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特表2023-528526フルオキサストロビン及びその中間体を調製するためのプロセス
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  • 特表-フルオキサストロビン及びその中間体を調製するためのプロセス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-04
(54)【発明の名称】フルオキサストロビン及びその中間体を調製するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C07D 413/12 20060101AFI20230627BHJP
   A01N 43/88 20060101ALI20230627BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20230627BHJP
   C07C 67/307 20060101ALI20230627BHJP
   C07C 69/34 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
C07D413/12
A01N43/88
A01P3/00
C07C67/307
C07C69/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022575264
(86)(22)【出願日】2021-06-08
(85)【翻訳文提出日】2023-02-03
(86)【国際出願番号】 IB2021055016
(87)【国際公開番号】W WO2021250558
(87)【国際公開日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】202021024007
(32)【優先日】2020-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521257525
【氏名又は名称】ユーピーエル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】UPL LIMITED
【住所又は居所原語表記】UPL Limited, UPL House, 610 B/2, Bandra Village, Off Western Express Highway, Bandra (East), Mumbai, Maharashtra, India
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パンチャル ディジシュクマール マヌバイ
(72)【発明者】
【氏名】タンデル パレシュクマール カルヤンジ
【テーマコード(参考)】
4C063
4H006
4H011
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB04
4C063CC59
4C063EE03
4H006AA02
4H006AC48
4H006BB21
4H006BC10
4H006BE53
4H006BM10
4H006BM72
4H006KA31
4H006KC12
4H011AA01
4H011BB10
(57)【要約】
本発明は、フルオキサストロビン及びその中間体を調製するための改善されたプロセスを提供する。本発明は、不要な不純物を実質的に含まないフルオキサストロビン、4,6-ジクロロ-5-フルオロ-ピリミジン、及びジエチル2-クロロマロネートを調製するためのプロセスを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)の中間体を介して、又は式(1)の中間体を介して調製された式(5)の中間体を介して、フルオキサストロビンを調製するためのプロセスであって、
【化1】
前記式(1)の中間体が、式(2)の化合物を塩素で塩素化することにより調製され、
【化2】
前記塩素化の反応中の反応媒体における反応性塩素の濃度が0.01~5モル%/分の間であり、式中のR=C~Cアルキルである、プロセス。
【請求項2】
前記式(1)の中間体を介してフルオキサストロビンを調製するための請求項1に記載のプロセスであって、
【化3】
前記式(1)の中間体が、式(2)の化合物を塩素で塩素化することにより調製され、
【化4】
前記塩素化の反応中の反応媒体における反応性塩素の濃度が0.01~5モル%/分の間であり、式中のR=C~Cアルキルである、プロセス。
【請求項3】
式(5)の4,6-ジクロロ-5-フルオロ-ピリミジンを介してフルオキサストロビンを調製するためのプロセスであって、
【化5】
前記式(5)の化合物が式(1)の中間体を介して調製され、前記式(1)の中間体が、式(2)の化合物を塩素で塩素化することにより調製され、
【化6】
前記塩素化の反応中の反応媒体における反応性塩素の濃度が0.01~5モル%/分の間である、プロセス。
【請求項4】
式(1)の中間体を介して式(5)の4,6-ジクロロ-5-フルオロ-ピリミジンを調製するためのプロセスであって
【化7】
前記式(1)の中間体が、式(2)の化合物を塩素で塩素化することにより得られ、
【化8】
前記塩素化の反応中の反応媒体における反応性塩素の濃度が0.01~5モル%/分の間である、プロセス。
【請求項5】
式(1)の化合物を調製するためのプロセスであって、
【化9】
式(2)の化合物を塩素で塩素化する工程を含み、
【化10】
