(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-06
(54)【発明の名称】IL-10ムテイン
(51)【国際特許分類】
C12N 15/24 20060101AFI20230629BHJP
C07K 14/54 20060101ALI20230629BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230629BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20230629BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20230629BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20230629BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20230629BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230629BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230629BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20230629BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230629BHJP
C12N 15/63 20060101ALN20230629BHJP
C12N 7/01 20060101ALN20230629BHJP
【FI】
C12N15/24
C07K14/54 ZNA
C07K19/00
C12N15/62 Z
C07K16/00
C07K14/705
A61K38/20
A61P29/00
A61P37/02
A61P1/04
A61P35/00
C12N15/63 Z
C12N7/01
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022554913
(86)(22)【出願日】2021-03-10
(85)【翻訳文提出日】2022-11-02
(86)【国際出願番号】 GB2021050592
(87)【国際公開番号】W WO2021181091
(87)【国際公開日】2021-09-16
(32)【優先日】2020-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】510279918
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ ダンディー
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF DUNDEE
(71)【出願人】
【識別番号】517007264
【氏名又は名称】アンセルム(アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル)
(71)【出願人】
【識別番号】518338518
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ドゥ・リール
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE LILLE
(71)【出願人】
【識別番号】522359811
【氏名又は名称】サントル オスピタリエ ルジョナル ユニヴェルシテール ドゥ リール
【氏名又は名称原語表記】CENTRE HOSPITALIER REGIONAL UNIVERSITAIRE DE LILLE
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100173473
【氏名又は名称】高井良 克己
(72)【発明者】
【氏名】クレア ゴルビー
(72)【発明者】
【氏名】イグナシオ モラガ ゴンザレス
(72)【発明者】
【氏名】スーマン ミトラ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084CA53
4C084DA12
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA661
4C084ZA662
4C084ZB071
4C084ZB072
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZB261
4C084ZB262
4H045AA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA02
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、野生型IL-10と比較して改善された特徴を示す、IL-10の修飾形態またはムテインおよびその変異体に関するものである。本発明はさらに、治療方法を含む方法における、IL-10のそのような修飾形態またはムテインおよびその変異体の使用に関するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
完全長成熟野生型IL-10と比較して、18位、92位および99位に少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、IL-10ムテイン。
【請求項2】
18位、92位および99位に少なくとも2つのアミノ酸置換を含む、請求項1に記載のIL-10ムテイン。
【請求項3】
18位、92位および99位の3つのすべての位置にアミノ酸置換を含む、請求項1に記載のIL-10ムテイン。
【請求項4】
18位に置換を含み、該置換はYまたはI(承認された1文字アミノ酸コードに従ったレタリング)である、請求項1~3のいずれかに記載のIL-10ムテイン。
【請求項5】
92位に置換を含み、該置換はIである、請求項1~4のいずれかに記載のIL-10ムテイン。
【請求項6】
99位に置換を含み、該置換はNである、請求項1~5のいずれかに記載のIL-10ムテイン。
【請求項7】
1つまたは複数のさらなる置換を含むが、前記野生型IL-10配列と比較して、典型的には10、9、8、または7つ未満の置換である、請求項1~6のいずれかに記載のIL-10ムテイン。
【請求項8】
前記1つまたは複数のさらなる置換は、55位、69位、97位、110位、111位および/または148位にある、請求項7に記載のIL-10ムテイン。
【請求項9】
前記IL-10ムテインは、SEQ ID NO:5、7、11または15の配列と少なくとも97、98、99%または100%同一であるが、対応する野生型IL-10配列(SEQ ID NO:1)とは異なる、SEQ ID NO:5、7、11または15において同定されるアミノ酸置換を少なくとも含む、請求項1~8のいずれかに記載のIL-10ムテイン。
【請求項10】
さらに異なるタンパク質分子またはタンパク質分子の一部に融合した請求項1~9のいずれかに記載のIL-10ムテインを含む、融合タンパク質。
【請求項11】
前記さらなる分子は、インターロイキン(IL)分子などの異なるサイトカインである、請求項10に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
前記さらなるIL分子は、野生型または変異体IL-4分子である、請求項10に記載の融合タンパク質。
【請求項13】
前記融合タンパク質は、SEQ ID NO:17、19、21、または23において同定される配列と少なくとも97、98、99%、または100%同一であるが、前記野生型IL-10配列とは異なる、SEQ ID NO:11において同定されるアミノ酸置換を少なくとも含む配列を含む、請求項10~12に記載の融合タンパク質。
【請求項14】
前記IL-10分子は、PEG化、リン酸化、アミド化および/またはグリコシル化によってさらに修飾される、請求項1~13のいずれかに記載のIL-10ムテインまたは融合タンパク質。
【請求項15】
請求項1~14のいずれかに記載のIL-10ムテインまたは融合タンパク質を、薬学的に許容される賦形剤とともに含む、医薬組成物。
【請求項16】
抗がん剤、抗炎症剤、または免疫寛容促進剤などのさらなる医薬活性剤をともに含む、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記さらなる医薬活性剤は、CAR T細胞などの免疫細胞または抗がん剤もしくは抗炎症性抗体である、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
治療方法において使用するための、請求項1~17のいずれかに記載のIL-10ムテイン、融合タンパク質、または医薬組成物。
【請求項19】
炎症、自己免疫疾患、移植片対宿主病、炎症性腸疾患/クローン病またはがんの治療方法において使用するための、請求項18に記載のIL-10ムテイン、融合タンパク質、または医薬組成物。
【請求項20】
請求項1~14に記載のIL-10ムテインまたは融合タンパク質をコードする、DNAまたはRNA分子などのポリヌクレオチド。
【請求項21】
請求項20に記載のポリヌクレオチドを含む、プラスミド、ウイルス、細胞、脂質ナノ粒子、またはリポプレックス。
【請求項22】
前記IL-10ムテインは、野生型IL-10のIL-10Rβへの結合と比較して100倍、好ましくは1000倍低いKdでIL-10Rβに結合する、請求項1~14に記載のIL-10ムテインまたは融合タンパク質。
【請求項23】
前記IL-10ムテインは二量体を形成する、請求項1~14に記載のIL-10ムテインまたは融合タンパク質。
【請求項24】
前記IL-10ムテインは、少なくとも1つのポリペプチド結合ドメイン、好ましくは抗体またはその断片、最も好ましくは単鎖抗体、例えばVHHに融合している、請求項10~13に記載の融合タンパク質。
【請求項25】
前記ポリペプチド結合ドメインは、CD27、CD137、2B4、TIGIT、CD155、ICOS、HVEM、CD40L、LIGHT、OX40、DNAM-1、PD-L1、PD1、PD-L2、CTLA-4、CD8、CD40、CEACAM1、CD48、CD70、A2AR、CD39、CD73、B7-H3、B7-H4、BTLA、IDOl、ID02、TDO、KIR、LAG-3、TIM-3および/またはVISTA、好ましくはPD-L1、PD1から選択される少なくとも一つのチェックポイント分子に結合する、請求項24に記載の融合タンパク質。
【請求項26】
前記ポリペプチド結合ドメインは、CD1a、CD1c、CD11c、CD14、CD32b、CD123、CD141、CD206(MR)、CD2007(ランゲリン)、BDCA-1、BDCA-2、BDCA-3、BDCA-4、CADM1(Necl2)、Clec9A、DEC-205、DC-SIGN、DCIR2(Clec4A4)、LSP-1、SIRPアルファおよび/またはXCR1から選択される少なくとも1つの樹状細胞表面マーカーに結合する、請求項24に記載の融合タンパク質。
【請求項27】
前記ポリペプチド結合ドメインは、アルファ(v)インテグリン(αvβ1、αvβ3、αvβ5およびαvβ8など)、CHI3L1(YKL-40)、CXCR4、E-セレクチン、FAP、EDAおよびEDBフィブロネクチン、ガレクチン-3、ICAM-1、IGF2R(CI-MPR)、LFA-1、MadCAM-1(アドレシン)、MUC2、MUC4、PDGFRアルファ、PDGFRベータ、PSGL-1、STRA6(RBP受容体)、ならびに/またはVCAM-1から選択される少なくとも1つの炎症性組織マーカーに結合する、請求項24に記載の融合タンパク質。
【請求項28】
前記ポリペプチド結合ドメインは、CD11b、CD40、CD45、CD68、CX3CR1、EMR1(F4/80)、Iba1および/またはTMEM19から選択される少なくとも1つのミクログリアマーカーに結合する、請求項24に記載の融合タンパク質。
【請求項29】
前記ポリペプチド結合ドメインは、EpCAM、EGFR、HER-2、HER-3、c-Met、FoIR、PSMA、CD38、BCMA、CEA、5T4、AFP、B7-H3、カドヘリン-6、CAIX、CD117、CD123、CD138、CD166、CD19、CD20、CD205、CD22、CD30、CD33、CD40、CD352、CD37、CD44、CD52、CD56、CD70、CD71、CD74、CD79b、CLDN18.2、DLL3、EphA2、ED-Bフィブロネクチン、FAP、FGFR2、FGFR3、GPC3、gpA33、FLT-3、gpNMB、HPV-16E6、HPV-16E7、ITGA2、ITGA3、SLC39A6、MAGE、メソテリン、Muc1、Muc16、NaPi2b、ネクチン-4、P-カドヘリン、NY-ESO-1、PRLR、PSCA、PTK7、ROR1、SLC44A4、SLTRK5、SLTRK6、STEAP1、TIM1、Trop2および/またはWT1から選択される少なくとも1つの腫瘍抗原に結合する、請求項24~28に記載の融合タンパク質。
【請求項30】
前記IL-10ムテインは、半減期延長分子、好ましくはFc分子などの免疫グロブリン断片、または血清タンパク質、好ましくはアルブミンに対するポリペプチド結合ドメインに融合している、請求項24~29に記載の融合タンパク質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、野生型IL-10と比較して改善された特徴を示す、IL-10の修飾形態、つまりムテインと、その変異体に関するものである。本発明はさらに、治療方法を含む方法における、IL-10のそのような修飾形態、つまりムテインと、その変異体の使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン-10(IL-10)は、強力な抗炎症反応を誘発する免疫制御のための特徴的なサイトカインである。IL-10は、自然細胞の表面の主要組織適合性複合体(MHC)レベルおよび共刺激分子を減少させて自然細胞の抗原提示能を低下させることにより、免疫反応の適応力を制御する(de Waal Malefyt et al., 1991b、Willems et al., 1994)。さらに、IL-10は単球、マクロファージおよびT細胞を含む様々な細胞型からの炎症促進性サイトカインの産生を強力に抑制し(Fiorentino et al., 1991a, Fiorentino et al., 1991b)、抗炎症性環境にさらに寄与する。IL-10の健全な免疫反応への重要な寄与は、IL-10欠損のヒトがクローン病および大腸炎などの重度の自己免疫疾患を発症するという発見によってさらに強調される(Correa et al., 2009, Zhu et al., 2017)。IL-10のヒトの健康との関連度にもかかわらず、IL-10の広範な抗炎症活性の誘発を可能にする分子基盤は十分に理解されていない。
【0003】
IL-10は、その強力な抗炎症特性から、自己免疫疾患を治療するための非常に魅力的な創薬標的と見なされていた。しかし、マウス研究での有効性にもかかわらず(Saxena et al., 2015, Cardoso et al., 2018)、IL-10療法は臨床で有益な結果を得ることができず、いくつかの臨床試験においては、患者において軽度の有効性および偏った反応しか示さなかった(Colombel et al., 2001, Buruiana et al., 2010)。IL-10の臨床有効性の低さを説明する主な仮説は、IL-10療法中に低レベルの同サイトカインが消化管に到達するため、効果的な反応が得られないというものである。しかし、IL-10の用量がその免疫調節能にどのように影響するかについては、現在に至るまで十分に理解されていない。より標的化されたIL-10送達のための戦略の開発は、まだ初期段階の研究ではあるが、臨床有効性の増強を示し、このモデルを裏付けている。(Cardoso et al., 2018, Steidler et al., 2000, Shigemori and Shimosato, 2017, Braat et al., 2006)。治療的に適切な用量で強い反応を誘発する能力を有するIL-10変異体は、非常に望ましいであろう。
【0004】
抗炎症活性に加えて、最近の研究においては、IL-10がCD8T細胞の細胞傷害性機能を高め、腫瘍を標的化する能力を増強し、抗がん反応を高めることが可能であることが示されている(Oft, 2019)。腫瘍の微小環境におけるIL-10は、おそらく抗原提示に対するIL-10の抑制効果が原因となって、腫瘍の免疫反応回避に関連しているため、これは逆説的に思われる(Yue et al., 1997, Mannino et al., 2015)。この逆説にもかかわらず、いくつかの研究は、IL-10がin vitroおよびin vivoの両方でCD8エフェクタ分子グランザイムBおよびインターフェロンγの産生を改善することが可能であることを見事に実証している(Emmerich et al., 2012, Mumm et al., 2011, Mumm and Oft, 2013)。現在、IL-10の抗腫瘍特性を試験する臨床試験がいくつかあり、すでに最初の有望な結果が得られている(Naing et al., 2019)。これらの試験においては、高用量のPEG化IL-10(ペギロデカキン)が使用された結果、IL-10の循環内での保持が延長されて有効性が保証され、効果的なin vivoでのIL-10反応にはIL-10が高濃度であり、かつレベルが維持されることが必要であることが再度強調されている。
【0005】
IL-10は二量体サイトカインであり、2つのIL-10Rαおよび2つのIL-10Rβ受容体サブユニットから構成される表面受容体に結合することにより活性を発揮し、JAK1/TYK2/STAT3/STAT1シグナル伝達経路の活性化と特定の遺伝子発現プログラムの誘導を引き起こす。動力学的には、IL-10はまず高い親和性で2分子のIL-10Rαと結合し、第2ステップにおいては低い親和性で2分子のIL-10Rβをリクルートして、活性シグナルを発する六量体のIL-10複合体を形成する。他のサイトカインと比較した場合のIL-10系の顕著な特徴は、IL-10が極めて弱い、高μM/低mM範囲の桁の親和性でIL-10Rβに結合することであり(Logsdon et al., 2002)、これによりこの系はリガンドおよび/または受容体の濃度のいずれかの変化に対して非常に感度が高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、IL-10のin vivo活性の低さが、IL-10Rβサブユニットに対する親和性の弱さに起因するという仮説に基づいている。IL-10Rβとより高い親和性で結合するIL-10変異体は、このサイトカインのin vivoでの制限を克服し、IL-10に基づく療法をレスキューする可能性を有する。この仮説を検証するために、本発明者らは、酵母表面ディスプレイ工学プラットフォームを使用して、IL-10Rβに野生型IL-10(wt)の1000倍よく結合する、新しいIL-10変異体を作製した。
【0007】
第1の態様において、完全長成熟野生型IL-10と比較して、18位、92位および99位に少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、IL-10ムテインが提供される。言い換えれば、IL-10ムテインは、18位、92位および99位から選択される位置に1つまたは複数のアミノ酸置換を含む。番号付けは、SEQ ID NO:1に示される野生型IL-10配列に関するが、同定された野生型およびムテインIL-10配列の最初の18アミノ酸残基を構成するシグナルペプチド配列は除外されている。疑念を避けるために述べると、成熟野生型配列はSer Pro Glyから始まる。さらなる疑念を避けるために述べると、本明細書で使用されるアミノ酸置換は、本明細書に例示されるように、アミノ酸を別の天然に存在するアミノ酸で置換することを指す。
【0008】
一実施形態において、IL-10ムテインは、18位、92位および99位から選択される位置、またはそれらの位置に少なくとも2つのアミノ酸置換を含む。一実施形態においては、IL-10ムテインは、18位、92位および99位の3つのすべての位置にアミノ酸置換を含む。
【0009】
一実施形態において、18位に置換があり、該置換はYまたはIである(承認された1文字アミノ酸コードに従ったレタリング)。
