(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-05
(54)【発明の名称】複合導光光学素子
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20230628BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
H04N5/64 511A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022560222
(86)(22)【出願日】2021-05-24
(85)【翻訳文提出日】2022-11-14
(86)【国際出願番号】 IL2021050608
(87)【国際公開番号】W WO2021240513
(87)【国際公開日】2021-12-02
(32)【優先日】2020-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518010049
【氏名又は名称】ルムス エルティーディー.
【氏名又は名称原語表記】Lumus Ltd.
【住所又は居所原語表記】8 Pinchas Sapir Street, 7403631 Ness Ziona, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アイゼンフェルト,ティシオン
【テーマコード(参考)】
2H199
【Fターム(参考)】
2H199CA02
2H199CA24
2H199CA47
2H199CA53
2H199CA64
2H199CA66
(57)【要約】
内部結合領域に注入された画像照明を、視認のためにユーザに向けるための光学系は、一対の平行な主要外面(24)を有する導光光学素子(LOE)(12)を含む。LOEの第1の領域(16)は、LOE内をLOEの第2の領域(18)に向かって伝搬する画像照明を方向転換するように配向された部分反射面の第1のセット(17)を含み、第2の領域(18)は、画像照明をユーザに向かって外部結合するように配向された部分反射面の第2のセット(19)を含む。部分反射面の第2のセット(19)が第2の領域(18)の表層の一方または両方から除外されるように、部分反射面の第1のセット(17)は、LOEの厚さの少なくとも95%にわたって延在し、一方、部分反射面の第2のセット(19)は、厚さの95%未満に及ぶ厚さの小区分内に含まれる。
【選択図】
図6B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部結合領域に注入された画像照明を、視認のためにユーザに向けるための光学系であって、透明材料から形成された導光光学素子(LOE)を備え、前記LOEが、
(a)第1の配向を有する平面の相互に平行な部分反射面の第1のセットを含む第1の領域と、
(b)前記第1の配向に対して非平行な第2の配向を有する、平面の相互に平行な部分反射面の第2のセットを含む第2の領域と、
(d)相互に平行な主要外面のセットであって、前記部分反射面の第1のセット、および前記部分反射面の第2のセットの両方が、前記主要外面の間に位置するように、前記主要外面が前記第1および第2の領域にわたって延在する、相互に平行な主要外面のセットと、を備え、
前記第1の領域から前記第2の領域への前記主要外面での内部反射による前記LOE内を伝搬する画像照明の一部が、前記LOEから前記ユーザに向かって外部結合されるように、前記部分反射面の第2のセットが、前記主要外面に対して斜角にあり、前記内部結合領域からの前記主要外面での内部反射による前記LOE内を伝搬する画像照明の一部が、前記第2の領域に向かって偏向されるように、前記部分反射面の第1のセットが配向され、
前記LOEが、前記主要外面間に厚さを有し、前記部分反射面の第1のセットが、前記厚さの少なくとも95%にわたって延在し、前記部分反射面の第2のセットが、前記第2の領域の少なくとも1つの表層から除外されるように、前記第2の領域内の前記部分反射面の第2のセットが、前記厚さの95%未満に及ぶ前記厚さの小区分内に含まれる、光学系。
【請求項2】
前記部分反射面の第2のセットが、前記第2の領域内で前記主要外面の両方の表層から除外される、請求項1に記載の光学系。
【請求項3】
前記部分反射面の第2のセットが除外される、前記第2の領域の前記少なくとも1つの表層の総厚さが、前記厚さの6%~33%である、請求項1に記載の光学系。
【請求項4】
前記主要外面に平行な方向における前記部分反射面の第2のセットの隣接面間の間隔が、少なくとも1mmであり、前記部分反射面の第2のセットが除外される前記第2の領域の前記少なくとも1つの表層の総厚さが、前記厚さの少なくとも10%である、請求項1に記載の光学系。
【請求項5】
