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特表2023-528588体外血液治療のためのシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-05
(54)【発明の名称】体外血液治療のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20230628BHJP
【FI】
A61M1/16 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022572430
(86)(22)【出願日】2021-06-01
(85)【翻訳文提出日】2022-11-24
(86)【国際出願番号】 EP2021064592
(87)【国際公開番号】W WO2021245040
(87)【国際公開日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】2050621-8
(32)【優先日】2020-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501473877
【氏名又は名称】ガンブロ・ルンディア・エービー
【氏名又は名称原語表記】GAMBRO LUNDIA AB
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホブロ, ストゥレ
(72)【発明者】
【氏名】フォルサル, インナズ
(72)【発明者】
【氏名】ハンコック, ヴィクトリア
(72)【発明者】
【氏名】ニルソン, アンダース
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077DD01
4C077HH02
4C077HH03
4C077HH10
4C077HH12
4C077JJ02
4C077JJ03
4C077JJ08
4C077JJ09
4C077JJ12
4C077JJ16
(57)【要約】
本願は、対象を治療するための体外血液治療システム(50)に関し、システムは、体外血液回路(52);透析液流体回路(54);濾過ユニット(58)の膜(56)によって分割された体外血液回路および透析液流体回路;血液回路を通る血液の流れを制御するための少なくとも1つの血液ポンプ(60);透析液流体回路(54)を通る透析液流体の流れを制御するための少なくとも1つの透析液流体ポンプ(62);血液ポンプおよび透析液流体ポンプに動作可能に接続されたシステムコンピューティングユニット(64)であって、少なくとも1つの入力手段を有するシステムコンピューティングユニットを備え、システムコンピューティングユニットは、グルタミンの所望の血中濃度GLNを受信し、グルコースの所望の血中濃度GLUCOSEを受信し、ケトン体KETONEの所望の血中濃度を受信するように適合され;システムコンピューティングユニットは、グルタミンの実際の濃度値GLNがGLNになるようにされ、グルコースの実際の濃度値GLUCOSEがDになるように、血液ポンプおよび透析液流体ポンプを制御するように適合され、ケトン体の実際の濃度値が、KETONEになるようにされる。本出願は、また、体外血液治療システムで使用するための治療セット、システムを使用して癌を治療する方法、方法を制御するコントローラ、および方法に適した透析液にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌に罹患している対象を治療するための体外血液治療システム(50)であって、前記システムが:
体外血液回路(52a、52b);
透析液流体回路(54a、54b);
濾過ユニット(58)の膜(59)によって分割された前記体外血液回路(52a、52b)および透析液流体回路(54a、54b);
前記血液回路(52a、52b)を通る血液の流れを制御するための少なくとも1つの血液ポンプ(60);
前記透析液流体回路(54a、54b)を通る透析液流体の流れを制御するための少なくとも1つの透析液流体ポンプ(62、68);
オプションとして、1つまたは複数の注入ライン(66、80、81、82)であって、各注入ラインが前記体外血液回路(52a、52b)に接続されるか、または治療される前記対象の血管系に直接接続されるように適合され、各注入ラインが注入ポンプを含む、1つまたは複数の注入ライン(66、80、81、82);
前記血液ポンプ(60)および前記透析液流体ポンプ(62、68)に動作可能に接続され、オプションとして前記1つまたは複数の注入ライン(66、80、81、82)の前記1つまたは複数の注入ポンプに動作可能に接続されたシステムコンピューティングユニット(64)であって、入力手段および表示手段を含むユーザインタフェースを含む前記システムコンピューティングユニット;
を含み、
前記システムコンピューティングユニット(64)は、0.1から0.5mMの範囲内のグルタミンの所望の血中濃度値GLNを受信する(901)ように適合され;
前記システムコンピューティングユニット(64)は、2から4mMの範囲内のグルコースの所望の血中濃度値GLUCOSEを受信する(903)ように適合され;
前記システムコンピューティングユニット(64)は、1から15mMの範囲内のアセトアセテート、β-ヒドロキシブチレート、または薬学的に許容されるそれらの誘導体、エステル、および塩等のケトン体の所望の血中濃度値KETONEを受信する(905)ように適合され;
前記システムコンピューティングユニット(64)は、新しい透析液流体中のグルタミンまたは薬学的に許容されるグルタミン含有化合物の濃度を表す濃度値GLNを受信する(902)ように適合され;
前記システムコンピューティングユニット(64)は、新しい透析液流体中のグルコースの濃度を表す濃度値GLUCOSEを受信する(904)ように適合され;
オプションとして、前記システムコンピューティングユニット(64)は、新しい透析液流体中のアセトアセテート、β-ヒドロキシブチレート、または薬学的に許容されるそれらの誘導体、エステルおよび塩等のケトン体の濃度を表す濃度値KETONEを受信する(907)ように適合され;
オプションとして、前記システムコンピューティングユニット(64)は、前記1つまたは複数の注入ライン(66、80、81、82)のうちの1つを介して、前記体外血液ライン(52b)内に注入されるか、または治療される前記対象の前記血管系に直接注入される、注入流体中のアセトアセテート、β-ヒドロキシブチレートまたは薬学的に許容されるそれらの誘導体、エステルおよび塩等のケトン体の濃度を表す濃度値KETONEを受信する(906)ように適合され;
前記システムコンピューティングユニット(64)は、前記治療された対象から血液中のグルタミンの実際の濃度値GLNを受信し(909)、および前記治療された対象から血液中のグルコースの実際の血液濃度値GLUCOSEを受信し(910)、およびアセトアセテート、および/またはβ-ヒドロキシブチレート等のケトン体の実際の濃度値KETONEを受信(911)するよう適合され、
前記システムコンピューティングユニット(64)は、グルタミンの前記実際の血中濃度値GLNがGLN以下にされ(912)、かつグルコースの前記実際の血中濃度値GLUCOSEがGLUCOSE以下にされる(914)ように、前記血液ポンプ(60)および前記透析液流体ポンプ(62、68)を制御するように適合され;
および
前記システム(50)が前記注入ライン(66、80、81、82)の1つまたは複数を備える場合、および前記注入ライン(66、80、81、82)の1つが前記注入液を前記体外血管ライン(52b)内に注入するか、または治療される前記対象の前記血管系内に直接注入するように適合される場合、前記システムコンピューティングユニット(64)は、前記実際の血液濃度値KETONEがKETONEになるように、前記注入ラインの前記注入ポンプを制御する(920)ように適合されている;
または、代替的に、
前記システム(50)がそのような注入ライン(66、80、81、82)を備えていない場合、前記システムコンピューティングユニット(64)は、KETONEとKETONEとを比較し、かつKETONE<KETONEである場合、前記治療された対象がさらなる量のケトン体または中鎖トリグリセリドを消費する必要があることを知らせる前記ディスプレイ上にメッセージを表示する、体外血液治療システム。
【請求項2】
前記システム(50)は、1つまたは複数の前記注入ライン(66、80、81、82)を備え、前記システムコンピューティングユニット(64)は、前記1つまたは複数の注入ライン(66、80、81、82)のうちの1つを介して、前記体外血液ライン(52b)に注入されるか、または治療される前記対象の前記血管系に直接注入される、注入液中のアセトアセテート、β-ヒドロキシブチレート、または薬学的に許容されるそれらの誘導体、エステルおよび塩等のケトン体の濃度を表す、濃度値KETONEを受信する(906)ように適合され、および
前記システムコンピューティングユニット(64)は、前記実際の血中濃度値KETONEがKETONEになる(920)ように、前記注入ラインの前記注入ポンプを制御するように適合される、請求項1に記載の体外血液治療システム(50)。
【請求項3】
前記システムコンピューティングユニット(64)は、GLNを監視し、前記1つまたは複数の注入ライン(66、80、81、82)のうちの1つにおいて関連する注入ポンプを始動することによって、GLNがGLNよりも低い場合、グルタミンまたは薬学的に許容されるグルタミン含有化合物を含む組成物の注入を開始し(916)、GLNがGLNに等しくなるまで前記注入を維持するよう適合される、請求項2に記載の体外血液治療システム(50)。
【請求項4】
前記システムコンピューティングユニット(64)は、GLOCOSEを監視し、前記1つまたは複数の注入ライン(66、80、81、82)のうちの1つにおいて関連する注入ポンプを始動することによって、GLOCOSEがGLOCOSEよりも低い場合、グルコースを含む組成物の注入を開始し(918)、GLOCOSEがGLOCOSEに等しくなるまで前記注入を維持するよう適合される、請求項2または3に記載の体外血液治療システム(50)。
【請求項5】
前記濾過膜は、60kDa未満の分子量カットオフ(MWCO)を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記濾過膜は、約50kDa未満、または約40kDa未満(30kDa未満、10kDa未満、5kDa未満、または2kDa未満等)のMWCOを有する、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記血液回路は、使用中に前記血液ライン内の血液を加熱または冷却するための熱管理システムを備える、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記熱管理システムは、前記血液回路内の血液の温度を20℃から43℃の間の温度に調節するように制御可能である、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
グルコース、グルタミン、およびケトン体の群から選択される検体を検出するための1つ以上のセンサ(S、90、91、92、93)をさらに含み、前記センサ(S、90、91、92、93)は、好ましくは前記透析液流体回路の流出部分(54a)に配置され、前記センサは、前記システム処理ユニット(64)と通信して、血液中、または好ましくは使用済み透析液流体中の前記検体の濃度を示す出力を提供し、前記システム処理ユニット(64)は、前記センサ(S、90、91、92、93)の前記出力から検体の代表的な血液濃度を決定するように構成され、それによってGLN、GLUCOSE、およびKETONEの少なくとも1つを監視する、請求項1から8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の体外血液治療システム(50)で使用するための治療セットであって、前記セットは、
統合された血液ライン(52a、52b)および統合された透析液流体ライン(54a、54b)を分割する膜(59)を有する濾過ユニット(58)を含み、前記血液ライン(52a、52b)および/または前記透析液流体ライン(54a、54b)は、GLN、GLUCOSE、およびKETONEの少なくとも1つを監視するためのセンサ(S、90、91、92、93)を含む、治療セット。
【請求項11】
システム(50)を使用して癌に罹患している対象を治療する方法であって、前記システム(50)は、
体外血液回路(52a、52b);
透析液流体回路(54a、54b);
濾過ユニット(58)の膜(59)によって分割された前記体外血液回路(52a、52b)および透析液流体回路(54a、54b);
前記血液回路(52a、52b)を通る血液の流れを制御するための少なくとも1つの血液ポンプ(60);
前記透析液流体回路(54a、54b)を通る透析液流体の流れを制御するための少なくとも1つの透析液流体ポンプ(62、68);および
オプションとして、1つ以上の注入ライン(66、80、81、82)であって、各注入ラインが前記体外回路(52a、52b)に接続されるか、または治療される対象の前記血管系に直接接続されるように適合され、各注入ラインが注入ポンプを含む1つ以上の注入ライン(66、80、81、82);を含み、
前記方法は、
0.1から0.5mMの範囲内のグルタミンの所望の血中濃度を表す濃度値GLNを受信する(901)こと;
2から4mMの範囲内のグルコースの所望の血中濃度を表す濃度値GLUCOSEを受信する(903)こと;
1から15mMの範囲内のアセトアセテート、β-ヒドロキシブチレート、または薬学的に許容されるそれらの誘導体、エステル、および塩等のケトン体の所望の血中濃度を表す濃度値KETONEを受信する(905)こと;
前記新しい透析液流体中のグルタミン、または薬学的に許容されるグルタミン含有化合物の濃度を表す濃度値GLNを受信する(902)こと;
前記新しい透析液流体中のグルコースの濃度を表す濃度値GLUCOSEを受信すること(904);
オプションとして、前記新しい透析液流体中のアセトアセテート、β-ヒドロキシブチレート、または薬学的に許容されるそれらの誘導体、エステル、および塩等のケトン体の濃度を表す濃度値KETONEを受信すること(907);
オプションとして、前記1つまたは複数の注入ライン(66、80、81、82)のうちの1つを介して、前記体外血液ライン(52b)に注入されるか、または、治療される前記対象の前記血管系に直接注入される注入液のアセトアセテート、β-ヒドロキシブチレート、または薬学的に許容されるそれらの誘導体、エステル、および塩等のケトン体の濃度を表す濃度値KETONEを受信する(906)こと;
前記治療された対象の前記血液中のグルタミンの実際の濃度を表す濃度値GLNを受信すること(909);
前記治療された対象の前記血液中の実際のグルコース濃度を表す濃度値GLUCOSEを受信すること(910);
アセトアセテートおよび/またはβ-ヒドロキシブチレート等のケトン体の実際の濃度を表す濃度値KETONEを受信する(911)こと;
前記血液ポンプ(60)および前記少なくとも1つの透析液流体ポンプ(62、68)を制御して、グルタミンの前記実際の濃度値GLNがGLN以下にされ(912)、かつグルコースの前記実際の濃度値GLUCOSEがGLUCOSE以下にされる(914)こと;
および
前記システム(50)が1つまたは複数の前記注入ライン(66、80、81、82)を備え、前記注入ライン(66、80、81、82)の1つが前記注入液を前記体外血液ライン(52b)に注入するか、または治療される前記対象の前記血管系に直接注入する場合、KETONがKETONになる(920)ように前記注入を制御すること;
または、代替的に、
前記システム(50)がケトン体を含む注入液を注入しない場合、治療される前記対象は、KETONがKETONよりも低い場合に、ケトン体または中鎖トリグリセリドの量を経口摂取するよう求められること、を含む方法。
【請求項12】
前記システム(50)は、1つまたは複数の前記注入ライン(66、80、81、82)を含み、前記方法は、
注入液中のアセトアセテート、β-ヒドロキシブチレート、または薬学的に許容されるそれらの誘導体、エステルおよび塩等のケトン体の濃度を表す濃度値KETONEを受信する(906)こと;
