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特表2023-528582インターフェロンβ変異体と抗体が融合された組換えタンパク質およびそれを含む薬学的組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-05
(54)【発明の名称】インターフェロンβ変異体と抗体が融合された組換えタンパク質およびそれを含む薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20230628BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230628BHJP
   C12N 15/22 20060101ALI20230628BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230628BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230628BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230628BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230628BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230628BHJP
   C07K 14/565 20060101ALI20230628BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230628BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230628BHJP
   A61K 38/21 20060101ALI20230628BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230628BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230628BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230628BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20230628BHJP
   C12P 21/02 20060101ALN20230628BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z ZNA
C12N15/22
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K19/00
C07K14/565
C07K16/28
A61P35/00
A61K38/21
A61K39/395 M
A61K39/395 T
A61K47/68
C12N15/13
C12P21/08
C12P21/02 F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022566371
(86)(22)【出願日】2021-04-28
(85)【翻訳文提出日】2022-12-19
(86)【国際出願番号】 KR2021005407
(87)【国際公開番号】W WO2021221470
(87)【国際公開日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】10-2020-0052911
(32)【優先日】2020-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】522423444
【氏名又は名称】ジェノファーム インク.
【氏名又は名称原語表記】GENOPHARM INC.
【住所又は居所原語表記】(HanwhaBizmetro 1(il)-cha, Guro-dong), 604, 242, Digital-ro, Guro-gu, Seoul 08394, Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】520371286
【氏名又は名称】エイビオン インク.
【氏名又は名称原語表記】ABION INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ヘ ミン
(72)【発明者】
【氏名】イ,チャン ギュ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジ ソン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ジュン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ナ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ヨン ジン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG10
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA05
4B065AA90X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BD14
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA06
4C084BA41
4C084DA23
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA66
4C084NA03
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C085AA14
4C085AA21
4C085BB01
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA17
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、アミノ酸残基が置換されたインターフェロンβ変異体と特定の抗原に結合する抗体が融合された組換えタンパク質、ポリヌクレオチド、発現ベクターおよび組換え微生物、前記組換えタンパク質を有効成分として含む抗癌用薬学的組成物に関するものであり、前記組換えタンパク質は、部位特異的変異によってインターフェロンβの物理的特性が改善され、生物活性および精製効率が向上され、生産性が向上し得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
17番目のアミノ酸残基がセリンに置換され、27番目のアミノ酸残基がスレオニンに置換されたインターフェロンβ変異体;及び、前記インターフェロンβ変異体に直接的または間接的に共有結合された抗体またはその断片を含む組換えタンパク質。
【請求項2】
前記インターフェロンβ変異体が、80番目および25番目のアミノ酸残基にグリコシル基を含むものである、請求項1に記載の組換えタンパク質。
【請求項3】
前記インターフェロンβ変異体が、配列番号1のアミノ酸配列で示されるものである、請求項1に記載の組換えタンパク質。
【請求項4】
前記抗体またはその断片が、トラスツズマブ(Trastuzumab)、セツキシマブ(Cetuximab)及びアテゾリズマブ(Atezolizumab)からなる群から選択された1種以上のものである、請求項1に記載の組換えタンパク質。
【請求項5】
前記組換えタンパク質が、インターフェロンβ変異体と抗体またはその断片がペプチドリンカーによって連結されたものである、請求項1に記載の組換えタンパク質。
【請求項6】
