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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-06
(54)【発明の名称】ウイルスベクターの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/02 20060101AFI20230629BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20230629BHJP
   C12N 15/864 20060101ALN20230629BHJP
   C12N 15/867 20060101ALN20230629BHJP
【FI】
C12N7/02
C12M1/00 A
C12N15/864 100Z
C12N15/867 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022572331
(86)(22)【出願日】2021-06-10
(85)【翻訳文提出日】2022-11-24
(86)【国際出願番号】 US2021036840
(87)【国際公開番号】W WO2021252782
(87)【国際公開日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】63/037,777
(32)【優先日】2020-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521438515
【氏名又は名称】2セブンティ バイオ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】コイスマン, ブレント ジュリアン
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA27
4B029BB13
4B029DG08
4B029GB09
4B065AA95X
4B065AA97X
4B065BA01
4B065BD14
4B065BD18
4B065CA44
(57)【要約】
本開示は、レンチウイルス組成物を精製及び/又は濃縮するための改善されたシステム及び方法を提供する。本開示は、一般的に、部分的には、ウイルスベクター組成物の精製及び濃縮のための改善された方法及びシステムに関する。特に、本発明は、シングルパス接線流濾過を含む、ウイルスベクター組成物を精製及び/又は濃縮する方法を提供する。より具体的には、本方法及びシステムは、ウイルスベクター組成物の大規模産生(例、連続及び/又はバッチ供給産生)のために有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルスベクター組成物を精製する方法であって、
(a)SPTFFシステムを通じてウイルスベクターを含む組成物を供給する工程であって、前記システムは、
(i)供給ポンプ、及び
(ii)前記ウイルスベクター組成物を精製するSPTFF濾過モジュールを含む、供給する工程、及び
(b)精製ウイルスベクター組成物を収集する工程を含む、方法。
【請求項2】
ウイルスベクター組成物を濃縮する方法であって、
(a)SPTFFシステムを通じてウイルスベクターを含む組成物を供給する工程であって、前記システムは、
(i)供給ポンプ、及び
(ii)前記ウイルスベクター組成物を濃縮するSPTFF濾過モジュールを含む、供給する工程、及び
(b)濃縮ウイルスベクター組成物を収集する工程を含む、方法。
【請求項3】
前記ウイルスベクターがアデノ随伴ウイルス又はレンチウイルスから由来する、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ウイルスベクターがレンチウイルスから由来する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記SPTFFシステムが親和性クロマトグラフィー構成要素を含まない、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記SPTFFシステムが一個以上のSPTFF濾過モジュールを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記SPTFF濾過モジュールが三個以上の接線流濾過(TFF)カセット又は中空繊維カートリッジを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記SPTFF濾過モジュールが四個以上の接線流濾過(TFF)カセット又は中空繊維カートリッジを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記SPTFF濾過モジュールが五個以上の接線流濾過(TFF)カセット又は中空繊維カートリッジを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記SPTFF濾過モジュールが六個以上の接線流濾過(TFF)カセット又は中空繊維カートリッジを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記SPTFF濾過モジュールが七個以上の接線流濾過(TFF)カセット又は中空繊維カートリッジを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記SPTFF濾過モジュールが八個以上、九個以上、十個以上、十一個以上、十二個以上、又は十三個以上の接線流濾過(TFF)カセット又は中空繊維カートリッジを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記TFFカセットが一つ以上のフラットシート膜を含む、請求項7~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記中空繊維カートリッジが一つ以上の中空繊維膜を含む、請求項7~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記一つ以上の膜が、約1kDa、約5kDa、約10kDa、約20kDa、約30kDa、約40kDa、約50kDa、約60kDa、約70kDa、約80kDa、約90kDa、約100kDa、約200kDa、約300kDa、約400kDa、及び約500kDaからなる群から選択される平均分子量カットオフ(MWCO)を含む、請求項13又は請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記一つ以上の膜が約30kDaのMWCOを含む、請求項13又は請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記一つ以上の膜が約300kDaのMWCOを含む、請求項13又は請求項14に記載の方法。
【請求項18】
二つ以上のTFFカセット又は中空繊維カートリッジが、並列処理のために構成される、請求項7~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
二つ以上のTFFカセット又は中空繊維カートリッジが、直列処理のために構成される、請求項7~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記TFFカセット又は中空繊維カートリッジが、並列及び直列処理のために構成される、請求項7~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記ウイルスベクター組成物が、前記SPTFFシステム及び/又はSPTFF濾過モジュールを通る流路に従う、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記TFFカセット又は中空繊維カートリッジが有効膜面積を有する、請求項7~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記有効膜面積が、前記SPTFF濾過モジュール内の前記流路に沿って減少する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記システムが、(a)前記SPTFF濾過モジュールに入るウイルスベクター組成物供給液流量及び(b)前記SPTFF濾過モジュールを出るウイルスベクター組成物保持液流量を含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記SPTFF濾過モジュールに入る前記ウイルスベクター組成物供給液流量が、前記SPTFF濾過モジュールを出る前記ウイルスベクター組成物保持液流量の少なくとも約10倍である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記SPTFF濾過モジュールから出る前記ウイルスベクター組成物保持液流量が、前記SPTFF濾過モジュールに入る前記ウイルスベクター組成物供給液流量よりも少なくとも約10倍少ない、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記SPTFF濾過モジュールが、約10psi以下、約9psi以下、約8psi以下、約7psi以下、約6psi以下、約5psi以下、約4psi以下、約3psi以下、又は約2psi以下の平均膜貫通圧(TMP)を有する、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記SPTFF濾過モジュールが、約5psi以下の平均膜貫通圧(TMP)を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記供給ポンプが、前記SPTFF濾過モジュールの直前に位置付けられ、前記流路と連続している、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記システムが、前記SPTFF濾過モジュールの後に、前記流路と連続的に保持液ポンプをさらに含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記システムが、廃棄液ポンプ又は透過液ポンプをさらに含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記SPTFFシステムが遠心分離を含まない、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記ウイルスベクター組成物が、前記SPTFFシステム、SPTFF濾過モジュール、及び/又は前記SPTFF濾過モジュール内の任意のTFFカセットもしくは中空繊維カートリッジを通して再循環されない、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記システムが、前記SPTFF濾過モジュールに続くシングルパス透析濾過(SPDF)構成要素をさらに含む、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記システムが、前記SPTFF濾過モジュール後の研磨クロマトグラフィー構成要素をさらに含む、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記研磨クロマトグラフィー構成要素が、疎水性相互作用樹脂、サイズ排除樹脂、及び/又はイオン交換樹脂を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記研磨クロマトグラフィー構成要素がアニオン交換樹脂を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記研磨クロマトグラフィー構成要素によって、前記ウイルスベクター組成物から宿主細胞タンパク質及び/又は宿主gDNAが除去される、請求項35~37に記載の方法。
【請求項39】
前記SPTFFシステムが、0.22μMの最終フィルターをさらに含む、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記SPTFFシステムが、ヌクレアーゼを前記ウイルスベクター組成物に加えるための機構をさらに含む、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記ヌクレアーゼが、前記ウイルスベクター組成物を前記SPTFF濾過モジュールを通して供給する前に、前記ウイルスベクター組成物に加えられる、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記ヌクレアーゼが、前記ウイルスベクター組成物が前記SPTFF濾過モジュールを通過した後に前記ウイルスベクター組成物に加えられる、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記ヌクレアーゼがデナラーゼDNAエンドヌクレアーゼなどである、請求項40~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記システムがバイオリアクターをさらに含む、請求項1~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記バイオリアクターがウイルスベクター産生細胞を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記ウイルスベクター産生細胞がレンチウイルスベクター産生細胞である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記産生細胞が懸濁液中で維持される、請求項45又は請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記産生細胞がHEK293細胞である、請求項45~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記HEK293細胞がHEK293T細胞又はHEK293F細胞である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記ウイルスベクターが、治療用タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項1~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記治療用タンパク質が、操作されたαβTCR、操作されたγδTCR、二量体化剤調節免疫受容体複合体(DARIC)、キメラ抗原受容体(CAR)、キメラ共刺激受容体(CCR)、二重特異的T細胞エンゲイジャー(BiTE)、ゼタカイン受容体、βグロビンタンパク質、ABCD1ポリペプチド、エリスロポエチン受容体もしくはその断片、エンドヌクレアーゼ、又はmegaTALである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記ウイルスベクターが、shRNA、shmiR、又はガイドRNAをコードするポリヌクレオチドを含む、請求項1~51のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全体が本明細書中に組み込まれる、2020年6月11日に出願された米国仮出願第63/037,777号の35 U.S.C.§ 119(e)に基づく利益を主張する。
