IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルケム・シリコーンズ・ユーエスエイ・コーポレーションの特許一覧

特表2023-528486導電性フィラーとしてカーボンブラックを含むシリコーン材料で長期安定した電気伝導性を達成するための方法及び組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-04
(54)【発明の名称】導電性フィラーとしてカーボンブラックを含むシリコーン材料で長期安定した電気伝導性を達成するための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/04 20060101AFI20230627BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20230627BHJP
   C08K 5/54 20060101ALI20230627BHJP
   C08K 5/5415 20060101ALI20230627BHJP
   C08L 83/06 20060101ALI20230627BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20230627BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20230627BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230627BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
C08L83/04
C08K3/04
C08K5/54
C08K5/5415
C08L83/06
B33Y70/00
B33Y80/00
B33Y10/00
C09K3/10 G
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022574612
(86)(22)【出願日】2021-06-02
(85)【翻訳文提出日】2023-02-02
(86)【国際出願番号】 US2021035495
(87)【国際公開番号】W WO2021247739
(87)【国際公開日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】63/034,226
(32)【優先日】2020-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519289224
【氏名又は名称】エルケム・シリコーンズ・ユーエスエイ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】ELKEM SILICONES USA CORP.
【住所又は居所原語表記】Two Tower Center Boulevard,Suite 1601,East Brunswick,NJ 08816 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】イェン・モン
(72)【発明者】
【氏名】アマンダ・バートン
(72)【発明者】
【氏名】ダナヤ・プラチャヤナン
【テーマコード(参考)】
4H017
4J002
【Fターム(参考)】
4H017AA04
4H017AA29
4H017AB15
4H017AD01
4H017AE05
4J002CP061
4J002DA036
4J002EX037
4J002EX038
4J002EX068
4J002FD016
4J002FD147
4J002FD208
4J002GJ02
(57)【要約】
導電性フィラーとしてファーネスブラックとアセチレンブラックの混合物を含む、安定した長期電気抵抗率/抵抗を有する導電性又は半導電性の硬化性シリコーン組成物が提供される。導電性又は半導電性の硬化性シリコーン組成物の調製方法、及び導電性又は半導電性の硬化性シリコーン組成物の使用も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性シリコーン組成物Xであって、
(A)縮合硬化反応により硬化する少なくとも1つの有機ケイ素成分Aを含む、シリコーンベースと、
(B)2種類以上のカーボンブラックCBの組み合わせであって、少なくとも1種類のカーボンブラックがファーネスブラックCB1であり、少なくとも1種類のカーボンブラックがアセチレンブラックCB2である、組み合わせと、
(C)縮合触媒Cと、
(D)少なくとも1つの架橋剤Dと、
(E)任意に、接着促進剤Eと
を含む、硬化性シリコーン組成物X。
【請求項2】
前記少なくとも1つの有機ケイ素成分Aがヒドロキシル末端キャップのポリジオルガノシロキサンである、請求項1に記載の硬化性シリコーン組成物X。
【請求項3】
前記少なくとも1つの有機ケイ素成分Aがヒドロキシル末端キャップのポリジオルガノシロキサンのブレンドである、請求項1又は2に記載の硬化性シリコーン組成物X。
【請求項4】
前記少なくとも1つの有機ケイ素成分Aは、両末端にヒドロキシル基を有する少なくとも3種のポリジオルガノシロキサン(A1、A2、及びA3)のブレンドであり、前記ヒドロキシル末端キャップのポリジオルガノシロキサンA1は、25℃で約100~約10,000mPa・sの粘度を有し;前記ヒドロキシル末端キャップのポリジオルガノシロキサンA2は、25℃で約5,000~約25,000mPa・sの粘度を有し;前記ヒドロキシル末端キャップのポリジオルガノシロキサンA3は、25℃で約20,000~約100,000mPa・sの粘度を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物X。
【請求項5】
前記ファーネスブラックCB1は、80~300m2/gのBET表面積、70~250ml/100gの吸油量、及び100~350mg/gのヨウ素吸着量を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物X。
【請求項6】
前記アセチレンブラックCB2は、50~200m2/gのBET表面積、70~250ml/100gの吸油量、及び70~150mg/gのヨウ素吸着量を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物X。
【請求項7】
前記硬化性シリコーン組成物X中のカーボンブラックCBの総量は、全組成物に基づいて5~50重量%、好ましくは全組成物に基づいて10~25重量%である、請求項1~6のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物X。
【請求項8】
前記アセチレンブラックCB2に対する前記ファーネスブラックCB1の重量比が92:8~8:92である、請求項1~7のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物X。
【請求項9】
前記アセチレンブラックCB2に対する前記ファーネスブラックCB1の重量比が92:8~50:50である、請求項1~8のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物X。
【請求項10】
前記縮合触媒Cは、次のものからなる群から選択されるスズ誘導体である、請求項1~9のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物X:ジメチルスズジオレート、ジメチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート(DBTDL)、ジブチルスズジオレート、ジフェニルスズジアセテート、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズジメトキシド、ジブチルビス(トリエトキシシロキシ)スズ、及びジオクチルスズジラウレート。
【請求項11】
前記少なくとも1つの架橋剤Dは、次のものから選択される1つ又は複数の化合物である、請求項1~10のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物X:メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリス(アセトキシム)シラン、ビニルトリス(アセトキシム)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシム)シラン、ビニルトリス(メチルエチルケトキシム)シラン;及び前記各化合物の部分加水分解物。
