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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-04
(54)【発明の名称】改善されたスロットドロープロセス
(51)【国際特許分類】
   C03B 17/06 20060101AFI20230627BHJP
【FI】
C03B17/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022574432
(86)(22)【出願日】2021-05-26
(85)【翻訳文提出日】2023-02-01
(86)【国際出願番号】 US2021034260
(87)【国際公開番号】W WO2021247324
(87)【国際公開日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】63/034,053
(32)【優先日】2020-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ビッソン,アントワーヌ ガストン デニス
(72)【発明者】
【氏名】ル ガリック,ブルーノ
(72)【発明者】
【氏名】セネイナ,ビレル
(72)【発明者】
【氏名】テリエ,グザヴィエ
(57)【要約】
1200℃付近又はそれより高い融点を有するガラス配合物から200μm未満の厚さを有するガラスシートを形成するための改善されたスロットダウンドロープロセスが提供される。この改善により、スロットアセンブリの保守が容易になり、スロットダウンドローシステムの一部の構成要素が経験する熱膨張の管理がより良好になる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スロットダウンドローガラス成形システムであって、
溶融ガラス送給セクション、
前記溶融ガラス送給セクションに接続され、かつ前記溶融ガラス送給セクションと流体連通するガラスコンディショナ拡散セクション、
ガラスコンディショナ垂直セクション、及び
端子スロットアセンブリであって、
上部リップ、及び
下部リップ
を含む、端子スロットアセンブリ
を備えており、ここで、前記下部リップは前記上部リップに取り外し可能に結合されており、前記下部リップが前記上部リップを取り外さずに前記端子スロットアセンブリから取り外されるように構成されている、
スロットダウンドローガラス成形システム。
【請求項2】
前記下部リップが支持フレームによって前記上部リップに連結される、請求項1に記載のスロットダウンドローガラス成形システム。
【請求項3】
前記上部リップと前記下部リップとの間に設けられた耐火繊維フェルトの層をさらに含む、請求項1に記載のスロットダウンドローガラス成形システム。
【請求項4】
前記下部リップ、上部リップ、又は下部リップと上部リップの両方が、ジュール加熱による加熱素子として構成される、請求項1に記載のスロットダウンドローガラス成形システム。
【請求項5】
前記ガラスコンディショナ拡散セクションが、溶融ガラス受入端と溶融ガラス排出端とを有しており、前記溶融ガラス受入端がジュール加熱による加熱素子として構成される、請求項4に記載のスロットダウンドローガラス成形システム。
【請求項6】
前記ガラスコンディショナ拡散セクション、前記ガラスコンディショナ垂直セクション、及び前記端子スロットアセンブリを制御された雰囲気でプセル化して、前記ガラスコンディショナ拡散セクション、前記ガラスコンディショナ垂直セクション、及び前記端子スロットアセンブリの白金構成要素の酸化を低減する筐体構造
をさらに含む、請求項1に記載のスロットダウンドローガラス成形システム。
【請求項7】
スロットダウンドローガラス成形システムであって、
溶融ガラス送給セクション、
前記溶融ガラス送給セクションに接続され、かつ前記溶融ガラス送給セクションと流体連通するガラスコンディショナであって、拡散セクション、垂直セクション、前記拡散セクションと前記垂直セクションとを接続するエルボ型セクション、並びに前記拡散セクション、前記エルボ型セクション、及び前記垂直セクションを通って延びる前記溶融ガラスを運ぶための白金通路を含む、ガラスコンディショナ、
前記コンディショナ拡散セクション内の前記白金通路を取り囲む第1のケーシング部、
前記コンディショナ垂直セクション内の前記白金通路を取り囲む第2のケーシング部、
前記エルボ型セクション内の前記白金通路を取り囲むエルボ型ケーシング部
を備えており、ここで、
前記第1のケーシング部と前記エルボ型ケーシング部は、前記コンディショナ拡散セクション内の前記白金通路と直線的な位置合わせで配置され、前記第1のケーシング部と前記エルボ型ケーシング部は、前記スロットダウンドローガラス成形システムが周囲温度からガラス処理温度まで加熱される際に前記コンディショナ拡散セクション内の前記白金通路の熱膨張に適応させるために前記直線的な位置合わせを維持しつつ、前記エルボ型ケーシング部を前記第1のケーシング部から遠ざかるように制御可能に移動させるように構成されており、
端子スロットアセンブリ
をさらに備える、スロットダウンドローガラス成形システム。
【請求項8】
前記エルボ型ケーシング部及び前記第2のケーシング部が、前記コンディショナ垂直セクション内の前記白金通路及び前記エルボ型ケーシング部と直線的な位置合わせで配置され、前記第2のケーシング部が、前記スロットダウンドローガラス成形システムが室温からガラス処理温度まで加熱される際に前記コンディショナ垂直セクションの前記白金通路の熱膨張に適応させるために前記直線的な位置合わせを維持しつつ、前記第2のケーシング部を前記エルボ型ケーシング部から遠ざかるように制御可能に移動させるように構成される、請求項7に記載のスロットダウンドローガラス成形システム。
【請求項9】
前記エルボ型ケーシング部を前記第1のケーシング部から遠ざかるように制御可能に移動させるために、前記第1のケーシング部と前記エルボ型ケーシング部との間に1つ以上の調節可能なプッシュロッドが配置される、請求項7に記載のスロットダウンドローガラス成形システム。
【請求項10】
前記エルボ型ケーシング部が移動している間に前記第1のケーシング部と前記エルボ型ケーシング部との間の前記直線的な位置合わせを維持する、1組以上のレール及び線形軸受をさらに含む、請求項9に記載のスロットダウンドローガラス成形システム。
【請求項11】
前記コンディショナ拡散セクション内の前記白金通路の熱膨張が、前記コンディショナ拡散セクション内の前記白金通路の温度を監視することによって決定される、請求項7に記載のスロットダウンドローガラス成形システム。
【請求項12】
前記第2のケーシング部を前記エルボ型ケーシング部から遠ざかるように制御可能に移動させるために、前記エルボ型ケーシング部と前記第2のケーシング部との間に1つ以上の調節可能なプッシュロッドが配置される、請求項8に記載のスロットダウンドローガラス成形システム。
