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特表2023-528427コロナウイルス感染症の診断、予防及び治療
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-04
(54)【発明の名称】コロナウイルス感染症の診断、予防及び治療
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/165 20060101AFI20230627BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20230627BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20230627BHJP
   A61K 47/69 20170101ALI20230627BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20230627BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230627BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20230627BHJP
   C07K 17/14 20060101ALI20230627BHJP
   G01N 33/569 20060101ALI20230627BHJP
   C12N 15/50 20060101ALN20230627BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALN20230627BHJP
【FI】
C07K14/165 ZNA
A61K38/08
A61K39/00 H
A61K47/69
A61K31/7088
A61P31/14
C12N5/0783
C07K17/14
G01N33/569 L
C12N15/50
C12Q1/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022574281
(86)(22)【出願日】2021-06-02
(85)【翻訳文提出日】2023-01-24
(86)【国際出願番号】 EP2021064803
(87)【国際公開番号】W WO2021245140
(87)【国際公開日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】2008250.9
(32)【優先日】2020-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522468571
【氏名又は名称】エマージェクス ヴァクシーンズ ホールディング リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100125818
【弁理士】
【氏名又は名称】立原 聡
(72)【発明者】
【氏名】トマス ラーデマッヘル
(72)【発明者】
【氏名】リチャード ペリンス
(72)【発明者】
【氏名】ローレンス ラーデマッヘル
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C076
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA18
4B063QQ08
4B063QR48
4B063QS32
4B063QS33
4B063QX02
4B065AA94X
4B065AA95X
4B065CA46
4B065CA60
4C076AA30
4C076AA95
4C076CC35
4C076CC41
4C076DD21
4C076DD26
4C076DD29
4C076EE59
4C076FF34
4C076FF67
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA17
4C084BA23
4C084MA43
4C084NA06
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZB33
4C085AA03
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA43
4C086NA06
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZB33
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA15
4H045CA01
4H045EA31
4H045FA15
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、コロナウイルスペプチド、並びにコロナウイルス感染症の診断、治療及び予防のためのそのようなペプチドの使用に関する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号9、1~8、10~34のいずれか1つ又はその変異体を含む、ペプチド。
【請求項2】
MHC分子に結合した請求項1に記載のペプチドを含む、複合体。
【請求項3】
請求項1に記載の2つ以上のペプチド及び2つ以上のMHC分子を含む、請求項2に記載の複合体。
【請求項4】
各ペプチドが、前記2つ以上のMHC分子のうちの1つに結合している、請求項3に記載の複合体。
【請求項5】
前記2つ以上のMHC分子のそれぞれがデキストラン骨格に結合している、請求項3又は4に記載の複合体。
【請求項6】
前記複合体がフルオロフォアをさらに含み、場合により、前記フルオロフォアが前記デキストラン骨格に結合している、請求項5に記載の複合体。
【請求項7】
前記複合体が、配列番号21、1、19、28、2、27、16及び14のうちの2つ以上又はその変異体を含み、場合により、前記複合体が、配列番号21、1、19、28、2、27、16及び14又はその変異体を含む、請求項3~7のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項8】
個体における現在又は以前のコロナウイルス感染症の存在又は非存在を判定する方法における、請求項1に記載のペプチド又は請求項2~7のいずれか一項に記載の複合体の使用。
【請求項9】
前記方法が、前記ペプチド又は複合体を前記個体から得られた試料と接触させること、及び前記ペプチド又は複合体と前記試料に含まれる分子との間の結合の存在又は非存在を判定することを含む、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記分子が抗体又はT細胞受容体である、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記結合の存在が、現在又は以前のコロナウイルス感染症の存在を示し、かつ/又は前記結合の非存在が、現在又は以前のコロナウイルス感染症の非存在を示す、請求項9又は10に記載の使用。
【請求項12】
コロナウイルス特異的T細胞を同定する方法における、請求項1に記載のペプチド又は請求項2~7のいずれか一項に記載の複合体の使用。
【請求項13】
前記方法が、前記ペプチド又は複合体を個体から得られた試料と接触させること、及び前記ペプチド又は複合体と前記試料に含まれるT細胞受容体との間の結合の存在又は非存在を判定することを含む、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記個体が、前記コロナウイルスに現在感染している、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記個体が、前記コロナウイルスに以前に感染していたが、現在は感染していない、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
コロナウイルス特異的T細胞受容体を同定する方法における、請求項1に記載のペプチド又は請求項2~7のいずれか一項に記載の複合体の使用。
【請求項17】
前記方法が、前記ペプチド又は複合体をT細胞受容体と接触させること、及び前記ペプチド又は複合体と前記T細胞受容体との間の結合の存在又は非存在を判定することを含む、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記結合の存在が、前記T細胞受容体がコロナウイルス特異的T細胞受容体であることを示し、かつ/又は前記結合の非存在が、前記T細胞受容体がコロナウイルス特異的T細胞受容体ではないことを示す、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
配列番号9、1~8、10~34のいずれか1つ又はその変異体を含むペプチドに結合することができるT細胞受容体を含む、T細胞。
【請求項20】
請求項1に記載のペプチド、又は請求項19に記載のT細胞受容体に結合することができるペプチドを含む、ワクチン組成物。
【請求項21】
請求項20に記載のワクチン組成物であって、
(a)それぞれが配列番号9、1~8、10~34若しくはその変異体から選択される異なる配列を含む、請求項1に記載の2つ以上のペプチド、又は
(b)それぞれが請求項19に記載の異なるT細胞受容体に結合することができる2つ以上のペプチドであって、各異なるT細胞受容体が配列番号9、1~8、10~34若しくはその変異体から選択される異なる配列に結合することができる、2つ以上のペプチド
を含む、ワクチン組成物。
【請求項22】
それぞれが配列番号21、1、19、28、2、27、16及び14又はその変異体から選択される異なる配列を含む2つ以上のペプチドを含む、請求項21に記載のワクチン組成物。
【請求項23】
前記2つ以上のペプチドのそれぞれが異なるHLAスーパータイプと相互作用する、請求項21に記載のワクチン組成物。
【請求項24】
請求項20に記載の少なくとも1つのペプチドを含み、前記ペプチドが少なくとも2つの異なるHLAスーパータイプと相互作用する、請求項20~23のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項25】
前記少なくとも2つの異なるHLAスーパータイプが、
(i)A2、A203/A2、A23、A24、A2403/A2、A2403/A24、A39、A3、A11、A30、A31、A32、A68、A69、B7、B8、B35、B37、B44、B48、B53、B60、B61、B62、B63、B72、B75、Cw1及びCw6、
(ii)A3、A11及びA31、
(iii)B7及びB35、
(iv)B72、A2及びA203/A2、
(v)B72、B62及びB75、
(vi)A68、A11及びA31、
(vii)A203/A2及びA2、
(viii)A2403/A2及びA23、
(ix)A11、A30、A3、A68及びA31、
(x)A11、A30、A3及びA68、
(xi)B60、B48及びB44、
(xii)A68、B63及びA203/A2、
(xiii)A2、A203/A2、A69及びA32、
(xiv)A2、A203/A2及びA68、
(xv)B35、B53、A29、
(xvi)B37、B60、B61、B44及びB48、
(xvii)Cw6及びCw1、並びに
(xviii)A30、B7、B8、B62及びB72
から選択される、請求項23又は24に記載のワクチン組成物。
【請求項26】
前記ペプチドがナノ粒子に結合している、請求項20~25のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項27】
前記2つ以上のペプチドのそれぞれがナノ粒子に結合している、請求項21~26のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項28】
前記ナノ粒子が、金ナノ粒子、リン酸カルシウムナノ粒子又はケイ素ナノ粒子であり、場合により、前記金ナノ粒子が、α-ガラクトース及び/又はβ-GlcNAcでコーティングされている、請求項26又は27に記載のワクチン組成物。
【請求項29】
前記ペプチドが、リンカーを介して前記ナノ粒子に結合している、請求項26~28のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項30】
請求項1に記載のペプチド、又は請求項19に記載のT細胞受容体に結合することができるペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、ワクチン組成物。
【請求項31】
請求項30に記載のワクチン組成物であって、
(a)それぞれが配列番号9、1~8、10~34若しくはその変異体から選択される異なる配列を含む、請求項1に記載の2つ以上のペプチド、又は
(b)それぞれが請求項19に記載の異なるT細胞受容体に結合することができる2つ以上のペプチドであって、各異なるT細胞受容体が配列番号1~34若しくはその変異体から選択される異なる配列に結合することができる、2つ以上のペプチド
