(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-06
(54)【発明の名称】複合負極材料およびその製造方法、負極材料およびリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/485 20100101AFI20230629BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
H01M4/485
H01M4/36 C
H01M4/36 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022546389
(86)(22)【出願日】2021-11-01
(85)【翻訳文提出日】2022-07-29
(86)【国際出願番号】 CN2021127974
(87)【国際公開番号】W WO2022237091
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】202110520487.6
(32)【優先日】2021-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522057847
【氏名又は名称】蜂巣能源科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100142365
【氏名又は名称】白井 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】許▲しん▼培
(72)【発明者】
【氏名】江衛軍
(72)【発明者】
【氏名】陳思賢
(72)【発明者】
【氏名】鄭暁醒
(72)【発明者】
【氏名】王鵬飛
(72)【発明者】
【氏名】施澤涛
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050BA17
5H050CB03
5H050EA02
5H050FA17
5H050FA18
5H050GA10
5H050GA16
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA20
(57)【要約】
本発明は、複合負極材料およびその製造方法、負極材料およびリチウムイオン電池を提供する。当該複合負極材料は欠陥型遷移金属酸化物とチタン酸リチウムとを含み、チタン酸リチウムは、コーティングおよび/またはドーピングの方式で欠陥型遷移金属酸化物と複合し、欠陥型遷移金属酸化物は二次粒子であり、欠陥型遷移金属酸化物における遷移金属元素は、タングステン、イットリウム、スズのいずれか1種から選択される。本発明は、チタン酸リチウムを欠陥型遷移金属酸化物にコーティング・ドーピングすることで、欠陥型遷移金属酸化物と電解液との副反応の可能性を大幅に低減することができる。一方、チタン酸リチウムの「ゼロ歪性」は、リチウムイオンの脱インターカレーション過程中の電池負極の体積膨張効果を大幅に低減するため、当該複合負極材料の安定性がさらに向上し、その結果、当該複合負極材料を含むリチウムイオン電池のサイクル後の容量維持率が高くなる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
欠陥型遷移金属酸化物とチタン酸リチウムとを含む複合負極材料であって、前記チタン酸リチウムは、コーティングおよび/またはドーピングの方式で前記欠陥型遷移金属酸化物と複合し、前記欠陥型遷移金属酸化物は二次粒子であり、前記欠陥型遷移金属酸化物における遷移金属元素は、タングステン、イットリウム、スズのいずれか1種から選択される、ことを特徴とする複合負極材料。
【請求項2】
前記欠陥型遷移金属酸化物と、前記チタン酸リチウムとの質量比は、1:0.005~1:0.03である、ことを特徴とする請求項1に記載の複合負極材料。
【請求項3】
前記欠陥型遷移金属酸化物は、欠陥型酸化タングステン、欠陥型酸化イットリウム、欠陥型酸化スズのいずれか1種から選択される、ことを特徴とする請求項1または2に記載の複合負極材料。
【請求項4】
前記複合負極材料の平均粒子径は2.0μm~5.0μmであり、前記複合負極材料の比表面積は15.0m
2/g~50.0m
2/gである、ことを特徴とする請求項1または2に記載の複合負極材料。
【請求項5】
