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特表2023-528666アスファルトのリサイクルのための回復剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-05
(54)【発明の名称】アスファルトのリサイクルのための回復剤
(51)【国際特許分類】
   C08L 95/00 20060101AFI20230628BHJP
   C08K 5/1515 20060101ALI20230628BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
C08L95/00
C08K5/1515
C08L63/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022575821
(86)(22)【出願日】2021-06-08
(85)【翻訳文提出日】2023-02-07
(86)【国際出願番号】 EP2021065321
(87)【国際公開番号】W WO2021250014
(87)【国際公開日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】20178931.0
(32)【優先日】2020-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521037411
【氏名又は名称】ベーアーエスエフ・エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 晋平
(72)【発明者】
【氏名】ズザンネ・シュナイダー
(72)【発明者】
【氏名】カリン・シュライナー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファニ・シルヴィア・ファウスト
(72)【発明者】
【氏名】ケルスティン・ハフナー
(72)【発明者】
【氏名】ミハエル・ディーチュ
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AG001
4J002AG002
4J002CD003
4J002ED016
4J002EH097
4J002EH147
4J002EL027
4J002EN036
4J002EP016
4J002FD206
4J002FD207
4J002GT00
(57)【要約】
本発明は、瀝青バインダー及び少なくとも1種の回復剤を含むバインダー組成物に関する。本発明は、バインダー組成物における回復剤の効率性を評価するための方法に更に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)瀝青バインダー;及び
(b)バインダー組成物の総量に対して0.05~20質量%の回復剤
を含むバインダー組成物であって、
前記回復剤が、アルコキシレート、脂肪族カルボン酸のN,N-ジアルキルアミド、N-アルキルラクタム及びポリ(アルキルアミン)からなる群から選択される少なくともアスファルテン分散体、
モノグリシジルエーテル及びエステル、ジ及びトリグリシジルエーテル、高分子アルコールのジグリシジルエーテル並びに触媒とのそれらの混合物からなる群から選択されるアスファルテン再活性化剤、
可塑剤であるマルテン再活性化剤、
又はそれらの混合物
を含む、
バインダー組成物。
【請求項2】
前記回復剤が、瀝青ミセル構造の微細構造の変化を導入し、好ましくは、前記バインダー組成物の損失正接が、前記瀝青バインダーの損失正接と比較して増加し、且つ/又は
前記バインダー組成物の移動性成分の量及び/若しくはTD NMRによるそれらそれぞれの移動度が、前記瀝青バインダーの移動性成分の量及び/若しくはそれらそれぞれの移動度と比較して増加する、請求項1に記載のバインダー組成物。
【請求項3】
前記回復剤が、
(i)前記回復剤の総量に対して1~100質量%の前記アスファルテン分散体;
(ii)前記回復剤の総量に対して1~100質量%の前記アスファルテン再活性化剤;
(iii)前記回復剤の総量に対して1~100質量%の前記マルテン再活性化剤;又は
(iv)前記回復剤の総量に対して1~100質量%の、成分(i)~(iii)のうちの少なくとも2種からなる混合物
を含む、
請求項1又は2に記載のバインダー組成物。
【請求項4】
前記瀝青バインダーが、再生アスファルト舗装バインダー、再生アスファルトシングルバインダー、少なくとも50/70の硬度グレードの未加工の瀝青、又はそれらの混合物を、任意選択で未加工のバインダーと組み合わせて含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のバインダー組成物。
【請求項5】
前記バインダー組成物が、
式(1)の構造を有するアルコキシレート
【化1】
(式中、
Rは、H、C1~C22-アルキル、C2~C22-アルケニル、フェニル又はアルキルフェニルであり、
nは0~20であり、
mは0~20であり、
n+m≧1である);
式(2)の構造を有する脂肪族カルボン酸のN,N-ジアルキルアミド
【化2】
(式中、
nは、3~16であり、少なくとも1つの「CH2」部分の炭素原子は、少なくとも1つのC1~C5-アルキルで更に置換されていてもよく、2つの隣接する「CH2」部分の少なくとも2個の炭素原子は二重結合を形成していてもよく、
R1は、C1~C4-アルキルであり、
R2はC1~C4-アルキルである);
式(3)の構造を有するN-アルキルラクタム
【化3】
(式中、
nは、3~11であり、少なくとも1つの「CH2」部分の炭素原子は、少なくとも1つのC1~C3-アルキルで更に置換されていてもよく、
Rは、C1~C22アルキル又はC2~C22-アルケニルである);又は
式(4)の構造を有するポリ(アルキルアミン)
【化4】
(式中、
nは、1~6であり、2つの隣接する「CH2」部分の少なくとも2個の炭素原子は二重結合を形成していてもよく、
mは、1~6であり、2つの隣接する「CH2」部分の少なくとも2個の炭素原子は二重結合を形成していてもよく、
xは、4~50であり、
R1はC1~C4アルキルであり、
これらのポリ(アルキルアミン)は、末端アミン部分においてC1~C4アルキル、脂肪酸又はアルコキシル化により更に誘導されていてもよい)
からなる群から選択されるアスファルテン分散体;
並びに/又はモノグリシジルエーテル及びエステル、ジ及びトリグリシジルエーテル、高分子アルコールのジグリシジルエーテル並びにN,N-ジメチルベンジルアミン等の触媒とのそれらの混合物からなる群から選択されるアスファルテン再活性化剤であって、前記モノグリシジルエーテル及びエステル、ジ及びトリグリシジルエーテル、高分子アルコールのジグリシジルエーテルは、式(5a)、(5b)、(5c)及び(5d)の構造
【化5】
(式中、
式(5a)について、
Rは、C1~C20-アルコキシ、C2~C20-アルケニルオキシ、フェノキシ又はC1~C20-カルボキシアルキルであり、フェノキシは、少なくとも1つのC1~C15-アルキルで更に置換されていてもよく;
式(5b)について、
Rは、少なくとも1つのC1~C5-アルキルで更に置換されていてもよい直鎖状C5~C20-アルキレン、又は少なくとも1つのC1~C10-アルキル及び/若しくは少なくとも1つのフェニルで更に置換されたC1~C4-アルキレンであり;
式(5c)について、
Rは、C1~C5-アルキレンであり;
式(5d)について、
Rnは、式(6a)、(6b)又は(6c)
(-CH2CH2O-)n (6a)
(式中、nは、3~20である)、
(-CH2CH(CH3)O-)n (6b)
(式中、nは、3~18である)、又は
(-CH2CH2CH2CH2O-)n (6c)
(式中、nは、3~18である)
を有する)
を有する、アスファルテン再活性化剤;
並びに/又は式(7a)、(7b)、(7c)、(7d)若しくは(7e)を有する可塑剤
【化6】
(式中、
式(7a)について、
Rは、C4~C14-アルキル又はC4~C14-アルケニルであり;
式(7b)について、
Rは、C4~C14-アルキル又はC4~C14-アルケニルであり;
式(7c)について、
Rは、C4~C14-アルキル又はC4~C14-アルケニルであり;
式(7d)について、
Rは、C4~C14-アルキル又はC4~C14-アルケニルであり;
式(7e)について、
Rは、C4~C14-アルキル又はC4~C14-アルケニルであり、
nは、4~10であり、2つの隣接する「CH2」部分の少なくとも2個の炭素原子は二重結合を形成していてもよい)
であるマルテン再活性化剤
を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のバインダー組成物。
【請求項6】
前記アスファルテン分散体が存在し、式(1)の構造を有するアルコキシレート
【化7】
(式中、
Rは、H、C1~C22-アルキル、C2~C22-アルケニル、フェニル又はアルキルフェニル、好ましくは、H又はC1~C22-アルキル、より好ましくはH又はC1~C18-アルキルであり、
nは、0~20、好ましくは0~15、より好ましくは0~10であり、
mは、0~20、好ましくは0~15、より好ましくは0~10であり、
n+m≧1、好ましくはn+m≧5である);
特に、式(1)の構造(式中、
Rは、C10-アルキル又はC13-アルキル、好ましくは2-プロピルヘプチル又はイソトリデシルであり、
nは、0~6であり、
mは、0~8であり、
n+m≧5である)
を有するアルコキシレート;
式(2)の構造を有する脂肪族カルボン酸のN,N-ジアルキルアミド
【化8】
(式中、
nは、3~16であり、少なくとも1つの「CH2」部分の炭素原子は、少なくとも1つのC1~C5-アルキルで更に置換されていてもよく、2つの隣接する「CH2」部分の少なくとも2個の炭素原子は二重結合を形成していてもよく、好ましくは6~14であり、少なくとも1つの「CH2」部分の炭素原子は、少なくとも1つのC1~C5-アルキルで更に置換されていてもよく、
R1は、C1~C4-アルキル、好ましくは、メチル又はエチルであり、
R2は、C1~C4-アルキル、好ましくは、メチル又はエチルである);
特に、式(2)の構造(式中、
nは、8~12であり、
R1は、メチル又はエチルであり、
R2は、メチル又はエチルである)
を有する脂肪族カルボン酸のN,N-ジアルキルアミド;
式(3)の構造を有するN-アルキルラクタム
【化9】
(式中、
nは、3~11であり、少なくとも1つの「CH2」部分の炭素原子は、少なくとも1つのC1~C3-アルキル、好ましくは3(ピロリドン)、5(カプロラクタム)又は11(ラウロラクタム)で更に置換されていてもよく、
Rは、C1~C22-アルキル又はC2~C22-アルケニル、好ましくはC4~C18-アルキルである);
特に、式(3)の構造(式中、
nは、3(ピロリドン)であり、
Rは、C8~C12-アルキルである)
を有するN-アルキルラクタム;又は
式(4)の構造を有するポリ(アルキルアミン)
【化10】
(式中、
nは、1~6、好ましくは2~3であり、2つの隣接する「CH2」部分の少なくとも2個の炭素原子は二重結合を形成していてもよく、
mは、1~6、好ましくは2~3であり、2つの隣接する「CH2」部分の少なくとも2個の炭素原子は二重結合を形成していてもよく、
xは、4~50であり、
R1は、C1~C4-アルキル、好ましくは、C1~C2-アルキルであり、
これらのポリ(アルキルアミン)は、末端アミン部分においてC1~C4アルキル、脂肪酸又はアルコキシル化により更に誘導されていてもよい);
特に、オリゴ-N,N-ビス-(3-アミノプロピル)メチルアミン及びポリ-N,N-ビス-(3-アミノプロピル)メチルアミンからなる群から選択されるポリ(アルキルアミン)
からなる群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載のバインダー組成物。
【請求項7】
前記アスファルテン再活性化剤が存在し、モノグリシジルエーテル及びエステル、ジ及びトリグリシジルエーテル、高分子アルコールのジグリシジルエーテル並びに触媒とのそれらの混合物からなる群から選択され;
前記モノグリシジルエーテル及びエステル、ジ及びトリグリシジルエーテル、高分子アルコールのジグリシジルエーテルは式(5a)、(5b)、(5c)及び(5d)の構造を有し
【化11】
(式中、
式(5a)について、
Rは、C1~C20-アルコキシ、C2~C20-アルケニルオキシ、フェノキシ又はC1~C20-カルボキシアルキルであり、フェノキシは、少なくとも1つのC1~C15-アルキル、好ましくはC4~C16-アルコキシ、好ましくは、2-エチルヘキサノレート、n-ブタノレート、tert.-ブタノレート、C12~C15-アルコキシ、ノニルフェノレート、アリルアルコレート又はネオデカンカルボキシレートで更に置換されていてもよく;
式(5b)について、
Rは、少なくとも1つのC1~C5-アルキルで更に置換されていてもよい直鎖状C5~C20-アルキレン、又は少なくとも1つのC1~C10-アルキル及び/若しくは少なくとも1つのフェニルで更に置換されたC1~C4-アルキレン、好ましくは、少なくとも1つのC1~C4-アルキルで更に置換されていてもよい直鎖状C5~C15-アルキレン又は少なくとも1つのC1~C5-アルキル及び/若しくは少なくとも1つのフェニルで更に置換されたC1~C3-アルキレンであり;
式(5c)について、
Rは、C1~C5-アルキレン、好ましくはC3-アルキレンであり;
式(5d)について、
Rnは、式(6a)、(6b)又は(6c)
(-CH2CH2O-)n (6a)
(式中、nは、3~20である)、
(-CH2CH(CH3)O-)n (6b)
(式中、nは、3~18、好ましくは3~15である)、又は
(-CH2CH2CH2CH2O-)n (6c)
(式中、nは、3~18、好ましくは3~15である)
を有する);
好ましくは、前記アスファルテン再活性化剤が、ポリエチレングリコールビス(グリシジル)エーテル、ポリプロピレングリコールビス(グリシジル)エーテル、ネオペンチルグリコールビスグリシジルエーテル、2-メチル-2-フェニル-1,3-プロパンジオールビスグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、及び触媒とのこれらの化合物の混合物からなる群から選択され;より好ましくは、前記アスファルテン再活性化剤が、ポリプロピレングリコールビス(グリシジル)エーテルである、請求項1から6のいずれか一項に記載のバインダー組成物。
【請求項8】
前記マルテン再活性化剤が存在し、式(7a)、(7b)、(7c)、(7d)又は(7e)を有する可塑剤
【化12】
(式中、
式(7a)について、
Rは、C4~C14-アルキル又はC4~C14-アルケニルであり;
式(7b)について、
Rは、C4~C14-アルキル又はC4~C14-アルケニルであり;
式(7c)について、
Rは、C4~C14-アルキル又はC4~C14-アルケニルであり;
式(7d)について、
Rは、C4~C14-アルキル又はC4~C14-アルケニルであり;
式(7e)について、
Rは、C4~C14-アルキル又はC4~C14-アルケニルであり、
nは、4~10であり、2つの隣接する「CH2」部分の少なくとも2個の炭素原子は二重結合を形成していてもよい)
であり、
好ましくは、前記可塑剤が、式(7a)、(7c)又は(7d)(式中、
式(7a)について、
Rは、C8~C12-アルキル又はC7~C12-アルケニル、好ましくはC8~C11-アルキルであり;
式(7c)について、
Rは、C8~C12-アルキル又はC7~C12-アルケニル、好ましくはC8~C11-アルキルであり;
式(7d)について、
Rは、C8~C12-アルキル又はC7~C12-アルケニル、好ましくはC8~C11-アルキルであり、
nは、4~8であり、2つの隣接する「CH2」部分の少なくとも2個の炭素原子は二重結合を形成していてもよい)
を有し、より好ましくは、前記マルテン再活性化剤が、ジイソノニルフタレート又はジイソノニルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレートからなる群から選択され、より好ましくは、前記マルテン再活性化剤が、ジイソノニルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレートである、請求項1から7のいずれか一項に記載のバインダー組成物。
【請求項9】
前記瀝青バインダーが、前記瀝青バインダーの総質量に対して10~100質量%の再生アスファルト舗装及び/又は再生アスファルトシングルバインダーを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のバインダー組成物。
【請求項10】
前記瀝青バインダーが、更なる添加剤を含み、好ましくは、前記更なる添加剤が、ポリマー、ワックス、ファイバー又はそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載のバインダー組成物。
【請求項11】
骨材、及び請求項1から10のいずれか一項に記載のバインダー組成物を含むアスファルト組成物。
【請求項12】
請求項11に記載のアスファルト組成物を含む舗装道路面、道路準表面、滑走路、車道、駐車場、路肩、橋梁、橋台、屋根、堤防護岸又は未舗装道路。
【請求項13】
バインダー組成物における回復剤の効率性を評価するための方法であって、前記回復剤の効率性が、
(i)規定温度での動的せん断レオメーター(DSR)周波数掃引から得られたエージング前若しくは後の損失正接を介して証明され、ここで、前記周波数掃引は、0~90℃の温度で測定され、効果的な回復剤は、不等式(a)
損失正接[bc]>1.3×損失正接[bb] (a)
(式中、損失正接[bc]は、バインダー組成物の損失正接を示し、損失正接[bb]は、瀝青バインダーを示し、損失正接[bc]及び損失正接[bb]は、0.01~10rad/秒の周波数で評価される)
を満たすか、又は
(ii)-50~200℃の温度で瀝青サンプルに対して実施したTD NMR緩和実験を介して証明され、ここで、効果的な回復剤は、不等式(aa1)
T2e1[bc]>1.3×T2e1[bb] (aa1)
