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特表2023-528584硬化した3次元成形体の交互積層製造法、当該方法によって得られる成形体、及びその使用
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  • 特表-硬化した3次元成形体の交互積層製造法、当該方法によって得られる成形体、及びその使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-05
(54)【発明の名称】硬化した3次元成形体の交互積層製造法、当該方法によって得られる成形体、及びその使用
(51)【国際特許分類】
   B22C 1/22 20060101AFI20230628BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230628BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20230628BHJP
   B33Y 70/10 20200101ALI20230628BHJP
   B22C 9/02 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
B22C1/22
B33Y10/00
B33Y80/00
B33Y70/10
B22C1/22 C
B22C9/02 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022566477
(86)(22)【出願日】2021-06-14
(85)【翻訳文提出日】2022-10-28
(86)【国際出願番号】 EP2021065939
(87)【国際公開番号】W WO2021254953
(87)【国際公開日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】102020003562.0
(32)【優先日】2020-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516319588
【氏名又は名称】アーエスカー ケミカルズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】ASK CHEMICALS GMBH
【住所又は居所原語表記】Reisholzstrasse 16-18, 40721 Hilden (DE)
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】デニス・バルテルス
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク・ポルサキエヴィチ
【テーマコード(参考)】
4E092
【Fターム(参考)】
4E092AA24
4E092AA50
(57)【要約】
本発明は、(i)バインダであって、少なくとも下記の成分:a)フルフリルアルコールモノマーと樹脂成分の合計に基づいて、約60質量%から100質量%のフルフリルアルコールモノマーがバインダ中に存在する、フルフリルアルコールモノマー、及び任意選択により場合によっては少なくともフラン樹脂を含む樹脂成分、並びにb)メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、及びそれらの混合物から選択される硬化剤成分、を含む、バインダを用意する工程、(ii)耐熱性成形材料の層をもたらして、成形材料層を準備する工程、(iii)耐熱性成形材料とは別に、成形材料層の少なくとも一部にバインダの成分a)又はb)を選択的に適用する工程、(iv)工程(iii)で挙げた成分とは別に、バインダの他方の成分を適用する工程であって、ここで工程(iv)は、工程(iii)の前若しくは後に行われうるか、又は工程(iv)は、工程(ii)と組み合わされうる、工程、並びに(v)任意選択により場合によっては、工程(ii)、(iii)、及び(iv)を、1回又は複数回繰り返す工程、を少なくとも含む、硬化した3次元成形体の交互積層製造方法に関する。そのようにして得られた成形体、及びその使用も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)バインダであって、少なくとも以下の成分:
a)フルフリルアルコールモノマーと場合によっては樹脂成分との合計に基づいて、約60質量%~100質量%のフルフリルアルコールモノマーがバインダ中に存在する、フルフリルアルコールモノマー、及び任意選択により場合によっては、少なくともフラン樹脂を含む樹脂成分、並びに
b)メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、及びそれらの混合物から選択される硬化剤成分
を含む、バインダを用意する工程、
(ii)耐熱性成形材料の層をもたらして、成形材料層を準備する工程、
(iii)前記成形材料層の少なくとも一部に、前記耐熱性成形材料とは別に、前記バインダの成分a)又はb)を選択的に適用する工程、
(iv)工程(iii)で挙げた成分とは別に、前記バインダの他方の成分を適用する工程であって、ここで工程(iv)は、工程(iii)の前若しくは後に行われうるか、又は工程(iv)は、工程(ii)と組み合わされうる、工程、並びに
(v)任意選択により場合によっては、工程(ii)、(iii)、及び(iv)を、1回又は複数回繰り返す工程
を少なくとも含む、硬化した3次元成形体の交互積層製造方法。
【請求項2】
少なくとも:
A)前記耐熱性成形材料と前記硬化剤成分b)の混合物を調製する工程、
B)前記耐熱性成形材料と前記硬化剤成分b)の前記混合物の層をもたらす工程、
C)前記層の少なくとも一部に、前記フルフリルアルコールモノマー及び任意選択により場合によっては前記樹脂成分からなる成分a)を選択的に適用する工程、及び
D)任意選択により場合によっては、工程B)及びC)を、1回又は複数回繰り返す工程
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも:
A)前記耐熱性成形材料と前記フルフリルアルコールモノマー及び任意選択により場合によっては前記樹脂成分からなる前記成分a)との混合物を調製する工程、
B)前記耐熱性成形材料と成分a)との前記混合物の層をもたらす工程、
C)前記層の少なくとも一部に、前記硬化剤成分b)を選択的に適用する工程、及び
D)任意選択により場合によって、工程B)及びC)を、1回又は複数回繰り返す工程
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも:
A)前記耐熱性成形材料の層をもたらす工程、
B)前記層の表面に、前記フルフリルアルコールモノマー及び任意選択により場合によっては前記樹脂成分からなる成分a)を適用する工程、
C)成分a)がその上に適用された前記層の少なくとも一部に、前記硬化剤成分b)を選択的に適用する工程、及び