【請求項12】
前記少なくとも1つの架橋剤Dは、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、又はそれらの組み合わせである、請求項1~11のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物X。
【請求項13】
前記接着促進剤Eを含み、前記接着促進剤Eは、ジ-t-ブトキシジアセトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(glymo)、又はそれらの組み合わせから選択される、請求項1~12のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物X。
【請求項14】
前記硬化性シリコーン組成物Xが1液型RTV-1シリコーン組成物である、請求項1~13のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物X。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物Xを硬化して得られる硬化シリコーンゴム。
【請求項16】
請求項1~14のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物Xを含む物品。
【請求項17】
請求項1~14のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物Xの導電性シリコーンシーラントとしての使用。
【請求項18】
前記導電性シリコーンシーラントは、水力発電機の固定子バーの表面をコーティングするために使用される、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
3次元(3D)シリコーンエラストマー物品の形成方法であって、請求項1~14のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物Xから、3Dプリンター、好ましくは押出又はインクジェット3Dプリンターによって成形体を生成すること、及び前記硬化性シリコーン組成物Xを硬化させてエラストマー物品を形成することを含む方法。
【請求項20】
3次元(3D)物品を形成する方法であって、前記方法は、
i)第1の硬化性シリコーン組成物を3Dプリンターで印刷して層を形成すること;
ii)前記少なくとも部分的に硬化した層上に第2の硬化性シリコーン組成物を3Dプリンターで印刷して、後続の層を形成すること;及び
iii)任意に、任意の追加の層用に独立して選択された硬化性シリコーン組成物を用いて工程i)及びii)を繰り返して3D物品を形成すること;
を含み、
前記第1及び第2の硬化性シリコーン組成物は、互いに同じか又は異なり、前記第1及び第2の硬化性シリコーン組成物の少なくとも一方は、請求項1~14のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物Xである、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年6月3日に出願された、米国特許仮出願第63/034,226号の利益を主張し、その内容はここで参照により全体的に取り込まれる。
【0002】
本発明は、導電性フィラーとしてファーネスブラックとアセチレンブラックとの混合物を含む、安定した長期電気抵抗率/抵抗を有する導電性又は半導電性の硬化性シリコーン組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
硬化してシリコーンゴムになるシリコーン組成物はよく知られており、このような組成物は、それらの耐候性、耐熱性、耐寒性、電気絶縁性が優れているため、電気・電子部品のポッティング材やコーティング材、金型用の成形材として広く使用されている。さらに、本来絶縁材料であるシリコーン組成物に導電特性を付与する技術も当技術分野で知られている。導電性フィラーをシリコーン組成物に組み込むことによってシリコーン組成物に導電特性を付与することは、一般に知られている。最も一般的な導電性フィラーは、カーボンブラック、銀粒子、銀メッキニッケル、銀メッキアルミニウム、銀メッキガラス粒子、ニッケルなどである。カーボンブラックは、低コストであり、ゴムの補強能力があるため、最も一般的な導電性フィラーである。導電率を高めるために、より導電率の高いカーボンブラック又はより多くのカーボンブラックがポリマーに添加される。
【0004】
業界には、ファーネスブラック、サーマルブラック、ランプブラック、チャネルブラック、アセチレンブラックの5種類のカーボンブラックがある。それぞれ異なる製法で作られている。ゴム及びプラスチック産業で最も広く使用されているカーボンブラックは、ファーネスブラックとサーマルブラックである。現在、世界で生産されているカーボンブラックの90%以上は、石油を熱分解してカーボンブラック粒子を生成するファーネスプロセス、すなわち、ファーネスブラックによって製造されている。
【0005】
カーボンブラックの各タイプは、物理的及び化学的特性が異なる。DBP吸油量は、カーボンブラック粒子同士が化学的・物理的に結合して複雑に凝集した構造の度合いを示し、カーボンブラック100gあたりに含まれる油のml数で表される。通常、構造の程度、すなわち吸油量(OAN)が高いほど、電気伝導率が高くなる。ヨウ素吸着量(I2NO又はIAN)は、カーボンブラックの表面積を測定するための最も一般的な手法である指標であり、カーボンブラック1キログラムあたりに吸着されるヨウ素のグラム数、又はカーボンブラック1グラムあたりに吸着されるヨウ素のミリグラム数によって与えられる。より良好な導電性を得るという観点からは、ヨウ素吸着量が高いことが好ましい。ただし、ヨウ素吸着量が高いと加工処理上問題となる場合がある。ヨウ素吸着量と同様に、高いBET表面積は高い導電率を達成するために有益である。しかし、加工の難易度も上がる。
【0006】
現在世界で生産されている全カーボンブラックの90%以上を占めるカーボンブラックタイプであるファーネスブラックのみを導電性フィラーとして使用する導電性又は半導電性シリコーン材料について、シリコーン材料が硬化した後、時間の経過とともに電気抵抗率/抵抗が大幅に増加することが見出されている。
【0007】
米国特許第5,164,443号明細書は、組成物への炭酸マグネシウムの配合が、カーボンブラック含有導電性シリコーン組成物の導電性の再現性及び安定性を改善するのに有効であることを開示している。「炭酸マグネシウム」とは、塩基性炭酸マグネシウムを意味し、4MgCO3・Mg(OH)2・5H2Oで大まかに表すことができる。組成物中の炭酸マグネシウムの添加量は、組成物中のカーボンブラック100重量部に対して10~300重量部が好ましい。しかしながら、このようなフィラーの添加は、組成物中の導電性カーボンブラックの相対的な含有量を低下させ、それによって得られる組成物の導電性を低下させる可能性がある。また、アセトキシ湿気硬化シリコーン組成物については、炭酸マグネシウムが組成物中の酢酸と反応し、貯蔵寿命を短縮するという懸念がある。
【0008】
特開2007-186544号公報は、MMMプロセスによって生成されたCB、又はMMM CBと他のタイプのCBとのブレンドを使用することによって、良好な導電性(安定した導電性又は導電性の長期安定性ではない)を達成すると主張している。MMMプロセスは、水焼入れ工程を含まない、CBを生成する油燃焼法である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
シリコーン材料が硬化した後、電気抵抗率/抵抗が経時的に増加するという問題を軽減する必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意研究の結果、ファーネスブラックとアセチレンブラックなど、2種類以上のカーボンブラックを所望の重量比範囲で組み合わせることにより、安定した長期電気抵抗率/抵抗を有する導電性又は半導電性シリコーン材料を提供し、上記の問題を解決できることを見出した。
【0011】
硬化性シリコーン組成物Xが提供され、前記硬化性シリコーン組成物Xは、
(A)縮合硬化反応により硬化する少なくとも1つの有機ケイ素成分Aを含む、シリコーンベースと、
(B)少なくとも2種類のカーボンブラックCBの組み合わせであって、少なくとも1種類のカーボンブラックがファーネスブラックCB1であり、少なくとも1種類のカーボンブラックがアセチレンブラックCB2である、組み合わせと、
(C)縮合触媒Cと、