前記二次粒子の平均粒子径は2.0μm~5.0μmであり、前記欠陥型遷移金属酸化物の二次粒子は一次粒子が凝集して得られ、前記一次粒子の平均粒子径は200nm~500nmである、ことを特徴とする請求項1に記載の複合負極材料。
【請求項6】
前記チタン酸リチウムの平均粒子径は100nm~300nmである、ことを特徴とする請求項1に記載の複合負極材料。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の複合負極材料の製造方法であって、欠陥型遷移金属酸化物と、チタン酸リチウムとを乾式混合して前記複合負極材料を得るステップを含み、前記欠陥型遷移金属酸化物は二次粒子である、ことを特徴とする製造方法。
【請求項8】
前記乾式混合の過程で攪拌を行い、前記攪拌の回転数は2000r/min~3000r/minであり、前記攪拌の時間は10min~20minである、ことを特徴とする請求項7に記載の複合負極材料の製造方法。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか1項に記載の複合負極材料を含む、ことを特徴とする負極材料。
【請求項10】
負極シートを含み、前記負極シートは請求項9に記載の負極材料を含むことを特徴とするリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池の技術分野に関し、具体的には、複合負極材料およびその製造方法、負極材料およびリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は,エネルギー密度が高く、循環性能に優れ、自動車や電子産業などの分野に広く応用されている。リチウムイオン電池の動作中に、リチウムイオンは、正極と負極の間に往復移動し、電気化学的平衡を実現するために外部回路に電流を発生する。ここで、正極と負極はリチウムイオンのインターカレーションと脱インターカレーションの役割を果たすため、負極のリチウムイオンに対する収容効果がリチウムイオン電池の性能を決定する。
【0003】
現在、商業化されている負極材料は、一般に炭素材料(グラファイト、軟質炭素、硬質炭素など)である。しかし、グラファイト材料は一般的な負極材料として、その理論容量は372mAh/gにすぎず、リチウムイオンの収容能力が低く、有機溶媒との適合能力が劣り、電解液と反応しやすく、リチウムイオンの脱インターカレーション能力を低下させる。シリコン系材料の理論容量は4200mAh/gに達するが、リチウムイオンの脱インターカレーション過程中の体積膨張と収縮が比較的深刻であり、材料構造の破壊と機械的粉砕をもたらしやすく、さらに悪いサイクル性能を示す。遷移金属酸化物は、理論容量が良好で供給源が豊富であるという利点があるが、導電率が低いという問題もあり、従来技術では、遷移金属酸化物の導電性を改善するために欠陥性遷移金属酸化物が使用されているが、導電率の改善は制限されており、且つ、欠陥性遷移金属酸化物の活性が向上しているため、電解液中で他の副反応が起こりやすくなるため、リチウムイオン電池の全体的な電気的特性が低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の主な目的は、従来技術において遷移金属酸化物を負極材料とするリチウムイオン電池のサイクル後の容量維持率が劣るという問題を解決するために、複合負極材料及びその製造方法、負極材料及びリチウムイオン電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明の一態様によれば、欠陥型遷移金属酸化物とチタン酸リチウムとを含む複合負極材料を提供し、チタン酸リチウムは、コーティングおよび/またはドーピングの方式で欠陥型遷移金属酸化物と複合し、欠陥型遷移金属酸化物は二次粒子であり、欠陥型遷移金属酸化物における遷移金属元素は、タングステン、イットリウム、スズのいずれか1種から選択される。
【0006】
さらに、上記欠陥型遷移金属酸化物と、チタン酸リチウムとの質量比は、1:0.005~1:0.03である。
【0007】
さらに、上記欠陥型遷移金属酸化物は、欠陥型酸化タングステン、欠陥型酸化イットリウム、欠陥型酸化スズのいずれか1種から選択される。
【0008】
さらに、欠陥型酸化タングステンの化学式は、WO2.72、WO2.9、Y2O3.12、SnO2.14のいずれか1種または複種から選択される。
【0009】
さらに、上記複合負極材料の平均粒子径は2.0~5.0μmである。
