(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-06
(54)【発明の名称】遠心分離機
(51)【国際特許分類】
B04B 9/14 20060101AFI20230629BHJP
【FI】
B04B9/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570254
(86)(22)【出願日】2021-05-20
(85)【翻訳文提出日】2023-01-17
(86)【国際出願番号】 EP2021063510
(87)【国際公開番号】W WO2021234107
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】102020113765.6
(32)【優先日】2020-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508291836
【氏名又は名称】アンドレアス ヘティック ゲーエムベーハー アンド カンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】ベルンド フィードラー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ヘルダーレ
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ホーネック
(72)【発明者】
【氏名】クラウス-ギュンター エベレ
【テーマコード(参考)】
4D057
【Fターム(参考)】
4D057AA00
4D057AB01
4D057AC01
4D057AC05
4D057AD01
4D057AE11
4D057BA28
(57)【要約】
【課題】できるだけ広い周波数範囲にわたって十分な減衰が達成されるようにする。
【解決手段】本発明は、a)遠心分離機のための材料を有する容器を受けるためのロータ(32)と、b)ロータ(32)が取り付けられた駆動シャフト(42)と、c)駆動シャフト(42)を介してロータ(32)を駆動するモータ(18)と、d)ばね軸(20e,22e,24e;46e,48e,50e;52e,54e,56e;64e,66e,68e)を含む減衰要素(20a,22a,24a;46a,48a,50a;52a,54a,56a,64a,66a,68a)を有する軸受(20,22,24,46,48,50,52,54,56;64,66,68)を含む軸受ユニット(44)と、e)遠心分離機(10)内に軸受ユニット(44)を介してモータ(18)を固定するためのキャリア要素(16)とを備える遠心分離機(10)、特に実験室用遠心分離機に関する。本発明は、少なくとも1つの減衰要素が、完全に金属から形成され、弾性特性を有するワイヤニットを含む金属クッション(46a,48a,50a;52a,54a,56a,64a,66a,68a)であることを特徴とする。
【選択図】
図2b
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)遠心分離される材料が入った容器を受け取るためのロータ(32)、
b)ロータ(32)が取り付けられた駆動シャフト(42)、
c)駆動シャフト(42)を介してロータ(32)を駆動するモータ(18)、
d)ばね軸(46e,48e,50e;52e,54e,56e;64e,66e,68e)を含む減衰要素(46a,48a,50a;52a,54a,56a,64a,66a,68a)をそれぞれが有する軸受(46,48,50,52,54,56;64,66,68)を備えた軸受ユニット(44)、及び
e)遠心分離機(10)において軸受ユニット(44)を介してモータ(18)を固定するためのキャリア要素(16)を備える遠心分離機(10)、特に実験室用遠心分離機において、
少なくとも1つの減衰要素は、完全に金属から形成され、弾性特性を有するワイヤニットを含む金属クッション(46a,48a,50a;52a,54a,56a,64a,66a,68a)として形成されていることを特徴とする遠心分離機。
【請求項2】
請求項1に記載の遠心分離機において、
金属クッション(46a,48a,50a;52a,54a,56a,64a,66a,68a)は、円筒形であることを特徴とする遠心分離機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の遠心分離機において、
2つの金属クッション(46a,48a,50a;46g,48g,50g;52a,54a,56a;52g,54g,56g;64a,66a,68a;64g,66g,68g)が協働して減衰要素を形成し、第1金属クッション(46a,48a,50a,52a,54a,56a;64a,66a,68a)が第1方向におけるロータ(32)の振れを打ち消し、第2金属クッション(46g,48g,50g;52g,54g,56g;64g,66g,68g)が第2方向、特に反対方向におけるロータ(32)の振れを打ち消すことを特徴とする遠心分離機。
【請求項4】
請求項3に記載の遠心分離機において、
軸受ユニット(44)は、軸受プレート(44a,44b,44c;44d,44e,44f;44g,44h,44i;44j,44k,44l)を備えた少なくとも1つの軸受(46,48,50)を含み、軸受プレート(44a,44b,44c;44d,44e,44f;44g,44h,44i,44j,44k,44l)の第1の側には第1金属クッション(46a,48a,50a;52a,54a,56a;64a,66a,68a)が配置され、軸受プレート(44a,44b,44c)の第2の側には第2金属クッション(46g,48g,50g;52g,54g,56g;64g,66g,68g)が配置されていることを特徴とする遠心分離機。
【請求項5】
請求項4に記載の遠心分離機において、
