(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-05
(54)【発明の名称】トルバプタン及びその誘導体の中間体並びにその調製方法
(51)【国際特許分類】
C07D 223/16 20060101AFI20230628BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230628BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20230628BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230628BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230628BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20230628BHJP
A61K 31/55 20060101ALN20230628BHJP
【FI】
C07D223/16 A CSP
A61P1/16
A61P9/04
A61P9/00
A61P43/00 111
C07B61/00 300
A61K31/55
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022574332
(86)(22)【出願日】2021-06-04
(85)【翻訳文提出日】2022-12-01
(86)【国際出願番号】 EP2021064964
(87)【国際公開番号】W WO2021249877
(87)【国際公開日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】102020000013573
(32)【優先日】2020-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520439221
【氏名又は名称】ケンブレックス プロファルマコ ミラノ ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ
【氏名又は名称原語表記】CAMBREX PROFARMACO MILANO S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーゴ、 ダニエレ
(72)【発明者】
【氏名】カプート、 フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】コロンボ、 フランチェスコ
【テーマコード(参考)】
4C086
4H039
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC32
4C086NA20
4C086ZA36
4C086ZA75
4C086ZC42
4H039CA41
4H039CA71
4H039CD20
(57)【要約】
本発明は、トルバプタン及びその誘導体の合成のための新規中間体並びに当該中間体を含むその調製方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化1】
ここで、Xは、ハロゲン原子又はO-スルホン酸基であり、
X
1は、ハロゲン原子であり、
W及びW
1は一緒になって酸素原子(式(Ia)の化合物)を形成するか、
【化2】
又は、W及びW
1基の一方は水素であり、他方はORp基(式(Ib)の化合物)であるか、
【化3】
ここで、Rpは、水素又はヒドロキシル保護基であり、
又は、W及びW
1はカルボニル保護基PG(式(Ic)の化合物)を表す。
【化4】
【請求項2】
PGは、環状若しくは非環状のケタール又はチオケタールを表し、この場合、化合物Icは式(Ic
1)、(Ic
2)、(Ic
3)、(Ic
4)で表される、請求項1に記載の化合物:
【化5】
ここで、
R及びR
1は、互いに同一又は異なっており、直鎖又は分岐のC
1-C
6アルキル;C
1-C
4アルキル基で任意に置換されたC
5-C
6シクロアルキル;CH
2-フェニル、CH
2-アリール、CH
2-ヘテロアリールであって、フェニル、アリール、ヘテロアリールは、直鎖又は分岐のC
1-C
6アルキル、ハロゲン、-NO
2、-OR
2基から選択される一つ以上の基で任意に置換されており(但し、R
2は、H、直鎖又は分岐のC
1-C
6アルキル、任意に置換されたベンジルから選択される);から選択され、
Tは、CR
IIR
III-(CR
IVR
V)
nであり、
ここで、
n=0~3であり、R
II、R
III、R
IV、R
Vは、互いに同一又は異なっており、水素、直鎖又は分岐のC
1-C
6アルキル;C
1-C
4アルキル基で任意に置換されたC
5-C
6シクロアルキル;CH
2-フェニル、CH
2-アリール、CH
2-ヘテロアリールであって、フェニル、アリール、ヘテロアリールは、直鎖又は分岐のC
1-C
6アルキル、ハロゲン、-NO
2、-OR
2基から選択される一つ以上の基で任意に置換されており(但し、R
2は、H、直鎖又は分岐のC
1-C
6アルキル、任意に置換されたベンジルから選択される)、から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
X
1は、塩素、臭素及びヨウ素から選択され、好ましくは塩素であり、
Xは、臭素、ヨウ素、メタンスルホネート、p-トルエンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート、好ましくは臭素、ヨウ素又はトリフルオロメタンスルホネートから選択され、
Rpは、H及びアセチル;ベンゾイル;ベンジル;β-メトキシエトキシメチルエーテル;ジメトキシトリチル;[ビス-(4-メトキシフェニル)フェニルメチル];メトキシメチルエーテル;メトキシトリチル[(4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル];p-メトキシベンジルエーテル;メチルチオメチルエーテル;ピバロイル;トリフェニルメチル(Tr);テトラヒドロピラニルエーテル;テトラヒドロフラニルエーテル;トリメチルシリル、トリエチルシリル、tert-ブチルジメチルシリル、トリ-イソ-プロピルシリル、トリ-イソ-プロピルシリルオキシメチル、ジメチルイソプロピルシリル、ジエチルイソプロピルシリル、t-ブチルジメチルシリル、t-ブチルジフェニルシリルから選択されるシリル誘導体;アルキルエーテル;及びアルコキシエーテル;から選択されるヒドロキシル保護基、から選択され、
より好ましくは、Rpは、水素及びテトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、アセチル、ベンゾイル、ピバロイル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、tert-ブチルジメチルシリル、トリ-イソ-プロピルシリル、トリ-イソ-プロピルシリルオキシメチル、ジメチルイソプロピルシリル、ジエチルイソプロピルシリル、t-ブチルジメチルシリル、t-ブチルジフェニルシリルから選択され、Rpは、さらに好ましくはHであり、
R及びR
1は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、
ベンジル、p-メチルベンジル、p-メトキシベンジル、m-メトキシベンジル、p-ニトロベンジル、p-クロロベンジル、3,4-ジメトキシベンジル、シクロペンチル、シクロヘキシルから選択され、より好ましくは、R及びR
1は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルであり、
Tは、CH
2;CHR
III基から選択され、ここでR
IIIは、水素、C
1-C
6アルキル基、任意に置換されたフェニル基又はアリール基から選択され、好ましくは、R
IIIは、H、Me、Et、n-Pr、i-Pr、n-Bu、i-Bu、t-Bu、Ph、(CH
2-CHR
IV)から選択され(但し、R
IVは、C
1-C
6アルキル基、任意に置換されたフェニル基、又はアリール基であり、好ましくは、(CH
2-CHR
IV)は、(CH
2-CHCH
3)、(CH
2-CHC
2H
5)、(CH
3CH-CHCH
3)、(CH
2-C(CH
3)
2-CH
2)から選択される、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
トルバプタン及びその薬理学的に許容される誘導体の調製方法であって、
-遷移金属触媒、塩基及び適当な溶媒の存在下、室温と溶媒還流温度との間で構成される温度で、式(I
T)の化合物と式(II)の化合物を反応させて式(III
T)の化合物を得る工程を含む、方法:
【化6】
ここで、Xは、臭素、ヨウ素、メタンスルホネート、p-トルエンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネートから選択され;より好ましくは、臭素、ヨウ素、トリフルオロメタンスルホネートであり、並びにW及びW
1は、上記のように定義される。
【請求項5】
前記遷移金属触媒が、金属Ru、Rh、Pt、Pd及びCu、及び、酸化物、ハロゲン化物、シアン化物、アルコキシド、カルボン酸塩、及び塩から選択され、任意に適当な配位子と錯体化されている、それらの誘導体、及び前記配位子と前記遷移金属とが予備形成した錯体から選択され、好ましくは、金属Pd触媒又は金属Cu触媒、又は、酸化物、ハロゲン化物、シアン化物、アルコキシド、カルボン酸塩、及び塩から選択され、任意に適当な配位子と錯体化されている、それらの誘導体、又は前記配位子、好ましくはホスフィン又はカルベン錯体と予備形成しているもの、
前塩基は、水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、フッ化物及びアルコキシド、アルカリ金属とアルカリ土類金属のアルキルシリルアミド、及びそれらの混合物から選択され、好ましくは、前記塩基は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸セシウム、tert-ブチルナトリウム、tert-ブチルカリウム、tert-ブチルセシウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム、フッ化カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸カリウム、リン酸セシウム、tert-ブチル酸ナトリウム、tert-ブチル酸カリウム、tert-ブチル酸セシウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム、フッ化カリウム、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、ナトリウムメトキシド、より好ましくは、リン酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、tert-ブチル酸ナトリウム、tert-ブチル酸カリウム、ナトリウムメトキシド、リチウムビス(トリメチルシリル)アミドから選択され、
