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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-06
(54)【発明の名称】ペロブスカイト層
(51)【国際特許分類】
   H10K 30/50 20230101AFI20230629BHJP
   H10K 30/40 20230101ALI20230629BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20230629BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20230629BHJP
【FI】
H10K30/50
H10K30/40
C08L101/00
C08K3/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573184
(86)(22)【出願日】2021-05-28
(85)【翻訳文提出日】2023-01-27
(86)【国際出願番号】 NL2021050344
(87)【国際公開番号】W WO2021242108
(87)【国際公開日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】20177541.8
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522394225
【氏名又は名称】ネザーランズ オーガニサイト フォー トゥーホパスト ナチュルヴェンテンスハッペリク オーダーズック ティエヌオー
【氏名又は名称原語表記】NEDERLANDSE ORGANISATIE VOOR TOEGEPAST-NATUURWETENSCHAPPELIJK ONDERZOEK TNO
【住所又は居所原語表記】Anna van Buerenplein 1, 2595 DA ’s-Gravenhage, The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン ブレーメン、アルベルト ヨス ヤン マリー
(72)【発明者】
【氏名】ゲリンク、ガーウィン ヘルマニュス
【テーマコード(参考)】
4J002
5F251
【Fターム(参考)】
4J002AA001
4J002BB271
4J002BD081
4J002BE021
4J002BE061
4J002BF021
4J002BG011
4J002BG041
4J002BG051
4J002BL011
4J002BL021
4J002BP011
4J002BP031
4J002CE001
4J002CG001
4J002CG011
4J002CK021
4J002CM011
4J002CM031
4J002CM041
4J002CN011
4J002DC006
4J002DD026
4J002DE096
4J002GQ00
4J002GQ05
5F251AA11
(57)【要約】
本発明は半導体の分野に属する。本発明は、組成物、層を製造する方法、層、光導電装置、及び光電池装置に関する。本発明の組成物は、ポリマーを含むマトリックス、及び前記マトリックス中に分散された1つ以上のペロブスカイト材料を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
・ポリマーを含むマトリックス、及び
・前記マトリックス中に分散された1つ以上のペロブスカイト材料を含む組成物であって、
前記1つ以上のペロブスカイト材料が1つ以上の金属ハライドペロブスカイト材料を含み、及び/又は
前記組成物は1つ以上のペロブスカイト材料を前記組成物の総重量に対して50%を超える量で含む、組成物。
【請求項2】
前記ポリマーを含むマトリックスの量が、0.5~8%、0.5~7%、0.5~6%、又は0.5~5%、例えば1~4%の範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記1つ以上のペロブスカイト材料が固体粒子として存在する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記固体粒子が、0.01~75μm、好ましくは0.5~50μm、例えば1~20μmの平均粒子サイズを有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリマーが、絶縁性ポリマー、半導体性ポリマー、及び導電性ポリマーからなる群から選択される1つ以上を含む、請求項1~4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリマーが、スチレンブロックコポリマー、及びポリ(トリアリールアミン)等のポリアミンからなる群から選択される1つ以上を含む、請求項1~5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリマーが、スチレン及びエチレン/ブチレンに基づく線状トリブロックコポリマーである、請求項1~6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリマーが、ポリ(ビニルアルコール)のo-スルホベンズアルデヒドアセタールナトリウム、クロロスルホン化ポリ(エチレン)、高分子ビスフェノールポリ(カーボネート)とビスフェノールカーボネート及びポリ(アルキレンオキサイド)を含むコポリマーとの混合物、水性エタノール可溶性ナイロン、ポリ(アルキルアクリレート