【0010】
一実施形態において、92位に置換があり、該置換はIである。
【0011】
一実施形態において、99位に置換があり、該置換はNである。
【0012】
任意に、IL-10ムテインは、1つまたは複数のさらなる置換を含んでいてもよいが、典型的には、野生型IL-10配列と比較して10、9、8、または7つ未満の置換を含む。一実施形態において、前記1つまたは複数のさらなる置換は、55位、69位、97位、110位、111位および/または148位にあってよい-ここでも、番号付けはSEQ ID NO:1で同定されるwtIL-10配列との比較であり、野生型配列の最初の18アミノ酸残基を構成するシグナルペプチド配列は除外されている。
【0013】
一実施形態において、IL-10ムテインは、SEQ ID NO:5、7、11または15の配列を含む、からなる、またはから本質的になる。この文脈においては、「~から本質的になる」とは、SEQ ID NO:5、7、11または15の配列と少なくとも97、98または99%同一であるが、野生型IL-10配列(SEQ ID NO:1)とは異なる、SEQ ID NO:5、7、11または15において同定されるアミノ酸置換を少なくとも含むIL-10ムテインを指す。
【0014】
従って、上記の同定された変異に加えて、本発明のIL-10ムテインは、IL-10ムテインの活性に実質的に悪影響を及ぼさない限り、1つまたは複数のさらなるアミノ酸修飾、例えば置換(保存的置換など)、挿入、欠失、または逆位を含んでいてもよい。
【0015】
IL-10は、その機能的に活性な天然状態において、2つの同一の単量体から形成される二量体として見出される。本明細書に記載のIL-10ムテインは、該して単量体配列で記載されるが、二量体が2つの単量体IL-10ムテイン配列から形成されてもよいことが理解されよう。より詳細に記載されるように、本発明者らはまた、IL-10ムテイン融合物を開発しており、これは、別の分子に融合された本明細書に記載のIL-10ムテインを含む。さらに本発明者らは、記載のようなIL-10ムテインの五量体形態について記載する。
【0016】
野生型IL-10は二量体形態で見出されるため、その操作は困難であり、本発明者らは、Walterグループによって以前に記載された単量体IL-10変異体を工学的足場として使用した(Josephson et al., 2000)。本発明者らは、野生型と比較して親和性を高めた単量体IL-10変異体を作製し、次にこれを天然の二量体立体構造に変換して、単量体および二量体形態のIL-10ムテインを得た。これらの分子によって、IL-10受容体結合親和性およびIL-10受容体複合体化学量論のIL-10生物学への寄与を評価するユニークな機会が本発明者らに提供された。本明細書に提示されるデータは、IL-10のIL-10Rβに対する親和性を増加させることが、分子レベルおよび細胞レベルの両方でIL-10の既知の特性を増強させることを示している。定量的イメージング研究により、本明細書に記載のIL-10ムテインは、単量体形態または二量体などの多量体形態のいずれかで、受容体複合体会合の改善を示し、その結果、操作されたサイトカインによるSTAT1およびSTAT3因子のより強力な活性化がもたらされることが明らかになった。親和性を増強させたIL-10変異体は、そのシグナル伝達プロファイルの改善に一致して、単球およびCD8T細胞における野生型リガンドよりも強い遺伝子発現プログラムならびにより強い細胞反応を誘導した。提示されたデータはさらに、IL-10の用量がどのように免疫調節活性を制御しているかについての新しい洞察を提供し、本明細書に記載のIL-10ムテインが、より幅広い用量範囲でより強い生理活性を誘発することにより、野生型IL-10よりも明らかに治療上有利になることを示している。
【0017】
好都合なことに、本明細書に記載のIL-10ムテインは、野生型IL-10と比較して、より高いIL-10受容体結合親和性および/または機能活性を示し得る。一実施形態において、前記IL-10ムテインは、野生型IL-10と比較して、より高い親和性でIL-10Rβに結合する。好都合なことに、親和性の増大は、当該技術分野において既知のIL-10親和性を決定するための適切なアッセイ(Moraga et al, 2015a参照)に従って、または本明細書に記載されているように決定することができる。典型的には、親和性(典型的にはKdを単位とする)の増大は、少なくとも2倍、例えば5倍、10倍、25倍、50倍、100倍、250倍、500倍、1000倍、またはそれ以上であってよい。機能的活性の増大は、当業者に既知である適切なIL-10活性アッセイに関連して決定されてもよい。適切な活性アッセイは、例えば、STAT1および/またはSTAT3因子の活性化、遺伝子発現および/または細胞反応の増強を対象とし得る。IL-10のそのような機能的活性を検出するための適切なアッセイは当業者に知られており、例えばMoore et al, 2001に記載されている。
【0018】
さらなる実施形態では、IL-4(例えばSEQ ID NO:19)などのさらに異なるIL分子、または他の分子と融合した、本明細書に記載のIL-10ムテインが提供される。さらに異なるIL分子は、野生型でもよいし変異IL分子でもよい。一実施形態では、共通ガンマ鎖またはIL-13Rα1と結合せず、従ってIL4およびIL-13のアンタゴニストとして作用する変異IL-4分子と融合した、本明細書に記載のIL-10ムテインが提供される。一実施形態では、このようなIL-10ムテイン/IL-4融合体は、IL-10Rα/IL-10Rβ/IL-4Rαを含む三量体受容体複合体をリクルートし、抗炎症特性を示し得る。例示的な融合タンパク質は、SEQ ID NO:19において同定される配列と少なくとも97、98、99%、または100%同一であるが、野生型IL-10配列(SEQ ID NO:1)とは異なる、SEQ ID NO:11において同定されるアミノ酸置換を少なくとも含む配列を含む。
【0019】
本明細書に記載のIL-10ムテインは、少なくとも1つのポリペプチド結合ドメイン、例えば抗体またはその断片、例えばVHHのような単鎖抗体に融合してもよい。特定の教示においては、ポリペプチド結合ドメインは、以下のいずれかの1つまたは複数に結合することができる:
CD27、CD137、2B4、TIGIT、CD155、ICOS、HVEM、CD40L、LIGHT、OX40、DNAM-1、PD-L1、PD1、PD-L2、CTLA-4、CD8、CD40、CEACAM1、CD48、CD70、A2AR、CD39、CD73、B7-H3、B7-H4、BTLA、IDOl、ID02、TDO、KIR、LAG-3、TIM-3および/またはVISTA、好都合にはPD-L1、PD1から選択される少なくとも一つのチェックポイント分子;
CD1c、CD11c、SIRPa、CD206/MR、CD14、CD141、XCR1、Clec9a、CADM1/Necl2(Saxena & Bhardwaj, 2017参照)、Clec9a、CD141、XCR1、CADM1、CD1c、CD32b、CD123、BDCA-2、BDCA-4、CD141、CD1c、CD11c、CD1a、ランゲリン/CD207、CD14(Rhodes et al., 2019参照)、CD123、BDCA-2、BDCA-4、CD141、BDCA-1、CD1c、CD11c、ランゲリン/CD207(Collin & Bigley, 2018参照)、DEC-205、DC-SIGN、DCIR2/Clec4A4(DEC-205、DC-SIGN、またはDCIR2/Clec4A4(Moutel et al., 2020;国際公開第2018/069480号参照)参照)から選択される少なくとも1つの樹状細胞表面マーカー;
アルファ(v)インテグリン(αvβ1、αvβ3、αvβ5およびαvβ8など)、CHI3L1(YKL-40)、CXCR4、E-セレクチン、FAP、EDAおよびEDBフィブロネクチン、ガレクチン-3、ICAM-1、IGF2R(CI-MPR)、LFA-1、MadCAM-1(アドレシン)、MUC2、MUC4、PDGFRアルファ、PDGFRベータ、PSGL-1、STRA6(RBP受容体)、VCAM-1(Yazdani et al. , 2017; Jin et al., 2018; Lemanska-Perek & Adamik, 2019; Farkas et al., 2006; Mejias et al., 2010; Kelly et al., 2012; Siew et al., 2019; Gonen et al., 2018; Kircher et al., 2018参照)から選択される少なくとも1つの炎症性組織マーカー;
CD11b、CD40、CD45、CD68、CX3CR1、EMR1(F4/80)、Iba1、TMEM19(Bennett et al., 2016参照)から選択される少なくとも1つのミクログリアマーカー;ならびに
EpCAM、EGFR、HER-2、HER-3、c-Met、FoIR、PSMA、CD38、BCMA、CEA、5T4、AFP、B7-H3、カドヘリン-6、CAIX、CD117、CD123、CD138、CD166、CD19、CD20、CD205、CD22、CD30、CD33、CD40、CD352、CD37、CD44、CD52、CD56、CD70、CD71、CD74、CD79b、CLDN18.2、DLL3、EphA2、ED-Bフィブロネクチン、FAP、FGFR2、FGFR3、GPC3、gpA33、FLT-3、gpNMB、HPV-16E6、HPV-16E7、ITGA2、ITGA3、SLC39A6、MAGE、メソテリン、Muc1、Muc16、NaPi2b、ネクチン-4、P-カドヘリン、NY-ESO-1、PRLR、PSCA、PTK7、ROR1、SLC44A4、SLTRK5、SLTRK6、STEAP1、TIM1、Trop2、および/またはWT1から選択される少なくとも1つの腫瘍抗原。
【0020】
さらに、またはあるいは、本明細書に記載のIL-10ムテインは、半減期延長分子、例えばFc分子などの免疫グロブリン断片、または血清タンパク質、例えばアルブミンに対するポリペプチド結合ドメインに融合していてもよい。
【0021】
代替のIL-10ムテイン/IL-4変異体融合体は、IL-4Raにより低い親和性で結合することができる。従って、さらなる例示的な融合タンパク質は、SEQ ID NO:21において同定される配列と少なくとも97、98、99%、または100%同一であるが、野生型IL-10配列(SEQ ID NO:1)とは異なる、SEQ ID NO:11において同定されるアミノ酸置換を少なくとも含む配列を含む。このような融合分子は、完全に機能的なIL-10受容体複合体を発現する細胞においてのみIL-10およびIL-4シグナル伝達反応を引き起こすことが可能であり得、全身的なIL-4刺激に関連する毒性を制限し得る。
【0022】
さらに、本発明者らは、本発明のIL-10ムテインがCD8T細胞の細胞傷害活性の増強をもたらすことを観察した。従って、本発明のIL-10ムテインは、CAR T細胞に基づく療法の一助となり得ることが想定される。従って、さらなる教示において、本発明は、IL-10ムテインの非存在下でCAR T細胞の細胞傷害性効果を増強するように、治療方法においてCAR T細胞と組み合わせて使用するための、本明細書に記載のIL-10ムテインを提供する。
【0023】
一実施形態において、IL-10ムテインは、グリコシル化および/またはアミド化などの翻訳後修飾などによって、さらに修飾される。他の修飾としては、PEGなどのさらなる分子を本発明のIL-10ムテインに結合させることが挙げられる。野生型IL-10がPEG化によってどのように修飾され得るか、およびいずれが本明細書に記載のIL-10ムテインに採用され得るかについての詳細は、米国特許第9925245号明細書に記載されており、当業者はこれを参照し、その内容全体は参照によりここに組み込まれるものとする。
【0024】
また、提供される実施形態のいずれかの本明細書に記載のIL-10ムテイン、ならびに変異体および修飾形態、融合タンパク質をコードするDNAまたはRNA分子などの核酸分子が提供される。いくつかの実施形態において、核酸分子は合成核酸である。いくつかの実施形態においては、核酸分子はcDNAである。
【0025】
また、提供される実施形態のいずれかの核酸分子を含むベクターが提供される。いくつかの場合において、ベクターは発現ベクターである。いくつかの態様において、ベクターは哺乳動物発現ベクターまたはウイルスベクターである。このようなベクターは、例えば、プラスミド、ウイルスベクターまたはファージミドの形態であってもよい。
【0026】
さらに、本明細書に記載のポリペプチド、ポリヌクレオチドまたはベクターは、脂質または非イオン性界面活性剤ベシクル、ナノ粒子、リポプレックスなどの適切な担体分子とともに提供されてもよい。
【0027】
また、提供される実施形態のいずれかのベクターを含む細胞が提供される。いくつかの例において、細胞は哺乳類細胞である。いくつかの態様においては、細胞はヒト細胞である。いくつかの実施形態においては、細胞は免疫細胞またはリンパ球である。
【0028】
また、本明細書に記載のIL-10ムテイン、ならびに変異体および修飾形態、融合タンパク質を作製する方法であって、提供される実施形態のいずれかの核酸分子または提供される実施形態のいずれかのベクターを、細胞内でタンパク質を発現する条件下で宿主細胞に導入することを含む方法が提供される。いくつかの例において、前記方法は、本明細書に記載のIL-10ムテイン、ならびに変異体および修飾形態、融合タンパク質を細胞から単離または精製することをさらに含む。
【0029】
また、本明細書に記載のIL-10ムテイン、ならびに変異体および修飾形態、融合タンパク質を発現する細胞を操作する方法であって、本明細書に記載のIL-10ムテイン、ならびに変異体および修飾形態、融合タンパク質をコードする核酸分子を、細胞内でポリペプチドが発現する条件下で宿主細胞に導入することを含む方法が提供される。
【0030】
本発明のIL-10ムテイン、ならびに本明細書に記載の変異体および修飾形態、融合タンパク質、ならびに他の分子との組み合わせは、治療方法において特定の用途を見出すことができる。従って、一実施形態において、本発明のIL-10ムテイン、ならびに本明細書に記載の変異体および修飾形態、融合タンパク質、ならびに他の分子との組み合わせを、任意に薬学的に許容される賦形剤と共に含む、治療方法において使用するための医薬製剤が提供される。また、本発明のIL-10ムテイン、ならびに本明細書に記載の変異体および修飾形態、融合タンパク質、ならびに他の分子との組み合わせを、それを必要とする対象に投与することを含む治療方法が提供される。
【0031】
本発明のIL-10ムテインを、1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上、好ましくは1つまたは2つ、好ましくは1つの他の治療剤との併用療法で投与する場合、IL-10ムテインは同時にまたは逐次的に投与することが可能である。逐次的に投与する場合、それらは、短い間隔(例えば5~10分間にわたって)またはより長い間隔で(例えば1、2、3、4時間、もしくはそれ以上空けて、または必要であればさらに長い期間を空けて)投与することが可能であり、正確な投与計画は治療剤の特性に相応する。
【0032】
本発明のIL-10ムテインはまた、PD1抗体、または当該技術分野において既知の他の抗がん抗体、または炎症を防ぐように設計された抗TNFもしくは抗IL6抗体などのさらなる治療剤と組み合わせて投与することができる。対象は、典型的には動物、例えば哺乳類、特にヒトである。
【0033】
治療的または予防的に効果的な量とは、所望の反応を達成することが可能なものを意味し、典型的には、医師によって判断される。必要な量は、少なくとも該当の活性IL-10ムテイン、患者、治療または防止が望まれる状態、および治療される患者の体重1kgあたりの化合物が1μg~1gの桁である製剤のうちの、1つまたは複数に依存する。
【0034】
異なる投与計画が同様に管理されてもよいが、これも典型的には医師の裁量による。本発明のIL-10ムテインは、少なくとも毎日の投与が可能であるが、IL-10ムテインがより低頻度で、例えば1日おき、毎週または隔週で投与される投与計画も、本発明によって包含される。
【0035】
治療とは、本明細書において、少なくとも患者が患っている状態の改善を意味し;治療は治癒的である(すなわち、状態の消失をもたらす)必要はない。同様に、本明細書における防止または予防への言及は、状態の完全な予防を示すものでも必要とするものでもなく;代わりに、本発明に従った予防または防止を介してその兆候が低減または遅延され得るものである。
【0036】
本発明の使用のために、本明細書に記載のIL-10ムテインまたはその生理学的に許容される塩、溶媒和化合物、エステルもしくはアミドは、IL-10ムテインまたはその生理学的に許容される塩、エステルもしくは他の生理学的機能的誘導体を、そのための1つまたは複数の薬学的に許容される担体ならびに任意に他の治療および/または予防成分とともに含む医薬製剤として提示され得る。製剤のその他の成分と適合し、その受容者に有害でないという意味において、任意の担体が許容される。適切なさらなる治療および/または予防剤としては、抗がん剤、抗炎症剤、または免疫寛容促進剤が挙げられる。
【0037】
医薬製剤には、経口投与、局所投与(経皮、頬側および舌下投与を含む)、直腸投与または非経口投与(皮下、皮内、筋肉内および静脈内投与を含む)、鼻腔投与および経肺投与、例えば吸入、に適切なものが含まれる。製剤は、適切な場合には、便宜的に離散的な用量単位で提示されてもよく、薬学の技術分野において周知の任意の方法によって調製され得る。方法は、典型的には、活性化合物を液体担体もしくは細かく分割された固体担体またはその両方と会合させるステップと、次に、必要ならば、生成物を所望の製剤に成形するステップとを含む。
【0038】
担体が固体である経口または直腸投与に適した医薬製剤は、最も好ましくは、それぞれが所定量の活性化合物を含むボーラス、カプセルまたは錠剤などの単位用量製剤として提示される。錠剤は、任意に1つまたは複数の副成分とともに圧縮または成形により製造することができる。圧縮錠剤は、粉末または顆粒などの易流動性形態の活性化合物を、任意に結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、潤滑剤、表面活性剤または分散剤と混合して、適切な機械で圧縮することにより調製することができる。成形錠剤は、活性化合物を不活性液体希釈剤と共に成形することにより製造することができる。錠剤は、任意にコーティングされていてもよく、コーティングされていない場合は、任意に筋入れされてもよい。カプセルは、活性化合物を単独で、または1つもしくは複数の副成分と混合してカプセルシェルに充填し、次いで通常の方法で密封することによって調製することができる。
【0039】
経口投与用の製剤には、放出制御剤形、例えば、活性化合物が適切な放出制御マトリクス中に配合されるか、または適切な放出制御フィルムでコーティングされている錠剤が含まれる。このような製剤は、予防的な使用に特に好都合であり得る。
【0040】
担体が固体である直腸投与に適した医薬製剤は、最も好ましくは、単位用量坐薬として提示される。適切な担体には、カカオ脂および当該技術分野において一般的に使用される他の材料が含まれる。坐剤は、活性化合物を軟化または融解した担体と混合し、次いで型に入れて冷却および成形することにより、好都合に形成することができる。
【0041】
非経口投与に適した医薬製剤には、水性または油性溶媒中の活性化合物の無菌溶液または懸濁液が含まれる。
【0042】
注射用調製物は、ボーラス注射または継続的注入に適応させることができる。このような調製物は、単位用量または複数回用量容器に入れて、製剤の導入後、使用に必要となるまで密封して好都合に提示される。
【0043】
あるいは、活性化合物は粉末形態であってもよく、これは使用前に無菌パイロジェンフリー水などの適切な溶媒と構成される。
【0044】
活性化合物は、長時間作用性のデポ調製物として製剤化することもでき、これは、筋肉内注射または移植、例えば、皮下もしくは筋肉内移植により投与することができる。デポ調製物は、例えば、適切な高分子もしくは疎水性材料、またはイオン交換樹脂を含んでもよい。このような長時間作用性製剤は、予防的な使用に特に好都合である。
【0045】