前記部分反射面の第1のセットが、前記厚さの少なくとも96%にわたって延在する、請求項1に記載の光学系。
【請求項6】
前記部分反射面の第1のセットが、前記厚さの少なくとも98%にわたって延在する、請求項1に記載の光学系。
【請求項7】
前記部分反射面の第1のセットが、前記厚さの全体にわたって延在する、請求項1に記載の光学系。
【請求項8】
前記部分反射面の第1のセットの前記第1の配向が、前記主要外面に垂直である、請求項1に記載の光学系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学系に関するものであり、具体的には、光学的開口拡大を達成するための導光光学素子(LOE)を含む光学系に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複合導光光学素子(LOE)または「二次元拡張導波管」は、Lumus Ltd.(イスラエル)による以前の公開物に記載されている。かかる複合LOEの例は、例えば、PCT公開第WO2020/049542号に見出すことができる。概して、これらの複合LOEは、2つの領域を採用し、領域の各々は、主要面での内部反射によってコリメート画像を搬送する光の伝搬を支援するための透明材料の平行面ブロックであり、コリメート画像の一部を徐々に方向転換し、光学開口の拡大を達成する、相互に平行な内部部分反射面または「ファセット」のセットを含む。異なるファセット配向を有する2つのそのような素子を組み合わせることによって、単一の素子内の光学開口の二次元拡大を達成し、それによって画像プロジェクタからの入力画像を拡大し、それを観察者の眼に向かってより大きな領域にわたって出力することが可能である。
【0003】
参照の便宜のために、複合素子内の拡張の第1の段階を担う導光光学素子(LOE)領域は、「第1のLOE」または「LOE1」と称され、一方で、一旦偏向された画像を観察者に向かって外部結合することを担うLOE領域は、本明細書では、「第2のLOE」または「LOE2」と称される。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、内部結合領域で注入された画像照明を視認のためにユーザの方に向けるための光学系である。
【0005】
本発明の実施形態の教示によれば、視認のために内部結合領域で注入された画像照明をユーザの方に向けるための光学系が提供され、光学系は、透明材料から形成された導光光学素子(LOE)を備え、LOEが、(a)第1の配向を有する平面の、相互に平行な部分反射面の第1のセットを含む第1の領域と、(b)第1の配向に非平行な第2の配向を有する平面の、相互に平行な部分反射面の第2のセットを含む第2の領域と、(c)相互に平行な主要外面のセットであって、主要外面が、部分反射面の第1のセットと部分反射面の第2のセットの両方が、主要外面の間に位置するように、第1の領域と第2の領域にわたって延在する、相互に平行な主要外面のセットと、を備え、部分反射面の第2のセットは、主要外面における内部反射によりLOE内で第1の領域から第2の領域内へ伝搬する画像照明の一部が、LOEからユーザに向かって外部結合するように、主要外面に対して斜角にあり、部分反射面の第1のセットは、主要外面における内部反射によりLOE内で内部結合領域から伝搬する画像照明の一部が、第2の領域に向かって偏向されるように、配向され、LOEは、主要外面間に厚さを有し、部分反射面の第1のセットは、厚さの少なくとも95%にわたって延在し、部分反射面の第2のセットが第2の領域の少なくとも1つの表層から除外されるように、第2の領域内の部分反射面の第2のセットは、厚さの95%未満に及ぶ厚さの小区分内に含まれる。
【0006】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、部分反射面の第2のセットは、第2の領域内で主要外面の両方の表層から除外される。
【0007】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、部分反射面の第2のセットが除外される、第2の領域の少なくとも1つの表層における総厚さは、厚さの6%~33%である。
【0008】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、主要外面に平行な方向における部分反射面の第2のセットの隣接面間の間隔は少なくとも1mmであり、部分反射面の第2のセットが除外される第2の領域の少なくとも1つの表層の総厚さが、厚さの少なくとも10%である。
【0009】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、部分反射面の第1のセットは、厚さの少なくとも96%にわたって延在する。
【0010】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、部分反射面の第1のセットは、厚さの少なくとも98%にわたって延在する。