及びメタクリレート)、ポリ(アクリル酸及びメタクリル酸を含むアルキルアクリレート及びメタクリレート)のコポリマー、ポリ(ビニルブチラール)、ポリ(ウレタン)エラストマー、セルロースアセテートブチレート、ポリアルキル(メタ)アクリレート、ポリビニル-n-ブチラール、ポリ(ビニルアセテート-co-ビニルクロライド)、ポリ(アクリロニトリル-co-ブタジエン-co-スチレン)、ポリ(ビニルクロライド-co-ビニルアセテート-co-ビニルアルコール)、ポリ(ブチルアクリレート)、ポリ(エチルアクリレート)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(ビニルブチラール)、トリメリット酸、ブテン二酸無水物、無水フタル酸、ポリイソプレン、ポリブタジエン又はポリイソプレンからの飽和ゴムブロックを有するスチレン-水添ジエンブロックコポリマー、ポリフルオレン、ポリフェニレン、ポリピレン、ポリアズレン、ポリナフタレン、ポリピロール、ポリカルバゾール、ポリインドール、ポリアゼピン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリ(アルキルチオフェン)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(p-フェニレンスルフィド)、ポリ(p-フェニレンビニレン)、ポリカルバゾール、ジケトピロロピロール系ポリマー、ポリ(ナフタレンジイミド)ポリマー、及びポリ(トリアリールアミン)からなる群から選択される1つ以上を含む、請求項1~7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記1つ以上のペロブスカイト材料が、メチルアンモニウム鉛ヨウ化物(CHNHPbI)等の有機金属系金属ハライドペロブスカイト材料から選択される、請求項1~8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
前記1つ以上のペロブスカイト材料が、CsPbBr等の無機金属ハライドペロブスカイト材料から選択される、請求項1~9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の組成物を含む層を製造する方法であって、
1つ以上のペロブスカイト材料を流体中に分散させ、それによって分散液を生成する工程、及び
基板を前記分散液で被覆する工程を含み、
前記流体が、
・ポリマー、
・硬化性化合物、及び/又は
・前記1つ以上のペロブスカイト材料が溶解しない溶媒を含む、方法。
【請求項12】
前記分散液を硬化させる工程を更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記被覆工程が、ブレードコーティング、スクリーン印刷、ステンシル印刷、及び/又は付加製造を含む、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
熱を用いて前記層を圧縮する工程を更に含む、請求項11~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
機械力を用いて前記層を圧縮する工程を更に含む、請求項11~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
請求項1~10のいずれかに記載の組成物を含む層。
【請求項17】
請求項11~15のいずれかに記載の方法で得ることができる、請求項16に記載の層。
【請求項18】
100μm以上、好ましくは100~1000μmの厚さを有する、請求項16又は17に記載の層。
【請求項19】
請求項1~10のいずれかに記載の組成物、及び/又は請求項16~18のいずれかに記載の層を含む、光導電装置。
【請求項20】
請求項1~10のいずれかに記載の組成物、及び/又は請求項16~18のいずれかに記載の層を含む、光電池装置。
【請求項21】
請求項1、9及び10のいずれかに記載の2つ以上の異なるペロブスカイト材料を含む、請求項19に記載の光導電装置、又は請求項20に記載の光電池装置であって、
前記2つ以上の異なるペロブスカイト材料の各々が、請求項16~18のいずれかに記載の別々の層に存在し、
前記層が互いの上に積み重ねられている、光導電装置又は光電池装置。
【請求項22】
請求項1、9及び10のいずれかに記載の2つ以上の異なるペロブスカイト材料を含む、請求項19に記載の光導電装置、又は請求項20に記載の光電池装置であって、
前記2つ以上の異なるペロブスカイト材料の各々が、面内の層の別々の部分に存在する、光導電装置又は光電池装置。
【請求項23】
請求項1、9及び10のいずれかに記載の2つ以上の異なるペロブスカイト材料を含む、請求項19に記載の光導電装置、又は請求項20に記載の光電池装置であって、