(D)少なくとも1つの架橋剤Dと、
(E)任意に、接着促進剤Eと
を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つの有機ケイ素成分Aがヒドロキシル末端キャップのポリジオルガノシロキサンである。いくつかの実施形態では、前記少なくとも1種の有機ケイ素成分Aがヒドロキシル末端キャップのポリジオルガノシロキサンのブレンドであり、例えば、両末端にヒドロキシル基を有する少なくとも3つのポリジオルガノシロキサン(A1、A2、及びA3)のブレンドであり、前記ヒドロキシル末端キャップのポリジオルガノシロキサンA1は、25℃で約100~約10,000mPa・sの粘度を有し;前記ヒドロキシル末端キャップのポリジオルガノシロキサンA2は、25℃で約5,000~約25,000mPa・sの粘度を有し;前記ヒドロキシル末端キャップのポリジオルガノシロキサンA3は、25℃で約20,000~約100,000mPa・sの粘度を有する。
【0013】
本明細書で考慮されるすべての粘度は、ブルックフィールド型の機械を用いて、それ自体既知の方法で、25℃で測定される動的粘度の大きさに対応する。流体製品に関して、本明細書で対象とする粘度は、「ニュートン」粘度として知られる、25℃での動的粘度であり、すなわち、測定される粘度が速度勾配に依存しないように、十分に低いせん断速度勾配で、それ自体既知の方法で測定される動的粘度である。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記ファーネスブラックCB1は、以下の特性の1つ又は複数を有する:80~300m2/gのBET表面積、70~250ml/100gの吸油量、及び100~350mg/gのヨウ素吸着量。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記アセチレンブラックCB2は、以下の特性のうちの1つ又は複数を有する:50~200m2/gのBET表面積、70~250ml/100gの吸油量、及び70~150mg/gのヨウ素吸着量。
【0016】
いくつかの実施形態では、本発明の前記硬化性シリコーン組成物X中のカーボンブラックCBの総量は、全組成物に基づいて5~50重量%、好ましくは全組成物に基づいて10~25重量%である。
【0017】
いくつかの実施形態において、本発明の前記硬化性シリコーン組成物X中の前記ファーネスブラックCB1と前記アセチレンブラックCB2との重量比は、93:7~7:93、好ましくは93:7~50:50である。
【0018】
いくつかの実施形態では、本発明の前記硬化性シリコーン組成物Xに使用される前記縮合触媒Cは、以下からなる群から選択されるスズ誘導体である:ジメチルスズジオレート、ジメチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート(DBTDL)、ジブチルスズジオレート、ジフェニルスズジアセテート、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズジメトキシド、ジブチルビス(トリエトキシシロキシ)スズ、及びジオクチルスズジラウレート。
【0019】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つの架橋剤Dは、以下から選択される1つ又は複数の化合物である:メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリス(アセトキシム)シラン、ビニルトリス(アセトキシム)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシム)シラン、ビニルトリス(メチルエチルケトキシム)シラン;及び前記各化合物の部分加水分解物。好ましくは、前記少なくとも1つの架橋剤Dは、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、又はそれらの組み合わせである。
【0020】
いくつかの実施形態では、前記接着促進剤Eは、ジ-t-ブトキシジアセトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(glymo)、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0021】
いくつかの実施形態では、硬化性シリコーン組成物Xは、1液型RTV-1シリコーン組成物である。
【0022】
また、本発明による前記硬化性シリコーン組成物Xを硬化して得られる硬化シリコーンゴムも提供される。本発明による前記硬化性シリコーン組成物Xを含む物品がさらに提供される。
【0023】
導電性シリコーンシーラントとしての硬化性シリコーン組成物Xの使用がさらに提供される。いくつかの実施形態では、前記導電性シリコーンシーラントは、水力発電機の固定子バーの表面をコーティングするために使用される。
【0024】
3Dプリンターでの本発明の硬化性シリコーン組成物Xの使用も提供される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本開示をさらに説明する前に、本開示は、以下に説明する本開示の特定の実施形態に限定されないことを理解されたい。特定の実施形態の変形がなされてもよく、それらは依然として添付の特許請求の範囲内にある。使用される用語は、特定の実施形態を説明するためのものであり、限定することを意図していないことも理解されたい。代わりに、本開示の範囲は、特許請求の範囲によって確立される。
【0026】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明確に別の指示をしない限り、複数の参照を含む。別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0027】
本明細書で使用するとき、「シリコーンゴム」という用語は、任意の架橋可能なシリコーン組成物の架橋生成物を含む。「シリコーンゴム」及び「シリコーンエラストマー」という用語は、交換可能に使用することができる。
【0028】
本明細書で使用するとき、用語「架橋した」及び「硬化した」は交換可能に使用することができ、硬化性シリコーン組成物の成分を組み合わせて反応させ、硬化したシリコーンエラストマーをもたらすときに起こる反応を指す。
【0029】
一態様では、本発明は硬化性シリコーン組成物Xであり、前記硬化性シリコーン組成物Xは、
(A)縮合硬化反応により硬化する少なくとも1つの有機ケイ素成分Aを含む、シリコーンベース;
(B)2種類以上のカーボンブラックCBの組み合わせであって、少なくとも1種類のカーボンブラックがファーネスブラックであり、少なくとも1種類のカーボンブラックがアセチレンブラックである、組み合わせ;及び
(C)縮合触媒C;
(D)少なくとも1つの架橋剤D;及び
(E)任意に、接着促進剤E
を含む。
【0030】
本発明者らは、驚くべきことに、本明細書で定義される硬化性シリコーン組成物Xの使用が、安定した電気伝導性及び優れたレオロジー特性を提供することを見出した。特に、導電性シーラントとしての本発明の硬化性シリコーン組成物Xの使用は、導電性を損なうことなく、良好な接着、迅速な硬化、及び最適な粘度を提供する。
【0031】
特に、シリコーン組成物にファーネスブラックとアセチレンブラックとを併用すると、安定した導電性が得られることがわかった。
【0032】
本明細書に記載の表面積は、ASTM Special Technical Bulletin No.51,1941の第95頁以降に従って、窒素吸収によって決定される(一般に「BET」法と呼ばれる)。
【0033】
「ファーネスブラック」という用語は、ドイツの化学文献にも記載されている("Ullmanns Encyklopadie der technischen Chemie", Volume 14, Munich-Berlin, 1963の第799頁参照)。本発明の硬化性シリコーン組成物Xには、任意の適切なファーネスブラックを使用することができる。ファーネスブラックは、導電性に優れたファーネスブラックであることが好ましい。例としては、導電性ファーネスブラック(CF)、スーパー導電性ファーネスブラック(SCF)、エキストラ導電性ファーネスブラック(XCF)、及び約1500℃の高温で処理されたファーネスブラックが含まれる。より具体的には、導電性ファーネスブラックには、Continental Carbon社製のContinex CF、及びCabot社製のVulcan Cが含まれ、スーパー導電性ファーネスブラックには、Continental Carbon社製のContinex SCF、及びCabot社製のVulcan SCが含まれ、エキストラ導電性ファーネスブラックには、旭カーボン株式会社製のAsahi HS-500、及びCabot社製のVulcan XC-72が含まれる。また、Ketjen Black International社製のケッチェンブラックEC及びケッチェンブラックEC-600JDとして市販されている変性ファーネスブラックも有用である。