【請求項13】
前記エルボ型ケーシング部が移動している間に前記エルボ型ケーシング部と前記第2のケーシング部との間の前記直線的な位置合わせを維持する、1組以上のレール及び線形軸受をさらに含む、請求項12に記載のスロットダウンドローガラス成形システム。
【請求項14】
前記コンディショナ垂直セクション内の前記白金通路の熱膨張を決定するための皿ばね座金の1つ以上のスタックをさらに含み、
前記皿ばね座金の1つ以上のスタックが、前記コンディショナ垂直セクション内の前記白金通路が前記第2のケーシング部に対して膨張するときに圧縮の増加を経験するように構成され、前記コンディショナ垂直セクション内の前記白金通路の熱膨張が、前記皿ばね座金の1つ以上のスタックの前記圧縮の増加を監視することによって決定される、
請求項12に記載のスロットダウンドローガラス成形システム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、その全体がここに参照することによって本願に援用される、2020年6月3日出願の米国仮特許出願第63/034053号の米国法典第35編特許法119条に基づく優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、ガラスシート、特に、200μm未満の厚さを有するガラスシートを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
シート状のガラスの最新の用途の多くは、靭性の向上だけでなく、極薄(200μm未満の厚さ)のガラスシートも必要とする。このような薄いガラスシートの製造には、従来使用されていたものとは大幅に異なるガラス組成が必要とされる。時には、このような新しいガラス組成物は、一般に1200℃を超える溶融温度を有する高温組成物であり、フュージョンドローなどの単一のプラットフォームでは一般に製造できない。
【0004】
スロットドロープロセスは、ガラスが機械加工されたスロットの形状のオリフィスから供給され、その後、目標の厚さに達するまで下方に引っ張られ、極薄のガラスシートをより適切に製造することができる、ダウンドロープロセスである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ますます要求が厳しくなる用途では、既存のスロットドロー装置の機能では達成することができない製品特性の大幅な改善が必要とされる。したがって、改善されたスロットドロープロセスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
改善されたスロットダウンドローガラス成形システムが提供される。スロットダウンドローガラス成形システムは、溶融ガラス送給セクション;溶融ガラス送給セクションに接続され、かつ溶融ガラス送給セクションと流体連通するガラスコンディショナ拡散セクション;ガラスコンディショナ垂直セクション;並びに、上部リップと下部リップとを含む端子スロットアセンブリを備えており、ここで、下部リップは上部リップに取り外し可能に結合され、下部リップは、上部リップを取り外さずに端子スロットアセンブリから取り外されるように構成される。
【0007】
別の実施形態によるスロットダウンドローガラス成形システムが提供される。該システムは、溶融ガラス送給セクション;溶融ガラス送給セクションに接続され、かつ溶融ガラス送給セクションと流体連通するガラスコンディショナであって、拡散セクション、垂直セクション、拡散セクションと垂直セクションとを接続するエルボ型セクション、並びに、拡散セクション、エルボ型セクション、及び垂直セクションを通って延びる溶融ガラスを運ぶための白金通路を含む、ガラスコンディショナ;コンディショナ拡散セクション内の白金通路を取り囲む第1のケーシング部;コンディショナ垂直セクション内の白金通路を取り囲む第2のケーシング部;エルボ型セクション内の白金通路を取り囲むエルボ型ケーシング部;を備えており、ここで、第1のケーシング部及びエルボ型ケーシング部は、コンディショナ拡散セクション内の白金通路と直線的な位置合わせで配置されており、第1のケーシング部及びエルボ型ケーシング部は、スロットダウンドローガラス成形システムが周囲温度からガラス処理温度まで加熱する際に、コンディショナ拡散セクションの白金通路の熱膨張に適応させるように直線的な位置合わせを維持しつつ、エルボ型ケーシング部を第1のケーシング部から遠ざかるように制御可能に移動させるように構成されており;該システムは、端子スロットアセンブリをさらに備えている。
【0008】
別の実施形態によれば、スロットダウンドローガラス成形システムは、溶融ガラス送給セクション;溶融ガラス送給セクションに接続され、かつ溶融ガラス送給セクションと流体連通するガラスコンディショナ;溶融ガラスの流れをガラスコンディショナを通して端子スロットアセンブリに運ぶための白金通路;並びに、端子スロットアセンブリの近くで白金通路を囲むケーシング;を含み、ここで、端子スロットアセンブリは、そこを通じてガラスリボンが垂直に下向きに延伸されるスロットを画成し、端子スロットアセンブリは上部リップと下部リップとを含む。スロットは幅を有し、上部リップはスロットの幅を超えて延在して、第1の端部及び第2の端部を画成し、ここで、ケーシングは、2つの独立して横方向に可動な部分を含み、第1の可動部分及び第2の可動部分は、上部リップの第1の端部及び第2の端部に対応し、上部リップの第1の端部はケーシングの第1の可動部分に接続され、上部リップの第2の端部はケーシングの第2の可動部分に接続され、上部リップ及びケーシングは、スロットダウンドローガラス成形システムが周囲温度からガラス処理温度まで加熱する際に、上部リップの熱膨張に適応させるように、ケーシングの第1の可動部分を上部リップの第1の端部に対して横方向に制御可能に移動させ、かつケーシングの第2の可動部分を上部リップの第2の端部に対して横方向に制御可能に移動させるように構成され、ここで、下部リップもまた、スロットの幅を超えて延在して、第1の端部及び第2の端部を画成し、下部リップの2つの端部の各々は、独立して横方向に可動な第1の可動部分及び第2の可動部分を含む下部リップ支持フレームに接続され、スロットダウンドローガラス成形システムが周囲温度からガラス処理温度まで加熱する際に、下部リップの熱膨張に適応させるように、下部リップの2つの端部及び下部リップ支持フレームの2つの可動部分は、第1の可動部分を下部リップの第1の端部に対して横方向に制御可能に移動させ、かつ第2の可動部分を下部リップの第2の端部に対して横方向に制御可能に移動させるように構成される。
【0009】