前記2つ以上の異なるペロブスカイト材料が同じ層に存在し、混合されている、光導電装置又は光電池装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体の分野に属する。本発明は、組成物、層を製造する方法、層、光導電装置、及び光電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体は、様々な電子装置及び光電子装置で用いられている。光子が電子信号に、又は電子信号が光子に変換される光電子工学における適用で広く用いられている半導体材料のクラスは、ペロブスカイトである。ペロブスカイト材料、すなわち一般式:ABX〔式中、A及びBは異なるサイズの陽イオンであり、Xは陰イオンである〕を有するペロブスカイト格子構造を示す材料は、太陽電池、X線及び/又はγ線の測定装置等の光電子装置に適用される。これらの適用に重要であることは、ペロブスカイト材料が、その適用に応じて、特定の電子的又は光電子的特性、例えば特定のバンドギャップ、高い電荷キャリアの移動度、長い電荷キャリアの寿命、及び高い信号対ノイズ比等を示すことである。通常、ペロブスカイト材料の単結晶を用いることで、これらの特性が最もよく達成される。しかし、ペロブスカイト材料の単結晶の製造は時間のかかるプロセスであり、しばしば不安定な湿式化学手順を伴う。従って、単結晶の製造は製造コストが高くなる。更に、いくつかの適用では、広い面積を覆うペロブスカイト材料の厚い層を製造する必要があり、所望の寸法の単結晶を製造することが非常に困難な場合がある。
【0003】
当技術分野において、単結晶ペロブスカイトのいくつかの代替物が知られている。Kim et al., Nature 2017, 550, 87-91では、前駆体溶液をフィルム中に広げることによって金属ハライドペロブスカイト層が作成され、その後、前駆体溶液フィルム中でインサイチュで金属ハライドペロブスカイト材料が形成される。しかし、ペロブスカイトの形成は一般に制御が難しく、特にそのような前駆体溶液フィルム中でインサイチュでは制御が難しい。従って、この方法を用いて高品質の層を取得することは困難である。
【0004】
単結晶ペロブスカイトの他の代替物は、ペロブスカイト粒子の焼結によって製造されるペロブスカイト材料の層である。この方法は、Shrestha et al., Nature Photonics 2017, 11, 436-440に記載されている。焼結を含む方法にも多くの欠点がある。まず第一に、これらの方法では、焼結前に広い面積に粉末を良好に分散させる必要があるが、これを達成することは困難である。更に、通常、焼結は電極等の基板への接着が不十分な層をもたらす。
【0005】
更に、これらの代替方法を用いて作成された金属ハライドペロブスカイト材料は、単結晶と比較して電子的又は光電子的特性が劣っている。通常、これらの代替方法を用いて得られた材料の、半導体材料の品質の尺度として用いられるキャリアの移動度(μ)と寿命(τ)の積(μτ積)は、単結晶よりも100倍低い。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Kim et al., Nature 2017, 550, 87-91
【非特許文献2】Shrestha et al., Nature Photonics 2017, 11, 436-440
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、特に厚い層及び/又は広い面積を覆う層が必要な場合に、当技術分野で知られている方法よりも製造が容易及び/又は安価であるペロブスカイト材料を提供することである。単結晶の既知の代替物と比較して、本発明のペロブスカイト材料は、電荷キャリアの移動度及び電荷キャリアの寿命等の電子的特性が同等又はより優れている。本発明の他の目的は、当技術分野で知られている材料及び方法の1つ以上の欠点に対処することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目標を達成するために、本発明の第1の側面において、
・ポリマーを含むマトリックス、及び
・前記マトリックス中に分散された1つ以上のペロブスカイト材料を含む組成物であって、
前記1つ以上のペロブスカイト材料が1つ以上の金属ハライドペロブスカイト材料を含み、及び/又は
前記組成物は1つ以上のペロブスカイト材料を前記組成物の総重量に対して50%を超える量で含む、組成物が提供される。
【0009】
本発明の第2の側面において、本明細書に記載の組成物を含む層を製造する方法が提供される。
本発明の第3の側面において、本明細書に記載の組成物を含む層が提供される。
【0010】
本発明の第4及び第5の側面において、本明細書に記載の組成物及び/又は層を含む光導電装置又は光電池装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施態様の方法の概略図を示す。
図2】2つ以上のペロブスカイト材料を組合せるための異なる方法の概略図を示す。
図3】実施例1に従って製造され、基板上に塗付された、Kraton(商標)FG1901を含むマトリックス中に分散されたCsPbBrの層の写真である。
図4】実施例1に従って製造され、基板上に塗付された、Kraton(商標)FG1901を含むマトリックス中に分散されたメチルアンモニウム鉛ヨウ化物(CHNHPbI)の層の写真である。
図5】本発明の実施態様の層がインジウムスズ酸化物アノード及びインジウムスズ酸化物カソードとどのように接触しているかの例を示す。
図6】暗条件と明条件で測定された、2つのインジウムスズ酸化物電極の間に挟まれたKraton(商標)FG1901を含むマトリックスに分散されたCsPbBrの厚さ300μmの層のJV曲線を示す。
図7】暗条件と明条件で測定された、2つのインジウムスズ酸化物電極の間に挟まれたKraton(商標)FG1901を含むマトリックスに分散されたCHNHPbIの厚さ300μmの層のJV曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