【0034】
いくつかの実施形態では、本発明の硬化性シリコーン組成物Xで使用されるファーネスブラックは、40~1500m2/g、好ましくは80~300m2/gのBET表面積を有する。他の実施形態では、本発明の硬化性シリコーン組成物Xで使用されるファーネスブラックは、100~300m2/g、125~300m2/g、150~300m2/g、175~300m2/g、200~300m2/g、又は225~300m2/gのBET表面積を有する。あるいは、本発明の硬化性シリコーン組成物Xで使用されるファーネスブラックは、100~275m2/g、125~275m2/g、150~275m2/g、175~275m2/g、200~275m2/g、又は225~275m2/gのBET表面積を有する。あるいは、本発明の硬化性シリコーン組成物Xで使用されるファーネスブラックは、100~250m2/g、125~250m2/g、150~250m2/g、175~250m2/g、200~250m2/g、又は225~250m2/gのBET表面積を有する。
【0035】
いくつかの実施形態では、本発明の硬化性シリコーン組成物Xで使用されるファーネスブラックは、30~1200ml/100g、好ましくは70~250ml/100gの吸油量を有する。他の実施形態では、本発明の硬化性シリコーン組成物Xで使用されるファーネスブラックは、100~250ml/100g、125~250ml/100g、150~250ml/100g、又は175~250ml/100gの吸油量を有する。あるいは、本発明の硬化性シリコーン組成物Xで使用されるファーネスブラックは、70~230ml/100g、100~230ml/100g、125~230ml/100g、150~230ml/100g、又は175~230ml/100gの吸油量を有する。
【0036】
いくつかの実施形態において、本発明の硬化性シリコーン組成物Xで使用されるファーネスブラックは、6~400mg/g、好ましくは100~350mg/gのヨウ素吸着量を有する。他の実施形態において、本発明の硬化性シリコーン組成物Xで使用されるファーネスブラックは、125~350mg/g、150~350mg/g、175~350mg/g、200~350mg/g、225~350mg/g、又は250~350mg/gのヨウ素吸着量を有する。あるいは、本発明の硬化性シリコーン組成物Xに使用されるファーネスブラックは、100~325mg/g、125~325mg/g、150~325mg/g、175~325mg/g、200~325mg/g、225~325mg/g、又は250~325mg/gのヨウ素吸着量を有する。あるいは、本発明の硬化性シリコーン組成物Xに使用されるファーネスブラックは、100~300mg/g、125~300mg/g、150~300mg/g、175~300mg/g、200~300mg/g、225~300mg/g、又は250~300mg/gのヨウ素吸着量を有する。あるいは、本発明の硬化性シリコーン組成物Xに使用されるファーネスブラックは、100~275mg/g、125~275mg/g、150~275mg/g、175~275mg/g、200~275mg/g、225~275mg/g、又は250~275mg/gのヨウ素吸着量を有する。
【0037】
本発明の硬化性シリコーン組成物Xには、任意の適切なアセチレンブラックを使用することができる。アセチレンブラックは、導電性に優れたアセチレンブラックであることが好ましい。例えば、デンカ株式会社製のデンカアセチレンブラック、Shawinigan Chemical社製のShawiniganアセチレンブラック、及びSoltex社製のアセチレンブラック-01等が挙げられる。
【0038】
いくつかの実施形態では、本発明の硬化性シリコーン組成物Xに使用されるアセチレンブラックは、40~1000m2/g、好ましくは50~200m2/gのBET表面積を有する。他の実施形態では、本発明の硬化性シリコーン組成物Xに使用されるアセチレンブラックは、50~175m2/g、50~150m2/g、50~125m2/g、50~100m2/g、50~90m2/g、50~80m2/g、又は50~75m2/gのBET表面積を有する。あるいは、本発明の硬化性シリコーン組成物Xに使用されるアセチレンブラックは、60~200m2/g、60~175m2/g、60~150m2/g、60~125m2/g、60~100m2/g、60~90m2/g、60~80m2/g、又は60~75m2/gのBET表面積を有する。
【0039】
いくつかの実施形態において、本発明の硬化性シリコーン組成物Xで使用されるアセチレンブラックは、30~1200ml/100g、好ましくは70~250ml/100gの吸油量を有する。他の実施形態では、本発明の硬化性シリコーン組成物Xで使用されるアセチレンブラックは、100~250ml/100g、125~250ml/100g、150~250ml/100g、又は175~250ml/100gの吸油量を有する。あるいは、本発明の硬化性シリコーン組成物Xで使用されるアセチレンブラックは、70~230ml/100g、100~230ml/100g、125~230ml/100g、150~230ml/100g、又は175~230ml/100gの吸油量を有する。
【0040】
いくつかの実施形態において、本発明の硬化性シリコーン組成物Xで使用されるアセチレンブラックは、6~400mg/g、好ましくは70~400mg/gのヨウ素吸着量を有する。他の実施形態において、本発明の硬化性シリコーン組成物Xで使用されるアセチレンブラックは、70~125mg/g、又は70~100mg/gのヨウ素吸着量を有する。あるいは、本発明の硬化性シリコーン組成物Xに使用されるアセチレンブラックは、75~150mg/g、75~125mg/g、又は75~100mg/gのヨウ素吸着量を有する。あるいは、本発明の硬化性シリコーン組成物Xに使用されるアセチレンブラックは、80~150mg/g、80~125mg/g、又は80~100mg/gのヨウ素吸着量を有する。あるいは、本発明の硬化性シリコーン組成物Xに使用されるアセチレンブラックは、85~150mg/g、85~125mg/g、又は85~100mg/gのヨウ素吸着量を有する。
【0041】
硬化性シリコーン組成物X中のカーボンブラックの総量は、全組成物に基づいて5~50重量%、好ましくは全組成物に基づいて10~25重量%である。いくつかの実施形態では、硬化性シリコーン組成物X中のカーボンブラックの総量は、10~20重量%、10~19重量%、10~18重量%、10~17重量%、10~16重量%、又は10~15重量%である(すべて全組成物に基づく)。他の実施形態では、硬化性シリコーン組成物X中のカーボンブラックの総量は、11~20重量%、11~19重量%、11~18重量%、11~17重量%、11~16重量%、又は11~15重量%である(すべて全組成物に基づく)。あるいは、硬化性シリコーン組成物X中のカーボンブラックの総量は、12~20重量%、12~19重量%、12~18重量%、12~17重量%、12~16重量%、又は12~15重量%である(すべて全組成物に基づく)。あるいは、硬化性シリコーン組成物X中のカーボンブラックの総量は、13~20重量%、13~19重量%、13~18重量%、13~17重量%、13~16重量%、又は13~15重量%である(すべて全組成物に基づく)。あるいは、硬化性シリコーン組成物X中のカーボンブラックの総量は、14~20重量%、14~19重量%、14~18重量%、14~17重量%、14~16重量%、14~15重量%である(すべて全組成物に基づく)。
【0042】