請求項1に記載の組換えタンパク質を符号化するポリヌクレオチド。
【請求項7】
前記ポリヌクレオチドが、配列番号9、10または11の塩基配列で示されるものである、請求項6記載のポリヌクレオチド。
【請求項8】
請求項6に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項9】
請求項8に記載の発現ベクターで形質転換された宿主細胞。
【請求項10】
請求項1に記載の組換えタンパク質を有効成分として含む抗癌用薬学的組成物。
【請求項11】
(a)インターフェロンβ変異体に直接的または間接的に共有結合した抗体またはその断片を含む組換えタンパク質を発現するように形質転換された宿主細胞を培養する段階;及び、
(b)培養された宿主細胞またはその培養物でインターフェロンβに直接的または間接的に共有結合された抗体またはその断片を含む組換えタンパク質を単離・精製する段階を含む、
インターフェロンβ変異体に直接的または間接的に共有結合された抗体またはその断片を含む組換えタンパク質の製造において、前記インターフェロンβ変異体の17番目のアミノ酸であるシステインを他のアミノ酸に変形させた組換えタンパク質を発現するように宿主細胞を形質転換させたことを特徴とする、
前記組換えタンパク質の生産または単離・精製時のタンパク質の安定性を高める方法。
【請求項12】
前記インターフェロンβ変異体が、インターフェロンβのR27T変異体であることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記他のアミノ酸が、セリンであることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記宿主細胞が、哺乳動物細胞であることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
抗癌用製剤を製造するための請求項1に記載の組換えタンパク質の使用。
【請求項16】
請求項1に記載の組換えタンパク質を含む組成物の有効量を、これを必要とする個体に投与することを含む癌の治療法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年4月29日に出願された大韓民国特許出願第10-2020-0052911号を優先権主張し、前記明細書全体は本出願の参考文献である。
【0002】
本発明は、アミノ酸残基が置換されたインターフェロンβ変異体と特定の抗原に結合する抗体が融合された組換えタンパク質、ポリヌクレオチド、発現ベクターおよび宿主細胞、前記組換えタンパク質を有効成分として含む抗癌用薬学的組成物に関するものである。
【背景技術】
【0003】
インターフェロン(IFN)は、免疫において重要な役割を果たす主要なサイトカインのうち1つであり、強力な抗癌効果があることが知られている。このインターフェロンは、タイプI(IFN-αおよびIFN-β)、タイプII (IFN-γ)、タイプIII(IFN-λ)に分けられる。
【0004】
タイプIインターフェロンは、抗ウイルス、抗増殖(antiproliferative) 効果を示し、腫瘍特異抗原(tumor specific antigen)を認知して腫瘍細胞を除去する機能である免疫監視(cancer immunosurveillance)においても必須的な役割を果たす。
【0005】
タイプIインターフェロンのシグナル伝達(signaling)とは、インターフェロン受容体の活性により多数の酵素が段階的に活性化されることであり、この場合、STAT1、STAT2などの転写因子も作用する。これらのシグナル伝達は免疫システムを作動させ、アントラサイクリンなどの化学療法剤(chemotherapeutic)、ヒト表皮成長因子受容体(human epidermal growth factor receptor 2; HER2)、表皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor; EGFR)などのような成長因子受容体(growth factor receptor)を標的とする抗体、アジュバント投与、腫瘍細胞崩壊性ウイルス治療(oncolytic virotherapy)など様々な抗癌剤に対する抗癌効果を示すためにも必須である。特に、トラスツズマブとは、HER2を標的とする抗体癌治療剤であり、MUC4の過剰発現により治療抵抗性を有することになる。この抵抗性機構に関連する信号物質のうち1つであるpSTAT3は、2つの同一物質が重合した形態(pSTAT3ホモジマー(homodimer))を有し、pSTAT1によって抑制されることが知られている。よって、pSTAT1を活性化させるタイプIインターフェロンをトラスツズマブと結合した場合、増加した抗癌効果が期待できる。
【0006】
インターフェロンβ(IFN-β)は、細胞の成長を抑制する効果がインターフェロン-α(IFN-α)に比べてより強力である。特に、抗癌剤と併用する場合は、インターフェロンβの抗増殖活性範囲及び相乗効果が非常に優れています。しかし、インターフェロンを用いた治療剤は、細胞毒性が大きいため、治療対象者から熱( 80% )、筋肉痛(73%)、頭痛(50%)、疲労(50%)、倦怠感(50%)などの症状が出ることが知られている。また、インターフェロンβは、疎水性の強いタンパク質であり、よく凝集する傾向があり、生物活性および生産性が低下する。また、半減期が短いため、頻繁に投与しなければならないという欠点がある。よって、インターフェロンを用いた治療剤を開発するためには、インターフェロンによる限界を最小限に抑える必要がある。
【0007】
これにより、本発明者らは、部位特異的変異によってインターフェロンの物理的特性を変化させることによって生産性が向上し、凝集現象が減少した突然変異インターフェロンβを開発した。そのインターフェロンβ変異体は、抗体癌治療薬と融合して優れた抗癌効果を示す新しい抗癌治療薬として利用することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一態様は、17番目のアミノ酸残基がセリンに置換され、27番目のアミノ酸残基がスレオニンに置換されたインターフェロンβ(IFN-β)変異体; 及び、インターフェロンβ変異体に直接的または間接的に共有結合された抗体またはその断片を含む組換えタンパク質を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明の他の態様は、前記組換えタンパク質を符号化するポリヌクレオチドを提供することを目的とする。
また、本発明の他の態様は、前記ポリヌクレオチドを含む発現ベクターを提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明の他の態様は、前記発現ベクターで形質転換された宿主細胞を提供することを目的とする。
また、本発明の他の態様は、前記組換えタンパク質を有効成分として含む抗癌用薬学的組成物を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明の他の態様は、前記組換えタンパク質からなる抗癌用薬学的組成物を提供することを目的とする。
また、本発明の他の態様は、前記組換えタンパク質から必修的になる抗癌用薬学的組成物を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明の他の態様は、
(a)インターフェロンβ変異体に直接的または間接的に共有結合された抗体またはその断片を含む組換えタンパク質を発現するように形質転換された宿主細胞を培養する段階;及び、
(b)培養された宿主細胞またはその培養物でインターフェロンβに直接的または間接的に共有結合された抗体またはその断片を含む組換えタンパク質を単離・精製する段階を含む、