【0010】
さらに、複合負極材料の比表面積は15.0~50.0m2/gである。
【0011】
さらに、上記二次粒子の平均粒子径は2.0~5.0μmであり、欠陥型遷移金属酸化物の二次粒子は一次粒子が凝集して得られる。
【0012】
さらに、一次粒子の平均粒子径は200~500nmである。
【0013】
さらに、上記チタン酸リチウムの平均粒子径は100~300nmである。
【0014】
本発明の一態様によれば、上記複合負極材料の製造方法を提供し、当該製造方法は、欠陥型遷移金属酸化物と、チタン酸リチウムとを乾式混合して複合負極材料を得るステップを含み、欠陥型遷移金属酸化物は二次粒子である。
【0015】
さらに、上記乾式混合の過程で攪拌を行い、攪拌の回転数は2000~3000r/minである。
【0016】
さらに、攪拌の時間は10~20minである。
【0017】
本発明の別の態様によれば、負極材料を提供し、当該負極材料は上記の複合負極材料を含む。
【0018】
本発明のさらなる態様によれば、負極シートを含むリチウムイオン電池を提供し、当該負極シートは上記の負極材料を含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明の技術的解決策を適用することにより、欠陥型遷移金属酸化物の導電性は、対応する従来の遷移金属酸化物と比較して改善されるが、同時に、欠陥型遷移金属酸化物の結晶歪みにより化学活性が高くなり、電解液との副反応が起こりやすく、リチウムイオン電池の電気的特性に影響を与える。本発明は、チタン酸リチウムを欠陥型遷移金属酸化物にコーティング・ドーピングすることで、欠陥型遷移金属酸化物の構造をより安定させ、コーティングされたチタン酸リチウムは、電解液に直接接触している欠陥型遷移金属酸化物の面積を低減し、欠陥型遷移金属酸化物と電解液との副反応の可能性を大幅に低減する。一方、チタン酸リチウムの「ゼロ歪性」は、リチウムイオンの脱インターカレーション過程中の電池負極の体積膨張効果を大幅に低減するため、当該複合負極材料の安定性がさらに向上し、その結果、当該複合負極材料を含むリチウムイオン電池のサイクル後の容量維持率が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明の一部を構成する明細書の図面は、本発明のさらなる理解を提供するために用いられ、本発明の概略的な実施例およびその説明は、本発明を説明するために用いられ、本発明の不当な制限を構成するものではない。図面において、
【0021】
【
図1】本発明の実施例1に提供されたWO
2.72のSEM図である。
【
図2】本発明の実施例1に提供された複合負極材料のSEM図である。
【
図3】本発明の実施例1に提供されたWO
2.72のエネルギースペクトル解析図である。
【
図4】本発明の実施例1に提供された複合負極材料のエネルギースペクトル解析図である。
【
図5】本発明の実施例1に提供された複合負極材料、比較例1に提供された負極材料のサイクル後の容量維持率図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本願における実施例および実施形態の特徴は、矛盾がない場合、互いに組み合わせることができることに留意されたい。以下、図面を参照して実施例と併せて本発明を詳細に説明する。
【0023】
背景技術で分析されるように、従来技術では、遷移金属酸化物を負極材料とするリチウムイオン電池は、サイクル後の容量維持率が低いという問題があり、この問題を解決するために、本発明は、複合負極材料およびその製造方法、負極材料およびリチウムイオン電池を提供する。
【0024】
本発明の典型的な実施形態では、複合負極材料を提供し、当該複合負極材料は欠陥型遷移金属酸化物とチタン酸リチウムとを含み、チタン酸リチウムは、コーティングおよび/またはドーピングの方式で欠陥型遷移金属酸化物と複合し、欠陥型遷移金属酸化物は二次粒子であり、欠陥型遷移金属酸化物における遷移金属元素は、タングステン、イットリウム、スズのいずれか1種から選択される。
【0025】