をコードするポリヌクレオチドを含む、ワクチン組成物。
【請求項32】
請求項30に記載のワクチン組成物であって、
(a)それぞれが請求項1に記載のペプチドをコードする2つ以上のポリヌクレオチドであって、各ペプチドが配列番号1~34若しくはその変異体から選択される異なる配列を含む、2つ以上のポリヌクレオチド、又は
(b)それぞれが請求項18に記載のT細胞受容体に結合することができるペプチドをコードする2つ以上のポリヌクレオチドであって、各ペプチドが請求項18に記載の異なるT細胞受容体に結合することができ、各異なるT細胞受容体が配列番号1~34若しくはその変異体から選択される異なる配列に結合することができる、2つ以上のポリヌクレオチド
を含む、ワクチン組成物。
【請求項33】
コロナウイルス感染症を予防又は治療する方法であって、コロナウイルスに感染している、又は感染するリスクがある個体に、請求項20~32のいずれか一項に記載のワクチン組成物を投与することを含む、方法。
【請求項34】
個体におけるコロナウイルス感染症を予防又は治療する方法に使用するための、請求項20~32のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項35】
前記コロナウイルスが、SARSコロナウイルス又はSARSコロナウイルス2である、請求項8~18のいずれか一項に記載の使用、請求項19に記載のT細胞受容体、請求項20~32のいずれか一項に記載のワクチン組成物、請求項33に記載のコロナウイルス感染症を予防若しくは治療する方法、又は請求項34に記載の使用のためのワクチン組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年6月2日に出願された英国特許出願公開第2008250.9号明細書の優先権を主張し、その内容及び要素は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、コロナウイルスペプチド、並びにコロナウイルス感染症の診断、治療及び予防のためのそのようなペプチドの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
コロナウイルスは、哺乳動物及び鳥類において疾患を引き起こす関連ウイルスの群である。コロナウイルス感染症の症状は種によって異なる。例えば、ニワトリにおけるコロナウイルス感染症は上気道疾患を引き起こすのに対して、ウシ及びブタにおけるコロナウイルス感染症は下痢を引き起こす傾向がある。
【0004】
ヒトでは、コロナウイルスは気道感染症を引き起こす。いくつかのコロナウイルスによる感染によって引き起こされる疾患は、風邪などの軽度であり得る。他のコロナウイルスは、SARS、MERS、及びCOVID-19などのより重篤で潜在的に致死的な疾患を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
いくつかの研究では、コロナウイルスに対するワクチンの開発のための標的部位が同定され、特徴付けられている。例えば、Heらは、SARSコロナウイルスの抗原部位をマッピングする実験を行った(1)。SARSのヌクレオカプシドタンパク質は、可能性のあるワクチン候補を同定するために広く特徴付けられており(2)、優性ヘルパーT細胞エピトープがこのタンパク質で同定されている(3)。より最近では、COVID-19コロナウイルスに対する潜在的なワクチン標的が、以前のSARS-CoV免疫学的研究に基づいて同定されている(4)。それにもかかわらず、ヒトコロナウイルス感染症を予防又は治療するためのワクチンはまだ市販されていない。ヒト個体における現在及び/又は以前のコロナウイルス感染症を判定するための検査は限られている。コロナウイルス感染症のアウトブレイクの制御は、正確な検査及び/又は効果的なワクチン接種を含む戦略に依存するので、ワクチン及び検査の提供が非常に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ヒトにおけるコロナウイルス感染症を診断、予防又は治療するために使用されてもよいコロナウイルス由来ペプチドに関する。本発明者らは、異なるコロナウイルス間で保存され、それらのウイルスに感染した細胞上のMHC分子によって提示されるいくつかのペプチドを同定した。ワクチン組成物中に1つ以上のそのようなペプチドを含めることにより、1つ以上のコロナウイルスに対する防御能力及び/又は既存のコロナウイルス感染症を治療する能力を付与する可能性がある。ペプチドのそれぞれはまた、例えば、ペプチドに結合することができる分子(T細胞受容体又は抗体など)の存在又は非存在を試料中で検出することによって、コロナウイルス感染症の存在又は非存在を診断するために使用されてもよい。コロナウイルスは、例えば、ヒトの流行又はパンデミックに関与するコロナウイルスであってもよい。コロナウイルスは、例えば、人獣共通感染症由来のコロナウイルスであってもよい。コロナウイルスは、例えば、ベータコロナウイルス(Betacoronavirus)属のメンバーであってもよい。コロナウイルスは、例えば、サルベコロナウイルス(Sarbecoronavirus)亜属のメンバーであってもよい。コロナウイルスは、例えば、SARSコロナウイルス又はSARSコロナウイルス2であってもよい。
【0007】
したがって、本発明は、配列番号1~34のいずれか1つ又はその変異体を含むペプチドを提供する。
【0008】
本発明はまた、
-MHC分子に結合した本発明のペプチドを含む複合体、
-個体における現在又は以前のコロナウイルス感染症の存在又は非存在を判定する方法における本発明のペプチド又は複合体の使用、
-コロナウイルス特異的T細胞を同定する方法における本発明のペプチド又は複合体の使用、
-コロナウイルス特異的T細胞受容体を同定する方法における本発明のペプチド又は複合体の使用、
-配列番号1~34のいずれか1つ又はその変異体を含むペプチドに結合することができるT細胞受容体を含むT細胞、
-本発明のペプチド、又は配列番号1~34のいずれか1つ若しくはその変異体を含むペプチドに結合することができるT細胞受容体に結合することができるペプチドを含むワクチン組成物、
-本発明のペプチド、又は配列番号1~34のいずれか1つ若しくはその変異体を含むペプチドに結合することができるT細胞受容体に結合することができるペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むワクチン組成物、
-コロナウイルス感染症を予防又は治療する方法であって、コロナウイルスに感染しているか、又は感染するリスクがある個体に、本発明のワクチン組成物を投与することを含む方法、及び
-個体におけるコロナウイルス感染症を予防又は治療する方法に使用するための本発明のワクチン組成物
を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1(1)】実施例1の吸光度スペクトルを示す図である。
図1(2)】実施例1の吸光度スペクトルを示す図である。
図1(3)】実施例1の吸光度スペクトルを示す図である。
図1(4)】実施例1の吸光度スペクトルを示す図である。
図2(1)】実施例1のDLSデータを示す図である。
図2(2)】実施例1のDLSデータを示す図である。
図2(3)】実施例1のDLSデータを示す図である。
図2(4)】実施例1のDLSデータを示す図である。
図3A】実施例1のHPLC法を示す図である。
図3B(1)】実施例1のHPLCの結果を示す図である。EM009-064-01 いずれのペプチドも含まないGNPは3.4%である。
図3B(2)】実施例1のHPLCの結果を示す図である。EM009-064-02:いずれのペプチドも含まないGNPは0%である。
図3B(3)】実施例1のHPLCの結果を示す図である。EM009-064-03:いずれのペプチドも含まないGNPは2.2%である。
図4(1)】実施例1のLC-MSペプチド定量を示す図である。
図4(2)】実施例1のLC-MSペプチド定量を示す図である。
図4(3)】実施例1のLC-MSペプチド定量を示す図である。
図5】実施例1で使用したペプチドのアラインメントを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ペプチド
本発明は、配列番号1~34のいずれか1つ又はその変異体を含むペプチドを提供する。変異体を以下に詳細に定義する。配列番号1~34を表1に示す。
【表1】
【0011】
配列番号1~34を同定するために、SARS-CovにおいてメモリーT細胞応答を引き起こすことが示されている長いペプチド配列を使用して、9~10残基長の短い重複ペプチドのシリーズを作製した。次いで、これらの配列をMHCFlurryを用いて処理して、様々なHLA対立遺伝子に対するそれらの結合親和性を予測した。SARS-COV2(NCBIアクセッション番号NC_045512)におけるタンパク質に対して100nM以下の親和性及び100%の同一性を有する配列を選択した。
【0012】
したがって、本発明のペプチドは、MHCクラスI分子に結合することができる。ペプチドは、感染細胞内のウイルスプロテオームのイムノプロテオソームプロセシングに由来するものであってもよい。ペプチドは、1つ以上のコロナウイルスの表面上に、又は1つ以上のコロナウイルス内で細胞内に発現されるペプチドであってもよい。コロナウイルスは、例えば、ヒトの流行又はパンデミックに関与するコロナウイルスであってもよい。コロナウイルスは、例えば、人獣共通感染症由来のコロナウイルスであってもよい。コロナウイルスは、例えば、ベータコロナウイルス(Betacoronavirus)属のメンバーであってもよい。コロナウイルスは、例えば、サルベコロナウイルス(Sarbecoronavirus)亜属のメンバーであってもよい。コロナウイルスは、例えば、SARSコロナウイルス又はSARSコロナウイルス2であってもよい。ペプチドは、コロナウイルスの代謝又は複製に関与するペプチドなどの構造ペプチド又は機能ペプチドであってもよい。好ましくは、ペプチドは内部ペプチドである。好ましくは、ペプチドは、2つ以上の異なるコロナウイルス又はコロナウイルス血清型の間で保存されている。2つ以上の異なるコロナウイルス又はコロナウイルス血清型のそれぞれが、ペプチドと50%以上(例えば、60%、70%、75%、80%、90%、95%、98%又は99%)相同な配列をコードする場合、ペプチドは、2つ以上の異なるコロナウイルス又はコロナウイルス血清型の間で保存される。
【0013】
ペプチドは、任意の数のアミノ酸を含有してもよい、すなわち、任意の長さであってもよい。典型的には、ペプチドは、約8~約30、35又は40アミノ酸長、例えば約9~約29、約10~約28、約11~約27、約12~約26、約13~約25、約13~約24、約14~約23、約15~約22、約16~約21、約17~約20又は約18~約29アミノ酸長である。ペプチドは、好ましくは9又は10個のアミノ酸の長さを有する。ペプチドは、ポリペプチドであってもよい。ペプチドは、配列番号1~34のうちの1つのアミノ酸配列からなってもよいか、又は本質的になってもよい。ペプチドは、ポリペプチドコロナウイルス抗原から、例えばタンパク質分解的切断によって化学的に誘導されてもよい。より典型的には、コロナウイルスペプチドは、当技術分野で周知の方法を用いて合成されてもよい。
【0014】
ペプチドは、配列番号1~34のうちの1つのみ又はその変異体を含んでもよい。あるいは、ペプチドは、任意の組合せで、配列番号1~34又はその変異体のうちの2つ以上、例えば3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、10個以上、11個以上、12個以上、13個以上、14個以上、15個以上、16個以上、17個以上、18個以上、19個以上、20個以上、21個以上、22個以上、23個以上、24個以上、25個以上、26個以上、27個以上、28個以上、29個以上、30個以上、31個以上、32個以上又は33個以上を含んでもよい。ペプチドは、配列番号1~34のすべて又はその変異体を含んでもよい。ペプチドは、例えば、配列番号21、1、19、28、2、27、16及び14のうちの1つ以上を含んでもよい。ペプチドは、例えば、配列番号21、1、19、28、2、27、16及び14のすべてを含んでもよい。
【0015】
特定の実施形態では、ペプチドは、配列番号9、24及び25のいずれか1つ以上を含んでもよい。
【0016】
HLRIAGHHL(配列番号9)は、SARS-CoV-1 Mにおける配列HLRMAGHSL(配列番号34)に基づく。
【0017】
SMWALIISV(配列番号24)は、SARS-CoV-1 pp1abにおけるSMWALVISV(配列番号31)配列に基づく。
【0018】
TKAYNVTQAF(配列番号25)は、SARS-CoV-1 NにおけるTKQYNVTQAF(配列番号32)配列に基づく。
【0019】
いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、置換がSARS-CoV-2の改善された特異的検出を有利に提供すると考える。