【0011】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、部分反射面の第1のセットは、厚さの全体にわたって延在する。
【0012】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、部分反射面の第1のセットの第1の配向は、主要外面に垂直である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
発明を、添付の図面を参照して、実施例としてのみ本明細書に記載する。
【
図1】AおよびBは、それぞれトップダウン構成および側注構成を示す、本発明の教示に従って構築され、動作可能である、導光光学素子(LOE)を使用して実装された光学系の概略等角図である。
【
図2A】画像の2つの極限域に対する光路を示す、
図1のAまたは
図1のBのLOEの拡大概略等角図である。
【
図2B】画像の2つの極限域に対する光路を示す、
図1のAまたは
図1のBのLOEの拡大概略等角図である。
【
図3】LOEを通って伝搬し、LOE内で第1の方向転換および視認者へのLOEの外部結合のための第2の方向転換を経験する主光線の経路を示す、
図2Aおよび
図2BのLOEの概略正面図である。
【
図4】AおよびBは、LOEの第2の領域内を伝搬し、LOEの厚さに及ぶ、または及ばない内部部分反射面にそれぞれぶつかる光線の光線経路を示す、
図3の線IV-IVに沿った部分概略断面図である。
【
図5】A、B、およびCは、LOEの第1の領域内を伝搬し、LOEの厚さに完全に及ぶ、または両方の主要面から、もしくは1つの主要面のみから離間される内部部分反射面にそれぞれぶつかる光線の光線経路を示す、
図3の線V-Vに沿った部分概略断面図である。
【
図6A】LOEの第1および第2の領域の両方が、部分反射内面が除外される表層、すなわち、カバープレートを有する実施態様における、
図2Aおよび
図2BのLOEの概略側面図である。
【
図6B】LOEの第2の領域のみがカバープレートを有する実施態様における、
図6Aと同様の図である。
【
図6C】LOEの第2の領域がカバープレートを有し、LOEの第1の領域が第2の領域よりも薄いカバープレートを有する、
図6Aと同様の図である。
【
図6D】LOEの第1の領域の1つの側面のみに、カバープレートが設けられている、
図6Cと同様の図である。
【
図7】LOE部分反射面の空間密度と、LOEの第2の領域のカバープレートの好ましい最小厚さとの間の関係を例示する概略グラフである。
【
図8】AおよびBは、本発明の特定の実施形態による、LOEのための製造プロセス中の中間作業製品の、それぞれ側面図および等角図である。
【
図9A】第1の領域が最初にカバープレートなしで形成され、第2の領域が所望のカバープレートの厚さの一部のみを有するカバープレートで形成されたLOEの全体にわたって薄いカバープレートが適用される、製造プロセスの段階を例示する概略側面図である。
【
図9B】
図9Aの製造プロセスから得られる構造を例示する概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、内部結合領域で注入された画像照明を視認のためにユーザの方に向けるための光学系である。
【0015】
本発明の特定の実施形態は、仮想現実ディスプレイ、またはより好ましくは拡大現実ディスプレイであり得る、ヘッドアップディスプレイ、最も好ましくはニアアイディスプレイの目的で、光学的開口拡大を達成するための導光光学素子(LOE)を含む光学系を提供する。
【0016】
本発明の実施形態の教示によるLOE12を採用した、全体が10で示された、ニアアイディスプレイの形態のデバイスの例示的な実装態様を、
図1のAおよび
図1のBに概略的に示す。ニアアイディスプレイ10は、画像光が、1つの次元において、相互に平行な平面状外面のセットにおける内部反射によって捕捉されるLOE(互換的に、「導波管」、「基板」、または「スラブ」と称される)12内に画像を注入するように光学的に結合されたコンパクトな画像プロジェクタ(または「POD」)14を採用している。光は、互いに平行であり、かつ画像光の伝搬方向に対して斜めに傾斜した(「ファセット」と互換的に称される)部分反射面のセットに衝突し、各連続ファセットは、基板内に捕捉され/内部反射によって誘導されてもいる、ある割合の画像光を偏向方向に偏向させる。この第1のセットのファセットは、
図1のAおよび
図1のBには個別に示されていないが、16と示されたLOEの第1の領域に位置する。この連続ファセットにおける部分反射は、第1の次元の光学的開口拡大を達成する。
【0017】
