IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イオタ バイオサイエンシズ, インコーポレイテッドの特許一覧

特表2023-528596内蔵神経刺激による癌の治療のための装置及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-05
(54)【発明の名称】内蔵神経刺激による癌の治療のための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/372 20060101AFI20230628BHJP
   A61N 1/05 20060101ALI20230628BHJP
   A61N 1/36 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
A61N1/372
A61N1/05
A61N1/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573403
(86)(22)【出願日】2021-06-04
(85)【翻訳文提出日】2023-01-27
(86)【国際出願番号】 US2021035923
(87)【国際公開番号】W WO2021248013
(87)【国際公開日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】63/034,604
(32)【優先日】2020-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520404344
【氏名又は名称】イオタ バイオサイエンシズ, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】IOTA BIOSCIENCES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ニーリー, ライアン
(72)【発明者】
【氏名】マハルビズ, ミシェル, エム.
(72)【発明者】
【氏名】カルメナ, ホセ, エム
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053BB12
4C053BB35
4C053BB36
4C053CC10
4C053JJ03
4C053JJ04
4C053JJ05
4C053JJ06
4C053JJ21
4C053KK01
4C053KK07
4C053KK08
(57)【要約】
被験者における癌を治療するか、又は癌の増殖又は再発を阻害するための方法、埋め込み型装置、及びシステムが、本明細書に記載される。
そのような方法は、内臓神経と電気的に連絡している1つ以上の電極から放出される複数の電気パルスで、被験者の胸部の内蔵神経(例えば、大内蔵神経)を電気的に刺激することを含むことができ、ここで複数の電気パルスは、被験者における循環ナチュラルキラー(NK)細胞を増加させるために内臓神経における1つ以上の活動電位を誘発する。
埋め込み型装置は、癌を有する被験者の胸部の内蔵神経と電気的に連絡するように構成された1つ以上の電極を含んでもよく、循環NK細胞を増加させる内臓神経における1つ以上の活動電位を誘発する複数の電気パルスで内臓神経を電気的に刺激するように1つ以上の電極を動作させるように構成されてよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者における癌を治療する方法であって、前記被験者の胸部の内臓神経を、前記内臓神経と電気的に連通している1つ以上の電極から放出される複数の電気パルスを用いて電気的に刺激することを含み、前記複数の電気パルスは、前記被験者における循環ナチュラルキラー(NK)細胞を増加させるために前記内臓神経における1つ以上の活動電位を誘発する、方法。
【請求項2】
被験者における癌の増殖又は再発を阻害する方法であって、前記被験者の胸部の内臓神経を、前記内臓神経と電気的に連通している1つ以上の電極から放出される複数の電気パルスを用いて電気的に刺激することを含み、前記複数の電気パルスは、前記被験者における循環ナチュラルキラー(NK)細胞を増加させるために前記内臓神経における1つ以上の活動電位を誘発する、方法。
【請求項3】
前記被験者は以前に癌切除手術を受けたことがある、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記胸部の内臓神経が、大内臓神経、小内臓神経、又は最小内臓神経である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記胸部の内臓神経が大内臓神経である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記電気パルスが約100μA~約30mAの電流を有する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記電流が前記複数の電気パルスにわたり一定である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の電気パルスにおける前記電気パルスは、約1Hz~約10kHzの周波数で放出される、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の電気パルスは複数の二相電気パルスを含む、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記二相電気パルスは、アノードパルス相、カソードパルス相、及び位相間遅延を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記二相電気パルスは、アノード相とそれに続くカソード相とを含む、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記電気パルスが約5μs~約50msの長さである、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記複数の電気パルスは2以上の電気パルスを含む複数のパルス列を含む、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記パルス列が約100ms~約15秒の休止期間によって分離される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記複数の電気パルスにおける前記電気パルスは持続的に放出される、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記内臓神経が、前記複数の電気パルスによって約1分~約60分の期間電気的に刺激される、請求項1乃至15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記内臓神経が、前記複数の電気パルスによって1日1回~1日4回電気的に刺激される、請求項1乃至16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記1つ以上の電極が、前記被験者内に完全に埋め込まれた埋め込み型装置により動作させられる、請求項1乃至17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記埋め込み型装置は、トリガ信号に基づいて1つ以上の電気パルスを放出するように前記1つ以上の電極を動作させる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記トリガ信号は前記埋め込み型装置によって生成される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記埋め込み型装置において、前記トリガ信号を無線で受信することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記トリガ信号が、前記埋め込み型装置が受信する超音波で符号化される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記トリガ信号が前記被験者内で検出された1つ以上の生理学的信号に基づく、請求項19乃至22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記埋め込み型装置が、前記1つ以上の生理学的信号を検出するように構成された1つ以上のセンサを備える、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記埋め込み型装置で超音波を受信することと、
前記1つ以上の生理学的信号に関連する情報を符号化する超音波後方散乱を前記埋め込み型装置から放出することと、
を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記埋め込み型装置で受信する前記超音波を外部装置から送信することと、
前記外部装置において、前記1つ以上の生理学的信号に関連する前記情報を符号化する前記超音波後方散乱を受信することと、
前記外部装置において前記トリガ信号を生成することと、
前記トリガ信号を符号化する超音波を前記外部装置から送信することと、
前記埋め込み型装置において、前記トリガ信号を符号化する前記超音波を受信することと、
を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記1つ以上の生理学的信号が電気生理学的信号を含む、請求項23乃至26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記電気生理学的信号が、前記内臓神経によって送信される電気生理学的信号を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記1つ以上の生理学的信号が、温度、圧力、歪み、pH、又は検体レベルを含む、請求項23乃至28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記1つ以上の生理学的信号が血行動態信号を含む、請求項23乃至29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記血行動態信号が、拡張期血圧、平均血圧、収縮期血圧、血液酸素化レベル、心拍数、又は血液潅流速度を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
埋め込み型装置が受信する超音波からのエネルギーを、前記埋め込み型装置に電力を供給する電気エネルギーに変換することを含む、請求項1乃至31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記癌が転移性癌である、請求項1乃至32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
NK細胞活性化剤を前記被験者に投与することをさらに含む、請求項1乃至33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記NK細胞活性化剤が、IL-2、IL-6、IL-15、若しくはIL-12、又はその生物活性断片を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記被験者に化学療法剤を投与することをさらに含む、請求項1乃至35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記被験者がヒトである、請求項1乃至36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
外部装置と、請求項1乃至37のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成された埋め込み型装置とを備える、システム。
【請求項39】
埋め込み型装置であって、癌を有する被験者の胸部の内臓神経と電気的に連絡するように構成された1つ以上の電極を備え、前記装置は、前記被験者における循環ナチュラルキラー(NK)細胞を増加させる前記内臓神経における1つ以上の活動電位を誘発する複数の電気パルスを用いて前記内臓神経を電気的に刺激するよう前記1つ以上の電極を動作させるように構成されている、埋め込み型装置。
【請求項40】
前記内臓神経を少なくとも部分的に包み、前記内臓神経と電気的に連通している前記1つ以上の電極のうちの少なくとも1つを配置するように構成された基板を備える、請求項39に記載の装置。
【請求項41】
前記胸部の内臓神経が、大内臓神経、小内臓神経、又は最小内臓神経である、請求項39又は40に記載の装置。
【請求項42】
前記胸部の内臓神経が大内臓神経である、請求項39又は40に記載の装置。
【請求項43】
前記電気パルスが約100μA~約30mAの電流を有する、請求項39乃至42のいずれか一項に記載の装置。
【請求項44】
前記電流が前記複数の電気パルスにわたり一定である、請求項43に記載の装置。
【請求項45】
前記複数の電気パルスにおける前記電気パルスは、約1Hz~約10kHzの周波数で放出される、請求項39乃至44のいずれか一項に記載の装置。
【請求項46】
前記複数の電気パルスは複数の二相電気パルスを含む、請求項39乃至45のいずれか一項に記載の装置。
【請求項47】
前記二相電気パルスは、アノードパルス相、カソードパルス相、及び位相間遅延を含む、請求項46に記載の装置。
【請求項48】
前記二相電気パルスは、アノード相とそれに続くカソード相とを含む、請求項46又は47に記載の装置。
【請求項49】
前記電気パルスが約5μs~約5msの長さである、請求項39乃至48のいずれか一項に記載の装置。
【請求項50】
前記複数の電気パルスは2つ以上の電気パルスを含む複数のパルス列を含む、請求項39乃至49のいずれか一項に記載の装置。
【請求項51】
前記パルス列が約100ms~約15秒の休止期間によって分離される、請求項50に記載の装置。
【請求項52】
前記複数の電気パルスにおける前記電気パルス群は持続的に放出される、請求項39乃至49のいずれか一項に記載の装置。
【請求項53】
1つ以上の生理学的信号を検出するように構成された1つ以上のセンサをさらに備える、請求項39乃至52のいずれか一項に記載の装置。
【請求項54】
基板に取り付けられた無線通信システムを備える本体をさらに備える、請求項39乃至52のいずれか一項に記載の装置。
【請求項55】
前記装置が1つ以上の生理学的信号を検出するように構成された1つ以上のセンサを備え、前記無線通信システムが前記1つ以上の生理学的信号を第2の装置に無線で通信するように構成される、請求項54に記載の装置。
【請求項56】
前記本体は、前記基板の外面上に配置される、請求項54又は55に記載の装置。
【請求項57】
前記無線通信システムが無線周波数(RF)アンテナを備える、請求項54乃至56のいずれか一項に記載の装置。
【請求項58】
前記無線通信システムが超音波変換器を備える、請求項54乃至57のいずれか一項に記載の装置。
【請求項59】
前記超音波変換器は超音波を受信し、前記超音波からのエネルギーを前記装置に電力を供給する電気エネルギーに変換するように構成される、請求項58に記載の装置。
【請求項60】
前記装置が1つ以上の生理学的信号を検出するように構成されたセンサを備え、前記超音波変換器が、超音波を受信し、前記1つ以上の生理学的信号を符号化する超音波後方散乱を放出するように構成される、請求項58又は59に記載の装置。
【請求項61】
トリガ信号に応答して前記内臓神経を電気的に刺激するよう前記1つ以上の電極を動作させるように構成された集積回路をさらに備える、請求項39乃至60のいずれか一項に記載の装置。
【請求項62】
1つ以上の生理学的信号を検出するように構成された1つ以上のセンサを備え、前記集積回路は、前記1つ以上の生理学的信号を使用して前記トリガ信号を生成するように構成される、請求項61に記載の装置。
【請求項63】
無線通信システムを備え、前記無線通信システムは前記トリガ信号を受信するように構成される、請求項62に記載の装置。
【請求項64】
1つ以上の生理学的信号が電気生理学的信号を含む、請求項53乃至63のいずれか一項に記載の装置。
【請求項65】
前記電気生理学的信号が、前記内臓神経によって送られる電気生理学的信号を含む、請求項64に記載の装置。
【請求項66】
1つ以上の生理学的信号が温度、圧力、歪み、pH、又は検体レベルを含む、請求項53乃至65のいずれか一項に記載の装置。
【請求項67】
1つ以上の生理学的信号が血行動態信号を含む、請求項53乃至66のいずれか一項に記載の装置。
【請求項68】
前記血行動態信号が、拡張期血圧、平均血圧、収縮期血圧、血液酸素化レベル、心拍数、又は血液潅流速度を含む、請求項67に記載の装置。
【請求項69】
前記埋め込まれた装置が、約5mm以下の体積を有する、請求項39乃至68のいずれか一項に記載の装置。
【請求項70】
請求項39乃至69のいずれか一項に記載の装置と、前記装置と無線で通信するように、又は前記装置に電力を供給するように構成された無線通信システムを備えるインテロゲータとを備える、システム。
【請求項71】
請求項34乃至37のいずれか一項に記載の、被験者における癌を治療する方法において使用するための、又は被験者における癌の増殖又は再発を阻害する方法において使用するための、ナチュラルキラー(NK)細胞活性化剤又は化学療法剤を含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書には、被験者の胸部の内臓神経を電気的に刺激することによって、被験者における癌を治療する、又は被験者における癌の増殖若しくは再発を予防するための方法及び装置が記載される。
【0002】
[優先権]
本出願は、2020年6月4日に出願された米国特許出願第63/034,604号に対する優先権を主張し、その全体の参照によりその開示が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
ナチュラルキラー(NK)細胞は、事前の抗原提示なしに体内の癌細胞を認識し破壊することができる自然免疫系の要素である。運動訓練など、NK活性又は数を増加させることが知られている介入は、癌の発生及び再発を低減するのに有効であることが示されている。逆に、手術侵襲など、NK細胞の活性を低下させることが知られている介入は、腫瘍増殖及び転移のリスクを増加させ、同様に患者の予後を悪化させることが知られている。腫瘍切除は癌の一般的な治療であるため、手術侵襲はとりわけ問題となる。さらに、手術中に、腫瘍の破壊は癌細胞を血流中に放出し、これは、転移のリスクを増加させ、患者が癌転移のリスクがありかつ癌の破壊において通常役割を果たすナチュラルキラー細胞の活性の低下を経験している、患者にとっての「二重の危険」を作り出す。
【0004】
NK細胞は、それらの活性に影響を及ぼすいくつかの受容体を発現する。そのような受容体の1つはβ2-アドレナリン受容体(β2-AR)であり、これは他のリンパ球と比較してNK細胞の膜において高度に濃縮されている。β2-ARは、エピネフリンと高い親和性で結合し、より少ない程度でノルエピネフリンと結合する。NK細胞上のβ2-ARの活性化は、内皮細胞へのそれらの接着を減少させ、循環中のNK細胞の数の増加をもたらす。さらに、エピネフリンによるβ2-ARの活性化はまた、腫瘍細胞に対するそれらの細胞傷害活性を増加させることによってNK細胞の活性を変化させることができる。この経路は、運動中のヒト被験者におけるβ2-ARの遮断が細胞傷害活性と循環NK細胞の増加との両方を低下させるため、身体運動の抗癌恩恵の少なくとも一部を占める可能性が高い。
【発明の概要】
【0005】
[発明の簡単な概要]
本明細書にさらに記載されるように、被験者における癌は内臓神経と電気的に連絡している1つ以上の電極から放出される複数の電気パルスで被験者の胸部の内蔵神経(例えば、大内蔵神経)を電気的に刺激することによって治療することができる。複数の電気パルスは内臓神経における1つ以上の活動電位を誘発することができ、これは、癌細胞を標的化し死滅させるのに有効である、被験者における循環ナチュラルキラー(NK)細胞の個数の増加をもたらす。
【0006】
被験者における癌を治療する例示的な方法において、この方法は、被験者の胸部の内臓神経を、内臓神経と電気的に連通している1つ以上の電極から放出される複数の電気パルスを用いて電気的に刺激することを含み、複数の電気パルスは、被験者における循環ナチュラルキラー(NK)細胞を増加させるために内臓神経における1つ以上の活動電位を誘発する。
【0007】
被験者における癌の増殖又は再発を阻害する例示的な方法において、この方法は、被験者の胸部の内臓神経を、内臓神経と電気的に連通している1つ以上の電極から放出される複数の電気パルスを用いて電気的に刺激することを含み、複数の電気パルスは、被験者における循環ナチュラルキラー(NK)細胞を増加させるために内臓神経における1つ以上の活動電位を誘発する。
【0008】
上記の方法のいくつかの実施形態では、被験者が癌切除手術を以前に受けたことがある。
【0009】
いくつかの実施形態では、胸部の内蔵神経が大内臓神経、小内臓神経、又は最小内臓神経である。いくつかの実施形態において、胸部の内蔵神経は、大内臓神経である。
【0010】
