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特表2023-528650ハイブリットキャパシタの正極、その調製方法および使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-05
(54)【発明の名称】ハイブリットキャパシタの正極、その調製方法および使用
(51)【国際特許分類】
   H01G 11/28 20130101AFI20230628BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20230628BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20230628BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20230628BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20230628BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20230628BHJP
   H01G 11/36 20130101ALI20230628BHJP
   H01G 11/38 20130101ALI20230628BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20230628BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20230628BHJP
   H01G 11/06 20130101ALI20230628BHJP
【FI】
H01G11/28
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 E
H01M4/62 Z
H01M4/587
H01G11/36
H01G11/38
H01G11/86
H01G11/84
H01G11/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022575357
(86)(22)【出願日】2020-11-16
(85)【翻訳文提出日】2022-12-06
(86)【国際出願番号】 CN2020128952
(87)【国際公開番号】W WO2022077685
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】202011112353.2
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518405050
【氏名又は名称】恵州億緯▲リ▼能股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】EVE ENERGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 38, Huifeng 7th Road, Zhongkai Hi-Tech Zone Huizhou, Guangdong 516006, China
(71)【出願人】
【識別番号】522475122
【氏名又は名称】恵州億緯創能電池有限公司
【氏名又は名称原語表記】EVE HYPERPOWER BATTERIES INC.
【住所又は居所原語表記】NO. 63, Huitai Industrial Park, Zhongkai High-Tech Zone Huizhou, Guangdong 516006, China
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 功
(72)【発明者】
【氏名】羅垂意
(72)【発明者】
【氏名】卜芳
(72)【発明者】
【氏名】祝媛
(72)【発明者】
【氏名】袁中▲直▼
(72)【発明者】
【氏名】劉建華
(72)【発明者】
【氏名】劉金成
【テーマコード(参考)】
5E078
5H050
【Fターム(参考)】
5E078AA02
5E078AA14
5E078AB06
5E078BA04
5E078BA13
5E078BA15
5E078BA26
5E078BA27
5E078BA53
5E078BB23
5E078BB30
5E078BB33
5E078BB37
5H050AA19
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA16
5H050CA29
5H050CB08
5H050DA02
5H050DA09
(57)【要約】
本開示は、ハイブリットキャパシタの正極、その調製方法および使用に関する。前記正極は、集電体、集電体表面に順次位置する粘着層および正極材料層を備え、粘着層は第1粘着剤を含み、正極材料層は、第2粘着剤、導電剤、正極活物質およびリチウムリッチ化合物を含み、導電剤は第1導電剤および第2導電剤を含み、第1導電剤は、黒鉛粉末、導電性カーボンブラックまたはアセチレンブラックのうちの少なくとも1種を含み、第2導電剤は、グラフェン系材料および一次元炭素材料のうちの少なくとも1種を含む。
【選択図】無し
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体、集電体表面に順次位置する粘着層および正極材料層を備え、
前記粘着層は第1粘着剤を含み、前記正極材料層は、第2粘着剤、導電剤、正極活物質およびリチウムリッチ化合物を含む、
ハイブリットキャパシタの正極。
【請求項2】
前記粘着層の厚さは0.5~10μmである、
請求項1に記載の正極。
【請求項3】
前記導電剤は第1導電剤および第2導電剤を含み、前記第1導電剤は、黒鉛粉末、導電性カーボンブラックまたはアセチレンブラックのうちの少なくとも1種を含み、前記第2導電剤は、グラフェン系材料および一次元炭素材料のうちの少なくとも1種を含む、
請求項1または2に記載の正極。
【請求項4】
前記粘着層の厚さは1~5μmであり、
好ましくは、前記正極活物質は、リチウム含有正極活物質および炭素系正極活物質を含み、
好ましくは、前記リチウム含有正極活物質は、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、リン酸第一鉄リチウム、ニッケルコバルトマンガン三元系材料、ニッケルコバルトアルミニウム三元系材料またはニッケルコバルトマンガンアルミニウム四元系材料のうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含み、ニッケル酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン三元系材料、ニッケルコバルトアルミニウム三元系材料またはニッケルコバルトマンガンアルミニウム四元系材料のうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせであることが好ましく、
好ましくは、前記炭素系正極活物質は、活性炭、グラフェン、ドープグラフェンまたは多孔質バイオマス炭素のうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含む、
