(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-06
(54)【発明の名称】抗BKウイルス抗体分子
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230629BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230629BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230629BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230629BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230629BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230629BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20230629BHJP
C07K 16/08 20060101ALI20230629BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230629BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20230629BHJP
A61K 51/10 20060101ALI20230629BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20230629BHJP
G01N 33/569 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
C07K16/08
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P31/12
A61K51/10
G01N33/53 D
G01N33/569 L
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022574127
(86)(22)【出願日】2021-06-09
(85)【翻訳文提出日】2022-12-01
(86)【国際出願番号】 EP2021065462
(87)【国際公開番号】W WO2021250097
(87)【国際公開日】2021-12-16
(32)【優先日】2020-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516243504
【氏名又は名称】メモ テラポイティクス アクチェンゲゼルシャフト
(71)【出願人】
【識別番号】520017801
【氏名又は名称】ウニベルズィテート ベルン
(71)【出願人】
【識別番号】501393966
【氏名又は名称】ウニヴェルジテート・チューリッヒ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITAET ZUERICH
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】ウェーバー マルセル
(72)【発明者】
【氏名】シュミット ジモーネ
(72)【発明者】
【氏名】エッスリンゲル クリシュトフ
(72)【発明者】
【氏名】シャヒトナー トーマス
(72)【発明者】
【氏名】フイン ドー ウエン
(72)【発明者】
【氏名】プロヴェンツァーノ マウリツィオ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
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4B065AA01X
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4C085AA14
4C085CC22
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085KA03
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
抗BKウイルス抗体分子またはその結合断片が開示される。これらの抗BKウイルス抗体分子または結合断片は、BKウイルス感染症および/またはBKウイルス関連疾患の治療または予防に使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、抗BKウイルス抗体分子またはその抗BKウイルス結合断片:
配列番号21の重鎖相補性決定領域1(VHCDR1)アミノ酸配列または1もしくは2個のアミノ酸置換を有する配列、配列番号22の重鎖相補性決定領域2(VHCDR2)アミノ酸配列または1もしくは2個のアミノ酸置換を有する配列、および配列番号23の重鎖相補性決定領域3(VHCDR3)アミノ酸配列または1もしくは2個のアミノ酸置換を有する配列を含む重鎖可変領域(VH)、および
配列番号24の軽鎖相補性決定領域1(VLCDR1)アミノ酸配列または1もしくは2個のアミノ酸置換を有する配列、配列番号25の軽鎖相補性決定領域2(VLCDR2)アミノ酸配列または1もしくは2個のアミノ酸置換を有する配列、および配列番号26の軽鎖相補性決定領域3(VLCDR3)アミノ酸配列または1もしくは2個のアミノ酸置換を有する配列を含む軽鎖可変領域(VL)。
【請求項2】
以下を含む、請求項1に記載の抗体分子またはその結合断片。
配列番号21の重鎖相補性決定領域1(VHCDR1)アミノ酸配列、および配列番号22の重鎖相補性決定領域2(VHCDR2)アミノ酸配列、および配列番号23の重鎖相補性決定領域3(VHCDR3)アミノ酸配列を含む、重鎖可変領域(VH);および
配列番号24の軽鎖相補性決定領域1(VLCDR1)アミノ酸配列、配列番号25の軽鎖相補性決定領域2(VLCDR2)アミノ酸配列および配列番号26の軽鎖相補性決定領域3(VLCDR3)アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)。
【請求項3】
以下を含む、請求項1または2に記載の抗体分子またはその結合断片:
(i)配列番号27のアミノ酸配列、または配列番号27と少なくとも約85%、90%、95%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および配列番号28のアミノ酸配列、または配列番号28に対して少なくとも約85%、90%、95%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(ii)配列番号27のアミノ酸配列、または配列番号27に対して少なくとも約85%、90%、95%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域(VH)、および配列番号31のアミノ酸配列、または配列番号31に対して少なくとも約85%、90%、95%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域(VL)。
【請求項4】
以下を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の抗体分子またはその結合断片:
(i)配列番号27のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および配列番号28のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL);または
(ii)配列番号27のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および配列番号31のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)。
【請求項5】
以下の性質の1つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8または9)を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体分子またはその結合断片。
(i)BKウイルス血清型I VP1に結合し、例えば、抗体分子またはその結合断片が、例えば実施例2に記載されるように、ELISAを用いて二価の分子として試験される場合、EC50が約10nM、1nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、0.19nM、0.18nM、0.17nM、0.16nM、0.15nM、0.14nM、0.13nM、0.12nM、0.11nM、0.10nM、0.09nM、0.08nM、0.07nM、0.06nM、0.05nM、0.04nM、0.03nMまたは0.02nM未満である;
(ii)BKウイルス血清型II VP1に結合し、例えば、抗体分子またはその結合断片が、例えば実施例2に記載されるように、ELISAを用いて二価の分子として試験される場合、EC50が約10nM、1nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、0.19nM、0.18nM、0.17nM、0.16nM、0.15nM、0.14nM、0.13nM、0.12nM、0.11nM、0.10nM、0.09nM、0.08nM、0.07nM、0.06nM、0.05nM、0.04nM、0.03nMまたは0.02nM未満である;
(iii)BKウイルス血清型III VP1に結合し、例えば、抗体分子またはその結合断片が、例えば実施例2に記載されるように、ELISAを用いて二価の分子として試験される場合、EC50が約10nM、1nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、0.19nM、0.18nM、0.17nM、0.16nM、0.15nM、0.14nM、0.13nM、0.12nM、0.11nM、0.10nM、0.09nM、0.08nM、0.07nM、0.06nM、0.05nM、0.04nM、0.03nMまたは0.02nM未満である;
(iv)BKウイルス血清型IV VP1に結合し、例えば、抗体分子またはその結合断片が、例えば実施例2に記載されるように、ELISAを用いて二価の分子として試験される場合、EC50が約10nM、1nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、0.19nM、0.18nM、0.17nM、0.16nM、0.15nM、0.14nM、0.13nM、0.12nM、0.11nM、0.10nM、0.09nM、0.08nM、0.07nM、0.06nM、0.05nM、0.04nM、0.03nMまたは0.02nM未満である;
(v)JCウイルスVP1とは結合しない、
(vi)BKウイルス血清型Iを中和する;
(vii)BKウイルス血清型IIを中和する;
(viii)BKウイルス血清型IIIを中和する;
(ix)BKウイルス血清型IVを中和する。
【請求項6】
BKウイルス血清型I VP1、BKウイルス血清型II VP1、BKウイルス血清型III VP1、および/またはBKウイルス血清型IV VP1への結合を、請求項1~5のいずれか1項に記載の抗体分子またはその結合断片と競合する、抗体分子またはその結合断片。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の抗体分子またはその結合断片と、薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤とを含む、医薬組成物。
【請求項8】
BKウイルス感染症および/またはBKウイルス関連疾患の治療または予防に使用するための、請求項1~6のいずれか1項に記載の抗体分子もしくはその結合断片、または請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか1項に記載の抗体分子またはその結合断片の抗体重鎖および/または軽鎖可変領域をコードする核酸。
【請求項10】
請求項9に記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項11】
請求項9に記載の核酸又は請求項10に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項12】
請求項11に記載の宿主細胞を遺伝子発現に適した条件下で培養することを含む、抗体分子を製造する方法。
【請求項13】