いくつかの実施形態では、ファーネスブラック対アセチレンブラックの重量比は、97:3~3:97、好ましくは92:8~8:92である。いくつかの実施形態では、ファーネスブラック対アセチレンブラックの重量比は、97:3~33:67、97:3~50:50、97:3~60:40、97:3~70:30、97:3~75:25、97:3~80:20、97:3~84:16、97:3~85:15、97:3~86:14、97:3~87:13、97:3~88:12、97:3~89:11、97:3~90:10、97:3~91:9、又は97:3~92:8である。他の実施形態では、ファーネスブラック対アセチレンブラックの重量比は、95:5~33:67、95:5~50:50、95:5~60:40、95:5~70:30、95:5~75:25、95:5~80:20、95:5~84:16、95:5~85:15、95:5~86:14、95:5~87:13、95:5~88:12、95:5~89:11、95:5~90:10、95:5~91:9、又は95:5~92:8である。あるいは、ファーネスブラック対アセチレンブラックの重量比は、94:6~33:67、94:6~50:50、94:6~60:40、94:6~70:30、94:6~75:25、94:6~80:20、94:6~84:16、94:6~85:15、94:6~86:14、94:6~87:13、94:6~88:12、94:6~89:11、94:6~90:10、94:6~91:9、又は94:6~92:8である。あるいは、ファーネスブラック対アセチレンブラックの重量比は、93:7~33:67、93:7~50:50、93:7~60:40、93:7~70:30、93:7~75:25、93:7~80:20、93:7~84:16、93:7~85:15、93:7~86:14、93:7~87:13、93:7~88:12、93:7~89:11、93:7~90:10、93:7~91:9、又は93:7~92:8である。あるいは、ファーネスブラック対アセチレンブラックの重量比は、92:8~33:67、92:8~50:50、92:8~60:40、92:8~70:30、92:8~75:25、92:8~80:20、92:8~84:16、92:8~85:15、92:8~86:14、92:8~87:13、92:8~88:12、92:8~89:11、92:8~90:10、又は92:8~91:9である。
【0043】
いくつかの実施形態では、上記のファーネスブラック及びアセチレンブラックに加えて、本発明の硬化性シリコーン組成物Xに1つ又は複数のさらなるカーボンブラックを添加することができる。1つ又は複数のさらなるカーボンブラックは、任意の適切なカーボンブラックであり得る。例えば、1つ又は複数のさらなるカーボンブラックは、上記の任意のカーボンブラック又はそれらの任意の組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のさらなるカーボンブラックは、導電性ゴム組成物の製造において伝統的に使用される任意の従来のカーボンブラックであり得る。例としては、サーマルブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、導電性ファーネスブラック(CF)、スーパー導電性ファーネスブラック(SCF)、エキストラ導電性ファーネスブラック(XCF)、導電性チャネルブラック(CC)、及び約1500℃の高温で処理されたファーネスブラック及びチャネルブラックが含まれる。より具体的には、アセチレンブラックには、デンカ株式会社製のデンカアセチレンブラック、Shawinigan Chemical社製のShawiniganアセチレンブラック、Soltex社製のアセチレンブラック-01が含まれ、導電性ファーネスブラックには、Continental Carbon社製のContinex CF、及びCabot社製のVulcan Cが含まれ、スーパー導電性ファーネスブラックには、Continental Carbon社製のContinex SCF、及びCabot社製のVulcan SCが含まれ、エキストラ導電性ファーネスブラックには、旭カーボン株式会社製のAsahi HS-500、及びCabot社製のVulcan XC-72が含まれ、導電性チャネルブラックには、Degussa社製のCorax L.が含まれる。また、Ketjen Black International社製のケッチェンブラックEC及びケッチェンブラックEC-600JDとして市販されている変性ファーネスブラックも有用である。中でも、アセチレンブラックは、不純物が少なく、二次構造が発達しているため、導電性が高く好ましい。また、ケッチェンブラックEC及びケッチェンブラックEC-600JDは、比表面積が非常に大きくなっており、低負荷で十分な導電性を達成できるため、有用である。
【0044】
硬化性シリコーン組成物は当技術分野でよく知られており、過酸化物硬化、付加硬化、又は縮合硬化の3種類の反応によって硬化するシリコーン組成物が含まれる。
【0045】
硬化性シリコーン組成物は、使用される硬化方法、硬化温度条件、及び硬化性シリコーン組成物の稠度又は粘度に従って、以下に示すように分類される。
・HCR(High Consistency Silicone Rubbers、高稠度シリコーンゴム)は、付加硬化又は過酸化物硬化反応によって成分が硬化する熱硬化性シリコーン組成物(High Temperature Vulcanizing silicone composition(高温加硫シリコーン組成物)の頭字語であるHTV)である。それらは、様々な反応基を含む高分子量高分子を含む反応性シリコーンガムから調製される。
・LSR(Liquid Silicone Rubbers、液状シリコーンゴム)は、付加硬化触媒を使用する熱硬化性シリコーン組成物(又は高温加硫、HTV)であり、2液型として販売されている。液状シリコーンゴム(LSR)と高稠度ゴム(HCR)の主な違いは、LSR材料の「流動性」又は「液体」の性質である。
・RTV(Room Temperature Vulcanizing、室温加硫)は、付加硬化触媒又は縮合硬化触媒のいずれかを使用する硬化性シリコーン組成物である。それらは、縮合硬化触媒を使用する場合の室温から、付加硬化触媒を使用する場合の最高200℃まで硬化する1液型又は2液型として販売されている。
【0046】
縮合硬化反応により硬化する硬化性組成物とは、水分の存在下で、シロキサンポリマー又はシランのシラノール基(Si-OH)及び/又は加水分解可能なSi-X基(Xは加水分解可能な基)の間の反応によって硬化が達成され、シロキサン(Si-O-Si)結合と水素ガス又は水の形成に至る硬化性シリコーン組成物をいう。通常、縮合硬化シリコーン系は、有機スズ化合物及び/又はチタン酸塩で硬化される。亜鉛、ジルコニウム、アルミニウム、又はグアニジン誘導体などのアミンに基づく触媒など、他の触媒を挙げることもできる。伝統的に、これらの配合物は、ヒドロキシル末端シリコーン油、例えばα,ω-(ヒドロキシジメチルシリル)-ポリジメチルシロキサン(任意に加水分解性及び縮合性末端を有するようにシランで事前に官能化されたもの)、架橋剤、重縮合触媒、伝統的にはスズ塩又はチタン酸アルキル、並びに目的の最終用途に応じて任意に様々なフィラー及び添加剤を含有する。
【0047】
周囲温度(地域によって5℃~30℃の間で変動する場合がある)で重合及び/又は架橋によって硬化するこれらのシリコーン組成物は当業者によく知られており、2つの別個のグループに分類される:
・「1液型」組成物(RTV-1)として包装された組成物であり、気密包装された単一の部分(又は成分)の形態であるもの;及び
・「2液型」組成物(RTV-2)として包装された組成物であり、2つの別個の部分の形態であり(したがって「2液型」と呼ばれる)、触媒を含む包装は気密であるもの。
【0048】
気密包装の目的は、触媒を含有するシリコーン組成物が使用前の貯蔵中に大気中の水分と接触するのを防ぐことである。これらのシリコーン組成物の重合及び/又は架橋によって行われる硬化の間、RTV-1組成物の場合には水が大気水分によって供給される。RTV-2組成物の場合には、ジメチルスズジカルボキシレートが触媒として一般的に使用されるが、2つの部分の内容物が周囲の空気と混合されて、組成物の硬化につながるエラストマーネットワークを形成するときに、触媒を活性化し、重縮合反応を可能にするために、これらの部分の一方にいくらかの水を追加することが必要な場合がある。
【0049】
例えば、マスチック又は接着剤として使用される単一成分のシリコーン組成物(RTV-1)は、2つの主要反応を含むメカニズムによって低温架橋を受け、これらは順次又は同時に生じる場合がある:
1.シラノール官能基を有するシリコーンオイル、例えばα,ω-(ヒドロキシジメチルシリル)-ポリジメチルシロキサンなどのヒドロキシル末端シリコーンオイルと、SiX4型のシラン(例えばケイ酸塩)などの架橋剤又は次の官能基-SiX3を有する化合物(Xはほとんどの場合、アルコキシ、アシルオキシ、アミノ、アミド、エノキシ、アミノキシ、ケチミノキシ又はオキシム官能基である)とを接触させることにより生じる官能化反応。これらの官能基は、シラノール官能基と反応性があるものとしてよく知られている。得られた生成物は、ほとんどの場合「官能化オイル」と呼ばれる。この反応は、組成物の調製中(現場での官能化)に直接、又は任意に組成物の他の成分を添加する前の予備工程として望まれる場合がある。
