(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-05
(54)【発明の名称】分析物の検出および定量化のための磁性ナノ粒子の使用
(51)【国際特許分類】
G01N 27/72 20060101AFI20230628BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20230628BHJP
G01N 37/00 20060101ALN20230628BHJP
【FI】
G01N27/72
G01N33/543 541A
G01N37/00 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023515223
(86)(22)【出願日】2021-05-25
(85)【翻訳文提出日】2023-01-20
(86)【国際出願番号】 AU2021050497
(87)【国際公開番号】W WO2021237283
(87)【国際公開日】2021-12-02
(32)【優先日】2020-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522459166
【氏名又は名称】クアンタム アイピー ホールディングス プロプライアタリー リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100227835
【氏名又は名称】小川 剛孝
(72)【発明者】
【氏名】ポール ジェレミー キング
(72)【発明者】
【氏名】カムデン イェーウン-ワー ロー
【テーマコード(参考)】
2G053
【Fターム(参考)】
2G053AA04
2G053AB01
2G053BA08
2G053BB08
2G053BC14
2G053BC20
2G053CA01
2G053CA05
2G053CA06
2G053CB22
(57)【要約】
記載されているのは、サンプル中の分析物を検出するための方法およびデバイスであって、標的分析物を含むサンプルを磁化可能粒子と接触させることであって、粒子が標的分析物に相補的な結合分子で被覆されており、結合および非結合結合剤複合体をもたらす、接触させることと、磁場センサーに近接して、結合および非結合結合剤複合体の両方を含む磁化可能粒子を配置すること、結合および非結合結合剤複合体の両方を含む磁化可能粒子の少なくとも一部を、磁場センサーへのそれらの近接から解放するのに十分な磁場を変化させることと、磁気センサーに関連する磁化可能粒子の、並進または回転運動のいずれかである、正味の運動から検出された磁気信号における変化を測定することと、を含む、方法およびデバイスである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の分析物を検出するための方法であって、
・標的分析物を含む前記サンプルを磁化可能粒子と接触させることであって、前記粒子が前記標的分析物に相補的な結合分子で被覆されており、結合および非結合結合剤複合体をもたらす、接触させることと、
・磁場センサーに近接して、前記結合および前記非結合結合剤複合体の両方を含む前記磁化可能粒子を配置すること、
・前記結合および前記非結合結合剤複合体の両方を含む前記磁化可能粒子の少なくとも一部を、前記磁場センサーへの近接から解放するのに十分な磁場を変化させることと、
・前記磁気センサーに関連する前記磁化可能粒子の、並進または回転運動のいずれかである、正味の運動から検出された磁気信号における変化を測定することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記方法が、
・サンプルウェルまたはサンプルリザーバと、
・前記サンプルウェルまたは前記サンプルリザーバにおいて前記磁場を発生させるための1つまたは複数の磁石と、
・前記サンプルウェルまたは前記サンプルリザーバにおいて前記磁場における経時的変化を測定するための前記磁場センサーと、を備えるサンプル検査デバイスを提供すること、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記磁気センサーへの近接から前記磁化可能粒子の少なくとも一部を解放するのに十分な前記磁場を変化させることを含む前記サンプル検査デバイスを提供すること、を更に含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項4】
前記サンプル中の前記分析物の検出および定量が、前記磁場センサーを介して検出される前記磁化可能粒子の量に依存する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記磁化可能粒子が、前記分析物に明確に結合する分子で官能化される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記サンプルおよび前記磁化可能粒子が、マイクロ流体デバイスによって処理される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記マイクロ流体デバイスが、前記磁化可能粒子と前記分析物との間の結合を促進する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記磁化可能粒子が、磁化可能粒子である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記磁化可能粒子が、常磁性または強磁性である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記磁化可能粒子が、約5~約5000nmの平均粒子サイズを有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記マイクロ流体デバイスが、前記磁化可能粒子および前記分析物を前記磁気センサーと極めて近接に配置する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記磁化可能粒子および前記分析物が、前記磁気センサーの感知要素から1~5,000μm内にもたらされる、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記1つまたは複数の磁石(または電磁石)が、前記磁化可能粒子を整列させる、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記1つまたは複数の磁石が、経時的に変化する前記磁場を発生する、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
磁場発生器が、大きさの連続性を発生することができる、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
磁場発生器が、前記磁場をオンとオフの間で交互に切り替えることができる、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記磁場が、前記磁化可能粒子への影響を最大化するが、前記磁気センサーへの影響を最小化するように発生および配置される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記磁場センサーが、前記磁化可能粒子によって発生される磁場強度における経時的変化を測定する、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記磁場センサーが、前記磁化可能粒子の感知を最大化し、前記磁石からの前記感知を最小化するように適合される、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記センサーによるデータ取得が、前記マイクロ流体デバイスと同期される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
データが、前記センサーから連続的に取得される、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
取得されたデータが、(1)環境および/または周囲、または(2)サンプルデータとしてフラグ付けされる、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記方法が、前記信号取得と前記マイクロ流体デバイスの前記動作との同期に基づいて較正される、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記データが、約1秒~約60秒の期間にわたって取得される、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記磁場センサーからの前記信号出力が、信号増幅器によって増大される、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記磁場センサーからの前記信号出力が、感知する前記磁場強度に比例する電圧読み取り値である、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記磁場センサーからの電圧が、データ処理および収集電子機器と互換性のある範囲内で、すべての変化が元の信号に比例して保たれながら、大きさがより高い電圧に増大される、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記増幅された信号が、電圧読み取り値からデジタルビットストリームに変換され、コンピュータによって記録および/または分析される、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記変換が、アナログ-デジタル変換器(ADC)によって実行される、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記方法が、
a)前記サンプル中の前記標的分析物の量を検出および/または測定するのに十分な磁気信号を15秒以内に発生する、または
b)少なくとも約0.05pg/mLの検出限界(LOD)を有する、または
c)少なくとも約0.1pg/mLの定量限界(LOQ)を有する、または
d)(a)から(c)のうちの1つまたは複数である、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
請求項1~30のいずれか一項に記載の方法を実行するためのデバイスであって、前記デバイスが、前記磁場センサーと、前記磁場を発生するための1つまたは複数の磁石と、サンプルウェルまたはサンプルリザーバと、を備える、デバイス。
【請求項32】
サンプル中の分析物を検出するためのデバイスであって、
・マイクロ流体デバイスとは別の、またはマイクロ流体デバイスに統合されたサンプルウェルと、
・前記サンプルウェルにおいて磁場を発生させるための1つまたは複数の磁石と、
・前記サンプルウェルに近接する前記磁場における経時的変化を測定するための磁場センサーと、を備え、
・前記1つまたは複数の磁石が、前記磁場センサーに関連する磁化可能粒子の位置を制御するように適合されており、磁気センサーが、前記磁気センサーに関連する前記磁化可能粒子の並進または回転のいずれかである、正味の運動における変化を検出できるように使用するために適合されている、デバイス。
【請求項33】
前記デバイスが、任意の配向において動作可能である、請求項31または32に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプル中の分析物を検出するための方法に関し、より具体的には、磁化可能ナノ粒子および磁気センサーシステムの使用に関する。本発明はまた、磁化可能ナノ粒子の使用に基づいて分析物を検出するためのデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
サンプル中の分析物を検出および定量化する方法は、数多く知られている。そのようなシステムは、分析物に結合した複合体を検出および測定することによって、分析物を定量化する間接的な方法を必要とする。典型的には、そのような方法は、サンプル中の分析物に結合する結合分子に視覚化補助剤が被覆もしくは連結される、結合または認識システムに依存する。
【0003】
結合分子は、標的分析物に対する親和性に基づいて、明確に選択される抗体、酵素、または薬理学的薬剤を含み得る。分析物に直接結合する分子は、それ自体が酵素または蛍光体(蛍光標識の場合)で標識され得る。
【0004】
代替的に、分析物に直接結合する分子は、それ自体が標識されていなくてもよく、代わりに、それ自体が酵素または蛍光体で標識されている別の結合剤に結合している。この追加の標識手順は、信号を増幅し、背景染色を減らすことができる。周知の複合体は、アビジン-ビオチン複合体およびペルオキシダーゼ-抗ペルオキシダーゼ手法である。
