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特表2023-528452プロセスストリームからのアセタールの除去
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-04
(54)【発明の名称】プロセスストリームからのアセタールの除去
(51)【国際特許分類】
   C07C 51/44 20060101AFI20230627BHJP
   C07C 53/08 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
C07C51/44
C07C53/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022574394
(86)(22)【出願日】2021-06-03
(85)【翻訳文提出日】2022-12-14
(86)【国際出願番号】 US2021035689
(87)【国際公開番号】W WO2021247855
(87)【国際公開日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】63/034,086
(32)【優先日】2020-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512225379
【氏名又は名称】セラニーズ・インターナショナル・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】リー,デビッド
(72)【発明者】
【氏名】リュウ,ヨウ-ファ
(72)【発明者】
【氏名】シェーヴァー,ロナルド・ディー
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AD11
4H006AD13
4H006BC51
4H006BC52
4H006BD60
4H006BD84
4H006BS10
(57)【要約】
酢酸中でのアセトアルデヒドの質量組成を下げることが可能な、酢酸を製造するためのプロセスが提供される。本発明における酢酸を製造するためのプロセスには、次の運転条件を満足させる、少なくとも1つの蒸留工程が含まれる:(i)蒸留カラムの下側部分における温度が、40℃以上である;(ii)下側ストリームの中の水の質量組成が、0.3重量%以上である;又は(iii)下側ストリームの中の酢酸の質量組成が、重量パーセント基準で、第一の混合物の中での酢酸の質量組成より大である。ここで、第一の混合物の中のメタノールの質量組成が、2重量%以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセトアルデヒド、1種又は複数のヨウ化C~C12アルキル、水、及びメタノールを含む第一の混合物からアセトアルデヒドを分離するための方法であって、前記方法が、
蒸留カラムの中で、前記第一の混合物を蒸留して、塔頂ストリーム、サイドカットストリーム、及び下側ストリームからなる群より選択される少なくとも2つのストリームを形成させ、ここで、前記塔頂ストリーム又はサイドカットストリームのいずれかを、第二の混合物として抜き出す工程;
前記第二の混合物からアセトアルデヒドを分離する工程;及び
前記蒸留カラムを、以下の条件(i)~(iii):
(i)前記蒸留カラムの下側部分における温度が、40℃以上である;
(ii)前記下側ストリームの中の水の質量組成が、0.3重量%以上である;又は
(iii)前記下側ストリームの中の酢酸の質量組成が、重量パーセント基準で、前記第一の混合物の中での酢酸の質量組成より大である;
の少なくとも1つの下で運転することにより、前記下側ストリームの中の1,1-ジメトキシエタンの質量組成を、0.03重量%以下に制御する工程
を含み、
前記第一の混合物の中の前記メタノールの質量組成が、2重量%以下である、
方法。
【請求項2】
前記第一の混合物の中の前記メタノールの質量組成が、1重量%以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第一の混合物の中の前記メタノールの質量組成が、0.5重量%以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記蒸留カラムの中の圧力が、0.1~0.7MPaである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記下側ストリーム対塔頂ストリームにおける、1,1-ジメトキシエタンの質量組成の重量比が、100:1~10:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記下側ストリーム対サイドカットストリームにおける、1,1-ジメトキシエタンの質量組成の重量比が、100:1~10:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第二の混合物が、前記塔頂ストリームの一部及び前記サイドカットの一部を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第二の混合物からアセトアルデヒドを分離する前記工程が、第二の混合物の少なくとも一部を、前記第二の混合物を水相と有機相とに相分離させるのに十分な条件下にある槽にフィードする工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記有機相が、条件(i)~(iii)の少なくとも1つの下で、前記蒸留カラムの下側部分にフィードされる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記有機相が、メタノールを含み、前記有機相及び第一の混合物の中のメタノールの合計質量組成が、2重量%以下である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記第一の混合物を蒸留するための前記蒸留カラムが、抽出蒸留工程であり、前記蒸留カラムの上側部分に抽出剤を添加することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
条件(ii)で、前記下側ストリームの中の水の質量組成が、0.6重量%以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
条件(iii)で、前記下側ストリームの中の酢酸の質量組成が、3重量%以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記蒸留カラムが、10段よりも多い段を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記蒸留カラムの還流比が、1:20~20:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記第一の混合物が、前記第一の混合物の合計重量を基準にして、アセトアルデヒドを0.01~30重量%の質量組成で、1種又は複数のヨウ化C~C12アルキルを0.1~90重量%の質量組成で、水を0.1~90重量%の質量組成で、及びメタノールを0.001~2重量%の質量組成で含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記第一の混合物の中の前記メタノールの質量組成が、前記ジメチルエーテルの質量組成よりも多い、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記蒸留カラムが、メタノールの生成を防止するための条件下で運転される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
アセトアルデヒド、1種又は複数のヨウ化C~C12アルキル、水、及びメタノールを含む第一の混合物からアセトアルデヒドを分離するための方法であって、前記方法が、
蒸留カラムの中で、前記第一の混合物を蒸留して、塔頂ストリーム、サイドカットストリーム、及び下側ストリームからなる群より選択される少なくとも2つのストリームを形成させ、ここで、前記サイドカットストリームを、第二の混合物として抜き出す工程;
前記第二の混合物を、アセトアルデヒドを含む水性ストリームの中、又は1種又は複数のヨウ化C~C12アルキルを含む有機ストリームの中に、分離する工程、及び
前記蒸留カラムを、以下の条件(i)~(iii):
(i)前記蒸留カラムの下側部分における温度が、40℃以上である;
(ii)前記下側ストリームの中の水の質量組成が、0.3重量%以上である;又は
(iii)前記下側ストリームの中の酢酸の質量組成が、重量パーセント基準で、前記第一の混合物の中での酢酸の質量組成より大である;
の少なくとも1つの下で運転することにより、前記下側ストリームの中の1,1-ジメトキシエタンの質量組成を、0.03重量%以下に制御する工程
を含み、
前記第一の混合物の中の前記メタノールの質量組成が、2重量%以下である、
方法。
【請求項20】
前記第一の混合物を蒸留するための前記蒸留カラムが、抽出蒸留工程であり、前記蒸留カラムの上側部分に抽出剤を添加することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、2020年6月3日に出願された米国仮特許出願第63/034,086号の優先権に基づく優先権を主張するものであり、これはあらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般的には、高品質の酢酸を製造するための改良されたプロセスに関する。具体的には、そのプロセスは、少なくとも、メタノール、水、ヨウ化C~C12アルキル、及び少なくとも1種の過マンガン酸塩還元化合物(たとえば、アセトアルデヒド)を含む第一の混合物を、蒸留カラムの中、アセタールの生成を制御するための特定の運転条件下で蒸留することにより、アセトアルデヒドを質量基準で減少させることに関する。蒸留カラム内の運転条件により、第一の混合物からアセトアルデヒドを効率よく分離するための蒸留カラム中で、アセタールを抑制又は低減させる。
【背景技術】
【0003】
メタノールのカルボニル化プロセスは、酢酸を製造するための好適な工業的合成プロセスである。酢酸の収率が高いにもかかわらず、そのプロセスは、不純物を発生させ、その結果低純度の酢酸が得られるということが知られている。大きな関心をもたれてきた、そのような不純物の1つが、アセトアルデヒドであるが、その理由は、除去がかなり困難であること、アセトアルデヒドが、いくつかのその他の不純物の前駆物質であること、及び酢酸の純度に対する強い影響力である。たとえば、アセトアルデヒドは、有効な助触媒と沸点が近く、そのため単蒸留では不十分である。それらの不十分な点を克服する目的で、アセトアルデヒドを除去するために、アルカン若しくは水抽出法によるか、又はアミノ化合物、酸素含有ガス、及びヒドロキシル化合物との反応による、いくつかの提案がなされてきた。残念ながら、それらの処理を使用したにもかかわらず、アセトアルデヒドは、高純度の酢酸を得るための挑戦課題であり続けている。さらには、アセトアルデヒドから誘導される不純物の生成が、アセトアルデヒドを除去する際の効率を低下させている。
【0004】
酢酸製造プロセスにおいては、その酢酸製造プロセスの中で、アセトアルデヒドの副生物が生成する。たとえば、その反応混合物には、たとえば以下のような少量の副生物(不純物)が含まれる:アセトアルデヒドの副生物(たとえば、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、2-エチルクロトンアルデヒド、及びそれらのアルドール縮合反応生成物)、有機ヨウ化物(たとえば、C2~12アルキルのヨウ化物、たとえばヨウ化エチル、ヨウ化ブチル、又はヨウ化へキシル)、その他。これらの不純物は、低品質の酢酸をもたらす。慣用されるプロセスでは、高品質の酢酸の製造をさらに改良するために、蒸留カラム及び処理ユニットを使用している。そのような処理は、ある種のタイプの不純物を除去するには有益ではあるが、それらのカラム及びユニットでは、いくつかの不純物に関しては、限度がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、慣用されるプロセスでは、蒸留カラムにおけるアセトアルデヒド除去の効率を上げることができないが、その理由は、アセトアルデヒドが、塔頂留出物の中に効率よく分離されないからである。既存のカルボニル化プロセスでも高収率ではあるが、安全且つ効率的な方法で、高純度の酢酸を回収するための改良が、依然として望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
いくつかの実施形態においては、本発明は、アセトアルデヒドから誘導される不純物(1,1-ジメトキシエタンを含む)を低減させることによる、酢酸を製造するためのプロセスを提供する。
【0007】
いくつかの実施形態においては、本発明は、メタノール、アセトアルデヒド、水、及び1種又は複数のヨウ化C~C12アルキルを含むストリームから、過マンガン酸塩還元化合物(PRC)、たとえばアセトアルデヒド(これに限定される訳ではない)の塔頂抽出を使用することによる、酢酸を精製するためのプロセスを提供する。
【0008】
いくつかの実施形態においては、本発明は、蒸留カラムの中でメタノールの質量組成を制御及び/又は調節しながら、アセトアルデヒドを効率よく分離する、酢酸を製造するためのプロセスを提供する。
【0009】
本明細書で使用するとき、「質量組成(mass composition)」又は「濃度(concentration)」という用語は、特に断らない限り、合計質量に対するその物質の質量分率を指していて、一般的には、重量%(「wt%」、又は「% by weight」)で表される。
【0010】
いくつかの実施形態においては、本発明は、メタノール、アセトアルデヒド、水、及び1種又は複数のヨウ化C~C12アルキルの共存下に、PRCを抽出蒸留することによる、PRCとヨウ化メチルを相互に効率よく分離するためのプロセス、並びに酢酸を製造するためのプロセスを提供する。
【0011】
いくつかの実施形態においては、本発明は、メタノール、アセトアルデヒド、水、及び1種又は複数のヨウ化C~C12アルキルの共存下に、蒸留カラムに追加の水を供給することなく、PRCを蒸留することによる、PRCとヨウ化メチルを相互に効率よく分離するためのプロセス、並びに酢酸を製造するためのプロセスを提供する。
【0012】
いくつかの実施形態においては、本発明は、PRCを抽出蒸留することによる、PRCとヨウ化メチルを相互に効率よく分離するためのプロセスを提供するが、この場合、その蒸留カラムは、1,1-ジメトキシエタンの生成を防止するための条件下で運転される。
【0013】
1つの実施形態においては、アセトアルデヒド、1種又は複数のヨウ化C~C12アルキル(ヨウ化メチル)、水、及びメタノールを含む第一の混合物からアセトアルデヒドを分離するためのプロセスが開示されているが、そのプロセスには、以下の工程が含まれる:蒸留カラムの中で、第一の混合物を蒸留して、塔頂ストリーム、サイドカットストリーム、及び下側ストリームからなる群より選択される少なくとも2本のストリームを形成させ、ここで、塔頂ストリーム又はサイドカットストリームのいずれかを、第二の混合物として抜き出す工程;その第二の混合物からアセトアルデヒドを分離する工程;及びその蒸留カラムを、以下の条件(i)~(iii)の少なくとも1つの下で運転することにより、その下側ストリームの中の1,1-ジメトキシエタンの質量組成を、0.03重量%以下に制御する工程:(i)その蒸留カラムの下側部分における温度が、40℃以上である;(ii)その下側ストリームの中の水の質量組成が、0.3重量%以上である;又は(iii)その下側ストリームの中の酢酸の質量組成が、重量パーセント基準で、その第一の混合物の中の酢酸の質量組成より大である;そしてその第一の混合物の中のメタノールの質量組成が、2重量%以下である。
【0014】
1つの実施形態においては、アセトアルデヒド、1種又は複数のヨウ化C~C12アルキル、水、及びメタノールを含む第一の混合物からアセトアルデヒドを分離するためのプロセスが提供されるが、そのプロセスには、以下の工程が含まれる:蒸留カラムの中で、第一の混合物を蒸留して、塔頂ストリーム、サイドカットストリーム、及び下側ストリームからなる群より選択される少なくとも2本のストリームを形成させ、ここで、そのサイドカットストリームを、第二の混合物として抜き出す工程;その第二の混合物を、アセトアルデヒドを含む水性ストリームの中、又は1種又は複数のヨウ化C~C12アルキルを含む有機ストリームの中に、分離する工程、及びその蒸留カラムを、以下の条件(i)~(iii)の少なくとも1つの下で運転することにより、その下側ストリームの中の1,1-ジメトキシエタンの質量組成を、0.03重量%以下に制御する工程:(i)その蒸留カラムの下側部分における温度が、40℃以上である;(ii)その下側ストリームの中の水の質量組成が、0.3重量%以上である;又は(iii)その下側ストリームの中の酢酸の質量組成が、重量パーセント基準で、その第一の混合物の中の酢酸の質量組成より大である;そしてその第一の混合物の中のメタノールの質量組成が、2重量%以下である。
【0015】
添付の非限定的な図面を参照すれば、本発明がよりよく理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のいくつかの実施形態に従った、酢酸の製造の模式的フローダイヤグラムを示す図である。
図2】本発明のいくつかの実施形態に従った、アセトアルデヒド分離カラムの模式的フローダイヤグラムを示す図である。
図3】本発明のいくつかの実施形態に従った、副生物除去システムの模式的フローダイヤグラムを示す図である。
図4】本発明のいくつかの実施形態に従った、副生物除去システムの模式的フローダイヤグラムを示す図である。
図5】本発明のいくつかの実施形態に従った、蒸留カラムの下側ストリームの中の、アセタール(1,1-ジメトキシエタン)の質量組成のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
最初に、そのような各種の実務的実施形態の開発においては、開発者の特定の目的を達成するためには、たとえばシステム関連及びビジネス関連の制約の順守(これは、実施態様ごとに変化するであろう)を達成するといった、数多くの実施態様特有の決定をしなければならないということに注意されたい。それに加えて、平均的又は合理的な当業者には明らかであろうが、本明細書に開示されたプロセスには、引きあいに出したり、特別に参照したりしたものとは異なる要素も含まれうる。
【0018】
本明細書に提示された図面及びテキストから明らかなように、各種の実施形態が考えられる。
【0019】
本発明における酢酸を製造するためのプロセスには、次の運転条件の少なくとも1つを満足させる、少なくとも1つの蒸留工程が含まれる:(i)その蒸留カラムの下側部分における温度が、40℃以上である;(ii)その下側ストリームの中の水の質量組成が、0.3重量%以上である;及び/又は(iii)その下側ストリームにおける酢酸の質量組成が、合計重量を基準にして、その第一の混合物の中の酢酸の質量組成より大である。そのような運転条件を満足させる蒸留工程においては、蒸留カラムの下側部分におけるアセタール及び/又はヘミアセタールの生成が、効率よく抑制及び/又は低減される。理論に拘束されることなく言えば、上述の運転条件下では、その平衡(可逆)反応が、アセトアルデヒドのアセタール及び/又はヘミアセタールへのアセタール化を低減させる方へシフトしていると考えられる。上述の運転条件を満足させる蒸留工程は、アセタール及び/又はヘミアセタールの生成を抑制又は低減させて、アセトアルデヒドを効率よく分離でき、そしてメタノールの生成を防止するので、蒸留カラムの下側部分の中のメタノールの質量組成が、2重量%以下となる。
【0020】
