(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-06
(54)【発明の名称】電解ニッケルめっき用表面改質剤及びそれを含むニッケル電気めっき溶液
(51)【国際特許分類】
C25D 3/12 20060101AFI20230629BHJP
C25D 5/12 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
C25D3/12 102
C25D5/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573406
(86)(22)【出願日】2021-03-22
(85)【翻訳文提出日】2023-01-26
(86)【国際出願番号】 KR2021003483
(87)【国際公開番号】W WO2021241865
(87)【国際公開日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】10-2020-0064172
(32)【優先日】2020-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514122502
【氏名又は名称】ワイエムティー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チュン、ソン ウク
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ポ ムク
(72)【発明者】
【氏名】キム、テ クン
(72)【発明者】
【氏名】キム、チョン イル
(72)【発明者】
【氏名】カン、チン ソク
【テーマコード(参考)】
4K023
4K024
【Fターム(参考)】
4K023AA04
4K023AA12
4K023BA06
4K023BA15
4K023CA09
4K023CB03
4K023DA02
4K023DA06
4K023DA07
4K023DA08
4K024AA03
4K024AA09
4K024AA11
4K024AB03
4K024AB09
4K024BB11
4K024CA01
4K024CA02
4K024CA03
4K024CA04
4K024CA06
4K024GA01
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1種のカルボキシル基含有化合物を含む電解ニッケルめっき用表面改質剤、及び該表面改質剤を含むニッケル電気めっき溶液に関する。本発明に係るニッケル電気めっき溶液の使用により、先行技術とは違って強い電気分解を行わなくても、高い表面粗さ及びマット性を有するニッケルめっき層を効率的に形成することが可能となる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のカルボキシル基含有化合物及び少なくとも1種のナトリウム含有化合物を含む、電解ニッケルめっき用表面改質剤。
【請求項2】
前記カルボキシル基含有化合物がヒドロキシ酸である、請求項1に記載の電解ニッケルめっき用表面改質剤。
【請求項3】
前記ヒドロキシ酸が、クエン酸、乳酸、酒石酸、イソクエン酸、サリチル酸、セリン、トレオニン、グルカル酸、グルクロン酸、グリセリン酸、及び没食子酸からなる群から選択される、請求項2に記載の電解ニッケルめっき用表面改質剤。
【請求項4】
前記ナトリウム含有化合物が、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、硝酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、及び硫化ナトリウムからなる群から選択される、請求項1に記載の電解ニッケルめっき用表面改質剤。
【請求項5】
少なくとも1種のニッケルイオン源、少なくとも1種のハロゲン化物イオン源、及び請求項1~4のうちのいずれか1項に記載の電解ニッケルめっき用表面改質剤を含む、ニッケル電気めっき溶液。
【請求項6】
