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特表2023-528640溶融亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板及びその製造方法
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  • 特表-溶融亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-05
(54)【発明の名称】溶融亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 2/06 20060101AFI20230628BHJP
   C23C 2/02 20060101ALI20230628BHJP
   C23C 2/40 20060101ALI20230628BHJP
   C23C 2/26 20060101ALI20230628BHJP
   C22C 18/04 20060101ALI20230628BHJP
   C22C 18/00 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
C23C2/06
C23C2/02
C23C2/40
C23C2/26
C22C18/04
C22C18/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022575298
(86)(22)【出願日】2020-10-15
(85)【翻訳文提出日】2022-12-06
(86)【国際出願番号】 CN2020121167
(87)【国際公開番号】W WO2021248765
(87)【国際公開日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】202010513855.X
(32)【優先日】2020-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518456328
【氏名又は名称】首鋼集団有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHOUGANG GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.69 Yangzhuang Street, Shijingshan District Beijing 100041 (CN)
(71)【出願人】
【識別番号】520350878
【氏名又は名称】首鋼京唐鋼鉄聯合有限責任公司
【氏名又は名称原語表記】SHOUGANG JINGTANG IRON & STEEL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Caofeidian Industrial District Tangshan, Hebei 063200 China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】蒋 光鋭
(72)【発明者】
【氏名】王 保勇
(72)【発明者】
【氏名】李 研
(72)【発明者】
【氏名】劉 大滔
(72)【発明者】
【氏名】滕 華湘
(72)【発明者】
【氏名】徐 呈亮
(72)【発明者】
【氏名】王 海全
【テーマコード(参考)】
4K027
【Fターム(参考)】
4K027AA05
4K027AB05
4K027AB44
4K027AC13
4K027AC64
4K027AC72
4K027AE02
4K027AE03
4K027AE12
(57)【要約】
本発明は、鋼板及びめっきを含む切欠耐食性を有する溶融亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板を開示しており、めっきの化学成分の質量分率が、アルミニウム2~12%、マグネシウム1~4%、残部亜鉛及び不可避不純物となり、且つアルミニウムの質量分率がマグネシウムの質量分率の2~3倍であり、めっきの厚みが鋼板の厚みの5‰以上である。本発明は前記めっき鋼板の製造方法をさらに開示しており、前記めっきの化学成分を用いてめっき液を作成する工程と、前記めっき液を加熱し、温度が前記めっき液の融点以上且つ500℃以下に制御された予熱めっき液を作成する工程と、鋼板を前記予熱めっき液に浸漬させ、めっきされた鋼板を取得する工程と、前記めっきされた鋼板を冷却する工程とにより、切欠耐食性を有する溶融亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板を作成する。本発明が提供する製造方法は、めっき液を鋼板の切欠箇所に十分に塗布させ、緻密な水酸化物の2層化合物を形成することができ、溶融亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板が優れた切欠耐食性を有するようにする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板とめっきを含む切欠耐食性を有する溶融亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板であって、
前記めっきの化学成分の質量分率が、アルミニウム2~12%、マグネシウム1~4%、残部亜鉛、及び不可避不純物となり、前記アルミニウムの質量分率が前記マグネシウムの質量分率の2~3倍であり、
前記めっきの厚みが、前記鋼板の厚みの5‰以上であることを特徴とする、切欠耐食性を有する溶融亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板。