【0005】
サンプル中の分析物を検出および定量化するための技術は、体外診断のニーズを満たすために、迅速、高感度、定性的、および/または小型化可能である必要がある。デバイスの小型化は、粘性力の増加のため、流体の混合が遅く、非効率になる可能性がある。
【0006】
臨床現場即時検査は、改善されたワークフローを与える診断検査のためのターンアラウンドタイムを短縮し、従って、改善された患者ケアに潜在的に役立つ。そのようなシステムは、バイオマーカー(例えば、タンパク質マーカーまたは核酸マーカー)を検出するセンシング技術を含まなければならない。磁化可能粒子は、基礎研究のための手動アッセイからハイスループット検査まで、分析物を検出するために使用されてきた。
【0007】
磁化可能粒子に付着した分析物を検出するための多くの既存のデバイスは、臨床現場即時検査用途における小型化には適さないか、または容易には適合しない、複雑な構成を必要とする。
【0008】
磁化可能粒子の使用は、標的分析物への結合を可能にする結合分子(例えば、標的分析物に対して高い親和性を有する抗体)による粒子の官能化に依存し、その後、分離および精製を達成するための流体交換ステップが続く。分析物捕捉率は、懸濁粒子の総表面積、したがって粒子濃度に比例することが報告されている。しかしながら、粒子濃度が高いと、概して、非特異的な粒子間相互作用および粒子表面相互作用が増加し、電界誘起が促進され、粒子凝集、粒子濃縮段階で立体障害を引き起こし、粒子の化学反応を妨害し、粒子とバイオセンシング表面との間の反応を立体的に阻害するので、非常に高濃度の粒子の使用は、統合されたマルチステップのラボオンチップアッセイの下流プロセスにとって不利である。
【0009】
標的分析物は、血液または唾液などの高濃度の背景物質を含有する、サンプル内に低濃度で存在し得る。そのような複雑なマトリックスでは、非標的分子の磁化可能粒子への非特異的付着は、アッセイの有効性を低下させることができる。
【0010】
標的分析物の磁性粒子ベースの捕捉のプロセスは、2つの成分(標的分析物および磁性粒子)間の遭遇で構成され、2つの成分が互いに関連して非常に特異的な方法でそれらの外面を整列させることに依存し得る。したがって、2つの成分の結合速度は、拡散および2つの成分の結合部位の幾何学的制約によって制限され得、また、最終的な化学反応によっても減少され得る。
【0011】
分析対象物は、流動流体または静的流体で捕捉されることができる。流動性がなければ、表面固定化抗体に依存する方法は、拡散によって制限され、結合率が低下する可能性がある。
【0012】
磁性粒子による標的分析物の捕捉後、追加処理は、検出のために必要とされる。担体としてのみ使用される場合、磁化可能粒子は、典型的には、発光標識または蛍光分子などの識別分子に結合されている。正確な検出のためには、結合した分析物のみが標識され、結合した標識のみが検出されることが重要である。これは、数回の洗浄または分離ステップが必要とする。
【0013】
磁化可能粒子はまた、感知表面での標的分析物の結合を示す標識として使用され得る。凝集アッセイは、サンプル流体中に特定の分析物が存在するときに、粒子の凝集体が形成されるプロセスを利用する。凝集度は、流体内の分析物の濃度についての尺度である。凝集アッセイは、分離または厳密性なしで1つのステップで実行されるため、試薬に負担がかかる。
【0014】
磁気凝集アッセイでは、粒子クラスターの形成は、磁場の影響下で粒子を集めることによって加速される。そのような方法論の問題は、分析物濃度が磁化可能粒子濃度よりもはるかに小さい場合、ポアソン統計によって支配される少数の粒子凝集体が形成されることである。磁場の印加は、インキュベーション中に磁場を印加することによって強化され得る。しかしながら、磁場はまた、粒子間の非特異的結合を増加させ得る。非特異的結合(すなわち、結合が標的分析物によって媒介されない)は、偽陽性信号をもたらす。非特異的結合は、ファンデルワールス相互作用、静電相互作用、疎水性相互作用などのいくつかのタイプの相互作用に起因する可能性があり、背景レベルならびに結果の統計的変動を引き起こし、したがって、定量限界および方法の精度に影響を及ぼす。
【0015】
磁化可能粒子の使用は、例えば、結合された粒子を結合されていない粒子から分離するために、粒子に追加の力を加えることができることを意味する。
【0016】
検出方法論の分析性能の評価は、定量限界(LoQ)、すなわち、所定の要求精度で定量できる最低バイオマーカー濃度に基づいている。
【0017】
特定の用途向けに磁化可能粒子を最適化し、適切な検出方法を選択することは、検出感度、分子特異性、および用途の複雑さに対する要求が高まっているため、磁性ナノテクノロジー界にとって依然として困難である。
【0018】
イムノアッセイでのGMRの使用は、分子標的を、タグ付き磁気プローブを加えたセンサー表面に固定化する、サンドイッチ型アプローチ(ELISAなど)で使用されてきた(非特許文献1、及び、非特許文献2)。
【0019】
いくつかの技術は、磁気標識された細菌におけるネール緩和(磁気双極子の誤整列)を検出および測定する、超伝導量子干渉デバイス(SQUID)を使用する。そのような技術では、磁場は、磁気双極子の整列を引き起こすためにパルス化され、その後の双極子の誤整列が検出される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】KohおよびJosephson「Magnetic nanoparticle sensors」Sensors 2009:9;8130-45
【非特許文献2】YaoおよびXu「Detection of magnetic nanomaterials in molecular imaging and diagnosis applications」Nanotechnol.Rev 2014:3;247-268
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の目的は、上述の問題の1つまたは複数に対処すること、および/またはサンプル中の分析物を検出するための方法を提供すること、および/または少なくとも公衆に有用な選択肢を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
第1の態様では、サンプル中の分析物を検出するための方法であって、
・標的分析物を含む上記サンプルを磁化可能粒子と接触させることであって、上記粒子が上記標的分析物に相補的な結合分子で被覆されており、結合および非結合結合剤複合体をもたらす、接触させることと、
・磁場センサーに近接して、上記結合および上記非結合結合剤複合体の両方を含む上記磁化可能粒子を配置すること、
・上記結合および上記非結合結合剤複合体の両方を含む上記磁化可能粒子の少なくとも一部を、上記磁場センサーへのそれらの近接から解放するのに十分な磁場を変化させることと、
・上記磁気センサーに関する上記磁化可能粒子の正味の運動(並進または回転運動)の結果として、上記磁化可能粒子から検出された磁気信号における変化を測定することと、を含む、方法が記載されている。
【0023】
更なる態様では、サンプル中の分析物を検出するための方法であって、
〇サンプルウェルまたはサンプルリザーバと、
〇上記サンプルウェルまたは上記サンプルリザーバにおいて磁場を発生させるための1つまたは複数の磁石と、
〇上記サンプルウェルまたは上記サンプルリザーバにおいて上記磁場における経時的変化を測定するための磁場センサーと、を備えるサンプル検査デバイスを提供すること、
・標的分析物を含む上記サンプルを上記サンプルウェル内の磁化可能粒子と接触させることであって、上記粒子が標的分析物に相補的な結合分子で被覆されている、接触させることと、
・上記磁化可能粒子を磁気センサーに近接して配置することと、
・上記磁化可能粒子が上記磁気センサーに関して運動(並進または回転運動)することを可能にするために上記磁場を十分に変化させることと、を含む、方法が記載されている。
【0024】
更なる態様では、分析物を検出するための方法であって、上記方法が、
a)サンプル中の標的分析物の量を検出および/または測定するのに十分な磁気信号を10秒以内に発生する、または
b)少なくとも約0.05pg/mLの検出限界(LOD)を有する、または
c)少なくとも約0.1pg/mLの定量限界(LOQ)を有する、または
d)(a)から(c)のうちの1つまたは複数である、方法が記載されている。
【0025】
更なる態様では、サンプル中の分析物を検出するためのデバイスであって、
・サンプルウェルまたはサンプルリザーバと、
・上記サンプルウェルにおいて磁場を発生させるための1つまたは複数の磁石と、
・上記サンプルウェルにおいて上記磁場における経時的変化を測定するための磁場センサーと、を備え、
上記1つまたは複数の磁石および磁気センサーが、上記磁気センサーに関する磁化可能粒子の正味の運動(並進または回転運動)に基づいて、上記磁気センサーが上記磁場における変化を上記磁気センサーが検出できるように、使用するために適合されている、デバイスが記載されている。
【0026】
更なる態様では、サンプル中の分析物を検出するための診断システムであって、上記システムが、
・標的分析物を含む上記サンプルを磁化可能粒子と接触させることであって、上記粒子が標的分析物に相補的な結合分子で被覆されている、接触させることと、
・磁化可能粒子を磁場センサーに近接して配置することと、
・上記磁化可能粒子の少なくとも一部を、上記磁場センサーへのそれらの近接から解放するのに十分な磁場を変化させることと、
・上記磁気センサーに関して運動(並進または回転運動)する上記磁化可能粒子として、上記磁化可能粒子から検出された磁気信号における変化を測定することと、を含み、
上記診断システムが、
a)上記サンプル中の上記標的分析物の量を検出および/または測定するのに十分な磁気信号を20秒以内に取得する、または
b)少なくとも約0.05pg/mLの検出限界(LOD)を有する、または
c)少なくとも約0.1pg/mLの定量限界(LOQ)を有する、または
d)(a)から(c)のうちの1つまたは複数である、システムが記載されている。
【0027】
以下の実施形態のうちの任意の1つまたは複数は、上記の態様のいずれかに関連し得る。
【0028】
一構成では、デバイスまたは診断システムは、サンプル中の標的分析物の量を検出および/または測定するために十分な磁気信号を5、10、15、または20秒以内に取得し、適切な範囲は、これらの値のいずれかの間から選択され得る。
【0029】
一構成では、磁場は、磁化可能粒子を磁場センサーに近接して配置するために印加される。
【0030】
一構成では、磁場は、サンプルを混合する。
【0031】
一構成では、サンプル中の分析物の検出および定量は、磁場センサーを介して検出される磁化可能粒子の量に依存する。
【0032】
一構成では、磁化可能粒子は、遠心力、音響または圧電性を使用して配置される。
【0033】
一構成では、磁化可能粒子は、分析物に明確に結合する分子で官能化される。
【0034】
一構成では、サンプルおよび磁化可能粒子は、マイクロ流体デバイスによって処理される。好ましくは、マイクロ流体デバイスは、磁化可能粒子と分析物との間の結合を促進する。
【0035】
一構成では、磁場は、磁化可能粒子と標的分析物との結合を増進または強化する。
【0036】
一構成では、磁化可能粒子は、磁性粒子である。
【0037】
一構成では、磁化可能粒子は、常磁性である。
【0038】
一構成では、磁化可能粒子は、強磁性である。
【0039】
一構成では、検出は、ラボオンチップデバイスによって提供される。好ましくは、ラボオンチップデバイスは、マイクロ流体デバイスを備える。
【0040】
一構成では、チップデバイスは、多重チップセット設計を有する。
【0041】
一構成では、磁化可能粒子は、約5~約500nmの平均粒子サイズを有し、適切な範囲は、これらの値のいずれかの間から選択され得る。
【0042】
一構成では、磁化可能粒子は、約5、10、50、100、150、200、250、300、350、400、450または500nmの平均粒子サイズを有し、適切な範囲は、これらの値のいずれかの間から選択され得る。
【0043】
一構成では、磁化可能粒子は、約500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、または1000nmの平均粒子サイズを有し、適切な範囲は、これらの値のいずれかの間から選択され得る。
【0044】
一構成では、磁化可能粒子は、約1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、または5000nmの平均粒子サイズを有し、適切な範囲は、これらの値のいずれかの間から選択され得る。
