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特表2023-528550患者の血管系内に補綴インプラントを固定するためのデバイスおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-05
(54)【発明の名称】患者の血管系内に補綴インプラントを固定するためのデバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20230628BHJP
【FI】
A61F2/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577063
(86)(22)【出願日】2021-05-27
(85)【翻訳文提出日】2021-12-24
(86)【国際出願番号】 US2021034399
(87)【国際公開番号】W WO2021242948
(87)【国際公開日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】63/030,811
(32)【優先日】2020-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500218127
【氏名又は名称】エドワーズ ライフサイエンシーズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Edwards Lifesciences Corporation
【住所又は居所原語表記】One Edwards Way, Irvine, CALIFORNIA 92614, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アディ・カルミ
(72)【発明者】
【氏名】ボアズ・マナッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ニコライ・グロヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ブキン
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA27
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC05
4C097CC12
4C097CC18
4C097SB02
(57)【要約】
人工弁アセンブリは、人工弁と固着フレームとを含む。人工弁は、弁フレームと弁構造とを含む。弁フレームは、複数のストラットを含み、圧縮構成から拡張構成に拡張可能である。弁構造は、弁尖部を含む。弁構造は、弁フレーム内に半径方向に配設され、弁フレームに結合される。弁構造は、人工弁アセンブリを通る第1の方向への血流を許容し、人工弁アセンブリを通る第2の方向への血流を制限するように構成される。固着フレームは複数のストラットを含む。固着フレームは、弁フレームから半径方向外側に配設され、弁フレームに結合される。固着フレームのストラットは、自然組織に接触して人工弁アセンブリを移植位置に固定するのを助けるように構成された1つ以上の組織係合要素を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工心臓弁アセンブリであって、
人工心臓弁であって、
複数のストラットを備え、半径方向圧縮給送構成から半径方向拡張構成に拡張可能な弁フレームと、
複数の弁尖部を備える弁構造であって、前記弁構造は、前記弁フレーム内に半径方向に配設されかつ前記弁フレームに結合されており、かつ前記弁構造は、前記人工心臓弁アセンブリを通る第1の方向への血流を許容し、かつ前記人工心臓弁アセンブリを通る第2の方向への血流を制限するように構成されている弁構造と、
を備える人工心臓弁と、
複数のストラットを備える固着フレームであって、前記固着フレームは、前記弁フレームから半径方向外側に配設されかつ前記弁フレームに結合されており、前記固着フレームの前記ストラットは、自然組織に接触して前記人工心臓弁アセンブリを移植位置に固定するのを助けるように構成された1つ以上の組織係合要素を備える固着フレームと、
を備える人工心臓弁アセンブリ。
【請求項2】
前記組織係合要素は、前記固着フレームの前記ストラットから延びる1つ以上の突起を含む、請求項1に記載の人工心臓弁アセンブリ。
【請求項3】
前記突起は、前記人工心臓弁アセンブリの中央長手方向軸に対して所定の角度で前記ストラットから延びる、請求項2に記載の人工心臓弁アセンブリ。
【請求項4】
前記突起は、前記人工心臓弁アセンブリの中央長手方向軸に少なくとも略平行になるように前記ストラットから延びる、請求項2に記載の人工心臓弁アセンブリ。
【請求項5】
前記組織係合要素は、前記固着フレームの前記ストラットに形成された複数の溝を含む、請求項1または2に記載の人工心臓弁アセンブリ。
【請求項6】
前記溝は、前記溝同士の間にリッジを形成するように互いに対して離間される、請求項5に記載の人工心臓弁アセンブリ。
【請求項7】
前記組織係合要素は、前記固着フレームの前記ストラットから延びる複数のタインを含み、前記タインは、互いに軸方向に整列されたタインの対として配置される、請求項1から6のいずれか一項に記載の人工心臓弁アセンブリ。
【請求項8】
タインの各対は、第1のタインと第2のタインとを含み、前記第1のタインは、前記第2のタインと比較して前記人工心臓弁アセンブリの流入端部の近くに配設され、前記第1のタインと前記第2のタインは、前記固着フレームが半径方向圧縮構成であるときに第1の距離だけ離間され、前記第1のタインと前記第2のタインは、前記固着フレームが半径方向拡張構成であるときに第2の距離だけ離間され、前記第2の距離は前記第1の距離よりも短い、請求項7に記載の人工心臓弁アセンブリ。
【請求項9】
前記固着フレームは、複数のセルを備え、前記セルは、前記固着フレームが前記半径方向圧縮構成であるときに第1の軸長を有し、前記固着フレームが前記半径方向拡張構成であるときに第2の軸長を有し、前記第2の軸長は、前記第1の軸長よりも短く、タインの各対は、それぞれのセル内に配設され、タインの各対の前記第1のタインと前記第2のタインの結合軸長は、前記タインの対が配設される前記それぞれのセルの前記第2の軸長よりも短い、請求項8に記載の人工心臓弁アセンブリ。
【請求項10】
前記組織係合要素は、複数のタインを含み、前記タインは、前記固着フレームが半径方向圧縮構成であるときに前記固着フレームの前記ストラットに半径方向に整列されるように構成され、前記タインは、前記固着フレームが半径方向拡張構成であるときに前記固着フレームの前記ストラットから半径方向外側に延びるように構成される、請求項1から6のいずれか一項に記載の人工心臓弁アセンブリ。
【請求項11】
前記固着フレームは、複数のセルを備え、前記セルは、前記固着フレームが前記半径方向圧縮構成であるときに第1の軸長を有し、前記固着フレームが前記半径方向拡張構成であるときに第2の軸長を有し、前記第2の軸長は、前記第1の軸長よりも短く、前記タインは、前記セルの前記第1の軸長よりも短く、前記セルの前記第2の軸長よりも長い軸長を有する、請求項10に記載の人工心臓弁アセンブリ。
【請求項12】
前記タインは、前記固着フレームが前記半径方向拡張構成であるときに前記セルを画定する前記固着フレームの前記ストラットと軸方向に重なり合う、請求項11に記載の人工心臓弁アセンブリ。
【請求項13】
前記固着フレームの前記ストラットは、前記固着フレームが前記半径方向圧縮構成から前記半径方向拡張構成に移動するときに前記タインを前記ストラットに対して半径方向外側に送るように構成された1つ以上の傾斜面を備える、請求項10から12のいずれか一項に記載の人工心臓弁アセンブリ。
【請求項14】
前記タインは、前記固着フレームが前記半径方向圧縮構成から前記半径方向拡張構成に移動するときに前記タインを前記ストラットに対して半径方向外側に送るように構成された傾斜面を備える、請求項10から13のいずれか一項に記載の人工心臓弁アセンブリ。
【請求項15】
前記タインの各々は、固定端部と自由端部とを備える、請求項10から14のいずれか一項に記載の人工心臓弁アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に組み込まれている、2020年5月27日に出願された米国仮出願第63/030811号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
本開示は概して、移植可能な補綴デバイスに関し、より詳細には、患者の血管系内の自然組織に対して補綴デバイスを固定するためのデバイスおよび関連する方法に関する。
【0003】
ヒトの心臓には様々な弁膜疾患が生じることがある。これらの弁膜疾患によって、心臓が重度の機能不全に陥り、最終的に自然弁の修復または自然弁と人工弁の置換が必要になることがある。いくつかの公知の修復デバイス(たとえば、ステント)および人工弁、ならびにこれらのデバイスおよび弁をヒトに移植するいくつかの公知の方法がある。様々な処置において、外科手術では容易に到達できず、外科手術なしで到達できることが望まれる体内の位置に補綴医療機器を給送するために経皮的低侵襲手術法が使用される。
【0004】
1つの特定の例では、人工心臓弁を給送装置の遠位端上に圧接状態で取り付け、人工心臓弁が心臓内の移植部位に到達するまで患者の血管系を通して(たとえば、大腿動脈および大動脈を通して)前進させることができる。次いで、たとえば、人工弁が取り付けられたバルーンを膨張させるか、人工心臓弁に拡張力を加える機械的アクチュエータを作動させるか、または人工心臓弁がその機能サイズまで自己拡張できるように給送装置のシースから人工心臓弁を展開させることによって、人工心臓弁がその機能サイズまで拡張される。
【0005】
人工心臓弁は、拡張された後、周囲の自然心臓弁組織に接触して人工心臓弁を所定の位置に固定する。自然心臓弁組織の状態は患者ごとに大きく異なることがある。さらに、心臓の様々な自然弁の生体構造は大きく異なる。人工心臓弁に加えて、患者の血管系を含む組織を治療するための他の種類の補綴物がある。これらのデバイスには、ステント、弁ドッキングフレーム、グラフトなどを含めることができる。したがって、患者ごとのばらつきに適合し、ならびに/または様々な移植位置に使用することのできる人工心臓弁および他の補綴物が引き続き必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第9393110号明細書
【特許文献2】米国特許出願第2018/0028310号明細書
【特許文献3】米国特許第6730118号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書では、人工弁およびその他の補綴物ならびに人工弁および補綴物を移植するための方法について説明する。いくつかの例では、人工弁アセンブリが開示される。開示される人工弁アセンブリは、弁フレームに結合され、人工弁を自然弁に固定するように構成された固着フレームおよび/またはその他の要素を有する。いくつかの例では、固着フレームは、人工弁アセンブリと自然組織との間の摩擦を増強させるように構成された組織係合要素を備えることができる。したがって、本明細書で開示される人工弁アセンブリは、自然組織に対する移動に抵抗することができる。開示されるアセンブリは、たとえば、固定すべき典型的な人工弁に十分な構造を形成しない移植位置で使用することができる。たとえば、これらのアセンブリは、大動脈弁、僧帽弁、三尖弁、および/または肺動脈弁を含む自然心臓弁に移植することができる。詳細には、開示される人工弁は、非狭窄および/または非石灰化自然弁に移植することができる。追加または代替的に、本明細書で開示される人工弁は、血管(たとえば、大動脈)などの患者の血管系内の他の位置に移植することができる。
【0008】
代表的な一例では、人工心臓弁アセンブリは、人工心臓弁と固着フレームとを含む。人工心臓弁は、弁フレームと弁構造とを含む。弁フレームは、複数のストラットを含み、半径方向圧縮給送構成から半径方向拡張構成に拡張可能である。弁構造は、複数の弁尖部を含む。弁構造は、弁フレーム内に半径方向に配設され、弁フレームに結合される。弁構造は、人工心臓弁アセンブリを通る第1の方向への血流を許容し、人工心臓弁アセンブリを通る第2の方向への血流を制限するように構成される。固着フレームは複数のストラットを含む。固着フレームは、弁フレームから半径方向外側に配設され、弁フレームに結合される。固着フレームのストラットは、自然組織に接触して人工心臓弁アセンブリを移植位置に固定するのを助けるように構成された1つ以上の組織係合要素を備える。
【0009】
別の代表的な例では、人工心臓弁アセンブリ用の固着フレームが提供される。固着フレームは、複数の相互接続されたストラットと、ストラットから延びる複数の突起とを含む。ストラットは、半径方向圧縮構成から半径方向拡張構成に移動するように構成され、ストラットは、人工心臓弁に結合されるように構成される。突起は、移植位置において自然組織に係合するように構成される。
【0010】
別の代表的な例では、固着フレームは、ストラットの半径方向外側に面する表面に形成された複数の溝を備える複数の相互接続されたストラットを含む。ストラットは、人工心臓弁に結合されるように構成され、固着フレームは、半径方向圧縮構成から半径方向拡張構成に拡張することができ、溝は、固着フレームが移植位置において半径方向に拡張されたときに自然組織を受け入れるように構成される。
【0011】
別の代表的な例では、固着フレームは、複数の相互接続されたストラットと、ストラットから延びる複数のタイン(尖叉)とを備える。ストラットは、半径方向圧縮構成から半径方向拡張構成に移動させられるように構成され、かつストラットは、人工心臓弁に結合されるように構成される。タインは、第1のタインと第2のタインとを含む対として構成される。第1および第2のタインは、互いに軸方向に整列される。第1のタインと第2のタインは、ストラットが半径方向圧縮構成であるときに互いに対して軸方向に第1の距離だけ離間される。第1のタインと第2のタインは、ストラットが半径方向拡張構成であるときに互いに対して軸方向に第2の距離だけ離間され、第1の距離は第2の距離よりも長い。
【0012】
別の代表的な例では、固着フレームは、複数の相互接続されたストラットと複数のタインとを備える。ストラットは、半径方向圧縮構成から半径方向拡張構成に移動させられるように構成され、かつストラットは、人工心臓弁に結合されるように構成される。各タインは、固定端部と自由端部とを備える。固定端部は、ストラットのうちの1つ以上に結合され、自由端部は、ストラットに対して移動可能である。ストラットが半径方向圧縮構成であるとき、タインの自由端部は第1の半径方向位置にある。ストラットが半径方向拡張構成であるとき、タインの自由端部は、第2の半径方向位置にある。第2の半径方向位置は、第1の半径方向位置よりも固着フレームの中央長手方向軸から遠い。
【0013】
別の代表的な例では、人工心臓弁は、弁フレームと、弁構造と、1つ以上の摩擦増強要素とを含む。弁フレームは、複数のストラットを備え、半径方向圧縮給送構成から半径方向拡張構成に拡張可能である。弁構造は、複数の弁尖部を備え、弁フレーム内に半径方向に配設され、弁フレームに結合される。弁構造は、人工心臓弁アセンブリを通る第1の方向への血流を許容し、人工心臓弁アセンブリを通る第2の方向への血流を制限するように構成される。摩擦増強要素は、フレームのストラットの周りを覆い、自然組織に係合するように構成され、人工心臓弁が自然組織に対して移動するのを妨げるのを助ける。
【0014】
別の代表的な例では、人工心臓弁は、弁フレームと、弁構造と、1つ以上の摩擦増強要素とを含む。弁フレームは、複数のストラットを備え、半径方向圧縮給送構成から半径方向拡張構成に拡張可能である。弁構造は、複数の弁尖部を備え、弁フレーム内に半径方向に配設され、弁フレームに結合される。弁構造は、人工心臓弁アセンブリを通る第1の方向への血流を許容し、人工心臓弁アセンブリを通る第2の方向への血流を制限するように構成される。摩擦増強要素は、弁フレームを区画し、かつ摩擦増強要素は、自然組織に係合するように構成され、人工心臓弁が自然組織に対して移動するのを妨げるのを助ける。
【0015】
別の代表的な例では、人工心臓弁は、弁フレームと弁構造とを含む。弁フレームは、複数のストラットと複数の固着部材とを備え、半径方向圧縮給送構成から半径方向拡張構成に拡張可能である。弁フレームは、半径方向圧縮構成において円筒形状を備え、半径方向拡張構成において非円筒形状を備える。ストラットは、弁フレームが半径方向圧縮構成から半径方向拡張構成に移動するときに弾性的に変形し、固着部材は、弁フレームが半径方向圧縮構成から半径方向拡張構成に移動するときに塑性変形する。弁構造は複数の弁尖部を含む。弁構造は、弁フレーム内に半径方向に配設され、弁フレームに結合される。弁構造は、人工心臓弁アセンブリを通る第1の方向への血流を許容し、人工心臓弁アセンブリを通る第2の方向への血流を制限するように構成される。