請求項1~6のいずれか1項に記載の抗体分子またはその結合断片を含む診断用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、抗BKウイルス抗体分子またはその結合断片に関する。本開示は、さらに、抗体分子またはその結合断片をコードする核酸、発現ベクター、宿主細胞、および抗体分子またはその結合断片を製造する方法に関する。また、この抗体分子またはその結合断片を含む医薬組成物も提供される。本開示の抗BKウイルス抗体分子またはその結合断片は、BKウイルス感染症および/またはBKウイルス関連疾患を治療または予防するために(単独または他の薬剤もしくは治療様式と組み合わせて)使用することができる。したがって、本開示は、さらに、BKウイルス感染症および/またはBKウイルス関連疾患の治療または予防に使用するための、抗BKウイルス抗体分子またはその結合断片、あるいは抗BKウイルス抗体分子またはその結合断片を含む医薬組成物に関する。また、当該抗体分子またはその結合断片を含む診断用組成物も提供される。
【背景技術】
【0002】
免疫抑制剤は、移植を受けた患者の生着を可能にし、移植片の拒絶反応を防ぐための標準的な治療法である。免疫抑制は、例えば腎臓移植レシピエントの40~50%においてヒトBKポリオーマウイルスの再活性化を誘発し(Hurdiss et al., Structure, 2016 Apr 5;24(4):528-536)、最大10%の症例でBKウイルス(BKV)関連腎症(BKVAN)につながる(Bennett et al., Microbes Infect, 2012 Aug;14(9):672-83, Rinaldo et al, APMIS, 2013 Aug;121(8):728-45)。BKVANは深刻な脅威であり、移植片機能の低下や移植片の喪失につながる可能性もある(Ramos et al, Transplantation, 2009 Mar 15;87(5):621-30)。抗ウイルス剤の使用は、一貫した有効性の結果が得られておらず、価値ある治療法とは考えられていない(Santeusanio et al.Am J Health Syst Pharm, 2017 Dec 15;74(24):2037-2045; Kable et al., Transplant Direct, 2017 Mar 10;3(4):e142)。
【0003】
そのため、急性ウイルス血症の標準的な治療法は、免疫抑制を弱めて免疫系がウイルスを抑えることができるようにすることである。しかし、この場合、ドナー特異的な抗体の形成など、宿主と移植片の免疫反応により、短期的・長期的に移植片が機能不全に陥る大きなリスクがある。
【0004】
免疫抑制患者における予防的または根治的治療のための改善策の必要性に鑑み、BKウイルス活性を中和するための新しい組成物が非常に望まれている。
【発明の概要】
【0005】
局面A
一局面A1において、本開示は、抗BKウイルス抗体分子またはその抗BKウイルス結合断片に関する。
【0006】
構造特性
局面A1のいくつかの実施形態において、本開示は、抗BKウイルス抗体分子またはその抗BKウイルス結合断片に関し、抗体分子または結合断片は、表3に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)および/または軽鎖可変領域(VL)から、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つの相補性決定領域(CDR)(または集合的にCDRの全て)を含み、ここで、CDRの1以上(または集合的にCDRの全て)は1、2、3、4、5、6またはそれ以上の変化、例えば表3に示されるアミノ酸配列に対して、アミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)、挿入または欠失を有していてもよい。
【0007】
局面A1のいくつかの実施態様において、本開示は、以下を含む抗BKウイルス抗体分子またはその抗BKウイルス結合断片に関する:
以下の1、2または3個を含む重鎖可変領域(VH):配列番号21の重鎖相補性決定領域1(VHCDR1)アミノ酸配列または1、2、3または4個のアミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)、挿入または欠失を有する配列、配列番号22の重鎖相補性決定領域2(VHCDR2)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば保存的アミノ酸置換)、挿入または欠失を有する配列、および配列番号23の重鎖相補性決定領域3(VHCDR3)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)、挿入もしくは欠失を有する配列;および/または
以下の1、2または3個を含む軽鎖可変領域(VL):配列番号24の軽鎖相補性決定領域1(VLCDR1)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば保存的アミノ酸置換)、挿入または欠失を有する配列、配列番号25の軽鎖相補性決定領域2(VLCDR2)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば保存的アミノ酸置換)、挿入もしくは欠失を有する配列、および配列番号26の軽鎖相補性決定領域3(VLCDR3)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば保存的アミノ酸置換)、挿入または欠失を有する配列。
【0008】
局面A1のいくつかの実施態様において、本開示は、
配列番号23の重鎖相補性決定領域3(VHCDR3)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)を有する配列を含む重鎖可変領域(VH);および/または
配列番号26の軽鎖相補性決定領域3(VLCDR3)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)を有する配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、抗BKウイルス抗体分子またはその抗BKウイルス結合断片に関する。
【0009】
局面A1のいくつかの実施態様において、本開示は、以下を含む抗BKウイルス抗体分子またはその抗BKウイルス結合断片に関する:
配列番号21の重鎖相補性決定領域1(VHCDR1)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば保存的アミノ酸置換)を有する配列、および配列番号22の重鎖相補性決定領域2(VHCDR2)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば,保存的アミノ酸置換)を有する配列、および配列番号23の重鎖相補性決定領域3(VHCDR3)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)を有する配列を含む、重鎖可変領域(VH);および/または
配列番号24の軽鎖相補性決定領域1(VLCDR1)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば保存的アミノ酸置換)を有する配列、配列番号25の軽鎖相補性決定領域2(VLCDR2)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば保存的アミノ酸置換)を有する配列、および配列番号26の軽鎖相補性決定領域3(VLCDR3)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば保存的アミノ酸置換)を有する配列を含む、軽鎖可変領域(VL)。
【0010】
局面A1のいくつかの実施態様において、本開示は、以下を含む抗BKウイルス抗体分子またはその抗BKウイルス結合断片に関する:
配列番号21の重鎖相補性決定領域1(VHCDR1)のアミノ酸配列、および配列番号22の重鎖相補性決定領域2(VHCDR2)のアミノ酸配列、または1、2、もしくは3個のアミノ酸置換を有する配列、および配列番号23の重鎖相補性決定領域3(VHCDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH);および/または
配列番号24の軽鎖相補性決定領域1(VLCDR1)アミノ酸配列、または1もしくは2個のアミノ酸置換を有する配列、配列番号25の軽鎖相補性決定領域2(VLCDR2)のアミノ酸配列、および 配列番号26の軽鎖相補性決定領域3(VLCDR3)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換を有する配列を含む、軽鎖可変領域(VL)。
【0011】
局面A1のいくつかの実施形態では、抗BKウイルス抗体分子またはその抗BKウイルス結合断片は、以下を含む:
配列番号21の重鎖相補性決定領域1(VHCDR1)アミノ酸配列、および配列番号22の重鎖相補性決定領域2(VHCDR2)アミノ酸配列、および配列番号23の重鎖相補性決定領域3(VHCDR3)アミノ酸配列を含む、重鎖可変領域(VH);および
配列番号24の軽鎖相補性決定領域1(VLCDR1)アミノ酸配列、配列番号25の軽鎖相補性決定領域2(VLCDR2)のアミノ酸配列、および配列番号26の軽鎖相補性決定領域3(VLCDR3)のアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域(VL)、
ここで、CDR内の1つまたは2つのアミノ酸が挿入、欠失または置換されている。
【0012】
局面A1のいくつかの実施形態では、抗BKウイルス抗体分子またはその抗BKウイルス結合断片は、以下を含む:
配列番号21の重鎖相補性決定領域1(VHCDR1)アミノ酸配列、および配列番号22の重鎖相補性決定領域2(VHCDR2)アミノ酸配列、および配列番号23の重鎖相補性決定領域3(VHCDR3)アミノ酸配列を含む、重鎖可変領域(VH);および
配列番号24の軽鎖相補性決定領域1(VLCDR1)アミノ酸配列、配列番号25の軽鎖相補性決定領域2(VLCDR2)アミノ酸配列および配列番号26の軽鎖相補性決定領域3(VLCDR3)アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)。
【0013】
局面A1のいくつかの実施形態では、抗BKウイルス抗体分子またはその抗BKウイルス結合断片は、配列番号27のアミノ酸配列、または配列番号27に対して少なくとも約85%、90%、95%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)を含む。
【0014】
局面A1のいくつかの実施形態では、抗BKウイルス抗体分子またはその抗BKウイルス結合断片は、以下を含む:
(i) 配列番号28のアミノ酸配列、または配列番号28に対して少なくとも約85%、90%、95%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL);または
(ii) 配列番号31のアミノ酸配列、または配列番号31に対して少なくとも約85%、90%、95%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)。
【0015】
局面A1のいくつかの実施形態では、抗BKウイルス抗体分子またはその抗BKウイルス結合断片は、以下を含む:
(i) 配列番号27のアミノ酸配列、または配列番号27と少なくとも約85%、90%、95%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および配列番号28のアミノ酸配列、または配列番号28に対して少なくとも約85%、90%、95%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(ii) 配列番号27のアミノ酸配列、または配列番号27に対して少なくとも約85%、90%、95%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域(VH)、および配列番号31のアミノ酸配列、または配列番号31に対して少なくとも約85%、90%、95%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域(VL)。
【0016】
局面A1のいくつかの実施形態では、抗BKウイルス抗体分子またはその抗BKウイルス結合断片は、以下を含む:
(i) 配列番号27のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および配列番号28のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL);または
(ii) 配列番号27のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および配列番号31のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)。
【0017】
機能特性
局面A1のいくつかの実施形態では、抗BKウイルス抗体分子またはその抗BKウイルス結合断片は、以下の特性の1つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8または9)を含む:
(i) BKウイルス血清型I VP1に結合し、例えば、抗体分子またはその結合断片が、例えば実施例2に記載されるように、ELISAを用いて二価の分子として試験される場合、EC50が約10nM、1nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、0.19nM、0.18nM、0.17nM、0.16nM、0.15nM、0.14nM、0.13nM、0.12nM、0.11nM、0.10nM、0.09nM、0.08nM、0.07nM、0.06nM、0.05nM、0.04nM、0.03nMまたは0.02nM未満である;
(ii) BKウイルス血清型II VP1に結合し、例えば、抗体分子またはその結合断片が、例えば実施例2に記載されるように、ELISAを用いて二価の分子として試験される場合、EC50が約10nM、1nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、0.19nM、0.18nM、0.17nM、0.16nM、0.15nM、0.14nM、0.13nM、0.12nM、0.11nM、0.10nM、0.09nM、0.08nM、0.07nM、0.06nM、0.05nM、0.04nM、0.03nMまたは0.02nM未満である;
(iii) BKウイルス血清型III VP1に結合し、例えば、抗体分子またはその結合断片が、例えば実施例2に記載されるように、ELISAを用いて二価の分子として試験される場合、EC50が約10nM、1nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、0.19nM、0.18nM、0.17nM、0.16nM、0.15nM、0.14nM、0.13nM、0.12nM、0.11nM、0.10nM、0.09nM、0.08nM、0.07nM、0.06nM、0.05nM、0.04nM、0.03nMまたは0.02nM未満である;
(iv) BKウイルス血清型IV VP1に結合し、例えば、抗体分子またはその結合断片が、例えば実施例2に記載されるように、ELISAを用いて二価の分子として試験される場合、EC50が約10nM、1nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、0.19nM、0.18nM、0.17nM、0.16nM、0.15nM、0.14nM、0.13nM、0.12nM、0.11nM、0.10nM、0.09nM、0.08nM、0.07nM、0.06nM、0.05nM、0.04nM、0.03nMまたは0.02nM未満である;
(v) 例えば、実施例6に記載されているように、JCウイルスVP1に結合しない;
(vi) BKウイルス血清型Iを中和する;
(vii) BKウイルス血清型IIを中和する;
(viii) BKウイルス血清型IIIを中和する;
(ix) BKウイルス血清型IVを中和する。
【0018】
一局面A2において、本開示は、BKウイルス血清型I VP1、BKウイルス血清型II VP1、BKウイルス血清型III VP1、および/またはBKウイルス血清型IV VP1への結合を本明細書に記載の抗体分子またはその結合断片と競合する、抗体分子またはその結合断片に関する。局面A2のいくつかの実施形態において、本開示は、BKウイルス遺伝子型I VP1、BKウイルス遺伝子型II VP1、BKウイルス遺伝子型III VP1、および/またはBKウイルス遺伝子型IV VP1への結合を、以下を含む抗体分子またはその結合断片と競合する、抗体分子またはその結合断片に関する:配列番号21の重鎖相補性決定領域1(VHCDR1)のアミノ酸配列、および 配列番号22の重鎖相補性決定領域2(VHCDR2)のアミノ酸配列、および配列番号23の重鎖相補性決定領域3(VHCDR3)のアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域(VH);および
配列番号24の軽鎖相補性決定領域1(VLCDR1)アミノ酸配列、配列番号25の軽鎖相補性決定領域2(VLCDR2)アミノ酸配列および配列番号26の軽鎖相補性決定領域3(VLCDR3)アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)。
【0019】
局面A2のいくつかの実施形態において、本開示は、BKウイルス遺伝子型I VP1、BKウイルス遺伝子型II VP1、BKウイルス遺伝子型III VP1、および/またはBKウイルス遺伝子型IV VP1への結合を、以下を含む抗体分子またはその結合断片と競合する、抗体分子またはその結合断片に関する:
(i) 配列番号27のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および配列番号28のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL);または
(ii) 配列番号27のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および配列番号31のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)。
【0020】
一局面A3において、本開示は、本明細書に記載の抗体分子又はその結合断片と、薬学的に許容される担体、賦形剤又は安定剤とを含む、医薬組成物に関する。
【0021】
一局面A4において、本開示は、BKウイルス感染症および/またはBKウイルス関連疾患の治療または予防に使用するための、本明細書に記載の抗BKウイルス抗体分子またはその結合断片、あるいは抗BKウイルス抗体分子またはその結合断片を含む医薬組成物に関する。局面A4のいくつかの実施形態では、BKウイルス関連疾患は、ネフロパシー、BKウイルス関連腎症(BKVAN)、出血性膀胱炎(HC)からなる群から選択される。
【0022】
一局面A5において、本開示は、本明細書に記載の抗体分子またはその結合断片の抗体重鎖および/または軽鎖可変領域をコードする核酸に関する。
【0023】
一局面A6において、本開示は、本明細書に記載の核酸を含む発現ベクターに関する。
【0024】
一局面A7において、本開示は、本明細書に記載の核酸又は本明細書に記載の発現ベクターを含む宿主細胞に関する。
【0025】
一局面A8において、本開示は、抗体分子を製造する方法に関し、本方法は、遺伝子発現に適した条件下で、本明細書に記載の宿主細胞を培養することを含む。
【0026】
一局面A9において、本開示は、本明細書に記載の抗体分子又はその結合断片を含む診断用組成物に関する。
【0027】
局面B
一局面B1において、本開示は、抗BKウイルス抗体分子またはその抗BKウイルス結合断片に関する。
【0028】
構造特性
局面B1のいくつかの実施形態において、本開示は、抗BKウイルス抗体分子またはその抗BKウイルス結合断片に関し、抗体分子または結合断片は、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つの相補性決定領域(CDR)(または集合的にCDRの全て)を表4に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)および/または軽鎖可変領域(VL)から含み、ここで、CDRの1以上(または集合的にCDRの全て)は1、2、3、4、5、6またはそれ以上の変化、例えば表4に示されるアミノ酸配列に対して、アミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)、挿入または欠失を有していてもよい。
【0029】
局面B1のいくつかの実施態様において、本開示は、以下を含む抗BKウイルス抗体分子またはその抗BKウイルス結合断片に関する:
(i) 配列番号34の重鎖相補性決定領域1(VHCDR1)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば保存的アミノ酸置換)、挿入または欠失を有する配列、配列番号35の重鎖相補性決定領域2(VHCDR2)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば保存的アミノ酸置換)、挿入または欠失を有する配列、および配列番号36の重鎖相補性決定領域3(VHCDR3)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)、挿入もしくは欠失を有する配列のうちの1、2または3個を含む、重鎖可変領域(VH);および/または配列番号37の軽鎖相補性決定領域1(VLCDR1)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば保存的アミノ酸置換)、挿入または欠失を有する配列、配列番号38の軽鎖相補性決定領域2(VLCDR2)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば保存的アミノ酸置換)、挿入もしくは欠失を有する配列、および配列番号39の軽鎖相補性決定領域3(VLCDR3)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば保存的アミノ酸置換)、挿入もしくは欠失を有する配列のうちの1、2または3個を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(ii) 配列番号34の重鎖相補性決定領域1(VHCDR1)アミノ酸配列または1、2、3または4個のアミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)、挿入または欠失を有する配列、配列番号44の重鎖相補性決定領域2(VHCDR2)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば保存的アミノ酸置換)、挿入または欠失を有する配列、および配列番号36の重鎖相補性決定領域3(VHCDR3)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)、挿入もしくは欠失を有する配列のうちの1、2または3個を含む、重鎖可変領域(VH);および/または配列番号37の軽鎖相補性決定領域1(VLCDR1)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば保存的アミノ酸置換)、挿入または欠失を有する配列、配列番号38の軽鎖相補性決定領域2(VLCDR2)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば保存的アミノ酸置換)、挿入もしくは欠失を有する配列、および 配列番号39の軽鎖相補性決定領域3(VLCDR3)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば保存的アミノ酸置換)、挿入もしくは欠失を有する配列のうちの1、2または3個を含む、軽鎖可変領域(VL)、または
(iii) 配列番号34の重鎖相補性決定領域1(VHCDR1)アミノ酸配列または1、2、3または4個のアミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)、挿入または欠失を有する配列、配列番号44の重鎖相補性決定領域2(VHCDR2)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば保存的アミノ酸置換)、挿入または欠失を有する配列、および配列番号36の重鎖相補性決定領域3(VHCDR3)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)、挿入もしくは欠失を有する配列のうちの1、2または3個を含む、重鎖可変領域(VH);および/または配列番号37の軽鎖相補性決定領域1(VLCDR1)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば保存的アミノ酸置換)、挿入または欠失を有する配列、配列番号38の軽鎖相補性決定領域2(VLCDR2)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば保存的アミノ酸置換)、挿入もしくは欠失を有する配列、および 配列番号48の軽鎖相補性決定領域3(VLCDR3)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば保存的アミノ酸置換)、挿入もしくは欠失を有する配列のうちの1、2または3個を含む、軽鎖可変領域(VL)。
【0030】
局面B1のいくつかの実施態様において、本開示は、以下を含む抗BKウイルス抗体分子またはその抗BKウイルス結合断片に関する:
(i) 配列番号36の重鎖相補性決定領域3(VHCDR3)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)を有する配列を含む重鎖可変領域(VH);および/または