前記塩素化の反応中の反応媒体における反応性塩素の濃度が0.01~5モル%/分の範囲内であり、式中のR=C~Cアルキルである、プロセス。
【請求項6】
前記式(2)の化合物がマロン酸ジメチル又はマロン酸ジエチルである、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記塩素化の反応が塩素ガスを用いて実施される、請求項5に記載のプロセス。
【請求項8】
前記反応中の前記反応媒体における反応性塩素の濃度が0.1~3モル%/分の間である、請求項5に記載のプロセス。
【請求項9】
前記反応が1~6時間実施される、請求項5に記載のプロセス。
【請求項10】
前記反応が5~20℃の範囲の温度で実施される、請求項5に記載のプロセス。
【請求項11】
前記反応が希釈剤の存在下で実施される、請求項5に記載のプロセス。
【請求項12】
前記希釈剤が、アセトニトリル、プロピオニトリル、又はブチロニトリルから選択されるアルキルニトリルである、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記式(1)の化合物が、式(10)のジハロマロネート不純物を実質的に含まない、請求項1に記載のプロセス。
【化11】
式中、Xはそれぞれ独立して塩素又はフッ素から選択される。
【請求項14】
式(5)の4,6-ジクロロ-5-フルオロ-ピリミジンを調製するためのプロセスであって、
(i)式(2)の化合物を塩素で塩素化し、
【化12】
式(10)のジハロマロネート不純物を実質的に含まない式(1)の化合物を得る工程であって、前記塩素化の反応中の反応媒体における反応性塩素の濃度が0.01~5モル%/分の間である、工程と、
【化13】
(ii)式(1)の化合物をフッ素化剤で処理して、式(3)の化合物を得る工程と、
【化14】
(式中、R=C~Cアルキルである。)
(iii)式(3)の化合物をホルムアミド又はその誘導体と反応させて、式(4)の化合物を得る工程と、
【化15】
(iv)式(4)の化合物を塩素化剤で処理して、式(5)の4,6-ジクロロ-5-フルオロ-ピリミジンを得る工程と
【化16】
を含むプロセス。
【請求項15】
前記工程(ii)において、前記フッ素化剤が、トリエチルアミントリヒドロフルオリド、フッ化水素酸、ピリジニウムポリ(フッ化水素)、ピリジニウム、1-フルオロ-2,4,6-トリメチル-、1,1,1-トリフルオロメタンスルホネート(1:1)、又はHF錯体から選択される、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記工程(ii)におけるフッ素化反応が、無機塩基又は有機塩基の存在下で実施される、請求項14に記載のプロセス。
【請求項17】
前記無機塩基が、金属炭酸塩、金属重炭酸塩、金属水酸化物、又は金属アルコキシドから選択され、前記有機塩基が、第三級アミン、ピリジン、トリエチルアミン、置換又は非置換二環式アミンから選択される、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記工程(iii)の反応が、アルコール/アルコキシド混合物の存在下で行われる、請求項14に記載のプロセス。
【請求項19】
前記アルコール/アルコキシド混合物が、メタノール/ナトリウムメトキシド、エタノール/ナトリウムエトキシド、及びブタノール/ナトリウムブトキシドから選択される、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
前記工程(iv)における前記塩素化剤がオキシ塩化リンである、請求項14に記載のプロセス。
【請求項21】
前記工程(iv)が、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン、トリエチルアミン、又はトリブチルアミンから選択される有機塩基の存在下で行われる、請求項14に記載のプロセス。
【請求項22】
前記工程(iv)における有機塩基とオキシ塩化リンとのモル比が0.005対0.05、好ましくは0.008対0.1である、請求項14に記載のプロセス。
【請求項23】
式(5)の化合物を式(9)のフルオキサストロビンに変換する工程を更に含み、前記変換が、
(i)式(5)の4,6-ジクロロ-5-フルオロ-ピリミジンを式(6)の2-クロロフェノールと縮合し、
【化17】
式(7)の4-クロロ-6-(2-クロロフェノキシ)-5-フルオロ-ピリミジンを得、そして
【化18】
(ii)式(7)の4-クロロ-6-(2-クロロフェノキシ)-5-フルオロ-ピリミジンを式(8)の2-[5,6-ジヒドロ-1,4,2-ジオキサジン-3-イル-(メトキシアミノ)メチル]フェノールと縮合し、
【化19】
式(9)のフルオキサストロビンを得る
【化20】
ことにより実施される、請求項14に記載のプロセス。
【請求項24】
式(10)のジハロマロネート不純物を実質的に含まない、式(5)の化合物である4,6-ジクロロ-5-フルオロ-ピリミジン。
【化21】
(式中、Xはそれぞれ独立して塩素又はフッ素から選択される。)
【請求項25】
式(10)のジハロマロネート不純物を実質的に含まない、請求項23に記載のプロセスにより調製されるフルオキサストロビン。
【化22】
(式中、Xはそれぞれ独立して塩素又はフッ素から選択される。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストロビルリン化合物及びその中間体を調製するためのプロセスを提供する。より具体的には、本発明は、不純物を実質的に含まないフルオキサストロビン及びその中間体を調製するためのプロセスを提供する。