前記溶媒は、任意に水の存在下、非プロトン性無極性又は極性溶媒、芳香族、脂肪族、エーテル、エステル、ケト、アルコール溶媒、及びそれらの混合物から選択され、好ましくは、任意に水の存在下、ジクロロメタン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、スルホラン、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジメチルアセトアミド、ジオキサン、ジメトキシエタン、トルエン、キシレン、クメン、シメン、バレロラクトン、シクロペンチルメチルエーテル、メチルイソブチルケトン、エタノール、i-プロパノール、メタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、t-ブタノール、sec-ブタノール、t-アミルアルコール又はそれらの混合物、から選択され、好ましくは、前記溶媒は、トルエン、ジオキサン、ジメトキシエタン、t-ブタノール、n-ブタノール、tert-アミルアルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、N-メチルピロリドン、2-メチル-テトラヒドロフラン、ジメチルアセトアミドから選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記触媒が、金属Pd触媒、又は、酸化物;アルコキシド;カルボン酸塩、好ましくは酢酸塩;塩化物、好ましくはCl、Br及びI;アルキルスルホネート、アリールスルホネート、好ましくはメタンスルホネート、エタンスルホネート、p-トルエンスルホネート、トリフレートから選択されるそれらの誘導体;及び、前記誘導体と、第三級ホスフィン、それらのπ-アリル錯体(π-allyl complexes)、カルベン、塩及び溶媒とそれらの付加体とから選択される配位子との錯体、及び前記配位子と予備形成された錯体(pre-formed complexes);好ましくは、ホスフィン又はカルベンの予備形成された錯体、好ましくは、第3級ホスフィンは、トリ-tert-ブチルホスフィン、2-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)-1,1′-ビフェニル、2-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)-2′-メチル-1,1′-ビフェニル、2-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)-1,1′-ビナフチル、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2′,6′-ジメトキシ-1,1′-ビフェニル、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2′,6′-ジイソプロポキシ-1,1′-ビフェニル、N-フェニル-2-(ジ-tert-ブチルホスフィン)ピロール、1-フェニル-2-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)-1H-インデン)、(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)[2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]、(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2′,6′-ジメトキシ-1,1′-ビフェニル)[2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]、[(2-ジ-tert-ブチルホスフィノ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)-2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]、[(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-3,6-ジメトキシ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)-2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]、[(2-ジ-tert-ブチルホスフィノ-3,6-ジメトキシ-2′、4′、6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)-2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]、(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2′,6′-ジイソプロポキシ-1,1′-ビフェニル)[2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]、クロロ[(トリ-tert-ブチルホスフィン)-2-(2-アミノビフェニル)]、クロロ[(4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン)-2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]、[2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]、[4-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)-N,N-ジメチルアニリン](クロロ)、クロロ(トリシクロヘキシルホスフィン)[2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]、クロロ[(p-ジメチルアミノフェニル)(ジ-tert-ブチルホスフィン)]、(p-ジメチルアミノフェニル)(ジ-tert-ブチルホスフィン)、トリ-tert-ブチルホスフィン(クロロ)、クロロ(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2′,6′-ジイソプロポキシ-1,1′-ビフェニル)、クロロ(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2′,6′-ジメトキシ-1,1′-ビフェニル)、(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-3,6-ジメトキシ-1,1′-ビフェニル)、(2-ジ-tert-ブチルホスフィノ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)、(2-ジ-tert-ブチルホスフィノ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)[(R)-2,2′-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1′-ビナフタレン]、[4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン]、トリシクロヘキシルホスフィン、[5-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)-1′,3′,5′-トリフェニル-1′H-1,4′-ビピラゾール]、トリ-o-トリルホスフィン、[2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)][4-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)-N,N-ジメチルアニリン]、[(2-ジ-tert-ブチルホスフィノ-3,6-ジメトキシ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)-2-(2´-アミノ-1,1´-ビフェニル)]、4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン、(トリシクロヘキシルホスフィン)[2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]、クロロ(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)、(1,4-ナフトキノン)-[1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)イミダゾール-2-イリデン]、アリルクロロ-[1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)イミダゾール-2-イリデン]、アリルクロロ-[1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-4,5-ジハイドロイミダゾール-2-イリデン]、(3-フェニルアリルクロロ)-[1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-4,5-ジハイドロイミダゾール-2-イリデン]、
好ましくは、[(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-3,6-ジメトキシ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)-2-(2´-アミノ-1,1´-ビフェニル)]、(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)[2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]、及びクロロ(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)]、から選択され、
より好ましくは、Pd金属触媒は、クロロ(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)[2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]パラジウム(II)のTHF付加物、クロロ(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2′,6′-ジメトキシ-1,1′-ビフェニル)[2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]パラジウム(II)の1.5THF付加物、[(2-ジ-tert-ブチルホスフィノ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)-2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]パラジウム(II)メタンスルホネートのMTBE付加物、[(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-3,6-ジメトキシ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)-2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]パラジウム(II)メタンスルホネート、[(2-ジ-tert-ブチルホスフィノ-3,6-ジメトキシ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)-2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]パラジウム(II)メタンスルホネート、(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2′,6′-ジイソプロポキシ-1,1′-ビフェニル)[2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]パラジウム(II)メタンスルホネート、クロロ[(トリ-tert-ブチルホスフィン)-2-(2-アミノビフェニル)]パラジウム(II)、クロロ[(4,5-ビス(ジフェニルホスフィン)-9,9-ジメチルキサンテン)-2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]パラジウム(II)、[2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)][4-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)-N,N-ジメチルアニリン](クロロ)パラジウム(II)、クロロ(トリシクロヘキシルホスフィン)[2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]パラジウム(II)、クロロ(クロチル)(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)パラジウム(II)、クロロ(クロチル)[(p-ジメチルアミノフェニル)(ジ-tert-ブチルホスフィン)]パラジウム(II)、トリ-tert-ブチルホスフィン(クロロ)(クロチル)パラジウム(II)、クロロ(クロチル)(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2′,6′-ジイソプロポキシ-1,1′-ビフェニル)パラジウム(II)、クロロ(クロチル)(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2′,6′-ジメトキシ-1,1′-ビフェニル)パラジウム(II)、クロチル(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-3,6-ジメトキシ-1,1′-ビフェニル)パラジウム(II)トリフレート、アリル(2-ジ-tert-ブチルホスフィノ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)パラジウム(II)トリフレート、アリル[(R)-2,2′-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1′-ビナフタレン]パラジウム(II)クロリド、アリル[4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン]パラジウム(II)クロリド、クロロ(クロチル)(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム(II)、アリル[5-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)-1′,3′,5′-トリフェニル-1′H-1,4′-ビピラゾール]パラジウム(II)トリフレート、クロロ(クロチル)(トリ-o-トリルホスフィン)パラジウム(II)、[(2-ジ-tert-ブチルホスフィノ-3,6-ジメトキシ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)-2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]パラジウム(II)メタンスルホネート、[2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)][4-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)-N,N-ジメチルアニリン](クロロ)パラジウム(II)、クロロ(トリシクロヘキシルホスフィン)[2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]パラジウム(II)、ヘキサクロロパラジウム酸ナトリウム(IV)四水和物、ヘキサクロロパラジウム酸カリウム(IV)、パラジウム(II)クロライド、パラジウム(II)ブロマイド、パラジウム(II)アセテート、パラジウム(II)アセチルアセトネート、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロテトラアミノパラジウム(II)、ジクロロ(シクロオクタ-1,5-ジエン)パラジウム(II)、パラジウム(II)トリフルオロアセテート、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム付加物、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、(1,4-ナフトキノン)-[1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)イミダゾール-2-イリデン]パラジウム(0)、アリルクロロ-[1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)イミダゾール-2-イリデン]パラジウム(II)、アリルクロロ-[1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-4,5-ジハイドロイミダゾール-2-イリデン]パラジウム(II)、(3-フェニルアリルクロロ)-[1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-4,5-ジハイドロイミダゾール-2-イリデン]パラジウム(II)、
より好ましくは、[(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-3,6-ジメトキシ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)-2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]パラジウム(II)メタンスルホネート、
(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)[2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]パラジウム(II)メタンスルホネート及びクロロ(クロチル)(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)パラジウム(II)から選択される、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記触媒が、金属Cu、又は、酸化物;アルコキシド;カルボン酸塩、好ましくは酢酸塩;塩化物、好ましくはCl、Br及びI;シアン化物;アルキルスルホネート、アリールスルホネート、好ましくはメタンスルホネート、エタンスルホネート、p-トルエンスルホネート、トリフレートから選択されるそれらの誘導体、及び、前記誘導体と、ジアミン、ジカルボニル化合物、アミノ酸、塩及び溶媒とそれらの付加物とから選択される配位子との錯体、
好ましくは、配位子は、任意に置換されたC
1-C
6ベータケトエステル;任意に置換されたC
1-C
6ジケトン;アミノ酸、C
1-C
6アルキルジアミン、任意に置換されたC
4-C
8シクロアルキルジアミン、アリールジアミン、及び窒素原子で任意に置換され及び炭素原子で任意に置換されているヘテロアリールジアミン(但し、C及びNにおける置換基は、互いに同一又は異なっていて、H、C
1-C
4アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、OR
a基(但し、R
aはC
1-C
4アルキル基及びアリール基から選択される);から選択され、
より好ましくは、配位子は、エチレンジアミン、N-N′-ジメチルエチレンジアミン、1,2-シクロヘキシルジアミン、N,N′-ジメチル-1,2-シクロヘキシルジアミン、プロリン、4-ヒドロキシプロリン、グリシン、N,N-ジメチルグリシン、
ビス-(2-ヒドロキシエチル)グリシン、2-(ジメチルアミノ)エタノール、ピコリン酸、メチルN-メチルプロリナート、から選択され、
最も好ましくは、金属Cu、CuI-N-N′-ジメチルエチレンジアミン、CuI-1,2-シクロヘキシルジアミン、CuI-N-N′-ジメチル-1,2-シクロヘキシルジアミン、CuI-N,N-ジメチルグリシン、から選択されるCu触媒である、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項8】
適当な溶媒の存在下、室温と溶媒還流温度との間から構成される温度で、式(IV)の化合物と式(V)の化合物とを反応させる工程を含む、請求項4~7の何れか1項に記載の方法:
【化7】
式中、X、X
1、W及びW
1は、先の請求項において報告された意味を有し、X
3は、ハロゲン原子、OH、O-スルホン酸基;OR
5基(但し、R
5は、直鎖又は分岐のC
1-C
6アルキル;任意に置換されたC
1-C
4アルキルで任意に置換されたC
5-C
6アルキル;C
3-C
9シクロアルキル;フェニル、ナフチル、ヘテロアリール基から選択され)、から選択され、好ましくは、X
3は、塩素、臭素、ヨウ素、メタンスルホネート、p-トルエンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネートから選択され、より好ましくは、X
3は塩素、臭素及びヨウ素、から選択される。
【請求項9】
前記溶媒は、非プロトン性無極性又は極性溶媒、芳香族、脂肪族、エーテル、エステル、ケト、アルコール溶媒、任意に水の存在下であり、及びそれらの混合物、好ましくは、ジクロロメタン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、スルホラン、N-メチルピロリドン、N-ブチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル、トルエン、キシレン、クメン、シメン、バレロラクトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、i-プロパノール、メタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、t-ブタノール、sec-ブタノール、tert-アミルアルコール又はそれらの混合物、任意に水の存在下であり、好ましくは、トルエン、ジオキサン、ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル、t-ブタノール、n-ブタノール、tert-アミルアルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、2-メチル-テトラヒドロフラン、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N-ブチルピロリドン、及びそれらの溶媒混合物、任意に水の存在下であり、から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
式IVの化合物(但し、W及びW
1が酸素原子を形成する(式IV
Ta))を、式(V)の化合物(但し、X
1が塩素原子である)と反応させ、式(I
Ta)の化合物を得る請求項8又は9に記載の方法。
【化8】
【請求項11】
式IVの化合物(但し、WがORp基であり、W
1が水素である(式(IV
T))を、式(V)の化合物(但し、X
1が塩素原子である)と反応させて式(I
Tb)の化合物を得る、請求項8又は9に記載の方法。
【化9】
【請求項12】
式IVの化合物(但し、WがOPG基であり、W
1が水素である(式(IV
Tc)))を、式(V)の化合物(但し、X
1が塩素原子である)と反応させて式(I
Tc)の化合物を得る、請求項8又は9に記載の方法:
【化10】
ここで、X、X
3及びPGは、先の請求項で報告された意味を有する。
【請求項13】
さらに、適当な溶媒中、還元剤の存在下、式(I
Ta)の化合物を還元して、式(I
Tb)の化合物(但し、Rpは、先の請求項で報告された意味を有する)を得、任意にヒドロキシ基の保護が続く工程を含む、請求項8~11の何れか1項に記載の方法。
【化11】
【請求項14】
さらに、式(IV
Ta)の化合物を適当な還元剤で還元して式(IV
Tb)の化合物を得、
【化12】
任意選択で、ヒドロキシ基を保護し、その後、式(V)の化合物と反応させて、それぞれの化合物(I
Tb)を得ることを含む、請求項8~11の何れか1項に記載の方法:
【化13】
ここで、X、X
3及びRpは、先の請求項で報告された意味を有する。
【請求項15】
さらに式(IV
Ta)の化合物を保護して、式(IV
Tc)の化合物を得る工程を含む請求項12に記載の方法:
【化14】
ここで、X、X
3及びPGは、先の請求項で報告された意味を有する。
【請求項16】
酢酸;アルコール、好ましくはメタノール、エタノール、イソプロパノール;炭化水素、好ましくはヘキサン、シクロヘキサン;エーテル、好ましくはジエチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル;エステル、好ましくは酢酸エチル、酢酸メチル;非プロトン性極性溶媒、好ましくはジメチルホルムアミド;又は前記溶媒の混合物;又はそれらと水との混合物から選択される溶媒中、前記還元剤が、LiAlH
4、NaBH
4、Zn(BH
4)
2、BH
3、Red-Al及びLiBH
4、又はB
2H
6である、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項17】
a)適当な溶媒の存在下、室温と溶媒還流温度の間で構成される温度において、式(IV
T)の化合物を式(V)の化合物と反応させる工程:
【化15】
ここで、X、X
3、W及びW
1は、先の請求項で報告された意味を有する、
b)遷移金属触媒、塩基の存在下、適当な溶媒中、室温と溶媒還流温度の間で構成される温度で、式(I
T)の化合物を式(II)の化合物と反応させ、式(III
T)の化合物を得る工程:
【化16】
を含む、請求項4~16の何れか1項に記載の方法。
【請求項18】
トルバプタン及びその薬理学的に許容される誘導体を調製するための方法における式(I)の化合物の使用:
【化17】
ここで、X、X
1、及びW及びW
1は、先の請求項で報告された意味を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルバプタン(Tolvaptan)及びその薬理学的に許容される誘導体を合成するための新規な中間体、並びに当該中間体を含むその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トルバプタンは、N-[4-(7-クロロ-5-ヒドロキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-ベンゾ[b]アゼピン-1-カルボニル)-3-メチル-フェニル]-2-メチルベンズアミド(N-[4-(7-chloro-5-hydroxy-2,3,4,5-tetrahydro-benzo[b]azepin-1-carbonyl)-3-methyl-phenyl]-2-methylbenzamide)としても知られ、次の式によって特徴づけられる。
【0003】
【0004】