驚くべきことに、ポリマーを含むマトリックスに分散されたペロブスカイト材料を含む組成物が、高い電荷輸送、すなわち高いキャリアの移動度(μ)及び長いキャリアの寿命(τ)、並びに低い暗電流、及びX線等の高エネルギー放射線の検出における高い感度等の好ましい光電子特性を示すことを見出した。伝統的に、電子的又は光電子的適用のための半導体材料は、高い電荷輸送等の許容可能な電子的特性を示すために、欠陥又は結晶粒界をほとんど持つべきではないと考えられている。従って、当技術分野で知られている光電子的適用のための半導体材料の製造方法は、典型的には、欠陥又は結晶粒界の量が最小化された材料を達成することを目的とする。本発明の組成物は、本質的に多数の結晶粒界を含むが、良好な光電子的特性を示すことは驚くべきことである。更に、本発明の組成物、並びにその組成物を含む層、及びその組成物及び/又はその層を含む装置が、当技術分野で知られている方法よりも少ない労力及びより低い費用で調製することができる。
【0013】
本発明に従って、
・ポリマーを含むマトリックス、及び
・前記マトリックス中に分散された1つ以上のペロブスカイト材料
を含む組成物であって、
前記1つ以上のペロブスカイト材料が1つ以上の金属ハライドペロブスカイト材料を含み、及び/又は
前記組成物は1つ以上のペロブスカイト材料を前記組成物の総重量に対して50%を超える量で含む、組成物が提供される。
【0014】
1つ以上のペロブスカイト材料は、固体粒子として存在することができ、好ましくは0.01~75μm、より好ましくは0.5~50μm、例えば1~20μmの平均粒子サイズを有することができる。例えば、平均粒子サイズは、2~15μm、3~10μm、4~20μm、又は5~20μmであってもよい。粒子が小さすぎる場合、例えば0.5μm未満又は0.1μm未満の場合、組成物の電子的又は光電子的特性が悪影響を受けうる。もし粒子が大きすぎれば、例えば75μmより大きいか100μmより大きければ、組成物でできた層の表面が粗くなる及び/又は不規則になることがあり、望ましくない。
【0015】
組成物中の固体粒子は、異なるサイズの粒子の混合物であってもよい。その場合、固体粒子は狭いサイズ分布を有することが好ましい。本明細書で用いられる狭いサイズ分布とは、平均粒子サイズの50%未満、好ましくは40%未満、より好ましくは20%未満、例えば10%未満の標準偏差を意味する。いくつかの実施態様において、標準偏差は、固体粒子の平均粒子サイズの15%未満である。
【0016】
粒子サイズ及び粒子サイズ分布は、例えば、走査型電子顕微鏡法(SEM)又は光学顕微鏡法を用いて測定することができる。粒子サイズを決定する、又は所望のサイズ範囲内の粒子を得るための他の方法は、ふるい分けである。適切なメッシュサイズのふるいを用いることで、粒子が所望の範囲内にあるかどうかを決定することができ、又は所望の粒子サイズ範囲よりも広い範囲の粒子サイズを有する粒子の混合物から所望のサイズ範囲を有する粒子を選択することができる。
【0017】
組成物は、ペロブスカイト材料とポリマーの特定の組合せに限定されない。マトリックスは、1種類のポリマー、又は2種類以上のポリマーを含むことができる。ポリマー又は複数のポリマーは、広範囲の異なる材料から選択することができる。
【0018】
好ましくは、ポリマー又は複数のポリマーは、組成物が適用され得る装置が用いられる種類の電磁放射に対して透明である。例えば、X線の変換のために組成物を用いる場合、マトリックス及びその中の複数のポリマーはX線に対して透明であることが好ましい。
【0019】
実施態様において、ポリマー又は複数のポリマーはゴム及び/又は弾性ポリマーから選択される。なぜなら、これが組成物の機械的特性にプラスの影響を与えることができるからである。例えば、ゴム及び/又は弾性ポリマーから選択されるポリマー又は複数のポリマーを含む組成物は、ゴム及び/又は弾性ポリマーから選択されるポリマー又は複数のポリマーを含まない組成物と比較して、ひび割れしにくい。
【0020】
マトリックスは、絶縁性ポリマー、半導体性ポリマー及び/又は導電性ポリマーを含むことができる。驚くべきことに、マトリックスが絶縁性ポリマーを含む場合にも、組成物の良好な電子的特性が観察された。
【0021】
ポリマー又は複数のポリマーは、例えばポリ(ビニルアルコール)のo-スルホベンズアルデヒドアセタールナトリウム;クロロスルホン化ポリ(エチレン);高分子ビスフェノールポリ(カーボネート)とビスフェノールカーボネート及びポリ(アルキレンオキサイド)を含むコポリマーとの混合物;水性エタノール可溶性ナイロン;ポリ(アルキルアクリレート及びメタクリレート);ポリ(アクリル酸及びメタクリル酸を含むアルキルアクリレート及びメタクリレート)のコポリマー;ポリ(ビニルブチラール);ポリ(ウレタン)エラストマー;及びこれらの混合物から選択することができる。
【0022】
実施態様において、ポリマー又は複数のポリマーは、セルロースアセテートブチレート、ポリアルキル(メタ)アクリレート、ポリビニル-n-ブチラール、ポリ(ビニルアセテート-co-ビニルクロライド)、ポリ(アクリロニトリル-co-ブタジエン-co-スチレン)、ポリ(ビニルクロライド-co-ビニルアセテート-co-ビニルアルコール)、ポリ(ブチルアクリレート)、ポリ(エチルアクリレート)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(ビニルブチラール)、トリメリット酸、ブテン二酸無水物、無水フタル酸、ポリイソプレン、及び/又はそれらの混合物等の有機ポリマーから選択される。
【0023】