【0045】
一構成では、マイクロ流体デバイスは、磁化可能粒子および分析物を磁気センサーと極めて近接に配置する。
【0046】
一構成では、磁化可能粒子および分析物は、磁気センサーの感知要素から1、10、100、500、1000、2000、3000、4000または5,000μm以内にもたらされ、有用な範囲は、これらの値のいずれかの間で選択され得る。
【0047】
一構成では、1つまたは複数の磁石(または電磁石)は、磁化可能粒子を整列させる。
【0048】
一構成では、1つまたは複数の磁石は、経時的に変化する磁場を発生する。
【0049】
一構成では、磁場発生器は、大きさの連続性を発生することができる。
【0050】
一構成では、磁場発生器は、磁場をオンとオフの間で交互に切り替えることができる。
【0051】
一構成では、磁場は、磁化可能粒子への影響を最大化するが、磁気センサーへの影響を最小化するように発生および配置される。
【0052】
一構成では、磁場センサーは、磁化可能粒子の感知を最大化し、磁石からの感知を最小化するように適合される。
【0053】
一構成では、マイクロ流体デバイスが磁化可能粒子を処理し、磁気センサーと極めて近接に配置したときに、センサーからの磁場信号がサンプルからのデータとして識別可能であるように、センサーによるデータ取得は、マイクロ流体デバイスと同期される。
【0054】
一構成では、データは、センサーから連続的に取得される。好ましくは、データは、磁気センサーからの信号の処理によって取得される。
【0055】
一構成では、取得されたデータは、1)環境および/または周囲、または(2)検査データとしてフラグ付けされる。好ましくは、(1)環境および/または周囲、または(2)検査データへのデータの分類は、データ取得とマイクロ流体デバイスの動作との同期に依存する。
【0056】
一構成では、本方法は、信号取得とマイクロ流体デバイスの動作との同期に基づいて較正される。
【0057】
一構成では、データは、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、90または120秒の期間にわたって取得され、有用な範囲は、これらの値のいずれかの間で選択され得る。
【0058】
一構成では、磁気センサーからの信号出力は、信号増幅器によって増大される。
【0059】
一構成では、センサーからの信号出力は、それが感知する磁場強度に比例する電圧読み取り値である。
【0060】
一構成では、センサーからの電圧は、データ処理および収集電子機器と互換性のある範囲内で、すべての変化が元の信号に比例して保たれながら、大きさがより高い電圧に増大される。
【0061】
一構成では、増幅された信号は、電圧読み取り値からデジタルビットストリームに変換され、コンピュータによって記録される
【0062】
一構成では、変換は、アナログ-デジタル変換器(ADC)によって実行される。
【0063】
一構成では、変換速度またはサンプリング速度は、50~500,000ヘルツにすることができる。
【0064】
一構成では、変換分解能またはサンプリング分解能は、16~32ビットにすることができる。
【0065】
一構成では、信号出力は、解釈および分析のために使用されることができる読み出し値を生成するために、数学演算でデジタル処理される。
【0066】
1つの構成において、デバイスまたは診断システムの使用は、少なくとも0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.15または0.20pg/mLのLODを有し、有用な範囲は、これらの値のいずれかの間で選択され得る。
【0067】
1つの構成において、デバイスまたは診断システムの使用は、少なくとも0.1pg/mLのLODを有する。
【0068】
1つの構成において、デバイスまたは診断システムの使用は、少なくとも0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19または0.20pg/mLのLOQを有し、有用な範囲は、これらの値のいずれかの間で選択され得る。
【0069】
1つの構成において、デバイスまたは診断システムの使用は、少なくとも0.1pg/mLのLOQを有する。
【0070】
本明細書で使用される「comprising(備える、含む)」という用語は、「少なくとも部分的に~からなる」を意味する。その用語を含む本明細書の記載を解釈するとき、各記載においてその用語が前に付く特徴は、すべて存在する必要があるが、他の特徴も存在する可能性がある。「comprise(備える、含む)」や「comprised(備えられる、含まれる)」などの関連する用語も同様に解釈されるべきである。
【0071】
本明細書に開示される数の範囲(例えば、1~10)への言及は、その範囲内のすべての有理数(例えば、1、1.1、2、3、3.9、4、5、6、6.5、7、8、9、および10)への言及も組み込み、また、その範囲内の任意の範囲の有理数(例えば、2~8、1.5~5.5、および3.1~4.7)も組み込むことが意図される。
【0072】
本発明はまた、本出願の明細書において個別にまたは集合的に言及または示された部品、要素および特徴、ならびに該部品、要素または特徴の任意の2つ以上の任意またはすべての組み合わせ、および本発明が関係する技術分野で既知の同等物を有する特定の整数が本明細書で言及される場合、そのような既知の同等物は、個別に記載されるように本明細書に組み込まれると見なされる。
【0073】
本発明が関係する当業者には、添付の特許請求の範囲に定義された本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の構成における多くの変更、および広く異なる実施形態および用途が示唆されるであろう。本明細書における開示および記載は、純粋に例示であり、いかなる意味においても限定を意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0074】
ここで、本発明を、単に一例として、添付の図面を参照しながら説明する。
【0075】
【
図1】
図1は、記載されたような方法のセットアップを示すフロー図である。
【
図2】
図2は、マイクロ流体デバイスの概略図である。
【
図3】
図3は、約0.5pgのLoQを示す信号対感度のプロットを示すグラフである。
【
図4】
図4は、対照用、粒子50pg、粒子500,000pgの経時的信号取得を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0076】
記載されているのは、サンプル中の分析物を検出するための方法であって、
・標的分析物を含む上記サンプルを磁化可能粒子と接触させることであって、上記粒子が上記標的分析物に相補的な結合分子で被覆されており、結合および非結合結合剤複合体をもたらす、接触させることと、
・磁場センサーに近接して、上記結合および上記非結合結合剤複合体の両方を含む上記磁化可能粒子を配置するために磁場を印加すること(「捕捉」ステップ)と、
上記結合および上記非結合結合剤複合体の両方を含む上記磁化可能粒子の少なくとも一部を、上記磁場センサーへのそれらの近接から解放するのに十分な磁場を変化させること(「解放」ステップ)と、
・上記磁気センサーに関連する上記磁化可能粒子の正味の運動の結果として、上記磁化可能粒子から検出された磁気信号における変化を測定することとのステップを含む、方法である。運動は、並進または回転移動のいずれかである。
【0077】
記載された方法は、磁化可能粒子および分析対象物複合体を磁場センサーと極めて近接させるという概念に基づいている。磁場強度は、磁化可能粒子および分析物複合体が磁場センサーから拡散することを可能にするように(すなわち、並進または回転運動によって)調節される。次いで、磁場センサーは、磁化可能粒子がブラウン回転または拡散のために発生する磁場強度の経時的変化を測定し、磁化可能粒子-分析物複合体の量を定量化し、これによりサンプル中の分析物の量を判定することが可能になる。すなわち、結合および非結合結合剤複合体は、それらの拡散特性に基づいて区別される。磁化可能ビーズ(すなわち、結合および非結合複合体の両方)は、磁場センサーに関連して物理的に移動するため、結合および非結合複合体を区別できる(異なる拡散特性により異なる程度に移動すると仮定)。
【0078】
大まかに言うと、サンプルの分析方法には3つの段階がある。第1の段階は、プリサンプルのベースライン感知段階であり得る。この段階は、サンプルが存在しない状態でベースラインの読み取り値を得るために実行される。ベースラインの読み取り値は、後続のサンプル読み取り値のベース比較を提供する。プリサンプルのベースライン感知段階は、1、2、3、4、または5秒かかり得、適切な範囲は、これらの値のいずれかの間から選択され得る(例えば、約1~約5、約1~約4、約2~約5、約2~約3または約3~約5秒)。
【0079】
第2の段階は、サンプルをデバイスに充填することであり得る。この段階は、サンプルの混合および分析物-結合複合体化(すなわち、官能化された磁化可能粒子が分析物に結合する)を含み得る。この段階は、約3、4、5、6、7または8分かかり得、適切な範囲は、これらの値のいずれかの間から選択され得る(例えば、約3~約8、約3~約7、約3~約5、約4~約8、約4~約6、または約5~約8分)。
【0080】
第3の段階は、サンプル読み取り段階であり得る。すなわち、磁化可能粒子は、磁場センサーに近接して配置され、磁場は、結合および非結合結合剤複合体の少なくとも一部を解放するために変化され、磁気センサーは、磁気センサーに関連するそれらの正味の運動の結果として磁化可能粒子から検出された磁気信号の変化を測定する。この段階は、約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20秒かかり得、適切な範囲は、これらの値のいずれかの間から選択され得る(例えば、約10~約20、約10~約18、約10~約15、約11~約20、約11~約19、約11~約16、約11~約15、約12~約20、約12~約18、約12~約15、約13~約20、約13~約19、約13~約17、または約13~約15秒)。
【0081】
上述の通り、サンプル中の分析物の量は、磁気センサーによって検出される磁気信号の変化に基づいて判定される。磁気センサーは、磁化可能粒子の正味の運動に基づいて変化を検出する。磁場センサーへのそれらの近接から解放されると、結合および非結合結合剤複合体の両方を備える磁化可能粒子は、磁場センサーから離れる方に移動する。この運動は、ブラウン拡散に基づくランダムなものである。
【0082】
典型的には、磁場センサーは、サンプルウェルまたはサンプルリザーバの表面に接近または隣接して(非サンプル側に)配置される。結合および非結合磁化可能粒子が磁場センサーに近接して配置されるときに、結合および非結合磁化可能粒子は、解放されるまで、サンプルウェルもしくはサンプルリザーバの壁の表面で、または接近して位置し得る。磁場センサーへのそれらの近接から解放されると、磁化可能粒子は、並進的または回転的に移動し得る。サンプルウェルまたはサンプルリザーバの表面へのそれらの近接が与えられると、結合および非結合磁化可能粒子は、典型的には、サンプルウェルまたはサンプルリザーバの表面に関連して180°運動の自由度で移動し得る。ブラウン拡散は、磁化可能粒子が、磁場センサーに向かう方向を含め、任意の方向に移動し得ることを意味する。磁場センサーによって検出される磁気信号は、結合および非結合磁化可能粒子の正味の運動に基づいている。
【0083】
本発明の利点は、迅速な検出(例えば、実施例2を参照)および高感度の検出方法論(例えば、実施例1および3を参照)を含み得る。
【0084】
溶液中で遊離している分析物と磁化可能粒子との間の遭遇を考慮すると、拡散遭遇ステップは、(1)流体体積を通した拡散輸送のプロセス、および(2)表面付近の整列のプロセスに分割されることができる。体積輸送が粒子と標的分析物との最初の遭遇を生成する場合、その後の表面付近の整列プロセスは、反応物の結合部位の整列速度を扱う。体積輸送は、本質的に並進プロセスであるが、整列は、反応物の並進および回転移動度の両方によって判定される。
【0085】
遊離成分が溶液中で反応するときに、整列プロセス(すなわち、回転拡散)は、非常に特異的な整列制約のために重要な制約となるが、体積輸送(すなわち、並進拡散)は、制限ではない。成分の1つが表面に付着しているときの場合では、体積輸送は、制限となる可能性がある。
【0086】
ナノおよびミクロンサイズの磁性材料の磁気特性は、対応するバルク磁性材料の磁気特性とは異なる。典型的には、磁化可能粒子は、印加された磁場の存在下および非存在下での磁気挙動に基づいて、常磁性、強磁性、フェリ磁性、反強磁性、または超常磁性に分類される。
【0087】