【背景技術】
【0002】
フルオキサストロビンは、広く使用されているストロビルリン系の広域スペクトル殺菌剤である。これは、斑点病、早期及び後期の胴枯れ病、並びに葉さび病などの真菌病に対して使用される。
【0003】
フルオキサストロビンは、ミトコンドリア(細胞内でエネルギー産生を行う細胞小器官)内での呼吸を阻害し、呼吸鎖中での電子伝達を遮断する。
【0004】
フルオキサストロビンの合成は、多段階プロセスである。米国特許第6103717号明細書は、フルオキサストロビンなどのハロゲノピリミジン化合物、それら化合物を調製するためのプロセス、及びそれら化合物の殺虫剤としての使用を開示している。
【0005】
公知の方法のうち1つは、マロン酸ジエチルの塩素化によるジエチル2-クロロマロネートの調製から始まる。塩化スルフリルなどの塩素化剤を使用してジエチル2-クロロマロネートを調製すると、対応するモノクロロ化合物とジクロロ化合物との混合物が形成されることが分かっている。
【0006】
特開2002-128735号公報は、トルエン溶媒の存在下で塩素ガスを使用してマロン酸ジエチルを塩素化することによる、クロロマロン酸ジエステル、具体的にクロロマロン酸ジエチルの合成を開示している。しかし、この反応では相当量のジクロロマロン酸ジエチルが形成されることが指摘されている。
【0007】
合成の第1の工程において反応混合物中にジクロロマロン酸ジエチルが形成されると、非常に多くの副反応が生じるとともに、いくつかの不要な副生成物が様々な分量で形成される。このような複合反応混合物により、最終生成物として品質と収量が劣るフルオキサストロビンが形成される。更に、純粋なフルオキサストロビンを反応混合物から単離するのは極めて困難であった。
【0008】
このような場合、フルオキサストロビンは、複雑な分離方法によってのみ単離することができる。それゆえ、良好な収量と高純度でフルオキサストロビン及びその中間体を調製するために、経済的で商業的に実現可能なプロセスを開発する必要がある。このため、本発明は、不要な不純物を実質的に含まないフルオキサストロビン及びその中間体を調製するためのプロセスを提供する。
【0009】
発明の目的
本発明の目的は、ジアルキル-2-クロロマロネートを調製するための改善されたプロセスを提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、フルオキサストロビンの調製に有用な中間体を調製するためのプロセスを提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、経済的で環境に優しい、フルオキサストロビンを調製するためのプロセスを提供することである。
【0012】
本発明のまた別の目的は、特定の不純物を実質的に含まないジエチル2-クロロマロネートを提供することである。
【発明の概要】
【0013】
一態様では、本発明は、式(1)の化合物を調製するためのプロセスであって、
【化1】
式(2)の化合物を塩素で塩素化する工程を含み、
【化2】
塩素化の反応中の反応媒体における反応性塩素の濃度が0.01~5モル%/分の間であり、式中のR=C~Cアルキルである、プロセスを提供する。
【0014】
別の態様では、本発明は、式(5)の4,6-ジクロロ-5-フルオロ-ピリミジンを調製するためのプロセスであって、
(i)式(2)の化合物を塩素で塩素化し、
【化3】
式(1)の化合物を得る工程であって、塩素化の反応中の反応媒体における反応性塩素の濃度が0.01~5モル%/分の間であり、
【化4】
任意選択で式(1)の化合物を単離しない工程と、
(ii)式(1)の化合物をフッ素化剤でフッ素化して、式(3)の化合物を得る工程であって、
【化5】
任意選択で式(3)の化合物を単離しない工程と、
(iii)式(3)の化合物をホルムアミド又はその誘導体化合物と反応させて、式(4)の化合物を得る工程であって、
【化6】
任意選択で式(4)の化合物を単離しない工程と、
(iv)式(4)の化合物を塩素化剤で塩素化して、式(5)の4,6-ジクロロ-5-フルオロ-ピリミジンを得る工程と
【化7】
を含み、式中のRは上記に定義されるものと同じである、プロセスを提供する。
【0015】
別の態様では、本発明は、式(9)のフルオキサストロビンを調製するためのプロセスであって、
(i)式(5)の4,6-ジクロロ-5-フルオロ-ピリミジンを式(6)の2-クロロフェノールと縮合して、
【化8】
式(7)の4-クロロ-6-(2-クロロフェノキシ)-5-フルオロ-ピリミジンを得る工程と、
【化9】
(ii)式(7)の4-クロロ-6-(2-クロロフェノキシ)-5-フルオロ-ピリミジンを、式(8)の(E)-(5,6-ジヒドロ-1,4,2-ジオキサジン-3-イル)(2-ヒドロキシフェニル)メタノンO-メチルオキシムと縮合し、
【化10】
式(9)のフルオキサストロビンを得る工程とを含み、
【化11】
上記式(5)の4,6-ジクロロ-5-フルオロ-ピリミジンは、本発明によるプロセスにより調製される、プロセスを提供する。
【0016】
別の態様では、本発明は、式(10)のジハロマロネート不純物を実質的に含まない、式(1)の化合物、式(5)の4,6-ジクロロ-5-フルオロ-ピリミジン、及び式(9)のフルオキサストロビンを提供し、
【化12】
Xはそれぞれ独立して塩素又はフッ素から選択され、R=C~Cアルキルである式(1)の化合物は、本発明によるプロセスにより調製される。
【0017】