(式中、T2e1[bc]は、バインダー組成物の個々の成分に対応する緩和時間を示し、T2e1[bb]は、瀝青バインダーの個々の成分に対応する緩和時間を示す)
を満たす、
方法。
【請求項14】
再生アスファルト舗装(RAP)及び/又は屋根からのアスファルトシングル(RAS)をリサイクルするための、アルコキシレート、脂肪族カルボン酸のN,N-ジアルキルアミド、N-アルキルラクタム及びポリ(アルキルアミン)からなる群から選択される少なくともアスファルテン分散体、モノグリシジルエーテル及びエステル、ジ及びトリグリシジルエーテル、高分子アルコールのジグリシジルエーテル並びに触媒とのそれらの混合物からなる群から選択されるアスファルテン再活性化剤、可塑剤であるマルテン再活性化剤、又はそれらの混合物を含む回復剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、瀝青バインダー及び少なくとも1種の回復剤(rejuvenating agent)を含むバインダー組成物に関する。更に、本発明は、本発明によるバインダー組成物を含むアスファルト組成物に関する。本発明は、バインダー組成物における回復剤の効率性を評価するための方法に更に関する。
【背景技術】
【0002】
道路舗装及び他の資源(例えば、再生アスファルト舗装、RAP又は屋根からのアスファルトシングル、RAS)由来の再生アスファルトバインダーは、重要且つ価値のある廃棄材料であり、アスファルト製造における再利用が増加している。「欧州アスファルト舗装協会(European Asphalt Pavement Association)」(EAPA、Asphalt in Figures 2018)によると、2018年に生成された合計2億9800万トンのアスファルトのうち、約5000万トンの再生アスファルトが、2018年に欧州で再利用されており、これは、アスファルトの約17%が再生アスファルトで生成されたことを表す。アスファルトの製造に再利用された再生アスファルトの量は、将来的に更に増加し、2035年には欧州においておそらく50%に近づく。世界の他の地域でも状況は同様であり、世界的なトレンドを形成し、アスファルトは、世界のリサイクルのための最も重要な材料うちの1つとなっている。
【0003】
しかしながら、道路舗装又は任意の他の用途におけるアスファルトは、経時的な劣化を示し、結果として、高温におけるより高い粘度及び特により低温における増加した脆性、したがって、より高い割れの傾向につながる。これらのエージング(ageing)効果は、アスファルトのバインダー相である瀝青による。アスファルト性能を妥協することなく、再生アスファルトを再利用するために、瀝青の特性プロファイルは、未加工の(virgin)瀝青のプロファイルに可能な限り近く戻す必要がある。この再生アスファルト中のエージングした瀝青のいわゆる回復(rejuvenation)は、化学物質、いわゆる回復剤を用いて実施され、これは、適切な方式でアスファルト製造プロセスに添加される。多くのそのような回復剤が、文献において既に記載されており、それらのいくつかは市販されてもいるが、それでもなおほとんど使用されていない。アスファルト製造によるこの側面で表される主な問題は、全般に不足していると思われる性能、及びとりわけ、例えば、表面層としてのとりわけ高価値用途におけるそれらの長期間性能に関する不確実さ、及び多くの既存のベンチマークは、それらの毒性学的プロファイル等のそれらの安全性欠陥が公知の芳香族油であるため、安全性の問題である。
【0004】
回復剤は、その化学構造及び組成に従って以下の通り分類できる:
- 軟質瀝青(例えば、KONINK BAM GROEP NV社、WO2014168478;又はRECYCLED ASPHALT SHINGLE TECHNOLOGY LLC社、WO2013075088)を添加することによる瀝青相の補充は、エージングした瀝青を未加工の瀝青プロファイルに非常に近く調節することが可能であるため、依然として最も多くの場合に適用される方法である。しかしながら、再利用される再生アスファルトのシェアの増加に伴って、必要な必要量の軟質瀝青が実現しようとする所望のアスファルト組成物についての瀝青の全量を超えるため、この方法はうまくいかない。
- 原油蒸留又は任意の他の炭化水素系プロセスから得られた低粘度生成物(主に芳香族分)による改質。これらの生成物は「フラックスオイル」とも呼ばれ、アスファルト製造におけるそれらの利用も非常に十分に確立されているが、レオロジー特性プロファイルの復元、長期間性能の不足及び許容されない安全性プロファイルに関する明らかな欠点がある。
- 「フラックスオイル」と同様の挙動及び欠点を有する再生可能資源由来の油、とりわけ植物ベースの油(トリグリセリド)、例えば、ダイズ油又はナタネ油(例えば、M. Freisthler、US7008670)。
- 改質トリグリセリド:トリグリセリドの記載した欠点を克服するために、適切な方式でそれらを改質するいくつかの例が文献において見出され、またそれらは市販製品として供給されている(例えば、不飽和脂肪酸を含有するオリゴマー化トリグリセリドについて研究しているCARGILL社、例えば、WO2018191501;「フラックスオイル」と炭化水素ワックスの組合せを特許請求しているSASOL社、例えば、EP2052056;トリグリセリドと例えばサリチル酸等の硬化剤を組み合わせるCOLLABORATIVE AGGREGATES社、例えば、WO2015070180)。
- 再生可能資源由来の芳香族油、例えば、カシューナッツ殻液(CNSL)(VENTRACO社、EP3208288)。
- ロジンエステルを含むトール油脂肪酸及びエステル(例えば、ARIZONA CHEM.社によってWO2013163463において特許請求されているもの)。
- バイオベースの油及びポリマー(トリグリセリド及びトール油脂肪酸エステル)(例えば、KRATON社、WO2017117127)。
- 植物ベースのオリゴテルペン及びステロール(例えば、ARIZONA CHEM.社によってWO2016102314及びERGON社によってWO2018031540において特許請求されているもの)。
- 反応性回復剤(例えば、Huelva大学によってES22375125において特許請求されているもの)。
- (非イオン性)又は(カチオン性)界面活性剤(例えば、CECA社によってWO2013053882において特許請求されているもの)。
【0005】
文献に記載されている全ての生成物又は生成物混合物は、(多かれ少なかれ)瀝青の特性プロファイル及び/又はアスファルト性能に対する正の効果を示しているが、全てのこれらの生成物の性能プロファイルは、いずれも異なる試験手順を使用して、部分的にのみ記載されており、公開された情報に従うことによってそれらの回復能を完全に評価することができず、最終的に、完全に説得力のあるものではない。
【0006】
好ましくは再生可能資源に由来する化学物質は、一部の市販製品をもたらし、これは、再利用アスファルトを一部の候補のために適度に十分回復させることが可能であるが、それらの多くが回復したバインダーに対して負の影響を有する。本産業は、更により大量の再生アスファルトを処理すること、及び表面層においてさえアスファルトを再利用することを可能にするより柔軟な概念を必要としている。更に、許容される安全性プロファイル、及び瀝青の微細構造(例えば、アスファルテンミセル)への実際の影響を有し、単純には希釈しない性能指向回復剤、及び例えば、回復物質を再生アスファルト由来の利用可能なバインダーの実際のプロファイルに容易に適合することを可能にする、容易に適用可能な試験方法が必要である。
【0007】
まとめると、とりわけ表面層における再生アスファルトのより高い利用率のための統合概念への必要性が現在進行形で存在している。この概念は、
・許容されるエージング挙動を示すことを含む、瀝青相の特性プロファイルをほぼ完全又は完全に復元することを可能にする回復剤、
・回復剤の適用を特定の再生アスファルト及び製造されるアスファルトの所望の使用に適合することを可能にする分析試験手順、
・許容される安全性プロファイル、並びに
・個別化された合成ソリューションに基づく機能回復
を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2014168478
【特許文献2】WO2013075088
【特許文献3】US7008670
【特許文献4】WO2018191501
【特許文献5】EP2052056
【特許文献6】WO2015070180
【特許文献7】EP3208288
【特許文献8】WO2013163463
【特許文献9】WO2017117127
【特許文献10】WO2016102314
【特許文献11】WO2018031540
【特許文献12】ES22375125
【特許文献13】WO2013053882
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この背景に対して、本発明の目的は、任意の種類の再利用アスファルトを可能な限り少ない制限で加工することを可能にする柔軟な製品ソリューションを提供することであった。これに関連して、回復剤を含むバインダー組成物を提供することが目的であった。特に、回復剤が許容されるエージング挙動を示すことを含む、瀝青相の特性プロファイルをほぼ完全又は完全に復元することを可能にする、バインダー組成物を提供することが目的であった。軟らかさ、粘度及び弾性の観点で十分にバランスのとれた特性を有するバインダー組成物を提供することは特定の目的であった。これに関連して、特に大量の再生アスファルトを含む、且つ/又は例えばトップ層等の高性能が要求されるアスファルト層におけるその再利用を可能にするバインダー組成物を提供することが目的であった。特に、許容される安全性プロファイルを有するバインダー組成物を提供することが目的であった。更に、大量の再生アスファルトを含むアスファルト組成物を提供することが目的であった。更に、回復剤の適用を特定の再生アスファルト及び製造されるアスファルトの所望の使用に適合することを可能にする分析試験手順を提供することが目的であった。
【0010】
驚くべきことに、これらの目的のうちの少なくとも1つは、特許請求されるバインダー組成物によって実現できることが見出された。本明細書の以下で定義されるバインダー組成物は、改善された回復特性をもたらすことが見出された。特許請求される回復剤の効率性を評価するための方法は、瀝青微小構造を決定するのに好適であり、これにより、技術水準に対する特許請求される回復剤の利点は明確に区別可能であることが更に見出された。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって第1の態様では、本発明は、
(a)瀝青バインダー;及び
(b)バインダー組成物の総量に対して0.05~20質量%の回復剤
を含むバインダー組成物であって、
回復剤が、アルコキシレート、脂肪族カルボン酸のN,N-ジアルキルアミド、N-アルキルラクタム及びポリ(アルキルアミン)からなる群から選択される少なくともアスファルテン分散体、モノグリシジルエーテル及びエステル、ジ及びトリグリシジルエーテル、高分子アルコールのジグリシジルエーテル並びに触媒とのそれらの混合物からなる群から選択されるアスファルテン再活性化剤、可塑剤であるマルテン再活性化剤、又はそれらの混合物を含む、
バインダー組成物に関する。
【0012】
以下、バインダー組成物の成分の好ましい実施形態が更に詳細に記載される。各々の好ましい実施形態は、それ自体で、及び他の好ましい実施形態と組み合わせて関連することが理解される。
【0013】
第1の態様の好ましい実施形態A1では、回復剤は、瀝青ミセル構造の微細構造の変化を導入し、好ましくは、バインダー組成物の損失正接は、瀝青バインダーの損失正接と比較して増加し、且つ/又はバインダー組成物の移動性成分の量及び/若しくはTD NMRによるそれらそれぞれの移動度は、瀝青バインダーの移動性成分の量及び/若しくはそれらそれぞれの移動度と比較して増加する。
【0014】
第1の態様の好ましい実施形態A2では、回復剤は、
(i)回復剤の総量に対して1~100質量%のアスファルテン分散体;
(ii)回復剤の総量に対して1~100質量%のアスファルテン再活性化剤;
(iii)回復剤の総量に対して1~100質量%のマルテン再活性化剤;又は
(iv)回復剤の総量に対して1~100質量%の、成分(i)~(iii)のうちの少なくとも2種からなる混合物
を含む。
【0015】
第1の態様の好ましい実施形態A3では、瀝青バインダーは、再生アスファルト舗装バインダー、再生アスファルトシングルバインダー、少なくとも50/70の硬度グレードの未加工の瀝青、又はそれらの混合物を、任意選択で未加工のバインダーと組み合わせて含む。
【0016】
第1の態様の好ましい実施形態A4では、バインダー組成物は、式(1)の構造を有するアルコキシレート
【0017】
【化1】
【0018】
(式中、部分は、本明細書の以下で定義される通りである);
式(2)の構造を有する脂肪族カルボン酸のN,N-ジアルキルアミド
【0019】
【化2】
【0020】
(式中、部分は、本明細書の以下で定義される通りである);
式(3)の構造を有するN-アルキルラクタム
【0021】
【化3】
【0022】
(式中、部分は、本明細書の以下で定義される通りである);若しくは
式(4)の構造を有するポリ(アルキルアミン)
【0023】
【化4】
【0024】
(式中、部分は、本明細書の以下で定義される通りであり、
これらのポリ(アルキルアミン)は、末端アミン部分においてC1~C4-アルキル、脂肪酸又はアルコキシル化により更に誘導されていてもよい)
からなる群から選択されるアスファルテン分散体;
並びに/又は式(5a)、(5b)、(5c)及び(5d)の構造を有するモノグリシジルエーテル及びエステル、ジ及びトリグリシジルエーテル、高分子アルコールのジグリシジルエーテル
【0025】
【化5】
【0026】
(式中、式(5a)~(5d)の部分は、本明細書の以下で定義される通りである)
並びにN,N-ジメチルベンジルアミン等の触媒とのそれらの混合物からなる群から選択されるアスファルテン再活性化剤;
並びに/又は式(7a)、(7b)、(7c)、(7d)若しくは(7e)を有する可塑剤
【0027】
【化6】
【0028】
(式中、式(7a)~(7e)の部分は本明細書の以下で定義される通りである)
であるマルテン再活性化剤
を含む。
【0029】
第1の態様の好ましい実施形態A5では、アスファルテン分散体は存在し、式(1)の構造を有するアルコキシレート
【0030】
【化7】
【0031】
(式中、
Rは、H、C1~C22-アルキル、C2~C22-アルケニル、フェニル又はアルキルフェニル、好ましくは、H又はC1~C22-アルキル、より好ましくはH又はC1~C18-アルキルであり、
nは、0~20、好ましくは0~15、より好ましくは0~10であり、
mは、0~20、好ましくは0~15、より好ましくは0~10であり、
n+m≧1、好ましくはn+m≧5である);
特に、式(1)の構造(式中、
Rは、C10-アルキル又はC13-アルキル、好ましくは、2-プロピルヘプチル又はイソトリデシルであり、
nは、0~6であり、
mは、0~8であり、
n+m≧5である)
を有するアルコキシレート;
式(2)の構造を有する脂肪族カルボン酸のN,N-ジアルキルアミド
【0032】
【化8】
【0033】
(式中、
nは、3~16であり、少なくとも1つの「CH2」部分の炭素原子は、少なくとも1つのC1~C5-アルキルで更に置換されていてもよく、2つの隣接する「CH2」部分の少なくとも2個の炭素原子は二重結合を形成していてもよく、好ましくは6~14であり、少なくとも1つの「CH2」部分の炭素原子は、少なくとも1つのC1~C5-アルキルで更に置換されていてもよく、
R1は、C1~C4-アルキル、好ましくは、メチル又はエチルであり、
R2は、C1~C4-アルキル、好ましくは、メチル又はエチルである);
特に、式(2)の構造(式中、
nは、8~12であり、
R1は、メチル又はエチルであり、
R2は、メチル又はエチルである)
を有する脂肪族カルボン酸のN,N-ジアルキルアミド;
式(3)の構造を有するN-アルキルラクタム
【0034】
【化9】
【0035】
(式中、
nは、3~11であり、少なくとも1つの「CH2」部分の炭素原子は、少なくとも1つのC1~C3-アルキル、好ましくは3(ピロリドン)、5(カプロラクタム)又は11(ラウロラクタム)で更に置換されていてもよく、
Rは、C1~C22-アルキル又はC2~C22-アルケニル、好ましくはC4~C18-アルキルである);
特に、式(3)の構造(式中、
nは、3(ピロリドン)であり、
Rは、C8~C12-アルキルである)
を有するN-アルキルラクタム;又は
式(4)の構造を有するポリ(アルキルアミン)
【0036】
【化10】
【0037】
(式中、
nは、1~6、好ましくは2~3であり、2つの隣接する「CH2」部分の少なくとも2個の炭素原子は二重結合を形成していてもよく、
mは、1~6、好ましくは2~3であり、2つの隣接する「CH2」部分の少なくとも2個の炭素原子は二重結合を形成していてもよく、
xは、4~50であり、
R1は、C1~C4-アルキル、好ましくはC1~C2-アルキルであり、
これらのポリ(アルキルアミン)は、末端アミン部分においてC1~C4アルキル、脂肪酸又はアルコキシル化により更に誘導されていてもよい);
特に、オリゴ-N,N-ビス-(3-アミノプロピル)メチルアミン(methylamin)及びポリ-N,N-ビス-(3-アミノプロピル)メチルアミンからなる群から選択されるポリ(アルキルアミン)
からなる群から選択される。
【0038】
第1の態様の好ましい実施形態A6では、アスファルテン再活性化剤は存在し、式(5a)、(5b)、(5c)及び(5d)の構造を有するモノグリシジルエーテル及びエステル、ジ及びトリグリシジルエーテル、高分子アルコールのジグリシジルエーテル
【0039】
【化11】
【0040】
(式中、
式(5a)について、
Rは、C1~C20-アルコキシ、C2~C20-アルケニルオキシ、フェノキシ又はC1~C20-カルボキシアルキルであり、フェノキシは、少なくとも1つのC1~C15-アルキル、好ましくはC4~C16-アルコキシ、好ましくは、2-エチルヘキサノレート、n-ブタノレート、tert.-ブタノレート、C12~C15-アルコキシ、ノニルフェノレート、アリルアルコレート又はネオデカンカルボキシレートで更に置換されていてもよく;