前記1つまたは複数の注入ライン(66、80、81、82)の1つを通して、前記注入液を、前記体外血液ライン(52b)に注入するか、または治療される前記対象の前記血管系に直接注入すること;および
前記実際の血中濃度値KETONEがKETONEになるように、前記注入ラインの前記注入ポンプを制御する(920)こと、をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記癌は、ヒトの結腸癌および神経膠芽腫、ならびに前立腺癌、乳癌および肝臓癌から選択される、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
癌に罹患している対象を治療するための体外血液治療システム(50)を制御するように適合されたシステムコンピューティングユニット(64)であって、前記システムコンピューティングユニットは、
少なくとも1つの血液ポンプ(60)、少なくとも1つの透析液流体ポンプ(62、68)、およびオプションとして、1つまたは複数の注入ライン(66、80、81、82)のそれぞれの流れを制御するための1つまたは複数の注入ポンプに動作可能に接続されるように適合された複数の出力手段;
入力手段と表示手段とを含むユーザインタフェース;および
記憶手段および計算手段;を備え、
前記システムコンピューティングユニット(64)は、グルタミンの所望の血中濃度値GLNを受信する(901)ように適合され;
前記システムコンピューティングユニット(64)は、グルコースの所望の血中濃度値GLUCOSEを受信する(903)ように適合され;
前記システムコンピューティングユニット(64)は、ケトン体の所望の血液濃度値KETONEを受信する(905)ように適合され;
前記システムコンピューティングユニット(64)は、グルタミンの透析液濃度値GLNを受信する(902)ように適合され;
前記システムコンピューティングユニット(64)は、グルコースの透析液濃度値GLUCOSEを受信する(904)ように適合され;
オプションとして、前記システムコンピューティングユニット(64)は、新しい透析液中のアセトアセテート、β-ヒドロキシブチレート、または薬学的に許容されるそれらの誘導体、エステルおよび塩等のケトン体の濃度を表す濃度値KETONEを受信する(907)ように適合され;
オプションとして、前記システムコンピューティングユニット(64)は、ケトン体の注入液濃度値KETONEを受信する(906)ように適合され;
前記システムコンピューティングユニット(64)は、グルタミンの実際の血中濃度値GLNを受信する(909)ように適合され;
前記システムコンピューティングユニット(64)は、グルコースの実際の血中濃度値GLUCOSEを受信する(910)ように適合され;
前記システムコンピューティングユニット(64)は、β-ヒドロキシブチレート、および/またはアセトアセテート等のケトン体の実際の血中濃度値KETONEを受信する(911)ように適合され;
前記システムコンピューティングユニット(64)は、前記血液ポンプ(60)および前記透析液流体ポンプ(62、68)を制御して、グルタミンの前記実際の血中濃度値GLNがGLN以下にされ(912)、およびグルコースの前記実際の血中濃度値GLUCOSEがGlucose以下にされる(914)ように適合され;
および
注入ポンプが前記システムコンピューティングユニット(64)に動作可能に接続されている場合、前記システムコンピューティングユニット(64)は前記注入ポンプを制御して、前記実際の血中濃度値KETONEがKETONEになる(920)ように適合され、
および
注入ポンプが前記システムコンピューティングユニット(64)に動作可能に接続されていない場合、前記システムコンピューティングユニット(64)は、KETONEとKETONEとを比較し、かつKETONE<KETONEの場合、前記治療された対象がケトン体または中鎖トリグリセリドのさらなる量を消費する必要があることを知らせるメッセージを前記ディスプレイ上に表示するように適合される、システムコンピューティングユニット。
【請求項15】
癌の透析治療に適した透析液流体であって、アセトアセテート、β-ヒドロキシブチレート、または薬学的に許容されるそれらの誘導体、エステルおよび塩等のケトン体を含む、透析液流体。
【請求項16】
a)グルタミンまたはグルタミン含有化合物、および
b)グルコース
の少なくとも1つをさらに含む、請求項15に記載の透析液流体。
【請求項17】
a)グルタミンまたはグルタミン含有化合物の濃度は、0から0.5mM、好ましくは0.05から0.3mMの量であり;
b)グルコースの濃度は0から6mM、好ましくは0.5から4mMの量であり;
c)ケトン体の濃度は1から15mM、好ましくは2から12mMの量である、請求項15に記載の透析液流体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願明細書における開示は、体外血液治療に関する。より具体的には、本開示は、癌の治療における血液透析等の体外血液治療の使用、およびそのような治療のためのシステム、ならびにそのような体外血液治療中に記録されたデータ(s-g履歴データ)の制御および表示のためのユーザインタフェースに関する。
【背景技術】
【0002】
ほとんどのヒト癌細胞は、正常細胞と区別されるエネルギ代謝の変化を示す。正常な細胞は、ミトコンドリアの酸化的リン酸化によってエネルギの大部分を獲得し、これは、グルコースが酸化される好気的プロセスであり、最初は解糖によって、続いてトリカルボン酸(TCA)サイクルによってアデノシン三リン酸を生成する。それに対して、この経路は、癌細胞では二次的なものにすぎない。これは、1920年代にWarburgによって初めて観察された。彼は、癌細胞が解糖によってグルコースを代謝した後、プルビン酸から乳酸が生成されることに注目した。正常な細胞では、これは嫌気性条件下でのみ発生するが、癌細胞では、豊富な酸素の存在下でもこの代替経路が増加する。この現象は、「好気性解糖」または「Warburg効果」と名付けられた(Warburg et al.,1927,Gen Physiol 8:519-530)。癌細胞における特徴的な解糖表現型の存在は、ほとんどの癌細胞で解糖に関与する酵素の過剰発現も観察されたその後の研究によって確認された。
【0003】
上記の代謝変換は、癌細胞に選択的な成長の利点を与え、低酸素症とアポトーシスに抵抗する能力に貢献する。腫瘍細胞の増殖速度が新しい血管の形成速度を上回るため、多くの腫瘍は低酸素環境で増殖する。癌細胞にはさまざまな代謝変化が存在するが、最も一般的で最もよく知られているのは、好気性解糖によってエネルギを生成する習性である。さらに、例えばリボース、グリセロールおよびセリン等の解糖の多くの中間体は、癌細胞の成長および増殖中に不可欠な生合成経路および同化経路の中間体でもある。また、解糖はADPからATPを生成し、腫瘍内の細胞増殖を維持することと可能とする。しかし、解糖は酸化的リン酸化よりもはるかに効率が悪いため、十分な量のATPを生成するには大量のグルコースが必要である。したがって、この代謝経路には大量のグルコースが必要である。多くの癌細胞は、主要なエネルギ供給源としてグルコースに依存するようになる。複数の理由により、グルコース供給が標的にされた場合、解糖腫瘍細胞は脆弱になる。
【0004】
さらに、多くの癌細胞もグルタミン中毒を示す。グルタミン依存性細胞により示されるグルタミン取り込み率の高さは、ヌクレオチドおよびアミノ酸生合成における窒素供給源としての役割の結果であるだけでなく、グルタミンは、癌における主要なミトコンドリア基質であり、レドックス制御および巨大分子合成のためのNADPHを生成するために必要とされる。
【0005】
癌には、生存に重要な役割を果たしている他の代謝変化が存在し、重要なことに、多くの癌は、代謝プロファイルを変化させる驚くべき優れた能力を示す。グルコース、グルタミン、または酸素が低下した場合等の環境課題に耐えるこの適応性は、癌細胞の生存にとって重要である。
【0006】
さらに、多くの癌細胞はグルタミンへの依存も示す。グルタミン依存性癌細胞によるグルタミン取り込み率の高さは、ヌクレオチドおよびアミノ酸生合成の窒素供給源としての役割の結果であるだけでなく、グルタミンは、多くの癌における主要なミトコンドリア基質であり、レドックス制御および巨大分子合成のためのNADPHを生成するために必要とされる。
【0007】
癌には多くの代謝変化が存在し、グルタミン等のさまざまなアミノ酸は癌代謝において重要な役割を果たし、レドックスバランスを制御し、かつ継続的な増殖のための構成要素を生成し、さらに、多くの癌は、新しい代謝制限に適応する必要がある場合、それらの代替経路を利用して代謝プロファイルを変化させる驚くほど優れた能力を示す。この品質(能力)は、癌にとって重要な特徴であり、かつグルコース、グルタミン、酸素等の代謝エネルギ源が不足したときに環境課題に耐える能力である。
【0008】
したがって、代謝アプローチを通じて効果的に癌に影響を与えるには、複数の方向から代謝システムに影響を与えることが重要である。減少したグルコースは、ほとんどの癌細胞によって容易に処理できるが、いくつかの代謝の可能性が同時に影響を受ける場合(グルコースとグルタミンの減少等)、これらの変化の合計は、個々の部分よりもはるかに壊滅的になる。
【0009】
多くの癌の世界的なエネルギ源であるグルコース、ケトン、およびグルタミンに加えて、セリンとグリシンは、例えば一炭素代謝を通じて、癌の細胞の成長と増殖を維持するための重要な特定のニーズを満たす。大量のエネルギを必要とすることに加えて、癌細胞は、核酸、タンパク質、および脂質を含む新しい細胞成分を構築するための構成要素や、細胞のレドックス状態を維持するための同様に重要な補因子も蓄積する必要がある(Amelio et al.:Trends.Biochem.Sci.(2014),Vol.39(4):191-198))。
【0010】
研究は、アルギニンが細胞成長に必要であり、かつ急速な成長の状態で制限される可能性があり、および癌細胞から奪われた場合にも生存に影響を与えることを実証している(Albaugh et al.,J.Surg.Oncol.(2017),Vol.115(3),273-280)。
【0011】
上記の観点から、血糖値の低下は、広範囲の解糖依存性腫瘍を標的とする戦略として役立つ可能性があることが示唆されている。低血糖状態では、脂肪、特にケトン体が、正常細胞の主要な代謝燃料としてグルコースに取って代わることができる。しかし、多くの腫瘍は、エネルギのために脂質とケトン体を代謝するのに必要な遺伝子と酵素に異常がある。したがって、炭水化物からエネルギのケトンへの移行は、解糖依存性腫瘍細胞のエネルギ代謝を特異的に標的とする(Seyfried et al,2010,Nutrition and Metabolism,7:7)。
【0012】
このアプローチに従って、例えば、国際公開第2011/070527号は、血中グルコース濃度を低下させるために血液透析装置が使用される、個体における癌性または非癌性の増殖性疾患の治療方法を開示している。
【0013】
血糖を低下させるための血液透析装置の使用は、血液中のグルコース濃度を低下させることができ、それにより、食事によるグルコース除去と比較して、より制御された効果的な方法で低下させることができるという利点を有する。しかしながら、国際公開第2011/070527号に開示された方法および装置は、血液取り込み流、血液還流および透析液に接続された血中グルコースセンサおよび血中グルタミンセンサを必要とし、これらのセンサはすべて血液透析機の中央制御ユニットに接続されている。さらに、国際公開第2011/070527号の中央制御ユニットは、脳波計(EEG)にも接続され、グルコースおよびグルタミンレベルの上昇を開始する自発的な脳電気的活動に関する情報を中央ユニットに提供する。このような多数のセンサと機器は、高度な複雑さとそれに伴う高コストにつながる。さらに、この治療を受けている患者は、治療に着手する前の数日間、グルコース制限食のみを消費しなければならない。これは患者にとって取るに足らない負担ではない。
【0014】
癌を治療するための改善された方法が常に必要とされている。
【発明の概要】
【0015】
本発明の第1の態様では、癌に罹患している対象を治療するための体外血液治療システム(50)であって、前記システムが:
体外血液回路(52a、52b);
透析液流体回路(54a、54b);
濾過ユニット(58)の膜(59)によって分割された前記体外血液回路(52a、52b)および透析液流体回路(54a、54b);
前記血液回路(52a、52b)を通る血液の流れを制御するための少なくとも1つの血液ポンプ(60);
前記透析液流体回路(54a、54b)を通る透析液の流れを制御するための少なくとも1つの透析液流体ポンプ(62、68);
オプションとして、1つまたは複数の注入ライン(66、80、81、82)であって、各注入ラインが前記体外血液回路(52a、52b)に接続されるか、または治療される前記対象の血管系に直接接続されるように適合され、各注入ラインが注入ポンプを含む1つまたは複数の注入ライン(66、80、81、82);
前記血液ポンプ(60)および前記透析液流体ポンプ(62、68)に動作可能に接続され、オプションとして前記1つまたは複数の注入ライン(66、80、81、82)の1つまたは複数の注入ポンプに動作可能に接続されたシステムコンピューティングユニット(64)であって、入力手段および表示手段を含むユーザインタフェースを含む前記システムコンピューティングユニット;
を含み、
前記システムコンピューティングユニット(64)は、0.1から0.5mMの範囲内のグルタミンの所望の血中濃度値GLNを受信する(901)ように適合され;
前記システムコンピューティングユニット(64)は、2から4mMの範囲内のグルコースの所望の血中濃度値GLUCOSEを受信する(903)ように適合され;
前記システムコンピューティングユニット(64)は、1から15mMの範囲内のアセトアセテート、β-ヒドロキシブチレート、またはその薬学的に許容されるそれらの誘導体、エステル、および塩等のケトン体の所望の血中濃度値KETONEを受信する(905)ように適合され;
前記システムコンピューティングユニット(64)は、新しい透析液流体中のグルタミンまたは薬学的に許容されるグルタミン含有化合物の濃度を表す濃度値GLNを受信する(902)ように適合され;
前記システムコンピューティングユニット(64)は、新しい透析液流体中のグルコースの濃度を表す濃度値GLUCOSEを受信する(904)ように適合され;
オプションとして、前記システムコンピューティングユニット(64)は、新しい透析液流体中のアセトアセテート、β-ヒドロキシブチレート、または薬学的に許容されるそれらの誘導体、エステルおよび塩等のケトン体の濃度を表す濃度値KETONEを受信する(907)ように適合され;
オプションとして、前記システムコンピューティングユニット(64)は、前記1つまたは複数の注入ライン(66、80、81、82)のうちの1つを介して、前記体外血液ライン(52b)内に注入される、または治療される前記対象の前記血管系に直接注入される、注入流体中のアセトアセテート、β-ヒドロキシブチレートまたはそれらの薬学的に許容される誘導体、エステルおよび塩等のケトン体の濃度を表す濃度値KETONEを受信する(906)ように適合され;
前記システムコンピューティングユニット(64)は、前記治療される対象から血液中のグルタミンの実際の濃度値GLNを受信し(909)、および前記治療される対象から血液中のグルコースの実際の血液濃度値GLUCOSEを受信し(910)、およびアセトアセテート、およびβ-ヒドロキシブチレート等のケトン体の実際の濃度値KETONEを受信(911)するよう適合され、
前記システムコンピューティングユニット(64)は、グルタミンの前記実際の血中濃度値GLNがGLN以下にされ(912)、かつグルコースの前記実際の血中濃度値GLUCOSEがGLUCOSE以下にされる(914)ように、前記血液ポンプ(60)および前記透析液流体ポンプ(62、68)を制御するように適合され;