上記の方法のいくつかの実施形態では、電気パルスが約100μA~約30mAの電流を有する。いくつかの実施形態では、電流が複数の電気パルスにわたり一定である。いくつかの実施形態では、複数の電気パルス内の電気パルスが約1Hz~約10kHzの周波数で放出される。いくつかの実施形態では、複数の電気パルスが複数の二相電気パルスを含む。いくつかの実施形態では、二相電気パルスがアノードパルス相、カソードパルス相、及び位相間遅延を含む。いくつかの実施形態では、二相電気パルスがアノード相と、それに続くカソード相とを含む。いくつかの実施形態では、電気パルスが約5μs~約50msの長さである。いくつかの実施形態では、複数の電気パルスが2つ以上の電気パルスを含む複数のパルス列を含む。いくつかの実施形態では、パルス列が約100ms~約15秒の休止期間によって分離される。いくつかの実施形態では、複数の電気パルス内の電気パルスが持続的に放出される。いくつかの実施形態では、内臓神経が、複数の電気パルスによって約1分~約60分の期間電気的に刺激される。いくつかの実施形態では、内臓神経が、複数の電気パルスによって1日1回~1日4回電気的に刺激される。
【0011】
上記の方法のいくつかの実施形態では、1つ以上の電極が被験者内に完全に埋め込まれた埋め込み型装置によって動作させられる。いくつかの実施形態では、埋め込み型装置は、トリガ信号に基づいて1つ以上の電気パルスを放出するように1つ以上の電極を動作させる。いくつかの実施形態では、トリガ信号が埋め込み型装置によって生成される。いくつかの実施形態では、この方法が、埋め込み型装置において、トリガ信号を無線で受信することを含む。いくつかの実施形態では、トリガ信号が、埋め込み型装置によって受信される超音波において符号化される。
【0012】
いくつかの実施形態では、トリガ信号が被験者内で検出された1つ以上の生理学的信号に基づく。いくつかの実施形態では、埋め込み型装置が、1つ以上の生理学的信号を検出するように構成された1つ以上のセンサを備える。いくつかの実施形態では、この方法が、埋め込み型装置で超音波を受信することと、1つ以上の生理学的信号に関連する情報を符号化する超音波後方散乱を埋め込み型装置から放出することと、を含む。いくつかの実施形態では、この方法が、埋め込み型装置で受信する超音波を外部装置から送信することと、外部装置において、1つ以上の生理学的信号に関連する情報を符号化する超音波後方散乱を受信することと、外部装置においてトリガ信号を生成することと、トリガ信号を符号化する超音波を外部装置から送信することと、埋め込み型装置において、トリガ信号を符号化する超音波を受信することと、を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の生理学的信号が電気生理学的信号を含む。いくつかの実施形態では、電気生理学的信号が、内臓神経によって送られる電気生理学的信号を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の生理学的信号が温度、圧力、歪み、pH、又は検体レベルを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の生理学的信号が血行動態信号を含む。いくつかの実施形態では、血行動態信号が、拡張期血圧、平均血圧、収縮期血圧、血中酸素化レベル、心拍数、又は血液潅流速度を含む。
【0013】
上記の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、この方法が、埋め込み型装置が受信する超音波からのエネルギーを、埋め込み型装置に電力を供給する電気エネルギーに変換することを含む。
【0014】
上記の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、癌は転移性癌である。
【0015】
上記の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、この方法は、被験者にNK細胞活性化剤を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、NK細胞活性化剤がIL-2、IL-6、IL-15、若しくはIL-12、又はその生物活性断片を含む。
【0016】
上記の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、この方法は、被験者に化学療法剤を投与することを含む。いくつかの実施形態では、被験者はヒトである。
【0017】
本明細書では、外部装置と、上記の方法のいずれかを実行するように構成された埋め込み型装置とを備えるシステムがさらに説明される。
【0018】
また、本明細書には、埋め込み型装置であって、癌を有する被験者の胸部の内臓神経と電気的に連絡するように構成された1つ以上の電極を備え、装置は、被験者における循環ナチュラルキラー(NK)細胞を増加させる内臓神経における1つ以上の活動電位を誘発する複数の電気パルスを用いて内臓神経を電気的に刺激するよう1つ以上の電極を動作させるように構成されている、埋め込み型装置が記載されている。いくつかの実施形態では、胸部の内蔵神経が大内臓神経、小内臓神経、又は最小内臓神経である。いくつかの実施形態において、胸部の内蔵神経は、大内臓神経である。いくつかの実施形態では、この装置は、内臓神経を少なくとも部分的に包み、内臓神経と電気的に連通している1つ以上の電極のうちの少なくとも1つを配置するように構成された基板を備える。
【0019】
上記の装置のいくつかの実施形態では、電気パルスが約100μA~約30mAの電流を有する。いくつかの実施形態では、電流が複数の電気パルスにわたり一定である。いくつかの実施形態では、複数の電気パルス内の電気パルスが約1Hz~約10kHzの周波数で放出される。いくつかの実施形態では、複数の電気パルスが複数の二相電気パルスを含む。いくつかの実施形態では、二相電気パルスがアノードパルス相、カソードパルス相、及び位相間遅延を含む。いくつかの実施形態では、二相電気パルスがアノード相と、それに続くカソード相とを含む。いくつかの実施形態では、電気パルスが約5μs~約5msの長さである。いくつかの実施形態では、複数の電気パルスが2つ以上の電気パルスを含む複数のパルス列を含む。いくつかの実施形態では、パルス列が約100ms~約15秒の休止期間によって分離される。いくつかの実施形態では、複数の電気パルス内の電気パルスが持続的に放出される。
【0020】
上記の装置のいくつかの実施形態では、この装置が、1つ以上の生理学的信号を検出するように構成された1つ以上のセンサをさらに備える。
【0021】
上記の装置のいくつかの実施形態では、この装置が、基板に取り付けられた無線通信システムを備える本体をさらに備える。いくつかの実施形態では、装置が、1つ以上の生理学的信号を検出するように構成されたセンサを備え、無線通信システムが1つ以上の生理学的信号を第2の装置に無線で通信するように構成される。いくつかの実施形態では、本体が基板の外面上に配置される。いくつかの実施形態では、無線通信システムが無線周波数(RF)アンテナを備える。いくつかの実施形態では、無線通信システムが超音波変換器を備える。いくつかの実施形態では、超音波変換器が、超音波を受信し、その超音波からのエネルギーを装置に電力を供給する電気エネルギーに変換するように構成される。いくつかの実施形態では、装置が、1つ以上の生理学的信号を検出するように構成された1つ以上のセンサを備え、超音波変換器が、超音波を受信し、1つ以上の生理学的信号を符号化する超音波後方散乱を放出するように構成される。
【0022】
上記の装置のいくつかの実施形態では、この装置が、トリガ信号に応答して内臓神経を電気的に刺激するよう1つ以上の電極を動作させるように構成された集積回路をさらに備える。いくつかの実施形態では、この装置が、1つ以上の生理学的信号を検出するように構成された1つ以上のセンサを備え、集積回路は、1つ以上の生理学的信号を使用してトリガ信号を生成するように構成される。いくつかの実施形態では、この装置が無線通信システムを備え、無線通信システムはトリガ信号を受信するように構成される。
【0023】
上記の装置のいくつかの実施形態では、1つ以上の生理学的信号が電気生理学的信号を含む。いくつかの実施形態では、電気生理学的信号が、内臓神経によって送られる電気生理学的信号を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の生理学的信号が温度、圧力、歪み、pH、又は検体レベルを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の生理学的信号が血行動態信号を含む。いくつかの実施形態では、血行動態信号が、拡張期血圧、平均血圧、収縮期血圧、血中酸素化レベル、心拍数、又は血液潅流速度を含む。
【0024】
上記の装置のいくつかの実施形態では、埋め込まれた装置が約5mm以下の体積を有する。
【0025】
また、本明細書では、上記の装置のいずれかと、装置と無線で通信するか、又は装置に電力を供給するように構成された無線通信システムを備えるインテロゲータとを備えるシステムについて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】埋め込み可能な装置本体のための例示的な基板組立体を示す図であり、これは、ハウジング内に封入され、(神経カフなど)基板に取り付けられ得る。
【0027】
図2】2つの直交して配置された超音波変換器を含む装置の本体のための基板組立体を示す図。
【0028】
図3】留め具を使用して神経カフに取り付けられた例示的な本体ハウジングを示す図。
【0029】
図4】ハウジングの上部に取り付けることができる音響窓と、ハウジングに音響伝導性材料を充填するために使用され得るポートとを有する例示的なハウジングを示す図。
【0030】
図5A】ハウジングの基部にフィードスルーポートを有する例示的なハウジングを示す図。
図5B】ハウジングに取り付けられたフィードスルーを有するハウジングを示す図。このフィードスルーはフィードスルーポートを通って嵌合し、気密シールを形成するために、ハウジングにろう付けされるか、はんだ付けされるか、又は他の方法で取り付けられる。
図5C】神経カフに取り付けられたハウジングを有する装置の断面図を示す図。このハウジングに取り付けられたフィードスルーは、神経カフ上の電極を、ハウジング内に収容された基板組立体に電気的に接続する。
【0031】
図6A】屈曲構成の例示的な螺旋状神経カフを示す図であり、この螺旋状部分は部分的に解かれている。
図6B】螺旋状部分が屈曲構成から反跳した後に巻かれている、図6Bの螺旋状神経カフを弛緩構成で示す図。
【0032】
図7A】任意で本明細書に記載される埋め込み可能な装置の一部となり得る、例示的な螺旋状神経カフを示す図である。
図7B図7Aに示される神経カフを異なる角度から示す図。
図7C図7A及び図7Bに示される神経カフと同様の例示的な螺旋状神経カフを示すが、基板の第1の端部に近接する螺旋状基板に取り付けられた第1のハンドル部と、基板の第2の端部に近接する螺旋状基板に取り付けられた第2のハンドル部とをさらに含む図。
図7D】、及び
図7E】ハウジングを有する本体に取り付けられた図7A及び図7Bの螺旋状神経カフを示す図。
図7F】ハウジングを有する本体に取り付けられた図7Cの螺旋状神経カフを示す図。
【0033】
図8A】、及び
図8B】それぞれ、螺旋状神経カフの別の実施形態の正面視点及び裏面視点を示す図。
図8C】ハウジングを有する本体に取り付けられた図8A及び図8Bの螺旋状神経カフを示す図。
【0034】
図9A】、及び
図9B】それぞれ、螺旋状神経カフの別の実施形態の正面視点及び底面視点を示す図。
図9C】ハウジングを有する本体に取り付けられた図9A及び図9Bの螺旋状神経カフを示す図。
【0035】
図10A】、及び
図10B】それぞれ、螺旋状神経カフの別の実施形態の下面視点及び上面視点を示す図。
【0036】
図11A】、及び
図11B】それぞれ、螺旋状神経カフの別の実施形態の下面視点及び上面視点を示す図。
【0037】
図12】埋め込み可能な装置と共に使用することができる例示的なインテロゲータを示す図。
【0038】
図13】埋め込み型装置と通信するインテロゲータを示す。このインテロゲータは、トリガ信号を符号化することができる超音波を送信することができる。この埋め込み可能な装置は、情報を符号化するため、埋め込み可能な装置によって変調され得る超音波後方散乱を放出する。
【0039】
図14】大内臓神経刺激の前、最中、及び後の血漿エピネフリン濃度を示す図。偽刺激は、同じ外科的処置を受けたが刺激されなかった動物を示す。エラーバーは標準エラーを示す。このプロットは、大内蔵神経刺激がエピネフリンの放出を引き起こすことを示す。
【0040】
図15】偽刺激(コントロール)動物と比較した、各大内臓神経刺激試験動物についての総リンパ球のパーセントとして測定された、末梢血中のNK細胞の個数の時間経過を示す図であり、これは、大内臓神経刺激が循環NK細胞の個数の増加を引き起こすことを示す。個々の点それぞれは、示された時点での単一の動物からの血液サンプルを表す。
【0041】
図16】マッチしたコントロール(「偽」)動物において検出されたYAC-1細胞の個数に関して正規化された、屠殺された試験(「stim」)の肺組織において検出されたYAC-1細胞の個数の変化倍率を示す図である(コントロール動物は自己正規化されている)。
【0042】
図17】大内蔵神経刺激期間の前後の試験動物(大内蔵刺激)及びコントロール動物(偽刺激)における血漿エピネフリンレベルを示す図であり、これは、刺激がエピネフリンの放出を引き起こすことを示す。
【0043】
図18】刺激前の値に対して正規化された、大内蔵神経刺激期間の前後の末梢血中のNK細胞の個数を示す図であり、これは、大内蔵神経刺激が循環NK細胞の個数の増加を引き起こすことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
胸部の内臓神経(例えば、大内臓神経、小内臓神経、又は最小内臓神経)を電気的に刺激することによる、癌を治療するため、又は(例えば、癌切除手術後に)癌の増殖又は再発を阻害するための方法が本明細書に記載される。本方法は、内臓神経と電気的に連絡している1つ以上の電極を使用することによって、被験者におけるナチュラルキラー細胞(NK)循環を増加させることを含み、これは複数の電気パルスを放出して内臓神経を電気的に刺激する。また、そのような方法を実行するための装置及びシステムも記載される。例えば、被験者の内臓神経と電気的に連絡するように構成された1つ以上の電極を含む埋め込み型装置が、本明細書に記載される。この装置は、被験者における循環ナチュラルキラー(NK)細胞を増加させる複数の電気パルスを用いて内臓神経を電気的に刺激するように構成される。
【0045】
電気パルスを使用する、大内臓神経などの胸部の内蔵神経の電気刺激は、神経の軸索における活動電位を誘発することができる。次いで、これらの活動電位は副腎髄質から循環系へのカテコールアミン(例えば、エピネフリン及び/又はノルエピネフリン)の放出を誘発し、これは、身体全体に分布するNK細胞上のβ2-アドレナリン受容体に結合することができる。カテコールアミン結合は、NK細胞動員の増加をもたらす。刺激された大内臓神経の活動電位はまた、脾神経を活性化させることができ、その結果、脾臓におけるノルエピネフリンの放出をもたらす。NK細胞の大きな集団が脾臓内に存在するため、この器官におけるノルエピネフリンの放出は、循環中のNK細胞の数の一過性の増加をもたらす。したがって、大内蔵神経刺激は、脾臓を神経支配することによって循環NK細胞を増加させるだけでなく、カテコールアミンの放出を引き起こす副腎髄質を神経支配することによって循環NK細胞をさらに活性化させもする。動員されると、これらのNK細胞は体内に存在し得る任意の癌細胞に自由に遭遇する。次いで、数分~数時間後、NK細胞は組織に再分配されるが、優先的に任意の癌性組織に付着する。例えば、動員されたNK細胞は次いで、血液由来の癌細胞に結合するか、又は固形腫瘍に局在化することができる。NK細胞が癌細胞を同定すると、それらは癌細胞の殺傷を開始することができる。
【0046】
[定義]
本明細書で使用されるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は文脈が明らかにそわないことを指示しない限り、複数の参照を含む。
【0047】
本明細書では、「約」の値又はパラメータへの参照は、その値又はパラメータそれ自体に向けられた変動を含む(及び記載する)。例えば、「約X」を指す記載は「X」の記載を含む。
【0048】
本明細書で使用されるとき、「二相パルス」は、アノード相及びカソード相を有する単一の電気パルスを、いずれかの順序で、任意選択で、アノード相とカソード相との間の位相間遅延を伴って指す。二相パルスに関してなされる時間の長さへの言及は、アノード相、カソード相、及び任意の位相間遅延を含む時間の長さを指す。
【0049】
「個人」、「患者」、及び「被験者」という用語は同義語として使用され、哺乳動物を指す。
【0050】
「増加」又は「増加させる」は、絶対数の増加又は数の相対的増加を指す。「循環ナチュラルキラー細胞の増加」は、循環ナチュラルキラー細胞の絶対数の増加、又は循環リンパ球の総数に対する循環ナチュラルキラー細胞の数の増加を指す。
【0051】
本明細書に記載される本発明の態様及び変形は、「それからなる」及び/又は「本質的にそれからなる」態様及び変形を含むことが理解される。
【0052】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限との間の各介在値、及びその状態範囲内の任意の他の明言された値又は介在値は、本開示の範囲内に包含されることが理解されるべきである。記載された範囲が上限又は下限を含む場合、含まれる限界のいずれかを除外する範囲も本開示に含まれる。
【0053】
本明細書で使用される項目見出しは、構成の目的のためでしかなく、記載される主題を制限すると解釈すべきではない。この記載は当業者が本発明を作成及び使用することを可能にするために提示され、特許出願及びその要件の文脈で提供される。記載された実施形態に対する種々の変形は当業者に容易に明らかであり、本明細書での一般的な原理は他の実施形態に適用されてもよい。したがって、本発明は、示された実施形態に限定されることを意図するものではなく、本明細書に記載された原理及び特徴と一致する最も広い範囲を与えられるべきである。
【0054】
図面は、様々な実施形態によるプロセスを示す。例示的なプロセスではいくつかのブロックが任意選択的に組み合わされ、いくつかのブロックの順序は任意選択的に変更され、いくつかのブロックは任意選択的に省略される。いくつかの例では、追加の工程が例示的なプロセスと組み合わせて実行されてもよい。したがって、図示される(及び以下でより詳細に説明される)ように、動作は本質的に例示的なものであり、それ故に限定的であると見なされるべきではない。
【0055】
本明細書で参照されるすべての刊行物、特許、及び特許出願の開示は、それぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。参照により組み込まれる任意の参照が本開示と矛盾する場合、本開示が優先するものとする。
【0056】
[胸部の内蔵神経の電気刺激]
胸部の内蔵神経は、内臓神経と電気的に連通している1つ以上の電極から放出される複数の電気パルスで内臓神経を電気的に刺激することによって、被験者における循環ナチュラルキラー細胞を増加させるように活性化され得る。いくつかの実施形態では、胸部の内蔵神経は大内臓神経である。いくつかの実施形態では、胸部の内蔵神経は小内臓神経である。いくつかの実施形態では、胸部の内蔵神経は最小内臓神経である。
【0057】
内臓神経と電気的に連絡している1つ以上の電極から放出される複数の電気パルスで被験者の内臓神経を電気的に刺激することにより、被験者における循環ナチュラルキラー細胞を増加させることによって、被験者における癌を治療することができ、又は(例えば、癌切除手術後の)癌の増殖又は再発を阻害することができる。いくつかの実施形態では、電気刺激が内臓神経における1つ以上の活動電位を誘発する。
【0058】
いくつかの実施形態では、1つ以上の電極が内臓神経に接触する。例えば、この1つ以上の電極は、内臓神経を少なくとも部分的に取り囲む神経カフなどの基板上に配置されてもよい。この基板が所定の位置にあると、1つ以上の電極が神経と電気的に連通し、1つ以上の電極が電気パルスを放出するように動作されると、電気パルスが内臓神経を活性化する。いくつかの実施形態では、この1つ以上の電極は、完全に埋め込み可能な装置、例えば、本明細書でさらに説明される埋め込み型装置の一部である。
【0059】
電気パルスは単相(すなわち、カソード相のみを有する、又はアノード相のみを有する)又は二相(すなわち、カソード相とアノード相との両方を有する)であってもよい。二相パルスにおけるカソード相及びアノード相の順序はいずれの順序(すなわち、アノード優先又はカソード優先)であってもよい。二相パルスのアノード相及びカソード相は中間間隔(例えば、約10μs~約150μsの長さ、例えば、約10μs~約20μs、約20μs~約40μs、約40μs~約60μs、約60μs~約80μs、約80μs~約100μs、又は約100μs~約150μsの長さ)によって分離されてもよい。この中間間隔は一般に、偶発的な酸化還元反応の反転を可能にするのに十分に短く、電荷が反転する前に神経の実質的な脱分極を可能にするのに十分に長い。いくつかの実施形態では、二相パルスのアノード相及びカソード相は同じ長さである。いくつかの実施形態では、二相パルスのアノード相及びカソード相は異なる長さである。