式(5b)について、
Rは、少なくとも1つのC1~C5-アルキルで更に置換されていてもよい直鎖状C5~C20-アルキレン、又は少なくとも1つのC1~C10-アルキル及び/若しくは少なくとも1つのフェニルで更に置換されたC1~C4-アルキレン、好ましくは、少なくとも1つのC1~C4-アルキルで更に置換されていてもよい直鎖状C5~C15-アルキレン又は少なくとも1つのC1~C5-アルキル及び/若しくは少なくとも1つのフェニルで更に置換されたC1~C3-アルキレンであり;
式(5c)について、
Rは、C1~C5-アルキレン、好ましくはC3-アルキレンであり;
式(5d)について、
Rnは、式(6a)、(6b)又は(6c)
(-CH2CH2O-)n (6a)
(式中、nは、3~20である)、
(-CH2CH(CH3)O-)n (6b)
(式中、nは、3~18、好ましくは3~15である)、又は
(-CH2CH2CH2CH2O-)n (6c)
(式中、nは、3~18、好ましくは3~15である)
を有する)
並びにN,N-ジメチルベンジルアミン等の触媒とのそれらの混合物からなる群から選択され;
好ましくは、アスファルテン再活性化剤は、ポリエチレングリコールビス(グリシジル)エーテル、ポリプロピレングリコールビス(グリシジル)エーテル、ネオペンチルグリコールビスグリシジルエーテル、2-メチル-2-フェニル-1,3-プロパンジオールビスグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、及びN,N-ジメチルベンジルアミン等の触媒とのこれらの化合物の混合物からなる群から選択され;より好ましくは、アスファルテン再活性化剤は、ポリプロピレングリコールビス(グリシジル)エーテルである。
【0041】
第1の態様の好ましい実施形態A7では、マルテン再活性化剤は存在し、式(7a)、(7b)、(7c)、(7d)又は(7e)を有する可塑剤
【0042】
【化12】
【0043】
(式中、
式(7a)について、
Rは、C4~C14-アルキル又はC4~C14-アルケニルであり;
式(7b)について、
Rは、C4~C14-アルキル又はC4~C14-アルケニルであり;
式(7c)について、
Rは、C4~C14-アルキル又はC4~C14-アルケニルであり;
式(7d)について、
Rは、C4~C14-アルキル又はC4~C14-アルケニルであり;
式(7e)について、
Rは、C4~C14-アルキル又はC4~C14-アルケニルであり、
nは、4~10であり、2つの隣接する「CH2」部分の少なくとも2個の炭素原子は二重結合を形成していてもよい)
であり、好ましくは、可塑剤は、式(7a)、(7c)又は(7d)(式中、
式(7a)について、
Rは、C8~C12-アルキル又はC7~C12-アルケニル、好ましくはC8~C11-アルキルであり;
式(7c)について、
Rは、C8~C12-アルキル又はC7~C12-アルケニル、好ましくはC8~C11-アルキルであり;
式(7d)について、
Rは、C8~C12-アルキル又はC7~C12-アルケニル、好ましくはC8~C11-アルキルであり、
nは、4~8であり、2つの隣接する「CH2」部分の少なくとも2個の炭素原子は二重結合を形成していてもよい)
を有し、より好ましくは、マルテン再活性化剤は、ジイソノニルフタレート又はジイソノニルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレートからなる群から選択され、より好ましくは、マルテン再活性化剤は、ジイソノニルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレートである。
【0044】
第1の態様の好ましい実施形態A8では、瀝青バインダーは、瀝青バインダーの総質量に対して10~100質量%の再生アスファルト舗装及び/又は再生アスファルトシングルバインダーを含む。
【0045】
第1の態様の好ましい実施形態A9では、瀝青バインダーは、更なる添加剤を含み、好ましくは、更なる添加剤は、ポリマー、ワックス、ファイバー又はそれらの混合物からなる群から選択される。
【0046】
第2の態様では、本発明は、骨材及び特許請求されるバインダー組成物を含むアスファルト組成物に関する。
【0047】
第3の態様では、本発明は、特許請求されるアスファルト組成物を含む舗装道路面、道路準表面、滑走路、車道、駐車場、路肩、橋梁、橋台、屋根、堤防護岸又は未舗装道路に関する。
【0048】
第4の態様では、本発明は、バインダー組成物における回復剤の効率性を評価するための方法であって、回復剤の効率性が、
(i)規定温度での動的せん断レオメーター(DSR)周波数掃引から得られたエージング前若しくは後の損失正接を介して証明され、周波数掃引は、0~90℃の温度で測定され、効果的な回復剤は、不等式(a)
損失正接[bc]>1.3×損失正接[bb] (a)
(式中、損失正接[bc]は、バインダー組成物の損失正接を示し、損失正接[bb]は、瀝青バインダーを示し、損失正接[bc]及び損失正接[bb]は、0.01~10rad/秒の周波数で評価される)
を満たすか、又は
(ii)-50~200℃の温度で瀝青サンプルに対して実施したTD NMR緩和実験を介して証明され、効果的な回復剤は、不等式(aa1)
T2e1[bc]>1.3×T2e1[bb] (aa1)
(式中、T2e1[bc]は、バインダー組成物の個々の成分に対応する緩和時間を示し、T2e1[bb]は、瀝青バインダーの個々の成分に対応する緩和時間を示す)
を満たす、
方法に関する。
【0049】
第5の態様では、本発明は、再生アスファルト舗装(RAP)及び/又は屋根由来のアスファルトシングル(RAS)をリサイクルするための、アルコキシレート、脂肪族カルボン酸のN,N-ジアルキルアミド、N-アルキルラクタム及びポリ(アルキルアミン)からなる群から選択される少なくともアスファルテン分散体、モノグリシジルエーテル及びエステル、ジ及びトリグリシジルエーテル、高分子アルコールのジグリシジルエーテル並びに触媒とのそれらの混合物からなる群から選択されるアスファルテン再活性化剤、可塑剤であるマルテン再活性化剤、又はそれらの混合物を含む回復剤の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】本発明による回復剤により損失正接が増加することを開示する図である。
図2】5%の本明細書で特許請求される回復剤の一部又はベンチマークRheofalt(登録商標)HP-AMを用いて回復させた瀝青20/30の3×RTFOTエージング後のtanδを開示する図である。
図3】5%の本明細書で特許請求される回復剤の一部又はベンチマークRheofalt(登録商標)HP-AMを用いて回復させたRTFOT+PAVエージング瀝青50/70(BP社)のtanδを開示する図である。
図4】5%のここで特許請求される回復剤の一部又はベンチマークRheofalt(登録商標)HP-AMを用いて回復させたRTFOT+PAVエージング瀝青50/70(Schwedt社)のtanδを開示する図である。
図5】5%のここで特許請求される回復剤の一部又はベンチマークRheofalt(登録商標)HP-AMを用いて回復させたRAP瀝青のtanδを開示する図である。
図6】5%のここで特許請求される回復剤の一部又はベンチマークRheofalt(登録商標)HP-AMを用いて回復させたOlexobit 45のtanδを開示する図である。
図7】3×RTFOT後の、5%のここで特許請求される回復剤の一部又はベンチマークRheofalt(登録商標)HP-AMを用いて回復させたOlexobit 45のtanδを開示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明の例示的な実施形態を詳細に記載する前に、本発明を理解するために重要な定義を示す。
【0052】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、文脈が別途明らかに記述していない限り、それぞれの複数も含む。本発明の文脈において、「約」及び「およそ」という用語は、当業者が問題の特徴の技術的効果が依然として確実であると理解する精度の間隔を示す。この用語は、典型的には、示された数値の±20%、好ましくは±15%、より好ましくは±10%、更により好ましくは±5%の偏差を示す。「含む」という用語は、限定ではないことを理解されたい。本発明の目的で、「からなる」という用語は、「構成される」という用語の好ましい実施形態であると考えられる。本明細書の以下で、ある群が、少なくとも一定数の実施形態を含むと定義される場合、これは、好ましくはこれらの実施形態のみからなる群も包含することを意味する。
【0053】
更に、本明細書及び特許請求の範囲における、「第1」、「第2」、「第3」又は「(a)」、「(b)」、「(c)」、「(d)」等及び同様の用語は、類似の要素を区別するために使用され、必ずしも連続する又は時系列による順序を記載するためのものではない。そのように使用される用語は、適切な状況下で交換可能であり、本明細書に記載される本発明の実施形態は、本明細書に記載又は例示されるもの以外の他の順序で操作可能であることを理解されたい。「第1」、「第2」、「第3」又は「(a)」、「(b)」、「(c)」、「(d)」、「i」、「ii」等の用語が方法又は使用又はアッセイの工程に関する場合、本明細書中上記又は下記に示される適用において別途示されない限り、工程間に時間又は時間間隔の一貫性は存在しない、つまり、工程は、同時に実施されてもよいし、又はそのような工程間に数秒間、数分間、数時間、数日間、数週間、数か月間若しくは更には数年間の時間間隔があってもよい。方法論、プロトコル、試薬等は様々であってもよいため、本発明は、本明細書に記載の特定の方法論、プロトコル、試薬等に限定されないことを理解されたい。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を記載することのみを目的とし、本発明の範囲を限定することは意図されず、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることも理解されたい。別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0054】
組成物及びそれに含まれる成分の質量パーセントに言及する場合、本発明によると、成分の全量は100%(丸めに起因して±1%)を超えないことを理解されたい。
【0055】
「アルキル」という用語は、本明細書で使用される場合、各々の場合に、通常1~25個の炭素原子、好ましくは1~22個の炭素原子、より好ましくは1~18個の炭素原子、更により好ましくは1~15個の炭素原子を有する直鎖又は分枝状アルキル基を示す。
【0056】
「アルケニル」という用語は、本明細書で使用される場合、各々の場合に、通常2~25個、好ましくは2~22個の炭素原子、より好ましくは2~18個の炭素原子、更により好ましくは2~15個の炭素原子を有し、任意の位置に少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む不飽和、直鎖又は分枝状炭化水素基を示す。二重結合に関して幾何異性体が可能である場合、本発明は、E及びZ異性体の両方に関する。
【0057】
「アルコキシ」という用語は、本明細書で使用される場合、各々の場合に、酸素原子を介して結合し、通常1~25個の炭素原子を有する直鎖又は分枝状アルキル基を示す。
【0058】
「アルケニルオキシ」という用語は、本明細書で使用される場合、各々の場合に、酸素原子を介して結合し、通常2~25個の炭素原子を有する直鎖又は分枝状アルケニル基を示す。
【0059】
「カルボキシアルキル」という用語は、本明細書で使用される場合、各々の場合に、カルボキシ基の酸素原子を介して結合し、通常1~25個の炭素原子を有する直鎖又は分枝状アルキル基を示す。
【0060】
本明細書で使用される場合、「アルキレン」という用語は、通常1~15個の炭素原子を有する連結している直鎖又は分枝状アルキレン基を指す。アルキレン基は、分子の特定の基を架橋する。本発明によると、アルキレン基は、分子の2又は3つの基を架橋していてもよい。当業者であれば、例えば、CH2を指す場合、四価である炭素原子は、架橋(-CH2-)を形成するために残された二価を有することを理解する。同様に、例えば、CH2CH2を指す場合、各々の炭素原子は、架橋(-CH2CH2-)を形成するために残された又は(-C2H4-)により表される一価を有する。
【0061】
「アルキルフェニル」という用語は、本明細書で使用される場合、各々の場合に、少なくとも1つのアルキル基で置換されていてもよいフェニルを示す。
【0062】
「フェノキシ」又は「フェニルオキシ」という用語は、本明細書で使用される場合、酸素原子を介して分子の残部に結合した対応する基(すなわち、フェニル)を指す。
【0063】
「(Cn~Cm-アルキル)」という用語は、本明細書で使用される場合、各々の場合に、リンカー部分を示し、これに結合した部分は、末端炭素に結合している。
【0064】
「アスファルト」という用語は、本明細書で使用される場合、「骨材」及び「瀝青」を含み、例えば、路面舗装又は屋根に使用される複合材料を指す。アスファルトの最も一般的な用途は、舗装用途である。様々なグレードのアスファルトが、これらの舗装用途のために定義されており、主には、92.5~96質量%のはるかに大部分を形成する骨材の非常に十分に指定された組成を有する。典型的には、瀝青の量は、4~7.5質量%である。しかしながら、組成物のより小さな部分であっても、瀝青の特性プロファイルは、アスファルトの性能プロファイルに対して絶大な影響を有する。
【0065】
「再生アスファルト」という用語は、本明細書で使用される場合、使用後に再生された任意の種類のアスファルトを指す。とりわけ、道路から取り出された舗装から得られた「再生アスファルト舗装(RAP)」及び「再生アスファルトシングル(RAS)」又は屋根用途由来の材料を含有する任意の他のアスファルトが挙げられるべきである。
【0066】
「瀝青」という用語は、本明細書で使用される場合、石油化学精製所の残留物として得られる、又は天然堆積物として見出される粘着性で黒色の高粘性液体又は半固体材料を指す。
【0067】
「未使用の(fresh)瀝青」は、本明細書で使用される場合、精製所に由来し、以前に道路舗装、屋根又は任意の他の用途に使用されたことのない瀝青を指す。これに関連して、未使用の瀝青はエージングしていないことが理解される。
【0068】
「未加工の(virgin)バインダー」という用語は、回復剤を含まない(したがって、回復していない)「未使用の瀝青」及び少なくとも1種の回復剤を含む「未使用の瀝青」を指す。これに関連して、未加工のバインダーはエージングしていないことが理解される。未加工のバインダーは、ポリマー、ワックス、ファイバー又は剥離防止剤からなる群からの少なくとも1種の添加剤を更に含有しうる。
【0069】
「エージングした瀝青」という用語は、本明細書で使用される場合、再生アスファルト中に存在するか又は再生アスファルトから回収された瀝青を指す。エージングプロセスに起因して、エージングした瀝青は、例えば、アスファルトの製造に使用された対応する未使用の瀝青より高い粘度及びより高い軟化点を示す。通常、エージングした瀝青は、再生アスファルトから単離されない。SARA分析により特徴付けられるエージングした瀝青の化学組成は、瀝青の劣化への主要な影響であるアスファルテン含有量の大幅な増加を示す。エージングしたバインダーは、通常、RAPを使用する新しいアスファルトの製造のために再生アスファルトから単離されない。代わりに、再生アスファルトは、アスファルト混合プラントにおいて未使用の瀝青(バインダー組成物を形成する)あり又はなしで、及び骨材あり又はなしで、適切な方式で回復剤と一緒に混合される。研究所規模でのみ、回復剤の機能を調査し、最適な組成及び回復剤の投入量を決定するために、エージングしたバインダーが再生アスファルトから単離される(典型的には、溶媒抽出によって)。
【0070】
使用される「骨材」という用語は、例えば、砂、砂利、砕石又はスラグとして建設に使用される中程度から微粒化された材料よりも粗いと定義され、例えば、石灰岩、花崗岩、玄武岩又は石英岩をベースとする。
【0071】
「バインダー組成物」という用語は、本明細書で使用される場合、未使用の及び/又はエージングした瀝青(すなわち瀝青バインダー)、並びに任意選択で他の成分、例えば、ポリマー、接着促進剤、回復剤又は他の好適な添加剤等の混合物を指す。本発明によると、バインダー組成物はまた、少なくとも1種の回復剤を含有する。
【0072】
「回復剤」という用語は、本明細書で使用される場合、適切な方式で、エージングした瀝青と混合され、エージングした瀝青の特性プロファイルを未使用の瀝青の特性プロファイルに近く復元することを可能にする組成物又は化合物を指す。
【0073】
分析方法
「SARA分析」という用語は、本明細書で使用される場合、瀝青の化学組成の記載を指す。典型的には、瀝青は、その物理特性、とりわけ粘弾性挙動によって記載される。その化学組成による記載は、莫大な数の個々の化学物質からなり、それらの組成は瀝青の由来に非常に大きく依存することから、非常に複雑である。それにも関わらず、瀝青の化学組成の記載に関して、SARA分析は、アスファルト産業において確立されている。SARAは、全ての瀝青において見出される4群の化学物質:飽和分(非極性、脂肪族及び脂環式炭化水素)、芳香族分(低極性、芳香族炭化水素)、レジン(極性、縮合脂環式、芳香族及びヘテロ芳香族化合物、n-ヘプタンに可溶)、及びアスファルテン(極性、縮合脂環式、芳香族及びヘテロ芳香族化合物、ヘプタンに不溶)を反映する。瀝青の性能プロファイルに関して、これらのSARA成分間の非常に十分にバランスのとれた比が非常に重要であり、アスファルテンが非常に重要な役割を果たす。
【0074】
「レオロジー」は、「物質の変形及び流動、とりわけ液体の非ニュートン流動及び固体の塑性流動」の研究である。中及び高温範囲のレオロジー特性に関して、バインダーレオロジーは、必ずではないが最も多くの場合、DSRレオロジー測定を使用して特徴付けられる。以下のレオロジーパラメーターが最も典型的に分析される:
・バインダーの「軟らかさ」は、所与の温度範囲でのその可撓性を示す。実験的に、瀝青に関して、軟らかさは典型的には、「軟化点リングアンドボール」(DIN EN 1427)又は針入度試験(DIN EN 1426)から導出される。
・「粘度」は、バインダーの流動性を示す。粘度は、とりわけ瀝青の製造中及びアスファルトの製造に重要である。瀝青に関して、粘度は、それが測定される温度に強く依存する。瀝青の粘度は、最も典型的には、プレート/プレート形状を使用し、最も多くの場合135℃であるがまた他の温度、例えば60℃において、DSRレオロジー測定を使用して決定される(DIN EN 12595、DIN EN 12596)。
・「損失正接」(「損失係数(tanδ)」としても公知)は、粘弾性バインダーの粘性項(viscous contribution)G"及び弾性項(elastic contribution)G'の間の比である。損失正接は、必ずではないが例えば、バインダーの規定温度での周波数掃引から得ることができる。損失正接はG"/G'間の比であるため、これは、必ずではないがとりわけ、バインダー系へのレオロジー測定自体の影響が最小である低周波数でのバインダー内の分子の移動度を直接示し(G"自体は、バインダーの移動度によってのみ定義される粘性項である)、それによって、バインダーの固有の移動度を直接研究する。
・「弾性」は、MSCR試験又は伝統的な弾性回復率のいずれかから導出された弾性回復率である(DIN EN 13398)。複数の応力クリープ回復(「MSCR」)試験(DIN EN 16659)は、バインダーの弾性回復強度を示す。プレート/プレート形状内に拘束されたバインダーに応力がかけられた後、試験は、バインダーがねじり前の初期状態に回復する能力を測定する。回復率パーセンテージが高いほど、系は弾性になる。
・「延性」は瀝青の塑性変形性及び凝集力の尺度であり、延性計を用いたフォースダクティリティ試験(DIN EN 13589)により日常的に測定される。
・近年の研究は瀝青の「低温挙動」が低温でのDSR測定を使用して近似できることを示唆しているが、一般に、今日まで、最も信頼性の高い低温試験は、なお曲げビームレオメーター(BBR)試験(DIN EN 14771)であると考えられている。ここで、2値のたわみクリープ剛性S及びm値(系が緩和する能力を記載する値=所与の時間における剛性の対数対時間の対数の曲線の傾き)が決定される。
・「エージング挙動」:回復剤は、瀝青エージングの新しいサイクルに耐える必要があり、瀝青のエージング挙動に対する回復剤の影響を決定することが重要である。回復剤のエージングは、バインダー組成物に対するRTFOTエージング試験(DIN EN 12607)、並びに135℃における粘度の変化及び/又はエージングに起因した損失正接の変化の決定により試験できる。エージングは、エージング後の粘度をエージング前の粘度で割ったものとして定義されるエージング指数(AI)により特徴付けることができる。回復剤のエージング挙動に関わるより正確な結果を有するために、本発明者らは、典型的には、バインダーの長期安定性を近似することができることが科学界で公知の試験である延長RTFOTエージング試験(163℃において3×RTFOT)を実施する。バインダーの長期安定性を近似することが公知の別の試験は、いわゆる圧力エージング容器(PAV、DIN EN 14769)であり、ここでは、バインダーは、長期間(通常、20時間)、高温(85~110℃の間)、圧力下(およそ2.1MPa)でエージングされる。
【0075】
バインダー組成物及びその使用に関する好ましい実施形態は、本明細書の以下で詳細に記載される。本発明の好ましい実施形態は、単独で、又は互いに組み合わせて好ましいことが理解される。
【0076】
上記の通り、本発明は、一実施形態において、
(a)瀝青バインダー;及び
(b)バインダー組成物の総量に対して0.05~20質量%の回復剤
を含むバインダー組成物であって、
回復剤が、少なくともアスファルテン分散体、アスファルテン再活性化剤、マルテン再活性化剤、又はそれらの混合物を含む、
バインダー組成物に関する。
【0077】
どのような理論にも縛られることを望むものではないが、本発明による瀝青は、連続炭化水素媒体中の極性ミセルの分散体(=「マルテン」又は「マルテン相」)と考えられる。このモデルにおいて、「マルテン」は、とりわけ、例えば、典型的には少数のヘテロ官能基を有する脂肪族、脂環式及び芳香族炭化水素に基づく「飽和分」及び「芳香族分」、例えば、アルコール、カルボン酸、メルカプタン又はアミン及び「レジン」(=アスファルテンのように低分子量であり、ある程度の極性を有するあまり縮合していない芳香族又は芳香族-脂環式系)を含む。ミセルは、「レジン」によって取り囲まれた「アスファルテン」(=より高分子量及びより多数のヘテロ官能基によって引き起こされたより高い極性を有する縮合芳香族系)に基づく。これらのレジンは、コロイド系の安定化、及びしたがってまた任意の回復プロセスにおいて重要な役割を果たす。
【0078】
ごく少数の原油(1500超のうちおよそ100)のみが、瀝青用途及びとりわけアスファルト製造に好適な真空蒸留後の残留物を送達する。これは、各々の原油資源に特異的であり、瀝青の必要なレオロジー特性プロファイルをもたらす最小含有量の「アスファルテン」、並びに「マルテン」及び「アスファルテン」の間の十分にバランスのとれた比に関連すると考えられる。このバランスは、エージングプロセスによって、とりわけ、化学酸化、連鎖損失又は縮合によって崩され、レオロジー特性プロファイルがより高粘度、及び最終的により低温での材料の増加した脆性に向かってシフトし、バインダーはもはや、例えば、アスファルト舗装用途に適さなくなる。
【0079】
時に主張されることもあるが、回復剤は、正確な未加工の瀝青組成物を復元するとは考えられていない。しかしながら、本発明による回復剤は、未加工の瀝青の特性プロファイルに近い特性プロファイルをもたらす「飽和分」、「芳香族分」、「レジン」及び「アスファルテン」の間の新しいバランスを可能にする。
【0080】
利用される再生アスファルト及び複数回リサイクルされている再生アスファルトの量の増加に伴って、将来的にも、必要なアスファルト性能を確実にするために瀝青相の特性を復元する必要性は増加する。
【0081】
本発明によるアスファルテン分散体は、ミセルによるアスファルテンの分散を改善する化学物質又は前記化学物質を含む組成物である。特に、アスファルテン分散体は、アスファルテンスタックをより短いアスファルテン骨材に分解するか、又はマルテン相内でのアスファルテンスタックの分散を改善する。これに関連して、アルコキシレート、脂肪族カルボン酸のN,N-ジアルキルアミド、N-アルキルラクタム及びポリ(アルキルアミン)が挙げられる。毒性学標識を有さないアスファルテン分散体が好ましい。
【0082】
本発明の一実施形態では、アルコキシレートは、式(1)の構造
【0083】
【化13】
【0084】
(式中、
Rは、H、C1~C22-アルキル、C2~C22-アルケニル、フェニル又はアルキルフェニルであり、
nは0~20であり、
mは0~20であり、
n+m≧1である)
を有する。
【0085】
本発明の好ましい実施形態では、アルコキシレートは、式(1)の構造(式中、
Rは、H又はC1~C22-アルキル、好ましくはH又はC1~C18-アルキル、より好ましくはH又はC4~C13-アルキルであり、
nは、0~20、好ましくは0~15、より好ましくは0~10であり、
mは、0~20、好ましくは0~15、より好ましくは0~10であり、
n+m≧1、好ましくはn+m≧5である)
を有する。
【0086】
本発明の特定の実施形態では、アルコキシレートは、式(1)の構造(式中、
Rは、C10-アルキル又はC13-アルキル、好ましくは2-プロピルヘプチル又はイソトリデシルであり、
nは、0~6であり、
mは、0~8であり、
n+m≧5である)
を有する。
【0087】
本発明の一実施形態では、脂肪族カルボン酸のN,N-ジアルキルアミドは、式(2)の構造
【0088】
【化14】
【0089】
(式中、
nは、3~16であり、少なくとも1つの「CH2」部分の炭素原子は、少なくとも1つのC1~C5-アルキルで更に置換されていてもよく、2つの隣接する「CH2」部分の少なくとも2個の炭素原子は二重結合を形成していてもよく、
R1は、C1~C4-アルキルであり、
R2は、C1~C4-アルキルである)
を有する。
【0090】
本発明の好ましい実施形態では、脂肪族カルボン酸のN,N-ジアルキルアミドは、式(2)の構造(式中、
nは、6~14、好ましくは6~12であり、少なくとも1つの「CH2」部分の炭素原子は、少なくとも1つのC1~C5-アルキルで更に置換されていてもよく、
R1は、C1~C4-アルキル、好ましくは、メチル又はエチルであり、
R2は、C1~C4-アルキル、好ましくは、メチル又はエチルである)
を有する。
【0091】
本発明の特定の実施形態では、脂肪族カルボン酸のN,N-ジアルキルアミドは、式(2)の構造(式中、
nは、8~12であり、
R1は、メチル又はエチルであり、
R2は、メチル又はエチルである)
を有する。
【0092】
本発明の一実施形態では、N-アルキルラクタムは、式(3)の構造
【0093】
【化15】
【0094】
(式中、
nは、3~11であり、少なくとも1つの「CH2」部分の炭素原子は、少なくとも1つのC1~C3-アルキルで更に置換されていてもよく、
Rは、C1~C22-アルキル又はC2~C22-アルケニルである)
を有する。
【0095】
本発明の好ましい実施形態では、N-アルキルラクタムは、式(3)の構造(式中、
nは、3(ピロリドン)、5(カプロラクタム)又は11(ラウロラクタム)であり、
Rは、C1~C22-アルキル、好ましくはC4~C18-アルキル、より好ましくはC8~C12-アルキルである)
を有する。
【0096】
本発明の特定の実施形態では、N-アルキルラクタムは、式(3)の構造(式中、
nは、3(ピロリドン)であり、
Rは、C8~C12-アルキルである)
を有する。
【0097】
本発明の一実施形態では、ポリ(アルキルアミン)は、式(4)の構造
【0098】
【化16】
【0099】
(式中、
nは、1~6であり、2つの隣接する「CH2」部分の少なくとも2個の炭素原子は二重結合を形成していてもよく、
mは、1~6であり、2つの隣接する「CH2」部分の少なくとも2個の炭素原子は二重結合を形成していてもよく、
xは、4~50であり、
R1は、C1~C4-アルキルである)
を有し、
これらのポリ(アルキルアミン)は、末端アミン部分においてC1~C4アルキル、脂肪酸又はアルコキシル化により更に誘導されていてもよい。
【0100】
本発明の好ましい実施形態では、ポリ(アルキルアミン)は、式(4)の構造(式中、
nは、1~6、好ましくは2~3であり、
mは、1~6、好ましくは2~3であり、
xは、4~50であり、
R1は、C1~C2-アルキルである)
を有し、
これらのポリ(アルキルアミン)は、末端アミン部分において脂肪酸又はアルコキシル化により更に誘導されていてもよい。
【0101】
本発明の特定の実施形態では、ポリ(アルキルアミン)は、オリゴ-N,N-ビス-(3-アミノプロピル)メチルアミン及びポリ-N,N-ビス-(3-アミノプロピル)メチルアミン(以下でポリ(ビスアミノプロピルアミン)又はポリBAPMAとも呼ばれる)からなる群から選択される。
【0102】
上記の通り、本発明によると、式(4)を有するポリ(アルキルアミン)は、末端アミン部分において脂肪酸により更に誘導されていてもよい。
【0103】
本発明の一実施形態では、ポリ(アルキルアミン)は、式(4a)の構造
【0104】
【化17】
【0105】
(式中、
nは、1~6、好ましくは2~3であり、2つの隣接する「CH2」部分の少なくとも2個の炭素原子は二重結合を形成していてもよく、
mは、1~6、好ましくは2~3であり、2つの隣接する「CH2」部分の少なくとも2個の炭素原子は二重結合を形成していてもよく、
xは、4~50であり、
R1は、C1~C4-アルキル、好ましくはC1~C2-アルキルであり、
yは、10~20である)
を有する。
【0106】
上記の通り、本発明によると、式(4)を有するポリ(アルキルアミン)は、アルコキシル化を介して末端アミン部分において更に誘導されていてもよい。
【0107】
本発明の一実施形態では、ポリ(アルキルアミン)は、式(4b)の構造
【0108】
【化18】
【0109】
(式中、
nは、1~6、好ましくは2~3であり、2つの隣接する「CH2」部分の少なくとも2個の炭素原子は二重結合を形成していてもよく、
mは、1~6、好ましくは2~3であり、2つの隣接する「CH2」部分の少なくとも2個の炭素原子は二重結合を形成していてもよく、
xは、4~50であり、
R1は、C1~C4-アルキル、好ましくはC1~C2-アルキルであり、
a+b≧1≦10である)
を有する。
【0110】
アスファルテン分散体の好適な例は、Lutensol(登録商標)TO 8、Lutensol(登録商標)TO 3、Lutensol(登録商標)TO 15、Disponil(登録商標)FEP 3830 PA、Lutensol(登録商標)XL 60、Lutensol(登録商標)XP 70、Agnique(登録商標)AMD 12、Lutensol(登録商標)TO 5、Pluriol(登録商標)A 500 PE、部分的に変動するMWを有するポリBAPMA、並びに例えば、ステアリン酸、N-ドデシルピロリドン及びN,N-ジメチルドデカン酸アミドとの反応後のそれらの可能な脂肪酸アミド誘導体である。
【0111】
本発明の好ましい一実施形態では、アスファルテン分散体は、式(1)の構造を有するアルコキシレート
【0112】
【化19】
【0113】
(式中、
Rは、H、C1~C22-アルキル、C2~C22-アルケニル、フェニル又はアルキルフェニルであり、
nは0~20であり、
mは0~20であり、
n+m≧1である)
、ポリ(ビスアミノプロピルアミン)(ポリBAPMA)又はN-ドデシルピロリドンである。
【0114】
本発明によるアスファルテン再活性化剤は、アルケン鎖等の有機鎖のアスファルテンへの化学結合により、バインダーのエージングプロセスの結果としてその溶解度が損失した後に、マルテン内のアスファルテンの溶解度を増加させる化学物質又は前記化学物質を含む組成物である。アスファルテン再活性化剤の作用機序は、アスファルテンの官能基との化学反応であり、それによりアスファルテン凝集に対して作用する。好ましいアスファルテン再活性化剤は、毒性学的標識を有さない。これに関連して、モノグリシジルエーテル及びエステル、ジ及びトリグリシジルエーテル、高分子アルコールのジグリシジルエーテル並びにN,N-ジメチルベンジルアミン等の触媒とのそれらの混合物が挙げられる。
【0115】
本発明の一実施形態では、モノグリシジルエーテル及びエステル、ジ及びトリグリシジルエーテル、高分子アルコールのジグリシジルエーテルは、式(5a)、(5b)、(5c)及び(5d)の構造
【0116】
【化20】
【0117】
(式中、
式(5a)について、
Rは、C1~C20-アルコキシ、C2~C20-アルケニルオキシ、フェノキシ又はC1~C20-カルボキシアルキルであり、フェノキシは、少なくとも1つのC1~C15-アルキルで更に置換されていてもよく;
式(5b)について、
Rは、少なくとも1つのC1~C5-アルキルで更に置換されていてもよい直鎖状C5~C20-アルキレン、又は少なくとも1つのC1~C10-アルキル及び/若しくは少なくとも1つのフェニルで更に置換されたC1~C4-アルキレンであり;
式(5c)について、
Rは、C1~C5-アルキレンであり;
式(5d)について、
Rnは、式(6a)、(6b)又は(6c)
(-CH2CH2O-)n (6a)
(式中、nは、3~20である)、
(-CH2CH(CH3)O-)n (6b)
(式中、nは、3~18である)、又は
(-CH2CH2CH2CH2O-)n (6c)
(式中、nは、3~18である)
を有する)
を有する。
【0118】
本発明の好ましい実施形態では、モノグリシジルエーテル及びエステル、ジ及びトリグリシジルエーテル、高分子アルコールのジグリシジルエーテルは、式(5a)、(5b)、(5c)及び(5d)の構造(式中、
式(5a)について、
Rは、C4~C16-アルコキシ、好ましくは2-エチルヘキサノレート、n-ブタノレート、tert.-ブタノレート、C12~C15-アルコキシ、ノニルフェノレート、アリルアルコレート又はネオデカンカルボキシレートであり、
式(5b)について、
Rは、少なくとも1つのC1~C4-アルキルで更に置換されていてもよい直鎖状C5~C15-アルキレン、又は少なくとも1つのC1~C5-アルキル及び/若しくは少なくとも1つのフェニルで更に置換されたC1~C3-アルキレン、好ましくは、(-C6H12-)、(-CH2C(CH3)2CH2-)及び(-CH2C(CH3)(C6H6)CH2-)であり;
式(5c)について、
Rは、C3-アルキレン、好ましくは(-C3H6-)であり;
式(5d)について、
Rnは、式(6a)、(6b)又は(6c)
(-CH2CH2O-)n (6a)
(式中、nは、3~20である)、
(-CH2CH(CH3)O-)n (6b)
(式中、nは、3~15である)、又は
(-CH2CH2CH2CH2O-)n (6c)
(式中、nは、3~15である)
を有する)
を有する。
【0119】
本発明の別の好ましい実施形態では、モノグリシジルエーテル、ジ及びトリグリシジルエーテル、高分子アルコールのジグリシジルエーテルは、式(5b)、(5c)及び(5d)の構造
(式中、
式(5b)について、
Rは、(-C6H12-)、(-CH2C(CH3)2CH2-)及び(-CH2C(CH3)(C6H6)CH2-)であり;
式(5c)について、
Rは、(-C3H6-)であり;
式(5d)について、
Rnは、式(6a)、(6b)又は(6c)
(-CH2CH2O-)n (6a)
(式中、nは、3~20である)、
(-CH2CH(CH3)O-)n (6b)
(式中、nは、3~15である)、又は
(-CH2CH2CH2CH2O-)n (6c)
(式中、nは、3~15である)
を有する)
を有する。
