、細胞は、前記細胞に天然には存在しない異種配列を含む。典型的に、異種配列は、ベクター系、またはリポソームを含む細胞に核酸分子を導入するための他の手段を介して導入される。異種核酸分子は、細胞のゲノムに組み込まれてもよいし、染色体外に、例えばプラスミドの形態で存在してもよい。この用語には、遺伝子工学操作された、単離されたCARポリペプチドを細胞に導入する実施形態も含まれる。
【0095】
「自己由来」という用語は、後に同じ個体に再導入されるものと同じ個体に由来する任意の材料を指す。
【0096】
「同種異系」という用語は、材料が導入される個体と同じ種に属する異なる動物に由来する任意の材料を指す。1つまたは複数の遺伝子座における遺伝子が同一でない場合、2体以上の個体は互いに同種異系であると言われる。
【0097】
「細胞系列」という用語は、共通の祖先をもち、同じ種類の識別可能な細胞から特定の識別可能な/機能性の細胞へと発達する細胞を指す。本書で使用される細胞系列は、呼吸器、前立腺、膵臓、乳腺、腎臓、腸、神経、骨格、血管、肝臓、造血、筋肉または心臓の細胞系列を含むが、これらに限定されない。
【0098】
系列特異的抗原の遺伝子発現または機能に関して使用される場合の「阻害」という用語は、系列特異的抗原の遺伝子発現または機能のレベルの低下を指し、阻害は遺伝子発現または機能への干渉の結果である。阻害は、完全なこともあり、その場合は検出可能な発現もしくは機能がなく、または部分的なこともある。部分的な阻害は、ほぼ完全な阻害から、ほぼ阻害がないものまで、幅があり得る。特定のターゲット細胞を排除することにより、CAR T細胞は、特定の細胞系列の全体的な発現を効果的に阻害し得る。
【0099】
「系列特異的抗原が欠損している」造血細胞などの細胞は、天然に存在する同等物、例えば、同じ種類の内因性造血細胞、または、系列特異的抗原を発現しない細胞、すなわち、FACSなどの定型的なアッセイによって検出できない細胞と比較した場合、系列特異的抗原の発現レベルが実質的に低下している細胞を指す。場合によっては、「抗原が欠損している」細胞による系列特異的抗原の発現レベルは、天然に存在する同等物による同じ系列特異的抗原の発現レベルの約40%未満(例えば、30%、20%、15%、10%、5%またはそれ以下)であり得る。
【0100】
本書で使用される「スプライスエレメント」という用語は、スプライスアクセプター部位、スプライスドナー部位、スプライスエンハンサー部位、及びスプライスサイレンサー部位を含む。
【0101】
本書で使用される場合、「約」という用語は、特定の値±5%を指す。例えば、約40%の発現レベルは、35%~45%のいずれかの発現量を含み得る。
【0102】
系列特異的細胞表面抗原をターゲティングする薬剤
本開示の諸態様は、例えばターゲットがん細胞にある、系列特異的細胞表面抗原(複数可)をターゲティングする薬剤(例えば、CD33をターゲティングする薬剤、例えば、CD33と結合する抗原結合性フラグメントを含む薬剤、及び少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原をターゲティングする薬剤、例えば、少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原と結合する抗原結合性フラグメントを含む薬剤)を提供する。そのような薬剤は、系列特異的細胞表面抗原(複数可)と結合しこれをターゲティングする抗原結合性フラグメントを含み得る。場合によっては、抗原結合性フラグメントは、系列特異的抗原に特異的に結合する単鎖抗体(scFv)であり得る。
【0103】
A. 系列特異的細胞表面抗原
本書で使用される場合、「系列特異的」、「系列特異的細胞表面抗原」及び「細胞表面系列特異的抗原」という用語は、同義に使用されることがあり、細胞の表面に十分に存在する、細胞系列(複数可)の1つまたは複数の集団に関連する任意の抗原を指す。例えば、抗原は、細胞系列(複数可)の1つまたは複数の集団に存在し、他の細胞集団の細胞表面には存在しない(またはレベルが低下している)場合がある。
【0104】
概して、系列特異的細胞表面抗原は、抗原及び/または抗原を提示する細胞集団が宿主生物の生存及び/または発達に必要とされるかどうかといった、いくつかの要素に基づいて分類することができる。系列特異的抗原の例示的な種類の概要を以下の表1に提示する。
図1も参照のこと。
【表1】
【0105】
表1及び
図1に示すように、0型系列特異的細胞表面抗原は、組織の恒常性及び生存に必要であり、0型系列特異的細胞表面抗原を保有する細胞型も、対象の生存に必要であり得る。よって、恒常性及び生存における0型系列特異的細胞表面抗原または0型系列特異的細胞表面抗原を保有する細胞の重要性を考えると、かかる抗原及びかかる抗原を保有する細胞の阻害または除去は対象の生存に対して有害であり得るため、従来のCAR T細胞免疫療法を使用してこのカテゴリの抗原をターゲティングするのは困難であり得る。それ故、系列特異的細胞表面抗原(0型系列特異的抗原など)及び/またはかかる抗原を保有する細胞型は、例えば対象において必須の重複しない機能を果たすため、生存のために必要である可能性があり、その場合、この種類の系列特異的抗原は、CAR T細胞ベースの免疫療法のターゲットとして不適切であり得る。
【0106】
0型抗原とは異なり、1型系列特異的細胞表面抗原及び1型系列特異的細胞表面抗原を保有する細胞は、対象の組織恒常性または生存に必要とされない。1型系列特異的細胞表面抗原をターゲットにした場合、対象に有害な結果をもたらす可能性は低い。例えば、正常な形質細胞と多発性骨髄腫(MM)細胞との両方で独特に発現される1型抗原であるCD307をターゲティングするように工学操作されたCAR T細胞は、両方の細胞型の排除につながる(
図2)(Elkins et al.,Mol Cancer Ther.(2012)10:2222)。しかし、形質細胞系列は生物の生存のために消費されるため、CD307及び他の1型系列特異的抗原は、CAR T細胞ベースの免疫療法に好適な抗原である。1型クラスの系列特異的抗原は、卵巣、精巣、前立腺、乳房、子宮内膜、及び膵臓を含む多種多様な異なる組織で発現され得る。いくつかの実施形態では、薬剤は、1型抗原である系列特異的細胞表面抗原をターゲティングする。
【0107】
2型抗原のターゲティングは、1型抗原と比較すると大きな問題点を提示する。2型抗原は、(1)抗原が生物の生存のために不必要である(すなわち、生存に必要とされない)こと、及び(2)抗原を保有する細胞系列が生物の生存に不可欠である(すなわち、特定の細胞系列が生存に必要とされる)ことを特徴とするものである。例えば、CD33は、正常な骨髄性細胞及び急性骨髄性白血病(AML)細胞の両方で発現される2型抗原である(Dohner et al.,(2015)NEJM 373:1136)。結果として、CD33抗原をターゲティングするように工学操作されたCAR T細胞は、正常細胞及びAML細胞の両方の死滅につながる可能性があり、対象の生存と両立しない可能性がある(
図3)。いくつかの実施形態では、薬剤は、2型抗原である系列特異的抗原細胞表面をターゲティングする。
【0108】
多種多様な抗原が本開示の方法及び組成物のターゲットになり得る。これらの抗原に対するモノクローナル抗体は、商業的に購入してもよいし、または、上述のように、目的の抗原で動物を免疫化した後、従来のモノクローナル抗体方法論、例えばKohler and Milstein,Nature(1975)256:495の標準的な体細胞ハイブリダイゼーション技法を行うことを含む、標準的な技法を使用して生成してもよい。抗体または抗体をコードする核酸は、任意の標準的なDNAまたはタンパク質のシーケンシング技法を使用してシーケンシングすることができる。
【0109】
いくつかの実施形態では、本書に記述される方法及び細胞を使用してターゲティングされる系列特異的細胞表面抗原は、白血球または白血球の亜集団の系列特異的細胞表面抗原である。いくつかの実施形態では、系列特異的抗原細胞表面は、骨髄性細胞に関連する抗原である。いくつかの実施形態では、系列特異的細胞表面抗原は、細胞膜分化抗原(CD)である。CD抗原の例は、限定されるものではないが、CD1a、CD1b、CD1c、CD1d、CD1e、CD2、CD3、CD3d、CD3e、CD3g、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8a、CD8b、CD9、CD10、CD11a、CD11b、CD11c、CD11d、CDw12、CD13、CD14、CD15、CD16、CD16b、CD17、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD25、CD26、CD27、CD28、CD29、CD30、CD31、CD32a、CD32b、CD32c、CD33、CD34、CD35、CD36、CD37、CD38、CD39、CD40、CD41、CD42a、CD42b、CD42c、CD42d、CD43、CD44、CD45、CD45RA、CD45RB、CD45RC、CD45RO、CD46、CD47、CD48、CD49a、CD49b、CD49c、CD49d、CD49e、CD49f、CD50、CD51、CD52、CD53、CD54、CD55、CD56、CD57、CD58、CD59、CD60a、CD61、CD62E、CD62L、CD62P、CD63、CD64a、CD65、CD65s、CD66a、CD66b、CD66c、CD66F、CD68、CD69、CD70、CD71、CD72、CD73、CD74、CD75、CD75S、CD77、CD79a、CD79b、CD80、CD81、CD82、CD83、CD84、CD85A、CD85C、CD85D、CD85E、CD85F、CD85G、CD85H、CD85I、CD85J、CD85K、CD86、CD87、CD88、CD89、CD90、CD91、CD92、CD93、CD94、CD95、CD96、CD97、CD98、CD99、CD99R、CD100、CD101、CD102、CD103、CD104、CD105、CD106、CD107a、CD107b、CD108、CD109、CD110、CD111、CD112、CD113、CD114、CD115、CD116、CD117、CD118、CD119、CD120a、CD120b、CD121a、CD121b、CD121a、CD121b、CD122、CD123、CD124、CD125、CD126、CD127、CD129、CD130、CD131、CD132、CD133、CD134、CD135、CD136、CD137、CD138、CD139、CD140a、CD140b、CD141、CD142、CD143、CD144、CDw145、CD146、CD147、CD148、CD150、CD152、CD152、CD153、CD154、CD155、CD156a、CD156b、CD156c、CD157、CD158b1、CD158b2、CD158d、CD158e1/e2、CD158f、CD158g、CD158h、CD158i、CD158j、CD158k、CD159a、CD159c、CD160、CD161、CD163、CD164、CD165、CD166、CD167a、CD168、CD169、CD170、CD171、CD172a、CD172b、CD172g、CD173、CD174、CD175、CD175s、CD176、CD177、CD178、CD179a、CD179b、CD180、CD181、CD182、CD183、CD184、CD185、CD186、CD191、CD192、CD193、CD194、CD195、CD196、CD197、CDw198、CDw199、CD200、CD201、CD202b、CD203c、CD204、CD205、CD206、CD207、CD208、CD209、CD210a、CDw210b、CD212、CD213a1、CD213a2、CD215、CD217、CD218a、CD218b、CD220、CD221、CD222、CD223、CD224、CD225、CD226、CD227、CD228、CD229、CD230、CD231、CD232、CD233、CD234、CD235a、CD235b、CD236、CD236R、CD238、CD239、CD240、CD241、CD242、CD243、CD244、CD245、CD246、CD247、CD248、CD249、CD252、CD253、CD254、CD256、CD257、CD258、CD261、CD262、CD263、CD264、CD265、CD266、CD267、CD268、CD269、CD270、CD271、CD272、CD273、CD274、CD275、CD276、CD277、CD278、CD279、CD280、CD281、CD282、CD283、CD284、CD286、CD288、CD289、CD290、CD292、CDw293、CD294、CD295、CD296、CD297、CD298、CD299、CD300a、CD300c、CD300e、CD301、CD302、CD303、CD304、CD305、306、CD307a、CD307b、CD307c、D307d、CD307e、CD309、CD312、CD314、CD315、CD316、CD317、CD318、CD319、CD320、CD321、CD322、CD324、CD325、CD326、CD327、CD328、CD329、CD331、CD332、CD333、CD334、CD335、CD336、CD337、CD338、CD339、CD340、CD344、CD349、CD350、CD351、CD352、CD353、CD354、CD355、CD357、CD358、CD359、CD360、CD361、CD362及びCD363を含む。www.bdbiosciences.com/documents/BD_Reagents_CDMarkerHuman_Poster.pdfを参照のこと。
【0110】
いくつかの実施形態では、系列特異的細胞表面抗原は、CD19、CD20、CD11、CD123、CD56、CD34、CD14、CD33、CD66b、CD41、CD61、CD62、CD235a、CD146、CD326、LMP2、CD22、CD52、CD10、CD3/TCR、CD79/BCR、及びCD26である。
【0111】
いくつかの実施形態では、系列特異的細胞表面抗原はCD33である。
【0112】
代替的に、またはさらに、系列特異的細胞表面抗原は、がん抗原、例えば、がん細胞に示差的に存在する系列特異的細胞表面抗原であり得る。いくつかの実施形態では、がん抗原は、組織または細胞系列に特異的な抗原である。特定の種類のがんに関連する系列特異的細胞表面抗原の例は、限定されるものではないが、CD20、CD22(非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、慢性リンパ球性白血病(CLL))、CD52(B細胞CLL)、CD33(急性骨髄性白血病(AML))、CD10(gp100)(共通(プレB)急性リンパ球性白血病及び悪性黒色腫)、CD3/T細胞受容体(TCR)(T細胞リンパ腫及び白血病)、CD79/B細胞受容体(BCR)(B細胞リンパ腫及び白血病)、CD26(上皮系及びリンパ系の悪性腫瘍)、ヒト白血球抗原(HLA)-DR、HLA-DP、及びHLA-DQ(リンパ系悪性腫瘍)、RCAS1(婦人科癌、胆管腺癌及び膵管腺癌)、ならびに前立腺特異的膜抗原を含む。
【0113】
いくつかの実施形態では、系列特異的細胞表面抗原はCD33であり、AML細胞に関連する。いくつかの実施形態では、系列特異的細胞表面抗原はEMR2であり、AML細胞に関連する。
【0114】
B. 抗原結合性フラグメント
任意の抗体またはその抗原結合性フラグメント(例えば、CD33または少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原、例えばEMR2と結合するもの)を使用して、本書に記述される系列特異的細胞表面抗原をターゲティングする薬剤を構築することができる。そのような抗体または抗原結合性フラグメントは、従来の方法により、例えば、ハイブリドーマ技術または組換え技術を使用して調製することができる。
【0115】
例えば、目的の系列特異的抗原に特異的な抗体は、従来のハイブリドーマ技術によって作製することができる。KLHなどの担体タンパク質にカップリングできる細胞表面系列特異的抗原を使用して、その複合体に結合する抗体を生成するために宿主動物を免疫化することができる。宿主動物の免疫化の経路及びスケジュールは、概して、本書にさらに記述されるように、抗体刺激及び産生のための確立された従来の技法に従う。マウス抗体、ヒト化抗体、及びヒト抗体の産生のための一般的技法は、当技術分野では公知であり、本書に記述されている。ヒトを含む哺乳動物のハイブリドーマ細胞株を産生するための基礎とするために、ヒトを含む任意の哺乳動物対象またはそれに由来する抗体産生細胞が操作され得ることが企図される。典型的には、宿主動物の腹腔内、筋肉内、口腔内、皮下、足底内、及び/または皮内に、本書に記述されるものを含むある量の免疫原を接種する。
【0116】
ハイブリドーマは、Kohler and Milstein Nature(1975)256:495-497の一般的な体細胞ハイブリダイゼーション技法またはBuck et al.,In Vitro(1982)18:377-381により修正されたものを使用して、リンパ球及び不死化骨髄腫細胞から調製することができる。ハイブリダイゼーションには、X63-Ag8.653、及びSalk Institute,Cell Distribution Center,San Diego,Calif.,USAからのものを含むがこれらに限定されない、利用可能な骨髄腫株を使用してもよい。概して、この技法は、ポリエチレングリコールなどの融合剤を使用して、または当業者によく知られている電気的手段によって、骨髄腫細胞及びリンパ系細胞を融合させることを伴う。融合後、細胞を融合培地から分離し、ヒポキサンチン-アミノプテリン-チミジン(HAT)培地などの選択的増殖培地で増殖させて、ハイブリダイズしていない親細胞を排除する。本書に記述される培地はいずれも、血清を補うか補わないかにかかわらず、モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを培養するために使用することができる。細胞融合技法の別の代替法として、EBV不死化B細胞を使用して、本書に記述されるTCR様モノクローナル抗体を産生してもよい。ハイブリドーマを拡大培養し、必要に応じてサブクローニングし、上清を従来のイムノアッセイ手順(例えば、ラジオイムノアッセイ、エンザイムイムノアッセイ、または蛍光イムノアッセイ)によって抗免疫原活性についてアッセイする。
【0117】
抗体源として使用できるハイブリドーマは、系列特異的抗原に結合可能なモノクローナル抗体を産生する親ハイブリドーマのすべての誘導体、子孫細胞を包含する。そのような抗体を産生するハイブリドーマは、公知の手順を使用してin vitroまたはin vivoで増殖させることができる。モノクローナル抗体は、必要に応じて、硫酸アンモニウム沈殿法、ゲル電気泳動、透析、クロマトグラフィー、及び限外濾過などの従来の免疫グロブリン精製手順により、培養培地または体液から単離することができる。望まれない活性が存在する場合、これは例えば、固相に結合した免疫原で作られた吸着剤に調製物を流し、所望の抗体を免疫原から溶離または遊離させることによって除去することができる。ターゲット抗原、または、二官能性薬剤もしくは誘導体化剤、例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介したコンジュゲーション)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基を介する)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl、もしくはR1N=C=NR(式中、R及びR1は異なるアルキル基である)を使用して、免疫化しようとする種において免疫原性のあるタンパク質、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、もしくは大豆トリプシン阻害剤にコンジュゲートされたターゲットアミノ酸配列を含むフラグメントで宿主動物を免疫化すると、抗体(例えば、モノクローナル抗体)の集団がもたらされ得る。
【0118】
必要に応じて、目的の抗体(例えば、ハイブリドーマによって産生されるもの)をシーケンシングしてもよく、次にポリヌクレオチド配列を発現または増殖のためにベクターにクローニングしてもよい。目的の抗体をコードする配列は、宿主細胞内のベクターにおいて維持してもよく、次に宿主細胞を拡大培養し、将来使用するために凍結することができる。代替法では、ポリヌクレオチド配列は、抗体の「ヒト化」または抗体の親和性の改善(親和性成熟)もしくは他の特徴の改善を行うための遺伝子操作に使用され得る。例えば、定常領域は、抗体がヒトの臨床試験及び処置に使用される場合、免疫応答を回避するためにヒト定常領域により類似するように工学操作され得る。系列特異的抗原に対する高い親和性が得られるように抗体配列を遺伝子操作することが望ましい場合がある。当業者には、抗体に対して1つまたは複数のポリヌクレオチドの変更を行っても、ターゲット抗原に対するその結合特異性が維持され得ることは明らかであろう。
【0119】
他の実施形態では、特定のヒト免疫グロブリンタンパク質を発現するように工学操作されている市販のマウスを使用して、完全ヒト抗体を取得することができる。より望ましい(例えば、完全ヒト抗体)またはよりロバストな免疫応答を生じるように設計されたトランスジェニック動物を使用して、ヒト化抗体またはヒト抗体を生成することもできる。そのような技術の例は、Amgen,Inc.(Fremont,Calif.)のXenomouse(商標)ならびにMedarex,Inc.(Princeton,N.J.)のHuMAb-Mouse(商標)及びTC Mouse(商標)である。別の代替法では、抗体は、ファージディスプレイまたは酵母技術によって組換え的に作製され得る。例えば、米国特許第5,565,332号、同第5,580,717号、同第5,733,743号、及び同第6,265,150号、ならびにWinter et al.,Annu.Rev.Immunol.(1994)12:433-455を参照のこと。代替的に、ファージディスプレイ技術(McCafferty et al.,Nature(1990)348:552-553)を使用して、非免疫化ドナー由来の免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーからヒト抗体及び抗体フラグメントをin vitroで産生してもよい。
【0120】
インタクトな抗体(完全長抗体)の抗原結合性フラグメントは、定型的な方法によって調製することができる。例えば、F(ab’)2フラグメントは、抗体分子のペプシン消化によって産生することができ、Fabフラグメントは、F(ab’)2フラグメントのジスルフィド架橋を還元することによって生成することができる。
【0121】
ヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖抗体、及び二重特異性抗体などの遺伝子工学操作された抗体は、例えば、従来の組換え技術を介して産生することができる。一例では、従来の手順を使用して(例えば、モノクローナル抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)、ターゲット抗原に特異的なモノクローナル抗体をコードするDNAを容易に単離しシーケンシングすることができる。ハイブリドーマ細胞は、かかるDNAの好ましい供給源としての機能を果たす。DNAを単離したら、1つまたは複数の発現ベクターに入れることができ、これを次に、さもなければ免疫グロブリンタンパク質を産生しないE.coli細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞などの宿主細胞にトランスフェクトすると、組換え宿主細胞におけるモノクローナル抗体の合成が達成される。例えば、PCT公開第WO87/04462を参照のこと。次に、例えば、相同マウス配列の代わりにヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード配列を置換することによって(Morrison et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.(1984)81:6851)、または免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列のすべてもしくは一部を共有結合することによって、DNAを修飾してもよい。この様式で、ターゲット抗原の結合特異性を有する「キメラ」抗体または「ハイブリッド」抗体などの遺伝子工学操作された抗体を調製することができる。
【0122】
「キメラ抗体」の産生のために開発された技法は、当技術分野ではよく知られている。例えば、Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(1984)81,6851、Neuberger et al.,Nature(1984)312,604、及びTakeda et al.,Nature(1984)314:452を参照のこと。
【0123】
ヒト化抗体を構築するための方法も当技術分野ではよく知られている。例えば、Queen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(1989)86:10029-10033を参照のこと。一例では、親非ヒト抗体のVH及びVLの可変領域を、当技術分野で公知の方法に従う三次元分子モデリング分析に供する。次に、同じ分子モデリング分析を使用して、正しいCDR構造の形成に重要であると予測されるフレームワークアミノ酸残基を識別する。並行して、親VH及びVL配列を検索クエリとして使用して、親非ヒト抗体のものと相同なアミノ酸配列を有するヒトVH及びVL鎖を任意の抗体遺伝子データベースから識別する。次に、ヒトVH及びVLアクセプター遺伝子を選択する。
【0124】
選択されたヒトアクセプター遺伝子内のCDR領域は、親非ヒト抗体またはその機能的バリアント由来のCDR領域に置き換えることができる。必要であれば、CDR領域(上記の説明を参照のこと)との相互作用に重要であると予測される親鎖のフレームワーク領域内の残基を使用して、ヒトアクセプター遺伝子における対応する残基を置換することができる。
【0125】
単鎖抗体は、重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列と軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列とを連結することによる組換え技術を介して調製することができる。好ましくは、可動性リンカーが2つの可変領域間に組み込まれる。代替的に、単鎖抗体の産生に関して報告されている技法(米国特許第4,946,778号及び同第4,704,692号)を応用して、ファージまたは酵母scFvライブラリを産生することができ、系列特異的抗原に特異的なscFvクローンを定型的な手順に従ってライブラリから識別することができる。陽性クローンをさらなるスクリーニングに供して、系列特異的細胞表面抗原と結合するものを識別してもよい。
【0126】
場合によっては、目的の系列特異的細胞表面抗原はCD33であり、抗原結合性フラグメントは、CD33、例えばヒトCD33と特異的に結合する。抗ヒトCD33抗体の例示的な重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のアミノ酸及び核酸配列を以下に提示する。CDR配列は太字で示し、アミノ酸配列に下線を引いてある。
【0127】
抗CD33重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号5)
【化1】
【0128】
抗CD33重鎖可変領域の核酸配列(配列番号6)
CAGGTGCAGCTGCAGCAGCCCGGCGCCGAGGTGGTGAAGCCCGGCGCCAGCGTGAAGATGAGCTGCAAGGCCAGCGGCTACACCTTCACCAGCTACTACATCCACTGGATCAAGCAGACCCCCGGCCAGGGCCTGGAGTGGGTGGGCGTGATCTACCCCGGCAACGACGACATCAGCTACAACCAGAAGTTCCAGGGCAAGGCCACCCTGACCGCCGACAAGAGCAGCACCACCGCCTACATGCAGCTGAGCAGCCTGACCAGCGAGGACAGCGCCGTGTACTACTGCGCCAGGGAGGTGAGGCTGAGGTACTTCGACGTGTGGGGCCAGGGCACCACCGTGACCGTGAGCAGC
【0129】
抗CD33軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号7)
【化2】
【0130】
抗CD33重鎖可変領域の核酸配列(配列番号8)
GAGATCGTGCTGACCCAGAGCCCCGGCAGCCTGGCCGTGAGCCCCGGCGAGAGGGTGACCATGAGCTGCAAGAGCAGCCAGAGCGTGTTCTTCAGCAGCAGCCAGAAGAACTACCTGGCCTGGTACCAGCAGATCCCCGGCCAGAGCCCCAGGCTGCTGATCTACTGGGCCAGCACCAGGGAGAGCGGCGTGCCCGACAGGTTCACCGGCAGCGGCAGCGGCACCGACTTCACCCTGACCATCAGCAGCGTGCAGCCCGAGGACCTGGCCATCTACTACTGCCACCAGTACCTGAGCAGCAGGACCTTCGGCCAGGGCACCAAGCTGGAGATCAAGAGG
【0131】
本書に記述されるCD33をターゲティングする薬剤の構築において使用するための抗CD33抗体結合性フラグメントは、配列番号5及び配列番号7のものと同じ重鎖及び/または軽鎖CDR領域を含み得る。そのような抗体は、フレームワーク領域のうちの1つまたは複数にアミノ酸残基変化を含み得る。場合によっては、抗CD33抗体フラグメントは、配列番号5と少なくとも70%の配列同一性(例えば、75%、80%、85%、90%、95%、またはそれ以上)を共有する重鎖可変領域を含んでもよく、及び/または配列番号7と少なくとも70%の配列同一性(例えば、75%、80%、85%、90%、95%、またはそれ以上)を共有する軽鎖可変領域を含んでもよい。
【0132】
2つのアミノ酸配列の「パーセント同一性」は、Karlin and Altschul Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1990)87:2264-68のアルゴリズムを、Karlin and Altschul Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1993)90:5873-77に記載のように修正したものを使用して決定される。かかるアルゴリズムは、Altschul,et al.J.Mol.Biol.(1990)215:403-10のNBLAST及びXBLASTプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。BLASTタンパク質検索を、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3で行うと、本開示のタンパク質分子と相同なアミノ酸配列を取得することができる。2つの配列間にギャップが存在する場合、Altschul et al.,Nucleic Acids Res.(1997)25(17):3389-3402に記述されているようにGapped BLASTを用いることができる。BLAST及びGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラムのデフォルトパラメータ(例えば、XBLAST及びNBLAST)を使用することができる。
【0133】
C. キメラ受容体を発現する免疫細胞
いくつかの実施形態では、本書に記述される系列特異的細胞表面抗原をターゲティングする薬剤は、系列特異的抗原(例えば、CD33、EMR2)に結合することができる抗原結合性フラグメント(例えば、単鎖抗体)を含むキメラ受容体を発現する免疫細胞である。細胞表面に系列特異的抗原を有するターゲット細胞(例えば、がん細胞)をキメラ受容体の抗原結合性フラグメントによって認識することで、キメラ受容体のシグナル伝達ドメイン(複数可)(例えば、共刺激シグナル伝達ドメイン及び/または細胞質シグナル伝達ドメイン)へ活性化シグナルが伝達され、これにより、キメラ受容体を発現する免疫細胞におけるエフェクター機能が活性化され得る。
【0134】
本書で使用される場合、キメラ受容体とは、宿主細胞の表面で発現することができ、細胞表面系列特異的抗原に結合する抗原結合性フラグメントを含む、天然に存在しない分子を指す。概して、キメラ受容体は、異なる分子に由来する少なくとも2つのドメインを含む。本書に記述される抗原結合性フラグメントに加えて、キメラ受容体は、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、少なくとも1つの共刺激ドメイン、及び細胞質シグナル伝達ドメインのうちの1つまたは複数をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、キメラ受容体は、N末端からC末端へ、細胞表面系列特異的抗原に結合する抗原結合性フラグメント、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞質シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、キメラ受容体は、少なくとも1つの共刺激ドメインをさらに含む。