【請求項2】
前記鋼板の厚みは、0.5mm~6mmの範囲にある、請求項1に記載の切欠耐食性を有する溶融亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板。
【請求項3】
前記めっきのマグネシウム及びアルミニウムの質量分率は、鋼板の厚みに応じて制御され、具体的に、
0.5mm≦鋼板の厚み≦2mmの場合、前記めっきの化学成分の質量分率が、アルミニウム2%~12%、マグネシウム1%~4%、残部亜鉛及び不可避不純物となり、
2mm<鋼板の厚み≦4mmの場合、前記めっきの化学成分の質量分率が、アルミニウム3%~12%、マグネシウム1.5%~4%、残部亜鉛及び不可避不純物となり、
4mm<鋼板の厚み≦5mmの場合、前記めっきの化学成分の質量分率が、アルミニウム4%~12%、マグネシウム2%~4%、残部亜鉛及び不可避不純物となり、
5mm<鋼板の厚み≦6mmの場合、前記めっきの化学成分の質量分率が、アルミニウム6~12%、マグネシウム3~4%、残部亜鉛及び不可避不純物となる、請求項1又は2に記載の切欠耐食性を有する溶融亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板。
【請求項4】
前記めっきの化学成分の質量分率は、アルミニウム2~12%、マグネシウム1~4%、カルシウム0.01%~0.1%、残部亜鉛及び不可避不純物となり、且つ前記アルミニウムの質量分率がマグネシウムの質量分率の2~3倍であり、前記めっきの厚みが、前記鋼板の厚みの5‰以上である、請求項1に記載の切欠耐食性を有する溶融亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板。
【請求項5】
前記カルシウムの質量分率が0.01%である場合、めっきのマグネシウム及びアルミニウムの質量分率が鋼板の厚みに応じて制御され、具体的に、
0.5mm≦鋼板の厚み≦2.5mmの場合、前記めっきの化学成分の質量分率が、アルミニウム2%~12%、マグネシウム1%~4%、残部亜鉛及び不可避不純物となり、
2.5mm<鋼板の厚み≦4mmの場合、前記めっきの化学成分の質量分率が、アルミニウム2.5%~12%、マグネシウム1.2%~4%、残部亜鉛及び不可避不純物となり、
4mm<鋼板の厚み≦5mmの場合、前記めっきの化学成分の質量分率が、アルミニウム3.8%~12%、マグネシウム1.8%~4%、残部亜鉛及び不可避不純物となり、
5mm<鋼板の厚み≦6mmの場合、前記めっきの化学成分の質量分率が、アルミニウム5~12%、マグネシウム2.5~4%、残部亜鉛及び不可避不純物となる、請求項4に記載の切欠耐食性を有する溶融亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の切欠耐食性を有する溶融亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板の製造方法であって、
請求項1~5のいずれか1項に記載の切欠耐食性を有する溶融亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板の前記めっきの化学組成を用いて、めっき液を作成する工程と、
前記めっき液を加熱し、予熱温度が前記めっき液の融点以上且つ500℃以下に制御されためっき液を作成する工程と、
鋼板を前記予熱めっき液に浸漬させ、めっきされた鋼板を取得する工程と、
前記めっきされた鋼板を冷却し、切欠耐食性を有する溶融亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板を作成する工程と、を含んでいることを特徴とする切欠耐食性を有する溶融亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板の製造方法。
【請求項7】
前記めっきされた鋼板を冷却する工程においては、
めっき浴の温度<前記めっきされた鋼板の温度<360℃の場合、0<冷却速度≦1℃/sに制御された第1冷却速度で冷却を行い、
360℃<前記めっきされた鋼板の温度<300℃の場合、5℃/s以上の第2冷却速度で冷却を行う、請求項6に記載の切欠耐食性を有する溶融亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板の製造方法。
【請求項8】
前記鋼板を前記めっき液に浸漬させめっき浴を行う前に、前記鋼板を、前記予熱めっき液の温度±10℃の範囲の鋼板予熱温度に予熱する、請求項6に記載の切欠耐食性を有する溶融亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板の製造方法。
【請求項9】
前記鋼板を前記めっき液に浸漬させめっき浴を行う前に、前記鋼板を鋼板の厚みに応じて制御される鋼板予熱温度に予熱し、具体的に、
0.5mm≦鋼板の厚み≦2mmの場合、前記予熱めっき液の温度≦鋼板予熱温度≦前記予熱めっき液の温度+10℃となり、
2mm<鋼板の厚み≦4mmの場合、前記予熱めっき液の温度-5℃≦鋼板予熱温度≦予熱めっき液の温度となり、
4mm<鋼板の厚み≦6mmの場合、前記予熱めっき液の温度-10℃≦鋼板予熱温度≦予熱めっき液の温度-5℃となる、請求項6に記載の切欠耐食性を有する溶融亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板の製造方法。
【請求項10】
