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特表2023-5284992-(4-(1-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)イソインドリン-1-オンの化合物を含むパーキンソン病の予防または治療用薬学的組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-04
(54)【発明の名称】2-(4-(1-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)イソインドリン-1-オンの化合物を含むパーキンソン病の予防または治療用薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4035 20060101AFI20230627BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20230627BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230627BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20230627BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20230627BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20230627BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230627BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20230627BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230627BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20230627BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20230627BHJP
   C07D 209/46 20060101ALN20230627BHJP
【FI】
A61K31/4035
A61P25/16
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/107
A61K9/127
A61K9/14
A61K9/16
A61K9/20
A61K9/48
A23L33/10
C07D209/46
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022574783
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(85)【翻訳文提出日】2023-01-30
(86)【国際出願番号】 KR2021003722
(87)【国際公開番号】W WO2021246627
(87)【国際公開日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】10-2020-0066977
(32)【優先日】2020-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522471939
【氏名又は名称】イエプ バイオ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】YEP BIO CO. LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【弁理士】
【氏名又は名称】柿沼 公二
(72)【発明者】
【氏名】パク チフ
(72)【発明者】
【氏名】ユ ミョンジュ
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒョンシク
【テーマコード(参考)】
4B018
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LB10
4B018MD18
4B018ME14
4C076AA11
4C076AA17
4C076AA19
4C076AA22
4C076AA24
4C076AA30
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC01
4C076FF01
4C076FF11
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC10
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA22
4C086MA23
4C086MA24
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA43
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA15
(57)【要約】
本発明は、2-(4-(1-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)イソインドリン-1-オンの化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含むパーキンソン病の予防または治療用薬学的組成物に関するものであって、本発明によるパーキンソン病の予防または治療用薬学的組成物は、成功的に血液脳関門(BBB)を通過して個体の脳でPGC-1αのタンパク質レベルを増加させうるという効果を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む、パーキンソン病の予防または治療用薬学的組成物。
【化1】
【請求項2】
前記組成物は、PGC-1αの発現を増加させる、請求項1に記載のパーキンソン病の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項3】
前記組成物は、溶液、懸濁液、シロップ剤、エマルジョン、リポソーム、散剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤、徐放性製剤、及びカプセル剤からなる群から選択された剤形である、請求項1に記載のパーキンソン病の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項4】
前記組成物は、経口投与用組成物であり、リポソームを含んだ薬物伝達体または徐放性製剤の剤形である、請求項3に記載のパーキンソン病の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項5】
前記組成物は、非経口投与用組成物であり、リポソーム及び超音波造影剤を含んだ薬物伝達体または徐放性製剤の剤形である、請求項3に記載のパーキンソン病の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項6】
前記組成物は、PGC-1αの発現が減少した対象体に投与する、請求項1に記載のパーキンソン病の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項7】
下記化学式1で表される化合物を有効成分として含む、パーキンソン病緩和用健康機能食品。
【化2】
【請求項8】
下記化学式1で表される化合物を含む製剤を対象体に投与する段階を含む、パーキンソン病の予防または治療方法。
【化3】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2-(4-(1-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)イソインドリン-1-オンの化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含むパーキンソン病の予防または治療用薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
パーキンソン病は、振戦(震え)、硬直、徐動症(行動が遅くなる)、不安定な姿勢保持などを主症状とする病気であって、脳でドーパミンという神経伝達物質が不足になって生じる慢性疾患であり、中枢神経系退行性疾患の1つであり、中脳の黒質緻密部(Substantia nigra pars compacta)の変形を始めに脳の体積の減少、α-シヌクレイン(α-synuclein、αSyn)の凝集などを病態生理的症状として有する疾患であって、歩行の不完全、手ぶれ、剛直な行動などを示す。
【0003】
このようなパーキンソン病の治療戦略は、主にL-DOPAまたはドーパミン受容体アゴニストのような薬物及び脳深部刺激術でもって運動機能症状を管理することに制限されていた。また、このような治療法は、ドーパミン作動性ニューロン(DA)の漸進的死滅を予防するのに失敗したことが現在研究レベルであった。
【0004】
一方、最近、細胞の死滅と生存とにおいて、PGC-1α(peroxisome proliferator-activated receptor-γ coactivator-1α)の機能とPGC-1αの調節障害がもたらしうる各種の疾病とについての研究内容が報告されている。
【0005】
アルツハイマー、パーキンソン病、ハンチントン病、ルーゲーリック病のような神経退行性疾病は、神経細胞の漸進的機能喪失と細胞死とによるものであり、これらの疾病の全体的な兆候は、特定部分の神経細胞の損失に起因する。PGC-1α knock-outマウスで見られる神経退化による過多な活動亢進(hyperactivity)と大脳皮質部位に少なく表われた損傷部位とは異なって、脳線状体に顕著に表われた損傷部位に神経退行性疾病にPGC-1αが直接に関連があるという事実が分かる。
【0006】
また、このような発見と共に、PGC-1α knock-outマウスの中枢神経系に表われた液胞損傷(vacuolar lesion)を確認することにより、PGC-1αが神経細胞機能の保持に重要な役割を行うということが分かる。
【0007】
PGC-1αの発現減少は、アルツハイマーを誘発するアミロイドの前駆タンパク質を分解切断してβアミロイドを生成するBACE1の発現を増加させ、βアミロイドの量を増加させて、ミトコンドリアの機能低下と細胞死とを誘発する。PGC-1αの遺伝子の一塩基変異は、パーキンソン病とハンチントン病とにかかる危険要素の増加と相当な関連関係があり、アルツハイマー、パーキンソン病、ハンチントン病患者のPGC-1αの遺伝子発現が減少すると知られている。
【0008】
このような神経退行性疾病と密接な関連を有したPGC-1αの機能を用いてPGC-1αを薬理的に活性化させる機作を用いるパーキンソン病の治療方法に対して最近関心が高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】大韓民国登録特許10-1384642
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、2-(4-(1-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)イソインドリン-1-オンの化合物を含むことにより、脳内のPGC-1αの発現が向上して、対象体内でパーキンソン病を予防または治療することができる組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、下記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含むパーキンソン病の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0012】
【化1】
【0013】
そして、前記組成物は、PGC-1αの発現を増加させることができる。
【0014】
また、前記組成物は、溶液、懸濁液、シロップ剤、エマルジョン、リポソーム、散剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤、徐放性製剤、及びカプセル剤からなる群から選択された剤形である。
【0015】