好ましくは、ポリマー又は複数のポリマーは、スチレンブロックコポリマー、例えばポリブタジエン又はポリイソプレンからの飽和ゴムブロックを有するスチレン-水素化ジエンブロックコポリマーから選択される。本発明の組成物中にブロックコポリマー系ポリマーとして用いることができる特に適切な熱可塑性ゴムは、商品名Kraton(商標)、例えばKraton(商標)Gゴム等ので販売されるポリマーである。Kraton(商標)FG1901、すなわち30%のポリスチレン含有量を有するスチレン及びエチレン/ブチレンに基づく線状トリブロックコポリマーを用いた場合に、良好な結果が得られた。
【0024】
ポリマー又は複数のポリマーはまた、本技術分野で知られ、例えば有機発光ダイオード(OLED)、有機薄膜トランジスター(OTFT)及び有機太陽電池(OPV)に用いられている半導体性ポリマー又は導電性ポリマーから選択することもできる。このようなポリマーの例は、ポリフルオレン、ポリフェニレン、ポリピレン、ポリアズレン、ポリナフタレン、ポリピロール(PPy)、ポリカルバゾール、ポリインドール、ポリアゼピン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリ(アルキルチオフェン)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリ(p-フェニレンスルフィド)(PPS)、ポリアセチレン(PAc)、ポリ(p-フェニレンビニレン)(PPV)、ポリカルバゾール、ジケトピロロピロール(DPP)系ポリマー、ポリ(ナフタレンジイミド)ポリマー、及びポリ(トリアリールアミン)、例えばポリ[ビス(4-フェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)アミン]である。これらのポリマーは、1種類の繰り返し単位、例えば芳香族共役単位からなるホモポリマーであることができるが、2種類以上の繰り返し単位、例えば2種類以上の共役単位、又は共役単位と非共役単位の組合せが組み込まれているコポリマー、ブロックコポリマー、ターポリマー等であることもできる。
【0025】
本明細書で用いられる用語:ペロブスカイト材料は、ペロブスカイト構造を示す材料を指す。一般に、ペロブスカイト材料は一般式:ABX〔式中、A及びBは異なるサイズの陽イオンであり、Xは陰イオンである〕を有するが、以下に説明するように、他の式を有するペロブスカイト材料も存在する。ペロブスカイト材料は、数ある中で、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸鉛、ビスマスフェライト、ランタンイッテルビウム酸化物、ランタンマンガナイト等の、XがO2-アニオンを表す酸化物を含む。XがF、Cl、Br、I、又はそれらの混合物等のハライドアニオンを表す金属ハライドペロブスカイト材料は、他の種類のペロブスカイト材料である。
【0026】
ペロブスカイト材料の電子的及び光電子的特性は、それらの化学構造に依存する。好ましくは、1つ以上のペロブスカイト材料が、金属ハライドペロブスカイト材料から選択される。なぜなら、金属ハライドペロブスカイト材料は、高エネルギー放射線の検出及び太陽光発電等の様々な適用における使用に特に適した電子的又は光電子的特性を有するからである。
【0027】
1つ以上のペロブスカイト材料は、有機金属系ペロブスカイト、純粋な無機ペロブスカイト、又はそれらの混合物から選択することができる。ペロブスカイト材料の一般式:ABXに関して、Aは、例えばCHNH (メチルアンモニウム)、CHCHNH (エチルアンモニウム)、CHCHCHNH (プロピルアンモニウム)等であることができる。Aは、例えばHC(NH (ホルムアミジニウム)、Cs又はRbを表すこともできる。Bは、例えばPb2+、Sn2+、Cu2+、Ni2+、Bi2+、Co2+、Fe2+、Mn2+、Cr2+、Cd2+、Ge2+、Yb2+、又はこれらの混合物を表すことができる。Xは、Cl、Br、I、及びこれらの混合物から選択することができる。例えば、1つ以上のペロブスカイト材料は、CHNHPbI、CHNHPbBr、HC(NHPbI、CHNHPbICl、HC(NHPbBr、CHCHNHPbI、CHCHCHNHPbI、CHCHNHPbBr、及びCHCHCHNHPbBr等の有機金属系金属ハライドペロブスカイト材料から選択することができる。無機金属ハライドペロブスカイト材料の例には、CsPbX及びCsSnX〔式中、Xは、Cl、Br、I又はそれらの混合物を示す。〕、例えばCsPbBrが含まれる。1つ以上のペロブスカイト材料はまた、式:ABXを有する材料、例えば(CHCHCHCHNHPbI、(CCHNHPbI、及び(CCHCHNHPbIから選択することもできる。1つ以上のペロブスカイト材料はまた、式:AMM’X〔式中、MはCu及び/又はAgであってよく、M’はBi3+、Ga3+、Sb3+及び/又はIn3+であってよい。〕を有する材料、例えばCsAgBiBrから選択することもできる。1つ以上のペロブスカイト材料はまた、式:AM’、例えばCsSbBr、RbBiBr、RbSbBrを有することもできる。
【0028】
2つ以上のペロブスカイト材料の可能な組合せには、異なるペロブスカイト材料を互いの上に含む層、異なるペロブスカイト材料を面内で互いに隣接して含む層、又は異なる特性、例えば異なるバンドギャップを有する異なるペロブスカイト材料を混在して含む層が含まれる。このようにして、組成物の電子的又は光電子的特性を、所望の適用に合わせて変えて調節することができる。2つ以上のペロブスカイト材料を組合せるための異なる方法の概略図を図2に示す。
【0029】