【0016】
別の代表的な例では、人工心臓弁は、内側フレームと、弁構造と、外側フレームとを含む。内側フレームは、複数のストラットを含み、かつ内側フレームは、半径方向圧縮給送構成から半径方向拡張構成に拡張可能である。弁構造は、複数の弁尖部を含む。弁構造は、内側フレーム内に半径方向に配設され、内側フレームに結合される。弁構造は、人工心臓弁を通る第1の方向への血流を許容し、人工心臓弁を通る第2の方向への血流を制限するように構成される。外側フレームは、複数のストラットを含む。外側フレームは、内側フレームから半径方向外側に配設され、内側フレームに結合される。外側フレームのストラットは、自然組織に接触して人工心臓弁を移植位置に固定するのを助けるように構成された1つ以上の組織係合要素を備える。
【0017】
別の代表的な例では、人工心臓弁または人工心臓弁アセンブリを移植するための方法が提供される。この方法は、人工心臓弁または人工心臓弁アセンブリを給送装置に取り外し可能に結合するステップと、給送装置および人工心臓弁または人工心臓弁アセンブリを患者の血管系に挿入するステップと、人工心臓弁または人工心臓弁アセンブリを移植位置まで前進させるステップと、人工心臓弁または人工心臓弁アセンブリを半径方向圧縮構成から半径方向拡張構成に拡張させるステップであって、人工心臓弁または人工心臓弁アセンブリが移植位置において自然組織に接触する、ステップと、人工心臓弁または人工心臓弁アセンブリを給送装置から取り外すステップとを含む。
【0018】
別の代表的な例では、人工弁は、内側フレームと、弁構造と、外側フレームとを含む。内側フレームは、複数のストラットを含み、内側フレームは、半径方向圧縮給送構成から半径方向拡張構成に拡張可能である。内側フレームは、第1の厚さを備える。弁構造は、複数の弁尖部を含む。弁構造は、内側フレーム内に半径方向に配設され、内側フレームに結合される。弁構造は、人工弁を通る第1の方向への血流を許容し、人工弁を通る第2の方向への血流を制限するように構成される。外側フレームは、複数のストラットを含む。外側フレームは、内側フレームから半径方向外側に配設され、内側フレームに結合される。外側フレームのストラットは、自然組織に接触して人工弁を移植位置に固定するのを助けるように構成された1つ以上の組織係合要素を備える。外側フレームは、内側フレームの第1の厚さよりも薄い第2の厚さを備える。
【0019】
別の代表的な例では、ドッキングアセンブリが、補綴ドッキングデバイスと固着フレームとを備える。補綴物を受け取り支持するように構成されたフレームを含む補綴ドッキングデバイス。補綴ドッキングデバイスのフレームに結合され、複数の相互接続されたストラットと、複数の相互接続されたストラットから延びる複数の突起とを備える固着フレーム。補綴ドッキングデバイスおよび固着フレームは、半径方向圧縮構成から半径方向拡張構成に移動させられるように構成される。固着フレームの突起は、移植位置において自然組織に係合してアセンブリが移植位置に対して移動するのを妨げるのを助けるように構成される。
【0020】
別の代表的な例では、アセンブリが、補綴デバイスと、第1の固着フレームと、第2の固着フレームとを備える。補綴物を受け取り支持するように構成されたフレームを含む補綴ドッキングデバイス。フレームは、第1の端部と第2の端部とを備える。第1の固着フレームは、補綴ドッキングデバイスのフレームの第1の端部に結合され、第1の複数の相互接続されたストラットと、第1の複数の相互接続されたストラットから延びる第1の複数の突起とを備える。第2の固着フレームは、補綴ドッキングデバイスのフレームに結合され、第2の複数の相互接続されたストラットと、第2の複数の相互接続されたストラットから延びる第2の複数の突起とを備える。
【0021】
別の代表的な例では、アセンブリが、人工心臓弁と、第1の固着フレームと、第2のフレームとを備える。フレームと、フレーム内に支持される弁構造とを含む人工心臓弁。フレームは、第1の端部と第2の端部とを備える。人工心臓弁のフレームの第1の端部に結合され、第1の複数の相互接続されたストラットと、第1の複数の相互接続されたストラットから延びる第1の複数の突起とを備える第1の固着フレーム。人工心臓弁のフレームに結合され、第2の複数の相互接続されたストラットと、第2の複数の相互接続されたストラットから延びる第2の複数の突起とを備える第2の固着フレーム。
【0022】
別の代表的な例では、アセンブリが、グラフトと、第1の固着フレームと、第2の固着フレームとを備える。血管内で半径方向に拡張可能なフレームを含むグラフト。グラフトのフレームの第1の端部に結合され、第1の複数の相互接続されたストラットと、第1の複数の相互接続されたストラットから延びる第1の複数の突起とを備える第1の固着フレーム。グラフトのフレームに結合され、第2の複数の相互接続されたストラットと、第2の複数の相互接続されたストラットから延びる第2の複数の突起とを備える第2の固着フレーム。
【0023】
別の代表的な例では、アセンブリが、グラフトと固着フレームとを備える。血管内で半径方向に拡張可能なフレームを含むグラフト。グラフトのフレームに結合され、複数の相互接続されたストラットと、複数の相互接続されたストラットから延びる複数の突起とを備える固着フレーム。グラフトおよび固着フレームは、半径方向圧縮構成から半径方向拡張構成に移動させられるように構成される。固着フレームの突起は、移植位置において自然組織に係合してアセンブリが移植位置に対して移動するのを妨げるのを助けるように構成される。
【0024】
別の代表的な例では、人工心臓弁アセンブリが、人工心臓弁と、固着フレームと、1本または複数の縫合糸とを備える。人工心臓弁は、弁フレームと弁構造とを備える。弁フレームは、複数のストラットを備える。弁フレームは、半径方向圧縮給送構成から半径方向拡張構成に拡張可能である。複数の弁尖部を備える弁構造。弁構造は、弁フレーム内に半径方向に配設され、弁フレームに結合される。弁構造は、人工心臓弁アセンブリを通る第1の方向への血流を許容し、人工心臓弁アセンブリを通る第2の方向への血流を制限するように構成される。複数のストラットを備える固着フレーム。固着フレームは、弁フレームから半径方向外側に配設され、弁フレームに結合される。固着フレームのストラットは、自然組織に接触して人工心臓弁アセンブリを移植位置に固定するのを助けるように構成された1つ以上の組織係合要素を備える。1本または複数の縫合糸は、固着フレームの周りを周方向に延び、自然組織と人工心臓弁との間の弁傍漏れを低減させるように構成される。
【0025】
この開示の様々な新規要素は組み合わせて使用するかまたは別個に使用することができる。この概要は、以下に詳細な説明においてさらに説明する概念のうちの選択された概念を簡略化形態で紹介するためのものである。この概要は、請求される主題の重大な特徴または必須の特徴を識別するものではなく、また、請求される主題の範囲を制限するために使用されるものでもない。本開示の上記の目的、特徴、および利点ならびにその他の目的、特徴、および利点は、以下の詳細な説明、特許請求の範囲、および添付の図から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】例示的な人工心臓弁アセンブリの斜視図である。
図2図1の人工心臓弁アセンブリの詳細図である。
図3A】環状構成における弁フレームを示す、図1の人工心臓弁アセンブリの弁フレームの斜視図である。
図3B】環状構成における固着フレームを示す、図1の人工心臓弁アセンブリの固着フレームの斜視図である。
図4A】平坦構成における弁フレームを示す、図1の人工心臓弁アセンブリの弁フレームの側面立面図である。
図4B】平坦構成における固着フレームを示す、図1の人工心臓弁アセンブリの固着フレームの側面立面図である。
図5A図3Aに示す線5A-5Aに沿った弁フレームのストラットの断面図である。
図5B図3Bに示す線5B-5Bに沿った固着フレームのストラットの断面図である。
図6】部分断面で示す心臓の自然大動脈弁に給送され移植された人工心臓弁アセンブリの図である。
図7】部分断面で示す心臓の自然大動脈弁に給送され移植された人工心臓弁アセンブリの図である。
図8】部分断面で示す心臓の自然大動脈弁に給送され移植された人工心臓弁アセンブリの図である。
図9】部分断面で示す心臓の自然大動脈弁に給送され移植された人工心臓弁アセンブリの図である。
図10】部分断面で示す心臓の自然大動脈弁に給送され移植された人工心臓弁アセンブリの図である。
図11】部分断面で示す心臓の自然大動脈弁に給送され移植された人工心臓弁アセンブリの図である。
図12】部分断面で示す心臓の自然僧帽弁内に移植された別の例示的な人工心臓弁アセンブリを示す図である。
図13】別の例示的な人工心臓弁アセンブリの斜視図である。
図14】別の例示的な人工心臓弁アセンブリの斜視図である。
図15】別の例示的な人工心臓弁アセンブリの斜視図である。
図16】人工心臓弁アセンブリの別の固着フレームの部分側面立面図である。
図17図16の固着フレームの詳細図である。
図18】平坦構成における固着フレームを示す人工心臓弁アセンブリの別の固着フレームの側面立面図である。
図19図18の固着フレームの詳細図である。
図20A】半径方向圧縮構成における固着フレームを示す、図18の固着フレームの詳細図である。
図20B】半径方向拡張構成における固着フレームを示す、図18の固着フレームの詳細図である。
図21A】半径方向圧縮構成における固着フレームおよび固着フレームに隣接する自然弁尖組織を示す、図18の固着フレームの詳細図である。
図21B】半径方向拡張構成における固着フレームおよび固着フレームのタイン間に捕捉された自然弁尖組織を示す、図18の固着フレームの詳細図である。
図22】半径方向拡張構成における固着フレームを示す、別の固着フレームの側面立面図である。
図23A】一構成における固着フレームのタインを示す、図22の固着フレームの概略部分側面図である。
図23B】一構成における固着フレームのタインを示す、図22の固着フレームの概略部分側面図である。
図23C】一構成における固着フレームのタインを示す、図22の固着フレームの概略部分側面図である。
図24A】一構成における固着フレームのタインを示す、図22の固着フレームの他の概略部分側面図である。
図24B】一構成における固着フレームのタインを示す、図22の固着フレームの他の概略部分側面図である。
図24C】一構成における固着フレームのタインを示す、図22の固着フレームの他の概略部分側面図である。
図25】半径方向圧縮構成における固着フレームを示す、図22の固着フレームの側面立面図である。
図26】半径方向圧縮構成における固着フレームを示す、別の固着フレームの側面立面図である。
図27】別の人工心臓弁アセンブリの斜視図である。
図28図27の人工心臓弁アセンブリのフレームおよび摩擦増強要素の詳細図である。
図29】別の人工心臓弁アセンブリの斜視図である。
図30】半径方向拡張構成におけるフレームを示す、人工心臓弁アセンブリのフレームの斜視図である。
図31図30のフレームの詳細図である。
図32】半径方向圧縮構成におけるフレームを示す、図30のフレームの斜視図である。
図33A】(たとえば、図34の固着フレームと比較して)比較的短い軸長を有する別の固着フレームの斜視図である。
図33B図33Aの固着フレームの詳細図である。
図34】(たとえば、図33Aの固着フレームと比較して)比較的長い軸長を有する別の固着フレームの斜視図である。
図35】一例による、密封部材を含む人工心臓弁の別のフレームの斜視図である。
図36A】張力付与構成における拡張可能縫合糸の斜視図である。
図36B】弛緩または膨張構成における図36Aの拡張可能縫合糸の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
一般的な検討事項
この説明の目的に応じて、本明細書ではこの開示の例のある態様、利点、および新規の特徴について説明する。開示される方法、装置、およびシステムは、いかなる点でも限定的な方法、装置、およびシステムと解釈すべきではない。その代わり、本開示は、様々な開示される例のすべての新規の特徴および態様ならびに非自明の特徴および態様の各々ならびにそれらの相互の様々な組合せおよび部分的組合せを対象とする。方法、装置、およびシステムは、それらまたはそれらの組合せの任意の特定の態様または特徴に限定されず、また、開示される例が、任意の1つもしくは複数の特定の利点が存在するかまたは1つもしくは複数の問題を解決することを必要とすることもない。
【0028】
開示される例におけるいくつかの例の動作について、好都合に提示するために特定の順序で説明するが、この説明方法が、以下に記載される特定の文言によって特定の順序付けが必要とされない限り再構成を包含することを理解されたい。たとえば、順次説明する動作は、場合によっては、再構成されるかまたは同時に実行されてもよい。さらに、説明を簡略化するために、添付の図は、開示される方法を他の方法とともに使用することができる様々な方法を示さない場合がある。さらに、説明では、開示される方法について説明するために「提供する」または「実現する」のような用語を使用することがある。これらの用語は、実行される実際の動作を高度に抽象化した語である。これらの用語に対応する実際の動作は、特定の実装形態に応じて異なる場合があり、当業者によって容易に識別可能である。
【0029】
この出願および特許請求の範囲では、単数形"a"、"an"、および"the"は、文脈上明白に複数形を含まないことが示されない限り複数形を含む。さらに、「含む」という用語は「備える」を意味する。さらに、「結合される」という用語は、物理的、機械的、化学的、磁気的、および/または電気的に結合またはリンクされることを意味し、特定の逆の文言がない限り結合されるかまたは関連付けられる品目間の中間要素の存在を除外しない。
【0030】
本明細書では、「近位」という用語は、ユーザにより近く、移植部位からより遠いデバイスの位置、方向、または部分を指す。本明細書では、「遠位」という用語は、ユーザからより遠く、移植部位により近いデバイスの位置、方向、または部分を指す。したがって、たとえば、デバイスの近位への動きは、移植部位から離れて(たとえば、患者の体から出て)ユーザの方へ向かうデバイスの動きであり、一方、デバイスの遠位への動きは、ユーザから離れて移植部位の方へ(たとえば、患者の体内に)向かうデバイスの動きである。「長手方向の」および「軸方向の」という用語は、明示的に別段の定義がある場合を除き近位方向および遠位方向に延びる軸を指す。
【0031】
開示される技術の紹介
心臓の自然弁には、自然弁を不適正に動作させる様々な問題が生じることがある。たとえば、大動脈閉鎖不全症("AI")または大動脈弁逆流("AR")は、血液が自然大動脈弁を通って左心室(“LV")に戻る拡張期逆流を特徴とする。慢性AIでは、心臓が心拍出量の低下を解消しようとすることに起因するLV容積の増大および/または圧負荷が生じることがある。
【0032】
これらの状態は、場合によっては、人工心臓弁を移植して、機能不全が生じている自然弁の機能に置き換えることによって治療することができる。いくつかの人工心臓弁は、低侵襲的に移植することができる。これらの弁は一般に、「経カテーテル心臓弁」("THV")と呼ばれる。THVは、回復時間が短いことおよび/またはより広範囲の患者に適合することを含む多くの利点を有する。これらの利点にもかかわらず、多くの公知のTHVは、自然弁尖に自然狭窄または石灰化が生じた場合に自然心臓弁輪(たとえば、自然大動脈弁輪)において展開されるように設計される。多くの代表的なTHVは、狭窄または石灰化が生じていない場合に、自然生体構造に対してTHVを固定するための十分な固着機構を有さない。このため、場合によっては、THVは、移植部位における生理的圧力の下で移動しならびに/または位置ずれすることがある。
【0033】
したがって、局部的な狭窄および/または石灰化した生体構造がない場合に自然生体構造に固着することのできる人工心臓弁を提供することが望ましい。さらに、提案される解決手段を既存の人工心臓弁とともに使用して複雑で時間がかかる再設計を不要にできることが望ましい。
【0034】