【0135】
いくつかの実施形態では、本書に記述されるキメラ受容体は、抗原結合性フラグメントと膜貫通ドメインとの間に位置し得るヒンジドメインを含む。ヒンジドメインは、タンパク質の2つのドメイン間に一般的に見られるアミノ酸セグメントであり、タンパク質の可動性及びドメインの一方または両方の互いに対する移動を許容し得る。キメラ受容体の別のドメインに対する抗原結合性フラグメントのかかる可動性及び移動をもたらす任意のアミノ酸配列を使用することができる。
【0136】
ヒンジドメインは、約10~200アミノ酸、例えば、15~150アミノ酸、20~100アミノ酸、または30~60アミノ酸を含み得る。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、約10、11、12、13、14,15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、または200アミノ酸長であり得る。
【0137】
いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、天然に存在するタンパク質のヒンジドメインである。ヒンジドメインを含むことが当技術分野で知られているいずれのタンパク質のヒンジドメインも、本書に記述されるキメラ受容体における使用に適合する。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、天然に存在するタンパク質のヒンジドメインの少なくとも一部であり、キメラ受容体に可動性を付与する。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、CD8αまたはCD28αのものである。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、CD8αのヒンジドメインの一部、例えば、CD8αまたはCD28αのヒンジドメインの少なくとも15(例えば、20、25、30、35、または40)個の連続アミノ酸を含むフラグメントである。
【0138】
IgG、IgA、IgM、IgE、またはIgD抗体などの抗体のヒンジドメインも、本書に記述されるキメラ受容体における使用に適合する。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、抗体の定常ドメインCH1及びCH2を結合するヒンジドメインである。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、抗体のものであり、抗体のヒンジドメイン及び抗体の1つまたは複数の定常領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、抗体のヒンジドメイン及び抗体のCH3定常領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、抗体のヒンジドメインならびに抗体のCH2及びCH3定常領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、IgG、IgA、IgM、IgE、またはIgD抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、IgG抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4抗体である。いくつかの実施形態では、ヒンジ領域は、IgG1抗体のヒンジ領域ならびにCH2及びCH3定常領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒンジ領域は、IgG1抗体のヒンジ領域及びCH3定常領域を含む。
【0139】
本開示の範囲内には、天然に存在しないペプチドであるヒンジドメインを含むキメラ受容体も含まれる。いくつかの実施形態では、Fc受容体の細胞外リガンド結合性ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間のヒンジドメインは、(GlyxSer)nリンカー)などのペプチドリンカーであり、式中、x及びnは、独立して、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12を含む3~12の整数、またはそれ以上であり得る。
【0140】
本書に記述されるキメラ受容体のヒンジドメインにおいて使用され得る更なるペプチドリンカーは、当技術分野では公知である。例えば、Wriggers et al.Current Trends in Peptide Science(2005)80(6):736-746及びPCT公開第WO2012/088461号を参照のこと。
【0141】
いくつかの実施形態では、本書に記述されるキメラ受容体は、膜貫通ドメインを含み得る。キメラ受容体において使用するための膜貫通ドメインは、当技術分野で知られている任意の形態であり得る。本書で使用される場合、「膜貫通ドメイン」は、細胞膜、好ましくは真核細胞膜において、熱力学的に安定している任意のタンパク質構造を指す。本書で使用されるキメラ受容体における使用に適合する膜貫通ドメインは、天然に存在するタンパク質から取得することができる。代替的に、膜貫通ドメインは、合成の天然に存在しないタンパク質セグメント、例えば、細胞膜において熱力学的に安定している疎水性タンパク質セグメントであり得る。
【0142】
膜貫通ドメインは、膜貫通ドメインが膜を通過する回数及びタンパク質の向きを含む、膜貫通ドメインのトポロジーに基づいて分類される。例えば、シングルパス膜タンパク質は細胞膜を1回横断し、マルチパス膜タンパク質は細胞膜を少なくとも2回(例えば、2、3、4、5、6、7、またはそれ以上の回数)横断する。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、シングルパス膜貫通ドメインである。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、キメラ受容体のN末端を細胞の細胞外側に向け、キメラ受容体のC末端を細胞の細胞内側に向けるシングルパス膜貫通ドメインである。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、シングルパス膜貫通タンパク質から取得される。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8αのものである。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD28のものである。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、ICOSのものである。
【0143】
いくつかの実施形態では、本書に記述されるキメラ受容体は、1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。本書で使用される「共刺激シグナル伝達ドメイン」という用語は、細胞内のシグナル伝達を媒介してエフェクター機能などの免疫応答を誘導するタンパク質の少なくとも一部を指す。本書に記述されるキメラ受容体の共刺激シグナル伝達ドメインは、シグナルを伝達し、T細胞、NK細胞、マクロファージ、好中球、または好酸球などの免疫細胞によって媒介される応答を調節する、共刺激タンパク質由来の細胞質シグナル伝達ドメインであり得る。
【0144】
いくつかの実施形態では、キメラ受容体は、複数(少なくとも2つ、3つ、4つ、またはそれ以上)の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、キメラ受容体は、異なる共刺激タンパク質から取得される複数の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、キメラ受容体は、共刺激シグナル伝達ドメインを含まない。
【0145】
概して、多くの免疫細胞には、細胞増殖、分化、及び生存を促進し、細胞のエフェクター機能を活性化するために、抗原特異的シグナルの刺激に加えて共刺激が必要である。宿主細胞(例えば、免疫細胞)内の共刺激シグナル伝達ドメインの活性化は、サイトカインの産生及び分泌、貪食特性、増殖、分化、生存、及び/または細胞傷害性を増加または減少させるように細胞を誘導し得る。いずれの共刺激タンパク質の共刺激シグナル伝達ドメインも、本書に記述されるキメラ受容体における使用に適合し得る。共刺激シグナル伝達ドメインの種類(複数可)は、キメラ受容体が発現される免疫細胞の種類(例えば、初代T細胞、T細胞株、NK細胞株)、及び所望の免疫エフェクター機能(例えば、細胞傷害性)などの因子に基づいて選択される。キメラ受容体において使用するための共刺激シグナル伝達ドメインの例は、限定されるものではないが、CD27、CD28、4-1BB、OX40、CD30、Cd40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3を含む、共刺激タンパク質の細胞質シグナル伝達ドメインであり得る。いくつかの実施形態では、共刺激ドメインは、4-1BB、CD28、またはICOSに由来する。いくつかの実施形態では、共刺激ドメインは、CD28に由来し、キメラ受容体は、4-1BBまたはICOS由来の第2の共刺激ドメインを含む。
【0146】
いくつかの実施形態では、共刺激ドメインは、複数の共刺激ドメインまたは複数の共刺激ドメインの一部を含む融合ドメインである。いくつかの実施形態では、共刺激ドメインは、CD28及びICOS由来の共刺激ドメインの融合体である。
【0147】
いくつかの実施形態では、本書に記述されるキメラ受容体は、細胞質シグナル伝達ドメインを含む。任意の細胞質シグナル伝達ドメインが、本書に記述されるキメラ受容体において使用され得る。概して、細胞質シグナル伝達ドメインは、細胞外リガンド結合性ドメインとそのリガンドとの相互作用などのシグナルを中継して、細胞のエフェクター機能(例えば、細胞傷害性)を誘導するなど、細胞応答を刺激する。
【0148】
当業者には明らかであるように、T細胞活性化に関与する因子は、細胞質シグナル伝達ドメインの免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)のリン酸化である。当技術分野で知られている任意のITAM含有ドメインを使用して、本書に記述されるキメラ受容体を構築することができる。概して、ITAMモチーフは、アミノ酸配列YxxL/Iの2つのリピートが6~8アミノ酸によって分離され(ここで、各xは独立して、任意のアミノ酸である)、保存されたモチーフYxxL/Ix(6-8)YxxL/Iとなったものを含み得る。いくつかの実施形態では、細胞質シグナル伝達ドメインはCD3ζ由来である。
【0149】
例示的なキメラ受容体を以下の表2及び3に提示する。
【表2】
【0150】
キメラ受容体を構築するための例示的な構成要素の核酸配列を以下に提示する。
【0151】
CD28細胞内シグナル伝達ドメイン-DNA-ヒト(配列番号15)
ATTGAAGTTATGTATCCTCCTCCTTACCTAGACAATGAGAAGAGCAATGGAACCATTATCCATGTGAAAGGGAAACACCTTTGTCCAAGTCCCCTATTTCCCGGACCTTCTAAGCCCTTTTGGGTGCTGGTGGTGGTTGGTGGAGTCCTGGCTTGCTATAGCTTGCTAGTAACAGTGGCCTTTATTATTTTCTGGGTGAGGAGTAAGAGGAGCAGGCTCCTGCACAGTGACTACATGAACATGACTCCCCGCCGCCCCGGGCCCACCCGCAAGCATTACCAGCCCTATGCCCCACCACGCGACTTCGCAGCCTATCGCTCCAGAGTGAAGTTCAGCAGGAGCGCAGACGCCCCCGCGTACCAGCAGGGCCAGAACCAGCTCTATAACGAGCTCAATCTAGGACGAAGAGAGGAGTACGATGTTTTGGACAAGAGACGTGGCCGGGACCCTGAGATGGGGGGAAAGCCGAGAAGGAAGAACCCTCAGGAAGGCCTGTACAATGAACTGCAGAAAGATAAGATGGCGGAGGCCTACAGTGAGATTGGGATGAAAGGCGAGCGCCGGAGGGGCAAGGGGCACGATGGCCTTTACCAGGGTCTCAGTACAGCCACCAAGGACACCTACGACGCCCTTCACATGCAGGCCCTGCCCCCTCGC
【0152】
ICOS細胞内シグナル伝達ドメイン-DNA-ヒト(配列番号16)
CTATCAATTTTTGATCCTCCTCCTTTTAAAGTAACTCTTACAGGAGGATATTTGCATATTTATGAATCACAACTTTGTTGCCAGCTGAAGTTCTGGTTACCCATAGGATGTGCAGCCTTTGTTGTAGTCTGCATTTTGGGATGCATACTTATTTGTTGGCTTACAAAAAAGAAGTATTCATCCAGTGTGCACGACCCTAACGGTGAATACATGTTCATGAGAGCAGTGAACACAGCCAAAAAATCTAGACTCACAGATGTGACCCTAAGAGTGAAGTTCAGCAGGAGCGCAGACGCCCCCGCGTACCAGCAGGGCCAGAACCAGCTCTATAACGAGCTCAATCTAGGACGAAGAGAGGAGTACGATGTTTTGGACAAGAGACGTGGCCGGGACCCTGAGATGGGGGGAAAGCCGAGAAGGAAGAACCCTCAGGAAGGCCTGTACAATGAACTGCAGAAAGATAAGATGGCGGAGGCCTACAGTGAGATTGGGATGAAAGGCGAGCGCCGGAGGGGCAAGGGGCACGATGGCCTTTACCAGGGTCTCAGTACAGCCACCAAGGACACCTACGACGCCCTTCACATGCAGGCCCTGCCCCCTCGC
【0153】
CD28/ICOS共刺激シグナル伝達領域-DNA-ヒト(配列番号17)
ATTGAAGTTATGTATCCTCCTCCTTACCTAGACAATGAGAAGAGCAATGGAACCATTATCCATGTGAAAGGGAAACACCTTTGTCCAAGTCCCCTATTTCCCGGACCTTCTAAGCCCTTTTGGGTGCTGGTGGTGGTTGGTGGAGTCCTGGCTTGCTATAGCTTGCTAGTAACAGTGGCCTTTATTATTTTCTGGGTGAGGAGTAAGAGGAGCAGGCTCCTGCACAGTGACTACATGTTCATGAGAGCAGTGAACACAGCCAAAAAATCTAGACTCACAGATGTGACCCTAAGAGTGAAGTTCAGCAGGAGCGCAGACGCCCCCGCGTACCAGCAGGGCCAGAACCAGCTCTATAACGAGCTCAATCTAGGACGAAGAGAGGAGTACGATGTTTTGGACAAGAGACGTGGCCGGGACCCTGAGATGGGGGGAAAGCCGAGAAGGAAGAACCCTCAGGAAGGCCTGTACAATGAACTGCAGAAAGATAAGATGGCGGAGGCCTACAGTGAGATTGGGATGAAAGGCGAGCGCCGGAGGGGCAAGGGGCACGATGGCCTTTACCAGGGTCTCAGTACAGCCACCAAGGACACCTACGACGCCCTTCACATGCAGGCCCTGCCCCCTCGC
【0154】
いくつかの実施形態では、核酸配列は、CD33に結合し、配列番号5のCDRと同じCDRを有する重鎖可変領域と、配列番号7のCDRと同じCDRを有する軽鎖可変領域とを含む、抗原結合性フラグメントをコードする。いくつかの実施形態では、抗原結合性フラグメントは、配列番号5に提示される重鎖可変領域と、配列番号7に提示される軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、キメラ受容体は、少なくとも膜貫通ドメイン及び細胞質シグナル伝達ドメインをさらに含む。いくつかの実施形態では、キメラ受容体は、ヒンジドメイン及び/または共刺激シグナル伝達ドメインをさらに含む。
【0155】
表3は、本書に記述される例示的なキメラ受容体を提示する。例示的な構築物は、N末端からC末端へ、抗原結合性フラグメント、膜貫通ドメイン、及び細胞質シグナル伝達ドメインを有する。いくつかの例において、キメラ受容体は、抗原結合性フラグメントと膜貫通ドメインとの間に位置するヒンジドメインをさらに含む。いくつかの例において、キメラ受容体は、膜貫通ドメインと細胞質シグナル伝達ドメインとの間に位置し得る、1つまたは複数の共刺激ドメインをさらに含む。
【表3】
【0156】
上記の表3に列記した例示的なキメラ受容体のアミノ酸配列を以下に提示する。
【0157】
CART1アミノ酸配列(配列番号18)
MWLQSLLLLGTVACSISEIVLTQSPGSLAVSPGERVTMSCKSSQSVFFSSSQKNYLAWYQQIPGQSPRLLIYWASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVQPEDLAIYYCHQYLSSRTFGQGTKLEIKRGSTSGSGKPGSGEGSTKGQVQLQQPGAEVVKPGASVKMSCKASGYTFTSYYIHWIKQTPGQGLEWVGVIYPGNDDISYNQKFQGKATLTADKSSTTAYMQLSSLTSEDSAVYYCAREVRLRYFDVWGQGTTVTVSSALSNSIMYFSHFVPVFLPAKPTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEASRPAAGGAVHTRGLDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITKRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCELRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
【0158】
CART2アミノ酸配列(配列番号19)
MWLQSLLLLGTVACSISEIVLTQSPGSLAVSPGERVTMSCKSSQSVFFSSSQKNYLAWYQQIPGQSPRLLIYWASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVQPEDLAIYYCHQYLSSRTFGQGTKLEIKRGSTSGSGKPGSGEGSTKGQVQLQQPGAEVVKPGASVKMSCKASGYTFTSYYIHWIKQTPGQGLEWVGVIYPGNDDISYNQKFQGKATLTADKSSTTAYMQLSSLTSEDSAVYYCAREVRLRYFDVWGQGTTVTVSALSNSIMYFSHFVPVFLPAKPTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEASRPAAGGAVHTRGLDKPFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVRSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
【0159】
CART3アミノ酸配列(配列番号20)
MWLQSLLLLGTVACSISEIVLTQSPGSLAVSPGERVTMSCKSSQSVFFSSSQKNYLAWYQQIPGQSPRLLIYWASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVQPEDLAIYYCHQYLSSRTFGQGTKLEIKRGSTSGSGKPGSGEGSTKGQVQLQQPGAEVVKPGASVKMSCKASGYTFTSYYIHWIKQTPGQGLEWVGVIYPGNDDISYNQKFQGKATLTADKSSTTAYMQLSSLTSEDSAVYYCAREVRLRYFDVWGQGTTVTVSSALSNSIMYFSHFVPVFLPAKPTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEASRPAAGGAVHTRGLDKPFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVRSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSKRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCELRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
【0160】
CART8アミノ酸配列(配列番号21)
MWLQSLLLLGTVACSISEIVLTQSPGSLAVSPGERVTMSCKSSQSVFFSSSQKNYLAWYQQIPGQSPRLLIYWASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVQPEDLAIYYCHQYLSSRTFGQGTKLEIKRGSTSGSGKPGSGEGSTKGQVQLQQPGAEVVKPGASVKMSCKASGYTFTSYYIHWIKQTPGQGLEWVGVIYPGNDDISYNQKFQGKATLTADKSSTTAYMQLSSLTSEDSAVYYCAREVRLRYFDVWGQGTTVTVSSALSNSIMYFSHFVPVFLPAKPTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEASRPAAGGAVHTRGLDFWLPIGCAAFVVVCILGCILICWLTKKKYSSSVHDPNGEYMFMRAVNTAKKSRLTDVTLTKRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCELRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
【0161】
CART4dualアミノ酸配列(配列番号22)
MWLQSLLLLGTVACSISIQMTQTTSSLSASLGDRVTISCRASQDISKYLNWYQQKPDGTVKLLIYHTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDYSLTISNLEQEDIATYFCQQGNTLPYTFGGGTKLEIGSTSGSGKPGSGEGSTKGLQESGPGLVAPSQSLSVTCTVSGVSLPDYGVSWIRQPPRKGLEWLGVIWGSETTYYNSALKSRLTIIKDNSKSQVFLKMNSLQTDDTAIYYCAKHYYYGGSYAMDYWGQGTSVTVSALSNSIMYFSHFVPVFLPAKPTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEASRPAAGGAVHTRGLDKPFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
【0162】
CART5dualアミノ酸配列(配列番号23)
MWLQSLLLLGTVACSISEIVLTQSPGSLAVSPGERVTMSCKSSQSVFFSSSQKNYLAWYQQIPGQSPRLLIYWASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVQPEDLAIYYCHQYLSSRTFGQGTKLEIKRGSTSGSGKPGSGEGSTKGQVQLQQPGAEVVKPGASVKMSCKASGYTFTSYYIHWIKQTPGQGLEWVGVIYPGNDDISYNQKFQGKATLTADKSSTTAYMQLSSLTSEDSAVYYCAREVRLRYFDVWGQGTTVTVSSALSNSIMYFSHFVPVFLPAKPTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEASRPAAGGAVHTRGLDKPFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVRSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRS
【0163】
CART6アミノ酸配列(配列番号24)
MWLQSLLLLGTVACSISIQMTQTTSSLSASLGDRVTISCRASQDISKYLNWYQQKPDGTVKLLIYHTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDYSLTISNLEQEDIATYFCQQGNTLPYTFGGGTKLEIGSTSGSGKPGSGEGSTKGLQESGPGLVAPSQSLSVTCTVSGVSLPDYGVSWIRQPPRKGLEWLGVIWGSETTYYNSALKSRLTIIKDNSKSQVFLKMNSLQTDDTAIYYCAKHYYYGGSYAMDYWGQGTSVTVSALSNSIMYFSHFVPVFLPAKPTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEASRPAAGGAVHTRGLDKPFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVRSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
【0164】
CART7アミノ酸配列(配列番号25)
MWLQSLLLLGTVACSISEIVLTQSPGSLAVSPGERVTMSCKSSQSVFFSSSQKNYLAWYQQIPGQSPRLLIYWASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVQPEDLAIYYCHQYLSSRTFGQGTKLEIKRGSTSGSGKPGSGEGSTKGQVQLQQPGAEVVKPGASVKMSCKASGYTFTSYYIHWIKQTPGQGLEWVGVIYPGNDDISYNQKFQGKATLTADKSSTTAYMQLSSLTSEDSAVYYCAREVRLRYFDVWGQGTTVTVSSIEVMYPPPYLDNEKSNGTIIHVKGKHLCPSPLFPGPSKPFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVRSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
【0165】
上記の表3に列記した例示的なキメラ受容体の核酸配列を以下に提示する。
【0166】
CART1核酸配列(配列番号26)
GGTGTCGTGAGCGGCCGCTGAACTGGCCACCATGTGGCTGCAGTCTCTGCTGCTGCTGGGCACCGTGGCCTGTAGCATCAGCGAGATCGTGCTGACCCAGAGCCCTGGCTCTCTGGCTGTGTCTCCTGGCGAGCGCGTGACCATGAGCTGCAAGAGCAGCCAGAGCGTGTTCTTCAGCAGCTCCCAGAAGAACTACCTGGCCTGGTATCAGCAGATCCCCGGCCAGAGCCCCAGACTGCTGATCTACTGGGCCAGCACCAGAGAAAGCGGCGTGCCCGATAGATTCACCGGCAGCGGCTCTGGCACCGACTTCACCCTGACAATCAGCAGCGTGCAGCCCGAGGACCTGGCCATCTACTACTGCCACCAGTACCTGAGCAGCCGGACCTTTGGCCAGGGCACCAAGCTGGAAATCAAGCGGGGCAGCACAAGCGGCAGCGGAAAGCCTGGATCTGGCGAGGGCTCTACCAAGGGCCAGGTGCAGCTGCAGCAGCCTGGCGCCGAAGTCGTGAAACCTGGCGCCTCCGTGAAGATGTCCTGCAAGGCCAGCGGCTACACCTTCACCAGCTACTACATCCACTGGATCAAGCAGACCCCTGGACAGGGCCTGGAATGGGTGGGAGTGATCTACCCCGGCAACGACGACATCAGCTACAACCAGAAGTTCCAGGGCAAGGCCACCCTGACCGCCGACAAGTCTAGCACCACCGCCTACATGCAGCTGTCCAGCCTGACCAGCGAGGACAGCGCCGTGTACTACTGCGCCAGAGAAGTGCGGCTGCGGTACTTCGATGTGTGGGGCCAGGGAACCACCGTGACCGTGTCTAGCGCCCTGAGCAACAGCATCATGTACTTCAGCCACTTCGTGCCCGTGTTTCTGCCCGCCAAGCCTACCACAACCCCTGCCCCTAGACCTCCTACCCCAGCCCCTACAATCGCCAGCCAGCCTCTGTCTCTGAGGCCCGAGGCTTCTAGACCAGCTGCTGGCGGAGCCGTGCACACCAGAGGCCTGGATATCTACATCTGGGCCCCACTGGCCGGCACCTGTGGCGTGCTGCTGCTGTCTCTCGTGATCACCAAGAGAGGCCGGAAGAAGCTGCTGTACATCTTCAAGCAGCCCTTCATGCGGCCCGTGCAGACCACCCAGGAAGAGGACGGCTGTAGCTGCCGGTTCCCCGAGGAAGAAGAAGGGGGCTGCGAGCTGAGAGTGAAGTTCAGCAGAAGCGCCGACGCCCCTGCCTATCAGCAGGGCCAGAACCAGCTGTACAACGAGCTGAACCTGGGCAGACGGGAAGAGTACGACGTGCTGGACAAGCGGAGAGGCAGGGACCCTGAGATGGGCGGCAAGCCCAGACGGAAGAACCCTCAGGAAGGCCTGTATAACGAACTGCAGAAAGACAAGATGGCCGAGGCCTACTCCGAGATCGGAATGAAGGGCGAGCGGAGAAGAGGCAAGGGCCACGATGGACTGTACCAGGGCCTGAGCACCGCCACCAAGGACACCTATGACGCCCTGCACATGCAGGCCCTGCCCCCCAGATGAAATTCATCGACGTTAACTATTCTAG
【0167】
CART2核酸配列(配列番号27)
GGTGTCGTGAGCGGCCGCTGAACTGGCCACCATGTGGCTGCAGTCTCTGCTGCTGCTGGGCACCGTGGCCTGTAGCATCAGCGAGATCGTGCTGACCCAGAGCCCTGGCTCTCTGGCTGTGTCTCCTGGCGAGCGCGTGACCATGAGCTGCAAGAGCAGCCAGAGCGTGTTCTTCAGCAGCTCCCAGAAGAACTACCTGGCCTGGTATCAGCAGATCCCCGGCCAGAGCCCCAGACTGCTGATCTACTGGGCCAGCACCAGAGAAAGCGGCGTGCCCGATAGATTCACCGGCAGCGGCTCTGGCACCGACTTCACCCTGACAATCAGCAGCGTGCAGCCCGAGGACCTGGCCATCTACTACTGCCACCAGTACCTGAGCAGCCGGACCTTTGGCCAGGGCACCAAGCTGGAAATCAAGCGGGGCAGCACAAGCGGCAGCGGAAAGCCTGGATCTGGCGAGGGCTCTACCAAGGGCCAGGTGCAGCTGCAGCAGCCTGGCGCCGAAGTCGTGAAACCTGGCGCCTCCGTGAAGATGTCCTGCAAGGCCAGCGGCTACACCTTCACCAGCTACTACATCCACTGGATCAAGCAGACCCCTGGACAGGGCCTGGAATGGGTGGGAGTGATCTACCCCGGCAACGACGACATCAGCTACAACCAGAAGTTCCAGGGCAAGGCCACCCTGACCGCCGACAAGTCTAGCACCACCGCCTACATGCAGCTGTCCAGCCTGACCAGCGAGGACAGCGCCGTGTACTACTGCGCCAGAGAAGTGCGGCTGCGGTACTTCGATGTGTGGGGCCAGGGAACCACCGTGACCGTGTCTGCCCTGAGCAACAGCATCATGTACTTCAGCCACTTCGTGCCCGTGTTTCTGCCCGCCAAGCCTACCACAACCCCTGCCCCTAGACCTCCTACCCCAGCCCCTACAATCGCCAGCCAGCCTCTGTCTCTGAGGCCCGAGGCTTCTAGACCAGCTGCTGGCGGAGCCGTGCACACCAGAGGACTGGACAAGCCCTTCTGGGTGCTGGTGGTCGTGGGCGGAGTGCTGGCCTGTTACAGCCTGCTCGTGACAGTGGCCTTCATCATCTTTTGGGTGCGCAGCAAGCGGTCTAGACTGCTGCACAGCGACTACATGAACATGACCCCCAGAAGGCCAGGCCCCACCCGGAAGCACTATCAGCCTTACGCCCCTCCCAGAGACTTCGCCGCCTACCGGTCCAGAGTGAAGTTCAGCAGAAGCGCCGACGCCCCTGCCTATCAGCAGGGCCAGAACCAGCTGTACAACGAGCTGAACCTGGGCAGACGGGAAGAGTACGACGTGCTGGACAAGAGAAGAGGCCGGGACCCTGAGATGGGCGGCAAGCCCAGACGGAAGAACCCTCAGGAAGGCCTGTATAACGAACTGCAGAAAGACAAGATGGCCGAGGCCTACTCCGAGATCGGCATGAAGGGCGAACGGCGGAGAGGCAAGGGACACGATGGACTGTACCAGGGCCTGAGCACCGCCACCAAGGACACCTATGACGCCCTGCACATGCAGGCCCTGCCCCCCAGATGAAATTCATCGACGTTAACTATTCTAG