ガイドピン(46b,48b,50b;52b,54b,56b;64b,66b,68b)は、軸受プレート(44a,44b,44c;44d,44e,44f;44g,44h,44i;44j,44k,44l)に対して直接的又は間接的に載置された第1金属クッション(46a,48a,50a;52a,54a,56a;64a,66a,68a)、並びに、軸受プレート(44a,44b,44c;44d,44e,44f;44g,44h,44i;44j,44k,44l)及びキャリア要素(16)に対して直接的又は間接的に載置された第2金属クッション(46g,48g,50g;52g,54g,56g;64g,66g,68g)を通って延び、ガイドピン(46b,48b,50b;52b,54b,56b;64b,66b,68b)は、一方の側においてキャリア要素(16)に固定的に接続され、他方の側において第1金属クッション(46a,48a,50a;52a,54a,56a;64a,66a,68a)に対して間接的又は直接的に支持する頭部を有し、第1金属クッション(46a,48a,50a;52a,54a,56a;64a,66a,68a)、軸受プレート(44a,44b,44c)及び第2金属クッション(46g,48g,50g;52g,54g,56g;64g,66g,68g)は、ガイドピン(46b,48b,50b;52b,54b,56b;64b,66b,68b)に対して自由に移動可能であることを特徴とする遠心分離機。
【請求項6】
前述の請求項の何れか1項に記載の遠心分離機において、
異なる軸受(20,22,24;46,48,50;52,54,56;64,66,68)の減衰要素(20a,22a,24a;46a,48a,50a;52a,54a,56a;64a,66a,68a)は設計が異なり、特に、第1軸受(46,48,50;52,54,56;64,66,68)の減衰要素(46a,48a,50a;52a,54a,56a;64a,66a,68a)は減衰に関して最適化され、第2軸受(20,22,24)の減衰要素(20,22,24)は重量力の吸収に関して最適化されていることを特徴とする遠心分離機。
【請求項7】
請求項6に記載の遠心分離機において、
一方の減衰要素は少なくとも1つの金属クッション(46a,48a,50a;52a,54a,56a;64,66,68)を含み、他方の減衰要素(20a,20b,20c)は少なくとも天然ゴムを含むことを特徴とする遠心分離機。
【請求項8】
前述の請求項の何れか1項に記載の遠心分離機において、
隣り合う減衰要素(20a,20b,20c;46a,48a,50a;52a,54a,56a;64,66,68)は、駆動軸(42)に対する周方向において互いに等間隔に配置されていることを特徴とする遠心分離機。
【請求項9】
前述の請求項の何れか1項に記載の遠心分離機において、
減衰要素の少なくとも1つのばね軸(52e,54e,56e)は、駆動シャフト(42)に対して垂直に配置されていることを特徴とする遠心分離機。
【請求項10】
前述の請求項の何れか1項に記載の遠心分離機において、
減衰要素(20a,22a,24a;46a,48a,50a;64a,66a,68a)の少なくとも1つのばね軸(20e,20e,20e;46e,48e,50e;64e,66e,68e)は、駆動シャフト(42)と平行に配置されていることを特徴とする遠心分離機。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の遠心分離機において、
減衰要素(20a,22a,24a;52a,54a,56a)を備えた複数の軸受(20,22,24;52,54,56)が設けられ、減衰要素(52a,54a,56a)の半分のばね軸(52e,54e,56e)は駆動シャフト(42)に対して垂直に配置され、減衰要素(20a,22a,24a)の他の半分のばね軸(20e,22e,24e)は駆動シャフト(42)に対して平行に配置されていることを特徴とする遠心分離機。
【請求項12】
請求項9乃至11の何れか1項に記載の遠心分離機において、
減衰要素(52a,54a,56a)のばね軸(52e,54e,56e)が駆動シャフト(42)に対して垂直に配置され、減衰要素(20a,22a,24a)のばね軸(20e,22e,24e)が駆動シャフト(42)に対して平行に配置されることを交互に繰り返すことを特徴とする遠心分離機。
【請求項13】
前述の請求項の何れか1項に記載の遠心分離機において、
減衰要素(46a,48a,50a;52a,54a,56a;62,64,66)は、ロータ(32)の領域において2mm未満、特に1.5mm未満の最大振れを可能にすることを特徴とする遠心分離機。
【請求項14】
前述の請求項の何れか1項に記載の遠心分離機において、
減衰要素(46a,48a,50a;52a,54a,56a,64a,66a,68a)は、減衰要素(20a,22a,24a)の領域において1mm未満、特に0.9mm未満の最大振れを可能にすることを特徴とする遠心分離機。
【請求項15】
前述の請求項の何れか1項に記載の遠心分離機において、
3つの減衰要素(20a,22a,24a;46a,48a,50a;52a,54a,56a,64a,66a,68a)が設けられ、それぞれのばね軸(20e,22e,24e;46e,48e,50e;52e,54e,56e;64e,66e,68e)は同一方向に配置されていることを特徴とする遠心分離機。
【請求項16】
前述の請求項の何れか1項に記載の遠心分離機において、
ワッシャ(20d,22d,24d;46d,48d,50d;52d,54d,56d,64d,66d,68d)、特に金属ワッシャは、ばね軸(20e,22e,24e;46e,48e,50e;52e,54e,56e,64e,66e,68e)の方向において減衰要素(20a,22a,24a;46a,48a,50a;52a,54a,56a,64a,66a,68a)を片側に区切ることを特徴とする遠心分離機。
【請求項17】
請求項16に記載の遠心分離機において、
ワッシャ(20d,22d,24d;46d,48d,50d;52d,54d,56d,64d,66d,68d)は、ばね軸(20e,22e,24e;46e,48e,50e;52e,54e,56e,64e,66e,68e)の方向において減衰要素(20a,22a,24a;46a,48a,50a;52a,54a,56a,64a,66a,68a)の全体を覆うことを特徴とする遠心分離機。
【請求項18】
前述の請求項の何れか1項に記載の遠心分離機において、
金属クッション(46a,48a,50a;52a,54a,56a,64a,66a,68a)は、クロム・ニッケルを含む鋼線によって形成されていることを特徴とする遠心分離機。
【請求項19】
請求項18に記載の遠心分離機において、