本明細書では、人工心臓弁を移植するための人工心臓弁および方法について説明する。いくつかの例では、人工心臓弁アセンブリを開示する。開示される人工心臓弁アセンブリは、弁フレームに結合され、人工心臓弁を自然組織に固定するように構成された固着フレームおよび/またはその他の要素を有する。固着フレームは、場合によっては、人工心臓弁アセンブリと自然組織との間の摩擦を増強させるように構成された組織係合要素を備える。したがって、本明細書で開示される人工心臓弁アセンブリは、自然組織に対する移動に抵抗することができる。開示されるアセンブリは、たとえば、(たとえば、自然僧帽弁における)代表的な人工心臓弁用の十分な構造を形成しない比較的狭窄の目立たない生体構造および/または移植位置を有する患者に使用することができる。さらに、本明細書で開示される固着フレームおよび/または他の組織係合要素は、たとえば、人工心臓弁に取り付ける(たとえば、組み込む)ことができる。したがって、開示されるデバイスおよび方法は、人工心臓弁の安定性を向上させ、移動を抑制し、また、実施するのが比較的簡単であり、費用効果が高い。
【0035】
特定の例では、開示される人工心臓弁アセンブリは、250mmHGもの高い血圧(平均血圧は100mmHgである)の下で自然大動脈弁輪に対する位置を保持することができる。
【0036】
心臓の様々な自然弁の代わりにまたは自然弁に加えて、本明細書で開示される人工弁アセンブリは、血管(たとえば、大動脈)などの患者の血管系内の他の位置に移植されるように構成することができる。
【0037】
本明細書では、様々な他の種類のデバイス(すなわち、人工心臓弁フレーム以外)用のフレームも開示される。これらのフレームは、患者の血管系(たとえば、心臓弁組織、血管など)内に移植され血管系に係合する弁ドッキングデバイス、グラフト、ステント、および/または他のデバイスに結合するかまたはそれらと一体に形成することができる。
【0038】
以下に、開示される技術のいくつかの特定の例について説明する。
【0039】
開示される技術の例
図1図5Bは、人工心臓弁アセンブリ100またはその構成要素を示す。図6図11は、人工心臓弁アセンブリ100が例示的な移植方法を介して心臓の自然大動脈弁に移植される様子を示す。
【0040】
図1を参照するとわかるように、人工心臓弁アセンブリ100は、人工心臓弁102と、人工心臓弁102の弁フレーム106に結合された固着フレーム104とを備える。それらの相対的位置から、固着フレーム104は、「外側フレーム」と呼ばれることもあり、弁フレーム106は、「内側フレーム」と呼ばれることもある。人工心臓弁アセンブリ100は、半径方向に圧縮して(「圧接する」とも言う)給送構成(たとえば、図6~7)にし、患者の血管系を通して移植位置に前進させることができる。人工心臓弁アセンブリ100は、半径方向において給送構成から機能構成に拡張し、自然心臓弁輪(たとえば、図8~10)に配置することができる。人工心臓弁アセンブリ102は、血液の流れを人工心臓弁アセンブリ100を通る一方向に制限するように構成され、固着フレーム104は、人工心臓弁102を自然心臓弁組織に固定するのを助け、ならびに/または自然組織と人工心臓弁アセンブリ100との間の組織内部成長を推進するのを助けるように構成された複数の組織係合要素(たとえば、突起124)を備える。
【0041】
概要として、図1を再び参照するとわかるように、人工心臓弁102は、弁フレーム106と、弁構造108と、場合によっては1つ以上の密封部材110(「密封スカート」または「PVLスカート」と呼ぶこともできる)とを備える。弁フレーム106は、弁構造108を支持し、ならびに/または人工心臓弁アセンブリ100を自然心臓弁組織(たとえば、自然心臓弁輪および/または自然弁尖)に固定するのを助けるように構成される。弁構造108は、開いて、人工心臓弁102を通る流入端部112から流出端部114への血流を許容するように構成される。弁構造108はまた、閉じて、人工心臓弁102を通る流出端部114から流入端部112への血流を妨げるかまたは制限するように構成される。密封部材110は、弁構造108および/または自然組織の周りの血流(「弁傍漏れ」、「弁周囲漏れ」、"PVL"と呼ぶこともできる)を減少させるかまたは排除するように構成される。
【0042】
図3Aおよび図4Aは、他の構成要素を取り外した人工心臓弁102の弁フレーム106を示す。図3Aは、環状構成の弁フレーム106を示し、環状構成は弁フレーム106の機能構成に相当し、図4Aは、例示のための平坦構成の弁フレーム106を示す。弁フレーム106は、複数の相互接続されたストラットを備える。いくつかの例では、ストラットは複数のセルを形成する。たとえば、図4Aを参照するとわかるように、弁フレーム106のストラットは、クローズドセルの第1の行I、クローズドセルの第2の行II、クローズドセルの第3の行III、およびクローズドセルIVの第4の行を含むクローズドセルの複数の行を形成する。図示の例では、行Iのセルは、行IIおよびIIIのセルよりも大きいが、行IVのセルよりも小さい。行IIのセルは、行IIIのセルと同じサイズであるかまたは少なくとも実質的に同じサイズである。図示の例では、セルは概ね六角形である。他の例では、弁フレームは、セルの様々な他の数の行を備えることができ、セルは、それぞれに異なるサイズを備えることができ、ならびに/またはセルは、それぞれに異なる形状を備えることができる。
【0043】
弁フレーム106は、複数の交連窓116(たとえば、図示の例では3つ)を備える。交連窓116は、弁構造108を弁フレーム106に結合するように構成される。
【0044】
弁フレームは、様々な適切な塑性拡張可能材料(たとえば、ステンレススチール)および/または自己拡張材料(たとえば、ニチノール)のうちのいずれかで作ることができる。弁フレームが塑性拡張可能材料を備えるとき、弁フレーム(したがって、人工心臓弁アセンブリ)を圧接して給送カテーテル上で半径方向圧縮状態にし、次いで、給送装置のインフレータブルバルーンまたは同等の拡張機構によって患者の体内で拡張することができる。弁フレームが自己拡張可能材料を備えるとき、弁フレーム(したがって、、人工心臓弁アセンブリ)を圧接して半径方向圧縮状態にし、給送装置のシースまたは同等の機構によって圧縮状態に拘束することができる。人体の内部に入った後、人工心臓弁アセンブリを給送シースから前進させることができ、それによって弁はその機能サイズに自己拡張することができる。
【0045】
弁フレームを形成するのに使用することができる適切な塑性拡張可能材料には、ステンレススチール、ニッケルベース合金(たとえば、コバルトクロム合金またはニッケルコバルトクロム合金)、ポリマー、および/またはそれらの組合せが含まれる。特定の例では、弁フレームは、MP35NTM(SPS Technologiesの商標)などのニッケルコバルトクロムモリブデン合金で作られる。MP35NTMは、(ASTM F562-02が対象とする) UNS R30035と同等である。MP35NTM/UNS R30035は、ニッケル35wt%、コバルト35wt%、クロム20wt%、およびモリブデン10wt%を含む。
【0046】
弁フレームに関する追加の詳細は、参照により本明細書に組み込まれている、特許文献1および特許文献2に記載されている。
【0047】
再び図1を参照するとわかるように、弁構造108は、複数の弁尖部118(たとえば、図示の例では3つの弁尖部)を備え、弁尖部118は、集合的に弁尖構造を形成する。弁尖構造の下縁部は、起伏のある湾曲した貝殻形状を有する。縫合線120は概して、弁尖構造の貝殻形状に倣う。各弁尖部118の上縁部はタブ122を備える。弁尖部の互いに隣接する対のタブ122を接合して交連部を形成することができる。タブ122を弁フレーム106の交連窓118を通して挿入し、弁フレーム106に固定することができる。
【0048】
弁構造および弁構造を弁フレームに固定することのできる方法に関するさらなる詳細は、特許文献1および特許文献2に記載されている。
【0049】
弁尖部118は、心膜組織(たとえば、ウシ、ブタ、および/またはウマ心膜組織)、生体適合合成材料、および/または参照により本明細書に組み込まれている特許文献3に記載された様々な他の適切な自然材料または合成材料で形成することができる。
【0050】
密封部材110は、弁構造108を弁フレーム106に固定し、弁尖部118の下縁部の下方の弁フレーム106のオープンセルを通過する血液の流れを阻止することによって人工心臓弁アセンブリ100と自然弁輪との間に良好なシールを形成するのを助けることができる。図示の例では、密封部材110は、弁フレーム106の内側に配設される。他の例では、密封部材は、弁フレームの内側から弁フレームの外側まで延びることができる。追加または代替として、人工心臓弁102は、弁フレームの内側に配設された第1の密封部材(すなわち、内側スカート)と弁フレームの外側に配設された第2の密封部材(すなわち、外側スカート)とを含む、複数の密封部材を備えることができる。
【0051】
密封部材110は、繊維または布などの様々な材料で形成することができる。いくつかの例では、密封部材は、ポリエチレンテレフタレート("PET")および/または超高分子量ポリエチレン("UHMWPE")繊維で形成することができる。他の例では、様々な他の合成材料または自然材料を使用することができる。
【0052】
弁構造108は、縫合糸、ファスナなどを含む様々な方法で密封部材110に取り付けることができる。密封部材に関するさらなる詳細は、特許文献1および特許文献2に記載されている。
【0053】
図3Bを参照するとわかるように、固着フレーム104は、環状に構成された複数のストラットを備える。図2に示すように、固着フレーム104はまた、複数の組織係合要素を備える。図示の例では、組織係合要素は、固着フレーム104のストラットから延びる突起124(「アンカー」と呼ぶこともできる)である。突起124は、自然心臓弁組織に係合する(および場合によっては貫通する)ように構成される。このようにして、突起124は、人工心臓弁アセンブリ100と自然心臓弁組織との間の摩擦係合を増強し、それによって、人工心臓弁アセンブリ100が給送装置から解放された後の自然心臓弁組織に対する人工心臓弁アセンブリ100の移動を抑制するのを助けることができる。突起は、組織内部成長を向上させならびに/またはPVLを低減させるのを助けることができる。
【0054】
突起124は、固着フレーム104のストラットから様々な方向に延びることができる。たとえば、図示の例では、突起124のうちのいくつかは、ストラットから、人工心臓弁アセンブリの流入端から流出端まで延びる中央長手方向軸に対して所定の角度に延びる。いくつかの例では、突起は、ストラットに垂直であるか、または少なくとも略垂直(たとえば、80度~100度の角度を形成する)であり、これらのストラットから突起が延びている。他の例では、突起は、それぞれのストラットから様々な他の角度(たとえば、1度~79度の間)に延びることができる。たとえば、いくつかの例では、突起は、それぞれのストラットから約45度の角度に延びることができ、それによって、突起は、人工心臓弁アセンブリの流入端から流出端まで延びる中央長手方向軸に平行であるかまたは少なくとも実質的に平行である。
【0055】
突起は、様々な形状および長さを備えることができ、それによって、突起は、人工心臓弁アセンブリに対する十分な保持力を生じさせ、また、周囲の自然組織に対する潜在的な損傷を低減させる。たとえば、図示の例では、突起は、タインまたはスパイクを備える。他の例では、突起は、球形バルジおよび/または矩形状を備えることができる。追加または代替として、突起のうちの1つ以上は、湾曲形状、フック形状、十字形状、T字形、および/またはとげ形状を備えることができる。突起の形状および/またはサイズの様々な組合せを使用することができる。
【0056】
人工心臓弁アセンブリ100の固着フレーム104は、アセンブリを形成するように人工心臓弁102に取り付けられた別個の構成要素として形成することができる。図3Bおよび図4Bは、人工心臓弁102から取り外された人工心臓弁アセンブリ100の固着フレーム104を示す。図3Bは、環状構成における固着フレーム104を示し、図4Bは、平坦構成における固着フレーム104を示す。
【0057】
いくつかの例では、固着フレーム104のストラットは複数のセルを形成することができる。たとえば、図4B(平坦構成における固着フレーム104を示す)を参照するとわかるように、固着フレーム104のストラットは、クローズドセルの第1の行I、クローズドセルの第2の行II、およびクローズドセルの第3の行IIIを含む、クローズドセルの複数の行を形成する。図示の例では、第1の行Iのセルは行IIおよびIIIのセルよりも大きい。第2の行IIのセルは、第3の行IIIのセルと同じサイズであるかまたは少なくとも実質的に同じサイズである。セルは概ね六角形である。他の例では、固着フレームは、セルの様々な他の数の行(たとえば、1行、2行、4行)を備えることができ、セルは、それぞれに異なるサイズを備えることができ、ならびに/またはセルはそれぞれに異なる形状を備えることができる。
【0058】
固着フレーム104は、固着フレーム104のストラットおよび行I、II、およびIIIのセルがそれぞれ、弁フレーム106のストラットおよび行I、II、およびIIIのセルと整列されるように構成される(たとえば、図1参照)。このようにして、図2に示すように、固着フレーム104のストラット接合部126を弁フレーム106のストラット接合部128に結合することができる。図示の例では、固着フレーム104は縫合糸130によって弁フレーム106に結合される。いくつかの例では、固着フレーム104は、開口部132を備え、開口部132は、縫合糸130を受け入れるように構成することができる。図示の目的上、図1には縫合糸が示されていないことに留意されたい。他の例では、固着フレームは、様々な他の方法(たとえば、ファスナー、溶接、接着剤など)で弁フレームに結合することができる。固着フレーム104の接合部126を弁フレーム106の接合部128に結合することによって、固着フレーム104をたとえば、弁フレーム106と同時に拡張しならびに/または圧縮することができる。
【0059】
いくつかの例では、固着フレーム104は、(たとえば、縫合糸130および/またはファスナによって)弁フレーム106に取り外し可能に結合される。本明細書では、「取り外し可能に結合された」は、2つの構成要素が結合され、いずれの構成要素を塑性変形することなしに分離することができるように結合されることを意味する。他の例では、固着フレームは、(たとえば、溶接を介して)弁フレームに永久的に結合することができる。本明細書では、「永久的に結合された」は、2つの構成要素が、少なくとも一方の構成要素を塑性変形せずに分離することができないように結合されることを意味する。
【0060】
固着フレームは、様々な適切な塑性拡張可能材料(たとえば、ステンレススチールなど)および/または自己拡張材料(たとえば、ニチノール)のいずれかで作ることができる。固着フレームが塑性拡張可能材料を備えるとき、固着フレーム(したがって、人工心臓弁アセンブリ)を圧接して給送カテーテル上で半径方向圧縮状態にし、次いで、給送装置のインフレータブルバルーンまたは同等の拡張機構によって患者の体内で拡張することができる。固着フレームが自己拡張可能材料を備えるとき、固着フレーム(したがって、、人工心臓弁アセンブリ)を圧接して半径方向圧縮状態にし、給送装置のシースまたは同等の機構によって圧縮状態に拘束することができる。人体の内部に入った後、人工心臓弁アセンブリを給送シースから前進させることができ、それによって人工心臓弁アセンブリはその機能サイズに拡張することができる。
【0061】
固着フレームを形成するのに使用することができる適切な塑性拡張可能材料には、ステンレススチール、ニッケルベース合金(たとえば、コバルトクロム合金またはニッケルコバルトクロム合金)、ポリマー、および/またはそれらの組合せが含まれる。特定の例では、固着フレームは、MP35NTM(SPS Technologiesの商標)などのニッケルコバルトクロムモリブデン合金で作られる。MP35NTMは、(ASTM F562-02が対象とする) UNS R30035と同等である。MP35NTM/UNS R30035は、ニッケル35wt%、コバルト35wt%、クロム20wt%、およびモリブデン10wt%を含む。
【0062】
固着フレーム104および弁フレーム106の厚さは、図5A図5Bに概略的に示されている。図5Aは、弁フレーム106のストラットの断面図を示す。図5Bは、固着フレーム104のストラットの断面図を示す。弁フレーム106は、図5Aに示すように厚さT1を備える。固着フレーム104は、図5Bに示すように厚さT2を備える。固着フレーム104は、弁構造108によって弁フレームに加えられる荷重を支持しない(少なくとも実質的に支持しない)ので、弁フレーム106よりも比較的薄くすることができる。いくつかの例では、弁フレーム106の厚さT1は、0.3mm~0.9mmの範囲内であり、固着フレーム104の厚さT2は、0.01mm~0.1mmの範囲内である。いくつかの例では、弁フレーム106の厚さT1に対する固着フレーム104の厚さT2の比は0.3~0.9の範囲内とすることができる。フレームが一様な厚さ(または実質的に一様な厚さ)を有さない例では、厚さT1およびT2は、フレームの公称厚さまたは平均厚さとすることができる。