【0168】
CART3核酸配列(配列番号28)
GGTGTCGTGAGCGGCCGCTGAACTGGCCACCATGTGGCTGCAGTCTCTGCTGCTGCTGGGCACCGTGGCCTGTAGCATCAGCGAGATCGTGCTGACCCAGAGCCCTGGCTCTCTGGCTGTGTCTCCTGGCGAGCGCGTGACCATGAGCTGCAAGAGCAGCCAGAGCGTGTTCTTCAGCAGCTCCCAGAAGAACTACCTGGCCTGGTATCAGCAGATCCCCGGCCAGAGCCCCAGACTGCTGATCTACTGGGCCAGCACCAGAGAAAGCGGCGTGCCCGATAGATTCACCGGCAGCGGCTCTGGCACCGACTTCACCCTGACAATCAGCAGCGTGCAGCCCGAGGACCTGGCCATCTACTACTGCCACCAGTACCTGAGCAGCCGGACCTTTGGCCAGGGCACCAAGCTGGAAATCAAGCGGGGCAGCACAAGCGGCAGCGGAAAGCCTGGATCTGGCGAGGGCTCTACCAAGGGCCAGGTGCAGCTGCAGCAGCCTGGCGCCGAAGTCGTGAAACCTGGCGCCTCCGTGAAGATGTCCTGCAAGGCCAGCGGCTACACCTTCACCAGCTACTACATCCACTGGATCAAGCAGACCCCTGGACAGGGCCTGGAATGGGTGGGAGTGATCTACCCCGGCAACGACGACATCAGCTACAACCAGAAGTTCCAGGGCAAGGCCACCCTGACCGCCGACAAGTCTAGCACCACCGCCTACATGCAGCTGTCCAGCCTGACCAGCGAGGACAGCGCCGTGTACTACTGCGCCAGAGAAGTGCGGCTGCGGTACTTCGATGTGTGGGGCCAGGGAACCACCGTGACCGTGTCTAGCGCCCTGAGCAACAGCATCATGTACTTCAGCCACTTCGTGCCCGTGTTTCTGCCCGCCAAGCCTACCACAACCCCTGCCCCTAGACCTCCTACCCCAGCCCCTACAATCGCCAGCCAGCCTCTGTCTCTGAGGCCCGAGGCTTCTAGACCAGCTGCTGGCGGAGCCGTGCACACCAGAGGACTGGACAAGCCCTTCTGGGTGCTGGTGGTCGTGGGCGGAGTGCTGGCCTGTTACAGCCTGCTCGTGACAGTGGCCTTCATCATCTTTTGGGTGCGCAGCAAGCGGTCTAGACTGCTGCACAGCGACTACATGAACATGACCCCCAGAAGGCCAGGCCCCACCCGGAAGCACTATCAGCCTTACGCCCCTCCCAGAGACTTCGCCGCCTACAGATCCAAGAGAGGCCGGAAGAAGCTGCTGTACATCTTCAAGCAGCCCTTCATGCGGCCCGTGCAGACCACCCAGGAAGAGGACGGCTGTAGCTGCCGGTTCCCCGAGGAAGAAGAAGGGGGCTGCGAGCTGAGAGTGAAGTTCAGCAGAAGCGCCGACGCCCCTGCCTATCAGCAGGGCCAGAACCAGCTGTACAACGAGCTGAACCTGGGCAGACGGGAAGAGTACGACGTGCTGGACAAGAGAAGAGGCCGGGACCCTGAGATGGGCGGCAAGCCCAGACGGAAGAACCCTCAGGAAGGCCTGTATAACGAACTGCAGAAAGACAAGATGGCCGAGGCCTACTCCGAGATCGGAATGAAGGGCGAGCGGCGGAGAGGCAAGGGACACGATGGACTGTACCAGGGCCTGAGCACCGCCACCAAGGACACCTATGACGCCCTGCACATGCAGGCCCTGCCCCCCAGATGAAATTCATCGACGTTAACTATTCTAG
【0169】
CART4dual核酸配列(配列番号29)
GGTGTCGTGAGCGGCCGCTGAACTGGCCACCATGTGGCTGCAGTCTCTGCTGCTGCTGGGCACCGTGGCCTGCAGCATCAGCATCCAGATGACCCAGACCACCAGCAGCCTGAGCGCCAGCCTGGGCGATAGAGTGACCATCAGCTGCAGAGCCAGCCAGGACATCAGCAAGTACCTGAACTGGTATCAGCAGAAACCCGACGGCACCGTGAAGCTGCTGATCTACCACACCAGCAGACTGCACAGCGGCGTGCCCTCTAGATTTTCCGGCAGCGGCTCCGGCACCGACTACAGCCTGACCATCTCCAACCTGGAACAGGAAGATATCGCTACCTACTTCTGTCAGCAAGGCAACACCCTGCCCTACACCTTCGGCGGAGGCACCAAGCTGGAAATCGGCAGCACAAGCGGCTCTGGCAAGCCTGGATCTGGCGAGGGCTCTACCAAGGGCCTGCAGGAATCTGGCCCTGGACTGGTGGCCCCTAGCCAGAGCCTGTCTGTGACCTGTACCGTGTCCGGCGTGTCCCTGCCTGACTATGGCGTGTCCTGGATCAGACAGCCCCCCAGAAAGGGCCTGGAATGGCTGGGAGTGATCTGGGGCAGCGAGACAACCTACTACAACAGCGCCCTGAAGTCCCGGCTGACCATCATCAAGGACAACTCCAAGAGCCAGGTGTTCCTGAAGATGAACAGCCTGCAGACCGACGACACCGCCATCTACTACTGCGCCAAGCACTACTACTACGGCGGCAGCTACGCCATGGACTACTGGGGCCAGGGCACAAGCGTGACCGTGTCTGCCCTGAGCAACAGCATCATGTACTTCAGCCACTTCGTGCCCGTGTTTCTGCCCGCCAAGCCTACCACAACCCCTGCCCCTAGACCTCCTACCCCAGCCCCTACAATCGCCAGCCAGCCTCTGTCTCTGAGGCCCGAGGCTTCTAGACCAGCTGCTGGCGGAGCCGTGCACACCAGAGGACTGGACAAGCCCTTCTGGGTGCTGGTGGTCGTGGGCGGAGTGCTGGCCTGTTATAGCCTGCTCGTGACAGTGGCCTTCATCATCTTTTGGGTGCGCGTGAAGTTCAGCCGCAGCGCCGATGCCCCTGCCTATCAGCAGGGACAGAACCAGCTGTACAACGAGCTGAACCTGGGCAGACGGGAAGAGTACGACGTGCTGGACAAGAGAAGAGGCCGGGACCCTGAGATGGGCGGCAAGCCCAGAAGAAAGAACCCCCAGGAAGGCCTGTATAACGAACTGCAGAAAGACAAGATGGCCGAGGCCTACAGCGAGATCGGCATGAAGGGCGAACGGCGGAGAGGCAAGGGCCACGATGGACTGTATCAGGGCCTGAGCACCGCCACCAAGGACACCTATGACGCCCTGCACATGCAGGCTCTGCCCCCTCGCTGAAATTCATCGACGTTAACTATTCTAG
【0170】
CART5dual核酸配列(配列番号30)
GGTGTCGTGAGCGGCCGCTGAACTGGCCACCATGTGGCTGCAGTCTCTGCTGCTGCTGGGCACCGTGGCCTGTAGCATCAGCGAGATCGTGCTGACCCAGAGCCCTGGCTCTCTGGCTGTGTCTCCTGGCGAGCGCGTGACCATGAGCTGCAAGAGCAGCCAGAGCGTGTTCTTCAGCAGCTCCCAGAAGAACTACCTGGCCTGGTATCAGCAGATCCCCGGCCAGAGCCCCAGACTGCTGATCTACTGGGCCAGCACCAGAGAAAGCGGCGTGCCCGATAGATTCACCGGCAGCGGCTCTGGCACCGACTTCACCCTGACAATCAGCAGCGTGCAGCCCGAGGACCTGGCCATCTACTACTGCCACCAGTACCTGAGCAGCCGGACCTTTGGCCAGGGCACCAAGCTGGAAATCAAGCGGGGCAGCACAAGCGGCAGCGGAAAGCCTGGATCTGGCGAGGGCTCTACCAAGGGCCAGGTGCAGCTGCAGCAGCCTGGCGCCGAAGTCGTGAAACCTGGCGCCTCCGTGAAGATGTCCTGCAAGGCCAGCGGCTACACCTTCACCAGCTACTACATCCACTGGATCAAGCAGACCCCTGGACAGGGCCTGGAATGGGTGGGAGTGATCTACCCCGGCAACGACGACATCAGCTACAACCAGAAGTTCCAGGGCAAGGCCACCCTGACCGCCGACAAGTCTAGCACCACCGCCTACATGCAGCTGTCCAGCCTGACCAGCGAGGACAGCGCCGTGTACTACTGCGCCAGAGAAGTGCGGCTGCGGTACTTCGATGTGTGGGGCCAGGGAACCACCGTGACCGTGTCTAGCGCCCTGAGCAACAGCATCATGTACTTCAGCCACTTCGTGCCCGTGTTTCTGCCCGCCAAGCCTACCACAACCCCTGCCCCTAGACCTCCTACCCCAGCCCCTACAATCGCCAGCCAGCCTCTGTCTCTGAGGCCCGAGGCTTCTAGACCAGCTGCTGGCGGAGCCGTGCACACCAGAGGACTGGACAAGCCCTTCTGGGTGCTGGTGGTCGTGGGCGGAGTGCTGGCCTGTTACAGCCTGCTCGTGACAGTGGCCTTCATCATCTTTTGGGTGCGCAGCAAGCGGTCTAGACTGCTGCACAGCGACTACATGAACATGACCCCCAGAAGGCCAGGCCCCACCCGGAAGCACTATCAGCCTTACGCCCCTCCCAGAGACTTCGCCGCCTACAGAAGCTGAAATTCATCGACGTTAACTATTCTAG
【0171】
CART6核酸配列(配列番号31)
GGTGTCGTGAGCGGCCGCTGAACTGGCCACCATGTGGCTGCAGTCTCTGCTGCTGCTGGGCACCGTGGCCTGCAGCATCAGCATCCAGATGACCCAGACCACCAGCAGCCTGAGCGCCAGCCTGGGCGATAGAGTGACCATCAGCTGCAGAGCCAGCCAGGACATCAGCAAGTACCTGAACTGGTATCAGCAGAAACCCGACGGCACCGTGAAGCTGCTGATCTACCACACCAGCAGACTGCACAGCGGCGTGCCCTCTAGATTTTCCGGCAGCGGCTCCGGCACCGACTACAGCCTGACCATCTCCAACCTGGAACAGGAAGATATCGCTACCTACTTCTGTCAGCAAGGCAACACCCTGCCCTACACCTTCGGCGGAGGCACCAAGCTGGAAATCGGCAGCACAAGCGGCTCTGGCAAGCCTGGATCTGGCGAGGGCTCTACCAAGGGCCTGCAGGAATCTGGCCCTGGACTGGTGGCCCCTAGCCAGAGCCTGTCTGTGACCTGTACCGTGTCCGGCGTGTCCCTGCCTGACTATGGCGTGTCCTGGATCAGACAGCCCCCCAGAAAGGGCCTGGAATGGCTGGGAGTGATCTGGGGCAGCGAGACAACCTACTACAACAGCGCCCTGAAGTCCCGGCTGACCATCATCAAGGACAACTCCAAGAGCCAGGTGTTCCTGAAGATGAACAGCCTGCAGACCGACGACACCGCCATCTACTACTGCGCCAAGCACTACTACTACGGCGGCAGCTACGCCATGGACTACTGGGGCCAGGGCACAAGCGTGACCGTGTCTGCCCTGAGCAACAGCATCATGTACTTCAGCCACTTCGTGCCCGTGTTTCTGCCCGCCAAGCCTACCACAACCCCTGCCCCTAGACCTCCTACCCCAGCCCCTACAATCGCCAGCCAGCCTCTGTCTCTGAGGCCCGAGGCTTCTAGACCAGCTGCTGGCGGAGCCGTGCACACCAGAGGACTGGACAAGCCCTTCTGGGTGCTGGTGGTCGTGGGCGGAGTGCTGGCCTGTTATAGCCTGCTCGTGACAGTGGCCTTCATCATCTTTTGGGTGCGCAGCAAGCGGAGCCGGCTGCTGCACTCCGACTACATGAACATGACCCCCAGACGGCCAGGCCCCACCCGGAAACACTATCAGCCTTACGCCCCTCCCAGAGACTTCGCCGCCTACCGGTCCAGAGTGAAGTTCAGCAGATCCGCCGACGCCCCTGCCTATCAGCAGGGACAGAACCAGCTGTACAACGAGCTGAACCTGGGCAGACGGGAAGAGTACGACGTGCTGGACAAGAGAAGAGGCCGGGACCCTGAGATGGGCGGCAAGCCCAGAAGAAAGAACCCCCAGGAAGGCCTGTATAACGAACTGCAGAAAGACAAGATGGCCGAGGCCTACAGCGAGATCGGCATGAAGGGCGAACGGCGGAGAGGCAAGGGCCACGATGGACTGTATCAGGGCCTGAGCACCGCCACCAAGGACACCTATGACGCCCTGCACATGCAGGCTCTGCCCCCTCGCTGAAATTCATCGACGTTAACTATTCTAG
【0172】
CART7核酸配列(配列番号32)
GGTGTCGTGAGCGGCCGCTGAACTGGCCACCATGTGGCTGCAGTCTCTGCTGCTGCTGGGCACCGTGGCCTGTAGCATCAGCGAGATCGTGCTGACCCAGAGCCCTGGCTCTCTGGCTGTGTCTCCTGGCGAGCGCGTGACCATGAGCTGCAAGAGCAGCCAGAGCGTGTTCTTCAGCAGCTCCCAGAAGAACTACCTGGCCTGGTATCAGCAGATCCCCGGCCAGAGCCCCAGACTGCTGATCTACTGGGCCAGCACCAGAGAAAGCGGCGTGCCCGATAGATTCACCGGCAGCGGCTCTGGCACCGACTTCACCCTGACAATCAGCAGCGTGCAGCCCGAGGACCTGGCCATCTACTACTGCCACCAGTACCTGAGCAGCCGGACCTTTGGCCAGGGCACCAAGCTGGAAATCAAGCGGGGCAGCACAAGCGGCAGCGGAAAGCCTGGATCTGGCGAGGGCTCTACCAAGGGCCAGGTGCAGCTGCAGCAGCCTGGCGCCGAAGTCGTGAAACCTGGCGCCTCCGTGAAGATGTCCTGCAAGGCCAGCGGCTACACCTTCACCAGCTACTACATCCACTGGATCAAGCAGACCCCTGGACAGGGCCTGGAATGGGTGGGAGTGATCTACCCCGGCAACGACGACATCAGCTACAACCAGAAGTTCCAGGGCAAGGCCACCCTGACCGCCGACAAGTCTAGCACCACCGCCTACATGCAGCTGTCCAGCCTGACCAGCGAGGACAGCGCCGTGTACTACTGCGCCAGAGAAGTGCGGCTGCGGTACTTCGATGTGTGGGGCCAGGGAACCACCGTGACCGTGTCCAGCATCGAAGTGATGTACCCCCCTCCCTACCTGGACAACGAGAAGTCCAACGGCACCATCATCCACGTGAAGGGCAAGCACCTGTGCCCCAGCCCTCTGTTTCCTGGCCCTAGCAAGCCCTTCTGGGTGCTGGTGGTCGTGGGCGGAGTGCTGGCCTGTTACAGCCTGCTCGTGACAGTGGCCTTCATCATCTTTTGGGTGCGCAGCAAGCGGTCTAGACTGCTGCACAGCGACTACATGAACATGACCCCCAGAAGGCCAGGCCCCACCCGGAAGCACTATCAGCCTTACGCCCCTCCCAGAGACTTCGCCGCCTACCGGTCCAGAGTGAAGTTCAGCAGAAGCGCCGACGCCCCTGCCTATCAGCAGGGCCAGAACCAGCTGTACAACGAGCTGAACCTGGGCAGACGGGAAGAGTACGACGTGCTGGACAAGCGGAGAGGCAGGGACCCTGAGATGGGCGGCAAGCCCAGACGGAAGAACCCTCAGGAAGGCCTGTATAACGAACTGCAGAAAGACAAGATGGCCGAGGCCTACTCCGAGATCGGCATGAAGGGCGAGCGGAGAAGAGGCAAGGGCCACGATGGACTGTACCAGGGCCTGAGCACCGCCACCAAGGACACCTATGACGCCCTGCACATGCAGGCCCTGCCCCCCAGATGAAATTCATCGACGTTAACTATTCTAG
【0173】
さらに、本書では、AML患者においてCD33をターゲティングするキメラ受容体に加えてEMR2をターゲティングするキメラ受容体を発現する免疫細胞も企図される。これは、1)抗CD33キメラ受容体を発現する免疫細胞と、抗EMR2キメラ受容体を発現する免疫細胞とを別々に生成し、両種類の免疫細胞を別々に患者に注入すること、または2)CD33及びEMR2の両方をターゲティングする免疫細胞を同時に生成すること(Kakarla et al.,Cancer(2014)2:151)という、2つの異なるアプローチによって達成することができる。
【0174】
本書に記述されるキメラ受容体のいずれも、組換え技術などの定型的な方法によって調製することができる。本書におけるキメラ受容体を調製するための方法は、抗原結合性フラグメントと、場合により、ヒンジドメインと、膜貫通ドメインと、少なくとも1つの共刺激シグナル伝達ドメインと、細胞質シグナル伝達ドメインとを含む、キメラ受容体のドメインの各々を含むポリペプチドをコードする核酸の生成を伴う。いくつかの実施形態では、キメラ受容体の構成要素の各々をコードする核酸は、組換え技術を使用してひとつに結合される。
【0175】
キメラ受容体の構成要素の各々の配列は、定型的な技術、例えば、PCR増幅を介して、当技術分野で知られている種々の供給源のうちのいずれか1つから取得することができる。いくつかの実施形態では、キメラ受容体の構成要素のうちの1つまたは複数の配列は、ヒト細胞から取得される。代替的に、キメラ受容体の1つまたは複数の構成要素の配列は、合成することができる。構成要素(例えば、ドメイン)の各々の配列は、PCR増幅またはライゲーションなどの方法を使用して、キメラ受容体をコードする核酸配列を形成するために、直接的または間接的に(例えば、ペプチドリンカーをコードする核酸配列を使用して)結合させることができる。代替的に、キメラ受容体をコードする核酸は、合成してもよい。いくつかの実施形態では、核酸はDNAである。他の実施形態では、核酸はRNAである。
【0176】
構成要素の各々の配列を結合させる前または後の、キメラ受容体の構成要素のうちの1つまたは複数(例えば、抗原結合性フラグメント)における1つまたは複数の残基の変異。いくつかの実施形態では、キメラ受容体の構成要素における1つまたは複数の変異は、ターゲットに対する構成要素(例えば、ターゲット抗原に対する抗原結合性フラグメント)の親和性を調節する(増加または減少させる)及び/または構成要素の活性を調節するためになされ得る。
【0177】
本書に記述されるキメラ受容体のいずれも、従来の技術を介して、好適な免疫細胞に導入して発現させることができる。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、初代T細胞またはT細胞株などのT細胞である。代替的に、免疫細胞は、確立されたNK細胞株(例えば、NK-92細胞)などのNK細胞であり得る。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、CD8(CD8+)またはCD8及びCD4(CD8+/CD4+)を発現するT細胞である。いくつかの実施形態では、T細胞は、確立されたT細胞株のT細胞、例えば、293T細胞またはJurkat細胞である。
【0178】
初代T細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)、骨髄、脾臓、リンパ節、胸腺、または腫瘍組織などの組織のような、任意の供給源から取得することができる。所望の種類の免疫細胞を取得するために好適な供給源は、当業者には明らかであろう。いくつかの実施形態では、免疫細胞集団は、造血器悪性腫瘍を有するヒト患者、例えば、患者から取得された骨髄またはPBMCに由来する。いくつかの実施形態では、免疫細胞集団は、健康なドナーに由来する。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、キメラ受容体を発現する免疫細胞が後に投与される対象から取得される。細胞の取得元となった対象と同じ対象に投与される免疫細胞は自己由来細胞と呼ばれ、一方、細胞が投与される対象ではない対象から取得される免疫細胞は同種異系細胞と呼ばれる。
【0179】
所望の種類の宿主細胞は、刺激分子と共に細胞をコインキュベートすることによって取得された細胞集団内で拡大培養することができ、例えば、T細胞の拡大培養には、抗CD3抗体及び抗CD28抗体を使用することができる。
【0180】
本書に記述されるキメラ受容体構築物のいずれかを発現する免疫細胞を構築するためには、キメラ受容体構築物の安定発現または一過性発現のための発現ベクターを、本書に記述される従来の方法を介して構築し、免疫宿主細胞に導入することができる。例えば、キメラ受容体をコードする核酸を、好適なプロモーターに作動可能に連結したウイルスベクターなどの好適な発現ベクターにクローニングしてもよい。核酸及びベクターを好適な条件下で制限酵素と接触させて、各分子上に相補的な末端を作り出してもよく、相補的な末端は、互いと対合することができ、リガーゼで結合させることができる。代替的に、キメラ受容体をコードする核酸の末端に合成核酸リンカーをライゲートしてもよい。合成リンカーは、ベクター内の特定の制限部位に対応する核酸配列を含み得る。発現ベクター/プラスミド/ウイルスベクターの選択は、キメラ受容体の発現のための宿主細胞の種類に依存するが、真核細胞における組み込み及び複製に好適なものであるべきである。
【0181】
本書に記述されるキメラ受容体の発現のためには種々のプロモーターを使用することができ、プロモーターは、限定されるものではないが、サイトメガロウイルス(CMV)中間初期プロモーター、ウイルスLTR、例えばラウス肉腫ウイルスLTR、HIV-LTR、HTLV-1 LTR、マロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)LTR、骨髄増殖性肉腫ウイルス(MPSV)LTR、脾フォーカス形成ウイルス(SFFV)LTR、サルウイルス40(SV40)初期プロモーター、単純ヘルペスtkウイルスプロモーター、EF1-αイントロンありまたはなしの伸長因子1-アルファ(EF1-α)プロモーターを含む。キメラ受容体の発現のための更なるプロモーターには、免疫細胞において構成的活性型の任意のプロモーターが含まれる。代替的に、免疫細胞内で発現が調節され得るように、任意の制御可能なプロモーターを使用してもよい。
【0182】
更に、ベクターは、例えば、次のうちのいくつかまたはすべてを含み得る:宿主細胞における安定なまたは一過性のトランスフェクタントの選択のためのネオマイシン遺伝子などの選択可能マーカー遺伝子;高レベルの転写のためのヒトCMVの前初期遺伝子からのエンハンサー/プロモーター配列;mRNA安定性のためのSV40からの転写終結シグナル及びRNAプロセシングシグナル;α-グロビンまたはβ-グロビンのような高発現遺伝子からのmRNA安定性及び翻訳効率のための5’非翻訳領域及び3’非翻訳領域;適切なエピソーム複製のためのSV40ポリオーマ複製起点及びColE1;内部リボソーム結合部位(IRES);多目的多重クローニング部位;センス及びアンチセンスRNAのin vitro転写のためのT7及びSP6 RNAプロモーター;起動されるとベクター保有細胞の死を引き起こす「自殺スイッチ」または「自殺遺伝子」(例えば、HSVチミジンキナーゼ、iCasp9などの誘導性カスパーゼ);ならびにキメラ受容体の発現を評価するためのレポーター遺伝子。導入遺伝子を含むベクターを産生するための好適なベクター及び方法は、当技術分野でよく知られており、利用可能である。キメラ受容体の発現のためのベクターの調製の例は、例えば、全体が参照により本書に組み込まれているUS2014/0106449に見出すことができる。
【0183】
いくつかの実施形態では、キメラ受容体構築物または前記キメラ受容体をコードする核酸は、DNA分子である。いくつかの実施形態では、キメラ受容体構築物または前記キメラ受容体をコードする核酸はDNAベクターであり、免疫細胞に電気穿孔することができる(例えば、Till et al.,Blood(2012)119(17):3940-3950を参照のこと)。いくつかの実施形態では、キメラ受容体をコードする核酸は、免疫細胞に電気穿孔することができるRNA分子である。
【0184】
本書に記述されるキメラ受容体構築物をコードする核酸配列を含むベクターのいずれも、本開示の範囲内にある。そのようなベクターは、好適な方法によって宿主免疫細胞などの宿主細胞内に送達され得る。ベクターを免疫細胞へ送達する方法は当技術分野でよく知られており、DNA、RNA、もしくはトランスポゾンを送達するための、DNA、RNA、もしくはトランスポゾンの電気穿孔、リポソームもしくはナノ粒子などのトランスフェクション試薬;機械的変形によるDNA、RNA、もしくはトランスポゾン、もしくはタンパク質の送達(例えば、Sharei et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2013)110(6):2082-2087を参照のこと);またはウイルス形質導入を含み得る。いくつかの実施形態では、キメラ受容体の発現のためのベクターは、ウイルス形質導入によって宿主細胞に送達される。例示的なウイルスによる送達方法は、組換えレトロウイルス(例えば、PCT公開第WO90/07936号、同第WO94/03622号、同第WO93/25698号、同第WO93/25234号、同第WO93/11230号、同第WO93/10218号、同第WO91/02805号;米国特許第5,219,740号及び同第4,777,127号;英国特許第2,200,651号;ならびに欧州特許第0345242号を参照のこと)、アルファウイルスベースのベクター、及びアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター(例えば、PCT公開第WO94/12649号、同第WO93/03769号、同第WO93/19191号、同第WO94/28938号、同第WO95/11984号、及び同第WO95/00655号を参照のこと)を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、キメラ受容体の発現のためのベクターは、レトロウイルスである。いくつかの実施形態では、キメラ受容体の発現のためのベクターは、レンチウイルスである。いくつかの実施形態では、キメラ受容体の発現のためのベクターは、アデノ随伴ウイルスである。
【0185】
キメラ受容体をコードするベクターがウイルスベクターの使用により宿主細胞に導入される例では、免疫細胞に感染可能でありベクターを保有するウイルス粒子を、当技術分野で知られている任意の方法によって産生することができ、これは例えば、PCT出願第WO1991/002805号A2、同第WO1998/009271号A1、及び米国特許第6,194,191号に見出すことができる。ウイルス粒子は細胞培養上清から回収され、ウイルス粒子を免疫細胞と接触させる前に単離及び/または精製されてもよい。
【0186】
本書に記述されるキメラ受容体のいずれかを発現する宿主細胞を調製する方法は、免疫細胞をex vivoで活性化及び/または拡大培養することを含み得る。宿主細胞の活性化は、宿主細胞を刺激して活性化状態にすることを意味し、この状態で細胞はエフェクター機能(例えば、細胞傷害性)を果たすことが可能であり得る。宿主細胞を活性化する方法は、キメラ受容体の発現のために使用される宿主細胞の種類に依存する。宿主細胞の拡大培養は、キメラ受容体を発現する細胞の数の増加をもたらす任意の方法、例えば、宿主細胞の増殖を可能にすること、または宿主細胞を刺激して増殖させることを含み得る。宿主細胞の拡大培養を刺激する方法は、キメラ受容体の発現のために使用される宿主細胞の種類に依存し、当業者には明らかであろう。いくつかの実施形態では、本書に記述されるキメラ受容体のいずれかを発現する宿主細胞は、対象への投与の前にex vivoで活性化及び/または拡大培養される。
【0187】
いくつかの実施形態では、系列特異的細胞表面抗原(複数可)をターゲティングする薬剤は、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)である。当業者には明らかであるように、「抗体-薬物コンジュゲート」という用語は、「免疫毒素」と同義に使用することができ、毒素または薬物分子にコンジュゲートされた抗体(またはその抗原結合性フラグメント)を含む融合分子を指す。抗体が対応する抗原に結合すると、細胞表面上に抗原を提示する細胞(例えば、ターゲット細胞)への毒素または薬物分子の送達が可能になり、それにより、ターゲット細胞の死がもたらされる。
【0188】
いくつかの実施形態では、薬剤は、抗体-薬物コンジュゲートである。いくつかの実施形態では、抗体-薬物コンジュゲートは、抗原結合性フラグメントと、ターゲット細胞において細胞傷害性を誘導する毒素または薬物とを含む。いくつかの実施形態では、抗体-薬物コンジュゲートは、2型抗原をターゲティングする。いくつかの実施形態では、抗体-薬物コンジュゲートは、CD33またはEMR2をターゲティングする。
【0189】
いくつかの実施形態では、抗体-薬物コンジュゲートの抗原結合フラグメントは、配列番号5により提示される重鎖可変領域と同じ重鎖CDRと、配列番号7により提示される軽鎖可変領域と同じ軽鎖CDRSとを有する。いくつかの実施形態では、抗体-薬物コンジュゲートの抗原結合フラグメントは、配列番号5により提示される重鎖可変領域と、配列番号7により提示されるものと同じ軽鎖可変領域とを有する。
【0190】
抗体-薬物コンジュゲートにおける使用に適合する毒素または薬物は、当技術分野でよく知られており、当業者には明らかであろう。例えば、Peters et al.,Biosci.Rep.(2015)35(4):e00225、Beck et al.,Nature Reviews Drug Discovery(2017)16:315-337、Marin-Acevedo et al.,J.Hematol.Oncol.(2018)11:8、Elgundi et al.,Advanced Drug Delivery Reviews(2017)122:2-19を参照のこと。
【0191】