本発明においては、特定の運転条件を満足させる蒸留工程を含む酢酸を製造するためのプロセスは、蒸留カラムの下側部分において、アセタール及び/又はヘミアセタールの生成を抑制又は低減させることができる。したがって、蒸留カラムの下側部分にアセタールと共に分配されているアセトアルデヒドを、蒸留工程において効率よく分離して、製品の酢酸の中のアセタールの質量組成を低減(従って、アセトアルデヒドの質量組成を低下)させることが可能であるし、或いは、より低いアセトアルデヒドの質量組成を有する塔底留分を、反応器にリサイクルさせることができる。
【0021】
驚くべきことには、蒸留カラムにおける特定の運転条件下で、蒸留カラムの下側ストリーム中での1,1-ジメトキシエタンの生成を抑制又は低減させることができるということが見出された。本願発明者らの見出したところでは、次の条件の少なくとも1つを満足させる蒸留カラムを運転することによって、蒸留カラムの下側部分におけるアセタールの生成を抑制することができる:(i)蒸留カラムの下側部分の中の温度が、40℃以上である;(ii)下側ストリームの中の水の質量組成が、0.3重量%以上である;又は(iii)下側ストリームの中の酢酸の質量組成が、重量パーセント基準で、第一の混合物の中の酢酸の質量組成より大である。これらの運転条件下では、蒸留カラムの下側部分におけるメタノールの質量組成が抑制されて、2重量%以下である。
【0022】
本発明の発明者らは、精力的な検討を実施することによって、高純度の酢酸を製造するための上記の改良されたプロセスを達成し、蒸留工程において、特定の運転条件下、且つ大量のメタノールがアセトアルデヒドと共存しているときに、アセタールが形成されるということを発見した。蒸留カラムの下側部分において、メタノールの量が多いほど、より多くのアセタールが形成されるということが見出された。結果として、可逆反応によって、アセトアルデヒドが、アセタールへ移行又は転換され、そして塔底の液体ストリームの中へ逃げ出す。可逆的な性質のために、リサイクルによってアセタールをアセトアルデヒドに再転換させることができる。このことによって、アセタールの形態でのトラッピングが理由で、メタノールの存在下でのアセトアルデヒドの除去性能が限定される。結果として、蒸留カラムへの混合物の中のアセトアルデヒドが、蒸留カラムの下側部分にアセタールの形態で分配されて、第二の混合物を形成し、それが可逆反応によって容易に戻り転換をするので、それによって、蒸留カラムにおけるアセトアルデヒドの効率的な分離が妨げられる。
【0023】
具体的には、本願発明者らの見出したところでは、蒸留カラムの中のある種の運転条件下では、より高沸点の成分(たとえば、64℃)である、1,1-ジメトキシエタンが、蒸留カラムの下側部分に形成され、そして1,1-ジメトキシエタンの質量組成の増量と共に、アセトアルデヒドの除去が限定されるようになり、そのため、低品質の酢酸製品となってしまう。
【0024】
したがって、本願発明者らは、さらなる検討を実施して、次のことを見出した:蒸留カラムの下側部分で、高温、最低限の水分量及び/又は高い酢酸量を保持することによって、アセタールの生成を抑制又は低減させるように、蒸留カラムを運転することができる。これらの条件を満足させる蒸留カラムの中では、蒸留カラムの下側部分では、少量の1,1-ジメトキシエタンしか形成されない。1,1-ジメトキシエタンが少ないことによって、アセトアルデヒドの除去が改良される。下側ストリームにおける1,1-ジメトキシエタンの量を下げることによって、可逆反応を介して移行することが可能なアセトアルデヒドの存在量が少なくなる。したがって、アセトアルデヒドは、たとえば、水抽出蒸留によって効率よく分離することができる。
【0025】
メタノールのカルボニル化の際に、蒸留カラムへの混合物の中に存在するアセトアルデヒド又はアセトアルデヒドの副生物が、アセタール化を起こして、アセタール及び/又はヘミアセタールが生成する可能性もある。アセトアルデヒド(AcH)のアセタール(たとえば、1,1-ジメトキシエタン)へのアセタール化は、メタノールのカルボニル化システムにおける二段階の酸触媒反応である。その第一ステップで、アセトアルデヒドが、メタノールと反応して、ヘミアセタールを形成する。その第二ステップで、そのヘミアセタールが、メタノールと反応して、アセタール、1,1-ジメトキシエタン、及び水を生成する。その総括反応を、式Iに示す:
CHCHO+2CHOH⇔(CHO)CHCH+HO 式1
アセトアルデヒド(AcH)のアセタール(たとえば、1,1-ジメトキシエタン)へのアセタール化は、次式に見られる平衡(可逆)反応である:
【数1】
【0026】
蒸留カラムの中でのある種の運転条件下(たとえば、蒸留カラムの下側部分における低温、低水条件、及び/又は酢酸の低質量組成)では、その平衡反応が、アセトアルデヒドのアセタール化に有利となる。さらに、アセタール化反応は、鉱酸又はカルボン酸、たとえば酢酸の存在下で、触媒作用をさらに受ける可能性がある。したがって、アセタールの質量組成は、混合物から酢酸を回収している間に蒸留カラムの中で増大して、より多くのアセトアルデヒドを、1,1-ジメトキシエタンの形態で、蒸留カラムの下側部分に分配させる原因となりうる。より高純度の酢酸を製造するためには、蒸留プロセスが、蒸留カラムから抜き出される下側ストリームの中に、低減された質量組成のアセタール、たとえば、0.03重量%以下のアセタール(1,1-ジメトキシエタン)、0.025重量%以下のアセタール、0.02重量%以下のアセタール、又は0.01重量%以下のアセタールを有することが要求される。範囲で言えば、下側ストリームの中のアセタール(1,1-ジメトキシエタン)の質量組成が、0.0001~0.03重量%、たとえば、0.0001~0.025重量%、又は0.0001~0.02重量%であるのがよい。
【0027】
本発明は、酢酸精製の際に、アセタール(1,1-ジメトキシエタン)の質量組成を低減させるためのプロセスを提供する。理論に拘束されることなく言えば、本発明は、平衡反応を、アセタールの生成に向かうアセタール化反応低減させる方向に向けさせ、蒸留カラムの下側部分の中で濃縮されるアセトアルデヒドを、より少なくすることができる。1つの実施形態においては、本明細書に記載のプロセスが、次の運転条件の少なくとも1つを満足させる蒸留工程において、アセタールの質量組成を抑制又は低減させることができる:(i)蒸留カラムの下側部分における温度が40℃以上である;(ii)下側ストリームの中の水の質量組成が、0.3重量%以上である;又は(iii)下側ストリームの中の酢酸の質量組成が、重量パーセント基準で、第一の混合物の中の酢酸の質量組成より大である。いくつかの実施形態においては、上述の運転条件の少なくとも1つを満足させる蒸留工程が、アセタールの質量組成を、上記の条件で運転しない蒸留工程に比較して、少なくとも10%、たとえば、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、又は少なくとも35%低減させる。
【0028】
運転条件(i)~(iii)の少なくとも1つを満足させる蒸留カラムを運転することによって、アセトアルデヒドを、その蒸留カラムの塔頂留分に、効率よく分離することが可能であり、そして、その蒸留カラムの下側ストリームの中に濃縮される1,1-ジメトキシエタンが、より少なくなる。これらの発見に基づいて、本願発明者らが見出したところでは、蒸留カラムの中での運転条件を制御することによって、1,1-ジメトキシエタンの生成を低減また抑制することが可能であり、それによって、より多くのアセトアルデヒドを蒸留カラムの塔頂留分に分配させることが可能となる。それに加えて、蒸留カラムの中での運転条件が、蒸留カラムの下側ストリームの中での1,1-ジメトキシエタンの生成を抑制又は低減し、そしてカルボニル化反応器にリサイクルされるアセトアルデヒドがより少なくなり、その結果、製品ストリームの中の不純物が低下し、高品質の酢酸製品が得られる。1,1-ジメトキシエタンの量が少ないので、アセトアルデヒドは、蒸留カラムの塔頂留分の中で効率よく分離することができる。
【0029】
それに加えて、蒸留カラムの中の圧力が、カラムへの混合物中のアセトアルデヒドの蒸留に影響を与えうることも見出された。常圧蒸留カラムよりは高い蒸留温度で運転される、単一の高圧蒸留カラムを使用すると、上述の運転条件と組み合わせて、効率的なアセトアルデヒドの分離が可能となる。
【0030】
運転条件(i)のためには、蒸留カラムの下側部分における温度は、40℃以上、たとえば、42℃以上、44℃以上、46℃以上、48℃以上、50℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上、90℃以上、100℃以上、110℃、又は115℃以上である。範囲で言えば、蒸留カラムの下側部分における温度は、40℃~165℃、たとえば、50℃~160℃、60℃~155℃、70℃~150℃、80℃~140℃、90℃~135℃、100℃~140℃、110℃~135℃、又は115℃~130℃の範囲である。上限で言えば、蒸留カラムの下側部分における温度は、165℃未満、たとえば、160℃未満、155℃未満、150℃未満、145℃未満、140℃未満、130℃、125℃未満、又は120℃未満である。本明細書で開示されている範囲には、その両端、サブレンジ、及び個々の数値が含まれる。
【0031】
運転条件(ii)のためには、蒸留カラムの下側部分の中の水の質量組成は、0.3重量%以上、たとえば、0.4重量%以上、0.5重量%以上、0.6重量%以上、0.8重量%以上、1重量%以上、1.5重量%以上、又は2重量%以上である。範囲で言えば、蒸留カラムの下側部分の中の水の質量組成は、0.3重量%~20重量%、たとえば、0.5重量%~18重量%、0.8重量%~16重量%、1重量%~15重量%、1.5重量%~14重量%、2重量%~12重量%、3重量%~10重量%、4重量%~9重量%、又は5重量%~9重量%の範囲である。蒸留カラムの下側部分の中の水の質量組成は、20重量%未満、たとえば、18重量%未満、15重量%未満、10重量%未満、又は5重量%未満である。
【0032】
運転条件(iii)のためには、下側ストリームの中の酢酸の質量組成は、重量パーセント基準で、第一の混合物の中での酢酸の質量組成より大である。第一の混合物の中の酢酸は、主として、上側ストリームよりは下側ストリームの方に移行される。いくつかの実施形態においては、下側ストリームの中の酢酸は、3重量%以下、たとえば、2.8重量%以下、2.5重量%以下、2.2重量%以下、2重量%、又は1.8重量%以下である。これらの酢酸の質量組成を達成するためには、50%より大、たとえば、60%より大、70%より大、80%より大、又は90%より大の第一の混合物の中の酢酸が、下側ストリームに移行される。その下側ストリームが、第一の混合物より低い、水対酢酸の比率(HO/HOAc)を有しているのがよい。1つの実施形態においては、下側ストリームにおけるHO/HOAcの比率が、1:10~1:100、たとえば、1:15~1:90、又は1:20~1:75である。その上側ストリームが、第一の混合物より高い、水対酢酸の比率(HO/HOAc)を有しているのがよい。
【0033】
運転条件(i)~(iii)を満足させる蒸留工程の例としては、アセトアルデヒドの分離及び除去システムの中の各種の蒸留カラム(たとえば、アセトアルデヒドの除去カラム)が挙げられる。本発明は、上述のものに限定される訳ではなく、たとえば、低沸点成分除去カラム、脱水カラム、又は高沸点除去カラムも含まれる。この場合においては、蒸留カラムへの第一の混合物(たとえば、均一液体、水相、有機相など)には、少なくとも、メタノール、水、ヨウ化C~C12アルキル、及びPRC(たとえば、アセトアルデヒド)が含まれる。いくつかの実施形態においては、その第一の混合物には、PRC(たとえば、アセトアルデヒド)が約0.001重量%~10重量%、ヨウ化メチルの質量組成が10重量%~85重量%、酢酸メチルの質量組成が0重量%~30重量%、酢酸の質量組成が0重量%~12重量%、水の質量組成が、1重量%~95重量%、ジメチルエーテルの質量組成が0重量%~1重量%、そしてメタノールの質量組成が、0.0001重量%~2重量%含まれる。いくつかの実施形態においては、その蒸留カラムへの第一の混合物(たとえば、フィード)が、ジメチルエーテルの質量組成よりも高いメタノールの質量組成を有している。
【0034】
いくつかの実施形態においては、その蒸留カラムの中の圧力が、アセタールの平衡反応に影響を与える可能性がある。たとえば、蒸留カラムの中の特定の成分の分圧を制御する目的で、ガス、たとえば二酸化炭素をパージして、蒸留カラムに対して圧力制御を実施すると、アセタールの生成に影響を及ぼす可能性がある。いくつかの実施形態においては、蒸留カラムの中で、その塔頂圧力を、たとえば、80~160kPa(ゲージ圧)に設定し、その塔底圧力は、塔頂圧力よりは高いので、たとえば、85~180kPa(ゲージ圧)に設定する。いくつかの実施形態においては、その塔頂温度を、たとえば、その設定塔頂圧力での酢酸の沸点よりは低い温度であって、90~130℃に設定し、そしてその塔底温度が、たとえば、その設定塔底圧力での酢酸の沸点より高い温度であって、120~165℃(たとえば、125~160℃)に設定する。
【0035】
1つの実施形態においては、カルボニル化プロセスにおいて形成されるアセタールは、高い圧力で運転されている蒸留カラムの中で、第一の混合物、又はその誘導ストリームを分離することにより、低減させることができる。粗混合物からの酢酸の分離においては、数本の蒸留カラムが必要であり、その数本の蒸留カラムの少なくとも1本を高い圧力で運転することにより、アセタールの質量組成を低減させることができる。いくつかの実施形態においては、分離における数本のカラムの1本を、その他のカラムよりは高い圧力で運転して、そのカラムの内部でのアセタールの加水分解をさらに高めることができる。
実施形態
【0036】
いくつかの実施形態においては、本発明は、少なくとも、メタノール、水、ヨウ化C~C12アルキル(ヨウ化メチル、さらにはその他のヨウ化アルキル)、及び過マンガン酸塩還元化合物(PRC、又はアセトアルデヒドも含めたPRC)を含む第一の混合物から、過マンガン酸塩還元化合物(たとえば、アセトアルデヒド)を分離又は除去するためのプロセスを提供する。酢酸を製造するためのそのプロセスは、プロセスストリームの中のアセトアルデヒドの量を低下させることができる。本発明における酢酸を製造するためのプロセスには、次の運転条件の少なくとも1つを満足させる、少なくとも1つの蒸留工程が含まれる:(i)蒸留カラムの下側部分における温度が、40℃以上である;(ii)下側ストリームの中の水の質量組成が、0.3重量%以上である;又は(iii)下側ストリームの中の酢酸の質量組成が、重量パーセント基準で、第一の混合物の中での酢酸の質量組成より大である。ここで、第一の混合物の中のメタノールの質量組成が、2重量%以下である。
【0037】
いくつかの実施形態においては、そのプロセスに、蒸留工程において第一の混合物を蒸留して、塔頂ストリーム、サイドカットストリーム、及び下側ストリームから選択される、少なくとも2つのストリームを形成させることが含まれる。運転条件(i)~(iii)の少なくとも1つを満足させる蒸留カラムは、その蒸留カラムの塔頂部分(たとえば、塔頂ストリームとフィードストリームとの間)に、PRC及び少なくともヨウ化メチル及び水の質量組成ゾーンを形成し、PRCを効率よく分離させる。上述の運転条件では、蒸留カラムの下側部分に分配されているアセトアルデヒドが少ないが、その理由は、アセタールの量が少なく、それにより、蒸留カラムの下側部分より上にPRCの濃縮ゾーンが形成されるからである。蒸留カラムにおいては、ヨウ化メチルより優先させてPRCを抽出することができる抽出剤(すなわち抽出溶媒)が、PRCの濃縮ゾーン(たとえば、高濃縮ゾーン)に添加される。いくつかの実施形態においては、濃縮ゾーンから下降する抽出混合物(たとえば、液化留分)が、サイドカットストリームとして抜き出される。
【0038】
いくつかの実施形態においては、蒸留カラムに対して、抽出剤が添加されない。たとえば、その蒸留カラムには、追加の水が供給されない(還流が使用されるのなら、蒸留カラムへの還流には、水以外のもの)。運転条件(i)~(iii)の少なくとも1つでの第一の混合物の蒸留により、第一の混合物の中の水の少なくとも一部が、フィードポートより上側の位置にまで上昇して、水の一部を含む第二の混合物を形成することが可能となり、その第二の混合物は、上側ストリームとして抜き出すことができる。その下側ストリームは、第一の混合物よりは低い水分量を有することが可能であり、その下側ストリームは、フィードポートより下の位置から抜き出すことができる。その下側ストリームには、第二の混合物よりは低い、アセタール対PRCの比率を有することができる。このようにして、第一の混合物の蒸留により、蒸留カラムのフィードポートよりは上側の位置に、PRCの濃縮ゾーンを形成させることができ、そして、第一の混合物の中の水の少なくとも一部を、濃縮ゾーンにまで上昇(すなわち、上へ移動)させることが可能となり;そして、濃縮ゾーンのストリームすなわち流体を、上側ストリームとして抜き出すことができる。このプロセスにおいては、濃縮ゾーンから下降する混合物を、サイドカットストリームとして抜き出すことができる。
【0039】
図1に、本発明のいくつかの実施形態に従った、酢酸を製造するため連続プロセス10を示す。このプロセス10においては、金属触媒としてのロジウム触媒及び助触媒を含む触媒システム、さらには酢酸、酢酸メチル、及び有限の(すなわち限定された)量の水の存在下でのメタノールの一酸化炭素とのカルボニル化反応により製造された反応混合物から、酢酸が製造される。プロセス10には、少なくとも、反応器100、フラッシャー200、第一の蒸留カラム300、第一の液-液分離ユニット400、及び第二の蒸留カラム500が含まれていてよい。これらの工程の内でも、本発明には、少なくとも、反応器100、フラッシャー200、第一の蒸留カラム300、及び第二の蒸留カラム500が含まれる。
【0040】
当業者ならば、各種のプロセス機器、たとえば熱交換器、レシーバー、ポンプ、制御装置、バルブなどが、図1に詳しく示されていないと理解するべきである。特に断らない限り、そのようなプロセス機器が示されていないということは、そのようなプロセス機器が、任意要素として使用されているのであろうと当業者なら理解するであろう。
【0041】
反応器100(たとえば、反応システムすなわち反応器)で、メタノールのカルボニル化反応を実施することができる。フラッシャー200は、酢酸を含む反応混合物を、揮発相202(たとえば、低沸点留分)と低揮発相204(たとえば、高沸点留分)とに分離することができる。第一の蒸留カラム300(たとえば、スプリッターカラム)は、揮発相202を、第一の塔頂ストリーム302、サイドカットストリームとしての酢酸ストリーム304、及び下側ストリーム306(たとえば、高沸点留分)に分離することができる。第一の液-液分離ユニット400は、第一の塔頂ストリーム302を凝縮させて、2相を形成させることができる。第二の蒸留カラム500(たとえば、第二の蒸留カラム)は、第一の塔頂ストリーム302(第一の蒸留カラムから直接)、第一の液-液分離ユニット400(たとえば、デカンター)の中で形成された水相402又は有機相404、又はそれらの組合せのいずれか1つを含む、第一の(フィード)混合物を分離して、第二の塔頂ストリーム502、サイドカットストリーム504、及び下側ストリーム506とすることができる。
【0042】
反応工程(反応器)
図1に、酢酸を製造するための連続プロセス10を示す。示されているように、メタノール含有フィードストリーム102及び一酸化炭素含有フィードストリーム104が、カルボニル化反応器100に向かい、その中で、酢酸を製造するためのカルボニル化反応が起きる。そのカルボニル化反応では、均一系触媒を使用するのがよく、連続ベース(たとえば、連続プロセス)で運転される。
【0043】
メタノール含有フィードストリーム102には、メタノール、ジメチルエーテル、及び酢酸メチルからなる群より選択される、少なくとも1つのメンバーが含まれていてよい。メタノール含有フィードストリーム102は、部分的に、フレッシュフィードからもたらされてもよいし、或いは、プロセス10からリサイクルされてもよい。メタノール及び/又はその反応性誘導体の少なくとも幾分かは、液状媒体中での酢酸とのエステル化によって、酢酸メチルに転換されるであろう。反応器100の中での未反応のメタノールの量は、転化率が高いために、少なく、反応器100の中の液相全体を基準にして、1重量%以下、たとえば、0.8重量%以下、0.5重量%未満、又は0.3重量%未満とすることができる。