【0060】
いくつかの実施形態では、1つ以上の電気パルスは二相電気パルスを含み、アノード相及びカソード相が同じ電流の大きさ及び/又は長さを有する。いくつかの実施形態では、1つ以上の電気パルスは二相電気パルスを含むみ、アノード相及びカソード相が異なる電流の大きさ及び/又は異なる長さを有する。例えば、いくつかの実施形態では、1つ以上の電気パルスは二相電気パルスを含み、アノード相がカソード相よりも大きい電流の大きさ及び短い長さを有する。いくつかの実施形態では、1つ以上の電気パルスは二相電気パルスを含み、カソード相はアノード相よりも大きい電流の大きさ及び短い長さを有する。
【0061】
いくつかの実施形態では、電気パルスは約5μs~約5ms(約5μs~約10μs、約10μs~約20μs、約20μs~約50μs、約50μs~約100μs、約100μs~約150μs、約150μs~約300μs、約300μs~約500μs、約500μs~約1ms、又は約1ms~約5msなど)の長さである。いくつかの実施形態では、1つ以上の電気パルスは二相電気パルスを含み、アノード相及びカソード相は同じ長さを有する。いくつかの実施形態では、1つ以上の電気パルスは二相電気パルスを含み、アノード相及びカソード相は異なる長さを有する。いくつかの実施形態では、アノード相がカソード相よりも長い。いくつかの実施形態では、アノード相がカソード相よりもより短い。いくつかの実施形態では、電気パルスは二相性であり、約5μs~約5ms(約5μs~約10μs、約10μs~約20μs、約20μs~約50μs、約50μs~約100μs、約100μs~約150μs、約150μs~約300μs、約300μs~約500μs、約500μs~約1ms、又は約1ms~約5msなど)の長さのアノード相を含む。いくつかの実施形態では、電気パルスは二相性であり、約5μs~約5ms(約5μs~約10μs、約10μs~約20μs、約20μs~約50μs、約50μs~約100μs、約100μs~約150μs、約150μs~約300μs、約300μs~約500μs、約500μs~約1ms、又は約1ms~約5msなど)の長さのカソード相を含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、1つ以上の電気パルスが約100マイクロアンペア(μA)~約30mA(約100μA~約250μA、約250μA~約500μA、約500μA~約1mA、約1mA~約2mA、約2mA~約3mA、約3mA~約5mA、約5mA~約10mA、約10mA~約20mA、又は約20mA~約30mAなど)の電流を有する。いくつかの実施形態では、電気パルスが複数の電気パルスにわたってほぼ同じ(例えば、互いの10%以内、5%以内、2%以内、又は1%以内の)電流を有する。
【0063】
いくつかの実施形態では、1つ以上の電気パルスが約1Hz~約10kHz(約1Hz~約5Hz、約10Hz~約10Hz、約10Hz~約20Hz、約20Hz~約30Hz、約30Hz~約40Hz、約40Hz~約50Hz、約50Hz~約75Hz、約75Hz~約100Hz、約100Hz~約150Hz、約150Hz~約200Hz、約200Hz~約300Hz、約300Hz~約400Hz、約400Hz~約500Hz、約500Hz~約750Hz、約750Hz~約1kHz、約1kHz~約2kHz、約2kHz~約5kHz、又は約5kHz~約10kHzなど)の周波数を有する。
【0064】
いくつかの実施形態では、複数の電気パルスが持続的に放出される。いくつかの実施形態では、複数の電気パルスが約1Hz~約10kHz(約1Hz~約5Hz、約10Hz~約10Hz、約10Hz~約20Hz、約20Hz~約30Hz、約30Hz~約40Hz、約40Hz~約50Hz、約50Hz~約75Hz、約75Hz~約100Hz、約100Hz~約150Hz、約150Hz~約200Hz、約200Hz~約300Hz、約300Hz~約400Hz、約400Hz~約500Hz、約500Hz~約750Hz、約750Hz~約1kHz、約1kHz~約2kHz、約2kHz~約5kHz、又は約5kHz~約10kHzなど)の周波数で持続的に放出される。
【0065】
いくつかの実施形態では、複数の電気パルスが複数のパルス列で(すなわち、複数の「バースト」パターンで)放出される。このパルス列は設定された周波数で放出される複数の個々の電気パルスを含み、パルス列は休止期間によって分離される。いくつかの実施形態では、パルス列が(2~約5パルス、約5パルス~約10パルス、約10パルス~約50パルス、約50パルス~約100パルス、約100パルス~約250パルス、約250パルス~約500パルス、約500パルス~約1000パルス、約1000パルス~約2500パルス、又は約2500パルス~約5000パルスなど)2~約5000個の電気パルスを含む。いくつかの実施形態では、パルス列が約5~約5000個の電気パルスを含む。いくつかの実施形態では、パルス列が約5~約500個の電気パルスを含む。例えば、パルス列は(約100ms~約250ms、約250ms~約500ms、約500ms~約1秒、約1秒~約2秒、約2秒~約5秒、約5秒~約10秒、又は約10秒~約15秒など)約100ms~約15秒の休止期間によって分離され得る。いくつかの実施形態では、パルス列内の電気パルスが約1Hz~約10kHz(約1Hz~約5Hz、約10Hz~約10Hz、約10Hz~約20Hz、約20Hz~約30Hz、約30Hz~約40Hz、約40Hz~約50Hz、約50Hz~約75Hz、約75Hz~約100Hz、約100Hz~約150Hz、約150Hz~約200Hz、約200Hz~約300Hz、約300Hz~約400Hz、約400Hz~約500Hz、約500Hz~約750Hz、約750Hz~約1kHz、約1kHz~約2kHz、約2kHz~約5kHz、又は約5kHz~約10kHzなど)の周波数で放出される。
【0066】
この電気パルスは、内臓神経を刺激するために1つ以上の電極から一時的に放出されてもよい。一時的な刺激はナチュラルキラー細胞循環の増加を可能にし、これは循環中にあると、癌性組織に局在する可能性があり、これは数分~数時間の過程にわたって起こり得る。いくつかの実施形態では、内臓神経が約1分~約60分(約1分~約2分、約2分~約5分、約5分~約10分、約10分~約15分、約15分~約20分、約20分~約30分、約30分~約45分、又は約45分~約60分など)の期間、複数の電気パルスによって電気的に刺激される。いくつかの実施形態では、エピソード刺激が1日1回~1時間1回の頻度、又はその間の頻度で(例えば、2時間ごとに1回、3時間ごとに1回、4時間ごとに1回、6時間ごとに1回、8時間ごとに1回、又は12時間ごとに1回)起こる。いくつかの実施形態では、一過性刺激が1日1回~1日4回の頻度で起こる。
【0067】
内臓神経に投与される電気パルスは、正弦波、正方形、鋸歯状、又は任意の他の適切な形状であってもよい。
【0068】
いくつかの実施形態では、被験者における癌を治療する方法が、内臓神経と電気的に連絡している1つ以上の電極から放出される複数の二相電気パルスで被験者の胸部の内臓神経を電気的に刺激することによって、被験者における循環ナチュラルキラー(NK)細胞を増加させることを含む。いくつかの実施形態において、胸部の内蔵神経は、大内臓神経である。いくつかの実施形態では、1つ以上の電極が被験者内に完全に埋め込まれた埋め込み型装置によって動作させられる。いくつかの実施形態では、被験者が癌切除手術を以前に受けたことがある。
【0069】
いくつかの実施形態では、被験者における癌を治療する方法が、内臓神経と電気的に連絡している1つ以上の電極から約1Hz~約10kHzの周波数で放出される複数の二相電気パルスで被験者の胸部の内臓神経を電気的に刺激することによって、被験者における循環ナチュラルキラー(NK)細胞を増加させることを含む。いくつかの実施形態において、胸部の内蔵神経は、大内臓神経である。いくつかの実施形態では、1つ以上の電極が被験者内に完全に埋め込まれた埋め込み型装置によって動作させられる。いくつかの実施形態では、被験者が癌切除手術を以前に受けたことがある。
【0070】
いくつかの実施形態では、被験者における癌を治療する方法が、内臓神経と電気的に連絡している1つ以上の電極から約1Hz~約10kHzの周波数で持続的に放出される複数の二相電気パルスで被験者の胸部の内臓神経を電気的に刺激することによって、被験者における循環ナチュラルキラー(NK)細胞を増加させることを含む。いくつかの実施形態において、胸部の内蔵神経は、大内臓神経である。いくつかの実施形態では、1つ以上の電極が被験者内に完全に埋め込まれた埋め込み型装置によって動作させられる。いくつかの実施形態では、被験者が癌切除手術を以前に受けたことがある。
【0071】
いくつかの実施形態では、被験者における癌を治療する方法が、内臓神経と電気的に連絡している1つ以上の電極から約1Hz~約10kHzの周波数で持続的に放出される複数の二相電気パルスで被験者の胸部の内臓神経を電気的に刺激することによって、被験者における循環ナチュラルキラー(NK)細胞を増加させることを含み、その電気パルスは長さが約5μs~約5msである。いくつかの実施形態において、胸部の内蔵神経は、大内臓神経である。いくつかの実施形態では、1つ以上の電極が被験者内に完全に埋め込まれた埋め込み型装置によって動作させられる。いくつかの実施形態では、被験者が癌切除手術を以前に受けたことがある。
【0072】
いくつかの実施形態では、被験者における癌を治療する方法が、内臓神経と電気的に連絡している1つ以上の電極から約1Hz~約10kHzの周波数で持続的に放出される複数の二相電気パルスで被験者の胸部の内臓神経を電気的に刺激することによって、被験者における循環ナチュラルキラー(NK)細胞を増加させることを含み、その電気パルスは長さが約5μs~約5msである。いくつかの実施形態において、胸部の内蔵神経は、大内臓神経である。いくつかの実施形態では、1つ以上の電極が被験者内に完全に埋め込まれた埋め込み型装置によって動作させられる。いくつかの実施形態では、被験者が癌切除手術を以前に受けたことがある。
【0073】
いくつかの実施形態では、被験者における癌を治療する方法が、内臓神経と電気的に連絡している1つ以上の電極から約1Hz~約10kHzの周波数で持続的に放出される複数の二相電気パルスで被験者の胸部の内臓神経を電気的に刺激することによって、被験者における循環ナチュラルキラー(NK)細胞を増加させることを含み、その電気パルスは長さが約5μs~約5msであり、約100μA~約30mAの定電流を有する。いくつかの実施形態において、胸部の内蔵神経は、大内臓神経である。いくつかの実施形態では、1つ以上の電極が被験者内に完全に埋め込まれた埋め込み型装置によって動作させられる。いくつかの実施形態では、被験者が癌切除手術を以前に受けたことがある。
【0074】
いくつかの実施形態では、被験者における癌の増殖又は再発を阻害する方法が、内臓神経と電気的に連絡している1つ以上の電極から放出される複数の二相電気パルスで被験者の胸部の内臓神経を電気的に刺激することによって、被験者における循環ナチュラルキラー(NK)細胞を増加させることを含む。いくつかの実施形態において、胸部の内蔵神経は、大内臓神経である。いくつかの実施形態では、1つ以上の電極が被験者内に完全に埋め込まれた埋め込み型装置によって動作させられる。いくつかの実施形態では、被験者が癌切除手術を以前に受けたことがある。
【0075】
いくつかの実施形態では、被験者における癌の増殖又は再発を阻害する方法が、内臓神経と電気的に連絡している1つ以上の電極から約1Hz~約10kHzの周波数で放出される複数の二相電気パルスで被験者の胸部の内臓神経を電気的に刺激することによって、被験者における循環ナチュラルキラー(NK)細胞を増加させることを含む。いくつかの実施形態において、胸部の内蔵神経は、大内臓神経である。いくつかの実施形態では、1つ以上の電極が被験者内に完全に埋め込まれた埋め込み型装置によって動作させられる。いくつかの実施形態では、被験者が癌切除手術を以前に受けたことがある。
【0076】
いくつかの実施形態では、被験者における癌の増殖又は再発を阻害する方法が、内臓神経と電気的に連絡している1つ以上の電極から約1Hz~約10kHzの周波数で持続的に放出される複数の二相電気パルスで被験者の胸部の内臓神経を電気的に刺激することによって、被験者における循環ナチュラルキラー(NK)細胞を増加させることを含む。いくつかの実施形態において、胸部の内蔵神経は、大内臓神経である。いくつかの実施形態では、1つ以上の電極が被験者内に完全に埋め込まれた埋め込み型装置によって動作させられる。いくつかの実施形態では、被験者が癌切除手術を以前に受けたことがある。
【0077】
いくつかの実施形態では、被験者における癌の増殖又は再発を阻害する方法が、内臓神経と電気的に連絡している1つ以上の電極から約1Hz~約10kHzの周波数で持続的に放出される複数の二相電気パルスで被験者の胸部の内臓神経を電気的に刺激することによって、被験者における循環ナチュラルキラー(NK)細胞を増加させることを含み、その電気パルスは長さが約5μs~約50msである。いくつかの実施形態において、胸部の内蔵神経は、大内臓神経である。いくつかの実施形態では、1つ以上の電極が被験者内に完全に埋め込まれた埋め込み型装置によって動作させられる。いくつかの実施形態では、被験者が癌切除手術を以前に受けたことがある。
【0078】
いくつかの実施形態では、被験者における癌の増殖又は再発を阻害する方法が、内臓神経と電気的に連絡している1つ以上の電極から約1Hz~約10kHzの周波数で持続的に放出される複数の二相電気パルスで被験者の胸部の内臓神経を電気的に刺激することによって、被験者における循環ナチュラルキラー(NK)細胞を増加させることを含み、その電気パルスは長さが約5μs~約50msである。いくつかの実施形態において、胸部の内蔵神経は、大内臓神経である。いくつかの実施形態では、1つ以上の電極が被験者内に完全に埋め込まれた埋め込み型装置によって動作させられる。いくつかの実施形態では、被験者が癌切除手術を以前に受けたことがある。
【0079】
いくつかの実施形態では、被験者における癌の増殖又は再発を阻害する方法が、内臓神経と電気的に連絡している1つ以上の電極から約1Hz~約10kHzの周波数で持続的に放出される複数の二相電気パルスで被験者の胸部の内臓神経を電気的に刺激することによって、被験者における循環ナチュラルキラー(NK)細胞を増加させることを含み、その電気パルスは長さが約5μs~約50msであり、約100μA~約30mAの定電流を有する。いくつかの実施形態において、胸部の内蔵神経は、大内臓神経である。いくつかの実施形態では、1つ以上の電極が被験者内に完全に埋め込まれた埋め込み型装置によって動作させられる。いくつかの実施形態では、被験者が癌切除手術を以前に受けたことがある。
【0080】
胸部の内蔵神経の電気刺激は、埋め込み型装置によって受信されるか、又は埋め込み可能な装置によって生成されるトリガ信号に応答して生じ得る。トリガ信号は、埋め込み型装置によって放出される電気パルスの周波数、振幅、長さ、パルスパターン、及び/又はパルス形状を含む命令を含んでもよい。いくつかの実施形態では、トリガ信号が(いくつかの実施形態では被験者の外部にある)第2の装置によって送信される可能性のある、埋め込み型装置によって無線で受信される。例えば、トリガ信号は、無線周波数(RF)、超音波、又は他の無線遠隔測定方法で符号化され得る埋め込み型装置に通信されてもよい。いくつかの実施形態では、トリガ信号は、例えば埋め込み型装置によって検出される情報、又は埋め込み型装置に通信される情報(例えば、1つ以上の生理学的信号)を使用して、埋め込み型装置自体により生成されてもよい。
【0081】
このトリガ信号は、胸部の内蔵神経(例えば、大内蔵神経)の活性、免疫系状態の変化、炎症の増加若しくは減少、炎症応答、又は被験者内で検出される1つ以上の生理学的信号に基づくことができる。いくつかの実施形態では、トリガ信号が1つ以上の生理学的信号に基づく。例示的な生理学的信号は、電気生理学的信号(例えば、内臓神経、脾神経、若しくは他の神経によって送信される電気生理学的信号)、温度、圧力、歪み、pH、検体レイブ(例えば、検体の存在若しくは濃度)、又は血行動態信号(例えば、拡張期血圧、平均血圧、収縮期血圧、血液酸素化レベル、心拍数、若しくは血液潅流速度)を含む。
【0082】
本明細書でさらに説明するように、この埋め込み型装置は生理学的信号を検出し、生理学的信号に関連する情報を符号化する信号を(例えば、超音波後方散乱によって)無線で送信するように構成され得る。生理学的信号を符号化する信号は、検出された生理学的信号に関連する情報を得るために信号を復号することができる第2の装置(例えば、本明細書にさらに記載されるようなインテロゲータ)によって受信することができる。この情報は、第2の装置によって分析されるか、又はその情報を分析するために別のコンピュータシステムに中継されることができる。検出された生理学的信号に基づいて、第2の装置は、埋め込み型装置にトリガ信号を送信し、埋め込み型装置に内臓神経を電気的に刺激するように命令することができる。
【0083】
いくつかの実施形態では、トリガ信号は、ベースラインの内臓神経活動と比較した内臓神経活動の変化に基づく。ベースラインの内蔵神経活性は例えば、個々の被験者において確立することができ、そのトリガ信号は、ベースラインの内蔵神経活性からの偏位に基づくことができる。トリガ信号は例えば、ある期間にわたって内蔵神経から測定された電圧電位変化又は電圧電位変化パターンに基づくことができる。電圧変化(例えば、電圧スパイク)は内蔵神経を通過する活動電位を示すものであり、これは、埋め込まれた装置上の電極によって検出される。電圧スパイクの周波数及び/又は振幅の差(活動電位の単一電圧スパイク又は複合電圧スパイク)は、免疫活性の変化を示し得る。
【0084】
いくつかの実施形態では、トリガ信号は、内蔵神経活性パターンの分析、及び温度、脈拍、又は血圧などの検出された生理学的信号に基づく。内蔵神経活性は、埋め込み可能な装置、又は他の何らかの装置若しくは方法によって検出されてもよい。
【0085】
いくつかの実施形態では、トリガ信号は、過去の期間にわたって、例えば、数分、数時間、又は数日間にわたって検出された集計情報(例えば、内蔵神経活性及び/又は生理学的信号)に関連する情報に基づくことができる。例えば、いくつかの実施形態では、トリガが約30秒、約1分、約5分、約15分、約30分、約1時間、約2時間、約4時間、約8時間、約12時間、約24時間、約2日、約4日、又は約7日以内から検出される内蔵神経活性に関連する情報に基づく。
【0086】
いくつかの実施形態では、埋め込まれた装置は、その埋め込まれた装置に電力を供給し動作させる超音波を送信することができるインテロゲータを使用して動作させることができる。本明細書でさらに説明するように、このインテロゲータは超音波を埋め込まれた装置に送信し、及び/又は埋め込まれた装置から放射された超音波後方散乱を受信することができる超音波変換器を含む装置である。いくつかの実施形態では、インテロゲータが被験者の外部の装置であり、被験者が着用することができる。いくつかの実施形態では、インテロゲータによって送信される超音波がトリガ信号を符号化する。
【0087】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、被験者における癌を治療するために、又は被験者における癌の増殖若しくは再発を阻害するために使用される。例えば、被験者は、癌切除手術を受けていてもよい。切除不能癌又は転移癌は、手術後でさえも被験者内に残存し得、この残存癌が治療的介入なしに再発及び/又は増殖する可能性のあるリスクがいくらか残る。さらに、この手術は、被験者の免疫応答を低下させ、被験者を癌の再発又は増殖に対してより罹りやすくし得る。本明細書に記載される方法を使用して、被験者における循環ナチュラルキラー細胞を増加させるために胸部の(例えば、大)内臓神経を電気的に刺激することができ、これは残存癌を標的とすることができる。
【0088】
癌を受ける被験者は一般に、ヒト、ラット、マウス、イヌ、ネコ、ウマ、ブタなどの哺乳動物である。
【0089】