これらの図面は、説明の目的で提供されており、本明細書に開示され、論じられる実施形態は、示される構成及び手段に限定されないことが理解される。図は概略図であり、縮尺どおりではない。寸法又は実際の比率を示すことは意図されていない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】スロットダウンドロープロセスの一般的な概念を示す大まかな図
図2】本開示の幾つかの実施形態による、溶融ガラスからガラスシートを形成するための改善されたスロットダウンドローガラス成形システムを示す図
図3】改善されたスロットダウンドローガラス成形システムのガラスコンディショナ部分を示す図
図4】本開示のガラスコンディショナ垂直セクションの端部に設けられた端子スロットアセンブリ140の断面図(断面は、スロットを介して直角に切断した)
図5】本開示によるガラス調節アセンブリを封入する筐体の実施形態を示す図
図6A】本開示による、改善されたスロットダウンドローガラス成形システムのガラスコンディショナ部分の側面断面図
図6B】本開示によるガラスコンディショナ垂直セクションを示す図
図6C】本開示によるガラスコンディショナ垂直セクションの終端におけるスロットの上部リップ及び下部リップを示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書は詳細を含むことができるが、これらは範囲の制限として解釈されるべきではなく、特定の実施形態に固有であり得る特徴の説明として解釈されるべきである。
【0012】
改善されたガラス形成プロセスのさまざまな実施形態が、図面を参照して説明され、理解を容易にするために同様の要素には同様の番号が付与されている。
【0013】
また、特に明記しない限り、「上部」、「下部」、「外向き」、「内向き」などの用語は便宜上の言葉であり、限定する用語として解釈されるべきではないことも理解される。加えて、あるグループが要素のグループ及びそれらの組合せのうちの少なくとも1つを含むと記載される場合には常に、そのグループは、個々に又は互いに組み合わせて、列挙された任意の数の要素を含むか、実質的にそれらで構成されるか、又はそれらからなる。
【0014】
同様に、あるグループが要素のグループ又はそれらの組合せのうちの少なくとも1つからなると記載される場合には常に、そのグループは、個々に又は互いに組み合わせて、列挙された任意の数の要素で構成されうる。特に明記しない限り、値の範囲は、列挙される場合には、範囲の上限と下限の両方を含む。本明細書で用いられる場合、不定冠詞「a」及び「an」、並びに対応する定冠詞「the」は、特に明記しない限り、「少なくとも1つ」又は「1つ以上」を意味する。
【0015】
当業者は、本開示の有益な結果を取得しつつ、記載された実施形態に対して多くの変更を行うことができることを認識するであろう。本開示の所望の利益の幾つかは、他の特徴を使用することなく、記載された特徴の幾つかを選択することによって得ることができることも明らかであろう。したがって、当業者は、多くの修正及び適応が可能であり、ある特定の状況では望ましいことさえあり、本開示の一部であること認識するであろう。よって、以下の説明は、本開示の原理の例示として提供されるものであって、本開示を限定するものではない。
【0016】
800~1200℃の範囲の成形温度(すなわち、送給温度)を有するガラス配合物から極薄の(200μm未満の厚さを有する)ガラスシートを形成するための改善されたスロットダウンドロープロセスのさまざまな実施形態が本明細書に開示される。改善されたスロットドロープロセスは、600~1400℃の範囲の成形温度を有するガラス配合物も取り扱うことができる。
【0017】
図1は、スロットダウンドロープロセスの一般的な概念を示す大まかな概略図である。スロットダウンドロープロセスでは、溶融ガラスは、示されるように、白金通路10の終端にあるスロット12から送給される。スロット12は、白金又は白金合金で作られたリップによって形成することができる。スロットから分配されたガラスリボンRは、連続シートとしてアニーリング領域へと下方に延伸される。
【0018】
図2を参照すると、溶融ガラスからガラスシートを形成するための改善されたスロットダウンドローガラス成形システム100が本明細書に記載される。改善されたシステムは、200μm未満の厚さのガラスシートの製造に特に適している。
【0019】
取り外し可能な2-パーツアセンブリスロット:
幾つかの実施形態では、改善されたスロットダウンドローガラス成形システム100は、溶融ガラスの連続供給をガラスコンディショナ130セクションに送給するように構成された溶融ガラス送給セクション132を含む。図3を参照すると、ガラスコンディショナ130は、溶融ガラス送給セクション132に接続され、該溶融ガラス送給セクション132と流体連通するガラスコンディショナ拡散セクション134、ガラスコンディショナ垂直セクション135、拡散セクション134と垂直セクション135とを接続するエルボ型セクション134a、並びに端子スロットアセンブリ120を含む。ガラスコンディショナ拡散セクション134は、管状流として受け入れた溶融ガラスの供給を、断面形状が約(500~1000mm)幅×(5~20mm)深さの略長方形の溶融ガラス流へと変換する。拡散プロセスは、溶融ガラス流の幾何学形状を、下流の端子スロットアセンブリ120の幾何学形状に一致するように変換する。ガラスコンディショナ垂直セクション135は、ガラスコンディショナ拡散セクションからの溶融ガラス流を垂直方向に変えて、下流の端子スロットアセンブリ120に向かって流下するように構成される。
【0020】
図4を参照すると、従来のスロットダウンドローシステムとは異なり、本開示の幾つかの実施形態による端子スロットアセンブリ120は、上部リップ121と下部リップ122とを含む。上部リップ121は、より広いスロットを形成し、保守手順中に取り外す必要がなく、概して、ガラスコンディショナ垂直セクション135内の白金通路10のセクションに取り付けることができる。上部リップ121は、白金通路10に溶接することができる。
【0021】
下部リップ122は、上部リップ121よりも狭いスロットを形成し、下流のダウンドロープロセス工程のために所望の厚さのガラスリボンRを分配する。下部リップ122は、上部リップ121を取り外さずに下部リップ122を端子スロットアセンブリ120から取り外すことができるように、上部リップ121に取り外し可能に結合される。耐火断熱材の支持フレーム146は、下部リップ122を支持する。支持フレーム146は、上部スロット支持フレーム145に対してクランプされる。2つのスロット間の直接接触を回避するために、耐火繊維フェルト層147がガラス封止層として上部リップ121と下部リップ122との間に挿入される。下部リップ122を取り外し可能にすることにより、保守手順中に上流の部品を冷却する必要なく、下部リップ122の迅速な交換が可能になる。