【0044】
一酸化炭素含有フィードストリーム104には、主として、95重量%以上、たとえば、97重量%以上、又は99容積%以上の一酸化炭素が含まれていてよい。いくつかの実施形態においては、微量不純物たとえば、水素、二酸化炭素、酸素、及び/又は窒素が、5重量%未満、たとえば3重量%未満、又は1重量%未満の量で存在していてもよい。これらの微量不純物は、運転条件下の各種の副反応により、発生する可能性もある。
【0045】
いくつかの実施形態においては、そのメタノール含有フィードストリーム102及び/又は一酸化炭素含有ストリーム104には、不純物が含まれている可能性がある。たとえば、メタノール含有フィードストリーム102には、金属イオンが含まれている可能性があり、それが、メタノール含有フィードストリーム102の純度に影響する。ある種の実施形態においては、そのメタノール含有フィードストリーム102が、極めて低い金属イオン含量を有している可能性があり、具体的には、そのメタノール含有フィードストリーム102が、極めて低い亜鉛イオン含量を有している可能性がある。メタノール含有フィードストリーム102又は一酸化炭素含有フィードストリーム104の中の金属イオンの量は、10重量ppm未満であってよい。たとえば、その金属イオンの質量組成が、重量で、1ppm未満、0.5ppm未満、又は0.1ppm未満であってよい。不純物を低減させるために、反応器100に導入するより前に、カチオン交換樹脂カラムを使用した、予備処理工程を存在させてもよい。
【0046】
いくつかの実施形態においては、反応器100に向かうフィードストリーム又はプロセスストリームを、その反応器に導入するより前に、予備処理にかけてもよい。たとえば、予備処理工程において、反応工程に向かうフィードストリーム又はプロセスストリームから、不純物(たとえば、アミン系及び/又は金属系)を除去することができる。本明細書に記載のプロセスの目的のためには、市販のメタノールを使用することができる。メタノール含有フィードストリームは、部分的に、リザーバータンク(図示せず)からのフレッシュフィード、システムからのリサイクルされたフィード、又はフレッシュフィードとリサイクルフィードとの組合せから導入することができる。メタノール及び/又はその反応性誘導体の少なくとも幾分かは、液状媒体中での酢酸とのエステル化反応によって、酢酸メチルに転換され、したがって酢酸メチルとして存在しているであろう。
【0047】
そのカルボニル化触媒システムには、通常、金属触媒(たとえば、コバルト触媒、ロジウム触媒、又はイリジウム触媒)、触媒安定剤又は反応促進剤、及び助触媒が含まれる。それらの金属触媒は、単独、又は組合せの形で使用してよい。その金属触媒に、ロジウム触媒及びイリジウム触媒(特にはロジウム触媒)が含まれているのが好ましい。
【0048】
その金属触媒は、単一の金属、金属酸化物(錯体の金属酸化物を含む)、金属水酸化物、金属ヨウ化物、金属のカルボン酸塩(たとえば、酢酸塩)、無機酸の金属塩(たとえば、硫酸塩、硝酸塩、及びリン酸塩)、又は金属錯体の形態で使用することができる。いくつかの実施形態においては、その金属触媒が、液相の中に溶解された形態(たとえば、錯体の形態)にある。ロジウム触媒としては、たとえば、ヨウ化ロジウム錯体、たとえば、{RhI、[RhI(CO)、及び[Rh(CO)]-}、及びロジウムカルボニル錯体を挙げることができる。
【0049】
いくつかの実施形態においては、その反応混合物に、触媒安定剤又は反応促進剤が含まれていてもよい。触媒安定剤又は反応促進剤としては、反応混合物の中でヨウ化物イオンを生成することが可能な金属ヨウ化物、たとえば、アルカリ金属ヨウ化物(たとえば、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、及びヨウ化カリウム)が挙げられる。いくつかの実施形態においては、その安定剤にヨウ化リチウムが含まれていてよい。これらの助触媒又は促進剤は、単独で使用しても、或いは組合せで使用してもよい。いくつかの実施形態においては、その触媒安定剤又は反応促進剤が、反応器の中の液相全体の中で、約1~25重量%、たとえば、約2~22重量%、約3~20重量%、約4~18重量%、約5~16重量%、又は約8~15重量%の質量組成を有している。
【0050】
その反応混合物には、酢酸、酢酸と原料のメタノールとの反応により生成した酢酸メチル、及び水が含まれる。その上に、反応混合物には、通常、未反応の原料メタノールが含まれている。いくつかの実施形態においては、反応混合物中の酢酸メチルの質量組成は、0.5~30重量%、たとえば、0.3~20重量%、0.6~9重量%、又は0.6~4.1重量%に保持されている。反応混合物の中の酢酸メチルの質量組成は、約0.1~30重量%、たとえば、約0.3~20重量%、約0.5~10重量%、又は約0.5~6重量%であってよい。
【0051】
いくつかの実施形態においては、その反応混合物には、金属触媒、たとえば、コバルト、ロジウム、イリジウム、又はそれらの組合せが、200~3000ppm(重量ppm)、たとえば、800~3000wppm、850~200wppm、又は900~1500wppmの量で含まれている。いくつかの実施形態においては、その反応混合物の中のヨウ化メチルの質量組成が、1~25重量%、たとえば、2~22重量%、4~20重量%、5~15重量%、又は4~13.9重量%に保持される。いくつかの実施形態においては、その反応混合物の中のヨウ化物塩たとえばヨウ化リチウムの質量組成が、1~25重量%、たとえば、2~20重量%、3~18重量%、4~15重量%、5~14重量%に保持される。ヨウ化物塩は、たとえば、酢酸リチウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム、又はその他の、その反応混合物と相溶性のあるアニオンのリチウム塩を添加することによって、インサイチューで形成させることができる。いくつかの実施形態においては、そのプロセスでは、その反応混合物での酢酸リチウムの質量組成を、0.3~0.7重量%、たとえば、0.3~0.6重量%に保持するのがよい。
【0052】
その反応混合物の中には、低量の水が存在する。いくつかの実施形態においては、その反応混合物の中の水の質量組成が、約0.1~15重量%、たとえば、約0.5~10重量%、約0.8~5重量%、約1~3重量%、約1~10重量%、又は約2~5重量%であってよい。いくつかの実施形態においては、その反応を、水が少ない条件下で実施し、その反応混合物には、0.1~4.1重量%、たとえば、0.1~3.1重量%、又は0.5~2.8重量%の量で水が含まれる。いくつかの実施形態においては、その反応混合物の中の酢酸の質量組成が、一般的には、30重量%より大、たとえば、40重量%より大、又は50重量%より大である。反応混合物の中の酢酸は、溶媒として機能し、スタートアップ時に反応器の予め仕込んだ酢酸が含まれている。
【0053】
酢酸製造プロセスにおいて、ギ酸は、カルボニル化反応器の中で副生物として生成する望ましくない不純物であり、酢酸製品の品質を低下させる。ギ酸の生成を低減又は限定するためには、水の質量組成、さらには反応器の温度を制御するのがよい。反応器によって生成するギ酸はすべて、蒸留により分離するよりは、そのプロセス全体で分解させるのがよい。1つの実施形態においては、ギ酸は、反応器中の水分及び/又は反応器の温度によって制御することが可能で、その結果、酢酸製品の中のギ酸含量は、200wppm未満、たとえば、180wppm未満、160wppm未満、140wppm未満、120wppm未満、又は100wppm未満である。
【0054】
反応混合物の複数の成分は、副生物の生成を抑制しながらも、酢酸の製造及び反応物の利用を十分に確保できる、所定の限度内に保持される。連続プロセスにおいては、成分の量は、所定の範囲内に保持され、それらの範囲内での変動は見込まれている。通常の技術者ならば、反応混合物中の成分の量を保持するためのプロセスの制御法を、容易に理解するところであろう。
【0055】
いくつかの実施形態においては、カルボニル化反応の温度は、たとえば、150℃~250℃、たとえば、175℃~230℃、又は185℃~205℃であってよい。
【0056】
反応圧力(反応器の合計圧力)は、副生物の分圧も含めて、たとえば、約1.5~4MPa(絶対圧力)又は約2~3.5MPa(絶対圧力)であってよい。いくつかの実施形態においては、反応器中の一酸化炭素の分圧(絶対圧力)が、0.2MPa~3MPa、たとえば、0.3MPa~1.8MPa、0.4MPa~1.5MPa、又は0.6MPa~1.2MPaとなる可能性がある。一酸化炭素の分圧(絶対圧力)の下限は、0.2MPa以上、たとえば、0.3MPa以上、0.4MPa以上、又は0.6MPa以上である。
【0057】
いくつかの実施形態においては、反応器中の二酸化炭素の分圧(絶対圧力)が、110kPa以下、たとえば、105kPa以下、又は70kPa以下となる可能性がある。いくつかの実施形態においては、反応器中の二酸化炭素の分圧(絶対圧力)が、0kPa~110kPa、たとえば、0kPa~105kPa、0kPa~100kPa、0kPa~90kPa、0kPa~80kPa、又は0kPa~70kPaの範囲となる可能性がある。二酸化炭素の分圧(絶対圧力)の下限は、0kPaとすることができるが、二酸化炭素の分圧(絶対圧力)は、0.1kPaより大、たとえば、0.5kPaより大、1kPaより大、2kPaより大、4kPaより大、又は5kPaより大であってよい。
【0058】
二酸化炭素は、カルボニル化反応には参加しないが、一酸化炭素含有フィードストリーム104の中に少量存在してもよいし、或いは、ガスシフト反応によって生成する可能性がある。二酸化炭素は、その他のガスと同様に、ベントストリームを通過させることによって除去できるが、その結果、有用な一酸化炭素にも相応のロスが生じる。酢酸の製造の実施において、反応混合物中の一酸化炭素の質量組成は、ベントストリームの中で、5kmol/hr以下、たとえば、4.5kmol/hr以下又は4.1kmol/hr以下のレベルがよい。
【0059】
水素は、触媒活性を上げることができるものの、水素が存在すると、副生物が生成する可能性もある。酢酸の製造を実施するために、反応器に水素をフィードしてもよい。水素は、そのプロセスで排出されたガス状成分(水素、一酸化炭素、又はその他のガスを含む)を、必要があれば、それに続く工程において、ガス状成分を精製及び/又は分離した後で、リサイクルすることにより、反応器にフィードしてもよい。いくつかの実施形態においては、反応器中の水素の分圧(絶対圧力)は、500kPa未満、たとえば、180kPa未満、150kPa未満、135kPa未満、125kPa未満、120kPa未満、又は105kPa未満とすることができる。いくつかの実施形態においては、反応器中の水素の分圧(絶対圧力)は、0kPa~500kPa、たとえば、5kPa~180kPa、5kPa~150kPa、5kPa~135kPa、5kPa~120kPa、又は5kPa~105kPaの範囲とすることができる。水素の分圧(絶対圧力)の下限は、0kPaとすることが可能ではあるが、水素の分圧(絶対圧力)を、1kPaより大、たとえば、2kPaより大、4kPaより大、又は5kPaより大としてもよい。
【0060】
反応器の中では、メタノールのカルボニル化反応が、液相反応系と気相系との間の平衡を保ちながら、進行する。液相反応系には、反応物及び金属触媒成分が含まれ、そして気相系は、一酸化炭素、反応生成物(水素、メタン、及び二酸化炭素)及び蒸発した低沸点成分(たとえば、ヨウ化メチル、酢酸、及び酢酸メチル)が含まれる。蒸気成分(ベントガス)は、反応器の塔頂(すなわちヘッド)から抜き出すことが可能であるか、又は吸収処理にかけて、凝縮性の液体、一酸化炭素及び/又は水素を回収してもよく、それらは次いで、反応器へリサイクルしてもよい。
【0061】
いくつかの実施形態においては、その反応器100の内部圧力を、ガス状ストリーム112を抜き出したり、ベントしたりすることによって制御してもよい。ガス状ストリーム112はさらに、吸収システム110、たとえばスクラッバーシステム又は圧力スイング吸収カラムの中で処理するのがよい。いくつかの実施形態においては、ガス状ストリーム12を凝縮させ、そのガス状部分(非凝縮性の留分)を、吸収システム110へフィードするのがよい。いくつかの実施形態においては、そのガス状部分が、一酸化炭素含量が比較的に高いために、触媒を沈降に対して安定化させるのに有用である。吸収システム110は、有用な成分、特には、有機成分、さらにはヨウ化メチルを捕集及び/又は回収することができる。冷却した溶媒を、ライン116を介して、吸収ユニット100の塔頂にフィードして、残渣118の中のそのような成分を回収して、それを、反応器100に戻すのがよい。その冷却した溶媒には、酢酸、メタノール、酢酸メチル、水、又はそれらの混合物が含まれていてよく、20℃以下、たとえば、18℃以下、又は10℃以下の温度に冷却されている。残渣118の中の、捕集されずに残ったガス状体はいずれも、ライン114を介して、塔頂近くから、吸収システム110から放出される。吸収システム110については、1基のアブソーバーしか示していないが、その吸収システムが、複数の吸収カラム、さらには溶媒ストリッピングカラムを含んでいてもよい。さらには、そのプロセス全体で得られたその他のベントストリームを集めて、吸収システム110を通して流してもよい。
【0062】
1つの吸収システムに、たとえば、異なった吸収溶媒及び/又は異なった圧力を用いた、複数の吸収工程が含まれる。そのようなシステムは、米国特許第8,318,977号明細書に記載されている(そのすべてを、参考として引用し本明細書に組み入れたものとする)。
【0063】
反応混合物(反応液体)には、酢酸、助触媒としてのヨウ化メチル、酢酸とメタノールとの反応生成物としての酢酸メチル、水、及び副生物としてのアセトアルデヒドが含まれていてよい。その反応混合物には、たとえば、金属触媒成分(たとえば、ロジウム触媒)、触媒安定剤としてのヨウ化リチウム、及び/又はヨウ化メチルが含まれていてよい。
【0064】
酢酸反応生成物に加えて、各種の副生物及び/又は不純物も、その反応混合物の中に生成する可能性がある。さらには、アセトアルデヒドから誘導された副生物(アセトアルデヒ誘導体)もまた生成する。アセトアルデヒ誘導体としては、たとえば、以下のものが挙げられる:他のアルデヒド、たとえば。ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、2-エチルクロトンアルデヒド、及び2-エチルブチルアルデヒド;ケトン、たとえば、アセトン又はメチルエチルケトン;それらのアルドール縮合反応生成物;並びにC2~12アルキルのヨウ化物、たとえば、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピル、ヨウ化ブチル、ヨウ化ペンチル、又はヨウ化へキシル。副生物としては、以下のものが挙げられる:3-ヒドロキシアルカナール(たとえば、3-ヒドロキシブタナール);ギ酸又はC3~12アルカンカルボン酸(たとえば、プロピオン酸、ブタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、又はオクタン酸);C3~12アルキルアルコール、たとえばブチルアルコール又は2-エチルブチルアルコール;メタノール又は上述のアルキルアルコールと酢酸又は上述のカルボン酸とのエステル;メタノール及び/又は上述のアルキルアルコールのエーテル(ジアルキルエーテル、たとえばジメチルエーテル);並びにメタン、及び2個以上の炭素原子を有する炭化水素(たとえば、C2~12アルカン)。アセトアルデヒド及びアセトアルデヒドから誘導された副生物(たとえば、他のアルデヒド、ケトン、及びアルドール縮合反応生成物)は、過マンガン酸塩還元化合物(PRC)に属する。したがって、反応混合物からの主たる副生物であるアセトアルデヒドを分離及び除去すること、並びにプロセスストリームから有用な成分(たとえば、ヨウ化メチル)を回収することが好ましい。
【0065】
本開示においては、連続反応においてさえも、アセトアルデヒドを効率よく分離及び除去して、反応器の中のアセトアルデヒドの量を低減させることができる。アセトアルデヒドの量を減らすか、又はアセトアルデヒドを排除することによって、アセトアルデヒドから誘導された副生物の生成が、顕著に防止される。具体的には、塔頂留分の中に分離されるアセトアルデヒドの含量が、より高いために(アセタールにトラップされる量が少ないので)、反応器へリサイクルされる下側ストリームの中には、アセトアルデヒドの量が、より少ない。たとえば、反応器が、たとえば、1800wppm未満、たとえば、1600wppm未満、1000wppm未満、又は800ppm未満のPRC(典型的には、アセトアルデヒド)の質量組成を有している可能性がある。いくつかの実施形態においては、反応器が、0~1800wppm、たとえば、100~1600wppm、150~1000wppm、又は200~800wppmのPRC(典型的には、アセトアルデヒド)の質量組成を有している可能性がある。
【0066】
この反応系における酢酸の空時収量は、たとえば、約5mol/L・h~50mol/L・h、好ましくは約8mol/L・h~40mol/L・h、より好ましくは約10mol/L・h~30mol/L・hとすることができる。
【0067】
この反応系は、熱の発生を伴う発熱反応系であり、その反応温度は、除熱可能な(すなわち除熱性)ユニット又は冷却ユニット(たとえば、ジャケット)を取り付けて、冷却するか、又はそれから熱を除去した凝縮物をリサイクルすることにより、制御(すなわち調節)することができる。反応熱の一部を除去する目的で、反応器からの蒸気(ベントガス)を、その蒸気を液体成分とガス状成分とに分離するためのコンデンサー、熱交換器、又はその他の手段の中で冷却するのがよく、そしてその液体成分及び/又はガス状成分は、反応器にリサイクルすることができる。
【0068】
いくつかの実施形態においては、カルボニル化反応工程において、反応熱を回収する目的で、ポンプ循環反応器又は拡張(extended)反応器を使用することができる。たとえば、反応器まわりのポンプ(pump around reactor)を、カルボニル化反応器からのサイドストリームの位置に設置することが可能であり、カルボニル化反応器からの反応溶液の一部を、その反応器まわりのポンプにフィードする。一酸化炭素並びにメタノール、酢酸メチル、ギ酸メチル、ジメチルエーテル及び/又は混合物からなる群より選択される反応物を、その反応器まわりのポンプにフィードすることができる。1つの実施形態においては、その反応器まわりのポンプには、反応溶液中の触媒のみが含まれる、すなわち、その反応器まわりのポンプへ、追加の触媒が導入されることはない。反応器まわりのポンプは、カルボニル化反応を拡張して、追加の反応熱を発生するが、それは、回収することができる。
【0069】
カルボニル化反応は発熱性であり、反応器の温度は、各種の方法で制御するのがよい。本開示の目的では、反応器の温度を制御するために、各種適切な冷却を使用してよい。米国特許第5,374,774号明細書には、反応器のためのリサイクルラインの中の冷却ユニットが記載されている。カルボニル化反応器の温度を制御しながら、ポンプ回りのループ(pump around loop)を使用して、スチーム生成のための追加の熱を発生させてもよいが、このことは、さらに、米国特許第8,530,696号明細書にも記載されている。いくつかの実施形態においては、反応器の温度を、反応器に戻されるフラッシュ塔頂留出物の一部を凝縮させることによって制御させているが、このことは、さらに、米国特許第8,957,248号明細書にも記載されている。
【0070】
カルボニル化反応器100及びその内部部品の材料には、特別な制限はなく、金属、セラミック、ガラス、又はそれらの組合せであってよい。たとえば、その材料としては、高い耐食性を有するジルコニウムベースの材料及び合金が挙げられるが、さらには、鉄ベースの合金(ステンレス鋼)、ニッケルベースの合金(HASTELLOY(商標)又はINCONEL(商標))、チタンベースの材料及び合金、又はアルミニウムベースの材料又は合金も挙げることができる。