鋼線の直径は、0.05mmから0.5mmであることを特徴とする遠心分離機。
【請求項20】
前述の請求項の何れか1項に記載の遠心分離機において、
金属クッション(46a,48a,50a;52a,54a,56a,64a,66a,68a)の外径は、12mmから50mmであることを特徴とする遠心分離機。
【請求項21】
前述の請求項の何れか1項に記載の遠心分離機において、
金属クッション(46a,48a,50a;52a,54a,56a,64a,66a,68a)は、中空円筒に設計されており、特に内径が4mmから12mmの間であることを特徴とする遠心分離機。
【請求項22】
前述の請求項の何れか1項に記載の遠心分離機において、
金属クッション(46a,48a,50a;52a,54a,56a,64a,66a,68a)の減衰係数kは、
-励起周波数が1Hzの場合、500~8,000Ns/m;
-励起周波数が10Hzの場合、300~5,000Ns/m;
-励起周波数が20Hzの場合、200~2,500Ns/m;
-励起周波数50Hzの場合、80~1,200Ns/m;
-励起周波数100Hzの場合、40~500Ns/m
であることを特徴とする遠心分離機。
【請求項23】
前述の請求項の何れか1項に記載の遠心分離機において、
金属クッション(46a,48a,50a;52a,54a,56a,64a,66a,68a)の剛性(c)は、3N/mmから300N/mmの間であることを特徴とする遠心分離機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段部分で特定された形式の遠心分離機、特に実験室用遠心分離機に関する。
【背景技術】
【0002】
遠心分離機は、それ自体種々の設計のものが知られている。特に実験室用遠心分離機では、実験室のスペースが限られているため、できるだけコンパクトな装置を提案する努力が続けられている。また、実験室用遠心分離機は通常、上方からの積み下ろしが多いため、蓋を開けるための十分なクリアランスが上方にあることが必要である。
【0003】
同時に、遠心分離機の設計にあたっては、動作中に遠心分離機に不可避的に発生するアンバランスを打ち消すために、良好な減衰を考慮する必要がある。このため、例えばロータを搭載したモータを、ばね軸がモータの長手方向軸と平行な減衰要素で支持することが一般に知られている。通常、減衰要素は、基本的に天然/合成ゴムでできている。このような天然/合成ゴム製の減衰要素は、リーズナブルな価格で、多種多様なデザインと材質のカタログ部品として入手できる。それらの特性は明確に定義され、文書化されており、このような設計の減衰要素は幅広い用途で使用できる。このため、これらの減衰要素は、遠心分離機の新しい設計または再設計に使用されている。このタイプの減衰要素は、動作中に大きなアンバランスが発生しないようにする用途にも完全に適している。
【0004】
この設計の遠心分離機は、完全自動化システムにも使用される。例えばデュアルロータの使用は、遠心分離機に高いアンバランス耐性を要求する。例えば、ロータに奇数個のサンプルが投入され、片方のロータにはサンプルが十分に投入されたバケット、もう片方のロータにはサンプルが投入されていないバケットという状態で遠心分離機が運転されるような場合である。
【0005】
しかし、遠心分離機はますます複雑な作業に使用されている。既知のゴム製減衰要素は、減衰特性と減衰範囲の点で不十分であることが判明しているため、遠心分離動作中に発生するアンバランスは、このような複雑なタスクとプロセスにとってますます問題になりつつある。以前の設計の減衰要素は、発生する力を十分に吸収することができず、実行されるプロセスに悪影響を及ぼしている。一方、これらの減衰要素は、その寿命や遠心分離機の寿命を縮めるようなストレスがかかっている。
【0006】
そのため、ロータとモータに対する減衰要素のばね軸の配置を変えて、この問題を解決する試みがなされてきた。さらに、複数の異なるタイプの減衰要素を直列に接続することも行われてきた。
【0007】
遠心分離機は、例えばDE 39 22 744 A1が知られており、これは、遠心分離される材料が入った容器を受けるためのロータを備えている。そのロータは、駆動軸を介して駆動され、そのために駆動軸はモータに接続されている。駆動軸とロータを備えたモータは、ばね軸を含む複数の減衰要素を有する軸受ユニットに接続されている。全体は、モータによって支持される部品とともに、モータを遠心分離機の所定の位置に固定するための支持要素に接続されている。減衰要素のばね軸は、モータの回転軸Yに対して鋭角δに設定されてもよい。減衰要素は、それぞれ支柱を介して軸受ユニットに接続されている。支柱は、各減衰要素のそれぞれのばね軸と同心円状になるように設定・配置されている。軸受ユニットは、支持プレートを含む。減衰要素は、コイルスプリングと別の減衰要素によって2つの均等化室の形式で形成され、その間に減衰流体が負荷の方向に応じてスロットルチャネルを通って流れる。
【0008】
WO 2015/128296 A1において、減衰要素のばね軸を斜めに設定し、ゴムバッファと組み合わせてさらなる減衰要素として(この文献ではラグと呼ぶ)金属板ばねを使用することが知られている。
【0009】
GB 739 666 Aは、ゴムクッションが減衰要素として提供され、摩擦抵抗を介して減衰するアームがさらなる減衰要素として提供される遠心分離機を開示している。
【0010】
US 1 848 641 Aには、モータが支柱とばねの形の減衰要素とによってハウジング内で支持されている遠心分離機が開示されている。
【0011】
DE 195 16 904 A1は、ゴム製の振動減衰装置を備えた実験用遠心分離機を開示している。
【0012】
モータにロータが支持された状態でモータを減衰させる既知の手段は、特に15から50Hzの周波数帯ではあまり有効ではない。しかし、その目的は、遠心分離機の許容されるアンバランスと、遠心分離機の動作中に発生する全周波数範囲にわたる減衰の両方であり、それによって遠心分離機の利用オプションを増やし、なおかつ安全な遠心分離機の動作を保証することにある。この際、特に重要な共振域ではロータのブレイクアウトがあってはならない。ロータの振れ(又は、偏位)は可能な限り小さくしなければならない。減衰改善のための追加手段により、全体のサイズが大きくなってはならない。
【0013】
同時に、回転質量、すなわち部分的にしか負荷がかかっていない可能性のある動作中のアンバランスロータから、支持プレートに接続された遠心分離機ハウジングを備えた支持プレートへの振動伝達は、できるだけ低く保たれなければならない。さもなければ、許容できない騒音が発生する。この振動は、例えば実験台上で遠心分離機が動き出す原因となる。
【発明の概要】
【0014】
本発明の目的は、請求項1の前文に規定されたタイプの遠心分離機を、上記の欠点を回避しつつ、できるだけ広い周波数範囲にわたって十分な減衰が達成されるように、さらに改良することである。
【0015】
この目的は、請求項1の特徴とその前文の特徴との組み合わせによって達成される。
【0016】
従属請求項は、本発明の有利なさらなる実施形態に関するものである。
【0017】
本発明は、過酷な使用に耐える用途や過酷な環境条件から知られている金属クッションが、従来遠心分離機に使用するために知られていた減衰要素よりも広い周波数範囲にわたってかなり優れた減衰特性を有しているため、減衰要素として使用できるという洞察に基づいている。
【0018】
本発明によれば、少なくとも1つの減衰要素は、弾性特性を有する編まれた金網を含む金属クッションとして、全体が金属で形成されている。しかしながら、遠心分離機用の金属クッションの個々のパラメータは、まず複雑な方法で決定される必要がある。金属クッションの減衰に関する周波数依存値を示した図は、そのような金属クッションの製造業者から入手することはできない。そのため、比較的軽量な遠心分離機、特に実験室用遠心分離機用の金属クッションを設計できるようにするには、複雑な計算と測定が必要である。そのため、遠心分離機の金属クッションを設計するためのすべての測定、計算及びシミュレーションは、個々のタイプの遠心分離機について段階的に実施されなければならない。これが行われ、遠心分離機に合わせてパラメータが最適化されると、広い周波数範囲にわたって減衰特性の点で優れた結果が得られる。
【0019】
ある種の取り付け状況においては、金属クッションは円筒形であることが有利である。これにより、既存の結合要素の断面積及び/又は力吸収に必要な表面を考慮して、金属クッションを省スペースで設計することができる。
【0020】
ロータの異なる荷重に対応するため、2つの金属クッションが協働して減衰要素を形成し、第1金属クッションがロータの振れの第1方向を、第2クッションが第2の、特に反対の振れ方向を打ち消す。金属クッションは引張荷重によって破損したり、破壊されたりすることがあるため、圧縮荷重のみを受けるようにした。
【0021】
本発明の有利な実施形態では、軸受ユニットは、軸受プレートを有する少なくとも1つの軸受を含む。第1金属クッションは軸受プレートの一方の側に配置され、第2金属クッションは軸受プレートの第2の側に配置されている。
【0022】
ガイドピンは、軸受プレートに対して直接的又は間接的に載置された第1金属クッション、並びに、軸受プレート及び支持要素に対して直接的又は間接的に載置された第2金属クッションを貫通してもよい。ガイドピンの一方の側は、支持要素にしっかりと接続されている。ガイドピンの他方の側には、第1金属クッションに直接的又は間接的に隣接する頭部が設けられている。第1金属クッション、軸受プレート及び第2金属クッションは、ガイドピンに対して自由に移動可能である。これにより、互いに反対方向の減衰が確保され、これは、動作中にこれらの方向に起こりうる動きを減衰させるために必要であるが、各金属クッションには圧縮荷重のみがかかる。
【0023】
また、異なる軸受の減衰要素は、異なる設計にしてもよい。特に、第1軸受の減衰要素は減衰に関して最適化され、第2軸受の減衰要素は重量力(weight force)を吸収することに関して最適化されている。例えば、第1軸受の一方の減衰要素は少なくとも1つの金属クッションを含み、第2軸受の他方の減衰要素は少なくとも天然/合成ゴムを含んでもよい。
【0024】
これは、遠心分離機の軸受ユニットに必要な減衰のために、金属クッションを備えた軸受を本質的に最適に設計できるという利点があり、天然ゴム/合成ゴムを用いた軸受がロータと一緒のモータの負荷を吸収する。これは、例えば、下部と上部の金属クッションに均等に負荷がかかることを意味する。これにより、減衰用に最適化された金属クッションの使用が可能になる。金属クッションの設計では、ロータと一緒のモータの負荷を考慮する必要はない。基本的に、これは、モータとロータの負荷に耐える必要がなく、それによって予負荷がかからないため、より小さくて柔らかい金属クッションを使用できることを意味する。
【0025】
好ましくは、駆動シャフトに対して周方向に隣り合う減衰要素及び/又は軸受の間隔は同じである。
【0026】
用途によっては、減衰要素の少なくとも1つのばね軸が駆動シャフトに対して垂直に配置されていることが有利であってもよい。
【0027】
さらに、又は代替として、減衰要素の少なくとも1つのばね軸が駆動シャフトと平行に配置されていてもよい。
【0028】
本発明の一実施形態では、減衰要素を有する複数の軸受が提供される。減衰要素の半分のばね軸は駆動シャフトに対して垂直に配置され、減衰要素の他の半分のばね軸は駆動シャフトと平行に配置されている。
【0029】
この場合、減衰要素のばね軸は、駆動シャフトに対して垂直と平行に交互に配置されていてもよい。
【0030】
好ましくは、減衰要素は、ロータの領域で2mm未満、特に1.5mm未満の最大振れ(又は、最大偏位)を可能にし、及び/又は、減衰要素の領域で1mm未満、特に0.9mm未満の最大振れを可能にする。
【0031】
例えば、3つの減衰要素が設けられてもよく、それぞれのばね軸が同じように配置されていてもよい。
【0032】
本発明の一実施形態では、ワッシャ、特に金属ワッシャが用いられ、ばね軸の方向において片側で減衰要素を区切る。ワッシャは、発生する力が減衰要素の断面全体にわたって適用又は伝達されることを確保する。
【0033】
ワッシャは、ばね軸の方向において減衰要素を完全に覆っていてもよい。
【0034】
腐食の発生を防ぐため、金属クッションはクロム・ニッケルを含む鋼線によって形成されている。このため、鋼線はステンレス鋼線である。
【0035】