2.一般に、大気にさらされた表面から材料に拡散する水蒸気に起因する官能化オイルの加水分解による架橋、及び形成されたシラノール基と他の残留反応官能基との縮合。
【0050】
2液型組成物(RTV-2)の形態で包装された組成物に関しては、第1の成分(又は部分)は重縮合性ポリオルガノシロキサンを含み、気密性である第2の成分(又は部分)は触媒及び1種以上の架橋剤を含む。2つの成分(又は部分)は使用時に混合され、特に組成物が補強フィラーを含む場合には、混合物は比較的硬質のエラストマーの形態で架橋反応によって硬化する。2成分系にパッケージ化されたこれらの組成物はよく知られており、特にWalter Nollの著作「Chemistry and Technology of Silicones」(1968年、第2版、第395~398頁)に記載されている。これらの組成物は、ほとんどの場合、次の成分を含む:
・反応性ポリオルガノシロキサンであって、鎖の末端にシラノール基を有するもの、例えばα,ω-ジ(ヒドロキシジメチルシリル)(ポリジメチルシロキサン)、鎖中にシラノール基を有するもの、又は鎖の末端と鎖中の両方にシラノール基を有するもの;
・架橋剤;
・縮合触媒;及び
・任意に、ジアルキルスズジカルボキシレートが触媒として使用される場合に存在することが多く、当該触媒の活性化剤として作用する水。
【0051】
好ましい実施形態では、本発明の硬化性シリコーン組成物Xは、縮合反応によって硬化する1液型RTV-1シリコーン組成物である。
【0052】
少なくとも1つの有機ケイ素成分Aの官能基の選択は、例えば、ケイ素結合ヒドロキシル基、ケイ素結合アルコキシ基、ケイ素結合オキシム基、ケイ素結合アミノ基、ケイ素結合アミド基、ケイ素結合アミノキシ基、ケイ素結合アシルオキシ基、ケイ素結合ケチミノキシ基及びケイ素結合エノキシ基とすることができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの有機ケイ素成分Aは、両端にヒドロキシル基を有するポリジオルガノシロキサン(すなわち、ヒドロキシル末端キャップのポリジオルガノシロキサン)である。成分Aのポリジオルガノシロキサン中の有機基は、一価の置換又は非置換炭化水素基である。これらは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ドデシル基等のアルキル基等の非置換炭化水素基;フェニル基等のアリール基、及びβ-フェニルエチル基又はβ-フェニルプロピル基等のアラルキル基;並びにクロロメチル基又は3,3,3-トリフルオロプロピル基などの置換炭化水素基である。一般に、ポリマーの製造が容易なため、ほとんどの場合、メチル基が使用される。
【0054】
いくつかの実施形態では、ヒドロキシル末端キャップのポリジオルガノシロキサンは、好ましくは25℃で約100~約100,000mPa・s、好ましくは25℃で約1,000~約75,000mPa・s、より好ましくは25℃で約2,500~約50,000mPa・sの粘度を有する。
【0055】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの有機ケイ素成分Aは、ヒドロキシル末端キャップのポリジオルガノシロキサンのブレンドである。ヒドロキシル末端キャップのポリジオルガノシロキサンのブレンドは、好ましくは、25℃で約100~約100,000mPa・s、好ましくは25℃で約1,000~約75,000mPa・s、より好ましくは25℃で約2,500~約50,000mPa・sの粘度を有する。
【0056】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの有機ケイ素成分Aは、少なくとも3種のヒドロキシル末端キャップのポリジオルガノシロキサン(A1、A2、及びA3)のブレンドである。いくつかの実施形態では、ヒドロキシル末端キャップのポリジオルガノシロキサンA1は、25℃で約100~約10,000mPa・sの粘度を有し;ヒドロキシル末端キャップのポリジオルガノシロキサンA2は、25℃で約5,000~約25,000mPa・sの粘度を有し;ヒドロキシル末端キャップのポリジオルガノシロキサンA3は、25℃で約20,000~約100,000mPa・sの粘度を有する。好ましい実施形態では、ヒドロキシル末端キャップのポリジオルガノシロキサンA1の粘度は、25℃で約500~約7,500mPa・s、より好ましくは25℃で約1,000~約5,000mPa・sである。ヒドロキシル末端キャップのポリジオルガノシロキサンA2の粘度は、25℃で約7,500~約20,000mPa・s、より好ましくは25℃で約10,000~約15,000mPa・sである。好ましい実施形態では、ヒドロキシル末端キャップのポリジオルガノシロキサンA3の粘度は、25℃で約25,000~約75,000mPa・s、より好ましくは25℃で約40,000~約60,000mPa・sである。
【0057】
適切な縮合触媒Cは、アルキルスズに基づく化合物などのスズ誘導体であり、例えば、ジメチルスズジオレート、ジメチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート(DBTDL)、ジブチルスズジオレート、ジフェニルスズジアセテート、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズジメトキシド、ジブチルビス(トリエトキシシロキシ)スズ、及びジオクチルスズジラウレートである。
【0058】
別の縮合触媒C、特にチタン系触媒は従来技術で知られている(例えば、国際公開第2013/036546号を参照)。他の縮合触媒C、例えば、亜鉛、スカンジウム、イッテルビウム、銅、銀、セリウム、モリブデン、ビスマス、ハフニウム又はグアニジン誘導体に基づく触媒が挙げられている。オクタン酸鉄、オクタン酸コバルト、オクタン酸マンガン、ナフテン酸スズ、カプリル酸スズ、オレイン酸スズなどのカルボン酸金属塩も、適切な縮合触媒Cとして挙げられている。ジルコニウム又はチタンのキレートの使用は、特に国際公開第01/49789号に記載されている。触媒Cとして使用できる他の選択肢は、仏国特許出願公開第2856694号明細書又は米国特許出願公開第2017/022325号明細書に記載されている。
【0059】
硬化性シリコーン組成物Xに含まれる縮合触媒Cの量は、成分Aのベースポリマー100重量部に基づいて、0.001~5重量部であることが好ましい。縮合触媒Cが規定範囲未満で存在すると、硬化に長時間を要する。さらに、空気と接触していない組成物の深部の硬化が不完全になる。逆に、縮合触媒Cの量が規定範囲よりも多い場合、組成物の貯蔵安定性が低下する。より好ましくは、縮合触媒Cの量は、成分Aのベースポリマー100重量部に基づいて、0.005~0.5重量部である。
【0060】
少なくとも1つの架橋剤Dの官能基の例は以下のとおりである:
・アルコキシ型の加水分解性及び縮合性基を使用することができる。例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、2-メトキシエトキシ、ヘキシルオキシ又はオクチルオキシ基などの1~8個の炭素原子を有する基が挙げられる。
・アルコキシアルキレンオキシ型の加水分解性及び縮合性基を使用することができる。例えば、メトキシ-エチレン-オキシ基が挙げられる。
・アミノ型の加水分解性及び縮合性基を使用できる。例えば、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、n-ブチルアミノ、sec-ブチルアミノ又はシクロヘキシルアミノ基が挙げられる。
・N-メチルアセトアミド基の加水分解性及び縮合性基。
・アシルアミノ型の加水分解性及び縮合性基を使用することができる。例えば、ベンゾイルアミノ基が挙げられる。
・アミノキシ型の加水分解性及び縮合性基を使用できる。例えば、ジメチルアミノキシ、ジエチルアミノキシ、ジオクチルアミノキシ又はジフェニルアミノキシ基が挙げられる。
・イミノキシ、特にケチミノキシタイプの加水分解性及び縮合性基を使用することができる。例としては、以下のオキシムから誘導される基が挙げられる:アセトフェノンオキシム、アセトンオキシム、ベンゾフェノンオキシム、メチルエチルケトキシム、ジイソプロピルケトキシム又はメチルイソブチルケトキシム。
・アシルオキシ型の加水分解性及び縮合性基を使用することができる。例えば、アセトキシ基が挙げられる。