【0071】
いくつかの実施形態においては、その反応器100が、自己撹拌的(撹拌可能)な、たとえば、機械的撹拌槽、エジェクター若しくはポンプ循環混合を有する槽、又はバブル-カラムタイプの槽(撹拌機の存在下又は非存在下)であって、その中に、反応性の液体又はスラリー内容物が、好ましくは自動的に、所定のレベルに保持され、そのレベルが、定常運転の間は、実質的に一定に保たれる。
【0072】
フラッシュ蒸発工程
定常状態運転においては、反応混合物が、カルボニル化反応器100からライン120を介して、その中のレベルを一定に保つのに十分な速度で連続的に抜き出され、フラッシャー200に送られる。酢酸製品を得るためには、ライン120を介して抜き出された反応混合物を、その次の下側ストリームフラッシャー200(たとえば、フラッシュ蒸発器、フラッシュ槽、又はフラッシュ蒸留)にフィードする。いくつかの実施形態においては、反応器とエバポレーターとの間の流路に、転化反応器(図示せず)又はパイプ反応器(図示せず)を採用することも可能である。パイプ反応器は、米国特許第5,672,744号明細書に記載されており、その反応混合物の中に溶解した一酸化炭素を反応させるのに使用される。中国特許第1043525C号明細書には、それに続くフラッシングより前に、反応を大幅に進行させることを可能とするための転化反応器が記載されている。その転化反応器からは、ガス状成分を含むベントストリームが生成し、それらは、典型的には、相溶性のある溶媒を用いてスクラビングして、ヨウ化メチル及び酢酸メチルのような成分を回収する。本明細書に記載するように、反応器10及びコンバーターからのガス状ストリームは、組み合わせるか又は別々にスクラビングすることができ、典型的には、酢酸、メタノール、又は酢酸とメタノールとの混合物のいずれかを用いてスクラビングして、そのプロセスからの低沸点成分たとえばヨウ化メチルのロスを防ぐ。
【0073】
フラッシャー200が、反応混合物を分離(本明細書においては、フラッシング又は蒸発と呼ばれる)して、揮発相(蒸気状の酢酸反応生成物)202及び低揮発相(残留液体触媒ストリーム)204とする。その揮発相202には、酢酸、ヨウ化メチル、アセトアルデヒド、酢酸メチル、水、又はその他の化合物が含まれ、そして低揮発相204には、酢酸、金属(コバルト、ロジウム、及び/又はイリジウム)触媒、及び助触媒化合物(ヨウ化リチウムを含む)が含まれる。揮発相の少なくとも第一の部分が、第一の蒸留カラム300にフィードされ、そして低揮発相204が、リサイクルラインを介して、反応工程の反応器100にリサイクルされる。図1には示されていないが、一部の低揮発相204が、凝縮され、凝縮物が、反応器100にリサイクルされてもよい。
【0074】
揮発相202及び低揮発相204それぞれの流量は、変更可能である。いくつかの実施形態においては、フラッシャー200の中へのフロー(たとえば、ライン120を介しての反応混合物のフロー)の15%~55%が、揮発相202として除去され、そしてそのフローの45%~85%が、低揮発相204として除去される。フラッシャー200の中で分離される、揮発相202と低揮発相204との間の比率は、質量比で言って、10:90~60:40、たとえば、25:75~45:55、又は30:70~40:60であってよい。いくつかの実施形態においては、フラッシャー200の中での反応混合物の蒸発比率は、10~60質量%、たとえば、26~45質量%、27~42質量%、又は30~40質量%である。
【0075】
いくつかの実施形態においては、低揮発相204には、酢酸、金属触媒、腐食した金属、さらにはその他の各種の化合物が含まれる。1つの実施形態においては、低揮発相204には、酢酸が60~90重量%の量で、金属触媒が0.01~0.5重量%の量で、腐食した金属(たとえば、ニッケル、鉄、及びクロム)が10~2500wppmの合計量で、ヨウ化リチウムが5~20重量%の量で、ヨウ化メチルが0.5~5重量%の量で、酢酸メチルが0.1~5重量%の量で、水が0.1~8重量%の量で、アセトアルデヒドが1重量%以下の量(たとえば、0.0001~1重量%のアセトアルデヒド)で、そしてヨウ化水素が、0.5重量%以下の量で(たとえば、0.0001~0.5重量%のヨウ化水素)含まれる。
【0076】
1つの実施形態においては、その揮発相202には、酢酸、ヨウ化メチル、酢酸メチル、水、アセトアルデヒド、及びヨウ化水素が含まれる。1つの実施形態においては、揮発相202には、その揮発相の合計重量を基準にして、酢酸が45~75重量%の量で、ヨウ化メチルが20~50重量%の量で、酢酸メチルが9重量%以下の量で、水が15重量%以下の量で、そしてPRCが5重量%以下の量で含まれる。また別の実施形態においては、揮発相202には、その揮発相の合計重量を基準にして、酢酸が45~75重量%の量で、ヨウ化メチルが24~36重量%以下の量で、酢酸メチルが9重量%以下の量で、水が15重量%以下の量で、そしてPRCが2重量%以下の量で含まれる。いくつかの実施形態においては、揮発相202には、酢酸が55~75重量%の量で、ヨウ化メチルが24~35重量%の量で、酢酸メチルが0.5~8重量%の量で、水が0.5~14重量%の量で、そしてPRCが1重量%以下の量で含まれる。いくつかの実施形態においては、揮発相202には、酢酸が60~70重量%の量で、ヨウ化メチルが25~35重量%の量で、酢酸メチルが0.5~6.5重量%の量で、水が1~8重量%の量で、そしてPRCが0.5重量%以下の量で含まれる。
【0077】
揮発相202の中のアセトアルデヒドの質量組成は、揮発相202の合計重量を基準にして、0.005~1重量%、たとえば、0.01~0.8重量%、又は0.01~0.7重量%の量であってよい。いくつかの実施形態においては、アセトアルデヒドが、0.01重量%以下の量で存在していてよい。揮発相202には、ヨウ化水素を、揮発相202の合計重量を基準にして、1重量%以下、たとえば、0.5重量%以下、又は0.1重量%以下の量で含んでいてよい。揮発相202は、好ましくは、その揮発相の合計重量を基準にして、実質的にプロピオン酸フリー、すなわち、0.0001重量%以下のプロピオン酸しか含まない。
【0078】
酢酸に加えて、揮発相202には、ヨウ化メチル、酢酸メチル、水、並びにPRC、たとえば、アセトアルデヒド及びクロトンアルデヒドも含まれる。反応器100を出て、フラッシャー200に入る溶解ガスには、一酸化炭素の一部が含まれ、そしてさらに、ガス状の副生物、たとえば、メタン、水素、及び二酸化炭素が含まれていてもよい。そのような溶解ガスは、フラッシャー200から、揮発相202の一部として排出される。1つの実施形態においては、ガス状のパージストリームの中の一酸化炭素を、フラッシャー200の基部にフィードして、ロジウムの安定性を高めてもよい。
【0079】
図1には示されていないが、揮発相202の一部を冷却して、コンデンサーの中で凝縮させてもよい。そのようにして得られる凝縮物は、その凝縮物を反応器100へリサイクルするために、ホールドタンクの中で保存してもよい。コンデンサーの中で冷却された反応生成物(凝縮物及び/又は非凝縮性の成分)は、液-液分離工程へフィードするのがよく、そして第一の蒸留工程(スプリッターカラム)からの塔頂留出物と共にデカンターの中に保存するのがよく、そしてその冷却された反応生成物と塔頂留出物との混合物を、液-液分離ユニット(たとえば、デカンター)の中で、2相に分離するのがよい。
【0080】
いくつかの実施形態においては、揮発相202の一部を、凝縮させることなく、蒸留工程に直接的又は間接的にフィードしてもよいし、或いは、1基又は複数のコンデンサーの中で冷却及び凝縮させて、液-液分離工程を介して、2相(水相又は有機相)を形成させて、その水相又は有機相(少なくとも水相)を、直接的又は間接的に蒸留工程にかけてもよい。たとえば、揮発相202の一部を、場合によっては、上述のようにして凝縮してもよく(そして場合によっては、液-液分離してもよい)、そして液-液分離工程で得られた凝縮物と混合し、その混合物を、蒸留工程にかけてもよい。必要があれば、触媒成分(金属触媒成分)及び触媒安定剤又は反応促進剤を、1種又は複数の工程により、低揮発相204から分離し、そして反応器100にリサイクルしてもよい。
【0081】
フラッシュ蒸発としては、恒温的フラッシュ法(この場合は、反応混合物を加熱して、除圧する)、断熱的フラッシュ法(この場合は、加熱なしで、反応混合物を除圧する)、又はそれらのフラッシュ条件の組合せが挙げられる。そのようなフラッシュ蒸発によって、反応混合物を、気相と液相とに分離することができる。たとえば、フラッシュ蒸留は、反応混合物の温度が、80~250℃、反応混合物の圧力(絶対圧力)が、10~1000kPa(たとえば、100~1000kPa)、好ましくは100~500kPa、より好ましくは100~300kPaで実施するのがよい。フラッシュ蒸発は、たとえば、80~250℃、たとえば、90~200℃、100~180℃、110~170℃、及び120~160℃の温度で実施するのがよい。その圧力(ゲージ圧)は、0.01~1MPa、たとえば、0.03~1MPa、0.05~0.5MPa、0.08~0.3MPa、又は0.1~0.2MPaでよい。その低揮発相すなわち触媒液体混合物は、たとえば、80~200℃、たとえば、90~180℃、100~170℃、又はより好ましくは130~160℃の温度を有しているのがよい。
【0082】
フラッシャー200は、円環形(torispherical)、楕円形、又は半球形のヘッドを有する垂直エバポレーターであってよい。メンテナンスやアクセスを可能とするために、フラッシャー200には、1個又は複数のマンホールがあるのがよい。反応混合物120は、米国特許第6,599,348号明細書に示されているようにして、1つ又は複数のフィードポートを通して、フラッシュ槽200の上側部分に、接線方向にフィードするのがよい。液体部分を下方に向かわせるために、それぞれのフィードポートで、スプラッシュプレートを使用してもよい。反応混合物120のためのノズルは、フラッシャー200の上側部分、たとえば、フラッシャー200の内部の液体レベルよりは上にあるのがよい。反応混合物を接線方向に導入して、蒸気部分をさらに分離させる、1本又は数本のノズル(図示せず)が存在していてもよい。いくつかの実施形態においては、フラッシャー200が、上側部分がその下側部分よりは大きいシリンダー直径を有していてもよい。フラッシャー200は、そこにフィードされる反応混合物120が、フラッシャー200の中に保持されて、所望のカルボニル化反応生成物を揮発相202の中に蒸発させることを可能とするような、大きな容積を有しているべきであり、その後で、低揮発相204をリサイクルさせる。1つの実施形態においては、フラッシャー200の中での滞留時間が、約1分又はそれ以上であるのが望ましく、そしていくつかの実施形態においては、少なくとも2分、又はそれ以上の滞留時間を使用することができる。
【0083】
触媒の安定性を保持又は向上させ、そしてフラッシャー200内での触媒の沈降を低減又は防止するために、一酸化炭素含有パージは、フラッシャー200の下側セクション、たとえば、フィードノズルの下、又は低揮発相204の中に導入するのがよい。一酸化炭素含有パージには、60重量%より大、たとえば、80重量%より大、又は90重量%より大の一酸化炭素が含まれていてよい。一酸化炭素含有パージの量は、フラッシャー200の下側部分に保持された液体の中へ、一酸化炭素を溶解させるに十分な量であってよい。1つの実施形態においては、その一酸化炭素含有パージを、5Nm/hrより大、たとえば、50Nm/hrより大、又は100Nm/hrより大の量でフィードするのがよい。その上限は、1000Nm/hrである。
【0084】
触媒を安定化させるためにCO含有パージを使用したときであっても、その内部表面上に沈降した、不溶性の形状物が、幾分か存在する可能性がある。それが相対的に高価であるために、内部表面上に集まったロジウムの不溶性の形状物は、回収して再利用するのがよい。
【0085】
プロセスを連続的に運転している場合、触媒がいくらかロスすることはあり得るので、補給用の触媒を使用する必要が生じる。補給用の触媒は、直接反応器100に添加してもよいが、1つの実施形態においては、補給用の触媒を、フラッシャー200、又は低揮発相204のためのラインに添加してもよい。補給用の触媒は、連続反応を維持するのに十分な速度で計量仕込みするのがよい。
【0086】
いくつかの実施形態においては、蒸気の出口近くに任意要素のミストエリミネーターを採用して、液滴を凝集させてもよい。フラッシャーの蒸気出口に、任意要素のスクラビングセクション(図示せず)をさらに採用して、金属触媒又はその他の金属成分が、揮発相202の中に同伴することを、防止及び/又は低減させてもよい。任意要素のスクラビングセクションの中に、洗浄液体を導入するのがよい。また別の実施形態においては、揮発相202のためのラインの中で、インラインセパレーターを使用して、渦運動を与え、同伴された液体を凝集させてもよい。その液体を、フラッシャー20にドレインで戻して、揮発相202中での同伴を低減させてもよい。
【0087】
いくつかの実施形態においては、その低揮発相204を処理して、腐食質の金属(たとえば、ニッケル、鉄、及びクロム)を除去してもよい。たとえば、低揮発相204を反応器100にリサイクルする前に、米国特許第5,731,252号明細書(その全体を、参考として引用し本明細書に組み入れたものとする)に記載されているようにして、スリップストリームを、腐食した金属の除去床、たとえばイオン交換床を通過させて、同伴された各種の腐食した金属、たとえばニッケル、鉄、クロム、及びモリブデンを除去するのがよい。さらには、米国特許第8,697,908号明細書(その全体を、参考として引用し本明細書に組み入れたものとする)に記載されているようにして、腐食した金属の除去床を使用して、窒素化合物、たとえばアミンを除去してもよい。
【0088】
第一の蒸留工程(第一のカラム、すなわちスプリッターカラム)
図1に示されているように、揮発相202を、第一の蒸留工程の中の第一の蒸留カラム300に向かわせる(これは、スプリッターカラム又はライトエンドカラムとも呼ばれる)。分離を可能とさせるために、その第一の蒸留カラム300には、棚段カラム、充填カラム、又はそれらの組合せが含まれている。棚段カラムを使用する実施形態においては、その理論段数は、5~80段、たとえば、10~60段又は15~50段の範囲がよい。第一の蒸留カラム300においては、揮発相202(又はその一部)を分離して、第一の塔頂ストリーム302、酢酸ストリーム304、及び下側ストリーム306とする。第一の塔頂ストリーム302(塔頂ガス、低沸点ストリーム、又は低沸点留分)が、塔頂、又はカラムの上側の位置(すなわち、上側部分)から抜き出され、酢酸ストリーム304が、上側の位置と下側の位置との間の位置からサイドカットとして抜き出されて、主として酢酸を含んでおり、そして下側ストリーム306(高沸点ストリーム又は高沸点留分)が、第一の蒸留カラム300の塔底又は下側の位置(すなわち、下側部分)から抜き出される。酢酸のほとんどが酢酸ストリーム304に除去され、好ましくは、下側ストリーム306からは、酢酸が、ほとんど又は全く回収さない。第一の塔頂ストリーム302の割合は、揮発相202全体の約20%~60%、たとえば、約35%~50%であってよい。酢酸ストリーム304の割合は、揮発相202全体の約30%~80%、たとえば、約40%~70%であってよい。下側ストリーム306の割合は、揮発相202全体の約0%~10%、たとえば、約0%~3%であってよい。
【0089】
第一の塔頂ストリーム302には、少なくとも、過マンガン酸塩還元化合物(PRC)とヨウ化メチルの両方が含まれる。PRCには、少なくとも、副生物のアセトアルデヒドが含まれる。第一の塔頂ストリーム302には、通常、酢酸メチルが含まれ、実際には、以下のものが含まれる:酢酸、メタノール、水、ジメチルエーテル、及び/又はアセトアルデヒドから誘導された副生物(たとえば、アルデヒド、たとえばクロトンアルデヒド又はブチルアルデヒド;アセトアルデヒ誘導体、たとえばC2~12アルキルのヨウ化物又はC3~12アルカンカルボン酸;並びにC2~12アルカン)。
【0090】
1つの実施形態においては、第一の塔頂ストリーム302には、水が、第一の塔頂ストリーム302の合計重量を基準にして、5重量%以上、たとえば、10重量%以上、又は25重量%以上の量で含まれる。いくつかの実施形態においては、水分量が、80重量%までであってよい。範囲で言えば、塔頂留出物の中の水の質量組成が、5重量%~80重量%、たとえば、10重量%~70重量%、又は25重量%~60重量%であってよい。水の質量組成を5重量%未満にまで下げることは、有利ではないが、その理由は、それによって、酢酸の反応系へ戻るリサイクルが大量となり、それがさらに、精製システム全体で大きなリサイクルをもたらすからである。水に加えて、第一の塔頂ストリーム302にはさらに、酢酸メチル、ヨウ化メチル、及びカルボニル不純物も含まれうるが、それらは、酢酸ストリーム304の酢酸から除去される塔頂留出物の中に濃縮されるのが好ましい。これらのカルボニル不純物もまた、本明細書においては、PRCと呼ばれることもある。
【0091】
第一の蒸留カラム300からの第一の塔頂ストリーム302は、1基又は複数のコンデンサー350の中で、冷却及び凝縮される。凝縮物352は、第一の液-液分離ユニット(たとえば、デカンター)400の中で、水リッチな水相とヨウ化メチルリッチな有機相との二相に分離することが可能である。いくつかの実施形態においては、その第一の塔頂ストリーム302が、直列に配置された複数のコンデンサー(たとえば、連続的に冷却温度を下げていく複数のコンデンサー)の中で冷却されて、連続的に温度が低下していく複数の凝縮物を形成させる。たとえば、それら複数のコンデンサーの中の第一のコンデンサーの中で形成される凝縮物が、10℃~120℃、たとえば、20℃~110℃、30℃~100℃、40℃~90℃、50℃~80℃、又は60℃~70℃の温度を有していてよい。いくつかの実施形態においては、それら複数のコンデンサーの中の第二のコンデンサーの中で形成される凝縮物が、-30℃~60℃、たとえば、-20℃~50℃、-15℃~45℃、-5℃~40℃、0℃~30℃、又は5℃~20℃の温度を有していてよい。
【0092】
いくつかの実施形態においては、凝縮物352の少なくとも一部が、第一の蒸留カラム300に直接還流される。いくつかの実施形態においては、凝縮物352の少なくとも一部が、第一の液-液分離ユニット400に向かい、水相402及び有機相404を形成する。第一の液-液分離ユニット400の中では、凝縮物352が分離して、水相402及び有機相404が形成されるような条件が保持されるのが望ましい。その相分離は、2つの別々の相が保持されて、第三の相が形成されたり、それの相の間にエマルションが形成されたりということがあってはならない。
【0093】
いくつかの実施形態においては、その凝縮物352の一部である、水相402及び/又は有機相404を、それぞれ還流ライン406又は408を介して、第一の蒸留カラム300に戻すことができる。PRC(アセトアルデヒドを含む)を除去する必要性に応じて、水相402の少なくとも一部を第二の蒸留カラム500にフィードし、そして有機相404の少なくとも一部を、リターンライン416を介して反応器100にリサイクルさせてもよい。いくつかの実施形態においては、その凝縮物352の一部である、水相402及び/又は有機相404を、それぞれリターンライン414又は416を介して、反応器100に戻すことができる。したがって、1つの実施形態においては、水相402の一部を、ライン406を介して還流のために第一の蒸留カラム300に戻し、水相402の残りの部分を、ライン410を介して第二の蒸留カラム500にフィードし、そして有機相404の部分全体を、ライン416を介して反応器100に戻す。また別の実施形態においては、水相402の一部を、ライン406を介して還流のために第一の蒸留カラム300に戻し、そし有機相404の一部を、ライン412を介して第二の蒸留カラム500に向かわせ、そして有機相404のまた別の一部を、ライン416を介して反応器に戻す。また別の実施形態においては、水相402の一部を、ライン406を介して還流のために第一の蒸留カラム300に戻し、そし水相402及び有機相404の一部を、ライン410及び412を介して第二の蒸留カラム500に向かわせ、そして有機相404のまた別の一部を、ライン416を介して反応器に戻す。還流されないか、又は第二の蒸留カラム500へフィードされずに残った水相402はすべて、ライン414を介して反応器100に戻される。