前記システム(50)が前記注入ライン(66、80、81、82)の1つまたは複数を備える場合、および前記注入ライン(66、80、81、82)の1つが前記注入液を前記体外血管ライン(52b)内に、または治療される前記対象の前記血管系内に直接注入するように適合される場合、前記システムコンピューティングユニット(64)は、前記実際の血液濃度値KETONEがKETONEに向かうように、前記注入ラインの前記注入ポンプを制御する(920)ように適合されている;
または、代替的に、
前記システム(50)がそのような注入ライン(66、80、81、82)を備えていない場合、前記システムコンピューティングユニット(64)は、KETONEとKETONEとを比較し、かつKETONE<KETONEである場合、前記治療された対象がさらなる量のケトン体または中鎖トリグリセリドを消費する必要があることを知らせる前記ディスプレイ上にメッセージを表示する、体外血液治療システムが提供される。
【0016】
本開示において、「対象」という用語は、治療を必要とするヒトまたは動物の患者に関する。
【0017】
好ましい実施形態では、前記体外血液治療システム(50)は、1つまたは複数の前記注入ライン(66、80、81、82)を備え、および前記システムコンピューティングユニット(64)は、前記1つまたは複数の注入ライン(66、80、81、82)のうちの1つを介して、前記体外血液ライン(52b)または治療された前記対象の前記血管系に直接注入される注入液中のアセトアセテート、β-ヒドロキシブチレート、またはそれらの薬学的に許容される誘導体、エステルおよび塩等のケトン体の濃度を表す、濃度値KETONEを受信する(906)ように適合され、および
前記システムコンピューティングユニット(64)は、前記実際の血中濃度値KETONEがKETONE(920)に向かうように、前記注入ラインの前記注入ポンプを制御するように適合される。
【0018】
好ましい実施形態では、前記システムコンピューティングユニット(64)は、GLNおよびGLUCOSEを監視し、および、前記1つまたは複数の注入ライン(66、80、81、82)のうちの1つにおいて関連する注入ポンプを始動することによって、GLNがGLNよりも低い場合、グルタミンまたは薬学的に許容されるグルタミン含有化合物を含む組成物の注入を開始し(916)、および/またはGLUCOSEがGLUCOSEよりも低い場合、グルコースを含有する組成物の注入を開始する(918)ように適合され、GLNがGLNに等しくなり、GLUCOSEがGLUCOSEに等しくなるまで前記注入を維持する。
【0019】
「薬学的に許容されるグルタミン含有化合物」という用語は、オリゴペプチド、典型的にはアミノ酸残基の少なくとも1つがグルタミンであるジペプチドに関する。そのようなジペプチドの典型的な例は、L-アラニル-L-グルタミンおよびL-グリシル-L-グルタミンである。グルタミン含有化合物は、典型的には、安定性および溶解性を高めるために、液体組成物においてグルタミンの代わりに使用される。
【0020】
「ケトン体」という用語は、脂肪酸から肝臓によって生成され得るケトン基を含む水溶性分子に関する。典型的には、本発明によるケトン体は、β-ヒドロキシ酪酸またはその鏡像異性体(R)-β-ヒドロキシ酪酸、(S)-β-ヒドロキシ酪酸、または鏡像異性体混合物等のそれらの薬学的に許容される誘導体、または薬学的に許容されるそれらの塩、または薬学的に許容されるそれらのエステル、ならびにアセトアセテートである。中鎖トリグリセリドもまた、本発明によるケトン体の誘導体であると考えられる。「中鎖トリグリセリド」または「MCT油」という用語は、6から12個の炭素原子の脂肪族テールを有する2つまたは3つの脂肪酸を有するトリグリセリドである。このような中鎖トリグリセリドまたはMCT油は、人体でケトン体に変換される可能性がある。ケトン体またはケトン体誘導体を含む注入液の例は、Lipofundin(登録商標)MCT/LCT20%(B.Braun)またはSMOFlipid(登録商標)20%(Fresenius Kabi)である。さらなる例は、国際公開第2018/114309号に記載されている。他のケトン体誘導体が対象の体内でこれらの化合物のいずれかに変換されるので、実際のケトン体濃度KETONEとして、対象の血液中でβ-ヒドロキシブチレートおよび/またはアセトアセテートの濃度のみが検出される。
【0021】
好ましくは、濾過膜は、60kDa未満の分子量カットオフ(MWCO)を有する。より好ましくは、濾過膜は、約50kDa未満または約40kDa未満(30kDa未満、10kDa未満、5kDa未満、または2kDa未満等)のMWCOを有する。
【0022】
好ましくは、血液回路は、使用中に血液ライン内の血液を加熱または冷却するための熱管理システムを備える。
【0023】
より好ましくは、熱管理システムは、血液回路内の血液の温度を20℃から43℃の間の温度に調節するように制御可能である。
【0024】
好ましくは、システム(50)は、グルコース、グルタミン、およびケトン体の群から選択される検体を検出するための1つ以上のセンサ(S、90、91、92、93)をさらに含み、センサ(S、90、91、92、93)は、好ましくは透析液流体回路の流出部分(54a)に配置され、センサはシステム処理ユニット(64)と通信し、血液中、または好ましくは使用済み透析液流体中の検体の濃度を示す出力を提供し、システム処理ユニット(64)は、センサ(S、90、91、92、93)の出力から検体の代表的な血液濃度を決定するように構成され、それによって少なくとも1つ、および好ましくは全てのGLN、GLUCOSE、およびKETONEを監視する。
【0025】
第2の態様では、本発明は、第1の態様に係る体外血液治療システム(50)で使用するための治療セットであって、前記セットは、統合された血液ライン(52a、52b)および統合された透析液流体ライン(54a、54b)を分割する膜(59)を有する濾過ユニット(58)を含み、前記血液ライン(52a、52b)および/または前記透析液流体ライン(54a、54b)は、GLN、GLUCOSE、およびKETONEの少なくとも1つを監視するためのセンサ(S、90、91、92、93)を含む治療セットを提供する。
【0026】
以下に示すように、グルタミン、グルコース、およびケトン体を分析するための適切なセンサおよびアッセイは、当技術分野で知られている。
【0027】
第3の態様では、本発明は、システム(50)を使用して癌に罹患している対象を治療する方法であって、前記システム(50)は、
体外血液回路(52a、52b);
透析液流体回路(54a、54b);
濾過ユニット(58)の膜(59)によって分割された前記体外血液回路(52a、52b)および透析液流体回路(54a、54b);
前記血液回路(52a、52b)を通る血液の流れを制御するための少なくとも1つの血液ポンプ(60);
前記透析液流体回路(54a、54b)を通る透析液流体の流れを制御するための少なくとも1つの透析液流体ポンプ(62、68);および
オプションとして、1つ以上の注入ライン(66、80、81、82)であって、各注入ラインが前記体外回路(52a、52b)に接続されるか、または治療される対象の前記血管系に直接接続されるように適合され、各注入ラインが注入ポンプを含む1つ以上の注入ライン(66、80、81、82);を含み、
前記方法は、
0.1から0.5mMの範囲内のグルタミンの所望の血中濃度を表す濃度値GLNを受信する(901)こと;
2から4mMの範囲内のグルコースの所望の血中濃度を表す濃度値GLUCOSEを受信する(903)こと;
1から15mMの範囲内のアセトアセテート、β-ヒドロキシブチレート、または薬学的に許容されるそれらの塩、誘導体およびエステル等のケトン体の所望の血中濃度を表す濃度値KETONEを受信する(905)こと;
新しい透析液流体中のグルタミン、または薬学的に許容されるグルタミン含有化合物の濃度を表す濃度値GLNを受信する(902)こと;
前記透析液流体中のグルコースの濃度を表す濃度値GLUCOSEを受信すること(904);
オプションとして、前記システムコンピューティングユニット、
オプションとして、新しい透析液流体中のアセトアセテート、β-ヒドロキシブチレート、または薬学的に許容されるそれらの誘導体、エステルおよび塩等のケトン体の濃度を表す濃度値KETONEを受信すること(907);
オプションとして、前記1つまたは複数の注入ライン(66、80、81、82)のうちの1つを介して、前記体外血液ライン(52b)に注入される、または、治療される前記対象の前記血管系に直接注入される注入液中のアセトアセテート、β-ヒドロキシブチレート、または薬学的に許容されるそれらの塩、誘導体およびエステル等のケトン体の濃度を表す濃度値KETONEを受信する(906)こと;
前記治療された対象の前記血液中のグルタミンの実際の濃度を表す濃度値GLNを受信すること(909);
前記治療された対象の前記血液中の実際のグルコース濃度を表す濃度値GLUCOSEを受信すること(910);
前記治療された対象の前記血液中のアセトアセテートおよびβ-ヒドロキシブチレート等のケトン体の実際の濃度を表す濃度値KETONEを受信する(911)こと;
前記血液ポンプ(60)および前記少なくとも1つの透析液流体ポンプ(62、68)を制御して、グルタミンの前記実際の濃度値GLNがGLN以下にされ(912)、かつグルコースの前記実際の濃度値GLUCOSEがGLUCOSE以下にされる(914)こと;
および
前記システム(50)が1つまたは複数の前記注入ライン(66、80、81、82)を備え、前記注入ライン(66、80、81、82)の1つが前記注入液を前記体外血液ライン(52b)に、または治療される前記対象の前記血管系に直接注入する場合、KETONがKETONに向かう(920)ように前記注入を制御すること;
または、代替的に、
前記システム(50)がケトン体を含む注入液を注入しない場合、治療される前記対象は、KETONがKETONよりも低い場合に、ケトン体または中鎖トリグリセリドの量を経口摂取するよう求められること、を含む、方法を提供する。
【0028】
好ましくは、前記システム(50)は、1つまたは複数の前記注入ライン(66、80、81、82)を含み、前記方法は、
注入液中のアセトアセテート、β-ヒドロキシブチレート、または薬学的に許容されるそれらの誘導体、エステルおよび塩等のケトン体の濃度を表す濃度値KETONEを受信する(906)こと;
前記1つまたは複数の注入ライン(66、80、81、82)の1つを通して、前記体外血液ライン(52b)に、または治療される前記対象の前記血管系に直接、前記注入液を注入すること;および
前記実際の血中濃度値KETONEがKETONEに向かうように、前記注入ラインの前記注入ポンプを制御する(920)こと、をさらに含む。
【0029】
好ましくは、前記癌は、ヒトの結腸癌および神経膠芽腫、ならびに前立腺癌、乳癌および肝臓癌から選択される。
【0030】
第4の態様では、本発明は、癌に罹患している対象を治療するための体外血液治療システム(50)を制御するように適合されたシステムコンピューティングユニット(64)であって、前記システムコンピューティングユニットは、
少なくとも1つの血液ポンプ(60)、少なくとも1つの透析液流体ポンプ(62、68)、およびオプションとして、1つまたは複数の注入ライン(66、80、81、82)のそれぞれの流れを制御するための1つまたは複数の注入ポンプに動作可能に接続されるように適合された複数の出力手段;
入力手段と表示手段とを含むユーザインタフェース;および
記憶手段および計算手段;を備え、
前記システムコンピューティングユニット(64)は、グルタミンの所望の血中濃度値GLNを受信する(901)ように適合され;
前記システムコンピューティングユニット(64)は、グルコースの所望の血中濃度値GLUCOSEを受信する(903)ように適合され;
前記システムコンピューティングユニット(64)は、ケトン体の所望の血液濃度値KETONEを受信する(905)ように適合され;
前記システムコンピューティングユニット(64)は、グルタミンの透析液濃度値GLNを受信する(902)ように適合され;
前記システムコンピューティングユニット(64)は、グルコースの透析液濃度値GLUCOSEを受信する(904)ように適合され;
オプションとして、前記システムコンピューティングユニット(64)は、新しい透析液中のアセトアセテート、β-ヒドロキシブチレート、または薬学的に許容されるそれらの誘導体、エステルおよび塩等のケトン体の濃度を表す濃度値KETONEを受信する(907)ように適合され;
オプションとして、前記システムコンピューティングユニット(64)は、ケトン体の注入液濃度値KETONEを受信する(906)ように適合され;
前記システムコンピューティングユニット(64)は、グルタミンの実際の血中濃度値GLNを受信する(909)ように適合され;
前記システムコンピューティングユニット(64)は、グルコースの実際の血中濃度値GLUCOSEを受信する(910)ように適合され;
前記システムコンピューティングユニット(64)は、β-ヒドロキシブチレート、およびアセトアセテートの群から選択されるケトン体の実際の血中濃度値KETONEを受信する(911)ように適合され;
前記システムコンピューティングユニット(64)は、前記血液ポンプ(60)および前記透析液流体ポンプ(62、68)を制御して、グルタミンの前記実際の血中濃度値GLNがGLNに向かうまたはそれ未満とされ(912)、およびグルコースの前記実際の血中濃度値GLUCOSEがGlucoseに向かうまたはそれ未満とされる(914)ように適合され;
および
注入ポンプが前記システムコンピューティングユニット(64)に動作可能に接続されている場合、前記システムコンピューティングユニット(64)は前記注入ポンプを制御して、前記実際の血中濃度値KETONEがKETONEに向かう(920)ように適合され、
および
注入ポンプが前記システムコンピューティングユニット(64)に動作可能に接続されていない場合、前記システムコンピューティングユニット(64)は、KETONEとKETONEとを比較し、かつKETONE<KETONEの場合、前記ディスプレイ上に前記治療される対象がケトン体または中鎖トリグリセリドのさらなる量を消費する必要があることを知らせるメッセージを表示するように適合される、システムコンピューティングユニットを提供する。
【0031】
第5の態様において、本発明は、アセトアセテート、β-ヒドロキシブチレート、または薬学的に許容されるそれらの誘導体、エステルおよび塩等のケトン体を含む、癌の透析治療に適した透析液を提供する。
【0032】
好ましくは、透析液は、また、a)グルタミンまたはグルタミン含有化合物、および/またはb)グルコースを含む。
【0033】
好ましくは、a)グルタミンまたはグルタミン含有化合物の濃度は、0から0.5mM、およびより好ましくは0.05から0.3mMの量であり;
b)グルコースの濃度は0から6mM、およびより好ましくは0.5から4mMの量であり;
c)ケトン体の濃度は1から15mM、およびより好ましくは2から12mMの量である。
【0034】
本開示の上記の概要は、各実施形態またはそれの全ての実施を記載することを意図していない。利点は、本開示のより完全な理解とともに、添付の図面と併せて解釈される以下の詳細な説明および特許請求の範囲を参照することによって明らかになり、理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、使用中の本発明に係るシステムの概略図である。
【0036】
図2図2は、本願明細書に記載のユーザインタフェースおよび方法を利用することができる入力装置および表示装置を含む例示的な体外血液治療システムのブロック図である。
【0037】
図3図3は、本願明細書に記載のグラフィカルユーザインタフェースを含むことができる例示的な透析システムの斜視図である。
【0038】
図4図4は、図2に示される例示的な透析システムの一部の正面図である。
【0039】
図5図5は、本発明の一実施形態に係る熱管理を有するシステムの一部の概略図である。
【0040】
図6a図6aは、検討1の結果のチャートを示す。
図6b図6bは、検討1の結果のチャートを示す。
図6c図6cは、検討1の結果のチャートを示す。
図6d図6dは、検討1の結果のチャートを示す。
図6e図6eは、検討1の結果のチャートを示す。
図6f図6fは、検討1の結果のチャートを示す。
図6g図6gは、検討1の結果のチャートを示す。