頬側口腔を経由する経肺投与に適した製剤は、活性化合物を含む、望ましくは0.5~7ミクロンの範囲の直径を有する粒子が、受容者の気管支樹内に送達されるように提示される。
【0046】
一つの可能性として、そのような製剤は細かく粉砕された粉末の形態であり、吸入装置において使用するための、適切には例えばゼラチンの突き刺し可能なカプセルに入れて、または代替的に、活性化合物、適切な液体または気体噴霧剤ならびに任意に界面活性剤および/または固体希釈剤などの他の成分を含む自己推進型製剤として、好都合に提示することができる。適切な液体噴霧剤としては、プロパンおよびクロロフルオロカーボンが挙げられ、適切な気体噴霧剤としては二酸化炭素が挙げられる。活性化合物が溶液または懸濁液の液滴の形態で分注される自己推進型製剤も採用され得る。
【0047】
このような自己推進型製剤は、当該技術分野において既知のものと同様であり、確立された手順によって調製することができる。適切には、それらは、所望の噴霧特徴を有する手動操作可能なまたは自動的に機能するバルブのいずれかを備えた容器に入れて提示され;有利には、バルブは、その各操作時に一定量、例えば25~100マイクロリットルを送達する計量型のものである。
【0048】
さらなる可能性として、活性化合物は、加速された気流または超音波攪拌を採用して吸入のための微細な液滴霧を生成するアトマイザまたはネブライザにおいて使用するための溶液または懸濁液の形態であってもよい。鼻腔投与に適した製剤には、経肺投与用に上記したものと一般に類似している製剤が含まれる。このような製剤は、分注時、鼻腔内での保持を可能にするために、望ましくは10~200ミクロンの範囲の粒子径を有するべきであり;これは、適宜、適切な粒子径の粉末の使用または適切なバルブの選択によって達成され得る。他の適切な製剤としては、鼻に近づけた容器から鼻道を通じて素早く吸入して投与するための20~500ミクロンの範囲の粒子径を有する粗粉末、および水性または油性の溶液または懸濁液中に活性化合物を0.2~5%w/v含む点鼻薬が挙げられる。
【0049】
前述の担体成分に加えて、上記の医薬製剤は、希釈剤、緩衝剤、着香剤、結合剤、表面活性剤、増粘剤、滑沢剤、および保存剤(抗酸化剤を含む)などの適切な1つまたは複数の追加の担体成分と、製剤を対象とする受容者の血液と等張にする目的で含まれる物質を含み得ることを理解されたい。
【0050】
薬学的に許容される担体は、当業者に周知であり、0.1M、および好ましくは0.05Mのリン酸緩衝液、または0.8%生理食塩水を含むが、これらに限定されるものではない。さらに、薬学的に許容される担体は、水性または非水性の溶液、懸濁液、および乳濁液であってもよい。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルである。水性担体には、生理食塩水および緩衝媒体を含む、水、アルコール/水溶液、乳濁液または懸濁液が挙げられる。非経口溶媒としては、塩化ナトリウム溶液、リンガーブドウ糖、ブドウ糖および塩化ナトリウム、乳酸化リンガーオイルまたは固定油が挙げられる。保存剤および他の添加剤、例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガスなども存在してよい。局所製剤に適した製剤は、例えば、ゲル、クリームまたは軟膏として提供され得る。このような調製物は、例えば、創傷または潰瘍に塗布することができ、創傷もしくは潰瘍の表面に直接広げるか、または包帯、ガーゼ、もしくはメッシュなどの適切な支持体に載せて、治療すべき領域に当ててもよい。液体または粉末製剤もまた提供され得、治療すべき部位、例えば創傷または潰瘍に直接噴霧または散布することが可能である。あるいは、包帯、ガーゼ、またはメッシュなどの担体に製剤を噴霧または散布した後、治療すべき部位に当てることも可能である。
【0051】
獣医学的使用のための治療用製剤は、好都合に粉末または液体濃縮形態のいずれかであってもよい。標準的な獣医学的な製剤の慣行に従って、粉末にラクトースまたはスクロースのような通常の水溶性賦形剤を組み込んでその物理的特性を改善してもよい。従って、本発明の特に適切な粉末は、50~100%w/w、好ましくは60~80%w/wの活性成分と、0~50%w/w、好ましくは20~40%w/wの通常の獣医学的賦形剤とを含む。これらの粉末は、例えば中間プレミックスとして動物の飼料に加えるか、または動物の飲料水に希釈することができる。
【0052】
本発明の液体濃縮物は、適切にはIL-10ムテインまたはその誘導体もしくは塩を含み、任意に獣医学的に許容される水混和性溶媒、例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、グリセロールホルマルまたはこのような溶媒と最大30%v/vのエタノールを混合したものを含んでもよい。液体濃縮物は、動物の飲料水に投与することができる。
【0053】
また、関節リウマチ、移植片対宿主病および炎症性腸疾患/クローン病などの慢性炎症など、IL-10の発現または機能の低減に関連する疾患の治療および/または防止のための方法において使用するための、本明細書に記載のIL-10ムテイン(および核酸組成物を含む組成物)、ならびに、変異体および修飾形態、融合タンパク質ならびに他の分子との組み合わせが提供される。本発明に従って治療され得るさらなる疾患には、炎症性疾患を含み、または自己免疫疾患が以下から選択される:関節炎(急性関節炎などの関節リウマチ、慢性関節リウマチ、痛風または痛風性関節炎、急性痛風性関節炎、急性免疫性関節炎、慢性炎症性関節炎、変性性関節炎、II型コラーゲン誘発性関節炎、感染性関節炎、ライム関節炎、増殖性関節炎、乾癬性関節炎、スティル病、椎骨関節炎、および全身性若年発症関節リウマチ、変形性関節症、進行性慢性関節炎、変形性関節炎、原発性慢性多発性関節炎、反応性関節炎および強直性脊椎炎)、炎症性過増殖性皮膚疾患、尋常性乾癬、滴状乾癬、膿疱性乾癬、爪乾癬などの乾癬、花粉症およびヨブ症候群などのアトピー性疾患を含むアトピー、接触皮膚炎、慢性接触皮膚炎、剥離性皮膚炎。アレルギー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、疱疹状皮膚炎、貨幣状皮膚炎、脂漏性皮膚炎、非特異的皮膚炎、一次刺激性接触皮膚炎、およびアトピー性皮膚炎を含む皮膚炎、x連鎖性高IgM症候群、アレルギー性眼内炎症性疾患、慢性アレルギー性蕁麻疹および慢性自己免疫性蕁麻疹を含む慢性特発性蕁麻疹などの蕁麻疹、筋炎、多発性筋炎・皮膚筋炎、若年性皮膚筋炎、中毒性表皮壊死症、強皮症(全身性強皮症を含む)、全身性硬化症、脊髄視覚MS、原発性進行性MS(PPMS)、および再発寛解型MS(RRMS)などの多発性硬化症(MS)、進行性全身性硬化症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、播種性硬化症、失調性硬化症などの硬化症、視神経脊髄炎(NMO)、炎症性腸疾患(IBD)(例えば、クローン病、自己免疫介在性消化管疾患、潰瘍性大腸炎、大腸性潰瘍、顕微鏡的大腸炎、膠原線維性大腸炎、ポリープ状大腸炎、壊死性腸炎、および全層性大腸炎などの大腸炎、ならびに自己免疫性炎症性腸疾患)、腸炎、壊疽性膿皮症、結節性紅斑、原発性硬化性胆管炎、成人または急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を含む呼吸窮迫症候群、髄膜炎、ぶどう膜の全部または一部の炎症、虹彩炎、脈絡膜炎、自己免疫性血液疾患、リウマチ様脊椎炎、リウマチ様滑膜炎、遺伝性血管性浮腫、髄膜炎などにおける脳神経障害、妊娠性疱疹、妊娠性天疱瘡、陰嚢そう痒症、自己免疫性早発卵巣不全、自己免疫疾患による突発性難聴、アナフィラキシーならびにアレルギー性およびアトピー性鼻炎などのIgE介在性疾患、ラスムッセン脳炎ならびに辺縁系および/または脳幹脳炎などの脳炎、前部ぶどう膜炎、急性前部ぶどう膜炎、肉芽腫性ぶどう膜炎、非肉芽腫性ぶどう膜炎、水晶体抗原性ぶどう膜炎、後部ぶどう膜炎、または自己免疫性ぶどう膜炎などのぶどう膜炎、原発性GN、免疫介在性GN、膜性GN(膜性腎症)、特発性膜性GNまたは特発性膜性腎症、I型およびII型を含む膜性または膜性増殖性GN(MPGN)、ならびに急速進行性GN、増殖性腎炎など、慢性または急性糸球体腎炎などの、ネフローゼ症候群を伴うまたは伴わない糸球体腎炎(GN)、自己免疫性多腺内分泌失調、形質細胞限局性亀頭炎を含む亀頭炎、亀頭包皮炎、遠心性環状紅斑、色素異常性固定紅斑、多形紅斑、環状肉芽腫、光沢苔癬、硬化性萎縮性苔癬、慢性単純性苔癬、棘状苔癬、扁平苔癬、葉状魚鱗癬、表皮溶解性角化症、前がん性角化症、壊疽性膿皮症、アレルギー性疾患および反応、アレルギー応答、アレルギー性またはアトピー性湿疹、皮脂欠乏性湿疹、異汗性湿疹および小水疱性掌蹠湿疹を含む湿疹、喘息気管支炎、気管支喘息、および自己免疫性喘息などの喘息、T細胞の浸潤および慢性炎症反応を伴う疾患、妊娠中の胎児A-B-0血液型などの外来性抗原に対する免疫反応、慢性炎症性肺疾患、自己免疫性心筋炎、白血球接着不全症、ループス腎炎、ループス脳炎、小児ループス、非腎性ループス。腎外ループス、円板状ループスおよび円板状エリテマトーデス、ループス脱毛症、皮膚SLEまたは亜急性皮膚SLEなどの全身性エリテマトーデス(SLE)、新生児期ループス症候群(NLE)、ならびに播種性エリテマトーデスを含むループス、小児インスリン依存性糖尿病(IDDM)を含む若年発症型(I型)糖尿病、および成人発症型糖尿病(II型糖尿病)および自己免疫性糖尿病。また、以下も考慮される:サイトカインおよびTリンパ球介在性の急性および遅延性過敏症に関連する免疫反応、サルコイドーシス、リンパ腫様肉芽腫症を含む肉芽腫症、ウェゲナー肉芽腫症、無顆粒球症、血管炎、大血管炎(リウマチ性多発筋痛症および巨細胞性(高安)動脈炎を含む)、中血管炎(川崎病および結節性多発動脈炎/結節性動脈周囲炎を含む)、顕微鏡的多発動脈炎、免疫血管炎、中枢神経系血管炎、皮膚血管炎、過敏性血管炎、全身性壊死性血管炎などの壊死性血管炎、ならびにチャーグ・ストラウス血管炎または症候群(CSS)およびANCA関連小血管炎などのANCA関連血管炎を含む血管炎症候群、側頭動脈炎、再生不良性貧血、自己免疫性再生不良性貧血、クームス陽性貧血、ダイヤモンドブラックファン貧血、溶血性貧血または自己免疫性溶血性貧血(AIHA)を含む免疫性溶血性貧血、アジソン病、自己免疫性好中球減少、汎血球減少、白血球減少、白血球の血管外漏出を伴う疾患、CNS炎症性疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、敗血症、外傷または出血に続発する多臓器損傷症候群、抗原抗体複合体介在性疾患、抗糸球体基底膜疾患、抗リン脂質抗体症候群、アレルギー性神経炎、ベーチェット病/症候群、キャッスルマン症候群、グッドパスチャー症候群、レイノー症候群、シェーグレン症候群、スティーブンスジョンソン症候群、水疱性類天疱瘡および皮膚性類天疱瘡などの類天疱瘡、天疱瘡(尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、粘液膜天疱瘡、および紅斑性天疱瘡を含む)、自己免疫性多腺内分泌障害、ライター病または症候群、熱傷、妊娠高血圧腎症、免疫複合体腎炎などの免疫複合体疾患、抗体介在性腎炎、多発神経炎、IgM多発神経障害またはIgM介在性神経障害などの慢性神経障害、慢性もしくは急性のITPを含む特発性血小板減少性紫斑病(ITP)などの自己免疫または免疫介在性血小板減少症、特発性角強膜炎、上強膜炎などの強膜炎、自己免疫性精巣炎および卵巣炎を含む精巣および卵巣の自己免疫疾患、原発性甲状腺機能低下症、副甲状腺機能低下症、自己免疫性甲状腺炎、橋本病、慢性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)、または亜急性甲状腺炎などの甲状腺炎を含む自己免疫性内分泌疾患、自己免疫性甲状腺疾患、特発性甲状腺機能低下症、グレーブ病、自己免疫性多腺性症候群(または多腺内分泌障害症候群)などの多腺性症候群、ランバート・イートン筋無力症候群またはイートン・ランバート症候群などの神経性腫瘍随伴症候群を含む腫瘍随伴症候群、スティッフマンまたはスティッフ・パーソン症候群、アレルギー性脳脊髄炎またはアレルギー性脳脊髄炎および実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)、実験的自己免疫脳脊髄炎などの脳脊髄炎、胸腺腫関連重症筋無力症などの重症筋無力症、小脳変性症、神経性筋強直症、眼球クローヌスまたは眼球クローヌスミオクローヌス症候群(OMS)、および感覚神経障害、多巣性運動神経障害、シーハン症候群、自己免疫性肝炎、慢性肝炎、ルポイド肝炎、巨細胞性肝炎、慢性活動性肝炎または自己免疫性慢性活動性肝炎、リンパ性間質性肺炎(LIP)、閉塞性細気管支炎(非移植)対NSIP、ギラン・バレー症候群、ベルガー病(IgA腎症)、特発性IgA腎症、線状IgA皮膚症、急性熱性好中球性皮膚症、角層下膿疱性皮膚症、一過性棘融解性皮膚症、原発性胆汁性肝硬変および肺硬変などの硬変、自己免疫性腸疾患症候群小児脂肪便症またはセリアック病、セリアックスプルー(グルテン性腸症)、難治性スプルー、特発性スプルー、クリオグロブリン血症、筋萎縮性側索硬化症(ALS;ルー・ゲーリック病)、冠動脈疾患、自己免疫性内耳疾患(AIED)などの自己免疫性耳疾患、自己免疫性難聴、難治性または再発もしくは再発性多発性軟骨炎などの多発性軟骨炎、肺胞タンパク症、コーガン症候群/非梅毒性間質性角膜炎、ベル麻痺、スウィート病/症候群、自己免疫性酒さ、帯状疱疹関連痛、アミロイドーシス、非がん性リンパ球増加症、単クローン性B細胞リンパ球増加症を含む一次リンパ球増加症(例えば、良性単クローン性免疫グロブリン血症および意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症、MGUS)末梢神経障害、腫瘍随伴症候群、てんかん、片頭痛、不整脈、筋障害、難聴、失明、周期性四肢麻痺、およびCNSのチャネル異常症などのチャネル異常症、自閉症、炎症性筋疾患、巣状もしくは分節性または巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、内分泌性眼障害、ぶどう膜網膜炎、脈絡網膜炎、自己免疫性肝障害、線維筋痛症、多発性内分泌不全、シュミット症候群、副腎炎、胃萎縮、初老期認知症、自己免疫性脱髄疾患および慢性炎症性脱髄性多発神経障害などの脱髄疾患、ドレスラー症候群、円形脱毛症、全脱毛症、CREST症候群(石灰沈着症、レイノー現象、食道運動障害、強指症、および毛細血管拡張症)、男性および女性の自己免疫性不妊症、例えば抗精子抗体によるもの、混合性結合組織病、シャーガス病、リウマチ熱、反復流産、農夫肺、多形紅斑、開心術後症候群、クッシング症候群、愛鳥家肺、アレルギー性肉芽腫性血管炎、良性リンパ性血管炎、アルポート症候群、アレルギー性肺胞炎および線維化性肺胞炎などの肺胞炎、間質性肺疾患、輸血反応、ハンセン病、マラリア、リーシュマニア症、キパノソミアシス、住血吸虫症、回虫症、アスペルギルス症などの寄生虫疾患、サンプター症候群、カプラン症候群、デング熱、心内膜炎、心筋線維症、びまん性間質性肺繊維症、間質性肺繊維症、肺繊維症、特発性肺繊維症、嚢胞性繊維症、眼内炎、持久性隆起性紅斑、胎児赤芽球症、好酸球性筋膜炎、シュルマン症候群、フェルティ症候群、フィラリア症、慢性毛様体炎、異時性毛様体炎、虹彩毛様体炎(急性または慢性)、またはフックス毛様体炎などの毛様体炎、ヘノッホ・シエーンライン紫斑病、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染、SCID、後天性免疫不全症候群(AIDS)、エコーウイルス感染症、敗血症、内毒素血症、膵炎、甲状腺中毒症、パルボウイルス感染症、風疹ウイルス感染症、ワクチン接種後症候群、先天性風疹感染症、エプスタイン・バール・ウイルス感染症、流行性耳下腺炎、エヴァン症候群、自己免疫性性腺機能不全、シデナム舞踏病、連鎖球菌感染後腎炎、閉塞性血栓性血管炎、甲状腺中毒症、脊髄癆、脈絡膜炎、巨細胞性多発筋痛症、慢性過敏性肺炎、乾性角結膜炎、流行性角結膜炎、特発性腎炎症候群、微小変化型腎症、良性家族性および虚血再灌流傷害、移植臓器再灌流、網膜自己免疫、関節炎、気管支炎、慢性閉塞性気道/肺疾患、珪肺症、アフタ、アフタ性口内炎、動脈硬化性疾患、精子形成欠如、自己免疫性溶血、ベック病、クリオグロブリン血症、デュピュイトラン拘縮、水晶体過敏性眼内炎、アレルギー性腸炎、らい性結節性紅斑、特発性顔面神経麻痺、慢性疲労症候群、リウマチ性発熱、ハマン・リッチ病、感音性難聴、発作性血色素尿症、性腺機能低下症、限局性回腸炎、白血球減少、伝染性単核症、横断性脊髄炎、原発性特発性粘液水腫、ネフローゼ、交感神経眼炎、肉芽腫性精巣炎、膵炎、急性多発性神経根炎、壊疽性膿皮症、ケルバン甲状腺炎、後天性脾臓萎縮、非悪性胸腺腫、白斑、毒性ショック症候群、食中毒、T細胞の浸潤を伴う疾患、白血球接着不全症、サイトカインおよびTリンパ球介在性の急性および遅延性過敏症に関連する免疫反応、白血球の血管外漏出を伴う疾患、多臓器損傷症候群、抗原抗体複合体介在性疾患、抗糸球体基底膜疾患、アレルギー性神経炎、自己免疫性多腺内分泌障害、卵巣炎、原発性粘液水腫、自己免疫性萎縮性胃炎、交感性眼炎、リウマチ性疾患、混合性結合組織病、ネフローゼ症候群、
膵島炎、多腺内分泌不全、自己免疫性多腺性症候群I型、成人発症型特発性副甲状腺機能低下症(AOIH)、拡張型心筋症などの心筋症、後天性表皮水疱症(EBA)、ヘモクロマトーシス、心筋炎、ネフローゼ症候群、原発性硬化性胆管炎、化膿性または非化膿性副鼻腔炎、急性または慢性副鼻腔炎、篩骨洞炎、前頭洞炎、上顎洞炎または蝶形骨洞炎、好酸球増多症、肺浸潤性好酸球増多症、好酸球増多筋痛症候群、レフラー症候群、慢性好酸球性肺炎、熱帯性肺好酸球増多症などの好酸球関連障害、気管支肺アスペルギルス症、アスペルギローマ、または好酸球含有肉芽腫、アナフィラキシー、血清反応陰性脊椎関節炎、多腺内分泌自己免疫疾患、硬化性胆管炎、強膜、上強膜、慢性粘膜皮膚カンジダ症、ブルトン症候群、乳児一過性低ガンマグロブリン血症、ウィスコット・アルドリッチ症候群、毛細血管拡張性運動失調症候群、血管拡張症、膠原病関連自己免疫障害、リウマチ、神経疾患、リンパ節炎、血管機能障害、組織損傷、心血管虚血、痛覚過敏、腎虚血、脳虚血、および血管新生に伴う疾患、アレルギー性過敏障害、糸球体腎炎、再灌流傷害、虚血性再灌流障害、心筋または他の組織の再灌流傷害、リンパ腫性気管支炎、炎症性皮膚疾患、急性炎症性成分を有する皮膚疾患、多臓器不全、水疱性疾患、腎皮質壊死、急性化膿性髄膜炎または他の中枢神経系炎症性疾患、眼球および眼窩の炎症性疾患、顆粒球輸血関連症候群、サイトカイン誘導性毒性、ナルコレプシー、急性重篤炎症、慢性難治性炎症、腎盂炎、動脈内過形成、消化性潰瘍、弁膜症、移植片対宿主病、接触過敏症、喘息性気道過敏症、ならびに子宮内膜症。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本明細書に記載のIL-10ムテイン(および組成物)、ならびに変異体および修飾形態、融合タンパク質ならびに他の分子との組み合わせは、CD8T細胞反応に対するその効果の観点から、がんの治療および/または防止のための方法における使用を見出すことができる。
【0055】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、一般に、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般に、本明細書で使用される命名法および細胞培養、分子遺伝学、有機化学における実験手順は、当該技術分野において周知であり、一般的に採用されているものである。核酸およびペプチド合成には、標準的な技術が使用される。技術および手順は、一般に、当該技術分野における通常の方法、および本書を通じて提供される様々な一般的参考文献(一般に、Sambrook et al. MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, 2nd ed. (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.参照、これは参照により本明細書に組み込まれるものとする)に従って実施される。本明細書で使用される命名法ならびに以下に記載される分析および合成有機化学の実験手順は、当該技術分野において周知であり、一般的に採用されているものである。化学合成および化学分析には、標準的な技術またはその修正が使用される。
【0056】