【0094】
いくつかの実施形態においては、水相402(又は、水相から誘導されたプロセスストリーム)の一部(又は全部)を、第二の蒸留カラム500にフィードすることができるか、又は有機相404の少なくとも一部(又は有機相全体)を、第二の蒸留カラム500にフィードすることができる。いくつかの実施形態においては、有機相404(ヨウ化メチルリッチな有機相)の少なくとも一部を、ライン406を介して第一の蒸留カラム300に還流し、そして水相402の少なくとも一部を、ライン410を介して第二の蒸留カラム500にフィードすることができる。
【0095】
凝縮物352の還流比(還流量/留出量)、第一の蒸留カラム300への水相402及び/又は有機相404を制御して、不純物をさらに分離又は除去することができる。水分含量が高いために、水相402は、還流させるのに、より適している。水相402、そして水相のみを、第一の蒸留カラム300へ還流する場合、水相の還流比は、0.2~15、たとえば、1.5~15、1.8~10、又は1.8~5でよい。有機相404の一部を、単独で、又は水相402と組み合わせて、ライン408を介して第一の蒸留カラム300へ還流させてもよいが、ヨウ化メチルリッチな有機相を、ライン416を介して反応器100に戻す方が、より望ましい。したがって、有機相404の一部を、水相402と共に、ライン408を介して還流させてもよく、そして全還流が、0.2~15であってもよい。
【0096】
このようにして、第一の蒸留カラム300の塔頂部分におけるクロトンアルデヒドを、5.0質量ppm未満、たとえば、4.5質量ppm未満、4.0質量ppm未満、3.5質量ppm未満、3.0質量ppm未満、2.5質量ppm未満、2.0質量ppm未満、1.8質量ppm未満、1.5質量ppm未満、1.2質量ppm未満、1.0質量ppm、又は0.8質量ppm未満、又は0.5質量ppm未満に制御することが可能である。いくつかの実施形態においては、その第一の蒸留カラム300が、より高純度の酢酸製品のために、最低限のクロトンアルデヒドの質量組成となるように運転される。クロトンアルデヒドは、酢酸の過マンガン酸カリウムの試験値(過マンガン酸塩時間)における劣化を起こさせる。さらには、クロトンアルデヒドは、アセトアルデヒドと反応して、2-エチルクロトンアルデヒドを生成する。2-エチルクロトンアルデヒドもまた、酢酸の過マンガン酸カリウムの試験値における劣化を起こすものの、2-エチルクロトンアルデヒドの質量単位あたりの過マンガン酸カリウム試験での劣化の程度は、クロトンアルデヒドの場合よりは、はるかに小さい。
【0097】
凝縮物を一時的に保存又は保持して、その凝縮物を二相に分離するための、第一の液-液分離ユニット400(たとえば、デカンター)に加えて、凝縮物を一時的に保存(又は保持)するための緩衝用のタンクを、場合によっては、使用してもよい。
【0098】
いくつかの実施形態においては、液-液分離ユニット400からオフガスをベントしてもよい。いくつかの実施形態においては、第一の液-液分離ユニット400の中における、凝縮された第一の塔頂ストリーム302の平均滞留時間が、1分以上、たとえば、3分以上、5分以上、10分以上であるか、及び/又はその平均滞留時間が、60分以下、たとえば、45分以下、又は30分以下、又は25分以下である。
【0099】
たとえば、主として水である、水相は、表1に示す次の組成を有していてよい。
【0100】
【表1】
【0101】
たとえば、主としてヨウ化メチルである、有機相は、表2に示す次の組成を有していてよい。
【0102】
【表2】
【0103】
主としてヨウ化メチルである、有機相404の一部を、反応器100に戻す(リサイクルさせる)。いくつかの実施形態においては、有機相404の一部を、単独、又は水相402と共に、第一の蒸留カラム300に還流させてもよい。有機相404の比重は、1.3~2、たとえば、1.5~1.8、1.5~1.75、又は1.55~1.7であってよい。米国特許第6,677,480号明細書に記載されているように、有機相404で測定した比重は、その反応混合物の中の酢酸メチルの質量組成と関連づけることが可能である。比重が下がるにつれて、その反応混合物の中の酢酸メチルの質量組成が高くなる。いくつかの実施形態においては、レシーバーは、ヨウ化メチルの過剰ホールドアップを防止するために、低い界面レベルが保持できるように、配列され、構成されている。レシーバーから抜き出される水相の流量の、レシーバーから抜き出される有機相のそれに対する比率(重量基準)は、たとえば、約0.1/1~10/1たとえば、約0.3/1~3/1、又は約0.5/1~2/1たとえば、約0.7/1~1.5/1であってよい。
【0104】
オフガスは、必要に応じて、第一の蒸留カラム300及び/又は液-液分離ユニット400からベントし、吸収ユニットに向かわせるのがよい。
【0105】
連続プロセスにおいては、流量に変動があり得て、それを放置していると、プロセスに乱れが起きたり、運転が困難となったりする可能性がある。それらの変動に対応するために、そのプロセスに、第一の蒸留カラム300と液-液分離ユニット400との間のストリームを緩衝させるためのホールドタンク、又は水相又は有機相いずれかのためのレシーバーを配備するのがよい。使用する場合、そのホールドタンクは、レシーバーを出入りするフローの、最高20%までの変動に対処できるようなサイズとする。
【0106】
第二の蒸留工程
図2に示されているように、第一の混合物を、第二の蒸留工程の中の第二の蒸留カラム400に向かわせる。図2では、第一の蒸留カラム300からの第一の塔頂ストリーム302として、第一の混合物が、第二の蒸留カラムに向かうように示されているが、その第一の混合物は、複数のプロセスストリームの各種の組合せであってよい。たとえば、第二の蒸留カラム400に導入されるプロセスストリームには、第一の塔頂ストリーム302及びそれから二相分離された相(水相402及び/又は有機相404)、酢酸ストリーム304及びそれから二相分離された相、又は各種のストリームの凝縮物が含まれていてよい。その第一の混合物は、第一の塔頂留出物302として表示されるが、その第一の混合物には、上述の液-液分離された水相及び有機相を含めた、第一の塔頂留出物302の一部が含まれていてよいということは理解されたい。
【0107】
1つの実施形態においては、その第一の塔頂留出物302の一部(水相又は有機相のいずれか、又はそれらの組合せ)が、第二の蒸留カラム500に導入されてよいが、ここで、第二の塔頂留出物502の中では、アセトアルデヒドが除去されており、そして1,1-ジメトキシエタン(カラムの中で生成した1,1-ジメトキシエタンを含む)が、カラム500を下降し、下側ストリーム506に入る。その蒸留は、バッチ蒸留又は連続蒸留のいずれでも実施することができる。分離を可能とさせるために、その第二の蒸留カラム500には、棚段カラム、充填カラム、又はそれらの組合せが含まれている。棚段カラムを使用する、複数の実施形態においてはその理論段数を、1~100段、たとえば、2~80段、又は5~75段の範囲とするのがよい。
【0108】
本発明においては、その第二の蒸留カラム500が、次の運転条件の少なくとも1つを満足するべきである:(i)蒸留カラムの下側部分における温度が、40℃以上である;(ii)下側ストリームの中の水の質量組成が0.3重量%以上である;及び/又は(iii)下側ストリームの中の酢酸の質量組成が、下側ストリームの合計重量を基準にして、第一の混合物の中の酢酸の質量組成よりも大である。第二の蒸留カラム500を、運転条件(i)~(iii)のいずれか1つで運転することによって、アセトアルデヒドを、その蒸留カラムの上側ストリーム(第二の塔頂ストリーム502又はサイドカットストリーム504)に分離することが可能であり、そして生成し、第二の蒸留カラム500の下側ストリームに濃縮される、1,1-ジメトキシエタンが、より少ない。蒸留カラムにおける上述の運転条件が、1,1-ジメトキシエタンの生成を低減また抑制することが可能であり、それによって、第二の蒸留カラム500の上側ストリームに、アセトアルデヒドがより多く分配できるようになる。第二の蒸留カラム500から抜き出された下側ストリーム506は、カルボニル化反応器100に(たとえば、直接的に)リサイクルすることが可能であり、より高純度の酢酸製品のための、不純物(たとえば、アセトアルデヒド及び/又は1,1-ジメトキシエタン)がより少ない。上述の条件を満足させる蒸留工程は、2重量%以下、たとえば、1重量%以下、又は0.5重量%以下の、蒸留カラムへの第一の混合物(ライン410における水性部分又はライン412における有機部分)におけるメタノールの質量組成を有している。いくつかの実施形態においては、第二の蒸留カラム500への第一の混合物(フィード混合物と呼ばれることもある)が、ジメチルエーテルの質量組成よりも高いメタノールの質量組成を有している。
【0109】
本願発明者らが見いだしたところでは、蒸留の下側ストリームの中の1,1-ジメトキシエタンの量を制御することによって、第二の蒸留カラム500の中で、アセトアルデヒドを効率よく分離することができる。第二の蒸留カラム500の下側部分の中の1,1-ジメトキシエタンが少量なので、蒸留カラムから抜き出される下側ストリームの中で濃縮されアセトアルデヒドが少ない。結果として、第一の混合物又は第一の塔頂留出物302(たとえば、第二の蒸留カラム500へのフィード混合物、水相であっても、有機相であってもよい)の中のアセトアルデヒドを、効率よく分離して、蒸留カラムの上側部分に分配させて、PRC(たとえば、少なくともアセトアルデヒドを含む)の濃縮ゾーンを形成させる。その質量組成の中のアセトアルデヒドは、抽出剤(たとえば、水)を第二の蒸留カラム500に添加することによって、濃縮ゾーンから優先的に分離させることができる。具体的には、PRCの濃縮ゾーンに抽出剤を添加して、その他の成分よりも、アセトアルデヒドを優先的に抽出し、それにより、第二の蒸留カラム500におけるアセトアルデヒドの効率的な分離が得られる。
【0110】
運転条件(i)のためには、第二の蒸留カラム500の下側部分における温度は、40℃以上、たとえば、42℃以上、44℃以上、46℃以上、48℃以上、50℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上、90℃以上、100℃以上、110℃以上、又は115℃以上である。範囲で言えば、第二の蒸留カラム500の下側部分における温度は、40℃~165℃、たとえば、50℃~160℃、60℃~155℃、70℃~150℃、80℃~140℃、90℃~135℃、100℃~140℃、110℃~135℃、又は115℃~130℃の範囲である。上限で言えば、この蒸留カラムの下側部分における温度は、165℃未満、たとえば、160℃未満、155℃未満、150℃未満、145℃未満、140℃未満、130℃、125℃未満、又は120℃未満である。
【0111】
運転条件(ii)のためには、第二の蒸留カラム500の下側部分の中の水分量が、0.3重量%以上、たとえば、0.4重量%以上、0.5重量%以上、0.6重量%以上、0.8重量%以上、1重量%以上、1.5重量%以上、又は2重量%以上である。範囲で言えば、この蒸留カラムの下側部分の中の水分量は、0.3重量%~20重量%、たとえば、0.5重量%~18重量%、0.8重量%~16重量%、1重量%~15重量%、1.5重量%~14重量%、2重量%~12重量%、3重量%~10重量%、4重量%~9重量%、又は5重量%~9重量%の範囲である。第二の蒸留カラム500の下側部分の中の水分量は、20重量%未満、たとえば、18重量%未満、15重量%未満、10重量%未満、又は5重量%未満である。
【0112】
運転条件(iii)のためには、下側ストリームの中の酢酸の量は、重量パーセント基準で、第一の混合物の中での酢酸の量より大である。第一の混合物の中の酢酸は、主として、上側ストリームよりは下側ストリームの方に移行される。いくつかの実施形態においては、下側ストリームの中の酢酸は、3重量%以下、たとえば、2.8重量%以下、2.5重量%以下、2.2重量%以下、2重量%、又は1.8重量%以下である。これらの酢酸の量を達成するためには、第一の混合物の中の50%より大、たとえば、60%より大、70%より大、80%より大、又は90%より大の酢酸が、下側ストリームに移行される。
【0113】
運転条件(i)~(iii)のいずれかを満足させる蒸留工程は、下側ストリームの中の1,1-ジメトキシエタンの量を、下側ストリームの合計重量を基準にして、0.03重量%以下、たとえば、0.025重量%以下、0.02重量%以下、0.01重量%以下、又は0.005重量%以下に制御することができる。いくつかの実施形態においては、その下側ストリームの中の1,1-ジメトキシエタンの量が、下側ストリームの合計重量を基準にして、0.001重量%~0.03重量%、たとえば、0.001重量%~0.025重量%、0.004重量%~0.02重量%、又は0.008重量%~0.015重量%の範囲である。
【0114】
いくつかの実施形態においては、その第二の蒸留カラム500へのその第一の混合物(たとえば、第一の蒸留カラム300からの第一の塔頂ストリーム302、又はそれからの誘導ストリーム)が、そのフィード混合物の合計重量を基準にして、2重量%以下、たとえば、1.5重量%以下、1重量%以下、0.5重量%以下、0.1重量%以下、0.05重量%以下、0.01重量%以下、0.0005重量%以下のメタノール量を含む。範囲で言えば、第二の蒸留カラム500へのフィード混合物には、0.0001~2重量%、たとえば、0.0005~1.5重量%、0.01~1重量%、0.05~0.5重量%、又は0.1~0.3重量%のメタノール量を含む。
【0115】
上で述べたように、本明細書に記載の運転条件では、第二の蒸留カラム500の下側部分における1,1-ジメトキシエタンの量が少ないために、より多くのアセトアルデヒドが、カラムの上側部分に分配されて、PRCの濃縮ゾーンを形成する。いくつかの実施形態においては、第一の塔頂ストリーム302(たとえば、凝縮物、水相、有機相、又はそれらの組合せ)が、第二の蒸留カラム500にフィードされ、そして、第二の蒸留カラム500の中の濃縮ゾーンに抽出剤(たとえば、水)を添加することによって、PRCが効率的に抽出される。その抽出剤は、第一の混合物からアセトアルデヒドを抽出するのに適した組成であるのがよい。処理を容易とするために、その抽出剤は、液-液分離法及び/又は膜分離法を含めた低エネルギー技術を使用して、ヨウ化メチルから分離可能であるのがよい。その抽出剤には、抽出水、混合溶媒、又は水溶性有機溶媒(グリコール、グリセリン、アセトン、エーテル、及び/又はエステル)が含まれていてよい。抽出混合物を液-液分離状態に保つには、水の導入が有利であり、従って、抽出剤には、80重量%以上の水、たとえば、90重量%以上の水、又は95重量%以上の水を含むようにする。1つの実施形態においては、過剰にならないように、抽出剤には、メタノール、又はその他のモノアルコールを実質的に含まない。第一の(フィード)混合物が、上側ストリーム(第二の塔頂ストリーム502又はサイドカットストリーム504)の中に効率的に留出され、それには、多量の少なくともヨウ化メチル(特には、多量の少なくともヨウ化メチル及びPRC)が含まれる。
【0116】
第一の塔頂ストリーム302(又はその誘導ストリーム)を、第二の蒸留カラム500の中で蒸留して、上側ストリーム及び下側ストリームを形成させる。その上側ストリームには、第二の塔頂ストリーム502及びサイドカットストリーム504の少なくとも1つが含まれていてよい。その第二の蒸留カラム500においては、抽出剤(たとえば、水)を、ライン524を介して第二の蒸留カラム500に添加して、PRCの質量組成ゾーンからPRCを抽出することができる。その抽出剤は、質量組成ゾーンから、ヨウ化メチルよりもPRCを優先的に抽出して、抽出混合物を形成する。濃縮ゾーンから下降する、その抽出混合物(質量組成ゾーンから抽出したPRCを含む)は、サイドカットストリーム504として抜き出すことができる。いくつかの実施形態においては、サイドカットストリーム504の中のアセトアルデヒドのヨウ化メチルに対する比率が、第一の塔頂ストリーム302の中のそれよりも高く、且つ、下側ストリーム506の中のそれよりも高い。そのプロセスは、酢酸メチル及び/又は酢酸の共存下に、PRCを抽出蒸留することによって、PRCとヨウ化メチルを、互いにそれぞれから効率よく分離する。
【0117】
第二の蒸留カラム500のための本明細書に記載の運転条件では、カラムの下側部分で生成する1,1-ジメトキシエタンが少ない。いくつかの実施形態においては、下側ストリーム中の1,1-ジメトキシエタンの質量組成の塔頂ストリームに対する重量比は、100:1~10:1、たとえば、95:1~15:1、90:1~20:1、80:1~25:1、75:1~30:1、70:1~40:1、又は60:1~50:1である。いくつかの実施形態においては、下側ストリーム中の1,1-ジメトキシエタンの質量組成のサイドカットに対する重量比は、100:1~10:1、たとえば、95:1~15:1、90:1~20:1、80:1~25:1、75:1~30:1、70:1~40:1、又は60:1~50:1である。
【0118】
いくつかの実施形態においては、第二の蒸留カラム500への第一の混合物には、0.05~50重量%、0.05~10重量%、0.1~5重量%、又は0.1~1重量%のPRC(たとえば、アセトアルデヒド)の合計した質量組成が含まれる可能性がある。したがって、目標量とするPRCを、第一の混合物から分離することができる。その第一の混合物は、第一の塔頂ストリーム302、又はその一部から誘導することが可能で、その他の成分、非限定的に挙げれば、たとえばヨウ化C~C12アルキル、酢酸、酢酸メチル、水、及び/又はメタノール、その他をさらに含んでいてもよい。混合組成物が、水相及び有機相の部分から誘導された場合には、その第一の混合物が、PRCに加えて、2.5重量%~90重量%、たとえば、10重量%~85重量%、又は20~70重量%であるヨウ化C~C12アルキル(ヨウ化メチル)の質量組成、並びに0.5重量%~90重量%、たとえば、1重量%~90重量%、又は1.5重量%~85重量%である水の質量組成を有していてよい。代表的なヨウ化C~C12アルキルは、ヨウ化メチルである。1つの実施形態においては、ヨウ化C~C12アルキルの量が、水の質量組成よりも大きい。重要なことは、第一の混合物の中では、PRC、ヨウ化C~C12アルキル、及び水の質量組成が、本明細書に開示された広い範囲から選択することができる範囲が存在するということである。第一の混合物の中の組成物は、均一な液体であってもよいし、或いは水相と有機相との混合物であってもよい。第一の混合物の組成物にはさらに、酢酸メチルが30重量%まで、たとえば、0.1~28重量%、又は1~20重量%の量で、酢酸が25重量%まで、たとえば、0.01~12重量%、又は0.5~7.5重量%の量で、そしてジメチルエーテルが1重量%まで、たとえば、0.001~1重量%、又は0.004~0.8重量%の量で含まれる。
【0119】
これらの成分に加えて、その第一の混合物にはさらに、メタノールが含まれていてもよい。そのメタノールは、未反応のメタノールであってもよいし、或いは分離及び/又は蒸留プロセスの間に二次反応により生成したメタノールであってもよい。1つの実施形態においては、その第一の混合物の中のメタノールの質量組成は、2重量%以下、たとえば、1.8重量%以下、1.5重量%以下、1.1重量%以下、1.0重量%以下、又は0.5重量%以下であってよい。
【0120】