トルバプタンは、遠位ネフロンのV2受容体にAVP(アルギニン バソプレシン)が結合するのを特異的に阻害する非ペプチド性のバソプレシン拮抗薬であり、うっ血性心不全、肝硬変及び不適当な抗利尿ホルモン症候群(SIADH)に伴う低ナトリウム血症の治療に用いられる。
【0005】
トルバプタンはラセミ体として市販されている。
トルバプタンの製造のための種々の合成アプロ-チが開示されている。
特許文献1及び2は、以下のスキ-ムにより、トルバプタン及びその誘導体を含むベンゾヘテロ環化合物、並びにニトロ基を還元して対応するアミンを与えることによるそれらの調製方法を、開示している。
【0006】
【0007】
非特許文献1には、7-クロロ-1,2,3,4-テトラヒドロ-5H-ベンゾ[b]アゼピン-5-オンを4-ニトロ安息香酸の適当な誘導体と縮合して対応するアミドを与えることによってベンゾジアゼピン化合物が合成されると記述している。その後、ニトロ基を還元して、アニリン誘導体を得る。
特に、トルバプタンの合成には、PtO2の存在下でのSnCl2またはH2の存在下での還元が含まれる。この反応式は以下のとおりである。
【0008】
【0009】
特許文献3は、塩基としてN-メチルモルホリンの存在下、2-メチル-4-ニトロ安息香酸クロリドを用いて7-クロロ-5-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-1-ベンズアゼピンをN-アシル化するプロセスを開示している。
【0010】
【0011】
特許文献4には、塩基の非存在下、有機溶媒中で、適当なベンゾアゼピンとニトロベンゾイルクロリドとの反応を含む、トルバプタンの合成のための中間体ニトロ誘導体の調製方法が記載されている。
【0012】
【0013】
特許文献5は、金属塩化物とPd-Cからなり、金属塩化物が塩化リチウム又は三塩化インジウムである触媒系の存在下で、ニトロ誘導体を接触水素化して、対応するアミンが得られることを開示している。
【0014】
【0015】
特許文献6は、PPh3、PdCl2又はPd(OAc)2及びカルボニル化剤の存在下でのベンゾアゼピンと1-ブロモ-2-メチル-4-ニトロベンゼンとのアミド化反応、、続いてFeダスト(dust)およびNH4Clの存在下での還元、並びにその後のアシル化および還元反応を含むトルバプタンの調製プロセスを開示する。
【0016】
【0017】
特許文献7は、NaOH、KOH、K2CO3、KHCO3、Na2CO3又はNaHCO3の存在下で、アセトニトリル中で適当なベンズアゼピンと塩化ニトロベンゾイルを反応させてニトロ誘導体を調製するプロセスを記載している。
【0018】
【0019】
特許文献8は、下記のスキ-ムによる、適当なベンゾアゼピンと適当な酸塩化物との間の反応によるトルバプタンの調製方法を記載している。
【0020】
【0021】
上記酸塩化物は、2-メチル-4-ニトロ安息香酸の還元から出発して対応するアミンを生じ、これを塩化2-メチルベンゾイルと縮合して、2-メチル-4-(2-メチルベンジル)安息香酸を生じ、続いて塩化物として活性化される。
【0022】
現在知られているトルバプタン合成法では、ニトロ誘導体を経由し、その後還元して対応するアミンを得るステップを含む。
【0023】
いくつかの化学構造は、ニトロ基の存在を特徴とする芳香族構造を含む変異原性および発癌活性と関連している(非特許文献2)。
【0024】
したがって、医薬品の合成経路に芳香族ニトロ化合物が存在すると、変異原性不純物に関連するICH M7ガイドラインで推奨されている負担の大きい分析試験や精製段階を必要とし、また発がん性デ-タがポジティブであれば、非常に困難となることが予想される、中間体や由来する不純物が変異原性や遺伝毒性を持つ可能性により、非常に大きな問題となります。
【0025】
本出願人は、従来の合成方法、すなわちニトロ化合物を用いる方法によれば、5000ppmより高い潜在的変異原性不純物(PMI)量を含む中間体1-(4-アミノ-2-メチルベンゾイル)-7-クロロ-5-オキソ-2、3、4、5-テトラヒドロ-1H-1-ベンズアゼピンの精製のための新しい有効なプロセスを開発した。
【0026】
この精製システムにより、PMI含有量を10倍以上減少させることができ、規制要件に従った値を得ることができる。
【0027】
この精製方法は効果的であるが、生産コストの増加を伴うさらなる工程を必要とする。
【0028】
したがって、発がん性や変異原性を有する可能性のある化合物が存在しないようにするために、芳香族ニトロ化合物の使用やニトロ基を含む中間体(特に芳香族構造と結合している場合)の通過を伴わない新しい中間体や異なる合成戦略を、見出す必要性は依然として残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】US5258510
【特許文献2】US5559230
【特許文献3】CN102060769
【特許文献4】IN2012MUM634
【特許文献5】CN108341780
【特許文献6】CN106883175
【特許文献7】CN102382053
【特許文献8】CN104418803
【非特許文献】
【0030】
【非特許文献1】Bioorganic & Medicinal Chemistry 7 (1999) 1743-1754
【非特許文献2】Reg. Tox. And Farm. 44 (2006) 198-211; Current Computer-Aided Drug Design, 2006, 2, 1-19, (2) 169-176
【発明の概要】
【0031】
発明の説明:
本発明者は、今回、トルバプタン又はその薬理学的に許容される誘導体を合成するための新規中間体、及び芳香族ニトロ化合物を使用しない、高収率かつ高化学純度の調製方法を見出した。
【0032】
従って、本発明の第1の目的は、式(I)の新規中間体である。
【0033】
【化10】
ここで、Xは、ハロゲン原子又はO-スルホン酸基であり、
X
1は、ハロゲン原子であり、
W及びW
1は一緒になって酸素原子(式(Ia)の化合物)を形成するか、
【0034】
【化11】
又は、W及びW
1基の1つは水素であり、別の1つはORp基(式(Ib)の化合物)であるか、
【0035】
【化12】
ここで、Rpは、水素若しくはヒドロキシル保護基であり、
【0036】
又は、W及びW1はカルボニル保護基PG(式(Ic)の化合物)を表す。
【0037】
【化13】
ここで、PGは、好ましくは、環状若しくは非環状のケタール又はチオケタールを表す。
【0038】
Ic化合物の例としては、式(Ic1)、(Ic2)、(Ic3)、(Ic4)で表されるものが挙げられる。
【0039】
【0040】
ここで、
R及びR1は、互いに同一又は異なっており、直鎖又は分岐のC1-C6アルキル;C1-C4アルキル基で任意に置換されたC5-C6シクロアルキル;CH2-フェニル、CH2-アリール、CH2-ヘテロアリールであって、フェニル、アリール、ヘテロアリールは、直鎖又は分岐のC1-C6アルキル、ハロゲン、-NO2、-OR2基から選択される一つ以上の基で任意に置換されており(但し、R2は、H、直鎖又は分岐のC1-C6アルキル、任意に置換されたベンジルから選択される);から選択され、
Tは、CRIIRIII-(CRIVRV)nであり、
ここで、
n=0~3であり、RII、RIII、RIV、RVは、互いに同一又は異なっており、水素、直鎖若しくは分岐のC1-C6アルキル;C1-C4アルキル基で任意に置換されたC5-C6シクロアルキル;CH2-フェニル、CH2-アリール、CH2-ヘテロアリールであって、フェニル、アリール、ヘテロアリールは、直鎖又は分岐のC1-C6アルキル、ハロゲン、-NO2、-OR2基から選択される一つ以上の基で任意に置換されており(但し、R2は、H、直鎖又は分岐のC1-C6アルキル、任意に置換されたベンジルから選択される)、から選択される。
【0041】
好ましくは、X1は、塩素、臭素及びヨウ素であり、より好ましくは塩素である。
【0042】
好ましくは、Xは、臭素、ヨウ素、メタンスルホネート、p-トルエンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネートであり、より好ましくは、臭素、ヨウ素又はトリフルオロメタンスルホネートである。
【0043】
好ましくは、Rpは、H又はヒドロキシルの保護基、
例えばアセチル(Ac);ベンゾイル(Bz);ベンジル(Bn);β-メトキシエトキシメチルエーテル(MEM);ジメトキシトリチル;[ビス-(4-メトキシフェニル)フェニルメチル](DMT);メトキシメチルエーテル(MOM);メトキシトリチル[(4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル](MMT);p-メトキシベンジルエーテル(PMB);メチルチオメチルエーテル(MTM);ピバロイル(Piv);トリフェニルメチル(Tr);テトラヒドロピラニルエーテル;テトラヒドロフラニルエーテル;好ましくは、トリメチルシリル(TMS)、トリエチルシリル(TES)、tert-ブチルジメチルシリル(TBDMS)、トリイソプロピルシリル(TIPS)、トリイソプロピルシリルオキシメチル(TOM)、ジメチルイソプロピルシリル(IPDMS)、ジエチルイソプロピルシリル(DEIPS)、t-ブチルジメチルシリル(TBS)、t-ブチルジフェニルシリル(TBDPS)から選択されるシリル誘導体;アルキルエーテル及びアルコキシエーテルである。
【0044】
より好ましくは、Rpは水素、又はテトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、アセチル、ベンゾイル、ピバロイル、トリメチルシリル(TMS)、トリエチルシリル(TES)基、tert-ブチルジメチルシリル(TBDMS)、トリイソプロピルシリル(TIPS)、トリイソプロピルシリルオキシメチル(TOM)、ジメチルイソプロピルシリル(IPDMS)、ジエチルイソプロピルシリル(DEIPS)、t-ブチルジメチルシリル(TBS)、t-ブチルジフェニルシリル(TBDPS)である。
Rpは、さらにより好ましくは水素である。
【0045】
R及びR1は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ベンジル、p-メチルベンジル、p-メトキシベンジル、m-メトキシベンジル、p-ニトロベンジル、p-クロロベンジル、3,4-ジメトキシベンジル、シクロペンチル、シクロヘキシルから選択することができる。
【0046】
好ましくは、Tは、CH2;CHRIIIからなる基から選択され、ここでRIIIは水素、C1-C6アルキル基、フェニル基、任意に置換されたアリール基から選択される。
好ましくは、RIIIは、H、Me、Et、n-Pr、i-Pr、n-Bu、i-Bu、t-Bu、Ph、(CH2-CHRIV)(但し、RIVは、C1-C6アルキル基、フェニル基、任意に置換されたアリール基から選択され)から選択され、好ましくは、(CH2-CHRIV)は、(CH2-CHCH3)、(CH2-CHC2H5)、(CH3CH-CHCH3)、(CH2-C(CH3)2-CH2)から選択される。
【0047】
本発明の好ましい実施形態は、式(IT)の化合物である。
【0048】
【化15】
ここで、Xは臭素、ヨウ素又はトリフルオロメタンスルホネートであり、W及びW
1は上記のように定義される。
【0049】
WとW1が一緒になって酸素原子と結合を形成している場合、その化合物は式(ITa)で表される。
【0050】
【0051】
Wと及びW1の一方が水素であり、他方がORp基であるとき、化合物は、式(ITb)で表される。
【0052】
【化17】
ここで、Rpは上記のように定義される。
【0053】
W及びW1がカルボニル基の保護基であるとき、化合物は式(ITc)で表される。
【0054】
【化18】
ここで、PGは上記のように定義され、及びI
Tc化合物は、式(I
Tc1)、(I
Tc2)、(I
Tc3)、(I
Tc4)で表される。
【0055】
【化19】
ここで、R及びR
1及びTは上記のように定義される。
【0056】
式(ITb)の化合物において、Rpは、好ましくは、水素、及びテトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、アセチル、ベンゾイル、ピバロイル、トリメチルシリル(TMS)、トリエチルシリル(TES)、tert-ブチルジメチルシリル(TBDMS)、トリ-イソ-プロピルシリル(TIPS)、トリ-イソ-プロピルシリルオキシメチル(TOM)、ジメチルイソプロピルシリル(IPDMS)、ジエチルイソプロピルシリル(DEIPS)、t-ブチルジメチルシリル(TBS)、t-ブチルジフェニルシリル(TBDPS)から選択され;より好ましくは、RpはHである。
【0057】