【0020】
ペプチドは、配列番号1~34のうちの1つ以上の複数のコピー、例えば2つ以上、例えば3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、10個以上のコピーを含んでもよい。配列番号1~34のうちの1つ以上の複数のコピーを含むペプチド、又は配列番号1~34のうちの1つ以上を含むペプチドは、約18~約250個のアミノ酸、例えば約20、約30、約40又は約50個のアミノ酸~約200、約150又は約100個のアミノ酸の長さを有してもよい。そのようなペプチドでは、配列番号1~34のうちの2つ以上、又は配列番号1~34のうちの1つ以上の複数のコピーは、互いに直接連結していてもよく、又は2~約20個のアミノ酸若しくは約3~約10個のアミノ酸などの1つ以上によって連結していてもよい。ペプチドにおいて、連結アミノ酸は、典型的には、天然の配列番号1~34のうちの2つ以上の配列を連結する正確なアミノ酸配列を含まない。
【0021】
配列番号1~34のいずれか1つ又はその変異体と同様に、ペプチドは、1つ以上のCD8+T細胞エピトープ、1つ以上のCD4+T細胞エピトープ及び/又は1つ以上のB細胞エピトープを含んでもよい。例えば、ペプチドは、2つ以上、例えば3つ以上、4つ以上、5つ以上、10個以上、15個以上又は20個以上のCD8+T細胞エピトープを含んでもよい。ペプチドは、2つ以上、例えば3つ以上、4つ以上、5つ以上、10個以上、15個以上又は20個以上のCD4+T細胞エピトープを含んでもよい。ペプチドは、2つ以上、例えば3つ以上、4つ以上、5つ以上、10個以上、15個以上又は20個以上のB細胞エピトープを含んでもよい。
【0022】
CD8+T細胞エピトープは、好ましくは、配列番号1~34のいずれか1つ又はその変異体を含まないCD8+T細胞エピトープである。CD8+T細胞エピトープは、例えば、コロナウイルスCD8+エピトープ、すなわち、1つ以上のコロナウイルスによって発現され、(i)クラスI MHC分子による提示及び(ii)CD8+T細胞上に存在するT細胞受容体(TCR)による認識が可能なペプチドであってもよい。あるいは、CD8+T細胞エピトープは、1つ以上のコロナウイルスによって発現されないCD8+T細胞エピトープであってもよい。
【0023】
CD4+T細胞エピトープは、例えば、コロナウイルスCD4+エピトープ、すなわち、1つ以上のコロナウイルスによって発現され、(i)クラスII MHC分子による提示及び(ii)CD4+T細胞上に存在するT細胞受容体(TCR)による認識が可能なペプチドであってもよい。あるいは、CD4+T細胞エピトープは、1つ以上のコロナウイルスによって発現されないCD4+T細胞エピトープであってもよい。
【0024】
B細胞エピトープは、例えば、コロナウイルスB細胞エピトープ、すなわち、1つ以上のコロナウイルスによって発現され、B細胞上に存在するB細胞受容体(BCR)による認識が可能なペプチドであってもよい。あるいは、B細胞エピトープは、1つ以上のコロナウイルスによって発現されないB細胞エピトープであってもよい。
【0025】
コロナウイルスは、例えば、ヒトの流行又はパンデミックに関与するコロナウイルスであってもよい。コロナウイルスは、例えば、人獣共通感染症由来のコロナウイルスであってもよい。コロナウイルスは、例えば、ベータコロナウイルス(Betacoronavirus)属のメンバーであってもよい。コロナウイルスは、例えば、サルベコロナウイルス(Sarbecoronavirus)亜属のメンバーであってもよい。1つ以上のコロナウイルスは、例えば、SARSコロナウイルス及び/又はSARSコロナウイルス2を含んでもよい。
【0026】
「ペプチド」という用語は、アミノ酸残基がペプチド(-CO-NH-)結合によって連結されている分子だけでなく、ペプチド結合が逆転している分子も含む。そのようなレトロインベルソペプチド模倣物は、当技術分野で公知の方法、例えばMeziere et al(1997)J.Immunol.159,3230-3237に記載の方法を用いて作製してもよい。このアプローチは、側鎖の配向ではなく、主鎖が関与する変化を含む擬似ペプチドを作製することを含む。Meziereら(1997)は、少なくともMHCクラスII及びヘルパーT細胞応答について、これらの擬似ペプチドが有用であることを示している。CO-NHペプチド結合の代わりにNH-CO結合を含有するレトロインバースペプチドは、タンパク質分解に対してはるかに耐性である。
【0027】
同様に、ペプチド結合は、アミノ酸残基の炭素原子間の間隔を保持する適切なリンカー部分が使用される限り、完全に省かれてもよい。リンカー部分が、ペプチド結合と実質的に同じ電荷分布及び実質的に同じ平面性を有する場合が特に好ましい。ペプチドは、エキソタンパク質分解消化に対する感受性を低下させるのを助けるために、そのN末端又はC末端で都合よくブロックされてもよいことも理解されよう。例えば、ペプチドのN末端アミノ基は、カルボン酸と反応させることによって保護されてもよく、ペプチドのC末端カルボキシル基は、アミンと反応させることによって保護されてもよい。修飾の他の例としては、グリコシル化及びリン酸化が挙げられる。別の可能な修飾は、R又はKの側鎖アミン上の水素がメチレン基で置き換えられてもよいことである(-NH2は-NH(Me)又は-N(Me)に修飾されてもよい)。
【0028】
「ペプチド」という用語はまた、インビボでペプチドの半減期を増加又は減少させるペプチド変異体を含む。本発明に従って使用されるペプチドの半減期を増加させることができる類似体の例としては、ペプチドのペプトイド類似体、ペプチドのD-アミノ酸誘導体及びペプチド-ペプトイドハイブリッドが挙げられる。本発明に従って使用される変異体ポリペプチドのさらなる実施形態は、ポリペプチドのD-アミノ酸形態を含む。L-アミノ酸ではなくD-アミノ酸を使用するポリペプチドの調製は、正常な代謝プロセスによるそのような剤の望ましくない分解を大幅に減少させ、その投与頻度と共に投与する必要がある剤の量を減少させる。
【0029】
変異体
上記のように、ペプチドは、配列番号1~34のいずれか1つの変異体を含んでもよい。ペプチドは、例えば、配列番号1~34のうちの2つ以上、例えば3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、10個以上、11個以上、12個以上、13個以上、14個以上、15個以上、16個以上、17個以上、18個以上、19個以上、20個以上、21個以上、22個以上、23個以上、24個以上、25個以上、26個以上、27個以上、28個以上、29個以上、30個以上、31個以上、32個以上又は33個以上の変異体を含んでもよい。ペプチドは、例えば、配列番号1~34のすべての変異体を含んでもよい。ペプチドは、例えば、配列番号21、1、19、28、2、27、16及び14のうちの1つ以上の変異体を含んでもよい。ペプチドは、例えば、配列番号21、1、19、28、2、27、16及び14のすべての変異体を含んでもよい。
【0030】
配列番号1~34のいずれか1つの変異体は、配列番号1~34のいずれか1つと5つ以下(例えば、4つ以下、3つ以下、2つ以下又は1つ以下)のアミノ酸が異なる配列であってもよい。5つ以下のアミノ酸差異のそれぞれは、配列番号1~34から選択される関連配列に対するアミノ酸の置換、欠失又は挿入であってもよい。アミノ酸置換は、例えば、保存的アミノ酸置換であってもよい。
【0031】
好ましくは、配列番号1~34のいずれか1つの変異体は、配列番号1~34のいずれか1つと1つ以下のアミノ酸が異なる配列であってもよい。例えば、配列番号1~34から選択される配列の変異体は、関連配列に対する1つのアミノ酸の置換、欠失又は挿入を含んでもよい。アミノ酸置換は、例えば、保存的アミノ酸置換であってもよい。
【0032】
保存的置換は、アミノ酸を、同様の化学構造、同様の化学特性又は同様の側鎖体積の他のアミノ酸で置き換える。導入されるアミノ酸は、それらが置き換えるアミノ酸と同様の極性、親水性、疎水性、塩基性度、酸性度、中性度又は電荷を有してもよい。あるいは、保存的置換は、既存の芳香族又は脂肪族アミノ酸の代わりに芳香族又は脂肪族である別のアミノ酸を導入してもよい。保存的アミノ酸変化は当技術分野で周知であり、以下の表2に定義される20個の主アミノ酸の特性に従って選択してもよい。アミノ酸が同様の極性を有する場合、これは表3のアミノ酸側鎖のハイドロパシースケールを参照して決定することもできる。
【表2】
【表3】
【0033】
複合体
本発明は、MHC分子に結合した本発明のペプチドを含む複合体を提供する。したがって、複合体は、MHC分子に結合した配列番号1~34のいずれか1つ又はその変異体を含む又はそれからなるペプチドを含む。
【0034】
ペプチド:MHC結合は、当技術分野で周知である。好ましくは、複合体に含まれるペプチドとMHC分子との間の結合は、非共有結合性である。結合は、例えば、静電相互作用、水素結合、ファンデルワールス力及び/又は疎水性相互作用によって媒介されてもよい。
【0035】
MHC分子は、MHCクラス1分子又はMHCクラスII分子であってもよい。好ましくは、MHC分子はMHCクラスI分子である。MHCクラスI分子は、任意のHLAスーパータイプのものであってもよい。例えば、MHCクラスI分子は、スーパータイプA2、A203/A2、A23、A24、A2403/A2、A2403/A24、A39、A3、A11、A30、A31、A32、A68、A69、B7、B8、B35、B37、B44、B48、B53、B60、B61、B62、B63、B72、B75、Cw1又はCw6のものであってもよい。
【0036】
複合体は、本発明の2つ以上のペプチド及び2つ以上のMHC分子を含んでもよい。例えば、複合体は、3つ以上、例えば4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、10個以上、11個以上、12個以上、13個以上、14個以上、15個以上、16個以上、17個以上、18個以上、19個以上又は20個以上の本発明のペプチドを含んでもよい。複合体は、3つ以上、例えば4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、10個以上、11個以上、12個以上、13個以上、14個以上、15個以上、16個以上、17個以上、18個以上、19個以上又は20個以上のMHC分子を含んでもよい。複合体は、例えば、3つ以上、例えば4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、10個以上、11個以上、12個以上、13個以上、14個以上、15個以上、16個以上、17個以上、18個以上、19個以上又は20個以上の本発明のペプチドと、3つ以上、例えば4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、10個以上、11個以上、12個以上、13個以上、14個以上、15個以上、16個以上、17個以上、18個以上、19個以上又は20個以上のMHC分子とをそれぞれ含んでもよい。複合体は、MHC分子と同じ数の本発明のペプチドを含んでもよい。複合体は、MHC分子の数とは異なる数の本発明のペプチドを含んでもよい。複合体は、例えば、4つのMHC分子を含んでもよい。複合体は、MHC四量体を含んでもよいか、又はMHC四量体からなってもよい。複合体は、例えば、12個のMHC分子を含んでもよい。複合体は、MHC十二量体を含んでもよいか、又はMHC十二量体からなってもよい。
【0037】
複合体が本発明の2つ以上のペプチドを含む場合、2つ以上のペプチドのそれぞれは同じであってもよい。あるいは、2つ以上のペプチドのそれぞれは異なっていてもよい。複合体が本発明の3つ以上のペプチドを含む場合、3つ以上のペプチドのそれぞれは同じであってもよい。複合体が本発明の3つ以上のペプチドを含む場合、3つ以上のペプチドのそれぞれは異なっていてもよい。複合体が本発明の3つ以上のペプチドを含む場合、3つ以上のペプチドの一部は同じであってもよく、3つ以上のペプチドの一部は異なっていてもよい。複合体は、例えば、配列番号21、1、19、28、2、27、16及び14のうちの2つ以上を含んでもよい。複合体は、例えば、配列番号21、1、19、28、2、27、16及び14のすべてを含んでもよい。
【0038】
複合体が2つ以上のMHC分子を含む場合、2つ以上のMHC分子のそれぞれは同じであってもよい。あるいは、2つ以上のMHC分子のそれぞれは異なっていてもよい。複合体が本発明の3つ以上のペプチドを含む場合、3つ以上のMHC分子のそれぞれは同じであってもよい。複合体が本発明の3つ以上のペプチドを含む場合、3つ以上のMHC分子のそれぞれは異なっていてもよい。複合体が3つ以上のMHC分子を含む場合、3つ以上のMHC分子の一部は同じであってもよく、3つ以上のMHC分子の一部は異なっていてもよい。
【0039】