請求項1から3のいずれか1項に記載の正極。
【請求項5】
前記導電性カーボンブラックは、粒径10~200nmの小粒子導電性カーボンブラックおよび/または粒径1~30μmの大粒子導電性カーボンブラックを含み、
好ましくは、前記グラフェン系材料は、グラフェン、酸化グラフェンまたはドープグラフェンのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含み、
好ましくは、前記一次元炭素材料は、カーボンナノチューブおよび/または炭素繊維を含み、
好ましくは、前記正極材料層における、グラフェン系材料と一次元炭素材料との質量比は(1~2):(3~6)であり、
好ましくは、前記第1粘着剤および第2粘着剤は可溶性フッ素樹脂であり、
好ましくは、前記第1粘着剤および第2粘着剤は、独立してPVDF、PTFEまたはPFAから選ばれるいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせであり、
好ましくは、前記リチウムリッチ化合物は、LiNiO、LiFeO、LiN、LiO、LiまたはM/フッ化リチウム複合体のうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含み、ただし、Mは、Co、NiまたはFeのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含み、LiNiO、LiNまたはM/フッ化リチウム複合体のうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせであることが好ましい、
請求項2から4のいずれか1項に記載の正極。
【請求項6】
前記粘着層には第3導電剤が更に含まれ、前記第3導電剤は、導電性カーボンブラックであることが好ましい、
請求項2に記載の正極。
【請求項7】
粘着層と正極材料層の総質量を100%として、前記第1粘着剤と第2粘着剤の総質量分率は2%~10%であり、
好ましくは、粘着層と正極材料層の総質量を100%として、前記第1導電剤の質量分率は1%~6%であり、
好ましくは、粘着層と正極材料層の総質量を100%として、前記グラフェン系材料と一次元炭素材料の総質量分率は0.5%~3%であり、
好ましくは、前記第3導電剤と第1粘着剤との質量比は(1~5):1であり、(2~4):1であることが好ましく、
好ましくは、粘着層と正極材料層の総質量を100%として、前記リチウム含有正極活物質の質量分率は5%~80%であり、
好ましくは、粘着層と正極材料層の総質量を100%として、前記炭素系正極活物質の質量分率は10%~90%であり、
好ましくは、粘着剤と正極材料層の総質量を100%として、前記正極活物質の質量分率は85%~95%であり、
好ましくは、前記リチウム含有正極活物質と炭素系正極活物質との質量比は1:(0.5~1.5)であり、1:(1~1.2)であることが好ましく、
好ましくは、粘着層と正極材料層の総質量を100%として、前記リチウムリッチ化合物の質量分率は2%~30%である、
請求項1から6のいずれか1項に記載の正極。
【請求項8】
(1)第2粘着剤、導電剤、正極活物質およびリチウムリッチ化合物を混合して正極スラリーを取得するステップであって、前記導電剤は第1導電剤および第2導電剤を含み、前記第1導電剤は、黒鉛粉末、導電性カーボンブラックまたはアセチレンブラックのうちの少なくとも1種を含み、前記第2導電剤は、グラフェン系材料および一次元炭素材料のうちの少なくとも1種を含むステップと、
(2)集電体表面に第1粘着剤を含む分散液を塗布し、1回目のベークを行い、粘着層を調製し、また、ステップ(1)で得られた正極スラリーを前記粘着層表面に塗布し、2回目のベークを行い、中間製品を取得するステップと、
(3)ステップ(2)で得られた中間製品をプレスし、3回目のベークを行い、正極を取得するステップと、を含む、
請求項1から7のいずれか1項に記載の正極の調製方法。
【請求項9】
ステップ(2)に記載の集電体は、腐食集電体、塗布集電体、純粋な集電体または貫通孔集電体のうちのいずれか1種を含み、
好ましくは、ステップ(2)に記載の分散液における、粘着剤の質量分率は1%~10%であり、2%~8%であることが好ましく、
好ましくは、ステップ(2)に記載の分散液に第3導電剤が更に含まれ、
好ましくは、ステップ(2)に記載の1回目のベークの温度は60~180℃であり、80~150℃であることが好ましく、
好ましくは、ステップ(2)に記載の粘着層の厚さは0.5~10μmであり、1~5μmであることが好ましく、
好ましくは、ステップ(2)に記載の2回目のベークの温度は80~150℃であり、100~130℃であることが好ましい、
請求項8に記載の調製方法。
【請求項10】
ステップ(1)および(2)の過程において、環境温度を20~30℃、湿度を3%~40%に制御する、
請求項8または9に記載の調製方法。
【請求項11】
ステップ(3)に記載のプレスの速度は2~50m/minであり、
好ましくは、ステップ(3)に記載のプレスの方式は冷間プレスおよび/または熱間プレスであり、
好ましくは、前記冷間プレスの温度は0~45℃であり、
好ましくは、前記熱間プレスの温度は60~270℃であり、80~250℃であることが好ましく、
好ましくは、ステップ(3)に記載の3回目のベークの方式は真空ベークを含み、
好ましくは、前記真空ベークの真空度は5~200Paであり、
好ましくは、ステップ(3)に記載の3回目のベークの温度は80~150℃であり、
好ましくは、ステップ(3)に記載の3回目のベークの時間は10~60minである、
請求項8~10のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項12】
(1)第1導電剤、第2粘着剤、正極活物質およびリチウムリッチ化合物を1~3hドライブレンドした後、第2導電剤を加えて1~2h攪拌混合し、その後、有機溶剤を加えて4~6h攪拌し、正極スラリーを取得するステップと、
(2)集電体表面に第1粘着剤の分散液を塗布し、60~180℃でベークし、粘着層を調製し、前記粘着層の厚さを0.5~10μmに制御し、また、ステップ(1)で得られた正極スラリーを前記粘着層表面に塗布し、80~150℃でベークし、中間製品を取得するステップと、
(3)ステップ(2)で得られた中間製品を、ロールプレス速度2~50m/s、温度60~270℃に制御して熱間プレスし、80~150℃、真空度5~200Paの条件で10~60minベークし、前記正極を取得するステップと、
を含み、
ステップ(1)およびステップ(2)は、いずれも温度20~30℃、湿度3%~40%の環境で行われる、
請求項8~11のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項13】
請求項1~7のいずれか1項に記載の正極を備える、
ハイブリットキャパシタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、ハイブリットキャパシタの技術分野に関し、ハイブリットキャパシタの正極、その調製方法および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギーおよび環境問題の益々の顕在化に伴い、クリーンエネルギーおよび再生可能エネルギーが、広く研究され、利用されている。スーパーキャパシタは、通常のキャパシタと二次電池との間に介在する新規高効率エネルギー貯蔵素子として、注目され、研究されている。その中で、炭素系スーパーキャパシタは炭素材料を主な電極材料とし、広く使用されており、活性炭は常用の炭素材料の1つであるが、活性炭の比容量は、一般的に25~35F/gの間にあり、圧密密度(compacted density)は0.5~0.6g/mしかなく、純活性炭を電極とするキャパシタのエネルギー密度は2~10Wh/kgしかなく、著しく制限される。また、活性炭電極は、主に水系スラリーを作成して箔材表面に塗布して乾燥してロールプレスすることにより得られ、活性炭は極めて強い吸着能力を有するため、残留水分が乾燥しにくく、デバイスの電圧および放電性能に影響を及ぼす。そのため、人々は研究重点をハイブリットキャパシタに移し、その中で、リチウムイオンキャパシタは、エネルギー密度およびパワー密度が高く、静電容量が高く、サイクル寿命がリチウムイオン電池よりも長いという利点を持ち、新エネルギー自動車、風力エネルギーおよびIoT(Internet of Things)等の分野で広く適用されることが期待されている。
【0003】
現在、高エネルギー密度を取得して負極電位を高めるために、リチウムイオンキャパシタの負極は、一般的に、リチウム予備吸蔵処理を行う必要がある。CN104538194Aは、リチウム予備吸蔵ハードカーボン負極を採用したリチウムイオンキャパシタ(LIC)の調製方法を開示しており、商品化された活性炭を正極とし、ハードカーボンを負極とし、1MのLiPF/EC+DECを電解液としてリチウムイオンキャパシタを組み立てる。リチウム吸蔵容量が400mAh/gのLICは、最高エネルギー密度およびパワー密度が、それぞれ76.5Wh/kgおよび5.1kW/kgであり、1000サイクル後も、エネルギー保持率は依然として92.0%と高い。15hのリチウム予備吸蔵を経たリチウムイオンキャパシタのエネルギー密度は97.2Wh/kgに達することができ、最も小さいインピーダンスおよび良好なサイクル性能(1A/gの電流密度で1000回サイクルした後、エネルギー保持率は91.2%である)を持つ。正極と負極との質量比が2.2である場合、エネルギー保持率は57.0%である。それとともに、キャパシタは、非常に小さい電荷移動内部抵抗(10.4)を有し、最大エネルギー密度およびパワー密度は、それぞれ88.7Wh/kgおよび12kW/kgである。しかし、該発明に係る調製方法は、プロセスが複雑で、時間が長く、コストが高く、IoT電源のレート性能およびエネルギー密度に対する要求を満たすことができない。
【0004】
CN104617335Aは、低温化学電源およびその製造方法を開示しており、製造方法は、1)電池セルを調製し、タブを溶接し、電池セルをケースに入れてパッケージしてから乾燥するステップ、2)電池セルをケースに入れてパッケージしてから乾燥し、1回目の注液を行うステップ、3)リチウムイオンキャパシタまたはリチウムイオン電池を化成処理するステップ、4)化成済みの単体に対して2回目の注液を行うステップ、及び5)単体を整形し、後続の処理を行うステップを含む。該発明は、2回の注液を行い、1回目の注液の目的は主に化成成膜であり、2回目の注液の目的は、デバイスの導電率および低温特性を向上させることである。該発明は、化学電源の低温性能を改善したが、依然としてIoT電源の動作温度-40℃~125℃に対するニーズを満たすことができない。
【0005】
上記文献の研究に基づき、IoT電源の応用を満たし、エネルギー密度が高く、レート性能が良く、負極のリチウム予備吸蔵を行う必要がなく、コストが低いハイブリットキャパシタをどのように開発するかは、早急に解決すべき問題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願の目的は、ハイブリットキャパシタの正極、その調製方法および使用を提供することである。前記ハイブリットキャパシタの正極は、通常の正極の配合およびプロセスを改良することにより、炭素系キャパシタのエネルギー密度が低く、負極のリチウム予備吸蔵処理を行う必要があるという問題を解決し、デバイスのエネルギー密度およびレート性能を向上させ、-40℃~125℃での高レートのパルス放電を満たすことができる。本願の方法は、特に、室温レート性能および低温レート性能を向上させるとともに、負極のリチウム予備吸蔵を行う必要がなく、生産コストを低減することに適する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本願は、以下の技術案を採用する。
【0008】
態様1において、本願は、ハイブリットキャパシタ用の正極を提供し、前記正極は、集電体、集電体表面に順次位置する粘着層および正極材料層を備え、前記粘着層は第1粘着剤を含み、前記正極材料層は、第2粘着剤、導電剤、正極活物質およびリチウムリッチ化合物を含む。
【0009】
本願に係る正極は、集電体と正極材料層との間に粘着層を設けることにより、正極材料と集電体との結合能力を向上させ、タブの内部抵抗を低減する。リチウムリッチ化合物および正極活物質は、充電中に供給するリチウムイオンが負極に入り、リチウム吸蔵挙動を行うので、負極は、リチウム予備吸蔵のステップを行う必要がない。上記各物質は相互作用し、正極のレート性能を向上させ、高レートの充放電のニーズを満たすことができる。
【0010】
好ましくは、前記粘着層の厚さは0.5~10μmであり、例えば、0.5μm、1μm、2μm、4μm、6μm、8μm、9μmまたは10μm等であってもよく、1~5μmであることが好ましい。前記厚さが0.5μmよりも小さい場合、導電性粘着層の粉体への粘着力は小さく、タブ抵抗を効果的に低減して粉体の脱落を防止することができず、厚さが10μmよりも大きい場合、タブの厚さが大きくなり、デバイスのエネルギー密度の向上に不利である。
【0011】
好ましくは、前記導電剤は第1導電剤および第2導電剤を含み、前記第1導電剤は、黒鉛粉末、導電性カーボンブラックまたはアセチレンブラックのうちの少なくとも1種を含み、前記第2導電剤は、グラフェン系材料および一次元炭素材料のうちの少なくとも1種を含む。正極材料層で、グラフェン系材料および/または一次元炭素材料は、三次元立体導電ネットワークを構築し、黒鉛粉末、導電性カーボンブラックまたはアセチレンブラックのうちの少なくとも1種の粒子は、導電ネットワークの内部および/または表面に分散して完全な導電系を形成し、材料の導電率を向上させる。
【0012】
好ましくは、前記正極活物質は、リチウム含有正極活物質および炭素系正極活物質を含む。
【0013】