組成物は、好ましくは、組成物の総重量に対して50%を超える1つ以上のペロブスカイト材料を含む。もし1つ以上のペロブスカイト材料の量がこの量より少なければ、組成物の電子的特性が悪影響を受けうる。好ましくは、組成物は、組成物の総重量に対して60%以上、より好ましくは70%以上の1つ以上のペロブスカイト材料を含む。組成物中の1つ以上のペロブスカイト材料の量は、組成物の総重量に対して99.5%程度に高くても良い。もし組成物中のペロブスカイトの量が多すぎると、組成物及び/又は組成物の層を製造するプロセスが複雑になりうる。例えば、組成物は、組成物の総重量に対して80~98%、又は90~99%、又は95~99%の1つ以上のペロブスカイト材料を含むことができる。
【0030】
組成物は、好ましくは、組成物の総重量に対して50%以下のポリマーを含むマトリックスを含む。好ましくは、組成物は、組成物の総重量に対して40%以下、より好ましくは30%以下のポリマーを含むマトリックスを含む。組成物中のポリマーを含むマトリックスの量は、組成物の総重量に対して0.5%程度に低くてもよい。もし組成物中のポリマーを含むマトリックスの量が少なすぎると、組成物の層を製造するプロセスが複雑になりうる。例えば、組成物は、組成物の総重量に対して0.5~30%、又は0.5~25%、1~25%、又は1~10%のポリマーを含むマトリックスを含むことができる。好ましくは、ポリマーを含むマトリックスの量は、0.5~8%、0.5~7%、0.5~6%、又は0.5~5%、例えば1~4%の範囲であることができる。
【0031】
電荷キャリアの移動度(μ)と電荷キャリアの寿命(τ)の積は、μτ積として知られ、これは適用される電場に依存する。低い電場を適用しながら、高いμτ積を達成することが望ましい。高すぎる電場を適用すると、例えば、組成物の安定性が悪影響を受けうる。本発明の組成物のμτ積は、5×10-5cm-1以上、好ましくは1×10-4cm-1以上、より好ましくは2.5×10-4cm-1以上、更により好ましくは5×10-4cm-1、例えば1×10-3cm-1以上であることができる。本発明の組成物で達成することができるμτ積は、5×10-3cm-1程度に高くてもよいが、通常、これより低い。
【0032】
2V/μm以下、好ましくは1V/μm以下、より好ましくは0.5V/μm以下、更により好ましくは0.2V/μm以下、例えば0.1V/μm以下の電場を用いて、上記のμτ積を達成することができる。0.05V/μm程度の低い電場を用いて、上記のμτ積を達成することができるが、適用される電場は通常、これより高い。
【0033】
組成物及び/又はマトリックスは、接着剤、可塑剤、光硬化性モノマー、光開始剤、帯電防止剤、界面活性剤及び/又は安定剤等の追加の化合物を更に含んでもよい。
【0034】
本明細書に記載の組成物を含む層を製造する方法であって、
1つ以上のペロブスカイト材料を流体中に分散させ、それによって分散液を生成する工程、及び
基板を前記分散液で被覆する工程を含み、
前記流体が、
・ポリマー、
・硬化性化合物、及び/又は
・前記1つ以上のペロブスカイト材料が溶解しない溶媒を含む、方法も提供される。
【0035】
実施態様において、流体は、1つ以上のペロブスカイト材料が溶解しない溶媒を含む。例えば、ポリマー、硬化性化合物、及び/又は流体の他の成分を溶解するために、特にこれらの成分が被覆工程が行われる条件で流体でない場合に、溶媒を適用することができる。分散液を基板により容易に塗付できるように分散液の粘度を調整するため、溶媒を用いることもできる。1つ以上のペロブスカイト材料が溶解しない適切な溶媒には、例えばトルエン、キシレン、及びヘキサン等の非極性溶媒が含まれる。
【0036】
代替的又は追加的に、被覆工程中に流体の成分が実際に流体であることを確認する、及び/又は、例えば分散液を加熱又は冷却することで分散液の粘度を調整する、他のアプローチを適用することも可能である。
【0037】
実施態様において、本発明の方法は、分散液を硬化させる工程を更に含む。流体中に溶媒が存在する場合、硬化工程は溶媒を蒸発させる機能を有してもよい。もし硬化工程が溶媒を蒸発させるための熱処理であれば、硬化工程はアニーリングとも言われうる。代替的又は追加的に、分散液中で重合及び/又は架橋を容易にするために、硬化工程を適用することができる。硬化工程は、真空、電磁放射及び/又は熱による処理を含んでもよい。好ましくは、硬化工程は、紫外線放射等の放射による処理を含む。
【0038】
流体及び/又は分散液は、硬化性(例えば光硬化性)モノマー、硬化性(例えば光硬化性)オリゴマー、光開始剤、接着剤、可塑剤、帯電防止剤、界面活性剤及び/又は安定剤等の追加の化合物を更に含んでもよい。これらの追加の化合物は、2つ以上の目的に役立つものであってもよい。例えば、硬化性モノマー又は硬化性オリゴマーを用いて、被覆工程を良好に行うことができるように分散液の粘度を最適化することができる。更に、同じ硬化性モノマー又は硬化性オリゴマーは、硬化後、すなわち重合及び/又は架橋後に、組成物及び/又はマトリックスに所望の機械的特性を与えることもできる。
【0039】
被覆工程は、ブレードコーティング、スクリーン印刷、ステンシル印刷、及び/又は付加製造を含んでもよい。付加製造は、3D印刷としても知られている。適切な付加製造技術は、ステレオリソグラフィー(SLA)及び溶融フィラメント製造(FFF)を含む。パターン化された層、すなわち電子装置及び/又は光電子装置の製造に有用な、所定のパターンに従って基板の一部に選択的に塗付した層を製造するために、これらの技術を有利に用いることができる。これらの技術を用いて、図2に示すように、異なるペロブスカイト材料を面内で互いに隣接して及び/又は互いの上に含む層を塗付することもできる。