本発明の第1のセットの好ましいが非限定的な実施例では、前述のセットのファセットは、基板の主要外面に直交している。この場合、注入画像と、領域16内を伝搬するときに内部反射を受けるその共役体との両方が、偏向され、偏向方向に伝搬する共役画像となる。代替的なセットの好ましいが非限定的な実施例では、第1のセットの部分反射面は、LOEの主要外面に対して斜めに角度付けられる。後者の場合、注入画像またはその共役体のいずれかが、LOE内を伝搬する所望の偏向画像を形成し、一方で、他の反射は、例えば、反射が必要とされない画像によって提示される入射角範囲に対してそれらを比較的透明にする角度選択的コーティングをファセットに採用することによって、最小化され得る。
【0018】
第1のセットの部分反射面は、画像照明を、全内部反射(TIR)によって基板内に捕捉される第1の伝搬方向から、やはりTIRによって基板内に捕捉される第2の伝搬の方向に偏向する。
【0019】
次いで、偏向された画像照明は、隣接する別個の基板として、または単一の基板の延長部として実装され得る第2の基板領域18に入り、その中では、外部結合配置(典型的には、部分反射ファセットのさらなるセット)が、眼球運動ボックス(EMB)として画定される領域内に位置する観察者の眼に向かって、ある割合の画像照明を次第に外部結合し、それによって、光学的開口拡大の第2の寸法が達成される。デバイス全体は、各眼に対して別々に実装されてもよく、好ましくは、各LOE12がユーザの対応する眼に対向する状態で、ユーザの頭部に対して支持される。ここに示されたような1つの特に好ましい選択肢では、支持構成は、ユーザの耳に対してデバイスを支持するための側部20を有する眼鏡フレームとして実装される。ヘッドバンド、サンバイザ、またはヘルメットから吊り下げられたデバイスを含むがそれらに限定されない、他の形態の支持構成も使用され得る。
【0020】
本明細書では、図面および特許請求の範囲において、LOEの第1の領域の一般的な延在方向において水平(
図1のA)または垂直(
図1のB)に延在するX軸、およびそれに垂直に、すなわち
図1のAでは垂直に、
図1のBでは水平に、延在するY軸が参照される。
【0021】
非常に大まかに言えば、第1のLOE、またはLOE12の第1の領域16は、X方向の開口拡大を達成すると見なされ得、一方で、第2のLOE、またはLOE12の第2の領域18は、Y方向の開口拡大を達成する。視野の異なる部分が伝搬する角方向の広がりの詳細については、以下でより正確に説明する。
図1のAに示されたような配向は、LOEの主部(第2の領域)に入る画像照明が上縁部から入る「トップダウン」実装態様と見なされ得、
図1のBに示された配向は、ここではY軸と称される軸が水平に展開されている、「側注」実装態様と見なされ得ることに留意されたい。残りの図面では、本発明の特定の実施形態の様々な特徴は、
図1のAと同様の「トップダウン」方向のコンテクストで示される。しかしながら、これらの特徴のすべては、側注実装態様にも等しく適用可能であり、それもまた発明の範囲内にあることが理解されるべきである。特定の場合では、他の中間配向も適用可能であり、明示的に除外される場合を除き、本発明の範囲内に含まれる。
【0022】
本発明のデバイスで採用されるPODは、好ましくは、コリメート画像、すなわち、各画像画素の光が、画素位置に対応する角方向で、無限遠にコリメートされた平行ビームである画像を生成するように構成される。したがって、画像照明は、二次元の視野角に対応する角範囲に及ぶ。
【0023】
画像プロジェクタ14は、典型的にはLCOSチップなどの空間光変調器を照明するために配備された、少なくとも1つの光源を含む。空間光変調器は、画像の各画素の投影強度を変調し、それによって、画像を生成する。代替的に、画像プロジェクタは、プロジェクタの画像平面を横切ってレーザ光源からの照明を走査しながら、ビームの強度が動きと同期して画素単位で変化し、それによって各画素に所望の強度を投影する、典型的には高速走査ミラーを使用して実装される走査構成を含み得る。どちらの場合も、無限遠にコリメートされる出力投影画像を生成するために、コリメート光学系が設けられる。上記構成要素のいくつかまたはすべては、典型的には、当技術分野で周知であるように、1つ以上の偏光ビームスプリッタ(PBS)キューブまたは他のプリズム構成の表面上に配置される。
【0024】
LOE12への画像プロジェクタ14の光学結合は、LOEの側縁部および/または主要外面のうちの1つを介して、例えば斜めに角度付けられた入力面を有する結合プリズムを介してまたは反射結合構成を介してなど、任意の好適な光学結合によって達成され得る。結合入力構成の詳細は、発明にとって重要ではなく、ここでは、LOEの主要外面のうちの1つに適用される非限定的な実施例であるウェッジプリズム15として概略的に示されている。
【0025】