【0022】
コンディショナ及び端子スロットの直接燃焼ゾーン:
スロットダウンドローガラス成形システム100の幾つかの実施形態では、上部リップ121及び下部リップ122のうちの少なくとも一方又は両方を、ジュール加熱による(一又は複数の)直接加熱素子として構成することができる。ジュール加熱を達成するために、加熱される特定のスロット構造に電流が印加される。次に、構造に流れる電流の量を制御することによって、温度が制御される。これにより、リップ121、122を通過する溶融ガラスの流れの温度を正確に制御して、ガラス粘度を制御することにより最適な流量を維持することができる。溶融ガラスと直接接触するほとんどの構成要素と同様に、上部及び下部リップ121、122は白金又は白金合金でできており、ジュール加熱に適している。ダウンドローシステム構成要素自体を直接加熱することにより、正確な温度制御が可能になり、従来のスロットダウンドローガラス成形システムと比較して大幅に高い溶融温度でガラス組成物を処理する能力が得られる。
【0023】
ガラスコンディショナ拡散セクション134は、溶融ガラス受入端134aと溶融ガラス排出端134bとを有する。幾つかの実施形態では、溶融ガラス受入端134aは、ジュール加熱による加熱素子として構成される。溶融ガラス受入端134aセクションは、ジュール加熱用の電流源に接続することができる。幾つかの実施形態では、直接加熱フランジ134f要素を溶融ガラス受入端134aに取り付けて、電気接続を行うことができる。
【0024】
幾つかの実施形態では、ガラスコンディショナ垂直セクション135は、ジュール加熱によって垂直セクションの側面を加熱するように構成することができる。この特徴は、ガラスコンディショナ垂直セクション135を通って流下する溶融ガラスの側面から中心への温度勾配を発達させるために使用することができる。
【0025】
制御雰囲気:
幾つかのガラス組成物は、スロットダウンドローガラス成形システム100のさまざまな部分を取り囲む、制御された環境(例えば、酸素、水素、湿度、温度、ガス流量、圧力など)を提供することによる恩恵を受ける。これを行うのは一般に簡単ではない。本開示の一態様によれば、気密ステンレス鋼筐体構造200は、制御された環境を提供する閉ループ制御システムを備えたスロットダウンドローガラス成形システム100の一部を封入する。好ましくは、筐体構造200は、ガラスコンディショナ130部分を封入する。例えば、筐体構造200内の制御環境は、ガラスコンディショナ130の構成要素の外側(ガラスに接触しない表面)の周りの水素のレベルを制限して、ガラスシートにおけるガス状含有物及び表面膨れの形成を抑制するように制御される。加えて、閉ループ制御システム及び筐体構造200は、望ましくない酸化を防止するために、ガラスに接触する貴金属構成要素の周囲の酸素を最小限に抑えた雰囲気を維持する。ガラスに接触する貴金属構成要素は、白金又は白金合金で作ることができる。ガラスに接触する貴金属構成要素の幾つかの例は、ガラス成形システム100並びに上部及び下部リップ121、122を通して溶融ガラスを運ぶための白金通路10である。図5を参照すると、幾つかの実施形態では、筐体200は、ガラスコンディショナ拡散セクション134、ガラスコンディショナ垂直セクション135、及び端子スロットアセンブリ140を取り囲み、封入するように構成される。
【0026】
垂直及び水平熱膨張管理システム:
極薄のガラスシートを形成するために必要とされるより高い融点のガラス組成物は、ガラスコンディショナ130が、該コンディショナ130の異なるセクションで大きい温度勾配を経験することを必要とし、これは、その多くが白金及び/又は白金合金で作られるコンディショナ構成要素の著しい熱膨張を生じる。構成要素の熱膨張を管理するために、調節可能な機械的構成のシステムが提供される。
【0027】
本明細書に開示される機械的構成は、熱膨張管理システムを形成し、ガラスコンディショナアセンブリ130を、周囲温度からガラスコンディショナ部品の公称処理温度への温度変化によって引き起こされる白金構成要素の熱膨張に適応させて、ガラスコンディショナアセンブリ130の異なる構成要素における望ましくない機械的応力を低減する。ガラスコンディショナ部品の公称処理温度は、溶融高温ガラスの特定の組成に依存する。概して、公称処理温度は約90℃~約1200℃の間である。熱膨張管理システムは、構成要素間の熱膨張の不一致に起因するガラス成形システムの構成要素の機械的変形を防ぐ。
【0028】
ガラスコンディショナアセンブリ130の2つの隣接する構成要素間に大きい温度勾配が存在する場合、構成要素は異なる量で膨張し、機械的応力を引き起こしうる。隣接する構成要素が異なる熱膨張係数(CTE)を有する異なる材料で作られ、より大きいCTEを有する構成要素がより高い温度にある場合、問題は悪化しうる。これは、ガラスコンディショナアセンブリ130における状況である。溶融ガラスを運ぶ白金通路10は、ガラスコンディショナアセンブリ130の周囲の構成要素よりも高温になり、白金構成要素は周囲の構成要素よりも高いCTEを有する。
【0029】
本開示による熱膨張管理システムは、2つの不均一に膨張する隣接する部品を1つ以上のガイドレール上に配置して、2つの不均一に膨張する隣接する部品間の相対的な移動を可能にすることを含む。2つの隣接する部品間の不均一な膨張は、スロットダウンドローガラス成形プロセスの動作中に存在する温度勾配に起因する。熱膨張管理システムはまた、より大きい熱膨張を経験する隣接する部品の熱膨張に適応させるために、より小さい熱膨張を経験する構成要素を制御可能に移動させる。
【0030】
このような熱膨張管理機能を組み込んだスロットダウンドローガラス成形システムが開示される。図3及び6Aを参照すると、ガラスコンディショナセクション130及び溶融ガラス送給セクション132が示されている。ガラスコンディショナ130は、溶融ガラス送給セクション132に接続され、溶融ガラス送給セクション132と流体連通する。ガラスコンディショナ130は、拡散セクション134、垂直セクション135、拡散セクション134と垂直セクション135とを接続するエルボ型セクション134a、並びに、拡散セクション134、エルボ型セクション134a、及び垂直セクション135を通って延びる溶融ガラスを運ぶための白金通路10を含む。第1のケーシング部310は、コンディショナ拡散セクション134内の白金通路10を取り囲む。第2のケーシング部330は、コンディショナ垂直セクション135内の白金通路10を取り囲む。エルボ型ケーシング部320は、エルボ型セクション134a内の白金通路10を取り囲む。第1のケーシング部310及びエルボ型ケーシング部320は、コンディショナ拡散セクション134内の白金通路10と直線的な位置合わせで配置される。第1のケーシング部310及びエルボ型ケーシング部320は、スロットダウンドローガラス成形システムが周囲温度からガラス処理温度まで加熱する際に、コンディショナ拡散セクション134内の白金通路10の熱膨張に適応させるように直線的な位置合わせを維持しつつ、エルボ型ケーシング部320を第1のケーシング部310から遠ざかるように制御可能に移動させるように構成される。ガラスコンディショナ垂直セクション135の終端に設けられた端子スロットアセンブリ140も示されている。