本明細書で使用される「野生型」は、対立遺伝子変異を含む、自然界に見出されるアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を指す。「野生型IL-10」とは、天然か組換え型かにかかわらず、18アミノ酸のIL-10シグナルペプチドを含まない天然ヒトIL-10、SEQ ID NO:1の、通常存在する160のアミノ酸配列を有するIL-10を意味する。
【0057】
用語「ポリペプチド」、「タンパク質」または「ペプチド」は、その長さまたは翻訳後修飾(例えば、グリコシル化もしくはリン酸化)に関係なく、アミノ酸残基の任意の鎖を指す。
【0058】
本明細書で使用される「ムテイン」は、野生型ポリペプチドと比較して1つまたは複数の部位にアミノ酸の挿入、欠失、置換および修飾を含むポリペプチドを意味する。例示的なムテインは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上のアミノ酸の置換を含むことが可能である。
【0059】
本明細書に記載の定義された変異と同様に、本発明のムテインは、野生型ポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列全体に保存的修飾および置換(例えば、ムテインの二次または三次構造に最小限の影響を与えるもの)もまた含むことができる。そのような保存的置換には、DayhoffによってThe Atlas of Protein Sequence and Structure 5(1978)に、およびArgosによってEMBO J.,8:779-785(1989)に記載されているものが含まれる。
【0060】
用語「治療する」または「治療」または「療法(therapy)」または「療法(therapies)」は、治療的処置および予防的または防止的措置の両方を指し、その目的は標的となる病的状態または障害を防止または減速(軽減)することである。
【0061】
次に、本発明は、例として、以下を示す図を参照してさらに記載される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1】
図1Aは、酵母表面ディスプレイによる高親和性IL-10変異体の作製を示す図である。IL-10二量体(上段パネル)およびIL-10単量体(下段パネル)についてのIL-10段階的受容体会合の模式図。
図1Bは、酵母表面ディスプレイによる高親和性IL-10変異体の作製を示す図である。(Walter, 2014, Josephson et al., 2000)によって記載されたIL-10二量体およびIL-10単量体の二次構造機構の模式図。拡張リンカー領域は青色で強調されている。
図1Cは、酵母表面ディスプレイによる高親和性IL-10変異体の作製を示す図である。酵母細胞表面に表示されたIL-10および蛍光標識された組み換え型IL-10Rβを使用したスクリーニングの表示。
図1Dは、酵母表面ディスプレイによる高親和性IL-10変異体の作製を示す図である。酵母に表示された野生型IL-10とのIL-10Rα結合(パネル2)およびIL-10Rαの非存在下(パネル3)または存在下(パネル4)でのIL-10Rβ結合。非染色コントロールはパネル1に示されている。
図1Eは、酵母表面ディスプレイによる高親和性IL-10変異体の作製を示す図である。各酵母ディスプレイ選択ラウンドで使用されたリガンド条件の概要。選択ラウンドは、1μMのIL-10Rβおよび100nMの非ビオチン化IL-10Rαで開始し、20nMのIL-10Rβ単独で終了した。
図1Fは、酵母表面ディスプレイによる高親和性IL-10変異体の作製を示す図である。ラウンド3選択、ラウンド6選択、およびラウンド8選択における、酵母に表示された野生型IL-10のIL-10Rβ結合(AF647)の代表的なヒストグラム。ライブラリ選択が進むにつれ、IL-10Rβの染色性は改善している。
図1Gは、酵母表面ディスプレイによる高親和性IL-10変異体の作製を示す図である。IL-10Rβの最高濃度は、1/3倍段階希釈の7つの濃度のうち1μMである。非ビオチン化IL-10Rαを、協同的結合を改善するために100nMで加えた。
図1Hは、酵母表面ディスプレイによる高親和性IL-10変異体の作製を示す図である。高親和性変異体に見出されるアミノ酸変化についての表。野生型配列は黄色で示されている。変異体間で保存された変化は青色で示されている。個々の変異は白色で示されている。
図1Iは、酵母表面ディスプレイによる高親和性IL-10変異体の作製を示す図である。パネル1は、(Mendoza et al., 2017)によってIL-10Rβ結合部位であると予測された領域としてヘリックスAおよびDが赤色で強調された、野生型IL-10構造を示す。パネル2は、変異が紫色で強調された、高親和性変異体R5A11の構造を示す。
図1Iは、酵母表面ディスプレイによる高親和性IL-10変異体の作製を示す図である。酵母ディスプレイライブラリからのG3クローンに対するIL-10Rβ結合についての用量反応。
【
図2】
図2Aは、IL-10Rβ結合親和性の増加がIL-10受容体の二量体化を増強することを示す図である。2色1分子共局在化および共追跡による細胞膜における受容体二量体化の定量化。それぞれ単量体ECFPおよびEGFPのN末端融合変異体を有するIL-10RαおよびIL-10Rβを、ナノボディEN
AT643およびMI
Rho11でそれぞれ標識した。
図2Bは、IL-10Rβ結合親和性の増加がIL-10受容体の二量体化を増強することを示す図である。IL-10非存在下(左列)ならびにWTD存在下(中列)およびR5A11D存在下(右列)における、それぞれIL-10Rα(青)、IL-10Rβ(赤)および共局在化IL-10Rα:IL-10Rβ(マゼンタ)のトラジェクトリ。
図2Cは、IL-10Rβ結合親和性の増加がIL-10受容体の二量体化を増強することを示す図である。共運動分析によって定量化された、二量体IL-10変異体によって誘導されたIL-10RαおよびIL-10Rβのヘテロ二量化(左)、ならびにIL-10Rα(中央)およびIL-10Rβ(右)のホモ二量化。各データ点は細胞を表し、各実験の細胞数は箱ひげ図に示されている。
図2Dは、IL-10Rβ結合親和性の増加がIL-10受容体の二量体化を増強することを示す図である。共運動分析によって定量化された、単量体IL-10変異体によって誘導されたIL-10RαおよびIL-10Rβのホモおよびヘテロ二量化。
【
図3】
図3Aは、高親和性変異体が単球におけるIL-10のシグナル伝達能力を改善することを示す図である。CD14陽性MACS選択によりヒトバフィーコートサンプルから単球を単離した。細胞を、M-CSFを含む培地中に2日間静置した。その後、細胞を分析前にIL-10を用いて24時間刺激した。
図3Bは、高親和性変異体が単球におけるIL-10のシグナル伝達能力を改善することを示す図である。IL-10処理した単球におけるpSTAT3およびpSTAT1の用量反応。細胞を野生型IL-10および高親和性変異体を用いて15分間刺激した。STAT3およびSTAT1の活性化を、ホスホフローサイトメトリによって分析した。シグモイド曲線を、GraphPad Prismソフトウェアを用いてフィッティングした。示したデータは5つの生物学的複製の平均であり、エラーバーは平均の標準誤差を示す。各生物学的複製は、最高濃度の最高MFI値を100%とし、非処理コントロールの最低MFI値を0%とすることにより正規化してある。
図3Cは、高親和性変異体が単球におけるIL-10のシグナル伝達能力を改善することを示す図である。
図3Bの用量反応曲線からのpSTAT1およびpSTAT3のlog
10EC50値。各点は1つの生物学的複製を表し、線は平均値、エラーバーはすべての点のうち最小から最大を示す。
図3Dは、高親和性変異体が単球におけるIL-10のシグナル伝達能力を改善することを示す図である。IL-10で刺激した単球におけるpSTAT1対pSTAT3の比率。比率は、5つの生物学的複製について40nMでのpSTAT3およびpSTAT1の活性化の割合を取り、pSTAT1をpSTAT3の値で割ることによって算出した。各点は1つの生物学的複製を表し、線は平均値、エラーバーはすべての点のうち最小から最大を示す。
図3Eは、高親和性変異体が単球におけるIL-10のシグナル伝達能力を改善することを示す図である。IL-10によって誘導されるpSTAT3およびpSTAT1の動態。単球は固定前に、示された時間IL-10を用いて刺激した。示したデータは4つの生物学的複製の平均であり、エラーバーは平均の標準誤差を示す。各生物学的複製は、15分での最高MFI値を100%とし、非処理コントロールの最低MFI値を0%とすることにより正規化してある。
図3Fは、高親和性変異体が単球におけるIL-10のシグナル伝達能力を改善することを示す図である。24時間のIL-10処理後の単球におけるHLA-DR細胞表面発現の測定。各点は1つの生物学的複製(n=4)を表し、エラーバーは標準偏差を示す。倍率変化は、処理したサンプルのMFIを非IL-10処理コントロール(非刺激)で割ることによって、各生物学的複製について算出される。
図3Gは、高親和性変異体が単球におけるIL-10のシグナル伝達能力を改善することを示す図である。単球を、LPSを用いてIL-10の存在下で8時間刺激した。各点は1つの生物学的複製(n=3)を表し、エラーバーは平均の標準誤差を示す。P値は両側比率ペアt検定により算出。
【
図4】
図4Aは、ヒト単球においてIL-10および高親和性変異体によって誘導される転写活性の特徴を示す図である。単球刺激の模式図。CD14陽性細胞は、MACSによって3つのヒトバフィーコートから単離し、野生型IL-10および高親和性変異体を用いて24時間刺激する前に、M-CSFを含む培地中に2日間静置した。
図4Bは、ヒト単球においてIL-10および高親和性変異体によって誘導される転写活性の特徴を示す図である。非IL-10刺激細胞と比較して、IL-10野生型二量体によってlog
2倍率変化0.6以上に有意にアップレギュレートされた(赤)、およびlog
2倍率変化-0.6以下に有意にダウンレギュレートされた単球遺伝子のボルカノプロット図。倍率変化は、各ドナーについてWTD50nMを非刺激の値で割ることによって算出した。平均倍率変化を算出し、この値のlog
2をプロットした。P値≦0.05は、各ドナーについてWTD50nM/非刺激遺伝子のlog
2倍率変化の両側不対t検定によって算出した。有意な変化がない遺伝子、またはlog
2倍率変化が≦0.6≧-0.6の遺伝子は除外した。
図4Cは、ヒト単球においてIL-10および高親和性変異体によって誘導される転写活性の特徴を示す図である。非刺激細胞と比較して、WTD50nMによってlog
2倍率変化≧0.6または≦-0.6に有意に制御された単球遺伝子の割合。
図4Dは、ヒト単球においてIL-10および高親和性変異体によって誘導される転写活性の特徴を示す図である。単球においてWTD50nMによって有意にアップ(赤)およびダウン(青)レギュレートされた上位20個のタンパク質コード遺伝子のlog
2倍率変化。
図4Eは、ヒト単球においてIL-10および高親和性変異体によって誘導される転写活性の特徴を示す図である。高用量WTDと比較した低用量WTDの活性の割合。WTD0.1nMのlog
2倍率変化をWTD50nMで割り、100を掛けた。高用量活性の≦75%を示した遺伝子(183遺伝子)を赤色で強調している。挿入図は、これらの遺伝子のうち、活性がアップまたはダウンレギュレートされたものの割合を示している。
図4Fは、ヒト単球においてIL-10および高親和性変異体によって誘導される転写活性の特徴を示す図である。WTD濃度変化への感度が高い183遺伝子の遺伝子オントロジー生物学的プロセス分析。
図4Gは、ヒト単球においてIL-10および高親和性変異体によって誘導される転写活性の特徴を示す図である。WTD50nMおよび0.1nMについて炎症性サイトカインおよびケモカイン遺伝子のlog
2倍率変化。
図4Hは、ヒト単球においてIL-10および高親和性変異体によって誘導される転写活性の特徴を示す図である。WTD50nMによってlog
2倍率変化≧-0.6または≦0.6に有意にアップまたはダウンレギュレートされた遺伝子と、それらに対応する、非刺激コントロール細胞と比較したR5A11D50nM、WTD0.1nM、R5A11D0.1nM、R5A11M50nMおよびWTM50nMによるlog
2倍率変化の、ヒートマップ図。数値は3人のドナーの平均値である。ヒートマップクラスタ分析はR studioで作成した。
図4Iは、ヒト単球においてIL-10および高親和性変異体によって誘導される転写活性の特徴を示す図である。それぞれ0.1nM濃度のWTD(青)およびR5A11D(緑)によって制御される遺伝子のボルカノプロット図。WTD50nMによって有意にアップまたはダウンレギュレートされることが既に示されている遺伝子のみをプロットしている。
図4Jは、ヒト単球においてIL-10および高親和性変異体によって誘導される転写活性の特徴を示す図である。R5A11D0.1nMと比較して、WTD0.1nMによってアップおよびダウンレギュレートされた上位10個の遺伝子のヒートマップ図。
図4Kは、ヒト単球においてIL-10および高親和性変異体によって誘導される転写活性の特徴を示す図である。WTD50nMおよび0.1nMならびにR5A11D0.1nMによって制御される炎症性サイトカインおよびケモカイン遺伝子のヒートマップ図。
【
図5】
図5Aは、高親和性変異体がヒトCD8T細胞におけるIL-10のシグナル伝達能力を改善することを示す図である。ヒトバフィーコートサンプルからPBMCを単離し、CD8細胞をCD8陽性MACS選択により精製した。PBMCまたは精製CD8細胞を、IL-10の存在下または非存在下で、IL-2(20ng/mL)とともに可溶性抗CD3(100ng/mL)(PBMC)または抗CD3/抗CD28ビーズ(CD8細胞)を使用して3日間活性化させた。3日目に活性化培地を除去し、細胞集団をIL-2+/-IL-10を含む培地中にさらに2~3日置いた後に分析した。
図5Bは、高親和性変異体がヒトCD8T細胞におけるIL-10のシグナル伝達能力を改善することを示す図である。PBMC集団中の活性化CD8細胞におけるpSTAT3およびpSTAT1の用量反応(IL-10の非存在下で活性化)。細胞は、IL-10野生型および変異体を用いて15分間刺激する前に、IL-2を含まない培地中に一晩置いた。示したデータは4つの生物学的複製の平均であり、エラーバーは平均の標準誤差を示す。各生物学的複製は、最高濃度の最高MFI値を100%とし、非処理コントロールの最低MFI値を0%とすることにより正規化してある。
図5Cは、高親和性変異体がヒトCD8T細胞におけるIL-10のシグナル伝達能力を改善することを示す図である。
図5Bの用量反応曲線からのpSTAT3およびpSTAT1のlogEC50値。各点は1つの生物学的複製を表し、線は平均値、バーはすべての点のうち最小から最大を示す。
図5Dは、高親和性変異体がヒトCD8T細胞におけるIL-10のシグナル伝達能力を改善することを示す図である。PBMC集団中のIL-10刺激したCD8細胞におけるpSTAT1対pSTAT3の比率。比率は、4つの生物学的複製について40nMでのpSTAT3およびpSTAT1の活性化の割合を取り、pSTAT1をpSTAT3の値で割ることによって算出した。各点は1つの生物学的複製を表し、線は平均値、エラーバーはすべての点のうち最小から最大を意味する。
図5Eは、高親和性変異体がヒトCD8T細胞におけるIL-10のシグナル伝達能力を改善することを示す図である。IL-10によって誘導されるpSTAT3およびpSTAT1の動態。PBMC集団中の非活性化CD8細胞を固定前に、示した時間IL-10を用いて刺激した。示したデータは3つの生物学的複製の平均であり、エラーバーは平均の標準誤差を示す。各生物学的複製は、15分での最高MFI値を100%とし、非処理コントロールの最低MFI値を0%とすることにより正規化してある。
図5Fは、高親和性変異体がヒトCD8T細胞におけるIL-10のシグナル伝達能力を改善することを示す図である。IL-10存在下での活性化CD8T細胞におけるグランザイムBタンパク質。PBMC集団中のCD8T細胞を増殖させ、
図5Aに示したように刺激した。その後、細胞を固定し、透過処理し、グランザイムBタンパク質をフローサイトメトリによって定量化した。各ドナーについて、非IL-10処理コントロールに対して正規化することにより、倍率変化を算出した。各点は1つの生物学的複製(n=8)を表し、エラーバーは標準偏差を示す。
【
図6】
図6Aは、ヒトCD8T細胞においてIL-10および高親和性変異体によって誘導される転写活性の特徴を示す図である。CD8T細胞刺激の模式図。CD8T細胞はMACSによって単離し、抗CD3/CD28ビーズおよびIL-2を用いて、IL-10wtおよび変異体の存在下または非存在下で3日間活性化した。3日目に培地をIL-10wtおよび変異体の存在下または非存在下でIL-2に変更し、細胞をさらに3日間増殖させた。
図6Bは、ヒトCD8T細胞においてIL-10および高親和性変異体によって誘導される転写活性の特徴を示す図である。非IL-10刺激細胞と比較して、IL-10野生型二量体によってlog
2倍率変化≧0.6に有意にアップレギュレートされた(赤)、およびlog
2倍率変化≦-0.6に有意にダウンレギュレートされたCD8T細胞遺伝子のボルカノプロット図。倍率変化は、各ドナーについてWTD50nMを非刺激の値で割ることによって算出した。平均倍率変化を算出し、この値のlog
2をプロットした。P値≦0.05は、各ドナーについてWTD50nM/非刺激遺伝子のlog
2倍率変化の両側不対t検定によって算出した。有意な変化がない遺伝子、またはlog
2倍率変化が≦0.6≧-0.6の遺伝子は除外した。
図6Cは、ヒトCD8T細胞においてIL-10および高親和性変異体によって誘導される転写活性の特徴を示す図である。非刺激細胞と比較して、WTD50nMによってlog
2倍率変化≧0.6または≦-0.6に有意に制御されたCD8T細胞遺伝子の割合。
図6Dは、ヒトCD8T細胞においてIL-10および高親和性変異体によって誘導される転写活性の特徴を示す図である。CD8T細胞においてWTD50nMによって有意にアップ(赤)およびダウン(青)レギュレートされた上位20個のタンパク質コード遺伝子のlog
2倍率変化。
図6Eは、ヒトCD8T細胞においてIL-10および高親和性変異体によって誘導される転写活性の特徴を示す図である。消耗したT細胞に存在することが以前に報告されている遺伝子のヒートマップ図。(Bengsch et al., 2018)からの消耗特異的遺伝子のリストを、WTD50nMによって有意にアップまたはダウンレギュレートされた遺伝子の比較として使用した。以前に報告された遺伝子は、アップレギュレートされた遺伝子については1、ダウンレギュレートされた遺伝子については-1という名目値を与えた。WTD50nMに対するlog
2倍率変化をプロットした。クラスタ1(C1)は、消耗した細胞でアップレギュレートされ、WTD50nMによってアップレギュレートされた遺伝子を表す。C2は、消耗した細胞でアップレギュレートされ、WTD50nMによってダウンレギュレートされた遺伝子を表す。C3は、消耗した細胞でダウンレギュレートされ、WTD50nMによってアップレギュレートされた遺伝子を表す。C4は、消耗した細胞でダウンレギュレートされ、WTD50nMによってダウンレギュレートされた遺伝子を表す。
図6Fは、ヒトCD8T細胞においてIL-10および高親和性変異体によって誘導される転写活性の特徴を示す図である。各クラスタからの遺伝子のサンプルについて、WTD50nMによって誘導されたlog
2倍率変化。
図6Gは、ヒトCD8T細胞においてIL-10および高親和性変異体によって誘導される転写活性の特徴を示す図である。各ドナーのIL2RA遺伝子についての、非刺激およびWTD50nM条件でのRKPM。
図6Hは、ヒトCD8T細胞においてIL-10および高親和性変異体によって誘導される転写活性の特徴を示す図である。IL-2によって制御されることが以前に報告された遺伝子(Rollings et al., 2018)について、WTD50nMによって誘導されたlog
2倍率変化を示すヒートマップ図。
図6Iは、ヒトCD8T細胞においてIL-10および高親和性変異体によって誘導される転写活性の特徴を示す図である。高用量WTDと比較した低用量WTDの活性の割合。WTD0.1nMのlog