配列番号39の軽鎖相補性決定領域3(VLCDR3)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)を有する配列を含む軽鎖可変領域(VL)。
(ii) 配列番号36の重鎖相補性決定領域3(VHCDR3)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)を有する配列を含む重鎖可変領域(VH);および/または
配列番号48の軽鎖相補性決定領域3(VLCDR3)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)を有する配列を含む軽鎖可変領域(VL)。
【0031】
局面B1のいくつかの実施態様において、本開示は、以下を含む抗BKウイルス抗体分子またはその抗BKウイルス結合断片に関する:
(i) 配列番号34の重鎖相補性決定領域1(VHCDR1)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば保存的アミノ酸置換)を有する配列、および配列番号35の重鎖相補性決定領域2(VHCDR2)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば保存的アミノ酸置換)を有する配列、および配列番号36の重鎖相補性決定領域3(VHCDR3)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)を有する配列を含む重鎖可変領域(VH);および/または
配列番号37の軽鎖相補性決定領域1(VLCDR1)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば保存的アミノ酸置換)を有する配列、配列番号38の軽鎖相補性決定領域2(VLCDR2)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば保存的アミノ酸置換)を有する配列、および 配列番号39の軽鎖相補性決定領域3(VLCDR3)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば保存的アミノ酸置換)を有する配列を含む軽鎖可変領域(VL);または
(ii) 配列番号34の重鎖相補性決定領域1(VHCDR1)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば保存的アミノ酸置換)を有する配列、および 配列番号44の重鎖相補性決定領域2(VHCDR2)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば保存的アミノ酸置換)を有する配列、および 配列番号36の重鎖相補性決定領域3(VHCDR3)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)を有する配列を含む、重鎖可変領域(VH);および/または
配列番号37の軽鎖相補性決定領域1(VLCDR1)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば保存的アミノ酸置換)を有する配列、配列番号38の軽鎖相補性決定領域2(VLCDR2)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば保存的アミノ酸置換)を有する配列、および 配列番号39の軽鎖相補性決定領域3(VLCDR3)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば保存的アミノ酸置換)を有する配列を含む軽鎖可変領域(VL);または
(iii) 配列番号34の重鎖相補性決定領域1(VHCDR1)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば保存的アミノ酸置換)を有する配列、および配列番号44の重鎖相補性決定領域2(VHCDR2)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば保存的アミノ酸置換)を有する配列、および配列番号36の重鎖相補性決定領域3(VHCDR3)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)を有する配列を含む、重鎖可変領域(VH);および/または
配列番号37の軽鎖相補性決定領域1(VLCDR1)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば保存的アミノ酸置換)を有する配列、配列番号38の軽鎖相補性決定領域2(VLCDR2)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば保存的アミノ酸置換)を有する配列、および 配列番号48の軽鎖相補性決定領域3(VLCDR3)アミノ酸配列、または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換(例えば保存的アミノ酸置換)を有する配列を含む軽鎖可変領域(VL)。
【0032】
局面B1のいくつかの実施態様において、本開示は、以下を含む抗BKウイルス抗体分子またはその抗BKウイルス結合断片に関する:
(i)配列番号34の重鎖相補性決定領域1(VHCDR1)アミノ酸配列、配列番号35の重鎖相補性決定領域2(VHCDR2)アミノ酸配列または1、2もしくは3個のアミノ酸置換を有する配列、および配列番号36の重鎖相補性決定領域3(VHCDR3)アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および/または
配列番号37の軽鎖相補性決定領域1(VLCDR1)アミノ酸配列または1もしくは2個のアミノ酸置換を有する配列、配列番号38の軽鎖相補性決定領域2(VLCDR2)アミノ酸配列、配列番号39の軽鎖相補性決定領域3(VLCDR3)のアミノ酸配列または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換を有する配列を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(ii) 配列番号34の重鎖相補性決定領域1(VHCDR1)アミノ酸配列、配列番号44の重鎖相補性決定領域2(VHCDR2)アミノ酸配列または1、2もしくは3個のアミノ酸置換を有する配列、および配列番号36の重鎖相補性決定領域3(VHCDR3)アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および/または
配列番号37の軽鎖相補性決定領域1(VLCDR1)アミノ酸配列または1もしくは2個のアミノ酸置換を有する配列、配列番号38の軽鎖相補性決定領域2(VLCDR2)アミノ酸配列、配列番号39の軽鎖相補性決定領域3(VLCDR3)のアミノ酸配列 または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換を有する配列を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(iii) 配列番号34の重鎖相補性決定領域1(VHCDR1)アミノ酸配列、配列番号44の重鎖相補性決定領域2(VHCDR2)アミノ酸配列または1、2もしくは3個のアミノ酸置換を有する配列、および配列番号36の重鎖相補性決定領域3(VHCDR3)アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および/または
配列番号37の軽鎖相補性決定領域1(VLCDR1)アミノ酸配列または1もしくは2個のアミノ酸置換を有する配列、配列番号38の軽鎖相補性決定領域2(VLCDR2)アミノ酸配列、配列番号48の軽鎖相補性決定領域3(VLCDR3)のアミノ酸配列 または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸置換を有する配列を含む軽鎖可変領域(VL)。
【0033】
局面B1のいくつかの実施形態では、抗BKウイルス抗体分子またはその抗BKウイルス結合断片は、以下を含む:
(i) 配列番号34の重鎖相補性決定領域1(VHCDR1)アミノ酸配列、配列番号35の重鎖相補性決定領域2(VHCDR2)アミノ酸配列、および配列番号36の重鎖相補性決定領域3(VHCDR3)アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH);および
配列番号37の軽鎖相補性決定領域1(VLCDR1)アミノ酸配列、配列番号38の軽鎖相補性決定領域2(VLCDR2)アミノ酸配列および配列番号39の軽鎖相補性決定領域3(VLCDR3)アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL);
ここで、CDR内の1つまたは2つのアミノ酸が挿入、欠失または置換されている、または
(ii) 配列番号34の重鎖相補性決定領域1(VHCDR1)アミノ酸配列、配列番号44の重鎖相補性決定領域2(VHCDR2)アミノ酸配列、および配列番号36の重鎖相補性決定領域3(VHCDR3)アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH);および
配列番号37の軽鎖相補性決定領域1(VLCDR1)アミノ酸配列、配列番号38の軽鎖相補性決定領域2(VLCDR2)アミノ酸配列および配列番号39の軽鎖相補性決定領域3(VLCDR3)アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL);
ここで、CDR内の1つまたは2つのアミノ酸が挿入、欠失または置換されている、
または
(iii) 配列番号34の重鎖相補性決定領域1(VHCDR1)アミノ酸配列、配列番号44の重鎖相補性決定領域2(VHCDR2)アミノ酸配列、および配列番号36の重鎖相補性決定領域3(VHCDR3)アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH);および
配列番号37の軽鎖相補性決定領域1(VLCDR1)アミノ酸配列、配列番号38の軽鎖相補性決定領域2(VLCDR2)アミノ酸配列および配列番号48の軽鎖相補性決定領域3(VLCDR3)アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL);
ここで、CDR内の1つまたは2つのアミノ酸が挿入、欠失または置換されている。
【0034】
局面B1のいくつかの実施形態では、抗BKウイルス抗体分子またはその抗BKウイルス結合断片は、以下を含む:
(i) 配列番号34の重鎖相補性決定領域1(VHCDR1)アミノ酸配列、配列番号35の重鎖相補性決定領域2(VHCDR2)アミノ酸配列、および配列番号36の重鎖相補性決定領域3(VHCDR3)アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH);および
配列番号37の軽鎖相補性決定領域1(VLCDR1)アミノ酸配列、配列番号38の軽鎖相補性決定領域2(VLCDR2)アミノ酸配列および配列番号39の軽鎖相補性決定領域3(VLCDR3)アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL);または
(ii) 配列番号34の重鎖相補性決定領域1(VHCDR1)アミノ酸配列、配列番号44の重鎖相補性決定領域2(VHCDR2)アミノ酸配列、および配列番号36の重鎖相補性決定領域3(VHCDR3)アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH);および
配列番号37の軽鎖相補性決定領域1(VLCDR1)アミノ酸配列、配列番号38の軽鎖相補性決定領域2(VLCDR2)アミノ酸配列および配列番号39の軽鎖相補性決定領域3(VLCDR3)アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL);または
(iii) 配列番号34の重鎖相補性決定領域1(VHCDR1)アミノ酸配列、配列番号44の重鎖相補性決定領域2(VHCDR2)アミノ酸配列、および配列番号36の重鎖相補性決定領域3(VHCDR3)アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH);および
配列番号37の軽鎖相補性決定領域1(VLCDR1)アミノ酸配列、配列番号38の軽鎖相補性決定領域2(VLCDR2)アミノ酸配列および配列番号48の軽鎖相補性決定領域3(VLCDR3)アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)。
【0035】
局面B1のいくつかの実施形態では、抗BKウイルス抗体分子またはその抗BKウイルス結合断片は、以下を含む:
(i) 配列番号40のアミノ酸配列、または配列番号40に対して少なくとも約85%、90%、95%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、または