【0031】
溶融ガラスは白金通路10を通って流れることから、すべてが周囲温度から始まるスロットダウンドローシステムの始動中に、白金通路10と周囲のケーシング(第1のケーシング部310、エルボ型ケーシング部320、及び第2のケーシング部330)との間に実質的な温度勾配が形成される(白金通路10は実質的により高い(100℃を超える)温度にある)。温度勾配に起因して、白金通路10はすぐに膨張し、ケーシングよりも大きく膨張する。この効果は、白金通路10がケーシング材料よりも大きいCTEを有し、ケーシングのような周囲の構造が非貴金属で作られ、幾つかの部品がより小さいCTEを有する耐火材料で作られているという事実によって増幅される。エルボ型ケーシング部を第1のケーシング部310から遠ざかるように制御可能に移動させるように構成されている第1のケーシング部310及びエルボ型ケーシング部320は、拡散セクション134内の白金通路10の熱膨張に一致するように、拡散セクション134内の第1のケーシング部310及びエルボ型ケーシング部320を合わせた長さに延在する。第1のケーシング部310及びエルボ型ケーシング部320は、2つのケーシング部が離間して移動するときに、それらが白金通路10の構造を妨害又は損傷しないように、白金通路10と直線的な位置合わせで維持される必要がある。
【0032】
幾つかの実施形態では、エルボ型ケーシング部320を第1のケーシング部310から遠ざかるように制御可能に移動させる工程は、第1のケーシング部310とエルボ型ケーシング部320との間に配置された1つ以上の調節可能なプッシュロッド410によって達成される。調節可能なプッシュロッド410は、エルボ型ケーシング部320を押したり引いたりすることができるねじ付きボルト及びスリーブ構成を備えることができ、このような構成の特定の実装形態に応じてねじ付きボルト又はねじ付きスリーブを回すことによって、第1のケーシング部310に対するエルボ型ケーシング部320の位置を調節することができる。
【0033】
幾つかの実施形態では、1つ以上の調節可能なプッシュロッド410を手動で回して、エルボ型ケーシング部320の位置を制御及び調節することができる。幾つかの実施形態では、1つ以上の調節可能なプッシュロッド410は、例えば、エルボ型ケーシング部320の位置を制御及び調節するために、ステッピングモータによって遠隔操作することができる。
【0034】
幾つかの実施形態では、エルボ型ケーシング部320が移動している間、第1のケーシング部310とエルボ型ケーシング部320との間の直線的な位置合わせを維持することができるように、1組以上のレール及び線形軸受510を可動部品(この場合はエルボ型ケーシング部320)に設けることができる。
【0035】
幾つかの実施形態では、コンディショナ拡散セクション134内の白金通路10の熱膨張の量は、コンディショナ拡散セクション134内の白金通路10の温度を監視することによって決定される。白金通路のCTEは知られていることから、白金通路10が直線的に膨張する量を計算することができる。温度監視には、適切な熱電対又は他の適切なデバイスを使用することができる。
【0036】
図6Bを参照すると、コンディショナ130の垂直セクション135内の構成要素の熱膨張を管理するために、エルボ型ケーシング部320及び第2のケーシング部330は、第2のケーシング部330をエルボ型ケーシング部320から遠ざかるように制御可能に移動させて、スロットダウンドローガラス成形システム100が周囲温度からガラス処理温度まで加熱される際にコンディショナ垂直セクション135内の白金通路10の熱膨張に適応させるように構成される。エルボ型ケーシング部320及び第2のケーシング部330は、コンディショナ垂直セクション135内の白金通路10と直線的な位置合わせで配置され、この直線的な位置合わせは、第2のケーシング部330が制御可能に移動している間、維持される。
【0037】
幾つかの実施形態では、第2のケーシング部330の制御可能な移動は、エルボ型ケーシング部320と第2のケーシング部330との間に配置された1つ以上の調節可能なプッシュロッドによって達成される。幾つかの実施形態では、1つ以上の調節可能なプッシュロッド410aを手動で回して、第2のケーシング部330の位置を制御及び調節することができる。幾つかの実施形態では、1つ以上の調節可能なプッシュロッド410aは、例えば第2のケーシング部330の位置を制御及び調節するために、ステッピングモータによって遠隔操作することができる。
【0038】
幾つかの実施形態では、第2のケーシング部330が移動している間、エルボ型ケーシング部320と第2のケーシング部330との間の直線的な位置合わせを維持することができるように、可動する第2のケーシング部330に対して1組以上のレール及び線形軸受510aを設けることができる。
【0039】
幾つかの実施形態では、コンディショナ垂直セクション135内の白金通路10の熱膨張の量は、皿ばね座金の1つ以上のスタック520を使用して決定される。図6Bに示される図示された例では、コンディショナ垂直セクション135の各側に1つずつ、皿ばね座金520の2つのスタックが利用されている。皿ばね座金520のスタックの各々は、コンディショナ垂直セクション135内の白金通路10が高温の溶融ガラスが通過するにつれて膨張するときに、膨張する白金通路10が皿ばね座金520のスタックに圧縮力を及ぼすように位置づけられる。したがって、各スタック520内の皿ばね座金の圧縮を監視することによって、白金通路による熱膨張の量を決定することができる。この情報は、1つ以上の調節可能なプッシュロッド410aを調節し、第2のケーシング部330をエルボ型ケーシング部320から遠ざかるように適切な量だけ移動させて、白金通路10の膨張に適応させるために用いられる。皿ばね座金の一例は、ベルビルディスクとしても知られるベルビルワッシャーである。
【0040】