いくつかの実施形態では、抗体-薬物コンジュゲートは、抗体及び薬物分子を結合させるリンカー(例えば、切断可能なリンカーなどのペプチドリンカー)をさらに含み得る。抗体-薬物コンジュゲートの例は、限定されるものではないが、ブレンツキシマブベドチン、グレンバツムマブベドチン/CDX-011、デパツキシズマブマホドチン/ABT-414、PSMA ADC、ポラツズマブベドチン/RG7596/DCDS4501A、デニンツズマブマホドチン/SGN-CD19A、AGS-16C3F、CDX-014、RG7841/DLYE5953A、RG7882/DMUC406A、RG7986/DCDS0780A、SGN-LIV1A、エンホルツマブベドチン/ASG-22ME、AG-15ME、AGS67E、テリソツズマブベドチン/ABBV-399、ABBV-221、ABBV-085、GSK-2857916、チソツマブベドチン/HuMax-TF-ADC、HuMax-Axl-ADC、ピナツズマブベドチン/RG7593/DCDT2980S、リファスツズマブベドチン/RG7599/DNIB0600A、インデュサツマブベドチン/MLN-0264/TAK-264、バンドルツズマブベドチン/RG7450/DSTP3086S、ソフィツズマブベドチン/RG7458/DMUC5754A、RG7600/DMOT4039A、RG7336/DEDN6526A、ME1547、PF-06263507/ADC 5T4、トラスツズマブエムタンシン/T-DM1、ミルベツキシマブソラブタンシン/IMGN853、コルツキシマブラブタンシン/SAR3419、ナラツキシマブエムタンシン/IMGN529、インダツキシマブラブタンシン/BT-062、アネツマブラブタンシン/BAY 94-9343、SAR408701、SAR428926、AMG 224、PCA062、HKT288、LY3076226、SAR566658、ロルボツズマブメルタンシン/IMGN901、カンツズマブメルタンシン/SB-408075、カンツズマブラブタンシン/IMGN242、ラプリツキシマブエムタンシン/IMGN289、IMGN388、ビバツズマブメルタンシン、AVE9633、BIIB015、MLN2704、AMG 172、AMG 595、LOP 628、バダスツキシマブタリリン/SGN-CD33A、SGN-CD70A、SGN-CD19B、SGN-CD123A、SGN-CD352A、ロバルピツズマブテシリン/SC16LD6.5、SC-002、SC-003、ADCT-301/HuMax-TAC-PBD、ADCT-402、MEDI3726/ADC-401、IMGN779、IMGN632、ゲムツズマブオゾガマイシン、イノツズマブオゾガマイシン/CMC-544、PF-06647263、CMD-193、CMB-401、トラスツズマブデュオカルマジン/SYD985、BMS-936561/MDX-1203、サシツズマブゴビテカン/IMMU-132、ラベツズマブゴビテカン/IMMU-130、DS-8201a、U3-1402、ミラツズマブドキソルビシン/IMMU-110/hLL1-DOX、BMS-986148、RC48-ADC/ヘルツズマブ-vc-MMAE、PF-06647020、PF-06650808、PF-06664178/RN927C、ルパルツマブアマドチン/BAY1129980、アプルツマブイクサドチン/BAY1187982、ARX788、AGS62P1、XMT-1522、AbGn-107、MEDI4276、DSTA4637S/RG7861を含む。一例において、抗体-薬物コンジュゲートはゲムツズマブオゾガマイシンである。
【0192】
いくつかの実施形態では、抗体-薬物コンジュゲートが系列特異的細胞表面タンパク質のエピトープに結合すると、抗体-薬物コンジュゲートの内部移行が誘導され、薬物(または毒素)が細胞内に放出され得る。いくつかの実施形態では、抗体-薬物コンジュゲートが系列特異的細胞表面タンパク質のエピトープに結合すると、毒素または薬物の内部移行が誘導され、これにより、毒素または薬物が、系列特異的タンパク質を発現する細胞(ターゲット細胞)を死滅させることが可能になる。いくつかの実施形態では、抗体-薬物コンジュゲートが系列特異的細胞表面タンパク質のエピトープに結合すると、毒素または薬物の内部移行が誘導され、これにより、系列特異的タンパク質を発現する細胞(ターゲット細胞)の活性が制御され得る。本書に記述される抗体-薬物コンジュゲートに使用される毒素または薬物の種類は、いずれかの特定の種類に限定されない。
【0193】
本書に記述されるADCは、本書に記述される併用療法を受けた対象に対する後続処置として使用され得る。
【0194】
1つまたは複数の系列特異的細胞表面抗原(複数可)が欠損している造血細胞
本開示は、系列特異的細胞表面抗原(例えば、CD33)が欠損するように遺伝子修飾された造血幹細胞(HSC)及び/または造血前駆細胞(HPC)などの造血細胞も提供する。いくつかの実施形態では、造血幹細胞(HSC)及び/または造血前駆細胞(HPC)などの造血細胞は、系列特異的細胞表面抗原(例えば、CD33)及び少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原(例えば、EMR2)が欠損するように遺伝子修飾されている。
【0195】
いくつかの実施形態では、細胞を遺伝子修飾し、オフターゲット効果及び望ましくない消耗性の免疫抑制副作用を低下させるために、CRISPRベースの塩基エディターシステムを使用した。いくつかの実施形態では、1つのCRISPRベースの塩基エディターシステムを使用して、系列特異的細胞表面抗原が欠損するように細胞を修飾し、第2のCRISPRベースの塩基エディターシステムを使用して、少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原が欠損するように細胞を修飾する。本書では、複数の系列特異的細胞表面抗原が欠損するように細胞を修飾するための、CRISPRベースの塩基エディターシステムの使用の成功を示す。いくつかの実施形態では、同じ細胞において、複数のCRISPRベースの塩基エディターシステムを使用して、複数の更なる系列特異的細胞表面抗原が欠失または阻害され得る。
【0196】
本書では、系列特異的細胞表面抗原をコードする内因性遺伝子における特定のヌクレオチド置換をもたらす、CRISPRベースの塩基エディターシステムの使用が示される。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド置換は、スプライスエレメントをコードする配列内にあり、ヌクレオチド置換は、遺伝子によってコードされる転写物の選択的スプライシングをもたらす。いくつかの実施形態では、CRISPRベースの塩基エディターシステムは、内因性遺伝子におけるスプライスエレメントをターゲティングし、CRISPRベースの塩基エディターシステムは、遺伝子によってコードされる転写物の選択的スプライシングをもたらす。いくつかの実施形態では、選択的スプライシングは、エピトープをコードするエキソンがスキップされることを引き起こす。いくつかの実施形態では、選択的スプライシングは、エピトープをコードするエキソンが延長されることを引き起こす。いくつかの実施形態では、選択的スプライシングは、早期コドン終結を誘導する。いくつかの実施形態では、スプライスエレメントは、スプライスドナー、スプライスアクセプター、スプライスエンハンサー、またはスプライスアクセプターである。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド置換は、「C」から「T」である。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド置換は、「G」から「A」である。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド置換は、「A」から「G」である。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド置換は、「T」から「C」である。いくつかの実施形態では、エピトープは、治療剤または免疫療法剤によってターゲティングされる。
【0197】
本書に記述されるCRISPRベースの塩基エディターシステムは、シトシンデアミナーゼまたはアデノシンデアミナーゼ(塩基エディター)に融合したDNA修飾酵素すなわちCas9ニッカーゼに融合した、触媒的に損なわれたCasタンパク質と、シングルガイドRNAとを含む。CRISPRベースの塩基エディター複合体の各々は、系列特異的抗原ポリヌクレオチドに結合し、1つまたは複数のヌクレオチドの置換を可能にし、それにより、ポリヌクレオチドを修飾することができる。複数のCRISPRベースの塩基エディターシステムを使用して、複数の系列特異的細胞表面抗原を修飾することができる。
【0198】
いくつかの実施形態では、CRISPRベースの塩基エディターシステムは、シトシン塩基エディターに融合したCasニッカーゼを含む。いくつかの実施形態では、CRISPRベースの塩基エディターは、シトシン塩基エディターである。いくつかの実施形態では、シトシン塩基エディターは、BE4maxである。いくつかの実施形態では、CRISPRベースの塩基エディターシステムは、CD33をターゲティングし、gRNAは、配列番号1及び2からなる群から選択される。
【0199】
いくつかの実施形態では、CRISPRベースの塩基エディターは、アデノシン塩基エディターである。いくつかの実施形態では、シトシン塩基エディターは、ABE8eである。いくつかの実施形態では、CRISPRベースの塩基エディターシステムは、CD33をターゲティングし、gRNAは、配列番号3である。
【0200】
いくつかの実施形態では、CD33のエキソン2内のスプライスアクセプターまたはエキソンスプライシングエンハンサー部位が改変される。いくつかの実施形態では、CD33のイントロン1/エキソン2ジャンクションのヌクレオチド配列が改変される。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド置換は、「C」から「T」である。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド置換は、「G」から「A」である。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド置換は、「A」から「G」である。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド置換は、「T」から「C」である。いくつかの実施形態では、gRNA配列は、CD33をコードするヌクレオチド配列の一部にハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、gRNA配列は、CD33をコードするヌクレオチド配列のエキソン2内のスプライスアクセプターまたはエキソンスプライシングエンハンサー部位をターゲティングする。いくつかの実施形態では、gRNA配列は、CD33のSNPであるrs12459419をターゲティングする。いくつかの実施形態では、gRNA配列は、CD33のイントロン1/エキソン2ジャンクションをターゲティングする。いくつかの実施形態では、gRNA配列は、配列番号37を含むヌクレオチド配列をターゲティングする。
【0201】
いくつかの実施形態では、CRISPRベースの塩基エディターは、アデノシン塩基エディターである。いくつかの実施形態では、シトシン塩基エディターは、ABE8eである。いくつかの実施形態では、CRISPRベースの塩基エディターシステムは、EMR2をターゲティングし、gRNAは、配列番号4である。いくつかの実施形態では、CRISPRベースの塩基エディターシステムは、EMR2をターゲティングし、gRNAは、配列番号46である。いくつかの実施形態では、CRISPRベースの塩基エディターシステムは、EMR2をターゲティングし、gRNAは、配列番号47である。
【0202】
いくつかの実施形態では、EMR2のエキソン13内のスプライスドナー部位が改変される。いくつかの実施形態では、EMR2のイントロン12/エキソン13ジャンクションのヌクレオチド配列が改変される。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド置換は、「C」から「T」である。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド置換は、「G」から「A」である。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド置換は、「A」から「G」である。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド置換は、「T」から「C」である。いくつかの実施形態では、gRNA配列は、EMR2をコードするヌクレオチド配列の一部にハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、gRNA配列は、EMR2をコードするヌクレオチド配列のエキソン13内のスプライスドナー部位をターゲティングする。いくつかの実施形態では、gRNA配列は、EMR2のイントロン12/エキソン13ジャンクションをターゲティングする。いくつかの実施形態では、gRNA配列は、配列番号40を含むヌクレオチド配列をターゲティングする。
【0203】
いくつかの実施形態では、前述のCRISPRベースの塩基エディターシステムのすべてが、リボ核タンパク質(RNP)ベースの送達系に塩基エディタータンパク質及びgRNAを含むことができる。
【0204】
いくつかの実施形態では、造血細胞は、HSC、HPC、または本書で「HSPC」(「造血幹細胞及び/または前駆細胞」)と呼ばれるそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、本書に記述される細胞集団は、複数の造血幹細胞を含み、いくつかの実施形態では、本書に記述される細胞集団は、複数の造血前駆細胞を含み、いくつかの実施形態では、本書に記述される細胞集団は、複数の造血幹細胞及び複数の造血前駆細胞を含む。HSCは、骨髄系前駆細胞とリンパ系前駆細胞との両方を生じさせることができ、これらはさらに、骨髄性細胞(例えば、単球、マクロファージ、好中球、好塩基球、樹状細胞、赤血球、血小板など)及びリンパ系細胞(例えば、T細胞、B細胞、NK細胞)をそれぞれ生じさせる。HSCは、HSCの識別及び/または単離に使用され得る細胞表面マーカーCD34の発現(例えば、CD34+)、及び細胞系列への傾倒に関連する細胞表面マーカーの非存在を特徴とする。したがって、いくつかの実施形態では、HSCはCD34+である。
【0205】
いくつかの実施形態では、HSCは、哺乳動物対象などの対象から取得される。いくつかの実施形態では、哺乳動物対象は、非ヒト霊長類、齧歯類(例えば、マウスまたはラット)、ウシ、ブタ、ウマ、または家畜である。いくつかの実施形態では、HSCは、造血器悪性腫瘍を有するヒト患者などのヒト患者から取得される。いくつかの実施形態では、HSCは、健康なドナーから取得される。いくつかの実施形態では、HSCは、キメラ受容体を発現する免疫細胞が後に投与される対象から取得される。細胞の取得元となった対象と同じ対象に投与されるHSCは自己由来細胞と呼ばれ、一方、細胞が投与される対象ではない対象から取得されるHSCは同種異系細胞と呼ばれる。
【0206】
HSCは、当技術分野で知られている従来手段を使用して、任意の好適な供給源から取得することができる。いくつかの実施形態では、HSCは、骨髄サンプルまたは血液サンプルなど、対象由来のサンプルから取得される。代替的に、またはさらに、HSCは臍帯から取得することができる。いくつかの実施形態では、HSCは、骨髄または末梢血単核細胞(PBMC)に由来する。概して、骨髄細胞は、対象の腸骨稜、大腿骨、脛骨、脊椎、肋骨、または他の髄腔から取得することができる。骨髄は、患者から採取され、当技術分野で知られている様々な分離及び洗浄手順によって単離され得る。骨髄細胞を単離するための例示的な手順は、次のステップを含む:a)骨髄サンプルを抽出すること;b)骨髄懸濁液を遠心分離で3つの画分に分け、中間画分またはバフィーコートを収集すること;c)ステップ(b)のバフィーコート画分を、分離液、一般的にはFicoll(商標)中でもう一度遠心分離し、骨髄細胞を含む中間画分を収集すること;及びd)ステップ(c)から収集された画分を洗浄して、再輸注可能な骨髄細胞を回収すること。
【0207】
HSCは通常、骨髄に存在するが、末梢血からHSCを採取するために動員剤を投与することにより、循環血中に動員することができる。いくつかの実施形態では、HSCの取得元になる対象は、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)などの動員剤を投与される。動員剤を使用した動員後に収集されるHSCの数は、通常、動員剤を使用せずに取得される細胞の数より多い。いくつかの実施形態では、HSCは、末梢血HSCである。
【0208】
いくつかの実施形態では、サンプルが対象から取得され、次に、所望の細胞型が濃縮される。例えば、PBMC及び/またはCD34+造血細胞は、本書に記述されるように、血液から単離され得る。細胞は、例えば、所望の細胞型の細胞表面上のエピトープに結合する抗体を用いた単離及び/または活性化により、他の細胞から単離することもできる。使用できる別の方法には、細胞表面マーカーに対する抗体を使用して、受容体の関与により細胞を活性化することなく特定の細胞型を選択的に濃縮する、負の選択が含まれる。
【0209】
HSCの集団は、HSCを遺伝子工学操作して系列特異的細胞表面抗原を欠損させる前または後に拡大培養することができる。細胞は、1つまたは複数のサイトカイン、例えば幹細胞因子(SCF)、Flt-3リガンド(Flt3L)、トロンボポエチン(TPO)、インターロイキン3(IL-3)、またはインターロイキン6(IL-6)を含む、拡大培養培地を含む条件下で培養され得る。細胞は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25日、または必要な任意の範囲にわたって拡大培養してもよい。いくつかの実施形態では、HSCは、対象から取得されたサンプルから所望の細胞集団(例えば、CD34+/CD33-)を単離した後、かつ遺伝子工学操作の前に拡大培養される。いくつかの実施形態では、HSCは、遺伝子工学操作の後に拡大培養され、それにより、遺伝子修飾を受けて系列特異的細胞表面抗原が欠損している細胞が選択的に拡大培養される。いくつかの実施形態では、遺伝子修飾後に所望の特徴(例えば、表現型または遺伝子型)を有する1つの細胞(「クローン」)または幾つかの細胞を選択し、独立して拡大培養することができる。
【0210】
いくつかの実施形態では、造血細胞は、系列特異的抗原細胞表面(例えば、CD33)が欠損する(例えば、それを発現しない)ように遺伝子工学操作される。いくつかの実施形態では、造血細胞は、系列特異的細胞表面抗原(例えば、CD33)及び少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原が欠損する(例えば、それらを発現しない)ように遺伝子工学操作される。いくつかの実施形態では、造血細胞は、薬剤(複数可)によってターゲティングされるものと同じ系列特異的細胞表面抗原(複数可)が欠損するように遺伝子工学操作される。本書で使用される場合、造血細胞において系列特異的細胞表面抗原(複数可)が欠損しているとみなされるのは、造血細胞における系列特異的細胞表面抗原(複数可)の発現が、遺伝子工学操作された造血細胞と同じ種類の(例えば、CD34などの同じ細胞表面マーカーの存在によって特徴付けられる)天然に存在する造血細胞と比較して実質的に低下している場合である。いくつかの実施形態では、造血細胞は、系列特異的細胞表面抗原(複数可)の発現が検出不可能である(例えば、系列特異的細胞表面抗原(複数可)を発現しない)。系列特異的細胞表面抗原の発現レベルは、当技術分野で知られている任意の手段によって評価され得る。例えば、系列特異的細胞表面抗原の発現レベルは、抗原特異的抗体で抗原を検出すること(例えば、フローサイトメトリー法、ウェスタンブロッティング)によって評価することができる。
【0211】
いくつかの実施形態では、遺伝子工学操作された造血細胞における系列特異的細胞表面抗原(複数可)の発現が、天然に存在する造血細胞(例えば、野生型の同等物)における系列特異的細胞表面抗原(複数可)の発現と比較される。いくつかの実施形態では、遺伝子工学操作は、天然に存在する造血細胞における系列特異的細胞表面抗原(複数可)の発現と比較した場合、系列特異的細胞表面抗原(複数可)の発現レベルにおける少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の低下をもたらす。すなわち、いくつかの実施形態では、遺伝子工学操作された造血細胞は、天然に存在する造血細胞(例えば、野生型の同等物)と比較した場合、系列特異的細胞表面抗原(複数可)(例えば、CD33)の約20%未満、約19%未満、約18%未満、約17%未満、約16%未満、約15%未満、約14%未満、約13%未満、約12%未満、約11%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満を発現する。
【0212】
いくつかの実施形態では、遺伝子工学操作は、天然に存在する造血細胞における野生型の系列特異的細胞表面抗原(複数可)のレベルの発現と比較した場合、野生型の系列特異的細胞表面抗原(複数可)(例えば、CD33)の発現レベルにおける少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の低下をもたらす。すなわち、いくつかの実施形態では、遺伝子工学操作された造血細胞は、天然に存在する造血細胞(例えば、野生型の同等物)と比較した場合、野生型の系列特異的細胞表面抗原(複数可)(例えば、CD33)の約20%未満、約19%未満、約18%未満、約17%未満、約16%未満、約15%未満、約14%未満、約13%未満、約12%未満、約11%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満を発現する。
【0213】
いくつかの実施形態では、造血細胞は、系列特異的細胞表面抗原(複数可)をコードする内因性遺伝子全体が欠損している。いくつかの実施形態では、系列特異的細胞表面抗原(複数可)をコードする内因性遺伝子全体が欠失している。いくつかの実施形態では、造血細胞は、系列特異的細胞表面抗原(複数可)をコードする内因性遺伝子の一部を含む。いくつかの実施形態では、造血細胞は、系列特異的細胞表面抗原(複数可)の一部(例えばトランケート型タンパク質)を発現する。他の実施形態では、系列特異的細胞表面抗原(複数可)をコードする内因性遺伝子の一部が欠失している。いくつかの実施形態では、系列特異的細胞表面抗原(複数可)をコードする遺伝子の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%またはそれ以上が欠失している。
【0214】
いくつかの実施形態では、遺伝子工学操作された造血細胞における系列特異的細胞表面抗原(複数可)のエキソンによってコードされるエピトープの発現が、天然に存在する造血細胞(例えば、野生型の同等物)における系列特異的細胞表面抗原(複数可)のエピトープの発現と比較される。いくつかの実施形態では、遺伝子工学操作は、天然に存在する造血細胞における系列特異的細胞表面抗原(複数可)のエピトープの発現と比較した場合、系列特異的細胞表面抗原(複数可)のエピトープの発現レベルにおける少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の低下をもたらす。すなわち、いくつかの実施形態では、遺伝子工学操作された造血細胞は、天然に存在する造血細胞(例えば、野生型の同等物)と比較した場合、系列特異的細胞表面抗原(複数可)(例えば、CD33)のエピトープの約20%未満、約19%未満、約18%未満、約17%未満、約16%未満、約15%未満、約14%未満、約13%未満、約12%未満、約11%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満を発現する。
【0215】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数のヌクレオチドの置換が、内因性遺伝子のエキソンによってコードされるエピトープにおいてなされる。
【0216】
当業者には理解されるように、造血細胞において抗原(複数可)が欠損する(例えば、抗原(複数可)の発現が実質的に低下する)ように、系列特異的細胞表面抗原(複数可)をコードするヌクレオチド配列の一部、または1つもしくは複数の非コード配列が欠失していてもよい。
【0217】
いくつかの実施形態では、系列特異的細胞表面抗原はCD33である。CD33の予測される構造には、IgVドメイン及びIgC2ドメインという2つの免疫グロブリンドメインが含まれる。いくつかの実施形態では、CD33のエキソン2が欠失する。いくつかの実施形態では、内因性CD33遺伝子のエキソン2内の改変されたスプライスアクセプターまたはエキソンスプライシングエンハンサーが改変され、改変は、野生型の同等の細胞と比較した場合、CD33のエキソン2によってコードされるエピトープの発現レベル低下を引き起こす。
【0218】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原はEMR2である。いくつかの実施形態では、EMR2のエキソン13が欠失する。いくつかの実施形態では、内因性EMR2遺伝子のエキソン13内の改変されたスプライスドナーが改変され、改変は、野生型の同等の細胞と比較した場合、EMR2のエキソン13によってコードされるエピトープの発現レベル低下を引き起こす。いくつかの実施形態では、選択的スプライシングは、野生型の同等の細胞と比較した場合、早期コドン終結及び変異型またはトランケート型のEMR2の産生を誘導する。
【0219】
1つまたは複数の細胞表面系列特異的抗原が欠損している、または改変されている、HSCなどの遺伝子工学操作造血細胞のいずれも、定型的な方法または本書に記述される方法によって調製することができる。いくつかの実施形態では、遺伝子工学操作は、ゲノム編集を使用して行われる。本書で使用される場合、「ゲノム編集」とは、生物のタンパク質をコードするまたはコードしない任意のヌクレオチド配列を含むゲノムを修飾して、ターゲット遺伝子の発現をノックアウトする方法を指す。
【0220】
本開示の一態様では、系列特異的抗原が修飾されている正常細胞を使用する、修飾された正常細胞集団による腫瘍細胞の置換が行われる。そのような修飾は、CRISPR(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)ベースの塩基エディターシステムを使用した、任意の系列特異的抗原の枯渇または阻害を含み得る。
【0221】
CRISPR-Casシステムは、細菌、ヒト、ショウジョウバエ、ゼブラフィッシュ及び植物を含むがこれらに限定されない様々な生物のゲノムを編集するために首尾よく利用されている。例えば、Jiang et al.,Nature Biotechnology(2013)31(3):233、Qi et al,Cell(2013)5:1173、DiCarlo et al.,Nucleic Acids Res.(2013)7:4336、Hwang et al.,Nat.Biotechnol(2013),3:227)、Gratz et al.,Genetics(2013)194:1029、Cong et al.,Science(2013)6121:819、Mali et al.,Science(2013)6121:823、Cho et al.Nat.Biotechnol(2013)3:230、及びJiang et al.,Nucleic Acids Research(2013)41(20):el88を参照のこと。
【0222】
本開示は、系列特異的抗原ポリヌクレオチドにおけるターゲット配列とハイブリダイズするCRISPRベースの塩基エディターシステムを利用し、ここで、CRISPRベースの塩基エディターシステムは、シトシンデアミナーゼまたはアデノシンデアミナーゼ(塩基エディター)に融合したDNA修飾酵素すなわちCas9ニッカーゼに融合した、触媒的に損なわれたCasタンパク質と、シングルガイドRNAとを含む。CRISPRベースの塩基エディター複合体は、系列特異的抗原ポリヌクレオチドに結合し、1つまたは複数のヌクレオチドの置換を可能にし、それにより、ポリヌクレオチドを修飾することができる。
【0223】
本開示のCRISPRベースの塩基エディターシステムは、コード領域もしくは非コード領域内の細胞表面系列特異的抗原において、遺伝子においてもしくは遺伝子に隣接して、例えば、リーダー配列、トレーラー配列、もしくはイントロンなどで、またはコード領域の上流もしくは下流のいずれかの非転写領域内で、目的の領域に結合し、及び/または目的の領域を切断し得る。本開示で使用されるガイドRNA(gRNA)は、ゲノム内の所定の切断部位(ターゲット部位)への塩基エディタータンパク質-gRNA複合体の結合をgRNAが指示するように設計され得る。切断部位は、配列が未知の領域、またはSNP、ヌクレオチド挿入、ヌクレオチド欠失、再構成などを含む領域を含むフラグメントを遊離させるように選択され得る。
【0224】
本開示で使用されるガイドRNA(gRNA)は、ゲノム内の所定のターゲット部位への塩基エディタータンパク質-gRNA複合体の結合をgRNAが指示するように設計され得る。ターゲット部位は、SNP、ヌクレオチド挿入、ヌクレオチド欠失、再構成などを含む領域であり得る。
【0225】
「gRNA」、「ガイドRNA」及び「CRISPRガイド配列」という用語は、全体を通して同義に使用されることがあり、CRISPRベースの塩基エディターシステムの塩基エディタータンパク質の特異性を決定する配列を含む核酸を指す。gRNAは、宿主細胞のゲノム中のターゲット核酸配列に(部分的または完全に相補的に)ハイブリダイズする。ターゲット核酸にハイブリダイズするgRNAまたはその一部は、15~25ヌクレオチド長、18~22ヌクレオチド長、または19~21ヌクレオチド長であり得る。いくつかの実施形態では、ターゲット核酸にハイブリダイズするgRNA配列は、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、ターゲット核酸にハイブリダイズするgRNA配列は、10~30または15~25ヌクレオチド長である。
【0226】
いくつかの実施形態では、gRNAは、ターゲット核酸に結合する配列に加えて、足場配列も含む。ターゲット核酸に相補的な配列と足場配列との両方をコードするgRNAの発現は、ターゲット核酸に結合(ハイブリダイズ)すること、及びエンドヌクレアーゼをターゲット核酸に動員することの両方の二重機能を有し、部位特異的CRISPR活性をもたらし得る。いくつかの実施形態では、そのようなキメラgRNAは、シングルガイドRNA(sgRNA)と呼ばれることがある。
【0227】
いくつかの実施形態では、gRNAは修飾されており、例えば、化学修飾されている。修飾されたgRNAは、核酸塩基、糖、及びホスホジエステル結合または骨格部分(例えば、ヌクレオチドリン酸)のうちの少なくとも1つの化学構造に対する修飾を有する少なくとも1つのヌクレオチドを含む。例示的なgRNA修飾は、当業者には明らかであり、例えば、Lee et al.,Elife(2017)May 2;6及び米国公開2016/0289675に見出すことができる。更なる好適な修飾には、ホスホロチオエート骨格修飾、2’-O-Me修飾糖、2’F修飾糖、リボース糖の二環式ヌクレオチド-cEtによる置換、3’チオPACE(MSP)、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。好適なgRNA修飾は、例えば、Rahdar et al.PNAS(2015)112(51):E7110-E7117及びHendel et al.,Nat Biotechnol.(2015 Sep)33(9):985-989に記述されており、これらは各々、その全体が参照により本書に組み込まれている。
【0228】
いくつかの実施形態では、本書に記述されるgRNAは、化学修飾されている。例えば、gRNAは、1つまたは複数の2’-O修飾ヌクレオチド、例えば、2’-O-メチルヌクレオチドを含み得る。いくつかの実施形態では、gRNAは、2’-O修飾ヌクレオチド、例えば、2’-O-メチルヌクレオチドを、gRNAの5’末端に含む。いくつかの実施形態では、gRNAは、2’-O修飾ヌクレオチド、例えば、2’-O-メチルヌクレオチドを、gRNAの3’末端に含む。いくつかの実施形態では、gRNAは、2’-O-修飾ヌクレオチド、例えば、2’-O-メチルヌクレオチドを、gRNAの5’末端及び3’末端の両方に含む。いくつかの実施形態では、gRNAは、gRNAの5’末端のヌクレオチド、gRNAの5’末端から2番目のヌクレオチド、及びgRNAの5’末端から3番目のヌクレオチドにおいて、2’-O修飾、例えば、2’-O-メチル修飾されている。いくつかの実施形態では、gRNAは、gRNAの3’末端のヌクレオチド、gRNAの3’末端から2番目のヌクレオチド、及びgRNAの3’末端から3番目のヌクレオチドにおいて、2’-O修飾、例えば、2’-O-メチル修飾されている。いくつかの実施形態では、gRNAは、gRNAの5’末端のヌクレオチド、gRNAの5’末端から2番目のヌクレオチド、gRNAの5’末端から3番目のヌクレオチド、gRNAの3’末端のヌクレオチド、gRNAの3’末端から2番目のヌクレオチド、及びgRNAの3’末端から3番目のヌクレオチドにおいて、2’-O修飾、例えば、2’-O-メチル修飾されている。いくつかの実施形態では、gRNAは、gRNAの3’末端から2番目のヌクレオチド、gRNAの3’末端から3番目のヌクレオチド、及びgRNAの3’末端から4番目のヌクレオチドにおいて、2’-O修飾、例えば、2’-O-メチル修飾されている。いくつかの実施形態では、gRNAの3’末端のヌクレオチドは化学修飾されていない。いくつかの実施形態では、gRNAの3’末端のヌクレオチドは、化学修飾された糖を有しない。いくつかの実施形態では、gRNAは、gRNAの5’末端のヌクレオチド、gRNAの5’末端から2番目のヌクレオチド、gRNAの5’末端から3番目のヌクレオチド、gRNAの3’末端から2番目のヌクレオチド、gRNAの3’末端から3番目のヌクレオチド、及びgRNAの3’末端から4番目のヌクレオチドにおいて、2’-O修飾、例えば、2’-O-メチル修飾されている。いくつかの実施形態では、2’-O-メチルヌクレオチドは、隣接するヌクレオチドへのリン酸結合を含む。いくつかの実施形態では、2’-O-メチルヌクレオチドは、隣接するヌクレオチドへのホスホロチオエート結合を含む。いくつかの実施形態では、2’-O-メチルヌクレオチドは、隣接するヌクレオチドへのチオPACE結合を含む。
【0229】
