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特表2023-528449過マンガン酸塩還元化合物を除去することによる、酢酸を製造するための方法
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  • 特表-過マンガン酸塩還元化合物を除去することによる、酢酸を製造するための方法 図1
  • 特表-過マンガン酸塩還元化合物を除去することによる、酢酸を製造するための方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-04
(54)【発明の名称】過マンガン酸塩還元化合物を除去することによる、酢酸を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 51/44 20060101AFI20230627BHJP
   C07C 53/08 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
C07C51/44
C07C53/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022574389
(86)(22)【出願日】2021-06-03
(85)【翻訳文提出日】2022-12-14
(86)【国際出願番号】 US2021035687
(87)【国際公開番号】W WO2021247853
(87)【国際公開日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】63/034,072
(32)【優先日】2020-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512225379
【氏名又は名称】セラニーズ・インターナショナル・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】リー,デビッド
(72)【発明者】
【氏名】リュウ,ヨウ-ファ
(72)【発明者】
【氏名】シェーヴァー,ロナルド・ディー
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AD11
4H006AD13
4H006BD84
4H006BS10
(57)【要約】
本方法は、抽出蒸留塔を使用して、メタノールのカルボニル化プロセスからアセトアルデヒドを除去するときの、アセタールの生成を制御することに関する。アセタールは、アセトアルデヒドとアルコール(たとえばメタノール)との二次反応により生成することができる。本方法は、抽出蒸留塔から下方流におけるアセタールの過剰な蓄積を防止して、その生成を制御する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の過マンガン酸塩還元化合物(PRC)、1種又は複数のヨウ化C~C12アルキル、及び水を含む第1の混合物から、前記少なくとも1種のPRCを分離するための方法であって、前記方法が、
蒸留塔の第1の位置に前記第1の混合物を供給する工程であって、前記第1の混合物は、前記1種又は複数のヨウ化C~C12アルキルと水との間の、質量を基準とする差よりは小さい、メタノールの質量組成を有している、工程;
前記第1の混合物を蒸留して、第2の混合物と下方流とにする工程であって、前記第2の混合物は、塔頂流、及び前記第1の位置よりも高いところで抜き出されるサイドドロー流からなる群より選択される少なくとも1つの流である、工程;及び
前記第1の位置よりも低い第2の位置から前記下方流を抜き出す工程であって、前記下方流は、以下の条件(i)~(iii):
(i)前記下方流の中のアセタールの合計質量組成が、0.02重量%以下である;
(ii)前記下方流の中のアセタールの合計質量組成が、前記下方流の中のメタノールとアセトアルデヒドを組み合わせた質量組成よりも少ない;及び
(iii)前記下方流の中のアセタールの合計質量組成が、前記第1の混合物の中のメタノールの質量組成よりも少ない
の少なくとも1つを満足させる、工程
を含み、
前記第1の混合物が、追加のメタノールの供給なしで、第2の混合物と下方流とに分離され;及び
前記第2の混合物が、少なくとも1種のPRCリッチとなっている、
方法。
【請求項2】
前記下方流が、条件(i)及び(ii)を満足させている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記下方流が、条件(i)及び(iii)を満足させている、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
条件(i)のための前記アセタールの合計質量組成が、0.0001重量%~0.02重量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
条件(ii)のための、前記メタノールとアセトアルデヒドとを合わせた質量組成が、1.9重量%以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
条件(iii)のための、前記メタノールの質量組成が、2重量%以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の混合物が、前記1種又は複数のヨウ化C~C12アルキルを2.5重量%~90重量%の量で、前記少なくとも1種のPRCを0.05~50重量%の量で、及び水を0.5重量%~90重量%の量で含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の混合物の中の前記メタノールの質量組成が、2重量%以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の混合物が、80重量%以上の水を含む抽出剤を使用して蒸留される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記抽出剤対前記第1の混合物の流量比(重量基準)が、0.0001/100~100/100である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の混合物が、前記1種又は複数のヨウ化C~C12アルキルを0.5~95重量%の量で、前記少なくとも1種のPRCを0.1~90重量%の量で、そして水を0.1~20重量%の量で含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の混合物を、水相と有機相とに二相分離することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
酢酸製造方法であって、前記方法が、アセタールの生成を制御するための以下の工程:
(a)金属触媒、イオン性の金属ヨウ化物、及びヨウ化メチル、酢酸、酢酸メチル、並びに水を含む反応性混合物の存在下に、メタノールを一酸化炭素と連続的に反応させる工程;
(b)前記反応混合物を、加熱の存在下又は非存在下に、蒸発させて、蒸気状の粗反応生成物及び触媒の循環流を得る工程;
(c)前記蒸気状の粗反応生成物の少なくとも一部を蒸留して、塔頂流及びサイド流を形成させ、前記塔頂流を1基又は複数のコンデンサーの中で凝縮させて、前記凝縮物をレシーバーの中に捕集して、上方相と下方相とにする工程;及び
(d)前記下方相の少なくとも一部を分離して、アセトアルデヒド及び下方流を含む第2の流を形成させる工程であって、前記下方流が、以下の条件(i)~(iii):
(i)前記下方流の中のアセタールの合計質量組成が、0.02重量%以下である;
(ii)前記下方流の中のアセタールの合計質量組成が、前記下方流の中のメタノールとアセトアルデヒドを組み合わせた質量組成よりも少ない;又は
(iii)前記下方流の中のアセタールの合計質量組成が、前記下方相の中のメタノールの質量組成よりも少ない
の少なくとも1つを満足させる、工程
を含み、
前記下方相が、追加のメタノールの供給なしに、前記第2の流と下方流とに分離され;及び
前記第2の流が、少なくとも1種のPRCリッチとなっている、
方法。
【請求項14】
前記下方相が、1種又は複数のヨウ化C~C12アルキルを60~98重量%の量で、前記少なくとも1種のPRCを5重量%までの量で、水を3重量%までの量で、そしてメタノールを5重量%までの量で含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
工程(d)が、前記上方相の少なくとも一部を分離する工程をさらに含み、ここで工程(d)が、100:0~10:90の前記下方相対前記上方相の重量比を有する混合物を分離する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記下方流が、工程(a)又は工程(d)に戻される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記下方相の少なくとも一部が、80重量%以上の水を含む抽出剤を用いて蒸留される、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
条件(i)のための前記アセタールの合計質量組成が、0.0001重量%~0.02重量%である、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
条件(ii)のための、前記メタノールとアセトアルデヒドとを合わせた質量組成が、1.9重量%以下である、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
条件(iii)のための、前記メタノールの質量組成が、2重量%以下である、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、2020年6月3日に出願された米国仮特許出願第63/034,072号に基づく優先権を主張するものであり、これはあらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般的には、酢酸を製造するためのプロセス、並びに蒸留(抽出蒸留も含む)の際に、下方流において質量基準でアセタールの合計量を制御又は保持して、アセトアルデヒド及びその他の過マンガン酸塩還元化合物(PRC)を除去又は低減させるための改良されたプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
メタノールのカルボニル化は、均一系触媒を含む反応混合物の存在下に酢酸を得るための工業的プロセスである。酢酸の収率が高いにもかかわらず、そのプロセスは、不純物を発生させ、その結果低純度の酢酸が得られるということが知られている。大きな関心をもたれてきた、そのような不純物の1つがアセトアルデヒドであるが、その理由は、除去がかなり困難であること、アセトアルデヒドが、いくつかのその他の不純物の前駆物質であること、及び酢酸の純度に対する強い影響力である。たとえば、アセトアルデヒドは、有効な助触媒と沸点が近く、そのため単蒸留では不十分である。それらの不十分な点を克服する目的で、アセトアルデヒドを除去するために、アルカン若しくは水抽出法によるか、又はアミノ化合物、酸素含有ガス、及びヒドロキシル化合物との反応による、いくつかの提案がなされてきた。残念ながら、それらの処理を使用したにもかかわらず、アセトアルデヒドは、高純度の酢酸を得るための挑戦課題であり続けている。さらには、アセトアルデヒドから誘導される不純物の生成が、アセトアルデヒドを除去する際の効率を低下させている。
【0004】
アセトアルデヒドを除去するための、蒸留及び/又は抽出についてのさらなるアイデアが提案されてきたが、高品質の酢酸製品を達成するためには、改良を続ける必要がある。
【0005】
米国特許第8,859,810号明細書には、酢酸を製造するためのプロセス、特には、酢酸を製造するためのカルボニル化触媒の存在下に、メタノールをカルボニル化させる際に形成される、過マンガン酸塩還元化合物を回収するための、改良されたプロセスが記載されている。その回収された過マンガン酸塩還元化合物から、アルキルハライドが除去又は低減される。
【0006】
米国特許第10,562,836号明細書には、過マンガン酸塩還元化合物(PRC)及びヨウ化メチルを効率よく分離しながら、酢酸を製造するためのプロセスが記載されている。PRC及びヨウ化メチルを含む混合組成物から、蒸留工程においてその混合組成物を蒸留して、塔頂流、サイドカット流、及び下方流を形成させることにより、PRCが分離又は除去される。その蒸留工程の蒸留塔の中では、ヨウ化メチルより優先させてPRCを抽出する抽出剤(たとえば、水)が濃縮ゾーンに添加されて、そこで、PRC及びヨウ化メチルが濃縮され、そしてその濃縮ゾーンから下降する抽出混合物が、サイドカット流として抜き出される。
【0007】
米国特許第10,265,639号明細書には、少なくとも1種のPRC、ヨウ化メチル、及び水を含む第1の混合物からPRCを分離又は除去するためのプロセスが記載されており、それには、第1の混合物を蒸留塔の供給ポートに供給する工程、及び蒸留工程、及びその第1の混合物を上方流と下方流に分離する工程が含まれているが、ここで、その第1の混合物の蒸留により、供給ポートよりも上の位置で第2の混合物が形成され、そしてそのプロセスにはさらに、上方流としての第2の混合物の抜き出し、及び供給ポートより下の位置からの下方流の抜き出しが含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
既存のカルボニル化プロセスでも高収率ではあるが、安全且つ効率的な方法で不純物を低減させながら、酢酸を回収するための改良が、依然として望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、一般的には、酢酸を製造するためのプロセスに関する。本発明の実施形態は、戻り流の中のアセタールの合計質量組成を低減させながらも、1種又は複数のヨウ化C~C12アルキル(特にヨウ化メチル)から過マンガン酸塩還元化合物(PRC)を効果的に除去するためのプロセス、並びに酢酸を製造するためのプロセスを提供する。
【0010】
1つの実施形態においては、少なくとも1種のPRC、1種又は複数のヨウ化C~C12アルキル(たとえばヨウ化メチル)及び水を含む第1の混合物から、少なくとも1種の過マンガン酸塩還元化合物(PRC;たとえばアセトアルデヒド)を分離するためのプロセスが提供されるが、そのプロセスには以下の工程が含まれる:蒸留塔の第1の位置に第1の混合物を供給する工程(ここでその第1の混合物は、質量の点で、1種又は複数のヨウ化C~C12アルキルと水との間の差よりは小さい、メタノールの質量組成を有している)、第1の混合物を蒸留して、第2の混合物と下方流とにする工程(その第2の混合物は、塔頂流、及び第1の位置よりも高いところで抜き出されるサイドドロー流からなる群より選択される少なくとも1つの流である)、及び第1の位置よりも低い第2の位置から下方流を抜き出す工程、そしてここで、その下方流は、以下の条件(i)~(iii)の少なくとも1つ(又は2つ)を満足させる:
(i)その下方流の中のアセタールの合計質量組成が、0.02重量%以下;
(ii)その下方流の中のアセタールの合計質量組成が、下方流の中のメタノールとアセトアルデヒドを組み合わせた質量組成よりも少ない;又は
(iii)その下方流の中のアセタールの合計質量組成が、その第1の混合物の中のメタノールの質量組成よりも少ない;
このプロセスにおける、1つの実施形態においては、その第1の混合物が、追加のメタノールを供給しなくても、第2の混合物と下方流とに分離される。さらに、そのようにして得られる第2の混合物は、少なくとも1種のPRCリッチとなっている。
【0011】
1つの実施形態においては、アセタールの生成を制御するための、以下の工程を含む酢酸製造プロセスが提供される:反応性混合物(金属触媒、イオン性の金属ヨウ化物、及びヨウ化メチル、酢酸、酢酸メチル、並びに水を含む)の存在下に、メタノールを一酸化炭素と連続的に反応させる工程;その反応混合物(加熱の存在下又は非存在下)を蒸発させて、蒸気状の粗反応生成物及び触媒の循環流を得る工程;その蒸気状の粗反応生成物の少なくとも一部を蒸留して、塔頂流及びサイド流を形成させ、そしてその塔頂流を1基又は複数のコンデンサーの中に凝縮させて、その凝縮物をレシーバーの中に捕集して、上方相と下方相とにする工程;その下方相の少なくとも一部(及び/又はその上方相の少なくとも一部)を分離して、アセトアルデヒド及び下方流を含む第2の流を形成させる工程:その下方流を、第1の位置よりは低い第2の位置から、抜き出す工程。その下方流が、以下の条件(i)~(iii)の少なくとも1つ(又は2つ)を満足しているのがよい:
(i)その下方流の中のアセタールの合計質量組成が、0.02重量%以下;
(ii)その下方流の中のアセタールの合計質量組成が、下方流の中のメタノールとアセトアルデヒドを組み合わせた質量組成よりも少ない;又は
(iii)その下方流の中のアセタールの合計質量組成が、その下方相の中のメタノールの質量組成よりも少ない。
【0012】
下方相(及び/又は上方相)を分離して第2の混合物と下方流とする実施形態においては、追加のメタノールを供給しない。それに加えて、その第2の混合物は、下方相(及び/又は上方相)よりも、少なくとも1種のPRCリッチとなっている。
【0013】
添付の非限定的な図面を参照すれば、本開示がよりよく理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に従った、酢酸を製造するためのプロセスの模式図である。
図2】本発明の実施形態に従った、アセトアルデヒドを分離し、除去するプロセスの模式図である。
図3】本発明の実施形態に従った、アセトアルデヒドを分離し、除去するプロセスのまた別な模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