取得した前記鋼板は、表面粗さRaが1μm~2μmである鋼板を含む、請求項6に記載の切欠耐食性を有する溶融亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願に対する相互参照>
本発明は、2020年6月8日に、中国に出願された出願番号202010513855X、発明名称「優れた切欠耐食性を有する溶融亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板及びその製造方法」に基づき優先権を主張し、その内容全体を参照により本願に援用する。
【0002】
本願は、鋼材製造技術分野に関し、特に、溶融亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
溶融亜鉛めっきは、溶融した亜鉛およびその合金を鋼素地と反応させて、強固な冶金接合めっきを形成するものである。このような溶融亜鉛めっき鋼材は、高いめっき密着性、長い寿命、容易な製造工程、および低い製品価格等の利点を有しており、自動車産業、電気産業、建築産業における需要が増え続ける。
【0004】
従来の溶融亜鉛めっき熱延鋼板は純亜鉛めっきを用い、耐食性に対する要求が高まっていることに伴い、従来の純亜鉛めっき鋼板が耐食性の要求を満たすことができなくなるため、溶融亜鉛めっきアルミニウムマグネシウム合金めっきが開発された。
【0005】
亜鉛アルミニウムマグネシウム合金めっきは耐食性に優れるものの、板厚が厚いと、鋼板の切欠部に錆が発生しやすく、使用中の要求を満足することが困難であることが判明した。また、厳しい使用環境では、切断箇所に錆が発生しやすく、製品設計の最適化が必要となる。
そこで、切欠部に耐食性を有する溶融亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板を開発することが急務の技術課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術の問題点を解決するために、本発明は、切欠耐食性を有する溶融亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板及びその製造方法を提供する。本発明は、大気腐食の初期に、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン及び亜鉛イオンを含有する流動性の良い液膜を鋼板表面に形成させることができ、液膜を鋼板の切欠箇所に十分に被覆させることができ、緻密な水酸化物の2層化合物が形成され、切欠耐食性に優れた溶融亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板を取得することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、鋼板とめっきを含む切欠耐食性を有する溶融亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板を提供しており、前記めっきの化学成分の質量分率が、アルミニウム2~12%、マグネシウム1~4%、残部亜鉛、及び不可避不純物となり、且つ前記アルミニウムの質量分率が前記マグネシウムの質量分率の2~3倍であり、前記めっきの厚みが、前記鋼板の厚みの5‰以上である。
【0008】
本発明の一部の実施態様において、前記アルミニウムの質量分率は、前記マグネシウムの質量分率の2.3倍であってもよい。
【0009】
本発明の一部の実施態様において、前記鋼板の厚みは、0.5mm~6mmの範囲にあってもよい。
【0010】
本発明の一部の実施態様において、前記めっきのマグネシウム及びアルミニウムの質量分率は、鋼板の厚みに応じて制御され、具体的に、0.5mm≦鋼板の厚み≦2mmの場合、前記めっきの化学成分の質量分率が、アルミニウム2%~12%、マグネシウム1%~4%、残部亜鉛及び不可避不純物となり、2mm<鋼板の厚み≦4mmの場合、前記めっきの化学成分の質量分率が、アルミニウム3%~12%、マグネシウム1.5%~4%、残部亜鉛及び不可避不純物となり、4mm<鋼板の厚み≦5mmの場合、前記めっきの化学成分の質量分率が、アルミニウム4%~12%、マグネシウム2%~4%、残部亜鉛及び不可避不純物となり、5mm<鋼板の厚み≦6mmの場合、前記めっきの化学成分の質量分率が、アルミニウム6~12%、マグネシウム3~4%、残部亜鉛及び不可避不純物となってもよい。
【0011】
本発明は、さらなる鋼板とめっきを含む切欠耐食性を有する溶融亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板を提供しており、前記めっきの化学成分の質量分率は、アルミニウム2~12%、マグネシウム1~4%、カルシウム0.01%~0.1%、残部亜鉛及び不可避不純物となり、且つ前記アルミニウムの質量分率がマグネシウムの質量分率の2~3倍であり、前記めっきの厚みが、前記鋼板の厚みの5‰以上であってもよい。
【0012】
本発明の一部の実施態様において、前記カルシウムの質量分率が0.01%である場合、めっきのマグネシウム及びアルミニウムの質量分率が鋼板の厚みに応じて制御され、具体的に、0.5mm≦鋼板の厚み≦2.5mmの場合、前記めっきの化学成分の質量分率が、アルミニウム2%~12%、マグネシウム1%~4%、残部亜鉛及び不可避不純物となり、2.5mm<鋼板の厚み≦4mmの場合、前記めっきの化学成分の質量分率が、アルミニウム2.5%~12%、マグネシウム1.2%~4%、残部亜鉛及び不可避不純物となり、4mm<鋼板の厚み≦5mmの場合、前記めっきの化学成分の質量分率が、アルミニウム3.8%~12%、マグネシウム1.8%~4%、残部亜鉛及び不可避不純物となり、5mm<鋼板の厚み≦6mmの場合、前記めっきの化学成分の質量分率が、アルミニウム5~12%、マグネシウム2.5~4%、残部亜鉛及び不可避不純物となってもよい。