反磁性材料は、磁場が存在しない場合、双極子モーメントを示さず、磁場が存在する場合、磁場の方向に逆らって整列する。
【0088】
常磁性粒子は、磁場が存在しない場合、ランダムな双極子モーメントを示し、磁場が存在する場合、磁場の方向に整列する。
【0089】
強磁性材料は、整列した双極子モーメントを示す。
【0090】
フェリ磁性材および反強磁性材料は、交互に整列した双極子モーメントを示す。
【0091】
一実施形態では、磁化可能粒子は、常磁性粒子である。そのような粒子は、磁場にさらされると磁性を帯びる。磁場が取り除かれると、粒子は、磁気特性を失い始める。
【0092】
別の実施形態では、磁化可能粒子は、強磁性粒子である。すなわち、それらは、磁場の有無に関係なく、常に磁気特性を示す。
【0093】
市販の磁化可能粒子は、Thermo Fisher Scientific製のDynaparticles M-270,Dynaparticles M-280,Dynaparticles MyOne T1,およびDynaparticles MyOne C1、Miltenyi Biotec製のμMACS MicroParticles、Spherotech製のSPHERO(商標)Superparamagnetic Particles,SPHERO(商標)Paramagnetic Particles,およびSPHERO(商標)Ferromagnetic Particlesを含む。
【0094】
磁化可能粒子は、それ自体が酸化鉄から形成されるフェライト(マグネタイトおよびマグヘマイトなど)によって形成され得る。共沈、熱分解、熱水など、酸化鉄および金属置換フェライト磁化可能粒子を合成するための様々な方法が知られている。共沈プロセスは、化学量論量の第一鉄および第二鉄塩をアルカリ溶液中でポリエチレングリコール(PEG)などの水溶性表面被覆材料と組み合わせて使用し、被覆が、コロイド安定性および生体適合性を提供する。磁化可能粒子のサイズおよび特性は、還元剤濃度、pH、イオン強度、温度、鉄塩源、又はFe2+とFe3+の比率を調整することによって制御されることができる。
【0095】
磁化可能粒子のサイズと形状は、有機溶媒の種類、加熱速度、界面活性剤、反応時間などの反応条件を変えることで調整されることができる。この方法は、サイズ範囲10~100nmにおける磁化可能粒子の狭いサイズ分布をもたらす。Fe2+は、飽和磁化を増大するために、他の金属で置換され得る。
【0096】
磁化可能粒子は、合成プロセス中に、疎水性被覆で被覆され得る。そうである場合、磁化可能粒子を製造する方法は、更なる使用のために磁化可能粒子を水中に分散させることができるように配位子交換の追加のステップを含み得る。
【0097】
磁化可能粒子は、数十~数百ナノメートルのサイズ範囲の水分散磁化可能粒子を生成するポリオール水熱還元によって製造され得る。酸化鉄磁化可能粒子のサイズおよび表面官能化は、使用される溶媒系、還元剤、および界面活性剤のタイプを調整することによって最適化され得る。このプロセスは、FePt磁化可能粒子を合成するために使用され得る。
【0098】
磁化可能粒子は、逆油中水型ミセル法によって製造され得る。この方法は、沈殿によって得られた磁性ナノ粒子を伴う油相における界面活性剤によって安定化される、鉄前駆体の水性ナノ液滴のマイクロエマルションを形成する。酸化鉄ナノ結晶は、マイクロエマルションとシリカゾルゲルを組み合わせることによって組み立てることができ、これは共沈によって100nmを超える直径を有する磁化可能粒子に得ることができる。
【0099】
金属磁化可能粒子は、単金属(例えば、Fe、Co、またはNi)またはバイメタル(例えば、FePtおよびFeCo)のいずれかであり得る。合金磁化可能粒子は、真空蒸着および気相蒸発を含む物理的方法によって合成され得る。これらの方法は、高飽和磁化(約207emu/g)を有するFeCo磁化可能粒子を生成し得、Fe3+およびCo2+塩の還元を介して合成され得る。
【0100】
磁化可能粒子は、単一の金属または金属酸化物コアを備え得る。磁化可能粒子は、複数のコア、磁性材料および非磁性材料の多層を備え得る。磁化可能粒子は、磁気シェルを有するシリカまたはポリマーコアの被覆を備え得る。非磁性コア粒子は、シリカまたは他のポリマーを備え得る。
【0101】
磁化可能粒子は、磁気シェルで被覆された誘電シリカコアを備え得る。磁気シェルは、Co、FePt、またはFe3O4から形成され得る。シェルはまた、シリカシェルまたは高分子電解質層などの安定剤を備え得る。磁化可能粒子は、メソポーラス磁化可能粒子であり得る。
【0102】
磁化可能粒子上の被覆は、磁化可能粒子と生物学的分子(分析物など)との間の相互作用、およびそれらの生体適合性を定義し得る。被覆は、表面電荷を定義するために使用されることができ、被覆とともに磁性粒子の流体力学的サイズを変更し得る。磁化可能粒子の流体力学的サイズは、磁性粒子の官能性を変え得る。
【0103】
磁化可能粒子は、静電反発力および立体反発力を提供する特定の被覆で被覆され得る。そのような被覆は、磁化可能粒子の凝集または沈殿を防ぐことができる磁化可能粒子の安定化に役立ち得る。
【0104】
磁化可能粒子は、無機材料から形成された被覆を備え得る。そのような磁化可能粒子は、コアシェル構造で形成され得る。例えば、生体適合性シリカまたは金で被覆された磁化可能粒子(例えば、シリカで被覆された合金磁性ナノ粒子、FeCoおよびCoPt)である。シェルは、磁化可能粒子を配位子(例えば、チオール)で修正するためのプラットフォームを提供し得る。他の無機被覆材料は、チタン酸塩または銀を含み得る。例えば、銀被覆酸化鉄磁化可能粒子は、合成され、カーボンペーストと統合され得る。
【0105】
シェルは、シリカから形成され得る。シリカで被覆する利点は、シリカで被覆された磁化可能粒子が、用途の広い官能性分子および表面反応基と共有結合できることである。シリカシェルは、例えば、ゾルゲル原理を使用するストーバー法、またはPhilipse法、またはそれらの組み合わせによって製造され得る。磁化可能粒子のコアは、例えば、磁気コアの表面上のシリカシェルにTEOSを凝縮および重合する塩基性条件下でのTEOSの加水分解によって、テトラエトキシシラン(TEOS)で被覆され得る。コバルト磁化可能粒子は、3-アミノプロピル)トリメトキシシランとTEOSを組み合わせた修正ストーバー法を使用して被覆され得る。
【0106】
Philipse法は、磁気コア上にケイ酸ナトリウムのシリカシェルを形成する。シリカの第2の層は、Stober法によって堆積され得る。逆マイクロエマルション法は、シリカで被覆するように使用され得る。この方法は、界面活性剤で使用され得る。界面活性剤は、約5~約20nmの厚さのシリカシェルを提供するために、Igepal CO-520から選択され得る。好ましくは、シリカシェルを製造するための試薬は、アミノ末端シランまたはアルケン末端シランから選択される。好ましくは、アミノ末端シランは、(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン(APTMS)である。好ましくは、アルケン末端シランは、3-メタクリロキシプロピル)トリメトキシルシランである。
【0107】
磁化可能粒子は、金で被覆され得る。金被覆酸化鉄ナノ粒子は、化学的方法、逆マイクロエマルジョン、およびレーザー増進方法のいずれかによって合成され得る。金で被覆された磁化可能粒子は、磁化可能粒子コアに金を直接被覆することによって合成され得る。代替的に、金被覆された磁化可能粒子は、金被覆についての中間層としてシリカを使用することによって合成され得る。好ましくは、還元は、磁化可能粒子上に金シェルを堆積させる方法として使用される。
【0108】
金属酸化物またはシリカで被覆された磁気コアは、最初に(3-アミノプロピル)トリメトキシシランで官能化された後、約2~約3nmの金ナノ結晶シード(塩化金酸から)を表面に静電的に付着させ、続いて還元剤が添加されて金シェルを形成させ得る。好ましくは、還元剤は、クエン酸ナトリウムまたは塩化テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウムから選択される穏やかな還元剤である。いくつかの実施形態では、金シェルは、酢酸金(III)(Au(OOCCH3)3)の還元から形成される。いくつかの実施形態では、金シェルは、逆ミセルによって金属磁気コア(例えば、ニッケルおよび鉄)上に形成される。
【0109】
磁化可能粒子は、有機配位子で官能化され得る。これは、その場で(すなわち、合成工程中に磁化可能粒子上に提供される官能性配位子)、または合成後に実行され得る。磁化可能粒子は、末端ヒドロキシル基(-OH)、アミノ基(-NH2)、およびカルボキシル基(-COOH)で官能化され得る。これは、水熱合成に使用される界面活性剤(例えば、デキストラン、キトサン、またはポリ(アクリル酸))を変えることによって達成され得る。
【0110】
合成後の磁化可能粒子の官能化は、任意の磁化可能粒子表面上でカスタマイズされた配位子の官能化について可能にし得る。合成後の官能化は、配位子の付加および配位子の交換によって実行され得る。リガンド付加は、二重層構造を形成するための両親媒性分子(疎水性セグメントおよび親水性成分の両方を含む)の吸着を備える。リガンド交換は、元の界面活性剤(またはリガンド)を新しい官能性リガンドに置き換える。好ましくは、新しい配位子は、強力な化学結合または静電引力のいずれかを介して磁化可能粒子表面に結合することが可能である官能基を含有する。いくつかの実施形態では、磁化可能粒子はまた、水中での安定化および/または生体官能化のための官能基を含む。
【0111】
磁化可能粒子は、イオン安定性を高める配位子で被覆され得る。官能基は、カルボキシレート、ホスフェート、およびカテコール(例えば、ドーパミン)から選択され得る。配位子は、ヒドロキシル基が豊富な表面を被覆するためのシロキサン基であり得る(例えば、金属酸化物磁性粒子またはシリカ被覆磁性粒子)。配位子は、磁化可能粒子および様々な官能性配位子(例えば、アミン、カルボキシレート、チオール、およびエポキシド)を連結する小さなシラン配位子であり得る。シラン配位子は、カルボキシレート末端磁性粒子を提供するために、N-(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン三酢酸および(トリエトキシシリルプロピル)コハク酸無水物から選択され得る。官能基は、(親水性尾部基を提供するために)ホスホン酸およびカテコールから選択され得る。官能基は、アミノ末端ホスホン酸から選択され得る。官能基は、水溶液中の分散のために、メチルホスホン酸3-(トリヒドロキシシリル)プロピルから選択され得る。配位子は、水に分散させるための磁化可能粒子のために、ジヒドロキシヒドロ桂皮酸、クエン酸、またはチオリンゴ酸から選択され得る。
【0112】
いくつかの実施形態では、磁化可能粒子は、ポリマーリガンドで官能化される。ポリマーは、天然ポリマー(例えば、デンプン、デキストランまたはキトサン)、PEG、ポリアクリル酸(PAA)、ポリ(メタクリル酸)(PMAA)、ポリ(N,N-メチレン-ビスアクリルアミド)(PMBBAm)、およびポリ(N,N/メチレンビスアクリルアミド-コグリシジルメタクリル酸)(PMG)から選択され得る。
【0113】
磁化可能粒子表面の官能基は、相補的な生体分子と結合するためのリンカーとして機能する。生体分子は、小さな生体分子であり得る。小生体分子は、ビタミン、ペプチド、およびアプタマーから選択され得る。生体分子は、より大きな生体分子であり得る。より大きな生体分子は、DNA、RNA、およびタンパク質から選択され得る。
【0114】
核酸結合に関して、核酸は、非化学的方法(例えば、静電相互作用)または化学的方法(例えば、共有結合)によって結合され得る。核酸鎖は、官能基で修正され得る。官能基は、チオールまたはアミン、またはそれらの任意の組み合わせから選択され得る。
【0115】
より大きな生体分子の結合は、特定の受容体-基質認識(すなわち、抗原-抗体およびビオチン-アビジン相互作用)など、幅広いサブトラクトおよび合成類似体との特異的結合相互作用に依存し得る。
【0116】
特定のタンパク質対は、磁性粒子上に種を固定するために使用され得る。物理的相互作用は、静電、親水性-疎水性、および親和性相互作用を含む。
【0117】
いくつかの実施形態では、生体分子は、磁性ポリマー被覆(例えば、ポリエチレンイミンまたはポリエチレンイミン)の電荷と反対の電荷を有する。例えば、負に帯電したDNAと結合する正に帯電した磁化可能粒子である。
【0118】
磁化可能粒子は、ビオチン-アビジン相互作用を利用し得る。ビオチン分子と四量体ストレプトアビジンは、抗体のFab領域の抗原への露出など、相互作用する生体分子の方向を制御するための非特異的結合が少ない部位特異的な引力を有する。
【0119】