別の態様では、本発明は、式(10)のジハロマロネート不純物を実質的に含まない、式(1)の化合物、式(5)の4,6-ジクロロ-5-フルオロ-ピリミジン、及び式(9)のフルオキサストロビンを調製するためのプロセスを提供し、式中のRは上記で定義されるとおりである。
【0018】
本発明のこれら特定の態様は限定することを意味するものではなく、本発明の他の実施形態及び態様が下記に示すように存在する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明により調製された純粋なジエチル2-クロロマロネートのガスクロマトグラフィーを表す図である。
図2】実施例5(比較例)により調製されたジエチル2-クロロマロネートのガスクロマトグラフィーを表す図である。
図3】本発明により調製されたジエチル2-フルオロマロネートのガスクロマトグラフィーを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の詳細な説明の目的のために、本発明は、反対に明示的に指定される場合を除いて、様々な代替的な変形例及び工程配列を想定し得ることを理解されたい。更に、任意の操作例以外、又は別途記載のない限り、例えば本明細書中で使用される材料/成分の量を表す全ての数は、全ての場合において、用語「約」によって修飾されるものとして理解されるべきである。「約」という用語は、「およそ」又は「合理的に近い」、及びそこからのあらゆる統計的に有意な変動を意味すると解釈されるものとする。
【0021】
したがって、本発明を詳細に説明する前に、本発明は、当然ながら変化し得る特に例示されたシステム又はプロセスパラメータに限定されないことを理解されたい。本明細書で使用される用語は、本発明の特定の実施形態を説明する目的のためのものであり、いかなる方法でも本発明の範囲を限定することを意図するものではないことも理解されたい。本明細書で論じられる任意の用語の例を含む本明細書のあらゆる場所における例の使用は、例示的なものにすぎず、本発明の又は任意の例示された用語の範囲及び意味を限定するものではない。同様に、本発明は、本明細書で与えられる様々な実施形態に限定されない。
【0022】
本明細書で使用するとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容がそうでない旨を明確に指示しない限り、複数の指示対象を含むことにも留意されたい。用語「好ましい」及び「好ましくは」は、特定の状況下で特定の利益をもたらし得る本発明の実施形態を指す。
【0023】
本明細書で使用するとき、用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「関与する(involving)」などは、非制限的である、すなわち、非限定的に含むことを意味すると理解されるべきである。
【0024】
「実質的に純粋な」という用語は、本発明により生成された化合物が、望ましくない化合物/不純物を約10%未満、好ましくは約5%未満しか有さない高純度であることを意味する。
【0025】
本発明は、高純度及び優れた収量で式(I)の化合物を調製するための効率的で経済的なプロセスを提供する。
【0026】
反応は、式(1)の化合物を調製するための一般的な反応条件に従うが、最終的に式(10)のジハロマロネート不純物を大量に生じさせてしまう。式(1)の化合物と、X=Clである式(10)のジハロマロネート不純物とが化学的性質において類似することから、式(10)のジハロマロネート不純物を除去するために複雑な単離手順が必要となる。式(10)のジハロマロネート不純物を含む式(1)の化合物から調製される式(5)の化合物又は式(9)の化合物にはより複雑な反応混合物が生じてしまうため、商業規模での式(5)の化合物又は式(9)の化合物の調製に採用するには適していない。
【0027】
本発明者らは、驚くべきことに、かつ予想外に、式(2)の化合物を塩素化し、その時の反応媒体における反応性塩素の濃度が0.01~5モル%/分の間であると、商業的に実現可能なプロセスによって式(1)の化合物を調製できることを見出した。このため、本発明は、式(10)のジハロマロネート不純物を実質的に含まない式(1)の化合物を、高収量かつ高純度で調製するためのプロセスを提供する。
【0028】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0029】
本発明によれば、商業的に実現可能であるとともに大規模生産に有効である、式(I)の化合物の調製に有用な式(9?)のストロビルリン化合物及び中間体化合物を調製するためのプロセスが提供される。
【0030】
具体的に、本発明は、フルオキサストロビン及びその中間体を調製するためのプロセスを提供する。本発明によるフルオキサストロビンを調製するためのプロセスは、下記に示すスキーム1に表される。
【0031】
【化13】
【0032】
本発明は、式(1)の中間体を介してフルオキサストロビンを調製するためのプロセスを提供し、
【化14】
式(1)の中間体は、式(2)の化合物を塩素で塩素化することにより調製され、
【化15】
塩素化の反応中の反応媒体における反応性塩素の濃度が0.01~5モル%/分の間であり、式中のR=C~Cアルキルである。
【0033】
本発明は、式(1)の化合物を調製するためのプロセスを提供し、
【化16】
このプロセスは、式(2)の化合物を塩素で塩素化し、
【化17】
塩素化の反応中の反応媒体における反応性塩素の濃度が0.01~5モル%/分の間であり、式中のR=C~Cアルキルである。