複合体が本発明の2つ以上のペプチド及び2つ以上のMHC分子を含む場合、各ペプチドは、2つ以上のMHC分子のうちの1つに結合していてもよい。すなわち、複合体に含まれる各ペプチドは、複合体に含まれるMHC分子に結合していてもよい。好ましくは、複合体に含まれる各ペプチドは、複合体に含まれる異なるMHC分子に結合している。すなわち、複合体に含まれる各MHC分子は、複合体に含まれる1つ以下のペプチドに結合していることが好ましい。しかしながら、複合体は、MHC分子に結合していない本発明の1つ以上のペプチドを含んでもよい。複合体は、本発明のペプチドに結合していない1つ以上のMHC分子を含んでもよい。
【0040】
複合体に含まれる1つ又は複数のMHC分子は、互いに連結されていてもよい。例えば、複合体中の1つ以上のMHC分子のそれぞれは、骨格分子又はナノ粒子に結合していてもよい。複合体に含まれる1つ又は複数のMHC分子は、デキストラン骨格に結合していてもよい。すなわち、複合体は、MHCデキストラマーを含んでもよいか、又はMHCデキストラマーからなってもよい。1つ又は複数のMHC分子をデキストラン骨格に結合させる機構は、当技術分野で公知である。任意の数のMHC分子がデキストラン骨格に結合していてもよい。例えば、1つ以上、2つ以上、3つ以上、例えば4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、10個以上、11個以上、12個以上、13個以上、14個以上、15個以上、16個以上、17個以上、18個以上、19個以上又は20個以上の本発明のペプチド、及び3つ以上、例えば4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、10個以上、11個以上、12個以上、13個以上、14個以上、15個以上、16個以上、17個以上、18個以上、19個以上又は20個以上のMHC分子がデキストラン骨格に結合していてもよい。
【0041】
複合体は、フルオロフォアを含んでもよい。フルオロフォアは当技術分野で周知であり、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)、PE(フィコエリトリン)及びAPC(アロフィコシアニン)が挙げられる。複合体は、任意の数のフルオロフォアを含んでもよい。例えば、複合体は、2つ以上、3つ以上、例えば4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、10個以上、11個以上、12個以上、13個以上、14個以上、15個以上、16個以上、17個以上、18個以上、19個以上又は20個以上の本発明のペプチドと、3つ以上、例えば4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、10個以上、11個以上、12個以上、13個以上、14個以上、15個以上、16個以上、17個以上、18個以上、19個以上又は20個以上のフルオロフォアとを含んでもよい。複合体が複数のフルオロフォアを含む場合、複合体に含まれるフルオロフォアは同じであっても異なっていてもよい。複合体がデキストラン骨格などの骨格を含む場合、フルオロフォアは好ましくはデキストラン骨格に結合している。フルオロフォアをデキストラン骨格に結合させる機構は、当技術分野で公知である。
【0042】
使用
本発明のペプチド又は複合体は、以下に記載される使用など、いくつかの方法で利用されてもよい。
【0043】
現在又は以前のコロナウイルス感染症の存在又は非存在の判定
本発明は、個体における現在又は以前のコロナウイルス感染症の存在又は非存在を判定する方法における本発明のペプチド又は複合体の使用を提供する。
【0044】
この方法は、ペプチド又は複合体を個体から得られた試料と接触させること、及びペプチド又は複合体と試料に含まれる分子との間の結合の存在又は非存在を判定することを含んでもよい。
【0045】
試料は、例えば、血液試料、血清試料、血漿試料、尿試料、唾液試料、又は個体に存在する粘膜表面を拭き取って得られた試料であってもよい。好ましくは、試料は、血液試料、血清試料又は血漿試料である。
【0046】
分子は、免疫機能を有する分子であってもよい。例えば、分子は、自然免疫系又は適応免疫系に含まれてもよい。好ましくは、分子は適応免疫において役割を有する。分子は、例えば、抗体又は抗体フラグメントであってもよい。抗体又は抗体フラグメントは、B細胞の表面上にあってもよく、又はB細胞に含まれてもよい。抗体又は抗体フラグメントは、試料中に遊離していてもよい。分子は、例えば、T細胞受容体であってもよい。T細胞受容体は、CD4+T細胞受容体であってもよい。T細胞受容体は、CD8+T細胞受容体であってもよい。T細胞受容体は、T細胞の表面上にあってもよく、又はT細胞に含まれてもよい。T細胞は、CD4+T細胞であってもよい。T細胞は、CD8+T細胞であってもよい。
【0047】
好ましくは、ペプチド又は複合体と分子との間の結合は、非共有結合性である。結合は、例えば、静電相互作用、水素結合、ファンデルワールス力及び/又は疎水性相互作用によって媒介されてもよい。ペプチド又はペプチド含有複合体と分子との間の結合を検出する方法は、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、酵素結合免疫吸収スポット(ELISpot)及びフローサイトメトリーを含む点で当技術分野で周知である。
【0048】
結合の存在は、現在又は以前のコロナウイルス感染症の存在を示す場合がある。結合の非存在は、現在又は以前のコロナウイルス感染症の非存在を示す場合がある。
【0049】
現在のコロナウイルス感染症では、コロナウイルス粒子又はその成分(例えば、ペプチド、タンパク質)が個体内に存在する場合がある。現在のコロナウイルス感染症では、コロナウイルス粒子又はその成分(例えば、ペプチド、タンパク質)に特異的な抗体、B細胞、CD8+T細胞及び/又はCD4+T細胞が個体内に存在する場合がある。好ましくは、現在のコロナウイルス感染症では、(i)コロナウイルス粒子又はその成分(例えば、ペプチド、タンパク質)並びに(ii)コロナウイルス粒子又はその成分(例えば、タンパク質)に特異的な抗体、B細胞、CD8+T細胞及び/又はCD4+T細胞が個体内に存在する。
【0050】
以前のコロナウイルス感染症では、コロナウイルス粒子又はその成分(例えば、ペプチド、タンパク質)が個体に存在しない場合がある。以前のコロナウイルス感染症では、コロナウイルス粒子又はその成分(例えば、ペプチド、タンパク質)に特異的な抗体、B細胞、CD8+T細胞及び/又はCD4+T細胞が個体内に存在する場合がある。好ましくは、以前のコロナウイルス感染症では、コロナウイルス粒子又はその成分(例えば、ペプチド、タンパク質)が個体に存在せず、コロナウイルス粒子又はその成分(例えば、ペプチド、タンパク質)に特異的な抗体、B細胞、CD8+T細胞及び/又はCD4+T細胞が個体内に存在する。
【0051】
コロナウイルスは、例えば、ヒトの流行又はパンデミックに関与するコロナウイルスであってもよい。コロナウイルスは、例えば、人獣共通感染症由来のコロナウイルスであってもよい。コロナウイルスは、例えば、ベータコロナウイルス(Betacoronavirus)属のメンバーであってもよい。コロナウイルスは、例えば、サルベコロナウイルス(Sarbecoronavirus)亜属のメンバーであってもよい。コロナウイルスは、例えば、SARSコロナウイルス又はSARSコロナウイルス2であってもよい。
【0052】
コロナウイルス特異的T細胞の同定
本発明は、コロナウイルス特異的T細胞を同定する方法における本発明のペプチド又は複合体の使用を提供する。この方法は、ペプチド又は複合体を個体から得られた試料と接触させること、及びペプチド又は複合体と試料に含まれるT細胞受容体との間の結合の存在又は非存在を判定することを含んでもよい。
【0053】
試料は、例えば、血液試料、血清試料、血漿試料、尿試料、唾液試料、又は個体に存在する粘膜表面を拭き取って得られた試料であってもよい。好ましくは、試料は血液試料である。
【0054】
T細胞受容体は、CD4+T細胞受容体であってもよい。T細胞受容体は、CD8+T細胞受容体であってもよい。好ましくは、T細胞受容体はCD8+T細胞受容体である。
【0055】
好ましくは、T細胞受容体は、T細胞の表面上にあってもよく、又はT細胞に含まれてもよい。T細胞は、CD4+T細胞であってもよい。T細胞は、CD8+T細胞であってもよい。好ましくは、T細胞はCD8+T細胞である。
【0056】
好ましくは、ペプチド又は複合体とT細胞受容体との間の結合は、非共有結合性である。結合は、例えば、静電相互作用、水素結合、ファンデルワールス力及び/又は疎水性相互作用によって媒介されてもよい。ペプチド又はペプチド含有複合体とT細胞受容体との間の結合を検出する方法は、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、酵素結合免疫吸収スポット(ELISpot)及びフローサイトメトリーを含む点で当技術分野で周知である。
【0057】
結合の存在は、1つ以上のコロナウイルス特異的T細胞の存在を示す場合がある。結合の非存在は、コロナウイルス特異的T細胞の非存在を示す場合がある。
【0058】
個体は、コロナウイルスに現在感染していてもよい。現在のコロナウイルス感染症では、コロナウイルス粒子又はその成分(例えば、ペプチド、タンパク質)が個体内に存在する場合がある。現在のコロナウイルス感染症では、コロナウイルス粒子又はその成分(例えば、ペプチド、タンパク質)に特異的な抗体、B細胞、CD8+T細胞及び/又はCD4+T細胞が個体内に存在する場合がある。好ましくは、現在のコロナウイルス感染症では、(i)コロナウイルス粒子又はその成分(例えば、ペプチド、タンパク質)並びに(ii)コロナウイルス粒子又はその成分(例えば、ペプチド、タンパク質)に特異的な抗体、B細胞、CD8+T細胞及び/又はCD4+T細胞が個体内に存在する。
【0059】
個体は、コロナウイルスに以前に感染したことがあってもよいが、コロナウイルスに現在感染していなくてもよい。以前のコロナウイルス感染症では、コロナウイルス粒子又はその成分(例えば、ペプチド、タンパク質)が個体に存在しない場合がある。以前のコロナウイルス感染症では、コロナウイルス粒子又はその成分(例えば、ペプチド、タンパク質)に特異的な抗体、B細胞、CD8+T細胞及び/又はCD4+T細胞が個体内に存在する場合がある。好ましくは、以前のコロナウイルス感染症では、コロナウイルス粒子又はその成分(例えば、ペプチド、タンパク質)が個体に存在せず、コロナウイルス粒子又はその成分(例えば、ペプチド、タンパク質)に特異的な抗体、B細胞、CD8+T細胞及び/又はCD4+T細胞が個体内に存在する。したがって、以前のコロナウイルス感染症では、コロナウイルス粒子又はその成分(例えば、ペプチド、タンパク質)が個体に存在しない場合があるが、コロナウイルス粒子又はその成分(例えば、ペプチド、タンパク質)に特異的な抗体、B細胞、CD8+T細胞及び/又はCD4+T細胞が個体内に存在する場合がある。
【0060】
コロナウイルスは、例えば、ヒトの流行又はパンデミックに関与するコロナウイルスであってもよい。コロナウイルスは、例えば、人獣共通感染症由来のコロナウイルスであってもよい。コロナウイルスは、例えば、ベータコロナウイルス(Betacoronavirus)属のメンバーであってもよい。コロナウイルスは、例えば、サルベコロナウイルス(Sarbecoronavirus)亜属のメンバーであってもよい。コロナウイルスは、例えば、SARSコロナウイルス又はSARSコロナウイルス2であってもよい。
【0061】
コロナウイルス特異的T細胞受容体の同定
本発明は、コロナウイルス特異的T細胞受容体を同定する方法における本発明のペプチド又は複合体の使用を提供する。この方法は、ペプチド又は複合体をT細胞受容体と接触させること、及びペプチド又は複合体とT細胞受容体との間の結合の存在又は非存在を判定することを含んでもよい。
【0062】
T細胞受容体は、CD4+T細胞受容体であってもよい。T細胞受容体は、CD8+T細胞受容体であってもよい。好ましくは、T細胞受容体はCD8+T細胞受容体である。
【0063】
T細胞受容体は、T細胞の表面上にあってもよく、又はT細胞に含まれてもよい。T細胞は、CD4+T細胞であってもよい。T細胞は、CD8+T細胞であってもよい。好ましくは、TはCD8+T細胞である。
【0064】
好ましくは、ペプチド又は複合体とT細胞受容体との間の結合は、非共有結合性である。結合は、例えば、静電相互作用、水素結合、ファンデルワールス力及び/又は疎水性相互作用によって媒介されてもよい。ペプチド又はペプチド含有複合体とT細胞受容体との間の結合を検出する方法は、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、酵素結合免疫吸収スポット(ELISpot)及びフローサイトメトリーを含む点で当技術分野で周知である。
【0065】