磁化可能粒子は、共有結合を使用して生体分子に結合し得る。共有結合は、ホモ二官能性/ヘテロ二官能性架橋剤(アミノ基)、カルボジイミドカップリング(カルボキシル基)、マレイミドカップリング(アミノ基)、直接反応(エポキシド基)、マレイミドカップリング(チオール基)、シッフ塩基縮合(アルデヒド基)、およびクリック反応(アルキン/アジド基)から選択され得る。
【0120】
磁化可能粒子は、約5、10、50、100、150、200、250、300、350、400、450または500nmの平均粒子サイズを有し得、適切な範囲は、これらの値のいずれかの間から選択され得る(例えば、約5~約500、約5~約400、約5~約250、約5~約100、約5~約50、約10~約500、約10~約450、約10~約300、約10~約150、約10~約50、約50~約500、約50~約350、約50~約250、約50~約150、約100~約500、約100~約300、約150~約500、約150~約450、または約200~約500nm)。
【0121】
磁化可能粒子は、約500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、または1000nmの平均粒子サイズを有し得、適切な範囲は、これらの値のいずれかの間から選択され得る(例えば、約500~約1000、約500~約850、約500~約700、約550~約1000、約550~約800、約600~約1000、約600~約900、約650~約1000、約650~約950、約650~約800、または約700~約1000nm)。
【0122】
磁化可能粒子は、約1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、または5000nmの平均粒子サイズを有し得、適切な範囲は、これらの値のいずれかの間から選択され得る(例えば、約1000~約5000、約1000~約4000、約1500~約5000、約1500~約4500、約1500~約3500、約2000~約5000、約2000~約4000、約2500~約5000、約2500~約3500、約3000~約5000nm)。
【0123】
磁化可能ビーズの粒子サイズの変動は、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1%未満であり得、適切な範囲は、これらの値のいずれかの間から選択され得る。
【0124】
マイクロ流体は、分析の高速化および応答時間の短縮を可能にする。マイクロ流体システムはまた、サンプルの調製を自動化する能力を提供し、それによって、人為的ミスによる汚染および偽陽性のリスクを軽減する。追加的に、マイクロ流体システムは、少量のサンプル体積を必要とする。マイクロ流体は、表面積と体積の比率を増やし、マイクロおよびナノ加工されたチャネルおよびチャンバを通して試薬の消費を減らし、および/またはプロセスのすべてのステップを自動化することによって、拡散距離を短縮し得る。
【0125】
マイクロ流体は、ラボオンチップ用途を可能にする小型化を可能にする。マイクロ流体は、例えば、生物学的サンプル(例えば、唾液および/または歯肉溝滲出液)を取得すること、流体を処理すること(例えば、1つまたは複数の試薬と組み合わせること、および/または生体分子との相互作用を検出することなど)のためのチャネルを含むバイオセンサーの一部として使用され得る。
【0126】
マイクロ流体は、ある程度のサンプル調製を必要とし得る。サンプル調製は、細胞溶解、洗浄、遠心分離、分離、濾過、および溶出を含み得る。いくつかの実施形態では、サンプル調製は、オフチップで調製される。代替では、サンプル調製は、オンチップで調製される。
【0127】
いくつかの構成では、マイクロ流体システムは、硬質または柔軟な材料を含み得、デバイスに統合され得る電子機器を含み得る。電子機器は、無線通信電子機器を含み得る。
【0128】
マイクロ流体システムは、フロースルーまたは定置システムであり得る。例えば、マイクロ流体システムは、マイクロ流体システムに関連して定置している磁場センサーを備え得る。
【0129】
マイクロ流体システムは、受動的に作動し得る。例えば、マイクロ流体システムは、受動拡散下で動作し得る。すなわち、マイクロ流体システムは、効果的に実行するために積極的に生成された流れを必要としない。
【0130】
マイクロ流体システムは、リザーバのネットワークを含み得、マイクロ流体チャネルによって接続され得る。マイクロ流体チャンネルは、能動的計量または受動的計量のために構成され得る。これは、サンプル流体をマイクロ流体チャンネルに引き込み、サンプルチャンバに通過させることを可能にし得る。
【0131】
マイクロ流体システムは、デバイス上の様々なサンプルおよび/または検出領域への様々な時間でのアクセスを可能にするように構成されたマイクロ流体チャネルを含み得る。例えば、アライナ内またはアライナ上に統合されたマイクロ流体デバイスは、流体の一時的サンプリングを介してタイミングを提供するように構成され得る。例えば、マイクロ流体システムは、時系列の順序および制御されたタイミングでのサンプリングを可能にするように設計されることができる。いくつかの変形例では、マイクロチャネル内の流体のタイミングは、例えば、弁(例えば、電気機械弁、電磁弁、圧力弁)の解放を介したチャネルの開放によって、積極的に時間を計り得る。マイクロ流体ネットワークにおいて流体を制御する弁の例は、圧電、動電学、および化学的アプローチを含む。
【0132】
マイクロ流体は、連続して配列された複数のマイクロ流体チャネルを含み得る。流体は、計量された速度でマイクロ流体に引き込まれ得る。チャネルへのサンプルのアクセスのタイミングは、ずれる場合がある。
【0133】
デバイスは、信号多重化を実行し得る。すなわち、デバイスは、制御された間隔で複数のバイオマーカーをサンプリングおよび/または測定するために使用され得る。例えば、デバイスは、1つまたは複数のサンプルチャンバへのアクセスを提供するために使用され得る。デバイスは、デバイスにおける制御回路によって制御される1つまたは複数の弁を含み得る。1つまたは複数の弁は、互いに接続され得る。したがって、デバイスは、共通のサンプル本体における複数の分析物の同時検出を実行するように適合され得る。追加的にまたは代替的に、デバイスは、同じ標的の複数のサンプルの同時複数検出を実行するように構成され得る。
【0134】
マイクロ流体チャネルは、約0.001~0.01mm2、0.01~0.1mm2、0.1~0.25mm2、0.25~0.5mm2、0.1~1mm2、0.5~1mm、2、1~2mm2、または2~10mm2の範囲における断面を有し得、有用な範囲は、これらの値のいずれかの間で選択され得る。
【0135】
いくつかの実施形態では、マイクロ流体は、約0.1~1μL、1~5μL、5~10μL、10~20μL、または20~50μL以上の範囲における所定のサンプル体積を受容し、有用な範囲は、これらの値のいずれかの間で選択され得る。
【0136】
図2に示されるのは、マイクロ流体デバイス1の実施例である。マイクロ流体デバイス1は、サンプル挿入領域4からセンサー3に向かって液体および粒子の流れを導くように配列された複数のチャネル2を備え得る。
【0137】
チャネルは、上述のような断面寸法、より好ましくは、約0.1mm2(0.1mm×1.0mm)を有し得る。チャネルは、可変長であり得る。例えば、チャネルは、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、250、または300mmの長さであり得、有用な範囲は、有用な範囲は、これらの値のいずれかの間で選択され得る(例えば、約1~10、1~20、1~50、1~100、1~200、1~300、1~20、10~40、10~60、10~80、10~100、50~100、50~150、50~200、50~250、50~300、100~200、100~300mmの長さ)。
【0138】
チャネルの上記の寸法は、受動的な毛管の流れを促進する。
【0139】
使用におけるときは、サンプルは、サンプル挿入領域4を介してマイクロ流体デバイス1に導入される。
【0140】
いくつかの実施形態では、フィルタ膜は、サンプルの所望の成分を分離して通過させるために、挿入領域4に存在し得る。例えば、血液からの血漿をマイクロ流体デバイス1に通過することを可能にするが、細胞は通過させない。フィルタ膜の存在は、サンプルの性質、およびマイクロ流体デバイス1に通過しないことが望ましい成分を備えるかどうかに依存する。
【0141】
挿入領域4に導入されると、次いで、サンプルは、マイクロ流体チャネル2と接触し、チャンネル回路の残りの部分を通って流れる。
【0142】
マイクロ流体デバイス1は、チャネル2に極めて近接する1つまたは複数の磁気センサー3を備え得る。例えば、マイクロ流体デバイス1は、マイクロ流体デバイス1の周りに配列された1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の磁気センサーを備え得る。
図5に示されるように、マイクロ流体デバイス1は、チャネル2の接合点に配置された6つの磁気センサー(6)を備える。
【0143】
一実施形態では、マイクロ流体デバイス1は、混合を促進するためにチャネル2において液体を通して磁化可能粒子を引き寄せて活性化することができるチャネルに極めて近接して配列される、例えば、永久磁石または電磁石などの2つ以上の磁石を備える。混合は、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10分間実行され得、適切な範囲は、これらの値のいずれかの間から選択され得る。混合のタイミングは、サンプル体積、粘度、組成、標的分析物の検出範囲などのアッセイ要件に依存し得る。
【0144】
混合を効果的に行うために、磁石(例えば、電磁石)は、チャネルの、またはマイクロ流体デバイス1の実質的に対向する端部に配置され得る。例えば、磁石は、チャネルまたはマイクロ流体デバイス1の一端に向かって磁化可能粒子を引き寄せ、次いで、チャネルまたはマイクロ流体デバイス1の他端に向かって磁化可能粒子を引き寄せるために反転するように、制御または切り替えられ得る。このサイクルは、所望のレベルの混合が達成されるまで、複数回繰り返され得る。
【0145】
磁石は、電磁石であり得る。電磁石は、約0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45または50ガウスの場の強度を及ぼし得、適切な範囲は、これらの値のいずれかの間から選択され得る。
【0146】
サンプルが分析のために準備されたときに、次いで、磁石は、磁化可能粒子を磁気センサーの極めて近接に配置するために、制御または切り替えられ得る。磁石は、約0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、5、10、50、または100ガウスの磁場強度を及ぼし得、適切な範囲は、これらの値のいずれかの間から選択され得る。次いで、サンプルデータは、記載されたように取得される。
【0147】
磁化可能粒子は、磁気センサーによって感知される。
【0148】
磁気センサーは、スピントロニクスセンサー、原子磁力計(AM)、核磁気共鳴(NMR)システム、フラックスゲートセンサー、ファラデー誘導コイルセンサー、ダイヤモンド磁力計、および磁壁ベースのセンサーから選択され得る。
【0149】
平面ホール効果(PHE)センサーなどの体積ベースのセンサーは、シンプルかつ迅速なサンプル調製および検出を提供する。巨大磁気抵抗(GMR)などの表面ベースのセンサーは、磁化可能粒子とセンサーの間の距離が短いため、低い検出限界を提供する(単一粒子)。しかしながら、これらの技術は、典型的には、手間のかかるサンプルおよび/または基板調製を必要とする。特定の用途向けに磁化可能粒子を最適化し、適切な検出方法を選択することは、検出感度、分子特異性、および用途の複雑さに対する要求が高まっているため、磁性ナノテクノロジー界にとって依然として困難である。スピントロニクスセンサーは、巨大磁気抵抗(GMR)、トンネル磁気抵抗(TMR)、異方性磁気抵抗(AMR)、および平面ホール効果(PHE)センサーから選択され得る。
【0150】
GMR効果は、1980年代に発見され、伝統的にデータ記録において使用されてきた。スピン弁は、ミクロンサイズの設計でより高い感度を提供する。スピン弁GMRセンサーは、強磁性層と非磁性層が交互に配置された人工磁気構造で構成される。磁気抵抗効果は、異なる層を横切る伝導電子間のスピン軌道結合によって引き起こされる。磁気抵抗における変化は、このスピン依存センサーによる定量分析を提供する。GMRセンサーは、DNA-DNAまたはタンパク質(抗体)-DNA相互作用を検出するために使用され得る。センサーアレイの寸法は、個々の磁化可能粒子の検出のために調整され得る。GMRセンサーは、反強磁性粒子と組み合わせて使用され得る。