【0034】
本発明は、希釈剤としてアルキルニトリルを任意選択で含む、式(1)の化合物を調製するためのプロセスを更に提供する。
【0035】
一実施形態では、本発明は、Rがメチル、エチルなどから選択される式(1)の化合物を調製するためのプロセスを提供する。
【0036】
一実施形態では、式(2)の化合物はマロン酸ジメチル又はマロン酸ジエチルである。
【0037】
一実施形態では、塩素化は、塩素ガスをパージすることにより行われる。
【0038】
一実施形態では、反応中の反応媒体における反応性塩素の濃度は、0.01~5モル%/分の間である。
【0039】
一実施形態では、反応中の反応媒体における反応性塩素の濃度は、0.1~3モル%/分の間である。
【0040】
一実施形態では、反応中の反応媒体における反応性塩素の濃度は、0.3~1.5モル%/分の間である。
【0041】
一実施形態では、反応は、約1~6時間実施される。
【0042】
一実施形態では、反応は、5~20℃の間の温度で実施される。
【0043】
一実施形態では、反応は、8~15℃の間の温度で実施される。
【0044】
一実施形態では、式(1)の化合物を調製するためのプロセスは、希釈剤としてアルキルニトリルを任意選択で含む。
【0045】
一実施形態では、希釈剤は、アセトニトリル、プロピオニトリル、又はブチロニトリルから選択される。
【0046】
本発明は、式(1)の中間体を介して式(5)の4,6-ジクロロ-5-フルオロ-ピリミジンを調製するためのプロセスを提供し、
【化18】
式(1)の中間体は、式(2)の化合物を塩素で塩素化することにより得られ、
【化19】
塩素化の反応中の反応媒体における反応性塩素の濃度は0.01~5モル%/分の間である。
【0047】
本発明はまた、式(5)の4,6-ジクロロ-5-フルオロ-ピリミジンを介してフルオキサストロビンを調製するためのプロセスを提供し、
【化20】
式(5)の化合物は式(1)の中間体を介して調製され、当該式(1)の中間体は、式(2)の化合物を塩素で塩素化することにより得られ、
【化21】
塩素化の反応中の反応媒体における反応性塩素の濃度は0.01~5モル%/分の間である。
【0048】
本発明は、式(5)の4,6-ジクロロ-5-フルオロ-ピリミジンを調製するためのプロセスであって、
(i)式(2)の化合物を塩素で塩素化し、
【化22】
式(1)の化合物を得る工程であって、塩素化の反応中の反応媒体における反応性塩素の濃度が0.01~5モル%/分の間であり、
【化23】
任意選択で式(1)の化合物を単離しない工程と、
(ii)式(1)の化合物をフッ素化剤でフッ素化して、式(3)の化合物を得る工程であって、
【化24】
任意選択で式(3)の化合物を単離しない工程と、
(iii)式(3)の化合物をホルムアミド又はその誘導体と反応させて、式(4)の化合物を得る工程であって、
【化25】
任意選択で式(4)の化合物を単離しない工程と、
式(4)の化合物を塩素化剤で塩素化して、式(5)の4,6-ジクロロ-5-フルオロ-ピリミジンを得る工程、
【化26】
とを含み、式中、Rは上記に定義されるものと同じである、プロセスである。
【0049】
本発明の文脈では、「任意選択で」という用語は、プロセス工程、例えば化合物の単離を含むプロセスのあらゆる工程に関して使用するとき、対象の要素が、単離されるか、あるいは更なる化合物へと変換する前に単離されないことを意味するように意図される。両方の代替案は、本発明の範囲内にあることが意図される。
【0050】
一実施形態では、本発明は、Rがメチル、エチルなどから選択される式(1)の化合物を調製するためのプロセスを提供する。
【0051】
一実施形態では、式(2)の化合物は、マロン酸ジメチル又はマロン酸ジエチルから選択される。
【0052】
一実施形態では、プロセスの工程(ii)は、式(1)の化合物を単離することなく実施される。
【0053】
一実施形態では、式(2)の化合物のフッ素化は、式(3)の化合物を得るために、フッ素化剤を使用して行われ、下記式中のRは、上記で定義されるものと同じである。
【化27】
【0054】
好ましい実施形態では、本発明によるプロセスは、Rがメチル、エチルなどから選択される式(3)の化合物を提供する。
【0055】
一実施形態では、フッ素化剤は、トリエチルアミントリヒドロフルオリド、フッ化水素酸、ピリジニウムポリ(フッ化水素)、ピリジニウム、1-フルオロ-2,4,6-トリメチル-、1,1,1-トリフルオロメタンスルホネート(1:1)、及びHF錯体から選択される。
【0056】
一実施形態では、反応は塩基の存在下で行われる。
【0057】
一実施形態では、反応は無機塩基又は有機塩基の存在下で行われる。
【0058】
上記実施形態では、無機塩基は、金属炭酸塩、金属重炭酸塩、金属水酸化物、金属アルコキシドなどから選択される。
【0059】
上記実施形態では、有機塩基は、第三級アミン、ピリジン、トリエチルアミン、置換又は非置換二環式アミンなどから選択される。
【0060】
一実施形態では、プロセスの工程(iii)は、式(3)の化合物を単離することなく実施される。
【0061】
一実施形態では、式(3)の化合物は、式(4)の化合物を得るために、ホルムアミド又はその誘導体と反応させる。
【化28】
【0062】
一実施形態では、反応は、アルコール/アルコキシド混合物の存在下で行われる。
【0063】
一実施形態では、アルコール/アルコキシド混合物は、メタノール/ナトリウムメトキシド、エタノール/ナトリウムエトキシド、及びブタノール/ナトリウムブトキシドから選択される。