【0120】
本発明の好ましい実施形態では、グリシジルエーテルは、式(5d)の構造(式中、
Rは、式(6a)、(6b)又は(6c)
(-CH2CH2O-)n (6a)
(式中、nは、3~20である)、
(-CH2CH(CH3)O-)n (6b)
(式中、nは、3~15である)、又は
(-CH2CH2CH2CH2O-)n (6c)
(式中、nは、3~15である)
を有する)を有する。
【0121】
本発明の特定の実施形態では、グリシジルエーテルは、式(5d)の構造(式中、
Rは、式(6b)又は(6c)
(-CH2CH(CH3)O-)n (6b)
(式中、nは、3~15である)、又は
(-CH2CH2CH2CH2O-)n (6c)
(式中、nは、3~15である)
を有する)
を有する。
【0122】
式(5d)の構造(式中、Rは、式(6b)
(-CH2CH(CH3)O-)n (6b)
(式中、nは、3~12である)
を有する)を有するグリシジルエーテルが最も好ましい。
【0123】
アスファルテン再活性化剤の好適な例は、ビス(グリシジル)エーテル、例えば、ポリエチレングリコールビス(グリシジル)エーテル及びポリプロピレングリコールビス(グリシジル)エーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、2-メチル-2-フェニル-1,3-プロパンジオールビスグリシジルエーテル(MPPD-DGE)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(ネオペンチルグリコールビスグリシジルエーテルとしても公知)、並びにN,N-ジメチルベンジルアミン等の触媒とのこれらの化合物の混合物である。
【0124】
本発明の一実施形態では、アスファルテン再活性化剤は、ポリエチレングリコールビス(グリシジル)エーテル、ポリプロピレングリコールビス(グリシジル)エーテル、ネオペンチルグリコールビスグリシジルエーテル、2-メチル-2-フェニル-1,3-プロパンジオールビスグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、及び触媒とのこれらの化合物の混合物からなる群から選択され、好ましくは、アスファルテン再活性化剤は、ポリプロピレングリコールビス(グリシジル)エーテルである。
【0125】
本発明によるマルテン再活性化剤は、マルテン相を補充するだけでなく、パイ-パイ相互作用、極性相互作用及びファンデルワールス相互作用の合わせた作用によりバインダー内のコロイド安定性を(再)確立する化学物質又は前記化学物質を含む組成物である。本発明によると、マルテン再活性化剤は、可塑剤である。好ましいマルテン再活性化剤は、毒性学的標識を有さない。マルテン再活性化剤の好適な例は、Palatinol(登録商標)DINP又はHexamoll(登録商標)DINCHである。
【0126】
本発明の一実施形態では、可塑剤は、式(7a)、(7b)、(7c)、(7d)又は(7e)
【0127】
【化21】
【0128】
(式中、
式(7a)について、
Rは、C4~C14-アルキル又はC4~C14-アルケニルであり;
式(7b)について、
Rは、C4~C14-アルキル又はC4~C14-アルケニルであり;
式(7c)について、
Rは、C4~C14-アルキル又はC4~C14-アルケニルであり;
式(7d)について、
Rは、C4~C14-アルキル又はC4~C14-アルケニルであり;
式(7e)について、
Rは、C4~C14アルキル又はC4~C14-アルケニルであり、
nは、4~10であり、2つの隣接する「CH2」部分の少なくとも2個の炭素原子は二重結合を形成していてもよい)
を有する。
【0129】
本発明の好ましい実施形態では、可塑剤は、式(7a)、(7c)又は(7d)(式中、
式(7a)について、
Rは、C8~C12-アルキル又はC7~C12-アルケニル、好ましくはC8~C11-アルキルであり;
式(7c)について、
Rは、C8~C12アルキル又はC7~C12-アルケニル、好ましくはC8~C11-アルキルであり;
式(7d)について、
Rは、C8~C12-アルキル又はC7~C12-アルケニル、好ましくはC8~C11-アルキルであり、
nは、4~8であり、2つの隣接する「CH2」部分の少なくとも2個の炭素原子は二重結合を形成していてもよい)
を有する。
【0130】
本発明のより好ましい実施形態では、可塑剤は、式(7a)、(7c)又は(7d)(式中、
式(7a)について、
Rは、C9~C10-アルキル、好ましくは2-プロピルヘプチル又はイソノニルであり;
式(7c)について、
Rは、C9~C10-アルキル、好ましくは2-プロピルヘプチル又はイソノニルであり;
式(7d)について、
Rは、C9~C10-アルキル、好ましくは2-プロピルヘプチル又はイソノニルであり、
nは、4~6、好ましくは4である)
を有する。
【0131】
本発明の特定の実施形態では、可塑剤は、式(7c)(式中、
式(7c)について、
Rは、C9~C10-アルキル、好ましくは2-プロピルヘプチル又はイソノニル、より好ましくはイソノニルである)
を有する。
【0132】
本発明によると、好ましいマルテン再活性化剤は、ジイソノニルフタレート又はジイソノニルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレート、より好ましくはジイソノニルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレートからなる群から選択される。
【0133】
本発明の一実施形態では、バインダー組成物は、
アルコキシレート、脂肪族カルボン酸のN,N-ジアルキルアミド、N-アルキルラクタム及びポリ(アルキルアミン)からなる群から選択されるアスファルテン分散体、好ましくは、式(1)の構造を有するアルコキシレート
【0134】
【化22】
【0135】
(式中、
Rは、H、C1~C22-アルキル、C2~C22-アルケニル、フェニル又はアルキルフェニルであり、
nは、0~20であり、
mは、0~20であり、
n+m≧1である);
式(2)の構造を有する脂肪族カルボン酸のN,N-ジアルキルアミド
【0136】
【化23】
【0137】
(式中、
nは、3~16であり、少なくとも1つの「CH2」部分の炭素原子は、少なくとも1つのC1~C5-アルキルで更に置換されていてもよく、2つの隣接する「CH2」部分の少なくとも2個の炭素原子は二重結合を形成していてもよく、
R1は、C1~C4-アルキルであり、
R2は、C1~C4-アルキルである);
式(3)の構造を有するN-アルキルラクタム
【0138】
【化24】
【0139】
(式中、
nは、3~11であり、少なくとも1つの「CH2」部分の炭素原子は、少なくとも1つのC1~C3-アルキルで更に置換されていてもよく、
Rは、C1~C22アルキル又はC2~C22-アルケニルである);又は
式(4)の構造を有するポリ(アルキルアミン)
【0140】
【化25】
【0141】
(式中、
nは、1~6であり、2つの隣接する「CH2」部分の少なくとも2個の炭素原子は二重結合を形成していてもよく、
mは、1~6であり、2つの隣接する「CH2」部分の少なくとも2個の炭素原子は二重結合を形成していてもよく、
xは、4~50であり、
R1は、C1~C4-アルキルであり、
これらのポリ(アルキルアミン)は、末端アミン部分においてC1~C4アルキル、脂肪酸又はアルコキシル化により更に誘導されていてもよい)
からなる群から選択されるアスファルテン分散体;
並びに/又は式(5a)、(5b)、(5c)及び(5d)の構造を有するモノグリシジルエーテル及びエステル、ジ及びトリグリシジルエーテル、高分子アルコールのジグリシジルエーテル
【0142】
【化26】
【0143】
(式中、
式(5a)について、
Rは、C1~C20-アルコキシ、C2~C20-アルケニルオキシ、フェノキシ又はC1~C20-カルボキシアルキルであり、フェノキシは、少なくとも1つのC1~C15-アルキルで更に置換されていてもよく;
式(5b)について、
Rは、少なくとも1つのC1~C5-アルキルで更に置換されていてもよい直鎖状C5~C20-アルキレン、又は少なくとも1つのC1~C10-アルキル及び/若しくは少なくとも1つのフェニルで更に置換されたC1~C4-アルキレンであり;
式(5c)について、
Rは、C1~C5-アルキレンであり;
式(5d)について、
Rnは、式(6a)、(6b)又は(6c)
(-CH2CH2O-)n (6a)
(式中、nは、3~20である)、
(-CH2CH(CH3)O-)n (6b)
(式中、nは、3~18である)、又は
(-CH2CH2CH2CH2O-)n (6c)
(式中、nは、3~18である)
を有する)
並びにN,N-ジメチルベンジルアミン等の触媒とのそれらの混合物からなる群から選択されるアスファルテン再活性化剤;
並びに/又は好ましくは式(7a)、(7b)、(7c)、(7d)若しくは(7e)を有する可塑剤
【0144】
【化27】
【0145】
(式中、
式(7a)について、
Rは、C4~C14-アルキル又はC4~C14-アルケニルであり;
式(7b)について、
Rは、C4~C14-アルキル又はC4~C14-アルケニルであり;
式(7c)について、
Rは、C4~C14-アルキル又はC4~C14-アルケニルであり;
式(7d)について、
Rは、C4~C14-アルキル又はC4~C14-アルケニルであり;
式(7e)について、
Rは、C4~C14-アルキル又はC4~C14-アルケニルであり、
nは、4~10であり、2つの隣接する「CH2」部分の少なくとも2個の炭素原子は二重結合を形成していてもよい)
であるマルテン再活性化剤
を含む。
【0146】
本発明の特定の実施形態では、回復剤は、式(1)の構造を有するアルコキシレート
【0147】
【化28】
【0148】
(式中、
Rは、C10-アルキル又はC13-アルキル、好ましくは2-プロピルヘプチル又はイソトリデシルであり、
nは、0~6であり、
mは、0~8であり、
n+m≧5である)、ポリ(ビスアミノプロピルアミン)、N-ドデシルピロリドン、ポリプロピレングリコールビス(グリシジル)エーテル及びジイソノニルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレート
からなる群から選択される。
【0149】
本発明による回復剤は、瀝青バインダーを希釈することで主に公知であるベンチマークと比較して、瀝青バインダーの微小構造レベルで活性である。本発明の好ましい実施形態では、回復剤は、全ての温度範囲において瀝青バインダー特性を改善する、且つ/又はリサイクルされた瀝青バインダーのエージングに対して負の効果を有さないか若しくは正の効果さえ有する。本発明の特定の好ましい実施形態では、回復剤は、毒性学的に安全である。
【0150】
本発明の好ましい実施形態では、回復剤は、瀝青ミセル構造の微細構造の変化を導入する。微細構造の変化は、回復剤の添加後の瀝青バインダーの加工性(特に粘度)の改善を伴うことが理解される。
【0151】
本発明の一実施形態では、瀝青ミセル構造のこの微細構造の変化は、損失正接を介して検出される。したがって、本発明の好ましい実施形態では、バインダー組成物の損失正接は、瀝青バインダーの損失正接と比較して増加する。これに関連して、本発明によるバインダー組成物は、回復したバインダー組成物(本発明による回復剤を含むため)であり、瀝青バインダーは、回復していない瀝青バインダーであることが理解される。損失正接は、本発明に従って決定されることが理解される。
【0152】
本発明の好ましい実施形態では、瀝青ミセル構造の微細構造の変化は、不等式(a)
損失正接[bc]>1.3×損失正接[bb] (a)
を満たすことによって、
より好ましくは、不等式(b)
損失正接[bc]>1.5×損失正接[bb] (b)
を満たすことによって、
特に、不等式(c)
損失正接[bc]>2×損失正接[bb] (c)
を満たすことによって、表すことができ、
(式中、損失正接[bc]は、バインダー組成物の損失正接を示し、損失正接[bb]は、瀝青バインダーを示し、損失正接[bc]及び損失正接[bb]は、0.01~10rad/秒の周波数、好ましくは0.01~1rad/秒の周波数で評価される)。
【0153】
本発明の一実施形態では、瀝青ミセル構造の微細構造の変化は、TD NMRを介して代替的に又は追加的に検出される。瀝青ミセル構造の微細構造の変化は、移動性成分の量及び/又はその/それらの移動度の増加をもたらす。したがって、本発明の好ましい実施形態では、TD NMRによるバインダー組成物の移動性成分の量及び/又はそれらそれぞれの移動度は、瀝青バインダーの移動性成分の量及び/又はそれらそれぞれの移動度と比較して増加する。本発明の別の好ましい実施形態では、TD NMRによるバインダー組成物の固体成分の量は、瀝青バインダーの固体成分の量と比較して減少する。本発明のなお別の好ましい実施形態では、バインダー組成物の移動性成分の量及び/又はTD NMRによるそれらそれぞれの移動度は、瀝青バインダーの移動性成分の量及び/又はそれらそれぞれの移動度と比較して増加し、TD NMRによるバインダー組成物の固体成分の量は、瀝青バインダーの固体成分の量と比較して減少する。
【0154】
本発明の好ましい実施形態では、瀝青ミセル構造の微細構造の変化は、不等式(aa1)
T2e1[bc]>1.3×T2e1[bb] (aa1)
を満たすことによって、
より好ましくは、不等式(bb1)
T2e1[bc]>1.5×T2e1[bb] (bb1)
を満たすことによって表すことができる。
(式中、T2e1[bc]は、バインダー組成物の個々の成分に対応する緩和時間を示し、T2e1[bb]は、瀝青バインダーの個々の成分に対応する緩和時間を示し、測定は各々30℃におけるものである)。
【0155】
本発明の好ましい実施形態では、瀝青ミセル構造の微細構造の変化は、不等式(aa2)
pe1[bc]>1.05×pe1[bb] (aa2)
を満たすことによって、
より好ましくは、不等式(bb2)
pe1[bc]>1.1×pe1[bb] (bb2)
を満たすことによって表すことができる。
(式中、pe1[bc]は、バインダー組成物の0~1の範囲にスケール調節された個々の成分のシグナル分率を示し、pe1[bb]は、瀝青バインダーの0~1の範囲にスケール調節された個々の成分のシグナル分率を示し、測定は各々30℃におけるものである)。
【0156】
本発明の好ましい実施形態では、瀝青ミセル構造の微細構造の変化は、不等式(aa3)
T2g2[bc]>1.05×T2g2[bb] (aa3)
を満たすことによって、
より好ましくは、不等式(bb3)
T2g2[bc]>1.1×T2g2[bb] (bb3)
を満たすことによって表すことができる。
(式中、T2g2[bc]は、バインダー組成物の個々の成分に対応する緩和時間を示し、T2g2[bb]は、瀝青バインダーの個々の成分に対応する緩和時間を示し、測定は各々30℃におけるものである)。
【0157】
本発明の好ましい実施形態では、瀝青ミセル構造の微細構造の変化は、不等式(aa4)
pe1[bc]>1.05×pe1[bb] (aa4)
を満たすことによって、
より好ましくは、不等式(bb4)
pe1[bc]>1.1×pe1[bb] (bb4)
を満たすことによって表すことができる。
(式中、pe1[bc]は、バインダー組成物の0~1の範囲にスケール調節された個々の成分のシグナル分率を示し、pe1[bb]は、瀝青バインダーの0~1の範囲にスケール調節された個々の成分のシグナル分率を示し、測定は各々80℃におけるものである)。
【0158】
本発明の好ましい実施形態では、瀝青ミセル構造の微細構造の変化は、不等式(aa5)
T2e2[bc]>1.2×T2e2[bb] (aa5)
を満たすことによって、
より好ましくは、不等式(bb5)
T2e2[bc]>1.3×T2e2[bb] (bb5)
を満たすことによって表すことができる。
(式中、T2e2[bc]は、バインダー組成物の個々の成分に対応する緩和時間を示し、T2e2[bb]は、瀝青バインダーの個々の成分に対応する緩和時間を示し、測定は各々80℃におけるものである)。
【0159】
本発明の好ましい実施形態では、瀝青ミセル構造の微細構造の変化は、不等式(aa6)
T2e2[bc]>1.2×T2e2[bb] (aa6)
を満たすことによって、
より好ましくは、不等式(bb6)
T2e2[bc]>1.3×T2e2[bb] (bb6)
を満たすことによって表すことができる。
(式中、T2e2[bc]は、バインダー組成物の個々の成分に対応する緩和時間を示し、T2e2[bb]は、瀝青バインダーの個々の成分に対応する緩和時間を示し、測定は各々140℃におけるものである)。
【0160】
本発明の好ましい実施形態では、瀝青ミセル構造の微細構造の変化は、不等式(aa7)
T2e3[bc]>1.15×T2e3[bb] (aa7)
を満たすことによって、
より好ましくは、不等式(bb7)
T2e3[bc]>1.25×T2e3[bb] (bb7)
を満たすことによって表すことができる。
(式中、T2e3[bc]は、バインダー組成物の個々の成分に対応する緩和時間を示し、T2e3[bb]は、瀝青バインダーの個々の成分に対応する緩和時間を示し、測定は各々140℃におけるものである)。
【0161】
一実施形態では、バインダー組成物は、バインダー組成物の総量に対して、0.05~20質量%、好ましくは0.1~18質量%、より好ましくは0.5~15質量%、更により好ましくは1~13質量%、なおより好ましくは2~10質量%、特に3~7質量%の回復剤を含む。
【0162】
一実施形態では、バインダー組成物は、バインダー組成物の総量に対して、80~99.95質量%、好ましくは82~99.9質量%、より好ましくは85~99.5質量%、更により好ましくは87~99質量%、なおより好ましくは90~98質量%、特に93~97質量%の瀝青バインダーを含む。
【0163】
本発明の一実施形態では、回復剤は、
(i)回復剤の総量に対して、1~100質量%、好ましくは20~100質量%、より好ましくは40~100質量%、なおより好ましくは60~100質量%、特に80~100質量%のアスファルテン分散体;
(ii)回復剤の総量に対して、1~100質量%、好ましくは20~100質量%、より好ましくは40~100質量%、なおより好ましくは60~100質量%、特に80~100質量%のアスファルテン再活性化剤;