【0002】
本開示は、ウイルスベクターを精製及び/又は濃縮するための改善されたシステム及び方法に関する。より具体的には、本開示は、ウイルスベクター組成物を精製及び/又は濃縮するためにシングルパス接線流濾過を使用した、改善されたシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
関連分野に関する記載
これまでに、生物学的産物、例えばモノクローナル抗体、治療用タンパク質、ワクチン、及び他の生物学的産物などを精製するための主要な手段は、捕捉クロマトグラフィー、例えば、親和性クロマトグラフィーの使用を通じてきた。ウイルスについては、精製過程はまた、超遠心分離、イオン交換、ならびに親和性及びサイズ排除クロマトグラフィー方法を含んでもよい。これらの精製方法及び/又は濃縮方法は、遅く、高価であり、治療用産物での使用のための大規模なウイルスベクター産生に容易に適合しない。さらに、これらの方法は、産生細胞を含むバイオリアクターから供給されるベクターを連続的に精製及び/又は濃縮するそれらの能力において制限される。
【0004】
したがって、本明細書中にさらに記載するように、特に連続ベクター産生システムと使用するための、高純度及び濃縮ウイルスベクター組成物の大規模産生のための改善された方法及びシステムについてのニーズがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、一般的に、部分的には、ウイルスベクター組成物の精製及び濃縮のための改善された方法及びシステムに関する。特に、本発明は、シングルパス接線流濾過を含む、ウイルスベクター組成物を精製及び/又は濃縮する方法を提供する。より具体的には、本方法及びシステムは、ウイルスベクター組成物の大規模産生(例、連続及び/又はバッチ供給産生)のために有用である。
【0006】
様々な実施形態では、以下の工程を含む、ウイルスベクター組成物を精製及び/又は濃縮する方法:(a)SPTFFシステムを通じてウイルスベクターを含む組成物を供給すること、このシステムは(i)供給ポンプ;及び(ii)SPTFF濾過モジュール(前記SPTFF濾過モジュールが前記ウイルスベクター組成物を精製する)を含み;ならびに(b)精製ウイルスベクター組成物を収集すること。一部の実施形態では、ウイルスベクターはアデノ随伴ウイルス又はレンチウイルスから由来する。一部の実施形態では、ウイルスベクターはレンチウイルスから由来する。
【0007】
特定の実施形態では、SPTFFシステムは親和性クロマトグラフィー構成要素を含まない。
【0008】
様々な実施形態では、SPTFFシステムは一個以上のSPTFF濾過モジュールを含む。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールは三個以上の接線流濾過(TFF)カセット又は中空繊維カートリッジを含む。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールは四個以上の接線流濾過(TFF)カセット又は中空繊維カートリッジを含む。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールは五個以上の接線流濾過(TFF)カセット又は中空繊維カートリッジを含む。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールは六個以上の接線流濾過(TFF)カセット又は中空繊維カートリッジを含む。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールは七個以上の接線流濾過(TFF)カセット又は中空繊維カートリッジを含む。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールは八個以上、九個以上、十個以上、十一個以上、十二個以上、又は十三個以上の接線流濾過(TFF)カセット又は中空繊維カートリッジを含む。
【0009】
様々な実施形態では、TFFカセットは一つ以上のフラットシート膜を含む。様々な実施形態では、中空繊維カートリッジは一つ以上の中空繊維膜を含む。一部の実施形態では、一つ以上の膜は、約1kDa、約5kDa、約10kDa、約20kDa、約30kDa、約40kDa、約50kDa、約60kDa、約70kDa、約80kDa、約90kDa、約100kDa、約200kDa、約300kDa、約400kDa、および約500 kDaからなる群から選択される平均分子量カットオフ(MWCO)を含む。一部の実施形態では、一つ以上の膜は約30kDaのMWCOを含む。一部の実施形態では、一つ以上の膜は約300kDaのMWCOを含む。
【0010】
様々な実施形態では、二つ以上のTFFカセット又は中空繊維カートリッジは、並列で処理するように構成される。一部の実施形態では、二つ以上のTFFカセット又は中空繊維カートリッジは、直列で処理するよう構成される。一部の実施形態では、TFFカセット又は中空繊維カートリッジは、並列及び直列で処理するよう構成される。
【0011】
様々な実施形態では、ウイルスベクター組成物は、SPTFFシステム及び/又はSPTFF濾過モジュールを通る流路に従う。
【0012】
様々な実施形態では、TFFカセット又は中空繊維カートリッジは有効な膜面積を有する。一部の実施形態では、有効膜面積は、SPTFF濾過モジュール内の流路に沿って減少する。
【0013】
様々な実施形態では、システムは、(a)SPTFF濾過モジュールに入るウイルスベクター組成物供給液流量、及び(b)SPTFF濾過モジュールを出るウイルスベクター組成物保持液流量を含む。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールに入るウイルスベクター組成物供給液流量は、SPTFF濾過モジュールを出るウイルスベクター組成物保持液流量よりも少なくとも約10倍大きい。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールを出るウイルスベクター組成物保持液流量は、SPTFF濾過モジュールに入るウイルスベクター組成物供給液流量よりも少なくとも約10倍少ない。
【0014】
様々な実施形態では、SPTFF濾過モジュールは、約10psi以下、約9psi以下、約8psi以下、約7psi以下、約6psi以下、約5psi以下、約4psi以下、約3psi以下、又は約2psi以下の平均膜貫通圧(TMP)を有する。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールは約5psi以下の平均膜貫通圧(TMP)を有する。
【0015】
様々な実施形態では、供給ポンプは、SPTFF濾過モジュールの直前に、流路と連続的に配置される。一部の実施形態では、システムは、SPTFF濾過モジュールの後に、流路と連続的に保持液ポンプをさらに含む。一部の実施形態では、システムは廃棄液又は透過液ポンプをさらに含む。
【0016】
一部の実施形態では、SPTFFシステムは遠心分離を含まない。
【0017】
様々な実施形態では、ウイルスベクター組成物は、SPTFFシステム、SPTFF濾過モジュール、及び/又はSPTFF濾過モジュール内の任意のTFFカセットもしくは中空繊維カートリッジを通して再循環されない。
【0018】
様々な実施形態では、システムは、SPTFF濾過モジュールに続くシングルパス透析濾過(SPDF)構成要素をさらに含む。
【0019】
様々な実施形態では、システムは、SPTFF濾過モジュールの後に研磨クロマトグラフィー構成要素をさらに含む。一部の実施形態では、研磨クロマトグラフィー構成要素は、疎水性相互作用樹脂、サイズ排除樹脂、及び/又はイオン交換樹脂を含む。一部の実施形態では、研磨クロマトグラフィー構成要素はアニオン交換樹脂を含む。一部の実施形態では、研磨クロマトグラフィー構成要素は、ウイルスベクター組成物から宿主細胞タンパク質及び/又は宿主gDNAを除去する。
【0020】
様々な実施形態では、SPTFFシステムは、0.22μmの最終フィルターをさらに含む。
【0021】
様々な実施形態では、SPTFFシステムは、ウイルスベクター組成物にヌクレアーゼを加える機構をさらに含む。一部の実施形態では、ヌクレアーゼは、ウイルスベクター組成物にSPTFF濾過モジュールを通して供給する前に、ウイルスベクター組成物に加えられる。一部の実施形態では、ヌクレアーゼが、ウイルスベクター組成物がSPTFF濾過モジュールを通過した後に、ウイルスベクター組成物に加えられる。一部の実施形態では、ヌクレアーゼはデナラーゼDNAエンドヌクレアーゼなどである。
【0022】
様々な実施形態では、システムはバイオリアクターをさらに含む。一部の実施形態では、バイオリアクターはウイルスベクター産生細胞を含む。一部の実施形態では、ウイルスベクター産生細胞はレンチウイルスベクター産生細胞である。一部の実施形態では、産生細胞は懸濁液中で維持される。一部の実施形態では、産生細胞はHEK293細胞である。一部の実施形態では、HEK293細胞はHEK293T細胞又はHEK293F細胞である。
【0023】
様々な実施形態では、ウイルスベクターは、治療用タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、治療用タンパク質は、操作されたαβTCR、操作されたγδTCR、二量体化剤調節免疫受容体複合体(DARIC)、キメラ抗原受容体(CAR)、キメラ共刺激受容体(CCR)、二重特異的T細胞エンゲイジャー(BiTE)、ゼタカイン受容体、βグロビンタンパク質、ABCD1ポリペプチド、エリスロポエチン受容体もしくはその断片、エンドヌクレアーゼ、又はmegaTALである。一部の実施形態では、ウイルスベクターは、shRNA、shmiR、又はガイドRNAをコードするポリヌクレオチドを含む。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1A及び図1Bは、並列及び直列の両方で処理するよう構成された、同様のサイズの接線流濾過(TFF)カセット又は中空繊維カートリッジを有するシングルパス接線流濾過(SPTFF)モジュールの概略図を示す。
図2図2A及び2Bは、直列で処理するように、及び流路に沿った有効膜面積において減少するように構成された、TFFカセット又は中空繊維カートリッジを有するSPTFFモジュールの概略図を示す。
図3図3は、SPTFFシステムの例示的な概略図を示す。
図4図4は、追加的な特徴及び/又は構成要素を有するSPTFFシステムの例示的な概略図を示す。
図5図5Aは、TFFカセットを利用したSPTFFシステムにおける300kDaの膜フィルターを使用した様々な実験のための濃縮倍率(体積、力価、及び粒子)及び宿主細胞タンパク質(HCP)レベルを描写するグラフである。図5Bは、標準的なTFF及び改善されたSPTFFシステム/方法を使用して産生された濃縮レンチウイルスベクターで形質導入された細胞からのベクターコピー数(VCN)を描写するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
A.概要
本開示は、一般的に、部分的に、医薬品の製造における使用のためのウイルスベクター組成物を精製及び濃縮するための改善されたシングルパス接線流濾過(SPTFF)方法に関する。様々な実施形態では、これらの方法は、大量バッチ(例、バルク供給)又は連続的な精製/濃縮システム、例えば、バイオリアクター中で産生されるウイルスベクターでの使用のために特に適している。一部の実施形態では、ウイルスベクターは、産生細胞を使用して産生される。
【0026】
本発明者らは、SPTFFシステムの使用が、業界標準の捕捉又は親和性クロマトグラフィーを使用したシステムと比較し、ウイルスベクター組成物の大量バッチ又は連続的な精製/濃縮のための主要手段として驚くほど効果的であることを発見した。加えて、本発明者らは、SPTFFシステム内の膜貫通圧(TMP)の減少が、驚くべきことに、ウイルスベクター組成物の改善された精製及び濃縮をもたらすことを発見した。
【0027】
一態様では、ウイルスベクターを精製及び/又は濃縮するための方法が提供される。一部の実施形態では、方法は以下の工程を含む:(a)SPTFFシステムを通じてウイルスベクターを含む組成物を供給すること、このシステムは(i)供給ポンプ;及び(ii)SPTFF濾過モジュール(前記SPTFF濾過モジュールが前記ウイルスベクター組成物を精製する)を含み;ならびに(b)精製ウイルスベクター組成物を収集すること。
【0028】
別の態様では、ウイルスベクターを精製及び/又は濃縮するためのSPTFFシステムが提供される。一部の実施形態では、システムは、供給ポンプ及びSPTFF濾過モジュールを含み、前記SPTFF濾過モジュールはウイルスベクター組成物を精製する。
【0029】
特定の実施形態では、ウイルスベクターはアデノ随伴ウイルス(AAV)又はレンチウイルスから由来する。
【0030】
好ましい実施形態では、本明細書中に記載する方法又はSPTFFシステムは、特に大量バッチ及び/又は連続的な様式の操作で、製造過程におけるウイルスベクターの精製及び濃縮のための主要手段として使用される。様々な実施形態では、本明細書中に記載するシステム及び方法は、捕捉又は親和性クロマトグラフィーの構成要素又は工程を含まない。一部の実施形態では、ウイルスベクター組成物は、SPTFFシステム又はSPTFF濾過モジュールを通じて再循環されない。一部の実施形態では、本明細書において企図する方法は、遠心分離を含まない。
【0031】
様々な実施形態では、SPTFF濾過モジュールは、四個以上、五個以上、六個以上、七個以上、八個以上、九個以上、十個以上、十一個以上、十二個以上、又は十三個以上の接線流濾過(TFF)カセットを含む。様々な実施形態では、SPTFF濾過モジュールは、四個以上、五個以上、六個以上、七個以上、八個以上、九個以上、十個以上、十一個以上、十二個以上、又は十三個以上の中空繊維TFFカートリッジを含む。
【0032】
一部の実施形態では、TFFカセット又は中空繊維TFFカートリッジは、直列及び/又は並列で作動する。したがって、SPTFFシステムでは、供給液(例、ウイルスベクター組成物)は、一つのカセットもしくはカートリッジ(又はカセットもしくはカートリッジのグループ)上に一度に流れることができ(別名、連続作動)、又はいくつかのカセットもしくはカートリッジの間で分割することができる(別名、並列作動)。一部の実施形態では、供給を、いくつかのカセット又はカートリッジの間で並列に(例、グループ又は段階で)分割し、カセット又はカートリッジのいくつかのグループを直列に連結する。