上で述べたように、第二の蒸留カラム500においては、第一の塔頂ストリーム302(第一の混合物)が蒸留されて、第二の蒸留カラム500の上側の位置に、質量組成ゾーン(PRC(特には、アセトアルデヒド及びヨウ化メチル)の高い質量組成を有するゾーン)を形成する。たとえば、PRCの質量組成ゾーンは、第二の蒸留カラム500の一部、第一の混合物のフィードラインより上に形成される。抽出剤を、ライン524を介してその質量組成ゾーンに添加して、その質量組成ゾーンの中のその他の成分(たとえば、ヨウ化メチル)より優先して、PRC(特に、アセトアルデヒド)を抽出することが可能であり、そして質量組成ゾーンから下降する抽出混合物を、サイドカットストリーム504として、第二の蒸留カラム500から抜き出す。その抽出混合物は、第二の蒸留カラム500にフィードされる第一の塔頂ストリーム302よりも、顕著に高いPRC(特に、アセトアルデヒド)の質量組成を有している。サイドカットストリーム504として抽出混合物を抜き出すことによって、PRCを、効率的に分離又は除去することが可能となる。
【0121】
いくつかの実施形態においては、第二の蒸留カラム500が、10段より大、たとえば、15段より大、20段より大、25段より大、又は30段より大の実段を有している。たとえば、全部で43の段数(すなわちプレート)を有するプレート蒸留カラムでは、第一の塔頂ストリーム302がフィードされるフィードプレートは、蒸留カラムの塔底から、ほぼ第1段~第20段のプレート、たとえば、ほぼ第2段~第15段のプレート、又はほぼ第4段~第10段のプレートがよい。たとえば、全部で10の段数(すなわちプレート)を有するプレート蒸留カラムでは、第一の混合物がフィードされるフィードプレートは、蒸留カラムの塔底から、ほぼ第1段~第7段のプレート、たとえば、ほぼ第1段~第5段のプレート、又はほぼ第1段~第3段のプレートがよい。
【0122】
いくつかの実施形態においては、第一の混合物(たとえば、第一の塔頂ストリーム302、又は水性/有機相)が、第二の蒸留カラム500にフィードされる位置(フィードポート、又はフィードプレート若しくはトレー)は、変更可能である。いくつかの実施形態においては、蒸留カラムの高さレベルを「1」と仮定すると、第一の塔頂ストリーム302は、たとえば、塔底から、約0.01/1~0.7/1、たとえば、約0.01/1~0.5/1、約0.03/1~0.45/1、約0.04/1~0.4/1、又は約0.05/1~0.35/1の高さレベルのところにフィードするのがよい。
【0123】
いくつかの実施形態においては、その抽出剤は、通常、第二の蒸留カラム500の上側部分に添加することができる。いくつかの実施形態においては、その抽出剤を、カラムの一番上のプレート、又はカラムの塔頂と第一の混合物のフィード部分よりは少なくとも1段上のプレートに位置するプレート又はフィードトレーとの間に添加することができる。その第二の蒸留カラム500が、100段の合計段数を有していると仮定すると、抽出剤のフィードプレートは、第二の蒸留カラム50の塔頂又は近傍のプレート、たとえば、その蒸留カラムの塔頂からほぼ第0段~第50段のプレート、たとえば、ほぼ第1段~第25段のプレート、ほぼ第1段~第20段のプレート、ほぼ第1段~第15段のプレート、又はほぼ第1段~第10段のプレートがよい。別の言い方をすれば、その蒸留カラムの蒸留部分の高さレベルを「1」と仮定すると、抽出剤は、たとえば、カラムの塔頂から、ほぼ0/1(=カラムの塔頂)~0.5/1、たとえば、ほぼ0.01/1~0.25/1、ほぼ0.01/1~0.2/1、ほぼ0.01/1~0.15/1、又はほぼ0.01/1~0.1/1の高さレベルでフィードされるのがよい。
【0124】
上昇蒸気又は蒸発留分に対して向流的に抽出剤を添加することにより抽出効率を向上させるためには、その抽出剤は、通常、第二の蒸留カラム500の最上段のプレートに添加するのがよい。抽出効率を向上させるために、抽出剤を、液滴の形態で添加するのがよいが、具体的には、スプレー方式又はスプリンクラー方式によって添加するのがよい。抽出剤は、たとえば、約0~60℃、たとえば、約10~50℃、約20~40℃、又は約15~25℃の温度を有しているのがよい。抽出剤は、抽出剤を加温又は加熱、たとえば約30~150℃、約50~110℃に加熱するか、又は蒸気(過熱蒸気も含む)の形態で添加するのがよい。
【0125】
その抽出剤は、質量組成ゾーンにあるその他の成分(たとえば、ヨウ化メチル)よりは、PRC(特に、アセトアルデヒド)を優先的に抽出することができる。その抽出剤は、液-液分離によって、ヨウ化メチル相から分離可能であるのが好ましい。特には、その抽出剤が、抽出混合物を、上側相と下側相とに分離することができる。具体的には、その抽出剤としては、たとえば以下のような、少なくとも水を含む水性抽出剤が挙げられる:水、並びに水を含む混合溶媒、並びに水溶性有機溶媒、たとえば、アルコールたとえばメタノール、グリコールたとえばエチレングリコール、多価アルコールたとえばグリセリン、アセトン、エステル、及びエーテル。
【0126】
その抽出剤は、水と、以下のものからなる群より選択される少なくとも1種の成分とが含まれていてもよい:PRC、ヨウ化メチル、酢酸、酢酸メチル、ジメチルエーテル、及びそのプロセスの中に存在している成分(上述の不純物も含めた、すべての成分)。そのような抽出剤は、たとえば以下のような、プロセスの中で生成した水性溶媒であってよい:第一の塔頂ストリームの液-液分離工程で生成する水相、水性のプロセスストリームたとえば、第二の液-液分離工程で生成した抽出物(たとえば、アセトアルデヒド含有水性プロセスストリーム)、及びその他のアセトアルデヒド含有水性プロセスストリーム、たとえば、水を用いてPRCを抽出することにより生成した水相。抽出剤としてはさらに、水を用いてオフガス(そのオフガスは、そのプロセスで生成したものである)を吸収処理することにより得ることが可能な、水溶液(たとえば、アセトアルデヒド及びヨウ化メチルを含む水溶液)も挙げられる。
【0127】
いくつかの実施形態においては、第一の塔頂ストリーム302(又は凝縮物、水相、有機相、若しくはそれらの組合せ)が、第二の蒸留カラム500にフィードされ、第二の蒸留カラム500に水(カラムへの還流の中の水を除く)を供給することなく、蒸留される。第一の塔頂ストリーム302を蒸留する場合、第一の塔頂ストリーム302の中の水の一部を、第二の蒸留カラム500の、フィードポートよりは上側の位置に分配させて、水の移行又は分配により、増大した水分量を有する第二の混合物(たとえば、凝縮により二相に分離することが可能な第二の混合物)を形成させる。
【0128】
いくつかの実施形態においては、その第二の混合物を、第二の塔頂ストリーム502として抜き出すことができる。その下側ストリーム506は、第二の塔頂ストリーム502よりは少ない水分量を有しており、フィードポートより下側の位置から抜き出される。具体的には、第一の塔頂ストリーム302の中の水が、下側ストリーム506よりは優先的に上側ストリームとして、第二の塔頂ストリーム502に移行する。このようにして、第二の塔頂ストリーム502は、第一の塔頂ストリーム302、すなわち第二の蒸留カラム500にフィードされる第一の混合物よりは、顕著に高いPRC(たとえば、アセトアルデヒド)の量を有している。第二の塔頂ストリーム502を凝縮させ、二相分離させて、さらに効率的に濃縮されたPRCを含む水相を形成することができる。
【0129】
第二の蒸留カラム500は、第一の塔頂ストリーム302の中の水を、下側ストリーム506よりは第二の塔頂ストリーム502に優先的に移行させるような、特定の条件下で運転するのがよい。たとえば、本明細書に記載の特定の運転条件で第二の蒸留カラム500を運転すると、その蒸留カラムの中に、高い水分量を有するゾーンが形成される。いくつかの実施形態においては、第二の蒸留カラム500のフィードポートよりは上側の位置に、PRC及びヨウ化メチルを高濃度で含むゾーンが形成され、第一の混合物の中の水の少なくとも一部を、濃縮ゾーンに分配させることが可能となる。このプロセスにおいては、濃縮ゾーンから下降する混合物を、サイドカットストリーム504として抜き出すことができる。PRC(アセトアルデヒドを含む)が、下側ストリーム506とは反対側の、上側ストリーム(第二の塔頂ストリーム502又はサイドカットストリーム504)の中に抽出される場合には、比較的に少ない量の抽出剤の使用ですむ。たとえば、ライン524の中の抽出剤の、第一の混合物(たとえばライン410及び/又は412)に対する流量比(重量基準)は、以下の範囲とすることができる:(0.0001/100)~(100/100)、たとえば、0.001/100~50/100、0.0001/100~20/100、0.001/100~10/100、0.01/100~8/100、又は0.1/100~5/100。第二の蒸留での抽出蒸留工程の使用においては、PRC及びヨウ化C~C12アルキルは、エネルギーの必要量を低減させるのに効率のよい方法で処理されるのがよい。
【0130】
第二の蒸留工程の第二の蒸留カラム500の内部温度は、その内部圧力に依存する。内部圧力が大気圧の場合には、第二の蒸留カラム500は、たとえば、以下の塔頂温度を有することができる:約15~120℃、たとえば、約18~100℃、約20~90℃、たとえば、約20~80℃、約20~70℃、又は約25~70℃。第二の蒸留工程においては、他の蒸留条件(たとえば、蒸留カラムの理論段数及び還流比)は、蒸留工程の場合と同じであってよい。第二の蒸留カラム400の還流比(還流:留出物)は、1:20~20:1、たとえば、1:15~15:1、又は5:1~10:1である。
【0131】
第二の蒸留カラム500の内部圧力は、蒸留カラムの中でのセタールの生成に影響を及ぼす可能性がある。たとえば、第二の蒸留カラム500の内部圧力の変動を制御して、アセタールの生成を抑制することができる。いくつかの実施形態においては、その第二の蒸留カラム500には、蒸留カラムの圧力を制御するための、圧力制御装置を備えていてよい。蒸留カラムの中(たとえば、カラムの塔頂部分又は塔底部分)の圧力は、カラムの中に不活性ガス又はオフガスを導入するか、及び/又は蒸留カラムから非凝縮性ガスを放出することによって、制御することができる。いくつかの実施形態においては、第二の蒸留工程の中の蒸留カラム(たとえば、カラムの塔頂又は塔底部分)の内部圧力は、以下のようにするのがよい:たとえば、絶対圧力で、約0.1~0.7MPa、たとえば、約0.01~0.6MPa、好ましくは約0.13~0.4MPa、より好ましくは0.15~0.35MPa。いくつかの実施形態においては、その蒸留カラムの内部圧力が、0.7MPa以下、たとえば、0.6MPa未満、0.5MPa未満、0.4MPa未満、0.3MPa未満、又は0.2MPa未満である。第二の蒸留工程は、蒸留カラムの内部圧力を制御して、アセトアルデヒド及びヨウ化メチルリッチな第二の塔頂留出物を形成させることができる。第二の塔頂ストリーム502は、大気圧で、15~110℃、たとえば、18~90℃、20~80℃、又は20~70℃の温度を有していてよい。
【0132】
いくつかの実施形態においては、その第二の蒸留カラム500に、コレクタートレー(プレート)501(このものは、ハットトレー又はチムニートレーとも呼ばれる)が備わっていて、第一の混合物から上側ゾーンへ蒸気を良好に分配し、そしてサイドカットストリーム504として抜き出すための抽出混合物の全量を保持することを可能としている。本明細書に記載の実施形態では、各種好適なデザインのコレクタートレー501が使用可能である。コレクタートレー501は、実際には、サイドカットストリーム504が抜き出されるところに位置していて、従って、抽出剤524は、コレクタートレー501より上に添加される。このことによって、第二の蒸留カラム500の上側部分から下降する液体を、コレクタートレー501上に受け取ることが可能となる。
【0133】
図2に示されているように、第二の蒸留カラム500は、第一の混合物(第一の塔頂ストリームから)302の成分を、第二の蒸留カラム500の第一の位置で、抽出蒸留により分離する。本明細書に含まれる開示の目的では、図2~4での「図1の302から」には、第一の混合物としての、第一の塔頂ストリーム302又はその一部(水相又は有機相)が含まれていてよいということは理解されたい。1つの実施形態においては、そのフィードラインは、第二の蒸留カラム500の第一の位置より上の上側ゾーンの中に導入される抽出剤524を用いて抽出することができる。いくつかの実施形態においては、その第二の塔頂留出物502が、凝縮され、留出物の一部が、PRCを除去するための第二の混合物として使用される。図2に示された実施形態においては、第二の塔頂留出物502の組成は、塔頂留出物レシーバー520(たとえば、デカンター)の中で水相523と有機相522とに分離可能な相であってよい。有機相522では、ヨウ化メチルリッチとなり、且つ水が乏しいが、それに対して、水相523には、有用量のPRC及び水が含まれていてよい。いくつかの実施形態においては、アセトアルデヒドを除去するために、水相523をサイドカットストリーム504と組み合わせて槽600にフィードしてもよいし、或いは、水相523を別途に槽600にフィードしてもよい。さらに別の実施形態においては、水相523の一部を、第二の蒸留カラム500への還流として使用してもよいが、それに対してある程度のアセトアルデヒドを含む有機相522は、槽600にフィードする。
【0134】
第一の混合物の中の混合組成に依存して、PRC(アセトアルデヒドを含む)とヨウ化C~C12アルキル(ヨウ化メチルを含む)との両方に対して親和性の傾向を有する酢酸メチル及び/又は酢酸が存在していながらも、アセトアルデヒドは、第二の塔頂留出物502の中に効率的に抽出できる。1つの実施形態においては、カラムの上側部分(第二の塔頂留出物502及び/又はサイドカット504を含む)におけるアセトアルデヒドの量は、重量基準で、第一の混合物における量の5~1000倍、たとえば、10~500倍又は20~300倍である。
【0135】
いくつかの実施形態においては、その第二の塔頂ストリーム502及び/又はサイドカットストリーム504が凝縮される。その凝縮物は、第二の蒸留カラム500の塔頂部分に還流させることができる。いくつかの実施形態においては、第二の蒸留カラム500の塔頂から抜き出される留出物もあるが、一般的には、第二の塔頂ストリーム502の凝縮された部分は、還流される。第二の塔頂ストリーム502は、15℃~120℃の温度範囲で第二の蒸留カラム500を出て、コンデンサー(必要に応じて、複数のコンデンサー)が、その第二の塔頂ストリーム502を、ヨウ化メチルの沸点より低い温度にまで下げて、凝縮させる。その凝縮された液体510を、塔頂留出物レシーバー520の中に蓄積し、ライン522を介して還流させる。抽出条件を保持するために、ライン522を、抽出剤524の位置とサイドドロー504の抜き出し位置(たとえば、コレクタートレー501の上)との間で第二の蒸留カラム500に入れるのがよい。この還流を使用して、過剰の抽出剤、すなわち水が、塔頂留出物502の中に存在することを防止することができる。
【0136】
第二の蒸留カラム500の下側部分に、混和性溶媒を、直接的又は間接的にカラムにフィードするのがよい。この溶媒は、ヨウ化メチルを含むプロセスストリームと混和性がある。その混和性溶媒は、水、酢酸、ヨウ化メチル、及びメタノールからなる群より選択される少なくとも1種の成分であってよい。添加する場合には、その混和性溶媒は、コレクタートレー501から抜き出されたサイドカットストリーム504の量に対して、30%以下、たとえば、15%以下、又は10%以下がよい。
【0137】
図2に示されているように、サイドカットストリーム504は、槽600の中に捕集することができる。槽600は、緩衝用のタンクであってもよいし、或いは、サイドカットストリーム504を受け取って、そのサイドカットストリーム504を複数の相に分離することが可能な、液-液分離槽であってもよい。いくつかの実施形態においては、槽600が、液-液分離可能なサイドカットストリーム504を、水相602と有機相604とに分離する。PRC(アセトアルデヒドを含む)は、有機相604よりは水相602の中により好適に分配する。それに加えて、抽出剤が、水相602の中に、より好適に分配され、その抽出剤は、その水相を次に処理することにより回収することが可能ではあるが、抽出剤を回収することが必須という訳ではない。その有機相は、条件(i)~(iii)の少なくとも1つの下での運転を保持されている第二の蒸留カラム500に戻してもよいし、或いは、下側ストリーム506と組み合わせて、反応器100に戻す。それに加えて、水相602の中のヨウ化メチルを低減させるのが望ましく、それにより、アセトアルデヒドを、さらなる処理をすることなく、排出することができる。
【0138】
1つの実施形態においては、槽600で、サイドカット504を、水相602と有機相604とに分離する。水相602と有機相604とのマスフロー比(水相対有機相)は、1:1000~1:1、たとえば、1:900~1:10、又は1:650~1:100であってよい。バランス上、マスフローを基準にして、水相602が、有機相604よりも少ないストリームであるのがよい。有機相604には、抽出剤が含まれず、第二の蒸留カラム500に戻すことができる。
【0139】
水相602は、有機相604よりも、PRC(アセトアルデヒド)の量が多く、そして水相602は、ヨウ化C~C12アルキル(ヨウ化メチル)よりも多い量でPRCを含んでいる可能性がある。アセトアルデヒド及びヨウ化メチルを代表として取り上げると、水相602は、重量で、2:1~60:1、たとえば、3:1~45:1、3:1~30:1、又は4:1~20:1の前者対後者の比率を有することができる。水相602の組成には、以下のものが含まれている:PRC(アセトアルデヒド)の質量組成が1~50重量%、たとえば、5~45重量%、又は10~35重量%、水の質量組成が40~95重量%、たとえば、50~90重量%、又は60~75重量%、ヨウ化C~C12アルキル(ヨウ化メチル)の質量組成が0.01~15重量%、たとえば、0.1~10重量%、又は0.5~6重量%、酢酸メチルの質量組成が0.1~25重量%、たとえば、0.5~20重量%、又は0.5~10重量%、酢酸の質量組成が0~5重量%、たとえば、0.01~2.5重量%、又は0.05~1重量%、メタノールの質量組成が0~2.5重量%、たとえば、0.01~2.1重量%、又は0.05~2重量%、アセタールの質量組成が0~2.5重量%、たとえば、0.01~1.7重量%、又は0.05~1.5重量%、そしてジメチルエーテルの質量組成が0~1.2重量%、たとえば、0.01~0.8重量%、又は0.05~0.5重量%。
【0140】
有機相604は、第二の蒸留カラム500の下側のコレクタートレー501に戻すのがよい。1つの実施形態においては、有機相604の組成には、以下のものが含まれる:ヨウ化C~C12アルキル(ヨウ化メチル)の質量組成が0.1~90重量%、たとえば、5~85重量%、又は10~80重量%、酢酸メチルの質量組成が0.1~30重量%、たとえば、0.5~20重量%、又は0.5~10重量%、PRC(アセトアルデヒド)の質量組成が0.01~15重量%、たとえば、0.5~10重量%、又は0.5~5重量%、酢酸の質量組成が0~5重量%、たとえば、0.01~2.5重量%、又は0.05~1重量%、水の質量組成が0.01~5重量%、たとえば、0.05~4重量%、又は0.5~3.5重量%、メタノールの質量組成が0~2.5重量%、たとえば、0.01~2.1重量%、又は0.05~2重量%、アセタールの質量組成が0~2.5重量%、たとえば、0.01~1.7重量%、又は0.05~1.5重量%、そしてジメチルエーテルの質量組成が0~1.2重量%、たとえば、0.01~0.8重量%、又は0.05~0.5重量%。有機相604にはさらにメタノールも含まれていてよく、第二の蒸留カラム500に戻る有機相604の中の追加のメタノールが、アセタール(1,1-ジメトキシエタン)の生成速度を上げる可能性がある。アセタールの生成を制御するために、有機相604を第二の蒸留カラム500に戻し、メタノールを含んでいる場合、第一の混合物及び有機相のメタノールの合計質量組成は、2重量%以下、たとえば、1.5重量%以下、1重量%以下、0.5重量%以下、又は0.25重量%以下である。有機相604が、2重量%より多いメタノールを含んでいる場合、有機相604を第二の蒸留カラム500にフィードせずに、有機相604を下側ストリーム506と組合せてもよい。効率的な運転をするためには、1つの実施形態においては、その下側ストリーム506が、特にフィードストリーム302が有機相404の部分を含んでいる場合には、フィードストリーム302からのヨウ化メチルの顕著な割合を含んでいる。蒸留カラム500の下側ストリーム506には、有用なヨウ化メチルが含まれていて、それは、反応器100に戻される。十分な製造を達成するためには、蒸留カラムが、フィードストリーム302の中のヨウ化メチルの60~99.9%、たとえば、75~99.5%、又は80~99.1%を、下側ストリーム506の中に除去する。ヨウ化メチルの除去に成功すると、10~90重量%、たとえば、15~85重量%、又は20~80重量%の、ヨウ化C~C12アルキル(ヨウ化メチル)の質量組成を有する下側ストリーム506が得られる。しかしながら、そうすることによって、反応器への1,1-ジメトキシエタンの戻りが多くなる。これらの欠陥を克服し、下側ストリーム506を効率的に使用するために、水の質量組成を、1,1-ジメトキシエタンに移行又は転換させるのに十分なレベルに保持する。