D)任意選択により場合によって、工程A)、B)、及びC)を、1回又は複数回繰り返す工程
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも:
A)前記耐熱性成形材料の層をもたらす工程、
B)前記層の表面に、前記硬化剤成分b)を適用する工程、
C)前記硬化剤成分b)がその上に適用された前記層の少なくとも一部に、前記フルフリルアルコールモノマー及び任意選択により場合によっては前記樹脂成分からなる成分a)を選択的に適用する工程、及び
D)任意選択により場合によっては、工程A)、B)、及びC)を、1回又は複数回繰り返す工程
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記バインダは、樹脂成分とフルフリルアルコールモノマーの合計に基づいて、約60質量%~約98質量%のフルフリルアルコールモノマーを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記選択的な適用は、プリントヘッドを用いて行われる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記選択的な適用は、ジェット印刷を用いて行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法によって得られる成形体。
【請求項10】
金属鋳造、特に鉄、鋼(スチール)、銅、又はアルミニウム鋳造のための、請求項9に記載の成形体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化した3次元成形体の交互積層製造法に関する。この方法で製造された成形体は、特に鋳造用中子及び金属鋳造用型に適する。
【背景技術】
【0002】
3次元成形体の交互積層製造に用いられる様々な方法が知られている。これらの方法を用いて、CADデータから層毎(layer-by-layer)に3D印刷することによって、成形型を用いずに、最も複雑な形状を有する物体すら直接製造することが可能である。これは、型を必要とする従来の方法では不可能である。
【0003】
国際公開第2001/068336号は、交互積層製造用の様々なバインダを開示している。特に、少なくとも50%のフルフリルアルコール及び約4%のエチレングリコールを有するフラン樹脂(これについての更なる詳細は説明されていない)をバインダ成分として使用することも挙げられている。バインダの樹脂成分は、固まっていない成形材料の加工表面全体に層毎に噴霧され、次いで同様に層毎に硬化されるが、有機酸などの硬化剤が選択的に適用される。トルエンスルホン酸が有機酸として開示されている。
【0004】
国際公開第01/72502号は、この方法の変形を記載しており、その方法では、液体バインダ材料、特にここでもフラン樹脂(これについての更なる詳細は説明されていない)及びトルエンスルホン酸などの液体硬化剤が、硬化される区域に、樹脂成分の次に硬化剤という順で交互に選択的に適用される。
【0005】
国際公開第03/103932号によると、バインダの樹脂組成物は、もはやプリントヘッドを用いて層毎に適用されずに、成形材料と直接混合され、成形材料と共に層毎に適用される。この樹脂成分と成形材料の混合物は、次いで、硬化剤として亜硫酸を選択的に適用することで硬化される。
【0006】
硬化した3次元成形体を交互積層製造する別の方法が国際公開第2018/2214093号に開示されている。この文献において、少なくともアルデヒド化合物とフルフリルアルコールとの反応生成物としてフラン樹脂、並びに任意選択で場合によっては窒素含有化合物及び/又はフェノール化合物を含有する樹脂組成物が使用され、ここで樹脂成分の窒素含有量は、5質量%未満であり、樹脂成分は、樹脂成分に基づいて5質量%を超え、且つ50質量%未満のフルフリルアルコールモノマーを含む。
【0007】
国際公開第2004/110719号においては、添加の順番は逆転する。まず、成形材料が硬化剤と予め混合され、次いで樹脂成分が選択的に層毎に適用される。酸、アミン、及びエステルが硬化剤として記載されている。硬化剤の更なる詳細は記載されていない。
【0008】
DE10 2014 106 178には、物体の交互積層製造方法が記載されており、その方法においては、レゾール樹脂及びエステルを用いて成形材料が層において硬化される。
【0009】
特に、国際公開第2004/110719号に従う酸/フラン樹脂システム、及びDE10 2014 106 178に従うエステル/レゾール樹脂システムは、成形体の交互積層製造に実務上ある程度受け入れられており、新規鋳造部品の開発に使用され、且つ従来の成形型を用いる製造が複雑で高価すぎるか、又は複雑なコアパッケージでのみ実現可能な場合に、個々の部品又は小系列の製造に使用されている。
【0010】
酸/フラン樹脂システムは、この方法に従って製造された成形体から、まず、成形材料の付着した非印刷混合物、及び酸又は樹脂成分を、複雑な工程で除かなければならないという欠点を有している。この作業を行う人は、塵に加えて溶媒及びバインダの蒸気に曝される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2001/068336号
【特許文献2】国際公開第01/72502号
【特許文献3】国際公開第03/103932号
【特許文献4】国際公開第2018/224093号
【特許文献5】国際公開第2004/110719号
【特許文献6】DE10 2014 106 178
【特許文献7】DE20 2011 110 617 U1
【特許文献8】DE10 2014 002 679 A1
【特許文献9】欧州特許出願公開第1 137 500 A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の課題は、結果として得られた成形体に非接着混合物が付着する傾向が最小限に抑えられた、硬化した3次元成形体の交互積層製造法を提供することである。従って、接着領域から非接着粒(sand)を除去するのに必要な労力が最小化される。結果的に達成される時間の短縮に加えて、作業員の溶媒及び/又はバインダ蒸気への曝露も最小限に抑えられる。本発明の別の課題は、高い曲げ強度を有する3次元成形体を製造する方法を提供することである。
【0013】
3Dプリンタのいわゆるジョブボックスを、より高い空間効率で使用可能であること、すなわち成形体が互いに付着する危険性を伴うことなく、成形体を互いにより近接して配置することができることは、更なる利点である。更に、既にわずかに反応し硬化している面積が著しく低減されるため、印刷されていない成形材料混合物を、より容易にプロセスに再導入することができる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(i)バインダであって、少なくとも下記の成分:
a)フルフリルアルコールモノマーと場合によっては樹脂成分との合計に基づいて、約60質量%~100質量%のフルフリルアルコールモノマーがバインダ中に存在する、フルフリルアルコールモノマー、及び任意選択により場合によっては、少なくともフラン樹脂を含む樹脂成分、並びに
b)メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、及びそれらの混合物から選択される硬化剤成分
を含む、バインダを用意する工程、
(ii)耐熱性成形材料の層をもたらして、成形材料層を準備する工程、
(iii)成形材料層の少なくとも一部に、耐熱性成形材料とは別に、バインダの成分a)又はb)を選択的に適用する工程、
(iv)工程(iii)で挙げた成分とは別に、バインダの他方の成分を適用する工程であって、ここで工程(iv)は、工程(iii)の前若しくは後に行うことができるか、又は工程(iv)は、工程(ii)と組み合わせることができる、工程、並びに
(v)任意選択により場合によっては、工程(ii)、(iii)、及び(iv)を、1回又は複数回繰り返す工程
を少なくとも含む、硬化した3次元成形体の交互積層製造法によって、これらの課題を達成可能であることが驚くべきことに発見された。
【0015】
本発明にかかる方法の特に有利な実施形態は、少なくとも下記の工程:
α)耐熱性成形材料と硬化剤成分b)の混合物を調製する工程、
β)耐熱性成形材料と硬化剤成分b)の混合物の層をもたらす工程、
γ)層の少なくとも一部に成分a)を選択的に適用する工程、及び
δ)任意選択により場合によっては、工程β)及びγ)を、1回又は複数回繰り返す工程
を含む。
【0016】
更に、本発明は、本発明による方法によって得られる成形体に関する。成形体は、金属鋳造、特に鉄、鋼(スチール)、銅、又はアルミニウム鋳造に使用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、製造工程中に生じる接着を定量化するための試料の形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[発明の詳細な説明]
本発明による方法は、
(i)バインダであって、少なくとも下記の成分:
a)フルフリルアルコールモノマーと任意成分である樹脂成分の合計に基づいて、約60質量%から100質量%のフルフリルアルコールモノマーがバインダ中に存在する、フルフリルアルコールモノマー、及び任意選択により場合によっては、少なくともフラン樹脂を含む樹脂成分、並びに
b)メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、及びそれらの混合物から選択される硬化剤成分
を含む、バインダを用意する工程、
(ii)耐熱性成形材料の層をもたらして、成形材料層を準備する工程、
(iii)成形材料層の少なくとも一部に、耐熱性成形材料とは別に、バインダの成分a)又はb)を選択的に適用する工程、
(iv)工程(iii)で挙げた成分とは別に、バインダの他方の成分を適用する工程であって、ここで工程(iv)は、工程(iii)の前若しくは後に行うことができるか、又は工程(iv)は、工程(ii)と組み合わせることができる、工程、並びに
(v)任意選択により場合によっては、工程(ii)、(iii)、及び(iv)を、1回又は複数回繰り返す工程
を少なくとも含む。
【0019】
本発明にかかる方法の特に有利な実施形態は、少なくとも下記の工程:
α)耐熱性成形材料と硬化剤成分b)の混合物を調製する工程、
β)耐熱性成形材料と硬化剤成分b)の混合物の層をもたらす工程、
γ)層の少なくとも一部に成分a)を選択的に適用する工程、及び
δ)任意選択により場合によっては、工程β)及びγ)を、1回又は複数回繰り返す工程
を含む。
【0020】
<耐熱性成形材料>
耐熱性成形材料は、特に限定されない。任意の微粒子状固体が耐熱性成形材料として使用されうる。好ましくは、耐熱性成形材料は、自由に流動する状態である。耐熱性成形材料として、一般的に知られる鋳型製造用の材料が、純粋な形態、又はその混合物の形態で使用されうる。適切な材料は、例えば、ケイ砂、ジルコニウム砂又はクロム鉱石砂、カンラン石、バーミキュライト、ボーキサイト、耐火粘土、並びに人工的に製造される耐熱性成形材料、及び/又は合成材料(例えば、中空微小球体)から得られる耐熱性成形材料である。費用面の理由から、ケイ砂が特に好ましい。耐熱性成形材料は、融点(融解温度)が高い材料である。好ましくは、耐熱性成形材料の融点は、少なくとも約600℃、より好ましくは少なくとも約900℃、特に好ましくは少なくとも約1200℃、一層好ましくは少なくとも約1500℃である。
【0021】
耐熱性成形材料の平均粒子径は、通常、約30μmから約500μm、好ましくは約40μmから約400μm、特に好ましくは約50μmから約250μmである。粒径は、例えばDIN ISO3310に準拠するふるい分けによって測定されうる。
【0022】
<成形材料添加剤>
耐熱性成形材料に加えて、成形材料層は、追加の固体を含みうる。本発明の構成において、それらは、成形材料添加剤と称される。成形材料添加剤は、通常、微粒子状固体である。成形材料添加剤の平均粒径は、通常、約30μmから約500μm、好ましくは約40μmから約400μm、特に好ましくは約50μmから約250μmである。粒径は、例えばDIN ISO3310に準拠するふるい分けによって測定されうる。
【0023】
耐熱性成形材料及び任意選択成分である成形材料添加剤(存在する場合)は、成形材料混合物と称される。成形材料添加剤の例として、酸化鉄類、ケイ酸塩類、アルミン酸塩類、中空微小球体、おかくず、及びでん粉、並びにそれらの混合物などの有機又は無機添加剤が挙げられる。これらは、鋳造欠陥を防ぐために耐熱性成形材料に添加されうる。
【0024】
成形材料添加剤の量は特に限定されず、通常、成形材料混合物に基づいて最大で約10質量%、好ましくは最大で約7質量%、特に好ましくは最大で約1質量%である。
【0025】
成形材料混合物中の耐熱性成形材料の量は、特に限定されない。好ましくは、耐熱性成形材料は、成形材料混合物の少なくとも約80質量%、より好ましくは少なくとも約90質量%、特に好ましくは少なくとも約93質量%、一層好ましくは99質量%を占める。
【0026】
好ましい実施形態において、成形材料添加剤として非晶質SiOが使用される。
【0027】
<バインダ>
バインダは、
a)フルフリルアルコールモノマー及び任意成分である樹脂成分の合計に基づいて、約60質量%から100質量%のフルフリルアルコールモノマーがバインダ中に存在する、フルフリルアルコールモノマー、及び任意選択により場合によって、少なくともフラン樹脂を含む樹脂成分、並びに
b)メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、及びそれらの混合物から選択される硬化剤成分
を少なくとも含む多成分システムである。
【0028】