ニアアイディスプレイ10は、典型的には小さな搭載電池(図示せず)または何らかの他の好適な電源からの電力を採用して、典型的には画像プロジェクタ14を作動させるためのコントローラ22を含む、様々な追加の構成要素を含むことが理解されよう。コントローラ22は、当技術分野ですべて周知であるように、画像プロジェクタを駆動するための少なくとも1つのプロセッサまたは処理回路などのすべての必要な電子部品を含むことが理解されよう。
【0026】
ここで、
図2Aおよび
図2Bを参照すると、ニアアイディスプレイの実施態様の光学的特性がより詳細に例示されている。具体的には、第1の配向を有する平面状で、相互に平行な部分反射面の第1のセット17を含む、本明細書では「LOE1」とも称される第1の領域16と、第1の配向に非平行である第2の配向を有する平面状で、相互に平行な部分反射面の第2のセット19を含む、本明細書では「LOE2]とも称される第2の領域18とを含む、透明材料から形成された導光光学素子(LOE)12のより詳細な図が示されている。相互に平行な主要外面24のセットが、第1のセットの部分反射面17および第2のセットの部分反射面19の両方が主要外面24の間に位置するように、第1および第2の領域16および18にわたって延在している。最も好ましくは、主要外面24のセットは、第1および第2の領域16および18の全体にわたって各々連続する一対の表面であるが、領域16と領域18との間の厚さのセットダウンまたは逓増を有する選択肢もまた、本発明の範囲内にある。領域16および18は、境界で会合するように直接並置されてもよく、境界は、直線境界もしくは何らかの他の形の境界であり得、または、特定の用途に応じて、様々な追加の光学的もしくは機械的機能を提供するために、それらの領域の間に介在させた1つ以上の追加のLOE領域が存在してもよい。本発明は任意の特定の製造技術に制限されるものではないが、特定の特に好ましい実装態様では、別個に形成された領域16および18がそれらの間に挟まれて複合LOE構造を形成する連続外部プレートを採用することによって、特に高品質の主要外面が達成される。この選択肢およびこれらのプレートの厚さに関する検討事項について、以下でさらに説明する。
【0027】
LOEの光学特性は、画像照明経路を逆行してトレースすることによって理解され得る。第2のセットの部分反射面19は、主要外面での内部反射によって、LOE12内を第1の領域16から第2の領域18内へ伝搬する画像照明の一部が、LOEから眼球運動ボックス26に向かって結合出力されるように、主要外面24に対して斜角にある。第1のセットの部分反射面17は、主要外面での内部反射によって、LOE12内を結合入力領域(結合プリズム15)から伝搬する画像照明の一部が第2の領域18に向かって偏向されるように配向されている。
【0028】
画像プロジェクタ14からの投影画像の角度広がりの1つの次元は、
図2Aでは、LOEの右側のPOD開口部からLOEの左側に向かって広がる円錐の照明によって表されている。ここに示された非限定的な実施例では、PODの中心光軸は、X軸に整列されたLOE内の伝搬方向を規定し、(LOE内の)角度広がりは、およそ±16°である。(屈折率の変化により、FOV角は空気中でより大きくなることに留意されたい。)第1のセットの部分反射面17は、第1の領域16に示され、第2のセットの部分反射面19は、第2の領域18に示されている。
【0029】
ニアアイディスプレイは、「眼球運動ボックス」(EMB)26(すなわち、眼の瞳孔が投影画像を見るであろうLOEの平面から離れた、典型的には矩形として表される形状)によって指定される、許可された位置範囲内の、ある位置に位置するユーザの眼に、投影画像の全視野を提供するように設計されている。眼球運動ボックスに到達するために、光は、第2のセットの部分反射面19によって、第2の領域18からEMB26に向かって結合出力されねばならない。全画像視野を提供するために、EMB内の各点は、全角範囲の画像をLOEから受け取らねばならない。EMBから視野を逆追跡することは、関連する照明がLOEからEMBに向かって結合出力されるより大きな長方形28を示唆する。
【0030】
図2Aは、投影画像の左下画素に対応する、視野の第1の末端部を示す。LOE内に結合されるときのプロジェクタの光学開口に対応する幅のビームは、PODから左上向きに伝搬し、一連の部分反射面17から部分反射されることが示されている。ここに示されているように、サブセットのファセットのみが、ユーザによって目視される画像内の対応する画素を提供するのに有用な反射を生成し、それらのファセットのサブ領域のみが、この画素の観察画像に寄与する。関連領域は、黒の太線によって示されており、ファセット17から反射され、次いで、ファセット19によって結合出力されて、EMB26の4つの角に到達する、方向転換された画像内のこの画素に対応する光線が示されている。ここで、および説明全体を通じて、光線の平面内伝搬方向のみを、ここではLOE内の伝搬中で示すが、光線は、実際には、2つの主要外面から繰り返される内部反射のジグザグ経路をたどり、1つの次元全体の画像視野が、Y次元の画素位置に対応する、主要外面に対する光線の傾斜角度によって符号化されることに留意されたい。1つの追加実施例として、EMBの左上角に見られるような、画像の左上末端部に対応する、偏向および結合出力された光線が、破線で示されている。