結合の存在は、ペプチド又は複合体と接触したT細胞受容体がコロナウイルス特異的T細胞受容体であることを示す場合がある。結合の非存在は、ペプチド又は複合体と接触したT細胞受容体がコロナウイルス特異的T細胞受容体ではないことを示す場合がある。
【0066】
コロナウイルスは、例えば、ヒトの流行又はパンデミックに関与するコロナウイルスであってもよい。コロナウイルスは、例えば、人獣共通感染症由来のコロナウイルスであってもよい。コロナウイルスは、例えば、ベータコロナウイルス(Betacoronavirus)属のメンバーであってもよい。コロナウイルスは、例えば、サルベコロナウイルス(Sarbecoronavirus)亜属のメンバーであってもよい。コロナウイルスは、例えば、SARSコロナウイルス又はSARSコロナウイルス2であってもよい。
【0067】
T細胞
本発明は、配列番号1~34のいずれか1つ又はその変異体を含むペプチドに結合することができるT細胞受容体を含むT細胞を提供する。ペプチドとT細胞受容体との間の結合を検出する方法は、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、酵素結合免疫吸収スポット(ELISpot)及びフローサイトメトリーを含む点で当技術分野で周知である。T細胞受容体は、上記のコロナウイルス特異的T細胞受容体を同定する方法を用いて同定されていてもよい。
【0068】
T細胞は、単離されたT細胞であってもよい。
【0069】
T細胞は、CD4+T細胞であってもよい。T細胞受容体は、CD4+T細胞受容体であってもよい。
【0070】
T細胞は、CD8+T細胞であってもよい。T細胞受容体は、CD8+T細胞受容体であってもよい。好ましくは、T細胞はCD8+T細胞である。好ましくは、T細胞受容体はCD8+T細胞受容体である。
【0071】
T細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)発現細胞であってもよい。T細胞受容体はCARであってもよい。
【0072】
ワクチン組成物
本発明は、本発明のペプチド、又は配列番号1~34のいずれか1つ若しくはその変異体を含むペプチドに結合することができるT細胞受容体に結合することができるペプチドを含むワクチン組成物を提供する。変異体は上に定義されている。ワクチン組成物は、以下の考察から明らかになるいくつかの利点を有する。しかし、重要な利点をここで要約する。
【0073】
第1に、ワクチン組成物は、コロナウイルスに対する免疫応答を刺激することができる。好ましくは、免疫応答は細胞性免疫応答(例えば、CD8+T細胞応答)である。CD8+細胞傷害性Tリンパ球(CTL)は、感染細胞に対するそれらの細胞傷害活性を介してウイルスクリアランスを媒介する。したがって、細胞性免疫の刺激は、コロナウイルス感染症に対する有益な防御を提供する可能性がある。
【0074】
第2に、本発明者らによって同定されたペプチドは、異なるコロナウイルス(例えば、SARSコロナウイルス及びSARSコロナウイルス2)間で保存されており、それらのウイルスのうちの1つ以上に感染した細胞上のMHC分子によって提示される可能性がある。ワクチン組成物中にそのような保存されたペプチドを含めることにより、(i)関連するタイプのウイルス、(ii)複数の種のコロナウイルス及び/又は(iii)特定の種の複数の系統又は血清型に対する防御能力、すなわち交差防御が付与される可能性がある。ウイルス間の100%の相同性は、交差防御が付与されるために必要ではない。むしろ、特定の残基が正しい位置に保持されている場合、交差防御は、例えば、異なるウイルスに感染した細胞で発現されるCD8+T細胞エピトープと約50%以上(例えば、60%、70%、75%、80%、90%、95%、98%又は99%)相同な配列での免疫化後に生じる可能性がある。したがって、配列番号1~34のいずれか1つ若しくはその変異体を含む1つ以上のペプチド、又は配列番号1~34のいずれか1つ若しくはその変異体を含むペプチドに結合することができるT細胞受容体に結合することができるペプチド、又は対応するポリヌクレオチドを含むワクチン組成物は、表1に列挙されたものを超える様々な既存のコロナウイルスに対する交差防御を提供することができる可能性がある。ワクチン組成物中に1つ以上の保存されたペプチドを含めることはまた、コロナウイルスゲノムの進化に関連する新興コロナウイルス株に対する防御能力を付与する可能性がある。このようにして、単一のコロナウイルスワクチン組成物を使用して、様々な異なるコロナウイルスに対する防御を付与することができる。これは、コロナウイルス感染症の拡散を制御する費用効果の高い手段を提供する。
【0075】
第3に、本発明者らによって同定された異なるペプチドは、異なるHLAスーパータイプに結合することができる。それぞれが異なるHLAスーパータイプ(又は対応するポリヌクレオチド)に結合することができる複数のペプチドを含めることにより、異なるHLAタイプを有する個体において有効なワクチン組成物が得られる。このようにして、単一のコロナウイルスワクチン組成物を使用して、ヒト集団の大部分に防御を付与することができる。これもまた、コロナウイルス感染症の拡散を制御する費用効果の高い手段を提供する。
【0076】
第4に、本発明のワクチン組成物に含まれるコロナウイルスペプチドは、ナノ粒子、例えば金ナノ粒子に結合する可能性がある。以下により詳細に説明するように、ナノ粒子への結合は、ワクチン組成物中にアジュバントを含める必要性を低減又は排除する。ナノ粒子への結合はまた、ワクチン組成物中にウイルスを含める必要性を低減又は排除する。したがって、本発明のワクチン組成物は、個体への投与時に有害な臨床効果を引き起こす可能性が低い。
【0077】
ワクチン組成物は、それぞれが配列番号1~34又はその変異体から選択される異なる配列を含む、請求項1に記載の2つ以上のペプチドを含んでもよい。ペプチドのそれぞれは、上記の「ペプチド」の項で述べた特性のいずれかを有してもよい。例えば、各ペプチドは、配列番号1~34又はその変異体、並びに場合により、1つ以上のCD8+T細胞エピトープ、1つ以上のCD4+T細胞エピトープ及び/又は1つ以上のB細胞エピトープから選択される複数の配列を含んでもよい。一態様では、ワクチン組成物は、それぞれが配列番号1~34又はその変異体から選択される異なる配列を含む3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、10個以上、11個以上、12個以上、13個以上、14個以上、15個以上、16個以上、17個以上、18個以上、19個以上、20個以上、21個以上、22個以上、23個以上、24個以上、25個以上、26個以上、27個以上、28個以上、29個以上、30個以上、31個以上、32個以上又は33個以上のペプチドを含んでもよい。ワクチン組成物は、ペプチドの任意の組合せを含んでもよい。ワクチン組成物は、例えば、それぞれが配列番号1~34又はその変異体から選択される異なる配列を含む34個のペプチドを含んでもよい。
【0078】
ワクチン組成物は、それぞれが配列番号1~34のいずれか1つ又はその変異体を含むペプチドに結合することができる異なるT細胞受容体に結合することができる2つ以上のペプチドを含んでもよく、各異なるT細胞受容体は、配列番号1~34又はその変異体から選択される異なる配列に結合することができる。ペプチドのそれぞれは、上記の「ペプチド」の項で述べた特性のいずれかを有してもよい。例えば、ワクチン組成物に含まれる各ペプチドは、それぞれが配列番号1~34のいずれか1つ又はその変異体を含むペプチドに結合することができる複数の異なるT細胞受容体に結合することができる可能性がある。ワクチンは、1つ以上のCD8+T細胞エピトープ、1つ以上のCD4+T細胞エピトープ及び/又は1つ以上のB細胞エピトープを含んでもよい。一態様では、ワクチン組成物は、それぞれが配列番号1~34のいずれか1つ又はその変異体を含むペプチドに結合することができる異なるT細胞受容体に結合することができる3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、10個以上、11個以上、12個以上、13個以上、14個以上、15個以上、16個以上、17個以上、18個以上、19個以上、20個以上、21個以上、22個以上、23個以上、24個以上、25個以上、26個以上、27個以上、28個以上、29個以上、30個以上、31個以上、32個以上又は33個以上のペプチドを含んでもよい。ワクチン組成物は、ペプチドの任意の組合せを含んでもよい。ワクチン組成物は、例えば、それぞれが配列番号1~34のいずれか1つ又はその変異体を含むペプチドに結合することができる異なるT細胞受容体に結合することができる34個のペプチドを含んでもよい。
【0079】
交差防御
本発明者らによって同定された配列番号1~34は、複数のコロナウイルスによって発現される。したがって、ワクチン組成物は、2つ以上のコロナウイルス、例えば、SARSコロナウイルス及びSARSコロナウイルス2に対する防御免疫応答を誘発する可能性がある。換言すれば、本発明のワクチン組成物は、いくつかの異なるコロナウイルスに対して交差防御性である免疫応答を誘発する可能性がある。異なるコロナウイルスのそれぞれは、例えば、ヒトの流行又はパンデミックに関与するコロナウイルスであってもよい。コロナウイルスは、例えば、人獣共通感染症由来のコロナウイルスであってもよい。コロナウイルスは、例えば、ベータコロナウイルス(Betacoronavirus)属のメンバーであってもよい。コロナウイルスは、例えば、サルベコロナウイルス(Sarbecoronavirus)亜属のメンバーであってもよい。
【0080】
別のウイルスからの配列と100%相同なエピトープを含む組成物によるワクチン接種によって生成された免疫応答は、そのウイルスによるその後の感染から防御することができる。別のウイルスによってコードされる配列と約50%以上(例えば、60%、70%、75%、80%、90%、95%、98%又は99%)相同なエピトープを含む組成物でのワクチン接種によって生成された免疫応答は、そのウイルスによるその後の感染から防御する可能性がある。場合によっては、防御効果は、エピトープと他のウイルスによってコードされる配列との間の特定の残基の保存に関連する。したがって、本発明のワクチン組成物による免疫化は、他のコロナウイルスなどの表1に記載されていない様々なウイルスに対する防御免疫応答を誘導する可能性がある。
【0081】
したがって、本発明のワクチン組成物は、組み込まれた異種間及び/又は異属間有効性を有する可能性がある、すなわち交差防御ワクチン組成物である可能性がある。したがって、本発明の単一のコロナウイルスワクチン組成物は、様々な異なるコロナウイルスに対する防御を付与するために使用される可能性がある。これは、コロナウイルス感染症の拡散を制御する費用効果の高い手段を提供する。
【0082】
ワクチン組成物中に保存されたペプチドを含めることは、コロナウイルスゲノムの進化に関連する新興コロナウイルス株に対する防御能力を付与する可能性がある。これは、コロナウイルス感染症の長期制御を補助する可能性がある。
【0083】
HLAスーパータイプとの相互作用
ワクチン組成物は、それぞれが異なるHLAスーパータイプと相互作用する少なくとも2つのペプチドを含んでもよい。ワクチン組成物に複数のそのようなペプチドを含めることにより、ワクチン組成物は、ワクチン組成物が投与される個体のより大きな割合で免疫応答(CD8+T細胞応答など)を誘発することが可能になる。これは、ワクチン組成物が、ワクチン組成物に含まれるペプチドの1つと相互作用するHLAスーパータイプのすべての個体において免疫応答を誘発することができなければならないからである。各ペプチドは、A2、A203/A2、A23、A24、A2403/A2、A2403/A24、A39、A3、A11、A30、A31、A32、A68、A69、B7、B8、B35、B37、B44、B48、B53、B60、B61、B62、B63、B72、B75、Cw1若しくはCw6、又は当技術分野で公知の任意の他のHLAスーパータイプと相互作用する可能性がある。ペプチドの任意の組合せが可能である。
【0084】
ワクチン組成物は、少なくとも2つの異なるHLAスーパータイプと相互作用する少なくとも1つのペプチドを含んでもよい。ここでも、これにより、ワクチン組成物は、ワクチン組成物が投与される個体のより大きな割合で免疫応答(CD8+T細胞応答など)を誘発することが可能になる。ワクチン組成物は、それぞれが少なくとも2つの異なるHLAサブタイプと相互作用する少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個又は少なくとも30個のペプチドを含んでもよい。各ペプチドは、例えば、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個又は少なくとも15個の異なるHLAスーパータイプと相互作用する可能性がある。各ペプチドは、任意の組合せで、A2、A2、A203/A2、A23、A24、A2403/A2、A2403/A24、A39、A3、A11、A30、A31、A32、A68、A69、B7、B8、B35、B37、B44、B48、B53、B60、B61、B62、B63、B72、B75、Cw1及びCw6、又は当技術分野で公知の任意の他のHLAスーパータイプの2つ以上と相互作用する可能性がある。
