(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-05
(54)【発明の名称】コアキャビティを有する無線電力共振器のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
H02J 50/12 20160101AFI20230628BHJP
A61M 60/873 20210101ALI20230628BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
H02J50/12
A61M60/873
H02J7/00 301D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022575364
(86)(22)【出願日】2021-06-08
(85)【翻訳文提出日】2022-12-07
(86)【国際出願番号】 US2021036306
(87)【国際公開番号】W WO2021252429
(87)【国際公開日】2021-12-16
(32)【優先日】2020-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517073591
【氏名又は名称】ティーシー1 エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン、ジョン・フレディ
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン、ラッセル
(72)【発明者】
【氏名】ハージェス、ダニエル・アイ
(72)【発明者】
【氏名】バヴァル、アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】イウディチェ、ジェフリー
【テーマコード(参考)】
4C077
5G503
【Fターム(参考)】
4C077AA04
4C077DD01
4C077FF04
4C077KK23
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503GB08
(57)【要約】
本開示によれば、無線電力伝送システムで使用するための共振器が提供される。本開示の共振器は、コアであって、前面、背面、及び前面と背面との間に延びる環状側壁を有し、前面には、環状溝、及び環状溝によって取り囲まれたポスト部が形成されており、背面には、キャビティが形成されており、ポスト部及びキャビティは、コアの長手方向軸と整列している、該コアを含む。本開示の共振器は、コアの前面の環状溝内に配置されたコイル素子をさらに含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線電力伝送システムで使用するための共振器であって、
コアであって、前面、背面、及び前記前面と前記背面との間に延びる環状側壁を有し、前記前面には、環状溝、及び前記環状溝によって取り囲まれたポスト部が形成されており、前記背面には、キャビティが形成されており、前記ポスト部及び前記キャビティは、前記コアの長手方向軸と整列している、該コアと、
前記環状溝内に配置されたコイル素子と、を含む、共振器。
【請求項2】
請求項1に記載の共振器であって、
前記キャビティ内に配置された少なくとも1つの電子部品をさらに含む、共振器。
【請求項3】
請求項2に記載の共振器であって、
前記キャビティに、前記少なくとも1つの電子部品から発生した熱を当該共振器の背面へ逃がすように構成された断熱材が充填されている、共振器。
【請求項4】
請求項1に記載の共振器であって、
前記キャビティは、約20mmの直径、及び約4mmの深さを有する、共振器。
【請求項5】
請求項1に記載の共振器であって、
当該共振器は、植込み型受信共振器を含む、共振器。
【請求項6】
請求項1に記載の共振器であって、
当該共振器は、外部送信共振器を含む、共振器。
【請求項7】
請求項1に記載の共振器であって、
前記コイル素子は、複数の積層板を含む、共振器。
【請求項8】
請求項1に記載の共振器であって、
前記コイル素子は、複数のリッツ線のループを含む、共振器。
【請求項9】
請求項1に記載の共振器であって、
前記コアの前記背面に凹部が形成されており、
前記凹部は、前記キャビティよりも浅い、共振器。
【請求項10】
請求項1に記載の共振器であって、
前記キャビティに、当該共振器の前面から当該共振器の背面への熱伝達を容易にするガスが充填されている、共振器。
【請求項11】
無線電力伝送システムであって、
電源と、
前記電源に電気的に接続された送信共振器と、
負荷と、
前記負荷に電気的に接続された植込み型受信共振器と、を備え、
前記植込み型受信共振器は、前記送信共振器から無線電力を受信するように構成されており、かつ、
前記植込み型受信共振器は、