2倍率変化をWTD50nMで割り、100を掛けた。高用量活性の≦75%であった遺伝子(781遺伝子)を赤色で強調している。挿入図は、これらの遺伝子のうち、活性がアップまたはダウンレギュレートされたものの割合を示している。
図6Jは、ヒトCD8T細胞においてIL-10および高親和性変異体によって誘導される転写活性の特徴を示す図である。50nMまたは0.1nM濃度でのWTDの消耗またはIL-2刺激およびその制御に関連する遺伝子のlog
2倍率変化。
図6Kは、ヒトCD8T細胞においてIL-10および高親和性変異体によって誘導される転写活性の特徴を示す図である。WTD50nMによってlog
2倍率変化≧0.6または≦-0.6に有意にアップまたはダウンレギュレートされた遺伝子と、それらに対応する、非刺激コントロール細胞と比較したR5A11D50nM、WTD0.1nM、R5A11D0.1nM、R5A11M50nMおよびWTM50nMによるlog
2倍率変化の、ヒートマップ図。数値は3人のドナーの平均値である。
図6Lは、ヒトCD8T細胞においてIL-10および高親和性変異体によって誘導される転写活性の特徴を示す図である。CD8T細胞において、それぞれ0.1nM濃度のWTD(青)およびR5A11D(緑)によって制御される遺伝子のボルカノプロット図。WTD50nMによって有意にアップまたはダウンレギュレートされることが既に示されている遺伝子のみをプロットしている。
図6Jは、ヒトCD8T細胞においてIL-10および高親和性変異体によって誘導される転写活性の特徴を示す図である。R5A11D0.1nMおよびWTD0.1nMによるCD8T細胞遺伝子の制御の比較。R5A11D0.1nM/非刺激のlog
2倍率変化を、WTD0.1nM/非刺激のlog
2倍率変化で割った。R5A11Dによって制御が増強される遺伝子の割合を赤色で、R5A11Dによって制御が減少する遺伝子の割合を青色で、R5A11DとWTDの間で変化がない遺伝子を灰色で示す。
図6Mは、ヒトCD8T細胞においてIL-10および高親和性変異体によって誘導される転写活性の特徴を示す図である。R5A11D0.1nMと比較して、WTD0.1nMによってアップおよびダウンレギュレートされた上位10個のCD8T細胞遺伝子のヒートマップ図。
図6Nは、ヒトCD8T細胞においてIL-10および高親和性変異体によって誘導される転写活性の特徴を示す図である。WTD50nMおよび0.1nMならびにR5A11D0.1nMによって制御される消耗またはIL-2関連遺伝子のヒートマップ図。
【
図7】
図7Aは、単球およびCD8T細胞におけるIL-10による共通遺伝子制御の比較を示す図である。単球およびCD8T細胞において野生型IL-10(50nM)によって有意にアップまたはダウンレギュレートされる遺伝子を比較したベン図。ベン図は「Venny」(Oliveros, 2007-2015)を使用して作成した。
図7Bは、単球およびCD8T細胞におけるIL-10による共通遺伝子制御の比較を示す図である。両方の細胞サブセットにおいてIL-10によって制御される181遺伝子の比較。CD8T細胞および単球の両方における、WTD(50nM)/非刺激の各遺伝子のlog
2倍率変化をプロットしている。両細胞型においてIL-10によってアップレギュレートされた遺伝子はクラスタ1(C1)と表記する。CD8T細胞ではIL-10によってアップレギュレートされるが、単球ではIL-10によってダウンレギュレートされる遺伝子は、クラスタ2(C2)に分類する。単球ではIL-10によってアップレギュレートされるが、CD8T細胞ではIL-10によってダウンレギュレートされる遺伝子は、クラスタ3(C3)に分類する。単球およびCD8T細胞の両方においてIL-10によってダウンレギュレートされる遺伝子は、クラスタ4と表記する(C4)。
図7Cは、単球およびCD8T細胞におけるIL-10による共通遺伝子制御の比較を示す図である。各クラスタの遺伝子の例。CD8T細胞および単球の両方における、WTD(50nM)/非刺激のlog
2倍率変化をプロットしている。各点は1つの生物学的複製を表し、エラーバーは標準偏差を表す。
【
図8】
図8Aは、野生型および高親和性IL-10単量体および二量体変異体の組換え発現を示す図である。野生型ならびに変異体の単量体および二量体のFPLCクロマトグラム図。タンパク質はS200ゲルろ過カラムにかけ、サイズ排除により分離した。
図8Bは、野生型および高親和性IL-10単量体および二量体変異体の組換え発現を示す図である。10%ゲルにかけたFPLC精製タンパク質のクマシゲル。
【
図9】
図9Aは、高親和性IL-10変異体の生物物理学的特徴を示す図である。ビアコア測定のために、ビオチン-ストレプトアビジン相互作用を介してIL-10Rβをチップ表面上に固定化し、チップ上に溶液中のIL-10変異体を流した。
図9Bおよび
図9Gは、高親和性IL-10変異体の生物物理学的特徴を示す図である。野生型および高親和性IL-10のIL-10Rβ結合の動態チャートならびに親和性曲線の挿入図。使用した濃度は曲線上に示した。
図9Cは、高親和性IL-10変異体の生物物理学的特徴を示す図である。野生型および高親和性変異体のIL-10Rβ結合のK
D値。
図9Dは、高親和性IL-10変異体の生物物理学的特徴を示す図である。IL-10Rβをチップ表面に固定化し、チップ表面上に溶液中の、IL-10Rαに予め結合されたIL-10変異体を流した。使用した濃度は曲線上に示した。
図9Gは、高親和性IL-10変異体の生物物理学的特徴を示す図である。IL-10Rαの存在下でのIL-10Rβ結合動態。
図9Fおよび
図9Hは、高親和性IL-10変異体の生物物理学的特徴を示す図である。IL-10タンパク質がIL-10Rαに予め結合されている場合のIL-10Rβ結合のK
D値。
【
図10】
図10Aは、TIRF顕微鏡によるIL-10受容体の1分子イメージングを示す図である。異所性発現IL-10Rα(青)およびIL-10Rβ(赤)の細胞表面受容体密度。n=20細胞。
図10Bは、TIRF顕微鏡によるIL-10受容体の1分子イメージングを示す図である。IL-10Rα(青)、IL-10Rβ(赤)および共運動受容体(マゼンタ)の、二量体および単量体IL-10変異体の非存在下または存在下での拡散係数。WTD:n=20細胞、R5A11D:n=16細胞、WTM:n=19細胞、R5A11M:n=18細胞、非刺激:n=10細胞。
【
図11】
図11は、ヒト単球におけるIL-10および変異体の拡張動態を示す図である。3日間の単球のpSTAT3/1動態。単球を固定前に、示された時間IL-10を用いて刺激した。示したデータは4つの生物学的複製の平均であり、エラーバーは平均の標準誤差を示す。各生物学的複製は、15分での最高MFI値を100%とし、非処理コントロールの最低MFI値を0%とすることにより正規化してある。
【
図12】
図12Aは、ヒト単球においてIL-10野生型および高親和性変異体によって誘導された遺伝子発現プロファイルの分析を示す図である。ヒト単球において、WTD50nMによってlog
2倍率変化≧0.6または≦-0.6に有意にアップまたはダウンレギュレートされた遺伝子のKEGGおよびGO経路分析。経路分析は、DAVID Bioinformatics Resource機能アノテーションツール(Huang da et al., 2009a, Huang da et al., 2009b)を使用して行った。
図12Bは、ヒト単球においてIL-10野生型および高親和性変異体によって誘導された遺伝子発現プロファイルの分析を示す図である。選択された、代謝経路、サイトカインおよびケモカイン、CDならびにインターフェロン関連遺伝子の、WTD(50nM)刺激によるlog
2倍率変化発現を示すヒートマップ図。
図12Cは、ヒト単球においてIL-10野生型および高親和性変異体によって誘導された遺伝子発現プロファイルの分析を示す図である。50nMのWTD、WTM、およびR5A11M、ならびに0.1nM濃度のWTDおよびR5A11Dによる遺伝子の発現におけるlog
2倍率変化の比較。
図12Dは、ヒト単球においてIL-10野生型および高親和性変異体によって誘導された遺伝子発現プロファイルの分析を示す図である。R5A11M50nMおよびWTD50nMによる単球遺伝子の制御の比較。R5A11M50nM/非刺激のlog
2倍率変化を、WTD50nM/非刺激のlog
2倍率変化で割った。R5A11Mによって制御が増強される遺伝子の割合を赤色で、R5A11Mによって制御が減少する遺伝子の割合を青色で、R5A11MとWTDの間で変化がない遺伝子を灰色で示す。
図12Eは、ヒト単球においてIL-10野生型および高親和性変異体によって誘導された遺伝子発現プロファイルの分析を示す図である。R5A11D0.1nMおよびWTD0.1nMによる遺伝子の制御の比較。R5A11D0.1nM/非刺激のlog
2倍率変化を、WTD0.1nM/非刺激のlog
2倍率変化で割った。R5A11Dによって制御が増強される遺伝子の割合を赤色で、R5A11Dによって制御が減少する遺伝子の割合を青で、R5A11DとWTDの間で変化がない遺伝子を灰色で示す。
【
図13】
図13Aは、IL-10処理CD8T細胞の表現型の特徴を示す図である。PBMC集団中のCD8細胞および精製CD8細胞について、24時間の活性化後にCD69を、6日間の活性化および増殖後にCD71を染色した。消耗マーカーPD-1およびLAG3を、6日間の活性化および増殖後に分析した。各ドナーについて、IL-10刺激MFI値を非IL-10刺激コントロールで割ることによって、倍率変化を算出した。各点は1人のドナーを表す。
図13Bは、IL-10処理CD8T細胞の表現型の特徴を示す図である。PBMC集団中のCD4およびCD8T細胞の増殖について、6日間の活性化/増殖後に分析した。CD4+およびCD8+細胞の細胞数を取り、IL-10処理細胞を、同じドナーからの非IL-10処理コントロール集団で割ることによって倍率変化を算出した。各点は1つの生物学的複製を表し、p値は両側ペアt検定を使用して算出した。
図13Cは、IL-10処理CD8T細胞の表現型の特徴を示す図である。精製集団中のCD8T細胞について、グランザイムBを染色した。PBMC集団中のCD8細胞および精製CD8細胞の両方について、各生物学的複製内で非IL-10処理コントロール(TCR刺激)に対して正規化することによって、グランザイムBの倍率変化を算出した。精製CD8細胞集団からmRNAを単離し、gzmb mRNAをRTqPCRによって定量化した。倍率変化は、非IL-10処理コントロールで割ることによって算出した。各点は1つの生物学的複製を表し、p値は両側ペアt検定を使用して算出した。
【
図14】
図14Aは、ヒトCD8T細胞においてIL-10野生型および高親和性変異体によって誘導された遺伝子発現プロファイルの分析を示す図である。ヒトCD8T細胞において、WTD50nMによってlog
2倍率変化≧0.6または≦-0.6に有意にアップまたはダウンレギュレートされた遺伝子のKEGGおよびGO経路分析。経路分析は、DAVID Bioinformatics Resource機能アノテーションツール(Huang da et al., 2009a, Huang da et al., 2009b)を使用して行った。
図14Bは、ヒトCD8T細胞においてIL-10野生型および高親和性変異体によって誘導された遺伝子発現プロファイルの分析を示す図である。50nMのWTD、WTM、およびR5A11M、ならびに0.1nMのWTDおよびR5A11Dによるサイトカインおよびケモカイン遺伝子、CDマーカー遺伝子、IL-2関連遺伝子、ならびにMAPKシグナル伝達遺伝子の制御のヒートマップ比較。
図14Cは、ヒトCD8T細胞においてIL-10野生型および高親和性変異体によって誘導された遺伝子発現プロファイルの分析を示す図である。R5A11M50nM/非刺激のlog
2倍率変化を、WTD50nM/非刺激のlog
2倍率変化で割った。R5A11Mによって制御が増強される遺伝子の割合を赤色で、R5A11Mによって制御が減少する遺伝子の割合を青色で、R5A11MとWTDの間で変化がない遺伝子を灰色で示す。
図14Dは、ヒトCD8T細胞においてIL-10野生型および高親和性変異体によって誘導された遺伝子発現プロファイルの分析を示す図である。R5A11D0.1nMおよびWTD0.1nMによる遺伝子の制御の比較。R5A11D0.1nM/非刺激のlog
2倍率変化を、WTD0.1nM/非刺激のlog
2倍率変化で割った。R5A11Dによって制御が増強される遺伝子の割合を赤色で、R5A11Dによって制御が減少する遺伝子の割合を青色で、R5A11DとWTDの間で変化がない遺伝子を灰色で示す。
【
図15】
図15Aは、五量体IL-10ならびにIL-4wtおよび変異体形態との融合型のIL-10の生成を示す図である。IL-10ムテインの五量体形態の生成を示すゲル。
図15Bは、五量体IL-10ならびにIL-4wtおよび変異体形態との融合型のIL-10の生成を示す図である。様々なIL-10ムテイン/IL-4融合物の生成を示すゲル。
【
図16】
図16Aは、WTおよびIL-10ムテインを使用したCAR T実験を示す図である。IL-2と比較して、wtIL-10およびIL-10ムテインの濃度の増加が、CAR T in vitro腫瘍生存率に与える効果を示すグラフ。
図16Bは、WTおよびIL-10ムテインを使用したCAR T実験を示す図である。wtおよび変異体形態のIL-10を加えた後の、CAR T細胞によるインターフェロンγの産生を示すグラフ。
【実施例】
【0063】
材料および方法:
タンパク質発現および精製
単量体野生型IL-10(Josephson et al., 2000)、単量体高親和性変異体およびIL-10Rα外部ドメイン(アミノ酸22~235)を、(Martinez-Fabregas et al., 2019)に記載のようにクローニングし発現させた。簡潔には、タンパク質配列を、タンパク質分泌を駆動するN末端gp67シグナル配列、およびC末端ヘキサヒスチジンタグとともにpAcGP67-Aベクター(CD Biosciences)中にインフレームでクローニングした。(LaPorte et al., 2008)に概説されているように、タンパク質産生にはバキュロウイルス発現系を使用した。SF900II培地(Invitrogen)中で増殖させたSpodoptera frugiperda(SF9)細胞にトランスフェクトしてP0バキュロウイルス株を作製し、その後それをSF9細胞中で増殖させてP1ウイルス株を作製した。タンパク質発現は、InsectXpress培地(Lonza)中で増殖させた細胞を用いて、Trichoplusiani ni(High Five)を使用して実施した。
【0064】
精製は、Sprangler et al (2019)に記載された方法を使用して実施した。簡潔には、最終濃度200mM、50mMおよび1mMまでTris pH8.0、CaCl2およびNiClを添加することによる沈殿ステップの前に、2000rpmでの遠心分離を用いて細胞をペレット化した。その後、形成された沈殿物を6000rpmで遠心分離して除去した。ニッケルNTAアガロースビーズ(Qiagen)を加え、バッチ結合と、その後のHBS、200mMイミダゾール、pH7.2でのカラム溶出を通じて標的タンパク質を精製した。標的タンパク質を濃縮し、10mM HEPES(pH7.2)、150mM NaClで平衡化したENrich SEC 650 300カラム(Biorad)上でサイズ排除クロマトグラフィによりさらに精製した。IL-10Rαは、メーカーのプロトコルに従ってEZ=Link NHSビオチン化キット(Thermo)を使用してビオチン化した。
【0065】
ビオチン化IL-10Rβの発現のために、外部ドメイン(アミノ酸20~220)を、C末端ビオチン受容体ペプチド(BAP)-LNDIFEAQKIEWHWに続いてヘキサヒスチジンタグを有するpAcGP67-Aベクター中にクローニングした。精製タンパク質はBirAリガーゼを用いてビオチン化した。
【0066】
二量体野生型IL-10および二量体高親和性変異体の発現のために、合成遺伝子ブロック(IDT)を、N末端ヘキサヒスチジンタグおよびlacプロモータとともにインフレームでpET21ベクター中にクローニングし、大腸菌BL21細胞に形質転換した。最終濃度1mMのIPTG(Formedium)を使用してタンパク質の産生を誘導し、その後37℃で3~5時間インキュベートした。細胞は6000xgで15分間遠心分離することにより回収した。細胞ペレットは、元の培養液1リットルあたり、50mM Tris-HCl(pH8.0)、25%(w/v)スクロース、1mM NaEDTA、10mM DTT、0.2mM PMSFに再懸濁し、-80℃で一晩凍結させた。
【0067】
組換えタンパク質を封入体として発現させ、その精製を次のように実施した。細胞を100mM Tris-HCl(pH8.0)、2%(v/v)TritonX-100、200mM NaCl、2500単位ベンゾナーゼ、10mM DTT、5mM MgCl2、0.2mM PMSFに溶解し、室温で撹拌しながら20分間インキュベートした。その後、最終濃度10mMのEDTAを懸濁液に加え、細胞を氷浴中で超音波処理(15秒間オン/オフを8~10サイクル、15ミクロン、Soniprep 150)した。この溶液を7000xgで15分間遠心分離し(4℃)、50mM Tris-HCl pH8.0、0.5%TritonX-100、100mM NaCl、1mM NaEDTA、1mM DTT、0.2mM PMSFに再懸濁した。このステップを、調製物が白く見えるようになるまで、少なくとも合計3回の洗浄を繰り返した。その後、最終ペレットを、界面活性剤を含まない緩衝液(50mM Tris-HCl pH8.0、1mM NaEDTA、1mM DTT、0.2mM PMSF)で1回洗浄した。
【0068】
精製した封入体を、元の培養液1リットルあたり10mLの6M GuHCl中で、室温で30分間可溶化した。この溶液を7000rcfで15分間遠心分離して清澄化し、可溶化したタンパク質を慎重にデカントした。リフォールディングは、リフォールディング緩衝液(50mM Tris-HCl、pH8.0、50mM NaCl、5mM EDTA、2mM還元グルタチオン(GSH)、および0.2mM酸化グルタチオン(GSSG))に、可溶化タンパク質溶液を溶液:緩衝液が1:20の比率で、4℃で滴下して実施し、その後穏やかに撹拌しながら4℃で一晩インキュベーションすることにより行った。
【0069】
その後溶液をろ過して沈殿物を除去し、10mM HEPES(pH7.2)、150mM NaClに対して、14kDa Mwtカットオフの透析膜を使用して透析を実施した。
【0070】
透析後、Ni-NTAビーズの使用、およびSuperdex75 increase 10/300カラム(GE Healthcare)上でのサイズ排除によって、タンパク質をさらに精製した。その後、エンドトキシンの除去を実施した。1mLのNi-NTAアガロースをpolyprepカラムに加え、タンパク質を加える前に10mLのHBSで平衡化した。50カラム容量の氷冷HBS、150mM NaCl、20mMイミダゾール、0.1%Triton-X114(pH X)を用いてカラムを洗浄して、エンドトキシンを除去した。その後、さらに20カラム容量のHBS、20mMイミダゾール(pH X)を用いてカラムを洗浄した。エンドトキシンを含まなくなったタンパク質を、4カラム容量のHBS、200mMイミダゾール(pH X)を使用して溶出した。PD-10カラム(GE Healthcare)を使用して、タンパク質を10mM HEPES、150mM NaCl(pH7.2)に緩衝液交換した。エンドトキシンレベルは、PierceLAL発色性エンドトキシン定量キット(Thermo)を使用して、メーカーのプロトコルに従って測定した。すべてのタンパク質について、エンドトキシンレベルはキットの検出レベル未満であった。
【0071】
表面プラズモン共鳴
表面プラズモン共鳴を使用して、組換え産生された単量体IL-10野生型および変異体の、IL-10Rαの存在下または非存在下でのIL-10Rβへの結合親和性を求めた。ビオチン化IL-10Rβを、ストレプトアビジンを介してチップ表面上に固定化した。シリーズSセンサSA(GE Healthcare)チップは、ビオチン化受容体の固定化前に、10mM HEPES、150mM NaCl、0.02%TWEEN-20中でプライミングした。その後、10mM HEPES、150mM NaCl、0.05%TWEEN-20、および0.5%BSA中で分析ランを実施した。測定にはBiacore T100(T200 Sensitivity Enhanced)を使用し、データ分析にはBiacore T200 Evaluation Software3.0を使用した。