(ii) 配列番号45のアミノ酸配列、または配列番号45に対して少なくとも約85%、90%、95%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、または
(iii) 配列番号49のアミノ酸配列、または配列番号49に対して少なくとも約85%、90%、95%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)。
【0036】
局面B1のいくつかの実施形態では、抗BKウイルス抗体分子またはその抗BKウイルス結合断片は、以下を含む:
(i) 配列番号41のアミノ酸配列、または配列番号41に対して少なくとも約85%、90%、95%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(ii) 配列番号50のアミノ酸配列、または配列番号50に対して少なくとも約85%、90%、95%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)。
【0037】
局面B1のいくつかの実施形態では、抗BKウイルス抗体分子またはその抗BKウイルス結合断片は、以下を含む:
(i) 配列番号40のアミノ酸配列、または配列番号40と少なくとも約85%、90%、95%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および配列番号41のアミノ酸配列、または配列番号41に対して少なくとも約85%、90%、95%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(ii) 配列番号45のアミノ酸配列、または配列番号45と少なくとも約85%、90%、95%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および配列番号41のアミノ酸配列、または配列番号41に対して少なくとも約85%、90%、95%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(iii) 配列番号49のアミノ酸配列、または配列番号49と少なくとも約85%、90%、95%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および配列番号50のアミノ酸配列、または配列番号50に対して少なくとも約85%、90%、95%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)。
【0038】
局面B1のいくつかの実施形態では、抗BKウイルス抗体分子またはその抗BKウイルス結合断片は、以下を含む:
(i) 配列番号40のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)。
(ii) 配列番号45のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)。
(iii) 配列番号49のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および配列番号50のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)。
【0039】
機能特性
局面B1のいくつかの実施形態では、抗BKウイルス抗体分子またはその抗BKウイルス結合断片は、以下の特性の1つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8または9)を含む:
(i) BKウイルス血清型I VP1に結合し、例えば、抗体分子またはその結合断片が、例えば実施例2に記載されるように、ELISAを用いて二価の分子として試験される場合、EC50が約10nM、1nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、0.19nM、0.18nM、0.17nM、0.16nM、0.15nM、0.14nM、0.13nM、0.12nM、0.11nM、0.10nM、0.09nM、0.08nM、0.07nM、0.06nM、0.05nM、0.04nM、0.03nMまたは0.02nM未満である;
(ii) BKウイルス血清型II VP1に結合し、例えば、抗体分子またはその結合断片が、例えば実施例2に記載されるように、ELISAを用いて二価の分子として試験される場合、EC50が約10nM、1nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、0.19nM、0.18nM、0.17nM、0.16nM、0.15nM、0.14nM、0.13nM、0.12nM、0.11nM、0.10nM、0.09nM、0.08nM、0.07nM、0.06nM、0.05nM、0.04nM、0.03nMまたは0.02nM未満である;
(iii) BKウイルス血清型III VP1に結合し、例えば、抗体分子またはその結合断片が、例えば実施例2に記載されるように、ELISAを用いて二価の分子として試験される場合、EC50が約10nM、1nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、0.19nM、0.18 nM、0.17 nM、0.16nM、0.15nM、0.14nM、0.13nM、0.12nM、0.11nM、0.10nM、0.09nM、0.08nM、0.07nM、0.06nM、0.05nM、0.04nM、0.03nMまたは0.02nM未満である;
(iv) BKウイルス血清型IV VP1に結合し、例えば、抗体分子またはその結合断片が、例えば実施例2に記載されるように、ELISAを用いて二価の分子として試験される場合、EC50が約10nM、1nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、0.19nM、0.18nM、0.17nM、0.16nM、0.15nM、0.14nM、0.13nM、0.12nM、0.11nM、0.10nM、0.09nM、0.08nM、0.07nM、0.06nM、0.05nM、0.04nM、0.03nMまたは0.02nM未満である;
(v) 例えば、実施例6に記載されているように、JCウイルスVP1に結合しない;
(vi) BKウイルス血清型Iを中和する;
(vii) BKウイルス血清型IIを中和する;
(viii) BKウイルス血清型IIIを中和する;
(ix) BKウイルス血清型IVを中和する。
【0040】
一局面B2において、本開示は、BKウイルス血清型I VP1、BKウイルス血清型II VP1、BKウイルス血清型III VP1、および/またはBKウイルス血清型IV VP1への結合を本明細書に記載の抗体分子またはその結合断片と競合する、抗体分子またはその結合断片に関する。 局面B2のいくつかの実施形態において、本開示は、BKウイルス遺伝子型I VP1、BKウイルス遺伝子型II VP1、BKウイルス遺伝子型III VP1、および/またはBKウイルス遺伝子型IV VP1への結合を、以下を含む抗体分子またはその結合断片と競合する、抗体分子またはその結合断片に関する:
(i) 配列番号34の重鎖相補性決定領域1(VHCDR1)アミノ酸配列、配列番号35の重鎖相補性決定領域2(VHCDR2)アミノ酸配列、および配列番号36の重鎖相補性決定領域3(VHCDR3)アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH);および
配列番号37の軽鎖相補性決定領域1(VLCDR1)アミノ酸配列、配列番号38の軽鎖相補性決定領域2(VLCDR2)アミノ酸配列および配列番号39の軽鎖相補性決定領域3(VLCDR3)アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL);または
(ii) 配列番号34の重鎖相補性決定領域1(VHCDR1)アミノ酸配列、配列番号44の重鎖相補性決定領域2(VHCDR2)アミノ酸配列、および配列番号36の重鎖相補性決定領域3(VHCDR3)アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH);および
配列番号37の軽鎖相補性決定領域1(VLCDR1)アミノ酸配列、配列番号38の軽鎖相補性決定領域2(VLCDR2)アミノ酸配列および配列番号39の軽鎖相補性決定領域3(VLCDR3)アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL);または
(iii) 配列番号34の重鎖相補性決定領域1(VHCDR1)アミノ酸配列、配列番号44の重鎖相補性決定領域2(VHCDR2)アミノ酸配列、および配列番号36の重鎖相補性決定領域3(VHCDR3)アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH);および
配列番号37の軽鎖相補性決定領域1(VLCDR1)アミノ酸配列、配列番号38の軽鎖相補性決定領域2(VLCDR2)アミノ酸配列および配列番号48の軽鎖相補性決定領域3(VLCDR3)アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)。
【0041】
局面B2のいくつかの実施形態において、本開示は、BKウイルス遺伝子型I VP1、BKウイルス遺伝子型II VP1、BKウイルス遺伝子型III VP1、および/またはBKウイルス遺伝子型IV VP1への結合を、以下を含む抗体分子またはその結合断片と競合する、抗体分子またはその結合断片に関する:
(i) 配列番号40のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)。
(ii) 配列番号45のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)。
(iii) 配列番号49のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および配列番号50のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)。
【0042】
一局面B3において、本開示は、本明細書に記載の抗体分子又はその結合断片と、薬学的に許容される担体、賦形剤又は安定剤とを含む、医薬組成物に関する。
【0043】
一局面B4において、本開示は、BKウイルス感染症および/またはBKウイルス関連疾患の治療または予防に使用するための、本明細書に記載の抗BKウイルス抗体分子またはその結合断片、あるいは抗BKウイルス抗体分子またはその結合断片を含む医薬組成物に関する。局面B4のいくつかの実施形態では、BKウイルス関連疾患は、ネフロパシー、BKウイルス関連腎症(BKVAN)、出血性膀胱炎(HC)からなる群から選択される。
【0044】
一局面B5において、本開示は、本明細書に記載の抗体分子またはその結合断片の抗体重鎖および/または軽鎖可変領域をコードする核酸に関する。
【0045】
一局面B6において、本開示は、本明細書に記載の核酸を含む発現ベクターに関する。
【0046】
一局面B7において、本開示は、本明細書に記載の核酸又は本明細書に記載の発現ベクターを含む宿主細胞に関する。
【0047】
一局面B8において、本開示は、抗体分子を製造する方法に関し、本方法は、遺伝子発現に適した条件下で、本明細書に記載の宿主細胞を培養することを含む。
【0048】
一局面B9において、本開示は、本明細書に記載の抗体分子又はその結合断片を含む診断用組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】ELISA法における抗BKウイルス抗体とBKV-VP1血清型I-IVとの結合性。これらのデータをもとに、GraphPad Prism Softwareで3パラメータ解析を行い、EC50
E値を決定した。
【0050】
【
図2】BKV株(血清型Ia、Ib、II、III、およびIV)の抗体を介した中和を定量的に評価する。293TT細胞を、血清型Ia,Ib,II,III,IVのいずれかのVP1で形成されたルシフェラーゼ発現BKシュードウイルスの感染ターゲットとして使用した。抗BKウイルス抗体は、表示された濃度で使用した。
【0051】
【
図3】抗BKウイルス抗体によるヒト初代尿細管上皮細胞上の野生型BKVの長期的なウイルス中和。細胞、BKウイルス、抗BKウイルス抗体を表示濃度で長時間共培養した後の残存ウイルス量を示す。抗体濃度は、EC95(1.500)、EC50(0.15)、およびEC5(0.015)に対応する。P8D11は、この図では「BM2」と表記する。
【0052】
【
図4】抗BKウイルス抗体と立体配置エピトープとの結合。
【0053】
【
図5】抗体319C07および抗体336F07のVP1変異体およびJCV-に対するELISA法による結合強度を、抗体P8D11と比較して評価した。VP1およびJC-VP1の様々な変異体に対するEC50値を野生型VP1と比較して求めた。VP1変異体は、VP1-STI配列のうち、番号の左側のアミノ酸から番号の右側のアミノ酸まで変化した位置を示す標準的なフォーマットで指定されている。