図6h図6hは、検討1の結果のチャートを示す。
図6i図6iは、検討1の結果のチャートを示す。
図6j図6jは、検討1の結果のチャートを示す。
図6j2図6jは、検討1の結果のチャートを示す。
【0041】
図7a図7aは、検討2の結果のチャートを示す。
図7b図7bは、検討2の結果のチャートを示す。
図7c図7cは、検討2の結果のチャートを示す。
図7d図7dは、検討2の結果のチャートを示す。
【0042】
図8図8A、8B、および8Cは、本発明に係る治療目標を示す。
【0043】
図9図9は、本発明の制御アルゴリズムを示すフローチャートである。
【0044】
図10図10は、示されるように、培地AからCにおけるA549およびRCC4細胞の成長率を示す。
【0045】
図11図11は、21または5%の酸素において培地AからC中で3日間培養した後の肺癌A549、腎癌RCC4、および初代RCC細胞の量を示す。星印は、Tukeyの多重比較検定で2元配置分散分析によって決定された有意に異なる値を示す。
【0046】
図12図12は、8mM Acac、16mM BOHB、または4mM Acac/8mM BOHBの組み合わせを添加した培地AからC中の酸素正常状態および低酸素状態でのヒト神経膠腫細胞株A172の培養の結果を示す。4および8mMのLiClは、Acacのためのコントロールとして使用される。Sidakの多重比較検定で1元配置分散分析によって決定された有意に異なる値は、星印でマークされている。
【0047】
図13図13は、8mM Acac、16mM BOHB、または4mM Acac/8mM BOHBの組み合わせを添加した培地AからC中の酸素正常状態および低酸素状態での神経膠腫細胞株U118MGの培養の結果を示す。4および8mMのLiClは、Acacのためのコントロールとして使用される。Sidakの多重比較検定で1元配置分散分析によって決定された有意に異なる値は、星印でマークされている。
【0048】
図14図14は、8mM Acac、16mM BOHB、または4mM Acacと8mM BOHBの組み合わせを添加した培地BからC中の酸素正常状態および低酸素状態での神経膠腫細胞株A172の培養の結果を示す。4mM Acac/8mM BOHBまたは8mM Acacのためのコントロールとして、4および8mMのLiClがそれぞれ使用される。Sidakの多重比較検定を使用した1元配置分散分析によって決定された有意に異なる値は、星印でマークされている。
【0049】
図15図15は、8mM Acac、16mM BOHB、または4mM Acacと8mM BOHBとの組み合わせを添加した培地BからC中の酸素正常状態および低酸素状態での神経膠腫細胞株U118MGの培養の結果を示す。4mM Acac/8mM BOHB、または8mM Acacのためのコントロールとして、4および8mMのLiClがそれぞれ使用される。Sidakの多重比較検定を使用した1元配置分散分析によって決定された有意に異なる値は、星印でマークされている。
【0050】
図16図16は、8mM Acac、16mM BOHB、または4mM Acacと8mM BOHBとの組み合わせを添加した培地BからC中の酸素正常状態および低酸素状態での腎癌細胞株RCC4の培養の結果を示す。4mM Acac/8mM BOHB、または8mM Acacのためのコントロールとして、4および8mMのLiClがそれぞれ使用される。Sidakの多重比較検定を使用した一元配置分散分析によって決定された有意に異なる値は、星印でマークされている。
【発明を実施するための形態】
【0051】
体外血液治療のための履歴データを選択、表示、およびフィルタリングする例示的なシステムおよび方法を、図1から5を参照して説明する。体外血液治療システムは、履歴データをもたらす1つまたは複数の体外血液治療の1つまたは複数のパラメータおよび/またはイベントを記録または保存することができる。本願明細書で説明する例示的なシステムおよび方法は、そのような履歴データを表示するためのグラフィカルユーザインタフェースを提供する。一般に、履歴データは、患者の流体除去データ、流体データ、治療データ、抗凝固データ、圧力データ、イベントデータ、設定データ、患者データ、アラームデータ、システム電圧および電流データ、システムタイミングデータ、ユーザインタラクションデータ(例えば、ボタン押下、および画面選択等のユーザインタフェースとのインタラクション)等を含み得る。本発明では、システムがそれらの濃度を検出するための1つまたは複数のセンサを含むことができるので、データは患者の血液流中の特定の物質の濃度を含むことができる。検出される物質には、グルコース、グルタミン、およびセリン、グリシン、アルギニン等の他のアミノ酸、ケトン、およびサイトカインが含まれ得る。
【0052】
患者流体除去データは、全患者流体除去データ、意図しない患者流体除去データ、選択された制限データ(例えば、1時間、3時間、または24時間等の選択された期間にわたる意図しない患者の流体増加/損失に対する選択された制限)等を含み得る。流体データは、注入前データ、透析液データ、交換後流体フィルタ後データ、フィルタデータ、流出データ、濾過画分データ、希釈前データ、患者キログラムあたりの速度データ、限外濾過速度データ、血液流量の限外濾過率ポスト%データ等を含み得る。治療データは、処方された流出用量データ、送達された流出用量データ、目標流出用量データ、処方された限外濾過率(UFR)用量データ、目標UFR用量データ、送達されたUFR用量データ等を含み得る。抗凝固データは、ヘパリンデータ、推定患者クエン酸負荷データ、クエン酸溶液データ、カルシウム溶液データ、補充溶液データ、カルシウム補償データ、注射器容積送達データ、ボーラス送達データ等を含み得る。圧力データは、アクセスライン圧力データ、リターンライン圧力データ、フィルタ圧力データ、膜貫通圧力(TMP)データ、フィルタを横切る圧力降下(P DROP)データ(例えば、フィルタの血液コンパートメント内の圧力条件)、セルフテストデータ、圧力アラームデータ、切断および閉塞限界データ、安定化圧力データ等を含み得る。イベントデータは、システム構成データ、アラームデータ、設定データ、治療セットデータ、助言データ、処方設定データ、システム設定データ、抗凝固データ、圧力データ、患者データ、機械的データ、投与量データ等を含み得る。
【0053】
図1に示される例示的な体外血液治療システム10は、本願明細書に記載の例示的な方法および/またはプロセスを実行するために使用され得る。少なくとも1つの実施形態では、システム10は、血液の体外治療のための機械であってもよく、またはそれを含んでもよい。システム10は、例えば、代替的に、血液治療装置または血液成分調製装置または流体の送達および/または収集のための他の医療装置であるか、またはこれらを備えることができる。
【0054】
示されるように、例示的な体外血液治療システム10は、コンピューティング装置12を含む。コンピューティング装置12は、入力装置20から入力を受信し、および表示装置22に出力を送信するように構成され得る。さらに、コンピューティング装置12は、データストレージ14を含み得る。データストレージ14は、処理プログラムまたはルーチン16、および体外血液治療の実行、履歴データの記録、履歴データのフィルタリング、および履歴データの表示に使用するための例示的な方法および/またはプロセスを実行するために使用できる1つまたは複数の他のタイプのデータ18へのアクセスを可能にすることができる。例えば、コンピューティング装置12は、ユーザが入力装置20を使用して(例えば、ユーザからの入力に基づいて)履歴データの様々なセットを選択および表示できるように、流量および容量等のデータを記録(log)または記録(record)するように構成され、および表示装置22を使用して、ユーザが選択した履歴データを表示するよう構成され得る。
【0055】
コンピューティング装置12は、例えば、入力装置20および表示装置22のそれぞれとの間でデータを送信するために、入力装置20および表示装置22に動作可能に結合され得る。例えば、コンピューティング装置12は、例えば、アナログ電気接続、デジタル電気接続、無線接続、バスベースの接続等を使用して、入力装置20および表示装置22のそれぞれに電気的に結合され得る。本願明細書でさらに説明するように、ユーザは、入力装置20に入力を提供して、表示装置22上に表示された1つまたは複数のグラフィック描写(例えば、ウィンドウ、領域、エリア、ボタン、アイコン等)を操作または修正する、および/または履歴データを表示することができる。さらに、様々なデバイスおよび装置が、コンピューティング装置12内で使用されるようにコンピューティング装置12に動作可能に結合されて、1つまたは複数の体外手順/処理、ならびに本願明細書に記載される機能、方法、および/または論理を実行することができる。示されるように、システム10は、入力装置20および表示装置22を含み得る。入力装置20は、コンピューティング装置12に入力を提供して、本願明細書に記載の機能、方法、および/または論理を実行することができる任意の装置を含むことができる。例えば、入力装置20は、タッチスクリーン(例えば、容量性タッチスクリーン、抵抗性タッチスクリーン、マルチタッチタッチスクリーン等)、マウス、キーボード、トラックボール等を含んでもよい。入力装置20により、ユーザは、表示装置22上に表示される(例えば、履歴データを表すグラフィカルユーザインタフェースを表示する)様々な履歴データを選択およびフィルタリングすることができる。
【0056】
同様に、表示装置22は、本願明細書に記載の機能、方法、および/または論理を実行するために、グラフィカルユーザインタフェース等、ユーザに情報を表示できる任意の装置を含み得る。例えば、表示装置22は、液晶ディスプレイ、有機発光ダイオードスクリーン、タッチスクリーン、陰極線チューブディスプレイ等を含むことができる。少なくとも1つの実施形態では、タッチスクリーン装置を表示画面上に重ねて、ユーザが表示画面上のグラフィックボタンおよびアイコンに触れて、特定のアクションを実行できるようにすることができる。
【0057】
本願明細書でさらに説明するように、表示装置22は、体外血液治療のための生データおよび/または履歴データを選択および表示するために使用される1つまたは複数の領域および/またはエリアを含むグラフィカルユーザインタフェースを表示するように構成され得る。例えば、表示装置22によって表示されるグラフィカルユーザインタフェースは、二次元グラフ、二次元グラフ上にプロットされたデータセット、二次元グラフに近接するイベントを表す1つまたは複数のグラフィック要素またはアイコン、時間間隔選択領域、イベントタイプ選択領域、イベントリスト領域またはビュー、イベント情報領域、履歴データ領域、イベント表示領域等を含む、または表示することができる。
【0058】
各グラフ、領域、ビュー、ボタン、アイコン、パネル、エリア、ダイアログ等は、表示装置22のグラフィカルユーザインタフェース上で履歴データを選択して表示するために、ユーザによって使用されてもよい。本願明細書で使用されるように、グラフィカルユーザインタフェースの「領域」は、情報が表示される、または機能が実行されるグラフィカルユーザインタフェースの一部として定義することができる。領域は他の領域内に存在する場合があり、別々にまたは同時に表示される場合等がある。例えば、小さな領域が大きな領域内に配置されたり、領域が並んで配置されたりすること等がある。さらに、本願明細書で使用されるように、グラフィカルユーザインタフェースの「エリア」は、それが位置する領域よりも小さい領域に位置するグラフィカルユーザインタフェースの一部として定義され得る。
【0059】
処理プログラムまたはルーチン16は、計算数学、行列数学、標準化アルゴリズム、比較アルゴリズム、または本願明細書で説明される1つまたは複数の例示的な方法および/またはプロセスを実施するために必要な任意の他の処理を実行するためのプログラムまたはルーチンを含み得る。データ18は、例えば、履歴データ、ユーザカウント、ライセンス情報、処理プロファイル、ビットマップ、ビデオ、較正データ、システム構成情報、ソリューションデータ、エンジニアリングログ、イベントおよびアラームデータ、システム圧力、システム電圧、システム電流、セルフテストシーケンスデータ、ユーザインタラクションデータ、処理状態データ、モニター使用データ、利用データ、ソフトウェア実行可能ファイル、患者情報、処理概要情報、処理実行時間データ、グラフィック(例えば、グラフィック要素、アイコン、ボタン、ウィンドウ、ダイアログ、プルダウンメニュー、グラフィックエリア、グラフィック領域、3Dグラフィックス等)、グラフィカルユーザインタフェース、本願明細書の開示に従って使用される1つまたは複数の処理プログラムまたはルーチンからの結果、または本願明細書で説明されている1つおよび/または複数のプロセスまたは方法を実行するために必要な可能性があるその他のデータを含み得る。
【0060】
1つまたは複数の実施形態では、システム10は、例えば処理能力、データ記憶装置(例えば、揮発性または不揮発性メモリおよび/または記憶要素)、入力デバイス、および出力デバイスを含むコンピュータ等のプログラム可能なコンピュータ上で実行される1つまたは複数のコンピュータプログラムを使用して実装することができる。本願明細書に記載のプログラムコードおよび/またはロジックを入力データに適用して、本願明細書に記載の機能を実行し、および所望の出力情報を生成することができる。出力情報は、本願明細書で説明するように、または既知の方法で適用されるように、1つまたは複数の他のデバイスおよび/または方法に入力として適用することができる。
【0061】
本願明細書に記載の方法および/またはプロセスを実施するために使用されるプログラムは、任意のプログラム可能な言語、例えば、コンピュータシステムと通信するのに適した高レベル手続き型および/またはオブジェクト指向プログラミング言語を使用して提供され得る。任意のそのようなプログラムは、本願明細書に記載されている手順を実行するために適切なデバイスが読み取られるとき、例えば、コンピュータシステムを構成および操作するためのコンピュータシステム(例えば、処理装置を含む)上で実行される汎用または専用プログラムによって読み取り可能な、例えば記憶媒体等の任意の適切なデバイスに格納されてもよい。換言すれば、少なくとも一実施形態では、システム10は、コンピュータプログラムで構成されたコンピュータ可読記憶媒体を使用して実施することができ、そのように構成された記憶媒体は、コンピュータを特定の事前定義された方法で動作させて、本願明細書で説明される機能を実行させる。さらに、少なくとも1つの実施形態では、システム10は、実行のためのコードを含む1つまたは複数の非一時的媒体に符号化されたロジック(例えば、オブジェクトコード)によって実装されるよう記載されることができ、およびプロセッサによって実行されると、本願明細書に記載されている方法、プロセス、および/または機能等の操作を実行するよう作動可能である。
【0062】
同様に、システム10は、リモートコンピュータ装置を介して(例えば、ウェブブラウザを介して)1人または複数のユーザによるアクセスを可能にし、およびユーザが本開示による機能を使用できるようにするリモートサイト(例えば、アプリケーションサーバ)で構成することができる(例えば、ユーザは、データを処理するために1つまたは複数のプログラムに関連付けられたグラフィカルユーザインタフェースにアクセスする)。
【0063】
コンピューティング装置12は、例えば、任意の固定またはモバイルコンピュータシステム(例えば、コントローラ、マイクロコントローラ、パソコン、ミニコンピュータ等)であり得る。コンピューティング装置12の正確な構成は限定的ではなく、かつ本質的に、適切なコンピューティング能力および制御能力(例えば、グラフィックス処理、体外血液治療装置の制御等)を提供できる任意のデバイスを使用することができる。
【0064】
本願明細書で説明するように、デジタルファイルは、本願明細書に記載のコンピューティング装置12によって読み取り可能および/または書き込み可能であり得る、デジタルビット(例えば、バイナリ、トライナリ等でエンコードされた)を含む任意の媒体(例えば、揮発性または不揮発性メモリ、CD-ROM、パンチカード、磁気記録可能テープ等)であってもよい。
【0065】