コアであって、前面、背面、及び前記前面と前記背面との間に延びる環状側壁を有し、前記前面には、環状溝、及び前記環状溝によって取り囲まれたポスト部が形成されており、前記背面には、キャビティが形成されており、前記ポスト部及び前記キャビティは、前記コアの長手方向軸と整列している、該コアと、
前記環状溝内に配置されたコイル素子と、を含む、
無線電力伝送システム。
【請求項12】
請求項11に記載の無線電力伝送システムであって、
前記共振器は、前記キャビティ内に配置された少なくとも1つの電子部品をさらに含む、無線電力伝送システム。
【請求項13】
請求項11に記載の無線電力伝送システムであって、
前記キャビティは、環状のキャビティ側壁と、キャビティ底壁とによって画定される、無線電力伝送システム。
【請求項14】
請求項13に記載の無線電力伝送システムであって、
前記キャビティは、約20mmの直径、及び約4mmの深さを有する、無線電力伝送システム。
【請求項15】
請求項11に記載の無線電力伝送システムであって、
前記コイル素子は、複数の積層板を含む、無線電力伝送システム。
【請求項16】
請求項11に記載の無線電力伝送システムであって、
前記コイル素子は、複数のリッツ線のループを含む、無線電力伝送システム。
【請求項17】
請求項11に記載の無線電力伝送システムであって、
前記コアの前記背面に凹部が形成されており、
前記凹部は、前記キャビティよりも浅い、無線電力伝送システム。
【請求項18】
請求項11に記載の無線電力伝送システムであって、
前記キャビティに、当該共振器の前面から当該共振器の背面への熱伝達を容易にするガスが充填されている、無線電力伝達システム。
【請求項19】
無線電力伝送システムを組み立てる方法であって、
電源を外部送信共振器に電気的に接続させるステップと、
植込み型受信共振器に負荷を電気的に接続させるステップと、を含み、
前記植込み型受信共振器は、前記外部送信共振器から無線電力を受信するように構成されており、かつ、
前記植込み型受信共振器は、
コアであって、前面、背面、及び前記前面と前記背面との間に延びる環状側壁を有し、前記前面には、環状溝、及び前記環状溝によって取り囲まれたポスト部が形成されており、前記背面には、キャビティが形成されており、前記ポスト部及び前記キャビティは、前記コアの長手方向軸と整列している、該コアと、
前記環状溝内に配置されたコイル素子と、を含む、
方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、
少なくとも1つの電子部品を前記キャビティ内に配置するステップをさらに含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年6月8日出願の米国特許仮出願第63/036、010号に基づく優先権を主張するものである。上記出願の開示内容の全体は、参照により本明細書中に援用される。
【0002】
(技術分野)
本開示は、一般に無線電力伝送システムに関し、より詳細には、共振器のコアに形成されたキャビティを有する無線電力伝送共振器に関する。
【背景技術】
【0003】
VADとして知られる心室補助装置は、植込み型の血液ポンプであり、一般に心不全またはうっ血性心不全と呼ばれる心臓が十分な循環を提供することができない症状を患っている患者において、短期間(すなわち、数日または数か月)及び長期間(すなわち、数年または生涯)の両方の用途で使用される。心不全を患っている患者は、心臓移植を待つ間に、または、長期のDT治療(destination therapy)として、VADを使用することができる。別の例では、患者は、心臓手術後の回復期に、VADを使用することができる。このように、VADは、弱った心臓を補助したり(すなわち、部分的に補助したり)、自然の心臓の機能を効果的に置き換えたりすることができる。
【0004】
VADへの電力供給には、無線電力伝送システムを使用することができる。無線電力伝送システムは、一般に、外部送信共振器と、患者の体内に植え込まれるように構成された植込み型受信共振器とを備える。このような無線電力伝送システムは、経皮エネルギー伝送システム(TETS)とも呼ばれている。
【0005】
無線電力伝送システムの動作を向上させるためには、一般に、共振器の発熱量を低減すること、及び、共振器を小型化することが望ましい。特に、植込み型受信共振器の動作時に発生する熱量を低減すること、及び、植込み型受信共振器を小型化することが有益である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、無線電力伝送システムで使用するための共振器に関する。本開示の共振器は、コアであって、前面、背面、及び前面と背面との間に延びる環状側壁を有し、前面には、環状溝、及び環状溝によって取り囲まれたポスト部が形成されており、背面には、キャビティが形成されており、ポスト部及びキャビティは、コアの長手方向軸と整列している、該コアを含む。本開示の共振器は、コアの前面の環状溝内に配置されたコイル素子をさらに含む。