【0031】
図2Bは、
図2Aと同じ構成を示しているが、ここでは、EMBの4つの角に到達する、視野の右下の画素に対応する光線を示し、やはり、関連する部分反射面17の関連領域が太線で示されている。
【0032】
EMBのすべての領域に到達する画像のすべての領域(方向または画素)の対応光路を追加的にトレースすることによって、結合入力領域から、LOE内を伝搬し、第1のセットの部分反射面のうちの1つによって偏向され、第2のセットの部分反射面のうちの1つによって、眼球運動ボックスに到達する方向に結合出力される、すべての光線経路のエンベロープをマッピングすることが可能であり、このエンベロープは、画像がEMBに到達することに寄与する、画像照明の一部を偏向させるのに必要な各ファセット17の「結像領域」を画定し、一方で、エンベロープの外にあるファセット17の残りのものは、必要な画像に寄与しない「非結像領域」であることが明らかであろう。任意選択的に、ファセットの平面内範囲は、撮像領域のみをカバーするように切り取られてもよい。異なる撮像注入の場所および幾何学的形状、不均一なファセット間隔を採用し、または部分反射内面の追加の(例えば、第3の)セットを導入する、このおよび他の変形実施形態は、Lumus Ltd.(イスラエル)による以前の公開物、特に前述のPCT公開第WO2020/049542、ならびにPCT公開第WO2020/152688およびPCT出願第PCT/IL2020/051354で詳細に論じられており、これらはいずれも、本出願の優先日時点で未公開であり、先行技術とは見なされない。これらの追加の特徴はすべて、本発明の文脈において実装され得るが、簡潔に言えば、それらは本明細書では詳細には扱われない。
【0033】
部分反射面の第2のセット19が第2の領域18の少なくとも1つの表層から除外されるように、部分反射面の第1のセット17がLOEの厚さの少なくとも95%にわたって延在し、一方、第2の領域18内の部分反射面の第2のセット19が厚さの95%未満にわたる厚さの小区分内に含まれることが、本発明の特定の実施形態の特に好ましい特徴である。ここで、この組み合わせの利点を提示する。
【0034】
用語の問題において、用語「カバープレート」は、本明細書において、概して、LOEの内部部分反射面のセットが除外されるLOEの主要面の一方または両方に隣接する特定の深さの層の任意の実施態様を指すために使用される。そのような層を形成するための1つのアプローチは、透明材料のシート、すなわち、物理的に別個のカバープレートをLOE構成要素に取り付けることによる。しかしながら、例えば、部分反射コーティングが活性LOE層に対応する領域のみに適用され、LOEの主要外面に隣接することになる領域が反射コーティングなしで屈折率整合接着剤を用いて接合される、プレートの積層からLOE構造を生成することによるなど、他の製造技術も可能である。用語「カバープレート」は、製造技術とは無関係に、層がどのように形成されていても、ファセットなしに表層がカバープレートとして機能する機能構造を指すために使用される。
【0035】
図3を参照すると、これは、単一の光線30、ここではX次元における画像のフィールドの中心に対応する主光線の経路が、LOE1の一部を横切るときに、部分反射面17の1つにおいて反射によりLOE2に向かって方向転換され(光線30’)、部分反射面19の1つにおいて反射により方向転換されて、視認者に向かって外部結合する(光線30”)ことを例示している。
図4のAおよび
図4のBは、LOEに面プレートを追加しない場合と追加した場合の第2の方向転換/外部結合の幾何学的形状を示し、
図5のAおよび
図5のBは、第1の方向転換の幾何学形状を示す。
【0036】
画像が視認者に向かって外部結合されるLOE2(領域18)では、斜めに傾斜したファセットが使用される。ファセットが(例えば、主要外面に対して25度で)傾斜している場合、光線は、
図4のAに例示されるように、同じファセットから2回反射され得る。これにより、導波管から不均一なビームが出る。より暗い領域は、第2の反射によって生成される。その後、導波管の射出瞳に暗い縞模様が現れる。視認者にとっては、これにより、遠視野画像に暗い縞模様がもたらされることになる。
【0037】