前記ニッケルイオン源が、スルファミン酸ニッケル、硫酸ニッケル、炭酸ニッケル、及び酢酸ニッケルからなる群から選択される、請求項5に記載のニッケル電気めっき溶液。
【請求項7】
前記ハロゲン化物イオン源が、臭化ニッケル及び塩化ニッケルからなる群から選択される、請求項5に記載のニッケル電気めっき溶液。
【請求項8】
pH緩衝剤、表面張力調整剤、及びpH調整剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含む、請求項5に記載のニッケル電気めっき溶液。
【請求項9】
前記表面改質剤が、ニッケル電気めっき溶液1リットルあたり0.5~10gの濃度で存在する、請求項5に記載のニッケル電気めっき溶液。
【請求項10】
絶縁基板、該絶縁基板上に形成された銅めっき層、該銅めっき層上のニッケル電気めっき層、及び該ニッケルめっき層上に形成された金めっき層を含み、
前記ニッケルめっき層は請求項5に記載のニッケル電気めっき溶液を用いて形成される、
プリント回路板。
【請求項11】
前記ニッケルめっき層が、0.3以下の表面光沢度及び0.35μm以上の表面粗さ(Ra)を有する、請求項10に記載のプリント回路板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解ニッケルめっきによるニッケル電気めっき層の表面粗さ及び光沢を制御するのに用いることができる、電解ニッケルめっき用表面改質剤、並びに該表面改質剤を含むニッケル電気めっき溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
電解金めっき及び無電解金めっきは、プリント回路板上に受動部品及び能動集積回路を実装するための表面処理プロセスである。ワイヤーボンディングの際に金とニッケルめっき層との間の界面において剥離する可能性を無電解金めっきは増加させるため、電解金めっきが主に用いられる。
【0003】
電解金めっきプロセスは、それがどのように実行されるかによって、電解ソフト金めっきと、電解ハード金めっきに分けることができる。電解ソフト金めっきは、大きな金粒子がめっきとして付与されるため、多孔構造及び低密度を有する金めっき層を形成することができる。電解ハード金めっきは、小さな金粒子がめっきとして付与されるため、高い密度を有する金めっき層を形成することができる。
【0004】
電解金めっきは、絶縁基板/銅めっき層/ニッケルめっき層という構造上に金めっき層を形成するために行われる。ここで、金めっき層の接着性及び半導体パッケージの信頼性を確保するためには、ニッケルめっき層の表面粗さ及び光沢に対する制御が必要である。つまり、ニッケルめっき層と金めっき層との間の接着(ボンディング)を向上させながら表面実装技術(SMT)におけるプリント回路板上の欠陥の検出を向上させるためには、ニッケルめっき層は高い表面粗さ及び高いマット性を有する必要がある。
【0005】
したがって、先行技術によれば、表面粗さ及び光沢が制御されたニッケルめっき層を形成するために、スルファミン酸ニッケルめっき溶液を用いて、強い電気分解が行われる。強い電気分解の間、長時間電流をかけることにより、スルファミン酸ニッケルからヒドロキシル基及びアミン基への加水分解が促進され、このことはニッケルめっきの成長を妨害して、ニッケルめっき層を粗くする。
【0006】
しかし、電流を長時間かけると高い電力消費を生じること、金属イオンの沈殿及び消費は補助材料の価格の上昇をもたらすこと、及び、長いプロセス待ち時間はニッケルめっき層を形成する上での低い効率につながることの点において、強い電気分解は多くの問題を有している。さらに、強い電気分解は、ニッケルめっき層の表面粗さ及び光沢を調整する上での限界を有する。
【0007】
したがって、ニッケルめっき層の表面硬さ及び結晶性のテクスチャーを維持しながら、ユニバーサルなスルファミン酸ニッケルめっき溶液を用いたニッケル電気めっき層の表面を粗面化することが必要である。つまり、ニッケルめっき層の表面に影響を与えずにニッケルめっき層の表面粗さのみを制御することができる表面改質剤を開発することの必要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、粗さが向上したマット表面を有するニッケルめっき層を形成するために用いることができる電解ニッケルめっき用表面改質剤を提供することを意図する。