そして、前記組成物は、経口投与用組成物であり、リポソームを含んだ薬物伝達体または徐放性製剤の剤形である。
【0016】
また、前記組成物は、非経口投与用組成物であり、リポソーム及び超音波造影剤を含んだ薬物伝達体または徐放性製剤の剤形である。
【0017】
また、前記化学式1で表される化合物は、2-(4-(1-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)イソインドリン-1-オン(2-(4-(1-hydroxypropan-2-yl)phenyl)isoindolin-1-one)である。
【0018】
本発明の他の側面によれば、前記化学式1で表される化合物を有効成分として含むパーキンソン病緩和用健康機能食品が提供される。
【0019】
本発明のさらに他の側面によれば、前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む組成物を個体に投与する段階を含むパーキンソン病の予防または治療方法が提供されうる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によるパーキンソン病の予防または治療用薬学的組成物は、成功的に血液脳関門(Blood-brain barrier:BBB)を通過して個体の脳で神経細胞保護能力があるPGC-1αの発現を増加させて、対象体のパーキンソン病を予防または治療することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明による2-(4-(1-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)イソインドリン-1-オンの化合物の合成過程を示す反応式である。
図2】本発明による2-(4-(1-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)イソインドリン-1-オンの化合物を合成後、構造を確認したNMRデータである。
図3】実施例2の化合物スクリーニング実験方法を図式化したものである。
図4】実施例2のルシフェラーゼアッセイ(Luciferase assay)を通じたPGC-1αのプロモーターの活性の測定結果のグラフである。
図5】PGC-1αのプロモーターの活性を2.5倍以上増加させる薬物14個で実験を進行した結果を示すグラフである。
図6】SH-SY5Y細胞株に化合物を処理した後、行ったタンパク質免疫ブロットのイメージである(実施例4)。
図7】化合物の飼料を食べたマウスSN(黒質)でのPGC-1αのタンパク質免疫ブロットを示した図面である(実施例4)。
図8】化合物を含む飼料を食べたパーキンソン病モデルマウスの脳組織での免疫組織染色及び免疫ブロットを示した図面である(実施例5)。
図9】化合物を含む飼料を食べたパーキンソン病モデルマウスのポールテスト(pole test)を示した図面である(実施例6)。
図10】化合物を含む飼料を食べたパーキンソン病モデルマウスのPGC-1αとPGC-1αの主要ターゲット遺伝子との発現を示した図面である(実施例7)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、多様な変換を加え、さまざまな実施例を有することができるので、特定実施例を図面に例示し、詳細な説明で詳細に説明する。しかし、これは、本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる、あらゆる変換、均等物または代替物を含むものと理解しなければならない。本発明を説明するに当って、関連した公知技術についての具体的な説明が、本発明の要旨を不明にする恐れがあると判断される場合、その詳細な説明を省略する。
【0023】
本発明は、下記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含むパーキンソン病の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0024】
【化2】
【0025】
以下、発明の具体的な具現例によるパーキンソン病の予防または治療用薬学的組成物に関してより詳細に説明する。
【0026】
従来のパーキンソン病の治療戦略は、主にL-DOPAまたはドーパミン受容体アゴニストのような薬物及び脳深部刺激術でもって運動機能症状を管理することに制限されており、このような治療法は、ドーパミン作動性ニューロン(DA)の漸進的死滅を予防するのに失敗した問題点があった。
【0027】
これにより、本発明者らは、特定の誘導体化合物を投与する場合、BBBを成功的に通過してPGC-1αのプロモーターの活性増加及び脳内のPGC-1αのタンパク質発現量を増加させうるという点を実験を通じて確認し、発明を完成した。
【0028】
本発明は、前記2-(4-(1-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)イソインドリン-1-オンの化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含むパーキンソン病の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0029】
PGC-1αは、ミトコンドリア生物発生に重要な転写プログラムを共同調節し、ミトコンドリアをミトコンドリア酸化ストレスから保護するミトコンドリア機能の主要調節因子である。このようなPGC-1αのレベルは、パーキンソン病患者の場合、減少し、このようなパーキンソン病でのPGC-1αのレベルの下向きは、PGC-1αの促進因子のメチル化のためであると考えられている。
【0030】
一方、PGC-1α knock-outマウスは、パーキンソン病神経毒である1-メチル-4-フェニル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン(MPTP)の退行的効果にさらに敏感であり、PGC-1αの過発現は、MPTPの活性代謝物質であるN-メチル-4-フェニルピリジニウムイオン(MPP+)毒性に対する保護効果を示すことが知られており、また、PGC-1αの過発現は、α-シヌクレイン、MPTP、酸化ストレス及びロテノン誘導性退行に対する保護効果を示すという点が知られている。