【0064】
一実施形態では、式(4)の化合物は、式(5)の化合物の4,6-ジクロロ-5-フルオロ-ピリミジンを得るために、塩素化剤を使用して塩素化される。
【化29】
【0065】
一実施形態では、式(5)の化合物を調製するために使用される塩素化剤は、オキシ塩化リンである。
【0066】
一実施形態では、式(4)の化合物の塩素化は有機塩基の存在下で行われる。
【0067】
一実施形態では、塩基は、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどから選択される。
【0068】
一実施形態では、塩基とオキシ塩化リンとのモル比は、0.005対0.05、好ましくは0.008対0.1である。
【0069】
本発明は、式(9)のフルオキサストロビンを調製するためのプロセスであって、
(i)式(5)の4,6-ジクロロ-5-フルオロ-ピリミジンを式(6)の2-クロロフェノールと縮合して、
【化30】
式(7)の4-クロロ-6-(2-クロロフェノキシ)-5-フルオロ-ピリミジンを得る工程と、
【化31】
(ii)式(7)の4-クロロ-6-(2-クロロフェノキシ)-5-フルオロ-ピリミジンを、式(8)の(E)-(5,6-ジヒドロ-1,4,2-ジオキサジン-3-イル)(2-ヒドロキシフェニル)メタノンO-メチルオキシムと縮合して、
【化32】
【0070】
式(9)のフルオキサストロビンを得る工程と
【化33】
を含むプロセスを提供する。
【0071】
本発明のプロセスにより得られる式(9)のフルオキサストロビンは、他の不純物を実質的に含まず、99.5%を超える化学純度を有する。
【0072】
本発明により調製されるフルオキサストロビンは、その塩、溶媒和物、立体異性体、又はそれらの幾何異性体、N-オキシド、若しくは多形体を含む。
【0073】
一実施形態では、式(7)の4-クロロ-6-(2-クロロフェノキシ)-5-フルオロ-ピリミジンは、式(5)の4,6-ジクロロ-5-フルオロ-ピリミジンを式(6)の2-クロロフェノールと縮合させることにより調製され、
【化34】
式(5)の4,6-ジクロロ-5-フルオロ-ピリミジンは、本発明のプロセスにより調製される。
【0074】
一実施形態では、式(5)の4,6-ジクロロ-5-フルオロ-ピリミジンと式(6)の2-クロロフェノールとの縮合反応は、無機塩基の存在下で実施される。
【0075】
好ましい実施形態では、塩基は炭酸カリウムである。
【0076】
一実施形態では、式(5)の4,6-ジクロロ-5-フルオロ-ピリミジンと式(6)の2-クロロフェノールとの縮合反応は、有機溶媒中で実施される。
【0077】
好ましい実施形態では、溶媒はメチルイソブチルケトンである。
【0078】
式(6)の化合物2-クロロフェノール及び式(7)の4-クロロ-6-(2-クロロフェノキシ)-5-フルオロ-ピリミジンは、文献に記載の公知の方法により調製することができる。
【0079】
一実施形態では、式(9)のフルオキサストロビンは、式(7)の4-クロロ-6-(2-クロロフェノキシ)-5-フルオロ-ピリミジンを式(8)の(E)-(5,6-ジヒドロ-1,4,2-ジオキサジン-3-イル)(2-ヒドロキシフェニル)メタノンO-メチルオキシムと縮合することによって調製され、
【化35】
式(8)の化合物は、本発明のプロセスにより調製される式(5)の4,6-ジクロロ-5-フルオロ-ピリミジンから調製される。
【0080】
一実施形態では、式(7)の4-クロロ-6-(2-クロロフェノキシ)-5-フルオロ-ピリミジンと、式(8)の(E)-(5,6-ジヒドロ-1,4,2-ジオキサジン-3-イル)(2-ヒドロキシフェニル)メタノンO-メチルオキシムとの縮合反応は、無機塩基の存在下で実施される。
【0081】
式(7)の化合物は、国際公開第200172719号に開示される公知の方法により調製することができる。
【0082】
好ましい実施形態では、無機塩基は炭酸カリウムである。
【0083】
一実施形態では、式(7)の4-クロロ-6-(2-クロロフェノキシ)-5-フルオロ-ピリミジンと、式(8)の(E)-(5,6-ジヒドロ-1,4,2-ジオキサジン-3-イル)(2-ヒドロキシフェニル)メタノンO-メチルオキシムとの縮合反応は、有機溶媒、水、又はそれらの混合物中で実施される。
【0084】
好ましい実施形態では、有機溶媒はメチルイソブチルケトンである。
【0085】
別の好ましい実施形態では、溶媒は、水とメチルイソブチルケトンとの混合物である。
【0086】
一実施形態では、式(7)の4-クロロ-6-(2-クロロフェノキシ)-5-フルオロ-ピリミジンと、式(8)の(E)-(5,6-ジヒドロ-1,4,2-ジオキサジン-3-イル)(2-ヒドロキシフェニル)メタノンO-メチルオキシムとの縮合反応は、触媒の存在下で実施される。
【0087】
一実施形態では、触媒は、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)又はその塩若しくは誘導体、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、その塩及び誘導体、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン、その塩及び誘導体、又は1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、その塩若しくは誘導体から選択される。
【0088】