皿ばね座金520のスタックが説明したように動作するためには、皿ばね座金520は、第2のケーシング部330に取り付けられた取り付け具又はブラケット330aと端子スロットアセンブリ140の上部リップ121に取り付けられた圧縮キャップ522との間に捕捉される。フランジ121fが上部リップ121の各端部から延び、スロット12の幅を超えて延在し、圧縮キャップ522aがフランジ121fに接続される。上部リップ121は白金通路10に取り付けられる。したがって、白金通路10が第2のケーシング部330に対して膨張する場合、コンディショナ130のエルボ型セクション134aが垂直方向に固定されていることから、白金通路10は、図6Bに示される図において下方に膨張する。次に、この下方への移動により、圧縮キャップ522aが下向きに引っ張られ、皿ばね座金520が圧縮される。したがって、皿ばね座金520の1つ以上のスタックの圧縮の増加を監視することによって、コンディショナ垂直セクション内の白金通路の熱膨張の量を決定することができる。
【0041】
幾つかの実施形態では、コンディショナ垂直セクション135内の白金通路10の熱膨張の量は、コンディショナ拡散セクション134内の白金通路10の温度を監視することによって決定することができる。温度監視には、適切な熱電対又は他の適切なデバイスを使用することができる。
【0042】
スロットアセンブリの上部リップ及び下部リップの熱膨張管理システム:
幾つかの実施形態では、スロットダウンドローガラス成形システム100は、そこを通ってガラスリボンRが垂直に下向きに延伸されるスロット12を画成する端子スロットアセンブリ140を含み、該端子スロットアセンブリ140は、上部リップ121と下部リップ122とを含む。スロット12は幅Wを有し、上部リップ121はスロット12の幅Wを超えて延在し、上部リップ121は第1の端部121’及び第2の端部121”を画成する。第2のケーシング部330は、上部リップ121の第1の端部121’及び第2の端部121”に対応する、2つの独立して横方向に可動な部分である第1の可動部分330’及び第2の可動部分330”を含む。上部リップ121の第1の端部121’は第1の横方向に可動な部分330’に接続され、上部リップ121の第2の端部121”は第2の横方向に可動な部分330”に接続される。横方向に可動とは、2つの可動部分330’及び330”が上部リップ121の長さと平行(すなわち、図6Cに示される図において実質的に水平)な方向に可動であることを指す。
【0043】
スロットダウンドローガラス成形システムが周囲温度からガラス処理温度まで加熱する際に、上部リップ121の熱膨張に適応させるために、上部リップ121及び第2のケーシング部330は、第1の可動部分330’を上部リップ121の第1の端部121’に対して横方向に制御可能に移動させ、かつ第2の可動部分330”を上部リップ121の第2の端部121”に対して横方向に制御可能に移動させるように構成される。上部リップ121及び下部リップ122は白金又は白金合金構造であり、したがって、同じ温度であっても、上部リップ121及び下部リップ122は、非貴金属及び耐火材料で作られた周囲のケーシング及びフレーム構成要素よりも実質的に大きく膨張する。
【0044】
幾つかの実施形態では、2つの可動部分330’、330”を上部リップの2つのそれぞれの端部121’、121”に対して横方向に制御可能に移動させるために、上部リップ121の2つの端部121’、121”の各々と第2のケーシングのそれぞれの第1及び第2の可動部分330’、330”との間に1つ以上の調節可能なプッシュロッド410bが配置される。幾つかの実施形態では、1つ以上の調節可能なプッシュロッド410bは、手動で制御することができる。幾つかの実施形態では、1つ以上の調節可能なプッシュロッド410bは、例えばステッピングモータを使用して遠隔制御される。幾つかの実施形態では、2つの可動部分330’、330”の移動を容易にするために、1組以上のレール及び線形軸受510bが提供される。
【0045】
上部リップ121が経験する熱膨張の量は、1組以上のスタックされた皿ばね座金520aによって検出することができる。図6Cに示されるように、皿ばね座金520aの各スタックは、ケーシング330と、上部リップ121の一端121’、121”に接続された調節可能なプッシュロッド410bとの間に配置されるように構成されている。上部リップ121は、膨張するにつれて、矢印Aで表されるようにスロット12の構造から外向きに移動する。これにより、プッシュロッド410bが同じ外向き方向に付勢され、皿ばね座金520aのスタックに対する圧縮が低下する。したがって、皿ばね座金520aのスタックにおける圧縮の低下を監視することにより、上部リップ121が経験する熱膨張の量を決定することができ、プッシュロッド410bを使用してケーシング330の可動部分330’、330”を外向き方向Aに移動させることによって、熱膨張に適応するように対応する調節が行われる。
【0046】
幾つかの実施形態では、下部リップ122もまた、スロット12の幅Wを超えて延在し、下部リップ122は第1の端部122’及び第2の端部122”を画成する。下部リップ122は、下部リップ支持フレーム340に取り付けられる。下部リップ支持フレーム340は、下部リップ122の第1の端部122’及び第2の端部122”に対応する、2つの別々に横方向に可動な部分である、第1の可動部分340’及び第2の可動部分340”を含む。横方向に可動とは、2つの可動部分340’及び340”が下部リップ122の長さと平行な方向に可動であることを指す。
【0047】
スロットダウンドローガラス成形システムが周囲温度からガラス処理温度まで加熱する際に、下部リップ122の熱膨張に適応させるために、下部リップ122及び下部リップ支持フレーム340は、第1の可動部分340’を下部リップ122の第1の端部122’に対して横方向に制御可能に移動させ、かつ第2の可動部分340”を下部リップ122の第2の端部122”に対して横方向に制御可能に移動させるように構成される。
【0048】
幾つかの実施形態では、それぞれ、2つの可動部分340’、340”を下部リップ122の第1の端部122’及び第2の端部122”に対して横方向に制御可能に移動させるために、それぞれ、下部リップ122の2つの端部122’、122”の各々と下部リップ支持フレーム340の2つの可動部分340’、340”との間に1つ以上の調節可能なプッシュロッド410cが配置される。幾つかの実施形態では、1つ以上の調節可能なプッシュロッド410cは、手動で制御することができる。幾つかの実施形態では、1つ以上の調節可能なプッシュロッド410cは、例えばステッピングモータを使用して遠隔制御される。幾つかの実施形態では、2つの可動部分340’、340”の移動を容易にするために、1組以上のレール及び線形軸受510cが提供される。
【0049】