【0013】
本発明は、前記切欠耐食性を有する溶融亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板の製造方法をさらに提供しており、前記切欠耐食性を有する溶融亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板の前記めっきの化学組成を用いて、めっき液を作成する工程と、前記めっき液を加熱し、温度が前記めっき液の融点以上且つ500℃以下に制御された予熱めっき液を作成する工程と、鋼板を前記予熱めっき液に浸漬させ、めっきされた鋼板を取得する工程と、前記めっきされた鋼板を冷却し、切欠耐食性を有する溶融亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板を作成する工程と、を含んでいる。
【0014】
本発明の一部の実施態様において、前記めっきされた鋼板を冷却する工程には、めっき浴の温度<前記めっきされた鋼板の温度<360℃の場合、0<冷却速度≦1℃/sに制御された第1冷却速度で冷却を行い、360℃<前記めっきされた鋼板の温度<300℃の場合、5℃/s以上の第2冷却速度で冷却を行ってもよい。
【0015】
本発明の一部の実施態様において、前記めっきされた鋼板を冷却する工程は、送気または噴水により前記めっきされた鋼板のめっき表面を冷却するプロセスを含んでも良い。
【0016】
本発明の一部の実施態様において、前記鋼板を前記めっき液に浸漬させめっき浴を行う前に、前記鋼板を、前記予熱めっき液の温度±10℃の範囲の鋼板予熱温度に予熱してもよい。
【0017】
本発明の一部の実施態様において、前記鋼板を前記めっき液に浸漬させめっき浴を行う前に、前記鋼板を厚みに応じて制御される鋼板予熱温度に予熱し、具体的に、0.5mm≦鋼板の厚み≦2mmの場合、前記予熱めっき液の温度≦鋼板予熱温度≦前記予熱めっき液の温度+10℃となり、2mm<鋼板の厚み≦4mmの場合、前記予熱めっき液の温度-5℃≦鋼板予熱温度≦予熱めっき液の温度となり、4mm<鋼板の厚み≦6mmの場合、前記予熱めっき液の温度-10℃≦鋼板予熱温度≦予熱めっき液の温度-5℃となってもよい。
【0018】
本発明の一部の実施態様において、取得した前記鋼板は、表面粗さRaが1μm~2μmである鋼板を含んでもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の実施態様の一つまたはいくつかの技術手段は、少なくとも下記の技術的効果または利点を有する。本発明が提供する切欠耐食性を有する溶融亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板の製造方法において、(1)成分として、アルミニウム2%~12%、マグネシウム1%~4%、残部亜鉛及び不可避不純物を含み、且つ前記アルミニウムの含有量が、前記マグネシウムの含有量の2~3倍であり、前記めっきの厚みは、前記鋼板の厚みの5‰以上であり、(2)前記方法において、予熱用めっき浴の温度を、前記めっき浴の融点以上且つ500℃以下に制御することにより、大気腐食の初期に、鋼板の表面に、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン及び亜鉛イオンを含む流動性の良い液膜を形成することに有利であり、液膜を鋼板の切欠箇所を十分に被覆させ、緻密な水酸化物の2層化合物を形成することができ、優れた切欠耐食性を有する溶融亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板を取得する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本願の実施例における技術手段をより明確に説明するために、以下、実施例の説明に必要な図面を簡単に説明するが、以下の説明における図面は本願のいくつかの実施例であることが明らかであり、当業者にとって、創造的な労力をせずに、これらの図面に基づき他の図面を想到することもできる。
図1】本願の実施例における亜鉛アルミニウムマグネシウムめっきの切欠に対する保護工程図である。
図2】本発明の実施例における溶融亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板の製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の利点と技術的効果をより明確に示すように、本発明の具体的態様及び実施例に基づき、本発明を具体的に説明する。当業者にとっては、これらの具体的な実施形態および実施例が、本発明を説明するためのものであり、本発明を限定するものではないことを理解するべきである。
【0022】
本明細書全体において、特に明記しない限り、本明細書で使用される用語は、当該技術分野で慣用されている意味として理解されるべきである。したがって、特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する業界の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾がある場合には、本明細書を優先する。
【0023】
特に明記しない限り、本発明で使用される様々な原料、試薬、器具、装置などは、市販品として入手可能であり、または既存の方法によって入手可能である。
【0024】