【0141】
下側ストリーム506は、30℃~160℃、たとえば、35℃~120℃、又は40℃~100℃の温度で抜き出すのがよい。
【0142】
補助的なアセトアルデヒドの除去
アセトアルデヒド(その他のPRCを含む)は、第二の蒸留カラム500へのフィードストリーム302から除去されるものの、補助的な処理を用いてアセトアルデヒドを除去又は低減させて、有用な有機成分及び/又は抽出剤のいずれかを回収できれば望ましい。アセトアルデヒドのそのような補助的な除去を達成するための、いくつかの利用可能な方法が存在する。本発明の目的では、それらの補助的な除去プロセスは、使用するのならば、その処理設備の要件に応じて、変更することができる。補助的なアセトアルデヒドの除去の1つの態様は、そのプロセスでは、下側ストリーム506の中の1,1-ジメトキシエタンの質量組成を増やしてはならないということである。
【0143】
1つの実施形態においては、第二の蒸留カラム500からの上側ストリーム(たとえば、第二の塔頂留出物502又はサイドカットストリーム504)を、そのプロセスからパージすることによって、アセトアルデヒドを除去又は低減させることができる。これは、極めて低い量、具体的には、1重量%未満、たとえば、0.5重量%未満のヨウ化メチルを含む、上側ストリームを用いて実施することができる。その上側ストリームが、高い量のヨウ化メチルを含んでいる場合には、補助的なアセトアルデヒド除去プロセスを採用することにより、第二の混合物のパージを回避するのが望ましい。
【0144】
また別の実施形態においては、段を有さない抽出器又は段を有する蒸留カラムの中で、上側ストリームの第二の抽出工程を行うのがよい。この補助的なアセトアルデヒド除去プロセスでは、その第二の抽出が、二次抽出剤(追加の水)を使用して、アセトアルデヒドを含む抽出剤、及びヨウ化メチルを含むラフィネートを生じさせるのがよい。これによって、ラフィネートを回収し、そして抽出剤をさらに廃棄するか又はパージすることが可能となる。この手はずのもとでは、その第二の抽出を、第二の蒸留カラム500をともなう連続のステージとして位置づけることができる。抽出ステージ、すなわち、第二の蒸留カラム500と抽出器との間に、コンデンサー/チラーを存在させてもよい。コンデンサー/チラーを使用している場合の上側ストリームの温度は、10℃~80℃、たとえば、12℃~65℃、又は13℃~45℃であってよい。
【0145】
図3に、補助的なアセトアルデヒド除去プロセスの1つの実施形態を示す。上で述べたように、第二の蒸留カラム500への第一の混合物は、第一の塔頂留出物302として表されているが、その第一の混合物には、第一の塔頂留出物302の一部(上述の液-液分離された上側及び下側ストリームも含む)が含まれていてもよいということは理解されたい。その第一の混合物が、第二の蒸留カラム500で蒸留及び/又は抽出された後、第二の混合物が、第二の蒸留カラム500からサイドカットストリーム54として抜き出され、槽600に導入される。第二の塔頂留出物502が凝縮され、その凝縮された部分510が、ライン522を介して還流される。水を抽出剤524として使用し、第二の蒸留カラム500の塔頂に導入する。下側ストリーム506を、第二の蒸留カラム500の塔底から抜き出し、少なくとも1.5重量%以上の水を含む槽にリサイクルし、その中に含まれる1,1-ジメトキシエタンを移行させる。槽600からの有機相604が、第二の蒸留カラム500の下側部分にリサイクルされる。有機相602は、第二の混合物に比較して、ヨウ化メチルリッチであり、抜き出しのためのサイドカットストリーム504の位置よりは下の位置、たとえば、コレクタートレー501よりは下へリサイクルするのがよい。
【0146】
相分離されたサイドカットストリーム504では、有機相604よりは水相602の中に、比較的多量のアセトアルデヒドが含まれている。水相602は、その水分含量のために、第二の蒸留カラム500のための好適な抽出混合物であり、その一部は、抽出剤524としてリサイクルすることができる。このリサイクル部分は、抽出剤の全体を構成してもよいし、或いは追加の水の供給源と組み合わせて、抽出剤の一部を構成してもよい。1つの実施形態においては、水相602を抽出剤としては使用せず、閉止可能なバルブを備えてもよいし、或いはプロセスが除去してもよい。
【0147】
サイドストリーム504(第二の混合物)と同様の比較的高い温度なので、槽600からの水相602は、コンデンサー(冷却器)を通して冷却してから、デカンター606で捕集するのがよい。冷却液としては、冷却水又はプロセス水が使用できる。水相602の温度は、-5℃~60℃、たとえば、0℃~30℃、又は3℃~20℃がよい。
【0148】
デカンター606の中には、残留量のヨウ化メチルが存在している可能性があるが、それは、液-液分離で分離して、残留ストリーム610へ送ることができる。その残留ストリーム610には、水相608中よりは多くのヨウ化メチルが含まれている。デカンター606の中で形成された残留ストリーム610(ヨウ化メチルリッチな重質相、すなわち下側相)は、槽600の有機相604と組み合わされるか、又は第二の蒸留カラム500のコレクタープレート501の下に独立して添加されるかのいずれかにより、第二の蒸留カラム500にリサイクルされる。残留ストリーム610が、第二の蒸留カラム500をバイパスしてよく、下側ストリーム506と共に反応器100に戻すこともできるが、反応器100に戻す前に、残留ストリーム610の中の不純物をまず低減させておくのが好ましい。相の問題が起きないようにするため、残留ストリーム610を槽600に戻すことは、推奨しない。
【0149】
デカンター606ではさらに、液体ストリーム608も形成される。その液体ストリーム608には、除去すべき目標のアセトアルデヒドが含まれている。液体ストリーム608対残留ストリーム610のマスフロー比(液体対残留)は、1:500~1:0.5、たとえば、1:400~1:1、又は1:375~1:10であってよい。比較的に少ないストリームではあるが、液体ストリーム608には、有用な量のアセトアルデヒドが含まれている。液体ストリーム608の中のアセトアルデヒドの質量組成は、残留ストリーム610の中での量を基準にして、2×(2倍)より大、たとえば、3×より大、又は4×より大であってよい。
【0150】
液体ストリーム608は、アセトアルデヒドの量(たとえば、プロセスからパージされた)を低減させるために設置されているのではあるが、ヨウ化メチル及び/又は抽出混合物のために使用される抽出剤(水)をさらに保持しようと試みるプロセスも存在しうる。したがって、液体ストリーム608又はその一部を、第三の蒸留カラム700を使用して、分離にさらにかけてもよい。そのような蒸留においては、第三の蒸留カラム700では、アセトアルデヒドを1~99重量%の量で、そしてヨウ化メチルを0.1~30重量%の量で含む第三の塔頂ストリーム702、並びに主成分としての抽出剤を10重量%以上の量で、そしてヨウ化メチルを1重量%以下の量で含むボトムストリーム704が生成する(それぞれのストリームが、不純物も含めて、100重量%の合計量であるとする)。ボトムストリーム704の一部を、ライン524を介して、第二の蒸留カラム500に戻して、抽出剤として使用することもできる。その他の実施においては、ボトムストリーム704を、このプロセスから除去又は排除してもよい。
【0151】
第三の蒸留カラム700は、100~500kPa、たとえば、115~375kPa、及び125~250kPaの塔頂圧力(絶対)を有していてよい。塔頂留出物を効率的に分離するためには、大気圧での第三の蒸留カラム700では、10~90℃、たとえば、15~80℃、又は20~60℃の塔頂温度、及び/又は70~170℃、たとえば、80~160℃、又は90~150℃の塔底温度を有している。第三の蒸留カラム700の中の段数(プレート数)は、たとえば、1~50段、たとえば、2~45段、又は3~30段あれば、分離には十分な数である。第三の蒸留カラム700の還流比(還流:留出物)は、1:20~20:1、たとえば、1:15~15:1、又は5:1~10:1である。
【0152】
第三の塔頂ストリーム702すなわちその留出物には、第二の混合物よりは多いアセトアルデヒドを含み、そして第二の混合物よりは少ないヨウ化メチルの量を有している。1つの実施形態においては、第三の塔頂ストリーム702の組成には、以下のものが含まれる:PRC(アセトアルデヒド)の質量組成が45~99重量%、たとえば、50~99重量%、又は60~98重量%、ヨウ化C~C12アルキル(ヨウ化メチル)の質量組成が0.1~30重量%、たとえば、0.5~25重量%、又は1~20重量%、酢酸メチルの質量組成が0.1~25重量%、たとえば、0.5~20重量%、又は0.5~12重量%、酢酸の質量組成が0~5重量%、たとえば、0~1.5重量%、又は0~1重量%、水の質量組成が0~5重量%、たとえば、0~2.5重量%、又は0.01~2重量%、メタノールの質量組成が0~2.5重量%、たとえば、0.01~2.1重量%、又は0.05~2重量%、アセタールの質量組成が0~2.5重量%、たとえば、0.01~1.7重量%、又は0.05~1.5重量%、及びジメチルエーテルの質量組成が0~1.2重量%、たとえば、0.01~0.8重量%、又は0.05~0.5重量%。1つの実施形態においては、第三の塔頂ストリーム702は、第三の蒸留カラム700へのフィードにおけるヨウ化メチルの酢酸に対する比率(重量基準)よりは高い、この比率を有している。それに加えるか、又は独立して、第三の塔頂ストリーム702は、第三の蒸留カラム700へのフィードにおけるヨウ化メチルの酢酸メチルに対する比率(重量基準)よりは高い、この比率を有していてよい。
【0153】
第三の塔頂ストリーム702は、大気圧で、15~100℃、20~90℃、又は35~75℃の温度を有している。慣用されるコンデンサー/冷却器710を使用して、第三の塔頂ストリーム702を凝縮させて、第三の塔頂ストリーム702を60℃以下、たとえば、45℃以下、又は30℃以下の温度にまで冷却するのがよい。その凝縮物の一部は、ライン706を介して第三の蒸留カラムに還流させることができる。
【0154】
1つの実施形態においては、第二の蒸留カラム500に添加される抽出剤524が水である場合には、そのボトムストリーム704は、それが水を主成分として含んでいるために、抽出剤として機能することができる。その主成分に加えて、そのボトムストリーム704には、酢酸メチル、並びに少量の酢酸、メタノール、ジメチルエーテル、ヨウ化メチル、及び/又はアセトアルデヒドが含まれていてよい。このことにより、ボトムストリーム704の一部、又はボトムストリーム704の全体を、第二の蒸留カラム500への抽出剤524として使用することが可能となる。そのボトムストリーム704は、85~99.99重量%、たとえば、90~99.98重量%、又は92~99重量%の水の質量組成を有していてよい。酢酸メチルは、第三の蒸留カラム700の下側部分に保持され、ボトムストリーム704の中に抜き出される。ボトムストリーム704の中の酢酸メチルの質量組成は、0.1~15重量%、たとえば、0.5~10重量%、又は0.7~7重量%であってよい。その他の成分が存在している場合には、それらは、一般的には、それぞれ、5重量%以下の少ない量である。1つの実施形態においては、そのボトムストリーム704が、以下の組成を有していてよい:アセトアルデヒドの質量組成が1重量%以下、たとえば、0.5重量%以下、又は0.3重量%以下、ヨウ化メチルの質量組成が1.5重量%以下、たとえば、1重量%以下、又は0.5重量%以下、酢酸の質量組成が5重量%以下、たとえば、1重量%以下、又は0.5重量%以下、メタノールの質量組成が1重量%以下、たとえば、0.5重量%以下、又は0.1重量%以下、及び/又はジメチルエーテルの質量組成が0.1重量%以下、たとえば、0.01重量%以下、又は0.001重量%以下。ボトムストリーム704は、大気圧で、65~165℃、たとえば、70~120℃、又は85~105℃の温度を有している。
【0155】
図3では、液体ストリーム608が蒸留されるように描かれているが、その他の実施においては、第二の混合物及び/又は水性ストリーム602が、槽600及び/又はデカンター606のいずれを通過することもなく、第三の蒸留カラム700で蒸留されてもよい。
【0156】
第三の塔頂ストリーム702中でのヨウ化メチルの量は少ないが、蒸留単独でアセトアルデヒドからヨウ化メチルを分離しても、ヨウ化メチルを完全に回収することはできない。さらに、単蒸留で、ヨウ化メチルの回収における限界に近いか又は漸増的な改良がもたらされる可能性があり、したがって、より効果的な処理が、補助的処理のための、魅力的なメリットを与える。蒸留の存在下又は非存在下での抽出を、ヨウ化メチルの回収を高めるための効果的なプロセスとして使用することができる。1つの実施形態においては、ヨウ化メチルの回収を高めるために、第二の抽出蒸留カラムを使用することができる。図3に見られるように、第三の塔頂ストリーム702すなわちその留出物部分を、ライン712を介して、水含有抽出性混合物を使用する抽出蒸留として運転される、第四の蒸留カラム800に導入する。第四の蒸留カラム800は、ヨウ化メチルリッチな塔頂ストリーム802及びアセトアルデヒドリッチなストリーム804を得るような方式で運転され、さらにはその抽出剤が水である。ボトムストリーム804の少なくとも一部(全部も含む)は、抽出混合物として、第二の蒸留カラム500にリサイクル、すなわち戻すのがよい。
【0157】
1つの実施形態においては、その第四の蒸留カラム800が、フィードの塔頂(留出物)ストリーム702のヨウ化メチル対アセトアルデヒドの比率(重量基準)よりも高い、比率を有する塔頂ストリーム802を分離する。塔頂ストリーム802を、第四の蒸留カラム80の塔頂留出物又は塔頂近傍のストリームとして、取り出すことができる。回収を維持するために、その塔頂ストリーム802を、直接的又は間接的いずれかで、反応器100に向かわせることが、有用となりうる。いくつかの実施形態においては、その塔頂ストリーム802の一部を、第二の蒸留カラム500、好ましくはその下側部分に導入するのがよい。
【0158】
抽出のためには、水-抽出混合物を、ライン810を介して、第四の蒸留カラム800の塔頂に、対向流方向で添加すれば十分である。米国特許第8,859,810号明細書(その内容及び開示のすべてを、参照することにより、取り入れたものとする)に記載されているように、その水-抽出混合物には、水、グリコール、グリセロール、高沸点アルコール(それらの混合物も含む)が含まれていてよい。水抽出蒸留の場合には、その水は、抽出剤として、同じ温度であるのがよい。その水は、抽出剤すなわち蒸発させる水(すなわちスチーム)と同じ温度を有する、加温又は加熱した水として添加するのがよい。1つの実施形態においては、その水-抽出混合物810が、0~60℃、たとえば、10~50℃、又は20~40℃の範囲内に制御又は保持された温度を有している。水-抽出混合物810の流量対塔頂ストリーム802すなわちその留出物部分の流速の重量比[前者/後者]は、1:1000~10:1、たとえば、1:500~5:1、1:100~5:1、又は1:4~4:1の範囲であってよい。
【0159】
第四の蒸留カラム800においては、その塔頂ストリーム802が、たとえば、コンデンサー812(間接コンデンサー)を通過させることによって、冷却及び/又は凝縮され、そして、その凝縮物806の第一の部分が、蒸留カラム800に戻されるか又は還流され、それに対して、その凝縮物の第二の部分(図示せず)が、図1の中の反応器100にリサイクルされる。ボトムストリーム804は液体ストリームであって、蒸留カラム800の下側部分(塔底、又は塔底近くを含む)に抜き出すことが可能であるが、アセトアルデヒド及び抽出剤が含まれている。アセトアルデヒドリッチであるので、ボトムストリーム804は、系の外へパージ又は排出される。ボトムストリーム804の一部は、第二の蒸留カラム500及び/又は第四の蒸留カラム800のいずれかで、抽出剤として使用してもよい。その塔頂ストリーム802は、液体ストリーム804におけるヨウ化メチル対アセトアルデヒドよりは大きい、ヨウ化メチル対アセトアルデヒドの重量比を有している。
【0160】
第四の蒸留カラム800は、100~500kPa、たとえば、100~400kPa、及び105~350kPaの塔頂圧力(絶対)を有していてよい。塔頂留出物を効率的に分離するためには、大気圧での第4の蒸留カラム800では、10~90℃、たとえば、15~80℃、又は20~60℃の塔頂温度、及び/又は70~170℃、たとえば、80~160℃、又は90~150℃の塔底温度を有している。第四の蒸留カラム800の中の段数(プレート数)は、たとえば、1~50段、たとえば、2~45段、又は3~30段あれば、分離には十分な数である。第四の蒸留カラム800の還流比(還流:留出物)は、1:20~20:1、たとえば、1:15~15:1、又は5:1~10:1である。
【0161】
1つの実施形態においては、その第四の蒸留カラム800は、たとえば、50段未満の理論段(又はプレート)を有していてよく、塔頂ストリーム802又はそれの凝縮された部分が、以下の組成を有していてよい:ヨウ化メチルの質量組成が20~80重量%、たとえば、30~75重量%、又は40~65重量%、PRCの質量組成が0.1~70重量%、たとえば、0.5~65重量%、又は1~20重量%、酢酸メチルの質量組成が0.01~15重量%、たとえば、0.05~10重量%、又は0.1~10重量%、酢酸の質量組成が0~5重量%、たとえば、0~3重量%、又は0~1重量%、そして水の質量組成が0~10重量%、0~8重量%、又は0.01~5重量%。塔頂ストリーム802中の質量組成における、その他の有機物、たとえばジメチルエーテル及び/又はメタノールの質量組成は、少量であって、たとえば、1重量%以下又は0.5重量%以下である。さらに、その第四の蒸留カラム800が50段未満を含む場合には、そのボトムストリーム804は、以下の組成を有していてよい:PRCの質量組成が1~90重量%、たとえば、5~80重量%、又は10~50重量%、水の質量組成が10~95重量%、15~90重量%、又は20~85重量%、ヨウ化メチルの質量組成が0~2重量%、たとえば、0.01~1.5重量%、又は0.05~1重量%、酢酸メチルの質量組成が0.01~15重量%、たとえば、0.05~10重量%、又は0.1~10重量%、酢酸の質量組成が0~5重量%、たとえば、0~3重量%、又は0~1重量%、そして有機物(ジメチルエーテル及び/又はメタノール)の質量組成が3重量%以下、たとえば、1重量%以下、又は0.5重量%以下。その塔底液体804を、そのプロセスから排出及び/又はパージする場合、アセトアルデヒド対ヨウ化メチルの質量比は、20:1~2000:1、たとえば、35:1~1800:1、又は50:1~1000:1であってよい。