下部リップ122が経験する熱膨張の量は、1組以上のスタックされた皿ばね座金520bによって検出することができる。図6Cに示されるように、皿ばね座金520bの各スタックは、下部リップ支持フレーム340と下部リップ122の一端122’、122”に接続された調節可能なプッシュロッド410cとの間に配置されるように構成されている。下部リップ122は、膨張するにつれて、矢印Aで表されるようにスロット12の構造から外向きに移動する。これにより、プッシュロッド410cが同じ外向き方向に付勢され、皿ばね座金520aのスタックに対する圧縮が低下する。したがって、皿ばね座金520bのスタックにおける圧縮の低下を監視することにより、下部リップ122が経験する熱膨張の量を決定することができ、プッシュロッド410cを使用して下部リップ支持フレーム340の可動部分340’、340”を外向き方向Aに移動させることによって、熱膨張に適応するように対応する調節が行われる。
【0050】
当業者は、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載された例示的な実施形態に対して多くの修正が可能であることを認識するであろう。したがって、説明は意図されておらず、与えられた例に限定されると解釈されるべきではなく、添付の特許請求の範囲及びその等価物によって与えられる保護の全範囲が認められるべきである。加えて、本開示の幾つかの特徴は、他の特徴の対応する使用なしに、使用することが可能である。したがって、例示的又は実例となる実施形態の前述の説明は、本開示の原理を限定するものではなく、説明する目的で提供され、本開示をそれに対する修正及びそれらの並べ替えを含むことができる。
【0051】
本開示の好ましい実施形態について説明してきたが、記載された実施形態は単なる例示であり、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ定義されるものであり、完全な範囲の同等性が与えられる場合には、本明細書の熟読から当業者に自然に生じる多くの変形及び修正が含まれることが理解されるべきである。
【0052】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0053】
実施形態1
スロットダウンドローガラス成形システムであって、
溶融ガラス送給セクション、
前記溶融ガラス送給セクションに接続され、かつ前記溶融ガラス送給セクションと流体連通するガラスコンディショナ拡散セクション、
ガラスコンディショナ垂直セクション、及び
端子スロットアセンブリであって、
上部リップ、及び
下部リップ
を含む、端子スロットアセンブリ
を備えており、
前記下部リップは前記上部リップに取り外し可能に結合されており、前記下部リップは、前記上部リップを取り外さずに前記端子スロットアセンブリから取り外されるように構成されている、
スロットダウンドローガラス成形システム。
【0054】
実施形態2
前記下部リップが支持フレームによって前記上部リップに連結される、実施形態1に記載のスロットダウンドローガラス成形システム。
【0055】
実施形態3
前記上部リップと前記下部リップとの間に設けられた耐火繊維フェルトの層をさらに含む、実施形態1に記載のスロットダウンドローガラス成形システム。
【0056】
実施形態4
前記下部リップがジュール加熱による加熱素子として構成される、実施形態1に記載のスロットダウンドローガラス成形システム。
【0057】
実施形態5
前記上部リップがジュール加熱による加熱素子として構成される、実施形態4に記載のスロットダウンドローガラス成形システム。
【0058】
実施形態6
前記ガラスコンディショナ拡散セクションが、溶融ガラス受入端と溶融ガラス排出端とを有しており、前記溶融ガラス受入端がジュール加熱による加熱素子として構成される、実施形態5に記載のスロットダウンドローガラス成形システム。
【0059】
実施形態7
前記ガラスコンディショナ拡散セクション、前記ガラスコンディショナ垂直セクション、及び前記端子スロットアセンブリを制御された雰囲気でプセル化して、前記ガラスコンディショナ拡散セクション、前記ガラスコンディショナ垂直セクション、及び前記端子スロットアセンブリの白金構成要素の酸化を低減する筐体構造
をさらに含む、実施形態1に記載のスロットダウンドローガラス成形システム。
【0060】
実施形態8
スロットダウンドローガラス成形システムであって、
溶融ガラス送給セクション、
前記溶融ガラス送給セクションに接続され、かつ前記溶融ガラス送給セクションと流体連通するガラスコンディショナであって、拡散セクション、垂直セクション、前記拡散セクションと前記垂直セクションとを接続するエルボ型セクション、並びに前記拡散セクション、前記エルボ型セクション、及び前記垂直セクションを通って延びる前記溶融ガラスを運ぶための白金通路を含む、ガラスコンディショナ、
前記コンディショナ拡散セクション内の前記白金通路を取り囲む第1のケーシング部、
前記コンディショナ垂直セクション内の前記白金通路を取り囲む第2のケーシング部、
前記エルボ型セクション内の前記白金通路を取り囲むエルボ型ケーシング部
を備えており、ここで、
前記第1のケーシング部及び前記エルボ型ケーシング部は、前記コンディショナ拡散セクション内の前記白金通路と直線的な位置合わせで配置され、前記第1のケーシング部及び前記エルボ型ケーシング部は、前記スロットダウンドローガラス成形システムが周囲温度からガラス処理温度まで加熱される際に前記コンディショナ拡散セクション内の前記白金通路の熱膨張に適応させるために前記直線的な位置合わせを維持しつつ、前記エルボ型ケーシング部を前記第1のケーシング部から遠ざかるように制御可能に移動させるように構成されており、
端子スロットアセンブリ
をさらに含む、スロットダウンドローガラス成形システム。
【0061】
実施形態9
前記エルボ型ケーシング部及び前記第2のケーシング部が、前記コンディショナ垂直セクション内の前記白金通路及び前記エルボ型ケーシング部と直線的な位置合わせで配置され、前記第2のケーシング部が、前記スロットダウンドローガラス成形システムが室温からガラス処理温度まで加熱される際に前記コンディショナ垂直セクションの前記白金通路の熱膨張に適応させるために前記直線的な位置合わせを維持しつつ、前記第2のケーシング部を前記エルボ型ケーシング部から遠ざかるように制御可能に移動させるように構成される、実施形態8に記載のスロットダウンドローガラス成形システム。
【0062】
実施形態10
前記エルボ型ケーシング部を前記第1のケーシング部から遠ざかるように制御可能に移動させるために、前記第1のケーシング部と前記エルボ型ケーシング部との間に1つ以上の調節可能なプッシュロッドが配置される、実施形態8に記載のスロットダウンドローガラス成形システム。
【0063】
実施形態11
前記1つ以上の調節可能なプッシュロッドが遠隔制御可能である、実施形態10に記載のスロットダウンドローガラス成形システム。
【0064】
実施形態12
前記エルボ型ケーシング部が移動している間に前記第1のケーシング部と前記エルボ型ケーシング部との間の前記直線的な位置合わせを維持する、1組以上のレール及び線形軸受をさらに含む、実施形態10に記載のスロットダウンドローガラス成形システム。
【0065】
実施形態13