(iii)回復剤の総量に対して、1~100質量%、好ましくは20~100質量%、より好ましくは40~100質量%、なおより好ましくは60~100質量%、特に80~100質量%のマルテン再活性化剤;又は
(iv)回復剤の総量に対して、1~100質量%、好ましくは20~100質量%、より好ましくは40~100質量%、なおより好ましくは60~100質量%、特に80~100質量%の、(i)~(iii)の成分のうちの少なくとも2種からなる混合物
を含む。
【0164】
回復剤はまた、少なくとも2種の異なるアスファルテン分散体を含んでもよい。
【0165】
回復剤はまた、少なくとも2種の異なるアスファルテン再活性化剤を含んでもよい。
【0166】
回復剤はまた、少なくとも2種の異なるマルテン再活性化剤を含んでもよい。
【0167】
回復剤は、アスファルテン分散体及びアスファルテン再活性化剤の混合物を含んでもよい。
【0168】
回復剤は、アスファルテン分散体及びマルテン再活性化剤の混合物を含んでもよい。
【0169】
回復剤は、アスファルテン再活性化剤及びマルテン再活性化剤の混合物を含んでもよい。
【0170】
回復剤は、アスファルテン分散体、アスファルテン再活性化剤及びマルテン再活性化剤の混合物を含んでもよい。
【0171】
上記で概説した量の回復剤の添加によって、次いで、回復した瀝青組成物(すなわち、本発明によるバインダー組成物)は、未処理(すなわち回復していない)瀝青組成物及び/又は本産業で典型的なベンチマークを用いて回復させた瀝青組成物と比較して、軟らかさ、粘度、MSCR、損失正接、弾性、低温挙動及びエージング挙動からなる群から選択されるパラメーターのうちの1つ又は複数に対する改善された特性を有する。
【0172】
本発明の好ましい一実施形態では、回復剤は、非毒性である。本発明のなお別の好ましい実施形態では、回復剤は、長時間持続性である、つまり、典型的な芳香族ベンチマーク回復剤で可能であるように、アスファルト製造の間に失われない。
【0173】
本発明の特定の実施形態では、回復剤は、非毒性であり、長時間持続性である、つまり、典型的な芳香族ベンチマーク回復剤で可能であるように、アスファルト製造の間に失われない。
【0174】
本発明によると、瀝青バインダーは、ポリマー等の改質剤を含有するエージングしたバインダーを含有する再生アスファルトを含んでもよい。これらの場合、記載される化学バランス(「飽和分」、「芳香族分」、「レジン」及び「アスファルテン」間)は、未加工の瀝青において既に困難であり、エージング後は更に大きな困難がもたらされる。それにも関わらず、大部分の再生アスファルトは、好ましくはこれらの改質剤を含有する表層から得られるため、とりわけこれが、一層重要になっている。
【0175】
本発明による回復対象の瀝青バインダーは、様々な資源、例えば、未加工の瀝青、天然瀝青及び回復の必要のある様々な種類のエージングした瀝青バインダーに由来する瀝青バインダーであってもよい。例えば、回復対象の瀝青バインダーは、未加工の瀝青、天然瀝青、吹込み瀝青組成物、ポリマー含有瀝青組成物、メタロセン含有瀝青組成物及び合成ワックス含有瀝青組成物からなる群から選択される。ポリマー含有瀝青組成物は、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)又はエチレン酢酸ビニル(EVA)等のポリマーで改質された瀝青バインダーであってもよい。
【0176】
本発明の一実施形態では、瀝青バインダーは、再生アスファルトを含む。
【0177】
本発明による回復対象の瀝青バインダーは、好適には、1~40質量%の範囲の量のアスファルテンを含有する。
【0178】
本発明の好ましい実施形態では、瀝青バインダーは、再生アスファルト舗装バインダー、再生アスファルトシングルバインダー、少なくとも50/70の硬度グレードの未加工の瀝青、又はそれらの混合物を含む。任意選択で、本発明による瀝青バインダーは、再生アスファルト舗装バインダー、再生アスファルトシングルバインダー、少なくとも50/70の硬度グレードの未加工の瀝青、又はそれらの混合物を、未加工のバインダーと組み合わせて含んでもよい。これと関連して、少なくとも50/70の硬度グレードの未加工の瀝青を含む瀝青バインダーの柔らかさは、所望の場合、本発明で概説される回復剤を使用して、十分に調節されうることが理解される。本発明の特に好ましい実施形態では、瀝青バインダーは、再生アスファルト舗装バインダー、再生アスファルトシングルバインダー、又はそれらの混合物を、任意選択で未加工のバインダーと組み合わせて含む。
【0179】
本発明の別の実施形態では、瀝青バインダーは、瀝青バインダーの総質量に対して10~100質量%の再生アスファルト舗装バインダーを含む。
【0180】
本発明の一実施形態では、瀝青バインダーは、瀝青バインダーの総質量に対して10~100質量%の再生アスファルトシングルバインダーを含む。
【0181】
本発明のなお別の実施形態では、瀝青バインダーは、瀝青バインダーの総質量に対して10~100質量%の再生アスファルト舗装バインダー及び再生アスファルトシングルバインダーの混合物を含む。
【0182】
本発明の一実施形態では、瀝青バインダーは、更なる添加剤を含み、好ましくは、更なる添加剤は、ポリマー、ワックス、ファイバー又はそれらの混合物からなる群から選択される。
【0183】
これに関連して、好適なポリマーとして、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、スチレン-ブタジエンゴム、エチレン酢酸ビニル(EVA)及びゴムを挙げることができる。
【0184】
好適なワックスとして、ポリエチレンワックスを挙げることができる。
【0185】
好適なファイバーとして、セルロースを挙げることができる。
【0186】
本発明によるバインダー組成物は、回復剤が添加されていないか又はベンチマーク回復剤が添加された対応するバインダー組成物と比較した場合に、本発明による回復剤の添加によって問題の特性の測定値が前記特性の理想値若しくは理想値範囲に近づいている場合、又は測定値が前記特性の理想範囲内となる場合、少なくとも一つの特性に関して改善されている。理想値は以下の通りである:
・軟らかさ、粘度、MSCR、弾性、低温挙動BBR S値及びエージング挙動(AI):可能な限り低い;
・損失正接、低温挙動BBR m値:可能な限り高い。
【0187】
典型的なベンチマーク回復剤と比較すると、本発明による回復剤は、一般に、軟化点、粘度、MSCR弾性回復率、エージング指数及びBBR S値から選択される特性の少なくとも1つを低下させうる。これは、瀝青20/30だけでなくまた実際に研究室でエージングさせた瀝青サンプル等のエージングした瀝青を代表とする系、及び例えばRAP又はRASから抽出された瀝青において真である。
【0188】
以下、本発明の更なる態様を概説する。別途述べない限り、とりわけバインダー組成物、瀝青バインダー及び回復剤の観点の全ての上記の実施形態は、以下の態様にも当てはまるものとすることが理解される。
【0189】
上記の通り、本発明は、一実施形態において、骨材及び上記で定義した通りのバインダー組成物を含むアスファルト組成物に更に関する。一実施形態では、アスファルト組成物はエマルジョンである。
【0190】
本発明によるアスファルト組成物は、アスファルト組成物の総質量に対して、2~15質量%、好ましくは3~10質量%、より好ましくは4~7.5質量%の、上記で定義した通りのバインダー組成物を含んでもよい。
【0191】
本発明によるアスファルト組成物は、アスファルト組成物の総質量に対して、85~98質量%、好ましくは90~97質量%、より好ましくは92.5~96質量%の骨材を含んでもよい。
【0192】
本発明の好ましい実施形態では、アスファルト組成物は、アルコキシレート;脂肪族カルボン酸のN,N-ジアルキルアミド;N-アルキルラクタム;ポリ(アルキルアミン);モノグリシジルエーテル及びエステル、ジ及びトリグリシジルエーテル、高分子アルコールのジグリシジルエーテル並びに触媒とのそれらの混合物;並びに可塑剤からなる群から選択される少なくとも1種の回復剤を含む。
【0193】
上記の通り、本発明は、一実施形態において、上記で定義したアスファルト組成物を含む舗装道路面、道路準表面、滑走路、車道、駐車場、路肩、橋梁、橋台、屋根、堤防護岸又は未舗装道路に更に関する。
【0194】
一実施形態では、本発明は、瀝青バインダーが、再生アスファルト舗装(RAP)及び/又は屋根由来のアスファルトシングル(RAS)を含む、上記で定義したアスファルト組成物を含む舗装道路面、道路準表面、滑走路、車道、駐車場、路肩、橋梁、橋台、屋根、堤防護岸又は未舗装道路に関する。
【0195】
上記の通り、本発明は、技術水準に対する特許請求される回復剤の利点が明確に区別可能である、瀝青微小構造の分析のために新規の2種の分析方法を更に記載する。加えて、2種の新規の分析方法は、容易に実現可能である。
【0196】
したがって、本発明の一実施形態は、バインダー組成物における回復剤の効率性を評価するための方法であって、回復剤の効率性が、
(i)規定温度での動的せん断レオメーター(DSR)周波数掃引から得られたエージング前若しくは後の損失正接を介して証明され、周波数掃引は、0~90℃の温度で測定され、効果的な回復剤は、不等式(a)
損失正接[bc]>1.3×損失正接[bb] (a)
(式中、損失正接[bc]は、バインダー組成物の損失正接を示し、損失正接[bb]は、瀝青バインダーを示し、損失正接[bc]及び損失正接[bb]は、0.01~10rad/秒の周波数、好ましくは0.01~1rad/秒の周波数で評価される)
を満たすか、又は
(ii)-50~200℃の温度で瀝青サンプルに対して実施したTD NMR緩和実験を介して証明され、効果的な回復剤は、不等式(aa1)
T2e1[bc]>1.3×T2e1[bb] (aa1)
(式中、T2e1[bc]は、バインダー組成物の個々の成分に対応する緩和時間を示し、T2e1[bb]は、瀝青バインダーの個々の成分に対応する緩和時間を示す)
を満たす、
方法に関する。
【0197】
効率的な回復剤は、回復剤の添加後の瀝青バインダーの加工性(特に粘度)を改善することが理解される。未処理瀝青バインダー(特にエージングした瀝青バインダーの)のそれぞれの値と比較した場合に、回復剤の添加後に損失正接及び/又はTD NMRを介して決定した移動性成分が増加した場合、回復剤は、特に、効率的であると考えられる。回復剤は、回復した瀝青バインダーに対して可能な限り低い負の影響を有するべきであることが更に好ましい。
【0198】
損失正接を使用して、本発明による回復剤が、典型的なベンチマーク回復剤とは異なる作用機序を有することを証明できる。損失正接に対する本発明による回復剤の効果は、完全に異なる。ここで、典型的なベンチマークと比較して本発明による回復剤を用いて回復させた後の損失正接のはるかに強い増加が見られうる。これは、本発明による回復剤が、例えば、アスファルテン骨材の溶解又はミセルの再構築によって、瀝青の微小構造に対する影響を有し、大部分のベンチマークでそうであるようにはバインダー相を単純に希釈しないことを意味する。
【0199】
本発明による評価方法は、作用機構を示す。
【0200】
損失正接(tanδ)の分析を使用した場合、周波数掃引が検出されている。損失正接は、粘性項G"と、弾性項G'と、G*との間の比である。比が大きいほど、レオロジー特性に対する粘性項が大きくなり、したがって、瀝青相内の分子移動度が高くなる。とりわけ、系に対する測定自体の影響が非常に小さい低周波数において、瀝青構成成分の移動度に関する情報を抽出できる。
【0201】
一般に、周波数掃引は、0~200℃、好ましくは20~100℃の温度で測定できる。本発明によると、周波数掃引(frequency seep)は、0~90℃、好ましくは20~90℃、より好ましくは30~90℃、更により好ましくは40~80℃、なおより好ましくは50~70℃、特に55~65℃の温度で測定される。
【0202】
好ましくは、周波数掃引は、60℃で、0.5%のせん断変形(sheer deformation)γで0.01から100rad/秒に漸増させて測定する。tanδは、好ましくは、0.01~10rad/秒の周波数、より好ましくは0.01~1rad/秒の周波数、特に最低周波数で評価される。
【0203】
好ましい実施形態では、不等式(b)
損失正接[bc]>1.5×損失正接[bb] (b)
が満たされる(式中、損失正接[bc]は、バインダー組成物の損失正接を示し、損失正接[bb]は、瀝青バインダーを示し、損失正接[bc]及び損失正接[bb]は、0.01~10rad/秒の周波数で評価される)。
【0204】
より好ましい実施形態では、不等式(c)
損失正接[bc]>2×損失正接[bb] (c)
が満たされる(式中、損失正接[bc]は、バインダー組成物の損失正接を示し、損失正接[bb]は、瀝青バインダーを示し、損失正接[bc]及び損失正接[bb]は、0.01~10rad/秒の周波数で評価される)。
【0205】
TD NMR分析を使用して、本発明による回復剤が、典型的なベンチマーク回復剤が有するのと同じように、バインダーの移動度に対して増加した影響を有することを証明できる。移動性成分の数及び種類に対する本発明による回復剤の効果は、異なる。本発明による回復剤を用いて回復されたバインダーは、典型的なベンチマークと比較して、より多くの移動性成分及びより高い移動度を有する成分を有する。これは、本発明による回復剤が、瀝青の微小構造に対して異なる影響を有することを意味する。
【0206】
TD NMR分析を使用した場合、様々な移動度を有する個々の成分のシグナル分率及びそれらの緩和時間が検出されている。移動性又は部分的に移動性の成分の量が多いほど、及びそれらの移動度が高いほど(つまり、各々の移動性成分の対応する緩和時間が長いほど)、レオロジー特性に対する粘性項が大きくなり、したがって、瀝青相内の分子の移動度が高くなる。
【0207】
一般に、TDNMRは、-100~200℃の温度で測定できる。本発明によると、TDNMRは、-50~200℃、好ましくは0~180℃、より好ましくは20~150℃の温度で測定される。
【0208】
好ましい実施形態では、効果的な回復剤は、不等式(bb1)
T2e1[bc]>1.5×T2e1[bb] (bb1)
を満たす(式中、T2e1[bc]は、バインダー組成物の個々の成分に対応する緩和時間を示し、T2e1[bb]は、瀝青バインダーの個々の成分に対応する緩和時間を示し、測定は各々30℃におけるものである)。
【0209】
好ましい実施形態では、効果的な回復剤は、不等式(aa2)
pe1[bc]>1.05×pe1[bb] (aa2)
を満たし、より好ましくは、不等式(bb2)
pe1[bc]>1.1×pe1[bb] (bb2)
を満たす(式中、pe1[bc]は、バインダー組成物の0~1の範囲にスケール調節された個々の成分のシグナル分率を示し、pe1[bb]は、瀝青バインダーの0~1の範囲にスケール調節された個々の成分のシグナル分率を示し、測定は各々30℃におけるものである)。
【0210】
好ましい実施形態では、効果的な回復剤は、不等式(aa3)
T2g2[bc]>1.05×T2g2[bb] (aa3)
を満たし、好ましくは不等式(bb3)
T2g2[bc]>1.1×T2g2[bb] (bb3)
を満たす(式中、T2g2[bc]は、バインダー組成物の個々の成分に対応する緩和時間を示し、T2g2[bb]は、瀝青バインダーの個々の成分に対応する緩和時間を示し、測定は各々30℃におけるものである)。
【0211】
好ましい実施形態では、効果的な回復剤は、不等式(aa4)
pe1[bc]>1.05×pe1[bb] (aa4)
を満たし、好ましくは不等式(bb4)
pe1[bc]>1.1×pe1[bb] (bb4)
を満たす(式中、pe1[bc]は、バインダー組成物の0~1の範囲にスケール調節された個々の成分のシグナル分率を示し、pe1[bb]は、瀝青バインダーの0~1の範囲にスケール調節された個々の成分のシグナル分率を示し、測定は各々80℃におけるものである)。
【0212】
好ましい実施形態では、効果的な回復剤は、不等式(aa5)
T2e2[bc]>1.2×T2e2[bb] (aa5)
を満たし、好ましくは不等式(bb5)
T2e2[bc]>1.3×T2e2[bb] (bb5)
を満たす(式中、T2e2[bc]は、バインダー組成物の個々の成分に対応する緩和時間を示し、T2e2[bb]は、瀝青バインダーの個々の成分に対応する緩和時間を示し、測定は各々80℃におけるものである)。
【0213】
好ましい実施形態では、効果的な回復剤は、不等式(aa6)
T2e2[bc]>1.2×T2e2[bb] (aa6)
を満たし、好ましくは不等式(bb6)
T2e2[bc]>1.3×T2e2[bb] (bb6)
を満たす(式中、T2e2[bc]は、バインダー組成物の個々の成分に対応する緩和時間を示し、T2e2[bb]は、瀝青バインダーの個々の成分に対応する緩和時間を示し、測定は各々140℃におけるものである)。
【0214】
好ましい実施形態では、効果的な回復剤は、不等式(aa7)
T2e3[bc]>1.15×T2e3[bb] (aa7)
を満たし、好ましくは不等式(bb7)
T2e3[bc]>1.25×T2e3[bb] (bb7)
を満たす(式中、T2e3[bc]は、バインダー組成物の個々の成分に対応する緩和時間を示し、T2e3[bb]は、瀝青バインダーの個々の成分に対応する緩和時間を示し、測定は各々140℃におけるものである)。
【0215】
好ましくは、効果的な回復剤は、(aa1)、(aa2)、(aa3)、(aa4)、(aa5)、(aa6)及び(aa7)からなる群から選択される、少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つ、なおより好ましくは少なくとも4つ、特に少なくとも5つの不等式を満たす。
【0216】
好ましくは、効果的な回復剤は、(bb1)、(bb2)、(bb3)、(bb4)、(bb5)、(bb6)及び(bb7)からなる群から選択される、少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つ、なおより好ましくは少なくとも4つ、特に少なくとも5つの不等式を満たす。