また、本願明細書で説明するように、ユーザ可読形式のファイルは、ユーザによって可読、および/または理解可能な任意の媒体(例えば、紙、ディスプレイ等)上に表示可能なデータの任意の表示(例えば、ASCIIテキスト、2進数、16進数、10進数、グラフィック等)であってもよい。
【0066】
上記を考慮すると、本開示に係る1つまたは複数の実施形態で説明した機能は、当業者に知られている任意の方法で実装できることは容易に明らかであろう。そのため、本願明細書に記載のプロセスを実装するために使用されるコンピュータ言語、コンピュータシステム、またはその他のソフトウェア/ハードウェアは、本願明細書に記載されたシステム、プロセス、またはプログラム(例えば、そのようなシステム、プロセス、またはプログラムによって提供される機能)の範囲を限定するものではない。
【0067】
本願明細書に記載の実施形態と共にグラフィカルユーザインタフェースを使用できることが理解されよう。ユーザインタフェースは、それへのユーザ入力、入力の変更、ファイルのインポートまたはエクスポート、または本願明細書で説明するプロセスでの使用に一般的に適している可能性があるその他の特徴を可能にする様々な特徴を提供することができる。例えば、ユーザインタフェースは、ユーザが表示装置に表示される様々な履歴データを選択し、かつフィルタリングすることを可能にすることができる。
【0068】
システムまたは様々な構成要素に起因するものを含む、本開示で説明される方法および/またはロジックは、少なくとも部分的に、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはそれらの任意の組み合わせで実装され得る。例えば、技術の様々な態様は、1つまたは複数のマイクロプロセッサ、DSP、ASIC、FPGA、または任意の他の同等の集積または個別論理回路、ならびにそのような要素の任意の組み合わせ、または他のデバイスの任意の組み合わせを含む、1つまたは複数のプロセッサ内で実装され得る。「プロセッサ」または「処理回路」という用語は、一般に、前述の論理回路のいずれかを、単独で、または他の論理回路と組み合わせて、または任意の他の同等の回路を指し得る。
【0069】
そのようなハードウェア、ソフトウェア、および/またはファームウェアは、本開示で説明される様々な動作および機能をサポートするために、同じデバイス内または別個のデバイス内で実装され得る。さらに、記載された要素のいずれも、別個であるが相互運用可能な論理デバイスとして一緒にまたは別々に実装することができる。例えばブロック図等を使用した様々な特徴の描写は、異なる機能的側面を強調することを意図しており、かつ、そのような特徴が別個のハードウェアまたはソフトウェアの要素によって実現されなければならないことを必ずしも意味するものではない。むしろ、機能は別個のハードウェアまたはソフトウェアの要素によって実行されるか、共通または別個のハードウェアまたはソフトウェアの要素内に統合され得る。ソフトウェアで実装される場合、本開示で説明されるシステム、デバイス、および方法に起因する機能は、RAM、ROM、NVRAM、EEPROM、フラッシュメモリ、磁気データ記憶媒体、光データ記憶媒体等のコンピュータ可読媒体上の命令および/またはロジックとして具現化され得る。命令および/またはロジックは、本開示で説明される機能の1つまたは複数の態様をサポートするために、1つまたは複数のプロセッサによって実行され得る。
【0070】
体外血液治療における履歴データの選択および表示のために本願明細書に記載される例示的なシステム、およびそのような例示的なシステムによって実行または使用される例示的な方法は、一般に透析システムと呼ばれ得る。本願明細書で使用される透析という一般用語には、血液透析、血液濾過、および血液透析濾過が含まれる。一般に透析では、血液を体外に取り出し、および処理装置にかけて、そこから物質の分離および/またはそこへ物質の添加を行った後、血液を体内に戻す。したがって、一般的な透析を行うことができる体外血液治療システムは、図2から4の例示的な体外血液治療システムを参照して本願明細書に記載される。他のシステムは、本願明細書に記載のシステム、方法、および装置から利益を得ることができ、および本開示は特定の流体処理システムに限定されない。
【0071】
図2の概略図において、例示的な体外血液治療システム50は、一般に、患者の血管系に接続可能な動脈ライン52aおよび静脈ライン52bを含む血液チューブ回路52を含む。この装置は、半透性濾過膜59によって分離された一次チャンバ(血液チャンバ)および二次チャンバ(透析液チャンバ)を有する濾過ユニット58を備える。一次チャンバの入口は、採血ラインまたは動脈ライン52aに接続されている。同様に、一次チャンバの出口は、血液リターンラインまたは静脈ライン52bに接続される。
【0072】
二次チャンバの入口は、新しい透析液流体供給ライン54bに接続され、これは、新しい透析溶液を提供するための供給源74に接続される。濾過ユニット58の二次チャンバの出口は、使用済み透析溶液を流出コネクタ73に運ぶ透析溶液または使用済み透析液ライン54aに接続されている。
【0073】
本発明では、濾過ユニット58は、血液チューブ回路112内の血液から比較的小さい化合物を除去するように構成されているという点で、従来の血液透析濾過膜とは異なる膜59を備える。膜は、50kDa以下、またはさらに40kDa以下(30kDa以下、10kDa以下、5kDa以下、または2kDa以下等)の分子量カットオフ(MWCO)を有するように構成される。
【0074】
血液ライン52a、52bおよび濾過ユニット58を通る血液の流れは、動脈ライン52aに配置された血液ポンプ60によって支配される。同様に、供給ライン54b内の透析液流体ポンプ68によって、供給源74から濾過ユニット58を通って流出物収集器73までの新しい透析液流体の流れ、透析液流体ライン54内の圧力は、使用済み透析液ライン54a内の圧力解放弁によって支配される。代替的に、圧力解放弁の代わりに、第2のポンプ62を使用済み透析液ライン54aに含めることができる。
【0075】
血液ライン52bの静脈部分に接続された1つ以上の注入ライン66、80、81、82も存在し得る。いくつかの実施形態では、これらの注入ラインのうちの1つまたは複数が、患者の血管系に直接接続されるように適合される(図示せず)。1つまたは複数の注入ライン66、80、81、82のそれぞれは、別個のポンプを備えることができる。一実施形態では、ケトン体またはケトン体誘導体を含む注入液を、そのような注入ラインによって注入することができる。
【0076】
システムコンピューティングユニット64は、血液ポンプ60、透析液流体ポンプ68、および1つまたは複数の注入ライン66、80、81、82の1つまたは複数のポンプ、および圧力解放弁または追加の透析液流体ポンプ68と通信するように提供され、使用中のこれらのデバイスの制御を提供する。代替の実施形態では、システムコンピューティングユニット64は、1つまたは複数の注入ライン66、80、81、82内のポンプのためのグラフィカルユーザインタフェースを介して適切な設定データをユーザに提供する。システムコンピューティングユニットは、また、システム処理ユニット64への情報および命令の提供のための入力手段と通信する。入力手段は、タッチスクリーン構成を使用して制御することができるもの等のグラフィカルユーザインタフェースを備えることができる。いくつかの実施形態では、入力手段はキーボードを含むことができる。いくつかの実施形態では、入力手段は、患者の血液中および/または使用済み透析液中の様々な物質または状態の濃度を検出するための1つまたは複数のセンサを含み得る。
【0077】
例えば、対象の血液中のグルタミン、セリン、グリシン、アルギニン、グルコース、ケトン、およびサイトカイン等のアミノ酸のうちの1つまたは複数の濃度を検出するために、センサを提供することができる。特に、そのようなセンサは、対象の血中のグルタミン、グルコース、およびケトン体の1つまたは複数の濃度を検出するように適合させる必要がある。そのようなセンサS、91、93は、血液ライン52に提供されてもよく、または患者の体S、90の他の場所に配置されてもよい別個のデバイスの使用によって提供されてもよい。センサは、配備されている範囲で、システム処理ユニット64に(直接または追加の入力手段を介して)意図した検体の実際の血中濃度の表示を提供する。この提供は、処理中に定期的または実質的に継続的に行うことができる。
【0078】
グルタミン、グルコース、およびケトン体を分析するための適切なセンサおよびアッセイは、当技術分野で知られている。例えば、グルタミンのセンサは、米国特許第4,780,191号明細書に開示されている。グルタミンのアッセイの例は、米国特許第9,995,750号明細書および米国特許出願公開第2016/168619号明細書に開示されている。ケトン体の濃度を決定するためのセンサおよびアッセイの例は、米国特許第8,532,731号明細書、国際公開第2016/178823号、米国特許第5,326,697および米国特許第5,618,686号明細書に開示されている。グルコースのセンサおよびアッセイの例は、米国特許出願公開第2019/328288号明細書、米国特許出願公開第2018/128767号明細書および米国特許出願公開第2011/105871号明細書に開示されている。
【0079】
さらに、グルタミン、セリン、グリシン、およびアルギニン等のアミノ酸の1つまたは複数、ならびにグルコース、ケトン、およびサイトカイン(好ましくは、少なくともグルコースおよびグルタミンのもの)の患者の血中濃度は、患者の血液の回収および別の分析(例えば、実験室での分析)によって測定され得る。この方法は、長期にわたる処理中に特に関連する可能性があるが、分析施設の近さと速度によっては、任意の処理中に展開される場合がある。
【0080】
別の実施形態では、1つまたは複数のセンサS、92をオプションとして、流出ライン54bに含めることができる。このセンサは、必要に応じて、グルコース、グルタミン、セリン、グリシンおよびアルギニン等のアミノ酸、ケトンまたはサイトカインの1つまたは複数の濃度を検出することができる。流出ラインで測定された関連検体の濃度を使用して、欧州特許第2377563号明細書(参照により本願明細書に組み込まれる)に記載されている方法等で、患者の血液中の関連検体の代表的な濃度を決定することができる。
【0081】
体内の細胞が通常よりも高い温度にさらされると、細胞内で変化が起こる。処理は、処理する領域の範囲に応じて、局所(腫瘍のみ)、局所(四肢等)、または全身の温熱療法であり得る。非常に高温になると、癌細胞が壊死/アポトーシス(熱アブレーション)に移行する可能性があるが、高温は損傷を引き起こしたり、正常細胞のアポトーシス/壊死を誘発したりする可能性もある。したがって、温熱療法は慎重に管理する必要がある。
【0082】
温熱療法は癌治療を改善する有望な方法であり、および、今日では特別な装置が必要であるため、実行が面倒である。癌治療のための温熱療法に関する多くの臨床試験が進行中である。示唆されているように、余分な体の回路は、患者に低体温を誘発し、かつそれを制御するのに適している。体外血液量の治療と同時に血液温度を上昇させることは、変化した血液量の効果を高めることができる優れた組み合わせ治療になる。
【0083】
300ml/minの血流と43度の戻り血液の温度で、約120ワットの効果が患者に伝達され、および体温が容易に上昇する。血液温度は、血液に実質的な損傷を与えることなく、短時間で45℃まで上昇させることができた。
【0084】
治療を終了するためだけでなく、あまりにも効果的な治療を調整するために、患者を冷却する必要があるかもしれない。冷却は、正常細胞と癌細胞の代謝率の低下につながるが、その後、酸素消費量も低下につながる。言及された変化は、正常な健康な細胞の保護につながるが、例えば、従来の癌治療だけでなく、癌透析、およびグルコース、およびグルタミン、および酸素の減少に対する癌細胞の弱体化にもつながる。冷却は、また、患者に行われる従来の癌治療に対する有害な副作用を軽減するだけでなく、癌透析および従来の癌治療のより積極的な治療にも耐えることができる。本図面は、血液を冷却または加熱するための手段を示していないが、そのような手段は当業者に周知であり、および連続腎代替療法(CRRT)等のいくつかのタイプの体外血液治療に関連して頻繁に使用される。
【0085】
図8A、8Bおよび8Cは、本発明の治療目標および原理を示す。各図は、特定の血液成分の濃度に関する正常な状態の例を開示している。図8Aは、治療開始時の患者が典型的に0.20から0.8mMの範囲内のグルタミンGLNの実際の血中濃度を有することを示している。処理中、グルタミンの実際の血中濃度は、0.1から0.5mMの範囲内、および例えば0.15から0.3mMの範囲内である所望の値GLNまで低下する。8Bは、処理開始時の患者が典型的に4から8mmol/lの範囲内のグルコースGLUCOSEの実際の血中濃度を有することを示している。処理中、グルコースの実際の血中濃度は、典型的には2から4mmol/lの範囲内である所望の値GLUCOSEまで低下する。最後に、図8Cは、血液が、β-ヒドロキシ-酪酸、またはナトリウム塩等の薬学的に許容されるそれらの塩またはエステル等のケトン体を最初はほとんど含まないことを示している。したがって、患者の血液中のケトン体の濃度の実際の値KETONEは、約0である。通常、新しい透析液にはケトン体がまったく含まれていないか、少量しか含まれていない。処理中、そのようなケトンの血中濃度は、ケトン体および/またはケトン体誘導体の溶液の注入によって、2から12mMの範囲内等、1から15mmol/lの範囲内の所望の値KETONEに上昇し得る。
【0086】
一実施形態では、グルタミンの実際の血中濃度GLN、および/またはグルコースの実際の血中濃度GLUCOSEは、所望の値GLNおよび/またはGLUCOSEを下回る可能性がある。次いで、これらの実際の血中濃度値GLNおよび/またはGLUCOSEは、グルコースおよび/またはグルタミンまたは薬学的に許容されるグルタミン含有化合物を含む溶液の注入によって所望の値GLNおよび/またはGLUCOSEまで増加され得る。
【0087】
図9は、本発明による制御プロセスのアルゴリズム900の一例のフローチャートを開示する。処理を開始する前に、システムコンピューティングユニット64は、重要な化合物の処理目標濃度または所望の血中濃度を受信するように適合される。通常、これらの処理目標濃度は、ユーザインタフェースを使用して入力される。
【0088】
したがって、ステップ901において、システムコンピューティングユニット64は、グルタミンの所望の血中濃度値GLNを受信する。
【0089】
ステップ903において、システムコンピューティングユニット64は、グルコースの所望の血中濃度値GLUCOSEを受信する。
【0090】
ステップ905において、システムコンピューティングユニット64は、ケトン体の所望の血中濃度値KETONEを受信する。
【0091】
処理を開始する前に、システムコンピューティングユニット64は、また、上記の重要な成分のため新しい透析液中の濃度値を受信するように適合される。通常、これらの濃度値もユーザインタフェースを使用して入力される。
【0092】
したがって、ステップ902において、システムコンピューティングユニット64は、新しい透析液中のグルタミンの濃度値GLNを受け取る。
【0093】
ステップ904において、システムコンピューティングユニット64は、新しい透析液中のグルコースの濃度値GLUCOSEを受信する。
【0094】
ステップ907において、システムコンピューティングユニット(64)は、新しい透析液中のアセトアセテート、β-ヒドロキシブチレートまたはそれらの薬学的に許容される誘導体、エステルおよび塩等のケトン体の濃度を表す濃度値KETONEを受信するように適合される。
【0095】
ステップ906において、システムコンピューティングユニット64は、体外血液ライン(52b)に注入されるか、または処理される対象/患者の血管系に直接注入される注入される注入液中のケトン体の濃度値KETONEを受信する。
【0096】