本発明は、高効率でニッケルめっき層を形成するために用いることができるニッケル電気めっき溶液を提供することも意図する。
本発明は、前記ニッケル電気めっき溶液を用いて、ニッケル電気めっき層を含むプリント回路板を提供することも意図する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの態様は、少なくとも1種のカルボキシル基含有化合物及び少なくとも1種のナトリウム含有化合物を含む、電解ニッケルめっき用表面改質剤を提供する。
前記カルボキシル基含有化合物は、ヒドロキシ酸であってもよい。
前記ヒドロキシ酸は、クエン酸、乳酸、酒石酸、イソクエン酸、サリチル酸、セリン、トレオニン、グルカル酸、グルクロン酸、グリセリン酸、及び没食子酸からなる群から選択されてもよい。
前記ナトリウム含有化合物は、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、硝酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、及び硫化ナトリウムからなる群から選択されてもよい。
【0010】
本発明は、少なくとも1種のニッケルイオン源、少なくとも1種のハロゲン化物イオン源、及び前記電解ニッケルめっき用表面改質剤を含むニッケル電気めっき溶液も提供する。
前記ニッケルイオン源は、スルファミン酸ニッケル、硫酸ニッケル、炭酸ニッケル、及び酢酸ニッケルからなる群から選択されてもよい。
前記ハロゲン化物イオン源は、臭化ニッケル及び塩化ニッケルからなる群から選択されてもよい。
【0011】
前記電解ニッケルめっき用表面改質剤は、ニッケル電気めっき溶液1リットルあたり0.5~10gの濃度で存在してもよい。
本発明のニッケル電気めっき溶液は、pH緩衝剤、表面張力調整剤、及びpH調整剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含んでもよい。
【0012】
本発明は、絶縁基板、該絶縁基板上に形成された銅めっき層、該銅めっき層上のニッケル電気めっき層、及び該ニッケルめっき層上に形成された金めっき層を含むプリント回路板も提供し、ここで、前記ニッケルめっき層は前記ニッケル電気めっき溶液を用いて形成される。
前記ニッケルめっき層は、0.3以下の表面光沢度及び0.35μm以上の表面粗さ(Ra)を有してもよい。
【発明の効果】
【0013】
前記電解ニッケルめっき用表面改質剤中に前記カルボキシル基含有化合物が存在するために、前記表面改質剤を含む前記ニッケル電気めっき溶液を使用することにより、先行技術とは違って強い電気分解を行わなくても、高い表面粗さ及びマット性(mattness)を有するニッケルめっき層を効率的に形成することが可能となる。したがって、本発明は、半導体パッケージを製造するプロセスの効率及び信頼性を向上するのに寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1~
図5は、本発明に係る実験例1を説明するための参考画像である。
【
図2】
図1~
図5は、本発明に係る実験例1を説明するための参考画像である。
【
図3】
図1~
図5は、本発明に係る実験例1を説明するための参考画像である。
【
図4】
図1~
図5は、本発明に係る実験例1を説明するための参考画像である。
【
図5】
図1~
図5は、本発明に係る実験例1を説明するための参考画像である。
【
図6】
図6~
図8は、本発明に係る実験例2を説明するための参考画像である。
【
図7】
図6~
図8は、本発明に係る実験例2を説明するための参考画像である。
【
図8】
図6~
図8は、本発明に係る実験例2を説明するための参考画像である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書及び特許請求の範囲で用いられる用語及び単語は、一般的かつ辞書的な意味を有すると解釈すべきではなく、発明者は自らの発明を最良の方法で記載するために用語及び単語の概念を適切に定義できるという原則に照らし合わせて、本発明の技術精神に対応する意味及び概念を有するものと解釈されることを理解されたい。