インターフェロンβ変異体に直接的または間接的に共有結合された抗体またはその断片を含む組換えタンパク質の製造において、前記インターフェロンβ変異体の17番目のアミノ酸であるシステインを他のアミノ酸に変形させた組換えタンパク質を発現するように宿主細胞を形質転換させたことを特徴とする、
前記組換えタンパク質の生産または分離・精製時のタンパク質の安定性を高める方法を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明の他の態様は、抗癌用製剤を製造するための前記組換えタンパク質の使用を提供することを目的とする。
また、本発明の他の態様は、前記組換えタンパク質を含む組成物の有効量をそれを必要とする個体に投与することを含む癌の治療法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一実施態様によれば、本発明は、17番目のアミノ酸残基がセリンに置換され、27番目のアミノ酸残基がスレオニンに置換されたインターフェロンβ( IFN-β)変異体;及び、インターフェロンβ変異体に直接的または間接的に共有結合された抗体またはその断片を含む組換えタンパク質を提供する。
【0015】
インターフェロンβは、5つのアルファ・ヘリックス(α-helix)を有している球状タンパク質であり、サイズが22kDaであり、抗ウイルス活性、細胞成長の抑制または抗増殖活性、リンパ球の細胞毒性増強活性、免疫調節活性、標的細胞の分化誘導または抑制活性、マクロファージの活性化の活性、サイトカインの産生の増加の活性、細胞毒性T細胞の効果増加の活性、自然殺害細胞(natural killing cell)の増加の活性など様々な免疫学的活性にて癌、自己免疫障害、ウイルス感染、HIVに関連の疾病、C型肝炎、関節リウマチなどの治療に効果があるという報告がある。しかし、インターフェロンβは、強い疎水性タンパク質で凝集現象を示し、生物活性および生産性が低く半減期が短いため、インターフェロンβの活用に制限点があった。よって、本発明では、インターフェロンβの遺伝子に対して部位特異的変異(site-directed mutagenesis)を誘導することにより、変異が起こらなかった野生型インターフェロンβに比べて物理的特性を改善したインターフェロンβ変異体を開発した。
【0016】
前記インターフェロンβ変異体(interferon beta mutein)は、17番目のシステイン(cysteine; C)がセリン(serine; S)に置換され、27番目のアルギニン(arginine; R)がスレオニン(threonine; T)に置換されたことによって、80番目および25番目のアミノ酸残基にグリコシル基を含むことを特徴とする。この場合、インターフェロンβ変異体は、配列番号1のアミノ酸配列またはそれを符号化する配列番号2の塩基配列で示されるものでもよい。そのようなインターフェロンβ変異体は、野生型インターフェロンβのアミノ酸配列の全部または一部を含もことであり、インターフェロンβの活性を有する。
【0017】
前記抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)およびその断片を含む。完全な抗体は全体的にY字の型をしており、2つの長い重鎖(Heavy chain; H)と2つの短い軽鎖(light chain; L)からなる。各重鎖と軽鎖は互いに硫化結合で連結され、抗原と反応する部位である可変領域(variable region; V)と、効果機能を発現する部位である不変領域(constant region; C)に分けられる。可変領域には、抗原との特異的な結合の形成を可能にために可変領域の構造を決定し、抗体結合強度を調節する相補性決定部位(CDR)が存在する。前記抗体の断片は、抗原と反応して抗原結合活性を示すことができる特定の部位を示し、一例としてFabフラグメント(パパイン消化による断片)、Fab′断片 (ペプシン消化および部分的還元による断片)、F(ab′)2断片 (ペプシン消化による断片)、Facb(プラスミン消化による断片)、Fd(ペプシン消化、部分的還元および再凝集による断片)、scFv断片(分子生物学技法による断片)などであってもよい。好ましくは、抗体が、腫瘍特異抗原を認識する抗体またはその断片であり、癌などの標的治療剤としての使用が可能である。一例として、ヒト表皮成長因子受容体(HER-2)を標的とする抗体治療剤であるトラスツズマブ(Trastuzumab)、表皮成長因子受容体(EGFR)を標的とする抗体治療剤であるセツキシマブ(Cetuximab)、癌細胞の表面に発現するPD-L1を標的とする抗体治療剤であるアテゾリズマブ(Atezolizumab)などであってもよい。この場合、トラスツズマブは、配列番号3で示されるアミノ酸配列を有する重鎖及び配列番号4で示されるアミノ酸配列を有する軽鎖からなってもよく、セツキシマブは、配列番号5で示されるアミノ酸配列を有する重鎖及び配列番号6で示されるアミノ酸配列を有する軽鎖からなってもよく、アテゾリズマブは、配列番号7で示されるアミノ酸配列を有する重鎖及び配列番号8で示されるアミノ酸配列を有する軽鎖からなってもよい。
【0018】
前記組換えタンパク質は、インターフェロンβ変異体と抗体またはその断片がペプチドリンカーによって連結され形成された融合体または複合体であってもよい。 前記ペプチドリンカーとは、アミノ酸またはアミノ酸に類似の物質が互いにペプチド結合によって2つ以上が連結された短い断片のアミノ酸またはアミノ酸類似体で2つ以上の別々の物質を互いに連結させる役割をする分子を示す。この場合、グリシン、セリン、アラニンなどが主要構成アミノ酸として用いられ、グリシン-セリンリンカー、グリシン-セリン-アラニンリンカーなどを用いてもよい。そのようなリンカーは、抗体の重鎖のC末端または抗体の軽鎖のC末端に連結されるか、または抗体の軽鎖のC末端と重鎖のC末端にリンカーのN末端が連結されてもよい。この場合、リンカーのC末端にはインターフェロンβ変異体のN末端を連結されてもよい。
【0019】
また、本発明の他の一実施態様によれば、本発明は、前記組換えタンパク質を符号化するポリヌクレオチドを提供する。
ポリヌクレオチドは、塩基、糖、リン酸の3つの要素からなる化学的モノマーであるヌクレオチドが多数のリン酸エステル結合を媒介に鎖状に繋がった高分子化合物であり、一本鎖または二本鎖の形態で存在するデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドのポリマーである。
【0020】
前記ポリヌクレオチドは、RNAゲノム配列、DNA(gDNA又はcDNA)及びそれから転写されるRNA配列等でもよい。前記組換えタンパク質のアミノ酸配列を符号化するヌクレオチド配列の他にも、配列に相補的な配列も含む。好ましくは、インターフェロンβ変異体とトラスツズマブの重鎖が連結された組換えタンパク質を符号化する配列番号9で示される塩基配列であるか、またはインターフェロンβ変異体とセツキシマブの重鎖が連結された組換えタンパク質を符号化する配列番号10で示される塩基配列であるか、またはインターフェロンβ変異体とアテゾリズマブの重鎖が連結された組換えタンパク質を符号化する配列番号11で示される塩基配列であってもよい。
【0021】
また、本発明の他の実施態様によれば、本発明は、前記ポリヌクレオチドを含む発現ベクターを提供する。
発現ベクターとは、宿主細胞において、インターフェロンβ変異体および抗体またはその断片を含む組換えタンパク質を発現することができるベクターであり、遺伝子挿入物が発現できるように作動可能に連結された遺伝子配列と発現調節配列を含む遺伝子産物を意味する。前記「作動可能に連結された(operably linked)」とは、一般的機能を果たすように核酸発現調節配列と、目的とするタンパク質を符号化する核酸配列とが機能的に連結(functional linkage)されていることを示す。 前記「発現制御配列」とは、特定の宿主細胞において作動可能に連結されたポリヌクレオチド配列の発現を調節するDNA配列を意味する。そのような発現ベクターは、当該業界に公知となった遺伝子組換え技術を用いて製造することができ、部位特異的DNAを切断および連結するのに当該業界で通常的に用いられる酵素などが用いられてもよい。