好ましくは、前記リチウム含有正極活物質は、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、リン酸第一鉄リチウム、ニッケルコバルトマンガン三元系材料、ニッケルコバルトアルミニウム三元系材料またはニッケルコバルトマンガンアルミニウム四元系材料のうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含み、ニッケル酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン三元系材料、ニッケルコバルトアルミニウム三元系材料またはニッケルコバルトマンガンアルミニウム四元系材料のうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせであることが好ましい。この中で、コバルト酸リチウムとマンガン酸リチウム、マンガン酸リチウムとリン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウムとコバルト酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン三元系材料とニッケルコバルトアルミニウム三元系材料、ニッケルコバルトアルミニウム三元系材料とニッケルコバルトマンガンアルミニウム四元系材料の組み合わせが典型的であるが、これらに限定されず、ニッケル酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン三元系材料、ニッケルコバルトアルミニウム三元系材料またはニッケルコバルトマンガンアルミニウム四元系材料のうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせが好ましい。
【0014】
好ましくは、前記炭素系正極活物質は、活性炭、グラフェン、ドープグラフェンまたは多孔質バイオマス炭素のうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0015】
本願において、前記炭素系正極活物質は、大きな比表面積を有し、一般的には、1500m/g以上(例えば、1500m/g、1600m/g、1700m/g、1800m/g、2000m/g、または2100m/g等)であり、リチウム含有正極活物質と混合してキャパシタのエネルギー密度の向上を実現することができる。
【0016】
好ましくは、前記導電性カーボンブラックは、粒径10~200nmの小粒子導電性カーボンブラックおよび/または粒径1~30μmの大粒子導電性カーボンブラックを含み、例えば、小粒子導電性カーボンブラックの粒径は、10nm、15nm、20nm、50nm、80nm、100nm、120nm、150nm、180nm、190nmまたは200nm等であってもよく、大粒子導電性カーボンブラックの粒径は、1μm、3μm、5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、28μmまたは30μm等であってもよい。
【0017】
本願において、小粒子導電性カーボンブラックまたは大粒子導電性カーボンブラックの種類について、具体的には限定せず、SPであってもよく、当業者が常用する物質であれば、いずれも本願に適用される。
【0018】
本願において、前記グラフェン系材料は、グラフェン、酸化グラフェン、ドープグラフェンのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0019】
好ましくは、前記一次元炭素材料は、カーボンナノチューブおよび/または炭素繊維を含む。
【0020】
好ましくは、前記第2導電剤は、グラフェン系材料の少なくとも1種および一次元炭素材料の少なくとも1種を含む。
【0021】
好ましくは、前記正極材料層における、グラフェン系材料と一次元炭素材料との質量比は(1~2):(3~6)であり、この好ましい比で、正極材料層内に超導電ネットワークが形成され、優れた導電率が得られる。前記質量比は、例えば、1:3、1:4、1:5、1:6、2:3、2:5または2:6等であってもよく、前記質量比が1:6よりも小さい場合、正極で三次元導電ネットワークを構築しにくく、質量比が2:3よりも大きい場合、グラフェン系材料の分散が困難で、デバイスの内部抵抗が大きくなる。グラフェン系材料は、第2導電剤の構成部分であってもよいし、炭素系正極活物質の構成部分であってもよく、正極材料層にある限り、上記含有量の範囲内に含まれることが理解されやすい。
【0022】
好ましくは、前記第1粘着剤および第2粘着剤は可溶性フッ素樹脂である。
【0023】
好ましくは、前記第1粘着剤および第2粘着剤は、独立してPVDF、PTFEまたはPFAから選ばれるいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせであり、この中で、PVDFとPFA、PFAとPTFEの組み合わせが典型的であるが、これらに限定されない。
【0024】
好ましくは、前記リチウムリッチ化合物は、LiNiO、LiFeO、LiN、LiO、LiまたはM/フッ化リチウム複合体のうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含み、ただし、Mは、Co、NiまたはFeのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含み、LiNiO、LiNまたはM/フッ化リチウム複合体のうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせであることが好ましい。その中で、LiNiOとLiFeO、LiNとLiO、LiOとLi、LiNとLiOとLi、LiNiOとNi/フッ化リチウム複合体、LiNiOとLiNまたはM/フッ化リチウム複合体のうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせが典型的であるが、これらに限定されない。
【0025】
前記「M/フッ化リチウム複合体」は金属Mとフッ化リチウムの複合体である。
【0026】
本願に係る正極の好ましい技術案として、前記粘着剤に第3導電剤が更に含まれ、前記第3導電剤は、導電性カーボンブラックであることが好ましい。
【0027】
好ましくは、粘着層と正極材料層の総質量を100%として、前記第1粘着剤と第2粘着剤の総質量分率は2%~10%であり、例えば、2%、3%、5%、6%、8%または10%等であってもよい。
【0028】
第1粘着剤と第2粘着剤との配合比は特に限定されず、当業者は必要に応じて選択することができる。
【0029】
好ましくは、粘着層と正極材料層の総質量を100%として、前記第1導電剤の質量分率は1%~6%であり、例えば、1%、2%、3%、4%、5%または6%等であってもよい。
【0030】
好ましくは、粘着層と正極材料層の総質量を100%とし、前記グラフェン系材料と一次元炭素材料の総質量分率は0.5%~3%であり、例えば、0.5%、1%、2%、2.5%または3%等であってもよい。前記質量が0.5%よりも低い場合、デバイスの低温レート性能が影響を受け、質量が3%よりも高い場合、デバイスの内部抵抗が大きくなり、電気的性能が影響を受ける。グラフェン系材料は第2導電剤の構成部分であってもよく、炭素系正極活物質の構成部分であってもよく、正極材料層にある限り、上記含有量の範囲内に含まれることが理解されやすい。
【0031】
好ましくは、前記第3導電剤と第1粘着剤との質量比は(1~5):1であり、例えば、1:1、2:1、3:1、4:1または5:1等であってもよく、(2~4):1であることが好ましい。