式(ITc1)及び(ITc2)の化合物において、R及びR1は、互いに同一又は異なり、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ベンジル、p-メチルベンジル、p-メトキシベンジル、m-メトキシベンジル、p-ニトロベンジル、p-クロロベンジル、3,4-ジメトキシベンジル、シクロペンチル、シクロヘキシル、から選択され、さらにより好ましくは、R及びR1は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルから選択される。
【0058】
式(ITc3)及び(ITc4)の化合物において、Tは、好ましくは、(CH2-CHCH3),(CH2-CHC2H5)、(CH3CH-CHCH3)、(CH2-C(CH3)2-CH2)基から選択される
【0059】
本発明のさらなる目的は、トルバプタン及びその薬理学的に許容される誘導体を調製するための方法であって、
遷移金属触媒ベース(a transition metal catalyst based)、塩基及び適当な溶媒の存在下で、式(IT)の化合物と式(II)の化合物とを反応させて、式(IIIT)の化合物を与える工程を含む方法である。
【0060】
【0061】
ここで、Xは、臭素、ヨウ素、メタンスルホネート、p-トルエンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート;より好ましくは臭素、ヨウ素、トリフルオロメタンスルホネートから選択され、W及びW1は上記のように定義される。
上記反応は、室温と溶媒の還流温度との間の温度で行われる。
【0062】
W及びW1が一緒になって酸素原子を表す場合、化合物(IT)及び(IIIT)は、式(ITa)及び(IIITa)で表される
【0063】
【0064】
W及びW1の一方がORp基であり、他方が水素であるとき、式(IT)及び(IIIT)の化合物は、式(ITb)及び(IIITb)によって表される。
【0065】
【化22】
ここで、X及びRpは上記のように定義される。
【0066】
W及びW1がカルボニル基の保護基である場合、式(IT)及び(IIIT)の化合物は、式(ITc)及び(IIITc)によって表される。
【0067】
【化23】
ここで、X及びPGは上記のように定義される。
【0068】
好ましくは、遷移金属触媒は、Ru、Rh、Pt、Pd及びCuであって、金属形態、又は、酸化物、ハロゲン化物、シアン化物、アルコキシド、カルボン酸塩、塩であって、任意に適当な配位子と錯体化された形態、又は前記配位子と予め形成された錯体の形態から選択される。
【0069】
触媒は、好ましくは、Pd又はCuであって、金属形態、又は、酸化物、ハロゲン化物、シアン化物、アルコキシド、カルボン酸塩及び塩であって、任意に適当な配位子と錯体を形成した形態、又は、前記配位子、好ましくはホスフィン又はカルベンと予備形成された錯体の形態を、ベースとする(based on)ことが好ましい。
【0070】
塩基は、好ましくは、水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、フッ化物及びアルコキシド、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のアルキルシリルアミド、並びにそれらの混合物から選択される、ことが好ましい。
【0071】
塩基は、好ましくは、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、
炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸セシウム、tert-ブチル酸ナトリウム、tert-ブチル酸カリウム、tert-ブチル酸セシウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム、フッ化カリウム、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、メチル酸ナトリウム、さらに好ましくは、リン酸カリウム;炭酸セシウム;炭酸カリウム;水酸化カリウム;tert-ブチル酸ナトリウム;tert-ブチル酸カリウム;メチル酸ナトリウム、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、から選択される。
【0072】
好ましくは、溶媒は、無極性又は極性アプロティック(polar aprotic)、芳香族、脂肪族、エーテル、エステル、ケトン、アルコール溶媒、任意に水の存在下、及びそれらの混合物から選択される。
【0073】
溶媒の例としては、ジクロロメタン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、
スルホラン、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、
メチルテトラヒドロフラン、ジメチルアセトアミド、ジオキサン、ジメトキシエタン、トルエン、キシレン、クメン、シマヌテン(cimanutene)、シクロペントン・メチルメチルエチルメチルメチルアセテート(cyclopentone-methyl methyl ethyl methyl methyl acetate)、iメタノール(i methanol)、n-プロパノール、n-ブタノール、t-ブタノ-ル、sec-ブタノール、tert-アミルアルコール(teramyl alcohol)、及びそれらの混合物、任意に水の存在下であり、
より好ましくはトルエン、ジオキサン、ジメトキシエタン、t-ブタノール、n-ブタノール、tert-アミルアルコール(teramyl alcohol)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、N-メチルピロリドン、メチルテトラヒドロフラン、ジメチルアセトアミド及びそれらの混合物、任意に水の存在下であり、が挙げられる。
【0074】
触媒は、金属Pdまたはその酸化物;アルコキシド;カルボン酸塩、好ましくは酢酸塩;ハロゲン化物;好ましくはCl、Br及びI;アルキルスルホネート、アリールスルホネート、好ましくはメタンスルホネート、エタンスルホネート、p-トルエンスルホネート、トリフラート;前記の誘導体と、第三級ホスフィン、それらのπ-アリル錯体(π-allyl complexes)、カルベン、塩及び溶媒とそれらの付加体とから選択される配位子との錯体、及び前記配位子と予備形成された錯体(complexes of said preformed ligands);好ましくは、ホスフィン又はカルベン錯体、をベースとするものが好ましい。
【0075】
好ましくは、前記第三級ホスフィンは、トリ-tert-ブチルホスフィン、2-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)-1,1′-ビフェニル、2-(ジ-tert-ブチルホスフィン)-2′-メチル-1,1′-ビフェニル、2-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)-1,1′-ビナフチル、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2′,6′-ジメトキシ-1,1′-ビフェニル、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2′、6′-ジ-イソ-プロポキシ-1,1′-ビフェニル、N-フェニル-2-(ジ-tert-ブチルホスフィン)ピロール、1-フェニル-2-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)-1H-インデン)、(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)[2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]、(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2′,6′-ジメトキシ-1,1′-ビフェニル)[2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]、[(2-ジ-tert-ブチルホスフィノ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)-2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]、[(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-3,6-ジメトキシ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)-2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]、[(2-ジ-tert-ブチルホスフィノ-3,6-ジメトキシ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)-2-(2´-アミノ-1,1´-ビフェニル)]、(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2′,6′-ジイソプロポキシ-1,1′-ビフェニル)[2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]、クロロ[(トリ-tert-ブチルホスフィン)-2-(2-アミノビフェニル)]、クロロ[(4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン)-2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]、[2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)][4-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)-N,N-ジメチルアニリン](クロロ)、クロロ(トリシクロヘキシルホスフィン)[2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]、クロロ[(p-ジメチルアミノフェニル)(ジ-tert-ブチルホスフィン)]、トリ-tert-ブチルホスフィン(クロロ)、クロロ(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2′,6′-ジイソプロポキシ-1,1′-ビフェニル)、クロロ(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2′,6′-ジメトキシ-1,1′-ビフェニル)、(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-3,6-ジメトキシ-1,1′-ビフェニル)、(2-ジ-tert-ブチルホスフィノ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)、(2-ジ-tert-ブチルホスフィノ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)、[(R)-2,2′-ビス(ジフェニルホスフィン)-1,1′-ビナフタレン]、[4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン]、トリシクロヘキシルホスフィン、[5-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)-1′,3′,5′-トリフェニル-1′H-1,4′-ビピラゾール]、トリ-o-トリルホスフィン、[2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)][4-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)-N,N-ジメチルアニリン]、[(2-ジ-tert-ブチルホスフィン-3,6-ジメトキシ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)-2-(2´-アミノ-1,1´-ビフェニル)]、4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン、(トリシクロヘキシルホスフィン)[2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]、クロロ(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)、(1,4-ナフトキノン)-[1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)イミダゾール-2-イリデン]、アリルクロロ-[1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)イミダゾール-2-イリデン]、アリルクロロ-[1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-4,5-ジヒドロイミダゾ-ル-2-イリデン]、(3-フェニルアリルクロロ)-[1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-4,5-ジヒドロイミダゾール-2-イリデン]、