【0022】
前記発現ベクターは、プロモーター、オペレーター、開始コドン、終結コドン、ポリアデニル化シグナル、エンハンサー(enhancer)などの発現調節要素の他にも、膜標的化または分泌のためのシグナル配列またはリーダー配列を含み、目的に応じて多様に製造することができる。また、発現ベクターは、発現ベクターを含む宿主細胞を選択するための選択マーカーを含み、複製可能な発現ベクターの場合は、複製起点を含んだ上に自己複製をするか、または宿主DNAに組み込まれてもよい。前記発現ベクターは、当該業界において通常に外部遺伝子の発現に使用可能なベクターを制限なく用いることができ、一例として、プラスミドベクター、コスミドベクター、ウイルスベクターなどでもよい。
【0023】
また、本発明の他の実施態様によれば、本発明は、前記発現ベクターで形質転換された宿主細胞を提供する。
宿主細胞は、挿入された配列の発現を調節するか、または好ましい特定の方法で遺伝子産物を進行させることを選択してもよい。異なる宿主細胞は、タンパク質の解毒および解毒後のプロセッシングと変形に対して特徴的且つ特異的な作用機序を有する。適した細胞株または宿主システムとしては、発現された異種タンパク質の好ましい変形およびプロセッシングを提供することを選択してもよい。酵母における発現は、生物学的活性生成物を産生することができる。真核細胞における発現は、ポリペプチドまたはタンパク質を構成するペプチド鎖の折り畳み(folding)の可能性を高めることができる。
【0024】
前記宿主細胞は、ベクターを安定化しながら連続的にクローニング及び発現させることができる当該業界に公知となった宿主細胞を制限なく使用することができ、 一例として、E. coli JM109、E. coli BL21DE、E. coli DH5、E. coli RR1、E. coli LE392、E. coli B、E. coli X 1776、E. coli W3110などのような大腸菌、アグロバクテリウムA4などのアグロバクテリウム属の菌株、バシルス・サブチリス(Bacillus subtilis)などのバシリ(bacilli)、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)、セラチア・マルゲセンス(Serratia marcescens)などの腸内 細菌、様々なシュードモナス(Pseudomonas)属の菌株などでもよい。また、真核細胞に発現ベクターを形質導入(transfection)する場合は、宿主細胞として酵母(Saccharomyces cerevisiae)、昆虫細胞、ヒト細胞(例えば、CHO(Chinese hamster ovary)、W138、BHK、COS-7、293、HepG2、3T3、RIN、MDCK細胞株)などを用いてもよい。
【0025】
発現ベクターの導入は、当該業界で通常に使用可能な形質転換法を用いて行うことができる。前記「形質転換」とは、外部DNAを宿主細胞内に導入することにより、DNAが宿主細胞内の染色体の因子として、または染色体の統合完成により複製が可能となるように人工的且つ遺伝的な変化を引き起こす現象である。前記形質転換方法は、CaCl沈殿法、CaCl法にDMSO(dimethyl sulfoxide)という還元物質を用いることにより効率を高めたハナハン(Hanahan)法、電気穿孔法、リン酸カルシウム沈殿法、原形質融合法、シリコンカーバイド繊維を用いた攪拌法、アグロバクテリアが媒介された形質転換法、PEGを用いた形質転換法、デキストラン硫酸、リポフェクタミン及び乾燥/抑制媒介された形質転換法などがある。
【0026】
また、本発明の他の一実施態様によれば、本発明は、前記組換えタンパク質を有効成分として含む抗癌用薬学的組成物を提供する。
前記組換えタンパク質は、物理的特性が改善されたインターフェロンβ変異体と抗体またはその断片が結合した構造であり、精製効率と生物活性に優れ、様々な癌細胞株に対する免疫調節効能、抗癌効能、ADCC効能などがあることが確認できた。よって、このような組換えタンパク質を有効成分として含む組成物は、癌細胞の増殖、活性を抑制する効果を示し、抗癌用薬学的組成物としての活用が可能である。
【0027】
前記組成物の製剤化方法は、薬剤学的に通常的に使用できる賦形剤、アジュバント、無痛化剤、等張化剤、保存剤、および他の薬剤学的に通常的に許容できるアジュバントと混合し、薬剤学的に通常に許容できる製剤の形態に製剤化して薬学的製剤を製造することができる。前記製剤の形態は、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾルなどの経口製剤であるか、または外用剤、坐剤および滅菌注射用溶液の形態でもよい。経口投与のための固形製剤としては、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれてもよく、経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内容液剤、乳剤、シロップ剤などが挙げられる。非経口投与のための製剤としては、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。
【0028】
前記組成物を投与する方法は、患者の状態および体重、疾患の程度、薬物形態、投与経路および期間によって異なるが、当業者によって適切に選択することができる。しかし、好ましい効果のためには、0.001~1,000mg/kgで1日投与してもよい。投与は1日に1回投与するか、または数回に分けて投与してもよい。投与経路はすべての方法で可能であり、一例として、経口、直腸または静脈、筋肉、皮下、子宮内硬膜または脳血管内注射によって投与してもよい。
【0029】
併せて、本発明では、インターフェロンβのR27T変異体の産生及び単離・精製において、インターフェロンβのC17、つまり17番目のアミノ酸であるシステインが変異体の安定性に重要な役割を果たすことを確認し、その結果、17番目のアミノ酸を他のアミノ酸に変形した場合、生産、単離、精製、さらには保管と流通時の安定性に影響を与える。
【0030】
よって、本発明は、
(a)インターフェロンβ変異体に直接的または間接的に共有結合された抗体またはその断片を含む組換えタンパク質を発現するように形質転換された宿主細胞を培養する段階;及び、
(b)培養された宿主細胞またはその培養物でインターフェロンβに直接的または間接的に共有結合された抗体またはその断片を含む組換えタンパク質を単離・精製する段階を含む、
インターフェロンβ変異体に直接的または間接的に共有結合された抗体またはその断片を含む組換えタンパク質の製造において、前記インターフェロンβ変異体の17番目のアミノ酸であるシステインを他のアミノ酸に変形させた組換えタンパク質を発現するように宿主細胞を形質転換させたことを特徴とする、
前記組換えタンパク質の生産または分離・精製時のタンパク質の安定性を高める方法を提供する。
【0031】
本発明の方法において、インターフェロンβ変異体は、インターフェロンβのR27T変異体であり、C17をさらに他のアミノ酸に変形するため、C17N、R27Tの二重変異体に直接的または間接的に共有結合された抗体またはその断片を含む組換えタンパク質を発現することになる。この場合、Nはシステインを除く任意のアミノ酸を示す。
好ましくは、変形される他のアミノ酸はセリンでもよい。
【0032】