初めに、任意のそのような実際の実施形態の開発において、システム関連及びビジネス関連の制約への準拠など、開発者の具体的な目標を達成するために、実施ごとに異なるであろう多数の実施固有の決定を行わなければならないことに留意すべきである。さらに、本明細書に開示の方法は、当該技術分野において平均的な又は十分な技術を有する者に明らかなように、引用又は具体的に言及されているもの以外の構成要素を含むこともできる。
【0016】
図面及び本明細書で示す文章から明らかなように、様々な実施形態が想定される。
【0017】
本発明の実施形態は、1種又は複数のヨウ化C~C12アルキルから、戻り流の中のアセタールの合計質量組成を低減させながらも、除去しないと、酢酸の品質低下の原因となる、過マンガン酸塩還元化合物(PRC)を効果的に除去するためのプロセスを提供する。アセタールの合計量が高いと、PRCを除去する性能が低下し、処理が非効果的となる。1つの実施形態においては、アセタールの合計量を低減させるために、その蒸留塔への供給流が、その流の中に、質量を基準にして、1種又は複数のヨウ化C~C12アルキル(特にヨウ化メチル)と水との間の差よりも少なくなるように保持(制御)された、メタノールの質量組成を有している。アセタール(及び/又はヘミアセタール)の合計量を低減させることによって、さらに、PRC中の混合物をリッチにする可能性がある。本明細書で使用するとき、「質量組成」又は「濃度」という用語は、特に断らない限り、合計質量に対するその物質の質量分率を指していて、一般的には、質量%又は重量%で表される。
【0018】
また別の実施形態においては、アセタールの合計量を低減させるために、そのプロセスに、その蒸留塔にメタノールを追加で供給することなく、1種又は複数のヨウ化C~C12アルキルからPRCを分離することが含まれていてもよい。
【0019】
また別の実施形態においては、アセタールの合計量を低減させるために、そのプロセスに、酢酸、水、酢酸メチル及び/又はメタノールの存在下に、1種又は複数のヨウ化C~C12アルキルからPRCを分離することが含まれていてもよい。
【0020】
本願発明者らが見出したところでは、アセタールの形成が進行して、PRCの1つと反応して高沸点成分を形成し、それが下方流の中に(移行して)、濃縮物となる。メタノールのカルボニル化の際に、蒸留塔への混合物の中に存在するアセトアルデヒド又はアセトアルデヒドの副生物が、アセタール化を起こして、アセタール及び/又はヘミアセタールが生成する可能性もある。アセトアルデヒド(AcH)のアセタール(たとえば、1,1-ジメトキシエタン)へのアセタール化は、メタノールのカルボニル化システムにおける2工程の酸触媒反応である。その第1工程で、アセトアルデヒドが、メタノールと反応して、ヘミアセタールを形成する。その第2工程で、そのヘミアセタールが、メタノールと反応して、アセタール、1,1-ジメトキシエタン、及び水を生成する。その総括反応を、式Iに示す:
CHCHO+2CHOH⇔(CHO)CHCH+HO 式1
アセトアルデヒド(AcH)のアセタール(たとえば、1,1-ジメトキシエタン)へのアセタール化は、次式に見られる平衡(可逆)反応である:
【数1】
【0021】
下方流は戻り流であるが、これは、プロセスに戻る、たとえば、反応器、又は上方流の蒸留塔、又は他の適切な槽に戻る流を指している。これが、望ましくないことには、そのプロセス全体にアセタール及び/又はヘミアセタールをもたらし、不純物を増大させ、それが、酢酸製品の品質を低下させる可能性がある。
【0022】
1つの実施形態においては、そのプロセスが、PRCを除去し、以下の条件(i)~(iii)の少なくとも1つを満足させる下方流を抜き出す:
(i)下方流の中のアセタールの合計量が、0.02重量%以下、たとえば0.018重量%以下、0.015重量%以下、又は0.01重量%以下である。1つの実施形態においては、塔の中で形成されたアセタールを除去するために、その下方流は、0.0001重量%以上、たとえば、0.0005重量%以上、又は0.001重量%以上である、低い量を有していてもよい。
(ii)その下方流の中のアセタールの合計量が、下方流の中のメタノールとアセトアルデヒドを組み合わせた量よりも少ない。1つの実施形態においては、PRCを効果的に除去したために、その下方流には、質量基準で、より低い量のメタノール及びアセトアルデヒドしか含まれない。これらの合計量が高いと、アセタールの合計質量組成もまた、相対的に大きくなる可能性がある。このことは、下方流での増大があるために、PRCの除去における効率を低下させる。メタノールとアセトアルデヒドの質量組成は、独立しており、いくつかの実施形態においては、メタノール又はアセトアルデヒドがまったく存在しないことがあり得る。1つの実施形態においては、そのメタノールの、質量組成が、1.9重量%以下、たとえば、1.5重量%以下、1重量%以下、0.8重量%以下、0.7重量%以下、0.5重量%以下、0.4重量%以下、0.3重量%以下であってよい。1つの実施形態においては、アセトアルデヒドの質量組成が、1.9重量%以下、たとえば、1重量%以下、0.5重量%以下、0.1重量%以下、0.01重量%以下、0.008重量%以下、0.006重量%以下であってよい。1つの実施形態においては、メタノールとアセトアルデヒドとを合わせた質量組成が、2重量%以下、たとえば、1重量%以下、0.9重量%以下、0.8重量%以下、0.7重量%以下、0.6重量%以下、0.5重量%以下、又は0.1重量%以下であってよい。
(iii)その下方流の中のアセタールの合計質量組成が、その第1の混合物の中のメタノールの質量組成よりも少ない。第1の混合物の中のメタノールの質量組成を低く維持すると、その下方流のアセタールの合計質量組成が限定又は低減されることが見出された。1つの実施形態においては、第1の混合物の中のメタノールの質量組成が、2重量%以下、たとえば、1.5重量%以下、1重量%以下、又は0.5重量%以下であってよい。
【0023】
1つの実施形態においては、その下方流が、上述の条件(i)~(iii)の少なくとも2つを満足させて、比較的に低いアセタールの合計量を維持する。これには、条件(i)及び条件(ii)を満足させるか、条件(i)及び条件(iii)を満足させるか、又は条件(ii)及び条件(iii)を満足させることが含まれるが、これらに限定される訳ではない。同様にして、それらが、下方流が、条件(i)、(ii)及び(iii)のそれぞれを満足させるような実施形態であってもよい。
【0024】
PRCとしては、以下のものが挙げられる:アセトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、2-エチルクロトンアルデヒド、2-エチルブチルアルデヒド、及びそれらのアルドール縮合反応生成物。これらの化合物は、たとえ少ない量であっても、その酢酸製品の過マンガン酸塩低減物質試験(過マンガン酸塩時間(permanganate time))で検出することができる。酢酸製品についての過マンガン酸塩時間は、70分以上、たとえば、90分以上、110分以上、120分以上、150分以上、250分以上又は、300分以上であるのがよい。
【0025】
アセタールの合計量が高いと、PRCを除去する性能が低下し、処理が非効果的となる。1つの実施形態においては、そのアセタールに、1,1-ジメトキシエタンが含まれていてよいが、それに限定される訳ではない。そのアセタールの合計量には、アセタール化学種に加えて、それらのヘミアセタールが含まれていてもよい。
【0026】
下方流には、その他の有用な成分たとえば、ヨウ化メチル、酢酸メチル、水、及び/又は酢酸が含まれていてもよい。したがって、そのプロセス中の下方流を、直接的又は間接的に反応器に循環することによって戻すのが望ましい。
【0027】
ここから、本発明の1つの実施形態を説明しよう。図1に、メタノールのカルボニル化による連続酢酸プロセスを模式的に示している。このプロセスには、反応器10、蒸発器20、蒸留塔30及び34、樹脂槽37たとえばイオン交換樹脂、分離ユニット40たとえば液-液分離ユニット、蒸留塔50、槽60、並びにアブソーバー90が含まれている。本開示の目的では、下方流52が、蒸留塔50の塔底又は塔底近くから得られる。本明細書に記載の実施形態においては、これらの工程が、ここに図示された工程に限定される訳ではなく、酢酸を製造するための工程には、槽60、蒸留塔34、樹脂槽37、及び/又はアブソーバー90の1つ又は複数が欠けていてもよい。いくつかの実施形態においては、樹脂槽37の上方流又は下方流に位置する、追加の蒸留塔(図示せず)が存在していてもよい。この単純且つ効率的な処理方法を通じて、不純物含量の低い氷酢酸を含む製品流38を得ることができる。必要に応じて、その他の不純物を除去又は分離するための、追加の蒸留塔を使用してもよい。
【0028】
当業者には理解されるであろうが、熱交換器、レシーバー、ポンプ、制御装置、バルブなどを含めて、各種の処理装置が、今や図1の中に詳しく示されている。特に断らない限り、そのような処理装置が欠けているのは、そのような処理装置は、それぞれに見合ったように使用されるであろうと通常の技術者にも理解できるであろう。
【0029】
1つの実施形態においては、塔30の塔頂流31は、1基又は複数のコンデンサーの中で凝縮されて、分離ユニット40の中に捕集される。分離ユニット40は、2相、すなわち主として水からなる上方相41、及び主としてヨウ化C~C12アルキル(非限定的に挙げれば、たとえばヨウ化メチル)からなる下方相42を形成させるための条件を保持している。その上方相41及び/又は下方相42には、PRCを含んでいる可能性があるので、したがって、上方相41a及び/又は下方相42aを蒸留塔50の中へ導入して、PRCを除去又は量を低減させるのが望ましい。供給ライン43を通して、蒸留塔50へ導入される第1の混合物は、上方相41a及び/又は下方相42aのいずれかであってもよいし、及び/又はそれらの流を部分的に組み合わせたものであってもよい。その第1の混合物には、少なくとも1種のPRC、1種又は複数のヨウ化C~C12アルキル、及び水が含まれていてよい。下方流52の中のアセタールの合計量をより低く維持するために、第1の混合物が、比較的に低いメタノール含量を有しているのがよい。1つの実施形態においては、そのメタノールの質量組成が、質量を基準にして、1種又は複数のヨウ化C~C12アルキルと水との間の差より小さい。
【0030】
1つの実施形態においては、蒸留塔30における分離によって得られた上方相41a及び/又は下方相42a(第1の混合物)が、供給ライン43を通して、蒸留塔50の第1の位置(塔頂と塔底との中点)に導入される。いくつかの実施形態においては、溶媒/抽出剤の供給ライン54が、供給ライン43より上に設けられて、蒸留塔50の中で抽出蒸留が実施される。その溶媒としては、水、アルカン、又はそれらの組合せが挙げられる。その溶媒は、メタノール又はその他のアルコール類を一切含まずに供給すなわち導入されるのがよい。このことによって、第1の混合物が、追加のメタノールの供給なしで、蒸留塔50の中で分離されて、第2の混合物と下方流とになることが可能となる。その他の実施形態においては、溶媒供給ライン54は、存在しない。
【0031】
第1の混合物は、蒸留塔50の中で、第2の混合物を形成させるのに十分な条件下で蒸留し、それは、塔頂流51、サイドドロー53、又はそれらの組合せとして、抜き出すことができる。第2の混合物は、第1の位置より上方、塔頂に近い位置で抜き出す。1つの実施形態においては、その第2の混合物には、第1の混合物からのPRCのかなりの部分が含まれているのがよく、それによって、PRCが効率よく分離される。それに加えて、第2の混合物に対して、蒸留塔50は、下方流52も抜き出す。この下方流52は、第1の位置より下方、塔底に近い位置で抜き出す。その下方流52は、より低いセクション、或いは塔の基部に近いところで抜き出すのがよい。本明細書に開示された実施形態のための条件を満足せるためには、その下方流52が、以下の条件(i)~(iii)の少なくとも1つを満足させる:
(i)その下方流の中のアセタールの合計質量組成が、0.02重量%以下である;
(ii)その下方流の中のアセタールの合計質量組成が、下方流の中のメタノールとアセトアルデヒドを組み合わせた質量組成よりも少ない;又は
(iii)その下方流の中のアセタールの合計質量組成が、その第1の混合物の中のメタノールの質量組成よりも少ない。
【0032】
本明細書にさらに記載されているように、PRCを、第2の混合物から、さらに除去又は分離してもよい。このことにより、反応器の中のPRCの合計質量組成が低減され、高品質の酢酸製品の製造が可能となる。
【0033】
図1の反応器10に戻ると、これは、反応工程を実施するための槽である。この反応工程では、カルボニル化反応、好ましくはメタノールのカルボニル化反応を介して、酢酸が連続的に製造される(連続製造工程)。その反応工程では、反応混合物11が製造され、それは、連続的に除去することができる。メタノール及び一酸化炭素が、反応器10へ供給される原料であるが、これらの原料が反応器の中で転換されはするものの、反応器10、さらには反応混合物11の中には、これらの成分の、少量の未反応の質量組成が存在している。その反応混合物にはさらに、金属触媒、ヨウ化メチル、酢酸メチル、助触媒、水、及び酢酸が含まれている。1つの実施形態においては、下方流52が、反応器10に直接循環されてもよい。
【0034】
蒸発器20は、フラッシュ蒸発を実施するための槽である。この蒸発器工程で、反応混合物11から、蒸気状の粗反応生成物21を抜き出し(酢酸抜き出し工程)、触媒の循環流(触媒残渣流)22を反応器10へ戻す。1つの実施形態においては、下方流52が、蒸発器20の底部に供給されてもよいし、或いは、触媒の循環流22と合流して、反応器10に戻されてもよい。触媒を安定化させ、それにより、望ましくない沈降を回避するために、蒸発器20中の条件下で、一酸化炭素の使用可能な流を導入してもよい。1つの実施形態においては、蒸気状の粗反応生成物21の一部を凝縮させて、反応器10に戻し、温度制御を与えてもよい。
【0035】
蒸留塔30は、蒸発器20からの蒸気状の粗反応生成物21を分離するための槽である。この蒸留工程は、蒸気状の粗反応生成物21をさらに精製するためのもので、次の流の内の少なくとも2つを与える:塔頂流31、ボトム32、及び酢酸流33。いくつかの実施形態においては、蒸発器20と蒸留塔30とを組み合わせて結合槽(図示せず)としてもよく、反応器の混合物11を、直接この結合塔に供給する。米国特許第7,790,920号明細書には、そのような結合塔が記載されている(その内容及び開示のすべてを、参考として引用し本明細書に組み入れたものとする)。
【0036】
塔頂流31は、間接コンデンサー中で、冷却液、非限定的に挙げれば、たとえば20℃~120℃、たとえば20℃~90℃、25℃~80℃、又は25℃~45℃の温度を有するプロセス水又は冷却水を使用して、1基又は複数のコンデンサー中で、凝縮させてもよい。1つの実施形態においては、そのようにして得られた凝縮物を、凝縮させた塔頂流に相分離を起こさせるような条件下に維持された、分離ユニット(デカンター)40の中で捕集する。1つの実施形態において、分離ユニット40が、2相、主として水からなる上方相41、及び主としてヨウ化C~C12アルキル(非限定的に挙げれば、たとえばヨウ化メチル)からなる下方相42を形成させる。上方相41及び/又は下方相42は、蒸留塔30に還流させたり、及び/又は反応器10に戻したりしてよい。PRCを除去するために、下方相42a及び/又は上方相41aいずれかの一部を、第2の蒸留塔50の中に導入する。
【0037】
酢酸流33には酢酸が含まれ、蒸留塔30で富化されているために、蒸気状の粗反応生成物21よりも高い酢酸の質量組成を有している。高品質の製品を得るためにさらに、流33の一部を、蒸留、吸収、抽出、又はその他の手段を使用する精製工程に供給して、水、さらにはその他の不純物を実質的に除去して、高品質の酢酸が得られるようにしてもよい。高品質の酢酸は、氷酢酸とも呼ばれ、たとえば2000ppm(重量ppm)以下又は1500ppm以下のような、極めて低い水含量しか有していない。その他の不純物(クロトンアルデヒド、酢酸ブチル、2-エチル-クロトンアルデヒド、プロピオン酸、及びギ酸が含まれる)も同様に、一旦除去されれば、極めて低い含量となっている。
【0038】
以降で、必要に応じて図面を参照しながら、実施形態について詳細に説明する。様々なプロセスで説明されている各工程に少なくとも1つの対応するユニットが存在し、互換的に参照することができる。
【0039】
カルボニル化プロセスのための反応器(10)
反応器10は、均一触媒を使用し、液相中でカルボニル化反応工程を実施するためのユニットである。その反応工程では、酢酸を製造するために、連続方式でメタノールをカルボニル化させる。その反応における出発物質は、液体のメタノール及びガス状の一酸化炭素である。メタノール含有供給流及び一酸化炭素含有供給流を、反応器10に導入し、その中で、カルボニル化反応が起きて、酢酸が生成する。図には示されていないが、両方の供給流上にフロートランスミッターを存在させて、それらそれぞれの流の流れを制御及び/又は監視するのがよい。特に、メタノール含有供給流のマスフローの制御及び/又は監視は、プロセスの効率を測定するには有用である。
【0040】
メタノール含有供給流には、メタノール、ジメチルエーテル、及び酢酸メチルからなる群より選択される、少なくとも1つのメンバーが含まれていてよい。本明細書に記載のプロセスの目的のためには、市販のメタノールを使用することができる。アミン系及び/又は金属系も含め、各種の不純物は、予備処理工程において、そのメタノール含有供給流から除去又は低減させておくのがよい。メタノール含有供給流は、部分的に、リザーバータンク(図示せず)からのフレッシュ供給、システムからの循環された供給、又はフレッシュ供給と循環供給との組合せから導入することができる。メタノール及び/又はその反応性誘導体の少なくとも幾分かは、液状媒体中での酢酸とのエステル化反応によって、酢酸メチルに転換され、したがって酢酸メチルとして存在しているであろう。反応器10中のメタノール(未反応メタノールと呼ばれる)の量は、1重量%以下、たとえば0.8重量%以下、0.5重量%未満、又は0.3重量%未満であってよい。