NK細胞は自然免疫系の構成要素であり、最初の接触時に、事前のプライミング又は曝露なしに、腫瘍性突然変異を有する細胞を識別し破壊することができる。これは、NK細胞の特有の特徴であり、T細胞などの他の腫瘍殺傷リンパ球は、癌性細胞に対して細胞傷害性になる前に事前の抗原曝露を必要とする。腫瘍細胞のNK細胞認識の重要な特性は、腫瘍学的突然変異(「欠損-自己」認識)の間に生じるMHCクラスI分子の欠如又は下方制御である。しかしながら、癌性細胞は、NK細胞を活性化することができる多くの他のリガンドを過剰発現することもできる。これらの特性は、NK細胞が広範囲の自発性、移植可能、造血性及び非造血性の腫瘍細胞を破壊することを可能にする。例えば、Guilereyらの"Targeting natural killer cells in cancer immunotherapy", Nat. Immunol. vol.17, p.1025-1036(2016))、Smythらの「New aspects of natural-killer-cell surveillance and therapy of cancer」(Nat. Rev. Cancer. vol.2, p.850-861(2002)、及びVesyらの"Natural innate and adaptive immunity to cancer", Annu. Rev. Immuol. Vol.29, p.235-271 (2011)を参照。いくつかの実施形態では、癌は原発性癌である。いくつかの実施形態では、癌は転移性癌である。いくつかの実施形態では、癌は固形癌である。いくつかの実施形態では、癌はリンパ腫である。例示的ながんは、副腎皮質癌腫、特発性骨髄線維症、AIDS関連癌(例えば、AIDS関連リンパ腫)、肛門癌、虫垂癌、(例えば、小脳及び大脳の)星細胞腫、基底細胞癌、胆管癌(例えば、肝外癌)、膀胱癌、骨癌(骨肉腫及び悪性線維性組織球腫)、脳腫瘍(例えば、神経膠腫、脳幹神経膠腫、小脳又は大脳星細胞腫(例えば、毛様細胞性星細胞腫、退形成性(悪性)星細胞腫)、悪性神経膠腫、上衣腫、乏突起膠腫、髄膜腫、頭蓋咽頭腫、血管芽腫、髄芽腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、視経路及び視床下部神経膠腫、乳癌、気管支腺腫/気管支カルチノイド、カルチノイド腫瘍(例えば、胃腸カルチノイド腫瘍)、原発不明癌腫、中枢神経系リンパ腫、子宮頸癌、結腸癌、結腸直腸癌、慢性骨髄増殖性疾患、子宮内膜癌(例えば、子宮癌)、上衣腫、食道癌、ユーイングファミリー腫瘍、眼癌(例えば、眼球内黒色腫及び網膜芽細胞腫)、胆のう癌、胃癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、胚細胞腫瘍(例えば、頭蓋外、性腺外、卵巣)、妊娠性絨毛腫瘍、頭頸部癌、肝細胞(肝)癌(例えば、肝癌腫及び肝細胞腫)、下咽頭癌、膵島細胞癌腫(膵臓内分泌部)、喉頭癌、喉頭癌、白血病、口唇及び口腔癌、口部の癌、肝臓癌、肺癌(例えば、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、及び肺扁平上皮癌)、リンパ系腫瘍(例えば、リンパ腫)、髄芽腫、卵巣癌、中皮腫、転移性扁平上皮頸部癌腫、口の癌、多発性内分泌腫瘍症候群、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、鼻腔及び副鼻腔癌、上咽頭癌、神経芽細胞腫、神経内分泌癌、中咽頭癌、卵巣癌(例えば、卵巣上皮癌、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍)、膵臓癌、副甲状腺癌、陰茎癌、腹膜癌、咽頭癌、褐色細胞腫、松果体芽腫及びテント上原発性神経外胚葉腫、下垂体腫瘍、胸膜肺芽腫、リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫(小神経膠細胞腫)、肺リンパ管筋腫症、直腸癌、腎臓癌、腎盂及び尿管癌(移行上皮癌)、横紋筋肉腫、唾液腺癌、皮膚癌(例えば、非黒色腫(例えば、扁平上皮癌腫)、黒色腫、及びメルケル細胞癌)、小腸癌、扁平上皮癌、精巣癌、喉の癌、胸腺腫及び胸腺癌、甲状腺癌、結節性硬化症、尿道癌、膣癌、外陰癌、ウィルムス腫瘍及び移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)、母斑症に関連付けられる異常血管増殖、(脳腫瘍に関連付けられるものなどの)浮腫、並びにメイグズ症候群を含むが、これらには限定されない。
【0090】
いくつかの実施形態では、癌は白血病である。いくつかの実施形態では、1つ以上のナチュラルキラー細胞活性化剤が被験者に投与される。ナチュラルキラー細胞活性化剤は被験者における循環NK細胞の割合を増加させることができ、これは、癌に対するNK細胞の細胞傷害作用を増加させることができる。例示的なNK細胞活性化剤は、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-15(IL-15)、及びインターロイキン-12(IL-12)、又はその生物活性断片、変異体、若しくは融合体を含む。NK細胞活性化剤の「生物活性断片」は、循環NK細胞を活性化することができるNK細胞活性化剤の任意の断片を指す。いくつかの実施形態において、IL-2は、アルデスロイキン、テセロイキン、バイオロイキン、又はデニロイキンジフチトクスである。
【0091】
いくつかの実施形態では、被験者における癌を治療する方法において使用するためのナチュラルキラー(NK)細胞活性化剤を含む医薬組成物であって、その方法が、NK細胞活性化剤を含む医薬組成物を被験者に投与することと、内臓神経と電気的に連絡している1つ以上の電極から放出される複数の電気パルスで被験者の胸部の内蔵神経を電気的に刺激することとを含み、複数の電気パルスが、被験者における循環ナチュラルキラー(NK)細胞を増加させるために大内臓神経における1つ以上の活動電位を誘発する、医薬組成物が存在する。いくつかの実施形態において、胸部の内蔵神経は、大内臓神経である。いくつかの実施形態では、NK細胞活性化剤は、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-15(IL-15)、及びインターロイキン-12(IL-12)、又はその生物活性断片である。
【0092】
いくつかの実施形態では、被験者における癌の増殖又は再発を阻害する方法において使用するためのナチュラルキラー(NK)細胞活性化剤を含む医薬組成物であって、その方法が、NK細胞活性化剤を含む医薬組成物を被験者に投与することと、内臓神経と電気的に連絡している1つ以上の電極から放出される複数の電気パルスで被験者の胸部の内蔵神経を電気的に刺激することとを含み、複数の電気パルスが、被験者における循環ナチュラルキラー(NK)細胞を増加させるために大内臓神経における1つ以上の活動電位を誘発する、医薬組成物が存在する。いくつかの実施形態において、胸部の内蔵神経は、大内臓神経である。いくつかの実施形態では、NK細胞活性化剤は、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-15(IL-15)、及びインターロイキン-12(IL-12)、又はその生物活性断片である。
【0093】
いくつかの実施形態では、1つ以上の化学療法剤が被験者にさらに投与される。例示的な化学療法剤としては、ヌクレオシド類似体(アザシチジン、カペシタビン、カルモフール、クラドリビン、クロファラビン、シタラビン、デシタビン、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、メルカプトプリン、ネララビン、ペントスタチン、テガフール、及びチオグアニンなど)、葉酸代謝拮抗剤(メトトレキサート、ペメトレキセド、ラルチトレキセドなど)、ヒドロキシカルバミド、トポイソメラーゼI阻害剤(イリノテカン及びトポテカンなど)、アントラサイクリン(ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、及びバルルビシンなど)、ポドフィロトキシン(エトポシド及びテニポシドなど)、タキサン(カバジタキセル、ドセタキセル、及びパクリタキセルなど)、ビンカアルカロイド(ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンフルニン、及びビノレルビンなど)、アルキル化剤(ベンダムスチン、ブスルファン、カルムスチン、クロラムブシル、クロルメチン、シクロホスファミド、ダカルバジン、ホテムスチン、イホスファミド、ロムスチン、メルファラン、ストレプトゾトシン、及びテモゾロミドなど)、白金製剤(カルボプラチン、シスプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン)、アルトレタミン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ダクチノマイシン、エストラムスチン、イキサベピロン、マイトマイシン、及びプロカルバジン)、モノクローナル抗体(抗CD52抗体(例えば、アレムツズマブ)、抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)、抗EGFR抗体(例えば、セツキシマブ及びパニツムマブ)、抗RANKL抗体(デノスマブなど)、抗CD33抗体(ゲムツズマブオゾガミシンなど)、抗CD20抗体(イブリツモマブチウキセタン、オファツムマブ、及びトシツモマブなど)、抗CTLA4抗体(イピリムマブなど)、抗PD-L-1抗体(ペンブロリズマブなど)、抗HER2阻害剤(ペルツズマブ、及びトラスツズマブなど)など)、チロシンキナーゼ阻害剤(アフィニブ、アフリベルセプト、アキシチニブ、ボスチニブ、クリゾチニブ、ダサチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、ニロチニブ、パゾパニブ、ポナチニブ、レゴラフェニブ、ルキソリチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、バンデタニブなど)、mTOR阻害剤(エベロリムス、及びテムシロリムスなど)、レチノイド(アリトレチノイン、ベキサロテン、イソトレチノイン、タミバロテン、及びトレチノインなど)、免疫調節剤(レナリドミド、ポマリドミド、及びサリドマイドなど)、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(パノビノスタット、ロミデプシン、バルプロ酸、及びボリノスタットなど)、並びにベムラフェニブを含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、被験者における癌を治療する方法において使用するための化学療法剤を含む医薬組成物であって、その方法が、化学療法剤を含む組成物を被験者に投与することと、大内臓神経と電気通信している1つ以上の電極から放出される複数の電気パルスで被験者の胸部の内蔵神経を電気的に刺激することとを含み、複数の電気パルスが、被験者における循環ナチュラルキラー(NK)細胞を増加させるために内臓神経における1つ以上の活動電位を誘発する、医薬組成物が存在する。いくつかの実施形態において、胸部の内蔵神経は、大内臓神経である。いくつかの実施形態では、NK細胞活性化剤は、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-15(IL-15)、及びインターロイキン-12(IL-12)、又はその生物活性断片である。
【0095】
いくつかの実施形態では、被験者における癌の増殖又は再発を阻害する方法において使用するための化学療法剤を含む医薬組成物であって、その方法が、化学療法剤を含む医薬組成物を被験者に投与することと、内臓神経と電気通信している1つ以上の電極から放出される複数の電気パルスで被験者の胸部の内蔵神経を電気的に刺激することとを含み、複数の電気パルスが、被験者における循環ナチュラルキラー(NK)細胞を増加させるために大内臓神経における1つ以上の活動電位を誘発する、医薬組成物が存在する。いくつかの実施形態において、胸部の内蔵神経は、大内臓神経である。いくつかの実施形態では、NK細胞活性化剤は、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-15(IL-15)、及びインターロイキン-12(IL-12)、又はその生物活性断片である。
【0096】
[埋め込み型装置及びシステム]
埋め込まれた装置は、胸部の内蔵神経と電気的に連通するように構成された1つ以上の電極を含む。この装置は、被験者における循環ナチュラルキラー(NK)細胞を増加させる複数の電気パルスを用いて内臓神経を電気的に刺激するために1つ以上の電極を動作させるように構成される。いくつかの実施形態では、この埋め込み型装置は、本明細書に記載の方法のうちの任意の1つ以上を実行するように構成される。いくつかの実施形態において、胸部の内蔵神経は、大内臓神経である。いくつかの実施形態では、胸部の内蔵神経は小内臓神経である。いくつかの実施形態では、胸部の内蔵神経は最小内臓神経である。
【0097】
この埋め込み型装置は、1つ以上の電極を胸部の内蔵神経と電気的に連通するように配置するように構成された基板(例えば、螺旋状神経カフであり得る神経カフなど)を含むことができる。例えば、この基板は1つ以上の電極を含むことができ、胸部の内蔵神経を少なくとも部分的に包むように構成することができる。いくつかの実施形態では、基板が1つ以上の電極を、大内臓神経と電気的に連通するように配置するように構成される。いくつかの実施形態では、基板が1つ以上の電極を、小内臓神経と電気的に連通するように配置するように構成される。いくつかの実施形態では、基板が1つ以上の電極を、最小内臓神経と電気的に連通するように配置するように構成される。
【0098】
いくつかの実施形態では、埋め込まれた装置は、無線通信システム(例えば、1つ以上の超音波変換器若しくは1つ以上の無線周波数アンテナ)及び/又は装置を動作させる集積回路を含むことができる本体を含む。この無線通信システムは、検出された生理学的信号に関連する情報、装置の状態、及び/又は1つ以上の電極から放出された電気パルスなどの情報を送信することができる。この装置により検出され、及び/又は無線通信により通信され得る例示的な生理学的信号は、電気生理学的信号(例えば、大内臓神経、脾神経、若しくは他の神経によって送信される電気生理学的信号)、温度、圧力、歪み、pH、検体レイブ(例えば、検体の存在若しくは濃度)、又は血行動態信号(例えば、拡張期血圧、平均血圧、収縮期血圧、血液酸素化レベル、心拍数、若しくは血液潅流速度)を含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、埋め込み型装置が超音波を受信し、受信した超音波を装置に電力を供給する電気エネルギーに変換するように構成された超音波変換器を含む。この装置の本体は、超音波変換器と(例えば、集積回路を介して)電気通信している生理学的信号を検出するように構成された1つ以上の電極及び/又はセンサを含むか、又はそれらに接続され得る。いくつかの実施形態では、変換器を流れる電流は、無線通信システムによって放出される超音波後方散乱波に情報を符号化するために変調され得る。この符号化された情報は、例えば、センサによって検出された生理学的信号に関連するデータ、装置の状態(例えば、装置が超音波に符号化された信号を受信していることを確認している状態、集積回路の動作を確認している状態、又は装置が電力供給されていることを確認している状態)、又は埋め込み型装置によって放出された電気パルスに関連する情報を含んでいてもよい。
【0100】
いくつかの実施形態では、埋め込み型装置は、装置を胸部の内蔵神経に取り付けるよう寸法決めされ構成された本体に取り付けられた基板(神経カフなど)を備える。いくつかの実施形態では、胸部の内蔵神経が大内臓神経、小内臓神経、又は最小内臓神経である。この本体は例えば、本体(ハウジングを含んでいてもよい)を神経カフの外面上に配置することによって、神経カフに取り付けられてもよい。この神経カフはさらに、電極を内蔵神経と電気的に連絡するように配置するよう寸法決めされ構成される。いくつかの実施形態では、この神経カフは、内蔵神経を少なくとも部分的に取り囲み、2つ以上の電極を脾神経と電気的に連絡するように配置するように構成される。
【0101】
この埋め込み型装置は、本明細書にさらに記載されるようなインテロゲータなどの第2の装置をさらに含むシステムの一部であってもよい。第2の装置は、外部装置であってもよい。いくつかの実施形態では、システムの第2の装置が1つ以上の電極から複数の電気パルスを放出するための命令を埋め込み型装置に提供するトリガ信号を埋め込み型装置に送信する。いくつかの実施形態では、埋め込み型装置は、例えば無線周波数又は超音波後方散乱を使用して、埋め込み型装置によって検出された生理学的信号に関連する情報を第2の装置に無線で送信することができる。この第2の装置は、いくつかの実施形態では検出された生理学的信号に関連する情報を受信し、その関連情報に基づいてトリガ信号を生成するように構成される。したがって、このシステムは、いくつかの実施形態では埋め込み型装置によって検出された生理学的信号に基づいて内臓神経を電気的に刺激する閉ループシステムを形成することができる。
【0102】
いくつかの実施形態では、埋め込み型装置自体が、循環ナチュラルキラー細胞を増加させるために内臓神経を電気的に刺激した複数の電気パルスを放出するように1つ以上の電極を動作させるための命令を提供するトリガ信号を生成することができる。この埋め込み型装置は、完全埋め込み型であってもよく、埋め込み型装置に電力を供給することができる第2の装置(外部装置であってもよい)をさらに含むシステムの一部であってもよい。例えば、第2の装置は超音波を放出することができる1つ以上の超音波変換器を含むインテロゲータであってもよく、この超音波は埋め込み型装置の超音波変換器によって受信され、埋め込み型装置に電力を供給する電気エネルギーに変換され得る。
【0103】
いくつかの実施形態では、1つ以上の電極が1つ以上の単極電極を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の電極が1つ以上の双極電極を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の電極が三極電極を含む。双極又は三極電極は、例えば、刺激電流を収容し、それが近くの筋肉組織を活性化するのを防ぐために、特に有益であり得る。
【0104】
いくつかの実施形態では、埋め込み型装置は隣接する組織に固定されるように構成される。例えば、埋め込み型装置は、内臓神経と電気的に連通する1つ以上の電極を配置する基板を含んでもよく、さらに隣接組織に固定されてもよい。装置を隣接組織に固定することは、埋め込む位置に装置を保持するのに役立つ。
【0105】
[埋め込み型装置の本体]
埋め込み型装置は、胸部の内蔵神経に係合するように構成された基板(神経カフなど)に取り付けられた本体を含むことができる。この本体は、本体と基板との間に介在リードを伴わずに基板に取り付けられてもよい。すなわち、この本体は、身体に埋め込まれたときに本体と神経カフとが同時に配置されるように、神経カフの外面上に配置されることができる。この本体は、内臓神経を電気的に刺激するために複数の電気パルスを放出するように構成された1つ以上の電極に電気的に接続された無線通信システムを含んでもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上の電極のうちの1つが埋め込み型装置の本体上に配置され、1つ以上の電極のうちの1つが基板上に配置される。基板は例えば、本明細書にさらに詳細に記載されるように、螺旋状神経カフであってもよい。埋め込み可能な装置は完全に埋め込み可能であり、すなわち、埋め込み後に被験者の体外に有線又はリードが接続されない。
【0106】
内臓神経を電気的に刺激するように構成された1つ以上の電極は基板上の電極のうちの1つ以上を含み、無線通信システムと電気的に接続される。この装置の本体は集積回路をさらに含んでもよく、集積回路を介して無線通信システムに電極が接続される。集積回路は、装置本体の無線通信システムを動作させるように構成されてもよく、複数の電気パルスを放出するように埋め込み型装置の1つ以上の電極を動作させることができる。任意で、この埋め込み可能な装置は、生理学的信号を検出するように構成された1つ以上のセンサ(温度センサ、酸素センサ、pHセンサ、歪みセンサ、圧力センサ、インピーダンスセンサ、又は検体の濃度を検出することができるセンサなど)を含む。いくつかの実施形態では、生理学的信号を検出するように構成されたセンサは、内臓神経によって送信される電気生理学的信号などの電気生理学的信号を検出するように構成された1つ以上の電極を含む。いくつかの実施形態では、電極のうちの1つ以上が埋め込み型装置の本体上に配置される。いくつかの実施形態では、電極のうちの1つ以上が装置の基板上に配置される。
【0107】
埋め込み可能な装置の本体は、別個の装置(外部インテロゲータ又は別の埋め込み可能な装置など)と通信することができる無線通信システムを含んでもよい。例えば、無線通信は、内臓神経に電気パルスを放出するための命令(すなわち、トリガ信号)を受信するように、及び/又は検出された生理学的信号に関連するデータなどの情報を送信するように構成されてもよい。無線通信システムは、例えば1つ以上の超音波変換器又は1つ以上の無線周波数アンテナを含むことができる。また、無線通信システムは、別の装置から(例えば、超音波又は無線周波数(RF)を介して)、いくつかの実施形態では埋め込み可能な装置に電力を供給するために使用される可能性もあるエネルギーを受信するように構成されてもよい。
【0108】