【0033】
様々な実施形態では、連続及び/又は並列で作動するTFFカセット及び/又は中空繊維TFFカートリッジは、有効膜面積を有する。例えば、連続モードで作動するカセット又はカートリッジの有効膜面積は、膜のサイズと等しくなりうる。しかし、並列モードで作動するいくつかのカセット又はカートリッジの有効膜面積は、流路に沿った任意の所与の工程で、全てのカセット又はカートリッジの膜面積の総和に等しい有効膜面積を有しうる(例、図1A及び図1Bを参照のこと)。特定の実施形態では、有効膜面積は、SPTFF濾過モジュール内の流路に沿って減少する。
【0034】
様々な実施形態では、SPTFF濾過モジュールに入る組成物(例、供給液)の流量は、SPTFF濾過モジュールを出る保持液流量よりも10倍大きい。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールを出る組成物保持液流量は、SPTFF濾過モジュールに入る供給液流量よりも10倍少ない。
【0035】
様々な実施形態では、SPTFF濾過モジュールは、約10psi以下、約9psi以下、約8psi以下、約7psi以下、約6psi以下、約5psi以下、約4psi以下、約3psi以下、又は約2psi以下の平均膜貫通圧(TMP)を有する。一部の実施形態では、システムは、供給ポンプ、保持液ポンプ、及び/又は透過液/廃棄液ポンプを含む。
【0036】
様々な実施形態では、システムは、バイオリアクター、シングルパス透析濾過(SPDF)構成要素、研磨クロマトグラフィー構成要素、及び/又は最終フィルターをさらに含む。一部の実施形態では、研磨クロマトグラフィー構成要素は、疎水性相互作用樹脂、サイズ排除樹脂、及び/又はイオン交換樹脂を含む。一部の実施形態では、研磨クロマトグラフィー構成要素はアニオン交換樹脂を含む。一部の実施形態では、バイオリアクターは産生細胞を含む。一部の実施形態では、方法は、ヌクレアーゼを組成物に加える工程をさらに含む。
【0037】
様々な実施形態では、ウイルスベクターは、治療用タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む。様々な実施形態では、ウイルスベクターは、操作されたαβ TCR、操作されたγδ TCR、二量体化剤調節免疫受容体複合体(DARIC)、キメラ抗原受容体(CAR)、キメラ共刺激受容体(CCR)、二重特異的T細胞エンゲイジャー(BiTE)、ゼタカイン受容体、キメラTGFβ受容体(CTBR)、βグロビンタンパク質、ABCD1ポリペプチド、エリスロポエチン受容体もしくはその断片、エンドヌクレアーゼ、又は megaTALをコードするポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、ウイルスベクターは、shRNA、shmiR、又はガイドRNAをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0038】
組み換え(すなわち、操作された)DNA、ペプチド及びオリゴヌクレオチド合成、免疫アッセイ、組織培養、形質変換(例、エレクトロポレーション、リポフェクション)、酵素反応、精製ならびに関連する技術及び手法は、本明細書を通じて引用され、考察される、微生物学、分子生物学、生化学、分子遺伝学、細胞生物学、ウイルス学及び免疫学における様々な一般的及びより具体的な参考文献に記載されるように一般的に行われてもよい。例えば、Sambrook et al.,molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3d ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.;Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley and Sons、2008年7月に更新)、Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience;Glover,DNA Cloning:A Practical Approach,vol.I&II(IRL Press,Oxford Univ.Press USA,1985)、Current Protocols in Immunology (Edited by:John E.Coligan,Ada M.Kruisbeek,David H.Margulies,Ethan M.Shevach,Warren Strober 2001 John Wiley&Sons,NY,NY)、Real-Time PCR:Current Technology and Applications,Edited by Julie Logan,Kirstin Edwards and Nick Saunders,2009,Caister Academic Press,Norfolk,UK、Anand,Techniques for the Analysis of Complex Genomes,(Academic Press,New York,1992)、Guthrie and Fink,Guide to Yeast Genetics and Molecular Biology(Academic Press,New York,1991)、Oligonucleotide Synthesis(N.Gait,Ed.,1984)、Nucleic Acid The Hybridization(B.Hames&S.Higgins,Eds.,1985)、Transcription and Translation(B.Hames&S.Higgins,Eds.,1984)、Animal Cell Culture(R.Freshney,Ed.,1986)、Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning(1984)、Next-Generation Genome Sequencing(Janitz,2008 Wiley-VCH)、PCR Protocols(Methods in Molecular Biology)(Park,Ed.,3rd Edition,2010 Humana Press)、Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press,1986)、the treatise,Methods In Enzymology(Academic Press,Inc.,N.Y.)、Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells(J.H.Miller and M.P.Calos eds.,1987,Cold Spring Harbor Laboratory)、Harlow and Lane,Antibodies,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1998)、Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology(Mayer and Walker,eds.,Academic Press,London,1987)、Handbook Of Experimental Immunology,Volumes I-IV(D.M.Weir and CC Blackwell,eds.,1986)、Roitt,Essential Immunology,6th Edition,(Blackwell Scientific Publications,Oxford,1988)、Current Protocols in Immunology(Q.E.Coligan,A.M.Kruisbeek,D.H.Margulies,E.M.Shevach and W.Strober,eds.,1991)、Annual Review of Immunology、並びにAdvances in Immunologyなどの専門誌の研究論文を参照されたい。
【0039】
B.定義
本開示をより詳細に記載する前に、本明細書において使用されるべきある特定の用語の定義を提供することは、その理解に役立ちうる。
【0040】
他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって普遍的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書中に記載するものと類似した、又は均等の方法及び材料を、特定の実施形態の実施又は検証に使用することができるが、本明細書においては好ましい組成物、方法及び材料の実施形態を開示している。本開示の目的に対し、以下の用語を、以下に規定する。
【0041】
冠詞「a」、「an」及び「the」は、本明細書において、当該冠詞の文法上の対象の一つ又は複数(すなわち少なくとも一つ、又は一つもしくは複数)を指すために使用される。例示として、「an element」とは、一つの要素、又は一つもしくは複数の要素を意味する。
【0042】
選択肢(例、「又は」)の使用は、いずれか一つ、両方、又はその選択肢の任意の組み合わせを意味すると理解されたい。
【0043】
用語「及び/又は」は、いずれか一つ、又はその選択肢の両方を意味すると理解されたい。
【0044】
本明細書中で使用するように、用語「約」又は「およそ」は、基準の数量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、大きさ、量、重さ、又は長さに対し、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、又は1%変化する数量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、大きさ、量、重さ、又は長さを指す。一実施形態では、用語「約」又は「およそ」は、基準の数量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、大きさ、量、重さ、又は長さに関し、±15%、±10%、±9%、±8%、±7%、±6%、±5%、±4%、±3%、±2%、又は±1%の数量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、大きさ、量、重さ、又は長さの範囲を指す。
【0045】
一実施形態では、例えば、1~5、約1~5、又は約1~約5といった範囲は、当該範囲に包含される各数値を指す。例えば、一つの非限定的かつ単に例示的な実施形態では、範囲「1~5」は、表現1、2、3、4、5、又は1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、もしくは5.0、又は1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、もしくは5.0と同等である。
【0046】
本明細書中で使用するように、用語「実質的に」は、基準の数量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、大きさ、量、重さ、又は長さと比較して、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上である数量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、サイズ、量、重量、又は長さを指す。一実施形態では、「実質的に同じ」は、参照の量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量又は長さとほぼ同じである効果、例えば、生理学的効果を生じる量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、又は長さを指す。
【0047】
本明細書全体を通じて、文脈が別段要求しない限り、語句「含む(comprise)」、「含む(comprises)」及び「含むこと」は、規定される工程もしくは要素又は工程もしくは要素のグループを含むことを暗示するが、任意の他の工程もしくは要素又は工程もしくは要素のグループを除外することを暗示しないことは理解されるだろう。「~からなる」とは、語句「からなる」に先行するもの全てを含み、それらに限定されることを意味する。このように、文言「~からなる」は、列記される要素が必要又は義務であり、他の要素は存在し得ないことを示す。「本質的に~からなる」とは、当該文言の後に列記される任意の要素、及び列記される要素に関して本開示中に特定される活性もしくは作用に干渉しない、又は寄与しない他の要素に限定される任意の要素を含むことを意味する。このように、文言「本質的に~からなる」は、列記される要素が必須又は義務であり、しかし列記される要素の活性又は作用に実質的に影響を与える他の要素は存在しないことを示す。
【0048】
本明細書全体を通じて「一実施形態」、「実施形態」、「特定の実施形態」、「関連する実施形態」、「ある実施形態」、「追加的な実施形態」、もしくは「さらなる実施形態」、又はそれらの組み合わせに対する参照は、当該実施形態と関連付けて記載される特定の性質、構造又は特徴が、少なくとも一つの実施形態に含まれることを意味する。このように、本明細書全体の様々な箇所での前述の文言の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指しているわけではない。さらに、特定の性質、構造、又は特徴は、一つ以上の実施形態において任意の適切な様式で組み合わされうる。また、一実施形態でのある特徴の肯定的な列挙は、特定の実施形態での当該特徴を除外するための根拠として機能することが理解される。
【0049】
用語「SPTFF濾過モジュール」は、一つ以上のTFFカセット又は中空繊維TFFカートリッジを含むSPTFFシステム中の構成要素を指す。SPTFF濾過モジュールはまた、TFFカセットのための「ホルダ」を含みうる。SPTFF濾過モジュールはまた、TFFカセット及び/又は中空繊維TFFカートリッジへの、及び/又はそれらからの供給液、保持液、透過液、及び/又は廃棄液を運ぶように構成された一つ以上のマニホールド又はマニホールドセグメントを含んでもよい。
【0050】
用語「マニホールドセグメント」は、供給液を運ぶためのマニホールド、保持液を運ぶためのマニホールド、及び透過液を運ぶためのマニホールドを含む、複数のマニホールドを有するブロックを指す。
【0051】
「TFFカセット」又は「カセット」は、濾過膜(例、限外濾過膜、マイクロ濾過膜)ならびにSPTFF過程のために適切な別々の供給液/保持液及び透過液のフローチャネルを含む、プレート及びフレーム構造を指す。