【0031】
PGC-1αの反応性遺伝子は、パーキンソン病患者由来ドーパミン作動性ニューロンで下向き調節されるが、これは、このPGC-1αがパーキンソン病の原因に重要な役割を担当するということを暗示すると考えられており、パーキンソン病の原因タンパク質であるパキンの基質であるPARISが過発現される時、ドーパミンニューロンの消失は、PGC-1αの過発現によって抑制されるが、これは、PGC-1αがドーパミン作動性神経退行でパキンの主要標的であるということを示すと考えられている。
【0032】
したがって、PGC-1αの信号伝達の欠陥は、パーキンソン病においてドーパミン作動性退行に重要な原因として浮上しており、パキン機能喪失によるPGC-1αの減少は、パーキンソン病の予防または治療のための主要ターゲットである。
【0033】
本発明の実施例2では、ルシフェラーゼアッセイを通じたPGC-1αのプロモーターの活性の測定結果を測定(図4)し、PGC-1αのプロモーターの活性を2.5倍以上増加させる薬物14個で実験を進行した結果を示すが、化学式1で表される化合物である2-(4-(1-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)イソインドリン-1-オンの活性が最も大きく表われた(図5)。
【0034】
また、本発明の実施例4では、SH-SY5Y細胞株に化合物を多様な濃度で処理した後(0、0.01、0.1、1.0、10μM、48時間)、行った免疫ブロットのイメージ分析結果、2-(4-(1-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)イソインドリン-1-オンが非常に低い濃度にも敏感にPGC-1αのタンパク質量を最も多く増加させることが分かった(図6)。
【0035】
そして、Chow、Indoprofen、またはYPD-01(2-(4-(1-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)イソインドリン-1-オン)飼料(0.5% w/w)を1週間食べたマウスSNでのPGC-1αのタンパク質免疫ブロットで示されるように、2-(4-(1-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)イソインドリン-1-オンは、成功的にBBBを通過し、マウスのSNでPGC-1αのタンパク質発現を統計的に有意に増加させたことが分かった(実施例4、図7)。
【0036】
また、本発明の実施例5では、パーキンソン病モデルマウスに一般飼料またはYPD-01が含まれた飼料(0.5% w/w)を与えた後、脳を採取後、ミクロトームを用いて切片化した結果、AAV-PARIS注入でドーパミン神経細胞が著しく死滅し、YPD-01が含まれた飼料を食べたマウスの場合、ドーパミン神経細胞死が有意に抑制されたことが分かった(図8)。
【0037】
また、本発明の実施例6では、パーキンソン病モデルマウスに一般飼料またはYPD-01が含まれた飼料(0.5% w/w)を与えた後、ポールテストを行った結果、AAV-PARIS注入されたマウスの場合、ポール(pole)の上端から下るのに必要となった時間が、AAV-GFPが注入されたマウスよりも2倍程度長くかかり、YPD-01摂取によって行動異常症状が消滅したことが分かった(図9)。
【0038】
また、本発明の実施例7では、パーキンソン病モデルマウスに一般飼料またはYPD-01が含まれた飼料(0.5% w/w)を与えた後、PGC-1αとPGC-1αの主要ターゲット遺伝子との発現を測定した結果、AAV-PARISによるPARIS過発現は、PGC-1αの発現抑制とそのターゲット遺伝子の発現減少とを引き起こせ、YPD-01を摂取したマウス黒質でPARISによるPGC-1αとPGC-1αの主要ターゲット遺伝子(NRF-1、Tfam)との発現抑制が有意に回復したことが分かった(図10)。
【0039】
一方、下記化学式1で表される化合物は、2-(4-(1-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)イソインドリン-1-オンである。
【0040】
【化3】
【0041】
図1は、前記2-(4-(1-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)イソインドリン-1-オンの化合物の合成反応式であり、図2は、化合物を合成後、構造を確認したNMRデータである。
【0042】
本発明の薬学的組成物において、有効成分は、化学式Iの化合物、その薬学的に許容可能な塩、水化物、または溶媒化物である。
【0043】
「薬学的に許容可能な塩」は、所望の薬理学的効果、すなわち、PGC-1αの発現を誘導する前記化合物の塩を示す。このような塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩及びヨウ化水素酸塩のような無機酸、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、重硫酸塩、スルファミン酸塩、硫酸塩、ナフチル酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、カンホレート、カンホサルフェート、シクロペンタンプロパン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、トシル酸塩及びウンデカン酸塩のような有機酸を用いて形成されうる。「薬学的に許容可能な水化物」は、所望の薬理学的効果を有する前記化合物の水化物を示し、「薬学的に許容可能な溶媒化物」は、所望の薬理学的効果を有する前記化合物の溶媒化物を示す。前記水化物及び溶媒化物も、前記酸を用いて製造可能である。
【0044】
一方、薬学的組成物として製造するために、通常使う適切な担体、賦形剤、及び希釈剤をさらに含みうる。また、通常の方法によって、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾルなどの経口型剤型、外用剤、坐剤、及び滅菌注射溶液の形態で剤形化して使われる。
【0045】