【0016】
本発明は、電解金めっき(特には電解ソフト金めっき)を受けることになる表面であるニッケルめっき層の表面粗さ及び光沢を効率的に制御するために用いることができる、電解ニッケルめっき用表面改質剤、並びに該表面改質剤を含むニッケル電気めっき溶液を対象としている。前記表面改質剤及び前記ニッケル電気めっき溶液は、以降で詳細に説明する。
【0017】
本発明の表面改質剤は、電解めっきによってニッケルめっき層を形成するためのニッケル電気めっき溶液を調製するために用いられる。ニッケル電気めっき溶液の使用は、ニッケルめっき層をマットにしつつ、ニッケルめっき層の表面粗さを増大させる。本発明の表面改質剤はニッケル電気めっき溶液に添加される添加剤と考えることができる。本発明の表面改質剤は、少なくとも1種のカルボキシル基含有化合物及び少なくとも1種のナトリウム含有化合物を含んでもよい。
【0018】
前記カルボキシル基含有化合物は、ニッケルの電解めっき(めっきとして付与されるニッケルイオンの吸着)を妨害する官能基を供給するのに働き、ニッケルイオンは平坦にめっきとして付与されるのではなく突起に集中するため、粗い表面を有するニッケルめっき層の形成を生じる。つまり、カルボキシル基含有化合物の存在は、高い表面粗さ(Ra)及びマット性を有するニッケルめっき層の形成につながる。
【0019】
前記カルボキシル基含有化合物はヒドロキシ酸であってもよい。ヒドロキシ酸とは、カルボキシル基(-COOH)及びヒドロキシ基(-OH)の両方を分子内に有している化合物を指す。ヒドロキシ酸中におけるカルボキシル基及びヒドロキシル基の存在は、高い表面粗さ(Ra)及びマット性を有するニッケルめっき層の形成を可能にする。具体的には、ヒドロキシ酸分子中のヒドロキシル基は、官能基間の強い水素結合を形成する。ヒドロキシ酸分子中のヒドロキシル基は、水素結合に起因する自らの高い静電的親和性のためにめっき対象物に最初に吸着されるため、ニッケルイオンの電解めっきを妨害する。加えて、ヒドロキシ酸分子中のカルボキシル基は水素イオンを放出する傾向があり、ヒドロキシル基に変換され、これは最初にめっき対象物に吸着して、ニッケルイオンの電解めっきを妨害する。カルボキシル基及びヒドロキシル基によるニッケルイオンの電解めっきの妨害は、高い表面粗さ(Ra)及びマット性を有するニッケルめっき層の形成を生じる。
【0020】
前記ヒドロキシ酸は、特には、クエン酸、乳酸、酒石酸、イソクエン酸、サリチル酸、セリン、トレオニン、グルカル酸、グルクロン酸、グリセリン酸、及び没食子酸からなる群から選択される。ニッケルめっき層の表面粗さ及びマット性に加えて経済的な実現可能性を考慮して、前記ヒドロキシ酸はクエン酸であってもよい。
【0021】
前記ナトリウム含有化合物は、前記表面改質剤のpHを調整するのに働く。前記ナトリウム含有化合物は、前記表面改質剤のpHを、ニッケル電気めっき溶液に加えられる添加剤として必要とされるレベルとなることを可能とする。
前記ナトリウム含有化合物は、特には、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、及びプロピオン酸ナトリウムからなる群から選択される有機化合物でも、水酸化ナトリウム、硝酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、及び硫化ナトリウムからなる群から選択される無機化合物であってもよい。
【0022】
カルボキシル基含有化合物とナトリウム含有化合物との間の混合比は特に限定されない。例えば、ニッケルめっき層の表面粗さ及びマット性を考慮に入れた場合、カルボキシル基含有化合物とナトリウム含有化合物との間の重量比は2:1~4:1、特には2.6:2~3:2.5、であってもよい。
【0023】
本発明の表面改質剤は、ニッケルめっき層の表面粗さ及びマット性をさらに増大させるために少なくとも1種の補助化合物(例えば、グリシン又は硫酸グリシン)をさらに含んでいてもよい。