好ましくは、鋼線の直径は、0.05mmから0.5mmである。この範囲は、意図された用途のために最適な弾性変形をもたらすことが示されている。
【0036】
例えば、金属クッションの外径は、12mmから50mmであってもよい。
【0037】
特に、金属クッションは、直径4mmから12mmの中空の円筒として設計してもよい。
【0038】
動作中の遠心分離機の要件を可能な限り最適にするために、所定の励起周波数での金属クッションの減衰係数kは次の範囲である:
-励起周波数が1Hzの場合、減衰係数kは500~8,000Ns/mである;
-励起周波数が10Hzの場合、減衰係数kは300~5,000Ns/mである;
-励起周波数が20Hzの場合、減衰係数kは200~2,500Ns/mである;
-励起周波数50Hzの場合、減衰係数kは80~1,200Ns/mである;
-励起周波数100Hzの場合、減衰係数kは40~500Ns/mである。
【0039】
本発明の一実施形態では、金属クッションの剛性(c)は、3~300N/mmの範囲にある。
【0040】
遠心分離機に金属クッションを使用する利点は、上記の減衰特性に加え、経年劣化に対する耐性である。材料の硬化やクリープがない。ステンレス鋼を使用することで、溶剤、酸、油、グリース、液体及び粉塵に対する耐腐食性を実現している。さらに、このような金属クッションは経年劣化に対して高い耐性を有している。金属クッションは、アンバランス耐性が高く、設置スペースをほとんど必要としないため、遠心分離機のハウジング内のモータとロータの比較的近くに配置できる。また、圧力がかかるように設置することで、動作の信頼性を高めている。従来のゴム製要素では引張荷重で割れていたのに対し、金属クッションは引き裂きを防止する。さらに、金属クッションのパラメータは、耐用年数にわたってほぼ同じままである。また、温度変動を受けても金属クッションのパラメータに変化はない。そのため、加熱されたエンジンコンパートメントで問題なく、遠心分離機の動作に影響を与えることなく使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
本発明のさらなる利点、特徴及び可能な用途は、図面に示された実施形態を参照する以下の説明から明らかになるであろう。
【0042】
明細書、特許請求の範囲及び図面を通じて、これらの用語および関連する参照符号は、以下の参照符号のリストに記載されているように使用される。
【
図1a】
図1aは、モータ、ロータ、安全容器及びゴム製の従来技術の減衰要素を備えた遠心分離機の破断斜視図である;
【
図1b】
図1bは、軸受プレート及び減衰要素を備えた遠心分離機のハウジングに取り付けられたモータを示す、
図1aの部分斜視図である;
【
図2a】
図2aは、本発明の第1実施形態に係るモータ、ロータ、安全容器及び減衰要素を備えた遠心分離機の破断斜視図である;
【
図2b】
図2bは、本発明の第1実施形態に係る軸受プレート及び減衰要素を備えた遠心分離機のハウジングに取り付けられたモータの
図2aの部分斜視図である;
【
図3a】
図3aは、
図1の従来技術の減衰要素と組み合わせた
図2のモータ、ロータ、安全容器及び減衰要素を備えた、本発明の第2実施形態に係る遠心分離機の破断斜視図である;
【
図3b】
図3bは、軸受プレート及び減衰要素を備えた遠心分離機のハウジングに取り付けられたモータの
図3aの部分斜視図である;
【
図4a】
図4aは、
図1のモータ、ロータ、安全容器及び従来技術の減衰要素とさらなる実施形態とを備えた本発明の第3実施形態に係る遠心分離機の破断斜視図である;
【
図4b】
図4bは、軸受プレート及び減衰要素を備えた遠心分離機のハウジングに取り付けられたモータの
図4aの部分斜視図である;
【
図5a】
図5aは、さらなる実施形態に係るモータ、ロータ、安全容器及び減衰要素を備えた本発明の第4実施形態に係る遠心分離機の破断斜視図である;
【
図5b】
図5bは、軸受プレート及び減衰要素を備えた遠心分離機のハウジングに取り付けられたモータの
図5aの部分斜視図である;
【
図6】
図6は、上部(ロータの領域)及び下部(軸受、即ち減衰要素の領域)におけるモータシャフトの振れ(又は、偏位)を示す図である;
【
図7】
図7は、天然ゴム製の要素を用いた場合と金属クッションを用いた場合の回転軸の振れを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1から
図5は、実験室用遠心分離機10の5つの異なる実施形態の異なる図であり、
図1は従来技術を示し、
図2から
図5は本発明に係る4つの異なる実施形態を示す。本発明の本質的な要素をより良く視認するために、実験室用遠心分離機10の全ての構成要素が図面に示されているわけではない。個々の実施形態の構成要素のうち、本発明を理解するために必要なものだけが、それぞれの図に示されている。
【0044】
図1aから
図1fは、従来技術の実験用遠心分離機10の第1実施形態を示す。
【0045】
遠心分離機のハウジング12の内部14において、モータ18は、3つの支持体20、22及び24を介してベースプレート16上に配置されている。ベースプレート16は、ベースプレート16の下側に4つの一体的な足26を有し、この足26はベースプレート16の角部領域に設けられている。実験室用遠心分離機10は、その足26を介して、例えば実験台の上に立つ。
【0046】
遠心分離機のハウジング12は、上部で内部14を閉鎖し、モータ軸28と同心の凹部30を有し、それを通してロータ32を装填することができる。
【0047】
遠心分離機の蓋34は、特定の領域で凹部30に係合し、それによって内部14を閉鎖する。周囲空気は、実験室用遠心分離機10の動作中に、同心に配置された換気孔36及び別の横方向に配置された換気孔38を介して内部14に流入する。この目的のために、遠心分離機の蓋34は二重シェル設計を有し、同心の換気孔36と横方向の換気孔38との間に流路34aを形成する。遠心分離機の蓋34は、従来の方法で遠心分離機のハウジング12に回動可能に取り付けられている。
【0048】
遠心分離機のハウジング12の同心凹部30に隣接して安全容器40があり、これは遠心分離機ハウジング12にしっかりと接続されている。駆動シャフト42は、安全容器の底に作られた対応する穴を通して安全容器40と係合している。ロータ32は、モータ18に接続された駆動シャフト42上に回転自在に固定されて配置されている。ロータ32は、駆動シャフト42を介してモータ18によって既知の方法で駆動される。