【0151】
平面ホール効果は、強磁性材料の異方性磁気抵抗効果に基づく交換バイアスパーマロイ平面センサーである。PHEセンサーは、スピン弁PHEまたはPHEブリッジセンサーであり得る。PHEセンサーは、単一粒子センシングを実行することができ得る。
【0152】
記載されているのは、サンプル中の分析物を検出するための方法であって、
・標的分析物を含む上記サンプルを磁化可能粒子と接触させることであって、上記粒子が上記標的分析物に相補的な結合分子で被覆されており、結合および非結合結合剤複合体をもたらす、接触させることと、
・磁場センサーに近接して、上記結合および上記非結合結合剤複合体の両方を含む上記磁化可能粒子を配置すること、
・上記結合および上記非結合結合剤複合体の両方を含む上記磁化可能粒子の少なくとも一部を、上記磁場センサーへのそれらの近接から解放するのに十分な磁場を変化させることと、
・上記磁気センサーに関連する上記磁化可能粒子の正味の運動(すなわち、並進または回転運動)から検出された磁気信号における変化を測定することと、を含む、方法である。
【0153】
図1に示されるように、この方法の一実施形態によるセットアップは、マイクロ流体デバイス、センサー、磁石、信号増幅器、アナログ-デジタル変換器、およびコンピュータを広く備え得る。
【0154】
標的分析物は、磁化可能粒子に提供された結合分子に相補的であり、結合分子によって結合されることが可能である任意の物質または分子であることができる。例えば、標的分析物は、タンパク質、ペプチド、核酸、脂質または炭水化物からなる群から選択されることができる。
【0155】
標的分析物は、抗体、酵素、信号伝達分子、またはホルモンからなる群から選択されるタンパク質またはそのフラグメントであり得る。
【0156】
標的分析物は、DNA、RNA、cDNA、mRNA、またはrRNAからなる群から選択される核酸であり得る。
【0157】
本方法は、単一のサンプル中の複数の標的分析物を検出し得る。例えば、本方法は、単一サンプル中の2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、10以上、15以上、20以上の標的分析物を検出し得る。
【0158】
分析されるサンプルは、1つまたは複数の標的分析物を含有し得る任意のサンプルであることができる。例えば、サンプルは、臨床、獣医学、環境、食品、法医学、または他の適切な生物学的サンプルであり得る。
【0159】
臨床サンプルは、体液から選択され得る。例えば、体液は、血液、汗、唾液、尿、痰、精液、粘液、涙、脳脊髄液、羊水、胃液、歯肉溝または間質液から選択され得る。
【0160】
環境サンプルは、水、土壌、またはエアロゾルからなる群から選択され得る。
【0161】
本発明の利点は、サンプル調製は手間がかからず、調製が困難でないことであり得る。サンプル調製は、マイクロ流体表面または磁化可能粒子表面のいずれかで、分子の官能化および付着のために確立された生化学を利用する。
【0162】
分析されるサンプルは、追加の処理なしで、サンプルウェルまたはマイクロ流体デバイスに直接追加され得る。
【0163】
サンプルは、1つまたは複数のサンプル処理ステップに供され得る。適切なサンプル処理ステップは、分析されるサンプルのタイプおよび/または性質に依存し得ることが理解されるであろう。いくつかの実施形態では、サンプル処理ステップは、希釈、濾過、または抽出(例えば、液液、固相)を含む群から選択され得る。例えば、全血サンプルは、分析される血漿を分離するために、セルロースベースのフィルタを使用して濾過され得る。
【0164】
本方法の第1のステップは、分析されるサンプルを、サンプルウェルまたはサンプルリザーバ内の標的分析物に相補的な結合分子(結合剤複合体)で被覆された自由に拡散可能な磁化可能粒子を含有する調製物で組み合わせることを含み得る。適切な場合、「結合剤複合体」という用語は、被覆された結合分子である磁化可能粒子を指すために交換可能に使用され得る。
【0165】
いくつかの実施形態では、磁化可能粒子は、限定された拡散性を有し得る。これは、磁化可能粒子が巨大分子で架橋または誘導体化されている場合に発生し得る。巨大分子は、ヒドロゲルまたはPEGリンカーであり得る。これは、1つのサンプルで複数の標的またはサンプルを検出するための多重化アッセイにデバイスを使用する場合に発生し得る。
【0166】
本方法は、移動可能であり、溶液中で自由に拡散可能な結合剤複合体を提供することによって、結合分子が標的分析物に結合する速度を改善し得る。サンプルと結合剤複合体の調製物が組み合わせられるときに、結合剤複合体は、自由に拡散し、結合分子は、サンプル体積全体にわたって標的分析物と相互作用することができる。結合剤複合体と標的分析物の両方が自由に拡散可能であり、サンプル体積内に浮遊しているため、標的分析物と結合剤複合体の間の平均的な物理的距離は、小さくなるようである。したがって、結合速度は、改善され、結合平衡は、著しく速く達成され得る。
【0167】
ELISAなどの検出アッセイでは、抗体などの結合分子は、検査ウェルの表面などのマクロスケールの物体に固定化される。そのような方法では、標的分析物と抗体との間の物理的距離は、サンプル体積中の分析物の位置に応じて著しく変化し得る。例えば、サンプル体積の上部近くにある標的分析物は、固定化された抗体からかなり離れている可能性があり、捕捉および結合される可能性は低くなるようである。このように、結合速度は、標的分析物が固定化された抗体に向かってサンプル体積内で拡散する速度によって制限され得る。
【0168】
サンプルおよび結合剤複合体は、結合分子が結合平衡に達することができるように、適切な時間について組み合わせられることが可能である。いくつかの実施形態では、結合が平衡に達するのを可能にする適切な時間は、約1、2、3、4、5、10、20、30、45、60、90、120、180、240、300または360秒であり得、有用な範囲は、これらの値のいずれかの間で選択され得る(例えば、約1~30、1~60、1~120、10~30、10~60、10~90、30~60、30~90、30~120、60~90、60~120、60~180、90~120、90~180、90~240、180~240、180~300、180~360秒)。
【0169】
磁場発生器は、サンプルの磁気流体力学的混合を誘導し、結合平衡に達する速度を改善するために使用され得る。そのような実施形態では、磁場発生器は、サンプル体積内の結合剤複合体の移動を誘導するために使用される。
【0170】
サンプル中の分析物の定量化を可能にする信号は、結合した分析物が磁場センサーから離れて移動する際の磁場の変化を測定することによって生成される。
【0171】
磁場センサーは、オンチップ磁力計であり得る。磁場センサーは、少なくとも1mV/V/ガウスの感度を有し得る。いくつかの実施形態では、磁場センサーは、少なくとも約10mガウス、1mガウス、100μガウス、または10μガウスの磁場を検出および/または測定し得る。
【0172】
磁場センサーは、複数の軸、例えば、1軸、2軸、または3軸を備え得る。
【0173】
磁場センサーは、Honeywell HMC 1021S磁力計であり得る。別の実施形態では、磁場センサーは、Honeywell HMC1041Z磁気センサーであり得る。他の実施形態では、磁場センサーは、Honeywell HMC 1001、HMC 1002、HMC 1022、HMC 1051、HMC 1052、HMC 1053、またはHMC 2003磁力計を含む群から選択され得る。
【0174】
磁場センサーは、特注の構成要素を有する特注の磁場センサーを備え得る。
【0175】
複数の磁場センサーは、磁場の変化を測定するために、同時に使用され得る。例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、22、または24個の、小型のポータブル用途についての磁界センサーである。
【0176】
磁場センサーは、デバイス内の比較的小さな領域に提供され得る。例えば、24個の磁場センサーは、約13mm×19mmの領域に提供され得る。そのような構成は、段落[0081]~[0082]で上述したように、この磁場センサー構成で使用されるより短いマイクロ流体チャネルにより、より速いサンプルからデータまでの時間を可能にする。この構成は、更に小型で携帯性の高いデバイスを可能にする。
【0177】
デバイスは、プリント回路基板の1cm2あたり約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15個の磁場センサーを備え得、有用な範囲は、これらの値のいずれかの間で選択され得る(例えば、プリント回路基板の1cm2あたり約5~約15、約5~約13、約5~約10、約6~約15、約6~約12、約6~約9、約7~約15、約7~約14、約7~約13、約7~約10、約8~約15、約8~約14、約8~約11、約9~約15、約9~約13、または約10~約15個のセンサー)。
【0178】
いくつかの実施形態では、複数の磁場センサーは、磁場の変化を測定するために、同時に使用され得る。例えば、小型のポータブル用途およびその場での実験室または臨床用途のための50、60、70、80、90、100、110または120個の磁場センサーであり、有用な範囲は、これらの値のいずれかの間で選択され得る(例えば、約50~約120、約50~約100、約50~約90、約50~約80、約60~約120、約60~約110、約60~約90、約70~約110、約70~約90、約80~約120、または約80~約110個の磁場センサー)。
【0179】
いくつかの実施形態では、複数の磁場センサーは、磁場の変化を測定するために、同時に使用され得る。例えば、実験室または臨床、研究、または産業用途のための1000、1250、1500、1750、2000、2250、2500、2750、または3000の磁場センサーである。
【0180】
本方法の更なるステップは、結合剤複合体を磁場センサーに近接して配置するために、サンプルに磁場を印加することを含み得る。段落[0171]に記載された磁場発生器は、磁場センサーが磁化可能粒子によって発生された磁場における変化を効果的に測定することが可能である位置に、結合および非結合結合剤複合体を操作するために磁場を発生するように使用され得る。
【0181】
いくつかの実施形態では、結合剤複合体は、マイクロ流体、音響、圧電性、または他の適切な手段を使用して、磁場センサーに近接して配置され得る。他の実施形態では、結合剤複合体は、遠心分離によって配置され得る。
【0182】
いくつかの実施形態では、磁場は、サンプル体積内の磁化可能粒子を磁場センサーに向かって移動する方向に発生され得る。磁場センサーは、検査ウェルまたはマイクロ流体デバイスに関連して任意の位置に提供され得る。例えば、磁場センサーが検査ウェルまたはサンプルリザーバの下に配置されている場合、磁場は、磁化可能粒子を検査ウェルまたはサンプルリザーバの底部に向かって移動する。別の実施例では、磁場センサーが検査ウェルまたはサンプルリザーバの上に配置されている場合、磁場は、磁化可能粒子を検査ウェルまたはサンプルリザーバの上部に向かって移動する。
【0183】
いくつかの実施形態では、発生される磁場は、静的または動的であり得る。
【0184】
いくつかの実施形態では、発生される磁場の強度は、調節され得る。
【0185】
理論に束縛されることは望まないが、この磁場(すなわち、バイアス磁場)の調節は、検出中に検出の最高感度を達成するために磁化可能粒子をセンサーに整列させるという主要な機能を有する。強磁性粒子の場合、それらが独自の永久磁場を持っている場合、バイアス磁場がオフになり、磁性粒子の誤整列の結果をもたらす。常磁性(または超常磁性)粒子の場合、その磁場は、外部磁場によって誘導される必要があるため、バイアス磁場は、そのような磁場を誘導する追加の機能を果たす。
【0186】
バイアス磁場は、異なる粒子が(化学組成または物理的サイズによるかどうかにかかわらず)異なるバイアス磁場の強度および構成を必要とし得るため、異なる磁化可能粒子をサポートするために調節され得る。
【0187】
いくつかの実施形態では、磁場は、磁化可能粒子への影響を最大化するが、磁気センサーへの影響を最小化するように発生および配置され得る。磁場発生器は、磁場センサーに極めて近接して生成および/または配置され得る。いくつかの実施形態では、磁場発生器は、磁場センサーの上、下、または横に配置される。いくつかの実施形態では、磁場発生器は、磁場センサーと同じ垂直面または水平面上に配置され得る。
【0188】
本方法の更なるステップは、結合および非結合結合剤複合体が磁場センサーに近接して配置されたときに、磁場センサーへのそれらの近接から結合剤複合体の少なくとも一部を解放するのに十分なだけ磁場を変化させることを含み得る。