より好ましくは[(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-3,6-ジメトキシ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)-2-(2´-アミノ-1,1´-ビフェニル)]、
(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)[2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]及びクロロ(2-ジシクロヘキシルホスフィン-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)、から選択される。
【0076】
Pd系触媒は、好ましくは、クロロ(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)[2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]パラジウム(II)のTHF付加物、クロロ(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2′,6′-ジメトキシ-1,1′-ビフェニル)[2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]パラジウム(II)の1.5THF付加物、[(2-ジ-tert-ブチルホスフィノ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)-2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]パラジウム(II)メタンスルホネートのMTBE付加物、[(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-3,6-ジメトキシ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)-2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]パラジウム(II)メタンスルホネート、[(2-ジ-tert-ブチルホスフィノ-3,6-ジメトキシ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)-2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]パラジウム(II)メタンスルホネート、(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2′,6′-ジイソプロポキシ-1,1′-ビフェニル)[2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]パラジウム(II)メタンスルホネート、クロロ[(トリ-tert-ブチルホスフィン)-2-(2-アミノビフェニル)]パラジウム(II)、クロロ[(4,5-ビス(ジフェニルホスフィン)-9,9-ジメチルキサンテン)-2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]パラジウム(II)、[2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)][4-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)-N,N-ジメチルアニリン](クロロ)パラジウム(II)、クロロ(トリシクロヘキシルホスフィン)[2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]パラジウム(II)、クロロ(クロチル)(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)パラジウム(II)、クロロ(クロチル)[(p-ジメチルアミノフェニル)(ジ-tert-ブチルホスフィン)]パラジウム(II)、トリ-tert-ブチルホスフィン(クロロ)(クロチル)パラジウム(II)、クロロ(クロチル)(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2′,6′-ジイソプロポキシ-1,1′-ビフェニル)パラジウム(II)、クロロ(クロチル)(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2′,6′-ジメトキシ-1,1′-ビフェニル)パラジウム(II)、クロチル(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-3,6-ジメトキシ-1,1′-ビフェニル)パラジウム(II)トリフレート、アリル(2-ジ-tert-ブチルホスフィノ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)パラジウム(II)トリフレート、アリル[(R)-2,2′-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1′-ビナフタレン]パラジウム(II)クロリド、アリル[4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン]パラジウム(II)クロリド、クロロ(クロチル)(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム(II)、アリル[5-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)-1′,3′,5′-トリフェニル-1′H-1,4′-ビピラゾール]パラジウム(II)トリフレート、クロロ(クロチル)(トリ-o-トリルホスフィン)パラジウム(II)、[(2-ジ-tert-ブチルホスフィノ-3,6-ジメトキシ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)-2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]パラジウム(II)メタンスルホネート、[2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)][4-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)-N,N-ジメチルアニリン](クロロ)パラジウム(II)、クロロ(トリシクロヘキシルホスフィン)[2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]パラジウム(II)、ヘキサクロロパラジウム酸ナトリウム(IV)四水和物、ヘキサクロロパラジウム酸カリウム(IV)、パラジウム(II)クロライド、パラジウム(II)ブロマイド、パラジウム(II)アセテート、パラジウム(II)アセチルアセトネート、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロテトラアミノパラジウム(II)、ジクロロ(シクロオクタ-1,5-ジエン)パラジウム(II)、パラジウム(II)トリフルオロアセテート、
トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム付加物、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、(1,4-ナフトキノン)-[1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)イミダゾール-2-イリデン]パラジウム(0)、アリルクロロ-[1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)イミダゾール-2-イリデン]パラジウム(II)、アリルクロロ-[1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-4,5-ジハイドロイミダゾール-2-イリデン]パラジウム(II)、(3-フェニルアリルクロロ)-[1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-4,5-ジハイドロイミダゾール-2-イリデン]パラジウム(II)、
より好ましくは、[(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-3,6-ジメトキシ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)-2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]パラジウム(II)メタンスルホネート、(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)[2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]パラジウム(II)メタンスルホネート及びクロロ(クロチル)(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)パラジウム(II)、から選択される。
【0077】
さらに好ましい実施形態では、金属Cu、又は、酸化物;アルコキシド;カルボン酸塩、好ましくは酢酸;ハロゲン化物、好ましくは、Cl、Br及びI;シアン化物;アルキルスルホネート、アリールスルホネート、好ましくはメタンスルホネート、エタンスルホネート、p-トルエンスルホネート、トリフラート;、及び、前記誘導体と、ジアミン、ジカルボニル化合物、アミノ酸、塩、及び、溶媒とそれらの付加物、から選択される配位子との錯体から選択される、それらの誘導体をベースとする触媒を用いる。
【0078】
Cu系触媒の配位子は、好ましくは、任意に置換されたC1-C6ベータケトエステル;任意に置換されたC1-C6ジケトン;アミノ酸、C1-C6アルキルジアミン、任意に置換されたC4-C8シクロアルキルジアミン、アリールジアミン、窒素原子で任意に置換され及び炭素原子で任意に置換されているヘテロアリールジアミン(但し、C及びNにおける置換基は、互いに同一又は異なっていて、H、C1-C4アルキル基、アリール基、ヒドロキシル基、ORa基(但し、RaはC1-C4アルキル基及びアリール基から選択される);から選択される。
【0079】
配位子は、好ましくは、エチレンジアミン、N-N′-ジメチルエチレンジアミン、1,2-シクロヘキシルジアミン、N-N′-ジメチル-1,2-シクロヘキシレンジアミン、プロリン、4-ヒドロキシプロリン、グリシン、N,N-ジメチルグリシン、ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン、2-(ジメチルアミノ)エタノール、ピコリン酸、メチルN-メチルプロリネートから選択される。
【0080】
より好ましくは、金属Cu、CuI-N-N′-ジメチルエチレンジアミン、1、2-シクロヘキシルジアミン、N、N′-ジメチル-1、2-シクロヘキシレンジアミン、CuI-N、N-ジメチルグリシンから選択されるCu系触媒が使用される。
【0081】
本発明の目的は、式(I)の化合物の調製をさらに含むトルバプタン及びその薬理学的に許容される誘導体を調製する方法である。
【0082】
式(I)の化合物は、適当な溶媒の存在下、室温と溶媒の還流温度の間の温度で式(IV)の化合物と式(V)の化合物との反応を含む方法により本発明に従って調製される。
【0083】
【0084】
ここで、X、X1、W及びW1は、上記で報告された意味を有し、
X3は、ハロゲン原子、OH、O-スルホネート基;OR5基(但し、R5は、直鎖又は分岐のC1-C6アルキル;C1-C4アルキルで任意に置換されたC5-C6シクロアルキル;C3-C9アルケニル;任意に置換された、フェニル、ナフチル、ヘテロアリール)、から選択され、
好ましくは、X3は、塩素、臭素、ヨウ素、メタンスルホネート、p-トルエンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネートから選択され、より好ましくは、X3は塩素、臭素及びヨウ素、から選択される。
【0085】
溶媒は、好ましくは、無極性又は極性アプロティック(aprotic)、芳香族、脂肪族、エーテル、エステル、ケトン、アルコール溶媒、任意に水の存在下、及びそれらの混合物から選択される。