また、突然変異体に直接的または間接的に共有結合された抗体またはその断片を含む組換えタンパク質を発現する宿主細胞は、タンパク質の発現に用いられる哺乳動物細胞でもよい。好ましくは、CHO細胞株、W138、BHK、COS-7、293、HepG2、3T3、RINおよびMDCK細胞株を用いてもよく、最も好ましくは、本発明における宿主細胞はCHO細胞株でもよい。
【0033】
また、本発明は、抗癌用製剤を製造するための前記組換えタンパク質の使用を提供する。
また、本発明は、前記組換えタンパク質を含む組成物の有効量を、これを必要とする個体に投与することを含む癌の治療法を提供する。
【0034】
本発明の前記「有効量」とは、個体に投与した場合、癌の改善、治療、予防、検出、診断又は前記疾患の抑制又は減少効果を示す量を示し、前記「個体」とは、動物、好ましくは哺乳類動物、特にヒトを含む動物であってもよく、動物に由来の細胞、組織、器官などであってもよい。前記個体は、前記効果が必要な患者でもよい。
【0035】
本発明の前記「治療」とは、癌または癌の症状を改善することを包括的に示し、これは前記疾患を治癒、実質的な予防、または状態の改善を含んでもよく、癌から生じた1つの症状またはほとんどの症状を緩和、治癒または予防することを含むが、これに制限されない。
【0036】
本明細書における用語「~を含む(comprising)」とは、「含有する(including)」または「特徴とする(characterized by)」と同じ意味として使われ、本発明による組成物または方法において、具体的に言及されていない追加的な構成成分または方法の段階などを排除しない。また、用語「~からなる(consisting of)」とは、別途の記載がない追加的な要素、段階、または成分などを除外することを意味する。用語「~から必修的になる(essentially consisting of)」とは、組成物または方法の範囲において、記載の物質または段階に加えて、その基本的な特性に実質的に影響を及ぼさない物質または段階などを含み得ることを意味する。
【発明の効果】
【0037】
本発明によるインターフェロンβ変異体と抗体またはその断片が結合した組換えタンパク質は、部位特異的変異によってインターフェロンβの物理的特性が改善され、生物活性および精製効率が向上し、生産性が高まることもある。このような組換えタンパク質は、インターフェロンβの機能および特定の抗原に結合する抗体の特性が全て発現するため、癌などの標的治療剤として有用に使うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1は、インターフェロンβ変異体と腫瘍標的化抗体が結合した融合タンパク質の構造を示す模式図である。
図2図2a~図2dは、アフィニティークロマトグラフィー精製過程における抗体 - インターフェロンβ変異体融合タンパク質の精製効率を比較した結果である。(図2a)トラスツズマブ-IFNβ、トラスツズマブ-IFNβ-R27Tおよびトラスツズマブ-IFNβ-C17S-R270Tの精製効率を各実験別に示したグラフである。(図2b)トラスツズマブ-IFNβ、トラスツズマブ-IFNβ-R27Tおよびトラスツズマブ-IFNβ-C17S-R27Tの精製反復実験の平均収率を比較したグラフである。(図2c)セツキシマブ-IFNβ-R27T及びセツキシマブ -IFNβ- C17S-R27Tの精製効率を比較した結果である。(図2d)アテゾリズマブ-IFNβ-R27T及びアテゾリズマブ-IFNβ- C17S-R27Tの精製効率を比較した結果である。
図3図3a~図3cは、精製した抗体-インターフェロンβ変異体融合タンパク質のタンパク質凝集度をサイズ排除クロマトグラフィーで分析し比較した結果である。(図3a)トラスツズマブ-IFNβ、トラスツズマブ-IFNβ-R27Tおよびトラスツズマブ-IFNβ-C17S-R27Tのタンパク質の凝集を比較した結果である。(図3b)セツキシマブ-IFNβ-R27T及びセツキシマブ-IFNβ-C17S-R27Tのタンパク質の凝集を比較した結果である。(図3c)アテゾリズマブ-IFNβ-R27T及びアテゾリズマブ-IFNβ-C17S-R27Tのタンパク質の凝集を比較した結果である。
図4図4a及び図4bは、MCF-7、MDA-MB231、NCI-N87の3種類の細胞株を用いて、トラスツズマブ、トラスツズマブ-IFNβ-R27Tおよびトラスツズマブ-IFNβ-C17S-R27TのHER2結合能をフローサイトメーターで分析した結果である。
図5図5は、トラスツズマブ-IFNβ-C17S-R27Tのインターフェロンシグナル活性能力を分析した結果である。NCI-N87細胞株にIFNβ-C17S-R27Tとトラスツズマブ-IFNβ-C17S-R27Tをそれぞれ処理してから1時間経過した後にpSTAT1の発現量を確認することにより、インターフェロンβのシグナル活性度を測定した結果である。
図6図6は、HER2陽性癌細胞株であるHCC1954とMDA-MB453細胞株におけるControl IgG、IFN-β、トラスツズマブおよびトラスツズマブ-IFNβ-C17S-R27Tの抗体依存性細胞毒性効果を比較分析した結果である。
図7図7a及び図7bは、HER2の発現量が高い細胞株であるNCI-N87、HER2の発現量が中レベルの細胞株であるSNU1およびSNU620、HER2の発現量が低い細胞株であるHs746TおよびMKN45におけるトラスツズマブ、T-DM1、IFNβ-R27T、トラスツズマブ-IFNβ-C17S-R27Tの各物質の直接的な抗増殖活性を比較した結果である。
図8図8aおよび図8bは、CPEアッセイによってトラスツズマブ-IFNβ、トラスツズマブ-IFNβ-R27Tおよびトラスツズマブ-IFNβ-C17S-R27Tの抗ウイルス活性を定量的に測定し比較した結果である。
図9図9a及び図9bは、HER2陽性胃癌細胞株であるNCI-N87細胞をヌードマウスに異種移植し、トラスツズマブ-IFNβ-C17S-R27Tの腫瘍標的能力をトラスツズマブ-IFNβ-R27Tと比較して確認したことである。
図10図10は、HER2陽性乳癌細胞株であるHCC1954細胞をヌードマウスに異種移植し、トラスツズマブ-IFNβ-C17S-R27Tの抗癌活性をトラスツズマブ-IFNβ-R27Tと比較して確認したことである。トラスツズマブ-IFNβ-R27Tは10 mg/kg(mpk)の単一濃度を使い、トラスツズマブ-IFNβ-C17S-R27Tは1、3、10 mg/kgの3つの濃度で効能を評価した。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、添付の図面を参照して本発明をより詳細に説明する。但し、これらの説明は、本発明の理解を補うために例示的に提示されたものであるだけであり、本発明の範囲がこの例示的な説明によって限定されることではない。
【0040】
1.材料及び方法
1-1.融合タンパク質の製造設計
インターフェロンβ変異体と結合した抗体を一時的または安定的に発現する細胞株を確立するために、発現ベクターとしてpCHO 1.0(Life Technologies)を使った。抗体としてトラスツズマブ(Trastuzumab)、セツキシマブ(Cetuximab)、アテゾリズマブ(Atezolizumab)を使い、インターフェロンβ(IFN-β)で27番目のアミノ酸残基がスレオニンに置換された変異体(IFNβ-R27T)または R27Tに追加的に17番目のアミノ酸残基がセリンに置換された変異体(IFNβ-C17S-R27T)を使った。
【0041】
抗体の重鎖部位にリンカーとインターフェロンβ変異体R27TまたはC17S-R27Tが結合できるようにクローニングした。その後、全遺伝子の3'末端および5'末端にそれぞれ制限酵素AvrII(CCTAGG)切断部位とBstz17I(GTATAC)切断部位(Thermo Scientific、米国)を挿入して重鎖の最終遺伝子を確保した。また、抗体の軽鎖の3'末端および5'末端にそれぞれ制限酵素EcoRV(GATATC)切断部位とPacI(TTAATTAA)を挿入して軽鎖の最終遺伝子を確保した。重鎖および軽鎖の最終遺伝子をpCHO 1.0ベクターに挿入した。