【0162】
酢酸を製造するための連続プロセスにおいて、そのプロセスストリームが、蒸気ストリーム又は液体ストリームの両方に、上で詳しくは説明しなかった不純物である各種の成分を含んでいてもよい。それらの不純物は、反応器中で、副反応により生成した可能性がある。そのような不純物を回避するためには、不純物の生成を抑制するか、又は増加を防止するためにパージするのが望ましい。各種のプロセスストリームには、各種の量のギ酸、より高級な酸、及び/又はヨウ化水素が含まれている可能性がある。
【0163】
図3に示した分離プロセスには、各種の構成が存在しうる。これには、第三及び/又は第四の蒸留カラムを補ったり、置き換えたりする追加のユニットが含まれる。このことにより、デカンター606からの液体ストリーム608を、第三の蒸留カラム700をバイパスさせることが可能となり、第四の蒸留カラム800の中にフィードされるか、或いは1つ又は複数の抽出槽にフィードすることができる。したがって、必要があれば、ミキサー及び沈降タンクを備えた1つ又は複数の水抽出槽によるか、又は第四の蒸留カラム800によって、アセトアルデヒドを、水を用いて液体ストリーム608から抽出することができる。その他の実施においては、液体ストリーム608を精製するための、第三及び/又は第四の蒸留カラムを使用する必要がないかもしれない。
【0164】
図4に、補助的なアセトアルデヒド除去プロセスための分離プロセスを与える、また別の実施形態を示す。1つの実施形態においては、第二の蒸留カラム500に導入されるフィードストリーム302には、図1において凝縮された塔頂留出物からの有機相404の一部が含まれる。したがって、フィードストリーム302には、ヨウ化C~C12アルキル(主として、ヨウ化メチルで代表される)が60~98重量%、たとえば、60~95重量%、又は75~93重量%の量で、PRC(アセトアルデヒド)が5重量%まで、たとえば3重量%まで、又は0.5重量%までの量で、そして水が3重量%まで、たとえば、1重量%まで、又は0.8重量%までの量で、含まれる。さらに、フィードストリーム302にはさらに、低量のメタノールが含まれるが、メタノール量を調節する必要があるのなら、そのフィードラインに、水相402の一部を含ませることもできる。上で述べた様に、抽出剤は、ライン524を介して、コレクタートレー501より上に添加する。塔頂での蒸気はすべて、捕集し、凝縮させ、そして第二の蒸留カラム500へ還流させる。
【0165】
この実施形態においては、サイドカットストリーム504が、-5℃~60℃に凝縮又は冷却されて、液-液分離のためのデカンター606に直接フィードされて(従って、図3における槽600をスキップ)、残留ストリーム610(ヨウ化メチルを含む)及び液体ストリーム608(アセトアルデヒドを含む)を得る。その液体ストリーム608対残留ストリーム610のマスフロー比(液体対残留)は、1:500~1:0.5、たとえば、1:400~1:1、又は1:375~1:10であってよい。そのサイドカットストリーム504が、相分離に適した組成を有していてよく、1つの実施形態においては、そのサイドカットストリーム504の組成が、以下のようであってよい:PRCの質量組成が0.1~90重量%、たとえば、0.2~65重量%、又は0.5~50重量%、ヨウ化C~C12アルキル(ヨウ化メチル)の質量組成が0.5~95重量%、たとえば、1~95重量%、5~90重量%、又は10~60重量%、酢酸メチルの質量組成が0.1~25重量%、たとえば、0.5~20重量%、又は0.5~10重量%、酢酸の質量組成が0~10重量%、たとえば、0.01~5重量%、又は0.05~1重量%、水の質量組成が0.1~20重量%、たとえば、0.5~15重量%、又は0.5~8重量%、メタノールの質量組成が0~2.5重量%、たとえば、0.01~2.1重量%、又は0.05~2重量%、アセタールの質量組成が0~2.5重量%、たとえば、0.01~1.7重量%、又は0.05~1.5重量%、そしてジメチルエーテルの質量組成が0~1.2重量%、たとえば、0.01~0.8重量%、又は0.05~0.5重量%。図4に示されているようなプロセスは、大量のアセタールを増大させることなく、PRCをさらに濃縮する。
【0166】
図4に示されているように、残留ストリーム610を、第二の蒸留カラム500からの下側ストリーム506と組み合わせることも可能である。いくつかの実施形態においては、残留ストリーム610が、第二の蒸留カラム500の下側部分にフィードされてもよい。混和性溶媒としての酢酸が、フィードライン507を介して、第二の蒸留カラム500の下側部分にフィードされたが、いくつかの実施形態においては、フィードストリーム302のフィード位置よりは下にフィードされてもよい。図4には示されていないが、第二の蒸留カラム500にフィードされる混和性溶媒が存在していてもよい。
【0167】
液体ストリーム608は、デカンター606から抜き出されたら、第三の蒸留カラム700にフィードされる。比較的に少ないストリームではあるが、液体ストリーム608には、有用な量のアセトアルデヒドが含まれている。液体ストリーム608の中のアセトアルデヒドの質量組成は、残留ストリーム610の中での量を基準にして、2×より大、たとえば、3×より大、又は4×より大であってよい。上で述べた様に、第三の蒸留カラム700は、アセトアルデヒドを1~99重量%の量で、そしてヨウ化メチルを0.1~30重量%の量で含む第三の塔頂ストリーム702、並びに主成分としての抽出剤を10重量%以上の量で、そしてヨウ化メチルを1重量%以下の量で含むボトムストリーム704が生成するように運転される(それぞれのストリームが、不純物も含めて、100重量%の合計量であるとする)。ボトムストリーム704の一部を、第二の蒸留カラム500に戻して、抽出剤として使用することもできる。その他の実施においては、ボトムストリーム704を、このプロセスから除去又は排除してもよい。
【0168】
塔頂ストリーム704又はその留出物には、第二の混合物よりは多いアセトアルデヒドの質量組成及び第二の混合物よりは少ないヨウ化メチルの質量組成が含まれている。1つの実施形態においては、第三の塔頂ストリーム702の組成には、以下のものが含まれる:PRC(アセトアルデヒド)の質量組成が45~99重量%、たとえば、50~99重量%、又は60~98重量%、ヨウ化C~C12アルキル(ヨウ化メチル)の質量組成が0.1~30重量%、たとえば、0.5~25重量%、又は1~20重量%、酢酸メチルの質量組成が0.1~25重量%、たとえば、0.5~20重量%、又は0.5~12重量%、酢酸の質量組成が0~5重量%、たとえば、0~1.5重量%、又は0~1重量%、水の質量組成が0~5重量%、たとえば、0~2.5重量%、又は0.01~2重量%、メタノールの質量組成が0~2.5重量%、たとえば、0.01~2.1重量%、又は0.05~2重量%、アセタールの質量組成が0~2.5重量%、たとえば、0.01~1.7重量%、又は0.05~1.5重量%、及びジメチルエーテルの質量組成が0~1.2重量%、たとえば、0.01~0.8重量%、又は0.05~0.5重量%。1つの実施形態においては、第三の塔頂ストリーム702は、第三の蒸留カラム700へのフィードにおけるヨウ化メチルの酢酸に対する比率(重量基準)よりは高い、この比率を有している。それに加えるか、又は独立して、第三の塔頂ストリーム702は、第三の蒸留カラム700へのフィードにおけるヨウ化メチルの酢酸メチルに対する比率(重量基準)よりは高い、この比率を有していてよい。そのボトムストリーム704は、85~99.99重量%、たとえば、90~99.98重量%、又は92~99重量%の水の質量組成を有していてよい。1つの実施形態においては、ボトムストリーム704が、そのプロセスから除去されるか、又はその少なくとも一部が、抽出剤として、第二の蒸留カラム500に戻されてもよい。
【0169】
これまでの図面と同様に、図4では、第三の塔頂ストリーム702又はその留出物部分を、このストリームを、水含有抽出性混合物を使用する抽出蒸留として運転されている第四の蒸留カラム800に導入することにより、加工している。上で述べた様に、第四の蒸留カラム800は、ライン812を介した水-抽出混合物を用いる方法で運転されて、ヨウ化メチルリッチな第四の塔頂ストリーム802、及びアセトアルデヒドリッチな水性ボトムストリーム804、さらには水である抽出剤が得られる。水性ボトムストリーム804の少なくとも一部(全部も含む)は、抽出混合物として、第二の蒸留カラム500にリサイクルすなわち戻すのがよい。
【0170】
蒸留システムに伴うそれぞれのメンバー又はユニット(カラム、バルブ、コンデンサー、レシーバー、ポンプ、リボイラー、及び内部部品、並びにこの蒸留システムをそれぞれ連結している各種のライン)の材料は、適切な物質、たとえば、ガラス、金属、セラミック、又はそれらの組合せで作られていてよく、特定のどれかに特に限定されることはない。本発明においては、前述の蒸留システム及び各種のラインの物質は、遷移金属又は遷移金属ベースの合金たとえば、鉄合金、たとえば、ステンレス鋼、ニッケル若しくはニッケル合金、ジルコニウム若しくはそれらのジルコニウム合金、チタン若しくはそれらのチタン合金、又はアルミニウム合金である。好適な鉄ベースの合金としては、鉄を主成分として含むもの、たとえば、クロム、ニッケル、モリブデン、及びその他のものをさらに含む、ステンレス鋼が挙げられる。好適なニッケルベースの合金としては、主成分としてのニッケル、及びクロム、鉄、コバルト、モリブデン、タングステン、マンガン、その他の1種又は複数を含むもの、たとえば、HASTELLOY(商標)及びINCONEL(商標)が挙げられる。耐食性の金属が、蒸留システム及び各種のラインのための材料としては、特に適している。
【実施例
【0171】
ここから、実施例を参照しながら、本発明をさらに詳しく説明する。しかしながら、本発明は、それらの実施例により限定されるものではない。「MeI」はヨウ化メチルを表し、「MA」は酢酸メチルを表し、「MeOH」はメタノールを表し、「DME」はジメチルエーテルを表し、「HOAc」は酢酸を表し、そして「AcH」はアセトアルデヒドを表す。
【0172】
実施例1
第一の混合物は、半経験的シミュレーター(semi-empirical simulator)を使用して、ライトエンドカラムの塔頂デカンターの有機相から得た。その第一の混合物には、メタノール(1128ppm)が含まれていた。その第一の混合物の大部分が、ヨウ化メチル及び酢酸メチルではあるが、その第一の混合物にはさらに、酢酸(1.83重量%)、アセトアルデヒド(0.186重量%)、及び水(0.7重量%)も含まれていた。その第一の混合物を、45段の実段を有する蒸留カラムにフィードした。その蒸留カラムの下側部分における温度は、46℃であった。そのカラムは、1気圧の圧力で運転した。そのカラムは、サイドカットストリームを抜き出すためのコレクタートレーを有していた。塔頂ストリームを抜き出し、凝縮し、そして還流した。抽出溶媒(水)を、蒸留の上側部分に添加した。アセトアルデヒドをさらに除去するために、サイドカットストリームから第二の混合物を抜き出した。
【0173】
蒸留カラムの下側部分で、下側ストリームを抜き出した。蒸留を100時間続け、定期的にサンプリングをして、下側ストリームにおける変化を調べた。表3に示されているアセタールは、1,1-ジメトキシエタンである。
【0174】
【表3】
【0175】
実施例1において、蒸留カラムは、運転条件(i)の下で運転し、極めて低い量の1,1-ジメトキシエタンしか含まない下側ストリームを生じる、高い効率を示した。したがって、アセトアルデヒドは、効果的に除去された。
【0176】
運転条件(i)に加えて、第一の混合物よりも酢酸が多かったので、実施例1は運転条件(iii)にも適合していた。
【0177】
実施例2
実施例1と同じ蒸留カラムを使用して、極めて低い量のメタノール(33ppm)を含む第一の混合物を使用した。その第一の混合物には、ヨウ化メチル及び酢酸メチルに加えて、酢酸(1.83重量%)、アセトアルデヒド(0.196重量%)、及び水(0.31重量%)がさらに含まれていた。
【0178】
蒸留カラムの下側部分で、下側ストリームを抜き出した。その蒸留を100時間続けたが、その組成における変化を表4に示す。表4に示されているアセタールは、1,1-ジメトキシエタンである。
【0179】
【表4】
【0180】
実施例2における蒸留カラムは、運転条件(i)の下で運転したが、下側ストリームの生成で高い効率を示し、1,1-ジメトキシエタンは検出できなかった。下側ストリームを、1,1-ジメトキシエタンについて測定したが、その検出限界は1ppmであった。アセタールは形成されたが、アセトアルデヒドは効果的に除去された。
【0181】
比較例A
多量のメタノールを含む第一の混合物と比較する目的で、実施例1と同じ蒸留カラムを使用した。その第一の混合物には、メタノールを2.52重量%の質量組成で含んでいた。その第一の混合物には、ヨウ化メチル及び酢酸メチルに加えてさらに、酢酸を質量組成で1.83重量%、アセトアルデヒドを質量組成で0.2重量%、そして水を質量組成で0.71重量%含んでいた。
【0182】
条件(i)及び(iii)の下で運転したにもかかわらず、その蒸留で、下側ストリームの中のアセタールの質量組成を、0.03重量%未満に保持することはできなかった。表5に示すように、アセトアルデヒドの分離効率の低下となった。
【0183】
【表5】
【0184】
本発明を詳しく説明してきたが、本発明の精神及び範囲の内の修正は、当業者には容易に明らかであろう。前述の考察、当技術に関連する知識、並びに「背景技術」及び「発明を実施するための形態」に関連して先に論じた参考文献に鑑みて、それらの開示はすべて、参考として引用し本明細書に組み入れたものとする。それに加えて、本発明の態様及び各種の実施形態の部分、並びに以下及び/又は添付の請求項で列挙される各種の特徴は、その全体的又は部分的にいずれかを組み合わせたり、入れ替えたりすることができるということは理解されたい。各種の実施形態のこれまでの記述において、また別の実施形態に関わるそれらの実施形態を、当業者によって評価されるであろうその他の実施形態と適宜組み合わせてもよい。さらには、当業者ならば、ここまでの記述は、例を挙げるためだけであって、本発明を限定することは意図されていないと認めるであろう。
【0185】
実施形態
以下で使用されているように、一連の実施形態への各種の言及は、それらの実施形態を、それぞれ選言的に言及したものと理解されたい(たとえば、「実施形態1~4」は、「実施形態1、2、3、又は4」と理解されたい)。
【0186】
[実施形態1]
アセトアルデヒド、1種又は複数のヨウ化C~C12アルキル、水、及びメタノールを含む第一の混合物からアセトアルデヒドを分離するための方法であって、方法が、蒸留カラムの中で、第一の混合物を蒸留して、塔頂ストリーム、サイドカットストリーム、及び下側ストリームからなる群より選択される少なくとも2つのストリームを形成させ、ここで、塔頂ストリーム又はサイドカットストリームのいずれかを、第二の混合物として抜き出す工程;第二の混合物からアセトアルデヒドを分離する工程;及び蒸留カラムを、以下の条件(i)~(iii):(i)蒸留カラムの下側部分における温度が、40℃以上である;(ii)下側ストリームの中の水の質量組成が、0.3重量%以上である;又は(iii)下側ストリームの中の酢酸の質量組成が、重量パーセント基準で、第一の混合物の中の酢酸の質量組成より大である;の少なくとも1つの下で運転することにより、下側ストリームの中の1,1-ジメトキシエタンの質量組成を、0.03重量%以下に制御する工程、を含み、第一の混合物の中のメタノールの質量組成が、2重量%以下である、方法。
【0187】
[実施形態2]
第一の混合物の中のメタノールの質量組成が、1重量%以下である、実施形態1に記載の方法。
【0188】
[実施形態3]
第一の混合物の中のメタノールの質量組成が、0.5重量%以下である、実施形態1又は2に記載の方法。
【0189】
[実施形態4]
蒸留カラムの中の圧力が、0.1~0.7MPaである、実施形態1~3に記載の方法。
【0190】
[実施形態5]
下側ストリーム対塔頂ストリームにおける、1,1-ジメトキシエタンの質量組成の重量比が、100:1~10:1である、実施形態1~4に記載の方法。
【0191】
[実施形態6]
下側ストリーム対サイドカットストリームにおける、1,1-ジメトキシエタンの質量組成の重量比が、100:1~10:1である、実施形態1~5に記載の方法。
【0192】
[実施形態7]
第二の混合物が、塔頂ストリームの一部及びサイドカットの一部を含む、実施形態1~6に記載の方法。
【0193】
[実施形態8]
第二の混合物からアセトアルデヒドを分離する工程が、第二の混合物の少なくとも一部を、第二の混合物を水相と有機相とに相分離させるのに十分な条件下にある槽にフィードする工程をさらに含む、実施形態1~7に記載の方法。
【0194】
[実施形態9]
有機相が、条件(i)~(iii)の少なくとも1つの下で、蒸留カラムの下側部分にフィードされる、実施形態8に記載の方法。
【0195】
[実施形態10]
有機相が、メタノールを含み、有機相及び第一の混合物の中のメタノールの合計質量組成が、2重量%以下である、実施形態8又は9に記載の方法。
【0196】
[実施形態11]
第一の混合物を蒸留するための蒸留カラムが、抽出蒸留工程であり、蒸留カラムの上側部分に抽出剤を添加することをさらに含む、実施形態1~10に記載の方法。
【0197】
[実施形態12]
条件(ii)で、下側ストリームの中の水の質量組成が、0.6重量%以上である、実施形態1~11に記載の方法。
【0198】
[実施形態13]
条件(iii)で、下側ストリームの中の酢酸の質量組成が、3重量%以下である、実施形態1~12に記載の方法。
【0199】
[実施形態14]
蒸留カラムが、10段よりも多い段を有する、実施形態1~13に記載の方法。
【0200】
[実施形態15]
蒸留カラムの還流比が、1:20~20:1である、実施形態1~14に記載の方法。
【0201】
[実施形態16]
第一の混合物が、第一の混合物の合計重量を基準にして、アセトアルデヒドを0.01~30重量%の質量組成で、1種又は複数のヨウ化C~C12アルキルを0.1~90重量%の質量組成で、水を0.1~90重量%の質量組成で、そしてメタノールを0.001~2重量%の質量組成で含む、実施形態1~15に記載の方法。
【0202】
[実施形態17]
第一の混合物の中のメタノールの質量組成が、ジメチルエーテルの質量組成よりも多い、実施形態1~16に記載の方法。
【0203】
[実施形態18]
蒸留カラムが、メタノールの生成を防止するための条件下で運転される、実施形態1~17に記載の方法。
【0204】
[実施形態19]
アセトアルデヒド、1種又は複数のヨウ化C~C12アルキル、水、及びメタノールを含む第一の混合物からアセトアルデヒドを分離するための方法であって、方法が、蒸留カラムの中で、第一の混合物を蒸留して、塔頂ストリーム、サイドカットストリーム、及び下側ストリームからなる群より選択される少なくとも2つのストリームを形成させ、ここで、サイドカットストリームを、第二の混合物として抜き出す工程;第二の混合物を、アセトアルデヒドを含む水性ストリームの中、又は1種又は複数のヨウ化C~C12アルキルを含む有機ストリームの中に、分離する工程、及び蒸留カラムを、以下の条件(i)~(iii)の少なくとも1つ:(i)蒸留カラムの下側部分における温度が、40℃以上である;(ii)下側ストリームの中の水の質量組成が、0.3重量%以上である;又は(iii)下側ストリームの中の酢酸の質量組成が、重量パーセント基準で、第一の混合物の中の酢酸の質量組成より大である;の下で運転することにより、下側ストリームの中の1,1-ジメトキシエタンの質量組成を、0.03重量%以下に制御する工程、を含み、そして第一の混合物の中のメタノールの質量組成が2重量%以下である、方法。
【0205】
[実施形態20]
第一の混合物を蒸留するための蒸留カラムが、抽出蒸留工程であり、蒸留カラムの上側部分に抽出剤を添加することをさらに含む、実施形態19に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】