・エノキシ型の加水分解性及び縮合性基を使用できる。例えば、2-プロペノキシ基が挙げられる。
【0061】
本発明の硬化性シリコーン組成物Xに含めることができる架橋剤Dの例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:エチルシリケート、プロピルシリケート、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリス(メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン、メチルトリプロペノキシシラン等のアルコキシ化合物;メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン等のアセトキシ化合物;及びメチルトリス(アセトキシム)シラン、ビニルトリス(アセトキシム)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシム)シラン、ビニルトリス(メチルエチルケトキシム)シラン;並びに前記各化合物の部分加水分解物。さらに、ヘキサメチルビス(ジエチルアミノキシ)シクロテトラシロキサン、テトラメチルジブチルビス(ジエチルアミノキシ)シクロテトラシロキサン、ペンタメチルトリス(ジエチルアミノキシ)シクロテトラシロキサン、ヘキサメチルビス(メチルエチルアミノキシ)シクロテトラシロキサン、及びペンタメチルビス(ジエチルアミノキシ)モノ(メチルエチルアミノキシ)シクロテトラシロキサン等の環状シロキサンがさらに挙げられる。架橋剤Dは、シラン構造、シロキサン構造のいずれであってもよく、シロキサン構造は直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。上記架橋剤Dは2種以上併用してもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの架橋剤Dとして、メチルトリアセトキシシランとエチルトリアセトキシシランとの組み合わせが使用される。
【0062】
少なくとも1つの架橋剤Dの量は、成分Aのベースポリマー100重量部に基づいて、好ましくは0.1~20重量部である。少なくとも1つの架橋剤Dの量が0.1重量部未満であると、ゴム硬化物の十分な強度が得られない。逆に20重量部を超えると最終ゴム製品が脆くなり不都合がある。
【0063】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの架橋剤Dの量は、組成物中のシラノール基に対するアセトキシ基の比が15~25、好ましくは17.5~22.5、より好ましくは20~21であるように選択される。好ましい実施形態では、少なくとも1つの架橋剤Dの量は、組成物中のシラノール基に対するアセトキシ基の比が約20又は約21であるように選択される。
【0064】
硬化性シリコーン組成物Xは、任意に、少なくとも1つの接着促進剤Eを含有することができる。少なくとも1つの接着促進剤Eは、1つ又は複数の有機シラン、例えば、アルコキシシラン、ビニルアルコキシシラン、アミノアルコキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO)、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(MEMO)、ジ-t-ブトキシジアセトキシシラン及びそれらの混合物とすることができる。別の実施形態では、少なくとも1つの接着促進剤Eは、アミノ官能基及びケイ素に結合した3つ未満のアルコキシ基を有する化合物などの1つ又は複数の有機シランであってもよい。例としては、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3アミノプロピルメチルジエトキシ及びそれらの混合物が挙げられる。
【0065】
いくつかの実施形態では、接着促進剤Eは、ジ-t-ブトキシジアセトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(glymo)、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0066】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの接着促進剤Eは、全組成物の約0.1~約10重量%、好ましくは全組成物の約1~約7重量%、より好ましくは全組成物の約3~約5重量%の量で含まれる。
【0067】
本発明の導電性硬化性シリコーン組成物Xは、適宜、フィラー、硬化遅延剤、可塑剤、有機溶剤、顔料、耐熱性向上剤、防火剤、及びその他の添加物をさらに含有することができる。さらに、本発明の効果を阻害しない範囲で、他のポリオルガノシロキサンを含んでいてもよい。そのような任意の添加剤の例には、以下が含まれるが、これらに限定されない:ヒュームドシリカ、沈降シリカ、石英粉、珪藻土、炭酸カルシウム、焼結クレーなどの補強フィラー、並びに酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化セリウム、マイカ、クレー、グラファイト、炭酸亜鉛、炭酸マンガン、水酸化セリウム、ガラスビーズ、ポリジメチルシロキサン、及びアルケニル基含有ポリシロキサン。
【0068】
任意の添加剤の他の例には、シリコーンポリエーテルなどの界面活性剤、UVトレーサー(蛍光増白剤)、及び短鎖ヒドロキシル末端キャップのポリジオルガノシロキサンなどの硬化速度調整剤が含まれる。
【0069】
レオロジー特性を改善し、より高い流動性と成形品の滑らかな表面を提供するために、レオロジー調整剤を任意に追加することができる。そのようなレオロジー調整剤は、PTFE粉末、酸化ホウ素誘導体、脂肪酸脂肪アルコール誘導体又は誘導体、エステル及びその塩、又はフルオロアルキル界面活性剤などの流動添加剤とすることができる。使用できるレオロジー調整剤の例としては、例えば、エポキシ官能性シラン、ポリ(アリール)シロキサン、ポリアルキレングリコール、ポリエステルポリオール、多価アルコール、ジカルボン酸、ポリエステルジオール、及びシリコーン-ポリエーテルブロックコポリマー、遊離ポリエーテル、及びそれらの混合物などのシリコーンポリエーテル、例えば、BLUESIL SP-3300(シロキサン及びシリコーン、ジ-Me,3-ヒドロキシプロピルMe、エトキシル化プロポキシル化;エルケムシリコーンズ社製)などがある。
【0070】
使用できる添加剤の他の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:有機染料又は顔料、熱安定性、高温空気に対する耐性、加硫戻り、高温での微量の酸又は水の攻撃下での解重合を改善するためにシリコーンゴムに導入される安定剤。可塑剤、又は離型オイル、又はポリジメチルシロキサンオイルなど、ヒドロキシル基のない疎水化性オイルも挙げられる。脂肪酸誘導体や脂肪族アルコール誘導体、フルオロアルキルなどの離型剤も挙げられる。
【0071】
また、本発明は、本明細書で定義される硬化性シリコーン組成物Xを硬化することによって得られる硬化シリコーンゴムにも関する。本発明のさらに別の実施形態では、前述の硬化性シリコーン組成物Xを含む物品が提供される。
【0072】
いくつかの実施形態では、本発明に係る硬化性シリコーン組成物Xは、工業、エレクトロニクス及びヘルスケアの分野で使用することができる。例えば、硬化性シリコーン組成物Xは、水力発電機の固定子バーの表面をコーティングするために使用することができる。コーティングの導電性は、静電気を低減又は除去するためのものであり、それがなければ、水力発電機の運転中に蓄積する可能性がある。通常、固定子バーには銅コアがあり、マイカを含むエポキシテープで包まれている。したがって、いくつかの実施形態では、コーティング基材はマイカを含むエポキシである。
【0073】
本明細書に記載の電子シーラント又はコーティングなどの物品及び/又は製品における本発明の硬化シリコーンエラストマーの使用も提供される。
【0074】
あるいは、硬化性シリコーン組成物Xは、3D印刷法を使用して加工されてもよい。3次元(3D)物品を形成する典型的な方法は、次の工程:
i)第1の硬化性シリコーン組成物を3Dプリンターで印刷して層を形成すること;
ii)任意に層を加熱して少なくとも部分的に硬化した層を形成すること;
iii)少なくとも部分的に硬化した層上に第2の硬化性シリコーン組成物を3Dプリンターで印刷して、後続の層を形成すること;
iv)任意に後続の層を加熱して少なくとも部分的に硬化した後続の層を形成すること;及び