いくつかの実施形態では、gRNAは、1つまたは複数の2’-O修飾かつ3’リン修飾されたヌクレオチド、例えば、2’-O-メチル3’ホスホロチオエートヌクレオチドを含み得る。いくつかの実施形態では、gRNAは、2’-O修飾かつ3’リン修飾された、例えば、2’-O-メチル3’ホスホロチオエートヌクレオチドを、gRNAの5’末端に含む。いくつかの実施形態では、gRNAは、2’-O修飾かつ3’リン修飾された、例えば、2’-O-メチル3’ホスホロチオエートヌクレオチドを、gRNAの3’末端に含む。いくつかの実施形態では、gRNAは、2’-O修飾かつ3’リン修飾された、例えば、2’-O-メチル3’ホスホロチオエートヌクレオチドを、gRNAの5’末端及び3’末端に含む。いくつかの実施形態では、gRNAは、1つまたは複数の非架橋酸素原子が硫黄原子で置換されている骨格を含む。いくつかの実施形態では、gRNAは、gRNAの5’末端のヌクレオチド、gRNAの5’末端から2番目のヌクレオチド、及びgRNAの5’末端から3番目のヌクレオチドにおいて、2’-O修飾かつ3’リン修飾、例えば、2’-O-メチル3’ホスホロチオエート修飾されている。いくつかの実施形態では、gRNAは、gRNAの3’末端のヌクレオチド、gRNAの3’末端から2番目のヌクレオチド、及びgRNAの3’末端から3番目のヌクレオチドにおいて、2’-O修飾かつ3’リン修飾、例えば、2’-O-メチル3’ホスホロチオエート修飾されている。いくつかの実施形態では、gRNAは、gRNAの5’末端のヌクレオチド、gRNAの5’末端から2番目のヌクレオチド、gRNAの5’末端から3番目のヌクレオチド、gRNAの3’末端のヌクレオチド、gRNAの3’末端から2番目のヌクレオチド、及びgRNAの3’末端から3番目のヌクレオチドにおいて、2’-O修飾かつ3’リン修飾、例えば、2’-O-メチル3’ホスホロチオエート修飾されている。いくつかの実施形態では、gRNAは、gRNAの3’末端から2番目のヌクレオチド、gRNAの3’末端から3番目のヌクレオチド、及びgRNAの3’末端から4番目のヌクレオチドにおいて、2’-O修飾かつ3’リン修飾、例えば、2’-O-メチル3’ホスホロチオエート修飾されている。いくつかの実施形態では、gRNAの3’末端のヌクレオチドは化学修飾されていない。いくつかの実施形態では、gRNAの3’末端のヌクレオチドは、化学修飾された糖を有しない。いくつかの実施形態では、gRNAは、gRNAの5’末端のヌクレオチド、gRNAの5’末端から2番目のヌクレオチド、gRNAの5’末端から3番目のヌクレオチド、gRNAの3’末端から2番目のヌクレオチド、gRNAの3’末端から3番目のヌクレオチド、及びgRNAの3’末端から4番目のヌクレオチドにおいて、2’-O修飾かつ3’リン修飾、例えば、2’-O-メチル3’ホスホロチオエート修飾されている。
【0230】
いくつかの実施形態では、gRNAは、1つまたは複数の2’-O修飾かつ3’-リン修飾された、例えば、2’-O-メチル3’チオPACEヌクレオチドを含み得る。いくつかの実施形態では、gRNAは、2’-O修飾かつ3’リン修飾された、例えば、2’-O-メチル3’チオPACEヌクレオチドを、gRNAの5’末端に含む。いくつかの実施形態では、gRNAは、2’-O修飾かつ3’リン修飾された、例えば、2’-O-メチル3’チオPACEヌクレオチドを、gRNAの3’末端に含む。いくつかの実施形態では、gRNAは、2’-O修飾かつ3’リン修飾された、例えば、2’-O-メチル3’チオPACEヌクレオチドを、gRNAの5’末端及び3’末端に含む。いくつかの実施形態では、gRNAは、1つまたは複数の非架橋酸素原子が硫黄原子で置換されており、1つまたは複数の非架橋酸素原子がアセテート基で置換されている骨格を含む。いくつかの実施形態では、gRNAは、gRNAの5’末端のヌクレオチド、gRNAの5’末端から2番目のヌクレオチド、及びgRNAの5’末端から3番目のヌクレオチドにおいて、2’-O修飾かつ3’リン修飾、例えば、2’-O-メチル3’チオPACE修飾されている。いくつかの実施形態では、gRNAは、gRNAの3’末端のヌクレオチド、gRNAの3’末端から2番目のヌクレオチド、及びgRNAの3’末端から3番目のヌクレオチドにおいて、2’-O修飾かつ3’リン修飾、例えば、2’-O-メチル3’チオPACE修飾されている。いくつかの実施形態では、gRNAは、gRNAの5’末端のヌクレオチド、gRNAの5’末端から2番目のヌクレオチド、gRNAの5’末端から3番目のヌクレオチド、gRNAの3’末端のヌクレオチド、gRNAの3’末端から2番目のヌクレオチド、及びgRNAの3’末端から3番目のヌクレオチドにおいて、2’-O修飾かつ3’リン修飾、例えば、2’-O-メチル3’チオPACE修飾されている。いくつかの実施形態では、gRNAは、gRNAの3’末端から2番目のヌクレオチド、gRNAの3’末端から3番目のヌクレオチド、及びgRNAの3’末端から4番目のヌクレオチドにおいて、2’-O修飾かつ3’リン修飾、例えば、2’-O-メチル3’チオPACE修飾されている。いくつかの実施形態では、gRNAの3’末端のヌクレオチドは化学修飾されていない。いくつかの実施形態では、gRNAの3’末端のヌクレオチドは、化学修飾された糖を有しない。いくつかの実施形態では、gRNAは、gRNAの5’末端のヌクレオチド、gRNAの5’末端から2番目のヌクレオチド、gRNAの5’末端から3番目のヌクレオチド、gRNAの3’末端から2番目のヌクレオチド、gRNAの3’末端から3番目のヌクレオチド、及びgRNAの3’末端から4番目のヌクレオチドにおいて、2’-O修飾かつ3’リン修飾、例えば、2’-O-メチル3’チオPACE修飾されている。
【0231】
いくつかの実施形態では、gRNAは、化学修飾された骨格を含む。いくつかの実施形態では、gRNAは、ホスホロチオエート結合を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の非架橋酸素原子が硫黄原子で置換されている。いくつかの実施形態では、gRNAの5’末端のヌクレオチド、gRNAの5’末端から2番目のヌクレオチド、及びgRNAの5’末端から3番目のヌクレオチドは各々、ホスホロチオエート結合を含む。いくつかの実施形態では、gRNAの3’末端のヌクレオチド、gRNAの3’末端から2番目のヌクレオチド、及びgRNAの3’末端から3番目のヌクレオチドは各々、ホスホロチオエート結合を含む。いくつかの実施形態では、gRNAの5’末端のヌクレオチド、gRNAの5’末端から2番目のヌクレオチド、gRNAの5’末端から3番目のヌクレオチド、gRNAの3’末端のヌクレオチド、gRNAの3’末端から2番目のヌクレオチド、及びgRNAの3’末端から3番目のヌクレオチドは各々、ホスホロチオエート結合を含む。いくつかの実施形態では、gRNAの3’末端から2番目のヌクレオチド、gRNAの3’末端から3番目のヌクレオチド、及びgRNAの3’末端から4番目のヌクレオチドは各々、ホスホロチオエート結合を含む。いくつかの実施形態では、gRNAの5’末端のヌクレオチド、gRNAの5’末端から2番目のヌクレオチド、5’末端から3番目のヌクレオチド、gRNAの3’末端から2番目のヌクレオチド、gRNAの3’末端から3番目のヌクレオチド、及びgRNAの3’末端から4番目のヌクレオチドは各々、ホスホロチオエート結合を含む。
【0232】
いくつかの実施形態では、gRNAは、チオPACE結合を含む。いくつかの実施形態では、gRNAは、1つまたは複数の非架橋酸素原子が硫黄原子で置換されており、1つまたは複数の非架橋酸素原子がアセテート基で置換されている骨格を含む。いくつかの実施形態では、gRNAの5’末端のヌクレオチド、gRNAの5’末端から2番目のヌクレオチド、及びgRNAの5’末端から3番目のヌクレオチドは各々、チオPACE結合を含む。いくつかの実施形態では、gRNAの3’末端のヌクレオチド、gRNAの3’末端から2番目のヌクレオチド、及びgRNAの3’末端から3番目のヌクレオチドは各々、チオPACE結合を含む。いくつかの実施形態では、gRNAの5’末端のヌクレオチド、gRNAの5’末端から2番目のヌクレオチド、gRNAの5’末端から3番目のヌクレオチド、gRNAの3’末端のヌクレオチド、gRNAの3’末端から2番目のヌクレオチド、及びgRNAの3’末端から3番目のヌクレオチドは各々、チオPACE結合を含む。いくつかの実施形態では、gRNAの3’末端から2番目のヌクレオチド、gRNAの3’末端から3番目のヌクレオチド、及びgRNAの3’末端から4番目のヌクレオチドは各々、チオPACE結合を含む。いくつかの実施形態では、gRNAの5’末端のヌクレオチド、gRNAの5’末端から2番目のヌクレオチド、5’末端から3番目のヌクレオチド、gRNAの3’末端から2番目のヌクレオチド、gRNAの3’末端から3番目のヌクレオチド、及びgRNAの3’末端から4番目のヌクレオチドは各々、チオPACE結合を含む。
【0233】
gRNAの化学修飾は、例えば、全体が参照により本書に組み込まれているHendel et al.,Nature Biotech.(2015)33(9)に記述されている。
【0234】
本書で使用される場合、「足場配列」は、tracrRNAとも呼ばれ、相補的gRNA配列に結合(ハイブリダイズ)したターゲット核酸へとCasエンドヌクレアーゼを動員する核酸配列を指す。少なくとも1つのステムループ構造を含み、エンドヌクレアーゼを動員する任意の足場配列が、本書に記述される遺伝要素及びベクターに使用され得る。例示的な足場配列は当業者には明らかであり、例えば、Jinek,et al.Science(2012)337(6096):816-821、Ran,et al.Nature Protocols(2013)8:2281-2308、PCT出願第WO2014/093694号、及びPCT出願第WO2013/176772号に見出すことができる。
【0235】
いくつかの実施形態では、gRNA配列は足場配列を含まず、足場配列は別個の転写物として発現される。そのような実施形態において、gRNA配列には、足場配列の一部に相補的であり、足場配列と結合(ハイブリダイズ)してエンドヌクレアーゼをターゲット核酸に動員するように機能する更なる配列がさらに含まれる。
【0236】
いくつかの実施形態では、gRNA配列は、ターゲット核酸に少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または少なくとも100%相補的である(gRNA配列とターゲットポリヌクレオチド配列との相補性の教示について参照により組み込まれている米国特許第8,697,359号も参照のこと)。CRISPRガイド配列とターゲット核酸の3’末端付近のターゲット核酸との間のミスマッチは、ヌクレアーゼ切断活性を消失させ得ることが示されている(Upadhyay,et al.Genes Genome Genetics(2013)3(12):2233-2238)。いくつかの実施形態では、gRNA配列は、ターゲット核酸の3’末端(例えば、ターゲット核酸の3’末端の最後の5、6、7、8、9、または10個のヌクレオチド)に少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または少なくとも100%相補的である。
【0237】
ターゲット核酸の3’側には、エンドヌクレアーゼと相互作用し、ターゲット核酸へのエンドヌクレアーゼ活性のターゲティングにさらに関与し得る、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)がフランキングしている。ターゲット核酸にフランキングするPAM配列は、エンドヌクレアーゼ及びエンドヌクレアーゼの由来源に依存すると一般に考えられている。例えば、Streptococcus pyogenesに由来するCas9エンドヌクレアーゼの場合、PAM配列はNGGである。Staphylococcus aureusに由来するCas9エンドヌクレアーゼの場合、PAM配列はNNGRRTである。Neisseria meningitidisに由来するCas9エンドヌクレアーゼの場合、PAM配列はNNNNGATTである。Streptococcus thermophilusに由来するCas9エンドヌクレアーゼの場合、PAM配列はNNAGAAである。Treponema denticolaに由来するCas9エンドヌクレアーゼの場合、PAM配列はNAAAACである。Cpf1ヌクレアーゼの場合、PAM配列はTTNである。
【0238】
いくつかの実施形態では、細胞の遺伝子工学操作は、CRISPRベースの塩基エディタータンパク質を細胞に導入することも含む。いくつかの実施形態では、CRISPRベースの塩基エディターと、gRNAをコードする核酸とは、同じ核酸(例えば、ベクター)において提供される。いくつかの実施形態では、CRISPRベースの塩基エディタータンパク質と、gRNAをコードする核酸とは、異なる核酸(例えば、異なるベクター)において提供される。代替的に、またはさらに、CRISPRベースの塩基エディターは、タンパク質形態で細胞に提供または導入され得る。いくつかの実施形態では、gRNAは、タンパク質形態でCRISPRベースの塩基エディターと複合体を形成する。
【0239】
いくつかの実施形態では、Casエンドヌクレアーゼは、Cas9酵素またはそのバリアントである。いくつかの実施形態では、Cas9エンドヌクレアーゼは、Streptococcus pyogenes(SpCas9)、Staphylococcus aureus(SaCas9)、Neisseria meningitidis(NmCas9)、Streptococcus thermophilus、Campylobacter jejuni(CjCas9)、またはTreponema denticolaに由来する。いくつかの実施形態では、Casエンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列は、宿主細胞における発現のためにコドン最適化され得る。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼは、Cas9ホモログまたはオルソログである。いくつかの実施形態では、Cas9エンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列は、タンパク質の活性を改変するようにさらに修飾されている。いくつかの実施形態では、Cas9エンドヌクレアーゼは、「ニッカーゼ」または「Cas9n」と呼ばれるエンドヌクレアーゼの触媒残基のうちの1つを不活性化するよう修飾されている。Cas9ニッカーゼエンドヌクレアーゼは、ターゲット核酸の1本のDNA鎖を切断する。例えば、Dabrowska et al.Frontiers in Neuroscience(2018)12(75)を参照のこと。酵素のRuvC及びHNH触媒ドメインにおける1つまたは複数の変異はCas9効率を改善し得ることが示されている。例えば、Sarai et al.Currently Pharma.Biotechnol.(2017)18(13)を参照のこと。いくつかの実施形態では、Cas9エンドヌクレアーゼは、触媒的に不活性なCas9である。例えば、dCas9は、触媒活性残基(D10及びH840)の変異を含み、ヌクレアーゼ活性を有しない。代替的に、またはさらに、Cas9エンドヌクレアーゼは、別のタンパク質またはその一部に融合していてもよい。いくつかの実施形態では、dCas9は、KRABドメインなどのリプレッサードメインに融合している。いくつかの実施形態では、そのようなdCas9融合タンパク質は、多重遺伝子抑制(例えば、CRISPR干渉(CRISPRi))のために、本書に記述される構築物と共に使用される。いくつかの実施形態では、dCas9は、VP64またはVPRなどのアクチベータードメインに融合している。いくつかの実施形態では、そのようなdCas9融合タンパク質は、遺伝子活性化(例えば、CRISPR活性化(CRISPRa))のために、本書に記述される構築物と共に使用される。いくつかの実施形態では、dCas9は、ヒストンデメチラーゼドメインまたはヒストンアセチルトランスフェラーゼドメインなどのエピジェネティック調節ドメインに融合している。いくつかの実施形態では、dCas9は、LSD1もしくはp300、またはその一部に融合している。いくつかの実施形態では、dCas9融合は、CRISPRベースのエピジェネティック調節のために使用される。いくつかの実施形態では、dCas9またはCas9は、Fok1ヌクレアーゼドメインに融合している。いくつかの実施形態では、Fok1ヌクレアーゼドメインに融合したCas9またはdCas9は、ゲノム編集のために使用される。いくつかの実施形態では、Cas9またはdCas9は、蛍光タンパク質(例えば、GFP、RFP、mCherryなど)に融合している。いくつかの実施形態では、蛍光タンパク質に融合したCas9/dCas9タンパク質は、ゲノム遺伝子座の標識及び/または可視化あるいはCasエンドヌクレアーゼを発現する細胞の識別のために使用される。
【0240】
いくつかの実施形態では、Casエンドヌクレアーゼは、酵素の特異性を増強する(例えば、オフターゲット効果を低下させ、ロバストなオンターゲット切断を維持する)ために修飾されている。いくつかの実施形態では、Casエンドヌクレアーゼは、特異性が増強されたCas9バリアント(例えば、eSPCas9)である。例えば、Slaymaker et al.Science(2016)351(6268):84-88を参照のこと。いくつかの実施形態では、Casエンドヌクレアーゼは、高忠実度Cas9バリアント(例えば、SpCas9-HF1)である。例えば、Kleinstiver et al.Nature(2016)529:490-495を参照のこと。
【0241】
CasエンドヌクレアーゼなどのCas酵素は、当技術分野で知られており、様々な供給源から得ること、及び/または酵素の1つもしくは複数の活性もしくは特異性を調節するように工学操作/修飾することができる。いくつかの実施形態では、Cas酵素は、1つまたは複数のPAM配列を認識するように工学操作/修飾されている。いくつかの実施形態では、Cas酵素は、Cas酵素が工学操作/修飾なしで認識するPAM配列とは異なる1つまたは複数のPAM配列を認識するように工学操作/修飾されている。いくつかの実施形態では、Cas酵素は、酵素のオフターゲット活性を低下させるように工学操作/修飾されている。
【0242】
いくつかの実施形態では、Casエンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列は、エンドヌクレアーゼ活性の特異性を改変する(例えば、オフターゲット切断を低下させ、細胞におけるCasエンドヌクレアーゼ活性または寿命を減少させ、相同指向組換えを増加させ、非相同末端結合を低下させる)ようにさらに修飾されている。例えば、Komor et al.Cell(2017)168:20-36を参照のこと。いくつかの実施形態では、Casエンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列は、エンドヌクレアーゼのPAM認識を改変するように修飾されている。例えば、CasエンドヌクレアーゼSpCas9は、PAM配列NGGを認識し、一方で、エンドヌクレアーゼの1つまたは複数の修飾を含むSpCas9の緩和型(relaxed)バリアント(例えば、VQR SpCas9、EQR SpCas9、VRER SpCas9)は、PAM配列NGA、NGAG、NGCGを認識し得る。Casエンドヌクレアーゼが、修飾されていないCasエンドヌクレアーゼと比較してより多くの潜在的なPAM配列を認識する場合、修飾されたCasエンドヌクレアーゼのPAM認識は、「緩和型」とみなされる。例えば、CasエンドヌクレアーゼSaCas9は、PAM配列NNGRRTを認識し、一方で、エンドヌクレアーゼの1つまたは複数の修飾を含むSaCas9の緩和型バリアント(例えば、KKH SaCas9)は、PAM配列NNNRRTを認識し得る。一例において、CasエンドヌクレアーゼFnCas9は、PAM配列NNGを認識し、一方で、エンドヌクレアーゼの1つまたは複数の修飾を含むFnCas9の緩和型バリアント(例えば、RHA FnCas9)は、PAM配列YGを認識し得る。一例において、Casエンドヌクレアーゼは、置換変異S542R及びK607Rを含むCpf1エンドヌクレアーゼであり、PAM配列TYCVを認識する。一例において、Casエンドヌクレアーゼは、置換変異S542R、K607R、及びN552Rを含むCpf1エンドヌクレアーゼであり、PAM配列TATVを認識する。例えば、Gao et al.Nat.Biotechnol.(2017)35(8):789-792を参照のこと。
【0243】
いくつかの実施形態では、複数(例えば、2つ、3つ、またはそれ以上)のCasエンドヌクレアーゼが使用される。いくつかの実施形態では、Casエンドヌクレアーゼのうちの少なくとも1つはCas9酵素である。いくつかの実施形態では、Casエンドヌクレアーゼのうちの少なくとも1つはCpf1酵素である。いくつかの実施形態では、Cas9エンドヌクレアーゼのうちの少なくとも1つは、Streptococcus pyogenesに由来する。いくつかの実施形態では、Cas9エンドヌクレアーゼのうちの少なくとも1つは、Streptococcus pyogenesに由来し、少なくとも1つのCas9エンドヌクレアーゼは、Streptococcus pyogenesではない生物に由来する。
【0244】
いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼは、塩基エディターである。塩基エディターエンドヌクレアーゼは、概して、機能ドメインに融合した、触媒的に不活性なCasエンドヌクレアーゼを含む。例えば、Eid et al.Biochem.J.(2018)475(11):1955-1964、Rees et al.Nature Reviews Genetics(2018)19:770-788を参照のこと。
【0245】
CRISPRベースの塩基編集システムは、概して、編集を行うデアミナーゼに融合したCasニッカーゼまたはCas、Casを特定の遺伝子座にターゲティングするgRNA、及びCasタンパク質によって指定される編集ウィンドウ内の編集のためのターゲット塩基を含む。
【0246】
現在、塩基エディターのクラスには、シトシン(CBE)及びアデニン(ABE)の2つがある。CBEは、CからTへの変化(または逆鎖におけるGからAへの変化)を媒介する。ABEは、AからGへの変化(または逆鎖におけるTからCへの変化)を行う。これは、可能な12の変化のうちの4つを占めるにすぎない。
【0247】
最初のシトシン塩基エディターは、シチジンデアミナーゼを不活性なdCas9とカップリングすることによって作製された(Komor et al.,Nature(2016)533:420-424)。これらの融合物は、DNAを切断することなくシトシンをウラシルに変換する。そしてウラシルはその後、DNAの複製または修復によってチミンに変換される。ウラシルDNAグリコシラーゼの阻害剤(UGI)をdCas9に融合させると、UをC変異に戻す塩基除去修復が防止される。塩基編集効率を増加させるために、dCas9の代わりにCasニッカーゼが使用された。得られたエディターのBE3は、未修飾のDNA鎖にニックを入れることにより、細胞に「新しく合成された」ように見せる。よって、細胞はU含有鎖をテンプレートとして使用してDNAを修復し、塩基編集をコピーする。
【0248】
第4世代の塩基エディターであるBE4は、以前のBEで発生し得る望まれないC→GまたはC→A変換を低下させる。これらの副産物は、塩基除去修復中にウラシルN-グリコシラーゼ(UNG)による除去に起因した可能性が高い。UNG阻害剤であるUGIの第2のコピーを付加すると、塩基編集産物の純度が増加する。APOBEC1-Cas9n及びCas9n-UGIリンカーは、産物の純度を改善するために伸長された。これら3つの改善が、第4世代の塩基エディターを表す。BE3と比較すると、BE4は、C→G及びC→A産物の2.3倍の減少ならびにインデル形成の2.3倍の減少をもたらす。
【0249】
哺乳動物編集のための塩基編集効率を改善することは、エディターが核に達して良好に発現されることを確実にすることである。核局在化シグナル及びBE4のコドン使用法が改善されて、編集効率が4.2~6倍改善されたBE4max及びAncBE4maxが作り出された(Koblan et al.,Nat Biotechnol(2018)36:843-846)。
【0250】
アデニン塩基エディターはアデニンをイノシンに変換し、AからGへの変化をもたらす(Gaudelli et al.,Nature(2017)551:464-471)。既知のDNAアデニンデアミナーゼが存在しないため、アデニン塩基エディターを作るには更なるステップが必要である。同著者らは、定向進化を使用して、RNAアデニンデアミナーゼTadAからそれを作り出した。
【0251】
核局在化及び発現を改善することによってもアデニン塩基エディターの改善が行われている。2020年には、塩基エディターのターゲティングの柔軟性及び特異性が改善された、ABE7.10から進化した更なるABEについて記述する2つの論文が公開された。この最初の論文では、オフターゲット活性を増加させることなく、ABE7.10のTadAよりも約590倍速く編集するABE8eが生成された(Richter et al.,Nat Biotechnol(2020)38:883-891)。
【0252】
更に、ABE7.10を出発点として使用して、Gaudelliは、塩基エディターを40の新しいABE8バリアントに進化させた(Gaudelli et al.,Nat Biotechnol(2020)38:892-900)。ABE7.10と比較すると、ABE8は、ABE7.10と比較した場合、プロトスペーサー位置A5~A7で1.5倍の編集、ならびにNGG PAMの位置A3~A4及びA8~A10で3.2倍の編集、ならびに非NGG PAMバリアントで4.2倍高い編集効率をもたらした。ABE8は、以前はターゲティングが困難であった部位においても、改善された塩基編集能力を有する。ABE8は、初代T細胞において98~99%のターゲット修飾を達成できるため、細胞療法用途で有望なツールとなっている。
【0253】
いくつかの実施形態では、触媒的に不活性なCasエンドヌクレアーゼは、dCas9である。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼは、1つまたは複数のウラシルグリコシラーゼ阻害剤(UGI)ドメインに融合したdCas9を含む。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼは、アデニン塩基エディター(ABE)、例えばRNAアデニンデアミナーゼTadAから進化したABEに融合したdCas9を含む。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼは、ABE8eに融合したdCas9を含む。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼは、シチジンデアミナーゼ酵素(例えば、APOBECデアミナーゼ、pmCDA1、活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID))に融合したdCas9を含む。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼは、BE4maxに融合したdCas9を含んでいた。
【0254】
いくつかの実施形態では、触媒的に不活性なCasエンドヌクレアーゼは、Cas9ニッカーゼまたはCas9nである。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼは、1つまたは複数のウラシルグリコシラーゼ阻害剤(UGI)ドメインに融合したCas9ニッカーゼを含む。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼは、アデニン塩基エディター(ABE)、例えばRNAアデニンデアミナーゼTadAから進化したABEに融合したCas9ニッカーゼを含む。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼは、ABE8eに融合したCas9ニッカーゼを含む。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼは、シチジンデアミナーゼ酵素(例えば、APOBECデアミナーゼ、pmCDA1、活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID))に融合したCas9ニッカーゼを含む。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼは、BE4maxに融合したCas9ニッカーゼを含んでいた。
【0255】
塩基エディターの例は、限定されるものではないが、BE1、BE2、BE3、HF-BE3、BE4、BE4max、AncBE4max、BE4-Gam、YE1-BE3、EE-BE3、YE2-BE3、YEE-CE3、VQR-BE3、VRER-BE3、SaBE3、SaBE4、SaBE4-Gam、Sa(KKH)-BE3、Target-AID、Target-AID-NG、xBE3、eA3A-BE3、BE-PLUS、TAM、CRISPR-X、ABE7.9、ABE7.10、ABE7.10*、xABE、ABESa、ABE8e、VQR-ABE、VRER-ABE、Sa(KKH)-ABE、及びCRISPR-SKIPを含む。塩基エディターの更なる例は、例えば、米国公開第2018/0312825号A1、米国公開第2018/0312828号A1、及びPCT公開第WO2018/165629号A1に見出すことができ、これらは全体が参照により本書に組み込まれている。
【0256】
いくつかの実施形態では、塩基エディターは、ターゲット部位における塩基除去修復を阻害し、細胞のミスマッチ修復を誘導するようにさらに修飾されている。本書に記述されるCasエンドヌクレアーゼのいずれも、Casエンドヌクレアーゼを分解及びエキソヌクレアーゼ活性から保護するために、Gamドメイン(バクテリオファージMuタンパク質)に融合していてもよい。例えば、Eid et al.Biochem.J.(2018)475(11):1955-1964を参照のこと。
【0257】
いくつかの実施形態では、Casエンドヌクレアーゼは、Casエンドヌクレアーゼのクラス2タイプVに属する。クラス2タイプVのCasエンドヌクレアーゼは、タイプV-A、タイプV-B、タイプV-C、及びタイプV-Uにさらにカテゴリ分けできる。例えば、Stella et al.Nature Structural&Molecular Biology(2017)を参照のこと。いくつかの実施形態では、Casエンドヌクレアーゼは、Cpf1ヌクレアーゼなどのタイプV-A Casエンドヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、Casエンドヌクレアーゼは、C2c1エンドヌクレアーゼなどのタイプV-B Casエンドヌクレアーゼである。例えば、Shmakov et al.Mol Cell(2015)60:385-397を参照のこと。いくつかの実施形態では、Casエンドヌクレアーゼは、Mad7である。
【0258】
代替的に、またはさらに、Casエンドヌクレアーゼは、Cpf1ヌクレアーゼまたはそのバリアントである。当業者には理解されるように、CasエンドヌクレアーゼCpf1ヌクレアーゼは、Cas12aと呼ばれることもある。例えば、Strohkendl et al.Mol.Cell(2018)71:1-9を参照のこと。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、Provetella菌種もしくはFrancisella菌種、Acidaminococcus菌種(AsCpf1)、Lachnospiraceae bacterium(LpCpf1)、またはEubacterium rectaleに由来するCpf1ヌクレアーゼを発現する。いくつかの実施形態では、Cpf1ヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列は、宿主細胞における発現のためにコドン最適化され得る。いくつかの実施形態では、Cpf1エンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列は、タンパク質の活性を改変するようにさらに修飾されている。
【0259】