処理を開始する前、およびオプションとして処理中に、システムコンピューティングユニット64は、患者の血液から決定された実際の濃度値を受信するように適合される。これらの濃度値は、血液サンプルを採取し、続いて別の分析ユニットで分析した後に取得できる。それから、濃度値は、ユーザインタフェースを介して手動で入力される。いくつかの実施形態では、システムコンピューティングユニットは、1つまたは複数のそのような別個の分析ユニットに接続されているため、そこから直接データを受信することができる。いくつかの実施形態では、血液回路52a、52b、および/または透析液回路54a、54bは、データを受信するシステムコンピューティングユニット64に接続された適切なセンサS、90、91、92、93を備えてもよい。システムコンピューティングユニット64は、典型的には、直前に受信した実際の値GLN、GLUCOSE、およびKETONEに基づいて処理を制御する。
【0097】
したがって、ステップ908において、システムコンピューティングユニット64は処理を開始する。
【0098】
ステップ909において、システムコンピューティングユニット64は、患者からグルタミンの実際の血中濃度値GLNを受信するように適合される。
【0099】
ステップ910において、システムコンピューティングユニット64は、患者からグルコースの実際の血中濃度値GLUCOSEを受信するように適合される。
【0100】
ステップ911において、システムコンピューティングユニット64は、患者からケトン体の実際の血中濃度値KETONEを受信するように適合される。
【0101】
ステップ912において、システムコンピューティングユニット64は、血液ポンプ60および透析液流体ポンプ62、68を、GLNがGLNに向かう、またはそれ未満にされるように制御する。
【0102】
同時のステップ914において、システムコンピューティングユニット64は、血液ポンプ60および透析液流体ポンプ62、68を、GLUCOSEがGLUCOSEに向かう、またはそれ未満にされるように制御する。
【0103】
同時のステップ916で、システムコンピューティングユニット64は、GLNを監視し、およびGLNがGLNよりも低い場合、システムコンピューティングユニットはグルタミンまたはグルタミン含有化合物を含む組成物の体外血液回路52a、52bへの注入を開始および維持する。
【0104】
同時のステップ918において、システムコンピューティングユニット64はGLUCOSEを監視し、およびGLUCOSEがGLUCOSEよりも低い場合、システムコンピューティングユニットはグルコース含有組成物の体外血液回路52a、52bへの注入を開始および維持する。
【0105】
同時のステップ920において、システムコンピューティングユニット64はKを監視し、およびKがKよりも低い場合、システムコンピューティングユニットは、ケトン体を含む組成物の体外血液回路52a、52bへの注入を開始して維持するか、または処理される対象の血管系へ直接注入を開始して維持する。
【0106】
いくつかの実施形態では、血中の他の物質の濃度を制御することができる。例えば、セリン、グリシン、アルギニン等のアミノ酸の濃度を通常より下げると有益であることがわかっている。
【0107】
図3から4の斜視図および部分正面図において、本願明細書に記載の処理およびグラフィカルユーザインタフェースを実施することができる例示的な体外血液治療システム110は、一般に、それぞれアクセスデバイス117およびリターンデバイス119を介して、両方とも患者の血管系に接続された第1および第2のチューブセグメント114および116を有する血液チューブ回路112を含む。デバイス117および119は、当業者によって理解されるように、カニューレ、カテーテル、翼付き針等であり得る。チューブセグメント114および116は、濾過または処理ユニット120にも接続される。透析では、濾過ユニット120は、しばしばフィルタとも呼ばれる透析器である。
【0108】
血液回路112の多数の他の要素デバイスも、例えば、圧力センサ127、128、154、129として含まれる。グルコースおよび/またはグルタミン、ケトン(ヒドロキシブチレート(BHB)アセトアセテートおよびアセトン等)および/またはサイトカイン(腫瘍壊死因子(TNF)等)(例えば、TNF-α)、インターロイキン(例えばIL-6))の濃度を監視するために、さらなるセンサを提供することができる。しかしながら、上記のように、センサは、血液回路112ではなく、患者と直接接触して配置されてもよい。それらが存在する場合、センサは、無線接続または物理接続によってコンピューティング装置12に動作可能に接続される。
【0109】
図5に概略的に示されているように、血液アクセスライン114および血液リターンライン116を含む血液回路112は、また、血液回路112内の血液を加熱または冷却するための熱管理システム500を含み得る。熱管理システム500は、コンピューティング装置12、64に動作可能に接続される。このような熱管理システムは、患者に戻る血液を約37℃等に加熱するために使用することができる。このようなシステムを使用して、戻る血液を20℃まで冷却したり、または戻る血液の温度を43℃に上げたりして、患者を38から40℃までの温度に温めることもできる。さらに、透析液回路は、また、血液が血液フィルタ120を通過した後に所望の温度に達したことを確実にするために、第2の熱管理システム501を含んでもよい。
【0110】
また、図3および4に示されているものは、システム110の透析液流体または濾液側であり、これは、一般に、第1および第2の透析液流体チューブセグメント141および142を有する透析液流体回路140を含む。これらのチューブセグメントの各々は、血液回路112セグメント114、116に対して膜の反対側で濾過ユニット120に接続される。これらの図3から4において、それぞれの流体ポンプ144、146は、これらのチューブセグメント141および142のそれぞれと動作可能に関連付けられる。
【0111】
第1のチューブセグメント141は、また、透析液流体源(例えば、流体バッグ149)に接続され、これは、電解質またはその中に予め混合された他の処理化合物を含み得る。第2のチューブセグメント142は、廃棄物収集デバイス(例えば、バッグ153等の廃棄物容器)に接続される。圧力センサ154は、また、第2の透析流体チューブセグメント142内に配置され得る。
【0112】
図3~4は、多数の透析手順の基本モデルとして一般的なシステムを示している。追加の流体ライン、回路、および要素を追加(または削除)して、治療オプションを増やすことができる。特に、本発明では、ケトン(例えば、ヒドロキシブチレート(BOHB)、アセトアセテートおよび/またはアセトン)を患者に(血液回路112への追加等によって)供給するための追加のラインを設けることができる。患者へのケトンの供給は、処理の開始前に患者が食事誘発性ケトーシスの状態にある必要性を減らすため重要である。ケトンの別個の供給が提供されない実施形態では、流体源バッグ149は、また、膜を通って血液回路に拡散するために、溶液中に1つ以上のケトン(ナトリウムBOHB等)を含み得る。
【0113】
透析液流体源149、廃棄物容器153、および交換流体容器168のうちの1つまたは複数を、コンピューティング装置12と動作可能に通信するスケール400上に提供することができる。ケトンの任意の追加供給源も、そのようなスケール400上に提供され得る。これにより、各容器内の流体の質量を使用中に監視して、使用または収集された各流体の量の正確な記録を提供できる。
【0114】
さらに、図3から4に示されるように、システム110は、制御/表示スクリーン161(例えば、システムハウジング193に設けられた制御装置またはコントローラ)を介して制御および/または監視され得る、多数の処理オプションを提供する体外血液制御装置160を含む。タッチスクリーン制御をここに組み込むことができ、および/または他の従来のノブまたはボタン(図示せず)を使用することができる(例えば、本願明細書で説明されるようにタッチスクリーンを介してグラフィカルユーザインタフェースを表示することができる)。例示的な装置160に関するその他のより詳細な情報は、とりわけ、米国特許第5,679,245号明細書、米国特許第5,762,805号明細書、米国特許第5,776,345号明細書、および米国特許第5,910,252号明細書、
米国特許第に見出すことができる。
【0115】
例えば、図3および4を参照して説明した装置を用いて実行される一般的な透析処理手順は、例示の目的で一般的に説明される。最初に、血液は、例えば血液ポンプ124によってアクセスデバイス117を介して患者118から取り除かれ、およびアクセスライン114を通ってフィルタ120に流れる。フィルタ120は、多数の体外血液治療プロファイルのうちの選択された1つ以上(例えば、制御装置160のスクリーンインタフェース161を介して選択および制御される)に従ってこの血液を処理する。
【0116】
処理プロファイルには、患者の血液中のグルタミンとグルコースの減少も含まれる。グルタミンの濃度は、0.1から0.5mMの範囲内の値、および好ましくは0.15から0.3mMの範囲内の値に減少される。グルコースの血中濃度は、1から6mMの範囲内、および好ましくは2から4mMの範囲内の濃度に減少される。この処理は、多くの癌細胞で解糖およびグルタミノリシス経路が強化されるため、体内の健康な細胞よりも癌細胞にはるかに顕著な悪影響を及ぼす。癌細胞の増加するエネルギ需要を満たすために解糖が強化される一方で、グルタミノリシスも多くの癌細胞で強化され、および生合成前駆体を提供できるが、活性酸素種(ROS)止血の維持においても重要な役割もする。癌細胞でROSの生産を増加させることによって癌細胞を強制的にアポトーシスさせることは、放射線療法と化学療法の両方にとって重要な標的である。最後に、グルタミンは、低レベルのグルコース中にATPの供給源として作用する可能性がある。いくつかの実施形態では、処理プロファイルは、適切な非経口栄養組成物を血液ラインに提供することによって、または患者の血管系への直接の別個の注入として、患者の栄養ニーズを満たすことができることを保証する。いくつかの実施形態では、ケトン体の血中濃度は、治療中、1から15mMの範囲内、および好ましくは2から12mMの範囲内の値に維持される。患者は、そのような低血中グルコース濃度にさらされると、独自のケトン体を生成することが期待されるが(例えば、消費または注入された脂質または体脂肪の貯蔵から)、十分な量のケトン体を生成する生物学的プロセスが始まるまでに時間がかかる場合がある。本願明細書に記載の処理中のケトン体の導入は、血中グルタミンおよび血中グルコース濃度が不自然に速い速度で減少する場合でも、患者が生命機能を継続するための十分なエネルギ源をタイムリに有することを保証する。
【0117】
特定の処理(特に高い血中ケトン体濃度が維持される処理)では、血中グルコース濃度の低下を助けるために、1つまたは複数の薬剤が患者に供給される。このようなグルコース低下剤には、好ましくは、ビグアナイド、α-グルコシダーゼ阻害剤、SGLT2阻害剤、およびドーパミン作動薬が含まれる。このような薬剤は、透析液流体源149、追加のケトン源(存在する場合)に含めることによって、または血液回路112または患者に供給される追加の注入として、システムによって供給され得る。
【0118】
ビグアナイドの例はメトホルミンである。α-グルコシダーゼ阻害剤の例は、アカルボースまたはミグリトールを含む。SGLT2阻害剤の例は、カナグリフロジン、ダパグリフロジン、およびエンパグリフロジンを含む。ドーパミンアゴニストの例は、ブロモクリプチンを含む。
【0119】
いくつかの好ましい処理では、抗解糖剤を患者に提供して、腫瘍細胞における解糖活性をさらに阻害することができる。このような薬剤は、透析液流体源149、追加のケトン源(存在する場合)に含めることによって、または血液回路112または患者に供給される追加の注入として、システムによって供給され得る。
【0120】
処理に続いて、システムは、患者118の血管系に挿入された、または別の方法で接続されたリターンライン116およびリターンデバイス119を介して、処置または処理された血液を患者118に戻す。
【0121】
アクセスデバイス117、アクセスライン114、血液ポンプ124、フィルタ120、ならびに、患者に戻るリターンライン116およびリターンデバイス119を含む、患者118への、および患者118からの血流経路は、血流回路112を形成する。圧力センサは、システム110内の様々な圧力を感知するために使用され得る。例えば、圧力センサ127をアクセスライン114に接続して、かつアクセスライン114内の流体圧力を監視できるようにすることができ、および第2の圧力センサ128を、第1の血液ポンプ124とフィルタ120への血液の入口との間の血液回路112に接続することができ、およびフィルタ120の入口に供給される血液の圧力を検出および監視するために使用することができる。
【0122】
システム110は、リターンラインに脱気チャンバ125をさらに含み、血液から空気を押し出すために渦のように動作する搬送経路を提供する。空気/血液界面を防ぐために、フィルタ交換後の溶液を血液上部の脱気チャンバに追加することができる。脱気チャンバ監視ライン191は、脱気チャンバ125を、例えばリターン圧力ポート129等の接続装置を使用して、システムハウジング193内の内部圧力トランスデューサに接続することができる。これにより、リターン圧力の監視と、必要に応じて脱気チャンバからの空気の除去が可能になる。血液回路112に接続されたリターンクランプ131は、血液回路112を通る血液の流れを選択的に許可または停止する(例えば、気泡検出器126によって血液中に空気が検出されるたびに、リターンクランプ131を作動させることができる)。
【0123】
さらに、ポンプ162を抗凝固剤容器164に接続して、抗凝固剤を抗凝固剤ライン165を介してチューブセグメント114内の血液に送達することができ、およびポンプ166が、交換流体容器またはバッグ168から交換流体ライン170を介して交換流体を送達することができる。二次流れ回路140は、また、図3から4に示されており、フィルタ120と相互作用する。二次流れ回路140は、フィルタ120の二次チャンバに接続される。血液から体外に除去された物質は、二次流れ回路140の出口チューブセグメント142を通してフィルタ120の二次チャンバから除去され、および血液に体外で加えられた物質は、二次流れ回路140の入口チューブセグメント141を通してフィルタ120内に移動される。
【0124】
二次流れ回路140は、一般に、バッグ149、入口流体ライン141、第3のポンプ144、フィルタ120の二次チャンバ、廃棄流体ライン142、圧力センサ154、第4のポンプ146、およびコンテナ153等の廃棄物収集デバイス等の流体源を含む。流体源バッグ149は、血液不純物が濾過ユニット120の半透膜を通って拡散する、一般に血液に等張の無菌透析流体を含み得る。流体源バッグは、また、膜を通って血液回路に拡散するために、溶液中に1つまたは複数のケトンを含んでもよい。
【0125】
ポンプ144は、透析液流体源149からフィルタ120への入口に透析液流体を送達するために、入口流体ライン141に接続される。廃棄物収集容器153は、フィルタ120内の半透膜を横切って移送された血液から物質を収集または受け取るために、および/またはフィルタ120を通過した後に使用済み透析液流体を受け取るために提供される。第4のポンプ146は、使用済み透析液をフィルタ120から廃棄物収集容器153に移動させるために廃棄物収集ライン142に接続される。圧力センサ154は、また、フィルタ120の二次チャンバ内の圧力を監視する目的で、廃棄物収集ライン142内に配置されてもよい。
【0126】
濾過ユニット120、流れチューブライン、および本願明細書で説明する一次および二次流れ回路112および140内の他の要素(例えば、ポンプおよびおそらくいくつかの他のアイテムを除く)は、一体型交換可能なユニット(例えば、体外血液セット)として形成されてもよい。この一体型交換ユニットは、本願明細書では「治療セット」と呼ばれる場合がある。そのような治療セット、または一体型交換可能ユニットの例は、「一体型血液治療流体モジュール」と題する米国特許第5,441,636号明細書に詳細に記載されている(体外処理装置の保持デバイスと題する米国特許第5,679,245号明細書も参照)。
【0127】