【0052】
用語「中空繊維TFFカートリッジ」、「中空繊維カートリッジ」、又は「カートリッジ」は、中空繊維(膜)の束により形成されるチャネルを含む構造(例、管様構造)を指す。そのようなカートリッジは、典型的には、キャップ付き端部を含み、前記カートリッジは、供給サンプル又は溶液(例、ウイルスベクター組成物)用の入口、ならびに保持液及び透過液用の一つ以上の別々の出口を含む。
【0053】
用語「中空繊維膜」は、中空繊維の形態で半浸透性バリアを含む人工濾過膜のクラスを指す。
【0054】
用語「濾過膜」は、SPTFF過程を使用して、透過液流及び保持液流に供給液を分離するための選択的透過性膜を指す。濾過膜は、限外濾過(UF)膜、マイクロ濾過(MF)膜、逆浸透(RO)膜、及びナノ濾過(NF)膜を含むが、これらに限定しない。濾過膜はフラットシート又は中空繊維でありうる。
【0055】
用語「マイクロ濾過膜」及び「MF膜」は、約0.1マイクロメートル~約10マイクロメートルの間の範囲の細孔サイズを有する膜を指す。
【0056】
用語「限外濾過膜」及び「UF膜」は、約10ナノメートル~約100ナノメートル(即ち、約0.01マイクロメートル~約0.1マイクロメートル)の間の範囲の細孔サイズを有する膜を指す。
【0057】
用語「ナノ濾過膜」及び「NF膜」は、約1ナノメートル~約10ナノメートル(即ち、約0.001マイクロメートル~約0.01マイクロメートル)の間の範囲の細孔サイズを有する膜を指す。
【0058】
追加の定義は、本開示全体を通じて記載されている。
【0059】
C.シングルパス接線流濾過(SPTFF)システム
接線流濾過(TFF)は、膜を使用して、サイズ、分子量、又は他の差異に基づいて、液体溶液又は懸濁液(例、供給サンプル)中の構成要素を分離する過程である。これらの過程では、供給サンプルは、膜表面に沿って接線方向にポンプ注入され、膜を通過するには大き過ぎる粒子又は分子は保持され、供給サンプルが十分に明らかにされ、濃縮され、又は精製されるまで、膜を横切る追加の通過(即ち、再循環)のために過程タンクに戻される。TFFのクロスフローの性質は、膜の汚損を最小限にし、バッチ当たり大量処理を可能にする。
【0060】
従来のバッチ供給再循環TFF過程は、しかし、既存のTFFシステムのサイズ及び最小作業量のために制限される。シングルパスTFF(SPTFF)によって、再循環の非存在下における産物(例、タンパク質)の直接フロースルー濃縮が可能になり、それよって、機械的な構成要素の除去を通して全体的なシステムサイズが低下し、高変換レベルでの連続的な作動が可能になる。しかし、バイオマニュファクチャリングにおけるウイルスベクター精製/濃縮のための主要手段としてのそのようなSPTFFシステムの使用は、完全には実現されていない。
【0061】
任意の特定の理論により束縛されるものではないが、SPTFFシステムは、ウイルスベクターを効果的に精製/濃縮することができるSPTFFシステムを、薬物製造のために要求される高い基準で構築する固有の困難さのために、大規模バイオマニュファクチャリングシステム(例、大規模バッチ供給又は連続ウイルスベクター製造システム)においてウイルス粒子を精製/濃縮するための主要な手段として使用されていないことが企図される。さらに、ウイルスベクターを数日間(数週間は言うまでもなく)にわたり連続的に産生できる産生細胞を作製することは困難であり、それによって、ウイルスベクターの精製/濃縮のための連続又は大規模バッチ供給SPTFFシステムの使用が可能となる。本発明者らは、ウイルスベクターの精製/濃縮に驚くほど効果的であるSPTFFシステム及び方法を(例、連続又は大量バッチ供給の様式で)開発しているが、こうして、ウイルスベクター製造におけるコスト、処理時間、ならびに産物の収率及び回収を低下させた。
【0062】
様々な実施形態では、シングルパス接線流濾過(SPTFF)を使用してウイルスベクター組成物を精製及び/又は濃縮するための改善されたシステム及び方法が提供される。特定の実施形態では、本明細書において企図されるシステム及び方法は、連続又は大量バッチ供給様式でのウイルスベクター組成物の製造のために有用である。
【0063】
本明細書中で使用するように、用語「SPTFFシステム」は、シングルパスモードでの作動のために構成されるシングルパス接線流濾過(SPTFF)システムを指し、即ち、供給サンプル(例、ウイルスベクター組成物)が、システムを通して一度だけ通過し、システム又はSPTFF濾過モジュールを通して再循環されない。一部の実施形態では、供給サンプル(例、ウイルスベクター組成物)は、精製及び/又は濃縮のために使用されるSPTFF濾過モジュールを通して再循環されないが、しかし、他の目的(例、透析濾過)のために使用される一つ以上のTFF濾過モジュールを通して再循環される。一部の実施形態では、供給サンプル(例、ウイルスベクター組成物)は、SPTFFシステム内の任意のTFF濾過モジュールを通して再循環されない。
【0064】
様々な実施形態では、ウイルスベクターを精製及び/又は濃縮するためのSPTFFシステム、及び関連方法が提供される。一部の実施形態では、方法は以下の工程を含む:(a)SPTFFシステムを通じてウイルスベクターを含む組成物を供給すること、このシステムは(i)供給ポンプ;及び(ii)SPTFF濾過モジュール(前記SPTFF濾過モジュールが前記ウイルスベクター組成物を精製する)を含み;ならびに(b)精製ウイルスベクター組成物を収集すること。特定の実施形態では、ウイルスベクターはアデノ随伴ウイルス(AAV)又はレンチウイルスから由来する。一部の実施形態では、ウイルスベクターはアネロベクターである。
【0065】
様々な実施形態では、本明細書において企図されるシステム及び方法は、親和性又は捕捉クロマトグラフィーの構成要素又は工程を含まない。好ましい実施形態では、ウイルスベクター組成物は、SPTFFシステム又はSPTFF濾過モジュールを通じて再循環されない。一部の実施形態では、方法又はシステムは遠心分離を含まない。
【0066】
様々な実施形態では、SPTFFシステム又は関連する方法は、処理を支援するために異なる構成要素(例、ユニット及び/又はモジュール)を含んでもよい。一般的に、本明細書において企図される方法を実施するのに有用なSPTFFシステムは、標準的な既存のTFFシステム構成要素を使用して組み立てて操作することができる。市販されているTFFシステム構成要素の例は、 限定しないが、一つ以上のバイオリアクター、保持タンク又は容器、廃棄タンク又は容器、供給ライン、SPTFF濾過モジュール、濾過膜を含むTFFカセット、カセットホルダ、中空繊維カートリッジ、クロマトグラフィー構成要素、 透析濾過構成要素、限外濾過膜/フィルターマイクロ濾過膜/フィルター、供給用の導管(例、チューブ、管)、保持液及び透過液、筐体又はエンクロージャ、バルブ、ガスケット、ポンプモジュール(例、ポンプ筐体、ダイアフラム、及びチェックバルブを含むポンプモジュール)、サンプリングポート、Tライン(例、インライン緩衝液の添加用)、バルブセンサー、流量計、一つ以上のリザーバ(例、バイオ過程コンテナ)、圧力計、及びバイアル充填構成要素を含む(例、 図3及び図4を参照のこと)。
【0067】
様々な実施形態では、構成要素の一つ以上が、構成要素間の供給サンプル(例、ウイルスベクター組成物)の連続的な流れを達成するために流体接続される。語句「流体接続」は、一つ以上の導管(例、供給液チャネル、保持液チャネル、透過液チャネル)により接続されて、供給サンプルが一つの構成要素から他へ流れることができるようにする、SPTFFシステムの二つ以上の構成要素(例、二つ以上のマニホールドセグメント、二つ以上のマニホールドセグメント、二つ以上のTFFカセット、二つ以上の中空繊維TFFカートリッジ、又はそれらの任意の組み合わせ)を指す。
【0068】
用語「プロセシング」は、ウイルスベクター組成物を含む供給流を(例、SPTFFにより)濾過し、その後、濃縮及び/又は精製された形態でウイルスベクターを回収する作用を指す。濃縮ウイルスベクターは、ウイルスベクターのサイズ及び濾過膜の細孔サイズに依存して、保持液流又は透過液流のいずれかで、濾過システム(例、SPTFFシステム)から回収することができる。好ましい実施形態では、ウイルスベクターは、保持液流中の濾過システムから回収される。
【0069】
用語「精製」、「精製する」、「精製された」、及び「精製している」は、サンプル(例、宿主細胞タンパク質)の一つ以上の他の構成要素に対して、目的の一つ以上の構成要素(例、ウイルスベクター)の量を濃縮する手順を指す。例えば、特定の実施形態では、本明細書において企図されるSPTFFシステムは、宿主細胞タンパク質(HCP)を組成物から除去し、それにより宿主細胞タンパク質濃度を低下させる一方で、ウイルスベクターを濃縮する。本明細書中で使用するように、用語「精製」、「精製する」、「精製された」、及び「精製している」は、サンプルから目的の成分以外の全ての材料を除去することを意味するものではない。
【0070】
用語「供給」、「供給サンプル」、及び「供給流」は、濾過されるSPTFF濾過モジュールに送達される溶液(例、ウイルスベクター組成物)を指す。濾過のためにSPTFF濾過モジュールに送達される供給は、例えば、SPTFFシステムの外側又はSPTFFシステム内に統合された供給容器(例、容器、タンク、又はバイオリアクター)からの供給であることができる。
【0071】
用語「濾過」は、膜を使用して、供給サンプルを透過液及び保持液の二つの流れに分離する作用を一般的に指す。
【0072】
用語「透過液」及び「濾過液」は、膜を通じて透過した供給液のその部分を指す。
【0073】
用語「保持液」は、膜により保持された供給液の部分を指し、保持液は、保持された種が濃縮された流れである。
【0074】
用語「供給ライン」又は「供給チャネル」は、供給源(例、供給コンテナ、容器、タンク、又はバイオリアクター)からの供給液を、濾過アセンブリ(例、SPTFFシステム又はSPTFF濾過モジュール)内の一つ以上の処理構成要素に運搬するための導管を指す。
【0075】
用語「保持液ライン」又は「保持液チャネル」は、保持液を運ぶための濾過アセンブリ内の導管を指す。
【0076】
用語「透過液ライン」又は「透過液チャネル」は、透過液を運ぶための濾過アセンブリ内の導管を指す。
【0077】
様々な実施形態では、本明細書において企図されるSPTFFシステム及び関連する方法は、インビトロ及び/又はインビボ用途のために適切な精製及び/又は濃縮されたウイルスベクター組成物を取得するために有用である。特定の実施形態では、精製及び/又は濃縮されたウイルスベクター組成物は、限定しないが、細胞遺伝子治療産物及びワクチンを含む、遺伝子治療産物のインビボ投与及び/又は製造のために適切である。好ましい実施形態では、精製及び/又は濃縮されたウイルスベクター組成物は、細胞治療の製造のために適切である。さらなる好ましい実施形態では、精製及び/又は濃縮されたウイルスベクター組成物は、インビトロ、エクスビボ、又はインビボでの遺伝子治療のために有用である。
【0078】
様々な実施形態では、本明細書中で提供するSPTFFシステム及び関連する方法は、流動的に接続される一つ以上のSPTFF濾過モジュール又は構成要素を含む。一部の実施形態では、SPTFFシステム及び関連する方法は、第一のSPTFF濾過モジュール上の供給入口及び最後のSPTFF濾過モジュール上の保持液出口を含む。一部の実施形態では、第一及び最後のSPTFF濾過モジュールは、同じモジュールであり、即ち、システムは、一つのSPTFF濾過モジュールのみを含む。
【0079】
様々な実施形態では、SPTFFシステム及び関連する方法は、一つ以上の流路を含む。表現「流路」は、SPTFFシステムの全て又は一部を介した溶液(例、供給液、保持液、透過液、又は組成物)の流れを支持するチャネルを指す。このように、SPTFFシステムは複数の流路を有することができ、供給液入口から保持液出口までのシステム全体を通じた流路、SPTFF濾過モジュール内の流路(例、TFFカセットを通じた流路)、二つ以上の隣接するSPTFF濾過モジュール間の流路(例、隣接するSPTFF濾過モジュール内のマニホールドセグメント間の流路)、及び二つ以上の隣接するTFFカセット又は中空繊維カートリッジ間の流路(例、隣接するSPTFF濾過モジュール内のマニホールドセグメント間の流路)を含む。流路は、接線流を支持する任意のトポロジー(例、直線、コイル状、ジグザグ様式で配置)を有しうる。流路は並列又は直列であることができる。さらに、流路は、中空繊維膜により形成されるチャネルの実施例のように開放であることができ、あるいは、例えば、織布もしくは不織布のスペーサー、又はガスケット(例、シリコンガスケット)により間隔があけられた平坦シート膜により形成される一つ以上の流れ障害物を有することができる。
【0080】
一部の実施形態では、SPTFFシステム及び関連する方法は、一つ以上のバイオリアクターを含む。例えば、SPTFFシステム及び関連する方法は、一つ、二つ、三つ、四つ、又は五つのバイオリアクターを含む。
【0081】
本明細書中で使用するように、用語「バイオリアクター」は、生物学的に活性な環境を支持する任意の製造又は操作された装置又はシステムを指す。一部の例では、バイオリアクターは、細胞培養過程を行う容器である。そのような過程は、好気性又は嫌気性のいずれかであってもよい。一般的に使用されるバイオリアクターは、典型的には、リットルから立方メートルまでのサイズに及ぶ円筒形であり、しばしば、ステンレス鋼で作製されている。本明細書中で記載する一部の実施形態では、バイオリアクターは、鋼鉄以外の材料で作製され、使い捨て又は単回使用である。バイオリアクターの総体積は、特定の過程に依存して、100mLから最大10,000リットル又はそれ以上に及ぶ任意の体積であってもよいことが企図される。本明細書中で記載する過程及びシステムによる一部の実施形態では、バイオリアクターは、ユニット作動、例えばデプスフィルターなどに接続される。本明細書中に記載する一部の実施形態では、バイオリアクターは、細胞培養ならびに沈殿の両方に使用されるが、沈殿物はバイオリアクターに直接加えられて、一つ以上の不純物を沈殿させうる。
【0082】
一部の実施形態では、バイオリアクターは、SPTFFシステム内の一つ以上の構成要素に流動的に接続される。例えば、一部の実施形態では、バイオリアクターは、SPTFF濾過モジュールに流動的に接続される。一部の実施形態では、バイオリアクターは、保持タンク又は容器に流体接続され、それはまた、SPTFF濾過モジュール(例、供給液入口を介して)に流体接続されてもよい。
【0083】