検出された生理学的信号に関する情報は、無線通信システムを使用して受信装置に送信されてもよい。例えば、無線通信システムは、超音波後方散乱波又は無線周波数後方散乱波を使用して、検出された生理学的信号に関する情報を符号化するように動作可能な超音波変換器を含んでもよい。電気生理学的信号を検出し、検出されたその電気生理学的信号に関連する情報を符号化することができる例示的な埋め込み可能な装置は、国際公開第2018/009910A2号に記載される。電気パルスを放出するために超音波を使用して動作できる例示的な埋め込み可能な装置は、国際公開第2018/009912A2号に記載される。超音波によって電力供給され、検出された生理学的信号を符号化する超音波後方散乱を放出することができる例示的な埋め込み可能な装置は、国際公開第2018/009905A2号及び国際公開第2018/009911A2号に記載される。
【0109】
この装置本体に含まれる集積回路は電極又はセンサと無線通信システム(例えば、1つ以上の超音波変換器又は1つ以上のRFアンテナ)との間を電気的に接続し、通信することができる。この集積回路は、電流中の情報を符号化するために無線通信システム(例えば、1つ以上の超音波変換器又は1つ以上の無線周波数アンテナ)を通って流れる電流を変調する、無線通信システム内の変調回路を含むか、又は動作させることができる。変調された電流は無線通信システムが放射する後方散乱波(例えば、超音波後方散乱波又は高周波後方散乱波)に影響し、後方散乱波は情報を符号化する。
【0110】
図1は、ハウジングによって取り囲まれてもよく、神経カフに取り付けられ得る、埋め込み可能な装置本体のための例示的な基板組立体の側面図を示す。この基板組立体は無線通信システム(例えば、超音波変換器)102及び集積回路104を含む。図示される実施形態では、集積回路104は、コンデンサ106を含む電力回路を含む。図示される実施形態では、コンデンサは、(集積回路チップ上にはないという点で)「オフチップ」コンデンサであるが、依然として回路に電気的に集積されている。コンデンサは、無線通信システムによって受信されたエネルギー(例えば、超音波)から変換された電気エネルギーを一時的に蓄積することができ、エネルギーを蓄積又は放出するために集積回路104によって動作させることができる。任意で、本体は、生理学的信号を検出するように構成されたセンサ108をさらに含む。超音波変換器102、集積回路104、コンデンサ106、及びオプションのセンサ108は、プリント回路基板であってもよい回路基板110上に据えられている。回路基板110は、回路基板及び/又は集積回路を神経カフの1つ以上の電極に電気的に接続する1つ以上のフィードスルー112a、112b、112c、並びに112dをさらに含んでいてもよい。無線通信システム102は、集積回路104と電気的に接続され、集積回路104はフィードスルー112a、112b、112c、及び112dを介して電極に電気的に接続され、それによって、無線通信システム102を電極に電気的に接続する。
【0111】
無線通信システムは、埋め込み可能な装置を動作させるための命令を受信するように構成することができる。この命令は例えば、インタロゲータなどの別個の装置によって送信されてもよい。例として、埋め込み可能な装置によって受信された超音波(例えば、インテロゲータによって送信されたもの)は、埋め込み可能な装置を動作させるための命令を符号化することができる。別の例では、埋め込み可能な装置によって受信されたRF波が、埋め込み可能な装置を動作させるための命令を符号化することができる。この命令は例えば、埋め込み可能な装置に、装置の電極を通して電気パルスを放出するように命令するトリガ信号を含んでいてもよい。トリガ信号は例えば、電気パルスがいつ放出されるべきか、パルス周波数、パルス電力若しくは電圧、パルス形状、及び/又はパルス持続時間に関する情報を含んでいてもよい。
【0112】
いくつかの実施形態では、埋め込み型装置は、無線通信システムを介して、インテロゲータによって受信され得る情報(すなわち、アップリンク通信)を送信するように動作される可能性もある。いくつかの実施形態では、無線通信システムは、情報を符号化する通信信号(例えば、超音波又は無線周波数波)を能動的に生成するように構成される。いくつかの実施形態では、無線通信システムは、後方散乱波(例えば、超音波後方散乱波又はRF後方散乱波)上で符号化された情報を送信するように構成される。後方散乱通信は情報を送信するより低電力の方法を提供し、これは、使用されるエネルギーを最小化するための小型装置にとって特に有益である。例として、無線通信システムは超音波を受信し、埋め込み可能な装置によって送信された情報を符号化することができる超音波後方散乱を放出するように構成された1つ以上の超音波変換器を含んでいてもよい。電流は超音波変換器を通して流れ、情報を符号化するために変調され得る。この電流は、例えば電流を変調するセンサに電流を通すことによって直接的に変調されてもよく、例えば検出された生理学的信号に基づいて変調回路を使用して電流を変調することによって間接的に変調されてもよい。
【0113】
いくつかの実施形態では、無線通信システムによって送信される情報は、埋め込み可能な装置によって検出された生理学的信号に関連しない情報を含む。例えば、この情報は、埋め込み可能な装置の状態に関連する情報、又は電気パルスが放出されたことを確認する確認信号、電力、周波数、電圧、持続時間、若しくは放出された電気パルスに関連する他の情報、及び/又は埋め込み可能な装置の識別コードのうちの1つ以上を含むことができる。任意で、集積回路は情報をデジタル化するように構成され、無線通信システムはデジタル化された情報を送信することができる。
【0114】
無線通信システムを使用して無線で送信された情報は、インタロゲータで受信することができる。いくつかの実施形態では、この情報は後方散乱波(例えば、超音波後方散乱又は高周波後方散乱)で符号化されることによって送信される。この後方散乱は、インテロゲータによって受信され、例えば符号化された情報を決定するために解読され得る。後方散乱通信に関するさらなる詳細は本明細書で提供され、追加の例はWO2018/009905、WO2018/009908、WO2018/009910、WO2018/009911、WO2018/009912、国際特許出願第PCT/US2019/028381号、国際特許出願第PCT/US2019/028385号、及び国際特許出願第PCT/2019/048647号で提供され、これらの各々はあらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。この情報は、変調回路を使用して集積回路により符号化することができる。この変調回路は無線通信システムの一部であり、集積回路によって動作させることも、集積回路内に収容することもできる。
【0115】
インテロゲータは、エネルギー波(例えば、超音波又は無線周波数波)を送信することができ、このエネルギー波は、無線通信システムを通って流れる電流を生成する(例えば、超音波変換器又は無線周波数アンテナを通って流れる電流を生成する)ために、装置の無線通信システムによって受信される。次いで、流れる電流は、無線通信システムによって放出される後方散乱波を発生させることができる。この変調回路は、情報を符号化するために、無線通信システムを流れる電流を変調するように構成することができる。例えば、この変調回路は、インテロゲータから超音波を受信する超音波変換器に電気的に接続されてもよい。受信した超音波によって生成された電流は、情報を符号化するために、変調回路を使用して変調することができ、その結果、情報を符号化するために超音波変換器によって超音波後方散乱波が放出される。同様のアプローチは、無線周波数波を受信する無線周波数アンテナを用いてとることができる。変調回路は、オン/オフスイッチ又は電界効果トランジスタ(FET)などの1つ以上のスイッチを含む。埋め込み可能な装置のいくつかの実施形態と共に使用することができる例示的なFETは、金属-酸化物-半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)である。変調回路は、無線通信システムを流れる電流のインピーダンスを変更することができ、この無線通信システムを流れる電流の変動は情報を符号化する。いくつかの実施形態では、後方散乱波で符号化された情報は、神経により伝達された電気生理学的信号、埋め込み可能な装置によって放出された電気パルス、又は埋め込み可能な装置のセンサによって検出された生理学的信号に関連する情報を含む。いくつかの実施形態では、後方散乱波に符号化された情報は、埋め込み型装置に対する一意の識別子を含む。これは、例えば、複数の埋め込み可能な装置が被験者に埋め込まれたときに、インテロゲータが正しい埋め込み可能な装置と連絡することを確実にするために有用であり得る。いくつかの実施形態では、後方散乱波に符号化された情報は、埋め込み可能な装置によって放出された電気パルスを検証する検証信号を含む。いくつかの実施形態では、後方散乱波に符号化された情報は、エネルギー蓄積回路(又はエネルギー蓄積回路内の1つ以上のコンデンサ)に格納されたエネルギー量又は電圧を含む。いくつかの実施形態では、後方散乱波に符号化された情報は、検出されたインピーダンスを含む。インピーダンス測定値の変化は、瘢痕組織又は電極の経時的な劣化を識別することができる。
【0116】
いくつかの実施形態では、変調回路は、情報をデジタル化信号若しくはアナログ信号で能動的に符号化することができるデジタル回路又は混合信号集積回路(集積回路の一部であってもよい)を使用して動作させられる。デジタル回路又は混合信号集積回路は、メモリと、埋め込み型装置を動作させるための1つ以上の回路ブロック、システム、又はプロセッサとを含んでいてもよい。これらのシステムは例えば、搭載マイクロコントローラ若しくはプロセッサ、有限状態機械実装、又はインプラント上に格納された若しくはインテロゲータと埋め込み型装置との間の超音波通信を介して提供された1つ以上のプログラムを実行することができるデジタル回路を含むことができる。いくつかの実施形態では、デジタル回路又は混合信号集積回路は、アナログ-デジタル変換器(ADC)を含み、これは、デジタル回路又は混合信号集積回路によって信号が処理され得るように、インテロゲータから放出される超音波に符号化されたアナログ信号を変換することができる。デジタル回路又は混合信号集積回路は、例えば組織を刺激するための電気パルスを生成するように、電力回路を動作させることもできる。いくつかの実施形態では、デジタル回路又は混合信号集積回路は、インテロゲータによって送信された超音波に符号化されたトリガ信号を受信し、そのトリガ信号に応答して電気パルスを放電するように電力回路を動作させる。
【0117】
いくつかの実施形態では、無線通信システムは、1つ、2つ、又は3つ以上の超音波変換器などの1つ以上の超音波変換器を含む。いくつかの実施形態では、無線通信システムは、第1の偏波軸を有する第1の超音波変換器と、第2の偏波軸を有する第2の超音波変換器とを含み、ここで第2の超音波変換器は第2の偏波軸が第1の偏波軸と直交するように配置され、第1の超音波変換器及び第2の超音波変換器は、装置に電力を供給し超音波後方散乱を放出する超音波を受信するように構成される。いくつかの実施形態では、無線通信システムは、第1の偏波軸を有する第1の超音波変換器と、第2の偏波軸を有する第2の超音波変換器と、第3の偏波軸を有する第3の超音波変換器とを含み、第2の超音波変換器は、第2の偏波軸が第1の偏波軸及び第3の偏波軸に直交するように配置され、第3の超音波変換器は、第3の偏波軸が第1の偏波及び第2の偏波軸に直交するように位置決めされ、第1の超音波変換器及び第2の超音波変換器は、装置に電力を供給し超音波後方散乱を放出する超音波を受信するように構成される。図2は、2つの直交して配置された超音波変換器を含む装置の本体のための基板組立体を示す。この基板組立体は、プリント回路基板などの回路基板202と、コンデンサ206を含む電力回路である集積回路204とを含む。本体は、集積回路208に電気的に接続された第1の超音波変換器208と、集積回路204に電気的に接続された第2の超音波変換器210とをさらに含む。第1の超音波変換器208は第1の偏波軸212を含み、第2の超音波変換器210は第2の偏波軸214を含む。第1の超音波変換器208及び第2の超音波変換器は、第1の偏波軸212が第2の偏波軸214に直交するように配置される。
【0118】
超音波変換器は、無線通信システムに含まれる場合、容量型微細加工超音波変換器(CMUT)若しくは圧電微細加工超音波変換器(PMUT)などの微細加工超音波変換器とすることができ、又はバルク圧電変換器とすることができる。バルク圧電変換器は、結晶、セラミック、又はポリマーなどの任意の天然又は合成材料とすることができる。例示的なバルク圧電変換器データは、チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、酸化亜鉛(ZO)、窒化アルミニウム(AlN)、水晶、ベルリナイト(AlPO)、トパズ、ランガサイト(LaGaSiO14)、オルトリン酸ガリウム(GaPO)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)、ニオブ酸カリウム(KNbO)、タングステン酸ナトリウム(NaWo)、ビスマスフェライト(BiFeO)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、及びニオブ酸鉛マグネシウム-チタン酸鉛(PMN-PT)を含む。
【0119】
いくつかの実施形態では、バルク圧電変換器はほぼ立方体(すなわち、約1:1:1(長さ:幅:高さ)のアスペクト比)である。いくつかの実施形態では、圧電変換器は、長さ又は幅アスペクトの何れかにおいて、約7:5:1以上、又は約10:10:1以上など、約5:5:1以上のアスペクト比を有する板状である。いくつかの実施形態では、バルク圧電変換器は、約3:1:1以上のアスペクト比で長く狭く、その最長寸法は超音波後方散乱波の方向(すなわち、分極軸)に整列される。いくつかの実施形態では、バルク圧電変換器の1寸法は、変換器の駆動周波数又は共振周波数に対応する波長(λ)の1/2に等しい。この共振周波数において、変換器の何れかの面に衝突する超音波は、逆位相に達するために180°の位相シフトを受け、2つの面の間で最大の変位を引き起こすだろう。いくつかの実施形態では、圧電変換器の高さは(約40μm~約400μm、約100μm~約250μm、約250μm~約500μm、又は約500μm~約1000μmなど)約10μm~約1000μmである。いくつかの実施形態では、圧電変換器の高さは(約4mm以下、約3mm以下、約2mm以下、約1mm以下、約500μm以下、約400μm以下、250μm以下、約100μm以下、又は約40μm以下など)約5mm以下である。いくつかの実施形態では、圧電変換器の高さは、長さが(約40μm以上、約100μm以上、約250μm以上、約400μm以上、約500μm以上、約1mm以上、約2mm以上、約3mm以上、又は約4mm以上など)約20μm以上である。いくつかの実施形態では、超音波変換器は、最長寸法において(約4mm以下、約3mm以下、約2mm以下、約1mm以下、約500μm以下、約400μm以下、250μm以下、約100μm以下、又は約40μm以下など)約5mm以下の長さを有する。いくつかの実施形態では、超音波変換器は、最長寸法において(約40μm以上、約100μm以上、約250μm以上、約400μm以上、約500μm以上、約1mm以上、約2mm以上、約3mm以上、又は約4mm以上など)約20μm以上の長さを有する。
【0120】
この超音波変換器は、無線通信システムに含まれる場合、集積回路との電気通信を可能にするために、2つの電極と接続することができる。第1の電極は変換器の第1の面に取り付けられ、第2の電極は変換器の第2の面に取り付けられ、ここで第1の面及び第2の面は、1つの寸法に沿って変換器の対向する側面である。いくつかの実施形態では、電極は、銀、金、白金、白金黒、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン(PEDOT))、導電性ポリマー(導電性PDMS又はポリイミドなど)、又はニッケルを含む。いくつかの実施形態では、変換器の電極間の軸が変換器の動きと直交する。
【0121】
埋め込み可能な装置は、エネルギーを無線で受信し、そのエネルギーを電気エネルギーに変換するように構成されてもよく、この電気エネルギーは、装置に電力を供給するために使用されてもよい。無線通信システムがエネルギーを無線受信するために使用されてもよく、別個のシステムがエネルギーを受信するように構成されてもよい。例えば、超音波変換器(無線通信システム内に収容される超音波変換器又は異なる超音波変換器であってもよい)は超音波を受信し、その超音波からのエネルギーを電気エネルギーに変換するように構成することができる。いくつかの実施形態では、RFアンテナ(無線通信システム内に包含されるRFアンテナ又は異なるRFアンテナであってもよい)はRF波を受信し、そのRF波からのエネルギーを電気エネルギーに変換するように構成される。電気エネルギーは、装置に電力を供給するために集積回路に送信される。電気エネルギーが装置に直接電力を供給してもよく、集積回路が後の使用のためにエネルギーを蓄積するために電力回路を動作させてもよい。
【0122】
いくつかの実施形態では、集積回路は、エネルギー蓄積回路を含むことのできる電力回路を含む。エネルギー蓄積回路は、蓄電池、又は1つ以上のコンデンサなどの代替エネルギー蓄積装置であってもよい。埋め込み可能な装置は好ましくは無電池であり、代わりに、1つ以上のコンデンサに依存してもよい。一例として、埋め込み可能な装置が(例えば、無線通信システムを通して)受信した超音波又は高周波からのエネルギーは、電流に変換され、エネルギー蓄積回路に蓄積され得る。このエネルギーは、デジタル回路、変調回路、又は1つ以上の増幅器に電力を供給するなど、埋め込み型装置を動作させるために使用することができ、又は組織を刺激するために使用される電気パルスを生成するために使用することができる。いくつかの実施形態では、電力回路は例えば、整流器及び/又はチャージポンプをさらに含む。
【0123】
集積回路は、神経によって伝達される電気生理学的信号を検出すよう、又は神経に電気パルスを放出するように構成された装置の2つ以上の電極を動作させるように構成されてもよく、この電極のうちの少なくとも1つは神経カフ上に含まれる。電極は神経カフ上、装置の本体上、又はその両方に配置されてもよい(例えば、1つ以上の電極が装置の本体上にあってもよく、1つ以上の電極が神経カフ上にあってもよい)。いくつかの実施形態では、本体のハウジングが電極として動作する。例えば、装置が神経カフ上に1つ以上の作用電極を含んでもよく、ハウジングが対電極として構成されてもよい。したがって、いくつかの実施形態では、装置のハウジングが集積回路に電気的に接続される。神経カフ上の1つ以上の電極は、例えば1つ以上のフィードスルーを介して、集積回路に電気的に接続される。
【0124】
いくつかの実施形態では、埋め込み型装置が、生理学的信号を検出するように構成された1つ以上のセンサを含む。このセンサは、例えば装置の本体の一部として、又は神経カフ上に含まれてもよい。このセンサは、温度、酸素濃度、pH、(グルコースなどの)検体、歪み、又は圧力などの生理学的信号を検出するように構成される。生理学的信号の変動はインピーダンスを変調し、次に、集積回路に電気的に接続される検出回路、又は集積回路の一部を介して流れる電流を変調する。埋め込み型装置は、同じ生理学的信号又は異なる生理学的信号を検出する場合のある(2、3、4、5つ又はそれ以上など、)1つ以上のセンサを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、埋め込み型装置が10、9、8、7、6、又は5つ以下のセンサを備える。例えば、いくつかの実施形態では、埋め込み型装置は、温度を検出するように構成される第1のセンサと、酸素を検出するように構成される第2のセンサとを含む。両方の生理学的信号の変化は無線通信システムによって放出される後方散乱波で符号化することができ、この後方散乱波は、外部コンピューティングシステム(インテロゲータなど)によって解読することができる。
【0125】
埋め込み可能な装置の本体は、神経カフに、例えば、螺旋状神経カフの外面に取り付けられる。いくつかの実施形態では、この本体は、神経カフの末端、又は神経カフの中央部分に取り付けられる。必要に応じて、ハンドル部は、神経カフに取り付けられ、身体に近接する位置に取り付けられてもよい。いくつかの実施形態では、埋め込み型装置は、神経カフに取り付けられた身体に近接する位置で螺旋状神経カフに取り付けられたハンドル部と、神経カフの端部などの末端の位置で神経カフに取り付けられた第2のハンドル部とを含む。螺旋状神経カフに取り付けられた埋め込み可能な装置本体の例が、図7D、7E、7F、8C、及び9Cに示されている。いくつかの実施形態では、ハンドル部分が埋め込み型装置の本体に取り付けられる。
【0126】
埋め込み可能な装置の本体は接着剤(例えば、エポキシ、糊、セメント、はんだ、又は他の結合剤)、1つ以上の留め具(例えば、ステープル、ねじ、ボルト、クランプ、リベット、ピン、ロッドなど)によって、又は埋め込み後に神経カフから分離しないことを確実にするために神経カフに本体をしっかりと取り付けるための任意の他の適切な手段によって、神経カフに取り付けられてもよい。図3は、留め具(306及び308)を使用して神経カフ304に取り付けられた例示的な本体302を示す。いくつかの実施形態では、この本体は細長い形状を有しており、本体の端部(すなわち、取り付け端部)は神経カフに取り付けられ、その反対側の端部(すなわち、延長端部)は神経カフから延びる(例えば、図7Eの神経カフに取り付けられた本体を参照されたい)。本体は、神経カフの外面に直接(すなわち、本体と神経カフとの間にリードを介在させることなく)取り付けられる。