Cpf1の触媒的に不活性なバリアント(Cas12a)は、dCas12aと呼ばれることがある。本書に記述されるように、Cpf1の触媒的に不活性なバリアントは、機能ドメインに融合して塩基エディターを形成していてもよい。例えば、Rees et al.Nature Reviews Genetics(2018)19:770-788を参照のこと。いくつかの実施形態では、触媒的に不活性なCasエンドヌクレアーゼは、dCas12aである。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼは、1つまたは複数のウラシルグリコシラーゼ阻害剤(UGI)ドメインに融合したdCas12aを含む。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼは、アデニン塩基エディター(ABE)、例えばRNAアデニンデアミナーゼTadAから進化したABEに融合したdCas12aを含む。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼは、ABE8eに融合したdCas12aを含む。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼは、シトジンデアミナーゼ酵素(例えば、APOBECデアミナーゼ、pmCDA1、活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID))に融合したdCas12aを含む。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼは、BE4maxに融合したdCas12aを含んでいた。
【0260】
代替的に、またはさらに、Casエンドヌクレアーゼは、Cas14エンドヌクレアーゼまたはそのバリアントであり得る。Cas9エンドヌクレアーゼとは異なり、Cas14エンドヌクレアーゼは古細菌に由来し、サイズが小さい傾向にある(例えば、400~700アミノ酸)。エンドヌクレアーゼはPAM配列を必要としない。例えば、Harrington et al.Science(2018)を参照のこと。
【0261】
本書に記述されるCasエンドヌクレアーゼのいずれも、所望の時点でCasエンドヌクレアーゼの発現及び/または活性のレベルを制御するように調節され得る。例えば、Casエンドヌクレアーゼの発現及び/または活性のレベルを細胞周期の特定の段階(複数可)において上昇させることが有利であり得る。相同性指向修復のレベルは細胞周期のG1期中に低下することが示されており、したがって、Casエンドヌクレアーゼの発現及び/または活性のレベルをS期、G2期、及び/またはM期中に上昇させると、Casエンドヌクレアーゼ編集後の相同性指向修復が増加し得る。いくつかの実施形態では、Casエンドヌクレアーゼの発現及び/または活性のレベルは、細胞周期のS期、G2期、及び/またはM期中に上昇する。一例において、Casエンドヌクレアーゼは、ヒトジェミニンのN末端領域に融合した。例えば、Gutschner et al.Cell Rep.(2016)14(6):1555-1566を参照のこと。いくつかの実施形態では、Casエンドヌクレアーゼの発現及び/または活性のレベルは、G1期中に低下する。一例において、Casエンドヌクレアーゼは、G1期中に活性が低下するように修飾されている。例えば、Lomova et al.Stem Cells(2018)を参照のこと。
【0262】
代替的に、またはさらに、本書に記述されるCasエンドヌクレアーゼのいずれかは、エピジェネティック調節因子(例えば、クロマチン修飾酵素、例えば、DNAメチラーゼ、ヒストンデアセチラーゼ)に融合していてもよい。例えば、Kungulovski et al.Trends Genet.(2016)32(2):101-113を参照のこと。エピジェネティック調節因子に融合したCasエンドヌクレアーゼは、「エピエフェクター」と呼ばれることがあり、一時的及び/または一過性のエンドヌクレアーゼ活性を可能にし得る。いくつかの実施形態では、Casエンドヌクレアーゼは、クロマチン修飾酵素に融合したdCas9である。
【0263】
更に、本書に記述される組成物及び方法は、CRISPRのプライム編集方法において使用することができる。CRISPRベースのプライムエディターシステムは、M-MLV逆転写酵素(RT)に融合したCas9ニッカーゼを含み得る。プライムエディターシステムは、プライム編集ガイドRNA(pegRNA)も使用する。プライム編集は、CRISPRベースの塩基エディターよりも多くの塩基置換を可能にし、これを使用することで、ヌクレオチド置換が、スプライスエレメントをコードする配列内にあり、ヌクレオチド置換が、遺伝子によってコードされる転写物の選択的スプライシングをもたらす、本書に記述される遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞を生成することができる。
【0264】
さらなる実施形態では、相同性指向修復を使用することで、ヌクレオチド置換が、スプライスエレメントをコードする配列内にあり、ヌクレオチド置換が、遺伝子によってコードされる転写物の選択的スプライシングをもたらす、本書に記述される遺伝子工学操作された造血幹細胞または前駆細胞が生成される。
【0265】
いくつかの実施形態では、本開示は、ガイドRNA配列が、系列特異的細胞表面抗原をコードするヌクレオチド配列にハイブリダイズする、CRISPRベースの塩基エディターシステムを使用して、造血細胞における系列特異的細胞表面抗原を阻害するための組成物及び方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、ガイドRNA配列が、系列特異的細胞表面抗原をコードするヌクレオチド配列にハイブリダイズする、CRISPRベースの塩基エディターシステムを使用して、造血細胞における複数の系列特異的細胞表面抗原を阻害するための組成物及び方法を提供する。
【0266】
いくつかの実施形態では、本開示は、ガイドRNA配列が、系列特異的細胞表面抗原をコードするヌクレオチド配列にハイブリダイズする、CRISPRベースの塩基エディターシステムを使用して、造血細胞における系列特異的細胞表面抗原を改変するための組成物及び方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、ガイドRNA配列が、系列特異的細胞表面抗原をコードするヌクレオチド配列にハイブリダイズする、CRISPRベースの塩基エディターシステムを使用して、造血細胞における複数の系列特異的細胞表面抗原を改変するための組成物及び方法を提供する。
【0267】
いくつかの実施形態では、系列特異的細胞表面抗原はCD33であり、gRNAは、CD33をコードするヌクレオチド配列の一部にハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、gRNAは、CD33のエキソン2にフランキングする配列をハイブリダイズする(
図4)。CD33をターゲティングするgRNAの例を表4に提示するが、CD33の適切なヌクレオチド配列にハイブリダイズし、本書に記述される方法において使用され得る、更なるgRNAを開発してもよい。
【0268】
場合によっては、本開示において使用するためのgRNAは、表4の例示的なガイドRNA配列のいずれかと少なくとも90%(例えば、少なくとも93%、95%、96%、97%、98%、または99%)同一のスペーサー配列を含み得る。
【0269】
いくつかの実施形態では、系列特異的細胞表面抗原はEMR2であり、gRNAは、EMR2をコードするヌクレオチド配列の一部にハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、gRNAは、EMR2をコードするヌクレオチド配列のエキソン13にフランキングする配列をハイブリダイズする(
図9B)。EMR2をターゲティングするgRNAの例を以下に提示するが、EMR2の適切なヌクレオチド配列にハイブリダイズし、本書に記述される方法において使用され得る、更なるgRNAを開発してもよい。
【0270】
場合によっては、本開示において使用するためのgRNAは、配列番号4及び46~47のいずれかと少なくとも90%(例えば、少なくとも93%、95%、96%、97%、98%、または99%)同一のスペーサー配列を含み得る。
【表4】
【0271】
更に、本開示は、第1の系列特異的細胞表面抗原及び少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原、すなわち、第1の系列特異的抗原、第2の系列特異的抗原、第3の系列特異的抗原、第4の系列特異的抗原などを組み合わせて阻害するための組成物及び方法を提供する。
【0272】
更に、本開示は、第1の系列特異的細胞表面抗原及び少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原、すなわち、第1の系列特異的抗原、第2の系列特異的抗原、第3の系列特異的抗原、第4の系列特異的抗原などを組み合わせて改変するための組成物及び方法を提供する。
【0273】
いくつかの実施形態では、第1の系列特異的抗原はCD33である。いくつかの実施形態では、第2の系列特異的抗原はEMR2である。
【0274】
2つの核酸の「パーセント同一性」は、Karlin and Altschul Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1990)87:2264-68のアルゴリズムを、Karlin and Altschul Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1993)90:5873-77に記載のように修正したものを使用して決定される。かかるアルゴリズムは、Altschul,et al.J.Mol.Biol.(1990)215:403-10のNBLAST及びXBLASTプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。BLASTヌクレオチド検索を、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長-12で行うと、本発明の核酸分子に相同なヌクレオチド配列を取得することができる。2つの配列間にギャップが存在する場合、Altschul et al.,Nucleic Acids Res.(1997)25(17):3389-3402に記述されているようにGapped BLASTを用いることができる。BLAST及びGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラムのデフォルトパラメータ(例えば、XBLAST及びNBLAST)を使用することができる。
【0275】
また本書では、細胞を用意することと、ゲノム編集のためのCRISPRベースの塩基エディターシステムの構成要素を細胞に導入することとを含む、系列特異的細胞表面抗原が欠損しているまたは改変されている細胞を産生する方法が提供される。いくつかの実施形態では、系列特異的細胞表面抗原をコードするヌクレオチド配列の一部にハイブリダイズする、またはハイブリダイズすると予測されるガイドRNA(gRNA)を含む核酸が、細胞に導入される。いくつかの実施形態では、gRNAは、ベクターにおいて細胞に導入される。いくつかの実施形態では、CRISPRベースの塩基エディターが細胞に導入される。いくつかの実施形態では、CRISPRベースの塩基エディターは、CRISPRベースの塩基エディターをコードする核酸として細胞に導入される。いくつかの実施形態では、gRNAと、CRISPRベースの塩基エディターをコードするヌクレオチド配列とは、同じ核酸(例えば、同じベクター)において細胞に導入される。いくつかの実施形態では、CRISPRベースの塩基エディターは、タンパク質の形態で細胞に導入される。いくつかの実施形態では、CRISPRベースの塩基エディター及びgRNAは、in vitroで予備形成され、複合体として細胞に導入される。いくつかの実施形態では、複合体(例えば、リボ核タンパク質複合体)は、電気穿孔を使用して導入される。
【0276】
また本書では、細胞を用意することと、ゲノム編集のための複数のCRISPRベースの塩基エディターシステム、すなわち、系列特異的細胞表面抗原のゲノム編集のためのCRISPRベースのエディターシステム、及び少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原のゲノム編集のためのCRISPRベースのエディターシステム、例えば、第1及び第2のCRISPRベースの塩基エディターシステムを細胞に導入することとを含む、複数の系列特異的細胞表面抗原が欠損しているまたは改変されている細胞を産生する方法が提供される。いくつかの実施形態では、複数のCRISPRベースの塩基エディターシステムの構成要素が細胞に導入される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原をコードするヌクレオチド配列の一部にハイブリダイズする、またはハイブリダイズすると予測されるガイドRNA(gRNA)を含む核酸が、細胞に導入される。いくつかの実施形態では、gRNAは、ベクターにおいて細胞に導入される。いくつかの実施形態では、CRISPRベースの塩基エディターが細胞に導入される。いくつかの実施形態では、CRISPRベースの塩基エディターは、CRISPRベースの塩基エディターをコードする核酸として細胞に導入される。いくつかの実施形態では、gRNAと、CRISPRベースの塩基エディターをコードするヌクレオチド配列とは、同じ核酸(例えば、同じベクター)において細胞に導入される。いくつかの実施形態では、CRISPRベースの塩基エディターは、タンパク質の形態で細胞に導入される。いくつかの実施形態では、CRISPRベースの塩基エディター及びgRNAは、in vitroで予備形成され、複合体として細胞に導入される。いくつかの実施形態では、複合体(例えば、リボ核タンパク質複合体)は、電気穿孔を使用して導入される。
【0277】
いくつかの実施形態では、第1のCRISPRベースの塩基エディターシステムは、後続ベースの塩基エディターシステムとは異なる方法によって細胞に導入される。いくつかの実施形態では、CRISPRベースの塩基エディターシステムのすべてが、同じ方法を使用して細胞に導入される。
【0278】
本開示は、CRISPRベースの塩基エディターシステムの1つまたは複数の構成要素をコードし得る、工学操作された、天然に存在しないベクター及びベクター系をさらに提供し、このベクターは、(i)系列特異的抗原配列にハイブリダイズする(CRISPR)-CasシステムガイドRNA及び(ii)CRISPRベースの塩基エディターをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0279】
本開示のベクターは、哺乳動物発現ベクターを使用した哺乳動物細胞における1つまたは複数の配列の発現を駆動し得る。哺乳動物発現ベクターの例は、pCDM8(Seed,Nature(1987)329:840)及びpMT2PC(Kaufman,et al.,EMBO J.(1987)6:187)を含む。哺乳動物細胞において使用される場合、発現ベクターのコントロール機能は、通常、1つまたは複数の制御エレメントによってもたらされる。例えば、一般的に使用されるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルス、サルウイルス40、及び本書で開示され当技術分野で知られている他のものに由来する。原核細胞及び真核細胞の両方で好適な他の発現系については、例えば、Sambrook,et al.,MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL.2nd eds.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989のチャプター16及び17を参照のこと。
【0280】
本開示のベクターは、特定の細胞型において優先的に核酸の発現を指示することができる(例えば、組織特異的制御エレメントが核酸を発現させるために使用される)。そのような制御エレメントは、組織特異的または細胞特異的であり得るプロモーターを含む。プロモーターに適用される「組織特異的」という用語は、特定の型の組織(例えば、種子)に対して目的のヌクレオチド配列の選択的発現を指示することができ、異なる型の組織において同じ目的のヌクレオチド配列の発現が相対的にないプロモーターを指す。プロモーターに適用される「細胞型特異的」という用語は、特定の型の細胞における目的のヌクレオチド配列の選択的発現を指示することができ、同じ組織内の異なる型の細胞における同じ目的のヌクレオチド配列の発現が相対的にないプロモーターを指す。プロモーターに適用される「細胞型特異的」という用語は、単一の組織内の一領域において目的のヌクレオチド配列の選択的発現を促進することができるプロモーターも意味する。プロモーターの細胞型特異性は、当技術分野でよく知られている方法、例えば、免疫組織化学染色を使用して評価することができる。
【0281】
従来のウイルスに基づく遺伝子移入方法及びウイルスに基づかない遺伝子移入方法を使用して、CRISPRベースの塩基エディターをコードする核酸を哺乳動物細胞またはターゲット組織に導入することができる。そのような方法は、CRISPRベースの塩基エディターシステムの構成要素をコードする核酸を培養下の細胞または宿主生物に投与するために使用することができる。
【0282】
非ウイルスベクター送達系は、DNAプラスミド、RNA(例えば、本書に記述されるベクターの転写物)、ネイキッド核酸、及び送達ビヒクルと複合された核酸を含む。一実施形態では、使用される非ウイルスベクター送達系は、予備形成されたリボ核タンパク質複合体(例えば、ターゲティングgRNAと複合したCRISPRベースの塩基エディタータンパク質を含む複合体)である。予備形成されたリボ核タンパク質複合体は次に、電気穿孔、微粒子銃照射、または他の物理的送達方法を介して細胞に導入され得る。一実施形態では、電気穿孔を使用して、予備形成されたリボ核タンパク質複合体を細胞に導入する。例えば、実施例1を参照のこと。
【0283】
ウイルスベクター送達系は、細胞への送達後にエピソームゲノムまたは組み込まれたゲノムのいずれかを有するDNA及びRNAウイルスを含む。ウイルスベクターは、患者に直接(in vivo)投与されてもよいし、またはin vitroもしくはex vivoで細胞を操作するために使用されてもよく、修飾された細胞は、患者に投与されてもよい。一実施形態では、本開示は、遺伝子移入のために、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、及び単純ヘルペスウイルスのベクターを含むがこれらに限定されない、ウイルスベースのシステムを利用する。さらに、本開示は、レトロウイルスまたはレンチウイルスなどの宿主ゲノムにおける組み込みが可能なベクターを提供する。好ましくは、本開示のCRISPRベースの塩基エディターシステムの発現に使用されるベクターは、レンチウイルスベクターである。
【0284】
一実施形態では、本開示は、CRISPRベースの塩基エディターをコードする1つまたは複数のベクターを真核細胞に導入することを提供する。細胞は、がん細胞であり得る。代替的に、細胞は、造血幹細胞などの造血細胞である。幹細胞の例としては、多能性、複能性、及び単能性の幹細胞が挙げられる。多能性幹細胞の例としては、胚性幹細胞、胚性生殖細胞、胚性癌細胞、及び人工多能性幹細胞(iPSC)が挙げられる。好ましい実施形態において、本開示は、CRISPRベースの塩基エディターを造血幹細胞に導入することを提供する。
【0285】
本開示のベクターは、対象の真核細胞に送達される。CRISPRベースの塩基エディターシステムによる真核細胞の修飾は、細胞培養下で行うことができ、この方法は、修飾前に対象から真核細胞を単離することを含む。いくつかの実施形態では、この方法は、前記真核細胞及び/またはそれに由来する細胞を対象に戻すことをさらに含む。
【0286】
併用療法
本書に記述されるように、系列特異的細胞表面抗原(例えば、CD33)に結合する抗原結合性フラグメントを含む薬剤は、系列特異的細胞表面抗原またはそのエピトープが欠損している造血細胞、例えば、本書に記述されるCRISPRベースの塩基エディターシステム及びgRNAを使用して産生された造血幹細胞または前駆細胞と組み合わせて対象に投与することができ、例えば、gRNAは、配列番号1、配列番号2、または配列番号3のヌクレオチド配列を含む。
【0287】
本書に記述されるように、系列特異的細胞表面抗原(例えば、EMR2)に結合する抗原結合性フラグメントを含む薬剤は、系列特異的細胞表面抗原またはそのエピトープが欠損している造血細胞、例えば、本書に記述されるCRISPRベースの塩基エディターシステム及びgRNAを使用して産生された造血幹細胞または前駆細胞と組み合わせて対象に投与することができ、例えば、gRNAは、配列番号4、配列番号46、または配列番号47のヌクレオチド配列を含む。
【0288】
また本書に記述されるように、系列特異的細胞表面抗原(例えば、CD33)に結合する抗原結合性フラグメントを含む薬剤と、少なくとも1つの更なる系列特異的細胞表面抗原に結合する抗原結合性フラグメントを含む薬剤とは、系列特異的細胞表面抗原またはそのエピトープが欠損している造血細胞、例えば、本書に記述されるCRISPRベースの塩基エディターシステム及びgRNAを使用して産生された造血幹細胞または前駆細胞と組み合わせて対象に投与することができ、例えば、gRNAは、次のヌクレオチド配列を含む:
(配列番号1)、
(配列番号2)、または
(配列番号3)、及び
(配列番号4)、
(配列番号46)、または
(配列番号47)。
【0289】
本書で使用される場合、「対象」、「個体」、及び「患者」は、同義に使用され、脊椎動物、好ましくはヒトなどの哺乳動物を指す。哺乳動物は、ヒト霊長類、非ヒト霊長類、またはマウス、ウシ、ウマ、イヌ、もしくはネコの種を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、対象は、造血器悪性腫瘍を有するヒト患者である。
【0290】
いくつかの実施形態では、薬剤及び/または造血細胞を薬学的に許容できる担体と混合して医薬組成物を形成することができ、これも本開示の範囲内にある。
【0291】
本書に記述される方法を実施するために、系列特異的細胞表面抗原(複数可)に結合する抗原結合性フラグメントを含む薬剤(複数可)の有効量と、造血細胞の有効量とを、処置を必要とする対象に同時投与することができる。本書で使用される場合、「有効量」という用語は、「治療有効量」という用語と同義に使用されることがあり、それを必要とする対象に投与されると所望の活性をもたらすのに十分である、薬剤、細胞集団、または医薬組成物(例えば、薬剤及び/または造血細胞を含む組成物)の量を指す。本開示の文脈において、「有効量」という用語は、本開示の方法によって処置される障害の少なくとも1つの症状の顕在化を遅延させる、その進行を阻止する、それを軽減または緩和するのに十分である、化合物、細胞集団、または医薬組成物の量を指す。活性成分の組み合わせが投与される場合、組み合わせの有効量は、個別に投与された場合に有効であっただろう各成分の量を含んでも含まなくてもよいことに留意されたい。
【0292】
当業者には認識されるように、有効量は、処置される特定の状態、状態の重篤度、年齢、身体状態、サイズ、性別及び体重を含む個々の患者パラメータ、処置期間、並行療法(存在する場合)の性質、特定の投与経路、ならびに医療従事者の知識及び専門技術の範囲内にある同様の因子に応じて変動する。いくつかの実施形態では、有効量は、対象における任意の疾患または障害の症状を緩和、軽減、寛解、改善、低減させるか、またはその進行を遅延させる。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、造血器悪性腫瘍を有するヒト患者である。
【0293】
本書に記述されるように、キメラ受容体を発現する造血細胞及び/または免疫細胞は、対象にとって自己由来であり得、すなわち、細胞は、処置を必要とする対象から取得され、細胞表面系列特異的抗原の発現またはキメラ受容体構築物の発現が欠損するまたは改変されるように遺伝子工学操作され、次に同じ対象に投与される。自己由来細胞の対象への投与は、非自己由来細胞の投与と比較して、宿主細胞の拒絶反応の低減をもたらし得る。代替的に、宿主細胞は同種異系細胞であり、すなわち、細胞は、第1の対象から取得され、細胞表面系列特異的抗原の発現またはキメラ受容体構築物の発現が欠損するまたは改変されるように遺伝子工学操作され、第1の対象とは異なるが同じ種である第2の対象に投与される。例えば、同種異系免疫細胞は、ヒトドナーに由来し、ドナーとは異なるヒトレシピエントに投与され得る。
【0294】
いくつかの実施形態では、本書に記述されるキメラ受容体のいずれかを発現する免疫細胞は、ターゲット細胞(例えば、がん細胞)の数を少なくとも20%、例えば、50%、80%、100%、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、またはそれ以上低下させるのに有効な量で対象に投与される。
【0295】
哺乳動物(例えば、ヒト)に投与される細胞、すなわち、免疫細胞または造血細胞の典型的な量は、例えば、細胞100万個~1000億個の範囲内であり得るが、この例示的な範囲を下回るまたは上回る量も本開示の範囲内にある。例えば、細胞の一日用量は、細胞約100万個~約500億個(例えば、細胞約500万個、細胞約2500万個、細胞約5億個、細胞約10億個、細胞約50億個、細胞約200億個、細胞約300億個、細胞約400億個、または前述の値のうちのいずれか2つによって定義される範囲)、好ましくは細胞約1000万個~約1000億個(例えば、細胞約2000万個、細胞約3000万個、細胞約4000万個、細胞約6000万個、細胞約7000万個、細胞約8000万個、細胞約9000万個、細胞約100億個、細胞約250億個、細胞約500億個、細胞約750億個、細胞約900億個、または前述の値のうちのいずれか2つによって定義される範囲)、より好ましくは細胞約1億個~細胞約500億個(例えば、細胞約1億2000万個、細胞約2億5000万個、細胞約3億5000万個、細胞約4億5000万個、細胞約6億5000万個、細胞約8億個、細胞約9億個、細胞約30億個、細胞約300億個、細胞約450億個、または前述の値のうちのいずれか2つによって定義される範囲)であり得る。
【0296】
一実施形態では、キメラ受容体(例えば、キメラ受容体をコードする核酸)が免疫細胞に導入され、対象(例えば、ヒト患者)は、キメラ受容体を発現する免疫細胞の最初の投与または用量を受ける。薬剤(例えば、キメラ受容体を発現する免疫細胞)の1回または複数回の後続投与が、前回の投与の後、15日、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、または2日の間隔で患者に提供されてもよい。薬剤の複数用量、例えば、薬剤の2回、3回、4回、またはそれ以上の投与が、1週間毎に対象に投与されてもよい。対象は、1週間に複数用量の薬剤(例えば、キメラ受容体を発現する免疫細胞)を受け、その後1週間は薬剤の投与を受けず、続いて最後に薬剤の1回または複数回の更なる用量(例えば、キメラ受容体を発現する免疫細胞の1週間に複数回の投与)を受けてもよい。キメラ受容体を発現する免疫細胞は、1週間に3回の隔日投与で、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、またはそれ以上にわたって投与され得る。
【0297】
本開示の文脈において、本書に列挙される疾患状態のいずれかに関連する限り、「処置する」、「処置」などの用語は、かかる状態に関連する少なくとも1つの症状を軽減もしくは緩和すること、またはかかる状態の進行を緩徐化もしくは逆転させることを意味する。本開示の意味において、「処置する」という用語は、疾患を阻止すること、その発症(すなわち、疾患の臨床的顕在化の前の期間)を遅延させること、及び/またはその発生もしくは悪化のリスクを低下させることも意味する。例えば、がんとの関連において、「処置する」という用語は、患者の腫瘍負荷を排除もしくは低下させること、または転移を防止、遅延、もしくは阻害することを意味し得る。
【0298】
いくつかの実施形態では、薬剤(複数可)は、系列特異的細胞表面抗原(複数可)と結合する抗原結合性フラグメントと、系列特異的細胞表面抗原(複数可)が欠損しているまたは改変されている造血細胞集団とを含む。したがって、そのような治療方法において、薬剤(複数可)は、薬剤(複数可)によってターゲティングされる細胞型の系列特異的細胞表面抗原(複数可)リポピュレーションを発現するターゲット細胞を認識する(それと結合する)。いくつかの実施形態では、患者の処置は、次のステップを含み得る:(1)系列特異的細胞表面抗原(複数可)をターゲティングする薬剤(複数可)の治療有効量を患者に投与すること、及び(2)自己由来または同種異系のいずれかの造血幹細胞を患者に注入または再注入することであって、系列特異的な疾患関連抗原(複数可)の発現が低下しているまたは改変されている造血細胞を注入または再注入すること。いくつかの実施形態では、患者の処置は、次のステップを含み得る:(1)キメラ受容体を発現する免疫細胞の治療有効量を患者に投与することであって、系列特異的細胞表面疾患関連抗原(複数可)と結合するキメラ受容体をコードする核酸配列を含む免疫細胞を投与すること、及び(2)自己由来または同種異系のいずれかの造血細胞(例えば、造血幹細胞)を患者に注入または再注入することであって、系列特異的疾患関連抗原(複数可)の発現が低下しているまたは改変されている造血細胞を注入または再注入すること。
【0299】
細胞表面系列特異的抗原(複数可)と結合する抗原結合性フラグメントを含む薬剤(複数可)と、系列特異的細胞表面抗原(複数可)が欠損しているまたは改変されている造血細胞集団とを使用する治療方法の有効性は、当技術分野で知られている任意の方法によって評価することができ、熟練した医療専門家には明らかであろう。例えば、療法の有効性は、対象の生存または対象もしくは組織もしくはそのサンプルにおけるがん負荷によって評価され得る。いくつかの実施形態では、療法の有効性は、細胞の特定の集団または系列に属する細胞の数を定量化することによって評価される。いくつかの実施形態では、療法の有効性は、細胞表面系列特異的抗原を提示する細胞の数を定量化することによって評価される。
【0300】
いくつかの実施形態では、細胞表面系列特異的抗原に結合する抗原結合性フラグメントを含む薬剤と、造血細胞集団とは、併用投与される。
【0301】
いくつかの実施形態では、系列特異的細胞表面抗原(複数可)と結合する抗原結合性フラグメントを含む薬剤(複数可)(例えば、本書に記述されるキメラ受容体を発現する免疫細胞)は、造血細胞の投与の前に投与される。いくつかの実施形態では、系列特異的細胞表面抗原(複数可)と結合する抗原結合性フラグメントを含む薬剤(複数可)(例えば、本書に記述されるキメラ受容体を発現する免疫細胞)は、造血細胞の投与の少なくとも約1日前、2日前、3日前、4日前、5日前、6日前、7日前、8日前、9日前、10日前、1週間前、2週間前、3週間前、4週間前、5週間前、6週間前、7週間前、8週間前、9週間前、10週間前、11週間前、12週間前、3ヶ月前、4ヶ月前、5ヶ月前、6ヶ月前、またはそれよりも前に投与される。いくつかの実施形態では、系列特異的細胞表面抗原(複数可)と結合する抗原結合性フラグメントを含む薬剤(複数可)(例えば、本書に記述されるキメラ受容体を発現する免疫細胞)は、造血細胞の投与の前に対象に複数回投与される。
【0302】
いくつかの実施形態では、造血細胞は、系列特異的細胞表面抗原(複数可)と結合する抗原結合性フラグメントを含む薬剤(複数可)(例えば、本書に記述されるキメラ受容体を発現する免疫細胞)の前に投与される。いくつかの実施形態では、造血細胞集団は、系列特異的細胞表面抗原(複数可)に結合する抗原結合性フラグメントを含む薬剤(複数可)の投与の少なくとも約1日前、2日前、3日前、4日前、5日前、6日前、1週間前、2週間前、3週間前、4週間前、5週間前、6週間前、7週間前、8週間前、9週間前、10週間前、11週間前、12週間前、3ヶ月前、4ヶ月前、5ヶ月前、6ヶ月前、またはそれよりも前に投与される。
【0303】
いくつかの実施形態では、系列特異的細胞表面抗原をターゲティングする薬剤(複数可)と、造血細胞集団とは、実質的に同時に投与される。いくつかの実施形態では、系列特異的細胞表面抗原(複数可)をターゲティングする薬剤(複数可)が投与され、患者が一定期間にわたって評価され、その後、造血細胞集団が投与される。いくつかの実施形態では、造血細胞集団が投与され、患者が一定期間にわたって評価され、その後、系列特異的細胞表面抗原(複数可)をターゲティングする薬剤(複数可)が投与される。
【0304】
本開示の範囲内には、薬剤及び/または造血細胞集団の複数回の投与(例えば、用量)も含まれる。いくつかの実施形態では、薬剤及び/または造血細胞集団は、対象に1回投与される。いくつかの実施形態では、薬剤及び/または造血細胞集団は、対象に複数回(例えば、少なくとも2回、3回、4回、5回、またはそれ以上)投与される。いくつかの実施形態では、薬剤及び/または造血細胞集団は、規則的な間隔で、例えば、6ヶ月毎に対象に投与される。
【0305】
いくつかの実施形態では、対象は、造血器悪性腫瘍を有するヒト対象である。本書で使用される場合、造血器悪性腫瘍は、造血細胞(例えば、前駆細胞及び幹細胞を含む血液細胞)が関与する悪性異常を指す。造血器悪性腫瘍の例は、限定されるものではないが、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、白血病、または多発性骨髄腫を含む。白血病としては、急性骨髄性白血病、急性リンパ系白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病または慢性リンパ芽球性白血病、及び慢性リンパ系白血病が挙げられる。
【0306】