【0054】
グラフは、抗体319C07、抗体336F07、アイソタイプ対照抗体24C03、抗体P8D11と、選択したBKV-VP1変異体、JCV-VP1、および無関係な抗原としてCMV-gHペンタマーとの結合を示す。
【0055】
表は、試験したすべてのBKV-VP1変異体とJCV-VP1についてのデータを示している。「+」は、元の配列と変異した配列の間で結合親和性に差が見られないことを示す。「red」は結合の減少を示す。「-」は、結合が観察されなかったことを示す。
【0056】
【
図6】抗BKウイルス抗体によるHRPTEC上でのBKV拡散の抑制(この図ではP8D11を「BM2」と表記する)。
【0057】
【
図7】感染および非感染HPRTECに対する抗BKV抗体のADCC活性。
【0058】
【
図8】ヒト血清存在下での感染および非感染HPRTECに対する抗BKV抗体のCDC活性。
【0059】
(詳細な説明)
以下に例示的に説明する本発明は、本明細書に特に開示されていない要素または(複数の)要素、限定または(複数の)限定がない場合にも好適に実施することができる。
【0060】
以下、本発明を特定の実施形態に関して、また特定の図を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。
【0061】
本明細書および特許請求の範囲において、用語「含む」が使用されている場合、それは他の要素を除外するものではない。本発明の目的のために、用語「からなる」は、用語「含む」の好ましい実施形態であると考えられる。以下、あるグループが少なくとも一定数の実施形態を含むと定義される場合、これは、好ましくはこれらの実施形態のみからなるグループを開示するとも理解される。
【0062】
「a」、「an」、「the」など、単数形の名詞を指すときに不定冠詞または定冠詞が使用される場合、他の何かが明確に記述されていない限り、その名詞の複数形を含む。本発明の文脈における「約」又は「およそ」という用語は、当業者が、当該特徴の技術的効果を依然として確保するために理解するであろう精度の間隔を示すものである。指示された数値に対して、±20%、好ましくは±10%、より好ましくは±5%の偏差を示す。
【0063】
専門用語は一般的な意味で使用される。特定の用語に特定の意味がある場合、その用語の定義は、その用語が使用されている文脈で、以下において記載する。
【0064】
本開示のある局面は、少なくとも部分的に、以下の抗BKウイルス抗体分子またはその結合断片の同定に基づく。
- BKウイルス血清型Iに結合して中和する;および/または
- BKウイルス血清型II に結合し中和する;および/または
- BKウイルス血清型IIIに結合し中和する;および/または、
- BKウイルス血清型IVに結合し中和する;および/または
- JCウイルスVP1に結合しない。
【0065】
好ましい実施形態では、抗BKウイルス抗体分子またはその結合断片は、BKウイルス血清型I、II、III、およびIVを中和する。
【0066】
別の好ましい実施形態では、抗BKウイルス抗体分子またはその結合断片は、JCウイルスVP1に結合しない。特異性の向上は、近縁のJCウイルスVP1には結合しないことで現れている。特異性が高まると、オフターゲット活性のリスクが低くなるため、安全性が高まると考えられる。
【0067】
上述のように、本開示は、抗BKウイルス抗体分子またはその結合断片を考察するものである。全長抗体には、定常ドメインと可変ドメインがある。 定常領域は、抗体の抗原結合性断片に存在する必要はない。
【0068】
したがって、結合断片は、完全な抗体の抗原結合領域または可変領域など、無傷の完全長抗体の一部を含むことができる。抗体断片の例としては、Fab、F(ab’)2、IdおよびFv断片;ダイアボディ;直鎖抗体;単鎖抗体分子(例えば、scFv);二重特異性、三重特異性、および多重特異性抗体などの多重特異性抗体断片(例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ);ミニボディ;キレート組換え抗体;トリボディまたはビボディ;イントラボディ;ナノボディ;小型モジュール免疫医薬品(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質;ラクダ化抗体;VHH含有抗体;および抗体断片から形成されるその他のポリペプチドを含む。当業者は、抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片によって行われ得ることを認識している。
【0069】
本明細書で開示されるのは、指定された配列、またはそれと実質的に同一もしくは類似の配列、例えば指定された配列に対して少なくとも約85%、90%、95%、または99%の配列同一性を有するポリペプチドのことである。
【0070】
2つの配列間のパーセント同一性の決定は、好ましくは、Karlin and Altschul (1993) Proc.Natl.Acad.Sci USA 90:5873-5877の数学アルゴリズムを用いて達成される。このようなアルゴリズムは、NCBI(https://blast.ncbi.nlm.nih.gov/)で入手可能であるAltschul et al.(1990) J. Mol.Biol.215:403-410プログラムに組み込まれている。同一性の割合の決定は、BLASTpプログラムの標準的なパラメータで行うことができる。一般的なパラメータとしては、「Max Target Sequences」ボックスを100に、「Short queries」ボックスをチェックし、「Expect threshold」ボックスを10に、「Word Size」ボックスを「3」に、「Max matches in a query range」ボックスを「0」に設定することができる。スコアリング・パラメータについては、「Matrix」ボックスを「BLOSUM62」に設定し、「Gap Costs」ボックスを「Existence:11 Extension:1」に設定し、「Compositional adjustments」ボックスを「Conditional compositional score matrix adjustment」に設定してもよい。フィルタとマスキングパラメータでは、「Low complexity regions」ボックスにチェックがない場合、「Mask for lookup table only」 ボックスにチェックがない場合、および「Mask lower case letters」 ボックスにチェックがない場合があり得る。
【0071】
本開示によれば、「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基に置換されるアミノ酸置換である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが、当技術分野で定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン)、β分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む。
【0072】
前述のように、本開示はまた、いくつかの実施形態において、抗体分子又はその結合断片をコードする核酸、そのような核酸を含むベクター、及びそのような核酸又はベクターを含む宿主細胞に関する。
【0073】
抗体分子またはその結合断片は、単一の核酸(例えば、抗体の軽鎖および重鎖ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単一の核酸)によりコードされてもよいし、それぞれが抗体分子または抗体断片の異なる部分をコードする、2以上の別々の核酸によってコードされてもよい。核酸は、DNA、cDNA、RNAなどであってもよい。
【0074】
本明細書に記載された核酸は、ベクターに挿入することができる。「ベクター」とは、コード化されたポリペプチドの合成が行われる適切な細胞内に核酸配列を運ぶ能力を有する任意の分子または組成物のことである。
【0075】
いくつかの局面における本開示は、本発明の核酸またはベクターを含む宿主細胞(例えば、単離または精製された細胞)をさらに提供する。宿主細胞は、それによってコードされるポリペプチドを産生するように、本発明の核酸またはベクターで形質転換することができる任意のタイプの細胞であることができる。
【0076】
本発明の抗BKウイルス抗体分子またはその抗BKウイルス結合断片は、組成物、特に医薬組成物に配合することができる。このような組成物は、治療的有効量の抗体またはその結合断片を、薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤と混和して含む。
【0077】
さらに、本明細書に記載の抗BKウイルス抗体分子またはその抗BKウイルス結合断片および医薬組成物は、BKウイルス感染症および/もしくはBKウイルス関連疾患を治療または予防する方法において投与することができる。
【0078】
本発明の局面B1~B9の好ましい実施形態は、以下に関する:
1.以下を含む、抗BKウイルス抗体分子またはその抗BKウイルス結合断片:
(i)配列番号34の重鎖相補性決定領域1(VHCDR1)アミノ酸配列または1もしくは2個のアミノ酸置換を有する配列、配列番号35の重鎖相補性決定領域2(VHCDR2)アミノ酸配列または1もしくは2個のアミノ酸置換を有する配列、および配列番号36の重鎖相補性決定領域3(VHCDR3)アミノ酸配列または1もしくは2個のアミノ酸置換を有する配列を含む重鎖可変領域(VH)、および
配列番号37の軽鎖相補性決定領域1(VLCDR1)アミノ酸配列または1もしくは2個のアミノ酸置換を有する配列、配列番号38の軽鎖相補性決定領域2(VLCDR2)アミノ酸配列または1もしくは2個のアミノ酸置換を有する配列、および配列番号39の軽鎖相補性決定領域3(VLCDR3)アミノ酸配列または1もしくは2個のアミノ酸置換を有する配列を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(ii)配列番号34の重鎖相補性決定領域1(VHCDR1)アミノ酸配列または1もしくは2個のアミノ酸置換を有する配列、配列番号44の重鎖相補性決定領域2(VHCDR2)アミノ酸配列または1もしくは2個のアミノ酸置換を有する配列、および配列番号36の重鎖相補性決定領域3(VHCDR3)アミノ酸配列または1もしくは2個のアミノ酸置換を有する配列を含む重鎖可変領域(VH)、および
配列番号37の軽鎖相補性決定領域1(VLCDR1)アミノ酸配列または1もしくは2個のアミノ酸置換を有する配列、配列番号38の軽鎖相補性決定領域2(VLCDR2)アミノ酸配列または1もしくは2個のアミノ酸置換を有する配列、および配列番号39の軽鎖相補性決定領域3(VLCDR3)アミノ酸配列または1もしくは2個のアミノ酸置換を有する配列を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(iii)配列番号34の重鎖相補性決定領域1(VHCDR1)アミノ酸配列または1もしくは2個のアミノ酸置換を有する配列、配列番号44の重鎖相補性決定領域2(VHCDR2)アミノ酸配列または1もしくは2個のアミノ酸置換を有する配列、および配列番号36の重鎖相補性決定領域3(VHCDR3)アミノ酸配列または1もしくは2個のアミノ酸置換を有する配列を含む重鎖可変領域(VH)、および
配列番号37の軽鎖相補性決定領域1(VLCDR1)アミノ酸配列または1もしくは2個のアミノ酸置換を有する配列、配列番号38の軽鎖相補性決定領域2(VLCDR2)アミノ酸配列または1もしくは2個のアミノ酸置換を有する配列、および配列番号48の軽鎖相補性決定領域3(VLCDR3)アミノ酸配列または1もしくは2個のアミノ酸置換を有する配列を含む軽鎖可変領域(VL)。
【0079】
2.以下を含む、項目1に記載の抗体分子またはその結合断片:
(i)配列番号34の重鎖相補性決定領域1(VHCDR1)アミノ酸配列、配列番号35の重鎖相補性決定領域2(VHCDR2)アミノ酸配列、および配列番号36の重鎖相補性決定領域3(VHCDR3)アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH);および
配列番号37の軽鎖相補性決定領域1(VLCDR1)アミノ酸配列、配列番号38の軽鎖相補性決定領域2(VLCDR2)アミノ酸配列および配列番号39の軽鎖相補性決定領域3(VLCDR3)アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL);または
(ii)配列番号34の重鎖相補性決定領域1(VHCDR1)アミノ酸配列、配列番号44の重鎖相補性決定領域2(VHCDR2)アミノ酸配列、および配列番号36の重鎖相補性決定領域3(VHCDR3)アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH);および