【0063】
固着フレームは、比較的薄く可撓性を有するので、半径方向圧縮構成において人工心臓弁の半径方向の外形をそれほど大きくしない。これによって、たとえば、人工心臓弁アセンブリ100を固着フレーム104を含まない人工心臓弁と同様に移植するのを可能にすることができる。また、同じ給送装置を使用して人工心臓弁102に固着フレーム104を結合した状態でまたは固着フレーム104を結合せずに人工心臓弁102を給送するのを可能にすることもできる。
【0064】
したがって、固着フレーム104は、自然心臓弁組織との摩擦係合を向上させることができ、また、人工心臓弁に比較的容易に結合される。したがって、固着フレーム104は、人工心臓弁102および/または給送装置を固着フレーム104を収容するように修正する必要なしに固着を向上させる。
【0065】
図6図11に示すように、人工心臓弁アセンブリ100を給送装置200に結合することができ、給送装置200を使用して人工心臓弁アセンブリ100を自然心臓弁輪に給送し、配置し、固定することができる。図示の移植手順では、人工心臓弁アセンブリ100は経大腿動脈給送手法を使用して心臓の自然大動脈弁輪に移植される。他の例では、人工心臓弁アセンブリ100を他の位置(たとえば、僧帽弁、三尖弁、および/または肺動脈弁)に移植することができ、ならびに/または他の給送手法(たとえば、経心尖、経大動脈、経中隔など)を使用して移植することができる。
【0066】
人工心臓弁アセンブリは、給送装置の遠位端部に配設されたインフレータブルバルーンを覆うように人工心臓弁アセンブリを配置し、人工心臓弁アセンブリを半径方向に圧縮して給送構成にすることによって、給送装置の遠位端部に取り外し可能に結合することができる。図6に示すように、バルーン202を備える給送装置200の遠位端部および半径方向に圧縮された人工心臓弁アセンブリ100を経皮的に患者の血管系に挿入し心臓300の方へ前進させることができる。図7に示すように、人工心臓弁アセンブリ100を心臓300の自然大動脈弁輪302内または自然大動脈弁輪302に隣接する位置に配設することができる。次いで、図8に示すように、バルーン202を膨張させて人工心臓弁102を半径方向において半径方向圧縮給送構成から半径方向拡張機能構成に拡張させることができる。人工心臓弁アセンブリ100は、半径方向外側に拡張することができ、それによって、固着フレーム104が心臓300の自然組織(たとえば、自然大動脈弁尖304)に接触する。
【0067】
固着フレーム104の突起124は、自然組織に係合することができ、それによって、人工心臓弁アセンブリ100を心臓300の自然大動脈弁輪302に対して確実に固定するのを助けることができる。人工心臓弁アセンブリ100が自然弁輪内に固定された後、図9に示すように、給送装置200のバルーン202をしぼませることができる。図10に示すように、次いで、給送装置200を患者の血管系から引き出し、人工心臓弁アセンブリ100を心臓300の自然大動脈弁輪302内に残して左心室から大動脈内への血流を規制することができる。図11に示すように、固着フレーム104の突起124は(いくつかの例では)自然組織を貫通することができる。
【0068】
固着フレーム104は人工心臓弁アセンブリ100を自然弁輪に対して固定するのを助けるので、人工心臓弁アセンブリ100との自然組織内部成長が向上する。さらに、固着フレーム104は、自然弁輪に対する人工心臓弁アセンブリ100の移動を抑制し、それによって、人工心臓弁アセンブリ100を様々な患者に移植するのを可能にする。たとえば、人工心臓弁アセンブリ100は、弁石灰化および/または狭窄の程度が、代表的な人工心臓弁を固着するのに必要な程度よりも比較的低い患者に移植することができる。
【0069】
図12は、心臓300の自然僧帽弁306に移植された人工心臓弁アセンブリ400を示す。人工心臓弁アセンブリ400は、それぞれ人工心臓弁102および固着フレーム104と同様に構成された人工心臓弁および固着フレームを備えることができる。人工心臓弁アセンブリ400は人工心臓弁アセンブリ100と概ね同様であるが、人工心臓弁アセンブリ400は自然僧帽弁に移植されるように構成される。本明細書で開示される人工心臓弁アセンブリおよび/または固着フレームは、いくつかの例では、代表的な人工心臓弁を所定の位置に保持するのに十分な生体構造を有さない自然僧帽弁内で展開するのに特に適している。この理由は、開示される人工心臓弁アセンブリおよび/または固着フレームは、自然組織との摩擦係合を増強し、それによって、代表的な人工弁が適さない場合がある自然僧帽弁のような位置でも、自然組織に対する移動に抵抗する人工心臓弁アセンブリの能力を向上させるからである。
【0070】
図13は、別の例による人工心臓弁アセンブリ500を示す。人工心臓弁アセンブリ500は、人工心臓弁102と、固着フレーム104に代わる固着フレーム502とを備える。固着フレーム502は、弁フレーム106から半径方向外側に配設される。固着フレーム502は、固着フレーム502のストラットの接合部506および弁フレーム106の接合部126において(たとえば、縫合糸504によって)弁フレーム106に結合することができる。図示の目的上、縫合糸は固着フレームのあらゆる接合部に示されているわけではないことに留意されたい。固着フレーム502を弁フレーム106に取り付けるのを容易にするために、固着フレーム502には、いくつかの例では、1つ以上の開口部508が形成されている。
【0071】
固着フレーム502は、人工心臓弁アセンブリ500と人工心臓弁アセンブリに隣接する自然組織との間の摩擦係合を増強させるように構成されるという点で固着フレーム104と同様に機能する。したがって、固着フレーム502は、1つ以上の組織係合要素510を備えることができる。組織係合要素は、様々な形状、サイズ、および/または向きを備えることができる。
【0072】
しかし、固着フレーム104とは異なり、固着フレーム502のストラットは、弁フレーム106のストラットとは整列されない(少なくとも同程度には整列されない)。固着フレーム502のセルは、固着フレーム502のセルが周方向に重なり合う弁フレーム106のセルよりも大きく、固着フレーム502のストラットは、弁フレーム106のクローズドセルのうちの1つ以上を横切って延びる。
【0073】
図示の例では、固着フレーム502は、クローズドセルの単一の行を備える。他の例では、固着フレームは、クローズドセルの2つ以上の行(たとえば、クローズドセルの2~12個の行)を備えることができる。さらに他の例では、固着フレームは、クローズドセルの行なしで形成されてもよい。たとえば、いくつかの例では、固着フレームは、クローズドセルを形成しない複数の相互接続されたストラット(たとえば、ジグザグパターンで配置されたストラット)を有してもよい。
【0074】
固着フレームの特定のストラット構成(たとえば、オープンまたはクローズドセル、行の数など)にかかわらず、固着フレームは、弁フレームとともに拡張し圧縮されるように構成することができる。このことは、たとえば、固着フレーム502の接合部506(またはノード)を弁フレーム106の接合部126と整列させ、固着フレームを弁フレームに結合することによって実現することができる。
【0075】
図14は、別の例による人工心臓弁アセンブリ600を示す。人工心臓弁アセンブリ600は、人工心臓弁102と固着フレーム104に代わる固着フレーム602とを備える。固着フレーム602は、弁フレーム106から半径方向外側に配設される。固着フレーム602は、固着フレーム602のストラット接合部および弁フレーム106のストラット接合部において(たとえば、縫合糸によって)弁フレーム106に結合することができる。図示の目的上、縫合糸が示されていないことに留意されたい。固着フレーム602を弁フレーム106に取り付けるのを容易にするために、固着フレーム602には、いくつかの例では、1つ以上の開口部604が形成されている。縫合糸は、開口部604を通って延び、ならびに/または固着フレーム602および弁フレーム106のストラットの周りを延びることができる。
【0076】
固着フレーム602は、セルの3つの周方向に延びる行を備える。固着フレーム104および固着フレーム502のセルと比較して、固着フレーム602のセルは比較的小さい。
【0077】
固着フレーム602は、人工心臓弁アセンブリ600と人工心臓弁アセンブリに隣接する自然組織との間の摩擦係合を増強させるように構成される。したがって、固着フレーム602は、複数の組織係合要素606を含む。組織係合要素は、様々な形状、サイズ、および/または向きを備えることができる。
【0078】
図15は、人工心臓弁アセンブリ700を示す。人工心臓弁アセンブリ700は、人工心臓弁102と、固着フレーム104と、外側密封部材702(「密封スカート」または「外側密封スカート」と呼ぶこともできる)とを備える。外側密封部材702は、内側密封部材110に結合し、かつ固着フレーム104および/または弁フレーム106に結合することができる。外側密封部材702は、PVLを低減させるように構成される。
【0079】
外側密封部材702は、様々な方法で内側密封部材に結合することができる。たとえば、外側密封部材702は、図示の例に示すように、裁縫704によって内側密封部材110に結合することができる。他の例では、内側および外側密封部材を連続的な材料(たとえば、PET繊維)から一体的に形成することによって外側密封部材を内側密封部材に結合することができる。
【0080】
外側密封部材702は、様々な方法で固着フレーム104および/または弁フレーム106に結合することができる。たとえば、図15に示すように、外側密封部材702は、縫合糸706によって固着フレーム104および弁フレーム106に結合される。他の例では、様々な他の種類のファスナおよび/または他の結合手段を使用して外側密封部材をフレームに結合することができる。
【0081】
図16図17は、別の例による固着フレーム800を示す。固着フレーム800をたとえば、人工心臓弁(たとえば、人工心臓弁102)に結合して人工心臓弁アセンブリを形成することができる。固着フレーム800は、人工心臓弁アセンブリと人工心臓弁アセンブリに隣接する自然組織との間の摩擦係合を増強させるように構成されるという点で固着フレーム104と同様である。固着フレーム800と固着フレーム104との1つの違いは、固着フレーム800が、固着フレーム104のようにストラットから延びる突起を有するのではなく固着フレーム800のストラットの半径方向外側に面する表面に形成された複数の溝802を備えることである。固着フレーム800の溝802は、溝802間にリッジ804を形成するように離間される。溝802およびリッジ804は、自然組織に係合することができ、代表的な人工心臓弁上に見られるような比較的平滑なフレームと比較して摩擦を増強させることができる。
【0082】
固着フレーム800は、たとえば、固着フレーム800を人工心臓弁に結合するために使用できる1つ以上の取り付け要素を備えることもできる。図示の例では、固着フレームは、固着フレームの頂点に配設された複数の開口部806を備える。固着フレーム800は、頂点における開口部の代わりにまたは開口部に加えて、(たとえば、頂点間の中間位置に)さらなる開口部および/または他の取り付け要素を備えることができる。
【0083】
図18図21Bは、別の例による固着フレーム900を示す。図18は、例示のために平坦構成における固着フレーム900を示すが、固着フレームは、(たとえば、図3Bに示す固着フレーム104の環状構成と同様の)環状構成を備えることができる。固着フレーム900をたとえば、人工心臓弁(たとえば、人工心臓弁102)に結合して人工心臓弁アセンブリを形成することができる。固着フレーム900は、固着フレーム900が人工心臓弁アセンブリと人工心臓弁アセンブリに隣接する自然組織との間の摩擦係合を増強させるように構成されるという点で固着フレーム104と同様である。
【0084】
固着フレーム900は、固着フレーム900のストラットの接合部間に延びる複数のタイン902を備える。図19を参照するとわかるように、タイン902は、対で構成され、対の各タインが周方向において互いに整列され、軸方向に互いに離間される。たとえば、図19に示すように、タインの対は、第1のタイン902aと第2のタイン902bとを備え、第1のタイン902aと第2のタイン902bは、周方向に整列され、軸方向に離間される。第1のタイン902aは、第2のタイン902bに対して固着フレーム900の第1の端904の近くに配設され、第1のタイン902aは、軸方向に固着フレーム900の第2のタイン902bおよび第2の端906に向かって延びる。第2のタイン902bは、第1のタイン902aに対して固着フレーム900の第2の端906の近くに配設され、第2のタイン902bは、軸方向に固着フレーム900の第1のタイン902aおよび第1の端904に向かって延びる。
【0085】
図20A図20Bに示すように、固着フレーム900は、半径方向に圧縮されたときに軸方向に伸長し(図20A)、半径方向に拡張されたときに軸方向に短縮される(図20B)ように構成される。固着フレーム900が軸方向に伸長し/半径方向に圧縮されると、タインの各対は互いに離れる。固着フレーム900が軸方向に短縮され/半径方向に拡張すると、タインの各対は互いに接近する。したがって、固着フレーム900を移植位置(たとえば、自然心臓弁輪)において半径方向に拡張可能させると、タインの対はたとえば、図21A図21Bに示すようにタイン同士の間に自然組織1000(たとえば、自然弁尖)を捕捉する(たとえば、挟み込む)。このようにして、固着フレーム900は、固着フレーム900が結合される人工心臓弁が確実に固定され、自然組織に対して移動しないようにするのを助けることができる。
【0086】
いくつかの例では、タインのうちの1つ以上は、固着フレームの流入端の方へ延び、タインのうちの1つ以上は、固着フレームの流出端の方へ延びる。ある例では、タインのうちの1つ以上は、固着フレームの中央長手方向軸に平行であるかまたは少なくとも実質的に平行である(たとえば、1~10度以内)。追加または代替として、タインのうちの1つ以上は、固着フレームの中央長手方向軸に対して所定の角度(たとえば、11~90度)に延びることができる。
【0087】
図22図25は、別の例による固着フレーム1100を示す。図22を参照するとわかるように、固着フレーム1100は、自然組織(たとえば、自然弁尖)に係合するように構成された複数のタイン1102を備える。図22および図23Cを参照するとわかるように、各タイン1102は固定端部1104と自由端部1106とを備える。固定端部1104は、(たとえば、ストラット接合部1108において)固着フレームのストラットに結合することができる。自由端部1106は、固定端部1104から軸方向に離れる方向に延びる。固着フレーム1100が半径方向に拡張し圧縮されると、自由端部1106は、固着フレーム1100のストラットに対して軸方向に移動することができ(たとえば、図23A図23C参照)、固着フレーム1100のストラットに対して半径方向に移動することができる(たとえば、図24A図24C参照)。
【0088】
固着フレーム1100は、タイン1102が固着フレーム1100が半径方向圧縮構成であるときに半径方向において固着フレーム1100の他のストラットに整列させ、タイン1102が固着フレーム1100が半径方向拡張構成であるときに固着フレーム1100の他のストラットから半径方向外側に延びるように構成される。
【0089】
たとえば、図23A図24A、および図25に示すように、タイン1102は、固着フレーム1100が半径方向圧縮状態であるときに固着フレーム1100のセル内に入れ子にすることができる。このことは、たとえば、固着フレーム1100が半径方向圧縮構成であるときに互いに隣接するストラット接合部1108間の距離以下の軸方向長さを有するようにタイン1102を形成することによって実現することができる。いくつかの例では、タイン1102は、固着フレーム1100が半径方向圧縮構成であるときに半径方向において他のストラットの外面1110と整列される(たとえば、同一平面上に位置する)ことができる。他の例では、タイン1102は、固着フレーム1100が半径方向圧縮構成であるときに半径方向において他のストラットの外面からずれる(たとえば、くぼむ)ことができる。
【0090】