【0049】
モータ18は、軸受ユニット44にしっかりと取り付けられ、配置されている。軸受ユニット44は、支持体20,22,24を介してベースプレート16に接続されている。このため、軸受ユニット44は、板状突起44a,44b,44cをそれぞれ有している。より具体的には、板状突起44aは支持体20と、板状突起44bは支持体22と、板状突起44cは支持体24と、それぞれ関連している。支持体20,22,24は、軸受ユニット44をベースプレート16から所定の距離に位置させるように作用する。
【0050】
支持体20は、ゴムクッション20aの形態の減衰要素を有し、ベースプレート16に支持されている。ゴムクッション20aは、円柱状に形成されている。ゴムクッション20aの各端面には、ネジ付きボルト20bが取り付けられ、ベースプレート16に固定されている。板状突起44aの下面は、ゴムクッション20aの上面に支持されている。ボルト20bに螺合され、板状突起44aの上面を押し付けるナット20cは、支持体20のゴムクッション20aの所定位置に軸受ユニット44を保持している。ナット20cと板状突起44aの上面との間には、ワッシャ20dが介在している。支持体22と24は、同じ構造である。
【0051】
支持体22は、ゴムクッション22aの形態の減衰要素を有し、ベースプレート16に支持されている。ゴムクッション22aは、円柱状に形成されている。ゴムクッション22aの端面には、ネジ付きボルト22bが取り付けられ、ベースプレート16に固定されている。板状突起44bの下面は、ゴムクッション22aの上面に支持されている。ボルト22bに螺合され、板状突起44bの上面を押し付けるナット22cは、支持体22のゴムクッション22aの所定位置に軸受ユニット44を保持している。ナット22cと板状突起44bの上面との間には、ワッシャ22dが介在している。
【0052】
支持体24は、ゴムクッション24aの形態の減衰要素を有し、ベースプレート16に支持されている。ゴムクッション24aは、円柱状に形成されている。ゴムクッション24aの端面には、ネジ付きボルト24bが取り付けられ、ベースプレート16に固定されている。板状突起44cの下面は、ゴムクッション24aの上面に支持されている。ボルト24bに螺合され、板状突起44cの上面を押し付けるナット24cは、支持体24のゴムクッション24aの所定位置に軸受ユニット44を保持している。ナット24cと板状突起44bの上面との間には、ワッシャが介在している。
【0053】
ゴムクッション20a、22a、24aはそれぞれ、関連するネジ20b、22b、24bの軸と同一のばね軸20e、22e、24eを有し、モータ軸28と平行に整列している。
【0054】
駆動シャフト42及びロータ32と一緒になったモータ18は、このように完全に軸受ユニット44内に配置され、後者によって支持されている。これらの部品は、支持体20,22,24を介して遠心分離機のハウジング12に接続されている。ゴムクッション20a、22a、24aは、遠心分離機のハウジング内で軸受ユニット44を支持し、騒音の発生を防止する。しかし、減衰特性は不十分である。
【0055】
図2aから
図2fに示すのは、本発明に係る実験室用遠心分離機10の第1実施形態である。以下では、同じ参照符号を使用して同じ部品を示すことにする。さらに、従来技術の実施形態に対する相違点のみを説明する。
【0056】
図1の実施形態を参照すると、この場合、異なる支持体46、48、50が設けられている。板状突起44a、44b、44cは、それぞれ第1金属クッション46a、48a、50aに支持されている。これらの第1金属クッション46a,48a,50aは、モータ18およびロータ32の重量によって予荷重がかけられている。さらに、第1金属クッション46a,48a,50aは、
図1のゴムクッション20a,22a,24aよりもわずかに短く、軸受肩46f,48f,50fの上に載っている。軸受肩46f,48f,50fは、それぞれベースプレート16にボルトで固定されている。軸受肩46f,48f,50fからボルト46b,48b,50bは、上方に延び、板状突起44a,44b,44c、第1金属クッション46a,48a,50aと同一設計の第2金属クッション46g,48g,50g、及びワッシャ46d,48d,50dを通過している。ナット46c,48c,50cは、ボルト46b,48b,50bに螺合され、ワッシャと第2金属クッション46g,48g,50gを押圧している。さらに、第2金属クッション46g,48g,50gと軸受肩46f,48f,50fとの間には、第2ワッシャ46h,48h,50hが介在している。
【0057】
このように、第1金属クッション46a,48a,50aは下向きの動きを打ち消し(又は、対抗し;又は、弱め)、第2金属クッション46g,48g,50gは上向きの動きを打ち消す(又は、対抗する;又は、弱める)。これらはそれぞれ圧縮荷重のみを受けるため、金属クッションの最適な減衰特性を発揮させることができる。
【0058】
図3aから
図3fに示すのは、本発明に係る実験室用遠心分離機10の第2実施形態である。以下では、同じ参照符号を使用して同じ部品を示すことにする。さらに、ここでは、
図1の遠心分離機と第1実施形態に対する相違点のみを説明する。
【0059】
本実施形態は、
図1に係る3つの支持体20,22,24と、本発明の第1実施形態に係る3つの支持体46,48,50の合計6つの支持体を有する。その結果、軸受ユニット44は、6つの板状突起44d,44e,44f,44g,44h,44iを有する。より具体的には、突起44dは支持体20に、突起44eは支持体22に、突起44fは支持体24に、突起44gは支持体46に、突起44hは支持体48に、突起44iは支持体50に関連している。ベースプレート16に取り付けられた支持体20,22,24,46,48,50は、互いに等間隔で、モータ軸28と同心に配置されている。より具体的には、反時計回りにおいて、支持体46は支持体20の隣に、支持体22は支持体46の隣に、支持体48は支持体22の隣に、支持体24は支持体48の隣に、支持体50は支持体24の隣に、支持体20は支持体50の隣に配置されている。その結果、