配列番号37の軽鎖相補性決定領域1(VLCDR1)アミノ酸配列、配列番号38の軽鎖相補性決定領域2(VLCDR2)アミノ酸配列および配列番号39の軽鎖相補性決定領域3(VLCDR3)アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(iii)配列番号34の重鎖相補性決定領域1(VHCDR1)アミノ酸配列、配列番号44の重鎖相補性決定領域2(VHCDR2)アミノ酸配列、および配列番号36の重鎖相補性決定領域3(VHCDR3)アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH);および
配列番号37の軽鎖相補性決定領域1(VLCDR1)アミノ酸配列、配列番号38の軽鎖相補性決定領域2(VLCDR2)アミノ酸配列および配列番号48の軽鎖相補性決定領域3(VLCDR3)アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)。
【0080】
3.以下を含む、項目1または2に記載の抗体分子またはその結合断片:
(i)配列番号40のアミノ酸配列、または配列番号40と少なくとも約85%、90%、95%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および配列番号41のアミノ酸配列、または配列番号41に対して少なくとも約85%、90%、95%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(ii)配列番号45のアミノ酸配列、または配列番号45と少なくとも約85%、90%、95%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および配列番号41のアミノ酸配列、または配列番号41に対して少なくとも約85%、90%、95%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)、または
(iii)配列番号49のアミノ酸配列、または配列番号49と少なくとも約85%、90%、95%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および配列番号50のアミノ酸配列、または配列番号50に対して少なくとも約85%、90%、95%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)。
【0081】
4.以下を含む、項目1~3のいずれか1項に記載の抗体分子またはその結合断片:
(i)配列番号40のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)。
(ii)配列番号45のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および配列番号41のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)。
(iii)配列番号49のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および配列番号50のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)。
【0082】
5.以下の性質の1つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8または9)を含む、項目1~4のいずれか一項に記載の抗体分子またはその結合断片。
(i)BKウイルス血清型I VP1に結合し、例えば、抗体分子またはその結合断片が、例えば実施例2に記載されるように、ELISAを用いて二価の分子として試験される場合、EC50が約10nM、1nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、0.19nM、0.18nM、0.17nM、0.16nM、0.15nM、0.14nM、0.13nM、0.12nM、0.11nM、0.10nM、0.09nM、0.08nM、0.07nM、0.06nM、0.05nM、0.04nM、0.03nMまたは0.02nM未満である;
(ii)BKウイルス血清型II VP1に結合し、例えば、抗体分子またはその結合断片が、例えば実施例2に記載されるように、ELISAを用いて二価の分子として試験される場合、EC50が約10nM、1nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、0.19nM、0.18nM、0.17nM、0.16nM、0.15nM、0.14nM、0.13nM、0.12nM、0.11nM、0.10nM、0.09nM、0.08nM、0.07nM、0.06nM、0.05nM、0.04nM、0.03nMまたは0.02nM未満である;
(iii)BKウイルス血清型III VP1に結合し、例えば、抗体分子またはその結合断片が、例えば実施例2に記載されるように、ELISAを用いて二価の分子として試験される場合、EC50が約10nM、1nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、0.19nM、0.18nM、0.17nM、0.16nM、0.15nM、0.14nM、0.13nM、0.12nM、0.11nM、0.10nM、0.09nM、0.08nM、0.07nM、0.06nM、0.05nM、0.04nM、0.03nMまたは0.02nM未満である;
(iv)BKウイルス血清型IV VP1に結合し、例えば、抗体分子またはその結合断片が、例えば実施例2に記載されるように、ELISAを用いて二価の分子として試験される場合、EC50が約10nM、1nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、0.19nM、0.18nM、0.17nM、0.16nM、0.15nM、0.14nM、0.13nM、0.12nM、0.11nM、0.10nM、0.09nM、0.08nM、0.07nM、0.06nM、0.05nM、0.04nM、0.03nMまたは0.02nM未満である;
(v)JCウイルスVP1とは結合しない、
(vi)BKウイルス血清型Iを中和する;
(vii)BKウイルス血清型IIを中和する;
(viii)BKウイルス血清型IIIを中和する;
(ix)BKウイルス血清型IVを中和する。
【0083】
6.BKウイルス血清型I VP1、BKウイルス血清型II VP1、BKウイルス血清型III VP1、および/またはBKウイルス血清型IV VP1への結合を、項目1~5のいずれか1項に記載の抗体分子またはその結合断片と競合する、抗体分子またはその結合断片。
【0084】
7.項目1~6のいずれか1項に記載の抗体分子またはその結合断片と、薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤とを含む、医薬組成物。
【0085】
8.BKウイルス感染症および/またはBKウイルス関連疾患の治療または予防に使用するための、項目1~6のいずれか1項に記載の抗体分子もしくはその結合断片、または項目7に記載の医薬組成物。
【0086】
9.項目1~6のいずれか1項に記載の抗体分子またはその結合断片の抗体重鎖および/または軽鎖可変領域をコードする核酸。
【0087】
10.項目9に記載の核酸を含む、発現ベクター。
【0088】
11.項目9に記載の核酸または項目10に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【0089】
12.抗体分子を製造する方法であって、項目11に記載の宿主細胞を、遺伝子発現に適した条件下で培養することを含む、方法。
【0090】
13.項目1~6のいずれか1項に記載の抗体分子またはその結合断片を含む、診断用組成物。
【実施例】
【0091】
紹介コメント
以下の実施例で使用したVP1タンパク質コンストラクトのアミノ酸配列を、以下の表1にまとめた。
表1 - VP1タンパク質構築物のアミノ酸配列
【表1】
【0092】
比較抗体
P8D11(WO 2017/046676)は、他の抗体について記載したようにクローニングした。WO 2017/046676に記載のP8D11のVHおよびVLを、後述のIgGの同一の定常ドメインに融合させた。比較抗体P8D11のアミノ酸配列を以下の表2にまとめた。
【0093】
陰性対照24C3は、健康なヒトの破傷風トキソイドに対する抗体である。可変フラグメントは、以下に述べるようにIgGの同一の定常ドメインに融合させた。
【0094】
表2 比較抗体P8D11(WO2017/046676)のアミノ酸配列
【表2】
【0095】
抗体探索
実施例1
健康なヒトドナーまたは腎臓移植患者の末梢血メモリーB細胞を用いて、免疫グロブリン軽鎖および重鎖可変領域を、ヒト免疫グロブリン定重領域とヒトCD8由来の膜貫通ドメインを組み合わせた発現カセットにクローニングし、抗体レパートリー発現ライブラリーを調製し、抗体の哺乳類細胞での提示を可能にした。抗体ライブラリーのスクリーニングは、HEK293T細胞にライブラリーを導入後、BKウイルスのVP1ペンタマーを蛍光標識して抗原特異的ソーティングにより実施した。
【0096】
このようにして得られたBK-ウイルス特異的抗体発現HEK細胞クローンをさらに増殖させ、ELISAにおける結合アッセイやBK-ウイルス中和など、抗体特性の下流解析のために抗体産生の規模を拡大した。ルシフェラーゼ発現レポータープラスミドを搭載したBKシュードウイルス(BK-PsV)と野生型BKVを用いて、抗体の中和能を試験した。次に、高い親和性とウイルス中和能を有するBKウイルス特異的抗体を可溶性抗体発現用ベクターにサブクローニングし、HEK293F細胞またはCHO細胞に一過性にトランスフェクションした後に発現させた。その後、プロテインGまたはプロテインAで抗体を精製し、様々なアッセイで特性を確認した。同定された抗体319C07に関するアミノ酸配列を以下の表3にまとめる。さらに、バリアントも作製し、対応するアミノ酸配列を以下の表3にまとめる。同定された抗体336F07に関するアミノ酸配列を以下の表4にまとめる。さらに、バリアントも作製し、対応するアミノ酸配列も以下の表4にまとめる。
【0097】
表3 - 抗BKウイルス抗体319C07および319C07-var1のアミノ酸配列。
【表3】
【0098】
表4 - 抗BKウイルス抗体336F07、336F07-var1および336F07-var4 のアミノ酸配列。
【表4】
【0099】
アッセイ
実施例2 - ELISAにおけるVP1-ペンタマーへの結合性
材料と方法
抗BKウイルス抗体とBKV-VP1ペンタマーとの結合をELISA法で解析した。簡単に説明すると、Costar(登録商標) 96 well Assay Plates, half area high binding plates (Corning Inc. #3690) に1μg/ml BKV-VP1 ペンタマー を30μl/well で4℃にて一晩コーティングした。 その後、PBSで希釈した5%スキムミルクパウダー(Rapilait, Migros #7610200017598)を用いてプレートをブロッキングした。抗体は0.5%スキムミルクパウダーを含むPBSで連続希釈し、抗原を塗布したプレートに1.5時間添加した。次に、プレートをPBS 0.05% Tween20 (AppliChem, A4974) で洗浄し、0.5% スキムミルクパウダーを含むPBSで一万分の1に希釈した酵素標識二次抗体 (HRP-conjugated goat anti-human IgG, Jackson-Immuno #109-035-098) で45分間インキュベートした。プレートは、0.05% Tween 20を含むPBSで3回洗浄した。30μl/well TMB liquid substrate (Sigma-Aldrich, #T0440)を用いて反応を展開し、15μl/well H2SO4で停止させた。450nmで吸光度を検出した(Tecan, CM INFINITE MONO 200)。データをフィッティングし、見かけのEC50 ELISA値(EC50E)をGraphPad Prism(GraphPad Software)の3パラメータ解析で決定した。
【0100】
結果
抗体319C07は、すべてのBKV-VP1血清型に対して強い選択的な結合を示した(
図1、EC50
E値は以下である)。抗体319C07は、比較抗体P8D11と比較して、血清型I、IIおよびIVに対して高い親和性を示し、BKV-VP1-血清型IIIに対しては同等の親和性を示す。
【0101】
また、抗体336F07は、すべてのBKV-VP1血清型に対して強い選択的な結合を示した(
図1、EC50
E値は以下である)。比較抗体P8D11と比較して、抗体336F07は4つの血清型すべてにおいて高い親和性を示した。
【0102】