固着フレーム1100が半径方向圧縮状態から半径方向に拡張すると、図23A図23Cに示すように、固着フレーム1100のセルは軸方向に短縮される。これによって、軸方向に整列されたストラット接合部1108が互いに接近し、タイン1102の自由端部1106が隣接するストラット接合部1108に接触する。自由端部1106および/またはストラット接合部1108は、図23Bおよび図24Bに示すようにタインの自由端部1106がストラット接合部1108に対して半径方向外側に逸れるように構成することができる。このことは、たとえば、斜面もしくはテーパ面、および/またはタインの自由端部を固着フレーム1100の外面1110の方へ案内するための他の手段を含むようにタインの自由端部1106および/またはストラット接合部1108を形成することによって実現することができる。図23Bおよび図24Bは、部分半径方向拡張状態の固着フレーム1100の部分を示し、ここでは、タインの自由端部1106がストラット接合部1108を覆うように軸方向に滑り出し、ストラット接合部1108に対して半径方向外側に逸れ始めている。図23Cおよび図24Cは、図23Bおよび図24Bと比較してさらに半径方向に拡張させた固着フレーム1100の部分を示す。この構成では、タインの自由端部1106は、ストラット接合部1108と軸方向に重なり合い、ストラット接合部1108に対して半径方向外側に逸れる。タイン1102の外側に突き出た自由端部1106は、自然組織に係合し、固着フレーム1100が結合された人工心臓弁が自然組織に対して移動するのを妨げるのを助けることができる。
【0091】
図22を参照するとわかるように、固着フレーム1100のタイン1102のすべてが同じ概略的な向きに構成され、すなわち、各タイン1102の固定端部1104は、そのそれぞれの自由端部1106よりも固着フレーム1100の第1の端部1112の近くに配設される。他の例では、各タインの固定端部が、そのそれぞれの自由端部よりも固着フレームの第2の端部1114の近くに配設されるように、固着フレームのタインのすべてを構成することができる。さらに他の例では、固着フレームは、1つ以上のタインの固定端部が、そのそれぞれの自由端部よりも固着フレーム1100の第1の端部の比較的近くに配設され、1つ以上の他のタインの固定端部が、そのそれぞれの自由端部よりも固着フレームの第2の端部の比較的近くに配設されるように構成することができる。タインの様々なパターンおよび/または向きを組み合わせることができる。
【0092】
図22および図25に示すように、固着フレーム1100は、タイン1102の5つの周方向に延びる行を備え、これらのタインは、2つのタインまたは3つのタインのいずれかを備えるタインの軸方向に整列された列として配置される。各列は、2つのタインと3つのタインを交互に備える。他の例では、様々な他の構成を使用することができる。たとえば、図26は、2つの周方向に延びる行に配置された複数のタイン1202を備える固着フレーム1200を示す。様々な他の行および/または列構成を使用することができる。
【0093】
図27図28は、人工心臓弁アセンブリ1300を示す。人工心臓弁アセンブリ1300は、人工心臓弁102と、固着フレーム104に代わる1つ以上の摩擦増強要素1302とを備える。摩擦増強要素1302は、弁フレーム106のストラットを覆うことができ、人工心臓弁アセンブリ1300に隣接する自然組織に係合し、人工心臓弁アセンブリを所定の位置に固定するのを助けることができる。
【0094】
図28を参照するとわかるように、いくつかの例では、摩擦増強要素1302の各ラップ1304が、弁フレーム106に沿って互いに離間され、ラップ間に溝が形成されている。したがって、人工心臓弁アセンブリ1300を半径方向に拡張させると、周囲の自然組織(たとえば、自然弁尖)が半径方向に延びて溝1306内に入ることができる。それによって、自然組織は、ラップ1304によって溝1306内に固着される。このようにして、摩擦増強要素1302は、周囲の自然組織に対する人工心臓弁アセンブリ1300の移動(たとえば、軸方向の変位)を妨げることができる。有利には、ラップ1304および溝1306は、たとえば、人工心臓弁アセンブリ1300に十分な保持力を与えることができ、また、周囲の自然組織に対する潜在的な損傷を最小限に抑える。
【0095】
いくつかの例では、人工心臓弁アセンブリ1300は、弁フレーム106の1つ以上のストラット部分を連続的に覆う単一の摩擦増強要素を備えることができる。他の例では、人工心臓弁アセンブリは、複数の摩擦増強要素を備えることができ、この場合、各摩擦増強要素は、弁フレーム106の1つ以上の部分を覆う。
【0096】
いくつかの例では、摩擦増強要素1302は、弁フレーム106の1つ以上の部分上に配設し(たとえば、1つ以上の部分を覆い)、弁フレーム106の1つ以上の他の部分上には配設しないようにすることができる。たとえば、図示の例に示すように、摩擦増強要素1302は、弁フレーム106の流入端部112のストラット部分を覆い、弁フレーム106の流出端部114を覆わないようにすることができる。他の例では、摩擦増強要素を弁フレームの全軸長上に配設することができる。
【0097】
摩擦増強要素1302の様々な態様は、展開後に周囲の組織に対する人工心臓弁アセンブリ1300の十分な保持力を確保するのを助けるように修正することができる。たとえば、ラップの量および密度ならびに覆われるセルまたはストラット部分の量および位置を含む被覆構成に加えて、様々な種類の材料、剛性、幅、厚さを選択することができる。
【0098】
いくつかの例では、摩擦増強要素1302をワイヤまたは縫合糸とすることができる。ワイヤまたは縫合糸は、金属線もしくはケーブル(たとえば、MP35N、ステンレススチール、ニチノールなど)および/またはポリマー繊維(たとえば、PET、UHMWPE(たとえば、Dyneema(R)ポリウレタン("PU")、ナイロンなど)で作ることができる。
【0099】
特定の例では、摩擦増強要素1302は、摩擦増強要素1302と、摩擦増強要素1302が接触する自然組織との間の摩擦を増強させるように非平滑表面パターンを有することができる。たとえば、摩擦増強要素1302は、編み表面、ねじれ表面、および/またはコイル状表面パターンを有することができる。
【0100】
摩擦増強要素1302は、様々な方向において(たとえば、右回りまたは左回り)ストラットを覆うことができる。いくつかの例では、摩擦増強要素1302のすべてが一様な方向(たとえば、右回り)を覆うことができる。他の例では、第1の摩擦増強要素1302または第1の摩擦増強要素の第1の部分が第1の方向(右回り)を覆うことができ、第2の摩擦増強要素1302または第1の摩擦増強要素の第2の部分が第2の方向(左回り)を覆うことができる。いくつかの例では、第1の摩擦増強要素と第2の摩擦増強要素は交差することができる。
【0101】
図29は、人工心臓弁アセンブリ1400を示す。人工心臓弁アセンブリ1400は、人工心臓弁102と、人工心臓弁102の周りを延びる1つ以上の摩擦増強要素1402(たとえば、図示の例では3つ)とを備える。摩擦増強要素1402を「摩擦リング1402」と呼ぶこともできる。
【0102】
摩擦リング1402は、摩擦係合によって人工心臓弁102に結合することができる。たとえば、摩擦リングは、弁フレームの外径よりもわずかに小さい内径を有することができ、摩擦リングを弾性的に変形して(たとえば、伸長させて)弁フレームに密着させることができる。摩擦リングは、弁フレームが半径方向圧縮状態から半径方向拡張状態に拡張するのを可能にするように十分に弾性変形可能にすることができる。追加または代替として、摩擦リング1402を縫合糸、接着剤、および/または他の結合手段を介して人工心臓弁102に(たとえば、弁フレーム106および/または密封部材110に)結合することができる。
【0103】
図示の例では、人工心臓弁アセンブリ1400は3つの摩擦リング1402を備える。他の例では、人工心臓弁は、3つよりも少ないかまたは多い摩擦リングを備えることができる。たとえば、人工心臓弁アセンブリは、1つ、2つ、または4~12個の摩擦リングを備えることができる。
【0104】
摩擦リング1402は、互いに離間されて摩擦リング1402同士の間に隙間1404を形成する。摩擦リング間には様々な間隔を使用することができる。たとえば、各対の隣接する摩擦リング1402間の隙間1404は、一様にするかまたは少なくとも実質的に一様にすることができる。他の例では、隙間1404を非一様にすることができる。
【0105】
複数の摩擦リング1402を備える例では、周囲の自然組織(たとえば、自然弁尖)は、人工心臓弁アセンブリ1400が拡張されて自然組織に接触するときに半径方向に隙間1404内に延びることができる。自然組織を摩擦リング1402の互いに隣接する側壁間に固定することができ、それによって、自然組織に対する人工心臓弁アセンブリ1400の軸方向の移動または変位を妨げるかまたは低減させることができる。
【0106】
人工心臓弁102に対する摩擦リング1402の軸方向位置は、一定でなくてもよい。たとえば、摩擦リング1402は、図示の例に示すよりも人工心臓弁の流入端部112に近い位置かまたは流出端部114に近い位置に配設することができる。
【0107】
いくつかの例では、摩擦リングを人工心臓弁の軸長全体にわたって配設する(たとえば、流入端部から流出端部まで離間する)ことができる。他の例では、摩擦リング1402を人工心臓弁の1つ以上の部分のみを覆うように配設し、人工心臓弁の1つ以上の他の部分を覆うようには配設しないようにすることができる。たとえば、摩擦リング1402は、人工心臓弁102の流入端部112を覆い、人工心臓弁102の流出端部114を覆わないようにすることができる。
【0108】
摩擦リングの数、密度、および位置に加えて、材料および厚さ/幅の種類を含む、摩擦リングの1つ以上の態様は、展開後に周囲の組織に対する人工心臓弁の十分な保持力を与えるように選択することができる。これらの態様のうちの1つ以上としては、経時的な隙間内の組織内部成長を推進する態様を選択することもでき、このことは、有利には、相対的な弁変位に対する追加的な安定性をもたらすことができる。
【0109】
いくつかの例では、摩擦リングは、シリコーン、PU、および/または自然生体構造に対して展開されたときに人工心臓弁アセンブリ1400の軸方向変位を妨げるように周囲の生体構造に対して十分な摩擦を生じるように構成された別の材料などのポリマー材料を備える。いくつかの例によれば、摩擦リングはOリングの形で設けることができる。
【0110】
いくつかの例では、摩擦リングのうちの1つ以上は、それぞれに異なる材料で作ることができ、ならびに/または1つ以上の他の摩擦リングとは異なる寸法(たとえば、厚さ)を有することができる。
【0111】
本明細書で開示される様々な固着フレームおよび摩擦増強要素は、人工心臓弁の構造的な修正を必要とせず、かつこれらの構成要素を人工心臓弁に比較的容易に結合することができるので、開示されるデバイスおよび方法は有利には、製品(たとえば、Edwards Sapien 3(R)人工心臓弁)の既存のラインを利用して、開示される摩擦増強要素のうちの1つ以上および/または固着フレームのうちの1つを備える人工心臓弁アセンブリを形成するのを可能にする。したがって、本明細書で開示されるデバイスおよびアセンブリは、人工心臓弁の移動を抑制するだけでなく、モジュール式で費用効果が高く、ならびに/または実施するのが比較的簡単である。
【0112】
図30図32は、人工心臓弁および/または人工心臓弁アセンブリ用のフレーム1500を示す。フレーム1500は、たとえば、弁フレーム106の代わりに人工心臓弁102の弁フレームとして使用することができる。別の例として、フレーム1500を固着フレーム104の代わりに人工心臓弁アセンブリ100の固着フレームとして使用することができる。
【0113】
概要として、フレーム1500は、フレーム1500が半径方向圧縮構成であるときに円筒形または少なくとも実質的に円筒形の外形を有するように構成される(たとえば、図32)。フレーム1500はまた、フレーム1500が半径方向拡張構成であるときに非円筒形の外形を有するように構成される(たとえば、図30)。このことは、たとえば、1つ以上の塑性変形可能部分と1つ以上の弾性変形可能部分とを含むようにフレーム1500を形成することによって実現することができる。したがって、フレーム1500は、半径方向圧縮構成において円筒形状を有し(たとえば、図32)、フレーム1500が半径方向拡張構成であるときに塑性変形可能部分が塑性変形することに起因して非円筒形状(または円筒形とは多少異なる形状)を有することができる。
【0114】
より詳細には、フレーム1500は、複数のストラット形成セルを備え、セルのうちの1つ以上は、ストラット接合部1504に取り付けられた固着部材1502を有する。固着部材1502は、塑性変形可能材料(たとえば、MP35NTM、ステンレススチールなど)で形成され、一方、フレーム1500の1つ以上の他の部分は、弾性変形可能材料(たとえば、ニチノール)から形成される。固着部材1502は、軸方向において互いに接近するストラット接合部1504によって加えられる固着部材1502に対する軸方向圧縮力に起因してフレーム1500の半径方向拡張の間塑性変形(たとえば、座屈)するように構成される。座屈によって、固着部材1502は、フレーム1500の中央長手方向軸に対して半径方向に(外側または内側のいずれかに)広がり、それによって、フレーム1500は円筒形構成(たとえば、図32)から非円筒形構成(たとえば、図30)に移動する。言い換えれば、フレームが半径方向拡張構成であるときには固着部材の中間部分が固着部材の端部に対して半径方向にずれる。
【0115】
図示の例では、固着部材1502は、非変形状態であるときには直線状である(たとえば、垂直)(たとえば、図32)。他の例では、固着部材は様々な他の形状を備えることができる。たとえば、いくつかの例では、固着部材は"S"字形を備えることができる。
【0116】
いくつかの例では、固着部材1502は、特定の位置において固着部材を塑性変形させるように構成された1つ以上の座屈ガイドを備えることができる。たとえば、図32に示すように、固着部材1502は、孔1506の形の座屈ガイドを備える。固着部材1502は、孔1506に隣接する位置では、材料が少ないことに起因して固着部材1502が比較的脆弱であるので、フレーム1500を半径方向に拡張させたときに孔1506において座屈する傾向がある。図示の目的上、孔1506は図30図31に示されていないことに留意されたい。
【0117】
図30図31に示すように、固着部材1502のうちのいくつかは、固着部材1502の頂点1508がそれぞれのストラット接合部1504から半径方向外側に配設されるように向きを定められ、固着部材1502のうちのいくつかの他の固着部材は、固着部材1502の頂点1508がそれぞれのストラット接合部1504から半径方向内側に配設されるように向きを定められる。半径方向内側に面する固着部材および/または半径方向外側に面する固着部材の数および/またはパターンは一定でなくてもよい。たとえば、いくつかの例では、固着部材のうちのすべてが半径方向外側に延びることができる。他の例では、固着部材のうちのすべてが半径方向内側に延びることができる。他の例では、フレームの流入端部における固着部材のうちのすべてが半径方向外側に延びることができ、フレームの流出端部における固着部材のうちのすべてが半径方向内側に延びることができる。さらに他の例では、固着部材は、交番インアウトパターン(たとえば、ワンインツーアウトパターン、または逆のパターン)で構成することができる。
【0118】
特定の例では、座屈ガイドは、固着部材が塑性変形するときに固着部材を特定の方向(たとえば、半径方向内側または半径方向外側)に送るのを助けるように構成することができる。たとえば、固着部材1502は、孔1506の代わりにまたは孔1506に加えて、固着部材の半径方向内側に面する表面および/または半径方向外側に面する表面に形成された1つ以上の溝、スロット、ノッチなどを備えることができる。そのような例では、固着部材は、ノッチまたは溝から座屈する傾向がある。たとえば、溝が半径方向内側に面する表面に形成された固着部材は、固着部材の頂点が半径方向外側に広がるように座屈する傾向がある。別の例として、溝が半径方向外側に面する表面に形成された固着部材は、固着部材の頂点が半径方向内側に広がるように座屈する傾向がある。
【0119】
いくつかの例では、フレーム1500は、図32に示す円筒形給送構成に形成することができる。フレーム1500は、給送装置のインフレータブルバルーン上に圧接することができる。フレーム1500は、バルーンを膨張させ、固着部材1502を塑性変形させることによって給送構成から非円筒形機能構成に移動させることができる。固着部材1502は、移植位置においてフレームを囲む自然組織に係合することができる。このようにして、固着部材1502は、自然組織に対するフレーム1500(したがって、人工心臓弁)の移動を妨げるかまたは抑制するのを助けることができる。
【0120】