【0189】
いくつかの実施形態では、磁場は、徐々に減少され得る。
【0190】
いくつかの実施形態では、磁場は、即座に除去され得る。
【0191】
いくつかの実施形態では、磁場は、形状において可変であり得る。
【0192】
サンプルに印加された磁場が減少および/または除去されるにつれて、結合および非結合結合剤複合体は、磁場から解放され、磁場センサーへのそれらの近接から自由に拡散(並進運動)し得る。結合剤複合体はまた、サンプルに印加された磁場が減少および/または除去されると、磁場センサーに関連して回転する(回転運動)し得る。
【0193】
本方法によれば、結合および非結合結合剤複合体は、拡散速度がその分子量の平方根に反比例するというグラハムの分子拡散の法則による分子拡散特性の変化に基づいて区別され得る。拡散速度は、以下の式を使用して計算され得る。
【数1】
ここで、
R
A=分子Aについての拡散速度、
R
B=分子Bについての拡散速度、
M
A=分子Aの分子量、および
M
B=分子Bの分子量。
【0194】
標的分析物に結合した結合剤複合体は、非結合結合剤複合体と比較して分子量が大きいため、非結合結合剤複合体は、グラハムの法則に従って拡散速度が速くなる。したがって、結合および非結合結合剤複合体は、それらの動力学的プロファイルに基づいて区別され得る。
【0195】
本方法の更なるステップは、磁場センサーに関して(並進または回転運動を介して)移動する際に、磁化可能粒子から検出された磁気信号における変化を測定することを含み得る。磁場センサーは、前の段落で詳細に記載されたように、磁化可能粒子によって発生される磁場強度の経時的変化を測定する。本方法は、標的分析物の結合のために1つの結合分子のみを必要とする、経時的磁場変化を使用する。
【0196】
いくつかの実施形態では、経時的磁場変化は、磁気抵抗効果および経時的信号減衰を測定することによって判定され得る。
【0197】
磁場センサーに関して磁化可能粒子によって発生される磁場信号は、磁気双極子場方程式に準拠する。
【数2】
ここで、
Bは、場である
rは、双極子の位置から場が測定されている位置までのベクトルである
rは、rの絶対値:双極子からの距離である
【数3】
は、rに平行な単位ベクトルである。
mは、(ベクトル)双極子モーメントである
μ
0は、自由空間の透磁率である
【0198】
磁気双極子場方程式に基づいて、検出信号は、磁場センサーからの距離の3乗まで落ち込む。上で記載された拡散動力学と合わせたこの現象は、前の段落で記載された信号発生について使用されることができる。
【0199】
非結合結合剤複合体の拡散速度が高いため、非結合結合剤複合体は、標的分析物に結合された結合剤複合体と比較したときに、より速い速度でセンサーから遠くに移動し得る。拡散速度の違いは、経時的に磁場減衰信号を発生する。減衰速度は、結合および非結合結合剤複合体の分子量に依存し、非結合結合剤複合体は、結合する結合剤複合体と比較してより速い減衰速度を有する。
【0200】
減衰率は、減衰曲線でモデル化され得る。減衰曲線は、結合する結合剤複合体と非結合結合剤複合体を区別するために使用され得る。例えば、加速された減衰曲線は、非結合結合剤複合体を示し、減衰された減衰曲線は、結合する結合剤複合体を示し得る。
【0201】
本方法は、標的分析物を定量化するために、結合および非結合結合剤複合体を区別する経時的信号曲線を生成するために、以下のステップの複数回繰り返しを含み得る。
・磁場センサーに近接して磁化可能粒子を配置するために磁場を印加する。
・磁場センサーへのそれらの近接から磁化可能粒子の少なくとも一部を解放するのに十分な磁場を変化させる。
・磁性粒子が磁気センサーから遠ざかるにつれて、磁性粒子から検出される磁気信号における変化を測定する。
【0202】
この方法は、結合または非結合結合剤複合体によって発生される全磁場強度を測定することによる基準較正ステップを含み得る。
【0203】
磁化可能粒子によって発生される磁場信号は、磁化可能粒子の固有の特性のためであり得、または外部磁場によって誘導され得る。
【0204】
磁場センサーは、磁化可能粒子のその感知を最大にするが、磁場発生器の感知を最小にするように配置される。
【0205】
磁化可能粒子からの磁場または信号は、その原子構造に固有のものであることができ、または外部磁場によって誘導されることができる。
【0206】
センサーによるデータ取得は、マイクロ流体デバイスと同期され得る。これは、検出されたセンサーからのデータを、サンプルデータまたは環境もしくは周囲データの間で特徴付けられることを可能にし得る。例えば、マイクロ流体デバイスへのサンプル注入がない信号の磁気センサーによる検出は、そのデータを環境または周囲データとして特徴付ける。環境データまたは周囲データとしてのデータの特徴付けは、背景を確立するのに役立ち得、また、較正データの調製にも役立ち得る。
【0207】
磁気センサーに極めて近接した磁化可能粒子の配置と一致する、マイクロ流体デバイスへのサンプルの注入に続く信号を磁気センサーが検出する場合、そのようなデータは、サンプルデータとして特徴付けられることができる。
【0208】
センサーからのデータ取得は、連続的であり得る。すなわち、磁気センサーは、連続的に信号を送信し、データ収集とマイクロ流体デバイスへのサンプルの注入との同期に基づいて、データをサンプルデータまたは背景データとして特徴付ける。
【0209】
センサーデータは、磁化可能粒子からの磁気信号の変化を測定するために、ある期間にわたって取得され得る。作用または事象は、感知された磁気信号における変化から推測され得る。作用または事象は、流体の流れから、外部磁力から、または拡散からの磁化可能粒子の運動を含み得る。
【0210】
本方法は、サンプル中の標的分析物の量を定量化するために、磁場センサーから出力された生データを処理することを含み得る。生データ処理は、前の段落で詳細に記載されたハードウェアおよびソフトウェア実装の組み合わせを使用して実行され得る。
【0211】
出力された生データの処理は、信号増幅器を使用して磁場センサーからの信号出力を増幅することを含み得る。磁場センサーから出力された信号は、感知された磁場に比例する電圧読み取り値であり得る。いくつかの実施形態では、信号増幅器は、Texas Instruments INA819増幅器である。
【0212】
磁場センサーからの電圧読み取り値は、データ処理および収集電子部品と互換性のある(元の電圧読み取り値に比例して)より高い電圧に大きさが増幅され得る。
【0213】
出力された生データの処理は、磁場センサーから出力されたアナログデータを出力されたデジタルデータに変換することを更に含み得る。例えば、電圧読み取り値は、コンピュータによって記録可能なデジタルビットストリームに変換され得る。
【0214】
アナログからデジタルへの変換は、アナログ-デジタル変換器(ADC)を使用して実行され得る。
【0215】
変換またはサンプリング分解能は、16、24、32、64、128、256、または512ビットであり得る。
【0216】
検出方法の分析性能の評価は、多くの場合、検出限界(LoD)が導出されることができる用量反応曲線を測定することによって行われる。LoDは、選択された信頼レベルで検出されることができるバイオマーカーなどの物質の最低量である。選択されたアッセイ(バイオマーカー、生体材料、サンプルマトリックス、インキュベーション時間など)は、LoDに強い影響を与え得る。また、特定の要求精度で定量化できる最低のバイオマーカー濃度である定量限界(LoQ)が使用される。LoQは、用量反応曲線が良好な感度を有する場合、すなわち、信号が標的濃度の関数として大きく変化する場合、LoDに接近する。
【0217】
本方法は、約0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、または2.0pg/mLのLoQを提供し得、適切な範囲は、これらの値のいずれかの間から選択され得る。
【0218】
本方法は、約0.1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、または2.0pg/mLのLoDを提供し得、適切な範囲は、これらの値のいずれかの間から選択され得る。
【0219】
本発明は、サンプル中の分析物を検出および定量する方法、試薬およびシステムを記載する。
【0220】
ハイスループットスクリーニング(HTS)システムは、多数のアッセイを比較的短時間で実施することを可能にする。HTSシステムは、マイクロプレート、マイクロプレートリーダー、ロボット液体およびマイクロプレートハンドリングプラットフォームを備え得る。いくつかの実施形態では、現在記載されている方法のうちの1つまたは複数のステップは、HTSシステムを使用して実行され得る。
【0221】
いくつかの実施形態では、マイクロプレートは、例えば、6、12、24、48、96、384、または1536個のサンプルウェルを備え得る。
【0222】
いくつかの実施形態では、磁気センサーは、マイクロプレートに提供され得る。
【0223】
いくつかの実施形態では、ロボット液体ハンドリングデバイスは、サンプルおよび/または試薬をマイクロプレート上に分配するために使用され得る。
【0224】
いくつかの実施形態では、本方法は、HTSシステムを使用して部分的または完全に自動化され得る。
【0225】
分析物を検出するためのデバイスは、任意の配向で動作可能であり得る。デバイスの動作または本方法の性能は、効果的に機能するために重力に依存しない。すなわち、デバイスは、デバイスがどのように配向されているかに関係なく、本方法を実行することができる。例えば、デバイスは、磁場センサーがサンプルリザーバまたはマイクロ流体デバイスの上方に配向される反転構成において動作可能であり得る。
【0226】
本方法は、標的分析物の検出および/または定量化を必要とする任意の用途に広く使用され得ることが理解されるであろう。特に、本方法は、サンプル中の標的分析物の存在の
i)迅速な判定、または
ii)高感度な判定、または
iii)定量的判定、または
iv)(i)~(iii)の任意の組み合わせ
を必要とする用途において使用され得る。
【0227】
例えば、適切な用途は、臨床、獣医、環境、食品安全、または法医学用途を含み得る。
【0228】
いくつかの実施形態では、臨床用途は、臨床状態を示し得るサンプル中のバイオマーカーの診断的検出を含み得る。一実施例では、本方法は、病原体による感染の可能性を示し得る、血液サンプル中の特異的抗体の迅速、高感度、および定量的診断検出に使用され得る。更なる実施例において、本方法は、がんにおいて過剰発現される特定のタンパク質バイオマーカーの診断的検出のために使用され得る。診断的検出は、異なる種にわたるサンプルで実行され得る。
【0229】
臨床状態は、細菌、真菌、ウイルス(例えば、肝炎およびHIV)(例えば、肝炎およびHIV抗体などのバイオマーカー)、寄生虫(例えば、微生物寄生虫[例えば、マラリア]、線虫、昆虫寄生虫)からの感染症などの感染症から選択され得る。
【0230】
臨床状態は、心臓病(BNPなどのバイオマーカー)、がん(例えば、固形臓器がん、血液がん、他のがん)、(例えば、Ca-125および他の腫瘍マーカーなどのバイオマーカー)、神経疾患(例えば、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病)(例えば、CNS免疫グロブリンなどのバイオマーカー)、呼吸器疾患(例えば、血清ACEなどのバイオマーカー)、肝疾患(例えば、肝機能検査およびアルブミンなどのバイオマーカー)、腎臓病(例えば、クレアチニンおよびタンパク質などのバイオマーカー)などの疾患から選択され得る。
【0231】
臨床状態は、脳損傷(例えば、グリア線維酸性タンパク質もしくはGFAPなどのバイオマーカー)、腎臓損傷(例えば、血清クレアチンなどのバイオマーカー)、心臓損傷(例えば、クレアチンキナーゼ-筋肉などのバイオマーカー)、肺損傷(例えば、細胞間接着分子-1もしくはICAM1などのバイオマーカー)、もしくは肝臓損傷(例えば、アルカリホスファターゼなどのバイオマーカー)などの臓器損傷または不全から選択され得る。
【0232】
臨床状態は、糖尿病(例えば、インスリン、昇圧、HbA1C、甲状腺機能障害、甲状腺ホルモンなどのバイオマーカー)、下垂体障害(例えば、ACTH、プロラクチン、ゴナドトロフィン、甲状腺刺激ホルモン、成長ホルモン、抗利尿ホルモンなどのバイオマーカー)、副甲状腺障害(例えば、副甲状腺ホルモンなどのバイオマーカー)、副腎障害(例えば、コルチゾール、アルドステロン、アドレナリン、DHEASなどのバイオマーカー)、性ホルモン不均衡(例えば、アンドロゲンやエストロゲンなどのバイオマーカー)、カルチノイド腫瘍(例えば、5-HIAA、VIPoma、血清VIPなどのバイオマーカー)、骨代謝の上昇(例えば、P1NPなどのバイオマーカー)などの内分泌疾患から選択され得る。