【0042】
1-2.哺乳動物細胞における融合タンパク質構築物の発現
トラスツズマブ、トラスツズマブ-インターフェロンβ-R27T及びトラスツズマブ-インターフェロンβ-C17S-R27Tの発現ベクターをFreeStyleTM MAX reagent(Thermo Scientific)を使ってCHO-S細胞(Thermo Scientific)内に形質導入した。セツキシマブとアテゾリズマブ抗体も同様に形質導入した。FreeStyleTM MAX reagent-DNA複合体にOptiPROTM SFM(Thermo Scientific)を添加した混合物をフラスコに入れたCHO-Sに入れ、湿気のある8%のCO2 大気圧の条件で培養した。48時間の形質導入後に安定的に融合タンパク質を発現する細胞株を選別した。プロマイシン(puromycin)10~50μg/mLおよびMTX 100~1,000nMによる二次選択により細胞を分類した。選択した細胞は、37 ℃で湿気のある8% CO2 大気圧、130 rpmの条件で5日間または7日間融合タンパク質を発現させるためにグルコースと一緒に培養した。
【0043】
1-3.融合タンパク質の精製
CHO-S細胞で発現した融合タンパク質をアフィニティークロマトグラフィー法により精製した。CHO-S培養液をプロテインAマブセレクトシュア(Protein A Mabselect sure, Cytiva)が充填されたカラムに通過させた後、平衡バッファー(equilibration buffer)、洗浄バッファー(wash buffer) , 溶出バッファー(elution buffer)を順次に加えて精製したタンパク質を得た。
【0044】
1-4.タンパク質の凝集の分析
物理的特性を測定するために凝集分析(FPLC-SEC)を行った。充填されたサイズ排除クロマトグラフィーカラムであるハイロード(HiLoad 16/600 Superdex 200 pg)をAKTA purifier(Cytiva)に連結する。最大圧力を0.3Mpaに設定した後、アフィニティークロマトグラフィー法で精製した試料を1mg/mLに濃度を合わせてサンプルループ(Sample loop)の長さの50%ほどを注入した。UV(280nm)ピークを確認してタンパク質の凝集率を確認した。
【0045】
1-5.細胞株および培養条件
ヒト乳癌(human breast cancer)細胞株(MCF-7、MDA-MB-231、HCC-1954、MDA-MB-453)、ヒト胃癌(human gastric cancer)細胞株(SNU1、SNU620、Hs746T、MKN45)は韓国細胞株銀行(KCLB、Seoul、South Korea)で購入した。ヒト胃癌細胞株NCI-N87は、米国細胞株銀行(ATCC、Manassas、VA、USA)で購入した。U937細胞株(iLite type I IFN assay ready cell、ATCC#CRL1593.2)は、Euro Diagnostica AB(Malmo、Sweden)で購入した。
【0046】
MCF-7、MDA-MB-231、HCC-1954、MDA-MB453、NCI-N87、SNU1、SNU620、Hs746T、MKN45およびU937細胞株は、10% FBS(HyClone、USA)、ペニシリン100 units/mLおよびマイシン100μg/mLを含有するRPMI-1640(HyClone, USA)培地を、Hs746T細胞株は10% FBS(HyClone, USA)、ペニシリン100 units/mLおよびストレプトマイシン100μg/mLを含有するDMEM(HyClone、USA)培地を用いて培養した。すべての細胞株は、 37 ℃で湿気のある5% CO2 の大気圧条件で培養した。
【0047】
1-6.フローサイトメーターによるHER2認知能の分析
MCF-7、MDA-MB-231、NCI-N87細胞株をそれぞれEPチューブに集めた後、ブロッキング・バッファー(blocking buffer)にて4 ℃で1時間反応させ、PBSで2回洗浄した。その後、トラスツズマブ、トラスツズマブ-IFNβ-R27T、およびトラスツズマブ-IFNβ-C17S-R27Tを1μg反応させ、PBSで3回洗浄した。その後、FITCが結合した抗ヒトIgG二次抗体を反応させ、3回洗浄した。抗体と反応した細胞をCytoFlex(Beckman coulter、USA)フローサイトメーターで分析した。
【0048】
1-7. Western blotによるSTAT1タンパク質のリン酸化の分析
NCI-N87細胞にIFN-β(5~200 pg/mL)、IFNβ-C17S-R27T (5 ~ 200 pg/mL)またはトラスツズマブ-IFNβ-C17S-R27T (20 ~ 2,000 pg /mL)を処理した後、プロテアーゼ阻害剤(protease inhibitor)混合物(Roche)およびホスファターゼ阻害剤(phosphatase inhibitor)混合物(Roche)を追加したRIPA溶解バッファー(150mM NaCl、1% トリプトンX-100、1% ジオキシコール酸ナトリウム、0.1% SDS、50mM Tris-HCl[pH 7.5]、2 mM EDTAを含有)を用いて細胞を溶解した。溶解した細胞を4 ℃で20分培養し、14,000gで10分間遠心分離を行った。上澄液を回収し、製造業者の使用説明に従ってBCA protein assay kit(Thermo Scientific)を用いてタンパク質の濃度を測定した。タンパク質20μgを10% SDS-PAGEで分離し、PVDF膜(polyvinyl difluoride membrane)(BioRad)に移した。PVDF膜をTBS-Tween20バッファー(5% BSAを含む)で遮断し、一次抗体と4℃で一晩培養を行った。その後、二次抗体と室温で1時間培養した。ここで使われた一次抗体は、抗pSTAT1 、抗STAT1(Cell Signaling Technology)または抗β-アクチン(Santa Cruz Biotechnology)であり、二次抗体は、抗マウスIgG-HRP(ThermoFisher Scientific)または抗ウサギ IgG-HRP(ThermoFisher Scientific)です。 タンパク質に結合したHRPをClarity Western ECL substrate(Bio-Rad)で可視化した。
【0049】
1-8.抗体依存性細胞毒性活性の測定
標的細胞(target cell)であるHCC1954またはMDA-MB453細胞にControl IgG(0.0001~100 nM)、トラスツズマブ(0.0001~100 nM)、IFN-β(0.000001~1 nM)、またはトラスツズマブ-IFNβ-C17S-R27T (0.0001~100 nM)を処理し、作動細胞(effector cell)と共培養して抗体依存性細胞傷害活性を測定した。作動細胞は、抗体依存的な細胞毒性を誘発するためにCD16aを人為的に過剰発現した自然殺害細胞(NK cell)細胞株NK-92MI-CD16aを利用し、作動細胞対比標的細胞の比率(E:T ratio)が8:1になるようにして薬物と共に4時間反応した。標的細胞の細胞毒性は、製造業者の使用説明に従って乳酸デヒドロゲナーゼ(Lactate dehydrogenase、LDH)の放出を測定する非放射性細胞毒性アッセイ(Promega、USA)を用いて測定した。
【0050】
1-9.抗増殖活性の測定