フレーム1500は、例示的な例としてのみ働く。他の例では、フレームは、材料の種類および変形可能性の程度および方向に影響を与える寸法などの、フレームの挙動に影響するいくつかのパラメータに従って塑性変形可能部分を設計し、ならびに/あるいは塑性変形可能部分の総数および分布、フレームに沿った取り付け点、および/またはフレームのセルもしくは他の構成要素に対する向きを含め、フレームの他の構成要素への塑性変形可能部分の取り付けを設計することによって任意の所望の拡張形態に形状設定することができる。
【0121】
本明細書で開示する人工心臓弁アセンブリは、自然組織に対する移動に抵抗することができる。したがって、開示されるアセンブリは、たとえば、代表的な人工心臓弁(たとえば、自然僧帽弁)の十分な構造を形成しない比較的狭窄の目立たない生体構造および/または移植位置を有する患者に使用することができる。さらに、本明細書で開示される固着フレームおよび/または他の組織係合要素は、たとえば、人工心臓弁に取り付ける(たとえば、組み込む)ことができる。したがって、開示されるデバイスおよび方法は、安定性を向上させ、人工心臓弁の移動を抑制し、また、実施するのが比較的簡単であり費用効果が高い。
【0122】
本明細書で説明するデバイスおよび方法は主として、自然心臓弁(たとえば、大動脈、僧帽弁、三尖弁、および/または肺動脈弁)内の移植向けに構成された人工心臓弁アセンブリを対象としているが、開示されるデバイスおよび方法は、血管内を含む様々な他の位置への移植向けに構成できることに留意されたい。たとえば、ある例では、固着フレーム(たとえば、固着フレーム104)は大静脈内の移植向けに構成することができる。
【0123】
いくつかの例では、ドッキングアセンブリが提供される。ドッキングアセンブリは、補綴ドッキングデバイス、本明細書で開示される固着フレームのうちの1つ以上、および/または本明細書で開示される組織係合要素のうちの1つ以上を備えることができ、固着フレームおよび組織係合要素は(たとえば、縫合糸、ファスナ、接着剤、および/または他の結合手段によって)補綴ドッキングデバイスに結合することができる。
【0124】
他の例では、グラフトアセンブリが提供される。グラフトアセンブリは、グラフト(たとえば、大動脈グラフト)、本明細書で開示される固着フレームのうちの1つ以上、および/または本明細書で開示される組織係合要素のうちの1つ以上を備えることができ、固着フレームおよび組織係合要素は(たとえば、縫合糸、ファスナ、接着剤、および/または他の結合手段によって)グラフトに結合することができる。
【0125】
図33A図33Bは、比較的短い固着フレーム1600を示し、図34は、比較的長い固着フレーム1700を示す。固着フレーム1600および固着フレーム1700はそれぞれ、固着フレームのストラットから延びる突起1602、1702を備え、突起1602、1702は、固着フレーム104の突起124と同様に構成することができる。
【0126】
いくつかの例では、ドッキングデバイスなどの補綴デバイスは、自然組織に接触し係合するように構成された比較的短い外部フレームと、内部で展開することのできる人工弁を保持するように構成された内部フレームとを含むことができる。いくつかのそのような例では、比較的短い固着フレーム1600をドッキングデバイスの外側フレームに結合する(たとえば、縫合する)ことができる。
【0127】
いくつかの補綴デバイスは、2つの部分(たとえば、近位部および遠位部)を有するフレームを備え、各部分は、より長いストラット部分によって2つの部分の間に取り付けられた比較的短いサブフレーム部分を含む。いくつかのそのような例では、比較的短い固着フレーム1600のうちの2つを使用することができる(たとえば、各固着フレームがそれぞれのサブフレーム部に取り付けられる)。
【0128】
グラフトおよび/またはステントなどのいくつかの補綴デバイスは、比較的長いフレームを含む。そのような例では、比較的長い固着フレーム1700をグラフトまたはステントに結合することができる。
【0129】
図35は、一例による人工弁1800を示す。人工弁1800は、フレーム1802と、流入端部1804と、流出端部1806とを備える。人工心臓弁1800は、弁構造(たとえば、上述の弁構造108)と内側密封スカート(たとえば、上述の内側スカート110)とを含むこともできる。ただし、これらの構成要素は、図示の目的上省略されている。フレーム1802は、たとえば、ステンレススチールまたはコバルトクロム合金から形成された塑性拡張可能フレームとすることができ、バルーンまたは他の拡張機構を使用して半径方向拡張させることができる。したがって、人工弁1800をバルーン拡張可能弁と呼ぶことができる。人工弁に関するさらなる詳細は、特許文献1および特許文献2で開示されている。他の例では、人工弁1800は、ニチノールなどの形状記憶材料で作られたフレームを有する自己拡張可能弁とすることができる。
【0130】
図35に示すように、フレーム1802は、いくつかの例では、フレーム1802の選択されたストラットから延びる複数の固着部材1803(または突起)を備える。他の例では、固着部材1803は、人工心臓弁1800のフレーム1802に結合された固着フレーム上に配設することができる。固着部材1803は、人工弁1800を選択された移植部位の自然組織に固定し、ならびに/または自然組織と人工弁1800との間の組織内部成長を推進するのを助けるように構成することができる。固着部材1803は、フレーム1802のストラットから様々な方向に延びることができる。たとえば、いくつかの例では、固着部材1803のうちの1つ以上は、人工心臓弁アセンブリの流入端から流出端まで延びる中央長手方向軸に対して所定の角度でストラットから延びることができる。いくつかの例では、固着部材1803は、ストラットに垂直にするかまたは少なくとも略垂直にする(たとえば、80~100度の角度に形成する)ことができ、このストラットから固着部材1803が延びている。他の例では、固着部材1803は、そのそれぞれのストラットから様々な他の角度(たとえば、1~79度)で延びることができる。たとえば、いくつかの例では、固着部材は、そのそれぞれのストラットから約45度の角度で延びることができ、それによって、固着部材は、人工心臓弁アセンブリの流入端から流出端まで延びる中央長手方向軸に平行になるかまたは少なくとも略平行になる。
【0131】
フレーム1802(またはフレームの一部)を固着フレームとして構成することができる。したがって、フレーム1802は、いくつかの例では、別のフレーム(たとえば、人工心臓弁のフレーム、ステント、またはグラフト)に結合することができる。
【0132】
固着部材1803は、様々な形状および長さを備えることができ、それによって、突起は、人工心臓弁アセンブリに十分な保持力をもたらし、同時に周囲の組織への潜在的な損傷を抑制する。たとえば、図示の例では、固着部材1803は、タインまたはスパイクを備える。他の例では、固着部材1803は、球形バルジおよび/または矩形状を備えることができる。追加または代替として、固着部材1803うちの1つ以上は、湾曲形状、フック形状、十字形状、T字形、および/またはとげ形状を備えることができる。固着部材1803の形状および/またはサイズの様々な組合せを使用することができる。
【0133】
人工弁1800は、フレーム(および/または固着フレーム)の外側に配設された密封部材もしくは外側スカートの代わりにまたは密封部材もしくは外側スカートに加えて、1つ以上の拡張可能ヤーンまたは縫合糸1808を備えることができる。図36Aおよび図36Bを参照するとわかるように、縫合糸1808は、弾力的に伸縮自在であり、張力を加えたときに張力付与軸方向伸長状態に配置することができ(図36A)、張力を除去したときに弛緩非張力付与状態に配置することができる(図36B)。張力を加えて配置すると、縫合糸1808が軸方向に伸長して直径が短くなる(図36A)が、張力を解除すると(たとえば、縫合糸が弛緩状態になると)、縫合糸の直径が大きくなり、けば立って膨らみ(図36B)、流体(たとえば、血液)を吸収する能力が向上する。縫合糸1808は、自然弁輪の組織を密封し、弁傍漏れを低減させるのを助けることによって、人工弁用の密封部材として働くことができる。ある例では、縫合糸1808は、複数の仮撚加工フィラメントを備えることができ、これらのフィラメントをたとえば、撚り合わせるかまたは編み込むことができる。仮撚加工フィラメントは、たとえばピン仮撚加工を介して仮撚加工することができる。たとえば、いくつかの例では、拡張可能縫合糸は、フィラメントに微細なひだを形成するように撚り合わされ(たとえば、1メートル当たり3000~4000回)熱処理された複数のフィラメントを含む伸加工糸(DTY)を備える。他の例では、フィラメントをギア加工および/またはエアー加工を介して仮撚加工することができる。
【0134】
図35に示すように、人工弁1800は、フレーム1802の外面を区画し、人工弁1800の長手方向軸に沿って互いに離間された複数の縫合糸1808を備える。人工弁1800は、垂直に延びる縫合糸1810をさらに備えることができる。垂直に延びる縫合糸1810は、フレーム1802のそれぞれのセル1814の互いに向かい合う接合部1812間を延びることができる。図示の例では、フレームの外面上の密封部材が省略されている。縫合糸1808は、代表的な外側スカートと比較してフレーム1802の外面のより小さい表面積を覆い、それによって有利には、固着部材1803が自然組織に係合するのを可能にする。
【0135】
上述のように、いくつかの例では、縫合糸1808は、拡張可能縫合糸を形成するように組み合わされた(たとえば、撚り合わされならびに/または編み込まれた)複数の仮撚加工フィラメントを備える。縫合糸1808は、任意の数のフィラメントを備え、たとえば、2~20本のフィラメントを備えることができる。特定の例では、縫合糸は12本のフィラメントを備える。張力を加えると、縫合糸1808は、人工弁の軟性構成要素を互いに固定するか、または軟性構成要素を弁のフレームに固定するのに一般に使用される縫合糸(たとえば、2-0、3-0、または4-0縫合糸)の直径と同等の直径、たとえば、約0.15mm~約0.3mmの直径を有することができる。いくつかの特定の例では、拡張可能縫合糸1808はポリエステルを含むことができる。
【0136】
いくつかの例では、縫合糸1808の各々は、ピン仮撚加工ポリエチレンテレフタレート(PET)の8本のフィラメントまたは8つの「末端」を備えることができる。フィラメントの線質量密度は1/40Den/27Filである。フィラメントは、交番キャリア張力を用いて(たとえば、編み込みの間、フィラメントのうちの数本を張力下に保持し、一方、他のフィラメントを弛緩した状態に保持することができ、または数本のフィラメントを第1の張力下に保持し、一方、他のフィラメントを第2の張力下に保持することができる、など)編み密度を1インチ当たり10ピック(PPI)として編み込んで縫合糸1808を形成することができる。縫合糸1808をスプールの周りに巻き付けた状態でたとえば320°Fで熱処理することができる。他の例では、縫合糸を個々のユニットにおいてたとえば320°Fで熱処理することができる。
【0137】
他の例では、縫合糸1808の各々は、線質量密度が1/20Den/27Filであるピン仮撚加工PETの12本のフィラメントまたは「末端」を備えることができる。いくつかの例では、フィラメントを交番キャリア張力を用いて編み密度を10PPIにして編み込んで縫合糸1808を形成することができる。他の例では、フィラメントを交番キャリア張力および可変ピック密度(たとえば、可変PPI)を用いて編み込んで縫合糸1808を形成することができる。縫合糸1808をスプールの周りに巻き付けた状態で、たとえば320°Fで熱処理することができる。他の例では、縫合糸を個々のユニットにおいて320°Fで熱処理することができる。
【0138】
さらに他の例では、縫合糸1808の各々は、線質量密度が1/20Den/27Filであるピン仮撚加工PETの12本のフィラメントまたは「末端」を備えることができる。いくつかの例では、フィラメントを交番キャリア張力および可変ピック密度(たとえば、可変PPI)を用いて編み込んで縫合糸を形成することができる。他の例では、フィラメントを交番キャリア張力を用いて編み密度を10PPIにして編み込んで縫合糸1808を形成することができる。縫合糸1808をスプールの周りに巻き付けた状態で、たとえば320°Fで熱処理することができる。他の例では、縫合糸を個々のユニットにおいて320°Fで熱処理することができる。
【0139】
いくつかの例では、縫合糸1808が非張力付与拡張状態でフレームの外面上に組み付けられる(図36B)。人工弁1800が選択された移植部位に移植された後、張力が加えられていないまたは弛緩した縫合糸1808(図36B)は、組織内部成長を推進し、PVLを低減させることができる。いくつかの例では、弛緩した縫合糸1808は、血液を吸収して膨張することができる。図36Bに示すような弛緩構成のときは、縫合糸1808のヤーンまたはフィラメントが互いに弛緩し、縫合糸1808の長手方向軸から半径方向外側に広がり、けば立ったまたは膨らんだテクスチャを形成する。弛緩した縫合糸1808は、PVLを防止または軽減するように構成された密封部材として働くことができる。
【0140】
縫合糸1808の選択された部分が張力付与構成に保持され、他の部分が弛緩構成に保持されるように、縫合糸1808をフレーム上に組み付けることができる。縫合糸1808の張力付与部分および弛緩部分は、各張力付与部分または弛緩部分の末端をたとえばフレームに「ロックし」、縫合糸1808をフレームに結び、縫合糸1808をフレームの接合部もしくはストラットの周りに巻き付け、ならびに/または追加の縫合糸を使用して縫合糸1808の一部を結わえて縫合糸1808のある部分を弛緩構成もしくは張力付与構成に維持することによって、縫合糸1808の張力付与状態または弛緩状態に保持することができる。たとえば、いくつかの例では、フレームの外面上の縫合糸1808の部分を弛緩状態に保持して密封を推進することができ、一方、フレームの内側の縫合糸1808の部分を張力付与状態に保持してひだ外形を低減させ、ならびに/または他の構成要素(たとえば、内側スカート)をフレームにぴったりと固定することができる。張力付与部分を形成する際、縫合糸1808を第1の位置においてフレームにロックし(たとえば、結ぶかまたはストラットもしくは接合部の周りに巻き付け)、ぴんと引張り、次いで第2の位置においてフレームにロックすることができる。弛緩部分を形成する際、縫合糸1808を第1および第2の位置においてフレームにロックし、第1の位置と第2の位置との間の縫合糸の部分を非張力付与弛緩状態にすることができる。単一の縫合糸1808を使用して人工弁上の様々な位置に1つ以上の張力付与部分および1つ以上の弛緩部分を形成することができる。
【0141】
図35の図示の例はリングとして構成された4本の縫合糸1808を示すが、他の例では、4本よりも多いかまたは少ない縫合糸を使用できることに留意されたい。たとえば、いくつかの例では、人工弁は、人工弁1800の流入端部1804を区画する単一の拡張可能縫合糸を備えることができる。
【0142】
開示される技術のさらなる例
この出願では、開示される主題の上述の実装形態を考慮して、以下に列挙するさらなる例を開示する。孤立した例の1つの特徴または組み合わされた例の2つ以上の特徴、場合によっては、1つ以上のさらなる例の1つ以上の特徴との組合せが、同じくこの出願の開示内のさらなる例であることに留意されたい。
【0143】
例1
人工心臓弁アセンブリは、人工心臓弁と固着フレームとを備える。弁フレームと弁構造とを備える人工心臓弁。複数のストラットを備え、半径方向圧縮給送構成から半径方向拡張構成に拡張可能な弁フレーム。複数の弁尖部を備え、弁フレーム内に半径方向に配設され、弁フレームに結合された弁構造。弁構造は、人工心臓弁アセンブリを通る第1の方向への血流を許容し、人工心臓弁アセンブリを通る第2の方向への血流を制限するように構成される。複数のストラットを備え、弁フレームから半径方向外側に配設され、弁フレームに結合された固着フレーム。固着フレームのストラットは、自然組織に接触して人工心臓弁アセンブリを移植位置に固定するのを助けるように構成された1つ以上の組織係合要素を備える。
【0144】
例2
組織係合要素は、固着フレームのストラットから延びる1つ以上の突起を含む、本明細書の任意の例、特に例1の人工心臓弁アセンブリ。
【0145】
例3
突起は、人工心臓弁アセンブリの中央長手方向軸に対して所定の角度でストラットから延びる、本明細書の任意の例、特に例2の人工心臓弁アセンブリ。
【0146】
例4
突起は、人工心臓弁アセンブリの中央長手方向軸に少なくとも略平行になるようにストラットから延びる、本明細書の任意の例、特に例2の人工心臓弁アセンブリ。
【0147】
例5
組織係合要素は、固着フレームのストラットに形成された複数の溝を含む、本明細書の任意の例、特に例1または例2の人工心臓弁アセンブリ。
【0148】
例6