前記コンディショナ拡散セクション内の前記白金通路の熱膨張が、前記コンディショナ拡散セクション内の前記白金通路の温度を監視することによって決定される、
実施形態8に記載のスロットダウンドローガラス成形システム。
【0066】
実施形態14
前記第2のケーシング部を前記エルボ型ケーシング部から遠ざかるように制御可能に移動させるために、前記エルボ型ケーシング部と前記第2のケーシング部との間に1つ以上の調節可能なプッシュロッドが配置される、実施形態9に記載のスロットダウンドローガラス成形システム。
【0067】
実施形態15
前記1つ以上の調節可能なプッシュロッドが遠隔制御可能である、実施形態14に記載のスロットダウンドローガラス成形システム。
【0068】
実施形態16
前記エルボ型ケーシング部が移動している間に前記エルボ型ケーシング部と前記第2のケーシング部との間の前記直線的な位置合わせを維持する、1組以上のレール及び線形軸受をさらに含む、実施形態14に記載のスロットダウンドローガラス成形システム。
【0069】
実施形態17
前記コンディショナ垂直セクション内の前記白金通路の熱膨張を決定するための皿ばね座金の1つ以上のスタックをさらに含み、
前記皿ばね座金の1つ以上のスタックが、前記コンディショナ垂直セクション内の前記白金通路が前記第2のケーシング部に対して膨張するときに圧縮の増加を経験するように構成され、前記コンディショナ垂直セクション内の前記白金通路の熱膨張が、前記皿ばね座金の1つ以上のスタックの前記圧縮の増加を監視することによって決定される、
実施形態14に記載のスロットダウンドローガラス成形システム。
【0070】
実施形態18
スロットダウンドローガラス成形システムであって、
溶融ガラス送給セクション、
前記溶融ガラス送給セクションに接続され、かつ前記溶融ガラス送給セクションと流体連通するガラスコンディショナ、
前記溶融ガラスの流れを前記ガラスコンディショナを通して端子スロットアセンブリに運ぶための白金通路、及び
前記端子スロットアセンブリの近くで白金通路を囲むケーシング
を備えており、
前記端子スロットアセンブリが、そこを通じてガラスリボンが垂直に下向きに延伸されるスロットを画成し、前記端子スロットアセンブリが、
上部リップ、及び
下部リップ
を備えており、ここで、
前記スロットが幅を有し、前記上部リップが前記スロットの前記幅を超えて延在し、かつ第1の端部及び第2の端部を画成し、
前記ケーシングが、2つの独立して横方向に可動な部分である、前記上部リップの前記第1の端部及び前記第2の端部に対応する第1の可動部分及び第2の可動部分を含み、
前記上部リップの前記第1の端部が前記ケーシングの前記第1の可動部分に接続され、前記上部リップの前記第2の端部が前記ケーシングの前記第2の可動部分に接続され、
前記スロットダウンドローガラス成形システムが周囲温度からガラス処理温度まで加熱される際に、前記上部リップの熱膨張に適応させるために、前記上部リップ及び前記ケーシングが、前記ケーシングの前記第1の可動部分を前記上部リップの前記第1の端部に対して横方向に制御可能に移動させ、かつ前記ケーシングの前記第2の可動部分を前記上部リップの前記第2の端部に対して横方向に制御可能に移動させるように構成され、
前記下部リップもまた、前記スロットの幅を超えて延在し、第1の端部及び第2の端部を画成し、前記下部リップの前記2つの端部の各々が、独立して横方向に可動な第1の可動部分及び第2の可動部分を含む下部リップ支持フレームに接続され、
前記スロットダウンドローガラス成形システムが周囲温度からガラス処理温度まで加熱される際に、前記下部リップの熱膨張に適応させるために、前記下部リップの前記2つの端部及び前記下部リップ支持フレームの前記2つの可動部分が、前記第1の可動部分を制御可能に前記下部リップの前記第1の端部に対して横方向に移動させ、かつ前記第2の可動部分を前記下部リップの前記第2の端部に対して横方向に制御可能に移動させるように構成される、
スロットダウンドローガラス成形システム。
【0071】
実施形態19
前記ケーシングの前記可動部分を制御可能に移動させるために、前記上部リップの前記2つの端部の各々と前記ケーシングのそれぞれの第1及び第2の可動部分との間に1つ以上の調節可能なプッシュロッドが配置される、実施形態18に記載のスロットダウンドローガラス成形システム。
【0072】
実施形態20
前記1つ以上の調節可能なプッシュロッドが遠隔制御可能である、実施形態19に記載のスロットダウンドローガラス成形システム。
【0073】
実施形態21
前記1つ以上の調節可能なプッシュロッドが手動制御可能である、実施形態19に記載のスロットダウンドローガラス成形システム。
【0074】
実施形態22
前記ケーシングの前記2つの可動部分の移動を容易にするための1組以上のレール及び線形軸受をさらに含む、実施形態19に記載のスロットダウンドローガラス成形システム。
【0075】
実施形態23
前記下部リップ支持フレームの前記可動部分を制御可能に移動させるために、前記下部リップの前記2つの端部の各々と前記下部リップ支持フレームのそれぞれの可動部分との間に1つ以上の調節可能なプッシュロッドが配置される、実施形態18に記載のスロットダウンドローガラス成形システム。
【0076】
実施形態24
前記1つ以上の調節可能なプッシュロッドが遠隔制御可能である、実施形態23に記載のスロットダウンドローガラス成形システム。
【0077】
実施形態25
前記1つ以上の調節可能なプッシュロッドが手動制御可能である、実施形態23に記載のスロットダウンドローガラス成形システム。
【0078】
実施形態26
前記下部リップ支持フレームの前記2つの可動部分の移動を容易にするために、前記下部リップ支持フレームの前記2つの可動部分の各々に設けられた1組以上のレール及び線形軸受をさらに含む、実施形態23に記載のスロットダウンドローガラス成形システム。
【符号の説明】
【0079】
10 白金通路
12 スロット
100 ガラス成形システム
120 端子スロットアセンブリ
121 上部リップ
122 下部リップ
130 ガラスコンディショナ
132 溶融ガラス送給セクション
134 ガラスコンディショナ拡散セクション
134a エルボ型セクション
135 ガラスコンディショナ垂直セクション
140 端子スロットアセンブリ
145 上部スロット支持フレーム
146 支持フレーム
147 耐火繊維フェルト層
200 筐体構造
310 第1のケーシング部
320 エルボ型ケーシング部
330 第2のケーシング部
340 下部リップ支持フレーム
410,410b プッシュロッド
510a,b,c 1組以上のレール及び線形軸受
520,520a,b 皿ばね座金
522,522a 圧縮キャップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
【国際調査報告】