いくつかの実施形態では、白血病は、急性骨髄性白血病(AML)である。AMLは、主要な分化制御経路及び成長制御経路を破壊する重要な遺伝子変化を徐々に獲得した形質転換細胞に起因する、異種性、クローン性、腫瘍性の疾患と特徴付けられる。(Dohner et al.,NEJM,(2015)373:1136)。CD33糖タンパク質は、正常な骨髄系前駆細胞及び単球前駆細胞だけでなく骨髄性白血病細胞の大部分に発現し、AML療法の魅力的なターゲットと考えられてきた(Laszlo et al.,Blood Rev.(2014)28(4):143-53)。抗CD33モノクローナル抗体ベースの療法を使用した臨床試験では、標準的な化学療法と組み合わせた場合に一部のAML患者において生存の改善が示されたが、これらの効果には、安全性及び有効性に関する懸念も付随した。
【0307】
AML細胞のターゲティングを目的とした他の取り組みには、AMLにおけるCD33を選択的にターゲティングするキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞の生成が含まれている。Buckley et al.,Curr.Hematol.Malig.Rep.(2015)2:65。しかし、データは限られており、このアプローチが患者の処置においてどの程度有効であり得るか(ターゲティングされる細胞のすべてが除去されるかどうか)は不確かである。更に、骨髄系列細胞は生命に不可欠であるため、対象の骨髄系列細胞を枯渇させると、患者の生存に有害な影響が及ぶ可能性がある。本開示は、少なくとも部分的に、AML処置に関連するそのような問題を解決することを目的とする。
【0308】
代替的に、またはさらに、本書に記述される方法は、肺癌、耳鼻咽頭癌、結腸癌、黒色腫、膵臓癌、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、基底細胞癌、胆道癌、膀胱癌、骨癌、子宮頸癌、絨毛癌、結腸直腸癌、結合組織癌、消化器系癌、子宮内膜癌、食道癌、眼癌、頭頸部癌、胃癌(gastric cancer)、上皮内腫瘍、腎臓癌、喉頭癌、肝臓癌、線維腫、神経芽細胞腫、口腔癌(例えば、唇、舌、口、及び咽頭)、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、腎癌、呼吸器系癌、肉腫、皮膚癌、胃癌(stomach cancer)、精巣癌、甲状腺癌、子宮癌、泌尿器系癌、ならびに他の癌腫及び肉腫を含むがこれらに限定されない非造血性癌を処置するために使用され得る。
【0309】
癌腫は、上皮起源のがんである。本開示の方法による処置が意図される癌腫は、腺房癌、腺房癌腫、濾胞状腺癌(腺様嚢胞癌、腺筋上皮腫、篩状癌腫、及び円柱腫とも呼ばれる)、腺腫性癌腫、腺癌、副腎皮質の癌腫、肺胞癌、肺胞細胞癌(細気管支癌、肺胞細胞腫瘍及び肺腺腫症とも呼ばれる)、基底細胞癌、基底細胞癌腫(バサローマまたはバシローマ、及び毛母癌とも呼ばれる)、類基底癌、基底扁平細胞癌、乳癌、気管支肺胞上皮癌、細気管支癌、気管支癌、脳様癌、胆管細胞癌(胆管腫及び肝内胆管癌とも呼ばれる)、絨毛膜癌、膠様癌(colloid carcinoma)、面皰癌、子宮体部癌、篩状癌、鎧状癌、皮膚癌腫、円柱状癌腫、円柱細胞癌、管癌、硬性癌腫、胚性癌腫、脳様癌腫、上眼球癌、類表皮癌、上皮性腺様癌、潰瘍癌、線維癌、膠様癌(gelatiniform carcinoma)、膠様癌(gelatinous carcinoma)、巨細胞癌、巨大細胞、腺性癌腫、顆粒膜細胞癌、毛母癌、血様癌、肝細胞癌(肝細胞腫、悪性肝細胞腫、及び肝臓癌腫とも呼ばれる)、Huirthle細胞癌、硝子質癌、副腎様癌、乳児胚性癌、上皮内癌、表皮内癌、上皮内癌腫、Krompecher癌腫、Kulchitzky細胞癌、レンズ状癌、レンズ状癌腫、脂肪腫性癌腫、リンパ上皮癌、乳腺癌、髄様癌腫、髄様癌、黒色癌(carcinoma melanodes)、黒色癌(melanotic carcinoma)、粘液性癌腫、粘液分泌癌、粘液細胞癌、粘膜類表皮癌、粘液癌、粘膜癌、粘液腫様癌、鼻咽腔癌、黒色癌(carcinoma nigrum)、燕麦細胞癌、骨化性癌、類骨癌、卵巣癌、乳頭癌、門脈周囲癌、前浸潤癌、前立腺癌、腎臓の腎細胞癌(腎臓腺癌及び副腎様癌(hypemephoroid carcinoma)とも呼ばれる)、補充細胞癌、肉腫様癌、シュナイダー(scheinderian)癌、スキルス癌、陰嚢癌、印環細胞癌、単純癌、小細胞癌、バレイショ状癌、楕円状細胞癌、紡錘細胞癌、海綿様癌、扁平上皮癌、扁平細胞癌、紐様癌(string carcinoma)、血管拡張性癌腫、毛細血管拡張性癌腫、移行細胞癌、結節癌、結節性癌、疣状癌、絨毛癌腫を含むが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、本開示の方法は、乳癌、子宮頸癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、結腸直腸癌、膵臓癌、胃癌、または腎臓癌を有する対象を処置するために使用される。
【0310】
肉腫は、骨及び軟部組織に生じる間葉新生物である。様々な種類の肉腫が認識されており、これらは、脂肪肉腫(粘液性脂肪肉腫及び多形性脂肪肉腫を含む)、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、悪性末梢神経鞘腫瘍(悪性神経鞘腫、神経線維肉腫、または神経原性肉腫とも呼ばれる)、ユーイング腫瘍(ユーイング骨肉腫、骨外性(すなわち、非骨)ユーイング肉腫、及び原始神経外胚葉性腫瘍[PNET]を含む)、滑膜肉腫、血管肉腫(angiosarcomas)、血管肉腫(hemangiosarcomas)、リンパ管肉腫、カポジ肉腫、血管内皮腫、線維肉腫、類腱腫(侵襲性線維腫症とも呼ばれる)、隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)、悪性線維性組織球腫(MFH)、血管外皮腫、悪性間葉腫、胞状軟部肉腫、類上皮肉腫、明細胞肉腫、結合組織形成性小細胞腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)(GI間質肉腫としても知られている)、骨肉腫(骨原性肉腫としても知られている)-骨格性及び骨外性、ならびに軟骨肉腫を含む。
【0311】
いくつかの実施形態では、処置されるがんは、難治性がんであり得る。「難治性がん」は、本書で使用される場合、処方される標準治療に抵抗性のあるがんである。これらのがんは、最初は処置に応答するように見える(その後再発する)場合もあれば、処置に対して完全に不応性である場合もある。通常の標準治療は、がんの種類及び対象における進行度に応じて異なる。これは化学療法、もしくは手術、もしくは放射線、またはそれらの組み合わせでもよい。当業者は、そのような標準治療を認識している。したがって、本開示による難治性がんの処置を受ける対象は、そのがんのために別の処置に既に曝露されている可能性がある。代替的に、がんが難治性である可能性が高い場合(例えば、がん細胞または対象の記録の分析を所与として)、対象は別の処置に既に曝露されていない可能性がある。難治性がんの例は、白血病、黒色腫、腎細胞癌、結腸癌、肝臓(肝)癌、膵臓癌、非ホジキンリンパ腫、及び肺癌を含むが、これらに限定されない。
【0312】
本書に記述されるキメラ受容体を発現する免疫細胞のいずれも、薬学的に許容できる担体または賦形剤において、医薬組成物として投与することができる。
【0313】
「薬学的に許容できる」という語句は、本開示の組成物及び/または細胞との関連で使用される場合、哺乳動物(例えば、ヒト)に投与した際に生理学的に忍容可能であり、通常は有害反応をもたらさない、そのような組成物の分子実体及び他の成分を指す。好ましくは、本書で使用される場合、「薬学的に許容できる」という用語は、哺乳動物における、より特定するとヒトにおける使用に関して、連邦政府もしくは州政府の規制機関によって承認されている、または米国薬局方もしくは他の一般的に認識されている薬局方に記載されていることを意味する。「許容できる」とは、担体が組成物の活性成分(例えば、核酸、ベクター、細胞、または治療用抗体)と適合し、組成物(複数可)が投与される対象に悪影響を及ぼさないことを意味する。本件の方法で使用される医薬組成物及び/または細胞のいずれも、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で、薬学的に許容できる担体、賦形剤、または安定剤を含むことができる。
【0314】
バッファーを含む薬学的に許容できる担体は、当技術分野でよく知られており、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤;低分子量ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;アミノ酸;疎水性ポリマー;単糖類;二糖類;及び他の炭水化物;金属錯体;及び/または非イオン性界面活性剤を含み得る。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed.(2000)Lippincott Williams and Wilkins,Ed.K.E.Hooverを参照のこと。
【0315】
治療用途のためのキット
本開示の範囲内には、系列特異的細胞表面抗原をターゲティングする薬剤を細胞表面系列特異的抗原(複数可)が欠損している造血細胞集団と組み合わせて使用するためのキットも含まれる。そのようなキットは、系列特異的細胞表面抗原(複数可)と結合する抗原結合性フラグメントを含む任意の薬剤(複数可)(例えば、本書に記述されるキメラ受容体を発現する免疫細胞)及び薬学的に許容できる担体を含む第1の医薬組成物と、1つまたは複数の細胞表面系列特異的抗原(複数可)が欠損している造血細胞(例えば、造血幹細胞)の集団及び薬学的に許容できる担体を含む第2の医薬組成物とを含む、1つまたは複数の容器を含み得る。
【0316】
いくつかの実施形態では、本書に記述されるキットは、配列番号1~3の配列を有するgRNAを含む。いくつかの実施形態では、本書に記述されるキットは、配列番号4、及び46~47の配列を有するgRNAを含む。さらなる実施形態では、キットは、配列番号1~4及び46~47のいずれかの配列を有するgRNAをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、キットは、シトシンデアミナーゼまたはアデノシンデアミナーゼ(塩基エディター)に融合したDNA修飾酵素すなわちCas9ニッカーゼに融合した、触媒的に損なわれたCasタンパク質を含む、CRISPRベースの塩基エディターシステムの試薬をさらに含み得る。
【0317】
いくつかの実施形態では、キットは、本書に記述される方法のいずれかの使用説明書を含んでもよい。含まれる説明書は、対象において意図される活性を達成するために第1及び第2の医薬組成物を対象に投与することに関する説明を含み得る。キットは、対象が処置を必要としているかどうかの識別に基づいて処置に好適な対象を選択することに関する説明をさらに含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、説明書は、処置を必要とする対象に第1及び第2の医薬組成物を投与することに関する説明を含む。
【0318】
本書に記述される細胞表面系列特異的抗原をターゲティングする薬剤ならびに第1及び第2の医薬組成物の使用に関する説明書は、概して、意図される処置のための投与量、投薬スケジュール、及び投与経路に関する情報を含む。容器は、単位用量、バルクパッケージ(例えば、複数用量パッケージ)またはサブユニット用量であり得る。本開示のキットにおいて供給される説明書は、典型的には、ラベルまたは添付文書に記載された説明書である。ラベルまたは添付文書は、医薬組成物が、対象の疾患または障害を処置するため、その発症を遅延させるため、及び/またはそれを緩和するために使用されることを示す。
【0319】
本書において提供されるキットは、好適なパッケージングに入っている。好適なパッケージングは、バイアル、ボトル、瓶、可撓性パッケージングなどを含むが、これらに限定されない。吸入器、経鼻投与デバイス、または注入デバイスのような特定のデバイスと組み合わせて使用するためのパッケージも企図される。キットは、滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、静注液バッグ、または皮下注射針によって穿刺可能な栓を有するバイアルであり得る)。容器が滅菌アクセスポートを有していてもよい。医薬組成物中の少なくとも1つの活性剤は、本書に記述されるキメラ受容体バリアントである。
【0320】
キットは、場合により、バッファー及び解説情報などの更なる構成要素を提供してもよい。通常、キットは、容器と、容器に付けられたまたは関連付けられたラベルまたは添付文書(複数可)とを含む。ある実施形態では、本開示は、上述のキットの内容物を含む製品を提供する。
【0321】
一般的技法
本開示の実施には、別段の記載がない限り、分子生物学(組換え技法を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、及び免疫学の従来技法が用いられ、これらは当業者の技能の範囲内にある。そのような技法は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,second edition(Sambrook,et al.,1989)Cold Spring Harbor Press、Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait,ed.1984)、Methods in Molecular Biology,Humana Press、Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis,ed.,1989)Academic Press、Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.1987)、Introuction to Cell and Tissue Culture(J.P.Mather and P.E.Roberts,1998)Plenum Press、Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle,J.B.Griffiths,and D.G.Newell,eds.1993-8)J.Wiley and Sons、Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.)、Handbook of Experimental Immunology(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.):Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.Miller and M.P.Calos,eds.,1987)、Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel,et al.eds.1987)、PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullis,et al.,eds.1994)、Current Protocols in Immunology(J.E.Coligan et al.,eds.,1991)、Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons,1999)、Immunobiology(C.A.Janeway and P.Travers,1997)、Antibodies(P.Finch,1997)、Antibodies:a practice approach(D.Catty.,ed.,IRL Press,1988-1989)、Monoclonal antibodies:a practical approach(P.Shepherd and C.Dean,eds.,Oxford University Press,2000)、Using antibodies:a laboratory manual(E.Harlow and D.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999)、The Antibodies(M.Zanetti and J.D.Capra,eds.Harwood Academic Publishers,1995)、DNA Cloning:A practical Approach,Volumes I and II(D.N.Glover ed.1985)、Nucleic Acid Hybridization(B.D.Hames & S.J.Higgins eds.(1985)、Transcription and Translation(B.D.Hames & S.J.Higgins,eds.(1984)、Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.(1986)、Immobilized Cells and Enzymes(lRL Press,(1986)、及びB.Perbal,A practical Guide To Molecular Cloning(1984)、F.M.Ausubel et al.(eds.)などの文献で十分に説明されている。
【0322】
当業者であれば、さらなる詳述がなくとも、上記説明に基づいて本開示を最大限に利用できると考えられる。したがって、以下の特定の実施形態は、単なる例示と解釈されるべきであり、決して本開示の残部を限定するものと解釈されてはならない。本書で引用されるすべての刊行物は、本書で参照される目的または主題のために参照により組み込まれる。
【実施例】
【0323】
実施例1:塩基エディターによるHSC/HSPCの効率的な編集
材料及び方法
1%のペニシリンストレプトマイシン、ならびに次のヒトサイトカイン、100ng/mLのTPO、100ng/mLのSCF、100ng/mLのIL6、及び100ng/mLのFLT3L及びUM171 0.35nM(Xcessbio,San Diego,CA,USA)を含むStemSpan SFEM II(STEMCELL Technologies Inc)で、ヒト臍帯血CD34+幹細胞を維持した。ヒトサイトカインはすべてBiolegend(San Diego,CA,USA)から購入した。
【0324】
ABEタンパク質及びsgRNAをP3バッファー(Lonza、Amaxa P3 Primary Cell 4D-Nucleofector Kit)中で混合し、10分間インキュベートした。次に、細胞をPBSで洗浄し、P3バッファーに再懸濁し、Cas9/sgRNA RNP複合体と混合し、次に4D-Nucleofectorで電気穿孔した。電気穿孔後、細胞を分析または注射するまで37℃で培養した。
【0325】
ABE8eタンパク質によるHSC/HSPCの編集
Lonza 4Dヌクレオフェクター及びプログラムDZ100を使用し、100万個のHSC/HSPCに11ugrのABE8eタンパク質+1.5ugrのsgRNA(化学修飾したもの(配列番号3))をヌクレオフェクトした。
【0326】
BE4maxタンパク質によるHSC/HSPCの編集
Lonza 4Dヌクレオフェクター及びプログラムDZ100を使用し、500000個のHSC/HSPCに8ugrのBE4maxタンパク質+1.5ugrのsgRNA(化学修飾したもの(配列番号1または2))をヌクレオフェクトした。
【0327】
電気穿孔後、細胞を分析するまで37℃で培養した。
【0328】
編集結果及びオフターゲット評価:
CRISPResso2によるHTS分析
プロトスペーサーsgRNA 208またはsgRNA SAの周囲の350bp領域を囲むプライマーを設計した。各プライマーには、適切なILLUMINAアダプターを付加した。次に、生成されたPCR産物を、ILLUMINAフォワード及びリバースインデックスプライマーを使用して再増幅し、250~300bpのシングルエンドIlluminaシーケンシングを生成した。次に、CRISPResso2を使用して、各リードを参照アンプリコンとアラインし、プロトスペーサーを囲むウィンドウ内でその参照に対するインデルまたは塩基変化を識別した。これらはソフトウェアによって定量化される。Clement et al.Nature Biotechnology(2019)37:224-26、Huang et al.Nature Protocols(2021)16(2):1089-1128を参照のこと。
【0329】
PCR
RNA to cDNA EcoDry mix(Takara)を使用し、細胞由来の100ngの全RNAからcDNAを調製した。CD33Δ2に特異的なプライマー(エキソンジャンクション1-3にまたがる)、CD33FLに特異的なプライマー(エキソンジャンクション2-3またはエキソン2にまたがる)、またはすべてのアイソフォームに共通のプライマー(エキソン1、5、及び7内)を使用して、30サイクルのPCRを行った。PCR産物をポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離し、サンガーシーケンシングによって分析した。
【0330】
フローサイトメトリー
エキソン2内に位置するエピトープを認識する抗CD33抗体クローンM53及びP67.6を使用した電気穿孔の7日後にヒトCD34+幹細胞を分析した。
【0331】
統計
統計はすべてGraphpad Prism 9.1.1を使用して行った。連続変数については、対応のない両側t検定を行った。平均の差はp値が<0.05の場合に有意とみなし、さもなければ有意ではない(ns;p>0.05)とした。
【0332】
結果
BEまたはABE塩基エディターを使用してエキソン2スキッピングを誘導するように3つのsgRNAを設計した(
図4)。CD33 mRNA完全長(CD33
FL)は7つのエキソンを含み、エキソン2はIg様V型ドメインをコードする。CD33
Δ2は、CをTに変化させて改変されたエキソンスプライシングエンハンサー(ESE)部位をもたらす一般的な多型(rs12459419、A14VSNP))のためにエキソン2を欠いている。
【0333】
mRNA及びリボ核タンパク質(RNP)ベースの送達系を試験して、初代細胞における効率を調べた。CD34細胞に、これらのgRNAの各々と、塩基エディター(BE)またはアデニン塩基エディター(ABE)タンパク質とを電気穿孔した。具体的には、CD34細胞に、ABE8e及び配列番号3を有するsgRNA、またはBE4max及び配列番号1を有するsgRNA、もしくはBE4max及び配列番号2を有するsgRNA(表4)を電気穿孔した。
【0334】
サンガーシーケンシングにより示されるように、BE及びABEは、ターゲットのヌクレオチドにC>TまたはA>Gのいずれかの変換を導入した(
図5A)。
【0335】
また、PCR及びIllumina MiSeqを使用して、編集済細胞を分析した。これらの結果は、ターゲットの塩基各々が意図される変異を獲得したことを示した。配列番号3及びABE8eで編集された細胞は、4%の野生型リードしか示さなかった。配列番号1または2及びBE4maxで編集された細胞は、約9~12%の野生型リードを示した(
図5B)。CD33のエキソン2内に位置するエピトープを認識する2つの抗体を用いた編集済細胞のフローサイトメトリー分析により、編集済細胞にCD33エキソン2が存在しないことが確認された(
図5C)。
【0336】
cDNAと、CD33
Δ2に特異的なプライマー(エキソンジャンクション1-3にまたがる)、CD33FLに特異的なプライマー(エキソンジャンクション2-3またはエキソン2にまたがる)、またはすべてのアイソフォームに共通のプライマー(エキソン3内、エキソンジャンクション3-5または4-5にまたがる)を用いるPCRとを使用し、編集済細胞を編集結果についてさらに分析した。結果は、ESEまたはSAの編集が他のエキソンに影響を与えることなくエキソン2スキッピングを誘導したことを示した(
図5D)。
【0337】
実施例2:CD33Δ2細胞はIn Vitroで正常な貪食能力を示し、GOに対する抵抗性をもつ
実施例1に記述したCD34+CD33Δ2細胞をさらに分析した。
【0338】
貪食
in vitroで分化したCD34
+CD33
WT及びCD33
Δ2単球がin vitroでE coli生体粒子を貪食する能力を試験した。In vitroで分化したWTまたはCD33
Δ2の単球は、E.Coli生体粒子の内部移行によって測定した場合に同等の貪食能力を示す。
図6Aを参照のこと。
【0339】
GO細胞傷害性
更に、CD34
+CD33
Δ2は、in vitroでGO細胞傷害性に抵抗した。細胞をGOと共に48時間インキュベートし、Sytox Blueまたは7AADを生死判別色素として使用したFACSによって分析した。CD34
+CD33
Δ2は、GO細胞傷害性に対し、ホモ接合性rs12459419(TT)A14V SNPを有するドナーと比べて同じ抵抗性を示す(
図6B)。
【0340】
実施例3:CD34+CD33Δ2はIn Vivoで長期の多系列生着が可能であり、CD33標的免疫療法(GO)に対する抵抗性をもつ
材料及び方法
In vivo実験
本件のアプローチは、CD33抗原のCAR-Tによるターゲティング及びADC送達(GO)のためのプラットフォームとしてCD33遺伝子編集済幹細胞(CD34+CD33Δ2)を移植することを含み得るため、生着し骨髄造血及びリンパ球新生に寄与するCD34+CD33Δ2細胞の能力を試験することが重要である。
【0341】
NOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJ(NSG)マウスまたはNOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl Tg(CMV-IL3,CSF2,KITLG)1Eav/MloySzJ(NSG-SGM3)マウス(The Jackson Laboratory,Bar Harbor,Maine,USA)を致死量以下(100cGy)の全身照射(TBI)で前処置した。致死量以下の照射を受けたマウスに、CD34+WTまたはCD34+CD33Δ2のHSPC(実施例1に記述したようにABE8e及び配列番号3を使用して編集された細胞)を尾静脈注射によって注射した。
【0342】
造血系の経時的な生着及びリポピュレーション(
図7A)を、Biolegend(San Diego,CA,USA)またはBD Biosciences(San Jose,CA,USA)による次の抗体;Ter119-PeCy5、Ly5-BV711、H2kd-BV711、hCD45-BV510、hCD3-Pacific Blue、hCD123-BV605、hCD33-APC、hCD14-APC/Cy7、hCD10-BUV395、hCD19-BV650、CD34-BV421、CD90-PeCy7、hCD38-BUV661、及びhCD45RA-BUV737を使用した末梢血(PB)、脾臓、及び全骨髄(BM)の分析によって評価した。ヨウ化プロピジウムを使用して死細胞を排除した。注射したCD34
+ヒト由来細胞をTer119-、Ly5-/H2kd-ヒトCD45+でゲーティングした。
【0343】
CD34
+CD33
Δ2細胞がin vivoでGO抵抗性をもつことを示すために、移植12週間後のマウスのPBをCD33
+CD14
+細胞またはCD33
Δ2CD14
+細胞の存在について分析した。次にマウスに2.5ugrのGOを注射し、処置の1週間後に採血して袋詰めし、ヒト化マウスのPB及び骨髄中の骨髄性細胞の存在を評価した。GO処置前、CD34
+WT移植マウスまたはCD34
+CD33
Δ2移植マウスは、PB中のCD14
+細胞の頻度が同じであることを示していた(
図7D、上のFACSプロット)。GO注射の1週間後、CD34
+CD33
Δ2細胞を生着させたマウスのPB及びBM中ではCD33
-CD14
+細胞が検出されたが、CD34+WT生着マウスのPB及びBM中ではCD33
+細胞及びCD14
+細胞が根絶されていた。
【0344】
移植の16週間後、CD33遺伝子座をマウスの骨髄由来のゲノムDNAから増幅させた。アンプリコンをHTSによってシーケンシングし、A7位におけるAからGへの編集を定量化した。
【0345】
実験はすべて、Columbia UniversityのInstitutional Animal Care and Use Committeeによって承認されたプロトコールのもとで行った。
【0346】
結果
移植16週間後の骨髄及び脾臓の両方で、ヒトCD45+細胞、ならびに、ヒトCD45内の骨髄系前駆細胞(CD123)及びリンパ系前駆細胞(CD10)、ならびに成熟した骨髄系細胞(CD14)及びリンパ系細胞(CD19)、及びT細胞(CD3)の存在が明らかになった(
図7B)。すべての細胞がCD33陰性のままであった(
図7A)。
【0347】
GO処置後CD34
+CD33
Δ2細胞を生着させたマウスの末梢血及び骨髄においてCD33-CD14+が検出され、一方でCD33+細胞は検出できず、CD14
+CD34
+WT生着マウスの根絶に至っている。したがって、CD33
WT細胞はGOへの感受性を保っているが、CD34
+CD33
Δ2細胞は非感受性であった。
図7B及び7C。
【0348】
生着したWT(未編集)細胞または編集済細胞中のターゲット部位(A7)におけるオンターゲット編集を、移植16週間後の骨髄サンプルから分析した。移植の16週間後、CD33遺伝子座をマウスの骨髄由来のゲノムDNAから増幅させた。
図7D。
【0349】
実施例4:オフターゲット評価
材料及び方法
CIRCLEseq
オフターゲット部位の塩基編集を識別するために、QIAgen Gentra PureGeneキット(カタログ番号158445)を使用して、匿名化されたヒトドナー由来のCD34+濃縮細胞集団からゲノムDNAを抽出した。CIRCLE-seqを既報(Tsai et al,Nature Methods(2017)14:607-14)のように行った。簡潔に述べると、精製されたゲノムDNAをCovaris S2器具で平均300bpの長さに切断した。KAPA HTP Library Preparation Kit,PCR Free(KAPA Biosystems)を使用し、フラグメント化されたDNAを末端修復し、Aテールを付加し、ウラシル含有ステムループアダプターにライゲートした。アダプターにライゲートしたDNAをラムダエキソヌクレアーゼ(NEB)及びE.coliエキソヌクレアーゼI(NEB)で処理し、次にUSER酵素(NEB)及びT4ポリヌクレオチドキナーゼ(NEB)で処理した。T4 DNAリガーゼ(NEB)を用いてDNAの分子内環状化を行い、残留した線状DNAをPlasmid-Safe ATP-dependent DNase(Lucigen)によって分解した。250ngのPlasmid-Safe処理環状化済みDNA、90nMのCas9ヌクレアーゼ(NEB)、Cas9ヌクレアーゼバッファー(NEB)及び90nMの合成化学修飾sgRNA(Synthego)を100μlの容量で用い、In vitro切断反応を行った。切断された産物にAテールを付加し、ヘアピンアダプター(NEB)をライゲートし、USER酵素(NEB)で処理し、Kapa HiFi Polymerase(KAPA Biosystems)を使用してバーコード化ユニバーサルプライマーNEBNext Multiplex Oligos for Illumina(NEB)を用いたPCRによって増幅させた。ライブラリをIllumina MiSeq器具において150bpペアエンドリードでシーケンシングした。CIRCLE-seqデータ分析は、オープンソースのCIRCLE-seq分析ソフトウェア(https://github.com/tsailabSJ/circleseq)を使用し、デフォルトのパラメータを使用して行った。ヒトゲノムGRCh37をアラインメントのために使用した。
【0350】
オフターゲット編集を評価するために、CIRCLE-seqによって指定された上位19のオフターゲット部位を、移植16週間後の骨髄から生着したヒトWT細胞(未編集細胞)または編集済細胞においてシーケンシングした。
【0351】
各オフターゲット部位について、ガイドRNA用のアラインされたオフターゲット結合部位と、Illuminaシーケンシング用の付加されたアダプターとを含む、250~300bpの産物を生成するように、プライマーを設計した。二次PCRによって各サンプルにバーコードを付けた後、産物をプールし、300サイクルv2 Illumina MiSeqキットを使用してシーケンシングした。アンプリコンをHTSによってシーケンシングし、A7位におけるAからGへの編集を定量化した。
【0352】
得られたfastqファイル中の編集結果を分析するために、CRISPResso2を使用して各リードを参照アンプリコンとアラインし、インデルまたは塩基変化を定量化した。
【0353】
実施例1に記述したようにABE8e及び配列番号3を使用して編集されたCD34+CD33Δ2細胞をさらに分析した。
【0354】
結果
CIRCLE-seqを使用し、上位19のオフターゲット遺伝子座を識別した。
図8A。
【0355】
上述のように、シーケンシングを行って、生着したヒトWT(未編集)細胞または編集済細胞において識別された上位19のオフターゲット遺伝子座におけるA7ターゲットヌクレオチドを編集するA7位におけるAからGへの編集を評価した。