Water-Soluble Tetrazolium(WST)colorimetric assay(Ez-Cytox; Daeil Lab Service)を用いて抗増殖活性を測定した。NCI-N87、SNU1、SNU620、Hs746TおよびMKN45細胞を96ウェルプレートに分注し、トラスツズマブ、T-DM1、IFNβ-R27T、またはトラスツズマブ-IFNβ-C17S -R27Tをそれぞれ濃度別(0.0001 ~ 100 nM)に72時間処理した。その後、各ウェルにWST 10 ulを添加し4時間培養し、吸光度測定器(microplate reader、TECAN)を用いて450 nmにおける吸光度を測定した。
【0051】
1-10.抗ウイルス活性の測定
細胞変性効果分析(cytopathic effect assay、CPE assay)を用いて、トラスツズマブ-IFNβ、トラスツズマブ-IFNβ-R27Tおよびトラスツズマブ-IFNβ-C17S-R27Tの抗ウイルス活性を測定した。細胞変性効果を測定するために、A549細胞を96ウェルプレートに分注し、各薬物を濃度別に(0.78125~100 IU/mL)処理した。薬物処理してから22時間後、1000 TCID50/mLのEMCVを入れた。22時間の共培養を行った後、WST比色アッセイ(WST colorimetric assay)を用いて得た吸光度値より細胞変性効果を測定した。
【0052】
1-11.薬物の腫瘍移行実験
6週齢の雌のヌードマウスの皮下を介して、HER2陽性胃癌細胞株であるNCI-N87を注射し異種移植を行った。薬物を追跡するために、IgG-IFNβ-R27T、トラスツズマブ-IFNβ-R27T、IgG-IFNβ-C17S-R27T、またはトラスツズマブ-IFNβ-C17S-R27T薬物に蛍光標識因子(CF750)を結合した。形成された腫瘍のサイズが約100 mm3になった場合、無作為に3匹ずつ割り当て、IgG-IFNβ-R27T、トラスツズマブ-IFNβ-R27T、IgG-IFNβ-C17S-R27T、またはトラスツズマブ-IFNβ-C17S-R27Tを100μg/mice投与した。薬物を投与してから24時間後にマウスを麻酔した後、小動物光学バイオイメージャー(Ami HTX、Spectral Instruments Imaging)装置を用いて薬物の生体分布を観察した。また、生体外分析のために癌が異種移植されたマウスの癌、肝臓、腎臓、脾臓、肺、腸を分離して組織間の薬物分布を観察した。実験結果は、スチューデントのt検定を分析し統計処理した。
【0053】
1-12.異種移植(xenograft)動物実験
5週齢の雌のヌードマウスの皮下を介して、HER2陽性乳癌細胞株であるHCC1954を注射した。形成された腫瘍のサイズが約100 mm3になった場合、無作為に5匹ずつ割り当ててビヒクルと、トラスツズマブ-IFNβ-R27Tまたはトラスツズマブ-IFNβ-C17S-R27Tとを各投与用量に応じて1週に3回ずつ3週間投与した(day 0)。腫瘍は、キャリパーを用いて週に2回測定し、(長さ * 幅)/2=体積(mm)にて計算した。実験結果は、Two-way ANOVA分析をして統計処理した。
【0054】
2. 結果
2-1.融合タンパク質の精製効率の比較
トラスツズマブ-IFNβ-C17S-R27T、トラスツズマブ-IFNβ-R27Tおよびトラスツズマブ-IFNβを発現する細胞株を用いて同じ条件で発現および精製した。
形質導入したCHO-S細胞株を37 ℃、8% CO2で5日間培養した。Cedex-bio(Roche)を用いて細胞培養液中の融合タンパク質の発現濃度を測定した後、AKTA instrumentシステムおよびprotein A beadを用いてアフィニティクロマトグラフィー法により精製した。
【0055】
その結果、図2a~図2dに示したように、トラスツズマブ-IFNβ-C17S-R27Tの精製効率は約92%であり、52%のトラスツズマブ-IFNβまたは54%のトラスツズマブ-IFNβ-R27Tに比べて大幅に向上したことが確認できた。セツキシマブ抗体とアテゾリズマブ抗体を適用した場合にも、IFNβ-C17S-R27Tが結合した融合タンパク質の精製効率がより優れていることが確認できた。
【0056】
2-2. 融合タンパク質のタンパク質の凝集比率の比較
タンパク質の凝集問題は、物質の活性とも深い関係があり、患者から免疫原性が誘発される可能性があるため、治療薬の開発において重要な考慮をするべきことである。タンパク質の凝集を分析するために精製した融合タンパク質をFPLC-SEC法で比較分析した。
【0057】
その結果、図3a~図3cに示したように、トラスツズマブ-IFNβ-C17S-R27Tのタンパク質の凝集率は約8%であり、40%のトラスツズマブ-IFNβ-R27Tまたは85%のトラスツズマブ-IFNβに比べて大きく減少したことが確認できた。セツキシマブ抗体とアテゾリズマブ抗体を適用した場合もIFNβ-C17S-R27Tが結合した場合、タンパク質の凝集比率が大きく減少することが確認できた。
【0058】
2-3.トラスツズマブ-IFNβ-C17S-R27Tの細胞表面におけるHER2抗原認識能の比較
トラスツズマブ-IFNβ-C17S-R27TのHER2抗原認識能をトラスツズマブ-IFNβ-R27Tおよびトラスツズマブと比較した。各物質をHER2発現が高いNCI-N87細胞または発現が低いMCF-7、MDA-MB-231細胞と反応させた後、フローサイトメーターを用いて蛍光強度ピークの移動による細胞表面におけるHER2抗原認識能を分析した。
【0059】
その結果、図4a及び図4bに示したように、何も処理しなかった未処理群は対照群としてピークが移動しなかったが、トラスツズマブ、トラスツズマブ-IFNβ-R27T、およびトラスツズマブ-IFNβ-C17S-R27Tを処理した群はHER2発現の程度に応じて蛍光強度のピークが移動した。HER2発現が低いMCF-7およびMDA-MB-231細胞株では、3つの物質とも蛍光強度がやや増加したが、HER2発現が高いNCI-N87細胞株では蛍光強度が大幅に増加した。特に、三つの物質の蛍光ピークに差がない点から、トラスツズマブ-IFNβ-C17S-R27TのHER2抗原認識能がトラスツズマブと差がないことが確認できた。
【0060】
2-4.トラスツズマブ-IFNβ-C17S-R27TのIFN生物活性
インターフェロン活性は、タイプIのIFN受容体と結合し、サブシグナル伝達者であるSTATのリン酸化過程によって起こる。トラスツズマブ-IFNβ-C17S-R27Tによるインターフェロン活性を確認するために、NCI-N87細胞にIFNβ-C17S-R27Tおよびトラスツズマブ-IFNβ-C17S-R27Tをそれぞれ濃度別(0.004~40 pM)に1時間処理した後、ウェスタンブロットによってSTAT1リン酸化とSTAT1およびβ-アクチンの発現を確認した。
【0061】
その結果、図5に示したように、STAT1リン酸化のシグナルは、トラスツズマブ-IFNβ-C17S-R27Tの処理濃度に応じて向上し、トラスツズマブ-IFNβ-C17S-R27Tの活性レベルはIFNβ-C17S-R27Tと類似したこととして示された。
【0062】
2-5. トラスツズマブ-IFNβ-C17S-R27Tの抗体依存性細胞毒性
抗体依存性細胞毒性は、トラスツズマブの主要な抗癌機構の1つである。抗体が標的細胞に結合すると、トラスツズマブのFcドメインと結合することができるFcガンマ受容体を有するNK細胞の活性化によって癌細胞の死滅が起こる。
トラスツズマブ-IFNβ-C17S-R27Tは、トラスツズマブを含んでいるため、トラスツズマブと同様に抗体依存性細胞毒性を含み得る。標的細胞であるHER2陽性癌細胞(HCC1954、MDA-MB453)にControl IgG、トラスツズマブ、IFN-β、およびトラスツズマブ-IFNβ-C17S-R27Tをそれぞれ濃度別に処理し、作動細胞であるNK細胞(NK-92MI-CD16a)と8:1の作動細胞対比標的細胞比率で共培養した後、抗体依存的細胞毒性を確認した。
【0063】