【0032】
好ましくは、粘着層と正極材料層の総質量を100%として、前記リチウム含有正極活物質の質量分率は5%~80%であり、例えば、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%または80%等であってもよい。
【0033】
好ましくは、粘着層と正極材料層の総質量を100%として、前記炭素系正極活物質の質量分率は10%~90%であり、例えば、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%等であってもよい。
【0034】
好ましくは、粘着剤と正極材料層の総質量を100%として、前記正極活物質の質量分率は85%~95%であり、例えば、85%、88%、90%、92%、93%または95%等であってもよい。
【0035】
好ましくは、前記リチウム含有正極活物質と炭素系正極活物質との質量比は1:(0.5~1.5)であり、例えば、1:0.5、1:0.8、1:0.9、1:1、1:1.2、1:1.3または1:1.5等であり、1:(1~1.2)であることが好ましい。
【0036】
好ましくは、粘着層と正極材料層の総質量を100%として、前記リチウムリッチ化合物の質量分率は2%~30%であり、例えば、2%、3%、5%、10%、15%、20%、25%または30%等であってもよい。前記質量が2%よりも低い場合、デバイスの容量および放電中央値電圧が低く、質量が30%よりも高い場合、デバイスの原材料コストが増加する。
【0037】
態様2において、本願は、
(1)第2粘着剤、導電剤、正極活物質およびリチウムリッチ化合物を混合して正極スラリーを取得するステップであって、前記導電剤は第1導電剤および第2導電剤を含み、前記第1導電剤は、黒鉛粉末、導電性カーボンブラックまたはアセチレンブラックのうちの少なくとも1種を含み、前記第2導電剤は、グラフェン系材料および一次元炭素材料のうちの少なくとも1種を含むステップと、
(2)集電体表面に第1粘着剤を含む分散液を塗布し、1回目のベークを行い、粘着層を調製し、また、ステップ(1)で得られた正極スラリーを前記粘着層表面に塗布し、2回目のベークを行い、中間製品を取得するステップと、
(3)ステップ(2)で得られた中間製品をプレスし、3回目のベークを行い、前記正極を取得するステップと、を含む、
上記態様1に記載の正極の調製方法を提供する。
【0038】
本願に係る調製方法は、正極の集電体表面に第1粘着剤を含む分散液を塗布し、その後、プレスし、ベークすることで正極の各物質と集電体との結合をより緊密にさせ、タブの内部抵抗を低減し、ハイパワー充放電性能を向上させる。第1導電剤および第2導電剤で、三次元立体導電ネットワークを構築することができ、リチウムリッチ酸化物および正極活物質は充電中に供給するリチウムイオンが負極に入り、リチウム吸蔵挙動を行うので、負極は、リチウム予備吸蔵のステップを行う必要がなく、プロセスが簡略化され、生産コストを低減し、高い応用価値を有する。
【0039】
本願は、ステップ(1)に記載の正極スラリーの混合方法について具体的には限定せず、1つのステップで混合してもよいし、複数のステップに分けて混合してもよく、例えば、2つのステップ、3つのステップ、および4つのステップ等に分けてもよく、当業者は必要に応じて調製することができる。
【0040】
好ましくは、グラフェン系材料以外の気体物質をドライブレンドし、混合粉末を取得し、その後、グラフェン系材料と前記混合粉末とを混合し、最後に有機溶剤を加えて均一に混合させ、正極スラリーを取得する。
【0041】
本願において、有機溶剤の種類について具体的には限定せず、当業者が常用する有機溶剤であれば、いずれも本願に適用される。
【0042】
好ましくは、ステップ(2)に記載の集電体は、腐食集電体、塗布集電体、純粋な集電体または貫通孔集電体のうちのいずれか1種を含む。
【0043】
好ましくは、ステップ(2)に記載の分散液における、粘着剤の質量分率は1%~10%であり、例えば、1%、3%、5%、8%、9%または10%等であり、2%~8%であることが好ましい。
【0044】
好ましくは、ステップ(2)に記載の分散液に第3導電剤が更に含まれる。
【0045】
好ましくは、ステップ(2)に記載の1回目のベークの温度は60~180℃であり、例えば、60℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、100℃、120℃、140℃、160℃、170℃または180℃等であってもよく、80~150℃であることが好ましい。前記温度が60℃よりも低い場合、有機溶剤を乾燥させることができず、温度が180℃よりも高い場合、タブが割れる可能性がある。
【0046】
好ましくは、ステップ(2)に記載の粘着層の厚さは0.5~10μmであり、例えば、0.5μm、1μm、2μm、4μm、6μm、8μm、9μmまたは10μm等であってもよく、1~5μmであることが好ましい。前記厚さが0.5μmよりも小さい場合、導電性粘着層の粉体に対する粘着力が小さくなり、タブの抵抗を効果的に低減して粉体の脱落を防止することができず、厚さが10μmよりも大きい場合、タブの厚さが大きくなり、デバイスのエネルギー密度を向上させることに不利である。
【0047】
好ましくは、ステップ(2)に記載の2回目のベークの温度は80~150℃であり、例えば、80℃、85℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃または150℃等であってもよく、100~130℃であることが好ましい。前記温度が80℃よりも低い場合、タブに残留された溶剤および水分を除去することができず、温度が150℃よりも高い場合、タブをベークし過ぎて、粉が落ちる可能性がある。
【0048】
好ましくは、ステップ(1)および(2)において、環境温度を20~30℃、湿度を3%~40%に制御し、例えば、温度は20℃、22℃、25℃、26℃、28℃または30℃等であってもよく、湿度は3%、5%、8%、10%、15%、20%、25%、30%、35%または40%等であってもよい。
【0049】
好ましくは、ステップ(3)に記載のプレスの速度は2~50m/minであり、例えば、2m/min、5m/min、10m/min、20m/min、25m/min、30m/min、35m/min、40m/min、45m/min、48m/minまたは50m/min等であってもよく、前記速度が2m/minよりも小さい場合、タブの生産効率が低く、速度が50m/minよりも大きい場合、粘着層とスラリーとを良好に粘着することができない。
【0050】
好ましくは、ステップ(3)に記載のプレスの方式は冷間プレスおよび/または熱間プレスである。
【0051】
好ましくは、前記冷間プレスの温度は0~45℃であり、例えば、0℃、5℃、10℃、15℃、20℃、30℃、40℃または45℃等であってもよい。
【0052】
好ましくは、前記熱間プレスの温度は60~270℃であり、例えば、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、160℃、180℃、190℃、200℃、230℃、250℃または270℃等であってもよく、80~250℃であることが好ましい。前記温度が60℃よりも低い場合、粘着層内の粘着剤を熱溶融することができず、粘着力の生成に不利であり、温度が270℃よりも高い場合、粘着剤の構造が破壊される可能性がある。