【0085】
好ましくは、ワクチン組成物は、A3、A11及びA31と相互作用するペプチドを含む。この場合、ワクチン組成物は、例えば、配列番号1及び/又は11を含むペプチドを含んでもよい。ワクチン組成物は、例えば、配列番号1を含むペプチド及び配列番号11を含むペプチドを含んでもよい。
【0086】
好ましくは、ワクチン組成物は、B7及びB35と相互作用するペプチドを含む。この場合、ワクチン組成物は、例えば、配列番号2を含むペプチドを含んでもよい。
【0087】
好ましくは、ワクチン組成物は、B72、A2及びA203/A2と相互作用するペプチドを含む。この場合、ワクチン組成物は、例えば、配列番号3を含むペプチドを含んでもよい。
【0088】
好ましくは、ワクチン組成物は、B72、B62及びB75と相互作用するペプチドを含む。この場合、ワクチン組成物は、例えば、配列番号4及び/又は15を含むペプチドを含んでもよい。ワクチン組成物は、例えば、配列番号4を含むペプチド及び配列番号15を含むペプチドを含んでもよい。
【0089】
好ましくは、ワクチン組成物は、A68、A11及びA31と相互作用するペプチドを含む。この場合、ワクチン組成物は、例えば、配列番号5及び/又は11を含むペプチドを含んでもよい。ワクチン組成物は、例えば、配列番号5を含むペプチド及び配列番号11を含むペプチドを含んでもよい。
【0090】
好ましくは、ワクチン組成物は、A203/A2及びA2と相互作用するペプチドを含む。この場合、ワクチン組成物は、例えば、配列番号3、8、13、14、21、24及び/又は26を含むペプチドを含んでもよい。ワクチン組成物は、例えば、配列番号3を含むペプチド、配列番号8を含むペプチド、配列番号13を含むペプチド、配列番号14を含むペプチド、配列番号21を含むペプチド、配列番号24を含むペプチド及び配列番号26を含むペプチドを含んでもよい。
【0091】
好ましくは、ワクチン組成物は、A2403/A2及びA23と相互作用するペプチドを含む。この場合、ワクチン組成物は、例えば、配列番号10を含むペプチドを含んでもよい。
【0092】
好ましくは、ワクチン組成物は、A11、A30、A3、A68及びA31と相互作用するペプチドを含む。この場合、ワクチン組成物は、例えば、配列番号11を含むペプチドを含んでもよい。
【0093】
好ましくは、ワクチン組成物は、A11、A30、A3及びA68と相互作用するペプチドを含む。この場合、ワクチン組成物は、例えば、配列番号12を含むペプチドを含んでもよい。
【0094】
好ましくは、ワクチン組成物は、B60、B48及びB44と相互作用するペプチドを含む。この場合、ワクチン組成物は、例えば、配列番号17を含むペプチドを含んでもよい。
【0095】
好ましくは、ワクチン組成物は、A68、B63及びA203/A2と相互作用するペプチドを含む。この場合、ワクチン組成物は、例えば、配列番号22を含むペプチドを含んでもよい。
【0096】
好ましくは、ワクチン組成物は、A2、A203/A2、A69及びA32と相互作用するペプチドを含む。この場合、ワクチン組成物は、例えば、配列番号24又は配列番号31を含むペプチドを含んでもよい。
【0097】
好ましくは、ワクチン組成物は、A2、A203/A2及びA68と相互作用するペプチドを含む。この場合、ワクチン組成物は、例えば、配列番号26を含むペプチドを含んでもよい。
【0098】
好ましくは、ワクチン組成物は、B35、B53、A29と相互作用するペプチドを含む。この場合、ワクチン組成物は、例えば、配列番号27を含むペプチドを含んでもよい。
【0099】
好ましくは、ワクチン組成物は、B37、B60、B61、B44及びB48と相互作用するペプチドを含む。この場合、ワクチン組成物は、例えば、配列番号29を含むペプチドを含んでもよい。
【0100】
好ましくは、ワクチン組成物は、Cw6及びCw1と相互作用するペプチドを含む。この場合、ワクチン組成物は、例えば、配列番号30を含むペプチドを含んでもよい。
【0101】
好ましくは、ワクチン組成物は、A30、B7、B8、B62及びB72と相互作用するペプチドを含む。この場合、ワクチン組成物は、例えば、配列番号34を含むペプチドを含んでもよい。
【0102】
ナノ粒子
ペプチド又は1つ以上のペプチドは、例えば本発明のワクチン組成物中のナノ粒子に結合していてもよい。ワクチン組成物にさらに含まれる任意の他のペプチドもまた、ナノ粒子に結合していてもよい。ナノ粒子、例えば金ナノ粒子への結合は有益である。
【0103】
上記のように、ナノ粒子(金ナノ粒子など)へのペプチドの結合は、ワクチン組成物中にウイルス又はアジュバントを含める必要性を低減又は排除する。ナノ粒子は、ペプチドに対する免疫応答を効果的に誘導するのに役立つ免疫「危険シグナル」を含有する可能性がある。ナノ粒子は、堅牢な免疫応答に必要な樹状細胞(DC)の活性化及び成熟を誘導する可能性がある。ナノ粒子は、抗原提示細胞などの細胞によるナノ粒子、したがってペプチドの取込みを改善する非自己成分を含有する可能性がある。したがって、ナノ粒子へのペプチドの結合は、抗原提示細胞がウイルス特異的T細胞及び/又はB細胞を刺激する能力を高める可能性がある。ナノ粒子への結合はまた、皮下、皮内、経皮及び経口/口腔経路を介したワクチン組成物の送達を促進し、投与の柔軟性を提供する。
【0104】
ナノ粒子は、リガンドを固定するための基質として使用することができる1~100ナノメートル(nm)のサイズの粒子である。本発明のワクチン組成物において、ナノ粒子は、1~100、20~90、30~80、40~70又は50~60nmの平均直径又は平均コア直径を有してもよい。好ましくは、ナノ粒子は、5~40nm、例えば10~30nm又は20~32nmの平均直径又は平均コア直径を有する。好ましくは、ナノ粒子は、5nmの平均直径又は平均コア直径を有する。5~40nmの平均直径又は平均コア直径は、ナノ粒子のサイトゾルへの取込みを促進する。平均直径又は平均コア直径は、透過型電子顕微鏡などの当技術分野で周知の技術を用いて測定することができる。
【0105】
本発明のペプチドなどの抗原の送達に好適なナノ粒子は、当技術分野で公知である。そのようなナノ粒子の製造方法も公知である。
【0106】
ナノ粒子は、例えば、ポリマーナノ粒子、無機ナノ粒子、リポソーム、免疫刺激複合体(ISCOM)、ウイルス様粒子(VLP)又は自己集合性タンパク質であってもよい。ナノ粒子は、リン酸カルシウムナノ粒子、ケイ素ナノ粒子又は金ナノ粒子であることが好ましい。
【0107】
ナノ粒子は、ポリマーナノ粒子であってもよい。ポリマーナノ粒子は、ポリ(d,l-ラクチド-コ-グリコリド)(PLG)、ポリ(d,l-乳酸-コグリコール酸)(PLGA)、ポリ(g-グルタミン酸)(g-PGA)mポリ(エチレングリコール)(PEG)又はポリスチレンなどの1つ以上の合成ポリマーを含んでもよい。ポリマーナノ粒子は、多糖、例えばプルラン、アルギナート、イヌリン及びキトサンなどの1つ以上の天然ポリマーを含んでもよい。ポリマーナノ粒子の使用は、ナノ粒子に含まれてもよいポリマーの特性のために有利である可能性がある。例えば、上記の天然及び合成ポリマーは、良好な生体適合性及び生分解性、非毒性の性質並びに/又は所望の形状及びサイズに操作される能力を有する可能性がある。ポリマーナノ粒子は、ヒドロゲルナノ粒子を形成する可能性がある。ヒドロゲルナノ粒子は、ナノサイズの親水性三次元ポリマーネットワークの一種である。ヒドロゲルナノ粒子は、柔軟なメッシュサイズ、多価コンジュゲーションのための大きな表面積、高い含水量、及び抗原に対する高い負荷容量を含む好ましい特性を有する。ポリ(L-乳酸)(PLA)、PLGA、PEG及び多糖類などのポリマーは、ヒドロゲルナノ粒子を形成するのに特に好適である。
【0108】
ナノ粒子は、無機ナノ粒子であってもよい。典型的には、無機ナノ粒子は剛性構造を有し、非生分解性である。しかしながら、無機ナノ粒子は生分解性であってもよい。無機ナノ粒子は、抗原が封入されてもよいシェルを含んでもよい。無機ナノ粒子は、抗原が共有結合していてもよいコアを含んでもよい。コアは、金属を含んでもよい。例えば、コアは、金(Au)、銀(Ag)又は銅(Cu)原子を含んでもよい。コアは、2種類以上の原子から形成されていてもよい。例えば、コアは、Au/Ag、Au/Cu、Au/Ag/Cu、Au/Pt、Au/Pd又はAu/Ag/Cu/Pdの合金などの合金を含んでもよい。コアは、リン酸カルシウム(CaPO)を含んでもよい。コアは、半導体材料、例えばセレン化カドミウムを含んでもよい。
【0109】
他の例示的な無機ナノ粒子としては、カーボンナノ粒子及びシリカ系ナノ粒子が挙げられる。カーボンナノ粒子は良好な生体適合性を有し、ナノチューブ及びメソポーラス球に合成することができる。シリカ系ナノ粒子(SiNP)は生体適合性であり、それらの治療用途に適合するように調整可能な構造パラメータを用いて調製することができる。
【0110】
ナノ粒子は、元素状ケイ素ナノ粒子などのケイ素ナノ粒子であってもよい。ナノ粒子は、メソポーラスであってもよく、又はハニカム細孔構造を有していてもよい。好ましくは、ナノ粒子は、ハニカム細孔構造を有する元素状ケイ素粒子である。そのようなナノ粒子は当技術分野で公知であり、ほぼ任意の負荷、投与経路、標的又は放出プロファイルに調整することができる調整可能で制御された薬物負荷、ターゲティング及び放出を提供する。例えば、そのようなナノ粒子は、それらの負荷のバイオアベイラビリティを増加させ、かつ/又は経口投与された活性物質の腸透過性及び吸収を改善する可能性がある。ナノ粒子は、それらの多孔質構造及び大きな表面積のために、非常に高い負荷容量を有する可能性がある。ナノ粒子は、それらの物理的特性に応じて、数日間、数週間又は数ヶ月にわたってそれらの負荷を放出する可能性がある。ケイ素は人体の天然に存在する元素であるため、ナノ粒子は免疫系からの応答を誘発しない場合がある。これは、ナノ粒子のインビボ安全性に有利である。
【0111】
上記のSiNPのいずれも、生分解性又は非生分解性であってもよい。生分解性SiNPは、ケイ素の生物学的に利用可能な形態であるオルトケイ酸(orthosilic acid)に溶解する可能性がある。オルトケイ酸(orthosilic acid)は、骨、結合組織、毛髪及び皮膚の健康に有益であることが示されている。
【0112】
ナノ粒子は、リポソームであってもよい。リポソームは、典型的には、生分解性の非毒性リン脂質から形成され、水性コアを有する自己集合性リン脂質二重層シェルを含む。リポソームは、単一のリン脂質二重層を含む単層ベシクル、又は水の層によって分離されたいくつかの同心リン脂質シェルを含む多層ベシクルであってもよい。結果として、リポソームは、親水性分子を水性コア内に又は疎水性分子をリン脂質二重層内に組み込むように調整することができる。リポソームは、送達のためにコア内に抗原を封入してもよい。リポソームは、ウイルスエンベロープ糖タンパク質をシェルに組み込んで、ビロソームを形成してもよい。いくつかのリポソーム系製品が当技術分野で確立されており、ヒトでの使用が承認されている。
【0113】
ナノ粒子は、免疫刺激複合体(ISCOM)であってもよい。ISCOMは、典型的にはコロイド状サポニン含有ミセルから形成されるケージ様粒子である。ISCOMは、コレステロール、リン脂質(ホスファチジルエタノールアミン又はホスファチジルコリンなど)及びサポニン(Quillaia saponariaの木由来のQuil Aなど)を含んでもよい。ISCOMは、従来、単純ヘルペスウイルス1型、B型肝炎又はインフルエンザウイルス由来のエンベロープタンパク質などのウイルスエンベロープタンパク質を捕捉するために使用されてきた。
【0114】
ナノ粒子は、ウイルス様粒子(VLP)であってもよい。VLPは、生体適合性カプシドタンパク質の自己集合によって形成される感染性核酸を欠く自己集合性ナノ粒子である。VLPは、典型的には、直径が約20~約150nm、例えば約20~約40nm、約30~約140nm、約40~約130nm、約50~約120nm、約60~約110nm、約70~約100nm又は約80~約90nmである。VLPは、免疫系との相互作用のために天然に最適化された進化したウイルス構造の力を有利に利用する。天然に最適化されたナノ粒子サイズ及び反復構造秩序は、VLPがアジュバントの非存在下でさえ強力な免疫応答を誘導することを意味する。
【0115】
ナノ粒子は、自己集合性タンパク質であってもよい。例えば、ナノ粒子はフェリチンを含んでもよい。フェリチンは、自己集合してほぼ球形の10nm構造になり得るタンパク質である。ナノ粒子は、主要ヴォールトタンパク質(MVP)を含んでもよい。96単位のMVPは、幅約40nm及び長さ70nmのサイズを有する樽形状のヴォールトナノ粒子に自己集合することができる。
【0116】