本発明のニッケル電気めっき溶液は前記表面改質剤を含む。特には、本発明のニッケル電気めっき溶液は、少なくとも1種のニッケルイオン源、少なくとも1種のハロゲン化物イオン源、及び前記表面改質剤を含んでいてもよい。
【0024】
前記ニッケルイオン源は、ニッケルめっき層を形成するためのニッケルイオンを供給するのに働く。前記ニッケルイオン源は、特には、スルファミン酸ニッケル、硫酸ニッケル、炭酸ニッケル、及び酢酸ニッケルからなる群から選択される。
前記ニッケルイオン源の濃度は特に限定されない。例えば、ニッケルめっき層を容易に形成することを考慮して、前記ニッケルイオン源は、ニッケル電気めっき溶液1リットルあたり80~100g、特には85~95g、の濃度で存在してもよい。
【0025】
前記ハロゲン化物イオン源は、アノードを溶解するのに働く。前記ハロゲン化物イオン源は、特には、臭化ニッケル及び塩化ニッケルからなる群から選択される。
前記ハロゲン化物イオン源の濃度は特には限定されない。例えば、ニッケルめっき層を容易に形成することを考慮して、前記ハロゲン化物イオン源はニッケル電気めっき溶液1リットルあたり1~7g、特には2~5g、の濃度で存在してもよい。
【0026】
前記表面改質剤は、ニッケル(ニッケルイオン)の電解めっきを妨害する官能基(例えば、カルボキシル基及びヒドロキシル基)を供給するのに働き、ニッケルめっき層が高い表面粗さ及びマット性を有することを可能にする。具体的には、前記表面改質剤は、電解めっきによるニッケル電気めっき層の表面をマットにすることができる。前記表面改質剤は上記に記載したものと同じであり、その説明は省略することとする。
【0027】
前記表面改質剤の濃度は特に限定されない。例えば、ニッケルめっき層の表面粗さ及びマット性を考慮して、前記表面改質剤はニッケル電気めっき溶液1リットルあたり0.5~10g、特には5~10g、の濃度で存在してもよい。前記表面改質剤は、長時間用いる場合にはその参考濃度(1g/L)よりも大きい量で加えられてもよい。
【0028】
ニッケルめっき層の容易な形成のために、本発明のニッケル電気めっき溶液は、pH緩衝剤、表面張力調整剤、及びpH調整剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含んでもよい。
前記pH緩衝剤は、特には、ホウ酸、フルオロホウ酸、リン酸、硝酸、酢酸、スルファミン酸、酢酸ナトリウム、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
前記pH緩衝剤の濃度は特に限定されない。例えば、ニッケル電気めっき溶液のpHを考慮して、前記pH緩衝剤はニッケル電気めっき溶液1リットルあたり35~45g、特には37~43g、の濃度で存在してもよい。
【0029】
前記表面張力調整剤は、特には、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、スルホコハク酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0030】
前記表面張力調整剤の濃度は特に限定されない。例えば、ニッケルめっき層を容易に形成することを考慮して、前記表面張力調整剤は、ニッケル電気めっき溶液1リットルあたり0.1~1g、特には0.2~0.6g、の濃度で存在してもよい。
前記pH調整剤は、特には、スルファミン酸(H3NSO3)含有希釈剤であってもよい。
ニッケルめっき層を容易に形成するために、本発明のニッケル電気めっき溶液は3.5~4.5のpH、特には3.7~4.3のpH、を有していてもよい。
【0031】
前記表面改質剤が存在するために、前記ニッケル電気めっき溶液は電解ニッケルめっきの際にニッケル(ニッケルイオン)がめっきとして付与されるのを妨害する官能基を供給し、粗い表面を有するニッケルめっき層、つまり高い表面粗さを有するニッケルめっき層、の形成を可能とする。したがって、前記ニッケル電気めっき溶液の使用により、先行技術とは違って強い電気分解を行わなくても、高い表面粗さ及びマット性を有するニッケルめっき層の効率的な形成が可能となり、したがって前記ニッケル電気めっき溶液の使用は、プリント回路板及び半導体パッケージの(コスト削減及び生産性の点での)製造効率を向上させるのに有効である。