【0053】
好ましくは、ステップ(3)に記載の3回目のベークの方式は真空ベークを含む。
【0054】
好ましくは、前記真空ベークの真空度は5~200Paであり、例えば、5Pa、10Pa、15Pa、20Pa、50Pa、80Pa、100Pa、150Pa、180Paまたは200Pa等であってもよい。
【0055】
好ましくは、ステップ(3)に記載の3回目のベークの温度は80~150℃であり、例えば、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、135℃、140℃、145℃または150℃等であってもよい。
【0056】
好ましくは、ステップ(3)に記載の3回目のベークの時間は10~60minであり、例えば、10min、10min、20min、30min、40min、50minまたは60min等であってもよい。
【0057】
好ましくは、前記調製方法は、
(1)第1導電剤、第2粘着剤、第2導電剤、正極活物質およびリチウムリッチ化合物を1~3hドライブレンドした後、0.5~3wt%の第3導電剤を加えて1~2h攪拌混合し、その後、有機溶剤を加えて4~6h攪拌し、正極スラリーを取得するステップと、
(2)集電体表面に第1粘着剤の分散液を塗布し、60~180℃でベークし、粘着層を調製し、前記粘着層の厚さを0.5~10μmに制御し、また、ステップ(1)で得られた正極スラリーを前記粘着層表面に塗布し、80~150℃でベークし、中間製品を取得するステップと、
(3)ステップ(2)で得られた中間製品を、ロールプレス速度2~50m/s、温度60~270℃に制御して熱間プレスし、80~150℃、真空度5~200Paの条件で10~60minベークし、前記正極を取得するステップと、
を含み、
ステップ(1)およびステップ(2)は、いずれも温度20~30℃、湿度3%~40%の環境で行われる。
【0058】
態様3において、本願は、上記態様1に記載の正極を備えるハイブリットキャパシタを更に提供する。
【0059】
本願に係るハイブリットキャパシタは、上記態様1に記載の正極を採用し、前記正極は、集電体、集電体表面に順次位置する粘着層および正極材料層を備え、正極材料層内のリチウムリッチ化合物および正極活物質は、充電中にリチウムイオンが脱離して負極に入るので、負極がリチウム予備吸蔵を行う必要がなく、前記ハイブリットキャパシタの作製プロセスが簡単になり、コストが低いとともに、エネルギー密度およびレート性能を向上させ、IoT電源のニーズを満たすことができる。
【発明の効果】
【0060】
従来技術と比べ、本願は、少なくとも以下の有益な効果を有する。
【0061】
(1)本願は、集電体、集電体表面に順次位置する粘着層および正極材料層を備える正極を提供し、粘着層は、集電体と正極材料層との結合能力を向上させ、タブの内部抵抗を低減し、正極材料層内の導電剤、リチウムリッチ化合物および正極活物質等の物質が協働して、正極のエネルギー密度およびレート性能を向上させるとともに、充電中に供給するリチウムイオンが負極に入り、負極のリチウム予備吸蔵を行う必要がない。
【0062】
(2)本願に係る正極の調製方法は、正極の集電体表面に第1粘着剤を含む分散液を塗布し、その後、プレスし、ベークすることで正極の各物質と集電体との結合をより緊密にさせ、タブの内部抵抗を低減し、ハイパワー充放電性能を向上させ、第1導電剤および第2導電剤で三次元立体導電ネットワークを構築し、リチウムリッチ化合物および正極活物質は充電中に供給するリチウムイオンが負極に入り、リチウム吸蔵挙動を行うので、負極は、リチウム予備吸蔵を行う必要がなく、プロセスが簡略化され、生産コストを低減し、産業化しやすい。
【0063】
(3)本願に係るハイブリットキャパシタは、集電体、集電体表面に順次位置する粘着層および正極材料層を備える正極を採用することにより、キャパシタのエネルギー密度を向上させ、レート性能を改善するとともに、負極のリチウム予備吸蔵を行う必要がなく、IoT電源のニーズを満たす。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下、具体的な実施形態により、本願が所定の技術的効果を達成するために採用する技術的手段について更に説明する。本願の具体的な実施形態についての詳細な説明は、以下のとおりである。
【0065】
本願の実施例は、集電体の種類を限定せず、腐食集電体、塗布集電体、純粋な集電体または貫通孔集電体等であってもよく、ここで、腐食集電体は腐食アルミニウム箔であり、市販のものであってもよいし、アルミニウム箔を腐食して得たものであってもよく、アルミニウム箔を腐食する具体的な方法は従来技術であり、当業者は、従来技術に開示された方法を参照して調製することができ、塗布集電体は、カーボン塗布アルミニウム箔である。
【0066】
[実施例1]
本実施例は、ハイブリットキャパシタの正極を提供し、前記正極は、集電体、集電体表面に順次位置する粘着層および正極材料層を備え、前記粘着層の構成は、第1粘着剤(具体的な構成はPTFEであり、厚さが1μmであった)であり、前記正極材料層は、第2粘着剤(具体的な構成はPVDFであった)、導電剤、正極活物質およびリチウムリッチ化合物を含み、前記導電剤は第1導電剤および第2導電剤を含み、第1導電剤は黒鉛粉末であり、第2導電剤は、グラフェンとカーボンナノチューブとの質量比1:4の混合物であり、正極活物質は、活性炭とコバルト酸リチウムとの混合物であり、リチウムリッチ化合物はLiNiOであった。
【0067】
ここで、粘着層と正極材料層の総質量を100%として、第1粘着剤と第2粘着剤の総質量分率は5wt%で、第1導電剤の質量分率は4%で、第2導電剤の質量分率は1%で、コバルト酸リチウムの質量分率は45wt%で、活性炭の質量分率は40wt%で、リチウムリッチ化合物の質量分率は5%であった。
【0068】
本実施例は、以下のステップを含む上記ハイブリットキャパシタの正極の調製方法を提供する。
【0069】
ステップ(1):黒鉛粉末、PVDF、活性炭、コバルト酸リチウムおよびLiNiOを3hドライブレンドした後、グラフェンとカーボンナノチューブとの混合物を加えて2h攪拌混合し、その後、NMPを加えて4h攪拌し、正極スラリーを取得した。
【0070】
ステップ(2):集電体表面に質量分率3%のPTFE分散液を塗布し、90℃でベークし、導電性粘着層を調製し、粘着層の厚さを1μmに制御し、また、ステップ(1)で得られた正極スラリーを前記粘着層表面に塗布し、85℃でベークし、中間製品を取得した。
【0071】
ステップ(3):ステップ(2)で得られた中間製品を、ロールプレス速度2m/min、温度140℃に制御して熱間プレスし、140℃、真空度5Paの条件で30minベークし、前記正極を取得した。
【0072】
ここで、ステップ(1)およびステップ(2)は、いずれも環境温度25℃、湿度5%で行われた。
【0073】
[実施例2]