式(8)の化合物(E)-(5,6-ジヒドロ-1,4,2-ジオキサジン-3-イル)(2-ヒドロキシフェニル)メタノンO-メチルオキシムは、文献中にある公知の方法により調製することができる。
【0089】
好ましくは、式(8)の中間体化合物は、米国特許出願公開第201562168196号に開示されるプロセスにより調製される。明細書、特許請求の範囲、及び要約を含む米国特許出願公開第201562168196号の開示全体は、参照により本明細書に援用される。
【0090】
本発明は、式(9)のフルオキサストロビンを調製するためのプロセスを提供し、重要な中間体である式(5)の4,6-ジクロロ-5-フルオロ-ピリミジンは、下記工程を含むプロセスにより調製される。
(i)式(2)の化合物を塩素で塩素化し、式(1)の化合物を得る工程であって、
【化36】
塩素化の反応中の反応媒体における反応性塩素の濃度が0.01~5モル%/分の間であり、
【化37】
任意選択で式(1)の化合物を単離しない工程と、
(ii)式(1)の化合物をフッ素化剤でフッ素化して、式(3)の化合物を得る工程であって、
【化38】
任意選択で式(3)の化合物を単離しない工程と、
(iii)式(3)の化合物をホルムアミド又はその誘導体と反応させて、式(4)の化合物を得る工程であって、
【化39】
任意選択で式(4)の化合物を単離しない工程と、
(iv)式(4)の化合物を塩素化剤で塩素化して、式(5)の4,6-ジクロロ-5-フルオロ-ピリミジンを得る工程と
【化40】
を含み、式中のRは上記に定義されるものと同じである、プロセス。
【0091】
一実施形態では、本発明は、図1において特徴付けられた式(10a)のジクロロマロネート不純物を実質的に含まない、式(1)の化合物を提供する。
【化41】
【0092】
一実施形態では、本発明は、式(10a)のジクロロマロネート不純物を5%未満しか含有しない、式(1)の化合物を提供する。
【0093】
一実施形態では、本発明は、式(10a)のジクロロマロネート不純物又は式(10b)のジフルオロマロネート不純物を実質的に含まない、式(5)の4,6-ジクロロ-5-フルオロ-ピリミジンを提供する。
【0094】
一実施形態では、本発明は、式(10a)のジクロロマロネート不純物又は式(10b)のジフルオロマロネート不純物を5%未満しか含有しない、式(5)の化合物を提供する。
【化42】
【0095】
一実施形態では、本発明は、式(10a)のジクロロマロネート不純物又は式(10b)のジフルオロマロネート不純物を実質的に含まない、式(9)のフルオキサストロビンを提供する。
【0096】
一実施形態では、本発明は、式(2)の化合物を塩素化することにより、RがC~Cアルキルから選択される式(1)の化合物を提供し、塩素化の反応中の反応媒体における反応性塩素の濃度は0.01~5モル%/分の間であり、式(1)の化合物は式(10a)のジクロロマロネート不純物を5%未満しか含有しない。
【0097】
本発明の利点及び他のパラメータを、以下の実施例によって示す。しかしながら、本発明の範囲は、いかなる方法でも実施例によって限定されるものではない。本発明が前述の実施例を含み、更に本発明の技術的範囲内で変更及び改変することができることは、当業者には理解されるであろう。
【実施例
【0098】
実施例1:ジエチル2-クロロマロネートの調製
塩素(95g、1.33モル)を、1.05g/分(1.19モル%/分)の速度で、マロン酸ジエチル(200g、1.25モル)のアセトニトリル(600g)溶液中、10~15℃で1.5時間パージし、得られた混合物を同じ温度で30分間維持する。窒素ガスを反応混合物中で1時間パージし、続いて減圧下での蒸留により溶媒を回収して、250gのジエチル2-クロロマロネートを得る。[GCによる純度:92.91%、1,3-ジエチル2,2-ジクロロプロパンジオエート:3.88%]。
【0099】
実施例2:ジエチル2-クロロマロネートの調製
塩素(95g、1.33モル)を、0.63g/分(0.71モル%/分)の速度で、マロン酸ジエチル(200g、1.25モル)のアセトニトリル(600g)溶液中、10~15℃で2.5時間パージし、得られた混合物を同じ温度で30分間維持する。窒素ガスを反応混合物中で1時間パージし、続いて減圧下での蒸留により溶媒を回収して、250gのジエチル2-クロロマロネートを得る。[ガスクロマトグラフィーによる純度:91.87%、1,3-ジエチル2,2-ジクロロプロパンジオエート:3.36%(図1)]。
【0100】
実施例3:ジエチル2-クロロマロネートの調製
塩素(77g、1.084モル)を、0.85g/分(1.2モル%/分)、マロン酸ジエチル(160g、1.00モル)のアセトニトリル(480g)溶液中、15~20℃で1.5時間パージし、得られた混合物を同じ温度で30分間維持する。窒素ガスを反応混合物中で1時間パージし、続いて減圧下での蒸留により溶媒を回収して、197gのジエチル2-クロロマロネートを得る。[GCによる純度:92.83%、1,3-ジエチル2,2-ジクロロプロパンジオエート:3.73%]。
【0101】
実施例4:ジエチル2-クロロマロネートの調製
塩素(303g、4.26モル)を、3.19g/分(1.123モル%/分)、マロン酸ジエチル(640g、4.00モル)のアセトニトリル(1920g)溶液中、15~20℃で95分間パージし、得られた混合物を同じ温度で30分間維持する。窒素ガスを反応混合物中で1時間パージし、続いて減圧下での蒸留により溶媒を回収して、800gのジエチル2-クロロマロネートを得る。[GCによる純度:93.68%、1,3-ジエチル2,2-ジクロロプロパンジオエート:3.8%]。