【0007】
また、本開示は、無線電力伝送システムに関する。本開示の無線電力伝送システムは、電源と、電源に電気的に接続された送信共振器と、負荷と、負荷に電気的に接続された植込み型受信共振器と、を備え、植込み型受信共振器は、送信共振器から無線電力を受信するように構成されている。植込み型受信共振器は、コアであって、前面、背面、及び前面と背面との間に延びる環状側壁を有し、前面には、環状溝、及び環状溝によって取り囲まれたポスト部が形成されており、背面には、キャビティが形成されており、ポスト部及びキャビティは、コアの長手方向軸と整列している、該コアを含む。植込み型受信共振器は、コアの前面の環状溝内に配置されたコイル素子をさらに含む。
【0008】
また、本開示は、無線電力伝送システムを組み立てる方法に関する。本開示の方法は、電源を外部送信共振器に電気的に接続させるステップと、植込み型受信共振器に負荷を電気的に接続させるステップと、を含み、植込み型受信共振器は、外部送信共振器から無線電力を受信するように構成されており、かつ、植込み型受信共振器は、コアであって、前面、背面、及び前面と背面との間に延びる環状側壁を有し、前面には、環状溝、及び環状溝によって取り囲まれたポスト部が形成されており、背面には、キャビティが形成されており、ポスト部及びキャビティは、コアの長手方向軸と整列している、該コアと、環状溝内に配置されたコイル素子と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の無線電力伝送システムの一実施形態の簡略化された電気回路図である。
【
図2】
図2は、
図1の無線電力伝送システムを心室補助装置(VAD)への電力供給に使用した様子を示す図である。
【
図3】
図3は、
図1に示した本システムを実施するために使用することができる共振器300の一実施形態の前面側の斜視図である。
【
図6】
図6は、
図1に示した本システムを実施するために使用することができる別の共振器の背面側の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、無線電力共振器のためのシステム及び方法に関する。また、本開示は、無線電力伝送システムで使用するための共振器に関する。本開示の共振器は、コアであって、前面、背面、及び前面と背面との間に延びる環状側壁を有し、前面には、環状溝、及び環状溝によって取り囲まれたポスト部が形成されており、背面には、キャビティが形成されており、ポスト部及びキャビティは、コアの長手方向軸と整列している、該コアを含む。本開示の共振器は、コアの前面の環状溝内に配置されたコイル素子をさらに含む。
【0011】
次に図面を参照すると、
図1は、本開示の無線電力伝送システム100の簡略化された電気回路を示す。本システム100は、外部送信共振器102と、植込み型受信共振器104とを備える。
図1に示す本システムでは、電源Vsが送信共振器102に電気的に接続されており、電源Vsから送信共振器102に電力が供給される。受信共振器104は、負荷106(例えば、植込み型医療装置)に接続されている。受信共振器104及び負荷106は、スイッチング素子または整流素子(図示せず)で電気的に接続してもよい。
【0012】
例示的な本実施形態では、送信共振器102は、コンデンサCxによって電源Vsに接続されたコイルLxを含む。また、受信共振器104は、コンデンサCyによって負荷106に接続されたコイルLyを含む。コイルLx(インダクタLx)とコイルLy(インダクタLy)とは、結合係数kで接続される。Mxyは、2つのコイル間の相互インダクタンスである。相互インダクタンスMxyは、結合係数kと下記の式(1)に示す関係にある。
【0013】
【0014】
動作時、送信共振器102は、電源Vsから供給された電力を無線送信する。受信共振器104は、送信共振器102から無線送信された電力を受信し、受信した電力を負荷106に供給する。
【0015】
図2は、外部コイル202(例えば、
図1に示す送信共振器102)を使用して、患者200の体内に植え込まれた植込み型コイル204(例えば、
図1に示す受信共振器104)に電力を無線送信する一実施形態を示す。植込み型コイル204は、外部コイル202から受信した電力を使用して植込み型装置206に電力を供給する。例えば、植込み型装置206としては、ペースメーカーまたは心臓ポンプ(例えば、左心室補助装置(LVAD))が挙げられる。いくつかの実施形態では、植込み型コイル204及び/または植込み型装置206は、電池を備えてもよいし、または電池に接続されてもよい。
【0016】