【0032】
特には、本発明のニッケル電気めっき溶液は、以降に詳述する、金めっき層を含むプリント回路板の製造に用いることができる。
本発明は、絶縁基板、銅めっき層、ニッケルめっき層、及び金めっき層を含むプリント回路板も提供する。
前記絶縁基板は絶縁層として働き、ガラス又はエポキシ樹脂などの絶縁性樹脂からなるものであってもよい。
【0033】
前記銅めっき層は前記絶縁基板上に形成される。前記銅めっき層は回路層として働き、従来からの電解銅めっきプロセス又は無電解銅めっきプロセスにより形成されてもよい。前記銅めっき層は、フォトレジスト、ビアホール、及びスルーホールの埋め込みめっき(fill plating)により形成された回路パターンを有していてもよい。
【0034】
前記ニッケルめっき層は前記銅めっき層上に形成される。前記ニッケルめっき層は、前記銅めっき層と前記金めっき層との間の接着(ボンディング)を増大させるのに働き、前記ニッケル電気めっき溶液を用いた電気めっきにより形成されてもよい。前記ニッケル電気めっき溶液を用いた前記ニッケルめっき層の形成のためのめっき条件は特に限定されない。例えば、めっきは45~55℃の温度及び1~5A/dm2の電流密度で行われてもよい。
【0035】
前記ニッケル電気めっき溶液を用いた前記ニッケル電気めっき層は、0.3以下(特には0.1~0.25)の表面光沢度及び0.35μm以上(特には0.45~0.75μm)の表面粗さ(Ra)を有してもよい。前記表面光沢度は、分光光度法に基づいて以下の式によって計算することができる。
[式] 表面光沢度(T)=(I/I0)×100
ここで、Ioはニッケルめっき層を通過する前の光(紫外光、可視光、又は赤外光)の強度であり、Iはニッケルめっき層を通過した後の光(紫外光、可視光、又は赤外光)の強度である。
【0036】
参考までに、表面光沢度が0.3以下の場合、ニッケルめっき層の表面は、目視で観察したときに、色が、深く濃い灰色(deep dark gray)である。また、表面光沢度が0.3を超える場合、ニッケルめっき層の表面は、色が、薄い灰色である。
【0037】
前記金めっき層は、前記ニッケルめっき層上に形成され、ワイヤーボンディングのための表面を提供するのに働く。前記金めっき層は、従来からの電解金めっきプロセス(特には、電解ソフト金めっき)により形成することができる。
【0038】
前記ニッケルめっき層は、前述のニッケル電気めっき溶液を用いて形成される。前記ニッケルめっき層は0.3以下の表面光沢度(このことはニッケルめっき層の高いマット性を示している)及び0.35μm以上という高い表面粗さを有している。前記ニッケルめっき層の表面性状は、半導体パッケージの信頼性が評価された場合に、本発明のプリント回路板を用いて製造された半導体パッケージにおける光散乱検出器により検出される欠陥の数を最小化することができ、金めっき層が配線にボンディングされた安定な状態を維持することができる。
【0039】
以下の実施例を参照しながら以下で本発明をより具体的に説明する。ただし、これらの実施例は例示目的で与えられるものであって、本発明の範囲を限定するように機能するものではない。本発明の範囲及び精神から逸脱すること無しに様々な改変及び変更が可能であることは、当業者にとって明らかであろう。
【0040】
<実施例1>
クエン酸(240g/l)、クエン酸ナトリウム(260g/l)、酢酸ナトリウム(300g/l)、プロピオン酸ナトリウム(200g/l)、及びグリシン(1g/l)を一緒に混ぜて、電解ニッケルめっき用表面改質剤を調製した。
<実施例2>
クエン酸の代わりに乳酸を用いたこと以外は実施例1と同様にして、電解ニッケルめっき用表面改質剤を調製した。
<比較例1>
クエン酸の代わりにギ酸エチルを用いたこと以外は実施例1と同様にして、電解ニッケルめっき用表面改質剤を調製した。
【0041】