バイオリアクターは、バッチもしくはフェドバッチバイオリアクターのような任意のタイプのバイオリアクター、又は連続灌流発酵バイオリアクターのような連続バイオリアクターでありうる。バイオリアクターは、任意の適切な材料で作製することができ、任意のサイズであることができる。典型的な材料はステンレス鋼又はプラスチックである。好ましい実施形態では、バイオリアクターは、使い捨てバイオリアクターであり、例えば、単回使用のために設計された、可動性の折り畳み式バッグの形態である。バイオリアクター内で増殖している細胞は、液体培地中に浸漬されてもよく、又は固体培地の表面に付着されてもよい。液内培養物は懸濁又は固定させてもよい。一部の実施形態では、バイオリアクターはSPTFFシステムに流体接続させる。一部の実施形態では、バイオリアクターは保持タンク(例、中間保持タンク)に流体接続させる。
【0084】
一部の実施形態では、バイオリアクターは産生細胞を含む。本明細書中で使用するように、用語「産生細胞」又は「産生細胞株」は、パッケージング細胞株及びパッケージングシグナルを含むトランスファーベクター構築物を含む、組換えレトロウイルス粒子を産生することが可能である細胞又は細胞株を指す。感染性ウイルス粒子及びウイルスストック溶液の生成は、従来的な技術を使用して行ってもよい。ウイルスストック溶液を調製する方法は、当該技術分野で公知であり、例えば、Y.Soneoka et al.(1995)Nucl.Acids Res.23:628-633、及びN.R.Landau et al.(1992) J.Virol.66:5110-5113により例示されている。感染性ウイルス粒子は、従来の技術を使用して産生細胞から収集されうる。例えば、感染性粒子を、当技術分野で公知のように、細胞溶解、又は細胞培養の上清の収集により収集することができる。場合により、収集されたウイルス粒子を、望ましい場合、精製してもよい。適切な精製技術は当業者に周知である。
【0085】
一部の実施形態では、産生細胞は、バイオリアクター内の懸濁液中で維持される。一部の実施形態では、産生細胞は、AAVベクター産生細胞、アネロベクター産生細胞、又はレンチウイルスベクター産生細胞である。特定の実施形態では、産生細胞はレンチウイルスベクター産生細胞である。一部の実施形態では、産生細胞はHEK293細胞である。一部の実施形態では、HEK293細胞はHEK293T細胞又はHEK293F細胞である。一部の実施形態では、ウイルスベクターは、治療用導入遺伝子又は治療用タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0086】
様々な実施形態では、SPTFFシステム又は方法における第一の構成要素は、出発材料を含むバイオリアクターであり、例えば、精製されるタンパク質又はウイルスベクターを発現する細胞を培養する。
【0087】
様々な実施形態では、本明細書において企図する方法を実施するために有用なSPTFFシステムは、一つ以上のポンプをさらに含む。一部の実施形態では、ポンプは供給ポンプである。一部の実施形態では、SPTFFシステムは、一つ以上の供給ポンプを含む。一部の実施形態では、供給ポンプは、流路内のSPTFF濾過モジュールの前に位置付けられる。一部の実施形態では、SPTFFシステム又は方法は、一つ以上の保持液ポンプを含む。一部の実施形態では、保持液ポンプは、流路内のSPTFF濾過モジュールの後に位置付けられる。
【0088】
様々な実施形態では、保持液ポンプは、供給ポンプよりも遅い流速を有する。一部の実施形態では、SPTFFシステムは、一つ以上の廃棄液ポンプ又は透過液ポンプを含む。一部の実施形態では、廃棄液ポンプ又は透過液ポンプは、供給ポンプ及び/又は保持液ポンプよりも遅い流速を有する。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールに入る供給液流量は、SPTFF濾過モジュールを出る保持液流量よりも少なくとも7倍大きい。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールに入る供給液流量は、SPTFF濾過モジュールを出る保持液流量よりも少なくとも8倍大きい。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールに入る供給液流量は、SPTFF濾過モジュールを出る保持液流量よりも少なくとも9倍大きい。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールに入る供給液流量は、SPTFF濾過モジュールを出る保持液流量よりも少なくとも10倍大きい。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールに入る供給液流量は、SPTFF濾過モジュールを出る保持液流量よりも少なくとも11倍大きい。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールに入る供給液流量は、SPTFF濾過モジュールを出る保持液流量よりも少なくとも12倍大きい。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールに入る供給液流量は、SPTFF濾過モジュールを出る保持液流量よりも少なくとも7倍~12倍大きい。
【0089】
一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールを出る組成物保持液の流量は、SPTFF濾過モジュールに入る供給液流量よりも少なくとも7倍少ない。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールを出る組成物保持液の流量は、SPTFF濾過モジュールに入る供給液流量よりも少なくとも8倍少ない。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールを出る組成物保持液の流量は、SPTFF濾過モジュールに入る供給液流量よりも少なくとも9倍少ない。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールを出る組成物保持液の流量は、SPTFF濾過モジュールに入る供給液流量よりも少なくとも10倍少ない。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールを出る組成物保持液の流量は、SPTFF濾過モジュールに入る供給液流量よりも少なくとも11倍少ない。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールを出る組成物保持液の流量は、SPTFF濾過モジュールに入る供給液流量よりも少なくとも12倍少ない。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールを出る組成物保持液の流量は、SPTFF濾過モジュールに入る供給液流量よりも少なくとも7x~12x少ない。
【0090】
本発明者らはまた、驚くべきことに、TFFシステム(SPTFFシステムを含む)の特定の第三者プロバイダ/ベンダーにより提案されたものよりも低い流量、ひいては低い膜貫通圧によって、ウイルスベクター組成物についての増加した体積及び産物濃縮倍率がもたらされたことを発見した。特定の膜貫通圧力をもたらすために要求される流量は、膜総面積、膜の種類、細孔サイズ、膜流束、流路の合計長さ、保持液及び/又は透過液ライン上の追加のポンプの存在、ラインクランプなどを含む多くの要因の結果である。したがって、一部の実施形態では、供給ポンプは、約75ml/分以下、約100ml/分以下、約150ml/分以下、約200ml/分以下、約250ml/分以下、約300ml/分以下、約350ml/分以下、約400ml/分以下、約450ml/分以下、又は約500ml/分以下の流量を有する。一部の実施形態では、供給ポンプは、約75ml/分~約100ml/分、約75ml/分~約150ml/分、約75ml/分~約200ml/分、約75ml/分~約250ml/分、約75ml/分~約300ml/分、約75ml/分~約350ml/分、約75ml/分~約400ml/分、約75ml/分~約450ml/分、又は約75ml/分~約500ml/分の流量を有する。一部の実施形態では、供給ポンプは、約50ml/分~約100ml/分、約50ml/分~約150ml/分、約50ml/分~約200ml/分、約50ml/分~約250ml/分、約50ml/分~約300ml/分、約50ml/分~約350ml/分、約50ml/分~約400ml/分、約50ml/分~約450ml/分、又は約50ml/分~約500ml/分の流量を有する。一部の実施形態では、供給ポンプは、約25ml/分~約100ml/分、約25ml/分~約150ml/分、約25ml/分~約200ml/分、約25ml/分~約250ml/分、約25ml/分~約300ml/分、約25ml/分~約350ml/分、約25ml/分~約400ml/分、約25ml/分~約450ml/分、又は約25ml/分~約500ml/分の流量を有する。
【0091】
一部の実施形態では、SPTFFシステム及び関連する方法は、膜貫通圧を減少させるために透過液ライン上のクランプを含む。一部の実施形態では、クランプは部分クランプである。一部の実施形態では、SPTFFシステム及び関連する方法は、保持液ライン上のクランプを含み、膜貫通圧を増加させる。一部の実施形態では、クランプは部分クランプである。部分クランプによって、保持液又は透過液の低下した体積が、クランプされたラインを通って流れることが可能になる。
【0092】
一部の実施形態では、膜を横切る供給液流量(例、ウイルスベクター組成物)が停止されて、それが透過する、又は浸透により膜を通して後方に拡散することを可能にしない。
【0093】
様々な実施形態では、本明細書において企図されるSPTFFシステム及び関連する方法は、保持タンク又は容器をさらに含む。保持タンク又は容器は、供給サンプル(例、ウイルスベクター組成物)が、システムの別の構成要素中に供給される前に保持されるシステム内の任意の位置に位置付けられてもよい。例えば、システムは、SPTFF濾過モジュール中に供給される前にウイルスベクター組成物を保持するように設計された中間保持タンクを含んでもよい。保持タンク又は容器はまた、限定しないが、媒質、緩衝剤、及び/又は添加剤を含む他の構成要素を保持するために使用されうる。
【0094】
様々な実施形態では、本明細書において企図する方法を実施するために有用なSPTFFシステムは、ヌクレアーゼ及び/又は緩衝剤をウイルスベクター組成物に加えるための機構をさらに含む。一部の実施形態では、ヌクレアーゼ及び/又は緩衝液は、保持タンク又は容器中に保持される。一部の実施形態では、ヌクレアーゼ及び/又は緩衝液は、中間保持タンク(例、図3及び図4を参照)中のウイルスベクター組成物に加えられる。一部の実施形態では、トレハロース又はポロキサマーは、中間保持タンク中のウイルスベクター組成物に加えられる。一部の実施形態では、ポロキサマーはポロキサマー188である。一部の実施形態では、中間保持タンクは、SPTFF濾過モジュールの前に位置付けられる。一部の実施形態では、ヌクレアーゼ/緩衝液保持タンクは、中間保持タンクに流体接続される。一部の実施形態では、SPTFFシステムは、中間保持タンクに流体接続されたフィルター(例、限外濾過膜又はマイクロ濾過膜)を含む。一部の実施形態では、フィルターは、ヌクレアーゼ/緩衝液保持タンクと中間保持タンクの間に流体接続される。様々な実施形態では、ヌクレアーゼはエンドヌクレアーゼである。一部の実施形態では、ヌクレアーゼはセラチア・マルセセンスから由来している。好ましい実施形態では、ヌクレアーゼはDenerase(登録商標)である。
【0095】
様々な実施形態では、本明細書において企図する方法を実施するために有用なSPTFFシステムは、透析濾過構成要素をさらに含む。一部の実施形態では、透析濾過構成要素はシングルパス透析濾過(SPDF)構成要素である。一部の実施形態では、透析濾過緩衝液(例、製剤緩衝液)は、透析濾過構成要素に流体接続されたタンク又は容器中に保持される。一部の実施形態では、透析濾過構成要素は、SPTFF濾過モジュールの後に位置付けられる。一部の実施形態では、透析濾過構成要素は、TFFカセット又は中空繊維カートリッジを含む。
【0096】
様々な実施形態では、本明細書において企図する方法を実施するために有用なSPTFFシステムは、クロマトグラフィー構成要素をさらに含む。好ましい実施形態では、クロマトグラフィー構成要素は、研磨クロマトグラフィー構成要素及び/又は工程である。本明細書中で使用する用語「研磨クロマトグラフィー」は、SPTFFシステム構成要素及び関連する方法を指し、それらはクロマトグラフィーを使用し、組成物が他の精製/濾過工程(例、任意のSPTFF濾過モジュール/工程)を通過した後、ウイルスベクター組成物中の任意の残留不純物又は凝集体を除去する。
【0097】
一部の実施形態では、研磨クロマトグラフィー構成要素及び/又は方法工程は、フロースルークロマトグラフィーを含む。本明細書中で使用する用語「フロースルークロマトグラフィー」は、溶液が、不純物を結合するカラム上を流れる一方で、所望の産物/分子/ベクターがカラムに実質的に結合しない(即ち、カラムを通じて流れる)、産物を精製又は濃縮するためのクロマトグラフィー構成要素又は関連する方法工程を指す。一部の実施形態では、フロースルークロマトグラフィー又は研磨クロマトグラフィーは、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、もしくは疎水性相互作用クロマトグラフィー、又はそれらの組み合わせを含むが、これに限定しない、不純物を結合及び除去するための一つ以上の分離機構を含む。
【0098】
一部の実施形態では、SPTFFシステム及び関連する方法は、一つを上回る研磨クロマトグラフィー工程を含む。一部の実施形態では、SPTFFシステム及び関連する方法は、二つ以上の研磨クロマトグラフィー工程を含む。一部の実施形態では、SPTFFシステム及び関連する方法は、三つ以上の研磨クロマトグラフィー工程を含む。一部の実施形態では、SPTFFシステム及び関連する方法は、一つ、二つ、又は三つの研磨クロマトグラフィー工程を含む。
【0099】
様々な実施形態では、SPTFFシステム及び関連する方法は、一次精製及び/又は濃縮工程又は構成要素としての捕捉又は親和性クロマトグラフィー工程又は構成要素を含まない。典型的な精製/濃縮システムでは、一次精製/濃縮工程は、精製/濃縮システム又は方法内の第一濾過工程である。したがって、一部の実施形態では、SPTFFシステム及び関連する方法は、第一濾過工程又は構成要素としての捕捉又は親和性クロマトグラフィー工程又は構成要素を含まない。一部の実施形態では、SPTFFシステム及び関連する方法は、捕捉又は親和性クロマトグラフィー工程又は構成要素を含まない。
【0100】