【0233】
臨床状態は、脂質障害(例えば、コレステロールおよびトリグリセリドなどのバイオマーカー)から選択され得る。
【0234】
臨床状態は、栄養障害(例えば、ビタミン欠乏症、吸収不良症候群、栄養失調、ビタミン代謝障害)、(例えば、ビタミンレベル、鉄レベル、ミネラルレベルなどのバイオマーカー)から選択され得る。
【0235】
臨床状態は、炎症または炎症性障害(例えば、ESR、Crpおよび他の急性期タンパク質などのバイオマーカー)から選択され得る。
【0236】
臨床状態は、自己免疫疾患(例えば、特異的抗体マーカーなどのバイオマーカー)から選択され得る。
【0237】
臨床状態は、アレルギー疾患(例えば、トリプターゼなどのバイオマーカー)から選択され得る。
【0238】
臨床状態は、感電死などの物理的外傷(例えば、クレアチニンキナーゼなどのバイオマーカー)から選択され得る。
【0239】
臨床状態は、免疫不全障害(例えば、分類不能型免疫不全症)(例えば、補体、白血球および免疫グロブリンなどのバイオマーカー)から選択され得る。
【0240】
臨床状態は、凝固障害(例えば、血栓症)(例えば、凝固因子および他のマーカーなどのバイオマーカーなどのバイオマーカー)から選択され得る。
【0241】
臨床状態は、遺伝性または後天性酵素障害、欠乏または過剰、および他の先天性または後天性代謝障害(例えば、バーター症候群、先天性副腎過形成)(例えば、電解質、酵素レベル、酵素の代謝産物などのバイオマーカー)から選択され得る。
【0242】
臨床状態は、高カリウム血症および高ナトリウム血症などの電解質障害(例えば、電解質などのバイオマーカー)から選択され得る。
【0243】
臨床状態は、薬物の副作用または中毒(例えば、薬物レベルおよび薬物代謝産物のレベルなどのバイオマーカー)から選択され得る。
【0244】
獣医学に特化すると、臨床状態は、腎不全、FIV/AIDS(ネコ科)、がん、および臓器機能/不全についての任意のバイオマーカーから選択され得る。
【0245】
いくつかの実施形態では、臨床状態は、ネコ科、イヌ科、ウシ科、ヒツジ科、ウマ科、ブタ科、またはネズミ科などの獣医学的対象における状態であり得る。
【0246】
いくつかの実施形態では、環境用途は、環境サンプル中の汚染物質の検出を含み得る。環境汚染物質は、例えば、鉛、粒子状物質、マイクロプラスチック、およびホルモンなどの汚染物質から選択され得る。
【0247】
例えば、本方法は、水サンプル中の重金属を監視および定量化するために使用され得る。
【0248】
いくつかの実施形態では、食品安全用途は、食品サンプル中の病原体の検出を含み得る。例えば、本方法は、細菌性病原体による乳中の低温殺菌後の汚染を迅速かつ高感度に検出するために使用され得る。
【実施例】
【0249】
実施例1:検出の感度および限界
本研究の目的は、検出の感度を検査することであった。
【0250】
磁化可能粒子の特定量は、検出のためにマイクロ流体システムに追加されていた。システムのセットアップは、以下に要約される。
・磁気センサー:Honeywell HMC 1021S磁力計
・磁性粒子:Thermo Fisher Dynaparticles T1(1μm)ストレプトアビジン粒子
・生体標識:ストレプトアビジン
・増幅器:Texas Instrument INA826
・粒子数:
〇サンプル1:対照-0pgの粒子
〇サンプル2:0.5pgの粒子
〇サンプル3:5 pgの粒子
〇サンプル4:50 pgの粒子
〇サンプル5:500 pgの粒子
〇サンプル6:50,000 pgの粒子
〇サンプル7:500,000 pgの粒子
・センサーデータの取得:
〇1読み取りあたり0.012秒
〇1サンプルあたり1,200読み取り
〇合計読み取り時間約15秒
【0251】
マイクロ流体システムに導入された後、粒子は、マイクロ流体デバイスによってセンサー上に配置された。磁石は、磁化可能粒子を磁気センサーに極めて近接させるために作動された。次いで、磁石は、オフにされ、センサーの下に配置された永久磁石がバイアス場を発生するために使用された。磁場センサーは、磁化可能粒子が磁気センサーから離れて拡散する際に発生する磁場強度の経時的変化を測定した。本デバイスは、磁場センサーに関連する磁化可能粒子の正味の運動を測定することによって、サンプル中の分析物の量を判定する。
【0252】
センサーデータは、各サンプルについて取得された。
【0253】
次いで、センサーデータは、次のとおり処理された。30サンプルウィンドウの移動平均フィルタは、適用され、データは、経時的に平均化され、陰性対照サンプル(サンプル1)に対して正規化された。
【0254】
図3は、縦軸を任意単位(a.u.)の信号として表された、検出された信号を示すグラフである。
【0255】
粒子の量は、横軸上でピコグラム(pg)として表されている。
【0256】
その結果は、粒子の数が多いほど感度および信号取得が改善されていることを実証する。
【0257】
図3のグラフは、感度プロットであり、約0.5pgのLoQが実証されている。
【0258】
実施例2:検出の速度
本研究の目的は、検出システムの速度を検査することであった。
【0259】
磁化可能粒子の特定量は、検出のためにマイクロ流体システムに追加されていた。システムのセットアップは、以下に要約される。
・磁気センサー:Honeywell HMC 1021S磁力計
・磁性粒子:Thermo Fisher Dynaparticles T1(1μm)ストレプトアビジン粒子
・生体標識:ストレプトアビジン
・増幅器:Texas Instrument INA826
・粒子数:
〇サンプル1:対照-0pgの粒子
〇サンプル2:50pgの粒子
〇サンプル3:500,000pgの粒子
・センサーデータの取得:
〇1読み取りあたり0.012秒
〇1サンプルあたり1,200読み取り
〇合計読み取り時間約15秒
【0260】
マイクロ流体システムに導入された後、粒子は、マイクロ流体デバイスによってセンサー上に配置された。磁石は、磁化可能粒子を磁気センサーに極めて近接させるために作動された。次いで、磁石は、オフにされ、センサーの下に配置された永久磁石がバイアス場を発生するために使用された。磁場センサーは、磁化可能粒子が磁気センサーから離れて拡散する際に発生する磁場強度の経時的変化を測定した。本デバイスは、磁場センサーに関連する磁化可能粒子の正味の運動を測定することによって、サンプル中の分析物の量を判定する。
【0261】
センサーデータは、各サンプルについて取得された。
【0262】
次いで、センサーデータは、次のとおり処理された。30サンプルウィンドウの移動平均フィルタは、適用され、データは、陰性対照サンプル(サンプル1)に対して正規化された。
【0263】
図4に示されるのは、縦軸を任意単位(a.u.)の信号として表された、経時的信号取得を示すグラフである。
【0264】
各読み取りの時点は、横軸上で秒(s)として表された。
【0265】
その結果は、サンプル内に存在する粒子の量を定性的に測定および識別するために、本方法が15秒以内に十分な信号を取得できることを実証する。
【0266】
図4のグラフは、データ取得プロットについての時間であり、15秒未満における高速サンプル検出およびデータ収集を実証する。
【0267】
図4のグラフは、上記のシステムが非常に少量の粒子(すなわち、ピコグラム範囲)に応答し、数秒で迅速に検出および識別できることを示す。
【0268】
実施例3:サンプル中のストレプトアビジンタンパク質の検出
この研究の目的は、標的分析物としてのサンプル中のストレプトアビジンタンパク質の定量的検出を実証することであった。
【0269】
ラテックス粒子(非磁性粒子)に結合されたビオチンは、検出のためにマイクロ流体システムに追加された特定量のストレプトアビジンを捕捉し、関連付けるために、使用されていた。システムのセットアップは、以下に要約される。
・磁気センサー:Honeywell HMC 1021S磁力計
・磁性粒子:Thermo Fisher Dynaparticles T1(1um)ストレプトアビジン粒子
・生体標識:ストレプトアビジン
・増幅器:Texas Instrument INA826
・サンプル
〇サンプル1:磁化可能粒子に結合された0pmol/mlストレプトアビジンタンパク質
〇サンプル2:磁化可能粒子に結合された0.33pmol/mlストレプトアビジンタンパク質
〇サンプル3:磁化可能粒子に結合された3.3pmol/mlストレプトアビジンタンパク質
〇サンプル4:磁化可能粒子に結合された33pmol/mlストレプトアビジンタンパク質
〇サンプル5磁化可能粒子に結合された:330pmol/mlストレプトアビジンタンパク質
・センサーデータの取得:
〇1読み取りあたり0.012秒
〇1サンプルあたり1,200読み取り
〇合計読み取り時間約15秒
【0270】
マイクロ流体システムに導入された後、粒子は、マイクロ流体デバイスによってセンサー上に配置された。磁石は、磁化可能粒子を磁気センサーに極めて近接させるために作動された。次いで、磁石は、オフにされ、センサーの下に配置された永久磁石がバイアス場を発生するために使用された。磁場センサーは、磁化可能粒子が磁気センサーから離れて拡散する際に発生する磁場強度の経時的変化を測定した。本デバイスは、磁場センサーに関連する磁化可能粒子の正味の運動を測定することによって、サンプル中の分析物の量を判定する。
【0271】
センサーデータは、各サンプルについて取得された。
【0272】
次いで、センサーデータは、次のとおり処理された。30サンプルウィンドウの移動平均フィルタは、適用され、データは、経時的に平均化され、陰性対照サンプル(サンプル1)に対して正規化された。
【0273】
表1に示されるのは、ビオチン捕捉およびストレプトアビジンタンパク質の結合を介して検出された信号であり、任意単位(au)としての信号である。
【表1】
【0274】
表1は、本発明の方法が3.3pmol/mL以下でストレプトアビジンのレベルを検出できることを実証する。
【0275】
実施例4:定量化の感度および限界
この研究の目的は、異なる種のサンプルにおけるバイオマーカーの感度および定量的検出を実証することであった。
【0276】
磁化可能粒子は、各抗体がそれぞれ特定バイオマーカーを標的とする、組換え抗体で官能化された。官能化された磁化可能粒子は、定量化のためにマイクロ流体システムに追加された各サンプル中の特定濃度のバイオマーカーを捕捉し、関連付けるために、使用されていた。システムのセットアップは、以下に要約される。
・磁気センサー:Honeywell HMC 2003磁力計
・磁性粒子:抗体で化学的に官能化されたNanocs MP25-AV(直径30nm):
〇抗ヒトCRP検出抗体(R&D Systems DY1707)
〇抗ヒトアルブミン検出抗体(R&D Systems DY1455)
〇抗イヌ科IL-6検出抗体(R&D Systems DY1609)
〇抗イヌ科VEGF-A検出抗体(R&D Systems DY1603)
〇抗ネコ科TNFα検出抗体(R&D Systems DY2586)
〇抗ネコ科GM-CSF検出抗体(R&D Systems DY987)
〇抗ウマ科TNFα検出抗体(R&D Systems DY1814)
・増幅器:Honeywell HMC 2003 内蔵増幅器
・センサーデータの取得:
〇1読み取りあたり0.007秒
〇1サンプルあたり1,000読み取り
〇合計読み取り時間約10秒
・サンプル(組換えタンパク質):
〇ヒトCRP
〇ヒトアルブミン
〇イヌ科IL-6
〇イヌ科VEGF-A
〇ネコ科TNFα
〇ネコ科GM-CSF
〇ウマ科TNFα
【0277】
マイクロ流体システムに導入された後、粒子は、マイクロ流体デバイスによってセンサー上に配置された。磁石は、磁化可能粒子を磁気センサーに極めて近接させるために作動された(「捕獲」ステップ)。次いで、磁石は、オフにされた(「解放」ステップ)。磁場センサーは、磁化可能粒子が磁気センサーから離れて拡散する際に発生する磁場強度の経時的変化を測定した。
【0278】
センサーデータは、各サンプルについて取得された。
【0279】
次いで、センサーデータは、次のとおり処理された。データは、最初の10回の読み取り全体で平均をとり、次いで、各相対陰性対照サンプルについて正規化された。
【0280】
表2に示されるのは、各サンプルについて、抗体捕捉およびバイオマーカーとの関連付けを介して検出されたセンサー値(任意単位[a.u.])である。
【表2】
【0281】
表2における結果は、様々な種のバイオマーカーの範囲にわたって0.1pg/mLの範囲での定量限界を実証する。結果はまた、0.1~10,000pg/mLの6桁にわたるバイオマーカー検出を実証する。
【国際調査報告】