一実施形態では、外部コイル202は、コンピュータ装置210との間で信号を送受信できるように、例えば有線接続または無線接続を介してコンピュータ装置210に通信可能に接続されている。いくつかの実施形態では、コンピュータ装置210は、外部コイル202の電源としての役割も果たす。他の実施形態では、外部コイル202は、別の電源(図示せず)に接続される。コンピュータ装置210は、メモリ装置214と、メモリ装置214に通信可能に接続されたプロセッサ212とを備える。いくつかの実施形態では、コンピュータ実行可能命令がメモリ装置214に格納される。
【0017】
コンピュータ装置210は、ユーザインターフェース(UI)216をさらに備える。ユーザインターフェース(UI)216は、ユーザ(例えば、患者200)に情報を提示する。ユーザインターフェース(UI)216としては、例えば、陰極線管(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、有機LED(OLED)ディスプレイ、及び/または「電子インク」ディスプレイなどのディスプレイ装置に接続されるディスプレイアダプタ(図示せず)が挙げられる。いくつかの実施形態では、ユーザインターフェース(UI)216は、1以上の表示装置を含む。さらに、いくつかの実施形態では、プレゼンテーションインターフェースは、視覚的コンテンツを生成せずに、可聴及び/またはコンピュータで生成された音声コンテンツを生成する。例示的な実施形態では、ユーザインターフェース(UI)216は、外部コイル202と植込み型コイル204との間の接続が最適になるように、患者200が外部コイル202を配置するのを支援するよう作られた1以上の表現または画像を表示する。いくつかの実施形態では、コンピュータ装置210は、ウェアラブルデバイスであってもよい。例えば、一実施形態では、コンピュータ装置210は腕時計であり、ユーザインターフェース(UI)216は腕時計に表示される。
【0018】
図3は、
図1に示した本システム100を実施するために使用することができる本開示の共振器300の一実施形態の前面側の斜視図である。本開示の共振器300は、例えば、外部送信共振器102、植込み型受信共振器104、外部コイル202、及び/または植込み型コイル204を実施するために使用することができる。
図4は、
図3に示した共振器300の背面側の斜視図である。
図5は、
図3及び
図4に示した共振器300の断面図であり、
図4の5-5線に沿った断面図である。
【0019】
図3~
図5に示すように、本開示の共振器300は、コア302と、コイル素子304とを含む。コア302は、前面305と、背面306と、前面305及び背面306間に延びる環状側壁308とを有する。前面305には環状溝310が形成されており、これにより、前面305の中央部分に中央ポスト部312が形成されている。
【0020】
共振器300(コア302及びコイル素子304を含む)は、コンデンサ(例えば、コイル素子304に電気的に接続されたプリント基板上のコンデンサ)に接続されると、無線電力共振器として機能する。しかしながら、当業者であれば、コンデンサに接続されていない共振器300がコイルアセンブリを構成していることを理解するであろう。したがって、本明細書で使用するとき、「共振器」という用語は、無線電力共振器を形成するために、その共振器をコンデンサに接続することを必要としない。それどころか、本明細書で使用するとき、「共振器」という用語は、
図3に示すように、コンデンサに接続されていないコア及びコイル素子を含むコイルアセンブリを包含するのに十分な広範さを有する。
【0021】
コア302は、ニッケル系やマンガン系のフェライトなどのフェライト材料から形成することができる。ニッケル系フェライトは、一般に、電気伝導率が低く、損失が少ない。一方、マンガン系フェライトは、透磁率が高く(しかし、損失は許容範囲)、磁力線の封じ込めを容易にし、近くの導体(例えば、近くのPCBのチタン製の筐体や銅)に入る漏れ磁場を減らして、損失を防止する。他の実施形態では、他の種類のフェライト材料を使用してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、マグネシウム系フェライト(例えば、約1メガヘルツ(MHz)の周波数範囲においてニッケル系またはマンガン系のフェライトよりも性能が優れているMgCuZn)を使用してもよい。
【0022】
図示の実施形態では、コイル素子304は環状溝310内に配置され、中央ポスト部312を取り囲んでいる。共振器300は、例えば、リッツ線共振器または積層板共振器であり得る。リッツ線型の共振器では、コイル素子304は、複数のリッツ線のループを含む。積層板型の共振器では、コイル素子304は、複数の誘電体層及び導電層を交互に積層させて構成した積層板を含む。誘電体層は、例えば、セラミック、プラスチック、ガラス、及び/またはマイカ(雲母)から形成することができる。
【0023】