本明細書中で使用するように、用語「捕捉クロマトグラフィー」又は「親和性クロマトグラフィー」は、カラムへの、及びカラムからの所望の産物(例、ウイルス粒子)の結合及び溶出を含む、クロマトグラフィー構成要素、又は関連する方法工程を指す。捕捉又は親和性クロマトグラフィーは、典型的には、分析物と特定の分子(例、クロマトグラフィー媒質に結合された特定のリガンド)の間での選択的な非共有結合性相互作用を使用する。例えば、捕捉又は親和性クロマトグラフィーは、プロテインG、抗体、特異的基質、リガンド又は抗原を捕捉試薬として使用しうる。
【0101】
様々な実施形態では、本明細書において企図するSPTFFシステム及び関連する方法は、追加のフィルターを含む。一部の実施形態では、フィルターは最終フィルター(即ち、システム又は方法における最後のフィルター)である。一部の実施形態では、フィルターは滅菌フィルターである。一部の実施形態では、フィルターはマイクロ濾過膜を含む。一部の実施形態では、フィルターは限外濾過膜を含む。一部の実施形態では、フィルターはナノ濾過膜を含む。一部の実施形態では、フィルターは0.22μmのフィルターである。
【0102】
様々な実施形態では、本明細書において企図するSPTFFシステム及び関連する方法は、バイアル充填構成要素及び/又は方法工程を含む。
【0103】
D.SPTFF濾過モジュール
様々な実施形態では、SPTFFシステム及び関連する方法は、一つ以上のSPTFF濾過モジュールを含む。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールは、TFFカセット及び/又は中空繊維カートリッジを含む。一部の実施形態では、カセット及び/又はカートリッジは、1)並列、2)直列、又は3)並列及び直列の両方(例、バルブ、ガスケット、ダイバータープレート、マニホールド、マニホールドセグメント、あるいは、及び/又は導管を使用して)を処理するために構成される。
【0104】
表現「並列処理」、「並列で処理している」、「並列操作」、「並列で操作する」、「並列で操作している」、「並列での操作」、「並列で組み立てる」、「並列での処理用に構成される」、及び「並列構成」は、SPTFFシステム中の供給サンプル(例、ウイルスベクター組成物)を、その後の接線流濾過のために同時にアセンブリにおいて二つ以上の濾過構成要素(例、SPTFF濾過モジュール、TFFカセット、中空繊維カートリッジ)に分配させることを指す。
【0105】
表現「直列処理」、「直列で処理している」、「直列操作」、「直列で操作する」、及び「直列で操作している」、「直列での操作」、「直列で組み立てる」、「直列での処理用に構成される」、及び「直列構成」は、SPTFFシステム中の供給サンプル(例、ウイルスベクター組成物)を、一つの濾過構成要素(例、SPTFF濾過モジュール、TFFカセット、中空繊維カートリッジ)を一度に分配させることを指し、前述の構成要素の前記保持液流が、その後の隣接した構成要素のための供給流としての役割を果たすようにする。
【0106】
一部の実施形態では、供給を、いくつかのカセット又はカートリッジの間で並列に(例、グループ又は段階で)分割し、カセット又はカートリッジのいくつかのグループを直列に連結する。
【0107】
好ましくは、並列での処理のために構成されるカセット又はカートリッジは、直列での処理のために構成されるカセット又はカートリッジの前にある。特定の実施形態では、SPTFFシステム中のSPTFF濾過モジュールの全てが、直列(例、図1A及び図1Bを参照)での処理のために構成される最後の二つのカセット又はカートリッジを除いて、並列での処理のために構成されるカセット(例、並列で構成された、及び直列で連結されたカセット又はカートリッジの一つ以上のグループ又は段階)を有する。一部の実施形態では、SPTFFシステム中のSPTFF濾過モジュールの全てが、直列での処理のために構成される最後のカセット又はカートリッジを除いて、並列での処理のために構成されたカセット(例、並列で構成された、及び直列で連結されたカセット又はカートリッジの一つ以上のグループ又は段階)を有する。好ましい実施形態では、有効膜面積は、SPTFF濾過モジュールを通じた流路に沿って減少する。
【0108】
用語「有効膜面積」は、SPTFF濾過モジュール内の流路に沿った任意の所与の段階/点でのTFF膜の総面積を指す。例えば、SPTFF濾過モジュールがTFFカセットを含む、又は中空繊維カートリッジが並列での処理のために構成される場合(例、図1A中の段階1~2、及び図1B中の段階1~4を参照)、次に有効膜面積は、流路に沿った任意の所与の段階又は工程での全てのカセット又はカートリッジの膜面積の総和である。
【0109】
図1Aに示すように、SPTFF濾過モジュールは、4つの段階を含む流路を有する。第一段階では、組成物は、並列での処理のために構成された三つのTFFカセット又は中空繊維カートリッジを通じて流れる。このように、段階1での有効膜面積は、全ての三つのTFFカセット又は中空繊維カートリッジの膜面積の総和である。第二段階では、組成物は、並列での処理のために構成された二つのTFFカセット又は中空繊維カートリッジを通じて流れる。段階2での有効膜面積は、二つのTFFカセット又は中空繊維カートリッジの膜面積の総和である。第三段階及び第四段階で、組成物は、連続的に処理するよう構成された二つの単一のTFFカセット又は中空繊維カートリッジを通じて流れる。段階3及び4の各々での有効膜面積は、各TFFカセット又は中空繊維カートリッジの膜面積と等しい。したがって、図1A及び1Bに示すように、有効膜面積は、一般的に、SPTFF濾過モジュール内の供給サンプル(例、ウイルスベクター組成物)の流路に沿って減少する。
【0110】
あるいは、一つ以上のTFFカセット又は中空繊維カートリッジは、異なる有効膜面積を有してもよく、減少する順序で組み立ててもよい。例えば、図2A及び図2Bに示すように、TFFカセット又は中空繊維カートリッジは、直列で、及び各段階での有効膜面積の減少する順序で処理するよう構成される。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールは、図1A-1B及び図2A-2Bに示す両方のシステムの態様を含んでもよい。例えば、一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールは、異なる有効膜サイズ及び並列アセンブリを有するTFFカセット又は中空繊維カートリッジの両方を含む。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールは、異なる有効な膜サイズを有し、並列及び直列で組み立てられたTFFカセット又は中空繊維カートリッジを含む。
【0111】
様々な実施形態では、構成(即ち、並列又は直列構成)に依存して、一つ以上のTFFカセット及び/又は中空繊維カートリッジは、約0.01m、約0.015m、約0.02m、約0.025m、約0.03m、約0.035m、約0.04m、約0.045m、約0.05m、約0.055m、約0.06m、約0.065m、約0.07m、約0.075m、約0.08m、約0.085m、約0.09m、約0.095m、約0.1m、約0.11m、約0.12m、約0.13m、約0.14m、約0.15m、約0.16m、約0.17m、約0.18m、約0.19m、約0.20m、約0.21m、約0.22m、約0.23m、約0.24m、約0.25m、約0.26m、約0.27m、約0.28m、約0.29m、約0.30m、約0.31m、約0.32m、約0.33m、約0.34m、約0.35m、約0.40m、約0.45m、約0.50m、約0.55m、約0.60m、約0.65m、約0.70m、約0.75m、約0.80m、約0.85m、約0.90m、約0.95m、約1.0m、約1.1m、約1.2m、約1.3m、約1.4m、約1.5m、約1.6m、約1.7m、約1.8m、約1.9m、約2.0m、約2.1m、約2.2m、約2.3m、約2.4m、約2.5m、約3.0m、約3.5m、約4.0m、約4.5m、約5.0m、約6.0m、約6.5m、約7.0m、約7.5m、約8.0m、約8.5m、約9.0m、約9.5m、約又は10mであるの有効膜面積を含む。
【0112】
様々な実施形態では、 構成(即ち、並列又は直列構成)に依存して、一つ以上のTFFカセット及び/又は中空繊維カートリッジは、約0.01m~約10m、約0.015m~約10m、約0.02m~約10m、約0.025m~約10m、約0.03m~約10m、約0.035m~約10m、約0.04m~約10m、約0.045m~約10m、約0.05m~約10m、約0.055m~約10m、約0.06m~約10m、約0.065m~約10m、約0.07m~約10m、約0.075m~約10m、約0.08m~約10m、約0.085m~約10m、約0.09m~約10m、約0.095m~約10m、約0.1m~約10m、約0.11m~約10m、約0.12m~約10m、約0.13m~約10m、約0.14m~約10m、約0.15m~約10m、約0.16m~約10m、約0.17m~約10m、約0.18m~約10m、約0.19m~約10m、約0.20m~約10m、約0.21m~約10m、約0.22m~約10m、約0.23m~約10m、約0.24m~約10m、約0.25m~約10m、約0.26m~約10m、約0.27m~約10m、約0.28m~約10m、約0.29m~約10m、約0.30m~約10m、約0.31m~約10m、約0.32m~約10m、約0.33m~約10m、約0.34m~約10m、約0.35m~約10m、約0.40m~約10m、約0.45m~約10m、約0.50m~約10m、約0.55m~約10m、約0.60m~約10m、約0.65m~約10m、約0.70m~約10m、約0.75m~約10m、約0.80m~約10m、約0.85m~約10m、約0.90m~約10m、約0.95m~約10m、約1.0m~約10m、約1.1m~約10m、約1.2m~約10m、約1.3m~約10m、約1.4m~約10m、約1.5m~約10m、約1.6m~約10m、約1.7m~約10m、約1.8m~約10m、約1.9m~約10m、約2.0m~約10m、約2.1m~約10m、約2.2m~約10m、約2.3m~約10m、約2.4m~約10m、約2.5m~約10m、約3.0m~約10m、約3.5m~約10m、約4.0m~約10m、約4.5m~約10m、約5.0m~約10m、約6.0m~約10m、約6.5m~約10m、約7.0m~約10m、約7.5m~約10m、約8.0m~約10m、約8.5m~約10m、約9.0m~約10m、約9.5m~約10m、約又は10mの有効膜面積を含む。
【0113】
様々な実施形態では、構成(即ち、並列又は直列構成)に依存して、一つ以上のTFFカセット及び/又は中空繊維カートリッジは、約0.01m、約0.01m~約0.015m、約0.01m~約0.02m、約0.01m~約0.025m、約0.01m~約0.03m、約0.01m~約0.035m、約0.01m~約0.04m、約0.01m~約0.045m、約0.01m~約0.05m、約0.01m~約0.055m、約0.01m~約0.06m、約0.01m~約0.065m、約0.01m~約0.07m、約0.01m~約0.075m、約0.01m~約0.08m、約0.01m~約0.085m、約0.01m~約0.09m、約0.01m~約0.095m、約0.01m~約0.1m、約0.01m~約0.11m、約0.01m~約0.12m、約0.01m~約0.13m、約0.01m~約0.14m、約0.01m~約0.15m、約0.01m~約0.16m、約0.01m~約0.17m、約0.01m~約0.18m、約0.01m~約0.19m、約0.01m~約0.20m、約0.01m~約0.21m、約0.01m~約0.22m、約0.01m~約0.23m、約0.01m~約0.24m、約0.01m~約0.25m、約0.01m~約0.26m、約0.01m~約0.27m、約0.01m~約0.28m、約0.01m~約0.29m、約0.01m~約0.30m、約0.01m~約0.31m、約0.01m~約0.32m、約0.01m~約0.33m、約0.01m~約0.34m、約0.01m~約0.35m、約0.01m~約0.40m、約0.01m~約0.45m、約0.01m~約0.50m、約0.01m~約0.55m、約0.01m~約0.60m、約0.01m~約0.65m、約0.01m~約0.70m、約0.01m~約0.75m、約0.01m~約0.80m、約0.01m~約0.85m、約0.01m~約0.90m、約0.01m~約0.95m、約0.01m~約1.0m、約0.01m~約1.1m、約0.01m~約1.2m、約0.01m~約1.3m、約0.01m~約1.4m、約0.01m~約1.5m、約0.01m~約1.6m、約0.01m~約1.7m、約0.01m~約1.8m、約0.01m~約1.9m、約0.01m~約2.0m、約0.01m~約2.1m、約0.01m~約2.2m、約0.01m~約2.3m、約0.01m~約2.4m、約0.01m~約2.5m、約0.01m~約3.0m、約0.01m~約3.5m、約0.01m~約4.0m、約0.01m~約4.5m、約0.01m~約5.0m、約0.01m~約6.0m、約0.01m~約6.5m、約0.01m~約7.0m、約0.01m~約7.5m、約0.01m~約8.0m、約0.01m~約8.5m、約0.01m~約9.0m、約0.01m~約9.5m、約又は10mの有効膜面積を含む。
【0114】
一部の実施形態では、構成(即ち、並列又は直列構成)に依存して、TFFカセット及び/又は中空繊維カートリッジは、0.01m、0.015m、0.02m、0.025m、0.03m、0.035m、0.04m、0.045m、0.05m、0.055m、0.06m、0.065m、0.07m、0.075m、0.08m、0.085m、0.09m、0.095m、0.1m、0.11m、0.12m、0.13m、0.14m、0.15m、0.16m、0.17m、0.18m、0.19m、0.20m、0.21m、0.22m、0.23m、0.24m、0.25m、0.26m、0.27m、0.28m、0.29m、0.30m、0.31m、0.32m、0.33m、0.34m、0.35m、0.40m、0.45m、0.50m、0.55m、0.60m、0.65m、0.70m、0.75m、0.80m、0.85m、0.90m、0.95m、1.0m、1.1m、1.2m、1.3m、1.4m、1.5m、1.6m、1.7m、1.8m、1.9m、2.0m、2.1m、2.2m、2.3m、2.4m、2.5m、3.0m、3.5m、4.0m、4.5m、5.0m、6.0m、6.5m、7.0m、7.5m、8.0m、8.5m、9.0m、9.5m、又は10mの有効膜面積を含む。
【0115】