溝は、溝同士の間にリッジを形成するように互いに対して離間される、本明細書の任意の例、特に例5の人工心臓弁アセンブリ。
【0149】
例7
組織係合要素は、固着フレームのストラットから延びる複数のタインを含み、タインは、互いに軸方向に整列されたタインの対として配置される、本明細書の任意の例、特に例1~例6のうちのいずれか1つの人工心臓弁アセンブリ。
【0150】
例8
タインの各対は、第1のタインと第2のタインとを含み、第1のタインは、第2のタインと比較して人工心臓弁アセンブリの流入端部の近くに配設され、第1のタインと第2のタインは、固着フレームが半径方向圧縮構成であるときに第1の距離だけ離間され、第1のタインと第2のタインは、固着フレームが半径方向拡張構成であるときに第2の距離だけ離間され、第2の距離は第1の距離よりも短い、本明細書の任意の例、特に例7の人工心臓弁アセンブリ。
【0151】
例9
固着フレームは、複数のセルを備え、セルは、固着フレームが半径方向圧縮構成であるときに第1の軸長を有し、固着フレームが半径方向拡張構成であるときに第2の軸長を有し、第2の軸長は、第1の軸長よりも短く、タインの各対は、それぞれのセル内に配設され、タインの各対の第1のタインと第2のタインの結合軸長は、タインの対が配設されるそれぞれのセルの第2の軸長よりも短い、本明細書の任意の例、特に例8の人工心臓弁アセンブリ。
【0152】
例10
組織係合要素は、複数のタインを含み、タインは、固着フレームが半径方向圧縮構成であるときに固着フレームのストラットに半径方向に整列されるように構成され、タインは、固着フレームが半径方向拡張構成であるときに固着フレームのストラットから半径方向外側に延びるように構成される、本明細書の任意の例、特に例1~例6のうちのいずれか1つの人工心臓弁アセンブリ。
【0153】
例11
固着フレームは、複数のセルを備え、セルは、固着フレームが半径方向圧縮構成であるときに第1の軸長を有し、固着フレームが半径方向拡張構成であるときに第2の軸長を有し、第2の軸長は、第1の軸長よりも短く、タインは、セルの第1の軸長よりも短く、セルの第2の軸長よりも長い軸長を有する本明細書の任意の例、特に例10の人工心臓弁アセンブリ。
【0154】
例12
タインは、固着フレームが半径方向拡張構成であるときにセルを画定するフレームのストラットと軸方向に重なり合う、本明細書の任意の例、特に例11の人工心臓弁アセンブリ。
【0155】
例13
固着フレームのストラットは、固着フレームが半径方向圧縮構成から半径方向拡張構成に移動するときにタインをストラットに対して半径方向外側に送るように構成された1つ以上の傾斜面を備える、本明細書の任意の例、特に例10~例12のうちのいずれか1つの人工心臓弁アセンブリ。
【0156】
例14
タインは、固着フレームが半径方向圧縮構成から半径方向拡張構成に移動するときにタインをストラットに対して半径方向外側に送るように構成された傾斜面を備える、本明細書の任意の例、特に例10~例13のうちのいずれか1つの人工心臓弁アセンブリ。
【0157】
例15
各タインは、固定端部と自由端部とを備える、本明細書の任意の例、特に例10~例14のうちのいずれか1つの人工心臓弁アセンブリ。
【0158】
例16
タインのうちの1つ以上は、自由端部が、固定端部と比較して固着フレームの流出端部の近くに配設されるように向きを定められる、本明細書の任意の例、特に例15の人工心臓弁アセンブリ。
【0159】
例17
タインのうちの1つ以上は、自由端部が、固定端部と比較して固着フレームの流入端部の近くに配設されるように向きを定められる、本明細書の任意の例、特に例15または例16の人工心臓弁アセンブリ。
【0160】
例18
各タインは、固着フレームが半径方向圧縮構成であるときに完全に固着フレームのそれぞれのセル内に配設され、各タインは、固着フレームが半径方向拡張構成であるときに固着フレームのそれぞれのセルから部分的に延びる、本明細書の任意の例、特に例10~例17のうちのいずれか1つの人工心臓弁アセンブリ。
【0161】
例19
弁フレームまたは固着フレームに結合された密封部材をさらに備える、本明細書の任意の例、特に例1~例18のうちのいずれか1つの人工心臓弁アセンブリ。
【0162】
例20
密封部材は、内側スカートと外側スカートとを備え、内側スカートは、弁フレームから半径方向内側に配設され、外側スカートは、固着フレームから半径方向外側に配設される、本明細書の任意の例、特に例19の人工心臓弁アセンブリ。
【0163】
例21
固着フレームは、弁フレームに取り外し可能に結合される、本明細書の任意の例、特に例1~例20のうちのいずれか1つの人工心臓弁アセンブリ。
【0164】
例22
固着フレームは、縫合糸によって弁フレームに取り外し可能に結合される、本明細書の任意の例、特に例21の人工心臓弁アセンブリ。
【0165】
例23
固着フレームに結合された1つ以上の摩擦増強要素をさらに備える、本明細書の任意の例、特に例1~例22のうちのいずれか1つの人工心臓弁アセンブリ。
【0166】
例24
摩擦増強要素は、固着フレームのストラットおよび/または弁フレームのストラットの周りを覆う、本明細書の任意の例、特に例23の人工心臓弁アセンブリ。
【0167】
例25
摩擦増強要素は、金属線を含む、本明細書の任意の例、特に例24の人工心臓弁アセンブリ。
【0168】
例26
摩擦増強要素は、固着フレームを区画する1つ以上のリングを含む、本明細書の任意の例、特に例23~例25のうちのいずれか1つの人工心臓弁アセンブリ。
【0169】
例27
摩擦増強要素は、固着フレームを区画する複数のリングを含み、リングは、軸方向において互いに対して離間されている、本明細書の任意の例、特に例26の人工心臓弁アセンブリ。
【0170】
例28
弁フレームは、1つ以上のセルを備え、固着フレームは、1つ以上のセルを備え、固着フレームの1つ以上のセルは、周方向および軸方向において弁フレームの1つ以上のセルと整列される、本明細書の任意の例、特に例1~例27のうちのいずれか1つの人工心臓弁アセンブリ。
【0171】
例29
弁フレームは、1つ以上のセルを備え、固着フレームは、1つ以上のセルを備え、固着フレームの1つ以上のセルは、周方向および軸方向において弁フレームの1つ以上のセルからずれる、本明細書の任意の例、特に例1~例27のうちのいずれか1つの人工心臓弁アセンブリ。
【0172】
例30
弁フレームは、1つ以上のセルを備え、固着フレームは、1つ以上のセルを備え、固着フレームの1つ以上のセルは、弁フレームの1つ以上のセルよりも小さい、本明細書の任意の例、特に例1~例27のうちのいずれか1つの人工心臓弁アセンブリ。
【0173】
例31
弁フレームは、1つ以上のセルを備え、固着フレームは、1つ以上のセルを備え、固着フレームの1つ以上のセルは、弁フレームの1つ以上のセルよりも大きい、本明細書の任意の例、特に例1~例27のうちのいずれか1つの人工心臓弁アセンブリ。
【0174】
例32
弁フレームは、第1の軸長を備え、固着フレームは、第2の軸長を備え、固着フレームの第2の軸長は、弁フレームの第1の軸長よりも短い、本明細書の任意の例、特に例1~例31のうちのいずれか1つの人工心臓弁アセンブリ。
【0175】
例33
固着フレームは、弁フレームの流入端部上に配設され、軸方向において弁フレームの流出端部から離間される、本明細書の任意の例、特に例32の人工心臓弁アセンブリ。
【0176】
例34
固着フレームは、弁フレームの流出端部上に配設され、軸方向において弁フレームの流入端部から離間される、本明細書の任意の例、特に例32の人工心臓弁アセンブリ。
【0177】
例35
弁フレームは、第1の軸長を備え、固着フレームは、第2の軸長を備え、弁フレームの第1の軸長と固着フレームの第2の軸長は、少なくとも実質的に等しい、本明細書の任意の例、特に例1~例31のうちのいずれか1つの人工心臓弁アセンブリ。
【0178】
例36
弁フレームは、第1の厚さを備え、固着フレームは、第2の厚さを備え、第2の厚さは第1の厚さよりも薄い、本明細書の任意の例、特に例1~例35のうちのいずれか1つの人工心臓弁アセンブリ。
【0179】
例37
弁フレームは、第1の厚さを備え、固着フレームは、第2の厚さを備え、第1の厚さに対する第2の厚さの比は、0.3~0.9の範囲内である、本明細書の任意の例、特に例1~例35のうちのいずれか1つの人工心臓弁アセンブリ。
【0180】
例38
人工心臓弁アセンブリ用の固着フレームであって、複数の相互接続されたストラットと、複数の突起とを備える固着フレーム。複数の相互接続されたストラットは、半径方向圧縮構成から半径方向拡張構成に移動させられ、人工心臓弁に結合されるように構成される。複数の突起は、ストラットから延び、移植位置において自然組織に係合するように構成される。
【0181】
例39
突起のうちの1つ以上は、スパイクを備える、本明細書の任意の例、特に例38の固着フレーム。
【0182】
例40
突起のうちの1つ以上は、球形のバルジを備える、本明細書の任意の例、特に例38または例39の固着フレーム。
【0183】
例41
突起のうちの1つ以上は、矩形を備える、本明細書の任意の例、特に例38~例40のうちのいずれか1つの固着フレーム。
【0184】
例42
突起のうちの1つ以上は、湾曲形状を備える、本明細書の任意の例、特に例38~例41のうちのいずれか1つの固着フレーム。
【0185】
例43
突起のうちの1つ以上は、フック形状を備える、本明細書の任意の例、特に例38~例42のうちのいずれか1つの固着フレーム。
【0186】
例44
突起のうちの1つ以上は、とげ形状を備える、本明細書の任意の例、特に例38~例43のうちのいずれか1つの固着フレーム。
【0187】
例45
突起のうちの1つ以上は、十字形を備える、本明細書の任意の例、特に例38~例44のうちのいずれか1つの固着フレーム。
【0188】
例46
突起のうちの1つ以上は、T字形を備える、本明細書の任意の例、特に例38~例45のうちのいずれか1つの固着フレーム。
【0189】
例47
ストラットは、固着フレームを人工心臓弁に結合するために使用することのできる縫合糸またはファスナを受け入れるように構成された開口部を備える、本明細書の任意の例、特に例38~46のうちのいずれか1つの固着フレーム。
【0190】
例48
ストラットは、クローズドセルを形成する、本明細書の任意の例、特に例38~例47のうちのいずれか1つの固着フレーム。
【0191】
例49
ストラットは、クローズドセルの1つ以上の周方向に延びる行を形成する、本明細書の任意の例、特に例38~例48のうちのいずれか1つの固着フレーム。
【0192】
例50
ストラットは、クローズドセルの厳密に3つの周方向に延びる行を形成する、本明細書の任意の例、特に例38~例49のうちのいずれか1つの固着フレーム。
【0193】
例51
人工心臓弁アセンブリ用の固着フレームであって、ストラットの半径方向外側に面する表面に形成された複数の溝を備える複数の相互接続されたストラットを備える固着フレーム。ストラットは、人工心臓弁に結合されるように構成される。固着フレームは、半径方向圧縮構成から半径方向拡張構成に拡張させることができる。溝は、固着フレームが移植位置において半径方向に拡張されるときに自然組織を受け入れるように構成される。
【0194】
例52
溝は、ストラットが溝同士の間にリッジを備えるように互いに離間される、本明細書の任意の例、特に例51の固着フレーム。
【0195】
例53
人工心臓弁アセンブリ用の固着フレームであって、複数の相互接続されたストラットと、ストラットから延びる複数のタインとを備える固着フレーム。複数の相互接続されたストラットは、半径方向圧縮構成から半径方向拡張構成に移動させられ、人工心臓弁に結合されるように構成される。タインは、第1のタインと第2のタインとを含む対として配置される。第1のタインと第2のタインは、軸方向において互いに整列される。第1のタインと第2のタインは、ストラットが半径方向圧縮構成であるときに軸方向において互いに対して第1の距離だけ離間される。第1のタインと第2のタインは、ストラットが半径方向拡張構成であるときに軸方向において互いに対して第2の距離だけ離間され、第1の距離は、第2の距離よりも長い。
【0196】
例54
第1のタインおよび第2のタインは、ストラットが半径方向圧縮構成であるときに自然組織が半径方向において第1のタインと第2のタインとの間を延びることができるように構成され、第1のタインおよび第2のタインは、ストラットが半径方向拡張構成であるときに第1のタインと第2のタインとの間に自然組織を捕捉するように構成される、本明細書の任意の例、特に例53の固着フレーム。
【0197】
例55
タインのうちの1つ以上は、固着フレームの流入端の方へ延び、タインのうちの1つ以上は、固着フレームの流出端の方へ延びる、本明細書の任意の例、特に例53または例54の固着フレーム。
【0198】
例56
第1のタインおよび/または第2のタイン、固着フレームの中央長手方向軸に平行である、本明細書の任意の例、特に例53~例55のうちのいずれか1つの固着フレーム。
【0199】
例57
第1のタインおよび/または第2のタインは、固着フレームの中央長手方向軸に対して6~90度の範囲内の角度で延びる、本明細書の任意の例、特に例53~例55のうちのいずれか1つの固着フレーム。
【0200】
例58
人工心臓弁アセンブリ用の固着フレームであって、複数の相互接続されたストラットと複数のタインとを備える固着フレーム。複数の相互接続されたストラットは、半径方向圧縮構成から半径方向拡張構成に移動させられ、人工心臓弁に結合されるように構成される。各タインは、固定端部と自由端部とを備える。固定端部は、ストラットのうちの1つ以上に結合され、自由端部は、ストラットに対して移動可能である。ストラットが半径方向圧縮構成であるとき、タインの自由端部は、第1の半径方向位置にある。ストラットが半径方向拡張構成であるとき、タインの自由端部は、第2の半径方向位置にあり、第2の半径方向位置は、第1の半径方向位置よりも固着フレームの中央長手方向軸から遠い。
【0201】
例59
タインの自由端部は、人工心臓弁が半径方向圧縮構成であるときにストラットに対して半径方向に整列されるかまたは半径方向にくぼむ、本明細書の任意の例、特に例58の固着フレーム。
【0202】
例60
タインの自由端部は、人工心臓弁が半径方向圧縮構成であるときにストラットによって形成されるセル内で入れ子になり、タインの自由端部は、人工心臓弁が半径方向拡張構成であるときにストラットによって形成されるセルから突き出る、本明細書の任意の例、特に例58または例59の固着フレーム。
【0203】
例61
タインの自由端部は、第1の半径方向位置から第2の半径方向位置に移動するときにストラットに接触する、本明細書の任意の例、特に例58~例60のうちのいずれか1つの固着フレーム。
【0204】
例62
タインの自由端部は、タインの自由端部がストラットに接触するときにタインの自由端部をストラットに対して半径方向外側に案内するように構成された傾斜面を備える、本明細書の任意の例、特に例61の固着フレーム。
【0205】
例63
ストラットは、タインの自由端部がストラットに接触するときにタインの自由端部をストラットに対して半径方向外側に案内するように構成された傾斜面を備える、本明細書の任意の例、特に例61または例62の固着フレーム。
【0206】
例64
傾斜面は、ストラットの接合部に配置される、本明細書の任意の例、特に例63の固着フレーム。
【0207】
例65
タインは、1つ以上の周方向に延びる行として配置される、本明細書の任意の例、特に例58~例64のうちのいずれか1つの固着フレーム。
【0208】
例66
タインは、複数の周方向に延びる行として配置される、本明細書の任意の例、特に例58~例65のうちのいずれか1つの固着フレーム。
【0209】
例67
第1の周方向に延びる行のタインは、第2の周方向に延びる行のタインと軸方向において重なり合う、本明細書の任意の例、特に例66の固着フレーム。
【0210】
例68
タインは、周方向に延びる2~5個の行として配置される、本明細書の任意の例、特に例65~例67のうちのいずれか1つの固着フレーム。
【0211】
例69
人工心臓弁は、弁フレームと、弁構造と、1つ以上の摩擦増強要素とを備える。弁フレームは、複数のストラットを備え、半径方向圧縮給送構成から半径方向拡張構成に拡張可能である。弁構造は、複数の弁尖部を備える。弁構造は、弁フレーム内に半径方向に配設され、弁フレームに結合される。弁構造は、人工心臓弁アセンブリを通る第1の方向への血流を許容し、人工心臓弁アセンブリを通る第2の方向への血流を制限するように構成される。1つ以上の摩擦増強要素は、フレームのストラットの周りを覆っている。摩擦増強要素は、自然組織に係合し、人工心臓弁が自然組織に対して移動するのを妨げるのを助けるように構成される。
【0212】
例70
摩擦増強要素は、金属線または金属ケーブルを備える、本明細書の任意の例、特に例69の人工心臓弁。