コイル素子304は、例えば、電源(送信共振器として機能する場合)または負荷106(受信共振器として機能する場合)に電気的に接続される。動作時には、送信共振器として動作する共振器300に電力が供給されると、コイル素子304に電流が流れ、それにより、誘導電流ループが形成される。第1の共振器300の共振周波数が第2の共振器300の共振周波数との共振周波数が重なることを条件にして、この誘導電流ループにより、第1の共振器300から第2の共振器300に電力を無線伝送することができる。図示の実施形態では、コイル素子304は、コア302を貫通して背面306まで延びる複数の端子314を有する。コイル素子304の端子314は、必要に応じて、コイル素子304を電源または負荷に電気的に接続することを容易にする。
【0024】
図3~
図5に示すように、コア302の背面306に、キャビティ320が形成されている。図示の実施形態では、キャビティ320は、或る深さ322、及び或る直径324を有する略円筒形のキャビティである。キャビティ320の深さ322は、例えば、約4mm(ミリメートル)であり得る。また、キャビティ320の直径324は、例えば、約20mmであり得る。あるいは、キャビティ320は、任意の適切な寸法を有し得る。さらに、キャビティ320は(ポスト部312と共に)共振器300の長手方向軸326と整列している。
【0025】
キャビティ320は、キャビティ側壁332とキャビティ底壁330とによって画定される。図示の実施形態では、キャビティ側壁332は、略環状であり、キャビティ底壁330に対して直交するように配向されており、キャビティ側壁332とキャビティ底壁330とは、丸みを帯びたまたは面取りされた境界部334で交わる。他の実施形態では、キャビティ側壁332及びキャビティ底壁330は、任意の適切な配向を有してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、境界部334は、キャビティ側壁332とキャビティ底壁330との間に直角を形成する。
【0026】
本明細書で説明するように、キャビティ320を有する本開示の共振器300は、キャビティ320を有していない従来の共振器(すなわち、連続的な平面状の背面を有する共振器)と比較して、いくつかの利点を提供する。注目すべきは、共振器300が受信共振器であっても送信共振器であっても、キャビティ320を利用できることである。
【0027】
例えば、キャビティ320を有する本開示の共振器300は、キャビティ320を有していない従来の共振器と比較して、動作時(例えば、無線電力転送時)に発生する熱量が少ない。例えば、コンピュータモデリングシミュレーションでは、キャビティ320を有していない従来の植込み型共振器(すなわち、受信共振器として機能する従来の共振器)は、共振器に隣接する局所組織の温度を5.68°C上昇させたが、キャビティ320を有する本開示の共振器300は、局所組織の温度を5.44°Cしか上昇させなかった。このような温度上昇の減少は、少なくとも部分的には、コア302の材料の一部を除去したことに起因する。
【0028】
コンピュータモデリングシミュレーションの結果から、温度上昇の減少は、共振器300の背面(すなわち、背面306の近傍)での熱量の増加に起因すると判断された。具体的には、キャビティ320が存在しない場合、受信共振器の前面は、送信共振器に面しているので、通常は、背面よりも温度が高くなる。キャビティ320が存在する場合、共振器300の前面の熱は背面に逃がされ(誘導され)、これにより、共振器300の背面では熱量が増加するが、共振器300の前面では熱量が減少し、その結果、共振器300の熱量を全体的に低減することができる。
【0029】
一般に、植込み型装置で発生する熱量を減らすことは、植込み型装置がそれに隣接する組織に与える影響を減らすため、望ましいことである。キャビティ320を有する共振器300は、キャビティ320を有していない対応する共振器と比較して、重量が軽い(キャビティ320内にコア302の材料が存在しないため)。キャビティ320には、空気または他の適切なガスを充填してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、キャビティ320には、共振器300の前面から背面への熱伝達を容易にするガスが充填されている。
【0030】
注目すべきは、共振器300にキャビティ320を形成しても、共振器300の電磁特性に対して大きな影響を与えないことである。つまり、共振器300にキャビティ320を形成しても、共振器300の無線電力の送受信能力は損なわれない。これは、キャビティ320の位置における磁場強度が比較的低いためである。すなわち、共振器300の形状に起因して、動作時には、キャビティ320の位置には比較的弱い磁場しか発生しない。例えば、ある実験シミュレーションでは、キャビティ320内の磁場強度は5マイクロテスラ(μT)であったが、環状側壁308の外側の磁場強度はその約50倍であった。さらに、共振器300の形状を変更することによって、キャビティ320により、共振器300の動作時に発生し得る閉ループ磁力線の定在波の除去または低減を容易にすることができる。