【0072】
細胞培養
ヒトバフィーコートはスコットランド国立輸血サービスから入手し、末梢血単核細胞(PBMC)は密度勾配遠心分離(Lymphoprep、StemCell Technologies)によって単離した。PBMCは、RPMI-1640、10%v/vFBS、100U/mLペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco)ならびに増殖および活性化用のサイトカイン中で増殖させた。IL-10変異体の非存在下または存在下で3日間、培地に100ng/mL抗CD3(ヒトUltraLEAF、Biolegend)および20ng/mL IL-2(Proleukin、Novartis)を添加した。3日間の活性化後に細胞を遠心分離し、20ng/mLのIL-2+または-IL-10変異体を添加した培地に再懸濁した。細胞集団は2~3日かけて増殖させた。
【0073】
単球は、CD14陽性選択を使用してPBMC集団から単離した。抗CD14FITC抗体(Biolegend#367116)を使用して細胞を染色し、メーカーのプロトコル(MACS Miltenyi)に従って磁気分離により単離を行った。次に単球を、M-CSF(20ng/mL、Biolegend)を添加した完全なRPMI(上記のとおり)中で培養した。その後、IL-10変異体を用いて、分析前に24時間細胞を刺激した。
【0074】
CD8T細胞は、抗CD8aFITC抗体(Biolegend#30906)を用いて染色した後、磁気分離(MACS Miltenyi)によってPBMCから単離した。精製したCD8T細胞の活性化には、ImmunoCultヒトCD3/CD28T細胞アクティベータ(Stem Cell)をメーカーのプロトコルに従って使用するとともに、20ng/mL IL-2およびIL-10変異体を加えた。細胞を3日間活性化した後、培地を20ng/mL IL-2およびIL-10変異体を添加した完全なRPMIに2~3日間交換した。
【0075】
フローサイトメトリ染色および抗体
HLA-DRPE(Biolegend#307605)の生細胞表面染色のために、非接着単球を遠心分離によって培養液から除去し、冷PBSに再懸濁した。接着単球は、アキュターゼ(StemCell Technologies)を室温で5から10分間使用して剥離させた。生細胞表面マーカー染色中、細胞は4℃または氷上に保ち、特に断らない限り染色は96ウェルvボトムプレート(Griener)中で行った。非接着細胞および剥離細胞を組み合わせ、1条件につき50μLの容量でFcRブロッキング試薬(Miltenyi)に4℃で10分間再懸濁した。細胞をPBS/0.5%BSAで洗浄し、FcRブロッキング試薬で1/100に希釈した抗体混合物50μLに再懸濁した。抗体のインキュベーションは4℃、暗所で30から60分間行った。細胞は2回洗浄後、CytoFlexフローサイトメータ(Beckman Coulter)で分析するために、ウェルあたり100μLに再懸濁した。平均蛍光強度(MFI)をすべての集団について定量化した。IL-10処理細胞のMFIを同じドナーの非IL-10処理コントロールで割ることによって、各ドナー内でデータを正規化して倍率変化を算出した。
【0076】
グランザイムB細胞内染色のために、活性化6日目のPBMCまたはCD8細胞のいずれかを室温で10分間2%パラホルムアルデヒドを用いて固定した後、PBSで洗浄した。細胞を0.1%Triton-X100/PBS中で10分間透過処理し、PBS/0.5%BSAで洗浄した。細胞は洗浄前に、1/100希釈の抗CD8aAlexaFluor700(Biolegend#300920)、抗CD4PE(Biolegend #357404)、抗CD3BrilliantViolet510(Biolegend#300448)および抗グランザイムBFITC(Biolegend#515403)を用いて1時間染色した。MFIをすべての集団について定量化し、正規化は上記のように行った。
【0077】
STAT1およびSTAT3のホスホフロー分析のために、96ウェルvボトムプレートに細胞懸濁液50μL/ウェル、密度2×104細胞/ウェルで細胞を蒔いた。用量反応試験のため、7倍段階希釈したIL-10変異体および非刺激コントロール(50μL/ウェル)を用いて、細胞を37℃で15分間刺激した後、2%パラホルムアルデヒドを用いて室温で10分間固定した。動態試験のために、細胞を飽和濃度のIL-10変異体(50nM)を用いて規定の時点で刺激した後、2%パラホルムアルデヒドを用いて同時に固定した。細胞をPBSで洗浄し、氷冷100%メタノールで透過処理し、氷上で最低30分間インキュベートした。細胞は、(Krutzik and Nolan, 2006; Martinez-Fabregas et al., 2019)に記載のように蛍光バーコード化した。簡潔には、2つのNHS-色素(Pacific BlueおよびDyLight800、Thermo)の16の組み合わせのパネルを使用して、氷上で個々のウェルを35分間染色した後、PBS/0.5%BSAで洗浄することによって反応を停止させた。バーコード化したらすぐに16の集団を抗体染色のために合わせてプールした。PBMC、CD8細胞および単球を、上記の細胞表面マーカー、ならびに抗pSTAT3Alexa488(Biolegend #651006)および抗pSTAT1Alexa647(Cell Signalling Technologies#8009)を用いて染色した。取得中に、個々の集団をバーコードパターンに従って識別し、すべての集団についてpSTAT3Alexa488およびpSTAT1Alexa647のMFIを定量化した。MFIをプロットし、Prismソフトウェア(バージョン7、GraphPad)を使用してシグモイド用量反応曲線をフィッティングした。データは、各ドナーグループ内で、すべての刺激の最高濃度の最高MFIを100%とし、最低MFIを0%とすることにより正規化した。
【0078】
酵母ディスプレイライブラリ
酵母表面ディスプレイプロトコルは、以前のプロトコル(Boder and Wittrup, 1997; Martinez-Fabregas et al., 2019)から応用した。IL-10酵母ディスプレイライブラリを作成するために、単量体IL-10遺伝子(Josephson et al., 2000)を、(Mendoza et al., 2017)に記載されているように、エラープローンPCRに供した。次いで、この生成物を増幅し、線形化pCT302ベクターとともに出芽酵母株EBY100に形質転換し、選択的デキストロースカザミノ酸(SDCAA)培地中で30℃、2日間増殖させた。次いで、酵母細胞を、(Chao et al., 2006)に記載されているように、選択的ガラクトースカザミノ酸(SGCAA)中に20℃で2日間置いて、IL-10変異体の細胞表面発現を誘導した。磁気活性化細胞選別(MACS、Miltenyi)を使用して、他の系について以前に記載されたように(Moraga et al., 2015b)、IL-10Rβに対する結合親和性が高いIL-10変異体を選択した。簡潔には、高濃度のストレプトアビジンビーズを使用し第1の選択ラウンドを実施して、ストレプトアビジンと結合することが可能な変異体を表示する任意の酵母を除去した。第2の選択ラウンドでは、表示されたタンパク質が確実に適切に折り畳まれているようにしながら、C末端にc-mycタグを有する変異体を表示する酵母を選択した。その後の選択ラウンドは、誘導された酵母を、組換え産生されたビオチン化IL-10Rβの濃度を漸減させながらともに2時間インキュベートし、続いて、蛍光標識ストレプトアビジン(AlexaFluor647)とともに15分間インキュベートすることにより行った。磁気活性化細胞選別(MACS、Miltenyi)によって、IL-10Rβと結合することが可能なIL-10変異体を表示する酵母を選択した。結合に必要なIL-10Rβの濃度が野生型単量体IL-10と比較して十分に低下したら、酵母をSDCAA寒天に蒔き、用量反応試験のために単一コロニーを単離して変異体のEC50値を求めた。
【0079】
有望なIL-10変異体を表示する酵母コロニーをZymoprep(Zymoresearch)に供してプラスミドを単離し、これを次にコンピテントDH5α大腸菌にヒートショックし、プラスミドを配列決定して単量体IL-10遺伝子中のどこに変異が生じたかを観察した。次いで、これらの遺伝子をバキュロウイルス発現ベクターpACgp67BN中にクローニングし、上記のように組換え発現させた。
【0080】
IL-6分泌の測定
単球をLPS(100ng/mL)(大腸菌O26:B6、Sigma)+様々な濃度のIL-10変異体を用いて8時間刺激した。次いで上清を除去し、IL-6検出のための酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)に使用した(Biolegend、#430501)。メーカーのプロトコルに従った。96ウェルハーフエリアプレート(Sigma)に捕捉抗体をコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。プレートはPBS/0.05%Tween-20で洗浄し、アッセイ希釈液で1時間ブロッキングし、洗浄した。上清をアッセイバッファで1対10に希釈した後、プレートに加えた。プレートを室温で2時間振とうしながらインキュベートした。プレートを再度洗浄し、検出抗体とともに1時間インキュベートした。洗浄後、アビジン-HRPを加え、30分間インキュベートし、続いてTMB基質溶液とともに15分間インキュベートした。H2SO4を加えて反応を停止させ、450nmおよび570nmの吸光度を測定し、570nmの吸光度を450nmから差し引いた。
【0081】
RNAトランスクリプトーム配列決定
それぞれ3人のドナーから得たヒト初代単球およびCD8T細胞(StemCell Technologies)を、上記のように刺激した。細胞は、ハンクス平衡塩溶液(HBSS、Gibco)で洗浄し、保存のため瞬間凍結した。RNAはRNeasyキット(Quiagen)を使用してメーカーのプロトコルに従って単離した。すべてのRNAの260/280比は1.9超であった。1サンプルあたり1μgのRNAを使用した。トランスクリプトーム分析はNovogene社が次のように行った。NEBNext(登録商標)UltraTM RNALibrary Prep Kit for Illumina(登録商標)(NEB、アメリカ合衆国)を使用して、メーカーの推奨に従ってシーケンスライブラリを作成し、インデックスコードを加えて各サンプルに配列を帰属させた。簡潔には、ポリTオリゴ結合磁性ビーズを使用して全RNAからmRNAを精製した。NEBNext First StrandSynthesis反応バッファ(5X)中で、高温下で二価カチオンを使用して断片化を行った。ランダム六量体プライマおよびM-MuLV逆転写酵素(RNase H-)を使用して第1鎖cDNAを合成した。その後、DNAポリメラーゼIおよびRNase Hを使用して第2鎖cDNA合成を実施した。残ったオーバーハングはエキソヌクレアーゼ/ポリメラーゼ活性を介して平滑末端に変換した。DNA断片の3′末端をアデニル化した後、ヘアピンループ構造を有するNEBNextアダプタを連結して、ハイブリダイゼーションのために調製した。優先的に長さ150~200bpのcDNA断片を選択するため、AMPureXPシステム(Beckman Coulter、ビバリー、アメリカ合衆国)を用いてライブラリ断片を精製した。次いで、3μLのUSER酵素(NEB、アメリカ合衆国)を、サイズ選択してアダプタを連結したcDNAとともに37℃で15分間、続いて95℃で5分間、PCRの前に使用した。その後、Phusion高忠実度DNAポリメラーゼ、ユニバーサルPCRプライマおよびインデックス(X)プライマを用いてPCRを実施した。最後に、PCR生成物を精製し(AMPureXPシステム)、Agilentバイオアナライザ2100システムでライブラリの品質を評価した。
【0082】
RNA配列データ分析
品質管理、基準ゲノムへのマッピングおよび定量化のための一次データ分析は、Novogene社が以下に概説するように行った。
【0083】
品質管理:まずFASTQ形式の生データ(生リード)を、社内スクリプトを通じて処理した。このステップでは、生データからアダプタ配列およびポリN配列を含むリードならびに低品質のリードを除去することにより、クリーンデータ(クリーンリード)を得た。同時に、クリーンデータのQ20、Q30およびGC含有量を算出した。下流の分析はすべて高品質のクリーンデータに基づいて行った。
【0084】
基準ゲノムへのマッピング:基準ゲノムおよび遺伝子モデルのアノテーションファイルは、ゲノムウェブサイトブラウザ(NCBI/UCSC/Ensembl)から直接ダウンロードした。HISAT2ソフトウェアを使用して、ペアエンドクリーンリードを基準ゲノムにマッピングした。HISAT2は、合わせるとゲノム全体を網羅する、小さなGFMインデックスの大規模なセットを使用する。これらの小さなインデックス(ローカルインデックスと呼ばれる)をいくつかのアライメント戦略と組み合わせることで、シーケンシングリードの迅速かつ正確なアライメントが可能になる。
【0085】
定量化:HTSeqを使用して、既知および新規の遺伝子を含む各遺伝子のマッピングされたリード数を数えた。次いで、遺伝子の長さとその遺伝子にマップされたリード数に基づいて各遺伝子のRPKMを算出した。RPKM(リード/キロベースエキソンモデル/100万マップリード)は、リード数に対するシーケンシングの深さおよび遺伝子長の効果を同時に考慮し、現在最も一般的に使用される遺伝子発現レベル推定法である。
【0086】
統計分析は筆者らがExcelで行った。各ドナー内でIL-10刺激発現レベルを非刺激コントロールで割ることにより、倍率変化を算出した。平均の倍率変化を、3人のドナーにわたって各刺激について算出し、次いでこの平均のlog2を算出した。有意に変化した遺伝子の算出のために、各ドナーのIL-10刺激と非刺激の発現レベル間の倍率変化のlog2を別々に算出し、不対両側t検定を使用してp値を生成した。その後このp値のlog10を、先に算出したlog2平均倍率変化に対してプロットした。野生型IL-10二量体(WTD)50nM条件で、log2倍率変化0.6超または-0.6未満に有意に(p≦0.05)変化した遺伝子を遺伝子のセットリストとし、これに対して他のすべてのIL-10刺激を比較した。アップレギュレートされた遺伝子はlog2倍率変化≧0.6、ダウンレギュレートされた遺伝子はlog2倍率変化≦-0.6の遺伝子を意味する。WTDと他のIL-10変異体刺激の比較のために、変異体の平均log2倍率変化をWTDの平均log2倍率変化で割った。存在量が検出限界に近い遺伝子を除去するために、2人以上のドナーにおいてRPKMが1未満の遺伝子は分析から除外した。
【0087】
遺伝子の機能アノテーション(KEGG経路、GO terms)は、DAVID Bioinformatics Resource機能アノテーションツール(Huang da et al., 2009a, b)を使用して行った。クラスタ化ヒートマップは、R Studio Pheatmapパッケージを使用して作成した。
【0088】
生細胞2色1分子イメージング研究
受容体ホモおよびヘテロ二量体化を、以前に記載されたように2色1分子共追跡によって定量化した(Moraga et al., 2015c, Wilmes et al., 2015, Wilmes et al., 2020)。受容体二量体化実験は、IL-10RαおよびIL-10Rβを、それぞれ単量体ECFPおよびEGFPのN末端融合変異体とともに一過性に発現するHeLa細胞において実施した。細胞表面の標識化は、操作したシステイン残基を介して光安定性フルオロフォアと部位特異的に結合した抗GFPナノボディミニマイザ(MI)およびエンハンサ(EN)をそれぞれ使用して達成した。受容体ヘテロ二量体化の定量化のために、IL-10RαおよびIL-10Rβを、それぞれMIRho11(ATTORho11、ATTO-TEC GmbH)およびENAT643(ATTO643、ATTO-TEC GmbH)を用いて標識した。ホモ二量体化の定量化のためには、IL-10RαをMIRho11およびMIAT643を用いて標識するか、またはIL-10RβをENRho11およびENAT643を用いて標識した。対応する他の受容体サブユニットの過剰発現は、それぞれENAT488またはMIAT488(ATTO488、ATTO-TEC GmbH)を用いて標識することによって保証した。細胞膜における個々のIL-10RαおよびIL-10Rβのタイムラプス2色イメージングは、561nmおよび640nmで励起し、画像分割器(QuadView QV2、Photometrics)を使用して単一EMCCDカメラ(Andor iXon Ultra897、Andor)を用いて検出する全反射蛍光顕微鏡によって行った。複数標的トレーシング(MTT)アルゴリズム(Serge et al., 2008)を使用して分子を局在化させた。受容体二量体は、以前に詳細に記載されたように、少なくとも10連続フレームについて150nmの距離閾値内に共局在化した分子として同定した(Moraga et al., 2015c, Wilmes et al., 2015, Wilmes et al., 2020)。
【0089】
〔結果〕
IL-10Rβに対する親和性を増強したIL-10変異体の操作
IL-10はその四量体の受容体複合体と2段階の結合プロセスで結合する。第1段階では、1分子のIL-10が2つのIL-10Rαと高い親和性で結合し、第2段階では、2つのIL-10RβがIL-10/IL-10Rα四量体複合体にリクルートされて、シグナル伝達を開始する(
図1A、上段パネル)。IL-10の顕著な特徴は、IL-10Rβに対する結合親和性が非常に低い(~mM範囲)ことであり、我々はこのことがIL-10の生理活性の律速段階として作用すると仮定した。そこで、IL-10Rβ親和性を増強したIL-10変異体が、幅広い範囲のリガンド濃度で強い反応を誘導することによって、このin vivo律速段階を克服するか検討した。この疑問に取り組むため、酵母表面ディスプレイを使用してIL-10のIL-10Rβに対する結合親和性を高め、親和性を増強したこれらの新しいIL-10変異体によって誘導されるシグナル伝達および活性プロファイルを調べた。IL-10の操作において注意が必要なのは、このサイトカインが二量体的性質を有し、酵母表面に正しく表示することが困難であることである。この制限を克服するために、Walterグループによって以前に記載された単量体IL-10変異体(Josephson et al., 2000)を工学的足場として使用した。単量体IL-10は、IL-10のヘリックスDとEの間の結合リンカーを6ペプチド延長し、その結果、ヘリックスEおよびFがそれ自身の疎水性コア中に折り畳まれてIL-10単量体を形成することにより、Walterグループによって作製された(
図1Bおよび
図8)。単量体のIL-10は、IL-10RαおよびIL-10Rβをそれぞれ1分子ずつリクルートして、活性シグナルを発する三量体複合体を形成する(
図1A、下段パネル)。単量体IL-10はIL-10介在性の反応を引き起こすことが可能であるが、その二量体対応物と比較して効力は著しく低い(Josephson et al., 2000, Logsdon et al., 2002)。
【0090】
まず、IL-10RαおよびIL-10Rβ受容体サブユニットへの結合が酵母表面の状況で保たれるか検証するために、単量体のIL-10構築物を酵母にトランスフェクトした。ビオチン化IL-10RαおよびIL-10Rβ受容体をAlexa-647蛍光標識ストレプトアビジンと組み合わせて使用して、フローサイトメトリによって受容体結合を測定した(
図1C)。
図1Dに示すように、単量体IL-10はIL-10Rαへの結合を保持し、酵母の表面に正しく表示されていることが確認された。IL-10Rαの存在下でも非存在下でも単量体IL-10のIL-10Rβへの結合は検出できず、この受容体サブユニットへの結合が弱いことが確認された(