前記組成物に含まれる担体、賦形剤、及び希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギン酸、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、非晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、及び鉱物油などがある。前記組成物を製剤化する場合には、通常の充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して調剤される。
【0046】
本発明による薬学的組成物は、薬学的に有効な量で投与することができる。本発明において、「薬学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的な恵み/危険の比率で疾患の治療に十分な量を意味し、有効容量レベルは、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出比率、治療期間、同時使われる薬物を含んだ要素、及びその他の医学分野によく知られた要素によって決定される。
【0047】
本発明による薬学的組成物は、治療効果を増進させるために、望ましくは、併用される薬物と同時に(simultaneous)、別途に(separate)、または順次(sequential)に投与され、単一または多重投与される。前記要素をいずれも考慮して副作用なしに最小限の量で最大効果が得られる量を投与することが重要であり、これは、当業者によって容易に決定される。具体的に、本発明による薬学的組成物の有効量は、患者の年齢、性別、状態、体重、体内で活性成分の吸収度、不活性率及び排泄速度、疾病の種類、併用される薬物によって変わりうる。
【0048】
本発明の薬学的組成物は、個体に多様な経路で投与される。投与のあらゆる方式は予想されるが、例えば、経口投与、鼻腔内投与、経気管支投与、動脈注射、静脈注射、皮下注射、筋肉注射、または腹腔内注射によって投与される。
【0049】
本発明の薬学的組成物は、治療する疾患、投与経路、患者の年齢、性別、体重、及び疾患の中等度などの多様な関連因子と共に、活性成分である薬物の種類によって決定される。
【0050】
本発明の他の様態として、本発明は、前記薬学的組成物を個体に投与する段階を含む神経炎症の抑制方法を提供する。本発明において、「個体」とは、疾病の治療を必要とする対象を意味し、より具体的には、ヒトまたは非ヒトである霊長類、マウス(mouse)、犬、猫、馬、及び牛などの哺乳類を意味する。
【0051】
また、本発明の一具現例による薬学的組成物は、溶液、懸濁液、シロップ剤、エマルジョン、リポソーム、散剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤、徐放性製剤、及びカプセル剤からなる群から選択された剤形である。
【0052】
そして、前記組成物は、経口投与用組成物であり、リポソームを含んだ薬物伝達体または徐放性製剤の剤形である。また、前記組成物は、非経口投与用組成物であり、リポソーム及び超音波造影剤(ultrasound contast agent)を含んだ薬物伝達体または徐放性製剤の剤形である。
【0053】
本発明の薬学的組成物は、リポソームに内包(encapsulation)させて薬物伝達のための剤形の安定性を提供することができる。本発明に用いられるリポソームは、ポリオール、界面活性剤、リン脂質、脂肪酸及び水を含む混合物によって製造可能である。
【0054】
リポソームに用いられるポリオールは、特に制限されず、望ましくは、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、メチルプロパンジオール、イソプレングリコール、ペンチレングリコール、エリスリトール、キシリトール及びソルビトールを含み、最も望ましくは、プロピレングリコールである。
【0055】
リポソームの製造に用いられる界面活性剤は、当業者に公知の如何なるものも使用することができ、例えば、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、陽性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤が使われ、望ましくは、陰イオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤が使われる。陰イオン性界面活性剤の具体例は、アルキルアシルグルタミン酸、リン酸アルキル、乳酸アルキル、リン酸ジアルキル及びリン酸トリアルキルを含む。非イオン性界面活性剤の具体例は、アルキルエーテルアルコキシレート、アルキルエステルアルコキシレート、アルキルポリグリコシド、ポリグリセリルエステル及びシュガーエステルを含む。
【0056】
リポソームの製造に用いられるさらに他の成分であるリン脂質は、両親和性脂質として用いられたものであって、天然リン脂質及び合成リン脂質を含み、望ましくは、レシチンである。リポソームの製造に用いられる脂肪酸は、高級脂肪酸であって、望ましくは、C12-22アルキルチェーンの飽和または不飽和脂肪酸であって、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸及びリノール酸を含む。リポソームの製造に用いられる水は、一般的に脱イオン化された蒸留水である。
【0057】
リポソームの製造は、当業者に公知の多様な方法を通じて行われるが、最も望ましくは、前記成分を含む混合物を高圧ホモジナイザーに適用して製造される。このように製造されたリポソームシステムは、多種の難溶性物質を溶かすと共に不安定な物質を安定化させて薬物伝達を極大化する長所を有している。
【0058】
本発明の薬学的組成物は、持続的に有効成分の有効血中濃度を保持することにより、薬剤の服用回数を減らして服薬順応度を高めるように徐放性製剤として製造可能である。
【0059】
徐放性製剤は、本発明の有効成分以外に、徐放化担体及びその他の補助剤を含んで製剤化される。本発明で使われる徐放化担体は、当業者に公知の多様な徐放化担体を利用できるが、望ましくは、ポリエチレンオキシドである。
【0060】