【0041】
一酸化炭素含有供給流は、主に95体積%以上、例えば97体積%以上、又は99体積%以上の一酸化炭素を含むことができる。いくつかの実施形態では、水素、二酸化炭素、酸素、及び/又は窒素などの少量の不純物は、5体積%未満、例えば3体積%未満又は1体積%未満の量で存在し得る。これらの少量の不純物は、運転条件における様々な副反応によって生成する場合もある。
【0042】
反応器中の一酸化炭素の分圧は、各種変動する可能性があるが、典型的には、絶対圧力で、2~30気圧、たとえば、3~18気圧、又は6~15気圧である。水素は、反応で発生する可能性もあるし、或いは必要に応じて供給してもよいが、触媒活性を増強させはするものの、同時に、アセトアルデヒドも含めた副生物の生成をもたらす可能性もある。反応器中の水素の分圧は、典型的には、絶対圧力で、0.05~5気圧、たとえば、0.25~2気圧、又は0.3~1.8気圧である。副生物の分圧(典型的には、1気圧未満)、及び含まれている液体の蒸気圧のために、反応器内の合計圧力が、15~40気圧(絶対圧力)、たとえば、20~35気圧の範囲となる可能性がある。いくつかの実施形態においては、その反応器の内部圧力を、ガス状流12を抜き出したり、ベントしたりすることによって制御してもよい。
【0043】
典型的なカルボニル化反応の温度は、150℃以上、たとえば、175℃以上、又は185℃以上がよい。範囲で言えば、カルボニル化反応の温度は、150℃~250℃、たとえば、175℃~230℃、又は185℃~205℃がよい。カルボニル化反応は発熱性であり、反応器の温度は、各種の方法で制御するのがよい。本開示の目的では、反応器の温度を制御するために、各種適切な冷却を使用するのがよい。米国特許第5,374,774号明細書には、反応器のための再循環ラインの冷却ユニットが記載されている。カルボニル化反応器の温度を調節しながら蒸気を生成するための追加の熱を生成するために、ポンプアラウンドループを使用することができる。これは米国特許第8,530,696号明細書に詳しく記載されている。いくつかの実施形態では、反応器の温度は、反応器に戻されるフラッシュ塔頂流の一部を凝縮することによって制御することができる。これは米国特許第8,957,248号明細書に詳しく記載されている。
【0044】
酢酸の製造速度は、5~50mol/L・h、たとえば、10~40mol/L・h、また15~35mol/L・hであってよい。「より高い製造速度」とは、一般的には、20mol/L・hより高い運転操作を指している。
【0045】
一酸化炭素は、所望される反応器の内部圧力を保持するのに十分な速度で導入される。いくつかの実施形態においては、一酸化炭素が、カルボニル化反応器の中、望ましくは撹拌機の下に連続的に導入されるが、その撹拌機を使用して、内容物を撹拌し、一酸化炭素をその液状の反応媒体全体に完全に分散させることができる。たとえば、エダクターを備えた槽、又はポンプ循環混合、又はバブル-塔タイプの槽(撹拌機の存在下又は非存在下)など、反応媒体を撹拌するためのその他の方法を採用してもよい。
【0046】
カルボニル化反応器及び、その内部部品(供給ライン及びエフルーエントラインも含む)の材料には、特別な制限はなく、金属、セラミック、ガラス、又はそれらの組合せであってよい。たとえば、その材料としては、高い耐食性を有するジルコニウムベースの材料及び合金が挙げられるが、さらには、鉄ベースの合金(ステンレス鋼)、ニッケルベースの合金(HASTELLOY(商標)又はINCONEL(商標))、チタンベースの材料及び合金、又はアルミニウムベースの材料又は合金も挙げることができる。
【0047】
連続の製造条件下では、各種の気相成分が、形成されたり、或いは液体反応物から発生したりする可能性がある。そのような気相成分としては、以下のものが挙げられる:一酸化炭素、水素、メタン、二酸化炭素、酢酸、酢酸メチル、ヨウ化メチル、ヨウ化水素、アセトアルデヒド、ジメチルエーテル、及び水。いくつかの実施形態においては、そのガス状流に、少量の、1容積%以下、たとえば、0.9容積%以下、0.8容積%以下、0.7容積%以下、又は0.5容積%以下のヨウ化水素が含まれる。各種の気相成分の望ましくない増大を防止するために、反応器の上方部分から、ガス状流12を抜き出したり、ベントしたりしてもよい。
【0048】
反応器10からガス状流12をガス抜きすることによって、ガス状の副生物の増大がさらに低減され、所定の反応器の合計圧力で、設定された一酸化炭素の分圧が保持される。有用な成分のロスを防止するために、1基又は複数のコンデンサーの中で、冷媒を用いた熱交換器によりガス状流12を冷却して、そのガスのパージ流の中に蒸気として存在している凝縮性の各種液体を部分的に凝縮させて、凝縮物部分とガス状部分とに分離させるのがよい。凝縮物部分には、典型的には、有用な液状の反応生成物、たとえば酢酸、酢酸メチル、ヨウ化メチル、アセトアルデヒド、ジメチルエーテル、水、又はそれらの混合物が含まれていて、それは、反応器に戻される。そのガス状部分は、フレア焼却処理をするのがよいが、そのガス状部分には、典型的には、かなりの量の一酸化炭素、水素、メタン、二酸化炭素、及び微少量のヨウ化物、たとえばヨウ化メチル又はヨウ化水素が含まれているので、さらに回収するのが望ましい。
【0049】
ガス状流12はさらに、吸収システム90、たとえばスクラッバーシステム又は圧力スイング吸収塔の中で処理するのがよい。典型的に実施されるのは、ガス状流12を凝縮させ、そのガス状部分(非凝縮性の留分)を、吸収システム90へ供給するのがよい。いくつかの実施形態においては、そのガス状部分が、一酸化炭素含量が比較的に高いために、触媒を沈降に対して安定化させるのに有用である。吸収システム90は、有用な成分、特には、有機成分、さらにはヨウ化メチルを捕集及び/又は回収することができる。冷却した溶媒を、ライン93を介して、吸収ユニット90の塔頂に供給して、残渣92の中のそのような成分を回収して、それを、反応器に戻すのがよい。その冷却した溶媒には、酢酸、メタノール、酢酸メチル、水、又はそれらの混合物が含まれていてよく、20℃以下、たとえば、18℃以下、又は10℃以下の温度に冷却されている。残渣92の中の、捕集されずに残ったガス状体はいずれも、ライン91を介して、塔頂近くから、吸収システム90から放出される。吸収システム90については、1基のアブソーバーしか示していないが、その吸収システムが、複数の吸収塔、さらには溶媒ストリッピング塔を含んでいてもよい。さらには、そのプロセス全体で得られたその他のベント流を集めて、吸収システム90を通して流してもよい。
【0050】
1つの吸収システムに、たとえば、異なった吸収溶媒及び/又は異なった圧力を用いた、複数の吸収工程が含まれる。そのようなシステムは、米国特許第8,318,977号明細書に記載されている(そのすべてを、参考として引用し本明細書に組み入れたものとする)。
【0051】
反応器10に戻ると、反応媒体中の触媒は、メタノールのカルボニル化反応を促進する役割を果たす。商業生産では、金属触媒はメタノールを直接活性化しないため、より反応性の高いメチル基質(反応物)を系内で生成しなければならない。ヨウ化水素などのヨウ化物系促進剤は、メタノールをヨウ化メチルに変換する。しかしながら、反応媒体のほとんどが酢酸であるため、メタノールは酢酸メチルへとエステル化され、これはヨウ化水素によってヨウ化メチルに活性化される。
【0052】
反応媒体の複数の成分は、副生物の生成を抑制しながらも、酢酸の製造及び反応物の利用を十分に確保できる、所定の限度内に、保持される。以下における量は、反応媒体の液相の合計重量を基準にしたものである。連続プロセスでは、成分の量は規定の範囲内に維持され、これらの範囲内での変動が想定される。当業者は、反応媒体中の成分の量を維持するためにプロセスを制御する方法を容易に理解するであろう。
【0053】
その反応媒体には、第VIII族金属触媒、たとえば、コバルト、ロジウム、イリジウム、又はそれらの組合せが、その反応媒体中の金属を基準にして、200~3000ppm、たとえば、800~3000ppm、又は900~1500ppmの量で含まれる。その金属触媒は、均一系触媒であってもよく、樹脂-担持触媒であってもよく、或いは、固定層に担持されていてもよい。
【0054】
反応媒体中の水は、メタノールのカルボニル化反応機構に従って酢酸を形成させるのに有用な成分であり、さらに、反応媒体中の可溶性成分を溶解させる。反応媒体中の水の質量組成は、14重量%以下、たとえば、0.1重量%~14重量%、0.2重量%~10重量%、又は0.25重量%~6重量%、又は1.8~4.1重量%になるように保持される。水の質量組成を制御するために、カルボニル化反応器10に、循環ラインを通すものも含めて、所定の流量で、水を連続的に供給するのがよい。いくつかの実施形態においては、その反応を、水が少ない条件下で実施し、その反応媒体には、0.1~4.1重量%、たとえば、0.1~3.1重量%、又は0.5~2.8重量%の量で水を含むようにする。また別の実施形態においては、その反応を、2重量%以下の量の水、たとえば、0.1~2重量%、又は0.1~1.9重量%の水を用いて実施する。
【0055】
反応媒体中の助触媒は、触媒の活性を助ける、ヨウ化物であってよい。助触媒としてのヨウ化物の非限定的な例としては、ヨウ化メチル、イオン性のヨウ化物、及びそれらの組合せが挙げられる。反応媒体中のヨウ化メチルの質量組成は、1~25重量%、たとえば、5~20重量%、又は4~13.9重量%に保持される。イオン性のヨウ化物は、金属触媒を安定化させ、副反応を抑制することができる。イオン性の金属ヨウ化物の非限定的な例としては、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、及びヨウ化カリウムが挙げられる。反応媒体中のヨウ化物の金属ヨウ化物(イオン性の塩)、たとえば、ヨウ化リチウムの質量組成は、1~25重量%、たとえば2~20重量%、又は3~20重量%に保持される。ヨウ化物塩は、たとえば、酢酸リチウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム、又はその他の、その反応媒体と相溶性のあるアニオンのリチウム塩を添加することによって、インサイチューで形成させることができる。いくつかの実施形態においては、そのプロセスでは、その反応媒体中での酢酸リチウムの質量組成を、0.3~0.7重量%、たとえば、0.3~0.6重量%に保持するのがよい。
【0056】
一般的には、重要なのはその触媒システムの中のヨウ化物イオンの量であって、ヨウ化物に伴うカチオンではない、そして所定のモル質量のヨウ化物では、そのカチオンの性質は、ヨウ化物の効果に比較してそれほど大きくないということが認識されるであろう。各種の金属ヨウ化物塩、又は各種の有機カチオンの各種のヨウ化物塩、又はその他のカチオンたとえば、アミン、又はホスフィン化合物をベースとするもの(場合によっては、三級又は四級カチオン)は、その塩が、その反応媒体の中に十分に可溶性であって、所望のレベルのヨウ化物を与えることができるのであれば、反応媒体の中に保持される。そのヨウ化物が金属塩である場合、それが、「Handbook of Chemistry and Physics」(CRC Press(Cleveland,Ohio)刊),2002-03(第83版)の中に記載されているような、周期律表のIA族及びIIA族の金属からなる群のメンバーのヨウ化物塩あるのが好ましい。特に、アルカリ金属ヨウ化物が有用であり、ヨウ化リチウムが特に適している。
【0057】
上で述べたように、酢酸メチルは、酢酸とメタノールとの間の反応により形成される。その反応媒体の中の酢酸メチルの質量組成は、0.5~30重量%、たとえば、0.5~20重量%、0.6~9重量%、又は0.6~4.1重量%に保持される。
【0058】
酢酸は、その反応の主反応生成物であり、そしてその反応媒体の中の酢酸の質量組成(これは、溶媒の関数でもある)は、一般的には、30重量%以上、たとえば、40重量%以上、又は50重量%以上の量である。その反応媒体の中の酢酸には、スタートアップ時に、前もってその反応器の中に仕込まれた酢酸も含まれる。
【0059】
酢酸反応生成物に加えて、各種の副生物及び/又は不純物も、その反応媒体の中に発生する可能性がある。以前の精力的な検討に基づくと、その反応媒体の中には、たとえば以下のような副生物及び/又は不純物(これらに限定される訳ではない)が存在していることが見出された:水素、メタン、二酸化炭素、ギ酸、ヨウ化水素、無水酢酸、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、2-エチルクロトンアルデヒド、ジメチルエーテル、プロピオン酸、及びヨウ化アルキルたとえば、ヨウ化エチル、ヨウ化へキシル、ヨウ化デシル、及びヨウ化ドデシル(まとめて、ヨウ化C~C12アルキルとして、ヨウ化メチルと共に含まれる)。触媒が単独、又は助触媒との組合せで使用された場合には、ヨウ化水素は、メタノールのカルボニル化反応の反応機構を介して形成される。その反応媒体には、反応媒体の合計の0~1800ppm、たとえば、10~1600ppm、50~1000ppm、50~800ppm、又は100~400ppmの範囲の量で、アセトアルデヒドが含まれていてよい。その反応媒体には、反応媒体の合計の50~5000ppm、たとえば、100~3000ppm、又は200~2000ppmの範囲の量のヨウ化水素が含まれていてよい。いくつかの実施形態においては、その反応媒体には、無水酢酸がさらに含まれていてもよい。反応媒体には、無水酢酸を、その反応媒体の合計の0~5000ppm、たとえば、0.01~3000ppm、又は0.1~1000ppmの範囲の量で含んでいてよい。
【0060】
酢酸を扱う際には、酢酸そのものからだけではなく、その他の成分、特にヨウ化水素からの腐食の問題があり得る。1つの実施形態においては、ヨウ化水素が原因の腐食を防止又は低減させるために、水酸化カリウムを導入してもよい。水酸化カリウムは、注意深く取り扱うべきであるが、その理由は、酢酸カリウムもまた、酢酸と反応して生成される可能性があるからである。これらのカリウム化合物は、循環ラインを通して、反応器10に戻すことができる。酢酸の効率的な製造を保持するために、反応器10におけるカリウム(全部のカリウム源から、非限定的に挙げれば、たとえば、水酸化カリウム及び酢酸カリウムからの)のレベルを、500ppm以下、たとえば、350ppm以下、又は200ppm以下とするのがよい。
【0061】
副生成物は、反応媒体を調節することによって制御することができ、さらに、副生成物は、本明細書でさらに説明する分離プロセスによって除去することができる。例えば米国特許第8,017,802号明細書で記載されているように、ギ酸は、反応器中の含水量及び/又は反応器の温度を制御することによって制御することができ、その結果、酢酸生成物中のギ酸含有量は、160ppm未満、例えば140ppm未満、又は100ppm未満になる。副生成物の分離は、それに伴うコストによって制限される場合がある。副生成物、特に高沸点成分が除去されない場合、成分は酢酸生成物に濃縮される可能性がある。したがって、分離の必要性を減らすために、反応器内での副生成物の生成を制限することが有用である。例えば、いくつかの実施形態では、酢酸生成物中のプロピオン酸の量は、酢酸生成物からプロピオン酸を除去せずに、反応媒体中のヨウ化エチルの量を750ppm以下、例えば400ppm以下、350ppm以下、又は300ppm以下に維持することによって、250ppm未満にさらに維持することができる。
【0062】
蒸発器(20)
定常状態運転の場合においては、反応器10から反応媒体が、流11として、その中で、一定のレベルを保持するに十分な速度で、連続的に抜き出される。酢酸製品を得るためには、流11中の、その抜き出された反応媒体を、それに続く下方流の蒸発器20へ供給するが、それは、フラッシュ蒸発器、フラッシュ槽(たとえば、フラッシャー)、又はフラッシュ蒸留器であってよい。いくつかの実施形態では、変換反応器(図示せず)又は管型反応器(図示せず)を、反応器と蒸発器との間の流路で使用することができる。管型反応器は、米国特許第5,672,744号明細書に記載されており、反応媒体中で溶解した一酸化炭素を反応させるために使用される。中国特許第1043525C号明細書には、後続のフラッシングの前に反応をより大きく進行させることを可能にする変換反応器が記載されている。その転化反応器からは、ガス状成分を含むベント流が生成し、それらは、典型的には、相溶性のある溶媒を用いてスクラビングして、ヨウ化メチル及び酢酸メチルのような成分を回収する。本明細書に記載するように、反応器10及びコンバーターからのガス状流は、組み合わせるか又は別々にスクラビングすることができ、典型的には、酢酸、メタノール、又は酢酸とメタノールとの混合物のいずれかを用いてスクラビングして、そのプロセスからの低沸点成分たとえばヨウ化メチルのロスを防ぐ。
【0063】
蒸発器20では、フラッシュ蒸発又は蒸留(本明細書では、フラッシング又は蒸発と呼ばれる)の工程が実施されるが、それは、複数の槽で実施することが可能であり、触媒の循環流22を反応器10に戻し、酢酸を含む蒸気状の酢酸反応生成物21を分離して、さらなる処理へ送る。いくつかの実施形態においては、そのフラッシングは、加熱の存在下又は非存在下に、流11の中の反応媒体を除圧することによって実施できる。流11は、米国特許第6,599,348号明細書に示されているようにして、上方部分にある1つ又は複数の供給ポートを通して、接線方向に(tangentially)供給することもできる。液体部分を下方に向かわせるために、それぞれの供給ポートで、スプラッシュ棚段を使用してもよい。いくつかの実施形態においては、フラッシングを、断熱的又は恒温的のいずれかで実施して、蒸気温度が100℃~260℃、そして残留液体温度が80℃~200℃となるようにすることができる。蒸発器20の内圧(ゲージ圧)を、0.5気圧~5気圧、たとえば、0.5気圧~3.5気圧、0.5~2.5気圧、又は0.5~1.5気圧とするのがよい。