本発明の実施例は、切欠耐食性を有する溶融亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板を提供し、全体的な技術思想が以下の通りである。
【0025】
上記従来技術の短所を克服するために、本発明の実施例は鋼板とめっきを含む切欠耐食性を有する溶融亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板を提供しており、前記めっきの化学成分の質量分率が、アルミニウム2~12%、マグネシウム1~4%、残部亜鉛、及び不可避不純物となり、且つ前記アルミニウムの質量分率が前記マグネシウムの質量分率の2~3倍であり、前記めっきの厚みが、前記鋼板の厚みの5‰以上である。
【0026】
本発明の一部の実施形態において、図1は、亜鉛アルミニウムマグネシウムのめっきに対する保護工程図を示す。大気腐食が受けられた初期に、大気中の水蒸気がめっき表面に凝結して水膜を形成し、めっき中のマグネシウム元素は、まずアノード腐食反応を起こし、マグネシウムイオンが形成されて水膜に溶解し、カソード極で反応して形成された水酸化物および炭酸塩と結合することで、流動性の良い炭酸マグネシウムや塩基性炭酸マグネシウム等の化合物が形成される。また、めっき中のアルミニウム及び亜鉛もアノード腐食反応を起こし、液膜中に溶解したアルミニウムイオン及び亜鉛イオンが形成される。これらのマグネシウムイオンとアルミニウムイオンとを含む化合物は、液膜に伴って鋼板の切欠箇所まで流れる。
【0027】
マグネシウムイオンとアルミニウムイオンの存在により、液膜のpHが10を超えることがないため、亜鉛イオンは、ポーラスな酸化亜鉛を形成することなく、塩基性炭酸亜鉛、塩基性塩化亜鉛等の緻密な酸化物を形成する傾向にある。これらの化合物は、逆に炭酸マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどと緻密な2層水酸化物保護層を形成することで、切欠に対する保護作用が良好となる。しかし、これらの保護層を鋼板の切欠箇所に十分に被覆させるためには、液膜が鋼板の切欠箇所を十分に被覆し、緻密な水酸化物の2層化合物を形成できるように、大気腐食の初期でも、鋼板の表面にマグネシウムイオン、アルミニウムイオン及び亜鉛イオンを含有する流動性の良い液膜を形成することが求められる。
【0028】
本発明の一部の実施形態において、マグネシウムの質量分率を1%~4%に設定してもよい理由は、まず、めっき中に一定のマグネシウム元素が要求され、マグネシウム元素の主な役割が、大気腐食の初期に、鋼板の表面に流動性の良好な水溶液または液膜を形成することである。このようなマグネシウムイオンを含む水溶液又は液膜は、アルミニウム及び亜鉛の溶解を促進し、アルミニウムイオン及び亜鉛イオンを形成する一方で、溶液中のアルミニウムイオンおよび亜鉛イオンが速やかに沈殿し、ボーラスな化合物となることを防止し、アルミニウムイオンおよび亜鉛イオンの溶液を大気中で二酸化炭素等と徐々に反応させ、緻密な酸化物を形成することができる。めっき中のマグネシウム含有量が1%よりも低い場合、その効果は発揮できない。しかし、マグネシウムの含有量が多すぎると、表面に形成された酸化マグネシウムが厚くなりすぎ、逆にアルミニウムおよび亜鉛の溶解を阻害するとともに、Mg-Zn化合物の硬質粒子が形成されやすくなり、めっき中に食い込んで電気化学的腐食を起こし、めっきの耐食性を低下させることとなる。従って、マグネシウム含有量は4%を超えないようにする。
【0029】
本発明の一部の実施形態において、アルミニウムの質量分率を2~12%に設定してもよい理由は、以下のとおりである。アルミニウムは、2層化合物を形成する主要な骨格元素であるとともに、ボーラスな酸化亜鉛および水酸化亜鉛の空隙を埋める主要元素であるため、めっき中のアルミニウム含有量を2%以上にするべきである。アルミニウムの含有量が多すぎると、激しいガルバニック腐食が起こり、アルミニウムと亜鉛との間に腐食電流が発生することで、かえってめっきの耐食性が低下する。めっき中のアルミニウム含有量は12%以下であるようにする。
【0030】
本発明の一部の実施形態において、前記アルミニウムの質量分率の含有量が前記マグネシウムの質量分率の含有量の2~3倍でもよい理由は、大気腐食が受けられた初期に、大気中の水蒸気が凝結して、めっき表面に水膜を形成することである。まず、めっき中のマグネシウム元素がアノード反応を起こし、マグネシウムイオンが生成されて水の膜中に溶解し、カソード反応で生成した水酸化物および炭酸イオンと結合することで、塩基性炭酸マグネシウムMg(OH)Mg・COと水酸化マグネシウムMg(OH)が生成される。マグネシウムイオンとアルミニウムイオンの存在により、水膜のpHが10を超えることがないため、亜鉛イオンは、ポーラスな酸化亜鉛を形成することなく、塩基性炭酸亜鉛、塩基性塩化亜鉛等の緻密な酸化物を形成する傾向にある。これらの化合物は逆に炭酸マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどと緻密な2層水酸化物保護層を形成し、切欠に対する良好な保護作用をもたらす。この2層水酸化物保護層(LDH)は、MgAl-LDHとZnAl-LDHからなり、前者のMgおよびAlの原子数がそれぞれ6と2であり、後者のAlの原子数が2である。安定性の面では、ZnAl-LDHの安定性がMgAl-LDHの5倍以上あるため、ZnAl-LDHを形成する2層水酸化物が主としてめっきと切欠を保護し、耐食性を向上させる。また、ZnAl-LDHの総量がMgAl-LDHの5倍である場合、2層水酸化物中のAlの総量はMgの2倍であるため、めっき中のAlがMgの2倍以上となる。しかし、めっき中のアルミニウムイオンが多すぎると、初期段階でAl(OH)化合物の沈殿が多くなりやすく、逆に緻密な2層水酸化物を形成することができない。本発明の一部の実施形態において、マグネシウムの酸化をより顕著に抑制することができるように、めっき中のアルミニウムの含有量は、マグネシウムの含有量の2.3倍に達することが好ましい。