【0127】
本体はハウジングを含むことができ、このハウジングは基部、1つ以上の側壁、及び頂部を含むことができる。ハウジングは、任意で導電性材料から作製され、神経により伝達された電気生理学的信号を検出するよう、又は神経に電気パルスを放出するように構成された埋め込み可能な装置の1つ以上の電極のうちの1つとして構成されてもよい。例えば、本体のハウジングは対電極として構成されてもよく、神経カフ上の1つ以上の電極は操作電極として構成されてもよい。ハウジングは、生体不活性金属(例えば、鋼又はチタン)又は生体不活性セラミック(例えば、チタニア又はアルミナ)などの生体不活性材料から作成される。このハウジングは、好ましくは密閉されており、体液が本体に入るのを防止する。
【0128】
図4を参照すると、音響窓406は、本体のハウジング402に、例えばハウジングの上部に含まれ得る。この音響窓は、音響波が埋め込み可能な装置の本体内の1つ以上の超音波変換器によって受信され得るように、音響波がハウジングを貫通することを可能にする、より薄い材料(箔など)である。いくつかの実施形態では、ハウジングは、(又はハウジングの音響窓)は、超音波がハウジングを貫通することを可能にするために薄くあってもよく、例えば約75μm以下、約50μm以下、約25μm以下、約15μm以下、又は約10μm以下など、厚さが約100マイクロメートル(μm)以下である。いくつかの実施形態では、ハウジング(又はハウジングの音響窓)の厚さは、約5μm~約10μm、約10μm~約15μm、約15μm~約25μm、約25μm~約50μm、約50μm~約75μm、又は約75μm~約100μmの厚さである。
【0129】
ハウジング402は、ポリマー又はオイル(シリコーンオイルなど)などの音響伝導性材料で充填されてもよい。この素材はハウジングの外部の組織とハウジング内の組織との間の音響インピーダンス不整合を低減するために、ハウジング内の空きスペースを埋めることができる。したがって、装置の本体は、好ましくは空気がない、又は真空である。ハウジングに、例えばハウジングの側壁(図4参照)に、ハウジングを音響伝導性材料で充填することを可能にするために、ポート404をハウジングに含めることができる。ハウジングが材料で充填されると、埋め込み後の材料の漏れを回避するために、ポートを密閉することができる。
【0130】
埋め込み可能な装置のハウジングは比較的小さく、これは、埋め込み可能な装置にしばしば関連付けられる組織炎症を制限する一方で、快適かつ長期間の埋め込みを可能にする。いくつかの実施形態では、装置のハウジングの最長寸法は、長さが約8mm以下、約7mm以下、約6m以下、約5mm以下、約4mm以下、約3mm以下、約2mm以下、約1mm以下、約0.5mm以下、約0.3mm以下、約0.1mm以下である。いくつかの実施形態では、装置のハウジングの最長寸法は、装置の最長寸法において、約0.05mm以上、約0.1mm以上、約0.3mm以上、約0.5mm以上、約1mm以上、約2mm以上、約3mm以上、約4mm以上、約5mm以上、約6mm以上、又は約7mm以上である。いくつかの実施形態では、装置のハウジングの最長寸法は、長さ約0.3mm~約8mm、長さ約1mm~約7mm、長さ約2mm~約6mm、又は長さ約3mm~約5mmである。いくつかの実施態様では、埋め込み型装置のハウジングは約10mm以下(約8mm以下、6mm以下、4mm以下、又は3mm以下など)の容積を有する。いくつかの実施態様では、埋め込み可能な装置のハウジングは、約0.5mm~約8mm、約1mm~約7mm、約2mm~約6mm、又は約3mm~約5mmの容積を有する。
【0131】
ハウジング(ハウジングの底部など)は貫通ポートを含むことができ、この貫通ポートは神経カフの貫通ポートと整列してもよい。フィードスルーは、神経カフの1つ以上の電極をハウジング内の本体の構成要素に電気的に接続することができる。例えば、このフィードスルーは、集積回路及び/又は装置本体の無線通信システムに電気的に接続されてもよい。図5Aはフィードスルーポート504を有するハウジング502を示し、図5Bは、身体構成要素を神経カフの1つ以上の電極に電気的に接続するように配置されたフィードスルー506を有するハウジングを示す。図5Cは例示的な装置の断面図を示し、ここで、フィードスルー506は、神経カフ上の電極508を、本体ハウジング502内に配置された電子回路510(集積回路、無線通信システムなど)に電子的に接続する。このフィードスルーは例えば、(銀、銅、金、白金、白金黒、又はニッケルを含む金属などの)金属、サファイア、又は導電性セラミック(例えば、インジウムスズ酸化物(ITO))であってもよい。電極は、はんだ付け、レーザ溶接、又はフィードスルーを電極に圧着するなどの任意の適切な手段を使用してフィードスルーと接続されてもよい。
【0132】
いくつかの実施形態では、埋め込み型装置が被験者に埋め込まれる。被験者は例えば、哺乳動物とすることができる。いくつかの実施形態では、この被験者は、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、サル、又はげっ歯類(ネズミ又はマウスなど)である。神経カフは、これらの動物又は他の動物のいずれかの体内で内臓神経を少なくとも部分的に包むように構成されてもよい。
【0133】
[埋め込み型装置の神経カフ]
いくつかの実施形態では、埋め込み可能な装置は、装置を胸部の内蔵神経に取り付け、1つ以上の電極のうちの少なくとも1つを大内蔵神経と電気的に連絡するように位置するよう寸法決めされ構成された神経カフを含むことができる。いくつかの実施形態では、胸部の内蔵神経が大内臓神経、小内臓神経、又は最小内臓神経である。いくつかの実施形態では、大内臓神経カフが螺旋状神経カフである。
【0134】
神経カフは、埋め込み型装置を胸部の内蔵神経上の所定の位置に保持する。いくつかの実施形態では、神経カフは、神経上での埋め込み型装置の何らかの回転運動を可能にする。いくつかの実施形態では、神経カフは、神経に内向きの圧力を働かせることによって胸部の内蔵神経を把持する。神経カフによって働く内向きの圧力の量は、神経カフのバネ定数に加えて、神経カフのサイズ及び曲率に基づいて決定することができる。この内向きの圧力は、挿入後に組織が治癒する間、埋め込み型装置を所定の位置に保持するのに十分であるべきであるが、脚部に接触する神経上膜又は血管壁が損傷されるほど高くはないべきである。いくつかの実施形態では、神経への内向きの圧力は、約1MPa以下(約0.7MPa以下、約0.5MPa以下、又は約0.3MPa以下など)である。いくつかの実施形態では、神経への内向きの圧力は、約0.1MPaから約1MPa(約0.1MPaから約0.3MPa、約0.3MPaから約0.5MPa、約0.5MPaから約0.7MPa、又は約0.7MPaから約1MPaなど)である。
【0135】
神経カフは、神経を含む糸状組織の周りを少なくとも部分的に包むように構成された螺旋状基板と、その基板の長さに沿って配置された1つ以上の電極とを含む。神経カフは任意で、1つ以上のハンドル部、例えば、基板の端部に取り付けられたハンドル部を含んでもよい。いくつかの実施形態では、神経カフが螺旋状神経カフである。
【0136】
神経カフの内径は、被験者の種又は被験者内の他の解剖学的差異(例えば、特定の被験者内の神経のサイズ。例として、その内径は、直径で約0.5mm~約5mm(約0.5mm~約1mm、約1mm~約2mm、約2mm~約3mm、約3mm~約4mm、又は約4mm~約5mmなど)であり得る)に応じて異なり得る、糸状組織の直径に基づいて選択されてもよい。
【0137】
神経カフは、少なくとも1回転だけ神経の周りを包むように構成されてもよい。例えば、神経カフは、約1~約1.3回転、約1.3~約1.7回転、約1.7~約2回転、約2~約2.5回転、約2.5~約3回転、又は約3~約4回転など、約1~約4回転だけ神経の周りを包むことができる。いくつかの実施形態では、神経カフは、約1.5回転だけ神経の周りを包むように構成される。
【0138】
いくつかの実施形態では、神経カフの基板は、螺旋形状に巻かれた細長い材料である。螺旋状基板は、実質的に平坦な内面及び/又は実質的に平坦な外面を有していてもよい。この基板の幅は、実質的に均一であってもよく、任意で、テーパ状又は丸みを帯びた端部を有する可能性がある。基板の幅は縁部を定義し、縁部は神経カフが弛緩位置にあるとき、基板が螺旋形状に巻きつくにつれて、互いに接触してもよく、接触しなくてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、ギャップは、基板の回転を分離してもしなくてもよい。いくつかの実施形態では、基板は、内面、基板の第1の縁部、及び基板の第2の縁部を定義する幅を有しており、ここで第1の縁部の少なくとも一部は、神経カフが弛緩位置にある場合に第2の縁部の少なくとも一部と接触する。いくつかの実施形態では、基板は、内面、基板の第1の縁部、及び基板の第2の縁部を定義する幅を有しており、ここで第1の縁部は、神経カフが弛緩位置にある場合に第2の縁部に接触しない。
【0139】
神経カフの基板は、生体適合性及び/又はエラストマー材料であり得る絶縁材から作製される。例示的な基板材料にはシリコーン、シリコーンゴム、ポリジメチルシオロキサン(PDMS)、ウレタンポリマー、ポリ(p-キシリレン)ポリマー(PARYLENE(登録商標)の商品名で販売されているポリ(p-キシリレン)ポリマーなど)、又はポリイミドが含まれるが、これらに限定されない。
【0140】
いくつかの実施形態では、神経カフの基板は2つ以上の層を含んでもよく、これらの層は同じ材料であっても、異なる材料であってもよい。これらの層は神経カフの内面を形成し、線維組織に接触する内層と、神経カフの外面を形成するものを形成する外層とを含むことができる。導電性材料は、神経カフの電極を形成することができる内層と外層との間に配置することができる。例えば、内層は電極を規定する導電性材料を露出させるために、内面上に1つ以上の開口部を含むことができる。別個の内層及び外層は、基板の螺旋形状をさらに規定することができる。例えば、内層は、螺旋状神経カフが屈曲構成にあるときに外層よりも高い張力下にあってもよく、これは螺旋状神経カフが弛緩構成にあるときに基板を内側に強制的に丸くさせる。
【0141】
神経カフの幅は神経カフの長さ(すなわち、神経カフの両端間の螺旋の中央を走る軸に沿った最大距離)、基板の回転数、及び(もしあれば)基板回転間のギャップの大きさに依存することができる。いくつかの実施形態では、神経カフの長さは、約4mm~約20mm(約4mm~約7mm、約7m~約10mm、約10mm~約13mm、約13mm~約16mm、又は約16mm~約20mmなど)である。いくつかの実施形態では、基板の幅(又は内側幅)は、約2mm~約8mm(約2mm~約4mm、約4mm~約6mm、又は約6mm~約8mmなど)である。
【0142】
神経カフは可撓であってもよく、埋め込み時に神経カフの操作を可能にする。例えばいくつかの実施形態では、螺旋状神経カフは、螺旋状神経カフを少なくとも部分的に巻き戻すことによって屈曲位置に構成し、螺旋構成の螺旋状神経カフを用いて弛緩位置に構成することができる。図6Aは、屈曲位置にある例示的な螺旋状神経カフを示し、ここでは神経カフの右巻き螺旋部分及び左巻き螺旋部分の両方が一緒に接合され、右巻き螺旋部分及び左巻き螺旋部分のいずれかの端部に一方向に取り付けられた第1のハンドル部及び第2のハンドル部を引っ張り、接合部材に取り付けられた第3のハンドル部を反対方向に引っ張ることによって、部分的に巻き戻される。図6Bは、弛緩位置にある、図6Aに示されるのと同じ螺旋状神経カフを示す。
【0143】
神経カフには、右巻き螺旋部分、左巻き螺旋部分、又は右巻き螺旋部分及び左巻き螺旋部分の両方が含まれることがある。例えば、いくつかの実施形態では、神経カフは、直接的に、又は接続部材(線形、湾曲状、又はヒンジ式であってもよい)を介して、左巻き螺旋部分に接合された右巻き螺旋部分を含んでもよい。
【0144】
神経カフの1つ以上の電極は、神経カフ基板の内側表面上に配置されてもよく、コーティングされなくてもよく、又は導電性材料でコーティングされてもよい(例えば、電極の電気特性を改善するためにポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)ポリマー又は他の導電性ポリマー若しくは金属で電気メッキされてもよい)。いくつかの実施形態では、1つ以上の電極は点電極である。いくつかの実施形態では、1つ以上の電極は細長くしてもよく、例えば基板の長さに沿って配置することができる。この電極は、基板の端部の前、基板の端部、又は基板の端部を越えて終端することができる。1つ以上の電極は神経カフ上のフィードスルーに接続され得、これは電極が基板の外面又は神経カフの外面に取り付けられた本体に電気的に接続されることを可能にする。
【0145】
神経カフは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個又はそれ以上の電極など、1つ以上の電極を含む。いくつかの実施形態では、この電極のうちの1つ以上は、神経に電気パルスを放出するように構成される。いくつかの実施形態では、神経カフは、神経に電気パルスを放出するように構成された1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個以上の電極を含む。いくつかの実施形態では、この電極のうちの1つ以上は、神経によって伝達される電気生理学的信号を検出するように構成される。いくつかの実施形態では、神経カフは、神経によって伝達される電気生理学的信号を検出するように構成された1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個以上の電極を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の電極は神経に電気パルスを放出するように構成され、この1つ以上の電極は、神経によって伝達される電気生理学的信号を検出するように構成される。いくつかの実施形態では、電気パルスを放出するように構成された電極は、電気生理学的信号を検出するように構成された電極よりも幅が広い。神経カフの電極(2つ以上の電極を有する)は、神経カフの長さに沿って、互いに並んで、又は異なる方向に配置されてもよい。
【0146】
任意のハンドル部は、外科用把持ツール(例えば、鉗子、フック、又は他の把持若しくはグリップ器具)によって把持されるように構成され、埋め込み中に神経カフを操作するために有用であり得る。このハンドル部は、基板から延びる、又は基板内に部分的に埋め込まれてもよく、ハンドル部の把持及び神経カフの操作を容易にするために、基板よりも可撓及び/又は薄くてもよい。ハンドル部は、例えばハンドル部内に、又はハンドル部のいずれかの端部が基板に取り付けられることによってループを形成することによって、ループを含むことができる。いくつかの実施形態では、ハンドル部は可撓性フィラメント(糸、紐、コード、縫合糸、又はワイヤなど)を備え、これは、被験者内に埋め込まれると任意で生分解性となる。いくつかの実施形態では、ハンドル部は、ポリグリコリド、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、又はそれらのコポリマーなどの生体吸収性材料を含む。
【0147】
任意のハンドル部は神経カフの端部に近接して(例えば、神経カフの先端で)神経カフに取り付けられてもよい。神経カフは、任意で1つより多いハンドル部を含む。例えば、基板は、基板の反対側の端部に近接する追加のハンドル部、及び/又は基板の中間部分に近接する追加のハンドル部を含んでもよい。神経カフが本体に取り付けられる場合、本明細書でさらに議論されるように、ハンドル部のうちの1つは、本体に対して近位であっても、本体に対して遠位であってもよい。例として、いくつかの実施形態では、本体は神経カフの第1の端部に近位に取り付けられ、ハンドル部は、螺旋状神経カフの第2の端部に近位に取り付けられる。いくつかの実施形態では、本体は神経カフの第1の端部の近位に取り付けられ、ハンドル部は神経カフの第1の端部の近位に取り付けられる。いくつかの実施形態では本体が神経カフの第1の端部に近位に取り付けられ、第1のハンドル部は本体に近位に取り付けられ、第2のハンドル部は神経カフの第2の端部に近位に取り付けられる。いくつかの実施形態では、本体は神経カフの中間部分に取り付けられ、第1のハンドル部は神経カフの第1の端部に近位に取り付けられ、第2のハンドル部は本体に近位に取り付けられ、任意で、第3のハンドル部は神経カフの第2の端部に近位に取り付けられる。
【0148】
任意で、神経カフに取り付けられた2つ以上のハンドル部が互いに接合される。例えば、第1のハンドル部は螺旋状神経カフの第1の端部に近位に取り付けられた第1の端部を含み、第2のハンドル部は神経カフの第2の端部に近位に取り付けられた第1の端部を含み、第1のハンドル部の第2の端部及び第2のハンドル部の第2の端部は互いに接合される。
【0149】
図7Aは、任意で本明細書に記載される埋め込み可能な装置の一部となり得る、例示的な螺旋状神経カフを示す。図7Bは、図7Aに示される神経カフを異なる角度から示す。神経カフ700は、外層704及び内層706を含む螺旋状基板702を含む。神経カフは約1.5回転だけ神経の周りを包むように構成され、ギャップ714は基板の回転を分離する。基板702は左巻き螺旋として構成されるが、右巻き螺旋状基板を有する実施形態も考えられる。細長い電極708は、螺旋状基板702の内面に配置される。細長い電極708はフィードスルーポート710からかかり、螺旋状基板702の端部712の前の位置で終端する。電極708は外層704と内層706との間にあり、内層106は、電極708を神経カフ700の内面に露出させる細長いカットアウトを含む。代替的な実施形態では、電極が内層706の上に配置される。図7D及び図7Eは、ハウジング722を有する本体に取り付けられた図7A及び図7Bの螺旋状神経カフを示す。ハウジング722は、螺旋状神経カフ基板702の外面に取り付けられる。フィードスルー724は、細長い電極708を本体に電気的に接続するフィードスルーポート710を通過する。
【0150】
図7Cは、図7A及び図7Bに示される神経カフと同様の例示的な螺旋状神経カフを示すが、基板702の第1の端部712に近接する螺旋状基板702に取り付けられた第1のハンドル部718と、基板702の第2の端部716に近接する螺旋状基板702に取り付けられた第2のハンドル部720とをさらに含む。第1のハンドル部718及び第2のハンドル部720はそれぞれ、ループを形成する可撓性フィラメントであり、フィラメントの各端部は基板702に取り付けられる。フィラメントの端部は、内層706と外層704との間の基板702内に埋め込まれている。図7Fは、ハウジング722を有する本体に取り付けられた図7Cの螺旋状神経カフを示す。ハウジング722は、螺旋状神経カフ基板702の外面に取り付けられる。
【0151】
図8A及び図8Bは、それぞれ、螺旋状神経カフ800の別の実施形態の正面視点及び裏面視点を示す。神経カフ800は、接続部材808を介して互いに接合された左巻き螺旋セグメント804及び右巻き螺旋セグメント806を有する基板802を含む。図示された神経カフ800の接続部材808は、神経の周りを360度回転一回よりもわずかに少ない回転をする、基板802の湾曲した細長い部分である。フィードスルーポート810は接続部材808に沿って配置され、これにより、本体が、基板の内面に配置された電極に電気的に接続されることが可能になる。基板802は外層812及び内層814を含み、外層812と内層814との間に導電性中間層816を挟む。螺旋状神経カフは、左巻き螺旋セグメント204で基板802の内面上の神経によって伝達される電気生理学的信号を検出するように構成される3つの並列の細長い電極(818、820、及び822)と、右巻き螺旋セグメント206で基板802の内面上の神経に電気パルスを放出するように構成される第4の細長い電極824とを含む。電極は、内層814の開口部によって画定される。図示の実施形態では、第4の細長い電極824は電極818、820、及び822よりも幅広である。図8Cは、ハウジング826を有する本体に取り付けられた図8A及び図8Bの螺旋状神経カフを示す。ハウジング826は、接続部材808において螺旋状神経カフ基板802の外面に取り付けられる。フィードスルー828は、電極818、820、822、及び824を本体に電気的に接続するフィードスルーポート810を通過する。
【0152】
図9A及び図9Bは、それぞれ、螺旋状神経カフ900の別の実施形態の正面視点及び底面視点を示す。神経カフ900は、接続部材908を介して互いに接合された左巻き螺旋セグメント904及び右巻き螺旋セグメント906を有する基板902を含む。図示された神経カフ900の接続部材908は、基板902の湾曲した細長い部分であり、図8A及び図8Bに示された神経カフの接続部材よりもより短い。フィードスルーポート910は接続部材908に沿って配置され、これにより、本体が、基板の内面に配置された電極に電気的に接続されることが可能になる。図示されていないカフ900の基板302は、基板902の内面に沿って配置された電極を有する単一層を含む。螺旋状神経カフは、左巻き螺旋セグメント904における基板902の内面上の3つの細長い電極(912、914、及び916)と、右巻き螺旋セグメント906における基板902の内面上の第4の細長い電極918とを含む。図9Cは、ハウジング920を有する本体に取り付けられた図9A及び図9Bの螺旋状神経カフを示す。ハウジング920は、螺旋状神経カフ基板902の外面に取り付けられる。