【0064】
蒸発器20は、円環形(torispherical)、楕円形、又は半球形のヘッドを有する垂直蒸発器であってよい。メンテナンスやアクセスを可能とするために、蒸発器20には、1個又は複数のマンホールがあるのがよい。流11のためのノズルは、蒸発器20の上方部分、たとえば蒸発器20の内部の液体レベルよりは上にあるのがよい。反応媒体を接線方向に導入して、蒸気部分をさらに分離させる、1本又は数本のノズル(図示せず)が存在していてもよい。いくつかの実施形態においては、蒸発器20が、上方部分がその下方部分よりは大きいシリンダー直径を有していてもよい。蒸発器20は、そこへ供給された流11中の反応媒体が、蒸発器20の中に保持されて、所望のカルボニル化反応生成物を、蒸気状の酢酸反応生成物21の中へ蒸発させることを可能とする大きな容積を有しているべきであり、その後で、触媒を循環流22へ循環させる。1つの実施形態においては、蒸発器20の中での滞留時間が、約1分又はそれ以上であるのが望ましく、そしていくつかの実施形態においては、少なくとも2分、又はそれ以上の滞留時間を使用することができる。
【0065】
相互に分離される、蒸気状の酢酸反応生成物21の触媒の循環流22に対する質量比は、10:90から50:50まで、たとえば、20:80から、24:76から、26:74から、30:70から、又は40:60からであってよい。蒸気状の酢酸反応生成物21には、以下のものが含まれる:酢酸、さらにはヨウ化メチル、酢酸メチル、水、過マンガン酸塩還元化合物(PRC)、及びその他の副生物又は不純物。蒸発器の中に入る反応媒体の中の溶解ガスは、濃縮されて、蒸気状の酢酸反応生成物21に入る。その溶解ガスには、一酸化炭素の一部が含まれ、さらには、ガス状の副生物たとえば、メタン、水素、及び二酸化炭素が含まれている可能性がある。
【0066】
蒸発器20の中での、触媒の安定性を保持又は向上させ、そして触媒の沈降を低減又は防止するために、CO含有パージを、蒸発器20の下方セクション、たとえば、供給ノズルより下か、又は触媒の循環流22の中へ導入するのがよい。そのCO含有パージには、60重量%以上、たとえば、80重量%以上、又は90重量%以上の一酸化炭素が含まれていてよい。CO含有パージの量は、蒸発器20の下方部分に保持された液体の中へ、一酸化炭素を溶解させるに十分な量であってよい。1つの実施形態においては、そのCO含有パージを、5Nm/hrより大、たとえば、50Nm/hrより大、又は100Nm/hrより大の量で供給するのがよい。本開示の目的では、上限は存在しないものの、実用的な上限が1000Nm/hrを超えないよう設定するのがよい。
【0067】
触媒を安定化させるためにCO含有パージを使用したときであっても、その内部表面上に沈降した不溶性の形状物が、いくぶんか存在する可能性がある。それが相対的に高価であるために、内部表面上に集まったロジウムの不溶性の形状物は回収して再利用するのがよい。
【0068】
プロセスを連続的に運転している場合、触媒がいくらかロスすることはあり得るので、補給用の触媒を使用する必要が生じる。補給用の触媒は、反応器10に直接添加してもよいが、1つの実施形態においては、補給用の触媒を、蒸発器20又は触媒の循環流22に添加してもよい。補給用の触媒は、連続反応を維持するのに十分な速度で計量仕込みするのがよい。
【0069】
いくつかの実施形態では、任意選択的なミストエリミネーターを蒸気出口の近くで使用することで、液滴を合体させることができる。金属触媒又は他の金属成分から蒸気酢酸反応生成物21への同伴を防止及び/又は低減するために、蒸発器の蒸気出口に任意選択的なスクラビングセクション(図示せず)がさらに使用されてもよい。任意選択的なスクラビングセクションに洗浄液を導入することができる。別の実施形態では、インラインセパレータを蒸気酢酸反応生成物21のラインで使用して旋回運動を付与し、同伴液体を合体させることができる。液体を抜き出して蒸発器20に戻すことで、蒸気酢酸反応生成物21への同伴を低減することができる。
【0070】
蒸気状の酢酸反応生成物21には、酢酸、ヨウ化メチル、酢酸メチル、水、アセトアルデヒド、及びヨウ化水素が含まれている。蒸発器20は、蒸気状の酢酸反応生成物21の中に入る反応媒体の合計を基準にして、ヨウ化メチル及び酢酸メチルの少なくとも80%を蒸発させるのに十分な条件下で、運転するのがよい。いくつかの実施形態においては、蒸気状の酢酸反応生成物21が、蒸気状の反応生成物流の合計重量を基準にして酢酸を45~75重量%の量で、ヨウ化メチルを20~50重量%の量で、酢酸メチルを9重量%以下の量で、そして水を15重量%以下の量で含んでいる。また別の実施形態においては、蒸気状の酢酸反応生成物21が、蒸気状の反応生成物流の合計重量を基準にして、酢酸を45~75重量%の量で、ヨウ化メチルを24~36重量%以下の量で、酢酸メチルを9重量%以下の量で、そして水を15重量%以下の量で含んでいる。より好ましくは、蒸気状の酢酸反応生成物21が、酢酸を55~75重量%の量で、ヨウ化メチルを24~35重量%の量で、酢酸メチルを0.5~8重量%の量で、そして水を0.5~14重量%の量で含んでいる。さらに好ましい実施形態においては、蒸気状の酢酸反応生成物21が、酢酸を60~70重量%の量で、ヨウ化メチルを25~35重量%の量で、酢酸メチルを0.5~6.5重量%の量で、そして水を1~8重量%の量で含んでいる。蒸気状の酢酸反応生成物21の中のアセトアルデヒドの量は、蒸気状の反応生成物の合計重量を基準にして、0.005~1重量%、たとえば、0.01~0.8重量%、又は0.01~0.7重量%である。蒸気状の酢酸反応生成物21には、ヨウ化水素が、蒸気状の反応生成物流の合計重量を基準にして、1重量%以下、たとえば、0.5重量%以下、又は0.1重量%以下の量で含まれる。プロピオン酸、無水酢酸、又はギ酸が存在するのなら、それらは、蒸気状の酢酸反応生成物21の中に、低減された量の、1重量%未満、たとえば、0.5重量%未満の量で含まれる。
【0071】
いくつかの実施形態においては、その蒸気状の反応生成物流の全部が、蒸気状の粗反応生成物21として、蒸留塔30(スプリッター塔又はライトエンド塔とも呼ばれる)に向かう。このことにより、蒸留塔30の中の複数の成分を分離するための、熱エネルギーが供給される。いくつかの実施形態においては、コンデンサー(図示せず)が存在していて、それが、蒸気状の粗反応生成物の一部を冷却し、部分的に凝縮させて、発熱性のカルボニル化反応により発生した熱を効率的に除去する。これらの実施形態においては、冷却によって形成された凝縮された部分が、熱交換器を通過した後で、反応器10に移行することができる。その他の実施形態においては、凝縮された部分が、蒸留塔30に向かい、ボトルネックを解消し、能力を向上させることができる。コンデンサーの中で冷却しても非凝縮性のガス状部分は、吸収システム90に向かうのがよい。
【0072】
触媒の循環流22(これは、液体の循環流である)を、流量を保持する方法で扱うことによって、装置の損傷が防がれ、そして、十分な制御ができるが、渦防止装置(vortex breaker)(図示せず)を、蒸発器20の液体出口の近くで使用してもよい。触媒の循環流22には、フラッシング工程でも、蒸発せずに留まった、酢酸、金属触媒、腐食した金属、さらにはその他の化合物が含まれる。金属触媒は、その可溶性の形態を保持しているのがよい。いくつかの実施形態においては、液体循環流には、酢酸が60~90重量%の量で、金属触媒が0.001~0.5重量%の量で、腐食した金属(たとえば、ニッケル、鉄、及びクロム)が10~2500ppmの合計量で、ヨウ化リチウムが5~20重量%の量で、ヨウ化メチルが0.5~5重量%の量で、酢酸メチルが0.1~5重量%の量で、水が0.1~8重量%の量で、アセトアルデヒドが1重量%以下(たとえば、0.0001~1重量%のアセトアルデヒド)の量で、そしてヨウ化水素が0.5重量%以下の量で(たとえば、0.0001~0.5重量%のヨウ化水素)含まれる。
【0073】
米国特許第5,731,252号明細書(その特許全体を、参考として引用し本明細書に組み入れたものとする)に記載されているようにして、反応器への触媒の循環流22が戻る前に、スリップ流を、腐食した金属の除去床、たとえばイオン交換床を通過させて、各種の同伴された腐食した金属、たとえばニッケル、鉄、クロム、モリブデン及び/又は亜鉛を除去することができる。さらには、米国特許第8,697,908号明細書(その特許全体を、参考として引用し本明細書に組み入れたものとする)に記載されているようにして、腐食した金属の除去床を使用して、窒素化合物、たとえばアミンを除去してもよい。
【0074】
さらには、触媒の循環流22を、蒸留塔からのその他の循環流、又は各種その他の凝縮させた液体流と混合してもよく、その混合物を反応工程の反応器10へ循環させる。触媒の循環流22及び/又は混合物を反応器10に戻すために、ポンプを使用してもよい。
【0075】
いくつかの実施形態では、蒸発工程(加熱あり又はなし)の蒸発率は、20~80質量%、例えば20~70%、25~75%、25~60%、25%~50%、又は30%~40%であってよい。
【0076】
蒸発器のための主要出口ラインである、蒸気状の酢酸反応生成物21及び触媒の循環流22に加えて、必要に応じて、ベント流も蒸発器から抜き出してよい。ベント流は、吸収システム90に向かわせるのがよい。
【0077】
第1の蒸留塔(30)
有用な酢酸は、蒸気状の酢酸反応生成物21の中に含まれており、反応成分及び副生物を除去することにより、高品質の製品をさらに得るのが有利である。1つの実施形態においては、高品質の製品をさらに得るために、蒸気状の酢酸反応生成物21を、第1の蒸留塔30で実施される第1の蒸留工程に供給する。第1の蒸留塔30は、ライトエンド塔又はスプリッター塔とも呼ばれている。分離を可能とさせるために、その第1の蒸留塔30には、棚段塔、充填塔、又はそれらの組合せが含まれている。棚段塔を使用する実施形態においては、その理論段数は、5~80段、たとえば、10~60段又は15~50段の範囲がよい。
【0078】
本明細書に記載するように、蒸留塔30で実施される蒸留工程は、蒸気状の粗反応生成物21をさらに精製するためのものであり、次の流の少なくとも2つを発生させる:塔頂流31、ボトム32、又は酢酸流33(これは、液状の側留抜出しとして、取り出される)。限定される訳ではないが、酢酸流33は、一般的には、ストリッピングセクションより上及び/又は蒸気状の粗反応生成物21の導入ポイントより上で、且つ還流流より下から抜き出される。導入ポイントより下にある、ストリッピングセクションから抜く出された流はいずれも、第1の蒸留塔30におけるボトム32と呼ぶことができる。生じる流の数は、蒸気状の粗反応生成物21の組成及び還流組成に依存する。たとえば、水分量が少ない場合には、塔頂流31及びボトム32又は酢酸流33のいずれかを、酢酸製品を含んでいるとみなすことができる。さらに、酢酸よりも高い沸点を有する成分の量が少ないと、ボトム32から抜き出される量が少なくなる。
【0079】
本開示の目的では、その第1の蒸留塔30が、全部で3本の流で記述されるであろうが、本発明がこれに限定されると考えてはならない。
【0080】
蒸気状の粗反応生成物21が、塔頂流31の中に、連続的に導入されて、分離にかけられて、酢酸流33(サイド流)と、ボトム32とになる。塔頂流31は、第1の蒸留塔30の濃縮部より上、たとえば塔頂近く、及び/又は第1の蒸留塔30の上方の位置から抜き出される。塔頂流31には、水が含まれ、ヨウ化メチル及び/又はアセトアルデヒドの内の少なくとも1つがリッチになっている。塔頂流31の割合は、蒸気状の粗反応生成物21の約20%~60%、たとえば、約35%~50%であってよい。酢酸流33は、主として酢酸が含まれる側留抜出しであって、上方の塔頂流の位置よりは下、且つ蒸気流21の入口位置よりは上の位置から抜き出される。液体のリディストリビューター、すなわちコンフィギャードトレイは、酢酸流33のための液体を捕集することができる。酢酸流33に含まれるのは、ほとんど酢酸である。いくつかの実施形態においては、蒸留塔30の側面に、酢酸流33を抜き出すための、複数のポートが存在していてもよい。酢酸流33の割合は、蒸気状の粗反応生成物21の約30%~80%、たとえば、約40%~70%であってよい。酢酸を大量に製造するために、蒸留塔30は、蒸気状の粗反応生成物21のかなりの量を、塔頂流31よりは、酢酸流33に多く押し込むように運転される。したがって、酢酸流33は、マスフローを基準にして、塔頂流31よりも多くなる。ボトム32は、第1の蒸留塔のストリッピング部分すなわち下方部分、及び/又は第1の蒸留塔30の下方の位置から抜き出すことができる。ボトム32の割合は、蒸気状の粗反応生成物21の、約0%~10%、たとえば、約0~5%、又は約0%~3%であってよい。
【0081】
塔頂流31には、好ましくは、低沸点成分、たとえば水、酢酸メチル、ヨウ化メチル、及びカルボニル不純物が含まれる。第1の塔頂流の中の水分量は、一般的には、5重量%以上である。塔頂流31の中に存在しているカルボニル不純物としては、アセトアルデヒド、さらにはアセトアルデヒドから誘導される各種の副生物、たとえばクロトンアルデヒド及び2-エチルクロトンアルデヒドが挙げられる。
【0082】
次いで、第1の塔30における分離からの主流として、酢酸流33(側留抜出し)を抜き出す。精製を必要とするために、酢酸流33には、質量を基準にして、蒸気状の粗反応生成物21よりも多くの量の酢酸を含んでいるのが好ましい。酢酸の量は、80重量%より大、たとえば、85重量%より大、又は90重量%より大がよい。サイドドロー中の水の質量組成は、還流比に応じて変化し得るものの、通常0.5重量%~5重量%、例えば0.6~3重量%、又は0.7~2.8重量%である。ヨウ化メチルは、好ましくは塔頂流に濃縮されるが、酢酸流33中にも6重量%以下、例えば3重量%以下又は1.7重量%以下の少量で存在し得る。同様に、酢酸メチルの質量組成は、塔頂流31よりも酢酸流33で低く、3重量%以下、例えば1.5重量%以下又は1.2重量%以下であってよい。
【0083】
酢酸流33の一部を凝縮させて、蒸留塔30に戻して、酢酸流33の純度をさらに向上させ、そしてその他の成分、特にヨウ化物及び水分量を減らすのがよい。
【0084】
高品質の製品のための精製を達成するための1つの実施形態においては、酢酸流33を蒸留塔34に供給する。蒸留塔34は、酢酸を下方部分に濃縮し、主として水を塔頂流の中に除去するが、そのため、これは、乾燥又は脱水塔とも呼ばれる。蒸留塔34は、蒸留塔35の下方部分でのボトム流又は塔底近くの流である、下方流35の中の水分量を低減させるのに十分な条件下で運転し、それにより、酢酸流33よりも酢酸リッチにさせるのがよい。塔頂流36は凝縮させて、必要に応じて還流させ、残りは反応器10に戻す。その下方流35は、さらに、イオン交換樹脂槽37を通過させて、ヨウ化物を除去するのがよい。効果的に採用される、銀で交換されたカチオンイオン交換樹脂ベッドは、下方流35の中のヨウ化物を除去するには十分である。いくつかの実施形態においては、追加の分離ユニットを存在させてもよく、非限定的に挙げれば、たとえば以下のものである:さらなる不純物を除去するための、蒸留塔34の上方流、蒸留塔34とイオン交換樹脂槽37との間、又はイオン交換樹脂槽37の下方流に位置する、蒸留、セパレーター、蒸発器、抽出器、又はその他の分離槽。製品は、流38から、高品質の酢酸製品として捕集することができる。
【0085】
ロジウムなどの同伴触媒が蒸留塔34に入らないように隔離する一実施形態では、蒸留塔30の下流に樹脂床(図示せず)が存在していてもよい。同伴される触媒は、最大100ppbの量の場合がある。この樹脂床は、定常運転中に酢酸流33を処理するために運転することができ、再生のためにオフラインで取り出すことができる。蒸留塔30の下流の樹脂床は、流33の腐食性のため、ニッケルベース又はジルコニウムベースの冶金が有効である。樹脂床は、窒素含有ヘテロ環繰り返し単位を有するポリマーを含むポリマー基材であってもよく、これには、限定するものではないが、ビニルピロリドンやビニルピリジン樹脂が含まれる。そのような適切な樹脂は、米国特許第7,902,398号明細書に詳しく記載されており、その内容及び開示の全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0086】
第1の蒸留塔30に戻ると、ボトム32は、比較的少量の流であって、酢酸、水、及びその他の成分(ヨウ化メチル、酢酸メチル、メタノール、同伴された触媒、及び/又はプロピオン酸)を含んでいる。その他の成分の量は、一般的には、ボトム32の中の水分量よりも少ない。ボトム32の中の水は、0.5重量%~5重量%、たとえば、0.6~3重量%の範囲であってよい。ボトム32の中の酢酸は、60重量%~99重量%、たとえば、80~98重量%の範囲であってよい。ボトム32は、連続的、又は必要に応じて、反応器10及び/又は蒸発器20のいずれかに戻すことができる。
【0087】
第1の蒸留塔30の内部温度は、内部圧力に応じて変化する。0.6~3気圧(ゲージ圧)、たとえば、0.7~1.5気圧の操作圧力を採用するのがよい。1つの実施形態においては、約1気圧の内部圧力を用い、その第1の蒸留塔が、50~180℃、たとえば、70~170℃、80~160℃、又は90~150℃の塔頂温度(塔頂流温度)を有している。いくつかの実施形態においては、第1の蒸留塔30における蒸留工程のための熱エネルギー(たとえば、熱)が、主として、蒸気状の粗反応生成物21により供給される。いくつかの実施形態において、補助的/漸増的な熱が必要とされる場合には、リボイラーを備えるのがよい。
【0088】