【0031】
本発明の一部の実施形態において、めっきの厚みが鋼板の厚みの5‰以上であってもよい理由は、めっきの厚みが鋼板の厚みの5‰未満となると、前記2層化合物保護層が鋼板の切欠側面を被覆することができず、同様に鋼板の切欠を保護することができなくなる。
【0032】
本発明の一部の実施形態において、前記めっきの化学成分の質量分率は、アルミニウム2%~12%、マグネシウム1%~4%、残部亜鉛及び不可避不純物となり、且つ前記アルミニウムの質量分率の含有量が、前記マグネシウムの質量分率の含有量の2~3倍であり、前記めっきの厚みが、前記鋼板の厚みの5‰以上であってもよい。これにより、大気腐食の初期に、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン及び亜鉛イオンを含有する流動性の良好な液膜が形成され、液膜が鋼板の切欠箇所を十分に被覆することに有利であり、緻密な水酸化物の2層化合物が形成されることで、切欠耐食性に優れた溶融亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板を取得する。
【0033】
本発明の一部の実施形態において、鋼板の厚みは0.5mm~6mmの範囲にあってもよい。溶融亜鉛アルミマグネシウムめっきによって鋼板の切欠を保護する場合、鋼板の厚みがある程度に要求される。鋼板が厚すぎると、優れた切欠耐食性を奏することができないため、通常6mmを超えることはない。鋼板が薄すぎる場合でも、微視的にみれば薄すぎる切欠に極めて鋭い角と窪みが形成され、当該箇所の曲率半径が一般的に水溶液の表面張力で濡れられる最小曲率半径よりも小さいため、アルミニウムイオンやマグネシウムイオンを含む溶液に被覆されず、保護層が形成できないおそれがある。本発明の一部の実施形態において、鋼板の厚みは、0.5mm以上であることが要求される。
【0034】
本発明者らの研究によれば、鋼板の厚みが厚いほど、必要となるアルミニウム及びマグネシウムの含有量も高くなり、より優れた切欠耐食性を奏することができる。具体的に、鋼板の厚みが2mmを超えない場合、めっき中のマグネシウム含有量が1%に達し、アルミニウム含有量が2%に達すると、良好な切欠保護効果を奏することができ、当然ながら、本発明内容の製造工程要件を満たすことが前提である。しかし、鋼板の厚みが厚くなるに従い、必要となるアルミニウム量、マグネシウム量の下限も増加する。一般的に、鋼板の厚みが4mmに達する場合、めっき中のマグネシウム含有量を1.5%以上、アルミニウム含有量を3%以上とするべきであり、鋼板の厚みが5mmに達すると、めっき中のマグネシウム含有量を2%以上、アルミニウム含有量を4%以上とするべきであり、鋼板の板厚が6mmに達する場合、めっき中のマグネシウム含有量を3%以上、アルミニウム含有量を6%以上とするべきである。
【0035】
本発明者らの研究によれば、めっきに一定のCa元素を添加することで、表面にMg-Zn化合物の大きな粒状物が形成されることを抑制できるため、Alと水酸化物との早期反応による沈殿物の形成を防止し、Alイオンの流動性を向上させ、MgイオンおよびAlイオンを切欠箇所に十分に被覆させることができることをさらに判明した。このため、めっきに一定のCa元素を添加することは、切欠耐食性を向上させる効果を奏する。本発明の一部の実施形態において、Ca元素の添加量は0.01%を超えてもよく、この時に形成されたMg-Zn化合物が多角形粒子から鈍い円粒子に変化し、粒径が50μmから20μm以下にさらに低減できる。Ca元素の添加量が0.1%を超えると、生産中に亜鉛滓という欠陥を引き起こしやすくなり、ガルバニック腐食が形成され、めっきの耐食性を低下させる。本発明の一部の実施形態において、カルシウム元素の添加量が0.01~0.1%であってもよく、且つアルミニウム2~12%、マグネシウム1~4%、残部亜鉛及び不可避不純物という組成も同時に満足しなければならず、また、前記アルミニウムの含有量がマグネシウムの2~3質量倍であり、前記めっきの厚みが鋼板の厚みの5‰以上であてもよい。
【0036】
本発明の一部の実施態様において、0.01%のCaを添加する場合、鋼板の厚みが2.5mm以下であれば、良好な切欠保護効果を奏するように、めっき中のマグネシウム含量が1%、アルミニウム含量が2%に達してもよい。本発明の一部の実施形態において、鋼板の厚みが4mmに達する場合、めっき中のマグネシウム含有量を1.2%以上、アルミニウム含有量を2.5%以上とするべきであり、鋼板の厚みが5mmに達すると、めっき中のマグネシウム含有量を1.8%以上、アルミニウム含有量を3.8%以上とするべきであり、鋼板の厚みが6mmに達する場合、めっき中のマグネシウム含有量を2.5%以上、アルミニウム含有量を5%以上とするべきである。
【0037】
本発明は、前記切欠耐食性を有する溶融亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板の製造方法を提供しており、前記切欠耐食性を有する溶融亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板の前記めっきの化学組成を用いてめっき液を作成する工程と、前記めっき液を加熱し、温度が前記めっき液の融点以上且つ500℃以下に制御された予熱めっき液を作成する工程と、鋼板を前記予熱めっき液に浸漬させ、めっきされた鋼板を取得する工程と、前記めっきされた鋼板を冷却し、切欠耐食性を有する溶融亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板を作成する工程と、を含んでいる。