本発明の構成において、本発明の方法において使用される全ての液体成分は、バインダの成分であると考えられる。
【0029】
<樹脂成分>
本発明の構成において、バインダ中の全てのポリマー及びオリゴマー成分は、樹脂成分と称される。
【0030】
バインダは、任意選択で場合により樹脂成分を含みうる。樹脂成分が存在する場合、樹脂成分はフラン樹脂を含む。フラン樹脂は、特に限定されず、本技術分野で知られる任意のフラン樹脂でありうる。
【0031】
通常、フラン樹脂は、フラン化合物から、特にフルフリルアルコール及びアルデヒド化合物、特にホルムアルデヒドから得られる。フルフリルアルコール以外に、2,5-ビス(ヒドロキシメチル)フラン、2,5-ビス(ヒドロキシメチル)フランのメチル又はエチルエーテル、又は5-ヒドロキシメチルフルフラールなどのフルフリルアルコール誘導体がコモノマーとして使用されうる。
【0032】
一般的に、アルデヒド化合物として式R-CHOで表される化合物が使用され、ここでRは、水素原子又は好ましくは1~8個、特に好ましくは1~3個の炭素原子を有する炭化水素基である。例として、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、及びブチルアルデヒドが挙げられる。フルフリルアルデヒド(フルフラール)及びグリオキサールも使用されうる。1を超えるアルデヒド化合物の混合物も可能である。ホルムアルデヒド又は(アルデヒド類のモル量に基づいて)主としてホルムアルデヒドを含有する混合物が特に好ましい。ホルムアルデヒドが最も好ましい。
【0033】
フラン化合物(特にフルフリルアルコール)のアルデヒド(特にホルムアルデヒド)に対するモル比は、通常、約0.5以上であり、モル比は、好ましくは約1:0.2~約1:1.5、より好ましくは約1:0.2~約1:0.8、特に好ましくは約1:0.3~約1:0.7である。
【0034】
また、アルデヒド化合物とフラン化合物を反応させる際、1つ又は複数の他の化合物、例えば、窒素を含有する化合物、例えば、尿素、フルフリルアルコール誘導体、及び/又はフェノール化合物を反応させることができる。
【0035】
結果として得られる部品の特性、例えば強度を向上させるため、樹脂成分は、任意選択により、窒素を含有する化合物を含んでいてもよい。窒素を含有する化合物は特に限定されない。窒素を含有する適切な化合物は、例えば、尿素そのもの、メラミン、若しくはエチレン尿素などの尿素誘導体、又は例えばアンモニア及びトリエチルアミン、モノエタノールアミン若しくは2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールなどのアミノアルコール等のアミンである。特に好ましい実施形態において、尿素、トリエチルアミン、又はモノエタノールアミン、特に尿素が使用される。
【0036】
窒素を含有する化合物は、他の反応原料又はそれらの予備縮合物と直接反応させることができ、又は好ましい変形例において、独立した予備縮合物、特に尿素誘導体、例えば好ましくは尿素そのもの等がアルデヒド、好ましくはホルムアルデヒドと縮合した形態、任意選択で場合によっては好ましくはフルフリルアルコール若しくはフルフリルアルコール誘導体と縮合した形態で添加される。
【0037】
窒素含有化合物の量は、窒素の存在に起因する表面欠陥が、結果として得られる成形品において低減されるか又は回避されるように、ケルダール法(DIN16916-02-B2又はVDG仕様書p70に準拠)に従って測定される樹脂成分の総窒素含有量(N)が最大で約5質量%、好ましくは最大で約3.5質量%、特に好ましくは最大で約2質量%となるよう選択されうる。
【0038】
任意選択により場合によっては、技術的な鋳型用粒子(sand)の特性、例えば強度を向上させるよう、樹脂成分中にフェノール化合物が存在しうる。フェノール化合物は、特に限定されない。しかし、適切なフェノール化合物は、1つ又は複数の芳香環、及びそれらの環上の少なくとも1個のヒドロキシ置換基を特徴とする。フェノールそのものに加え、例としてクレゾール、若しくはノニルフェノール、1,2-ジヒドロキシベンゼン(カテコール)、1,3-ジヒドロキシベンゼン(レゾルシノール)、カシューナッツ殻油、すなわちカルダノールとカルドールの混合物、若しくは1,4-ジヒドロキシベンゼン(ヒドロキノン)、若しくはビスフェノールAなどのフェノール化合物、又はそれらの混合物などの置換フェノールが挙げられる。フェノールがフェノール化合物として特に好ましい。
【0039】
フェノール化合物は、他の反応原料又はそれらの予備縮合物(pre-condensate)と直接反応させることができる。更に、アルカリ条件下で製造されるレゾール樹脂の形態のフェノールとホルムアルデヒドの反応生成物が樹脂成分に添加されうる。
【0040】
バインダに対する遊離フェノールの総含有量は、好ましくは、(ガスクロマトグラフィーで測定して)最大で約1質量%である。
【0041】
フラン化合物(特にフルフリルアルコール)及びアルデヒド化合物(特にホルムアルデヒド)(いずれもモノマーとして)の総量は、使用される全反応原料に基づいて、少なくとも約60質量%、好ましくは少なくとも約70質量%、特に好ましくは少なくとも約80質量%である。
【0042】
反応は、酸触媒、好ましくは25℃におけるpKa値が2.5以上の酸触媒、より好ましくはpKa値が約2.7から約6.0、特に好ましくはpKa値が約3.0から約5.0の酸触媒の存在中で行われうる。
【0043】
フラン樹脂の調製において、弱酸、それらの混合物、及びそれらの塩、好ましくは25℃におけるpKa値が2.5以上の弱酸、それらの混合物、及びそれらの塩、より好ましくはpKa値が約2.7から約6.0、特に好ましくはpKa値が約3.0から約5.0のものが酸触媒として使用される。好ましくは、これらは、安息香酸、乳酸、アジピン酸、クエン酸、又はサリチル酸などの有機酸を含む。塩の例として酢酸亜鉛が挙げられる。
【0044】
適切なフラン樹脂は、例えば、参照によりここに援用する国際公開第2004/110719号、国際公開第2018/224093号、DE20 2011 110 617 U1、及びDE10 2014 002 679 A1に記載されている。
【0045】
フラン樹脂は、50質量%~約100質量%、好ましくは60質量%~約99質量%、特に好ましくは30質量%~約97質量%の量で樹脂成分中に存在しうる。
【0046】
好ましい実施形態において、樹脂成分は、尿素-ホルムアルデヒド樹脂を更に含みうる。
【0047】
尿素-ホルムアルデヒド樹脂は、0~約25質量%、好ましくは約1~約20質量%、特に好ましくは約3~約15質量%の量で樹脂成分中に存在しうる。尿素-ホルムアルデヒド樹脂は、特に限定されない。尿素-ホルムアルデヒド樹脂は、アルデヒド化合物(特にホルムアルデヒド)を、窒素を含有するモノマー(特に尿素)と反応させることによって得ることができる。
【0048】