図4のBは、外面の一方または両方上の導波管にカバープレート32を追加することによって、この二重反射を回避し、ファセットを導波管の外面から効果的に離間させることができる方法を例示する。このようにして、ファセットで一旦反射した後、光線の透過部分はその上または下にジャンプし、次のファセットに直接伝搬するため、画像の均一性が向上する。
【0038】
しかしながら、カバープレートの使用に関して、LOE1における画像均一性を達成するための検討事項が、LOE2の検討事項と著しく異なることが分かった。画像照明を導波管内で誘導された一つの方向から別の誘導された方向に方向転換するために使用される部分反射面は、必然的に非常に急峻であり、いくつかの実施形態では、導波管の主要外面に直交しているため、光線は、単一のファセットによって2回反射されることはない。この場合、最適な画像均一性は、基板の厚さの全体に及ぶファセットの使用によって達成されるであろう(
図5のA)が、表面に届かないファセットは、特定の光線がファセットを完全に飛ばすことが許容され(
図5のB)、出力画像内に暗い線が生じることがわかっている。領域16および18の全体にわたってカバープレートを有する構造を提供する全体的な結果は、
図6Aに概略的に例示されており、画像プロジェクタからの均一に照明された入力開口34は、LOEを通って伝搬し、出力内の暗い線38によって破壊された画像領域36として眼球運動ボックス(EMB)26に向かって外部結合される。対照的に、
図6Bの構造は、LOE2 18上にのみカバープレートを採用し、一方LOE1 16のファセットは、デバイスの主要外面に延在する。この場合、画像プロジェクタから均一に注入された画像34は、好ましくは、視認者によって知覚されるような比較的均一な画像36をもたらす。
【0039】
LOE1領域16内のカバープレートの存在は、出力画像の品質に悪影響を及ぼすが、LOE1領域16の一方または両方の主要面上のカバープレートの使用を好む実用的な検討事項が存在する場合がある。例えば、外面に延在する任意の接着接合部が存在しないことで、導波管の高品質の平面状外面を達成することを容易にすることができる。カバープレートが十分に薄く、任意の結果として生じる画像の乱れが人の眼に支障がなければ、カバープレートの存在を許容することができる(
図6C)。薄いカバープレートは、出力画像が欠落している箇所に薄い暗い縞模様を生成する。暗い縞模様の空間周波数および幅は、人の眼によって知覚されるような、見え方と画像への影響を決定する。人の眼に対して塗りつぶされていない縞模様の重大度を正しく評価するために、人の眼の瞳孔を、導波管射出瞳の上で畳み込むと、許容されるべきカバープレートの厚さがわかる。暗い縞模様の空間周波数が眼の瞳孔の直径よりも著しく高い場合、変動は本質的に眼によって平均化される。空間周波数がより低い場合、瞳孔のサイズを平均した強度が大きく変化しない程度の十分に細い縞模様であれば、許容できる場合がある。
【0040】
実際には、LOE1領域のカバープレートの厚さ範囲は、存在する場合、1~100ミクロン、最も好ましくは50ミクロン未満であるべきである。LOEの厚さの割合として、カバープレートの総厚さは、好ましくは厚さの5%未満、好ましくは厚さの4%以下、最も好ましくは厚さの2%以下である。これは、部分反射面の第1のセットが、厚さの少なくとも95%、より好ましくは厚さの少なくとも96%、および最も好ましくは厚さの少なくとも98%にわたって(及んで)延在することに対応する。
図6Dに概略的に例示されるように、暗い縞模様の問題は、LOE1領域16の片側のみにカバープレートを使用することによって改善させることができる。
【0041】
カバープレートを採用することの考えられる利点にもかかわらず、本発明の特定の特に好ましい実施態様では、
図6Bに概略的に例示されているように、部分反射面17の第1のセットは、LOE1 16の厚さの全体にわたって、すなわち、カバープレートなしで延在する。
【0042】
上で考察したように、領域18のLOE2に関して、この領域のカバープレートは、照明の不均一性の低減に寄与し、それによって、視認される画像の品質が向上する。部分反射面の第2のセット19は、好ましくは、第2の領域内の主要外面の両方の表層から除外され、両方の主要面が「カバープレート」を有することを意味する。部分反射面の第2のセット19が除外される第2の領域18の表層の総厚さは、好ましくは、LOE2の総厚さの6%~33%である。
【0043】
ここでも、照明の不均一性が人の眼にどの程度知覚されるかは、強度変化の空間周波数、それらのダイナミックレンジ、およびそれらの幅に依存し、ひいては、これらの変動を改善するのに有効なカバープレートの好ましい厚さが決定される。外部結合ファセット19の場合、空間周波数は、主要外面に平行な方向の、部分反射面の第2のセット19の隣接面間の間隔から直接生じる。