図1に示されているように、塔頂流31は、1基又は複数のコンデンサー(図示せず)の中で凝集させ、その凝縮物は、レシーバー(デカンター)40の中に捕集することができる。1つの実施形態においては、その冷却が、たとえばプロセス水又は冷却水を使用する間接コンデンサーによって達成され、その凝縮物及び非凝縮物の蒸気は、レシーバーの中で捕集される。レシーバー40内部の条件は、相(液-液分離)が形成されて、不純物(主としてアセトアルデヒド)の除去が改良されるのに都合のよいように保持される。好ましい条件下では、第1の塔頂流31が、レシーバー40の中で分離(二相分離)して、上方相(水相)41と下方相(有機相)42とを形成する。典型的には、その上方相41が、水リッチであり、その下方相42が、ヨウ化メチルリッチである。その相分離は、2つの別々の相が保持されて、第3の相が形成されたり、それの相の間にエマルションが形成されたりということがあってはならない。必要に応じて、1つ又は複数のベント流(図示せず)が、レシーバー40から抜き出され、捕集された非凝縮性ガスが除去される。本明細書に記載の、非凝縮性ガスを含むその他の流と同様に、特にベント流は、アブソーバー90で処理することができる。
【0089】
レシーバー内での凝縮された成分の平均滞留時間は、1分以上、たとえば、3分以上、5分以上、10分以上であってよい。いくつかの実施形態においては、レシーバー内で凝縮された成分の平均滞留時間が、60分以下、たとえば、45分以下、30分以下、又は25分以下である。それに加えて、塔頂デカンターは、ヨウ化メチルの過剰ホールドアップを防止するために、低い界面レベルが保持できるように、配列され、構成されているのがよい。レシーバー内部での相分離温度は、-5℃以上且つ70℃以下、好ましくは20℃~45℃であってよい。分離の時の温度が、75℃より高いか、又は-10℃より低い場合には、液-液分離を達成することができない。
【0090】
第1の塔頂流31の組成には、水、ヨウ化メチル、PRC、又はその他公知の化合物が含まれていてよい。二相に分離することが可能な、第1の塔頂流31の組成としては、典型的な成分(アセトアルデヒド、ヨウ化メチル、酢酸メチル、酢酸、及び水など)を記述することができるが、その塔頂流及びその他のプロセス流には、不可避的に、以下で説明するようなその他の微少成分(非凝縮性ガス及び/又は不純物を含む)が含まれる。本明細書で使用するとき、それぞれの流は、不純物も含めて、重量基準で100重量%の合計量を有している。
【0091】
上方相41は、典型的には酢酸メチル、酢酸、ヨウ化水素、アセトアルデヒド、ジメチルエーテル、メタノール、及び少量のヨウ化メチルと共に、主に水を含む。ヨウ化メチルは、酢酸メチル、アセトアルデヒド、ジメチルエーテル、ヨウ化水素、メタノール、並びに少量の水及び酢酸をさらに含む下方相に濃縮される。ヨウ化水素、ギ酸、ジメチルエーテル、及びクロトンアルデヒドなど(ただしこれらに限定されない)の他の副生成物及び不純物が微量で存在する場合がある。上方相及び下方相中の1,1-ジメトキシエタンの質量組成は、2重量%以下、例えば1重量%以下又は0.5重量%以下であってよい。いくつかの実施形態では、上方相のアセトアルデヒドの量は、重量%基準で下方相よりも大きい。例えば、上方相は、表1に示す以下の組成を有し得る。
【0092】
【表1】
【0093】
本開示で提供される表で使用される場合、記号の「<」は、「表示された値以下」又は「最高で表示された値まで」を意味しており、そしてその成分が任意成分であってよいということを示している。
【0094】
上方相又は下方相から十分な還流流れを得ることができる。いくつかの実施形態では、上方相41bの一部を、第1の蒸留塔30に還流することができる。第1の蒸留塔30に対する上方相の還流比(上方相還流量41b/上方相留出物量41a)は、0.5~20、例えば1~15、又は1.5~12である。下方相42bを還流させる場合には、上方相41bと共に還流させてもよい。
【0095】
下方相(主としてヨウ化メチルである)又はその一部を、反応器10へ戻す(循環させる)。いくつかの実施形態では、下方相の一部を単独で、又は上方相とともに第1の蒸留塔30に還流することができる。下方相の比重は、1.3~2、例えば1.5~1.8、1.5~1.75、又は1.55~1.7であってよい。米国特許第6,677,480号明細書に記載されているように、下方相で測定される比重は、反応媒体中の酢酸メチルの量に相関し得る。比重が減少するのに伴い、反応媒体中の質量に基づく酢酸メチルの量が増加する。いくつかの実施形態では、レシーバーは、低い界面レベルを維持してヨウ化メチルの過剰な滞留を防止するように配置及び構築される。例えば、下方相は表2に示す以下の組成を有し得る。
【0096】
【表2】
【0097】
重量に基づいた、レシーバーから抜き出される下方相の流量に対するレシーバーから抜き出される上方相の流量の比は、例えば約0.1/1~10/1(例えば約0.3/1~3/1)、好ましくは約0.5/1~2/1(例えば約0.7/1~1.5/1)であってよい。
【0098】
オフガスは、必要に応じて、第1の蒸留塔30及び/又はレシーバー40からベントされて、アブソーバー90に向かわせるのがよい。
【0099】
連続プロセスでは、流れに変動が存在する場合があり、これを調整しないままにすると、中断が生じたり処理が困難になったりする可能性がある。これらの変動を考慮するために、プロセスは、第1の蒸留塔30とレシーバー40との間、又はレシーバーの後に上方相41又は下方相42のいずれかの流れを緩衝するための保持タンクが配置されてもよい。使用される場合、保持タンクはレシーバー40を出入りする流れの最大20%の変動を考慮したサイズにされる。
【0100】
第2の蒸留塔(50)
このプロセスでは、レシーバー40における液-液分離に加えて、第1の混合物(第1の塔頂流31又はその一部[上方相41a及び/又は下方相42aのどちらか])を、抽出剤54(たとえば、水)と接触状態にする抽出工程を具体化させて、アセトアルデヒド抽出物(第2の混合物)に分離する。これによって、抽出工程の中の第1の塔頂流31又はその一部を、直接的に水と接触状態として、アセトアルデヒド抽出物とすることが可能となる。その抽出工程は、第2の蒸留塔50の中で達成できる。蒸留は、バッチ式蒸留又は連続蒸留のいずれかで行うことができる。分離を可能にするために、第2の蒸留塔50は、棚段塔、充填塔、又はこれらの組み合わせを含むことができる。棚段塔を使用する実施形態では、その棚段の理論段数は、1~100段、例えば2~80段又は5~75段の範囲であってよい。
【0101】
1つの実施形態においては、第1の塔頂流31又はその一部(上方相41a及び/又は下方相42aのいずれか)を捕集し、供給ライン43を介して、第2の蒸留塔50の、その第2の蒸留塔50の塔頂と塔底との間に位置する第1の位置に向かわせる。供給ライン43の組成(第1の塔頂流31からもたらされ、本明細書においては、第1の混合物と呼ばれている)には、除去するべき、適切な量の過マンガン酸塩還元化合物、非限定的に挙げれば、たとえばアセトアルデヒドが含まれており、0.05~50重量%、0.05~10重量%、0.1~5重量%、又は0.1~1重量%の量の、そのような成分の質量組成を有していてよい。したがって、過マンガン酸塩還元化合物の目標量を、供給ライン43から分離することができる。本明細書で使用される「過マンガン酸塩還元化合物の質量組成」又は「過マンガン酸塩還元化合物質量組成」という用語は、全ての過マンガン酸塩還元化合物の総質量組成であってもよく、或いは各過マンガン酸塩還元化合物の質量組成であってもよい。代表的な過マンガン酸塩還元化合物としてはアセトアルデヒドが挙げられる。
【0102】
供給ライン43における第1の混合物にはさらに、その他の成分、非限定的に挙げれば、たとえばヨウ化C~C12アルキル(ヨウ化メチルを含む)、酢酸、酢酸メチル、水、及び/又はメタノール、その他が含まれていてもよい。混合組成物が、下方流及び上方流の一部からもたらされる場合には、その第1の混合物には、過マンガン酸塩還元化合物に加えて、ヨウ化C~C12アルキル(2.5重量%~90重量%、たとえば、10重量%~85重量%、又は20~70重量%)、及び水(0.5重量%~90重量%、たとえば、1重量%~90重量%、又は1.5重量%~85重量%)の質量組成を有していてよい。代表的なヨウ化C~C12アルキルは、ヨウ化メチルである。1つの実施形態においては、ヨウ化C~C12アルキルの質量組成が、水の質量組成よりも大きい。重要なのは、供給ライン43において、過マンガン酸塩還元化合物、ヨウ化C~C12アルキル、及び水の質量組成が、本明細書に開示された、広い範囲から選択することができる組成が存在するということである。供給ライン43の中の組成物は、均一な液体であっても、或いは下方流及び上方流の混合物であってもよい。供給ライン43の中の組成物にはさらに、酢酸メチルが、30重量%まで、たとえば、0.1~28重量%、又は1~20重量%の量で、酢酸が、25重量%まで、たとえば、0.01~12重量%、又は0.5~7.5重量%の量で、そしてジメチルエーテルが、1重量%まで、たとえば、0.001~1重量%、又は0.004~0.8重量%の量で含まれていてよい。
【0103】
供給ライン43にレシーバー40からの下方相42aが含まれている場合には、その供給ライン43は、前の表2に示された組成を有している可能性がある。必ず好ましいという訳ではないが、供給ライン43にレシーバー40からの上方相41bが含まれている場合には、その供給ライン43は、前の表1に示された組成を有している可能性がある。
【0104】
これらの成分に加えて、その混合組成物にはさらに、メタノールが含まれていてもよい。そのメタノールは、未反応のメタノールであってもよいし、或いは分離及び/又は蒸留プロセスの間に二次反応により生成したメタノールであってもよい。1つの実施形態においては、その第1の混合物が、質量を基準にして、1種又は複数のヨウ化C~C12アルキルと水との間の差より小さい、メタノールの質量組成を有している。水の質量組成が、1種又は複数のヨウ化C~C12アルキルの質量組成を超えている場合には、そのメタノールの質量組成が、水と1種又は複数のヨウ化C~C12アルキルと間の差よりも少ないのがよく、そしていくつかの実施形態においては、ゼロであってもよい。1つの実施形態においては、1種又は複数のヨウ化C~C12アルキルの質量組成を、主としてヨウ化メチルを含む、下方相42からその第1の混合物を誘導することによって、増大させることもできる。したがって、供給ライン43の中の第1の混合物において、上方相41ゼロを含めて、上方相41をより少なく使用することによって、水の質量組成を制御することができる。したがって、第1の混合物での、下方相42対上方相41の具体的な重量比は、100:0~10:90、たとえば、100:0~40:60、100:0~60:40、又は100:0~80:20の範囲がよい。これにより、第2の蒸留塔50に導入されるメタノールの量が制御される。1つの実施形態においては、第1の混合物の中のメタノールの質量組成が、2重量%以下、たとえば、1.8重量%以下、1.5重量%以下、1.1重量%以下、1.0重量%以下、又は0.5重量%以下があってよい。第1の混合物の中のメタノールの下限は、0.01重量%より大、たとえば、0.05重量%より大、又は0.1重量%より大であるのがよい。
【0105】
第2の蒸留塔50は、塔頂流51又はサイドドロー53として抜き出すことができる第2の混合物と、下方流52とを分離するように機能する。いくつかの実施形態では、第2の混合物は塔頂流51(又はその一部)及び/又はサイドドロー53(又はその一部)を含む。第2の蒸留塔50における抽出により、供給ライン43よりも大幅に多いアセトアルデヒドを含む第2の混合物が得られる。それにより、第2の混合物におけるヨウ化メチルに対するアセトアルデヒドの比は、重量基準で、第1の混合物におけるヨウ化メチルに対するアセトアルデヒドの比よりも大きい。第2の混合物は、第2の蒸留塔50で蒸留又は処理された主要なPRCであるアセトアルデヒドを含み、これは、さらに詳細に説明するように、プロセスからアセトアルデヒドを除去するために、又はアセトアルデヒドの量を減少させるために、その後処理することができる。第2の混合物は、第1の位置よりも高い、第2の蒸留塔50の頂部の近くで抜き出すことができる。精留を提供するために、一実施形態では、第1の位置と第2の混合物が抜き出される位置との間に少なくとも1つ以上の実際の棚段が存在していてもよい。
【0106】
一実施形態では、アセトアルデヒドは、ヨウ化メチルの損失を低減する効率的なプロセスでヨウ化メチルから分離することができ、第1の混合物が酢酸メチル、メタノール、酢酸、又はこれらの組み合わせを含むように製造された場合であっても機能又は作用することができる。特に、アセトアルデヒドは、下方流52中のアセトアルデヒドの量を低減するために、第1の混合物から分離される。下方流52は、ヨウ化メチルと酢酸メチルの相対量のため、液体再循環として(直接的に又は間接的に)反応器10に戻すことができる。間接循環とは、これらの流が、反応器10へ戻る前に、下方流52をさらに加工することが可能な、また別の槽を通過するプロセスを指している。直接再循環には、再循環流を1つ以上の他の再循環流と一緒にすることが含まれ得る。
【0107】
下方流52の中のアセトアルデヒドの質量組成が低減又は抑制されるものの、再循環でアセトアルデヒドに変換され得るアセトアルデヒドの反応副生成物を制御することも有用である。特に、第2の蒸留塔50の抽出工程で形成される傾向があるアセトアルデヒドの1つの副生成物は、1,1-ジメトキシエタンなどの(ただしこれに限定されない)アセタール又はヘミアセタールである場合がある。メタノールとの様々な二次反応又は副反応により、アセトアルデヒドは1,1-ジメトキシエタンに変換され得る。アルデヒドと比較してアセタールの沸点が比較的高いため、アセタールは下方流52に落ち、その後再循環される。1,1-ジメトキシエタンは64℃の沸点を有する。アセタール及び/又はヘミアセタールが生成することにより、第2の蒸留塔の効率が低下するが、その理由は、アセトアルデヒドが効果的に除去されるかわりに、下方部分でアセタールが増大し、それが反応器に戻るからである。可逆反応によって、循環されたアセタールからアセトアルデヒドが生成する可能性があり、それにより、第2の蒸留塔50の効率が低下するからである。アセタールの量を増加させ得る要因は多数存在し、これには、最初の混合物中に、又は別々に、過剰なメタノールが第2の蒸留塔50に導入される場合が含まれる。第2の蒸留塔50の温度及び還流比も、アセタールの量に影響を与える可能性がある。
【0108】
したがって、1つの実施形態においては、以下の条件(i)~(iii)の少なくとも1つが満足された場合に、下方流52が、第2の蒸留塔50から抜き出される:条件(i)下方流の中のアセタールの合計量が、0.02重量%以下であるとき。条件(ii)その下方流の中のアセタールの合計質量組成が、下方流の中のメタノールとアセトアルデヒドを組み合わせた質量組成よりも少ないとき。条件(iii)その下方流の中のアセタールの合計質量組成が、その第1の混合物の中のメタノールの質量組成よりも少ないとき。第1の混合物がメタノールを含まず、そのような実施形態で、下方流がアセタールを含まない場合に、条件(iii)が満たされる、ということは考えられる。三つの条件をすべて満足させるプロセスは、本開示の範囲及び予見の範囲内ではあるが、より低いアセタールの質量組成を保持するためには、三つの条件をすべて満足させる必要はない。いくつかの実施形態においては、それらの条件の内の2つ、たとえば、条件(i)と条件(ii)、又は条件(i)と条件(iii)が満足されればよい。その他の実施形態においては、それらの条件の1つが満足されればよい。
【0109】
第2の蒸留塔50には、図1に抽出剤54として示されている、その混合物からアセトアルデヒドを抽出するのに適した組成を有する抽出剤を供給すればよい。抽出剤は、第1の混合物からアセトアルデヒドを抽出するのに適した組成物とすることができる。処理を容易にするために、抽出剤は、液-液分離及び/又は膜分離などの低エネルギー技術を使用してヨウ化メチルから分離可能であってもよい。抽出剤は、水、混合溶媒、又は水溶性有機溶媒(グリコール、グリセリン、アセトン、エーテル、及び/又はエステル)を抽出することを含んでいてもよい。水を導入することは、抽出混合物を液-液分離状態に維持するのに有利であり、そのため、抽出剤は、80重量%以上の水、例えば90重量%以上の水、又は95重量%以上の水を含むようにされる。一実施形態では、過剰な形成を防止するために、抽出剤は実際にはメタノール又は他のモノアルコールを含まない。したがって、第2の蒸留塔50に追加のメタノールは供給されない。水又は水含有抽出剤が好ましい抽出混合物ではあるものの、いくつかの実施形態においては、第2の蒸留塔50で、水を追加することなく、供給ライン43の混合組成物を蒸留してもよい。
【0110】
一実施形態では、供給される水は、プロセス外部の未使用の水の供給源からのものであってよい。別の実施形態では、抽出剤のための供給される水は、第2の蒸留塔50の頂部に再度送られる水を含む内部流であってもよい。上方相41、蒸留塔34の塔頂流36、又は溶媒回収塔からの水抽出剤も含めて、各種適切な内部流を使用してよい。一実施形態では、0.1重量%以下のメタノールの質量組成を有する内部流などの、メタノールが少ない内部流を抽出剤として使用することが好ましい。内部流が多量のメタノールを含む場合には、適切な方法でメタノールの量を減少させるために、これらの内部流を処理することができる。これらの内部流に含まれる全てのアセトアルデヒド又は他のPRCは、第2の混合物で回収することができる。
【0111】