尿素とホルムアルデヒドのモル比は、最大で約1であることができ、好ましくは約1:1~約1:5、より好ましくは約1:1~約1:4、特に好ましくは約1:1.2~約1:1.3である。好ましくは25℃におけるpKa値が約-2.5以上の強酸、その混合物、及びそれらの塩、より好ましくはpKa値が約-2.5~約2.0、特に好ましくはpKa値が約0~約2.0のものが、尿素とホルムアルデヒドの反応の酸触媒として使用される。これらは、好ましくはパラトルエンスルホン酸、又はリン酸ナトリウムなどのホスホン酸の塩を含む。
【0049】
尿素-ホルムアルデヒド樹脂は、交互積層製造(layer-by-layer production)によって製造される成形体の強度の向上に好ましい影響を与える。
【0050】
更に、樹脂成分は、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、特にレゾール樹脂を含みうる。フェノール-ホルムアルデヒド樹脂は、0質量%~約25質量%、好ましくは0質量%~約20質量%、特に好ましくは0質量%~約15質量%の量で樹脂成分中に存在しうる。
【0051】
<フルフリルアルコールモノマー>
バインダは、樹脂成分及びフルフリルアルコールモノマーの合計に基づいて、約60質量%~100質量%のフルフリルアルコールモノマーを含み、すなわち、樹脂成分、フルフリルアルコールモノマー、及び任意選択成分の合計を100質量部とした場合、フルフリルアルコールモノマーの量は、約60質量部~100質量部を占める。好ましくは、フルフリルアルコールモノマーの量は、樹脂成分、フルフリルアルコールモノマー、及び任意選択成分の合計に基づいて、約60質量%~約99質量%、より好ましくは約60質量%~約98質量%、特に好ましくは約70質量%~約98質量%である。フルフリルアルコールモノマーの量は、例えば、ガスクロマトグラフィー(VDG仕様書p70「Bindemittelprufung,Prufung von flussigen saurehartbaren Furanharzen」第3版、1989年4月を参照されたい)を用いて測定されうる。
【0052】
樹脂成分とフルフリルアルコールモノマーの合計に基づいてフルフリルアルコールモノマーを約60質量%~100質量%含むバインダは、より少ないフルフリルアルコール含有量を有するバインダで製造された成形体よりも高い強度を示す成形体をもたらすことを発見した。しかし、この強度の増大は、部品に付着する物質の著しい増加をもたらす。本発明による硬化剤成分b)を使用することのみによって、所望される強度の増大だけでなく、もたらされる付着物質の低減も達成されうることを驚くべきことに発見した。
【0053】
フルフリルアルコールモノマーは、このようにしてバインダに添加されうる。代わりに、又は加えて、フルフリルアルコールモノマーの対応する残存含有量を有する市販のフラン樹脂が使用されうる。
【0054】
<硬化剤成分>
硬化剤成分b)は、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、又はそれらの混合物から構成される。
【0055】
硬化剤成分b)の量は、100質量%とみなされる成形材料混合物の量に基づいて、好ましくは約0.05質量%~約1.5質量%、より好ましくは約0.05質量%~約1.25質量%、特に好ましくは約0.05質量%~約1質量%である。
【0056】
<任意選択成分>
バインダは、フェノール化合物、水、グリコール、アルコール、溶媒、可塑剤、硬化調節剤、表面改質剤、又は界面活性剤などの追加の任意選択成分を含みうる。任意選択成分は、成分a)と共に、成分b)と共に、成分a)及び成分b)と共に、又は成分a)及び成分b)とは別に適用されうる。
【0057】
<フェノール化合物>
任意選択で、鋳型用粒子(sand)の技術的特性、例えば強度を向上させるために、フェノール化合物が存在しうる。フェノール化合物は、特に限定されない。しかし、適切なフェノール化合物は、1つ又は複数の芳香環、及びそれらの環上の少なくとも1個のヒドロキシ置換基を特徴とする。フェノールそのものに加えて、例としてクレゾール、若しくはノニルフェノール、1,2-ジヒドロキシベンゼン(カテコール)、1,3-ジヒドロキシベンゼン(レゾルシノール)、カシューナッツ殻油、すなわちカルダノールとカルドールの混合物、若しくは1,4-ジヒドロキシベンゼン(ヒドロキノン)、若しくはビスフェノールAなどのフェノール化合物、又はそれらの混合物などの置換フェノールが挙げられる。フェノール化合物としてレゾシノールが特に好ましい。フェノール化合物は、好ましくは、成分a)と共に適用される。
【0058】
<水>
バインダは、任意選択により場合によっては希釈のための水を含みうる。
【0059】
水の量は特に限定されず、水の量は、好ましくは、バインダに基づいて約0.009質量%~約60質量%、より好ましくは約0.1質量%~約50質量%、特に好ましくは約0.5質量%~約45質量%、特に好ましくは約1質量%~約40質量%である。
【0060】
硬化剤成分b)は、任意選択により場合によって希釈のための水を含みうる。ここで、水の量は、100%とみなされる硬化剤成分b)に基づいて、10質量%~90質量%、好ましくは25質量%~75質量%、より好ましくは40質量%~60質量%である。
【0061】
水の量は、DIN51777に準拠してカールフィッシャー滴定を用いて測定されうる。
【0062】
<グリコール>
更に、結果として得られる3次元成形体の鋳型用粒子(sand)の技術的特性を向上させるために、特に、それらの弾性を向上させ、かつ脆性を低減させるために、バインダは、グリコールを含みうる。グリコールは特に限定されず、任意のグリコールを使用することができ、ポリエチレングリコールなどのグリコールポリマーも考えられる。エチレングリコール、ブチルジグリコール、及びそれらの組み合わせが好ましく、エチレングリコールが特に好ましい。グリコールの量は、特に限定されず、好ましくは、グリコールは、100質量%とみなされる硬化剤成分b)の量に基づいて、約0.5質量%~約10質量%、より好ましくは約1質量%~約5質量%の量で存在する。好ましくは、グリコールは、成分b)と共に導入される。
【0063】
<アルコール>
バインダは、任意選択により、グリコールとは異なるC1~4アルコール(好ましくはエタノール)又はその混合物を含んでいてもよい。アルコールは、鋳型用粒子(sand)の技術的特性を最適化する役割を果たす。アルコールの量は特に限定されず、好ましくは、アルコールは、バインダの量に基づいて、約1質量%~約25質量%、より好ましくは約2質量%~約10質量%の量で存在する。
【0064】
<溶媒>
一実施形態において、バインダは、更なる溶媒、特に1~25個の炭素原子を含む有機溶媒、例えば、エタノール、プロパノール、5-ヒドロキシ-1,3-ジオキサン、4-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキソラン、又はテトラヒドロフルフリルアルコールなどのアルコール類、トリメチロールプロパンオキセタンなどのオキセタン類、アセトンなどのケトン類、又はトリアセチン及び炭酸プロピレンなどのエステル類等を追加で含みうる。更なる溶媒の量は、特に限定されず、好ましくは、他の溶媒は、バインダの量に基づいて、約1質量%~約25質量%、より好ましくは約2質量%~約10質量%の量で存在する。