本実施例は、ハイブリットキャパシタの正極を提供し、前記正極は、集電体、集電体表面に順次位置する粘着層および正極材料層を備え、前記粘着層の構成は、第1粘着剤(具体的な構成はPVDFであり、厚さが0.5μmであった)であり、前記正極材料層は、第2粘着剤(具体的な構成はPTFEであった)、導電剤、正極活物質およびリチウムリッチ化合物を含み、前記導電剤は第1導電剤および第2導電剤を含み、第1導電剤はアセチレンブラックであり、第2導電剤は、酸化グラフェンとカーボンナノチューブとの質量比2:3の混合物であり、正極活物質は、グラフェンとマンガン酸リチウムとの混合物であり、リチウムリッチ化合物はLiNであった。
【0074】
ここで、粘着層と正極材料層の総質量を100%として、第1粘着剤と第2粘着剤の総質量分率は2wt%で、第1導電剤の質量分率は1%で、第2導電剤の質量分率は0.5%で、マンガン酸リチウムの質量分率は84.5wt%で、グラフェンの質量分率は10wt%で、リチウムリッチ化合物の質量分率は2%であった。
【0075】
本実施例は、以下のステップを含むハイブリットキャパシタの正極の調製方法を提供する。
【0076】
ステップ(1):アセチレンブラック、PTFE、酸化グラフェン、マンガン酸リチウムおよびLiNを1hドライブレンドした後、グラフェンとカーボンナノチューブとの混合物を加えて2h攪拌混合し、その後、NMPを加えて5h攪拌し、正極スラリーを取得した。
【0077】
ステップ(2):集電体表面に質量分率8%のPVDF分散液を塗布し、60℃でベークし、粘着層を調製し、粘着層の厚さを0.5μmに制御し、また、ステップ(1)で得られた正極スラリーを前記粘着層表面に塗布し、80℃でベークし、中間製品を取得した。
【0078】
ステップ(3):ステップ(2)で得られた正極シートを、ロールプレス速度2m/min、温度90℃に制御して熱間プレスし、80℃、真空度200Paの条件で30minベークし、前記正極を取得した。
【0079】
ここで、ステップ(1)およびステップ(2)は、いずれも環境温度20℃、湿度3%で行われた。
【0080】
[実施例3]
本実施例は、ハイブリットキャパシタの正極を提供し、前記正極は、集電体、集電体表面に順次位置する粘着層および正極材料層を備え、前記粘着層の構成は、第1粘着剤(具体的な構成はPFAであり、厚さが5μmであった)であり、前記正極材料層は、第2粘着剤(具体的な構成はPFAであった)、導電剤、正極活物質およびリチウムリッチ化合物を含み、前記導電剤は第1導電剤および第2導電剤を含み、第1導電剤はSPであり、第2導電剤は、グラフェンとカーボンナノチューブとの質量比2:4の混合物であり、正極活物質は、活性炭とNCM811との混合物であり、リチウムリッチ化合物はLiOであった。
【0081】
ここで、粘着層と正極材料層の総質量を100%として、第1粘着剤と第2粘着剤の総質量分率は5wt%で、第1導電剤の質量分率は3%で、第2導電剤の質量分率は1.5%で、NCM811の質量分率は35wt%で、活性炭の質量分率は45wt%で、リチウムリッチ化合物の質量分率は10.5%であった。
【0082】
本実施例は、以下のステップを含む上記ハイブリットキャパシタの正極の調製方法を提供する。
【0083】
ステップ(1):SP、PFA、炭素繊維、NCM811およびLiOを2hドライブレンドした後、グラフェンとカーボンナノチューブとの混合物を加えて3h攪拌混合し、その後、NMPを加えて5h攪拌し、正極スラリーを取得した。
【0084】
ステップ(2):集電体表面に質量分率4%のPFA分散液を塗布し、120℃でベークし、粘着層を調製し、粘着層の厚さを5μmに制御し、また、ステップ(1)で得られた正極スラリーを前記粘着層表面に塗布し、120℃でベークし、中間製品を取得した。
【0085】
ステップ(3):ステップ(2)で得られた正極シートを、ロールプレス速度25m/min、温度150℃に制御して熱間プレスし、120℃、真空度100Paの条件で20minベークし、前記正極を取得した。
【0086】
ここで、ステップ(1)およびステップ(2)は、いずれも環境温度25℃、湿度5%で行われた。
【0087】
[実施例4]
本実施例は、ハイブリットキャパシタの正極を提供し、前記正極は、集電体、集電体表面に順次位置する粘着層および正極材料層を備え、前記粘着層は、第1粘着剤および第3導電剤(具体的に、第1粘着剤の構成はPTFEであり、第3導電剤はSPであり、厚さが3μmであった)を含み、前記正極材料層は、第2粘着剤(具体的な構成はPVDFであった)、導電剤、正極活物質およびリチウムリッチ化合物を含み、前記導電剤は第1導電剤および第2導電剤を含み、第1導電剤はアセチレンブラックであり、第2導電剤は、グラフェンとカーボンナノチューブとの質量比1:6の混合物であり、正極活物質は、多孔質バイオマス炭素とLiNi0.85Al0.075Mn0.075との混合物であり、リチウムリッチ化合物はCo/フッ化リチウム複合体であった。
【0088】
ここで、粘着層と正極材料層の総質量を100%として、第1粘着剤と第2粘着剤の総質量分率は5wt%で、第1導電剤の質量分率は2%で、第2導電剤の質量分率は2%で、第3導電剤質量分率は6%で、LiNi0.85Al0.075Mn0.075の質量分率は50wt%で、多孔質バイオマス炭素の質量分率は10wt%で、リチウムリッチ化合物の質量分率は25%であった。
【0089】
本実施例は、以下のステップを含む上記ハイブリットキャパシタの正極の調製方法を提供する。
【0090】
ステップ(1):アセチレンブラック、PVDF、多孔質バイオマス炭素、LiNi0.85Al0.075Mn0.075およびCo/フッ化リチウム複合体を2hドライブレンドした後、グラフェンとカーボンナノチューブとの混合物を加えて3h攪拌混合し、その後、NMPを加えて6h攪拌し、正極スラリーを取得した。
【0091】
ステップ(2):集電体表面に質量分率3%のPTFEおよびアセチレンブラックの分散液を塗布し、180℃でベークし、粘着層を調製し、粘着層の厚さを3μmに制御し、また、ステップ(1)で得られた正極スラリーを前記粘着層表面に塗布し、150℃でベークし、中間製品を取得した。
【0092】
ステップ(3):ステップ(2)で得られた正極シートを、ロールプレス速度50m/min、温度200℃に制御して熱間プレスし、150℃、真空度60Paの条件で10minベークし、前記正極を取得した。
【0093】
ここで、ステップ(1)およびステップ(2)は、いずれも環境温度30℃、湿度40%で行われた。
【0094】
[実施例5]
本実施例は、ハイブリットキャパシタの正極を提供し、前記正極は、集電体、集電体表面に順次位置する粘着層および正極材料層を備え、前記粘着層は、第1粘着剤および第3導電剤(具体的に、第1粘着剤の構成はPTFEであり、第3導電剤はSPであり、厚さが4μmであった)を含み、前記正極材料層は、第2粘着剤(具体的な構成はPVDFであった)、導電剤、正極活物質およびリチウムリッチ化合物を含み、前記導電剤は第1導電剤および第2導電剤を含み、第1導電剤はSPであり、第2導電剤は、グラフェンとカーボンナノチューブとの質量比2:5の混合物であり、第3導電剤はSPであり、正極活物質は、多孔質バイオマス炭素とLiNi0.85Al0.075Mn0.075との混合物であり、リチウムリッチ化合物はNi/フッ化リチウム複合体であった。