図1の支持体20,22,24のタイプと、本発明の第1実施形態の支持体46,48,50のタイプとが交互に配置されている。これは、遠心分離機10の軸受ユニット44の必要な減衰が、本質的に支持体46,48,50を通じて達成され、ロータと一緒になったモータの負荷を軸受20,22,24によって吸収し、下部及び上部の金属クッションが等しい負荷にさらされるようになるという利点を有している。これにより、減衰のために最適化された金属クッションを使用することができる。金属クッションの設計において、ロータと一緒になったモータの荷重を考慮する必要はない。
【0060】
図4aから
図4fに示されているのは、本発明に係る実験室用遠心分離機10の第3実施形態である。以下では、同じ参照符号を使用して、同じ部品を示す。さらに、ここでは、本発明に係る第1又は第2の実施形態と
図1の遠心分離機10に対する相違点のみを説明する。
【0061】
本実施形態は、第2実施形態と同様に、
図1に係る3つの支持体20,22,24と、水平方向の減衰を有する3つの支持体52,54,56の合計6つの支持体を有する。軸受ユニット44は、支持体20,22,24のための3つの板状突起44d,44f,44hを有する。より具体的には、板状突起44dは支持体20に関連し、板状突起44fは支持体22に関連し、板状突起44hは支持体24に関連している。
【0062】
軸受ユニット44のこれら3つの突起44d,44f,44hの間には、軸受ブラケット44j,44k,44lが設けられている。軸受ブラケット44j,44k,44lは、最初は軸受ユニット44から水平方向に離れて延び、その後、モータ軸28と平行に垂直方向上方に延びている。ベースプレート16からモータ軸28と平行に上方に延びる支持プレート58,60,62が、モータ軸28に対して半径方向に距離をおいて、軸受ブラケット44j,44k,44lのそれぞれのために設けられている。
【0063】
支持プレート58,60,62を起点として、第2ワッシャ52h,54h,56h、中空円筒状の第2金属クッション52g,54g,56g、軸受ブラケット44j,44k,44l、第1金属クッション52a,54a,56a、第1ワッシャ52d,54d,56d、ナット52c,54c,56cが、支持体52,54,56に配置されている。ボルト52b,54b,56bは、支持プレート58,60,62に締結され、第2ワッシャ52h,54h,56h、中空円筒状の第2金属クッション52g,54g,56g、軸受ブラケット44j,44k,44l、第1金属クッション52a,54a,56a及び第1ワッシャ52d,54d,56dを通って延びている。ナット52c,54c,56cは、ボルト52b,54b,56bにねじ込まれ、第1ワッシャ52d,54d,56dと第1金属クッション52a,54a,56aを押圧している。
【0064】
支持体20,22,24,52,54,56は、モータ軸28と同心円状にベースプレート16上に互いに等間隔で配置され、反時計回りにおいて、支持体52は支持体20の隣に、支持体22は支持体52の隣に、支持体54は支持体22の隣に、支持体24は支持体54の隣に、支持体56は支持体24の隣に、支持体20は支持体56の隣にある。このように、第1実施形態の支持体20,22,24の第1タイプと、支持体52,54,56の第3タイプとが交互に配置されている。
【0065】
支持体52,54,56は、ばね軸52e,54e,56eを有する。支持体52、54、56のばね軸52e,54e,56eは、モータ軸28に対して垂直に整列している。そのため、支持体は、モータ18及びロータ32の起こり得る振れを打ち消す。
【0066】
また、この実施形態では、減衰は、本質的に支持体52,54及び56によって達成される。金属クッションは、圧縮荷重のみを受けるので、その最適な減衰特性を発現することができる。ゴムクッション20a,22a,24aは、ロータと一緒になったモータの荷重を吸収する。これにより、減衰のために最適化された金属クッションを使用することができる。
【0067】
図5aから
図5fに示すのは、本発明に係る実験室用遠心分離機10の第4実施形態である。以下では、同じ参照符号を使用して同じ部品を示すことにする。さらに、ここでは、本発明に係る第1、第2又は第3の実施形態に対する相違点のみを説明する。
【0068】
軸受ユニット44は、第1実施形態と同様に形成されている。しかし、本実施形態では、異なる設計の支持体が使用されている。板状突起44a,44b,44cにそれぞれ関連する3つの支持体64,66,68が設けられている。板状突起44a,44b,44cから半径方向に間隔をあけて、取付ブラケット70,72,74が設けられている。各取付ブラケット70,72,74は、ベースプレート16から鉛直上方に延び、その後、モータ軸28に向かって水平方向に曲げられている。軸受ユニット44は、取付ブラケット70,72,74を介して支持されている。支持プレート58,60,62を起点として、第2ワッシャ64h,66h,68h、第2金属クッション64g,66g,68g、軸受ブラケット70,72,74、第1金属クッション64a,66a,68a、第1ワッシャ64d,66d,68d、ナット64c,66c,68cが設けられている。
【0069】
ボルト64b,66b,68bは、板状突起44a,44b,44cに締結され、第2ワッシャ64h,66h,68h、中空円筒状の第2金属クッション64g,66g,68g、取付ブラケット70,72,74、第1金属クッション64a,66a,68a及び第1ワッシャ64d,66d,68dを通って延びている。ナット64c,66c,68cは、ボルト64b,66b,68bにねじ込まれ、第1ワッシャ64d,66d,68dと第1金属クッション64a,66a,68aを押圧している。
【0070】
支持体64,66,68には、モータ軸28と平行に配置されたばね軸64e,66e,68eがそれぞれ設けられている。軸受ユニットは、第1実施形態のように支持体20,24,26の上に載っているのではなく、取付ブラケット70,72,74を介して支持体64,66,68によって支持されている。本実施形態では、第1保持クッション64a,66a,68aは取付ブラケット70,72,74の上方に配置され、第2保持クッション64g,66g,68gは軸受ユニット44の板状突起44a,44b,44cと取付ブラケット70,72,74との間に配置されている。