<調製例1>
スルファミン酸ニッケル(Ni(SO3NH2)2、90g/l)、臭化ニッケル(Ni(II)Br2、3g/l)、ホウ酸(H3BO3、40g/l)、ラウリル硫酸ナトリウム(0.4g/l)、スルファマート含有化合物(SNP 500PH、5g/l)、及び実施例1の表面改質剤(10g/l)を一緒に混ぜて、ニッケル電気めっき溶液を調製した。
<調製例2>
実施例1の表面改質剤の代わりに実施例2の表面改質剤を用いたこと以外は調製例1と同様にして、ニッケル電気めっき溶液を調製した。
【0042】
<比較調製例1>
実施例1の表面改質剤の代わりに比較例1の電解ニッケルめっき用表面改質剤を用いたこと以外は調製例1と同様にして、ニッケル電気めっき溶液を調製した。
<比較調製例2>
実施例1の表面改質剤を除いたこと以外は調製例1と同様にして、ニッケル電気めっき溶液を調製した。
【0043】
<実験例1>
表1に示した条件の下で銅基板上に電解ニッケルめっきを行い、ニッケルめっき層を形成した。
【0044】
【0045】
ニッケルめっき層の表面光沢度及び表面粗さを以下のようにして測定した。
●ニッケルめっき層の表面光沢度は分光光度測定に基づいてSE検出器を用いて測定した。
●ニッケルめっき層の表面粗さ(Ra)は常法により二次電子(SE)検出器で測定した。
結果を
図1~
図5に示す。
【0046】
図1~
図4は、調製例1及び2並びに比較調製例1及び2それぞれのニッケル電気めっき溶液を用いて形成したニッケルめっき層の表面光沢を示すSEM画像である。表面光沢度は、0.23(調製例1)、0.30(調製例2)、0.32(比較調製例1)、及び0.35(比較調製例2)であった。調製例1のニッケル電気めっき溶液を用いて形成したニッケルめっき層の表面光沢度及び調製例2のニッケル電気めっき溶液を用いて形成したニッケルめっき層の表面光沢度が、比較調製例1のニッケル電気めっき溶液を用いて形成したニッケルめっき層の表面光沢度及び比較調製例2のニッケル電気めっき溶液を用いて形成したニッケルめっき層の表面光沢度よりも低いことは、調製例1のニッケル電気めっき溶液を用いて形成したニッケルめっき層のマット性及び調製例2のニッケル電気めっき溶液を用いて形成したニッケルめっき層のマット性がより良好であることを示している。
【0047】
図5は、調製例1のニッケル電気めっき溶液を用いて形成したニッケルめっき層の表面粗さ及び比較調製例2のニッケル電気めっき溶液を用いて形成したニッケルめっき層の表面粗さを示す。調製例1のニッケル電気めっき溶液を用いたニッケル電気めっき層の表面粗さは0.59μmであったが、これは、比較調製例2ニッケル電気めっき溶液を用いたニッケル電気めっき層の表面粗さ(0.32μm)よりも高かった。
【0048】
[実験例2]
実験例1と同様にしてニッケルめっき層を形成した。該ニッケルめっき層の以下の物性を以下のように評価した。
●ワイヤーボンディング性:従来法によりニッケルめっき層上に電解ソフト金めっきを行い、金ワイヤーを金めっき層にボンディングし、そして剥離試験を行った。
●表面硬さ:Micro Vickers硬度計を用いて、韓国産業規格(KS) B0811 2003試験規格に準拠して、インデンターを用いて10秒間25gfの加重で力をニッケルめっき層にかけた後に、インデンターの表面サイズを測定して、前記ニッケルめっき層の表面硬さを求めた。
●均一な電着コート性:ハルセル試験(Hull cell test)を行った。
【0049】
結果を
図6~
図8に示した。
図6を参照すると、調製例1のニッケル電気めっき溶液を用いたニッケル電気めっき層のワイヤーボンディング性は、比較調製例1のニッケル電気めっき溶液を用いたニッケル電気めっき層のワイヤーボンディング性よりも良好であった。
図7を参照すると、調製例2のニッケル電気めっき溶液を用いたニッケル電気めっき層の表面硬さは、比較調製例2のニッケル電気めっき溶液を用いたニッケル電気めっき層の表面硬さよりも高かった。
図8を参照すると、本発明に係る電解ニッケルめっき用表面改質剤の添加(調製例1)にもかかわらず、ニッケルは良好にめっきされた。
【国際調査報告】