実施例3-抗BKウイルス抗体によるBKシュードウイルスの中和作用
材料と方法
NanoLucレポーター遺伝子を搭載したBKシュードウイルス(BK-PsV)を記載通りに作製した(Pastrana et al, J Virol, 2013 Sep; 87(18):10105-13)。5種類の遺伝子型が作られた。BKV-Ia (BK-D; JF894228), BKV-Ib2 (PittVR2; DQ989796) BKV-II (Q85238; CAA79596), BKV-III (Q0PDA6; BAF03017)および BKV-IVc2 (A-66H; AB369093)。VP1は、記載されているようにアガロースゲルビーズ上で精製した(Buck et al, J Virol, 2008 Jun;82(11):5190-7 および Buck et al, Curr Protoc Cell Biol, 2007 Dec; Chapter 26; 26.21).293TT細胞で感染性ウイルス力価を測定した。BK-PsVの異なる希釈液を96ウェルプレートで阻害剤あり、なしで試験した。さらなるアッセイに選択された希釈率では、非阻害細胞で高い発光シグナルが得られた。
【0103】
9%FBS、HEPES、ペニシリン/ストレプトアビジンを含むDMEMを用い、2万個の細胞(293TT)を96ウェルプレートに播種した。5時間インキュベートした後、様々な濃度の抗体と固定量のBK-シュードウイルスを各ウェルに加え、37℃、5% CO2でプレートをインキュベートした。 3 日間培養後、上清液中のルシフェラーゼ活性を NanoGloTM アッセイ試薬 (Promega, #N1130) を用いて測定した。
【0104】
細胞培養液またはウイルス-細胞-抗体共培養液-上清40ulを白底96ウェルプレートに移し、NanoGloTM 基質40ulを加え、2分間インキュベート後、ルミネセンスリーダー(BioTek Synergy)を用いてルシフェラーゼ活性を測定した。データは、シグナル対抗体濃度曲線にプロットした。IC50値は、非線形回帰(カーブフィット)と式「log(inhibitor) vs normalized response (variable slope)」(GraphPad Software)を用いて、GraphPad Prismで決定した。
【0105】
結果
319C07およびバリアント319C07-var1は、すべての血清型のBK-シュードウイルスに対して強い阻害作用を示した。319C07はP8D11を大きく上回った(
図2、IC50値は以下である)。
【0106】
また、抗体336F07およびそのバリアントである336F07-var1、336F07-var4は、すべての血清型のBKシュードウイルスを強く阻害した。336F07はP8D11を大きく上回った(
図2、IC50値は以下である)。
【0107】
実施例4-抗BKウイルス抗体による長期的なウイルス中和
材料と方法
抗BKウイルス抗体によるin vitroでの長期的なウイルス中和に取り組むため、ヒト初代腎近位尿細管上皮細胞(HPRTEC)、野生型BKウイルスI株(ATCC(登録商標) VR-837TM)、抗BKウイルス抗体の共培養を繰り返し行った。試験開始時に、抗BKウイルス抗体を、EC95、EC50、EC5のウイルス抑制力に対応した3つの異なる濃度で、細胞-ウイルス共培養に1週間添加した。この後、凍結融解を3回繰り返し、細胞および残りの上清からウイルスを採取した。次に、このウイルス抽出物10ulを、様々な濃度の抗体の存在下、新たに播種したHRPTEC細胞に添加した。 接種2週間後に再びウイルス量を定量し、次の感染サイクルに使用するウイルス抽出液を作製した。この手順を3回繰り返し、合計8週間の共培養を行った。
【0108】
アッセイは、96ウェルフラットボトム細胞培養プレートで三重で実施した。培養上清中のウイルス量の定量は、15μlの培地を採取し、95℃で10分間熱不活性化した後、プライマー5’-GGATGGGCAGCCTATGTATG-3’(配列番号53)および5’-TCATATCTGGGTCCCCTGGA-3’(配列番号54)並びにTaqManTMプローブ FAM-AGGGTGTTTGATGGCACAGA-TAMRA(配列番号55)を用いてqPCRを行った。PCRはPerfeCTa qPCR ToughMix(Quantabio,#95140)を用いて、以下の条件で行った:95℃で8分、並びに95℃10秒および60℃60秒のサイクルを40回。
【0109】
結果
抗体319C07は、P8D11と比較して、より完全なウイルスの中和を示す。このことは、8週間後の最後の感染-中和サイクルを見ると最も明らかで、EC95とEC50に相当する濃度ではもうウイルスが検出されないのに対し、P8D11ではEC95とEC50の両方で測定可能なウイルス量が検出された。(
図3、この図ではP8D11を「BM2」と表記する)。
【0110】
また、抗体336F07は、P8D11と比較して、より完全なウイルスの中和を示す。これは、8週間後の最後の感染-中和サイクルを見たときに最も明らかになる(
図3、この図ではP8D11を「BM2」と表記する)。
【0111】
実施例5 - 抗BKウイルス抗体と立体配置エピトープとの結合
材料と方法
抗BKウイルス抗体が立体配置エピトープに結合しているかどうかを調べるために、ネイティブな状態のVP1と変性した状態のVP1のドットブロットを実施した。血清型I、II、III、IVのBKV-VP1ペンタマーを、そのままの形か、SDSとβ-メルカプトエタノールを含むTrisバッファーを用いて85℃5分間加熱して化学熱変性後、ニトロセルロース膜にスポットした。両方の膜を抗BKウイルス抗体とインキュベートし、ヒトFcを指向するHRP結合二次抗体を用いてその結合を明らかにした。検出は比色基質(Sigma Fast DAB)を用いて行った。
【0112】
結果
抗体319C07と抗体336F07は、立体配置エピトープへの選択的な結合を示す(
図4)。変性した抗原は染色されないので、線形エピトープへの結合は除外できる。線形エピトープを認識することが知られている市販の対照抗体(Ab53977,Abcam,rabbit-IgG)は、変性VP1も非変性VP1も検出した。
【0113】
実施例6 - ELISAにおけるBKV-VP1ペンタマーの変異体およびJCV-VP1-ペンタマーとの結合性
材料と方法
VP1-血清型Ib野生型配列をもとに、様々な位置に変異を導入した。同様に、JCウイルスのVP1も使用した。抗BKウイルス抗体と野生型およびバリアントVP1ペンタマーとの結合をELISA法により解析した。 簡単に説明すると、Costar(登録商標) Assay Plate 96 well, half area high binding plate (Corning Inc. #3690) に1μg/ml BKV-VP1ペンタマーバリアントを30μl/wellで4℃にて一晩コーティングした。16時間後、PBSで希釈した5%スキムミルクパウダー(Rapilait, Migros #7610200017598)を用いて非特異的結合をブロックした。抗体は67nMから0.02nMまで0.5%スキムミルクを含むPBSで連続希釈し、抗原コートしたプレート上で1.5時間インキュベートした。その後、プレートをPBS 0.05% Tween20 (AppliChem, A4974) で3回洗浄し、0.5% スキムミルクパウダーを含むPBSで一万分の1に希釈した二次抗体(HRP結合ヤギ抗ヒトIgG, Jackson-Immuno #109-035-098) で45分インキュベートした。結合した二次抗体のHRP活性は、30μl/well TMB liquid substrate (Sigma-Aldrich, #T0440)を用いて明らかにした。2.5分後、15μl/wellの1M H2SO4を加えて反応を停止させた。450 nmで吸光度を検出した(Tecan, CM INFINITE MONO 200)。データをプロットし、GraphPad Prism(GraphPad Software)の3パラメータ解析によりEC50値を求め、EC50ELISA(EC50E)と称した。
【0114】
結果
野生型VP1と比較したBKVの変異型VP1への結合、および近縁のJCポリオーマウイルスのVP1への結合を、抗体319C07について抗体P8D11と比較して検証した。抗体319C07はJCウイルスのVP1に全く結合しないが、抗体P8D11は弱いが有意な結合を示す。N62、D175、またはS275の位置のアミノ酸をアラニンに変異させると、319C07の結合親和性はわずかに低下する。アミノ酸K172をアラニンに変えても、結合力は低下しない。一方、P8D11はVP1-I-K172A変異体への結合が減少しており、N62A、D175AまたはS275A変異体への結合には影響がない。抗体P8D11と比較して、319C07は明らかに異なるパターンを示し、P8D11と比較してVP1の異なるアミノ酸と相互作用することが示唆された(
図5)。
【0115】
BKVのVP1の変異型と野生型のVP1、および近縁のJCポリオーマウイルスのVP1に対する結合も、抗体336F07で抗体P8D11と比較してテストされた。抗体336F07はJCウイルスのVP1に全く結合しないが、抗体P8D11は弱いが有意な結合を示す。位置N62またはE73にアミノ酸に変異があると、336FC07は結合親和性がわずかに低下する。アミノ酸K172をアラニンに変えても、結合力は低下しない。一方、P8D11はVP1-I-K172A変異体への結合が減少しており、N62AやE73Q変異体への結合には影響がないことがわかった。抗体P8D11と比較すると、336F07は明らかに異なるパターンを示し、P8D11とは異なるVP1のアミノ酸と相互作用していることが示唆された(
図5)。
【0116】
実施例7 - 感染HRPTEC細胞からのウイルス拡散の抑制
材料と方法
初代ヒト腎近位尿細管上皮細胞(HRPTEC)をBKV(33-1株、ATCC(登録商標) 45024TM)に感染させた。5日後、細胞をセルスクレーパーで軽く引っ掻き、PBSで広範囲に洗浄し、細胞から遊離したウイルスをすべて除去した。次に、細胞を、接着して成長するHRPTECと様々な希釈度のBKV-中和抗体を含むウェルに加えた。細胞接種8日後に各ウェルから上清10μlを取り出し、記載されているように、プライマー5’-GGATGGGCAGCCTATGTATG-3’(配列番号53)および5’-TCATATCTGGGTCCCCTGGA-3’(配列番号54)並びにプローブFAM-5’-AGGGTGTTTGATGGCACAGA-3’-TAMRA(配列番号55)を用いた定量PCRによりウイルス量を測定した(Martelli et al.,Viruses, 2018 Aug 30;10(9):466)。
【0117】
結果
抗体319C07は、HRPTEC中でのBKV拡散抑制についてP8D11の約100倍の優位性を示し、抗体336F07もHRPTEC中のBKV拡散抑制についてP8D11に対して有意な優位性を示す(
図6、この図でP8D11を「BM2」と表記する)。
【0118】
実施例8 - 抗体依存性細胞傷害性(ADCC)
材料と方法
野生型BKウイルスI株(ATCC(登録商標) VR-837TM)を感染させた、または感染させていない、フラットボトム96ウェルプレートに播種したHPRTECを標的細胞として使用した。エフェクター細胞としては、Promega社のADCC Reporter Bioassay G7015の構成要素である人工Jurkat細胞を使用した。このアッセイでは、ADCC活性の代用として、エフェクター細胞によるFc-γRIIIaシグナルを発光の読み出しにより定量化する。
【0119】
抗BKV抗体または対照抗体を連続希釈してエフェクター細胞とともにHPRTEC培養に加え、6時間インキュベートした後、アッセイキットメーカーの記載に従って生物発光を発現させ測定した。
【0120】
結果
319C7と336F07は、感染したHPRTECに対して同等のADCC活性を示し、さらにP8D11と同等のADCC活性を示した。319C7と336F07、P8D11のいずれについても、感染させなかったHPRTECでは、ADCCは観察されなかった(
図7)。
【0121】
実施例9 - 補体依存性毒性
材料と方法
野生型BKウイルスI株(ATCC(登録商標) VR-837TM)を感染させた、または感染させていない、フラットボトム96ウェルプレートに播種したHPRTECを標的細胞として使用した。細胞を100μg/mlから始まる連続希釈の抗BKV抗体と20%ヒト血清で一晩インキュベートし、細胞生存率をサイトメーターでFSC/SSC クリテリウム(criterium)を用いて生細胞の比率を決定することにより定量化した。
【0122】
結果
319C7と336F07は100μg/mlの濃度で、感染HPRTECに対してCDC活性を示さず、HRPTECの無関係なターゲットに向けられた抗体P8D11と対照抗体リツキシマブでも同じ観察がなされた(
図8)。
【配列表】
【国際調査報告】