【0071】
本実施形態では、軸受ユニット44は吊り下げられており、軸受ユニット44は、一方向では金属クッション64a,66a,68aにより、他方向では金属クッション64g,66g,68gにより減衰される。
【0072】
本発明の実施形態で使用される金属クッションは、円筒形であり、外径は12mmから50mmの範囲にある。内径は、4mmから12mmの間の範囲にある。ワッシャは、金属クッションの面を完全に覆っている。ボルトは、クッションがボルトに対して自由に動くことができるように、金属クッションを貫通する。
【0073】
種々の実施形態は、遠心分離機10の種々の用途を最適化するために使用されてもよい。金属クッションは、ロータのレベルにおいて、2mm未満、特に1.5mm未満の最大振れを引き起こす。金属クッションのレベルでは、最大振れは1mm未満、好ましくは0.9mm未満である。
【0074】
金属クッションは、ステンレス鋼線となるクロム・ニッケルを含む鋼線によって形成されてもよい。鋼線の直径は、0.05mmから0.5mmの範囲である。
【0075】
各実施形態で用いられる金属クッションの減衰係数kは、所定の励起周波数に対して以下の範囲にある:
-励起周波数が1Hzの場合、減衰係数kは、500~8,000Ns/m;
-励起周波数が10Hzの場合、減衰係数kは、300~5,000Ns/m;
-励起周波数が20Hzの場合、減衰係数kは、200~2,500Ns/m;
-励起周波数50Hzの場合、減衰係数kは、80~1,200Ns/m;
-励起周波数100Hzの場合、減衰係数kは、40~500Ns/m
これまで一般的に使われてきたゴム製要素に代えて、あるいはゴム製要素に加えて、前述の金属クッションを使用することにより、小さな設置スペースにおいて高いアンバランス耐性を実現する。
【0076】
これは、前述のタイプの金属クッションと従来使用されているゴム製要素との間の以下の比較から明らかである:
使用したゴム製要素では、励起周波数が大きくなるにつれて、減衰係数は非常に低い値から減少する。約30Hzの周波数から、減衰は実質的に残っていない。
図6を参照。
図6は、上部(ロータの領域)及び下部(軸受、即ち減衰要素の領域)におけるモータシャフトの振れを示す図である。
【0077】
周波数スペクトルは、時間の関数としてトラバースされる(横断される)。ロータは静止状態から定格速度まで加速される。
図7を参照。
【0078】
図7から分かるように、本発明に係る金属クッションを使用すると、振れを約6mmから約1mmに減少させることができる。逆に、同じ遠心分離機において、寸法(ロータから遠心分離機の容器までの距離)が変わらない場合、許容されるアンバランスを大幅に増大させることができる。
【符号の説明】
【0079】
10 実験室用遠心分離機
12 遠心分離機ハウジング
14 遠心分離機ハウジング12の内部
16 ベースプレート
18 モータ
20 支持体-左-第1タイプ
20a 金属クッション
20b ボルト
20c ナット
20d ワッシャ
20e ばね軸
22 支持体-前-第1タイプ
22a 金属クッション
22b ボルト
22c ナット
22d ワッシャ
22e ばね軸
24 支持体-右-第1タイプ
24a 金属クッション
24b ボルト
24c ナット
24d ワッシャ
24e ばね軸
26 ベースプレート16の足
28 モータ軸/ロータ軸
30 遠心分離機のハウジング12の凹部
32 ロータ
34 遠心分離機の蓋
34a 流路
36 換気孔-同心
38 換気孔-側部
40 安全容器
42 駆動シャフト
44 モータ18用軸受ユニット
44a 支持体20及び46のそれぞれに関連した板状突起
44b 支持体22及び48のそれぞれに関連した板状突起
44c 支持体24及び50のそれぞれに関連した板状突起
44d 支持体20に関連した板状突起
44e 支持体46に関連した板状突起
44f 支持体22に関連した板状突起
44g 支持体48に関連した板状突起
44h 支持体24に関連した板状突起
44i 支持体50に関連した板状突起
44j 支持体52に関連した軸受ブラケット
44k 支持体54に関連した軸受ブラケット
441 支持体56に関連した軸受ブラケット
46 支持体-左-第2タイプ
46a 第1金属クッション
46b ボルト
46c ナット
46d 第1ワッシャ
46e ばね軸
46f 軸受肩
46g 第2金属クッション
46h 第2ワッシャ
48 支持体-中央-第2タイプ
48a 第1金属クッション
48b ボルト
48c ナット
48d 第1ワッシャ
48e ばね軸
48f 軸受肩
48g 第2金属クッション
48h 第2ワッシャ
50 支持体-右-第2タイプ
50a 第1金属クッション
50b ボルト
50c ナット
50d 第1ワッシャ
50e ばね軸
50f 軸受肩
50g 第2金属クッション
50h 第2ワッシャ
52 支持体-左-第3タイプ
52a 第1金属クッション
52b ボルト
52c ナット
52d 第1ワッシャ
52e ばね軸
52g 第2金属クッション
52h 第2ワッシャ
54 支持体-中央-第3タイプ
54a 第1金属クッション
54b ボルト
54c ナット
54d 第1ワッシャ
54e ばね軸
54g 第2金属クッション
54h 第2ワッシャ
56 支持体-右-第3タイプ
56a 第1金属クッション
56b ボルト
56c ナット
56d 第1ワッシャ
56e ばね軸
56g 第2金属クッション
56h 第2ワッシャ
58 支持体52の支持プレート
60 支持体54の支持プレート
62 支持体56の支持プレート
64 支持体
64a 第1金属クッション
64b ボルト
64c ナット
64d 第1ワッシャ
64e ばね軸
64g 第2金属クッション
64h 第2ワッシャ
66 支持体
66a 第1金属クッション
66b ボルト
66c ナット
66d 第1ワッシャ
66e ばね軸
66g 第2金属クッション
66h 第2ワッシャ
68 支持体
68a 第1金属クッション
68b ボルト
68c ナット
68d 第1ワッシャ
68e ばね軸
68g 第2金属クッション
68h 第2ワッシャ
70 取付ブラケット
72 取付ブラケット
74 取付ブラケット
【国際調査報告】