また、その他の補助剤として薬剤学的分野で通常使われる希釈担体が含まれる。このような目的として使われる希釈担体の例としては、ラクトース、デキストリン、澱粉、微結晶性セルロース、リン酸一水素カルシウム、炭酸カルシウム、糖類及び二酸化ケイ素などがあり、その他に流動性を増加させるために、ステアリン酸亜鉛またはマグネシウムのような滑沢剤や製薬分野で使用可能な他の補助剤を含ませることもできる。
【0061】
本発明の組成物は、PGC-1αの発現が減少した対象体に投与するためのものである。
【0062】
本発明の他の側面によれば、前記化学式1で表される化合物を有効成分として含むパーキンソン病緩和用健康機能食品が提供されうる。
【0063】
本発明の組成物が食品組成物または機能性食品組成物として製造される場合、有効成分として化学式Iの化合物だけではなく、食品製造時に通常添加される成分を含み、例えば、タンパク質、炭水化物、脂肪、栄養素、調味剤及び香味剤を含みうる。前述した炭水化物の例は、モノサッカライド、例えば、ブドウ糖、果糖など;ジサッカライド、例えば、マルトース、スクロース、オリゴ糖など;及びポリサッカライド、例えば、デキストリン、シクロデキストリンのような通常の糖及びキシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールである。香味剤として天然香味剤及び合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)を使用することができる。また、本発明の食品組成物がドリンク剤として製造される場合には、本発明の化学式Iの化合物以外に、クエン酸、液状果糖、砂糖、ブドウ糖、酢酸、リンゴ酸、果汁、トチュウ抽出液、ナツメ抽出液、甘草抽出液などをさらに含ませることができる。
【0064】
本発明の他の側面によれば、前記化学式1で表される化合物を含む製剤を対象体に投与する段階を含むパーキンソン病の予防または治療方法を提供する。
【0065】
以下、本発明の望ましい実施例を添付図面を参照して詳しく説明する。但し、これらの実施例は、単に本発明を説明するためのものであって、本発明の範囲が、これらの実施例によって制限されると解釈されない。
【0066】
実施例1:レポーター細胞株及びヒト細胞株の準備
【0067】
安定したレポーターSH-SY5Y細胞(SH-PGC-1α-Luc)の製作のためのレンチウイルスを製作するために、1-kb pGL3-PGC-1α promoter-LuciferaseをpGreenFire(System Biosciences)にcloningして(日本赤穂市深水筑波大学から提供される)、レンチウイルスconstructを先に製作した。
【0068】
15cm dishに培養したHEK293T細胞にpGreenFire vector 32μg、VSVg envelope 9μg、Prev 6.25μg、及びpMDL 12.5μgをtransfectionした。
【0069】
48時間後、ウイルス上澄み液を集めて超遠心分離法(ultracentrifugaation)を用いて濃縮し、PBSでウイルスpelletを溶かした後、SH-SY5Y細胞に濃縮されたウイルスを処理し、一日後にpuromycin(1μg/ml)で選別した。
【0070】
ヒト神経芽細胞であるSH-SY5Y細胞(ATCC、Manassas、VA)を培養するために、10% FBS(vol/vol、Welgene Gold Serum、cat# S 001-07)と抗生剤とが含まれたDMEM(Welgene fresh media DMEM、cat# LM 001-05)とを使用し、この際、二酸化炭素5%、温度37℃条件のインキュベーター(Forma Direct Heat CO2 incubator、Thermo Scientific)で培養した。
【0071】
実施例2:PGC-1αの発現を増加させる化合物を同定するための化合物スクリーニングとデータ分析
【0072】
8,320種の化合物ライブラリーは、薬物の特性を考慮して230,000個の薬物から選別(Korean Chemical Bank、Daegeon)し、liquid chromatography mass spectroscopy(LC-MS)で品質調節が可能な6,000個の薬物と2,320個のSpectrum Collection(Microsource、http://www.msdiscovery.com/spectrum.html)とが合わせられたライブラリーである(臨床承認薬物60%、天然物25%、生物活性薬物15%)。
【0073】
本実験が高処理量スクリーニング(high-throughput screening、HTS)に適しているか否かを調べるために、信号-背景(signal-to-background(S/B))比率、一日変化率、プレート別の変化率を含んだ標準パラメータ、そして、Z’factor、coefficient of variation(CV)を測定した。
【0074】
あらゆるHTS実験過程は、NIH guidelines(High-Throughput Screening Assay Guidance Criteria、http://www.ncats.nih.gov/research/reengineering/ncgc/assay/criteria/criteria.html)に従った。
【0075】
SH-PGC-1α-Lucは、白色の平らな底面の96-well plateに分注し、この際、1well当たり100μlのDMEM(10% FBS+penicillin/streptomycin(P/S))に10,000個のcellが入るように培養し、細胞は、37℃、5% COインキュベーターで12時間安定化させた。
【0076】
翌日、温めた50μl DMEMに各薬物が最終濃度が20μMになるように添加した後、細胞が入ったプレートから50μl DMEMを取り出し、薬物が入った50μl DMEMを添加(最終濃度10μΜ)した。その後、48時間細胞を薬物に露出させた後、SteadyGlo reagent(Promega)を用いてluciferase活性を測定した。
【0077】