図8Bに示すように、ターゲットのほとんどについて、A7編集はWT細胞及び編集済細胞において同様であった。
【0356】
図8Cに示すように、ターゲットのインデルのパーセントも、WT細胞及び編集済細胞の両方で同様であった。
【0357】
実施例5:多重塩基編集
2つのsgRNAを設計した。1つは、ABEエディターを使用してCD33におけるエキソンスキッピングを誘導するもの(配列番号3)である。2つ目は、ABEエディターを使用してEMR2におけるエキソン13のスキッピングを誘導するもの(配列番号4)であった。
図4A及び9A。
【0358】
5ugrのAB8e+1.5ugrのsgRNA(化学修飾したもの)を使用し、2つのRNP(ターゲット遺伝子毎に1つ)を別々に調製した。インキュベーション後、RNPを500,000個のHSC/HSPCと混合し、Lonza 4Dヌクレオフェクター及びプログラムDZ100を使用してヌクレオフェクトした。
【0359】
編集済細胞をヌクレオチド変換の導入について分析した。サンガーシーケンシングによって示されるように、ABE塩基エディターは両方の遺伝子座にA>G変換を導入し、それによってCD33遺伝子座のSA及びEMR2遺伝子座のSDを編集した(
図9B)。編集済細胞のフローサイトメトリー分析により、編集済細胞ではCD33及びEMR2抗体の結合が編集により抑止されることが確認された(
図9C)。
【0360】
実施例6:急性骨髄性白血病(AML)における細胞表面系列特異的CD33のターゲティング
本実施例は、AMLにおけるCD33抗原のターゲティングを包含する。この実施例の特定のステップを表5に概説する。
【表5】
【0361】
I. CD33標的キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法
A. 抗CD33 CAR構築物の生成
本書に記述されるCD33をターゲティングするキメラ抗原受容体は、5’から3’の順に次の構成要素からなり得る:pHIV-Zsgreenレンチウイルス骨格(www.addgene.org/18121/)、ペプチドシグナル、CD33 scFv、ヒンジ、CD28分子の膜貫通領域、CD28の細胞内ドメイン、及びTCR-ζ分子のシグナル伝達ドメイン。
【0362】
最初に、ペプチドシグナル、抗CD33軽鎖(配列番号8)、可動性リンカー、及び抗CD33重鎖(配列番号6)を、最適なKozak配列と共にpHIV-ZsgreenのEcoRI部位にクローニングする。
【0363】
軽鎖-リンカー-重鎖-ヒンジ-CD28/ICOS-CD3ζの基本構造を有するCD33と結合する例示的なキメラ受容体の核酸配列を以下に提示する。
【0364】
パート1:軽鎖-リンカー-重鎖(配列番号33):Kozak開始部位は太字で示されている。ペプチドシグナルL1はイタリック体で示されている。抗CD33軽鎖及び重鎖は太字のイタリック体で示され、リンカーで区切られている。
【化3】
【0365】
パート2:ヒンジ-CD28/ICOS-CD3ζ NotI制限酵素認識部位は大文字で示されている。翻訳停止部位は太字で示されている。BamHI制限切断部位は下線で示されている。
【0366】
【0367】
【0368】
融合(ハイブリッド)CD28及びICOS共刺激ドメイン(配列番号36)
【化6】
【0369】
次のステップでは、ヒンジ領域、CD28ドメイン(配列番号15)、及びTCR-ζの細胞質成分を、pHIV-Zsgreen(ペプチドシグナル及びCD33 scFvを既に含んでいる)のNotI及びBamHI部位にクローニングする。代替的に、CD28ドメインをICOSドメイン(配列番号16)で置換してもよい。
【0370】
CD28及びICOSドメインに加えて、CD28及びICOS細胞内シグナル伝達ドメインのフラグメントを含む融合ドメインを工学操作し(配列番号17)、更なるキメラ受容体を生成するために使用する。そのような構成では、キメラ受容体は、抗原結合性フラグメント、抗CD33軽鎖可変領域、リンカー、抗CD33重鎖可変領域、CD28/ICOSハイブリッド領域(CD28のTM領域を含む)、及びTCR-ζ分子のシグナル伝達ドメインを含む。
【0371】
キメラ受容体を生成するために使用され得る構成要素のアミノ酸配列の例は、本書で提示されており、例えば、CD28ドメイン(配列番号10)、ICOSドメイン(配列番号11)、CD28/ICOSハイブリッドドメイン(配列番号13)、及びTCR-ζは、本書で提示されている。代替的にキメラ受容体を生成してもよい(セクションB)。
【0372】
B. 抗CD33 CAR構築物の生成のための代替的方法
例示的なキメラ受容体の概略図を、
図10、パネルA~Dに提示する。キメラ受容体は、細胞外CD8ヒンジ領域、膜貫通ドメイン及び細胞質シグナル伝達ドメイン、ならびにCD3 ζシグナル伝達鎖に連結した、CD33抗原を認識する細胞外ヒト化scFvを使用して生成される(
図10、パネルB)。抗CD33キメラ受容体をコードするDNAは、ヒト化scFvを使用することによって生成される(Essand et al.,J Intern Med.(2013)273(2):166)。代替手段には、CD28の代わりにOX-1もしくは41-BBを含むCAR T細胞、またはCD28/OX1もしくはCD28/4-1-B-Bハイブリッドが含まれる(
図10、パネルC及びD)。
【0373】
抗CD33 scFV配列を生成するために、上述の抗CD33抗体の可変領域の重鎖及び軽鎖(配列番号6及び8)のコード領域を特異的プライマーで増幅させ、細胞内発現のためにpHIV-Zsgreenベクターにクローニングする。ターゲット抗原に対するscFv(単鎖可変フラグメント)の結合強度を評価するために、scFvをHek293T細胞内で発現させる。この目的のために、ベクター(コード領域を含むpHIV-Zsgreen)をE.coli Top10F細菌に形質転換し、プラスミドを調製する。得られたscFv抗体をコードする発現ベクターをトランスフェクションによりHek293T細胞に導入する。トランスフェクトされた細胞を5日間培養した後、上清を除去し、抗体を精製する。
【0374】
得られた抗体は、当技術分野で知られているプロトコールによるフレームワーク置換を使用してヒト化することができる。例えば、BioAtla(San Diego)により提供されているこのようなプロトコールの1つを参照されたい。このプロトコールでは、テンプレート抗体に由来する合成CDRコーディングフラグメントライブラリを、機能的に発現された抗体由来の生殖系列配列に限定されたヒトフレームワークプールからのヒトフレームワーク領域コーディングフラグメントにライゲートする(bioatla.com/applications/express-humanization/)。
【0375】
抗原結合親和性を改善するために親和性成熟を行ってもよい。これは、ファージディスプレイ(Schier R.,J.Mol.Biol(1996),263:551)などの当技術分野で知られている一般的技法を使用して達成することができる。バリアントは、例えばBiacore分析を使用して、それらの生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングすることができる。修飾に適した候補となる超可変領域残基を識別するために、アラニンスキャニング変異誘発を行って、抗原結合に著しく寄与する超可変領域残基を識別することができる。更に、報告されているコンビナトリアルライブラリを、抗体の親和性を改善するために使用することもできる(Rajpal et al.,PNAS(2005)102(24):8466)。代替的に、BioAtlaは抗体の高速かつ効率的な親和性成熟のためのプラットフォームを開発しており、これを抗体最適化の目的で利用してもよい(bioatla.com/applications/functional-maturation/)。
【0376】
C. CAR構築物のアセンブリ
次に、抗CD33 scFvを、細胞外CD8ヒンジ領域、膜貫通ドメイン及び細胞質CD28シグナル伝達ドメイン、ならびにCD3 ζシグナル伝達鎖に連結する。簡潔に述べると、抗CD33 scFv配列に特異的なプライマーを使用して、上述のようにscFvを増幅させる。完全なヒトCD8コード配列を搭載したプラスミド(pUN1-CD8)(www.invivogen.com/puno-cd8a)を使用して、CD8ヒンジ及び膜貫通ドメイン(アミノ酸135~205)を増幅させる。完全なヒトCD3ζコード配列を搭載したInvivogenプラスミドpORF9-hCD247a(http://www.invivogen.com/PDF/pORF9-hCD247a_10E26v06.pdf)から、CD3 ζフラグメントを増幅させる。最後に、CD28(アミノ酸153~220、CD28のTM及びシグナル伝達ドメインに対応する)を、Trizol法により活性化T細胞から収集されたRNAを使用して生成されたcDNAから増幅させる。スプライスオーバーラップ伸長(SOE)PCRを使用して、抗CD33-scFv-CD8-ヒンジ+TM-CD28-CD3ζを含むフラグメントをアセンブルする。得られたPCRフラグメントをpELPSレンチウイルスベクターにクローニングする。pELPSは、CMVプロモーターがEF-1αプロモーターに置き換えられ、HIVのセントラルポリプリントラクトがプロモーターの5’に挿入された、第3世代レンチウイルスベクターpRRL-SIN-CMV-eGFP-WPREの誘導体である(Milone et al.,Mol Ther.(2009)(8):1453、Porter et al.,NEJM(2011)(8):725)。すべての構築物をシーケンシングによって検証する。
【0377】
代替的に、CD28ドメインの代わりにICOS、CD27、41BB、またはOX-40シグナル伝達ドメインを含むCARを生成し、T細胞に導入し、CD33陽性細胞を根絶させる能力について試験する(
図10、パネルC)。「第3世代」キメラ受容体の生成も企図され(
図10、パネルD)、これは、効力をさらに増強するためにCD3z-CD28-41BBまたはCD3z-CD28-OX40などの複数のシグナル伝達ドメインを組み合わせるものである(Sadelain et al.,Cancer Discov.(2013)4:388)。
【0378】
D. 抗CD33 CAR T細胞の調製
初代ヒトCD8+T細胞を免疫磁気分離法(Miltenyi Biotec)によって患者の末梢血から単離する。既報(Levine et al.,J.Immunol.(1997)159(12):5921)のように、完全培地(10%の熱失活FBS、100U/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン硫酸塩、10mMのHEPESを補ったRPMI 1640)でT細胞を培養し、抗CD3及び抗CD28 mAbで被覆されたビーズ(Invitrogen)で刺激する。
【0379】
ターゲット細胞に形質導入することができ、抗CD33キメラ受容体を含むウイルスベクターを生成するために、パッケージング細胞株を使用する。レンチウイルス粒子を生成するために、本実施例のセクション(1)で生成されたCARを、不死化正常胎児腎293Tパッケージング細胞にトランスフェクトする。10%のFBS、100U/mlのペニシリン及び100μg/mlのストレプトマイシンを含む高グルコースDMEMで細胞を培養する。トランスフェクションの48~72時間後に上清を収集し、FBSを含まないDMEM中で組換えレンチウイルスを濃縮する。次に、初代CD8+T細胞をポリブレンの存在下で約5~10の感染多重度(MOI)において形質導入する。ヒト組換えIL-2(R&D Systems)を隔日添加する(50IU/mL)。T細胞を刺激後約14日間培養する。ヒト初代T細胞の形質導入効率をZsGreenレポーター遺伝子(Clontech,Mountain View,CA)の発現によって評価する。
【0380】
E. 患者へのCAR T細胞の注入
抗CD33 CAR T細胞を患者に静脈内(i.v.)注入する前に、細胞をリン酸緩衝生理食塩水で洗浄し、濃縮する。閉鎖式無菌システムを提供するHaemonetics CellSaver(Haemonetics Corporation,Braintree,MA)などのセルプロセッサを、配合前の洗浄及び濃縮ステップに使用する。抗CD33キメラ受容体を発現する最終的なT細胞を、ヒト血清アルブミンを補った滅菌生理食塩水100mlに配合する。最後に、患者に1~10×107個のT細胞/kgを1~3日間にわたって注入する(Maude et al.,NEJM(2014)371(16):1507)。注入される抗CD33キメラ受容体を発現するT細胞の数は、がん患者の状態、患者の年齢、以前の処置などといった多数の因子に依存する。
【0381】
さらに、本書では、AML患者においてCD33をターゲティングするキメラ受容体に加えてEMR2をターゲティングするキメラ受容体を発現する免疫細胞も企図される。これは、1)抗CD33キメラ受容体を発現する免疫細胞と、抗EMR2キメラ受容体を発現する免疫細胞とを別々に生成し、両種類の免疫細胞を別々に患者に注入すること、または2)CD33及びEMR2の両方をターゲティングする免疫細胞を同時に生成すること(Kakarla et al.,Cancer(2014)2:151)という、2つの異なるアプローチによって達成することができる。
【0382】
II. CD34+CD33Δ2細胞を使用した自己由来造血幹細胞移植(HSCT)
患者からの幹細胞の単離、前処置レジメン、及び患者への幹細胞の注入に関するプロトコールは、患者の年齢、状態、処置歴、及び処置が実施される施設に応じて大きく異なることが理解される。よって、以下に記述するプロトコールは単なる例であり、当業者による定型的な最適化の対象である。
【0383】
A. 抗CD33 CAR T細胞の養子移入後の末梢血幹細胞(PBSC)の動員を使用した造血幹細胞の単離
AML患者を1日当たり10mg/kgの顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)のi.v.投与によって刺激する。免疫磁気ビーズ及び免疫磁気濃縮デバイスを使用して、CD34+細胞の正の選択を行う。Fenwall CS 3000+細胞分離機を使用すると、少なくとも2×106個のCD34+細胞/kg体重が収集されると予想される(Park et al.,Bone Marrow Transplantation(2003)32:889)。
【0384】
B. 患者の前処置レジメン
自己由来末梢血幹細胞移植(PBSCT)の前処置レジメンは、エトポシド(VP-16)+シクロホスファミド(CY)+全身照射(TBI)を使用して行う。簡潔に述べると、このレジメンは、単回用量としての26時間にわたる1.8g/m2のエトポシド(VP-16)のi.v.持続注入(c.i.v.)に続いて、1日当たり60mg/kgのシクロホスファミド(CY)の2時間にわたるi.v.投与を3日間行い、その後次の3日間にわたって1日当たり300cGyの全身照射(TBI)を行うことからなる。
【0385】
用量を計算するには、理想体重または実際の体重のいずれか少ない方を使用する。前述のように、がん患者の状態、患者の年齢、以前の処置、及び手技が実施される施設の種類などの因子のすべてが、正確な前処置レジメンを決定する際に考慮される。
【0386】
C. CD33をターゲティングするCRISPRベースの塩基エディターシステムのプラスミド構築
アデノシン塩基エディター(例えば、ABE8e)に融合したCasニッカーゼを含むレンチウイルスベクターを取得し、CD33をターゲティングするgRNA(例えば、配列番号3)をベクターにクローニングする。CD33 gRNAオリゴヌクレオチドをIntegrated DNA Technologies(IDT)から取得し、37℃で30分間ポリヌクレオチドキナーゼ(Fermentas)を使用してリン酸化し、95℃まで5分間加熱して1.5℃/分で25℃まで冷却することによってアニールする。T7リガーゼを使用してオリゴをアニールし、その後、アニールされたオリゴをゲル精製ベクター(Qiagen)に25℃で5分間ライゲートする。得られたプラスミドは次に、エンドトキシン不含ミディプレップキット(Qiagen)を使用して増幅させることができる(Sanjana et al.,Nat Methods(2014)(8):783)。
【0387】
代替的に、2ベクター系を使用してもよく(gRNA及びCasが別々のベクターから発現される)、プロトコールは既報である(Mandal et al.,Cell Stem Cell(2014)15(5):643)。ここで、Mandalらは、非ウイルスベクターから発現されたCRISPR-Casシステムを使用してヒト造血幹細胞における遺伝子の効率的なアブレーションを達成した。
【0388】
また代替的には、タンパク質形態のアデノシン塩基エディター(例えば、ABE8e)に融合したCasニッカーゼ及びgRNAが、リボ核タンパク質(RNP)ベースの送達系を使用して細胞に送達される。
【0389】
CD33枯渇造血幹細胞HSCを患者に注入することに加えて、あるプロトコールでは、実施例5の方法を使用してCD34+CD33Δ2EMRΔ13枯渇HSCを注入した。
【0390】
D. CD34+細胞HSCのトランスフェクションによるCD34+CD33Δ2またはCD34+CD33Δ2EMRΔ13-細胞の生成
新たに単離された末梢血由来CD34+細胞(ステップ4から)を、細胞培養グレードの幹細胞因子(SCF)300ng/ml、FLT3-L 300ng/ml、トロンボポエチン(TPO)100ng/ml、及びIL-3 60ng/mlの存在下で無血清CellGro SCGM培地に1×106細胞/mlで播種する。24時間の前刺激の後、CD34+HSCに、Amaxa Human CD34 cell Nucleofector kit(U-008)(#VPA-1003)を使用して(Mandal et al.,Cell Stem Cell(2014)15(5):643)、またはリボ核タンパク質(RNP)ベースの送達系を使用して、Cas9及びCD33 gRNAを含むLentiCRISPR v2をトランスフェクトする。トランスフェクションの24~48時間後、CD34+CD33Δ2細胞またはCD34+CD33Δ2EMRΔ13細胞を1.2μg/mlのピューロマイシンで選択する。ピューロマイシンによる選択の後、細胞をピューロマイシン不含培地中で数日間維持する。
【0391】
E. 患者へのCD34+CD33Δ2細胞の再注入
ex vivoでCRISPRベースの塩基エディターシステムがトランスフェクトされたCD34+細胞(CD34+CD33Δ2細胞またはCD34+CD33Δ2EMRΔ13細胞)を、Hickmanカテーテルにより、標準的な血液投与セットをフィルターなしで使用して直ちに再注入した(Hacein-Bey Abina et al.JAMA(2015)313(15):1550)。
【0392】
概して、上記に概説した処置プロトコールを受けた患者を、循環芽細胞の再出現及び血球減少についてモニタリングする。更に、特定の患者におけるAMLの発症機序に応じて、情報価値のある分子マーカーもしくは細胞遺伝学的マーカーの再出現、または情報価値のあるフローサイトメトリーパターンについて試験することにより、処置の成功をモニタリングする。例えば、フィラデルフィア染色体陽性AMLにおけるBCR-ABLシグナルの再出現は、BCR用(22番染色体上)及びABL用(9番染色体上)のプローブを用いた蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)を使用して検出される。
【0393】
CRISPRベースの塩基エディターシステムを介したCD33欠失の成功を評価するために、末梢血CD34+細胞を患者(移植後)から単離し、例えばフローサイトメトリー、ウェスタンブロッティング、または免疫組織化学を使用して、CD33発現について評価する。
【0394】
本書に記述されるように、本実施例に記述されるHSCTは、自己由来または同種異系のいずれでもよく、両方のアプローチが好適であり、本開示に記述される方法に組み込むことができる。
【0395】
III. 任意選択のステップ:毒素に結合したCD33抗体による患者の継続処置
A. CD33免疫毒素ゲムツズマブオゾガマイシン(GO)による患者の処置
2時間の静脈内注入としての9mg/m
2の抗CD33抗体ゲムツズマブオゾガマイシン(GO)により、2週間の間をあけて2回、患者を処置する(Larson et al.,Cancer(2005)104(7):1442-52)。GOは、細胞分裂阻害剤のカリケアマイシンとコンジュゲートされた、CD33に対するヒト化モノクローナル抗体から成る(
図11)。
【0396】
代替的に、抗CD33抗体を異なる毒素にコンジュゲートしてもよく、例えば、ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素A(PE)、またはリシン毒素A鎖(RTA)を生成することができる(Wayne et al.,Blood(2014)123(16):2470)。同様に、抗EMR2抗体を毒素に結合させ、処置レジメンに含めてもよい。
【0397】
実施例7:抗CD33キメラ受容体を発現するT細胞及びNK細胞株は、CD33を発現するターゲット細胞の細胞死を誘導する
CD33へのキメラ受容体の結合
CD33と結合するキメラ受容体(例えば、CART1、CART2、CART3)を、従来の組換えDNA技術を使用して生成し、pHIV-Zsgreenベクター(Addgene;Cambridge,MA)に挿入した。キメラ受容体を含むベクターを使用してレンチウイルス粒子を生成し、これを使用して、異なる細胞型、例えばT細胞株(例えば、293 T細胞)及びNK細胞株(例えば、NK92細胞)に形質導入した。キメラ受容体の発現をウェスタンブロッティング(
図12、パネルA)及びフローサイトメトリー(
図12、パネルB)によって検出した。
【0398】
キメラ受容体を発現する細胞を蛍光活性化細胞選別(FACS)によって選択し、CD33と結合する能力について評価した。簡潔に述べると、キメラ受容体を発現する293T細胞の溶解物を、CD33またはCD33-アロフィコシアニン(APC)コンジュゲートとコインキュベートした。サンプルをタンパク質電気泳動に供し、ポンソータンパク質染色で染色したか(
図13、パネルA)、または膜に移して抗CD3ζ一次抗体でプローブした(
図13、パネルB)。両方の場合において、キメラ受容体と、そのターゲットであるCD33との間の結合。
【0399】
キメラ受容体を発現するK562細胞のCD33に対する結合についても、CD33をプローブとして使用したフローサイトメトリーによって評価した(
図13、パネルC)。空のベクター対照を含む細胞と比較して、キメラ受容体(CART1、CART2、またはCART3)の発現について陽性の細胞の数及びCD33結合が増加し、キメラ受容体がCD33に結合することが示された。
【0400】
キメラ受容体を発現する細胞により誘導された細胞傷害性
キメラ受容体を発現するNK-92細胞を、細胞表面にCD33を提示するターゲット細胞の細胞傷害性を誘導する能力について機能的に特性評価した(例えば、K562は、CD33+のヒト慢性骨髄性白血病細胞株である)。細胞傷害性アッセイを行うために、エフェクター細胞(NK-92細胞などの免疫細胞)に、キメラ受容体をコードするレンチウイルス粒子を感染させ、拡大培養した。感染の7日後、キメラ受容体を発現する細胞を、キメラ受容体コードベクターによってもコードされる蛍光マーカー(例えば、GFP+またはRed+)を選択することによるFACS分析によって選択した。選択されたキメラ受容体発現細胞を1週間拡大培養した。感染の14日後、ターゲット細胞(ターゲット細胞表面系列特異的抗原CD33を発現する細胞)をカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)で染色し、ターゲット細胞及びキメラ受容体発現細胞の両方をカウントすることを含む細胞傷害性アッセイを行った。異なる比率のターゲット細胞とキメラ受容体発現細胞とを丸底96ウェルプレートで4.5時間コインキュベートし、その後、7-アミノアクチノマイシンD(7-AAD)を添加して生存不能細胞を染色した。フローサイトメトリーを行って、生存可能なターゲット細胞及び生存不能なターゲット細胞の集団を計数した。
図14、パネルA及びBに示すように、キメラ受容体CART1、CART2、またはCART3を発現するNK92細胞は、評価した細胞比の各々で、ターゲットK562細胞のかなりの量の細胞死を誘導した。
【0401】
K562細胞の細胞死がCD33に対するキメラ受容体の特異的ターゲティングに依存したことを決定するために、CRISPR/Casシステムを使用し、CD33が欠損するようにK562を遺伝子工学操作した。簡潔に述べると、ヒトコドン最適化Cas9エンドヌクレアーゼと、CD33のIgCドメインの一部をターゲティングするgRNAとを、K562細胞において発現させ、CD33欠損K562細胞集団をもたらした。細胞を拡大培養し、キメラ受容体を発現するNK92細胞とコインキュベートし、細胞傷害性アッセイを上述のように行った。
図15のパネルAに示すように、プールされたCD33欠損K562細胞は、キメラ受容体を発現するNK92細胞とコインキュベートした場合、細胞死のわずかな低減を示した。しかし、CD33欠損K562細胞の単一クローンを単離し、拡大培養し、細胞傷害性アッセイを行うために使用した場合、細胞傷害性におけるより有意な低減が観察された(
図15、パネルB)。
【0402】
初代T細胞におけるキメラ受容体の発現
CD4+細胞、CD8+細胞、またはCD4+/CD8+細胞の正の選択によるFACSによりドナーから取得されたPMBCから初代T細胞集団を単離し、高度に純粋な集団を得た(
図16、パネルA及びB)。初代T細胞(CD4+細胞、CD8+細胞、またはCD4+/CD8+細胞)の各集団に、キメラ受容体(例えば、CART1及びCART8)を含むレンチウイルスベクターを形質導入し、得られたキメラ受容体発現初代T細胞を使用して、上述のように細胞傷害性アッセイを行った。キメラ受容体を発現するCD4+T細胞集団とK562(1000個のターゲットK562細胞)とのコインキュベーションは、K562細胞の細胞傷害性をもたらさなかった(
図17、パネルA)。対照的に、キメラ受容体を発現するCD8+細胞またはCD4+/CD8+細胞のいずれかと、1000個のターゲットK562細胞とを使用した細胞傷害性アッセイでは、CD8+細胞またはCD4+/CD8+細胞は、低い細胞比でK562細胞の細胞死を誘導することができた(
図17、パネルB)。
【0403】
他の実施形態
本明細書で開示された特徴はすべて、任意の組み合わせで組み合わせることができる。本明細書で開示された各特徴は、同一、均等、または同様の目的を果たす代替的な特徴に置き換えてもよい。よって、別段の明確な記載がない限り、開示される各特徴は、一般的な一連の均等または同様の特徴の一例にすぎない。
【0404】
当業者であれば、上記の説明から、本開示の本質的な特徴を容易に確認することができ、その精神及び範囲を逸脱することなく、様々な用途及び条件に適合するように本開示に様々な変更及び修正を行うことができる。よって、他の実施形態も特許請求の範囲内にある。
【0405】
均等物
幾つかの発明実施形態を本書に記述及び例示したが、当業者は、本書に記述される機能を果たすため及び/または結果及び/または利点のうちの1つもしくは複数を得るための種々の他の手段及び/または構造を容易に想起するであろう。そのような変更及び/または修正の各々は、本書に記述される発明実施形態の範囲内にあるとみなされる。より一般的に言えば、当業者には、本書に記述されるパラメータ、寸法、材料、及び構成はすべて例示を意図すること、そして実際のパラメータ、寸法、材料、及び/または構成は発明の教示が使用される特定の用途または複数の用途に依存することが容易に理解されよう。当業者であれば、本書に記述される特定の発明実施形態の多くの均等物を認識するか、または定型的な実験を使用するだけでそれらを確認することができるであろう。したがって、前述の実施形態は例として提示されるにすぎず、添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲において、発明実施形態が、具体的に記述され請求されているものとは別様に実施され得ることを理解されたい。本開示の発明実施形態は、本書に記述される各個の特徴、システム、物品、材料、キット、及び/または方法を対象とする。さらに、そのような特徴、システム、物品、材料、キット、及び/または方法が相互に矛盾しなければ、2つ以上のそのような特徴、システム、物品、材料、キット、及び/または方法の任意の組み合わせが本開示の発明範囲内に含まれる。
【0406】
本書で定義され使用されるすべての定義は、辞書の定義、参照により組み込まれる文書の定義、及び/または定義された用語の通常の意味に優先すると理解されたい。
【0407】
本書で開示されるすべての参考文献、特許及び特許出願は、各々が引用される主題に関して参照により組み込まれており、これは場合によっては文書全体を包含し得る。
【0408】
本明細書及び特許請求の範囲において本書で使用される不定冠詞「a」及び「an」は、相反することが明確に示されない限り、「少なくとも1」を意味すると理解されたい。
【0409】
本明細書及び特許請求の範囲において本書で使用される「及び/または」という語句は、それによって等位接続された要素、すなわち、ある場合には接続的に存在し、他の場合には離接的に存在する要素の「いずれかまたは両方」を意味すると理解されたい。「及び/または」を用いて列記された複数の要素は、同じ様式で、すなわち、それによって等位接続された要素の「1つまたは複数」と解釈されたい。「及び/または」節によって具体的に特定された要素に関連するか関連しないかにかかわらず、具体的に特定された要素以外の他の要素が場合により存在してもよい。よって、非限定的な例として、「A及び/またはB」への言及は、「含む(comprising)」などの制限のない文言と併せて使用される場合、一実施形態では、Aのみ(場合によりB以外の要素を含む)を指すことがあり、別の実施形態では、Bのみ(場合によりA以外の要素を含む)を指すことがあり、さらに別の実施形態では、A及びBの両方(場合により他の要素を含む)を指すことがある、などということである。
【0410】
本明細書及び特許請求の範囲において本書で使用される場合、「または」は、上記で定義した「及び/または」と同じ意味を有すると理解されたい。例えば、リスト内の項目を区切る場合、「または」または「及び/または」は、包括的であるもの、すなわち、いくつかの要素またはリストの要素のうちの少なくとも1つを含むが複数も含み、場合により、列記されていない更なる項目を含むと解釈されるものとする。「のうちの1つのみ(only one of)」もしくは「のうちの1つだけ(exactly one of)」、または特許請求の範囲において使用される場合は「からなる(consisting of)」など、相反することが明確に示されている用語のみが、いくつかの要素またはリストの要素のうちの1つの要素だけを含むことを指す。概して、本書で使用される「または」という用語は、「いずれか」、「のうちの1つ」、「のうちの1つのみ」、または「のうちの1つだけ」といった排他性の用語が先行する場合に限り、排他的選択肢(すなわち「一方または他方、しかし両方ではない」)を示すと解釈されるものとする。特許請求の範囲において使用される場合、「から本質的になる(Consisting essentially of)」は、特許法の分野で使用されている通常の意味を有するものとする。
【0411】
本明細書及び特許請求の範囲において本書で使用される場合、1つまたは複数の要素のリストに関する「少なくとも1」という語句は、要素のリスト内のいずれか1つまたは複数の要素から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、必ずしも要素のリスト内で具体的に列記されたあらゆる要素を少なくとも1つ含むとは限らず、要素のリスト内の要素の任意の組み合わせを除外するものではないと解釈されたい。この定義はまた、「少なくとも1」という語句が指す要素のリスト内で具体的に特定された要素に関連するか関連しないかにかかわらず、具体的に特定された要素以外の要素が場合により存在する可能性を許容する。よって、非限定的な例として、「A及びBのうちの少なくとも1つ」(または同等に、「AまたはBのうちの少なくとも1つ」、または同等に、「A及び/またはB」のうちの少なくとも1つ)は、一実施形態では、Bが存在しない(場合によりB以外の要素を含む)、少なくとも1つの、場合により複数を含むAを指すことがあり、別の実施形態では、Aが存在しない(場合によりA以外の要素を含む)、少なくとも1つの、場合により複数を含むBを指すことがあり、さらに別の実施形態では、少なくとも1つの、場合により複数を含むA、及び少なくとも1つの、場合により複数を含むB(場合により他の要素を含む)を指すことがある、などということである。
【0412】
また、相反することが明確に示されない限り、本書で特許請求される、複数のステップまたは行為を含む任意の方法において、方法のステップまたは行為の順序は、方法のステップまたは行為が列挙される順序に必ずしも限定されないことを理解されたい。
【手続補正書】
【提出日】2023-02-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】