本明細書において企図する特定の実施形態での使用のために適切な膜(例、フラットシート又は中空繊維)は、当技術分野において公知の様々な異なる基材又はポリマーで作製されてもよい。例えば、一部の実施形態では、TFFカセット又は中空繊維カートリッジは、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリビニリデンフルオリド、修飾セルロース、再生セルロース、デルタ再生セルロース、セルロースアセテート、及び/又は当業者に公知の他のポリマーもしくは基材で作製された膜を含む。一部の実施形態では、膜はポリスルホン膜である。一部の実施形態では、膜はポリエーテルスルホン膜である。一部の実施形態では、膜はポリ(メチルメタクリレート)膜である。一部の実施形態では、膜はポリフッ化ビニリデン膜である。一部の実施形態では、膜は修飾セルロース膜である。一部の実施形態では、膜は再生セルロース膜である。一部の実施形態では、膜はデルタ再生セルロース膜である。一部の実施形態では、膜はセルロースアセテート膜である。
【0116】
様々な実施形態では、膜は、約1kDa、約5kDa、約10kDa、約20kDa、約30kDa、約40kDa、約50kDa、約60kDa、約70kDa、約80kDa、約90kDa、約100kDa、約200 kDa、約300kDa、約400kDa、又は約500kDaの平均分子量カットオフ(MWCO)を含む。一部の実施形態では、膜は、約30kDaの平均分子量カットオフ(MWCO)を含む。一部の実施形態では、膜は、約300kDaの平均分子量カットオフ(MWCO)を含む。
【0117】
一部の実施形態では、膜は、約1kDa~約500kDaの平均分子量カットオフ(MWCO)を含む。一部の実施形態では、膜は、約5kDa~約500kDaの平均MWCOを含む。一部の実施形態では、膜は、約10kDa~約500kDaの平均MWCOを含む。一部の実施形態では、膜は、約20kDa~約500kDaの平均MWCOを含む。一部の実施形態では、膜は、約30kDa~約500kDaの平均MWCOを含む。一部の実施形態では、膜は、約40kDa~約500kDaの平均MWCOを含む。一部の実施形態では、膜は、約50kDa~約500kDaの平均MWCOを含む。一部の実施形態では、膜は、約60kDa~約500kDaの平均MWCOを含む。一部の実施形態では、膜は、約70kDa~約500kDaの平均MWCOを含む。一部の実施形態では、膜は、約80kDa~約500kDaの平均MWCOを含む。一部の実施形態では、膜は、約90kDa~約500kDaの平均MWCOを含む。一部の実施形態では、膜は、約100kDa~約500kDaの平均MWCOを含む。一部の実施形態では、膜は、約200kDa~約500kDaの平均MWCOを含む。一部の実施形態では、膜は、約300kDa~約500kDaの平均MWCOを含む。一部の実施形態では、膜は、約400kDa~約500kDaの平均MWCOを含む。
【0118】
一部の実施形態では、膜は、約1kDa~約5kDaの平均MWCOを含む。一部の実施形態では、膜は、約1kDa~約10kDaの平均MWCOを含む。一部の実施形態では、膜は、約1kDa~約20kDaの平均MWCOを含む。一部の実施形態では、膜は、約1kDa~約30kDaの平均MWCOを含む。一部の実施形態では、膜は、約1kDa~約40kDaの平均MWCOを含む。一部の実施形態では、膜は、約1kDa~約50kDaの平均MWCOを含む。一部の実施形態では、膜は、約1kDa~約60kDaの平均MWCOを含む。一部の実施形態では、膜は、約1kDa~約70kDaの平均MWCOを含む。一部の実施形態では、膜は、約1kDa~約80kDaの平均MWCOを含む。一部の実施形態では、膜は、約1kDa~約90kDaの平均MWCOを含む。一部の実施形態では、膜は、約1kDa~約100kDaの平均MWCOを含む。一部の実施形態では、膜は、約1kDa~約200kDaの平均MWCOを含む。一部の実施形態では、膜は、約1kDa~約300kDaの平均MWCOを含む。一部の実施形態では、膜は、約1kDa~約400kDaの平均MWCOを含む。一部の実施形態では、膜は、約1kDa~約500kDaの平均MWCOを含む。
【0119】
様々な実施形態では、膜は、約0.01μm、約0.02μm、約0.03μm、約0.04μm、約0.05μm、約0.06μm、約0.07μm、約0.08μm、約0.09μm、約0.1μm、約0.15μm、約0.2μm、約0.25μm、約0.3μm、約0.35μm、約0.4μm、約0.45μm、約0.5μm、約0.55μm、約0.6μm、約0.65μm、約0.7μm、約0.75μm、約0.8μm、約0.85μm、約0.9μm、約0.95μm、又は約1.0μmの平均細孔径を含む。様々な実施形態では、膜は、0.01μm、0.02μm、0.03μm、0.04μm、0.05μm、0.06μm、0.07μm、0.08μm、0.09μm 0.1μm、0.15μm、0.2μm、0.25μm、0.3μm、0.35μm、0.4μm、0.45μm、0.5μm、0.55μm、0.6μm、0.65μm、0.7μm、0.75μm、0.8μm、0.85μm、0.9μm、0.95μm、又は1.0μmの平均細孔径を含む。
【0120】
様々な実施形態では、膜は、約0.01μm~約1.0μm、約0.02μm~約1.0μm、約0.03μm~約1.0μm、約0.04μm~約1.0μm、約0.05μm~約1.0μm、約0.06μm~約1.0μm、約0.07μm~約1.0μm、約0.08μm~約1.0μm、約0.09μm~約1.0μm、約0.1μm~約1.0μm、約0.15μm~約1.0μm、約0.2μm~約1.0μm、約0.25μm~約1.0μm、約0.3μm~約1.0μm、約0.35μm~約1.0μm、約0.4μm~約1.0μm、約0.45μm~約1.0μm、約0.5μm~約1.0μm、約0.55μm~約1.0μm、約0.6μm~約1.0μm、約0.65μm~約1.0μm、約0.7μm~約1.0μm、約0.75μm~約1.0μm、約0.8μm~約1.0μm、約0.85μm~約1.0μm、約0.9μm~約1.0μm、又は約0.95μm~約1.0μmの平均細孔径を含む。
【0121】
様々な実施形態では、膜は、約0.01μm~約0.02μm、約0.01μm~約0.03μm、約0.01μm~約0.04μm、約0.01μm~約0.05μm、約0.01μm~約0.06μm、約0.01μm~約0.07μm、約0.01μm~約0.08μm、約0.01μm~約0.09μm、約0.01μm~約0.1μm、約0.01μm~約0.15μm、約0.01μm~約0.2μm、約0.01μm~約0.25μm、約0.01μm~約0.3μm、約0.01μm~約0.35μm、約0.01μm~約0.4μm、約0.01μm~約0.45μm、約0.01μm~約0.5μm、約0.01μm~約0.55μm、約0.01μm~約0.6μm、約0.01μm~約0.65μm、約0.01μm~約0.7μm、約0.01μm~約0.75μm、約0.01μm~約0.8μm、約0.01μm~約0.85μm、約0.01μm~約0.9μm、約0.01μm~約0.95μm、又は約0.01μm~約1.0μmの平均細孔径を含む。
【0122】
一部の実施形態では、膜はマイクロ濾過膜である。
【0123】
一部の実施形態では、膜は限外濾過膜である。
【0124】
一部の実施形態では、膜はナノ濾過膜である。
【0125】
本明細書中の特定の実施形態において企図される方法のために有用である例示的なTFFカセットには、限定しないが、MilliporeSigma Corporation(マサチューセッツ州バーリントン)、Pall Corporation(ニューヨーク州ポートワシントン)、GE Healthcare Bio-Sciences(ニュージャージー州ピスカタウェイ)、及びSartorius AG(ニューヨーク州ボヘミア)により供給されるTFFカセットが含まれる。例示的なMilliporeSigma Corporation TFFカセットには、限定しないが、Biomax(商標)膜、Ultracel(商標)膜、又はDurapore(登録商標)膜を伴うPellicon(登録商標)カセット(例、Pellicon(登録商標)2カセット、Pellicon(登録商標)2ミニカセット、Pellicon(登録商標)2Maxiカセット、Pellicon(登録商標)3カセット)が含まれる。Pall CorporationのTFFカセットの例には、限定しないが、Centrasette(商標)カセット及びCadence(商標)単回使用カセットが含まれる。例示的なGE Healthcare Bio-Sciences TFFカセットには、限定しないが、Kvick(商標)フローカセットが含まれる。例示的なSartorius AGカセットには、限定しないが、Hydrosart(登録商標)カセットが含まれる。
【0126】
エンドプレート又はカセットホルダは、一般的に、TFFカセットをSPTFF濾過モジュール内に保持又は密封するために使用される。エンドプレート及びカセットホルダは、特定のカセットと使用するために取り付けることができる。本明細書中の特定の実施形態において企図する方法で用いられるSPTFFシステムでの使用に適した市販のエンドプレート及びカセットホルダの例としては、限定しないが、Pellicon(登録商標)カセットホルダ(MilliporeSigma Corporation、マサチューセッツ州バーリントン)、例えば、Pellicon(登録商標)2ミニホルダ、アクリルPellicon(登録商標)ホルダ、ステンレス鋼Pellicon(登録商標)ホルダ、過程スケールPellicon(登録商標)ホルダなどが含まれる。他の適したカセットホルダとして、以下に限定しないが、Centramate(商標)TFF膜カセットホルダ、Centrasette(商標)TFF膜カセットホルダ、Maximate(商標)TFF膜カセットホルダ、及びMaxisette(商標)TFF膜カセットホルダ(Pall Corporation、ニューヨーク州ポートワシントン)が含まれる。一部の実施形態では、既存のカセットホルダ(例、Pellicon(登録商標)カセットホルダ(Millipore Sigma Corporation))を、特定の実施形態での使用のために、本明細書中に記載するSPTFFシステムで機能するように改変することができる。
【0127】
本明細書において企図する特定の実施形態で有用な中空繊維TFFカートリッジの例として、限定しないが、Pall Corporation(ニューヨーク州ポートワシントン)、GE Healthcare Bio-Sciences(ニュージャージー州ピスカタウェイ)、及びRepligen Corporation(マサチューセッツ州ウォルサム)により供給される中空繊維カートリッジが含まれる。Pall Corporationの中空繊維カートリッジの例として、限定しないが、Microza(商標)カートリッジが含まれる。例示的なGE Healthcare Bio-Sciences中空繊維TFFカートリッジには、限定しないが、MaxCell(商標)カートリッジ、ProCell(商標)カートリッジ、MidGee(商標)カートリッジ、Xampler(商標)カートリッジ、ReadyToProcess(商標)使い捨てカートリッジ、ならびに様々な他の実験室及び過程スケールカートリッジが含まれる。例示的なRepligen Corporationの中空繊維カートリッジには、限定しないが、MicroKros(商標)、MidiKros(商標)、MidiKros TC(商標)、MiniKros(商標)、KrosFlo(商標)、又は KrosFlow Max(商標)カートリッジが含まれる。
【0128】
様々な実施形態では、SPTFFシステム構成要素は、使い捨てであることができる。SPTFFアセンブリの使い捨て構成要素の例として、限定しないが、TFF用Mobius(登録商標)FlexReady Solution(MilliporeSigma Corporation、マサチューセッツ州バーリントン)用のFlexware(登録商標)アセンブリの構成要素が含まれる。SPTFFアセンブリのその他の使い捨て構成要素として、例えば、Allegro(商標)TFFアセンブリ(Pall Corporation、ニューヨーク州ポートワシントン)の構成要素が含まれる。
【0129】
任意の特定の理論により束縛されることを望まないが、本明細書において企図するSPTFFシステム及び方法の一つの利点は、低膜貫通圧(TMP)によって体積及び産物濃縮倍率(それぞれVCF及びPCF)が改善される(例、増加される)という驚くべき発見である。
【0130】
用語「膜貫通圧」又は「TMP」は、膜の二つの側面間での圧力における差を指す。TMP圧力は、例えば、気圧バー又は平方インチ当たりのポンド(psi)で測定することができる。平均TMPは、SPTFF濾過モジュールに入る供給圧力及びSPTFF濾過モジュールから出る保持圧力の合計を2で割り、透過圧力を減算することにより算出することができる。TMP=供給圧力+保持圧力)/2-透過圧力。
【0131】
用語「体積濃縮倍率」又は「VCF」は、体積における倍率変化(例、低下)を指す。VCFは、初期組成物体積を最終組成物体積で割ることによって算出することができる。VCF=初期体積/最終体積。
【0132】
用語「産物濃縮倍率」、「産物CF」、「PCF」、「粒子濃縮倍率」、又は「ウイルス粒子濃縮倍率」は、産物濃度(例、ウイルス粒子濃度)の倍率変化(例、増加)を指す。PCFは、最終産物濃度を初期産物濃度で割ることによって算出することができる。PCT=最終産物濃度/初期産物濃度。
【0133】
様々な実施形態では、SPTFF濾過モジュールは、約10psi以下、約9psi以下、約8psi以下、約7psi以下、約6psi以下、約5psi以下、約4psi以下、約3psi以下、又は約2psi以下のTMPを含む。
【0134】
一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールは、約10psi以下の平均TMPを含む。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールは、約9psi以下の平均TMPを含む。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールは、約8psi以下の平均TMPを含む。一部の実施形態では、SPTFF濾過は、約7psi以下の平均TMPを含む。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールは、約6psi以下の平均TMPを含む。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールは、約5psi以下の平均TMPを含む。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールは、約4psi以下の平均TMPを含む。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールは、約3psi以下の平均TMPを含む。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールは、約2psi以下の平均TMPを含む。