【0040】
本明細書に記載の方法は、熱及び/又は機械力を用いて層を圧縮する工程を更に含むことができる。
【0041】
任意に、本発明の方法を用いて製造される層は、不動態化される。欠陥を不動態化するために、例えば原子層堆積(ALD)を用いて層を不動態化コーティングで被覆することで、不動態化を達成することができる。そのような不動態化コーティングを用いて、層の電子的又は光電子的特性を改善することができる。実施態様において、不動態化コーティングは酸化アルミニウムを含む。
【0042】
ペロブスカイト材料の前駆体で基板を被覆する層を製造するのと対比して、層を製造するために流体中で1つ以上のペロブスカイト材料の分散液を用いる利点は、前駆体層の条件と比較して、遥かによく制御される条件でペロブスカイト材料を製造することができることである。これによって、結晶子サイズ及びサイズ分布等のペロブスカイト材料の特性をより適切に制御することができる。更に、材料を流体中に分散させる前に、ペロブスカイト材料の精製等の追加の工程を適用することができる。これは、前駆体溶液から金属ハライドペロブスカイトがインサイチュで形成される層にそのような追加の工程を適用するよりも便利である。
【0043】
図1に、本発明の実施態様の方法の概略図が示される。まず第一に、ペロブスカイト材料が提供され、任意に精製及び/又は改変される。この材料を流体中に分散させて分散液を作り、続いて分散液で基板を被覆する。
【0044】
本発明によれば、本明細書に記載の組成物を含む層も提供される。
好ましくは、本明細書に記載の方法で層を得ることができる。
【0045】
本明細書に記載の組成物を含む層は、広範囲の厚さを有することができる。塗付及び被覆技術に応じて、層の厚さはマイクロメートルからミリメートルの範囲であることができる。好ましくは、層は、10μm以上、好ましくは50μm以上、より好ましくは100μm以上、例えば200μm以上の厚さを有する。層は、10mm程度の厚さでありえるが、一般的には5mm未満である。例えば、層は、50~5000μm、好ましくは150~2000μm、又は300~1000μmの厚さを有する。
【0046】
1つ以上のペロブスカイト材料が分散される流体は、場合によっては、結果として生じる組成物のマトリックスと同じ化学組成を有することができる。しかし、この方法で用いられる流体及び結果として生じる組成物のマトリックスは、異なる化学組成を有することもできる。流体とマトリックスの間の化学組成の起こり得る違いは、様々な要因、例えば用いられた被覆技術、硬化及び/又は圧縮工程が適用されたか否か、及びそのような硬化及び/又は圧縮工程の特性によって影響される。例えば、もし1つ以上のペロブスカイト材料が分散された流体が溶媒を含めば、及びもしこの溶媒が任意の硬化工程で蒸発すれば、流体の化学組成はマトリックスの化学組成と異なる。あるいは、もし用いられた被覆技術、並びに任意の硬化、圧縮、及び/又はその他の追加の工程が、例えば流体の1つ以上の成分の蒸発又は反応によって流体の化学組成の変化を引き起こさなければ、マトリックスの化学組成は、流体の化学組成と同じになり得る。
【0047】
本発明の方法を用いて、複数の層を互いの上に塗付することもできる。これらの層は、同じ組成又は異なる組成を有することができる。異なる層が異なる組成を有する場合、これらの層は、マトリックス中のポリマーの種類で、1つ以上のペロブスカイト材料の種類で、並びに/又はマトリックス及び/若しくは1つ以上のペロブスカイト材料の相対量で、異なることができる。
【0048】
本発明の2つ以上の層を互いの上に塗付する場合、前に塗付された層の上に後続の層を塗付する前に、前に塗付された層を硬化することができる。例えば、前に塗付された層のマトリックスの成分が次の層の流体に溶解するのを防ぐために、これを行うことができる。特に、もし異なる組成を有する層を互いの上に塗付するのであれば、次の層の塗付の前に、前に塗付された層を硬化させることで、それらの層の混合を防ぐことができる。後続の層の混合を防ぐための他のアプローチは、前に塗付された層のマトリックスの成分を溶解することができない異なる溶媒を後続の層中に用いることであってもよい。逆に、後続の層の間の混合が望まれる場合は、後続の層を塗付する前に、最初の層を意図的に未硬化のままにすることもできる。
【0049】
本明細書に記載された組成物及び/又は層は、広範囲の光電子装置に適用することができる。組成物及び/又は層は、例えば、直接変換X線又はγ線検出器等の光伝導装置に適用することができる。あるいは、組成物及び/又は層は、太陽電池等の光起電力装置で用いることができる。適用に応じて組成物及び/又は層の特性を最適化することができる。例えば、所望の適用に適合するように1つ以上のペロブスカイト材料のバンドギャップを選択することができる。代替的又は追加的に、ドーパントを用いて1つ以上のペロブスカイト材料のバンドギャップを調整することができる。適用に応じて、マトリックスの組成及びマトリックスとペロブスカイト材料の相対量等の他の要因も最適化することができる。
【0050】
光電子装置は、通常、半導体材料の1つ以上の層を含む。それらの特性に応じて、また装置の意図された適用に応じて、本発明の1つ以上の層は、例えば、光伝導材料として、光起電力材料として、及び/又はキャリア選択的層として作用することができる。本発明の層は、1つ以上の電極と接触させることもできる。更に、装置の電子的及び/又は光電子的特性を最適化するために、例えば本発明による層と電極との間に他の層が存在することができる。図5は、本発明の実施態様の層がインジウムスズ酸化物アノード及びインジウムスズ酸化物カソードとどのように接触しているかの例を示す。