システム構成によっては、異なる治療を行うために使用する治療セットが利用できる場合がある。一般に、図3および4から理解できるように、一体化されたチューブおよびフィルタモジュール(参照番号172によって識別される)は、フィルタ120と、装置160に接続可能な上述の全てのチューブおよび関連要素とを含む。例えば、フィルタおよびチューブは、装置160に接続可能な(例えば、装置160のシステムハウジング193に接続可能な)プラスチック支持部材174上に保持されてもよい。治療セットは、また、グルコースおよび/またはグルタミン、ケトン(ヒドロキシブチレート(BHB)、アセトアセテート、およびアセトン等)、および/またはサイトカイン(腫瘍壊死因子(TNF)(例えば、TNF-α)等)、インターロイキン(例えばIL-6)の濃度を監視するセンサを含み得る。このようなセンサは、血液回路内の列挙された成分の濃度を監視するように構成されるか、または患者の体と直接インタフェースすることによって列挙された成分の濃度を監視するように構成されることができる。
【0128】
装置160に接続された作動位置にあるとき、濾過ユニット120への、および濾過ユニット120からの柔軟な流体伝導チューブラインは、ポンプ124、144、146および166の蠕動ポンピング部材との作動接触のために作動ポンプ連絡ループに保持され、流体が一次(血液)および二次(透析液流体)回路112および140を通って流れる。モジュール172は、フィルタ120と、全てのチューブラインと、関連する流れ要素を含み、使用後に廃棄することができる。
【0129】
ポンプ124、144、146、および166の蠕動ポンピング部材は、装置160上に(使い捨てチューブループ要素無しで)固定して配置されることができ、および再使用可能であり得る。一般に、電気、機械、または電気機械部品も、装置160内または装置160上に固定して配置される(例えば、装置160のシステムハウジング193に接続可能)。そのような要素の例には、表示スクリーン161(例えば、タッチスクリーン)、気泡検出器126、ラインクランプ131、および圧力センサ127、128、129、154等を実装するために使用される圧力センサに結合するための接続装置が含まれる。カップリングは、必要な、または優先される任意のセンサに提供することもできる。
【0130】
上述のように、アクセスデバイス117およびリターンデバイス119はカテーテルを含むことができる。いくつかの実施形態では、カテーテルは、バルーン閉塞カテーテル等の閉塞カテーテルを含み得る。この構成により、アクセスデバイス117およびリターンデバイス119を、図4に示すように腫瘍の部位に送達することが可能になる(例えば、大腿動脈または静脈からの侵入を介して)。これにより、腫瘍周辺の血中グルコース濃度が局所的に低下し、それにより、血中グルコースおよび/またはグルタミン濃度をさらに低いレベルまで低下させる可能性がもたらされる。
【0131】
参考例1
癌透析で得られる状態を模倣するために、細胞培養培地中のグルコース、グルタミン、およびケトンの存在に対する異なるヒト癌細胞株の感受性と、選択された栄養素の同時枯渇に関する検討が行われた。
【0132】
検討1は、腎細胞癌、結腸癌、および神経膠芽腫から形成されたヒト癌細胞株の選択について実施された。最初の検討は、グルコースおよびグルタミンレベルの同時制限を伴う、ケトンβ-ヒドロキシブチレートの濃度増加の存在下での増殖の細胞生存率への影響である。細胞培養培地へのクエン酸塩の添加も試験した。これらの条件下で細胞を3日間培養した後、細胞の生存率を測定した。最初の検討では、グルタミンが培養培地から枯渇したときに細胞の生存率への主な影響が見られた。
【0133】
材料および方法
細胞培養条件
ヒト結腸癌(HCT15、NCI-H508、およびCOLO205)、腎細胞癌(769-P、786-0、およびRCC4)、および神経膠芽腫(LN-18、A-172、およびU-118MG)から形成された細胞株を分析のため選択した。全ての細胞株は、Sigma-Aldrich(Merck、ドイツ)から購入したRCC4およびHCT15を除いて、American Type Culture Collection(ATCC、LGC標準、英国)から入手した。さらに、腎摘出患者から分離された初代ヒト腎細胞癌(RCC)細胞が検討に含まれた。培養条件は、American Type Culture Collection(ATCC)の推奨に従って、1mMピルビン酸ナトリウムを添加したDMEM培地で細胞を増殖させ、さらにより近い条件を維持するためにこれをRPMI-1640培地にも添加した。
【0134】
769-P、RCC4、LN-18、A-172、U-118MGおよび初代RCC細胞はDMEM高グルコース培地で培養し、786-0 HCT15、NCI-H508およびCOLO205は、ATCCからの推奨に従って、RPMI-1640培地で培養した。両方の培地に、1%ペニシリン-ストレプトマイシンと10%ウシ血清を添加した。標準的な手順に従って、細胞を拡大し、および一定量を凍結した。
【0135】
「対数期増殖を確保するために細胞播種密度を最適化するためのプロトコル」に従って、96ウェルプレートの各細胞株について最適な播種密度を決定した。このプロトコルは次の通りである。
・単一細胞懸濁液を調製し、および細胞数/生存率を測定した。
・細胞を完全培地で約160,000細胞/mLに希釈した。96ウェルプレートの一番上の行に200μLの細胞を加えた。全ての他のウェルに100μLの完全培地を分注した。ブランクとして機能するように、各プレートに少数の培地のみのコントロールウェルが必要である。
・12ウェルチャネルピペットを使用して、細胞調製物をプレートで2分の1に繰り返し希釈、つまり、下の行において、100μL細胞が100μL培地へ添加された。次に、50μLの完全な培地を全てのウェルに追加した。プレートをカバーした。
・プレートを37℃、5%COで一晩インキュベートした。
・50μLの新しい培地をプレートウェルに加えて、最終容量を200μLにし、および37℃、5%COで72時間インキュベートした。
・製造業者のプロトコルに従って、Cell Titer Glo アッセイを使用して生存率を測定した。
・発光強度に対して対数細胞数をプロットして、対数増殖が達成される細胞濃度を特定した。
Cell Titer-Glo発光細胞生存率アッセイ(Promega)を生存率の読み出しとして使用した。
【0136】
検討1
各細胞株について、上記で決定した最適数の細胞を0日目に96ウェルプレートに播種した。翌日、細胞をPBSで洗浄し、表3およびファイル「プレート概要」に概説されている栄養素を添加して、培地をグルコースまたはL-グルタミンを含まないDMEM(Fisher Scientific)またはRPMI-1640培地(Saveen Werner)に変更しました。条件ごとに3つのウェルを処理した。試験条件の培地で3日間培養した後、培地を毎日交換し、Cell Titer-Glo生存率試験を使用して細胞の生存率を測定した。各細胞株について実験を3回繰り返した。
【0137】
【表1】
【0138】
【表2】
【0139】
【表3】
【0140】
マトリックスは検討1で使用される異なる成長条件の組み合わせを示す。*グルコースの量は、各細胞株の標準培地に存在する濃度のパーセンテージとして表示される。示されている場合、1mMのクエン酸塩を培地に添加した。示された栄養素は、グルコースまたはL-グルタミンを含まないDMEM(Fisher Scientific)またはRPMI-1640培地(Saveen Werner)に添加された。
【0141】
【表4】
【0142】
【表5】
【0143】
検討1の結果を、図6に示すチャートに示す。存在するグルタミンおよび細胞培養培地の減少と、細胞増殖の減少と、の間に明確な関連性が示されている。
【0144】
検討2
上記のように、検討1では、ATCCが推奨する培養条件に従った。しかしながら、ピルビン酸塩は、結果に影響を与える可能性のある潜在的なエネルギ源である。したがって、検討2では、検討1と同じ培養条件が、ピルビン酸ナトリウムを添加しない、DMEM培地中の2つの細胞株、A172(神経膠芽腫)、およびRCC4(腎細胞癌)で試験された。結果を図7に示す。検討1と同様に、存在するグルタミンおよび細胞培養培地の減少と、細胞増殖の減少と、の間に明確な関連性が示されている。しかしながら、細胞培養培地にピルビン酸塩が存在しない場合、結果ははるかに顕著になる。また、BOHBケトンの濃度の増加も細胞の増殖を抑制するようである。
【0145】
本願明細書に引用されている全ての特許、特許文献、および参考文献は、あたかもそれぞれが個別に組み込まれているかのように、その全体が組み込まれている。この開示は、例示的な実施形態を参照して提供されたものであり、限定的な意味で解釈されることを意図したものではない。前述のように、当業者は、他の様々な例示的用途が、本願明細書に記載の装置および方法の有益な特性を利用するために、本願明細書に記載の技術を使用できることを認識するであろう。例示的な実施形態の様々な変更、ならびに本開示の追加の実施形態は、この説明を参照すると明らかになるであろう。
【0146】
実施例2
検討デザイン
増殖培地
インビトロでの癌細胞増殖に対する栄養制限ケトジェニック環境の効果を検討するために、3つの異なる細胞培養培地が処方された。培地Aは、細胞株が日常的に培養される完全なRPMI1640培地であった。培地Bは、正常なヒト血清に見られる条件の近似として使用された。グルコース、グルタミン、セリン、グリシン、およびアルギニンのレベルは、ヒト血清に見られる正常な生理学的レベルに一致するように調整された。これらの栄養素は、報告されたエネルギ源としての使用および癌細胞の代謝状態への影響に基づいて選択された。培地Cは、ケトジェニック栄養素制限癌透析条件をエミュレートするために使用された。ここでは、選択した栄養素のレベルを培地Bの生理的レベルの半分に減らし、およびケトン体BOHBを追加した。
【0147】
各培地の組成は、材料と方法に記載されており、および表5および6に記載されている。
【0148】
酸素レベル
ヒト癌細胞株は、通常、大気中の酸素レベル(21%O)で形成および培養されるが、組織内の生理的酸素レベルはかなり低く、3から13%の範囲で変動する[Ward,Biochim Biophys Acta 2008;1777:1-14]。腫瘍の微小環境内では、癌細胞の急速な成長率と、しばしば奇形で欠陥のある血管系が組み合わさって、酸素レベルが0から5%の範囲の低酸素領域が生じることがよくある。エネルギ代謝に対する酸素レベルの影響[Xie et al.,J Biol Chem 2017;292:16825-16832]、およびさらに生体内の生理学的条件を模倣するために、培地A、B、およびCでの癌細胞株の増殖を、周囲の21%Oと、より生理学的な5%Oの両方で検討した。
【0149】
ケトン
ケトン体アセトアセテート(Acac)、BOHB、およびアセトンは、空腹時または飢餓時に肝臓によって生成される。BOHBは哺乳動物の主要なケトン体で、Acacは約20%を占めている。癌細胞に対するケトンの効果を研究する公開されたインビトロ研究の大部分は、主にBOHBに焦点を当てているが、BOHBと比較してAcacの追加による異なる効果を示唆する研究がある[Vallejo et al.,J Neurooncol 2020;147:317-326]。両方のケトンが存在する生体内のケトジェニック状態をさらに模倣し、およびBOHBとAcacの異なる影響の可能性を調査するため、Acacもこの検討に含まれている。
【0150】
材料および方法
細胞株
全ての細胞株は、Sigma-Aldrich(Merck)からのRCC4を除いて、ATCC(ATCC、LGC標準)から購入した。初代ヒト腎細胞癌細胞は、スウェーデンのヨーテボリにあるサールグレンスカ大学病院で実施された腎摘除術から、患者の同意を得て、かつ地域の倫理委員会の許可を得て分離された。最適な播種密度は、標準的な細胞培養培地で3日間培養された96ウェルプレートの各細胞株について決定された。
【0151】
培養条件と添加物
細胞は、10%血清、200mMのL-グルタミン、および1%ペニシリン-ストレプトマイシン(PEST)を添加したRPMI-1640培地(31870-025 GIBCO)で、37℃、5%COの加湿チャンバ内で維持した。低酸素条件(5%O)では、Nを使用してOレベルを5%に調整したGalaxy 14S CO インキュベーター(Eppendorf)で細胞を維持した。
【0152】
培地A、B、Cは以下のように調製した。
培地A:1%PEST、200mMのL-グルタミン、および10%透析血清を添加したRPMI1640(31870-025、GIBCO)。透析血清を使用して、アミノ酸等の低分子の量を減らした。
【0153】
培地BおよびCは、L-グルタミン、グルコース、およびアミノ酸を含まないRPMI1640改変培地粉末から調製した(R9010-01、US Biological Life Sciences)。1Lの培地に対して、加熱せずに7.4gの粉末を900mlの滅菌水に溶解し、かつ2gの重炭酸ナトリウムを添加した。表5に記載されているアミノ酸は、完全RPMI1640培地と同じ濃度で添加された(表5)。全ての添加後、培地を0.22μmの膜を通して濾過することにより滅菌し、かつ2本のボトルに分けた。
【0154】
培地Bでは、生理学的条件を模倣するために、グルタミン、セリン、グリシン、アルギニン、およびグルコースのレベルが、メイヨークリニック研究所(https://www.mavocliniclabs.com/test-catalog/Clinical+and+Interpretive/9265)からのデータに基づき、ヒト血清の測定されたレベルの中央値に設定された。
【0155】
培地Cで癌透析条件をモデル化するために、これらの栄養素のレベルを生理的レベルの50%に減らした。培地Aのため、1%PESTと10%透析血清を培地BおよびCに追加した。培地AからCで選択された栄養素の濃度を表6にまとめる。細胞培養培地に一般的に添加されるピルビン酸ナトリウムは、使用した培地のいずれにも存在していなかった。
【0156】
【表6】
【0157】
【表7】
【0158】
アミノ酸およびその他の添加物はSigma Aldrichから購入した。
【0159】
全ての栄養素を加えた後、pHを測定した。pH値は次のとおりである。10%非透析FBS、1%PEST、および200mMのL-グルタミンを含む完全なRPMI1640はpH7.78、培地AはpH7.56、培地BはpH7.62、および培地CはpH7.57であった。
【0160】
DL-β-ヒドロキシ酪酸ナトリウム塩(H6501、Sigma Aldrich)およびアセト酢酸リチウム(A8509、Sigma Aldrich)の原液を水中で調製し、滅菌濾過し、等分し、および-20℃で保存した。塩化リチウム(L7026、Sigma Aldrich)を、Li-Acacへのリチウム添加のコントロールとして使用した。
【0161】
生存率アッセイ
CellTiter-Glo発光細胞生存率アッセイ(Promega)は、製造元の指示に従って細胞数の読み取りとして使用された。図12および13に示す実験では、二重プレートに播種して処理した。乳酸測定(下記参照)およびCellTiterGloアッセイ用の培地の回収には、1組のプレートを使用した。プレートの他のセットは、実験の最後に-80℃で凍結した。凍結プレートは、ウェルあたりのDNAの量を測定するCyQuant細胞増殖アッセイ(Thermo Fisher)を目的としていた。CellTiterGloおよびCyQuantアッセイの両方による細胞量の分析により、生存率または増殖速度に対する培養条件の影響が、細胞あたりのATPレベルの同時変化によって隠れないことが保証される。
【0162】
乳酸測定用培地の採取
図12および13に示す実験では、細胞培養培地を3日目に回収し、新しい96ウェルプレートに移し、および-80℃で凍結した。この培地は、代謝状態の測定として排泄された乳酸の量を分析するために使用できた。乳酸測定用のいくつかのキットが利用可能であり、例えば、Lactate-Gloアッセイ(J5021、Promega)は、血清が存在するアッセイで使用するために設計されている。
【0163】
結果
実施例2は、次の問題に答えるように設計された。
―選択された癌細胞株の増殖は、通常酸素または低酸素において培地Cでエミュレートされた癌透析条件の影響を受けるか?