【0102】
実施例5:ジエチル2-クロロマロネートの調製(比較例)
塩化スルフリル(160g、1.19モル)をマロン酸ジエチル(160g、1.00モル)の溶液に、35~40℃で90分間かけてゆっくり添加し、得られた混合物を同じ温度で60分間維持する。窒素ガスを反応混合物中で1時間パージして、200gのジエチル2-クロロマロネートを得る。[GCによる純度:79.95%、1,3-ジエチル2,2-ジクロロプロパンジオエート:17.87%、(図2)]。
【0103】
実施例6:ジエチル2-クロロマロネートの調製(比較例)
塩素(4.0g、0.05モル)をマロン酸ジエチル(96.1g)のトルエン(166g)溶液にパージし、混合物を60℃に加温する。この溶液を10分間撹拌し、反応の進行を確認した後、塩素ガス(54.0g、0.760モル)を更に室温で3時間バブリングした。更に1時間撹拌した後、水(90g)を添加する。有機層を分離し、先ず6.3%炭酸水素ナトリウム水溶液(160g)で洗浄し、次いで水(50g)、最後に飽和ブライン(60g)で洗浄した。トルエンを蒸留により有機層から留去して、123gのジエチル2-クロロマロネートを得た。[GCによる純度:65.63%、1,3-ジエチル2,2-ジクロロプロパンジオエート:13.40%]。
【0104】
実施例7:ジエチル2-フルオロマロネートの調製
ジエチル2-クロロマロネート(実施例4で調製)(400g、2.00モル)のトリエチルアミン(300g、2.97モル)混合物に、トリエチルアミントリ(フッ化水素)(198g、1.23モル)を室温で滴加する。次いで、反応混合物を大気中で18~20時間かけ、100~105℃に加温する。反応混合物を室温に降温し、トルエン(410mL)と水(410mL)で希釈する。水層を分離し、トルエン(220mL)で抽出する。組み合わせた有機層を水(220mL)で洗浄する。有機層を減圧下で蒸留し、生成物を分留して、200gのジエチル2-フルオロマロネートを得る。
【0105】
実施例8:ジエチル2-フルオロマロネートの調製
ジエチル2-クロロマロネート(805g、3.84モル)のトリエチルアミン(600g、5.93モル)混合物に、トリエチルアミントリ(フッ化水素)(395g、2.45モル)を室温で滴加する。次いで、反応混合物をオートクレーブ中の圧力(4~5kg)下で18~20時間かけ、105~110℃に加温する。反応混合物を室温に降温し、トルエン(865mL)と水(865mL)で希釈する。水層を分離し、トルエン(432mL)で抽出する。組み合わせた有機層を水(432mL)で洗浄する。有機層を減圧下で蒸留し、生成物を分留して、402gのジエチル2-フルオロマロネートを得る。[GCによる純度:97.64%、1,3-ジエチル2,2-ジフルオロプロパンジオエート:0.05%未満(図3)]。
【0106】
実施例9:4,6-ジヒドロキシ-5-フルオロピリミジンの調製
ナトリウムメトキシド粉末(189g、3.50モル)を窒素雰囲気下、メタノール(441g)にゆっくり添加する。溶液を80~85℃に加温する。この溶液に、ホルムアミド(225g、5.0モル)中のジエチル2-フルオロマロネート(178.16g、1.0モル)を、還流下において3~4時間で添加する。反応物を還流下において1時間維持する。メタノールを減圧下で蒸留する。反応混合物を水(438g)に注ぐ。混合物を濃HClで酸性化し、pH1~2にする。こうして得られた固体を濾過、洗浄、及び乾燥して、110gの4,6-ジヒドロキシ-5-フルオロピリミジンを得る。[HPLCによる純度:96.21%]。
【0107】
実施例10:4,6-ジクロロ-5-フルオロピリミジンの調製
オキシ塩化リン(1194g、7.77モル)とN,N-ジメチルアニリン(9.42g、0.077モル)との撹拌混合物に、ロット単位(lot-wise)で4,6-ジヒドロキシ-5-フルオロピリミジン(純度:96.2%、210g、1.55モル)を添加し、得られた混合物を95~110℃に加温し、2時間撹拌する。反応物を90~95℃に降温し、三塩化リン(428g、3.11モル)を反応混合物に添加し、同時に塩素ガス(221g、3.11モル)をパージし、撹拌を5時間続ける。オキシ塩化リンを回収し、反応混合物を室温に降温する。二塩化メチレン(400 9m)を反応混合物に添加し、それを冷水(400gm)でクエンチする。水層を二塩化メチレン(200gm)で抽出し、組み合わせた有機層を水(200gm)で洗浄する。有機層を共沸させて水を除去し、MDCと蒸留生成物を回収して、218gの4,6-ジクロロ-5-フルオロピリミジンを得る。[GCによる純度:97.46%]。
【0108】
実施例11:フルオキサストロビンの調製
(E)-(5,6-ジヒドロ-1,4,2-ジオキサジン-3-イル)(2-ヒドロキシフェニル)メタノンO-メチルオキシム(476g、2.0モル)及びDABCO(10g、0.089モル)の水(800mL)溶液を、4-クロロ-6-(2-クロロフェノキシ)-5-フルオロピリミジン(518g、2.0モル)のメチルイソブチルケトン(1000mL)溶液に添加する。この混合物に、炭酸カリウム(372g、2.69モル)を添加する。混合物を3時間かけて70℃に加温する。加温した混合物に水を添加し、層を分離する。有機相を蒸留する。混合物を20℃に降温する。メタノールを添加して生成物を沈殿させる。懸濁液を5℃に降温し、濾過し、メタノールで洗浄し、乾燥させて、フルオキサストロビン(855g)を得る。
図1
図2
図3
【国際調査報告】