図1D)。部位特異的変異体ライブラリの設計の指針となる、IL-10Rβに結合したIL-10の結晶構造がないため、IL-10Rβに対する親和性を増強したIL-10変異体を作製するために、非バイアスでエラープローンな取り組みを試みた。単量体IL-10変異体をエラープローンPCRに供し、増幅したPCR生成物を、以前に記載されたプロトコル(Chao et al., 2006, Mendoza et al., 2017)に従ってサッカロミセス・セレビシエ株EBY100中に電気穿孔した。8回の選択ラウンドを実施して、IL-10Rβの濃度を徐々に低下させて、IL-10Rβとより高い親和性で結合するIL-10変異体を単離した(
図1E)。最初の選択ラウンドは、高濃度のビオチン化IL-10Rβを用いて非ビオチン化IL-10Rαの存在下で行って表面複合体を安定化させ、低親和性結合体を回収した。ラウンド6の後には、ライブラリは、IL-10Rαの非存在下でIL-10Rβと結合可能な変異体で構成されており、ラウンド8までにライブラリは低ナノモル範囲の濃度のIL-10Rβと結合可能になった(
図1Eおよび1F)。この時点で個々の酵母コロニーをピックし、IL-10野生型と比較してより高い親和性でIL-10Rβと結合するいくつかのクローン(A11、B11、R5A11)を単離した(
図1Fおよび1G)。これらの変異体において見出された変異をIL-10構造の文脈に置くと、重要なことに、それらはIL-10Rβと結合すると以前に予測されたヘリックスAおよびDに沿った領域に局在し(Mendoza et al., 2017)、我々の選択プロセスの正当性が認められた(
図1Hおよび1I)。
【0091】
単離したIL-10変異体の生物物理学的特性評価
次に、単離したIL-10変異体を組換え発現させ、その生物物理学的特性を評価した。重要なことに、IL-10変異体はゲルろ過カラムにかけると単量体として挙動し、その単量体的性質が確認された(
図8Aおよび8B)。表面プラズモン共鳴(SPR)試験を行って、
図1Gの酵母上結合滴定実験で見られた見かけの結合親和性の正当性を確認した。ビオチン化IL-10Rβをチップ表面上に固定化し、IL-10変異体A11、B11およびR5A11を流した(
図9A)。この試験で使用した用量範囲(マイクロモル範囲)で野生型単量体IL-10(WTM)の結合は検出できず、IL-10wtが示すIL-10Rβに対する結合親和性の低さが確認された(
図9Bのパネル1および9C)。親和性成熟IL-10変異体はすべて低マイクロモル範囲のK
D値でIL-10Rβと結合することが可能であり(
図9Bおよび9C)、その結合親和性の改善が確認された。
【0092】
IL-10は、IL-10Rαに予備結合すると、IL-10Rβに対する親和性が増強されるという協同的な結合動態を示す(Walter, 2014)。そこで、我々の変異体がこの特性を保っているか調べた。そのために、可溶性IL-10Rαに予め結合した高親和性IL-10変異体を使用して、新たなSPR測定を実施した(
図9D)。WTM/IL-10Rα複合体のIL-10Rβへの有意な結合は検出できず、IL-10Rβに対する結合親和性が非常に低いことが再度強調された(
図9Eのパネル1および9F)。IL-10変異体はすべて、IL-10Rαと複合体化するとIL-10Rβへの結合の増強を示し(nM範囲内)、それらの協同的結合が確認され、我々の新しい変異体に導入した変異によって、標準的なIL-10受容体複合体結合トポロジが攪乱されていないことを示唆した(
図9Eおよび9F)。我々のSPRデータから、そのwt対応物の1000倍高い結合親和性でIL-10Rβと結合する新しいIL-10変異体が単離されたことを確認した。
【0093】
IL-10Rβ結合親和性の増強は、受容体複合体の会合を改善する。
これまで、使用するタンパク質操作方法に必要であったため、我々の高親和性IL-10変異体の生物物理学的特性評価は、サイトカインの単量体立体構造で行ってきた。天然IL-10/IL-10受容体複合体の化学量論を再現するために、我々の高親和性IL-10変異体R5A11を、単量体形態(R5A11M)に加えて二量体形態(R5A11D)でも組換え発現させた(
図8Aおよび8B)。これと野生型IL-10二量体(WTD)および野生型IL-10単量体(WTM)の比較により、IL-10の分子活性および細胞活性に対する結合親和性の増加および化学量論の寄与効果を調べることが可能になった。
【0094】
IL-10Rβへの結合親和性を高めると、生細胞の細胞膜における受容体会合の動態がどのように変化するかを検証するために、2色全反射蛍光(TIRF)顕微鏡によって、両方の受容体鎖の拡散および相互作用を探った。この目的のために、非蛍光性(Y67F)mEGFPの操作した変異体を用いてタグ付けしたIL-10RαおよびIL-10Rβを、HeLa細胞において発現させた。タグは、2つの異なる抗GFPナノボディ((Kirchhofer et al., 2010) pdb:3k1kおよび3G9A)のいずれかを特異的に認識するように設計した。これらのナノボディ(NB)は、他のサイトカイン受容体系において以前に示されたように、生細胞の表面上のIL-10Rα
DY649およびIL-10Rβ
RHO11の同時2色1分子追跡に適した光安定性有機フルオロフォアRHO11およびDy649に結合させた(Martinez-Fabregas et al., 2019, Wilmes et al., 2020, Moraga et al., 2015a)(
図2Aおよび10A)。
【0095】
細胞表面標識の後、両方の受容体サブユニットが細胞膜において自由に拡散していることを見出した。受容体は、2つの個々の粒子が100nmの近接で≧10ステップ(~320ms)連続して両方のスペクトルチャネルで持続的に見出された場合、二量体化しているとみなした。これらの共局在化/共追跡の閾値により、密度依存的なランダムエンカウンタ共局在化を排除することが可能になった。IL-10の非存在下では、バックグラウンドを超えるIL-10RαとIL-10Rβのヘテロ二量体化は観察されなかった(
図2Bおよび2C)。飽和濃度のWTDで刺激すると、IL-10RαとIL-10Rβは有意に二量体化した。際立ったことに、R5A11Dは有意に高いレベルの受容体複合体会合を誘導した(
図2C)。この発見は、二量体型で見られたよりも低いレベルではあるが、野生型および高親和性IL-10変異体の両方の単量体型についても確認された(
図3D)。リガンド刺激は、特にIL-10Rαについて拡散移動度の著しい低下をもたらし、これは以前の報告と一致する(
図10B)。(Moraga et al., 2015c, Wilmes et al., 2015)。また、IL-10RαおよびIL-10Rβのホモ二量化を探った。この目的のために、二量体の半分のみが異なる色素で標識され、従って共追跡分析によってピックアップされることを考慮して、受容体鎖のいずれかを両方の色素を用いて確率的に標識した(
図10A)。二量体IL-10を用いて刺激すると、IL-10Rαの強いホモ二量化が誘導されたが、IL-10Rαの結合界面はR5A11で変化しなかったため、両方のサイトカイン変異体間で差異はなかった(
図2C)。代わりに、IL-10Rβのホモ二量化が、操作した変異体R5A11Dについて有意に増加した。単量体IL-10変異体については、すべてのホモ二量体化実験において、リガンドの単量体的性質と一致して、受容体ホモ二量体を誘導できなかった(
図2D)(Josephson et al., 2000)。まとめると、IL-10Rβに対する親和性成熟界面が関与するすべての条件下で、R5A11について受容体会合の増加が観察された。
【0096】
IL-10変異体はヒト初代単球においてシグナル伝達活性の増強を示す
IL-10は単球を含む種々の自然細胞の活性を調節することにより、炎症プロセスを抑制する。次に、ヒト単球において一連のシグナル伝達および活性アッセイを実施して、我々の操作した変異体の抗炎症能を調べた。単球(CD14
+細胞)をヒトバフィーコートから単離し、2日間静置してからIL-10wtならびに高親和性の単量体および二量体を用いて刺激した(
図3A)。リガンド刺激時のSTAT1およびSTAT3リン酸化のレベルを、これらの2つの転写因子はIL-10が関与する主要なシグナル伝達経路を表すことから、フローサイトメトリによって測定した(Wehinger et al., 1996, Finbloom and Winestock, 1995)。飽和濃度では、R5A11DおよびWTDは同等のSTAT1およびSTAT3レベルを活性化した(
図3B)。しかし、R5A11Dは飽和濃度未満ではSTAT3およびSTAT1の両方のリン酸化の増強を示し、これはWTDと比較してEC
50値の低下につながった(
図3Bおよび3C)。WTMが示したSTAT3およびTAT1の活性化は弱く、活性化の振幅はWTDによって誘発された活性化の振幅の50%未満であった(
図3B)。興味深いことに、WTMは偏ったシグナル伝達反応を引き起こした。WTD、R5A11DおよびR5A11Mが1:1のpSTAT1対pSTAT3比を示したのに対し、WTMはpSTAT3に対する明確な偏りを示し(
図3D)、これは短命サイトカイン-受容体複合体による偏ったシグナル伝達について記載した我々の研究所の以前の観察に一致した(Martinez-Fabregas et al., 2019)。R5A11Mは、飽和用量で二量体サイトカインによって誘導されるものと同等のレベルまでSTAT3およびSTAT1の両方の活性化を誘導し、WTMによって誘発されるシグナル伝達の欠陥は、受容体結合親和性の弱さに起因することを示唆した(
図3Bおよび3C)。シグナル伝達動態試験により、用量反応試験で得られたシグナル伝達プロファイルは、異なるIL-10変異体によって誘発されるシグナル伝達動態の差異によって混乱することはないことが示された。4つのIL-10リガンドは、ヒト単球において同等のシグナル伝達動態を引き起こし(
図3Eおよび
図11)、それらのシグナル伝達プロファイルの差異は、IL-10Rβへの結合親和性の差異に起因することが確認された。
【0097】
IL-10は、単球および樹状細胞などの自然細胞における抗原提示を抑制することにより、抗炎症特性を発揮する(Mittal and Roche, 2015)。そこで次に、IL-10のIL-10Rβへの結合親和性が、ヒト初代単球におけるHLA-DR発現を低下させるその能力に影響を与えるかを調べた。WTDおよびR5A11Dは、それらのシグナル伝達プロファイルが同等であることに一致して、飽和用量でHLA-DR表面レベルを同程度(50%)に低減させた(
図3F)。しかし、飽和用量未満では、R5A11DはWTDよりも有利であり、HLA-DR発現のより強いダウンレギュレーションを誘導した(
図3F)。WTMは、そのシグナル伝達効力の低さと同様に、HLA-DRの表面レベルの軽度の低減(20%)を誘導した(
図3F)。興味深いことに、R5A11Mは二量体リガンドと非常に類似した程度までSTAT1/STAT3を活性化するにもかかわらず、HLA-DRの表面レベルの低減を30%しか誘導せず(
図3F)、IL-10がHLA-DR発現を制御するさらなるメカニズムを示唆した。次に、IL-10Rβ結合親和性と、単球による炎症誘発性サイトカインの産生を抑制するIL-10の能力がどのように相関するかを調べた。このために、示した用量のWTDおよびR5A11Dの存在下でLPS刺激時に単球によって分泌されるIL-6のレベルを測定した(
図3G)。飽和濃度では、WTDおよびR5A11DはIL-6分泌を同程度に効果的に抑制した(
図3G)。しかし、飽和用量未満では、R5A11Dは再度WTDよりも顕著な改善を示した(
図3G)。まとめると、我々のデータは、IL-10Rβに対する結合の増強を示すIL-10変異体は、治療的介入中に見出されるような飽和用量未満で、機能的利点を得ることを強調している。
【0098】
受容体親和性の増加は単球におけるIL-10の転写活性を増強する
単球における我々の最初の研究は、IL-10によって制御される2つの古典的なマーカー、すなわちHLA-DRレベルおよびIL-6発現に焦点を当てたものであった。我々の変異体がどのようにヒト単球の活性を制御しているかについてより広く理解を得るために、種々のIL-10リガンドを用いて24時間刺激したヒト単球の詳細な転写分析を実施した。単球を単離し、
図4Aと同様に処理した。WTD処理はヒト単球において強い転写制御を誘発し、741遺伝子のアップレギュレーションおよび1084遺伝子のダウンレギュレーションを誘導した(
図4Bおよび4C)。高度にアップレギュレートおよびダウンレギュレートされた遺伝子を、
図5Dに示す。KEGG経路分析は、IL-10処理によって制御される、代謝経路に関与する多数の遺伝子を示し(
図12A)、その選択されたものを
図12Bに示す。WTD処理は、解糖系におけるキー酵素であるヘキソキナーゼ-2およびヘキソキナーゼ-3の発現を制御した。アシル-CoA合成に関連する遺伝子、ACSS2、ACSL4、ACSL1も有意にアップレギュレートされ、IL-10による脂質生合成の制御の可能性が強調された(
図12B)。代謝関連遺伝子に加えて、WTD処理は、サイトカイン、ケモカインおよびその受容体の発現を制御した(
図12B)。例えば、IL-12Rβ2、IL-21RαおよびIL-4Rαなどのサイトカイン受容体はアップレギュレートされ、一方でIL-8、IL-18およびIL-24などのサイトカインはダウンレギュレートされた(
図12B)。CXCL1、CCL22、CCL24、CCL18、CXCL10およびCXCL11ケモカインの発現もIL-10処理によって調節され、抗炎症性環境に寄与した。我々はまた、CD93-単球の食作用に重要な受容体ならびにCD44およびCD9-細胞表面接着に関与するマーカーを含む、CDマーカーの雑多なコレクションのWTD処理による制御(
図12B);ならびに以前の研究(Ito et al., 1999, Dallagi et al., 2015)と一致する、タイプI IFN遺伝子シグネチャの抑制(
図12B)を観察した。全体として、我々の転写研究は、エネルギー恒常性、移動および輸送の微調整を包含する、単球の生物学のIL-10による広範な制御を明らかにした。注目すべきことに、飽和用量のWTDによって制御される遺伝子の90%は、飽和未満用量のWTDを使用しても同程度に誘導され、IL-10反応の強さが強調された(
図4E)。しかし、興味深いことに、2つの用量のWTDによって差次的に制御された10%の遺伝子のうち、その96%はIL-10処理によってダウンレギュレートされた遺伝子に対応し、重要な炎症誘発性ケモカインおよびサイトカインを含む(
図4Eおよび4F)。差次的に発現した遺伝子のリストを、
図5Gに提示する。我々のデータは、低用量のIL-10処理が、炎症反応の増強に決定的に寄与するキーサイトカインおよびケモカインの発現を遮断するIL-10の能力を、特異的に妨害することを示す。
【0099】
次に、操作したIL-10変異体が、単球において遺伝子発現プログラムをどのように制御するかを調べた。WTMは、そのシグナル活性化プロファイルの弱さに一致して、非常に弱い転写反応を誘導した(
図4Hおよび12C)。興味深いことに、R5A11MはWTMと比較してより強力な転写反応を引き起こしたが、二量体リガンドによって誘導されたのと同じ効力に達することはできなかった(
図4Hおよび12C)。WTDおよびR5A11Mを直接比較すると、後者の単量体リガンドは、IL-10によって制御される遺伝子の39%において効果の減少を示した(
図12D)。これは、STAT1およびSTAT3を二量体リガンドによって誘導されるのと同等のレベルまで活性化するその能力とは対照的であり、STAT活性化がIL-10システムにおける転写活性と直接相関していないことを示唆している。我々のシグナル伝達研究と一致して、R5A11DはWTDと比較して、飽和用量未満でより強い遺伝子発現プロファイルを誘導した(
図4H)。R5A11Dは、0.1nMでWTDによって制御される遺伝子の18%の発現を増強し、WTDによってR5A11Dよりも好ましい活性を示す遺伝子はわずか6%であった(
図4Hおよび4I、12E)。
図4Jは、IL-10に制御される上位10個の遺伝子のうち、それらの大半がR5A11Dによる活性の増強を示したことを示す。このパターンは、遺伝子がファミリー、すなわちサイトカインおよびケモカイン、CDマーカーならびにMAPKシグナル伝達によるグループである場合に当てはまる(
図12C)。重要なことに、低用量ではWTDによって制御されなかったキー炎症誘発性サイトカインが、R5A11Dによっては依然として制御される(
図4K)。全体として、我々の転写データは、IL-10は種々のレベルで単球の生物学を制御しており、R5A11DはIL-10Rβに対する親和性の増強を示すことによってより広範な範囲のリガンド濃度でより強い反応を誘発し、炎症性疾患を標的とするIL-10に基づく療法をレスキューする可能性を有することを示している。
【0100】
IL-10変異体はヒト初代CD8T細胞においてシグナル伝達活性の増強を示す
IL-10は、その強力な抗炎症性効果に加えて、特定の状況下で細胞傷害性CD8T細胞を刺激し、エフェクタ分子の産生を増強し、細胞傷害活性を増加させる(Oft, 2014)。次に、我々の親和性成熟変異体が単球において示す活性の増強が、CD8T細胞にもあてはまるかを調べた。ヒト初代CD8T細胞を
図5Aに示すように増殖および活性化し、示した濃度のIL-10変異体に反応したSTAT1/STAT3活性化レベルをフローサイトメトリによって測定した(
図5B)。WTDおよびR5A11Dは飽和用量で非常に類似したSTATリン酸化レベルを誘導したが、R5A11Dは飽和用量未満でEC
50値の低下およびより強いシグナル伝達を示し(
図5B~D)、これは単球における我々の結果と一致した。興味深いことに、R5A11DはSTAT3よりも強力なSTAT1の活性化を示したが、これは単球では観察されず、このことは長命のIL-10受容体複合体が、CD8T細胞におけるSTAT1の活性化に有利であることを示唆している。WTMが示すSTAT1およびSTAT3の活性化は弱く、二量体分子によって誘発される活性化振幅の25%未満しか誘導せず、偏ったSTAT3活性化を示した(
図5B~D)。単球において観察されたのとは対照的に、R5A11MもまたSTAT3に偏った反応を誘発し、STAT3は二量体分子によって誘導されたレベルの80%まで、STAT1は二量体分子によって誘導されたレベルの60%まで活性化し(
図5B~D)、単球とCD8T細胞間の基本的な差異がIL-10受容体複合体の下流のシグナル伝達に影響を与えることを示唆した。単球と同様に、観察された種々のIL-10リガンドによるシグナル伝達出力の差異は、シグナル伝達活性化動態の変化に起因するものではないことが、シグナル伝達動態試験によって明らかになった(
図5E)。
【0101】
グランザイムBは、IL-10刺激時にCD8T細胞で増加することが示されている強力な細胞傷害性エフェクタ分子である(Naing et al., 2018)。次に、CD8T細胞によるグランザイムBの産生が、種々のIL-10リガンドによってどのように制御されるかを調べた。そのために、PBMCまたは単離したCD8T細胞を
図6Aに図示するワークフローに従って活性化し、フローサイトメトリまたはqPCRによってグランザイムBレベルを測定した。以前に報告されたように、IL-10刺激は、古典的な初期および後期活性化マーカー、すなわちそれぞれCD69およびCD71に影響せず、抑制性受容体、すなわちLAG-3およびPD-1の有意に高いアップレギュレーションも誘導せず、またCD8細胞の増殖にも影響しなかった(
図13Aおよび13B)。一方、IL-10刺激は、CD8T細胞がPBMC集団または精製CD8T細胞集団のいずれの状況下で活性化されたかにかかわらず、mRNAおよびタンパク質レベルの両方で単球におけるグランザイムBレベルの強いアップレギュレーションをもたらした(
図13C)。我々のIL-10リガンドを比較すると、飽和濃度では、WTDおよびR5A11Dは、TCR刺激単独によって誘導されるグランザイムBレベルより2.5倍高く、同程度にグランザイムB産生をアップレギュレートした(
図5F)。WTMが示したグランザイムB産生は、そのSTAT活性化の弱さと一致して、非常に低かった。飽和濃度未満でもR5A11Dによって誘導されたグランザイムBレベルのより強いアップレギュレーションが観察された。興味深いことに、R5A11M刺激は2つの主要な集団をもたらし、ドナーの半分はWTMによって誘導されるのと類似のレベルまでグランザイムBをアップレギュレートし、その他の半分は二量体分子によって誘導されるのと同等のレベルまでグランザイムBをアップレギュレートしていた。全体として、我々の結果は、IL-10Rβに対する親和性の増強が、幅広い範囲のリガンド用量および免疫細胞サブセットにおいて、IL-10に強い活性を与えることを示した。