【0095】
ここで、粘着層と正極材料層の総質量を100%として、第1粘着剤と第2粘着剤の総質量分率は3wt%で、第1導電剤の質量分率は1%で、第2導電剤の質量分率は1%で、第3導電剤の質量分率は5%で、LiNi0.85Al0.075Mn0.075の質量分率は5wt%で、多孔質バイオマス炭素の質量分率は87wt%で、リチウムリッチ化合物の質量分率は3%であった。
【0096】
本実施例は、以下のステップを含む上記ハイブリットキャパシタの正極の調製方法を提供する。
【0097】
ステップ(1):SP、PVDF、多孔質バイオマス炭素、LiNi0.85Al0.075Mn0.075およびNi/フッ化リチウム複合体を2hドライブレンドした後、グラフェンとカーボンナノチューブとの混合物を加えて3h攪拌混合し、その後、NMPを加えて6h攪拌し、正極スラリーを取得した。
【0098】
ステップ(2):集電体表面に質量分率1%のPTFEおよびSPの分散液を塗布し、180℃でベークし、粘着層を調製し、粘着層の厚さを10μmに制御し、また、ステップ(1)で得られた正極スラリーを前記粘着層表面に塗布し、150℃でベークし、中間製品を取得した。
【0099】
ステップ(3):ステップ(2)で得られた正極シートを、ロールプレス速度50m/min、温度270℃に制御して熱間プレスし、150℃、真空度180Paの条件で10minベークし、前記正極を取得した。
【0100】
ここで、ステップ(1)およびステップ(2)は、いずれも環境温度30℃、湿度40%で行われた。
【0101】
[実施例6]
実施例1と比べた際の区別は、ステップ(3)における熱間プレスを5℃の冷間プレスに置き換えたことだけである。
【0102】
[実施例7]
実施例1と比べた際の区別は、ステップ(3)における熱間プレスを40℃の冷間プレスに置き換えたことだけである。
【0103】
[実施例8]
実施例1と比べた際の区別は、コバルト酸リチウムと活性炭の総質量分率が実施例1と同じで、いずれも85%であり、且つ、コバルト酸リチウムと活性炭との質量比が2.5:1であったことだけである。
【0104】
[実施例9]
実施例1と比べた際の区別は、コバルト酸リチウムと活性炭の総質量分率が実施例1と同じで、いずれも85%であり、且つ、コバルト酸リチウムと活性炭との質量比が2:8であったことだけである。
【0105】
[比較例1]
実施例1と比べた際の区別は、本比較例に係る正極の調製方法において、リチウムリッチ化合物LiNiOを加えず、正極材料層内の残りの物質間の質量比を維持したことだけである。
【0106】
[比較例2]
実施例1と比べた際の区別は、本比較例に係る正極の調製方法において、活性炭を加えず、同量のコバルト酸リチウムに置き換えたことだけである。
【0107】
[比較例3]
実施例1と比べた際の区別は、本比較例に係る正極の調製方法において、グラフェンとカーボンナノチューブとの混合物を加えず、同量の黒鉛粉末に置き換えたことだけである。
【0108】
[比較例4]
実施例1と比べた際の区別は、粘着層が設けられず、正極材料層における粘着剤の含有量が実施例1における第1粘着剤と第2粘着剤との総量と同じであるように維持したことだけである。
【0109】
ハイブリットキャパシタの性能についての評価は以下のとおりである。
【0110】
上記実施例および比較例で調製されたハイブリットキャパシタの正極と黒鉛負極とでキャパシタを組み立て、容量、室温レートおよび-40℃の低温試験を行い、試験方法は以下のとおりである。
【0111】
容量試験:ハイブリットキャパシタを25℃の環境に置き、5min放置し、5mAの定電流定電圧で3.9Vに充電し、カットオフ電流が0.5mAであり、5min放置し、5mAの定電流で2.2Vに放電し、終了した。
【0112】
レート試験:ハイブリットキャパシタを25℃の環境に置き、NEWAREの5V5A精密放電箱により5mAの定電流定電圧で3.68Vに充電し、カットオフ電流が0.5mAであり、5min放置し、500Cのレートで1sパルス放電し、最低電圧を記録し、終了した。
【0113】
-40℃の低温試験:ハイブリットキャパシタを25℃の環境に置き、5V5A精密放電箱により5mAの定電流定電圧で3.68Vに充電し、カットオフ電流が0.5mAであり、ハイブリットキャパシタを高低温ボックスに移して-40℃の環境で6h静置し、150Cのレートで0.1sパルス放電し、最低電圧を記録し、終了した。
【0114】
本願の各実施例および比較例で調製された電池は、同じ型番(15500)であり、容量が高いほど、エネルギー密度が高いことを表す。
【0115】
試験結果は表1に示すとおりである。
【0116】
表1
注:表において、25℃&500C電圧は、25℃、電流500Cの条件で試験された最低電圧を表し、-40℃&150C電圧は、-40℃、電流150Cの条件で試験された最低電圧を表す。
【0117】
25℃&500C電圧および-40℃&150C電圧が高いほど、材料のレート性能が良いことを表す。
【0118】
表1により、以下のことが分かった。
【0119】
(1)実施例1と比較例1を総合すると分かるように、比較例1の正極にはLiNiOが含まれず、容量およびレート性能はいずれも低下し、これは、正極にLiNiOが含まれることが、ハイブリットキャパシタのエネルギー密度、室温レート性能および低温レート性能の向上に寄与することを意味している。
【0120】
(2)実施例1と比較例2を総合すると分かるように、比較例2の正極活物質は全てコバルト酸リチウムであり、容量は高かったが、レート性能が悪く、これは、正極に活性炭およびコバルト酸リチウムが含まれることが、ハイブリットキャパシタが良好なエネルギー密度、室温レート性能および低温レート性能を両立させることに寄与することを意味している。
【0121】
(3)実施例1と比較例3を総合すると分かるように、比較例3の正極にはグラフェンとカーボンナノチューブとの混合物が含まれず、黒鉛粉末に置き換えられ、容量およびレート性能が低下し、これは、正極にグラフェンとカーボンナノチューブとの混合物が含まれることが、ハイブリットキャパシタのエネルギー密度、室温レート性能および低温レート性能の向上に寄与することを意味している。
【0122】
(4)実施例1と比較例4を総合すると分かるように、比較例4で粘着層が設けられず、レート性能は低下し、これにより、正極材料層と集電体との間に設けられた粘着層が、ハイブリットキャパシタの室温レート性能および低温レート性能の向上に寄与することを意味する。
【0123】
(5)実施例1、実施例8および実施例9を総合すると分かるように、リチウム含有正極活物質および炭素系活物質の添加量は、材料の容量およびレート性能に重要な影響を及ぼし、リチウム含有正極活物質と炭素系正極活物質との質量比が1:(0.5~1.5)の好ましい範囲内にあることで、上記両方の効果をより良く両立させることができる。
【0124】
本願は、上記実施例により本願の詳細な構造的特徴について説明したが、本願は、上記詳細な構造的特徴に限定されるものではなく、すなわち、本願は上記詳細な構造的特徴に依存しなければ実施できないことを意味するものではないことを、出願人より声明する。
【国際調査報告】