各プレートは、3個の内部コントロールとDaidzein(positive control、10μΜ)、2個のnegative control(DMSO処理と無処理)があった。各wellのluciferase測定値は、無処理controlの平均値を基準に比率を示した。
【0078】
本実験のZ′factorは、0.5と1との間の値を示し、各well間、プレート間、実験日間の差は、controlの変化を比較して測定し、また、DMSO抵抗性、試薬の安定性、実験条件なども確認して有効性を立証した。
【0079】
前記ルシフェラーゼアッセイを通じたPGC-1αのプロモーターの活性の測定結果を図4に示した。最初のデータ判読でluciferase活性を測定し、この際、DMSOで基準に比較したものであり、図4の青色四角ボックスは、1.5倍以上活性化された薬物を表記したものである。
【0080】
そして、PGC-1αのプロモーターの活性を2.5倍以上増加させる薬物14個で実験を進行した結果を図5に示した(図5のYPD-01は、本発明において、化学式1で表される化合物である2-(4-(1-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)イソインドリン-1-オンであり、YPD-02は、2-[4-(3-オキソ-1H-イソインドール-2-イル)フェニル]プロピオン酸であり、YPD-03は、イソプロピル 2-(4-(1-オキソイソインドリン-2-イル)フェニル)プロピオン酸である)。
【0081】
実施例3:免疫ブロット法のためのSH-SY5Y細胞と組織サンプリング
【0082】
SH-SY5Y細胞とC57L/6NマウスのSNにRIPA bufferを入れた後、homogenizerで均質化させた。その後、凍らせて溶かす過程を3回繰り返し、総タンパク質量を確認するために、BSAを基準としてBCA kitを使用して定量した。
【0083】
Lysateは、2×SDS sample bufferを入れた後、95℃で10分間加熱して免疫ブロット法を行い、所望のタンパク質をアンチボディを処理して確認した。
【0084】
免疫ブロット法の実験では、バンドの濃さをImageJ(NIH、Bethesda、MO、USA、http://rsb.info.nih.gov/ij/)プログラムを用いて測定し、この際、タンパク質バンドの濃さをloading controlと比例して統計的分析を行った。統計分析は、GraphPad Prism version 7(GraphPad Software)プログラムを使用し、データは、unpaired two-tailed Students’t-testを適用して、p<0.05である時、統計的有意味性を示すものである。
【0085】
下記の実施例4でサンプルが対照群と比較してStudents’t-testによって統計的有意味性がある時、別表()で表示(p<0.05、**p<0.01、and ***p<0.001)した。
【0086】
実施例4:SH-SY5Y細胞株とマウス脳での2-(4-(1-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)イソインドリン-1-オンの効果
【0087】
前記実施例3のように、SH-SY5Y細胞株に化合物を処理した後(10μM、48時間)、行った免疫ブロットのイメージを図6に示した。
【0088】
図6から分かるように、YPD-02(2-[4-(3-オキソ-1H-イソインドール-2-イル)フェニル]プロピオン酸)とYPD-03(イソプロピル 2-(4-(1-オキソイソインドリン-2-イル)フェニル)プロピオン酸)は、薬物濃度(0.01、0.1、1、10μM)の増加によって、PGC-1αのタンパク質量を増加させることが見られたが、YPD-01(2-(4-(1-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)イソインドリン-1-オン)は、濃度に関係なくPGC-1αのタンパク質量を増加させることが分かった。
【0089】
Chow、YPD-02(2-[4-(3-オキソ-1H-イソインドール-2-イル)フェニル]プロピオン酸)、またはYPD-01(2-(4-(1-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)イソインドリン-1-オン)飼料(0.5% w/w)を1週間食べたマウスSNでのPGC-1αのタンパク質免疫ブロットを図7に示した(β-actinで定量化した定量グラフ/データは、mean±SEMで表現/統計的有意味性はunpaired two-tailed student t-testを適用して測定。p<0.05、**p<0.01)。
【0090】
図7の結果から、YPD-01(2-(4-(1-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)イソインドリン-1-オン)は、成功的にBBBを通過し、マウスのSNでPGC-1αのタンパク質レベルを増加させたことが分かった。
【0091】
実施例5:パーキンソン病モデルマウスでYPD-01のドーパミン神経細胞死の抑制効果
【0092】
パーキンソン病モデルマウスを作るために、AAV-PARISに黒質部位に定位注射後、4週間マウスに一般飼料またはYPD-01(2-(4-(1-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニル)イソインドリン-1-オン)が含まれた飼料(0.5% w/w)を与えた後、脳を採取後、ミクロトームを用いて切片化する。ドーパミン神経細胞マーカーであるTH抗体を35um切片に切り取ったマウス脳組織に反応させ、Vectastine ABC(Vector biolabs)とDAB(Sigma)溶液とに露出させてドーパミン神経細胞を可視化した。各実験に使われたラットは、6匹ずつであった。
【0093】
-定位注射法(Stereotaxic injection)を通じたAdeno-associated Virus(AAV)導入
【0094】
8週齢マウスの腹部にペントバルビタール(10mg/ml)100ul注入して麻酔し、マウス頭蓋骨膜を剥皮後、ブレグマを基準に左脳(X:1.2、Y:-3.2、Z:-4.5)、右脳(X:1.2、Y:3.2、Z:-4.5)部位を表示した。表示された部分をドリルで開け、注射器を通じてウイルスを徐々に(0.2ul当たり30秒)注入した。左脳にウイルス注入後、2分待機し、反対側も同じ方式で進行する。外科スーチャーで縫合後、ケージ内で回復するまで鋭意観察し、4週間飼育した。