【0153】
図10A及び図10Bは、それぞれ、螺旋状神経カフ1000の別の実施形態の下面視点及び上面視点を示す。神経カフ1000は、接続部材1008を介して互いに接合された左巻き螺旋セグメント1004及び右巻き螺旋セグメント1006を有する基板1002を含む。図示された神経カフ1000の接続部材1008は、細長く直線状の接続部材である。フィードスルーポート1010は接続部材1008に沿って配置され、これにより、本体が、基板の内面に配置された電極に電気的に接続されることが可能になる。図示されていないカフ1000の基板1002は、基板1002の内面に沿って配置された電極を有する単一層を含む。螺旋状神経カフは、左巻き螺旋セグメント1004における基板1002の内面上に3つの並列の細長い電極(1012、1014、及び1016)を含み、神経カフ1000の端部1018を越えて延びる。図示の実施形態では、接合端部1020で互いに接合されている電極1012、1014、及び1016。この神経カフはさらに、右巻き螺旋セグメント1006における基板1002の内面上に第4の細長い電極1022を含み、これは、神経カフ1000の反対側の端部1024を越えて延びる。
【0154】
図11A及び図11Bは、それぞれ、螺旋状神経カフ1100の別の実施形態の下側視点及び上側視点を示す。神経カフ1100は、接続部材1108を介して互いに接合された第1の左巻き螺旋セグメント1104及び第2の左巻き螺旋セグメント1106を有する基板1102を含む。図示された神経カフ1100の接続部材1108は、細長く直線状の接続部材である。フィードスルーポート1110は接続部材1108に沿って配置され、これにより、本体が、基板の内面に配置された電極に電気的に接続されることが可能になる。図示されていないカフ1100の基板1102は、基板1102の内面に沿って配置された電極を有する単一層を含む。螺旋状神経カフは、第1の左巻き螺旋セグメント1104における基板1102の内面上に3つの並列の細長い電極(1112、1114、及び1116)を含み、神経カフ1100の端部1118を越えて延びる。この神経カフはさらに、第2の左巻き螺旋セグメント1106における基板1102の内面上に第4の細長い電極1120を含み、これは、神経カフ1100の反対側の端部1122を越えて延びる。
【0155】
[インテロゲータ]
インテロゲータなどの第2の装置は、埋め込み型装置に電力を供給する及び/又は動作させるために使用される超音波を使用して、1つ以上の埋め込み型装置と無線で通信することができる。例えば、インテロゲータは、埋め込み型装置に電気パルスを放射するように命令するトリガ信号などの、装置を動作させるための命令を符号化する超音波を送信することができる。インテロゲータは、埋め込み型装置によって送信された情報を符号化する、埋め込み型装置からの超音波後方散乱をさらに受信することができる。この情報は例えば、検出された電気生理学的パルス、埋め込み型装置によって放射された電気パルス、及び/又は測定された生理学的信号に関連する情報を含んでいてもよい。インテロゲータは、超音波送信機及び/又は超音波受信機として(又は超音波を代替的に送信又は受信するように構成することができるトランシーバとして)動作することができる1つ以上の超音波変換器を含む。1つ以上のこの変換器は変換器アレイとして配置することができ、インテロゲータは1つ以上の変換器アレイを任意に含むことができる。いくつかの実施形態では、超音波送信機能は、別個の装置上の超音波受信機能から分離される。すなわち、任意に、インテロゲータは、超音波を埋め込み可能な装置に送信する第1の装置と、埋め込み可能な装置から超音波後方散乱を受信する第2の装置とを備える。いくつかの実施形態では、アレイ内の変換器は、規則的な間隔、不規則な間隔を有する、又は疎に位置づけることができる。いくつかの実施形態では、アレイは可撓性である。いくつかの実施形態では、アレイは平面であり、いくつかの実施形態ではアレイは非平面である。
【0156】
例示的なインテロゲータが図12に示されている。図示されたインテロゲータは、複数の超音波変換器を有する変換器アレイを示す。いくつかの実施形態では、変換器アレイは、1個以上、2個以上、3個以上、5個以上、7個以上、10個以上、15個以上、20個以上、25個以上、50個以上、100個以上、250個以上、500個以上、1000個以上、2500個以上、5000個以上、又は10000個以上の変換器を含む。いくつかの実施形態では、変換器アレイは、100,000個以下、50,000個以下、25,000個以下、10,000個以下、5000個以下、2500個以下、1000個以下、500個以下、200個以下、150個以下、100個以下、90個以下、80個以下、70個以下、60個以下、50個以下、40個以下、30個以下、25個以下、20個以下、15個以下、10個以下、7個以下、又は5個以下の変換器を含む。変換器アレイは、例えば50個以上の超音波変換器画素を備えるチップとすることができる。
【0157】
図12に示されるインテロゲータは単一の変換器アレイを図示するが、このインテロゲータは1つ以上、2つ以上、又は3つ以上の別個のアレイを含むことができる。いくつかの実施形態では、インテロゲータは、(9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個の変換器アレイなど、)10個以下の変換器アレイを含む。この別個のアレイは例えば、被験者の異なる地点に位置づけることができ、同じ又は異なる埋め込み可能な装置と通信することができる。いくつかの実施形態では、アレイが埋め込み可能な装置の対向側に設置される。インテロゲータは、特定用途向け集積回路(ASIC)を含むことができ、ASICは、変換器アレイ内の各変換器のためのチャネルを含む。いくつかの実施形態では、チャネルが(「T/Rx」によって図12に示される)スイッチを含む。このスイッチは、代替的に、超音波を送信するか又は超音波を受信するように、チャネルに接続された変換器を構成することができる。このスイッチは、超音波受信回路を、より高電圧の超音波送信回路から分離することができる。
【0158】
いくつかの実施形態では、チャネルに接続された変換器は、超音波を受信するためだけに、又は超音波を送信するためだけに構成され、スイッチはチャネルから任意に省略される。チャネルは、送信された超音波を制御するように動作する遅延制御部を含むことができる。遅延制御部は例えば、位相シフト、時間遅延、パルス周波数及び/又は波形(振幅及び波長を含む)を制御することができる。遅延制御部は、超音波を送信するために変換器によって使用されるより高い電圧に遅延制御からの入力パルスをシフトする、レベルシフタに接続することができる。いくつかの実施形態では、各チャネルの波形及び周波数を表すデータが、「波テーブル」に格納され得る。これは、各チャネルの送信波形を異ならせることを可能にする。次いで、このデータを変換器アレイへの実際の送信信号へと「流れ」ださせるために、遅延制御及びレベルシフタを使用することができる。いくつかの実施形態では、各チャネルに対する送信波形は、マイクロコントローラ又は他のデジタルシステムの高速シリアル出力によって直接生成され、レベルシフタ又は高電圧増幅器を介して変換器素子に送られることができる。いくつかの実施形態では、ASICは、ASICに供給される第1の電圧を、チャネルに印加されるより高い第2の電圧に変換するために、チャージポンプ(図12に図示)を含む。チャネルは、遅延制御部を動作させるデジタルコントローラなどのコントローラによって制御することができる。
【0159】
超音波受信回路では、受信した超音波は変換器(受信モードに設定)によって電流に変換され、データ取り込み回路に送信される。いくつかの実施形態では、増幅器、アナログ-デジタル変換器(ADC)、可変利得増幅器、若しくは組織損失を補償する時間利得制御可変利得増幅器、及び/又は帯域通過フィルタが受信回路に含まれる。ASICは、(インテロゲータの着用可能な実施形態に好ましい)電池などの電源から電力を引き出すことができる。図12に図示される実施形態では、ASICに1.8Vの電源が供給され、これはチャージポンプによって32Vに増加されるが、任意の適切な電圧を使用することができる。いくつかの実施形態では、インテロゲータは、プロセッサと非一時的コンピュータ可読メモリとを含む。いくつかの実施形態では、上述のチャネルがT/Rxスイッチを含まず、代わりに、良好な飽和回復を有する低ノイズ増幅器の形態の高電圧Rx(受信器回路)を有する独立したTx(送信)及びRx(受信)を包含する。
【0160】
いくつかの実施形態では、T/Rx回路はサーキュレーターを含む。いくつかの実施形態では、変換器アレイがインテロゲータ送信/受信回路内の処理チャネルよりも多くの変換器素子を含み、マルチプレクサはパルスごとに送信素子の異なるセットを選択する。例えば、3:1マルチプレクサを介して192個の物理変換器素子に接続された64個の送信受信チャネルであって、64個の変換器素子のみが所与のパルス上でアクティブである。いくつかの実施形態では、インテロゲータは埋め込み型である。いくつかの実施形態では、インテロゲータは外部にある(すなわち、埋め込まれていない)。例として、外部インテロゲータは、着用可能であり得、ストラップ又は接着剤によって本体に固定されてもよい。別の例では、外部インテロゲータは、ワンドであり得、(医療専門家などの)ユーザに保持されてもよい。いくつかの実施形態では、インテロゲータは、縫合糸、単純な表面張力や、布ラップ、スリーブ、弾性バンドなどの衣類ベースの固定装置を介して、又は皮下固定によって本体に保持することができる。インテロゲータの変換器又は変換器アレイは、変換器の残りの部分とは別個に配置されてもよい。例えば、変換器アレイは、第1の位置(例えば、1つ以上の埋め込まれた装置の近位)で被験者の皮膚に固定され得、インテロゲータの残りは、第2の位置に配置されてよく、ワイヤは変換器又は変換器アレイをインテロゲータの残りに繋ぐ。
【0161】
変換器アレイの具体的な設計は、アレイ内の個々の変換器の所望の貫通深さ、開口サイズ、及びサイズに依存する。変換器アレイのレイリー距離Rは、次のように計算される。
【数1】
ここで、Dは開口部のサイズであり、λは伝播媒体(すなわち組織)内の超音波の波長である。当技術分野で理解されるように、レイリー距離は、アレイによって放射されるビームが完全に形成される距離である。すなわち、受信電力を最大にするために、その圧力場は、レイリー距離での自然焦点に収束する。したがって、いくつかの実施形態では、埋め込み可能な装置は、変換器アレイからレイリー距離とほぼ同じ距離にある。
【0162】
変換器アレイ内の個々の変換器は、ビームフォーミング又はビームステアリングのプロセスを通して、レイリー距離と、変換器アレイによって放出される超音波のビームの位置とを制御するように調整することができる。線形拘束最小分散(LCMV)ビームフォーミングなどの技術は、複数の埋め込み可能な装置を外部の超音波トランシーバと通信させるために使用することができる。例えば、Bertrandらの、Beamforming Approaches for Untethered、Ultrasonic Neural Dust Motes for Cortical Recording(a Simulation Study、IEEE EMBC,2014年8月)を参照されたい。いくつかの実施形態では、ビームステアリングは、アレイ内の変換器によって放射される超音波の電力又は位相を調節することによって行われる。
【0163】
いくつかの実施形態では、インテロゲータは、1つ以上の変換器を使用して超音波をビームステアリングするための命令、1つ以上の埋め込み可能な装置の相対位置を決定するための命令、1つ以上の埋め込み可能な装置の相対移動をモニターするための命令、1つ以上の埋め込み可能な装置の相対移動を記録するための命令、及び複数の埋め込み可能な装置からの後方散乱を逆畳み込みするための命令のうちの1つ以上を含む。
【0164】
任意に、インテロゲータは、モバイル装置(例えば、スマートフォン又はテーブル)などの別個のコンピュータシステムを使用して制御される。コンピュータシステムは、例えばネットワーク接続、無線(RF)接続、又はBluetooth(登録商標)を介して、インテロゲータに無線通信することができる。コンピュータシステムは例えば、インテロゲータをオン又はオフしてもよく、又はインテロゲータによって受信された超音波に符号化された情報を分析してもよい。
【0165】
[埋め込み型装置とインテロゲータとの間の通信]
埋め込み型装置とインテロゲータとは、超音波を使用して互いに無線で通信する。埋め込み型装置は、埋め込み型装置上の1つ以上の超音波変換器を介してインテロゲータから超音波を受信し、この超音波は、埋め込み型装置を動作させるための命令を符号化することができる。埋め込み型装置上の超音波変換器の振動は、この変換器の電気端子間に電圧を生成し、集積回路を含む装置を通して電流が流れる。電流はエネルギー蓄積回路を充電するために使用することができ、このエネルギー蓄積回路は、例えばトリガ信号を受信した後に電気パルスを放出するために使用されるエネルギーを格納することができる。このトリガ信号は、インテロゲータから埋め込み型装置に送信され、電気パルスが放射されるべきであるということを知らせることができる。いくつかの実施形態では、トリガ信号は、周波数、振幅、パルス長、又はパルス形状(例えば、交流、直流、又はパルスパターン)など、放出されるべき電気パルスに関する情報を含む。デジタル回路はトリガ信号を解読し、パルスを放出するために電極及び電気蓄積回路を動作させることができる。
【0166】
いくつかの実施形態では、超音波後方散乱が埋め込み型装置から放射され、これは、埋め込み型装置によって放射された電気パルス、又は検出された生理学的信号に関する情報を符号化することができる。例えば、超音波後方散乱は、電気パルスが放出されたことを検証する検証信号を符号化することができる。いくつかの実施形態では、埋め込み型装置が電気生理学的信号を検出するように構成され、検出された電気生理学的信号に関する情報は超音波後方散乱によってインテロゲータに送信されることができる。超音波後方散乱で信号を符号化するために、埋め込み型装置の超音波変換器を通して流れる電流は、検出された電気生理学的信号又は測定された生理学的信号などの符号化された情報の関数として変調される。いくつかの実施形態では、電流の変調はアナログ信号であり得、これは、例えば、検出された神経活性によって直接変調され得る。いくつかの実施形態では、電流の変調はデジタル化された信号を符号化し、これは集積回路内のデジタル回路によって制御され得る。後方散乱は、外部の超音波トランシーバ(初期超音波を送信した外部の超音波トランシーバと同じであっても、異なっていてもよい)によって受信される。したがって、電気生理学的信号からの情報は、後方散乱超音波の振幅、周波数、又は位相の変化によって符号化することができる。
【0167】
図13は、埋め込み型装置と通信するインテロゲータを示す。外部の超音波トランシーバは、組織を通過することができる超音波(「搬送波」)を放出する。搬送波は、小型化された超音波変換器(例えば、小型化されたバルク圧電変換器、PUMT、又はCMUT)に機械的振動を生じさせる。超音波変換器の両端に電圧が生成され、これは、埋め込み可能な装置上の集積回路を通して流れる電流を付与する。超音波変換器を通して流れる電流は、埋め込み可能な装置上の変換器に、後方散乱超音波を放出させる。いくつかの実施形態では、集積回路は、情報を符号化するために超音波変換器を通して流れる電流を変調し、結果としてもたらされた超音波後方散乱波が情報を符号化する。後方散乱波は、インテロゲータによって検出することができ、超音波後方散乱に符号化された情報を解釈するために分析することができる。
【0168】
インテロゲータと埋め込み可能な装置との間の通信は、超音波を送受信するパルスエコー法を使用することができる。パルスエコー法では、インテロゲータが所定の周波数で一連のインテロゲーションパルスを送信し、次いで、埋め込まれた装置から後方散乱エコーを受信する。いくつかの実施形態では、このパルスは、正方形、長方形、三角形、鋸歯状、又は正弦波である。いくつかの実施形態では、出力されるパルスは、2レベル(GND及びPOS)、3レベル(GND、NEG、POS)、5レベル、又は任意の他の複数レベル(例えば、24ビットDACを使用する場合)とすることができる。いくつかの実施形態では、パルスは、動作中にインテロゲータによって連続的に送信される。いくつかの実施形態では、パルスがインテロゲータによって連続的に送信されるとき、そのインテロゲータ上の変換器の一部は超音波を受信するように構成され、そのインテロゲータ上の変換器の一部は超音波を送信するように構成される。超音波を受信するように構成される変換器と、超音波を送信するように構成される変換器とは、インテロゲータの同じ変換器アレイ上にあることができ、異なる変換器アレイ上にあることもできる。いくつかの実施形態では、インテロゲータ上の変換器が超音波を代替的に送信又は受信するように構成することができる。例えば、変換器は、1つ以上のパルスを送信することと、休止期間との間をサイクルすることができる。変換器は、1つ以上のパルスを送信するときに超音波を送信するように構成され、次いで、休止期間中に受信モードに切り替えることができる。
【0169】
いくつかの実施形態では、後方散乱超音波は、埋め込み可能な装置によってデジタル化される。例えば埋め込み可能な装置は、オシロスコープ又はアナログ-デジタル変換器(ADC)及び/又はメモリを含むことができ、これらは、電流(又はインピーダンス)変動における情報をデジタル的に符号化することができる。情報を符号化することができるデジタル化された電流変動は、超音波変換器によって受信され、これは、次いでデジタル化された音波を送信する。デジタル化されたデータは、例えば特異値分解(SVD)と最小二乗法に基づく圧縮とを使用することによって、アナログデータを圧縮することができる。いくつかの実施形態では、この圧縮は相関器又はパターン検出アルゴリズムによって行われる。後方散乱信号は、単一の時点で再構成データポイントを生成するために、後方散乱領域の第4順のバターワースバンドパスフィルタ整流積分などの、一連の非線形変換を経てもよい。このような変換は、ハードウェア(すなわち、ハードコーディングされた)又はソフトウェアの何れかで行うことができる。
【0170】
いくつかの実施形態では、デジタル化されたデータが一意の識別子を含むことができる。この一意の識別子は、例えば、複数の埋め込み型装置及び/又は複数の電極対を備える埋め込み型装置を備えるシステムにおいて有用であり得る。例えば一意の識別子は、複数の埋め込み型装置からのものであるとき、例えば埋め込み型装置から(検証信号などの)情報を送信するときに、発端の埋め込み型装置を識別することができる。いくつかの実施形態では、埋め込み型装置は複数の電極対を備え、これらの電極対は、単一の埋め込み型装置によって同時に又は代替的に電気パルスを放射してもよい。電極の異なる対は例えば、異なる組織(例えば、異なる神経若しくは異なる筋肉)又は同じ組織の異なる領域において電気パルスを放射するように構成することができる。デジタル化された回路は、どの電極対が電気パルスを放射したかを識別及び/又は検証するために、一意の識別子を符号化することができる。
【0171】
いくつかの実施形態では、デジタル化された信号はアナログ信号のサイズを圧縮する。デジタル化された信号の減少したサイズは、超音波後方散乱で符号化された情報のより効率的な報告を可能にすることができる。デジタル化を通じて送信される情報のサイズを圧縮することによって、潜在的に重複する信号を正確に送信することができる。
【0172】
いくつかの実施形態では、インテロゲータは複数の埋め込み可能な装置と通信する。これは、例えば、多入力多出力(MIMO)システム理論を使用して行うことができる。例えば、時分割多重化、空間多重化、又は周波数多重化を使用した、インテロゲータと複数の埋め込み可能な装置との間の通信。インテロゲータは、逆畳み込みされ得る複数の埋め込み可能な装置からの結合された後方散乱を受信することができ、それによって、各埋め込み可能な装置から情報を抽出する。いくつかの実施形態では、インテロゲータは、変換器アレイからの送信された超音波を、ビームステアリングを介して特定の埋め込み可能な装置へと集束させる。このインテロゲータは、送信された超音波を第1の埋め込み可能な装置に集束させ、第1の埋め込み可能な装置からの後方散乱を受信し、送信された超音波を第2の埋め込み可能な装置に集束させ、第2の埋め込み可能な装置からの後方散乱を受信する。いくつかの実施形態では、インテロゲータは超音波を複数の埋め込み可能な装置に送信し、次いで、複数の埋め込み可能な装置から超音波を受信する。
【0173】
[実施例]