【0038】
本発明の一部の実施態様において、前記予熱めっき液の温度を、めっき液の融点以上且つ500℃以下に制御する理由は、以下のとおりである。予熱めっき液の温度が高すぎると、めっき浴における酸化反応が激しくなり、めっき浴表層の合金元素が酸化、蒸発しやすくなり、めっき浴中の合金元素の分布が不均一となり、表層元素が少なくなり、内部元素が多くなるため、このように形成されためっきに元素の分布が不均一となり、めっきの耐食性を大きく劣化させる。本発明の一部の実施形態において、予熱めっき液の温度は、500℃を超えてはいけない。一方、予熱めっき液の温度がめっき液の融点よりも低い場合には、めっき液が凝固することとなる。
【0039】
本発明の一部の実施形態において、取得した前記鋼板の表面粗さRaは、1μm~2μmであってもよい。鋼板表面の表面粗さは、めっきと鋼板との密着性を高め、めっきの腐食に対する耐食性を高め、めっきの剥離が発生し難いようにするものである。鋼板表面が粗すぎると、めっきが局部的に著しく薄くなり、めっきの耐食性が低下するとともに、鋼板を溶融めっきする時に、粗い山部が急速に反応して、厚すぎるFe-Al-Zn化合物層が形成され、めっき液中のアルミニウムが消耗され、めっきの局部のアルミニウム不足による耐食性の低下が生じるという悪影響が発生する。したがって、本発明の一部の実施態様において、取得した鋼板の表面粗さRaを2.0μm以下、且つ1.0μm以上に限定してもよい。
【0040】
本発明の一部の実施形態において、前記鋼板をめっき浴に浸漬させめっき浴を行う前に、前記鋼板を厚みに応じて制御される鋼板予熱温度に予熱し、具体的に、0.5mm≦鋼板の厚み≦2mmの場合、前記予熱めっき液の温度≦鋼板予熱温度≦前記予熱めっき液の温度+10℃となり、2mm<鋼板の厚み≦4mmの場合、前記予熱めっき液の温度-5℃≦鋼板予熱温度≦前記予熱めっき液の温度となり、4mm<鋼板の厚み≦6mmの場合、前記予熱めっき液の温度-10℃≦鋼板予熱温度≦予熱めっき液の温度-5℃となってもよい。
【0041】
本発明の一部の実施形態において、0.5mm≦鋼板の厚み≦2mmの場合、溶融めっき前の鋼板予熱温度は、予熱めっき液の温度~予熱めっき液の温度より10℃高い温度(前記予熱めっき液の温度≦鋼板予熱温度≦予熱めっき液の温度+10℃)の範囲にあってもよい。これは、鋼板とめっき浴との間に安定なFe-Al-Zn化合物が形成され、めっき密着性を向上させ、めっきが剥離し難いようにするためである。しかし、温度が高すぎると、化合物が厚くなりすぎ、めっき中のアルミニウムが減少して耐食性が損なわれることとなる。鋼板の厚みが2mmを超えると、鋼板とめっき液との反応過程において、鋼板内部の温度が適時に下がらず、熱を適時に外へ伝導できなくなる一方、鋼板の温度が高すぎると、鋼板内部の熱が後も伝導し続けるため、鋼板とめっき浴との間に形成されたFe-Al-Zn化合物層が厚くなりすぎ、逆にめっき浴中のアルミニウムが消耗され、めっき中のアルミニウムが減少し、耐食性が損なわれることとなる。したがって、本発明の一部の実施形態において、鋼板の厚みが2mmを超えるが、4mmを超えてない場合、鋼板予熱温度は、予熱めっき液の温度よりも5℃低い温度~予熱めっき液の温度(予熱めっき液の温度-5℃≦鋼板予熱温度≦予熱めっき液の温度)の範囲にあってもよい。本発明の一部の実施形態において、前記鋼板の厚みが4mmを超えるが、6mmを超えない場合、鋼板予熱温度は、予熱めっき液の温度よりも10℃低い温度~予熱めっき液の温度よりも5℃低い温度(予熱めっき液の温度-10℃≦鋼板予熱温度≦前記予熱めっき液の温度-5℃)の範囲にあってもよい。
【0042】
本発明の一部の実施形態において、前記めっきされた鋼板を冷却する工程は、送気または噴水により前記めっきされた鋼板のめっき表面を冷却するプロセスを含んでも良い。
【0043】
本発明の一部の実施形態において、前記冷却は、二段階で行われてもよく、具体的には、めっき浴の温度<前記めっきされた鋼板の温度<360℃の場合、0<冷却速度≦1℃/sに制御された第1冷却速度で冷却を行い、360℃<前記めっきされた鋼板の温度<300℃の場合、5℃/s以上の第2冷却速度で冷却を行う。本発明者は、めっきが凝固し始める際に、めっき液と基板との間の速やかな反応により、アルミニウムリッチな化合物が形成されるとともに、先に析出した大きいアルミニウムリッチな結晶が形成されることを発見した。冷却速度が適当であれば、アルミニウムやマグネシウムリッチなデンドライトを多く生成するのに有利である。アルミニウム及びマグネシウムリッチなこのデンドライトは、後続の腐食過程において媒体との反応を起こしにくく、良好な耐食効果を有する。本発明者は、めっきの温度が360℃以下に低下すると、先に析出した結晶がすべて析出し、共晶反応過程が始まることをさらに発見した。共晶反応の間、Al/Zn/Mg-Zn、Al/Mg-Zn、またはZn/Mg-Znのうちの1つまたは幾つかを含有する混合物組織が形成される。当該混合物の組織の相は異なり、より緻密である。このような緻密な混合物組織は、後続の使用において、空気中の二酸化炭素、水と速やかに反応して、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムを含有する水溶液が形成され、切欠を被覆及び保護することができる。したがって、本発明の一部の実施形態において、アルミニウム及びマグネシウムリッチなデンドライトを多くに形成するために、前記めっきされた鋼板の温度がめっき浴温度~360℃にある場合、0<冷却速度≦1℃/sに制御された第1冷却速度で冷却を行ってもよい。本発明の一部の実施形態において、めっき表面に緻密な共晶組織(Al/Zn/Mg-Zn、Al/Mg-Zn、Zn/Mg-Znのうちの一つまたは幾つかを含む混合組織)を形成しやすくするために、前記めっきされた鋼板の温度が360℃~300℃にある場合、5℃/s以上の第2冷却速度で冷却を行ってもよい。