【0102】
受容体親和性の増加はCD8T細胞におけるIL-10の転写活性を増強する
IL-10がどのようにCD8T細胞反応を制御しているかについてより完全な理解を得るため、次に、種々のIL-10リガンドを用いて処理したCD8T細胞において転写試験を実施した。ヒトCD8T細胞を陽性選択によって精製し、
図6Aに示すようにIL-10wtおよび変異体の存在下で6日間にわたって活性化した。CD8T細胞においてWTDによって誘導された転写変化は、単球においてこのサイトカインによって誘導された転写変化ほど劇的ではなかった。有意に制御された遺伝子はわずか1000個であり、それらの遺伝子の79%がダウンレギュレートされた(
図6Bおよび6C)。より高度に制御された遺伝子を
図7Dに示す。KEGG経路分析により、IL-10に制御される遺伝子はサイトカイン-サイトカイン受容体相互作用に関与していることが示された(
図14A)。際立ったことに、我々はIL-10がCD8T細胞の消耗と古典的に関連する遺伝子のダウンレギュレーションを誘導することに気づいた(
図6E)。IL-10に制御される遺伝子を、以前に発表された、消耗特異的CD8T細胞遺伝子のリストと比較した(Bengsch et al., 2018)。IL-10によって制御される消耗遺伝子の4つのクラスタを同定できた。クラスタ1は、消耗したT細胞およびIL-10を用いて処理したT細胞の両方においてアップレギュレートされた遺伝子を含む。クラスタ2は、最大のクラスタであり、消耗したT細胞においてアップレギュレートされたが、IL-10処理によってダウンレギュレートされた遺伝子を示す。クラスタ3は、消耗したT細胞においてダウンレギュレートされたが、IL-10処理によってアップレギュレートされた遺伝子を表し、クラスタ4は、消耗したT細胞およびIL-10処理したT細胞の両方においてダウンレギュレートされた遺伝子で構成されている。各クラスタにおける制御された遺伝子の代表的なサンプルを
図6Fに示す。これらの結果は、IL-10が、CD8T細胞の消耗を防ぐことによってCD8T細胞の活性を増強し得ることを示唆している。興味深いことに、IL-10処理によるIL-2Rαの有意なダウンレギュレーションもまた観察され、これは、IL-13、LIF、SLC1A4、NFIL3などの古典的なIL-2依存性遺伝子の発現の低減と関連していた(
図6Gおよび6H)(Rollings et al., 2018)。我々の結果は、IL-10がIL-2への感度を制限することによってCD8の細胞傷害活性を制御し、その消耗を遅らせ得ることを示唆している。単球と同様に、飽和用量未満のWTDは、IL-10によって制御される遺伝子のサブセットに差次的に影響し、それらの遺伝子の大半がIL-10処理によってダウンレギュレートされた(
図6I)。興味深いことに、飽和用量未満では、WTDはIL-13およびLIFのような古典的なIL-2依存性遺伝子を制御できず、IL-10によるIL-2活性の制御には高用量のIL-10が必要であることが示唆された(
図6J)。
【0103】
単球で見られたように、WTMが示した遺伝子発現の誘導は非常に弱く(
図6Kおよび14B)、これはそのSTAT活性が準最適であることと一致している。R5A11MはここでもWTMと比較して転写反応を増強したが、非常に類似したシグナル伝達プロファイルを活性化したにもかかわらず、二量体リガンドによって誘導された発現レベルに達することはできなかった(
図6Kおよび14B)。実際、WTDおよびR5A11Mによって誘導された発現レベルを直接比較すると、高親和性単量体はIL-10に制御される遺伝子の56%の活性減少を示した(
図14C)。単球を用いて得られた結果に類似して、0.1nMのR5A11DはWTD50nMとともにクラスタ化され、低濃度で効果的に作用するその能力を裏付けた(
図6K)。飽和濃度未満のWTDおよびR5A11Dによって誘導された発現レベルを比較したところ、IL-10に制御される遺伝子の38%がR5A11Dによって増強されることが明らかになり、低用量のWTDによって好ましい発現を示したのはわずか7%であった(
図6Lおよび14D)。このことは、0.1nMのWTDおよびR5A11Dによってアップおよびダウンレギュレートされる上位10個の遺伝子の発現を比較すると明確に反映された(
図6M)。重要なことに、低用量のWTDによって制御されなかった古典的なIL-2依存性遺伝子が、R5A11Dによっては依然として制御された(
図6N)。まとめると、我々のデータから、ベータ受容体とより強く結合するIL-10変異体は、より幅広い範囲のリガンド濃度でより強い活性を示すことが確認され、IL-10に基づく抗がん免疫療法を後押しする新しい道を開いた。
【0104】
単球およびCD8T細胞においてIL-10により制御される差次的遺伝子発現プログラム
我々の研究は、単球およびCD8T細胞においてIL-10によって誘導される転写変化についての高度で詳細な説明を提供する。この2つの細胞型がIL-10によって刺激される方法は明らかに異なるにもかかわらず、STAT3転写活性を理解するための代理として、2つの細胞サブセットにおいてIL-10によって誘導される転写プログラムの類似性を調べることにした。種々の処理に起因する可変性を最小化するために、単球およびCD8T細胞の両方においてIL-10処理によって制御される遺伝子に焦点を当てた。興味深いことに、181個の遺伝子が単球およびCD8T細胞においてIL-10によって制御された(
図7A)。IL-10処理による制御に基づいて、4つの遺伝子クラスタを同定できた(
図7B)。クラスタ1は、単球およびCD8T細胞の両方においてIL-10処理によってアップレギュレートされた遺伝子を含む(
図7B)。クラスタ2は、単球ではIL-10によってダウンレギュレートされたが、CD8T細胞ではIL-10によってアップレギュレートされた遺伝子に対応する。クラスタ3は、単球ではIL-10処理によってアップレギュレートされ、CD8T細胞ではIL-10処理によってダウンレギュレートされた遺伝子を示す。クラスタ4は、単球およびCD8T細胞においてIL-10処理によってダウンレギュレートされた遺伝子を含む。各クラスタにおける制御された遺伝子の代表的なサンプルを
図7Cに示す。全体として、IL-10は単球およびCD8T細胞間に共通の遺伝子発現プログラムを誘導するが、それらのIL-10に制御される遺伝子がIL-10処理によって誘導されるかまたは抑制されるかは、IL-10刺激が行われる状況に依存し、サイトカインによるさらなるレベルの遺伝子制御を提供することを、我々の比較研究は強調する。
【0105】
五量体のIL-10ムテインとIL-10ムテイン/IL-4融合体の作製
我々のデータは、IL-10/受容体複合体の安定化が、IL-10によるより強力な免疫調節活性をもたらすことを示した。従って、IL-10の結合価を増加させることによってIL-10/受容体複合体をさらに安定化させれば、このリガンドによって誘導される活性の著しい改善がもたらされると仮定する。そのために,KCTDタンパク質の五量体BTBドメインを利用して、該五量体BTBドメインおよび単量体R5A11から構成される融合タンパク質を設計した(
図XおよびSeq.ID.Y)。このキメラタンパク質を高レベルで組換え発現させ、この手法の実現可能性を証明した(
図X)。
【0106】
文献に記載されている抗炎症性リガンドはごくわずかである。その1つがIL-10であり、これは本発明において操作したものである。さらなる抗炎症性サイトカインはIL-4である。ここでは、これらの2つの分子を含む合成サイトカインが特別な抗炎症特性を持つと仮定した。そのために、我々の単量体高親和性IL-10変異体を足場として使用して、3つの異なるIL-4変異体に融合させた。IL-4変異体1は野生型分子に対応する。IL-4変異体2は、GcまたはIL-13Ra1と結合せず、アンタゴニストとして作用するIL-4変異体に対応する。変異体3は、IL-4Raに対する親和性の低減を示すIL-4変異体に対応する。これらの変異は、合成分子の生体内分布に影響し、興味深い免疫細胞サブセットがそれらの分子の標的になることが期待される。
【0107】
CAR Tがん療法におけるIL-10
我々のデータは、CD8T細胞の細胞傷害活性を高める上でのIL-10の積極的な役割を裏付けている。IL-10処理は、CD8T細胞によるグランザイムBのアップレギュレーションを誘導し、その消耗遺伝子シグネチャを低減させ、全体として適応度を増加させた。この発見に基づき、次に、CAR T細胞療法を促進するためにIL-10を使用する可能性を探求することにした。CAR T細胞は、人工受容体を発現するように操作されたT細胞であり、目的の腫瘍細胞を特異的に標的化することが可能である。近年、この療法は多くの可能性を示し、がん免疫療法を改革した。しかしCAR T細胞は、操作されたCAR T細胞の過剰活性化による消耗を含む、その有効性を低減させるいくつかの欠点を依然として有する。患者への投与前にCAR T細胞をIL-10とともにインキュベートすることで、その適応度を改善し、従ってその殺腫瘍能力を増強することが可能である。この仮説を裏付けるいくつかの予備的な結果をここに提供する。IL-10wtまたは我々の操作したIL-10変異体(R5A11)のいずれかを用いて処理したCAR T細胞は、in vitroでのより強い殺傷活性を示し(
図16A)、古典的な細胞傷害性サイトカインであるIFNγのより高度に誘導した(
図16B)。さらに、我々の高親和性変異体はIL-10wtよりも強い効果を示し、IL-10Rbに対する親和性の増強がIL-10の免疫活性効力を高めることが再度強調された。
【産業上の利用可能性】
【0108】
考察:
IL-10は、炎症反応を制御し、CD8T細胞の細胞傷害活性を増強する重要な免疫調節サイトカインである(Moore et al., 2001; Oft, 2014; Walter, 2014)。免疫恒常性を保つその中心的な役割にもかかわらず、IL-10がその機能を行う正確な分子メカニズムの知識は依然として乏しい。我々は、IL-10が示すIL-10Rβに対する弱い結合親和性が、IL-10の免疫調節能を完全に誘発する濃度範囲を制限することによって、その機能適応度に決定的に寄与していると仮定する。ここでは、IL-10受容体複合体の安定性がIL-10の生理活性効力を決定するかを調べるために、IL-10を操作してIL-10Rβに対する親和性を増強した。我々の研究からは、主に2つの発見が得られた:(1)親和性を増強したIL-10変異体は、幅広いリガンド濃度および野生型IL-10と異なる免疫細胞サブセットにおいてより強い反応を引き起こすこと、ならびに(2)IL-10-受容体複合体の化学量論は、STAT活性化レベルの制御を超えてIL-10の生理活性効力に寄与していることである。より一般的に、本研究は、低受容体結合親和性サイトカインの効力を改善するための戦略を概説し、失敗したIL-10療法を再活性化する可能性を有する新しい分子データおよび細胞データを提示するものである。
【0109】
我々の研究において、IL-10は単球の転写プログラムに重大な制御を及ぼし、以前の観察と一致した(Moore et al., 2001)。IL-10処理は単球による抗原提示を抑制し、ケモカインおよびケモカイン受容体の発現の制御を通じて炎症性免疫細胞サブセットをリクルートする単球の能力を制限し、CD93、CD47、CD163などのスカベンジャー受容体およびIL-21Rαなどのサイトカイン受容体のアップレギュレーションを通じて食作用活性を高めた。加えて、IL-10処理は、最近の研究(Ip et al., 2017)と一致して、単球の解糖能および脂質生合成能を変化させることによって単球の代謝活性を調節した。興味深いことに、IL-10の効果は遺伝子抑制に対してわずかに偏っており、IL-10によって制御される遺伝子の59%がダウンレギュレートされた。実際、いくつかの研究は、他のSTATによって誘導される転写を抑制するSTAT3の能力を報告しており(Costa-Pereira et al., 2002; Ray et al., 2014; Yang et al., 2011)、STAT3活性化サイトカインは、他のサイトカインによって誘導される転写プログラムを妨害することによってその機能を誘発し得ることが示唆されている。このモデルと一致して、我々は最近、別のSTAT3活性化サイトカインであるIL-6が、クロマチンへの強いSTAT3結合を促進するが、遺伝子発現は低いことを報告した(Martinez-Fabregas et al., 2019)。
【0110】
IL-10の活性について記載する文献の大多数は、骨髄細胞に焦点を当て、IL-10の単回投与をしばしば飽和状態で使用している(de Waal Malefyt et al., 1991a; Ding et al., 1993; Fiorentino et al., 1991a)。しかし、このサイトカインが骨髄細胞において完全な反応を誘発するIL-10の用量範囲という、このサイトカインの臨床への応用を考慮する上で重要な側面に関しては、あまり理解されていない。ここで我々は、2つの異なる用量のIL-10を用いて刺激した単球からの転写データを提供し、1つは飽和、2つ目は飽和未満であり、後者はIL-10療法中に達成される用量により近い(Naing et al., 2018)。興味深いことに、IL-10によって制御される遺伝子の27%が、飽和用量未満のIL-10を使用したときに影響を受けた。影響を受けた遺伝子の大多数(95%)は、IL-10によってダウンレギュレートされた遺伝子であり、炎症性環境の確立に決定的に寄与するタンパク質、すなわちIL-24、CXCL10、CXCL11、CCL22などのキーケモカインおよびサイトカインをコードしていた。このデータは、IL-10の抗炎症活性がその効果を完全に達成するためには、高用量であることおよび用量の維持が特に必要であることを示唆しており、IL-10療法の失敗の一因となっている。我々の操作したIL-10変異体は、飽和量未満でより強い活性を示し、炎症誘発性ケモカインおよびサイトカイン、すなわちIL-24、CXCL10、CXCL11、CCL22の強力な抑制を誘導した。従って、我々の操作した変異体は、低リガンド用量で抗炎症活性を促進することにより、失敗したIL-10療法をレスキューすることが可能であると推測される。
【0111】
IL-10によって誘発される抗炎症活性ならびに単球およびマクロファージに対するその効果は非常に十分に文書化されている。一方、IL-10がどのようにCD8T細胞の活性を制御するかは、より不明確であり、より議論の余地がある(Oft, 2014)。IL-10がCD8T細胞の機能および腫瘍細胞を死滅させる能力を増強すると報告する研究がある一方で(Emmerich et al., 2012)、腫瘍の微小環境におけるIL-10の存在はT細胞の活性化を抑制するため、弱い反応が予測されると報告する研究もある(Zhao et al., 2015)。我々の結果は、CD8T細胞の細胞傷害活性におけるIL-10処理の積極的な効果と一致する。IL-10の存在下で刺激されたCD8T細胞は、グランザイムBなどのエフェクタ分子のレベルの増強を示し、これはPEG化IL-10を用いて治療した患者の腫瘍反応の改善を示す最近の臨床試験と一致する(Naing et al., 2019)。しかし、IL-10が抗腫瘍CD8T細胞反応を高める分子基盤は、十分に定義されていないままである。我々の転写研究は、IL-10を用いて刺激されたCD8T細胞が、消耗遺伝子シグネチャの低減を示し、より機能的に適応していることを強調した。また、IL-10処理したCD8T細胞はIL-2Rαの発現レベルが低く、これらの細胞におけるIL-2遺伝子シグネチャの低減と相関していた。まとめると、我々のデータは、IL-10はCD8T細胞のIL-2への感度を低減させることによって、CD8T細胞の過剰活性化を防ぎ、消耗表現型への移行を低下させ得るというモデルと一致している。注目すべきことに、IL-10はCD8T細胞における遺伝子発現を優先的に抑制し、IL-10によって制御される遺伝子の79%がダウンレギュレートされ、IL-10によるSTAT3の活性化が、関連する遺伝子プロモータへの結合において他のSTATと競合し、CD8T細胞の反応を微調整し得ることを示唆した。実際、以前の研究において、IL-2および炎症への細胞の感度に影響を与える遺伝子プロモータへの結合における、STAT3およびSTAT5タンパク質間の競合が報告されている(Yang et al., 2011)。我々の操作したIL-10変異体は、飽和用量未満を使用した場合、検証したすべての読み取りにおいてIL-10野生型よりも優れており、単球における我々の観察結果を再現し、治療量で抗腫瘍反応を高める可能性を強調した。
【0112】
IL-10の生物学的反応を発生させる上での二量体構造の重要性は、まだ十分に理解されていない。WTDはWTMの60倍よくIL-10Rαに結合し、シグナル伝達複合体へのIL-10Rβのより効率的なリクルートおよびより強力な活性に寄与する(参考文献)。逆説的に、R5A11MはWTDよりも高い親和性でIL-10Rβに結合し、より効率的な受容体会合を誘発するが、WTDと非常に類似した程度までSTATを活性化するにもかかわらず、引き起こす転写反応はより弱い。加えて、ウイルス性IL-10(二量体リガンドも)は、WTMよりも低い親和性でIL-10Rαと結合するにもかかわらず、WTDと同じ特異的活性を誘導する(Tan et al., 1993)。全体として、これらの観察は、受容体結合親和性に加えてIL-10-受容体複合体の化学量論が、IL-10生理活性効力の微調整に寄与していることを示唆している。我々は最近、サイトカイン受容体細胞内ドメインにおいて利用可能なホスホチロシンの数が、サイトカインによるシグナル伝達同一性の定義に決定的に寄与することを示した(Martinez-Fabregas et al., 2019)。gp130細胞内ドメインで利用可能なTyrの部分的リン酸化を引き起こしたIL-6変異体は、STAT3対STAT1活性化の偏りを示した(Martinez-Fabregas et al., 2019)。単量体および二量体IL-10リガンド間の機能的差異を説明するために、類似のモデルが援用される可能性がある。二量体IL-10変異体は、IL-10RαおよびIL-10Rβの2分子に結合し、リン酸化に利用可能なTyrを単量体リガンドの2倍提供する。この結果、リン酸化Tyrの局所濃度の増加がもたらされ、単量体リガンドにリクルートされないさらなるシグナル伝達分子と結合し、機能特異性を提供する可能性がある。このモデルと一致して、WTMおよびR5A11Mは、CD8T細胞において偏ったSTAT3活性化を誘発した。さらなる研究において、WTDによって結合された六量体複合体において利用可能なTyrの数が多いことが、そのシグナル伝達シグネチャおよび生物学的同一性の定義に寄与しているかどうかについて取り組む必要がある。
【0113】
我々の研究は、IL-10の濃度が治療的介入中に達成されるような準最適なものであることが、どのように差次的にIL-10の免疫調節特性に影響するかを詳細に記載するものである。IL-10の濃度が低下すると、このサイトカインによって誘導される重要な抗炎症活性が失われる。IL-10療法は、幅広い範囲の炎症性疾患を有する患者に投与されているが、ほとんどの場合、思わしくない結果しか得られていない(Buruiana et al., 2010; Colombel et al., 2001)。療法中に患部組織において到達されたIL-10の局所濃度は、十分な抗炎症反応を引き起こすには低すぎると考えられている(Buruiana et al., 2010; Colombel et al., 2001)。加えて、IL-10受容体のレベルは種々の骨髄細胞集団間で著しく変化し、そのIL-10への感度を変化させ、おそらくIL-10療法において観察される反応の弱さに寄与する(Ding et al., 2001)。重要なことに、IL-10の投与は患者の許容性が高く、高用量のIL-10を使用した場合、いくつかの軽度の副作用しかない(Buruiana et al., 2010; Colombel et al., 2001)。我々の高親和性IL-10変異体は、これらの制限を克服し、治療的に適切な用量、例えば100pM~10nMで強い抗炎症および抗がん反応を誘発することにより、IL-10療法を再活性化する可能性を有する。
【0114】
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