【0213】
例71
摩擦増強要素は、ポリマー繊維を備える、本明細書の任意の例、特に例69または例70の人工心臓弁。
【0214】
例72
摩擦増強要素は、非平滑表面パターンを有する、本明細書の任意の例、特に例69~例71のうちのいずれか1つの人工心臓弁。
【0215】
例73
非平滑表面パターンは、編み表面パターン、撚り表面パターン、またはコイル状表面パターンのうちの1つ以上を含む、本明細書の任意の例、特に例72の人工心臓弁。
【0216】
例74
人工心臓弁は、弁フレームと、弁構造と、1つ以上の摩擦増強要素とを備える。弁フレームは、複数のストラットを備える。弁フレームは、半径方向圧縮給送構成から半径方向拡張構成に拡張可能である。弁構造は、複数の弁尖部を備える。弁構造は、弁フレーム内に半径方向に配設され、弁フレームに結合される。弁構造は、人工心臓弁アセンブリを通る第1の方向への血流を許容し、人工心臓弁アセンブリを通る第2の方向への血流を制限するように構成される。1つ以上の摩擦増強要素は、弁フレームを区画する。摩擦増強要素は、自然組織に係合し、人工心臓弁が自然組織に対して移動するのを妨げるのを助けるように構成される。
【0217】
例75
弁フレームを区画する複数の摩擦増強要素を備え、摩擦増強要素は、互いに離間される、本明細書の任意の例、特に例74の人工心臓弁。
【0218】
例76
摩擦増強要素は、ポリマー材料を備える、本明細書の任意の例、特に例74または例75の人工心臓弁。
【0219】
例77
人工心臓弁は、弁フレームと弁構造とを備える。弁フレームは、複数のストラットと複数の固着部材とを備える。弁フレームは、半径方向圧縮給送構成から半径方向拡張構成に拡張可能である。弁フレームは、半径方向圧縮構成では円筒形を備え、半径方向拡張構成では非円筒形を備える。ストラットは、弁フレームが半径方向圧縮構成から半径方向拡張構成に移動するときに弾性変形する。固着部材は、弁フレームが半径方向圧縮構成から半径方向拡張構成に移動するときに塑性変形する。弁構造は、複数の弁尖部を備える。弁構造は、弁フレーム内に半径方向に配設され、弁フレームに結合される。弁構造は、人工心臓弁アセンブリを通る第1の方向への血流を許容し、人工心臓弁アセンブリを通る第2の方向への血流を制限するように構成される。
【0220】
例78
固着部材は、第1の端部と、第2の端部と、第1の端部と第2の端部との間に配設された中間部分とを備え、第1の端部および第2の端部は、ストラットに結合され、中間部分は、弁フレームが半径方向圧縮構成であるときに半径方向において第1の端部および第2の端部と整列され、中間部分は、弁フレームが半径方向拡張構成であるときに半径方向において第1の端部および第2の端部からずれる、本明細書の任意の例、特に例77の人工心臓弁。
【0221】
例79
固着部材の中間部分は、弁フレームが半径方向圧縮構成から半径方向拡張構成に移動するときに座屈するように構成される、本明細書の任意の例、特に例77または例78の人工心臓弁。
【0222】
例80
固着部材は、1つ以上の第1の固着部材と1つ以上の第2の固着部材とを含み、第1の固着部材は、弁フレームが半径方向拡張構成であるときに半径方向外側に延び、第2の固着部材は、弁フレームが半径方向拡張構成であるときに半径方向内側に延びる、本明細書の任意の例、特に例78または例79の人工心臓弁。
【0223】
例81
第1の固着部材は、弁フレームの流入端部に配設され、第2の固着部材は、弁フレームの流出端部に配設される、本明細書の任意の例、特に例80の人工心臓弁。
【0224】
例82
第1の固着部材は、弁フレームの流出端部に配設され、第2の固着部材は、弁フレームの流入端部に配設される、本明細書の任意の例、特に例80の人工心臓弁。
【0225】
例83
第1の固着部材は、弁フレームの流入端部に配設され、第2の固着部材は、弁フレームの流入端部に配設される、本明細書の任意の例、特に例80
の人工心臓弁。
【0226】
例84
第1の固着部材は、弁フレームの流出端部に配設され、第2の固着部材は、弁フレームの流出端部に配設される、本明細書の任意の例、特に例80の人工心臓弁。
【0227】
例85
人工心臓弁は、内側フレームと、弁構造と、外側フレームとを備える。内側フレームは、複数のストラットを備える。内側フレームは、半径方向圧縮給送構成から半径方向拡張構成に拡張可能である。弁構造は、複数の弁尖部を備える。弁構造は、内側フレーム内に半径方向に配設され、内側フレームに結合される。弁構造は、人工心臓弁を通る第1の方向への血流を許容し、人工心臓弁を通る第2の方向への血流を制限するように構成される。外側フレームは、複数のストラットを備える。外側フレームは、内側フレームから半径方向外側に配設され、内側フレームに結合される。外側フレームのストラットは、自然組織に接触して人工心臓弁を移植位置に固定するのを助けるように構成された1つ以上の組織係合要素を備える。
【0228】
例86
内側フレームは、第1の厚さを備え、外側フレームは、第2の厚さを備え、第2の厚さは、第1の厚さよりも薄い、本明細書の任意の例、特に例85の人工心臓弁。
【0229】
例87
本明細書の任意の例、特に例1~例86のうちのいずれか1つの人工心臓弁アセンブリ、人工心臓弁、または固着フレームを移植する方法であって、人工心臓弁アセンブリ、人工心臓弁、または固着フレームは、自然大動脈弁輪内に配置される方法。
【0230】
例88
本明細書の任意の例、特に例1~例86のうちのいずれか1つの人工心臓弁アセンブリ、人工心臓弁、または固着フレームを移植する方法であって、人工心臓弁アセンブリ、人工心臓弁、または固着フレームは、自然僧帽弁輪内に配置される方法。
【0231】
例89
本明細書の任意の例、特に例87または例88の人工心臓弁を移植する方法であって、人工心臓弁または人工心臓弁アセンブリを給送装置に取り外し可能に結合するステップと、給送装置および人工心臓弁または人工心臓弁アセンブリを患者の血管系に挿入するステップと、人工心臓弁または人工心臓弁アセンブリを移植位置に前進させるステップと、人工心臓弁または人工心臓弁アセンブリを半径方向圧縮構成から半径方向拡張構成に拡張させるステップであって、人工心臓弁または人工心臓弁アセンブリが移植位置において自然組織に接触する、ステップと、人工心臓弁または人工心臓弁アセンブリから給送装置から解放するステップとを含む方法。
【0232】
例90
人工心臓弁は、内側フレームと、弁構造と、外側フレームとを備える。複数のストラットを備える内側フレーム。内側フレームは、半径方向圧縮給送構成から半径方向拡張構成に拡張可能であり、内側フレームは、第1の厚さを備える。複数の弁尖部を備える弁構造。弁構造は、内側フレーム内に半径方向に配設され、内側フレームに結合される。弁構造は、弁構造は、人工弁を通る第1の方向への血流を許容し、人工弁を通る第2の方向への血流を制限するように構成される。複数のストラットを備える外側フレーム。外側フレームは、内側フレームから半径方向外側に配設され、内側フレームに結合される。外側フレームのストラットは、自然組織に接触して人工弁を移植位置に固定するのを助けるように構成された1つ以上の組織係合要素を備える。外側フレームは、内側フレームの第1の厚さよりも薄い第2の厚さを備える。
【0233】
例91
血管内に移植されるように構成される、本明細書の任意の例、特に例90の人工弁。
【0234】
例92
大静脈に移植されるように構成される、本明細書の任意の例、特に例91の人工弁。
【0235】
例93
ドッキングアセンブリは、補綴ドッキングデバイスと固着フレームとを備える。補綴物を受け入れて支持するように構成されたフレームを含む補綴ドッキングデバイス。補綴ドッキングデバイスのフレームに結合され、複数の相互接続されたストラットと、複数の相互接続されたストラットから延びる複数の突起とを備える固着フレーム。補綴ドッキングデバイスおよび固着フレームは、半径方向圧縮構成から半径方向拡張構成に移動させられるように構成される。固着フレームの突起は、移植位置において自然組織に係合してアセンブリが移植位置に対して移動するのを妨げるのを助けるように構成される。
【0236】
例94
補綴物は、人工心臓弁である、本明細書の任意の例、特に例93のドッキングアセンブリ。
【0237】
例95
アセンブリは、補綴デバイスと、第1の固着フレームと、第2の固着フレームとを備える。補綴物を受け入れ支持するように構成されたフレームを含む補綴ドッキングデバイス。フレームは、第1の端部と第2の端部とを備える。第1の固着フレームは、補綴ドッキングデバイスのフレームの第1の端部に結合され、第1の複数の相互接続されたストラットと、第1の複数の相互接続されたストラットから延びる第1の複数の突起とを備える。第2の固着フレームは、補綴ドッキングデバイスのフレームに結合され、第2の複数の相互接続されたストラットと、第2の複数の相互接続されたストラットから延びる第2の複数の突起とを備える。
【0238】
例96
第1の固着フレームは、軸方向において第2の固着フレームから離間される、本明細書の任意の例、特に例95のアセンブリ。
【0239】
例97
アセンブリは、人工心臓弁と、第1の固着フレームと、第2のフレームとを備える。フレームとフレーム内に支持される弁構造とを含む人工心臓弁。フレームは、第1の端部と第2の端部とを備える。人工心臓弁のフレームの第1の端部に結合され、第1の複数の相互接続されたストラットと第1の複数の相互接続されたストラットから延びる第1の複数の突起とを備える第1の固着フレーム。人工心臓弁のフレームに結合され、第2の複数の相互接続されたストラットと第2の複数の相互接続されたストラットから延びる第2の複数の突起とを備える第2の固着フレーム。
【0240】
例98
第1の固着フレームは、軸方向において第2の固着フレームから離間される、本明細書の任意の例、特に例97のアセンブリ。
【0241】
例99
アセンブリは、グラフトと、第1の固着フレームと、第2の固着フレームとを備える。血管内で半径方向に拡張可能なフレームを含むグラフト。グラフトのフレームの第1の端部に結合され、第1の複数の相互接続されたストラットと、第1の複数の相互接続されたストラットから延びる第1の複数の突起とを備える第1の固着フレーム。グラフトのフレームに結合され、第2の複数の相互接続されたストラットと、第2の複数の相互接続されたストラットから延びる第2の複数の突起とを備える第2の固着フレーム。
【0242】
例100
第1の固着フレームは、軸方向において第2の固着フレームから離間される、本明細書の任意の例、特に例99のアセンブリ。
【0243】
例101
アセンブリは、グラフトと固着フレームとを備える。血管内で半径方向に拡張可能なフレームを含むグラフト。グラフトのフレームに結合され、複数の相互接続されたストラットと複数の相互接続されたストラットから延びる複数の突起とを備える固着フレーム。グラフトおよび固着フレームは、半径方向圧縮構成から半径方向拡張構成に移動させられるように構成される。固着フレームの突起は、移植位置において自然組織に係合して、アセンブリが移植位置に対して移動するのを妨げるのを助けるように構成される。
【0244】
例102
人工心臓弁アセンブリは、人工心臓弁と、固着フレームと、1本以上の縫合糸とを備える。弁フレームと弁構造とを備える人工心臓弁。弁フレームは、複数のストラットを備える。弁フレームは、半径方向圧縮給送構成から半径方向拡張構成に拡張可能である。複数の弁尖部を備える弁構造。弁構造は、弁フレーム内に半径方向に配設され、弁フレームに結合される。弁構造は、弁構造は、人工心臓弁アセンブリを通る第1の方向への血流を許容し、人工心臓弁アセンブリを通る第2の方向への血流を制限するように構成される。複数のストラットを備える固着フレーム。固着フレームは、弁フレームから半径方向外側に配設され、弁フレームに結合される。固着フレームのストラットは、自然組織に接触して人工心臓弁アセンブリを移植位置に固定するのを助けるように構成された1つ以上の組織係合要素を備える。1本または複数の縫合糸は、固着フレームの周りを周方向に延びて、自然組織と人工心臓弁との間の弁傍漏れを低減させるように構成される。
【0245】
例103
1本または複数の縫合糸は、第1の縫合線と第2の縫合糸とを備え、第1の縫合糸は、軸方向において第2の縫合糸から離間される、本明細書の任意の例、特に例102の人工心臓弁アセンブリ。
【0246】
例104
1本または複数の縫合糸が、固着フレームのストラットに巻き付けられる、本明細書の任意の例、特に例102または例103の人工心臓弁アセンブリ。
【0247】
例105
1本または複数の縫合糸が、弁フレームのストラットに巻き付けられる、本明細書の任意の例、特に例102~例104のうちのいずれか1つの人工心臓弁アセンブリ。
【0248】
例106
1本または複数の縫合糸は、編み込まれた仮撚加工フィラメントを備える、本明細書の任意の例、特に例102~例105のうちのいずれか1つの人工心臓弁アセンブリ。
【0249】
例107
1本または複数の縫合糸は、撚り合わされた仮撚加工フィラメントを備える、本明細書の任意の例、特に例102~例106のうちのいずれか1つの人工心臓弁アセンブリ。
【0250】
例108
1本または複数の縫合糸は、ピン仮撚加工を介して仮撚加工される、本明細書の任意の例、特に例106または例107の人工心臓弁アセンブリ。
【0251】
例109
1本または複数の縫合糸は、ギア仮撚加工を介して仮撚加工される、本明細書の任意の例、特に例106~例108のうちのいずれか1つの人工心臓弁アセンブリ。
【0252】
例110
1本または複数の縫合糸は、エアー仮撚加工を介して仮撚加工される、本明細書の任意の例、特に例106~例109のうちのいずれか1つの人工心臓弁アセンブリ。
【0253】
例111
弁フレームの内側に配設された内側スカートをさらに備える、本明細書の任意の例、特に例102~例110のうちのいずれか1つの人工心臓弁アセンブリ。
【0254】
任意の例に関して本明細書で説明した特徴は、特に明記しない限り、他の例のうちの任意の1つ以上の例において説明した他の特徴と組み合わせることができる。たとえば、固着フレーム104の特徴のうちの任意の1つ以上の特徴を固着フレーム900の特徴のうちの任意の1つ以上の特徴と組み合わせることができ、逆についても同様である。別の例として、フレームのいずれか(たとえば、フレーム100、400、502、602、800、900、1100、1200、1500、1600、1700、および/または1800)を組織係合要素のうちの1つ以上(たとえば、組織係合要素1302および/または1402)とともに使用することができる。
【0255】
本開示の原則が適用される場合がある多くの可能な形態を考慮して、図示の構成が、開示された技術の例を示し、本開示または特許請求の範囲の範囲を限定すると見なすべきものではないことを認識されたい。厳密に言えば、請求される主題の範囲は、以下の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される。
【符号の説明】
【0256】
100 人工心臓弁アセンブリ
102 人工心臓弁
104 固着フレーム
106 弁フレーム
108 弁構造
110 密封部材
112 流入端部
114 流出端部
116 交連窓
118 弁尖部
122 タブ
124 突起
126 ストラット接合部、接合部
130 縫合糸
132 開口部
200 給送装置
202 バルーン
300 心臓
302 自然大動脈弁輪
304 自然大動脈弁尖
400、500、600、700、1300、1400 人工心臓弁アセンブリ
502、602、800、900、1100、1200、1600 固着フレーム
504、706 縫合糸
506 接合部
508、604、806 開口部
510 組織係合要素
702 外側密封部材
802、1306 溝
804 リッジ
902、1102 タイン
902a 第1のタイン
902b 第2のタイン
904 第1の端部
1000 自然組織
1104 固定端部
1106 自由端部
1108、1504 ストラット接合部
1110 外面
1112 第1の端部
1114 第2の端部
1302 摩擦増強要素
1304 ラップ
1402 摩擦リング
1404 隙間
1500、1802 フレーム
1502 固着部材
1506 孔
1508 頂点
1602、1702 突起
1800 人工弁
1803 固着部材
1804 流入端部
1808、1810 縫合糸
1812 接合部
1814 セル
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20A
図20B
図21A
図21B
図22
図23A
図23B
図23C
図24A
図24B
図24C
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33A
図33B
図34
図35
図36A
図36B
【国際調査報告】