【0086】
溶媒の例としては、任意に水の存在下、ジクロロメタン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、スルホラン、N-メチルピロリドン、N-ブチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン.ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル、トルエン、キシレン、クメンプロパノール(cumene- propanol)、メタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、t-ブタノール、sec-ブタノール、tert-アミルアルコール(teramyl alcohol)又はそれらの混合物が挙げられる。
【0087】
好ましくは、前記溶媒は、水の存在下で、トルエン、ジオキサン、ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル、t-ブタノール、n-ブタノール、tert-アミルアルコール(teramyl alcohol)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N-ブチルピロリドン及びそれらの混合物から選択される。
【0088】
本発明の好ましい実施形態では、X1は塩素原子である。
【0089】
本発明の好ましい実施態様では、トルバプタンを調製する方法は、適当な溶媒中、還元剤の存在下、式(ITa)の化合物を還元して式(ITb)の化合物を得、続いて任意にヒドロキシル基を保護する工程をさらに含む。
【0090】
【化25】
ここで、Rpは水素又はヒドロキシル保護基であり、Xは上記で報告された意味を有する。
【0091】
あるいは、本発明のトルバプタンを調製する方法は、例えば、「Greene′s Protective Groups in Organic Synthesis - IV ed.」に記載されている公知の方法における適当な反応条件下、式(ITa)の化合物を、適当なアルコール、チオール、ジオール、ジチオールと反応させることにより、式(ITa)の化合物のカルボニル基を保護して式(ITc)の化合物を得ることをさらに含む。
【0092】
【化26】
ここで、PGは上記のように定義され、I
Tc化合物は、上記報告された式(I
Tc1)、(I
Tc2)、(I
Tc3)、(I
Tc4)で表される。
【0093】
本発明のさらなる実施形態では、トルバプタンを調製する方法は、式(IVTa)の化合物を適当な還元剤で還元して式(IVTb)の化合物を得、続いて、任意に、ヒドロキシル基を保護し、その後、式(V)の化合物と反応させて、それぞれの化合物(ITb)を得る工程をさらに含む。
【0094】
【0095】
【化28】
ここで、X、X
3及びRpは上記の意味を有する。
【0096】
好ましくは、Rpは、水素及びテトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、アセチル、ベンゾイル、ピバロイル、トリメチルシリル(TMS)、トリエチルシリル(TES)、tert-ブチルジメチルシリル(TBDMS)、トリイソプロピルシリル(TIPS)、トリイソプロピルシリルオキシメチル(TOM)、ジメチルイソプロピルシリル(IPDMS)、ジエチルイソプロピルシリル(DEIPS)、t-ブチルジメチルシリル(TBS)、t-ブチルジフェニルシリル(TBDPS)から選択される。
【0097】
好ましくは、還元剤は、酢酸、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)、炭化水素(例えば、ヘキサン、シクロヘキサンなど)、エーテル(例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなど)、エステル(例えば、酢酸エチル、酢酸メチルなど)、極性非プロトン性溶媒(例えば、ジメチルホルムアミドなど)、及び任意に水とそれらの混合物から選択される溶媒中のLiAlH4、NaBH4、Zn(BH4)2、BH3、Red-Al及びLiBH4又はB2H6から選択される。
【0098】
任意のOH基の保護反応は、例えば、「Greene′s Protective Groups in Organic Synthesis - IV ed.」に記載される公知の方法に従って、式(VITb)の化合物に対して実施される。
【0099】
あるいは、トルバプタンを調製する方法は、さらに、式(IVTa)の化合物を保護して式(IVTc)の化合物を得ることを含む。
【0100】
【0101】
次いで、適当な溶媒の存在下で、室温と溶媒の還流温度の間の温度で、式(IVTc)の化合物と式(V)の化合物との反応により式(ITc)の化合物を得る。
【0102】
【化30】
ここで、PGは環状及び非環状ケタール及びチオケタールから選択され、化合物(IV
Tc)は、式(IV
Tc1)、(IV
Tc2)、(IV
Tc3)、(IV
Tc4)によって表される。
【0103】
【0104】
好ましくは、化合物(IVTc)は、例えば、「Greene′s Protective Groups in Organic Synthesis - IV ed.」に記載されている公知の方法に従う適当な条件下、式(IVTa)の化合物と、適当なアルコール、チオール、ジオール、ジチオールとの反応により得られる。
【0105】
したがって、さらなる本発明の目的は、トルバプタンを調製する方法は、以下の工程を含む:
a)適当な溶媒の存在下、室温と溶媒の還流温度の間の温度で、式(IVT)の化合物と式(V)の化合物とを反応させる工程。
【0106】
【化32】
ここで、X、X
3、W及びW
1は上記報告された意味を有する。
【0107】
b)遷移金属系触媒、塩基の存在下、適当な溶媒中、室温と溶媒還流温度の間の温度で、式(IT)の化合物と式(II)の化合物とを反応させ、式(IIIT)の化合物を得る工程。
【0108】
【0109】
好ましくは、ステップa)において、溶媒は、任意に水の存在下、無極性又は極性アプロティック(aprotic)、芳香族、脂肪族、エーテル、エステル、ケトン、アルコール溶媒、及びそれらの混合物から選択される。
【0110】
ステップb)において、好ましい塩基、溶媒及び触媒は、式ITc及びIIの化合物の間の反応について上記で報告されたものと同じである。
【0111】
本発明のさらなる目的は、トルバプタン及びその薬理学的に許容される誘導体を調製する方法における、式(I)の化合物の使用である
【0112】
【化34】
ここで、X、X
1、W、W
1は、上記報告された意味を有する。
【0113】
本発明のさらなる目的は、本発明の方法に従って得られたトルバプタン又はその薬理学的に許容される誘導体を、1つ以上従来の医薬添加物と混和して(in admixture with)含む医薬組成物に関するものである。
【0114】
したがって、本発明のプロセスは、ニトロ基を含む中間体の使用を回避し、したがって潜在的な発癌性物質及び変異原性物質の生成に関連する全ての欠点を回避できるので、驚くほど有利な選択肢であることが示されている。
【0115】
その好ましい実施形態において、本発明のトルバプタンを調製する方法は、以下のスキームによって表される。
【0116】
【実施例】
【0117】
本発明をより良く説明するために、次に以下の実施例を報告する。
【0118】
図面の簡単な説明
図1は、7-クロロ-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-(2-メチル-4-ブロモベンゾイル)-5H-1-ベンズアゼピン-5-オンの
1H-NMR(実施例3)である。
図2は、7-クロロ-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-(2-メチル-4-ブロモベンゾイル)-5H-1-ベンズアゼピン-5-オンの
13C-NMR(実施例3)である。
図3は、4-ブロモ-2-メチルフェニル-(7-クロロ-5-ヒドロキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[b]アゼピン-1-イル)メタノンの
1H-NMR(実施例4)である。
図4は、4-ブロモ-2-メチルフェニル-(7-クロロ-5-ヒドロキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[b]アゼピン-1-イル)メタノンの
13C-NMR(実施例4)である。
図5は、トルバプタンの
1H-NMR(実施例9)である。
図6は、トルバプタンの
13C-NMR(実施例9)である。
【0119】
分析法
IR分析(赤外分光法)
IRスペクトルは、JASCO FT-IR 460 Plus分光光度計を使用して記録した。試料は、約5mgの試料を約500mgのKBrと一緒に粉砕して調製し、4000~400cm-1の範囲で、4cm-1の分解能で分析した。
NMR分析(核磁気共鳴法)
NMR分析は、Bruker Avance 300MHz instrumentを用いて行った。
【0120】
実施例1
変異原性の可能性のある不純物を除去する1-(4-アミノ-2-メチルベンゾイル)-7-クロロ-5-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-1-ベンズアゼピンの精製
反応フラスコに、1-(4-アミノ-2-メチルベンゾイル)-7-クロロ-5-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-1-ベンズアゼピン塩酸塩(50.0g、タイトル(title)65%)及び水(500ml)を投入する。この混合物を約60℃に加熱し、15分間同じ温度に保つ。得られた懸濁液を、更に熱湯(50ml)でフィルターを洗浄することにより、ジカライト(PALLフィルタープレス(filter press))でろ過する。
濾液を約20℃に冷却し、トルエン:アセトニトリルの1:1混合物(3x150ml)で抽出する。相を分離し、ジクロロメタン(250ml)を水相に加える。水酸化ナトリウム30%(50ml)を二相系に加え、約20±5℃に維持する。懸濁液を約20℃で30分間撹拌下に維持する。相を分離し、さらにジクロロメタン(2x100ml)で水相を抽出する。有機相を集め、残留容量200mlまで濃縮する。アセトニトリル(150ml)を加え、再び残留容量200mlまで濃縮する。懸濁液を1時間で20℃に冷却し、その温度で30分間保持する。固体はブフナー(Buchner)上で濾過して回収し、アセトニトリル(50ml)で洗浄する。乾燥(45℃、16時間)後、23.7gの1-(4-アミノ-2-メチルベンゾイル)-7-クロロ-5-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-1-ベンズアゼピンを黄色固体として得る(収率81%、タイトル100%、HPLC純度99.8%)。
NITRO不純物含量(1-(4-ニトロ-2-メチルベンゾイル)-7-クロロ-5-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-1-ベンズアゼピン)は50ppm未満である。
【0121】
実施例2
2-メチル-4-ブロモ-ベンゾイルクロリド
窒素下のフラスコに、2-メチル-4-ブロモ安息香酸(60.5g、1.0eq)、トルエン(424ml)及びジメチルホルムアミド(0.44ml、0.02eq)の順序で仕込む。懸濁液を撹拌下で70℃にする。塩化チオニル(36.8g、1.1eq)を滴加し、温度を約70±5°Cに保ち、約70℃で2時間反応させる。反応の最後に、溶液を約50℃にし、真空下で蒸留して残留容量181mlとする。溶液中の生成物は、そのまま次の合成工程に供される。理論的に、65.7gの2-メチル-4-ブロモ-ベンゾイルクロリドが得られる。
【0122】
実施例3
7-クロロ-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-(2-メチル-4-ブロモベンゾイル)-5H-1-ベンズアゼピン-5-オン
窒素下のフラスコに、7-クロロ-5-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-1-ベンズアゼピン(50.0g、1.0eq)及びトルエン(200ml)をこの順序で仕込む。懸濁液を得る。実施例2で得たトルエン溶液中の2-メチル-4-ブロモ-ベンゾイルクロリド(65.7g、1.1eq)を約20℃で約15分間で滴加する。懸濁液を撹拌下で約3時間還流(110℃)させる。反応の最後に、溶液を約20℃に冷却する。5%重炭酸ナトリウム(250ml)を混合物の上に滴下し、温度を約20±5℃に維持する。相を分離し、水相を0.5M塩酸(250ml)、続いて水(250ml)で洗浄する。その後、有機相を一定重量の固体が得られるまで真空で濃縮する。95.4gの標記化合物を灰白色固体として得る(収率95%;HPLC純度97%)。