v)任意に、任意の追加の層用に独立して選択された硬化性シリコーン組成物を用いて、工程iii)及びiv)を繰り返して3D物品を形成すること;
を含み、
第1及び第2の硬化性シリコーン組成物は、互いに同じか又は異なり、第1及び第2の硬化性シリコーン組成物の少なくとも一方は、本発明に係る上記硬化性シリコーン組成物Xである。
【0075】
本発明によって提供される他の利点は、以下の例示的な実施例から明らかになるであろう。
【実施例
【0076】
材料及び方法
シリコーン組成物の調製
以下の例では、次の成分を使用した。
A1:a,ω-シラノールポリジメチルシロキサン(平均粘度50000mPa・s)
A2:a,ω-シラノールポリジメチルシロキサン(平均粘度14000mPa・s)
A3:a,ω-シラノールポリジメチルシロキサン(平均粘度3500mPa・s)
CB1:Vulcan(登録商標)XC72Rファーネスカーボンブラック(Cabot)
CB2:AB100%-01アセチレンカーボンブラック(Soltex)
C:ジブチルスズジラウレート
D1:メチルトリアセトキシシラン(MTA)
D2:エチルトリアセトキシシラン(ETA)
E1:ジ-t-ブトキシジアセトキシシラン
E2:γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(glymo)
【0077】
カーボンブラックの特性
例示的な組成物(CB1及びCB2)で使用される2つのカーボンブラックの特性を以下の表1及び2にまとめる。これらの表では、以下の略語を使用する:
Tint=着色力
I2NO=ヨウ素吸着量
OAN=吸油量
RES325=325メッシュ残余
【0078】
Vulcan(登録商標)XC72R(CB1)は、典型的な嵩密度が6lbs/ft3、平均粒径が50nmの粉末カーボンブラックである。BET表面積は241m2/gである。CabotのVulcan(登録商標)XC72Rカーボンブラックの仕様を以下の表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
AB100%-01(CB2)は平均粒径35~40nmのアセチレンブラックである。BET表面積は70m2/gである。SoltexのAB100%-01の仕様を以下の表2に示す。
【0081】
【表2】
【0082】
方法:
1)プロセス
・シリコーンポリマー及びカーボンブラックを全て添加する。
・2000rpmで1分間混合→壁面のカーボンブラックを手でこすり落として混合→2000rpmで1分間混合→手作業で混合→2000rpmで2分間混合→手作業で混合→2000rpmで1分間混合して、均一なペーストを形成する。
・材料を冷却する(工程2のせん断中に熱が発生した)。
・ジブチルスズジラウレートを添加する。手作業で混合→2000rpmで1分間混合→手作業で混合→2000rpmで30秒間混合。
・シランを添加する。手作業で混合→2000rpmで1分間混合→手作業で混合→2000rpmで30秒間混合(この工程では反応により若干の熱が発生する)。
【0083】
2)硬化
2.1)電気抵抗測定用サンプル
1)のプロセスに従って全ての成分を添加した後、木製の舌圧子を手で使用してシーラントサンプルをマイラー片上に広げた。ゼロ時間は、シーラントがマイラーに塗布されたときとした。
【0084】
2.2)機械的特性測定用サンプル
型でスラブ(厚さ約2mm、幅152mm、長さ152mm)を作製した。高湿度を維持するために、液体の水を入れたエンクロージャー内で、スラブを型内に2日間保持した。2日後、型からスラブを取り出した。その後、硬化のために25℃のフード内に5日間吊るした。
【0085】
2.3)体積抵抗率測定用サンプル
スラブ(厚さ約2mm、幅152mm、長さ152mm)を、各配合バリエーションの型で作製した。高湿度を維持するために、液体の水を入れたエンクロージャー内で、スラブを型内に2日間保持した。2日後、型からスラブを取り出した。その後、硬化のために25℃のフードに5日間吊るしてから、0日目の試験を行った。すなわち、ゼロ時間は、シーラントが準備されてから7日後、又は硬化のためにスラブがフードに吊るされてから5日後である。
【0086】
3)電気抵抗測定
デジタルマルチメーター(Etekcity型番MSR-R500)を使用して抵抗値を収集する。抵抗測定モードに変更した後、2つのプローブ(針状)をシーラント表面に対して~30°の角度でシーラントの上に置く。2つのプローブは~1cm離れている。プローブをシーラント表面に押し付けるときは、穏やかに力を加える。1回の測定として、シーラント表面の3つの異なる領域で3つの読み取り値を取得する。
【0087】
4)機械的性質
以下の機械的性質を評価した:デュロメーターショアA/ショアOO、引張強度、破断伸び、引き裂き強度、硬度、及び規格ASTM D412に記載された方法によるモジュラス。
【0088】
5)体積抵抗率測定
体積抵抗率は、室温でESP4ピンプローブを備えたLoresta(登録商標)GXを使用して測定した。サンプルは厚さ約2mm、直径48mmで、スラブから切り出された。型のキャビティの底にあるスラブの表面がこの試験に使用された。
【0089】
6)適用方法
本発明の導電性シリコーン組成物は、ポッティング材、接着剤、コーティング等として、それらの製品に様々な方法で適用することができる。
【0090】
例1-本発明の例示的な組成物。
以下の表3に定義されるファーネスブラック(CB1)及びアセチレンブラック(CB2)を様々な量で含有するシリコーン組成物を、上記のプロセスを用いて製造した。
【0091】
【表3】
【0092】
例2-経時的な抵抗率
例1で上述したシリコーン組成物の電気抵抗(R)を、周囲温度及び湿度で、硬化後の様々な時間で測定した。以下の表4にデータを示す。
【0093】
【表4】
【0094】
表4に示されるように、100%ファーネスブラックを含むシリコーン組成物(比較1)は、経時的に電気抵抗(R)の安定した増加を示し、250時間後に450Ωを超える。アセチレンブラックが異なる割合で混合された他のサンプルでは、Rは変動するが大幅に増加しない。250時間のエージング後、アセチレンブラックを含む全てのサンプルのRは250~320Ωの範囲になる。この安定化効果は、アセチレンブラックを8%しか含まないシリコーン組成物でも観察される。このデータは、2種類のカーボンブラックを使用したサンプルで長期的な電気抵抗を低く抑えることができることを裏付けており、これは多くの用途で非常に有利である。
【0095】
例3-本発明の例示的組成物の機械的性質
84%のファーネスブラック/16%のアセチレンブラックを含有する本発明の例示的な組成物の機械的特性を上記のように測定した。データを以下の表5に示す。
【0096】
【表5】
【0097】
例4-経時的な体積抵抗率
実施例1で上述したシリコーン組成物の体積抵抗率を、周囲温度及び湿度で硬化後の様々な時間で測定した。以下の表6にデータを示す。
【0098】
【表6】
【0099】
上記の表4に示した電気抵抗データと同様に、100%ファーネスブラックを含むシリコーン組成物(比較1)は、経時的に増加した体積抵抗率を示し、0日目に対して14日目に37.2%増加した。アセチレンブラックが異なる割合で混合された他のサンプルでは、体積抵抗率の増加率は20%未満である。この安定化効果は、アセチレンブラックを8%しか含まないシリコーン組成物でも観察される。このデータはさらに、2つのカーボンブラックを使用したサンプルでより低い長期電気抵抗率が得られることを裏付けており、これは多くの用途にとって非常に有利である。
【0100】
本明細書で引用される全ての参考文献は、各参考文献が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。参考文献の引用は、出願日の前のその開示のためのものであり、本開示が先行発明のためにそのような参考文献に先行する権利がないことを認めるものと解釈されるべきではない。
【0101】
上記要素のそれぞれ、又は2つ以上の集まりが、上記のタイプとは異なる他のタイプの方法においても有用な用途が見出される可能性があることが理解される。さらなる分析なしに、前述のことは、本開示の要旨を完全に明らかにするので、他の者は、現在の知識を適用することにより、先行技術の観点から、添付の特許請求の範囲に記載される本開示の一般的又は特定の態様の本質的な特徴を公正に構成する特徴を省略せずに、それを様々な用途に容易に適合させることができる。前述の実施形態は、例としてのみ提示されている。本開示の範囲は、特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
【国際調査報告】