【0065】
<可塑剤及び硬化調節剤>
一般的な可塑剤又は硬化調節剤は、成形体の強度及び弾性を調整するようためにバインダ中に含有されうる。可塑剤及び硬化調節剤として、例えば、2~12個の炭素原子を有するジオール類若しくはポリオール類、脂肪酸類、シリコーン類、又はフタル酸エステル類が挙げられる。オレイン酸のような脂肪酸類が特に好ましい。
【0066】
可塑剤又は硬化調整剤は、一般的な量で存在し、その量は樹脂成分に基づいて、例えば0質量%~約25質量%、好ましくは0質量%~約20質量%、より好ましくは約0.2質量%~約15質量%の範囲で変えうる。
【0067】
<表面改質剤>
表面張力を調整して技術的な鋳型用粒子(sand)の特性を向上させるための表面改質剤もバインダに添加されうる。表面改質剤としてシランを使用することが欧州特許出願公開第1137500A1号明細書によって知られている。適切なシランとして、例えば、γ-ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシ-シクロヘキシル)-トリメトキシシラン、及びN-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン又はポリシロキサン類などの、アミノシラン類、エポキシシラン類、メルカプトシラン類、ヒドロキシシラン類、及びウレイドシラン類が挙げられる。
【0068】
表面改質剤の量は、一般的な範囲内であり、例えば、樹脂成分に基づいて、0質量%~約5質量%、好ましくは約0.01質量%~約2.00質量%、より好ましくは約0.05質量%~約1.00質量%でありうる。
【0069】
<界面活性剤>
表面張力を低減するために、陽イオン性、陰イオン性、又は非イオン性界面活性剤などの界面活性剤が使用されうる。例として、カルボン酸塩類、スルホン酸塩類、又はナトリウム2-エチルヘキシルサルフェートのような硫酸塩類が陰イオン性界面活性剤として、エステルクワットのような4級アンモニウム化合物が陽イオン性界面活性剤として、又はポリアルキレングリコールエーテルのような、アルコール類、エーテル類、若しくはエトキシレート類が非イオン性界面活性剤として挙げられる。疎水性部及び親水性部を有する3-(ポリオキシエチレン)プロピルヘプタメチルトリシロキサンなどの修飾されたシロキサンも考えられる。好ましくは、界面活性剤は、適用を容易にするために、樹脂成分を選択的に適用する際に樹脂成分と共に使用される。
【0070】
本発明の方法において、硬化剤成分b)を、水及び任意選択により場合によってはグリコール(特にエチレングリコール)と共に混合物の形態で使用すると特に有利であることを発見した。
【0071】
硬化剤成分b)は、10質量%~約90質量%、好ましくは約25質量%~約75質量%、より好ましくは約30質量%~約70質量%、特に好ましくは約40質量%~約60質量%の量で混合物中に存在する。
【0072】
グリコールは、この混合物中に、約0質量%~約15質量%、好ましくは約2質量%~約10質量%、より好ましくは約4質量%~約8質量%の量で存在する。
【0073】
水は、この混合物中に、100%とみなされる硬化剤成分b)に基づいて、約10質量%~約90質量%、好ましくは25質量%~75質量%、より好ましくは40質量%~60質量%の量で存在する。
【0074】
<硬化した3次元成形体の交互積層製造法>
硬化した3次元成形体の交互積層製造法は、
(i)バインダを用意する工程、
(ii)耐熱性成形材料の層をもたらして、成形材料層を準備する工程、
(iii)成形材料層の少なくとも一部に、耐熱性成形材料とは別に、バインダの成分a)又はb)を選択的に適用する工程、
(iv)工程(iii)で挙げた成分とは別に、バインダの他方の成分を適用する工程であって、ここで工程(iv)は、工程(iii)の前若しくは後に行うことができるか、又は工程(iv)は、工程(ii)と組み合わせることができる、工程、並びに
(v)任意選択により場合によっては、工程(ii)、(iii)、及び(iv)を、1回又は複数回繰り返す工程
を少なくとも含む。
【0075】
<工程(ii):耐熱性成形材料の層をもたらして、成形材料層を準備する工程>
本発明の方法において、まず、耐熱性成形材料及び任意選択により場合によって成形材料添加剤の層が適用される。層の厚さは、例えば、約0.03mm~約3mm、好ましくは約0.03~約1.5mmでありうる。この工程において、所望する場合には、例えば、耐熱性成形材料の層が備えられる前に1つ又は複数のバインダ成分を耐熱性成形材料に混合すること(工程(iv)と工程(ii)の組み合わせ)によって、1つ又は複数のバインダ成分もまた適用されうる。
【0076】
<工程(iii):成形材料層の少なくとも一部に、耐熱性成形材料とは別に、バインダの成分a)又はb)を選択的に適用する工程>
<工程(iv):工程(iii)で挙げた成分とは別に、バインダの他方の成分を適用する工程>
「適用する」という用語は、2つの成分を一緒にすることを意味する。これは、非選択的又は選択的に行われうる。
【0077】
非選択的な適用において、1つの成分が表面(例えば、成形材料層上に)に適用されうる。それに代わり、ある成分は、混合装置を用いて又は手動で別の成分と(例えば、耐熱性成形材料と)混合されうる。
【0078】
選択的な適用において、ある成分は、他の成分の特定の領域に適用される。選択的な適用において、その成分は、好ましくは他の成分の特定の区域のみに適用される。選択的な適用は、例えば、プリントヘッド又は類似の適用法を用いて実施されうる。一実施形態において、適用される成分は、マスクを用いて適用されうる。マスクは、適用される成分が浸透しない領域、及び適用される成分が通過して、他の成分の特定の領域と接触することができる領域(例えば、開口部)を有するシートである。そのような方法は、例えば、スクリーン印刷又は孔版印刷である。
【0079】
特に好ましい実施形態において、選択的な適用は、プリントヘッドを用いて実施される。そのような方法は、例えば、場合により「バインダジェット方式」とも称される3D印刷である。適用される成分は、ジェット印刷を通してプリントヘッドを用いて適用される。3D印刷は、所望の成形体を得るために所定の領域で粉末材料をバインダに付着させる、付加による製造過程である。そのような過程は、例えばVDIガイドライン3405で規格化されている。
【0080】