欠陥型遷移金属酸化物の導電性は、対応する従来の遷移金属酸化物と比較して改善されるが、同時に、欠陥型遷移金属酸化物の結晶歪みにより化学活性が高くなり、電解液との副反応が起こりやすく、リチウムイオン電池の電気的特性に影響を与える。本発明は、チタン酸リチウムを欠陥型遷移金属酸化物にコーティング・ドーピングすることで、欠陥型遷移金属酸化物の構造をより安定させ、コーティングされたチタン酸リチウムは、電解液に直接接触している欠陥型遷移金属酸化物の面積を低減し、欠陥型遷移金属酸化物と電解液との副反応の可能性を大幅に低減する。一方、チタン酸リチウムの「ゼロ歪性」は、リチウムイオンの脱インターカレーション過程中の電池負極の体積膨張効果を大幅に低減するため、当該複合負極材料の安定性がさらに向上し、その結果、当該複合負極材料を含むリチウムイオン電池のサイクル後の容量維持率が高くなる。
【0026】
本発明の一実施例では、上記欠陥型遷移金属酸化物と、チタン酸リチウムとの質量比は、1:0.005~1:0.03である。
【0027】
チタン酸リチウムの添加量が多すぎると、複合負極材料の導電性が悪くなりすぎ、チタン酸リチウムの添加量が少なすぎると、複合負極材料のサイクル安定性等の電気的特性の向上が小さくなりすぎ、欠陥型遷移金属酸化物とチタン酸リチウムとの割合は、両者の相乗効果をより十分に発揮し、総合性能が最適化した負極材料を得るためには、上記の割合が好ましい。
【0028】
欠陥型遷移金属酸化物とチタン酸リチウムの相乗効果をさらに高め、より多様な複合負極材料を得るために、好ましくは、上記欠陥型遷移金属酸化物は、欠陥型酸化タングステン、欠陥型酸化イットリウム、欠陥型酸化スズのいずれか1種から選択される。上記の各欠陥型遷移金属酸化物は、市販の欠陥型遷移金属酸化物を用いて、または技術文献に開示された製造方法を用いて製造することができ、本願のいくつかの実施例では、採用された欠陥型酸化タングステンの化学式は、WO2.72、WO2.9、Y2O3.12、SnO2.14のいずれか1種または複種から選択される。
【0029】
ここで、欠陥型酸化タングステンWO2.72の製造効率を向上させるために、好ましい製造方法は、回転炉で、パラタングステン酸アンモニウムであるタングステン源(供給速度50~100g/minである。)を原料とし、NH3(2~10L/min)を通過させて750~810℃(昇温速度2~5℃/min)の温度でH2を生成することにより、パラタングステン酸アンモニウムを高温で還元させて欠陥型紫色酸化タングステン(WO2.72)を生成し、タングステン源がメタタングステン酸アンモニウム、パラタングステン酸アンモニウム、タングステン酸アンモニウムのいずれか1種から選択され、炉管の回転数が2回転/分である。当業者は、もちろん、従来技術における他の製造方法を参照してWO2.72を製造することも可能であるが、ここでは繰り返さない。
【0030】
本発明の一実施例では、上記複合負極材料の平均粒子径は2.0~5.0μmであり、好ましくは、複合負極材料の比表面積は15.0~50.0m2/gである。
【0031】
複合負極材料の平均粒子径と比表面積は、複合負極材料と電解液との接触面積に影響を与え、複合負極材料の表面積が大きいほど、その反応性は高くなる。そのため、複合負極材料の比表面積が大きいほど、副反応の可能性が高くなり、複合負極材料の比表面積が小さいほど、複合負極材料と電解液とのイオン交換に影響を及ぼす可能性があり、上記パラメータ範囲における好ましい複合負極材料は、複合負極材料をより好適な反応性を有させることができる。
【0032】
チタン酸リチウムの平均粒子径をより欠陥型遷移金属酸化物の粒子径に一致させ、欠陥型遷移金属酸化物にできるだけコーティング・ドーピングすることにより、欠陥型遷移金属酸化物に対する改質効果を高めるために、好ましくは、上記二次粒子の平均粒子径は2.0~5.0μmであり、欠陥型遷移金属酸化物の二次粒子は一次粒子が凝集して得られ、好ましくは、一次粒子の平均粒子径は200~500nmである。
【0033】
本発明の一実施例では、上記チタン酸リチウムの平均粒子径は100~300nmである。
【0034】
上記平均粒子径範囲のチタン酸リチウムは、欠陥型遷移金属酸化物と作用することをより助長し、それによって欠陥型遷移金属酸化物にコーティング・ドーピングして、改質することができる。
【0035】
本発明の別の典型的な実施例では、複合負極材料の製造方法を提供し、当該製造方法は、欠陥型遷移金属酸化物と、チタン酸リチウムとを乾式混合して複合負極材料を得るステップを含み、欠陥型遷移金属酸化物は二次粒子である。
【0036】