溶媒:DMSO-d6(80°C)
1H-NMR(TMSを基準とするppm):2.00(2H,t,J=6Hz);2.30(3H,s,-CH3);2.79(2H,t,J=6Hz);3.88(2H,m);7.00-7.50(4H,m,芳香族);7.48(1H,s);7.61(1H,s)。
13C-NMR(TMSを基準とするppm):18.6(CH3);22.0(CH2);39.7(CH2);46.9(CH2);122.3;128.1(CH);128.3(CH);128.7(CH);130.8(CH);132.2;132.3(CH);133.0(CH);135.2;136.5;137.6;139.4;167.1(CONR);200.4(C=O)。
【0123】
実施例4
4-ブロモ-2-メチルフェニル-(7-クロロ-5-ヒドロキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[b]アゼピン-1-イル)メタノン
窒素下のフラスコに、NaBH4(8.2g、1.0eq)及び2-メチル-テトラヒドロフラン(682ml)をこの順に仕込む。攪拌下、得られた懸濁液に、7-クロロ-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-(2-メチル-4-ブロモベンゾイル)-5H-1-ベンズアゼピン-5-オン(85.3g、1.0eq)を加える。この懸濁液を5℃に冷却し、2-メチル-テトラヒドロフラン(85ml)中のメタノール溶液(25.5ml、2.9eq)を5℃に温度を保ちながらゆっくりと滴加する。反応は5℃で2時間行う。反応終了後、アセトンを反応混合物(56.3ml、3.5eq)に5℃でゆっくりと加え、反応混合物を20℃に達するまで放置し、30分間攪拌する。1.0M塩酸(512ml)を滴加し、20℃でさらに30分間攪拌し、各相を分離する。有機相を真空下で濃縮して残留容量256mlとする。濃縮液にアセトニトリル(427ml)を加える。混合物を残留容量341mlまで完全に濃縮し、20℃に冷却し、1時間撹拌し、固体をブフナー(Buchner)上で濾過し、再びアセトニトリル(85ml)で洗浄する。71.2gの4‐ブロモ‐2‐メチルフェニル‐(7‐クロロ‐5‐ヒドロキシ‐2,3,4,5‐テトラヒドロ‐1H‐ベンゾ[b]アゼピン‐1‐イル)メタノンを灰白色固体として得る(収率83%;HPLC純度99.6%)。
溶媒:DMSO-d6
1H-NMR(TMSを基準とするppm):1.52及び2.12(2H,m);1.75及び1.96(2H,m);2.33(3H,s,-CH3);2.70及び4.62(2H,m);4.88(1H,m);5.70(1H,d,J=4Hz,exch,OH);6.73(1H,d,J=8Hz);6.78(1H,d,J=8Hz);7.00-7.15(2H,m);7.40(1H,bs);7.50(1H,bs)。
13C-NMR(TMSを基準とするppm):18.9(CH3);25.6(CH2);35.4(CH2);45.9(CH2);69.4(CH);121.7;125.1(CH);126.7(CH);127.7(CH);127.8(CH);129.3(CH);132.8(CH);135.5;137.8;138.1;144.9;167.4(CONR)。
【0124】
実施例5
2-メチル-ベンゾイルアミド
窒素下のフラスコに、2-メチル-安息香酸(50.0g、1.0eq)、トルエン(350ml)及びジメチルホルムアミド(0.57ml、0.02eq)を、この順序で仕込む。懸濁液を撹拌下で70℃にする。塩化チオニル(29.5g、1.1eq)を、温度を約70±5℃に維持し、滴加し、混合物を約70℃で2時間反応させる。反応の最後に、溶液を約50℃にし、真空下で蒸留して残留容量150mlとする。溶液中の生成物を2-メチル-テトラヒドロフラン(150ml)とアンモニア30%(150ml)の混合物上に滴下し、温度を20±5℃に維持する。混合物を約20℃で約1時間撹拌し、相を分離する。有機相を5%重炭酸ナトリウム(200ml)で洗浄する。有機相を真空下で一定の重量の固体が得られるまで濃縮する。46.6gの2‐メチル‐ベンゾイルアミドを白色固体として得る(収率94%、HPLC純度98%)。
【0125】
実施例6
N-[4-[(7-クロロ-2,3,4,5-テトラヒドロ-5-オキソ-1H-1-ベンズアゼピン-1-イル)カルボニル]-3-メチルフェニル]-2-メチル-ベンズアミド
窒素下のフラスコに、7-クロロ-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-(2-メチル-4-ブロモベンゾイル)-5H-1-ベンズアゼピン-5-オン(1.0g、1.0eq)、2-メチルベンゾイルアミド(0.379g、1.1eq)、クロロ(クロチル)(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)パラジウム(II)(0.034g、2%モル)及びリン酸カリウム(0.757g、1.4eq)をこの順序で仕込む。3回の真空/窒素サイクルを行い、最後に窒素で予め脱酸素したトルエン(10ml)を加える。懸濁液を約80℃にし、約20℃で反応させると、71%の生成物純度で90%を超える変換率が得られる。
【0126】
実施例7
粗トルバプタン
窒素下のフラスコに、水素化ホウ素ナトリウム(6.00g、1.05eq)、2-メチル-テトラヒドロフラン(270ml)を仕込み、懸濁液を5℃に冷却する。得られた混合物に、実施例5で得たトルエン及び2-メチル-テトラヒドロフラン溶液中のN-[4-[(7-クロロ-2,3,4,5-テトラヒドロ-5-オキソ-1H-1-ベンズアゼピン-1-イル)カルボニル]-3-メチルフェニル]-2-メチル-ベンズアミド(67.3g、1.0eq)を約5±5℃の温度を維持して滴加する。別に2-メチル-テトラヒドロフラン(67ml)中のメタノール(19.5ml)混合物を調製し、反応混合物上で約5±5℃の温度を維持して約30分間置く。混合物を約5℃で約2時間反応させる。反応が完了したら、約5±5℃の温度を維持してアセトン混合物(39.1ml、3.5eq)上に滴下する。温度が20℃に上がるように放置し、混合物を前記温度で30分間撹拌する。有機相を0.5M塩酸(2x400ml)で洗浄する。有機相を真空中で濃縮して残留容量を270mlとし、この溶液をメチル-tert-ブチルエーテル(MTBE、670ml)に滴下する。この懸濁液を約20℃で16時間撹拌し、形成された固体をブフナー上で濾過して回収し、MTBE(135ml)で洗浄する。約45℃で16時間乾燥した後、54.2gの粗トルバプタンを白色固体として得る(2段階収率80%、HPLC純度99.8%)。
【0127】
実施例8
粗トルバプタン
窒素下のフラスコに、4-ブロモ-2-メチル(7-クロロ-5-ヒドロキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[b]アゼピン-1-イル)メタノン(20.0g、1.0eq)、2-メチルベンゾイルアミド(6.85g、1.0eq)、[(2-ジ-シクロヘキシルホスフィノ-3,6-ジメトキシ-2′、4′、6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)-2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]パラジウム(II)メタンスルホネート(0.92g、2%mol)及びリン酸カリウム(15.1g、1.4eq)をこの順序で仕込む。2回の真空/窒素サイクルを行い、最後にあらかじめ窒素をバブリングして脱気したトルエン(100ml)を仕込む。2回の真空/窒素サイクルを再度行い、懸濁液を50℃に20時間保持する。反応が完了したら、20℃に冷却し、水(120ml)を加え、混合物を15分間撹拌し、水相をメチル-テトラヒドロフラン(40ml)で再抽出することによって相を分離する。有機相を集め、真空中で残留容量80mlまで濃縮する。濃縮溶液をメチル-tert-ブチルエーテル(200ml)に滴下して加え、20℃で16時間撹拌する(ゆっくりと沈殿させる)。固体は、ブフナー上で、メチルtert-ブチルエーテル(40ml)で再洗浄することによって回収する。乾燥後、18.4gの粗トルバプタンを灰白色固体として得る(収率81%;純度95.5%)
【0128】
実施例9
トルバプタン
窒素下のフラスコに、粗トルバプタン(50.0g)及びエタノール(600ml)を仕込む。混合物を加熱して還流させ、透明な溶液を得る。この混合物を還流下で約30分間撹拌した後、残留容量250mlまで濃縮し、さらに30分間還流下で維持し、1時間かけて徐々に約20℃に冷却する。混合物を20℃で1時間撹拌下に維持し、得られた固体をブフナー(Buchner)上で濾過して回収し、予め冷却したエタノール(100ml)で再度洗浄する。約60℃で16時間乾燥後、42.0gのトルバプタンを白色固体として得る(収率84%、純度99.9%)。
溶媒: DMSO-d6
1H-NMR(TMSを基準とするppm):1.52及び2.12(2H,m);1.75及び1.96(2H,m);2.35(6H,s,2CH3);2.68及び4.70(2H,m);4.92(1H,m);5.71(1H,d,J=4Hz,OH);6.77(2H,m,芳香族);7.07(1H,d,J=8Hz);7.25-7.50(5H,m,芳香族);7.52(1H,bs);7.62(1H,bs);10.27(1H,bs,NH)。
13C-NMR(TMSを基準とするppm):19.3(CH3);19.6(CH3);25.7(CH2);35.3(CH2);45.8(CH2);69.5(CH);115.9(CH);120.9(CH);125.0(CH);125.6(CH);126.5(CH);126.7(CH);127.2(CH);129.4(CH);129.6(CH);130.5(CH);131.5;131.7;135.2;136.0;137.0;138.7;139.4;144.9;167.9(CON);168.2(CON)。
【0129】
実施例10~35
式IIIの化合物の調製のための反応の一般的手順
【化36】
窒素下のフラスコに、1.0eqの式I
TaBrの化合物(但し、X=Br)又は式I
TbBrの化合物(但し、X=Br)、式(II)のアミド、塩基(1.4eq)及び触媒を、この順序で仕込む。真空‐窒素サイクルを2回行う。あらかじめ脱気した溶媒を固体の混合物上に仕込み、窒素を30分間バブリングする。
混合物を攪拌し、さらに2回の-窒素サイクルを行い、系(system)を窒素下で操作温度(operating temperature)にする。
【0130】
【0131】
【0132】
a)A:クロロ(クロチル)(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)パラジウム(II)
B:クロロ[(4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン)-2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]パラジウム(II)
C:(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)[2-(2′-アミノ-1、1′-ビフェニル)]パラジウム(II)メタンスルホネート
D:[(2-ジ-tert-ブチルホスフィノ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)-2-(2′-アミノ-1、1′-ビフェニル)]パラジウム(II)メタンスルホネートMTBE付加物
E:[(2-ジ-シクロヘキシルホスフィノ-3,6-ジメトキシ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)-2(2′-アミノ-1,1′-ジフェニル)]パラジウム(II)メタンスルホネート
b)混合物中の溶媒は体積比で1:1の割合で考慮される。
TERTAM:tert-アミルアルコール(teramyl alcohol)
TOL:トルエン
【0133】
実施例36~39
式(III)の化合物の調製のための反応の一般的手順。
窒素下のフラスコに、1.0eqの式ITaBrの化合物(但し、X=Br)又は式ITbBrの化合物(但し、X=Br)、1.1eqの式(II)のアミド、K3PO4(1.4eq)、CuI(10mol%)及びバインダー(20mol%)をこの順序で仕込む。真空-窒素サイクルを2回行い、あらかじめ窒素を30分間バブリングして脱気したDMF(5体積)を固体の混合物上に仕込む。
混合物を攪拌し、さらに2回の真空-窒素サイクルを行い、系(system)を窒素下で操作温度(100℃)にし、HPLC制御により反応の進行状況を定期的にモニタリングする。
【0134】
【国際調査報告】