【0031】
少なくともいくつかの実施形態では、1つ以上の電子部品(図示せず)が、キャビティ320内に配置される。キャビティ320内の磁場強度は比較的低いので、共振器300の動作時には、キャビティ320内に配置された電子部品は実質的に遮蔽される。つまり、電子部品がキャビティ320内に配置されている場合、共振器300の動作によって、その電子部品の動作が電磁的に損なわれたり、他の方法で妨げられたりすることはない。キャビティ320内に配置された電子部品は、(例えば、端子314を介して)コイル素子304に電気的に接続することができる。キャビティ320内に配置される電子部品としては、例えば、整流回路(例えば、電界効果トランジスタ、ダイオード)、整合コンデンサ、及び直列インダクタが挙げられる。あるいは、電子部品は、任意の適切な電子部品であってもよい。
【0032】
キャビティ320内に配置された電子部品が熱を発生する場合(例えば、約300ミリワット(mW)の熱量で)、電子部品で発生した熱を共振器300の背面に逃がす(誘導する)ために、キャビティ320に断熱材を充填してもよい。シミュレーションでは、このような断熱材の充填により、共振器300に隣接する組織の最大温度を少なくとも0.11°C低下させることが示されている。電子部品の発熱量が多ければ多いほど、このような断熱材の充填によってもたらされる利益は大きくなる。
【0033】
キャビティ320内に電子部品を配置することによって、共振器300の全体サイズを小さくすることが容易になる。つまり、電子部品がキャビティ320に配置されない場合(例えば、共振器がキャビティ320を有していない実施形態では)、これらの電子部品はコア302の外部に配置する必要があるため、共振器300のサイズは大きくなる。
【0034】
いくつかの実施形態では、共振器300は、キャビティ320内に配置された電子部品を取り囲んで保護するカバー(図示しない)を含む。このようなカバーは、背面306と実質的に同一平面をなすようにしてもよく、また、コア302と同じ材料で作ってもよい。
【0035】
当業者であれば、本明細書で説明した共振器300の寸法及び構造が単なる例に過ぎないことを理解するであろう。例えば、いくつかの実施形態では、(例えば、共振器300の所定の動作周波数において)損失を最小限に抑えるためにコア302とキャビティ320の寸法を変更してもよい。
【0036】
図6は、別の共振器600の背面側の斜視図である。特に断らない限り、共振器600は共振器300と実質的に同様であり、同様の参照番号が同様の構成要素を示すために用いられる。この実施形態では、キャビティ320に加えて、共振器600の背面306に凹部604が形成されている。凹部604は、一般にキャビティ320よりも幅広であるが、キャビティ320よりも浅い。したがって、端子314に接続されるプリント基板(PCB)などの比較的薄い部品を、凹部604内に配置することができる。
【0037】
本明細書で説明した実施形態は、無線電力伝送共振器のためのシステム及び方法に関するものである。また、本開示は、無線電力伝送システムで使用するための共振器に関する。本開示の共振器は、コアであって、前面、背面、及び前面と背面との間に延びる環状側壁を有し、前面には、環状溝、及び環状溝によって取り囲まれたポスト部が形成されており、背面には、キャビティが形成されており、ポスト部及びキャビティは、コアの長手方向軸と整列している、該コアを含む。本開示の共振器は、コアの前面の環状溝内に配置されたコイル素子をさらに含む。
【0038】
本明細書に開示される実施形態及び実施例を、特定の実施形態を参照して説明したが、これらの実施形態及び実施例は、本開示の原理及び適用の単なる例示であることを理解されたい。したがって、特許請求の範囲によって定義される本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態及び実施例に対して様々な変更を加えること、及び、他の構成を考案できることを理解されたい。したがって、本出願は、これらの実施形態及びその均等物の改変及び変形を包含することを意図している。
【0039】
本明細書は、実施例を用いて、最良の実施の形態(ベストモード)を含む本発明の内容を開示し、かつ、当業者が本発明を実施すること(任意の装置またはシステムの作製及び使用、並びに組み込まれた任意の方法の実施を含む)を可能にする。本発明の特許される技術範囲は、特許請求の範囲の請求項の記載によって定義され、かつ、当業者が想到可能な別の実施形態も含まれる。そのような別の実施形態は、各請求項の文言と相違しない構成要素を含む場合、または、各請求項の文言とは実質的に相違しない均等な構成要素を含む場合、その請求項の範囲内に含まれるものとする。
【国際調査報告】