その結果、図6に示したように、Control IgGおよびIFN-βは抗体依存性細胞毒性をほとんど誘発しなかったが、HER2を標的とするトラスツズマブとそれを含むトラスツズマブ-IFNβ-C17S-R27Tは同じレベルの抗体依存性細胞毒性を誘発した。
トラスツズマブによって誘導される抗体依存性細胞毒性効果がトラスツズマブ-IFNβ-C17S-R27Tでも完全に維持できることが確認できた。
【0064】
2-6.癌細胞のHER2発現度とトラスツズマブ-IFNβ-C17S-R27Tの癌細胞増殖抑制効果
IFN-βは、受容体結合を介して直接的に癌細胞の増殖を抑制する効果を有している。トラスツズマブ-IFNβ-C17S-R27Tの抗増殖能を様々なHER2発現レベルを有する胃癌細胞株で評価した。
その結果、図7aおよび図7bに示したように、トラスツズマブとトラスツズマブに基づく抗体薬物複合体であるT-DM1は、唯一HER2発現の高いNCI-N87細胞だけが有意な抗増殖能を示した。一方、トラスツズマブ-IFNβ-C17S-R27Tは、HER2発現が高い細胞株だけでなく、発現が中間(SNU1、SNU620)および低い(Hs746T、MKN45)胃癌細胞株でも有意な抗増殖能が観察できた。
【0065】
2-7. トラスツズマブ-IFNβ-C17S-R27Tの抗ウイルス活性
IFNを含む物質の活性を評価する場合における最も一般的な分析方法は、特定のウイルスによる細胞変性効果(cytopathic effect、CPE)から細胞を保護する抗ウイルス活性を測定することである。よって、CPEアッセイを用いて、トラスツズマブ-IFNβ、トラスツズマブ-IFNβ-R27Tおよびトラスツズマブ-IFNβ -C17S-R27TのIFN活性を定量的に測定し比較した。
その結果、図8a及び図8bに示したように、トラスツズマブ-IFNβ-C17S-R27Tによる抗ウイルス活性効果は、トラスツズマブ-IFNβ-R27Tに比べて約3倍高い効果を示し、トラスツズマブ-IFNβは、実験した濃度範囲では抗ウイルス活性がほとんど示されなかった。
【0066】
2-8. トラスツズマブ-IFNβ-C17S-R27Tの腫瘍標的能
動物モデルにおいて、各融合タンパク質が腫瘍特異的に移動する程度を比較分析した。
その結果、図9aおよび図9bに示したように、IgG融合タンパク質対比トラスツズマブ融合タンパク質群において有意な腫瘍標的効果が観察できた。特に、トラスツズマブ-IFNβ-R27TはIgG-IFNβ-R27Tに比べて2倍高い腫瘍標的能効果を示したが、トラスツズマブ-IFNβ-C17S-R27TはIgG-IFNβ-C17S-R27Tに比べて4倍以上の高い腫瘍標的能効果を示した。また、他の臓器に比べてトラスツズマブ-IFNβ-C17S-R27Tの腫瘍に移行の割合は、トラスツズマブ-IFNβ-R27Tより高いことが確認できた。
【0067】
2-9.トラスツズマブ-IFNβ-C17S-R27Tの生体内抗癌効能
融合タンパク質の抗癌効能を確認するために腫瘍異種移植モデル(Tumor xenograft model)を構築した後、各物質を投与し、腫瘍のサイズを測定した。
その結果、図10に示したように、トラスツズマブ-IFNβ-R27T 10 mpkまたはトラスツズマブ-IFNβ-C17S-R27Tを1、3、10 mpkの濃度別に処理した全ての群において、ビークルに比べて有意な腫瘍抑制効果が観察できた。トラスツズマブ-IFNβ-C17S-R27Tは濃度依存的に腫瘍の体積を減少し、10mpkで一部のマウスで完全寛解(1/5)が観察できた。また、トラスツズマブ-IFNβ- C17S-R27Tは、同じ濃度(10mpk)でトラスツズマブ-IFNβ-R27Tに比べて腫瘍抑制効果がより優れていることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明によるインターフェロンβ変異体と抗体またはその断片が結合した組換えタンパク質は、部位特異的変異によってインターフェロンβの物理的特性が改善され、生物活性および精製効率が向上し、生産性が高まることもある。このような組換えタンパク質は、インターフェロンβの機能および特定の抗原に結合する抗体の特性が全て発現するため、癌などの標的治療剤として有用に使うことができる。
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図3a
図3b
図3c
図4a
図4b
図5
図6
図7a
図7b
図8a
図8b
図9a
図9b
図10
【配列表】
2023528582000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-04-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
17番目のアミノ酸残基がセリンに置換され、27番目のアミノ酸残基がスレオニンに置換されたインターフェロンβ変異体;及び、前記インターフェロンβ変異体に直接的または間接的に共有結合された抗体またはその断片を含む組換えタンパク質。
【請求項2】
前記インターフェロンβ変異体が、80番目および25番目のアミノ酸残基にグリコシル基を含むものである、請求項1に記載の組換えタンパク質。
【請求項3】
前記インターフェロンβ変異体が、配列番号1のアミノ酸配列で示されるものである、請求項1に記載の組換えタンパク質。
【請求項4】
前記抗体またはその断片が、トラスツズマブ(Trastuzumab)、セツキシマブ(Cetuximab)及びアテゾリズマブ(Atezolizumab)からなる群から選択された1種以上のものである、請求項1に記載の組換えタンパク質。
【請求項5】
前記組換えタンパク質が、インターフェロンβ変異体と抗体またはその断片がペプチドリンカーによって連結されたものである、請求項1に記載の組換えタンパク質。
【請求項6】
請求項1に記載の組換えタンパク質を符号化するポリヌクレオチド。
【請求項7】
前記ポリヌクレオチドが、配列番号9、10または11の塩基配列で示されるものである、請求項6記載のポリヌクレオチド。
【請求項8】
請求項6に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項9】
請求項8に記載の発現ベクターで形質転換された宿主細胞。
【請求項10】
請求項1に記載の組換えタンパク質を有効成分として含む抗癌用薬学的組成物。
【請求項11】
(a)インターフェロンβ変異体に直接的または間接的に共有結合した抗体またはその断片を含む組換えタンパク質を発現するように形質転換された宿主細胞を培養する段階;及び、
(b)培養された宿主細胞またはその培養物でインターフェロンβに直接的または間接的に共有結合された抗体またはその断片を含む組換えタンパク質を単離・精製する段階を含む、
インターフェロンβ変異体に直接的または間接的に共有結合された抗体またはその断片を含む組換えタンパク質の製造において、前記インターフェロンβ変異体の17番目のアミノ酸であるシステインを他のアミノ酸に変形させた組換えタンパク質を発現するように宿主細胞を形質転換させたことを特徴とする、
前記組換えタンパク質の生産または単離・精製時のタンパク質の安定性を高める方法。
【請求項12】
前記インターフェロンβ変異体が、インターフェロンβのR27T変異体であることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記他のアミノ酸が、セリンであることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記宿主細胞が、哺乳動物細胞であることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
抗癌用製剤を製造するための請求項1に記載の組換えタンパク質の使用。
【請求項16】
請求項1に記載の組換えタンパク質を含む組成物の有効量を、これを必要とする個体に投与することを含む癌の治療のための、前記組成物
【国際調査報告】