ナノ粒子は、リン酸カルシウム(CaPO)ナノ粒子であってもよい。CaPOナノ粒子は、1つ以上(例えば、2つ以上、10個以上、20個以上、50個以上、100個以上、200個以上又は500個以上)のCaPO分子を含むコアを含んでもよい。CaPOナノ粒子及びそれらの製造方法は当技術分野で公知である。例えば、CAPナノ粒子の安定なナノ懸濁液は、カルシウム及びリン酸塩の無機塩溶液を一定の混合下で所定の比で混合することによって生成されてもよい。
【0117】
CaPOナノ粒子は、約80~約100nm、例えば約82~約98nm、約84~約96nm、約86~約94nm又は約88~約92nmの平均粒径を有してもよい。この粒径は、他のより大きな粒径よりも、免疫細胞取込み及び免疫応答に関してより良好な性能をもたらす可能性がある。例えば、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月、36ヶ月又は48ヶ月の期間にわたって測定した場合、粒径は安定である(すなわち、有意な変化を示さない)可能性がある。
【0118】
CaPOナノ粒子は、粒子合成中にナノ粒子の表面に吸着されたか、又はCaPOと共沈殿した1つ又は複数の抗原と共製剤化することができる。例えば、本発明のペプチドなどのペプチドは、ペプチドをDMSO(例えば、約10mg/mlの濃度)に溶解し、N-アセチル-グルコサミン(GlcNAc)(例えば、0.093mol/L及び超純水と共にCaPOナノ粒子の懸濁液に加え、室温で約4時間(例えば、1時間、2時間、3時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間又は10時間)混合することによって、CaPOナノ粒子に結合させてもよい。
【0119】
ワクチン組成物は、約0.15~約0.8%、例えば0.2~約0.75%、0.25~約0.7%、0.3~約0.6%、0.35~約0.65%、0.4~約0.6%又は0.45~約0.55%のCaPOナノ粒子を含んでもよい。好ましくは、ワクチン組成物は、約0.3%のCaPOナノ粒子を含む。
【0120】
CaPOナノ粒子は、骨及び歯などのヒト硬組織との化学的類似性のために高度の生体適合性を有する。したがって、有利には、CaPOナノ粒子は、治療用途に使用される場合、非毒性である。CaPOナノ粒子は、筋肉内、皮下、経口又は吸入経路を介した投与に安全である。CaPOナノ粒子はまた、商業的に合成することが簡単である。さらに、CaPOナノ粒子は、抗原の徐放に関連する可能性があり、これは、ナノ粒子に結合したペプチドに対する免疫応答の誘導を増強する可能性がある。CaPOナノ粒子は、アジュバントとしても薬物送達ビヒクルとしても使用されてもよい。
【0121】
ナノ粒子は、金ナノ粒子であってもよい。金ナノ粒子は当技術分野で公知であり、特に国際公開第2002/32404号パンフレット、国際公開第2006/037979号パンフレット、国際公開第2007/122388号パンフレット、国際公開第2007/015105号パンフレット及び国際公開第2013/034726号パンフレットに記載されている。各ペプチドに結合した金ナノ粒子は、国際公開第2002/32404号パンフレット、国際公開第2006/037979号パンフレット、国際公開第2007/122388号パンフレット、国際公開第2007/015105号パンフレット及び国際公開第2013/034726号パンフレットのいずれかに記載の金ナノ粒子であってもよい。
【0122】
金ナノ粒子は、金(Au)原子を含むコアを含む。コアは、1つ以上のFe、Cu又はGd原子をさらに含んでもよい。コアは、Au/Fe、Au/Cu、Au/Gd、Au/Fe/Cu、Au/Fe/Gd又はAu/Fe/Cu/Gdなどの金合金から形成されてもよい。コア中の原子の総数は、100~500個の原子、例えば150~450個、200~400個又は250~350個の原子であってもよい。金ナノ粒子は、1~100、20~90、30~80、40~70又は50~60nmの平均直径を有してもよい。好ましくは、金ナノ粒子は、20~40nmの平均直径を有する。
【0123】
ナノ粒子は、α-ガラクトース及び/又はβ-GlcNAcでコーティングされた表面を含んでもよい。例えば、ナノ粒子は、α-ガラクトース及び/又はβ-GlcNAcで不動態化された表面を含んでもよい。この場合、ナノ粒子は、例えば、金属及び/又は半導体原子を含むコアを含むナノ粒子であってもよい。例えば、ナノ粒子は金ナノ粒子であってもよい。β-GlcNAcは、抗原提示細胞を活性化することができる細菌病原体関連分子パターン(PAMP)である。このようにして、β-GlcNAcでコーティング又は不動態化された表面を含むナノ粒子は、免疫応答を非特異的に刺激する可能性がある。したがって、配列番号1~23に示されるCD8+T細胞エピトープの1つ以上又はその変異体を含むフラビウイルスペプチドのそのようなナノ粒子への結合は、本発明のワクチン組成物の個体への投与によって誘発される免疫応答を改善する可能性がある。
【0124】
ペプチド以外の1つ以上のリガンドがナノ粒子に連結されていてもよく、これは上記のいずれのタイプのナノ粒子であってもよい。リガンドは、コアの表面を部分的又は完全に覆う可能性がある「コロナ」、層又はコーティングを形成する可能性がある。コロナは、ナノ粒子コアを取り囲むか又は部分的に取り囲む有機層であると考えられる可能性がある。コロナは、ナノ粒子のコアの不動態化をもたらすか、又はそれに関与する可能性がある。したがって、特定の場合には、コロナは、コアを安定化させるのに十分に完全なコーティング層であってもよい。コロナは、本発明のナノ粒子の水溶性などの溶解性を促進する可能性がある。
【0125】
ナノ粒子は、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個又は少なくとも50個のリガンドを含んでもよい。リガンドは、1つ以上のペプチド、タンパク質ドメイン、核酸分子、脂質基、炭水化物基、アニオン性基、又はカチオン性基、糖脂質及び/又は糖タンパク質を含んでもよい。炭水化物基は、多糖、オリゴ糖又は単糖基(例えば、グルコース)であってもよい。リガンドの1つ以上は非自己成分であってもよく、これにより、病原性成分との類似性のためにナノ粒子が抗原提示細胞によって取り込まれる可能性が高くなる。例えば、1つ以上のリガンドは、炭水化物部分(細菌炭水化物部分など)、界面活性剤部分及び/又はグルタチオン部分を含んでもよい。例示的なリガンドとしては、チオール化グルコース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、グルタチオン、2’-チオエチル-β-D-グルコピラノシド及び2’-チオエチル-D-グルコピラノシドが挙げられる。好ましいリガンドとしては、糖ナノ粒子を形成する複合糖質が挙げられる。
【0126】
コアへのリガンドの連結は、リンカーによって促進される可能性がある。リンカーは、チオール基、アルキル基、グリコール基又はペプチド基を含んでもよい。例えば、リンカーは、C2~C15アルキル及び/又はC2~C15グリコールを含んでもよい。リンカーは、コアに共有結合することができる硫黄含有基、アミノ含有基、リン酸塩含有基又は酸素含有基を含んでもよい。あるいは、リガンドは、例えば、リガンドに含まれる硫黄含有基、アミノ含有基、リン酸塩含有基又は酸素含有基を介してコアに直接連結されていてもよい。
【0127】
ナノ粒子への結合
ペプチドは、そのN末端においてナノ粒子に結合していてもよい。典型的には、ペプチドはナノ粒子のコアに結合しているが、コロナ又はリガンドへの結合も可能である場合がある。
【0128】
ペプチドは、例えば、ペプチド中の硫黄含有基、アミノ含有基、リン酸塩含有基又は酸素含有基中の原子とナノ粒子又はそのコア中の原子との共有結合によって、ナノ粒子に直接結合していてもよい。
【0129】
リンカーを使用して、ペプチドをナノ粒子に連結してもよい。リンカーは、コア中の原子に共有結合することができる硫黄含有基、アミノ含有基、リン酸塩含有基又は酸素含有基を含んでもよい。例えば、リンカーは、チオール基、アルキル基、グリコール基又はペプチド基を含んでもよい。
【0130】
リンカーは、ペプチド部分及び非ペプチド部分を含んでもよい。ペプチド部分は、配列Xを含んでもよく、Xは、A及びGから選択されるアミノ酸であり、Xは、A及びGから選択されるアミノ酸であり、Zは、Y及びFから選択されるアミノ酸である。ペプチド部分は、配列AAY又はFLAAY(配列番号44)を含んでもよい。リンカーのペプチド部分は、ペプチドのN末端に連結されていてもよい。リンカーの非ペプチド部分は、C2~C15アルキル及び/又はC2~C15グリコール、例えばチオエチル基又はチオプロピル基を含んでもよい。
【0131】
リンカーは、(i)HS-(CH-CONH-AAY、(ii)HS-(CH-CONH-LAAY(配列番号43)、(iii)HS-(CH-CONH-AAY、(iv)HS-(CH-CONH-FLAAY(配列番号44)、(v)HS-(CH10-(CHOCH-CONH-AAY、及び(vi)HS-(CH10-(CHOCH-CONH-FLAAY(配列番号44)であってもよい。この場合、リンカーの非ペプチド部分のチオール基は、リンカーをコアに連結する。
【0132】
ペプチドをナノ粒子に結合させるための他の好適なリンカーは当技術分野で公知であり、当業者によって容易に同定及び実施される可能性がある。
【0133】
ワクチン組成物が2つ以上のペプチドを含む場合、2つ以上(例えば、3つ以上、4つ以上、5つ以上、10個以上又は20個以上)のペプチドが同じナノ粒子に結合していてもよい。2つ以上(例えば、3つ以上、4つ以上、5つ以上、10個以上又は20個以上)のペプチドは、それぞれ異なるナノ粒子に結合していてもよい。しかし、ペプチドが結合しているナノ粒子は、同じタイプのナノ粒子であってもよい。例えば、各ペプチドは、金ナノ粒子に結合していてもよい。各ペプチドは、CaPOナノ粒子に結合していてもよい。ペプチドが結合しているナノ粒子は、異なるタイプのナノ粒子であってもよい。例えば、1つのペプチドが金ナノ粒子に結合していてもよく、別のペプチドがCaPOナノ粒子に結合していてもよい。
【0134】
ポリヌクレオチドワクチン
本発明は、請求項1に記載のペプチド、又は配列番号1~34のいずれか1つ若しくはその変異体を含むペプチドに結合することができるT細胞受容体に結合することができるペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むワクチン組成物を提供する。
【0135】
ワクチン組成物は、それぞれが配列番号1~34又はその変異体から選択される異なる配列を含む、本発明の2つ以上のペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでもよい。
【0136】
ワクチン組成物は、それぞれが配列番号1~34のいずれか1つ又はその変異体を含むペプチドに結合することができる異なるT細胞受容体に結合することができる2つ以上のペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでもよく、各異なるT細胞受容体は、配列番号1~34又はその変異体から選択される異なる配列に結合することができる。
【0137】
ワクチン組成物は、それぞれが本発明のペプチドをコードする2つ以上のポリヌクレオチドを含んでもよく、各ペプチドは、配列番号1~34又はその変異体から選択される異なる配列を含む。
【0138】
ワクチン組成物は、それぞれが配列番号1~34のいずれか1つ又はその変異体を含むペプチドに結合することができるT細胞受容体に結合することができるペプチドをコードする2つ以上のポリヌクレオチドを含んでもよく、各ペプチドは、配列番号1~34のいずれか1つ又はその変異体を含むペプチドに結合することができる異なるT細胞受容体に結合することができ、各異なるT細胞受容体は、配列番号1~34又はその変異体から選択される異なる配列に結合することができる。
【0139】
ポリヌクレオチドはDNAであってもよい。ポリヌクレオチドはRNAであってもよい。例えば、ポリヌクレオチドはmRNAであってもよい。
【0140】
医薬品、治療方法及び治療的使用
本発明は、コロナウイルス感染症を予防又は治療する方法であって、コロナウイルスに感染している、又は感染するリスクがある個体に、本発明のワクチン組成物を投与することを含む方法を提供する。本発明はまた、個体におけるコロナウイルス感染症を予防又は治療する方法に使用するための本発明のワクチン組成物を提供する。
【0141】
コロナウイルス感染症は、例えば、ヒトの流行又はパンデミックに関与するコロナウイルス感染症であってもよい。コロナウイルス感染症は、例えば、人獣共通感染症由来のコロナウイルス感染症であってもよい。コロナウイルス感染症は、例えば、ベータコロナウイルス(Betacoronavirus)属のメンバーによる感染症であってもよい。コロナウイルスは、例えば、サルベコロナウイルス(Sarbecoronavirus)亜属のメンバーによる感染症であってもよい。コロナウイルス感染症は、例えば、SARSコロナウイルス感染症又はSARSコロナウイルス2感染症であってもよい。