工程(iii)において、バインダの成分a)又は成分b)のいずれかが、成形材料層の硬化される部分に適用される。バインダの成分a)及び成分b)が混合され、一緒に適用される場合、時期尚早な硬化反応が適用装置内(例えばプリントヘッド内)で起こりうる。これは、適用装置(例えばプリントヘッド)を目詰まりさせる可能性があり、生産性を低下させる原因となる。この理由により、成分a)は、硬化剤成分b)とは別に適用される。任意選択成分は、成分a)及び/又は硬化剤成分b)に添加されうるか、あるいはこれらの成分とは別に適用されうる。工程数を減らすため、任意選択成分は、成分a)及び/又は硬化剤成分b)に添加されることが好ましい。
【0081】
好ましい実施形態において、成分a)は、耐熱性成形材料及び成形材料添加剤(存在する場合には)と混合されて、成形材料層として耐熱性成形材料及び成形材料添加剤と共に適用される。次いで、硬化剤成分b)は、そのようにして活性化された成形材料層の少なくとも一部に選択的に適用される。
【0082】
別の特に好ましい実施形態において、硬化剤成分b)は、耐熱性成形材料及び成形材料添加剤(存在する場合)と混合され、成形材料層として耐熱性成形材料及び成形材料添加剤と共に適用される。次いで、成分a)は、そのようにして活性化された成形材料層の少なくとも一部に選択的に適用される。
【0083】
更に別の好ましい実施形態において、耐熱性成形材料及び成形材料添加剤(存在する場合)は、混合され、成形材料層としてもたらされる。次いで、成分a)及び硬化剤成分b)は、2つの異なるプリントヘッドを介して成形材料層の上に適用される。この関連で、成分の1つが表面(例えば、成形材料層の全表面)に適用され、他の成分が成形材料層の硬化される部分に選択的に適用されることが有利であることを発見した。
【0084】
耐熱性成形材料及び成形材料添加剤(存在する場合)の混合物、並びに硬化剤成分b)又は成分a)は、例えば、約10℃~約45℃の温度において適用されうる。
【0085】
成分の選択的な適用は当分野で知られており、一般的な方法を使用して実施されうる。温度(3D印刷においては、プリントヘッドの温度)は、室温に限定されないが、約20℃~約80℃、特に約20℃~約40℃でありうる。従って、より粘度の高い成分も容易に適用されうる。
【0086】
バインダ成分a)又は硬化剤成分b)を単独で、又は他の成分と共に選択的に適用する場合、したがって、問題となる適用方法に対して粘度を調整すべきである。プリントヘッドを用いて適用するためには、粘度(ブルックフィールド、25℃、スピンドル21、DIN EN ISO2555)は、約2mPas~約70mPas、好ましくは約5mPas~約60mPas、より好ましくは約5mPas~約50mPasであるべきである。
【0087】
バインダ成分a)又は硬化剤成分b)を単独で、又は他の成分と共に選択的に適用する場合、したがって、問題となる適用方法に表面張力を調整する必要がある。プリントヘッドを用いて適用する場合、Kruess K100フォース・テンシオメータを使用するWilhelmyプレート法を使用して20℃において測定される表面張力は、約10mN/m~約70mN/m、好ましくは約15mN/m~約60mN/m、より好ましくは約15mN/m~約55mN/m、特に好ましくは約20mN/m~約50mN/mであるべきである。
【0088】
<工程(v):任意選択により場合によっては、工程(ii)、(iii)、及び(iv)を、1回又は複数回繰り返す工程>
工程(v)において、工程(ii)、(iii)、及び(iv)が1回又は複数回繰り返されうる。好ましくは、それらの工程は、1回又は複数回繰り返される。
【0089】
工程(ii)、(iii)、及び(iv)を繰り返すことによって、複雑な成形体であっても段階的に構築されうる。繰り返す回数は、成形体の大きさ及び個々の層の厚さによって予め決まり、時には1000回を超えうる。
【0090】
繰り返しの回数は、特に限定されず、例えば、約2回~約10000回、好ましくは約2回~約5000回、より好ましくは約5回~約2500回、更により好ましくは約10回~約1000回の範囲で変わりうる。
【0091】
任意選択で、特許請求の範囲に記載している方法の後に追加の方法工程が続きうる。例えば、交互積層製造(layer-by-layer production)が完了した後、硬化が行われうる。硬化は、特に限定されず、あらゆる既知の硬化方法が使用されうる。好ましくは、硬化は、炉中(オーブン中)で又は電磁波を用いて実施される。
【0092】
必要な場合には、少なくとも部分的に硬化した成形体から出発原料の未硬化付着物が除去されうる。
【0093】
当然のこととして、ここで言及している好ましい実施形態の任意又は全ての組み合わせが本発明に包含される。
【0094】
第1の好ましい代替法によれば、本発明の方法は、少なくとも下記の工程ia)~id)を含む:
【0095】
ia)耐熱性成形材料及び硬化剤成分b)の混合物を調製する工程。
【0096】
この工程に関し、耐熱性成形材料は、成形材料に基づいて、好ましくは少なくとも約80質量%、より好ましくは少なくとも約90質量%、特に好ましくは少なくとも約95質量%の量で使用される。
【0097】
硬化剤成分b)の量は、100質量%とみなされる成形材料混合物の量に基づいて、好ましくは約0.05質量%~約1.5質量%、より好ましくは約0.05質量%~約1.25質量%、特に好ましくは約0.05質量%~約1質量%である。
【0098】
ib)耐熱性成形材料及び硬化剤成分b)の混合物の層をもたらす工程。
【0099】
ic)層の少なくとも一部に成分a)を選択的に適用する工程。
【0100】
成分a)は、硬化される耐熱性成形材料及び硬化剤成分b)の広げられた混合物の領域に適用される。
【0101】
成分a)の量は、成形材料混合物に基づいて、約0.1質量%~約5質量%、好ましくは約0.3質量%~約4質量%、より好ましくは約0.5質量%~約3質量%でありうる。
【0102】
id)所望する場合は、工程ib)及びic)を、1回又は複数回繰り返す工程。
【0103】
第2の好ましい代替法によると、本発明の方法は、少なくとも下記の工程iia)~iid)を含む:
【0104】
iia)耐熱性成形材料及び成分a)の混合物を調製する工程。
【0105】
この工程に関し、耐熱性成形材料は、成形材料混合物に基づいて、好ましくは少なくとも約80質量%、より好ましくは少なくとも約90質量%、特に好ましくは少なくとも約95質量%の量で使用される。一実施形態において、耐熱性成形材料の量は、成形材料混合物に基づいて、100質量%でありうる。
【0106】
成分a)は、耐熱性成形材料に基づいて、約0.1質量%~約5.3質量%、好ましくは0.3質量%~約4.3質量%、より好ましくは約0.5質量%~約3.1質量%の成分a)の量で、且つ成形材料混合物に基づいて、約0.1質量%~約5質量%、好ましくは約0.3質量%~約4質量%、より好ましくは約0.5質量%~約3質量%の量で使用されうる。
【0107】
iib)耐熱性成形材料及び成分a)の混合物の層をもたらす工程。
【0108】
iic)その層の少なくとも一部に硬化剤成分b)を選択的に適用する工程。
【0109】