【0217】
TD NMR技術に関する更なる詳細については、下記の実験の節を参照されたい。
【0218】
上記の通り、本発明は、一実施形態において、再生アスファルト舗装(RAP)及び/又は屋根由来のアスファルトシングル(RAS)をリサイクルするための、少なくともアスファルテン分散体、アスファルテン再活性化剤、マルテン再活性化剤、又はそれらの混合物を含む回復剤の使用に更に関する。
【0219】
本発明の好ましい実施形態では、回復剤は、アルコキシレート;脂肪族カルボン酸のN,N-ジアルキルアミド;N-アルキルラクタム;ポリ(アルキルアミン);モノグリシジルエーテル及びエステル、ジ及びトリグリシジルエーテル、高分子アルコールのジグリシジルエーテル並びに触媒とのそれらの混合物;並びに可塑剤からなる群から選択される。
【0220】
本発明の好ましい実施形態では、回復剤は、式(1)の構造を有するアルコキシレート
【0221】
【化29】
【0222】
(式中、
Rは、C10-アルキル又はC13-アルキル、好ましくは2-プロピルヘプチル又はイソトリデシルであり、
nは、0~6であり、
mは、0~8であり、
n+m≧5である)、ポリ(ビスアミノプロピルアミン)、N-ドデシルピロリドン、ポリプロピレングリコールビス(グリシジル)エーテル及びジイソノニルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレートからなる群から選択される。
【0223】
本発明は、以下の項目に更に関する:
1. (a)瀝青バインダー;及び
(b)バインダー組成物の総量に対して0.05~20質量%の回復剤
を含むバインダー組成物であって、
回復剤が、少なくともアスファルテン分散体、アスファルテン再活性化剤、マルテン再活性化剤、又はそれらの混合物を含む、
バインダー組成物。
【0224】
2. 回復剤が、瀝青ミセル構造の微細構造の変化を導入し、好ましくは、バインダー組成物の損失正接が、瀝青バインダーの損失正接と比較して増加し、且つ/又は
バインダー組成物の移動性成分の量及び/若しくはTD NMRによるそれらそれぞれの移動度が、瀝青バインダーの移動性成分の量及び/若しくはそれらそれぞれの移動度と比較して増加する、
項目1に記載のバインダー組成物。
【0225】
3. 回復剤が、
(i)回復剤の総量に対して1~100質量%のアスファルテン分散体;
(ii)回復剤の総量に対して1~100質量%のアスファルテン再活性化剤;
(iii)回復剤の総量に対して1~100質量%のマルテン再活性化剤;又は
(iv)回復剤の総量に対して1~100質量%の、成分(i)~(iii)のうちの少なくとも2種からなる混合物
を含む、項目1又は2に記載のバインダー組成物。
【0226】
4. 瀝青バインダーが、再生アスファルト舗装バインダー、再生アスファルトシングルバインダー、又はそれらの混合物を、任意選択で未加工のバインダーと組み合わせて含む、項目1から3のいずれか1つに記載のバインダー組成物。
【0227】
5. バインダー組成物が、
アルコキシレート、脂肪族カルボン酸のN,N-ジアルキルアミド、N-アルキルラクタム及びポリ(アルキルアミン)からなる群から選択されるアスファルテン分散体、好ましくは、式(1)の構造を有するアルコキシレート
【0228】
【化30】
【0229】
(式中、
Rは、H、C1~C22-アルキル、C2~C22-アルケニル、フェニル又はアルキルフェニルであり、
nは、0~20であり、
mは、0~20であり、
n+m≧1である);
式(2)の構造を有する脂肪族カルボン酸のN,N-ジアルキルアミド
【0230】
【化31】
【0231】
(式中、
nは、3~16であり、少なくとも1つの「CH2」部分の炭素原子は、少なくとも1つのC1~C5-アルキルで更に置換されていてもよく、2つの隣接する「CH2」部分の少なくとも2個の炭素原子は二重結合を形成していてもよく、
R1は、C1~C4-アルキルであり、
R2は、C1~C4-アルキルである);
式(3)の構造を有するN-アルキルラクタム
【0232】
【化32】
【0233】
(式中、
nは、3~11であり、少なくとも1つの「CH2」部分の炭素原子は、少なくとも1つのC1~C3-アルキルで更に置換されていてもよく、
Rは、C1~C22アルキル又はC2~C22-アルケニルである);又は
式(4)の構造を有するポリ(アルキルアミン)
【0234】
【化33】
【0235】
(式中、
nは、1~6であり、2つの隣接する「CH2」部分の少なくとも2個の炭素原子は二重結合を形成していてもよく、
mは、1~6であり、このとき、2つの隣接する「CH2」部分の少なくとも2個の炭素原子は二重結合を形成していてもよく、
xは、4~50であり、
R1は、C1~C4-アルキルであり、
これらのポリ(アルキルアミン)は、更に、末端アミン部分においてC1~C4-アルキル、脂肪酸又はアルコキシル化により誘導されていてもよい)
からなる群から選択されるアスファルテン分散体;
並びに/又は式(5a)、(5b)、(5c)及び(5d)の構造を有するモノグリシジルエーテル及びエステル、ジ及びトリグリシジルエーテル、高分子アルコールのジグリシジルエーテル
【0236】
【化34】
【0237】
(式中、
式(5a)について、
Rは、C1~C20-アルコキシ、C2~C20-アルケニルオキシ、フェノキシ又はC1~C20-カルボキシアルキルであり、フェノキシは、少なくとも1つのC1~C15-アルキルで更に置換されていてもよく;
式(5b)について、
Rは、少なくとも1つのC1~C5-アルキルで更に置換されていてもよい直鎖状C5~C20-アルキレン、又は少なくとも1つのC1~C10-アルキル及び/若しくは少なくとも1つのフェニルで更に置換されたC1~C4-アルキレン;
式(5c)について、
Rは、C1~C5-アルキレンであり;
式(5d)について、
Rnは、式(6a)、(6b)又は(6c)
(-CH2CH2O-)n (6a)
(式中、nは、3~20である)、
(-CH2CH(CH3)O-)n (6b)
(式中、nは、3~18である)、又は
(-CH2CH2CH2CH2O-)n (6c)
(式中、nは、3~18である)
を有する)
並びにN,N-ジメチルベンジルアミン等の触媒とのそれらの混合物からなる群から選択されるアスファルテン再活性化剤;
並びに/又は好ましくは式(7a)、(7b)、(7c)、(7d)若しくは(7e)を有する可塑剤
【0238】
【化35】
【0239】
(式中、
式(7a)について、
Rは、C4~C14-アルキル又はC4~C14-アルケニルであり;
式(7b)について、
Rは、C4~C14-アルキル又はC4~C14-アルケニルであり;
式(7c)について、
Rは、C4~C14-アルキル又はC4~C14-アルケニルであり;
式(7d)について、
Rは、C4~C14-アルキル又はC4~C14-アルケニルであり;
式(7e)について、
Rは、C4~C14-アルキル又はC4~C14-アルケニルであり、
nは、4~10であり、2つの隣接する「CH2」部分の少なくとも2個の炭素原子は二重結合を形成していてもよい)
であるマルテン再活性化剤
を含む、項目1から4のいずれか1つに記載のバインダー組成物。
【0240】
6. アスファルテン分散体が、アルコキシレート、脂肪族カルボン酸のN,N-ジアルキルアミド、N-アルキルラクタム及びポリ(アルキルアミン)からなる群から選択され、好ましくは、アスファルテン分散体が、式(1)の構造を有するアルコキシレート
【0241】
【化36】
【0242】
(式中、
Rは、H、C1~C22-アルキル、C2~C22-アルケニル、フェニル又はアルキルフェニルであり、
nは、0~20であり、
mは、0~20であり、
n+m≧1である);
式(2)の構造を有する脂肪族カルボン酸のN,N-ジアルキルアミド
【0243】
【化37】
【0244】
(式中、
nは、3~16であり、少なくとも1つの「CH2」部分の炭素原子は、少なくとも1つのC1~C5-アルキルで更に置換されていてもよく、2つの隣接する「CH2」部分の少なくとも2個の炭素原子は二重結合を形成していてもよく、
R1は、C1~C4-アルキルであり、
R2は、C1~C4-アルキルである);
式(3)の構造を有するN-アルキルラクタム
【0245】
【化38】
【0246】
(式中、
nは、3~11であり、少なくとも1つの「CH2」部分の炭素原子は、少なくとも1つのC1~C3-アルキルで更に置換されていてもよく、
Rは、C1~C22アルキル又はC2~C22-アルケニルである);又は
式(4)の構造を有するポリ(アルキルアミン)
【0247】
【化39】
【0248】
(式中、
nは、1~6であり、2つの隣接する「CH2」部分の少なくとも2個の炭素原子は二重結合を形成していてもよく、
mは、1~6であり、2つの隣接する「CH2」部分の少なくとも2個の炭素原子は二重結合を形成していてもよく、
xは、4~50であり、
R1は、C1~C4-アルキルであり、
これらのポリ(アルキルアミン)は、末端アミン部分においてC1~C4アルキル、脂肪酸又はアルコキシル化により更に誘導されていてもよい)
からなる群から選択される、項目1から5のいずれか1つに記載のバインダー組成物。
【0249】
7. アスファルテン再活性化剤が、式(5a)、(5b)、(5c)及び(5d)の構造を有するモノグリシジルエーテル及びエステル、ジ及びトリグリシジルエーテル、高分子アルコールのジグリシジルエーテル
【0250】
【化40】
【0251】
(式中、
式(5a)について、
Rは、C1~C20-アルコキシ、C2~C20-アルケニルオキシ、フェノキシ又はC1~C20-カルボキシアルキルであり、フェノキシは、少なくとも1つのC1~C15-アルキルで更に置換されていてもよく;
式(5b)について、
Rは、少なくとも1つのC1~C5-アルキルで更に置換されていてもよい直鎖状C5~C20-アルキレン、又は少なくとも1つのC1~C10-アルキル及び/若しくは少なくとも1つのフェニルで更に置換されたC1~C4-アルキレン;
式(5c)について、
Rは、C1~C5-アルキレンであり;
式(5d)について、
Rnは、式(6a)、(6b)又は(6c)
(-CH2CH2O-)n (6a)
(式中、nは、3~20である)、
(-CH2CH(CH3)O-)n (6b)
(式中、nは、3~18である)、又は
(-CH2CH2CH2CH2O-)n (6c)
(式中、nは、3~18である)
を有する)
並びにN,N-ジメチルベンジルアミン等の触媒とのそれらの混合物からなる群から選択され;
より好ましくは、アスファルテン再活性化剤が、ポリエチレングリコールビス(グリシジル)エーテル、ポリプロピレングリコールビス(グリシジル)エーテル、ネオペンチルグリコールビスグリシジルエーテル、2-メチル-2-フェニル-1,3-プロパンジオールビスグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、及び触媒とのこれらの化合物の混合物からなる群から選択され;更により好ましくは、アスファルテン再活性化剤が、ポリプロピレングリコールビス(グリシジル)エーテルである、項目1から6のいずれか1つに記載のバインダー組成物。
【0252】
8. マルテン再活性化剤が、可塑剤であり、好ましくは、可塑剤が、式(7a)、(7b)、(7c)、(7d)又は(7e)
【0253】
【化41】
【0254】
(式中、
式(7a)について、
Rは、C4~C14-アルキル又はC4~C14-アルケニルであり;
式(7b)について、
Rは、C4~C14-アルキル又はC4~C14-アルケニルであり;
式(7c)について、
Rは、C4~C14-アルキル又はC4~C14-アルケニルであり;
式(7d)について、
Rは、C4~C14-アルキル又はC4~C14-アルケニルであり;
式(7e)について、
Rは、C4~C14-アルキル又はC4~C14-アルケニルであり、
nは、4~10であり、2つの隣接する「CH2」部分の少なくとも2個の炭素原子は二重結合を形成していてもよい)
を有し、より好ましくは、マルテン再活性化剤が、ジイソノニルフタレート又はジイソノニルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレートからなる群から選択され、より好ましくは、マルテン再活性化剤が、ジイソノニルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレートである、
項目1から7のいずれか1つに記載のバインダー組成物。
【0255】
9. 瀝青バインダーが、瀝青バインダーの総質量に対して10~100質量%の再生アスファルト舗装及び/又は再生アスファルトシングルバインダーを含む、項目1から8のいずれか1つに記載のバインダー組成物。
【0256】
10. 瀝青バインダーが、更なる添加剤を含み、好ましくは、更なる添加剤が、ポリマー、ワックス、ファイバー又はそれらの混合物からなる群から選択される、項目1から9のいずれか1つに記載のバインダー組成物。
【0257】
11. 骨材、及び項目1から10のいずれか1つに記載のバインダー組成物を含むアスファルト組成物。
【0258】
12. 項目11に記載のアスファルト組成物を含む舗装道路面、道路準表面、滑走路、車道、駐車場、路肩、橋梁、橋台、屋根、堤防護岸又は未舗装道路。
【0259】
13. バインダー組成物における回復剤の効率性を評価するための方法であって、回復剤の効率性が、
(i)規定温度における動的せん断レオメーター(DSR)周波数掃引から得られたエージングの前若しくは後の損失正接、又は
(ii)規定温度において瀝青サンプルに対して実施したTD NMR緩和実験
を介して証明される、方法。
【0260】
14. 再生アスファルト舗装(RAP)及び/又は屋根由来のアスファルトシングル(RAS)をリサイクルするための、少なくともアスファルテン分散体、アスファルテン再活性化剤、マルテン再活性化剤、又はそれらの混合物を含む回復剤の使用。
【0261】
以下、本発明を、以下の実施例によって更に例示するが、これらは本発明をどのようにも限定しない。
【実施例
【0262】
(実施例1)
回復した瀝青20/30の軟らかさ及び粘弾特性
多様な化学的に異なる構造を、良好な程度にエージングさせた瀝青と似ている(例えば、アスファルテン含有量、レオロジー挙動)ことが公知の瀝青の種類である瀝青20/30を回復するそれらの能力に対して評価した。試験物質の選択を、Table 1(表1)に列挙する。異なる物質を試験するために、100gの瀝青20/30を、5%のそれぞれの化合物を用いて、撹拌下180℃で30分間回復させた。回復した瀝青(すなわちバインダー組成物)サンプルを、続いて、それらの軟化点(SP)、135℃における粘度及びMSCR試験からのパーセンテージ弾性回復率について分析した。全ての試験サンプルを、添加剤は存在しないが、やはり180℃で30分間撹拌した純粋な20/30瀝青と比較した。
【0263】
増加した軟化点、粘度及び弾性回復率が、変化しなかった又はごくわずかに減少した場合、試験物質は、回復しなかった、又はごくわずかに回復したと判断した。軟化点が強く(およそ10℃)減少し、粘度が1000mPas未満に減少し、かつMSCR弾性応答が、例えば0.1kPaについて10%未満減少した場合、又はこれらの基準のうちの少なくとも大部分が満たされた場合、試験物質は、瀝青20/30を回復する非常に良好な能力を有した。
【0264】
Table 1(表1)から、試験サンプルの全てが瀝青20/30を回復できたわけではないことが分かる。どのような理論にも縛られるものではないが、Glissopal(登録商標)2300(実施例1.2)のサンプル自体は、瀝青20/30における所望の効果を実現するには粘性が高すぎるか、又は弾性が高すぎる。Koresin(登録商標)Soft(実施例1.3)及びLignoboost(登録商標)(実施例1.5)サンプルから、それらの高分子量に起因して、回復は観察できなかったと考えられる。ドデシルベンゼンスルホン酸(実施例1.8)は瀝青を硬化させ、これは、大部分はおそらくその高極性に起因する。
【0265】
しかしながら、試験サンプルの多くは、瀝青20/30を回復することができた。サンプルPalatinol(登録商標)DINP又はHexamoll(登録商標)DINCHは、瀝青20/30を実に十分に軟化でき、どのような理論にも縛られるものではないが、これは、それらのマルテンに類似する化学構造に起因してそれらが成功裡にマルテン相を補充するためであると考えられる。
【0266】
別の例では、アスファルテンスタックを崩壊させると考えられるN-ドデシルピロリドン、又はマルテン内でアスファルテンスタックを良好に分散させると考えられるポリ(ビスアミノプロピルアミン)が良好に作用する。大きなクラスの界面活性剤(Lutensol(登録商標)TO3、Lutensol(登録商標)TO8、Lutensol(登録商標)TO15、Lutensol(登録商標)XP70、Lutensol(登録商標)XL60、Lutensol(登録商標)TO5、Agnique AMD 12(登録商標)、Triton(商標)X-100)もまた、非常に効果的であることが見出され、それらは、アスファルテンスタックを成功裡に崩壊させると考えられる。試験した界面活性剤の全ては、全ての試験パラメーターにおいて瀝青20/30を回復できたわけではなかった(例えば、Pluronic(登録商標)PE 6400、Tetronic(登録商標)90R4又はDisponil(登録商標)FEP 3830 PAは、おそらくそれらのより高い極性又は高すぎる分子量の結果として)。
【0267】
アスファルテン及び/又はレジンの極性官能基(例えば、COOH又はOH基)と反応し、それによって、以前にエージングの間に損失した溶解度をアスファルテンに再導入しうると考えられる別のクラスの化合物(ドデセニルコハク酸無水物、ポリプロピレングリコールビスグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールビスグリシジルエーテル、2-メチル-2-フェニル-1,3-プロパンジオールビスグリシジルエーテル)もまた、非常に十分に回復性であることが見出された。ポリエチレングリコールビスグリシジルエーテルのみが、おそらくポリプロピレングリコールビスグリシジルエーテルと比較してそのより高い極性及び/又は剛性に起因して、系をごくわずかに回復させた。