【0142】
ワクチン組成物は、医薬組成物として提供されてもよい。医薬組成物は、好ましくは薬学的に許容される担体又は希釈剤を含む。医薬組成物は、任意の好適な方法を用いて製剤化されてもよい。標準的な薬学的に許容され得る担体及び/又は賦形剤を用いた細胞の製剤化は、薬学分野における日常的な方法を用いて行われてもよい。製剤化の正確な性質は、投与される細胞及び所望の投与経路を含むいくつかの因子に依存する。好適な種類の製剤化は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,19th Edition,Mack Publishing Company,Eastern Pennsylvania,USAに完全に記載されている。
【0143】
ワクチン組成物又は医薬組成物は、任意の経路によって投与されてもよい。好適な経路には、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、皮内、経皮及び経口/口腔経路が含まれるが、これらに限定されない。
【0144】
組成物は、生理学的に許容される担体又は希釈剤と共に調製されてもよい。典型的には、そのような組成物は、ペプチド及び/又はペプチド連結ナノ粒子の液体懸濁液として調製される。ペプチド及び/又はペプチド連結ナノ粒子は、薬学的に許容され、有効成分と適合性である賦形剤と混合されてもよい。好適な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロールなど及びそれらの組合せである。
【0145】
さらに、所望であれば、医薬組成物は、湿潤剤若しくは乳化剤及び/又はpH緩衝剤などの少量の補助物質を含有してもよい。
【0146】
ペプチド又はペプチド連結ナノ粒子は、投与製剤と適合する様式で投与され、そのような量で治療上有効である。投与される量は、治療される対象、治療される疾患、及び対象の免疫系の能力に依存する。投与が必要とされるナノ粒子の正確な量は、医師の判断に依存してもよく、各対象に特有であってもよい。
【0147】
任意の好適な数のペプチド又はペプチド連結ナノ粒子を対象に投与してもよい。例えば、患者1kg当たり少なくとも又は約0.2×10、0.25×10、0.5×10、1.5×10、4.0×10又は5.0×10のペプチド又はペプチド連結ナノ粒子を投与してもよい。例えば、少なくとも又は約10、10、10、10、10個のペプチド又はペプチド連結ナノ粒子を投与してもよい。目安として、投与されるペプチド又はペプチド連結ナノ粒子の数は、10~10、好ましくは10~10であってもよい。
【0148】
実施例1
序論
以下に説明するように、コロナウイルスペプチドを金ナノ粒子に結合させた。
【0149】
表4に示すように、8つのペプチド:P77、P81、P83、P86、P92、P96、P99及びP100を選択した。
【表4】
【0150】
この実験の目的は、4mgのAuスケールでの試験GNP EM009-062-01に基づいて、毒性試験のための100mgのAuスケールバッチを作製することであった。全ペプチド負荷は、リガンド交換のためにNP当たり5当量(100Au原子/NPとして推定)から開始した。
【0151】
方法
【表5】
【0152】
計算
表5は、8つのペプチドのDMSO溶液調製に関する。表5は、90%のペプチド含有量/純度を仮定して、1mMストックを生成するために添加したDMSOの重み付けした量及び体積を列挙している。ペプチドの定量は問題があり、これらのペプチドについてはペプチド純度が引用されているが、「ペプチド含有量」が与えられておらず、これらは時々50%ほどの低さであり得るので、本発明者らは推定値として90%を使用し、その後試験室内HPLC定量を行った。
【表6】
【0153】
1mLのベースGNPの重量は1.003gであるので、100mgのAu=1.003*(100/3.193)=31.4gであり、正確さのためにベース粒子を重み付けした。得られた実際の体積は、以下の計算に基づいている。100mgのAu=505μモルのAu=5倍過剰のペプチド/NPで5.05μモルのNP=25.25μモルの総ペプチド、しかし8つのペプチドであるため、=3.16μモルの各ペプチド。
【0154】
ペプチドを秤量し、層流フード(LAF)に溶解し、新たに密封したDMSOのボトルを可溶化に使用した。上記のペプチドストックをHPLCによってアッセイした。一例として、P77について、本発明者らは、予想される70AUC(278nmでのTyr又はTryp残基の吸光度によって定義される)の代わりに50.1の面積を得た。1mMである代わりに、ペプチドは0.716mMであると決定されたので、3.16μモルのP77を得るためには、以下の表に示すように4.43mlが必要となると思われた。いくつかのペプチドストックは、ジスルフィドペプチドを有していた。チオールペプチド領域のみを定量したので、これらは無視した。
【0155】
リガンド交換のために採取した8つのペプチドのDMSO溶液の実際の体積を以下の表6に示す。
【表7】
【0156】
手順
31.4gのChemConベースGNPを50mL滅菌ファルコンチューブに秤量した。8つすべてのペプチドDMSO溶液を250mLガラス丸底フラスコ中で一緒に添加した。次いで、ChemCon ToxベースGNPを添加し、短時間混合し、容器を窒素フラッシュし、密封した。このリガンド交換溶液混合物を水浴中で300rpm、30℃で3時間撹拌し続けた。
【0157】
3時間後、暗褐色のGNP溶液を15mLの10kDa Amicon Tubes(×8)で濃縮し、次いで滅菌「注射用水」で洗浄し、すべての添加をLAF中で行った(×5、遠心分離機当たり4000Gで8分間、DMSOをAmiconデバイスにおいて15%未満に保った)。GNP溶液をAmiconチューブから12本の1.5mLエッペンドルフチューブに回収し、次いでこれを17Gで2分間遠心分離してすべての凝集体を除去した。各エッペンドルフチューブからの上清を合わせ、2つの0.2μm滅菌Nalgeneシリンジフィルタ(フィルタ当たり約5mLのGNP溶液)を通して濾過した。最終滅菌GNP溶液(EM009-064-01)は10mLであり、次いでこれを4℃に保った。200μLのこの最終GNP溶液を除去し、分析のために別々に保持した。
【0158】
Amiconチューブ膜上にいくらかのGNP材料があることに気づいており、17kGで2分間の最終的なハードスピン後、各エッペンドルフチューブの底部にペレットが認められた。後の検討は、これらの沈殿したGNPを0.2M炭酸緩衝液(CB pH10.22)に再懸濁できることを示した。Amicon及びエッペンドルフチューブから沈殿したすべてのGNPを0.2M炭酸緩衝液(pH10.22)に再懸濁し、前日から同じ8本のAmiconチューブ上で濃縮し、次いで0.2M CBでもう一度洗浄し、続いて水で洗浄した(×5、遠心分離機当たり4000Gで8分間)。AmiconチューブではGNPはほとんど観察されなかった。17kGで2分間遠心分離した後(沈殿は観察されなかった)、このGNP溶液(EM009-064-02)は2.7mLであり、さらなる分析のために4℃に保った。以下では、主要な滅菌調製物のAu収率が62.6%であり、24.9%が不溶性凝集体として失われたことが分かる。凝集した材料を可溶化し、収率を大幅に増加させるために、水洗浄前の0.2M炭酸緩衝液(pH10.22)洗浄を使用することができる。
【0159】
EM009-064-01:大きな毒性バッチ由来の上清GNP溶液。
EM009-064-02:主要な毒性バッチ由来の0.2M CB(pH10.22)で処理した後の沈殿したGNP。
EM009-064-03:EM0090-64-01(50μL)と02(13.52μL)の試験混合物。
【0160】
分析
金アッセイ
金アッセイの結果を表7に示す。
【表8】
【0161】
吸光度スペクトル
ChenconToxベースGNP、EM009-064-01、EM009-064-02及びEM009-064-03の吸光度スペクトルを図1に示す。
ChemCon ToxベースGNP、EM009-064-01、02及び03のバッチでは、520nmのプラズモンバンドは見られなかった。
【0162】
DLS
DLSの結果を図2に示し、以下に要約する。
ChemConToxベースGNPの場合、サイズ=3.77nm(n=3)、SD=±1.22nm。EM009-064-01の場合、サイズ=6.08nm(n=3)、SD=±2.62nm。EM009-064-02の場合、サイズ=4.77nm(n=3)、SD=±1.21nm。EM009-064-03の場合、サイズ=4.75nm(n=3)、SD=±1.05nm。
【0163】
ナノ粒子400nmのHPLC
この方法を図3に要約する。試料調製を以下の表8に示す。
【表9】
【0164】
各バッチについて、16μgのAuを40μLの水中に入れた。HPLCで、10μLのこのGNP溶液をカラムに注入し、各バッチの注入当たり4μgのAuを得た。
【0165】
HPLC結果は、3つすべての試料が優れたペプチド取込み(>96%)を有することを示した。EM009-064-01 いずれのペプチドも含まないGNPは3.4%である。EM009-064-02 いずれのペプチドも含まないGNPは0%である。EM009-064-03:いずれのペプチドも含まないGNPは2.2%である。
【0166】
LC-MSペプチド定量
試料調製を以下の表9に示す。
【表10】
【0167】
各バッチについて、25μgのAuを0.1M TCEPと共に40℃で4時間インキュベートし、次いでDMSOで100μLまで補充した。LC-MSで、32μLのこのGNP溶液をカラムに注入し、各バッチの注入当たり8μgのAuを得た。
【0168】
結果を図4に示す。
【0169】
3つすべてのバッチからの個々のペプチド負荷を表10に示す。
【表11】
【0170】
結論
両方のバッチの粒径は良好である。しかしながら、EM009-064-01バッチ(上清GNP溶液)は、EM009-064-02(CBで処理した沈殿GNP)よりわずかに大きいサイズを有する。520nmのプラズモンバンドは、3つのバッチのいずれにおいても観察されなかった。
【0171】
全GNP生成物のHPLCは、ペプチドを全く含まない最小GNP<4%を示した。EM009-064-02HPLCクロマトグラムからの大きな単一ピークは、このバッチが疎水性ペプチド(P92及び/又はP100)のより高い負荷を有することを示す。おそらくそれが、このバッチがAmicon洗浄中に水溶液から沈殿した理由である。
【0172】
EM009-064-01:合計8ペプチド負荷は4.2当量である(5当量から開始)。LC-MSは、P81及びP77がわずかに高い負荷を有するのに対して、P86及びP83は予想よりもわずかに低い負荷を有することを示した。
【0173】
EM009-064-02:合計8ペプチド負荷は9.4当量である(5当量から開始)。LC-MSは、P77及びP83がわずかに低い負荷を有するのに対して、P100は非常に高い負荷を有し、他のペプチドと比較した場合、ほぼ2倍であったことを示した。P100は非常に疎水性であり、そのような高い負荷は、このバッチがEM009-064-01精製中に水洗浄から沈殿した理由を説明するものである。しかし、0.2M CBで洗浄した後、この沈殿したGNPを再び水溶液に再懸濁することができる。このバッチは非滅菌条件下で再溶解可能であり、主なEM009-064-01生成物と混合することを意図していない。
【0174】
EM009-064-03:50μLのEM009-064-01を13.52μLのEM009-064-02と混合した。最終的なペプチド負荷は4.89である。P83負荷は依然として少し低く、P100負荷は依然として高いが、この混合バッチは、EM009-064-01及び02のバッチと比較した場合、より良好な全体的ペプチド負荷結果を示した。
【0175】
EM009-064-01は約62.6mgのAuを有し、EM009-064-02は約24.9mgのAuを有する。両方のバッチを一緒に組み合わせると、87.5%の金回収収率が得られる。今後は、Amiconでの最終GNP精製中に、最終金収率を増加させ、ペプチド比/レベルを改善するために、溶液中のGNPを維持するために0.2M CBを使用すべきである。
【0176】
生成物の量に関して、6.3mg/mlのAuで10mlの材料及び1.34μモル/mlの総ペプチド含有量、すなわち13.4μモルの総ペプチドは、約1nモルの各ペプチドの1600を超える用量の材料を提供する。
【0177】
参考文献
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図1(1)】
図1(2)】
図1(3)】
図1(4)】
図2(1)】
図2(2)】
図2(3)】
図2(4)】
図3A
図3B(1)】
図3B(2)】
図3B(3)】
図4(1)】
図4(2)】
図4(3)】
図5
【配列表】
2023528427000001.app
【国際調査報告】