図1に示されているように、第2の蒸留塔50は、抽出蒸留によって、供給ライン43の成分を分離する。一実施形態では、供給ラインは、第1の位置よりも上にある第2の蒸留塔50の上部ゾーンに導入される抽出剤54で抽出することができる。一実施形態では、抽出剤54は、第1の位置から離れた第2の蒸留塔50の頂部に導入することができる。したがって、抽出剤54が上方相41の一部を含むようにされる実施形態では、上方相41は、供給流の上方に、供給流とは別に供給される。PRCの質量組成は上部ゾーンでより高く、このゾーンに抽出剤54を導入すると抽出剤混合物が得られ、これはアセトアルデヒド及び他のPRCを多く含む第2の混合物(塔頂流51又はサイドドロー53のいずれか)として抜き出される。アセトアルデヒドを含むPRCが下流の流れとは対照的に第2の混合物(塔頂流又はサイドドロー)の中に抽出される場合には、比較的少量の抽出剤を使用することができる。例えば、ライン43中の第1の混合物に対する抽出剤54の流量比(重量基準)は、0.0001/100~100/100の範囲、例えば0.001/100~50/100、0.0001/100~20/100、0.001/100~10/100、0.01/100~8/100、又は0.1/100~5/100の範囲であってよい。
【0112】
第2の蒸留での抽出蒸留工程の使用においては、PRC及びヨウ化C~C12アルキルは、そのプロセスでのエネルギーの必要量を低減させるような効率のよい方法で処理されるのがよい。
【0113】
抽出蒸留によって、第2の蒸留塔50の段数を減らすことが可能となる。一実施形態では、第2の蒸留塔は、100段以下、例えば80段以下、又は45段以下有する。供給流の位置と抜き出された第2の混合物の位置を説明するために、以下の実施例は50段を使用して提供されており、下方流(底部)52は0番目の棚段であり、塔頂流51は50番目の棚段である。これらの実例は、異なる量の段又は棚段を有する蒸留塔に適用することができる。供給ライン43が導入される第1の位置は、1番目の棚段から35番目の棚段まで、例えば3番目の棚段から25番目の棚段まで、又は5番目の棚段から20番目の棚段までの範囲で選択することができる。第2の位置がコレクタートレイなど第1の位置の上方にある棚段から抜き出されることを条件として、サイドドローを抜き出すための第2の位置は、20番目から49番目の棚段、例えば25番目から48番目の棚段、又は35番目から48番目の棚段の範囲で選択することができる。一実施形態では、第2の位置と第1の位置とを分離する少なくとも1つの棚段、例えば少なくとも5つの分離棚段が存在していてもよい。抽出剤54は、頂部、例えば50番目の棚段に添加されてもよいものの、いくつかの実施形態では、抽出剤は、45番目から50番目の棚段、例えば45番目から49番目の棚段の範囲で選択された位置に添加することができる。
【0114】
抽出効率は、抽出剤54を上部ゾーンに向流的に添加することによって増加させることができる。さらに、抽出剤54は、噴霧若しくは散布、又は液滴形態での添加などの任意の他の適切な方法によって添加することができる。一実施形態では、抽出剤54は、0℃~60℃、例えば10℃~50℃、及び20℃~40℃の温度を有することができる。別の実施形態では、プロセスは、抽出剤を30℃~150℃、例えば50℃~110℃又は60℃~110℃の温度に予熱又は加温することを含み得る。
【0115】
図1に示されているように、第2の蒸留塔50には、コレクタートレイ(棚段)55(これは、ハットトレイ又はチムニートレイとも呼ばれる)が備わっていて、供給ライン43から上方のゾーンに対して蒸気の良好な分配を可能とし、サイドドロー53として抜き出される抽出混合物の全量を保持している。任意の適切なコレクタートレイ55の設計を、本明細書に記載の実施形態で使用することができる。コレクタートレイ55は、サイドドロー53が取り出される位置に実際には配置され、したがって、抽出剤54はコレクタートレイ55の上方に添加される。これにより、第2の蒸留塔50の上部から落ちる液体をコレクタートレイ55で受けることが可能になる。図1には示されていないものの、コレクタートレイ55が混合組成物の供給位置よりも低い位置に配置される場合には、コレクタートレイ55は下方流52の上方に位置する。
【0116】
一実施形態では、第2の蒸留塔50は、少なくとも1つのコレクタートレイ55を備える。複数のコレクタートレイを有する蒸留塔については、抽出剤54は最も上のコレクタートレイの上方に添加することができる。
【0117】
一実施形態では、第2の蒸留塔50はコレクタートレイを備えており、抽出剤又は抽出水は、コレクタートレイ55の上方の上部ゾーンに添加される。上部ゾーンは、第1の位置と蒸留塔50の頂部との間の空間に形成される。アセトアルデヒドは、PRCとしては比較的に低い沸点を有しており、そして上方ゾーンの中で第2の混合物を形成するヨウ化メチルは、ヨウ化C~C12アルキルとしては比較的に低い沸点を有している。一実施形態では、コレクタートレイ55は、第2の蒸留塔50の上方の位置に配置することができる。上部ゾーンからサイドドロー53を抜き出すことによってPRCが効率的に抽出されるため、コレクタートレイ55の位置は、供給ライン43(混合組成物)の第1の位置よりも実際には上である。コレクタートレイ55は、特定の位置に限定されず、第1の位置の高さレベルと同じ高さレベルに配置されてもよく、或いは第1の位置よりも下の下部ゾーンに配置されてもよい。
【0118】
第2の蒸留塔50におけるコレクタートレイ55の高さレベルは、供給ライン43の第1の位置よりも上方である。コレクタートレイ55が使用される場合、そのコレクタートレイは、蒸留塔の棚段を置き換えることができる。第2の蒸留塔の棚段の数に応じて、コレクタートレイ55の高さレベルは、塔の最上段(塔の頂部から1番目の棚段)と供給ライン43よりも少なくとも1段上にある棚段との間であるか、又は第2の蒸留塔の頂部若しくはその近くに配置される。蒸留塔の棚段の総数が50である場合、コレクタートレイ55の高さレベルは、蒸留塔の頂部から1番目の棚段から35番目の棚段まで、例えば2番目の棚段から30番目の棚段まで、又は2番目の棚段から15番目の棚段までの範囲から選択することができる。これらの実例は、異なる量の段又は棚段を有する蒸留塔に適用することができる。
【0119】
第2の蒸留塔50のための運転条件は、第2の混合物を回収するための抽出環境を保持する。理解されるように、第2の蒸留塔50の内部温度は、塔頂圧力(絶対圧)と関係する。この圧力は、通常100kPa~500kPa、例えば100kPa~250kPa、又は100kPa~200kPaの圧力内に制御又は維持される。大気圧(約101kPa)では、第2の蒸留塔は、15℃~120℃、例えば15℃~100℃、又は15℃~80℃の頂部温度、及び35℃~165℃、例えば40℃~150℃、又は40℃~115℃の底部温度で運転される。一実施形態では、底部温度は、第2の混合物の中に抽出するための上部ゾーンにアセトアルデヒドを向かわせるために、コレクタートレイ55の下方でアセトアルデヒドが気体状態に維持される温度よりも上に維持される。
【0120】
PRC(アセトアルデヒドなど)とヨウ化C~C12アルキル(ヨウ化メチルなど)の両方との親和性を有する傾向がある酢酸メチル及び/又は酢酸の存在にかかわらず、アセトアルデヒドは、供給ライン43内の混合組成に応じて、第2の混合物の中に効果的に抽出され得る。一実施形態では、第2の混合物(塔頂流51及び/又はサイドドロー53を含む)の中のアセトアルデヒドの量は、質量基準で第1の混合物中の量の5~1000倍、例えば10~500倍又は20~300倍である。
【0121】
一実施形態では、第2の混合物はサイドドロー53から取り出され、塔頂流51は凝縮され、第2の蒸留塔50の頂部で還流される。いくつかの実施形態では、第2の蒸留塔50の頂部から取り出される留出物が存在し得るものの、通常塔頂流51の凝縮した部分が還流される。塔頂流51は、15℃~120℃の温度で第2の蒸留塔50を出るので、コンデンサー(又は必要に応じて複数のコンデンサー)は、塔頂流51をヨウ化メチルの沸点よりも低い温度まで凝縮することができる。凝縮された液体57は、塔頂流レシーバー56に溜まり、ライン58を介して還流される。抽出条件を維持するために、ライン58は、抽出剤54の位置とサイドドロー53の抜き出し位置との間(例えばコレクタートレイ55の上方)で第2の蒸留塔50に入ることができる。この還流は、過剰量の抽出剤、すなわち水が塔頂流51に存在することを防ぐために使用することができる。
【0122】
第2の蒸留塔50の下部には、混和性溶媒を直接的に又は間接的に供給することができる。この溶媒は、ヨウ化メチルを含むプロセス流と混和する。混和性溶媒は、水、酢酸、ヨウ化メチル、及びメタノールからなる群から選択される少なくとも1つの成分であってよい。添加される場合、混和性溶媒は、コレクター棚段55から抜き出されるサイドドロー53の量に対して30重量%以下、例えば15重量%以下、又は10重量%以下であってよい。
【0123】
塔頂流51の組成は、通常、残りの有機成分の総質量組成を超えるPRCとヨウ化C~C12アルキルの総質量組成を有する。一実施形態では、塔頂流51の組成は、1~75重量%、例えば5~65重量%又は10~50重量%の総PRC質量組成、及び1~85重量%、例えば10~80重量%、又は20~60重量%のヨウ化C~C12アルキルの質量組成を有し得る。残りの有機成分は、酢酸メチル、酢酸、メタノール、及びジメチルエーテルを含むことができ、これらは10重量%以下、例えば5重量%以下の量を含み得る様々な量である。塔頂流51中の水の質量組成は、供給ライン43中の供給流組成物中の水よりも少なくてよい。塔頂流51は、20重量%以下、例えば15重量%以下、10重量%以下、又は5重量%以下の水の質量組成を有し得る。塔頂流51は、最大10重量%、例えば最大5重量%、又は最大1重量%の酢酸メチルの質量組成を有し得る。塔頂流51は、最大10重量%、例えば最大5重量%、又は最大1重量%の酢酸の質量組成を有することができる。通常、供給ライン43内の酢酸を減らすことによって可能な限り少ない酢酸の質量組成にすることが望ましい。同様に、塔頂流中のジメチルエーテル及びメタノールの質量組成も低レベルに維持することができる。塔頂流中のジメチルエーテルの質量組成は、1.8重量%以下、例えば1.5重量%以下、又は1重量%以下であってよく、塔頂中のメタノールの質量組成は、0.55重量%以下、例えば0.35重量%以下、又は0.25重量%以下であってよい。
【0124】
いくつかの実施形態では、第2の混合物は、塔頂流51であってもよく、或いは塔頂流51の一部を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、塔頂流51は凝縮され、留出物部分は、PRCを除去するための第2の混合物として使用される。図1に示されている実施形態では、塔頂流51の組成物は、塔頂流レシーバー56内で水相59と有機相58とに相分離可能であってよい。有機相58はヨウ化メチルを多く含み水が少ない可能性がある一方、水相59は有用な量のPRCと水とを含み得る。
【0125】
塔頂流51を凝縮させるために使用されるコンデンサーからは、凝縮されない部分もまた発生するが、それらは、コンデンサーから、又は塔頂流レシーバー56から除去することができる。除去の有無にかかわらず、凝縮されない部分を、吸収ユニット90の中で処理して、各種の有機成分を回収することができる。この凝縮されない部分には、ガス状成分、たとえば、酸化炭素類、窒素、ヨウ化水素、その他の不活性化合物、及び/又は酸素(これらに限定される訳ではない)が含まれていてよい。その凝縮されない部分の中の有機部分は、上述の凝縮された部分と同様ではあるが、ただし、ジメチルエーテルの量が顕著に多く、たとえば、90重量%以下である。
【0126】
サイドドロー53(第2の混合物)は、蒸留塔50から液体流として抜き出される。蒸留塔50の抽出できる性質の結果として、サイドドロー53は、重量基準で、第1の混合物中のヨウ化アルキルに対するPRCの比よりも大きいヨウ化アルキルに対するPRCの比を有することができる。これにより、除去のためにPRCがさらに濃縮される。本発明による方法は、大量のアセタールを蓄積せずにPRCを濃縮する。1つの実施形態においては、サイドドロー53(第2の混合物)の組成には以下のものが含まれていてよい:PRCが、0.1~90重量%、たとえば、0.2~65重量%、又は0.5~50重量%の範囲の量で、ヨウ化C~C12アルキルが、0.5~95重量%、たとえば、1~95重量%、5~90重量%、又は10~60重量%の範囲の量で、酢酸メチルが、0.1~25重量%、たとえば、0.5~20重量%、又は0.5~10重量%の範囲の量で、酢酸が、0~10重量%、たとえば、0.01~5重量%、又は0.05~1重量%の範囲の量で、水が、0.1~20重量%、たとえば、0.5~15重量%、又は0.5~8重量%の範囲の量で、メタノールが、0~2.5重量%、たとえば、0.01~2.1重量%、又は0.05~2重量%の範囲の量で、アセタールが、0~2.5重量%、たとえば、0.01~1.7重量%、又は0.05~1.5重量%の範囲の量で、ジメチルエーテルが、0~1.2重量%、たとえば、0.01~0.8重量%、又は0.05~0.5重量%の範囲の量で含まれる。
【0127】
図1に示されているように、第2の混合物が、槽60の中で捕集される。槽60は、緩衝液のタンクであってもよいし、或いは第2の混合物を受け取り、その第2の混合物を分離して複数の相にすることが可能な液-液分離槽であってもよい。いくつかの実施形態においては、槽60が、液-液分離可能な第2の混合物を分離させて、水相61と有機相62とにする。アセトアルデヒドなどのPRCは、有機相62よりも水相61により有利に分配される。さらに、抽出剤は水相61により有利に分離され、抽出剤を回収する必要はないものの、抽出剤は後続の水相の処理によって回収することができる。有機相は、第2の蒸留塔50に戻すことができ、或いは下方流52と合わせて反応器10に戻される。さらに、アセトアルデヒドを追加の処理なしで排出できるように、水相61中のヨウ化メチルの量を減らすことが望ましい。
【0128】
一実施形態では、槽60は、第2の混合物53を水相61と有機相62とに分離する。水相61と有機相62の質量流量比は、1:1000~1:1(水相対有機相)、例えば1:900~1:10、又は1:650~1:100であってよい。結局、水相は、質量流量に基づいて有機相よりも小さい流れとすることができる。有機相62は抽出剤の量が少なく、第2の蒸留塔50に戻すことができる。
【0129】
水相61には、有機相62よりも、質量を基準にして、より多くの量のPRC(アセトアルデヒド)が含まれ、そして、水相61には、ヨウ化C~C12アルキル(ヨウ化メチル)よりも多くの量のPRCが含まれる。代表としてアセトアルデヒド及びヨウ化メチルを使用すると、水相61は、重量基準で2:1~60:1、例えば3:1~45:1、3:1~30:1、又は4:1~20:1の前者対後者の比率を有し得る。水相61の組成は、1~50重量%、例えば5~45重量%又は10~35重量%のPRC(アセトアルデヒド)の質量組成と、40~95重量%、例えば50~90重量%、又は60~75重量%の水の質量組成と、0.01~15重量%、例えば0.1~10重量%、又は0.5~6重量%のヨウ化C~C12アルキル(ヨウ化メチル)の質量組成と、0.1~25重量%、例えば0.5~20重量%、又は0.5~10重量%の酢酸メチルの質量組成と、0~5重量%、例えば0.01~2.5重量%、又は0.05~1重量%の酢酸の質量組成と、0~2.5重量%、例えば0.01~2.1重量%、又は0.05~2重量%のメタノールの質量組成と、0~2.5重量%、例えば0.01~1.7重量%、又は0.05~1.5重量%のアセタールの質量組成と、0~1.2重量%、例えば0.01~0.8重量%、又は0.05~0.5重量%のジメチルエーテルの質量組成とを含む。
【0130】
有機相62は、コレクタートレイ55の下方で第2の蒸留塔50に戻すことができる。一実施形態では、有機相62の組成は、0.1~90重量%、例えば5~85重量%、又は10~80重量%のヨウ化C~C12アルキル(ヨウ化メチル)の質量組成と、0.1~30重量%、例えば0.5~20重量%、又は0.5~10重量%の酢酸メチルの質量組成と、0.01~15重量%、例えば0.5~10重量%又は0.5~5重量%のPRC(アセトアルデヒド)の質量組成と、0~5重量%、例えば0.01~2.5重量%、又は0.05~1重量%の酢酸の質量組成と、0.01~5重量%、例えば0.05~4重量%、又は0.5~3.5重量%の水の質量組成と、0~2.5重量%、例えば0.01~2.1重量%、又は0.05~2重量%のメタノールの質量組成と、0~2.5重量%、例えば0.01~1.7重量%、又は0.05~1.5重量%のアセタールの質量組成と、0~1.2重量%、例えば0.01~0.8重量%、又は0.05~0.5重量%のジメチルエーテルの質量組成とを含む。
【0131】
効率的な運転をするためには、特に第1の混合物が、下方相42aの一部を含むようにしたときには、下方流52が、第1の混合物からのヨウ化メチルをかなりの量で含んでいる。蒸留塔50の下方流52には、有用なヨウ化メチルが含まれていて、それは、反応器10に戻される。製造に成功するためには、蒸留塔が、第1の混合物の中のヨウ化メチルの60~99.9%、たとえば、75~99.5%、又は80~99.1%を、下方流52の中に除去する。ヨウ化メチルの除去に成功すると、10~90重量%、たとえば、15~85重量%、又は20~80重量%の、ヨウ化C~C12アルキル(ヨウ化メチル)の質量組成を有する下方流52が得られる。
【0132】