【0268】
特定の好ましい回復剤は、アスファルト混合プロセスの条件下でヒトの健康に水毒性(aquatoxic)でも有害(例えば、吸入時に毒性)でもない(生態)毒性学的プロファイルを有すると決定された。結果として、示された例から、サンプルHexamoll(登録商標)DINCH(実施例1.7)、ポリ(ビスアミノプロピルアミン)(実施例1.11)、Lutensol(登録商標)XL60(実施例1.17)、N-ドデシルピロリドン(実施例1.9)及びポリプロピレングリコールビスグリシジルエーテル(実施例1.24)が、最も好ましい候補(この後、好ましい候補と呼ぶ)と決定された。これらの化合物は、十分回復性であり、好ましくはアスファルト混合プラントにおいて回復剤として使用できることが見出された。
【0269】
【表1A】
【0270】
【表1B】
【0271】
【表1C】
【0272】
比較例(比較)
既存のベンチマークの文脈において選択した候補を評価することを可能にするために、ベンチマーク研究を、実施例1で行なったのと同様の方法で実施した。ベンチマーク研究の結果は、Table 2(表2)において見ることができる。製品1を除くベンチマークの全てが、異なる製品間で顕著な差を有して軟化点を低下させることができた。いずれの製品も、ここで特許請求される好ましい候補の大部分で可能であるように軟化点を50℃以下に低下させることはできなかった。サンプルの全ては、135℃における粘度を低下させることができ、ここでも、異なるベンチマーク間で認識可能な差があり、それらのうちの3種のみが135℃における粘度を1,000mPas以下に低下させることができた。製品1を除く全てが、MSCR試験の間に弾性回復率を低下させることができた。とりわけ、製品Rheofalt(登録商標)HP-AM(Ventraco社から購入、比較例1.3)は、弾性回復率を最も低下させることができ、これは、軟化点及び粘度を低下させるその能力と組み合わせて、試験サンプル下で最も良好に実施されたベンチマークであると考えられたためである。しかしながら、好ましい候補(実施例1から)と比較して、これは、同様には実施されない。
【0273】
【表2】
【0274】
(実施例2)
回復したエージングした瀝青の軟らかさ及び粘弾特性
実施例1で使用した瀝青20/30は、単なるモデル系であり、実際にエージングした瀝青ではないため、実際にエージングした瀝青において選択した候補の性能を確証することが重要である。したがって、好ましい候補を、3種の異なるエージングした瀝青サンプル:研究室でエージングさせた2つの異なる精製所からの2種類の50/70瀝青(RTFOT+PAV)、及び道路から抽出された瀝青で構成された1種の再生アスファルト舗装サンプルにおいて試験した。
【0275】
3種の異なる瀝青サンプルを、実施例1において行なったのと同じ方法で回復させ、分析した。好ましい候補は、製品RheoFalt(登録商標)HP-AM(比較例1.3)及びまた回復していない瀝青に対して毎回ベンチマークした。結果は、Table 3(表3)において見ることができる。使用した瀝青の種類に関係なく、20/30又は3種のエージングしたサンプルは、非常に十分に実施される好ましい候補でありうることが分かる。これは、異なるアスファルトプラントが非常に様々な瀝青品質を使用しており、十分機能する回復剤が、大きなスペクトルの異なる瀝青組成物全体を通して作用する必要があるため、非常に重要である。
【0276】
【表3A】
【0277】
【表3B】
【0278】
(実施例3)
低温性能(BBR)
実施例1~2は、中又は高温範囲での異なる回復剤の性能を説明した。しかしながら、エージングした瀝青はまた、脆性の増加等、低温性能が劇的に低下することが公知である。したがって、優れた回復剤はまた、瀝青の低温特性を改善しなくてはならない。
【0279】
異なる瀝青サンプルを、実施例1における通りに回復させ、BBR値S(たわみクリープ剛性)及びm(クリープ回復率)を、-16℃で評価した。結果を、回復していない瀝青サンプル及びベンチマークRheoFalt(登録商標)HP-AMを用いて回復させた瀝青(比較例1.3)と比較した。
【0280】
一般に、全ての試験サンプルは、-16℃で瀝青サンプルの剛性を低下させる強い能力を有した。全ての試験添加剤により、十分を超えるものである、瀝青50/70と比較してより可撓性のサンプルが作製された。瀝青20/30において試験したサンプルから、ベンチマークRheoFalt(登録商標)HP-AM(比較例1.3)が、最低の性能を有したことが分かり、本発明による好ましい候補がより強い影響を有したことが示される。
【0281】
【表4】
【0282】
(実施例4)
回復した瀝青サンプルの損失正接、tanδ
実施例1~3は、本発明による回復剤及び特に本発明による好ましい候補の、瀝青の種類とは無関係に、瀝青を回復させる能力を十分に実証した。加えて、本発明による添加剤は、ほとんどの場合、低、中及び高温範囲について、標準試験技術に従う一般的なベンチマークよりも良好に実施されることを示すことができた。しかしながら、作用機構の指標は、これらの測定から抽出することができない。これを行なうには、例えば、周波数掃引からの損失正接(tanδ)の分析がより適している。損失正接は、粘性項G"と、弾性項G'と、G*との間の比である。比が大きいほど、レオロジー特性に対する粘性項が大きくなり、したがって、瀝青相内の分子移動度が高くなる。とりわけ、系に対する測定自体の影響が非常に小さい低周波数において、つまり、線形粘弾領域(LVE)内で瀝青を特徴付けるための測定条件を選択して、瀝青構成成分の移動度に関する情報を抽出できる。
【0283】
異なる瀝青の種類を、実施例1による好ましい候補を用いて回復させた。次いで、周波数掃引を、60℃で、0.5%のせん断変形γで0.01から100rad/秒に漸増させて測定した。この温度は、粘性項が高くなりすぎておらず、弾性項がなお強くレオロジー応答を決定する温度であるため、これを選択した。次いで、tanδを、各々のサンプルについて最低周波数において評価した(Table 5(表5)を参照されたい)。これから、本発明による好ましい候補は、損失正接を大幅に増加させる、つまり、それらは瀝青相内の移動度を大幅に増加させ、したがって、瀝青の微小構造を変化させることが分かる。この効果は、瀝青の種類に無関係に観察された。他方、実施例4.7から分かるように、RheoFalt(登録商標)HP-AM(比較例1.3)は、同じ効果を有さなかった、つまり、主に希釈時に作用するが、アスファルテンスタック及び/又はそれらの分散体を変化させる際には作用しなかった。図1から、この効果はまた、瀝青20/30において試験した他のベンチマーク(比較例1.4、1.7及び1.8)について同じであることが分かり、この効果が、本発明による好ましい候補に特有であることが示される。図1から、効果が、低周波数だけではなく全周波数範囲にわたってさえ観察されたこと、つまり、これは非常に顕著な効果であることも分かる。
【0284】
【表5A】
【0285】
【表5B】
【0286】
(実施例5)
損失正接、tanδを介してモニタリングした3×RTFOT後のエージング挙動
以下では、エージング後であってさえ、本明細書で特許請求される回復剤の分子移動度に対する正の効果が維持されることが示される。したがって、異なる瀝青の種類を、実施例4による本明細書で特許請求される回復剤の一部を用いて回復させたが、続いて、周波数掃引試験の前に反復RTFOTエージング(3サイクルのRTFOTエージング)を介してエージングさせた。下記に示される全てのグラフから、本明細書で特許請求される回復剤の、バインダーの分子移動度に対する正の効果がエージング後に維持され、また、全周波数範囲にわたって観察される、つまり微小構造に対するそれらの効果は非常に顕著なものであることが分かる。全てのグラフはまた、参照として未使用のバインダー(50/70)についての値も示しており、本明細書で特許請求される回復剤は、部分的に又は時には更には完全に、未使用のバインダーの特性を復元することができ、これはベンチマークのいずれについても観察されたことのない効果であることがよく分かる。
【0287】
まず、本発明者らは、既に詳述した通り、十分エージングされた瀝青と似ている系である瀝青20/30において本明細書で特許請求される回復剤の一部を試験した。本明細書で特許請求される回復剤の有効性を評価することができるように(図2)、本発明者らは、結果を、ベンチマークRheofalt(登録商標)HP-AMを用いて回復させた瀝青20/30(TOTAL Chimie社から購入)と比較した(図2)。本明細書で特許請求される回復剤は、全周波数範囲にわたってベンチマークよりも高い損失正接に達することが分かり、技術水準に優る本明細書で特許請求される回復剤の改善された影響が確認され、このことから、それらは瀝青微小構造に対して限られた影響しか有さないと考えられる。
【0288】
この効果が使用したバインダーとは無関係であることを示すために、異なる種類のエージングした瀝青において本発明の同じ回復剤を試験した。これらの異なる瀝青の種類は、回復前にRTFOT及びPAVを介してエージングさせた2種の異なる精製所からの2種の50/70バインダー(BP社、図3及びSchwedt社、図4)、並びに回復前にアスファルト舗装から抽出したバインダー(RAP、図5)であった。やはり、Rheofalt(登録商標)HP-AMを、これらの試験においてベンチマークとして使用した。結果から、本明細書で特許請求される回復剤は常に、ベンチマークよりも良好に実施される、つまり、3×RTFOTエージング後、それらは常に、純粋な瀝青及びベンチマークを用いて回復させた瀝青よりも高い損失正接を有したことが分かる。回復剤ポリBAPMAのみが、瀝青の種類のうちの2種においてより低い損失正接を示し、これはおそらく、この添加剤のエージングが、他の回復剤に関するよりもわずかにバインダー依存性であることを示している。
【0289】
(実施例6)
ポリマー改質瀝青(PmB)に対する回復剤性能
ここでは、ここで特許請求される回復剤の正の効果が、PmB、この場合、Olexobit 45にも当てはまりうることが示される。したがって、Olexobit 45を、実施例1の手順に従って回復させた。Table 6(表6)から、ここで特許請求される回復剤が、Olexobit 45を回復できたこと、及びそれらの効果が、試験したベンチマークについての効果よりも強かったことが分かる。図6から、非改質瀝青に関する場合と同様に、Olexobit 45について分子移動度も変化したことが分かる。この効果は、図7から分かる通り、3×RTFOTエージング後もなお持続する。加えて、Table 6(表6)のエージング指数(AI)から分かる通り、Olexobitのエージングは、回復時、変化しないか又は改善する。
【0290】
【表6】
【0291】
(実施例7)
TD NMR緩和時間測定によって評価した回復剤性能
本明細書で特許請求される回復剤に関して観察された瀝青の微小構造に対する影響が、実施例4及び5で使用したDSR周波数掃引の効果だけではないことを示すために、微小構造に対する効果を、瀝青サンプルの物理化学分析を使用して、この具体例では、時間ドメインNMR(TD NMR)を使用して、更に精査した。
【0292】
NMRリラクソメトリーとしても公知のTD NMRは、公知のNMR技術であり、周波数ドメインスペクトルの代わりに核スピン系の緩和時間の測定に依拠する。これらのパラメーターの記録は、はるかに低く、均一性の低い磁場で実現でき、したがってTD NMR分光計は、冷却を必要としない永久磁石を用いた比較的小型で頑丈な機器である。また、サンプル調製は、サンプルの均質性に関する懸念がなく、溶媒を必要としないため、はるかに単純である。
【0293】
TD NMRは、異なる局所分子移動度を有する化学環境中のプロトンが、異なる特徴的な緩和時間を示すため、瀝青微小構造に対する効果を評価する目的に非常によく適している。同様に、固体、非晶質及び液体成分中のプロトン間の明らかな区別を、良好な精度で行なうことができる。したがって、回復剤が瀝青の微小構造に影響する場合、それは、固体成分の量を減少させ、液体成分の量を増加させる。また、回復剤が効果的であるほど、液体成分の移動度が高くなる。
【0294】
瀝青20/30を、実施例1によるここで特許請求される回復剤の一部を用いて回復させた。次いで、純粋な瀝青20/30及び回復させた瀝青20/30サンプルを、TD NMRによって分析した。これを行なうため、全てのサンプルを80℃まで加熱して、サンプルをNMRチューブに充填した。その後、30℃、80℃及び140℃におけるTD NMR測定を、SE-CMPGシーケンスを使用して行なった。このシーケンスは、交互相による後続のスピンエコーのいわゆるCPMG(Carr-Purcell-Meiboom-Gill)トレインと組み合わせた固体エコーで構成され、約5桁の時間にわたる横核磁化におけるコヒーレンスの減衰を記録することが可能である。測定温度に依存して、次いで、実験データを、半実験的に選択したいくつかのガウシアン及び指数成分を含む多成分モデルを用いてフィットさせた:
【0295】
【数1】
【0296】
瀝青の分子移動度に対する温度の効果を評価するために、30℃、80℃及び140℃の温度で実験を行ない、以下のモデルがそれぞれの正規化シグナル減衰曲線の適切なフィットを提供することが明らかになった:
・30℃において2つのガウシアン及び1つの指数、
・80℃において2つのガウシアン及び2つの指数、
・140℃において3つの指数。
【0297】
フィットから、異なる値が得られうる:
・0~1の範囲にスケール調節した個々の成分のシグナル分率を示すp値(pg1、pg2、pe1、pe2及びpe3)
・個々の成分の各々に対応する緩和時間を示すT2値(T2g1、T2g2、T2e1、T2e2及びT2e3)。緩和時間が長いほど、それぞれの成分の分子移動度が高くなる。
・値T2e1、T2e2及びT2e3に加えて、本発明者らは、2つ以上の移動性成分が存在する温度(80及び140℃)について、移動性成分の平均緩和時間、1/<1/T2e>も計算した。1/<1/T2e>は、以下を含む緩和時間の調和平均として計算した:
【0298】
【数2】
【0299】
・成分の種類:
- g1:剛性成分
- g2:部分的に移動性の成分
- e1、e2及びe3:ますます高い局所分子移動度を有する移動性成分。
【0300】
剛性成分g1は、アスファルテン骨材の量と直接相関すると考えられる。他方、移動性成分は、マルテン相に寄与しうる。p値(個々の成分の量)及びT2値(緩和時間、及びしたがって成分の移動度)はいずれも、TD NMRデータの解釈のために考慮される重要な値である。
【0301】
一般に、全ての回復剤(ベンチマークを含む)が、研究した全ての温度においてより長い緩和時間(したがって、より高い分子移動度)へのシフトをもたらすことが見出された。
【0302】
全ての回復剤は、30及び80℃において固体含有量pg1を低下させ、140℃においては、回復していないサンプルにおいてさえもはや固体含有量は存在しなかった。回復剤の異なる有効性の兆候は、温度の上昇に関連して減少することが見出された。しかしながらこれは、回復剤の有効性が高温において低くなるのではなく、より高温における瀝青の温度依存性の溶融が優勢な効果であることに起因する。一定の傾向として、本明細書で特許請求される回復剤は平均的にベンチマークよりも良好に実施されたことが見出された。本明細書で特許請求される回復剤のうちのシフトの個々の序列は、温度によって異なるが、Lutensol(登録商標)XL60及びN-ドデシルピロリドンは、瀝青相の移動度に対して最大の影響を有したと言える。個々の温度についての詳細な結果を下記に記載する。
【0303】
30℃:
30℃において、剛性固体成分pg1のシグナル分率は、全ての回復させたサンプルについて減少することが見出された。試験サンプルのうち、ベンチマークは、pg1に対して最小の影響を有し、本明細書で特許請求される回復剤が最大の影響を有することが示される。固体成分pg1の緩和時間T2g1は、全てのサンプルについてほぼ同様であり、量が減少したとしても、構造の種類は変化しなかったことを意味する。同様に、全ての回復剤は、移動性成分pe1の量及びその移動度T2e1が増加し、本明細書で特許請求される回復剤が、最大の効果を有した。弱移動性ガウシアンpg2に対する影響は、それほど顕著ではないものの、同様の傾向に従う。
【0304】
【表7】
【0305】
80℃:
80℃において、剛性固体成分pg1のシグナル分率は、瀝青の溶融に起因して、30℃と比較して劇的に減少する。全ての回復させたサンプルについて、それはまた、回復していない瀝青20/30と比較して大幅に減少する。やはり、全ての本明細書で特許請求される回復剤は、Rheofalt(登録商標)HP-AMよりもpg1を減少させる。30℃の場合と同じように、固体成分pg1の緩和時間T2g1は、全てのサンプルについて同様である。指数成分の緩和時間について、弱移動性ガウシアンpg2よりも顕著な差が認められた。緩和時間T2e1及びT2e2、並びに1/<1/T2e>から、Rheofalt(登録商標)HP-AMは、移動性成分の移動度に対して最小の効果を有することが分かる。
【0306】
【表8】
【0307】
140℃:
140℃において、剛性固体成分pg1はもはやいずれのサンプルについても存在せず、つまり、全てのサンプルは液体である。この温度では、成分パターンの差は、回復していない場合に既に液体である瀝青に起因して、より低温の場合ほど顕著ではない。しかしながら、本明細書で特許請求される回復剤が、より高い移動度(pe2及びpe3)を有する成分のより高いシグナル分率を有する一方、ベンチマークは、最低移動度(pel)を有する成分の最高シグナル分率を有することが明らかに分かる。全ての成分の緩和時間は、回復剤が添加されたサンプルについて、体系的により長い。平均緩和時間1/<1/T2e>から、Rheofalt(登録商標)HP-AMが、最短のものを有する、つまり、全ての回復したサンプルのうち最低の移動度をもたらすことが分かる。
【0308】
【表9】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】