【0051】
実施態様において、本発明の層を用いて、層又はその一部を検出器の活性領域を超えて拡張することで、高エネルギー放射線検出器(例えばX線検出器)の機械的堅牢性を改善する。本発明の層を基板上に塗付する場合、特に塗付された層が基板の厚さと比較して相対的に厚い場合、基板の機械的特性を改善することができる。比較的容易に本発明の層を塗付することができるため、X線検出器等の本発明の層を含む部品の機械的堅牢性及び/又は取扱い性を改善するために、その電子的機能に必要とされるよりも広い領域に層を塗付することが有利であり得る。
【実施例
【0052】
実施例1-マトリックスに分散したペロブスカイトの層の調製
0.5gのKraton(商標)FG1901(Kraton Polymers Research RV)及び7.5mlのトルエン(Sigma Aldrich,99.8%)を自転公転ミキサー(Thinky Mixer USA)で3000rpmで15分間混合した。得られた明るい透明で粘稠な溶液0.7gに、2.46gのペロブスカイト粉末を加え、自転公転ミキサー(Thinky Mixer USA)で3000rpmで15分間混合した。ドクターブレードコーティングを用いて厚さ0.5mmの金属ステンシルを通して、事前にパターン化されたインジウムスズ酸化物(ITO)下部電極を備えたガラス基板上に分散液を付着させた。続いて、ウェット層をホットプレート上で80℃で20分間アニーリングして、厚さ約300μmのドライ層を得た。最後に、パターン化されたITO上部電極がペロブスカイト層上にスパッタリングされた。
【0053】
図3は、実施例1に従って製造され、基板上に塗付された、Kraton(商標)FG1901を含むマトリックス中に分散されたCsPbBrの層の写真である。
【0054】
図4は、実施例1に従って製造され、基板上に塗付された、Kraton(商標)FG1901を含むマトリックス中に分散されたメチルアンモニウム鉛ヨウ化物(CHNHPbI)の層の写真である。
【0055】
実施例2-マトリックスに分散したペロブスカイトの層の調製
0.5gのKraton(商標)FG1901(Kraton Polymers Research RV)及び7.5mlのトルエン(Sigma Aldrich,99.8%)を自転公転ミキサー(Thinky Mixer USA)で3000rpmで15分間混合した。得られた明るい透明で粘稠な溶液0.7gに、2.46gのペロブスカイト粉末を加え、自転公転ミキサー(Thinky Mixer USA)で3000rpmで15分間混合した。事前にパターン化されたインジウムスズ酸化物(ITO)下部電極を備えたガラス基板上に、コロイド分散液をスピンコーティングし、続いて140℃でアニーリングすることで、スズ酸化物電荷輸送層を付着させた。ドクターブレードコーティングを用いて厚さ0.5mmの金属ステンシルを通して、前記基板上にペロブスカイト分散液を付着させた。続いて、ウェット層を真空オーブン中で110℃で30分間アニーリングして、厚さ約300μmのドライ層を得た。蒸着を用いてモリブデン酸化物正孔輸送層を付着させ、続いてパターン化されたITO上部電極を得た。
【0056】
実施例3-他の金属ハライドペロブスカイト層との比較
実施例1で得られた層の電流密度を、ペロブスカイト単結晶の他の代替物と比較した。
図6は、暗条件と明条件で測定された、2つのインジウムスズ酸化物電極の間に挟まれたKraton(商標)FG1901を含むマトリックスに分散されたCsPbBrの厚さ300μmの層のJV曲線(sweep)を示す。装置面積は1mmであった。±20Vで10-5mAcm-2の暗電流密度を導き出すことができる。
【0057】
図7は、暗条件と明条件で測定された、2つのインジウムスズ酸化物電極の間に挟まれたKraton(商標)FG1901を含むマトリックスに分散されたCHNHPbIの厚さ300μmの層のJV曲線を示す。装置面積は1mmであった。±20V(±0.07V/μmの電場)のバイアスで3×10-5mAcm-2の暗電流密度を導き出すことができる。
【0058】
比較として、Kim et al.(Nature 2017, 550, 87-91)は、2つのITO電極の間に挟まれたプリントされたCHNHPbIの層の55V(0.07V/μmの電場)のバイアスで3×10-2mAcm-2の暗電流密度を報告した。最適化された装置スタックを用いて、Kim et al.は、同じバイアスで暗電流密度を1×10-4mAcm-2に減らした。Shrestha et al.(Nature Photonics 2017, 11, 436-440)は、焼結されたCHNHPbI装置の0.2V/μmの電場で6×10-3mAcm-2の暗電流密度を報告した。Shrestha et al.は、厚さ1mmのCHNHPbIウエハーの電気接点が、それぞれポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)とフェニル-C61-酪酸メチルエステル(PCBM)と、正孔選択性及び電子選択性の接点及びバッファー層としてのZnOによって形成された最適化された装置スタックを用いた。下部のITO/ガラス基板と銀の上部電極で装置スタックが仕上げられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】