【0164】
培地A、B、およびCでの増殖
最初のステップとして、材料と方法で説明したように培地AからCを調製し、およびこれらの培地で増殖する癌細胞株の能力を試験した。各培地で経時的に選択された細胞株の成長曲線が確立された。酸素正常状態(21%O)で培地AからC中で1、2および3日間培養した後、細胞数を分析した。
【0165】
図10に示すように、培地Bのように選択した栄養素をより生理学的なレベルに減らすと、培地Aと比較して、A549肺癌細胞株とRCC4腎癌細胞株の増殖速度が大幅に低下した。培地Cは、培地Aと比較して増殖速度をさらに低下させた。
【0166】
酸素正常状態および低酸素状態での培地AからCでの癌細胞の増殖
図11では、A549肺癌細胞株およびRCC4腎癌細胞株ならびに初代腎癌(RCC)細胞について、正常酸素状態および低酸素状態で培地AからC中で3日間培養した後の細胞の量が示されている。ここでも、酸素正常状態での増殖速度は、培地Aと比較して培地BおよびCで低下した。5%Oで培養した細胞でも同じパターンが見られた。繰り返しになるが、RCC4では、低栄養レベルと培地CへのBOHBの添加は、培地Bの条件と比較して有意な追加効果をもたらさなかった。
【0167】
A549の場合、培地Bと培地Cの間で小さいながらも有意な成長率の低下が見られたが、それは正常酸素状態でのみであった。
【0168】
3人の患者からの初代腎癌細胞がこの検討に含まれていた。形成された細胞株と同様に、これらの細胞は、培地Aと比較して培地BおよびCでの増殖率の低下を示した。
【0169】
全体として、酸素圧を21%(酸素正常状態)から5%O(低酸素状態)に変更しても、これらの細胞の増殖速度に対する影響は非常に限定的であった。
【0170】
次に、検討にAcacも含め、およびBOHBとAcac単独の存在中で、または培地AからCの組み合わせで、培養した細胞の生存率を分析することにした。実験は、21%および5%Oで実行された。実験は、神経膠腫細胞株A172およびU118MGで行われた。
【0171】
BOHBはキラル分子であるため、D-BOHBとL-BOHBの2つのエナンチオマーが存在する。D-BOHBは、通常、ヒトで生成および代謝される。この検討で使用されたBOHB塩には、D-BOHBとL-BOHBが50:50の混合物で含まれている。活性型D型の高い存在を確実にするために、添加するBOHBの総濃度を16mMに増やし、8mMのD-BOHBのレベルを与えた。活性ケトンの総濃度を一定に保つために、8mMのAcacを使用し、かつ両方のケトンの組み合わせについて、レベルを4mMのAcacおよび8mMのBOHB(4mMのD-BOHBを含む)に調整した。
【0172】
インビトロでの使用に利用できるAcacは、リチウム塩の形をしている。リチウム自体が癌細胞の生存率に影響を与える可能性があるため[Cohen-Harazi et al.,Anticancer Res 2020;40:3831-3837]、8mMのLiClを8mMのAcacデータポイントのコントロールとして使用し、4mMのLiClを4mMのAcac/8mMのBOHBデータのコントロールとして使用した。
【0173】
実験の最後に、各ウェルからの培養培地を集めてかつ凍結し、代謝状態の測定として乳酸レベルを後で測定できるようにした。さらに、CyQuant増殖アッセイを使用して細胞数を後で定量化するために、1セットのプレートを凍結し、および他方の1セットの細胞の量をCellTiterGlo生存率アッセイで分析する二重実験を行った。
【0174】
BOHBとAcacの単独または併用添加による効果
図12および13に示すように、最初の実験では、A172およびU118MG神経膠腫細胞株の増殖に対する、栄養素が減少した条件での高ケトン濃度の影響に関する有望なデータが得られた。
【0175】
培地Aでは、酸素正常状態と低酸素状態の両方で、16mMのBOHB単独の添加はA172またはU118MG細胞で増殖阻害効果を示さず、および8mMのAcacは8mMのLiClコントロールと比較して細胞数をさらに減少させなかった。
【0176】
しかしながら、8mMのBOHBと組み合わせた4mMのAcacの添加は、4mMのLiClコントロールと比較して、酸素正常状態での培地A中のA172細胞の数を有意に減少させた。
【0177】
培地Bからの結果の解釈は、正常酸素圧コントロールサンプルの技術的なエラーによって妨げられた。しかし、低酸素A172細胞では、BOHBは細胞数を、BOHBを含まない培地Bの量の約70%に大幅に減少させた。同様の減少は、低酸素U118MG細胞でも見られた。
【0178】
さらに、培地Bでは、8mMのAcacは、両方の細胞株で8mMのLiClコントロールと比較して細胞数を大幅に減少させましたが、21%Oでのみであった。
【0179】
培地Cでは、8mMのAcac単独の添加をしても、8mMのLiClコントロールと比較して細胞の量は有意に減少しなかった。しかし、両方の細胞株と21%および5%Oの両方で、16mMのBOHBの添加により、BOHBを含まないC培地と比較して、細胞数が約30%に大幅に減少した。
【0180】
また、BOHBとAcacの組み合わせでは、4mMのLiClコントロールと比較して、両方の細胞株と両方の酸素レベルで、培地Cの細胞数が大幅に減少した。
【0181】
これらの結果は、高レベルのBOHBまたはAcacを単独で添加しても、培地A等の栄養豊富な環境で神経膠腫細胞の増殖を阻害しないことを示唆している。また、培地Bにおいて、より多くの生理学的栄養素レベルでは、ケトンが追加されたときにわずかな違いしか見られなかった。最大の効果は培地Cで見られ、16mMのBOHB単独と8mMのBOHBと4mMのAcacの組み合わせの両方が、低酸素状態と酸素正常状態の両方で、それぞれのコントロールと比較して細胞数を大幅に減少させた。これは、8mMのAcacを単独で添加した場合には見られなかった。
【0182】
しかし、正常酸素圧条件で培地BおよびCに焦点を当ててこれらの実験を繰り返したところ、一貫性のない結果が得られました。図14から16は、神経膠腫細胞系A172およびU118MGならびに腎癌細胞株RCC4についての実験2から6からの総合結果を示す。特にA172細胞株では、BOHBまたはAcacを別々に添加した場合、培地Cで増殖が減少する傾向が見られた。
【0183】
実施例2の第1部および第2部からの結果は、癌細胞株が栄養制限環境においてよりゆっくりと増殖することを示した。試験した細胞株は、増殖率は低下したが、培地BおよびCで生存しているように見えた。3日目の細胞の光学検査では、浮遊細胞は見られず、これは、死んだ細胞の兆候である可能性がある。
【0184】
検討の第3部のデータは、栄養制限培地C中の高レベルのBOHBまたはBOHBとAcacの組み合わせに対する神経膠腫細胞株の感受性の増加を示している。しかし、そのような感受性は腎癌細胞株RCC4では見られなかった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c
図6d
図6e
図6f
図6g
図6h
図6i
図6j
図6j2
図7a
図7b
図7c
図7d
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2022-12-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌に罹患している対象を治療するための体外血液治療システム(50)であって、前記システムが:
体外血液回路(52a、52b);
透析液流体回路(54a、54b);
濾過ユニット(58)の膜(59)によって分割された前記体外血液回路(52a、52b)および透析液流体回路(54a、54b);
前記血液回路(52a、52b)を通る血液の流れを制御するための少なくとも1つの血液ポンプ(60);
前記透析液流体回路(54a、54b)を通る透析液流体の流れを制御するための少なくとも1つの透析液流体ポンプ(62、68);
オプションとして、1つまたは複数の注入ライン(66、80、81、82)であって、各注入ラインが前記体外血液回路(52a、52b)に接続されるか、または治療される前記対象の血管系に直接接続されるように適合され、各注入ラインが注入ポンプを含む、1つまたは複数の注入ライン(66、80、81、82);
前記血液ポンプ(60)および前記透析液流体ポンプ(62、68)に動作可能に接続され、オプションとして前記1つまたは複数の注入ライン(66、80、81、82)の前記1つまたは複数の注入ポンプに動作可能に接続されたシステムコンピューティングユニット(64)であって、入力手段および表示手段を含むユーザインタフェースを含む前記システムコンピューティングユニット;
を含み、
前記システムコンピューティングユニット(64)は、0.1から0.5mMの範囲内のグルタミンの所望の血中濃度値GLNを受信する(901)ように適合され;
前記システムコンピューティングユニット(64)は、2から4mMの範囲内のグルコースの所望の血中濃度値GLUCOSEを受信する(903)ように適合され;
前記システムコンピューティングユニット(64)は、1から15mMの範囲内のアセトアセテート、β-ヒドロキシブチレート、または薬学的に許容されるそれらの誘導体、エステル、および塩等のケトン体の所望の血中濃度値KETONEを受信する(905)ように適合され;
前記システムコンピューティングユニット(64)は、新しい透析液流体中のグルタミンまたは薬学的に許容されるグルタミン含有化合物の濃度を表す濃度値GLNを受信する(902)ように適合され;
前記システムコンピューティングユニット(64)は、新しい透析液流体中のグルコースの濃度を表す濃度値GLUCOSEを受信する(904)ように適合され;
オプションとして、前記システムコンピューティングユニット(64)は、新しい透析液流体中のアセトアセテート、β-ヒドロキシブチレート、または薬学的に許容されるそれらの誘導体、エステルおよび塩等のケトン体の濃度を表す濃度値KETONEを受信する(907)ように適合され;
オプションとして、前記システムコンピューティングユニット(64)は、前記1つまたは複数の注入ライン(66、80、81、82)のうちの1つを介して、前記体外血液ライン(52b)内に注入されるか、または治療される前記対象の前記血管系に直接注入される、注入流体中のアセトアセテート、β-ヒドロキシブチレートまたは薬学的に許容されるそれらの誘導体、エステルおよび塩等のケトン体の濃度を表す濃度値KETONEを受信する(906)ように適合され;
前記システムコンピューティングユニット(64)は、前記治療された対象から血液中のグルタミンの実際の濃度値GLNを受信し(909)、および前記治療された対象から血液中のグルコースの実際の血液濃度値GLUCOSEを受信し(910)、およびアセトアセテート、および/またはβ-ヒドロキシブチレート等のケトン体の実際の濃度値KETONEを受信(911)するよう適合され、
前記システムコンピューティングユニット(64)は、グルタミンの前記実際の血中濃度値GLNがGLN以下にされ(912)、かつグルコースの前記実際の血中濃度値GLUCOSEがGLUCOSE以下にされる(914)ように、前記血液ポンプ(60)および前記透析液流体ポンプ(62、68)を制御するように適合され;
および
前記システム(50)が前記注入ライン(66、80、81、82)の1つまたは複数を備える場合、および前記注入ライン(66、80、81、82)の1つが前記注入液を前記体外血管ライン(52b)内に注入するか、または治療される前記対象の前記血管系内に直接注入するように適合される場合、前記システムコンピューティングユニット(64)は、前記実際の血液濃度値KETONEがKETONEになるように、前記注入ラインの前記注入ポンプを制御する(920)ように適合されている;
または、代替的に、
前記システム(50)がそのような注入ライン(66、80、81、82)を備えていない場合、前記システムコンピューティングユニット(64)は、KETONEとKETONEとを比較し、かつKETONE<KETONEである場合、前記治療された対象がさらなる量のケトン体または中鎖トリグリセリドを消費する必要があることを知らせる前記ディスプレイ上にメッセージを表示する、体外血液治療システム。
【請求項2】
前記システム(50)は、1つまたは複数の前記注入ライン(66、80、81、82)を備え、前記システムコンピューティングユニット(64)は、前記1つまたは複数の注入ライン(66、80、81、82)のうちの1つを介して、前記体外血液ライン(52b)に注入されるか、または治療される前記対象の前記血管系に直接注入される、注入液中のアセトアセテート、β-ヒドロキシブチレート、または薬学的に許容されるそれらの誘導体、エステルおよび塩等のケトン体の濃度を表す、濃度値KETONEを受信する(906)ように適合され、および
前記システムコンピューティングユニット(64)は、前記実際の血中濃度値KETONEがKETONEになる(920)ように、前記注入ラインの前記注入ポンプを制御するように適合される、請求項1に記載の体外血液治療システム(50)。
【請求項3】
前記システムコンピューティングユニット(64)は、GLNを監視し、前記1つまたは複数の注入ライン(66、80、81、82)のうちの1つにおいて関連する注入ポンプを始動することによって、GLNがGLNよりも低い場合、グルタミンまたは薬学的に許容されるグルタミン含有化合物を含む組成物の注入を開始し(916)、GLNがGLNに等しくなるまで前記注入を維持するよう適合される、請求項2に記載の体外血液治療システム(50)。
【請求項4】
前記システムコンピューティングユニット(64)は、GLOCOSEを監視し、前記1つまたは複数の注入ライン(66、80、81、82)のうちの1つにおいて関連する注入ポンプを始動することによって、GLOCOSEがGLOCOSEよりも低い場合、グルコースを含む組成物の注入を開始し(918)、GLOCOSEがGLOCOSEに等しくなるまで前記注入を維持するよう適合される、請求項2または3に記載の体外血液治療システム(50)。
【請求項5】
前記濾過膜は、60kDa未満の分子量カットオフ(MWCO)を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記濾過膜は、約50kDa未満、または約40kDa未満(30kDa未満、10kDa未満、5kDa未満、または2kDa未満等)のMWCOを有する、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記血液回路は、使用中に前記血液ライン内の血液を加熱または冷却するための熱管理システムを備える、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記熱管理システムは、前記血液回路内の血液の温度を20℃から43℃の間の温度に調節するように制御可能である、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
グルコース、グルタミン、およびケトン体の群から選択される検体を検出するための1つ以上のセンサ(S、90、91、92、93)をさらに含み、前記センサ(S、90、91、92、93)は、好ましくは前記透析液流体回路の流出部分(54a)に配置され、前記センサは、前記システム処理ユニット(64)と通信して、血液中、または好ましくは使用済み透析液流体中の前記検体の濃度を示す出力を提供し、前記システム処理ユニット(64)は、前記センサ(S、90、91、92、93)の前記出力から検体の代表的な血液濃度を決定するように構成され、それによってGLN、GLUCOSE、およびKETONEの少なくとも1つを監視する、請求項1から8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の体外血液治療システム(50)で使用するための治療セットであって、前記セットは、
統合された血液ライン(52a、52b)および統合された透析液流体ライン(54a、54b)を分割する膜(59)を有する濾過ユニット(58)を含み、前記血液ライン(52a、52b)および/または前記透析液流体ライン(54a、54b)は、GLN、GLUCOSE、およびKETONEの少なくとも1つを監視するためのセンサ(S、90、91、92、93)を含む、治療セット。
【請求項11】
癌に罹患している対象を治療するための体外血液治療システム(50)を制御するように適合されたシステムコンピューティングユニット(64)であって、前記システムコンピューティングユニットは、
少なくとも1つの血液ポンプ(60)、少なくとも1つの透析液流体ポンプ(62、68)、およびオプションとして、1つまたは複数の注入ライン(66、80、81、82)のそれぞれの流れを制御するための1つまたは複数の注入ポンプに動作可能に接続されるように適合された複数の出力手段;
入力手段と表示手段とを含むユーザインタフェース;および
記憶手段および計算手段;を備え、
前記システムコンピューティングユニット(64)は、グルタミンの所望の血中濃度値GLNを受信する(901)ように適合され;
前記システムコンピューティングユニット(64)は、グルコースの所望の血中濃度値GLUCOSEを受信する(903)ように適合され;
前記システムコンピューティングユニット(64)は、ケトン体の所望の血液濃度値KETONEを受信する(905)ように適合され;
前記システムコンピューティングユニット(64)は、グルタミンの透析液濃度値GLNを受信する(902)ように適合され;
前記システムコンピューティングユニット(64)は、グルコースの透析液濃度値GLUCOSEを受信する(904)ように適合され;
オプションとして、前記システムコンピューティングユニット(64)は、新しい透析液中のアセトアセテート、β-ヒドロキシブチレート、または薬学的に許容されるそれらの誘導体、エステルおよび塩等のケトン体の濃度を表す濃度値KETONEを受信する(907)ように適合され;
オプションとして、前記システムコンピューティングユニット(64)は、ケトン体の注入液濃度値KETONEを受信する(906)ように適合され;
前記システムコンピューティングユニット(64)は、グルタミンの実際の血中濃度値GLNを受信する(909)ように適合され;
前記システムコンピューティングユニット(64)は、グルコースの実際の血中濃度値GLUCOSEを受信する(910)ように適合され;
前記システムコンピューティングユニット(64)は、β-ヒドロキシブチレート、および/またはアセトアセテート等のケトン体の実際の血中濃度値KETONEを受信する(911)ように適合され;
前記システムコンピューティングユニット(64)は、前記血液ポンプ(60)および前記透析液流体ポンプ(62、68)を制御して、グルタミンの前記実際の血中濃度値GLNがGLN以下にされ(912)、およびグルコースの前記実際の血中濃度値GLUCOSEがGlucose以下にされる(914)ように適合され;
および
注入ポンプが前記システムコンピューティングユニット(64)に動作可能に接続されている場合、前記システムコンピューティングユニット(64)は前記注入ポンプを制御して、前記実際の血中濃度値KETONEがKETONEになる(920)ように適合され、
および
注入ポンプが前記システムコンピューティングユニット(64)に動作可能に接続されていない場合、前記システムコンピューティングユニット(64)は、KETONEとKETONEとを比較し、かつKETONE<KETONEの場合、前記治療された対象がケトン体または中鎖トリグリセリドのさらなる量を消費する必要があることを知らせるメッセージを前記ディスプレイ上に表示するように適合される、システムコンピューティングユニット。
【請求項12】
析液流体であって、アセトアセテート、β-ヒドロキシブチレート、または薬学的に許容されるそれらの誘導体、エステルおよび塩等のケトン体を含み、癌の透析治療処理で使用するための透析液流体。
【請求項13】
a)グルタミンまたはグルタミン含有化合物、および
b)グルコース
の少なくとも1つをさらに含む、請求項12に記載の癌の透析治療処理で使用するための透析液流体。
【請求項14】
a)グルタミンまたはグルタミン含有化合物の濃度は、0から0.5mM、好ましくは0.05から0.3mMの量であり;
b)グルコースの濃度は0から6mM、好ましくは0.5から4mMの量であり;
c)ケトン体の濃度は1から15mM、好ましくは2から12mMの量である、請求項12に記載の癌の透析治療処理で使用するための透析液流体。
【国際調査報告】