欠陥型遷移金属酸化物の導電性は、対応する従来の遷移金属酸化物と比較して改善されるが、同時に、欠陥型遷移金属酸化物の結晶歪みにより化学活性が高くなり、電解液との副反応が起こりやすく、リチウムイオン電池の電気的特性に影響を与える。本発明は、チタン酸リチウムを乾式混合により欠陥型遷移金属酸化物にコーティング・ドーピングすることにより、チタン酸リチウムが欠陥型遷移金属酸化物にコーティング・ドーピングすることで、欠陥型遷移金属酸化物の構造をより安定させ、コーティングされたチタン酸リチウムは、電解液に直接接触している欠陥型遷移金属酸化物の面積を低減し、欠陥型遷移金属酸化物と電解液との副反応の確率を大幅に減らす。一方、チタン酸リチウムの「ゼロ歪性」は、リチウムイオンの脱インターカレーション過程中の電池負極の体積膨張効果を大幅に低減するため、当該複合負極材料の安定性がさらに向上し、その結果、当該複合負極材料を含むリチウムイオン電池のサイクル後の容量維持率が高くなる。
【0037】
欠陥型遷移金属酸化物とチタン酸リチウムとの混合をより均質に混合するために、好ましくは、上記乾式混合の過程で攪拌を行い、攪拌の回転数は2000~3000r/minであり、好ましくは、攪拌の時間が10~20minである。
【0038】
本発明の別の典型的な実施形態では、上記の複合負極材料を含む負極材料を提供する。
【0039】
電池の負極材料として上記複合負極材料を採用しているため、電池がより優れた電気的特性を有する。
【0040】
本発明のさらなる典型的な実施形態では、負極シートを含むリチウムイオン電池を提供し、上記負極シートは上記の複合負極材料を含む。
【0041】
上記の負極材料を含むリチウムイオン電池は、より優れた電気的特性を有する。
【0042】
以下、本発明の有益な効果について、具体的な実施例及び比較例を参照して説明する。
【0043】
実施例1
回転炉(炉管の回転数2回転/分)で、5(NH4)2O・12WO3・5H2O(供給速度50g/min)を原料とし、NH3(5L/min)を通過させて800℃(加熱速度5℃/min)の温度でH2生成することにより、パラタングステン酸アンモニウムを還元させて欠陥型紫色酸化タングステン(WO2.72)を調製し、欠陥型紫色酸化タングステンを篩に掛けし(篩網は100メッシュ)、一次粒子の平均粒子径は200nmであり、得られた欠陥型紫色酸化タングステンWO2.72(二次粒子)の平均粒子径は2.0μmであった。
【0044】
欠陥型紫色酸化タングステンWO
2.72とLi
4Ti
5O
12を高速ミキサーで、速度2000r/min、混合時間10minで混合し、最後にチタン酸リチウム(平均粒子径100nm)と紫色酸化タングステンの複合負極材料を獲得し、欠陥型紫色酸化タングステンWO
2.72とLi
4Ti
5O
12の質量比は1:0.01であった。ここで、WO
2.72のSEM図を
図1に、複合負極材料のSEM図を
図2に、WO
2.72のエネルギースペクトル解析図を
図3に、複合負極材料のエネルギースペクトル解析図を
図4に、複合負極材料のサイクル後の容量維持率を
図5に示す。
【0045】
実施例2
実施例2と実施例1との違いは、
欠陥型紫色酸化タングステンWO2.72(二次粒子)と、Li4Ti5O12とを高速ミキサーで3000r/minの回転数で混合して、最終的に複合負極材料を得たことである。
【0046】
実施例3
実施例3と実施例1との違いは、
欠陥型紫色酸化タングステンWO2.72(二次粒子)と、Li4Ti5O12とを高速ミキサーで2500r/minの回転数で混合して、最終的に複合負極材料を得たことである。
【0047】
実施例4
実施例4と実施例1との違いは、
欠陥型紫色酸化タングステンWO2.72(二次粒子)と、Li4Ti5O12とを高速ミキサーで1000r/minの回転数で混合して、最終的に複合負極材料を得たことである。
【0048】
実施例5
実施例5と実施例1との違いは、
一次粒子の平均粒子径が300nmであり、欠陥型紫色酸化タングステンWO2.72の平均粒子径が3.5μmであり、最終的に複合負極材料を得たことである。
【0049】
実施例6
実施例6と実施例1との違いは、
一次粒子の平均粒子径が500nmであり、欠陥型紫色酸化タングステンWO2.72の平均粒子径が5μmであり、最終的に複合負極材料を得たことである。
【0050】
実施例7
実施例7と実施例1との違いは、
一次粒子の平均粒子径が100nmであり、欠陥型紫色酸化タングステンWO2.72の平均粒子径が0.1μmであり、最終的に複合負極材料を得たことである。
【0051】
実施例8
実施例8と実施例1との違いは、