【0095】
-免疫ブロット法(Western Blot、WB)
【0096】
AAV-PARISを正位注射したマウスに一般飼料またはYPD-01が含まれた飼料(0.5% w/w)を4週間与えたマウスの中脳を採取して、RIPA lysis bufferでタンパク質を抽出する。タンパク質の濃度をBCA検証法で4mg/mlに合わせ、2x Laemli sample bufferと混ぜて7%polyacrylamide gelに電気泳動し、transferした後、1次抗体及びHRP結合2次抗体を貼り付け、ECL溶液で現像する。AAV-GFPは、AAV-PARISの対照群として使われる。
【0097】
-免疫組織染色(Imunohistochemisty)
【0098】
ドーパミン神経細胞マーカーであるtyrosine hydroxylase(TH)抗体を35um氷切片に切り取ったマウス脳組織に4℃ over nightで反応させ、翌日、biotin結合された2次抗体を反応させた後、Vectastine ABC(Vector biolabs)、DAB(Sigma)溶液に露出させてドーパミン神経細胞の形状を現像する。現像した脳組織は、スライドガラスに載せ、顕微鏡で観察する。
【0099】
図8から分かるように、AAV-PARIS注入でドーパミン神経細胞が著しく死滅し、YPD-01が含まれた飼料を食べたマウスの場合、ドーパミン神経細胞死が有意に抑制されたことが分かった。免疫組織染色法で示した結果と同様にドーパミン神経細胞マーカーであるTH抗体でマウス黒質での免疫ブロットを実施した結果(β-actinで定量化した定量グラフ/データは、mean±SEMで表現/統計的有意味性はone-way ANOVAを適用して測定。p<0.05、***p<0.001)。免疫染色法で確認された結果のように、AAV-PARISによるドーパミン神経細胞死がYPD-01によって抑制されることを再確認した。
【0100】
実施例6:YPD01によるパーキンソン病行動異常の抑制効果
【0101】
前記実施例5のように、パーキンソン病モデルでYPD-01がドーパミン神経細胞死の抑制だけではなく、パーキンソン病類似行動異常にも効果があるかを確認するために、最も信頼度の高い行動実験であるポールテストを行った。
【0102】
-ポールテスト
【0103】
パーキンソン病の行動異常を調査するために、パーキンソン病モデルマウスをポールテストケージに移して3分間適応させ、マウスのしっぽを取って垂直に立てられたポールの端部に載せる。マウスがポールの端部から後ろ足を外す瞬間から底面に下る時までの時間を測定する。
【0104】
図9から分かるように、AAV-PARISによるドーパミン神経細胞死によってAAVPARIS注入されたマウスの場合、ポールの上端から下るのに必要となった時間が、AAV-GFP(対照群として使われる)が注入されたマウスよりも2倍程度長くかかり、前記実施例5で記述されたドーパミン神経細胞死の抑制と一脈相通ずるようにYPD-01摂取によって行動異常症状が消滅した(データは、mean±SEMで表現/統計的有意味性はone-way ANOVAを適用して測定。p<0.05)。
【0105】
実施例7:パーキンソン病モデルマウスでYPD-01がPGC-1αの発現を増加させることを検証
【0106】
実施例5のように構成された動物モデル実験でYPD-01摂取によって、PGC-1αとPGC-1αの主要ターゲット遺伝子(NRF-1、Tfam)との発現が増加したかをRT-qPCR方法で測定した。
【0107】
-逆転写リアルタイム重合酵素連鎖反応(Reverse Transcription quantitative Real-time Polymerase Chain Reaction.RT-qPCR)
【0108】
AAV-PARISを正位注射したマウスに一般飼料またはYPD-01が含まれた飼料を4週間与えたマウスの中脳を採取して、total RNA extraction kit(Intron Biotechnology)を用いてRNAを抽出する。抽出したRNAでcDNA synthesis kit(Enzynomics)及びoligo dTを用いてcDNAを合成する。分析対象遺伝子に対するプライマー及びSYBR green(Qiagen)試薬を活用してRotor gene Q(Qiagen)で遺伝子発現量をqPCRを通じて測定する。
【0109】
下記の図10から確認できるように、AAV-PARISによるPARIS過発現は、PGC-1αの発現抑制とそのターゲット遺伝子の発現減少とを引き起こせ、YPD-01を摂取したマウス黒質でPARISによるPGC-1αとPGC-1αの主要ターゲット遺伝子(NRF-1、Tfam)との発現抑制が有意に回復した(β-actinで定量化した定量グラフ/データは、mean±SEMで表現/統計的有意味性はone-way ANOVAを適用して測定。p<0.05、**p<0.01;ns、not significant)。
【0110】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳しく記述したところ、当業者にとって、このような具体的な記述は、単に望ましい実施形態に過ぎず、これにより、本発明の範囲が制限されるものではないという点は明白である。したがって、本発明の実質的な範囲は、特許請求の範囲とそれらの等価物とによって定義される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2023-01-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0029】
PGC-1αは、ミトコンドリア生物発生に重要な転写プログラムを共同調節し、ミトコンドリアをミトコンドリア酸化ストレスから保護するミトコンドリア機能の主要調節因子である。このようなPGC-1αのレベルは、パーキンソン病患者の場合、減少し、このようなパーキンソン病でのPGC-1αのレベルの下向きは、PARIS過発現によるものである。
【国際調査報告】