図7は、本明細書では瞳孔の直径と重なるファセットの数として定義される、様々なファセット密度に対する好ましい最小カバープレートの厚さ(LOE2総厚さのパーセンテージとしてのカバープレート厚さの合計)を例示しており、本明細書ではおよそ3ミリメートルとする。高いファセット密度では、強度の変動は本質的に瞳孔領域で平均化され、したがって、視認者によって知覚されにくいため、比較的薄いカバープレートで十分であることがわかる。ファセット間隔が大きくなるにつれて、強度変動の空間周波数が低下し、これらの変動を補償するために、より厚いカバープレートが必要になる。
【0044】
図7において水平破線で示される有用な参照点として、主要外面に平行な方向で部分反射面の第2のセット19の隣接面の間の間隔が、少なくとも1mm(3ミリメートル瞳孔径あたり3つのファセットの密度に対応)であるとき、部分反射面の第2のセットが除外される第2の領域の表層(複数可)の総厚さは、好ましくは総厚さの少なくとも10%である。
【0045】
本発明にかかる光学系は、当業者には明らかであろうように、本分野で採用される標準的な製造技術に基づく様々なプロセスによって製造され得る。各LOE領域は、典型的には、一方または両方の面にコーティングされた薄いプレートのスタック(通常は一方の面にすべてコーティング、または両方の面にコーティングされた交互のプレート)を一緒に接着して形成され、各インターフェースに望ましい部分反射特性を提供する。部分反射特性は、典型的には、当技術分野で周知であるように、角度選択反射率を提供することができる、多層誘電体コーティングによって提供される。次いで、これらのスタックは、正しく配向された内部部分反射面を有するLOEセクション/領域を生成するように、必要な角度でスライスされる。次いで、必要に応じて、適切な厚さのカバープレートを各領域に追加し、LOEセクションの縁面を研磨し、次いで一緒に接着して、最終的な複合LOEを形成する。
【0046】
任意選択的に、カバープレートがLOE1の一方または両方の主要面上に提供される場合、LOE1に必要とされるカバープレート厚さを差し引いた所望の最終カバープレート厚さに対応する、部分厚さのカバープレートを有するLOE2を生成することが有利であり得る。次いで、単一の連続したカバープレートを、複合LOEの組み立て中に追加することができ、これにより、LOE1に所望のカバープレートの総厚さが提供され、LOE2のカバープレートの厚さが所望の厚さまで補完される。この選択肢は、
図9Aおよび9Bを参照して、以下でさらに説明する。
【0047】
あるいは、場合によっては、LOE1に適した第1の厚さの第1の部分と、LOE2に適した(より大きい)第2の厚さの第2の部分とを有する段差状カバープレートを製造することが望ましい場合がある。次いで、2つのLOEセクションの組み立てのためのアライメント特徴として、2つの部分間の段差を使用することができる。
【0048】
本発明の複合LOEの製造のためのさらなる選択肢を、
図8のAおよび
図8のBに概略的に例示する。この場合、LOE1を形成するためのプレートのスタックは、複数のLOEに対応する寸法のブロック80を形成するように切断される。第2のブロック82は、中間透明プレート86と一緒含んで接着されたLOE2の複数の活性層84(すなわち、部分反射面を含むLOEのセクション)を組み合わせることによって形成される。次に、第1および第2のブロック80および82を一緒に接着させて、
図8のAおよび
図8のBに例示されるように、中間作業生成物81を形成し、これは、スライス平面88に沿ってスライスし、複数の複合LOEを生成するように研磨することができ、中間透明プレート86の厚さの一部は、各複合LOEの第2のLOE領域18のためのカバーシートになる。
【0049】
図8のAおよび
図8のBの製造技術、ならびにその変形例は、2020年5月24日に出願された米国仮特許出願第63/029,500号から優先して、本出願と同日に出願された「Method of Fabrication of Compound Light-Guide Optical Elements」と題された同時係属のPCT出願でさらに詳細に考察される。
【0050】
ここでも、第1のLOE領域16上にもカバープレートを有することが所望される場合、
図9Aに示されるように、領域18のカバープレート32aが、領域16に対して所望される厚さに等しい量だけ所望の厚さよりも小さい、
図8のAおよび
図8のBによる複合LOE構造を生成することが有利であり得る。次いで、両方のカバープレートは、構造全体にわたって導波管に接着された均一な厚さのプレート32bを追加することによって、それらの意図された総厚さにすることができ、それによって、
図9Bに例示されるような最終構造が生成される。
【0051】
上記の説明は、実施例としてのみ役立つことが意図されること、および添付の特許請求の範囲で定義されるような本発明の範囲内で、多くの他の実施形態が可能であることが理解されよう。
【国際調査報告】