【0044】
本発明の実施形態に係る一つまたは幾つかの技術手段によると、大気腐食の初期に、鋼板の表面にマグネシウムイオン、アルミニウムイオン及び亜鉛イオンを含む流動性の良い液膜を形成することに有利であり、液膜を鋼板の切欠箇所に十分に被覆させることができ、緻密な水酸化物の2層化合物が形成されることで、取得した溶融亜鉛ミニウムマグネシウムめっき鋼板が、優れた切欠耐食性を有することになる
【0045】
以下、実験データを参照しながら、本発明の切欠耐食性を有する溶融亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板及びその製造方法を詳細に説明する。CQグレードの熱延鋼板は基板として使用される。
【0046】
本発明の実施例の1つまたは幾つかの技術手段によれば、試験組1~17を設置する。また、対照組1~12を設置する。このうち、試験組1-6および比較組1-6には、冷延鋼板を基板として用い、鋼板材質がCQグレードであり、試験組7-17および比較組7-12には、熱延鋼板を基板として用い、鋼板材質がCQグレードである。試験組1~17及び比較組1~12においては、本発明が提供する切欠耐食性を有する溶融亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板の製造方法に開示されたプロセスで、めっき鋼板を製造し、試験組1~17および対照組1~12におけるめっき液の組成の違い目を表1に示し、具体的な製造工程およびパラメータの違い目を表2に示す。
【0047】
中性塩水噴霧試験を480時間行い、切欠箇所の赤錆面積の割合を観察するように、上記試験組1~17および対照組1~12で得られた亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板の切欠耐食性を評価する。上記試験組1~17及び対照組1~12で得られた亜鉛アルミマグネシウムめっき鋼板を、折り曲げ方法によりそれぞれ90°折り曲げ、剥離しためっきの割合を観察する。実験評価結果を表3に示す。
【0048】
表3から分かるように、試験組1~17で得られた切欠耐食性を有する溶融亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板は、赤錆面積の割合が0~3%の範囲にあり、且つめっき剥離の割合がいずれも0%である。一方、対照組1~12で得られた切欠耐食性を有する溶融亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板は、赤錆面積の割合が12~34%の範囲にあり、且つめっき剥離の割合が2~10%である。本発明の実施例である試験組1~17により取得した、切欠耐食性を有する溶融亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板は、赤錆面積の割合およびめっき剥離の割合のいずれも相当に低いことが明らかである。
【0049】
比較例の1~12においては、めっきがアルミニウム2~12%、マグネシウム1~4%、残部亜鉛、及び不可避不純物を含有し、且つアルミニウムの含有量をマグネシウムの含有量の2~3倍とすることを同時に満足していないため、得られためっきの厚みが鋼板の厚みの5‰以上であり、切欠箇所の悪い耐食性を招いた。
【0050】
以上を踏まえて、本発明は、切欠耐食性を有する溶融亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板の製造方法を提供するものであって、大気腐食の初期に、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン及び亜鉛イオンを含有する流動性の良い液膜を、鋼板の切欠部を充分に被覆させるように鋼板の表面に形成させ、緻密な水酸化物の2層化合物が形成されることで、切欠耐食性に優れた溶融亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板が作成される。
【0051】
最後に、技術用語の「備える」、「含む」、または他のいずれの変形体は、非排他的な包含を被覆するように意図され、一連の要素を含むプロセス、方法、品物、または装置が、それらの要素だけでなく、明示的に列挙されていない他の要素も含み、或いはこれらのプロセス、方法、品物、もしくは装置に固有の要素も含むようになっている。
【0052】
本発明の好ましい実施形態を説明したが、当業者は、一旦創造的な技術思想を基本的に了解すれば、さらなる変更および修正をこれらの実施形態に加えることができる。したがって、添付の特許請求の範囲は、好ましい実施形態、ならびに本発明の範囲内に入るすべての変更および修正を含むと解釈されることが意図される。
【0053】
当業者が、本発明の思想及び範囲から逸脱さずに、本発明に様々な変更及び変形を加えられることは明らかである。このようにすると、本発明のこれらの変形及び変更も、本願請求範囲及びその均等技術の範囲内に属すると解釈されることが意図される。
図1
図2
【国際調査報告】