そのプロセスでは、上述の運転条件(i)~(iii)を満足させる下方流52を抜き出して、受容可能なアセタールの質量組成を保持するのがよい。1つの実施形態においては、下方流52の組成が、条件(i)、すなわち下方流52の中のアセタールの合計質量組成が、0.02重量%以下、たとえば、0.018重量%以下、0.015重量%以下、又は0.01重量%以下となるように、運転するのがよい。1つの実施形態においては、そのヨウ化C~C12アルキル(ヨウ化メチル)の質量組成が、10~90重量%、たとえば、15~85重量%、又は20~80重量%である。条件(ii)の下では、メタノールとアセトアルデヒドとを合わせた質量組成が、2重量%以下、たとえば、1.9重量%以下であるのがよい。下方流52はさらに、1.9重量%以下、たとえば、1.5重量%以下、1重量%以下、0.8重量%以下、0.7重量%以下、0.5重量%以下、0.4重量%以下、又は0.3重量%以下である、メタノールの質量組成を含んでいるのがよい。下方流52はさらに、1.9重量%以下、たとえば、1重量%以下、0.5重量%以下、0.1重量%以下、0.05重量%以下、0.04重量%以下、0.02重量%以下、又は0.005重量%以下である、PRC(アセトアルデヒド)の質量組成を含んでいてよい。1つの実施形態においては、第1の混合物の水を、第2の混合物(塔頂流又は側留抜出し)へ、下方流52よりは優先して移行させる。一般的に、下方流52の中の水の質量組成は、1.5重量%未満、たとえば、1.1重量%未満、1.0重量%未満、0.7重量%未満、又は0.5重量%未満である。下方流52の中のその他の成分としては、酢酸メチル及びジメチルエーテルが挙げられる。下方流52の中の酢酸メチルの質量組成は、5~60重量%、たとえば、10~50重量%、又は10~35重量%であってよく、そしてジメチルエーテルの質量組成は、0~1.2重量%、たとえば、0.001~0.8重量%、又は0.005~0.5重量%であってよい。
【0133】
下側流52は、30℃~160℃、例えば35℃~120℃、又は40℃~100℃の温度で抜き出すことができる。
【0134】
下方流52は、有機相62の少なくとも一部と組み合わせるのがよい。
【0135】
補助的なアセトアルデヒド除去
他のPRCを含むアセトアルデヒドは、第2の蒸留塔50から第2の混合物において除去されるものの、補助的な処理によってアセトアルデヒドを除去又は低減し、有用な有機成分及び/又は抽出剤のいずれかを回収することが望ましい場合がある。そのようなアセトアルデヒドの補助的な除去を実現するためのいくつかの利用可能な方法が存在する。本発明の目的のためには、これらの補助的な除去プロセスは、使用される場合であっても、処理設備の要件に応じて変えることができる。
【0136】
一実施形態では、アセトアルデヒドは、プロセスから第2の混合物をパージすることによって除去又は低減することができる。これは、非常に少量のヨウ化メチル、特に1重量%未満、例えば0.5重量%未満の量のヨウ化メチルを含む第2の混合物で行うことができる。第2の混合物がより多量のヨウ化メチルを含む場合、補助的なアセトアルデヒド除去プロセスを用いることによって第2の混合物のパージを回避することが望ましい場合がある。
【0137】
別の実施形態では、段を有さない抽出器又は段を有する蒸留塔における第2の混合物の第2の抽出工程が存在していてもよい。この補助的なアセトアルデヒド除去プロセスでは、第2の抽出で補助的な抽出剤(追加の水)が使用され、アセトアルデヒドを含む抽出剤とヨウ化メチルを含むラフィネートが得られる。これにより、ラフィネートを回収し、抽出剤をさらに廃棄又はパージすることができる。この構成では、第2の抽出は、第2の蒸留塔50との連続段階として配置することができる。抽出段階、すなわち第2の蒸留塔50と抽出器との間にコンデンサー/冷却器が存在していてもよい。コンデンサー/冷却器を使用する第2の混合物の温度は、10℃~80℃、例えば12℃~65℃、又は13℃~45℃であってよい。
【0138】
図2は、補助的なアセトアルデヒド除去プロセスの、1つの具現化されたプロセスである。図2に示されているように、その第2の混合物は、第2の蒸留塔50からサイドドロー53として抜き出され、槽60に導入される。その塔頂流51は凝縮され、そしてその凝縮された部分57が、ライン58を介して還流される。水を抽出剤54として使用し、第2の蒸留塔50の塔頂に導入する。下方流52が、第2の蒸留塔50の塔底から抜き出され、条件(i)~(iii)の少なくとも1つが満足させられる。槽60からの有機相62が、第2の蒸留塔50の下方部分に循環される。有機相62は、第2の混合物に比較して、ヨウ化メチルリッチであり、抜き出しのためのサイドドロー53の位置よりは下の位置、たとえば、コレクタートレイ55よりは下へ循環するのがよい。
【0139】
サイドドロー53の部分は、水相61に相対的に多くのアセトアルデヒドを含む。水相61は、その含水量のため、第2の蒸留塔50のための適切な抽出混合物として存在することができ、ライン63のこの部分は、抽出剤54として再循環することができる。ライン63のこの再循環部分は、抽出剤54全体を含んでいてもよく、或いは追加の水供給源と一緒になって抽出剤54の一部を構成してもよい。一実施形態では、水相61は抽出混合物として使用されず、ライン63は、閉鎖可能な弁を有することができ、或いはライン63はプロセスから除去することができる。
【0140】
サイドドロー53(第2の混合物)の比較的高い温度と同様に、槽60からの水相61は、デカンター64に回収される前にコンデンサー(冷却器)を通過することによって冷却され得る。冷却水又は処理水はクーラントとして使用することができる。水相61の温度は、-5℃~60℃、例えば0℃~30℃又は3℃~20℃であってよい。
【0141】
デカンター64には、液-液分離によって残渣流65へと分離可能な残留量のヨウ化メチルが存在し得る。残渣流65は、水相61よりも多くのヨウ化メチルを含む。デカンター64の中で形成された残渣流65(ヨウ化メチルリッチな重質相、すなわち下方相)は、槽60の有機相62と組み合わされるか、又は第2の蒸留塔50のコレクター棚段55の下に添加されるかのいずれかにより、第2の蒸留塔50に循環される。いくつかの実施形態においては、残渣流65を、第2の蒸留塔50をバイパスさせてもよく、下方流52と共に反応器10へ戻す。相の問題を防ぐために、残渣流65を槽60に戻して導入することは望ましくない。
【0142】
デカンター64は、液体流66も生成する。液体流66は、除去すべき目的のアセトアルデヒドを含む。液体流66と残渣流65の質量流量比は、1:500~1:0.5(液体対残渣)、例えば1:400~1:1又は1:375~1:10であってよい。相対的に小さい流れにもかかわらず、液体流66は、有用な量のアセトアルデヒドを含む。量に基づく液体流66中のアセトアルデヒド質量組成は、残渣流65中の量の2×(2倍)超、例えば3倍超又は4倍超であってよい。
【0143】
液体流66は、アセトアルデヒドの質量組成を減らすために廃棄できるものの、抽出混合物に使用されるヨウ化メチル及び/又は抽出剤(水)をさらに保持しようとするプロセスが存在する場合がある。したがって、液体流66又はその一部は、第3の蒸留塔70を使用してさらに分離することができる。このような蒸留工程において、第3の蒸留塔70により、1~99重量%の量のアセトアルデヒドと0.1~30重量%の量のヨウ化メチルとを含む塔頂流71と、主成分としての10重量%以上の量の抽出剤と1重量%以下の量のヨウ化メチルとを含む塔底流72とが得られる(ただし、各流れは不純物を含めて100重量%の合計量である)。塔底流72の一部は、ライン73を介して抽出剤として使用することができ、第2の蒸留塔50に戻され得る。別の実施形態では、塔底流72はプロセスから除去又は排出することができる。
【0144】
第3の蒸留塔70は、100~500kPa、例えば115~375kPa及び125~250kPaの塔頂圧(絶対圧)を有することができる。塔頂流を効果的に分離するために、大気圧の第3の蒸留塔70は、塔頂で10~90℃、例えば15~80℃又は20~60℃の温度を有する、及び/又は70~170℃、例えば80~160℃又は90~150℃の塔底温度を有する。第3の蒸留塔70の段(棚段)数は、分離に十分な数とすることができ、例えば1~50段、例えば2~45段又は3~30段であってよい。第3の蒸留塔70の還流比(還流:留出物)は、1:20~20:1、例えば1:15~15:1、又は5:1~10:1である。
【0145】
塔頂流71又はその留出物は、より多くのアセトアルデヒドを含み、第2の混合物よりも低いヨウ化メチルの質量組成を有する。一実施形態では、塔頂流71の組成は、45~99重量%、例えば50~99重量%又は60~98重量%のPRC(アセトアルデヒド)の質量組成と、0.1~30重量%、例えば0.5~25重量%、又は1~20重量%のヨウ化C~C12アルキル(ヨウ化メチル)の質量組成と、0.1~25重量%、例えば0.5~20重量%、又は0.5~12重量%の酢酸メチルの質量組成と、0~5重量%、例えば0~1.5重量%、又は0~1重量%の酢酸の質量組成と、0~5重量%、例えば0~2.5重量%、又は0.01~2重量%の水の質量組成と、0~2.5重量%、例えば0.01~2.1重量%、又は0.05~2重量%のメタノールの質量組成と、0~2.5重量%、例えば0.01~1.7重量%、又は0.05~1.5重量%のアセタールの質量組成と、0~1.2重量%、例えば0.01~0.8重量%、又は0.05~0.5重量%のジメチルエーテルの質量組成とを含む。一実施形態では、塔頂流71は、第3の蒸留塔70への供給流中の酢酸メチルに対するヨウ化メチルの比率(重量に基づく)よりも高いこの比率を有する。これに加えて又は独立に、塔頂流71は、第3の蒸留塔70への供給流中の酢酸メチルに対するヨウ化メチルの比率(重量に基づく)よりも高いこの比率を有することができる。
【0146】
塔頂流71は、大気圧で15~100℃、20~90℃、又は35~75℃の温度を有する。塔頂流71を凝縮して塔頂流71を60℃以下、例えば45℃以下又は30℃以下の温度に冷却するために、従来のコンデンサー/冷却器を使用することができる。
【0147】
一実施形態では、抽出剤54が水である場合、塔底流72中の液体は、主成分として水を含む。主成分に加えて、塔底流72は、酢酸メチルと、それより少ない量の酢酸、メタノール、ジメチルエーテル、ヨウ化メチル、及び/又はアセトアルデヒドとを含み得る。これにより、塔底流72の一部又は塔底流72全体を、ライン73で第2の蒸留塔50に再循環させることにより、抽出剤54として使用することができる。塔底流72は、85~99.99重量%、例えば90~99.98重量%又は92~99重量%の水の質量組成を有し得る。酢酸メチルは、第3の蒸留塔70の下方部分に保持することができ、下方流72に抜き出される。塔底流72中の酢酸メチルの質量組成は、0.1~15重量%、例えば0.5~10重量%、又は0.7~7重量%であってよい。他の成分は、存在する場合、通常5重量%以下の低い個々の量である。一実施形態では、塔底流72は、1重量%以下、例えば0.5重量%以下又は0.3重量%以下のアセトアルデヒドの質量組成、1.5重量%以下、例えば1重量%以下、又は0.5重量%以下のヨウ化メチルの質量組成、5重量%以下、例えば1重量%以下、又は0.5重量%以下の酢酸の質量組成、1重量%以下、例えば0.5重量%以下、又は0.1重量%以下のメタノールの質量組成、及び/又は0.1重量%以下、例えば0.01重量%以下、又は0.001重量%以下のジメチルエーテルの質量組成を有し得る。塔底流72は、大気圧で65~165℃、例えば70~120℃又は85~105℃の温度を有する。
【0148】
図2は、液体流66が蒸留されることを示していが、別の実施形態では、第2の混合物及び/又は水性流61は、槽60及び/又はデカンター64のいずれも通過せずに第3の蒸留塔70で蒸留され得る。
【0149】
蒸留のみによってアセトアルデヒドからヨウ化メチルを分離すると、ヨウ化メチルの質量組成が塔頂流71で低くてもヨウ化メチルを完全に回収することができないことが明らかになっている。さらに単純な蒸留を行うと、ヨウ化メチルの回収はわずか又は漸進的な改善しか得られないため、補完的な処理のためにはより効果的な処理が魅力的な利点を提供する。蒸留を伴う又は伴わない抽出は、ヨウ化メチルの回収を促進する効果的なプロセスとして使用することができる。一実施形態では、ヨウ化メチルの回収を促進するために、第2の抽出蒸留塔を使用することができる。図2に示されているように、塔頂流71又はその留出物部分は、水含有抽出混合物を使用する抽出蒸留として機能する第4の蒸留塔80に導入される。第4の蒸留塔80は、ヨウ化メチルを多く含む塔頂流81と、アセトアルデヒドと水である抽出剤とを多く含む水性の塔底流82と、が得られるように機能する。水性の塔底流82の全部など少なくとも一部は、抽出混合物としてライン83を介して第2の蒸留塔50に再循環するか、又は戻ることができる。
【0150】
一実施形態では、第4の蒸留塔80は、アセトアルデヒドに対するヨウ化メチルの比(重量基準)が塔頂(留出物)流71中の供給流よりも大きい上方流81を分離する。上方流81は、塔頂流として、又は第4の蒸留塔80の頂部近くの流れとして取り出すことができる。回収を維持するために、上方流81を直接的に又は間接的に反応器10に向けることが有用な場合がある。いくつかの実施形態では、上方流81の一部は、好ましくは下方の部分で、第2の蒸留塔50に導入することができる。
【0151】
抽出のためには、ライン84を介して第4の蒸留塔80の頂部で水抽出混合物を向流方向に添加することで十分である。米国特許第8,859,810号明細書(この全内容及び開示は参照により組み込まれる)に記載されているように、水抽出混合物は、水、グリコール、グリセロール、高沸点アルコール、これらの混合物を含み得る。水抽出蒸留では、水は抽出剤と同じ温度であってもよい。水は、抽出剤と同じ温度の加温水又は加熱水として添加されてもよく、或いは気化した水(又は水蒸気)として添加されてもよい。一実施形態では、水抽出混合物84は、0~60℃、例えば10~50℃又は20~40℃の範囲内に制御又は維持された温度を有する。塔頂流71又はその留出物部分の流量に対する水抽出混合物84の流量の重量比[前者/後者]は、1:1000~10:1、例えば1:500~5:1、1:100~5:1、又は1:4~4:1の範囲であってよい。
【0152】
第4の蒸留塔80では、例えばコンデンサー(間接コンデンサー)を通過することにより塔頂流81が冷却及び/又は凝縮され、凝縮液の第1の部分は蒸留塔80に戻されるか又は還流され、凝縮液の第2の部分は図1の反応器10に再循環される。塔底流82は液体流であり、塔底又は塔底近くなどの蒸留塔80の下方の部分で抜き出すことができ、これはアセトアルデヒド及び抽出剤を含む。アセトアルデヒドが富化されているため、液体流82はパージされるか、又は系の外側に排出される。液体流82の一部は、第2の蒸留塔50及び/又は第4の蒸留塔80のいずれかで抽出剤として使用することができる。塔頂流81は、液体流82中のアセトアルデヒドに対するヨウ化メチルの重量比よりも大きいアセトアルデヒドに対するヨウ化メチルの重量比を有する。
【0153】
第4の蒸留塔80は、100~500kPa、例えば100~400kPa及び105~350kPaの塔頂圧力(絶対圧)を有し得る。塔頂流を効果的に分離するために、大気圧の第4の蒸留塔80は、塔頂で10~90℃、例えば15~80℃若しくは20~60℃の温度を有する、及び/又は70~170℃、例えば80~160℃若しくは90~150℃の塔底温度を有する。第4の蒸留塔80の段(棚段)数は、分離に十分な数とすることができ、例えば1~50段、例えば2~45段又は3~30段であってよい。第4の蒸留塔80の還流比(還流:留出物)は、1:20~20:1、例えば1:15~15:1、又は5:1~10:1である。
【0154】
一実施形態では、第4の蒸留塔80は、例えば50段未満の理論段数(又は棚段)を有していてもよく、塔頂流81又はその凝縮された部分は、20~80重量%、例えば30~75重量%又は40~65重量%のヨウ化メチルの質量組成と、0.1~70重量%、例えば0.5~65重量%、又は1~20重量%のPRCの質量組成と、0.01~15重量%、例えば0.05~10重量%、又は0.1~10重量%の酢酸メチルの質量組成と、0~5重量%、例えば0~3重量%、又は0~1重量%の酢酸の質量組成と、0~10重量%、0~8重量%、又は0.01~5重量%の水の質量組成とを有し得る。塔頂流81におけるジメチルエーテル及び/又はメタノールなどの他の有機物の質量組成は、少量、例えば1重量%以下又は0.5重量%以下であってよい。また、第4の蒸留塔80が50段未満の棚段を含む場合、塔底流82は、1~90重量%、例えば5~80重量%、又は10~50重量%のPRCの質量組成と、10~95重量%、15~90重量%、又は20~85重量%の水の質量組成と、0~2重量%、例えば0.01~1.5重量%又は0.05~1重量%のヨウ化メチルの質量組成と、0.01~15重量%、例えば0.05~10重量%、又は0.1~10重量%の酢酸メチルの質量組成と、0~5重量%、例えば0~3重量%、又は0~1重量%の酢酸の質量組成と、3重量%以下、例えば1重量%以下又は0.5重量%以下の有機物(ジメチルエーテル及び/又はメタノール)の質量組成とを有し得る。塔底液82がプロセスから排出及び/又はパージされる場合、アセトアルデヒド対ヨウ化メチルの質量比は、20:1~2000:1、例えば35:1~1800:1又は50:1~1000:1であってよい。
【0155】
酢酸を製造するための連続プロセスにおいて、蒸気流又は液体流の両方のプロセス流は、上で詳しく説明されていないものの、不純物である様々な成分を含有し得る。これらの不純物は、副反応によって反応器内で形成され得る。そのような不純物を回避するためには、不純物の形成を抑制するか、又は不純物をパージして蓄積を防止することが望ましい。様々なプロセス流は、様々な量のギ酸、より高級な酸、及び/又はヨウ化水素を含み得る。
【0156】
図2に示されている分離プロセスの様々な構成が存在し得る。これには、第3及び/又は第4の蒸留塔を補足又は交換する追加ユニットが含まれる。これにより、デカンター64からの液体流66が第3の蒸留塔70を迂回可能になり、第4の蒸留塔80に供給されるか、或いは1つ以上の抽出容器に供給され得る。したがって、必要に応じて、アセトアルデヒドは、ミキサー及びセトラーを備えた1つ以上の水抽出槽によって、又は第4の蒸留塔80によって、液体流66から水で抽出することができる。別の実施形態では、液体流66を精製するために第3及び/又は第4の蒸留塔を使用する必要がない場合がある。
【0157】