チタン酸リチウムの平均粒子径が200nmであり、最終的に複合負極材料を得たことである。
【0052】
実施例9
実施例9と実施例1との違いは、
チタン酸リチウムの平均粒子径が300nmであり、最終的に複合負極材料を得たことである。
【0053】
実施例10
実施例10と実施例1との違いは、
チタン酸リチウムの平均粒子径が400nmであり、最終的に複合負極材料を得たことである。
【0054】
実施例11
実施例11と実施例1との違いは、
攪拌の時間が20minであり、最終的に複合負極材料を得たことである。
【0055】
実施例12
実施例12と実施例1との違いは、
攪拌の時間が8minであり、最終的に複合負極材料を得たことである。
【0056】
実施例13
実施例13と実施例1との違いは、
欠陥型紫色酸化タングステンWO2.72と、チタン酸リチウムとの質量比が1:0.005であり、最終的に複合負極材料を得たことである。
【0057】
実施例14
実施例14と実施例1との違いは、
欠陥型紫色酸化タングステンWO2.72と、チタン酸リチウムとの質量比が1:0.03であり、最終的に複合負極材料を得たことである。
【0058】
実施例15
実施例15と実施例1との違いは、
欠陥型紫色酸化タングステンWO2.72と、チタン酸リチウムとの質量比が1:0.004であり、最終的に複合負極材料を得たことである。
【0059】
実施例16
実施例16と実施例1との違いは、
欠陥型紫色酸化タングステンWO2.72と、チタン酸リチウムとの質量比が1:0.035であり、最終的に複合負極材料を得たことである。
【0060】
実施例17
実施例17と実施例1との違いは、
欠陥型紫色酸化タングステンWO2.72の代わりにY2O3.12(二次粒子の平均粒子径が2.0μmである。)を使用し、最終的に複合負極材料を得たことである。
【0061】
比較例1
比較例1と実施例1との違いは、欠陥型紫色酸化タングステンWO
2.72をそのまま負極材料とすることであり、当該負極材料のサイクル後の容量維持率図を
図5に示す。
【0062】
実施例1~17の複合負極材料、比較例1で得られた負極材料の平均粒子径および比表面積をそれぞれ表1に示す。
【0063】
【0064】
実施例1~17で製造した複合負極材料、比較例1で得られた負極材料をそれぞれ10.0g秤量し、SP(アセチレンブラック)0.1579gと、脱泡機中で800r/minの攪拌速度で3min攪拌混合し、固形分1%のCMCガム液15.79gを加えて、2000r/minで10min混合し、型番SN307のバインダーエマルジョンを0.4386g添加し、脱泡機中で2000r/minの攪拌速度で3min攪拌した。最後に得られたスラリーを銅箔に均一に塗布し、80℃で乾燥させた。乾燥した極片を直径14mmの円形シートに切断し、リチウムシートを負極として、2032型ボタン電池をグローブボックス内で組み立て、2.0Vで各ボタン電池の0.1Cでの放電容量とサイクル後の容量維持率を試験し、試験結果を表2に示す。
【0065】
【0066】
以上の説明から、本発明の上記実施形態は、以下の技術的効果を奏することが明らかである。
【0067】
欠陥型遷移金属酸化物の導電性は、対応する従来の遷移金属酸化物と比較して改善されるが、同時に、欠陥型遷移金属酸化物の結晶歪みにより化学活性が高くなり、電解液との副反応が起こりやすく、リチウムイオン電池の電気的特性に影響を与える。本発明は、チタン酸リチウムを欠陥型遷移金属酸化物にコーティング・ドーピングすることで、欠陥型遷移金属酸化物の構造をより安定させ、コーティングされたチタン酸リチウムは、電解液に直接接触している欠陥型遷移金属酸化物の面積を低減し、欠陥型遷移金属酸化物と電解液との副反応の可能性を大幅に低減する。一方、チタン酸リチウムの「ゼロ歪性」は、リチウムイオンの脱インターカレーション過程中の電池負極の体積膨張効果を大幅に低減するため、当該複合負極材料の安定性がさらに向上し、その結果、当該複合負極材料を含むリチウムイオン電池のサイクル後の容量維持率が高くなる。
【0068】
上記は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を限定するものではなく、当業者にとって様々な変更および変化が可能なものである。本発明の精神および原理の範囲内で行われた修正、均等置換、改良等は、本発明の保護範囲に含まれるものとする。
【国際調査報告】