【0135】
一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールは、約1psi~約10psiの平均TMPを含む。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールは、約1psi~約9psiの平均TMPを含む。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールは、約1psi~約8psiの平均TMPを含む。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールは、約1psi~約7psiの平均TMPを含む。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールは、約1psi~約6psiの平均TMPを含む。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールは、約1psi~約5psiの平均TMPを含む。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールは、約1psi~約4psiの平均TMPを含む。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールは、約1psi~約3psiの平均TMPを含む。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールは、約1psi~約2psiの平均TMPを含む。
【0136】
一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールは、約2psi~約10psiの平均TMPを含む。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールは、約2psi~約9psiの平均TMPを含む。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールは、約2psi~約8psiの平均TMPを含む。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールは、約2psi~約7psiの平均TMPを含む。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールは、約2psi~約6psiの平均TMPを含む。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールは、約2psi~約5psiの平均TMPを含む。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールは、約2psi~約4psiの平均TMPを含む。一部の実施形態では、SPTFF濾過モジュールは、約2psi~約3psiの平均TMPを含む。
【0137】
E.ウイルスベクター
特定の実施形態では、本明細書において企図するSPTFFシステム及び関連する方法は、精製及び/又は濃縮されたウイルスベクターを製造するために使用される。特定の実施形態では、この組成物は、治療用導入遺伝子又はタンパク質、例えば、グロビン又は操作された抗原受容体をコードする一つ以上のウイルスベクターを含む。ウイルスベクターの例示的な例には、限定しないが、以下から由来するベクターが含まれる:アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルス、例えば、レンチウイルス(例、HIV-1、HIV-2)、単純ヘルペスウイルス、例えば、HSV-1、HSV-2)、アネロベクター、又はワクシニアウイルス。特定の実施形態では、ウイルスベクターは、治療用導入遺伝子又は治療用タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0138】
様々な実施形態では、ウイルスベクターは、治療用タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む。様々な実施形態では、ウイルスベクターは、操作されたαβTCR、操作されたγδTCR、二量体化剤調節免疫受容体複合体(DARIC)、キメラ抗原受容体(CAR)、キメラ共刺激受容体(CCR)、二重特異的T細胞エンゲイジャー(BiTE)、ゼタカイン受容体、キメラTGFβ受容体(CTBR)、βグロビンタンパク質、ABCD1ポリペプチド、エリスロポエチン受容体又はその断片、エンドヌクレアーゼ、あるいはmegaTALをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0139】
様々な実施形態では、ウイルスベクターは、グロビン、ヒトグロビン、ヒトβグロビン、ヒトδグロビン、ヒトγグロビン、ヒト抗シッキングβグロビン、又はヒトβA-T87Q-グロビン、ヒトβA-G16D/E22A/T87Q-グロビン、及びヒト βA-T87Q/K95E/K120E-グロビンをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0140】
様々な実施形態では、治療用タンパク質は、アルファ葉酸受容体(FRα)、αvβ6インテグリン、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3(CD276)、B7-H6、炭酸脱水酵素IX(CAIX)、CCR1、CD16、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD37、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD133、CD135(fmc様チロシンキナーゼ3としても公知である;FLT3)、CD138、CD171、がん胎児性抗原(CEA)、クローディン-6(CLDN6)、C型レクチン様分子-1(CLL-1)、CD2サブセット1(CS-1)、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4)、皮膚T細胞リンパ腫関連抗原1(CTAGE1)、上皮成長因子受容体(EGFR)、上皮成長因子受容体バリアントIII(EGFRvIII)、上皮糖タンパク質2(EGP2)、上皮糖タンパク質40(EGP40)、上皮細胞接着分子(EPCAM)、エフリンA型受容体2(EPHA2)、繊維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、Fc受容体様5(FCRL5)、胎児アセチルコリンエステラーゼ受容体(AchR)、ガングリオシドG2(GD2)、ガングリオシドG3(GD3)、グリピカン-3(GPC3)、ErbB2(HER2)を含むEGFRファミリー、IL-11Rα、IL-13Rα2、カッパ、がん/精巣抗原2(LAGE-1A)、ラムダ、ルイス-Y(LeY)、L1細胞接着分子(L1-CAM)、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー2(LILRB2)、黒色腫抗原遺伝子(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A6、MAGEA10、T細胞1(MelanA又はMART1)によって認識される黒色腫抗原、メソテリン(MSLN)、MUC1、MUC16、神経細胞接着分子(NCAM)、がん/精巣抗原1(NY-ESO-1)、ポリシアル酸;胎盤特異的1(PLAC1)、黒色腫で優位に発現された抗原(PRAME)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、前立腺特異的抗原(PSMA)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、滑膜肉腫、Xブレークポイント2(SSX2)、サバイビン、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有3(TIM-3)、TP53(P53)、腫瘍抗原p53、腫瘍内皮マーカー1(TEM1/CD248)、腫瘍内皮マーカー7関連(TEM7R)、トロホブラスト糖タンパク質(TPBG)、NKG2Dリガンド、血管内皮成長因子受容体2(VEGFR2)、並びにウィルムス腫瘍1(WT-1)からなる群から選択される、標的抗原と結合する、操作された抗原受容体である。
【0141】
様々な実施形態では、ウイルスベクターは、shRNA、shmiR、又はガイドRNAをコードするポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、shRNA、shmiR、又はガイドRNAは、BCL11A遺伝子、例えば、ヒトBCL11A遺伝子中の標的配列に結合する。
【0142】
様々な実施形態では、ウイルスベクターは、ベクターをウイルス粒子中にパッケージングするための補助タンパク質を含む産生細胞によって産生される。一部の実施形態では、産生細胞は、バイオリアクター内の懸濁液中で維持される。一部の実施形態では、産生細胞は、接着性産生細胞である。一部の実施形態では、産生細胞はHEK293細胞である。一部の実施形態では、HEK293細胞はHEK293T細胞又はHEK293F細胞である。
【0143】
本明細書において引用される全ての刊行物、特許出願、及び登録された特許は、あたかも個々の刊行物、特許出願、又は登録された特許が、参照により組み込まれることを具体的かつ個別に示したかのように、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0144】
前述の実施形態は、明確性及び理解を目的として、図及び実施例により詳細に記載されているが、本明細書において企図される教示に照らし、特定の変化及び改変が、添付の請求の範囲の主旨又は範囲から逸脱することなく実施されうることが当業者には容易に明らかであろう。以下の実施例は、解説のみを目的として提供されるものであり、限定ではない。当業者であれば、本質的に類似した結果をもたらすために変更又は修正されうる様々な非臨界パラメータを容易に認識するであろう。
【実施例
【0145】
実施例1
シングルパス接線流濾過システム
例示的なシングルパス接線流濾過(SPTFF)システムを組み立て、テストした。具体的には、改変HEK293T細胞を、十分な細胞濃度に達するまで撹拌タンクバイオリアクター中で培養した。細胞培養物を誘導培地に灌流して、レンチウイルスベクター産生を誘導した。レンチウイルスベクターを含む細胞培養培地を、保持タンクへの交互接線流濾過を使用してバイオリアクターから連続的に採取し、新鮮な培地をバイオリアクターに引き込み、一定の培養容量を維持した。
【0146】
十分なレンチウイルスベクターが回収されると、図1Aに示すように組み立てられたTFFカセットを含むSPTFF濾過モジュールをプライミングし、採取された材料をヌクレアーゼで処理して、図3に示すようにDNA不純物を消化した。材料をSPTFFモジュール中にゆっくりとポンプ注入し、5psiの膜貫通圧を標的とした。レンチウイルスベクターを欠く過剰な培養培地を、透過液ラインから廃棄容器中に収集し、濃縮レンチウイルスベクターを保持液ラインから収集した。濃縮レンチウイルスベクターを次に、0.22μm滅菌フィルターを使用して濾過し、バイアル化前に滅菌を確保した。
【0147】
組み立てられ、テストされた他のSPTFFシステムは、図4に示すように、追加の透析濾過(例、SPTFF及び/又は再循環TFFを使用して)及び研磨クロマトグラフィー工程(例、サイズ排除、疎水性相互作用、及び/又はアニオン交換クロマトグラフィー)をSPTFF後に実施して、望ましくない不純物をさらに低減し、レンチウイルスベクターを最終滅菌濾過前に適切に製剤化することを含む。
【0148】
実施例2
SPTFFシステムの使用によって、ウイルスベクター濃縮、精製、及びベクターコピー数が改善される。
【0149】
レンチウイルスベクターを含む、採取された細胞培養培地を、改変HEK293レンチウイルスベクター産生細胞を含む撹拌タンクバイオリアクターから収集した。この材料を次に完全に混合し、いくつかのプールに分割し、それを並列処理した。複数のプールを、実施例1に記載するSPTFF精製過程を使用して処理する一方で、最終プールを、以下からなる標準ベクター精製過程を使用して処理した:0.45μmの濾過、捕捉クロマトグラフィー、限外濾過及び透析濾過を実施するための再循環接線流濾過、ならびに最終0.22μmの滅菌濾過を使用した清澄化。
【0150】
各最終レンチウイルスベクター産物を次に使用して、CD34+細胞を形質導入し、これを次に凍結保存した。形質導入した細胞を解凍し、14日間培養した後、採取し、qPCRを実施して、細胞当たりの総ベクターコピー数(VCN)を決定した。
【0151】
図5Aに示すように、SPTFF過程によって、体積濃度が増加し、感染性力価が増加し(最終力価/初期力価)、ウイルス粒子濃度が増加し、宿主細胞タンパク質(HCP)レベルが減少した。図5Bでは、SPTFF精製過程によって、標準ベクター精製過程と比較して、薬物産物のベクターコピー数が3倍増加した。
【0152】
実施例3
流量の減少によって、体積濃度及び産物濃度が改善される。
【0153】
レンチウイルスベクターを含む、採取された細胞培養培地を、改変HEK293レンチウイルスベクター産生細胞を含む撹拌タンクバイオリアクターから収集した。この材料を、SPTFFを使用した処理期間全体を通して完全に混合させた。材料をSPTFFモジュール中にポンプ注入し、材料が保持液ラインから流出し始めるまで流量を徐々に増加させた。体積濃縮倍率及び膜貫通圧を次に、表1に示すように、テストした各流量で記録した。保持液プールをその後、レンチウイルスベクター含量についてテストし、産物濃縮倍率をこれらの値から遡及的に算出した。
【0154】
膜貫通圧を最大化させて、濃縮倍率を改善するために、より高い流量で作動するよう製造元が推奨しているにもかかわらず、表1は、驚くべきことに、体積濃縮倍率がより遅い流量に伴い増加し、産物濃縮倍率がそれに伴い特定の点まで増加したことを示す。
【表1】
【0155】
概して、以下の特許請求の範囲において、使用された用語は、特許請求の範囲を、本明細書及び特許請求の範囲に開示されている特定の実施形態に限定させるものと解釈されるべきではないが、かかる特許請求の範囲が権利を与える等価物の完全な範囲とともに全ての可能な実施形態を含むものと解釈されるべきである。したがって、請求の範囲は、本開示により限定されない。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】