図3に、補助的なアセトアルデヒド除去プロセスための分離プロセスを与える、また別の実施形態を示す。1つの実施形態においては、第2の蒸留塔50への供給ライン43に、図1におけるレシーバー40からの下方相42aが含まれている。このことにより、供給ライン43が、ヨウ化C~C12アルキル(主として、ヨウ化メチルで代表される)を60~98重量%、たとえば、60~95重量%、又は75~93重量%の量で、PRC(アセトアルデヒド)を5重量%まで、たとえば、3重量%まで、又は0.5重量%までの量で、そして水を3重量%まで、たとえば、1重量%まで、又は0.8重量%までの量で含むことが可能となる。さらに、供給ラインは少量のメタノールも含み、メタノールを調整する必要がある場合は、供給ラインが上方相の一部を含むようにすることができる。上述したように、抽出剤はコレクタートレイ55の上方でライン54を介して添加される。頂部の全ての蒸気は回収され、凝縮され、第2の蒸留塔50に還流される。
【0158】
この実施形態では、側流53は、デカンター64に直接供給するために、-5℃から60℃まで凝縮又は冷却され、その結果、液-液分離して残渣流65(ヨウ化メチルを含む)と液体流66(アセトアルデヒドを含む)とを得るための図2の槽60がスキップされる。液体流66と残渣流65の質量流量比は、1:500~1:0.5(液体対残渣)、例えば1:400~1:1又は1:375~1:10であってよい。側流53は、相分離に適した組成を有することができ、一実施形態では、側流53の組成は、0.1~90重量%、例えば0.2~65重量%又は0.5~50重量%のPRCの質量組成と、0.5~95重量%、例えば1~95重量%、5~90重量%、又は10~60重量%のヨウ化C~C12アルキル(ヨウ化メチル)の質量組成と、0.1~25重量%、例えば0.5~20重量%、又は0.5~10重量%の酢酸メチルの質量組成と、0~10重量%、例えば0.01~5重量%、又は0.05~1重量%の酢酸の質量組成と、0.1~20重量%、例えば0.5~15重量%、又は0.5~8重量%の水の質量組成と、0~2.5重量%%、例えば0.01~2.1重量%、又は0.05~2重量%のメタノールの質量組成と、0~2.5重量%、例えば0.01~1.7重量%、又は0.05~1.5重量%のアセタールの質量組成と、0~1.2重量%、例えば0.01~0.8重量%、又は0.05~0.5重量%のジメチルエーテルの質量組成とを有することができる。図3に示されているプロセスは、大量のアセタールを蓄積せずにPRCをさらに濃縮する。
【0159】
図3に示されているように、残渣流65は、第2の蒸留塔50からの下方流52と合わせられる。いくつかの実施形態では、残渣流65は、第2の蒸留塔50の下方部分に供給することができる。混和性溶媒としての酢酸は、第2の蒸留塔50の下方部分への供給ライン67から供給され、いくつかの実施形態では、流れ43の供給位置よりも下方に供給することができる。図2に示されていないものの、第2の蒸留塔50に供給される混和性溶媒が存在していてもよい。
【0160】
デカンター64から抜き出された後、液体流66は第3の蒸留塔70に供給される。相対的な流れが小さいにもかかわらず、液体流66は有用な量のアセトアルデヒドを含む。量に基づく液体流66中のアセトアルデヒドの質量組成は、残渣流65中の量の2倍超、例えば3倍超、又は4倍超であってもよい。上述したように、第3の蒸留塔70は、1~99重量%の量のアセトアルデヒドと0.1~30重量%の量のヨウ化メチルとを含む塔頂流71と、10重量%以上の量の主成分としての抽出剤と1重量%以下の量のヨウ化メチルとを含む塔底流72と、が得られるように機能する(ただし、各流れは不純物を含めて100重量%の合計量である)。塔底流72の一部は、ライン73を介して抽出剤として使用することができ、第2の蒸留塔50に戻され得る。別の実施形態では、塔底流72はプロセスから除去又は排出することができる。
【0161】
塔頂流71又はその留出物は、第2の混合物よりも多くのアセトアルデヒドを含み、且つ低いヨウ化メチルの質量組成を有する。一実施形態では、塔頂流71の組成は、45~99重量%、例えば50~99重量%又は60~98重量%のPRC(アセトアルデヒド)の質量組成と、0.1~30重量%、例えば0.5~25重量%、又は1~20重量%のヨウ化C~C12アルキル(ヨウ化メチル)の質量組成と、0.1~25重量%、例えば0.5~20重量%、又は0.5~12重量%の酢酸メチルの質量組成と、0~5重量%、例えば0~1.5重量%、又は0~1重量%の酢酸の質量組成と、0~5重量%、例えば0~2.5重量%、又は0.01~2重量%の水の質量組成と、0~2.5重量%、例えば0.01~2.1重量%、又は0.05~2重量%のメタノールの質量組成と、0~2.5重量%、例えば0.01~1.7重量%、又は0.05~1.5重量%のアセタールの質量組成と、0~1.2重量%、例えば0.01~0.8重量%、又は0.05~0.5重量%のジメチルエーテルの質量組成とを含む。一実施形態では、塔頂流71は、第3の蒸留塔70への供給流中の酢酸に対するヨウ化メチルの比率(重量に基づく)よりも高いこの比率を有する。これに加えて又は独立に、塔頂流71は、第3の蒸留塔70への供給流中の酢酸メチルに対するヨウ化メチルの比率(重量に基づく)よりも高いこの比率を有することができる。塔底流72は、85~99.99重量%、例えば90~99.98重量%、又は92~99重量%の水の質量組成を有し得る。一実施形態では、塔底流72はプロセスから除去され、或いはその少なくとも一部が抽出剤として第2の蒸留塔50に戻され得る。
【0162】
図2と同様に、図3は、塔頂流71又はその留出物部分を、水含有抽出混合物を使用する抽出蒸留として機能する第4の蒸留塔80に導入することによって処理する。上述したように、第4の蒸留塔80は、ヨウ化メチルを多く含む塔頂流81と、アセトアルデヒドと水である抽出剤とを多く含む水性の塔底流82と、とを得るために、ライン84を介して水抽出混合物を用いる方式で運転される。水性の塔底流82の全部などの少なくとも一部は、抽出混合物としてライン83を介して第2の蒸留塔50に再循環するか、又は戻ることができる。
【0163】
塔、バルブ、コンデンサー、レシーバー、ポンプ、リボイラー、及び内部構造物、並びに蒸留システムにそれぞれ連通する様々なラインなどの、蒸留システムに関連する各部材又はユニットの材料は、ガラス、金属、セラミック、又はそれらの組み合わせなどの適切な材料から製造することができ、特定のものに特に限定されない。本開示によれば、前述した蒸留システム及び様々なラインの材料は、遷移金属、又は鉄合金などの遷移金属ベースの合金、例えばステンレス鋼、ニッケル若しくはニッケル合金、ジルコニウム若しくはそのジルコニウム合金、チタン若しくはそのチタン合金、又はアルミニウム合金である。適切な鉄ベースの合金には、主成分として鉄を含むもの、例えばクロム、ニッケル、モリブデンなども含むステンレス鋼が含まれる。適切なニッケルベースの合金には、主成分としてのニッケルと、クロム、鉄、コバルト、モリブデン、タングステン、マンガンなどのうちの1つ以上とを含むもの、例えばHASTELLOY(商標)及びINCONEL(商標)が含まれる。耐腐食性金属は、蒸留システム及び様々なラインの材料として特に適している場合がある。
【0164】
本発明は、以降の非限定的な実施例を踏まえて、より理解されるであろう。
【実施例
【0165】
実施例1
過マンガン酸塩還元化合物(PRC)、1種又は複数のヨウ化C~C12アルキル、及び水を含む混合物を、半経験的シミュレーター(semi-empirical simulator)を使用した抽出蒸留塔の中で蒸留した。この実施例の場合のPRCは、アセトアルデヒドであり、主たるヨウ化C~C12アルキルは、ヨウ化メチルである。この混合物には、表3に示されているように、メタノールも含まれていた。
【0166】
その抽出蒸留塔は、塔頂温度37℃、そして塔底の温度44℃で運転した。その抽出蒸留塔の圧力は、0psigであった。抽出蒸留は45個の棚段を有していた。抽出剤は含水流であり、抽出剤は一番上の棚段に供給された。抽出剤はメタノールを含んでおらず、最初の混合物以外他のメタノール源は抽出蒸留塔に供給されなかった。抽出剤の温度は20℃であった。
【0167】
抽出蒸留の結果として、抽出蒸留塔のサイドから、第2の混合物が得られた。その第2の混合物を、第1の混合物の供給ポイントより上に位置するコレクタートレイから抜き出した。下方流もまた、その抽出蒸留塔の第1の混合物の供給ポイントよりは下に位置する、塔底から抜き出した。第2の混合物及び下方流の組成を、共に、表3に示す。
【0168】
【表3】
【0169】
その第1の混合物中のヨウ化メチルと水との差(重量基準)は、81.8重量%(=82.5重量%-0.701重量%)であり、メタノールの質量組成(0.1128重量%)を、この差より小さく維持した。表3に見られるように、第2の混合物は、アセトアルデヒドの点で、第1の混合物よりもリッチになっていた。このことは、抽出蒸留塔を使用してアセトアルデヒドを分離したときの、有効性を示している。下方流の中のアセタールの合計質量組成は、条件(i)が満足されていた。メタノールとアセトアルデヒドとを合わせた質量組成(0.138重量%)が、1,1-ジメトキシエタンの質量組成よりも高く、条件(ii)が満足されている。さらに、第1の混合物の中のメタノールの合計質量組成が1128ppmであったことに比較して、1,1-ジメトキシエタンの質量組成が低く、条件(iii)が満足されている。
【0170】
実施例2
実施例1の抽出蒸留塔を使用して、表4に示す次の混合物を供給した。実施例1の場合と同様に実施して、第2の混合物がサイドから、そして下方流が塔底から得られた。表4に、それらの結果を示す。
【0171】
【表4】
【0172】
第1の混合物におけるヨウ化メチルと水との差(重量基準)は、81.8重量%であり、そのメタノールの質量組成は、うまくこの差に維持された。表4に見られるように、第2の混合物は、アセトアルデヒドの点で、第1の混合物よりもリッチになっていた。このことは、抽出蒸留塔を使用してアセトアルデヒドを分離したときの、有効性を示している。下方流の中のアセタールの合計質量組成は、条件(i)が満足されていた。メタノールとアセトアルデヒドとを合わせた質量組成(0.02重量%)が、1,1-ジメトキシエタンの質量組成よりも高く、条件(ii)が満足されている。さらに、第1の混合物の中のメタノールの合計質量組成が33ppmであったことに比較して、1,1-ジメトキシエタンの質量組成が低く、条件(iii)が満足されている。
【0173】
実施例3
実施例1の抽出蒸留塔を使用して、表5に示す比較例の混合物を供給した。実施例1の場合と同様に実施して、第2の混合物がサイドから、そして下方流が塔底から得られた。表5に、それらの結果を示す。
【0174】
【表5】
【0175】
第1の混合物の中のメタノールの量が多いにもかかわらず、その下方流は、条件(ii)及び(iii)を満足させることができた。
【0176】
本発明を詳細に説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲内の変更は、当業者には容易に明らかになるであろう。前述した説明、当該技術分野における関連知識、並びに「背景技術」及び「発明を実施するための形態」に関連して上で説明した参考文献を考慮して、それらの開示は参照により全て本明細書に組み込まれる。さらに、本発明の態様、並びに以下に及び/又は添付の特許請求の範囲に記載されている様々な実施形態及び様々な特徴の一部は、全体として又は部分的に組み合わせるか交換できることが理解されるべきである。様々な実施形態の前述した説明において、別の実施形態に言及する実施形態は、当業者に理解されるように、他の実施形態と適切に組み合わせることができる。加えて、当業者は、前述した説明が例示にすぎず、本発明を限定することを意図するものではないことを理解するであろう。
【0177】
実施形態
以下で使用される一連の実施形態へのあらゆる言及は、それらの実施形態のそれぞれへの言及として選言的に理解されるべきである(例えば「実施形態1~4」は、「実施形態1、2、3、又は4」であるとして理解されるべきである)。
【0178】
[実施形態1]
少なくとも1種の過マンガン酸塩還元化合物(PRC)、1種又は複数のヨウ化C~C12アルキル、及び水を含む第1の混合物から、少なくとも1種のPRCを分離するための方法であって、方法が、
蒸留塔の第1の位置に第1の混合物を供給する工程であって、第1の混合物は、1種又は複数のヨウ化C~C12アルキルと水との間の差(質量基準)よりは小さい、メタノールの質量組成を有している、工程;
第1の混合物を蒸留して、第2の混合物と下方流とにする工程であって、第2の混合物は、塔頂流、及び第1の位置よりも高いところで抜き出されるサイドドロー流からなる群より選択される少なくとも1つの流である、工程;及び
第1の位置よりも低い第2の位置から下方流を抜き出す工程であって、下方流は、以下の条件(i)~(iii):
下方流の中のアセタールの合計質量組成が、0.02重量%以下である;
下方流の中のアセタールの合計質量組成が、下方流の中のメタノールとアセトアルデヒドを組み合わせた質量組成よりも少ない;及び
下方流の中のアセタールの合計質量組成が、第1の混合物の中のメタノールの質量組成よりも少ない
の少なくとも1つを満足させる、工程を含み、
第1の混合物が、追加のメタノールを供給することなく、第2の混合物と下方流とに分離され、第2の混合物は、少なくとも1種のPRCリッチである、
方法。
【0179】
[実施形態2]
下方流が、条件(i)及び(ii)を満足させている、実施形態1に記載の方法。
【0180】
[実施形態3]
下方流が、条件(i)及び(iii)を満足させている、実施形態1又は2に記載の方法。
【0181】
[実施形態4]
条件(i)のためのアセタールの合計質量組成が、0.0001重量%~0.02重量%である、実施形態1~3に記載の方法。
【0182】
[実施形態5]
条件(ii)のための、メタノールとアセトアルデヒドとを合わせた質量組成が、1.9重量%以下である、実施形態1~4に記載の方法。
【0183】
[実施形態6]
条件(iii)のための、メタノールの質量組成が、2重量%以下である、実施形態1~5に記載の方法。
【0184】
[実施形態7]
第1の混合物が、1種又は複数のヨウ化C~C12アルキルを2.5重量%~90重量%の量で、少なくとも1種のPRCを0.05~50重量%の量で、そして水を0.5重量%~90重量%の量で含む、実施形態1~6に記載の方法。
【0185】
[実施形態8]
第1の混合物の中のメタノールの質量組成が、2重量%以下である、実施形態1~7に記載の方法。
【0186】
[実施形態9]
第1の混合物が、80重量%以上の水を含む抽出剤を使用して蒸留される、実施形態1~8に記載の方法。
【0187】
[実施形態10]
抽出剤対第1の混合物の流量比(重量基準)が、0.0001/100~100/100である、実施形態9に記載の方法。
【0188】
[実施形態11]
第2の混合物が、1種又は複数のヨウ化C~C12アルキルを0.5~95重量%の量で、少なくとも1種のPRCを0.1~90重量%の量で、そして水を0.1~20重量%の量で含む、実施形態1~10に記載の方法。
【0189】
[実施形態12]
第2の混合物を、水相と有機相とに二相分離することをさらに含む、実施形態1~11に記載の方法。
【0190】
[実施形態13]
酢酸製造プロセスであって、プロセスが、アセタールの生成を制御するための以下の工程:
(a)金属触媒、イオン性の金属ヨウ化物、及びヨウ化メチル、酢酸、酢酸メチル、並びに水を含む反応性混合物の存在下に、メタノールを一酸化炭素と連続的に反応させる工程;
(b)反応混合物を、加熱の存在下又は非存在下に、蒸発させて、蒸気状の粗反応生成物及び触媒の循環流を得る工程;
(c)蒸気状の粗反応生成物の少なくとも一部を蒸留して、塔頂流及びサイド流を形成させ、塔頂流を1基又は複数のコンデンサーの中で凝縮させて、凝縮物をレシーバーの中に捕集して、上方相と下方相とにする工程;及び
(d)下方相の少なくとも一部を分離して、アセトアルデヒド及び下方流を含む第2の流を形成させる工程であって、下方流が、以下の条件(i)~(iii):
下方流の中のアセタールの合計質量組成が、0.02重量%以下である;
下方流の中のアセタールの合計質量組成が、下方流の中のメタノールとアセトアルデヒドを組み合わせた質量組成よりも少ない;又は
下方流の中のアセタールの合計質量組成が、下方相の中のメタノールの質量組成よりも少ない
の少なくとも1つを満足させる工程を含み、下方相が、追加のメタノールを供給することなく、第2の流と下方流とに分離され、第2の流が、少なくとも1種のPRCリッチである、
プロセス。
【0191】
[実施形態14]
下方相が、1種又は複数のヨウ化C~C12アルキルを60~98重量%の量で、少なくとも1種のPRCを5重量%までの量で、水を3重量%までの量で、及びメタノールを5重量%までの量で含む、実施形態13に記載の方法。
【0192】
[実施形態15]
工程(d)が、上方相の少なくとも一部を分離する工程をさらに含み、ここで工程(d)が、100:0~10:90の下方相対上方相の重量比を有する混合物を分離する、実施形態13又は14に記載の方法。
【0193】
[実施形態16]
下方流が、工程(a)又は工程(d)に戻される、実施形態13~15に記載の方法。
【0194】
[実施形態17]
下方相の少なくとも一部が、80重量%以上の水を含む抽出剤を用いて蒸留される、実施形態13~16に記載の方法。
【0195】
[実施形態18]
条件(i)のためのアセタールの合計質量組成が、0.0001重量%~0.02重量%である、実施形態13~17に記載の方法。
【0196】
[実施形態19]
条件(ii)のための、メタノールとアセトアルデヒドとを合わせた質量組成が、1.9重量%以下である、実施形態13~18に記載の方法。
【0197】
[実施形態20]
条件(iii)のための、メタノールの質量組成が、2重量%以下である、実施形態13~19に記載の方法。
図1
図2
図3
【国際調査報告】