本出願は、本出願の例示的な実施形態として提供される以下の非限定的な実施例を参照することによって、より良く理解される場合がある。以下の実施例は、実施形態をより完全に説明するために提示され、本出願の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本出願の特定の実施形態を本明細書に示し、説明したが、そのような実施形態が単に例として提供されることは明らかであろう。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、多数の変形、変更、及び置換が当業者に想起されてもよい。本明細書に記載された方法を実施する際に、本明細書に記載された実施形態の様々な代替形態が採用されてもよいことは理解されたい。
【0174】
[実施例1:大内蔵神経刺激は血漿エピネフリンレベルを増加させる]
実験期間中、純酸素と混合したイソフルランを用いてラットを麻酔した。局所ブピバカイン注射を、切開部位に与えた。任意の切開を行う前に、血液サンプルを顎下静脈から採取した(サンプルt=-30分)。その後、血液サンプルの残りを採取するために、大腿静脈にカニューレを挿入した。胸郭付近の大内臓神経にアクセスするために、側腹切開を行った。大内臓神経束は横隔膜の近くで分離され単離された。2つの白金電極を含む双極神経カフを、神経束の周りに穏やかに配置した。刺激の直前に、血液サンプル(t=0)を採取した。
【0175】
試験動物(n=5)において、150μsアノード相持続時間、60μs位相間隔、及び150μsカソード相持続時間を有する、30Hzの強直周波数の二相性(アノード第1)1mA定電流パルスを用いて、合計20分間大内蔵神経を刺激した。コントロール動物は電極を埋め込むために手術を受けたが、刺激されなかった(すなわち、「偽刺激」、n=6)。(刺激開始と比較して)0分、5分、20分、50分、80分、140分、及び200分の時点で、追加の血液サンプルを採取した。
【0176】
血液サンプル(それぞれ150μL)を、生理食塩水に溶解した200U/mLヘパリンと10:1で混合した。サンプルを遠心分離機で20分間遠心分離して血漿を単離し、ELISAを用いて血漿エピネフリン濃度を推定するためにこれを使用した。図14は、試験動物(十字線(+)で示す、大内蔵刺激)及びコントロール動物(円で示す、偽刺激)における血漿エピネフリンレベルの時間経過を示し、これは大内蔵神経刺激がエピネフリンの放出を引き起こすことを示す。
【0177】
[実施例2:大内蔵神経刺激はナチュラルキラー細胞の循環を増加させる]
実験期間中、純酸素と混合したイソフルランを用いてラットを麻酔した。局所ブピバカイン注射を、切開部位に与えた。任意の切開を行う前に、血液サンプルを顎下静脈から採取した(サンプルt=-30分)。その後、血液サンプルの残りを採取するために、大腿静脈にカニューレを挿入した。胸郭付近の大内臓神経にアクセスするために、側腹切開を行った。大内臓神経束は横隔膜の近くで分離され単離された。2つの白金電極を含む双極神経カフを、神経束の周りに穏やかに配置した。刺激の直前に、血液サンプル(t=0)を採取した。
【0178】
試験動物(n=15)において、150μsアノード相持続時間、60μs位相間隔、及び150μsカソード相持続時間を有する、30Hzの強直周波数の二相性(アノード第1)1mA定電流パルスを用いて、合計20分間大内蔵神経を刺激した。コントロール動物は電極を埋め込むために手術を受けたが、刺激されなかった(すなわち、「偽刺激」、n=16)。(刺激開始と比較して)0分、5分、20分、50分、80分、140分、及び200分の時点で、追加の血液サンプルを採取した。
【0179】
血液サンプル(それぞれ150μL)を、生理食塩水に溶解した200U/mLヘパリンと10:1で混合し、ナチュラルキラー(NK)細胞及びT細胞マーカーを用いてサンプルを染色することによりフローサイトメトリー用に調製した。NK個数は、全リンパ球のパーセントとして、フローサイトメトリー分析によって決定した。図15は、偽刺激(コントロール、円で示す)動物と比較した、各大内臓神経刺激試験動物(Xで示す)についての総リンパ球のパーセントとして測定された、末梢血中のNK細胞の個数の時間経過を示し、これは、大内臓神経刺激が循環NK細胞の個数の増加を引き起こすことを示す。
個々の点それぞれは、示された時点での単一の動物からの血液サンプルを表す。
【0180】
[実施例3:リンパ腫治療のための大内蔵神経刺激]
実験期間中、純酸素と混合したイソフルランを用いてラットを麻酔した。局所ブピバカイン注射を、切開部位に与えた。任意の切開を行う前に、血液サンプルを顎下静脈から採取した(サンプルt=-30分)。胸郭付近の大内臓神経にアクセスするために、側腹切開を行った。大内臓神経束は横隔膜の近くで分離され単離された。2つの白金電極を含む双極神経カフを、神経束の周りに穏やかに配置した。
【0181】
刺激の直前に、動物に蛍光標識YAC-1リンパ腫癌細胞(CellTrace violet、ThermoFisherで標識)の(大腿静脈経由)静脈ボーラス投与を与え、血液サンプル(t=0)を採取した。試験動物(n=7)において、150μsアノード相持続時間、60μs位相間隔、及び150μsカソード相持続時間を有する、30Hzの強直周波数の二相性(アノード第1)1mA定電流パルスを用いて、合計20分間大内蔵神経を刺激した。刺激中に血行動態データ(拡張期血圧、平均血圧、収縮期血圧、体温、血中酸素化、心拍数、及び血液潅流速度)を測定し、このデータは刺激開始時に一過性の変化を示したが、安全な範囲内に留まった。コントロール動物は電極を埋め込むために手術を受けたが、刺激されなかった(すなわち、「偽刺激」、n=7)。刺激直後に追加の血液サンプルを採取した。
【0182】
一定期間後、動物を屠殺し、動物の肺組織に存在するYAC-1細胞の個数を測定した。肺組織をホモジナイズし、赤血球を溶解し、細胞をペレット化し、洗浄し、フローサイトメトリー緩衝液に懸濁した。細胞懸濁液をフローサイトメーターに通して、単一細胞イベントの総数に対するYAC-1細胞の総数を計数した。屠殺された試験(「stim」)動物の肺組織において検出されたYAC-1細胞の個数の変化倍率が図16に表されており、これはマッチしたコントロール(「偽」)動物において検出されたYAC-1細胞の個数に関して正規化されている(コントロール動物は自己正規化されている)。動物をマッチさせて、手術及び細胞分析がほぼ同時に行われることを確実にし、同じYAC-1細胞培養物が使用されることを確実にした。大内蔵神経刺激は、肺組織において検出されるリンパ腫細胞数の有意な(p<0.05)減少をもたらした。
【0183】
血液サンプル(それぞれ150μL)を、生理食塩水に溶解した200U/mLヘパリンと10:1で混合した。サンプルを遠心分離機で20分間遠心分離して血漿を単離し、ELISAを用いて血漿エピネフリン濃度を推定するためにこれを使用した。図17は、大内蔵神経刺激期間の前後の試験動物(大内蔵刺激、十字線(+)で示す)及びコントロール動物(偽刺激、円で示す)における変化倍率血漿エピネフリンレベルを示し、これは、刺激がエピネフリンの放出を引き起こすことを示す。ナチュラルキラー(NK)細胞及びT細胞マーカーを用いてサンプルを染色することによって、フローサイトメトリーのためにさらなる血液サンプルを調製した。NK個数は、全リンパ球のパーセントとして、フローサイトメトリー分析によって決定した。図18は、刺激前の値に対して正規化された、大内蔵神経刺激期間の前後の末梢血中のNK細胞の個数を示し、これは、大内蔵神経刺激が循環NK細胞の個数の増加を引き起こすことを示す。内蔵神経刺激は十字線(+)によって示され、偽刺激は閉じた円によって示される。
【0184】
[例示的な実施形態]
前述の説明は、特定の実施形態を参照して説明されてきた。追加の例示的な実施形態が以下に提供される。しかしながら、上記の例示的な議論及び例示的な実施形態は、網羅的であること、又は開示を開示された厳密な形態に限定することを意図していない。上記の教示に鑑みて、多くの修正及び変形が可能である。実施形態は、技術の原理及びそれらの実際の応用を最も良く説明するために選択、及び説明された。これにより、当業者であれば、想定される特定の用途に適した様々な修正を加えて、本技術及び様々な実施形態を最良に利用することができる。
【0185】
本開示は添付の図面を参照して十分に説明されてきたが、様々な変更及び修正が当業者には明らかになることに留意されたい。そのような変更及び修正は、特許請求の範囲によって定義される開示及び実施例の範囲内に含まれているものとして理解されるべきである。
【0186】
以下の実施形態は例示的なものであり、この発明を限定するものと考えるべきではない。
【0187】
[実施形態1]
被験者における癌を治療する方法であって、被験者の胸部の内臓神経を、内臓神経と電気的に連通している1つ以上の電極から放出される複数の電気パルスを用いて電気的に刺激することを含み、複数の電気パルスは、被験者における循環ナチュラルキラー(NK)細胞を増加させるために内臓神経における1つ以上の活動電位を誘発する、方法。
【0188】
[実施形態2]
被験者における癌の増殖又は再発を阻害する方法であって、被験者の胸部の内蔵神経を、内臓神経と電気的に連通している1つ以上の電極から放出される複数の電気パルスで電気的に刺激することを含み、複数の電気パルスが、内臓神経における1つ以上の活動電位を誘発して、被験者における循環ナチュラルキラー(NK)細胞を増加させる、方法。
【0189】
[実施形態3]
被験者が、癌切除手術を以前に受けたことがある、実施形態1又は実施形態2に記載の方法。
【0190】
[実施形態4]
胸部の内臓神経が、大内臓神経、小内臓神経、又は最小内臓神経である、実施形態1乃至3のいずれか一つに記載の方法。
【0191】
[実施形態5]
胸部の内臓神経が大内臓神経である、実施形態1乃至3のいずれか一つに記載の方法。
【0192】
[実施形態6]
電気パルスが約100μA~約30mAの電流を有する、実施形態1乃至5のいずれか一つに記載の方法。
【0193】
[実施形態7]
電流が複数の電気パルスにわたり一定である、実施形態6に記載の方法。
【0194】
[実施形態8]
複数の電気パルスにおける電気パルスは、約1Hz~約10kHzの周波数で放出される、実施形態1乃至7のいずれか一つに記載の方法。
【0195】
[実施形態9]
複数の電気パルスは複数の二相電気パルスを含む、実施形態1乃至8のいずれか一つに記載の方法。
【0196】
[実施形態10]
二相電気パルスは、アノードパルス相、カソードパルス相、及び位相間遅延を含む、実施形態9に記載の方法。
【0197】
[実施形態11]
二相電気パルスは、アノード相とそれに続くカソード相とを含む、実施形態9又は10に記載の装置。
【0198】
[実施形態12]
電気パルスが約5μs~約50msの長さである、実施形態1乃至11のいずれか一つに記載の方法。
【0199】
[実施形態13]
複数の電気パルスは2以上の電気パルスを含む複数のパルス列を含む、実施形態1乃至12のいずれか一つに記載の方法。
【0200】
[実施形態14]
パルス列が約100ms~約15秒の休止期間によって分離される、実施形態13に記載の方法。
【0201】
[実施形態15]
複数の電気パルスにおける電気パルスは持続的に放出される、実施形態1乃至14のいずれか一つに記載の方法。
【0202】
[実施形態16]
内臓神経が、複数の電気パルスによって約1分~約60分の期間電気的に刺激される、実施形態1乃至15のいずれか一つに記載の方法。
【0203】
[実施形態17]
内臓神経が、複数の電気パルスによって1日1回~1日4回電気的に刺激される、実施形態1乃至16のいずれか一つに記載の方法。
【0204】
[実施形態18]
1つ以上の電極が、被験者内に完全に埋め込まれた埋め込み型装置により動作させられる、実施形態1乃至17のいずれか一つに記載の方法。
【0205】
[実施形態19]
埋め込み型装置は、トリガ信号に基づいて1つ以上の電気パルスを放出するように1つ以上の電極を動作させる、実施形態18に記載の方法。
【0206】
[実施形態20]
トリガ信号は埋め込み型装置によって生成される、実施形態19に記載の方法。
【0207】
[実施形態21]
埋め込み型装置において、トリガ信号を無線で受信することをさらに含む、実施形態19に記載の方法。
【0208】
[実施形態22]
トリガ信号が、埋め込み型装置が受信する超音波で符号化される、実施形態21に記載の方法。
【0209】
[実施形態23]
トリガ信号が被験者内で検出された1つ以上の生理学的信号に基づく、実施形態19乃至22のいずれか1つに記載の方法。
【0210】
[実施形態24]
埋め込み型装置が、1つ以上の生理学的信号を検出するように構成された1つ以上のセンサを備える、実施形態23に記載の方法。
【0211】
[実施形態25]
埋め込み型装置で超音波を受信することと、
1つ以上の生理学的信号に関連する情報を符号化する超音波後方散乱を埋め込み型装置から放出することと、
を含む、実施形態24に記載の方法。
【0212】
[実施形態26]
埋め込み型装置で受信する超音波を外部装置から送信することと、
外部装置において、1つ以上の生理学的信号に関連する情報を符号化する超音波後方散乱を受信することと、
外部装置においてトリガ信号を生成することと、
トリガ信号を符号化する超音波を外部装置から送信することと、
埋め込み型装置において、トリガ信号を符号化する超音波を受信することと、
を含む、実施形態25に記載の方法。
【0213】
[実施形態27]
1つ以上の生理学的信号が電気生理学的信号を含む、実施形態23乃至26のいずれか1つに記載の方法。
【0214】
[実施形態28]
電気生理学的信号が、内臓神経によって送信される電気生理学的信号を含む、実施形態27に記載の方法。
【0215】
[実施形態29]
1つ以上の生理学的信号が、温度、圧力、歪み、pH、又は検体レベルを含む、実施形態23乃至28のいずれか1つに記載の方法。
【0216】
[実施形態30]
1つ以上の生理学的信号が血行動態信号を含む、実施形態23乃至29のいずれか1つに記載の方法。
【0217】
[実施形態31]
血行動態信号が、拡張期血圧、平均血圧、収縮期血圧、血液酸素化レベル、心拍数、又は血液潅流速度を含む、実施形態30に記載の方法。
【0218】
[実施形態32]
埋め込み型装置が受信する超音波からのエネルギーを、埋め込み型装置に電力を供給する電気エネルギーに変換することを含む、実施形態1乃至31のいずれか1つに記載の方法。
【0219】
[実施形態33]
癌が転移性癌である、実施形態1乃至32のいずれか1つに記載の方法。
【0220】
[実施形態34]
NK細胞賦活剤を被験者に投与することをさらに含む、実施形態1乃至33のいずれか1つに記載の方法。
【0221】
[実施形態35]
NK細胞賦活剤が、IL-2、IL-6、IL-15、若しくはIL-12、又はその生物活性断片を含む、実施形態34に記載の方法。
【0222】
[実施形態36]
被験者に化学療法剤を投与することをさらに含む、実施形態1乃至35のいずれか1つに記載の方法。
【0223】
[実施形態37]
被験者がヒトである、実施形態1乃至36の何れか一つに記載の方法。
【0224】
[実施形態38]
外部装置と、実施形態1乃至37のいずれか1つに記載の方法を実行するように構成された埋め込み型装置とを備える、システム。
【0225】
[実施形態39]
埋め込み型装置であって、癌を有する被験者の胸部の内臓神経と電気的に連絡するように構成された1つ以上の電極を備え、装置は、被験者における循環ナチュラルキラー(NK)細胞を増加させる内臓神経における1つ以上の活動電位を誘発する複数の電気パルスを用いて内臓神経を電気的に刺激するよう1つ以上の電極を動作させるように構成されている、埋め込み型装置。
【0226】
[実施形態40]
内臓神経を少なくとも部分的に包み、内臓神経と電気的に連通している1つ以上の電極のうちの少なくとも1つを配置するように構成された基板を備える、実施形態39に記載の装置。
【0227】
[実施形態41]
胸部の内臓神経が、大内臓神経、小内臓神経、又は最小内臓神経である、実施形態39又は40に記載の装置。
【0228】
[実施形態42]
胸部の内臓神経が大内臓神経である、実施形態39又は40に記載の装置。
【0229】
[実施形態43]
電気パルスが約100μA~約30mAの電流を有する、実施形態39乃至42のいずれか1つに記載の装置。
【0230】
[実施形態44]
電流が複数の電気パルスにわたり一定である、実施形態43に記載の方法。
【0231】
[実施形態45]
複数の電気パルスにおける電気パルスは、約1Hz~約10kHzの周波数で放出される、実施形態39乃至44のいずれか1つに記載の装置。
【0232】
[実施形態46]
複数の電気パルスは複数の二相電気パルスを含む、実施形態39乃至45のいずれか1つに記載の装置。
【0233】
[実施形態47]
二相電気パルスは、アノードパルス相、カソードパルス相、及び位相間遅延を含む、実施形態46に記載の方法。
【0234】
[実施形態48]
二相電気パルスは、アノード相とそれに続くカソード相とを含む、実施形態46又は47に記載の装置。
【0235】
[実施形態49]
電気パルスが約5μs~約5msの長さである、実施形態39乃至48のいずれか1つに記載の装置。
【0236】
[実施形態50]
複数の電気パルスは2つ以上の電気パルスを含む複数のパルス列を含む、実施形態39乃至49のいずれか1つに記載の装置。
【0237】
[実施形態51]
パルス列が約100ms~約15秒の休止期間によって分離される、実施形態50に記載の装置。
【0238】
[実施形態52]
複数の電気パルスにおける電気パルス群は持続的に放出される、実施形態39乃至49のいずれか1つに記載の装置。
【0239】
[実施形態53]
1つ以上の生理学的信号を検出するように構成された1つ以上のセンサをさらに備える、実施形態39乃至52のいずれか1つに記載の装置。
【0240】
[実施形態54]
基板に取り付けられた無線通信システムを備える本体をさらに備える、実施形態39乃至52のいずれか1つに記載の装置。
【0241】
[実施形態55]
装置が1つ以上の生理学的信号を検出するように構成された1つ以上のセンサを備え、無線通信システムが1つ以上の生理学的信号を第2の装置に無線で通信するように構成される、実施形態54に記載の装置。
【0242】
[実施形態56]
本体は、基板の外面上に配置される、実施形態54又は55に記載の装置。
【0243】
[実施形態57]
無線通信システムが無線周波数(RF)アンテナを備える、実施形態54乃至56のいずれか1つに記載の装置。
【0244】
[実施形態58]
無線通信システムが超音波変換器を備える、実施形態54乃至57のいずれか1つに記載の装置。
【0245】
[実施形態59]
超音波変換器は超音波を受信し、超音波からのエネルギーを装置に電力を供給する電気エネルギーに変換するように構成される、実施形態58に記載の装置。
【0246】
[実施形態60]
装置が1つ以上の生理学的信号を検出するように構成されたセンサを備え、超音波変換器が、超音波を受信し、1つ以上の生理学的信号を符号化する超音波後方散乱を放出するように構成される、実施形態58又は59に記載の装置。
【0247】
[実施形態61]
トリガ信号に応答して内臓神経を電気的に刺激するよう1つ以上の電極を動作させるように構成された集積回路をさらに備える、実施形態39乃至60のいずれか1つに記載の装置。
【0248】
[実施形態62]
1つ以上の生理学的信号を検出するように構成された1つ以上のセンサを備え、集積回路は、1つ以上の生理学的信号を使用してトリガ信号を生成するように構成される、実施形態61に記載の装置。
【0249】
[実施形態63]
無線通信システムを備え、無線通信システムはトリガ信号を受信するように構成される、実施形態62に記載の装置。
【0250】
[実施形態64]
1つ以上の生理学的信号が電気生理学的信号を含む、実施形態53乃至63のいずれか1つに記載の装置。
【0251】
[実施形態65]
電気生理学的信号が、内臓神経によって送られる電気生理学的信号を含む、実施形態64に記載の装置。
【0252】
[実施形態66]
1つ以上の生理学的信号が温度、圧力、歪み、pH、又は検体レベルを含む、実施形態53乃至65のいずれか1つに記載の装置。
【0253】
[実施形態67]
1つ以上の生理学的信号が血行動態信号を含む、実施形態53乃至66のいずれか1つに記載の装置。
【0254】
[実施形態68]
血行動態信号が、拡張期血圧、平均血圧、収縮期血圧、血液酸素化レベル、心拍数、又は血液潅流速度を含む、実施形態67に記載の装置。
【0255】
[実施形態69]
埋め込まれた装置が、約5mm以下の体積を有する、実施形態39乃至68のいずれか1つに記載の装置。
【0256】
[実施形態70]
実施形態39乃至69のいずれか1つに記載の装置と、装置と無線で通信するように、又は装置に電力を供給するように構成された無線通信システムを備えるインテロゲータとを備える、システム。
【0257】
[実施形態71]
実施形態34乃至37のいずれか1つに記載の、被験者における癌を治療する方法において使用するための、又は被験者における癌の増殖又は再発を阻害する方法において使用するための、ナチュラルキラー(NK)細胞賦活剤又は化学療法剤を含む医薬組成物。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【国際調査報告】