硬化剤成分b)は、硬化される耐熱性成形材料及び硬化剤成分b)の広げられた混合物の領域に適用される。
【0110】
硬化剤成分b)の量は、100質量%であるとみなされる成形材料混合物の量に基づいて、好ましくは約0.05質量%~約1.5質量%、より好ましくは約0.05質量%~約1.25質量%、特に好ましくは約0.05質量%~約1質量%である。
【0111】
iid)所望する場合、工程iid)及びiic)を、1回又は複数回繰り返すことができる工程。
【0112】
第3の好ましい代替法によれば、本発明の方法は、少なくとも下記の工程iiia)~iiic)を含む:
【0113】
iiia)耐熱性成形材料の層をもたらす工程。
【0114】
iiib1)第1の適用装置を用いて(例えば、第1のプリントヘッドを用いて)、硬化剤成分b)を、その層の表面(例えば、耐熱性成形材料の全表面)にわたって適用する工程。
【0115】
iiib2)第2の適用装置を用いて(例えば、第2のプリントヘッドを用いて)、硬化剤成分b)がその上に適用された層の少なくとも一部に成分a)を選択的に適用する工程。
【0116】
iiic)所望する場合は、工程iiia)、iiib1)、及びiiib2)を、1回又は複数回繰り返しうる。
【0117】
第4の好ましい代替法によれば、本発明の方法は、少なくとも下記の工程iva)~ivc)を含む:
【0118】
iva)耐熱性成形材料の層をもたらす工程。
【0119】
ivb1)第1の適用装置を用いて(例えば、第1のプリントヘッドを用いて)、成分a)を上記の層の表面(例えば、耐熱性成形材料の全表面)にわたって適用する工程。
【0120】
ivb2)第2の適用装置を用いて(例えば、第2のプリントヘッドを用いて)、成分a)がその上に適用された層の少なくとも一部に、硬化剤成分b)を選択的に適用する工程。
【0121】
ivc)所望する場合には、工程iva)、ivb1)、及びivb2)を、1回又は複数回繰り返しうる。
【0122】
第1及び第2の代替法に関連する方法の工程及び成分の量に関する説明は、第3及び第4の代替法にも同様に類似して適用される。
【0123】
本発明の方法の工程に関する説明が、第1、第2、第3、及び第4の各代替法に適用されることは自明である。
【0124】
本発明の枠内で論じた全ての任意選択成分は、もちろん、第1から第4の代替法において任意選択により使用することができる。
【0125】
少なくとも成分a)、硬化剤成分b)、及び成形材料が、対応する体積部分で、当該体積部分が硬化しうるように存在する範囲に限り、「成形材料混合物」という用語は、硬化直前の全ての成分を含む組成物全体を意味する。硬化剤成分b)又は成分a)を含有しないジョブボックス内の体積部分は、成形材料混合物に起因しないが、代わりに、耐熱性成形材料及び成分a)から構成される混合物、又は耐熱性成形材料及び硬化剤成分b)から構成される混合物として特定される。
【実施例
【0126】
例を用いて発明をより詳細に説明するが、発明はこれらに限定されない。
【0127】
別段の記載がない限り、全ての比及び百分率は、質量に基づく。
【0128】
<例1:付着を低減する試験>
3次元体の交互積層製造において、結合された区域に未接着のサンド(sand)が付着する傾向を評価するために、Sand GS 19(平均粒径0.19mm)(成形材料混合物1)、又はSand GS 19と追加の0.2質量%の粉末添加剤(非結晶質SiO、ASK Chemicals GmbH社が提供する商品名INOTEC Promoter EP4500)(成形材料混合物2)から構成される2つの成形材料混合物の各々に0.3質量%の硬化剤を添加し、その混合物をパドルミキサ中で均質化した。
【0129】
硬化剤1は、パラトルエンスルホン酸65%及び水35%の混合物である。
【0130】
硬化剤2は、パラトルエンスルホン酸35%、キシレンスルホン酸35%、及び水30%の混合物である。
【0131】
硬化剤3は、メタンスルホン酸50%、水45%、及びモノエチレングリコール(MEG)5%の混合物である。
【0132】
硬化剤4は、パラトルエンスルホン酸65%、水35%、及びモノエチレングリコール(MEG)5%の混合物である。
【0133】
試験片は、商業用印刷システム(Voxeljet AG社から提供されているVX200)で製造した。フルフリルアルコールを87質量%含む市販のフラン樹脂(ASK Chemicals GmbH社から提供されているASKURAN 3D 120)を成分a)として使用した。全ての試験において、成分a)の量を、成形材料混合物100質量部に基づいて2質量部に設定した。
【0134】
試験片を印刷してその曲げ強度を測定し(寸法18.4mm×18.4mm×100mm)、万能試験機(Zwick Z010)で試験した。
【0135】
特定の試験体形状を作り出し、製造工程中に生じた付着物を定量した。形状及び対応する寸法を図1に示す。図1に示される開口部の寸法を表1に列挙する。
【0136】
【表1】
【0137】
試験片の製造後、試験片の上面及び底面並びに外縁から、付着するサンドをへら(スパチュラ)で完全に除去し、試験片の形状の開口部内のサンドのみが残った。これは、開口内のサンドまで除去することがないよう、可能な限り揺れを少なくして行った。次いで、試験片をふるい上に置き、振動板(Multiserv LUS-2e)上に置いた。この振動板を0.01の振幅で5秒間振動誘導し、この過程を12回繰り返した。従って、総振動時間は60秒であった。続いて、何個の開口、及びどの開口が振動によって開き、その結果サンドの付着が解消されたかを視覚的に評価した。試験片の製造及び誘導振動の両方とも一定に保ったので、この試験は、使用される材料システムによって引き起こされるサンドの付着の評価を可能にする。この試験の結果を表2に示してある。
【0138】
【表2】
【0139】
試験は、本発明に従って使用される硬化剤成分の使用が、結果として得られた試験片における顕著に低減したサンドの付着をもたらすことを示している(表2を参照されたい)。同時に、試験片の強度は影響を受けない。従って、本発明の方法において使用される硬化剤成分は、結果として生じる試験片の強度に悪影響を与えることなく、製造中並びに必要とされる後加工において生じる付着の顕著な低減を可能にする。
【0140】
<例2>
例1で論じた方法に基づいて、異なる酸を硬化剤成分として用いた試験片を、例1の成形材料混合物2及び例1に従う加工法を使用して製造した。
【0141】
【表3】
【0142】
本発明に従う試験片4は、優れた強度及び非常に少ないサンド付着を示した。
【0143】
ベンゼンスルホン酸及びメタンスルホン酸を用いる本発明に従う試験片5は、やや向上した強度を示したが、試験片4よりもやや多いサンド付着を示した。しかし、試験片5は良好な結果も示した。
【0144】
比較試験片C-1及びC-2は、試験片の大がかりな後処理を必要とする著しい砂の付着を示した。
【0145】
比較試験片C-3は、実用的使用を限定する低い強度を示した。
図1
【国際調査報告】